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1960-02-24 第34回国会 衆議院 大蔵委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年二月二十四日(水曜日)     午前十時二十八分開議  出席委員    委員長 植木庚子郎君    理事 足立 篤郎君 理事 小山 長規君    理事 坊  秀男君 理事 山下 春江君    理事 山中 貞則君 理事 佐藤觀次郎君    理事 平岡忠次郎君 理事 廣瀬 勝邦君       加藤 高藏君    鴨田 宗一君       黒金 泰美君    進藤 一馬君       田邉 國男君    竹下  登君       西村 英一君    濱田 幸雄君       細田 義安君    毛利 松平君       山本 勝市君    石野 久男君       石村 英雄君    加藤 勘十君       久保田鶴松君    栗林 三郎君       堀  昌雄君    横山 利秋君       大貫 大八君    松尾トシ子君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君  出席政府委員         大蔵事務官         (大臣官房長) 宮川新一郎君         大蔵事務官         (主計局次長) 佐藤 一郎君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         大蔵事務官         (主税局税関部         長)      木村 秀弘君         大蔵事務官         (理財局長)  西原 直廉君         大蔵事務官         (銀行局長)  石野 信一君         大蔵事務官         (為替局長)  酒井 俊彦君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    大月  高君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    村山 達雄君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    村上孝太郎君         大蔵事務官         (理財局総務課         長)      澄田  智君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 二月二十三日  委員松尾トシ子辞任につき、その補欠として  北條秀一君が議長指名委員に選任された。 同月二十四日  委員北條秀一辞任につき、その補欠として松  尾トシ子君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十四年産米穀についての所得税臨時特  例に関する法律案内閣提出第二号)  税制に関する件  金融に関する件  外国為替に関する件  専売専業に関する件      ————◇—————
  2. 植木庚子郎

    ○植木委員長 これより会議を開きます。  税制に関する件、金融に関する件、外国為替に関する件及び専売事業に関する件について調査を進めます。  質疑の通告があります。これを許します。石野久男君。
  3. 石野信一

    石野委員 私は、きょう大蔵大臣通産大臣企画庁長官に出てもらうように要求しておりましたが、通産大臣分科会でやむを得ない事情があって出られないそうですが、企画庁長官は何か大阪の方へ行っておられるそうです。長いこと、もう一月以上もこの要求を続けてきて、大臣のいろいろな都合から延びてきたのであるけれども、せっかくみんながそろうといっているときに、国会委員会を無視して、どんな事情があるか知らないけれども大阪へ行っておるということはけしからぬと思う。これは一つ委員長もう少ししっかりと国会重視の立場を政府にとってもらうようにしてもらわぬと困ると思うので、そういう意味で、この次の委員会のときに通産大臣企画庁長官に出てもらうことを私は一つ保留しておきまして、きょうは大蔵大臣に質問いたします。  ことしの予算の説明のときにも、大蔵大臣は、財政演説の中でも、また先般の本委員会におきましても、いろいろと経済見通しを述べられて、本年は特に貿易為替自由化を積極的に進めたいというお話があったのであります。私は、この際、貿易為替自由化というのが世論となって非常に大きく取り上げられておる際にあたって、この自由化政府はどういうふうに把握されておるか、自由化の本質的なものの考え方をどういうふうに見ておられるかということを、まず最初にお尋ねいたしたいのであります。  貿易為替自由化の問題については、西欧通貨交換性が一昨年の暮れに回復しましてからあと急速に伸びたということになっておるのですが、西欧二つブロック——西欧では欧州共同体と自由経済連盟二つができて、これは、自由化を進めるということとは逆に、熾烈なブロック的対立が出ていると見られるわけです。一月には、そういう意味から、パリ大西洋経済会議が行なわれて、アメリカやあるいはカナダが、それに対する介入といいますか、そのブロックの中へ何とか入っていこうという努力がなされたと見られるわけです。しかし、これは必ずしも、アメリカ最初に考えておったように、その中でブロック対立を解消させるようなところまではいっていないと思うのです。それはそう簡単ではないというように思います。アメリカは、国際収支の赤字が非常に強くなってきておるのと、現状ではなかなかやはり輸出が伸びないという事情のもとに、各国に対して差別排除要求貿易自由化を非常に強要しているわけです。それは、明年のIMF総会だとか、あるいは東京ガット総会のときにおいても、それがはっきり出ておるわけでございます。また、自由主義諸国は、同時にアメリカが今まで各国に対して与えた援助が、今日アメリカを非常に国際収支の面では苦しくしてきておるというような事情にかんがみて、アメリカ保護政策のもとに立ち戻ることを非常におそれておる。そういうことから、この自由化の問題に受けて立つという形があって、また受けねばならぬというような考え方を持っておるように見受けられるわけです。それで、IMF総会でも、あるいはガット総会でも、特に日本に対しては、各国が、強い貿易自由化といいますか、輸入制限排除要求をしておったと思います。特にそのうちでも、アメリカ日本に対してそれを強く要求していたと思うのであります。そういうような事情の中で、大蔵大臣は、二月九日の本委員会では、まあ自由化世界的の潮流であるから、できるだけこれを積極的にやりたいという話をなさったわけですし、通産大臣も、二月五日の商工委員会で、そのことを積極的にやろうということを言われました。  そこで、私は、この貿易自由化の問題について、こういうふうに思っているのです。最近行なわれておるところの貿易自由化の要請というものは、はたしてほんとうに世界経済長期にわたって立て直すことの意味を持っているかどうかという問題で、真剣に考えねばならぬものがあると思うのです。そもそも資本主義社会独占金融段階まで入ってきますと、必然的に、その独占が巨大になればなるほど、生産性が飛躍的に向上しますから、そのために消費市場が相対的に狭隘になってくる。ことに戦後は社会主義圏世界の三分の一から五分の二を占めるというような状態になっているために、ますますその消費市場が狭隘になってきていると思います。そういうことから、独占化市場世界に拡大しようという要求、そういうものがこの自由化を強く要求するようになってきているのだ、こういうように思うわけであります。アメリカが今日自由主峯諸国を助けたというのも、それは、軍事的であれ経済的であれ、究極的にはアメリカ市場を拡大しようという独占要望であったと思います。ところが、最近になりまして、アメリカ援助を受けた諸国が、それぞれ経済的な立ち直りをするようになって参りますと、アメリカ自身が今まで援助しておった国々に対して貿易を伸ばすということは、非常に困難になってきておるし、そういうことから独占資本自身自国市場拡大というものを求めるという方向が、アメリカの今まで自由主義諸国に対するような対策ではやっていけないというような事情になってきておるのが現状だと思うのです。こういうことから、自由化というものが自由主義諸国においては非常に強い要望となって出てきておる、こういうように私は見ております。従って、私たちの感じでは、貿易為替自由化というのは、資本主義経済社会におけるところの巨大独占資本市場拡大要求に基づいておるものである、こういうふうに見るわけです。従って、こういう見方からするならば、これはもう資本主義社会におけるところの独占発展段階の違う国々においては、自由化というものの受け方がおのずから違ってくると見なければいけない。巨大に成長しておるところのいわゆる先進国といわれる資本主義諸国、それから非常におくれたところ、あるいは日本のように中進国だといわれるような基底を持つところでは、自由化受け方というものは、これは非常に違ってくるのだ、こういうように見なければいけないのではないかと思います。そういう意味から、私は、この貿易為替自由化という問題について、わが国が処するの方途というものは、どういうふうな構想で受けなければならないか、こういうような問題になってくる、こう思うのです。  私は、この際一つ大臣——大臣貿易為替自由化をやらなければいかぬ、こう言っておりますが、今私どもが考えておる貿易自由化というものは、究極的には資本主義社会におけるところの独占資本市場拡大要求として出てきておるものであるから、そういうかまえでこの貿易為替自由化という問題に対処すべきであるという考え方に対して、大蔵大臣はどういうような所見を持っておられるか、この際一つはっきりお聞かせ願いたいと思います。
  4. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 為替貿易自由化、これは、御指摘通り、一昨年欧州通貨交換性を付与する、同時にコモン・マーケットが出発する、こういうようなことを契機にいたしまして、自由化方向各国とも大きく踏み出しております。その見方は今御議論がございましたが、その意見は、実は私はそういう見方はしない。いわゆる独占資本市場拡大だ、こういうようには実は思いません。この自由化のねらいは、申すまでもなく、各国経済発展向上させていく、そこに各国民族といいますか、国民の生活向上をもたらす、経済発展なくして生活向上なしということ、こういう意味で最も拘束のない状況のもとにおいて経済自由化闊達な方向に持っていきたい、こういう意味でこの自由化ということを考えておる。その意味で一面競争も激化しますが、他面において、国際協力の面に絶えず注意している。その点はいわゆる低開発国に対する経済開発という形において出てきておる。その国際的のねらいは、この自由化こそが真に経済発展をもたらし得るものだという基本的信念に基づいておる。それが経済発展生活向上だと、こういうことにあるのだと思います。しかし、御指摘通りに、後段でお示しなりましたように、各国世界全体としての経済発展を最も好条件のもとでしたい、そういう意味においての自由化、これは理論的に一応納得がいきますが、各国が置かれておるその状態のもとにおいて、ただ自由化ということから見ると、自国にどういう影響があるか、これを見のがすわけには参りません。御指摘通り、その経済の発達の状況によりまして、それぞれ自由化に対する対策も変わってくるでしょうし、また、自由化をするにしても、準備の諸施策が必要になってくる。日本の場合にとりまして、これは、お示し通り、いわゆる一流の工業国だと自負することはけっこうですが、実力としては私はそれまでの力はないと思う。御指摘通り進国だと思っている。そういたしますと、自由化された暁における競争の面からわが国を守っていく。後進国に対する協力わが国の役目も果たして参りますが、同時に、わが国経済自身の持つ弱点というものに対しても、自由化された暁においてはどういう影響を受けるかということについて、十分の検討を遂げて、その用意をしなければならないものだ、かように実は考えております。御意見通りに、後段については私どもも同じ所感を持っておるということを申し上げておきます。
  5. 石野信一

    石野委員 自由化の問題について、資本主義社会における独占金融資本段階まで入った今日の段階における貿易為替自由化をどういうふうに把握するかという問題は、これから施策を行なうにあたって、非常に重大な分かれ道を決すると私は思うのです。私は、今大臣がおっしゃられたように、経済発展段階において、この独占市場拡大方向からする自由化の問題ではなくして、各国経済発展のために、それは競争もあるけれども協力も出てくるからいいものだというような見方は非常に甘いと思っています。私の見方では、むしろ、やはり、それは確かに今日の独占資本が、それぞれの要求に基づいて、その力の関係において自由化要求し、またそれは一時的には世界経済を維持することはできましても、しかし、それは、たとえば今日の欧州における共同市場ブロックと、それからイギリスを中心とする自由経済連盟の諸君の対立というものは、そう簡単に解消するものでないと私は思います。しかもそれぞれのブロックの中では関税の障壁を取ってしまうのです。これほどフリーな形になってきておるにもかかわらず、なぜそれではこの二つブロックが一緒になれないのだろうか。こういう問題について、私は今度のパリにおける大西洋経済会議というものの意義が非常に重要であったと思うのです。しかし、この一月中旬に行なわれた大西洋経済会議というものは、必ずしも、アメリカが考えたように、この二つブロック政治的にも経済的にも一つの姿に統合することはできなかったと思います。これはおそらく相当長く続くものだと見なければいけない。従って、わが国がこういう問題を、これから後貿易為替自由化の中で歩んでいこうとすれば、必然的にわが国世界経済の中によって立つ基盤をどういうところに求めるかという問題にも関連してくるだろうと私は思うわけでございます。これはあとでまたそれらの問題に触れなければならないと思いまするけれども、私は、やはり、今日の段階におけるところの貿易為替自由化というものは、ただ世界的な流れだからというようなつかみ方ではいけないのであって、その流れの本源が何であるかということを経済の原理に基づいてつかまないといけないというふうに思います。そういう意味では、真剣に一つ政府として考えていただかなければいけない。  時間の制約がありまするので、私はあまり論争をやりませんけれども、しかし、少なくとも、私たちは、やはりもうヒルファディングの「金融資本論」においてさえも、すでに独占金融段階発展したときにはそういう状態が出てくるのだということを指摘されているわけでございますし、私たちはやはりそういう考え方というものは今日でも依然として強い力として世界経済を動かしているのだというふうに見なければいけない。ことに、東西の対立といいますか、平和共存というような問題が出て参りますと、世界市場は明らかに社会主義圏において三分の一ないし五分の二を占められておりまするし、残ったその三分の二なり五分の三なりというところでも、すでにアメリカとソ連との投資競争が行なわれておるというような実情であります。その門、経済に内包されておる問題はおのずから両体制においては違っておりまするので、従って、やはり日本としては、そういう世界経済の中における貿易為替自由化というものの取り上げ方というものを簡単に取り上げておったのでは、これは世界流れに押し流されるだけであって、その中でさおをさすことはとてもできないだろう、こう思いますから、この点は一つ大臣の今後の真剣な対策要望したいと思う。いたずらに世界流れだからというようなことだけで問題を軽く取り上げることは、やめてもらわなければいけないのじゃないかと思う。私は、今、日本貿易為替自由化を取り上げるにあたって、今の日本景気動向がどうあるかとか、あるいは世界景気動向がどういうふうに動いていくかという問題に対する見方は非常に重要だと思うのです。政府見方は、経済貿易為替自由化と相待ってゆるやかな上昇方向に向かっている、そしてまた物価は年度を通じて横ばい傾向をたどるだろうということを、しばしば言っておるわけです。私は、本年の日本経済というものが一兆五千七百億に及ぶところの膨大な予算、われわれから見れば相当インフレ的傾向を持っておる予算でありまするが、そういう予算の中で出てくることしの日本景気というものは、一般によくいわれているように、上半期非常に景気過熱傾向が出てくるのじゃなかろうか、下期になりますと、やはり引き締めを必要とするような状態になってくるのじゃなかろうか、こういうふうに見ておるのですが、大蔵大臣のその点に対する御見解を承りたい。
  6. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 為替貿易自由化の話を非常に簡単に時間の制約があるからといっておよしになりましたが、実は私どもも、国際的潮流であるということ、それ自体は十分認識しなければならぬということを申しますが、準備態勢を整えることにつきましては、十分慎重に対策を講ずるつもりでございます。私が最近の経済そのものから見ましても、今回の為替貿易自由化、このくらい大きな変動はないと思っております。その意味においては、過去において、明治時代といいますか、旧憲法下における金解禁、ああいう政策にも比すべき重大な意義を持つものだ、そういう意味において、政府自身も、また産業界自身におきましても、十分の用意がなければならないものだ、かように実は考えておるのであります。そういう意味で機会あるごとに貿易自由化について説いて参ってもおりますが、そういう意味から申しましても、一つ潮流そのものは無視できない。これは現実の姿なんです。それに対しまして一つスケジュールはどうしても作らなければならない。今日貿易自由化具体化といいますか、スケジュールを順次四月末くらいにはでき上がらすつもりで、今政府においても企画庁中心にして諸準備を進めておりますが、貿易自由化目標を立てて、業界協力を得る一つ目標を示さなくて、ただ自由化議論をしておるのでは、これは潮流におくれるということだ、かように考えて一つ目標を指示しておる。そのための準備政府業界においても怠りなくやって、そして、ただいま申すような基本的な経済の運営の変更だとか、それに対するだけの決意がなければならない、また用意がなければならない、こういうように実は考えておる次第でございます。そういう意味におきまして、石野さんが先ほど来御指摘なりました点は、まことにごもっともであります。政府自身演説等できわめて簡単な表現はいたしておりますが、自由化の持つ意義においては十分認識しておるつもりでありますし、またそういう意味で諸準備を遂げていく考え方でございます。  ところで、経済動向でございますが、経済動向につきましては、一定の経済推移と申しますか、ゆるくても、あるいは急カーブでありましても、絶えず長期にわたって上昇していくというような経済状況は、計画はできましても、それを持続していくということはなかなか困難じゃないか。と申しますのは、逆に申せば経済景気は絶えず波があり変動があるものです。しかし、長期にわたってこれをあとで見ると、波はあるが、長期の線としては上昇発展していく、こういうものではないかと思うのであります。そういう意味から、この経済動向について、私どもはぜひとも昨年の好況というものを持続したい。そういう意味で、絶えずそのときどきにおける経済の動きについて注視し、適時適切な方策を講じて誤りなきを期していく、こういう考え方でございます。ところで、昨年の十一月時分は、一部今御指摘なりましたように、上期における過熱状態が生じ、下期においては引き締めになっていきはしないか、こういう意味で、経済見方について政府見方は甘いのではないかというような御批判もあったかと思います。確かに、昨年の十月から十一月の候にかけましては、相当心配されるような現象が物価の面その他金融等の面にも少しずつ現われて参った、かように思います。しかし昨年の十二月に御承知のように公定歩合を一厘引き上げた。これは当時予防的措置だということをはっきり申し上げまして、注意を喚起いたしたのでございますが、その後今日までの経過を見ますと、ほぼ私どもが当時一厘引き上げ計画したときの見通しのような経過をただいまたどっております。たとえば年末金融等におきましても、もちろん一時的ではあるが、通貨も一兆円をこすだろう、相当の額に上るのではないかという心配が一部ございましたが、一厘の引き上げをいたしました結果は一兆三百億程度にとどまった。予定した金額よりも内輪にとどまり、しかも一兆円をこした期間がきわめて短い期間であって、その後環流状況も非常に順調に参りました。また一時値上がりを来たしておりました物価もまず横ばい状況推移するようになった。ことに自由化を前にして最も心配されました繊維関係などはむしろ値下がりを来たした。こういうような事柄物価の落ちつきを招来したものだ、実はかように思っております。また設備投資に対する資金需要が非常に強く出ておる。そういう意味で、業界についても警告をいたしますと同時に、金融機関におきましても、金融扱い方について十分その窓口において効果を上げるような方法をとったわけでありますが、その結果はやや引き締めという効果も出て参った。こういうことでありますので、まず一月、二月の経過はしごく順調ではないか、かように思います。また、最近この二月から三月にかけましては、国庫との関係等も考えまして、金融の方はやや今締まりぎみでございます。そういうことを考えてみますと、いわゆる上期過熱論というものはまず当たらないのじゃないか。ただ、御指摘のように、ことしの予算一兆五千七百億に近いもの、あるいは財政投融資計画等が実施に移された暁において、そういうものがどういう影響を与えるのか、政府は健全だと言っているけれども、相当大きくはないかというような御批判も一部にあるようであります。しかし、私どもは、今回の予算規模なり財政投融資規模はまず適正なものだと思うし、これが時期を得てそれぞれ現金化されるということでありますならば、いわゆる過熱だとか、その結果経済発展においてある部門だけが非常に膨張する、ある部門が非常に痛めつけられるというような結果なしに、まず順調な推移をもたらし得るのではないか、かように実は考えております。石野さんのお耳にも入っていることだと思いますが、昨年一厘の公定歩合引き上げをいたしまして、あるいは昨年末においては、あれは第一回の引き上げであり、さらに引き続いて第二次の引き上げがあるのじゃないか、こういうことを一部で懸念したようでしたが、年が明けるとともに、今度逆に、引き上げじゃなくて、政府はまた公定歩合を下げるのじゃないか、こういうような話が一部に出ておるようです。そういうように、まず金融では、私ども計画したような効果を今日おさめてきておる、かように実は思っているわけであります。かように申したからといって、私楽観しておるわけじゃございません。経済事柄でございますから、これはもう政治生きものと言いますが、政治より以上に鋭敏な生きものである経済を取り扱っている、こういう意味で私どもは絶えず注意しております。ことに冒頭の御意見に出ております貿易為替自由化という大きな転機を控えておりますだけに、この際は、政府といたしましても、十分経済活動状況なりあるいは金融の実際というものについて絶えず注意いたしまして、そうして適正にこれを指導し、また実施して参りたいという考えでございます。
  7. 石野信一

    石野委員 いろいろな見方があるし、またしばしばそういう説も聞いているわけですが、なるほど最近は、金利の問題についても、公定歩合引き上げなければならないような事情でなく、むしろ引き下げられるような気配もあるというような見方もできます。しかし、これらの問題は、一つには、また昨年の暮れから急に貿易為替自由化方向を急速に体制づけなければならないという意欲的な面も、それに非常に大きいファクターとして入っているものだと私は要るわけです。しかし、現上実には、三十五年度財政支出、それから財政投融資の中から、全体として昨年に比較して約二千二百億近い増が出ているわけです。それに、通産省が調べているところの約九百七十七社にわたる設備投資についての額は、昨年比約一一・一%近く上がっているはずであります。その額は約九千五百億になるはずです。これらのものは相当程度の過熱要因として働いてくるものと見なければならないのじゃないかというように思うわけです。それからまた、一面において、国際収支の面から見ますと、最近今度は逆に収支の帳じりの幅がだんだん狭くなってくるという傾向も出てきているわけです。そういうような問題が、国内の資金需要やなんかの問題とからみ合って、いろいろと含みを持った動きになってくるのじゃないか、こういうように考えて参りますので、私はそう簡単に政府の言うようにはいかないだろうと思う。むしろ、私どもとしては、やはり今日の経済が、たとえば生産が非常に増強していると言いますけれども、神武景気当時の生産の拡大というのは、全体として物価を案外に横ばいさしておったと思うのです。しかし、昨年米は、生産は上がると同時に、物価面も比例的に上がってきているという傾向があると思います。私は、最近日本経済は全体としてやはりインフレ含みの状態になっている、こういうように見るわけです。これは、日本だけではなしに、アメリカ経済もやはりそういう傾向を多分に持っているわけです。そういう意味から、私は、過熱の問題については相当程度注意を必要とするし、政府が言うように、そう簡単に横ばいとかあるいはまたゆるやかな上昇傾向というようなことじゃないと思う。むしろ、そういう過熱要因を含んでいるだけに、いろいろとやはり経済的な動きが出てきて、逆作用が出てくるのじゃなかろうかという気もするわけでございます。そういう点については、いま一度——特に財政支出や財政投融資の問題、あるいは設備投資の問題、ことに設備投資がどういうふうに日本景気に動くかという問題についての見方は重要だと思うのでございます。きょうは通産大臣がおいでになればその点お伺いしたかったのですけれども、いないのですが、大蔵大臣、その点、設備投資の面から日本景気をどういうふうに見ているかということを伺いたい。
  8. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今設備投資経済の各部門に均衡がとれている場合には、私は正常な拡大だと見てよろしいと思います。しかし、もしも不均衡を生じますと、逆に隘路というものが片一方に出てくることになりまして、それが経済に非常な悪影響を及ぼす。ただいまおあげになりました設備投資計画として取り上げた数字ならともかくでありますが、設備投資希望としての金額といわゆる計画との間には相当開きがあり、また実際の金融措置をつけるという、これにもまた開きのあることを御承知おき願いたいと思います。この自由化の場合に非常に困りますのは、一体どこかで実情をチェックするいい方法があるのかどうかということになるわけです。自由化されますと、実情を調査するということはできましても、一々許可にかかってくるわけじゃなし、認可にかかるわけじゃございませんので、そういう意味で実情に即さないものが出てくるかもわからない。そう考えてきますと、やはり金融に課せられる責任が非常に重くなる。ところが、金融自身も銀行同士お互いに競争いたしておりますし、銀行同士なかなか手のうちを見せませんから、これは把握が非常に困難ではないかという心配がある。そういう点を今の中央銀行を十分使うことによりまして、私ども金融の一面から実際の経済の動きを把握していく、こういうこと以外に方法がないのじゃないか、実はかように思っております。見方によれば、あるいは一部金融資本が非常に強化されるのではないかというような批判もあろうかと思いますが、私どもが一番心配いたしますのは、角をためて牛を殺すことがあっては相ならない、かように実は考えておりますので、その点はいわゆる金融、ことに中央銀行の持つその機能並びにその良識というものが経済発展に万遺憾なき役目を果たす、かように実は考えておる次第であります。     〔委員長退席、足立委員長代理着席〕
  9. 石野信一

    石野委員 設備投資の問題については、設備投資の意欲というものと、実際に設備投資の額がどういうふうになるかという関係はおのずから違うものだ。それはわれわれだってよくわかっておる。ただ問題は、今大臣も言われるように、貿易為替自由化が進んでいけば、それ自体もいろいろな問題について統制とかあるいは管理形態というものがはずれていくわけでございますから、容易なものじゃなかろう、こう思うのです。私は設備投資の意欲は非常に盛んであるということは事実だと思います。その問題を、景気過熱の問題とのからみ合わせで、政府がどういうふうにコントロールするかということにかかってくると思うのであります。だから、事実上設備投資の意欲というものが旺盛であって、それをそのまま放任しておけば過熱になるであろうという危惧があるのが、現在の日本の実情だ。そうするならば、その過熱がないのだと政府が言われるにあたっては、その意欲をどういうふうにして押えるかという問題、その方策、構想、これがやはり政府になければならないと思う。政府はどういうふうにその公正な設備投資の意欲を景気過熱に追い込まないようにするために処置されるつもりですか。
  10. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 設備投資の意欲につきまして、ただいま言われますように、たとえば通産省なら通産省という産業官庁としてみますと、それぞれの産業の拡大の方向——一社が一つ計画を持てば、他の社も同様に持ってくる。たとえば石油化学について、あるいはまた最近農林関係にも問題を波及して参りますが、テンサイ糖の製糖設備だとか、こういうような非常に強いものが出てくる。あるいは製鉄、これも一社が一つ計画すれば、同時に他のものも計画していく。そういう場合に、やはり企画庁中心なりますいわゆる経済の諸計画並びに経済の動きについての見通しというものが、それらの計画をどういうようにアジャストしていくかという問題に実はなるわけであります。中心はやはり企画庁における経済見通しというものが非常に強い役割を果たすものだと思うし、また、関係官庁としては、大蔵省自身が金融の面からそういうものについてどういうような援助協力やあるいは制約を加えるかということになるのではないかと思います。  問題は、もう一つ重大なポイントがあります。それは何かと申しますと、中小企業の面であります。比較的大企業についての設備投資については、調査もしやすいし行き届いて参りますが、こういう機会に一番心配いたしますのは、中小企業の設備投資意欲をどういうようにチェックしていくかということが、一つの大きな問題だと思います。もちろんこれが産業系列に入っております場合においては比較的つかみやすいのでございますが、今日のわが国の国内事情等から見まして、いわゆる零細企業は別として、中企業というものは、産業資金の需要の面から見ましても、あるいはまたそれの持つ生産力等から見ましても、ものによりましては独立し、またものによりましては、基幹産業との関連において、これは非常に価値を持つものであります。これを適正に育成していくということ、これは特別な注意をしなければならない。この方は、ことに都市銀行にあらずして、地方銀行との関連において特に密接な金融のつながりがあるようでありますから、そういうような意味においては、特に地方銀行等についても、同様の観点からこれを指導し見ていくということが必要じゃないか、かように実は考えております。
  11. 石野信一

    石野委員 設備投資に対する資金的な面におけるところの指導は、先ほどお話がありましたように、政府の適切な指導、そしてそれが金融機関を通じて金融的に必ず出てくるものだと思うのです。従って、そこでは当然金融の面におけるところの引き締めであるか、あるいは引き下げであるか、どちらかの方策になるであろうと思いますけれども、しかし、景気過熱を警戒する以上は、引き締め方向へ動くのは当然だと思うのです。この引き締め方向と、それから貿易為替自由化の態勢を国際金利の水準へ持っていこうとする場合との矛盾が当然出てくると思います。これらの問題はあとでまた金融政策のところでお尋ねしなくちゃならないのですが、しかく簡単ではないと思いますので、私は、設備投資の問題についての景気維持の観点からすれば、投資活動というものが盛んにならなければ、これはとてもだめなんだと思います。三十五年までの間に行なわれた消費景気というものを、三十五年度横ばいながらでもやや上昇過程に持っていこうとすれば、どうしてもそれは投資活動によらなければいけないだろうと思います。しかし、今のようなお話を聞いておりますと、やはりその投資活動をチェックするような形が多分に出てくるようなことになりまして、案外にその景気を持続することが困難になるのじゃなかろうかということも考えられるけれども、そういう心配はありませんか。
  12. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 経済自身が持ちます力は、とにかく拡大発展方向を持つ、これはもう本質的にそういうものがございます。私どもがこれをチェックすると申しましても、その本質を曲げるわけには参りません。ただスピードをゆるめるという程度、それより以上のことはできない。あるいはバランスをとるということ、それ以外にはできないことであります。その点はこれこそ御心配なくてよろしいことじゃないか、かように思います。
  13. 石野信一

    石野委員 経済自身が拡大の方向を持っておることは事実でありますから、私はやはりそういう意味からも過熱の心配があるということを言っているわけです。しかし、それは過熱でなくなるのだということについては、どうしてもやはり相当人為的、政策的にチェックしなければならなくなってくるのであって、私は、そういう形からすれば、引き締めの方策は当然出てくるものだというふうに見ているわけです。これはおそらく下期になればそういう傾向が強く出てくるものと思うわけです。  そこで、中小企業に対する投資計画をどのように把握するかということは非常に困難であり、またそれをどのようにコントロールし、リードしていくかという問題は、政府にとっても非常に重要な問題であろうと思います。私は、この中小企業がわが国経済に持っておる役割、特に外貨収支の面で持つ役割は非常に大きいという意味合いからも、中小企業に対する指導の面、特に金融政策というものは、大企業と同じような形ではとてもできないと思うのです。そういう点から見まして、財政、金融の面からする中小企業に対する政府のこの際における基本的な考え方、特に自由化に際して考えなければならぬ本質的なものはどういうところにあるかということを、この際お聞かせ願いたいと思います。
  14. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これこそ、通産大臣がおられると、所管大臣としてはっきり答えられるだろうと思いますが、私どもが特に今回の予算の財政投融資等において気をつけましたことは、金融の円滑化ということであります。従いまして、中小企業関係の三公庫についての金融は相当増額いたしたつもりでありますし、同時にまた信用付与の方法についても特に意を用いた。これらの点で御了承いただきたいものだと思います。
  15. 石野信一

    石野委員 政府は、予算において中小企業に対しては相当な増額をしたんだ、こういう話です。それは若干の増額はあります。しかしながら、私は、この際中小企業に対して特に財政、金融の面で政府がめんどうを見るということになるならば、形ではなくて、やはり実質的な面で中小企業に役立つような政策を出さくちゃいけないのじゃないかと思うのです。  私は、時間があまりありませんから、理屈ばかり言っておるといけませんので、具体的な問題で政府考え方をお聞きしたいのです。  たとえば、国民金融公庫なり中小企業金融公庫というのは、政府にとっては、これは政府機関で指導している非常に重要な機関です。ここへは今年度相当な額の増額もしております。しかし、私は、この中小企業金融公庫なり国民金融公庫なりで潤っておる中小企業の方々が実際にどういうことで一番困るのかという問題を、政府はよくつかんでいただく必要があると思うのです。毎年同じですけれども、われわれ、この国民金融公用なり中小企業金融公用は、中小企業者のために非常にめんどうを見て、そして少ない人員で、ずいぶんこまめに、小さな金を配分してきていると思います。ところが、最近、特に第四・四半期における中小企業金融公庫なり国民金融公庫の実情は、はたして中小企業の諸君に対してほんとうに恩恵を与えるようになっているのだろうか。逆に今度は困らすのじゃなかろうかという点が出てきているわけです。これは、御承知のように、国民金融公庫なり中小企業金融公庫というのは、自己の持つ資金もありまするけれども、主として運用部資金を相当使っているわけです。従って、年度末になりますると、その運用部資金を相当吸い上げられることになって参ります。その結果として、たとえば、一般の中小企業者は、国民金融公庫へ行けば、申し込みをしてから一カ月くらいすれば金を借りられるんだ、こういう考え方で来ているわけですが、国民金融公庫の場合をとってみますると、昨年の暮れは大体十一月の末で受付を締め切っているはずでございます。一カ月間はもう資金がなくて、よくめんどうを見ることはできなかったと思う。しかし、第四・四半期の今日においてどういう実情であるかということを大臣御承知だろうか。今日の実情からいいますると、国民金融公庫は二月の七日現在で締め切っておる。二月八日以後においてはもう金がないのです。回収された金はみな吸い上げられていくのです。そのために、暮れには三十日そこそこであったものが、今日では五十日の間というものは空白になるわけです。だから公庫はこれに対しはめんどうを見ることはできない。私は、昨年は大体二月十七日くらいまでは、所によりましてはめんどうを見れたと思うのです。今年は八日か七日になってしまっているというのが実情でございますので、こういう問題こそ、もっと、形だけでなしに、実質的にめんどうを見てやらなければいかぬじゃないか。年度末はどこにいきましても計算するのには非常に重要な時期でございますし、特に中小企業者は税金を納めなければならないときです。そういうときに、当てにしていた金が、五十日もほったらかしておかれて、年度がわりでなければ金がこない、こんなことでは、とてもこれは中小企業の対策を立てているとはいえないと思う。これは政府が簡単に吸い上げるからなんです。若干の運用部資金を使っている以上は、吸い上げられるのは仕方がありませんが、昨年よりも今年の方が詰まってきてしまっているということはよくないと思う。せめて昨年並み、あるいは今年の二月一ばいくらいはお客さんのめんどうを見るくらいのことは配慮すべきだ、それでなければ中小企業者は困るのではないかということを考えるのですが、大蔵大臣はそれについてどういうようにお考えですか。
  16. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 運営の実際についてただいま銀行局長から詳細に話させたいと思いますが、御承知のように、政府関係機関はそれぞれ金融計画を持っておりますから、その計画の面からあるいはただいま言われるような不都合を生じているかもわかりません。また一面、最近の中小企業の要請、需要もなかなか強いと思いますので、そういうことと相待っているのじゃないかと思います。詳細は銀行局長から説明いたさせます。
  17. 石野信一

    石野政府委員 ただいま大臣からお話のありました金融公庫、中小公庫の金融関係は、一般的に申しましては、最近の金融情勢——一般金融機関においても、必ずしも中小金融が非常に逼迫しているようにも見受けないのであります。と申しますのは、いわゆる引き締め関係でございますが、三十二年に経済が行き過ぎましたときのような引き締めなりますと、大企業の金融が引き締まって、そのしりが全部中小企業に押しつけられるというような傾向がありますために、非常に逼迫するわけでございますが、今日までのところは、中小企業の設備投資なり運転資金の需要が強い、そういう意味において、その需要が強いためにそれが十分には満足できない、こういう形における金詰まりというものがございますが、先ほど申しましたような意味での金融の中小企業に対するしわ寄せというような形ではないと思う。また具体的に金融公庫、中小公庫がどういうふうになっておるかという点でございますが、これは、おっしゃいますように、需要が非常に多いと、これに満足を与えるというわけには参りません。政府が補完的な金融機関としてああいう制度を活用しております限り、十分には参りませんが、今年が特に昨年よりも窮屈であるというふうには私どもは考えておらないのでございます。なお、実情につきましては十分調査をいたして、円滑を期したいと思います。
  18. 石野信一

    石野委員 私は今中小企業の金融が特に切迫しているとかなんとかいう意味で言っているわけじゃございません。政府が中小企業に対して非常にめんどうを見る施策をしているといわれているにもかかわらず、実質的には中小企業の方々がこういう苦しみをしているということを、よくわかってもらわなければいけない、わかってもらうだけではなくして、こういう苦しみをさせてはいけないということを申し上げているわけです。だから、中小企業金融公庫なり国民金融公庫が、ことさらに例月の貸出基準を上回ってよけいに貸し出しをしようとするから少なくなってきている、と言うのじゃありません。これは政府の指導によって一定の基準による貸し出しをしているわけです。しかし、その一定の基準による貸し出しをしようとしても、運用部資金などを使っている関係上、年度末になりますとこういう吸い上げが出てきているということです。政府としては、一応各金融機関計画があるからだという説明がつきましても、いわゆる一般中小企業者にとってはそういう理屈は通らないわけです。ほんとうに親心のある中小企業に対する政策をなさるならば、こういうラックが出るときに政府としてはそれを埋めるだけの配慮があって、ほんとうの中小企業の対策はできているということがいえると思う。今はそれができていないということを言っている。だから、ここで私が大臣にぜひお願いしたいことは、もう現実に国民金融公庫は二月七日ぐらいで押えていると思うのでございます。お得意さん、お客さんは、もう行けば必ず三月の末とか三月の半ばころには金が入るものと思っておりますけれども、実情は四月の半ばでなければ入らないということになる。これでは私はまずいと思う。昨年は二月の十七日か二十日ぐらいまでで締め切ったわけです。だから、ぜひ一つ二月の二十日とか、二月の末くらいまではやり繰りのできるような金のめんどうを何かの方法で見てやってほしい。そのことだけはぜひ一つやってもらわなければ、中小企業に対する対策ありとはいえないと思うのです。一つ大臣考え方をお聞かせ願いたい。
  19. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 大へんごもっともな御要望でございます。実情をよく調べまして、私ども善処していきたいと思います。
  20. 石野信一

    石野委員 私は、中小企業についての問題、とにかく景気過熱に関するいろいろな問題を通じては、政府と見解を異にする点がございますが、しかし、自由化を進めようというこの段階において、日本景気がどういうように動くかということは非常に重要でございますので、政府としては、いたずずらにその流れがそうだからというだけでなしに、世界景気動向日本景気動向というものを正しく把握する中で善処されるようにしてもらわぬと困ると思うのです。私は、先般も、その自由化の問題についても、本質的なものの考え方として、独占金融資本中心となる市場拡大要求がこういう形になってきていると私は見ております。これは政府と見解は違うけれども、現実にそういうように動くものと私は見ておりまするから、そうなって参りますると、日本独占はどんなに強いといっても、世界独占に比べればまだ子供のようなものです。これは、世界のあらしの中に入っていけば、渦巻の中に巻き込まれてしまうという実情であります。そういう観点からして、やはりわが国がこういう景気動向を見誤った上で、しかもそのものの考え方を誤っておりますると、とんでもない金解禁以上の破局に追い込まれることになるだろうと思いますので、私はそういう点では真剣な御配慮をしてもらわなければいかぬと思います。  私は、景気問題については見通しも違いますが、ただここで一つ聞いておきたいことは、アメリカ経済についてどういうような見方をしておられるかということです。アメリカ景気についても、私ども必ずしもその永久の繁栄などということは今では考えられなくなってきていると思います。ことにアイゼンハワーは、インフレこそが国を守る戦いの唯一の戦場である、こういうように言っておることでございます。私はアメリカ景気をどういうように見るかということが、今は非常に大事だと思いまするから、大臣の見解を一つ……。
  21. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 アメリカ景気は、政府筋といいますか、責任のある人たちの話は大へんな景気のようでございます。これはすでに御承知のことと思いますが、たとえばミューラー商務長官にしても、アンダーソン財務長官にしても、非常な自信を持っております。ことしはアメリカ経済は黄金の年だとみずから呼称しているという状況であります。ところで、最近の金融状況等も、きわめて最近発行されました大蔵証券などの金利はやや引き下がった状況で大蔵証券が出されておる。こういう点はただいま申す政府の自信を裏づけている一つじゃないかと思います。また、すでに予算教書においても見られますように、珍しくも黒字の予算を出している。こういうことなどでインフレに対する十分な抑制策がとられておる、こういう意味で非常に自信を持って、ことしはアメリカ経済は繁栄の年だ、こういうことを言っておるんだと思います。しかし、一面これを少し刈り引きして聞かなければならないような点も、ただいまの政治情勢から見まして一つはあるんではないかと思いますが、最近金融その他の面に出ておりますところ、あるいは物価動向等から見て、あるいは消費が依然として強いというような点から見ますと、おそらく政府筋が申しておる通り経過をたどるのではないか、かように私どもは考えております。
  22. 石野信一

    石野委員 景気論争であまり長いことしておると時間がありませんが、しかしアメリカ景気は必ずしもそう楽観はできないと思うのです。ことにニューヨークの株式の続落なんということは、すでにもう日本の証券界でも相当な注意を呼んでいるところです。特にアメリカの最近の消費構造というものは相当変わってきているということを、われわれは見なくちゃいけない。それだけでなくして、たとえば鉄鋼ストが終わったら案外に鉄鋼の在庫生産というものが続くだろう、こう見ておった。ところが最近はそうじゃない。むしろやはりこの在庫生産も案外上期のうちに終わっちゃうのではないかという状況が出てきておるのが実情であると思います。従って、そういうようなことを含んでのいわゆるインフレに対する警戒というものや何かがいろいろと市なりましてのアメリカの実情というものは、私ども考えるほどそんなに調子よくいくんじゃなくして、むしろやはりずっと引き締められる形が出てくるもの、こう見るわけであります。従って、そういう問題に対する政府対策なりなりというものも相当考えなければいけませんし、それから、私は、アメリカが相当黒字予算を組んでおるということの中には、世界各国に対して貿易為替自由化というものを相当強くその根底に置いて要求しておることだ、こう思っておるのです。これは少なくとも海外に対する援助を切っていくという形、もちろんことしは四十一億ドルからのものを一応対外援助ということで出しておりますけれども、しかしこれはやはり主として経済援助方向に出てくるわけであります。そういうようなことを考えて参りますと、アメリカとしては、むしろやはり貿易面でなるべく収支じりを赤字でなく黒字にしていこうということを積極的に考える段階になってくる。だから、貿易為替自由化というものは、必然的に、その相手方にとっては相当受け身の立場になってくるだろう。日本の場合でも、今度貿易面で初めて幾らか黒字が出ました。私は、自由化が進んでいくと、むしろ逆に今度はアメリカの赤字克服という線が強く出てきて、日本の方ではむしろ赤字の受け身にまた立たなければならないというような状態になってくることを考えなければなりませんので、アメリカ景気動向は好調だということだけで、そう簡単に見ていくことは間違いじゃないか、こういうように思うわけです。大臣は案外楽観しておるようですけれども、これはもう少し真剣に考えてもらう必要があると思うのですが、どうですか。
  23. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御注意の点はもちろん注意はいたしますが、私ども申し上げますように、アメリカ政府筋は非常な確信を持っておるということ。最近の自動車生産計画なり、あるいはその販売計画なり、また石油等の重要産業は鉄とともにやはりアメリカ産業の柱をなすもののようですが、これらについても悲観すべき材料は出ておらない、かように私どもは考えております。
  24. 石野信一

    石野委員 アメリカ経済についてはいろいろ論争しておっても何ですけれども、私は大体アメリカ景気というのは上期に上昇エネルギーを全く燃焼してしまうだろうと思っておる。それが案外に早いと私は思っておるのです。それよりむしろ、やはり戦後になりますと、戦後最もきびしいディプレッションにはならないけれども、リセッションの形にいくのではないだろうかというように私は見ておるわけです。これは見解の相違ですからそれ以上申しませんが、ただ私は、この景気の問題を通じて真剣に考えなければならぬのは、日本国際収支の問題だと思うのです。日本国際収支はなるほど順調に進んできましたが、先月あたりからちょっと傾向が変わってきていると思うのです。こういう問題についての見通しでございますが、政府はどういうように見ておりますか。
  25. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 一月の国際収支は赤字であった、こういうことがきょうの新聞あたりで出ておりますが、その理由等については、新聞に詳細に説明しておりますように、これは私ども心配する筋のものじゃないように実は思っております。御承知のように、ユーザンスの支払いその他がございますので、あるいは一部入ってくるものがやや時期がおくれておるというようなこともあり、国際収支そのものとして二千九百万ドルの赤字というものは、特に非常に強く取り上げる筋のものじゃないように思います。もちろん年度末あるいは自由化等に備えて相当の見越し輸入等もございますから、そういうものにはやや警戒をしなければならない点があろうかと思いますが、この見越し輸入にいたしましても、今日持っております外貨予算の面から申せば、それぞれ一応そのワク内の問題でありますし、特にこれがワクをまだこわす状況じゃございません。またわが国物価そのものと国際物価との間に相当開きもございますし、輸出の方の信用状等、これは順調に推移いたしております。だから、一月の帳じりだけがこれはもう特殊なんだ、かようにお考えをいただいていいことであります。これでどうこうというものじゃないように思っております。  ただいま御指摘なりました、アメリカの株なり日本の株式相場なり、これなどがネコの目のように変わっておる。こういうことはやはり景気の効きを現実に示しておるものじゃないか、こういう言い方も一面あると思いますが、いわゆる日本の場合でも、旧ダウの計算というようなことについては、私どもは実際の株式価格の実情をそのまま把握しておるものだとは思いません。旧ダウの計算方法には一つの価値のあることは認めますけれども、やはり株価そのものから見ますと、ああいう計算が必ずしもふさわしいものではないと思う。それで、株のことについては、私どもも相当心配しておりましたのは、もしもこれが投機的な意味で株の価格が作られるということは避けなければならない、こういうことで絶えず証券業界にも注意を促しております。昨年末の状態から見まして、順次株式の取引もいわゆる投機的なものは警戒をされるようになり、自粛の姿が出てきているのではないか、かように思います。これが毎日々々形成される価格でありますので、この一上一下にそう神経過敏になることはいいことじゃないのだと思っております。もちろん、長期にわたって下降の方向をたどるというようなことになれば、これは確かに私どもの知らない面においての心配すべき要素があるのかもしれませんけれども、そういう状況ではないように思いますので、これはよろしい。  また、国際収支の面においても、月々の状況において金額の多寡がございます。ことに、私ども、非常に昔の考え方で見ると、日本貿易は下期においては大体輸出が伸びて輸入の方が押えられるように、よほど古いところでは感じておったものでありますが、ここ戦後の形といたしましては、その状態もよほど変わっておるようでありますし、下期が特に輸入が減ってどうこうということじゃないのです。先ほど来、冒頭のお話のありましたような貿易自由化というものが順次間近に近づいておる、ことに対米関係の六品目もそれぞれ自由化目標が立っておるということになっておる今日でございますので、見越し輸入等がある程度の影響があるとか、あるいはまたユーザンスの関係の決済の時期が到来しますと、やはり支払いの面で決済上ある程度の状態一つ作っていく。それはその月における貿易自体を表わしておらないのだと、こういうことを一つ御了承いただきたいと思います。
  26. 石野信一

    石野委員 ユーザンス等の決済の面で、やはり帳じりが赤になっていくということがあるけれども、それは毎月毎月のものじゃないのだということ、それはわれわれもよくわかっていることなんです。ただ、国際収支の面でわれわれ注意しなければならないのは、最近やはり輸入増の傾向が非常に強くなってきているということが見られるわけです。特に原材料関係でそういう面もありまするし、そこへ今度貿易自由化の問題が出て参りますと、当然やはり消費財の輸入も出てくるだろうということは考えなければいけません。そうすると、消費財の輸入が出てくれは輸出が増大するかというと、輸出は増大しない。輸入がふえて輸出がふえないという事情も考えなければなりません。そのほかもう一つ大事なことは、やはり最近信用状なしの輸入がふえているということがよくいわれるわけでございます。これはどういうふうになっているか、私ども正確につかんでおりませんけれども、これは非常に重要な問題だろうと思いまするが、どの程度の信用状なしの輸入増というものが出ておるのか、この際ちょっとお聞かせ願いたい。
  27. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 おそらく、信用状なしの輸入というものは、これは数字じゃどういう意味かなかなかつかみにくいだろうと思います。最近問題になりましたのは、大豆の輸入が問題になったように思いますが、これなども一応外貨予算のワク内の問題である、かように実はみえます。業者自身も、ワク内の問題だから当然許可を得られるということで、早手回しの買付などをしたのじゃないか、かように私は思います。しかし詳細は為替局長から説明いたさせます。
  28. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 最近の数字につきまして動向だけ申し上げますと、昨年の夏から秋の初めにかけまして、大体信用状なしの輸入が輸入総額の二七、八%でございます。これは最近年末から一月にかけまして約三〇%、大体三%くらいふえております。これは中身は何かと申しますと、結局一番大きなものは油でございます。石油関係がふえておるということ、それから機械類、これがしCなしのものが相当ございます。機械類が若干ふえておる。しかし、その増加率といたしましては石油が非常に多いということでございます。
  29. 石野信一

    石野委員 今信用状なしの輸入が非常にふえてきておって、輸入総額の三割くらいになり、最近で三%くらいふえたのが、特に石油だとかあるいは機械だということになりますと、これは、主として私たちの見るところでは、やはり貿易自由化に備えるところの一つの態勢だろうと思うのです。これは、貿易自由化をねらっての石油資本なり、あるいはそれぞれの企業体が機械を持ってきておるものだ、こう思うのです。そうなりますと、それはそれなりによろしゅうございますが、そのことが国際収支に対しては非常に悪影響が出てくる一つの要因であることには間違いないと思うのです。特に為替管理で押えており、それから信用状でいろいろと押えようとする今の段階において、信用状なしでそういうものがふえてくるということは、国際収支の面で、それでなくとも幅が狭くなってきておるところの黒字を一そう危機に追い込むようなことになるのじゃなかろうか、こういうふうに思いまするので、この信用状なしの輸入増というものに対して、政府としては何か特別この際手を打たなければならぬということを考えておるのか。それはそのままほっておいてもいいのだというふうに見ておるのかどうか。一つその点の御見解を聞かして下さい。
  30. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 ただいまのお話でございますが、機械が若干ふえておると申しましても、例の神武景気のときのようなああいう急激なふえ方はいたしておりません。若干ふえてはおりますけれども、しかし、その中身を洗ってみますと、それほど不健全な要素はない。それから、油につきましては、これはもともとLCなしの輸入というのが非常に多うございまして、これは最近の油の使用量の増加というようなことで輸入が盛んになっておるわけでございますが、いずれにいたしましても、両方ともまだ割当物資でございまして、自由化をいつするか、その段取りをどういうふうにするかということについては、さらに相当研究を要する問題だと思います。割当制の中でそうむちゃくちゃにならぬように割り当ていたしますし、実情もそんなに不健全なものでないというふうに考えております。
  31. 石野信一

    石野委員 大臣にお尋ねしますが、国際収支見通しの問題ですけれども、最近そういうふうに黒字の幅がだんだん狭くなってきておるわけでございます。この傾向はそんなに悲観しなくてもいい、今までのように幅をぐっと広げていくという見通しが立つのか、それとも、今の見通しとしては、やはり詰まりながらでも、どうにか黒字だけは維持していくということなのか、それとも赤字が出てくる危険を感じているのか、そういう点について大蔵当局はどういうふうな見通しを持っておりますか。
  32. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは経済企画庁計画を立てました年間を通じて一億五千万ドル、これは動きはない、かように実は考えておるということを申すわけであります。見方によりましては、もっと多いという人もあるようでございますが、私どもは、今経済企画庁経済見通しとして立てておる数字、この数字は狂いがない、かように実は考えておる次第でございます。
  33. 石野信一

    石野委員 国際収支見通しの問題についてはいろいろありましょうが、私はやはりそう簡単ではなかろうと思うのです。むしろやはり貿易自由化などが積極的にやられるとすれば、どうしても設備更新なり国際競争力を持とうとする企業の意欲が、自然と機械の輸入とか何かになって参りまして、それがやはりすぐに輸出に転換されない形で輸入を増大させるだろうと思いまするから、これはそう簡単ではない、こういうふうに私は思います。ことに予算編成にあたっての政府考え方は、昨年の十月のころにはまだ自由化をそう積極的に考えてなかった。ところが、十一月から、ガット東京総会がありましてあと、急速にこの問題が出てきたという関係もありまして、業界も、そういう意味では、今度は設備更新に対する非常に新しい感覚による意欲が出てきておるものと見なくてはなりませんから、私はそれが引当程度国際収支影響してくるものと思います。そこで、私は、この国際収支の改善というもの、いわゆる黒字持続というものを考えるのには、わが国が持っておるところの外貨を有効的に利用することが非常に大事であろう、こう思うのです。同じように外貨を使っても、それが経済の再生産のために役立たなければしようがありませんから……。そこで、私は、外貨の有効利用の観点から、特にアジアにおけるところの地点で、日中貿易とか、あるいは日ソ貿易とか、あるいは日朝貿易とかいうようなものに、わが国の外貨を有効的に利用するということが非常に大半であろうということを思うわけです。政府としては、これらの地点については、今までいろんな関係から貿易中断などをしておりまするけれども為替貿易自由化が進むにつれて、当然考えられるべきものとして、わが国の外貨を健全に維持し、そしてまた、もし自由化をやるとするならば、それを堅実にするために、そういうような日中貿易なりあるいは日ソあるいは日朝貿易に対して御関心があられるのかどうか、この際一つ大蔵大臣にお伺いしたいと思います。
  34. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 関心があるどころじゃございません。大へんあるわけです。御承知のように、日ソ通商協定にいたしましても、これは最初バーターで貿易をし、その後現金取引になった。最近は、ソ連側の要望もありまして、延べ払い輸出も計画をいたしておりますし、その通商協定自身も、今回は三カ年の長期条約に切りかえるということであります。もうすでに商談なども進んでおりまして、プラント輸出なども計画されておるようでございます。ことにまた、ソ連においては、モスクワにおける日本商品の見本市、これはことし開かれることになっておりまして、両国ともその成果に非常に期待しておるところと思います。ソ連側から入って参りますものについても、油等の問題があるということであります。北朝鮮あるいは北京の中共政府との関係がただいま思うようにいっていないことは、私ども非常に遺憾に思っております。しかし、今の日ソ通商協定が三カ年ということになり、そうしてプラント輸出等が出ていくようになれば、その期待も大きい今日からいいますと、おそらくいわゆる極東における共産国との間の通商も道が開けていくのではないかという期待すら私ども持っておるわけであります。なおまた、先ほど来からのお話で一言つけ加えておきたいのは、貿易為替自由化、ことに貿易自由化を前にいたしまして見越し輸入があるということです。これは私ども非常に警戒しなければならないと思っております。ことに物価の高いものについての見越し輸入が非常に心配だと思います。しかし、たとえば昨年の暮れ繊維関係の値段が安くなった、繊維が値下がりになった、こういうことは、おそらく原綿等についての自由化が行なわれても、比較的危険な様相を来たさないのではないかと思います。油そのものについては、自由化もさることながら、近く御審議をいただくことになっております関税の問題がありますので、そういう点からの見越し輸入というものもある程度あるのだと思います。しかし、それも、先ほど為替局長が申しますように、外貨予算の範囲内のことでありますし、ことにまた、油については、貯油施設といいますか、タンクに制限がございますので、これは無制限には入ってくるものでもない。かように考えますと、およその見当はつけ得るということであります。しかし、その他のものにつきまして、たとえば対ドル地域についての六品目等についても、準備を怠らないで自由化をはかって参りますが、そのために見越し輸入する、それが、国内の業界が非常に弱い場合、いろんな問題を起こすのではないか、これを非常に警戒をしておる。たとえば皮の問題になりますと、これが自由化された暁における国内の原皮取り扱い業者、その業界に及ぼす影響には十分気をつけなければならない。これが弱いものでありますだけに、特に気をつける必要がある。こういうように、自由化については、それぞれの品目について、それぞれの対策を立てていかないと、これは円滑な自由化ということは推進できない、かように実は思っております。先ほど来いろいろ御意見が出ておりますが、その点については私どももすでに注意をしておる点もございますし、またお話のようにさらに注意の上にも注意を必要とする部面もあると思います。大へんけっこうなお話を伺ったと思っております。
  35. 石野信一

    石野委員 自由化についての体質改善の問題について、あとでまたいろいろ各産業とか国内産業の問題についてはお聞きしたいと思いますが、先ほど私が申しました外貨を有効利用するという点で、貿易地域的な問題がいろいろ出てくるわけです。私は、自由化が進んでくる過程の中で、先般来たびたび申しておりますように、西欧諸国ではブロックの形成が非常に強くなってきておる。日本もまた、あるいは太平洋経済ブロックというのですが、何かそういうようなものも作らなければならないという構想もあるやに聞いておりますが、それはともかくとして、日本自体としては、やはり自由化の中では、荒波の中へこっぱ船を持っていってもみくちゃになるものだというふうに考えなくてはいかぬと思うのです。それだけに、私たちは、やはりあらしの中へ入ることだけが能じゃないのでございまするから、船はやはり案外波静かなところで動かすことも、航海士としては非常に大事なことだと思います。そうなって参りまするならば、世界の荒波の中に入る前に、自分たちの近間にいい港があれば、そこに行くことが、船をあやつるものとしては、いわゆる航海士としてのやはり名誉をになうだろう、こう思うのです。そういう意味で、私は、日中、日ソあるいは日朝というような貿易関係というものは非常に大事であるし、またここで使う外貨というものは、ほかの地域で使うよりも非常に有効的に利用できる、こう思うのです。従って、やはり政府日本の国民経済の将来ということを考えて自由化というものを考えるならば、当然この地域におけるところの貿易を無視してはいけない、私はこういうふうに思います。日ソの問題については、今お話しのように、長期貿易計画というものを考えるような段階まできている。日中の場合は今不幸にしてとだえておるけれども、これもやはり、日ソの問題が解決すれば、それを契機として何かいくというような方向を考えていただくということは、私は政府としてはどうしてもやってもらわなければならぬことだと思うわけです。  そこで、私は特に日朝の問題についてお聞きしたいのですけれども、日朝の問題については、北の朝鮮は、南の朝鮮との関係上、政府としてもなかなかやりにくいものがあるということは、私どもも大体察知できるわけでございます。しかしながら、この両国の間におけるところの貿易関係なり国交関係というものは、いつまでもこんな状態に置いておいてはいけないと思いますし、日本経済自体でも、現実に最近は通産省なんかでもある程度の交流というものをそれ自体の中で認めている形になってきていると思います。ところが、実は、日朝貿易につきましては、今も特に行きだけはとにかく船が行けるという形が出ているわけです。これは通産省でも認めているわけです。ただ向こうの品物を持ってくるということは現状では許していないわけです。しかし、それは、香港貿易とかなんとかを通じてくる場合、スイッチでいく場合はいいということになっているのでございます。それほどまでにきておるのに、朝鮮の問題につきましては、昭和三十年十月二十四日の次官会議の決定によって、朝鮮民主主義人民共和国との間の貿易がチェックされているわけです。今昭和三十四年大蔵省令第六号でございますか、この中で一応貿易のめどは出るような形が出ているはずです。しかし、それが結局次官会議の線で押えられて、にっちもさっちも動けないというのが実情なんです。そこで、私は、この次官会議の決定というものは法的にどれだけの力があるものであるかということを、この際大臣にお聞きしたい。
  36. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 次官会議の決定というものは、事務当局の最高機関の会議ですが、それを閣議で了承した場合には、閣議決定とする場合もあるし、あるいは閣議で了承するという場合もあります。そういうことでやはり筋に乗ってくるわけであります。その程度にお考えをいただきたいと思います。
  37. 石野信一

    石野委員 閣議決定になってしまえば、これは一つの格が出てくるわけですが、そうでない場合、次官会議の決定と政令とはどっちが強いのですか。
  38. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 申すまでもなく政令が強うございます。
  39. 石野信一

    石野委員 政令と法律はどっちが強いですか。
  40. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 強弱というのもおかしなことですが、法律は私ども最も尊重しなければならない義務があります。
  41. 石野信一

    石野委員 従って、政令でいろいろときまっておる事項が、それより効力の薄い次官会議の決定によって左右されることでもよくないし、法律的な問題が次官会議の決定というようなことによって実質的にあれこれされるということでは、法治国の行政体系は根本的にくずれてしまうことだと思う。それはむしろ独裁の形だと思う。そういう形が日朝貿易の場合については現実にあるということを私たちは言わなくちゃならないのです。北朝鮮から品物を持ってきたりするのは、石炭が赤くなっておってだめなんだということを——私が先般朝鮮へ参りましたときに、南朝鮮の李承晩は、北からくる電気は赤いからつけない、石炭は赤いからいけないんだと言っているということを聞いた。     〔足立委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、石炭は燃えれば赤くなる。この石炭は赤いからいけないんだというような、日本でもそれと同じようなことを言っておったのでは困ると思うのです。なぜ私がこういうことを言うかといいますと、先ほどから言っているように、貿易為替自由化が進もうとしているときに、私たちはもうそんなことを言っている段階じゃないということを申し上げたいわけなんです。それですから、私は、この際、経済の動きでございますから、損得さえ成り立つならば、もし朝鮮との貿易の中で利益が出るならば、これは積極的にやるべきである、そうでなければ日本の国民経済は守れないのだというふうに思うわけなんです。従って、私は、朝鮮問題に対して、現実にこの昭和三十年十月二十四日の次官会議の決定というものが非常に大きな力をもってこれを抑えておるという実情を大臣は知っておられるかどうか、一つここでお聞かせ願いたい。
  42. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 実は知りませんでした。今為替局長からよく説明を申させます。
  43. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 今資料を取り寄せておりますから、しばらくお待ち願います。
  44. 石野信一

    石野委員 今ここで私はこまかいことは申しませんが、そういうのが実情なんですから、私は、大臣にこの際北朝鮮との貿易問題も、すでに通産省は行きの船は許しているわけです。これは、韓国との関係があるから、あまり大きいことを言うといろいろ差しつかえはあるかもしれませんが、しかし私は貿易関係はもう厳然としてやるべきだと思います。しかも次官会談の決定がいまだにもう三年も四年も五年も続いて効果を出しておる。法律以上の力を持っている。こんなばかげたことはないと思う。これは一つ大臣、現に岸内閣のもとにおいて行なわれておる、こういう法治国におけるところの理解のできないような行政体制というものを排除してもらいたいと思う。大臣一つそれだけのことをやっていただきたいと思いますが、御意見いかがですか。
  45. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今の次官会談の決定というものは実は知りませんでしたから、どういうことを書いておるかわかりません。おそらく決済方法その他についての問題が日中間の問題として考えられるのだろうと思う。今、日韓間の問題についてはオープン・アカウントで貿易決済をいたしておりますが、おそらく日韓間でオープンでやっていることを考えてみますと、北朝鮮との関係においてはもっと困難だろう、先ほどお話にありましたように、香港経由の場合だと決済方法があるということで、その道を開いておるというように実は考えます。今言われますように、貿易の方法は、日ソ間においても、最初はバーターであった。それから現金決済になった。今度は延べ払いにまで進めていこう。これはもう普通の状況のもとに変わって参っております。おそらく、北朝鮮と日本との間では、決済関係その他でいろいろ事務的な問題がある。そういうことについて何か申し会わせをしているのではないか、かように実は思います。  私どもは、貿易を進めていくことについては何らの異議はない。異議がないどころか、むしろ進めたい。非常に積極的な考え方を持っております。しかし、不幸にして、中国大陸との間では今貿易の道すらとだえておる。これはまことに残念と思っておりますが、こういう日本政府考え方なり日本国民総体の希望というものを相手国においても十分理解し、そうしてこれに同調していただくことが望ましいことではないか、かように私は思います。
  46. 石野信一

    石野委員 朝鮮の問題については、大蔵省令第六号の中にこういうように書いてあるのです。朝鮮に対する輸出について指定受領通貨が除外され、従って、通貨を受領せんとするときは、事前に政府の特別の承認を得ることが一つ、それから、第二番日には、朝鮮からの輸入について指定支払い通貨が除外され、従って、通貨を支払わんとするときは、事前に政府の特別の承認を得ること、こういうことになっておるわけなんです。それが、この承認の申請があったときにその次官会議の決定が出てくるわけなんです。それでうまく没にするという仕組みになっておるというわけなんです。これが問題なんです、為外管理法の第四十八条の後段の規定ではこういうふうになっているわけだ。「前項の政令による制限は、国際収支の均衡の維持並びに外国貿易及び国民経済の健全な発展に必要な範囲をこえてはならない。」というふうにして、制限を加えているわけなんですね。四十八条では、特定の地域を仕向地とする貨物を輸出しようとするとき、その取引についての制限がある、こういうふうになっているわけです。おそらくそれに該当していろいろな制約をされるのだと思いますけれども、私がやはり四十八条後段におけるところの制限規定というものの中から見ても、北朝鮮貿易というものはそんなに次官会議の決定で簡単に没にされちゃう理由はないと思うわけです。これは一つ大臣の方で、もういつまでもこういうことをやってもらっちゃ困りまするから、ぜひ次官会議の決定というものは排除するように、ここで約束していただきたい。
  47. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 次官会議の決定というものはどうかわかりませんが、だんだん今の規定等を考えてみますと、私が想像したように、決済方法について何か申し合わせしたものだろうと思います。しかし、政令に忠実であることはこれは当然でございますから、そういう意味で次官会議の決定というものをもう一度私の方でも検討してみます。
  48. 石野信一

    石野委員 先ほどお話のありました証券市場のダウ平均の問題でございまするが、この問題は、大臣はもう古いダウの計算については考えなければいかぬということをおっしゃっておりました。しかし、最近証券市場におけるところの千円台を上げたという問題などは、これは完全に品薄株に対する投機的な一つの動きだと私は思うのです。こういう形をそのままほっておきまするならば、貿易自由化だとかあるいは為替自由化だとかいう間越も、国内態勢を作る上からいっても非常に危険な要素になるだろう、こう思うわけです。政府としてはこういう問題をこのままほっておいていいのかどうか。大蔵大臣は、その監督官庁の長としての立場から、こういう問題について具体的にはどういうふうに指導しようというふうにお考えになっておられるか。この際一つ御所見を承っておきたい。
  49. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 品薄株について投機的な価格が出てくる。これは需給関係からそういう心配は多分にあると思います。また、貿易自由化に備えて体質改善という点からも、いわゆる株式価格の適正化をはかるという意味でなしに、本来の企業自体の体質改善という面から見ましても、自己資本の充実、これは絶対に必要なことだと思います。そういう意味では、増資を進めていくとか、あるいは社債等によるとか、こういうような方法でまかなっていくように指導すべきだということで、機会あるごとにその点を業界にも呼びかけておるわけでございます。また、一面証券業界自身も、こういう意味では、ことに社債市場の育成ということに対して証券市場の積極的協力を得たい、かように考えまして、絶えず証券業界にもその点をお願いしております。最近におきましては、相当証券業界自片も積極的に社債を引き受けるという態度を表明して参っております。そういう意味で、順次いわゆる品薄株に対する対策は講ぜられるだろう。これがただ単に投機的なものを抑制しようというだけでは、失態は絶対直ってくるわけではありません。一面企業の体質の改善の面からも等閑に付すべきではございませんし、そういう意味から業界自身に対する指導、また証券業界並びに金融機関のこれに対する協力ということを強くお願いしておる次第でございます。
  50. 石野信一

    石野委員 社債市場を育成するとかなんとか、いろいろな問題もございまするが、全体として見まする最近の株価の動きというのは、どうもやはり政府がたびたび指導する指導すると言っていながら、ずいぶんと大証券の操作が出ておりまして、そのために一般の大衆がむしろ逆に最近では大証券の株価操作というものに対してあきがきてしまって、何か底を見すかされたような形で、かえって大衆投資というものが遠のいていっているのじゃないかということさえいわれているように見受けられます。そういうことがもしも今後出てくるとすれば、証券市場だとか社債市場を作るとかいうようなことを言ってみてもこれはとてもできないことになってくるだろらと思うわけなんです。私は、やはり投機性を——もちろん株屋さんというのは投機を中心にしているのだから当然のことではございましょうけれども、これに対する規制というものはやはり相当に思い切ってやらないといけないのじゃなかろうか、こういうように思うわけなのであります。今大臣の言われるような形だけでは私はちょっと手ぬるいのじゃないかというふうに思いますが、どうでしょうか。
  51. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 もちろんその手ぬるいということも言えるか知りませんが、しかし、もとから正していかないと、なかなか株式価格の適正化というものははかりにくいだう。ことにそれが品薄株ということが投機を引き起こしておる大きな要因だといたしますれば、私が先ほどお答えしたように、かねてから大蔵省がとっておる政策でよろしいと思います。ただ、今お話しになりました大証券の投機的な取引ということが一つの問題だというお話でございまするが、私は、むしろ、投機的な問題だとして考えますならば、中小証券の方に実は多いのじゃないか、かように考えております。ことに大証券の方は投資信託等の制度もございますから、これとの間を明確にすることによりまして、資金的には比較的中庸を得た方法でいくのじゃないか。これは実例から申すのですが、昨年の年末における株価の規制をいたしました際に、一番影響をこうむりましたものは、もちろん大証券も相当の影響をこうむったことだと思いますが、非常に耐えられないような状態になったのは中小企業じゃないかと実は思うのでありまして、また私どものところへ参ります投書その他を通じて見ましても、大きな、いわゆる何十万株というような株の動きよりも、非常に小さな株式の動き、これが一般の需要者にも非常な影響を与えているし、そういうものの取り扱いをしているところは中小証券会社じゃないか、そういうことを実は考えるのです。この規制の結果不当に業界に好ましからない影響を与えたのじゃないかというようなことも、実は感じたのであります。しかし、昨年来の株の値段の効きというものは、一部を非常に刺激する株式の変動でありますし、私どもあれは何か注意するのが当然だ、かように考えて規制処置をとった。しかし、年が明けましてから、証券業界の実態を見、また株式の動き等も順次平静に帰しつつあるように考えられたので、規制を一部緩和をいたしました。その結果、最近旧ダウ千円をこすというような値段が出たわけでございます。問題は、中小証券会社に対しても十分実情に理解のある処置をとっていくことが必要じゃないか、そうすることが、いわゆる小さな投資衣を確保するゆえんではないか、かように考えて、やや緩和の処置をとったわけであります。大きな証券会社が投機的な処置をとります場合においては、政府といたしましてもこういうものについての戒告なり警告を発することは比較的容易でありますが、中小の、また多数の需要者、非常に小さな株式投資をされる方々、これらに対しての利益は十分見てあげなければならないのじゃないか、かように思って、総体のあり方についての適正化もはかって参りますが、同時に、適正化をはかることが非常に急激なために、業界や善意の投資家に迷惑のかからないように、やはり注意して参るつもりでございます。
  52. 石野信一

    石野委員 証券業界において、やはり投資家である大衆、特に零細な投資家というものに、どういうところが迷惑をかけるかというと、やはり中小の証券業者であることは間違いないのです。しかも、その中小の証券業者が、なぜそういうふうになるかというと、やはり大企業というのは、今大臣も言われたように、額も大きいし、株数も非常に大きく動くわけですから、何かやるときには規制の措置は政府もすぐとれるわけです。しかし、資本主義社会においてあせるのは、実質的にはやはりどうしたって中小の企業者なり証券業者だと思います。大企業は、でんとすわっておって、くわえたばこでなた豆ぎせるをたたいていても、もうかっていくわけです。ところが、中小は幾ら走り回っても大企業に追いついていけないというのが実情なんで、大臣も中小証券の災いがここに出たのだということですが、そういうことは最初からわかり切ったことです。だから、問題は、むしろ大証券が、四大証券とか幾つかのものが何かの投機操作をやりまして、それで振り回されるところの中小証券業者なり、それにくっついている大衆投資家というものをどういうふうに守るかという立場からして、大企業のいわゆる思惑投資とかいうようなものを警戒しなければいけないのだと私は思うのです。そういう意味では、むしろ大臣が言う大証券会社の取り締まりは楽なんだと言うけれども、実はこの楽な中に苦しみがあり、つらさがあると思う。やはり押え切れないものがあるのだと私は思うのです。そういう意味で、今の大臣のような中小証券の諸君を何とかしょうというような考え方、あるいはそれに対する対策を考えるのじゃなくて、やはり本質的には大証券が中小証券を振り回さないような処置を、やはりはっきり金融政策としてとっていくべきだ、こういうふうに私は思うのだけれども大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  53. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 その点は同感でございます。
  54. 石野信一

    石野委員 同感であれば大臣はどういうような処置をとろうとしておりますか。
  55. 澄田智

    ○澄田説明員 かわって御説明申し上げます。  大証券の監督の方針といたしましては、申すまでもないことでございますが、法令の順守ということを第一に考えております。先ほどお話がありましたように、大証券につきましては、監督の点からいっても比較的徹底しやすいということはございますので、そういう点を第一にやる。それから、この四月一日から投資信託の委託会社の分離も行なわれますので、その点も投資信託の運用によって株価の操作をするというようなことが、従来とは別な機構になり、従いまして公正に行なわれるということも当然予想されるところでありますし、また、監督の点から申しましても、はっきりして非常に便宜がある、そういうふうに考えまして、新しい発足によって好結果をもたらすように期待しているところでございます。なお、もう一つの問題は、中小証券との間の競争関係で、不当に中小証券を圧迫し、証券業界の秩序を混乱させるということのないように、店補の新設その他について十分各地心々で中小証券の意向を尊重して参るということで、従来からも種々配属をいたしております。さらに、広告とか投資の御勧誘等につきましては、非常に影響力も大きいことでありますし、顧客に対しまして不当に投機を助長させるというようなことのないように、これも十分目を光らせて監督をやっていきたい、こういうふうに考えております。全体といたしましては、証券検査を十分能率的に随時適切にやるということが根本でございまして、そいうことによって未然にいろいろな問題を防ぎまして、十分効果を上げていきたい、こういうふうに考えております。
  56. 石野信一

    石野委員 証券市場に対する政府の指導というのは、言うことは非常にやさしいことですけれども、非常に困難だと思います。それは、本質的に資本主義社会におけるところの中心が証券市場にあるといっても差しつかえないからだと思うのです。それゆえに、政府としても、やはりそれに対して思っていることもやれないというような、また内在的な制約を受けることもあるかと思います。しかし、私はそれを排除すべきだと思います。断固それを排除しつつ、ほんとうに国民経済を育成するための施策がそこに出てこなかったならば、とても貿易為替自由化などということを言っておったってできるものではありませんし、それに対する一つ施策というものが出なければ、自由化をやればやるほど、今度は海外資本にかき回されてしまうのであろうと思います。そういうようなことから、これは、証券市場に対して、社債市場として育成するとか、資本市場として育成するとかいうようなことを口では言っておりましても、事実上は、今度はその市場を育成した結果として、国民経済のへんぱ性といいまするか、二重構造を一そう強化するような結果が出てきては困るというふうに思いますので、大臣の証券の市場操作に対する政策なり、基本的な考え方を、明確に、そういう観点において持ってもらいたいと思いますが、大臣はどういうふうにお考えですか。
  57. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど来お話しになりますのは、実は私も同感だと申しましたが、これは証券業界がまずくいったときの話についてのいろいろな点でございますが、証券業界自身が経済界に持ついい方の面、これは助長しなければならない、これを助長ずることによりまして、またこれを助長する場合に生ずる幾多の経済悪をやはり是正していくということでなければならない、かように思います。先ほど来のお話を聞いていて、どうも証券業界はちっとも役立たないではないかという印象をもし一部にでも与えれば大へんなことだと思います。証券業界を通じての株式あるいは社債の市場育成だとか、こういう株式市場あるいは社債市場として持つ経済的機能、これを十分考えていかなければならない。そうして、その機能を達成する場合に、各関係の証券業者自身が、本来の筋は達成するが、同時にお互いの同において摩擦を生じたり、あるいはまた善意の投資家、ことに大衆投資家に迷惑を及ぼすことのないよう、本来の機能に徹するように、やはり基本的には指導して参りたい、かように考えております。
  58. 石野信一

    石野委員 証券市場日本の国民経済に役に立たないなどとはわれわれは思っておらない。それどころか、証券市場日本経済を引っぱっていっておる。われわれが押えても押え切れないような力をもって、強引にある一方へ引っぱっていこうとする。こういう独占金融資本に引っぱられないように、国民経済を守っていただきたいというのが私の願いなんです。日本の国民経済の実態というようなものを静かに考えて参りますと、日本の国民経済の実態は、二軍構造の中に非常にうめいているというのが実情だと思うのです。その二重構造だといわれておる——しかもまた、先ほど大臣も言われたように、世界先進国から見れば、中進国程度だといわれるような日本が、今貿易為替自由化をするにあたって  は、相当に考慮しなければならぬものがたくさんあることもわかったわけです。政府は、財政演説や、あるいはその他この委員会において、あるいは予算委員会においてもはっきり言っておりますように、貿易為替自由化を積極的にやるということを言っておられる。この際一つ、今まで聞いたことを総ぐるめでもよろしいのですが、政府貿易為替自由化に関するプラン、それのスケジュールというものはどういうふうに組まれておるか、それをこの際明確にお聞かせ願いたいと思います。
  59. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今日まで取り上げました貿易自由化では、まず第一に対ドル地域に対する十品目の自由化であります。そのうちの つ、三つは一月にすでに実施した。残っておる部分については、四月以降できるだけ早い機会にこれを実施に移して参るつもりであります。最後に残りますものが銑鉄と大豆でありますが、ただいま一応の目標といたしておりますのは、ことしの十月を目標として、これの対ドル地域に対する自由化をはかっていくということであります。同町にまた、このAA品目に追加されるこまかな問題の品目が相当多数ございますが、三百数十のものを一部四月、また大きなもので原綿、原毛等については来年、これも三月くらいの時期にこれをAAにしたい。またその他の品目でグローバル化するものも一応の予定を立てております。ところで、これらは、大体四月時分に、経済企画庁中心にいたしまして、総体のスケジュールを考えるつもりであります。  これに対応する為替自由化でございますが、すでにその一部を実施に移しております。為替の方の面におきましては、つい昨日も一部発表いたしましたように、ユーザンスの問題がございますが、それ以前に、あるいは旅行あるいは送金等についての制限を緩和したい。あるいは持ち高集中制を考えるとか、あるいは交互計算を認められる対象商社をふやすという処置をとっております。今後の問題として、さらにスケジュールに載せて参らなければならない問題の一つに、非居住者の円の問題があります。これを一部緩和することは容易でありますが、同時に、円為替導入というような問題になりますと、これはまだまだその時期を申し上げることすらも不適当だ、かように考えておりますので、この点は預からせていただきたいと思いますが、最終的にはそういう方向に行かなければならないものだ、かように思います。そこで、円為替や非居住者の保有円の問題も準備し、準備でき次第これを緩和していく方向に進めて参るつもりであります。  ところで、そういう為替貿易自由化をそれぞれの計画を進めて参ります場合に、先ほど来御指摘なりましたように、わが国経済はそういう自由化の場合にどういう影響を受けるか。在来ならば為替管理なりあるいは外資法等で資本の導入等についての制限がある。あるいは為替管理で相当の制限を受け、その制限が同時に保護的な役割を果たしていた。今度そういうものがなくなったらどうなるか。そうなりますと、当然関税という問題が取り上げられなければならない。関税の面につきましては、私どもスケジュールといたしましても、ただいま鋭意整備を急いでおる最中であります。ことに関税の問題になりますと、保護に徹底をいたしますれば、やはりガットに加入しておりますだけに、相手方からも、それに対する、当方で課するものに対しての報償的な関税を改定するということにもなりますので、そういう甘味からこれはなかなか慎重にしなければならないことであります。ことに、自由化はしたが、関税障壁を設けたということでは、本来の自由化の目的を達しない、こういうことでありますので、関税品目並びに関税の率をいかに決定するかということが、よほど苦心を要するところだ。しかも、先ほど来のお話のように、自由化の暁、わが国の産業に及ぼす影響ということを考えた場合に、これはある程度考えていかなければならぬ。しかし、それにしても、ただいま申し上げますように、自由化の基本線をそこなわないように、各国が承認しておりますような関税品目表を採用するとか、あるいは関税率を決定していくとか、そういう場合にその保護政策をどういうようにかげんしていくかということを考えて参るつもりでございます。これも省内に関税率審議会がございますが、既存の審議会を中心にしまして委員をふやし、あるいはこれを常時開催するとかいうような方法で万全を期して参るつもりであります。  なお、言い落としましたが、外資の導入の場合において、先ほど来申し上げるような考え方で順次緩和措置をとって参りますが、まず第一段は、何と申しましても、当方で考えることは、経営取引口についての為替自由化を順次拡大していくこと、資本導入についてはそれから後の問題だと、こういうようにおよその考え方をしております。しかしながら、資本導入を全然やらないわけではございません。もちろん、有用な資本の導入については、私どもは積極的にこれを勧奨する方でございますので、そういう意味では、今日の状態におきましても、ケース・バイ・ケースにそれを処理していく、こういう考え方であります。しかし、ただいわゆる外資の導入、こういった場合に、どういうような気持でやるかといわれれば、第一は、経営取引の面においての緩和方法をはかっていく、まず資本導入はその次の段階だ、こういうような考え方でやる。およそ申し上げたのは、今までの準備なり大体の考え方は、以上の通りであります。
  60. 石野信一

    石野委員 自由化のプランということになれば、非常に構想が大きゅうございますから、今お話を承っただけでも項目はたくさんあるわけです。しかし、今お話しになっているような——わかったようなわからないようなところがたくさんあるわけであります。たとえば、関税の問題にしたところで、自由化が進んでいけば、関税を立てておけば自由化にならないから、当然率あるいは品目という問題になってくるが、それはまだ準備ができていないと  いうのが実情だ、こういうわけですね。それから、円為替の問題についても、それは非居住者の問題についての保有円の問題、こういうことなんです。しかし、それは新聞発炎や何かのときはそれでもいいのですが、一つここで私のお尋ねしていることに対して御答弁いただきたいことについては、もうちょっと親身な御返事をいただきたい、こう思うわけです。大体スケジュールは三年以内には全部、百パーセント自由化をやるのだ、こういうことで、百パーセントといっても、どんな場合でも若干のものは残ると思いますが、しかし、二年なり三年なり計画を持っていくといたしました場合には、円為替の導入というものについては、非居住者の保有円をやるのだ、保有円についての操作をする、そのときにここでそれじゃ円為替の保有円を、どういう形で、またいつごろから、どういうふうにするのだというようなことも、ちょっとお聞かせ願いたいわけですね。一つ一つ言うといろいろありますが、さしあたり円為替の導入口についていつごろからそれを実施するのか、それからまた、これについて、この円為替を利用するようになってきますと、一番心配されるのはいわゆるホット・マネーが相当なにしてくるのではないかということですね。これらについては、大丈夫という意見もあるし、非常に心配する意見もあるので、これについて大臣はどういうふうにお考えになっているか、まずその点について……。
  61. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 この為替レートというような問題とか、あるいは円為替の導入の期日等を明確にしろといわれましても、これはお答えするのが不適当な問題のように思います。しかし、私どもがそういう事柄についてそれぞれ準備を進めつつあることだけは、これは当然申し上げなければなりませんが、一体いつの時期にどうするかということは差し控えさしていただきたい、かようにお願いをいたします。  それから、ただいま御指摘なりましたホット・マネーが入ってくる、これについてどういうように考えているかという点については、先ほど私申しました優良なる外資と申しますのは、申すまでもなくわが国経済発展に貢献し、同時にまた貿易伸張に役立つような資本、こういう意味で技術提携その他の形においてそういうものが行なわれることは、非常に望ましいことであります。しかしながら、自由化だといって、自由に外国の金によってわが国経済界が撹乱されるというようなことは、特に気をつけなければならないことであります。過去におきましても、いわゆる日本の事業は日本人の手でというような窮屈なことを申すわけではございません。またそんな考え方では将来の自由化には当然対抗はできないことでありますけれども、しかし、相当の力のあるものが、わが国経済界を混乱するようなことがあってはいかぬことでありますし、それは本来の自由化の筋に適合するものじゃないので、そういうものは厳に私ども警戒するつもりであります。ことに、これから育成を必要とする中小企業の面については、ただいまのホット・マネー云々は一番影響をこうむる危険があるだろうという点で、私どもは特に注意するつもりであります。そういう意味で、資本導入について、これが時期的にあとになるというのは、そういう意味の点を考慮した結果であります。そういう意味で、十分万全を期して参ると抽象的にお答えする以外に方法はございません。
  62. 石野信一

    石野委員 円為替の導入については相当やはり時期の問題があることも、私よくわかっているのです。しかし、当面非居住者の保有円というものは考えなければいかぬ段階にきていると思うのです。それと同時に、私は、この自由化の問題と、いわゆる経済協力の問題が、重要な関連性を持ってくると思うのです。おそらく、大臣は、アメリカとかあるいは西欧についてはともかくといたしましても、東南アジアとかその他の、いわゆる後進国に対しては、相当強い経済協力の形におけるところの資本投下をすることになってくるだろうと思うのです。そして、それと同時に、そこでは当然やはり円のなにが有力な力になってくるのじゃなかろうかと思うのです。とにかく日本円というものを円為替として使い、いわゆる後進国に対してドルを使うとかポンドを使うということだけじゃなしに、円為替というものをそこに使っていくというような形が出てきたりなんかいたしますと——またそうしなければ経済協力効果が出てこないだろうと思うのでございます。そうすると、やはりそこに使った円投資というものは、当然この円為替の非居住者円として回ってくる可能性を持つわけです。これは、矛盾する態勢ではあるけれども、当然やらなければならぬことになってくる。従って、やはりそれに対する政府のはっきりした見解と方針というものを持っていないと、政府としては中小企業者にホット・マネーが非常に弊害があるからとかなんとか言っている間に、いつの間にかそれが入ってくることになるわけです。従って、私は、円為替の導入に対する基本的な構想は、時期は明確にはできなくとも、ある程度のはっきりした考え方を持っておることが大事であるし、それと同町に、やはりこの外資導入等のなにになりまする、いわゆる外資法の改正について、基本的に政府考え方がなければならぬと思います。おそらく、政府は、今、外資法の改正について、大臣から指導して、いろいろと作業をやっているだろうと思うのです。大臣はそういう作業をおそらくさせていると思いまするが、大蔵大臣は、その外資法の改正について、どういうような構想に基づいて改正を指示しておられるか、この際一つその考え方を聞かしていただきたい。
  63. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 基本的な考え方がございますので、少し理屈ばったお話をして恐縮ですが、聞いていただきたいと思います。この自由化方向欧州共同市場というものがまず一つ問題になった。ところで、この欧州経済市場の失態も順次明らかになって参りまして、石野さんも御承知のことだと思いますが、最近の情報では、あの経済市場を構成している各国は、大蔵大臣はほとんど各国とも毎月一回は必ず会合している。あるいは外務大臣は三回に一回くらい会合している。その形から見ると、それはもう連邦的形態をとっている。相互の間に関税障壁をなくするといいますか、そればかりじゃない。産業の面においても、それぞれの国の特質を生かすような産業の助成方法をとっております。ここまで実は進んできておるようにいわれております。これなどは、やはりそれぞれの国自身の形もいたしておりますが、同時に、経済的には、ほとんど、国としての独立性というよりも、共同体としての行動の方が非常に強くなってきておる。こういうことのように看取されるのです。ところで、国際協力の問題でありますが、こういうことにも対応するわけでもないのでございましょうが、今、国会で大問題になっておる新安保条約第二条にも強く経済協力をうたっておる。経済協力自身は、日米間の貿易、通常経済の拡大ということが第一の目標でありますが、同時に、日本並びにアメリカがそれぞれの制限を相互に撤廃することによって、国際経済発展に貢献することができる、これなどはそういう意味で明らかに国際協力の面をうたっておるものだ、かように実は考えなければならない。日本も、中進国とはいいながらも、最近でき上がるいわゆる第二世銀に対しては、日本の持ち分を果たすという考え方をしていかなければならぬ。これなどは、持ち分の構成等からもまた払い込みの実情等からも見ますと、あるいはドルで払い込むものもあるし、またいつでもドルにかわり得ると申しますか、交換性を持つ円であとを引き受けるというようなことになっておる。こういうことを考えますと、円自身の交換性というものも部分的にはすでに解除される。為替自由化という方向へ行けば、終局的には円自身が交換性を持つようにならなければならない。これは一つのまことに大きな目標であります。そういう意味においての努力をとりあえず続けていく。それで、国際協力の面で、ただいまお話しになりましたが、この第二世銀に対する日本の持ち分を果たすということと、もう一つはこの国会に提案して御審議をいただいております経済協力基金の問題であります。これなどは、今もはっきり円でございますが、同時に、この円並びに後進国における現地通貨をいかに扱うかという問題、これも今後の問題になってくる。円自身の交換性の問題もございますが、後進国経済開発という場合に、現地通貨についての支払い等も将来は考えていかなければ、いわゆる第二世銀の機能も十分果たすことができない、順次その資本を食いつぶすということになるわけです。また、経済協力基金の場合におきましても、将来の経済協力基金の使い方によりますが、現地通貨の問題も考慮に入れないと、十分に経済協力効果を発揮することができなくなる、こういうような問題があろうかと思います。  そういうような意味で、私どもは、今後の問題は、欧州におけるような、いわゆる経済の面においては連邦的な性格を持つというところまで——これは欧州にただいま限られておりますが、この経済協力考え方発展していくと、そういう方向にならざるを得ないのじゃないか。かように申しますことは、経済発展さすこと自身が世界の平和を確保することなのだ。民族の生活向上もそこにある。不幸にして、ただいまのところ、自由主義国と共産主義国との間には、いわゆる後進国をめぐっての資本的な投資の競争が盛んに行なわれておる。フルシチョフ・ソ連首相がインドに行く。あるいはインドネシアに行く。それぞれまた経済開発についても援助をしておる。しかし、これは、少なくとも武力による争いではなくて、平和的な方法による競争だと思います。しかし、それを受けたところのそれぞれの国は、おそらく、経済発展させることにより、その民族の生活向上さすことにより、そして平和を維持する方向に強く実は働いていくのじゃないかと思います。そこで、共産主義国の話に移って大へん恐縮でございますが、私どもの見るところでは、共産主義の国は、一番自慢にするところは生産力の動員体制をとっておるのが共産主義国だ、こういって自負し、またそれを一番に自慢している。共産主義政治形態においてのみ生産力を動員することが可能だ、こういうことを世界に豪語している、かように思います。しかし、一部においては、資本主義国は、独占市場の拡大によって、その独占資本によってこれを支配しよう、こういう表現をされておりますが、私は、資本主義国、自由主義国が独占資本により独占市場を作るということは、やや時代おくれの感がする議論じゃないか、むしろ生産力に対する動員力を持つ強大なる共産主義陣営というものは、これこそ私ども十分考えていかなければならない問題じゃないか、かように私は思うのであります。この点は、先ほど来、石野さんのお話を通じてみましても、基本的立場が相当相違いたしておりますので、その点の意見は必ずしも一致をいたすとは思いません。思いませんが、私どもが国際経済協力を主張しておりますゆえんは、経済発展はその民族の生活向上させ、そこに世界的な平和をもたらす、こういう考え方、これが安保条約の第二条に規定しておる趣旨だ、かように私どもは理解しておる。その具体的な方法としては、おそらくただいまはそれぞれの国の通貨というものがあり、それは交換性を持たないで非常に窮屈な思いをしておりますが、順次それが交換性を持つようになり、そしてお互いに協力の面でそれぞれの国の経済発展も期していく、同時に自国の産業もそれによって発展していく、こういうような状態を作ることだろうと思います。今日の為替貿易自由化も、結局最もいい条件のもとにおいて経済発展さす、こういう意味から申しますならば、いわゆる自由でなければならない。制限をつけてはいけない。特別な保護政策をとることは段階的にはやむを得ないとしても、最終的段階においてはそういうものをはずしていくべきだ、こういう考え方だと思います。そこで、先ほど来のスケジュールにまた返りますが、関税率等の問題にいたしましても、一面保護があり、一面自由という方向との調整をはかっていくということをしなければならぬ、かように考える次第であります。
  64. 石野信一

    石野委員 いろいろと説明がありましたけれども、肝心の聞こうとするところへいく前に、ちょっとすわられちゃっては困る。私の聞きたいことは非常に考え方としてはなんですが、そこで、問題は、貿易為替自由化をするにあたって、わが国がやるいわゆる外資法の改正の問題について、大臣はどういう構想で今指導しているかということを私は聞いたわけですから、そこを一つ……。
  65. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 大へん大事な話を除いて申しわけございません。基本的な問題としては、ただいま申し上げたような考え方です。そこで外資法が一つ問題になる。ただいまのところは、外資法と為替管理法と二つを並行してやることが、今日の段階としては必要だろうと思う。だから、一部でいわれていた国際経済法だとかいう問題は、今しばらくお預かりの段階になっております。
  66. 石野信一

    石野委員 とにかく外資導入という問題は今すぐにはしないというのですが、しかし、自由化を進めたときに日本にとって一番の大きな問題は、やはり外資の導入だと思うのです。これが、将来の日本をほんとうに完全に育てるか、あるいは日本経済が外国資本に隷属する形になっていくかという分岐点を決するのでございますから、私は少なくともその構想は大臣において持たなくちゃならないだろうと思うのです。従って、たとえば外資の導入についても、持ち株の中の何パーセントくらいまではこうすべきだ、今は五%と押さえておる、あるものは八%だ、しかし将来にわたってはこの程度のところでというところの構想もなければならぬし、それは、どういうふうに、いつの段階にというくらいの構想は持っていなかったら、この外資法に対するものの考え方は出てこないのじゃないかと思いますが、大臣、どうですか。
  67. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 株式のパーセンテージを幾らにきめるかということは、私は末の問題だと思います。問題は有用なる外資はどんどん勧めて入ってくる。将来の日本産業の基幹をなす石油精製というような事業においては、すでに五〇%入っておる会社もございます。あるいはその五〇%半々にしておるものもございます。けれども、これはケース・バイ・ケースできめることでありまして、その幾らがいいとかいうことを最初から予定すると、どうしても小さいことになるものです。五%だとかあるいは七%というようなことになるだろうと思います。しかし、私は、かようなことは、将来自国産業は自国民の手でというような、そんな窮屈なことを考えることは間違いだ。もっと楽に考えていくべきだ。しかし寄り食いをされるというようなことは望ましいことではない。そういうものは厳に慎しむようにしたらいい。なお、一般的に申せば、これは人によっていろいろの議論があり、こういう点はよく気をつけなければならないことだと思いますが、外国の資本が入って参ります場合に、必ずその経営権を要求するとか、いわゆる議決権を必要とするというような場合もありますし、議決権を必要としないというような場合もあります。そういうような場合のことを考えることです。率自身にそうやかましくとらわれることはない。もし、議決権を考えたり、あるいは事業自身についての経営権を主張するというようなことの心配があるならば、いわゆる少数株主権として商法で認めておる株主総会を招集する権能のないところぐらいが、あるいは一定の範囲であるかもわかりません。しかし、そういうことはもう少しよく調べて、そうしてもっと具体的にケース・バイ・ケースできめ得るような措置の方が望ましいことではないか、かように実は考えます。
  68. 石野信一

    石野委員 ケース・バイ・ケースできめるということの意味は、外資法の中には、そういうことを、もう全然率なんというのは考えないで、その時その時でやるのだということを、外資法の改正の中でやるという構想を持っておるということですか。
  69. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 現在その通りやっているのです。おそらくそれを特に制限する必要はない。けれども、最近のいろいろな外資の入ってくる来方にいろいろな事情があるようでありますから、そういう事情をよく考えて、将来一つきまった基準を作るとなれば、よく検討しなければならぬということを申すわけでございます。私は一般的にきめることは非常に困難な問題じゃないかという気がしてならないのでございます。
  70. 植木庚子郎

    ○植木委員長 石野委員に申し上げますが、お約束の時間よりもだいぶん超過しましたので、なるべく早く完結を願います。
  71. 石野信一

    石野委員 時間が非常にないようですから、まだ聞きたいことはたくさんありますけれども、それではまたこの次になにしますが、最後に、私は、金融政策の面で、金利政策をどういうふうにお考えになっているかということを、一つ大臣から聞きたい。
  72. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 金利は、かつて申し上げました通り、国際金利にさや寄せするという基本的態度に変わりはございません。しかし、金利そのものは、そのときの金融情勢、経済情勢によって左右されるのですから、一時的にごらんになりますと、ときに上ることはございますけれども長期にごらんになれば、国際金利水準にさや寄せするというその基本的線をとっておる、かように御了承をいただきたいと思います。
  73. 石野信一

    石野委員 最後に、私は、為替貿易自由化をするにあたって、国内市場の問題があると思うのです。国内市場を拡大するという問題が一つ出てくると思いますが、この問題と関連して所得倍増計画というものがうまくいくかどうかという疑念を一つ持つわけであります。おそらく大臣は、為替貿易自由化をやるにあたっては、資本蓄積を相当強く要請されるだろうと思います。資本蓄積の強化というものが出て参りますし、また一面では外貨準備を高めなければならぬということも出てくるわけです。こういう関係から、当然やはりこの蓄積を強化するために、税法上の処置とか何かによりまして、この法人を擁護するという処置が当然出てくるんじゃないか、こういうふうに私は思います。そうなって参りました場合に、今日の財政の内包しているインフレ的要素というもの、あるいはまた防衛費関係とか治山治水関係によって、永年にわたるところの継続支出というものが出て参りまするから、自然減税ということは考えているとはいうけれども、なかなかやれないというような事情が出るだろうと私は思う。そういうような事情の中で、公債も出さなければならなくなってくるだろう。いろいろ考えて参りますと、やはり国内市場を拡大するための所得倍増というものは、なかなかそう簡単にはできないのじゃなかろうかというふうに私は思うわけなんです。こういうふうな事情を含めて、盛んに今所得倍増を言っておりまするが、所得倍増ということの意味は、国民経済全体としての所得倍増であるのか、個々の個人としての中には非常に格差があるわけです。その格差のある中で、所得倍増をどういうふうに扱っていこうとしているのか、その見解を一つお伺いしておきたい。
  74. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 経済企画庁長官からお答えするのが筋のように思いますし、皆さんももうあまり時間がないようにおっしゃいますので、詳細は企画庁長官に譲ることといたしまして、ただいま作業は、経済審議会に近く原案をかけまして御審議をいただき、その結果成案を得るということになっております。いわゆる減税であるとか、あるいは財政的な長期経済支出の問題であるとか、そういうものもこの長期経済計画の中に織り込みまして、一応の財政的見通しも立てるということになっております。その点を、まだ成案ができておらないときでありますから、経済審議会の結論を待った上でお答えさせていただきたいと思います。
  75. 石野信一

    石野委員 それじゃ時間がありませんから、あとでまた——今のその問題については、答申書なんか出ましたあとでまたお聞きすることにしたいと思います。  最後に、私は、自由化の問題について、どうしてもやはりこれは政府としては慎重にかまえてやってもらわねばいかぬということをお願いしたい。それは、われわれとしては、今まだ日本の国内態勢というものは、自由化を受けるだけの態勢があるかどうかということに、非常に疑念を持っているわけなんです。特にこの二重構造のときに、体質改善をほんとうに零細企業なり中小企業の段階にどういうふうに及ぼしていくかということが重大なのにかかわらず、自由化か非常に進んでいるということは、これは、国内経済の上からいきましても、産業構造の上からいっても、非常に大事だと思いますので、私はその準備だけは怠りなくやった上でやってもらいたいということを、大臣にくれぐれもお願いしておきたいと思います。
  76. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 もちろん慎重にやりますが、慎重断行ということだけは、はっきり繰り返して申し上げておきます。      ————◇—————
  77. 植木庚子郎

    ○植木委員長 この際昭和三十四年産米穀についての所得税臨時特例に関する法律案を議題といたします。  御質疑はありませんか。     〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 植木庚子郎

    ○植木委員長 御質疑がないようですから、これにて本案に対する質疑は終了いたします。  なお、本案に対しましては討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ることといたします。  採決いたします。本案を原案の通り可決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  79. 植木庚子郎

    ○植木委員長 御異議なしと認めます。よって、本案は原案の通り可決いたしました。  なお、この際お諮りいたします。  ただいま可決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  80. 植木庚子郎

    ○植木委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  午前の会議はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩いたします、     午後零時五十五分休憩      ————◇—————     午後二時三十七分開議
  81. 植木庚子郎

    ○植木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  税制に関する件、金融に関する件、外国為替に関する件及び専売事業に関する件について質疑を続けます。松尾トシ子君。
  82. 松尾トシ子

    ○松尾委員 大臣がおいでになりましたので——元来お昼からの質問というものは、どうも興ざめのような格好ですけれども、数点御質問を申し上げたいと思います。  ただいま国会の中は新安保条約の改定論議に集中されております格好ですが、私は、大蔵委員会に所属している関係上、政府御提案の三十五年度予算の説明書をちょっと読ましていただきました。まことに皮肉な言い方を申し上げて失礼ですけれども、いつもながら数字をよく合わせ、そしてその表現も実に上手にぼかして書かれておるような気がするわけです。もう少し深く掘り下げてみますと、安保条約改定に当面する日本全体の歩みと同様に、その財政政策は戦後大きな曲がりかどにきているのではないかというふうに思われるわけです。大臣は、再開国会財政演説の中でも非常に力強く強調されましたが、「健全財政を堅持して、財政面から景気に刺激を与えることを避け、通貨価値の維持と国際収支の安定を確保する」と、こういうふうに言われました。いわゆる中立予算の性格ということを基本にいたしまして編成した、こういう格好になるのだと思いますけれども、ほんとうは、健全財政というものは、むしろ放漫政策をとっている関係からくずれたんじゃないか、同時に、その上に国民のいわゆる税負担というものが少々ばかり重くなっていっているのではないか、こういうふうに感ずるわけですが、この点を一つ御説明願いたいと思います。
  83. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまの御指摘ですが、支出そのものといいますか、数字そのものが手かげんのできるものじゃございません。やはりすなおに事態を見ていただくということが一番大事であろうと思いますが、今回の予算にいたしましても、その歳出あるいは歳入の金額そのものが、考えられた以上に相当大きい。これはそれぞれの方が持たれる感じでございますから、いいとか悪いとかは申しません。放漫政策であるとか、あるいはインフレ的な要因を持つか持たないかということは、この歳入として私どもが計上いたしておりますその点に非常に無理があるのかないのか、またこれが経営収入でまかなっているかどうか、こういう点に特に御留意を願いたいと思います。予算の説明で明らかにいたしておりますように、これは歳入の点においては通常歳入をもって歳入として計上している。また、財政投融資等についても、そういうことを考えております。問題は、前年度の剰余金だとか繰越金だとか、そういうものがないということで、財源を使い果たしたのじゃないか、将来困りはしないか、こういうような点を指摘されることがあるようでございますが、この点は、逆に、むしろその年の歳出はその年の歳入をもってまかなうという意味で、あるいは健全性だ、あるいは規模に適応した、こういうことも実は言える、かように私ども考えておりまして、不幸にして言われますような放漫なものではない、かように考えております。問題は、自然増収が相当大きい、そういう  ことが国民の税負担を重からしめるのじゃないか、こういう点でございますが、税率そのものには変わりはないのでありまして、税制の建前そのものには変わりはない。しかし、収益状況が違っておりますと、同じ税制のもとにおきましても税として支払う金額がふえる。それを見方によりまして税負担は大きくなった、こういうことがあるいは言えるかと思います。しかしながら、問題は、特に税率を変えて、重い税負担を制度の上から要求したかしないか、こういうように見ていただきたい。その点においては、私どもは、最近の収入状況から税収がふえてきた、税率自身に何らの変更はないのだ、この点を特に御指摘申し上げる次第であります
  84. 松尾トシ子

    ○松尾委員 御説明ではございますけれども、私がちょっと研究してみますと——と言うと大げさなんですが、してみますと、まず第一に、かねて衆議院を通過いたしましたけれども、三十四年度の第三次補正予算、これは、実際は苦肉の策でもって、いわゆる大蔵省原案に組んでいた一部の経費をそこに回して、そして原案の規模を守ったという感じがするわけです。しろうとの私から申しますと、これは当然大蔵省原案に組まれていた経費の一部ですから、本来でしたならば三十五年度予算の上に上積みになるものじゃないか、こういうふうに解釈しているのです。第二の点はどういうことかというと、財政投融資も二百億円くらいふえております。また、当然返さなければならない余剰農産物のアメリカの積立金ですか、これなんかもくずして使っているように聞いておりますし、また来年度に回すべきロッキードF104Jですか、この発注費なんかも国庫債務負担行為に隠してしまっているような格好である。なお加えて食糧管理特別会計には赤字要因を残しておる。何か、聞くところによると、買付量を帳面上でもって操作して合わせるとかいうふうに聞いているわけです。こういうことを考え合わせますと、どうも予算全体が支出の面では赤字的な要因を包含しているし、どうもあまり出し過ぎてインフレ的な要因を持っているというふうに言わざるを得ないと思うのですけれども、この点についてもう少し御説明を伺いたいと思います。
  85. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 松尾委員は、しろうとで、ちょっと見たと言われますが、とんでもないしろうとでありまして、大へんくろうとなお話でございますが、ただいまの諸点については、予算委員会でも実はいろいろ御質疑をいただいたわけでございます。ことに私が注意して御説明をいたさなければならないことは、補正予算を組んだということは、三十五年度の予算のやりくり上そういうことをやったのじゃないか、特に最初の規模を維持するための無理な補正第三号を組んだのではないか、こういう御質問でございますが、この補正予算の内容をごらんになると、当然できるだけ早い機会に支出すべき支出要求のものばかりでございます。そういう意味からお考えになりますと、補正三号というものは当然三十四年内に支出すべき、またし得るならばそうすべき筋のものなんです。でありますから、これは、三十五年度予算との関係で補正予算云々を言われますことは、あまり見方がすなおではないんじゃないか。実は御婦人でいらっしゃるから非常にすなおにごらんになると思いましたが、まことに残念でございます。  それから、あとの債務負担行為、ロッキードその他の債務負担行為という点については、これまたいろいろ誤解があるようであります。なるほど三十五年度は債務負担行為としての金額は非常に大きい。ロッキード以外のものの債務負担行為を見ますと、例年程度の債務負担行為でありますが、ロッキードに関する金額が七百十六億にも上るということでありまして、これは非常に大きな金額になります。機体そのものは六百九十八億でございますが、それ以外にも関連部品その他の債務負担行為等を計上しますと、合計して七百十六億に上っております。この点が特に目立つのであります。目立つのでありますが、これこそは次期戦闘機の発注をいたしますに必要なる処置でございまして、債務負担行為としての限度を一応かように御審議をいただいておるのでありますが、これは三十六年度以降四年間にわたって予算化して参るわけであります。この予算化する場合に初めてはっきり負担というものが出てくるわけでありまして、そういうことをお考えいただきますと、この点についての御了承がいただけるのじゃないかと思います。  また、食管会計についての赤字補てんの問題でありますが、この食管会計の赤字が出ておりますことはまことに残念であります。あるいは、会計自身が、会計の整理がまずいのじゃないかというような議論があるようでありますが、主たる問題は、米麦の主食に関する生産者価格と消費者価格の二重価格をとっておる、こういう点から生じておる赤字補てんでありまして、言いかえますならば、その実際の赤字補てんの金額は、結局農村に対しては農産物の価格維持、これは米麦についての価格政策の現われであり、逆な見方をいたしますならば、消費者米価について国が特別補助しておるということであり、これこそは必要なる経費である、この金額そのものこそは、むしろ農産物に対する価格維持政策の一部と見てもしかるべきものなのである、かように実は考えておるのでありまして、これがインフレ的云々ということにはならないんじゃないかと考えます。  余剰農産物の特別会計について特にどうこうというお話がございましたが、これは何か誤解をしていらっしゃるのではないか。この点についてもただいま御指摘のような間違った処置をしておることはございません。どうかすなおに一つごらん願いたいと思います。
  86. 松尾トシ子

    ○松尾委員 どうもすなおに聞かないで、ごきげんが悪かったようですから、それはこの点でとめまして、続いてそう健全財政だと言い張られますけれども、国民の方の側から言いますと、もう一つ予算には注文をつけたいところがあるわけです。それは何かというと、何にしても減税問題だと思うのです。ところが、この減税も一応もう山を越えた、むしろ大きな意味社会保障制度を拡充した方がよい、こういう見方も確かにございます。しかしながら、今回は、あなたが先ほどおっしゃられましたように、非常に大きく自然増収を見積もっておられるし、その上ここ四、五年の間減税というものが行なわれなかったことは一回もない。今度が初めてというくらいに、減税がびた一文も行なわれておらないというわけなんです。加えて、いわゆる原重油関税ですか、これの引き上げが五十八億も見積もられておるのですから、何かちょっと数字に弱い人は増税になっているのじゃないかという気持さえするわけです。昭和三十二年度の自然増収、いわゆる石橋内閣のときには二千億円で、千億減税と千億施策を実施しているし、三十四年度は千八十六億円に対して四百十三億の減税をし、これを平年度に直すと七百億円になります。なかなかこれで与党はいばって選挙にも勝った経験を持っているわけなんです。ところが、この三十五年度は二千百五十三億の自然増収を見込みながらやらないというのは、おかしいのじゃないか、こういうふうにまた曲がってちょっと解釈したくなるわけなんです。私は、将来の経済見通しあるいはその他の諸情勢からいって、二千百五十三億円という大幅な見積りが、ほんとうは自信がないのかしらというようなことも考えるわけなんです。そういうふうに考えてきますと、つじつまが合っていくのですけれども予算は中立予算を組む。そして、中立予算ということは、景気上昇をブレーキしていくというか、低めに押えていく格好をとる。それでいて、自然増収の力はむしろ景気をあおるというような格好になって、言いかえると過熱に近いものだというふうな感じもするわけです。ここに何か矛盾があるのじゃないかという感じがするのですが、この点を一つ御説明を願い、数字に弱い私に一つよくわかるようにしていただきたいと思います。
  87. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 三十五年度は減税を行なっていないじゃないか。これは国民の要望にこたえていないじゃないか。この点は、私も、財政演説その他の機会に、すなおに減税のできなかったことを遺憾に思っておるということは実は表明いたしております。現在の税率等から見ますると、国民負担をさらに低減すべき必要のあることは御指摘通りであります。私どもも十分そういう点は考えていかなければならないことであります。ところで、ことしは増税だけやって減税をやらないじゃないかと言われますが、これについては私ども一言なきを得ぬのです。三十四年度の残りとは申しながら、今度は地方税において住民税の軽減がやはり法制化されます。だから、国民負担とすれば、国税だろうが地方税だろうが同じであります。何か住民税でも安くなりますならば、この点は幸いすることだと思います。また一面、ただいま最初の御意見で出ておりました食管会計に対する赤字の埋め立て、いわゆる消費者米価を維持する、そういうことも役立つのだと申し上げました。こういう点は、積極的な減税ではないが、やはり国民には役立つことであります。またもう一つは、社会保障の関係の国民皆保険を推進していくとか、あるいは拠出年金制度を整備していく。そのための所要の措置をとる。これなどもやはり国民負担の軽減という意味において必要なことであります。しかし、端的な減税ということが国民には一番わかりやすいことでありまして、社会保障関係政府予算をふやしたから、ことしは減税できません、かように申しましても、これはぴんとこないことだと思いますが、やはりそういう支出の面においても、減税とは事変わるが、国民負担を軽減するような処置をとってきている。そういうことをあわせお考えをいただいて、ことしも、三十五年度予算としては、いろいろ支出の面においても所要な経費が出ている。そういう点から減税を実施することができなかった。これはまことに私どもも遺憾に思う。しかし、総体といたしましては、御指摘なりましたような減税の方向への努力は、今後とも私ども努めていくつもりでございます。
  88. 松尾トシ子

    ○松尾委員 重ねてお尋ねをいたしますが、そうしますと、二千百五十三億円の自然増というのは自信があるということになると思うのです。ところで、こまかいことになるのですが、その中の法人税の九百八十億ばかりのものと、所得税の五百八十九億ばかりは、大幅のようですけれども、とれる自信がおありなのですか。
  89. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 事務当局から説明いたさせます。
  90. 村山達雄

    ○村山説明員 ただいま本年度予算に見積もりました法人税並びに所得税について、これだけとれる自信があるかというお話でありますが、われわれといたしましては相当の自信を持って計上したつもりでございます。御承知のように、経済企画庁で三十五年度のあらゆる経済指数を的確につかみ、それを基礎にいたしました。ただ、法人税について申しますと、御案内のようにこれは期間がずれております。と申しますのは、決算期が参りましても、そこですぐ納めるというわけではございませんので、二カ月後に納める。しかも二カ月後に納めますものは税額の半分、残りの半分はあとの三カ月で均等に納める。ここで五カ月のずれがあるわけです。そのほかに、一番大事な点は、法人税の税収は三月、九月決算にほとんど固まっている状況であります。これが全体の法人税の約五〇%を占めているわけであります。従って、端的に申しますと、三十五年三月の決算に基づく税収は、実は三十五年度の方に入ってくるわけであります。このようにずれがありますので、われわれの方といたしましては、それぞれ各月別の税のウェートを過去の平均値から出しまして、それにただいま申し上げました企画庁の生産物価の相乗積、これを乗じまして、税の上におきます各月ごとのウェートを出してございます。それで、一応言いますならば、売り上げ金額が大体推定できるわけであります。  しかし、むずかしい問題は、その場合に収入に対する純益の割合がどうなるか。これは実は企画庁の数字では、単にそれだけでは出て参りません。いわば純益率でございますが、これもいろいろなところからわれわれの方で計算しているわけなのでございます。純益率が変わって参ります点を申し上げますと、たとえて言いますと、売り上げがだんだん伸びていきます場合には、償却費その他の固定費の単位当たりの割合が減って参ります。従って純益率は上がってくる。あるいは期首期末の在庫の値上がり増加、これによりましてまた所得率が違ってくる。これを計算をいたしまして大体いっているところでございます。そのほかに、租税上の各種の徴収猶予の制度であるとか、あるいは申告に対して若干更生決定をしておりますが、これらの過去の平均値を見る。さらに、単に課税だけではなくて、それに対する徴収歩合も、過去の数値から大体われわれは見当がつくわけであります。そのほかに還付しなければならない税金も大体あるわけであります。  これらの要素を見積りまして出した数字が、今度出しました大体四千三百億という程度の数字になっております。一番大きな狂いのあり得るのは法人税でございまして、所得税については、過去の経験から言いましても、法人税ほどの大きな狂いはないわけであります。従いまして、そういったふうに一々積算をしておりますので、われわれは、国会に出しまして皆さんの御審議にたえ得る程度の見積もりはしておるつもりでございます。
  91. 松尾トシ子

    ○松尾委員 大へん自信の深い算定基礎を示していただきましてありがとうございますが、話をもとへ戻しますと、大臣は、減税しないことはつらつら反省をしている、ただしそういう方向に今後とも努力するとおっしゃって、これも私は強く大臣に希望するところであります。ところが、大臣、一般質問に対する大臣答弁としてでなしに、もう少し詳しく御意見のほどを伺いたいと思うのです。なぜかと申しますと、税金が高いということは百も承知だ、まだ少々負けるべきだということもわかる、努力をする、こうおっしゃるのですが、その努力は来年度の予算に現われてくるのだろうと思う。ところが、その来年度予算を編成するという上に立って考えてみますと、これから一そうだんだん歳入の面でむずかしくなるのじゃなかろうか、こういう感じがする。同時に、ことしの予算を見ておりますと、その内容がだんだんと固定化してきているし、また中には相当に長期的な予算を組んでおる、こういう格好です。一例をあげますと、いわゆるさっきのロッキードの問題もそうだろうし、防衛庁全体の四十年度までの計画、あるいは公共事業費でも十カ年組んでいる。こういったふうな中で予算を固定化して使っていくところへ、なおあとからちょっと質問したいと思いますが、貿易自由化準備もしなくちゃならないだろうし、なかなか大へんじゃないか。そして一挙に生産が伸びわが国景気がよくなるということも、不可能ではないけれども、なかなかむずかしいわざだ。順調に安定してやっていかなければならないというのですから、いきなりは伸びないだろう、こういったようなことを考えていきますと、先ごろ言われましたように、来年度国民の立場に立って減税を考えようというふうにおっしゃるならば、また再び公債論が出てくるのじゃないか、こういうふうに感じます。私は、筋があって理屈があるならば、公債論に決してそんなに大反対をしているものではありませんけれども、こういったことも出てくるだろうと思う。こういう点で、来年度大臣が国民のふところを感じて減税をしようというには、ただ大臣一般答弁ではなしに、もう少しこれらの三十五年度の固定化してきている予算の内容を見ながら、もうちょっと来年度にわたる減税という問題を話していただけると、大へんけっこうだと思うのです。
  92. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御指摘通り、三十六年度予算の編成ということは、いろいろむずかしい問題があるのでございます。たとえば社会保障関係においても拠出年金制度を実施していくだろうし、さらに平年度化もあるだろうし、あるいは給与の平年度化が出てくるとか、治山治水の計画はどうなるのか、あるいは港湾整備計画、すし詰め学級の整理だとか、文教費においてもしかり、防衛関係の債務負担行為もやはり予算化しなければならぬ、そういうふうに考えてくると、一体まかなえるのか、こういうふうな御心配のありますのは当然であります。大蔵大臣としても、そういう事態について十分関心を持たないわけではございません。しかしながら、何を申すにいたしましても三十六年の問題でありまして、ただいま御審議をいただいておるのは三十五年であります。三十六年度になりまして、今度はそういうような計画的な事業の遂行の面で幾分かでも減るものがあるか、三十六年度は恩給も最高といわれておるということでありますが、おそらく減るものとして考えられますものは、災害復旧とか、幸いにして昨年のような災害がないならば、災害復旧費は必ず減ってくるに違いない、かように思います。同町にまた、そういう事態になりますれば、諸出費等についても節約に節約を重ねていただくということをお願いしなければならぬと思います。しかし、それにしても、その金額はそう大した大きなものは期待できない。そうすると、やはり収入の面で特に期待ができるものがあるかということでございます。これは、最近の経済状態、幸いにして私どもが今計画しておるような方向経済の成長を維持することができます。ならば、税の収入も相当のものが多く見込み得るだろう。貿易自由化等について関税率等もまた変わっていく。これは非常に負担過重の方向にはしないようにしなければなりませんし、また国際的関係もございますから、これで増収をはかるとは申しませんが、おそらく、この計画ども、その結果におきましては歳入を助けることにもなるのじゃないかというような感じがあります。しかし、いずれにしても、ただいまは数字的な見当をつけ得る段階ではございません。  一面減税の問題につきましては、基本的な問題として、税制調査会を一昨年御審議をいただきまして、昨年来発足いたしております。第二年目を迎えるのでございますから、そのうちの一部についてはすでに結論が出て参ると思います。そういうものも順次取り上げていきたい、かように実は考えておりまして、今具体的な内容をお示しできないことはまことに残念でございますが、何分にも三十六年度以降の問題でございますから、その点について十分の見通しを申し上げ得ないことをお許しを得たいと思います。
  93. 松尾トシ子

    ○松尾委員 それは数字的に説明するとなると、ごもっともなことだと思うのです。ところが、世間のある一部ではこういうことを申しております。減税というのは国民への絶対サービスとしてやらなくてはいけない。ところが、それに反して自衛力の増強という対米信義というものにあまりにもこだわり過ぎていて、こんな兼ね合いが出るのかなという悪口を言っている人さえございますから、どうか一つ大臣の意思をずっと実行できるように、日本経済も大いに政府のよき御指導を得て、発展することを望んでおるわけです。現状をちょっと申し上げますと、先ほど大臣も申されましたけれども、確かに税金は高いと思う。経済発展して古くなり、国民所付が上がれば上がるほど税負担は大きくなるのは当然だし、これは、私が言うまでもなく、累進課税をとっているのですから、税率は変わらなくても、払うものは非常に大きくなるという格好になると思うのです。ここに一つの例を私はあげて申しますと、国民一人当たりの税負担というものは、三十四年度は一九・九%だったけれども、三十五年度は二〇・六%になっておるといって、大蔵省が発表しているのです。だからどうも高いという感じを受けるのですから、よりより一そう、先ほどおっしゃられましたような方向で、来年度は減税をしていただけるような方途に向けていただけるか、あるいは治山治水のように長期計画をお立てになって——今年は立ったくらいですから、国民の安定とか貧乏追放という点でも、長期政策的な予算を組んでいただかなくては困るという感じがいたします。  それはそのくらいにいたしまして、次にお尋ねしたいのは、石野さんがあまり尋ね過ぎましたから、どうも尋ねるところがなくなったのですけれども、あまり重なり合うと、大も朝から晩までお疲れでしょうから、同情しているのです。なるべく重なり合わないようにと思うのですけれども、下手ですから、重なり合ったら一つごかんべんを願いたい。  当面の中小企業の金融措置についてちょっとお尋ねしたいのです。それはどういうわけかといいますと、近ごろ経済新聞を見ておりますと、先ほど石野さんもちょっと触れましたけれども、月ごとに輸入がふえてきている。これからは貿易自由化も促進されるし、輸入シーズンに入りますから、なお一そうふえる傾向にあるのじゃないかと思う。私の女の考えからだと言われるかもしれませんけれども、こういう現象を見ていますと、さしあたり外為会計の方にお金がどんどん入る傾向の可能性が強くなるのじゃないか、言いかえますと、市中にずっと流れているお金が吸収される、こういう格好になるのじゃないかと思うのです。こういうときにこそ政策的な金融の役割というものは非常に大きいのですが、政府関係金融機関、いわゆる中小企業向けのこれらのワクの伸びは、平均してわずかに一割くらいじゃないかというふうに感じられるわけです。年間を通じまして下半期には少し釣ざを景気になるのじゃないかという人もあるけれども、年間を通じて景気がよいというふうに仮定をいたしましても、その他の事情を含みながら、今言いましたような基礎のもとにあって、金融の窓口というものは引き締め傾向になっていくのじゃないか、こういうふうに思うわけです。  引き締めのもう一つの理由はどこにあるかというと、私は私なりに考えますと、いわゆる今度の財政投融資の原資面をながめてみますと、公募債借入金が非常に——非常にというか、かなり多くなっているのです。これに対して金融界は民間資金を圧迫している、こういうこともいわれているくらいですから、ましてや窓口金融引き締めを指導するという格好にならざるを得なくなると、中小企業なんというものはなかなか借りられない、こういう格好になるわけです。私は、政府貿易自由化を強調しているのですから、一番弱い中小企業を合理化あるいはそれに備えるための方向に向けるのには、もっともっと大きなワクを今年はとってやるべきだったと思うのと同時に、今後全国金融の窓口に対して、何か中小企業を守るという一本筋金を入れた指導方針を現わさなくてはいけないのじゃないか、こういうふうに思うわけなんです。この点一つ現状とそれから将来の見通しということについて、御説明をお願いしたいと思います。
  94. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 なかなかむずかしいといいますか、基本的な問題でございます。中小企業の育成の問題については、先ほど石野委員にもお答えいたしましたように、やはり金融を主体にして、あとは組織その他の両でこれを育成強化していくという方法をとっておる。この点は御了承をいただけておると思いますが、貿易状態で国内金融が緩慢になったりあるいは引き締めが起きたりするだろう、そういうのが中小企業にしわ寄せするだろう、こういう御指摘であります。確かにそういう事柄が考えられる。そういう意味貿易は絶えず輸出超過の状況に持っていくことが必要なのであります。そういう事柄が中小企業に対しての圧迫を軽減することになる。また時期的に見まして揚超になるか払い超になるか、そういう国内金融の実状を勘案いたしまして、そのときどきにおける金融の指導というものが必要だ。そういう点で大蔵省も絶えず注意をいたしておりまして、中小企業、いわゆる弱者に対して特にしわ寄せにならないような努力を実はいたすわけでございます。なお、しかしそういう点についても不十分な点がときに起こることもあるかもわかりませんが、そういうことがあっては申しわけございませんから、御注意のありました点については、一そう気をつけて参るつもりでございます。
  95. 松尾トシ子

    ○松尾委員 この際銀行局長がお見えになっておられますから、今の市中金融の中小企業に対する窓口融資の状況をちょっと御説明願いたいと思います。
  96. 石野信一

    石野政府委員 ただいま大臣からお答えがございました通り国際収支金融関係、これが輸入超過になりまして揚超になると金融が詰まる、この点は御指摘通りでございます。これは、来年度の経済見通しにおいても、輸出超過で、やはり全体として払い超過を予定した予算でございます。それで、金融がどういう状態になって参りますかという点でございますが、三十四年の状態は、先ほども石野委員の御質問にお答えする際にも触れたのでございますが、三十二年のときの引き締めのような状態と違って、中小企業においても設備資金なり運転資金の需要が強いので、大企業あるいは経済全般が引き締めに人って、そのしわ寄せが中小企業貸寄っているというのではなくて、中小企業自身の設備資金、運転資金の貸し出しが強い。そういうことで全体の金融をある程度抑制いたしております関係で、窮屈な感じがいたしますが、そういう意味で逼迫した状態ではないというように考えております。  それで、全国銀行の中小企業向けの貸し出しの増加額でございますが、三十四年中総貸し出し増加額の三七%が、中小企業向けの貸し出しになっております。これが三十二年度は八%、三十三年度は三六%、三十四年中は、大体中小企業の方ももちろん需要が十二分にとは参りませんけれども、大企業よりも増加額としては現状としては若干ふえた、こういう状態であります。三十五年につきましては、これは金融情勢がどういうふうになりますか、四月以降補正予算関係等もあって、国庫がかなり払い出しというような見通しもございますので、そういうことになりますと、ある程度金融がゆるむような方向に出る時期もあるかもしれませんが、全体といたしましては、御指摘のように貿易の収支との関係でございますが、そういう点を見ながら、結局日本銀行の全体の金融政策を調整して参るということに相なると思います。  政府機関につきましては、先ほど御質問の中にもございましたように、一割以上の金を用意いたしまして、これは従来の例から申しますと、相当思い切った増額になっております。
  97. 松尾トシ子

    ○松尾委員 この間ちょっと日経を見ておりましたら気がついたことなんですが、全国銀行貸出増加表と申しますか、そういうものをちょっと拝見したのですが、その中に不要不急の産業に四百四十三億円出している。そしてこれは三十三年度と比べまして二・一倍に該当しているというのですが、この内容と、それからどうしてこんなにふやしたのか。もし、よく検討してみた上で——金額は他のものに比べると小さいのですが、これらのものも、なかなかこれからむずかしいという中小企業の金融の資金源として、よく銀行局から指令を出して、銀行窓口の方で不要不急なものは中小企業に向けるというわけに参らないでしょうか。内容を一つ御説明願いたいと思います。
  98. 石野信一

    石野政府委員 不要不急の観念でございまして、これは実は私どもも目下まじめに研究しております。と申しますのは、今まで不要不急ということで規制いたしておりましたのは、例の甲乙丙の準則を作りまして、そしてこれはかなり古くから作られたものでございますが、その丙に該当するものにつきまして不要不急ということで、そのときの貸し出し増加額の一五%をこえる場合には、日本銀行に協議するということにいたしておるわけでございます。しかし、何分そういう意味で甲乙丙というような形で基準をきめますと、一作になりまして、逆に中小企業等で必要な事業と申しますか、資金というものが、かえって不要不急に該当するというような部分もあるかと思うのであります。そういう意味においては、不要不急だから絶対いけないということで押えるのか。これは不要不急という言葉が悪いのかと思いますけれども経済の再建に非常に重点的にやらなければいけないという点に重きが置かれてきて、そういうやり方をやっておって、今不要不急という言葉で表わされたといいますけれども、不要不急という言葉を全部やめて、中小企業に全部回わすというような考え方でなくて、中小企業として必要なものは、どの程度のものを不要不急と考えるかというような点について、そういう表についても、もう少し検討する必要があるじゃないか、そういうふうにも考えております。もちろん、全体として非常にぜいたくなものだとか、ほんとうの意味での不要のものというようなものに金は回らないようには指導して参りたいと思いますけれども、そういう問題があることも御承知いただきまして、問題を御理解いただきたいと思います。
  99. 松尾トシ子

    ○松尾委員 ちょっとわかったようですけれども、今御説明を聞いておりますと、不要不急という表現が悪い、むしろこの中には中小向けのものがだいぶ引っかかりそうだ、こういうふうに思えたのですけれども、実際は、具体的にはどんなケースがあるでしょうか。
  100. 石野信一

    石野政府委員 たとえば、例に引きますといろいろございますが、国内の旅館のようなものです。それで、旅館といってもいろいろな種類があるわけです。全く不要である場合もあるかもしれません。しかし、国際観光的な意味で——国際観光の方は不要不急には入っておりませんけれども、しかしそういうものに役立つものもあるかもしれません。そういう意味で、具体的に一つなりわいということになりますと、そういう業種としては不要不急でも、非常に零細なものなら、むしろそういうものがあることが経済全体としては一つの必要だというふうな見方もあると思います。その辺で全体として一五%ということで規制しておりまして、そんなに厳格にはいたしておりません。従いまして、御津解いただきたいのは、今おっしゃるように、不要不急という言葉だけで、それで金融が非常にゆがんでおるというようなことでなくて、実情に即してなお研究をさしていただきたい、そういうふうに考えております。
  101. 松尾トシ子

    ○松尾委員 ちょっと大臣銀行局長の話を聞いて了承せざるを得ないのですけれども、どうも私なんかが見ますと、ことしは物価は安定しているけれども、いわゆる金融面では非常に旺盛なんで、景気行き過ぎというような格好である、こういうふうに思うのです。こういうときに中小企業が一番やりにくいものですから、一つ特に中小企業の金融政策に対しては、窓口金融もさることながら、政府金融政策の点で大いに努力していただきたいと思う次第でございます。その次にお尋ねしたいのは、だれしも関心を持っており、これを言わなければ大蔵委員でないとされて困るから言うのですが、貿易自由化です。(笑声)この貿易自由化ということは、ぼんやりしていたのかもしれませんけれども、最近急にやかましく言うようになってきている。むしろ去年の春、夏にかけては聞かないことはないのですけれども、消極的であった。ところが、昨年の秋ごろから、海外からの経済人が日本を訪問したり、あるいはかって開かれたことのないガット総会日本で開かれたり、あるいはビジネス・インターナショナル・グループが来たりというような格好になってから、急に騒ぎ出したような気がするのです。一体、さっき石野さんもおっしゃいましたけれども貿易自由化は、その基本的な総合スケジュールと合わせながら対策をしていく、統一的な行動をとりながら対策を樹立していくのだということがよくわかっているのですが、どうも私の考えるのには、あんまり日本としては、そんな下準備ができてないのじゃないか。それから、海外の貿易自由化のプロセスを見てみますと、かなり準備していたような様子なんです。そうしてみますと、御答弁にもいろいろあったのですが、それをじっと聞いていると、なに宣伝たけしておって、そんなにあわ食って、自由貿易を本腰でやるのじゃないから、そう農村も中小企業も心配しなくていい、こういうことに受け取っていいでしょうか。
  102. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 結論は大体それで間違いございません。ございませんが、少し経過を申し上げまりと、一昨年の秋、欧州のコンモン・マーケットというものができ、通貨交換性を回復した。そういう場合に、社会党の皆さんから、当委員会を通じて、欧州においては、すでにこうまでなっておる、日本はそういう事態に対して十分の用意があるのか、こういうことを御指摘された。当時、政府は、率直に、そういうような事態になっておるし、これから準備をいたします——一体それで間に合うのかというようなお話がございました。しかし十分間に合いますというようなお話をしてきたと思います。昨年一年は、そういう意味貿易為替自由化があらゆる機会に論議された。そこで、一部の業界等においては、政府はあんなに言っておるが、まず準備ができて、しかる上において貿易自由化を開くだろう、だからまだまだよろしいというような、見通しについて、今のスケジュール等は全然無視したような考えがあったと思います。そこで、政府においては、準備の必要なこともわかるが、同時に自由化ということに決意を示して、一定の目標を示さない限り、国民の方の決意もなかなかできないのではないか、こういうことを実は昨年の秋以来感ずるようになった。そういう際に、たまたまガットの総会が開かれるとか、あるいはその他の国際の機関も開かれ、あるいは私などもアメリカへ出かける、そういうようなこともありまして、一そう具体的に自由化を決意し、準備を進めていく、また財界も腹づもりをしていく、そういうことでないと、この大変革には対応し得ないのだ、こういうことに実はなっておるわけであります。そうして、ようやく政府が、ことしの初めに、まずその手初めに、対ドル地域に対する差別待遇を撤廃する。そこで十品目云々の話が出る。そういたしますと、今度は非常に極端な話が出て、今にも自由化が始まったのではないか、何らの準備もできてないではないか、こういうことで、非常にまた逆にあおられておるような向きもある。過日も予算委員会で率直にそのお話をしたのですが、大へん自由化について関心を持っていただいておることは非常にけっこうだ。しかし、もうすでに自由化が始まったというような考え方で、もうどの方面においても大へんな変化がきたのだ、何ぐずぐずしておるのかというようなことは、あまりにも時間的な観念を無視しておられるのではないか。それで、全体の問題について、あるいは二年先あるいは三年先の目標を示せというような話が出ておりますが、この大きなものについて、最終的なものならば三年くらい先のことになるということでございましょうが、今手近なものから片づけていき、順次そういう方向に向っていくということでありますだけに、それぞれの準備もこれに対応してやっていくということでございます。従いまして、今一部でおそれられておる向きは、あるいは政府自身自由化目標が自分たちが予想したよりも早い時期にくるのだということで、幾分か焦慮を感じておる向きがあるかもしれませんが、私どものは、そういうことの起こらないように、業界に混乱を来たさなように、一応の目標を立てております。とにかく決意しない限りそういうもいのは実施できないのだ、しかし、その目標のときに、これを実施するにあたりましては、その関係における十分の対策が立ったかどうかということを十分検討してやるつもりでございます。従いまして、民間においても、十分の決意をもってこの自由化に備えていただきたい、そういう意味においては十分用意もしていただきたいのですが、政府自身も主要な準備は遂げていくということでございます。一例をとって申しますならば、ただいま農村関係で問題になっております大豆の自由化というような問題、これは、自由化いたしました暁において、大豆の生産の農民に与える影響が非常に大きいこと、これについていかなる処置をとるかということが一つ、また、二次製品の生産業者等に自由化がもたらす利益を特別な保護措置のために殺させては、せっかくの自由化意味をなさなくなる、こういうような意味で、これなどは自会を通じて十分御審議をいただいて結論を出していくというような考え方でございますが、いずれにいたしましても、この自由化は大へん重大な大変革でございますので、十分注意し用意をして参るつもりでございます。
  103. 松尾トシ子

    ○松尾委員 それで一つはそういうふうに十分注意をしながら時間をかけて準備すると言っていながら、西欧競争あるいはアメリカ等の言われていることなんかに対抗していかれるのですか。言いかえますと自由貿易化のバスに乗りおくれはしないかということも心配されるんですが、この点どうですか。  それから、もう一つは、お話の大豆のことにつきましても、日本の農業経営の実態から言いますと、外国のそれとは価格の点においてなかなか競争にならない。もちろん関税という問題もあるでしょうけれども、こういったような問題は、いかに国会で研究したといえ、相当むずかしい問題じゃないかと思うのです。三割とか四割とかいうような価格の上の違いというものを国際価格に寄せることははむずかしいんじゃないかと思うんですけれども大臣が今お考えになっておる、また世間でいろいろ言っておりますことを勘案しながら、どういう方向におやりになるつもりか、一つ御説明願いたいと思います。
  104. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど来申し上げますように、十分慎重にとは申します。どうも政治家が慎重だと申しますときには、実行しないということが多いようでございまして、研究することが慎重だということで、実行があと回しになるようでございます。従いまして、けさほどもはっきり申し上げたのですが、熟議断行ということを中しましたが、必ずやる。しかしやるについては十分の用意をしてやるんだということでございますので、この点では各界の御協力をぜひとも願いたいと思っております。  問題の大豆につきましては、大蔵省としてイニシアチブをとって意見を開陳いたします前に、農林、通産両省において、やはり農林を主体にしていろいろ工夫されておるようでございます。その結論はまだ必ずしも当を得ておらないということでございます。従いまして、私がこの段階においてどうするんだということを申し上げることは、まだその時期でございません。いずれにいたしましても、農林省が中心なりまして、通産省ともよく話をし、それが同時に、ただいまのことでございますから、国会においても十分御審議をいただく、こういう段取りをとるつもりでございます。
  105. 松尾トシ子

    ○松尾委員 よくわかりました。  それから、ときどき政府はいろいろの品目を自由化して御発表になっております。たとえば去年の九月に第一次百五十品目、十一月には百八十一品目、本年一月には四百三十六品目、あるいは来年度の同月に繊維その他というふうになっておりますけれども自由化率の点から見るとどういうふうになるのでしょうか。たとえばこの四月はどうか、来年の四月はどうか、自由化率の点においてお示しを願いたいと思います
  106. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 自由化率という場合にいろいろ言い方がございます。ヨーロッパ各国におきましては、ある年度をとりまして、そのときにおける輸入構成を基礎にして、自由化率というふうに言っております。われわれ、現在の外貨予算のうちでどのくらい自由化されるかという問題になりますと、ただいま大体四〇%くらいまでいっていると思います。これは貿易でございます。それから、綿、原毛等の繊維製品が自由化されますと、六十数パーセントになるという見込みでございます。もちろん、これは、自由化いたしました場合に、結局額として幾ら入ってくるかということは的確につかめませんので、現在の予算のうちに占めるそれらの品目を自由化率と称しますならば、さっき申し上げましたように、現在が四〇%、来年の四月以降は六十数パーセントということになろうかと思います。
  107. 松尾トシ子

    ○松尾委員 そうすると、品目ではずいぶん自由化をされているのですが、現在のいわゆる外為のワク内ではまだ相当低いということですね。ところで貿易外取引というものもございますね。これらの全般を含めまして、いつごろまでに大体自由化ができるか、またどういう段階でやるか、こういうふうに質問の言い方を変えてお尋ねしますから、御説明していただきたい。
  108. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 ただいま申し上げましたのは貿易でございますが、貿易外につきましては、現在のところ、これも現行の予算のうちどれだけを占めておるかということでございますが、全体としては五三%の自由化率になっております。そのうち大蔵省関係のものは七七%自由化をいたしております。残ります大きな問題は、海上運賃、保険の問題でございます。貿易付帯経費といっております。これが自由化されますならば、おそらく九十数パーセントまでいくと思います。それではいつごろ一〇〇%、九〇%以上にいくかというようなことになりますと、これは、先ほどから大臣からいろいろ御説明がございましたように、残ります大きなものは食糧品、それから機械、原油、そういったようなものが多いのでございます。ことに食糧品は相当輸入しておりますが、この問題は農村の農業生産の面と非常に関係がございます。それらに対して十分な手を打たぬ限り、なかなか自由化はできないのではないか。これにはちょっと時間がかかるだろうと思います。従いまして、九〇%までいくということになれば、相当食糧も自由化しなければなりませんから、これは今からいつごろだということを申し上げられない状況でございます。
  109. 松尾トシ子

    ○松尾委員 次に、石野さんも御質問なさいましたが、信用状なしの輸入がふえた、こういうことでしたけれども、信用状なしの輸出はどういうもので、どのくらいの金額になっておりましょうか。
  110. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 輸出につきまして申し上げますと、月によってだいぶ動いておりますけれども、信用状なしで出ておりますのが、大体一三%から一五、六%という程度になっております。おもなものはやはり船舶その他の機械、プラント類でございます。それから、先ほど石野委員の御質問にお答えいたしました場合に、機械とそれから油のことを申し上げました。実は、食管が買います食糧につきましては、七割程度は現金の概算払いでございます。その部分はLCなしでできる。しかし、これは、食種関係というのは割合に輸入が安定しておりますので、増減の要因にはあまり関係がございませんので申し上げませんでしたが、食糧もLCなしの輸入がだいぶ多い。これだけちょっとつけ加えさしていただきたいと思います。
  111. 松尾トシ子

    ○松尾委員 船舶、機械の輸出信用状なしで輸出があるとおっしゃいましたが、それはどのくらいなんでしょう。それと、ドルに換算しまして信用状なしの輸出と輸入ではどっちが高いか低いか、これを知りたいと思います。
  112. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 実は機械、主として船舶でございますが、これは御承知のように延べ払いという格好が非常に多いのでございます。信用状というよりも、延べ払いのいろいろな保証条項等がついております。そういうものを含んでおります。非常に年限が長いということもございます。そこで、全体の計を申し上げますと、これは月によって違います。一カ月、二カ月申し上げますと、たとえば十一月、十二月は、輸出につきましては、信用状なしの輸出というのが三千九百万ドル、大体四千万ドル見当です。それから昨年の七月あたりは五千三百万ドルというふうなことになっております。そして、輸出の総額でございますが、これは去年の七月が二億七千五百、それに対して五千三百で一九・三%、十一月が二億八千で四千万の信用状なしで一四%、それから十一月が三億一千万の輸出でございまして、そのうち三千九百万ドルがLCなし、一二七%でございます。それから、輸入について申し上げますと、これも七月、十一月、十二月ぐらいのことを申し上げますと、七月の輸入総額が二億四千六百万ドル、それに対して六千四百万ドルの信用状なしの輸入がございまして、二六%。それから十一月を申し上げますと、輸入総額が二億六千八百万ドル、そのうち信用状のないものが七千三百万ドルで二七%、それから十二月が、輸入総額が二億八千四百万ドルでありまして、信用状なしが八千五百万ドル、二九・九%、これは月によって変動いたしておりますけれども、全部申し上げるのもなんでありますから、その三カ月だけを申し上げました。
  113. 松尾トシ子

    ○松尾委員 大へん詳しくありがとうございました。  となりますと、信用状なしの輸出、輸入の関係を見ておりましても、どうも輸入の方がふえる、またその他の輸出、輸入を見ておりましても、毎月の黒字が三千か四千万ドルぐらいということになりますと、近い将来にとんとんというふうになって、国際収支影響するようなことはないでしょうか。この点を一つ……。
  114. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 ただいま申し上げましたのは為替の統計でございまして、実は為替にはさっき申し上げましたようにユーザンスという制度がございます。従って、物を買い付けておいても、その実際上の決済は三カ月あとというふうなことで出て参ります。従って、去年の秋の終わりごろ入りましたものが、今金が落ちているわけでございます。そこで、国際収支の将来を見ます場合には、こういう毎月々々の変動、これはもうその月の特殊事情で動きます。さっきも申し上げましたように、一月中には、大臣からお話がありましたように、インパクト・ローンなどで入る予定のものが二月にちょっとずれたとか、いろいろなケースがございまして、その一カ月としては赤字になることもございます。しかしそれを、大体傾向といいますか、ブレンドに引き伸ばしてみるならば、現在はなお黒字基調である。それから、将来を見ます場合に一番見やすいのは信用状統計ですが、この信用状統計はずっと黒字を続けております。現在でも黒字になっております。そして、信用状なしのもございますけれども、そういうものが大体三割なら三割輸入についてはある、輸出については一五、六%あるというふうなことを見まして、信用状につきましては、これから二、三カ月先に、輸入は三カ月くらい先、それから輸出は割に早いのでございますが、そういう将来を見て参ります場合に、ここで模様が変わってすぐに赤になるということもございません。それから、一方、輸入物価と輸出物価、国際的な物価を比較してみました場合に、交易条件という御承知の条件が出るわけです。これも非常に良好でございます。つまり輸出物価は高くなっておるけれども、輸入物価の力はそれほど上がっていない、むしろ下がっているものもございますので、そういう面からも輸出の出ていく力が衰えていないということが判定されるわけでございます。ただ一時の動きだけでは、将来さあ模様が変わったというふうに御判定になるのは誤りではないか、私どもはそう考えております。
  115. 松尾トシ子

    ○松尾委員 国際収支はそう心配するに当たらないというところで、まあまあほっとするという形に落ちつけましょう。ただし、先ほどの御説明のように、石油とか機械というものは、これは生産も増になってくるし、また貿易自由化ということになりますと、どんどん入ってくるので、信用状なしで、これがきっかけになって、ずんずん入るようになることもあるのではないかと思われますから、相当注意する必要があろうと思うのです。  それから、もう一つ続いて聞きたいのは、外資導入の問題が相当騒がれておりますけれども、国民生活に最も密接な関係のある一点だけお尋ねをして、これで私の質問を終えたいと思います。まだほかにもあるのですけれども、あまり長くなるとまた石野さんみたいに言われるといけませんから、やめることにいたしておきます。  というのは、自由株式取得率の問題なんです。これは大へん専門的にいえばいろいろあるのだろうと思いますけれども日本の場合でも、株を収得することが民主化されまして、証券なり株というものはむしろ相当貯金化していると思うのです。零細なものが集まってやっているにもかかわらず、自由貿易なりましてから、この資本の取引といいますか、株の取得というものが自由になるとしますと、力のあるものが相当株市場を荒らしますし、それによってせっかくの零細貯金性のものが倒されていくという格好になるので、その比率について大へん私は心配しておるのです。現状と将来、どのくらいにしたなら、これらを防いでいき、なお一そう日本の自由貿易化を進めていかれる標準になるかということを、お示し願いたいと思います。
  116. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 今の株の問題でございますが、現行の外資法によりますと、一般に五%までは市場で収得してよく、その場合には配当送金を保証し、また元本につきましても、二年据え置いてあと五年で返せる、七年間で返せるという規定になっております。しかし、それが制限業種、たとえば公益事業でありますとか、銀行でありますとか、そういうものは五%でとまっておりますが、それ以外の業種につきましては相対の売買で三%余分に買える。結局一般には八%買えるわけであります。しかし、これは一人が八%というわけではございませんで、外国投資家全部合わせて八%ということでありますから、これは微々たるものでございます。今、日本の株式総額に対して、比較というよりも、外資の入っている数百社の会社を調べてみますと、全体の外国投資国の持ち株というのは一・三%くらいでありまして、一番株主の多い会社にいたしましても七%程度でございます。そういう程度でございまして、一般的にここでゆるめればそれほどどっと入ってくるかというと、そうでもないんじゃないか。ただ、御心配のように、これが順序を誤りまして一挙に自由化するということになりますと、さっき大臣がお話しになりましたように、ホット・マネー的に利ざやをかせいでは逃げていく。これでは非常に困るのでありまして、さればといって、日本経済の将来の発展にとって非常にメリットのある場合というのは、現在でもある程度株の取得率を非常に高く認めております。これからはそういう株を持ってもらうことによって、いい技術が入り、資本金も大きくなって日本経済発展に非常に役立つという場合には、これは歓迎していいと思うも出あります。要するに、そういうところをケース・バイ・ケースに調べまして、あまり鎖国的なことを言う必要はないと同時に、ホット・マネー的に利ざやをかせいでいくということについては、ある程度慎重にならざるを得ない。ただその五%を若干上げるかどうかということについては、もう少し上げてもいいんじゃないかという御意見もありまして、今研究しておる最中であります。
  117. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 ちょっと関連して。  今酒井さんのおっしゃったことなんですが、外人の持っておりまする株のパーセンテージが一番多い会社でも七%くらいだとおっしゃいましたけれども、石油関係の企業はそんなことではないように思うのですが、その点をお尋ねします。
  118. 酒井俊彦

    ○酒井政府委員 これは私の言葉が足りませんでした。普通に持っておる株でございます。それを平均しました場合でありまして、もちろん、石油でございますとか、それから外国系の資本がよくございますダンロップでありますとか、帝国酸素でしたか、ああいう会社とか、それからマックス・ファクターのようなものもございますし、そういうものは五〇%以上持っておるのもございます。しかし、これは外国会社の日本支店というような考えで、向うがこちらに資本を定着させて日本で商売しよう、そういうものはございます。確かに石油資本などはございますが、一般的に外資法でパーセンテージで認可していったものの平均を今申し上げたわけでございます。
  119. 松尾トシ子

    ○松尾委員 まだ質問は、自由化に備えての物価政策とか、あるいは関税問題で、したいのですけれども、きょうはこの程度でやめておきます。
  120. 植木庚子郎

    ○植木委員長 堀昌雄君。
  121. 堀昌雄

    ○堀委員 私、初めてこの大蔵委員会に参りまして、何さましろうとなものですから、ちょっと的のはずれている質問もあるかもしれません。大体日本経済というものを見ておりますと、一体どこまでが大蔵省の範囲なのか、通産省の範囲なのか、経済企画庁の範囲なのかということは、どうもはっきりした区分けが私にはちょっとつきかねる点もありますので、やや質問が大蔵省の所管外にわたる点があるかもしれませんけれども、その点については、お答えいただける範囲でお答えをいただけばけっこうだと思います。  その次に、これから私が当委員会で発言いたします態度でございますが、大体経済の問題というものは科学的な問題でございますから、本質的には、最終的に数字とのつながりの中で非常にシビアなものだというふうに私考えております。いろいろと政府の立場と私どもの立場の中には基本的な考え方の相違がございますから、主観的な問題についての見解の相違については私はやむを行ないと思いますけれども、具体的な事実を通じての客観的な問題につきましては、一つ精細なお答えをいただきたい、こういうふうに私最初に希望をいたしておきます。  まず最初に伺いたいのは、今回の通常国会におきましての大蔵大臣財政演説の冒頭にございますことでありますが、「私は、まず、昨年初来、わが経済がまことに力強い発展の過程をたどっておりますことを、国民各位とともに心から喜びたいと存じます。」「昭和三十四年のわが国経済は、各般にわたり目ざましい上昇を遂げて参りました。すなわち、鉱工業生産は年間二四%、輸出は二〇%に及ぶ記録的な伸びを示し、これに伴い、雇用情勢も一段と好転を見せ、国民生活も一そう豊かさを加えて参ったのであります。」こういうふうにおっしゃっているわけです。これは非常に喜ぶべきことだという立場に立ってごらんになっていると思いますが、実は、私は、なるほど鉱工業生産の伸びというものが伸びますことは、その問題の中に限って見るならば、喜ばしいという考え方も成り立つかと思いますけれども日本経済全体の立場というものから考えてみますと、このような伸び方がはたしてほんとうに手放しで喜んでいいものかどうかという点に、いささか問題があるような感じがいたすわけでございます。それはどういう点で感じておるかと申しますと、国の経済の基本的な問題としては、工業生産、輸出、国民の消費、こういうふうな観点から資本主義社会では問題をとらえて参るべきだと思いますけれども、その中で、工業主席の増加率は、一九五〇年から一九五七年の間の年平均約一九四%わが国ではふえている。輸出の増加率も一九五 ○年から一九五七年の年平均が二三三%に増加しておる。これは、西ドイツと比べますと、いずれも著しくわが国の伸びの方が大きいわけでございまして、西ドイツのとの問題を詳しく対比をして御質問申し上げたかったのですが、今回ちょっと時間がありませんので、その点が十分できないのでありますが、さらに個人消費の増加率を見てみますと、一九五〇年から一九五七年の年平均は八四%の増加にとどまっておる。そこで、工業生産がこういう形で非常に伸びて参りまして、輸出も伸びておるのでありますけれども、伸びた率だけで見ると、まことにバランスがとれておるようでありますが、実態をこう調べてみますと、貿易数量指数で見ますと、資料がどうもあちこちから出ておりますので、ちょっとつながらない点もございますが、経済企画庁の資料で見ますと、戦前を一〇〇といたしまして、一九五八年の生産指数は二三四八でありますが、輸出の数量指数は九八七で、輸入は一一七三と、非常に鉱工業生産の伸びが伸びておるにもかかわらず、実質的の貿易の伸びというものはあまり大きなものがない。消費水準で見ますと、やはり一九五八年では、都市で二四九%増で、農村が三八一%増にとどまっておる。これを他の国連の資料で調べてみますと、戦前比で、わが国の個人消費は、指数としてちょっと古いのですが、一九五七年で一六〇、工業生産は二七七、いずれも工業生産の伸びに比べて個人消費はきわめて低い状態にあると思います。美濃部さんがこの二七七の工業生産指数を御自分の考え方で分析をされておるのを拝見しますと、生産財が、三三九で、消費財は七一ぐらいになっておる、こういうふうに美濃部さんはこの問題を分析をしておいでになるのであります。こういうふうに見て参りますと、日本の現在の生産の伸びというものは、生産財の、異常な増産ということと、しかし、それに個人消費というものは、今申し上げた一六〇でございますから、この一六〇は実質額の指数でございますけれども、工業生産指数を個人消費指数で割ってみますと、大体一七三というような数が出ておりますが、国連の統計の中で見てみますと、世界で一番日本がこの較差が大きいというように出ておるわけであります。そうしますと、現実の問題として見ますと、今後の日本経済がこのような形で生産をどんどんふやしていったときに、はたしてどういうことになるか。これまでの御質問の中でも、輸出が今大へんふえたと言われておる。なるほど、昭和二十八年でございますか、ここらから見ますと、昭和三十三年まででほとんど倍になっておりますけれども、これは戦後に非常にダウンしておりましたために、伸び率として見れば非常に大きいのでありますけれども、実質的には戦前の水準くらいのところにしかまだ来ていない。生産はほぼ三倍近くになっておる、消費は大して伸びていないということは、やはり私は、今の日本経済というものは、生産財へさらに生産財が投入をされて、設備投資に次ぐ設備投資というものが現在の日本の好況をささえている大きな柱になっているのじゃないか、こういうふうに実は私なりに考えておるわけでございます。  そこで、まず大臣にお伺いをいたしたいことは、この前のこの委員会におきましても、あるいは財政演説におきましても、抽象的な形でいろいろ述べられておるわけでありますが、非常にグローバルな立場から見て、今後の日本のこの生産の伸びていく姿というものを、財政の関連においてどういうふうにお考えになっているか。手放しで、生産が伸びるのは非常にけっこうだという態度でいるのかどうか、この点を一つお伺いいたしたいと思います。
  122. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま堀委員が御指摘なりますように、わが国の戦後の経済は、一つの異常経済ということが言えるでしょう。御承知のように、あの大戦で生産の設備を全部こわしてしまった。また過去の蓄積をみな蕩尽してしまった。そういう意味で、国内消費もできるだけこれを押えるといいますか、国民の協力を求めて、そうして経済を、将来の発展に備えるような基盤を作ってきている、ことに五十年代まではそういう面が非常に強く出ている、かように思います。最近いわゆる神武景気といわれたとき、その時分に初めて消費水準も高まってきて、そうしてさらに国内消費というものも相当ふやしていかなければいけないのだということが指摘されるようになってきている。その後、神武景気の以後において一部国際収支の悪影響等があり、やや伸び縮んできたけれども、また一昨年来ようやく上昇して来、本格的な経済成長に今度は進んでいく、そういう意味から、なお設備の投資もふえて参るでしょう。また生産財の生産ということも非常に強くなりましょう。しかし、一面国内消費というものも相当私どもは改善されつつあると思います。最近の数字がどういうふうになっていますか。お手元にある資料でごらんになりましても、おそらく戦後の状態からは隔世の感があるだろう。またそういうことにならなければならない。ただ、そういう場合におきましても、国際決済のしりというものが、幅はあるいは小さくなるかわかりませんが、たえず黒字基調であることが必要である。そういう意味においての経済発展を期待しておる。結局、戦後において、非常に極端な表現をすれば、他の国にも見られましたように、いわゆる飢餓輸出、こういうことで国内経済を保つというような、そういう形はもうなくなってきている。もうそういう必要はない。むしろ国内における消費というものがよほど発展していく、国内消費が拡大されましても、しかも国際的な決済においては黒字基調を維持する、そういう経済方向でなければならない、またそういう方向へ今向かいつつある、かように実は私ども考えておるわけであります。同時にまた、国内消費の面におきましても、戦後の日本の特質は、軍備的なものが非常に減って参っておる。こういう点から、むしろ直接消費の面の拡大の方向日本経済も向かいつつある。これなどは他国に比べての一つの特質だろう、かように私は考えております。
  123. 堀昌雄

    ○堀委員 非常に抽象的なお答えなので、私もちょっとはっきり理解しかねる点もあるのでございますが、実は、最近のいろいろな問題の中で、やはり本来の日本傾向としては、インフレ的な傾向が全般的な経済の中に見受けられる。幸いにして現在はいろいろな物価指数その他は持ち合っておりますから、これはある意味では数量景気ということになるかもわかりませんが、しかし実際そういうものをそういう形にささえておる非常に大きな原動力というものは何か。私なりに分析してみますと、やはり政府の財貨サービスの購入というものが非常に大きな比重を占めておるのじゃないかという感じがするわけでございます。  そこで、先ほどから石野さんの質問、あるいは松尾さんの質問に対して、大蔵省当局では、経済企画庁経済計画について満幅の信頼を置いておいでになる。所得収入その他についても、この国民経済計算というものをもとにしてやったんだから間違いはございませんという、まことに自信満々たるお答えが出ております。これは大蔵大臣に申し上げるべき筋合いではないかもわかりませんが、この日本経済企画庁経済計画というものは、実は私は信用できない。その信用できない事実を、あまりひどい点もあるから、ちょっとここで申し上げておきたいのであります。  実は、昭和三十三年度の国民経済計算の計画におきまして、これは非常に私はおもしろいことだと思いますが、三十三年度実績見込みというものは、これはこまかい資料がございませんのでわかりませんが、日本の財政の中で出ておるのを見ますと、GNPで見まして十兆一千四百十億円になっております。ところが、結果で出たものを見ますと、昭和三十三年度の実績は十兆二千九百十七億円、かなりここにも違いがあります。特にこの中で非常に驚きましたのは、在庫品の増加という見通しが、見込みではなくて実績見込みで、千六百五十億円企画庁では見込んでいるのです。実績見込みで千六百五十億円見込んでおったものが、実際の実績になってみると、三百五十二億円しか在庫の増加がなかったというようなことが具体的にここに出ておるわけです。これは一番極端な例ですが、三十三年から三十四年の在庫品増加の伸び率というものは、二三六・四%だと経済計算で出しておりますけれども、実際には一七六一%なんです。われわれは現在の日本のいろいろな景気変動の主要なる部分は、在庫の変動日本経済の一番大きな要点になっておると思いますが、その在庫の見通しに対して、これはいわゆるグローバルなものであったにしても、これでは私は見通しを欠くものではないか、こういうふうに感ずるわけであります。それが引き続いて三十四年度の見通しなりますと、ここでまた著しい相違が出ておる。これは特にこの中で見ますと、在庫品増加の問題についても、見込みだけで見ると三千九百億円見込んでおります。ここにいただいた実績見込みでいくと、今度は六千二百億円にこれがなっているのです。倍違うのです。これが実績になったら何が出てくるのか、われわれは全然見通しが立たない。経済変動の中で最も大きい比重を占める在庫の問題は、なるほど非常に調査がむずかしいと思います。しかし私は、このようなグローバルなものにしても、あまりにも目測を誤っておると思います。これは私はこまかく調べてみたのですが、伸び率で見ましても、今の見込みで見ると国民所得で一〇六・一なんですが、実際には一一四・六が実績見込みとして出ておる。全体として見てみると、いずれも非常に上回っておるわけですが、こういうことが起きるもとが一体どこにあるかといいますと、この経済企画庁が出しておる経済計画見通しというものよりも、実際は財政支出というものの方が先に出て、これがぐるぐると循環をしてきて、その年度における経済規模の問題があとから非常な変革をしてくる、そういうところにあるという感じが私は非常にするのです。  なぜそういう感じがするかといいますと、三十三年度と三十四年度は著しく見込みが違うのですが、その違う原因は、まあそれだけによるかどうかわかりませんけれども、少なくともGNPの中の政府の財貨サービスの購入は、一九五七年には一八・一%であったものが、一九五八年には一九・四%、ここで著しくふえておるわけです。これは一番正確な数字で、そういうふえ方をしておるのと、片面で政府の財政の民間収支を見ますと、昭和三十一年、三十二年は、千六百三十四億、二千五百九十七億と、いずれも非常に揚超が続いておるところへ、三十三年は二千五百十億円の散超であった。三十四年度も二千二百億でしたか幾らでしたかの散超です。今年度を見ると、また千八百億円の散超、そうしてオーバーローンは全然そのままで残っておる、こういうふうに見てきますと、初めに計画を立ててみても、実際は財政から押してくるところの影響力の力が大き過ぎて、計算をされていけばいくほどひっくり返さなければならぬという現実の姿が出ておる。こういうふうに考えてみますと、今年度の財政規模は、私の計算なんですけれども、やはり政府の財貨サービスの購入はGNPに対して一九・七%、三十四年度の業績見込みでも一九・六%、いずれも非常に高い状態にここで継続をされておる。こういうことになれば、三十五年度の経済企画庁が出しておりますところのGNPで六・六%増というものは、実際はさらにさらにやはり大きくなる危険があるのじゃないか。その大きくなる危険というものは、同時にインフレ的要素を伴ってくるのではないか。経済企画庁の資料があまりに信用できないので、そういうふうに申し上げるのですが、大蔵省としてはこういう非常にグローバルなものを財政の規模としていらっしゃる。さっきのお話で、国際収支についても一億五千万ドルの黒字を企画庁で出した、これは大丈夫だというお話も出ておったが、一体どの程度に大蔵省としては考えておいでになるのかということと、大蔵省としてこういう問題についての過去の分析を何らかの形でやっておいでになるのかどうか、この問題についてちょっとお伺いしておきたい。
  124. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 数字を基礎にして御議論を進めておられますが、大へん私どもけっこうなことと考えます。ただ問題は、政府の財政支出あるいは財貨サービス購入というものが経済変動にどういう影響を与えるか。私ども考え方では大体二割程度じゃないかというような見方をいたしております。この経済企画庁の数字が違っておるのはこういう点にあるのだろう、こう言っておられますのは、非常に効果を大きく感じていらっしゃるのじゃないか、こういうふうに思います。なおこれらの点については詳細に担当の方から説明をいたさせます。  もう一つの問題ですが経済企画庁の数字においてとかく信が置けない。なるほど実績において数字はずいぶん狂ってきている。ただ、私弁護するわけではございませんが、三十二年から三十三平にかけて非常な変動のあったとき、この時分の数字についてはなかなか年度当初における計画の数字そのものの維持はできなかっただろう。これらの点は一応御了承をいただきたいと思います。もう一つの問題は、こういう見込みについて、どうしてもやや小胆とでも申しますか、思い切った見通しがなかなか立たない。非常に慎重に十分の考察をして見通しを立てている。こういう意味から見まして、実績はもっと拡大された、しかしながらそれが幾分か小さい見通しで済んでいる、こういうような事柄が実はあるのではないかと思います。これらの点も、私の感じを申したわけでございますが、この計画自身に参画しております事務当局からなお詳細に説明させたいと思います。
  125. 村上孝太郎

    ○村上説明員 ただいま経済企画庁見通しというものの正確性についていろいろ御議論があったわけでございます。この経済企画庁見通しの性格でございますけれども、確かに、現在のように自由私企業制度というものを建前にいたしております場合においては、経済の原動力になりますのは、個人並びに企業の自由な創意ということでございます。従って、国としましては、財政金融政策といういわば戦略的部門でもって、そうした経済発展についてのある程度のコントロールを加えるにすぎないわけでございます。見通しというものがどういう性格を持っておるか。一方にこれは単なる予測にすぎないのだというふうな説もございますれば、いやこれはまだ計画的なものと見ていいのだという説もあります。現在、われわれの考え方では、経済企画庁見通しというのは、ガイドポストと申しますか、一つ経済の指針といいますか、政府が、こういう程度の経済の伸びであれば、現在の経済の実勢からの動き方として好ましくもあり、かつまた非常に可能性のある形であると考えているようなものを、いろいろ経済計算としてお示しいたしておるわけであります。従って、その場合に、諸外国の要因などが非常に変わりまして、非常に外国の景気もよくなる、それに応じて国内の投資力も非常に増大してくるということになりますと、経済の伸びが当初の予想よりはそれを上回るということもあるわけであります。御指摘昭和三十四年度の見通しにつきましては、当初一月——去年の一月は私は五・五%の成長率というふうに考えておったのでありますが、その後六月、八月、十月でございますか、逐次見通しが変更になりまして、結局最後には一三%の成長率というところまで変わったわけでありまして、そういう意味における見通しの差はあったわけでございます。ただ、去年のなべ底景気が持ち直して上昇方向に向かうであろうという見通しにおいては、一応の方向、オリエンテーションは合っておったわけでございまして、それを正確な数字を予想してそれがぴたりと当たるということは、現在の景気予測においてはいかなる国といえどもなし得ないところでありまして、ただその方向づけがある程度合っていれば、こうしたガイドポストの意義としては一応認めねばならぬのではないかと思うのであります。  それから、先ほど景気を動かすものは政府の財貨サービスの購入ではないかということをおっしゃったのでございますが、財政の面から景気に及ぼします影響は、御存じのように、政府の支出が持つ乗数効果によって、その何倍かの需要を国民経済に働かせるわけであります。それが経済の扶養力になるわけであります。先ほど大臣も言われましたように、大体のGNPの中に占める割合が二〇%というのは、先進諸国に比べましてもそう大きな数字ではございません。従って、日本のこの経済変動が財政の面から起こってくるというふうなことは、われわれは考えておらぬわけであります。ただ、日本の財政が経済に及ぼす影響というものを考えます場合に、ある程度心理的な誘発的効果はあろうかと思います。あまりにも財政の計画が積極的で景気のいいものだという場合には、逆に——逆といいますか、国民経済の企業の側におきましても、財政はこれだけ積極的な計画なんだから、われわれの投資計画も大いに景気のいいものにしようということで、実際の財政支出の乗数効果以上に心理的な誘発効果があるという場合もあるわけであります。そういうものは経済の非常に自主性の強い国におきましては比較的少ないのでありますけれども日本の場合のように比較的政府施策に対して同調的な傾向の強い経済の場合には、そうしたことによって動かされる面が相当あろうかと思うのであります。昨年予算を編成します場合に、非常に上昇のテンポの早かった当時の経済情勢から考えて、財政の編成方針というものを慎重に中立的にせねばならぬということを、大蔵省もいろいろPRをいたしたわけでありますが、ここらあたりにもそうした日本経済政府施策に対する同調性が強いということを憂慮してのわれわれのおもんばかりがあったわけであります。そういう意味から申しまして、財政の支出が経済に及ぼす影響は確かにあるのでありますけれども、少なくとも経済計算に示されておりますところのこの二〇%前後の割合から申しますと、必ずしも日本の財政が経済に対して、他の先進国に比べて、非常に大きなウェートを持ち過ぎているというふうなことはないのじゃないかと思うのであります。ただ、この経済計算とは別個に、国庫収支の散超、揚超という問題で、民間の金融市場がゆるんだり締まったりする関係、それにいろいろ投資意欲というものがからまりますと、設備投資ブームが起こるというようなこともあり得るのであります。昨年の第三・四半期に国庫は大散超をいたしたわけであります。従って、そうした国庫の大散超に刺激されて民間の設備投資が非常に強まると、景気動向も非常に微妙であるということが民間でよく言われたのですが、そうしたところあたりに、ある程度国庫の散超、揚超が景気に及ぼす影響もあるわけでございますが、これはまた、別個の立場から申しますと、国庫から散布超過になりました資金というものは、現在の金融政策によりまして国民経済に必要な健全通貨の供給量を残しまして、一方日銀の窓口規制によって引き揚げられるというふうなシステムもあるわけであります、そういうことから申しますというと、先ほどおっしゃいましたような御懸念に対しては、それぞれ施策が考えられておるということでございます。
  126. 村山達雄

    ○村山説明員 先ほど、経済企画庁の数字をまるのみにした、それに基づく税収入ははなはだ不安ではないかということについて、お答え申し上げたいと思います。  実は言葉が足りないで申し上げませんでしたが、税と申しましてもいろいろの税がございまして、間接税で申しますと、たとえば酒でございますと、ことしの大体生産計画はできております。米がどれくらいでどれくらいできるということはできておりまして、それに基づくどれくらいの伸びになるかということを、過去の経験からいたしまして、また業界見通し等を中心にいたしまして、それぞれ酒の種類ごとにできております。たとえばビールにいたしますと、生産能力が一ぱいまでいってしまうというようなところでございます。それからまた、揮発油にいたしましても、通産の外貨割当をもとにいたしました需給計画、こういうもの、あるいは各物品税にいたしましても、品目ごとに各業界の生産計画をとっておりまして、今後の価格がどれくらい下がるか、それから過去においてどんなトレンドをたどってきたか、こういうすべて積み上げ計算をやっております。また、直接税にいたしましても、先ほどは法人税のお話をいたしましたので、ちょっと誤解を生じたかもしれませんが、たとえば勤労所得税にいたしますと、現在の企画庁のもとでは雇用の増が四・五%増と見込んでおりますが、われわれの方では、免税点以下の者がありますので、過去の経験等を十分参酌いたしまして、年間十一万八千円以下の収入金額の者がどれくらいおるか。これは大体計算できると思います。従いまして、それ以上のものになりますと、雇用において約二%の増、それから公務員が大体給与がどれくらい変わってくるか、これは計算できる、こういうふうな積み上げ計算をしておるわけです。従いまして、法人税ということが一番むずかしいわけでございますが、それも、たとえば先ほど申しましたように期間のずれは六カ月なわけです。ここは大事なところでありまして、たとえば経済企画庁見通します場合には年間フルに見積もるわけです。ところが、税の方は期間のずれが約六カ月ございますので、実は経済企画庁見通しました一年間の予測は、税においてはそのうちの半年分だけは実績に基づくともいえるわけでございます。この点が第一に違うわけでございます。それからまた、申告所得税にいたしましても、国民経済計算の方は会計年度であります。こちらの方は暦年度でございますので、三カ月の実績を見込んでおる、こういう実はこまかい計算をとっております。それから、会社につきましても十分見込みはとって、両面から推しまして過去の経験から出しておりますので、御心配は要らないと申し上げたのであります。
  127. 堀昌雄

    ○堀委員 実はきょうは大臣に御質問を申し上げるつもりなんで、グローブなことを話しておりますが、さっきの問題については、私これからこまかい資料を大蔵省からいただいてきっちり分析をして、一つまた後日こまかい点でお話をさしていただきますが、大臣にはきょうはそういう点で……。そこで次へ参ります。今そちらの方がおっしゃった各国政府の財貨サービスの購入、先進国は二〇%前後、日本の場合も一九%くらいだから、大したことはない。実は大したことなんです。なぜ大したことがあるかといいますと、これは、戦前の分を見まして、やはり一九三四年—三六年の平均が資料で出ておりますが、これがやはり一八・五%くらいなんですが、この中で占める軍需は当時三二・四%くらいだった。現在の諸外国では、アメリカなんかにおいては五〇%以上を占めておる。非常に大きな軍需が政府財貨サービス購入にありますが、日本の場合は六%しかない。そうしてみると、先進君国との門で財貨サービス購入が二〇%くらいだからといっても、軍需分についてのこの乗数効果だけでも私は相当大きな部分があるのではないか、こういうふうに考えますので——きょうはお答えはけっこうです。私の意見をちょっと申し述べて、その点ちょっと意見の相違があるかもしれないと思うのですが、次に、設備投資と生産の伸びと輸出というものを、一連の関係で少し私調べてみた。調べてみますと、三十一年から三十四年の中の投資総額は、鉄鋼が四千四百九十億円と非常な投資が入っておりますが、生産の伸びはこの間二倍になっておるけれども、輸出はほとんど伸びてない。鉄鋼については伸びてないという実情が一つございます。また片面最近非常に電気製品というものが伸びておりますが、設備投資千六百六十億で比較的この五カ年間でそう多くはないですけれども、生産の伸びは五八八、約六倍くらいの生産の伸び。輸出につきましてもこれは約六倍くらいになっておる。こういうことでありますけれども、この設備投資と実は生産の伸びと輸出の関係を見ておりますと、さっき大蔵大臣も、輸出も伸びるし、輸入も伸びるだろうけれども国際収支はそういう面であまり心配がないというお話があったように思うのですけれども、どうも相当これは峠に来ておるのではないか。日本の輸出は、いろいろな製品別の状態から見ると、峠に来かかっておるのではないか。西独の資料をずっと調べてみますと、西独では機械生産が非常に大きいけれども、それに見合って機械の輸出が非常に大きい。生産と輸出は非常にバランスがとれておるようですが、日本の場合には必ずしもそういうふうな状態になってない。そうしてくると、これは、ある地点に来ると、生産過剰という問題が出てくる要素をはらんでおるのではないか。国内の場合で見ましても、そういう要素をはらんでおる。そうすると、デフレがくるということで、それでは困るというので、依然としてこういう状態を続けていこうということになると、また設備投資が循環的にぐるぐると増加されてくるのではないか。こういうふうに感ずるわけですけれども、その点大臣は——現在でも、輸出入で見ますと、三十四年度はいいようですが、それまでは、ほとんど貿易外収支や特需や何かで整理したあとの実質的なものは黒字になっておりますが、必ずしも貿易自体として見る場合には楽観を許されないと私は思いますし、特に実際にこれから日本が輸出について必要な重化学工業の製品は先進諸国に売れる可能性はあまりないわけでありますから、後進諸国ということになれば、後進諸国現状必ずしもそういうものがどんどん伸びるような客観情勢にもない、こういうふうに考えてきますと、輸出は必ずしも楽観を許さない非常に重要な問題をはらんでおるのではないかと思いますが、この点についてはいかがですか。
  128. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほどの数字は、私もしろうとでちょっと参ったのですが、今のお話になりますと少しわかるようであります。先ほど申し上げましたのは、国際収支を黒字基調に保つということを実は申し上げたのであります。その点は誤解のないように願います。それから、輸入輸出ばかりではなく、貿易外収支ももちろん入ってくるわけであります。ところで、今設備投資と生産と輸出の関係を鉄鋼についてお話がございましたが、鉄鋼の設備投資が行なわれた。生産は伸びる。しかし鉄鋼そのものとして輸出炭はされない。これが船舶になりあるいは車両になりその他の二次製品として出ていくということを、これは御指摘ができるように思います。問題は、設備投資の場合でございますが、設備投資が非常にふえるという場合に、一体現在の操業度というものがどうなっておるか。その操業度によりまして新しい設備の増加というものの情勢が出てくる。こういうのが各産業別で均衡がとれることが必要だろう。そういうことが望ましいことだ。いわゆる神武景気の際に一部非常に困った状況を起こしましたのは、生産面においてのアンバランスができたとか、あるいは在庫投資に非常なこぶができたとか、こういう事柄経済の変調を来たしたのだと思います。今回の問題にいたしましても、設備投資自身をそう心配することはない、問題は隘路がなしに均衡がとれることが必要だ、かように思います。そこで、たとえば隘路として比較的考えられやすいのは一体何か。それが電力の面であったり、あるいは輸送の面であったりする。あるいは港湾施設の問題であったり、そういうようなことに考えられますので、政府自身が財政投融資でそういう点に特に力を入れておる。民間においても、この事業は将来性があるということで、自由に放任しておけば、おそらく石油化学などは際限なく設備投資要望される。そういう暁においては、在庫がふえ、そういうものがはけない、こういうことの結果を招来する。そういうことのないように絶えず気をつけていく。問題はそこに均衡をとらすことであると思います。同時にまた、貿易も大事でありますが、貿易の面では、日本の工業のあり方から見まして、原材料の輸入はもっとふえていくに違いない。同時にそれによる製品がまた相当出ていく。しかし同時に国内で消費されるものもとにかくふえていくに違いない。だから、国内消費をふやさない限り、お互いの生活向上もないわけでございますから、そういう意味においては望ましい傾向だと思いますが、国際収支を赤字にするような伸び方は困る。そういう意味で、政府自身設備投資や生産や貿易というようなことにいろいろの工夫をこらしていくわけであります。だから、この設備投資だけ、ある一つ部門だけをとってどうこう言うことは当たらないのじゃないか、実はかように考えております。
  129. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、たまたま鉄鋼を例にとりましただけで、鉄鋼そのものについてどうということではございませんが、大体日本設備投資の最近の現状は、ちょっと資料が古いのですが、大体蓄積、資金が四三%から四五%程度で、ほとんどが借り入れでまかなわれておるというのが最近の姿だと思います。戦前の日本の産業資金の状態を見ると、株式に六八%くらい依存をしていて、金融機関からは三〇%くらいしか借りていない。最近は株式は一五%くらいで、金融機関が七四%くらい依存している。こういう状態で、これは、さっきの松尾さんじゃないですが、貿易自由化との関連でやはり非常に大きな問題があるだろうと思う。日本の今の企業の状態というものは外部資金にたよっている点が非常に大きいということから見て、貿易自由化というような場合に、OEEC諸国のように自己資金を非常に充実しておる国と実際に競争する場合に、基本的な姿として、はたしてそれに耐えられるかどうかという点に非常に大きな問題があると思いますし、片面財政が非常にインフレの基調があるために、とかく過熱しやすいところは公定歩合を上げたりしながら、金融面で調節をしながら行かなければならぬという非常に不安定の状態の中で、国際的には向こうの非常に金利水準の低いものと競争をしていかなければならぬ。そうしてその競争するための土台になる産業資金というものは、ほとんど半ば以上借り入れにたよっておるのだ、こういう日本の今の経済状態というものは、非常に不安定な状態の上に立たされておる。ですから、貿易自由化という問題は、個々の問題としてはいろいろな手段方法があろうかと思うのですが、基本的には、こういう構造内変化と申しますか、そういうものが相当根本的に考えられていかないと、ある地点までは関税その他でいろいろな調節ができても、それは非常に末梢的な調節にすぎなくて、基本的な競争においては、それをやるためにかえって無理が積み重なっていくというような内部的な矛盾が増大する危険があるのじゃないか、こういうふうに感じるわけですが、その点についてはいかがですか。
  130. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 その点は、しごく私ども同感でございます。これはひとり貿易自由化に備えるばかりではございません。経済の健全性という面から体質改善を要望いたしておりますが、一にただいま御指摘の点にかかってくるわけであります。しかして、この点については、現状がかくあるという、その原因のよって来たる点などを考えてみますと、やはり当然金利政策等が多分に関連のあることであります。この金利については、私ども国際金利水準にさや寄せするという目標は立てておりますが、今日の金利は、一朝にして今日の金利ができたわけではございません。これは戦後のずっと多年にわたる経過を経て今日のような状況になっておるのでありまして、これは、相当努力をしない限り、相当長期にわたらない限り、現在の金利状況は変わっていかない。その金利状況が変わらないと、やはり配当にも影響してくるでしょうし、配当の多寡によりましてやはり増資その他にも関係を持ってくる。そういう意味から、たとえば増資免税というような変則的な議論が実は出てくるということになるわけです。少なくとも今の日本の企業の弱点というか、内部に包蔵しているものは、堀君の御指摘通りの問題である。しかも、それは、戦後のわが国経済金融政策その他のものと合わせてこういう状況になっている。ただ単に私どもが指導するだけではなかなか容易なことではない。かように私ども考えております。
  131. 堀昌雄

    ○堀委員 次に、今度は消費の面で少し伺いたいのでありますが、さっきも私言ったように、鉱工業生産の伸びは、それ自体としてはいいけれども、全体として問題があろうかという中に、実は日本の消費面というものに非常に激しい格差がついているわけです。これまた国民所得の資料になりますけれども、三十四年から三十五年に対する農林水産業の国民所得の伸びは二%ぐらいしか見られておりません。ところが、勤労所得で見ると九%ぐらいで、個人事業所得でも、農林水産業以外のその他のものは七%、個人消費が、支出の増加が大体七・三%ぐらい見られておりますから、そういう意味では、勤労所得なりその他の事業所得というものは、個人消費との関係ではバランスのある伸び方をしている。ところが、残念ながら、国民の四割を占めているところの農民は二%ぐらいしかふえない。それは、農業生産自体から見ても、三十四年、三十五年比の主要経済指標で見ると、鉱工業生産は一一一・八になっておりますが、農林水産生産は一〇一・七で、一・七%ぐらいしか上がらないという状態にこれはつながってくる。そこで、こういうふうに片方はどんどん上がっていく、片方は、少しは上るでしょうが、ほとんど上がらないということは、国民の所得の中に大きな格差を生じてきて、ある地点にくると非常に大きな問題をこれは引き起こしてくる要素がある、こういうふうに考える。  そこで今度は少し具体的なことで伺いたいのですけれども、実は、勤労者世帯というのは大体四・三四くらいの世帯構成なんですが、農家世帯というものは六・三か六・四ぐらいの平均で、非常に世帯構成は大きい。国民年金が来年度から始まるのですが、六六ぐらいの家族構成の中で見ますと、国民年金は、若い人が月に百円、年長者が百九十円くらいになる。農家の世帯の中では、大体若夫婦と年寄り夫婦で、四人ともそういう年金を払うような人が出てきます。そうすると、一世帯当たり五百円、年六千円くらいの負担が、実は来年度から一般の農家世帯にかかってくる状態一つ。これは今社会保障の問題に触れましたから、ついでに国民健康保険に触れてみますと、国民健康保険では最近の状態では一世帯当たり三千五百円くらいの負担になって上りますが、この三千五百円の負担では、実は国民健康保険はなかなか実施はできない。健康保険との間の格差というものは非常に大きな状態にある。こういうふうに可処分所得というものが非常に農家の中では少ないのにもかかわらず、吸い上げる部分が今後まだまだふえていくということになれば、これは、農家経済というものから見ると、資料で見ても、最近の年間の純利益といいますか、農家の差し引きは一万七千円くらいしかないというのが資料に出ておりますが、その中で年金だけで六千円もとっていくというようなことになれば、農家消費というものは今後あまり伸びないというような可能性が非常に大きいのではないか。ところが、最近農家で実際に困っておるのは、私どもの耳に入る具体的なものでも、農薬を非常にたくさん使わなければならない。肥料も戦前に比べて非常にたくさん使わなければならない。要するに、農家経済というものは、そういう近代的な生産がふえてきたのに比して、非常に経費がかかる実情にある。残念ながら日本では農業が水田農業でありますから、大きな形での仕事ができない。しかし、機械化はどんどん進んで、いろいろな耕作関係の機械、脱穀関係の機械は入っておるが、これは残念ながら共同利用ではなくて、個々の農家が買ておるという状態で、今非常に農家に負担がかかっておるのではないかと思うのですが、こういう形から見て、今後個人消費をもう少しバランスのとれた形で伸ばしていくということのために、財政上考えられる余地はないかどうかという点について、ちょっとお伺いをいたします。
  132. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 現在、所得格差のあるところから、消費の面においても非常な格差があるのではないかということでございます。これは基本的な問題でございますが、これはやはり人口構成といいますか、分布の状況も変わらなければならぬ。今政府において所得倍増計画を立てておりますが、この所得倍増計画によれば、当然そういう人口の再分布が考えられなければならない。ただいまお話しのように、農薬や肥料をどんどん使い、機械化はでき、農村の労働力は昔に比べてよほど減っていくだろう。そういう場合においては、おそらく余剰農村労働力というものは他にかわっていかなければならない。これはまた、別な言い方で申しますならば、産業の科学化、近代化を推進して参りますならば、当然工業労働と農業労働とはパーセンテージが変わってくるはずです。たとえばビルマやインドのように——ビルマならば、せんだって参りましたビルマの政府の人が言っておりましたが、八五%が農民だ。そういうところの農村の所得は、限られた土地であり、幾ら耕作方法を変えるにいたしましても、所得の増はそう大きくは期待できないだろう。インドにおいては大体七〇%ちょっとこすといわれており、アメリカの農村労働人口はわずかに一三%といわれておる。そういうことになれば、この限られた耕地で農産物を生産いたしました場合にも、一戸当たりの総所得は必ずふえていく。だから、わが国の農業人口を今四〇%というような言い方をされておりますが、つい十年かそこら前までは、おそらく五〇%程度であっただろう。だから、農村の人口が工業労働の方にかわっていく、そういうことが考えられると、農村の一戸当たりの所得そのものは、農村の農産物の生産増と比例してふえるというものではなくて、これはよほど変わっていく。こういう点を、農林省自身が主体になりまして、基本問題を検討しておる。私どももまた、所得倍増の計画においては、現在あるがままの姿においての倍増ということ、大きな変動は考えませんけれども、当然起こるであろう変動は想定いたしまして、所得倍増計画を推進していくということになるのであります。そういう事柄が、産業構造の変化によりまして、やはり格差を変えていく。また消費の格差もないようにしていく。あるいはまた、国民負担の軽減の問題におきましても、所得増による国民負担の減というか、そういうことを考えていく。私ども資本主義国における行き方と、また共産主義国との行き方は、当然基本的に変わってくる。私どもの方では、税によりましていろいろ社会保障制度なども進めていっておりますが、共産主義国においては、そういうことよりも、事業収益そのものをもってまかなうという形に変わっている。基本的にはそういう違いがあるわけであります。そういう違いはありましても、ともかくも消費の格差なりあるいは所得の格差のないような方向に、やはり新しい産業形態、新しい人口分布状況の構想を描いて進んでいくという以外に方法がないのではないか、そういうことをやって参りますれば、ただいま御指摘なりました農家一世帯の構成人員が幾らであるから、国民健康保険やあるいは年金の掛金が幾らになるということも順次変わって参ります。最近私地方を回りまして聞きますと、中学校の卒業生などもその土地にとどまる者は非常に少ない。高等学校の卒業生などは非常に需要が高まっているが、それはみんな農業を離れて工業の面あるいは商業の面等に変わっていくんだ、というような話をしておられますが、そういう状態で初めて今言われるような点が改善されるのではないか、かように私は考えます。
  133. 堀昌雄

    ○堀委員 長期的な希望としてはそういうことでなければならないと思いますが、しかし、現実の今の日本の姿を見ておりますと、資本主義的な生産に関係のある部分は非常に人間のふえが少なくて、労働生産性関係のある部分にどんどん人間がふえて参る。ところが、これは賃金格差が大きくて——時間がありませんから、あまり申しませんが、三十人以下の企業と千人以上の企業についてみれば、これは半分にも足らない。これはまた生産関係に従事しておるものの中にも二重構造の問題がある。二重構造の問題は単にこれにとどまらないで、今の農村の問題に関しても非常に十重二十重に輻湊しておりますので、今の大臣のお答えはそういうふうにありたいという希望としては全くその通りでありますが、現実にはそういう趨勢を妨げる状態日本経済の今の発展の中に出てきつつあるというふうに感じるわけです。たとえば、鉄鋼その他の状態を見ましても、設備近代化はだんだんと人間の労働力を必要としなくなってきて、非常に利潤は上がっておるけれども、実は賃金が上がらない。そこで、労働者一人当たりの労働生産性というものは、日本の場合には逆に安くなりつつあるという現実は、私は世界の趨勢から見て非常におかしいと思うのですが、それが非常に日本の場合には特異な点に出ているというところに、財政経済全体の問題に対する考え方の中で、多少私どもの理解する方法との間の相違があるかと思うのでありますが、私は、エアハルトではありませんけれども日本の生産の伸びに見合い、利潤の伸びに見合った賃金というものが、やはり大企業においても支払われるような方向に問題を発展させていくし、同時に、そういう場合には、労働時間が短縮されても、雇用はある程度伸ばしていくという格好がとられない限り、大臣の今おっしゃったような格好の話は、これは希望としてはあっても、現実に実現できないのではないか、そういうふうに考えますが、その点いかがでしょうか。
  134. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 なるほど、単一企業自身で見ますと、労働力を必要としない。それでは失業者が非常にふえてくるかと考えて参りますと、やはり新しい産業が起こって参ります。また失業労働の吸収率も他の面にそれぞれある。国の公共事業もそのうちの一つでございましょうし、そういうことで一部だけでなかなか見るわけにいかない。そうして、なおかつ失業者が出たときに一体どうなるのだ。そういう場合には、おそらく失業保険その他社会保障制度というものが一つの問題でありましょう。また、賃金についても、非常に零細企業と小企業あるいは中企業、大企業の間に格差があることも、私どもはその事実は承認します。その意味においては最低賃金制というものも考えられる。これで十分だとは申されませんが、各国の最低賃金制の実態を見ましても、比較的いいところにきまりつつある、こういうように私どもは考えておる。  ところで、そういうふうなそれぞれの処置がとられますが、基本的に今言われる賃金というものは一体どういうように考えたらいいのか。非常に簡単に申せば、生産性で賃金が向上していく、生産性向上と賃金、これは非常に密接な関係があるということが言えますが、それは一国内において言えるだけでありまして、他国の賃金と比べる場合においては、その生産性だけで比較するということは当を得ないものだ。もちろん社会環境、生産条件、あるいは負担、あるいは国のいろいろな諸施設、そういうものを全部考えて物価その他を考えてみないと、これは比較するわけにいかない。今最低賃金制という話がしばしば出ておりますが、これは非常に困難なことじゃないか。たとえば日本の賃金とドイツの賃金を比べてみる。なるほどドイツに比べれば低い。あるいは生産性が低いということも一つかもしらぬが、生産性が同一でありましても、生活の環境が違っており、物価状況が違っておるときには、これを比べてみることはなかなか適切なメリットは出てこないのじゃないか。ましてこれが自由主義国と共産主義国とのものを比べてみると、非常に極端な立て方の相違があるということを考えなければならない。だから、一国内において労銀が高くなる——なるほどその会社の成績が上がった、生産性向上したという場合には、利益配分という意味において賃金を上げるということは、これは非常にわかりやすい議論でありますが、諸外国と比べてみるということは非常に困難なことじゃないか。これは社会保障の場合でも同一のことが言えやしないか。税金においてまかなっておる場合、あるいはまた国営事業の利益によってまかなう場合、そういうようにそれぞれ違っている。あるいはまた消費の面において拘束を受けておるような国と、消費においては全然拘束を受けないような国との比較というのは、基本的に無理な話じゃないか、かように私自身は考えております。
  135. 堀昌雄

    ○堀委員 実は私は社会主義諸国とわれわれの国とを比較してみようとは思いません。これは基本的な性格が違います。ただ資本主義諸国の中で、今おっしゃった為替換算とか、そういう形で私は比較をしてみる気持はありません。大体私はアメリカへ行ったことがないのですが、アメリカへ行っておる友人の話では、向こうの一ドルが日本の百円という感じだと言っていましたけれども、そういうことで比較をしておりません。しかし、その国の中で生産が著しく伸びておる企業についてやはり正当な分配がないということは、消費が縮まっているからそこに格差ができてくる。生産は前へいっても消費はうしろにある、輸出も伸びない、軍需はわれわれが反対するからそうもやれないということになれば一体どうなるかということは、もう少し実際経済関係のある方は真剣に考えていいことじゃないか。エアハルトが言ったことは、その点では卵が先か鶏が先かという議論になるかもわかりませんけれども、やはり日本の場合は少なくとも生産性に見合うような賃金が支払われていないということは、いろんな指標を見ましても、明らかにこの中で私は感じ取っておるわけです。これは議論でございますからこれでよしますけれども、私が大臣一つお願いをいたしておきたいことは、やはり現実に非常に格差があるものが、今後ますます格差が広がりつつあるということは、これは万人の認めるところだ。そうすると、それを政府施策の中で可能な限り狭めなければならぬということは、大きな問題じゃないかと考えます。本日は時間がございませんからこれだけにいたしますけれども、今後の機会を通じて、具体的な問題においてそういう関係の問題に触れさせていただきたいと思うわけであります。  以上で終ります。
  136. 植木庚子郎

    ○植木委員長 石村英雄君。
  137. 石村英雄

    ○石村委員 大蔵大臣は御用事があるようですから、一言ごく簡単にお尋ねします。  大臣も地元に関係があって御承知の塩田の整理の問題ですが、塩田の整理が行なわれまして、失業者がそろそろ出てきたわけです。これに対する対策を何か政府として特別にお考えになっていらっしゃるかどうか。
  138. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 石村君並びにかく答弁をいたします私も、塩田整理については関心を持っておる問題でございますが、幸いにいたしましてただいまのところ塩田整理は順調に進んでおるということがいえますが、離職者に対してのその後の就職状況その他はまだつまびらかでございません。ただ政府自身として感じますことは、総体的にはいろいろ事業があるから吸収できるだろう、こういう程度にしか考えておりませんが、具体的にどういう状況になっていますか、まだはっきりした数字をつかまえておりません。
  139. 石村英雄

    ○石村委員 ところで、塩業者自体は国から補償金がもらえるし、また、直接塩田に従事しておった労働者は、きわめて不十分とはいえ、退職金をもらえるのですが、関連産業の失業者に対しては、見舞金を出そうかという話はあるようですが、全然これはないわけですね。ところで、従来特殊な例として聞きましたが、塩の輸送をしておった業者またそこに従事する労働者が今度失業することになった。そして、そういう輸送業者ですから、一般の物資の輸送の方にかわりたいと考えておりましても、今までの免許は限定免許とかなんとかいうので、一般の輸送にはすぐにはかわれないということがあるようです。こういう人は何の補償もないわけで実に気の毒なんですが、例の進駐軍の整理に対してはタクシーをやらせるとかなんとかいうことがあって、各陸運局なんかにそういう通達も行っておるようです。こういう場合なんか、やはり一般的な輸送を認める措置をとるということはきわめて簡単じゃないかと思うのですが、政府としてそういうことをおやりになるお考えがあるかどうか。
  140. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 たとえば山口県下で八百名程度の失業者が出るだろう。私どもも非常に関係が深いのでございますし、その地方における失業者の再就職等については十分関心を持っております。政府もさることですが、私どもも、第一段としてお世話のできることはしたい、かように考えておりますが、ただいままでのところ特に強い要望も実は伺っておりません。ただいま御指摘なります塩の輸送をやっておった者は、比較的類似のトラック輸送その他にかわり得るのじゃないか、そういう意味での便宜をはかったらどうかということでありますが、ただいま政府はそこまでの決意はいたしておりません。これは、もちろん今後の推移を見まして、非常にけっこうな御意見のように思いますので、私どももそういう点においてなお検討してみたい、かように考えております。
  141. 石村英雄

    ○石村委員 検討と言いますけれども、トラック輸送なんかとかく従来の既存業者が反対するわけです。既存業者はそれだけ仕事が減るのじゃないかということで反対するんだと思うのですが、そういう既存業者の擁護のみで輸送の許可がされて不許可ということになっておるとは限らないと思いますが、今度のような特殊の事件に対しては特別に考慮するというくらいのお気持だけは持っていただいて、それを措置していただきたいということを要望申し上げておきます。
  142. 植木庚子郎

    ○植木委員長 次会は明二十五日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。     午後五時一分散会      ————◇—————