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1960-05-10 第34回国会 衆議院 社会労働委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年五月十日(火曜日)     午前十一時二分開議  出席委員    委員長 永山 忠則君    理事 大石 武一君 理事 田中 正巳君    理事 藤本 捨助君 理事 滝井 義高君    理事 八木 一男君 理事 堤 ツルヨ君       池田 清志君    加藤鐐五郎君       齋藤 邦吉君    中山 マサ君       古川 丈吉君    赤松  勇君       伊藤よし子君    大原  亨君       岡本 隆一君    河野  正君       栗原 俊夫君    小林  進君       五島 虎雄君    中村 英男君       本島百合子君  出席政府委員         総理府事務官         (行政管理庁行         政監察局長)  原田  正君         厚生政務次官  内藤  隆君         厚生事務官         (大臣官房長) 森本  潔君         厚 生 技 官         (医務局次長) 川上 六馬君         厚生事務官         (医務局次長) 黒木 利克君         厚生事務官         (保険局長)  太宰 博邦君         運輸事務官         (船員局長)  土井 智喜君  委員外出席者         厚生事務官         (保険局船員保         険課長)    戸沢 政方君         運輸事務官         (船員局厚生課         長)      今成秀三郎君         専  門  員 川井 章知君     ――――――――――――― 五月四日  委員古川丈吉君及び山下春江辞任につき、そ  の補欠として石田博英君及び山田彌一君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員石田博英君及び山田彌一辞任につき、そ  の補欠として古川丈吉君及び山下春江君が議長  の指名委員に選任された。 同月六日  委員五島虎雄辞任につき、その補欠として淺  沼稻次郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員淺沼稻次郎辞任につき、その補欠として  五島虎雄君が議長指名委員に選任された。 同月七日  委員亀山孝一君及び古川丈吉辞任につき、そ  の補欠として辻寛一君及び今松治郎君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員松治郎君及び辻寛一辞任につき、その  補欠として古川丈吉君及び亀山孝一君が議長の  指名委員に選任された。 同月十日  委員亀山孝一君及び山口シヅエ辞任につき、  その補欠として山口好一君及び栗原俊夫君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員山口好一君及び栗原俊夫辞任につき、そ  の補欠として亀山孝一君及び山口シヅエ君が議  長の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月九日  引揚者給付金等支給法の一部を改正する法律案  (社会労働委員長提出参法第三号)(予) 同月六日  鹿児島公共職業安定所指宿出張所昇格等に関  する請願(上林山榮吉君紹介)(第三一一四  号)  日雇労働者健康保険法改善に関する請願(木  下哲君紹介)(第三一二九号)  市町村、労働組合等の行う職業訓練に対する経  費負担に関する請願木下哲紹介)(第三一  三〇号)  一般職種別賃金即時廃止に関する請願木下  哲君紹介)(第三一三一号)  消費生活協同組合資金貸付に関する法律の一  部改正等に関する請願外一件(多賀谷真稔君紹  介)(第三一七七号)  酒癖矯正施設設立に関する請願小松信太郎君  紹介)(第三一七八号)  同(本名武紹介)(第三一九五号)  戦傷病者のための単独法制定に関する請願(大  久保武雄紹介)(第三一七九号)  同(竹下登紹介)(第三一八〇号)  同(八田貞義紹介)(第三一九四号)  同(世耕弘一紹介)(第三二四〇号)  同(原田憲紹介)(第三二四一号)  同(坊秀男紹介)(第三二四二号)  同(三鍋義三紹介)(第三二四三号)  同(山崎巖紹介)(第三二四四号)  同(水谷長三郎紹介)(第三三四四号)  生活保護基準引上げ及び失業対策強化等に関  する請願多賀谷真稔紹介)(第三二三九  号)  那智の滝源泉確保に関する請願世耕弘一君紹  介)(第三二四五号) は本委員会付託された。     ――――――――――――― 五月六日  保育所予算増額等に関する陳情書  (第七一四号)  国民健康保険事業に対する国庫負担金増額に  関する陳情書(第  七一五号)  同(第七七三号)  失業対策事業就労者石炭手当支給に関する陳  情書(第七五五  号)  同(第七五六号)  同(第八六五号)  最低八千円の賃金制確立等に関する陳情書  (第七六  七号)  同(第  七六八号)  戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正に関す  る陳情書  (第七六九号)  失業対策事業就労者賃金引上分一律支給に関  する陳情書(第七  七〇号)  石炭鉱業離職者緊急就労事業費全額国庫負担に  関する陳情書  (第七七一号)  原子爆弾被爆者医療等に関する法律の一部改  正等に関する陳情書  (第七七二号)  未帰還者調査等に関する陳情書  (第八〇八号)  国民年金法の一部改正に関する陳情書  (第八〇九号)  石炭鉱業離職者緊急就労事業費全額国庫負担  等に関する陳情書  (第八一〇号)  認定共同職業訓練所建設費国庫補助に関する陳  情書(第八三七  号)  国民健康保険事業財政措置強化に関する陳情  書(第八四四  号)  旧満州国文武官遺家族援護等に関する陳情書  (第八五八  号)  労働組合法及び労働関係調整法の一部改正に関  する陳情書(第  八六六号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件母子福祉資金貸付  等に関する法律の一部を改正する法律案内閣  提出(第一二〇号)(参議院送付)  薬事法案内閣提出第一二七号)(予)  薬剤師法案内閣提出第一二八号)(予)  医療法の一部を改正する法律案内閣提出、第  三十一回国会閣法第一八三号)  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第一一五号)      ――――◇―――――
  2. 永山忠則

    永山委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。内閣提出身体障害者雇用促進法案について参考人より意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 永山忠則

    永山委員長 御異議なしと認め、さように決しました。  なお、時日及び参考人の選定につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 永山忠則

    永山委員長 御異議なしと認め、さように決しました。      ――――◇―――――
  5. 永山忠則

    永山委員長 去る四月二十七日付託になりました内閣提出母子福祉資金貸付等に関する法律の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。     ―――――――――――――
  6. 永山忠則

    永山委員長 まずその趣旨説明を求めます。内藤厚生政務次官
  7. 内藤隆

    内藤(隆)政府委員 ただいま議題となりました母子福祉資金貸付等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  現行母子福祉資金貸付制度は、都道府県母子世帯の母や子に対し、生業資金修学資金等八種類の資金を貸し付け、その経済的自立の助成をはかることを目的としているものでありますが、昭和二十八年四月この法律施行以来昭和三十三年度末までに、都道府県母子世帯に貸し付けました実績は、件数にして約三十二万件、金額にして約六十四億円に達しており、わが国における母子福祉対策に多大の寄与をいたしているのであります。  今回の改正の第一点は、母子世帯福祉をはかることを主たる目的とする社会福祉法人または民法第三十四条の規定により設立された法人が、母子世帯の母を使用して行なう事業について、事業開始資金及び事業継続資金を貸し付けることができるようにするとともに、その貸付金額の限度をそれぞれ百万円及び三十万円とし、その利率を年五分とすることであります。  すなわち、母子世帯の母の中には、みずから事業を経営する才能や手腕に恵まれないために現行貸付金制度を十分活用できないものが少なくなく、また他方、母子世帯の母にとっては、就職の機会がきわめて少ないので、これらの母子世帯経済的自立をはかるために、母子世帯福祉をはかることを主たる目的とする法人に対し、母子世帯の母を使用することを条件に貸付金貸付を行ない、適当な収益事業を行なわせようとするものであります。  改正の第二点は、住宅補修資金について六カ月間の据置期剛を設けることであります。現在、住宅補修資金については、据置期間が設けられていないのでありますが、実際問題として、直ちに償還することは非常に困難なことでありますので、母子世帯が償還を円滑に行なうことができるように据置期間を設けようとするものであります。  改正の第三点は、災害により被害を受けた母子世帯に対する事業開始資金事業継続資金または住宅補修資金について、その据置期間貸付の日から二年間まで延長することができるようにすることであります。  この種の措置は、従来大災害ごと特別立法により行なわれてきたものでありますが、これを一般的な制度として、災害による被害を受けた母子世帯福祉をはかろうとするものであります。  以上が改正案の大要でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  8. 永山忠則

    永山委員長 本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。手      ――――◇―――――
  9. 永山忠則

    永山委員長 去る四月二十六日、予備審査のため送付せられ、本委員会付託になりました内閣提出薬事法案及び薬剤師法案、右両案を一括議題とし、審査を進めます。     ―――――――――――――
  10. 永山忠則

    永山委員長 まずその趣旨説明を求めます。内藤厚生政務次官
  11. 内藤隆

    内藤(隆)政府委員 ただいま議題となりました薬剤師法案及び薬事法案提案理由説明いたします。  現行薬事法は戦後早々の間に立法されたものでありまして、種々不備の点もありましたし、またその後における実施の経験に徴し、かつ医薬品飛躍的進歩事情等に照らし、必ずしも今日の実情に沿わない点が多いのであります。よって、今回これらの点について検討を加えまして、その整備改善をはかろうとするものであります。すなわち、医薬品範囲につき再検討し、実情に応じた措置をとるとともに、医薬品等が、生命身体に直接影響するものであり、医療上きわめて重要なものであることにかんがみ、薬局製造業販売業を通じ、管理その他の規制についてまた医薬品表示取り扱いないし広告に関し遺憾なきょう、所要整備をはかろうとするものであります。  次に法律の形につきましても、現行法薬剤師身分に関する事項薬局並びに医薬品化粧品及び医療用具に関する事項を一本に規定し、かつ条文の配列、用語、表現が理解にきわめて不便でありますので、これについてはいわゆる身分法業務実体法とを分離するとともに、条文、体裁を整備せんとするものであります。  なお薬事法改正につきましては、右のような事情で、かねてから非常に要望が強かったものでありますが、今回、薬事審議会の答申を基礎として立案をいたし薬剤師法案及び薬事法案を上程する運びといたした次第であります。  まず薬剤師法案について、御説明申し上げます。  第一に、薬剤師の任務については、調剤医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与すべき旨を明らかにし、もって国民の健康な生活確保に資する上に努力をいたすべきことを期待する趣旨でございます。  第二に、薬剤師業務たる調剤につきましては、現行法不備を補い、調剤録の備付、保存その他の規定整備することにしております。  次に薬事法案について御説明申し上げます。  第一に、新たに医薬部外品制度を設け、口中清涼剤殺虫剤等で人体に対する作用の緩和なもの等を医薬部外品として医薬品範囲外とし、一面において医薬品特殊性を明確にするとともに、これらのものの取り扱いを簡易にすることにいたしております。  第二に、都道府県知事の諮問に応じ、薬事に関する重要事項を調査審議するために、地方薬事審議会を置くことができることといたしております。  第三に、薬局医薬品等製造業販売業等についてその業務が適正に行なわれることを確保するため、まず登録制許可制に改め、その許可基準整備し、また薬局製造業等管理についてその規定整備するとともに、新たに医薬部外品化粧品及び医療用具製造所にも責任技術者を置かなければならないことといたしたいと考えております。  第四に、医薬品販売業につきましては、医薬品生命身体に直接作用するものでありますので、これに関する相当の知識経験を有する者に取り扱わせるという本来の建前と、現下の実情とを勘案して、これを一般販売業薬種商配置販売業及び特例販売業の四種としております。すなわち、すべての品目を取り扱う者はこれを一般販売業者とし、指定医薬品以外のすべての品目を取り扱う者に薬種商の名称を付し、配置による販売を行なう者は配置販売業者とし、また医薬品販売業の普及が十分でない地域等特に必要がある場合に、品目を指定して認める者を特例販売業者とし、それぞれにつき、許可の内容について規定を設けました。  次に、医療用具販売業につきましても、特定医療用具についてはその取り扱いに遺憾なきを期するため、新たに届出制をとることにしたいと思います。  第五に、医薬品等取り扱いに関しましては、その特質にかんがみ、品質の確保、使用上の適正をはかるについて特別の留意をいたさなければならないことは言うまでもありません。この趣旨にかんがみまして、医薬品等には製造番号、記号及び成分分量等表示をさせることとするとともに、医薬品には封を施すことにしております。またホルモン剤等特殊成分を含有する化粧品につきましては、これによる障害等を防止するため、品目ごと承認を要することとし、またその成分分量等一定表示をさせることとしております。  次に、医薬品広告に関しましても、ガン等特殊疾病用特定医薬品広告承認前の医薬品広告についても所要の制限をしようとしております。  なお、これらの法律施行に伴う必要な経過措置につきましては、その移行が円滑に行なわれるように留意いたしております。  以上がこの二法案提出いたしました理由及び改正のおもな要点であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
  12. 永山忠則

    永山委員長 両案に対する質疑は後日に譲ることといたします。手      ――――◇―――――
  13. 永山忠則

    永山委員長 第三十一回国会において提出され、本国会に継続されております内閣提出医療法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。
  14. 永山忠則

    永山委員長 すでに本案趣旨につきましては、第三十一回国会において説明を聴取し、十分御了承のことと存じますので、この際これを省略いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 永山忠則

    永山委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  質疑に入ります。通告がありますのでこれを許します。栗原俊夫君。
  16. 栗原俊夫

    栗原委員 私は医療機関、特に国立医療機関の中で医療担当の人員が昨今非常に少なくなっておる、そしてそういう中で患者が非常な心配をしておる、こういう実情にかんがみまして、少しくお尋ねをしてみたいと思います。  まず第一に、ただいま国立医療機関医療担当の方々の数が定員と比較してみてどのような状態になっておるか、こういう点をお伺いしてみたいと思います。
  17. 川上六馬

    川上政府委員 医療担当の職員の中でも特に不足を告げまして私ども心配いたしておりますものは医師でございます。ただいま御質問の点を医師について申しますと、国立病院の方は定員が千五百六十五名で、現員が千五百二十四名でございまして、差引四十一名が欠員でございます。それから結核療養所定員が千七百九十一名、現員が千五百六十六名で、欠員が二百二十五名となっております。それから、らいの方は定員が百六十四名、現員が百十五名で、そして欠員が四十九名、精神療養所の方は定員が五十二名、現員が三十五名で、欠員が十七名というような状況でございます。
  18. 栗原俊夫

    栗原委員 この医療担当者、とりわけ直接病気の治療に当たる医師の数が定員よりどうも大へん欠員がある、こういうことは患者にとっては非常に重大な問題だと思いますが、この定員をきめる責任部署、これは一体どこであり、きめた定員確保していかなければならない責任ははたしてどこにあるのか、こういうことを一つ明らかにしてもらいたい。
  19. 川上六馬

    川上政府委員 むろん厚生大臣でございまして、その担当医務局がいたしております。
  20. 栗原俊夫

    栗原委員 大臣責任がある。担当医務局がやっておっても責任大臣にある、こういうことでありまして、きょうは大臣が見えておりませんから、次官に御答弁を願ってもいいわけですが、普通の場合の定員が欠けておる、これはサービスが行き届かないというような形で現われるかもしれませんが、病気の場合は生命に直接関係がある。このことは非常に重大であって、これでもって責任が果たせない、生命関係がある、欠員があるために生命に重大な事態が起こる、こういう責任ははたしてどのようにとる仕組みになるのか、この点一つ次官から御答弁願いたいと思います。
  21. 内藤隆

    内藤(隆)政府委員 仰せのごとく医師が足らぬという場合に生命に非常な影響をすることは、これはもうまことに遺憾なことでありますので、医師をすみやかに確保すべく努力しておる、かような次第であります。
  22. 栗原俊夫

    栗原委員 医師の数をきめる責任大臣にある、こういう御答弁であるわけですが、その必要な数が定員という姿で表われるのだと思います。その必要な数である定員をきめる責任はもちろん大臣責任できめるのでしょうが、大臣の考えだけできめるのではなくて、定員をきめる過程においてどんなような経過をとるのでございますか。
  23. 川上六馬

    川上政府委員 これは医療法の中に定員の根拠があるわけでありまして、その法律に基づいて省令などでそれぞれ医師については幾ら、あるいは看護婦については幾らというような一応規定をいたしておるのでありますが、その規定に基づいて大体定員をきめておるわけでありますけれども、そういう基準以外に、特に重症患者が非常に多いとかあるいは軽症部門医師が要るとかいうふうな特殊な事情によりまして、ある程度それに加算をいたしてきめておる次第であります。
  24. 栗原俊夫

    栗原委員 もちろん定員というものはその医療機関を完全に運営していくために必要にして十分、こういうものが定員として当然決定されておると思うのです。必要にして十分――これだけはなくちゃならぬ、しかしこれ以上は要らぬ、こういうところが定員の基本的な考え方だろうと思うのですが、その必要なものが欠けておるということは、その欠けておる医療機関は完全なる運営はできない、できていない状態だ、こういうことが言えると思うのです。これに対する責任立場に立っての考え方はどんな工合でございますか。
  25. 川上六馬

    川上政府委員 定員が足りませんと、今申されましたように不十分な点がやはりある程度できるわけでございまして、そのためには不足ながらも現在の医師あるいは看護婦あたりがそれをできるだけ補うために努力をいたしておるところでございます。
  26. 栗原俊夫

    栗原委員 この点はあとから関連質問等も出て、いろいろ質問もあろうと思いますけれども、同じ国立病院でも任意でもって入院するという場面は、その病院の現在のあり方を患者立場に立って見て、ここはどうも診療に対する設備が弱い、あるいは医師欠員しておるから行っても安心ならぬ、こういう形で患者の方から行こうと思ったけれどもやめるという、ある程度は自由意思があるかもしれません。しかし結核予防法とかあるいは精神衛生法とか、こういうもので本人意思に反して隔離して入れるものが運営が万全でないということになったら、この責任は実に重大だと思うのです。とにかく本人意思に反して、ここへ入れと持っていくのですから……。しかも持っていったところが完全なる設備がない、特に一番中心をなす医師設備が欠けておる、この責任を一体どうしてとるのですか。先ほど次官からは、これから努めますというお話ですが、これから努めますということではいかぬのであって、これは医師が欠けておる、そういうことで万一生命関係があれば、間接的ではあるかもしれぬけれども殺人的責任だってとらなければならぬことが起こり得る場面が理屈の上からいえば出てくると思うのですが、こいう点はどうなんですか。
  27. 川上六馬

    川上政府委員 確かに御説のように私どももすみやかに医師確保をはからなければならぬということを考えまして、従前から医師待遇改善努力をいたしております。民間勤務医師と違いまして国立医師待遇が悪うございますものですから、それを是正いたしたいと思いまして努力をいたしてきたわけでございますが、昨年の四月から行なわれました初任給を上げること、それから人事院の勧告で中だるみの是正というものが行なわれることになりまして、今度の予算でもってそれが是正されまというと、そういうものを合わせまして従来よりも本俸の約七%くらい増額になるわけでございます。しかしなお民間勤務医師待遇に比べますと約二割六分くらい低いわけでございまして、そういう点で医師確保が困難になっておりますので、本年度診療手当というものをそれにつけ加えたいと思って努力いたしたわけでございますけれども、その実現を見ることができませんで非常に遺憾に思っておるわけであります。しかし研究費でありますとかあるいは調整号俸を上げますとか、管理手当をつけるとかいうような面で、幾分従前よりも本年度改善することができたわけでございます。今後そういう面にさらに一そう努力を払って、医師国立施設確保できるように最善の努力を払っていきたいというように考えておる次第でございます。
  28. 栗原俊夫

    栗原委員 一般民間医療機関についてそれではちょっとお尋ねしてみたいのですが、一般医療機関で、病院とかそういうところで、いろいろ患者を収容する定員があるでしょう。そういう民間医療機関に対してはいろいろ監督していると思うのですが、民間に対しては、やはり病院がいかに大きくても、医師が足りないのに患者を一ぱい入れておく、医療をやっていくのにはどう見てもこれはいけない、少なくも基準に照らしては合っていない、こういうことがあっても、どうも医師が補給できないからやむを得ないのだ、こういってほうっておくのですか、これはどうですか。
  29. 川上六馬

    川上政府委員 これはやはり先ほど申しましたような法規に一応基準があるわけでございまして、それに基づいて医療管理などについても、その医療従事員不足しているような場合は、これを確保するように指導監督をいたしておるわけでございます。
  30. 栗原俊夫

    栗原委員 民間医療機関にはそうして指導監督する立場にある国の厚生省が、国の立場においてみずから営む医療機関医師が足らぬからといって、しかも定員をちゃんと明示しておってそれが欠員になっておるのを、どうも医師がない、こういうことでほうっておいては話にならぬと思うのですがね。  それでは具体的に聞きますが、先ほどいろいろ定員に対しては三百二十五名足らぬとか四十九名、十七名足らぬとか、こういうのですが、一つの具体的な医療機関で、定員現員との間で一番ひどい状態にあるのはどことどこで、どんな工合になっておりますか。
  31. 川上六馬

    川上政府委員 今そういう個々の医療機関につきましての詳細な資料を持ち合わせておりませんけれども、今申しましたように国立病院の方は――病院の方は全体として比較的よろしいわけでありまして、九七%くらい確保いたしておると思いますが、療養所の方はだいぶ欠員がありまして、八七%くらいを満たしております。らいと精神が大きくございましてこれが約七割弱程度にしか従事されていないという状態でございます。
  32. 栗原俊夫

    栗原委員 それでは一つ私が具体的な例を申し上げますが、ただいま言うらいの中で、これは私の地元にあるものですが、草津の楽泉園というところです。これは医師定員が十五名なんです。そこへ現員が八名なんですね。しかも八名の中に外科のお医者さんは一人もおりません。八名の中に歯医者が二人、こういう状況なんです。これではたして療養所としての機能が発揮できるのかどうか。しかもこういう事情を十分御承知だと思いますけれども、何かこれに対する具体的な対策等が立っておるか、これらについて少しお伺いしてみたいと思います。
  33. 川上六馬

    川上政府委員 先ほど申しましたように、やはり待遇改善してこれを確保するということでなければ、恒久的な確保がむずかしいと思うわけでございますけれども、非常にその点は今も心配いたしております。最近東京にある多磨全生園の方からそちらに人を向けるようなことも考えておるわけでございます。あるいは応急の場合におきましては、一時医師を派遣して手当を加える、そういうことを講ずるように考えておるわけでございます。
  34. 栗原俊夫

    栗原委員 そういうことでは全くなまぬるい。とにかく問題は生命の問題ですからね。サービスが悪い程度の問題ではなくて、具体的に問題が起これば命の問題なんですから、そういうことでは話にならぬと思う。そこで定員確保する、それには待遇を上げなければだめだ、こういうようなお考えなのですが、国が責任を持って人の命を預かる、しかも預かるのに必要なものが定員という形できめられておる。その定員確保できない。これでは全く話にならぬと思うのですが、これは一体どういうことをしたら確保できるか。確保できなければ大臣責任は持てますまい。確保するには具体的にどうしたらいいか、こういう点についてもっと具体的な考え方があったら一つお示しを願いたいと思います。     〔委員長退席、大石委員長代理着席〕
  35. 川上六馬

    川上政府委員 それは先ほど申しましたように、やはり待遇改善するということが一番大事だと考えておるわけでありましてその点に努力をいたすわけでありますが、そのほかに研究費増額いたしますとか、あるいはその他住宅を確保しますとか、いろいろなことをわれわれとしては考えておるわけでありまして、あるいは将来は給費制度なども考えていかなければならぬというようにいろいろ苦慮いたしているわけであります。
  36. 栗原俊夫

    栗原委員 将来はいろいろ考え方がありましょうが、具体的に今日どうするか。それは何としてでもやはり医師というものは確保しなければならぬと思うのですよ。そこでこれをどのようにして補給するか。もちろん今おっしゃるような給与の問題があるが、これは大蔵省と衝突しておるとか、なかなか理解が得られないとか、こういうことも聞いております。それならば基本的な給与ではなくて、もっと何らかの他の方法で連れていくような具体的なものを考えてみなければ、片一方にはとにかく生命を死にさらしておる人たちがいるのですからね。行ってみたことがありますか。たとえば楽泉園あたり外科医はいないのです。歯医者が二人いて、定員十五名のところへ園長を含めて八人しかいないのですから、話になりません。こういうことなのですから、もっと具体的な話をここでもってはっきりしてもらわぬと、国として責任が負えますまい。いま少し明確に、それではこうするのだ、市中から雇い上げることも講ずるのだ。極論すれば、給与が悪いからどんどん医師がやめていって、一人もいなくなっても、これから貸費制度を作りますからとか、そんなばかなことは言ってはおられますまい。現に草津あたりでは、まだやめていくといっている。一体どうするのですか。これはいま少し腹をくくった、ほんとうに生命を大事にするという立場に立った、そうしてその責任に立つ厚生省としての立場を、ここではっきり宣明していただきたいと思うのです。
  37. 川上六馬

    川上政府委員 さしあたりどうするかというような御質問でありますが、これは先ほど申しましたように、他の医療機関から派遣をいたしまして応援するとか、あるいは非常勤の医師を緊急の場合は雇い上げるとかいうようなことよりほかにないのでありますけれども、やはり基本的に申しますと、先ほど申しましたように、これは待遇改善に待たなければならぬ。われわれは決してそれを放任しておるわけではございません。従来とも非常に努力をしておるつもりでございますけれども、それがなかなか御期待に沿うように実現できないことを非常に残念に思っておるわけですが、これは先ほど申します通り、今後やはり努力をして充員するという覚悟でございます。
  38. 栗原俊夫

    栗原委員 そういうなまぬるいことをおっしゃっておるのではどうも承知ができません。これでもって医者がいない。それは一般国立病院とかあるいは結核療養所とか、民間にもいろいろありますが、らいなんというものは、医者がいないから、ほかに行くといったってどうしようもないでしょう。どうするのですか。給料を上げるといっても、当面一体どうするのですか。ほかに行けないのですからね。こんなどうにもならぬ人が、医者がいないからといって、うろうろ出歩いていいのですか、そういうことでいいのですか。これは、安心してここでもって治療ができますよという態勢をとれないのですか。どうなんですか。
  39. 川上六馬

    川上政府委員 先ほど申しましたように、栗生楽泉園につきましては、多磨の方の医者をそちらの方に向けるように交渉もいたしております。そういうことで多磨療養所の方から医師配置がえするとか、応援勤務をするとか、そういうことよりほかに、今のところ仕方がないというふうに考えておるわけであります。
  40. 小林進

    ○小林(進)委員 関連質問として伺いますが、今栗原委員医務局長との話を聞いていると、何にも責任のない、実に僕は無責任きわまる答弁だと思うのです。それでは一体国立病院とか国立療養所定員不足だとか、そこへ入って命を託しておる、そういうものに対する責任の所在はどこにあるのですか。責任はだれが持つのですか。私はここで一つ、政務次官通達というものが発せられておるのですが、これを読み上げてみます。これは一体どんな工合にあなたは責任を感じておられるのですか。「特殊病院に置くべき医師その他従業員の定数化について」昭和三十三年十月二日、厚生省発医第一三二号、これには、御存じでしょうけれども、「主として精神病又は結核患者を収容する病室を有する病院(以下「特殊病院」という)に置くべき医師その他の従業員の定数については医療法施行令(昭和二十三年政令第三二六号)第四条の四の規定による都道府県知事許可に基き医療法施行規則(昭和二十三年厚生省令第五〇号)第十九条に定める標準によらない事ができる事になっているが、従前これが取扱いについては、各都道府県実情により許す基準が区々にわたり、為にその定数に於いて相当の不均衡がみられ、かかる特殊病院の適正な運営の上から支障をきたしている向もみられるので、今般その運営の適正化を図る為、左記の通り許可を与える様配慮されるとともに、特殊病院にこの趣旨を徹底せしめられたい」という通達が昭和三十三年の十月二日に出ている。そして「二・五で入院患者数及外来患者数を除したものの和が五十二までは医師は三人、それ以上十六又はその端数を増す毎に一を加えた数」というふうに出ておるが、この趣旨をどういうふうに厳格に徹底されておりますかお伺いしたい。もしあなたのおっしゃるように、俸給が安いという事情があったら、これは何も今始まった事情ではないでしょう。そのときにこの通牒を出してどういう処置をされたのか、お答えを願いたい。
  41. 川上六馬

    川上政府委員 その通達は、医療法におきますところの一応の基準がございますから、結核療養所でありますとか、あるいは精神病院でありますとかというのは、医療法施行規則にきめた基準幾らか緩和した通達でございます。しかしそれにいたしましても、なおそれに達しないような医療施設民間にも多数ございますので、その基準によらせるように出した通牒でございまして、その点は各府県がその通牒に基づいてそれだけの定員は少なくとも確保したいということで指導監督をしておるような状態でございます。
  42. 小林進

    ○小林(進)委員 あなたの御答弁によりますと、今まで医療規則に基づく定員数を下回るので、その通知によるように各府県で努力するよう通知を出した。だから、監督官庁といいますか、その最高の責任者である厚生省の当面それの任務を担当しておる医務局としては責任はない、それは各府県が責任を持つべきものであって、私には責任がないとおっしゃるのですか。いま一つ答弁を願いたい。
  43. 川上六馬

    川上政府委員 そういう意味じゃございません。それは国の医療全般について、私は事務的な責任を持っておるわけでございます。ただ緩和した基準をきめた通牒でございますけれども、なお医療機関定員がそれにも足らないというようなものが多数ございますので、それだけのものは確保するようにということを府県に通牒を出したのでございまして、府県はそれによって努力をいたしておりますし、またそれが実現いたしますように、私どもとしても責任を持って努力しなければならぬと考えておるわけでございます。
  44. 小林進

    ○小林(進)委員 三十三年に出された通牒に対して、私自身も努力しなければならぬと思う――それは何という答弁ですか。あなた、努力しなければならぬというのは将来の話ですよ。問題は三年も四年も前の話です。もはやそれは結果において、したかしないか、これくらいのことをやったけれどもなおどうであったという、具体的な責任ある答弁がなければならない。したいと思いますではまるで答弁になっていません。そういうような無責任なものの考え方では、先ほどから言われているように、人の生命、身体に関する重大問題を扱えるような責任者じゃありませんよ。私は問題の責任を追及する前にお尋ねしますが、医療法施行規則の第十九条第一項のほかに、東京都においては医療法施行細則第十九条というのが昭和二十五年十二月二十八日にでき上がっておるのです。精神病、結核患者を収容する病院医師の最低数としてこういうものが東京都にできておる。これは医療法に基づいて各府県がそれぞれある幅を持ってやる権限を持っておりますから、やっておりますが、それに対して厚生省が、今作っている法規によらない、もっと下回る内規で何か定数をおきめになっているのじゃないかということがもっぱら喧伝されているが、そういうものがあるのかないのか。医療法施行規則のほかに、それよりうんと下回る定数を持ってもいいというふうな内規を厚生省がお作りになっているかどうか。私どもは証拠を持っていますよ。私は局長にお伺いするのだが、あるかないか、一つ責任ある御答弁を願いたい。     〔大石委員長代理退席、委員長着席〕
  45. 川上六馬

    川上政府委員 府県に通牒を出しましたその基準を下回った内規を持っているということはありません。
  46. 小林進

    ○小林(進)委員 私どもの調査によれば、普通入院患者五十三人まで三人、あと十六または端数を増すごとに一人というのが医療法に基づく施行規則になっておりますが、それを改変して昭和二十九年には、結核患者四十名に一人、それから手術をしたあとの一カ月は患者十七人に一人というふうな内規を厚生省でお作りになったことはありませんか。忘れたなら忘れたでいいですよ。
  47. 川上六馬

    川上政府委員 ただいまのお話は多分国立病院療養所医師その他の従業員のことじゃないかと思います。これは御承知のように看護などは基準看護というのがございますが、その基準看護をやっているところとやっていないところがあるものですから、基準看護に満たないところは多少そういう下回ったようなところがあるかと存じますけれども、しかしまた国立病院の方では、先ほども答弁申しましたように、手術が多いところとか、あるいは重症患者が多いところとか、あるいは検査件数の多いところだとかいうようなところには、医師をそれに加算いたしまして、つまり実情に合うようなこともいたしておるわけでございまして、そういう点ではかえってこの基準を上回っておるというような面もあるわけでございます。
  48. 小林進

    ○小林(進)委員 人命を保護して治療の完全を期するために法律あるいは規則で定数を定められた。医師をふやすことに対してはけっこうなことですから、私どもは何もその問題を言っているわけじゃありません。問題は、せっかくその最低基準を片方の施行規則というもので示しておきながら、厚生省みずからがそれを空文化して、定数の減ったものを、ごまかしの内規やら、あるいはつまらない申し合わせかなんかで合法化して、みずからその規則を守るための努力を放棄している。定員の少ないものをそのまま一つごまかそうというインチキな行為が厚生省において行なわれているかどうかということを私は質問している。ところがどうもそれをおやりになっている傾向がある。私はだんだん質問をしていきますが、あなた方の方はおやりになっているのです。おやりになっている前に、さっきも栗原委員が言いましたから私も言うけれども、栗原委員の言うらい療養所ばかりじゃないと思う。私は新潟県ですから新潟県の例で一つ質問申し上げましょう。まず新潟国立療養所の入院患者は三月一日現在で四百四十五名だが、これに対して現在の医師の数は九名です。これを医療法施行規則のままの必要数でいくならば、医者は二十八名いなければならぬ。二十八名の医者のところに九名ですから、不足分は十九名です。次に佐渡は、入院患者八十八名に対して現在の医師は一名だ。これは医療法施行規則によれば必要数は六名なくてはならぬ。五名不足だ。それから内野療養所は一体どうですか。これは入院患者三月一日現在で二百名、それに対して現在の医師数は七名です。医療法施行規則に基づく必要数は十三名だ。次は有明療養所、これは入院患者が百七十六名、それに対して現在の医師の数は四人です。他に週二日勤務をするアルバイトみたいなお医者さんが一人いますけれども、これは別口です。必要なる定数は十一人、不足数は少なくとも七人です。正確にいえば、アルバイトの人も入れれば六・六人不足ということになってくる。村松の療養所は百五十六名入院いたしております。現在の医師の数は四名です。定数は十名ですから、六名不足です。それから犀潟の療養所は入院患者百七十名、それに対して現在の医師数は三名、定数十一名に対して驚くなかれ八名不足です。小千谷の国立療養所、――小千谷病院ですが、現在入院患者百七十五名、現在の医師の数はわずかに五名、医療法施行規則に基づく定数は十一名、それに対して不足数八名です。寺泊の療養所は、入院患者は百十八名、それに対して現在の医師の数は三名、医療法施行規則に基づく必要数は八名です。五名も不足しているじゃありませんか。あなたは今国立療養所に対しては欠員は、何とおっしゃいましたか、二百二十五名とか、国立病院は定足数に対して九七%くらい、療養所にしても八七%、これくらい定数はいっているとおっしゃる。これは何ですか。私の調査に基づけば、新潟県下だけでも八つ、この医師の定数は半数に至っておるところはないじゃありませんか。五〇%に至るところはないじゃありませんか。はなはだしきに至っては一〇%にしか至っていない。数字が全然違っているじゃないですか。もう一回御答弁を願いたい。
  49. 川上六馬

    川上政府委員 あまり数字が違いますので、多少基準のとり方が違うのじゃないかという感じを受けるわけです。一般病院患者十六名に対して一人でありますけれども、結核や精神病院、そういう特殊病院は四十人に一人というような基準になっておりまして、基準のとり方があるいは少し違っておるのじゃないかというように思うわけであります。
  50. 小林進

    ○小林(進)委員 私の言っているのは規則ですよ。
  51. 川上六馬

    川上政府委員 その規則で、特殊病院には基準が緩和されているわけであります。そういう点であるいは少し医療法の数字が食い違っているのじゃないかという感じを受けるわけですが、あとでよく検討いたしてみたいと存ずるわけであります。しかし、いずれにいたしましても、確かに御指摘のように医師が大へん少なうございまして、この点は何とか早く確保しなければならぬということで努力をいたしているわけであります。今までただこれを放任しておったということは決してございません。いろいろ努力はいたしておりましてことしも国立病院につきましては、医者は三十七名ばかり定員をふやしております。看護婦などにつきましても、本採用の看護婦をふやしておるのでございまして、できるだけの努力は私どもとしていたしておるつもりでおりますけれども、確かに非常に不足しておりまして、この点の責任はむろん重々感じておるわけでございます。ただいま申し上げましたようないろいろな方法でもって今後この問題は善処していかなければならぬ、こういうような考えを持っておるわけであります。
  52. 小林進

    ○小林(進)委員 今の定数のとり方については、医療法施行規則第四十三条第二項において、精神、結核、らい病患者病院は第一項の規定によらないことができる旨の規定がありますから、あなたはこの第二項を基準にして定数の問題を云々されたのでしょうけれども、われわれはそれは承知の上でみんな勘定しているのですから、この数字の問題は私はもうここで議論する必要はありません。しかし、あとで見ていただきたい。今、病院へ入って、自分の生命を失うかどうかという者は、おぼれる者はわらをもつかむというけれども、病院に入っている患者の気持、それを取り巻く関係者の気持は切実なものだ。そこへ持ってきてその最高の責任の地位にあるあなた方が、定員不足しておることに対して、さっぱり責任をお感じになっていない。そうして自分たちが立案された、厚生省が立案の主体になっておる法律に基づく規則が一つも行なわれていないことに対して何にも責任を感じていない。もし、そんなあなた方の考え方一般化したらどうなるか。たとえば刑法もあります。民法もある。あなた方のように、法律を守る気はあったけれども守れなかった、それで一体罰金を許してくれますか。刑罰を許してくれますか。権力者の地位にすわっておる者は守らぬでもいい、権力の前にあるわれわれだけが、法律を無視すれば罰金も食う、刑罰も食う。あなた方の考え方は、権力にあぐらをかいて、自分たちは人殺しをしてもいいんだ、法律を守らなくてもよろしいんだ、どんなに患者が多く、医者が足りなくてもかまわない、そういうおそるべき法律軽視の思想があなた方の頭の中にあります。責任回避の思想があります。しかし、下人民だけは、法律施行された以上は、これを守らなければならぬ、いささかもゆるがせにしてはならぬ、間違いがあれば罰金だ、刑罰だ、損害賠償だ、こういうことになっている。あなたは、事医者に関する限りは、厚生省の規則に関する限りは、法律努力さえすれば実行しなくてもよろしいというならば、どこにそういう法律に違反してよいという根拠があるか、お示し願いたい。
  53. 川上六馬

    川上政府委員 いや、国だから法律を軽視してよいという考えは毛頭持っておりません。確かに現在医療法規定にもとるような点が定員ばかりでなしにその他の点にもあるわけであります。そういう点は、できるだけ早く改善をしていかなければならぬと考えております。決して責任を回避するわけではありません。先ほど申しましたように、そういう点につきましては重々責任を感じております。ただそれがすぐ御期待に沿えないような事情にあることをまことに遺憾に存じております。
  54. 小林進

    ○小林(進)委員 その問題に関連しまして、あなた方は最近国立療養所の入院ストップということをお考えになったことはありませんか。あるいは国立病院国立療養所の縮小をお考えになったことはありませんか。
  55. 川上六馬

    川上政府委員 私の方から入院ストップをかけたということは、最近は、統合廃止をきめております埴生療養所、それから国立和歌山病院、これもやはり廃止の方針をとっておりますが、この二つは統合廃止したいという方針を立てておりますものですから、新しい入院は救急の場合を除いてはいたしておりません。その他の病院におきましては、こちらから入院をストップするように指示したところはございません。
  56. 小林進

    ○小林(進)委員 新潟療養所はいかがですか。
  57. 川上六馬

    川上政府委員 新潟の方は、入院をストップするように私の方からは指示いたしておりません。ただ非常に医者が減っておるものでありますから、そういう面でせっかく入院を希望されても十分なお世話ができないというようなことがあるいはあるかもしれません。
  58. 小林進

    ○小林(進)委員 厚生省の医務局長としては、昨年の十月国立新潟療養所では入院ストップをやっているのでございますが、それをあるいは医師の手が足りないからそういうふうに断わっているかもしれないという程度のことしか御存じないのでありますか。これは厚生省の機構に関する問題でありますから、その点を一つ明確にお示し願いたい。そんな風のたよりに聞いているという程度のものでございますかどうか。
  59. 川上六馬

    川上政府委員 先ほど申しましたように、こちらからストップをしろということは言っておりません。ただ御承知のように、新潟療養所はだいぶ紛争をかもしたところでございますので、医師もだいぶ引き揚げましたりいたしまして、その補充がなかなかつきませんので、病院としてはあるいはせっかく入院を受けましても十分な治療ができないというような点で、さような制限をいたしておるかもしれないと存ずるわけでございます。
  60. 小林進

    ○小林(進)委員 重大なる発言があったのであります。先ほどまでは栗原委員や私の質問に対しては、医師の定数の不足していることはもっぱら給与の低いせいである。七%引き上げるようにしているけれども、まだ一般医師と比較すると、二割七分でありますか三割三分でありますか、若干そこのところは聞き漏らしましたけれども低い。さような答弁で終始をせられておったのでありますけれども、今の御答弁によりますと、医師の定数不足は紛争問題が起こっておって、そのために医師が引き揚げているからだという新しい事情をお示しになりました。この問題を私は重視しなければならぬのでありますが、その前に、今の御答弁は、私が先ほどお尋ねしました質問の回答になっておりません。国立療養所が入院のストップをした、こういうことを医務局長は風のたよりにしかお聞きにならないのかどうかということなんです。御指示になったかならぬかということじゃない。厚生省の機構では、そういう地元における病院長あるいは管理者等の責任者から本省の最高責任者に対して、一体風のたよりくらいしか通知がこないものかどうか、私はこれをお聞きしているのです。
  61. 川上六馬

    川上政府委員 新潟療養所は、御承知のように紛争以来退院患者がふえまして入院の希望者も減ったものですから、事実上患者も入院患者もだいぶ減ってきたわけでございます。それから、従来新潟大学が新潟療養所医師を供給してくれていたわけでございますけれども、そういうところには医師を出しにくいというような話がございまして、その補充がつかないというような事情にもあるわけでございます。この点につきましてはその後たびたび私の方から、ぜひ一つ医師を供給してくれということをお願いに出ておるわけでございますけれども、そういうことで事実上医師も減り患者も減りというような状態になっておるわけでございまして、入院ストップを知らないかというお尋ねでございますが、これは入退院は所長の権限になっておりまして、所長の方で病院の機能と考え合わせてさような処置をいたしておるわけだと思います。おそらくストップしておりましても、そのときの状態でやっておるのであって、今後一切入れないとかいうことは、むろんさような報告も受けておりませんので、今後停止をどのくらいするというようなことはしておりませんが、よしんばストップしたといたしましても、その場合の事情によっていたしたものであろうというふうに考えるわけであります。
  62. 小林進

    ○小林(進)委員 私のお聞きしているのは、新潟療養所が昨年の十月に入院ストップをしたときに、事後なり事前なりに、一体正式に厚生省の医務局長に対して承認を求めるか、事後承諾を与えるか、あるいは報告をするか、そういう通知があったかないかということなんです。あなたはさっきはそういうことをやったらしい、風のたよりに聞いたという御答弁であったが、いやしくも所長の権限において、あるいは入院ストップをかけたり病棟を閉鎖するときもあるだろう、そういうことは一つの日本における行政機構としては、当然いわゆる責任のある上長のもとに正式な通知があるものと了解している。それを私はお聞きしているのです。風のたよりにしか――正式な通知や報告や承諾を求めないでいいことになっておる機構なのかどうかということなんです。私どもはこれから国政を審議する上に重大なポイントですから聞いている。くどくど言わなくてよろしいから、明確に一つ答弁してもらいたい。イエスかノーか、それを聞かせてもらいたい。
  63. 川上六馬

    川上政府委員 先ほど来たびたび申しますように、正式の報告は受けていないと思いますけれども、なお念のためによく調べます。
  64. 小林進

    ○小林(進)委員 こういうことは私は重大問題だと思っているのです。これはあとでまた明確に御答弁をいただきます。書類でも御答弁をいただきます。こういう国立療養所における一組合員の馘首の問題にまで全部厚生省の指示を仰いでやっているが、病院の閉鎖をするとか入院ストップをするとかいうことは、これは一所長が厚生省の指示も受けなければ承認も受けなければ報告もなしに勝手にやり得るのだというならば、国家の行政事務がいかにゆがめられているかという証左でありますから、これは正式に書類で御報告願いたいと思います。報告があったかなかったか、書類で報告願いたい。それによってわれわれは考えなければならぬ。そんなゆがめられた行政機構でやられたのではたまるものではございません。  次の問題に移りますが、あなたは、医師不足しておる理由は、いわゆる紛争を起こしているために新潟医大で医師を全部引き揚げたのである、こういう答弁をなされたが、それは一体間違いないか、いま一回一つ答弁を願いたい。
  65. 川上六馬

    川上政府委員 医大の方からの話も聞いておるわけでありますが、そういうような紛争がたびたび繰り返されておって、医師としてはそういうところへは勤めにくいというようなことを申しておる向きもございまして、新潟医大としても、そういうところへなかなか人が行ってくれないということを医大の責任のある人も話しておったことは事実であります。そういうことは、単に新潟の療養所ばかりでなく、ほかの療養所でも同じような問題が起きまして、やはり病院の紛争というものは医師確保する上におきまして大へん困る問題でございまして、もちろんそれだけが原因だというわけではございませんけれども、そういった病院の秩序がよく保たれていなくて、医師として愉快に勤務することができないというような、そういう状態が、医師をそこにとどめにくいという一つの原因になっていることは事実でございます。
  66. 小林進

    ○小林(進)委員 これは私どもの調査によりますと、ともかく三十四年の十月十五日にいわゆる柏崎療養所の今井所長が辞職された。それから相沢、小田和という二人の医師が大学に帰られた。この所長辞職と医師の引き揚げについて、われわれの方で新潟医科大学の学長に面会をいたしまして、学長らその事実をお聞きした。それに対して学長はこう言われた。組合が戦ったから引き揚げたのではない、紛争を起こしているから医師を引き揚げたのじゃない、責任は厚生省にある。十一月の九日こういう言明をせられておる。これはどうでありますか。これはうそならうそであると言っていただきたい、御答弁を願います。
  67. 川上六馬

    川上政府委員 私はその学長の言葉を承知いたしましておりません。
  68. 小林進

    ○小林(進)委員 そうすると、あなたは新潟の療養所から医師が医科大学に引き揚げていったのは、あくまでも組合が紛争を起こしたために医師が引き揚げていったのであって、新潟大学の学長が、そういう紛争や組合の争いのために医師を引き揚げたのじゃない、責任は厚生省にあると言われている言葉はうそだとおっしゃられるわけですか。
  69. 川上六馬

    川上政府委員 それは先ほど申しましたように、根本的には医師待遇問題もあるわけでございます。しかし今言ったような事情も私は一面ある、こういうふうに考えておるわけであります。それから前の院長がやめられましたのは、ほかにいい適当な就職口があって、それを希望せられたということも事実でございます。
  70. 小林進

    ○小林(進)委員 だんだんお尋ねしてみますと、あなたのおっしゃる中心がぼけてきた。組合の紛争じゃない、他にいい就職口があった、こういうふうに話を持ってこられるのでありますが、私は関連質問でありますから、いいかげんに引っ込みますが、今度いずれ場所をあらためてこの問題はもっと掘り下げさしていただきます。まだ問題は山ほどある、そのほんの序の口でありますが、ただあなたの御答弁によりますと、この医師不足しているというときに、皆さん方は努力もされない、くれるべきものもくれない、規則も守らないというような、これはみんな厚生省のあなた方の責任です。医師不足しているのはだれが悪いか、医師を雇われるのはあなたの方でしょう。あなたの方は雇い主だ。その雇い主が悪いから、だれも雇われる者がいない。そしてその責任をみずからとろうとしないで、あるいはどうも他に責任を転嫁し、しかもいみじくも自分たちの雇用人である組合員の諸君が組合闘争をしておるから、そのために医師もこないし、医師不足しているというような、どうもこういう弁明の仕方は実に言語道断であると私は言わなくてはならぬと思う。そういう主客転倒をした無責任答弁というものが、一体この国会の中で許されるかどうか、いま一回あなた方はよく反省しなさい。あなたがこの国立療養所の使用人である。それが一所長であり、一事務官であるならば私はその答弁はお聞きしましょうが、医師を雇い入れる最高の地位にありながら、他に責任を転嫁して、みずからその責任をとろうとしないような、そういう無責任な態度で一体この重大な人の身体生命を預かるところの医療行政が担当できますか。  なおこの医師不足問題については、私は学閥の問題、大学の付属病院等、その問題も大きな影響があると思いますが、その点はどうですか。
  71. 川上六馬

    川上政府委員 私は学閥はできるだけ排除しなければならぬと考えておるわけでありますが、ただ病院側におきまして、やはり事情のわかったもよりの大学から医師を供給してもらっておるという事実もありましたり、それから研究指導などもその大学から受けておるものでありますから、自然大学と病院との関係がついて参りますが、ある大学がある療養所でそういうことで多数の定員を占めるということになりますと、そこの科長がかわる、院長がかわるということになりますと、やはり自然よその大学から持ってくれば折り合いが悪くなるということもできたりいたしまして、自然そこの大学から持ってくることが多いという実情にあるわけでありますが、しかしやはりそれも程度の問題でありまして、学閥によって実力のある者が登用されない、あるいは適当な人が他の学校からそこに入りにくいというようなことも、学閥がひどくなりますと当然起こってくる問題でございますので、私どもとしましては、できるだけそういう学閥によらないように、公平に人事が行なわれるようにいたしたいということで今後に対して参りたいというように考えております。
  72. 小林進

    ○小林(進)委員 もう関連ですから、これでやめますが、だんだん追及していきますと、問題の本質が変わって、今おっしゃるようなそういう学閥の問題などもあって医師不足なのだということが明らかになってきた。それから私をして言わしむれば、まだ独立採算制、特会制の制度を設けて、そうして訓令定員によるところの欠員の不補充、そういうものの範囲内で仕事を無理に強制して、そして皆さん方高級官僚の点数を上げようというような狭い考えが、今日の医師不足を来たしている原因だと私は言いたい。病院に働いている組合員諸君に無理な仕事、過重な労働を押しつけて、仕事を強制していこうというやり方、そうして上だけが点数を上げようという狭いやり方、あるいは管理者が非民主的なやり方をする、そういうことが全部重なってきて今日医師定員不足しておる。私はこの問題について後日あなたといま一回質問を展開することをお約束しまして、私の関連質問はこれで、終わります。
  73. 栗原俊夫

    栗原委員 小林委員からいろいろ広範な関連質問があったわけでありますが、私も本筋に戻って一つ結論を急ぎたいと思います。  あらためてお聞きしますけれども、ただいまきめてある国立病院あるいは療養所定員というものはどうしても必要なんだ、こういう医師の数であることには間違いありませんね。この点一つ明確にお答え願いたいと思います。
  74. 川上六馬

    川上政府委員 今の御質問、ちょっとはっきりしない点があるのでありますが、ただいまきめてある医師定員というものは間違いないかというお話でございますか、
  75. 栗原俊夫

    栗原委員 必要であるかということです。
  76. 川上六馬

    川上政府委員 ただいまきめてある定数というものは、先ほど申しましたように、患者が動けばその定数も変わるものでございますから、その状態というものでは必要だということは言えますけれども、患者の増減によって定員を増減しなければならぬ問題でありますから、そういう点を一つお含みの上、現在の定員は必要だと思っておるかというお話でございますが、そういう意味で必要だと考えております。
  77. 栗原俊夫

    栗原委員 それは当局の方のきわめてずるい答弁なんで、それなら定数なんかきめる必要はないですよ。これは患者の数に応じて医者をふやしたり減らしたりすればいいので、一応その機構の規模によって、この中へ満員ということを前提としてか、とにもかくにも定員というものをきめてある以上、病院なり療養所運営するにはこの定数は必要なんだ、こういうことで定員がきまっているのでしょう。いかがですか。
  78. 川上六馬

    川上政府委員 定員は、一応過去三カ年くらいの実績に基づいて割り出したものなのでございますが、実際は、最近になって御承知のように、結核療養所などはだいぶ患者が減って参ったものでありますから、そういう点、定員を必要としないところもできてきておるわけでございます。
  79. 栗原俊夫

    栗原委員 結核については、具体的な入院患者等についてはそういうことが言えるかもしれませんが、まあそれをあまり広げていくとまた時間もかかりますし、そういったなるべく入れないような傾向も議論の対象になろうかと思いますけれども、とにもかくにも一応必要に基づいて定数というものはきまっておるのだ、こういうことで、その定数に対して今それぞれ欠員ができておる。この欠員を、たまたま自然欠員という形で、けっこうなことだ、あえて首を切らなくても、おれたちの望んでおる通りに数が減ってきた、こういう考え方でおられるのか。これは必要なんだからぜひとも補充をして、そうして病院としての運営の全きを期す、もっとも具体的にいえば、患者がほんとうに安心して治療、療養ができる、こういう姿に持っていこうと考えておるのか、これはどうなんですか。
  80. 川上六馬

    川上政府委員 それはむろん定員が減るのを待っているというようなことは毛頭考えておりません。私としてはやはり病院としての使命を十分達していかなければならぬという責任を持っておるわけでありますから、やはり必要な定員はどうしても確保しなければならぬ、なおその定員不足ならやはりそれを充員しなければならぬ、そういう考えを持って、決してただ自然にまかせておくとか、あるいは定員が減るのを待っているのだとか、そういうような無責任な、消極的な考えは決してございません。
  81. 栗原俊夫

    栗原委員 欠員を補充する熱意のほどは、それではお答え通りまともに受ける。そうすると、先ほど小林委員からも欠員のできた理由等については幾つか論議が始まりましたが、先ほどのような問題のある、組合員のいろいろな闘争というような特殊な原因もございましょうが、そういうものは別として、欠員のできる一般的な原因というもの、そしてその原因を除去するには具体的にどうすればいいか、こういうことを一つ取りまとめて明確にしてもらいたいと思うのです。補充する決意があれば、やはり欠員のできる原因を明確に突きとめなければ、これを何とか補う新たなる積極的な具体的な策は出ぬはずです。理由はどうなんだ、そしてその理由を克服するにはどうすればいいのだ、こういう点を一つ明確にしてもらいたいと思うのです。
  82. 内藤隆

    内藤(隆)政府委員 国立医療機関定員不足医師欠員の問題は、さいぜんからの御審議の過程において、よく私の認識を新たにすることができました。いろいろとその原因等を探求してみますと、単に待遇改善とかいう問題よりも――それももちろん大きな問題であることは間違いないが、しかしそれよりも、たとえば特殊な病気に対する研究機関を整備するとか、あるいはまたその医師を迎える住宅の環境等に対しましても、十分に生活を楽しめるような環境を作り上げてやるとか、いろいろな手段があろうと思います。結局私は、さいぜんからのお話を拝聴しますと、厚生省としてもまことに重大な問題でありますので、この際これが改善と申しますか、すみやかに欠員を補充するような対策を検討いたしたい、かように考えております。
  83. 栗原俊夫

    栗原委員 行政監察局長さんにお尋ねするわけですが、ただいままで国立病院療養所等で一番大事な柱になっておる治療を担当する医師が、定員という取りきめがあるのだが、定員を非常に割っておる。こういうことで実際において病院あるいは療養所に入っておる患者生命の危険にさらされて非常に苦悶しておる。こういう状況が論議されてきたわけですが、行政監察の面から見て、定員というものがあり、そうしてなおかつその定員確保できないで、そこに起こっておる問題は、単なる一般のサービスとか行政の事務が滞るということではなくて、生命の危機にさらされておる、こういう姿になっておるこの状態を、行政監察の面からはどのようにごらんになるか、一つ御所見を承ってみたいと思います。
  84. 原田正

    原田(正)政府委員 先般国立療養所の監察をいたしました結果を取りまとめて申し上げます。  その調査の状況によりますと、今お話しになりましたように、国立療養所におきます医師が、定員に対しまして相当数の欠員を見ておる、こういう状況でございます。そこで私どもといたしましては、その欠員の点につきまして、さらにいろいろと検討をいたしてみたのでございます。実は厚生省は、昭和三十三年十月に一般民間病院につきまして、「特殊病院に置くべき医師その他の従業員の定数について」というふうな通牒を出しておられるのであります。その通牒に基づきます医師所要定数、これを一つの参考の基準といたしまして、現在の療養所におきます医師の定数というものを検討いたしてみたのでございます。そういたしますと、これは現在の定員よりか相当下回ったものになるわけでございます。しかもその間におきまして、各療養所につきまして、これは民間に対する基準でございますが、その基準に照らして検討してみますと、各療養所ごとのアンバランスが相当にある、こういうような事実が判明いたした次第でございます。こういう点に基づきまして、われわれといたしましては、国立療養所医師の定数そのものをもう少し合理的な基礎に立って検討してみる必要があるのではないか。現在の療養所におきます医師の定数というものは、今までの伝統と申しますか、その上に立った定数、従って合理的な基準に基づいて各療養所ごとの必要なる医師の定数というものを積み上げていき、その上に立って全体の定数を定めるべきではないか。こういうことによって各療養所間におきます医師の定数のアンバランスというものは調整されるのではないか。そうしてまた、今申し上げましたような民間の特殊病院に置くべき医師の定数と、国立療養所における医師の定数との関係、これは国立療養所の特殊な使命、役割といいますか、そういうもの、特に民間の特殊病院等に比べまして高度の手術を要しますような重症の患者の占める率が高い、そういうふうな病院的な性格の施設が相当ある、こういうことから見ますると、一般民間の特殊病院の定数と同じ基準で考うべきものではない。しかしながら、そういうものも参考にいたしまして、十分な検討を加えて合理的な定数の算定をすべきではないか。ただ今までの定数というものが、今申し上げました通り、必ずしも合理的な基礎の上に立った定数の算定というものではない。そういうものを十分に確立をして、真に必要なる定数の確保、こういうものに努力すべきものである、かように考えておる次第でございます。
  85. 栗原俊夫

    栗原委員 これはただいまいろいろ論議したものからは非常に方向の違った重大な発言をお聞きしたわけですが、そうなると、ただいままでの厚生省が中心に定めてきた定数については、かなり考うべき点が多々ある、こういう所見をお持ちなんですか。
  86. 原田正

    原田(正)政府委員 今申し上げました通り、各施設ごとの定数、こういうものをもう少し合理的に算定して、全体的な定数というものを定める、こういうことに努力すべきではないか、こういう考えを持っている次第でございます。
  87. 栗原俊夫

    栗原委員 それではいま少し具体的なものを一つ監察局長にお聞きしてみたいと思うのですが、先ほど新潟方面の結核療養所においても、定数の半数くらいしか具体的な医師現員がない、こういうことがある。私が直接身近に知っておるらい療養所あたりでも、定員十五名に対して八名くらいしか現員がない。しかもこういう特殊なところに外科医などというものがおらない、八名の中に歯医者が二名もおる、こういうような実態なんですが、これはあなたのおっしゃる今からあらためて合理的な数を考えなければならぬということのワクの外に実際あるように思うのです。こういうあり方で医療行政というものが正しくいっておる――ただ単に定数というものが合理的でないから、いかにも定数に対する欠員があるような姿になっておる、こういうことではなくて、実際に必要な医師というものが欠けておるんだ、こういうような実態についての御所見はいかがでございますか。
  88. 原田正

    原田(正)政府委員 全般的な療養所とか、あるいは保健所等におきまする医師定員不足、この点につきましては、前にすでに保健所等の場合におきましても指摘しておりますような、必要な要員を十分に満たすことができない、こういう実情にあることはわれわれも監察の結果として指摘をいたしておるところでございます。従って、これらの医師不足の対策を十分に確立して充足をはかるべきである、こういうことはわれわれ監察の立場におきましても考えておる次第であります。
  89. 栗原俊夫

    栗原委員 率直にいって、監察局長のほんとうのかような問題に対する権限といいますか、職務といいますか、それを私はつまびらかにしておりませんから、あまり突き込んだ質問を局長にすることはどうかと思いますけれども、一般の行政についてはかなり痛烈な監察をなさると思いますが、人の生命を預かっておる医療機関で、しかもその医療の最も大黒柱というべき医師の数が足らないという行政に対して、単に一般の事務とかその他の問題について監察の結果の注意を喚起する程度のことでは私は事足らぬのではないか、こう思うのです。受ける被害者は生命を危険にさらされておるわけですから、これは厳重な立場で監察の結果について指摘なりあるいは勧告なり行なわれるべきものと思うのですが、これらに対する御所信はいかがでございますか。
  90. 原田正

    原田(正)政府委員 今お話しになりましたように、医師の充足の問題がきわめて重要な問題であるということは、前に申し上げた通り今までの監察においても指摘しているような次第でございます。  今回の療養所の監察の結果としましても、医師の定数の問題につきまして十分な検討の余地があることも申しておりますが、さらに医師の質の問題あるいは勤務時間の問題、こういう点におきましてもはなはだ憂うべき状態にある。それらの原因といたしましては、国立療養所が相当不便なところにあるものが多い、あるいはまた療養所の給与、処遇等に対して相当の不満がある、こういうことが実情である。またそこに勤務されている医師等は学会その他の研究機関との接触の機会が少ない、研究等の機会が少ない、こういう点等におきまして非常に定着する率が悪い。またいい人が比較的得にくい、こういうことはきわめて重大な問題である、こういうことは指摘をいたしておる次第でございます。
  91. 栗原俊夫

    栗原委員 それでは厚生省の関係に戻りますが、欠員を補充する決意を持っておるということでございますが、いろいろこれを具体的に調べてみれば、国立関係病院療養所が平均して欠員ができているのではなくて、きわめて地域的に欠員ができる事情にあるように見受けます。特定病院なり療養所特定な条件がある、このことをやはり克服する方法が講じられなければいくまいと思う。全般的にはやはり国の公務員としての医師の給与としてある程度考えられておりますが、そういうことだけでは克服し切れない問題がある。従ってそうした基本的な問題を考えると同時に、やはり療養所病院ごとに一般給与の中でも地域給というようなものが配慮されておりますけれども、病院そのものについての給与というものの考え方が具体的に考えられなければならないと私は考えるわけです。こういう問題についてはおそらく厚生省の方々も十分考えておられるのだろうと思いますけれども、このこと自体は単に厚生省だけではなくて、やはり財政の関係等いろいろ重大な問題があろうと思います。人の生命がこれほどの欠員で危険にさらされている現状を見る限りにおいては、どうしてもそういう問題を突破して、この欠員を充員しなければならないと考えられるわけですが、これらについてはどういうお考えを持っておりますか。
  92. 川上六馬

    川上政府委員 ただいまお話しのように、やはり地域的に非常に不足しているところがあるわけであります。一口に言いますと、大体都市は医者を獲得しやすいし、へんぴなところは非常にむずかしいということでありまして、確かに今お話のような点を考慮しなければならぬと思っております。明年度予算におきましても、そういう点を特に考えまして、いなかにおきましても医師の拡充ができるようにできるだけ努力したいと思っております。  先ほど監察局長から、各施設定員が非常にアンバランスだというお話がありましたけれども、私の方は三十四年の六月に新しく定員をきめまして、それによってそういうアンバランスを是正することに大体最近成功いたしてりますので、先ほどお話のありました監察の時期はその以前のことだと思います。その後におきましてはそういう点はだいぶ是正できたと思っております。つけ加えて申し上げておきたいと思います。
  93. 栗原俊夫

    栗原委員 やはり将来の問題について当局では考えておられるのですが、もちろんそのことも大事ですけれども、私がきょう特にここで質問を始めておりますのは、将来はむろんのことであるが、当面をどうする、こういうことで特に質問をさしてもらっているわけですが、基本的には、この問題は厚生省だけでは解決しきれぬ問題でありましょうから、後ほどこれは同僚の委員諸君とも話し合って、大蔵当局にもやはりこの問題を十分実情をわかってもらって、そしてこの問題について腹を固めてもらう。さらになかなかこれが容易でないならば、やはり政府の最高である岸総理にも出てもらって、厚生大臣、大蔵大臣、総理大臣そろって生命を守るという政治の重大な一こまとしてこれは方向を固めていってもらいたい、こう思うわけです。当面これは何といっても、新潟の各療養所でもべらぼうな欠員が出ておるようなわけですが、私が特にお願いしたいのは、先般草津の楽泉園へ私も呼びつけられまして、行ってみてきましたところ、学位を取った連中は、今度は博士コースで、地方ではできぬということで、どんどん引き揚げていく、新しい医者は来てくれぬ。さらに欠員も出てきそうだ、何回も申し上げましたが、十五人のところ八人しかおらぬ、その八人は園長を含めてだ、外科医はおらぬ、八人の中には歯医者が二人もおる、こういう実情なんです。やはり現地においてこれをはばむものは人事の関係をつかさどる方面であろうし、さらに財政をつかさどる方面であろう。おれたちがこれほど生命の危険にさらされて悩んでおることを、ただ机の上で、そろばん玉と紙の上でやられたのではたまらぬ、どうしても一度現地へ来てみて、おれたちを愛する気持で、気持が悪くてもおれたちと握手するつもりで現地を視察してもらいたい、こういうことをほんとうに涙を流して望んでおるわけです。こういう点も十分考慮して、厚生省を中心に、やはり現地も見て、これではならぬという実情を十分把握をしてもらいたいと思うわけです。  私はさらに先ほど申し上げました、これらのらいとかあるいは精神に狂いを生じた人たちとか、あるいは結核その他の人たちの生命の問題でありますから、これはこの場において財政関係の大蔵大臣、ここで問題が解決しなければ総理までということで、一つ最終的な正しい方向を打ち出していただきたい、こう考えるわけであります。これに対する次官の御所見をお聞きして私の質問を終わりたい、こう考えます。
  94. 内藤隆

    内藤(隆)政府委員 御趣旨に沿うようにしたいと思っております。
  95. 河野正

    ○河野(正)委員 実は今まで公的医療機関におきます定員充足、確保の問題についていろいろ御論議がされたわけでございますが、もちろん定員確保するということは、医療を完璧ならしめる意味におきましては私は当然必要なことだと考えます。しかし、さればといって、定員だけが充足すればそれで医療機関が円滑に運営されると考えるわけには参らない。従って、定員の充足されぬような状態でありますから、残りました医員についても、これは非常に失礼だと思いますけれども、質の上においても非常に低下するのじゃないか、こういうことを憂える一人でございます。  そこで、今まで各委員から、定員確保が最低の公的医療機関における医療を守るゆえんだというような話がございましたが、この質の低下ということ、これは現在従事されておりますお医者さんにとりましては失礼な言葉かと思いますけれども、そういう点についてもよほど考えていただかなければならぬ。今日の公的医療機関と私的医療機関の間においては、機能の上においてもまた質の上においてもそれぞれ特殊性がなければならぬ。その点につきましては、先ほどからいろいろ実例で述べられたように、特殊なものがなければならぬ。ある意味におきましては、私的医療機関よりも公的医療機関の方が高度のものがなければならぬ。また実際受診者の方も高度のものとしてそれぞれ受診しておるのが今日の実情だと思う。ところが定員充足はおろか質的にもなかなか今日国民の方々が期待する方向には参っておらぬ、かように考えるわけです。そこで、定員充足ということについてまず御努力願うことも必要ですが、私はやはり質の向上、いいお医者さんを呼ぶということにも重点を指向していただかなければならぬ、かように思うわけですが、そういう点についてどのような所見を持っておるのか、一つこの際伺っておきたいと思います。
  96. 川上六馬

    川上政府委員 もちろん人を埋めればいいというようには考えておりません。やはり待遇をよくしなければいい人を確保することがむずかしいということは十分考えております。しかしただ給料だけ多く出せばいいということにも考えていないのでありまして、先ほど申しましたように、医者が愉快に国立施設で勤務できますようにその施設改善する、特に研究などにも相当な経費を出しまして、研究の方も助成していくようにする、そういう面をあわせて考えなければならぬというふうに考えます。国立病院は建物は大へん老朽なものが多いわけでありますけれども、幸い病院の科学的適正な医療といいますか、そういう点では相当実績を上げておる点はあります。ことに療養所の方には何といいましても結核の権威者が非常に多いわけでありまして、全国の肺外科の手術の半数以上を国立担当しておるというような状態になっておるわけであります。そういう面からむしろ誇りを持っておるわけでありますが、しかしそういう人をいつまでも待遇し、また今後優秀な素質の人を迎えるために、どうしても待遇改善あるいは施設の向上、環境の整備というような点をあわせて考えなければならぬと思っております。
  97. 河野正

    ○河野(正)委員 お説のごとく待遇が非常に悪いということ、あるいはまた環境の問題その他いろいろ御答弁願ったようでありますが、いずれにしてもそういうことが定員の充足を阻害する一つの原因であるということは、大体自他ともに認める点だと思うのです。いい医者という言葉は誤解があると思いますから、この際、それは技術的にも非常に経験豊富な医者だというふうにここではっきりしておきたいと思いますが、そういう意味においていい医者を招聘をするということについては、やはり定員充足と同じような条件が当然生まれてこようと思う。ところが先ほどからいろいろ意見が出ておりましたように、人事院の発表によっても三三・六%くらい民間給との格差がある。そういうことで今日までいろいろ厚生省も御努力願って、中だるみの是正その他で七%是正が行なわれたというようなお話がございますが、実際に公的医療機関に従事する人と、民間医療機関に従事する人との給与の格差というものは、人事院が発表するような状態ではないと私は確信するわけです。人事院ではどういう民間医療機関を対象にしたかということが問題でございますが、私は、人事院の三三・六%という格差は最低の格差だ、こういうふうに理解しておる。そこで、三三・六%以上あるということが今日の常識であるということになりますと、財源上の問題等も伴いますので、なかなか格差を埋めるということは、それは御努力願うと思いますけれども、当面の急務としてそういうことが可能であるかどうか、これは非常に問題があろうと思いますし、先ほどからいろいろ各委員の方から御追及になっておったようでございますけれども、その点必ずしも明確でない。そういたしますと、給与の改善が、定員を充足さしたりあるいは経験豊富な、技術の優秀な医師を招聘する第一の条件でなければならないが、その条件を満たすということは、今日の財政上の問題で困難だということになれば、どういう方法で定員を充足され、あるいはまた技術の優秀な体験豊富な医者を招聘されようとするのか、この点が明確にならないと、単に給与の改善だとか――なるほどそれはわかりますけれども、給与の改善がなかなかできないということになると、いつまでたってもこの悩みというものは解消できないと思うのです。この点に対して具体的にどういう構想を持ってそういう問題の解決に今後当たっていかれようとしているか、この点を明確にしていただかないと、いつまでたってもお互いに論議するだけで、解決の糸口は発見し得ないと思うのですが、この点いかがですか。
  98. 川上六馬

    川上政府委員 これは先ほど申しましたように、診療手当を昨年も予算に要求いたしたわけでございますけれども、先日も河野委員からお話がありましたように、医者について特別な給与表を作ったらどうかというような御意見もありましたし、そういう点も今検討いたしておるわけであります。しかし給与表を作るということもなかなか容易でないと思いまして、診療手当というもので従来要求してきたわけであります。そういうことや、先ほどのお話のような、医師について特別な考慮を必要とするのではないかというようなことも当然私らも考えておるわけでありまして、そういう面、あるいは先ほどの施設改善研究費増額するとか、住宅を確保するとか、いろいろな手で、ことに外国留学あたりも予算をとって出したいということも考えたわけでございますけれども、そういういろいろな方法でもって、技術の優秀な医師がとどまるように、また来てくれるように、全体としていろいろな方法で考えていきたいということで、十分お話のような点も、来年度予算も編成する時期になっておりますから、もう少し事務局で検討していきたいと考えております。
  99. 河野正

    ○河野(正)委員 国の医療行政が、今までいろいろ論議されましたように、非常にもたついておるということ、これはこの前の委員会の席上におきましても川上さんにいろいろ御質疑申し上げましたが、福岡県においては、県の医療に従事する百六十名のすべての医療職の職員が実は待遇改善を要求して、二カ月間の期間を区切って総辞職を願い出た、しかもそれが五月の二十日で二カ月が来るのです。にもかかわりませず今日もその解決の糸口が見出せない。これは地方自治体の状況ですけれども、やはりその基本は国の医療行政というものがはっきりしない、ここに私は端を発しておると思う。国の方針というものがはっきりすれば、おのずから地方自治体の方もそれにならって解決法も見出せようと思うのですけれども、なかなかその間の事情というものが明確でございませんので、実は二カ月間の期限を切って総辞職を願い出たが、すでにあと十日もすればその期限が来る。そうしますと福岡県の医療機関における医師というものは全員おらなくなるわけです。これは単に地方団体の問題のみならず、国民医療の面においてきわめて重大な問題だと思うのです。なるほど今日ここでは国の医療機関についていろいろ論議しましたが、これとこの地方の問題とは切り離して考えるべき筋合いの問題ではないというように私考えるわけです。これに対して厚生省としてどのように考えておられ、またどのような適切な処置をとろうとしておられるのか、この辺の御所見も一つ承っておきたいと思います。
  100. 川上六馬

    川上政府委員 確かに地方公務員の給与は国家公務員に準ずる場合が多いわけでございますから、国家公務員たる医師待遇改善が、ひいては地方の医師待遇改善にもなる。そういう点におきましては、国家公務員たる医師待遇改善は私は非常に大事だと考えておるわけであります。先ほど申しましたような、医師について特別な給与表というようなものでもできますれば、これはそういう点では非常に役に立つと思っております。  福岡の問題については、先般私も心配して知事にも会い、また医師の代表にも会ったわけでございます。そうしてお互いに譲歩して何とか円満に解決するように両方の間の取り持ちもやってきたわけでございますが、まだその解決ができないということは非常に遺憾に思っております。なおさらに続けてこの面につきまして努力をいたしたいと思います。
  101. 河野正

    ○河野(正)委員 この場合のこのケースを見て参りましても、やはり優秀な特殊技能と申しますか、そういう技能を持っておられる人は、民間給与との格差というものがべらぼうにあるわけですね。ですからむしろ個人的には、そういうことなら、いい機会であるのでこの際民間の方に移りたい。特殊技能を持っておられる人はことごとくが大学から派遣されていっておるというのが実情なんです。無理やりに派遣されていっておりますから、そういう総辞職というつの口実ができれば、この際それを機会に本気で辞任したい、こういう人が非常に多いわけです。そういたしますと、県民福祉と申しますか、特に医療を通じての県民福祉、こういう意味におきまして非常に重大な問題だと思う。しかも受診者の方は、公的医療機関ですから内容的には高度なもの、質的に高いという判断で受診をする。ところが実際には待遇が悪いためにそういう人は全部他の方から誘いの手が伸びて出ていってしまう。そこで国民考え方と実際の医療面においては非常に大きな差が出てくるわけですね。これは私は国民医療の上において非常に大きな問題だと思うのです。しかも現実に福岡県においては、二十日ですからあと十日後には全員自然退職するわけですね、辞表を出しておるわけですから。これはその根本を尋ねれば、やはり国の医療行政に欠陥がある。そこに端を発して地方でそういう紛争が出てきたわけですから、やはり国の責任において解決するような糸口を作っていただかなければならぬ。行政上の指導としてこの解決に努力していただかなければならぬ、こういうように思うのです。なるほど川上局長が福岡県まで行っていろいろ話されたことはわかりますけれども、今日の事態というものはもうとことんまで追い詰められておる。そこで私は、福岡に行っていろいろお話し願ったということで解決できる問題ではございませんので、さらに行政上の指導を通してこの解決に努力せられるべきだ。それはもとを尋ねれば国の厚生行政の欠陥がそういうトラブルを起こす原因を作っておるわけですから、当然私は国の責任において――国の責任においてと申しますか、指導上の責任において解決すべき問題だ、こういうふうに思うわけですが、この点いかがですか。
  102. 川上六馬

    川上政府委員 福岡の事情は特殊な事情があることは、河野委員も御承知でございますが、私は今度のああいう事件を起こしたことは、単に国の医師に対する待遇のやり方が悪いばかりではないというように、実は正直のところ申しますと思うわけでございますけれども、先ほど申しましたように確かに重大な関係がございます。これは御指摘の通り私の方も善処いたしたいと思います。
  103. 河野正

    ○河野(正)委員 関連でございますから、簡単に省略したいと思いますけれども、先ほどから行政監察庁のお話を承っておりますると、何か今まで公的医療機関欠員が出ておる。出ておるということは、あたかも合理的な定数でなかったので欠員が出ておるというような御答弁であったようです。この言葉は非常に重大なことを意味すると思うのです。ということは、欠員が出ておるということを口実にして、将来定員を削減するという考え方がそこにひそんでおるのではなかろうかという気持を実は強く持ったわけです。自分たちで定員を充足させないでおいて、いろいろ厚生行政の上に欠陥がある――結局定員を充足しないという責任はたなに上げておいて、定員が足りぬところで定員化をはかっていこう、こういう意味にとれるような御発言があったということは、私はきわめて遺憾であると思いますし、きわめて重要なことであります。そこで厚生政務次官にお尋ねしておきたいと思いますが、今の定数というものは合理的でないのかどうか。監察庁の方の御意見では、今までの定数を検討して合理化をしたいということでございますが、厚生省はそういう答弁に対して一体どういうふうにお考えになっているのか、これはきわめて重要でございますので、一つこの点につきまして厚生政務次官の御答弁をわずらわしておきたいと思います。
  104. 内藤隆

    内藤(隆)政府委員 行政監察庁は定員改訂前の状態を監察したように思いますので、現在は相当に行政の面から見ましても実績を上げておるというさいぜんの医務局長の報告を私はそのまま信じておるような次第でございます。それからその他の点につきまして、御趣旨に沿うように――これは今大きな問題となってくると私は思うのであります。十分に一つ検討を加えまして、御期待に沿うように進めていきたい、かように考えておる次第でございます。
  105. 河野正

    ○河野(正)委員 今政務次官が御答弁になりましたことが正しいといたしますならば、私は監察庁に対して明らかにこれを訂正していただかなければいかぬと思うのです。先ほどの御答弁を承っておりますると、今までの定数についてはいろいろ問題があった。そこで今後は合理的な定数を確立するために、今までの実績というものを積み重ねていかなければならぬという御答弁があったと思うのです。厚生政務次官は、もうすでに合理化されて、そうして今の定数というものは合理的なものだ、しかるに欠員があるので、その点については十分今後努力していかなければいかぬというような趣旨の御答弁であったと思うのです。それはけっこうですけれども、さっきの監察庁の御答弁は、どうも今までの定数というものは不合理である、そこで合理的な定数というものを確立していかなければいかぬという意味の御答弁があったように理解しております。それで少なくとも監察庁の答弁は、過去が云々ではなくて、今後そういう方針で臨むというような方針を示されたというふうに私は理解をいたしておりますので、もしそれが誤りであるならば、ここで一つあらためて御訂正を願いたい。
  106. 原田正

    原田(正)政府委員 私どもが監察をいたしましたのは、昭和三十三年の十月から十二月でございます。従いまして私どもはその監察の結果に基づきまして勧告をいたしました。その監察の場合におきましては、最初申し上げました通り、一定の基準に従って、たとえば民間の特殊病院におきます基準というものをつの基準としてみまして、各施設ごとの定数を算定して、現在の定数と比較してみたのであります。その結果によりますとアンバランスがあるわけでございます。従いまて厚生省としては、国立療養所の全般に通ずる算定の基準を作ってその基準のしに立って、各施設ごとの定数を再検討してみろ、こういうふうな意味の勧告をいたした次第であります。そうしますると、ただいまの御答弁によりますると、三十四年の六月に当方の勧告の趣旨等を取り入れて調整されたということでございます。実はその点を申し上げることを失念いたしまして、まことに申しわけありませんでした。
  107. 河野正

    ○河野(正)委員 それでは関連でございますから締めくくりをいたしたいと思いますが、いずれにいたしましても、この問題はここで簡単に質問して、簡単に御答弁されるようなことで解決するようななまやさしい問題ではないと思うのです。と申し上げますのは、制度のみならず、その背後には大きな財政上の問題等を伴いますので、簡単な問題でございません。そこでよほど私はふんどしを引き締めて当たっていただかなければ、この問題を抜本的に解決することはできないと思いますし、しかもそういう解決が今日行なわれないために、地方では、福岡県の例を一例話しましたが、そういういろいろな、中央に関連して、給与問題等に関連してそういう問題が起こってきておるわけですから、そこできょうは公的医療機関を中心として論議がいろいろ交わされましたけれども、しかしこれは単に国立病院であるとかあるいは療養所の問題にとどまるべき問題ではないと考えます。そこで一つぜひともこれはふんどしを引き締めて、重大な決意を持って事に当たっていただくという方針で臨んでいただきたいと思いますし、そういう面に対しまする――ほんとうを言えば大臣から御答弁いただきたいのでありますが、大臣は御欠席のようでございますから、その点について、次官から総括的に厚生省としての決意のほどを最後に承って、私の質疑を終わりたいと思います。
  108. 内藤隆

    内藤(隆)政府委員 仰せのごとくまことに重大な問題でありますので、十分の決意を持ってわれわれは善処していきたい、かように考えております。
  109. 滝井義高

    ○滝井委員 議事進行について。安保の審議もいよいよ山に差しかかっておりますが、厚生省関係法案も相当山積しておるわけです。大臣が御病気でやはり当委員会に出てこれないということは非常に遺憾なことですが、一体大臣はいつごろになったら病気快癒の上出てこられるのか。非常に長期になるとすれば臨時大臣でも置いてもらわなければ、とてもこれは審議が進まないと思うのです。いつごろになったら大臣が当委員会に出てこれるものなのか、一つ責任を持って御説明願いたいと思います。御病気ならばゆっくり休んでいただいてけっこうですから、臨時の厚生大臣でも置いていただかなければならぬと思うのです。
  110. 内藤隆

    内藤(隆)政府委員 実は大臣は慶応病院に入院をして、専門的な検査をいろいろやってもらいました結果、その原因等もわかりましたので、本日の晩方退院することに決定いたしました。明日は登院もできるし、従って、明日からは必ず委員会に出席せられる、私はかように信じておりますので、どうか一つ大臣御出席の上、審議をすみやかにお進め願いたいと思います。
  111. 永山忠則

    永山委員長 午後二時十分まで休憩いたします。     午後一時十一分休憩      ――――◇―――――     午後二時四十分開議
  112. 永山忠則

    永山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  船員保険法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。質疑に入ります。質疑の通告がありますので、これを許します。滝井義高君。
  113. 滝井義高

    ○滝井委員 船員保険法の一部を改正する法律案につきまして簡単に一、二点だけお聞きしたいのですが、船員保険法のけい肺なり脊髄骨折に関連する部面の改正は、昭和三十年にけい肺の特別保護法ができるときに附帯決議として要望をせられておったのです。ところがそれが足かけ五年も法律案としてできなかったというのは、一体どういう理由によるのですか。
  114. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 これは陸上の方ではけい肺及び外傷性脊髄障害に関する時限立法あるいは臨時措置法という形で出ております。船員につきましてはその職場の関係で、けい肺というものがございません。外傷性脊髄障害というものが若干あったわけでありますが、非常にわずかであったということ一つ、それから現在その人々は三年の療養給付期間が過ぎました後において、大多数の人は第一級の障害年金を支給いたしますとともに、この船員保険の福祉施設費というものを活用いたしましてその療養の面を負担するということで、一応遺憾なきを期して参ったような次第でございます。
  115. 滝井義高

    ○滝井委員 私はどうして三年間も、足かけ五年間も放置をしておったかという理由を尋ねておるのです。それならば今あなたのお示しのように障害年金を支給して、それから船員保険の福祉施設費を活用させて実質的に同じことをやっておったということならば、これはやる必要はないということになるわけです。あえてこれを早く通してくれ、通してくれという理由がわからなくなるわけです。
  116. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 先ほど申しましたように、向こうの方も時限立法ないし臨時措置法でやったというような関係もございました。今回は向こうの方も本格的な立法ということで、それからその幅も広げて参っております。私の方も当然それと相呼応いたしまして、職務上の傷病全部にこれを広げるというようなことでございますので、今回は一応こういう法律改正をいたすのが適当である、かように考えたわけでございます。それまでの間は先ほど申し上げましたように障害年金及び福祉施設費の活用によって大体やってこれたということでございます。
  117. 滝井義高

    ○滝井委員 保険局長は今回できたじん肺法なりあるいは労災保険法の一部を改正する法律、これが本格的なものだとおっしゃるけれども、あれは本格的なものではないのです。社会保障の総合的な政策ができるまでの過渡的なものとしてできているわけなんです。本格的なものじゃないのです。そうしますと、今までこれでやっておった。ところが今度はこれを新しく法律をじん肺法なり労災保険法の改正に合わせるということは、もっとはっきりした理由がなければならぬと思うのです。こういう理由でこれは合わせなければならぬという、どうしてもこの法律改正しなければならぬ理由がなければならぬと思うのです。今までも第一級の障害年金は支給し、あるいは船員保険の福祉施設費でうまくやっておりました、ちっともさしつかえありませんということなら、それでいいと思うのです。ところがそれでは何か都合が悪いことができてきたからこそ船員保険法の一部を改正する法律としたのじゃないか。たとえば国庫補助の面なんか、三年を越えたものについては労災保険その他は出ます。そういう点が同じ保険経済を考えた場合に不均衡に労災部面ではなるということから、これはやるのじゃないですか。急いでこれを通してくれというからには、それだけの理由がなければならぬと思うのです。改正点は三つか四つあるのですが、厚生当局もう少しそこらあたりをはっきり、こういう理由でこれはすみやかに改正しなければならぬのだ、そうしないと立法上何か均衡を失するのだということがなくてはならぬと思うのですか……
  118. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 従来は、先ほど申し上げましたように非常にわずかな該当者でありましたので――決して私どもそれで十分だと思っておるわけではございませんが、どうにかそれでやって参っておるわけでありますが、今回のように陸上のが労災保険法の改正となってこういうふうに新しい制度として打ち立てて参りますならば、私の方もそれに相呼応して制度的に考えるべきであろう。それから範囲も職務上の傷病ということに広くなりまするので、その点から申しましてもこれは制度としてやはり考えなければならぬ。それからお尋ねのように、陸上につきましてもそれぞれ二分のないし四分の三という、打ち切り補償後において国庫負担の制度が開かれた、これに相呼応いたしまして、船員保険のこの種の分野につましても、同じように国庫負担の道を開く必要があろうというようなことからいたしまして、今回の改正をお願いいたした次第でございます。
  119. 滝井義高

    ○滝井委員 けい肺に関連をする船員保険法なり船員法の改正を考えた場合に、救済の方法というものは三つあると思うのです。一つは、たとえばけい肺に準用して労災保険法を改正していくという方法です。何も船員も陸上の労働者と変わったことはない、同じ脊髄骨折なんだ、だからこれは労災で一つ行きましょうという行き方があるわけです。それからいま一つ、これは船員法との関係になってきますが、船員法では業務上の疾病については事業主が見ることになっていますから、従って船員法で死ぬまで見れる方法があるわけです。いま一つは、船員保険法というのが、幸いに短期保険と長期保険、失業保険まで含めた総合的な保険ですから、これで見ていくという方法があるわけです。昭和三十年ごろの参議院でも衆議院でもこれに対する質疑は出て、参議院においては、当時の安西さんというのは運輸省ですが、安西さん等は、一体けい肺の準用で行くか、船員法の改正で行くかあるいは船員保険法改正で行くか――これは三つのものについてはそれぞれ所管省が違うわけです。労災で行けば労働省です。船員法ならば運輸省ですね。それから船員保険法ならあなたの方の厚生省と、みんな違うわけです。従って、これは三省の間で実は協議中でございますという答弁をしたわけです。従ってこれはぜひ次の国会までには出したい、三十一年の通常国会には出したい、こういうことを言っておった。ところがそれがじんぜんとして三十五年になっちゃったわけですね。これは一体どういう協議をされておったのですか。そうしてどういう理由から船員保険法改正に落ちついたのですか。
  120. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 確かにお尋ねのように、陸上のこういうけい肺あるいは脊髄障害というものに見合う海上労働者に対しましてそういう手当をいたします場合に、やり方としては、お尋ねのように陸上の法律をそのまま海上にも及ぼすというやり方もございましょうし、また海上労務者についての職務上の疾病の基本を示します船員法において規定するという道もあろうかと思いますが、私どもといたしましては船員保険法というものができまして、これが短期及び長期両方を持つ総合保険であり、同時に陸上の労災の関係もこちらであわせてやっておるという建前からいたしまして、船員保険でやるのが当然筋であるというふうに考えておるわけであります。さような点について関係省の間に事務的にいろいろ意見があったこともあろうと思いますが、今回はそういうことで政府部内の意見が一致してここに御審議をお願いしているものと御了承いただいてけっこうだと思います。
  121. 滝井義高

    ○滝井委員 三十一年までに話し合いがまとまるものが三十五年までまとまらなかったということについては、私は何かそこによほど重大なことがなければ四年も五年もまとまらぬというはずはないと思う。そういう答弁国会でしたのは、久下さんが局長の時代ですから、三十年七月ですね。七月にそういう答弁をしている。ところが、それが四年もたたなければ話がまとまらない。まとまったときには船員保険法でまとまっておる。まとまったかどうか、これもはっきりしないところがあるのですが、まとまったと善意に解したいと思う。そういう点どうもなぞです。そうしますと、これを労災なり船員法でやらずに船員保険法改正でやることによって、他の二法でやるよりかどこか非常に大きな利点がありますか。
  122. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 これは船員保険という総合保険制度を作りましたその趣旨からいたしまして、このような外傷性の脊髄障害あるいはその他職務上の疾病というふうなものについて何か手当をするというふうな場合においては、船員保険でこれを考えるというのがむしろ筋である、何らかの特別な理由がなければ当然こちらでもってやるべき筋のものであろう、かように私は考えておるわけであります。もちろんそれを他のばらばらなものでやってやれないことはないと思いますけれども、これは同じ総合保険でこちらでやっております。ことに船員法の船主の責任をこちらの方でもってあわせて行なうというふうなことにもなっておりますので、これは当然こちらでやるのが筋である。こちらでやりますならば、やはり疾病の関係からあるいはその治癒した場合の廃疾の関係、あるいはそれが不幸にして死亡したというような、あとに至るまで一貫して同じ船員保険の中で見ることができるわけでございますから、これは当然こちらでやった方があらゆる点において便利であり、また筋でもある、かように考えております。
  123. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、船員法の八十九条「船員が職務上負傷し、又は疾病にかかったときは、船舶所有者は、その負傷又は疾病がなおるまで、その費用で療養を施し、又は療養に必要な費用を負担しなければならない。」こうなっておるわけです。この八十九条の第一項との関係はどうなるのですか。御存じの通り、船員法で職務上の負傷というものは全部事業主が見てくれることになる。すなわち船舶の所有者がこれを見てくれる。そうすると、同時にこの人は船員保険法の被保険者であり得るわけです。そうすると重なるわけです。この調整はどういう工合になるのですか。
  124. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 これは同じ船員法の災害補償の九十五条をごらんいただきますと、そこに、八十九条の規定によって、療養または手当等を受くべき者が、同じ理由船員保険法による保険給付を受けます場合においては、船舶の所有者は災害補償の責めを免れる、この規定によりまして、従来から船員保険において給付をいたして、これが八十九条の船主の責任を代行する、こういうことに相なっております。そのために当然保険料の計算の中においても、船主は、そういう分に相当する分を別に保険料として負担しておる、こういう建前に相なっております。
  125. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、労災法の概念からいうと、三カ年間で打ち切られるわけです。なおらなかったら、打ち切り補償をもらうわけです。そうすると、三年以降については、事業主は一切責任を負わないというのが基準法の建前なんです。ところが今まであなた方の方では、船員に関する限りにおいては、障害年金をやり、同時に保険で、それは船員保険の施設であったにしても見てきておったわけです。これは実は今までの労働基準法の概念を越えた概念を船員法でやってきておる。これは非常にいいことです。そういうことをやってきておったわけです。そうすると、それは大体三年で切れるのですから、それで業務上の疾病については事業主は一切の責任を免れるわけです。ところが、それを今までおやりになっておったというのは、八十九条によってやっておったのですか。八十九条では三年でしょう。この意味するところは、費用負担しなければならぬというのは、三カ年間だけでしょう。それ以降は、そうすると、いかなる法律上の根拠でやっておったのかということです。
  126. 戸沢政方

    ○戸沢説明員 お話の通り、船員法によりまして、船員については業務上の傷病について、なおるまで船主の災害補償責任というものが課せられておるわけでありますが、それをただいま局長の説明いたしました通り、九十五条によって船員保険で肩がわりをするということになっておりまして、その限りにおきまして、船員法による船主責任というものは全面的に船員保険法によって免責されるということになるわけであります。それで、船員法のこの部分の規定がなされましたときに、いろいろ議論があったようでありますけれども、当時の患者の状況あるいは医学の水準等から見まして、大部分の病気は三年でもって片がつくというようなところから、すべての傷病が三年の保険給付によって解決されるというふうになったようであります。従いましてその趣旨からすれば、三年間の療養給付をすれば、それで船員法による災害補償責任も解決される、免責されるということでありますけれども、その後、せき損といったような特殊の傷病につきましては、三年たっても十分なおらぬというものが若干発生しておるという現状から見まして、本来の保険給付ではないけれども、ちょうどアフター・ケア的な意味で、せき損患者以外についても、若干年金病院、整形外科病院等に委託をいたしまして、福祉施設でやっております。それと同じ意味におきまして、せき損患者についても、福祉施設で本来の保険給付以上のものといいますか、アフター・ケア的な意味での給付をしておったというわけであります。それを今度の改正では、そういうアフター・ケア的な福祉施設では十分な療養も行き届かないというところから、これを本来的な療養給付に切りかえて、十分な給付をいたしたいというふうに考えたわけでございます。
  127. 滝井義高

    ○滝井委員 こういうことでしょう。三年間たった。三年たってもせき損はなおっていない。従って固定していないから、いわゆる廃疾の認定ができない。従って、これはそこで打ち切り補償を出すわけでしょう。船員保険でも打ち切り補償の金をやるでしょう。やりませんか。――やらない。障害年金をすぐにやる。そこが普通のものと違うわけですね。普通は打ち切り補償を出す、船員保険は傷害年金をやる、こういうことですね。その間、普通の労災ならば、打ち切り補償をやったならば六カ年間は障害年金を停止される。この点が船員保険と違うらしい。私は打ち切り補償をくれるのかと思ったのですが、今あなたは障害年金と言うから、ちょっと普通と違うなと思ったのです。そうしますと、障害年金をくれておるということは、船員保険には治療その他はないんだが、特に治療面をアフター・ケアの意味でやっておった。そういう普通の保険とは違った恩典が船員保険には付加されておったという形になるのですね。
  128. 戸沢政方

    ○戸沢説明員 特別の恩典と申しますか、陸上労働者についてそういう特別措置法でもって、本来の労災給付以上の給付がなされておりましたために、それに準じて船員保険の福祉施設という形でもってやっておったという格好になるわけであります。
  129. 滝井義高

    ○滝井委員 障害年金もつき、船員保険の福祉施設としてやっておったということになれば、やっておった間は解雇はできないのでしょう。障害年金をもらったらもう解雇できるのですか。
  130. 戸沢政方

    ○戸沢説明員 雇用契約との関係は、船員法におきましては、現在のところ労働基準法のような保険給付と雇用関係、解雇といった規定はございません。船員につきましては別途労働協約が船主と船員の間できめられておりまして、これは現在のところ、三年たって療養給付が打ち切られた場合には解雇できるというような趣旨になっております。その点では実質的には陸と同じようなことが労働協約できめられておるわけでございます。
  131. 滝井義高

    ○滝井委員 従って労働協約はいろいろ船主によって違いましょうが、一般的に見ると、労働協約というのは、労働基準法における概念が適用されておるのではないかと思うのです。なおらなければ三年したら解雇だ、それから先は船主は全然責任がないという形に一般になっておるのですか、それともなっていなくて、ずっとある程度事業主が見てくれるということになっておるのですかということです。これはどうしてかというと、われわれが労災法の一部を改正する法律の修正をするときに、与党ががんとしてこれは拒否したところなんです。もし船員に三年以降においてもなお解雇しないという原則が労働協約その他でできておるならば、これは当然海の者にそういう原則が事業主に認められておれば、陸の事業主にも認められないはずはないと思うのです。ところがこれは日経連その他の圧力でがんとして与党が拒否したところなんです。どうですか、労働協約その他今後の日本の社会保障をやる上に非常に大事なところなんです。
  132. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 今主管課長から御答弁申し上げましたように、船員関係におきましても、船員法にはただいまのところ規定ございませんが、労働協約によりまして、三年たったならば解雇してもよろしいということに現在なっておるわけであります。陸上の関係はまた必ずしも海上労働者と一致しない面もあるし、またある点では一致してしかるべき面もあろうかと思いますが、船員の関係におきましては、現在そういうふうになっておる。陸上のことにつきましては私の責任でもって申し上げるのはいかがかと存じますので、この辺で……。
  133. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、ますます重要になってくるのです。この法律は、けい肺及び外傷性せき髄障害に関する法律との関連において船員法及び船員保険法改正してもらいたいという要望が今から五年前に出てきておるわけです。そして今度じん肺法なり労災保険法の一部改正としてこの国会法律が通過をしたそのあとを受けて、船員保険法改正されてきたわけです。そうしますと、今度のこの改正業務上の疾病については今までは障害年金をもらって、あるいは船員保険の福祉施設でまかなわれておったけれども、今度は堂々と廃疾の認定を、三年たってもよくなっておらなければやらない。そして傷病手当金と治療給付とをやるわけですね。そうしてこれがなおったら廃疾の認定をして障害年金に移るわけでしょう。そうしますと、なおらない間は船員は船員保険法においては解雇されないのですから――解雇されないわけでしょう、法律上の建前としてはどうですか。問題はそこなんです。解雇されないということになると、陸の労働者との均衡を今度はそこで失することになるわけです。だから船員において解雇されないならば、陸の労働者においてもやはりなおらない間は解雇してはいかぬという主張になってくるわけです。われわれはその主張を今までしてきたのですが、それが通らない。ところが今度政府提案によって、船員保険で解雇しないということになっておるならば、もう一ぺんわれわれはこの法律改正案のあとにくっつけて、労災においてもこれに準ずるという修正をやらざるを得ない。その点はどうですか。法律上の見解をいえば、三年たってなおらなくても、それは解雇しないでいくということになっているのかどうか。船員保険は私もあまり勉強していないし、これは複雑だからよくわからないのです。
  134. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 現在の船員法においては、疾病で療養の給付を受けておる間、絶対解雇していかぬという規定があるわけじゃないわけで、ただ普通疾病がなおる間大体三年というのが、今日いろいろな各種保険の一応のめどになっております。三年間というものは一つ当然見るべきじゃなかろうか。三年というものが一つの区切りになりまして、三年が経過した後においてなおなおらない者は、ある場合においては障害年金というような廃疾給付の方に持っていくということで、三年というものが一応の区切りになっておる。そこで労働協約等におきましても、三年というものを一つの区切りとして、それがたってなおなおらない、なおらない間は一応やめていただくというようなことがあってもこれはやむを得ない、こういうことになっておる。従いましてその辺からいきますと、三年というところに一つの線が引かれている。従いまして、今回の改正において、三年たった後もなおかつなおらない場合において、治癒するまで給付する、こういうふうにいたしたいということでお願いしておりますけれども、それは治癒するまでの間は絶対に解雇というものはないのだということとは私は別だと思うのでありまして、これは必ずしもこれと結びつくという問題ではない。むしろ三年というものが一応の区切りになっておる。それからあとは、法律には書いてないけれども、解雇があってもいい。これは逆にいえば、三年間だけはやらないでくれというふうな、裏から言えばそういうふうなことに相なります。そういうことであろうと思います。従いまして、三年たった後に療養の給付を延長してやる場合にも、とにかく治癒するまでは解雇しないのだということとは少し別なものであろうかとただいまのところは考えておるわけであります。
  135. 滝井義高

    ○滝井委員 それはどうも納得できないのです。職務外のものならば、これは三年たてばやむを得ないと思うのです。職務上のもので三年たってなおらなければ、今まで廃疾の認定をしておったわけです。廃疾だということは、もう労働能力がありませんぞということですから、これは首を切られてもやむを得ないと思うのです。ところが今度は、三年たってなおらないときには廃疾といわないのです。そしてなおあなたは療養して下さいよ、なおりますぞ、こういうことでお金、傷病手当金を出す。そうして療養を給付していくわけです。そうしてなおってから廃疾の認定をすることになったのです。従って、なおるまでは首を切っちゃいかぬということの理論がそこに出てくるわけです。なぜならば、なおったならば職場復帰してもらわなければならぬ。そうでしょう。廃疾なら、あなたの病気はなおりませんと宣言するのですから、これは首を切ってもいいと思う。いいことはないけれども、今までの慣行からいけば切ってもいい。ところが今度は廃疾というものをうしろに押しやったのですから、押しやって今まで通り治療を続けていくのですから、ちっとも状態は変わっていない。療養手当金を与える状態は、第一年度から三年度までの状態と同じ状態が続いてきておるわけです。そうして何年か治療をして初めてなおった。廃疾だ、障害年金、こういうことになったときに、それは廃疾だという認定を受ければ、これはだめになるかもしれません。しかしそこらあたりまではやはり首は切ってはいかぬ、こういう形になると思うのです。立法上の問題として、首がつながるか、つながらぬかということは、労働者にとっても大事だし、あなた方にとっても非常に大事なことですよ、保険経済に関係してくるのですから。だから、そこらを一体あなた方はどう雇用との関係を処理していくつもりなのかということが、これは政府の管掌の保険ですから、あなた方の考え一つですよ。あなた方で御答弁ができなければ、ちょっと労働省を呼んでもらわなければいかぬです。これは何なら労働省をちょっと呼んでくれませんか。この労災関係、これは労働省の方はがんとして三年でだめにしておるわけです。そうすると、労働省と運輸省と厚生省と話い合いの上で船員保険法の一部を改正する法律としてお出しになった。しかもそれは労働省の労災保険の一部を改正する法律に準じておやりになった、こういうことで、前が通っておるのだからこれも一つ早く通して下さい、こういうことだけれども、あなたの方の船員保険が非常によくなっているならば、一般陸上の労働者についても同じようなことが言えるのではないかというのがわれわれの主張なのです。だから、そのためには厚生省当局のこの立案にあたっての三年以降における雇用問題というものは一体どうなるのか、これは首を切ってもいいということでいくのか、首を切ってはいかぬということで厚生省当局はいくのか、この点を一つ明白にしていただきたいのです。
  136. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 もちろん保険の関係と雇用関係ということは、制度としての主管も違いますから、私がここで申し上げるということは、そういう場合に首を切ってよいかということは、むしろ労働省の方で責任を持ってお答えすべきが筋であるということで遠慮しておるわけですけれども、私どもの方は、従来三年たってなおらない場合にこれを障害年金の方に移しかえておりますが、その患者の実態が、その後今日においては治癒するまで療養の給付をやるというふうに変わってきておるというわけではない、実態は昔から同じだと思うのです。ただ、従来は三年というところで区切りをつけて、そこでなおらないものは療養の給付は打ち切って、そうして陸上の場合には打ち切り補償とかいうものにし、また船員の関係においては障害年金なんかにやる、こういうふうにしておった。しかし、そういう人たちといえども、なおかつ療養をして、できるだけ手当をするという道はあるわけであります。従いましてそういう点から私の方では福祉施設という先ほどのようなことでその人たちのめんどうも見ておったわけです。それは今日においても同じだろうと思います。ただ先般の労災保険の改正等にもございましたように、こういうものについてはやはり徹底してその最後までできるだけ可能な限り療養を見てあげるべきだということで、三年たった後においてもその療養の保障ができるようにする。陸上の場合においては第一種と第二種と分けて、傷病の療養給付と、あるいは療養の給付に準ずることがとられておる。それに相呼応いたしまして、船員の方でもそれをやっておるわけであります。ただ今までの、従来からの船員保険のあれからいたしますると、要するに療養をやっておるから、その間は首を切ってはいけないのだ、解雇してはいけないのだというふうに実は私どもとっておらないわけでありまして、むしろ先ほど申し上げましたように、三年たった後に解雇できるという労働協約は、三年間はむしろ解雇しないという保障のように私どもはとっておるわけなのであります。従いまして職務外の疾病でありますならば、三年を待たずして解雇することもある。しかし、職務上については三年間はとにかくやってはいけませんぞというところにその意義がある、かように考えておるわけであります。病気をやっておる間これが何年続くか、こういう脊髄障害というような患者の人たちは、今後相当長く療養を受けておられると思います。転帰をとるまでその間ずっと解雇できないのだということまでは私どもとしては考えておらないのでありまして、その辺のところまでは私どもとしては考慮に入れてこの規定を作っておるわけではないのであります。
  137. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、船員保険法の中に労災の部面が入っておるわけですが、これは労働省の見解を待つまでもなく、厚生省独自の立場でこれを解雇するかしないかということを御決定になれると思うのです。というのは、これは解雇されたら保険料を払わぬでいいし、解雇されていないということになると、保険料が入ってくるのです。解雇されたら保険料は入ってこないのです。この違いが出てくるわけです。従って、一体あなた方はこれをおとりになる場合には、船員保険法立場からはどちらをおとりになって立案されておるのかということです。三年以内でもう解雇されるという立場をとって予算を組まれるのか、三年以降でも解雇されないという立場予算を組むおつもりなのか。これが大事なところだと思う。その立場がはっきりしないと、今何人おるか知りません。あとでお尋ねしますけれども、この前三十年ごろ尋ねたときは、こういう関係の者は一人か二人しかおらないということを当時久下さんが答弁した。先ほど私が二人の事例を申し上げましたのは、年金給付の決定が、一人は昭和二十二年九月、人は二十三年三月すでに決定いたしておるので、年金の支給中のものでございます。今日となりましては、すでに療養給付の問題は法の改正がありましても、当然に起こってこないと思いますということで、結局法律改正しても一人もいない、こういう形です。今はどういうことになっておるか知りませんが、こういう形になっておりますから、予算の上では大した影響はないでしょう。しかし一つ法律論としては、保険料をとるかとらぬかの問題になるわけですから、これは予算に影響がすぐ出てくるわけです。だからあなた方としては、この法律をお作りになるときに、一体どういう態度をとるのかということです。三年の後も雇用関係にあるとして立法するのか、もう三年以降はだめだとして立法するのか。     〔委員長退席、藤本委員長代理着席]
  138. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 船員保険といたしましては、その解雇をどうこうということを船員保険の立場できめるべき建前になっておりません。船員については、船員法でもってその点を規定しております。もちろんそれが解雇されるかされぬかということによって保険料にも響いて参ることは事実でございますけれども、解雇する、せぬということは、その保険料に響くというよりも、もっと大きな問題でございますので、これはやはり船員法の方において、その点についての論議があれば、十分にそちらの方でいたすべきものであろう、このように考えるわけであります。
  139. 滝井義高

    ○滝井委員 船員法では解雇の問題はどうなっておるのですか。これはすなわち被保険者の資格喪失の問題に関連してくるわけです。資格喪失というのは、船員法で業務上の疾病で負傷をして、三年間たってもなおらないときには、必然的に被保険者たるの資格を喪失することになっておりますか。
  140. 戸沢政方

    ○戸沢説明員 現在の船員法では四十条に雇い入れ契約の解除の規定がございますが、その中に「船員が著しく職務に不適任である」とかいろいろ書いてありますが、ただ傷病の関係につきましては、その五号に「船員が負傷又は疾病のため職務に堪えないとき。」という抽象的な規定があるだけでございまして、それを具体化するものとして、結局労使の間で協約を結んでいるところは、これが三年で療養給付を打ち切られた人が、一つの契約解除ができる事由になっておるというだけのことであります。
  141. 滝井義高

    ○滝井委員 従って労働協約でおそらく多くのものは三年になっておるでしょうが、そのほかに三年以上のものがあるかどうか、たとえば大手の船会社で三年以上ずっと雇用関係を持続しているものが、相当労働協約にあるかどうかを知りたいわけです。
  142. 戸沢政方

    ○戸沢説明員 現在そういう船主と船員の間で労働協約を結んでいるのは、大手の汽船などでありますが、汽船につきましては全部同一の契約内容になっておるわけで、三年以上になっておるところはございません。
  143. 滝井義高

    ○滝井委員 わかりました。  それから今回の改正の対象となるものの人数、これをちょっと御説明願いたいと思います。
  144. 戸沢政方

    ○戸沢説明員 今度の改正による対象を調べるために、現在障害手当金ないし障害年金を受けておりますものにつきまして、過去五カ年くらいのカルテによってそれを経過期間別に、つまり手当金なり年金なりに切りかえられた時期、期間別に調査をいたしてみました。そうしますと、三年たってそこで廃疾認定されて、障害手当金ないし障害年金に切りかえられたものの数を見ますと、障害手当金に切りかえられたものは三年間に三十六名、障害年金に切りかえられたものは五年間に五十六名となっております。従いまして、年間十二名程度ということになっております。それをさらに病気別に調べてみますと、やはりせき損による患者が一番多うございまして、せき損患者で一級の年金を受給しておるものは十名ございまして、あとは潜水病とかその他外傷によるものが二、三名ずつあるような程度であります。
  145. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、これは三十年の七月二十九日以降の障害手当金と障害年金と、こういうことになるわけですね。その合計が九十二名、こういうことですね。
  146. 戸沢政方

    ○戸沢説明員 調査しましたのは、障害手当金につきましては、三十一年度から三十三年度までの三カ年間に三十六名でございます。それから障害年金につきましては、二十九年度から三十三年度までの五カ年間に五十六名ということでございます。
  147. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、この法律は三十年七月二十九日以後に職務上の事由に基づく外傷性脊髄障害に関して年金の支給を受けておるものが、この法律施行のときに三カ月以内に届け出を出す、こういうものを対象にするわけでしょう。そうすると今の数字は、一応三十一年から三十三年までの三カ年の三十六人と二十九年から三十三年までの五カ年の五十六人、この九十二人というわけにはいかぬわけでしょう。今度はもう少しふえるわけでしょう。
  148. 戸沢政方

    ○戸沢説明員 ふえるのではなしに、減るわけでございます。というのは、経過措置は三十年七月以降障害年金、しかもせき損患者の特別措置法による保護を受け得られるものに限られるわけでございますから、それは一級に該当するものだけでございます。そうしますと、それはごくわずかになりまして、現在調べのついておるところでは大体五名程度という状況でございます。
  149. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、この年金の五十六人というのは、いわゆるせき損でいえば、著しく脊髄に障害のあるもの、損傷のあるもの、何か法律ではそういう表現になっていたと思いますか……
  150. 戸沢政方

    ○戸沢説明員 少し説明が不十分でございましたが、その九十二名というのは、これはせき損だけでございませんで、要するに何でも職務上の傷病によって三年たってもなおらないままに廃疾認定されたものでありますから、せき損患者以外に潜水病とか、半身不随とか、眼疾とか、重度の外傷、あらゆる傷病者を含んでおるわけでございます。それで経過措置は三十年にさかのぼって保護しようというのは、これは特別措置法ありせば陸上と同様に保護されたであろうというものだけを救済しようというわけでございます。この対象にかかるのは、先ほど申した五名程度の重度のせき損患者だけということになるわけでございます。将来はこの九十二名を含め、どんな病気であろうと、職務上の傷病者で三年たってもなおらない者は全部なおるまで給付を延長することになるわけであります。
  151. 滝井義高

    ○滝井委員 従ってこの法律が通れば、経過的には三十年の七月二十九日以降のそういう重い者はかかる、同時に、この法律が通った後においては、せき損ばかりでなくて潜水病その他いわゆるじん肺に関連する部面、全部入るのですね。――わかりました。これで一体国庫負担が、一年間にどの程度支出されることになりますか。
  152. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 大体平年度化いたしますのが約九年くらいの後かというふうに私ども考えておりますが、その平年度化いたしました場合において増加いたします分が約五百五十万、それから三年を越えましても、なお療養給付いたします関係で、長期給付の方で減少いたします分がございますので、差引いたしますと、保険給付費の増加額というのは四百三十万程度でございます。国の負担は大体それの三分の一でほぼ百四十万前後かと思います。これは平年度化した場合でございます。
  153. 滝井義高

    ○滝井委員 わかりました。  それから条文だけちょっとお教え願いたいのは、三十一条の二項のところです。これがちょっとどうも私頭が悪くて意味がわからぬのですが、三十一条の一項では「職務外ノ事由ニ因ル同一ノ疾病又ハ負傷及之ニ因リ発シタル疾病ニ関スル療養ノ給付及傷病手当金ノ支給ハ療養ノ給付開始後三年ヲ経過シタルトキハ之ヲ為サズ」こうなっておるわけですね。そして旧条文の一号と二号とは削除するわけですね。そして削除して今度は二項に「職務外ノ事由ニ因ル同一ノ疾病又ハ負傷及之ニ因リ」云々と、ずっと同じことを書いておるわけですね。三十一条の一項と二項が、これはどうもわかりかねるのですが、ちょっと説明してくれませんか。
  154. 戸沢政方

    ○戸沢説明員 船員保険の規定は非常にわかりにくうございますが、この三十条の一項は、療養給付と傷病手当金が同時に支給され始めました者についての打ち切りの規定でございまして、二項の方はそうでなくて、傷病手当金を先に受けておりまして、医者にかかるほどではないが、休んでおってその間傷手を受けておった、それで後にやはり医者にかかる必要があるということで療養給付を受け始めたという者についての規定でございます。これは今度職務上の傷病につきましては、こういう療養給付あるいは傷病手当金の打ち切りの措置をやめる、必要がなくなりましたので、その部分を削除したという格好になっておるのであります。
  155. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、一項は療養の給付と傷病手当金があるわけですね。二項の方は療養の給付がないわけですね。傷病手当金だけです。そうすると、健康保険では、いつか私がここで問題にしたように、とにかく医者にかかっていないと傷病手当金はくれないわけですね。われわれの炭鉱言葉で言えば、医者に面着しなければいけないわけです。医者に行って薬をもらっておるという現実がないと傷病手当金をくれないが、船員保険では病気で休んでおればもう傷病手当金をくれるのだ、こういうことですね。私はいつかここで日雇いと健康保険との関係質問したのですが、日雇い健康保険については、日雇いの方に不公平だったんですね。ところがこちらはもっと寛大になってきておるわけですね。これはそういう意味ですか。
  156. 戸沢政方

    ○戸沢説明員 これは船員の特殊事情からいたしまして、港に着いて下船してから家に帰って初めてその療養給付を受けるというようなことも考えられますので、船員につきましては、療養給付と傷病手当金の支給というものを必ずしも同時に条件にはしていないのです。
  157. 滝井義高

    ○滝井委員 どうもここらあたりに日本の健康保険制度というもののばらばらな具体的なものが現われてきたわけですね。一項では療養の給付及び傷病手当金の支給がある。二項では傷病手当金だけである。しかしこれは三カ年間だけですよという規定で、三カ年以降はだめです。私病については、職務外のものについてはだめです、こういうことですが、どうも二項の規定が、療養の給付ということだけが落ちてあとは同じなのに、どうしてこれはこうなるのか、ちょっと普通の常識では私はわからなかったわけです。実は僕らもあまり船員保険法を勉強しておらなかったので全部ずっと読んでみたのですが、どうもここがわからなかったのですが、やっとわかりました。この船員保険のこれは非常にいいことですから、同時にこういうことは健康保険法にもやはり書く必要があると思うのですよ。たとえば結核で薬を飲まなくてもいいんだ、あなたは絶対安静にしておればよい、あるいは血圧が高い、薬は飲まなくても野菜を食べて十分睡眠をとって毎日便通に行くようにしてあと一週間安静にしておればいいといった場合でも、その労働者は医者に行かなければ、あるいは薬をもらっておらなければ傷病手当はもらえないというので、薬をやらなくてもいいものを、傷病手当金をとらせるためには無理やりに薬をやっておかなければならないという矛盾が出てきておる。これはやはり保険の乱費を来たす一つの原因にもなるわけですよ。だからやはりこういう船員保険法規定を健康保険法にも置くべきだと思います。健康保険法にはこういう規定はないでしょう。太宰さん、ないでしょう。傷病手当金は休んでおっても上げます、生活は保障しますよ、ゆっくり御養生なさいという規定はないと思いますよ。これは新発見ですよ。僕はそれだけえらくなった。今までこんな規定があることは実は夢にも知らなかったのです。だから私これはおかしいな、療養の給付というものを落して二度書いたのかと思って、これにインテロゲーション・マークをつけている、これで一つえらくなりました。  次は四十二条ノ三ですね。四十二条ノ三の旧条文で、「被保険者又ハ被保険者タリシ者が職務上ノ事由ニ因リ疾病又ハ負傷及之ニ因リ発シタル疾病ニ付療養ノ給付ヲ受ケタル日ヨリ起算シテ三年以内ニ死亡シタル際」のその「疾病又ハ負傷」云々から「三年以内ニ」までを削除しているわけですね。これは一体どういうことで削除するということになるのですか。
  158. 戸沢政方

    ○戸沢説明員 この規定はつまり遺族一時金について、従来遺族一時金は船員法の災害補償の規定によりまして、標準報酬月額の三十六カ月分ということになっておりますが、それを支給するのは療養給付を受けてから三年以内に死んだ場合だけでして、三年以降死んだ場合には出ない、三年目で傷害年金に切りかえられますから、それによる遺族給付が出るだけですが、それを今度職務上の傷病につきましてはなおるまで見るということにいたしましたので、期間制限を撤廃いたしまして、職務上の事由によって死んだ者につきましては、いつ死んでも三十六カ月分出すということによって、船員法による災害補償責任を完全にカバーしたということがいえると思います。     〔藤本委員長代理退席、永山委員長着席]
  159. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、労災法の方では三年以内で死んだら千二百日分ですよ。それから今度は三年以降にしても不治の病、せき損等については傷病手当金を出す、それから療養の給付を出しますから、四年目からなしくずしにずっと少なくなってくるでしょう。そして六年品目になったら――いわば九年ですね、三年と六年で九年目になりますと、百四十日になってしまうんですね。これは船員法もそういう工合になって逓減になっているんじゃなくて、船員法はいつ死んでも三十六カ月でしょう。そうなるのでしょう。
  160. 戸沢政方

    ○戸沢説明員 一時金につきましては、船員法の災害補償責任がもういかなる場合でも三十六カ月ということになっておりますので、これは時期のいかんにかかわらず、三十六カ月分を逓減するというようなことはせずに、まるまる支給するということになっています。
  161. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、ここも労災と違ってきたわけです。われわれはこれを主張した。せき損の患者がなおらなくて死んだ場合には、いつ死んでも千二百日分お出しなさいという主張をした。冷酷無情な自由民主党はそれをやらない。冷酷無情と言っても、ここにはだれもいらっしゃらない。ところが船員保険については同じ政府がこういう政策をとったわけです。これは一体どういうことですか。
  162. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 ただいまの四十二条の三は遺族一時金でございまして、遺族年金の支給を受ける人がない場合の規定でございますけれども、船員法においては遺族年金という額でこれを出しているわけでございます。そこで労災保険の方はお話のように遺族給付という形で、これは一時金でどんどん減って参りまして、足かけ九年目ですか、三プラス六年後には百四十日分、修正していただいてそうなっております。これはやはり陸上労働者と海上労働者との従来から特殊性と申しますか、船員保険においては陸上労働者の場合よりも手厚い扱いがされてきたということでございまして、これは今回の改正になる前からそういうふうになっている。その違いはやはり陸上労働者に比べて海上労働者にはそれだけの手厚い保護をしてやるだけの特殊性があるという認識のもとに、従来からそういうふうになってきたものと私どもは思うわけでございます。陸上の労働者が船員保険法に比べてなおかつ今回の改正後におきましても――大体似てきている面が多くなりましたが、なおこういう面においてはまだ劣っている面があるだろうと思います。これはやはり勤務の場所によるいろいろの労働条件その他による違いというふうに考えるべきであると存じます。
  163. 滝井義高

    ○滝井委員 陸上と海上との関係もありますが、これはいつ死んでも遺族のあるときは遺族年金を支給する、遺族なきときは三十六カ月をいつ死んでもあげますよ、こういう制度になっているわけです。特に三年というものを今度削除して、いつ死んでもあげます、こういう形は非常に進歩した面ですよ。船員保険のこの制度は、たまたま人数が少なかったからこういういい制度ができてきているし、陸上の労働者は人数が多いからといって――それはちょっとおかしいと思うのですよ。あなたの方に文句を言ってもしようがないから、労働省に来てもらわなければいかぬところなんです。労災保険法の一部を改正する法律と同じ趣旨のものが、こういうように非常に大きな開きを示すということは、同じ国会で、しかもあと続いて出てきた法律が前よりも非常によくなってきていることは非常に問題があると思う。私はむしろこれがほんとうだと思う。われわれはこういう主張をしたのです。遺族には遺族年金をやりなさい、それから死んだときにはいつ死んでもベタに一持金をやりなさいという主張をしたのですが、がんとして応じないのです。ところが船員保険ではこれをやっていらっしゃるということは、同じ政党内閣としてはちょっとシゾフレニィと申しますか、精神分裂をしている感じがするのです。あなたは頭を振っているのだけれども、三年というものを除外しているのですが、今まではあった。今度除外しているのですから、非常に船員保険は進歩したわけです。だから私は大賛成です。しからば同じ政府が、一般のものは一体どうしたのだということなんです。労働省と厚生省あるいは運輸省との間に、こういうことになりますと何も連絡がないのですよ。三者十分協議の上、法律を検討しております三言っているくせに、ちっとも協議の跡が見えない。そういう例はありませんと言って通しましたけれども、船員保険には出てきた。だから私は労災法を通すまでにこれを出しなさいということを言ったのはそのためなんですよ。急行列車が出たあとに列車が入ってきたから間に合わないのですよ。どうも私が疑問に思った点は、やはりなかなか問題があるところですね。  それからもう一つ、今度は四十二条ノ三の三項ですね。この四十二条ノ三の三項をちょっと読んでみます。「第一項ノ場合ニ於テ職務上ノ事由ニ由ル癈疾ト為りタルニ因リ障害年金ノ支給ヲ受クル者ニ関シナハ其ノ者ガ既ニ支給ヲ受ケタル障害年金ノ総額ガ障害年金ノ六年分ニ相当スル金額ニ満タザル場合ニ於テ其ノ差額が第一項又ハ前項ノ金額ヲ超ユルトキハ其ノ超ユル部分ノ金額ニ相当スル金額ヲ第一項又ハ前項ノ金額ニ加ヘテ其ノ遺族ニ支給ス」ということになっておるわけですが、この意味体です。特にここに六年というものが出てきたわけですね。障害年金というものは、打ち切りのときには、普通の年金では打ち切り補償をもらうと、障害年金は六カ年問はもらえないことになっていたわけですね。そこに六年ということがあるのですが、六年という概念が一般の労災保険や厚生年金なんかにはあるわけですが、この場合の何かごちゃごちゃ書いてあるのがどうもよく意味がわからぬのです。しろうとわかりのするように御説明願いたいと思う。
  164. 戸沢政方

    ○戸沢説明員 これは船員法の九十二条で障害手当の規定がございます。障害の程度に応じまして一級から十四級まで別表できめられております。金額的にいうと、四十八月分から二カ月分まで障害手当金として一時金でもって支給するという災害補償責任が課せられているわけです。それでこれを船員保険法で肩がわりして給付する場合には、一級から六級までこれを年金で支給しておりますが、これがちょうど六年間支給することによって船員法による障害手当の額に達するというように作ってあります。つまり逆にいって船員保険法の障害年金の額を六倍しますと船員法の九十二条による障害手当の額になるわけであります。  それでこの四十二条ノ三の三項は、そういうふうに船員法で船主責任とされておる障害手当の額だけはこれを補償してやろうという趣旨からしまして、その六年分、つまり船員法による障害手当の額を全部受け終わらないうちに死んだという者があれば、その差額はこれを遺族金にプラスして支給してやろう、船員法による障害手当分だけは死んだ者についてもまるまるこれを補償してやろうという趣旨でございます。
  165. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、四十二条ノ三の一項との関係はどうなるのですか。一項では三年を過ぎて死亡をしても、いつでも一時金を三十六カ月上げます、こうなっておるわけでしょう。だから障害年金をもらっておっても三十六カ月くれということになるのですが、「第一項ノ場合ニ於テ」云々ということがあるのですけれども、どうもちょっと意味がわかりかねるのです。
  166. 戸沢政方

    ○戸沢説明員 どうも規定のあり場所が必ずしも適当でないのかもしれませんが、四十二条ノ三の一項の方は、あくまで遺族一時金、つまり本来の遺族年金を受給する資格者がないという場合に、それ以外の者に一時金として三十六月分を支給するということでありまして、三項の方はそうでなくて、障害年金の支給を受ける者、つまり正規の受給資格者であって、障害年金を受けておったが、まるまるもらい切らないうちに死んでしまったという場合に、その遺族に差額を支給しようというわけでありまして、対象が正規の受給資格者とそうでない者と違うわけであります。
  167. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、その場合には船員法九十二条の障害手当と、船員保険法の六倍したものとの差額をもらった上に、さらに遺族年金を今度もらう、こういうことになるわけですね。
  168. 戸沢政方

    ○戸沢説明員 それは遺族一時金をもらう者についてだけでありまして、遺族年金の受給者は別途五月分遺族年金をもらうわけであります。
  169. 滝井義高

    ○滝井委員 三項の「第一項ノ場合ニ於テ」というのは、三十六カ月もらう者と、遺族年金の支給を受ける者と二つあるわけですね。だから遺族年金の支給を受けるという人もあるし、年金の支給を受けない者についてはというのは、遺族がないから一時金がいく、こういう二本建になっておるわけでしょう。そうすると一時金と障害年金とは別個の建前ですから、この三項は障害年金のことを書いておるわけですから一時金を遺族年金とは別個のものではないのでしょうか。だから障害年金と遺族年金が併給になるかどうかという質問を私はしているのです。
  170. 戸沢政方

    ○戸沢説明員 障害年金と遺族年金が併給になるということはあり得ないわけです。
  171. 滝井義高

    ○滝井委員 これをもらってない分だけが併給になるかというのです。
  172. 戸沢政方

    ○戸沢説明員 障害年金についてはそういうことはないわけでして、この三項は傷害年金の六年分という額が、たとえば四十月分になったというものについては、三十六月分との差額四月分を付加してやろう、トータル四十月になるわけでして、三十六月分より低いものがあれば、それは三十六月分だけ支給するということになります。
  173. 滝井義高

    ○滝井委員 いや、こういうことになるでしょう。廃疾の認定を受けると障害年金をもらうわけです。障害年金を受けておった者が死んで遺族がなければ一時金がくる、遺族があればこの者には遺族年金がくるわけです。そのときに、この条文からいくと、障害年金をもらっておった人が六年以内に死んだときは、その障害年金の差額と申しますか、船員法の九十二条と船員保険法の手当の六倍したものとの差額が障害年金としてこなければならないことになる。だからその場合に、遺族年金もくるし、その差額の傷害年金も別途くるかということですよ。
  174. 戸沢政方

    ○戸沢説明員 そういう場合は差額支給はしないわけです。障害年金受給者が三年以内に死んだという場合には、遺族年金は五月分という非常に厚い遺族年金がいきますので、そういう差額を付加するというようなことはしないわけでして、あくまでこれは遺族一時金の場合だけであります。
  175. 滝井義高

    ○滝井委員 どうもこの条文は、私はそう読めないのですがね。四十二条ノ三の三項は、どうも一時金だけの場合とは読めない感じがするのですが、五カ月分は五十条ノ二ですか、これは遺族年金のところにあるからわかるのですが、まあこれは私ももう少上研究してみましょう。  どうも船員保険は、なかなかその条文がむずかしくてわかりにくいのです。しかもこれは昭和十四年か何かにできて、片かなになっておって――日本では船員保険と健康保険ですか、片かなになって、古い法律なんですね。条文の書き方も非近代的ですよ。しかし内容は労災その他よりよくなったわけですから、近代的な内容は持っておるわけです。でき得べくんば、船員保険なり健康保険については、この片かなによってできておる条文を、もう少し読みやすいように平がなに直して、一ぺん全面的な改正をやってもらいたいですな。そうしないと、これは非常に読みにくいです。今あなたのおっしゃるように、どうもわれわれ頭にはち巻を締めて読んでみるけれども、なかなかわからないところが多いのですね。この船員保険は提案理由説明は平がなで書いて、しかし今度法案の内容になったら、実に難解な片かなになっておるということでは、やはり問題があると思いますから、一つ近いうちに一応全面的な検討をやって、改正をやってもらいたいと思います。  これでやめますが、運輸省の方がおいでになっておりますから、今回船員保険法の一部を改正する法律が、じん肺法なり労災法の改正と関連をして出て参ったのですが、運輸省の方でもこの改正には関与されたわけですか。
  176. 今成秀三郎

    ○今成説明員 御相談を受けております。
  177. 滝井義高

    ○滝井委員 そうなりますと、船員の場合では、三年間せき損ならせき損で治療を受けますね。そうしますと、陸上の労務者は、もう一年たてばあとは解雇になったのですね。われわれは、そういう業務上の障害で一生不治になった者は解雇すべきでないだろう、少なくとも六カ年間は……。というのは、打ち切り補償になったら、六カ年分だけのお金を千二百日分やりますから、六カ年間は解雇しないがいいというのが、われわれの主張だったわけです。船員法でもあるいは船員保険法でも、三年間治療をしてなおらない者については解雇をするという明文がないわけです。これが、この改正の後においては一体どういうことになるだろうかという質問なんですが、解雇制限というものがついていくのか、それとも三年すればやはり解雇されることになるのかということなんです。
  178. 今成秀三郎

    ○今成説明員 その問題は船員法第四十条の問題であろうかと思うのでありますが、船員法第四十条の第五号に、「船員が負傷又は疾病のため職務に堪えないとき。」、あるいは第六号の「前各号の場合を除いて、やむを得ない事由のあるとき。」と、第五号ないし第六号による解除ということは、一応法律上ではできる形に現在はなっております。
  179. 滝井義高

    ○滝井委員 「職務に堪えないとき」とか「やむを得ない事由」というのは、何年で切りなさいというように、期限は切っていないわけですね。労働基準法、労災その他は、雇用期間は三年ですぞと、きちんとこうなっておるわけですね。三年以降になれば、事業主は解雇制限から免れる。解雇してもよろしいのである、こうなっておるのですが、船員法の関係では、今言ったような抽象的な言葉しかないわけです。
  180. 今成秀三郎

    ○今成説明員 御質問は、現行法のことじゃなくて、何かそういう改正の意図ありやということでございましょうか。
  181. 滝井義高

    ○滝井委員 具体的に例をとって申しますと、今までは脊髄損傷になりますと、三年間治療してなおらないと、これは廃疾の認定を行なったわけですね。そして大体解雇というのが、陸上労務者では常識として行なわれてきたわけです。ところが今度の船員保険法では、三年たっても、病気がなおっていなければ廃疾の認定をしないわけです。そうして傷病手当金をあげ、療養の給付をして、なおるまで待つわけですね。なおれば、そのときに初めて廃疾の認定を行なう、こういう形になってきた。今までと建前が変わってきたわけです。従ってそういう建前の変わり方をしたならば、今までは三年で首を切っておったのが、今度はなおるまでは廃疾の認定をしないのですから、首を切らずにずっといってもいいんじゃないか、こういう主張をしておるわけです。特に船員法その他においては、三年したら首を切りますぞという規定はない。しかし、今あなたの言われたように、四十条の五号と六号に、「職務に堪えないとき」とか、その他「やむを得ない」とかいうふうな理由はあります。それでおそらく今までは、三年か何か知らぬけれども、三年以内で切っておったんでしょう。その条文はあるけれども、今度の改正の重要な点では廃疾にしないということになったんだから、「やむを得ない事由」とかなんとか言わずに、延ばしてみたらどうか。解雇制限を六年なら六年と――三年間は解雇制限がある。今度、死んだら三十六カ月分一時金をやりますが、労働基準法では、打ち切り補償をやったときは千二百日分の金を払いますがね、それは六年分のお金ですよという計算になっておるわけです。従って三百年、六年の、九年は解雇をしてはいかぬのじゃないかということを私は理論的に言っておるわけです。この船員法でそういうことはできないものか。
  182. 今成秀三郎

    ○今成説明員 現在のところ、現行法では建前としては、こういうように職務に耐え得ないときとか、やむを得ない事由のあるときとかいう場合には、一応首が切れるということになっておりますけれども、実際問題といたしまして、職務上でそのような病気になりました場合には、各自労働協約その他によって首を切らないようにやっておる例が多いわけであります。ただ船舶という特殊な作業場におきましては、廃疾の認定はなくとも疾病のため職務に耐え得ない者を乗せておることは、やはり陸上の場合と違う事情があって非常に困難な場合がありますので、法文で明確に三年間首を切ってはならないということを書けるかどうか、その点は考えてみないとわからないのじゃないかと思います。
  183. 滝井義高

    ○滝井委員 今は三年以内の者は首を切らないのでしょう。
  184. 今成秀三郎

    ○今成説明員 今船員法はそういう建前にはなっておりません。
  185. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、これはまただいぶ厚生省の言っておったことと違ってくるですよ。三年以内は、私は労働基準法がありますから首を切らないと思っておったのです。船員ではそれを首切ってもいいのですか。
  186. 今成秀三郎

    ○今成説明員 現実の協約の問題としまして、そういう労働協約を結んで首を切らないようにしているということを厚生省の保険課長は御説明になったのだろうと思います。
  187. 滝井義高

    ○滝井委員 三年以上はですよ。
  188. 今成秀三郎

    ○今成説明員 いや、三年以内は首を切らないように、そういう措置をとっておる。ただ法律上それが保障されておるわけじゃないということを今御説明申し上げたのであります。
  189. 滝井義高

    ○滝井委員 それじゃ、労働基準法違反の労働協約を結んでいいわけじゃないわけですから、三年以内は首を切ってはいかぬということは労働基準法の――基準法というのは船員であろうと何であろうと適用するのじゃないのですか、適用しないのですか。
  190. 今成秀三郎

    ○今成説明員 船員は労働基準法の適用除外になっておる。船員法が適用になっている……。
  191. 滝井義高

    ○滝井委員 それでどうもわれわれの常識とあなた方と議論が食い違うと思った。そうすると船員は三年以内でも、せき損その他があった場合には労務不能、職務に耐え得ないということで首切ってもいいことになっていますか、それは船員法のどの条文ですか。
  192. 今成秀三郎

    ○今成説明員 船員法の第四十条でございます。
  193. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、この四十条というものは業務上であろうと業務外であろうと適用していくわけですか。
  194. 今成秀三郎

    ○今成説明員 その負傷または疾病が業務上であろうと業務外であろうと、適用されるわけでございます。
  195. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、結局それを防止するには、厚生省がさいぜん説明をしておりましたが、労働協約か何かで三年までは確保するということをしておるというような意味のことをちょっと言っておったのですが、それはそういうことで労働協約ではやっておるわけですか。
  196. 今成秀三郎

    ○今成説明員 そういうことでございます。なお申し上げますと、船員法では雇い入れ契約という特殊な形態でございまして、つまり乗船から下船までの期間を雇い入れ契約期間と申すのであります。それから、下船いたしまてから後、予備員にして首を切らないということは、協約上行なっておるわけでございまして、先ほど申し上げましたように、船員法の特殊性といたまして、乗船期間中の労働の保護が前面に出ておるわけでございます。その意味におきまして、船舶という特殊な作業場におきまして負傷して職務に耐え得ない方をいつまでも乗せておくということは、これは船舶の運航上も差しつかえるという事態が起きるのでありまして、そういう特殊性があるのであります。
  197. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、その下船したときの予備員という形態は、これは雇用契約はあるわけで、やはり雇用されておるということには変わりないのですか。
  198. 今成秀三郎

    ○今成説明員 さようでございます。
  199. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、その場合の予備員のことを書いた規定はどこにありますか。そうして保険料の標準報酬その他との関係というものは、船員保険法ではどういう工合になってくるのですか。
  200. 今成秀三郎

    ○今成説明員 予備員の規定は船員法第百十八条に、三十一条から三十四条まで、それから八十四条二項及び百条の規定は「予備員の雇よう契約にこれを準用する。」とあります。この部分において予備員は保護されておるわけでございます。
  201. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、この百十八条で「予備員の雇よう契約にこれを準用する。」ということは、その準用する規定は、三十一条は法律違反に関する契約、三十四条は強制貯金の禁止、八十四条は未成年者の能力の問題ですね。それから百条は就業規則の効力ですね。だから、この就業規則なんてものは、働いていないわけですから、そうしますとその場合は当然給料が違ってくるわけでしょう、予備員になりますれば船に乗っていないわけですから、下船しているわけですから。
  202. 今成秀三郎

    ○今成説明員 法律上は別に書いてありませんが、船に乗っておりませんから、給料は、乗船手当とかそのほかのものが削除されますから、本給だけになりまして、その部分だけ低くなると思います。
  203. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、これで船員保険法の標準報酬の算定というものが、予備員になった場合と乗船をしておる場合と、絶えず変動してくるわけですね。標準報酬というものは定められなくなってしまうんじゃないですか。それは一体どういう工合に把握するのですか。
  204. 戸沢政方

    ○戸沢説明員 船員保険法におきましては、船員保険法の十七条で、船員保険の強制被保険者としまして「船員法第一条ニ規定スル船員トシテ船舶所有者ニ使用セラルル者ハ船員保険ノ被保険者」となっておりますので、明らかに船員法第一条に規定され、しかもその船舶所有者に使用せられるということが船員法の一条ないし二条から出てきますから、当然に予備員も被保険者として扱っております。その標準報酬の認定等は確かに一般の乗組船員とは実態は違うわけでありますけれども、その実態に応じて認定をしているわけでありまして、この予備員というのは今のところ大型汽船でございますから、その給与の実態も比較的つかむことも容易でございますので、特に予備員だからといって支障を来たしておるというようなことはございません。
  205. 滝井義高

    ○滝井委員 この船員というのは、船長と海員と予備員と、これだけあるわけですね。その予備員というのは「船舶に乗り組むため雇ようされている者で船内で使用されていないもの」こうなっておりますね。従って今度給料のところを見ると、固定給というものはあるわけです。標準報酬というものは固定給ではいかぬですね。現物給与をされれば現物給が含まれてくるし、それから下宿等を提供すれば畳一枚百円とか二百円とかいって、その畳の枚数でやるわけですね、標準報酬というものは。従ってこれは船に乗らない間には、家に帰る人もいるし、家に帰らなくて、船員会社の寮か何かにいる人もあるわけです。だからこれは非常にまちまちで、あなたの言うように、どうも僕はそういうことでちょっと疑問が出てきたんですが、どういうように一体標準報酬を把握するか、これは標準報酬によってあとの遺族年金とかいろいろなものの基礎になってくるわけですね。平均賃金の基礎になるわけですから……。そこらあたりの把握の仕方はどういう工合におやりになっているのか。
  206. 戸沢政方

    ○戸沢説明員 標準報酬にどういうものを認定の対象として入れるかということは、一般的、抽象的には船員保険法の三条にきまっておりまして、固定された賃金、給料、俸給、手当、賞与、そういったものが標準報酬の中に入り、臨時給与的なものは除外するというようなことになっております。それに基づきまして、さらにその標準報酬の算定についての方法が第四条の二にこまかい規定がまたございますが、そういう規定に基づきましてさらに告示でもってその標準報酬月額の算定方法というものをきめておりまして、予備員の場合にはどういう給与をとるとか、予備員のない船舶所有者についてはどういうものを対象にするとかいう一定の算出方法、様式をきめて計算しておるわけでございます。
  207. 滝井義高

    ○滝井委員 傷病手当金に関連する標準報酬の月額の算定の仕方その他、私も少し勉強したことがありますけれども、悲しいかな船員法については勉強しておりませんから、なお私もこの予備員その他については勉強不足でございますから、一応私もなお勉強をしてみたいと思います。  そこでこの船員保険法の対象になるものは、総トン数が五トン未満の船舶、それから湖、川または港のみを航行する船舶、総トン数三十トン未満の漁船、これは除くわけです。政府としてはこれらの零細な漁船等における業務上の疾病、負傷、こういうものの救済というものはどういうようにお考えになっておりますか。健康保険における五人未満の事業所は健康保険には加入しておりませんが、これは漁船その他こういう小さな船の特殊性と申しますか、そう莫大な数ではないと思うのです。こういういわゆる具体的な仕事に当たっている船というものは莫大な数でもないと思うし、脊髄損傷その他もそう多い数でもないのですが、これらの救済ですね。一般のものについては労災の適用がなかった。そうすると、今から私は一人のせき損患者を持ちましたから加入いたしますと言って、その分のお金を払い込めば、これを見てくれることになるわけですね。そういう措置が今度の改正によってとられますか。
  208. 戸沢政方

    ○戸沢説明員 船員保険で保護しますのは、給付しますのは、船員法第一条の規定する船員だけでございましてその他の者は労働基準法と労災法の適用を受けまして、労災法によって災害補償が保障されるという格好になっておりまして、この点は今度の改正後も同様でございます。
  209. 滝井義高

    ○滝井委員 だから私はそこに問題があると思うのです。海上労務者は陸上労務者とは特殊性があるんだということで、今まで違った形を答弁されてきた。ところが同じ海上労務者でも、あるいは海上の船舶に従事をしている、乗っている人たちは、五トン未満になると、基準法と労災法にいきなさい、それ以上のものは別ですよということがおかしいと思うのですよ。やはり私はこういう三十トン未満の漁船とか五トン未満の船舶というようなものについても、こちらの方がいいのですからこちらを準用すべきではないかと思うのですよ。その方だけは労働基準法とか労災法に追いやるというのはどうも筋が通らない。それならば全部の者にまず労働基準法なり労災法を適用して、そうしてそれよりいい部分について船員のものをやるというふうに、何か法律を一本にして、その上にプラス・アルファーを船員につけていく、こういう形をとるなら話がわかる。ところが全然労災その他とは無関係な形で船員法を作りあるいは船員保険法をお作りになっておって、そうして同じ範疇に属する五トン未満の船舶とか三十トン未満の漁船については労災と基準法でおいでなさいということは、どうも解せないところがあるのですが、こういう点について、一体船員法の所管の運輸省としてはどういうことですか。
  210. 今成秀三郎

    ○今成説明員 労働基準法と船員法の適用の範囲の問題は、いつも問題になるのでございますけれども、どこかで線を切りませんと、間にブランクができて保護されないので、どこかに線を引かなければならないと存じます。その場合船員法の適用船員をどれくらい以上の船にするかということはいつも問題になり、新しい議論として論ぜられているのでありますけれども、問題は船員法が労働基準法と別にできました根本から申し上げますと、やはり海上遠く家を離れて、職場即住居という特殊な労働条件のもとに働く船員を保護する労働保護法は、陸上の労働基準法とは異なる点が多々あるというところに、船員法が基準法から独立して作られたゆえんのものがあるわけでございます。従いまして船と名がつけば、たとい一トンの船でも、あるいは湖水に浮かぶボートでもというわけにはいかないのでございます。やはりそこに海上遠く離れて船員らしい生活をしておる、これを俗の言葉で言いますと、塩けがあるかないかというところに切れ目をつけているわけであります。現行法としては一応塩けをもって境目ということにしておるわけでございます。
  211. 滝井義高

    ○滝井委員 よくわかりました。ただしかし問題は、同じ船舶従事者がトン数が少ないからといって、一方は基準法に行く、一方は船員法に行くということはどうもちょっと解せないところがあるわけです。塩けだけと言いますが、小さい船に乗る者でも大きい船に乗ることもあるわけで、そうするとこれはすぐ厚生年金の問題なんかになってくるわけです。そうすると三十トン未満とか五トン未満は国民年金に加入する、そうして今度はたまたま大きな船に乗り始めると厚生年金になるということで、どうも制度としてまずいところがあるのですよ。だから、大は小をかねるので、大きいのはいい。小は大をかねることはできないということもあるかもしれません。それを別な言葉で言い表わせば、塩けがあるかないかということになるのだろうと思いますけれども、やはり問題を系統的に片づけていくとすれば、やはり小さい船でも一応何か船員法の例外的なもので救っていく方がいいのではないかと思うのです。それならば脊髄損傷は労災法でもいいのですよ。ちっとも救えないことはない。病気そのものをとらえていけば、脊髄損傷という病気は、陸で起こったって海で起こったって、脊髄損傷であることには変わりはない。それはかつて船員であった者であろうと、炭鉱労働者であった者であろうと、石灰山の労働者であった者であろうと、脊髄損傷の労働者であることは同じで、そういう点でやはりとらえ方をどういう工合にとらえるかということは、その見方々々によっていろいろ違ってきますけれども、同じ海のかおり水のかおりをかいで仕事をしている者を一つのグループに集めるという方針なら、私はやはりこの五人未満というものも健康保険に将来入れなければならないと同様に、五トン、三十トン未満の船舶なり漁船も船員法の方に方向としては持っていくべきではないかという感じがするのです。ここらあたりも今後われわれが社会保障を体系的に整備する上において一つの問題として残っている。そうでないと、この人たちは海の仕事をしている、川の仕事をしている、湖の仕事をしているにかかわらず陸上の人と同じような適用を受け、一方は海の適用を受けるということで、どうも納得がいかない点が出てくると思うのです。  あまりくだらぬ質問を長くしておってもしようがありませんから、これでやめますが、ぜひ一つ船員保険法をわかりやすく抜本的に近く改正をしてもらいたいと思います。政務次官どうでしょうか。かたかなで書いてあって読みにくく、船員保険の改正はずいぶん早くからやれやれと言われておったが、じんぜん延びているので、こういう改正が行なわれたときに、むしろ思い切って全般的な改正をやる方がいいと思うのですがね。
  212. 内藤隆

    内藤(隆)政府委員 仰せのごとくかたかなの文章で、内容等にも検討を加えなければならないものが多々あると思いますので、一つ慎重に検討してみたい、かように考えます。
  213. 滝井義高

    ○滝井委員 検討ばかりではなくて、ほんとうに一つ実践をしてもらいたいと思います。
  214. 永山忠則

    永山委員長 八木一男君。
  215. 八木一男

    ○八木(一男)委員 時間もだいぶ過ぎましたので、滝井委員とあまりダブらないような点で御質問を申し上げたいと思います。船員保険法の今度の一部改正案についての質問でございます。いろいろと船員保険の改正案理由について言われておりますが、要するに陸上の方のじん肺その他の法律改正に合わせての船員保険法改正案が出されたというようなことだと存じますが、それでよろしゅうございますか。内藤政務次官から一つ……。
  216. 内藤隆

    内藤(隆)政府委員 大体においてさようなことでございます。
  217. 八木一男

    ○八木(一男)委員 そういうような点から考えますと、陸上のけい肺とかせき損の患者と同じように、やはり海員の関係のそういう患者も扱わなければならないというような考え方が底流としてあって、こういうものを出されたと思いますが、それについて内藤さんから御答え願いたい。
  218. 内藤隆

    内藤(隆)政府委員 大体においてさようなことでございます。
  219. 八木一男

    ○八木(一男)委員 そういうことでなければならないと思います。当然厚生省もそういうふうに考えておられると思いますが、実態においてそうではない点が多々ございますので、その実態をそうでない方に合わせていただかなければならないと思うわけであります。というのは、海員関係ではけい肺はほとんどなく、せき損患者がありまして、陸上の方にもせき損患者がございますが、陸上の方のせき損患者は労災病院とか、せき損に特に経験の深いお医者さんがいる、そういう設備の整っているような病院で、非常に不幸な状態でありますけれども、できるだけ早く回復できるようにいろいろの医療が施されております。また回復がなかなかできない人でも、院内でいろいろの適切な措置が行なわれているわけです。そういう点で、労災病院はかなりよくいっておるわけでございますが、この海上の労働者である船員のせき損患者が陸上の労災病院に入れてもらえないという実態があるわけであります。それにつきましてどのようにお考えか、これは大局的な立場でございまするから、大臣のかわりに政務次官からぜひ伺いたいと思います。
  220. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 それでは便宜私から……。お尋ねのように現状で申しますれば、先ほど滝井委員の御質問にもお答えいたしまして、お聞きの通り、陸上についてはああいう特別保護立法があり、それの給付という形で労災病院などにおいて保護が行なわれている。それで船員につきましては、現状は大体そういう方々は傷害年金を支給する、そしてあとはいわゆる福祉施設としてそれぞれ船員保険病院なりでもって手当を加えていく。現状からいいますると、労災保険病院などの手当に比べますると、これは必ずしもそれと匹敵するほどのものであるとも私どもは思いません。まだ十分でないと思います。しかし今後こういうふうにして新たに改正をお願いして、もしこれが通りまするならば、給付がずっとそのまま継続して行なわれる、この場合におきましてもやはり私どもとしては、できるだけその内容が特別なそういう方たちですから、普通の疾病と多少違う面があるだろうと思います。そういう面については、私どももできるだけ手当を加えていきたい、かように考えております。
  221. 八木一男

    ○八木(一男)委員 特に内藤さんにしっかりお聞きを願いたいのです。局長にもしっかりお聞きを願いたいのですけれども、こういうことは結局厚生省がほんとうに決心すれば解決がすぐできる問題を含んでおりますので、ただ委員会の普通の法律の対峙したような問題じゃなしに、解決のつく問題ですので、しっかり聞いておいていただきたいと思います。今局長さんのお話だと、どんどんよくしていきたい。よくするのはあたりまえで、それはいいと思いますが、具体的な問題がないと思うのです。陸上のせき損患者にはそういうような専門の病院があって、専門の施設があって、ちゃんといろいろのいい治療をやっているわけです。早く自立できる人もいれば、またそこにいる人も同じような状態で、励まし合って、環境もいいわけです。同じようなせき損の人がいる、そこに海上の労働者であるからといって入れない、労災と法律関係が違うとか、いろいろなことで入れないということではいけないと思います。そういうことをまとめてやって、海上の労働者のせき損患者の非常に気の毒な人たちが実際早く自立できるように、またその自立できるまでの間も同じような病気の人が励まし合って、同じような環境でありますから、歩けないというようなことも恥ずかしいこともない、それから介護されてふろに入るのも恥ずかしいことじゃないというような状態に置いてあげるのが、当然だと思うのです。それがいろいろなこういう妙な法律の運用、妙な各省のセクショナリズムというようなことで行なわれてないということはよくないと思います。そういうことは打破して行なわれるようにしていただかなければならないと思いますが、大局的な立場で、一つ大臣の代理として内藤政務次官から伺いたいと思います。
  222. 内藤隆

    内藤(隆)政府委員 その通りと私は思います。各省のそういうセクショナリズムあるいはまた法の建前上から、そういう病人が一緒に慰め合うような機会のないようなことは、これはもうあってはならないと思います。御趣旨に沿うように進めていきたい、かように考えております。
  223. 八木一男

    ○八木(一男)委員 現在労災病院に入れてもらえないということは、どういうところから起こっているとお考えでございますか。
  224. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 現在福祉施設費でやっておりますので、その点で必ずしも今の労災病院に入れるということが、予算関係もありまして十分にいかぬ点もあると思います。これからの問題としては、これはただいま政務次官から答弁申し上げましたように、そういう労災病院などとも契約して、そういうふうに入れてもらえるならそれもいいでしょうし、またその他のことも、今までより手厚い手当をぜひやっていきたい。同時にその人たちが、ただ手厚い手当、看護という中に、ひとりぽっちでぽつんとおったんではあれでしょうから、同じような人たちが慰め合うということも大事なことだと思います。そういう点も含めて、手厚い保護を加えるということを、私どもの方でも考えて参りたいと思います。
  225. 八木一男

    ○八木(一男)委員 今労働省の方のせき損患者の場合には、食事が一日について三千カロリー、それからつき添い看護は、患者三人について一人というふうになっております。海員関係では違うわけです。このように三千カロリーになっている、三人につき一人のつき添い看護がついているという理由は、どういう理由からそういうふうに労働省の方でなさっておられるか。同じようなケースですから、厚生省として当然理解しておられると思いますが、どういう理由からそうなっているとお考えでございましょうか。
  226. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 これはちょっと詳しく存じませんので、労働省の方に聞きましてお答え申し上げます。
  227. 八木一男

    ○八木(一男)委員 普通の傷病と違ってそれだけにしておりますのは、再生の場合に、歩行の練習をするために非常に体力を要するわけです。そういうことで、二千四百カロリーを三千カロリーと計算したわけです。そうでないと再生ができないわけです。これは内藤さん、よく聞いておいていただきたいのです。ただ安静にしてなおるとか、そういう病気と違って、せき損ですから、手でいろいろなものを動かしたり、それからからだを動かす練習をしなければならないから、相当そういうことは要るわけです。それで三千カロリーという計算になっている。それからつき添いが三人に一人という、割合につき添いの率がいいのは、これは下半身が全部つぶれておりますから歩行ができません。ですからほんとうに看護するには、それだけの人数がいなければ、ほんとうの看護ができないということになる。そういうことを考えておられるのは当然いいことだと思うのです。特にこういう問題は、厚生省が特に熱心になられなければならない問題です。偶然に労災の方、労働省の方の関係ではあるけれども、こういうような人が早くなおるように、それから療養中に少しでも十分な治療とか看護が受けられるようにということは、当然厚生省がまっ先に考えなければならぬ。そういう意味で、労働省関係の問題よりも厚生省の法律関係である海上の労働者がおくれているというのは、これは非常にいけない問題だと思うのです。これは即時直される必要があると思います。これは政務次官から一つお答えを願いたい。
  228. 内藤隆

    内藤(隆)政府委員 御期待に沿うようにやって参りたいと思います。
  229. 八木一男

    ○八木(一男)委員 内藤政務次官の、御期待に沿うようにということでございます。これは医療内容のことですから、法改正をしなくても行政的にできるのです。法律は変えなくてもできることです。ですから即時にそういうことをやっていただけるという御返事をいただきたい。これは渡邊さんにきょうぜひ出ていただきたかったのですけれども、渡邊さんは御病気という話です。内藤政務次官に、さっき最初に大臣のかわりに積極的な御返事を願いた  いと申し上げたのは、一つはこれなんです。そういうことで、これは内藤さんのほんとうにこういうことに対する熱情と政治力をもってすれば、できるとお答えになってもいささかも問題はございません。対象のせき損患者の人数は、そう多いものじゃございません、非常に少ないものです。これは今局長と御相談になってけっこうですけれども、たとえば六月からすぐ実行するというようなお答えをぜひいただきたいと思います。
  230. 内藤隆

    内藤(隆)政府委員 すぐできることであるとすれば、準備が整い次第すぐ実行に移したい、かように考えます。
  231. 八木一男

    ○八木(一男)委員 すぐできることであるとしたならばという前提がちょっと困るのです。これは行政措置ですから、厚生省が決心なさればすぐできるのです。ブレーキをかける者はない。大臣や政務次官や局長が決心なさればできる。だから、するという意思表示をすれば――準備には一週間や半月ぐらいは要るかもしれません。しかし、するという決心をなさればブレーキをかける者はないはずなんです。ですから、するという御返事をぜひいただきたい。
  232. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 八木委員と私どもの考えはこの点に関しては別に変わってないので、私どもも法律を通していただけばできるだけ早くそうしたいと思います。しかしながらたとえば看護婦の問題にいたしましても、従来普通の病院でありますと三人に一人というわけに看護婦は置いておりません。従いましてこういう特別なものは看護婦を雇い入れるとか、それからそういう人たちに対する特別な訓練といいますか、グルントはできていると思いますけれども、そういうような準備は、私はこれは御了承いただけると思います。そういうことをできるだけ急ぎまして、そして実施する、こういうことを政務次官からお答えいただいたつもりでございます。お考えとは全然変わりはないというふうに御了承いただいていいと思います。
  233. 八木一男

    ○八木(一男)委員 政務次官、今局長の御陵弁の通りでございますね。
  234. 内藤隆

    内藤(隆)政府委員 その通りであります。
  235. 八木一男

    ○八木(一男)委員 今の三千カロリー、それから三人に一人という陸上のせき損患者に与えられたる治療とか看護とかそういうものと同じようにしていただく、それは普通の海員の入る病院でそうなさるのも当然でありますが、また一般の労災病院にそういうことで入れる道を至急に開くことを実現していただくということを確認してよろしゅうございますね。――首を縦に振られたと同時に、その点について……。
  236. 内藤隆

    内藤(隆)政府委員 よろしゅうございます。
  237. 八木一男

    ○八木(一男)委員 どうもありがとうございました。  それでは時間もありませんから次の問題に移りますが、運輸省の船員局長来ておられますか。――あとから出た方の船員保険法の一部改正案について、社会保障制度審議会に諮問をせられましたときに、答申が出ておりますが、その一番最後に――今見つかりませんけれども、厚生省は十分御存じでございまして、船員保険の一部負担について検討しなければならぬという文言がついているわけです。そこで厚生省の方も運輸省の方もよく聞いていただきたいのですが、この船員保険法の一部改正案、本国会に二つ出ましたあとの方のものは、陸上の方のじん肺法に関連して出た問題でありまして、ですから普通の一部負担の問題の内容とは違うわけです。違うのにかかわらず、その問題のときに、一部負担についての問題がある、至急に検討して解決しなければいかぬという諮問の答申が出たところに非常に重大性があるということを厚生省も運輸省もお考えを願いたい。この問題については昭和二十九年でございましたか、健康保険法の一部改悪案が通りましたときに、船員保険法もその改悪案が通った。そのときに大問題になって、一部負担というのは健康保険法の方の一番焦点の大問題である。ところが船員保険ではその一部負担は特に問題が別であってけしからぬという問題になって、ただ健康保険法にならって出てしまったので動きがつかぬから通ってしまったけれども、これは大問題であるということで、参議院の社会労働委員会では、それは直さなければいかぬという附帯決議がつき、またしばしば運輸大臣厚生大臣もそういうことについて、それはいかぬから、そういう点については一部負担の不合理な点を改めなければいかぬというような意思表示があったわけです。特に運輸大臣はそういうことが多かった。そういうことで、運輸省としてはそういうことは特に十分おわかりのはずなのに、今まで船員保険法の一部負担が非常に不合理であるということを直す措置を数年間怠っておられたのは非常に怠慢だと思う。それについて今どのように考えておられるか、この怠慢を償うために即刻にでも、今国会これから追いかけてもけっこうですから、その点を直すことを厚生省と十分相談されて運輸省として推進される意思ありやなしや、それについての御答弁をいただきたい。
  238. 土井智喜

    ○土井政府委員 ただいまお尋ねございましたこの船員保険に関連しまして、船員の疾病についての一部負担制度でありまするが、先般の社会保障制度審議会におきましても、船員法との関係において問題があり、実際上も被保険者にきわめて不利な状態が存するので、可及的すみやかに適切なる改善措置を講ずべきであるという御答申をいただいておるわけでございます。この問題につきまして前々国会でも当時の政府委員答弁いたしまして、実際問題として、船員法ではともかく船員が疾病にかかったときは船舶所有者がその費用で療養を施す、あるいは療養に必要な費用を負担するというのが原則であり、いわんや海上労働者においては、船舶というものはひんぱんに港を出入りするものであるから、特定の地点にばかりおる陸上労働者と違った特殊性があるから、その点についてはできるだけ早急に適切な措置を講ずべきである。たまたま法律改正にはひまがかかるから、その間においては船員労務官をして、船主負担において船員の、海上労働者の負担にならぬようにできるだけの措置をとろうというような答弁があったと記憶しております。またわれわれもその趣旨を受けて、実際問題として海上労働者の負担の軽減ということに努めて参ったのであります。しかるところ、大体外航船とか、そういう大型船舶につきましては、船主の経済もまあ割合ゆとりがありますから、その点において労働組合等関係におきましても、大体問題はないのでございましたけれども、やはり中小企業と申しますか、あるいは沿岸の漁船というようなことになりますと、業種間の格差があり、そこへ持ってきて沿岸のいろいろな事情のために、なかなか労働者側からそれを請求するということがむずかしい。そういうような事情がありまして、結局のところまあ泣き寝入りと申すとあるいは言葉が悪いのでありますが、現実にその診察料を船員が負担せざるを得ないというような事例も、これは調査においても若干発見しておるわけでありまして、その点について管海官庁あるいは労務官を通じまして、われわれの方も労使双方にできるだけその点について調整をするような指導をして参ったのであります。ただいま八木委員からお尋ねありますように、今回こういう船員保険法改正になる機会になぜそれじゃその問題を提案しなかったのかというお尋ねでございますが、御承知のように今度の改正につきましては、ここに案文も出ておるような範囲でもって、おそらく船員保険審議会等においても早急に提案せざるを得なかったと思われますので、この点につきましては、法律改正としては残されたわけでございます。なお、遺憾のないようなそういう行政上の措置は、引き続き講じたいと思っておるわけであります。
  239. 八木一男

    ○八木(一男)委員 非常に困った問題であるというのは、船員局長すでに御承知の通りですね。港々――これは太宰さんには何回も申し上げておるので、太宰さんはよく御存じですが、内藤さん、一つ聞いていただきたいのですが、この一部負担というものが船員については特にいけないのは、船員法の八十九条で、そういうようなものは一切船主の方で見るという規定があるのです。船員法に違反した法律船員保険法で作っておられる。法律が二つ矛盾しているわけです。それで大問題になった。実際的にも非常に工合が悪くて、たとえば一部負担というのは、お医者さんに見てもらったときに払うのですが、船員のときには、横浜に入港して見てもらう、そうして一部負担金を払う。次には四日市に入港して一部負担金を払う。また神戸で払う。それからまた九州で払う。三重も四重も五重もとられるわけです。それは非常な負担になる。ところで、それは負担になるから船主からあとで返すことになっている。ところが返せと言うと、船主は、今言ったように大船舶会社のときは、まあ労働組合がしっかりしているからそういうことが少ないですけれども、中小漁船の場合や何かですね、非常に封建的な雇用関係にあるわけです。そうすると、船主がいやな顔をする。そんなことを言うやつは首だとか、雇わないとか、お前は文句を言うということで、首になると大へんだから、結局請求しないわけです。当然の権利があるものが請求できない。それから、一回ならまだしも、数回も払わない。それができない。それが非常に工合が悪いからといって、運輸省の方では、そういうことにならないように、監督官か何とか官か、そういうものを派遣してやっておられるのだけれども、やっておられても、全然効果が上がっていない。中小漁船のときには、返してもらえないときの方がずっと多い。これは何年もやっておられるが、こんなむだなことはないわけです。一部負担は海員の場合には取らないようにすればよい。もともとあとから船主の方からくるのですから、船主の方の保険料に加えるか何かして――これは内藤さん、言っている通りですよ。うそじゃないです。海員が見てもらったときには、お医者さんに払う。払って、その金はあとで船員が船主からもらうことになっている。そんなことでなしに、払わないことにして、船主から保険会計で取ることにすればよいのです。そうしたら、そんなことは一つもしないで済むわけです。行政上も非常にむだが多い。むだが多くても、それが完全にいけば、海員の方は損をしなくても済むけれども、とにかく金が返ってこない。よし返ってきても、そこでいやな思いをする。いやな思いをしなくても、何回もそういう手続をするだけ、人間の生活にとってむだです。そういうむだなことをやっておる。そういう犠牲者が出ないように労務官をたくさん派遣してやっても、しり抜けだ。お役人を減らす必要はないけれども、そういうようなお役人がいれば、もっとほかの、いろいろな船舶行政がよくなるように、その人に働いてもらったらいいと思う。そんなむだなことに使う必要はない。ほかのことでどんどん働いてもらえばいいわけです。そういうむだなことが行なわれている。そして、それは何といっても話にならぬ。何といっても話にならぬということは、数年前からわかっているわけです。数年前からわかっているのに、一つも直さないわけです。こんなばかな話はない。数年前の二十九年のときに大問題になって、これはいかぬということは、与野党に通じてわかってそういうことはいかぬという附帯決議がついている。一年後くらいに必ず直せというのがついているのに、なまけて直さない。しかも船員保険法がそれから二回も出ておるのに一つも入っていない。これは非常に因った問題だと思う。太宰さんに一つこれはぜひ、過去を問い詰めてもしようがありませんから、問い詰める理由は十分あるのですけれども、今国会中に改正案を、その点だけでいいから出す、そのくらいの決意を一つ保険局として示していただきたいと思う。これは船員局長も同じです。政府の方で、三回も出してはどうかということを言ったら、そうではないのだ、今まで足りないことを、よいことをするには政府はやぶさかであってはならない。岸信介であってもなまけてはいかぬということを、あなたの方から突き上げれば通るわけです。自民党もわからず屋ばかりではない。自民党にもわかる人がおるので、筋の通ったことならば、三回も四回も改正案を出しても文句は言いません。われわれも大歓迎します。三回出したらけしからぬとは言いませんから即時用意をされて、今国会まだ期間がありますから、そういうものをお出しになる決心を固めていただきたい。それについて保険局長船員局長内藤政務次官から御答弁を願いたい。
  240. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 一部負担の問題につきましては、前々からいろいろ御質問もいただいておりますし、この国会におきましても、先般のいわゆる保険四法の改正の際にも、八木委員からもよく意のあるところは承っております。私どもの答弁必ずしもお気に入らないようでありまして、その点はまことに遺憾に存ずるわけでありますが、御趣旨の点も私どももわかるのであります。ただ、私どもの申し上げる点も、ある程度おわかりいただけるものと考えます。一部負担の問題は、まあそうくどくどここで申し上げなくてもおわかりかと思いますが、これはやはり相当大きな問題でありますし、船員保険は陸上労働者とも多少違う点かある。それはお話のように、船主が業務外におきましても三月分は出すということは、船員法に規定があるという点で、特殊事情はございますが、私どもの一部負担の趣旨は、これもまたいろいろ御意見もありましょうが、必ずしも財政の面だけを考えてないので、制度の健全な運営という表現で申し上げている。そこにまあいろいろ御議論のあることは承知しておりますが、そういう建前からいたしまして、その問題が必ずしも船員の場合にも――船員はもう陸上と全然違っていいのだというふうには私どもは参らない。そこで、全般の他の制度にも関連する問題として私どもも検討して参りたいということを、実は、この前の保険四法のときにも御質問に対してお答え申し上げたのです。ということでございまして、この点については、全般的に検討いたしますと同時に、また船員保険自体については、先ほどの滝井委員の御質問にもありましたように、今日の船員保険法というものについてはいろいろ、まず片かなで書いてある点からして古いじゃないかということでありますが、内容の点に至っても少し近代に合わない点が私どももあるのではないか、これを何とかして少し近代的な内容及び形を持ったものにいたしたいということで、先般来この関係者、といいますと、船主側あるいは海員側その他学識経験者の方にも御参加いただいて、これを一つ研究していって、なるべく近い将来においてこれを全面改正をして、新しい装いのものにいたしたい、こういうことで今いろいろ検討いたしております。その中に、当然今の問題も、船員保険法の問題としても私は出てくると思います。そういうようなことでございますので、この際は、今回の改正の場合においては、お話のように陸上のけい肺、じん肺等の措置に見合った分だけをとりあえず改正しておきまして、その他もろもろの点につきましては、そういうところでいま盛んに検討いたしておる段階でございますので、もうしばらく御猶予をいただきたい。それから同時に、制度全般につきましては、これはまた、制度審議会の会員には八大委員も非常に有力なメンバーで、御発言が重きをなしておるようでありますから、その点もございまして、私どもも事務的にもさらに検討して参りたいと思っております。
  241. 八木一男

    ○八木(一男)委員 内藤政務次官、何回も聞かれたと思いますが、またあとで申し上げますが、一部負担の問題は、厚生省の見解は、これはもう大間違いの間違いです。社会保険を否定している考えです。これは全般的にいかぬ、明らかにいかぬ、何と言われてもいかぬと思う。これは内藤さんや渡邊さんがしっかり理解してもらわなければいかぬ。ただそれは太宰さん言われるように厚生省側の立場もあると言われていますから、一応今は健康保険の一般的な一部負担の問題は別においてもいい。ですが船員保険の問題は、社会保障制度審議会で今度特にけい肺法と合わせる改正案を――普通ならばああいう良識のあるところではそういうものをつけない。じん肺、けい肺、せき損というようなことについての意見をつけるのがあたりまえなんです。そういうようなことを十分知り過ぎているところでわざわざこれをつけている。それにそういう重大な要素があるということを政務次官はお考え願わなければ困るのです。船員局長ももちろんそうです。それから、その健康保険の一部負担を中心とする改悪案――健康保険法と船員保険法が通ったときにも、この問題はいかぬという意思表示が参議院であったわけです。ですから、一般的な一部負担の問題はさておいても、この問題だけは別に解決をしなければならないということは、内閣の最高の諮問機関である社会保障制度審議会でもそうであるし、国権の最高機関である国会における論議においてもそうなんです。厚生省では今までの行きがかり上、それと一緒にごたごたに解決したい、延ばしたいというような立場をとっておられる。厚生省は行きかかり上そうであろうけれども、それは一般的には通らない。国会においても、あるいは内閣の最高の諮問機関においても、その意思表示をしている。その意思表示は、社会保障制度審議会設置法の第二条第二項をごらんになればわかるように、内閣はこれを尊重しなければならないということを法律で義務づけられておる。それをしなければ内閣自体が法律違反なんです。またその前に、船員法と船員保険法が矛盾している、船員保険法が船員法違反である、そういうようなでたらめなことを法治国家でやっておるということは、内閣責任上非常に重大な問題であろうかと思う。そういうものですから、これはほかのものと一緒に検討する、船員保険法は非常に複雑であるから、ほかのものを検討することがあるから、それと一緒にやろう、そういうことでほうっておいてはならないものです。それだけで至急に解決しなければならない、そういう問題です。内藤さん、そういうような理由で申し上げているのですけれども、ほんとうの政治家として、法治国家の政治家として、内藤さんのお考えはどうでございましょう。われわれは保険局とは意見が違うのですから、これは御相談にならないで、内藤さんは国務大臣の代理として、法治国家の政治家としてお答えを願いたいと思う。内藤さんも国会議員でいらっしゃいますから、法律を順守させる責任を持たれるわけです。あらゆる点で法律的にこの問題とぶつかっているわけです。ですから行政上の、あるいは厚生省の中の都合の問題ではない。直ちにこれを直される御意図を示されないと、内藤さんは法律を無視した国会議員であり、政務次官ということになるわけです。その意味で内藤政務次官のはっきりとした御答弁をお伺いしたい。
  242. 内藤隆

    内藤(隆)政府委員 私はその問題について、はなはだ不勉強でありますけれども、今までの経過等も詳しく知りません。八木委員の御説を承ってだいぶ教えられるところがございましたので、政治家としてこれをどうするか、政務次官としてどうするかということをここで即答することは少し軽率のように思いますが、ごもっともな筋があるということだけはよくわかります。現在の立場においては、要するに一部負担をしておりますその船員の負担を船主が補てんをしないということは、どうも少し私は合点が参らないのです。そういう立場から考えてみますと、行政的な指導とかあるいは啓豪というようなことではこの問題の解決は困難じゃないかと、今あなたの御質問を拝聴しておると思われる筋もございます。そこで、ここで今私に何か政治家としての立場から決断を述べよとおっしゃるのでありますが、しばらく時間をかしてもらいたい、その上で私は政治家としての立場を御答弁申し上げたい、かように考えております。
  243. 八木一男

    ○八木(一男)委員 それはごもっともだと思いますが、実はこの船員保険法について明後日さらに内海委員の御質問があるそうであります。その日までに渡邊厚生大臣とも御相談になっていただいたらけっこうですけれども、内藤政務次官の御所信、また御出席になりましたならば渡邊厚生大臣の御所信をおっしゃっていただきたいと思います。さらに運輸大臣とこの問題解決の御相談をなさって、運輸大臣の御所信もそのときに伺いたいと思います。ぜひ御検討願いたいと思います。
  244. 内藤隆

    内藤(隆)政府委員 あさってのことでありますので、おそらく大臣も御出席になると思います。しかし、健康の関係その他でもし出られない場合には、きょうあすのうちにすぐ大臣ともよくこの問題を相談して、さらにまた大臣を通じて運輸大臣とも御相談になるかもしれませんが、何とか一つ答弁を申し上げたい、かように思います。
  245. 八木一男

    ○八木(一男)委員 太宰さんにも一つお願いしたいと思うのですが、この場合に太宰さんの御助言が非常に重大な要素になると思うのです。太宰さんとは非常に親しくもしておるし、またけんかもしました。だけれどもこの問題については、さっき申し上げたような理由で、太宰さんといえども、一部負担のことは別にして、船員保険法特殊性は十分認めておいでになるわけです。船員法との関係法律的に非常に問題がある。制度審議会の意思表示がある、参議院の社会労働委員会意思表示があるという点で、解決しなければならない問題であるという立場において、大臣、政務次官を補佐していただくようにぜひ太宰さんにお願いしたいと思います。太宰さんのお気持を伺いたいと思います。
  246. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 私も主管局長として自分の所信を大臣次官に申し上げまして十分補佐いたしたいと思います。
  247. 八木一男

    ○八木(一男)委員 法律の問題ばかり申し上げましたけれども、蛇足でありますが、内藤政務次官にさらに申し上げておきたいのは、特に船員の中の零細な漁船の船員などは、生活が非常に因っているわけです。そういう人たちが二重、三重、四重、五重に一部負担金を取られる。船員の人の生活というものは、ちょっと人間の常態の生活と違いますから、からだをこわすことが多い。それで見てもらわなければならないことが多い。そういうことで一部負担を五重にも取られれば、やはり相当痛いことになる。百円の一部負担でも、五百円取られればとんでもないことになる。それを返してもらうように言おうとすれば、中小漁船の船主などというものはほんとうに封建的ですし、中小企業の特性で封建的なほかに、漁業というものは荒海に対抗するものですから、船主というのは相当荒っぽい気質の人が多い。だから理屈でなしに、そんな文句を言う者は首にするとか、文句を言うならほかのことを考えてやらないとか、お前はそんなことをぐずぐず言うな、黙っている、そういうのが全部ではないけれども、一部にあるのです。そうなれば言いたくても言えない。言っても扱ってもらえないということが起こるわけです。よし、それがうまくいっても、手続が非常にめんどくさくて、海上労務に疲れている人がその手続をする、またその手続を受ける側もめんどくさい。それからまた、そのために運輸省の方で特別に公務員の人が苦労してむずかしい問題を調べる、そういうことは国家の行政能率上非常に工合が悪い。有能な公務員の人はほかの運輸行政、海運行政でどんどん働いてもらった方がいい。そういう点で具体的に法律的な問題のほかに、そういう労働者が助かるように、関係の人が苦労しないで済むように、またその一部負担があるために労働者が見てもらうことを怠ってからだを悪くしてしまう、保障の本義にもとるような、病気が重くなってしまうようなことがないようにしていただきたいと思う。一部負担をなくすると、何回も見てもらう人が多過ぎて保険経済に影響があるということですが、だれも医者に見てもらうのを好む人はないのです。海員の人は帰ってきて港に着いたら、時間があればまっ先に家族なり親戚に会う。そうでなければ疲れを一ぱいの酒でいやしたいということが先になって、保険経済から注射でもしてもらって金を物質的にもうけてやろうなんていって一々医者に行くような、そんな変な考えを持っている人はいない。見てもらいにいくときは、どこかが苦しいか、どこかが痛いか、からだが心配だからなんです。それをただ経済的に見て、一部負担制がないと見てもらいに来るのが多過ぎて保険経済がどうだというようなことは、これは昭和二十八年ごろに一時的に健康保険が赤字になったときに、厚生省の御用学者が考えた理屈であって、そんな御用学者によって日本の政治がひっかき回されては困ると思う。実に七人委員会なるところに入った人は御用学者です。それが七人委員会は何々博士とか有名な人が入っているから、一番いいことのように、金科玉条のように今考えられているが、とんでもない間違いだ。あの連中は厚生省の健康保険の赤字解消のための任務を帯びて、医療保障とか社会保障を忘れて、その任務のためにいろいろの理屈をでっち上げただけで、それが黒字になってから明らかに間違いであることが立証されているのです。そんなとんでもない学者論がもとになった一部負担がいいという議論、そういう古くさい大間違いに間違った議論は、完全に自民党が医療保障なり労働者の擁護なりに熱心であるとするならば、そんなものは捨て去って、新しい観点で一部負担なんかなくするということに勇敢に踏み切っていただかなければ困ると思う。そういう点でぜひやっていただきたい。非常になまいきなことを申し上げましたけれども、一生懸命申しあげているので、ぜひよろしくお願いします。  それから、船員局長さんにお願いしたいのですけれども、これは厚生省だけではなしに、運輸省が積極的にならなければ実現できない問題です。運輸大臣か政務次官おいでになるように御請求したのですが、お見えになっておりませんので、特に所管の局長である船員局長から、本日こういうような状態になったと十分に大臣に御説明になって、運輸大臣自体から渡邊厚生大臣また内藤政務次官に積極的に働きかけるようにしていただきたいと思います。船員局長から太宰保険局長に、解決しようやということを積極的に申し出られ、推進せられるというようにしていただきたいと思います。それについての船員局長の御決意を伺いたい。
  248. 土井智喜

    ○土井政府委員 この一部負担の問題は長年の懸案でございますし、ただいま問題の所在につきましても新たないろいろ意義を帯びて参りました次第でございますし、ただいま八木委員からもお話がございましたように、厚生省と十分連絡いたしまして、遺憾のないようにいたしたいと思います。なお、運輸大臣には私から本日の議事につきまして御報告をいたしまして善処いたすつもりであります。
  249. 八木一男

    ○八木(一男)委員 それからあと一点だけ伺います。船員保険法の今度の改正点ではございませんが、船員保険の標準報酬がたしか最高三万六千円だったと思いますが、太宰さん、そうですね。――健康保険の標準報酬の最高は五万二千円。そこで、これは意地悪い質問はしませんけれども、何と言いますか、健康保険の方の対象者の平均賃金と、それから船員保険法の賃金の平均、おわかりでなければけっこうですけれども、平均というよりは最高、高い方の給料を持っている方の人数の調べ、比較、そういう数字があったらお示し願いたいと思いますが、明らかに高給者が船員の方に多いと思う。多いと思いますのに、船員保険法の方が標準報酬が三万六千円でストップになっている。一般の健康保険の方は五万二千円まで上がっている。これは非常に矛盾だと思う。やはり船長とか事務長とか機関長とかあるいは通信長なんかしている人は、すいぶん長いこと海上労働で苦労された方でございますが、そういう人たちの標準報酬が、実際の給料がそれよりはるかに高いのに三万六千円でストップされて、いろいろな給付がそれに準じて行なわれるということは非常に不合理だと思う。そういうような賃金の実態に合わせて標準報酬を改訂していただくのが正しいのじゃないか、これについて内藤政務次官と太宰保険局長から御答弁願います。
  250. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 私から便宜お答えしたいと思います。  先般当委員会でいわゆる保険四法の御改正をいただいたときの資料の記憶で申し上げますが、あの当時は厚生年金関係は一万八千円というように非常に低くて、ほとんど三分の一くらいの人が頭打ちになっておったわけであります。そこで、とりあえず三万六千円まで引き上げるようにお願いした。それで船員保険の関係は今三万六千円までになっております。これは確かに、賃金の実態からいたしますと、もう少し上の人がいるわけでございますから、もう少し引き上げるということも私ども実は考えてもみたわけでございますけれども、しかしこれを上げることによりまして、関係者の間にもそれぞれ利害の問題もございましょうし、またそれに耐え得るかどうかという問題もありまして、その辺は厚生省といたしましては十分みんなが納得のいく線で処理していくべきものだと思うわけです。そこで、ただいまのところは、船員保険は三万六千円で頭打ちになっておりますが、その頭打ちになっている人のパーセンテージはたしか六%くらいかと思っておりまして、比較的、先ほども申しました厚生年金の一万八千円のときのように、三割もの人が頭打ちになっているというようなほどひどい状態ではないわけでございます。これもそのうち私どもも引き上げて参りたいと思っておりますが、今日の段階では、一応三万六千円でも六%程度の人が頭打ちになっている程度でございますので、そういう点も考えまして、先般の改正の際には一応これを見送ったわけでございます。これは今後の推移もよく見きわめまして、また筋から申しますれば、お尋ねのように賃金の実態に合わせるべきものであろうと思いますので、そういう方向に向かって努力はいたしたい、かように考えております。
  251. 八木一男

    ○八木(一男)委員 今の御答弁で、早く進めていただければそれで非常にけっこうだと思いますが、六%と言われますけれども、船長や何か考えると、数はそうであっても、頭打ちをされている限度は非常に多いと思うのです。六万、七万取っている人が多くて、そういう人が三万六千円で扱われているのじゃ非常に気の毒だと思います。また、六%という数字なだけに反対も少なかろうと思う。該当者自体は反対しないと思う、労働者は。ただ使用主の方がとやかく言うかもしれませんけれども、六%程度であったら別にそれほど使用主の方もとやかく言いませんでしょうし、またそういう使用主の方の、そういう者を雇用している会社、かなり大会社が多うございますから、そういう点で問題は少なかろうと思います。至急にそういう点を改正していただくように推進をしていただきたいと思います。局長と政務次官の御決意をもう一回聞かしていただいて、これで私の質問を終わりたいと思います。
  252. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 先ほども申し上げましたように、大体私どもも八木委員と同じ考えを持っております。また関係者の間の機運を醸成するようによく指導して、そういう方向に持って参りたいと考えております。
  253. 内藤隆

    内藤(隆)政府委員 いろいろ事務的な事柄もあるでございましょうが、御趣旨に沿うように一つ進めていきたい、かように思っております。
  254. 永山忠則

    永山委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十九分散会