○鈴木
参考人 東京都に
勤務しております地方事務官あるいは地方技官、すなわちその他の雇員、用員もございますが、国家公務員の身分の問題について現状がどういうようなことになっておるかということと、またどういう点に問題があるかということにつきまして若干申し上げたいと存じます。
現在
東京都には地方自治法の施行規程という、地方自治法の施行に関する経過の政令がございますが、この政令に基づきまして、全体を合わせまして約三千の国家公務員がおります。これは社会保険
関係の者、職業安定行政に従事をいたします者、
国民年金
関係の事務に従事いたします者等でございまして、これらの三千人の
職員が都の
職員の中に入りまじっておるわけでございます。これらの
職員につきましては、その人事取り扱いは都の一般
職員のごとく地方公務員法の規制を受けませんで、国家公務員法の規制を受けますとともに、一部特例の
事項といたしまして、地方自治法施行規程の中におきまして、その任命権、進退等につきまして特例の規定があるわけでございます。そこでこれらの国家公務員とその他の一般の
東京都の公務員との間におきまして、いろいろの点におきまして取り扱い上の差異があるわけでございます。その差異の若干を申し上げますると、
一つは任命権の問題でございますが、これはもちろん一般の
職員は知事が任命権を持っているわけでございますが、地方事務官、地方技官、その他の国家公務員は、労働大臣あるいは厚生大臣が任命権を持っておられるわけでございまして、
〔
委員長退席、
大坪委員長代理着席〕
ただそのうち五等級以下の者につきましては、任命権を国家公務員でありまする都の一番上級の
職員、労働局で申しますると総務部長、あるいは
民生局の保険部長というような地位にあります国家公務員にこれを委任いたしておるわけでございます。しかし制度上は、およそこれらの国家公務員の進退につきましては知事の
意見を聞かなければいけない、こういう制限が政令の上に書いてございます。しかしこれは実際の運用といたしましてはあまり役立ってはいないように
考えられます。それから地方公務員法におきまする
職員団体の取り扱いと国家公務員法におきまする
職員団体の取り扱いとは、登録の場所が国の場合は人事院系統の機関でありまするし、都の場合は人事
委員会であるというようなことで、これもやかましく申すと制度上違うわけであります。あるいは服務などにつきましても、たとえば政治的行為の制限の規定が国家公務員法にも地方公務員法にもございますが、これもやかましく申しますると、それぞれ御案内のように、国家公務員法の方は罰則は刑罰規定なと相当きつくあるわけでございますが、地方公務員法の方はそこが懲戒罰になっておるというような点でそれぞれ違いがあるわけでございます。また給与の点につきましても、
東京都は御案内のように、昔の
東京市と
東京府が一緒になってできた団体でございまするから、一般の府県の
職員よりも若干給与が高いのは事実でございます。そこで給与の取り扱い等につきましても、国家公務員の場合におきまして、あるいは昇給の場合などを
考えてみますると、どうしても都の場合におきましては、国が人事院の勧告に基づきまして給与の改訂をいたしましてから若干おくれなければ給与の改訂ができないというのが従来の扱いでございますが、そういうような点についても実際上若干違ってくるというような、これは一例でございますけれども、給与においてもやはり給与予算が違う
関係がございまして、当然にこれは違って参るわけであります。
その他こまかい点を申し上げればいろいろあるわけでございますが、人事上さようにいろいろな点において両方が違っておるというのが現状におきまする
問題点の第一でございます。
問題点の第二といたしましては予算でございますが、これも一方は国の特別会計の保険
関係の予算あるいは職業安定
関係の国の団体
経営の予算というようなことで、歳入の徴収にいたしましても、支出にいたしましても、国の会計法規、財政法規に縛られましてこれをやる、こういうことでございまするし、一方は都の自治体の予算として執行する。予算の編成につきましても、一方については、知事は国の問題につきましては全然発言権はございませんが、そういうような点において、自身の予算を編成する場合とはやはり
立場が相当に異なってくるというようなことで、財政経理、予算編成の面等におきまして第二に相当違っておるという点があるわけでございます。
またこの
組織でございますが、社会保険
関係では社会保険出張所というのがございまして、これは地方自治法施行規程という経過規定に根拠を置いて作られておるわけでございます。そういうことで、地方自治法の体系で規定をいたしておりますから、これは都の行政
組織の中の一部であるというふうに理屈をつければなるわけでございますが、一方職業安定行政の
関係の公共職業安定所というものは、これは職業安定法の規定によって設けられ、また労働省設置法の中では支分部局というふうに規定されておるかと存じますが、そういうようなことで、これは国の出先機関である。その国の出先機関に対して、一方都の
組織であるところの職業安定所が職務上の指揮監督権を持っておる。すなわち知事が職務上の指揮監督権を持っておるというようなことでございまして、どうもいささか脈絡が一貫していないという面がどちらの面、国の面、都の面から申しましてもあるかと存じます。そういうことで、行政
組織が同じような形になっておりながら、制度上の規律が違っておるというのが第三の
問題点であろうかと思うのであります。
これを要しまするに、この人事の扱いあるいは予算の経理あるいは
組織というような点につきまして見ましても、いろいろと食い違いがあるわけでございますが、しかし何と申しましても、都庁の同じ部屋の中で、あるいは同じ局部の中で
仕事をやっておるわけでございまして、中身が国の直接の
仕事で、国の官吏である
職員がやっておるものでございましょうとも、一人の労働
局長あるいは一人の
民生局長の所管に属することであります。従ってまたこれは
東京都知事がその責任において
仕事をやっているのである、こういうふうに外部的には当然にとられるわけでございます。従っていいことも悪いことも、功罪ともにこれは知事の責任あるいは労働
局長、
民生局長の責任ということになるわけでございまするが、それにもかかわりませず、今申し上げましたような点においては、相当に多く一般の都の
職員と違った拘束があるというところに、知事といたしましてはこれはいささか
仕事がやりにくいという点が率直に申してあるわけでございます。
そこで、おそらくこれに従事する
職員の
立場になりましても、なるほど国家公務員という形でございまするから、
全国的に人事の交流は可能であるような形になっておりますが、都のような大きな
組織の場合におきましては、
全国的に交流するというよりも、むしろ都の中で、同じ局の中の他の部課あるいは他の局というような、都の公務員との間の交流の方をむしろ第一次的に要望するのが当然であろうかと思うのでありまして、そういう場合に、やはりこれはなかなか実際上めんどうであるというようなことでございまするし、またここに働いておりまする者から申しますと、いわばほかの方に異動をしてさらに昇進していくといいますか、そういうような将来に対する夢といいますか魅力、そういうものがやはり非常にそがれてくる。ことに同じ机にすわっておりながら、一方は国の公務員、一方は都の公務員ということであるがために、先ほど申し上げましたようないろいろの違いが出て参りますので、どうもこれは厳密な意味では同一労働、同一
賃金という
原則がそのまま当てはまるかどうかわかりませんが、常識的な感じといたしまして、同じところで働いており、同じ条件でありながら給与が違う、あるいは人事扱いが違うということについて、何か割り切れない点が残るのではないかと
考えられるわけでございます。
そこで、そもそもこの地方自治法の施行規程に暫定措置として、当分の間国家公務員にするというふうに書かれました立法のときの趣旨は、まだ国家公務員法というようなものが実は当時はできておりませんで、むしろ都道府県に働いておりまする者は、官吏でありましょうとも公吏でありましょうとも、いわば一本の官公吏法というような形のものに規律せられるようになる、そういうことを——当時私も
関係をいたしておりましたが、官公吏法というような一本の形の公務員法を作って、それで規律されるようになれば最もよいであろうというようなことも、実は司令部
関係の影響がなかったときにおいては
考えておったようなことがあったのであります。それと申すのも、身分が官吏公吏というふうに分かれておりましても、そこで働く場合には、旧制度においては御
承知のごとく官吏服務紀律というものが府県の
職員にもそのまま準用されるというようなことでございましたし、また出発は府県の吏員で、逐次これが官吏になって昇進していくというようなことで、身分は違いましても運用上は一本の姿で実際の運用をされておった。そこに官公吏併用の旧府県制などにおいては若干の妙味があったと思うのでございますが、今のように国の公務員の系統、地方公務員の系統というようなことで制度が截然と分かれておりますと、どうもつ実際
仕事をやる仕組みとしてはうまくない。そこで結局知事といたしましては、いろいろこれは
職員団体との間の話し合い等もあるわけでございますが、できるだけこの人事の扱いにいたしましても給与の扱いにいたしましても、実際の運用の面におきましてあまりちぐはぐが起こらないように種々心を砕くと申しますか頭を痛めまして調整の措置をやって参りまして、
職員の士気にできるだけ悪い影響がないようにしよう、こういうことで過去におきましてもいろいろ配慮してきたのでございます。そこで私どもといたしましては、この制度につきましてはやはり何らか調整をいたしまして、いま少し、同じ
職場で働くという建前からいたしまして、何らか
相互に調整をするというような必要があるのではないかと
考えるわけでございます。
過般
東京都議会におきましては、全部この事務を都に委譲をしていただいて、そして地方公務員という
立場でこれらの事務をやるようにしてもらいたい、国として必要なる統制、監督、
指導は特別法でいかようにおやりになっていただいてもよろしゅうございますが、そういったような形にしてもらいたいというような
意見書を提出しておるのでございますが、これはそういう形でこの問題を
解決したいという
一つの理想の姿を都議会としては
意見書の形で出されたものと存ずるのでございます。私どもといたしましては、地方自治という
立場から
考えますと、やはりこれが
一つの
解決策であろうかと思います。なおこれはおそらく国の
立場からもいろいろの御
意見があろうかと思いますけれども、いずれにいたしましても、この両者截然と分かれて起りまする建前をなるべくすみやかに、経過規定などで規定されるという形でなく、本来的な姿に戻しまして適切なる調整を国としてはかっていただきたいというふうな
考え方を持っておる次第でございます。