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1960-05-12 第34回国会 衆議院 社会労働委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年五月十二日(木曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 永山 忠則君    理事 大石 武一君 理事 大坪 保雄君    理事 田中 正巳君 理事 滝井 義高君    理事 八木 一男君 理事 堤 ツルヨ君       池田 清志君    臼井 莊一君       大橋 武夫君    齋藤 邦吉君       早川  崇君    柳谷清三郎君       山下 春江君    亘  四郎君       赤松  勇君    伊藤よし子君       大原  亨君    河野  正君       五島 虎雄君    多賀谷真稔君       中村 英男君    内海  清君       本島百合子君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 渡邊 良夫君         労 働 大 臣 松野 頼三君  出席政府委員         厚生事務官         (保険局長)  太宰 博邦君         労働事務官         (職業安定局         長)      堀  秀夫君  委員外出席者         厚生事務官         (保険局船員保         険課長)    戸沢 政方君         参  考  人         (日本身体障害         者団体連合会事         務局長)    黒木 猛俊君         参  考  人         (日本傷痍軍人         会本部参事)  奈良 栄三君         参  考  人         (国井社会保障         研究所長)   国井 国長君         参  考  人         (国立身体障害         者更生指導所職         能判定係)   田中  豊君         参  考  人         (全日本精神薄         弱者育成会専務         理事)     仲野 好雄君         参  考  人         (国立身体障害         者更生指導所         長)      稗田 正虎君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 五月十二日  委員小林進君及び木下哲辞任につき、その補  欠として山本幸一君及び内海清君が議長指名  で委員に選任された。 同 日  委員山本幸一君及び内海清辞任につき、その  補欠として小林進君及び木下哲君が議長指名  で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  身体障害者雇用促進法案内閣提出第五五号)  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第一一五号)      ————◇—————
  2. 永山忠則

    永山委員長 これより会議を開きます。  身体障害者雇用促進法案について審議を進めます。  本日、当委員会に御出席いただきました参考人は、日本身体障害者団体連合会事務局長黒木猛俊君、国井社会保障研究所長国井国長君、国立身体障害者更生指導所職能判定係田中豊君、全日本精神薄弱者育成会専務理事仲野好雄君、日本傷痍軍人会本部参事奈良栄三君、国立身体障害者更生指導所長稗田正虎君、以上六名の方々であります。  参考人方々には、御多忙中のところおいでをいただきまして、まことにありがとうございました。本日は、本法案について関係各方面の方々から忌憚のない御意見を承って、本委員会の審査の参考にいたしたいと存じております。  なお、議事の整理上、御意見は一人十分程度に要約してお述べをいただきたいと存じます。その後委員の質問にもお答えを願いたいと存じております。  それでは、順次御意見の御開陳をお願いいたします。まず黒木猛俊君。
  3. 黒木猛俊

    黒木参考人 最初に、忙しい中にもかかわらず、私たち関係者を直接お招きいただきまして、私ども意見をお聞き取り下さいますことに対しまして厚くお礼を申し上げます。  私は、日本身体障害者団体連合会を代表いたしまして、本法案に対する意見を述べさせていただきます。  意見を述べるに先だちまして一言申し上げたいことは、いろいろとこの政府案に対して私ども不満不備等を感ずるものでありますけれども、せっかくここまでたどりつきましたところのこの法案が、りっぱに誕生いたしますように、委員の諸先生方の御尽力をいただきたいと特にお願いを申し上げます。  私の申し上げる第一点は、皆さん御承知のように、この政府案が非常に障害者のいわゆるワク拡大をはかっておるという点でございます。身体障害者福祉法の第一級から第六級までで、すでに手帳の交付者が七十三万七千人に今日達しておるのでありますが、さらにワク拡大したために、膨大ないわゆる別表という障害者範囲が広がっていくのでありまして、そうなりますと、せっかく作られた法律適用を受ける場合に、重度身体障害者がその法律恩恵を受けることができないということを私たちは非常に懸念いたしております。従いまして、現在の政府案ワク法律を実施される場合には、障害別雇用の率を定めていただきたい。でないと、どういう結果が生じますかと申しますと、軽い身体障害者だけを採用してしまって、一定の率を満たすことによって、それぞれの国なりあるいは民間企業身体障害者の定められた範囲雇用をしたということになりまして、せっかく法律によって就職しようと念願しておりますところの重度身体障害者が、その法律恩恵からはみ出してしまうということが懸念されます。     〔委員長退席大石委員長代理着席〕 ぜひこの点を法律の中に規制していただいて、特に重度のこの法律を最も欲するところ、こういう法律ができなければ就職機会がないというような人たち就職できるように御考慮いただきたいのであります。  第二点は、受け入れ態勢であります。せっかく法律ができましても、たとえば国なり地方公共企業体身体障害者を採用しようと思いましても、資格がなければ採用できません。それから、民間企業等で採用いたしましても、それぞれに必要な技能を修得しておらなければ、これまた他の従業員等に対する劣等感も生ずるでありましょうし、また本人自身も、非常に精神的にも仕事の方でも苦しむと思うのであります。従いまして、民間企業、ことに地方公共企業によらず採用された場合に、それぞれその仕事に安んじた気持で従事できるような技能の修得、訓練ができるように御配慮を賜わりたい。次は、民間企業に対する保護と助成であります。せっかく採用されましても、身体障害者自体が非常に卑屈な感情を持つというようなことのないように、またそれぞれの企業体身体障害者を採用することによって、何だか損害をこうむっているのだというような感じを受けないように、国から、たとえば身体障害者法律が定めるだけ採用した場合には助成金を交付する、あるいはまた、必要な技能をさらに修得せしめる場合の費用の充当等を考慮していただく、こういうふうな点を第二点としてお考えいただきたいのであります。  第三点は、職種指定であります。特に盲人等は、御承知のように目が見えませんので、就職するということになりましても非常に困難でございます。今日盲人の大体五〇%は鍼灸あんまマッサージに携わることによって生計を立てておるのでありますけれども、パンマと称する婦人等の進出によって非常にその生活を脅かされております。盲人にとっては、あんまとかマッサージというような職業は、ほとんど唯一といっていいくらいの職業でございます。そういうふうな人たちに対するたとえば国なり大きな企業等が、健康保険を利用することによって、鍼灸あんまマッサージを必要とするような場合には、盲人等を優先的に使用するというふうな、特殊な仕事に対する職種指定をしていただきたい、こういう点を私どもとしては特にお願いしたいのであります。  それから、冒頭に申し上げましたこのワク拡大によるところの重度障害者就職の困難を招来するであろうという懸念でありますが、私ここへ資料をちょっと持っておりますので、この資料一つ見ていただきたいのであります。これを分けていただきたいと思います。——ただいまお手元にお届けいたしました資料は、これは厚生省で昨年の一月三十一日現在に作られたものでございまして、このカーブを描いている方を見ていただきたいのであります。このカーブを見ていただけばおわかりになりますように、視力障害者の三八・二%は一級と申しまして、ほとんど目の見えない人であります。それから言語障害はその五一%がいわゆる三級と申しまして、これは片手片足をつけ根から切断したような重度障害者と同じような人たちが半分おります。それから聴力障害とかいうのは世にいうところのつんぼでございますが、聴力障害人たちは二級がその半分であります。二級というのは、もう一上肢を切断して、片方の手がほとんど使えないという程度のやはり重度障害の方であります。それから肢体の不自由な人たちは、その占める割合が四級と申しまして、四級というのは大体片足下腿切断片手の全膊切断程度障害になりますが、これが三〇%でございます。それでその赤の鉛筆で線を引っ張ってありますのが各障害者平均でありまして、この平均によりますと、四級程度障害を持つ人が一番多いのであります。漸次下がりまして、六級というのが一番軽いのでありますが、六級は全体の一〇・九一%でありますから、全障害者の約一割が一番軽い障害でございます。一番多いのが四級でありまして、これが二五・四%でございます。この数字によってもわかっていただけますように、一級、二級というのは身体障害者雇用促進法という法律ができましても、ほとんどその恩恵をこうむることができない重度人たちでございます。一級、二級はほとんど法律ができましても就職のチャンスが得られないような、もうほとんど仕事のできないというような人たちでございます。従いまして、三級の人たち、四級の人たち、五級の人たち——三級が全体の一六・四八%であります。それから四級が二五・四%、五級が一八・六二%でございますが、これらの人たちが一番この法律を欲するわけでありますが、今度政府案によりますと、非常にワクが広げられまして、指骨関節の親指の中途から切断した程度でも法律適用を受けることになります。それから人さし指の指骨切断と、もう一つ小指でも間指でもよろしいのでありますが、障害があった場合には、これまた法律適用を受けることになります。それから片足の指が全部機能を喪失した場合、指が動かない程度であっても、法律適用を受けることになりますので、ここのところを一つよく御検討いただいて、とにかくどうしてもそういう法律ができなければ就職できないような、いわゆる私どもにいわせれば重度身体障害者就職できるように、特別の御配慮を賜わりたいのであります。六級以下の、政府厚生省で作られた資料による以外の推定的な数字を、私どもの方では持っておりませんが、おそらくは膨大な身体障害者がこの法律適用を受けることになると思いますので、重ねて申し上げますけれども、この点につきましては特に御配慮を賜わりたいのでございます。  最後に重ねて申し上げますが、せっかくここまで参りましたところの法律がぜひ成立をいたしますように、諸先生皆様方の特別の御尽力をお願い申し上げまして、私の意見を終わることにいたします。(拍手
  4. 大石武一

    大石委員長代理 次に日本傷痍軍人会本部参事奈良栄三君にお願いいたします。
  5. 奈良栄三

    奈良参考人 本日は身体障害者雇用促進法の御審議に関しまして、われわれの意見を聴取されて、これを今後の問題につきまして参考とされるという点につきましては、深く感謝の意を表する次第であります。  私は傷痍軍人立場からこの雇用促進法について意見を申し述べたいと思うのでありますが、この法律を見てみますと、傷痍軍人立場からいたしましても、問題点は多々ございます。身体障害者雇用制度につきましては、すでに欧米各国におきましては相当古い歴史を持っております。十年、二十年、ドイツの雇用法に至りましては、大正十二年にその基本法ができているというように、非常に長い歴史の上に築かれて現在発展をしているというのがその現状なのであります。ところが日本は、独立以来すでに相当の年数もたち、また福祉法が制定されてから足かけ十一年、また戦傷病者援護法ができましてからもすでに八年を経過しているこのとき、ようやくこの法律国会に提出されて、今その日を見ようとすることは、非常にわれわれは希望を持っているのでありますが、その中に触れて参りますと、たとえば傷痍軍人立場からいたしますれば、欧米各国のこの雇用制度というものは、戦争犠牲者というものに優先的な考え方を非常に織り込んでおる。ところが今度の法律を見ますと、全部を平等に扱っている。こういう点でわれわれは将来、戦傷病者に対する雇用の問題とか医療の問題、こういうものを含めまして単独立法をする必要があるのではないか、こういうふうに考えている次第であります。  またこの雇用法の中でわれわれが非常に重要視しているのは訓練であります。戦傷病者はその障害が後天的であるために、非常に就職機会が少ない。いわゆる技能を途中で中断をされて、新しい職業につこうと思っても、なかなかその技能がすぐ発揮できない、こういう意味において職業訓練というものに非常に重きを置いているわけであります。そこで、この訓練所施設の不足、また訓練の質の問題、こういう問題につきましても、今後さらに努力をお願いする次第であります。  それから、この法律ができましても、非常にわれわれが心配する点が一点あるのです。それは、大企業がこの身体障害者雇用する場合に、一応この法律では百名以上の企業体が対象になっておりますが、大きな企業は自分のところで生じた障害者をどうしても優先的に雇っていくのは当然であります。こういうために、その他の、その企業から発生した以外の障害者が除外される危険性もあるのじゃないか、こういうふうに実は心配をしておるのであります。  それから、今まで戦傷病者に対する援護福祉の向上、こういう面でいわゆる官庁の横のつながりを見ておりますと、非常にうまくいってない点が多多ございます。そこで一応この法律の二十四条では、職安福祉事務所の連絡、協力規定しておりますが、現在身体障害者に対しましては、身体障害者福祉司という専門相談相手がおりまして、いろいろな相談にあずかっておるわけであります。そこで、この雇用安定法ができました暁には、職安にも身体障害者専門相談相手を置いていただきたい。そして親身になって、ほんとに心から障害者の援助なり相談相手になっていただいて、そうして障害者が明るい生活のできるようにお願いしたいと思うのであります。  それから、法律ができましたとしても、その法律啓蒙啓発、こういうものがなされませんと、何らその法律は用をなしません。いわゆる運用の面も含まれますが、一応この法律の二十三条で雇用促進に必要な措置を講ずるという規定はございます。ところが、これが実際に行なわれないとするならば、せっかくあります法律意味をなさないで、知らないまま、または身体障害者が困っているという状態で今後も続くという問題が起こってくるわけであります。米国では毎年十月の第一週に身体障害者雇用促進週間というものを実施しておる。これは大統領が先頭になりまして、国をあげての雇用促進週間を実施しているのが現状であります。日本におきましてもこういう点も十分参考とされて、この法律啓蒙啓発に力を入れていただきたいと思うのであります。  このように問題点はたくさん出て参りますが、先ほどから言っておりますように、福祉法ができましてから足かけ十一年、援護法ができましてから八年を経過した今日、傷痍軍人を含めた身体障害者のためにこういう法律が提案されて、御審議をいただいているということにつきましては、傷痍軍人一般身体障害者は、明るい希望を持っているんじゃないかと思うのです。ただここで、この障害者雇用促進法だけだ、障害者援護が事足れりとするという考えがあるとすれば、これはとんでもない間違いでありまして、そのほかの福祉法または国民年金法、こういうものとの関連も十分御検討いただきまして、今後この法律が円滑に運用されるよう希望するものであります。ただ、この法律につきまして、いろいろな不備不満、そういうものがたくさんございますが、それらの点につきましては、この法律でも調査研究をしていくということも規定してございますし、聞くところによりますと、それらの研究費も本年は計上されておる、こういう話も聞いております。また本年は七月に身体障害者実態調査が実施され、十月には傷痍軍人実態調査が行なわれる、こういう結果に基づいて、これらの法律の悪い点を今後是正、改善をしていかなければならぬ面がたくさんございます。しかしながら、現段階として、多くの傷痍軍人、多くの障害者が、との法律成立を一日も早くしてくれという希望がたくさんございます。こういう点で、すみやかにこの法律を通過さしていただきますようお願いする次第でございます。(拍手
  6. 大石武一

    大石委員長代理 御苦労さまでした。  では次に、国井社会保障研究所長国井国長さんにお願いいたします。
  7. 国井国長

    国井参考人 昨年当委員会国民年金公聴会におきまして、私は公述人として意見を述べました際に、本年度から身体障害者雇用法を制定、実施してほしいということを要望いたしたのでございまするが、自由民主党、日本社会党民主社会党並び労働省、大蔵省の一方ならない御高配、御努力によりまして、身体障害者雇用促進法が提案されておりますことを、厚く厚く御礼申し上げまして、この法案が一日も早く可決、成立いたしますることを強く要望するのでございます。  身体障害音が人格の成長を確保されますためには、障害年金職業自立、この二つが補充しながら、総合的に施策されることを強く望むのでございます。官公庁本末身体障害者雇用を率先してするのに最もふさわしいものであるのでございまするが、残念ながら、日本におきましては官公庁雇用がはなはだよくないのでございまして、わずかに職員数の〇・七%、イギリスにおきましては四・七%を保っておるのでございます。また大事業所におきましても、日本ではわずかに〇・七%くらいでございますが、イギリスにおきましては三・一%の雇用率を保っておるのでございます。このようなために、やむなく多くの身体障害者は、零細事業主の恩情に救われまして、低賃金で不安定な生活にあえいでおるというのは、厚生省労働省実態調査にも明らかなところでございます。ただ一つ日本でも例外的に非常に高い雇用を示しておりますのは、財団法人の鉄道弘済会でありまして、ここでは、両足と片腕がない、あるいは両腕がないというふうな重度障害者二十七人を含めまして、四百四十五人が雇用されており、その雇用卒は二・七%でありまして、これはイギリスその他の先進諸国の水準に達しておるのでございまするが、これはひとえにその創立者でありまする堀木鎌三氏あるいは早川会長滝理事長長尾理事その他理事者管理者の一方ならない理解と努力、さらに一度職場を得ました身体障害者職員がみずからの努力と研さん、それから同僚職員協力によりまして、この高い雇用率が維持されておるのでありまして、それをまた別の面からささえておりますのは、同会が民間唯一施設として持っておりまする研究施設で、作業設備改善あるいは作業補助具支給を行ない、あるいは就職後の不断の指導によりまして、これが保たれておるのでございますので、範を外国に求めるまでもなく、日本でもやろうと思うならばできるのですが、従来政府は怠慢で、なかなかこれをやってくれなかったのでございます。     〔大石委員長代理退席大坪委員長代理着席〕 今回、幸いに先生方の格別の御努力によりまして、この法案が本国会に提案されたのでございまするが、政府並びに与党の御努力にかかわらず、この法案の中身はすこぶる貧弱で、裏づけのないものでございます。しかしながら、この法案は画期的な立法でありますることは、私ども認めるにやぶさかでないのでありまして、すみやかにこれを成立して、ILOが第三十八総会におきまして勧告いたしましたものにこたえていただきたいのでございますが、若干の点につきまして可能の範囲で修正して成立を賜われば、なお幸いでございますので、その修正点につきまして意見を述べさしていただきたいと存じます。  第一点は、新たに官公庁、大企業雇用されまする身体障害者の少なくとも一〇%以上、三級以上の重度障害を含めまして一〇%以上は必ず雇用する、こういうふうにありますると、毎年の官公庁の新しく雇い入れまする人員十五万人に対しまして一万五千人、従業員百人以上の大業所が毎年雇い入れますところの約二十二万人の一〇%で、これが約二万二千人、合計いたしまして約三万人の就職が可能になるのでございます。ただ、これは重度身体障害者の場合、特に視覚障害でありますとか肢体不自由の場合等は、特に作業設備改善でございますとか、作業補助兵支給というようなものが伴いませんと、官公の役所あるいは民間事業主の善意がありましても、なかなかそれが雇用の場に受け入れられないことになりますし、一たん雇用されましても、離職するというふうな危険がございますので、官公庁職場あるいは民間事業所におきましても、身体障害者雇用にふさわしいような作業設備改善をしていただく、あるいは作業補助具支給をしていただく、こういう点を御配慮願いたいのでございます。法案によりますると、こういったふうな作業補助具あるいは作業設備について事業主に助言をすることができるということが、たしか第四条か五条にございまするし、また労働省がそういったふうな研究をするということも書いてありまして、本年度若干の予算が組んでありますのは、非常にこの点に御配慮されておるのでございますが、ただ研究だけではいけないのでございまして、少なくともこういったふうなものを各雇用主にやることを義務づける、同時にこういったふうな作業設備改善、あるいは作業補助具支給いたしました民間事業主に対しましては、政府がその経費を補助する、これをお願いいたしたいのでございます。先生方承知のように、ILOの第三十八回総会におきまする職業更生に関する勧告には、この補助規定があるのでございますので、ぜひこの補助を実施していただきたいと考えるのでございます。これなくしては、雇用促進はなかなか困難であろうと思います。もう一つは、先ほど申し上げましたような雇用促進いたします場合に、この作業補助兵あるいは作業設備改善と伴いまして、これを指導いたしますために、職業安定所身体障害者職業指導官という専門職員を置きまして、この業務に当たらせるとともに、他の職員指導をしていただきたいのでございます。身体障害者の場合、特に重度身体障害者雇用に対しましては、それを取り扱う方々が非常に高い専門的な知識と、深い人間愛に燃えていなければ、なかなかこれを促進することができないのでございます。法案によりますと、就職後の指導職業安定所がやることができると書いてございまして、大へんけっこうなことでございますが、これがあってこそ、初めて雇用の場に迎えられました身体障害者が、その職場に安定することになりますので、ぜひお願いいたしたいのでございますが、残念ながら法案には、この身体障害者職業指導官規定がないのでございます。大へん残念なことでありますので、これはぜひ置いていただきたいのでございます。それは別の面から申し上げましても、労働省の御調査によりましても、現に身体障害者雇用を求めております者は約九万八千人ございます。その九万八千人のうちの七六%はまだ職業安定所に求職の登録をしていない方々でありまして、約七万人が今後求職登録をするであろうとわれわれは予想されるのでございます。なおこの求職登録をしております方々のうちの約四五%程度は、身体障害等級三度以上の重度障害の方でございます。しかるにこういうふうな画期的な法案が出されるにもかかわらず、本年度におきまして、職業安定所関係職員の増員はきわめてわずかでありまして、わずかに五百人程度職業紹介官というものが置かれるのでございます。これも一進歩でございますが、これは身体障害者職業紹介を専門に扱う方々ではないのでございます。これをイギリスが置いておりますように、また日本福祉事務所身体障害者福祉司を置きまして成績を上げておりますように、ぜひともこの身体障害者職業指導宮を置いていただきたいのでございます。なお予算の措置におきましても、はなはだ不十分でございまして、今回の画期的なこの法律を施行いたしますに、予算はわずかに九百九十三万円でございまして、身体障害者職業訓練所の費用を合わせましても、ようやく一億三千万あるいは一億八千万円程度でございまして、イギリスが本年度三百六十万ポンド、日本の金に引き直しまして三十六億円に比較しまして、あまりに少ないのでございまして、政府がこういうふうなけっこうな、画期的な法案をお出しになったにもかかわらず、予算的な裏づけもない、それから事務機構も整備されない、これでは困るのでございまして、ぜひ予算の裏づけもしていただきたいのでございます。本年度予算では、国民所得に対しまして税の負担率は、国税、地方税を合わせまして二〇・五%でございますので、明三十六年度では減税が必至であるということを伺っておりまして、減税もけっこうでございますが、身体障害者のような社会的にあるいは国家的に多くの施策を要するもののためには、そういったふうな減税の一部を振り向けても、ぜひともこの施策を強化していただきたいのでございまして、作業設備改善の費用でありますとか、あるいは身体障害者職業指導官を置きましても、それに要します経費の増額はわずか一億円足らずでございます。本年度先生の格別の御高配によりまして、社会保障あるいはその他関係の費用の国家予算の中に占める比率は二一%、最も広い関連対策費を入れまして広義の場合でも二〇・九%になったのでございますが、イギリスの三〇%に比較いたしますと、日本の社会保障関係の費用はまだまだ少ないのでございますし、国民所得に対する日本の社会保障あるいはその他関連費も七・八%程度でございまして、イギリスの一三・三%に対しまして非常に低いのでございまして、ぜひとも本年度の補正予算あるいはそれができなければ来年度の予算で、この身体障害者雇用法関係の予算として一億円程度は、先生方並びに政府当局の御努力によりまして確保していただきたいのでございます。  その次には、政府と並びまして民間の大事業所雇用拡大できるような方策をするために、法案の第十四条を御修正願いたいと思います。  その次には、重度障害者の場合には、この法案ではわずかに指定職種で若干考えられておるのでございますが、イギリスの実例に徴しましても、指定職種に従事しておりますものはわずかに五百人足らずでございますので、よほど指定職種ワク拡大をしていただきませんと、重度障害者は救われないのでございますので、やはり重度障害者もできるだけ一般職種の中で雇用を安定するようにしてほしいのでございます。そのためには、重度障害者を雇っていただきます場合は、先ほどのような作業設備あるいは作業補助具と関連いたしまして、雇用率を算定いたします場合に、重度障害者を一人雇った場合には二人にする、あるいは重度障害者のかわりにその妻を雇いました場合には、それを半人に計算するというふうな御措置も、法律あるいは政令の中でぜひお願いいたしたいと存ずるのでございます。  その次に内部障害の問題でございますが、今回の法案の別表では、身体障害程度が非常に広範囲に広げられるようになったのでございます。これはおそらく政府といたしましては、身体障害があり雇用に支障のある者はできるだけこの法律恩恵を及ぼそうというお考えであったと思うのでございますが、このために、重度障害者がどうかすると不利な条件になりまして、軽い者が雇われるというようなことになりかねないのでございますので、こういう点におきましては、先ほど申し上げましたような措置をおとりいただきますとともに、内部障害者につきましては、今度の法案でも別表の中で、その他障害の著しいものはそれに準じて云々というだけで、具体的に列挙または例示してないのでございまして、これは、こういった法律恩恵を受けたいというふうなことを要望しております内部障害者にとりましては非常にさびしいことでございますので、これもはっきりと法律あるいは政令の中に、これこれの内部障害については適用するのだということをお書き願いたいと存じておるのでございます。  以上のような七つの点を御修正の上、一日もすみやかに可決、成立を賜わりますようにお願いいたしたいと存じます。  あと若干つけ加えさせていただきますと、適応訓練という制度をお作りいただきましたことは大へんけっこうなことでございまして、これによりまして身体障害者雇用の場に安定することになりますので、これは、この法案の中でただ一つ具体的にこの措置をはっきりとしていただきました点で、大へん政府与党の御努力に感謝いたしますが、残念ながら本年度の人員はわずか五百人でございます。先ほど申し上げましたように、雇用希望者は九万八千人、そのうち現在全く職業のない者が三万八千人ありますのに、この五百人という数字はあまりに貧弱な数字でございますので、これはぜひ補正予算あるいは来年度予算で大幅に増員をしていただきたいのでございます。  その次に、職業指導あるいは更生指導の種目、期間、定員、こういうような点につきましてもぜひとも強化をいたしてほしいのでございます。  それから、今度の法案では、政令、労働省令あるいは審議会にいろいろと譲られておるのでございますが、今度できます身体障害者雇用審議会におきましては、その審議会の機能が十分に果たされますような御措置を賜わりたいということを特に要望いたしておきます。  以上によりましてこの法案が幸いに一日も早くできて実施されるといたしましても、なお不十分の点がございますので、身体障害者雇用あるいは職業訓練あるいは自画、そういうようなものを全部含めました身体障害者職業保障法というような法律に近いうちに完成をしていただきたいと思いますし、あるいは国民年金法を改正しますとか、最低賃金法を改正いたしますとか、さらには業務災害年金制度を確立いたしまして、一歩々々福祉国家に接近していくような御高配をぜひ賜わりたいと思うのでございます。そのためには、はなはだ数は少数で残念でございますが、社会保障あるいは職業安定関係に特に御熱心な先生方国会におられるのでございますから、こういう社会保障あるいは職業安定に特に御熱心な先生方には長く長く国会に議席を占めていただきまして、一歩々々法律の改正あるいは予算の増額をしていただき、こういうようなものを完成させていただきまして、われわれが生活を楽しめるような福祉国家を建設していただきたいということを特に特にお願いいたします。  ぜひとも先生方の格別の御高配によりまして、可能な範囲で御修正を賜わりまして、一日も早くこの法案が可決、成立されますように特にお願いをいたします。(拍手
  8. 大坪保雄

    大坪委員長代理 ありがとうございました。  次に、国立身体障害者更生指導所職能判定係田中豊君にお願いいたします。
  9. 田中豊

    田中参考人 私は専門は心理学でありまして、心理学的な判定によりまして、からだの不自由な人たちを実際に更生指導させて社会に送り出すというような職域に勤めているのでありますが、この法案国会にかかるというよなことが新聞に載りましたために、私のところにもからだの不自由な人かう何通かのたよりが参りまして、私のような者はどうだろうかということを私の手元まで問いかけてきております。     〔大坪委員長代理退席、委員長着席〕 それらの人たちを、ここに、用意されております法案と照らし合わせて考えてみますと、先ほどの黒木さんの御意見、あるいは国井さんの御意見、その他の先生方の御意見と同じように、大部分の人がこの法案のままでは適用を受けないのではないかというような気がするのであります。  黒木さんのお配りになりました障害種別・同程度別・身体障害者手帳交付数というのがありますけれども、その中で、現在の社会情勢の中で雇用の対象となることがほとんど不可能だと考えられるものは一、二級の者であります。それ以下三級、四級、五級、六級は、必ずやこの法案によって雇用の対象となり得るというふうに彼らは考えるのであります。自分たちこそ就職したいと考えているのだから、こういう法案が用意されれば私たち就職できるのではないかというふうに考えるのでありますけれども、残念なことに、この法案のままでは彼らは就職できないというような実情にあると考えます。実際にこういう雇用促進法が必要なのは三級、四級、五級といわれるような人たちであります。雇用促進していく実際の働きをするのは、これらに該当する人たちが一人でも多く社会に雇用されるかどうかということにかかっているだろうと思います。従って現在のままの法案ではこれらの人たちには恩恵が及ばない。私の手元に参りました手紙に対しても、私は返事を出すことがむずかしいというふうに思わざるを得ません。従ってこの法案に用意されております別表の身体上の欠陥の範囲ということに非常な問題を持っておるというふうに私は考えるものであります。この範囲を考えてみますと、政令によっていろいろとパーセントがきめられるようでありますけれども、実際にそのパーセントの決定次第、あるいは別表がこのままで通るというようなことを仮定いたしますと、実際上は雇用促進にならないのではないかというふうに、私は過去十年ばかりの経験を振り返ってみて思うのであります。なぜなうば、ここの別表にあるような身体障害者というものは非常に数が多うございますから、たとえばどのような官庁でも五百人なり千人なりといったようなものをお調べになると、かなり高いパーセントで雇用されているという実情であります。そうしますとそのパーセント次第によっては、わしのところはすでにあのパーセントを上回って雇用しているのだから、今さらもう身体障害者を雇おうとは考えないというふうに、かえってこの法案自身が身体障害者雇用を妨げるというような形になりかねないというふうに私は思います。従ってこの別表については十分考えていただきたい。実際に雇用促進されなくてはならない人たちは、この別表でいう範囲の中、ほんとうに困っていて、黒木さんのおっしゃったような一、二級の人は現在の状態では無理として、三級、四級、五級、六級の人の中には、私の経験からして十分社会で働ける人がいる。そういう人たちがほんとうにこの法案を望んでいるのだ、そういうふうに私は思います。従って現在のままでは実際上の効果はなかなか望めないのではないかというふうに思います。  もう一つ別表について意見がありますのは、別表には全体的にいろいろの障害が永続する、固定しておるということが前提になっておるようであります。これは国民年金の中の障害者福祉年金というものがありますけれども、その福祉年金の診断の場に私が立ち会って医者の意見などを聞いてみますと、実際にはもっと改善されるような余地のある障害者が年金法の適用を受けておるような実情であります。これらは特に永続するか固定するかというようなことについて、実際に専門家の意見を何らかの形で盛り込むということがない限り、現在の社会情勢の中では、必ずしも彼らの福祉ということを念願するこの雇用促進法が、ほんとうの意味で役に立つということにはならないのではないか。従って永続であるか固定的であるかということについては、必ず専門家の意見をそこに加えるということが必要であろうと思います。  なおこの法案全般を私が読ませていただいて感じましたことは、第三条あるいは第四条、第五条を見ますと、労働省の所管しておられますところの公共職業安定所に働いております身体障害者——国井さんは身体障害者指導官ということをおっしゃいましたけれども、実際には身体障害者係をしておられる方が各安定所にいらっしゃいます。その方たちの知識なり経験なり御努力なりというものが、実際のこの法案の骨子を成しております。この法案をほんとうに意味のあるものとするかしないかということは、この職業安定所に働いておるところの身体障害者係の人たちの采配いかんにかかってくるものだというふうに考えられます。ところが私は仕事の性質上、職業安定所に働きますところの身体障害者係の方の中に多くの知り合いを持っておりますけれども、それらの人たちは現在の公務員法の範囲内では、その同じ仕事を安心して長くやることが困難であります。同じような係をずっと続けることは、待遇なり何なりという点で行き詰まってしまうというふうになっておりまして、出世する人間はもっと係長になるとか主任になるとかいうふうなことをしなくてはならぬ。そのためにはその職責を続けていくことは困難であるということのために、私たちがせっかく知り合いになって、私たちが持っておるところのいろいろな知識を交換したりして、ようやっとほんとうに話がわかって下さるなと思うころには、すでにどこかの主任におなりになったり係長におなりになって、いらっしゃらない。また新しい人がおいでになる。私たちは同じ職責をずっと続けておりますから、そういうことを数限りなく繰り返してきたということはまことに残念だ。あの人たちがここにいてくれたらなあということを常に考えます。従って安定所に働きますところのこの法案の実際上の働きをする身体障害者係の人が、ほんとうに安んじてその職責を全うすることができるようにはっきり規定づけてあげることが必要なのではないか。今のような公務員法の中でこういうふうな職域を全うするようにすることは、家族のこともあり、生活のこともあって、その人の人生観あるいは情熱なりというものだけではささえられない。私はこの仕事を続けていきたいと思うけれども、やっぱり給料も上がりたいし身分も上がりたい、そういうことを考えるとやっぱり女房もそれには反対をする、従ってやむを得ぬ、田中君やめるぞというようなことを、私は何回か行われたのであります。従ってこの法案をほんとうに意味あらしめる身体障害者係というものが、もっと知識や経験を十分に持てるように、この法案に盛り込んでいただきたいということを考えるのであります。従って私の意見を要約いたしますと、別表がきわめて問題であるということを私は考えます。もっと他の法律であります身体障害者福祉法というものにあります別表となぜ一致させることができないのか。日本ではどういうことか知りませんけれども、いろいろの身体障害者についての等級があります。労働省ではこうやっている、労災年金ではこうやっている、身体障害者福祉法ではこうやっている、またまたここで新しい別表をお作りになる。それらが非常に錯綜しております。こういうような実情は、他の法案とも関連がございましょうけれども、これは統一していただいて、実際に身体障害者雇用促進法の別表がどういうふうな形で身体障害者の個々の人に適用されるかということを考えていただきたい。この別表のままでは実際に雇用ざれることが困難ではないか。かえって身体障害者を拒否する法案になりはしないかという危惧を持つこと。大体以上私は、別表でいうところの永続するとかあるいは固定するとかいうようなことで、実際に専門家の意見をどの程度に重んじなければならぬかというようなことが、実際福祉にどのように影響するかという点で問題があるということと、別表それ自身に問題があるということと、実際の実効は身体障害者係が持っているのだから、その身体障害者係をもう少し安定させるような方法がぜひ必要なんじゃないか、以上大体三点について意見を申し述べます。  私は心理学が専攻でありますから、もう少し心理学的な立場から意見を申し述べたいというふうに思いましたけれども、この参考人としての意見の聴取を求められたのがきのうであります。しかも夕方でありましたので、実際心理学的な立場から統計をとりあるいは分析をいたしまして皆さんに意見を申し述べることができないのをまことに残念に思います。(拍手)     〔委員長退席大石委員長代理着席
  10. 大石武一

    大石委員長代理 次に、全日本精神薄弱者育成会専務理事仲野好雄さんにお願いいたします。
  11. 仲野好雄

    仲野参考人 本日は日本で三百万人といわれる、さらにみずから訴えることができない、こういう者の親にかわりまして、五百万人を代表して私をこの席に呼んでいただいたことを非常に光栄に存ずる次第でございます。  なおこの機会に、三月の末に精神薄弱者福祉法と申します、私どもの子供が全然法律のそとにありましたのに、初めて法を作っていただきました皆様方に対して心から御礼を申し上げます。  私が本日申し上げます意見としては三つあるわけでございまして、その第一は、精神薄弱者は学問的にも身体に障害あるものの一つである。従ってぜひこの法律の保護適用を何らかの形式で受け得るようにしていただきたいと思うことであります。現在の医学では、精神薄弱は人間にとって一番大切な大脳皮質部が障害されたものであるといわれているわけであります。従いまして、世界じゅう先進国では、どこでもみな身体障害者に関する諸法律において精神薄弱者をも含んでおるのでございます。このたびヒューマニズムの大局的見地から立法されるこの法案には、何らかの形式で精神薄弱者をぜひ含んでいただきたいというのでございます。しかしながら、私は精薄者の全部にこの法律適用してくれというのではございません。御存じの通り、精神薄弱には大きく分けて三つございまして、魯鈍といい痴愚といい白痴といいます。ピンからキリまであるわけでございます。私はこの世界共通に教育可能——日本では文部省が担任しておりますけれども、一応魯鈍と申しますか、これは精薄者の九割を占め、知能指数は大体五〇以上を申すわけでございますが、私はこの教育可能の者だけをこの法律適用していただいてもいいのじゃないか、こういうように割り切って考えております。決して私は御無理を申し上げるつもりではないのでございます。現在非行青少年や売春婦の相当部分を精薄者で占めておりますことは、もう皆様方御存じの通りでございます。それらはみんな精薄のうちでも知能の高い者でございまして、そしてしかも一般の中学校あるいは特殊教育の中学校、こういうものを卒業したけれどもどこにも就職ができない、家庭や社会ではばか者扱いされる、じゃま者にされる、劣等感からくる欲求不満の反逆的精神に燃えて、ほかに何も楽しみがないのだ、気晴らしもないのだというような結果からこれらの問題が、出てくると私は考えております。どうぞ一つこういう知能程度の高い、教育の可能の精薄者だけでよろしゅうございまするから、こういう者にこの法律のあたたかい恩恵を与えていただくようにしていただきたい。ことに私がこれを強調さしていただきたいと思いますことは、現在産業がオートメーション化されまして、単純反復性の仕事が非常に多くなりまして、こういうことはむしろ精神薄弱者の方が一般の知能を持った者よりは能率がいいんだという事実でございます。これをよくお含みおき下さいまして、精神薄弱者もぜひこの法律に含めていただきたいということが第一でございます。  第二は、精神薄弱者の雇用の現況でございます。昨年度文部省と教育大の杉田先先が全国の特殊学級の中学の卒業生、昭和二十八年に卒業した者、三十一年に卒業した者、三十三年に卒業した者、こういうように年度間隔をおきまして、全国五千名の卒業者を調査されました資料が私の手元にあります。その五千名のうちで資料の集まったのが千五百名でございまするが、千五百名の資料を拝見いたしますと、就職に成功した者が五百二十七名で五一・七%を占めております。何とかやっている者が百三十六名で三一・二%でございます。不明な者が百十二名の一一%、就職したけれども失敗した者、これが百二十二名で一二%でございます。そのほかは特別な者、すなわち死んだ、あるいは結婚してしまった、こういう者が二十二名で、二・一%でございまして、全部の卒業生の調査可能の者の約七割が就職をされている。そのうちの五割は成功しておる。問題はあるが何とかやっておる者が四分の三というわけでございますので、私はこの機会におきまして、精神薄弱者もりっぱな労働力があるということがこの事実によって証明されておる、こういうことを申し上げたいのでございます。ここに私が付言さしていただきたいことは、そんなに雇用率がいいなら何も法律で精薄者を心配しないでもいいじゃないかという反問が起こりはしないかということであります。これに対しましては、私はその一つは、この資料で五千人のうち、未報告の三千五百人がどうなっておるだろうか、また失敗をした百二十二名あるいは不明の百十二名が家庭や世の中に非常に大きな負担をかけ、国もその跡始末に非常に大きなお金を使わせられておるということに対する、ヒューマニズム以外の実質的面における反省が必要ではないかと思うのでございます。  その二は、この程度雇用に持ち込むために、法の保護がありませんでしたので、特殊教育の先生や私たち父兄はなみなみならぬ多年にわたる非常な苦労の累積なんでございまして、大体今の就職率のうちの四九・五%は特殊教育の先生方のお骨折りによるものでございます。     〔大石委員長代理退席委員長着席〕 三二・九%は保護者の縁故なり、骨折りによるものでございまして、職安のお世話によってできたのはわずか九・一%でございます。  もう一つは、今学校では文部省や地方公共団体からの補助金に親たちがお金を出し合いまして、学校工場というようなものを作りまして、そしてここへ訓練の進んだ者を校外実習生という形で、職親にお願いをいたしまして、ちょうどこの法律の適応訓練に相当するものでございますが、そういうことをやりまして、卒業とともになるべくその学校時代に通っておった職場に雇っていただくというような形式を私どもはもう多年とってきているのでございます。先ほど九・一%と申しましたけれども、最近は職安がぼつぼつと協力的になられまして、ことに東京都におきましては非常によくやっていただけるようになりまして、私どもは感謝いたしておるのでございます。こういう見地からも、この法案のうちにぜひ精薄者への適用を考えていただいて、もう少し先生や観たちが苦労しなくて、自然な形で精薄者にも雇用の道が開けるようにしていただきたい、こう思うのでございます。  三番目には、精薄者についての正しい御理解、特にこういう子供たちは働く意欲を十分に持っているということでございます。この正しい御理解を願いたいということにつきましては、精薄者はよく精神病者と間違えられておるのでございます。くどいことはやめますが、最近先進諸国では精神薄弱という言葉を使っておりません。知能遅滞と申しております。簡単に申せばばかと気違い、これは混同していないのだということがその一つでございます。その二は、よくジャーナリストに言われるのでございますが、精神薄弱者は善人と悪魔が同居しているのだ、こういうことを言われるのであります。だから、いつ悪魔に変わるか心配だ、こら言われるのでございます。しかし私自身精薄の子供を持った体験から見ましても、全国を歩いてみましても、精薄者というものは、もう根っからの善人でございます。ただ家庭においても劣等感を与えられ、どこに行ってもいじめられる、この反抗心から物をぶちこわしてみる、あるいは火をつけてみるというようなわけなのでございます。女の子は何も楽しみがない、紙袋を張らしても、一日朝から晩までやっても一カ月千円しかかせげない、ところが売春婦に売られれば一晩に何千円になる、雇用主としてみれば頭が少し足りませんから搾取の対象になる、お客様としてみれば非常にサービスがいいというようなわけで、この精薄者の売春婦は絶対に跡を断たないという心配を私どもは非常にしているのでございます。  それで私の子供でございますが、当年二十四才でございます。学校を二年おくらせまして普通の小学校を卒業いたしまして、十五才になっても不器用で庭一つ掃けなかったのでございます。幾ら教えてもラジオ体操もやりません。その子供が、養護学校に入れて特殊教育を受けて二年間、それから職業指導三年半の後においては、現在りっぱに毎月何千円のお金をかせいで、皆様方がランを植えても恥ずかしくないよらな植木ばちを毎日作っております。なお、今度練馬にできました学校法人の旭出養護学校では、大企業の会社から学校工場をここに作っていただきまして、その大企業の部品をそこの精薄者のみでどんどん作ってまた返すというようなこともやっております。先般私は精神薄弱者あるいは身体障害者で、生活保護を受けて一生そこに住まれるようなよぼよぼの方たちの救護施設を見に参りました。ちょうど日曜でございましたけれども、翌朝起きて構内を散歩してみると、もう六時前からコンクリート・ブロックを作る工場で一生懸命に働いている。私は非常に不思議に思いました。しかもみなにこにこして働いている。園長に聞きますと、いや実はね仲野さん、機械が一台しかないので、半日ずつ交代でこの機械を使っているのだ、彼らには金をやってはいけませんから、働いた量によってパン券をやる、券をやる、そうするとそれを持って酒保へ行って、パンを買って食ら、ジュースを飲む、それだけが楽しみで、もう朝五時前から仕事をさせてくれといってきかないのだ、それで午前が終わると午後の者はもう待っている、こういうわけで、知恵のおくれた人々も非常に働く意欲を持っているわけであります。いや、実はこれが最大の彼らの楽しみなんでございます。やはり彼らといたしましても人間でありまして、劣等感を除いてもらう、それはうちでごろごろしておっても、うちでも劣等感は除けません。そのときに何か自分の精神を燃やし、何か働く意欲、このエネルギーを消耗させる仕事に取っ組んで、しかもそのことが何か世の中のお役に立っているのだということを知りました精神薄弱者は、ほんとうに何事も望みません。決して悪いことはいたさないのでございますから、どうぞ一つこの法律で何とか知恵のおくれた者も、どういう形式でも私はよろしいと思います。ぜひ一つ彼らにも働く喜び、そうした生きる喜びを与えていただいて、しかも社会の一員としてりっぱにおれはお役に立っているのだという自信を与えていただくように、法律なりあるいは政令で、はっきりその中に精神薄弱者を入れていただきたい。これを全国三百万人の精神薄弱者にかわりまして、また五百万人の親たちにかわりまして、私の意見を申し述べると同時に、一つお願いを申し上げた次第でございます。  ありがとうございました。(拍手
  12. 永山忠則

  13. 稗田正虎

    稗田参考人 今回身体障害者雇用促進法が提案されましたことは、この身体障害者の更生指導に従事しております一員として、非常にうれしく思っております。このことは身体障害者のためにまことに御同慶のことと思います。  この法案を読みまして、非常にけっこうなものだと思いますが、すでに諸外国におきましては、第一次世界大戦後、こういうふうな法案が出されまして、いろいろな問題が起こっております。それはこの雇用促進方法としまして、この法律による強制雇用の方法と、それから宣伝、啓発によるところの事業主の愛国心あるいは博愛心に訴えて、自発的に雇用促進するというこの二つの方法がとられているようでございます。このあとの方はイギリスでやられたのでございますが、このイギリスのその後の状況を聞きますと、単に愛国心だけではなかなか身体障害者雇用に持っていけない、やはりこれは強制雇用をしくべきだということがいわれております。ところがその強制雇用をしきました国でも、これにいろいろ欠陥ございまして、単に雇用主の犠牲と負担において身体障害者を雇うということは、障害者が冷遇をされるという結果になる。それで、これは障害者がどんなところに配置されたかということが問題でございまして、法律ができますことは、単に雇用する事業主の義務は果たされますが、障害者福祉が得られたかどうかということが問題になるわけでございます。それで、今度この雇用促進法ができた場合、その雇用促進法というそれだけで切り離しては私はあまり成功しないのじゃないか。ご存じのように、この身体障害者の問題は、単に労働問題だけで解決いたしませんで、これはいろいろの専門の業務のチーム・ワークによって初めてうまくいくわけでございまして、この身体障害者雇用促進する場合には、やはり雇用主がその人を雇ったことが非常にフラスになる、しかも障害者も非常に有利になるということになりませんと、これは永続性がないのじゃないか、こう考えます。そのためには、現在厚生省でもあるいは労働省でもいろいろおとりになっておりますところの施策ございまして、厚生省には更生指導業務として、全国に四十一カ所の施設がございます。また職業訓練施設というものは、これは労働省がお持ちになっておりまして、こういうものを通じて身体障害者を未訓練のままでなくて、その人の持っておる潜在能力をフラスにしていく、そうしてその人の適職において、身体的にあるいは知能的にあるいは精神的の部面で、あらゆる部面でその人を大きくプラスにしまして、そうしましてこの選択的な職業あっせんによっていきました場合、初めてこの雇用促進法というものが成功するのであるということがいろいろ考えられるわけでございます。このことは、国連のリハビリテーションのセミナーでも特にそういうことが強調されておるわけでございます。それで、身体障害者雇用促進というものを大いにやろうという場合には、その前提として、障害者を、やはり既存の施設、そういうものを強化して、必ずそういうものを通って社会に出すということが、ほんとうに障害者のためになるのじゃないかということが考えられますので、できるならば、そういうふうな方策をさらに強化をしていただきたい、こう考えるわけでございます。  それから、いろいろこの法案の中に出てきております雇用指数の改善とか経費の補助の問題、これは非常にけっこうなことでございます。ぜもやっていただきたいと思いますが、さらに障害者の中で手足を切断している人がたくさんございますが、こういう方が義肢というものを持ちます。ところがこの義肢というものは、今度の戦争によりまして非常に進歩いたして参りまして、理想的な義肢をつけて、その切断した障害者訓練いたしますと、文化的な職業においてはほとんど健常者と変わらないということがいわれているわけでございます。従いまして、日本ではまだ非常におくれておるわけでございますが、こういう部面の技術を進歩さしてこの切断者に与えますと、今までよりもより以上にその職業能力を向上することができる、言いかえますと、雇用が容易になるということでございます。しかしそのためには、やはり義肢を与えるだけでなくて訓練しなければならない。訓練をすることが前提でございますが、そういう職場につきました障害者につきましても、技術は日進月歩いたしておりますので、こういうものを支給する場合に、非常に短時間でけっこうでありますから、有給の訓練期間を認めてもらうというふうにいたしますと、これは非常に障害者福祉が得られますし、そのことは雇用主にも大いにフラスになるというふうに考えられます。  それから先ほどからいろいろ述べられておりますところの重度者の問題でございますが、私もやはり軽傷者で職域が満たされて、再度者がこのワク外にはみ出るのじゃなかろうかということを心配いたします。もちろんはみ出るような能力しか持たない人もあると思いますが、更生指導の技術とか、あるいは職業訓練の技術、あるいは義肢、あるいは装具、あるいは作業設備改善、あるいは補助具、こういうものが非常に進歩して参りまして、また選択的な職業あっせん業務というものが非常に進歩して参りますと、たとい両足ない人、あるいは両手ない人でも、適職においては健常者とちっとも変わらないような、さほど能率の劣らない作業ができるということがいわれるわけでございまして、われわれもそういう実例をいろいろ持っているわけでございます。こういうことでございますので、能力判定によって、重度者といえども、その適職がある場合には、やはり一般の雇用ワクの中に織り込んでいくというふうに御配慮をいただきたいというふうに考えます。産業の形態というものは、原始的な手足を酷使する状態から、機械の管理的な作業、単なる管理的な作業、あるいは非常にこれが分化され、容易になってきているわけでありまして、いろいろILOななかの報告を読みますと、身体障害者は必ずしも職業障害にならないということを言っているわけでございまして、われわれもある意味でそれを十分納得できるわけでございまして、むしろそういうふうな方向へ逐次研究を進めまして、しかもわれわれのこういうふうな身体障害者に対する更生指導の技術、あるいは職業訓練の技術というものを向上していきまして、より身体障害者が幸福になるように、しかもりっぱな地域社会を建設していく堅実な一員として、生の喜びを感じると申しますか、そういうことができるように、いろいろ御配慮をいただきたいと思います。そういたしまして、この法案が一日も早く成立いたしまして、施行されるということを切に望みます。(拍手
  14. 永山忠則

    永山委員長 以上で意見の開陳は終わりました。  次に参考人に対する質疑を許します。本島百合子君。
  15. 本島百合子

    ○本島委員 参考人のそれぞれの方々からいろいろ有益な御意見が述べられたわけでございますが、精神薄勝者の場合は、この間福祉法案を通しますときにいろいろ論議され、経済的な裏づけをしなければいけないのじゃないか、こういう意見が多く出されておりますし、今後もそういう線に沿って努力されることだと思うわけです。  その他の方々の御意見のおもな点は、大体重度障害者雇用ワクからはずされるのじゃないか、この意見が多かったと思うのです。この点につきまして国立身体障害者の更生指導所長さんに伺いますが、身体障害者の場合には職業障害にはならないと言われましたが、この考え方は各委員とも持っているわけです。ただ問題は、訓練所において、それだけ精巧な装具なり、あるいはそれにマッチできるような指導というものは行なわれているだろうか、こういう不安が私たちにあるわけなのですが、その点どうでしょうか。
  16. 稗田正虎

    稗田参考人 私はこの点は全部が全部重度障害だとは申しませんが、ただ重度障害によって、あるいは小さなときから病気にかかりましても、正しい学校教育を受けて知能が非常に高いという場合には、たとい両足ない人でも、これは事務的な、あるいは研究的な仕事、そういう仕事には十分耐え得るわけです。たとえば両手ない人でも、これは新しい義手を使いますと、現在やっておりますことは、ある程度針を持って縫うような仕事だってできますので、これはただその人の能力を身体的な部面ばかりでなくて、やはり知能的な部面、いろいろな部面を勘案いたして、それだけの能力を持っているということならば十分だと思います。ただ、からだは健全でありましても、今までの職業経験がないとか、あるいは学力も非常に低いということになりますと、選び存べき職業範囲というものも非常に狭いのでございますが、身体障害者対策としては、やはりこれは指導、教育の問題からして、そういうふうな正しい訓練をしていくというようなことになりますと、将来身体障害者に対する施策が徹底して参りますと、現在も行なわれつつあるわけでありますが、これは身体障害者でもりっぱに健常者に伍してやっていけるということが言えるわけでございます。われわれの問題は、必ずしも障害が重いから困るというのでなくして、障害プラスX——Xというのはいわゆる知能の問題とかそれがあるわけですが、そういうことが条件がよければ十分働けるというふうに思います。
  17. 本島百合子

    ○本島委員 視察に参った経験から、たとえば手のない方にいいあれを与えれば、何でもできるわけですね。そういうものが与えられていないような気がするのです。そういう精巧なものは、国でやる訓練所あるいは施設というようなものについては、特にそういう点で民間がやっていらっしゃる以上の研究があってしかるべきだ、こう思っているのに、それが非常におくれているように思えてしようがないので、その点がどういうふうになっているか。予算上足りないためにそういうところまでやってないのだ、やれてないのだということじゃないだろうかと、こう思うものですから御質問したわけです。
  18. 稗田正虎

    稗田参考人 今のことは、これは世界的に非常に新しい仕事でございます。どんどん進んでいるわけであります。ただ私も先ほど申しましたように、おくれている技術を向上していく、そういう更生指導技術、これは国としてはいろいろそういう方策をとりつつあるわけなのであります。たとえば義肢の部面については、外国からそういう専門家を呼んで講習をやるとか、いろいろいたしまして、全国的にそれを広めていきたいということでございまして、現在の段階ではある特定の数カ所しかできないのですが、これを早く全国的にそういうものができるようにしていきたい。単に義肢だけの問題ではなく、ほかのいろいろの指導の方法、また技術があるのでありますから、こういうものを早く日本に取り入れて進歩させていきたい、そのことがより重度障害者をよりたくさん実際の社会に送ることができるということでございます。
  19. 本島百合子

    ○本島委員 もう一つお尋ねしたいのは、田中豊さんでいらっしゃいましょうか、私この法案審議しているときにこういうことを感じるのです。たとえば民間でも役所でも、一人か二人ぽつんと採用された、こういう場合に非常に働きづらい心理的な面と、それからこの方々の将来の励ましといいますか、そういう点で欠けているのじゃないか。できるならば、同じような系列の方々を、障害度合いの同じような方々を多数にお願いできるようなやり方の方がいいんじゃないか、こういうことを感じるのですが、今まであなたが当たられて、そういう点はどう考えておりますか。
  20. 田中豊

    田中参考人 今御指摘になりましたことは、私が商売にしておりますようなことでして、きわめて微妙な問題を持っておるわけであります。身体障害者ばかりが働けば、その中ではいいチーム・ワークが成り立つかどうか、あるいは身体障害者が、今ここに一人いるところに、ある障害者が入った場合に、それがプラスの誘因として働くか、あるいはマイナスの誘因として働いて、かえってあとから来た人間がはじき出されるとか、あるいはもとからいた人がかえってはじき出されるとか、いろいろなことを私は経験をしておりますが、身体障害者が、できれば同じようなところで、できるだけ多くの人が働いた方がいいんじゃないか。御指摘の、二人以上の人間が働いた方がいいんじゃないかというようなことが全般的に言えるかどうかということになりますと、これはそのチームを形成する人たちが、どういう人たちかというようなことと関係がありまして、一がいにはっきりこうだということは困難だと思います。私の経験によりますと、両手のない人、あるいは脳漿麻痺といわれる人、あるいは脊髄性小児麻痺といわれる人、そういうふうな人たちがチームを組みまして、謄写、筆耕、孔版タイプというふうな仕事をしておるのを、私は過去六年ばかりずっと業務のかたわら、その計画やら事業のやり方などについて参画をしておりますけれども、これらは現在はからだの不自由でない人もその職域に入って参りまして、からだの不自由な人と不自由でない人とがちゃんとチームを慰んで、それらがそれぞれ自分のからだなり能力なりに適したような役割を持って、その謄写、筆耕、孔版タイプのある会社組織のようなものを経営しておりますけれども、これらを考えてみまして、それをずっと五、六年私が経験した範囲内では、それらでもやはり入っていった障害者がはじき出されたり、あるいはもといた人がやめていったり、いろいろの変遷があります。それらを考えるときに、必ずしも何人以上がいいんだというふうなことにはならないと思いますけれども、それらを、先ほど申し上げましたように、身体障害者指導されるところの安定所の指導官の方が、そういうふうなことについても十分な知識と経験をお持ちになるというようなことが必要だ。私は一緒に仕事をしておりまして、こういうふうな点はこういうふうに考える、あの人の場合はこういうふうにしたらどうかというような助言をいろいろいたしまして、今まで経験を積んでおりますけれども、それらの人が、先ほど申し上げましたように、どんどんお変わりになる。こういうことじゃ、私たちは実際に今まで積んできたものがまた御破算になって、また新しい人ともとの問題を同じように論議しなければならぬというようなことを繰り返すことになる。そういうふうに、今御指摘になりましたような点からいってみても、安定所に働く身体障害者係というものは、先ほど稗田先生が言われましたように、多くのチーム・ワークの中で出たいろいろな知識を必要とする。そういうようなことが上肢障害者と下肢障害者が一緒にやったらうまくいくんじゃないかというような簡単なものではない、非常にいろいろの知識経験を必要とするものだということを、一つ身体障害者係というものがこの法案の中心をなすものだから、御意見の通り、これらの人たちがほんとうにそういう知識を駆使できるようにする、それらがすぐやめてしまわなくする、そういうことがこの法案にぜひないと、あなたのおっしゃったようなことは、なかなか十分にこなせていけないのではないか、現在の実情はそういう実情にあるというふうに私は思います。
  21. 本島百合子

    ○本島委員 そこでもう一つ聞きますが、民間ではなかなか今までの現状からいって、国井さんからも言われたように、日の当たらない産業で、零細業者の中で多くの人が働いている、今度は日の当たる場所で何とかしてもらおう、これが皆さん方のお願いであった。と同時に、この法案の中で私たちが取り上げる場合に考えなければならぬことだと思います。そうした場合に、いろいろの障害者があるでしょうが、民間雇用官公庁で使われる状態をごらんになって、どちらの方が永続性があるか、また希望はどちらの方が多くあるのか、こういう点での御意見を、どなたからでもよろしゅうございますから、今までごらんになって、その経験上から、民間にやった場合と官公庁で雇ってもらった場合、永続性の点からいってどうなんだ、そういう気持があるのかと思いますから、その点を一つお聞かせ願います。
  22. 国井国長

    国井参考人 ただいまの本島先生の御質問でございますが、日本では、先ほど申し上げましたように、主として大事業所ではいろいろと作業も割合によく、それから給与とか待遇とか作業条件も割合に整っております。それから官公庁などにおきましても、もちろんこれは給与も民間のほぼ大事業所並みでありますし、身体障害者がいろいろ働き得る条件が整っておる。ところが残念ながら民間事業所におきましても、先生承知のように、従業員が五十人以下のような零細事業所におきましては、賃金が非常に低くて、それから身体障害者を使います場合に、そういったふうな小さな事業所では特段な設備の配慮もできませんので、どういたしましても、そういうふうな小さな事業所では、身体障害者が定着しないのでございます。これはたとえば先ほど例にあげましたような、鉄道弘済会でございますとかその他の民間でも比較的大きい事業所では、身体障害者職員のために、特別な係なども設けまして、常時いろいろな身体障害者仕事につきまして、助言しますとか指導いたしまするとか、あるいは作業設備改善とか作業補助具支給するとか、作業の段取りを考えるとか、こういうふうなことで、そこでは身体障害者があまり苦痛を感じなくて働いておる、こういうふうな状態でございまして、残念ながら、民間の零細事業所の場合には、これは身体障害者ばかりではございませんが、非常に定着性が悪いようにわれわれは考えておるのでございます。そういう点から、今度の政府法案でも、官公庁やあるいは大事業所身体障害者雇用の場を広げようというふうなお考えのように聞いておりますものですから、大体従業員が百人以上の事業所は、たしか一万五千幾らくらいあるように思っておりますので、こういうところならば、割合に行き届いた手が身体障害者に伸べられておりますので、ぜひこういったふうなところで安定さしていただくようにお願いしたいと思います。
  23. 永山忠則

    永山委員長 五島虎雄君。
  24. 五島虎雄

    ○五島委員 きょうは六人の方々から非常に貴重な参考意見を聞きまして、参考となりました。なお、私たちこの意見によっていろいろなおこの法律案審議したいと思っております。ところが稗田さんから説明されましたように、諸外国の例は強制的に雇用促進する国と、それから宣伝的に国民の愛国心等々に訴えてこれを促進する方法をとっている国がある、こういうようなことですが、この頭を出しました今回の法律案は、何か強制と宣伝と——強制ではしり抜けであって、何か宣伝の方に重点があるような法律案になっております。そこで六人の方々か言われましたように、別表のワクが非常に狭いとかなんとかというような意見が出てくるだろうと思うのです。稗田さんが言われましたのは、やはり強制的な法律案にすればそこには若干の欠点があるんだ。それは雇用主の義務と負担を強制するがあまりに、身体障害者職場において冷遇される。従って障害者を雇った雇用主が、雇用主にプラスになるように、あるいは職場を明るくするようにしていかなければならない。これは全く私たちも同感であるわけです。そこで私たちかねて思いますのには、できるだけ民間でも官公庁でも率以上の雇用促進するためには、ことに民間の方に問題があるんじゃないか。そうすると民間の方に雇用されれば、民間雇用主は喜んでこれに協力するような法律の内容にしておかなければ、なかなか遅々として実際的に進まないんじゃないかというような疑念があります。それで、たとえば政令で定まったところの率以上に雇用を実施していくということについては、たとえば雇用者が百人の事業所に三%程度とすれば、たとえば国井さんが言われたような一〇%ということになっても十人ですから、従って数人の人を雇い入れるということになりましたときは、これについて税金の措置などを考慮していく。そうしてまた能率の面で普通一般の方たちの賃金と、それからまた身体障害者の賃金に格差が虫ずるかもしれないというように、私たちは将来のことについては危惧を持っているわけです。それでその点の格差などについては、一体雇用主に義務を負わせるのかどうかというようなことなどについて非常に将来を心配しているものです。しかもなお雇用された身体障害者の方たちには、やはり同等の賃金を与えるということがヒューマニスティックであり、それが至当であろうと思うのです。それで何か雇用者にプラス、あるいは職場を明朗にしていき、そうしてほかの職場従業員等々についても非常にあたたかい、明るみを持って一緒に仕事をさしていかなければ実際の問題として仕事がしにくいというような問題が現われてきやしないかと思います。そこで私たちは具体的に、たとえば雇用された人たちに対するところの賃金の格差等々には国がこれを一部補助していけば、雇用主も安心して雇用することができるのじゃないか。それからまたもう一つは、国が税金その他の施策で、たとえば五人採用しており、そうして事業税などについては若干のものを税として納付しておれば、雇用された分については減免の措置等々が行なわれる、こういうようなことをすれば、雇用主としても非常に喜んで協力する要素がそこに出てきやしないか、こういうように思うわけです。従って稗田さんが、この雇用主の義務と負担のみを強制する欠陥がある、あるいは障害者が冷遇されるというようなことなどを排除される何か具体的な考えがございましたら一つお聞かせを願いたいと思います。  それから、時間が非常に足りませんから国井さんに簡単に質問しておきたいと思います。この配付されました書類を見ますと、私たちがかねて思うように重度障害者雇用というものが、これは一部重度のパーセンテージなんかを設定するのだと書いてありますけれども、なかなか重度障害者の方たち就職機会というものは非常に少ないのじゃないかというように常々思っておるわけです。ところが、これにかわる重度障害者の方たちで、どうしても就職できない、就職しなければ一家をさえられないというような家庭の状況にあるような方たちのために、私たちは奥さんをかわって雇用させてはどうか。そうしてここに国井さんが示されました通りに、もしも奥さんを重度障害者にかわって雇用をせしめるときは、非常に不平等な取り扱いのようですけれども、〇・五人に換算するのだ。女だから半分にするのだということじゃなくて、一人の重症度の障害者雇用するのに、奥さんたちを雇う場合は二人雇い入れられるのだ、こういうように考えて、これは私たちの考え方も全く同じなんです。そういうようなことについて政府にかねて審議の上から質問して明らかになったことは、この奥さん方を採用するということについては、重度障害者の方たちが死亡されたら一体そのパーセンテージはどうなるのだというようなことなどが取り扱い上非常に困難になるから、従ってあまりに技巧過ぎる。そういうことも政府は考えたけれども、あまりに技巧過ぎるからやめたのだというような答えがありました。しかし私たちはほんとうに身体障害者の方たち機会均等を与え、そうしてまた家庭経済を確立せしめていく上においては、奥さん方たちをこれに代替して、そうして率等々もそのように考えて、できるだけ多くの方たち雇用せしめていく促進法が必要じゃないか、こういうように思っておるわけですけれども政府の考え方は、あまりにテクニック過ぎるのだというようなことを言っております。従いまして稗田さんと国井さんにこの点だけお聞きいたしまして私の質問を終わっておきたいと思います。
  25. 稗田正虎

    稗田参考人 この職場におきまして能率が低下する、その能率の低下度に対しては、あるいは障害者を雇うということについて国で税金を免除するとか、あるいは何かそれ以外の助成金を出すというようなことも一つの考え方でございます。それからもう一つは、身体障害者というものを考えます場合に、先ほどから私繰り返しましたように、やはり正しい法律的な職業訓練あるいは更生指導というものをやりますと、ある適職においては十分やれる、非常に不適格な人の数が減ってくる。しかし非常に能率の低い人は、これは職業ということをやはり別途に考えなければならぬのじゃないか。やはりこのマイナスの分を、たとえば庇護授産所でございますとか、そういうものを作ってやらせていくということを別途考えないと職業として成り立ちにくいのじゃないか。作業はできますけれども職業としては成り立たないということは多分にありますので、そういうような一般の勤労者の就職というよりも、むしろ庇護授産的な形で、相当政府あるいはその他の団体が補助してやっていくというような考え方がまだあるのじゃないかというふうに私考えております。
  26. 国井国長

    国井参考人 ただいまの妻の問題でございますが、これは昨年参議院に社会党から御提案がございまして今回この国会に提案されました身体障害者雇用促進法案について政府を鞭撻いたしましたあの中にも、はっきりと妻を半人に換算するというふうに出ておりまして、大へん適切であろうと思います。特に重度身体障害者の場合には、いろいろ手を尽しましても、なかなか雇用機会を得ることが困難でございますので、ぜひこれは法律を修正していただきますなり、あるいは政令、省令の中ではっきりとお示しをいただきませんと、それでなくとも困難な重度障害者雇用は困難だろうと思います。これと関通いたしまて、今回の政府の別表では非常に範囲を広げまして、身体障害者手帳の所持の対象にならない、すなわち身体障害者福祉法の保護の対象になりませんような軽度のものが含まれておるのでございます。先生承知のように、労働基準法の障害等級といたしますならば、十級あるいは十一級のようなごく軽いものが含まれておるのであります。先ほど申し上げましたように、私ども危惧いたしますのは、せっかく政府の御努力にもかかわらず、現在では官公庁〇・七%、民間〇・七%というふうな身体障害者雇用実績でございますが、これを今度政府の御努力で一・五%、あるいは一%に引き上げようというような御意図のように伺っておりますが、実際に雇用が伸びませんでも、今度非常に軽度な者まで対象を広げましたために、あるいは来年になりましてこれを再計算いたしまして、政府が御発表になります場合には、現在よりも対象を広げたために、二〇%なり、三〇%なり、雇用人員が増加しておるというふうなおかしなことになりますので、それでは各参考人が要望いたしておりますように、ほんとうにこの法律を旱天の慈雨のように待っておりまして特別の保護の必要のある重度が救われませんので、妻の問題それから重度障害者の問題等は、先生方政府の御努力でぜひ御解決をお願いいたします。
  27. 永山忠則

    永山委員長 河野正君。
  28. 河野正

    ○河野(正)委員 時間がございませんから、一言だけ、この際仲野さんに御質問を申し上げて、御所見を伺っておきたいと思います。  仲野さんから、主として専門的な立場から、薄弱者の問題についていろいろ御教示いただいたのでありますが、今日までこのアフター・ケアの問題で、たとえば結核患者が回復いたしますと、その後実社会に出て生産に寄与するために一つの後保護施設というものがございます。あるいは身体障害者にとりましても、いろいろ後保護施設ないし授産施設等があって、いろいろ更生面に寄与しておる、こういう事実がございますことは御承知の通りでございます。ところで、まことに残念でございますけれども、この精神障害者ないしは薄弱者につきましては、今日までそういう更生という場合には、精神障害者の場合には更生という言葉を使いますけれども、薄弱者の場合には、後天的な場合もございますけれども、むしろ先天的な場合が多いのでありますから、更生という言葉は適切でないかもわかりませんけれども、そういう人々が実社会に出て生産に寄与し、あるいはまた独立生計を営んでいくという場合に、今日まで社会的な保護政策というものが非常に薄弱である、そういった点で、先ほどからいろいろ仲野さんの方からそういう面から御教示になったと思いますが、私どもも全く同感でございます。なるほど意欲はあるし、それからまた実際それぞれの職業についても能力も劣らぬというお話でございましたが、ある職種についてはそのようなことが言えると思います。ところが実際多面にわたります職種がございますから、各面にわたって、健康人よりは非常に制限はされておりますけれども、制限された中でもいろいろな職種が実社会にはあると思います。その場合に、これは非常に限定されますと、結局雇用の面において非常に窮屈になりますから、ある程度幅があった方がいいということは、雇う方の立場からいうと事実だと思います。そういう場合に、実社会に出る前にある程度訓練を行なうということは、当然必要なことだと思います。さっき申し上げますように、今日まで長い間アフター・ケアの問題が論議されて、その中でも、結核の回復患者の場合、それから身体障害者の場合は、それぞれ保護政策が樹立されて、相当救済されておる。ところが薄弱者の場合ないしは精神障害者の場合には何ら見るべきものがない。なるほど養護施設の中でいろいろ付随的には訓練されておると思いますけれども、しかしもちろんその目的の主たるものは、やはり基礎教育と申しますか、基礎訓練ということが主目的でございますから、従って実社会に出る職業補導的な訓練というものはありましても、現在の制度のもとにおいては従という立場をとっておることは御承知の通りであります。  そういうことで、非常に意欲もあり、またかなり能力もあるけれども、しかし一方においては、現実面においてはやはり欠けている面もある。しかしながら、私諸外国の例は知りませんけれども、たまたま私は南方に参りまして——精神障害者ないしは薄弱者の施設が南方にございます。実は私、専門的な立場からいろいろ検討もし、統計もとった実例もございますが、向こうの方では、施設というのはワーク・コロニー、集団、聚落という言葉を使っておるのでありますが、そういう実態を調査し統計をとりますと、非常に生産に寄与し得る能力があるということが立証されておる。たとえば、南方の場合は精神障害者も含んでおるのでございますが、大体七〇%から八〇%ぐらい生産に寄与し得るというパーセンテージが出ておる。かなり訓練すれば相当の能力があるし——ただ雇用問題については多少能力の点に欠けるところがあると思いますけれども、しかし今日はオートメーションの時代でありますから、機械的な仕事が非常に多いと思う。ですから、訓練すれば能力の点において劣ることはないだろうということは、お説の通りであります。しかしながら、そういう訓練をする機会に恵まれぬ、あるいは訓練する施設がないというようなことで、救い得る障害者ないしは薄弱者の人が、結局そのために日の当たらぬ谷間に生活しなければならぬというようなことも非常に多かろうと思うのです。ところが残念なことには、仲野さんからいろいろ御教示願いましたけれども、そういう強い御意思が今日の政策の面には十分反映しておらぬように私ども考えるわけです。そこで、現在能力があるということはわれわれにもわかる、ところがそこまで到達していない人々がたくさんおられる、これをやはりその一線まで引き上げなければならぬ。そのためには国が保護政策あるいはまた施設等によって一線まで引き上げていくという努力が、当然国の責務でやられなければならない。ところが、その辺の実際の政策面における具体策というものが、非常に国において欠けているのではないかと、私どももしみじみ痛感しておるわけです。そこで、結核の場合は長い間かかって——私も実はアフター・ケア設立の発起人の一人としてずいぶん運動をやりました。私は福岡なんですが、福岡でも最初にアフター・ケアができた、そういう実績もございますし、その後薄弱者それから精神障害者についても、結核と同様に、あるいは身体障害者と同様に、そういう具体的な保護政策が必要じゃないかということを私も強調して参りましたけれども、まことに残念でございますが、今日まで実現するに至らぬというようなことです。たまたま本日は仲野さんからきわめて適切な御意見もあったようでございますので、その辺に対してどのような具体的なお考えをもって政策面に反映しようという御希望なりお考えがあるのか、そういう御所見を承りまして、私どももそういう御所見を十分尊重して、今後ともそういうことが具体的に政策面に現われてくるように、私どもも微力ではございますけれども努力して参りたいと思います。そういう意味で若干御所見を承りたい。
  29. 仲野好雄

    仲野参考人 私どもがまず先ほど申し上げましたのは、実はこの法律に関しましては、大体知能指数の高い方でいい。低い方は、おかげ様で今度皆様に作っていただきました精神薄弱者福祉法というものができましたので、大体十八才までは児童福祉法でいく。それから十八才から先は精神薄弱者福祉法による更生援護なりあるいは保護でいく。もちろん法律ができたばかりで、施設はございません。そこで一応ゆりかごから墓場までの問題は解決した。ところが今私が一番政策的に反映していただきたいという問題は、精神薄弱者もぴんからきりまであり、子供とおとなを含んだ、縦横に割った国の一貫した方針がない。ことに文部省の教育を終わった十五才のあと、野放しなんです。十五才から十八才までの間がああいう子供は、普通の子供でもそうでございますけれども、このときが一番危険なんですね。その危険なときに、めんどうを見ていただく何もない。今度精神薄弱者福祉法ができても、その福祉法に基づく援護施設なりの施設は、ねらいは十八才と法律で限っているけれども、十五才から十八才までを何とか入れてくれとお願いしているのですが、なかなかむずかしい。ここで一番大事なことは、文部省は中学校なら中学校まで教育する。特殊学級の中学を終わった者で、しかも教育可能な、知能程度の高い者は労働省が受け持つんだ。そこで職業訓練法を来年は改正していただきまして、職業訓練法の中に——あれを作りますときに、特殊訓練所として、身体障害者訓練所と精神薄弱者の訓練所——これは一緒にしたのでは、劣等感でだめなんでございます。訓練法のときに私どもお願いしたのですが、とうとう予算が取れないで、国会の御支持はあったにしても、大蔵省のあれでけ飛ばされて、だめなんです。でございますから、先生のおっしゃいます一番のギャップは、私どもの願っておることは、労働省職業訓練法に、特殊訓練所として身体障害者のものが国立八カ所ございますが、この中に、精神薄弱者の専門の精薄部ともいうべき訓練所を作っていただきたい。それから職安と今度の法律によって雇用促進をしていただきたい。そしてそれは、私は程度の高いものと線を限っていただいていい。その悪い方は厚生省でやる。こういうように、厚生省は、児童局、社会局はこうやる、文部省はこうやる、労働省はこうやるという、この労働省と文部省と厚生省のしかも児童局、社会局——公衆衛生局の精神病のものは別でございますが、そこのところを、縦横の、おとなと子供と、しかも知能の高い者はどうだ、低い者はどうだという大きな国策の方向をきめていただく。ことにこの法律と関連しての問題は、職業訓練も、程度の高い者は労働省がやるんだ。そうすれば今の売春婦も非常に少なくなるし、犯罪者も非常に減るんじゃないか、こういうのが私どものお願いでございます。これが先生のおっしゃったアフター・ケアに持っていくための一番いい具体的の方法ではないかと考えておりますので、お答えいたします。
  30. 八木一男

    ○八木(一男)委員 参考人皆様方には、お忙しいところ非常に貴重な御意見を聞かしていただきまして、非常に私どもありがたく存ずるものであります。いろいろこれからほかの委員の方と一緒に、これを参考にさしていただいて、問題を進めて参りたいと考えておるわけでございます。  時間もございませんし、私自体も時間がございませんので、まとめてお伺いをいたしますが、黒木さん、国井さんの方からいろいろと総体的な御意見を伺いましたし、それからまた田中さんの方からは、ほんとうに就職の必要な人がこの法律では、はみ出てしまってできないじゃないかという御意見がございました。また仲野さんの方からは、精神薄弱者の方々をこの雇用法の対象にぜひしてほしいという御意見がありました。そうなりますと、非常に政治的な荒っぽい考え方かもしれませんけれども、結局量の問題になろうかと思います。労働省の方では最初において、官公庁で一・五%の雇用率にする、民間で一・三%の雇用率にするという計画で進めておられまして、ただし翌年度以降にもっとずっと上げる。きのう松野労働大臣の話では、少なくともその次は三%ぐらいには上げるようにしたいという御意見でございますけれども、量的に雇用率が確定しませんと——結局、重度の人、軽度の人がみんなこういう雇用法の作用によって就職する道が完全にいくというには、量の問題が多くならなければいけない。また新しく——新しいわけじゃございませんけれども、この法律にちゃんと明記したものだけではなしに、当然それと同じ以上の理由で、精神薄弱者の方や、あるいは結核のあとで障害の起こっておる人、そういう方々を、別表の一番最後の文章をはっきりさせるなり、またその文章を、政令でちゃんと具体的に適用して入れるとしたら、最初に狭義で考えられたものよりももっとたくさん入れなければならないことになる。そうすると、やはり量の問題になろうかと思う。その問題で、ただいま労働省の考えていられる雇用率の問題は、これはまだ非常に少ないと思う。こういう問題については、日本では非常に進んでおりませんでしたので、ないところにそういうものができれば、それが非常に前進であるということで、関係団体の方の御要望が、何と言いますか、非常に遠慮がちな、微温的な御要望になりがちでございます。ところが、たとえばユーゴスラビアは一〇%程度雇用しなければならぬ、西ドイツは八%以上雇用しなければならぬというような状態です。政府側では、アルゼンチンでは一%ということがあると言われておりますけれども、アルゼンチンは戦争に関係しなかったし、また交通事故その他の状況も日本よりは少ない。ああいうような食糧の豊かな国でございますから、虚弱児の生まれるようなことも少ないというような状態でありますから、そういう国じゃない日本としては、少なくとも西ドイツとか、そのような雇用率で考えていかなければ、問題は量的に解決がつかない。そういう点につきまして、黒木さん、国井さんから——皆さんからお伺いしたいのですけれども、時間もございませんので、一つ御所見をお伺いしたいと思います。
  31. 黒木猛俊

    黒木参考人 先生の質問される点が私どもの一番懸念しておる点でございまして、法律はできたけれども実効が上がらないのじゃ、まるっきり意味がないと考えております。しかしながら、私どもとしては、法律成立を希求する余り、熱望する余り、非常に消極的な参考意見しか述べなかったのでありますが、国立指導所の所長さんのお話では、やはり理想論を述べておられるのでありまして、私ども直接その法律適用を受ける側から申しますと、政府案は非常になまぬるいと考えております。なぜかと申しますと、欧米諸国のように、身体障害者等を白眼視するような人たちは一番野蛮人だというような道徳観念を、小さいときから植えつけられた国ですら、十数カ国がほとんど強制雇用という法律適用しておる。というのは、結局そういう強制的な法律でなければ実効が上がらないという、幾多の実績なり事実に立脚して、そのような強い法律が作られたんだと私どもは解釈しております。しかるに、相変わらず身体障害者はかたわ者だとか——あるいは法律の字句にもたくさんあります。国民年金法にもございまして、不具廃疾者であるとか、あるいは一般においても、ときどき新聞の投書等に現われますけれども身体障害者をかたわ者扱いにするというような、欧米諸国に比べればざらにさらに身体障害者を蔑視、軽視する国において、いわゆる理想を述べてみたところで始まらない。やはりそれは、より強い、強制的な意味で持った法律でなければ実効が上がらない。これは引き合いに出しますけれども先生方専門家であらせられるのでよく御承知でございますが、身体障害者福祉法という法律が昭和二十五年に制定されましたけれども法律というのは名前ばかりであって、非常に内容が空虚な、弱い法律でございまして、たとえば身体障害音福祉法の二十二条に売店の設置というのがあります。身体障害者等から、その更生をするために、国または地方公共団体の施設において売店を設置したいという願いがあった場合には、これを設置することを許すように努力しなければならぬという規定がありますけれども、ほとんどこれが皆無であります。私どもの方の調査の結果によりますと皆無であるということは、法律が努めなければならないということは規定しておっても、努めなかった場合にどうするという、いわゆる法律の拘束力がないために、全然実効はないのです。ですから、そういうような法律の拘束力の弱いようなことがまた今回できたんでは、ヤマブキの花ではありませんけれども、花ばかりで実がないというので、私どもとしてはやはり強制雇用的な法律を作ってもらいたいということを熱望しております。それから、確かに八木先生の今御指摘の、途中から非常にこの法律案ワク拡大された。そのために、労働省がお考えになっておるような一・五%とか一・三%の雇用でははみ出してしまって、さらにさらに多数の身体障害者が未就職の者がほうり出される、これは当然だと考えております。おそらく労働省あたりで検討された場合においては、身体障害者福祉法適用を受けておる手帳所持者のうち——大体六十二万人が去年の六月——四月でありますか、における手帳の交付者でありますが、それを基準にして、おそらく労働省では一・五%と一・三%という線を出されたんだと思います。ところが、おそらく労働省としても、あるいは厚生省としても、この別表のワクを広げたことによって、この法律適用を受けるところの身体障害者がどれだけ拡大していくかという推定数字はお持ち合わせではないと思います。これは全然つかめないと思います。従って先ほど参考人の中で田中参考人が申し上げましたけれども、現在就職しておる人が、もうすでに今回の法律がたとえばできた場合においても、その法律で定められた雇用率をはるかに上回る数字を持つようになってしまって、そのためにせっかくの法律ができても無意味になってしまう。これは当然起こり得る事態であります。従いまして、私どもとしてはやはり法律の実効をあげるためにも、このワクを強く規制していただきまして、やはり物事には段々というものがございますので、もっとこの法律の実現を旱天の慈雨のごとく渇望しておるところの重度身体障害者——私は片手切断でありますが、片手とか片足のない人というのは、ほとんど今日においては就職できないことは、労働省の統計が明らかにしております。足の場合はそうでもございませんが、手の切断なんということは、ほとんど就職不可能というのが今日の実情でございます。ところが右手なんて申しますと、きき腕と申しますから、同じ手の中でも左よりはなお率が悪いのであります。片腕切断の者を採用するよりは指一本ない者を採用した方がよほど得であります。右腕を切断した者より、左腕の親指の指骨関節から切断されておれば今回の法律適用を受けます。それから片方の足の指が全部機能を喪失したって全然歩くに支障ないのです。これは私ども幾多の実例を知っておりますけれども、足の中でもひざから下、これは下腿と申しますが、下腿の切断は義足を充用した場合には普通の人と、いろいろな作業能力を比較しましてもほとんど遜色ないのです。ですから、非常にそこに矛盾が生じてくるわけでありまして、第一にはもう現在の職場に働いておる身体障害者の数を計算してみたところが、はるかに雇用率身体障害者雇用促進法規定ざれる採用人員を上回る障害者雇用しておったということになり得まするし、さらに新しく雇用する場合に、より軽い人を採用した方が得策でありますから、よほどの深い理解と同情でも身体障害者に持たない限り、やはりより軽い人、より能率の上がる人を採用することになると思いますので、私どもは非常にこの点を懸念をしております。従いまして八木先生のおっしゃるような雇用率の問題と同時に、やはり障害の度合いにおいて、たとえば一・五彩雇用する場合に、そのうちの何パーセントは一級を雇う、二級は何。パーセント、三級は何パーセントというふうにして——ほんとうは私ども希望を申し上げれば、この別表なんという複雑煩瑣にわたるような線を新たに設けなくても、現在身体障害者福祉法という法律があるのですから、何のために実際こういう別表なんというものを設けたかと言いたいところなのです。ですけれども、こういうことを申し上げておると非常に複雑な政治的な問題を提起しますので、私はあえて申し上げませんが、この別表をこしらえられた陰にはちょっと不明朗なわれわれの推測があります。しかしそれは私はあえてこの機会には申し上げませんけれども、どうか一つ身体障害者雇用促進法の精神が生かされるように、今の雇用率とそれから障害者の等級に応じた採用がなされるように、格別の御配慮を賜わりたいということを申し上げたいのであります。
  32. 国井国長

    国井参考人 ただいまの先生雇用率重度、軽度の問題でございますが、政府は一・五%、あるいは民間の場合には一%という非常に低目の率を出しましたことは、大へんわれわれは不満であります。不満でございますが、私はさらに心配いたしますのは、この非常に低い雇用率でも、なかなかこれを達成することが困難であろう、こう考えるのでございます。それは先ほど申し上げましたように法律の条文がいろいろ不備である。もう一つは、それに伴いまして予算が十分でない。それから事務機構が整備されていない。こういったふうな心配でございます。できますならば社会党が御提案になっておりますように、国におきましては五%、民間におきましては三%を割当雇用率としていただくようにわれわれは望ましいのでございますが、それは漸次そこまで持っていくといたしまして、今の段階ではとりあえず一・五%程度でもやむを得ないと思いますが、再々申し上げておりますように今のこのしり抜けの、抜け穴だらけの法案では、よほど八木先生その他御熱心な先生方政府を御鞭撻をしていただかないと、このような世界に類例のないような非常に低い率でも私は達成が困難であろう。特に別表を非常に範囲を広げましたために、三級以上の者の就職が非常に困難になりまして、名目だけは、形式だけはりっぱであっても中身のないものになるおそれがある。御参考に申し上げますれば、先生方御存じと存じますが、昭和二十七年以来労働省努力されまして就職登録をやっておりますが、あれの登録人員は七万六千余人でございますけれども、その中で現在この対象として手帳所持者は約三万七千人、それから就職いたしております者も全部で、手帳を持っておりませんような、今度の別表の対象になるような軽い者を含めますと約五万人近くでございますが、手帳所持者は二万二千人、そういうことから、今度のこの法律が施行されまして再計算いたしますと、とたんに、新しく雇用されるのではないけれども、今まで雇用されておったものが再計算されてふえてしまう。そのためにあまり民間事業主政府努力をされなくても雇用率が達成されたというふうな妙なことになる。先ほど私が申し上げましたように、新たに官公庁あるいは民間事業所両方合わせますと約三十七万五千人くらいが毎年新たに雇い入れられますので、この中の一〇%、三万七千人程度は必ずこの三級以上の重度障害を含めまして雇用されますようにお願いいたしたい。これが達成されました暁に、社会党が御提案になっておりますように官公庁では五%、民間では三%というふうな雇用率を設定するように、ぜひ一つ政府を御鞭撻願いまして法律を改正していただくように次の段階で御努力願いたい、こう思います。
  33. 八木一男

    ○八木(一男)委員 今両参考人から伺いまして、非常にありがたいと思います。私ども重度が一番大事だということはもちろん考えておりますけれども、といって重度の次に位する人も、今の失業状態では、その人は働けるじゃないかと言われても、前に働いていた職場でそのくらいのけがをしたときには、そのままの給料でおそらくずっと働いておられるでしょう。ですけれども、なかなか就職の困難な状態では、実際は働ける能力に近いものを持っておっても、それを理由にして採用しないというようなことが起こるので、重度に重点を置くけれども、軽度の人もやはり雇用ができないという点を勘案していかなければならないと思うのです。その意味で総ワクをふやすことが大事であろうかと思います。それがしり抜けにならないように義務づけることを強力にやらなければならないと考えているわけです。  そこでお三人の方にちょっと伺いたいのですが、今黒木さんが各級別にいろいろのものを考えるべしと言われ、前に稗田参考人が、級だけじゃなしにいろいろとその人の状態に応じたものを考えるべしというようなことを言われましたが、これは非常に大事なことだと思います。そういうふうにこまかい法律や行政措置になるようにしていかなければならないと思いますが、一つの考え方として、先ほど国井さんの方から御提案になりました、重度の人を一人雇用した場合には、軽度の人を二人雇用したようにするというようなことも、今の大まかな政治上のやり方では、具体的に重度の人をたくさん雇用することを進める一つの道ではないかと思います。これは国井さんの御意見でありますから、黒木さんから、できたらその点についてだけの御意見を伺いたいと思いますのと、それから国井さん、実は今働いて暮らすということが建前でございますけれども、労働能力のない人はやはり所得保障があって、所得保障によって暮らしていかなければならないという建前になっているはずなのに、たとえば政府障害福祉年金は一級しかよこさない。そこで今の田中先生のお話では、二級、三級の人はこういう法律ができても労働戦線からはみ出るということになれば、働いても暮らせないし、社会保障でも、あれは一級でも一千五百円で食えませんけれども、その方の手当もできないという穴があるわけであります。そういう点についても御意見がありましたら、障害年金雇用の問題についての御意見を全参考人の方から伺いたいのでありますが、国井さん一つお伺いいたしたいと思います。  それから仲野さんに、これは御報告みたいな形になりますが、昨日の社会労働委員会におきまして、精神薄弱者の方々の問題を身体障害者雇用促進法に入れるべしという質問をいたしましたそのときに、労働省当局もその意味で考えて推進するというお話がございました。その点は、非常に御心配になって御熱心にやっておいでになりますので、御報告を申し上げておきたいと思いますけれども、なおこれはいろいろ先があると思いますので、御熱心に御運動を御推進になって心配なさっておられる子弟の方が、いい生活になられるように御運動を進めていただきたい。
  34. 黒木猛俊

    黒木参考人 重度障害者雇用をより促進するために、軽度の障害者も含めて採用するように働きかけたらどうかという御質問でございますけれども、まことに私も賛成でございまして、軽度の障害者も私どもとしてはやはり採用していただきたい。しかしながら私が懸念いたしましたのは、軽度の人ばかりを優先的に雇用することによって、重度の人が取り残されるのではないかということでありますので、やはり重度も軽度もすべてを含めて合理的に採用されるように、先生のおっしゃるように、重度の人を一人採用される場合に、軽度の人二人につけるというようなやり方は非常に合理的だと思いますし、そういうことは採用する方も採用される方も喜びますので、非常にけっこうだと思います。
  35. 国井国長

    国井参考人 私は先年来社会保障あるいはそれの関係の問題について、朝日新聞あるいは社会福祉協議会、大学あるいは市役所、身体障害者団体その他の主催で全国各地で講演いたしておりますが、その際いつも聴衆から強く訴えられますのは、国民年金の矛盾でございます。これは本日の議題のこの雇用促進法との深い関係がございます。ただいま八木先生から大へん適切な御質問をいただきましてありがとうございますが、先ほどの重度障害の場合にも、この三級あるいは四級程度の右腕がないとかあるいは足を大腿部から失ったというような、労働能力が相当程度損傷されておりまして、雇用の場に入ることが困難だ、あるいは雇用されましてもいろいろ賃金の上で不利なものがある、こういったものが、もし社会党が昨年御提案になったあの法律成立して、三級なり四級程度の者が障害福祉年金を受けているといたしますならば、だいぶこの雇用の問題も私は改善されてこようと思う。また雇用されましてもその者の生活が豊かになる。残念ながら政府成立いたしましたのは、身体障害者福祉法の一級程度にしぼられまして非常にきついのでございます。私はできますならば、身体障害者福祉法の三級あるいは四級程度まで、金額は多少今の額より少なくとも、支給されることによりまして、この雇用の場に身体障害者がつきました場合に、これが一つの国がいたします形を変えました賃金補給あるいは賃金に対します社会的な配慮にもなろう、こう考えるのでございます。  それから特にこの問題とも深く関連いたしますが、この身体障害者の問題では、とかく外形上に現われました目の障害、手の障害、こういったものには一般の御配慮が非常に厚いのでございますが、精神障害の問題でございますとか、胸腹部臓器、内臓の障害、これなどは今回の法案におきましてもきわめて軽く扱われている。しかしこれからこれを進めます場合に、来年の国民年金法の改正のときには、年金の最高権威であられます先生の御高配によりまして、ぜひ内部障害につきましても障害福祉年金が支給されますように、格別の御努力を賜わりたい。そうすることによって今度成立する雇用法と所得保障とが補完し合いまして、総合的に運営されると存じますので、ぜひ一つ先生、あるいはこういったふうな障害者の問題には永山委員長は実に御熱心で、私尊敬いたしておりますが、よろしくどうぞ御高配を願いたいと思います。
  36. 永山忠則

    永山委員長 これにて参考人方々に対する質疑は終了いたしました。  本日は長時間にわたり、種々貴重なる御意見をお述べ下さいまして、ありがとうございました。  午後二時まで休憩いたします。     午後一時七分休憩      ————◇—————     午後二時二十四分開議
  37. 永山忠則

    永山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  身体障害者雇用促進法案を議題として質疑を許します。臼井莊一君。
  38. 臼井莊一

    ○臼井委員 ただいま議題となっておりますこの身体障害者雇用促進法案が今度提出せられましたことは、かねて国民からも希望されていた法案でありまするし、非常な一大進歩といいますか、収穫であるというふうに考えるのであります。この点につきましては、一大遊歩であることはまことに御同慶にたえませんが、私は、同伊委員の方の一応当委員会における議事録等も拝見いたしまして、従って、そういう点については極力問題を重複を避けまして、簡単に一つ、二、三の点についてお伺いいたしたいのであります。今申し上げたように、この法案は非常にけっこうな法案で、おくればせながらこれが今度提出せられたということは喜ばしいのでありまするが、ただ、との委員会の質疑を通じ、また本日午前中の参考人の六人の方の御意見をいろいろ伺っても、相当まだまだもの足りないといいますか、不備というか、そういう点があるように思われるのであります。これらの点は今後実施の運営の面でも是正せられるでありましょうし、またさらに実施した上で不備な点があれば、いずれそういう問題点は改正せられるかと思うのでありまするけれども、しかし、せっかく法案が提出せられた際でありまするし、問題点についてはできるだけ明らかにしておく方がよかろう、こう考えまして質問を申し上げる次第であります。従いまして、多少重複する点がもしございましたら、御容赦をいただきたいと存じます。  その一点は、きょうの参考人のいろいろ御意見にもあったのですが、重度障害者でございます。身体障害者の重い方の雇用について、はたしてこの法案では十分な効果が上げられるかどうか、こういう問題点一つあるのであります。軽度の者の方を、雇用する側としては、雇用しがちになりはしないか、こういう点を指摘せられたのでありまするが、これに対しまして、政府当局の御意見はいかがでございますか、これは局長さんでけっこうでございますから……。
  39. 堀秀夫

    ○堀政府委員 この法律成立いたしまして、これを実施いたします暁におきまして、この別表に掲げております障害者の中には、御指摘のように重度の者もありまするし、軽度の者もある。従いまして、雇用比率の面だけから申しますると、軽度の方が就職促進されて、肝心の重度の方が取り残されるというような懸念もあることは、御指摘の通りでございます。そこで、われわれの方といたしましては、大体二つの点を考えております。  第一点は、官公庁におきましても、それから民間事業所におきましても、身体障害者雇用比率を一定比率以上にするために、採用計画を作成することになっております。これを労働大臣もしくは都道府県知事もしくは安定所長が、提出を受け、連絡を受けましたならば、それをよく見まして、実情に応ずるような、しかもほんとうに気の毒な障害者の方が優先的に雇用されるような方向に呼びかけて参りたいと思うのでございますが、そのような機会に、ただいまお話のありましたような、重度障害者方々就職促進されまするように、われわれは、この採用計画を提出されましたときの指導にあたりまして、十分に注意して参りたいと思います。  それから、もう一点は、この法案の第十五条にも規定しておきましたけれども、症状が重度でありますために、一般の軽度の方に比べて、非常にその就職が困難であるという方々につきましては、適職を指定するという方法をとっております。さしあたります第一に、これはもう問題にならないと思われまするのは、両眼失明あるいはそれに近いような方々についてあんまとか、マッサージ関係職種指定する。これはもうすぐにでもやりたいと思います。引き続きまして、この法律成立いたしました暁には、関係者を集めまして、身体障害者雇用審議会を設けます。この審議会におきまして、重度障害者とそれに対する適職というものを全部当たっていただきまして、そしてなるべく適職を選定し、これに対するところの雇用比率は一般よりもさらに高くするというような方法をもちましてやっていきたい。  以上のような二つの点をからみ合わせまして、ただいまお尋ねのような点に対処いたしたいと考えております。
  40. 臼井莊一

    ○臼井委員 西独などのこの種類の法案を見ますと、普通のものに比して能力が五〇%以上落ちているものをいわゆる重度というふうに見ておるようでございますが、こちらの別表でいうと、そういうような点で区別はできないのでございますか。厚生省身体障害者の手帳によると、一級、二級、三級、四級というふうに分かれておりますね。その級でいうと、たとえば五〇%以上能力が普通人に比して落ちている、こういうのは日本ではどこら辺のものに該当するのですか。もしおわかりでしたらお答え願いたい。
  41. 堀秀夫

    ○堀政府委員 実はこの別表を定めまするにあたりまして、いろいろな問題がございました。先ほど参考人の方から御意見がありましたけれども、われわれの方といたしましては、まず第一に身体障害者福祉法の別表に定めるものは全部入れるという考え方で、この法律案の別表の中にはそれは全部入っております。それに至りませんものにつきましても、いろいろの御意見参考にいたしまして、さらに若干を追加いたしたい、こういう形になっております。そこでこの別表の中において——これは症状に応じましていろいろな差異がございます。そこで一律にどのような症状から上のものというような点を法文上書きますことは、非常に問題がございます。身体障害者福祉法には、御指摘のように一級、二級、三級、四級というふうに分かれております。それからまた恩給法等におきましても、項症、款症あるいはその中でもさらに何症度とかいうものを設けております。これは大体年金もしくは一時金を支給するというような配慮からの分類でございます。われわれの方の法案を実施いたしまする際に、どこから上を重度にし、どこから下を軽度にするという問題につきましては、これはもう少し民間の医者の方、あるいは身体障害者関係の知識経験をお持ちの方々の御意見を十分伺いまして、その上で各症度に応じまして内容をきめて参りたい、このように考えております。これらの問題は身体障害者雇用審議会を法律成立早々さっそくに発足をいたさせまして、なるべくすみやかに運用いたしたいと考えております。
  42. 臼井莊一

    ○臼井委員 それからもう一つ雇用率でございます。今度の法案は、いわゆる促進法であって、割当強制というような点はないようでありますが、しかしいろいろ勧告とか命令とかで補って弾力性を持ってやっていく、こういうような特色があるようであります。ただ一応その目標といいますか、雇用率の算定には国及び地方公共団体あるいは三公社というような方面には政令で定める。それからさらに民間にありましては省令で定めるというようなことになっておりますが、それはもうすでに具体的に、百人以上の工場については幾らというふうにきまっているのでございましょうか。
  43. 松野頼三

    ○松野国務大臣 政府機関におきましては、提案前に各省と一応の打ち合わせをいたしまして、一・五くらいということを基準にいたしたいと考えております。民間におきましては、まだそこまで明細にはいっておりませんけれども、今日の身体障害者就職率から勘案いたしまして、百人以上の事業場におきまして一・三を標準にしてその雇用計画を定めさせるというような方向でやって参りたい、こういう一応の目やすはつけております。
  44. 臼井莊一

    ○臼井委員 その点についても、先ほどの参考人の御意見にもあったのですが、一応この質疑を通じましても、別表に該当する人員は約九十六万で、そして、うち労働の意思と能力のある者が六十二万で、いわゆる失業者はそのうち六万五千、従って一応就職の者は約五十五万五千名というようなふうに伺っています。ただ就職中の者はやはり軽度の者がほとんど多いのじゃないか。従って今度の法案によりまして、大体官公庁において従来の〇・六九%、これを一・五%くらいにしたい。それから民間においてはやはり倍の一・三%くらいにしたいという御希望のようですが、その率そのものも、外国から比べるとまだまだ低いようにも見受けられる。しかしこれは一挙にというわけにはいかないので、一応これを目標にされていると思うのですが、しかしこの残されたいわゆる失業者とかそういう者を就職させるとなると、ある程度重度の者の方が相当多いのじゃないか。従ってこれで推進する上においても、やはり従来の率より倍にするにしても相当困難がある。従って西ドイツあたりでも、聞くところによるとこの種の社会立法的な法案のうちでは最も成功した法案ではあるけれども、使用者の非常な理解と協力があってできた、こういうふうに聞いておるのであります。従ってよほどそういう点を理解を求めなくてはならぬと考えるのです。そういう点については十分お考えだと思うのですが、何か特殊な週間とか、そういうような世間によほど訴えるようなことが必要だと思うのですが、この点いかがでしょう。
  45. 松野頼三

    ○松野国務大臣 臼井委員の御指摘のように、この法案の作成までに実はたびたび自民党及び社会党両党から——身体障害者問題は多年研究されておるのでありまして、なかなかその成案を得なかった。成案を得なかったのは、その法律案自身よりも受け入力態勢の方に問題があったと私は存じております。従って政府もたびたびこの問題で各界と打ち合わせをいたしまして、どうやらこの辺ならば実行可能だという意味で、実効面からまずこの法案の作成を行なったわけであります。法案だけならばもっといろいろな御議論が出ましょうが、実効の上がらない法案では、これは何ら恩恵とあたたかみがないという意味で、いろいろ研究したのはそこに一番苦労いたしました。なお今後は身体障害者雇用に対する国民すべての理解という意味で、やはりこういうものについては国民運動、あるいは国民週間身体障害者雇用促進週間というふうなものも、各界の御理解の上にやって参りたい。そういうことも、一つの考えとして今回行なうつもりであります。  なお身体障害者雇用ですが、はたして重度の方がそういう雇用に進めるか。今までは、実は法的規制がありませんから、非常に御苦労なさいましたが、今回この法律ができれば、業種を指定しますと、その業種に関しては、いやでもおうでも重度の方を雇用する、こういうふうに法律規制がありますと、雇う方も、その職には重度の方と最初からきめておきますので、ある意味においては、あけておかなければならぬいすが出て参ります。それだけは確かに促進になるのではなかろうか。といって、九十万の者が一度にはなかなか参りませんけれども、今までよりもいすがある程度、これは重度身体障害者仕事だというものがきまりますと、そこだけは促進がはかられる。従って、あとは職種指定と比率が今後の問題になりますので、審議会にはかりまして、職種とその比率を考えて参りたいということで、数の九十六万を一度にはできませんけれども重度の方の就職確保だけは十分できる、私たちはこういう思想のもとに、今回この法律を提案いたしたわけであります。
  46. 臼井莊一

    ○臼井委員 今伺うところによっても、一応官公庁方面と民間とは多少比重を変えておりますが、ただしかし〇・二%の比率で、官公庁がはたして民間側の雇用率に対していいかどうかという点は、私は問題があろうと思うのです。官公庁方面の仕事では、身体障害者に適するような仕事の種類が相当多いはずであるドイツあたりでも、官公庁等の職員総数に対して一〇%、それから一般の民同においては八%置いている。従いまして、実施の面においてそういう点も将来十分お考えをいただきたい。それは一応目標でございましょうから、やはり公の方面で、そういう点の実施を十分していただきたいということと、それからもう一つ、鉄道弘済会などでは、鉄道で身体障害を受けた人は優先的に雇っておりますが、私はこの点官公庁方面でも、たとえばいろいろの売店とか、そういう傍系というか、外郭団体的な方面でも使う余地があるのではないかと思うので、これもやはり、一応官公庁に準じてやっていただくことがいいのじゃないか。ことに売店等を新しく設けるとかいうような場合には、これは一つの権利みたいなものですが、少なくとも官公庁においてもし負傷したとか、そういう方面はもちろんでありますが、一般の方面でも、一つ優先的にそういうことをしていただきたいというふうに考えるのでありますが、これらについて、もし御意見があれば伺いたい。
  47. 松野頼三

    ○松野国務大臣 ただいまの御意見のように、もちろん官公庁というのは、一応かたい意味で一・五という最低数をしぼりましたが、これに付随する組合とか、あるいは共済組合とかいうものについては、民間ではございますが、やはり官公庁並みの程度まで私どもの方は希望いたしたい。従って、一応民間でも一・三でいいというのではありません。一・三を最低限にして、そういうところは一・五%まで、官公庁並みの雇用計画を作っていただきたいという気持でこれを運用いたしたいと考えております。
  48. 臼井莊一

    ○臼井委員 それから今度の法案によると、身体障害の原因いかんにかかわらず同等に扱っている。この点は、一見公平なようであるけれども、また深く内容を検討すると、必ずしも社会的な公平ということに合致しているかどうかという点に私は疑問を持つのであります。というのは、同じ身体障害でありましても、国家並びに国民にほんとうに奉仕してけがをした。その一番いい例は、たとえば戦争で召集せられてそれで負傷したとか、そういう戦争犠牲者といいますか、あるいは消防とか警察官、これらは一つ職業ではありますけれども、やはり公に奉仕して負傷せられた者と、そのほかの、極端な例を言えば、酔っぱらって自動車を運転してけがをしたり、身体障害になったという、むしろ罪悪によって障害を受けた者とが、同じに取り扱われるということは、私は必ずしも社会的な正義感といいますか、公平というものの真の意味に合致しないじゃないか、こう考えるのですが、何かその点で、この法案実施においてお考えがあるのでしょうか、ちょっとお伺いいたします。
  49. 松野頼三

    ○松野国務大臣 臼井委員のおっしゃることはよくわかるのでありますが、一応職安法では、いろいろな差別をしてはならないというふうな原理原則はございます。しかし、病状の内容を見ますと、軍人の公務上障害の方が約九万人、それから産業上の災害者が九万三千人、疾病の方が四十五万人というふうな比率が一応今日出ておりますので、私たちも、職安法上は差別をすることはできませんけれども、しかしその内容とか、その方法とかいうことに関しましては、今回特に、福祉法には入らなくても、傷痍軍人の方は、傷痍軍人という証明があった場合には、その手帳をもって今回のこの措置に当てはまるというふうにワクを広げたことは、御趣旨のような精神でございます。ただその紹介について特に差別をするということは、実は職安法でできませんけれども、しかし私たちも、やはりそういうことは一つ資料として、行政上においてはおのずから考えられるという、幅を持って運用して参りたいと考えます。一応法律上は、一般に障害者は、身分その他の理由によって差別してはならないという規定がございますので、その原理を守りながら、気持は御趣旨のような運用をして参りたいと思います。その一つの現われとして、傷病軍人に関しては、福祉法ワクに入らない軽度の方でも、その手帳において今日の措置に当てはめるということだけは明らかにしておきます。
  50. 臼井莊一

    ○臼井委員 職安法にそう規定されているということは、一つは憲法第十四条に、「すべて国民は、法の下に平等であって、」というところからきておると思います。さらにその内容として、「人種、信條、性別、社會的身分又は門地により、政治的、經濟的又は社會的關係において、差別されない。」とあります。あるいはほかのあれかもしれませんが、もしこういう点からきておるとすると、今言ったような、社会公共のために負傷した者は、特別に運用の面ででも相当考慮しないと、要するに正直者がばかを見るということになったのでは、ますますガリガリの人間ばかりふえてしまって、御身大事ということで、公に奉仕するという精神がなくなると思いますので、一つそういう点も十分お考えをいただきたいということを申し添えるわけであります。  それからもう一つ、この法案に関連いたしましてちょっとお伺いいたしたいのでありますが、この法案には直接のあれはないかもしれません。しかしながらこの算定の率等で考慮していい一つの問題は、今申し上げたような、やはり公に奉仕したという者の家族でございますね。これについては、委員の皆さんからも御質問があったようで、あまり重度の負傷者過ぎて、奥さんがかわりに働きに出る者に対するいろいろ考慮とか、あるいはまた未亡人に対する考慮の問題の一応質疑、御議論があったようでありますが、やはり戦争の犠牲者の遺族に対する、遺族の未亡人等に対しても相当考慮をしなければならぬ。そこで、これも私はドイツの立法例でちょっと見たのでありますが、民間の会社、団体なりあるいは官公庁職員の中に、もし戦争の遺児とかあるいは未亡人というようなものが雇われているときには、その基礎の職員の中から除くというような例になっておるようであります。これなども一つは、やはりそういう人をできるだけ各会社で優先的に雇用することが望ましいという精神からそういう立法があると思うのです。ですから政令等で定める際に、こういうようなことも、やはりひとりそれに限りませんけれども、ほかのこれに類するようなもののあれもある程度雇っていて、いわゆる社会に奉仕した者の遺児なり家族というもの、特に未亡人等についてはできるだけ優先的に就職機会を与えるという、こういう精神は私はやはりあってしかるべきだと思うのですが、何らかそういう点についてお考えなり何なりあるのでございましょうか。それをお伺いいたします。
  51. 松野頼三

    ○松野国務大臣 実は先ほど憲法をお読みになりましたその条項が職業安定法の第三条にほとんど入っております。ただ職業安定法にもう少し具体的に出ておりますのは、従前の職業等を理由として職業紹介、職業指導について差別的取り扱いをすることができない、ここが少し、従前の職業というのが、憲法の人種、国籍、信条、性別、社会的身分のほかに、職業安定法にはそれが一つ入っておるわけであります。従って旧職業によって差別をつけるというわけには法律上はできません。ただしかし国家的に見ますると、軍人にはやはりそれ相当な恩給制度というものが今日でも実施されているという国の立場から考えますと、こういう条項があるにいたしましても、おのずからその中において国が恩給を払っておるというその性質から見るならば、あらゆる国家機関というものがその対策に非常な関心を持つことは当然なことじゃなかろうか、こう考えまして、私の方も、実は行政上の指令とか指示とか、あるいは要るときにはそういうものを含まぜながらやって参っておりますが、法律上は、憲法上、職業安定法上にそういう文句を書くことはなかなかむずかしいのではなかろうか。しかしおのずからそういう気持が各方面に浸透するのは当然ではなかろうかという気もします。やはり未亡人の方というのが今六十才以下が二百七十万おられます。その中でやはり主たる家計の担当者という方が百三十五万、この中で仕事をしたいという方が七十三万という統計が出ております。従って七十三万の未亡人の方が特に仕事をしたいという希望とまたそういう立場におられる方でありますので、私たちは一々前職業によって差別はいたしませんけれども、やはりそれにはそれ相当な立場もございますので、職業紹介等においてはその緊急の度合と申しますか、必要な方面を促進しながら私やって参りたいという気持は今日行政上持っております。
  52. 臼井莊一

    ○臼井委員 ただいま職業安定法の前職業によっての差別はしない、これは当然かと思うのですが、ただ私の申し上げるのは、たとえば軍人でも、いわゆる職業軍人と申しますか、そういうあれは職業としての軍人ですが、しかし赤紙一枚で応召されたのは職業として出征したのではなくて、国の要請に従って好むと好まざるとにかかわらず強制的に召集された。従ってこれは戦ったとしても職業としての任務ではなくて、もちろん国民としての義務で当時はあったのですが、その点私は非常に違う。そういう点で私は召集せられた兵、たといそれが昇進して将校になろうとも、これはやはり職業として考えるという点については、いささか異論があります。しかし実際運用の面ではそういうふうにお考えのようでありまするので、その点は一つ誤解のないように、もし私の考えが違えば御訂正いただいてもけっこうですけれども、そういう意味で、やはり傷痍軍人というようなものについても優先的に考えていいのじゃないか。もちろん戦後におきましては、たとい応召せられた者も何か戦争の責任者だというふうに考えられた面があって、占領中は恩給等も一時停止せられた、こういう占領政策はあったのですが、今日においては私はその考えは、少なくとも召集せられた者においてはそういうことはないと思いますので、その点を申し上げるのです。従いましてその見地に立ちまして、昭和二十九年十二月三日当衆議院労働委員会及び内閣委員会において、全委員の賛成を得て決議がされております。その決議は戦没者の遺児、未亡人の就職あっせんに関しては、現下の情勢にかんがみ特別なる考慮を払い、優先雇用の実現につき有効なる措置を講ぜられたい、こういう内容の決議がされております。この決議に基づいていろいろ政府でもそれぞれ何か措置を講ぜられたと思うのですが、特にこういう措置を講じたということがございましたら一つお伺いいたしたいと思います。
  53. 松野頼三

    ○松野国務大臣 昭和二十九年の決議に従いまして、その趣旨に沿ってあらゆる行政指導をいたして参りました。その結果でございますか、昭和三十三年の三月の卒業生の中のいわゆる就職率を見ますると、中学校卒業の遺児、片親のない方が九九・七、高等学校卒業の方が九九・七、非常に高度な就職率を三十三年三月には示しておられます。やはりこれは当委員会の決議の趣旨というものが国民に理解され、また私の方の職業紹介その他につきましても、これを徹底いたしました結果、私はこういう非常に上昇的なカーブが出たのじゃなかろうか、こう考えているのです。この問題はある程度焦眉を開いておりますが、ただときどき問題になりますのは、金融機関等において片親、遺児のために就職が非常に不利になったという例をたびたび散見するのであります。そういうことは実は非常に困ったことで、結局要するに保証の問題だということでありますので、各府県及び知事の御協力を得まして、知事が主として親がわりになって就職をさせるというところがだいぶふえて参りまして、その結果ぼつぼつその問題も解消しておりますが、まだ目立ちますのは、局部的な産業によっては遺児、片親が職業に非常に差別をつけられるということは、これは非常に遺憾なことだと存じまして、私ども労働省も、各府県知事にもそれを依頼しまして、なるべくそういう不遇な立場に置かないようにということを今心配しております。一般的にはだんだんそういうものの弊害というものはなくなって参りましたけれども、まだ全部がなくなったというわけには実は参っておりません。未亡人の方につきましては、先ほどの統計から見ましても相当な数がございますので、労働省でも職業紹介というものを特別に全国で数カ所設置をいたしております。ことに内職相談につきましては、全国の十六カ所で内職相談をしておりますが、これは非常に進んでおります。ただ、この内職の中の細部になりますと、待遇と賃金の問題が実はなかなか議論が出ますので、今回これにあわせまして家内労働の保護法を設置いたしたい。ただいま調査員を委嘱しまして、昨年の十一月から発足して、もう数回この会合を熱心に開いていただいておりますので、今年中には家内労働に対する保護法を私たちは設置いたしたい。そうすれば内職の加工賃、待遇という問題が非常に明らかになる。今日、内職の方は、未亡人につきましては相当進んでおります。ただその待遇と加工賃の問題がまだ残っておりますので、これはやはりある程度家内労働の保護という立場から政府で保護法を作って加工賃、衛生という面で保護をしなければ、なかなか今日の実情はむずかしいのじゃなかろうか。就職の数だけは相当——こういう労働省の施策に応じて今日の産業では相当重要な、実は生産、輸出の役割をされているのですから、なおこの上に質と内容を充実して参りたいというので、目下鋭意調査を急いでいただいて、年内には答申が出ますので、今年中には立法という方向に私どもは進んで参りたい、こう考えております。
  54. 臼井莊一

    ○臼井委員 ただいま大臣の、遺児や未亡人についてのかつての当会委員会の決議に基づいて政府等でもいろいろそういう方面の勧奨といいますか、行政指導で相当効果を上げているというようなことは、数学的にも就職率において出てきているからというお話でございます。その点はまことにけっこうでありますが、なお、今大臣のお話のように、以前よりはこれは非常になくなったのですが、やはり大きな銀行とか、大きな会社、一流の東京のデパートあたりではまだ何かそんなような、表面には出しませんけれども、実際そういうような点があるらしく、日本遺族会で調べた資料を拝見しても、茨城県においては東京電力とか、一流のデパートなんかにそういうような形跡があったとか、あるいは岡山あたりでも銀行でそういう実例があるというようなことを聞いております。ただそれは、やはり片親がないと財政的にも恵まれない面があるというので心配していることも一つの大きな原因だと思うのです。そこで今各県でも、今お話しのように身元保証をやっておりますが、これは実際は利用する数は割合に少ないようでございますね。少ないけれども、しかしもし身元保証人がなければ知事がしてやる、こういうことは、そういう家庭にとっては非常な力づけになりますし、大きな希望が持てる。たとえば、もしかりに万一不幸にして何か損害を受けたときには、県がそれを補償するということなんですが、これはそういうことがあってはならぬのですけれども、かりにそういう損害があったら、県で持つ半分くらいは国でも再補償してやるということは、こういう制度のない県などでは、やはり損害が起きたときどうするのかというようなことも一つの問題になると思うので、これは実際そういう場合はほとんどなし、実際の効果は別としても、今一占ったように国が間接に県を通じて補償してやるんだということは非常に精神的な支持というか、そこまで考えておるということにおいて効果があると思います。こういうような点において、何か将来お考えがあれば、御研究願うというようなことでもけっこうだと思いますが……。
  55. 松野頼三

    ○松野国務大臣 私も実は臼井委員と同じような感じを持っております。制度として、優秀な学生には御承知のごとく育英資金という制度がございます。それならば、社会に出る者に対して、育英というよりももち少し進んだ育成と申しますか、そういう制度があってもいいんじゃないかという感じを実は私も持っておるのです。各府県でそういうものがだんだん出て参りますれば、当然国でも再保険という考えで、別に予算を最初から目標にしなくても、保護法という法律みたいなものがあれば、非常にこういうものは進むのじゃなかろうか。そういう予算を使うような事件が出るようなことはあまり私たち考えなくとも、それによって就職ができるというならば、進んでそういう法律も考えていいのじゃなかろうかというので、今年も、一応予算に関係ないとは申しませんが、予算の額を議論するよりも、そういう制度を作ることは非常にあたたかみのある——数は全国民からいえばわずかかもしれませんけれども、わずかでもやはり政治の中においては見のがしてはならない、大事なことじゃなかろうかという感じを持っております。従って、各府県について、ずっとそういうことを調べまして、はたしてどうすればいいかということももら少し研究させていただきたい。私も臼井委員のおっしゃるように、もしそうすれば促進されるなら、非常に効果の上がるいい制度であるという感じを持ちますので、もう少し私ども実情を調べて、もし必要があれば喜んでその方向に向かって参りたい、そういうような感じを持っております。
  56. 臼井莊一

    ○臼井委員 今の大臣のお言葉でわれわれも非常に力強く感ずるのであります。なお、今の地方の保証制度を見ますと、就職が決定して、どうしても保証人がないときには、ということになっておるのです。ですから、大体親戚とか知己で保証人は得られるけれども、しかしさらにもっと強い保証人があれば銀行等においても就職が可能な場合が相当あるのじゃないかと思う。ということは、たとえば銀行等に私ども紹介いたしまして、推薦いたします。そうすると、もし就職した場合には保証人を承諾するということを、試験に通る前にわれわれ承認書を出すのです。ですから片親をきらうよらな銀行とか会社あたりがもしあるとしても、そこに力強い保証があるのだということになれば、私は採用試験、面接あるいは履歴書の審査等において非常に違うのじゃないかと思いますので、実施の面において一つそういうことの計画の面を十分に御研究いただきまして、もしそういうことができ得れば、私はそういう不幸な者の就職が非常に進むのじゃないかと思うのであります。まあ具体的な例としては、三十三年でございましたかに、横須賀の高校を卒業した女の子が、三才のときにお父さんに戦死されたというので就職に非常に苦しんで、切々たる日記などを書いて、とうとう熱海で鉄道自殺をしてしまったという件があるのです。これなども、日記を見ても実に胸を打たれるようなあれがあるのですが、ちょっと参考に一節読んでみても、昭和三十三年二月九日の日記で、「面接で先づ最初に聞かれるのはいつも〃貴女のお父さんは?〃の一言、〃戦死しました〃〃何時ですか?〃〃昭和十八年私の三つの時です〃私はこの言葉をいうのが一番つらい。何故か悲しみがこみ上げてきて、つい暗い顔になってしまう。人の気も知らないで、一番いやな事を最初に聞くんだ。情のない人達ばかり。こんな時私はいつも心の中で叫んだ〃あの戦争が私の父を殺したのだ!、私の父を殺したのは誰だ!〃と」そのほかこういうようなことをたくさん日記に連ねて、そうして一応どこかへ就職はしていたのですが、それが収入が少ないので、もう少しいいところへ就職したいということで、就職試験を受けているらちに、無断欠勤したというので前のところも首になってしまった、こういうようなことで、思い余って自殺したようなことがあるのです。ですからやはりそういう方面に対しても、本法案を直接の関係はないのですが、この運用の面で、先ほど申し上げたように、たとえば政令で定める際に、そういう者を使っていれば数の中からは除く。パーセンテージからいえばわずかなものでしょうけれども、しかしまたやはり今の身元保証と同じような面で、そういうことも国が考えていてくれるということに私は大きな力づけがあるというふうに考えます。こういうことを申し上げているときりがありませんからこれでとどめますが、どうぞ一つこの法案の実施のしにおきまして、いろいろの実際的な一面で運用をうまくしていただいて、さらに将来不利な点があったら、これも適当なときに改めることもできると思いますが、ことにこの法、案では適応訓練でございますか、これは私はやり方によっては非常にけっこうだと思います。ただ就職が、そこにいて何がしか給料をもらえばいいというのじゃなくて、やはりその人の能力が十分発揮できるようにしていただきたい。またきょう午前中の参考人の方のいろいろな御意見の中にもありましたが、ことに精薄児なども、これは日に見えた身体障害ではないけれども、身体障害というのは頭脳をいためて、少し脳を書したというような者にも適用されると思うのです。それも障害の中に入っているようですが、先天的ではあってもやはり知能がおくれているというのも私は身体の障害一つになると思う。これは教育方面でもいろいろ考えて、特殊学校等でも今後ますます力を入れていくようでありますが、そういう点で一つ十分りっぱな成果を上げられるようにお願いいたしまして、本法案を作りましたことに敬意を表して私の質問を終わります。手
  57. 永山忠則

    永山委員長 次に船員保険法の一部を改正する法律案を議題として審査を進めます。  質疑を行ないます。内海清君。
  58. 内海清

    内海(清)委員 私は船員保険法の一部の改正につきまして若干の質問をいたしたいと思いますが、すでに同僚の委員の皆さんからいろいろと質問が行なわれておりますので、できるだけ簡潔に、重複しないようにと考えておりますが、多少重複する部面があるかも存じませんので、お含みおきいただきたいと思います。  この船員保険法におきまする職務上の障害の問題、これは船員法との関連におきまして——つまり船員法の八十九条によりますと、船員の職務上の傷病については、船主が、その疾病が治るまで、その費用で療養を施し、または療養に必要な費用を負担しなければならぬ、こういうことなんです。さらにまた船員法の九十五条におきまして、船員保険は船員法に定めておる災害補償を全面的にカバーするものだという規規定があるわけでございます。ところが今日まで、この船員法と船員保険との間にはかなり大きい隔たりがあったと思うのであります。ことに船員保険におきましては、船員保険法の三十一条あるいは四十条というふうな条文があるにもかかわりませず、船員の職務上の傷病の場合に、職務外の傷病と同様に三年の療養期間が経過すると療養給付が打ち切られておる、こういう状態にあるのであります。これが今回の改正によって改められることは当然のことであると思う。特に三十年の七月に、けい肺及び外傷性脊髄障害に関する特別保護法が陸上労働者には制定いたされました。しかるに船員法に関しましては、何らこれに相当する法の改正が行なわれてない、ここに非常に大きな格差があったと思うのであります。これらの中におきましても、特別にこの外傷性脊髄障害の問題であります。この障害はまことに治癒しがたいものであり、そのために非常な悲惨なる療養生活をし、さらにそれが家族にまで及んでおるという状態も今日まで種々見られておるのであります。  そこで、まず第一番に、三十年七月に陸上労働者に関してはこの法が制定されまして、その療養が非常に有利な立場に置かれたのに対して、船員におきましてはこれが今日まで改正されなかった。なぜ改正されなかったのか、その理由についてお尋ねいたしたいと思います。
  59. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 便宜私からお答えいたします。御承知のように、陸上の労働者に対しましては三十年及び三十三年で、けい肺及び外傷性脊髄障害に関する特別の保護立法なりあるいは臨時措置法ができて、それぞれ手当を受けておるわけであります、船員につきましては、けい肺は大体ございませんが、外傷性脊髄障害はございます。ただ、その数が非常にわずかなものでございますことと、それから、そういう人たちは、大体現在の法律におきましても、療養給付期間三年間というものを経過した後においては、ほとんどの人が第一級の障害年金を受けておるということでございます。そのほかに、船員保険の福祉施設費においてその人たちの治療費を負担するという制度にいたして今日にまで至っておるわけであります。私どもも、一応はそういうことで参っておりますが、船員保険の方と陸上の方との手当に若干の差はあるということでありますので、これは何とかしなければいかぬなとは思っておりましたが、今回ようやくその機会が参った、従来の経緯はそういうことでございます。その辺を一つ御了承いただきたいと思います。
  60. 内海清

    内海(清)委員 これが陸上労働者の場合と同時に改正されなかった理由をいろいろおあげになりましたが、今日これが改正されるということ、すでにそのときに改正の必要があったのだと思うのです。でありますから、今おあげになりましたいろいろな理由というものは、私はそう決定的な理由ではないと思います。船員保険というのは特別な総合保険というふうなことになっておりますので、他の理由がもしあったら重ねてお伺いをいたします。
  61. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 特に申し上げるほどのものもございません。今お話のように総合保険であるということのために、かえって特別なような手当をするということにつきましてなお検討しなければならぬ問題がある。その辺のこともありまして、この点はそういうような程度でございます。
  62. 内海清

    内海(清)委員 他に特別なものがないということでございますので、これは従来厚生省におきましてもこの船員保険に関しましてはこれはこの問題ではございませんが、標準報酬の問題にしても二十六国会で附帯決議が行なわれておるのに、これが今日なお実施されていない、改善されていないというふうなことがございます。これらを考えまするときに、政府としてのこれらを具現いたします熱意と申しますか、あるいはまたそれに対する実行力と申しますか、そういうふうなものの欠除が見られたのじゃないかというふうに思うのであります。この問題につきましては、今回改正されましたので、この程度にいたしたいと思います。  それでは次にお伺いいたしたいと思いますのは、この三十年に陸上労働者に対する法が制定された。ところが船員にはこれがなされなかったというのでありますが、その陸上労働者に対する法が制定されましてから今日までに、船員の中でせき損患者が何人ぐらい出たか、あるいはまた現在何名ぐらいおるか、一つお知らせいただきたい。
  63. 戸沢政方

    ○戸沢説明員 今度の法改正をいたすにつきまして、過去の実績を調べた結果について申し上げますと、調べる手段といたしまして、過去何カ年間における障害手当金ないし障害年金を受けておる者につきまして、それが病気にどういう種類の者が、またどのくらい期間経過後にそういう手当金ないし年金に切りかえられたかというようなことを調べたものがございます。つまり従来の制度ですと、三年たちますれば、そこでなおろうとなおるまいと廃疾認定をされて、障害手当金ないし年金に切りかえられるわけでございますので、そういう三年の期間経過後に廃疾認定されて障害手当金ないし障害年金に切りかえられた者がどのくらいあるかということを調べてみたわけでございます。そうしますと、病気別に見ますと、やはり脊髄損傷による障害患者が一番多うございまして、脊髄損傷患者で障害年金を受けておる者について、その三年を経過したときにおいて年金に切りかえられた者を調べますと、全部で十九名ございます。申し落としましたが、これは昭和二十九年から三十三年まで五カ年間の調査でございます。十九名ございまして、それを障害年金の等級別に見ますと、一番重い一等級の者が十名ございまして、あと二等級ないし六等級という程度のものでございます。
  64. 内海清

    内海(清)委員 現在何名ぐらいおりますか。
  65. 戸沢政方

    ○戸沢説明員 現在そういう脊髄損傷患者について福祉施設費でもって便宜的に見ておる患者というものは五名おります。
  66. 内海清

    内海(清)委員 そういたしますと、二十九年から三十三年の間におきまして障害年金を受けておる者が十九名であります。それから現在船員のせき損患者が五名ということであります。そういたしますと、このせき損によりまして今日なお治療を受けなければならぬ者は、この合計の二十四名ということですか。
  67. 戸沢政方

    ○戸沢説明員 そうではございませんで、二十九年から三十三年までの五カ年間において障害年金を受けておった脊髄損傷患者が十九名でありまして、そのうち船員保険の福祉施設費で保護されておった者が五名というわけでございます。と申しますのは十九名おりますけれども、陸上の特別保護法で保護いたします病状の程度に該当する者は第一級の者だけでございまして、これが十九名のうち十名ございます。そのうちのさらに半分が大体まだ治療の余地があるというところで、福祉施設費で見ておったわけでございます。あとのものは治療の余地がない者ばかりとはいえないかもしれませんが、比較的程度の軽い者あるいは自宅で療養している者というようなことになるのじゃなかろうか、かように考えております。
  68. 内海清

    内海(清)委員 そうすると、端的にお尋ねをいたしまして、二十九年から三十三年までの五年間におけるこれだけの人数の中で、治癒している者は何名でございますか。
  69. 戸沢政方

    ○戸沢説明員 治癒と申しますか、現行では三年経過いたしますれば、その時期における廃疾の状態によって認定をして、障害年金に切りかえるわけでございますので、この十九名のうちどれだけの者がまだ治癒せずに療養の可能性があるかということははっきりいたしておりませんが、ともかく一番重い者の中でまだ治療の可能性があるという者については福祉施設費で見ておったわけでありまして、その者が五名おるということになっております。
  70. 内海清

    内海(清)委員 そういたしますと、そこの点はなかなか判然いたしませんが、いずれにしてにも、一応年金をもらっておるけれども、十分なる治療をすれば今日よりもある程度の健康な方向にいくという人がこの中にはかなりあるのではないかと思う。ところ今まで船員についてはとかく労災病院あたりに入院できなかった。これらの治療に対しまする労災病院のこの施設というものは非常に今まで完備しておった。ところがそれが入院できないために、今日なお非常にその病に呻吟しておるという人があると思うのです。これらにつきましては今度の法の改正によりまして、十分なる治療ができることと考えるのであります。これは今日までよりも非常な進歩であると思いますが、今度これらは一つ十分厚生当局においてお考えいただいて、今までワク外に置かれて病に苦しんだ人も、この際少しでも救うように十分なる御配慮が願いたい。  それでは次に一つお尋ねしてみたいと思いますことは、ただいまのお話によりますと、陸上労働者に対する三十年の法の制定以来、船員に関しては三年で打ち切られておる。ところがそれでなお治癒していない者が、私ども調査によりますとかなりあるわけです。それが今どういうふうな状態で療養に当たっておるか。このことも今度の法改正等によりましていろいろ御調査にもなっておると思いますが、一つその実情をお知らせいただきたい。
  71. 戸沢政方

    ○戸沢説明員 そういう三年たっても治癒しないままに年金に切りかえられた者がどのくらいあり、かつそういう患者がどういう状態にあるかということを全部について精細に知ることは困難でございますが、職務上のそういう傷病患者について分類的に見ますと、やはり何といっても一番多いのはせき損患者で、その次は潜水病でございまして、そのあとはけがによる患者が多いわけでございます。それでそういうけがによる患者というものは、ある一定の時期に達すれば一応の回復状態に固定するものが大部分でございますが……。
  72. 内海清

    内海(清)委員 せき損患者について。
  73. 戸沢政方

    ○戸沢説明員 せき損患者についてみますと、確かにまだ治癒の可能性がある、治療すれば若干は回復する見込みがあるというものもある程度あることは事実のようでございまして、そういう人が従来整形外科病院あるいは一般の公立病院等に入って、福祉施設費によって治療を受けておったわけでございます。しかしお話しの通り、労災病院におけるようなそのための特殊なベッド等を用意して、特別の治療、看護が行なわれておるというものに比べますれば、あるいは至らないものがあったわけでございます。それで今回の改正によりまして、今度は療養給付としてはっきりと、公然と治療を続けることができることになったわけでございますが、労災病院を初めとしまして、関係方面と十分よく連絡して、実情に沿った十分なる看護を施していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  74. 内海清

    内海(清)委員 ただいまの御答弁によりますと、どうもはっきりいたしませんが、少なくとも今回法を改正するにあたりましては、そういうふうな基礎的な、かなり詳しい調査が行なわれておらなければならぬと思うのであります。私ども承知しておる範囲におきましても、これは家庭までがかなり悲惨な状況に至っておるのもあるのであります。この障害年金あたりをもらって——いろいろ他の方の援助もありますけれども、それで細々と治療しても、なかなかなおるような状態でないのです。これはすでに御承知だと思う。このせき損患者の状態こそ真に——患者はもちろんでありますけれども、家族も日々いかに苦しんでおるか。しかしこれはもう過ぎたことでありまして、今申し上げましてもどうかと存じますけれども、今後これらに対する十分なる配慮が望ましいと思うのであります。このせき損患者に対しまする問題は、私は人道上の大きな問題だと思う。今までは法が改正されておらなかったので、船員に関してはやむを得ないといえばやむを得ないかもしれない。しかし人道上から考えれば、それだけでは済まされぬ問題もあるのじゃないかというふうな気持もいたします。従って今後は、今年金を受けております者も、この法の改正によって救済の道が生まれてくるわけであります。しかしすでに三十年の七月に陸上労働者の法が制定されてから今日まで、陸上労働者は療養の上で大きな恩恵を受けておるのであるが、船員に関しては何ら受けていない、これに関しましては政府の行政措置においても何か特別のものが考えられないだろうか、その期間におきまする——補償と言うては言葉が悪いかもしれませんが、何かこれに対するあたたかい配慮ができないものだろうかというふうに考えるのですが、その点に対する御意見一つ伺いたい。
  75. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 先ほど来お答え申し上げましたように、従来そういう人たちには障害年金の一級のものが大体いっていると思います。また療養の方につきましても福祉施設においてやっていく。それは労災病院の場合と比べますと若干落ちる点があろうかと思いますが、これは一般の患者並みのものはいたしておるわけでありますが、それ自体につきましては、さらによくするということについては、今回改正になりますればそういう面も十分考慮して参りたいと思うのでございまして、これも従来関係団体とも連絡して、極力その福祉施設費でもって療養いたして今日まで来たような実情でございます。今日からさかのぼってその人たちにどうこうということは、実際問題としてはなかなか困難ではあろうと思いますが、今後の看護につきましては、それだけに十二分にいたしてあげなければいけない、かように私どもとしては心ひそかに感じておるわけであります。
  76. 内海清

    内海(清)委員 これはすでに質問になっておることだと思いますが、重要だと思いますので、さらに一、二お尋ねいたしたいと思います。  今回の改正におきましては、被保険者の船員の一部負担については何らの手が加えられていない。これは参議院におかれましても附帯決議がつけられておるようでありますけれども、この理由はどういうことか、お伺いしたいと思います。
  77. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 一部負担の問題は、たびたび御質問もありましてお答え申しておりますので、ここであえて詳しく申し上げなくてもよろしいかと思いますが、やはり私どもといたしましては、それぞれの社会保険制度の健全性を維持していくためにこれはやむを得ない措置ということで、今日まできておるわけであります。しかし今後国民皆保険になりますと、やはりそれぞれの皆保険の名に恥じないような内容を盛っていくという時期に参っておりますので、これは検討しなきゃならぬとは考えております。しかしこの問題は船員保険だけの問題でなしに、やはり社会保険の各項に影響する問題でございますので、政府といたしましては各種制度全般についての総合調整、同時にその内容を充実するということに関連いたしまして、すでに総理大臣から内閣の社会保障制度審議会にも、その点についての基本的な考え方というものについて諮問をいたしております。また私どもも、事務的にそういう点も今検討いたしております。また厚生大臣の諮問機関でございます社会保険審議会におきまして、この船員保険関係の部門についても、今のお尋ねのようなものを含めまして、お互いが検討していこうということになって目下せっかく検討中でございます。今回はそういういろいろな点がありまして、どうこう結論を出すまでに至っておりません。これは政府といたしましても、各方面からの検討を加えて善処して参りたい、かように考えておる次第でございます。
  78. 内海清

    内海(清)委員 この問題は、ただいまお話もございましたが、審議会におきましてもすでに取り上げられて、政府に対して答申が行なわれておるのであります。しかもこれが解決しないために、船員の負担が過重であるということのみならず、これで早期診療ということが阻害されておるように思うのであります。このことは、船員の保健衛生上きわめて重大なことであると思います。政府におかれましてもこれらの点を考えられて、早急にこれが解決をはかってもらいたい、こういうふうに考えるのであります。  それから次は、今度の改正案におきましては、標準報酬についても触れてないのであります。これもすでに御承知のように、二十六国会においても附帯決議を付されておりますし、今回さらに参議院においても附帯決議が付されておると思うのであります。この標準報酬の最高及び最低の引き上げが、すでに二十六国会で決議されておるのであるから、何か処置が当然とらるべきであったと思うのであります。それが今日まで放置されておるというのはどういう理由でありましょうか、一つお伺いいたしたいと思います。
  79. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 標準報酬の等級区分は、申し上げるまでもなく、できるだけ被保険者が受け取ります賃金の実態に合わすべきものであろうという考えを私どもは持っております。それでこの国会の冒頭におきまして、いわゆる社会保険の四法案といわれるものの御審議をお願いいたしたわけでございますが、その機会に私どもは厚生年金保険法の方につきましては等級区分を改訂いたしました。その際船員保険の方は見送りました。その理由は、陸上の場合におきましては、先ほどの賃金の実態と非常に合いませんで、当時二万八千円の頭打ちに属する人が三割前後おる、これを何とかして是正をしなきゃならないというので、これを引き上げていただきまして改正いたしたのであります。その船員の保険は、現在三万六千円主でに相なっておりますが、その最高のクラスに属している人が大体六%くらいでございます。そこで私どもとしては、この法案を厚生大臣の諮問機関でございます社会保険審議会に諮問いたしました際にも、労使、公益それぞれからいろいろ御意見もございましたが、その答申を見ましても、その辺について関係者一同がまだ納得するほどにまで夫は機が熟しておらないということでございます。それから大体六%くらいでございますので、あえて今回は改正しなくてもまあまあよかろうというようなことをいろいろ考えまして、今回の改正には見送りにいたしたわけであります。しかし私どもといたしましては、できるだけ賃金の実態に合わせるように持っていくべきものだと考えておりますので、できるだけ関係者の間にもそういうものについてみんなの認識を一致するように指導をいたしまして、なるべくすみやかな機会において賃金の実態に合うようにこの改訂もいたしたい、かように存じておる次第でございます。
  80. 内海清

    内海(清)委員 これは今お話のありましたように、健康保険におきましては三十二年にこれが改正になって、一万八千円でありましたのが最高五万二千円というようなことであります。ところが船員の方におきましては、これが今日まで据置になっておる。しかも健康保険におきましては、これがたとえば死亡というふうな場合も、平均賃金によってやる。ところが船員の場合は、これによってやられるために、長年海上において船とともにやってきた人におきましてもこれに抑えられて、陸上労働者との間に非常に差ができておる。この辺に最も大きな問題があると思う。でありますから、審議会等におきまして、皆さんの御意見が一致していないということは、この海上労働者の実態というものを十分把握しておられないということに私は相なるのじゃないかと思うのです。そういう意味からいたしまして、これはすでに同僚委員から再三お話があったことと思いますので、私はこれに対してはあまり申し上げることも遠慮いたしたいと思いますが、これに対して引き上げるお考えがあるかないかこれはやはり早急にただいまの一部負担の問題と一緒に考えていただかなければならぬ問題だと思いますが、その辺に関するお考えを聞かしていただきたい。
  81. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、今日のところではいわゆる頭打ちになっている人は六%程度でありまして、わずかとはいいますけれども、しかし建前といたしましては、できるだけその賃金の実態と合わせるように私ども努力すべきだと思うのでございます。ただそれにつきましては、関係者の人々の間にもなるべく納得のいくように、すみやかな機会において私ども指導を加えていきたい、かように存じております。なおその御趣旨はよくわかっておりますので、その方面について努力を重ねて参りたいと思います。
  82. 内海清

    内海(清)委員 時間の関係がありますので、大体以上で終わりたいと思いますが、私は最後に特にお願い申し上げたいと思いますことは、またさっきに返るようでありますけれども、先ほど申し上げましたせき損患者について、これの給付内容というもの、ただいまの御答弁では、今後労災病院にも入ることができるであろう、この処置も早急にとっていただかなければなりませんけれども、たとえば給付の内容における食事のカロリーの問題、あるいはつき添い看護の問題、これら多くの解決を見なければならぬ問題が今日船員保険の中にはあると思う。これらにつきましては、今日までのいろいろ厚生省当局のお答えによりましても、十分配慮されると思いますけれども、これにつきましては、十分お考えいただいて、先ほど申し上げましたようなせき損患者の療養の実態でありますから、特別に一つ配慮いただきたい。このことを強く要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。     —————————————
  83. 永山忠則

    永山委員長 これにて質疑は終局いたしました。     —————————————
  84. 永山忠則

    永山委員長 引き続き討論に入るのでありますが、申し出がありませんので、直ちに採決するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  85. 永山忠則

    永山委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  船員保険法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  86. 永山忠則

    永山委員長 起立総員。よって本案は原案の通り可決すべきものと決しました。     —————————————
  87. 永山忠則

    永山委員長 この際、伊藤よし子君外二名より本案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されておりますので、その趣旨の説明を求めます。伊藤よし子君。
  88. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)委員 私は、自由民主党、日本社会党、民社党を代表いたしまして、ただいま可決になりました船員保険法の一部を改正する法律案に対する附帯決議を付したいと思います。  案文を朗読いたします。    船員保険法の一部を改正する法律案に対する附帯決議   政府は船員保険について左の事項に努力すべきである。  一、船員保険の被保険者の標準報酬は最高三万六千円に据置かれているが、賃金の実態に即して引き上げるようすみやかに措置すること。  二、船員勤務の特殊な実態にかんがみ、療養給付における一部負担制度についてすみやかに検討すること。  三、船員の外傷性せき髄障害患者に対する療養給付の内容(食事の熱量、附添看護等)は、陸上労働者の同一症状のものと同一の内容にすみやかに改めること。   なお、船員せき損患者が労災病院に入院できるよう至急に措置すること。  以上でございます。  何とぞ各位の御賛同あらんことをお願いいたします。(拍手
  89. 永山忠則

    永山委員長 本動議について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  90. 永山忠則

    永山委員長 起立総員。よって本案には、伊藤よし子君の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、厚生大臣より発言を求められておりますので、これを許します。渡邊厚生大臣。
  91. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 御決議の趣旨を尊重いたしまして、善処いたしたいと存ずる次第であります。     —————————————
  92. 永山忠則

    永山委員長 お諮りいたします。本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  93. 永山忠則

    永山委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時五分散会