○大池
政府委員 土地調整委員会の取り扱っております
事項につきまして、ごく概要の御説明をさせていただきます。
土地調整委員会は、
鉱業と
一般公益または農業、林業、その他の
産業との
調整をはかるために設けられたものでありますが、その所掌事務につき、御説明いたします。
当
委員会は、お手元に差し上げました摘要の一枚目の裏の二にあります
通り、
土地調整委員会設置法第三条により、(1)鉱区
禁止地域の指定、(2)
鉱業権または採石権の設定等に関する
異議の裁定、(3)
鉱業または採石業のための土地使用、収用、その他の利用に関する
異議の裁定、(4)核原料物質の探鉱のための土地使用、収用に関する裁定、に関することを取り扱うのでありますが、同
設置法第四条で、これがために種々の権限が与えられておりますので、実際の事務内容はずいぶん多岐にわたっております。
元来、当
委員会は、一般の諮問
委員会とは異なり、
鉱業と他
産業との
調整のための独立した行政
委員会でありまして、仕事の性質から分けてみますれば、お手元の最後のページにあります五の(1)
土地調整委員会規則並びに内部規則制定等の準立法的事務と、(2)行政的事務と、(3)準司法的事務との三種類になりますが、そのうちの後段に申し上げた行政的、準司法的の二つが当
委員会の特質でもありますから、ただいまから、その概略を説明させていただきます。
まず、行政事務の第一は、お手元の一枚目裏の三の1号以下に列記してありますが、鉱区
禁止でありまして、これには
禁止地域の指定とその解除があります。
鉱物の採掘が他
産業と対比して適当でないと認めたときは、鉱物を指定して、一定地域の鉱区
禁止をなし、また、指定後その必要がなくなったと認めたときは、指定解除をいたします。この両者とも、各大臣または都道府県知事の請求があった場合に行なうものでありまして、当
委員会の発動によるものではなく、全く受け身の形になっております。しかして鉱区
禁止をいたしましても、既存の
鉱業権は従来
通り存続することになりますので、そのままにしておいては著しく公共の福祉に反すると認めたときには、その
鉱業権の減区または取り消しを通産局長に勧告することがあります。
第二は、3号にあります
鉱業の掘採制限の決定に対する
承認であります。
鉱業権者は、公共施設並びに建物の地表、地下とも五十メートル以内の場所は掘採ができないのが原則でありまして、これを掘るためには、その管理人の承諾を必要といたします。その
承認が得られないときには、通産局長に許可の決定を申請できますが、通産局長がその決定をするには、事前に当
委員会の
承認を必要とするのであります。
第三は、当
委員会が意見を申し出る場合と協議を受けて回答する場合であります。
その
一つは、5号にあります土地収用法に基づく建設大臣に対する意見の申し出でありまして、(イ)といたしまして、都道府県知事が土地収用法による
事業認定を拒否したため建設大臣に
事業認定を申請した場合に、この申請を処理するときには、建設大臣は当
委員会の意見を求めるのであります。(ロ)として、建設大臣に
事業認定を申請したとき、これを拒否されたため、再審査を申し出たとしますれば、これまた建設大臣は、当
委員会の意見を求めて参ります。(ハ)として、都道府県知事が
事業認定をした場合または収用
委員会が裁決をした場合に、訴願をすることができますが、この訴願の処理をする場合もこれまた同様であります。
その二は、6号の森林法に基づく農林大臣への意見申し出であります。森林法によって土地収用または使用に関する都道府県知事の認可または裁定に対する訴願が農林大臣にあった場合、同大臣がその訴願裁決をしようとするときは、当
委員会の意見を求めてくるのであります。
次に、当
委員会の協議
事項としては、7号にあります文化財保護法に基づく同
委員会との協議がそれであります。すなわち、文化財保護
委員会から都道府県の教育
委員会は権限委任を受けて、重要文化財や史跡名勝天然記念物の
現状変更の許可や不許可ができますし、また、環境保全のための行為制限や
禁止ができます。このような場合に、そのことが
鉱業または採石業との
調整に関する
異議申し立てがありますれば、これを却下する場合以外はあらかじめ保護
委員会から当
委員会は協議を受けることになっております。
第四は、8号の核原料物質の探鉱のための土地使用または収用に関する裁決があります。核原料物質探鉱のための必要な土地の使用または使用により土地の形質が変更される場合、土地所有者は土地の収用の裁決を求めることができますので、これが裁決に当たります。
以上が行政
措置の一般であります。
次に、準司法的事務につき申し上げれば、行政庁の処分に対する
異議の裁定であります。これは当
委員会の重要な使命となっておるものでありまして、お手元の二ページの四の各号該当
事項がそれであります。その1は、
鉱業権の設定、取り消しまたは鉱区の増減等の処分に関する
異議の裁定であります。すなわち、(イ)
経済的価値がなく、または他
産業の利益を損じ、
一般公益に反するにかかわらず、通産局長が
鉱業権を
設置したりまたは鉱区の増減を許可した場合、また、これと反対に、上記の理由に基づきこれらのことを不許可とした場合に起こって参ります。(ロ)前申し上げた理由で
鉱業権、租鉱権を取り消した場合も同様であります。
その2は、採石権の設定等の処分に対するものであります。(イ)当事者の協議がまとまらないために、申請に基づき通産局長が採石権の設定をしたり、または採石権存続期間の更新をした場合と、(ロ)このときに通産局長が採石権の設定または存続期間の更新にかえて、その土地または残地が従来の用に適しなくなると認めて土地の買い取りを決定した場合に起こる
異議の裁定であります。ただいま申し上げた(イ)、(ロ)の場合には、通産局長が決定をする前に当
委員会に決定に対する意見を求めてきますので、当
委員会としては、その決定を
承認するかまたは拒否いたします。これは先刻保留させていただきました行政事務でありまして、お手元の三の4号に該当することであります。
その三は、
鉱業または採石業のために必要な他人の土地使用または収用の処分に対する
異議の裁定であります。これはしばしばその例を見るのでありますが、(イ)として、
鉱業権者または租鉱権者並びに採石権者が他人の土地を使用または収用を申請した場合、通産局長がこれを許可または拒否したために起こった
異議と、(ロ)として、前記の場合、収用
委員会が土地使用または収用の裁決もしくは決定をしたために起る
異議の裁定と二つがあります。
その四は、森林法に基づく
異議裁定でございまして、どんな場合に起こるか、努めて概略を申し上げますれば、(1)都道府県知事が立木竹の伐採許可をしたときとか、保安林の指定や解除申請を却下したとき、または保安林や保安施設地区の土地変更を許した場合に
異議があって、これが
鉱業や採石業の
調整に関する場合でございます。
(2)また農林大臣が保安林や保安施設地区の指定や解除をしたとき、あるいはこの申請があったのに不許可にしたというような場合に、前同様、
鉱業、採石業の
調整に関して
異議が起こった場合であります。
その五は、農地法に基づく
異議の裁定であります。都道府県知事や農林大臣が、農地や採草放牧地を、それ以外のものに転用許可をした場合に、
鉱業権者、租鉱権者または採石権者を相手方としたために
異議が起こった場合でございます。
その六は、海岸法に基づく
異議裁定でございまして、四つの場合がありますが、簡単に要点だけを申し上げますれば、海岸管理者が、(1)、海岸保全区域にある施設や工作物を設けることを許したり許さなかったりした場合、(2)、土石採取の施設を許した場合、(3)、許可なくして行なったり、許可条件に違反したり、ときには不正許可であったために、行為の中止を命じたり、原状
回復をさせたりする場合、(4)、公益上の理由で一度許された行為を取り消したり、条件を変えさせたり、ときに原状
回復をさせたりした場合、この四つの場合に、
鉱業、採石業または砂利採取業との
調整に関する
異議が起こりますれば、当
委員会の裁定事件と相なるのでございます。その七は、自然公園法に基づく
異議裁定でございます。御承知の
通り、国立公園や国定公園には、特別地域や特別保護地域と普通地域と区別をつけることがありますが、この特別及び特別保護地域で、鉱物の採掘または土石採取に
関連した行為を、厚生大臣や都道府県知事が許可する場合があります。また、普通地域内にある工作物やある行為が、厚生省令の基準違反だとして、都道府県知事が
禁止したり、制限を加えたり、ときに必要
措置を命ずることがあります。一方には都道府県立公園もありますので、これに関しては都道府県知事が条例でもって一定の処分ができます。以上申し上げた三つの場合に不服があってその理由が
鉱業または採石業との
調整に関したものであった場合の裁定でございます。
最後に、第八として、地すべり防止法に基づく
異議裁定でございます。地すべり防止法によりますと、(1)主務大臣または都道府県知事以外の者が、地すべり防止工事を施行する場合には、その工事設計や実施
計画を都道府県知事から
承認を受けなければなりません。従ってこのときの
承認。(2)、都道府県知事は、地すべりまたはボタ山崩壊防止工事以外の工事者またはこれらの防止工事の必要を生じさせた行為をした者に、これらの防止工事の施行を命ずることができます。従ってこのときの施行命令。(3)、都道府県知事は、地下水誘発または地表水放流等の地すべり防止を阻害または助長誘発することあるべき行為でも、その危険なしとして許可することがあり得るわけであります。よって、このときの許可。(4)は、前述の許可行為を都道府県知事がその後情勢により取り消したり、中止したり、または条件の変更その他諸施設に対し、必要な
措置を命ずることがあります。このときの命令。五番目には、都道府県知事以外の者が防止施設を管理しておる場合に、都道府県知事がその施設の改良補修と管理上必要な
措置を命ずることがあります。このときの命令。以上五つの場合の処分につきまして不服ある者が、その理由が
鉱業、採石業または砂利採取業との
調整に関するものであるときの当
委員会の裁定でございます。
以上で準司法的の裁定
事項の全般を概略申し上げましたが、このほかにも、当
委員会が裁定したことや、あるいは裁定申請を受けたとき、これを却下したのに対し訴訟が提起されて、裁判所が判決を下し、その事件を当
委員会に差し戻してきたり、証拠再調の上適当な
措置をとるよう命じられた場合には、再審理をいたさなければなりません。これが9号に当たる場合であります。
これをもちまして事務大要の御説明を終わります。長らく御清聴をわずらわしましたが、何分の御支援と御鞭撻をお願いいたします。