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1960-03-02 第34回国会 衆議院 商工委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月二日(水曜日)     午前十時二十二分開議  出席委員    委員長 中村 幸八君    理事 大島 秀一君 理事 小川 平二君    理事 小平 久雄君 理事 長谷川四郎君    理事 南  好雄君 理事 田中 武夫君    理事 松平 忠久君 理事 武藤 武雄君       鹿野 彦吉君    始関 伊平君       野田 武夫君    細田 義安君       渡邊 本治君    板川 正吾君       勝澤 芳雄君    小林 正美君       櫻井 奎夫君    東海林 稔君       八木  昇君    和田 博雄君       北條 秀一君    山下 榮二君  出席政府委員         通商産業政務次         官       内田 常雄君         通商産業事務官         (通商局長)  松尾泰一郎君  委員外出席者         参  考  人         (株式会社東京         銀行常務取締         役)      伊原  隆君         参  考  人         (全国農業協同         組合中央会常務         理事)     一楽 照雄君         参  考  人         (経済評論家) 稲葉 秀三君         参  考  人         (北海道大学教         授)      金沢 良雄君         参  考  人        (野村証券株式         会社副社長)  北裏喜一郎君         参  考  人         (経済団体連合         会事務局次長) 古藤利久三君         参  考  人         (東京商工会議         所常議員)   五藤 斎三君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 三月一日  石炭鉱業安定法案勝間田清一君外二十二名提  出、衆法第三号)  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第八五号)  海外経済協力基金法案内閣提出第八八号)  中小企業業種別振興臨時措置法案内閣提出第  九一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  貿易自由化に関する問題について参考人より意  見聴取      ――――◇―――――
  2. 中村幸八

    中村委員長 これより会議を開きます。  貿易自由化に関する問題について調査を進めます。  本日は、特に本問題調査のため、参考人として、株式会社東京銀行常務取締役伊原隆君、全国農業協同組合中央会常務理事楽照雄君、経済評論家稲葉秀三君、北海道大学教授金沢良雄君、野村証券株式会社社長北裏喜一郎君、経済団体連合会事務局次長古藤利久二君、東京商工会議所議員藤粛三君、以上七名の方々が御出席されております。なお、法政大学総長有沢広巳君の御出席も依頼してありましたが、おりあしく病気療養中につき出席できかねる旨、委員長のもとへ通知がございましたので御報告いたしておきます。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。本日は、きわめて御多忙中にもかかわらず、本委員会の要望をいれて御出席いただき、まことにありがとうございました。申すまでもなく、貿易自由化の問題は今日の日本経済が当面いたしておりまする最大の重要問題でありまして、政府におきましては、日本貿易伸張せしめる方策の一環として貿易為替自由化に踏み切り、逐次そのワクを拡張しているのでありますが、これが長い間統制下に置かれました国内産業に与える影響は非常に大なるものがあろうかと存じます。本日御出席願いました各参考人におかれましては、本問題について学界並びに業界の声といたしまして、その内外に及ぼす影響並びに対策等につき、忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存ずるのであります。ただ、時間の都合もありますので、御意見をお述べ願いまする時間はお一人大体十五分程度に願い、後刻委員から質疑もあることと存じますので、そのときに十分お答え下さるようお願い申し上げます。  それでは、はなはだ勝手ながら、発言の順序は委員長に御一任願うことといたします。  まず、伊原隆参考人よりお願い申し上げます。
  3. 伊原隆

    伊原参考人 参考人としてお呼び出しにあずかりました東京銀行伊原であります。ただいま委員長からお話がございましたように、貿易為替自由化の問題につきましては、その必要性というふうなことは、すでにもうその段階を通り越しまして、ただいまでは、いわゆる総論の段階から各論の段階に入っておるように存じます。ただ、問題が非常に広範でございますので、これは私の全く未定稿でございますが、「為替貿易自由化金融の問題」といたしまして、項目だけを拾いましたものをお手元に差し出してございます。なお、政府関係資料を除きまして、簡単な資料うしろにつけてございます。ただ、時間が非常に限られておりますので、全般の問題につきまして申し上げるのはいかがかと思い、きわめて簡単にしぼって申し上げたいと思います。私に課せられました使命は、主として為替自由化という点にあるように存ずるのでございますけれども、この為替自由化につきましては、一ページ目の第11の2というところに「為替自由化」として項目だけを掲げましても十二項目に及んでおりますし、二ページ目のまん中ごろの2というところに「為替自由化」という題目を掲げまして、ここもまた数行のものが書いてございます。  為替自由化につきましては、非常に複雑でもございますし、技術的でもございますので、ここで詳細な御説明を申し上げることはむしろ省略をいたした方がよいと思います。ただ、要点は、円の交換性の問題ということに帰着するように存じますので、これも経常勘定自由化資本勘定自由化というふうに手順よく政府にやっていただくということをお願い申し上げるにとどめたいと思います。私が主として申し上げてみたいと思いますのは、これから各参考人方々から各業界のことにつきましてお話があると思いますので、私は、むしろ一般論といたしまして、為替貿易自由化ということが一般的に産業界経済界にどういうふうな影響を及ぼすであろうかということと、それから、それに基づきまして、政府に御要望申し上げることに限って申し上げたいと思います。私は、結論から申しますと、今度の為替貿易自由化ということは、いろいろな手順にもよると思いますけれども日本経済界全体といたしましては、非常に急激な影響を及ぼすことはないし、また、及ぼすべきものでもないと考えます。その理由といたしまして二つをあげたいと思います。  第一は、今回の為替貿易自由化と申しますのは、よく世の中で言われておりますように、日本温室経済に対して風を入れるというお話がございますけれども貿易自由化にいたしましても、為替自由化にいたしましても、従来何にもやっておらなかったのを突然にやるというわけではございませんし、また、もう一つは、自由化限界というものがあると存ずるためでございます。すなわち、貿易につきましては、五年前からすでに一割六分程度自由化はいたしておったのでございまして、これが現在では三割二分に及び、また来年の四月には七割程度になる。企画庁長官お話では、三年後くらいに九割くらいまでに及ぶということでございますので、窓はすでにある程度あけられていたものを、さらに窓口をあけていくということであると思います。  それから為替自由化にいたしましても、従来全く禁止をいたしておったものを突然に開くのではございませんし、逐次為替自由化していく。円為替の導入というふうなことは多少時間がかかるかと思いますけれども、それにいたしましてもやり方によりまして違いますけれども、突然に外国のホット・マネーが入ってきて日本市場を撹乱するとか、また外国資本が急に日本に入ってきて、産業支配権をとるというふうなことのない配慮が必要でございますし、またそういうことはないというふうに考えます。  それからまた為替貿易自由化と申しますと、何でも急に全部自由になってしまうというふうな空気が世間にはないではないと思うのでございますが、この二ページ目の一番左の一等上に書きましたように、私は自由化には限界があると思います。その限界としてあげました点は五つ並べてございますが、第一は諸外国の例を見ましても広い意味雇用問題、エンプロイメントの問題ということは政治の最高目標でございますので、ここに一つ限界がある。ことに日本では農村の問題、中小企業の問題というふうな特異の問題がございますので、これらに対する注意ということが大切であると思います。また後ほど申し上げますように、全体としては私は日本雇用問題等にはいい影響があるんではないかと思っております。  それから(5)のところにつけておきました外貨準備にいたしましても、現在十三億ドルをこえた次第ではございますけれども、諸外国の例から見ましても、欧州あたりでは一年の輸入の金額の半分以上外貨を持っておるのが常識でございますのに、日本の十三億というのはまだ四カ月分の輸入にしか当たっておりません。従いまして自由化限界というふうなことにも、そう急に何もかにも自由にするということには相ならないと思います。それから諸外国と違いまして日本を取り巻いております国際環境というものは、後進国との相互貿易というものが日本貿易の三割以上を占めておりますので、ヨーロッパ諸国のようなまわりが全部先進国であり、多角貿易の国であるというふうな点も違いますし、そういうふうな日本独得自由化限界というものがあると思います。それから世界一般限界といたしまして、農産物につきましてはどこの国でも自由化を進めてはおりますけれども、一番あとに相なっておる次第でございまして、日本等におきましてもその辺の御配慮が要るのではないかと思います。  それから育成すべき産業につきましては、自由化をいたしますにしましても関税で保護するとか、そういうふうな問題があるということで、自由化にはおのずからの限界があると存じます。従いまして私が急激な変化はないし、またあるべきものでないと申します第一の理由は、ただいままでも相当自由化が行なわれておったこと、それからその自由化の前進は急速ではありますが、徐々に行なわれる、並びに自由化は全く完全な自由化を突然に行なうものではないということという理由から、一般の景況に対しまして非常な急激な変化があるとは思われないのでございます。  第二の理由自由化の中軸になっております為替相場の三百六十円ということでございます。よく金解禁のときに比較をする議論がございますが、ここの二ページの一等右のところに書いておきましたが、日本昭和五年に金の解禁をいたしました際に非常な不景気が起こりまして農村も困りましたし、それからわれわれ月給取りも減俸というようなこともありましたりして、非常な不景気を招来いたした次第でございますが、あのときは為替相場が四十ドル程度まで下がっておりましたのを、急激に五十ドル近くまで上げて解禁をいたしました。従って二割五分以上のデフレを強行いたしたわけでございます。しかるに今回の三百六十円の為替相場というものは、日本がここ十年来堅持をいたしておりまして、その三百六十円の為替相場日本経済というものがこれを中心にして運営され、また動かされて参った次第でございまするので、三百六十円ということを軸にいたしまして為替貿易自由化する窓を開くということになりまするので、過去の金解禁の当時のような影響があるということは考えられないと思います。ことにこの三百六十円というものは設定以来十年の経過を経ましたけれども、その間に日本経済というものは非常に強くなって参りましたし、それからこの三百六十円を維持いたすに足ります健全財政健全金融というものと、それからただいま申し上げました十三億ドルの外貨というふうなものによっても保護されておる為替相場でございまするし、御存じのように外国から見ますると、日本為替は三百六十円では弱過ぎるのではないか、日本はもっと為替を強くする、つまり三百六十円でなくて、三百円だとかいうふうに切り上げるべきではないかという議論さえあるのでございますので、世界的評価から申しますと、ある意味弱目為替相場貿易為替自由化いたすのでございますから、従って突然なる不景気とかいうふうなことが起こることはあり得ないと思うのでございます。それでもちろん個々の産業につきまして影響がでこぼこに出て参りますることは当然でございまするけれども、国全体として見ましたときにはむしろといいますか、当然いい影響がある。ことに輸出産業に及ぼす影響というものが、非常にいい影響が出てくるというふうに見るわけでございまして、雇用問題等につきましても全体としては心配がないというふうに考えるわけでございます。  ただし、この機会にそれらに関連しまして三点お願いを申し上げたいと思いまするのは、第一は、為替貿易自由化ということは、日本経済を強くするという点にあることは当然でございますが、他の外国との関係自由化するという部面も非常に多いのでございます。すなわち日本輸出を増進するために人の国に市場を開放させるためには、日本市場を開放しなければならないということでございまするし、それからまた外国から資本を入れて日本の建設に寄与するというふうなためにも、自由化しなければならぬというふうな問題がございまするので、自由化武器として経済外交といいますか、そういうものを推し進めまして、他の国に対して日本のものをもっと買わせるように、日本世界貿易における地位は戦前四%を占めておりましたのが、まだ三・五%にすぎません。従いまして世界的にも日本貿易を伸ばす正当性というものを持っておると思いますので、これを推し進めて自由化をする。それを武器にして日本輸出増進等を進めていただくということが第一でございます。  第二は、これはむしろ私ども業界決意によることと思うのでございますが、金融界にいたしましても、産業界にいたしましても、貿易界にいたしましても、自由化によって、せっかく安い原材料が入ってくる。これを使って輸出をして初めて日本所得倍増というふうなことも可能でございますし、日本経済発展させ得るのでありますから、その自由化利益輸出産業で十分生かすようにする。と申しますのは、どの業界が悪いというふうな責任の所在は別にいたしまして、とにかく外国で始終文句を言いますのは、日本安売りということでございます。この問題は非常に古くて新しい問題で、なかなか解決しない。だんだんによくなってはおるのでありますが、輸入自由化為替自由化機会に、新しい観点からもう一度日本輸出を秩序よくやって、かつできるだけたくさんの外貨をとるといいますか、安売りをして人にいやがられて、市場を締められて外貨を失っていくということがないような方策をどうしても講じなければ、輸入自由化利益というものは全く失われてしまうので、せっかく安く輸入いたしましても、また安く売ってしまうのでは、日本の賃金も上がりませんし、日本外貨もふえないということだと思います。  第三点は、一たん自由化をいたしました以上は、あとに戻れないということだと思います。これにつきましては、業界なり政府なりでも強い決意を持っていただく。昔と違いまして自由化をいたしました場合にあと戻りしないように、日本自身外貨をたくさん持っておりますし、それからIMFの援助、いろいろなこともございますけれども、一たん道を開いた以上、あと戻りをいたしますと、日本経済でも困りますし、外国に対する責任から申しましても、国際的責任というものもあると思いますので、それを堅持していくということをお願い申し上げたいと存じます。  時間が非常に限られておりますので、問題は広範でございますけれども、私見を申し述べまして、いろいろな点につきましては御質問にお答えを申し上げることにいたしたいと思います。
  4. 中村幸八

  5. 一楽照雄

    ○一楽参考人 本日は、当委員会からお呼び出しがございましたので、参したしたわけでございますが、他の参考人各位と違いまして、私貿易のことには全くしろうとでございます。ただお呼びいただきました意味は、私がしろうとということは、初めから十分承知の上だろうと思うのであります。全国の多数の農民組織の中で働いておりますので、そういう農民の意向がこの問題についてどうであるかということをお聞きいただくというのが、御趣旨だろうと思いますので、まことに素朴でございますけれども、私ども組織を通じて、この問題について私のところに反映しております意見お願いを申し上げるだけにとどめたいと思います。御了承願います。  貿易自由化につきましては、今ほどもお話がありましたように、しろうと考えで何もかも自由だというようなことを想定いたしますと、農業者のごときは、これは全く立ちいかないものである、最も大きな打撃を受けるというように、まず恐怖の念を抱くわけでございますが、だんだん伺っておりますと、決してそういうものではなくして、当然自由化にもそのときどきの限界があって、諸般の事情をよく考慮する、特に農業生産者立場というものは当然のこととして、また各国の例にかんがみても、日本においても十分考えた上で適切に措置していただけるというようなことが、だんだんわかって参りますと、それほどおそれる必要もないんじゃないかという感じにだんだんなってくると思うのでございます。現実の問題といたしましても、たとえば大豆の輸入というようなことについて、それの自由化はそれ自体としてはやむを得ないといたしましても、それに伴う農業者に対する措置としまして、農林省でいろいろ考案されました方策は、政府として実施していただけるというようなことになりますれば、農業者としても安心をすると思うわけであります。今のところ具体的な問題について、私どもの方から政府のいろいろお考えになっておられることに対して、絶対にこれは困るというような具体的な問題も出ておらない。米、麦というようなものについては、当然今の食管制度のもとである限り自由にするはずもないと考えておりますし、その他酪農製品畜産等につきましても、日本農業における畜産を育成していくという立場から、これを自由に放任しないというようなお考えのように聞いておりますので、大体において、当面の措置としてはそう不安を持たなくてもいいのではないかと考えておるわであります。ただ、しかしながら一般のいろいろな経済界あるいはマスコミ等の論議におきましては、ややもいたしますと、日本農業者経営は、全く時代おくれな農業経営をやっておるのであるから、これは自由経済の荒波の中にさらして、大きな手術を経ることによって、大きな試練を経ることによって日本農業も近代化していくんだから、貿易自由化の中で農業保護というようなことは考えなくていいんじゃないか。農産物でも、安いものがあればどしどし外国から輸入する、そうして日本工業立国だから、工業国になってどしどし輸出工業生産でやっていけばいいんじゃないかというような御議論等が、おりおり聞かれますが、そういう考え方が実際施策の上で影響をだんだん持っていくということになりますと、われわれ農業者としましては、この考え方に基づく施策にはまことに賛成いたしかねるということでございます。これは他の一般の、資本を投じて事業をし、そうしてその事業が競争上だんだんと必要なる合理化をする、また合理化をしてもやっていけない場合には仕事を転換するというような、相当な資本を持ってた大きな事業でありますれば、こういうように外界の事情に対応した合理化並びに事業の転換ということもできるわけでございますが、農業の場合は、何も好きこのんで零細企業をやっておるわけではありません。客観的に見ますと、潜在失業者といわれるような性格の人々が農村におって、農業をやっておるわけでございますので、この品物が引き合わないからほかの仕事をするとか、またほかの作物に転換するというようなことをやるだけの経済的弾力性もなければ、そういうことができない立場にあるわけでございますので、たとえば貿易自由化というようなことによって、外から強い、激しいあらしを農業に当てて、そうして農業を近代化するというような考え方は、生きた現実の大多数の人間に対する愛情のない考え方であると考えまするので、今後におかれましても、どうかこの自由化の中で、農業に対する必要なる程度保護的措置は、日本においてもこれを軽視なさらないでおやり願いたいということをお願いするものでございます。  なお、御承知の通りに、農業者の数が非常にたくさんでございますので、農業者は、一面において農業生産者であると同時に、国民消費大衆の中の大きな部分を占めておるわけでございますので、貿易自由化に伴っての日本国内経済の、徐々ながらもその変化変動というものが、単に産業経営者立場においての改善合理化、また日本経済全体という抽象的な立場での改善という点からだけ考えられないで、具体的に消費者大衆がいかなる影響を受けるかという立場からの考慮を十分に払われまして、何らかの経済上の変動が、多数の消費者に悪影響を及ぼさないというような方法で推移していくように、十分御配慮を願いたいと思うわけであります。現に、この貿易自由化と関連して、仄聞するところによりますと、政府の一部において考えられておりまする輸出入取引法の改正というような問題につきましても、貿易伸張自由化に伴う必要なる措置貿易自体に関しての措置というような見地から、いろいろ必要なこともおありだろうと思いまするが、それだからといって、今日あるところの独禁法の趣旨に抵触するというようなたぐいのことのないように、そういう大衆立場利益というものの面からもあわせ考え措置で進んでいかれるように、一つの事柄の是正、合理化のために、国民多数の消費者立場が、あるいは若干犠牲にされるというようなことのないように、御注意を十分この上ともお願いしたいということでございます。  以上、はなはだ簡単でございますが、まことに勝手なようでございますが、多数の農民の素朴なるお願いを代表しまして申し上げました。どうかよろしくお願いいたします。
  6. 中村幸八

    中村委員長 ありがとうございました。  次は稲葉秀三君にお願いいたします。
  7. 稲葉秀三

    稲葉参考人 稲葉でございます。私はこの参考人の名簿にございまするように、経済評論家という立場にございまするので、やや自由な立場発言を、この自由化についても今まで行なって参りました。すなわち、昨年の六月に、この自由化を推進すべしということにつきまして、日本経済新聞を通じて、公開状というようなものを出させていただきました。また昨年の十二月の十六日に「貿易為替自由化への提案」というのを、ほかの五人の先生方と一緒に「綜合政策研究会」という名前で出させていただいたのであります。私どもの思いまするのに、世界経済事情変化と、それからまた最近の特に日本におきまする経済発展貿易発展輸出伸張国際収支改善、こういったことというものを考えますと、日本が今までとっておりましたような貿易為替政策というものを、ずっと今後も引き続いてやっていくということはできにくくなるだろう、また日本としても、いろいろ産業構造が複雑ですから、簡単ではございませんけれども、全体としてこれを見れば、貿易自由化為替自由化に対応していくだけの条件を持っているだろう、またその条件を生かしていくことが、将来長い目で見て、日本経済成長にもなり、完全雇用への接近にもなる、このように考えておったからであります。だんだんその後国際的な雰囲気その他から見まして、日本としても、本格的にこの問題を取り上げねばならぬということになってきたわけでありますけれども、時間の関係上、簡単に御報告いたしますると、それには大体二つの大きな問題があると思います。その一つは、貿易為替自由化をどのような順序で進めていくかということであります。それから第二の問題は、これを進めていくにあたりまして、どのようないわゆる産業政策、経済政策をとっていかねばならないか、この二つの条件をどのようにかみ合わせていくかということに、やはり今後大きな点がかかっておる。いまだそれにつきましては、はっきりした政府の御決意が伺えないということになっております。私はそういう立場から、ぜひとも今後貿易為替自由化の推進をしてほしい、こういうふうに感じているわけでありますけれども、それについて簡単に私どものプログラムというものを御報告いたしますると、まず貿易為替自由化、特に貿易自由化につきましては、段階的にこれを行なっていかなければならない。つまり国内に対する影響その他等を考えて、段階的にこれを行なっていかなければならないということに尽きるわけであります。  まあそれだけではなかなかはっきりしないので、一応私たちは、それに関する標準的なプログラムというものを参考として提示をしております。これが正しいかどうかという点は、今後皆様方や、また一般国民諸氏の批判に待つということになるわけでありますけれども、大よそ四年くらいを元にして、そうして三段階並びに四段階に分かって、この貿易自由化を実施をしていくのがよいだろうと考えております。  第一段階につきましては、すでに実行されておりまするAA制品目の自由化ワクの拡大、それから対米差別制限十品目の自由化を大幅に推進していく。それから繊維原料の自由化、こういうものに引き続きまして、鉄鋼製品でありますとか、工業塩でありますとか、それから亜鉛、非鉄金属の一部なんかは自由化をしてはどうかということになります。それから問題は機械でございますけれども、機械は順序から申しますると、あと段階がいい。しかし機械の中でも、たとえば自転車とか、繊維機械とか、ミシンとか、光学機械とか、ラジオのように、すでに日本世界市場にどんどん進出をしているというものについては一向こうのものも受け入れるかわりに、一つ日本のものもどんどん受け入れよ、こういった形で自由化措置をとるのがよいと思っております。  それから第二段階といたしましては、順序から申しますると、エネルギーの自由化というのが行なわるべきでございますけれども、御存じのように日本の石炭事情というものは非常に深刻な場面に立っております。従いまして石炭の方はあと回しにして、そうして石油と―しかし石油につきましては石炭産業合理化とにらみ合わせるとか、この期間においてはボイラー規制法の存続を認めるとか、こういったようなことをする。それから銅等の非鉄金属、それから機械の中の次の段階において、十分国際競争に耐えられると考えられる原動機とか、鉱山、土木機械とか、重電機等を取り上げていくわけです。  それから第三段階といたしましては、石炭とそれから残りの機械の、原則として全部というものを自由化するとともに、私は農産物につきましても、やはりこれを全部非自由化にしておくという必要はない。農産物につきましても、やはりたとえば米でありますとか、飼料でありますとか、砂糖とかいうものにつきましては、今後の国内施策とにらみ合わせて自由化措置を推進すべし、このような考え方に私たちは立っておるのであります。そしてかなり自由化というものをこれに即応して推進をしていく、こういったような一連の。プログラムを作っていくということが必要である。これは私たちは何もこれをそのまま政府にやっていただきたいというのではなくて、やはりこういったような考え方に立って、それぞれ具体的にその順序を立てていただきたいし、それに対する対策を立ててほしいということであります。対策として、やはり一番問題になりますことは、ともかく日本の今の経済秩序というものは、いわゆる貿易管理、為替管理をてこにして立っているということは事実であります。また直接的に、政府がいろいろな形において産業助成や保護をしているということにおいて成り立っているということも事実であります。ですけれども自由化というのは、こういうようなのをほったらかしておいて、そして円と外貨を結びつけて、国際的に見て直ちに非能率な産業をつぶすということであってはいけない。やはり自由化をすることにおいて、私たちはなお一段と国際収支改善し、輸出を伸ばし、雇用を増加し、またいわゆる生活条件を上げるというものでなければならない。  それではどういったような措置が必要かと思いますると、まず第一に、今までのような直接的な産業統制あるいは金融統制といったような手段にかえまして、間接的な財政金融政策の手綱を機動的にやるということによりまして、国際収支経済発展というものを十分うまくアジャストできるということができる。それに対しましては、政府が財政編成また日本銀行その他金融機関の金融調整力というものについて、十分のいわゆる機動的弾力性を発揮をしていかなければならないと思います。  それからその次にどうしても必要なのは、金融の正常化と企業資本の充実でなければならない。ことに日本の今までの経済発達は、外面的にはいかにも活発でございますけれども、企業の資本構成が非常に脆弱になっている。私たちは株や資本自由化というのが、まず自由化の最後の問題だと考えておりますけれども、それに備えまして、やはり日本側としては景気調節のためにも、また将来の自由化に対処をするためにも、ここで大幅に企業資本の充実策をとっていかねばならない。今のように自己資本が三〇、外部資本が七〇といったような形で自由化に対処をするということは、合理的ではございませんので、これに対する措置を進めていく、また全融正常化を推進することによりまして、日本の金利の低下というものを推進をしていく、そのためにはやはりオーバー・ローンの解消とか、それからさらには金融機関の内部の合理化とか、あるいは預金金利の引き下げをして、やはり物の値段も国際水準に関税プラス・アルフアでリンクをすると同じように、日本の金利というものもそれにリンクをするようになるのだ、将来は経済成長とにらみ合わせて、日本の労賃もそれに合わせていくといったようなことが、自由化プログラムでなければならない、このように思っております。  それからその次に、やはり産業政策、特に産業構造政策を確立をしていく必要があるだろうと思います。特に私はここで問題になりますのは、中小企業農業ではないかと思うのであります。中小企業については異論があるかもしれませんけれども、私はだんだんと自由化体制が進んで参りますと、日本のように割合労働力の質がよくて、そうして過渡的期間において低い国は、ますます機械産業その他の加工産業が国際的に成長していくはずだと考えております。また、現にそういったような措置で、最近の日本中小企業は、労働市場変化ということもございまして、たくましい成長をなし遂げておると思います。ですから、願わくは、今までのように基礎産業やエネルギー産業第一主義をやめて、もっと加工産業を成長せしめるというところに国の経済政策のウエートを置くべきだ、私は、十分やり方によってはこれは成功し得るのではないかと思います。  次に農業について申し上げますと、農業は必ずしも自由化だけで影響を受けるのではなくて、日本経済成長の過渡期において、この食糧の需給その他から考えまして、今非常に大きな変化というものをこうむっておるわけであります。だから、別にその自由化という条件を入れなくても、私の思いまするのに、今のままで参りますと、農産物は全体としてやや供給過剰になっていく、お米は余っていくだろう、こういうふうに考えております。しかも農業の所得というものは伸び悩んでおります。ですから、私はむしろ自由化以前に、一体日本農業を長期的にどのようにしていくのか、そうして農業所得と農業外所得を合わせまして、一体農民の福祉というものを、どのように国民生活に平均化していくのかという問題があります。これについては、やはりもっとここで本質的なプログラムを作っていかなければならぬ。従来のように、お米を増産すればよい、あるいは政府が補助金を出せばよいといったような形で参りましても、食糧の需給その他から申しまして、そういったような条件がなかなか永続していかないと思いますると、むしろ農業については、構造政策というものをここで推進をしていく。もっとはっきり申しますると、やはり私はだんだんと農民の数を減らして耕地面積を上昇していく、そうして他方におきます加工産業、そのサービス産業の育成と相待って、漸進的にこれを進めていく必要があるだろうと思います。ですから、先ほど申しましたように、その自由化を直ちに農業に導入しろというわけではございません。むしろそれ以前のコースをここではっきりする必要がある。しかし将来の自由化ということをも考えて、今や、日本農業政策について、本質的に新しい道を出していくという必要があるだろうと思います。また国際的に申しましても、先進国貿易自由化の過程におきまして、農業を全部フリーにする、こういったようなことは、何もきまっておるというわけではなくて、十分そういったようないわゆる特殊事情は考慮をされると思うのでございますけれども、ともかく農業についての影響その他につきましては、ただ自由化だけが問題ではなくて、すでに農業内部に大きな問題があるのだということを十分お考えになって、ここでもっと合理的な農業政策を作っていただきたい。  それから、もう一つ強調したいのは、関税率の調整であります。つまり自由化はすれども、やはりある程度関税政策を弾力的にすることにおいていわゆる日本国内産業の育成をはかっていく。これだけの条件を導入推進して、そうして四年か五年という日時を置いてやっていって、そうした日本雇用構造をだんだん近代化していくということになれば、今の形をずっと続けて、ある程度先になって大きな問題を醸成するよりも、長い目で見まして、この自由化を推進する方が日本経済の将来に対してプラスになる。また皆様方も完全雇用だ、あるいは生活安定だということを言われておりますけれども、完全雇用や生活安定や所得倍増というのは、必ずしも現存のそれぞれの産業や企業にそれぞれ従業しておる労働者をそのまま二倍にするということであってはならない。むしろ全体としてバランスをとって、そうしてアンバランスを克服しながらやっていくものである、このように思いますると、私は今や私どもの出しました前提のもとにおきましては、自由化を推進すべきときにきておる、このように考えておる次第であります。
  8. 中村幸八

    中村委員長 ありがとうございました。  次は、北海道大学教授金沢良雄君にお願いいたします。
  9. 金沢良雄

    金沢参考人 この貿易自由化あるいは、それをめぐります問題は、先ほど伊原さんのお話にもありましたように、非常に広範にわたっておるわけであります。しかし私が本日申し上げたいと思いますのは、その中で特に主として貿易自由化に伴いますカルテルの問題について申し上げたいと存じます。  今日貿易自由化は必要であるといたしましても、これによる競争の激化を防止するためにカルテルを強化する必要があるというような考え方が一部に見られるように思われます。ところで、このような考え方に安易に走りますことは、貿易自由化の真の意義を見失う結果になるのではないかということをおそれるわけでございます。今日言われている貿易自由化というのは、国家による為替管理あるいは貿易管理の緩和あるいは撤廃ということでございますが、その根本的なねらいは、通商の自由化、その拡大化ということにほかならないと思われます。このような国家的な為替管理あるいは貿易管理というような直接的な統制が緩和あるいは廃止されるといたしましても、一方でカルテルが強化されるというようなことになりますと、それは直接、間接に通商の自由の制限を温存するという結果にならざるを得ないのであります。貿易自由化によって合理化が推進される利益も、カルテルの強化によってむしろはばまれるということになるだろうと思われます。  今日の貿易自由化世界的趨勢というものは、一般的に考えてみますと、それは戦後経済という、一つの特殊な時期における経済が今や解消しようとしているというふうに考えることもできると思われるのであります。こういう方向は、戦後定められました国際、貿易機関憲章あるいはガットのねらっている方向にほかならないのでございます。申すまでもなく、国際貿易機関憲章であるとか、あるいはガットというものは、第一次大戦後に発生いたしました国際経済のあの悲劇を再び繰り返さないようにする、それを防止するための意図に出ているものだと考えられます。ところで、このような憲章におきましても、戦後の過渡的な時期においては、例外的に為替管理、貿易管理というようなものを認めるという方針をとっているのでございますが、こういうものは可能な限りにおいてできるだけ早く廃止していく、今やその時期が来ておる、これが今日の貿易自由化の趨勢であろうと思われます。ところで、この国際貿易機関憲章を見ますと、その第五章に制限的商慣習、つまりカルテルというものが貿易発展、拡大に対して有害な影響を及ぼすということを認めまして、それに関する措置を定めているわけでございます。このことは日米通商航海条約の十八条にも取り入れられておるのでありまして、貿易自由化ということは、同時に独占の禁止ということを伴って国際通商貿易の拡大に役立つという考え方にほかならないのであります。  このように考えて参りますと、一方で貿易自由化を認めながら、他方でカルテルを強化するというようなことになりますと、真の意味での国際通商の拡大化ということははかられない結果になるのではないか、いわば根本的には両者は相矛盾するということにならざるを得ないと思います。むしろ貿易自由化に伴って独占禁止の強化といいますか、あるいはカルテルの後退政策というものの方が望ましいと言えるだろうと思います。  以上はきわめて一般論でございますが、ただ、現実の問題といたしまして、今日では貿易の完全な自由というものは一般化しておらないのでありまして、ときにはむしろ国際経済面で、ある種の計画性というものが要求せられているという場合もございます。たとえば、政府間の通商協定あるいは商品協定というようなものによって行なわれる場合でございますが、こういうような場合には、国際的な要請を満たす技術的方法として、必要な限度で、ある程度の業者間協定ということが貿易為替管理にかわるものとして、むしろ望ましいということが言えると思われます。このような立場に立ちまして、もし自由化に関連するカルテル関係の立法が審議せられるということになりますれば、十分に検討をしていただきたいと思うわけでございます。伝え聞くところによりますと、一部には、自由化に伴って独占禁止法の改正、緩和ということが言われているようでございますけれども、しかし、現実の問題としては、今日まだ独占禁止法の改正あるいは緩和問題は出ておらない。これはむしろ望ましいことかと思うわけでございますが……。  次に、ただ問題として出ておりまして最も重要なのが輸出入取引法の改正ということだろうと思われます。ところで、今般伝えられております輸出入取引法の改正ということにつきましては、先ほど申しましたような私の観点から見ますと、その内容はさほど懸念するほどのものではないというふうにも考えられるわけでございます。と申しますのは、かつて三十国会及び三十一国会に提出せられました輸出入取引法では、いわゆる輸出振興カルテル、つまり輸出品についてのみならず、輸出される商品の国内向けについてもカルテルを認めるという輸出振興カルテルというものが顔を出しておったのでございますけれども、今回の改正案には、どうもそういうものは考え方としてドロップしているように見受けられます。これはむしろけっこうなことかと思うのでございます。  次に、二点ばかり輸出入取引法の改正案について伝え聞く問題点に触れたいと思いますが、その一は、需要者の輸入貨物の購入にかかる国内取引に関する協定でございます。つまり、輸入業者のみならず、その輸入原材料を使ってものを生産する生産業者にも輸入貨物の国内取引に関する協定を認めようという考え方があるやに伺っているわけでありますが、これは特に相手方が輸出独占をやっている場合、あるいは通商協定の実施のために必要である場合には、先ほども申しましたような意味でのカルテルの強化ということではなくて、むしろある程度技術的に認めても差しつかえないものではないかというふうにも考えられるわけでございます。ただ、しかし、それを認める場合には厳重な要件で、これをしぼるという必要性はあろうかと存じます。  もう一つの点は、輸出入の調整に関する協定の問題でございます。これは特に後進国貿易等にいって考えられているようでございますが、通商協定というようなものがございます場合には、先ほども一般的な点で触れましたように、これに基づいて通商協定を実施する一つの方法として輸出入の調整を自主的なカルテルで、輸出業者と輸入業者を含めた協定でやっていくという方法が考えられるわけで、特に今まであれば為替管理あるいは貿易管理という国家の直接的統制を通じて、そういう通商協定あるいは後進国との関係の場合の輸出入の調整が行なわれておるというわけでございましょうが、それがなくなると、それにかわるべきものがむしろあった方が、国際協力的にも望ましいということにもなるのではないかと思われるのでございます。  以上は非常に簡単でございますけれども、これを要しますに、一般的には易の自由化に伴ってカルテルを強化するという考え方には賛成しがたい。しかし貿易自由化に伴って国際経済面からの要請等を勘案してある程度の、つまり過当競争の防止とか何とかということではなしに、むしろ技術的に協定を認めた方がよいというような場各に限りましては、これを認めていくということが望ましいのではなかろうか。だから具体的な貿易自由化に伴いますところのカルテル立法の御審議に際しましては、そういう点を十分に御考慮の上、慎重に審議していただきたいと存じます。以上で終わります。
  10. 中村幸八

    中村委員長 ありがとうございまし  た。  次は、野村証券株式会社社長北裏喜三郎君にお願いいたします。
  11. 北裏喜一郎

    ○北裏参考人 私は野村証券の北裏でございます。お手元にメモ式に「資本取引の自由化とその問題点」というメモを差し上げております。同時に「資一本取引の自由化と株式市場」という一つのシリーズを作っておりますので、これも何かのごついでに御参考に願いたいと思って持って参りましたのでお読み願いたいと思います。時間がありませんので、メモを読む形で申し上げますけれども、この意見というものは、われわれ証券業界の今まで議論いたしております経過的な一応の結論として申し上げてみたいと思います。なお施策その他の面につきましては議論の最中でございまして、研究すべき点が多々ございます。その辺をお含みの上しばらく御清聴を願います。  貿易為替自由化につきまして、私どもの基本的な考え方につきまして申し上げますと、これは先ほど来伊原参考人稲葉参考人方々が申された通り、全くわれわれの基本的な考え方といたしましては同感であります。貿易為替自由化が今や世界の大勢であることは申すまでもありません。従ってこれは今後わが国の経済界のよるべき大道と申してさしつかえないかと思うのであります。この方向は各国それぞれの立場からあとう限り協力していくことが、世界経済の構成員としての責任でございます。各国とも自国の経済力に照応して自由化をそれぞれの立場から推進するのは当然でございまして、いたずらに自国の利益のみを固執して、この要請に背馳するような状態では、かえって世界経済の構成員としての資格に欠けるのではないかとわれわれは思っております。特に近年わが国の経済発展ぶりが非常にめざましく、いわゆる体質の強化も格段に進んでおります。この点は海外におきましても一様に評価いたしておるところでありまして、当面のここ数年来ないしはここ目先のことを考えましても順調な成長が予想されております。こういう前提に立ちます限り、私ども自由化に対する受け取り方も単に受動的なまたは消極な意見にとどまるのではなくて、むしろ積極的に自由化機会に、わが国の経済をどういう工合に質的に強化改善し、もって世界経済発展に貢献するかという一点に置かるべきが当然だと思います。もちろん自由化に対しましては、先ほど来の御議論のようになかなか容易ならぬ点がございます。摩擦もだんだん起こって参ろうかと思うのであります。しかしながら方向といたしましては、大体こういう大道の方に向かっていくのが日本経済の進むべき方途だと思いますので、この摩擦をこの際どういう工合に積極的に調整しながらいくかということが、私どもの今研究すべきき中心ではないかと存じておるのであります。  さてわれわれの分野でございますが、私に与えられました資本取引の自由化の問題でございますが、これは申すまでもなく為替自由化の一環でございます。西欧諸国の先例を見ましても、その進み工合は非常に予想外に早いのであります。これは資本自由化の実現を待って、資本取引の自由化の実現ができまして、初めて貿易為替自由化の大目的が完全になる、こう信ずるからでございます。環境がそのようでございまする以上、いろいろ摩擦に対する慎重論もございまするが、そういう慎重論も大事でございまするけれども、全体としまして、大局としまして国際的な孤立を招かないようにわれわれは即応すべきではないかと思います。こう考えてみますと、資本取引につきましても自由化すべきではないという議論よりも、どういう工合に自由化に伴いまする摩擦を最小限度にとどめて自由化を達成するかという点に、現実的な問題がございまして、それがまた正しい方向であると思うのであります。  ここでちょっとメモから離れまして二、三の現状を具体的に申し上げますと、一九五八年以来通貨交換制が、先ほどの稲葉参考人の申された通り非常に進んで参って、特に資本取引につきましては、一昨年の秋からことしにかけまして非常な進捗ぶりであります。特に株式取引でございますが、西欧におきましては。パリ市場と西ドイツのフランクフルトの市場におきまして最も早く取り上げたのでございます。具体的なものを見ますと、パリではドイツのバイエルの株を上場するというのが一九五八年の十月でございましたが、その後マンネスマンが上場されて、その他数多くの株式が上場されております。バイエルなどがパリ市場に上場されましたのは一九一四年以来のことでありまして、その間久しぶりに登場したのであります。またフランクフルトなどにおきましても例のフィリップスであるとか、イタリアのモンテカティー二などだとか、そういう株を初めといたしまして非常に多くの株が上場され始めました。アメリカにおきましても一昨年、昨年を通じまして現在アメリカ市場で売買されておりまする外国の株式の銘柄は百七十になんなんとしております。そのうちニューヨーク市場におきましてはすでに十三、四の上場がされておりますし、またアメリカン・ストック・エクスチェンジにおきましては三十九銘柄が上場されております。他の百二十ぐらいは、アメリカの、私どもの言葉で申しますと、店頭上場、店頭売買ということで行なわれております。いずれにしましてもそういう工合に資本取引の自由化の中の株式などの交流というのが、非常な勢いでもって国際化いたしております。もっともこの資本取引の自由化と言いましても株式だけではございませんので、このほかに技術提携による資本提携、あるいは株式による外資導入、あるいは投資信託の受益証券であるとか、あるいは貸付金であるとかいうものが、いろいろ形がありまするが、一例を株式にとりましてもその通りであります。これに比べまして日本の現状はどうかといいますると、御承知の通り現在の大資本のもとにおきましては非常に微々たるものでありますが、日本に入った外資の総額は、去年の十二月末現在で御承知の通り七億七千万ドルということになっておりますが、そのうちで三億三百万ドルというのは世界銀行を通ずる借款でございます。それから一般輸出入銀行などを通じたのが一億三千万ドル、残りの九千二百一万ドルというのが株式による資本導入であります。戦後の株式による資本導入というのは九千二百万ドルであります。しかも、その九千二百万ドルのうち、わずか二千五百万ドルが証券市場、取引所を通じて外人が投資した金額であります。残りの六千六百万ドルに相当するものは、御承知の通り、各事業会社の技術提携あるいは資本提携による、時には経営参加を伴うとこの投資であります。そういう意味合いにおきまして、一般的な市場から買うという株式投資につきましては、日本の場合はほとんど問題になっておらぬくらい小規模であります。  そういう現実でございますが、ここで、資本取引の自由化がどういう工合にわが国に悪影響あるいは好影響を及ぼすかということにつきまして、メモを羅列的に申し上げますと、資本取引の自由化に伴いましてわが国にどういうプラスがあるかといいますと、一つは、これは先ほど来触れられましたが、わが国経済の成長、雇用拡大に資する。この点はいろいろ御議論がありますが、私どもの最も申し上げたい点は、次のカッコの中に書いておりますが、資本自由化によりまして外資導入が盛んになり、従来わが国の経済発展、成長の制約の一つでありました資本不足というものが大幅に緩和されました。それはどういう現状かと申しますと、日本の現在の貯蓄率と申しますのは、西ドイツに比べてやや劣りますけれども、過去三年の平均は一割三分四厘でございます。非常に高い貯蓄率を持つところの国柄であります。アメリカは大体六・四%というところでございます。そういう高度の貯蓄率を持つところのわが国においてすら、今日のわが国の経済成長を充足するには資本不足が一番大きな問題となっております。追っつかないのであります。従って各企業は非常なオーバー・ボローイングであることは、先ほどのお話にあった通りでございます。これは、外国資本が入ることによって―そういう道が開けることによって全部は解消いたしませんが、そういう道によって資本不足の緩和が来たされるということは申すまでもないのであります。  第二は、世界市場に新しい販路が獲得できる。これは、現に資本提携を通じまして商品の販路が非常に広がっておるという実例は皆様の御承知の通りであります。  第三番目は、国際的な高金利が是正される。わが国の金利水準の低下が誘導されるということであります。御承知の通り、わが国の金利は国際的に見まして非常に高うございます。一、二例を申しますと、現在の日本の貸出金利の平均は八分九毛であります。アメリカが四分八厘八毛、イギリスが四分二厘五毛から五分、フランスが四分五厘、こういうところが大体の貸出金利であります。各企業が高金利によって、資金コストに非常な影響があるということは皆様御存じの通りでありますけれども、これを具体的に申しますと、現在の企業の負担しておる金融資本と申しますのは、大体総利益率の半分に近いと思われるのであります。個々の具体的な例を申せば、ちょっと比較になりませんが、USスチールと八幡というような比較をかりに平面的にしてみますと、八幡製鉄は総売上高に対して利息を大体三・一%払っております。USスチールの方は〇・二%であります。約十五倍の金利を払っております。もっともそれは前提になります資本構成も違いますし、企業の資産構成も違いますし、内部保留の率も違いますが、いずれにいたしましても日本の一例として、八幡製鉄の金利負担が三・一%、USスチールが〇・二%ということでありますから、その辺もおのずから国際的な高金利の低利化を誘導するということに役立つだろうと思うのであります。  日本の金利に対する負担の一番底になっておりますのは、御承知の通り、日本金融の支配的地位を持っておる銀行の資金コストであると思っております。御承知の通り、銀行の資金コストは、地方銀行におきましては一銭九厘、市中銀行におきましては一銭八厘前後だと申されておりますが、これは年利に直しますと、市中銀行は年六分五厘七毛くらい、地方銀行におきましては六分九厘三毛くらい、日歩にいたしますと一銭九厘ないし一銭八厘というものが金融機関の資金コストであります。これが金利水準の大きな底になって、おりまして、これがどういう工合に合理的に低下するかということが、国内の金融正常化に通ずる点であろうかと思われますが、この点は稲葉参考人から申された点でございます。特に外資が入って金利が下がることだけがいいのではなくて、今申しましたように、金融業務はもともと信用業務でありますから、この機構を国内的にこわしては大きな資本市場の混乱を来たしますので、その辺は、金利を下げるということだけではなくて、その前提になる国内の金融正常化の必要が叫ばれておる理由であります。  その次は個々の企業の場合でありますが、第四番目に企業の体質が非常に強化される。先ほど来申し上げましたように、資金コストが下がれば、非常に企業の体質が強化されると同時に、製品のコストも下がり、国際競争力に耐え得るということは申すまでもございません。各企業の資本構成が非常に是正される。御承知の通り、現在財務比率から申しますと、内部資産、内部資本、外部負債を比較いたしますと、大体三三%は自己資本であります。これは戦前は約六割でございましたが、今日、日本資本不足、資産構成の改善を叫ばれてここ久しきにわたりますが、事業が成長産業であればあるほど、現在の財務比率が三割そこそこになっておるという現状は、何かの形で是正しなければいけないかと思うのであります。  おそらく外資導入によりまして、かような国際的なアブノーマルな企業体質面の反省が、当然企業間に起こるかと思うのであります。従って、国内的には、外資による株式の取得が多くなればなるほど、前提として国内の増資が促進されなければなりません。しかし、大局といたしまして、今申しましたように、日本の現状として、経済成長の一番ネックとなっております資本不足に通ずる金利高を是正するという方向の一つの道として、資本取引の自由化の方向に進まなければならないと思うのであります。  しかしながら、反面、これに対しましていろいろの悪影響も指摘されております。一つは、株式などの投資によりまして、その資金がホット・マネーとなりまして、短期資金化されまして、日本金融市場が乱されはしないかということであります。これもよく考えられるのでありますが、育成すべき日本産業が、世界的な国際的な競争力に耐え得なくて、競争力を減殺されはしないか。第三番目に、既存産業に対して外資の支配を許す懸念はないか、経営権をとられる懸念はないか。これらの問題もわれわれといたしましては、資本取引の自由化考える場合の前提として、そこでいろいろの施策を講じなければならない点でございます。現在の為替管理法にいたしましても、外資法にいたしましても、そういう点は非常に多くの悪影響のみを重視いたしておりますので、この辺はなお今日といえども残っておるわけでありますけれども施策よろしきを得れば、その懸念はないかと思うのであります。たとえて言いますと、この中で、一番皆さんの異論のある経営参加の問題です。現在日本に入っている株式、外人の持っている株式の率は、〇・一であります。これを、後ほど申し上げますが、われわれは一割五分くらいまで引き上げてよろしかろう、こう申すの、でありますが、経営の問題になりますと、過去におきましても、戦前から今日戦後にかけまして、初めから話し合いのもとに経営参加しておる事業が多々あることは、御承知の通りであります。たとえば、戦前からありますものでは、東芝とGEの関係であるとか、三菱電機とウエスチングハウスとの関係であるとか、日本板硝子とリビーオーエンスとの関係であるとか、あるいは三菱石油とあちらの石油会社との関係であるとか、戦後におきましては、日本軽金属とカナディアン・アルミニウムとの関係であるとか、各石油会社の外資提携であるとか、初めから経営参加を前提としている企業もあるのであります。しかし、市場を通じて株式支配をしようという動きは、むろん今日はございませんと同時に、今の外資法のもとではほとんど不可能でございます。われわれが後ほど提案申し上げます株式取得の率を、企業単位にいたしまして一割五分ぐらいまで、もしかりに引き上げた場合はどうなるかといいますと、これをかりに野放しにしましても、一割五分持たれましても、経営権には大きく響かぬと私は思います。日本の現在の資本構成、株主構成では、大体五割が日本の法人であります。それから五割一分が個人であります。投資信託などを含めまして五割五分程度ありますけれども、約五割、過半数が、国内の安定しておるところの法人、たとえば保険会社であるとか、銀行であるとか、その他法人でございます。一割の外資がかりに全部入って、そのまま放任しておいたからといいまして、今の日本の株主構成から、株式の世間のいわゆる乗り取りのごときものはまずなかろうと思います。しかし、だからといって、ここでそういう防壁を講じなくていいというのではありませんで、やはり私は当然いろいろの利益参加、社債の発行、転換社債あるいは株式にいたしましても、議決権を制限する、あるいは無議決権の株を作るという工合に、いろいろ法的に、あるいは実施面で、やはり予防策を講ずる必要はあろうかと思います。現にここ二、三年の例を見ましても、資本取引の自由化によりまして、株式の乗り取り、会社の乗り取りということが、外部でもないわけではございません。アメリカのレイノルド・メタルが、イギリスのアルミ会社を乗り取った例がございます。ブリティッシュ・アルミニウムが、八割をアメリカのレイノルド・メタルにとられまして、経営権をとられました。そういう例がございますので、われわれといたしましては、資本取引の自由化を言う場合にも、特に株式につきましては、一挙にこれを開放するわけにいかない。やはり段階的に、当面は一割五分ぐらいのところから始めなければいかぬ、こう考えるわけであります。こういうような点を十分考慮いたしまして、私どもは現在外資法の一部を改正していただくように、関係当局といろいろ折衝いたしておりますが、日本の外資法は、御承知の通り、第二条にはっきりと明文の規定がありまして、外国人の投資につきましては、事情の許す限り漸次緩和し、最後には廃止するのだという明文が明らかに外資法の第二条に出ておりますので、外資法の趣旨そのものも、過渡的なことであるということをうたっております通りでありますが、現状の段階といたしましては、私どもは次のことを関係当局にお願いいたしております。と申しますのは、第一には、今の許可制はこのままやはり外人投資については続けるべきである。第二は、現行の外人投資に対する送金制限、ただいま御承知の通り、二年据え置いて五年の分割払い、合計七年になっておりますが、この辺は三年程度に縮めるべきである。三年後は自由に送金もできるし、置いといてもいいというように改正をお願いしております。また先ほどの株式などの投資の資金が短期資金化する、ホット・マネー化するという心配がございますので、過渡的にはイギリスの制限ポンドをまねまして、振りかえ可能な非居住者資本円勘定を新設していただきたい、まあこういう工合に考えております。それから株式の取得率というものを各企業単位にいたしまして、一般の株式につきましては一五%、それから制限業種につきましては、現在の五%を一割というところまで引き上げる。現在一般の株式につきましては八%であります。それを一五%。それから制限業種、たとえば電鉄であるとか、ガスであるとか、電力のような公益事業につきましては、五%から一〇%に引き上げてもらう、こういうような考えを持ちまして、当面のステップといたしましては、全面的な資本取引の自由化ではなくて、こういう一つの許可制のもとに制限を緩和していこう、こういう考えであります。特にここで申し上げたいのは、外人投資と申しますけれども、なかなか日本事業にすべてが投資するという考えには、日を要するかと私は思うのでありまして、ただ数年来と今日と違いますのは、外人の投資家の意欲が、日本国内投資につきまして非常に注目をしておる。ここ三、五年前は、全然日本の投資については無関心で、ノー・インタレストでございましたが、今日では非常に注目して研究しておるということでございますので、この機会に、やや段階的に、資本取引の自由化に踏み切るべきであると考えるのであります。時間がありませんので、以上で終わります。
  12. 中村幸八

    中村委員長 ありがとうございました。  次は、経済団体連合会事務局次長古藤利久三君にお願いいたします。
  13. 古藤利久三

    ○古藤参考人 経団連の方に、参考人として出てこいというお話がございましたのは、おそらく経団連としての意見をお聞きになりたいということだろうと思いますが、実はこの問題につきましては、ごく最近に特別委員会を作りまして検討を始めておりまして、ただいま検討の過程でございますので、経団連の意見を公式に申し上げるという時期にはまだきていないわけでございます。しかしながら若干検討は進めておりますので、その過程に出て参りました皆さん方の意見というふうなものをまとめまして、二、三申し上げてみたい、こういうふうに存じます。  大体自由化の問題につきましては、対外的な要請が非常に強いから、日本産業界もやむなくそういうふうな気持になったんじゃないかというような御議論もございますが、われわれの方の考えからいきますと決してそうじゃなくて、やはりIMF八条というようなことで、どうしても自用化しなければならぬというような、最後通牒を突きつけられた段階ではございませんので、われわれとしては十分に自主的に判断して、この問題に対処する余裕を持っておるわけでございます。産業界としましては、先ほども稲葉さんがお触れになりましたように、この数年の間に非常な成長率を示しておりますし、しかもなお物価は安定してインフレ的な傾向は示していない、世界一の成長率をほとんど毎年繰り返しておる。そして投資は非常に拡大して、産業の近代化というものが相当強く推進されてきた、こういう認識に立ちますと、特にヨーロッパの共同市場がああいうふうな、最初の予定から見ますと、三年も五年も早く完成の時期が近づいてくるというふうな状況でもありますし、世界的にも自由化体制というものが非常に強く推進されておりますので、やはりこの機会に、日本産業界としても、この問題と正面から取り組んで、そして推進していかなければ、次の飛躍、発展はできないのだという考えに立っているわけでございます。従ってこの自由化の問題についてはあくまでも日本産業界が自主的に考えて対抗していけばいいので、あらかじめ何かのスケジュールを強制されて考えるという必要は少しもないのだ、こういう考え方で進んでおるわけでございます。この問題について一番問題になりますのは、やはり日本産業の体質といいますか、それは非常に過当競争の態勢を持っておる。これは潜在的な中小企業が非常に多いというふうなこととか、人口の問題とかいろいろございますが、要するに産業の方の過当競争態勢というものが、現在まで温存されてきておるわけでございます。そこで、この問題と取り組む上において一番大きな問題は、やはり産業界自身の自主調整という機能を十分に働かせるということが特に必要ではないか。この問題がもし十分にやれないならば、自由化を推進していっても、非常にそこに困難な問題にぶつかりやしないかという考え方になっております。自由化の問題についての、自由化していきますテンポの問題でございますが、概一括的に考えますと、やはり工業原料の自由化というのをまず最初に考えていく。それと同時、にだんだん製品の方の自由化に及ぼしていくというふうな形になっているわけでございます。そこで、大体産業界影響というような問題について、今いろいろな方面から実情を伺っておりますが、大体今まででほぼ検討が終わっておるのは繊維産業だけでございまして、ほかの産業はむしろこれから問題に取り組んでいく、または今真剣にその問題に取り組んでいるという時期でございまして、実際問題として、この自由化がどういうふうな影響を及ぼすかということについては、ほんとうの検討がまだ十分尽くされていないというのが現状だろうと思うのです。新聞や雑誌にいろいろなことが書いてございますが、これはむしろ実体認識というよりは、少し先に走ったような議論が非常に多いのではないか。この点につきましては、十分にこの自由化の与える影響、功罰というふうなものを各業種別に検討いたしまして、プラス・マイナスを十分に考えた上で、総合的に判断して順位をきめていくということが、特に必要じゃないかというふうに考えております。大きく見ますと、やはり一番困難な問題は、資源産業とか農業関係の問題が一番むずかしい問題ではないか。次にむずかしいのは重化学工業、機械工業というふうなところがむずかしい問題一になりまして、今一番準備が進でおります繊維産業あたりが、比較的対応しやすい態勢にある、こういうのが大体の今の状況でございます。  これについての対策の問題に入りますと、結局一番われわれが心配いたしますのは、自由化の政策を推進するについて、総合的な政策の用意があるかどうかという問題でございます。これは新しい問題でございますから、いろいろ政府の内部においても御意見があることは当然だと思いますが、一例をあげますと、大蔵省と通産省が、去年ずっと一年間かかって検討されました為替貿易の専門委員会というものがございますが、これはある程度結論が出ているのでございますが、その結論の最後の段階で、やはり両省の意見が一致しないというふうな点もございまして、なかなか一本の考え方が出てこない、こういう問題もございますし、また今度所得倍増計画というような問題が一方では論議されておる。これは当然国民所得を倍増するということはけっこうなことでございますが、同時にまた所得の不均衡を是正するのだということもうたわれておる。しかしこれと今これから進めようという自由化政策とでは、一体どういう関係になるのかという問題になりますと、必ずしもはっきりした解明がなされていない、そういうふうな状況でございまして、何かどうも自由化は必要である、そしてプログラムは提起されている、しかしそれに伴う総合的な政策というものは必ずしもはっきりした形で浮かんできていない、この辺に一つ問題がありゃしないかというような感じがしておるわけでございます。自由化を推進していく場合には、もちろん財政金融政策というものが基本になりまして、その基本の上に進めていかなければならぬわけでございますが、物と金との面の自由化という問題が、平灰を合わして、タイミングを合わしてやっていかないということになりますと、非常にその間に支障が起こってくるということも考えなければならぬ。それは今経済企画庁が中心になって総合的にやられる態勢にはなっておりますが、この政策の総合化という問題については、特に御注意を願いたいというふうに経済界の者は考えておるわけでございます。  それから、この政策を進めていきます場合の重要な問題点を簡単に指摘いたしますと、やはりさっき申しましたような過当競争態勢のもとにありますので、どうしても組織化対策ということが必要じゃないか。これは今の国会に提出されております輸出入取引法というようなものもその一つの対策でございますが、取引法の中には輸出振興カルテルというものが抜けております。これはいろいろの御意見がございますけれども、われわれの考えからいたしますと、自由化する以上は、独禁法もこんな国際的に見てもきびしい独禁法は改正することは当然でありますし、また輸出入取引法も改正せねばいけないのだ。というのは自由化する以上は、自由に競争すると同時に、協調すべき点は協調し得るという態勢が必要でございまして、これは少しも自由化とは矛盾しないのだ。特に御注意を願いたい問題は、自由化した場合に海外の競争にさらされるという開放態勢にわれわれはなる。その場合に世界の各国の国際競争の力にぶつかるわけでございますから、幾ら日本の内部の産業がカルテルを作ろうが、何しようが、そんなものは、それがもし非生産的であれば、直ちに食われてしまうという問題が背後にあるわけでございます。これは非常に厳重な為替管理をやっておるそのワクの中で、独禁法を改正するということは、これはあるいは問題があるかもしれません。しかし全面的に開放態勢に向かおうというのでありますから、高いものはどんどん国際的に輸入するというふうな傾向も出てくるのです。それを何も心配する必要はないのじゃないか。むしろ三百人や五百人の公取の職員が監視しておりますより、国際マーケットが監視しておるのですから、非常に日本のある産業のものが高いということになれば、すくその輸入の需要が起ってくるということで、大きな調整の手が打たれるということを確信していいじゃないか、そういうふうに考えますと、日本の独禁法というものは、アメリカの占領下に作られた法律でございますから、おそらくアメリカ以外の各国の独禁法に比べたら一番きびしいのじゃないか。そういう独禁法のもとにおいて、しかも過当競争の態勢の上にそういう法律を置いたまま、この自由化に進むということは、やはり非常に大きな問題を残しておるじゃないかということを考えるわけでございます。独禁法の問題は、今この国会に出ておりませんから、あまりやかましく申しませんけれども、特に輸出入取引法の面においては、少くともこの輸出の面における過当競争、輸入の面における過当競争、これを防止することは、むしろ原材料を安く買い、そうして日本で作った製品を適正な価格で売るということでございますから、これはほかの産業界にも悪影響を与えるような問題ではないと思います。しかもそれをやるためには、単に今までの輸出入取引法のように買い得る規模だけでやろうといったって、これは無理でございまして、それにつながるところの国内市場というものもあり、国内生産というものもあるわけでございますから、やはり輸出のために必要な協定であるとか、あるいは共同行為というものが、輸出に直結していなければできないというふうな、非常にぎくしゃくした法律でなくて、やはりそれにつながるところの輸出のための生産、国内取引というふうな一連の共同行為ができるということにしまして、そうして原料を買いあさって、非常に高く買ったり、あるいはやっと作った国内の製品を過当競争で安く売る、そういうばかなことのないような態勢を作る。これは自由化をやる場合に根本的に必要な問題じゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから、第二の問題は、先ほどもいろいろ御意見がございましたが、体質改善の問題でございまして、これは企業の自己資本の充実という問題に焦点が置かれるだろうと思うのでありますが、この点につきましては、たとえば大蔵省の主税局あたりは、どちらかといいますと、ここまで経済が回復してきた以上は、税の理論を通しまして、いわゆる臨時措置というふうなものは、全部この際修正すべきた、きれいさっぱり税制を合理化すべきだという考え方が一方にはございます。しかし問題はそういうところにはございませんで、この自由化を進めていく場合には、やはりそれ相当の資本の充実、特に自己資本の充実を短期にやらなければならぬ問題があるわけでございますから、そういう観点から、やはり税制につきましても、自由化を推進するに必要な特別措置というものも考えるというふうに、政策的には総合性を持たしていただきたい。たとえば、この価格変動準備金というような問題がありますが、この制度あたりももう要らないのじゃないかという議論もありますが、これは貿易自由化して参りますと、当然国際商品の変動ということは、絶えずあるわけですから、それの原料の買付の面、それに伴って、それが非常に不当な値下がりをするというふうな問題もございますので、やはり自由化に関連して真剣に考えるべきは税制対策じゃないか。それからまた、資本の充実に対する特別措置というふうなことも、今税制調査会で御議論になっていると思いますが、これもやはり推進していただきたい。  第三番目には、外資の問題でございますが、これはこの前、秋ですか、ビジネス・インターナショナルが参りましたときに、日本の財界といろいろ懇談いたしましたが、外国資本家には、日本ほど投資するに適当な条件のところはないのだというような気持がございまして、合弁事業に対する持ち株比率を、日本は五割で規制しているじゃないか、あるいは三割以上は認めないではないかというようなことを盛んに言っております。しかし、この持ち株比率の問題は、個々の企業がそれぞれ相手方の企業といろいろ検討して、そうして経営の自主性という観点から見て大丈夫だというところで、ケース・バイ・ケースで話をきめればいい問題でございますから、何も別に法律で規制する必要はないのじゃないか。ただ問題は、中小企業やなにかの場合に、そういうふうな相手方との公正な商談といいますか、公正な交渉ができるかどうかという問題が若干ございますので、それについては特別な相談機関のようなものでも設けて、適正な指導をしていくというふうにすれば、必ずしも心配はないのじゃないか。  市場を通じての株式の問題は、先ほど北裏さんがお触れになりましたので省略いたします。  次の問題は関税政策の問題でございます。これも自由化をやる以上は、あらためて取り上げなければならぬ非常に大きな問題点でございますが、残念ながら占領下にガットへ加入するときに関税を一応きめてしまった関係がございますので、新しく関税を改定するという場合には、各国との関税交渉という問題が起こってくるのじゃないか。そうしますと、こちらが関税をふやす場合には、ほかの品目で譲許しなければならぬというような問題も伴ってきておりますので、関税政策を自由に駆使できるというふうに考えて、その考え方のもとに自由化を促進したのでは少し行き過ぎになるのじゃないか。従って、これは製品の輸入の問題とも関連するわけでございますが、製品輸入自由化考える場合には、一体どこまで適正な関税がかけられるかという問題をにらみ合わして、十分検討した上で製品輸入自由化の時期、方法等を考えるべきじゃないかというふうに感じておるわけでございます  最後に、輸出振興の問題でございますが、自由化をした場合に、工業国に対する輸出は、大体有利になるというふうに考えていいと思うのでございます。たとえば、アメリカに対してこちらは自由にいたしますから、同時に、アメリカの日本からの輸出についてのいろいろな制限に対しては十分に抗議もできますし、また、三十五条援用国に対しては、こちらの自由化体制でもって向こうもそれを撤廃しろということも要求するという強い立場があるわけでありますから、工業国に対する貿易は概して順調に進むではないかというふうに考えられますが、後進国に対する貿易については特別な考え方をしなければいけないではないか。その問題につきましては、第一は、やはり経済協力という問題をもっと大きく取り上げまして、自由化経済協力という問題は結びつけて考えなければいかぬ問題ではないか。特に五十億の基金ができましたが、五十億くらいでは問題になりませんので、やはり東南アジアその他の後進国の開発について日本が協力するということをもっと具体的に、そしてもっと弾力的にやり得るようにこの機構をますます生かしていくということが必要ではないか。これをやりませんと、やはり東南アジアとの貿易というふうな問題が円滑にいかないで、むしろ日本は買うものがなくて売るものばかりだということで、向こうが買ってくれないという問題に追い込まれる。そういう問題かございますから、経済協力という問題をぜひ一つ推進していただきたい。同時に、多角的な取引によって決済するというのが自由化の大勢でございますが、やはり後進国に対しては、国によっては輸出入組合というふうなものを作って調整勘定的なやり方をやるとか、あるいはまた円クレジットというような形でいくとかいろいろな形が考えられますが、こういうような工業国に対するとは、別の貿易の政策を考えて推進していかなければならないではないか、こんな考え方を持っておるわけでございます。  次に、これはちょっと余談になりますが、農業関係とか中小企業関係が非常に問題になってくるわけでございますが、中小企業につきましては、やはり産業界としましては、これを系列化するとかあるいは専門化するとかいう形において、中小企業の近代化を促進するという政策が、自由化とともに行なわれなければならないというふうに考えております。もし中小企業全般を振興するというふうなばく然とした振興策を続けておったのでは、この目的は達成できないのではないか。ある種の産業ではむしろ大企業と中小企業の協力関係を新しく推進するということも必要でしょうし、また、ある中小企業においては、独立の専門生産というふうに生産分野をはっきりして担当し、それを大いに推進するという態勢をとるように、中小企業政策については、そういう自由化に伴ったはっきりした線を貫く必要があるではないかというようなことも考えているわけでございます。  最後に、農業との関係でございます。農業自身は自由化に対してどこの国でもいろいろな制限を置いているのは当然でございますが、日本においても簡単に自由化に踏み切れる問題ではないと思いますが、ただ、農業政策でどうしても補助金を出さなければならぬという問題については、農業に補助金を出すというふうな体制をはっきりとる必要があるではないか。農業政策とからんで産業政策をやるというふうな、産業政策と農業政策の混乱したような状態は、やはり自由化に踏み切る以上は、はっきりその点一線を画する必要があるではないか。必要な補助金はもちろん出すべきでありましょうし、また、これはあるいは国際会議において、やはり農業の補助金をだんだん逓減するようなことが、ガットの委員会でも問題になっているそうでございますから、いつまでもこれが続くとは思いませんが、しかし、当分は農業に対してそう自由化を直接やらなければならぬという問題にはならないのではないかというふうに、われわれは感じておるわけでございます。  先ほども申し上げましたように、まだ結論が出ておりません問題でございまして、議論の過程のことだけを申し上げまして、どういうことが問題になっているかということだけをちょっと御紹介した程度でございますが、これで終わります。
  14. 中村幸八

    中村委員長 ありがとうございました。  最後に、東京商工会議所議員の五藤斎三君にお願いいたします。
  15. 五藤斎三

    ○五藤参考人 貿易自由化世界経済における大勢から考えまして、もう世界の情勢がそのようになっており、国際市場の落後者とわが国の経済界がならないように、これを徐々に断行する必要のあることは、私どももっとに認識をいたしておりますが、ただ、底の浅いわが国の経済、ごとに中小企業の現状におきまして、先ほど来それぞれの参考人の方からのお話にもありましたように、現在のわが国の資本構成が、自己資本が三十数パーセントであり、他人資本が六十数パーセント、こういう現状で、資本構成の是正が促進せられて、わが国経済の竹馬の足を切り払わなければならぬということが叫ばれております中において、ことに中小企業においてはこれが非常にはなはだしいのでありまして、現状といたしまして自己資本の比率がわずかに一八%をこえる程度にしかなっていなのであります。その後進性の非常に著しい中小企業のためには、世界の情勢である貿易自由化の断行にあたりましても、周到な対策を考えていただきまして、これを、徐々に行なって中小企業の育成に十分配慮を加えていただかなければならないところだと思う次第であります。これはもちろん当局においてもさようの考慮をしておられることと仄聞いたすわけでありますがこの観点から、私は中小企業立場から、この貿易自由化がどう影響するだろうというような点を申し述べさせていただきたいと思います。  大企業の下請企業でございます機械工業等の場合におきましては、貿易自由化の結果といたしましては、親企業における自由競争が当然激化して参ります結果、中小企業の単価の引き下げ、管理の強化等の圧迫が当然現われてくることだろうと思います。ただし紡績と機屋のような関係におきましては、原材料メーカーの紡績業界の競争から、従来売手市場でありました綿糸その他の原料糸の売買が買手市場の形に変わってくる面もありましょうかと存じまして、この面からは有利な面も現われて参りましょうが、また反面におきましては輸入制限が従来自然に生産調整の作用をいたしておりましたことは、これは隠れなき事実でございますが、このかせがはずされますというと、当然過当競争が激化いたしますことは火を見るよりも明らかだと思うのでありまして、この点からは相当に価格等に混乱が起こるのではないかと懸念をいたします次第でございます。また大企業と競合関係にあります企業も中にはあるのでございます。たとえば大紡績と中小紡等もその形だと思うのでありますが、ただ中小紡績といえども、企業の規模の分類から申しますと、当然大企業でございますが、その他機械工業等の中には規模が小さくても、大企業と競合をして独立の製品を作っておるというようなものが多々あるのでありますが、これらの競合企業の場合を考えてみますと、大企業はその資本、信用力の大きさにものを言わせまして、その優位性によって海外市場も国内市場もどんどん席巻していく傾向が生まれてくるだろうと存じます。こういう関係から中小企業はそれだけの圧迫をこうむることは当然でありまして、これを克服するためには中小企業としては、どうもほかに方法がなかなかありませんので、当然労働条件の引き下げ等を余儀なくせられるといったようなことが起こるのではないかという危惧か起こるのでございます。古藤参考人もおっしゃいましたが、所得の平均政策といったようなことが、今後の施策一つでなければならぬと考えられます現下におきまして、逆に中小企業、大企業間の賃金格差がますますひどくなるというような状況が、こういう条件のもとに起こるのではないか、こういうことが激化いたしますと、やがてこれが社会不安の原因になるということも考えなければならぬと思うのでございます。また雑貨や特殊の機械製品等のメーカーでありまして、大企業とは独立をいたしております中小企業もございますのでありますが、これらの業界におきましては比較的影響が少ないと思うのでありますけれども、日用雑貨等の方面におきましては外国品に対する、いまだ日本国民感情といたしましてもなお崇拝均一心理など、それから外国の大きな宣伝力等と相待ちまして、多少高価であっても舶来品を使用するという国民の希望が非常にふえてくるのではないかと存じます。こういうふうな結果といたしまして、当然これらの国内中小企業を圧迫することになると思うのでありますが、現に化粧品、菓子、洋服地、洋酒等の輸入申請がすでに殺到しておるというようなことを承るのであります。たとえば私承ったところによりますと、ビスケットなどで申しますと、英国から輸入いたします、いわゆる英国製ビスケットといって、昔は国会で金魚にこれを与えるというような比喩をお話になったことなどを、私記憶いたしておりますが、この英国製のビスケットが単価六十円というものに対して、日本のビスケットが五十円である。日本のビスケットは多少安いのでありますけれども、英国製のビスケットが非常な魅力となって、日本製ビスケットの製造を非常に駆逐するのではないか、こんなふうにも考えられるのでございます。なお特殊の精密機械等を作っておりまする面では、近代の技術革新に関連いたしまして、これらに欠くべからざる少量の需要の精度の高い機械を作っている向きがございますが、これらはようやく国産の生産がその緒についた現在におきまして、ここで完成品の自由化が行なわれますというと、外国品の猛烈な売り込み運動が起こることは当然だと存じます。現在の制限下におきましてさえ、外国のそれらの製品が猛烈なリベート作戦や供応作戦によって、国内の中小企業もそれらのメーカーと大きな競合をやりまして、どうも力の弱い中小企業はこれに負けていきつつあるというような実例が幾多もあるのでございます。私の聞いたところによりますと、たとえば印刷機械の自由化につきましては、一般印刷機械については今一ぺんに自由化を行なうというと、全部がほとんど日本としては壊滅をするだろうから、一般印刷機械は少し時間を置いて最後の段階において自由化すべきだという御議論のように承っておりますが、ただ輪転機と称するものは新聞、雑誌等の多量印刷をやる応急の機械だから、これは日本でもメーカーが少ないし、影響が少ないだろうから、早目に自由化するという御議論もあるかのように承っておりますが、私の知っているメーカーの中で輪転フォーム印刷機というものを作っているメーカーがございますが、それは決して大企業でなしにまた大規模な機械でないのであります。最近の産業革命に欠くことのできない電子計算機等の用紙等を印刷する非常に小型の輪転印刷機でございますが、これらがようやく新技術の国産確立という観点から電子計算機もようやく日本でできた。それに要するパンチ・カードを印刷する輪転機も日本でようやくできた。これが外国品に比較して決して悪くないという世評を受けておりますが、ようやくできたところでありますから、なかなか価格におきましては外国品よりそう非常に安く作るわけにいかない。ここでこれが自由化するということになりますと、たちまち外国品に、多少安くても今のビスケットの話のように、国内品が外国品に駆逐されてしまう。せっかくできた日本の技術がここで芽をつまれてしまうといったことになるのではないか、こういったようなものが機械工業の中にはいろいろあるように承っておるのでございます。またプラネタリウムという天文の機械がございますが、これなども現在の宇宙ブームの関係で、国内でも相当にあっちこっちでこれを据えようという意向がございまして、ドイツなどから輸入をはかっておられるのでありますが、これが国内でできるようになりまして、外国におきましてはこれが案外に認識をせられまして、アメリカなどにも買われておる。ヨーロッパにも今非常に引き合いが出ておる。世界各国で百何十カ所も日本品を買いたいという認識が高まっておりますが、国内では舶来崇拝の国民思想に災いせられまして、これがなかなか売れない。外国に売れて、国内はまだ外国品を輸入しておる。お互いの国が製品を交換しておるという現象を呈しておりますが、こういう特殊のものに対しましては相当の配慮をしていただく必要があるのではないかと存じます。  そこで、これらの状況を勘案いたしまして、貿易自由化に対する対策といたしましては、業種別や企業別等に分けまして、きめのこまかい振興対策を十分考えていただく必要があるのではないかと思われるのであります。先ほどもお話がありましたように、トランジスター・ラジオ、あるいは光学機械でも双眼鏡や写真機のごとく、ほとんど日本の製品がアメリカ市場の独壇場を制しておるというものに対しましては、輸入自由化が行われましてもさしたる影響はないかと存じますけれども、先ほど申しましたような特殊の精密機械の中小メーカーによってのみできる少量生産の、むしろなくてはならない機械というものにつきましては、相当の配慮を必要とするのではないかと思います。すなわち、特殊機械の中で輸出可能の機種等に対しましては、海外市場の開拓が、中小企業でも十分にできますような積極的な考慮が望ましいのであります。渡航して市場調査し、あるいは見本市に出品をして、それの宣伝に人間が外国に出ていく、あるいは宣伝保険を政府がかけて、これによって間接的な援助をする。輸出保険法の中に宣伝保険という項目がございますけれども、これが、現状におきましては、ほとんど、大企業がプラント輸出等をお互いに国内の業者間で競争して入札においでになる旅費などに使われまして、ほんとうに中小企業が対外市場に新聞や雑誌に宣伝文書を出すというような必要に迫られた宣伝保険の利用が許されない、あるいはこれに品種か予定せられておりまして、お前の方で作っておる品種は、国できめておる品種の外であるから利用を許されないというようなことで、実情といたしましてはとかく中小企業にこれの利用ができにくいような状態になっておるように思われるのであります。これらの点も、一つ御考慮を願うという意味において、積極的な援助をすることが必要ではなかろうかと存じます。輸入の競争機械、先ほど申しました輪転フォーム印刷機のごときものに対しましては、いま少し技術的にも経済的にも育ちますまでは、輸入制限の特例を中小企業製品に対しては設けていただくような配慮を十分考えておいていただきたいと存じます。またそれらの関連といたしましては、先ほどもおっしゃいましたように、関税の保護、これはガットの規定の中にもある場合には許されておりますが、特殊の品種に対する関税の保護、それから輸出入取引法の強化等によりまして、これが保護せられるようなことが望ましいと思うのであります。  ただ古藤参考人のおっしゃいました、貿易自由化につれて当然独禁法が全面的に廃止せられ、あるいは緩和されることが望ましいというお話に対しましては、中小企業立場におきまして私どもは反対を申し上げたいと思います。先ほども申しましたように、中小企業の著しい後進性を是正するためには、いま少しくいろいろな法律による保護が必要でなければならぬと思うのでありまして、独禁法の除外規定といたしまして、協同組合法あるいは商工組合法等の施行がなされておりますが、これら独禁法除外の中小企業のカルテルの推進ということは、中小企業においてのみ多々ますますできるように御配慮を願い、一般的な独禁法の改廃に関しましては、いましばらく、日本の情勢がほんとうに安定をいたしまして、戦後の混乱経済が、インフレーションの懸念に対して最後の終止符を確立いたしますまで、これを延期していただきたいと存ずる次第であります。  そのほか、税制改正の問題につきましても、企業課税の面におきまして勤労所得、財産所得等とあるいは権衡を保ち、あるいはその特殊性を考えていただきまして、中小企業の企業課税の軽減を十分はかっていただきたいと思う次第であります。またその一環といたしまして、耐用年数の一般的短縮あるいは合理化のために特別に設置をいたしました機械の特別償却制度がございますが、これらの拡大、存続といったようなことは、後進性の著しい中小企業の設備近代化のためには、ぜひとも望ましい次第でありますが、これとともに金融政策におきましても、政府機関であります中小企業金融公庫、国民金融公庫、あるいは半官半民の商工組合中央金庫等の、政府資金の流れます金融機関に、いま一そうの国庫資金の導入をおはかりいただきまして、中小企業金融緩和に努力をしていただきたいと存じます。  いま一つは、国産愛用の運動の強化をぜひ願いたいと存ずるのでありますが、先ほど申しました。プラネタリウムの例におきましても、日本で同等以上のものができるとわかっておっても、舶来という魅力によりまして、大事な外貨がどんどんと国外へ流出をしている。外国はむしろ日本のものを買ってくれるといったような状況が見えるのであります。国産愛用運動というようなことが言いふらされておりますけれども、なお一そう強化していただきたいと思います。  そのほか輸出いたします価格と、国内価格という二重価格制の価格政策が現在多方面に見られますが、輸出産業を主としてやっております中小企業においては、ことのほかこれらの格差から参ります低賃金に甘んじていなければならない。こういう状態で大企業、中小企業間の賃金格差がますます開いておるような状態であります。今日では中小企業の平均賃金は大企業の二分の一以下に下がっておるのでありますが、これを何とかして是正しなければならぬということは国の経済の上において当然のことでありますが、これらを是正いたします一つの方法としても、輸出と国内需要との二重価格制からくる低賃金の是正ということにも配慮をしていただきたいと思います。また外資導入という問題につきましてはいろいろの御意見が出ましたが、ほとんどこれは大企業に限っておる状態でございますが、何らかの方法で中小企業も外資導入ができますように、たとい〇・一六%でありましょうが、あるいは一・六%でありましょうが、外資導入ができますように、これは個々の企業単位ではなかなかむずかしいかと存じますから、何らかの団体あるいは政府金融機関等が仲介になられまして、中小企業にも外資が入れられるように御配慮を願いたいと存じます。  最後に、最低賃金法というものが最近実施せられまして、労働民主化の観点から、生活ができるような賃金をとにかく払う必要があるということが一般に認められたわけでありますが、大企業と中小企業の関連におきましては、はなはだしい下請単価の搾取というものがございます。私きょうここへ参りますときに聞いて参りましたが、ある写真機会社が、合弁というほどではありませんが、外国資本との提携によりまして、外国名の写真機を多量に受注いたしまして、その写真機ののぞき窓のフアインダーのガラスを、中小企業に発注をいたしておる例を聞いたのでありますが、そのガラス一枚の値段が、驚くなかれ四十銭という低価格である。どうしてもこれをみがいておっては、そんな値段では納めることができないから、写真乾板の古いものを買ってきて、お湯につけて膜をはがして、それを清掃して、それに目盛りをして、それを切ることだけでやむを得ず納めておる、こういうことでありました。とにかく下請単価の切り下げ、搾取というのは非常にひどい状態であるのであります。貿易自由化の結果はこういった関係がますます激化するのではないかというふうに考えるのであります。そこで最低賃金制がございますように、最低下請工賃制といったようなものが何か考えられないものか、こういったことが一つ中小企業日本経済の半分を金額においても担っており、数におきましても九六%以上もあるわけであります。従業員もほぼ半分おるわけでありますから、貿易自由化とともに、これらの中小企業の育成をほんとうに考えていただきますことこそ、今後の日本経済のノルマルな発達のためにどうしても必要だと思うわけでありますので、こういう観点から中小企業貿易自由化の観点に関しまして一言公述をさせていただいた次第でございます。ありがとうございました。
  16. 中村幸八

    中村委員長 以上で参考人方々意見の陳述は終わりました。  委員より質疑の通告があります。順次これを許します。長谷川四郎君。
  17. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 時間がだいぶおそくなりまして申しわけありませんけれども、お帰りになる二、三の方だけに、ちょっと一つずつ御質問申し上げたいと思います。  伊原さんにお願いをしたいのですが、為替相場三百六十円の現在のレートというものは、外国から見た日本と比較してみて、もう少し高く評価されているんじゃないかということ、これに伴なってデノミネーションということを、どういうふうにお考えになられているか。今というわけにはいかないでしょうが、その時期というもの、どういうときにやるべきかということは、自由貿易に関してどんなふうなお考えでいられるかという点をお聞きいたします。  それから一楽さんにお聞きいたしますが、現在の日本農産物の価格全般から見まして、たとえば米に一例をとっても、日本では一石農民の手取りは一万円でございます。従って各国に比較して米の価格というものは非常に原価に開きがあります。これを、ドルを円に直してみますと、外国のを調べると大体一万三千円、二万一千円というのか高い方でございます。これは一例でございます。私は農産物を現在自由化しろという意味ではないのでございますけれども日本農業自体考えなければならないときにきていることは論を待たないところだと思う。従ってその改革をする方針というか、どういうふうに指導をなさっておられるか。たとえば耕地一キロ当たりに対して農業人口を調べてみると少ないところでは四名、日本では二百八十九名という人間である。私はこれに対する意見があるが、長くなりますから申し上げませんけれども、私は現在の農業耕地からいって四分の一の農業人口で間に合うという確信の上に立っております。でありますから、こういう点についてどういうような指導をなされ、いかに自由化という問題に触れたくなくても、助成という問題には逐次触れていかなければならない、農民だけに対する助成ということは許されないのではないか、こういう面もあわせて考えられますので、これらの指導について、抜本的な改革をしなければならない時期に来ているときに当たって、あなたがどういう考え方を持っておられるかということが一点。  それから稻葉先生にちょっとお聞きしたい。それは自由化に伴う先ほどからの論議というか、話題になっておりますカルテルの問題をどういうふうにお考えになっておられるか、この一点についてお聞きしたいと思います。
  18. 伊原隆

    伊原参考人 第一点の、為替相場一ドル三百六十円というものは十年以来日本がとって参りました為替相場で、その間日本経済力も非常に強く相なりましたし、これをささえております外貨も相当多いということ、それからまた外国からは主として輸出品の値段に関連いたしまして、もっと強いのではないかということを言われておりますことは先ほど申し上げた通りでございますが、私はこの為替相場というものは今後も政府は、他の外国が長い将来におきまして大きな変革をするというふうな場合は別にいたしまして、日本としましてはこれを堅持していただくことがよいと思います。  第二点のデノミネーションのお話でございますが、このデノミネーションは御存じの通りいわゆる貨幣の名前の呼びかえでございますから、だれも損をするものもないし、得をするものもない、株を持っておりましても、土地を持っておりましても、貴金属を持っておりましても、金を借りておっても貸しておっても、全然影響がないという経済的の効果を持っているものでございます。たとえばフランスあたりではこの間切り下げをいたしますと同時にデノミネーションをやり、また通貨の交換性を回復したのでございますけれども日本では過般のデノミネーション騒ぎという騒ぎが起こりましたことから考えましても、だれも損も得もしないものだということを徹底的に周知させることがなかなかむずかしい実情にかんがみまして、この点は軽々にやらない方がいいのではないかというふうに私は考えております。
  19. 一楽照雄

    ○一楽参考人 日本農業を基本的にどうするかという根本的なお尋ねでございますが、農業一つの営利的企業、一つの企業体と見ますると、いかにも時代おくれな、つまらぬことをいまだにやっておるではないか、これを近代的にやって、あるいは今の農業者の数を何分の一かに減らしてもやっていけるのではないかというようなお考えになるのは、ごもっともだと思うのでございますが、実際は日本はもちろんのこと、世界的に見ましても、逆に他の産業に就労できない多数の人口が、やむを得ずわずかな農地にしがみついているというのが、実態だろうと私は思うのです。また大経営でやりたいといいましても、それに相当する土地なり資本経済力がないわけでございます。ですから抽象的に大きな産業にするとか、大きな企業体にするという立場からいえば、当然今おっしゃいましたように農業者の数を減らすということが前提になるわけですけれども、それはそうやって選ばれて残された農業者だけはいいかも知れませんが、その切り捨てられた農民をどうするかという対策、その収容するところを先に作っていただく、それを一般経済界産業界の方へ収容していただく、その限りにおいては労働力は農業からそちらへ、今までも出向いておるわけであります。それが十分でなければそれ相応に失業対策なら失業対策で、農業をやっているよりも失業救済金をもらった方が得だ、損にならぬというような筋でもできれば、その農業の方の従業者を減らして農業を大経営にするということが成り立ちますけれども、そういう条件を備えないでただ農業自体がこれで近代化する、大経営にするというようなことは、この農民の中で優勝劣敗をさらに激しくして、それを助長しようというような考え方は、私は生きた現実の人間に対する政策といいますか指導としてはとれない。逆にこういう社会情勢を前提とする限り、わずかながらの農民でも、乏しきを分かちながらでも相結合して、六百万農民が―これを事業として見た場合、こんな零細な事業、こんなにお互いに過当競争している事例はないわけですから、せめてこれらができる限り流通面等において、他の経済界との関係においては、できる限りまとまって一本の力になって、そして他の経済界との関係において対等の立場に近いような立場を持つことが一つ。また農業生産自体においても、これは可能なる限り、技術を取り入れるにしましても、これを経済的に取り入れるためには共同化が必要でございますから、共同化することによって生産コストを下げていく方向に導いていく、じみなことでございまするが、われわれの行き方はそういう行き方をしておるわけでございます。  なお、特に日本の現在の農業を見ますると、農家が自給できるものも自給しないで交換経済の中へ入っておるということが必要以上に習慣になっていると思うわけです。そういう習慣ができました根本は、やはり日本産業経済を発達さすために、非常に周囲から農民を必要以上に交換経済に追い込んできていると思いますので、そういう点を是正して、可能なる範囲の自給は自分でやっていくようにしなければ、そして生活程度を高めるという方策を加えていかなければならないと思っております。  なお法制的に見ましても、タバコは農民が自由に作れない。米は作れてもどぶろくは自由に作れないという点で、日本農民経済の自由の原則も明治の初期に奪われたままで今日に至っておりますので、そういう点についても、もう少し農業者の耕作の自由並びに自分の農産物の処分の自由、これが制限されている面なんかも、逐次自由を与えてもらうようにして、農業の領域を広げていくというようなことが必要でないか。お答えにならないかと思いますが……。
  20. 稲葉秀三

    稲葉参考人 きょうの参考人お話にもございましたように、たとえば金沢さんは独禁法は改正すべきではないと言われまするし、古藤さんは自由化に備えて独禁法は全面的に改正すべきだ、こういったような御意見のように見受けられます。この問題は今後の自由化に備えまして一番大きな問題だと私は考えます。そこでこのお答えを現実的な立場から実は申し上げたいのでございますけれども、すでに繊維原料の輸入自由化を来年四月からするということは政府決定になったわけでございます。その政府決定をめくりまして、実はその前の段階で繊維産業総合対策懇談会というのが通産省の中に設けられまして、そうして業界、学識経験者側委員双方が集まって、この繊維原料の輸入自由化に対して、どういつた結論を出すかということが討議になったわけであります。その席でも実はその問題が現実的な背景から非常に深刻に出まして、たとえば業界の間でも、ニュアンスの相違はあるのですけれども、とにかく日本の繊維製品が世界一強いことは認める。だけれども、だれでも原料が買え、だれでも製品が作れるということになると、綿花も羊毛もどんどん入って、しかも設備がフルに動いて、結局国内の価格は下がってしまう。輸出の価格も安くなってしまう。であるから、何とかそれに備えて独禁法を全面的に改正をして、価格カルテルも作らしてほしい。生産カルテルも作らしてほしい。販売カルテルも作らしてほしい。今のところは自分たちの力だけでは作れないから、アウト・サイダー規制ということに対して、場合によっては政府が強権を発動してやってもらいたい、こういったような意見が出たわけであります。これに対しましていろいろ問題が出たのでありますけれども、私たち学識経験者―最後には学識無経験者といわれるようになったわけでございますけれども、学識無経験者の立場は、国際的に自由にするかわりに、今度はそのせきを国内でとめてくれというのは、自由化趣旨にも反する、独禁法の趣旨にも反するということであって、自由化というものを原則として産業組織を全面的に変えるという形と結びつけるのは、国際的な慣例に対してはおかしいじゃないか、むしろ業界とか各個々の企業そのものがこれに対処をすべきが原則である、こういった立場をとっております。大体こういったような立場が国際的にも適当な例であり、国内に対してもそうすべきだと思うのであります。ですけれども、実は現実的には非常に微妙な例がありますので、私はその場合において申し上げたい点は、自由化に伴って、たとえば国際的な批判を日本が受けるようなことであってはいけないというふうに考えます。そこで、独禁法の一番大きな条件である、たとえば三分の二なら三分の二の業者が団結すれば、価格も生産も数量も全部規制できるというところまではやるべきではない、しかしたとえば投資の調整とか輸出、こういったようなことについて問題が起こるときには、ある一定期間については政府がそれに対して介入をするとか、また現在の独禁法の中の不況カルテル、合理化カルテルの要件を拡大をして考える結果、この程度のことはいいではないか、しかし自由化をするから、そのかわりに全部国内的に産業保護をせよということは、これはどうもおかしい、こういうふうに言わざるを得ないのであります。むしろ自粛をしなければならぬのは大企業であり、経済団体の方であって、おれの方ができぬから国家や国民一つやってくれというのは、どうもおかしいのじゃないかと申し上げたいのであります。
  21. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 北裏さんがお帰りになるそうですから北裏さんに、お願いだけなんです。資本を導入される、資本取引が行なわれてくる、こういう点について各国でいろいろな法律を作っておられるようでございます。私も二、三承っておりますが、何か各国のこういうような例がありましたら、まことに申しわけないのだけれども一つこれを書いて送っていただきたい、これをお願いするだけです。  それから一楽さんの件は、あとでゆっくりこの点についてお話し申し上げて、―私はあなたの御答弁とちょっと違うのです。私は農民というものはやはり土曜、日曜にも休ませなければならぬのだ、農民にも八時間労働なら八時間労働をさせて、所得もりっぱに現在の大企業についている人、たとえば官公労についている人たちと同様なる、より高き生活ができなければならぬ。こういう点に重点を置いて私は先ほど申し上げたのですけれども、こまかいお話は、いずれあとでゆっくりお聞きしたいと思います。
  22. 北裏喜一郎

    ○北裏参考人 今の点は、私差し上げましたこの中の三十六ページに詳しく書いてあります。なおありましたらお送り申し上げます。
  23. 中村幸八

    中村委員長 次は田中武夫君。
  24. 田中武夫

    ○田中(武)委員 参考人の方にいろいろとお伺いしたい点があるのですが、時間を急がれる方もおられるそうですから、断片的になるので質問もやりにくいのですが、まず北裏さんが急がれているそうですから、一点だけお伺いしたいと思います。  先ほど北裏さんは参考意見を述べられる際に、外人投資について申されたわけでございまして、若干楽観のようなお話でござました。しかし、私考えてみますのに、為替統制がなくなりますと一〇〇%アメリカの資本で、いわゆるアメリカのというか、外国の会社が日本にでき、そして日本で生産をして、アジアとかヨーロッパへ輸出をする、そういう格好になるのではなかろうか、そういうものが出てくるのではなかろうかと思うのですが、それは日本の低賃金がねらいだと思うのです。そういうことがあるとするならば、現在アメリカと技術提携をやっております日本の企業は、いわゆる特許料を支払っておる、そういうことが大きな競争のために重荷になってくる。そういうことになってきて、民族産業といいますか、そういう点から危険であるというように考えるのですが、そういう状況についてはどういうような御意見を持っておられますか、お伺いいたします。
  25. 北裏喜一郎

    ○北裏参考人 実は私の申し上げました最後の提案の中に、われわれとしましては資本取引の自由化、ことに株式の取得につきましては、依然として現在の外資法によります許可制をやはりとっていかなければならぬということが、前提になっております。従って今の企業参加でも、日本で一〇〇%資本を出して、日本の人と技術を使うという点につきましは、あくまでも許可制にせざるを得ない。またそうすべきであると考えるのでありまして、これは今後とも握っておく必要がある、これが前提でございます。現在でも、すでに先ほど申しましたが、相当な会社が技術提携と資本参加をして初めから重役も入れております。そういう観点から、今後もあろうかと思いますが、これはやはり許可制をとる必要があると思います。これを野放しにするわけにはいかぬと思います。
  26. 田中武夫

    ○田中(武)委員 次に、稻葉先生もお急ぎのようですから、稻葉先生にお伺いいたしたい点を一度にまとめて申し上げますので、御意見を聞かせていただきたいと思います。稻葉先生は、経済評論家という立場から自由に意見を申し述べるということをおっしゃったので、一つ自由に意見を伺いたいと思うのですが、まず第一点は、この日本自由化に踏み切る、これは世界の大勢であるには違いないが、やはりアメリカ等の意思が強く反映しておるのではなかろうか。あえて言うならば、アメリカの押しつけとまではいかなくとも、そういったものではなかろうかという考えを持っております。だが、実は池田通産大臣等にこの点を幾らただしてもそういうことはありません、こう逃げておる。絶対にないとはわれわれは思わないのです。そういう点で、新安保条約第二条に日米の経済協力関係という規定がございます。御承知の通りでございますが、ちょっと読んでみますと「締約国は、その自由な諸制度を強化することにより、これらの制度の基礎をなす原則の理解を促進することにより、」云々、こういうことになっておることは、この安保条約の経済的な効果としての自由化をうたっておるといいますか、言うなれば押しつけられておる、こういうような感じを受けておりますので、その点について率直な御意見一つ伺いたいと思います。  もう一点は、自由化をやるについては日本はまだその条件が十分できてないのじゃないか、こういうように考えるわけであります。たとえば手持ち外貨にいたしましても十三億ドル、たとえば西ドイツのやった場合は六十億ドルだったと思いますが、そういうような点、ヨーロッパあるいはアメリカが自由化を進めているが、その以前に、たとえばヨーロッパにおいてはヨーロッパの経済ブロック圏といいますか、そういうようなものかできている。あるいはアメリカにおいてもそういうようなものができている。すなわち自分のところを中心とする回りのブロックを完成して、そのブロックの上に立って自由化を進めてくる、こういう格好でございますが、現在日本におきましては、アジアにおいてそのような状態がないことは御承知の通りでございます。そうするならば、日本はアメリカの経済圏へ入っていく、言いかえるならば、アメリカに対して経済的な従属関係を強化していく、こういうことの踏み切りの上においてやるかしなければならぬのじゃないか、このように考えます。それから、この自由化は自由主義諸国間における貿易自由化ということであって、共産圏との関係についてはどうなるのか。日本においては、共産圏、たとえば中共との貿易ということをまず開いていかなければ、ブロックというか、自由化を進める土台に欠けるのではないか、このように思うわけなんです。そういう点についての御意見。  第三点といたしましては、先ほど先生の御意見の中に、自由化に見合うように賃金を直す、何かこういったような御意見があったと思うのです。これはどういうことを音仙味しておられるのか。私考えますのに、日本のは、先生も言われたように自由化によって加工産業を推進しなければいけない、すなわち、安い材料を入れて作って出すという格好、これは日本の低賃金、こういうことに目をつけているといいますか、そういうふうに思うわけなんですが、この自由化と賃金の関係、ことに先生のおっしゃった自由化に見合うような賃金態勢ということはどういうことを意味しておられるのか、それをお伺いいたします。  それから先生の御意見の中に、自由化を進めるにしても三年ないし五年ということをおっしゃったわけでありますが、たとえばドイツ等はその準備に十年かかったと思うのです。政府の計画では三年後に七〇%自由化する、こういうことなんですが、テンポとしてそういう程度でもいいのか、これは私が先はど申しました条件が整っていないのじゃないかという点とも関連すると思いますが。  最後に、中小企業あるいは農業関係の方の御意見にもありましたように、自由化に対する中小企業擁護あるいは農業生産の保護というようなことも必要だということは言うを待たないのでありますが、まずその政策といいますか、そういう立法、措置をやってやらなければならないのじゃないか、このように考えるのです。そういう点についていろいろお伺いしたいのですが、時間がないそうですから、まとめてお伺いいたしまして御意見を伺いたいと思います。
  27. 稲葉秀三

    稲葉参考人 十分お答えができるかどうか内心じくじたるものがありますけれども、でき得る限り率直にお答えを申し上げたいと思います。  まず第一に、今度の自由化についてアメリカの要請があるかどうかということでございます。私最近の自由化ということについて特に感じますのは――去年の春ごろから、日本経済伸張に一伴いましてアメリカもそうでございますし、西ヨーロッパもそうでございますし、ほかの国々からも、どうも日本のやっていることは経済成長発展と見合っておかしいじゃないか、そういったような議論がだんだん強くなってきた、こういった事実があるということを指摘したい。もう一つ申し上げたい点は、なるほど日本から言えばいろいろ理屈はあるのですけれども、向こうから言う理屈にもやはりわれわれは客観的に聞くべきものがあるということも申し上げたい。たとえば繊維製品を、日本世界市場に送り出そうとしている。しかもやれ日本の繊維製品は安過ぎるとか、いろいろそういう非難をこうむっております。ところが日本政府も繊維業者も、外国から繊維製品を買うということは、これを全部ストップしておるというのが実情であります。なるほどイギリスやフランスの繊維製品も入っているのですけれども、これは協定貿易でちょっと入っている。ここまで日本が大きくなったのに、どうも日本のやっていることは勝手だといわれますと、必ずしもいやおれの方の言うことが百パーセント正しいというふうには、これだけ経済が伸び、輸出が伸びてくるとなかなか私は言えないのじゃないかということを申し上げたい。また日本とアメリカとの貿易で、去年は御存じのように、アメリカの統計を見ますと、アメリカの日本に対する輸出が九億三千万ドルで、日本がアメリカに輸出したのが十億ドルで、そのほかに観光収入とか特種収入というのがどんどん出ている、一年に五〇%も伸びた、こういったようなときに、日本はアメリカから入れるものはなるべくストップして、しかも、やれ繊維を買え、雑貨を買え、自動車を買えというと、しかも自動車は日本はもう全然買わぬ、こういったようなことで、今までは理屈が出たけれども、こういったような条件が変わってくると、なかなか出にくいという事情もあるということも考えなければならぬ。さらに、やはり日本貿易で立っていくというときには、アメリカや西ヨーロッパやほかの後進国考えていくということをもっとよく考えて、おおらかな気持でやっていく必要があるということも申し上げたいし、特に私たちが心配しますのは、IMFやガットの関係で、ほっておけ、ずっと日本が伸びていけば、三年前にドイツがやられ、去年イタリアがやられたように、お前たちはもはや十二条国ではないから八条国に改めろ、こういったようなことを言われたときには、それでは日本自体はそれを拒絶するのか。社会党はそれじゃそんなことはほっておいて、独立自主でやろうといわれるのかというと、なかなかそういうふうにはいきにくい。しかも私は国内の条件考えて、いよいよ日本も近代化する方向へ向けていくといったようなときにきておるときに私は必ずしもアメリカの要請がないとは言いません。しかし世界的な要請でこの問題が出てきたのだというふうにお考えになる方が合理的ではないかと申し上げたいのであります。  それから、第二点としてお答えをいたしたい点は、実はこれが安保条約の改定とどういう関係にあるかということであります。これについては実はこの間私テレビ放送をしまして、こういったような経済問題を政治的に扱ってもらいたくはないという放送をいたしました。それと同じであります。むしろ問題は、これが日本国民経済を全体として上昇せしめるか、プラスになるかマイナスになるかという局面で考えるべきであって、これを政治的に結びつけて考えていくというのはおかしい。しかし日本とアメリカとの関係については、最近経済上からもある種の変化があるという事実はこれを否定いたしません。と申しますのは、先ほど申したように、日本とアメリカの貿易関係が変わってきた。つまり一年にアメリカへ五〇%以上も日本輸出をし、しかもそのほかに―ここに通商局長がおいでになりますけれども、繊維製品とか合板とか、その他二、三のものについてはアメリカの国内の反対もあって、輸出自主調整をしていくといったような状態が起こっているわけであります。さらに、日本もここまできたのだから、もはやこの後進国開発というのも自分の実力をもって自前でやるべきではないか、あるいはまた国内経済態勢についてもある種の措置をとるべきではないかといったような要請が、やはり私はアメリカから出ておると思います。またこれは私個人の研究所の理事長や評論家として、いろいろ外国の方にお目にかかって意見を聞くわけでございますけれども、特にやはりアメリカの新聞関係方々とかいうのが去年の春以来こういったような問題についてどう思う、こう思うといったようなことを言われておったという事実も否定をいたしません。しかしこれは私をして言わしむれば、やはり経済的な必然の形になって、こういったような要請が出てきたので、別に安保条約について日本が反対する賛成するということが、この自由化がどうかということと大きな関係があるとは、どうもそこまでは客観的にそれが正しいとは言いかねるということを申し上げたいと思います。  それから第三点に、つまり私たちが自由化をしなければならぬというのは、実は百パーセントの自由化じゃないということなんです。先ほど共産国の貿易お話が出ましたけれども、もう一つ大きな問題は、日本輸出の四%くらいがやはり実は相手方がなかなか自由化ができないという国に輸出をしておるという事実があるわけであります。それではそれを捨てて何でも好きなところから安くていいものを買え、そして日本貿易構成を主としてアメリカや西ヨーロッパを中心にした先進国とやれということを、私たちがリコメンドしておるのか、また政府が今度おとりになる政策でそういったようなところまで、百パーセント大きく御変化になるのかというと、そうじゃないのです。やはり当分そういったような情勢は不可避的に長く続くだろう、そういったようなことを前提としたワクの中で、今までのやはり貿易管理や為替管理をどのようにしていくかということが、現実に現われるであろう貿易為替自由化プログラムであります。現にさっきも独禁法についてお話が出ましたけれども、実は繊維の自由化についてそれが非常に深刻に出ました。たとえば、日本はエジプトやペルーやイランとかいったような国から綿花を買っております。しかもその綿花というのは、よそに比べますと相当高い綿花であります。じゃ一つわしら自由化になったら、もうそういったような綿花を買わぬでもいいのか、それなら自由化にわしら協力してもよいというのが、一部の綿業者からいわれております。また羊毛については、御存じのように、オーストラリヤの羊毛やアルゼンチンの羊毛や南阿の羊毛があります。オーストラリヤに比べればそれらの羊毛は高いのであります。じゃそれを私たちは百パーセント採択したかというと、そうではなくて、結局それを確保して、非自由化、AA制をやっていこうということは、やめてほしいという形の妥結が行なわれたということを申し上げたい。それはどうしてやったのかと申しますと、綿花についていえば、輸入の一〇ないし一五%はどうしてもそういったような非自由化地域から買わなければいかぬ。これは高くなるかもしれぬ。しかしそれが見合いにやはり日本輸出に役立つということなら買いましょう、そのかわりに過去の実績に応じて、その自由化一五%というものは、やはり輸入した人が買うのだとか、あるいは価格調整費を何%か積み立てておいて、そうして高いものを輸入した人にはそれをお渡しするのだとか、そういうことをやれば、百パーセントの自由化でないけれども自由化体制というものはできるのじゃないか。また日本としては、じゃここで全面的に東南アジアに対する貿易をやめてしまえとか、あるいは今後経済ベースで中共やソ連との貿易をするのはやめてしまえ、こういったような意味自由化が唱道されているかといえばそうではなくて、やはり日本はそういったような形において、協定貿易その他のことをやりながら、他方においてはますます日本産業を国際的に強化していく、こういったような二重の自由化というのはやれるのであって、それがあるために全部自由化を御破算にするということにはならなくても、大体よいのではないか、こういったような立場に立っております。  それから最後の自由化と賃金の問題でございますけれども、実は農業がだめになる、中小企業がだめになるということは、この自由化に伴いましていろいろな方々から言われております。現に岸総理も一月二十日のアメリカの新聞記者会見で、日本先進国といわれているけれども、まだ中進国で、農業中小企業の占めるウエートが高いので、こういったような点を十分考えてやってほしいということを言っておられます。ですけれども、私個人は先ほどもちょっと申し上げましたけれども、必ずしも自由化といったものに対して、そういったようなネガティブな感じは持っていないということを率直に申し上げたい。  まず第一に、その自由化に伴いまして、日本中小企業の賃金水準が直ちに国際的になるということは、私はむずかしいと思います。しかし今五藤さんの言われたように、自由化をすれば賃金格差というのはますます大きくなるかといえば、これはうそだと私は申し上げたいのであります。またそのようなことをさせてはいけないと申し上げたいのであります。と申しますのは、案外事業をやっておられる方が、現実の労働市場とかそういったようなことを御存じないので、今は非常に人が余る、幾らでも人があいておるというけれども日本中小企業は今や若い人々を採るということに非常に苦難を感じておるのが実情であります。しかも、最近は大企業の中でも繊維産業のごときは、結局トランジスター・ラジオや機械工業がどんどん大きくなって、そこで若い人々や女の人が働くので、人が集まらない。現に、東海地方では、去年五万人、人が足らぬ、ことしは八万人、人が足らぬといったような状態になっているわけです。じゃ、私の方はそれで、安い賃金でやっていかにゃならぬといったってできない。だから、中小企業自由化に備えて近代化して、そして大企業はやはりそれを育成するような政策をとることによって、現実に賃金格差というのは、これからだんだん解消していくはずだと私は思います。また四、五年たって、労働人口が急激に増加が減り出したときには、もっとえらいことができるので、それに備えても、今日本はやはりもっと近代経営や近代化というものを推進していかねばならぬ。また、ほんとうに日本が完全雇用というものになるためには、そういったような形によって初めて、労働市場経営変化によって完全雇用というのが認められてくる。過渡的には、やはり問題はむずかしいんですよ。だから、私はまず商品の価格を漸次国際水準に近づける、金利も国際水準に近づける。そして最後の段階では、加工産業をだんだん育成することにおいて、日本の賃金水準が国際的にだんだん接近をし、また上と下の格差がなくなっていくということが必要だ。特に、私は四年前に労働省の中で、むしろ大労働組合は自分の会社を督励して、中小企業の下請単価その他を是正するということに協力すべきじゃないかということを申し上げましたが、今やそういったようなことをやって、今までは口にしたけれども日本は初めて、現実の場合において民主国家、上と下のものがだんだんなる国家にでき得るような経済条件経済体質を漸次身につけていくのだ。だから、体質を改善してから自由化をしようということじゃなくて、自由化と体質改善というものを双方結びつけてやっいてくということが必要だというのが、私の見解であります。
  28. 田中武夫

    ○田中(武)委員 それじゃ、条件の問題です、基礎条件。それから施策の問題、たとえば、農業に対しては、合理的農業政策が必要だ、こうおっしゃったのですが、まずそれを前提としてやらなくちゃならないんじゃないか、こういうことです。
  29. 稲葉秀三

    稲葉参考人 私がさっき申し上げましたことをもっと率直に披瀝をいたしますると、農業について一楽さんからいろいろお話もあり、私も一楽さんも、今法律によって規定をされました農林漁業基本問題調査会の連絡員で、最後の調整ということに当たっているわけであります。そして、先ほど申し上げましたように、日本農業については、自由化しなかったら日本農業がうまいこといくというんじゃなくて、自由化しなくても、今の制度をとっておっても、日本農業は所得が伸びない、都市に比べてだめだといったような実情にあるので、それをどのようにしていくかという問題に直面をしているわけであります。しかし、その自由化をして、直ちに農産物を写真相場プラス関税で日本に導入してみれば、日本農業が壊滅的な影響を受けるということは認めます。しかし、その条件として私の申し上げたい点は、ますます日本農業を、長期に見てだめにするような政策はとらなくてもいいじゃないか。もっとはっきり申しますと、米が余り出しているのに、全国至るところに国会で農業増産費を御決定になって、米をどんどん作るということはおやめになってはどうだろうと申し上げたいのであります。  それからさらにいろいろ農業保護政策というものについてもやめる。そうしてむしろ畜産物をどのように効果的にしていくとか、あるいは下層の農家をどのように救っていくかということに対する農業政策を立てるべきであります。そしてこれを自由化政策と並行して行なうべきであって、私をして言わしむれば、今の政府施策あるいは国会で御決定になる農業投資や、政策というものは農民のためにはならぬ、こういうように申し上げたいと思います。
  30. 田中武夫

    ○田中(武)委員 もう一つ私お伺いした中で―時間がないからこちらもまとめて申し上げますが、十三億ドルの手持ち外貨でやるということ、あるいはブロック経済の上に立って相手方は自由化してこよう、これに対してこちらは足場を持たなくていいのか、こういう点。もう一つ先ほど先生は経済問題と政治問題は切り離すというような御意見だった。だが私はその政治関係によって経済がゆがめられるということをおそれるのであります。たとえばおっしゃるように、なるほど世界の大勢あるいは日本の国内からの要請等もあって自由化ということは出てくる。しかしながらほかの外からの力によってそれをもっと推し進められる、たとえばもっとかけ足しろ、こういうことでうしろからしりをぶたれるというようなことで倒れてしまう。こういうようなことでテンポの問題等考える。たとえばアメリカは現在四十二億ドルですかの国際赤十字を持っておる。それを本年中に直さなければいかぬ、これはアメリカの大統領選挙等の関係もあると思うのです。そこで今までやっておった中から後進国開発を肩がわりするとか、あるいは軍事援助をなくするとか、あるいはこれを民間に肩がわりさせるとかいうようなことを言っておる。それとこれとの関係があるのじゃないか。たとえば先ほど先生のおっしゃいました後進国開発の問題にいたしましても、それは東南アジアに出ていかなければならぬという日本の意欲はある。しかしそういうことが中心になってなお押し寄せられて、実力以上にかけ足させられるのではないか、こういうことを憂えておるわけですが、その点どうですか。
  31. 稲葉秀三

    稲葉参考人 まず十三億ドルということについて申し上げれば、これだけの外貨日本自由化ができないじゃないか、こういったような主張が強く言われております。これについて私の意見を申し上げますと、望むらくは十三億ドルよりももっとたくさんの外貨日本は持って、自由化の導入に入っていきたいと思います。しかし御存じのようにこれには段階があることで、必ずしも今はまだ最初ですから、直ちに最後の段階と今の十三億ドルを結びつけるのはどうかという点が一つ。それからなるほど、先生のおっしゃいましたドイツは五十億ドルで自由化に入ったと言われますけれども、実は日本とドイツの貿易国際環境がだいぶ違うということも知っていただきたい。たとえば西ドイツは、大体最近は片道百億ドルくらいの輸出輸入というものをやっておるわけです。日本はこれだけ増大したといたしましても、三十五、六億ドルですから、かりに五十億ドルを三分の一にお割りになれば、大体十六、七億ドルというお金になるだろう。また国際的な資本導入というのは少なくとも現段階では、日本とドイツとは比較にならぬほど小さい。こういったようなことを考えますと、財政金融政策の手綱よろしきを得るのと、段階的にやっていくということをいえば、十三億ドルは少な過ぎるから自由化へはできないという主張にはならないだろう。しかもこの十三億ドルというのは御存じのように最近保有外貨の計算が変わりまして、全部自由にできるという形になっておる。そのほかにはまだいろいろ昔式にいえば二十億ドル近い形になり、そのほかにダイヤモンドもあれば金の茶がまも日本にはある。こういったような状況ですから、必ずしも今の基礎の上からはできない、こういうようには言えないじゃないかというふうにお答えを申し上げます。  その次に私は政治と結びつけてはいけないというのは、私が経済評論家という立場で言うのでありまして、皆様のように政治を主としておるお立場から言えば、別の考え方もあり得るということは否定はいたしません。ただ最近のアメリカとの関係について言えば、必ずしも私は政治的に押しつけられたとは考えない。現に、最近アメリカから予算教書とそれから対外援助教書というのが出ているわけであります。ところが、現実は、やはり先生のおっしゃるのと違いまして、なるほど四十億ドルの赤字はある。その赤字を消さにゃいかぬということは考えておるけれども、といって、アメリカのことしの対外経済援助費は、去年よりはやや増額をするという形になっておる。しかし、個々の、たとえば極東に出しておりまする経済援助資金とか、いろいろほかの勘定については、今まではヨーロッパや日本の品物もその援助のお金で買ってよかったのが、このごろは、やはりアメリカのドルの問題を考えて、原則としてアメリカの品にかえる、そういう点は伊原さんがよく御存じだと思うのですけれども、そういったようなことになっている。しかも私どもの漏れ聞くところ、四十億ドルの赤字を一挙に消せるということは考えなくて、大体ことし一九六〇年は三十億ドルくらいに減らしていこう、むしろでき得る限りは商品輸出の面で減らしていこうということで、いろいろほかに受ける影響というものを考えて、やはり漸進的な政策というものをとりつつあるように思う。しかしこれはやはり今までと違うのですから、マイナス局面に見られないとも言えません。ですけれども、一応公平に判断すればそういったことになっているので、直ちにアメリカの国際収支改善と結びつけて、自由化という問題が出てきたとは思えないのであります。  経済ブロックについて申し上げますと、私はそれについて一点として強調したいのは、先ほど伊原さんからのお話もありましたけれども、つまり私たちが言っている自由化は、昔の金解禁のときとは違うのだ、それから第二点は、だから今の為替レートを維持するということを考えて、やはり弾力的に間接的に財政や金融産業政策をうまくコントロールしていくような形において持っていけということであって、その点は前の段階のものとは違うということと、確かに西ヨーロッパではブロック的な経済自由化が推進されているという面がございます。ですけれども、これも第一次大戦後のブロック経済化と違いまして、むしろその中においては相当自由の要素というものがあり得るではなかろうか、こういうふうに考え、しかも最近、去年から日本は御存じのようにもはや中進国ではなくて、先進国だとか工業国だとかいわれましたが、日本の工業製品が目ざましく世界市場に進出しているといったようなことなのでございまして、確かにブロック化の面があるとは言えないけれども日本が今私どもの述べるような漸進的な形でいく限りにおいては、やはり極東でブロック経済を作って自由化をしていくということよりも、日本が今の段階に即応しながら漸次自由化を進めていくということはあり得る。しかもこれを国内的にプラスの条件としてやれるという余地はあり得る、こういうふうにお答えを申し上げたいと思います。
  32. 八木昇

    ○八木(昇)委員 関連して。お急ぎでございますから、非常に恐縮でございますが、関連して一つ。大体先生のおっしゃる意見は私どもも理解ができるのでございますけれども、やはり実際品物を輸入する者、あるいは国内の消費者という立場からしますると、どうしても貿易自由化していきますると、農産物とか工業原料というものは、従来東南アジア等の後進国から輸入していたものが、アメリカからの輸入へどうしてもほっておけば切りかえられていくということになるのじゃないかという懸念を感ずるわけでございまして、そういう点さらに先生のお気持をちょっと伺っておきたいこと。それから、私あたりはしろうとでございますけれども、今度日本貿易自由化することによって、わが国の貿易が積極的に拡大をするという要因ですね。ピンとくるような要因というものをなかなか見出し得ない。そういう点がどうしても私どもの気持に一つのひっかかりとなっておるわけです。で、日本貿易自由化したからといって、相手国の方の、たとえば関税などによるところの輸入制限措置とか、そういったものが解除されるという保証が一体あるのか、こういった点で私ども非常な疑問を感ずるわけです。特にアメリカあたりとしますれば、ドルが出過ぎておるから、もう少しドルを回収しようというような気持から、貿易自由化を呼びかけておるとするならば、なおさらその懸念がある。そこで日本貿易自由化することによって、わが国の貿易が積極的に拡大するという要因、われわれが納得できるような、ピンとくるような要因、そういったものを御説明願いたい。
  33. 稲葉秀三

    稲葉参考人 十分なお答えができるかどうかわかりませんけれども、まずお答えいたしたいのは、この自由化は、先ほども申し上げましたように、国際的部面からだんだん出てきたものである、従って、では今のままの体制が日本でとれるかどうかということも、もう一ぺんよくお考え願いたいということを申し上げたい。たとえば最近でもいろいろなことが言われている。現在、これ以上もう自由化をしないでほっておくと、ますます日本に対する商品輸入の制限とか、いろいろなものが行なわれてくる。現に西ヨーロッパでは平均九三、四%の自由化が行なわれています。しかし、その残りの分は実は日本に適用されているので、日本という国は低賃金で、その他いろいろ産業保護もしているから、まだ対等のおつき合いはできぬといったような形でシャット・アウトしているわけです。それと同じようなことがだんだん強くなっていくということはある。そうすると、私の申し上げたい点は、先ほどの繊維製品やいろいろな例から見まして、日本も今度はやはり自由に輸入をいたしますということをやれば、そういったような努力を多として、それは保証はないけれども、三十五条がだんだんなくなったり、それから各国の商品輸入というものをだんだん少なくするということもあり得る。先ほども申し上げましたように、国内の消費者はそれを好むのですけれども、やはりメーカーの方がそれをいやがることによって、自由化というものにレジスタンスしたいという空気は案外日本に強いのです。端的に申しますると、日本の大企業も、ほかの産業がやってもらえるのはいいけれども、おれの方はやってもらいたくないというのが、大体率直に言えば最近の自由化に対する空気です。そうすると日本が保ち得ないじゃないかという形で、そういったようなことを取りほぐしていけば、だんだんと、保証はないけれども日本においてプラスの要件はあるだろう。それはかけかもしれません。しかし、どうも今のままのやつがずっと続けていけそうもないということを考えますと、大体経済的には体質も改善され、ここまて来たのだから、一つやや強い形に移っていく方がよい、こういったような観測だというふうにお考え願いたいと思います。
  34. 田中武夫

    ○田中(武)委員 きょう参考人方々に来ていただいて、意見をいろいろと聞かしていただくということに、ちょっと計画に無理があったと思う。いろいろ聞きたい方が急いでおられるので、どうも残念ですが、あと伊原さんと一楽さんが急いでおられるそうですから、簡単に一つお伺いしたいのです。  まず伊原さんですが、最後に要望というようなことで三点ほどおっしゃいましたが、そのときに、安く輸入して、これを安く輸出するようでは意味がない、従って、安く輸入して、高くという言葉はなかったが、適当にやらなくちゃいかぬ。こういうような御発言があったと思うのですが、その裏にはやはりカルテル強化ということを示唆されておるのかどうかということなんです。原料を安く輸入して、そうして安く輸出するようでは意味ない、こういうようなことを言われたと思うのですが、その裏にはやはりカルテル強化というようなことを考えておられるのかどうか。  それからもう一つついでですが、先ほども稻葉先生に伺いましたが、賃金の問題です。あなたも、雇用はよくなる、こうおっしゃったわけですが、もちろん雇用という面になれば若干伸びるのじゃないかと思うが、賃金の面はむしろ下げられる、コスト・ダウンが行なわれるから、賃金は安くなる、同時に労働強化がしいられるのじゃないか、こういうように考えますが、そういうような点についてお伺いします。  それから一楽さんですが、自由化はいわゆる自由諸国家における自由化、こういうことで、現在ではアメリカ、ヨーロッパとの自由化ということになろうと思う。東南アジアとはそうはいかないと思う。そうすると、こちらの輸出したいものを向こうに買わすためには、向こうのものも買わなくちゃならぬ。そこで、池田さんが先日言っておったように、「東南アジアの米を買う、こういうことになると、先ほど来言っている農業関係に大きな影響があるのですが、そういう点について一楽さんの御意見を伺いたい。これだけをお伺いしておきます。
  35. 伊原隆

    伊原参考人 簡単にお答え申し上げ  ます。第一の点でございますが、今度の輸入自由化ということによりまして、まず原材料の輸入自由化が行なわれることになっておるのですが、御存じの通り、日本貿易立国の国でございますので、原材料を安く手に入れるということによって輸出をしていく。現に、私は数字は知りませんが、今度の自由化によりましても、原材料が今までよりも安く手に入る。それで、国内の消費者にも安いものを売ることができるというよい点もございまするが、同時に、日本全体としては、それによって輸出が伸びていかなければならない。輸出が伸びるためには、これは品物によって違いますけれども、私どもも外人に接する機会が非常に多いのですが、日本では安く売り過ぎるために輸出が伸びないということを各方面から聞くわけでございます。輸入自由化によって、せっかく原材料が安くなりましても、またそれを切り下げて売るのならば日本全体としてはプラスにならないと思います。外貨も失いますし、後ほど申し上げます雇用の問題、国民所得の問題、ひいては賃金の問題というものも、少しもよくならないわけでございまして、その方法につきましてはいろいろな方法があると思います。しかしながら、何とかして輸入自由化ということの利益を、輸出の面に確保する方法を講じなければいけない、こういうふうに考えておる次第でございます。その内容をどうするかということは、私は一つ考えを持っておりますが、いろいろとやり方があると思いますので、国全体としては自由化の福を転じて災となすようなことがあってはならないので、輸入自由化によって安く入った原材料を使って貿易を伸ばし、所得を伸ばしていくということが必要だと思います。  それから、第二の点でありますが、私も稲葉さんと同じように、雇用の問題、賃金の問題というものは、所得がだんだんにふえるという意味でふえると思います。先ほど申し上げましたように二つありますが、第一は、今度の自由化ということが三百六十円という為替相場―それは外国から見ましてもある意味では割安、つまり輸出に有利で輸入に不利な為替相場輸入をいたすのでございますから、個々の産業の受けます影響は別でもあり、また順序によりまして影響が違いますけれども、国全体としては雇用もふえ、また所得がふえていくという方角に進むと思います。  もう一つは、今後の問題といたしまして、さっき稲葉さんからも言いましたように、外国では人が足りなくて困っておる、日本ではむしろ人が余っておるという事態も、現在の問題としてもだんだんに解消されつつあるのでありますが、今後輸出が増加していくというふうなことを通じまして、中小企業の賃金というものも上がっていくべきものと私は考えております。
  36. 田中武夫

    ○田中(武)委員 安く入れてうまく輸出しなければいかぬ、これはわかるのですが、そのためには輸出カルテル等のカルテル政策も含みとしておられるのかどうかということなんです。
  37. 伊原隆

    伊原参考人 私はカルテルというふうなことが、ほかの弊害の問題とバランスの問題でございますが、政府業界においても自主的にやらなければならぬ。しかし、業界でできない場合には、政府もいろいろな方法で、交通整理的なことはやっていただきたいと考えております。
  38. 一楽照雄

    ○一楽参考人 経済発展さすためには、経営者方々がいろいろ努力して、機動力になることは事実でございますけれども、単に事業経営者立場からの促進だけでなく、それと同時に、経済のための経済ではなくて、結局においては国民大衆の生活程度の向上のためのものでございますから、その面からの配慮も同等に考えてやっていっていただきたい。およそ経済の原則は、放っておきますと弱肉強食の傾向へ行きますので、そこに政策を加えるゆえんのものは、むしろそういう傾向に対する是正、むしろ消費者の面、国民大衆の消費の立場からの是正ということが政策としては必要ではないかと思います。従いまして、ただいまもお話が出ましたように、一般論として貿易伸張するということ、特に輸出伸張するということは当然必要なことでございますけれども、それは多くの場合手段であって、それ自体が目的ではないわけでございますから、今例示的にお話がありましたように、東南アジアに輸出するために米を入れるというような本末転倒した考え方は絶対反対でございます。
  39. 板川正吾

    ○板川委員 一楽さんは時間の関係もあるようでありますから、一つだけお伺いします。  先ほどのお話を承っておりますと、政府貿易為替自由化をすると、日本農業を非常に圧迫するおそれがあり心配している。しかし、政府のやり方なりしさいに聞いていると、やや安心できるものもある。こういうふうなお考えのようでありました。しかし、経団連の古藤さんの御意見の中にありましたように、農業について補助するなら補助するというはっきりした形をとりなさい、こういう主張をされている者がある。しかし、はっきりした形をとれば、日本農業に非常に強い保護政策をとるならば、ガットその他後進国議論を喚起することは御承知であると思う。そこで、古藤さんから、国際会議でも今問題になっておるからその保護政策はいつまでも続けるわけにもいくまい、こういうお話があった。そこで、ジュネーブでガットの第二委員会があって、この委員会では日本農業保護政策が議論になったはずでありますが、そういうガットの動き、それから後進国で、今お話がありましたように、日本の品物を買うかわりに米やなにかを買ってくれ、こういう強い要求になっている。そうしますと、農業保護政策が当分続くから、まずこのところ安心というような気持を持つことはどうも危険じゃないか、私はこう思うのです。御承知のように、ヨーロッパの共同市場では、とにかく問題もありました西ドイツもフランスも、一九六五年までに全部の農産物自由化しよう、こういう計画を立てて、今着々準備を進めておる、こういう状況ですから、将来やはり自由化の傾向が―特に政府に強い経団連の意向がそうでありますし、やはり将来日本農業というのも嵐の前に立たざるを得ないじゃないか。そうしますと、今後日本農業はどうあるべきかという問題を、農業関係の団体が白紙でおるのではなく、自分から積極的にこうなくてはならぬではないかというものを打ち出していくべきではないか。そのことは政治の関係だから、白紙で政府にまかせるというふうなことではなくて、日本農業関係の団体、日本の百姓自身が日本農業を将来こうしてもらいたい、こういう形を持つべきではないか、それをまた政府に要求すべきじゃないか、こう思うのでありますが、これに対するお考えはいかがでしょうか。
  40. 一楽照雄

    ○一楽参考人 大体ごもっともに思うのでございまするが、農民経済的地位が低いということは頭脳的地位も低いことにつながっておりまして、おっしゃられますような、そういうように外から外からではなくて、農民に同情を持ってごらんになる方からごらんになると、歯がゆいような事態がたくさんあるかと思います。われわれとしましても、当面、日常のことでいろいろ防戦これ努めるというような受け身なことに追われておりまして、積極的に農業に対する国の政策を、基本的なものを要望するというようなことは、非常にまだその域まで行っていないというのが事実でございまして、決して今のような程度の勉強ではいけない。要するに勉強するだけのまだ態勢になっておらないということを個人的にはよく考えておるわけでございます。
  41. 田中武夫

    ○田中(武)委員 それでは、もうきわめて簡単に経済団体連合会の古藤さんと、それから東京商工会議所の五藤さんにお伺いしたいと思うのですが、私、まず古藤さんの御意見を伺っておりまして、いかにも経済団体の代表の方だという感じを、実は受けたわけなんです。いろいろお伺いしたい点もありますが、そういう点はもう省略いたしまして、一点だけお伺いいたしますが、独禁法につきまして、国際的にきびしい独禁法は緩和すべきである、こういったような御意見だったと思うのですが、私は諸外国は、むしろ最近、独禁法は強化の傾向にある、何も日本の独禁法が国際的にきびし過ぎるというような感じを実は持っていないんですが、そういうような点について、諸外国との関係をどういうように考えておられるかを、もう一度お伺いいたしたいのです。  それに関連いたしまして、古藤さんは、公取委の三百人やそこらの人が監視をするよりか、国際マーケットという目に見えないような大きな糸によって調整する方が云々、これは私、いささか現在の法制上においては暴論ではなかろうか、こう思うわけなんですが、あなたの考えておられることは、もちろん経済団体の、しかも大きなところの代表でございますので、そういうことだと思うのですが、目に見えぬ糸によって調整云々ということは、これれはアダム・スミスの言葉だと思うのですが、ほんとうに野放しを言っておられると思うのですが、現在の経済機構においてはそういうことは許されない、このように考えるのですが、そういう点についての御意見を伺います。  それから五島さんには、古藤さんは、中小企業の今後のあり方、いわゆる自由化に伴う中小企業のあり方は、中小企業の専門化の強化及び系列化強化、こういうような方法をとって大企業と中小企業との協力関係、こういうことを言われておったわけなんですが、言葉では協力関係、系列化の強化ということなんですが、裏を返せば、大企業による中小企業の従属、こういうことになろうと思うのですが、この点について中小企業立場にある五藤さんはどういうように、この系列化の強化あるいは専門化というようなことについて考えておられるかをお伺いいたします。  それから、これは私たちの意見でございますが、先ほど国産愛用というなつかしい言葉を聞かされたわけですが、この言葉はともかくといたしまして、このことと輸入自由化ということは相矛盾する問題だと思うのです。そういうことについての―まあ立場からあまり賛成でないような御意見があったので、もっともだと思うのですが、国産愛用といいますか、そういうことを進めるためにはどういう施策が必要であるかということを、一つあなたの御意見を伺いたい。  それから最後に、最低請負代金制度の制定というようなことが希望意見として述べられましたが、実はわれわれといたしましても、そのことは十分必要であろうと考えておりまして、さきに下請関係調整法をわれわれが作って出しまして、残念ながら政府の下請代金支払い遅延防止法と抱き合って心中いたしまして、後に政府の案が通ったわけなんですが、われわれはそのときの下請関係調整法を整備いたしまして、今度は下請関係基本法、こういうような法律を考えていきたいと思って今作業を進めております。その中において最低請負下請代金というようなことを考えておるということだけ申し上げておきます。
  42. 古藤利久三

    ○古藤参考人 さっき申し上げましたことに関連いたしまして、独禁法の改正を言ったわけでございますけれども、ヨーロッパでは、たとえば英国とか西独で最近独禁法という競争制限的な法律をやや強化される傾向にあるという事実は私ども承知しております。しかしそれは日本の独禁法と比較した場合は、やはり日本の独禁法の方がはるかにきびしいという問題とは少しも抵触しないわけであります。ことにヨーロッパ共同市場の結成のあとの動きなんかを見ますと、どんどん域内のカルテルといいますか、前で言えば国家間のカルテルというような形ですか、そういうものが進行しておる。法律的にもそういう傾向がございますけれども、同時に事実としてはむしろカルテル的な方向の方が強いのじゃないかというような感じも持っております。ただ私が申し上げましたのは、それにしても日本の独禁法は非常にきびしくできているということを申し上げただけでございまして、その傾向を全然知らないというわけじゃございません。  それから第二の問題は、ちょっと私の言葉が過ぎたかもしれませんが、要するに独禁法の改正が必要だということを言っておりますのは、輸入自由化をやる以上、改正はある程度やりましても、その弊害は相当除去される調節機能が大幅に開けるのではないか、そのことを十分御認識いただきたい。つまりFAで為替管理をやっておることは、ある意味では原材料輸入の強制カルテルをやっておるようなものですから、これをなくしてしまうということは、結局は完全な自由にした場合に過当競争が起こる。それをある程度是正するために輸出入取引法の改正や独禁法の改正が必要である。それは、私どもの言っておるのは、要するに自主的なカルテルのことを独禁法で問題としておるのでありまして、強制カルテルの問題を独禁法で改正しようというふうなことを考えておるわけじゃございません。これまた、それぞれ業種によって特に必要ならば単独立法によってそういう道をやらなければならぬ。たとえば繊維設備制限規則ですか、ああいう形でやるとか、措置法でやるというような問題が起こるだろうと思うのでございますが、その前に、ともかく業界の自主的な協調態勢を作ることについて、あまりにも現在の制約は強過ぎる。それを改正すべきではないかということを申し上げたのでありまして、今おられませんからちょっとあれなんですが、先ほど稻葉先生から、私どもが独禁法の改正で何か強制カルテルを作らせようとしておるんだというようなお言葉がちょっとありましたけれども、そこまでの考え方をわれわれ持っておるわけじゃございません。現在の独禁法をもう少し緩和して、そうしてどうせ弊害の面はあるのでございますから、その面はチェックするような形をとればいいので、これはかつて二年半ばかり前ですが、この改正案をどういうふうにするかということで一つの案ができておるわけですが、大体その程度のことをわれわれは考えておるのでありまして、独禁法の全廃とか、あるいは骨抜きにするというようなことを考えておるわけじゃございません。先ほど申しました点は、少し言葉が足りませんので、あるいは誤解されたか知りませんから訂正いたします。
  43. 五藤斎三

    ○五藤参考人 お答え申し上げます。  古藤さんのおっしゃられました専門化、系列化ということが、中小企業立場から申し上げました私どものの論旨と相反するのではないか、要するに、古藤さんのお考えは、中小企業が大企業の隷属的な方向に進むように日本経済を今後運営すべきではないかというような意味でおっしゃったように御理解をなさっておるように私承ったわけでございますけれども、古藤さんの御意見もそうではないと私は思っております。私も実は古藤さんの御主張の専門化、系列化には非常に賛成でございまして、私もその論拠から、先ほど来いろいろの実情を申し上げましたが、日本の現在の経済構造の中において一番問題がありますのが、大企業と中小企業の関連問題でございます。いわゆる下請と親企業の問題でございます。もう一つは、第二の問題は、大企業と中小企業との競合の問題でございまして、中小企業といえども独立して大企業と競争をして企業を続けておる、こういう問題でございます。それから、元来大企業に何ら関係のない中小企業、これは雑貨企業またはきわめて特殊な、先ほど申し上げましたIBMの輪転印刷機のような特殊機械を作る特殊機械工業というような特殊のメーカー、こういったような三つの面が、現在でもあるわけでございますが、これを多々ますます進めまして、専門化、系列化を進めるべきだ、こういうことは私どもも同感でございますし、そういくべきだと考えております。  系列化の面におきましては、親企業と下請企業がますます協力化いたしまして、唇歯輔車の関係で正常なる経済発展を期していかなければならない。ただこの面において、ややもすると、下請の搾取という形が出てくる憂いがある。ことに貿易自由化のような場合に、原料の輸入が第一に自由化せられますと、どんどん製品が過剰に作られるという傾向が起こりはしないか。その結果としては製品をどんどんダンピングするというようなこともできてくるだろう、あるいは光学企業の中において、資本にものをいわせて中小企業の分野をどんどん侵すというような形もできてくるのではないか。そういう形において下請企業が搾取せられ、あるいは対立的にやる中小企業が非常に苦境に陥る。そういうような結果として、先ほど稻葉先生は、貿易自由化の結果としては、ある場合には労働条件の引き下げが起こるかもわからぬということを五藤は言うたけれども、それはうそだとおっしゃったのですが、私は何もうそを言ったわけではございませんで、稻葉先生の御見解と私の見解との相違であると思うわけでありますが、私はそういうことも起こり得ると思います。と申しますことは、先ほど申しましたように、極端な下請搾取のような実情が、すでに光学工業界でもありまするので、そういうことが、激化されるという原因に、貿易自由化がなるのではないか、こういうような観点から、私はそういう予想もいたしておるようなわけでございます。専門化という問題につきましては、これは大企業との関連におきましても、きわめて専門的な工程をやって、大企業が総合的な面においてそれをアッセンブルなさるというようなこともあり得るわけであります。また大企業の全然お作りにならないものを中小企業がやるという意味の専門化ということも、これは望ましいことでございます。その面に関しましては、生産分野の画定ということがぜひとも望ましいわけでございます。たとえば今度カラーテレビというものができるわけでございますが、このテレビのカラー撮像機といったようなものを、もし作るということを考えました場合に、大企業これをやりましても、これは何百台も売れるものではないのであります。ベルト・コンベア・システムで多量生産の望みは全くないものでありまして、日本で幾つか、あるいは十くらい売れるかもわかりません。そういったものはむしろ中小企業がやるべきものであって、大企業はそういう経済生産に乗らないようなものはやるべきではない、こういう考え方を持っていただきたいと私ども考えるわけであります。たとえばプラネタリウムというようなものでも、三十三年かかって世界に三十五カ所しかできなかった。宇宙ブームになりましたので、最近になりまして、日本に対しましても、世界から百三十六カ所も引き合いがあるというふうにはなりましたけれども、これはとうてい多量生産で自動車を作るようなわけにはいかぬわけでございます。そういったようなものは中小企業の専門化によって、中小企業の生産分野でやるという形を確立していただきたい、こういったような施策をぜひお考えを願いたいと思うのであります。  それからもう一つは国産愛用の問題でありますが、これと貿易自由化が相逆行するのではないかという御懸念でございますが、私はこれは主として製品の段階においてのことを申し上げたっもりでございます。原料は何と申しましても自由化によってどんどん入ってきて、より安いものが供給せられるということが望ましいわけでございますが、製品になりますと、今申し上げましたように、非常に少数の製品で、しかも日本の新技術の確立等にはなくてならないもの、先ほど申しました輪転フォーム印刷機なども、現にIBMの会社の子会社ではこれを使っておる。ところで、日本の大きな企業ではなかなかこれを信頼して下さらないという事実があるということを、私昨夜も聞いたのでありますが、こういったような方面において、IBMの会社そのものが使っておられるようなものであれば、日本の企業はこれを率先してお使いになる、こういう意味において国産愛用の正しい認識を持っていただきたい。岸首相が公式の場合に日本の自動車にお乗りになっておるように、私お見受けいたしますけれども、私生活ではあれを徹底しておいでになりますかどうか私存じませんけれども……。(「ゴルフに行くときは違うよ、外国車だ」と呼ぶ者あり)それでは私生活ではお乗りになっていらっしゃらぬのじゃないかと思いますが、ときどきお見受けいたしますが、ほんとうに徹底的に国産を愛用なさって、日本の狭い道路には日本の自動車がいいということを皆様方が率先垂範していただきたい、こういう意味において国産愛用がどんどん進むようにお願いいたしたい、こう考えるのであります。  それから、下請最低工賃制等について特段の御配慮をいただいております点、これは私どもとしては非常に感謝にたえないことでございます。下請代金支払法の制定にあたりまして、私どもが主催をいたしております全日本中小企業協議会というのが、これの原案を作りまして、たびたび衆参両院の商工委員会お願いをいたしまして、国会の法制局まで私どもたびたびお呼び出しいただき、またこちらからも出向きまして、とうとう皆様の御援助でこれを通過さしていただいたのでありますが、次に今申し上げましたような中小企業保護政策的な新しい法令ができますことを、私どもはひたすら期待を申し上げておきたいと思います。
  44. 中村幸八

    中村委員長 次は板川正吾君。
  45. 板川正吾

    ○板川委員 それでは時間の関係もありますから、古藤さんと金沢先生に二、三お伺いいたします。  古藤さんが最近経団連において貿易為替自由化の特別委員会を設けて目下検討中だ、まだはっきりしたまとまった見解はない、こう仰せられます。また次に、今度の自由化外国より押しつけられてやったものではなくて、日本の自主的な判断によってやったんだ、こうおっしゃるわけです。そこに私は矛盾があるような感じがするのですが、自主的におやりになるならば、もう少し早く準備をしておくべきではなかったか、こう思う。御承知のように自由化を一番最初やりましたヨーロッパ共同市場等では、戦後、一九四八年のマーシャル・プラン以来、自由化をするという計画を立てて国民に発表しておったのです。その間に支払同盟を作りあるいは鉄鋼・石炭の共同市場をやり、その後に初めて自由化―この共同市場というのを作って、一九五九年の一月から出発したのですね。その間に少なくとも十年余の準備期間というものがあったのですけれども、それを国民承知しておる。だからそういう状態の中で着々と準備を進めておって、初めて自由化に踏み切ったのですね。ところが、そういう西欧の自由化のテンポは日本でわかっておったと思う。もし日本が、自由化世界の傾向であるとわかっておったなら、西欧が突然やみ打ち的に自由化をやったのではないのでありますから、そういう段階を経てきたのだから、それに見合った日本の計画を樹立しておくべきではなかったか、こう思うのです。特に私この間も聞いたのですが、去年の総理大臣の施政方針の中に、自由化するということは一言も載ってないですよ。昨年の秋ジロン国務次官に言われて以来、あるいはアメリカへ安保条約の調印に行く前にあわてて作っておる。そのために財界も混乱しておる。あわてて経団連も、ここで特別委員会を設けて、政府がそういうふうに踏み切ったのでは仕方があるまい、われわれもついていくほかはない、損をすることはあるまい、損する場合は考えるだろう、自由化するのではどうも犠牲が大きいから、独禁法を改正してくれ、輸出入取引法あるいはその他の繊維工業特別措置法、こういうもので独禁法の穴あけ的な役割を果たしてもらいたい、こういう要望が出ているんじゃないかと思うので、外国より押上つけられた自由化ではないと言いながら、経団連がようやく特別委員会を設けて検討中というのは、どうもその間の論理が合わない、こう思うのが第一点です。この点はどういうふうにお考えですか、承りたい。  それから古藤さんへの第二点は、この独禁法が世界で一番きびしい独占禁止法制だ、こういうような御主張であります。確かに、日本の独禁法ができた当初は、あるいはそう主張されてもやむを得ないものがあったかもしれません。そちらの主張に一歩譲って、そういうこともあり得たでしょう。しかしその後独禁法は、大幅な改正が二十四年と二十八年に行なわれている。そのほか小さい改正は、二十三年、二十六年、二十七年、二十九年、三十一年、三十二年、こういうふうに小幅ですが独禁法の改正が行なわれておる。さらに日本の独禁法の適用除外の範囲というものは、世界の独禁法制の中から見て決してきびしいものじゃない、こう私は思うのです。これは今正式に公取で、世界各国の独禁法制と日本の独禁法制と、法律のきめ方とその運用の状態――法律はどんなにきつくきめても、抜け穴があれは、そのきめた法律だけ見ておったんでは比較にならぬのですから、その抜け穴の状態、その運用等を調査をさしておりますが、われわれが中間報告を聞いても、たとえばカルテルを認めておるのは日本が圧倒的ですね。西ドイツでもイギリスでも、何百件申請しても、ほんとうに許可になるのは両手で数え得るくらいなんだ。そういう状態の中で、私は財界の方が一口に、独禁法はきびしい、あんな法律は守る必要はないんだ、こういうふうな感覚をお持ちになりますのは、そういう都合のいい宣伝をするのか知りませんが、どうも公正な判断じゃないと思うのです。その点を一体どういうように考えておられるか。  それから、御承知のように第二大戦後、独禁法制というものが各国とも強化されてきておる。今なお強化をされつつあります。そういう中で独禁法改正が当然なんだ、しかしどうもうるさいようだから、個別な輸出入取引法あるいは繊維工業特別措置法、こういうのでやっていくのは当然だという考えは、私はどうも独占資本の悪さというのが出ておるんじゃないか、日本の大きい資本も、もう少し外国の情勢を考えてみるべきではないか、こう思うのです。この点に対してどうお考えであるか。  それから第三点は、先ほど、カルテルを認めてもいいじゃないか、自由化になるんだから、カルテルを認めて、それで物価が高くなれば、外国からどんどん安い物が入って、カルテルで物価をつり上げたって、そんなものは外国の安い品物と太刀打ちできないのだ。従ってカルテルの弊害はない。認めてもいいじゃないか、こういうようなお話もございました。これは私は古藤さんが全部知っているかどうか知りませんが、なかなかそういうわけにいかないというのが実情じゃないでしょうか。たとえば中小企業外国から安い物を買おうとした場合、あるいはアウトサイダー規制でひっかけられるかもしれませんし、それでなければ、たとえば海運カルテルがあって、中小企業者が安く外国から買おうと思っても、海運会社でそれを運ばないというカルテルさえあるのですよ。だからカルテルを結んで物価をつり上げても、外国から安く買えるじゃないか。だから自然に、間違ったカルテル、物価を不当につり上げておるカルテルならば、それはつぶれてしまうんだから心配ないという議論は、私は受けないのですが、その点についてどうお考えですか。  それから金沢先生にお伺いしたいのですが、実は失礼でありますが、きょう御意見を承りたいと思ったことは、今度の自由化に伴って、政府輸出入取引法を改正するという。この輸出入取引法については、日本の消費国民である農民とか、農民の代表である農協、それから漁業協同組合――これはいずれも全国組織。それから生活協同組合あるいは中小貿易連盟とか中小企業団体、こういう方々が、ともかく輸出入取引法のアウトサイダーの規制とか、あるいはカルテルの強化というものに対して、不安を持っておるのですよ。反対をしておるのですよ。その反対は、私は決して一笑に付すべき問題じゃないと思う。その反対の理由一つ代弁して、こういう政府考え方には危険性がありますということを、実は主張していただきたいと思ったのでありますが、しかし先生は、今度の輸出入取引法は大体においてよろしい、こう言っておられる。どうもこれは私の方で選定を誤ったと思いますが、しかしこれはランダム方式で人を呼んで、抽出して呼んで意見を聞くというのじゃないのです。この輸出入取引法は、これに対して反対、賛成が国論の中にあるのですから、賛成者はそれはいい。反対者の意見をやはり代弁していただきたいというのが私らの趣旨であったのです。そういう点を一つ冒頭に申し上げてお伺いしたいのでありますが、今度の輸出入取引法の改正で、特に輸入のカルテルを強化してアウトサイダー規制を強化する、こういう改正の骨子でありますが、諸外国の独禁法制を見ても、国内の需要者カルテル、特にそれのアウトサイダー規制、こういうような規制をする外国の独禁法制というものはあるかどうか、一つこれは学術的な見解でありますからお伺いしたいのであります。  それから第二点は、需要者カルテルを認めて、しかも需要者カルテルを政府が国家権力、行政権力をもってアウトサイダー規制をする、そうなりますと私はこういう法律が生まれると、実際はもうその法律の行政権力というものをバツクにして自由なカルテルというものが結べると思うのですね。いわゆる地下カルテルといいますか、隠れてこの圧力で、われわれの方へ来なければこれがあるんだぞということで、輸入の面の国内需要までそのカルテルを認めるということは、どうも非常に、独禁法を守っていこうというわれわれの方からいうと危険な考え方なんです。もしこれのそういう心配がないからといって今度の輸出入取引法を認めれば、これは外堀を埋められたことになる。そうすると次に内堀と外堀の関係は、内堀の役割、独禁法の役割というものは大して役をなさなくなりますから、それならいっそのこと有名無実化した独禁法も次には改正した方がいいじゃないかという議論が、私は次に必ず出てくると思うのです。そういう意味で今度の輸出入取引法は多少だからいい、こういうことは、われわれの方からは考えたくないのですが、これに対するお考えはどうか一つ承りたい。  それから御承知のように第一次大戦以来管理貿易というのか、カルテル等が各国に取り上げられて、それでそういう経済体制が第二次世界大戦に導いた、こういう形がどこでもいわれておる。これは常識になっておって、だからこそ今度の第二次大戦後はお互いに自由貿易をしていこうという建前になり、競争制限を、要するにカルテルをとりはずしていこう、こういうふうな世界の趨勢になっておることは御承知の通りなんですが、ガットの関係、IMFの関係、そういう点からいって今度輸出入取引法を改正して輸入のカルテルを強化し、条件をつけてもアウトサイダー規制まで設けていきますと、私はやがてこれが世界の先進諸国、ガット、国際通貨基金、そういうところから日本の制限を強化するいき方は批判されると思うのですが、この点についてどうお考えですか、お尋ねしたい。
  46. 古藤利久三

    ○古藤参考人 第一の問題からお答えいたします。経済界として大体自由化に踏み切ったのは、その判断は自主的な判断であるということを申し上げましたが、もちろん国際会議その他で、日本はここまで外貨がたまり、輸出が振興して日本経済力も強くなったのだから自由化してはどうかというような、国際的な世論になっておるということは、これは現実のことでありますから、その客観的な情勢の上に立ちまして、それじゃ日本としてどうしたらいいかというふうな気持の上で自主的に判断をして自由化をやはり進めるべきだという気持になったという意味でございまして、実は昨年の十一月に経団連の評議員会というものをやりまして、総会に次ぐ会合でございますから、そこで決議をしております。そのときにやはり自由化の決議をしておるのであります。そのときからこの問題に対しては、やはり自由化の方向でこれからの経済政策を考えるべきだという考え方をとっておりまして、あるいは政府でいろいろお考えになり、具体的にいろいろなことが新聞に出たり何かするよりは、そのときが早かったのではないかと思っております。ただ何分にも問題は大きな問題でございますから、これから自由化をしていくということを考えました場合、どういうプログラムでどういうステップでやっていくかということは、実はこれからの問題でございまして、さっきおっしゃいましたようにヨーロッパのようにゆっくりした期間はございませんけれども世界の客観情勢がこういうふうになっておりますので、日本としてもこれ以上の輸出の振興をやっていって、そうして経済の成長率を高めていくためには、どうしても自由化を急いでやらなければならぬという、タイミングが少し短かいという問題はございますけれども、しかし外から何年間でやれというふうなことを強制されたわけではないと思います。従って経済界としては十分にこの功罪を考えて、そのテンポを考えていきたいという意味で、本格的に特別委員会をこしらえて、これから検討に入ろうということでございまして、非常にそういう問題について態度が矛盾しているのではないかという御指摘がございましたけれども、それは決してそういう意味ではございませんので、この点は一つ御了解いただきたいと思います。  それから第二の問題は、日本の独禁法が、なるほど独禁法はきびしいけれども数回の改正をした。その上に適用除外の立法がたくさんあるから、現実の状態でも相当ゆるくなっているのではないか、こういう御指摘でございますけれども、確かにおっしゃいますように独禁法は何回かの改正がございましたし、この前の改正で少なくとも合理化カルテルというような形で、一応のカルテルが認められることになりましたけれども、なお価格カルテルでありますとか、あるいは生産協定でありますとかいうような問題は必ずしも自由になっておりません。またいろいろ適用除外がございますけれども、これは特別な問題についての適用除外でございまして、逆に言いますと、こういうふうに適用除外をたくさん作らなければならぬという立法そのものが、非常に無理な立法をしたということも言えないことはないのでありまして、われわれから見ますと、やはり独禁法というものが縛るべき範囲以上に出ている点が相当多いのではないか。私どもが主張しておりますのは、決して独禁法を骨抜きにしてしまおうとか、あるいは独禁法をなくせという主張ではございません。やはり独占の弊害とかカルテルの弊害とかいうものはあるのですから、これはそれでけっこうだ。だけれどもそういうことと同時に過当競争の態勢というものを、どうして防止するかという点からいきますと、どうしても独禁法をもう少し緩和してもらいまして、そうして過当競争を防止するのに対して自主的な調整がお互いの間にできる。これができなければ、いろいろなことを一々役所の行政指導とか、あるいは認許可にひっかけなければならぬというふうな問題が起こるわけでございますから、そういうことは自由化の態勢とは非常に矛盾するのではないか。自由化という以上は、やはり自主的に産業界が自由競争の場面を通じてできるだけ経済発展さして輸出を振興さしていくということですが、同時にそれは、自由であると同時にお互いの協調というものが必ず伴うわけですから、その協調が円滑にいくということを独禁法の改正によって期待したい。ところがこれが一々官庁の認許可にひっかかりますと、その認許可される期間で、もう商売には間に合わぬという問題が起こるわけです。  これは国際競争がますます激しくなり、自由化に向かうというふうな今後の情勢から考えますと、そういうことを言って一々認可申請を出して、公正取引委員会で二カ月も三カ月もかかって認可されたのではこれは間に合わない、そういうような問題が起こるわけでございます。そういうと弊害が伴うからということでございましょうが、その弊害を伴うという点が、自由化された場合にはよほど救済されるのではないか。従来のようにどこからも物が入らぬというふうなことであれば、それは非常な弊害を起こしますけれども、今のように、これから製品をだんだん自由化していくということになれば、そういうむちゃくちゃな、国内で高いものを協定して売るというわけにいかないのですから、じきにそういうものはくずれてしまうということになるので、その点は、自由化された場合には、よほどそういう救済措置を片一方で大きく広げるのだから、独禁法の改正をやっても支障はないのではないか、こういうような意味でございます。  それから、第三におっしゃいましたことは、カルテルを認めてもいいのじゃないかという主張を私がしたように言っておられますが、その通りでございます。カルテルは、私どもとしては、やはり認めてもいいのじゃないか――自主的なカルテルでございます。強制カルテルではございません。まあ世界の今の大勢からいきましても、たとえば、一例をとりますと、化学工業品の輸出競争というような問題を考えました場合に、英国ではICIという大きな会社がある。イタリーにはモンテカティーニがある。西独にはイー・ゲー・ファルベン――これは分かれたのでありますけれども、今は一つのように活動しているわけです。これはカルテル以上に、コンツェルン、まあいわば前の日鉄のような存在だと思うのです。こういうようなところを相手にして輸出競争をやるという問題になるわけでありますから、もちろん各国の独禁法制の趨勢というものは考えなければなりませんが、実態として、各国の経済がどういうふうに動いておるか、それから公正取引委員会で今お調べになっているカルテル申請が何件許可されたかというような調べもございましょうけれども、実態はなかなか、われわれもいろいろ各方面から情報を集めておりますけれども、つかめないのでございます。独禁法制がございますけれども、それでは実際のカルテルがどういうふうに動いているかという問題になりますと、はるかにカルテルというものは活発に動いているのじゃないかというふうな現実認識を持っている人の方が多いのでありまして、この点はさらにわれわれもまた勉強しなければならぬと思いますが、私どもの今の判断では、ヨーロッパにおいても、やはりカルテル化というものは、相当共同市場というふうなものの結成を通じて、強くなっているというふうに判断しているわけでございまして、われわれが自主的なカルテルをやった場合に弊害が起こった場合には、それを差しとめるとかあるいは停止するということを否定するわけではございませんで、そういう機能はもちろん独禁法の中に残すべきだと思いますけれども、今のように非常な制限を加えておくということでは、この自由化に対する業界組織体制というものが十分にできないのではないかということで、独禁法の改正を主張しているわけでございます。
  47. 板川正吾

    ○板川委員 第三点は、カルテルを認めてもいいのではないか、それが無理なカルテルならば外国から安いものが買えて、そういう無理が続かないじゃないかということですが、それがそう簡単に外国から物が買えるような情勢に、カルテルが縛ってしまうから、ないですよということ、これに対してどう考えるかということです。
  48. 古藤利久三

    ○古藤参考人 その点はやはり消費者の方面もございますし、産業としてもまたその製品を消費する団体もあり、業界もあるわけでございますが、そういう方の世論が強ければ、今度は自由化された場合には、輸入したいものは入るという体制になるのでございますから、一般的に言えばやはり輸入は自由になるということで、非常に国内のものは、カルテルで高いということがもし万一あれば、直ちに輸入が増大するというようなことでこれは修正されるという客観的な動きはあるんじゃないかと私どもは思っております。たださっきおっしゃいました海運のような例は特別なケースとしてございましょうけれども、これは日本だけでなくて、各国とも、海運については特別な、ああいう独禁法制の例外措置みたいなものをとっております。ですからほかの国でもやはりそういうことは起こっているんじゃないかというような感じがいたします。
  49. 金沢良雄

    金沢参考人 ただいま板川さんから、私が申し上げましたことは御期待に沿わなかったような結果になったようにお受け取りになったそうでございますが、実は根本的には、私は貿易自由化にいわば便乗するようなカルテル強化は反対であるという、根本的な点についてはそういうことを申し上げているわけであります。ただ具体的に、輸出入取引法の今度の改正案について、いろいろ反対の意見が出ているということも事実でございますが、実はこの輸出入取引法というのは、われわれ法律の専門家にとりましてさえも、非常な難解の法律でございまして、非常に複雑な規定になっております。その関係で、その改正案の内容を十分に検討し、理解した上で、こういう点がいけないということを主張することが、ほんとうは好ましいのではないかと思うわけです。その点に多少の食い違いがあるのではないかと私予測するわけでございますが、この今度の法案を率直に拝見いたしました感じといたしましては、第三十国会及び第三十一国会に提出せられました改正法案に比べまして、非常に後退しておるということは事実だと思うわけなんです。特に輸出振興カルテルというようなものを全面的に認めておりませんという点は、まあ率直に申し上げて……(「それは通産省で言ったことだけれどもね」と呼ぶ者あり)私も今度の法案を拝見いたしましたところでは、二つの点、つまり需要者カルテルまで輸入について認めるということと、輸出入調整協定を認めるということ、この二つが大きなポイントになるんじゃないかと思われるわけですが、その点につきまして先ほども繰り返し申しましたように、カルテルを自由化に関連して認める場合には、ただ単に過当競争防止というようなことだけで、カルテルを認めることは好ましくないということは、はっきり申し上げているわけです。ただ通商協定があるとか、あるいは輸出国での輸出独占が行なわれているとか、そういったような特定の条件がある場合には、技術的に協定を認めざるを得ないのではないかということを申し上げたわけなんでございまして、その点誤解のないようにお聞きとりいただきたいと思うわけでございます。  それで次に需要者カルテルの場合のアウトサイダー規制の問題でございますけれども、この点につきましては、今度の案では、需要者カルテルについてのアウトサイダー規制はないというふうに聞いておりますので、その点についてのアウトサイダーの問題は、特に今回は考慮しなくてもいいんじゃないかと思われます。ただアウトサイダー規制というものが将来あるいはまたその点についても出てくるかもしれぬ、これに対する懸念はあるわけで、その点は十分注意しなければならぬと思います。このアウトサイダー規制につきましては、第一次大戦後、世界で初めて、いわゆるアウトサイダー規制としての強制カルテルを認めたのが実は日本なのであります。大正十四年の輸出組合法及び重要輸出品工業組合法、これが世界で最初の強制カルテル法であるといわれているのであります。その後御承知のようにドイツ、イタリアあたりで強制カルテルがだんだんできまして、ああいうふうな経済的悲劇を招いたのでございますから、こういう点については、そういう悲劇を繰り返さないように、また、そういう点についての世界あるいは国際機関からの監視というものに耐え得るだけの良心的な法制というものが、日本ではできていかなければならないということは、十分に今後は考慮していかなければならないと存じます。  なお最後に、先ほどガットあるいはIMFなどから批判が行なわれはせぬかということでございますが、この点はまさにおっしゃる通りでございます。ただ単純に過当競争であるというゆえんをもって、カルテルを強化するというような方向に進みますならば、それは貿易自由化の効果をその点で減殺してしまうことになるわけなんで、そういう方向に対しては国際機関からの批判というものは、当然免れないだろうと存じます。
  50. 中村幸八

    中村委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々には、長時間にわたりきわめて貴重なる御意見をお漏らしいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後二時三十一分散会