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1960-05-18 第34回国会 衆議院 社会労働委員会 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年五月十八日(水曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 永山 忠則君    理事 大坪 保雄君 理事 田中 正巳君    理事 八田 貞義君 理事 藤本 捨助君    理事 滝井 義高君 理事 八木 一男君    理事 堤 ツルヨ君       池田 清志君    藏内 修治君       河野 孝子君    齋藤 邦吉君       柳谷清三郎君    亘  四郎君       赤松  勇君    伊藤よし子君       大原  亨君    兒玉 末男君       五島 虎雄君    多賀谷真稔君       中村 英男君    山口シヅエ君       受田 新吉君    本島百合子君  出席政府委員         厚生事務官         (保険局長)  太宰 博邦君         林野庁長官   山崎  齊君         労働事務官         (労政局長)  亀井  光君  委員外出席者         厚生事務官         (保険局庶務課         長)      今村  譲君         農林事務官         (林野庁林政部         職員課長)   後藤伝一郎君         労働事務官         (職業安定局庶         務課長)    広瀬 忠三君         参  考  人         (全林野労働組         合中央執行委員         長)      亀井 忠衛君         参  考  人         (東京都副知         事)      鈴木 俊一君         参  考  人         (東京職員労         働組合調査部         長)      渡辺 勇二君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 五月十八日  委員小林進君及び木下哲辞任につき、その補  欠として兒玉末男君及び受田新吉君が議長の指  名で委員に選任された。 同日  委員兒玉末男君及び受田新吉辞任につき、そ  の補欠として小林進君及び木下哲君が議長の指  名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  労使関係に関する件(林野庁における労使関係  に関する問題)  社会保障制度に関する件(社会保険関係職員の  身分に関する問題)      ————◇—————
  2. 永山忠則

    永山委員長 これより会議を開きます。  林野庁における労使関係に関する件について調査を進めます。  本日は、本件について政府側から林野庁長官山崎政府委員組合側から参考人として全林野労働組合中央執行委員長亀井忠衛君の御出席を願っております。参考人にはおいでをいただきましてまことにありがとうございます。  まず本件について全林野労働組合中央執行委員長亀井参考人に御意見の開陳をお願いいたしたいと存じます。  亀井参考人
  3. 亀井忠衛

    亀井参考人 御指名によりまして、ただいまから全林野労働組合としての若干の参考意見を申し上げたいと思います。     〔委員長退席大坪委員長代理着席〕  話の概要といたしまして、まず全林野労働組合組織概要、次に林野職員仕事と、これに対するわれわれ組合としての考え方、次に林野庁当局労務対策について申し上げたい。組合に対する攻撃の、いわゆる分裂介入の問題についての具体的な内容、それから今問題点となっておりますところの団体交渉拒否と、それと関連をする林野当局が出しておりまする労務関係ハンドブックというものの概要に触れたいと思います。最後に、今全国各地に起きておりまするところの林野庁作業員雇用問題について御説明を申し上げたい。以上のような四点にわたりまして、以下いろいろお話を申し上げたい、かように存ずる次第でございます。  まず全林野組織概要についてでございますけれども、昭和二十八年に公労法が制定されまして以来、かつての国有林野従業員組合職員組合が合同いたしまして、当時約三万程度組織でありましたが、その後七カ年の活動の中から現在五万三千名の組織を有するに至りまして、国有林野に働く各階層を網羅した労働組合である、こういうふうな状態になっております。  組合の機構を申し上げますると、中央本部のもとに全国十四の営林局本庁本部を加えまして十五の地方本部を有し、さらにその傘下に三百三十八の営林署分会と約四千に上る班をもって組織運営がなされております。従って組合員の分布というものは、北は北海道から南は九州奄美大島に至る全国山間僻地にその職場を有するという、ほかの組合にあまり例のない特異な状態があるわけでございます。なかんずくその内容とする雇用区分に至りましては、いわゆる定員法の規制を受けまするところの定員内職員を初めとして、常勤作業員、給与法の特例を受けるところの、いわゆる私たちのいっております就業規則三十七条の適用者であるとか、それからその下にさらに常用作業員定期作業員臨時作業員、それからさらに月雇いと日雇いというふうな非常に繁雑な雇用区分また処遇上のさまざまな問題点を含む職員構成となっておるのであります。  次に林野職員仕事とこれに対する組合考え方を申し上げたいと存じますが、これら年間約十五万人に及ぶ林野職員は、国有林野事業という性格から、人里離れた山間僻陬地のおよそ文化というものから見離された不便な生活環境の中にあって、国有林経営という国民の負託にこたえるべく、それぞれの分野にありまして、あらゆる不便を忍びながら生産事業あるいは土木事業、造林、治山の各種の事業に従事しているのであります。近代的な労務管理というものから見た場合に、はるかに低い賃金なり、劣悪な非常に恵まれない厚生施設、さらに公務災害の危険などに至っては非常に大きなパーセントを示しております。こういうふうな危険に直面しながら働いているというふうな事実は、数多くの報告なり資料あるいはレポートなどの示すところによって明らかになっておる次第でございます。特に現場における作業員のほとんどは約三五%程度定期作業員、そのほか今申し上げたパーセント以外の大半を占めまする臨時月雇い、日雇いをもって生産事業がなされておるわけでございますが、この定期作業員年間平均稼働月数というものは大体六カ月ないし八カ月程度でありまして、その後三カ月間の失業保険手当と、残余の月というものは全く無収入の状態にある。いかにこういうふうな基礎の上に立っての生活というものがきわめて不安定な労働条件の上に基づいているか、こういうふうな状態が明らかに見られるわけでございます。しかも現在林野当局がとっておりますところの事業経営というものが、このような不合理な、不安定な労務条件を基盤として成り立っているというふうに認識をすべきである、このように考えるものであります。  次に林野事業に働いております組合員仕事内容を大別いたしますと、大ざっぱに言いましていわゆる事務系職員現場に働く作業員というふうに大体区別されるわけでございますけれども、事務系職員管理経営事業の各分野にわたって、いわゆる課長を補佐するというふうな立場の班長から、下は簡単な書記的な事務補助というふうに、各階層あるいは職階区分によって配置をされております。後者のいわゆる現場作業員の場合には生産地点における肉体労働に多く働いているという状態なのであります。こうした作業員賃金支払い形態というものは、いわゆる日給制という出づら払い、それから出来高による出来高制というものに大別をされるわけでございますけれども、大体林野事業におけるおもな作業、いわゆる伐木なり木寄運材等仕事は、大半出来高制をもって賃金が支払われておるというふうな状態になっております。  以上のように、事務系現場作業員仕事内容から見ました場合に相当な隔たりがございますけれども、昭和二十八年に労働組合が統一をされましてから、お互いの立場というものが双方十分に理解をされまして、その協力と信頼がなければ国有林野経営というものは民主的な国民の山として運営されないことに目ざめ、年を追ってその結びつきがいよいよ深まって参り、今日では全林野労働組合すべてが仕事上の相違を越えて一体となり、一面では現場作業員、すなわち地元労働者としての山間僻地における後進性あるいは封建性というものを改善しながら、大きくは農山経済の安定のためにも尽くしているというのが現状でございます。  次に林野庁当局労務対策の具体的な面に入って参りたいと思いますが、まず国有林野事業目的を大別した場合に、大体以下の三点に集約できるというふうな考えを持っております。まず一点といたしまして、国有林経営管理を通じて企業としての採算を維持すること、二点といたしましては、公共事業使命というものから地元民生なり経済に寄与すること、三点といたしましては、国土保全立場から必要な事業を行なうこと、大体以上にあると考えるわけでございます。従って管理経営に伴うあらゆる施策というものはこれらの原則を離れてはあり得ないと考えるわけでございますが、それぞれの事項によって相矛盾し競合する事項もまた数多く生ずるということはいなめません。しかし私たち労働組合といたしましても、それぞれ労使としての立場は異なっておりましても、相互信頼し、誠意努力を尽くすことによって必ずや共通点を見出し、妥協する余地のあるものであるというふうな考え方を強く持っているものでございます。最近林野当局がとっておるところの労働組合対策は、現在まで一歩々々築いてきた民主的労使の長年の慣行というものを一挙に破壊せんとするような状態が著しく現われております。特に昨年以来あらゆる面での締めつけあるいは圧迫というふうな非民主的労務管理、加えるに組織に対する分裂介入をはかってきたことは、数多くの例によって明らかでございます。  以下二、三の具体的な例を申し述べてみたいと思いますが、私たち全林野が昨年の十月本庁本部を中心として一部の組織分裂を起こすような状態になりました。それにならいまして九州あるいは前橋の地方本部管内におきましても若干の脱落者が出たのでございますけれども、これは単なる偶然ということではなくして、全林野組合員労働条件を向上さす活動、つまり特に現場作業員に対する地位の改善というものを阻止しよう、こういうふうな意図があったということは、明らかに感ぜられるわけでございます。それはどういうことかと申しますと、前にも説明いたしましたように、現場作業員は、農山村出身の者が非常に多く、しかもその働く期間というものは、日雇いから、一カ月ないし四カ月程度の月雇い、六カ月以上の定期作業員と、季節的な作業であって、雇用が中断をする。年間を通じて働いておる常用作業員というのは約三千五百名程度というふうな微々たる状態になっております。特に北海道から東北地方にかけましては、こういう状態が非常に顕著に現われております。組織分離というものが成功した場合には、現場作業員の実質的な組織力というものが寸断をされることは論を待たないわけでございますが、労働条件のこうした切り下げによって、さらに低賃金労働強化に至ることは、これもまた明らかに認められるところでございます。当局介入不当労働行為全林野九州地方本部より目下第三者に対して提訴中でありますが、二、三の例を説明いたしますと、昨年の九月三十日に、九州熊本営林局管内武雄という営林署がございますが、そこの庶務課長が、熊本営林局所属の当時の第二組合員主謀者赤沢真一という人がこの武雄営林署公務出張でおもむいておるが、これは明らかに第二組合結成のために来ておるという事実を十分に承知をしておりながら、管内勤務をしておる担当区主任をそれぞれ二カ所の担当区に集めまして、この赤沢真一とともに担当区へ行って、第二組合結成の会合に出席をし、支援あるいは便宜を与えた、こういう事実があがっております。  もう一つは、同じく昨年の九月二十八日ごろでございますが、熊本市の千歳旅館において、当時全林野所属組合員が約十九名ほど参加をいたしまして、第二組合結成についていろいろ協議をした際に、以下述べますような三点について申し合わせをしておる。これは組合結成のためのオルグ費用公務出張によって出た職員の旅費をそれぞれ使用していく。次はオルグ全林野の役員にはその行動を祕匿をして、いわゆる組合の中での動揺しやすい層に強力に働きかけをする。次は各分会に行った際には所轄の営林署長なり、あるいは事業課長等に依頼をして全林野組合員を集めてもらうこと、このような申し合わせをしておるわけでございます。そのほかまだ数多くの例があがっております。  さらに林野当局は昨年の春以来、それまで行なわれてきました団体交渉に対する進め方、あるいは交渉範囲の問題につきましては、一方的な見解を示したところの労務関係ハンドブックというものを下部管理者に指示をしております。それに従わない管理者は断固たる処置をとる、しかも具体的には、一部組合意見を肯定する、同意するというふうな好ましからざる管理者ということで、直ちに左遷をしたというふうな事例も出て参っております。まず従来の団体交渉を行なってきた事項というものを、管理運営事項、それから話し合いによる事項、それから当然の労働条件としての団体交渉の三つに区分整理をする、交渉に臨んだ際には、いたずらに法律であるとか、あるいは理論に巻き込まれるなというふうな指導をその中でしておるわけでございます。さらに話し合い事項ということできまった問題についても一切の文書化を拒否する。つまり確認書なり、協約文というものの作成をしてはならぬ、こういうふうな強力な指導をとっております。また管理運営事項というものは絶対に交渉に応じてはならないのだ、職場における管理運営事項というものと労働条件というものは、事案によっては紙一重、表裏一体の関係をなすというものが非常に多い、このように考えておりますが、われわれ組合側立場に立って考えた場合においても、いわゆる会社通念上の管理運営事項というものもすべて団体交渉に乗せるということは要求しておりません。ただその裏に紙一重の差異で密着しておるところの労働条件に相当する事項は、いわゆる公労法の精神からいいましても、当然団体交渉事項として認めるべきである、こういう考えを持っておるわけでございます。さらに具体的な問題につきましては、十分はる良識を持ちまして事案の処理に当たる、問題によっては当局誠意信頼するにとどめるという場合もある、かように考えておるわけでございますけれども、それですら当局側は、一方的な見解をのみ押しつける態度に現在まで終始をしておる、こういうような状態にあるわけでございます。このために全林野の各級機関におきましても、数回にわたって当局に対しての態度是正を求めたわけでありますけれども、当局の言うところは、信義的にはともかくとして法律の解釈上こういう  ことをしたのであるから、不満ならば出るところに出ろ、こういうふうな態度を変えないわけでございます。こうした営林署段階における交渉事項というものは、そのほとんどが未解決状態を余儀なくされておる、また団体交渉傍聴の件につきましても、元来公開が原則であるにもかかわらず、当局側の承諾をどうしても必要とするのである、事前協議が絶対の要件である、こういうふうなやり方をいたしまして、交渉委員の交代も含めて組合側考え方であるところの、要は円滑なる団体交渉運営に支障がなければ、そのこと自体自主的に判断すべきものである、こういう主張と現在まで対立を続けておるというふうな状態であります。  本年の四月一日付をもちまして分会地方本部を問わず全国一斉に、長年労使双方努力によりまして締結されておった協約のうち、約百六件に上る協約事項というものを一片の文書によって破棄通告をして参ったわけでありますが、これに対して組合側としては、それぞれの内容を十分に協議をして、その中から組合として改めるべき事項、があるならば率直に改めるという鮮度を申し述べておるわけでございますけれども、そういうふうな交渉の場すらも拒否しておるというふうな状態でございます。団体交渉ルールにつきましては、対立をしたまま昨年の十二月十八日以降団体交渉協約そのものは現在いまだに未協約状態になっておりますが、特に九州地方傘下の各分会における団体交渉拒否状態というものは、きわめて悪質な状態が見られるわけでございます。いわゆるこの営林局当局は、この無協約というものを理由にいたしまして、交渉事項なり時間、場所、傍聴の有無というものを事前協議をしよう。これが一致しなければ一切の交渉を拒否するという態度をいまだに主張しておる。そのために各分会におきましては、大体四十五程度分会がございますけれども、超過勤務完全支給の問題、あるいは宿舎の修繕その他の福利厚生関係における交渉というものは一切持たれない状態になっておりまして、一月以降労働条件については解決の目安がついておらない、こういうような状態になっております。当局のこのような不当性というものを指摘をいたしまして、目下第三者機関提訴中という状態でございますけれども、特に遺憾に考えておりますことは、昨年の十二月十八日以降、下部管理者営林署長の場合には完全なロボットとなっておる。いわゆる自事主的な判断を一切禁ぜられたのではないか、かように感ずるものでございます。たとえますならば、局長の命令があるならば、法律、法令に違反をしてもやむを得ないのだ、こういうようなことを言うに至っては、まことに言語道断である。こういうような一端からも、いかに林野当局の非民主的な労務対策が強行されているかということがうかがい知られるわけでございます。このように、時によっては法律規定というものを主張する、また時によってこれを否認するというふうな態度は、良識ある管理者のとるべきものではなくして、強い反省を求めてやまない、こういうふうな考えを持っております。  次に、林野庁におきますところの雇用問題について若干触れてみたいと思います。国有林野事業におきますところの作業員雇用問題について触れたいと思いますが、さきに国有林野事業目的一つとして地本民生経済の安定に寄与するということをいっておりますが、わが国の雇用事情は、私から申し上げるまでもなく、国会議員たる諸先生もよく御承知と思いますが、労働力の膨大な供給源であり、それだけに失業人口大半を占める農山村の労働力の消化、すなわち安定雇用の面に対しまして、林野事業が昔から果たしてきた役割というものは、そういう人たち生活と直接に結びついてきわめて大きなものがあるわけでございます。また事業そのものの特徴からも、地元労働力によって初めて円滑なる経営管理がなされているというような事実は何人といえども否定できないと思うわけでございますけれども、近年林野庁当局か極端な利潤追求政策の中から、事業遂行によって生ずる矛盾を、いわゆる恵まれざる山間僻地に働く現場作業員の犠牲にしわ寄せする、こういうような傾向が著しく現われて参っております。先ほども触れました季節的労働者は、みずからが好んで季節的に働くのではなくして、働きたくても仕事がないからである。年間を通じて働ける工場労働者と比較いたしましても、きわめて悪い作業環境なり、あるいは低い賃金状態、さらに数カ月の収入皆無という生活考えてみるならば、いかに、不安定なものであるかということか御判断願えると思うわけでございます。またこれら現場作業員は、たとい賃金が安くても毎年六カ月以上は働ける、あるいは失業保険手当がもらえる、また年末手当が当たるということへの大きな期待、希望というものを持っておりまして、そうした望みを託しながら毎年定期的に働いてきた人たち大半であります。今日こういう人たちの血と汗によって国有林野事業があるといっても過言ではない、こういうように思うのであります。こうした地元労働者との数十年来の関係というものは、林野当局十分認識をしているところである、かように思いますが、合理化政策の中から露骨に出して参りましたものは、いわゆる適時適期作業と称しますところの、作業期間の極端な短縮方針であり、また定期作業員の数を減らす指導なり、こま切れ雇用ということで、まさに問答無用の押しつけを強行しつつあるのが今日における林野庁当局雇用政策であり、労働組合対策なのでございます。現に北見営林局その他の局におきましても、数年来締結をし、円滑に実施をしつつありましたところの優先雇用協約につきましても、これを一方的に破棄通告をして参っております。林野当局は、国の事業である企業性格を十分に認識をしているならば、今全国各地農山村に起きておりますところの林野庁雇用切り下げ問題に対し、その行き方をすみやかに是正されんことを、単に労働組合立場からではなくして、国民の一人として強く訴えたい、かように考えておる次第でございます。  以上、林野庁がとって参りました労務政策につきまして、全林野労働組合立場からごく大まかな問題点について申し上げたわけでございますが、労務政策というものは権力によって一方的に押しつけられるものではなくして、労使双方のたゆまざる努力相互信頼というものがあってこそ、初めて民主的な明るい職場環境が生まれ、労使の間にあって平和かつ友好的な状態が維持されるものということを信じておるわけでございます。そのためにも、本委員会が公正妥当な御判断によりましてすみやかに現在の林野庁労務政策是正のためのよき結論を得られることを期待をいたしまして、私の意見を終わりたいと思います。(拍手)
  4. 大坪保雄

    大坪委員長代理 ちょっと速記をとめて下さい。     〔速記中止
  5. 大坪保雄

    大坪委員長代理 速記を始めて下さい。山崎政府委員
  6. 山崎齊

    山崎政府委員 林野庁といたしましての組合に対します考え方、あるいは雇用に対する考え方という点につきましていろいろとお話がありましたので、これについて林野庁考え方を簡単に申しあげたいと存じます。熊本営林局管内におきまして、分裂当局介入したという問題、あるいはまた団体交渉を拒否したというふうな重大な問題について話もありましたので、こういう問題について林野当局考え方を申し上げまして、全体としての林野当局考え方というものをこの点について申し上げてみたいと存じます。  分裂介入したということ、並びに団体交渉を拒否したということにつきまして、熊本営林局管内におきまして不当労働行為があるということ理由にいたしまして公労委提訴が行なわれまして、公労委におきましても、それぞれ審査に入ろうという段階にあるのでありますが、当局といたしましては、組合組織につきまして不介入だという原則に関しましては、私といたしましても機会あるごとに営林局等の幹部にはたびたび周知徹底をはかっておるところであります。また団体交渉につきましても、当局といたしましてどこまでも誠意をもって友好裏に、またルールに従って実施をしていかなければならぬということを極力指導しておる次第でありまして、不当労働行為というようなものはないものとわれわれは考えておるのであります。その提訴されました具体的な内容につきましては、審査段階で、その際に資料をもちまして明確化していくというふうに考えておる次第でございます。  また、雇用の問題でありますが、国有林野事業も国の企業といたしまして営利だけを追求するものでないことはもちろんであるのであります。公共的使命というものを前提といたしまして、能率的に合理的な運営をしていくということを考えておりますし、またそれがわれわれに課せられた任務だというように考えておるのであります。従いまして、事業をいたします場合には、事業の量と雇用を調整いたしまして、その計画化というものを通じまして雇用の安定化を極力考えていくというふうにわれわれも考えておるのであります。また賃金等について見ましても、あるいは手当その他の処遇の関係におきましても、われわれといたしましては、一般のいわゆる民間林業というようなものに比べますと、できるだけの考慮を払った処遇をいたしておるというふうに考えておる次第でありまして、全体を通じまして組合の健全な発達をもちろん念願いたしておりますし、組合との関係を平和裏に、友好裏に進めていくということはわれわれが常時深く考えているところであります。  以上をもちまして、簡単でありますが、説明を終わります。
  7. 大坪保雄

    大坪委員長代理 質疑に入ります。兒玉末男君。
  8. 兒玉末男

    兒玉委員 林野庁長官にお伺いしたいのでございますが、ことしの一月十三日に熊本市の自治会館におきまして熊本営林局管内の署長会議が招集されていろいろな指示がなされておるわけでありますが、この会合があったことは長官は知っておるのかどうか、お伺いいたします。
  9. 山崎齊

    山崎政府委員 署長会議はやったように聞いております。
  10. 兒玉末男

    兒玉委員 その際局長から中央の団体交渉運営に関する協約が無協約になっておるというようなことの前提に立ってこのような指示、厳命がなされておるわけでありますが、この点をまず確認をいたしたいと思います。  まずその一つは、「まず今后の団体交渉ではいたずらに労組法、公労法法律論争は行なわず指示通り実施すること」、二番は「団交のルールに関する協約が無協約な現在では必ず事前に次の事にいて協議当局主張通り議がととのはない限り団体交渉に応じないこと」。その一つは、「交渉委員の交替は認めないこと」。その二は、「団交事項か否かにいて(管理運営事項当局判断)、」三番、「団体交渉勤務時間外は行なわないこと」。四番は、「公開の団交でも傍聴等については協議すること」。こういう四つのことを厳格に実施するような言明がなされたということが資料で出ております。このような事実について長官は確認しておるかどうか、承りたいと思います。
  11. 山崎齊

    山崎政府委員 この署長会議におきまして、先生が御指摘になったようなことを局長が言ったかどうかというような点につきましては私は詳細に承知いたしませんので、ここで確認するというようなことには参らぬと考えております。
  12. 兒玉末男

    兒玉委員 少なくとも労使間の問題を現在団体交渉ができないという、この熊本管内における問題は、きわめて私は重大な問題で、しかもこういうふうな長官の傘下にある局長が、全営林署長を呼んでこういうふうな重大な問題を指示することに対して、そういう事実がはっきり確認されておらないということは、これはきわめて重大な問題だと思うのですが、全くタッチしていないのかどうか。あるいはそのような大綱について長官としての何らかの指示を傘下局長にやっておるかどうか、この点の事実はどうですか。
  13. 山崎齊

    山崎政府委員 団体交渉を行なうにあたりまして、いわゆる管理運営事項というようなものが団体交渉の対象ではないということは、法律的にも明らかでありますし、また団体交渉をやる場合におきまして、その日時とか場所とか議題とかいうふうな問題を十分話し合いまして、円滑に団体交渉が行なわれるようにしていくということも、これは当然のように考えるのでありまして、署長会議におきまして局長がいろいろな指示をいたしたとすれば、そういう点について話したことは、これはまた当然じゃないかと考えております。
  14. 兒玉末男

    兒玉委員 先ほど参考人の方からの意見を聞いておりますと、一月の十九日に宮崎の営林署長が、宮崎営林署管内の川島委員長に対して確認書を出されておる。その内容にいては署長は上司の命令であればそれが法律に違反しようがしまいがそういうことにはかかわりなく、とにかく局長の命令はその通りこれを実行する。これは先ほど長官自身が、労使間の問題については決してそのような不当労働行為なり、あるいは不当なる行為はなされておらないということを言われましたが、少なくとも管轄の署長ともあろう人が、そういうふうな全く私たちが常識で考えられないようなことをぬけぬけと言っておるところに私は今日の労使間の紛争の最大の原因があると思うわけであります。少なくとも私は長官の指示なり達しが法に違反することはないと思いますが、そういうことがあったにしても、署長は局長の命令であれば何でも聞く、そういうばかげたことは私はあり得ないと思う。そういうことで私は正常なる労使間の話し合いはできるはずがないと思うが、この事実について長官はどのようなお考えをお持ちか、伺いたいと思います。
  15. 山崎齊

    山崎政府委員 そういう具体的な問題につきましては、われわれとしてはせっかく不当労働行為としての提訴がなされ、審査段階に入っておりますので、詳細にその機会にわれわれとしては説明もいたすように考えておるのでありますが、御存じの通り、団体交渉の過程におきましてかなりエキサイトするような場面におきましては、ついいろいろな乱暴な言葉も当局側において出るということは、はなはだ遺憾ではありますがあり得る、ないというふうに言い切ることもできないのでありまして、要はその団体交渉を通じまして当局として誠心誠意をもって交渉に応じ当たっていくということが、われわれとして強く指導しておるところでありますので、今お話しのようなことだけをももまして、おかしいというふうに御了解願わないで、その全体としての団体交渉の過程を通じてその誠意をお考え願いたいというふうに考える次第であります。
  16. 兒玉末男

    兒玉委員 次に私は、長官が現在不当なる労働行為は行なわれておらないということを言明されましたが、具体的な事実として、熊本営林局長が傘下の署長に言ったまず第一の問題でございます。交渉委員の交代は一年間は認められない、こういうことを言っておるわけでありますが、これは公労法八条あるいは九条、十条、十一条の精神からいたしましても、交渉委員の任命権はそれぞれ当局なり組合側が自主的にきめらるべきが法律の精神であり、しかも任期等の問題につきましても、少なくとも団体交渉の精神というものが労使対等の立場において認められるところに団体交渉の真の意義があると思うわけであります。これを組合側交渉委員に対して一年間は認めないというがごときは一方的な考え方であり、しかもこの法の精神をみずからじゅうりんしたものであると私たちは断ぜざるを得ないわけでありますが、この点に対する長官の見解を承りたい。
  17. 山崎齊

    山崎政府委員 団体交渉交渉委員の形の問題でありますが、団体交渉というものを御存じの通り友好喪に平和裏に両者で行なっていくということには、双方におきましてやはり信頼感が絶対に必要であるようにわれわれは考えるのであります。従って交渉委員というものが常時一方的な都合だけでいつでもかわり得るというようなことは、この交渉を円滑に進めていく上におきまして相当の問題点もあるようにわれわれは考えるのであります。交渉委員の任期というようなものにつきましては、もちろん話し合いその他においてきまるわけでありますが、その間に正当な理由があって交代する者を当局としては何ら拒否するものではないというふうに考えております。
  18. 兒玉末男

    兒玉委員 長官のその答弁では現実に発生しておる問題の回答にはならないと思う。この熊本局長が出した一項は、明らかに官側の方が一年間は認めないということをはっきりと断定しておるところに私は問題があろうと思う。第二の問題としては、今長官は自分の相手方との交渉は平和裏に円満にするということを希望し、同時にお互いに相互信頼の上に立ってというような一方的なこのやり方こそが、組合側の出したところの交渉委員を信用しないといううらはらの見解に立つのであります。その点から私は長官の見解が相手側の交渉委員を信用しないという前提に立った一方的な見解であると指摘しないわけにいかないと思いますが、この点どうですか。
  19. 山崎齊

    山崎政府委員 交渉委員につきましては、それを一年間という任期の間は絶対に認めないということを局長が言ったかどうかということは、私は現在の段階において確認はいたしておらぬのであります。私たちといたしましては、交渉委員についての考え方は先ほど申し上げた通りでございます。労使双方におきまして、信頼感をもって交渉を進めていくという前提に立って、そのことを考えていくのがやはりいいじゃないかというように考えております。
  20. 兒玉末男

    兒玉委員 長官、もう少し誠意ある回答を私はいただきたいと思うわけです。というのは、そういうふうな重大な、公労法上において認められておるところの委員の任期について、一方的に制約する通告をして現実に団体交渉が行われておらない。しかもすでに無協約状態、あるいは団体交渉ができなくなってから四カ月間になっておるわけです。林野の中のことは知りませんけれども、これからおそらく非常に忙しい時期になるということを聞いております。いろいろな労働条件に関する問題についても、事前交渉しなければならない問題がたくさんあると思うわけでありますが、そういう重大な時期を迎えながら、そういう重大な一方的な制限をする指示事項をいまだ正式に確認しておらないということは、私は林野庁長官の重大な責任だと思うのですが、どうですか。
  21. 山崎齊

    山崎政府委員 団体交渉につきましてのルールの問題につきましては、昨年の暮れでありましたか、組合との間におきまして中央でルールの話し合いがつかず決裂いたしたわけであります。その際におきましても紳士協約をいたしまして、従来の協約の精神によって労使双方でやっていこうということに話し合いもいたしておるわけであります。また中央におきまして決裂いたしました基本的な問題といたしまして、今お話しのような、交渉委員をどういうふうにその交代を認めていくか、それをどういうように考えていくかという点も、やはり中央において妥結を見なかったような問題点であるわけでありまして、われわれといたしましては、従前の契約というものの精神によってその間はやっていくということを強く考えておる次第であります。
  22. 兒玉末男

    兒玉委員 私はこの根本的な問題に対する解明がなされない限り、本質的な解決はできないと思うわけです。ですから一年間認めないということになれば、相手側の交渉委員がたとえば病気その他の理由によって当然交代を必要とする場合もあるだろうし、あるいは不可抗力的な事由によって交渉委員がどうしても交代をしなければいけない場合、またはその団体交渉の問題というものが、単に営林署なりあるいは局を代表する交渉委員ではどうしても十分に意見の開陳ができない場合、こういうことは労使同の問題ですから、画一的に問題を規制することでは、私は団体交渉の妙味というものは発揮できないと思うわけです。私も過去十三年間労働運動に携わつた経験者として、特に同じ公労法下にあるところの国鉄の組合の一役員として、こういう団体交渉というものが、相手側の任期を一方的に規制するということになったら、私はほんとうの意味の団体交渉の妙味は出てこない。そのときの当事者個の能力なりあるいはその問題の内容において、ある程度幅を持たせるところに団交の妙味というものが発揮される、このように感ずるわけであります。長官としては、この一年間ということを認めないことをあくまでも固執するのかどうか。そういう客観的な情勢の変化に応じて、交渉委員の任期というものあるいは交代ということも認めるのだ、こういうように判断するのが第十一条の精神じゃないか。しかも交渉委員の任期等については団体交渉の対象事項として、明確に法律が規定しておるわけでありますから、そういう点からも、やはり私はその入り口において官側の一方的な解釈によってこの問題の解決が長引いておる、こういう点等から判断するならば、あくまでも一年間に固執するということ自体が、団交が成立しないところの最大の原因じゃないかということを私は考えるわけですが、この点に対する見解を承りたいと思います。
  23. 山崎齊

    山崎政府委員 交渉委員の任期と交代の問題につきましては、先ほど御指摘がありましたように、その任期の問におきましても、病気とかあるいはいろいろな事故とかいうふう正当な理由に基づいて交渉委員の交代を要するというふうな場合におきまして、当局としても、その交代はいかぬのだということをさらに考えるつもりはないのであります。
  24. 兒玉末男

    兒玉委員 それでは私ははっきり確認をいたしたいと思います。長官としては、こういう任期の点については絶対に固執をしないし、またそういうことは考えておらない、そういうことを言われるならば、この際一つ長官から傘下局長に対して、局長が出したところの指示というものは誤りであるということを明確に指示すべきだと思うが、どうですか。
  25. 山崎齊

    山崎政府委員 先ほど申し上げましたように、従前組合との間に締結いたしておりました三十二号協約におきましても、そういう場合には交代を認めるということにはなっておるわけでありまして、その線によってやっておるわけであります。
  26. 五島虎雄

    ○五島委員 関連して。今の団体交渉委員ですね、これは亀井労政局長に聞きますが、組合団体交渉委員として了承をした場合は、どういう人でも団体交渉委員になれるというようなことについての、一般的解釈はどうですか。
  27. 亀井忠衛

    亀井政府委員 交渉委員の選任の方法だろうと思いますが、交渉委員は、使用者は使用者側、労働組合組合側、それぞれ交渉委員を指名をいたしまして、名簿を交換するという建前でございます。明らかに双方の自主的な判断によってやる。ただ問題は、団体交渉は信義誠実の原則の上に立ってやられる性質のものでございますから、組合といえども、全然そういうことに関係のない第三者を入れるというふうなことは、これは法律的に割り切れても、実際問題としては、そこは団体交渉という性格からいきまして、やはりお考えをいただかなければならぬ問題もあるのではないだろうか。一般問題としては、自主的にそれぞれおきめいただくことであります。
  28. 五島虎雄

    ○五島委員 それは法律解釈は、自主的に選定すればいいことになっておる。ただし団体交渉制度を円滑に行なうにあたっては、信義、信頼感がそこには必要である。それはうまくいくための信義、信頼感の問題だと思うのです。しかしながら林野庁関係では、何か団体交渉委員が交代すれば交渉をしないんだ、こういうようなことは法の解釈を誤っているものだといわざるを得ない。なぜかならば、その交代をした人が信義、信頼感がないというようなことが前提となって団体交渉を拒否する理由になるならば、団体交渉を拒否するという事実かそこに生じてくるならば、不当労働行為であるといわなければならないと思いますけれども、これは信義、信頼感は、要望であって、対立するところの官側と組合側が——対立というのはけんかじゃありませんよ。ただ一つの物事を中心として対立する問題について、信義、信頼感を持って交渉するのは、それは最も望ましいことではあるけれども、労働法上におけるところの団体交渉は、何も経営者が好ましくないから信義、信頼感が生じないからといって、団体交渉委員を拒否したりなどすることはできないでしょう。これが法律の解釈ではないですか。信義、信頼感を前提とするところの交渉委員を自主的に選ばなければならないという責任は、法律は与えておらないと思うのですが、その点はどうでしょう。
  29. 亀井忠衛

    亀井政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、純法律的な形式面から言いますれば、まさにおのおのの側が勝手に自由に選ぶのでございますから、どういう人を選んでもよろしい。純法律的、形式的に言えばそうですが、しかし今お話しの中にもございましたように、団体交渉を円滑にやるための交渉委員でございます。何も団体交渉でけんかをするための交渉委員ではないのであります。そこで労使双方ともがそういうお気持でお選びいただきたいというのが法の精神だと思います。しかしそれだからといって、相手側から難くせをつけられた場合において、そういう場合につけられ得るがどうか、これは法律的には何らそういう制限規定がございませんから、法律的形式的には御説の通りでございますが、その団体交渉の本質からいって、おのおのがそういうことについて十分御配慮をいただくというのが法の精神でございます。
  30. 兒玉末男

    兒玉委員 私は局長にお伺いしたいのですが、さっき私が具体的に熊本営林局長の例を指摘したわけでありますが、この点について労政局長熊本営林局長が交渉委員の任期は一年としなければならないといういわゆる規制する通達というものを出している。そのことが守られなければ一切の交渉には応ずるなということを出しているわけですが、これは明らかに私は法の精神に違反する不当労働行為だと判断するわけですが、労政局長としてはどういうふうなお考えをお持ちですか。     〔大坪委員長代理退席、委員長着席〕
  31. 亀井忠衛

    亀井政府委員 法律にございますように交渉委員の任期は団体交渉できめるのでございます。第十一条にございますように、「交渉委員の数、交渉委員の任期その他団体交渉の手続に関し必要な事項は、団体交渉で定める。」従って労使双方の話し合いの中でその任期というものがきまっていくという形でございます。そのきまったものを片方が破るということは、これは協定違反という形にはなりますが、そうでなければ一年であろうが二年であろうがお互いに主長ずることはちっともかまわない。そこでお互いできまりましたものはお互いが信義誠実の原則に基づいてこれを順守していくという法の建前が十一条に書いてあるわけでございます。
  32. 兒玉末男

    兒玉委員 私は精神はそういう精神としても現実に起きているこの問題、熊本営林局長が交渉委員の任期は一年としなければいけない、こういうことを指示していること自体はどうかということを私は聞いているのです。
  33. 亀井忠衛

    亀井政府委員 指示の内容を具体的に承知しませんが、かりにそういう指示があってもそれは当局として交渉委員の任期は一年として組合交渉するのだという意味の指示ではないだろうか、これは先ほど申しますように団体交渉事項でございますから、そういう気持で組合交渉しなさいという式ではないかというふうに考えます。従って。その限りにおいては何ら不当なものではないと私は思います。
  34. 兒玉末男

    兒玉委員 局長よく聞いておいてもらいたいと思う。私は先ほどゆっくりした口調で読んだのですが、言葉は少し……。  こういうことを言っているのです。「団交のルールに関する協約が無協約な現在では必ず事前に次のことについて協議当局主張通り議がととのわない限り団体交渉に応じないこと。」現在熊本営林局傘下団体交渉について局長はこういうことを伝達しておるわけです。その(1)に「交渉委員の交代は認めないこと。」そのことは具体的には交渉委員の任期は一年、交渉委員の交代は一年間は認められないというように明確に規制をしている。このことについて私は聞いておるのであって、これであったら全く最初から当局側団体交渉はやらない、否定する立場に立っておることは、明確になっているわけです。その辺どうですか。
  35. 亀井忠衛

    亀井政府委員 そういう事実関係がありますかどうか、私も承知はいたしておりませんけれども、問題は公労委のあっせん事項にもなって、公労委で今あっせんが進んでおる段階でございます。私がそれに対しましてとやかく申し上げますることは、かえってあっせんの進行をはばむという結果にもなろうと思いますので、具体的に私がそれに対するお答えを出し上げることは避けさしていただきたいと思いますが、一般論として申し上げますれば、今交渉の手続がきまっていないために団体交渉ができてないというのが林野の実態だっと考えるわけであります。  そこで今問題になっておりまするものは交渉の手続でございます。その中には交渉委員の数の問題、あるいは任期の問題等が含まれておるわけでございます。従ってそれらのものがきまりまして初めて団体交渉というものが開かれていくという段階でございまするから、その交渉ルールをきめるについて、当局側の意思を下部に示したのだということであれば、これは何ら不当なものでもないと思うのでございます。かりにそういうルールがきまっておる、たとえば交渉委員の任期は一年であるというのにもかかわらず、当局側は半年でやめさせろというふうな指令をすればこれは明らかに不当労働行為になりましょうが、まだそういうとりきめもできてない段階だと私は考えております。あっせんになっておる段階でありますから、従ってそういう場合に当局側当局側の意思として下部にそれを伝えるということは何ら不当なことではないと考えます。
  36. 大原亨

    ○大原委員 関連して。亀井労政局長にお尋ねするのですが、今無協約状態なんですね。だから一年の期限というものについての途中交代は認めないという当局の方針を流すのはまあいいでしょう、一応、当局の意思だから。しかしそのことを理由として団体交渉を拒否したりすることは、今の労使間の現状ではいけないと思う。それは公労法の十条、十一条において全都はっきりしていますよ。それを理由として団体交渉の道を閉ざすということは、これは不当労働行為ですよ、そういう方針を示すことはいいけれども。だから交渉委員についてはこれは届出制だし、自主的に団結権の一部としてやれるのです。委任行為もできるのです。だからそれは、そういう中からこの交渉の道を確立しながら信頼関係を確立していくというのが団結権の趣旨なんです。だから無協約の現状において、いろいろな事情のもとにおいて行なわれている団体交渉において、団体交渉自体を不可能に陥れる条件として、一年間という期限を徹底的に固執して一方的に貫くというふうなことは、これは不当労働行為です。いかがですか。
  37. 亀井忠衛

    亀井政府委員 具体的な問題は公労委のあっせんに待っていきたいと思います。あるいは今の団体交渉の拒否については不当労働行為で申し立てもございます。私から具体的な判断を申し上げかねまするが、今無協定の状態でございますので、その協定を結ぶという段階どうして結んでいくか、そういうことであっせんになっているわけでございます。そこで協定を結ぶ際において当局側が自分の意思を組合側に伝える、これは何ら不当なことではないのではないかということをと、私は申し上げているわけです。それだけのことだと思います。  団体交渉はやはり交渉ルールがきまりませんければ開かれない。従来の全林野の慣行もあるようであります。そういうことは不当労働行為の対象にも実はなっておるのだろうと思います。従って私としましては、公労委の的確な御判断というものによって物事が処理されていくことを期待をいたしておきます。
  38. 五島虎雄

    ○五島委員 林野庁長官は一月十三日に兒玉君の質問に対して、署長会議を行なったということは知っていると言われました。また私たちの手元に資料として来ておりますが、「昭和三十五年」ことしの「二月上旬熊本営林局職員課長は格ブロック別に署長会議を招集し、大要次のごとき指示を与えている。」ということです。これは林野庁長官が御存じかどうかわかりませんけれども、その指示の内容は、イ項として「団体交渉は失効した三十二号協約通りやるということを繰り返して言え、それを具体的に言えば三十二号協約による従来の方法、交渉委員もそのままの形でと主張し」どんどん主張しろ、「もしそれでも理論的に行き詰まれば林野庁、局の一貫した指示を受けていると主張してもよい。こういうようなことを指示しているわけです。こういうことは林野庁の方から指示をされたのかどうか。そうして理論的に行き詰まったらということは、理論的に負けたらということになるだろうと思うのです。理論的に負けたら、これはおれたち考え方じゃなくて中央の林野庁の指示だと言いのがれをせよ、こういうようなことを言っているらしい。  それから次の項目です。「団体交渉の前に前述の内容事前協議をやろうと申し出よ。もし組合事前協議に応じない場合は、団体交渉はできないと主張せよ。」事前協議に応じない場合は団体交渉はしないと主張しなさいと、その手段、方法を綿密に指示しているらしい。「また事前協議に入っても、三十二号協約と変わった形での組合側の申し入れがあれば、話し合いにならないからとして打ち切れ。すなわち窓口で極力紛争を起こすこと。」先ほど林野庁長官は、団体交渉の精神は信頼感に基づくんだ、こういうようなことを述べられたんです。信頼感に基づく団体交渉の精神は、それは円滑な結論を出すためには信頼感がまずその中に介在することは私たちも決して反対じゃない。その通りにやろうと思うし、林野庁組合もそういう精神で団体交渉をやろうとする。その団体交渉内容労働条件に関してであろうと推測されるわけです。ところが団体交渉をしたくないというようなことがこの中ににじみ出ている。団体交渉をやるのに事前協議が必然的に必要なものであるかどうかというようなことは労働法上は出てこない。私たちの経験では事前協議をしなければ団体交渉ができないなんということは、われわれは今まで勉強してきたことはない。その通りです。それはあとで亀井労政局長にも聞きたいと思うのですけれども、こういうようなことを指示している。  それから次は、「事前協議でも団体交渉ルールは署単位で決定することはできない。」それから次は、組合側の主張する労組法、公労法法律論争に引き込まれることのないように注意し、組合側からの団体申し入れの際、交渉委員、場所など従前と変わりない場合にのみ団体交渉に応じてもよい、こういうように細部にわたって指示しておる。第一項目は、もう理屈に詰まって負けそうなときは、自分たちの責任は回避してもいい。そして中央の方に責任を転嫁してもいいぞ、これはあなたは知っているだけで、署長会議はやったことはあるけれども、その内容についてはわからないと言われましたけれども、これを指示されたことがあるかどうかということです。それからもう一つは、団体交渉は労働の基本権だと思うのです。労働の基本権を事前協議によって曲げていいかどうかということを労政局長に聞いておきたいと思うのです。しかも労働協約団体交渉は、こういうような理屈を先に並べて、もしも組合が反対であったならば、団体交渉は決裂せよ、事前協議も決裂していいぞというようなことを九州営林局か何かが、そういうように課長が指示すること自体不当労働行為にならないかどうか。しかも事実もう数カ月にわたって団体交渉ができていない。団体交渉によって労働条件を維持改善しなければならない。そして、それは誠意と誠実の念をもってやらなければならない。これは組合ばかりに要請されたことではないでしょう。その気持は署側にも官側にもあろうと思うのです。しかも団体交渉に入る前に打ち切ってもいいぞ、こういうようなことを並べろ、法律の解釈なんかに行き詰まったら窓口で紛議を起こせ、こういうようなことは信義と信頼の観念にもとるものといわなければならないと思う。従って法的解釈、それから局長が中央からそういうことを指示されたと思うのだが、どうですか。
  39. 山崎齊

    山崎政府委員 先ほども申し上げましたように、団体交渉ルールについて組合側意見が一致しないで決裂をしたわけであります。その際におきまして、この団体交渉ルールがきまるまでの間は従前の三十二号協約の精神によって紳士的にお互いにやっていこうということを話し合っておるわけでありまして、われわれといたしましてはその精神に従ってやっていくということを強く主張しているわけであります。
  40. 亀井忠衛

    亀井政府委員 公労法の十一条に、先ほどもちょっと申し上げましたように「交渉委員の数、交渉委員の任期その他団体交渉の手続に関し必要な事項は、団体交渉で定める。」ということで、今先生の言われております団体交渉が実質的に労働条件に関する一般的な団体交渉のことを言われていると思いますが、その前にやはりそういうルールを作っていく団体交渉一つ必要なわけでありまして、これは公労法の要求しているところです。そういうときには団体交渉をめぐります労使間の紛争があるわけであります。そしてそれが公労委にあっせんとしてかかって、あっせんが進行している段階でございます。その間はしからばどういうルールによって団体交渉を行なうかということにつきましては、今林野庁長官が申し上げましたように、三十二号の協約の精神でやっていこうじゃないかということでございますから、今でも労使双方がその気持になれば決して団体交渉はできないわけではないということを申し上げているわけであります。
  41. 兒玉末男

    兒玉委員 私もこの際組合側に御意見を聞きたいと思うわけです。官側がそんなに言うのだったら、何も組合側としては紛争に発展しないと思うのです。そこで私は官側の言うことはどうにも信用ができない。そして組合がこのような状態になっている最大のネックはどこにあるか、この点について組合亀井委員長の方から事情を聞きたいと思います。
  42. 亀井忠衛

    亀井参考人 ただいま局長お話を伺ったのでございますけれども、今長官の御答弁なり一部の先生方の御発言の中から、三十二号協約が期限切れで無協約状態になった際に、三十二号協約通り組合実施すればいいのだというふうな御意見が伺われますけれども、これは従来結んでおった団体交渉協約の本質的な面、今論議されております交渉委員の交代の問題なり、あるいは交渉の問題、さらには交渉範囲の問題、交渉委員の人数の問題、それらをめぐって非常な論議をかわしたわけです。最終的にその点が一致しないために目下第三者機関にこれを申請している状態を御認識願いたい。あの交渉が期限切れの際に、組合側の最終的な申し入れ事項としては、具体的な内容については今意見一致をしないまま、遺憾ながら期限切れにはなりましたけれども、下部においてのそれぞれ交渉の窓口は開いておくべきではないか。従ってそれぞれの機関における交渉委員の数なり、そういうものについては取りきめをしたいという申し入れば、当局側からの拒否によって決定をしておりません。それならば無協約状態の中にあってどうやって交渉をやっていくかと、いうことにつきましては、公労法なり労組法なりそれぞれの法律の規定に準拠しましてりっぱに交渉をやっていける、こういうふうに考えております。今九州の例であげましたように団体交渉をめぐっての区長官の考え方というものが労使相互信頼である、誠心誠意である、こういうことは私たちもたびたび耳にしているけれども、現実の面に現われている状態というものは、今兒玉先生の方からも御指摘があったように、頭から交代というものを認めない、あるいは任期内の交代の問題について論議をした際にも、本人の死亡したる際である、あるいは長期出張の際である、そういうような事項のみをあげて、そしていわゆる双方の自主性を全く認めないことにこの問題点があったということを御承知おき願いたいと思うわけです。そのほかいろいろ団体交渉ルールをめぐっては問題点がありますけれども、今具体的な資料を、なお詳細にわたって御説明申し上げる余裕がございませんけれども、決して当局が言っているような誠心誠意というものやっておらないという状態を御認識願いたいと思うわけです。
  43. 兒玉末男

    兒玉委員 私は今組合の最高責任者である委員長意見を聞いたわけでありますが、少なくともこの際長官としてもいろいろ問題もあろうと思うのですが、熊本傘下の四十五の営林署の各現場において、この問題をめぐって四カ月間も争っておって、労使双方とも十分な事業運営はできないと思うわけです。そういうような点から考えるならば、今組合委員長が言われたことと、長官が事前のいわゆる三十二号協約においてやればいいと言いながら、その裏を返せば組合が主張しておることを根本的に否定しておって、今後円満な交渉ができるかということです。その点どうですか。
  44. 山崎齊

    山崎政府委員 団体交渉ルールにつきましては、中央においても意見の一致を見ないで現在これのあっせんを公労委にお願いしておるわけでありまして、それぞれ問題になっております争点につきましては、そういうものの公正なあっせんを経て、両者で協約を取りかわすということが現在の段階においては最も適当なことであるとわれわれは考えておるのであります。そういう点を現実にそれぞれ末端において実現しなければいかぬということをわれわれ了承することにはなり得ないというふうに考えている次第であります。
  45. 兒玉末男

    兒玉委員 私は長官に再度お伺いしたいのでありますが、先ほど亀井労政局長もはっきりと言明されましたように、こういうふうな労使間の団体交渉に関する事項については、たとえば任期の問題についても明らかに十一条の精神からいって交渉の中においてきめる、こういうようにはっきりと明記されている問題について、なぜことさらに問題を紛糾させるようなこういう通達を今まで長官が黙認しておったのか、この窓口においてすでにこういう紛争が起きているわけでありますから、先ほど私は二回ほど指摘をしたと思うのですが、明らかに団体交渉の過程においてきめ得るところのこの一年間の任期の問題については再度考慮して、そして組合が主張しているように交渉の場においてその問題をきめる、こういうふうに考え方を変えていく意思はないのかどうか、再度私はお伺いしたいと思います。
  46. 山崎齊

    山崎政府委員 たびたび申し上げております通り、団体交渉ルールについて、決裂いたしました際にその無協約の間におきましては、三十二号協約の精神によってやっていこうというふうに話し合いもいたしておるわけであります。そういう精神によって円滑に交渉をしていくということをわれわれは進めて参りたいと考えております。
  47. 兒玉末男

    兒玉委員 単に精神だけ幾ら強調しても、具体的に組合の中でそれぞれの下部機関における交渉委員名簿の交換を通じての団体交渉というものが、その基本的な点において不一致を見ている、その点はやはり官側の歩み寄りというものがなければ絶対にこの交渉は成立いたさないし、あるいは現場におけるところの各機関の交渉委員の名簿交換なりあるいは団体交渉というのはそこで行き詰まりを来たしているわけでありますから、その基本的な点においてただ三十二号協約の精神々々と言っても、具体的にだれとだれを交渉委員に任命し、任期の問題はどうするとか、そういう具体的な問題の発展がない限り、ただ精神だけを強調しても私はだめだと思うのですが、その点どうですか。
  48. 山崎齊

    山崎政府委員 団体交渉ルールをきめます場合には、労使双方におきましてそれぞれ両者の立場というものを考えまして、両者が納得できる妥当な線でこれはきまるものでなければならぬと思うのでありまして、それが決裂いたしましてまだ決定を見てないという段階におきましては、先ほど申し上げましたような考え方でいくのが適当じゃないかと思います。
  49. 大原亨

    ○大原委員 ちょっと関連して、簡単にお尋ねしますが、長官こういうことですよ。団体交渉権の基本的ないわゆるルールについて、これを取りきめるための団体交渉をやる際には、日時をいつにしましょう、きょうは都合が悪いからあしたにしましょう、そういうふうなことは、これは言えますよ、場所の設定や日時の設定については。しかしそのこと以外にわたって、一方的にあなたの方の方針を固執して、三十二号協定を私は今持っておりませんからわかりませんが、その精神ということについても、あるいは現状における解釈についても意見がある場合に、原則的には無協約状態にある現在の状況において、その基本の問題について一方的な方針を指示しておいて、団体交渉をしないというような態度をやることは不当労働行為だと思うのです。私は記録にとどめておきたいからお尋ねするのだが、そういう日時の設定とか場所について異議があるならば、それについてはあなたの方の御都合や御意見を言うのはいいが、団体交渉自体について否認するようなことについては、私はいけないと思うがどうか。この点について明快に簡潔に御答弁願いたい。
  50. 山崎齊

    山崎政府委員 三十二号協約におきましては、その団体交渉をやるルールというものを、それぞれ具体的に明確に記載いたしておるわけでありまして、そういう線に基づいてのものであるならば、当然当局としても団体交渉を拒否したり何かするようなことはあるべきではないというように考えております。
  51. 滝井義高

    ○滝井委員 関連して。確認をしていきますが、林野庁の長官は去年の十二月十七日までで効力を失った三十二号の協定というものを、その精神は今後の団体交渉においては順守していくということを再々言われたのですが、これは確認いたしますね。
  52. 山崎齊

    山崎政府委員 仰せの通りであります。
  53. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、今今交渉委員の自主選任の問題が出ましたが、これは大体公労法の十一条等の関係もありますから、お互いにこれはいわゆる団体交渉をやって、そうして別にその資格その他について異議がなければこれは認めていくことが原則です。お互いに民主的に労使双方団体交渉をやるならば、これはもう亀井さん、常識でその通りなのですね。これも一ぺん確認しておきたい。
  54. 亀井忠衛

    亀井政府委員 その通りだと思います。
  55. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますとこれは組合から出た名簿、官側から出た名簿その他に重大な瑕疵のない限りはお互いにこれは認めるということが常識なんです。これは全労政局の見解の通りです。私はそこまで確認しておけばいいと思うのです。  次は団体交渉の範囲です。団体交渉の範囲というのが三十二号の協定を見ますと、大体今問題は主として下部に起こってきておるわけですから、下部における団体交渉の範囲というのが九条に出ておるわけです。この下部における団体交渉の範囲の実態というものは一体どういう工合になるのか、組合側と官側と両方から簡単に御説明願いたいと思います。
  56. 亀井忠衛

    亀井参考人 三十二号協約の中に統一的な取り扱いをする事項については上部機関においてその交渉をまとめるという趣旨がございます。これは数年前から大体そういうふうな形をとってきたわけでございますけれども、具体的に申し上げますと、たとえばある現場作業場において、非常に危険な作業であるから、作業員が軍手を一人についてたとえば三カ月間に三足ずつ貸与してほしいという要求があったとした場合に、下部における交渉の中で、それは一定にしてくれ、あるいは一足にしてくれという形で現実的に問題の解決をここ数カ年同はかってきておりました。ところが昨年の六月ごろ結ばれました三十二号協約の解釈といたしまして、そういうものはすべて統一的な取り扱いをするということで、一切下部における団体交渉事項の中からはずそうというふうな傾向、これは単なる例でございますけれども、その他幾多の事例というものがあがって参りました。今そういうふうな見解に立つならば、おそらく分会段階における団体交渉というのは、ほとんどがなくなるであろう。当局の意図も明らかにその辺にあるのではないかというふうにわれわれも判断しておるわけでございますけれども、少なくとも下部の署長なりそういうふうな能力のある、権限のある範囲内における交渉というものは、下部においてやるべきではないか、これが組合側の主張点でございます。
  57. 山崎齊

    山崎政府委員 末端におきます団体交渉の範囲というものにつきましては、もちろん管理運営事項というものは、団体交渉の範囲にならぬということは当然であります。また三十二号協約にうたわれておりますような統一的事項その他のものについても、そういうものは上部機関においてそれぞれ交渉をしてきめていくというようなことに考えて、実質上あるわけであります。
  58. 滝井義高

    ○滝井委員 管理運営事項と統一的な事項下部における団体交渉の範囲に入らぬということがはっきりしました。  そこで問題は、一体管理運営事項というものの範囲をどの程度に限るかということですね。あなた方は最近、組合側からの参考意見にもありましたが、労務管理ハンドブックと申しますか、労務対策ハンドブックと申しますか、何かそういうハンドブックをお出しになっておるのですか。
  59. 山崎齊

    山崎政府委員 これはたしかおととしくらいであるかと思いますが、業務上の参考資料として出したものであります。
  60. 滝井義高

    ○滝井委員 その中に管理運営事項のことが書かれておるらしいことを聞いておるのですが、どういうことが管理運営事項に入っておりますか。問題はここにあると思うのです。
  61. 山崎齊

    山崎政府委員 ハンドブックの中に具体的にどういうように書いてあったかというのは、現在持っておりませんので、直ちに申し上げるというわけにはいきませんので、御了承願いたいと思います。
  62. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、三十三年にお出しになったそうでありますから、至急に一つ委員会にその労務対策ハンドブックを出していただきたいと思うのです。これはお出しできますか。
  63. 山崎齊

    山崎政府委員 お話しの事項につきましては、その内容を見まして御答弁を申し上げたいと思います。
  64. 滝井義高

    ○滝井委員 そのハンドブックというものがありますかと言ったら、一昨年出したという御答弁でございますから、それを一つ委員会に出していただきたいということなんです。
  65. 山崎齊

    山崎政府委員 これはわれわれといたしましての内部的なものでありまして、これを外部に出すというふうに当初から考えているものではありませんので、その点御了承を願いたいと思います。
  66. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、それは部外秘ですか。一体一国の林野行政をおやりになる、しかもあなたがお述べになったものの中には営利の追求というだけではない、公共的な使命を持って林野行政というものをわれわれはやっておるんだ、こうおっしゃった。公共的な使命を持っておやりになっている林野行政に当たる職員の労務を管理するそのものが、国会にどうして出せませんか。部外の者だって、そういうバンドブックならばここに出して、一体林野行政が行なわれる過程の中で、その林野行政に働く職員管理がどのように行なわれているかということをわれわれ国会というものは当然知らなければならぬです。これをどうして出せませんか。秘密のあれじゃないでしょう。
  67. 山崎齊

    山崎政府委員 これは先ほど申し上げました通り、われわれといたしましてはいろいろな過去の経験に基づく反省録というふうな意味もあるわけでありまして、われわれとしてこれを外部に出すというふうな前提についても何も考えていないわけでありまして、お出ししないのがいいというふうに考えております。
  68. 滝井義高

    ○滝井委員 委員長お聞きの通り、これは林野行政をわれわれが見る上にきわめて重要なバンドブックだと思うのです。そこでこれは委員長一つ出すように言ってもらいたいと思うのですが、これはわれわれ当然出してもらう必要があるのです。なぜならば、今不当労働行為その他が起こっておるということを組合等も言い、そしてそれをしかも公労委に持っていっておる。一体そういうことが公労委にまで持っていかなければならぬ、しかも昨年十二月十八日以降切れている団体協約の問題で五カ月以上空白の状態になっている、従ってその五カ月前の協約の精神で今やっていきましょう、こう言っている。ところがそれはなかなかすぐには出そうにないというときに、一方今から二年前に出した労務対策ハンドブックで労務政策が行なわれようとしている。そうするとわれわれはこれを見せてもらう権限が当然あるのですよ。われわれは林野行政を今後円滑にやっていくためにはこれは必要なんですよ。で委員長としては、当委員会として当然当委員会の権威にかけてもこれは出してもらう必要がある。これは公労法の、組合の中で一体どういう労務行政が官側によって行なわれているかということがわからぬということは、われわれは納得できないと思うのですよ。だからこれはお出しになることは当然ですよ。どうして出せませんか。
  69. 山崎齊

    山崎政府委員 この資料は、われわれといたしましては、林野庁関係内だけに出しておるわけでありまして、部外にお出しする性格のものではないというふうに考えておるので、御了承いただきたいと思います。
  70. 滝井義高

    ○滝井委員 一体今日本の行政に機密というものはないのですよ。これは今防衛庁だって全部われわれの要求では出しております。出すときには、これは特に防衛庁で秘と考えるのは「秘」という判こを押して、われわれのところに全部資料がきております。私は安保の特別委員もしておりますが、全部出しておる。林野庁内部のものでどうして国会に出せませんか。何だったら「秘」と押してお出しになればわれわれだけが見るのです。これはもう絶対私は出してもらわなければいかぬです。これは私は当然出してもらうべきものだと思うのですが、どうですか林野庁長官、「秘」と押していいです。何だったら、「秘」だけで悪いなら、極秘でもいい、極々秘でもどちらでもけっこうですから、全部の委員に配ることができなければ、自民党に一通と社会党に一通と民社党に一通、三通だけ出してもらってけっこうです。だからこれは当然出してもらう必要がある。どうですか、委員長
  71. 永山忠則

    永山委員長 理事会でよく相談しましょう。
  72. 滝井義高

    ○滝井委員 これは拒否権はないですよ。  そうすると、この管理運営事項というものは、今林野庁長官どの程度のものを管理運営事項にお入れになっているのですか。一つ具体的に、こういうものが管理運営事項だということを教えてもらいたいと思うのです。私の聞くところによりますと、末端にいくと団体交渉をする範囲の二分の一以上は管理運営事項になってしまうらしい。たとえばげた箱一つ作るにも管理運営事項になるらしいのですよ。そういう非常識なことがこの民主的な世の中で、しかも岸さんも非常に民主的、民主的とおっしゃっているのですから、そういう保守党の内閣のもとで、げた箱を一つ作ることの交渉もできないというようなばかげた労働運動というものはないですよ、あるいは労務管理というものはないと思うのです。しかもこれは国家の機関ですからね。ですから一体管理運営事項というものはどういうものが管理運営事項に入るのか、具体的にお示しを願う必要があると思う。きょうあなたが管理運営事項がわからぬというならば、これも一つハンドブックと一緒に文書で出してもらいたいと思うのです。
  73. 山崎齊

    山崎政府委員 労働条件に直接関係する事項というものは団体交渉でやるべきことは当然でありまして、またさらに逆に申し上げまして、管理運営事項というものは、そういう事項でない、やはり職員の人事あるいは経営の方針とかいうような事項管理運営事項であるというふうに考えておるのであります。
  74. 滝井義高

    ○滝井委員 労働条件に直接関係する事項というものは団体交渉の対象になる。人事それから経営の方針はあるいはまあそういうことかもしれませんが、しかし人事の問題でも非常に重要な点はやはり団体交渉の問題になり得ると私は思うのです。実はこれがあなた方の出しているほんとうのハンドブックの中のものかどうかは私はわかりませんが、私がたまたま見たものの中に、管理運営事項として指摘しているものを見ますと、大体番号で六十八番まであるようです。そのうち管理運営事項として団交の対象からはずしてもよいと考えておるものは、「要員の増員について」「署内異動については事前組合協議せよ」「安全衛生委員会の設置について」「年次有給休暇の完全実施について」「作業員の入下山旅費を支給せよ」、これらは団体交渉の対象にならぬ管理運営事項になっておるらしいのです。ところがこれを考えてみると、これらのものが一体団体交渉の対象にならぬものかどうかということですよ。これは常識で考えたらなるものですよ。われわれの常識ではこれらのものはあなたのいわれる労働条件——労務管理関係することですよ。労務管理関係するということは、裏を返せば労働条件関係することになる。そうするとこれは当然団体交渉の対象にならなければならぬ。従って私は、ますます、もしこういうことがそのハンドブックに書かれて、末端のあなた方の責任者の方に流されておるとするならば、末端はそれをオウム返しにいくわけです。従ってどうしてもこれを、われわれとしては林野行政の円滑な運営考えるということは人間の問題に帰着しますから、あなた方がその最高の指針としているこのハンドブックというものをどうしても見なければならぬ。一説には、このハンドブックというものは戦陣訓だといわれているくらいに、いわば労働組合を敵階級という見方をしているのですね。敵対的な見方、(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)そんなことはないと言っているから、ますますその証拠を出してもらわなければいかぬ。そしてその想定問答なんかを見ると、とにかくうそをつけという指示をしている。それから不当労働行為というような声におびえてはならぬというようなこともいっている。これに書いていることを見ると、実に驚くべきことを書いておるのですね。私もこれを読んで、作戦要務令かと思ってちょっと読んでみた。「戦争には戦術は不可欠であり、時機に応じては意表に出ることも必要である。誠意一点張りでは交渉の進まないことのあることを承知しておき常に主導権を持って」云々と書いてある。それから「組合側から逆手をとられて、なす術もなく、権威は失墜し、無惨な敗北を招く事例はあまりにも多い。」というようなことを言われておるわけですね。とにかくこれを読んだ人は、戦陣訓かあるいは作戦要務令というような感じがするようなことを書いておる。こういうような形で、労働組合が敵のかまえとか敵と対決とかということは、これはやむを得ないと思うのです。これは階級的なものを持っておる。ところが国家の機関である行政府が労働組合と同じように組合を敵視をしてやっていくということになれば、これは結局階級闘争そのものを官が認めたことを意味するわけです。そういう労務政策というものがもしあなたの方で行なわれておるということになれば、それはやはりそれを行なうエッセンスであるハンドブックというものをわれわれは見せてもらわなければいかぬと思うのです。私まだいろいろたくさん言いたいことがありますが、この昨年切れた協約の精神でやるのだとおっしゃっておりますけれども、いわゆる団体交渉というものは公開が原則ですが、この三十二号にも公開を原則とするということが書いてある。しかも勤務時間にやることを原則としておる。しかし非常な多忙なときには、勤務時間外に団体交渉をやることがむしろ好ましい場合さえあるわけです。ところが勤務時間外に絶対やらないのだと、こういうことになっておる。こういう点は犬に組合側が自分の勤務時間内に最大の仕事をして、いわゆる国家公務員として、国民の奉仕者としての義務を果たそうとして、組合が時間外でやろうとすると、官側は時間外はだめだ、こういうように主張されておるわけですね。従って私はまだいろいろたくさんありますが、あとに一、二質問者がおりますから、委員長、私は絶対このハンドブックを出してもらいたいと思うのです。これは林野行政のあり方を示唆するきわめて重要な文献です。あることは確認したわけですから、あったからには絶対これは出してもらわなければいかぬ、こういう強い要求をいたします。全部の委員に配ることができなければ、民社党と自由民主党と社会党に一通ずつ一つお出し願いたい。そしてこれが極秘であるというならば、極秘の判を押していただけば、われわれはこれで党内の検討の資料にいたしたいと思うのです。そうして場合によっては、一つ次会にもう一回林野庁長官に来ていただいて、質問しなければならぬと思うのです。全貌がわからずに、他のいろいろの文献で読んでおっても、そんなことは書いてございませんと言われたら、水かけ論になりますから、この三十三年に出たその労務対策ハンドブックというのは、林野における労務管理のあり方をわれわれに知らせる決定的なものです。従ってこれを出さずして林野行政を論議することは、木によって魚を求むるのと同じですから、私はもう絶対これを出してもらいたいということを一応まず要求して、私の質問はこれで次会に留保したいと思います。
  75. 兒玉末男

    兒玉委員 関連して。私先ほど重大なことを聞き漏らしたのですが、長官が再三言っておったその三十二号協約というものは、いわゆる組合の機関と当局側との間において正式に成立したものであるかどうか。私たちの経験から申し上げますと、やはり協約というものは一応調印する前に機関——いわゆる組合の場合においては、最高の決議機関である大会の承認を得て初めて効力が発生するわけでありますが、そういうような全部の手続をとった上で、この三十二号協約というものは締結されておるかどうか、その点について、亀井委員長の方から実際どうなのかということを一つ伺いたい。
  76. 亀井忠衛

    亀井参考人 ただいま御質問のありました三十二号協約につきましては、中央段階でこれを妥結いたしておりまして、少なくとも手続上の落ちというものはない、こういうように考えております。ただその三十二号協約の運用にあたりまして、紹介側なり、従来実際に行なってきた慣行というものが、一つ一つ否認をされていく、こういうような顕著な例が現われたところに昨年末団体交渉においてその内容、表現というものを組合の要求によって変えよう、こういうふうな論議が持ち上がっておるわけであります。
  77. 五島虎雄

    ○五島委員 三十二号協約はずいぶん出ました。それで三十二号協約の有効期間は、三十四年六月十八日締結されて六カ月とする。そしてその間双方が意思表示をしないときはさらに一年間有効とする。それでこの点についてはいずれの方からか放棄しようとか、あるいは延べようとか、あるいは双方黙っておられたのか。従って二十二号協約はもう有効期間切れになっているのかどうかということについて、林野庁長どうですか。
  78. 山崎齊

    山崎政府委員 先ほどたびたび申し上げました通り、三十二号協約は昨年の十二月十七日かに両者で有効期間を終了したという形になっております。
  79. 五島虎雄

    ○五島委員 有効期間が終了したと解釈されるわけですか。はっきり有効期間はないと解釈していいのですね。そうすると、今団体交渉をやろうとすれば、三十二号の協約の精神を尊重しなければ団体交渉しないんだというように、三十二号の精神を精神をと言われるんだったら、なぜ当時林野庁組合側に対して何か有効期間交渉されなかったか。あるいは交渉されたと思うのですが、双方意思がなければさらに一年間延長するということにこの十七条の有効期間は規定してあるわけですけれども、両方がこの三十二号はいかぬから、もう有効期間切れにしようじゃないかという話し合いがあって、三十二号協約はなくなったのかどうか、その間のいきさつを簡単に述べて下さい。
  80. 後藤伝一郎

    ○後藤説明員 ちょっと事務的な説明をお許し願いたいと思います。三十二号協約ができましたのは昨年の六月十八日でありまして、有効期間は六カ月、こうなっておりますことは先生の御指摘の通りでございます。ただ期間が切れる一カ月くらい前だったと思いますが、全林野組合の方から改訂の意思表示があったわけであります。ですから一番最後に載っております自動更新の規定はその機能を営むに至らなかった。従いまして十二月十六日までに組合の改訂の要求に対しまして、当局側も慎重考慮いたし検討いたしまして、数次の交渉を持ったわけですが、相当歩み寄りのところまできましたけれども、残念ながらあと一歩というところで意見対立を来たして、ついに十二月十七日の失効の機を迎えるに至ったわけであります。ただしその十六日の団交は徹夜になりまして、そのあくる日、一体無協約状態になってどうするのだという議論になりまして、三役会談に移ったわけですが、その際に組合としては、いわゆる亀井委員長の表現ですと、窓口だけを開いておこうということで、これはいわゆる交渉単位だけを確認しようということでございますが、それだけ確認しても意味ないじゃないか、むしろお互いが三十二号協約の今までやってきたことで不都合がなければ、その通りやってくるという基本方針をお互いに確認し合えたら、その方がいいじゃないかということになりまして、その点については異存がないので、下部をそういうように相互指導しようじゃないかということでわれわれは別かれてきておるわけです。それで熊本の問題が本日の問題になっておるわけですが、中央で取りきめました以上のこと、あるいはそれ以外の慣行があったことにつきまして若干の紛争が起こっておる、かような経緯になっておるわけでございま
  81. 亀井忠衛

    亀井説明員 ただいま職員深長の説明の中に、例の三十二号協約が失効する際に、三十二号協約の精神なりやり方をそのままやっていかれるであろうと私が述べたというふうな点がありましたが、その点は誤解であると思います。問題になった三十二号協約はあれほど十分な論議をした結果、ついに意見の一致を見ないものを組合側がそのままの状態でいいじゃないかということは、おそらく常識的に考えてもあり得ないと思うわけでございます。  それから先ほどありました労務関係ハンドブックというのは、単に当局の執務の参考書類ではなくて、明らかに全林野に対する対策であるという点を強く御認識を願いたいと思います。この基本的な方向の中には、機会を得まして資料をごらんになればわかると思いますが、全管理者に戦う意識が盛り上がれば問題は半ば解決したようなものであるという訴え方をしております。それから例のうそをつけということにつきましては、懲戒処分の基準を出しておりますけれども、その想定問答の中で、上部から何らかの指示があったかと言えば、指示がない、局長の権限でこれを判断したということで述べなさい、こういうふうに指導をしております。  それからこまかい団体交渉内容につきましても、滝井先生から説明がございましたけれども、最近の合理化によりましてチェンソーが入っておりますけれども、組合側が備えつけろと要求した場合には、これは運営事項だからという指導の仕方、あるいは職場環境なりあるいは庁舎の窓ガラスがこわれておるから早く入れてくれというごく軽微な問題につきましても、施設の問題であるからお前たちから口を入れる余地はない、こういうようなきめつけ方をしております。  例の労務関係ハンドブックというものをごらんになれば、今林野庁がとっておる労務対策なり全林野対策なんか明らかになると思いますので、その点参考として十分審議していただきたいと思います。
  82. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 全林野労働組合から出ておりますこの中で、当局の主張点として、「旅費問題については管理運営事項なのでこの件の団体交渉に応ずることは出来ない。従来旅費問題について団体交渉で取り決めて来たことは一切間違であった。」二点として、「超過勤務の問題については管理運営事項であるのでこの件の団体交渉には応じない。三十二年十一月一日菊協力八号で結んだ超勤に関する事項については協約を結んだこと自体あやまりでありこの協約を認めることは出来ない。」こういうことが述べられておりますが、この旅費支給あるいは超過勤務の支給の場合どういうことを組合側あるいは当局者側が主張しておるのか、ちょっと理解ができないのですが、両者からこの件について具体的にお示し願いたい。
  83. 山崎齊

    山崎政府委員 当局といたしましては、旅費をそれぞれ、たとえば営林局にいたしますればどこの営林署年間なり半年間の予算として何ぼ出すのかというふうな問題については、これは団交事項とすべき問題ではないと考えておるのであります。
  84. 亀井忠衛

    亀井参考人 職員の出張旅費につきましては、組合側としては、基本的には現在実施されておりますところの国家公務員内国旅費規定なりそういう規定に統一して実施すべきである、こういうふうな考え方を持っておりまするが、実際的に予算上の制約の面ということで、過去においてはそれぞれの職階区分において旅費の額を規定をする、こういうふうな現実的な問題がございます。極端な例といたしましては、大阪管内においても、たとえば同じ定員法のワク内にありまする定員内の職員であっても、三十二年以前に任官をした職員については旅費を支給するけれども、それ以降に任官した職員については旅費を支給しない、こういうふうなきわめてばかげた取り扱いをしておる事実が指摘できると思います。
  85. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この旅費規程というものはどうなっていますか。
  86. 山崎齊

    山崎政府委員 その点につきましては職員課長から一つお答えいたしたいと思います。
  87. 後藤伝一郎

    ○後藤説明員 旅費の問題は、いわゆる国家公務員の旅費に関する法律というのがそもそもの根拠の法律になっておりまして、これについて林野庁長官が当事者能力を持っておるかどうかということになりますと、これは持ってないわけです。従いまして団体交渉をやります意味がございません。また協約締結権もございません。というのは、旅費法に反する。それからまた旅費法を受けまして支給規程というものがきておりまして、大蔵大臣の権限になっております。そういう法律関係、制度関係からいいましてそういうことになっておりますが、実際上は団体交渉の席上なりあるいは話し合いの席上で、組合意見をよく聞き、当局考え方も述べまして、支障なく運営をいたしてきておる、かように考えております。
  88. 大原亨

    ○大原委員 関連して。賃金についてもちゃんと法令できまっておって、その基準に従ってやっておるのですよ。しかしながらそれはやはり交渉事項なんですよ。それから旅費についても一応の基準や規程はあるのですよ。しかし私どもの入れた情報の範囲では、具体的に言ってもいいけれども、たとえば五日間ほど出張さしておいて三日間しかくれないとか、あるいは職階によって違うとか、こういう問題もあるのです。つまり旅費については実費を弁償するだけでは足りないとかいろいろな問題について、十分要求や意見もあるわけです。上の方が出張すれば一等旅費とかそういう基準はきまっておっても、一方的にきまったことについて、団体交渉権があっても、それが団体交渉の対象にできないということになれば、そんなことでは全然前進もない。それについて抽象的にも努力するということを約束して、具体的な予算措置をするという手もあるし、実際には旅費の実施とかあるいは基準とかいう問題については団体交渉になるのですよ。労働条件ですよ。超過勤務に至りましてはもってのほかです。あなたらが時間を五時間やらしておいて三時間くらいしか出さぬとかいろんなことをやっている。だから労働基準法の適用を受けるわけです。超過勤務の問題についてまだ時間をかけて論争したいけれども、そういうことからいいましたら団体交渉事項ですよ。団体交渉をどういうふうに受けて立つかという問題については問題はある。それはあなたの方の権限やその他のことはありますけれども、実際の運営その他を含めて全部管理運営事項だといって団体交渉を拒否するのだといったら、全部団体交渉はできない。そんなばかげたことをやっていると聞いたらあきれてしまう。長官どうですか。
  89. 山崎齊

    山崎政府委員 今、先生お話がありましたが、職員賃金とか給与とかあるいは作業員賃金というようなものは、公労法が適用されております以上は、これは団体交渉のまさに一番重要な要項であるということになっておるわけでありまして、これと旅費とは性格が違うというふうにわれわれは考えております。
  90. 大原亨

    ○大原委員 旅費に限って言いましょう。旅費については私から実例をあげて話をしたのです。基準と実施内容について、あなた一方的に査定するでしょう。そういうことについてはなぜあなたは、賃金団体交渉の対象の事項になるのに、賃金を基礎にした旅費とか超過勤務管理運営事項で一方的にきめていいという理由はどこにあるのですか。法的の根拠を言ってごらんなさい。
  91. 後藤伝一郎

    ○後藤説明員 ちょっと事務的に御説明を申し上げますが、実は日額旅費の支給規程が変わります際に、これは三十二年だったと思いますが、旅費が労働条件であるかいなかということが問題になりまして、当局側としましては法制局の見解を尋ねたわけですが、積極的に労働条件であるという見解は遂に法制局からはいただけなくて、ただ実際問題の処理といたしまして交渉事項運営しておるわけであります。先生のお話の中にありました五日間の出張をさせて三日間しか出張——当局が出張を命じましたものにつきまして、あるいは超過勤務を命じましたものにつきまして、その命じましたことが別段の指示として明らかな場合に旅費なり超勤なりの未払いの事実は全然ございませんことを申し上げておきます。
  92. 大原亨

    ○大原委員 ちょっとあなた、旅費とか超過勤務について、これは基準法の精神からいっても、そういう集団的な労使関係として、労使の中で交渉事項にするということを否定しておることはないし、賃金ができて、これができないということは絶対にないですよ。そんなことを一方的にきめるということはいけないですよ。異議があった場合には異議を申し立てる。いろんな情勢が違っておるのです。たとえば出張する場合に車馬賃だとか、あるいは宿泊料だとか、日当だとかいうものは情勢が違っておるのです。それについて十分団体交渉の対象として話し合いをするということを拒否することはおそらく法制局長官は言っておらないと思う。そういうことを言うはずはないのです。それを今まで団体交渉の対象にしておりながら一方的に途中で切ってしまうということはいけないですよ。今まで団体交渉しておったのでしょうから、それを一方的に途中で切ってしまって、そうして管理運営事項であるというふうに一方的にきめることはできない。団体交渉というのはそういう点を団体交渉できめるのですよ。少なくとも団体交渉事項であるし、運営においてはもちろんそうです。具体的に実費弁償の原則からやってみて、それについてどんどん情勢が変わっておるのですから……。私の質問に対して正確に答えて下さい。
  93. 山崎齊

    山崎政府委員 旅費の問題が団体交渉事項であるかどうかということにつきましては、林野庁として一方的に考えたわけでないのでありまして、法制局の統一的意見というものを聞いてわれわれはやっておるというふうにお含みおき願いたいと思います。
  94. 大原亨

    ○大原委員 職員課長の説明を聞いてみて下さい。団体交渉の対象にしてはいけないというような積極的な見解はなかったと言っておるのです。ましてや賃金についてやっておるのに、こういう実際上動いた場合の実費弁償の旅費の問題について団体交渉の対象にしないということを言ったらいけないです。あなたは職員課長と違った答弁をしておる。——あなた、今打ち合わせをしてはだめです。私の質問を聞いてからあと打ち合わせなさい。あなた職員課長と違った答弁をしたのです。積極的な答弁をしたのです。職員課長は消極的にこの問題について法制局の見解を言ったのです。あなたそれを積極的にすりかえた。だから違っておるのですよ。だから私の質問を聞いてから打ち合わせすることがあったらやって下さい。こんなものは非常識ですよ。団体交渉の対象から一方的に拒否するのは、それは昔の官吏と同じく無定量の忠義を尽くせということになるのですよ。そうじゃないですよ。
  95. 山崎齊

    山崎政府委員 職員課長から申しました事項は、この旅費が団体交渉であるかどうかという問題について、積極的に団体交渉事項である、あるいは積極的に団体交渉事項でないというふうなところの明確なあれがなかったということを職員課長は申し上げたと思います。そういうふうな考え方に立って、われわれとしては、旅費の問題は団体交渉としての事項ではないというふうに原則的には考えておるわけであります。ただ現実の問題として、組合のいろいろな意見を聞き、組合協議もするというふうな措置は従来もとっておるわけであります。
  96. 大原亨

    ○大原委員 この問題はいずれ法制局長官に来てもらって社会労働委員会で追及するけれども、あなたのさっきの答弁と今の答弁とは違ったわけです。法制局長官は旅費などについては団体交渉の対象にしないでもいいと言っているようなことをあなたは言った。職員課長はそうじやなかったのです。それは厳密な意味において言っている。あなたはそういうふうな一方的な答弁をしちゃいけませんよ。私はあなたの答弁は前後矛盾しているという点だけを明確に指摘しておきます。あとはいずれ法制局長官を呼んでから、この問題についてはまた追及いたします。
  97. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これは一般公務員、すなわち公企労法の適用を受けない職員の旅費規程を適用しているのですか。その点事務当局でけっこうですから御答弁願いたい。
  98. 後藤伝一郎

    ○後藤説明員 旅費法の適用につきましては、国家公務員全体として同一の適用を受けておるわけであります。
  99. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうすると、公企労の労働組合組合員でも、旅費については一般職の旅費規程を受けておる、こういうわけですね。
  100. 後藤伝一郎

    ○後藤説明員 さようでございます。
  101. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ところが同じ公企労法の適用を受けている三公社では、これは団体交渉の対象になっておりますね。すなわち国鉄なら国鉄の労働協約の中に、その一部に旅費に関する規定というのがある。これは団交の対象になっている、これは一体どういうことなんですか。
  102. 後藤伝一郎

    ○後藤説明員 公社の職員につきましては、これはいわゆる純粋の意味での公務員ではございませんので、これは別途な扱いがされておるのではないかと思います。
  103. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そのことはわかりますが、管理運営事項であるならば、公社の方だって公社の規定の中には当然入れなければなりません。これは論理的に言いますと団交の対象にならないはずですね。ところが公社の方は団交の対象になっておるのに、現業公務員の場合は公企労法の適用を受けておるのに団交の対象にならない、これは不思議でしょう。この点はどうですか。
  104. 後藤伝一郎

    ○後藤説明員 公務員の場合には旅費法の適用を直ちに受けますので、そこで労働条件とはこれは関連のあることではありましょうけれども、直ちにそれが労働条件として協約できまるというべき性質のものではないと思っております。
  105. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私はそのことがおかしいと言っているのです。それはむしろ協定を結ぶべきです。というのは、同じ公労法の適用を受けているのですから、管理運営事項は同じように除外されているのに、一方においては団交の対象になっている、労働条件と見なされている。一方は団体交渉の対象にならない、管理運営事項である、こういう点がおかしいではないか、こういうことを言っているのです。ですから当然一般職の旅費規程の適用は除外されて、あなたの方では特別の旅費規程の協定がなされてしかるべきである、こう考えるわけですが、長官どうですか。
  106. 山崎齊

    山崎政府委員 現在の私たち考え方といたしましては、先ほど職員課長から申し上げた通り、制度的に見てみますと、その点は困難だと思います。
  107. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 亀井労政局長、どうですか。
  108. 亀井忠衛

    亀井政府委員 これは二つ議論があろうと思います。一つは、実費弁償だから労働条件じゃないという意見もございます。また一方におきましては、そういう実費弁償であるにしても、実際にきめられました旅費規則と現実の姿が違うということで、組合が要求を出してその改訂の交渉をしていく、これも認められるのだという二説があります。われわれといたしましては、今林野庁がどういう態度をとっておられるか知りません。今公務員という部分から国家公務員の旅費規程を適用されるのかどうか実態を承知しませんが、一般的に言えば、やはり旅費というものがそういう意味において労働条件の一種であるというふうに私は理解をいたします。
  109. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 労働省は明快にお答えになっておりますから、やはり同じような法の扱いというものが私は必要じゃないかと思うのです。すなわち公社の場合も、現業の公務員つまり公労法の適用を受ける公務員の場合も、同じ扱いをされるのが至当ではないか、こういうように考えるわけです。  そこで再度長官にお尋ねしますが、これはあなたの方も政府に対して同じように考えることを要求すべきです。その点はどういうふうにお考えですか。
  110. 後藤伝一郎

    ○後藤説明員 ちょっと私の説明の足りない点を補足いたしますが、いわゆる公労法の適用を受けているから五現業の場合は三公社と同じ扱いをしなければならないということには直ちにならないかと思います。というのは、五現業の場合には、いわゆる国家公務員といたしまして、純粋なと言いますと語弊がありますけれども、直ちに旅費については旅費法の適用を受けますし、また賃金につきましては三公社と同じく給与特例法の適用を受けまして、その範囲内でいわゆる職務の内容、責任または能率に応じて賃金をきめるのだ、こういう給特法の精神にのっとって団体交渉賃金をきめておる。いわゆる法律なり制度なりのワクの中でそれぞれ三公社は三公社、五現業は五現業で違った場合もありますし、また同じ場合もありますが、それぞれの制度のもとで協約の締結、団体交渉などをやっておる、かような次第であります。
  111. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は金額の問題を言っているのじゃない。あなたもそういうように御理解であろうと思いますが、金額はたまたま国鉄と同じであってもいいのですが、一方は、すなわち国鉄なら国鉄の場合は、会社の社内規則できめられた場合はこれは管理運営事項ですね。これはまあいいのです。ところが実際は団体交渉の対象としてきめられておる、協約の一種である、こういう場合にはどうも扱いが違うではないか。すなわち公労法管理運営事項団体交渉の対象から除く、こう同じようになっておっても、その扱いを現業公務員と公社の場合を変える根拠は何もないじゃないか、こういうことを私は言っているわけです。それはどうですか。
  112. 後藤伝一郎

    ○後藤説明員 これは一課長ではきめられませんので、制度といたしまして、そうなっておるということを申し上げるにとどまるわけです。
  113. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 まあ私は問題点を指摘して、後日に質問を保留しますけれども、ここに第一問題がある。  その次の問題は、実際旅費の支給が現実に出張した場合に支払われていないというところに第二の問題があると思う。ですから、これはあなたの方は命令を出した場合必ず支払っておると言いますが、ではそれは内示で、命令簿に載せないのですね。よくわかりませんが、おそらく正式な命令をしないのでしょう。行ってきなさいといって、あとから正式な命令を作って、五日の場合は三日にする、あるいは三十二年以降任官した場合にはやらない、こういう操作をしているのでしょう。これはどうなのです。これも問題があるのじゃないですか。
  114. 山崎齊

    山崎政府委員 その点につきましては、終戦直後等におきましては、先生の御指摘になったような事態もあったかと思いますが、現在におきましてはお話しのような事態ではなくて、命令というものとはっきり関連して出しておるのが現実でございます。
  115. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 委員長どうですか、組合の方は。
  116. 亀井忠衛

    亀井参考人 ただいまの点につきましては、私が大阪管内を回った際にそういう事実を聞いて参っておりますので、決して終戦直後の事態ではなくして、現在でもそういう事実があるということを申し上げたいと思います。
  117. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これも私は、実際出張しておるのに出張の取り扱いができていないというところに問題があると思う。  続いて、超過勤務の場合は一体どういうことなのですか。
  118. 山崎齊

    山崎政府委員 超過勤務につきましても、先ほど申し上げました旅費の問題と同様にわれわれは考えて、指導もし、監督もしているのであります。
  119. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 超過勤務の場合は、これは団体交渉の対象になるのでしょう。これは一般職の超過勤務そのままをやっておるのですか。
  120. 後藤伝一郎

    ○後藤説明員 超過勤務につきましては、これは一般の規則関係といたしましては、国有林野事業就業規則でもって律しておりますし、またその基本になりますものは、御承知の通り労働基準法の精神にのっとりまして、就業規則で規定した形でやっておるわけでございます。
  121. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 手続はどうなのですか。
  122. 後藤伝一郎

    ○後藤説明員 就業規則にきめております。
  123. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういたしますと、就業規則ということになると、これは管理運営事項である、一般公務員法関係の規定の適用はないけれども、独自できめるけれども、これは就業規則でやっておる、こういうのですか。
  124. 後藤伝一郎

    ○後藤説明員 しかし、基準法のワクがあるわけでございますから、その基準に基づきまして就業規則を制定しておるわけでございます。
  125. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 本来それは就業規則できめられる場合もあるけれども、超過勤務というのは、本来の労働条件でしょう。どうですか。
  126. 後藤伝一郎

    ○後藤説明員 超過勤務を命ずるということにつきましては、これは明らかに監理権でございますが、その命令をしました結果につきまして、たとえば労働条件の面に反映するものにつきましては、これは交渉でもって処理すべきものかと思います。
  127. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これは明らかに団交事項なのですがね。どうなのですか。今林野庁の方では団交事項である、こうおっしゃるのですが、組合の方はどうして問題点としておあげになったのですか。
  128. 亀井忠衛

    亀井参考人 交渉した結果に基づきまして完全に支給すべきものという認識を持っておりますが、事実は支給されておらない状態が随所に見られます。先ほど来の旅費の問題につきましても、林野当局は、もしそういう具体的な事実があり、法令に違反しているならば、その点については直ちに追給なり、そういう手続をとるという態度を表明すべきであると考えております。
  129. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 団交事項が、実際財源か何かの関係で払ってないというところに問題がある。むしろ政府が基準法違反をやらしておるというところに問題がある、こういうように認識します。  最後に、私は亀井労政局長にお尋ねいたしたいのですが、あなたの先ほどの答弁で、たとえば交渉委員の交代は一年間認めないとかいうような、いわば団体交渉の手続に関する交渉が行なわれておるのであって、本来の団交に入ることができないんだ、こういう御事情の御説明があった。そこで、ルールができないので、団交をいわば拒否してもこれは団交の拒否にはならない、要するに、不当労働行為にはならない、こういうように展開をされたように聞いておりますが、その通りですか。
  130. 亀井忠衛

    亀井政府委員 そういうように申し上げたわけではないのでありまして、団体交渉をめぐりまする問題が今不当労働行為として公労委にかかっておる、その当、不当は公労委判断にまかせる。私が申し上げたのは、いわゆる労働条件を主体といたします一般的な団体交渉を開くには、その事前団体交渉ルール団体交渉できめなければなりません。しかるに、この問題をめぐりましてこれまたあっせんで今公労委にかかっておる。それまでは林野庁長官が三十二号協約の精神でやっていこうじゃないかということでありますから、従って、その精神をくみ取れば、労使双方団体交渉をする意思さえあれば、三十二号協約ルールでやっていけるのじゃないかということを申したのであります。
  131. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私はこの点が問題になるのではないかと思うのですが、団体交渉権というものは、本来組合員の権利です。そうすると、ルールがきまらない、ルールがきまらないということで、本来の労働条件団体交渉ができない、こういうことになりますと、団体交渉権というものはかなり侵害をされるということになる。ですから、本来の団体交渉をサボるために、ルールについて、強硬な使用者の態度というものは、むしろ不当労働行為になる、こういうように考えるわけですが、一般論としてどうですか。
  132. 亀井忠衛

    亀井政府委員 今の問題については、公労委不当労働行為問題になっておるのです。先ほども申し上げましたように、また林野庁長官が申し上げるように、三十二号協約の精神でやっていくんだということについて組合と話がついたと言われますから、その精神でやっていけば、基本的なルールがきまるまでは暫定的にこれでできるんじゃないか。これは結局労使双方団体交渉をやる意思があるとすればできるのじゃないかということを申しておるのであります。
  133. 永山忠則

  134. 本島百合子

    ○本島委員 私は総括的に伺いたいと思います。林野行政というものは、御承知の通り、日本の国土保全のためにはなくてはならぬ機関である。しかもそういう関係に働かれる方々の労働条件が他の産業に比較していいか悪いかということは長官が一番よく知っておられるわけです。私どもが地方に参りましても言われますことは、定員が非常に少ないということ、そのために臨時雇い、日雇いのような方々の労働を仰いでやっと林野行政がなされておるという状態の中から、組合としては他の産業に比較して要求される条件が非常に多いと思うのです。そういう問題について、今までいろいろと組合と官側と話し合いされてもそれがうまくいかなかった。そういう結果から今日の事態が引き起こったのではないか、こういうように感ずるのです。  そういう観点からお尋ねいたしたいことは、ただいま超過勤務についても旅費規程についてもいろいろ答弁を伺っておりましたが、地方の公共団体のあり方から判断いたしまして、大体地方公共団体においては解決されておるような問題がただいま質問の内容になっておったと思うのです。そういたしますと、林野庁の官側が——私のきょう受けた感じとすれば、労働組合の発達する以前の状態にこの林野関係の労働者は置かれておったということがだんだん明白になってきたと思うのです。こういう点で無協約状態のままに放置された、こういう状態が引き起こってきたのだと思います。従って要求されてくるものがほかの労働組合に比較して歴史前的な感じ方があるから大きなものが出されてきた。それをのまれなかったからこの問題が無協約状態にまでほったらかしになってきた。こういうように感ずるのですが、今後のあり方として長官はこの問題は大体どういう目安で解決をしていかれるか、また今日解決できないと主張していられる焦点はどこにあるのか、その点を聞かしていただきたいと思います。  また亀井委員長に対しましては、あなたの方は先ほどからたとえば交渉委員のメンバーについて話がととのわなかったということが一点あったと思います。二点は、傍聴人の問題についても人数並びにその顔ぶれというものがなかなかうまくいかなかった、そういうことからこじれておるというような印象を強く受けたわけですが、労働条件に対する問題よりはむしろそういう点においてこの問題の解決ができなかったというふうに私は答弁の中から受け取ったのですけれども、そういうことであるならば、組合側としては、あなたは中央の委員長であられると思いますけれども、そういう立場に立ってこれを打開する道は、こういう点がきまれば、こういうふうにすればうまくいくのじゃないか、こういう点がおありになろうかと思いますので、その二点をそれぞれの方からお聞きしたいと思います。
  135. 山崎齊

    山崎政府委員 当局といたしましては、先ほどからお話しのありました通り、団体交渉ルール等の問題につきましては、現在公労委のあっせんの段階に入っておるのであります。そういう過程を通じ当局意見も十分述べ、また公労委としては組合側意見も聞いていただくわけでありますから、そういう両者をもとにしてできるだけ早い機会に公正な判断をいただいて、その線にのっとって誠意を持って労使関係を円滑に進めていくということに努力して参りたいと考えておる次第であります。
  136. 亀井忠衛

    亀井参考人 ただいま御指摘になりました点についてお答えいたします。  まず交渉委員の指名の問題については、先ほど労政局長が明らかにしましたように、それぞれが自主的に指名をするということが法律的にあります。ただ交渉の過程において団体交渉が円滑に行なわれなかったり、あるいは双方の信義が好ましくない形にいくならば、この点はそれぞれ良識をもって判断をすべきであるけれども、基本的には指名をするという権利が規定上認められているのであるならば、そのような方法ではっきり対処すべきである、かように考えます。  それから傍聴の問題につきましては、現在当局がとっておる態度は、たとい二名でも三名でも当局の承諾がなければ傍聴を認めない、こういう態度をとっておるわけでありますけれども、交渉委員の質の問題あるいは傍聴の問題につきましても、要は団体交渉が円滑に行なわれるやいなやに問題点があると思います。それがポイントとして判断さるべきであるというふうに組合側考えておるわけでございます。従ってそれぞれの自主的な良識ある判断をもってこれを円滑に運営せられるならば、人数その他について必ずしも相手方の同意を得るというふうな義務的な強制力というものはないのではないか。従って公労委におきましてもそのような見解を持っての裁定というものが出されることを組合側として期待しておる、こういうふうな考え方でございます。  総体的な問題につきましては、先ほども触れましたように、現在全林野が直面しております当局労務対策、いわゆる労務関係のハンドブックを直ちに撤回をすること、さらにこのような紛争の事態の起こらなかった一昨年の状態に戻していく、しかし具体的な問題については労使双方誠意を持って十分協議の中からこの国有林野事業における労使の円滑なる運営期待すべきではなかろうか、こういうふうに考えております。
  137. 本島百合子

    ○本島委員 労働者が団体交渉権を持たないということは最もみじめなことであるわけなんです。従ってそういった軌道に乗せていってもらいたいということは、おそらく本日出られた委員の方々のすべてが考えていられることだと思います。そこでこれは飛躍するようでございますが、近くILOの批准の問題が提出されて参るわけです。国内法の問題でただいま政府から出されているものについて私ども検討しておりますが、そういうただいま自民党で考えていられる内容とあなたの方の、これは労働組合委員長にお聞きするのですが、その関連性においてどちらが有利であるのか。もちろん政府が今考えているのは、国内法の調整において非常に日本の労働者は不利であるということがいわれております。ですからそういう点について多分にこれは関連してくると私は感じたものですから、そういう点を一点お聞かせ願いたいと思うのです。
  138. 亀井忠衛

    亀井参考人 ILOの問題につきましては、政府の動向というものは新聞その他の情報でいろいろ伺っておりますけれども、われわれ労働組合立場においては、ILOの八十七号なりその他の号につきましても無条件でこれを批准すべきものであって、それに伴ういろいろな罰則規定というものを強化すべきでない、こういうふうな考え方を強く持っております。
  139. 本島百合子

    ○本島委員 私が聞いたのは、無協約状態に置かれておる、この立場に追い込められたその原因が、今回あなた方が先ほどから質問に答えられている内容から判断いたしまして、いわゆる交渉委員の任命、こういうところにたとえば組合員にあらざる人を持ってきたために官側がけっておるのであるかどうか。あるいはまた先ほど官側から答弁された、病気だとか長期出張だとか、そういうやむを得ざる事情においてはこれは交代させることができるのだが、そういう内容でないような答弁の仕方をしたわけなんです。ですから私はその点でこの関連性があるように思うのですが、そういう点はどうなのであろうか、こういうことでお聞きしたわけです。
  140. 亀井忠衛

    亀井参考人 ILO批准の問題と、今回林野に起きております団体交渉ルールの問題というものは、そう直接の関係はないというふうに理解しておりますけれども、組合側交渉委員の交代を求めておりますのは、現実に非組合員交渉委員に乗せるということでもなければ、あるいは全然問題と関係のない人を出してきて交渉委員にあげよう、こういう意図ではないわけです。先ほどのどなたかの御説明にあったように、それぞれ個々の具体的な問題に詳しい交渉委員と場合によっては組合側も自主的に交代をし得る場合もある。こういうふうな事由も認めてほしいということにほかならないわけでございます。
  141. 本島百合子

    ○本島委員 それでは長官にお尋ねいたしますが、どこに欠陥があってこういう問題がととのってこなかったか、こういう点で長官のお考えを聞かしてもらいたいと思います。
  142. 山崎齊

    山崎政府委員 昨年の暮れに組合と、数次の団体交渉ルールに関しまして交渉を持ったわけでございます。その中におきまして、今いろいろお話しのありました数点についての当局側組合側との意見の一致を見ない点が部分的に残ったということであるのでありまして、それが公労委のあっせんの段階に持ち込まれておるという形になっておるわけであります。職員課長から御説明いたしました通り、その間の考え方の相違というものはかなり接近した形で、微妙な点が一致してないというような形になっておるのでありまして、われわれといたしましては公労委のあっせんが早く出るようにということを期持している状態であります。
  143. 本島百合子

    ○本島委員 いま一点お聞きしておきます。こまかいことは申し上げませんが、先ほどの話で考えますと、労働条件に直接関係するものが団体交渉権として与えられるものであるという御説明があったわけです。ところが、聞いておりますと、こまかい問題までも官側が——労働組合の自主的な判断にまかせていいような範囲のものまで取り上げられているような感じを私は受けたわけです。今日の労働組合のあり万というものから考えて参ります場合に、ガラスが割れておるとか、労働者の休養施設であるとか、そういう点については明らかに組合との交渉権の中で持たれていける問題だと思う。それが長官の答弁を聞いておりますと、何もかも官側がやって、労働組合のささいな要求、しかもそれは働く上に最も重要な問題、こういうものまでが、地方のいわゆる下部組織における団体交渉権の中には入らないんだというふうに承れるわけです。私は今後公労委のあっせんでどのような結論が出るか知りませんが、こういう場合においては、私はもう少し林野庁長官考え方において、近代的な労働組合のあり方に対するマッチの仕方というものを考えていかれなければ、こういう問題が二回も三回も繰り返されてくると感ずるわけなんです。本日は参考人も呼んでお聞きいたしたわけですから、こまかい点についての論争は委員会にまかせるとしても、長官の組合に対するものの考え方の片鱗でもよろしゅうございますから御答弁願いたいと思います。そのことがこの問題をこじらしてきている大きな原因だと受け取れましたから、この点をお聞きいたします。
  144. 山崎齊

    山崎政府委員 今ガラスが割れているとかいろいろなことについてお話しがありましたが、私たちといたしましてもそういう問題は、いわゆる団体交渉とかなんとかいうふうな過程を経なければどうともならぬというような問題でなしに、当局としてもそういうものを積極的に改善するということを当然考えなければいかぬと考えておるのでありまして、組合なりそういう関係の方面の労働条件の重要な問題についての改善改良にはわれわれとしても積極的に努力していかなければならぬというふうに考えておる次第であります。
  145. 永山忠則

    永山委員長 八木委員
  146. 八木一男

    ○八木(一男)委員 林野庁長官に簡単に質問をいたします。  さっき滝井委員資料提出要求をされましたことにつきまして、林野庁長官は今までの間に考えられたと思いますが、無条件で即刻提出するという御答弁をいただくことが至当であろうと思います。これについて御答弁をいただきたい。
  147. 山崎齊

    山崎政府委員 その点につきましては先ほど申し上げました通りわれわれとしては考えておることを御了承願いたいと思います。
  148. 八木一男

    ○八木(一男)委員 実際的の問題で最初申し上げますが、林野庁がそういう林野労務行政をいいと考えておられるなら、出すのに何もはばからないはずだ、内容がいいと思うなら。悪いと思うからそういうことを言っている。悪いと思うことを国会の審議でひた隠しにされるようなことは、林野庁の長官として許されることではありません。即時反省されて、直ちに出します、前言を取り消して、直ちに出しますという御答弁をいただきたいと思います。
  149. 山崎齊

    山崎政府委員 先ほど申し上げました通り現在考えておりますことを御了承願いたいと思います。
  150. 八木一男

    ○八木(一男)委員 今おっしゃっておることは国政の審議権を無視したことになるのですが、それを考えて答弁をされたのですか。
  151. 山崎齊

    山崎政府委員 これはるる申し上げております通り、ほんとうの内部の参考という一つのものとしてわれわれ考えて出発しておるわけでありまして、われわれとしては外部にそういうものを出すというようなことを当初から全く考えてなかったわけでありまして、その点を御了承願いたいと思います。
  152. 八木一男

    ○八木(一男)委員 このような林野庁の長官は林野行政を預かる資格がないと思います。こういうような方針を内閣自体がとっておるかどうか、その点を究明しなければなりません。即時総理大臣の出席を要求いたします。
  153. 永山忠則

    永山委員長 総理大臣の要求は理事会を経て国会対策へ出さなければなりませんから、よく相談してやります。
  154. 八木一男

    ○八木(一男)委員 それでは林野庁長官のような行政管として不適な人間に対しては私はもう質問いたしませんが、この問題について、委員長が正式に委員長名で本日中にただいまの資料を提出することを林野庁に対して要求していただきたいと思います。
  155. 永山忠則

    永山委員長 理事会を開いて相談いたします。  午後三時まで休憩いたします。     午後一時三十八分休憩      ————◇—————     午後三時三十二分開議
  156. 永山忠則

    永山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  社会保険関係職員の身分に関する件について調査を進めます。  本日当委員会に御出席になりました参考人は、東京都副知事鈴木俊一君、東京職員労働組合調査部長渡辺勇二君でございます。  参考人の方々には、御多忙中のところ御出席いただきましてまことにありがとうございました。本日は本問題について理事者側並びに組合側からそれぞれ忌憚のない御意見を承り、本委員会調査の参考に資したい存じます。なお議事の整理上、御意見を一人十五分程度に要約してお述べをいただき、その後委員の質問にもお答えを願いたいと存じます。  それでは順次御意見の御開陳をお願いいたします。鈴木参考人
  157. 鈴木俊一

    ○鈴木参考人 東京都に勤務しております地方事務官あるいは地方技官、すなわちその他の雇員、用員もございますが、国家公務員の身分の問題について現状がどういうようなことになっておるかということと、またどういう点に問題があるかということにつきまして若干申し上げたいと存じます。  現在東京都には地方自治法の施行規程という、地方自治法の施行に関する経過の政令がございますが、この政令に基づきまして、全体を合わせまして約三千の国家公務員がおります。これは社会保険関係の者、職業安定行政に従事をいたします者、国民年金関係の事務に従事いたします者等でございまして、これらの三千人の職員が都の職員の中に入りまじっておるわけでございます。これらの職員につきましては、その人事取り扱いは都の一般職員のごとく地方公務員法の規制を受けませんで、国家公務員法の規制を受けますとともに、一部特例の事項といたしまして、地方自治法施行規程の中におきまして、その任命権、進退等につきまして特例の規定があるわけでございます。そこでこれらの国家公務員とその他の一般の東京都の公務員との間におきまして、いろいろの点におきまして取り扱い上の差異があるわけでございます。その差異の若干を申し上げますると、一つは任命権の問題でございますが、これはもちろん一般の職員は知事が任命権を持っているわけでございますが、地方事務官、地方技官、その他の国家公務員は、労働大臣あるいは厚生大臣が任命権を持っておられるわけでございまして、     〔委員長退席大坪委員長代理着席〕 ただそのうち五等級以下の者につきましては、任命権を国家公務員でありまする都の一番上級の職員、労働局で申しますると総務部長、あるいは民生局の保険部長というような地位にあります国家公務員にこれを委任いたしておるわけでございます。しかし制度上は、およそこれらの国家公務員の進退につきましては知事の意見を聞かなければいけない、こういう制限が政令の上に書いてございます。しかしこれは実際の運用といたしましてはあまり役立ってはいないように考えられます。それから地方公務員法におきまする職員団体の取り扱いと国家公務員法におきまする職員団体の取り扱いとは、登録の場所が国の場合は人事院系統の機関でありまするし、都の場合は人事委員会であるというようなことで、これもやかましく申すと制度上違うわけであります。あるいは服務などにつきましても、たとえば政治的行為の制限の規定が国家公務員法にも地方公務員法にもございますが、これもやかましく申しますると、それぞれ御案内のように、国家公務員法の方は罰則は刑罰規定なと相当きつくあるわけでございますが、地方公務員法の方はそこが懲戒罰になっておるというような点でそれぞれ違いがあるわけでございます。また給与の点につきましても、東京都は御案内のように、昔の東京市と東京府が一緒になってできた団体でございまするから、一般の府県の職員よりも若干給与が高いのは事実でございます。そこで給与の取り扱い等につきましても、国家公務員の場合におきまして、あるいは昇給の場合などを考えてみますると、どうしても都の場合におきましては、国が人事院の勧告に基づきまして給与の改訂をいたしましてから若干おくれなければ給与の改訂ができないというのが従来の扱いでございますが、そういうような点についても実際上若干違ってくるというような、これは一例でございますけれども、給与においてもやはり給与予算が違う関係がございまして、当然にこれは違って参るわけであります。  その他こまかい点を申し上げればいろいろあるわけでございますが、人事上さようにいろいろな点において両方が違っておるというのが現状におきまする問題点の第一でございます。  問題点の第二といたしましては予算でございますが、これも一方は国の特別会計の保険関係の予算あるいは職業安定関係の国の団体経営の予算というようなことで、歳入の徴収にいたしましても、支出にいたしましても、国の会計法規、財政法規に縛られましてこれをやる、こういうことでございまするし、一方は都の自治体の予算として執行する。予算の編成につきましても、一方については、知事は国の問題につきましては全然発言権はございませんが、そういうような点において、自身の予算を編成する場合とはやはり立場が相当に異なってくるというようなことで、財政経理、予算編成の面等におきまして第二に相当違っておるという点があるわけでございます。  またこの組織でございますが、社会保険関係では社会保険出張所というのがございまして、これは地方自治法施行規程という経過規定に根拠を置いて作られておるわけでございます。そういうことで、地方自治法の体系で規定をいたしておりますから、これは都の行政組織の中の一部であるというふうに理屈をつければなるわけでございますが、一方職業安定行政の関係の公共職業安定所というものは、これは職業安定法の規定によって設けられ、また労働省設置法の中では支分部局というふうに規定されておるかと存じますが、そういうようなことで、これは国の出先機関である。その国の出先機関に対して、一方都の組織であるところの職業安定所が職務上の指揮監督権を持っておる。すなわち知事が職務上の指揮監督権を持っておるというようなことでございまして、どうもいささか脈絡が一貫していないという面がどちらの面、国の面、都の面から申しましてもあるかと存じます。そういうことで、行政組織が同じような形になっておりながら、制度上の規律が違っておるというのが第三の問題点であろうかと思うのであります。  これを要しまするに、この人事の扱いあるいは予算の経理あるいは組織というような点につきまして見ましても、いろいろと食い違いがあるわけでございますが、しかし何と申しましても、都庁の同じ部屋の中で、あるいは同じ局部の中で仕事をやっておるわけでございまして、中身が国の直接の仕事で、国の官吏である職員がやっておるものでございましょうとも、一人の労働局長あるいは一人の民生局長の所管に属することであります。従ってまたこれは東京都知事がその責任において仕事をやっているのである、こういうふうに外部的には当然にとられるわけでございます。従っていいことも悪いことも、功罪ともにこれは知事の責任あるいは労働局長民生局長の責任ということになるわけでございまするが、それにもかかわりませず、今申し上げましたような点においては、相当に多く一般の都の職員と違った拘束があるというところに、知事といたしましてはこれはいささか仕事がやりにくいという点が率直に申してあるわけでございます。  そこで、おそらくこれに従事する職員立場になりましても、なるほど国家公務員という形でございまするから、全国的に人事の交流は可能であるような形になっておりますが、都のような大きな組織の場合におきましては、全国的に交流するというよりも、むしろ都の中で、同じ局の中の他の部課あるいは他の局というような、都の公務員との間の交流の方をむしろ第一次的に要望するのが当然であろうかと思うのでありまして、そういう場合に、やはりこれはなかなか実際上めんどうであるというようなことでございまするし、またここに働いておりまする者から申しますと、いわばほかの方に異動をしてさらに昇進していくといいますか、そういうような将来に対する夢といいますか魅力、そういうものがやはり非常にそがれてくる。ことに同じ机にすわっておりながら、一方は国の公務員、一方は都の公務員ということであるがために、先ほど申し上げましたようないろいろの違いが出て参りますので、どうもこれは厳密な意味では同一労働、同一賃金という原則がそのまま当てはまるかどうかわかりませんが、常識的な感じといたしまして、同じところで働いており、同じ条件でありながら給与が違う、あるいは人事扱いが違うということについて、何か割り切れない点が残るのではないかと考えられるわけでございます。  そこで、そもそもこの地方自治法の施行規程に暫定措置として、当分の間国家公務員にするというふうに書かれました立法のときの趣旨は、まだ国家公務員法というようなものが実は当時はできておりませんで、むしろ都道府県に働いておりまする者は、官吏でありましょうとも公吏でありましょうとも、いわば一本の官公吏法というような形のものに規律せられるようになる、そういうことを——当時私も関係をいたしておりましたが、官公吏法というような一本の形の公務員法を作って、それで規律されるようになれば最もよいであろうというようなことも、実は司令部関係の影響がなかったときにおいては考えておったようなことがあったのであります。それと申すのも、身分が官吏公吏というふうに分かれておりましても、そこで働く場合には、旧制度においては御承知のごとく官吏服務紀律というものが府県の職員にもそのまま準用されるというようなことでございましたし、また出発は府県の吏員で、逐次これが官吏になって昇進していくというようなことで、身分は違いましても運用上は一本の姿で実際の運用をされておった。そこに官公吏併用の旧府県制などにおいては若干の妙味があったと思うのでございますが、今のように国の公務員の系統、地方公務員の系統というようなことで制度が截然と分かれておりますと、どうもつ実際仕事をやる仕組みとしてはうまくない。そこで結局知事といたしましては、いろいろこれは職員団体との間の話し合い等もあるわけでございますが、できるだけこの人事の扱いにいたしましても給与の扱いにいたしましても、実際の運用の面におきましてあまりちぐはぐが起こらないように種々心を砕くと申しますか頭を痛めまして調整の措置をやって参りまして、職員の士気にできるだけ悪い影響がないようにしよう、こういうことで過去におきましてもいろいろ配慮してきたのでございます。そこで私どもといたしましては、この制度につきましてはやはり何らか調整をいたしまして、いま少し、同じ職場で働くという建前からいたしまして、何らか相互に調整をするというような必要があるのではないかと考えるわけでございます。  過般東京都議会におきましては、全部この事務を都に委譲をしていただいて、そして地方公務員という立場でこれらの事務をやるようにしてもらいたい、国として必要なる統制、監督、指導は特別法でいかようにおやりになっていただいてもよろしゅうございますが、そういったような形にしてもらいたいというような意見書を提出しておるのでございますが、これはそういう形でこの問題を解決したいという一つの理想の姿を都議会としては意見書の形で出されたものと存ずるのでございます。私どもといたしましては、地方自治という立場から考えますと、やはりこれが一つ解決策であろうかと思います。なおこれはおそらく国の立場からもいろいろの御意見があろうかと思いますけれども、いずれにいたしましても、この両者截然と分かれて起りまする建前をなるべくすみやかに、経過規定などで規定されるという形でなく、本来的な姿に戻しまして適切なる調整を国としてはかっていただきたいというふうな考え方を持っておる次第でございます。
  158. 大坪保雄

    大坪委員長代理 次に渡辺参考人にお願いをいたします。
  159. 渡辺勇二

    ○渡辺参考人 それではただいま組織、人事、財政の面にわたっての鈴木参考人の方からのお話があったのでありますが、私の方では、職場で働いている職員立場から、現在の制度によって生じて参りまする欠陥を申し述べてみたい、こういう工合に思うわけであります。  現在社会保険の関係仕事に従事する職員は、先ほどもお話がありましたように、地方自治法附則第八条に基づいて、本来は都道府県の職員にすべきであるという明文があるにもかかわらず、当分の間これを官吏とするというような規定がありますために、地方事務官という名称において各都道府県に配置をされる、こういうような状態になっておるわけです。このために、人事の面からこの点を見ますと、一応地方事務官ということならば全国的な規模の中で人事交流が行なわれるから人事上の面についての支障はないのではないか、こういう工合に一般的には考えられるわけですが、実際は全国的規模における人事交流の波に乗るものは百人のうち一人あるか、二人あるか、まことに数の少ない特定の人だけがこの対象になるのであって、ほとんど大多数の職員は、その県の中において一生涯を県の社会保険行政なら社会保険行政において終わらなければならない、こういう状態になっておるわけです。また地方自治法附則の関係で、同じように職業安定行政についても配置をされておるわけですが、職業安定行政の方の関係も今全国的な人事交流というのは名目だけであって、実際には、こういうことを言うと語弊があるかもしれませんけれども、幹部候補者に目されるような人たちが主要なポストを回って歩くというような程度の人事交流の域を出ていない。従ってこれら職業安定行政に従事する職員も、一生涯を県下における職業安定行政にささげなければならないという状態が出てきている。各県別に職業安定行政なりあるいは社会保険行政なりの組織、これに基づく職制、こういうものをながめてみますと、非常に小さい規模においてこういうものかありますので、やはり昇進の道というようなものはほとんど考えられないというような状態が出てくる。     〔大坪委員長代理退席、委員長着席〕 立身出世主義がいい悪いは別としても、とにかく勤労意欲を喪失しているということは事実であります。県におります職員は、県の機構の中で最大限に公務員としての能力を発揮をする、そのためにやはり必要なルートは何としてでもつけていただかなければ困る。そのためには、やはり国の機関であるとか地方の機関であるとかいうような大きな壁があったのでは、そういう人事上の面についてのルートがつけられない。こういうことを非常に悩みとして持っているわけです。先ほど指摘がありましたように、これらの事務は独立した姿において実施をされているのではなくして、あくまでも同一の都道府県知事の業務上の指揮監督のもとにおいて事務、事業実施いたしておりますし、隣には県の職員がおるというような状態の中で業務を実施いたしておりますので、こういう問題を解決するためには、何といっても事務、事業の移管の問題と、身分をはっきり地方に移す、こういうような改正がどうしても必要だという工合にわれわれは考えておるわけです。  次に給与の面から今の各府県におけるところの障害を申し上げますと、御承知のように各府県は、国家公務員の給与にならいまして、これを前提としてそれぞれの地方におけるところの特殊事情を加味しながら、これは地方公務員法の命ずるところですが、それぞれの府県におけるところの給与を定めておる。ところが国家公務員であるこれらの職員については、そのような地方の特殊性に基づいた給与措置がとられておらない。給与がそういうことになっておりますから、勢い生活環境、また生計費、給与との間におけるアンバランスというものがどうしても出て参りますし、同時に府県職員との間における給与の不均衡という問題が生じてくる。同じ職場にいて、同じ知事の指揮監督において働きながら、給与上の取り扱いについてもそのような不均衡が出てくる。これが勢い保険行政なり職業安定行政なりを実施していく場合の勤労意欲の喪失として響いてくる。こういうような事実が歴然と出ている。従ってわれわれとしては、こういうような障害を除くためにも、すでに知事に業務上の指揮監督を委任されている事業でありますから、業務を委任していただいて、身分も同時に地方の公務員としてすっきりしてもらう。そういうことをすれば、こういうような不均衡もなくなってくるのではないかという工合に思っているわけです。  また、一般の労働条件の問題についても、先ほどは政治活動の問題を指摘をされたわけですが、やはり職員団体の組合活動の面において非常な違いがある。大綱は国家公務員と地方公務員の場合にはそれぞれの法で同じに規律はされておりますが、地方公務員の場合においては特に理事者側との間で、これは労働協約という意味ではありませんけれども、文書協定に基づいて、それぞれの労働条件についての話し合い、交渉当局と持つことができる。作られた文書協定については相互誠意を持って実施をしなければならないというような事項法律上明文化されておるわけです。こういう中でわれわれは条例並びに規則の許す範囲において、給与の問題であるとかあるいは人事の問題であるとか、直接労働条件関係する問題についてそれぞれ話し合いをして結論を導き出し、それを相互実施するということになっておるわけですが、同じ職場に働いているこれらの職員については、これが適用をされないというような事態が出て参ってくるわけです。特に新潟県の場合に、県の職員組合と同県の知事との間で取りきめた文協定が、これらの職員に適用されるかどうかというような問題で、社会保険の問題で非常にトラブルが起きるというような事態がやはり出ているわけです。やはりわれわれとしては同一の職員団体の中に、同一の知事の指揮監督下にある人たちについては、同じ知事の間で協定をされた協定については実施をしていかなければ、職場におけるところの勤務の均衡がとれない、こういう角度でやはりこういう問題を解決していくためにも、身分の移管と行政の地方委譲とがどうしても必要だ、こういうような立場に立っておるわけです。  さらにこの問題とどうしても不可分の関係で、職場の中でいつも問題になっている問題は、地方自治法附則第八条の地方事務官と同じ職場で働いている労働事務官が実は存在するという事実です。これは職業安定法の関係できめられていることではあるのですが、同じ職業安定所の中には、地方事務官と労働事務官というものが競合している。また職業安定行政の中には、そのほかに都道府県の職員というものが含まれて事務事業実施に当たっている。そういうような関係で、われわれとしてはこれらの職員の身分の移管と同時に、職業安定機関に従事する職員の身分もやはり地方に移管をしてもらわないと、職場におけるところのアンバランスというものはなくならない、こういう工合に考えているわけです。特に東京都の場合に職業安定行政の面から失業対策事業を取り上げてみますと、失業対策事業実施する場合には、都単独の失業対策事業実施をやはりこの職業安定所の下にありまする労働出張所で実施をするというような姿をとっておりまするので、国の機関が都の単独の事業もあわせ実施をするというような事態が出てきているわけです。従いまして、ここでは都の職員が第一線に立って働いているという状態が出て参りますから、都の職員と、これらの職業安定行政に従事する職員との間では、日々給与なり労働条件などについての不均衡というものが目につく、そういうような意味で、こういう点も職員の労働意欲を喪失する大きな原因になっているわけです。そういうような意味合いからも、あわせてこの問題についての解決も、お願いをいたしたい、そういう工合にわれわれの方では思っておるわけです。
  160. 永山忠則

    永山委員長 以上で意見の開陳は終わりました。     —————————————
  161. 永山忠則

    永山委員長 参考人に対する質疑を許します。滝井義高君。
  162. 滝井義高

    ○滝井委員 今鈴木さんと渡辺さんから、社会保険関係職員の身分に関する問題について貴重な御意見を述べていただきましたが、一、二の点をお二人の方からお聞かせ願いたいと思うのです。それは御存じの通り最近における地方自治体の行政の中で一番むずかしい行政は、日雇い労働者を中心とする雇用の問題と、国民健康保険をいかに赤字なく住民の満足いくような姿で円滑に実施できるかということが、いわば公選の知事なり市町村長の成績を示すバロメーターになっているといわれるくらいに重要な問題になっておると私は心得ております。すなわち医療保障と所得保障の面、それから雇用の面という二つの行政というものが、その行政を行なう職員が一部は国の職員であり、一部は地方自治体の職員である、そしてそれらのものが相混雑をして行政を推進している、そこから単なる日常のいろいろの問題が起こってくるばかりでなくして、全国至るところの厚生省の保険局のいわば所管下にある各県の民生部の保険課、東京都でいえば保険部ですが、そういうところに汚職がちょいちょいと起こってくるということは、やはり何かそこに大きな機構上の問題、いわば鈴木さんからも御説明いただきました人事なり予算なり組織というようなものもひっくるめた制度自体の機構上の問題というものが何か一つの原因になっているという暗い影があるような感じがするわけです。鈴木さんはいわば自治庁の生き字引といわれるくらいに地方自治法には非常に詳しい方でございますが、東京都に行かれて、自分でいろいろ立案された法律を今度は東知事のふところ刀になってみずから実践する立場にあるわけですが、その場合に鈴木さんが当時地方自治法の立案に参画をされ、あるいはみずから主導権をとってお作りになった地方自治法の附則八条の、これらの事務に従事する都道府県の職員は当分の間これを官吏とすると、いう「当分の間」のことなんです。これはさいぜんの御意見の中では官吏、公吏というものを一本化した官公吏法というようなものが制定されるという考えを持っておったのだというような御意見がちょっとあったのですが、これは現在これらの職員が都道府県の職員であるという前提に立っておると思うのです。これらの事務に従事する都道府県の職員はと、こうなっておるのですから、都道府県の職員である、しかし何か機構上その他の問題があって、これは当分の間官吏、国家公務員にするのだ、こういうことになっていると思うのです。これは相当長い聞こういう姿できておるのですが、これを立案された当時のいきさつがおわかりになっておれば御説明願いたいと思うのです。そしてまたそれが当分の間といっておったものが、なぜ非常に長期にわたって地方自治体の職員となり得ないのか。鈴木さんはこの間から副知事になられたのですが、それまでは自治庁の次官として自治行政を主宰される立場にあったのですから、自治庁当時の事情もおわかりかと思うのですが、そこらのところもおわかりになっておれば少し詳細に御説明いただければけっこうだと思います。
  163. 鈴木俊一

    ○鈴木参考人 地方自治法の附則八条の関係についての御質問でございます。先ほどもちょっと申し上げましたように、またただいま御指摘がございましたように、「当分の間、なお、これを官吏とする。」しかも主語は御指摘のように「都道府県の職員っは、」というふうになっておるわけでございます。従ってこれは附則に書いた関係ももちろんそうでございますが、あくまでも経過的な措置として、本来これは当然都道府県の職員になすべきものであるけれども、従来の経緯から申して直ちに府県の職員にできないから、これを当分の間なお一応官吏としておくというのが附則八条の規定でございます、たしかこのいま一つ前の附則七条には、今は消えておりますが、警察についても、なお従前の例によるというようなことで、地方自治法が施行になりましたのは二十二年の五月三日でありますが、警察は二十三年の三月七日から国家地方警察と自治体警察に切りかわったのでございます。それまでの間は従来通りの警察が残っておったのでございますが、それもやはり附則のいま一つ前の条文でこれを残しておく形をとったわけでございまして、それらの関係を見ましてもおわかりのように、あくまでも経過的な措置ということであったわけでございます。そして政令で定めます場合におきましても、地方自治法施行令という一般的な政令にこの関係の規定を書かないで、特に地方自治法施行規程という経近規定の政令の中に書き上げておるのも、全くそういう趣旨にいずるものでございます。なお今日は先ほど申し上げましたような保険関係職員と職業安定関係職員、いま一つ道路運送関係のものがあとで加わってございますが、この三つの系統しかないのでございますけれども、当初はなお北海道の拓殖関係仕事に従事しております職員を国家公務員にしておりまして、ここに指定をしておったわけでありますし、また教員も地方教官ということで、その後教育委員会法が制定せられ、教育公務員特例法が施行になりますまでは、やはりこの根拠によりまして官吏ということになっておったわけでございます。従って残りました仕事もだんだん消えていって、しまいには全部都道府県の職員にするという前提であったわけでございますが、今日なお残っておりますのは、当時たとえば職業安定行政につきましては、労働省との間のいろいろな話し合いもございましたが、同時に司令部側の意向もいろいろあったわけでございます。また保険につきましては、社会保険として全国一体のプールの制度にしておくことが必要だというような実質的な理由を強調せられまして、今日に至るまでこのままになってきておるわけでございます。しかし反面、たとえば建築基準に関する仕事でありますとか、あるいは衛生警察に関する仕事でありますとかいったようなもの、かつては警察が直接やっておりまして、一番国家権力の強い立場でこれを処理しておったわけでございますが、そういうようなものも今日ではすべて一般の職員になっておるわけでございます。そういうものに比較いたしまして、保険行政だけは別であるという考え方が先になりまして今日このようなものとして残っておるのが今までの経緯だろうと考えております。
  164. 滝井義高

    ○滝井委員 この保険行政だけが別であるということで、地方自治法附則の八条で当分の間官吏とするということで残っている。ところが現在それが国のものになるのか地方になるのか、とにかく身分が一元化しにくい、たとえば地方自治体の東京部が要望しておるように、地方自治体の職員として一本化ができないというその隘路、これは一体どこにあるのでしょうか。
  165. 鈴木俊一

    ○鈴木参考人 この保険につきましては、たしか社会会保障制度審議会の方の答申の中にも、社会保険についてはこれをもっと国が一本で、全体を一つのプールの中で動かすというよりも、実際仕事一つの区切りとして担当しておる都道府県にもっと責任を持たして、都道府県をむしろ経営主体にして、全国的に料率その他もちろん統一をするが、全体の調整のためのプールを平衡勘定といいますか、そういうものを国の段階で作って、そうしてこれを運用していけば、これはできないことはないじゃないか、こういう趣旨の答申もあったかと記憶しております。これは私ども社会保障制度審議会においてはそういうような意見を求められて、何らかそういうようなことが考えられないだろうかということを申したような記憶もございますが、そういうことも話の問題を詰めて参りますれば一つ考え方と存じまするが、しかしこれに対してやはり厚生省とされましては従来とも強く反対をし、現在の建前を堅持したい、こういうことで今日に至っているわけであります。
  166. 滝井義高

    ○滝井委員 保険局長においでいただいておりますので、政府の方の御意見をこの機会にお聞かせ願いたいと思うのですが、今鈴木さんなり渡辺さんから、現在問題になっている社会保険関係職員の身分に関していろいろ御意見の開陳があったのですが、厚生省としてどうしても附則八条のような姿に職員を置いておかなければならぬという理由、それは一体どういう理由があるからこういう姿にしておかなければならぬのかというその理由を、一つおわかりになっておればお示し願いたいと思います。
  167. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 先ほど来いろいろ両参考人からお話がございました。御指摘の点は確かに私どもも今日問題の点であろうと思うのでありますが、このように社会保険の面だけで私申し上げますれば、国家公務員という身分においてこれを全部一括に運営する、あるいはこれを全部地方公務員という身分において運営する、その二つに截然と分離できない、いわばその中間的な形で今日運営してきているというところに、やはりこれををどうしたらいいかということについての悩みと申しますか、いろいろ問題点が深いということが言えるのではないかと思うのでございます。ただいまお尋ねの、この当分の間国家公務員でやっていくという点につきましては、鈴木参考人からその経緯等についてはお話があったのでありますが、やはり社会保険行政の仕事は私どもといたしましては、もろもろの国家の事務というような中でもやはり一番その色彩の強いものではあろう。つまり、全国的視野において、また全国的な画一性を保持してこれが運営されねばならない。そういう面から申しますれば、最もその国家的な色彩の強い面であろうかというふうに考えておるわけです。これを府県に一本化するということにつきましては、やはり社会保障制度審議会、当時私もそこに関係しておったのでありまするが、そこでも大へんいろいろ議論が出ました。確かに一部の方々は、これは思い切って府県管掌にやったらどうだろうという御意見も出たのでありまするが、しかし最終的には、社会保障制度審議会の医療保障制度に関する勧告といたしましては、そういうことをはっきりと打ち出すということはなくして、現在の政府管掌についていろいろ検討していけというようなことになっておるわけでありまして、これを府県管掌に移すということになりますると、全国的に見ますると、いろいろ県によって格差がございます。たとえばちょっと三十三年度の政府管掌健康保険の保険収支だけを取り上げて申し上げましても、東京都においては保険料収入が約百六十六億、保険料の支出が百十八億であります。その差約四十七、八億というものは、結局東京都の管内における事業主としては出す方が多い。つまり国の立場から言えば収入が多い。それがよその府県の給付の方に回っていく。同様にいたしまして、たとえば大阪などにおきましても、やはり収入の方が支出よりも多くて、つまりそれだけの差が他の府県の方の給付にも回っていく。もちろん今度は逆にいなかの県になりますれば、なかなか事業所その他の数も少ないし、また賃金が低いというようなことからいたしまして、保険料全体は、今度はその県に関する給付費を十分まかなうだけのものが得られないというようなところがもちろん反対側にあるわけでございますが、そういうふうにいたしまして、それぞれ各府県に格差がありまするものを、国全体が社会保障の最終責任という立場から、これを画一的な方針のもとに運営して参ります場合において、当然やはりそこに勤務いたしまする職員の点につきましても、やはりこれは国の公務員という資格において運営する方が、今日の段階ではどうしてもいたし方ないことであろうというふうに私どもは考えておるわけであります。もちろんそういうプラスの面のほかに、またそれぞれ先ほど来御指摘のような因った事情も出て参ろうかと思うのでありまして、しかし、これを国家公務員に全部判然と切りかえる、あるいは都道府県職員に切りかえてしまうというような形では、私はなかなか全般的な改善というわけには参らないのではないだろうか。こういう点につきましては先ほども鈴木参考人の方から、一つの提案のような意見、昔あった、つまり官吏、公吏を通じた官公吏法というようなものを作るべきではないかという御意見もあったというお話もございました。私どももそういうような点についてもう少し検討を国といたしてもする、また社会保険の運営についても、あるいはわれわれももっとよい知恵が出るかもしれません。これは社会保障制度全般に通ずる問題として検討して参りたいというふうに存ずるのでございまして、これはなかなか今日直ちにどうというわけにいかない問題であろうかと実は存じておる次第でございます。
  168. 滝井義高

    ○滝井委員 今太宰さんの方から、社会保障というものはやはり国が責任持たなければならぬという意味のことが一つ、もう一つは、各都道府県で所得の格差と申しますか、貧富の格差というものがある、従ってこれはやはり国が握って、全国的な調整をやらなければいかぬ。東京のようなところをそのままにしておくと、四十七、八億の金をよそに拠出しておるのが、できないようになるというような意味、そのほかに人事の交流の問題なんかもあると思います。そういうことが結局今のような姿になっておるのだ、こういう意見のように拝聴いたしました。この社会保険の機構と申しますか、歴史をちょっと見てみますと、なかなかおもしろい変遷をとっておるようであります。大正十五年に健康保険事業実施するために、国の出先機関として健康保険署が全国的にできたようである。それからその後、それが今度はやめになって、保険行政が警察部の中に移管をされております。そして警察部で健康保険課になった。さらにそれが今度、は昭和十七年、戦争がたけなわになるころになりますと、社会保険の制定、つまり労働年金、後の厚生年金の制定に伴って名称を今度は保険課に改めた。それから終戦になりますと、今度はそれが警察部から内政部に移管をされておる。東京都では勤労部になっておるようであります、それでそのときになると身分の名称は、これは事務官で警視庁属になっておる。それから東京都事務官に改まった。それから二十一年くらいになると、内政部から離れて教育民生部に所属することになった。そして二十二年に地方自治法の公布によって民生部、東京都でいえば民生局ですかに帰属することになって、身分が東京都事務官から地方事務官に変わって今日に至るという、こういう変遷をとっておるのです。こういういわゆる国家公務員と地方公務員とが雑居する形というのは、これは自治法改正以来のことであって、いわば鈴木さんが御指摘になったように、そこにその当時の意思としては、一本の何か法律で将来はまとめるという意欲があったわけです。ところがそれが現在までまとめられないという隘路というものは、どうもはっきりしませんが、結局そういうことにならないというのは、今厚生省のお述べになったように、社会保障は国で責任を持たなければならぬ、それから有無相通ずることが必要だ、これは人事面と予算面の両方で有無相通ずるということになるのでしょうが、そういう形できておるのですが、そういうことになると、実は非常に疑問が起こってくるのです。どういう疑問が起こってくるかというと、今の日本の社会保障というものは国の責任でやらなければならぬというのだが、一体国が責任を持って全部おやりになっておるのだろうかということです。皆保険政策をおやりになる場合、健康保険については、国は責任を持った形はとっておるけれども、ことしの予算を見ると、一兆五千六百九十六億の予算の中で三百六十億円で、実際に国が責任を持っておるのは、健康保険はたった五億円、それから事務費を幾分出している。それから国民健康保険は、半額は患者さんが持つ。それから保険料も被保険者が払う。そうすると国は五分の調整交付金と、二割程度しか持っておらぬということになりますと、最終的には国が責任を持っているという形は出ていないわけです。ばかりでなくて、国民健康保険自体を見ると、運営の主体というものは国ではないわけです。これは市町村です。それからその国民健康保険の部面については、都道府県においては、なるほど保険課長国民健康保険の監督はしておるようでありますけれども、実質的な運営の主体ではないのです。ただ監督を何となくしている。そしてそこに県の職員、福岡県あたりだったらたとえば健展保険の係長がおるのです。まだ健康保険の課長にはなってないと思います。そういう形で、国民健康保険というものはなるほど国の官吏である保険課長の監督下にはあるけれども、個々の部面については知事の発言権が非常に強くなってきておるわけです。同じ保険課の中で、健康保険の行政については知事の発言は弱いけれども、国民健康保険の行政については知事の発言は非常に強い。そしてまたこれに対して補助金を出しておれば、その補助金を出した部面についておそらく監査権があると思います。ところが健康保険については、なるほど監督権は持っておるが、県知事は監査をやってないと思います。こういうように同じ保険の内部でも、国が責任を持っておる保険にこれだけの違いがある。それから今度は年金は、これまた健康保険とは少し違っておる。なるほど国が管掌しておる国民年金であるけれども、厚生年金とはまた違っておる。国民年金というものは健康保険や厚生年金とは違った形で運用されておる、こういう姿が出ておるわけですよ。従って社会保障は国の責任において行なうというならば、もっと国が予算を出して、そうして一貫をしてその役人の身分から何から全部国で責任を持つということにするも一つの方法であります。もう一つは、たとえば都道府県に全部おまかせをして、そうして国が企画の大綱、監督の大綱、資金の運営の大綱、いわゆる今言ったプールみたいなことをやる、平衡交付金の役割というものを国でやって大綱的な監督をやっていくということも一つの方法だと思います。この方法は大ざっぱに言ったら、全部国が責任を持った形で国がとってしまうか、それとも大綱的な監督についてやるか、今のような中途半端なことで行くか、今のような中途半端なことでは行政がやりにくいということが、その従事する職員なり自治体の首長の方から、あるいは議会から出てきておるとすれば、これは検討しなければならぬ問題だと思います。これが国の責任に関する点に対する反論というか疑問点です。  それから、府県について貧富の差があるという議論は当たらないんですよ。すでに日本のすべての行政についてそれが現われておる。あに社会保険行政のみならんや。東京都の都民の収入と鹿児島県民の収入とは三対一です。鹿児島は三分の一しかない。そうして社会福祉施設の普及の度合いを見たら鹿児島は実に貧弱なものです。こういうように、もはや保険行政だけでなくして、すべての日本の行政についてアンバランスが都市と農村、あるいは富裕県と貧弱県との間に出てきておる。そうしてこれはわずかな交付税、交付金ではいかんともなしがたいところにきておることは御存じの通りであります。そうしてみますと、これはどうも府県の貧富の差ということは問題にならないと思います。それで大綱的なものさえ握っておれば、たとえば東京都の集めた保険料というものが四十億余れば、余った分については拠出してもらって、全国的な大綱でプールしていったらいいのですから、この問題は身分とは関係がないところで解決できると思います。それから都道府県同士の人事交流というものは上の方の幹部以外はやっていないわけですから、これは大して問題はないと思います。むしろベース・アップが順調に行なわれて、そうして掃除婦であっても長く勤めて勤勉ならば給料が上がるという給与体系の問題を解決すれば、そう人事の交流はなくてもいいと思います。そういう点でどうも今の保険局の太宰さんの述べられた点だけでは、戦後十四、五年も今のような姿でいくということについては問題があると思います。幸いに昭和三十六年四月一日から拠出制の年金が行なわれるし、国民皆保険で全国にわたって国民健康保険が普及されていくわけですから、ここらあたりでやはり根本的に社会保障制度のあり方、そしてそれに伴う行政機構のあり方について反省をし、検討をする時期がきておると思うのです。こういう点で、私はそういう感じがするのですが、太宰局長の御意見、それから今まで自治庁でいろいろ地方行政をごらんになり、今度はみずから自治行政を実践する立場にお入りになった鈴木さんの実感をもあわせてお聞かせ願いたいと思うのです。
  169. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 便宜私から先にお答えいたします。先ほど私が社会保障に国が責任を持っていると言ったことは、何も私が初めてここで申し上げるのじゃなしに、間々使われることであります。それは必ずしも一切がっさい、人間から経費までを全部国が持つんだ、医療保障の面に限局していうならば、医療国営ということになりますが、そうでなければ国が社会保障の責任を持てないということにはならないと思うのです。これは最終責任という意味で、ただこういう社会保障制度を企画し、作り、ある場合においては、その足りない場合に国がてこ入れもするというようなことにして、とにかく国民の福祉を増進していく最終の責任を国がとって、その立場において企画をしていくということを普通言っているのじゃなかろうかと私は思うのです。その点からいきますと、御指摘のように、運営主体が国である場合もございましょうし、またそれぞれの公共団体、そしてそれに対して国が監督をするという立場のものも、それは私はいろいろあると思うのであります。ただ現状から申しますれば、健康保険の分につきましては、中小企業の面は一括政府が管掌しております。今日の段階においては、私どもはこれを直ちに各府県に分割するということについてはまだ踏み切れないのでございまして、そういう点からいたしまして、今日の段階で国が政府管掌としてこれを運営しております限りにおいては、その事業がうまくいくためにはそこに働いている職員の人についても、これはやはり国の職員という立場においてやる方が何ごとによらず最もベターじゃなかろうか、こういうふうに考えておるわけであります。  貧富の差の点については、もちろんそれぞれ地域々々によって、あえて保険に関するのみならず、他の面においていろいろな格差がございます。生活程度において、またいろいろな文明の機関を利用する度合いにおいても差があることは事実でございます。しかし医療に関する限り、政府がこういうふうにいたすということになりますれば、これはやはり被用者保険の場合は事業所があればみんなそこから一つの画一的なものさしによって保険料を出していただく。そしてそれによって得たもので、それぞれの人が病気になった場合にやはり一つの規格に基づいてその給付を見る、こういう建前でございまして、その場合において先ほどちょっと例にあげましたように、それぞれの県においてかりに被保険者の方方が全面的に協力しようといたしましても、それぞれの県によってかくのごとき差が出ることはこれはいたし方ないのであります。ただしそれが府県の管掌にこのまままかせるということになりますると、こういう例を今私引くのはちょっといささか軽率ということに相なるかもしれませんが、その点はお許し願うとして、いろいろ心配することがまた何かと出て参る。たとえば保険料はとっても、これがよその府県までいくんだというようなことになりました場合に、はたして従来のように自分のところが持ち出しになっても十分に出すとかいうようなことに期待がかけられるかどうか、こういう点については、私どもはこんなことはあまり大きな声で言うべきじゃない、むしろわれわれが内部でもってそういうおそれがあるかないかは自分たち考えて、そしてそういうことにならないような制度、仕組みを考えていくべきだというふうに考えて、そういう点からいたしましても、府県管掌という面については私どもは今にわかには踏み切れない、かように考えておるわけであります。  人事の交流の面でございますが、これはもちろん全部の職員を一括動かすというようなことはございませんが、しかし私どもといたしましては、やはり国が先ほどのように運営しておりまするからには、それぞれの一面で人事の交流というものがあって、画一的、統一した方針のもとに運営されることを保証したい、かように考えておるのであります。その対象になる職員は、中堅以上の職員ということに実際は相なろうかと思いますけれども、しかし国がそういう行政をになっておるからと言うならば、そういう身分を府県だけに固定しないで、全国的視野で考慮するという道が開かれてしかるべきでなかろうか。身分だけをその府県に固定するということは、やはり仕事自体もその府県に固定するような方向へ進むおそれも生じて参ろうか、かように考えておる次第であります。
  170. 鈴木俊一

    ○鈴木参考人 ただいまの社会保険の事業の配分をどうするか、またそれに従事する職員をどうするかというような問題についてのお尋ねでございますが、これは社会保険制度を国の新しい憲法の目ざすところの一つ社会保障制度として完全にやっていく、それが全体の国民のために最もいい仕組みであるということが、何と申しましても究極のねらいであろうと存じます。そういう見地から申しまして、今太宰さんの言われましたことは、太宰さんの方のお立場からそういうふうな御心配があって、どうしても一元的にやる方がよろしい、地方に自主性を持たせることについてもある程度考えられるが、にわかに踏み切れないという御心配はお立場として無理からぬことと存じますが、私ども地方自治の関係者の立場から申しますると、一番理想は先ほど申し上げましたような、都議会の意見書にもございますように、国として最終責任者という立場においてコントロールしなければどうしても心配だという点はできるだけコントロールを確保する方法を講ぜられて、たとえば今の会計の調整の問題にいたしましても、あるいは最小限度の予算的な措置の問題にいたしましても、人事の問題等につきましても、ある程度の留保をされた上で、できますならば地方に移譲をしていただく。そしてほんとうに地方に責任を持たして組織運営の単位に今していただくということが一番望ましいと考えるわけであります。しかし一番徹底したやり方は、全部国の機関でやるといういき方もあるのでございましょうが、それより現在の制度がとにかく知事のもとに入れてある仕組み、身分は公務員である、組織は都道府県の組織であるというような中途半端な仕組みになっているわけでございまして、そういう意味でも確かに純粋の国家機関でやるよりは、やや地方に片寄せたいき方でございますが、しかしこういういき方より、いま一つ中間的ないき方としては、今都道府県の仕事の多くはそういう格好でございますが、いわゆる機関委任という仕事のやり方が一つあるわけであります。これは国の仕事ではあるけれども、しかしそれを処理する者は都道府県の職員である。百二十余りの仕事は今都道府県でそういう姿でやっているわけでございまして、そういうような仕組みでありますならば、身分は都道府県の職員である、しかし仕事は国の仕事であるから厚生大臣が十分指揮監督ができるというようなやり方もあるのではないかと思うのであります。もしも現在のような状態で、国の公務員と府県の公務員と両方を併用した形で仕事をやっていく、こういうようなことでございまするならば、やはり先ほど申しましたような国家公務員と地方公務員のいわば交渉法に関するような法律といいますか、そういうものでも作っていただいて、そういう職場、府県のような職場で働く者については、やっぱり普通の国家公務員と若干違った取り扱いができる。それはやはり府県の組織との関連において調節ができるというようなことを最小限度考えていただきませんというと、どうもこれはほんとうに仕事のやりやすい体制ではない、また職員の士気を鼓舞し得る体制ではないと思うわけでございまして、現状のままで雑然と区別した姿のものを恒久体制としておくのはいかがであろうか。やり方はいろいろあるかもしれませんが、今のような官吏、公吏両方併用でいくのならば、ちょうど交渉に関するような法律で調整をしてもらう必要があるのではないかと思うのであります。国家公務員法も、おそらくこういうような場所で働く国家公務員を建前として考えて規定されたのではなくて、純粋の国家組織の中において、本部あるいは出先において働く者を建前として規定されておるはずでございますから、どうも府県で、地方公務員の全体おりまする組織の中で働く国家公務員、こういう立場からの規定の読み方をいたしますると、いろいろな点で無理があるわけでございまして、やはりこれはそういう今のような形を将来とも残すというのならば、何らか調整を要するものではないか。とにかく今のままではどうしても因る点がございまして、その因る点は全部知事にしわ寄せされて、知事が現在の地方自治あるいは地方財政等に関するいろいろな法規にあるいはこれは抵触するのではないだろうかということを心配しながら調節をしていかなければならないという形になっておるわけでありまして、そういう点は非常に今やりにくいとも考えておるわけでございます。
  171. 滝井義高

    ○滝井委員 お二人の方の御意見を聞かしていただきますと、第一線における鈴木さんの御意見は、やはり今のままでは問題があるということがはっきりしたし、厚生省側はどうも今のままでいいんだという御意見でございます。これは両者ある程度平行線をたどっておるようでありますが、なにせこれは問題があるということは間違いのない点だと思うのです。そこで一番端的に、職員の側にも、それから理事者側にも、太宰さんの方にもわかる、集中的に現われる点は、やはり給与の点だと思うのです。同一労働は同一賃金でなくてはならぬ。同じ職場で同じ仕事をやっておるにもかかわらず、給料が違うということがあっては困ると思うのですが、これは太宰さんの方の実感、それから鈴木さんの方の状態、渡辺さんの方の状態で、一体現状を全国的に——渡辺さんの方は全国おわかりかどうかわかりませんが、東京都の現状で同じであるか違うかということ、それから太宰さんの方は全国的に見てそれぞれ官、公両方が同じところで働いておって、これは全国みんな給料が同じ状態で同じ仕事をしているかどうか。これは全国的な状態を太宰さんの方から述べていただくし、東京都の状態は、同じであるかないかということだけでけっこうです。あるとすればどれくらいの差があるかということだけでけっこうですが、これをちょっと述べていただきたいと思います。
  172. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 全国的なあれと申しましても、各府県で実態を発表しているとも限りませんものですから、なかなか私の方で判然としたところはつかまらないのでございますが、全体の私どもの感じとして出し上げることをお許しいただくといたしますと、相当数の府県において国家公務員の給与より幾ばくか高いというところがあるように考えております。それにつきましては、その間をどうして調整するか、これは国家公務員の方は人事院の一つのあれ、及び国の予算できまっております。府県の方は、それ以外に組合との交渉とかいうようなものも加わって参っておる県もあろうかと思います。その他従来の経緯というものもあろうかと思います。この違いは、実際同じところに働いております職員立場考えてみますと、私どももほんとうに頭を悩ましておることであることは事実であります。ただ、その食い違いが合法的な面でもってある程度カバーできる程度でございますればいいのでありますが、やはりこれがだんだん差がひどくなってくると、そこを何とかしなければならぬ。それぞれの府県の御好意なり何なりというようなもので、今日どうにかやってきている面もありますけれども、これをだんだん詰めて参りますとやはり問題であろう。なかなかそれは簡単な問題ではないというようなところもあろうかと思います。
  173. 滝井義高

    ○滝井委員 低いところもありますか。
  174. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 国家公務員のあれより低いというところがどれぐらいあるか、ちょっと私も存じておりません。とんとんぐらいのところが相当あるかと思います。
  175. 鈴木俊一

    ○鈴木参考人 都の場合に、都におる国の公務員と都の職員との間にどのぐらいの給与差があるか、今私も的確な資料を持っておりませんが、若干初任給につきまして、一号ないし二号程度の開きがあると思います。これは先ほども御指摘がございましたが、職員の給与体系も、東京都における民間給与との関係を考慮して定めることになっておりますので、民間給与との関係上、そういうような開きはやむを得ないかと思いますが、なおいま一つ東京都におきまする一つの特殊事情といたしましては、従来東京市あるいは東京府で同じ仕事に従事しておりながら、今日は、一方は国家公務員として保険の仕事をやっており、一方はその他の局の仕事をやっているというようなことのために、一緒に入った人の給与が違ってしまう、こういうようなことが若干あるわけでざごいまして、こういうものは、先ほどお話のあった同一労働同一賃金ではなくて、さらにその上に同一の育ちであるわけでございますけれども、それで給与の差が出るということはどうも好ましくない。そこで私ども理事者といたしましても、いろいろ心配しておる点でございます。
  176. 大原亨

    ○大原委員 関連して。今の点はあとでまた質問いたしますが、保険局長にお尋ねしたいのです。私は、同じ職場で働いている人の給与、待遇に格差ができておる原因には二つあると思うのです。その第一は、御承知のように本省の分は、本省関係のものと出先の地方ブロックのものと、府県単位の官庁とその県内出張所と、こういうふうに、大蔵省が予算査定をいたします際には、超過勤務手当から旅費に至るまで、あるいは級別定員にいたしましても、それぞれずっと差があるわけです。そういたしますと、末端へ行くほど不利なわけですよ。平均賃金から言いましても、職階制から言いましても、級別定員から言いましても、不利なわけです。これがやはり都道府県自体で——都道府県におきましては地元官庁になりますが、もちろん出先もございますけれども、そういうところの給与体系とは違う。というのは、地方公務員の給与というのは国の例による、こういうことになっておるものだから、そこでやはり実質上の格差が出てくる。これは事務費でもあるいは超過勤務手当でも同じですよ。大蔵省はいろいろな問題で追究してくると、やはり末端へ行くほど冷遇されているのですよ。予算が少ないのです。この問題が一つ。  それから東京都の場合には、今副知事がおっしゃったように、東京都の給与というものは、東京都の人事委員会というのがあって、これが民間賃金をも参照いたして勧告をやられるわけですよ。そこで、やはり全国的に見ましたならば、東京都みたいなところはある程度高いと思うのですよ。これは今のお話のように当然だと思うのです。そういう機構の面あるいは職階、級別定員の面からいっても、あるいは予算の分配の面からいっても不利である上に、たとえば東京都は、やはりそういう東京部内の給与ベースを参酌して賃金をきめる当然のシステムになっているのです。これは東京都で仕事をしているのだから、本省並みに超過勤務なんか出す。それ以上忙しいわけだから、それは当然です。そういたしますと二つの面から矛盾が出る。保険局長はいろいろ言われるけれども、そういう矛盾を放任しておいて、職場の能率を上げるとか、民主化するとか、あるいは責任体制をとれとかいったって、私はむずかしいと思うのです。しかも、監督上の面については盲点がある。知事は監督できないわけです。この問題は、私の質問のときにまた申し上げます。  大坪委員も知っておられると思うが、橋本厚生大臣のときに林天皇事件というのがあった。これは実際上あなたは局長でなかったから言うのだけれども、本省の保険局長も林天皇の下の局長である、そういうふうに一部ではいわれたことがある。そういうふうに絶大な権限を持っている。ついきのうだったか、新聞をちょっと見たら、まだ問題が解決していないということが出ておりました。その後もそういう盲点に乗じていろいろな問題が出ている。こういう問題点もひそんだ形でたくさんある。長野県にもあると聞いておる。その点についても、当時厚生大臣は、この問題は監督その他の面において一元化するように善処するということをかたく約束しているのです。その議事録もあります。しかし、実際上どういう措置をとっておるのか、私はやはり問題があると思う。これは責任のなすり合いみたいになっている。しかも、待遇面においても格差がある。今待遇の格差について滝井委員が御質問になっているから、私は必然的にそういう格差が出てくる原因を申し上げておるのです。そのことは非常に大切な点ですよ。職場の責任体制とか、民主化とか、そういう面は大切な点ですよ。だから、その盲点をほうっておいた上に、さらに待遇面においても矛盾があるということでは、私は決していい行政はできないと思うのです。事務の面については、やはり今副知事のお話のように、国の事務といたしましても、国が監督するような方法もあるし、会計上の調整ができるような方法もあるわけですから、これは、どういう面から考えても、身分についても職制についても一元化する必要がある。東京都の機構を見てみますと、局長さんが都の吏員、その上の副知事さんが都の吏員、知事ももちろん公選の吏員で、特別職でしょう。副知事も特別職だ。部長の中には都の吏員と地方の事務官がある。しかも、その職員の中にも、都の吏員もあれば何もある。そういうようなことでばらばらでしょう。そんなことでは、職場のチーム・ワークとか、あるいは責任体制とか、そういうものをとれということが無理だと思うのです。その点について、厚生省あるいは労働省から、ある意味においては、地方へ出していって、島流しのようなことも含めていろいろな人事上の配慮をすることも、役所のなわ張りからいえば既得権みたいになっているかもしらぬ。そういうことは払拭して、やはり地方自治についてはそういう問題も勘案して一元化すべきだと思う。私は給与の面だけを重点にとって質問するのですけれども、そうでしょう。その点は不合理じゃないですか。局長、いかがです。
  177. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 ただいまいろいろとお話がございましたが、給与の面で国家公務員のべースと東京都なら東京都の職員のべースとが必ずしも一つでないということがあると思います。そこが、先ほど滝井委員の御指摘のように、その給与の面の差があるということについて、何とかすべきではないかというようなお話も出てくることでもありましょうし、私どももそれがあってしかるべきだとは思っておらぬのです。ただ今日の制度のもとにおきましてはどうしてもそういうことになる。もちろん各府県の中には、大府県のように、府県の方がべースが高いところばかりではないと思う。私詳細に具体的なものを知りませんが、貧弱な県におきましては、あるいは国家公務員よりもつらいということもあろうと思います。それはこまかい点はちょっと申し上げかねるのでありますが、そういうようにばらばらになっておると思います。ということは、必ずしもそれ自体がいいとは私ども思わないのでありますが、これをどういう形で是正するかということになりますとなかなか問題がございまして、その是正のために本筋の業務自体が、国家的な視野において行なわれる業務であるということと、これとどう調整していくかということになるとなかなか問題がございまして、そこで、先ほど来御指摘のように、今日の段階ではそれを簡単にどうこうするということには相ならぬと思います。それは先ほど鈴木参考人からも一つの建設的な御意見がどこかにあったという御披露がありました。こういうような面に考えてみましても、これは相当大きな視野で、政府部内といたしましても、私どもだけではいけない、やはり人事院当局なり何なりというものにもよく考えていただくという手を打って参らねばならぬ。かような現状であるということを申し上げた次第でございます。
  178. 大原亨

    ○大原委員 私は関連ですから簡単に言いますが、この点は局長答えて下さい。今申しあげたように、国家公務員の給与水準というものは、人事院が勧告しまして、その配分、職階その他級別定員についても人事院規則でやっていた。今度それは総理府の人事局にぶんどろうというのですけれども、しかし、それは、全国の民間の賃金一つの基礎になっていて国家公務員のベースがきまっておるのです。そうでしょう。それから国の公務員の例によって、地方公務員法に基づいて地方公務員の給与ベースがきまるのです。だから基本的には国家公務員よりも少ないということはないのです。地方公務員にはそれ以下のところはないのです。ただし、ないけれども、国家公務員よりも高いものは、東京都のように、東京都内の民間賃金が高いからあるのです。それは、東京都には人事委員会があるのですから、民間賃金を勘案してやりますから、平均賃金が他の農村地帯があるところより高い。これは当然のことですけれども、それともう一つは、予算の配分というものが中央官庁から末端官庁に行くに従って実情は少なくなっておるのです。私は法務省関係その他についてずっと調べてみたのです。大蔵省もそのことを言っておるのです。超勤手当も実際上の収入になるわけです。そうしてみますと、都道府県や出張所の第一線官庁というものは機構的にも、制度上直そうと思ったって直せないのです。そういう不合理を是正するためには、身分を一元化して、給与についても一元化する以外にないのではないか。そのことは、国の事務の公正な履行、遂行ということについてももちろん考えなければいかぬけれども、こういう点を除いておくと、厳正な監督をしたり、あるいは公平な事務の履行をしたり、あるいは国民にサービスしたりする、そういう基本的な問題になる。というのは、それをやっておる人の人権の問題になって、やっておる人の人権を守るというか、これは組合運動だってそうだけれども、よりよくサービスするということなんです。そういう面からすると、そういう待遇面の矛盾というものは今の制度では払拭できない。基準局とかその他職場が違うところはよいが、同じ職場で、しかも同じことをやっておる。そういう矛盾をそのまま置いておくことはいけない。これは制度上の根本の問題です。保険行政その他の問題について起きておる問題を指摘いたしますけれども、私は全部一律に、今の出張所、たとえば陸運事務所なんかも知事の監督下に身分を設けろというようなことは言わない。私はその点についても若干研究しておるけれども、その点は問題がある。しかし保険行政、職安行政については一元化すべきである。その点については、私が指摘する矛盾があるでしょう。その矛盾があなたは何か簡単に調整できるのだと言っておるが、制度上これはできないのです。制度上できない基本の問題を言っておる。その点についてできる方法があればはっきり言ってもらいたいし、この問題は問題として将来研究しなければならぬというのだったら、その研究をこれからしなければならぬ問題だなというふうに、きょうは率直にお話し願えれば、決して私は言質をとったり、あげ足をとったりするんじゃないのだから、その点は一つそういうつもりで——私が言うようにそういう解決できない矛盾があるでしょう。これは制度上の矛盾ですよ。局長いかがですか。
  179. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 現在の給与の面について、いろいろ私どもも頭を悩ましておる点があるということは先ほど申し上げておるのです。別に今の矛盾を否定しているわけでもございません。また、それを簡単に解決できるとは私は実は申し上げておりません。これはやはりお話のように、やはり制度の基本から出ている問題でありますので、そう簡単にこれの解決はできる問題ではないわけです。これはとにかく保険行政のほかに職安行政、そのほかに税の行政とか、いろいろあると思いますが、そういうものに、全般に通じてこれはやはり考えるべき問題である、かように考えております。もちろんその場合には御指摘のように、給与だけの重要性もありますが、やはり根本の行政という面からの判断も当然ある。彼此全部総合的に判断しなければならぬ、そういうふうに私も考えております。この点は大原委員お話と格別私は違いはあるとは——なかなかそれは問題があるということは率直に申し上げたつもりであります。ただ検討すると申しましても、なかなか総合的なあれになるので、そう簡単な問題ではないということだけは一つ御了承をいただきたい。
  180. 滝井義高

    ○滝井委員 いろいろこれは問題点がある中で、私は特に集中的にわかりやすい給与の問題を出してみたわけです。矛盾がおそらく集中的に現われておるだろうということで出したのですが、さすが太宰さんも頭を悩ましておるということでございますから、従って明らかにこれは現在の社会保険行政、特にその末端機構に問題があるということだけは大体はっきりしたのです。しかも鈴木さんの方からは同一労働同一賃金というほかに、もう一つ同一の育ちでありながら給与は違うんだ、こういう重要な御指摘があったわけです。従って私は、他の問題はもはや指摘するまでもなく、やはり日本の社会保障、特に医療保障をになう末端機構というものは、これは検討しなければならぬ重要な問題を含んでおるということだけははっきりしてきました。  そこでもう一つ、機構上における一番末端の社会保険出張所というのは、これは国の機関ですか、自治体の機関ですか。
  181. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 だんだん詰めて参りますれば、これは地方の機関であるというふうになると思います。
  182. 滝井義高

    ○滝井委員 法律的に一体何なのかということなんです。社会保険出張所だから、地方にあるんだから地方の機関であることはわかるのですが、法律的に言うと、たとえば都道府県の保険課あるいは都の保険部ですか、これは地方自治法の百五十八条で社会保険の事務を行なう局部を明示しておりますから、これは明らかですね、法律的な地位が明らかです。そうすると社会保険出張所のやっている仕事内容を見ますと、これは保険課と同じことをやっておるのですよ。それは現業官庁で、歳入の徴収官も置いておるし、支出については資金の前渡官吏ですか、前渡しをやる官吏も置いておりますね。それから知事にかわって、あそこは多分認可権も持っておると思うのです。そうすると実質的には保険課と変わらぬですよ。ところがこれは、社会保険出張所は地方自治法の百五十八条の中にはどうも入っておらぬようなんですよ。そうすると一体これは何か、幽霊ではないはずなんです。厳として存在をしておりますから幽霊じゃない。そうするとこれは一体何ですか。
  183. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 御承知の通りに今日健康保険や日雇い健保、厚年等の行政の仕事は、それぞれの法律によりまして都道府県知事に機関委任されております。そのうちの会計法関係のものが一応別個に相なっておりますが、あとは都道府県知事に機関委任されておりまして、これは知事の権限になっておるのでありますから、その一部を行なわせるために社会保険出張所を設けておるのであります。ただ都道府県の行政機関を設けるにつきましては、地方自治法の百五十六条でその設置は法律または条例の定めるところとなっておる。その行政機関の位置、名称、管轄区域等は条例または規則で定める、こういうふうに相なっておるのでありますが、社会保険行政はその実態が全国画一的な行政を必要とするという特殊な事情から、この自治法の規定の例外がその施行規程でとられておるのでありまして、その設置については位置、名称等は県の条例とかあるいは規則で定めるのではなしに、厚生大臣が知事の意見を聞いて厚生省の告示で定める、こういう形をとっておるのであります。つまり形式は知事の権限の分掌機関でありますが、具体的な設置については、厚生大臣にその指導権を与えるということによりまして、先ほど来るるお話がありましたところの地方自治の要請と、それから実質上は国の機関的な性格であるということの要請とが、こういう形において一応調整点を見出しておる、こういうような事情でございます。国の機関であるといたしますならば、国家行政組織法によりますれば厚生省がその設置法において地方支分部局として規定をしなければならないので、あります。また自治法の百五十六条の規定によりまして国会の承認を得て設けるということになるのでありますが、今日そういうような立場から国の機関でないということで、こういうような支分部局の規定にも載っておらぬ。またその設置についても国会の承認を得ていない、こういうことにもなっておるわけであります。形式的に申しますれば都道府県の機関である、こういうふうに申し上げております。
  184. 滝井義高

    ○滝井委員 形式的に出しますと都道府県の機関である、こうおっしゃいますが、それだってどうもあまりはっきりしないんですね。どうも今の説明でも私よくわからない、わかったような、わからないような感じがするんですよ。今後社会保険出張所には国民年金の仕事をやらせるわけです。これは非常に重要な仕事です。そうして今度国民年金の仕事をやるために特に予算をとって設けておるわけです。よけい設けるわけですよ。増設するわけです。ところが、そういうどんどん増設をしていって莫大な人間をこの中に吸収して使うのですが、その社会保険出張所の法律上の根拠というものが一体どこにあるのだ。しかも国家行政組織法で国会の承認も得てない。しかし予算は国会の承認を得ていっておるのだといって、形式的に見ると告示できめられてそれは知事の分掌機関であるというような、何かわからぬようなことでは、そこに働く職員も、鈴木さんがさいぜん言ったように士気鼓舞の上からいっても問題だと思うんですよ。だから私は厚生省はすみやかに社会保険出張所の法律上の根拠というものをやはり明らかにする必要があると思うのです。これはいつまでも地方自治法の施行規程という、われわれがたまにしか見ないような規程の片すみに置いておって、そうしてしかも重要な公選知事なりあるいは市町村長の運命を決定するような大事な年金とか保険という仕事をやらしておるわけでしょう。そうしてその法律上の根拠というものはきわめておぼろげな、かげろうのようなものだというのでは困ると思うのですよ。かげろうならばかげろうの立つ根拠をやはりもう少しはっきり足をつけさせてやる必要があると思うのです。だからもう少しこの点を太宰さんにはっきりしてもらう必要があると思う。またこれは鈴木さんの方でもこういうものははっきりする必要があると思うのですが、鈴木さんの方の御意見もあわせてこの機会にお聞かせ願いたいと思うのです。
  185. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 これはなかなか簡単でないということで、おわかりにくいかもしれませんが、法律上の根拠ははっきりしておるわけであります。都道府県の機関である、しかし先ほど言ったような実態がありますので、そこの位置、名称をきめるのは厚生大臣がやっておる、こういうことであります。これは今日の行政の実態からいたしまして、こういう形をとっておるわけでございます。将来行政の実態というようなものが検討されるときになれば、当然その一環としてこれも検討されるかと思いますが、今日私どもはこの方法で当分やっていって差しつかえない、かように考えておるのであります。
  186. 鈴木俊一

    ○鈴木参考人 私もそういう気持でおります。現在の法制の建前では、これは都道府県の機関というふうに当然なる。当然と申すのはなんでありますが、現在の法律上分解して参りますと、そういうふうになると思います。将来の立法論といたしましては、組織に関する自主性と申しますか、これはやはり地方自治という見地から申しますと、長も強く考えなければならない原則一つだ、そういう意味で、もしもこれが都道府県の機関であるということならば、それにふさわしいような制度上の規定改正が行なわれることが望ましいというふうに私は考えております。
  187. 滝井義高

    ○滝井委員 もういいです。
  188. 永山忠則

  189. 受田新吉

    ○受田委員 渡辺さん、御要望されている事項の中に、職業安定行政に従事する下級職員の任命権者は知事となっておる。これは間違いないですね。
  190. 渡辺勇二

    ○渡辺参考人 その点については、正確には、六級職以下の職員の任命については、東京都の場合は東京都の総務部長が当たっておるということです。
  191. 受田新吉

    ○受田委員 どなたでも、それぞれ御所管の立場から御説明願いたいのですが、この地方自治体に国の行政事務を委任されている事項の中に、人事権というものが入るかどうかお答えを願いたい。
  192. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 私の方の社会保険関係で申しますれば、人事権は地方の知事に委任しておりません。
  193. 受田新吉

    ○受田委員 職業安定行政は……。
  194. 広瀬忠三

    ○広瀬説明員 職業安定行政につきましても、任命権については知事に委任いたしておりません。
  195. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、渡辺さんの御要望の点の「職業安定行政の地方移譲と職員の身分移管することの要請または請願について」この中にある「その他の職員の任命権者は知事となっております。」ここを詳細お尋ねしようと思ったのですが、間違いないですか、実態をお知らせ願いたい。
  196. 渡辺勇二

    ○渡辺参考人 正確に申し上げますと、六級職以下の職員にかかわる任命権は、東京都の場合は地方事務官である東京都の労働局の総務部長に委任をする、こういう工合に訓令で定められているわけです。実際にはこの総務部長は東京都の吏員でありまして、事実上の問題は東京都の中において処置をしているわけです。労働省の方にはその事実上の問題では相談あるいは協議、こういう程度で、決定権は東京都の範囲で処置してしまっている。そういう意味合いでこういう表現を使ったということです。
  197. 受田新吉

    ○受田委員 国家公務員たる出先機関の職員に対しては、国家公務員法に定むる試験に合格したる者をもって充てることを原則とし、地方公務員なり、地方の人事委員会のそれぞれの規定に基づいて、あるいは都道府県職員採用規定などによるところの採用という形で別個にやっているわけですか。労働省、厚生省から伺いたい。
  198. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 私の方の職員はやはり国家公務員でございますので、人事院のそれぞれの試験を通っている者の中から採用する、こういうことにいたしております。
  199. 広瀬忠三

    ○広瀬説明員 労働省の第一線機関の職員につきましても、人事院の定める任用の基準によりまして任用をいたしております。地方公務員の採用とは別個にやっております。
  200. 受田新吉

    ○受田委員 国家公務員法五十五条の二項に、任命権者の任命権委任ということはその部内の上級職員に限るとあって、地方庁の責任者にこれを委任することができないと国家公務員法にはっきり規定してあるのですが、それを地方庁のだれかに委任するということになるならば、これは問題だ。ほかに何か法的根拠があるかどうかを聞きたい。
  201. 広瀬忠三

    ○広瀬説明員 御指摘のように、国家公務員法の五十五条の二項で、部内の職員に任命権を委任することができる、こういうことになっております。東京都の総務部長は、これは都の職員という形をとっております。ここに非常に問題がございますが、部内の職員でなければ任命権を委任できないということがあり、これは東京都の総務部長を国家公務員に併任という形で、国家公務員として発令をしていただいて、現在任命権を行使していただいておるわけです。
  202. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、東京都の総務部長は一面国家公務員でもあるわけですね。
  203. 広瀬忠三

    ○広瀬説明員 その通りでございます。
  204. 受田新吉

    ○受田委員 東京都の職員の中で、兼任でなくて併任されている職員はほかにどういう人がありますか。
  205. 広瀬忠三

    ○広瀬説明員 東京都の職員とおっしゃるのは、国家公務員たる職員、こういうことでございましょうか、それとも……。
  206. 受田新吉

    ○受田委員 地方公務員たる東京都の職員が、同時に国家公務員たる職員として併任されているという事例が他にもありますか。これは両方からお答え願いたい。
  207. 広瀬忠三

    ○広瀬説明員 私の方の関係では、総務部長以外にはございません。
  208. 鈴木俊一

    ○鈴木参考人 今の人事権の問題は、先ほど御指摘のように、おそらく国家公務員法の部内の上級職員という立場で、労働局の総務部長を国家公務員に労働省が併任任用されまして、そして五級職員以下の任命権をまかしておるわけでございまして、社会保険の関係は、民政局の総務部長、これは都の職員でございますが、そういうものにまかせるという形でなく、保険部長、これは中央事務官で国の任命でございますが、そういうものにまかしておるように聞いております。従って今のような問題はないわけでございます。
  209. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、政府の御見解であるならば、東京都の総務部長は、すなわち任命権者として任命権を付与し得るその部内の上級職員ということになるのかどうか、その部内の上級職員に当たるのかどうか。併任されている立場のものが部内の上級職員と解釈するのには何かの根拠がなければならないのですが、いかなる規定に基づいて部内の上級職員ということになっているかを御指摘願いたいのです。
  210. 広瀬忠三

    ○広瀬説明員 労働省において東京都の総務部長を国家公務員に任用いたしました以上は、それは労働省の部内の職員である、こういうふうにいたしております。
  211. 受田新吉

    ○受田委員 部内の上級職員ということになりますね。
  212. 広瀬忠三

    ○広瀬説明員 部内の上級の国家公務員であるというふうに解釈しております。
  213. 受田新吉

    ○受田委員 厚生省の部内の上級職員、労働省の部内の上級職員、こういうことになると、どの辺からが上級の職員ということになるのかということです。たとえば国家行政組織法にあるところの府、省、庁という立場の部内の上級職員ということになるならば、少なくとも外局の長あるいは局長という地位のものにこれが考えられると思うのでありますが、東京都の総務部長は少なくとも厚生省の外局の長あるいは局長に相当する地位にあるのかどうかをお答え願いたいと思います。
  214. 広瀬忠三

    ○広瀬説明員 外局の長とか、あるいはそういった中央行政機関の単位の長と、それから地方の組織の長というのは、いわば格において違うということであると思います。それで地方の組織の最高の責任者というものは、これは上級の職員というふうに考えております。
  215. 受田新吉

    ○受田委員 これは法律の解釈を適正にしていただかないと、はなはだあいまいになるおそれがあるのでありますが、東京都の総務部長という地位は、この第五十五条の、任命権者が規定されるところの少なくとも「各外局の長」という程度のものに当たるかどうか、あるいは少なくともこれらの機関の長が有する任命権ですから、今の大臣とか会計検査院の院長とか、こういう立場の人にかわる上級の者といえば、少なくとも局長ということになるわけでございますが、地方庁の職員をこの国家公務員と同等の地位に当てはめるということは——大体都知事というのはどのくらいのものか、それから副知事はどのくらいのものか。特に鈴木さんは自治庁の次官をやられたのでありますから、お役人の前歴においてはまさに位人臣をきわめられた有能なお方であります。これは私よく承知しております。従って東京都の場合は、総務部長という地位は少なくとも厚生省や労働省の局長に相当するところである、かように了解していいのかどうか。
  216. 広瀬忠三

    ○広瀬説明員 東京都の知事さんとかあるいは局長さんと本省の局長、次官等と比較するということについては、ちょっと私も自信がございませんので、それについてはお答えしかねますが、要するに地方組織につきましては、その地方における国の行政事務の最高の責任者というものを部内の上級職員というふうに解しまして、これに任命権を委任している。労働省の場合でいけば、労働基準局長がございます。これはやはり五等級以下の職員については委任任命権者ということにいたしております。東京都の総務部長というのは、労働基準局長に近いというふうに考えております。その程度のグレードのものであるというふうに考えております。
  217. 受田新吉

    ○受田委員 東京都の総務部長、これは労働局の総務部長ですか。
  218. 広瀬忠三

    ○広瀬説明員 東京都の労働局の総務部長でございます。
  219. 受田新吉

    ○受田委員 これはまた格式が一つ下がってきたわけです。局長があるならば、局長が部内の上級職員ということになるのじゃないですか。上級というウェートの置き方ですけれども、局長が兼ねておるならばそれは納得できる点があるわけですけれども、部内のそのもう一つ下の局の部長ということになると、ちょっとこれは問題があると思うのです。
  220. 広瀬忠三

    ○広瀬説明員 東京都の労働局長は国家公務員たる身分を持っておりません。国家公務員たる身分を持っております国の行政事務についての最高の責任者である東京都の労働局の総務部長を委任任命権者といたしておるわけでございます。
  221. 受田新吉

    ○受田委員 これは詭弁に属するものであって、局長を任命権者に委任するというならば筋が通るが、国家公務員に任命しているのが総務部長であるから、今任命されているところでは一番上である、こういうことは詭弁に属する。それは局長が当然任命すべきものであって、総務部長が任命すべきではないと思う。これは任命の誤りである、こういうことになるのじゃないかと思う。これはまた鈴木さん、この国家公務員と地方公務員の関係は厳重な一応の区別をしておかないと、やはり今回問題になっているように、第一線では混同してしまって、結局地方公務員と同じ苦労をさせておるのに、国家公務員の身分だけ残っているのではないかという疑念が出るのでありますから、そこに問題があると思う。そこで国家公務員と地方公務員の区別があいまいであり、しかも地方公務員が同時に国家公務員を兼ねておるという問題がある。これは任命権の乱用である、こう私は思うのです。国家公務員法及び地方公務員法のそれぞれの根拠法規に基づいて公正妥当に任命されるということが適当であり、また併任というようなことが便宜主義で行なわれるということは、私は任命権の乱用であると思うのですが、いかがでしょう。
  222. 鈴木俊一

    ○鈴木参考人 私も受田委員と同じような感想を持っております。先ほども申し上げたわけでございますが、同じ都という職場におりながら、一方は国家公務員、一方は地方公務員ということで、現在の制度から見れば截然とお話のように区別して扱わなければならぬわけであります。ところが同じところで勤務をしておりますので、そういうふうに截然と分けることが実際問題として非常に無理であるというところから、要するに一切の職員を労働大臣が任命するということは事実上も困難であるというようなところから、何らかの委任ということを考えざるを得ない。その場合に、やはり委任をする以上は、今の国家公務員法の規定から申せば、都内の上級の職員ということでございますから、やはり相当のグレードのもつのでなければならぬというところで、ほんとうならば労働局長の万が、その法規からいえば御指摘のようにいいわけ—でございましょうけれども、労働局長を国家公務員に任命をしてそれに委任をするということが一つの行き方と思いますが、しかしこれはまた二面都の立場から申しますと、局長というのはいわば知事のもとの最も中心になる最高のそれぞれの所掌の責任者でございます。それが国家公務員に併任されるということは、これは地方自治という立場から申しますと、また非常に問題があるわけであります。おそらくこれは私が参ります以前からそういう扱いになっていると思うのでございますが、労働局の総務部長といういわば副局長に当たる者を国家公務員に任命をして、今のような委任の取り扱いをしているという、これは便法ということだろうと存じますが、そういうような便法を講ぜざるを得ないような点が、任命の問題をたまたま御指摘でございますが、その他の点についてもいろいろとあるわけでございまして、そこにやはり都の中に国家公務員がおりますという点にいろいろ無理な点が出てくるのかと思います。
  223. 受田新吉

    ○受田委員 私、この問題は、今ここへ来て、要望書を拝見してから法規と対照してみたのですが、私自身も準備を全然しておりませんので、私自身に誤りがあったらお許し願いたいのです。国家公務員の併任を許しておるところは——その国家公務員の任命権の委任事務を取り扱うに足る地位ということになれば、たとえば一級職か二級職の国家公務員の職種に相当する人でなければならぬ。ところが併任されている地位は一般職としての地位か——特別職ではないはずですが、一般職としての地位であるか。しからば一般職の何級職に相当する地位としてこれが任命してあるかをお答え願いたいと思います。
  224. 広瀬忠三

    ○広瀬説明員 任命権の昇任につきましては、何級職だからということで委任をしておるわけではございません。官職によりまして……。
  225. 受田新吉

    ○受田委員 相当する地位をお尋ねしておるのです。
  226. 広瀬忠三

    ○広瀬説明員 地方における安定行政の最高責任の地位にある者を任命するということは、再三申し上げましたが、東京都におきましては、大体のことでございますが、身分が全く国家公務員である職業安定部長というのが労働局におります。これは三等級でございます。それと大体同等でございます。  先ほどの御質問の際に任命権の乱用じゃないかというようなお活もありましたが、保険関係におきましては保険部長が任命権者になっております。これは国家公務員でございます。労働省の関係につきましても同じような措置ということが当然考えられたわけでございますけれども、東京都と相談をいろいろいたしまして、東京都の内部事情もいろいろございましたので、現実は、便宜主義という御批判はあると思いますけれども、東京都の事務吏員である総務部長さんを国家公務員に併任をいたしまして、そうしてその総務部長さんに任命権を委任した。職業安定部長に任命権を委任するという方法も確かにございます。ございますが、現実は東京都の方の事情もあったもので、総務部長さんを国家公務員に併任いたしまして任命権を委任した、こういう形でございます。
  227. 受田新吉

    ○受田委員 その任命の正式の辞令はどういう名称が用いてありましょうか。
  228. 広瀬忠三

    ○広瀬説明員 東京都の総務部長に対する辞令は、労働大臣から国家公務員に任用するという辞令を出しております。
  229. 受田新吉

    ○受田委員 ただそれだけですか。官だけあって職がないのですか。その辞令というのはどうも……。
  230. 広瀬忠三

    ○広瀬説明員 失礼いたしました。私具体的にどういう形で任命が行なわれたかということを実は確認しておりませんので—…。
  231. 受田新吉

    ○受田委員 それでは調査願ってからでもいいです。  次に質問を移します、これに関連するのですか、地方自治法附則第八条の規定の中に「官吏」という言葉があるのですね。「当分の間、なお、これを官吏とする。」という規定がある。これはほかの法律にはないのです。国家公務員法にも地方公務員法にもないのです。ただ、官吏という概念はある。官吏、公吏という概念は今日でもありますけれども、これを名称として用いてある規定というのは、私きょうここで拝見したのが初めてで、いずれの法規を見ましても国家公務員を官吏と銘を打った規定がないわけなんです。
  232. 広瀬忠三

    ○広瀬説明員 この官吏という言葉は、国家公務員法ができる以前にこの条文ができましたので、そういう関係で入っているわけであります。
  233. 受田新吉

    ○受田委員 それだから、この規定がはなはだ陳腐だということに一つなってくるわけです。そして国家公務員法が制定されて以後、概念としては従来の官吏制度というものがあっても、これを名称としては用いないというときに、まだこれが残っているということは、これは非常に古い官吏万能時代の思想である。官吏という名前をつければみんなが喜んでるであろうということで、その一角が今日残っておる。ところがこの官吏なる魅力は、今日はもうなくなった。官吏様なら嫁にやろう、娘をやろうという時代はもう過ぎて、みんな勤労を愛し、お互い勤務者として勤労に対する意欲に燃えている公務員になってしまったんですからね。つまり封建的な名称というものに魅力を感ずる公務員は、私が今日考えたところではおそらくないと思うのです。これは鈴木さんが地方自治を御所管にされておるころに直しておかれる必要があったかと思うのでございますけれども、この名称が今日まだ残っておる、概念としての官吏がまだ残っておるということになるわけで、この言葉そのものが一つ問題になると私は思っているのです。  あまり時間をかけないようにもう一、二お伺いしますが、御答弁が願えないような点はこの次にお願いします。さらに問題になるのは、地方公務員としての仕事と国家公務員としての仕事がほとんど同様であるという問題です。ここに問題が一つあるわけで、これは国家行政組織上からながめても、国の仕事としてやっている仕事と地方公務員のやっている仕事とが同じような形になって、形態の上においても内容においても同じだというようなことは、これはもうどちらかといえば、地方公務員なら地方公務員に切りかえる方がいい段階にきておるのであって、もし国家の統制を続けようとするならば国家の統制を続けるようにして、たとえば厚生省設置法を改正して社会保険の出張所を法的根拠のあるものにするとか、はっきりした根拠を持たないと、国家公務員の立場の方の魅力はなくなるわけです。しかも上級の職員は、それは人事の交流でどの県からどの県へ行くというようなことになるでしょうが、下級の職員の方はよその県へ栄転する、たとえば神奈川県から東京都へ栄転するとか、あるいは地方の私の郷里である山口県から大阪へ栄転するとか、こういう多少でも格づけも上がり役づきにもなってくるというところへ栄転するというのなら、それは国家公務員という立場を残しても、ある点において意味があると思うのですけれども、下級職員は、これを見ましてもほとんど栄転の機会がなくして、全く地方公務員と同じようなワクの中でしか人事の異動ができておらぬそうですが、これはそうなっておりましょうか。太宰さんでもどちらでもけっこうです。
  234. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 全国的に見れば、必ずしも下級の職員の交流と申しますか、一つの県から他の県に回るという例がないことはございません。しかし人事の交流が全国的視野で行なわれるというのは大体中堅以上の職員が多いということは、申し上げて差しつかえなかろうと存じます。
  235. 受田新吉

    ○受田委員 参考意見をお述べいただいたお二人の方にお気の毒であると思います。お二人の方の御所見に先ほどから承りまして、私たち了解をして、おるわけです。私、政府に対する質問はあと回しにいたしましょう。きょう御答弁をいただく点は、なかなかむずかしい問題がたくさんあるので、今からお尋ねしても時間がかかりますから、お二人に最後に一つだけお伺いをしておいてやめます。  鈴木さん、東京都というお役所は、これは日本のモデルのようなしあわせな役所であるのですけれども、東京都以外の府県、地方公共団体で、国家公務員である身分の人と地方公務員の身分の人とが、給与差を比較して、地方公務員の方が低いという県が全国にまだ多分残っておるということを、地方の連絡会議か何かでお聞きになっておらないか、あるいはかつて御在任中、多少国家公務員である身分の方が立場がいいんだという貧弱な府県がありますかどうですか、御記憶はないですか。
  236. 鈴木俊一

    ○鈴木参考人 私も、ちょっと最近の新しいところは承知しておりませんが、一、二財政再建の団体等で若干低い府県、市町村の場合はそういう例もあったかと思います。今日ではそういう例はないのじゃないかと想像いたしておりますが、若干はあるかもしれません。
  237. 受田新吉

    ○受田委員 渡辺さん、全国の同じ立場の方々の俸給の比較表や何かをお調べになっておりませんか。
  238. 渡辺勇二

    ○渡辺参考人 きょうは持参をいたしてきておりませんけれども、最近の統計をわれわれが見たところでは、国の基準を割っているというようなところはあまり見受けられない。ただ給与比較をする場合に、比較の根拠のとり方によっていろいろ違ったものが出てくるわけです。総収入の面から見て、国——国というのも国家公務員としての職業安定行政の出先と社会保険行政の出先ですね、出先の職員との給与の比較の中では、下回るものはないという工合に考えております。
  239. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、現実の問題として地方公務員に切りかえて、給与の上で、俗な言葉で申し上げますと、損をする府県がないということになるならば、切りかえをすれば給与面ではみな助かる、こういうことが言えると思いますね。
  240. 渡辺勇二

    ○渡辺参考人 その点については、大体そういうふうになるのではないかという工合に、われわれは考えております。
  241. 受田新吉

    ○受田委員 府県の経済事情で、昇給、昇格が延伸をされるとかストップされるとかいう事情のところも出て、国家公務員であればそういう問題が比較的安全であるという、そういう特徴の府県もまたときには起こるかもしれません。けれども、現実的に見ると、これはもう切りかえた方がいいということで、大体ほとんどの人が救われるということになるならば、現実の問題としては、国の行政機構というものと地方の行政機構というものとのどちらに重点を置くべきかを労働省や厚生省の方々がお考えになられて、この際切りかえた方がいいということになれば、国の事務を府県に委任して、そうして府県にその中央から指示したワク内で自治行政をやってもらうとかいう道もある、こういうことも言えるし、もしどうしても中央で国全体の統一的な政策として考えなければならぬという問題があるならば、地方の出先機関の国家公務員の処遇を府県の職員の処遇にできるだけ合わせるような何か特例を設けるとか、そういう道を考える、こういう方法をまた別の角度から検討されなければならぬ。こういう問題は、きょう政府のお方もおそくなっておられますので、私結論は次回に伺うことにいたしまして、きょうの私の質問は終わり、お二人の参考御意見を大いに感謝してお伺いをしたということをお二人に申し上げ、また政府委員の方々の長時間にわたるごしんぼうに謝意を表するとともに、自民党のただお一人の方がここで勉強しておられるだけで、あとの方ははなはだしく怠慢であるということを委員長銘記せられまして、社会労働委員会の権威を保持するために委員長の職権をもってこれをかり出すように今後努力してもらいたい。それを一つ委員長答弁を願いたい。
  242. 永山忠則

    永山委員長 鋭意努力をします。  本島百合子君。
  243. 本島百合子

    ○本島委員 大へんおそい時間まで参考人の方がいらして恐縮に存じますが、私は参考人の方にちょっと承りたいと思います。  これは午前の委員会でも申しましたが、最近政府はだんだん中央集権的なものの考え方を財政的にはとって参っております。ところが、終戦後民主日本という考え方に立ってこの法令ができましたときには、地方分権を土台として考えて参られたわけであります。そこでお説の通り、地方公共団体の方からは知事会を通じて、あるいは議長会を通じて、地方分権という考え方から、地方への移管の問題、こういう運動が熾烈に行なわれておると思うのであります。今でもやられておると思いますが、その点について本日は社会保険並びに職安関係の民間の問題についての御参考意見を聞いたわけでありますが、大体そういう運動が続けられておるわけでございます。ですから、そういう点はどういう職種にあるのか、それから政府はそれに対してどういう答弁をして参っておるか、そういう点をそれぞれの立場からお知らせいただきたいと思います。  それから渡辺さんにお伺いしたいことは、それと歩調を合わせるように、労働組合としては今日まで運用されてきたと思います。本日は社労委員会であるから特にこの関係のものがあげられたんだろうと私は思いますが、その他の所管についてはどのようにされておりますか、承りたいと思います。
  244. 鈴木俊一

    ○鈴木参考人 ただいまのお尋ねでございますが、本日この社会保険関係の事務に従事する国家公務員、それから職業安定関係の事務に従事する国家公務員、これらの問題について徴せられました意見を申し上げたわけでございますが、なおこのほかに陸運事務所という組織一つございまして、これがやはり今日問題となっております。ここに勤務いたします者はやはり国家公務員ということになっておるわけでございまして、この問題も中途半端な、いかにも府県の組織であるかのごときであって、実質的には国の組織、公務員としては国の公務員、こういうような形になっておるものでありますから、これをすっきりした姿にしてもらいたいというのが地方側の要望でございまして、国の方では、運輸省の方は申すまでもなくはっきりと自己の出先機関という形に整理いたしたい、こういうお考えのようでございまするし、自治庁の方ではやはり地方自治という立場考えて、いま少し都道府県との結びつきを強化した形において合理化したい、こういうような希望があるやに聞いております。
  245. 渡辺勇二

    ○渡辺参考人 このほかに、これは積極的な意味でわれわれは出しておるわけではないのですが、現在港湾行政を地方に一本化しようというような動きがある。こういうような問題について、現在の地方自治体から取り上げていくのはやめてもらいたいというような運動はやっております。それから今日までこの移管の問題についてわれわれも政府当局と再三にわたって話し合いはしてきておるわけです。その中で一番政府当局が指摘をしておるのは、先ほど政府委員の方から話がありましたように、保険行政というものは統一的に全国プールにしなければできないのだ、こういうような主張が出されておるわけです。われわれとしては、その問題と離して身分上の問題は解決できるのではないかという点の指摘をすると同時に、もしも保険行政自体の問題について問題があったとしても、われわれは国の統一の範囲の中でやらなければいけないという性格の部面を十分保証する範囲内において実施ができるじゃないかという点も主張しておるわけです。  それから職業安定行政の問題で問題になっておるのは国際労働機構の問題です。こういう問題についてやはりだめだというような話もあるのですが、われわれの主張としては、あれは中央の官庁が指揮監督しておればいいのであって、何も機関は都道府県であってはならないという工合には了解できない。また一番問題点として指摘されておる失業対策事業の問題について、赤字団体と富裕団体とで取り扱いがでこぼこになる危険性があるじゃないかというような指摘もあるわけです。こういう点はえらい間違いで、われわれは地方に移管をしてくれといっても、結局一般財源に振りかえる、つまり交付税でその予算措置をしてくれと言っておるのではない。補助金というような姿で現在国が三分の二を持ち、一分の一を都道府県が持ち出して事務、事業をやっておるわけです。従って、この予算の執行は都道府県会の議決を経ないと執行できないわけです。こういうようなもので、同じものが職業訓練行政にあるわけです。職業訓練行政もやはり労働省が所管をいたしておりますが、これは労働省の補助金を持ってきて、それに都道府県で積み足しをやって、都道府県会の議決を経て、そうして都道府県の機関として実施しておるわけです。職員も実際問題として都道府県の職員が当たっておるわけです。従って、一番問題になっておる失業対策行政についても都道府県で十分やれるじゃないか、こういうような指摘はいたしておりますが、残念ながらそういうことはなかなかできないんだというようなことで、経過的にはなかなか政府の方で了解をしていただけない、こういう経緯になっております。
  246. 本島百合子

    ○本島委員 副知事は知事会や議長会の行動を御報告にならなかったのですが、私の聞くところでは、この問題については各都道府県とも運動を開始して起るはずです。今までもやったはずです。ところが、政府は先ほど渡辺参考人から言われたような理由をたてにして地方移管ということをやらなかった、こういうことなんです。ですから、その点が本年度あたりはどのように動かれておるのか、これから動こうとされるのか、もう一度全国の情勢をお聞かせ願いたい。
  247. 鈴木俊一

    ○鈴木参考人 過去におきまして国の出先機関を府県に移譲してもらいたい、そうして府県の事務の内容をもっと多くして、地方自治を内容あるものにしてもらいたいという希望は、地方団体を通じての要望でございまして、そういう意味で、ただいま問題になっておりますような府県の組織の中に現在の国家公務員の仕事を移譲してもらいたい、こういうのはかねてからお話の通りあるわけでございます。ただいま知事会あるいは議長会におきましては、先ほどちょっと申し上げた陸運事務所の問題などと関連をいたしまして、あるいは今後問題になっていくのではないかと考えております。
  248. 本島百合子

    ○本島委員 知事会や議長会の方が少し運動を停頓さしておるように今聞いたわけですが、私も都議会におりましたときに、この問題について取り組んでやった一人なんです。先ほどから言われているように、同一職場において机を並べて仕事をしていながら、身分が違うということは、働く人々の心理の面においても非常に不合理である。また給与その他の面においてもおかしなものである。こういうことになれば、やはり地方府県の労働組合人たちだけが一生懸命なさるということはおかしなことで、むしろその衝に当たる人々が率先してやらなければならぬ問題じゃなかろうか、こういうふうに考えておるわけなんです。この社労委員会参考人を呼んでこういうことをお開きしたということは、そういう意欲を持っていたしたことでございますから、一つ副知事あたりから知事に報告されまして、従前のように地方分権という形における日本の政治のあり方、こういうものに立脚されて、もう少し活発なる運動を展開されなければ、先ほど政府の方々の答弁によりましても、なかなか移譲しない。身分の切りかえもむずかしい、こういうふうに見受けられるわけであります。そういう点について今後一大運動を展開されるかどうか。あなただけに聞いても、これは全国のことですから、むずかしいことはわかりますが、しかしこれは各県ともこういう意向で動いておられる。ただ労働組合の方々だけが、高じ職場にあって見るに見かねるというような形で運動されるのは非常にびっこな形だと思うんです。これはやはり理事者も一体となってやるべき運動であると思いますので、あなたの御所見のほどをもう一度承りたいと思います。
  249. 鈴木俊一

    ○鈴木参考人 ただいまの御意見、十分拝聴いたしまして、知事にもとくと報告をいたします。こういう問題は、やはりお話のように広範囲の声となって出て参りませんと、実現の上におきましても相当むずかしい点があろうかと思います。地方自治という立場から十分検討したいと思います。
  250. 本島百合子

    ○本島委員 なぜ私がこれを言うかというと、過日来、東京都で汚職問題がございました。また陸運局の汚職問題がありました。そのとき身分の所在というものがはっきりしなかったのです。あれは国家公務員だ、あれは地方公務員だ、そしてだれに監督の責任があるのか、こういうことになったときに、あいまいになってしまった。あの事件を見たときに、やはりだれもの考えるところは、この身分を一定しておかなければいけないのじゃないだろうか、こういうことが言われたわけなんです。ですから、地方に最も関係のある職種でございますから、これは何も政府ががんばってとっておかなければならぬという状態じゃないと思うのです。そういう意味で、いま少し、労働組合の方々がなさる以上の力を発揮されて、東京都はそういう経験を持っているだけに、率先してこの仕事にとっかかっていただいた方がいいのじゃないか。こういうふうに思ったわけで、くどいようですが、御質問したわけです。なお政府機関におかれましても、参考人の申されたこと、また質疑の過程で出てきたような法的矛盾というものがたくさんあるわけです。従いまして、この機会にやはり積極的な検討をされて、何も中央で持っていなければならないという理由がないものについては、どんどん移譲されるという考え方に立ってもらいということを要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  251. 永山忠則

    永山委員長 大原委員
  252. 大原亨

    ○大原委員 時間がありませんから簡単に申し上げるのですが、先般も林事件がありましたときに、安井前都知事の出席を願って、いろいろと事態を究明したい、こういうふうに希望いたしましたが、その機会が得られなかったのです。しかしきょうは、せっかく副知事がいらっしゃいますし、組合側の方も見えている、こういうことでいい機会だと思ったのですけれども、時間がありませんから、問題だけ提起しておきたいと思います。というのは、これは後ほど厚生省あるいは労働省のみならず行政管理庁、会計検査院、こういうところも一緒にここへ来ていただいていろいろ調査したいと思うのですが、問題は監査の問題であります。御承知のように国家公務員が行なっている、あるいは人事の問題あるいは予算の問題、これについては、私当時問題が起きたときに都議会の議事録を調べてみましたら、安井知事の答弁では、それには東京都の監査委員会は全然ノー・タッチです、制度上監査できません、こういうことでありました。そこでその問題についてはおかしいじゃないか、こういうことで橋本厚生大臣にもいろいろと質問いたしまして、事態を改善する、こういうことだったのです。しかし私はその当時の記憶では、監査をいたします際に、保険行政でありましたら厚生省の保険局から二、三の人が各県をずっと回りまして、事務監査も会計帳簿監査も若干する。それから会計検査院もするし、行政管理庁も事務面でするのだが、厚生省が各県に行き、あるいは出張所もあるということで行きまして、事務監査に来ました、どうなっておりますか、こういうことでありますが、保険団体その他関係団体がたくさんあるわけですから、それがなかなか目が届かぬどころか、ちょっと歓迎の宴会をやってもらいましたらそれで終わり、こういうことで帰るということで、あっちこっちへ行って歓迎してもらうだけで何も監査しておりませんというのが実態だと思う。たとえば一つの府県で二、三日しかおらぬということです。あるいはひどい場合は一日、こういうことです。だからこの問題は実質上は双方から監査をやらないという仕組みになっている。その後改まっていないと思うのですが、これは行政管理庁あるいは会計検査院等すべて出てもらって、林事件、長野事件あるいは陸運事務所の事件等を総合的に審議すべきだと思うのです。その点は問題を提起しておきたいのですが、今本島委員から要請がございましたが、元自治庁の次長であり東京都の副知事である鈴木さんの方でも、ぜひともこの点は各県の知事にも呼びかけて、知事会としての意見を出してもらって、積極的な運動をしてもらいたいと思うのです。私の申し上げたことについて特に誤った点がありましたならばこの際御発言を願っておいて、そして関心を持っていただきたいとお願いいたしまして私の質問を終わりたいと思うのです。
  253. 鈴木俊一

    ○鈴木参考人 ただいまの保険の会計につきまして、あるいは事務の執行につきまして監査委員が監査できるかどうかという点は、御指摘のように監査委員の権限としてはただいまの規定では監査できないようなぐあいになっております。従いましてこの点は、直接国費に関する問題でございますから、それを監査委員に監査させるのはいいことだという問題も実質論として一つあろうかと思います。ですから確かに、仕事としては知事が委任を受けて管理する建前になっておりながら、その点及ばないということで、先ほども申し上げましたが、知事の仕事になっておるからには功罪ともに知事に対して毀誉褒貶がくるのは当然でございます。しかしそれにもかかわらず是正をしようとする手段がない。自治体として知事だけでなく議会にも監査委員にもないという、その辺に問題があると思います。
  254. 永山忠則

    永山委員長 五島委員
  255. 五島虎雄

    ○五島委員 時間がございません。それで私二点、鈴木さんと渡辺さんに質問しておきたいと思います。同僚諸君からずっと質問されまして、非常に参考になりましたし、われわれもこの身分移管の問題について今後検討していきたいと思いますが、当委員会は社会労働ですから、雇用安定の問題等については重大関心をわれわれは持つものです。ところが職業安定行政の地方移譲と職員の身分移管することの要請または請願について、国費職員対策委員会から出されたところの説明の第四を見てみますと、「東京都の場合を例にとれば、失業対策事業においては、都で、単独に予算を組まねば厖大な数に上る日雇労務者を就労させることが至難であり、それが紹介の業務にあたる窓口の職員も、都の職員が相当数執務している。また、多くの求人、求職者の押し掛ける都内公共職業安定所の庁舎の改、新築の際は、都の予算も使用しているのが実態である。」これから昭和三十五年度予算概要というのが、東京都労働局から出されておりますけれども、それによると、東京都が六十二億円、国費が四十七億円の割になっておるわけです。そうすると、この四から見ると、これではなおかつ東京都内におけるところの失業対策事業等々は、支障があるのだというようなことになっておる。それでこれが一本に移管されたら、もっとよりよくその職業安定等々の事業は、円滑に進むのだというように説明されておるわけですけれども、私どもは、いずれの制度にしても雇用の促進をしなければならないし、雇用の安定をしていかなければならないと思うのです。その点について鈴木さんは、これが一本に移管されたら、東京都における雇用が促進し、あるいは安定業務が円滑にいくというようなことは同感でしょうか。それが第一点です。  それからもう一つは、ただいままで説明されたのが中心になって、東京都の問題ですが、全国の問題では、各都道府県では財政再建団体等もありましょうし、またそれに該当しなくても、各府県の財政事情の格差がそれぞれあろうと思うのです。それで都職労としては、すみやかなる身分移管の実現が望ましいことはわかりますけれども、たとえば、財政事情の非常に悪い、と言いますと語弊があるでしょうけれども、比較的悪いところの都道府県における、出先地方事務官等々の考え方もあるだろうと思います。ところが渡辺さんは東京都職労の敏腕な調査部長ですから、自治労関係でどういうような意向であるか、それからまた労働省関係の出先官吏、あるいは厚生行政関係の出先官吏等々の希望は、どういうところにあるだろうかというようなことを調査されていることがあるのならば、ここで忌憚なく説明しておいてほしいと思います。そういう説明を根拠として、われわれは慎重にそれを検討してみたいと思いますから、以上二点を鈴木さんと渡辺さんにお願いします。
  256. 鈴木俊一

    ○鈴木参考人 職業安定行政を全面的に都に移管をしていった場合に、雇用対策として、今よりさらに実が上がりはしないかというような点についてのお尋ねでございますが、これは、先ほど来私が申し上げましたのは、主として職業安定行政に従事いたします者の身分を中心にして申し上げたのでありまして、職業安定行政関係事業そのものを、全面的に地方団体に移譲するということが適当であるかどうか、また移譲するとしてどのくらいまでを移譲するかというようなことは、なお別個の角度から若干検討を要する点があろうかと思いますが、しかし都自身の問題といたしましては、これが移譲されますならば、都としては十分やっていけるだろうと考えております。
  257. 渡辺勇二

    ○渡辺参考人 全国的な問題ですが、私は今自治労の関係の対策委員長をやっているわけです。従って全国組合人たちともいろいろ話し合いをいたしておりますし、特に最近は、十日、十一日全国の代表を集めまして、この問題について話し合いをいたしました。その結果、業務と身分の移管については、自治労傘下の各県の組合の者たちは、こぞって賛成をしているというのが現状です。それからまた赤字団体では、もらったならばにっちもさっちもいかなくなるのじゃないか、従って、職員の方でも困るからやめてもらいたいというような意見があるということですが、この点については、先ほど申し上げたように補助金制度をはっきりさせ、そしてそれに対して、自治庁の方で地方交付税をきちっとつけて落としてくれれば、別に問題はないという工合にわれわれの方では割り切っておるわけです。そういう考え方ですから、心配はないという立場に立っております。  それから、自治労の組合以外の組織職員との話し合いですが、率直に申し上げまして、職業安定関係では、全労働という組織がございます。ここの組合とわれわれとの間で話し合いをした結果、全労働としては、行政機構の問題については、いろいろ意見があるので態度を決しかねる、従って、われわれがやる運動について足を引っぱるようなことはしない、こういうような話し合いになっているわけです。  それから厚生省関係の各出先の人たちとの話し合いですが、残念ながらこれは組織的に、全労働のように組織されている組合がないわけです。従って、意思を十分聞く機会にわれわれは恵まれないわけです。ただ県庁の中にあります保険課の職員については、県庁の職員としょっちゅう話し合いをいたしておりますから、希望的な考え方はわれわれは聞いております。これはわれわれと全く同じで、やはり地方に移管してもらわなければ困る、こういうような考え方をはっきりさせておりますし、出先の方についでも、そういうような意見がわれわれの方では聞かれるということですが、出張所の方は、残念ながらはっきり全国的にとらえてはおりません。そういうことです。
  258. 永山忠則

    永山委員長 これにて参考人の方々に対する質疑は終了いたしました。  本日は長時間にわたり種々貴重なる御意見を述べていただきまして、ありがとうございました。
  259. 八木一男

    ○八木(一男)委員 委員長に御質問申し上げますが、午前中の滝井委員林野庁長官に対する資料要求を、林野庁長官が拒否した。国政審議権を無視したことにつきまして、午後の初頭における理事会の決定では、午後の委員会が終了するまでにその問題を解決するということを、委員長の責任において言われたわけです。ところが、この問題がまだ解決されておりませんので、この問題について委員長はいかに処理されるか、考え方を明らかにしていただきたいと思います。
  260. 永山忠則

    永山委員長 私の方の理事意見がまとまらぬので、どうもならぬのですよ。だから、あすの朝委員会が始まる前に、うちの理事とさらに懇談をしてみようという考え方をしております。
  261. 八木一男

    ○八木(一男)委員 その経過は逐次伺っておりますから、はっきり存じておりますけれども、一から十まで筋の通らない話ばかりです。大体この問題は、国政審議権に関与する問題であって、委員長がはっきり自己の裁断によって、責任を持って提出させるということを言われるのが至当であります。そこで委員長としては決断が鈍くて、与党の理事の人と相談をされた。与党の理事も、たとえばそのときに出席された大坪理事は、委員長とともに、提出させることは妥当であるという意思表示をされた。された以上はそれをされるのがあたりまえであります。また、いない連中がある。その連中にいろいろと御相談になりたいようであったのでお待ちをしておりました。御相談になることは、ある程度私どもとしても了解をしてもいいのでありますけれども、この委員会終了までに結論を出していただかないときには——そのような相談される相手方が結論のじゃまになるときには、それは無視されなければいけないと思います。特に与党の理事は退席して一人もいない。自分の都合の悪いときには逃げていないような理事は、理事としての権限を放棄しておるものだと思います。いない理事は全部その審議権を放棄しておる。そのような者の意見委員長としては参考にされる必要は断じてない。でありまするから、委員長としては、直ちに委員長の責任で、林野庁長官に国政審議権の無視についてしかりつけて、そして即刻、本日中にその資料を出させるという確約をなさるのが至当であります。それについての御答弁を伺いたい。
  262. 永山忠則

    永山委員長 非常に御意見はよくわかるのです。しかしやはりうちの理事と懇談せぬと、どうも決意をするわけにいかぬから、ちょっと待ってもらいます。
  263. 八木一男

    ○八木(一男)委員 委員長はうちの理事と相談をするとおっしゃるけれども、委員長は国会の社会労働委員会の常任委員長であります。自民党の常任委員長ではない。与党の理事とも相談されてもいいですよ。しかし与党の理事がいて、この問題が起こって、きょうじゅうに解決つけなければならないことがわかっでいるのだから、そこでちゃんと出席して委員長と相談されるなら、それを参考にされることは私どもは拒否するものではない。ところが与党の理事は審議権や理事としての責任を放棄して、そして姿をくらましている。そのような者に与党の理事という立場でも相談される必要はない。まして、あなたは国会の常任委員員です。残った野党側の社会党と民主社会党がそのことを早く決定することを強く要望しておるときに、自民党の人がみんな審議権を放棄しているときに、それがなくても委員長が直ちに決定さるべきことでありますから、当然今その決意を直ちに明確にされるのがあたりまえであります。そうでないと委員長の資格はありません。委員長の明確な御答弁を願います。
  264. 永山忠則

    永山委員長 意見がまとまらないのだから、ちょっと待ってもらうよりしようがない。
  265. 八木一男

    ○八木(一男)委員 意見がまとまらないというのではなしに、現在柳谷委員を除いては一人もいない。その連中は意見を言う権利を放棄しているわけです。ですから、残った人はみんな意見がまとまっている。まとまっているのを委員長が拒否するのだったら、委員長委員会の意向を非常に無視するということになる。これは委員長の信任問題に関係します。委員長のお立場はわかりますけれども、委員長は、与党の理事に対して、もっと権威を持たれなければならない。委員長が困る羽目になるのがわかり切っていながら、与党の理事は逃げた。そのような者に対して、委員長はそのような者の意見を尊重する必要は断じてない。与党にどういう強いワクがはめられようとも、自由民主党は民主主義の政党で、民主主義のいろいろのルールを重んじて、常任委員長の権限を重んじる政党であるはずだ。たとい委員長が、岸信介君、河野一郎君、池田勇人君であったとしたって、そんな退場した委員のことは無視してしかるべきだ。しかも委員長はこの退場した連中よりもずっと国会の先輩だ。民主主義のルールを重んずる委員長だ。そんな者の意見を考慮する必要は断じてない。直ちに決定して意思を明確にして下さい。
  266. 永山忠則

    永山委員長 理事の反対が多いのだから、もうちょっと待ってもらわないと……。
  267. 八木一男

    ○八木(一男)委員 反対の意見と言われるけれども、八田理事と田中理事は、反対の意見は表明しておられません。齋藤君は理事じゃありません。大坪君は、さっき提出させることが必要である、委員長と一緒にやろうということを滝井理事や私や民社党の代表の方の前で言われた。出すことが至当であるということを言われた。ただ林野庁の役人に少し丁寧に言わなければならぬ、時間をかしてくれということを、言われた。出させるべきであるということは、委員長大坪君も認めておられるわけです。田中君と八田君は反対ということは一言も言っておられません。野党の理事は、出させなければいけないということを強力に言っておる。しかも、そのことは、この委員会の終わりまでに結論をつけるということを委員長は約束されておる。そのような結論が出ないような委員長はあったものではない。民主主義に熱心な永山さんが、何を与党にそんなに遠慮をするのですか。なぜ林野庁の一官僚に、国会の審議権を無視するような林野庁長官に遠慮をされるのか。直ちに決定して、直ちに意思を明確にして下さい。
  268. 滝井義高

    ○滝井委員 あなたとわれわれとが議論をしておってもしようがありませんから、われわれは今から夜を徹してでも林野庁を説得しますから、林野庁長官を直ちに呼んで下さい。同時に農林大臣も一緒に呼んで下さい。要求します。そうしてわれわれは今から国会議員立場で当然出すべきであると主張をします。そうして国会は、あしたになったらどうなるかわかりませんから、きょうわれわれははっきりしておかなければいかぬ。あしたは安保がどうなるか、客観情勢はわからぬ。あなた方は質疑を打ち切るかもしれぬ。あなた方の方で打ち切らぬという言質を与え、責任を持ってくれればいいですよ。それはなかなかむずかしいですから、私は今から待ちますから、林野庁長官が来ておりますから、どこかで会議があっておるというから直ちに呼んでいただいて、同時に農林大臣も呼んでいただきたい。一切のほかの審議が終わっておるから、どこかにおるはずです。派閥の会合か何かやっているでしょうから、直ちに呼んでもらいたい。委員会は続行しておるのですからね。これはあなたの職権で呼べることです。それからあなたの職権で呼ぶことがいやなら、あなたの職権であしたの朝出すことをお命じになればいいと思うのです。委員長の職権があるのだから、何もほかの理事に相談する必要はない。当然のことです。安保の委員会なんか、小澤君がひとりで出す出さぬはやっていますよ。だからぜひ出してもらいたい。秘ならば秘と判を押す、極秘ならば極秘の判を押して、各党に一部ずついただけばけっこうですから、直ちに呼んでいただいて、そうしてもう一ぺん、われわれが勝つか、林野庁の主張が勝つか、今からやりたいと思うのです。林野庁の連絡員が来ております。お願いします。
  269. 永山忠則

    永山委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止
  270. 永山忠則

    永山委員長 速記を始めて。暫時休憩いたします。     午後六時四十七分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕