運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1960-04-13 第34回国会 衆議院 商工委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月十三日(水曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 中村 幸八君    理事 大島 秀一君 理事 小川 平二君    理事 南  好雄君 理事 田中 武夫君    理事 松平 忠久君 理事 武藤 武雄君       江崎 真澄君    岡本  茂君       鹿野 彦吉君    始関 伊平君       關谷 勝利君    田中 榮一君       田中 龍夫君    野田 武夫君       濱田 正信君    細田 義安君       板川 正吾君    東海林 稔君       北條 秀一君  出席政府委員         法制局参事官         (第一部長)  山内 一夫君         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局長)  坂根 哲夫君         通商産業政務次         官       内田 常雄君         特許庁長官   井上 尚一君  委員外出席者         議     員 大貫 大八君         議     員 北條 秀一君         運輸事務官         (自動車局総務         課長)     黒住 忠行君         運輸事務官         (自動車局業務         部長)     梶本 保邦君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 本日の会議に付した案件  小規模事業者に対する金融特別措置法案大貫  大八君外九名提出衆法第六号)  下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法  律案大貫大八君外九名提出衆法第七号)  百貨店法の一部を改正する法律案大貫大八君  外九名提出衆法第八号)  中小企業産業分野確保に関する法律案(大  貫大八君外九名提出衆法第一〇号)  小売商業調整特別措置法の一部を改正する法律  案(大貫大八君外九名提出衆法第一一号)  官公需中小企業に対する発注確保に関する  法律案大貫大八君外九名提出衆法第一二  号)  中小企業団体組織に関する法律の一部を改正  する法律案大貫大八君外九名提出衆法第一  三号)  弁理士法の一部を改正する法律案内閣提出第  九四号)(参議院送付)  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 中村幸八

    中村委員長 これより会議を開きます。  大貫大八君外九名提出小規模事業者に対する金融特別措置法案下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案百貨店法の一部を改正する法律案中小企業産業分野確保に関する法律案小売商業調整特別措置法の一部を改正する法律案官公需中小企業に対する発注確保に関する法律案中小企業団体組織に関する法律の一部を改正する法律案、以上七法案を一括して議題とし、審査に入ります。     —————————————
  3. 中村幸八

    中村委員長 まず提出者より趣旨説明を聴取いたします。大貫大八君。
  4. 大貫大八

    大貫議員 提案者を代表しまして、小規模事業者に対する金融特別措置法案提案理由説明いたします。  本案中小企業等協同組合法第二十三条の三の、「政府は、事業協同小組合組合員に対し、税制上、金融上特別の措置を講じなければならない。」という規定のうち、金融上の特別措置について、具体的立法を提案するものでありまして、組合員以外であっても、常時使用する従業員の数が五人、商業またはサービス業を主たる事業とするものにあっては従業員数二人以下の小規模事業者に対して、この特別措置適用するものであります。  特別措置内容としては、第一に、商工組合中央金庫及び中小企業金融公庫の一事業年度間の貸付総額のうち、小規模事業者に対する貸付額を百分の二十五を下らない割合確保せしむる措置であります。商工組合中央金庫中小企業金融公庫も、中小企業金融政府関係専門機関でありまして、もとより小規模事業に対して融資することを業務としておるのでありますが、金融機関としての安全性から、ややもすれば小規模事業に対する貸付が消極的になるおそれがあるので、金融上の特別措置として、この際、これを確保する必要があるのであります。しかも、小規模事業規模別分布を見ますと、従業員三百人未満の事業所のうちに占むる従業員四人以下の事業所数を見ましても、七七%強なのでありまして、小規模事業に対して、総貸付の二五%程度を充てるのは当然の措置なのであります。  第二に、現行中小企業振興資金助成法規定する貸付にあたっても、一会計年度における小規模事業者に対する貸付を百分の二十五を下らないよう確保すべき点であります。これについては言うまでもなく、中小企業のうちに占める小規模事業社会的経済的比重の大きさから見て、当然過ぎる措置なのであります。  以上、小規模事業に対する金融上の特別措置として二点を含む特別立法を提案するものであります。何とぞ、慎重審議の上、御賛成あらんことを希望いたします。  次に、下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案提案理由説明いたします。  現行法は、下請代金支払遅延等を防止することによって、親事業者下請事業者との取引を公正ならしめて、下請事業者の利益を保護することを目的としております。しかし親事業者に対して、下請事業者が、どうしても弱い立場に立つという事実は、中小企業過当競争によって引き起こされるやむを得ない現象なのであります。従って現行法の執行にあたりましては、法の運営につき、よろしきを得ることが必要であるとともに、法の不備な点は、一日も早く是正しもしくは補足しなければならないのであります。  本法について改正を提案する点は左の通りであります。  第一に、現行法は第三条において契約内容を書面として交付すべき旨を明記しておりますが、下請事業者給付内容と記載されているのを、給付提供の時期、受領の時期、返品条件支払時期、支払手段として、その内容の主要点を明記して、契約を公正ならしむる必要があるのであります。  第二に、現行法第四条の親事業者が順守すべき事項については、下請事業者の責任でないことが明白な場合にもかかわらず下請事業者給付提供に対して一定期日以降にもそれを受領しない場合、及び給付に対する下請代金支払わない場合を追加することが必要であります。  第三に、現行法第四条には、新たな追加事項として  1 定められた支払期日までに親事業者下請代金支払わなかった場合の遅延利息支払義務と、その利息のとりきめ  2 下請事業給付提供に対して、親事業者がそれを受領しないことによって生ずる下請事業者損害賠償  3 親事業者下請事業者に対する下請単価が不当に押し引下げられているので、その最低額のとりきめ  4 下請事業者は、親事業者からの発注の受入れについて、継続性が保障されず全く不安定な立場におかれているので、やむを得ない場合を除いては、親事業者一定量発注を継続して下請事業者に委託する  右の四件を明記して下請事業者を保護し育成する必要があります。  第四に、以上の改正に伴って、罰則について若干の追加が必要であります。  以上、下請代金支払遅延等防止法の一部改正を提案するものであります。何とぞ、慎重審議の上、御賛成あらんことを期待するものであります。  次に、百貨店法の一部を改正する法律案提案理由説明いたします。  昭和三十一年五月に、百貨店法が制定された趣旨は、本法第一条に明らかな通り百貨店業事業活動調整することにより、中小商業事業活動機会確保し、商業の正常な発達をはかり、もって国民経済の健全な進展に資することにあります。  ところが、現行法ざる法といわれている通り法実施の当初より、あるいは公然と、あるいはやみで、本法はじゅうりんされております。本法目的とする趣旨確保せんがためには、絶対に本法改正が必要なのであります。  改正せんとする点は、第一に、百貨店業定義そのものを拡大しなければならない点であります。すなわち物品販売業もしくは物品加工修理業のほか、飲食店及び喫茶店営業も含め、かつ規定営業面積をこえる面積を他の物品販売業等に貸し付ける業をも百貨店という概念規定に入れない限り、中小商業活動確保できなくなっているのが現状なのであります。  第二に、百貨店業私鉄等の構内や駅建物を利用して経営を行なう現象が著しくなっておりますので、今後はこれを許可しない方針が必要であります。  第三に、最近は、百貨店業資本につながるスーパーマーケットが著しく、地域的に見て中小商業との間に紛争を起こしている例が少なくありません。そこで、百貨店業者もしくはこれと資本的、人的につながりのあるいわゆる同一系統資本スーパーマーケットその他の形で進出することが必要なのであります。このような認定については公正取引委員会独禁法に基づいて指定すべきであります。  第四に、現行法は第九条において、通商産業大臣が、百貨店業営業行為について勧告できることになっておりますが、これは特定営業方法を明記して、その内容について一々許可制とし、百貨店業と仕入先との関係についても、事項を明記して、その内容許可制とし、百貨店業行き過ぎを抑制する必要があります。  第五に、国、地方公共団体日本専売公社日本国有鉄道等の国及び公共団体が、百貨店業に対して、特定の便宜を付与するような、土地や施設の提供は、これも百貨店業行き過ぎを招くおそれが強いので抑制する必要があります。  第六に、以上のように百貨店業に対する必要な規制改正するので、これに応じて、現行法第十七条に規定している通商産業大臣百貨店業に対する報告徴収を、報告徴収及び検査にまで拡充する必要があります。  第七に、以上のように規制事項を増加したので、これに応じて罰則改正する必要つがあります。  以上のように、改正案趣旨は、いずれも最少限度必要なる措置のみを含むものなので、何とぞ、慎重審議の上、御賛成あらんことを希望いたします。
  5. 中村幸八

    中村委員長 次は北條秀一君。
  6. 北條秀一

    北條議員 私は提案者を代表いたしまして、以下四つ法律案について提案趣旨説明いたします。  お手元に配ってありますプリントには民社党を代表してというふうなことか書いてありますが、これは先ほどの大貫議員の御説明の中にもありましたように、全部抜かしておりますので、提案者を代表してというふうに御訂正願いたいのであります。中小企業産業分野確保に関する法律案提案理由説明いたします。昨今、大企業中小企業産業分野への進出は著しいものがあります。現に、大紡績会社縫裁部門進出して、学生服労働服、ワイシャツなど、二次加工、三次加工生産部門にまで進出し、製紙工場がノートブックや便せんを製造する等、大企業は利潤を追求して、大資本の持つ高度の合理的生産並びに資本圧力をもって、中小企業を圧迫しているのであります。もちろん、憲法職業選択の自由を認めていますが、この自由は公共福祉に反しない限りという前提条件が置かれております。しかるに最近の大企業進出は、中小企業過当競争をさらに深刻化しております。このような大企業の動向こそは、まさに公共福祉に反するものであります。  従って、憲法並びに独占禁止法が保障する経済活動自由の原則は、公益のために必要なる調整を行なわなければならないのが当然であります。ここに、大企業中小企業産業分野分業態勢を作り、これによって中小企業産業分野確保し、経済活動の保障を行なわんとするものであります。  この構想に基づきまして、第一に、製造業建設業サービス業に属する業種のうち、その業種事業者の五分の四以上が中小企業者であって、かつその業種の過去一年の生産実績の三分の二以上が中小企業者で占められており、かつまた、経済的にも社会的にも中小企業経営が適切と認められるものを、国が指定して、これを中小企業の専有する業種とするものであります。  第二に、このような業種指定があった後は、大企業者は、みずからまたは資本的または人間的関係で支配する形で、新たにその業種進出したり、増設する等の経営拡張はできないことにするものであります。また指定された業種における大企業活動が、その業種中小企業活動に重大な悪影響を与えている場合には、国はその大企業者に対して圧迫を緩和するような措置をとれるようにするものであります。  第三に、このような業種指定や、大企業に対する措置をとるについては、中小企業産業分野確保審議会を通商産業省に設置して、大臣は、これの意見を尊重して対処することにするものであります。  次に小売商調整特別措置法の一部を改正する法律案提案理由説明いたします。  現行法小売商購買会、並びに小売市場との関係調整することをもって、小売商事業活動機会を適正に確保し、かつ小売商業の正常な秩序を阻害する要因を除去するという本法目的を遂行するものとしております。しかしながら、本法小売市場に対する規制は、現状に対してきわめて不十分であります。また、小売商業者製造業者卸売業者との調整は、本法第十四条だけでは全く不十分であります。さらに本法には、都道府県知事あっせん調停または勧告し得ることになっておりますが、都道府県知事行為は単独の判断によってなされるのではなく、国または都道府県別及び特別に必要ありと指定された都市において、民主的な審議会を設置して調整すべき事項について、調整審議し、答申建議せしめる必要があります。  改正の第一点は、小売市場に関する条項についてであります。最近、小売市場営業内容が多種多様になり、一般小売商業者との調整を要する件数が増加しているので、新たに、小売市場定義を改めて、十以上の小売店舗を含む建物小売市場とすることにし、小売市場開設許可制にして、小売市場貸付譲渡等によって営業内容が任意に変化することを防止する必要があります。無許可開設に対しては厳重に規制するものといたします。  第二の改正点は、製造業者または卸売業者小売業者との間の関係は、本法第十四条で単に製造業者等小売商業兼業届出にすればよいと規定しているのを、各業間の業務分野を、商品と地域によって指定して調整し得るように改正する必要があります。これは製造業者卸売業者小売商業兼業は、すべて届出制とし、新たな新増設を禁止し、かつ兼業している小売商経営が既存の専業の小売商業者を著しく圧迫する場合は、これに適切な措置をとり得ないようにする必要があります。  第三の改正点は、商業調整審議会を、国、都道府県指定する都市に設置する件でありますが、この審議会本法施行に関する事項をすべて調査審議し得るものとして、審議委員小売業者製造業者卸売業者消費者労働者学識経験者によって構成する必要があります。  このような改正によって、本法の名称は、当然に商業調整法と改称すべきであります。  次に官公需中小企業に対する発注確保に関する法律案提案理由説明いたします。  政府の資料によると、昭和三十三年度国民総支出十兆二千九百十七億円のうち、政府財貨サービス購入は一兆九千九百五十七億円、すなわち一九・四%を占めております。従って国民購買力のうち、国、地方公共企業体公団等購買力、いわゆる政府財貨サービス購入は重要な役割を持っているのであります。  国が各種の経済政策をもって、中小企業経営の安定をはかっている現在、国民購買力のうちの相当量を、恒常的に中小企業に向けることが必要なのであります。このためには、国が自己の裁量によって政策通りに運用できる予算面で、中小企業に対する相当量発注確保することが、最も望ましいのであります。  そこで、本案は、第一に、国、地方公共団体公共企業体等が、サービスまたは物資を調達するため、請負、買い入れその他の契約をする場合に、中小企業に対して、調達総額最低二割を確保し、こうして中小企業活動を維持せしめ、中小企業の健全な発達をはからんとするものであります。  第二に、このように官公需要一定割合中小企業に対して確保するために、内閣総理大臣は、毎年度中小企業官公需確保審議会の答申に基づいて、その割合を決定し公表しなければならない義務を持つこととし、各省庁等の長は、その公表された割合に達するよう中小企業発注するよう努める義務を負わせるものであります。  第三に、このような一定量発注確保するために、中小企業者のみに一般競争契約をせしめることとし、また各省各庁の長及び地方公共団体や、公団公社の長は、毎年度中小企業に対する発注実績監督官庁報告する義務を負わせます。また、それぞれの監督官庁の長は、それぞれの官公機関一定量発注中小企業者に対して発し得るように必要な勧告を行なうことができるようにするものであります。  第四に、内閣総理大臣諮問機関として、中小企業官公需確保審議会を設置して、ここで毎年度中小企業発注すべき割合の決定、その他の事項について意見を具申できるようにしておくものであります。  次に、中小企業団体組織に関する法律の一部を改正する法律案提案理由説明をいたします。  第一に、本法は、第九条で、一定地域一定業種を営む中小企業者過当競争に陥った場合のみに商工組合設立を認めておりますが、大企業進出並びに全国的な慢性的な過当競争現状にかんがみて、商工組合設立要件は、一定業種がそのような状態に陥った場合は、特定された地域を越えて設立できるように改正する必要があります。  第二に、本法第十七条に規定している価格協定をなし得る場合の制限は、数量または方法等制限を行なわなくとも、当初から価格協定を行ない得るよう強化して、中小企業者共同行為範囲を拡大する必要があります。これがためには、第十七条第一項第二号、第四号、第六号を次のように改正する必要があります。  二、前号に掲げる物の販売価格もしくは加工賃制限またはその物の原材料の購買価格制限。ただし、前号に掲げる制限とともにする場合に限る。  四、前号に掲げる物の販売価格または購売価格制限。ただし、前号に掲げる制限とともにする場合に限る。  六、役務の提供価格制限。ただし、前号に掲げる制限とともにする場合に限る。  また、調整事業範囲に、新たに合理化カルテルにも加えることも必要としておるのであります。  第三に、本法第五十五条は、商工組合に対して、中小企業者が加入するよう命令をなし得るように規定されておりますが、わが党案におきましては、商工組合設立要件から地域制限を撤廃しましたので、このような命令を必要とする事態はなくなりまして、命令による弊害を防止することができるのであります。従って、本法より加入命令に関する条項は削除する必要があります。  以上、私は提案者を代表して、四つ法律案提案理由説明いたしたのでありますが、中小企業振興のためにぜひ必要なものでございますので、どうか早急に慎重審議の上、御賛成あらんことをお願いする次第であります。
  7. 中村幸八

    中村委員長 以上で趣旨説明は終わりました。質疑は後日に譲ることにいたします。     —————————————
  8. 中村幸八

    中村委員長 次に、私的独占禁止並びに公正取引に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。板川正吾君。
  9. 板川正吾

    板川委員 私は、最近かずかずの雑誌あるいは業界誌新聞等で、観光地自動車道をめぐって使用の独占が認められるかいなかということで大きな紛争が起こっていることを伝えていることを知っております。これは運輸行政が混乱している証拠じゃないかと思うのでありますが、その代表的な事件は、三月二十五日の日本週報という雑誌が伝えておりますが、箱根山における一般自動車道をめぐる東急系の箱根登山鉄道と西武系の伊豆箱根鉄道との紛争であります。念のために申し上げておきますが、私は両者の複雑な紛争の渦中に入るということで質問しようとするものでありません。ただ、問題にしたいと思いましたことは、一般自動車道事業という非常に公共性の高い事業道路性質上無差別公開原則とするということが要求されている事業、こういう事業特定のものに差別的な扱いをしようとし、また、それによって排他的に他の競争業者をなくして一般自動車道独占しようとするというようなことは、独占禁止法の見地から違反の疑いがあるのではないか、このように考えて、独占禁止法を守っていこうとする立場から、この問題について若干の質問をしたい、こう思うわけであります。  公正取引委員会にお伺いしますが、まず、道路運送法独禁法との関係であります。道路運送法独禁法適用を受けると思うのですが、その間の関係説明していただきたい。
  10. 坂根哲夫

    坂根政府委員 今すぐ手元法律を持って参りますけれども、私の了承しておる限りでは、道路運送法道路の上を走る共同行為については適用除外をしておりまして、それ以外には私どもの方は関係ないように私記憶しております。
  11. 板川正吾

    板川委員 道路運送法の二十一条に、私的独占禁止法適用除外という項目がございますね。それによりますと、道路運送法の二十条にいう運輸協定自動車運送事業者間で運輸に関する協定をする場合は、運輸大臣認可を受けてこれを実施しなければならない。それから、三十三条の第一項で、運輸大臣は、公共福祉を阻害している事実があることを認めて、運送事業者に対して、一定事項を限って改善の命令をする。これ以外については、公正取引委員会は、公正取引委員会立場から運輸行政に対する監督なり、所管事項を持つ、こういうふうに思うのですが、間違いありませんか。
  12. 坂根哲夫

    坂根政府委員 それは、その通りでございます。
  13. 板川正吾

    板川委員 そうしますると、この道路運送法の二十一条による以外は、公正取引委員会として意見を述べることもできまするから、この道路運送法の第三章以下の自動車道及び自動車道事業、こういう項目については、すべて公正取引委員会としては所管事項である。要するに、適用除外を受けていない、こういうふうに解釈してよろしいと思いますね。
  14. 坂根哲夫

    坂根政府委員 これはその通りだと思いますが、独禁法適用除外の中に、二十一条でございますか、その「自然的独占に固有な行為」、「この法律規定は、鉄道事業電気事業瓦斯事業その他その性質上当然に独占となる事業を営む者の行う生産販売又は供給に関する行為であってその事業に固有のものについては、これを適用しない。」これはかぶって参りますが、これをかぶらぬ範囲のものは、おっしゃる通りだと思います。
  15. 板川正吾

    板川委員 それでは、次に法制局にお伺いしたいのですが、きょうは問題をしぼりまして、道路運送法四十七条三項にいう一般自動車事業限定免許の問題についてお伺いしたいと思います。  法制局では、法制局一発第二七号、昭和二十四年九月七日、法制局長官林修三から運輸事務次官粟沢一男氏にあてて、「供用拒絶等条項を有する供用約款認可及び自動車道事業限定免許について」、「昭和三十三年七月八日付自道第一五一号をもって照会にかかる標記の件に関し、次のとおり意見を回答する。」これを御承知ですか。
  16. 山内一夫

    山内(一)政府委員 よく存じております。
  17. 板川正吾

    板川委員 これの限定免許に関する事項でございますが、この回答書の(ハ)の中に、ちょっと読み上げますと、「行政庁は、自動車道事業免許を行うに当り、当該自動車道を通行する自動車範囲につき、道路運送法第四十七条第三項の規定に基いて、次のいずれかの限定をすることができるものと解すべきであるか。」「1、当該自動車道を通行する自動車は、一般乗合旅客自動車運送事業の用に供される自動車については、自動車道事業者当該一般乗合旅客自動車運送事業を営む者と特約をした場合における当該自動車範囲に限る。」これが1、であります。この問題については、法制局では、一般自動車道事業者が任意に選んで、事由のいかんを問わず、自動車の通行を拒絶するということになるから、平等取り扱いの原則に反する。従って、これはこういう限定はできない、限定免許はすべきではない、こういうことを回答しておりますね。これはいいのですが、問題は、第二の質問で、「当該自動車道を通行する自動車は、一般乗合旅客自動車運送事業の用に供される自動車については、特定の者何某の営む一般乗合旅客自動車運送事業の用に供される自動車範囲に限る。」という運輸省側の質問に対して、法制局では、「お尋ねの問題2、についてであるが、行政庁がお示しの限定をすることができるかどうかは、もっぱら、他の一般乗合旅客自動車運送事業を営む者にくらべ、当該特定一般乗合旅客自動車運送事業を営む者を有利に取り扱うについて合理的理由があるかどうかに係るものといってよいであろう。したがって、たとえば、当該一般自動車道の建設又は維持管理に対する当該特定一般乗合旅客自動車運送事業を営む者の寄与が顕著である場合等には、右の差別的取扱には合理的理由があるものといってよいであろうから、行政庁は、お示しの限定をすることができるが、このように合理的理由がない場合には、行政庁は、お示しの限定をすることができないものと解する。」こういう回答をいたしておりますが、御承知でしょうか。
  18. 山内一夫

    山内(一)政府委員 よく存じております。
  19. 板川正吾

    板川委員 そこで、この問題2、について質問したいのですが、これを簡単に言いますと、自動車道について特別の寄与が顕著なものは、その自動車道独占してよろしい、そういう限定をする免許をしてもよろしい、こういうことになりますね。この第二項では、合理的な理由があれば、そういうような一社のみその乗合バスを認める、他は認めないということができる。しかし合理的な理由というのは、自動車道に対して建設または維持管理に寄与が顕著であるかどうかということになっておる、こういう解釈ですね。
  20. 山内一夫

    山内(一)政府委員 一般自動車道でございますから、これは個々の自家用車と申しますか、そういった個々の自動車を通さなければならない、そういう意味での供用の義務があるということ、これは当然でございまするが、一般乗合旅客自動車運送事業というものだけを考えますと、今先生おっしゃったように、ここに一種の独占ができてくるということは否定できないだろうと思います。この私どもが回答いたしました線でもって、そういう限定免許一般乗合旅客自動車運送事業についていたしますれば、そこに一種の独占ができるということは、それは先生のおっしゃった通りだと存じます。
  21. 板川正吾

    板川委員 当該一般自動車道の建設または維持管理に寄与が顕著である場合は、こういう差別的な取り扱いをしても合理的な理由があるのだ、こういうのですが、建設または維持管理、こういうような解釈は、私は非常に合理性を持っていない、こう考えるのです。合理的な理由というならば、だれが見ても、それは通るべきではない、通させないということがわかるような状態でなければならぬと思うのです。たとえばこういう例があります。建設には寄与した、その建設のときには、砂利道か何か簡単な道であったが、道路を拡幅して舗装にした、それに非常に金がかかった、建設には寄与したが、今度は別に維持管理に対しては大きな寄与をしない、そのときは金がないからできなかった、こういうような場合に、建設に寄与したけれども、維持管理に顕著な寄与ができなかったものを差別ができるというように解釈するのですが、どうなのですか。具体的に例を言うと、一般自動車道を作った、そしてそこを通過するためにAとBと二つのバス会社があった。両方で建設には寄与した。しかしその後ずっとやっておるうちに、自動車が大きくなって道路を拡幅して近代的な舗装をした。そのためにはA社は非常に金を出したが、B社は金を出さない、そうすると今度はA社の方は維持管理に非常に寄与をしておるのだ、だからこれを優先的に通して、建設に寄与したが、あまり維持管理に寄与しなかったB社は差別をする、こういうような解釈も成り立ってくるんじゃないでしょうか。そういうことは合理的な解釈ではないように思うのですが、いかがですか。
  22. 山内一夫

    山内(一)政府委員 御質問の点でちょっと、はなはだ恐縮でございますが、こちらからお伺いしますが、今のA社、B社という設例で、そのA社、B社も当該自動車道につきまして、一般乗合旅客運送事業の路線の免許がある場合を御想定の上の御質問でいらっしゃいますでしょうか、初めから一つが路線の免許を持っている場合を御想定でいらっしゃるわけですか。その点御答弁申し上げる前に伺いたいと思います。
  23. 板川正吾

    板川委員 じゃその場合に、A社は路線権を持っておった、B社は持っていないとしましょう。しかしたとえば今度は乗合自動車免許を出した場合、これは運送事業法第六条の基準ですか、運輸大臣許可してもいいと思った場合には、自動車道業者のいかんにかかわらず許可できますね。その場合運輸大臣がその乗合バスをB社に路線を許可したとしても、一般自動車道事業者A社がそれは通さぬ、なぜなら維持管理に寄与しなかったから。この限定免許でそういうことになるんじゃないですか。
  24. 山内一夫

    山内(一)政府委員 もう一つその前に、B社がその自動車道の土地の所有権なり何なりに一つの権限と申しますか、それを持っておる場合と持っていない場合とでは、おのずから結論が違ってくるというふうに私は考えるわけです。一つの自動車道をA社とB社が持っていて、そしてその権限の上に基づいて自動車道免許があります場合には、そのA社とB社が自動車道免許を受けた主体になるわけでございますから、それはおそらく一つの共同免許という形になると思います。その場合には、A社だけで自分がもう一つ経営しているところのバスを通すという形での限定免許は、おそらくB社の反対があるからできないと思う。そのB社の反対といいますのは、その自動車道の所有権なり地上権なり借地権に対して一つの権限を持っている場合には、自動車道免許を受けても法律上の権限はございませんから、そこで話がまとまらないということに相なるのではないか。それから自動車道に全然権限を持っていない場合には、そのB社がかりに一般乗合自動車事業経営いたします場合には、その自動車道経営しているA社以外のB社、C社、D社、E社と同じような形で出てくるところの一般乗合旅客自動車事業者ということになりますから、そういった意味で限定免許がありますとB社は通れないということになると思います。
  25. 板川正吾

    板川委員 回答がぴんとこないのですが、もっと具体的にお伺いしますと、この雑誌によると、問題の箱根の紛争の路線の道路の敷地を見ますと、西武系が三二%敷地を所有しておる。それから国有地が四四%の割合である。東急系が一五%、その他が九%、こういうことになっておるそうです。それで、たとえば西武系の場合は国有地に次いで三二%持っておりますが、これは敷地だけですから、そのほか建設の費用、維持管理の費用といったら、これに相当金額がプラスされますから、この割合でということは私は言いませんが、しかしいずれにしろ、その自動車道東急系も、顕著な寄与でなくても、相当の寄与をしておりますね。こういう場合に——これはあとで運輸省に聞くのですが、最近限定免許の申請が出ており、法制局の解釈に従って場合によっては限定免許してもよろしい、その限定免許にするということは、西武系一社は乗合バスは通すが、他は通さないという、西武系に対する有利な限定免許をするという動きがあるように聞いておりますが、顕著だから、相当だからというようなことで、一社を独占させて他を排他的に認めない、こういうようなことになりますと、今度の法制局の解釈で、建設または維持管理にその乗合自動車業者が顕著に寄与したかどうかというような基準で、限定免許をするかしないかをきめることは、これはどうも合理的な理由じゃない。合理的な理由というのはまた別にあるのじゃないか。この法制局の解釈で、建設に寄与したか寄与しないか、顕著か顕著でないかということだけで、独占を認めるか認めないかをきめるのはおかしいじゃないかと思うのですが、どうですか。
  26. 田中武夫

    田中(武)委員 関連。ただいまの板川委員の質問に関連してお伺いいたしたいと思うのですが、先ほど法制局部長は、限定免許があれば特定事業者自動車を通さないことができる、こういう答弁だったと思うのです。要は道路運送法第四十七条三項の自動車範囲限定の解釈だと思うのです。この自動車範囲限定ということはどういうことなのか。自動車道路の公共性からかんがみまして、特定の人は通さないというようなことを含むのかどうか、そこに私は問題があると思うのです。範囲限定の解釈についてお伺いいたします。
  27. 山内一夫

    山内(一)政府委員 板川先生の御質問も、田中先生の関連も、結局同じ問題を御質問だと思うのですが、それを御説明する前に、道路運送法では自動車道をどう考えているかという点でございますが、一方において専用自動車道という一つの自動車道の形態があるわけでございます。それは非常に排他的な形でもって一つある。それからもう一つ、一般自動車道という形であるわけです。その専用自動車道という方は、非常に独占性の強い自動車道なわけなんですが、もう一つの一般自動車道という方は、無限定であるのと限定があるのと、こう二種類あるわけでございます。そこで限定免許をする場合、どういうふうに考えたら一番公共福祉に適合するかという点が、一番大きな基本的な問題になると思うのですが、私どもの頭にありますのは、たとえば具体的な例で、たしか和歌山県の白浜にずっと高い山がありまして、そこが専用自動車道になっておるというふうに、私そこを実地に見ておりませんからよく知りませんが、そういうふうに聞いております。そこはどうして専用自動車道になっているかと申しますと、その専用自動車道経営している会社が、もう一つ観光のバスを経営していまして、もしそれを一般自動車道に切りかえた場合には、ほかの観光バスもそこへ入ってくるという形になる。それがいやだというので、専用自動車道というものを維持したい。そのために、個々の自家用車なり、普通の個々のバス事業でないところの自動車もそこへ入ってこれない形になっておるわけです。そういたしますと、なるほどバス事業がそこへ入ってくるというのは、そこの専用自動車道経営者にとって非常に困ることになるかもしれないけれども——そこの専用自動車道経営しているところの会社も、一般の個々の自動車は入ってもらっても実は差しつかえないんだけれども、それをそういうふうにすれば、ほかのバスもそこへ入ってくるというような形になるので、そこの点が非常に困るのだという話を聞いたことはございますが、その場合に、そこの白浜なら白浜の山の専用自動車道をより公共的に使うためには、それを有限定自動車道に切りか、えることが、私どもは公共福祉に今の状態でもより適合するんじゃないか、こういう頭があるわけなんです。そういう意味で、そういう自動車道の建設に非常に寄与したものにとって、それだけの自動車道公共福祉に適合させるように使わせるというその制度としては、有限定のものが考えられるというふうに思います。  そこで田中先生のおっしゃるように、自動車範囲が何かと言われる場合に、一つの議論としては、自動車の種類だけでもって限定するんだという解釈はあるわけでございます。たとえば大型とか小型とかいう形でやる場合があると思うのですけれども、それ以外に、やはり自動車道の建設に寄与するという観点でもって限定するということも、公共福祉に適合するという意味では、そういう限定の仕方もあるんじゃないか、こう私どもは思うわけです。ですから、自動車範囲限定して行なうことができるということでは、自動車の種類だけでもって、それだけに着目して限定することに、そこは限られるんだという解釈は直ちに出てこない、経営主体との関連においても限定があり得るんじゃないか、こういうふうに思うわけです。で、それが当該の箱根の場合に——私は実は実態そのものはよく知りませんから、それが限定になり得るものかどうかということは、法制局としては具体的には申し上げられませんけれども、そういう場合があるということで、限定免許の性格を考えておるという点で御答弁申し上げたいと思うわけです。
  28. 田中武夫

    田中(武)委員 法制局は、法律の解釈はどんぴしゃり言ってもらったらいいんだ。つまらぬことを言わなくてもよろしい。四十七条の第三項の限定というのは、これは私は物理的性格だと思う。あなたの言われるように、主観的、経済的、社会的な面でなく、この限定という言葉を物理的だと解釈している。すなわち何尺、何メートル幅以上のもの、あるいは何トン以上のものはいけない。これは道路性質上等からくるものであって、三項はそういう主観的な点に対する意味を持っていないと思う。なぜならば、法律の解釈は第一条、いわゆる目的によってやらなくちゃならない。道路運送法の第一条には、読まなくてもおわかりのように、「適正な運営及び公正な競争を確保する」云々とある。これは、いわゆる道路というものの公共性から考えなくちゃならぬと思う。この第一条の目的から四十七条三項を見た場合、そういう解釈になって、私は経済的な競争者云々ということではなかろうと思うのです。その点の問題だと思うのですが、もう一度お伺いいたします。
  29. 山内一夫

    山内(一)政府委員 限定免許をする際に一条の目的がかかってくる、これは私もう当然だと思うのですが、一条の立場から見た場合に、公共福祉に適合するという場合が、必ずしも自動車の物理的な形態、種類ということでもってやるということにすぐはいかないと、私は思います。これは自動車道を作った場合のそこへ投下した資本が、やはりある程度採算のとれるように考えてやらないと工合が悪いと思うのですが、その場合に、バスをそこで自分が経営していくということによって、その自動車道とバスとを合わせた経営において、そこが採算がとれるという見通しがありますればこそ、自動車道の建設をよくし、あるいは維持管理をよくするという場面がどうしても残りますから、そういう面を着目いたしますと、そういう限定の仕方をすることが、やはり公共福祉に適合する場合があり得るというふうに、私どもは思っております。
  30. 板川正吾

    板川委員 自動車道路を建設して経営が成り立つか成り立たないかなんということは、これは法解釈じゃなくて、免許するときに運輸省が考えることですね。経営能力があるかどうか、それは道路運送法の六条の何項かにあるでしょう。この四十七条の三項は「自動車道事業免許は、通行する自動車範囲限定して行うことができる。」で、自動車範囲ですね。法制局の解釈によると、自動車範囲ではなくて自動車業者の範囲になるのじゃないですか。一社は認めて他は通さないというのは、自動車業者の範囲限定することに実質的になりませんか。この「自動車」を自動車を使う業者まで含むというような気持で拡大解釈するというのは、どうも事情に沿わないばかりでなくて、この三項の条文からいっても、そういう解釈は私は成り立たないと思う。たとえばこの「自動車」の解釈というのは、一般自動車道開設した目的に沿うかどうかというようなことが合理的な理由になるのじゃないか。たとえばここは観光地だ、観光、遊覧を主として通すために作った道路だ、ところがそこを何かの関係で大型トラックや何かがじゃんじゃん通る、それは近くて料金が安いということもあるでしょう。どんどん利用して観光の目的開設目的に沿わない。道路公団のような地方開発というような自動車道じゃなくて、たとえば観光地の場合にトラックや何か入ってきて、その観光事業自動車がそこで行なう目的を果たせないというようなときに、たとえばどこそこの会社はトラックはいけないとか、どこそこの一社のトラックだけは通っていいけれども、ほかは通さぬということではなくて、そういうような道路開設目的に反するような自動車の場合は、それを限定して通さないということができる、そういう免許ができるのではないか、こう考えるべきが正しいのじゃないか。自動車道事業に寄与した濃度によって限定範囲をきめるというのはどうもおかしいし、この条文からいっても通行する自動車範囲ですよ。そうして第一条はただいま田中委員も言ったように、できるだけ競争を確保しろというのではないですか。道路運送法の第一条は御承知のように、「道路運送の総合的な発達を図り、もって公共福祉を増進することを目的とする。」の前に「適正な運営及び公正な競争を確保するとともに、」こういっております。そういう意味で、適正な競争を確保してその公共福祉に沿えということなんですが、そういうような考え方からいうと、ある一社は自動車道の建設、維持管理に寄与したから通して、他は排除してよろしいという意味の限定と解するのはおかしいのじゃないか。通行する自動車範囲で、業者を区分しろというのではないですから、その解釈はおかしいのじゃないですか。
  31. 田中武夫

    田中(武)委員 同じところですから固めて申し上げます。四十七条は一般自動車道路についての問題でしょう。専用自動車道路ではないでしょう。それが一つ。それから道路運送法第一条でいう公正な競争の確保、これと同じ文句が独禁法第一条にあるが、これの相違、及びあなたは今、そういうことに寄与した者だけを通す、これも公共福祉から見て云々と言われたが、あなたの言われる公共福祉とは、特定業者の利益だということです。それが公共福祉に合致するものかどうか。さらに限定特定との違い、これだけお願いします。これは法律的なことを法制局、それから独禁法との解釈の問題については公取、それから実際行政的に四十七条三項をどう運用せられるかについては梶本部長に、それぞれ御答弁願います。
  32. 山内一夫

    山内(一)政府委員 私の申し上げるのは、特定の業者に独占的な利益を与えるために限定をするというのではなくて、そういうふうに限定をしないと自動車道ができないという意味で、限定する場合があり得るだろうということを申し上げたわけです。特に独占的利益を与えるがために限定するというのは、私は限定の乱用というふうに思うのであります。ただ実情によっては、限定をしなければそこに自動車道ができないという場合もあり得るのではないかと思うので、そういう解釈をしたのであります。  それから「自動車」の範囲は、法制局の解釈では人に限ってやるのではないか、こういう最初の御質問があるわけですが、それは言葉の問題になりますけれども、やはり何某の自動車は通れる、それ以外の自動車は通れないというのは、言葉だけの意味からは自動車範囲に入ると思うのです。言葉だけをとらえて申し上げるのははなはだ恐縮でありますが、それが結局において道路運送法の考え方の公共福祉に適合することがあり得るといたしますれば、そういう限定も許される場合があるのではないか、それも全部が全部しなければいかぬというふうに申し上げているのではなくて、そういう場合も法文解釈として容認されてもしかるべきではないか、こういう意味で申し上げたつもりであります。
  33. 坂根哲夫

    坂根政府委員 本法に対する田中先生の御質問は、公正な競争が道路運送法独禁法では違うかということだろうと思いますが、私は言葉の解釈からいえば異なるわけはない、こう考えております。
  34. 梶本保邦

    ○梶本説明員 四十七条の三項をめぐって本来いろいろ意見があるわけで、運輸省として結局限定免許ができるかどうかということを、法制局にお伺いしました御回答が、先ほどお示しのようなことになっているわけでございます。建設とか維持管理とかいうことがここに書いてございますが、「寄与が顕著である場合等」と等という言葉もあるわけで、運輸省としましてはただいまの見解は、現在の段階におきましては合理的理由があるかどうかということを、一つの免許の基準に考えるべきである、かように考えております。その合理的理由というのは、一部の人が見て合理的理由というのではなくて、世間のどなたがごらんになっても合理的理由があって初めて免許の基準になるものだ、かように考えております。従ってここに建設とか維持管理とかいう言葉が書いてございますけれども、これは一つの合理的理由の大きな要素ではございますが、これだけが即合理的理由ではない、ここに「等」という言葉がございますので、運輸省としてはさように考えております。従って合理的理由をどこに見出すかということを、ただいま運輸省としまして審議しておる段階でございます。
  35. 田中武夫

    田中(武)委員 梶本部長にもう一つだけ。合理的理由、けっこうな言葉だと思うのですが、これの解釈に当たっては、道路という公益性の強い公共性のものから申して、この公共福祉というものと合理性というものは一致しなければいけないと思うのですが、その点いかがですか。
  36. 梶本保邦

    ○梶本説明員 全くお説の通りでございます。
  37. 板川正吾

    板川委員 梶本さんにお伺いするのですが、運輸省では、合理的理由があれば限定することができると四十七条三項にあるから、合理的理由がなくちゃならぬだろう、この合理的理由は第一条の精神を受け継ぐ、これはわかりますが、具体的にはどうかということがわからなくて、法制局意見を求めたのじゃないですか。その結果法制局では、ごらんのような、なるほど合理的理由の一つとして、たとえばといって一例をあげておる。こういうことになっておって、運輸省は今研究中といいますが、研究のもとは法制局意見回答、これが基礎になっているのじゃないかと思うから特に問題にしておるのです。  そこで法制局にお伺いしたいのですが、先ほどお話を伺っておると、これから自動車道を作る、たとえばバス会社が主として作る、建設費用もかかる、最初は採算がとれるかどうかわからぬ、だからある程度自動車道建設に寄与するであろう会社に、優先的に認めて、それを保護する意味から他は認めないという限定も、これから考えてもいいじゃないか、法制局の考え方は主としてそういう思想だ、こういう意味のことをおっしゃられておるようですが、そういうことでしょうか。
  38. 山内一夫

    山内(一)政府委員 最初に建設のときがやはり何といっても一番大きな問題になるのですが、ただしいて申し上げれば、一度免許を受けた場合でも、一応そこに自動車道がある場合でも、さらに拡幅するとか、自動車道の中身をよくするとかいう場合もあるように思いましたので、そういう場合も維持管理というような考え方で含めたわけですが、やはり建設をするというそのスタートが大もとだろうと思うわけです。法制局といたしましては、限定免許をせっせとやることが公共福祉に適合すると考えているわけじゃ決してなくて、そういうふうに限定をしなければ困る場合も運輸省としてはおありではないか、運輸省と申しますか、法の解釈としては困る場合もあるじゃないかという意味で申し上げましたので、合理的理由があれば必ず限定をした方がいいというふうな——これは政策論になりますから私の言うべき筋合いじゃございませんけれども、釈明のために申し上げますれば、気持としてはそういうような気持でおるわけでございます。
  39. 板川正吾

    板川委員 運輸省にお伺いしたいのですが、昨年の末に一般乗合自動車道を一社だけに限るという限定免許をしたそうでありますが、これはどことどこをしたのですか。それから、どういう根拠に基づいて、昨年十二月二十九日ですか、やったのですか、その間の事情をお伺いしたい。
  40. 梶本保邦

    ○梶本説明員 ただいま限定免許を申請しておりますものが六つございます。八つあったのでございますが、今お話しのようにその八つのうちの二つが、昨年の十二月末に限定免許になっております。一つは高知県交通の場合でございまして、高知市の桂浜における長さ六百メートルの道路でございます。それからもう一つは箱根の伊豆箱根鉄道が申請いたしましたもので、芦之湯から蛸川まで六キロ五百にわたる路線でございます。高知県交通の方は一度高松の陸運局長の方で問題になりました供用約款認可いたしたのでございますが、それを会社の方から取り下げて新しく限定免許の申請をやった、こういういきさつになっております。それから伊豆箱根の方は、まだ供用を開始いたしておりませんでした。これから供用開始するという段階でございました。これは芦之湯から御承知の駒が岳の方へ入って、ぐるっと回る路線でありまして、ここは幹線道路にもなっておりませんし、駒が岳のロープ・ウエーを伊豆箱根の系統で経営しておられるとか、いろいろとその土地の事情もございまして、これから供用を開始されるというふうな状況でございましたので、限定免許いたしたわけでございます。その他箱根地区において問題になっております路線とは別の問題だ、かように考えて、切り離して限定免許をいたしたのでございます。
  41. 板川正吾

    板川委員 箱根の場合をちょっとお伺いしますが、特定某社を限定免許した基準というのは、この法制局の解釈に従ってでしょうか。
  42. 梶本保邦

    ○梶本説明員 さようでございます。
  43. 板川正吾

    板川委員 私はこういう問題のある点を、何もそうあわてて限定免許しなくてもいいのじゃないか、こう考えておったのです。たとえばよその会社がそこに乗合自動車の路線を申請しましても、御承知のように道路運送法第六条に免許基準として、運輸大臣は当該事業の開始が輸送需要に適切なものであるかどうかということで、これは適切でなければ許可しなくてもいいのです。今それぞれバス業者が路線を張っていますけれども、よその会社の路線に申請しない、それは輸送需要と見合って適切でないから許可しない、だから駒ガ岳のそこへ一業者に限ってあわてて限定免許しなくても、運輸省は他から申請が出た場合に路線の許可をしなければいいのですから、そうあわててやる必要はなかったのじゃないかと思っているのです。これは私の考えですから回答はいいとして、次にお伺いしたいのですが、一般自動車道のすでに免許を受けているものが、新たに限定免許の申請をしている、こういうことを聞いておりますが、そういう事実がありますか。
  44. 梶本保邦

    ○梶本説明員 先生は道路運送法の六条とおっしゃいましたが、自動車道の場合の免許基準は四十九条になっております。これが自動車道自体の免許の基準になりますので……。
  45. 板川正吾

    板川委員 それはそうなんですが、しかし自動車道事業として限定免許しなくても、よその会社がそこへ路線を延長するか申請しても、乗合路線の許可をしないということが第六条の方でできるじゃないか。だからあわてて限定免許しなくても、その一業者の独占は当分できるんじゃないか、こう言っただけで、これは私の意見で質問でないからいい、こう言ったわけです。  その次の、すでに一般自動車道の、限定してない普通の免許を受けているものが、法制局の解釈が出てから、これはうまい解釈が出たということで、普通の無限定免許限定免許に切りかえる、独占しようということで限定免許に切りかえる、その免許申請が出ておると聞きますが、その事実はございますか。
  46. 梶本保邦

    ○梶本説明員 ただいまお話しの通り一般自動車道であったものが、新しく限定免許に切りかえるという申請が、ただいま運輸省の方へ出ております。  それから私先ほど少し言葉が足りなかったのでございますが、伊豆箱根鉄道の芦之湯—蛸川間の六キロ五百メートルの路線でございますが、供用開始していない、これは事実でございますけれども、私道であったわけでございます。私道であったものを私道のまま置いておくよりも、限定免許でもいい、そういうふうな形態をとった方が、より公共福祉に合するというので申請が出て参りましたので、その点をつけ加えさせていただきます。
  47. 板川正吾

    板川委員 運輸省の梶本さんにお伺いをするのですが、すでに無限定自動車道許可を受けておった、ところが今度は法制局のこういう解釈が出たから限定免許に切りかえよう、そうして排他的な、路線を独占しよう、こういう気持で限定免許に切りかえようということで申請が出ておると思うのです。しかしこの免許をかえる場合には、私は一たんすでにとっておる免許を廃止して新たに出すべきであるのではないか、手続的に。その手続というのは道路運送法の中には私はないと思うのです。道路運送法の中にあるのは、たとえば自動車道事業者事業計画の変更をする場合には法第六十六条、供用約款の変更については法第六十二条第一項後段ということで規定がございますが、無限定免許を受けておるのを、今度は有限の限定免許に切りかえようという手続は、法の中にはないと思うのです。だからこの場合は、一般に行なわれているように、手続的には一たんやめて新しく出す、こういう手続をとらなくてはならないのではないか。しかし実態が少しもかわらないのに、そういう手続をするということもまた私はどうかと思いますが、手続の問題を、ちょっとお伺いしたいのです。
  48. 梶本保邦

    ○梶本説明員 お説の通り、ただいまの道路運送法にはそういった手続規定はございません。ございませんが、高知県交通を限定免許いたしました場合は、今先生のお話のように、一般自動車道を廃止して同日付をもって限定免許認可したというふうな形態をとったわけでございますが、われわれとしては、それ以外に方法がないと思いましたので、そういう方法をとったのでございまして、道路運送法そのものには手続規定はございません。
  49. 板川正吾

    板川委員 有限に切りかえようということで申請を出しておる。しかしその場合は、一たん廃止して新たな申請によるほかないと思う。その場合には、特に新しくできたとか、歴史が浅い、影響が少ないという場合は、まあまあ今言ったようなそういう措置も、公共福祉に反しないということになるかもしれませんが、しかし長年やっておるところで、実質的に、廃止してすぐ限定免許にする、形態は少しもかわらない。しかもそこの手続を経て、残るものは、一社が独占して他社を排除する、こういう形になることは私は道路運送法の第一条の精神、同時に、公正取引立場から、独禁法の精神からいっても、そういうことは違法じゃないかと思う。たとえば箱根等のごとく何十年もやっているところを、きょう廃止して同日付で限定免許にするということは、どうも独禁法の精神からいっても、この道路運送法の精神からいっても反するのじゃないかと思うのですが、いかがですか。これは公取の意見を同時に伺いたい。
  50. 坂根哲夫

    坂根政府委員 ただいまの御質問は、そういう合理的な理由がなくして、道路運送法の第一条の精神を越えてそういう限定免許をされて、独占的な弊害が出るということになれば、法律違反は別として、問題は相当あり得ることは事実だろうと思います。
  51. 梶本保邦

    ○梶本説明員 ただいまお話のように必ずしも違法ではないと私は思います。しかし社会的に見た場合には必ずしも妥当でないということが言えるのではなかろうかと思います。従って、運輸省といたしましては、先ほど申し上げましたようにそういったことをする合理的な理由があるかどうかということを、ただいま検討いたしている、そういう段階でございます。
  52. 板川正吾

    板川委員 この問題は社会的にも非常に注目されております。法律的には何か今係争中だそうでありますから、裁判の結果がどう出るかしれませんが、私も大してその問題は研究しているわけではないのですが、自動車道のように公共性を持つものを、何かだれも納得するような理由をつけないで、一社が独占するという形はどうも好ましくない、こういう考え方を持っている。憲法あるいは独禁法道路運送法等の違反の疑いがあるような問題については、私は当局の慎重な扱い方を要望したいと思います。将来、場合によっては公正取引委員会独禁法立場から、この問題を調査していただきたい、こういうことを私は要望いたしまして質問を一応終わります。
  53. 田中武夫

    田中(武)委員 実は私も板川委員に引き続きまして、当問題について運輸当局、それから法制局、公取の意見をただしたいと考えておりましたが、法制局運輸委員会の方に呼ばれたので、三人そろわないと十分な質疑ができませんから、私の質問は保留しておきたいと思います。しかしながらここで申し上げておきたいことは、国立公園である箱根が一部の人たちのために独占化せられようとする傾向があるということは大きな問題であります。  そこで、公正取引委員会は、この種の問題につきまして、先ほど板川君が明らかにいたしましたように、道路運送法四十七条の限定許可、このことがやはり独禁法との関係もあるということも明らかでありますから、そういう点で一応調査をしていただきたい。調査の結果を、われわれにしかるべき機会に一応聞かしていただきたいと思っております。たとえば、この問題につきまして、西武が何か小田急の株を買い占めているというようなことも聞いております。かつて三十二年七月一応そういう問題がありまして、宮澤運輸大臣が仲に入って小田急側が申請している早雲線というのですか、あれを取り下げることで話がついたとかいうこともある。このこと自体はすでに独禁法において禁ずるところであろうと思います。その形式はどうか知りません。いろいろこういう問題がありますので、調査を願いたいと思います。  なお、梶本部長には、先ほど御答弁がありまして私はそれで了解したのですが、いわゆる合理的理由と公共福祉、この上に立って、一つ誤りのないような行政的措置を講ぜられんことを望んでおきます。それでこの問題についていろいろと法律的に疑問の点が、ことに法制局の解釈に対してありますが、それはきょうは保留しておきます。     —————————————
  54. 中村幸八

    中村委員長 次は、弁理士法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  前回に引き続き、質疑を続行いたします。田中武夫君。
  55. 田中武夫

    田中(武)委員 弁理士法改正法につきまして、若干の質問をいたしたいと思います。  まずその前にお伺いしておきたいことは、昨年三十一国会におきまして、特許関係の十法案ですか、改正になりました。そのうち手数料の値上げはもう四月に入ったから、多分実施になっておると思うのですが、その改正に伴う、当時問題になりました特許庁の内部の陣容の強化、そういうことについて受け入れ態勢ということは十分進んでおるか、及び改正の結果、あるいは料金値上げの結果等はどういうことになっておるか、時間がありませんから簡単でけっこうですから、ちょっと概況を説明していただきたい。
  56. 井上尚一

    ○井上政府委員 予算の点につきましては、前年度に比べまして約三割三分の歳出の増加ということに相なったわけでございまして、人員につきましても九十名の増員、こういうふうにしまして、人的、物的の特許行政の強化に、この際一歩前進することができたわけでございます。
  57. 田中武夫

    田中(武)委員 弁理士法の三条一号ですか、また弁護士法の三条二項、これによりまして、弁護士は当然に弁理士の事務ができる、こういうことになっております。同時に弁護士は同じく弁護士法と税理士法とによって税理士の業務をできることになっておる。ところが、税理士法によりますと、弁護士が税理士の仕事をする場合には、所属弁護士会を経由して国税局長に通知をするということが税理士法の五十一条にあります。ところが、弁護士が弁理士の仕事をする場合には、何らの手続ということが規定してない。法律を変えれば当然仕事ができるんだから、それでいい、こういう解釈も成り立ちますが、それなら一方当然にできる税理士法の方には、今申しましたように、手続があります。弁理士法においても、弁護士が弁理士の仕事をする場合の何らかの手続等が必要ではなかろうかと思いますが、いかがですか。
  58. 井上尚一

    ○井上政府委員 弁護士法第三条第二項の規定によりまして、弁護士が当然弁理士の事務を行なうことができるということになっておりますことは、ただいま御指摘の通りでございます。今日の実情としましては、弁理士としての登録を受けて弁理士業務をやっている弁理士もございまするし、また弁理士としての登録を受けないで、当然に、というこの規定関係上、弁理士業務をやっている弁護士もあるような実情でございます。弁護士と弁理士との業務の分野の調整につきましてはこのほかにもいろいろ重要な問題があるわけでございますので、実は弁理士制度のあり方をどうするかという問題が根本的に他方ございまするので、そういう弁理士制度のあり方、すなわち弁理士を専門的に分化していく方がいいかどうか、試験制度は今日のままでよいかどうかというような問題をも包含しまして、ただいま御指摘の弁護士と弁理士との業務調整、特に弁理士業務を行なう弁護士に対しましての通産大臣の監督関係をどうするかというような問題につきましては、今後なお関係方面あるいは学識経験者の人の意見も十分聞きまして、また外国の立法例等をも参考にして十分慎重に研究したい、かように考えておる次第でございまして、今回の法律改正ではさしあたって当面急を要する問題だけに限定しました次第でございます。
  59. 田中武夫

    田中(武)委員 私の申し上げているのは、弁護士法第三条二項ですか、によって「弁護士は、当然弁理士及び税理士の事務を行うことができる。」ことになっておる。ところが税理士法の方には弁護士が税理士の業務を行なう場合には、所属弁護士会を経由して国税局長に通知をするという手続があるわけです。今の御答弁によると、弁理士の仕事をする場合に、登録を受けている者といない者があるというならば、監督という言葉はどうかと思いますが、処理上登録を受けていない人が弁理士の仕事をやる場合に、そこに何か支障が起こるのではないか、従って何らかの規定を当然弁理士法に設けるべきではなかろうか、こういうことなんです。
  60. 井上尚一

    ○井上政府委員 ただいまの御意見につきましては、われわれも同様に考えておるようなわけでございます。すなわち弁理士業務を行なう範囲内におきましては、弁護士について指導監督という関係から必要な規定弁理士法中に設けたい、かように考えておるわけでございますが、この問題につきましては先ほど申しました他方大きないろいろ関連しました問題があるわけでございますので、そういう問題と同時に包括的に今後慎重に考えて参りたい、かように考えております。
  61. 田中武夫

    田中(武)委員 実は時間がないので簡単にやってのけたいと思います。そういう点も考えておる、こういうことですから、私はこの際入れたらいいじゃないか、登録も受けなければならぬじゃないかというような意見ですが、それは考えておるということですから、そうしておきましょう。また私は試験制度について、いわゆる司法試験と弁理士試験、税理士試験等の必須科目の問題等についても、当然弁護士が弁理士及び税理士の仕事をするということであるならば、試験科目を考える必要がある、検討する必要がある、この点も申し上げたいと思っておったが、長官はさきに試験制度云々と言われたから、それも考えておるということならば深くは申しません。たとえば弁理士が法第九条の二ですか、によって一部訴訟上の仕事ができることになっておりますね。そういうような関係を見ました場合に、弁理士にも訴訟法を覚えさせておく必要がある、また一方弁護士にも工業所有権の法について知識を持たす必要がある、こういうことを言いたかったのですが、検討したい、こういう考えですから、おいておきましょう。  次に報酬ですが、弁護士の場合は報酬という言葉が使ってあります。そうしてそれをきめる場合は弁護士会がその準則を連合会の承認を得て設けることになっておる。ところが弁理士法におきましてはいわゆる謝金、手数料という言葉が使ってあって、これは通産大臣認可を得てきめるということになっておる。この報酬という言葉と謝金、手数料という言葉はどんなに違うのですか、及び弁理士、弁護士ともに同じような自由業であるならば、そういうきめ方も一定にする必要があると思うのですが、その点いかがですか。
  62. 井上尚一

    ○井上政府委員 謝金、手数料という言葉は、大体報酬と同様な意味であるというふうに、われわれは考えておるようなわけでございます。  なお、弁理士の報酬につきましては、弁理士会の会則にその規定を設けることになっており、会則につきましては、通産大臣認可を要するということでございますが、実は報酬の標準額は総会においてきめるという会則を、通産大臣認可しておるという実情でございますので、実質的には総会でこの報酬の標準額というものが、現在は自主的にきめられていくという実情でございます。
  63. 田中武夫

    田中(武)委員 私は、時間の関係上問題点だけを申し上げて、きょうは終わりたいと思っていますが、仕事の高度とか複雑とかいうことの若干の差はあるとしても、大体同じような仕事のものとして、弁護士、弁理士、公認会計士、税理士、司法書士というようなものがあげられると思うのです。それぞれの報酬あるいは手数料等のきめ方は、同じような基準といいますか、手続に考えるべきではなかろうか。この解釈を今総会できめるということになっておるが、その会則は通産大臣認可ということであるので、弁護士の場合には自主的にきめられるが、弁理士の場合にはやはり通産大臣認可という事項の中に入るのではなかろうかという解釈をしておったのですが、そうすると、弁護士、弁理士の間に違いが出てくる。報酬という言葉と謝金、手数料は同じだ、こういうように言われたが、私は名前が違う限り、一方は謝金、手数料、一方は報酬とうたっておる点は、若干違う解釈が出てくると思う。  それから、もう一つ問題になってくるのは、それでは弁護士が特許事務をやった場合、逆に弁理士が訴訟事務を九条の二によってやった場合、その手数料あるいは報酬は、弁護士の方の基準によるのか、あるいは弁護士がやったときにも弁理士の方の基準によるのか、そういう点は今どうなっていますか。
  64. 井上尚一

    ○井上政府委員 弁理士の報酬という問題について、そしてまたその名称、きめ方につきましては、御意見通り、弁護士、税理士、あるいは公認会計士というような同種の業務等との関係をも十分考慮しまして、今後全面改正の場合に慎重に考えて参りたいと思っております。  それから、なお、ただいま弁理士法九条の二で、訴訟代理人としてやった場合のその弁理士の報酬につきましては、これはやはり弁理士会の会則できめられた報酬額によっている、かように考えております。
  65. 田中武夫

    田中(武)委員 弁護士が特許事務をやった場合は……。
  66. 井上尚一

    ○井上政府委員 現在としましては、弁護士としてやった場合は、やはり同様に弁護士の報酬の標準額によっているというような実情でございます。
  67. 田中武夫

    田中(武)委員 それは弁護士と弁理士という資格の上に立っての相違、だから、同じことをやっても報酬、手数料、謝金が違う、こういう考え方も出てくるが、一方、同じ仕事を弁護士、弁理士がやるわけです。ところが、結果的には報酬、謝礼は、一方は弁護士会の会則によってもらい、一方は弁理士会の会則によって取るという違いが出てくるわけです。そういう点についても検討の必要があろうと思っておりますが、どうでしょうか。
  68. 井上尚一

    ○井上政府委員 両者の調整という問題は、われわれとしましても十分な関心を持って検討して参りたいと思っております。
  69. 田中武夫

    田中(武)委員 私は質問ではなしに、問題点をあげるというだけで早く済ましたいと思いますが、井上長官はだいぶ助かったと思います。  次にお伺いしたいのは、弁理士が、法律で言うなら謝金、手数料を不当に請求するという事態、そういうことについて長官は御存じか。たとえば、特許は一つの工程のうちの一部分なんです。これに対して特許をとる。だから、一件で済むのを数件に分けて申請をして、数件の手数料を取るという事態もあるそうです。こういう点につきましてはどのような指導をしておられますか。あるいはそういう事実についてはどうですか。
  70. 井上尚一

    ○井上政府委員 工業所有権の新法の施行に、すでに入ったわけでありますが、旧法時代におきましては、一発明一出願主義というつわけで、一件の中に数個の発明を包含しているというような場合に、その発明ごとに出願書類を作るということが非常に多かったわけでございます。そういった関係上、ただいま御指摘のように、依頼人の意向とは食い違いまして、数個の出願書類として出さざるを得ないというような事態もあったかと存じますが、新法の実施に入った後にはそういった問題は、もうないということになろうかと存じます。なお、次の問題としまして、出願の内容としまして特許請求範囲という問題がございますが、大きく請求範囲を記載しますと、既存の事実に抵触する危険が多いですから、そういう関係から、なるべく特許請求範囲限定して狭く書いた方が特許になる可能性が大きい。そういうわけで、A・Bというような違ったアイデアが二つ入っておるような事実について、発明について、弁理士がそういう場合の扱い方の問題としまして、AとBとを区分して、しかも、その請求範囲を明確に限定した方が特許になると考えた場合には、やはり本人と協議の上あるいは本人の希望によって、これを分割するというような場合もあろうかと存じます。が、次の問題としまして、御指摘のように、弁理士が本人の意向、希望というようなものとは無関係に、必要以上にそれを分割して出願手続をするというようなこともないではないと存じます。まあそういうようなケースにつきましては、やはり弁理士会の自主的な規律の保持といいますか、品位の向上の問題でございます。もちろん、通産大臣、特許庁の長官としまして、一般的に弁理士会に対する監督、指導ということにも十分万全を期して参りたいと思いますが、そういうような具体的ケースにつきましては、弁理士会としましての自主的な規律ということで十分防止して参りたいと考えております。
  71. 田中武夫

    田中(武)委員 おっしゃるように、旧法時代において法律上、手続上分ける必要があった場合もあろうかと思いますが、それを悪用いたしまして、依頼者の意に反して数個に分ける、そうして数件分の手数料を請求したという事実は幾らもあります。こういう問題につきまして、特許庁といたしましては十分調べていただきたい。新法によればそういうおそれがないというのですが、そういった手数料、謝金の問題で不当な請求をしている事実がいろいろあります。きょうは申し上げません。ないというのならば事実を示してあなたに迫まる必要がありますが、きょうはその程度にしておきましょう。  次に、弁護士の報酬の場合、勝訴の場合は訴訟金額の幾ら、敗訴の場合は訴訟金額の幾らというように、勝訴と敗訴によって報酬が違っております。同じように、弁理士の謝金、手数料においても、まず謝金のことだと思うのですが、特許が認められた場合とそうでなかった場合とによって異なった謝金の制度があるのですか。どうですか。
  72. 井上尚一

    ○井上政府委員 現在の実際の運用の方法としましては、手数料を最初にとって、権利になった後には謝金として別にまたこれを要求するという運用の実情でございます。
  73. 田中武夫

    田中(武)委員 弁護士の場合は、訴訟係属中における弁護士の理論展開、あるいは訴訟技術というような問題が勝訴に導くという要因をなしておるわけです。従って、勝訴の場合はそれに当たるべき多くの報酬を取る。敗訴の場合はそれを取らない。これは一応わかる。だが弁理士の場合は、書類を整えて出せば、それから先は全部あなた方の方においてやられるのでしょう。その弁理士のテクニックが権利を認める認めないの上において大きな差異がありますが、もしあるとすれば、そこは問題になる。ないのが当然だと思います。それならば、権利が認められたときにはこう、認められぬときにはこうというような置き方は、私は疑問があると思うのですが、いかがですか。
  74. 井上尚一

    ○井上政府委員 弁理士業務と弁護士業務という問題につきまして、ただいま御指摘のように、その性質、性格が違うという点につきましては、私も同感でございますが、この問題につきまして、実は特許庁と弁理士会当局といろいろ議論をしたこともあった次第でございますが、大体考えとしましては、われわれとしましても、こういうふうに考えているわけでございます。すなわち、一応二段階に分ける形にはなっておりますけれども、実質的には、弁理士の場合には、出願を扱うという最初のときに、一括して本来ちょうだいすべき手数料である。しかしながら、特許出願等の場合に、拒絶になりましたりあるいは取り下げになって、結局終局的にはそれが権利にならないという場合には、あまりにも出願人に対する負担が大き過ぎる、そういう意味がら、イニシアル・コストと申しますか、当初の出願時におきましての出願人の経済的な負担を、できるだけ軽減したいという意味で、さしあたって内金と申しますと語弊がございますが、そういうような意味合いで、最初部分的にもらって、そして権利になった場合に、これに追加してもらうと申しますか、ですから、観念としましては、本来一括して要求すべき手数料を、そういう出願人の経済的な負担ということを考慮して、一応二段階に分けていく、こういうふうにわれわれは考えているわけでございます。  しかしながら、また他方別の問題としまして、弁理士を介して出願をやった方が、請求範囲の記載の方法、仕方、あるいは審査の途中での訂正、補充の加え方、そういうような点で、一般人が出願します場合に比べて、弁理士を通した方が、従来の長年の知識、経験の利用によって、特許になる可能性が大きい、成功率が高いということは、実際問題として言い得る点であろうかと存じます。
  75. 田中武夫

    田中(武)委員 その名の通り、弁理士を通した方が便利であるということは言える。しかし、弁理士のテクニックによって特許がきまるとかきまらぬとかいうようなことがあるとすれば、それは重大な問題だと思うのです。もちろん訂正その他がスムーズに行なわれるという点においては認めます。しかしそれは期日の問題であって、そのこと自体が権利の設定に対して左右するというようなことであるなら、私は特許庁自体の業務を疑う。従って、こういう謝金の取り方は誤りであると私は思っています。これは手数料、謝金と分けているのは、そういう意味だと思うのですが、むしろ弁理士の仕事は、手数料が重点だと思うのです。やる仕事は、それは若干の高度の違いはあると思いますが、司法書士的な書類を書いて出願するという、この範囲だと思うのです。弁護士のように、理論展開をやるとか、あるいは訴訟技術によって云々するというような性格のものでないと思います。この点は検討する必要があると思いますが、いかがですか。
  76. 井上尚一

    ○井上政府委員 先刻申しましたように、また御意見のように、本来特許の場合には、出願時においてそれが新規の発明であるという場合には、客観的にそこに特許性といいますか、特許になるべき運命がもうきまっているということが申せようかと存じます。そういう点で、弁理士の扱う業務と弁護士の場合とは、全然性格が違うという点は全く御意見通りでございます。しかしながら、実際問題としまして、同じアイデアにつきましても、その範囲をどう独占権としましての特許権の請求の範囲として書くか、きめて出すかというところは、これはやはりテクニックの問題でございまして、その請求範囲が大き過ぎますと、これはいわゆる既存の技術に抵触して、新規性がないということで、権利にはならないし、また小さく書き過ぎますと、これは権利にはなっても、その権利の内容が小さいということになるわけでございまして、結局弁理士としましては、大き過ぎず、また同時に小さきに失せずと申しますか、そういうふうに適確にその発明内容を具体的に出願書類に記載していくというところは、やはり弁理士の業務の本来の中心であろうかと思うわけでございます。そういう点から、実際上弁理士を通した方が成功率が大きいということは、繰り返して申す通りでございますが、先ほど申しましたように、いわゆる出願時においてその発明が新規性を持っているという場合には、客観的にそれは特許になるという運命は、もうきまっているわけでございます。
  77. 田中武夫

    田中(武)委員 弁理士の手数料、謝金についての規定を資料として出して下さい。これは全国一本でしょう。
  78. 井上尚一

    ○井上政府委員 全国一本でございます。提出いたします。
  79. 田中武夫

    田中(武)委員 それではそれを一つ出して下さい。  なお、先ほど来言っておりますように、弁理士の謝金の請求の方法及び弁護士と弁理士との業務の限界並びに弁護士が弁理士の仕事をした場合、先ほど申したような点、あるいは今私が申しておるところのこの謝金のきめ方等については、疑問を残します。  そこで、必要であるならば、日本弁護士会連合会長と弁理士会会長を参考人に呼んで、いろいろそういう点をただしたいと思っておりますが、これはあとのことにして、この改正について、そういうことをしておくらそうと思っておりませんから、その点は一つの研究課題として残しておきましょう。そして改正内容に入りたいと思います。  今度の改正の第一点は、いわゆる弁理士資格の特例の点でございますが、今までの高等官が二年というのが、いわゆる高等官はなくなったから、審査官七年ということになったという改正ですが、この七年というきめ方、これにはいろいろといきさつがあったように聞いております。妥協の結果であったとも聞いておりますが、法を制定する場合に、弁理士会が反対だったからこうだのというようなことで、三年が五年になったり、五年が七年になったりするようなことは許されないと思う。この法の改正にあたっては、改正前と改正後、すなわち戦前と今日の公務員における制度、これとにらみ合わせて、戦前戦後において損をしないといいますか、比較をした場合に大きな差があってはならないと思います。そこで、かりに大学を卒業し、戦前におきましてそれが高等官になり、二年たって特例による弁理士になり得る資格を得る期間と、今度の改正によって、大学を出てそして審査官になり、七年を経て特例の資格を得る期間との間においては、どうしても数年の差ができているように私は思います。そこで、戦前戦後の比較並びにたとえば弁護士法におきましても、その五条二号によりまして特例が設けてあります。しかしそれは五年ということになっております。そういう弁理士法及び弁護士法との関連等々について、この七年というものにつきましてはどのようにお考えになりますか。
  80. 井上尚一

    ○井上政府委員 現行法では、高等官に在職して二年審査、審判の事務に従事するということになっておるわけであります。従来高等官になるに要する期間は、その時代、時代によっていろいろ変遷があったかと存じますが、大体三年ないし五年というふうに考えてよいかと思います。そうしますと、結局弁理士になり得る期間は五年、六年、七年という期間になろうかと思います。今回の法律改正案としましては、われわれは七年を考えたわけでございます。これも普通の大学卒業の場合、修士の場合は違いますけれども、大体四年ないし五年と考えているわけでございます。そうしますと十一年ないし十二年というわけで、従来よりこの弁理士になり得る資格獲得に要する期間はだいぶ延びているわけでございます。しかしながら他方におきまして、実は一般社会情勢というものもだんだん変わって参りましたし、またこういうふうな資格の特例という問題も、一般的にいいますれば、だんだん特例が圧縮されておるというのが一般の傾向でございます。先ほど御指摘のように、この案を立案しました当時、実は特許庁としましては、審査官、審判官として五年ということで案を作ったわけでございますが、弁理士会方面ではこれに対しまして、当初そういう資格の特例を続けること自体について反対の意見があったわけでありますが、いろいろ協議を続けました結果、結局弁理士会方面としましても十年ならばよいという結論になりまして、特許庁は五年、弁理士会は十年という意見対立の状態がしばらく続いた次第でございます。われわれとしましては、国会になるべくすみやかに提案したいということも考え、また同時にこれは弁理士に関する法律案でございますので、弁理士会の意向をむげに無視することはできなかった次第でございます。その結果といたしまして、われわれはその妥協と申しますか、中間をとって七年と考えたわけでございますが、特許庁審査官、審判官の実際上の実務の経験、特に最近弁理士業務というものが、技術的にもだんだんむずかしくなって参りまして、そういうような技術の高度化、複雑化に応じまして、弁理士業務が実質的に困難性を加えてきつつあるという実情をも考えますと、七年ということで決して長過ぎることはない、こういうふうにわれわれとしては考えておる次第でございます。
  81. 田中武夫

    田中(武)委員 弁護士の特例との関連はどうですか。
  82. 井上尚一

    ○井上政府委員 弁護士につきましては五年、これは弁護士法第五条にたしかこういう規定がございますが、われわれとしては、先ほど申しましたように、特許庁関係者の立場、特許庁審査官、審判官の利益という面のみからいいますれば、なるべく短かい方がいいという理由で、私たちは一応五年ということを当初考えたわけでございますけれども、先ほど申しましたように、弁理士会方面の意向をもある程度尊重することが、実際上必要であったわけでございます。そういう点からやむを得ずと申しますか、妥協としまして、七年ということで法案を作成した次第であります。
  83. 田中武夫

    田中(武)委員 戦前と戦後において、戦前では大体大学を出て特例による資格修得には五年ないし七年であった。この改正せられようとする制度でいくならば十一年以上かかる。こういうことについては長官自体もお認めになっているようです。もちろん法改正にあたりましては、非公式にそれに関係を持つ団体の意見を聞く、すなわちこの際では弁理士会等の意見を聞くことは、ことに民主主義という上においては必要でしょうが、しかしそれに左右せられてはならないと思うのです。もちろん現在すでに資格を持っておる者は、あとから資格者が出てくることを、なるべく押えようとするのは人情の当然の結果です。長くというのは当然でしょう。そういう同業者が出てきて、自分たちの仕事の量が減るおそれのあることはなるべく防ごうとするのが当然です。その意見では十年だったので、だからまん中をとったというようなことで法の改正をせられるならば、そこに行政的な指導といいますか、理念の確立ということがないと思うのです。あなた自体が最初五年と考えておったならば五年が正しい。なぜその信念に従ってやれなかったのか。五年と考えておったが、弁理士会が最初はこの規定を設けること自体に反対した。それがようやく下がって十年といわれ、それでようやく七年ということであるならば、政府提出法案が外部団体によって左右せられておるという結果になります。そういう点についてはどうでしょう。
  84. 井上尚一

    ○井上政府委員 繰り返して申しますように、これは弁理士に関する法律案でございますので、われわれといたしましては、弁理士会の意向というものを、ある程度尊重することが当然必要である、かように考えたわけでございます。また審査官、審判官の利益という点から申しますれば、われわれとしては五年を希望していたわけでございます。しかし結果的にはこういうふうに七年ということに落ちついた次第でございますけれども、この七年ということの理由づけといたしましては、先ほど申しましたように、やはり考えてみますれば、今日の技術の進歩の実情等から考えまして、弁理士業務というものが内容的に実質的に相当むずかしくなってきておる。そういう場合に、他方弁理士試験という国家試験がある。その弁理士試験を要せずして、特許庁の職員が当然弁理士になり得るという制度を設けます以上は、これはどこへ出してもりっぱである、恥ずかしくない十分な知識経験を持った、実力を持った弁理士を考え、予定することが必要でございます。そういう点からわれわれとしましては、結局現在提出しました法律案の七年の理由づけといたしましては、七年というところは、特許庁の行政実務の修得の時間としては、りっぱな弁理士になり得るという観点から申しましてむしろ適当である、こういうふうな考え方に立っているわけでございます。先ほど申しました従来の考え方の経過と、同時に現在の法案の七年ということにしました理由づけは、さように考えているようなわけでございますので、御了承願いたいと思います。
  85. 田中武夫

    田中(武)委員 優秀な弁理士を作るためには長い方がいい、そういう点はいえると思う。しかしこの制度をずっと見てきた場合、昔は大学を卒業して一定の科目をとっておれば当然資格があった。それがだんだんと変わってきて、今日の改正では戦前よりか数年長くかかる、こういう改正になろうとしておる。それらの点について私の受けている印象は、やはり弁理士会等の圧力に長官が屈したといいますか、そういう感じを受けておる。この点については他のいろいろの関係法律、たとえば今言った弁護士法、あるいはあとで質問したいと思っておりましたが、弁理士を五年すれば税理士がやれるというような特例、そういう特例を見ると、大てい五年というのがきまり相場である。ここに、なぜ特に七年にしたかということについては大きな疑問がある。しかもこの疑問は外部からの圧力に屈した結果である、こういわざるを得ないと思う。ここであなたに幾ら言っても、この点についてはあなたは今のような答弁を繰り返すだろうしいたしますから、これ以上追及はいたしませんが、そういう感じを深くしておるということと、他の法令との関連上七年がいいのかどうかということは、委員長に申しておきますが、あらためて委員会において検討したい、こう思っております。  次に、弁理士を五年すれば税理士の仕事ができる、そこで一方税理士が取り消されたときには弁理士もやめる、弁理士が取り消されたときには税理士をやめる、もう一点の改正はそういう欠格条件の改正でしょう。
  86. 井上尚一

    ○井上政府委員 第五条に、弁理士の欠格事由としまして、従来弁護士としましての除名あるいは公認会計士としましての登録の抹消の処分があった場合が、規定になっておるわけでございます。これに税理士の場合を追加したということでございます。
  87. 田中武夫

    田中(武)委員 だから一面に、税理士法には、今度登録を取り消すというのが入るのでしょう。その改正は出ておるのですか。前からあるのですか。
  88. 井上尚一

    ○井上政府委員 税理士法中には、従来からその規定が入っております。
  89. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、そこに弁護士だけが残るのですね。弁護士がかりに税理士の仕事をしておって、そこで何らかの理由があった場合、その場合には弁護士の資格はどうなりますか。弁護士が、弁護士の方で取り消されたときには、弁理士はもちろんできなくなる。それは基礎がそうだ。しかし弁護士が弁理士の仕事をしておって、そこに問題が起きて欠格条件が生じた場合、弁護士の資格はどうなりますか。もっと具体的にいえば、弁護士の中で弁理士の登録を受けておる人もだいぶおるわけです。私は受けずにやっているのもおかしいじゃないか、登録をさすべきじゃなかろうかというのが先ほどの質問なんです。そうならば、弁護士で弁理士の登録を受けておる者が、その登録を取り消された場合に、弁護士の資格はどうなるか、こういうことです。
  90. 井上尚一

    ○井上政府委員 弁護士法の第六条に、懲戒の処分により、弁理士であって業務禁止された場合というのが、弁護士の欠格事由の規定としてあるわけであります。
  91. 田中武夫

    田中(武)委員 もうすでにあるのですか。
  92. 井上尚一

    ○井上政府委員 第六条の三号にございます。
  93. 田中武夫

    田中(武)委員 この規定は、取り消されたときは三年間できないというやつでしょう。現に弁護士であって弁理士の登録を受けておる、そして弁理士の方の登録を抹消されたときに、こっちの資格はどうなるかということです。今あなたのおっしゃっているのは、そういう処分を受けた後三年たたなければできない、こういうことなんだ。見当が違う。
  94. 井上尚一

    ○井上政府委員 業務禁止になりました場合には、そのなった瞬間から三年を経過するまでの間、弁護士としましての欠格事由がずっと続く、こういうことになるわけです。
  95. 田中武夫

    田中(武)委員 欠格事由が続くというのは、結局弁理士の仕事ができないと弁護士はやめなければいけないということになりますか。弁護士の登録は取り消されますか。欠格条件というのは、三年たたなければ弁護士になれないということなんですよ。
  96. 井上尚一

    ○井上政府委員 だから、弁護士法第六条には、そういう状態に入った場合には、弁護士となる資格を有しないということになっているわけでございます。
  97. 田中武夫

    田中(武)委員 六条三号から、弁理士の登録を取り消されたならば、弁護士の方の登録も当然取り消される、こういう解釈も出てきますね。
  98. 井上尚一

    ○井上政府委員 今第六条について申しましたが、これは同じ弁護士法の第十七条第一号に該当するわけでありまして、そこに、弁護士が第六条第三号に該当する場合は……。
  99. 田中武夫

    田中(武)委員 わかりました。  それからもう一つ、弁護士に対しては、弁護士法の第五十八条ですか、何人も、弁護士会に対して、懲戒といいますか、これが申し立てられるようになっていますね。それから税理士法の四十七条にも、何人もということで、不正をやった場合に国税庁長官へ申告権があります。ところが弁理士法には、そういうことによる第三者の申告権がどうもなさそうだと思うのですが、その点はどうですか。ただ懲戒のときには通産大臣が行なうということで、それに対するそれぞれの取り消しとか処分とかいうことについての取り消し権者はきまっておって、それによって、先ほども言ったように、弁護士法も税理士法も、何人といえども申告できるという申告権があるわけです。ところが弁理士の場合はないのですが、そうすると、そのことについては通産大臣に専属というか、大臣だけの考えでやる。第三者がやることができない。——どこか申告権がありますか。
  100. 井上尚一

    ○井上政府委員 弁理士法十七条の規定によりまして通産大臣が懲戒するというのは、通産大臣が公益の代表としてこれを懲戒するということでございますから、法文上、何人といえども、その懲戒について申告することを得という規定はございませんけれども、通産大臣に対する通告によりまして、通産大臣の方で職権をもって、そういう懲戒について検討をすることができるわけでございます。
  101. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、それは、たとえば税理士における国税庁長官の場合と同じなんだ。その場合は、何人といえども国税庁長官に対して申告できるという規定があるのですよ。税理士法の四十七条です。それから弁護士法の五十八条にも、そういった弁護士会というものに対する申告権があるのです。弁理士法にはないのです。
  102. 井上尚一

    ○井上政府委員 現行法規定は、先ほども申しましたように、第十七条において、通産大臣は公益の代表として、これで必要かつ十分であると考えたものと、われわれは存じますけれども、ただいま御指摘のように弁護士法には五十八条等の規定もあるわけでございますので、弁理士法の今後の改正の問題として、その点については十分検討してみたいと思います。
  103. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほど来申し上げているように、弁護士法、弁理士法、税理士法、その他同じような性格の自由業といいますか、これに対する法律の間に、いろいろと一致しないというか、歩調の合わない点が出てきておる。この点は長官自体もお認めになっておったからこそ、今回はさしあたりの点を改正して、根本的な改正をやりたいということは提案理由にも述べられておる。従って、そういうことはなされると思うのですが、それでは何年ぐらいの間に根本的な改正をやろうとしておられるのか。やるにあたっては審議会でも作るのか。その改正案の結論を出すための手続は、どのようなものを考えておられるのか、あるいはどのような機関でこれを検討するのか、あるいはどういうような機関の意見を聞こうと考えておられるのか、お伺いしておきます。
  104. 井上尚一

    ○井上政府委員 御指摘のように、弁理士法は非常に古い法律でございまして、弁護士法、公認会計士法、税理士法等、同種の法律は、最近数年間に非常に近代化されたわけでございます。そういうふうに現在の弁理士法は形式も内容もともに非常に古くなっておりますので、全面改正はどうしても必要であると存じます。ただ問題としましては、先ほど詳しく言いましたように、弁理士制度のあり方その他につきまして、いろいろ関連しました数多くの問題がございますので、われわれとしましては、学識経験者その他第二者の意見も聞き、外国の法制等も参考にしまして、十分時間を費して慎重に検討したいと考えておりますが、その時期、方法等につきましては、私個人としての目安はございますけれども、ちょっと現在その点につきまして申し上げる段階ではまだないと存じます。
  105. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、私の申し上げているのは、数年であるのか、次期国会等を考えておるのか、そういう範囲なんです。もしそれが数年というようなことであるなら、この際疑問になる点は、われわれが修正という格好でも入れておかなければならないし、すぐに根本的に改正してやろうという運びになっておるならば、それはそれにまかしてもいい、こういうことですから、その期間はどの程度に考えておられますか。
  106. 井上尚一

    ○井上政府委員 事柄の性質上、これは私個人の考えとしましては、やはり弁理士制度改正調査審議会とでも言うべき審議会を設けた方がよいと考えております。それで審議会の審議の期間を、ここであらかじめ予定するということは適当でないと存じますが、私どもの希望としましては、事柄はなかなか重要でございますが、なるべくすみやかに、しかし同時に慎重に審議会としましての審議を進めて、その結論に応じて法律をなるべくすみやかな機会提出したい、これが私の希望でございます。
  107. 田中武夫

    田中(武)委員 一時から実は両院議員総会で出席をとることになっておるので、きょうはこの程度でおいておきます。
  108. 中村幸八

    中村委員長 本日は、この程度にとどめ、次会は明日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。     午後一時十三分散会