○松根
参考人 私、御紹介いただきました
電気事業連合会副
会長の松根でございます。
このボイラー規制法の改正に関する表面に出ております問題は、直接電気事業の火力発電と実は
関係がないやに見えるのでございますが、いろいろ行政指導その他によりまして、油の使い方についての
政府のお
考えもあるようでございますので、石炭をたくさん使っております電気事業の立場から、このボイラー規制法についての
意見を申し述べさしていただきたいと思います。
電気事業の現在の需要の増加というものが、
日本の経済成長につれまして、年々非常な増加をいたしておりますことは、もう御承知の通りだと思うのでございますが、この電力を供給いたします電源につきましては、御承知のように水力の地点がだんだん減って参りますこと、あるいは経済的に不利であるというような
関係から、最近火力発電の進歩に伴いまして、だんだん火力の開発という問題が割合を大きく占めて参っております。大体ことしあたりの電力の発生源を比率で申し上げますと、大体水力が六、火力が四ぐらいになっておるかと存じますが、ここ数年後にはそれが逆になる。たとえば火力が六、水力が四になるというような態勢にあるのでございます。従いまして、この火力発電を何で起こすかという問題は電気業といたしましては非常に大きな問題であり、ことに電気業の料金というものが、御承知のように非常に低く押えられております
関係から、何とか、それを値上げしないように
——値上げいたしましても、これを極力小さくしたいという
努力を今日までいたしてきておるのでございますが、この燃料の問題がコストの中に占めます割合は、大体現在、全体の電気の二割を占めております。従いまして、先刻申しましたように、水火の割合が逆転いたしますと、将来これが二割五分あるいは三割近くコストを占めるというような傾向にあるだけに、この燃料問題につきましては、電気業としましましては非常な関心といいますか、関心以上のものを持っておるわけなのでございます。従いまして、われわれの
考えといたしましては、量の問題、経済性の問題、その両方から将来の電気業の燃料をどう
考えるかということを長期にわたっていろいろ計画を立て、
調査をいたしておるのでございます
が、
日本の従来火力発電は、百パーセント石炭にたよっておったのでございますが、
日本の石炭の産出量、それに特に今問題になっております経済をくっつけますと、おのずからこれについて限界があるということが最近いろいろの
委員会なり
審査会で、ほぼはっきりして参りまして、たとえば、この間の通産省の石炭鉱業審議会等におきましても、大体三十八年度が五千万トンないし五千五百万トンというような見当がついて参っております。かりに五千五百万トンといたしましても、大まかに申し上げまして、おそらくその中に原料炭、粘結炭が千五百万トンくらいあるのじゃないかと思います。従いまして、たき料になりますものが四千万トンというようなことになります。このうち他の産業にも使いますので、おそらくフルに使いましても二千五百万トンくらいが限度じゃないか。それでは今どれくらい電力が石炭を使っているかと申し上げますと、三十四年度で九電力だけで約手二百万トン、ほかを入れますと、千三百万トン近い数字じゃないかと思いますが、これが、さっきのような、火力を重点に置いて開発して参りますと、年々非常に膨大になって参つりまして、おそらく三十八年、つまりこの石炭の合理化が完成しますころになりますと、九電力だけで千八百万トン、全体といたしましては二千万トン近い数字が使われるのじゃないかと思うのであります。そういたしますと、これは今後石炭の合理化によって、いかに石炭のコストが下がっていくかということにも
関係いたしますが、大体
日本の火力発電というものの石炭に依存する限度というものはおおよそこれも限界がきた。従いまして、われわれの方としては、
あとをまず一番安い重油、次は、重油もこれから十年も
たちますと、またどういうことになるか知れませんので、どうしても原子力発電というものに最後はよっていかなければいかぬ、かように
考えておるわけでございます。従いまして、このボイラー規制法というような、各産業が消費しますエネルギーを、そのときの情勢に応じて最も経済なものでやっていくということは、特に電気事業のような公益事業につきましては、今のコストを低くするという
意味からも望ましい。従って、このボイラー規制法というようなものについては、存続について実は反対の
意見を従来持っておるのであります。今こういうふうな燃料が、技術革新と申しますか、エネルギーの変革と申しますか、そういういろいろなことからして優秀なものが出てくるということ。また重油に限りませず、天然ガスというようなものもだんだん出て参るというようなものを、やはり経済性、またその優秀性に応じて自由に選択しまして、そうして公益事業としての大事な使命を果たしていきたいというのは実は電気事業としては当然の念願だろうと思うのであります。
今、簡単に石炭と重油との値段を同じといたしまして、どれだけ違うかということを試算をいたしてみたのでございますが、大体一五%くらい石油の方が安いのでございます。従いまして五円の電気ができておりますと七十銭くらい安くなるというようなことに相なるわけでございます。なおその上に石炭をたきます発電所と、石油をたきます発電所とでは、約二割石油の方が金がかからない。これは、たとえば余分の貯炭場が要らないとか、あるいは石炭に要します運搬その他の節約ができますので、大体二割安くなるわけでございます。そういたしますと、これからわれわれが三十八年度までに、かりに三、四百万キロの発電所
——火力発電所はもっと多いのですが、その中で三、四百万キロのものを専焼にするとしないとでは、建設費だけで約三、四百億の金の節約になるわけでございます。
これもこの際皆さんにお聞きおきいただきたいのは、年々電気事業は非常に金がかかりまして、一年に二千六、七百億の金を建設費として使っております。この金を調達いたしますのに実は非常な苦心をいたしておりまして、なかなか内地ではまかないかねるというので、このごろでは外国へ
一つ借りにいこうという、外資の問題が御承知のように浮かび上がっております。かりに専焼にしたいものを残すといたしまして、一年に百億あるいは百五十億くらいの建設費の節約ができるのじゃないかと思います。それくらい資金の上においても非常な軽減をされるわけであります。
そういうことから
考えまして、電気業といたしましては、なるべく早く優秀なエネルギーを使いたいという
気持でおるのでありますが、かといって、それじゃ石炭は一トンも使わぬのかと申しますと、今私どもが申し上げております前提は、やはり従来ありますもの、またこれから三十八年度までに作っておりますもの、またその以降に作りますものも全部石油専焼でやろうといっておるのではないのであります。経済的に十分引き合います石炭がちょうだいできるならば、なるべく安定した内地の燃料を使い、またそれによって一国の雇用もよくなるということであるならば、できる限り内地の炭を使っていくことについては、やぶさかでないのでございます。ただ先ほど石松
会長からも
お話がございましたように、最近の石炭事業の合理化という問題につきましては、先年石炭合理化法ができましてからの経過を見ましても、なかなかうまくいっていない。今度はしっかりやるから
一つ三年間延ばしてくれぬかという
お話もございますが、率直に申し上げますと、はたしてこれでいけるだろうかということの信頼感が、これは単に電気業だけでなしに、一般的にあるのじゃないかと存ずるのであります。今後われわれといたしましても、急にこれを全部、いかに有利であるからといって、石油に切りかえようということは
考えておりません。三十八年度までにもおそらく年々百万トンくらいはだんだんふえて参りましょうし、それ以後におきましても、いろいろ石炭界の方ではいっておられますが、これが急激に減るというようなことはないと思います。ただし今度の石炭合理化がうまく進みまして、言うがごとく石炭のコスト・ダウンができますという前提に立っての
お話なんでございまして、電気業といたしましては、できるならばなるべく石炭を使いたい、従いまして石炭のコスト・ダウンが一体どこまでできるのか、またそういう経済的な出炭がどれだけの量確保できるのか、これは一応
調査はできておりますが、これは今後の実績に待たなければいけない、しかも三年間で合理化が実現するというのであれば、その間はこのボイラー規制法というものを延ばして御安心のいくようなことについて御
協力申し上げることはやむを得ないじゃなかろうかということで、実は昨年来石炭業界の方とわれわれの方とでいろいろ
お話しまして、そういうことになったわけでございますが、そのときにもやはり三十八年度以降はボイラー規制法はやめるのだ、三年間でやめるのだといたしますと、三十八年度から動く発電所については専焼でいいじゃないか、しかもその間石炭も年々使うことがふえていくのだというようなことから、われわれもそれじゃ三年間に限ってこれを延ばすことに御
協力申し上げようということに、両協会の話し合いがつきまして、各
委員会等もそういう結論に相なったわけでございます。従いまして、石炭の合理化を進められることはこれが一番大事なことでございまして、ボイラー規制法によって石炭の合理化が決して完成するものではない、そのつまみたいなものでありまして、主たる方を
一つしっかりやっていただくことが、電気業界としてほんとうに心から願っておるわけでございます。簡単でございますが終わります。