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1960-02-10 第34回国会 衆議院 商工委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年二月十日(水曜日)     午前十時二十五分開議  出席委員    委員長 中村 幸八君    理事 小川 平二君 理事 小平 久雄君    理事 長谷川四郎君 理事 小林 正美君    理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君    理事 武藤 武雄君       岡本  茂君    鹿野 彦吉君       關谷 勝利君    田中 榮一君       中井 一夫君    野田 武夫君       細田 義安君    渡邊 本治君       板川 正吾君    櫻井 奎夫君       東海林 稔君    八木  昇君       北條 秀一君    山下 榮二君  出席国務大臣         通商産業大臣  池田 勇人君         国 務 大 臣 菅野和太郎君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    大堀  弘君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  大來佐武郎君         通商産業政務次         官       内田 常雄君         通商産業事務官         (通商局長)  松尾泰一郎君         通商産業事務官         (鉱山保安局         長)      小岩井康朔君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      小室 恒夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件      ————◇—————
  2. 中村幸八

    中村委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済総合計画に関する件、私的独占の禁止及び公正取引に関する件、鉱業と一般公益との調整等に関する件について調査を進めます。  質疑の通告があります。順次これを許します。板川正吾君。
  3. 板川正吾

    板川委員 私は、去る二月五日当委員会において、通産大臣経済企画庁長官の恒例によるあいさつに関しまして、若干質問を申し上げたいと存じます。  まず第一に、池田通産大臣にお伺いしたいのでありますが、御承知のように所得倍増の問題であります。この所得倍増については、池田さんが、昨年の二月ですか、関西において月給二倍論をぶったのがきっかけであります。率直に申しまして、当時長期の不況下にあった中小企業者あるいは労働者は、池田さんの月給二倍論を大いに歓迎をして、期待したのであります。特に世間がこの月給二倍論に大きく期待した原因は、この月給二倍論を主張した人が、池田さんであるからであります。もしこれが経済第一人者でない、まあ数字に弱いという人あたりが、こういう月給二倍論をぶったならば、世間相当割引をして聞くのであります。ところが、池田さんは自他ともに許す経済第一人者だ、こういう立場にある人でありますから、その方が月給二倍論を言ったからには何か根拠があるだろう、ともかくそれを実現してくれるだろうということで、世間の期待が大きかったのであります。従って、池田さんとしては、この月給二倍論、その後当委員会で明らかにされました月給二倍論は、所得二倍論と同じである、こういうことを主張されておるのでございまするから、この月給二倍論、所得二倍論を実現することについて、その後どういう所信を持っておられるか、まずそれを一つ第一段階としてお伺いいたします。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 所得二倍論は、われわれ政治家として最も重大な目標でございます。この目標を掲げまして、それに向かって通商産業政策をやっていこうとしておるのであります。先般ここで通商産業政策重点についてと申し上げたことは、通商産業省の所管として所得倍増のためにこういう施策をやる、こういうことなのでございます。倍増自体目標でございます。私は常日ごろから考えておるのでございますが、経済成長ということは、国民決意行動によってもたらされるものである、だから、われわれ政治家としては、国民決意行動、いわゆる創造力、ポテンシャル・エナージーというものに刺激を与えて、そして倍増、三倍の雰囲気を作らして方向づけるということが政治家のなすべきことである、私はそういう意味におきまして、通産行政につきましても、倍増あるいは三倍に向かっていくような方策をとりたいというふうに、この前所信表明で申し上げたのであります。
  5. 板川正吾

    板川委員 そういう抽象的な一般論もありますけれども、しかし、野にあったときに、とにかく私がやるならば、あるいは私の意見が取り入れられるならば、月給二倍でも三倍でもできる、五年ないし十年の間にできる、こういう主張をされておったのですから、私は所得倍増について、もっと熱意をお持ちになっていいんじゃないかと考えるわけです。昨年岸内閣の改造で入閣をされた当時は、幾ら池田さんでもすぐ所得二倍論の実質的な計画を立てるということは不可能であろうと思います。従って臨時国会でなくて通常国会には何か具体的なものが池田さんの手によって打ち立てられるのじゃないか、こうわれわれは思っておったわけであります。ところが通商産業政策重点について、このごあいさつの中で、池田さんが多年の政治信条であるという所得倍増論について一言も触れてない、もちろん政策によって所得倍増をやるんだ、それは目的だからあえて触れなかった、こう言うのでありますが、これに一言も触れてないということは、所得倍増に対して池田さんの熱意がどうも冷却したんじゃないか、私はこういう感じを持つのです。今度の岸内閣世論調査等によっても評判が悪い。しかし評判が悪い中で人格円満な菅野経済企画庁長官とかあるいは経済実力者である池田さん、こういう方がおることは岸内閣の余命を保っておる—世論的にですよ。私は大きい要素であろうと思うのです。ところが、経済企画庁長官にはあとでお伺いしますけれども、池田さんはこういう考え方発表した後結語、最後の結びとして、こういう政策を行なって所得倍増計画を、これこれのうちに必ずやってみせますという信念目標、そういう熱意というものを披瀝さるべきであろう、私はこう思って期待しておったのですが、どうも一言所得倍増に触れないということは私は全く意外である、国民もこれは大いに意外であろうと思うのであります。この点に関して、もう一度大臣から所信を承りたい。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 私はこの通商産業政策重点を強力に進めていくならば所得倍増期して待つべし、こういう考えでおるのであります。これは先ほど申し上げましたように、国民のいわゆる熱意行動によることでございます。われわれがそれに方向づける、こういう格好でいくならば倍増できるという、私は考えでおるのであります。これは何も倍増のことを書いてないとおっしゃいますが、貿易為替自由化ということは倍増に向かう根本的のものであるということを御了承願いたいと思います。私は、今から十年ばかり前、昭和二十四年にあの統制経済国内的に自由経済にしたということが、今日の日本発展を促した根本でございます。もちろん国民の英知と努力によることは当然でございますが、あのとき自由主義経済にしたということは非常によかったと思います。数字を申し上げて恐縮でございますが、昭和二十四年の国民所得というものは二兆七千三百億、昭和三十四年は九兆六千億、これはどうなっておりますか、もう三倍半になっております。国民所得はこれだけふえました。八千二百万の人口が九千二百万になりましたが、しかも物価が五割上がりましたが、一人当たり倍以上になっておる。この実績は何に基づいてきたかというと、国内経済自由化に基づくことが多い。しかるに今日本経済を見ますと、国内的には自由化されておりまするが、国際的には自由化されていない。これ以上の国力の発展経済の伸張を願うならば、これは国際的に自由主義でいかなければならぬ、これが倍増計画のもとをなすものであります。で、私はこの為替貿易自由化についてのことを説明しておるのであります。そうしてそのひずみのきまする場合において、中小企業の問題を考えなければならぬから、中小企業の問題をあげておると同時に、エネルギーの問題につきましても長い目でこうやっていく、これが所得二倍論の根拠をなすものでございます。所得二倍論ということは、先ほどから繰り返して申し上げますように、一つ目標でございます。これに向かって進む重点政策がこれだというので、所得二倍につきましては、私は熱は日とともにますます高まっておるのであります。決しておろそかにはいたしておりません。
  7. 板川正吾

    板川委員 どうも池田さんからもう少し具体的に所得倍増に関する信念発表がないのがまことに残念であります。ただいま申されました国民所得昭和二十四年が二兆七千億であったが、三十四年が九兆六千億、確かに比率的に見れば、私は大きな飛躍であろうと思う。しかしこの比率というのはなかなか基礎となったベースが問題でありまして、たとえば言われるように中国の比率は非常に高いが、しかし現在の工業力はまだまだ十分じゃない。アメリカの成長力ははるかに日本より低いが、しかし今日本よりもはるかに高い工業水準生活水準を維持しておる、こういうことでありまするから、私は何も戦後の経済再建が全部失敗だというわけじゃないのですが、比率の上だけに根拠を置いて大成功だということには私はならないという感じを持っております。  これはいずれあと議論いたしたいと思いますが、それでは経済企画庁長官にお伺いしますが、菅野さんは昨年の七月十三日に名古屋商工会議所で、十年間で所得倍増論は十分可能であるということを発表されております。七月ですからもうそろそろ一年近くなりますけれども、この所得倍増についていまだ具体的な計画発表がない。ごあいさつの中では昨年十一月に経済審議会に諮問して目下鋭意作業中だと言われる。しかしいつごろ結論が出て、具体的にいつごろ所得倍増計画が明らかになるか。特に私は所得倍増数字の魔術でありますけれども、所得が単に倍になっても、これは平均でありますから、倍になったから全国民所得が倍になるとは限らないのであります。そこで特に人口の四割近くを占める農民所得、これを二倍にするということはなかなか私は十年間では困難だ、こう思うのでありますが、この所得倍増をいつごろ発表されるか、その見通し、同時に農民所得をどうして非農民所得と均衡をはかるか、こういう点についてその構想なり、考え方なりを一つお示し願いたいと思います。
  8. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 まず初めに十年間に国民所得が倍になるかというお尋ねだったと思いますが、これはその後における経済発展からして、ますます私のその確信を強めておるのであります。昨年の七月のときから見ると、昨年の七月ころには、昭和三十四年度の経済成長率は八%というように発表いたしたのでありますが、最近は御承知通り一三%、三十四年度の経済成長率は一三%というようになっております。そこで三十三年度の経済成長率は四・五%、昭和三十四年度は一三%、三十五年度はこの間申し上げました通り六・六%というので、平均しますると八%ということになっております。大体十年で国民所得が倍になるということは成長率を七・二%ということで計算しておるのでありまするからして、まあ、今後八%の成長率を続けるかどうかということは問題でありまするが、この三年間の情勢から見れば、十年間で十分国民所得は倍になるというように確信をますます強めてきたわけであります。そこでこれは国民所得でありますから、一人当たり所得ではありません。一人当たり所得につきましては、かりに十年間で国民所得が倍になるといたしましても、一人当たり所得は倍にはならないのであります。それは計算によって違いますが、大体一・六倍になるというように計算をいたしておるのであります。  それから次に、それじゃ農業所得は倍になるかどうかという問題、これはお話の通り鉱工業生産は大体平均一〇%上昇しますけれども、農業生産自体では、あるいは見通しをどういうふうにとるかわかりませんが、今農林省の方で農業基本問題調査会でいろいろやってもらっておりますが、かりに平均成長率を三%ということにしすまと、そこに非常に開きがあるから、従って農業所得と非農業産業とは、そこに所得格差が起きるということは確然とわかっておるのであります。この格差をどうしてなくするかということが、国民所得倍増のわれわれの計画の中で考えられておるのでありまして、いわゆる質的に国民所得倍増したいということを考えております。従って農業所得をいかにして倍にするかということは、言葉をかえて言えば農家収入をどういうようにしてふやすか。農業生産自体については生産技術や何かの関係で、そうこれをふやすことはできませんから、農家収入をどうしてふやすかということにつきましては、農林省の方でいろいろ今研究しておりますし、また今度の予算でも、農林省予算にそれが計上されております。たとえば次男、三男坊に将来は工業知識を授けなければならぬということで職業あっせん所を作るとか、そういうような教育をするとかいうようなことを農林省、労働省の方でいろいろと考えられておるのであります。そういうことや、あるいは農家耕作反別をどうするかというような問題、そういうようなことからして農家所得はやはり倍にしていくように、いろいろと今後一つ具体策農林省と相談して、今策定中なのであります。それで大体私の方の経済審議会に今いろいろ策定してもらっておりますが、できれば六月ごろまでにしたいというのが私の念願でありますが、おそらくあるいはそれが一月、二月おくれるのではないか、こう思っております。
  9. 板川正吾

    板川委員 所得倍増については、またいずれ具体的に計画発表後質問したいと思いますが、次に国民所得及び日本経済力、こういうような問題で通産大臣及び経済企画庁長官にお伺いいたしたいのであります。  先ほど池田さんも日本の戦後の経済再建が各国に比較して非常に順調に成功してきた、こう言われておるのであります。そこでお伺いしたいのでありますが、現在、最近の統計でもけっこうでありますが、日本の一人当たり国民所得、これは世界で大体どのくらいの位置を占めるのでしょうか。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 これは数字が古いのでございまするが、五年くらい前には三十五、六番目でございます。おととしくらいは二十七、八番目じゃないか、去年くらいは二十一、二番くらいじゃないかと思います。これは一人当たりであります。全体の国民所得と申しますると、大体世界の六、七番目でございます。
  11. 板川正吾

    板川委員 国民一人当たり所得は一九五七年、三十二年で二十八番目、国連の統計から推定できますが、この日本国民一人当たり所得は同じ年の比較ですと、米国の九分の一であります。カナダの六分の一であります。スイス、イギリスベルギーの五分の一であります。フランス西ドイツオランダの三分の一、大体でありますが、こういう水準を示しております。日本国民一人当たり所得がこのように低いのは、一体どこに原因があるとお思いでしょうか。一般人口が多過ぎるということもいわれております。あるいは国内資源が少ないから、それが日本国民所得を少なくしている原因である、あるいは戦争に負けた結果であるというような議論があるのでありますが、両大臣として、日本国民所得の低さがどこにあるか、こういうことをどうお考えになっておるかお伺いしたい。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 国民の総生産世界の六、七番目であります。それが一人当たりにすると二十数番目ということは、人口の多い関係、総生産人口との関係だと思います。総生産の低いのが何によるかということは資源の問題もありましょう、あるいは資本の問題もありましょう、国土の状況の問題もありましょう、いろんな問題があります。だからあらゆる原因が総合して結果がそういうふうに相なっておる。従って資源の乏しい日本が、そうしてあり余る労働力を持っている日本が、どうやって所得をふやしていくかということになると、やはり各方面における生産増強、いわゆる合理化による増強よりほかにないと思います。
  13. 板川正吾

    板川委員 日本国民所得の低い原因が、先ほども言われましたように人口が多いという説がある。これも一人平均を低くしている原因だと思うのです。しかしそういう傾向がたまたまあるからそれをもって——すべて低さの原因人口が多いから低いのだという議論が一部にありますが、これは私は間違いだと思っているのです。たとえば人口が多いというのであったらば、一平方キロ当たり人口は、オランダの方が日本よりも三七%多い。ベルギーの方が日本より二〇%多い。オランダは一平方キロ当たり三百三十六人であり、ベルギーは二百九十三人であり、日本は二百四十四人・多少年によって違いますが、そういう人口密度を持っておる。ところがオランダ日本の三倍の所得水準をとっておる。ベルギーが五倍の国民所得をとっておる。人口日本よりも二割も三割も四割も多いところが高い所得を持っておるということは、人口が多いから所得が低いということは言えない、こう私は思う。それから資源が少ないとかあるいは資本が少ないと言われますが、資源の少ないということを考えたのですが、資源が少なければ輸入をすればいいんじゃないか。日本輸入依存度というものは、イギリスオランダ、ああいう国から見ればまだ低いのであります。特に原綿とか原毛とかいうものを基準にして考えた場合に、ちょっと私も計算したのでありますが、一九五六年の統計によると、日本では原綿原毛はほとんど生産されていない。しかし日本消費水準というのは非常に高いのであります。米国が一人当たり一年間十二・五キログラム、イギリスが八・五キログラム、西独が七・七キログラム、フランスが七・五キログラム、日本が五・三キログラム、ソ連が五・二キログラム、イタリアが三・三キログラム、こういうふうに所得水準米国の九分の一でありながら、日本米国は一対九でありながら、羊毛や綿花の使用量は、日本が一に対して米国が二・五、イギリスが一・六、こういうように全然生産されない原料でも日本国民が豊富に使用できます。それから輸出の面におきましても、繊維産業が第一位であります。だから、私は、資源がないというならば、もっと輸入をふやせば、こういうように資源がないから産業発展しないという理屈は立たぬと思うのです。また戦争に負けたからとよく言われるのでありますが、負けた西ドイツ日本よりも三倍も国民所得をとっておる。こういうことでありますから、戦争に負けて領土が減ったから、日本は貧乏でいいのだという理屈は、多少の原因にはなっておっても、それをもって貧乏の言いわけをすることはできないのであります。  そこで、日本国民所得が低い原因は一体どこにあるのかと考えた場合に、私は、それは、日本貿易輸出入が低いということが日本国民所得の低さの最大の原因であろうと思う。池田さんは、新聞で拝見するところによると、輸出政策はそれほど重点を置かなくても、輸入をまかなえばいいじゃないかという議論のように拝見されたのでありますが、これは真意を伝えていない議論であろうと思うのであります。一体ことしの輸出目標は総体で幾らでしょうか、その点をお伺いしたいと思います。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 今、日本人の所得の少ないことにつきまして、オランダベルギーと御比較になりましたが、これは、日本の土地の構成から申しまして山が七割を占めておるところと山のないところとはだいぶ違うのです。それからオランダというものは、従来世界相当植民地を持ちまして、資本蓄積その他ができております。ベルギーもコンゴを持っております。そういう昔からのいわゆるしにせの国と、過去七、八十年の蓄積、しかも戦争によってこうなった国と、やはり一がいに比較はできないと思います。  それから昭和三十五年度の輸出目標は、為替ベースで三十七億ドルと見ております。三十四年度は、三十三億五千万ドルくらいになりましょうか、三十三億三千万ドルを見込んでおるのであります。輸入の方も、昨年度は三十一億九千万ドル、今度も三十六億程度見込んでおります。輸出というものは輸入をまかなうということか第一の原因でありますが、経済拡大をしようとすればそれだけではいけない。海外投資ということも考えなければいけない。ただ私が問題を出したのは、日本経済を強くしょうというためには、輸出ばかりを考えてはだめなんで、生産物国内消費する健全な消費に向けることが経済拡大の一番大きな要素であるということを言いたいために、これを忘れてはいかぬぞということを言っておるのであります。たとえば、先ほど申し上げましたように、昭和二十四年のときには総生産というのは三兆三千億でございましたが、今は十一兆八千億、約十二兆円になっております。三兆三千億のものが十二兆円になったときに、総生産の九兆円近いものはどういうふうに消費せられたかと申しますと、三十三億ドルの輸出でございますから、九兆円の増加生産物というものは輸出に向かっていったのです。これが一兆一千億程度あとの八兆円というものは、国民がこれを健全に消費したために日本経済が伸びてきたわけです。だから、私は、輸出輸入拡大けっこうだ、自由貿易主義もとれ、しかし忘れてならないことは、生産されたものが国内で健全に消費されること自体経済の拡張の根本なんだ、こういうことを言いたいために言っておるのであります。たとえばあなたの言われるイギリス日本の四・五倍の所得がある。総生産は二十二兆円。日本人口の半分の五千万人が二十二兆円というものを生産しておる。二十二兆円の生産物をあの老大国、しかもユナイテッド・キングダムとして立っておる国が何ぼ輸出しておるかというと、総生産の一割四、五分しか輸出していない。二十二兆の一割四、五分というと三兆五千億、二十二兆から三兆五千億引いた十八兆五千億というものは、五千万のイギリス人国内消費しておる。そこにイギリス経済拡大がある。ドイツだって十六兆円の一割四分しか輸出しておりません。八割六分というものは国内の五千万人のドイツ人消費しておる。イタリアフランスにつきましては、おのおの一割程度しか輸出していないで、九割を国内消費しておる。日本だって同じです。所得倍増論において十年後において二十四兆円の所得になり、十四兆円ふえた品物をどういうふうにして消費していくか、このうらはらの計画ができなければ、私は、七・二倍、二十四兆円に日本生産物がなったときに安心できない。ふえた十三兆円というものをどういうふうに使うかということを考えてくれ、こう言っておるのでありまして、輸出入についての奨励は人後に落ちるものではございませんが、国民経済を伸ばしてわれわれの所得を二倍にしよう、三倍にしようというときに考えなければならぬことは、お互いの月給を、あるいは所得を多くして、そうして消費をふやして、しかも国際収支が黒字である、これが大切なんだということを言っておるのであります。だから、昭和二十四年に比べましてどんどん生産は伸びましたが、国際収支はどうかといったら、今政府が表向き発表しておるものも十三億二千万ドル、裏に預金その他で置いておるものが四千五百万ドル、あるいは五千万ドルあります。こういう状態でございますから、今後所得を二倍、三倍にしようということなら、輸出入も大事だけれども、われわれの所得をふやして、その所得によって生産物を健全に消費していく。この経済政策をとらなければだめだということが、私の所得二倍論、三倍論の根拠であります。このごろは池田は非常に積極主義だと言っておりますが、積極主義というのではない、健全な進歩、健全な歩みを続けていく政策をとらなければ二倍論、三倍論も実現できない、こういうことを言っておるのでございます。
  15. 板川正吾

    板川委員 国民生産を上げること、これは確かに必要であります。しかし、私はまたあとで触れたいのですが、日本の立地条件からしまして、日本経済の、国民生産を上げるためには資源が十分でない。従ってアメリカなんかと違って貿易政策というのも、もっと力をいたすべきではないか、私はこう考える。そこで、池田さんは決して軽視しておるわけではない、こうおっしゃると思いますが、ことしの三十七億ドルの輸出目標は、国民一人当たりにいたしますと一万四千三百円見当であります。これは世界でもどのくらいかとちょっと比較をいたしましたら十八番目くらいであります。これは、こういう比較はどうかと思いますが、イタリアに次いで十八番目であります。ところが、日本より人口密度が高いというベルギーオランダ比較してみますと、ベルギーでは九千万の人口で、日本とほぼ大差のない輸出をしておるのであります。輸入もしておるのであります。オランダは一千百万の総人口でありますが、やはり日本と同じくらいの輸出入をいたしておるのであります。一九五七年の統計によりますと、ベルギー国民一人当たり十二万七千円、オランダが十万二千円、当時日本輸出は一万一千円、こういうことでありまして、ベルギーが十倍、オランダが九倍の国民一人当たり輸出を持っております。先ほど池田さんが言いましたように、イギリス日本の半分の人口で三倍の輸出をいたしております。三兆円ですから三倍。日本は本来なら、日本の総人口からいったって、経済のよろしきを得れば現在の三倍くらい、百億ドルくらいの輸出が可能である。少ない資源輸入すればよろしい。そうして輸出を百億ドル程度にする、国民一人が四万円程度輸出をする、こういうふうになれば、私は日本産業は大いに発展するだろうと思う。そうして池田さんとは別の言い方をしますが、目的は同じといたしまして、とにかくそういう方向でも、やはり所得が三倍でも四倍でもなっていくと思うのです。ところが日本貿易が伸びない原因幾ら物を作ったってそれを買ってくれる国がなければ貿易は伸びないのでありますから、日本輸出を伸ばすについては、私は日本の品物を買ってくれる市場が問題であろうと思う。こういうふうに考えると、日本の将来の貿易市場からいって、どうしても中国との貿易が現在途絶状態になっておるということは、私は国民の大きな不利であろうと思う。今の日本貿易構造というのは、遠いアメリカの方から原料を高い船賃を出して買って、そうして売るところはインドからアフリカ、東南アジア、非常に遠いところへ売っておる。その中における運賃のコストが高いわけなんです。こういう近い六億の人口を持つ中国の市場というものを日本が除外しておるところに、私は日本輸出の伸びない原因があろうと思っておるのですが、これに対して池田さんのお考えはいかがですか。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 貿易は各国とやることが一番望ましい。中共貿易につきましてもわれわれはこれの再開を念願しておるのであります。しかし今の中共の状態ではあまり実際面として多くを期待できないのじゃございますまいか。たとえば肥料とか鉄鋼その他はいいでありましょうが、雑貨類その他の中小企業のものはあまり多く期待できないと思います。それは百数十万の同胞がおり、そこで長い間のいわゆる利権を持っておったあの当時と、中共は全然違っておりますので、私はそう多くは期待できないと思います。しかしいずれにいたしましても、中共貿易の再開は私としては念願してやまないのでございます。  それから日本貿易についていろいろ御心配であるようでございますが、日本の昨年の貿易は非常に伸びました。昨年の大体九月、十月くらいまでしかわかっておりませんが、世界貿易輸出が五%、輸入が四%の増なんです。日本輸出入とも二〇%をこえる増でございます。アメリカなんかは輸出は二%の減で輸入が二〇%の増、ドイツにつきましても九%しか輸出が伸びていない。輸入は一〇%。日本は非常にいい結果が出ておる。とにかくほかの国が日本のまねをできぬほどに輸出が伸びております。それからこれを国別に見ましても、いわゆる対ドル地域に対して、特にアメリカには前年に対して五二%もふえておる。東南アジアにつきましても前年の二割あるいは二割五分、十月、十一月は三割五分くらいのふえようでございます。非常なふえ方をいたしております。ですから今後こういう地域に対しての貿易をどんどんふやしていくと同時に中共も忘れてならぬということが、私の貿易政策であるのであります。ただ日本の地位が非常に悪いというようにお考えのようですが、もちろんオランダベルギーは共同体ができたり、またできなくても、ああいう隣接した地域でございますから、非常に貿易が盛んでございます。特にベルギーオランダは昔からのあれを持っております。海岸線にたよっている日本としては、原材料を遠いところから持ってこなければならぬという状態でございますが、これは必ずしも悲観した状態ではない。現に原油を輸入してガソリンをアメリカに出しているところもありますし、中近東の石油関係から申しますと、マンモス・タンカーだとヨーロッパと日本とは置かれた地位がほとんど同じ状態でございます。アメリカにいたしましても鉄鋼原料はよそからとっている。私は海国日本、いい港を持つ日本は決して世界において立地条件が悪いと初めからきめてかかる必要はないのではないかと考えております。
  17. 板川正吾

    板川委員 今池田さんは、日本貿易が昨年非常に伸びた、この事実は認めますが、しかし私はそういう意味で、楽観論といいますか、手放しで喜ぶのはどうかと思います。昭和二十八年に貿易が再開されて、当時は日本輸出は十一億ドル、毎年々々四億ドルぐらいずつ伸びてきまして、昭和三十二年になったらば二十七億ドルかになった。そうして毎年昭和二十八年から三十二年までの五年間は四億から五億ドルずつ伸びてきた。ところが三十二年になって岸さんが政権をとってから、世界的な不況もあるでしょうが、輸出が横ばいになってしまった。横ばいになっておったら、たまたま世界の景気の変動等もあってことし伸びた。これはここ三年間伸びていなかったからその三年分伸びたのでありまして、私は別に伸びたことにけちをつけるわけではないのですよ。ないのですが、しかし今まで三年間伸びなかったことがようやく去年で伸びた、こういうことでありますから、あまり私は去年だけの前年比を見て喜んではいられないのではないかという感じがするわけであります。  時間がないから先に急ぎますが、池田さんはことしの新年早々に記者会見で、日中問題をことしは打開したい、こういうことを発言されたということが新聞で報道されている。ところがその次の報道によると、中国から会談の申し入れがあったが、会談の必要なしということでけんもほろろに拒絶したかのごとく新聞に報道されているのでありますが、この日中貿易に対する発言の真意というものはどうであったのでしょうか、この点を明らかにしていただきたい。
  18. 池田勇人

    池田国務大臣 私は日中貿易並びにソ連との関係につきましては、政治家のはしくれとして、常に目を向けていかなければならぬと思っております。これは昭和二十九年の自由党の幹事長をしているときに公開の席上でも言いました。われわれ政治家としては中共、ソ連というものは忘れてはいけない、考えなければいかぬということは、私の日ごろからのあれであります。しこうして今回新安保条約の成立を見た暁におきましては、われわれは自由諸国の一つの大きな柱として立っていく、こういう立場になった以上、年来の中共、ソ連との貿易拡大について進むべきだ、こう言っております。ただ私の友人が中共の方と会わぬかと言いますから、私は今閣僚としてそういう問題について会わない方がいいだろう、いずれまた機会を見よう、こういうことで会わなかったということを言っただけなのでありまして、別に今私は積極的に通産大臣として、どうこうという具体的な策は持っておりませんが、考え方としては、やはり日本は中共と貿易を再開して、これの発展を促すということにつきましては、私が日ごろから考えておることでございます。なお手放しで貿易を楽観するという、そんなことはございません。私は実態をよくつかんでいかなければいかぬということが日ごろからのあれであります。国際収支にいたしましても、私は野にあるときからも、昭和三十三年は政府は一億五千万ドルといっておるけれども、五億ドルになるぞ、三十四年も一億六千万ドルと政府はいっておるけれども、四億ドルをこえるぞ、こういうことを言っているのは、実態を見てそう言っているだけで、決して野放しの楽観ではない。どちらかといえば育ちが大蔵省ですし、人一倍引っ込み思案なんですけれども、しかし事実は事実として言った方がいいということで言っておるのでありまして、決して野放しの楽観はいたしておりません。
  19. 板川正吾

    板川委員 池田さんはこのあいさつの中で、今年は「中共国際見本市開催のほか、」云々、こういうことになっておって、中共に見本市を開きたい、こういう主張をされております。——これは間違いですか。
  20. 池田勇人

    池田国務大臣 私がここでしゃべった中には中共というのを抜かして言ったと思います。原稿にはあったと思います。その理由は、中共貿易の再開をわれわれは念願しておりまするから、中共の見本市は予算には入っておるのでございます。そこで事務当局としては中共と書いたようでございますが、私は多分読むときには読まなかったと思います。念願は中共に見本市を開きたい、予算はそういうふうにとっておるそうでございますから事務当局は書いたようでございますが、私は読むときに自信がございませんでしたからそれを抜かしたと思います。そういう事情であることを御了承願います。
  21. 板川正吾

    板川委員 次の政権を担当する池田さんが自信がないというようなことじゃ、どうも困るのであります。私も池田さんの言葉を全部聞いておったわけじゃないのですが、これをしさいに読んでみると、中共の見本市をやるという。一体今日本と中国の関係がどうなっているかということは、お互いに百も承知の立場で、突然中共貿易をやるというと、一体これはどういうふうにお考えかな、こう疑問を持ったわけであります。せっかく事務当局もその意思があるようですし、一つお伺いしたいのでありまするが、日中関係がこじれた原因は、第四次貿易協定の中にある覚書、その中にある国旗問題なんですね。これが直接の発端であったわけです。これはお互いに北京と東京に通商代表部を置き、その屋上に国旗を掲げることをお互いに認めよう、中国も認め、日本も認めよう、そうしてこれは日本側からの申し入れで、これは決して日本が中共を承認したことではない、ただその旗を掲げるということだけは認めるという了解のもとに、第四次貿易協定が成立したと思うのですが、中国見本市をやることになりますと——私も北京における見本市の再開のときに、たまたま現地に行っておりまして発会式に参加いたした関係もありますが、中国見本市を開くとなると、貿易の見本市の屋上に国旗が立ちますから、とりあえず国旗問題を解決しなければならない、こう思っておったのであります。こういうふうにせっかく出ているのでありますが、この中国貿易を再開するとすれば、国旗問題をどういうふうに池田さんはお考えになるだろうか。
  22. 池田勇人

    池田国務大臣 所管外の仕事でございますので、私がここでとやこう申し上げることはいかがかと思います。ただ私は通産大臣として、できるだけ早い機会に貿易が再開し、そうしてその貿易が今後拡大していくことを念願しているのみでございまして、国旗問題その他につきましての考え方を、私がここで申し上げることは不適当かと思います。
  23. 板川正吾

    板川委員 次に日ソ貿易の問題でお伺いしたいのでありますが、大臣のごあいさつをしさいに読みますと、モスクワにおいて大規模な見本市を開催する、こういわれております。これは大臣は抜かさないで読んだようであります。ですからそういうことであろうと思うのですが、御承知のように新安保条約がソ連を刺激してグロムイコ声明となった。そして目下日ソ関係が非常に悪化していることは、まことに遺憾であると思うのでありますが、そこで気になる点は、最近伝えられるように、日ソの貿易協定がまとまりそうであるということを、われわれ聞いておるのであります。岸内閣は政治と経済とを分離するというのが建前のようでございますが、歯舞、色丹問題は政治問題であります。従ってこれに関係なく、日ソ貿易協定が成立する見込みであろうと思うのでありますが、この貿易協定の現状、見通しについてお知らせ願いたいと思います。
  24. 池田勇人

    池田国務大臣 日ソ貿易協定は今順調に進んでおります。もう最後の段階にきておるようでございます。従って新安保条約に対しての今の政治的の問題はさることながら、われわれは経済的には日ソ間の貿易拡大していこう、その念願で進んでおります。また一昨年に比べまして昨年も相当ふえております。今後ももっと飛躍的に拡大できるものと私は希望しておる次第でございます。
  25. 板川正吾

    板川委員 日ソ貿易の協定が円満に進行しつつあることは、まことにけっうなことであります。この貿易内容を新聞等で見ますと、三年間の協定であります。片道二億三千万ドルの協定額、こういうふうになるということを伝えられておりますが、貿易業界では、ああいう計画経済の国では、長期計画を立てるので、その長期計画が安定しなければいけないから、貿易も長期的な協定の方がいいじゃないかといって要望しておったようであります。御承知のように、イギリスではソ連との貿易協定を五年間結んで、貿易額も非常に拡大しておるのでありますか、今度は日本ではとりあえず三年ということでしょうか。
  26. 池田勇人

    池田国務大臣 今まで一年こっきりだったものですから、とにかくお話しのように一応三年くらいでやってみたらどうか、私は事務当局から直接にまだ報告を受けておりませんが、何と申しましても、貿易額は昨年が千七百万ドルくらいじゃなかったかと思います。三年間で二億三千万ドルと聞きますると、どういう品目になっていくのか、まだ具体的の問題は存じませんが、ただソ連の方で延べ払いの問題があるわけであります。延べ払いの分は、やはりイギリスドイツもソ連に対してやっているようでございますが、もっと実態を調べると同時に、日本といたしましても、ソ連なんか持てる国でございましょうが、そうたくさんというわけにもいきません。その点が最後の折衝の点だと思います。
  27. 板川正吾

    板川委員 大臣がモスクワ見本市を大規模に開催したい、こういう主張をされておるのでありますが、こういう大きな見本市を開くような、これは国際的なお祭りみたいな格好になるわけでありますが、これを機会に、通産大臣はモスクワを訪問して、大いに東西貿易拡大するというお考えはありませんか。岸さんは、就任以来非常に世界各国を回っておる。ところが行く所はアメリカ、東南アジア、ヨーロッパ、南米と、こう行くのですが、東の方の国へは一回も行かない。その近所へ行っては反共演説をぶつというようなことになっておるのであって、岸さんでは日本の東西貿易拡大というのはなかなかできないと思う。しかし、講和条約によって日本は対等になった、独立国となってアメリカとも対等になったのだ、こういうのでありますから、ここでアメリカに気がねせずに、一つ見本市を開催するにあたって、大臣は訪ソして、大いに東西貿易拡大をはかる意思があるかどうか、伺いたい。
  28. 池田勇人

    池田国務大臣 適当の機会があったら行ってみたいと思っておりますが、今のところきめておりません。
  29. 板川正吾

    板川委員 その適当の機会が一日も早くくることを望んでおりますが……。
  30. 中村幸八

    中村委員長 板川君に申し上げます。大臣は間もなく席をはずさなければなりません。ところで八木君がぜひ発言さしてくれという申し出がありますので、一時中止いたしまして、八木君に譲っていただきたいと思います。
  31. 板川正吾

    板川委員 それでは、私次に大臣が一番重点政策中の重点としてやろうとしておる貿易自由化の問題についてお伺いをしたいと思ったのでありますが、これは次の機会に質問いたしたいと思います。
  32. 中村幸八

    中村委員長 八木昇君。
  33. 八木昇

    ○八木(昇)委員 時間が十分くらいしかないそうでございますから、ほんの二、三点お伺いしたいと思います。  きのうの一部の新聞にも報道せられておったのですが、電気ガス税の問題について、この機会にちょっと大臣所信を伺っておきたいと思います。  これはきのうの朝日新聞に載っておったのですが、「電気・ガス減税見送りか」という見出しで載っておる。この電気ガス税問題については、根本的に考えまして、電気、ガスというようにほんとうに民衆の日常生活に必要不可欠のこういったものに対して、一〇%に及ぶ税金をかけるということそれ自体、これは私としては非常に納得しがたいものがあるわけです。しかもすでにこのガス料金の値上につきましては、一一%の値上げというものを東京並びに大阪の両ガス会社に対して通産省は認められておる。その際に固定資産税の引き下げ、それからさらには今度の問題になっておりまするガス税の引き下げというようなものとの関連において、このことが決定されたというふうに、実は私どもは仄聞いたしておったわけであります。そして同僚議員に聞いてみますると、そのようなことが、かつてのこの商工委員会におきましても大臣から明瞭な言明があったというふうにも聞いておるわけでございます。しかるにもかかわらず、昨日でございますかの閣議におきましては、この電気ガス税の減税について、二、三の閣僚から異論もあって決定を見なかった、こういう報道がなされておる。今後通産大臣としてはいかなるお考えを持ってどのように対処せられるか、端的にお考えを述べていただければ幸いだと思います。
  34. 池田勇人

    池田国務大臣 御承知のごとく、電気とガスは公益事業といたしまして、料金その他について政府が特別に関与いたしております。しかるところ、この電気事業に対しましての固定資産税と、ガス事業に対しての固定資産税は違っておるわけであります。電気事業の方につきましては、固定資産税を新設後三年間は相当軽減しておりますが、ガスにはそういう軽減の規定はございません。従ってわれわれ通産省といたしましては、過去三年来、ガス事業にも電気事業と同じように固定資産税の軽減の規定を適用すべしと強く要望しておるのであります。しこうして、昨年の二月十一日に、自由民主党の政調会も、このガス税の固定資産税につきましては、早急にやらなければいかぬということを約束してくれておる。従って、私は、きのう地方税法の改正があって、そのことが載っておりませんから、前からの約束について一つ実行願いたい、こう申し出たのであります。この固定資産税ばかりでなしに、私といたしましては、今度一割一分程度の値上げをした分について、値上げ分についてまた税をかけるというのはどうか、それでなくても需要者が相当ふえて、ガス税の収入が年々ふえてきておる。ことにガス事業の健全な発達のために、今度やむを得ずに値上げした分についての一割の税金は取らないことにしてくれないかということは、これは自治庁長官にも前から申し出ておりますから、それを一つ実行願いたい、こういうことを言ったのでございます。しかるところ、いろいろな事情があるそうでございます。遊興飲食税の軽減等のかね合いが——それで自治庁の方といたしましては、党の方がなかなかむずかしいと言いますから、私は、自治庁長官として、行政官庁は減税について積極的な方策、考え方を持ってもらいたい、こういうことを主張したのでございます。努力いたしますと自治庁長官は言ってくれましたが、これから党と自治庁との話し合いになると思います。われわれ通産省といたしましては、きのうも党の方に申し込みをいたしまして、私の希望の実現するように努力を続けておる状況でございます。
  35. 八木昇

    ○八木(昇)委員 地方自治体の苦衷ということが、私どもといえども全然わからないわけではございません。ですけれども、電気ガス税というようなものに依存をして、地方自治体の財政がまかなわれておるということそれ自体、非常に間違いではないか、私はこういうふうに考えるわけです。そこで、通産大臣のそのお考えの線に沿って、今後一つ強力にこの減税ができるように御努力願いたいと思うのですが、なお今後の見通し等についてお考えがあれば、もうちょっと説明をしていただきたいと思います。
  36. 池田勇人

    池田国務大臣 こういう問題は、見通しでなしに、極力やるということが見通しでございます。極力努力してみたいと思います。
  37. 八木昇

    ○八木(昇)委員 今ガスの問題についてちょっと伺ったわけですが、電気の問題もいよいよ具体化してきておるわけです。そこで、九州電力を筆頭に、東京電力、そのほか二、三の電力会社について近々のうちに電気料金の値上げが行なわれるのではないかということがもっぱら言われておる。そこで電気料金値上げ問題についての大臣のお考えを承っておきたい。  時間がないそうですから、質問を続けて申します。そこで電気料金について、私も最近数字を全然見ておりませんので、よくわかりませんが、昭和二十九年の十月に大幅な電気料金の改定があった当時、電気の需用端での販売電力料金は、総平均しまして、一キロワット・アワー当たり四円七十銭くらいになっておったと思います。その当時アメリカの場合には一キロワット・アワー当たりの価格が大体六円ぐらい、それからイギリスで五円ぐらいであったと思うのですが、しかし当時の電気の質とかサービスとかいうような面を加味しまするというと、日本の電気料金はほとんどアメリカ並みであった。ほとんど世界最高の価格であったのではないか。それに加えてさらに一〇%の電気消費税というものがつきますというと、日本の電気料金というのは世界最高だと言っても過言ではない。しかも最近におきましては、おそらくやその当時のことから類推をいたしますると、一キロワット・アワー当たりの電気料金は現在すでに六円くらいになりつつあるのじゃないか、こういうように考える。そこで今後一体電気料金の値上げというものがなされるのかどうか、それについてのお考え、それとの関連において電気消費税の問題をどう扱おうとしておられるかという点を、この際一つお聞かせ願いたい。
  38. 池田勇人

    池田国務大臣 電気料金の値上げは好ましくないと思います。しかし自由経済のもとにおいて、ことに公益事業が将来赤字で立っていかないというふうな場合があっては、全体として困るわけです。私の見まするところ、全般的に電気料金の値上げの必要はないと今のところ考えております。日本の電気料金の算定についての適正を期するために、電気料金の算定基準というものを、今委員会へ諮って検討いたしております。この分は省令であるのでありますが、それでありましても、ただいまのところ全般的に電気料金の値上げということは考える必要はございません。ただ御指摘になりました九州電力の問題につきましては、あそこの事情から考えまして、かなり苦しい状況ではあるようでございます。しかしほかの電力につきましてはございません。従って九州電力は今一ツ瀬の発電所、また低品位炭の火力発電所を設けて合理化しようといたしております。もしやるといたしましても、よほど事情を見ながらやっていきたいと考えております。  それから電気ガス税の問題につきましては、私は創設当時関係しておったので、戦時前の状態であったのでございまするが、税の理論から申しますると、いい税ではございません。しかし税というのは、理論的によくても新税は悪税だといっております。悪税でも前からやっているのは良税だという説もあるようでございまして、理論的には私は電気ガス税というものは賛成はできませんけれども、しかし今やっておることを所管外の通産大臣がどうこう言うのはいかがかと思いますが、趣旨としては私はあまり賛成しておりません。これはほかの場合にも発言したと思います。
  39. 八木昇

    ○八木(昇)委員 ちょっと要望だけ。今の電気料金問題その他については、いずれ日をあらためてもう少し詳しく御質問したいと思います。先ほども申しましたように、アメリカとかイギリスのように、一般労働者の賃金にいたしましても、日本労働者の八倍から十倍の賃金をもらっておる。イギリスあたりでも五倍近い。こういうようなところで電気料金が一キロワット・アワー当たり六円くらいに当たっても、これは大した影響はありませんけれども、日本のようなところでは、これは相当な影響で、しかもそれに一〇%の税がつく。やはり家庭用電燈や小型電気機器というふうなものに対する電気税問題については、今後とも大いにがんばってもらいたいと思います。
  40. 中村幸八

  41. 板川正吾

    板川委員 池田大臣がおれば池田さんにお伺いしたいと思ったのでありますが、おりませんから、公益事業局長に最近頻発するガス中毒事故の問題について、若干質問をいたしたいと思います。  御承知のように、最近ガス中毒事故が頻発しております。一般消費者から見ると、料金は一月一日から大幅に引き上げられた上に事故が非常に多い、これはほんとにたまったものじゃないと思うのです。これが取り締まり官庁として、通産省はこの事故防止に対して、どういう考え方を持っておるか、その点を明らかにしてもらいたいと思います。
  42. 小室恒夫

    ○小室政府委員 最近のガス中毒事故の状況でありますが、昨年昭和三十四年においては、ガス中毒事故は前年に比して、事故の件数で九五%、死亡者で八九%、中毒者の数で七三%というふうに微減しておるのであります。ところが、この冬に入りまして、昨年の十二月あるいは特に一月になりまして事故が頻発しております。特に一月の二十七日森下町で起こった導管の折損の事故なども相当大きな被害者を出しております。私どもといたしましては、中毒防止対策の強化をこの際ぜひはかりたい、従来ももちろんいろいろ配意して参ったのでありますが、この際特に対策を強化いたしたいということで、ガス事業者を網羅しております瓦斯協会に対して、中毒防止対策委員会をひんぱんに開催して、具体的な対策を講ずるようにいたしましたが、同時に、問題のガスの大手三社に対しましては、これが全体の八割以上のガスを供給している関係もありまするし、諸般の事情からガス中毒が頻発しやすい地域であり、また被害が大きくなりやすい地域でありますので、これを重点にして特に具体的な対策を早急に講ずるようにいたしましたが、その第一の点は、まず中毒の最大の原因であるところの一酸化炭素の含有量を極力減少させるという点であります。これにつきましては、従来東邦瓦斯においてはすでにそういう施設を建設しておりまして、本年一月四日からそういう装置が動いて参っておるのでありますが、東京瓦斯、大阪瓦斯については、まだその点が十分の手が打たれてなかったのでありまして、この通産省の呼びかけにこたえて、一月二十八日に東京瓦斯、大阪瓦斯両社で、一酸化炭素を従来の含有量の半分近くに落とし、戦前の水準に近いところまで持っていくという、毒性を急速に減少させる装置について直ちに建設に着手するということにいたしたわけでございます。これが一番有効な具体的な対策で、最近新たに講ぜられたものであります。そのほかガスのにおいをもっと強化する、付臭と申しておりますが、においを入れる、そういう点についてさらに一段の工夫をこらし、また特に導管の折損事故等もありました際でございますから、導管の埋設状況、また地盤の状況、そういうものを再検討いたしまして、危険なものについて入れかえ、改修はできるだけ短期間に行なうように、また漏洩検査と申しまして、ガスがどこからか少しでも漏れていないかということの検査について機動的にこれを行なうということにいたし、また一般にガス使用についての安全をはかるためのPRを強化する。これは特に団地とかアパート、そういうようなところに対して重点を置いて宣伝を強化する、おおむねこういう状況であります。
  43. 板川正吾

    板川委員 これは池田さんによく言ってもらいたいのですが、最近池田さんが大臣になってから火薬事故が頻発をしておりますね。それから鉱山の爆発事故が頻発していますね。それでまたガス中毒が頻発しております。これは池田さんが大臣になったからというわけでもないのですけれども、とにかく池田さんになってから、こういう通産省の監督下にある事故、こういうものが非常に多いのですね。これはどうも一般の空気からいって、池田さんは金をもうける方、そういう面においては非常に熱心にやっておるが、こういう人命を尊重する方にはあまり重点を置かないのじゃないか、こういう批判さえあるのです。ですから、この点は、その一端を引き受けて責任を負っておる局長ですから、よく大臣に伝えて、こういう事故のないように厳重に一つその方面にも注意をしてもらいたいということを、まず第一に要望しておきます。  それから、今いろいろ対策を打っておる、こういうのでありますが、今まで事故が一体なぜ起こったかということを、まずわれわれ考えてみるべきだと思うのです。御承知のようにこの電気事業とガス事業は、いずれも公益事業であり、目に見えない危険性を持っておる。ところが電気事業の場合は非常に取締規則が微に入り細にわたって事故を起こさないようにできているのじゃないですか。たとえば電気用品取締規則、あるいは電気工作物規程、こういう取り締まり法令が整備しておって、いいかげんな器具や、いいかげんな不良の工事はできないように、そういう事故の防止的な法令が十分である。だから、割合に電気の事故は少ない。ガスよりも非常に多くて、利用もされておりながら、施設も多いのでありますが割合に少ない。しかしガスは、電気の何十分の一の規模でありながら、どうも多いように思うのです。このガスの場合、取り締まり法令が十分でなかったというところに、事故が頻発した原因があるのじゃないか、こう私は思うのでありますが、このガスの取り締まり法令ですが、法令にはどういうのがあるか一つお伺いしたい。
  44. 小室恒夫

    ○小室政府委員 今の事故との関連で見ますると、たとえば導管のガス漏れ等を防止するために、定期的に検査をする、そういうようなことはガス事業法の施行規則に基づいて、ガス会社を厳重に監督してやっておりますが、何分電気と違います事情は、ガス器具の構造なりその取り扱いなりが、非常に一般家庭にまかせられておる。電気でいえば、ほとんどスイッチをひねるという操作だけが一般家庭にまかせられておるのでありますが、ガスも、スイッチをひねる点は同じでありますけれども、コム管が接続に使われておるとか、あるいはスイッチのひねり方いかんによっては、ごく微細なガスが漏れているのに気がつかないことが起こるとか、せんの締め方一つにも事故を起こすもとがあるような点があります。一方、最近非常に急速にガス暖房あるいはガスぶろというようなものが一般の家庭に普及して参りまして、特に従来の日本式の家屋でない西洋式の密閉した家屋の中で、ガス器具が急激に用いられておる。実は私の家庭でもちょっとしたガス漏れがあったのでありますけれども、ほんのちょっとした注意を怠りますと、知らないうちにすぐガスが出ておる、そういうようなことが非常に起こり得るのでありまして、実は過去四年の統計を見ますと、死亡者の多いのは、ほとんどそういう家庭における不注意が大部分の原因でありまして、導管の事故によるものは、中毒の数は割合に多いのですが、薄められる関係で割合に死亡事故は少ないというようなことになっておりまして、どうしてもこの対策というと、有毒な一酸化炭素をできるだけ少なくしていくということに重点を置いていくとか、やはり家庭における使用方法を、できるだけ綿密なPRによって取り扱いの改善をやっていただく、この二つがどうしても大きな対策であろうと思います。ガスと電気はちょっと現実の事情が違う点がありますので、取締規則の強化ということはもちろん大事でありますが、私どもも実は協会の内部でもいろいろと研究させておりますが、今の二つの点が重点になるんじゃなかろうかと思います。
  45. 小平久雄

    ○小平(久)委員 関連して。最近の頻発するガス中毒の新聞記事等を見ておって実は不思議に思っておったのですが、それから今の局長の説明からもそういう印象を受けたのですが、私もよく知りませんが、供給するガスについては、圧力とか、今お話しの毒性、それについても一定の基準というか、そういう規定が供給規定のうちにあるんじゃないかと思います。今の説明でも、たとえば東京瓦斯等についても、戦前の基準に今度戻すというようなお話がありましたが、そうするとガス供給規定で認めておる毒性の基準というものは、戦後は戦前よりもゆるめてあるのですか。  それから新聞記事によると、需用の少ない夏の間は比較的毒性が少なくて、需用の多い冬季にはむしろ毒性がふえているんだというように見るのですが、こういう点も、どうも一般消費者の立場からいうと、はなはだどうも解せないというか、むしろ逆であってしかるべきだという気がするんだが、それはガスの量が多くなるのでやむを得ないということかもしれぬが、それじゃどうも需用との関係からいえば、はなはだ逆なことをやっておるし、また当局も認めておる、こういわざるを得ないと思うのですが、その点も一つ承りたい。  それからもう一つ。いわゆる三大ガスといわれますが、名古屋の方はすでに毒性を少なくする処置をとった、こう言っておられる。われわれは東京の新聞しか見ていませんから、われわれの目に映るガスの被害は、ほとんど全部東京瓦斯の関係だけ見るのですが、一体会社別に見ると、その被害の状況はどんな工合になっておるのですか。みな同じような頻度で起きておるのか、その辺も各社がどの程度事故の防止に努力しておるか一つのものさしになると思うが、各社別に見ると、一体どういう事故の発生率になっておるのか、この三点をちょっと伺っておきたい。
  46. 小室恒夫

    ○小室政府委員 夏と冬で一酸化炭素の含有率が違う。それが少し言葉は強いですが今の毒性という点でありますが、これは年間を通じて常時供給するのは石炭ガスが大部分でありまして一酸化炭素は比較的少ないのでありますが、冬になると急激にガスの需用がふえますので、その分を発生炉ガスとか、増熱水性ガスとか一酸化炭素の含有分の多いものを使いましてピークと申しますか、そういうものの需用をまかなっておる、そういう事情がありますので、冬あるいは特に炊飯の行なわれる時期に一酸化炭素がよけいに入っていくというやむを得ない事情があるのでありまして、なお一酸化炭素の含有分を法律的というか、あるいは取り締まりではっきりきめたらいいじゃないか、実は私どももそういうことを研究しておりますが、実は諸外国でもガス中毒事故は多いのであります。一例を申し上げますと、一酸化炭素の含有量を私どもでいろいろ調べておりますが、西ドイツの場合には二一・五%の含有量、フランスの場合には一七・二%の含有量あるいはオランダの場合は一五%の含有量があるというような例も出ておりまして、一酸化炭素の含有量が多いのですが、これは同時によく燃えるものですから、一酸化炭素含有量の多いガスを使いますと、経済的に熱量としては価値が高くなるというような面も一面ある。そういうような関係で、にわかに何%がいいということを、はっきり今早急に結論を出しがたい点があるのであります。しかしながら私どもとしては、今のところ目標としては一〇%以下にできるだけおさめていきたい、施設その他の関係で急激にそういかないところもございますが、目標としては一〇%以下、これは大体戦前の、今のような発生炉ガスとかその他のガスをあまり使わなかった時期のものでございます。そういうところにおさめていくように行政指導をして参りたい。法律的な点で標準をきめていくという点は、もう少し慎重に考えていきたい、そういうふうに思っております。  それから東京ガス、大阪ガス等のこまかい統計もむろんございます。たとえば三十四年で申しますと、東京ガスは七十三件の中毒事故があり、これに対して大阪ガスが四十八件の中毒事故、あるいは三十三年は東京ガスが八十九件、大阪ガスが四十件、あるいはその他の地区もございますけれども、どちらかというと、ちょっと大きな事故が一つあると数字が上がり下がりいたしまして、大体三大ガスの地域についてそう大きな差はない、それぞれ中毒事故防止については、相当の努力をしておるような状態でございます。
  47. 板川正吾

    板川委員 今の小平委員も疑点を持ったように毒性を調べる法令的な基準がないのですよ。私はそこに今まで事故が野放しになってきて、十分な対策が講じられなかった原因があろうと思っている。今局長は西ドイツとか、フランスとか、オランダとか言っておられますが、ああいう諸国は建物の構造から違うでしょうし、それから地震も少ないし、器具もあるいはもっと完全なものが使われておると思うのです。私、この問題をちょっと検討いたしたのですが、今の法律では御承知のようにガス事業法第二十九条ではガス業者にガスの成分を検査する義務を加えております。これは二十九条であります。そうしてガス事業法施行令ではこの二条でガスの成分を硫黄、硫化水素、アンモニアの三成分として、毎週一回この検査をしろ、こういうことを供給ガスについては規定しておる。ガス事業法施行規則の第二十一条では成分の分析の結果を様式十六号で記録しておけ、こういうふうにこの法令の中で規定をされておるのですね。それで今しょっちゅう中毒事故を起こす毒性はというと、これは一酸化炭素ですね。ところが、一酸化炭素をこの法令によって含有量を調べて報告しろということにはなっていないのですね。規定しておるのは、硫化水素、硫黄全量、アンモニア、こういう三つの成分については記録しておけというのですが、もちろんそれも毒性を持っていると思います。しかし今問題になっているのは、これで死ぬのではなくて、一酸化炭素が多いので死ぬのですね、事故を起こしているのです。だからやっぱりこの中で一酸化炭素の含有量を記録させて、非常に高いというなら、それを一つ低くするような方策を——法令的に取り締まっていくべきじゃないですか。それを従来そういう事故が起こっておるのに、通産省はそういう基準を調査もさせない。もちろんこれはガス協会と、先ほど言いましたように防止対策を協議してやらしておる、こういうのですね。ガス協会はガスの業者の集まりですからね、金のかかる施設については、それはなかなかうんと言いません。だから、これはそういうものと相談して抜本的な対策が講じられるはずは私はないと思う。いまちょっと通産省がこの事故の原因、社会的に及ぼす影響等私は真剣に考えたなら、通産省がもうける方の会社側ばかり考えないで、こういう点も考えたら、私は一酸化炭素の含有量をこの中で調査さして、記録さしておくべきではないか。そうして高い場合にはそれを注意するなり、これからだんだんとガスの需用がふえてくると、先ほど言いましたように、石炭ガスではなくて、発生炉ガス、これは含有量が二七%ですから、石炭ガスが七%で、四倍近く、水性ガスは三二%ですから五倍近く石炭ガスより一酸化炭素を含んでおるのですね。こういうふうに毒性、危険性がだんだんふえてくるのですから、これを私は調査をさせないで、記録を分析させないという法令に従来の事故が起こった根本的な原因があると思う。これは通産省として私は大いに反省しなくちゃならないことだと思うのですが、この点に対してどういう考え方を持っておりますか。
  48. 小室恒夫

    ○小室政府委員 ごもっともなお尋ねでございます。実を申しますと、先ほど御答弁申したように一酸化炭素の含有量を幾らというふうにぴしっと政令できめることについて、もう少し慎重な考慮が必要であるという意味で、法令にその点を盛り込んでおらないのでありますけれども、法令とは離れて私どもは現実にその記録を詳細にとっております。また実は今度の事故が起こりました際も、通牒を出そうかという話もあったのですが、通牒の文章などを練っておるよりは、ともかく東京、大阪両ガス会社に早く変性装置を作って、発生炉ガスの一酸化炭素分を少なくすることに現実に着手してもらう方がいいからということで、通牒とか、法令のことは若干あと回しにして、直ちにガス課長に現場に飛んでいってもらい、また私どもから各社に対して現実の勧告をいたしたわけであります。ただし、これから、中毒防止について、これで済むわけじゃございませんので、いろいろと中で研究いたしまして、その結果についてはおっしゃるように法令に盛り込んで参りたい。ただ肝心かなめの一酸化炭素を何%ということで、急にきめられないものですから、その意味で法令に今おっしゃるような穴があいているというような感じをお持ちだろうと思いますが、それも無理からぬ点だと思いますが、決してその点も無関心であるわけではございません。その点だけ申し上げておきます。
  49. 板川正吾

    板川委員 この十六号、これは省令ですか。ガス事業法施行規則、省令ですね。この様式十六号による成分試験記録表の中に一つ書いて、一酸化炭素の含有量も報告させ、記録もとらせる、そういう義務を業者に負わせる。そうして何パーセント以上は危険だからいかぬとかいうことだけはいま少し先にいく、こういう気持ですか。
  50. 小室恒夫

    ○小室政府委員 法律で申しますと第二十九条で、ガス事業者は人体に被害を及ぼしあるいはそういうおそれがあるものの量が政令で定める数量をこえていないかどうかを検査して、その量を記録しておかなければならぬ、こういう関連があるものでございますから、その点で一つ今の問題を申したわけでございます。しかしながら同時に現在でも記録はとっておりますので、そういう点の記録だけでもはっきり法令でとるようにしたらいいんじゃないかという御注意は、まことにごもっともだと思います。これは施行規則その他の問題と関連しまして、ただいま検討中でございますから、できるだけ早い機会に、そういう御趣旨も盛り込んだ改正にいたしたいと思っております。
  51. 板川正吾

    板川委員 安保条約の事前協議ではありませんが、局長と業者との共同声明みたいなものでは、いざというときには法律的効果はありませんよ。ですからそういうことなら安保条約の成文に書くがごとく、やはり政令の十六号様式を変えて、義務づけしてその上で事故防止上の監督行政をさらに強化してもらいたい、こう要望しますが、一つこれに対してお答えを願って、私のこれに対する質問を終わりたいと思います。
  52. 小室恒夫

    ○小室政府委員 先ほど来申しましたように、ほかにもこの施行規則を合理化し、改正しなければならぬ点もございます。また法律的観点から書き方についていろいろ研究しなければならぬ点もございますから、御趣旨はできるだけ織り込んで参りたいと思います。
  53. 田中武夫

    田中(武)委員 ちょっと関連して、大臣がいないので政務次官にお伺いしたいと思います。  実は火薬とか花火、ガスといったようないわゆる危険産業について、一貫して質問したいと思っておったのですが、きょうの板川委員の質問に関連して一言だけお伺いしたいんです。と申しますのは、火薬輸送の取り締まりは通産省ですか運輸省ですか、あるいは警察当局か、いろいろ関係があると思うのですが、やはり通産省が一番責任ある取り締まりだと思うのですが、そういう管轄はどうなっていますか。
  54. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 私もこのことは十分検討をいたしておりませんでしたが、先般事故が起こりました際に明らかになりましたことは、輸送手段の取り締まり監督官庁は運輸省であるが、それ以外の輸送に関連する直接の官庁が運輸省であるのか通産省であるのか、今の法令のでき方が必ずしも明瞭でないということが明らかにされたようであります。すでに申し上げましたように今度の国会に追って近く火薬類取締法の改正案を提出して御審議を願うわけでございますが、今お尋ねの点をも含めまして、せっかく今改正法令の内容につきまして法制局で成文を固めておりますので、その際にこの問題は法令上はっきりいたしたいと思います。ことに輸送につきましては今までは御承知のように届け出制である。しかもその届け出の効果がまだ現われないのに、すでに現実の輸送は開始されているというような状況でありましたので、たとえば届け出後何時間を経過しなければ輸送が開始できないとかいうことばかりでなしに、場合によっては輸送についても許可制をしくことの可能性につきましても、今法令改正について検討をいたしております。
  55. 田中武夫

    田中(武)委員 せんだっての東洋化工ですか、あれの事故で委員会から派遣になって私行ったのですが、そのとき気づいたのは、今申しましたように、さっき言ったのは輸送ですが、そうでなくこういった取り締まり関係が、ある点では消防、警察、あらゆる点と重複しており、ある点では盲点になっておる、こういう点がわかったわけなんです。そういうような点について、一般的に法令を検討していただいて、盲点のないようにしてもらいたい、こう思っております。つきましては火薬の輸送につきまして、神奈川県がかつてのああいう事故がありましたので、軍用火薬の輸送について米軍当局に申し入れをした。そうすると米軍当局は、そのことについては日米合同委員会の議案である、こういうようなことであったと聞いております。そこで通産省の方は軍用火薬であっても、それを請け負っておるといいますか、輸送を請け負っておる運送業者は、現在の規則、あるいは取り締まりを守るべきである、そういうようなことになっておる。そういう回答をされたようなことも、ちょっとニュースで聞いたのですが、そういう問題について、米軍の軍用火薬輸送、これを日米安全合同委員会ですか、あれに提案してくれということを、神奈川県から出してきたと思うのですが、通産省としてはどう考えておりますか。
  56. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 お尋ねのような問題があり得るわけであります。火薬類取締法の規定が、そのまま米軍の火薬に関する取り扱いに適用されるかどうかという問題にも関連するわけでありますが、少なくとも施設及び区域外の輸送等につきましては、かりに火薬類取締法がそのまま適用されなくても、同種の取り扱いをさすべきだ、これは法令をきめてはおりませんが、私はそう考えます。そこで先般もこの委員会で私から申し述べたのでありますが、外務省を通じまして駐留軍当局の方において、特に今回わが国においては火薬類取締法のかくかくの改正強化をするから、駐留軍の方における火薬の管理等に関しましても、同様の趣旨をもって、駐留軍が自分の責任においてやる場合には、施設区域内におきましても、同様の取り締まりの厳重を期せられたい、こういう申し入れをいたすことになっております。事によりましたら、もうその申し入れは出ておるかもしれませんです。あるいは場合によってはその文章等も差し上げることができるかもしれません。
  57. 田中武夫

    田中(武)委員 関連ですし、またあらためて一貫して質問したいと思っておるのですが、この問題を考えてみました場合に、米軍の軍用火薬を日本の業者が請け負って輸送する場合は、これは現在の、あるいは改正せられた取締法によって取り締まられる。しかしながら米軍直接に輸送する場合は、これは行政協定等によって別個な扱いになると思う。そのような場合に、一般からいえば受ける危険度は同じ工合でありますので、そういう点を十分考えていただきたい、このように考えております。このことにつきましては行政協定その他にまでさかのぼって論議しなければならないのじゃないかと思いますが、これはきょうはやらないことにいたしますが、今の御答弁によって、そういうように一般に対しては、民間であろうが米軍当局の輸送であろうが、危険において何ら変わりがないという取り扱いをしていただくように要望いたしておきます。
  58. 中村幸八

    中村委員長 以上をもちまして政府当局に対する本日の質疑は終わるのでありますが、板川正吾君の先ほどの発言中、速記録を調べまして適当と思われない部分がありましたら、委員長において削除いたしますから、御了承を願います。      ————◇—————
  59. 中村幸八

    中村委員長 次に、参考人出頭要求の件についてお諮りいたします。中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案及び中小企業振興資金助成法の一部を改正する法律案の両案の審査のため、来たる十二日金曜日、商工組合中央金庫、全国信用保証協会連合会、全国信用組合中央協会、全国信用金庫協会及び全国相互銀行協会の各代表の方々に参考人として御出席を願い、御意見をお聞きすることにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  60. 中村幸八

    中村委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。なお人選、手続等に関しましては、委員長に御一任願います。  本日はこの程度にとどめ、次会は来たる十二日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。     午後零時十分散会