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1960-04-13 第34回国会 衆議院 社会労働委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月十三日(水曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 永山 忠則君    理事 大石 武一君 理事 田中 正巳君    理事 八田 貞義君 理事 滝井 義高君    理事 八木 一男君       池田 清志君    加藤鐐五郎君       河野 孝子君    齋藤 邦吉君       田邉 國男君    中村三之丞君       中山 マサ君    古川 丈吉君       柳谷清三郎君    赤松  勇君       伊藤よし子君    大原  亨君       岡本 隆一君    小林  進君       五島 虎雄君    中村 英男君       本島百合子君  出席政府委員         厚生政務次官  内藤  隆君         厚生事務官         (大臣官房長) 森本  潔君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      尾村 偉久君         厚 生 技 官         (医務局長)  川上 六馬君         厚生事務官         (医務局次長) 黒木 利克君         厚生事務官         (児童局長)  大山  正君         労働事務官         (職業安定局         長)      堀  秀夫君  委員外出席者         参議院議員   谷口弥三郎君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 四月十三日  委員早川崇辞任につき、その補欠として田邉  國男君が議長指名委員に選任された。 同日  委員田邉國男辞任につき、その補欠として早  川崇君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  優生保護法の一部を改正する法律案参議院提  出、参法第一号)  身体障害者雇用促進法案内閣提出第五五号)      ————◇—————
  2. 永山忠則

    永山委員長 これより会議を開きます。  参議院提出優生保護法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 参議院から回わって参りました優生保護法の一部を改正する法律案について、提案者というより、政府の方に一、二点お聞きをしたいのですが、最近日本には家族計画というものが相当に普及をして参りました。従って、その家族計画が順調に普及してうまくいけばいいのですが、そうでない場合も相当あるわけです。その結果、いわゆる世にいう堕胎という現象が起こってくるわけですが、そういう問題についてはあとでお尋ねするとして、当面これは明らかに優生手術を必要とするということで、現在優生手術を受けておる人の数ですね、これを政府の方にお尋ねしたいのですが、一体年間どの程度優生手術を受ける人があるのか、そしてその優生手術を受ける直接の原因というものは、この法律におけるどういう条項のものが一番多いのか、それをちょっと御説明を願いたいと思う。
  4. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 お尋ねの優生手術自身でございますが、優生手術は三十三年の実績がございますけれども、年間四万一千九百八十五件、約四万二千件でございます。それからこの原因は、優生手術を適用する場合に法律で分かれておりますが、その内訳を申し上げますと、当事者の遺伝によるもの、これがただいまの四万一千九百八十五のうち百九十二、それから四親等内の近親者遺伝関係があるということによるものが百四十二、それから本人、配偶者の、らい、これが七十二、それから母体の生命の危険、これによるものが一万五千八百二十一、それから生命危険までいきませんが、母体健康低下によるもの、これが二万四千六百七十七、以上がこの優生保護法の三条による医師認定によるもの。このほかに、四条のいわゆる強制によるもの、これが遺伝性疾患で千二十七、それから遺伝性以外の、指定精神疾患によるものが五十四、合計いたしますと、ただいまの四万一千九百八十五、こういう実績でございます。
  5. 滝井義高

    滝井委員 昔からわれわれが常識的に考えておりました精神病を中心とする優生手術が四万一千九百八十五件程度だという御説明でございますが、それならば母性保護の見地から医師認定によって行なわれる人口妊娠中絶現状というものは、一体どういう状態ですか。
  6. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 やはり同様三十三年の実績でございますが、人口妊娠中絶実施の総数は百十二万八千二百三十一件、これは法によりまして届け出た、いわゆる公認実施数でございます。そのほかに若干公認でないものもあるかと推定されますが、これはわかりません。  それからただいまの人工妊娠中絶実施件数内訳でございますが、三十三年が、遺伝性疾患によるもの、これが千六百三十、らい疾患によるもの、これが三百十五、母体の健康いわゆる人工妊娠中絶の四号と申すものでございますが百十二万四千六百九十七、それから五号と称する泰行脅迫による懐妊によるものでございますが、これが三百五十八、それから原因がはっきりしないもの、これは届出の記載が不詳なためでございますが、これが千二百三十一、合計いたしまして百十二万八千二百三十一、こういう内訳になっております。
  7. 滝井義高

    滝井委員 現在大体日本出生人口は、ちょっと今正確な資料を手元に持ち合せがございませんが、百六、七十万台ではないかと思うのです。そうしますと中絶が百十二万、その医師認定による人工妊娠中絶のほかに、まあやみからやみへ葬られると申しますか、そういうものが学者の間では相当の数に評価をせられておるわけでありますが、これは将来の日本人口政策の上にもあるいは民族の質ということを考える場合においても、相当重要な問題点を含んでおると思うのです。そのことは同時に家族計画との関係、すなわち将来家族計画という政策をわれわれが普及していく上においても重大な関係を持つ問題でございますが、政府としてはこの優生手術や法に認められた人工妊娠中絶以外の中絶と申しますか、そういうようなものが一体どの程度あると御推定になっておるのか。これは人口問題の討議をする学会なり婦人科学会においてそういうことが公然と論議をせられておると思うのです。政府としてはそういうものを一体どの程度に御推定になっておるのか、これはわかっておれば私見を述べていただきたいと思うのです。
  8. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 これはあくまでも私見でございまして、公式に立法その他でとれないのがこの種のものの性格でございます。今まで私どもの方の参考といたしまして学会意見等、文献を渉猟いたしましたり、あるいは地方のこれにタッチする保健所長の部分的な意見等の結果では、年間公認人工流産数の最低五割最高九割、大体それに近い数字が、それぞれの学者統計等で推論が発表されておりますので、大体そういう程度であろう、かように参考にいたしております。
  9. 滝井義高

    滝井委員 この問題は将来における日本の、そういう中絶その他をやらなかった場合における人口動態にも非常に密接に結びついてくる問題になるわけです。そしてこのことは日本教育政策、あるいは日本産業雇用政策にも影響してくる問題です。もし国民生活が非常によくなって、そして今二人とか三人の産児計画をやっておりますが、これはやはり将来の日本経済成長が飛躍的によくなって、そして国民雇用もよくなる。現実に、たとえば中学校を卒業した子供雇用というものは現在日本では不足状態なんですね。こういう点は、また今から何年かしますと現在小学六年、今度中学一年になったところからは、昭和二十二、三年のベビー・ブームの関係があって、これらの諸君中学校を卒業しあるいは高等学校に入学し大学に行くということになると、相当入学難もあるだろうし、卒業すれば幾分の就職難はあるかもしれないけれども、今の日本経済成長状態その他から考えると必ずしもそうでもない、ヨーロッパと同じような労働力不足というような問題も出てくるかもしれないというようなことになると、やはり出生という、人口の一番基礎をなすところの政策というのが非常に重要になってくると思うのです。そして優生手術は論外としても、医学的に認められた中絶以外のやみ中絶の数は一体どの程度あるかという相当正確な把握をしておくことが、やはり政府としては必要じゃないかという感じが私はするのです。そういう点で今一応五割ないし九割ということ、学者によっては百五、六十万、あるいは二百万だという人もずっと前はあるにはあったのですが、五割としても五、六十万あるし、九割とすると百万程度のものがやみに葬られていくという、こういう形になるわけで、これは将来の人口動態を見る場合の非常に重要な問題点だと思いますので、なお一つ正確な把握方法その他を御検討になって、できる限りの正確な数を出すようにお願いをいたしたいと思うのです。  そのほかに受胎調節によって消える部面というものがあるわけです。この数の推計というものはなかなかむずかしくて、ここで質問するつもりはございませんが、そういう点、私が問題にしたいのは、ユダヤ人のような非常に子供を産む力のなくなる民族、それから日本人のように民族的には——民族学者あるいは解剖学者は、日本人は体質的に若いんだ、こう言っておりますが、表面に現われる最近の人口の姿というものはヨーロッパのような姿になって、日本人口構造がだんだん老人が多くなって、いましばらくは労働人口がふえるけれども、だんだん労働人口というものは停滞、頭打ちの状態になるということは——何も私は戦争中のように産めよふやせよという論を言うのではなくして、やはり何か人工中絶というようなものが、逆淘汰によって優秀な民族の質というものについて一つの問題を胚胎をしておるのじゃないか。特に最近における精神薄弱児童の増加というものは、やはり何か民族の逆淘汰一つの指標となっておるのじゃないかというような感じもするわけです。こういう点については、全般的に厚生省人口問題研究所ですか、ああいうところでもおやりになっておると思うのですが、家族計画その他のネックを掌握せられておる公衆衛生局としても、当然そういう点については相当の行政的な御検討なり御調査をなさっておると思うのですが、そういう点についての公衆衛生局の見解はどういうことになっておるのですか。
  10. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 ただいまの逆淘汰並びに、ことにその中で悪い方の比率がふえるという結果になるわけでございますが、精薄等の問題、逆淘汰を防ぐためにも、遺伝的には良質の者が、世間に対する恥ずかしさその他で、母体保護の正しい目的でやるべきにかかわらず、やみでどしどしやる、そのためにいろいろな事故も起こり、また指導を受けない不適当な人工妊娠中絶を続けていくというようなことは、非常に遺憾なことでございますので、従いまして母体保護あるいは悪質な遺伝質遺伝阻止というような正しい意味での優生保護法による公式のものを公明に実施する、これに努力いたしまして、従ってやみの横行を極力阻止する、これが一番大事な点であろうかと思います。  いま一つは、それだけではいかぬのでありまして、この優生保護法の活用によりまして、むしろ遺伝質の悪質のものをつかみ出して、これの遺伝阻止を積極的にやる、これをまた同時に並行してやる。この二方面が必要と思いますので、現在のところ精神衛生に関する行政とそれから人工妊娠中絶ないしは優生手術等方面行政と、これは十分からみ合わせて一貫した考えでやっていく、かように存じて進めておるわけでございます。
  11. 滝井義高

    滝井委員 具体的にお聞きしますが、この優生保護法の今度の改正にも関連をしてくるわけでございますが、十五条関係受胎調節実地指導ですね、この実地指導状態は、現状においては、行政的には一体どういう形で実地指導というものが行なわれておるのか、この概要を一つ説明願いたいと思います。
  12. 大山正

    大山政府委員 受胎調節実地指導につきましては、御承知のように、都道府県知事指定を受けました助産婦保健婦または看護婦受胎調節実地指導員ということになりまして、これがそれぞれあるいは家庭を訪問する等の方法によって、実地指導を行なっておるのでございますが、特に特別普及事業といたしまして、生活保護階層並びにボーダーライン階層に対しましては、全額あるいは半額器具配付を行なうというような方法によりまして、実地指導を行なっておるような次第でございます。
  13. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、今現実に具体的におやりになっておる受胎調節実地指導というのは、都道府県知事指定をした助産婦やら保健婦看護婦さんに、主として生活保護なり低所得階層中心器具類配付をやらせるという程度でございますか。そのほかには……。
  14. 大山正

    大山政府委員 受胎調節全体の仕事といたしましては、保健所、言いかえますならば優生保護相談所でございますが、これを中心といたしまして集団教育個別指導広報活動あるいはいろいろな講習会というようなことをやっておるのでございますが、ただいま御指摘になりました、実地指導員の制度につきましては、この実地指導員がそれぞれ指導いたしますとともに、ただいまお話のありました生活保護階層あるいはボーダーライン階層に対しまして器具医薬品の無料の配付あるいは半額負担による配付というようなことによりまして、特別普及事業をやっております。
  15. 滝井義高

    滝井委員 一体その経費は一人当たりどのくらい必要なのか。それから年間全国的にどの程度予算をお使いになっておるのか。実はここに予算書を持ってきておりますが、詳細のものを持ってきておりませんから、その額はわかりませんけれども、家族計画普及費として四千七百七十三万六千円で、昨年より六百四十万八千円の減額に、全体としてはなっておるのですね。そうしますと、これは受胎調節実地指導費用を、実地指導員補助として三分の一を国が持っておるわけです。それから特別普及費補助が二分の一ないし三分の一、こういうことになっておるのですが、この経費というものは、一人当たり一体冒頭に申し上げたように、幾ららいになっていますか。そしてその経費の支給の具体的な方法は、どういう形で第一線の保健婦さんや助産婦さんや看護婦さんに渡されることになるのか。それをあわせて御説明願いたいと思います。
  16. 大山正

    大山政府委員 本年度家族計画普及事業予算は四千七百七十三万六千円でございまして、それが御指摘のように前年度に比しまして約六百万円ほどの減になっておりますが、これは従来家族計画普及のための補助金が必ずしも県の段階におきまして十分消化されなかった。その実績によりまして、若干節約になっておるのでございます。  内訳を申し上げますと、一つ家族計画相談事業費補助金でございまして、これが一千六十四万六千円でございます。その内容といたしましては、保健所指導費、それから市町村のやります指導費、これに対する三分の一の補助でございます。次に、家族計画相談事業のためのいろいろな器材の整備費でございまして、これが五十七万六千円。これは三分の一の補助になっております。それから次に家族計画特別普及事業費補助金、これが三千四百三万五千円でございます。これは先ほど申し上げました器具医薬品生活保護者その他の低所得者に対しまして配付する費用でございまして、補助率は二分の一でございますが、一人当たりの額にいたしてみますと、生活保護者に対しましては一人三百円であります。
  17. 滝井義高

    滝井委員 月ですか。
  18. 大山正

    大山政府委員 年です。それからボーダーライン階層に対しましては、その半額の百五十円ということに相なっております。なおこの実地指導員手当は、一人の実地指導員が百名を担当するという想定のもとに、一人月額交通費を含めまして二千円の手当が出ております。次に、家族計画指導者講習会費補助金でございますが、これが百五十万九千円、補助率は三分の一でございます。次に、民間団体助成費補助金がございまして、これは九十七万円ということに相なっております。以上合計いたしまして、四千七百七十三万六千円という計算に相なっております。
  19. 滝井義高

    滝井委員 特別の普及費補助で、特に生活保護者に一人——僕は月かと思ったら、一年に三百円で、ボーダーライン層に一年百五十円では、なかなか日本の低所得諸君家族計画普及しないんじゃないかという感じがするのです。生活保護の皆さんが一年に三百円もらって、これで貧乏人子だくさんを抑制せよと言っても、抑制するどころか、生まれている子供あめ代にしかならない。しかも全般として予算が約六百四十万八十円削られているという、これは大蔵省役人諸君のこの家族計画に対する認識というのが全くないことを意味しておるし、それから公衆衛生局も私はやはり無責任だと思う。どうですか、次官、これは結局政治的にあなたの方になるのですが、お聞きの通り、一年に三百円やるから産児調節をおやりなさい、これでは全くナンセンスだという感じがします。こういう補助金ならば、これは大蔵省補助金の整理に関する法律を出して補助しなければいかぬ、その対象は農林省と厚生省だという、私はこれじゃ無理ないと思うのです。まあどんなに少なくてもやはり月に二、三百円、年間に二、三千円くらいの金はやらないと、そういう政策徹底というものはとてもできるものじゃないと思うのです。そのくらいやりますと、指導員が具体的に行った場合に話というものに耳をかすと思うのですよ。これは政務次官どうですか、やはり金を出すのならば、どぶに捨てるような金は出すものじゃないと思うのです。やはり政策というものは、少なくとも徹底をしながら一歩々々築いていかなければだめだと思うのですが、これは次官もお聞きの通りです。一カ月に三百円ならいいけれども、一年に三百円やるんだ、ボーダーライン層には半分の百五十円だ、これじゃ生活保護諸君に、幾ら貧乏人子だくさん状態を作ってはいけませんよと言ったって無理だと思うのです。貧乏は貧乏を生む形になるんです。もし家族計画というのを国の政策として実施をしていく、相当確実に実行をしていこうとするならば、ここらあたりをもう少し予算をふやして、そして重点的におやりになるということが必要じゃないかと思うのですが、どうですか。
  20. 内藤隆

    内藤(隆)政府委員 大蔵省との予算折衝の場合において、家族計画等に対する大蔵当局認識不足であったという点等もございますが、御指摘通り年間三百円くらい家族計画実施ができるということは、これはとうてい考えられませんから、漸次一つ予算を獲得しまして、その目的を達成するように進めていきたいと私は考えております。
  21. 滝井義高

    滝井委員 これは百人を一人の実地指導者が担当するわけですね。これは全国にどういう程度人数を置いておるのですか。
  22. 大山正

    大山政府委員 先ほどお答え申し上げましたときに若干申し落としましたが、この三百円は予算単価でございますけれども、これを税金給付でなしに、現物器具医薬品等を県で購入いたしまして、これを配付するという形になっております。ただいまも御指摘にありましたように、確かに予算単価といたしましても十分でないと思いますので、今後とも努力したいと考えております。  それから実地指導員につきましては、現在この特別普及事業に当たっておりますのが、おおむね五千名でございまして、対象となっております人員は、予算積算基礎といたしましては、生活保護階層が六万七千六百十人、低所得者階層が十万二千三百七十四人、こういう計算になっております。
  23. 滝井義高

    滝井委員 受胎調節実地指導をおやりになる助産婦さんなり保健婦さん等が全国に五千人おる。そうしますと、これはある程度医師の協力もできるわけですから、これは数は少ないながらも、その選定をする人によろしきを得れば、これはまあ何とかやっていけるんじゃないかと思うのです。それで月に二千円程度ですから、これは片手間にできる仕事ですから、これでいいと思います。やはり問題は、年間三百円程度のものを器具医薬品等現物にしても、これは相当問題があると思うのです。そうしますと、今度の法律改正の第二点の受胎調節のための医薬品で、厚生大臣指定するものを販売することができる。主としてこれは助産婦さんやら保健婦さんがやることになるのでしょうが、その医薬品というのが今御指摘になりました一人一年三百円を現物でやる分になるのですか。それとも全然別個に保健婦さんなり助産婦さんが自分のお金でそういう物を安く仕入れて、そうしてその安く仕入れた、原価に近いところで低所得者なり一般大衆に売るという、こういう形になるのですか。
  24. 大山正

    大山政府委員 ただいまお話にありました後段の形でございまして、従いまして先ほど申し上げました器具医薬品生活保護その他の低所得階層に国の補助しました予算配付するというのとは別に、助産婦さんその他の方、実地指導員一般の方々に売る等のケースにつきまして、今回の法律改正が提案されている、こういうことでございます。
  25. 滝井義高

    滝井委員 これはずっと前に出て、今度その期間を、三十五年七月三十一日で切れるものを、これからさらに五カ年間延ばすことになりますが、それのいわゆる六万七千六百十人の生活保護者と、十万二千三百七十四人の低所得階層以外の一般大衆に、一体年間にしたならばどの程度のものが売られて、受胎調節に役立っておるかという点です。
  26. 大山正

    大山政府委員 この実地指導員を通じまして、この規定に基づいて売られております額は実はあまり多くないのでございまして、推定でございますが、一年間に四百万円ほどでございます。
  27. 滝井義高

    滝井委員 一年に四百万円という額では、ちょっとなかなかピンとこないのですがね。一体四百万円ならば、どの程度人数実地指導されるかということなんです。さいぜんあなたの方の御説明で、低所得階層でいえば十万何がし、それから生活保護者ならば六万何ぼというのは、これは予算があって十六万という数が出てきたのですね。そうすると、四百万円というもので一体どの程度のものが対象になるか、こういうことなんです。     〔委員長退席八田委員長代理着席
  28. 大山正

    大山政府委員 実地指導員によります対象となっておる人数につきましては、実ははっきりした数字がないのでございまして、現在、先ほど申し上げました特別な普及事業を含めて、全体の実地指導員の数というのが三万人に上っておると考えられるのでございますが、これがはたしてどれだけの人数に対しまして実地指導を行ない、あるいはこの約四百万円の避妊用医薬品を買った人数がどれだけかということが、ただいまのところまだ十分把握できておらないのでございます。実地指導を受けましても、その実地指導員から器具医薬品を買わずに、薬局へ行って買うというようなものもございますので、これの対象人員につきましては十分調査しておりませんので、御了承いただきたいと思います。
  29. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、さいぜんの生活保護やら低所得実地指導をやる人五千人と言いましたね。この五千人は、今あなたの御説明をいただきましたいわゆる一般大衆実地指導している二万人の中に含まれておるのですか。兼ねておるわけでしょう。
  30. 大山正

    大山政府委員 ええ。
  31. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、これが兼ねておるということになりますと、ちょうど普通の医者が生活保護指定医になっているように、この五千人というものは、生活保護やら低所得階層実地指導指定員、こういう形になっておるのですか。
  32. 大山正

    大山政府委員 従来特別普及事業は一定の地区指定しまして、この地区内において行ないましたので、これに該当するのが先ほどお話し申し上げました五千人になるわけでございます。なお本年度からは必ずしもそういう地区指定をやらずに、全国的にやはりこういう普及事業をやっていきたい、かように考えておるので、その点はさらに今後検討して参りたいと思います。
  33. 滝井義高

    滝井委員 わかりましたが、そうしますと、私は問題は今度の法律改正によってさらに五カ年間受胎調節のための医薬品厚生大臣指定をして販売することができるようにするからには、今までわずかに四百万円だった、三万人の人によって実地指導される成果が四百万円ということでは、何かやはり物足りないと思うのです。そこで政府の方で、これは最高の医薬品であり最高の器具であるというものを二、三種類一括して安く買い入れて、それを産婆さんに実費で提供する。そうしてそれを産婆なり保健婦さんなりが一般大衆に安くやるという方法をとる。それぞれの地区、地域で、これは自分の経験やら研究によって器具医薬品というようなものはその効果がそれぞれの見方によって違うから、従って使用する薬も違ってくるかとは思いますけれども、やはり学界その他の意見を聞き、全国的な成果を検討した結果によって二、三種類のものを指定して、それを安く都道府県なり政府が買い入れて、その実地指導員に渡してそれを安く提供していく、こういう方法をとらないと、産婆さんが自分のお金で買って、それを持っていってみんなに分けてやるということになりますと、日本の習慣としては、普通のときになかなか産婆さんとのつき合いはないのですね。おなかが大きくなると産婆さんとのつき合いはできますけれども、おなかが大きくなる前に産婆さんとそういうことまでどんどんつき合っていくという習慣はまだ確立されていないと思うのです。保健婦さんは現在保健所におりますけれども、どんどん外を回るだけの余裕がないのです。保健婦さんとしては保健所で事務屋になりがちなんですよ。現場に出、大衆の中に飛び込んで第一線で産児調節普及というものをどんどん公民館活動や婦人会活動を通じてやろうという保健婦さん、産婆さんは、私の知る限りでは少ないのです。そうすると、たまに保健所長看護婦さんや保健婦さんを連れて公民館あたりで話をするのがせいぜいだと思うのです。ここに岡本さんがおられるのですが、政談演説で岡本さんあたりの方が産児調節の功労者かもしれない。そういう点があるものですから、これはやはりそこまで政府が手を延ばしてやらぬといかぬという感じがするのです。どうですか、来年から特別地区というものを廃止して、全国的にこういう網を張ろうという政策をお持ちならば、安くていい薬を製薬会社の二、三に指定をして作ってもらったら、製薬企業は必ず厚生省に差し出しますよ。そういうことにして、製薬会社で作っている医薬品の種類はいろいろありましょうから、そういう一種類か二種類に限る必要はない。相当の種類を指定してもいい。それを産婆さんなり保健婦さんに持たしてやるということになれば、相当政策徹底していくと思うのです。こういう点どうですか。来年から特別地区を廃止されるというならば、もう少しそういう点に予算をつぎ込まれていいと思う。たった四千七、八百万円で産児調節普及計画をやるというのは、これはおこがましいと思うのですよ。最小、億の単位にならなければいかぬと思うのですよ。一億か二億くらいの金を出してやるというなら、これはいいですよ。ところが、大政党の自由民主党がわずか四千万そこそこ出して、公衆衛生における大きなものは産児調節普及運動だ、蚊とハエの撲滅運動と並び称せられる政策だというようなことは、これは受け取れないと思うのです。今うしろの局長さんの方で、来年は特別地区指定を排除して三万人を動員してやろう、こうおっしゃるのですが、今のようにわずか四百万円しか売れておらぬのですから、これは何も製薬会社をもうけさせるという意味じゃなくて、ほんとうにいいものを指定して安く大衆にやれば、それは普及すると思うのです。これは薬の乱売にはならぬと思うのです。こういう点、政務次官はどうですか。
  34. 内藤隆

    内藤(隆)政府委員 特別地区を廃止するので、今滝井さんのおっしゃったようなことを実視する絶好の機会だと私は思います。明年度はさような線を実視するために一つ検討したいと考えております。
  35. 滝井義高

    滝井委員 ぜひ一つ検討をして、実践に移すようにしてもらわなければいかぬと思うのです。さいぜんから主張いたしますように、だんだん逆淘汰というようなものもありますから、こういうものも適正にやっていただきたいと思います。  それから改正の第一点でございますが、国庫が今まで優生手術に関する費用を負担をしておった。ところが国の支出にすると、なかなか支払い事務がおくれてくる。そこで一応県にその立てかえ支弁をせしめるという形をとることになりますが、そういう形にすると、一体事務的にどの程度の日にちが短縮されますか。
  36. 大山正

    大山政府委員 実は現在も、実際の支出事務は今度の改正のごとく府県でここ何年か行なってもらっておるのであります。と申しますのは、国から直接本人に支払うことになりますので、これは手数から見ましても、日にちだけでなく、本人とのいろいろな指導連絡も非常に不十分でございますので、現実にはそうやっておる。従って現実とこの法の規定とが合わなくなっておるわけで、現実に合わそう、違法にならぬようにしよう、こういうことでございますので、今度の改正によって日にちが短縮されるわけじゃなくて、現実にやっておることを法の方に合わせていく、こういうことでございます。
  37. 滝井義高

    滝井委員 最後に、提案者の谷口先生に一言お伺いをしておきたいのですが、いろいろ政府当局からの御答弁はお聞きの通りでございます。谷口先生は与党の中の重鎮でございますが、こういう政策民族の一番根本的な問題であるにもかかわらず、案外盲点になっておる。そして予算も御承知の通り四千七百万程度しかつけられない。その割にこれは日本国民の半数を占める御婦人の間では相当の関心を持たれておるものだ。しかし予算はついていない、こういうことでございます。そこでこの提案者としては、今後五カ年間も薬事法の特例を法律の上で実現をし、そしてあわせてその実地指導というようなものを普及していこう、こういう心がまえでございます。従ってこれはどうですか、来年は、提案者としても、与党の重鎮の谷口先生としても、御責任をもって一つ政府を督励して、この政策がほんとうに国民大衆の中に堅実に、しかもヒューマニズムにあふれた民主的な方法で実現ができるように御確約ができるかどうか、これを一つ提案者として意見を述べていただきたいと思うのです。
  38. 谷口弥三郎

    ○谷口参議院議員 ただいま滝井委員からのお話は、私どもがかねがね思っておるようなことでございまして、この受胎調節実地指導員に渡す金などは、もっとどうしてもふやしていただかなければならぬと思っておりますが、まあいろいろな事情で本年はこの程度にきまったのでございますけれども、明年度はぜひこれを拡大してもらって、十分その目的を達するようにしたいと存じております。  また先刻お話しの精薄児童などにいたしましても、民族の逆淘汰方面——特に私どもも母性保護の上からも民族の優秀化の上からも、ぜひそれを実現したいと思いますし、ことに精薄児は御承知のように分娩時などにおいての難産が非常な原因になっておりますので、妊娠の間あるいは分娩時の方面にも国がもっと指導してもらいたいと思って、この前の予算のときにもいろ  いろお願いもしたのですが、どうも微力で、先生のおっしゃるようにそう重鎮でもないものですから、思うように  いかずにおりますが、ぜひともそういう方面ももっと十分にやって、民族の優秀化、あるいは逆淘汰などの起こらぬように大いにやりたいと存じております。それは私の及ぶ限りにおいてやりたいと思っております。
  39. 滝井義高

    滝井委員 それからもう一つ政府の方にお願いをいたしたいのは、やはり妊娠中絶あるいは受胎調節というようなものには、犯罪的なニュアンスが伴いがちでございます。従ってそういう悪い血に対する是正と申しますか抑制と申しますか、そういう方面に対する注意という点はやはり怠ってはならないと思うのです。一方非常にいい面もありますが、暗い面も中絶家族計画というものには伴いがちでございます。そういう点に対する配慮というかPRと申しますか、そういう点をぜひ政府は心がけていただきたいと思いますが、そういう方面に対して何か政府の方で考えておることがあれば、この機会に御説明願っておきたいと思います。
  40. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 これにからまる犯罪的ニュアンスというと、私の方の感じでは二つあるかと思います。一つは、いろいろな犯罪等に関連する関係者がこういうようなものに非常に——ことに先ほどの人工妊娠中絶の場合にはやみの問題、こういうような当事者自身をめぐる問題、それからもう一つは、今度別個に、本人あるいは家族あるいはこれに関連する医師等に、恐喝その他これを種にする犯罪が起こりやすい。大体今までこういうような二つの問題をわれわれ聞いておるのでございますが、このいずれにいたしましても、こういうふうな非常に必死なことを当事者としては行なう場合に、そう陥らざるを得なかったような原因ないしはこれを中心にしていろいろな犯罪が起こるということについては、これを探知するのはやはり医師を初めこれの届出等を受けて保護に当たる保健所その他の衛生行政の担当者ないしは福祉関係のものと思いますので、こういうようなチャンスをつかまえまして、その防止には十分注意しなければいかぬと思いますので、一そうその点につきましては注意を喚起いたしたいと存じます。
  41. 滝井義高

    滝井委員 以上で終わります。
  42. 八田貞義

  43. 本島百合子

    ○本島委員 ただいま滝井委員から相当詳しく御質問がありましたので、それとダブらないように御質問いたしたいと思います。  第一点は、優生保護にかかりますとき非常に日にちがかかるのです。これは審査会があって、それで決定されるということになりますので、こういう点で妊娠中絶をしようということを決心されるのが非常におそいようです。大体貧しい家庭の方々でも、あるいは病弱者の場合でも、どうしてもいかぬからということで、それでおそくなって申請される人が多い。申請されてからその決定までまた日にちがかかる。そんなことをやっていられない。お医者さんなんかからも、月がたって参りますと中絶する場合に非常に置くなるから、こういう注意があったりするものですから、どうしても借金してでもやってしまうというような方がたくさんあるわけです。こういう点については、厚生省としては、一体申請されてからどのくらいでこの手術が行なわれていたというふうにお考えになっていらっしゃるのでしょうか。
  44. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 ただいまのお話で、優生保護の中で、いわゆる結紮その他を行ないまして妊娠をしないようにいたします優生手術、それから先ほどから百何万ということで問題になりました妊娠してからの人工流産と、この二つございまして、いずれも手術的行為でございますが、手術という方は前者の妊娠しないようにする手術でございます。この方はいろいろ認定いたしまして、条件がそろっておる場合にやる場合と、それから遺伝性疾患その他で、これは本人の納得なしでも、民族優生の立場で審査会にかけまして、これが認定して強制的にやる、こういうことでございまして、人工妊娠中絶の方は現在、申請いたしまして認定を受けるというようなことはございません。これはあくまで条件がそろっておりますれば、指定を受けた——指定も都道府県がいたすのではなくて、地方の医師会がこの人工妊娠中絶に当たる医師の適任者を選定いたしまして、そこで条件に合っておるものならば医師が行なうのであります。従いまして行政機関との関連で認定を受けるまでの期間が云々という場合には、今の強制優生手術、先ほど年間千何件と申しました、これだけでございます。これは相当慎重にいたします。といいますのが、本人の意思に反しまして国の立場から強制的にもう妊娠しないようにする手術でございますから、これはむしろ家系の調査から既往歴その他厳重にいたしますので、これの手術がおくれたのでという不満の非難は今までのところほとんどございません。むしろ、受けるのが不適当だというので、中央優生審査会等へ受けないための再審査の要求等もまれに起こります。以上のような状況でございます。
  45. 本島百合子

    ○本島委員 質問がちょっとはっきりしませんで失礼しましたが、前者の場合には、今言われたように調査が非常に厳重で、受けたくないからという不満もあるようですが、その場合にはこういうことが起こるのです。本人はそう言っても、むしろほかの人たちからすれば何としてもしておかぬとあと生まれてくる子供がもうどうにもなるまいというようなことで本人と家族との間に摩擦が起こるということもあるようです。けれども後者の場合、今おっしゃる通りですが、そうするとこの改正の一点にかかってくるのが——私どものところに相談に来る人はみんな、役所に頼むとおそくてどうにもならない、それでこの線で、たとえば私どものところですぐそれぞれに注意をいたします。そして二十日以内におかげさまでと言ってくる人はあまりないようです。一カ月越して来る方が多いのです。それはどこに原因があるのでしょうか。私どものところへ来る人の話では、そういうところに頼めばおそくなってみすみす、今二カ月か三カ月になるかという——人工流産の場合ですよ——そんな程度だと思っていたのに、役所に頼んだばかりにこれが月を越して、四カ月になってきました、五カ月になってきました、こう言ってくるのですが、これはどこに欠陥があるのでしょうか。
  46. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 ただいまのは、先ほど申しましたように、役所に届けたりあるいは認定を受けなければいかぬということになっておりませんので、医師だけの問題でございますが、もしそういうことがあるとすれば、それは役所といいますよりも、たとえば生活保護階層費用の問題、それの費用の出しどころの、医療券をもらうとかそういうような福祉事務所の問題ではないかと思います。この点、私の管轄でございませんのでつまびらかにしておりませんので、御了承を願いたいと思います。
  47. 本島百合子

    ○本島委員 わかりました。こういう問題については、そういう点もやはりお調べいただいて、今後そういうことがあまりないようにしていただきたいということが一つです。  それから先ほど滝井委員指摘されましたように、ボーダーライン層は一年間に三百円とおっしゃるのですが、現実に末端でやっておるところを見ておりますと、たとえば薬品、器具をいただきましても、人によって度数は違うでしょうけれども、それでも絶対足りないのです。そういたしますと幾ら指導いたしましても、それを買うことができない。それじゃ抑制できるかというと、これまたできないことですから、ここでいつも食い違って、最も受胎調節をしなければならない階層というものができないできておるのです。それじゃ全然指導されていないのかというと、指導は受けておるのです。受けておるが、今言ったように、こういうところにひっかかってくるわけなんです。ですからこれは年間でなしに、月にそのくらいもらえればどうにかいくのじゃないか、こう言っておるのです。ですからこの点はことしの予算の中で、追加をとってでもやっていただきたいということです。  それからもう一つは、特別指定地区をはずすとおっしゃったのですが、今までの家族計画等の運動を見てみますと、行き詰まっておるということが私どもによくわかるのです。ということは、しなければならない階層のところではできない、そして中産階級的なところで、少し子供さんでもふやしてもらいたいというようなところは割合に着実にやっていらっしゃる。これが現状だろうと思うのです。そうすると、私どもがどこの都道府県へ行って聞いてみましても、それじゃ一体どうすればうまくいきますかと聞くんですね。そうすると現在のように、昔産婆さんでこういう指導員になられた方がテクシーや自転車でてくてくやっていらっしゃる、これだけではもう手に負えないということです。私は東京都におりますとき、キッチン・カーみたいな料理の車はある、あるいは移動図書館の車はある、こういうものはそろっておりますが、この受胎調節指導という面においてのそういう車を使っておるところはほとんどないのです。私どもは、指導員というような方々があるからうまくいっておるだろう、こまかく回られているからいいだろう、こういうふうに考えておりますが、東京都の場合でも一カ月に千円、そして百人見当の指導といわれると足が出ちゃうのです。ほんとうに一生懸命にまじめにやられる方に聞きますと、これはみんな足が出ちゃうのです。ですからこれがうまくいかないという原因がここにも出てくるわけです。  それから最も必要な階層、こういうところ見つけていくということがなかなか、また人権侵害ということを言われるわけです。積極的にこちらが行くとしかられる、向こうから来るのを待つというと、保健所あたりにもちゃんと相談所がございますけれども、なかなかどこの保健所でも一ぱいになっておるというところはないようです。なぜそうなるのかというと、人間心理で、そういうところへ行って相談すればいいんだけれども、行くことがなかなかむずかしいし、調節よりも妊娠してしまってから片づけた方が早いんだ、これが一般の風潮になっておるから、やみ中絶が多くなってくる、こういう理屈にもなってくるわけです。ですから今回の予算で削られたなんということは、これは私ども削られちゃ困るということでいろいろお話し申し上げたはずでございますが、積極的にやっていくという意欲で考えていったらばどうすればいいか。その点で私どもの経験からすれば都道府県に車くらい用意をして、そしてこちらから出向いていって車の中ででも相談を受けてやってやるというような積極性がなければ、もうある程度行き詰まっているというのが現状だと思う。こういう点をどういうふうにお考えになっておるか。
  48. 大山正

    大山政府委員 ただいま受胎調節の実際の指導面につきましていろいろ貴重な御意見をお述べになったのでございますが、受胎調節予算につきましては確かにまだ不十分でございまして、先ほど申し上げました生活保護階層年間一人当たり三百円といいますのは、五日に一ぺんというような度数の計算になるかと思うのでございますが、これは平均でございますので、それぞれの個人的な事情によりまして多少これの金額を動かして実施するということになるのでございます。もちろん十分でござませんので、今後ともこの面の増額につきまして努力したいと考えております。  それから特別地区につきましては、先ほど申し上げましたように特に地区を限らずに、一般的に全国を通じまして特に低所得階層につきまして施策の重点を向けていきたい、こう考えております。その機会に、何か巡回する車でも用意するかということでございますが、事柄の性質からいいまして、あまり大っぴらに訪問するというわけにもいかない面もあろうかと思いますので、その点は一つ十分検討するようにいたしたい、かように考えております。
  49. 本島百合子

    ○本島委員 今の考え方が、やみ中絶がはやるもとじゃないでしょうか。大っぴらにとおっしゃるけれども、法律相談でも何でも巡回自動車でやっているわけです。やはり個人の秘密にわたるものが多いわけですけれども、割合来ているのです。こういう問題ですと、自分が保健所まで行くといっても、保健所までの距離が遠い地域がある、なかなか行けるものじゃない。こちらから出向いていってよく指導する、そのときにはもちろん指導員の方も一緒に来てくれるわけですから、こっちから出向いていくと案外来るものなんです。これは女の人の一つの心理かもしれませんが、自分一人だと、あの人はああいう相談をしたとか、こういうことがあったというようなことが案外漏れるのですが、大ぜいの中で指導を受けるということは割合なさるのです。ですからその点は男の人と女の人の感じの食い違いだと思うのですが、やはり積極的にそういう地域に出向いていく。そうして、民生委員さんもいらっしゃるし指導員さんもいらっしゃるのですから、たとえばこういう家庭へは主として行かなければいかぬだろうという家はわかっているわけです。そういうところに力をかけてやっていくという積極性がなければ、この受胎調節徹底ということはできない。  それからもう一つは、家族計画協会というものが全国的に組織されていると思うのですが、これは全国的にでき上がっておりましょうか。
  50. 大山正

    大山政府委員 ただいま御質問になりました家族計画に関する団体は、全国対象とするものとしまして家族計画連盟ができ上がっておりますが、まだ各県にそれの支部ができるという段階にまでいっておらないようでございます。各県にそれぞれ独自の団体が若干ありますが、まだ各県にすべてそういうものがあるという段階には至っておりません
  51. 本島百合子

    ○本島委員 会に対する補助金というものがあるはずなんですが、それを見てみますと非常にきついものがつけられておるようですね。たとえば工場地帯にどのくらいの従業員があって、その従業員数のところで何回やったとか、それからたとえば小さい中小企業ならば、これくらいの従業員のあるところで何回くらいやったか、そういうような形で補助金が出るという形をとっていらっしゃると思うのですが、そうですか。
  52. 大山正

    大山政府委員 現在団体補助につきましては、中小企業に対する受胎調節指導ということを団体にお願いするという意味で補助金を出すことにいたしまして、現在二団体に出しておるのでございますが、今後さらに全国的な団体、その他のこの方向の相当指導力のある団体もできるようになりますれば、その実績等十分考えまして、その補助金配付につきましては十分検討して参りたい、かように考えております。
  53. 本島百合子

    ○本島委員 その団体名はどういうところでしょう。
  54. 大山正

    大山政府委員 現在補助金を支出しております団体は、社団法人家庭生活研究会と社団法人東京都家族計画協会、この二つであります。
  55. 本島百合子

    ○本島委員 この点ですけれども、役所仕事といいましょうか、いつでもワクをはめて、そのワクにはまってこないとやってやらないぞ、こういうのですね。保健所あたりもやっているのに実績が上がってこない。そして最もやらなければならない階層のところには、こういう受胎調節の正しい教育が行なわれていない。そしてその力が足りないからこういう民間団体に多少の補助金を出してやらそうとなさるわけですね。こういう場合に実績とおっしゃるけれども、むしろ私は力が足りないのであれば、地方の団体でも受胎調節なんかを指導していらっしゃるというところはまじめな団体が多いのです。それで力が足りないで依頼されるのですから、そういう団体をもう少し積極的に皆さん方の方で見つけて、一つの力をかりるというふうになさったらどうかと思うのです。ということは、基準をきめて、何名以上の工場でこれこれやっていなければ、それは出さないんだ、こう言われるのです。そうすると実際問題として、そういう小さいところの中小企業団体あたりでも、そういう方を呼んで指導を受けてなんということになってきますと、工員さんなら別ですが、そうでない、その家族の奥さんなら奥さん、こういうものを指導していくわけでしょう。なかなかうまくいかないのです。ですから私は、この五カ年間器具の販売について延ばされるということになれば、当然この五カ年というものを目途としてもう少し積極的にやって、ある程度普及ができてしまえば手を抜いてもいいのじゃないか。ところが今日もうすでに予算上では減額されてきておる。それはその減額されたものが消化しきれなかったからだ。消化し切れなかった理由はどこにあるかというと、さっき言ったようにワクがある、たとえば一年間に三百円というようなワクがあるから、こういう金にひっかかってくる。そして回数を先ほど言われたように五回、こういうことを言われているのだけれども、お前たちは貧しいのだからそっちの方も節制して五日目になんて、こういうことがすでにもう人間性を無視しているのです。ですから、そういう階層は、いつもそういうことを指導を受けながら、またできちゃいました、できちゃいました、こうなってしまうのでしょう。こういうことが仏作って魂入れずというところにひっかかってくるのだと思う。こういうところで、私はむしろ今日ある予算不足ならばあとで追加してやるから、そういうところを徹底的に指導していけ、そういう方へもどんどん渡してやる、そういうことになってくれば楽なんです。またそういうふうにしなければボーター・ライン層並びに生活困窮者の場合はどうしても、そういうはずではなかったが、ということが出てくるわけです。ですから、その点は、私は本年度から追加予算をとってでもやってやるというような意欲を持っていただいて、正しい受胎調節の方向へ方向づけていただきたい。それが一点。  それからもう一つは、受胎調節を受けない——先ほど犯罪的な面で言われたのですが、これは、私は犯罪の面ばかりで見るべきではないと思うのです。あくまでも子供を産みたいというのは、女でも男でも本能で、特に女の場合は、育てられるものなら育てたいと思っているわけなんです。ところが、それが育てられない事情にあるから中絶するわけですね。やみ中絶が非常に多いと言われますが、そのことを責める前に、大体薬の中でインチキ広告が非常にたくさん出ていると思うのです。この売薬でもっておりるのだという考え方が、ある新聞や何か雑誌など見ていると出てくるわけです。こういう点について、どういう啓蒙をされてきたか。それからお医者さんの中でも、正規のお医者さんにかかればいいものを、そういうお医者さんでは割合に費用がかかるというので、変なやみの医者というのでしょうか、そういうところにひっかかっていく人もあるわけです。先ほどもちょっと滝井先生も言っていらっしゃったのですが、こういう点の、何といいますか、罰則規定とか、そういうものはないのですか。
  56. 大山正

    大山政府委員 ただいまの御質問のうち、前段の受胎調節に関して私からお答え申し上げます。受胎調節予算が、今日まで必ずしも十分消化されて実績が上がっておらないという点はまことに遺憾でありまして、私ども本年度から、先ほど申し上げましたように、特別地区というようなことでなしに全国的にやるということ、それから実地指導員に対する手当につきましても、従来単に受け持ちが何人であるということで出ておったのでございますが、むしろこれを実際に指導いたしました件数に応じて払うというような形にいたしまして、できるだけ実績を上げて参りたい、かように考えておるのでございますが、今後ともこのやり方につきましては一つ十分検討いたしまして、実効の上がるような方策を考えて参りたい、かように考えております。
  57. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 ただいまの人口妊娠中絶優生保護法によらざるいわゆるやみ中絶でございますが、これは刑法による堕胎罪の罰則適用がございます。
  58. 本島百合子

    ○本島委員 私の聞いたのは堕胎罪とかなんとかいうことではなしに、そういう医師会なら医師会に対して、皆さんの方で警告をしていただく。値段もある程度の協定があると思うのですが、医者によっては非常に高いものをとっているのです。それからお医者さんによっては実費程度だというのもあるわけです。そういう点で警告を発せられたことがあるかどうか。それから売薬については、これは売薬がこういうもので悪かったという実証が上がった場合には、それを売った者、また製造した者に対する罰則があると思いますが、そういうのではなくて、そういうものを使ってはいけないのだ、そういうものはだめなんだというようなPRなんかをされたようなことがあるかどうか、これを聞いているのです。
  59. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 具体的に、こういう事実が多いからということで、それを取り上げて医師会に警告したことは、具体的な例はございませんが、ただこれは医師会の倫理といたしましても、せっかく正しいものであるならば、指定を受けて堂々とできるように優生保護法はできておるのでございますから、それ以外のやみの行為等はしないようにするというのは、医師会の方でも各地いずれも十分注意されているごとでありますので、特段に行政庁からそういうことを指摘してということは——ふだんからお互い話し合っていることであると思いますが、さような形でいく。ことにただいま慣行料金という問題がありましたが、料金の問題は、健康保健法、社会保険の診療報酬の規定で、人工流産も正規にちゃんと載っているわけでございまして、これはほかのいろいろなやみ料金ということが全然絶無ではないと思いますけれども、この点は行政庁としてなかなか介入しにくい問題であります。しかしこれは一番大事な点でございますので、医師会あるいは医療従事者の団体でも関心を持たれてやっておられることでございますので、この点は特段に通知を出すというようなことはただいまのところ不適当かと存じております。それから国民に対する、今のあまりきき目のありっこない、人工流産が起こるというような内服薬の問題でございますが、これはいわゆる誇大広告ということで、薬務局が所管しております薬事法である程度規制できるわけでございますが、しかし幾ら広告を規制しましても、国民の力で、昔からのいろいろな風習がございますが、そういうことではいけませんので、正しい受胎調節、それからいたずらな人工妊娠中絶が行なわれないようにするということは、家族計画の一環として、PRの重要な内容として一そう努力しなければいかぬ、かように存じております。
  60. 本島百合子

    ○本島委員 もう一点、やみの問題でお尋ねしますが、そういうやみ中絶をやらなければならないという人自身も、これはせつないことだろうと思うのです。ですからそういうことのないように、もう少し積極的にPR活動をしていただいて、母体を保護してやっていただきたいということが私どものお願いなんです。それについては予算が、先ほどから聞いております通り零細な金で、全国的に啓蒙運動をなさるのにうまくやれるのだろうかと不思議に思って聞いているくらいなんです。ですからこういう点については、五カ年間これを延長されるということであれば、五カ年の間にそういう間違ったやみ中絶をする人はなくなるのだ、あるいは売薬を飲む人はなくなるのだというくらいまで、予算の中からでも見てもらいたいと思います。それからもう一つは、この優生保護でも、やみの場合でも同じですが、三カ月過ぎてきますと打ち帰って埋葬しなければならぬということになるのですが、まず埋葬する方というのは少ないようです。みな川や公園、雑草のはえているところに捨ててあるので、それがよく問題になってくるわけです。こういう点について何か厚生省としては施策はないものか、それはちゃんとした赤ちゃんであれば、死んだということでだれでも埋葬は考えるでしょうが、そこまでなっていない子供、これはお医者さんが持って帰れとおっしゃるんですが、持って帰って埋葬するということになれば金がかかってしまう。どうしても埋葬費というものに金がかかるものですから、自然、川に捨てたり、やぶのところにほうってあったりするんです。そういうことが全国的に非常に多くあるわけです。ですからそういうものに対して、何か金がかからないで埋葬がしてあげられるという考え方に立っていただけるかどうかということをお伺いしたいと思います。
  61. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 現在のところ四カ月以上でございますと、死産の届けを出すようになっておりまして、同じ人工流産でございましても、四カ月以上ですと、ある程度形ができておりますので、同じ胎児とはいいましても、今のお話のように、人間の感じが近くなりますので、跡始末が、三カ月以内の小さい、胎盤と一緒に不潔物として処理する場合と、確かに感じとして差があると思います。ただ、ただいまのところは、これはまだ普通の死体というふうにはしておりませんで、基地埋葬法でも、四カ月というようなものは、正規の墓地埋葬法による埋葬とかそういうような対象にも、実は法的にもいたしておらないわけでございます。従って実態的にそういう感じに合うようにやる。従来地方によりましては、むやみなところに捨てるのは忍びないということで、えなを集めてやる団体等ができまして、これを一括して人の目につかぬところで焼却をするとか埋没をするとか、そういうことがございますが、確かに今の点、病院でもそういうようなものが出たのを、普通の汚物と一緒に処理するのは感じとして工合が悪いので、本人に持って帰ってくれ、こういうことが起こりがちだろうと思います。この点は今のところ具体的に、今までそこまで施策をしておりませんので、十分検討いたしまして、実態に合ったように、しかしこれはあまり画一的に全国一斉にこうでなければならぬとなりますと、風習とかあるいはそれぞれの処理場の——処理した医療機関の能力によっても違いましょうから、これはあまり画一的ではいかぬと思いますが、できるだけこれは検討  いたしまして、持ち帰れといわれて、せっかく目的を達した人が跡始末に困らぬような方法検討してみたいと思います。
  62. 本島百合子

    ○本島委員 これで終わりますが、この優生保護的な面で特に気をつけていただきたいことは、いろいろ社会的に問題になって初めて厚生省は、これではいけなかったということをおっしゃるのですが、家族計画についてだけはもっと積極的に、日本は多産国で困っておるのですから、といって将来子孫を残さなければならない階層だけが減っていくというような形がもうすでに現われてきておると思うのです。こういう点については役所としても施策にもっと万全を期していただかなければ、この形はまだだんだん進んでいく。そうして悪い階層あるいは遺伝性の人たち、こういうところではどんどん子孫が繁栄するという形が出てくるだろうと思うのです。これを憂えて人口問題研究会なんかでも盛んに言われるわけなんです。ですからこういうものを改正されるときには、厚生省としてもやはり今後の対策として、今までの惰性でなくて、新しい施策というものが予算の中にも打ち立てられ、そうしてこちらにも改正が出てくるというふうになっていれば一番よかったのですけれども、そうなっておらなくて、びっこになっているようですから、こういう点については特段の研究をされて、特にこういう面の研究家もたくさんいることですから、積極的に民間の人たちとの懇談会などもおやりになって、そうして足らざるところを補っていくというふうな形をもってやっていただきたいと思うのです。保健所だけを頼られても解決しない問題が多いのですから、そういう点を要望いたしまして私の質問を終わります。
  63. 八田貞義

    八田委員長代理 小林進君。
  64. 小林進

    ○小林(進)委員 こういう機会ですから、しろうとの私も日ごろ疑問に思っておりますることの一、二を質問いたしたいと思います。  第一番目の、今もお話のありました流産の胎児の処理の問題ですが、これは話のついでですから、私はこういう企画があったことだけを申し上げて、一つ御意見だけ聞いておきたいと思うのであります。それは流産を病院なり医者のところに行って行なうときに、手術料の中に胎児を処理する料金を含めてお医者さんにとってもらう、これは強制的にとってもらう。そのかわり都なり市なり——町村まではいきませんけれども、それを処理する何かの機関を設けて検討する。そうして病院の通知を受けて、四カ月なり三カ月なりの胎児を引き取って、正規の火葬場なり埋没の場所なりに行って処理をする、こういうふうにしたらいいのではないかという意見が、数年前ですけれども相当あった。そういうことを具体的にやろうという運動も東京都内にはあった。一時は東京都内だけでも七十万人も百が人もそういう流産した胎児があるというようなことがあって、それが五カ月も六カ月もたちますると完全な人間の姿をしておりますから、それが川の中に捨てられ、便所の中にほうってあったりするというようなことは、どうも日本人の古来の美徳から見て感心しないから、やはり引き取って、一応坊さんにお経でも読まして、そうして完全に焼却するというような方法を講じなければいかぬのじゃないか。そのためには中絶や、やみからやみに葬るようなことをする女性みずからにその金をもらうわけにはいかぬから、お医者さんが二千円なり三千円なり手術料をとるときに、半強制的にその埋没料を加えてとってもらったらどうかという企画があったのですが、どうでしょうか、厚生省がお考えになりまして、実際上それは一体実現性ありやいなや、御意見を一つ承っておきたいと思います。
  65. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 ただいまのところ、この四カ月以上の死産については、法的にはまず医師は死亡者と同じに届出の義務が医師法で課されております。それから死体解剖保存法でも、四カ月以上の死産児は死体と同じ取り扱いになっております。ただし人工流産の方では——この対象はいわゆる人工流産の中に入りまして、三カ月も四カ月も、別に線はなくて同じ扱いになっている、さような関係でございますので、形の上では、原則といたしましては死体と同じにその保護者が引き取りまして、埋没については墓地埋葬法による許可を受けて処理するというのが原則でございます。相当原則は守られておりますが、今のお話のように現実には人工流産——掻爬されて形もくずれて出たというものを、一々そういう許可を受けて、棺を作って高い金をかけてやるということは現実に合わぬものでございますから、実際はそういうことになっておる。従ってこの法にきめられたものを、他人がまとめて一括してやるという方法については、これは相当研究を要するわけでございます。従いまして原則はあくまで尊重するけれども、そういうような便法もこの法のもとでできるかどうか、この点がございますが、しかし実際にはこれは何とかしないと確かに不適当なことがあるようでございます。それから、それが動物の死体と一緒に発見されて問題を起こすというようなことも、かつて新聞紙に何度か出たことがございます。これはぜひわれわれの力でも研究いたしまして、法的にどういうふうに処置するか、あるいは法の中でできるならば、そのようなふらちなことが起こらぬような団体なりを設立させるとか、そういうようなことを至急考えてみたいと思います。
  66. 小林進

    ○小林(進)委員 今までは本人みずからにそれを引き取らせたり処置せしめるというところに、どうもいろいろ公けの社会風潮を乱すような欠陥もあったようですから、一つ十分御考慮いただきたいと思いまして、この問題はこれで打ち切ります。  次に、これは提案者一つお尋ねしたい。これは質問があったかもしれませんけれども、今まで国庫支出でありましたものを、今度は県がその費用を支弁する、国庫はそれを負担する、こういうわけなんですが、全額はやはり国庫が御負担なさるわけですか。
  67. 谷口弥三郎

    ○谷口参議院議員 さようでございます。
  68. 小林進

    ○小林(進)委員 そうすると国庫は、国庫からいえば費用は変わらずにおやりになるが、その行政事務といいますか、手続だけは県がおやりになる、こういう形になるのでございますか。
  69. 谷口弥三郎

    ○谷口参議院議員 これまでは国が全額を支出することになっておったのでございますが、先刻もお話のございましたように、国から出すのでは非常に手数もかかるし、円滑に進まぬから、それで地方でそれをいわば代理に支出をしてもらっておいて、そしてあとで国がその全額をいわゆる間接支払いをやろうというのでございます。
  70. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 今谷口先生が説明された通りの内容でございまして、形といたしましては県費で一ぺん概算を計上いたしまして組みまして、そしてそれに対しまして精算で全額同額を県費に交付する、こういうような形にいたします。現実にはそれが一番正しく、また県としても事業計画がはっきり立つわけでございますが、現在は国から、この法律で、直接払うのをここ数年来県が実際にはやっておるわけでございます。非常にあいまいになっておるわけで、そこをはっきりと法的に是正して、県もやりいいようにしよう、こういう形でございます。
  71. 小林進

    ○小林(進)委員 それでは大体この問題はわかりました。  それから改正の第二点ですが、これも先ほど質問があったかどうか知りませんが、これは調節の実地指導をする助産婦保健婦看護婦というような者が受胎調節のための医薬品を販売することができるということを五年間延長されるというのですが、この販売品は厚生省か何かが一括してこういう指導を行なう者に卸値でおろして、若干の中間マージンをこういう指導者がもらって、そして販売する、こういう形になっておるのですか。一体その卸と小売の値段の、その利益の配分なんかどんなふうになっておるのですか。もう少し詳しく承りたいと思うのですが……。
  72. 大山正

    大山政府委員 実地指導員がこの条項によりまして販売できる薬品は、ゼリー剤、クリーム剤、錠剤、親水性堕剤等でございますが、これをそれぞれの実地指導員が自分で購入して販売しておるというのが大体の実情でございまして、県である程度あっせんをし一括してやっておる場合もあるようでございますが、先ほど滝井先生からも、そういうものは厚生省で十分調べて、何かいいものを安く一括して入るような工夫をしたらいいではないかという御意見もございましたので、この点十分一つ検討してみたい、かように考えております。
  73. 小林進

    ○小林(進)委員 それは先ほど滝井委員の質問があったか知りませんが、私も同感です。それは看護婦保健婦助産婦が勝手に薬屋から——結局薬局でしょうな、こういう品物を売っているといえば……。そういうところから買って、そうして持ち歩いて販売しておるというよりは、やはりこういうものは厚生省である程度その卸元を教えるとか、販売のあっせんをするとか、あるいは優良品を指定して、特に助産婦看護婦等々にはそれを使用せしめるような指示を与えて、若干の販売をしたら、その中間のマージン的なものはその看護婦なり保健婦のふところへ入るように、幾らか便宜をはかってやられた方がいいのじゃないかと思いますがね。今までだって若干利益はあるのでございましょうな。
  74. 大山正

    大山政府委員 その助産婦看護婦等の実地指導員がその間若干の利益を得られるというような意味もありまして、こういうような特別な条項を設けておるというのが実情でございます。
  75. 小林進

    ○小林(進)委員 私はこういう人たちにはやはり利益を与えてやることはいいことだと思いますね。さらにその利益を、優良な品物をもってもっと多く利益が与えられるように、これは厚生省でもう少し積極的に御指導していただいた方が、具体的な方策を講じて上げた方が非常にけっこうだと私は思いますので、そのように一つお願いいたしたいと存じます。  次は、私は若干しろうとめくかもしれませんけれども、こういう機会ですから、一つ御質問することを許していただきたいのでありますが、それは優生保護法の第三条に基づく強制手術といいますか、医師認定による優生手術、この手術が年間一体どれだけの人に行なわれておるか、先ほど千人なんぼとかおっしゃったように聞いておりまするが、一体どれだけの人数年間に行なわれて、その中で女子の受胎調節が大体何人、男子の優生手術がどれくらいになっておるか。ついでですから、その中で第一号から第三号までに至る人員の区分、そういうことを私は少し数字でお伺いしておきたいと思うのであります。
  76. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 実は先ほど三十三年の分は滝井先生の御質問のときにお答えした数でございますが、三条によりますのが四万九百四。その内訳といたしましては、このうちの一号にあたりますものが百九十二、二号が百四十二、らいが七十二、それから母体の生命危険が一万五千八百二十一、母体健康低下が二万四千六百七十七であります。これは強制でなくて、いわゆる医師認定によるものであります。それから今お話の四条のいわゆる強制する方は千二十七。この内訳を男女別に申し上げますと、これは私の方の男女別の資料が会計年度になっておりまして、今言った資料が歴年になっておりますので、端数が少し違いますが、五対七、すなわち千二十七の場合には女が約六百、男が四百という程度の数になります。正確なことを申し上げますと、女が六百三十三、男が三百九十四という数字になります。それからもう一つ飛びまして、十二条によるものが五十四でありますが、これは非遺伝性精神疾患であります。
  77. 小林進

    ○小林(進)委員 次に、第十四条の医師認定による人工妊娠中絶、これも数字をお知らせ願いたい。     〔八田委員長代理退席、委員長着席〕
  78. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 これは先ほどお答えしましたが、三十三年度を申し上げますと、合計いたしまして百十二万八千二百三十一。これを号別に申し上げますと、一の遺伝性疾患が千六百三十、らい疾患が三百十五、それから母体の健康は十四条の四号になっておりますが、これが百十二万四千六百九十七、それからこれの五号の中の暴行、強姦等が三百五十八、それから届け出の内容がどれに当たるか不詳というのがございますが、これが千二百三十一、以上のような内容でございます。
  79. 小林進

    ○小林(進)委員 第十四条の一号から三号までは、財団法人たる医師会の指定する医師が、左の各号の一に該当する者に対して、本人及び配偶者の同意を得てこれこれのことができる、こういうことになっております。そういたしますと、これは大体医師個人の認定によって人工中絶が行なわれて、あとは医師が別にまとめて報告さえしておけばよろしいということになるのですが、実際にはこの一号から三号までに該当しないもの、つまり不義で子供ができたとか、あるいは何かでできてしまった、だから人工中絶をしようというようなものも、正式な医師の手によって事実こういう中絶が行なわれる場合も考えられますが、あなたの先ほどの説明によると、そういうものはやみ中絶になりましょうね。あるいは正式の医師の資格を持たざるしろうとだとか、あるいは個人の関係だとか、実際に人中絶をやる資格も技術も持たない者がこういうような人工中絶の作業をするやみ行為と、資格のある医師が実際は第十四条に該当しない人工中絶を行なうというやみ行為と、やみ行為というものは二つに分けられるのではないでしょうか。一体その数字がどれくらいあるものか。これは推定数字になると思いますがどれくらいあるものかお知らせ願いたいと思います。
  80. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 ただいま一から三までという御意見でございましたが、実際にはこの公式というのは五までできると思うのでございます。ただいま御意見に出ました経済的理由または身体的理由によって、妊娠の継続が母体の健康を害する、これがただいま申し上げましたように百十二万八千のうちの百十二万四千を占めております。これがいわゆる正式のものであります。これは指定医がこの法律の第四号と認めまして行なったものであります。これを合わせて百十二万であります。従いまして、今のやみ行為と言われましたのは、指定医にあらざる者が、この条項にも実際に照らせば合うか合わぬかわかりませんが、これは指定医以外にはできないのでございますから、従ってやみということが大部分かと思うのでございますが、これは先ほどもちょっと申し上げましたように、実数はやみの性格から見まして行政的になかなか把握できないので、むしろ実際に当たっておる医師会、医学会その他のいろいろな分析の文献が発表されておりますが、そういうのを総合して、大体百十二万である正規のものの五割ないし九割の範囲内であるのではないか。大体こういうような数字を実は推定参考にしております。
  81. 小林進

    ○小林(進)委員 正式に届け出のありました百十二万に対する五割から九割というのがやみの流産とおっしゃるのですが、そのやみの流産を行なういわゆる窓口といいますか、やみ行為をやる手術者というか、それが一体どういう人か、その実態をお知らせ願いたい。今おっしゃるように、いわゆる医師会の指定によらざる医師が人工流産をやる、これもやみですね。それから全然医師にあらざる者がやる、しろうとがやる人工中絶というものが一体考えられないかどうか。昔は取り立てばばというものがありました。今でも農村に行くと、そういう古い経験者がそういう行為をやるということも、土地の習慣によってはあるということを聞いておるのですが、調査せられた範囲でよろしいのですが、お知らせ願いたい。  それからい一つは、こういうやみ流産によって死亡した妊婦の数は年間どれくらいになるものか。あるいは死亡までに至らないけれども健康を害したり、そのために、何とかいういろいろの病気がありますけれども、そういう病気にかかる人たちが年間どれくらいあるのか。これもおわかりになっておる範囲でお知らせ願いたいと思います。
  82. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 指定医以外の医師が人工流産をやれば、これはいわゆる法律外でやることでございますから、違法行為になりまして、これは刑法に引っかかるわけであります。従って、これが具体的につかめておりますれば、法的にいいますと片っ端から刑事事件が起こっているはずでございまして、そこが人工中絶やみやみたるゆえんでございますが、行政的には何としても把握できない。行政的に把握すれば当然これは告発なり、そういうことが続々と起こるはずであります。人工流産は、やった当事者のみならず、堕胎を受けた当事者もやはり違法行為になる。そこが非常にむずかしい問題で、実際のところ正確な数字は何とも言えないのであります。しかし先ほど言いましたような膨大な数があるということで、これはわれわれ行政を預かる者としては何とも申しわけないことなのでありますが、現在のところさようでございます。  それから、いわんや医師法に違反してしろうとが刑事上の堕胎行為をする、これはもってのほかでございまして、これは医学的な知識がない者がやるのでございますから、堕胎行為それ自身がいかぬほかに、母体の保護どころではなくて、これは傷つけることは大体間違いないということでございますから、これはもしあれば厳格に摘発していかなければならぬ。堕胎罪で摘発される者は、特別には医師が入っている場合もありますけれども、医師法違反のような、いわゆる医師をかたってやるというのが毎年何件か事例が出て参るわけであります。ただこれも、ただいまのところ私資料を持っておりませんので、これはあるいは医務局の方で持っております資料を調査すればある数が出るだろうと思います。  もう一つは人工流産の結果、妊娠中絶を正規に受けてなおかつ死亡がどのくらい出るかということでございますが、大体におきまして、今から二年ほど前に、谷口先生が会長をやっていらっしゃいます母性保護医協会という大きな産婦人科の先生方の団体がございますが、これが学術的に協力されまして、人工妊娠中絶の弊害調査をされました。非常に膨大な貴重な資料でございますが、それによりますと、直接障害率三・九%、人工中絶百人ありますと三・九人の直接障害がある。それから門後障害、その後長期にわたりまして腰痛とか不時の出血を起こすとか、いろいろな障害が起こるとかいう、これのデータは八・九%でございまして、これを合わせますと一割をこすわけでございます。ただ直接死亡例というのは非常に少ないのでございまして、一昨年のこの調査の中では、死亡数としては統計に出ない。ただ一例とか二例、たとえば子宮の穿孔を起こして、突き抜いて腹膜炎で死んだというのがその中にまれにございます。しかしその数はいずれも数例以下でございまして、全体の二万何千件という中からは率には出ないわけであります。
  83. 中山マサ

    ○中山委員 関連して。今これから出て参りますいろいろな障害について承ったのでございますが、かつて私が厚生政務次官をいたしておりましたときに、英国の厚生省と申しますか、そういうところの人が来て、日本はこういうふうなやみ行為を見のがしておるのか、これによって、そのときに直接の障害があることはむろんであるけれども、後年になってガンのもとになるということを非常に心配して私のところにおっしゃりに参りましたことがあるのでございます。この件について、そういうことをした結果ガンになる人はどれくらいあったか、そしてまたこういうことを一度ならず二度も重ねる人を私は聞き知っておりますが、こういう手術に何回までからたが耐えられるものか、そしておそろしい結果が後年において起こるということを母性保護医協会の会長の谷口先生は婦人層に御警告になったことがあるのでございましょうか。また厚生省としてこの問題について、婦人層に、あまりにも再々これを繰り返せばこういうおそれがあるということを教えて、そういうおそれがあるゆえに避妊というところに努力しなければいかぬという警告を発せられたことがあるかどうか、お尋ねしておきたいと思います。
  84. 谷口弥三郎

    ○谷口参議院議員 ただいまの人工妊娠中絶を何回もやったとかやるような人がおるということでございますが、日本母性保護医協会という指定医の会におきましては、人工妊娠中絶というようなことは最後の手段であるから、ます受胎調節をやれ、そして受胎調節をやったけれども失敗したという場合でも、いろいろの優生保護のワク内においてのみ人工妊娠中絶をやれということは、会員はもちろんのこと、いろいろな会合に臨んだ場合、婦人層その他の方人にも申し上げておるのでございます。  それから手術を何回もやったらいろいろな障害が起こりはせぬか、これはたびたびやった場合には、いかに優秀な医者でありましても、何回もやればいろいろな障害が起こらぬということは言えぬと思います。ただし子宮ガン腫とかあるいは子宮外妊娠であるとか、いろいろなのが人工妊娠中絶後に非常に多いのではないかというような説もありますので、私ども並びに産婦人科学会ではそれについてもただいま研究をいたしておりますが、実際にはそういうようなことがそのために起こったというような例はまだはっきりわかりません。しかしむろんそういう場合がありはせぬかというので、会の研究題目として研究いたしております。
  85. 小林進

    ○小林(進)委員 私はこれで終わりますが、人工避妊の問題とあわせて、やみによる人工中絶の問題、今の厚生省のお返事だけでも、五十万から百万近い、こういうやみの人工流産があるいうようなことは、私は、優生学上からももちろん、社会風紀、公序良俗の面からいっても放任できないものだと思います。いかにしてこういうものをなくするかという、そういう方法を、私は、先ほども同僚諸君が申しましたけれども、真剣に一つ考えていただきたいと思うのであります。そのやみの人工流産の中には、あるいはおっしゃるように、それは生活上の問題、経済上の問題もたくさんあると思います。そういう原因一つ一つ追求していただいて、金がなくて原因をなしておる者にはあたたかく一つ保護してあげるし、あるいはまた一時のうわ気か何かで風俗を乱してやった結果である者には取り締まりを強化するとか、具体的な幾多の事例をとらえて、そしてこういう好ましからざる行為がわが日本の中にあまりどうも風潮となっていかないように、あとを断つように大いに努力をしていただきたい、これをお願いいたしまして私の質問を終わることにいたします。
  86. 中村英男

    中村(英)委員 これは受胎調節指導員指導される場合に、厚生省がどの程度指導教育をされておるのかわからぬものですから私お伺いするのですが、農村の実例として、御承知のように、農村では農繁期と農閑期の労働力の山がある。そういう場合に、農閑期に受胎して、当然結果として農繁期に出産するのです。案外こういう点も指導員諸君は忘れている、そこまで気がつかずにおると思うのですが、これは非常に農村における家族の問題あるいは労働力の問題、母体の問題、いろいろ大きな問題を含んでおると思うのです。ですから、私は受胎指導員厚生省指導される際には、当然農村における受胎、出産は農閑期と農繁期を十分考えて——農村においては、おそらく農閑期になったからほっとして受胎する場合自が多いと思います。それはやはり少なくとも母体を維持するという建前から、あるいは農業の労働力を維持する建前から、むしろ農繁期に受胎すれば農閑期に出産するのです。そうすると農村における労働力も影響しないし、母体も傷つけないのです。それを自然なままで男女関係を置いておくと、農閑期に受胎して農繁期に出産しなければならない、母体も傷つけるし労働力にも非常に影響しますから、こういう点は一つ受胎調節普及員が指導されるのでしたら、そこまでこまかく農村における指導はされなければいかぬと思っております。私農村を回ってみてそういう点をちょっと感じましたので、御注意を願いたいと思います。
  87. 永山忠則

    永山委員長 岡本委員
  88. 岡本隆一

    ○岡本(隆)委員 一点だけお尋ねしておきたいと思います。先ほどからの議論の中で、日本の今の人口問題が非常に人口の逆淘汰の方向へいっているということは、これは政府の側もお認めの模様に思うのであります。そこでその人口の逆淘汰に対する対策をどういうふうに立てておられるのか、また今後どういうふうに進めていかれるのか、それを伺いたいと思います。
  89. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 逆淘汰になりますといろいろ内容が多岐にわたるわけでございますが、一番中心になりますのは何といいましても悪性悪質の遺伝による人口分率がふえていくということが逆淘汰一つの最重要要因とされております。従いまして悪性の者を極力増加しないようにして優良な者を逆にふやしていく、これが今度正しい意味の逆淘汰に反対する政策でございます。その意味で、この逆淘汰を阻止するためにできたのがこの優生保護法の最初の立方の趣旨と思います。従いまして先ほどからいろいろと御意見を承った点を、正しくこれを実行して是正していく、むしろ悪質な者、今まで見のがされている者を勧告あるいはPR等によって見つけ出して、この方は積極的に優生手術なりあるいは優生人工流産なり、これらによりまして、はっきりした者は阻止していく、これが第一に必要な点だ。ただし逆淘汰と言いましても、これが今のような医学的な優生遺伝の性格を持った以外の、たとえば現在の世代が偶然貧乏であるとか、いろいろな社会環境上からの因子で、ある程度社会の負担になっておるということは、これは必ずしも逆淘汰とは言えないので、そういうような点はむしろほかの経済政策とか、そういうので見ていく。やはり逆淘汰阻止は、行政的に手を加えて積極的に阻止するという場合には、優生遺伝の問題を中心にしてやっていくべきではないか、そちらには大いに積極的に馬力をかけていく、こういうふうに存じております。
  90. 岡本隆一

    ○岡本(隆)委員 私のお尋ねとお答えとが時点がややずれておったと思うのですが、なるほどあなたのおっしゃるのは純粋に医学的な意味におけるところの逆淘汰の問題、私もそれについて二つの、広義の解釈と狭義の解釈とに区別せずにお尋ねしたところにそういうずれが出てきたと思うのですが、しかしながら今政府が推し進められておるところの家族計画というものを見ておりますときに、私は一つの逆淘汰の傾向が出ていると思う。というのは、家族計画というものは非常に理知的な、理性に基づいて行なわれるものです。ところが性生活というものは感情や情緒に基づいて行なわれる生活、従ってそういうふうな性生活の中において理性を強く働かし得る人たちというものは、そういう意味においてはある種の優秀な人たちなんです。そういうふうな優秀な人たちの間でどんどん家族計画が推し進められ、そしてそういうふうな人たちの間では出席制限が行なわれる。しかしながらそういう理性というものを性生活の中に働かし得ないような人たちはたくさんある。そういう人たちの間では家族計画が行なわれない。だからいわばもう生活が困るのを承知していながら産んでいく人たちがあります。単にその人たちは、必ずしも貧乏即人間的な質が低いという意味じゃございませんが、その中には相当いわゆる頭脳的に低い人も含まれておるわけですね。だからそういうふうな一群の、先ほどから本島さんなんかたびたび言われておる、むしろほんとうに家族計画が行なわれるべき階層の中へ、今のような政府の方針では家族計画というものがなかなかしみ通っていかないと私は思う。それをどういうふうにしてしみ通らせていくか、そのことは私は日本の将来の人口分布というものにおいて非常に大切なことだと思うのです。その点について政府はどういう方針をお持ちになっておるのか、こういう点を私はお伺いしておきます。
  91. 大山正

    大山政府委員 ただいまもお話にございましたように、貧困といわゆる逆淘汰問題というものは必ずしも結びつかないと思うのでございまして、私どもといたしましてはそれぞれの家庭、家族の状況に応じまして、適当な数の子供を適当な間隔をおいて産むというのが家族計画であるというような考え方でいろいろ指導して参っているのでございますが、実際問題といたしまして、生活保護階層あるいはボーダーライン階層等におきまして貧困を脱却して立ち上がるというためにも、家族計画をやはり実施する方が望ましい。しかし実際にそういうことに十分知識もなく、あるいは費用もないというようなことが考えられますので、私どもの方で行なっております予算的措置といたしましても、貧困階層に対する特別普及事業というのに重点を置きまして、実地指導員等も主としてそちらの方面において十分活躍していただくというような方法で進めておる次第でございます。
  92. 岡本隆一

    ○岡本(隆)委員 家族計画について三つの階層が今ある。それは政府が考えておられるような方法で理性的に家族計画を実行しておる、妊娠の予防を実行しておる、しかしながらその予防を実行しようとしながらなかなかやはりそういう感情の生活の中では理知を十分働かし得ないで、予防をしつつもときどきしくじっては、いわゆる妊娠中絶の御厄介になるという階層、さらにまた、もうそういうふうな予防の必要性というものを聞いてはいても、知ってはいても、実行できないという意思薄弱組、従ってそれは毎回妊娠すれば妊娠中絶の御厄介になる、あるいはそれすらも、中絶しておかなければ困るということは知りながら、ついついそのまま出産にまで持っていってしまうというような三つの階層があると私は思うのです。特に私は今いう逆淘汰という意味において問題にしなければならないのは、そういうふうな非常な意思薄弱なことのために、結局は出産数をふやしていくという人たちを私たちは問題にしなければならない。これは私は貧富ということとは別に、ある一つの自分の計画とか、あるいは自分の考えというふうなものの中へ理性を十分に働かし得ないという、そういう意味においては一つの人間的な弱さを強く持っている人たちであると思います。そういうようなある立場において、たゆまず重ね得るか、し得ないかという、そのことにおいては、その人は劣性であると思います。そういう劣性群の中には、単にそういうふうな理性を働かし得るかどうかということは、妊娠予防の問題だけではなしに、そういう人たちの中には、たとえば犯罪の場合であるとか、あるいは飲酒の場合、その他いろいろな場合においても、結局はやはり理性でもってみずからの感情を押え得ない人たちが相当まじっておるわけであります。だからそういうふうないわゆる家族計画を完全にやり得ない階層というものの中には、相当多くの劣性遺伝分子というのが私は含まれておると思うのです。そしてその家族計画をやり得る人たちは、それは自分の生活を強く規制し得るだけあって、いわゆる世の指導層となる、そういう意味においては一つの優性的な人たちであると思うのです。だから私たちはそういうような予防対策をみずから講じ行ない一群の人たちというものの中にもっと強くいろいろな対策を講じていかなければ、どうしてもいわゆる人口の逆淘汰というものが私は生まれてくると思う。だからそういう点において政府は何か考慮をめぐらしておられるのか、これはもうやむを得ないというふうに考えておられるのか。何か対策が必要であると思われるなら、どういう対策をお考えになっておられるのか、そういう点を私はお伺いしておきたい。
  93. 大山正

    大山政府委員 ただいまの御意見はまことにごもっともでございます。ただ大へんむずかしい問題だと思うのでございまして、そういう階層に対して強力に進めていかなければいかぬと思いますが、一つ方法といたしまして、直接先生のお話に当たるかどうか存じませんが、たとえば私どもの方で所管しております保育所に子供を通わしている家庭というような場合をとって考えますと、それは子供を持っておって自分で育てる時間がない、働きに出なくちゃいかぬ、あるいは病気であるというような家庭の子供が多いわけでございますから、こういう家庭などには相当強力に、直接私の方で把握もできますし、指導する面があるのではなかろうか、そういうようないろいろな場をつかまえまして強力な指導をして参ることがよろしいのではないか、かように考えております。
  94. 岡本隆一

    ○岡本(隆)委員 私はそういうふうな意味において、政府の方針として受胎調節に重点を置いていられる、私の見ようでは政府受胎調節一本やりでいっていられるというところに、この問題の解決の困難性があるのではないかと日ごろ考えている。そういうような非常に意思の弱い、たゆまざる努力のできない人たちには、やはり思い切って優生手術をやらせる、優生手術を奨励していく、こういうことは、これは人道問題であるとかいうふうなことも出て参ります。しかしながら、ある点、私は相当これは日本の今の傾向から見るならば、やはり同時に——もちろん重点は受胎調節に置いていかなければなりませんが、たとえば民生安定所などで種々気をつけておれば、この両親はだいぶ知能が低いというふうなことがわかっている場合、それが悪質遺伝はない、あるいはまたとても強制的に手術させるというほどの低い知能程度でもない、しかしながら、ある程度この人たちの子供にはそういい子供は生まれないぞというようなことが考えられるような場合においては、その人たちには一応優生手術を勧めてみる。しかもこのごろは男性の優生手術というものはきわめて容易に、簡単にできるということはすでに御承知であると思います。ついこの間も読売かなんかの週刊誌に大きく男性の優生手術の記事が出ておりましたが、男性の優生手術というものはきわめて簡単なものであり、あまり弊害がないことはらい療養所その他ですでに長い経験があって、決して日本では浅い歴史ではないと思います。だから絶えず民生安定所その他厚生省で注意をしておられて、たとえばすでに三人四人の子供がある、しかもその人はたびたび中絶を繰り返しているとか、生活保護なんかがあればすぐわかるのですから、そういう場合に、厚生省の方ももっと積極的に優生手術受胎調節とあわせて人口対策の中の一つの問題として取り上げていかなければならない段階ではないかと私は思うのでありますが、その辺についての厚生省のお考えを承りたいと思います。
  95. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 優生保護法によりまして、優生手術は先ほど申し上げましたように年間四万余実施されております。この大部分は女子でございまして、強制の場合には先ほど言いましたように非常に女子の場合が多い。そういう形でございますが、この優生手術を今のように広い意味の逆淘汰にまで拡大いたしまして、合法的にさせるかという点は、これはまた非常に重大な問題でございます。現在のところはあくまで医学的な、帆走にある遺伝性のもの、さらに本人たちの配偶者等を含めた同意があれば、十二条によりまして別表の三十の疾患にかかっておる者はやってもいいことになっております。ただしこの中の、ただいまお話の一番関係がありますのは、別表の中にあります二と三で、すなわち二の遺伝性の精神薄弱、それから三の顕著な遺伝性精神病質、性欲異常、犯罪傾向、これが先ほどのお話にあたりまして、このうち意思薄弱というのがはたして精神薄弱の一環としての意思薄弱であるか、あるいは正常な心理構成の上での意思が弱いという意味か、これは非常に重大であって、従って精神障害者の範疇に入らぬ者まで、ただいまの社会的観点から見て工合が悪そうだという広い意味の逆淘汰防止という意味でやるには相当考慮を要しますので、現在のところはまだそこまで拡大してやった方がいいというような点は、私だけの考えではとても御答弁できませんが、しかし十分検討したいと思っております。
  96. 岡本隆一

    ○岡本(隆)委員 あなたは純粋に、今法律的な立場に立って議論を進めておられますが、私は現実の問題についてお話をしている。多少ものの考え方に違いがあるかもしれません。しかしながら、現在たとえば第三章の医師認定によるところの人工妊娠中絶が、第十四条四号の「妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの」これに該当せしめて、実際上人工妊娠中絶によるところの出産の調節が行なわれているということは、あなたも御承知の通りであります。それからまた任意の優生手術が行なわれておる、その法的な根拠は、第三条の五の「現に数人の子を有し、且つ、分娩ごとに、母体の健康度を著しく低下する虞れのあるもの」、これでもって今任意の優生手術が行なわれておる。このことはやはり貧困多子家庭という考え方に基づいて、貧困多子家庭は、優生手術もしくは人工妊娠中絶を行なってもいいというふうな広義解釈が、手術をする側には行なわれる。その広義解釈によって、その妊娠中絶がどんどん行なわれ、また政府も黙認しておる。奨励はしておらぬかもしれないけれども、黙認しておるのが現実であると私は思う。しからばその現実の上に立って、こういうことでもって妊娠中絶及び優生手術がどんどん行なわれ、しかもそれが比較的指導的な立場に立ち得るような優秀な人たちの間で出産の制限が行なわれておる。そしてそういうような指導的な立場に立ち得ないような人たちの間では、むしろやみくもに子供が生まれる傾向があるというところに、私はやはり民族全体の優秀性というものを確保するという点で問題点があると思うのです。そういうことが今人口の逆淘汰として懸念されておるわけでございまして、それじゃそういう現象をどうして矯正していくか。では片方でもっと優秀な人たちの優生手術その他の禁止を強くしていって、そういう人たちにもっと多く出産することを要求していくか。あるいはまた知的水準もしくはいろいろな性格的な多少の欠陥のある人の出産を制限していく。二つの方法をとる以外に道はないわけです。しかしながら今ここまで出産というものについていろいろな人的な操作が加わって、それがとうとうとした、こういった傾向になっているとき、それではどうして日本の将来の人口というものを優秀なものにするための努力を払っていくかということについては、何らかの手を打たなければならない。それについてわれわれは真剣に考えなければならない段階になっておるというのに、あなたのように純粋にこういう法理的な解釈の上にだけ立って、それ以外はどうにもならないんだというようなことでは、私は将来困ると思うのですが、それについて重ねて御意見を伺っておきたい。
  97. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 確かに今の四万余の毎年の実績のうち、五号によるものが相当多いわけでございまして、すなわち数人の子供を持ったというので、もう今後生まれないように手術してしまうわけです。もう次の世代ができておるということが前提条件で、これは相当行なえる。ところがこれと同様な意味で、まだ子供を持たぬ、あるいは一人か二人というところまでやって、それができが悪いとか、また親が精神障害まではいかぬけれども意志薄弱というのに優生手術をやりますと、そういうような条件がもし改善された場合にも再び子供は得られない。一ぺん手術してしまえば永久に子供は得られないということでございますので、この点まで拡大する諸条件というものはそうなまやさしく——うっかりいたしますと人道の問題がありますし、これはそういうような人間に限ってあとで案外よくなったということがある、そんな場合に取り返しのつかぬことになりますので、この点は十分検討を要する。どこまで拡大するかということは真剣に検討はしなければいかぬと思いますけれども、ただばく然とそういうような社会的な低条件にあるものにまで手術を拡大することについては十分研究の余地をお与え願った方がいいと思います。
  98. 岡本隆一

    ○岡本(隆)委員 考え方に多少相違があるので、議論していってもしばらくは平行線になると思います。しかし私は、現実に行なわれておる姿を見て、日本民族の将来を考えて、これでは困るということを考えておる一人でございます。あなたもおそらくそういうことはお考えになっていらっしゃるのではないか。ただ法的にどうしようもないというふうなことで、やむを得ぬというふうなことではないかと思うのですが、私も、もう一度研究してみますけれども、あなたもそういう現実にどう対処していくかということを——厚生省としてこのままでいいのだというのなら、このままでいいのだ、ちっとも逆淘汰は行なわれていないし、このままの姿で進行してちっとも差しつかえないというのなら、そのようにお答え願ったらけっこうであります。あるいは何とかしなければならないというようにお考えになっていらっしゃるならば、その辺そうだとお答え願う。その次に、それじゃどうしていくかということについては、これはお互いに研究すべき問題だと思います。人道上問題もあれば、あるいはその他いろいろななにがありますから、それをどうしていくかということについては、真剣にわれわれが研究しなければ、三十年、五十年先になればこれは大へんな問題になる。今は今として、これはちっとも現実の問題としてはどうもない。しかしながら今生まれてくる子供がおとなになってくる、生産年令に達し、国の中堅になってくるというような段階になって参りますれば、平均的な形において、相当な人間的な質の低下を民族全体として起こすということをおそれておるので、それに対する対策というものを厚生省は考える必要がある、考えなければならない、こう私は思っておりますので、その辺について、もう一重ねて御見解を承っておきたいと思います。
  99. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 確かに的確に必要なもの、再び要らぬ適格なもののみをうまくつかみ出しまして、それの拡大によって優生手術が行なわれるということならば、非常に適切なことであろうと思うのでありまして、御意見には同意いたしますが、ただとかく従来の人工妊娠中絶のときでさえ逆淘汰の御意見が出たほど、これは一ぺん手術をしてしまいますと、再び何らの措置なしに、心配なしに性交ができるようになるわけであります。むしろその拡大が、他の優良といいますか、社会的に適格でない者により多く悪用されることになりますと、従来以上に風俗を乱したり、あるいは逆淘汰をむしろ促進することになりますので、従ってこういうような場合には、従来以上に非常に的確にねらいを定めたものだけに行なわれる、そういうことがうまくいきますならば、これは非常に有力な方法である、十分考えなければならぬ、こう任じております。
  100. 岡本隆一

    ○岡本(隆)委員 私が最初にお尋ねしておる点についてのお答えを私は求めておるのですが、優生手術によるということは一つ方法論の問題でありまして、私はその方法論については、私の考えに間違いがあれば、幾らでも訂正するのにやぶさかではございません。しかしながら現実日本の今、優生保護法の運営されておる状態、その結果としてきておるところの出産の制限、それがどの階層により多く行なわれ、どの階層に少ないかというものを見るときに、一つ人口の逆淘汰が行なわれておる、だから、民族の将来を考えるときには、これについては何らかの措置をとらなければ、三十年、四十年先には大へんなことになりますよ、こう言って私も心配しておるし、ほかの先ほどからのみんなの御意見の中にも、相当そういうふうな憂慮の声が出ておったと思う。それに対して、厚生省としては、その事実を認めるか、認めないか、認めるとするなれば、どういうふうにしてそれを矯正していくかということについて、何か方針を持っておるかということを私はお尋ねしておるのであって、さらにその方針があればどうするのかという点を尋ねておるのについて、明確なお答えがございませんので、先ほどからお尋ねしておるわけです。
  101. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 今のお話で、優生手術を初め人工中絶等は、要するに今の適格な、ぜひ必要な者に徹底しない。それでむしろ必要ない者に乱用されるということが一番逆淘汰ということになる。ですから、これを実施するには、先ほどのPRもございましょうが、これは衛生当局なり指導員だけではだめなんでございまして、やはり社会福祉に関連のある生活全体からそういうような適格者であるという者をつかむということをタイアップしてやる、そこで地域の組織とかと連携を保っていく、これが一番有効であろうと思いますので、今のように逆淘汰を防ぐということの必要性は十分認識しておりますし、またその具体的な手段を構じませんと、実際には実効は上がりませんから、さような意味で実際に努力したい、こう存じております。
  102. 岡本隆一

    ○岡本委員 この程度にしておきます。
  103. 八田貞義

    八田委員 最後に要望しておきたいことがあるのですが、人口問題と人口対策とがごっちゃにされて議論される場合が非常に多いのです。人口問題というのは、長い歴史から考えていかなければならないのです。というのは、人口がふえて国が滅んだためしはどこにもないのです。ただ優生保護法が、雑草のもとにチューリップがはえたためしはないのだという見地から、人口問題を取り上げて、どういうふうな運営でいくべきかということが法の趣旨になっているわけなんです。ところが優生保護法というものが経済政策の一環として進められているところに問題があるのです。ですから、いろいろな議論が出るのですから、厚生省としましても、今後経済政策の一環として家族計画受胎調節関係を論じないで、やはり大きな視野から検討されて運営されていくということが非常に必要であろうと思うのであります。この点を特に希望して、今後誤りのない運営方法に進められんことを希望いたします。
  104. 永山忠則

    永山委員長 これにて質疑は終局いたしました。     —————————————
  105. 永山忠則

    永山委員長 引き続き討論に付すのでありますが、申し出もありませんので、直ちに採決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  106. 永山忠則

    永山委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  優生保護法の一部を改正する法律案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  107. 永山忠則

    永山委員長 起立総員貝。よって本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。本案に関する委員会報告書の作成等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  108. 永山忠則

    永山委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  午後二時半まで休憩いたします。     午後一時十四分休憩      ————◇—————     午後三時十六分開議
  109. 永山忠則

    永山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出身体障害者雇用促進法案を議題として検査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。齋藤邦吉君。
  110. 齋藤邦吉

    ○齋藤委員 私は身体障害者雇用促進法案に陶しまして若干御質問を申し上げたいと思います。  私が申し上げるまでもなく、身体障害者の生活、職業を含めての生活問題は非常に重要な問題でありまして、今日まで政府は身体障害者福祉法を制定し、その生活の安定に非常な努力をなさってきておったわけであります。それと同時に、身体障害者の雇用問題、これは何と申しましても身体障害者の援護の中心だと私思うのでございます。すなわち、身体障害者はとかくそれぞれの労働能力が落ちて参っておりますために、ひがんだ感じを持ちたがるものでございます。そこで身体障害者の雇用問題の根本は、身体障害者その人自身がひがむことなく、また一般の人々も卑下した感じを持たないで、あくまでも自立自営の精神を自分自身も持ち、そして外部の者もまた自立自営の精神を持たれるように指導し、激励をしていくということが根本の問題かと思うのでございますが、そうした観点から、政府の今日まで身体障害者の職業問題に対する態度というものを見て参りますと、さきに職業安定法によりまして、身体障害者に対する職業訓練施設を設けるということを定めて参りましたことも非常にけっこうなことだったと思います。それと同時に身体障害者の就職問題に直接取っ組もうという考え方から、先般来行政措置でいろいろな就職の問題について措置せられたことも十分承知いたしております。それもまことにけっこうなことであったと思うのでありますが、やはり何と申しましても身体障害者の雇用に関する基本法ともいうべきものがなかったということは、身体障害者の生活援護全般を見渡しまして残念なことだと思っておったわけでございます。諸外国にはいろいろ身体障害の雇用に関する立法があります。特に傷痍軍人については非常に手厚い保護がなされておるわけでございます。しかしわが国は新しい憲法のもとに、傷痍軍人だけを別建てにして援護をするということは許されないことでございまして、一般の身体障害者というワク内において傷痍軍人をも考えられておる。非常にいい考えであるわけでございますが、こういうふうなことで諸外国にはあるにもかかわらず、わが国には身体障害者の雇用に関する基本法がないということは、非常に残念なことであり、さびしいことであったと思うのでございますが、今政府が新たに身体障害者の雇用促進に関する基本立法を企てて提案されたということについては、私は深く政府の努力に敬意を表するものでございます。  ところで、しかしこの法律を見ますと、まだまだ私は不十分な点が多々あると思うのであります。一つの例を引いて申し上げますれば、第二章等を見ますと、職業紹介に関する規定は入っております。就職後の指導も入っておる。雇用主に対する助言あるいは本人に対するいろいろな指導というものもありますけれども、この職業紹介を容易ならしむる根本はやはり職業訓練であると思います。この職業訓練の規定というものが職業安定法にあるのゆえをもって雇用促進法に掲げられなかったということは、これはやはり法の体系から、そちらにあるから重複して書かないということであったろうとは思いますけれども、ほんとうを申しますと、最近のいろいろな社会保障の立法を見ますと、それぞれの谷間にある人々にあたたかい手を差し伸べる総合的立法というのが、やはり法の形態としては好ましい姿であったと私は思います。そういう意味において身体障害者雇用促進法の中に就職の根本をなす職業訓練、職業能力の劣っておる人に対して、その劣っておる者のハンディ・キャップを埋めてやるという職業訓練の規定というものを、職業安定法にあるのゆえをもってここに入れなかったということは、私は形から申しますと非常に残念なことであったと思います。安定法とこれとを合わせて読めばわかることではございますものの、やはりほんとうを申しますと、身体障害者に関する総合的な形の立法という形式の方がよかったのではなかろうかという感じもいたすわけでございます。  そのほかに、また内容的に見ますと、いろいろ問題があると思います。たとえば身体障害者の雇用を促進するために、民間雇用主に対してもっと何か援助というものができないものであろうか。特に身体障害者の方々の作業補助具、これは絶対、ほんとうに必要なものであります。そういうふうな作業補助共の問題等について、もう少し突っ込んで努力をしていただきたい、こういうふうな感じも持つのであります。しかしながらこうした問題は、私、一朝、夕に解決し得る問題ではない、こういうふうにも考えるのでございます。いずれにせよ、政府が、今まで何にもなかったところに身体障害者雇用促進法という社会保障の非常に大きな谷間を埋めるための一つの立法をされた。ここで、きょうの段階では私は非常に満足いたしますけれども、将来の問題としてはやはりいろいろ問題は残されておる。しかしその問題が解決しないうちはこうした立法は必要がないかということになりますと、やはり大いにある。一歩前進であり——一歩どころではなく、ほんとうに十歩も二十歩も私は前進であると思います。わが党内閣がいかに傷痍軍人を含め、こうした身体障害者の援護について努力されたかということについてあらためて敬意を表しながら、以下多少法律の内容について御質問を申し上げてみたいと思う次第であります。  まず第一にお尋ねを申し上げたいと思いますことは、第二章の職業紹介等に関する安定所の機能の問題であります。すなわち安定所におきましては、第三条「正当な理由がないにもかかわらず身体障害者でないことを条件とする求人の申込みを受理しないことができる。」そのほかに、安定所は就職した身体障害者に対するいろいろな指導を行なう、あるいはまた雇用主に対する第五条の助言、こういうふうになっておるわけでございますが、できるならば安定所の機能を——総合的機能はそういうふうになっておるのでございますが、安定所に身一障害者の職業相談員というふうなもの、現在あるのかどうか知りませんが、そういう制度をやはり機構的にもはっきり作るということが必要ではないだろうかという感じがするわけでございます。安定所の全般的な機能の一部はある。しかし、端的に身体障害者あるいは雇用主にぶつかっていく、そういう意味において何か身一体障害者職業相談員というふうなものがあって、専門的に取り扱うということが必要ではなかろうかという感じがするのでありますが、安定所のこの問題についての動き方の、具体的なそういう機能についてます御説明をお願いいたしたいと思います。
  111. 堀秀夫

    ○堀政府委員 ただいま身体障害者の就職促進に関する熱意ある御意見をお聞かせ願いまして、われわれも全くこれに対して同感であるわけでございます。今回の法案につきまして、ただいま御指摘のありましたように職業訓練に関する事項も一緒にここに規定すべきじゃないか、その方が総合的な法文として非常に理解もしやすいし、総合性を持つという御意見も、まことにもっともに拝聴するわけであります。私ども今回の法案には、法律技術的な観点からいたしまして、現在の職業安定法、職業訓練法によりまして、身体障害者の職業訓練の方は一緒にやる、こういう考えであります。法律技術的な観点から従来の安定法、職業訓練法の中に法案としてはゆだねていくという考え方であります。われわれはこの身体障害者雇用促進法の積極的な実施に努めると同時に、職業安定法、職業訓練法に基づく身体障害者の職業訓練につきましても、事実問題としてこの際大いに計画的に積極的に進めて参りたい、このような考え方でございます。本年度予算につきましても、従来大体身体障害者の特別訓練所の予算といたしまして、一億三万程度でありましたが、一億八万ということで、五千万増加いたしました。もとよりこれではまだまだ不十分でありますが、今後ともこのような点につきましては十分に努力いたしたいと考えております。  次に、職安に身体障害者の就職指導、紹介等についての専門的な人間を置いたらどうかという御指摘でありました。われわれも身体障害者の特殊性からいたしまして、身体障害者の方が職安の窓口に来られましたときに、親身になってその相談に応じられる、このような係がおることが必要であると思います。予算関係等もありまして、一朝一夕にその整備ができませんけれども、さしあたりわれわれの考えておりますことは、これは最近になって始めたことでありますが、第一に、比較的身体障害者の方が多い管轄の職業安定所におきましては、専門の身体障害者相談係というものを設けまして、もっぱらその方面に専心させる、こういうことを考えたいと思っております。  それから第二番目に、これは一般の職業紹介にも通ずる問題でございますが、特に身体障害者につきましても、この方面を重点をもって整備して参りたいと思いますが、職業紹介官という制度を設けまして、やはり窓口においてこの職業紹介の相談に応ずるような人は、あまり若いような人ではいけないので、やはり責任のある、思慮のある係が親身になって相談に応ずるという態勢を作りたいと思っております。その、ほかに民間の方等でございまして、この身体障害者の問題について非常に経験なり識見を持っておられるような方、これは今回この職業相談のために職業協力員という制度を設けまして、そのうちの一部を身体障害者関係の方にもぜひお願いしたい、このような態勢をとりまして、安定所の窓口の整備、親身になって相談に応ずる態勢を整備したい。もとより一朝一夕になかなか理想的な形までは参らぬかもしれませんが、われわれとしては、ただいま御指摘のような窓口の整備ということにつきましては今後大いに努力したい考えでございます。
  112. 齋藤邦吉

    ○齋藤委員 この雇用促進法の中に身体障害者の職業訓練等の規定を入れなかったということは法の技術的な理由によるのだということでございますが、この点は見解の相違ですから私もそう主張いたしませんが、労働省のいろいろな雇用問題についての立法は、やはりそれぞれの対象に応じて分化的に発展していくということが道だと私は思うのです。と申しますのは、この身体障害者の雇用問題が解決いたしたあとに一つ大きな問題は、いわゆる父親のない子供の就職、これはやはり非常に大きな問題だと思います。戦後十数年、いわゆる軍人遺家族の問題は主として恩給やあるいは生活問題で終始してきましたけれども、今日の段階ではそれらの乳飲み子がもうすでに大きくなってきておる、こういう段階でありまして、この父親のない子供の就職に対しては世間は非常に冷淡であります。こういうことで、この問題の解決後は直ちにそうした問題に入っていかなければならぬ。そういうふうなことを考えていきますと、そういうものについても現在の職業安定法があるじゃないか、あるいは何法があるじゃないかという形では、やはり職安行政というものは伸びていかない。どうしてもやはり国会の審議を経て、総合的な国の意思としてこうした問題を解決していくという形をとるべきだと私は思います。そういう意味において、私はやはり将来はこういうふうな、個別的な問題かもしれませんけれども、そのつどそのつど発生してくる社会の谷間を埋めていくという一つ一つの努力が一つ一つの形の法体系でいくというのも一つ方法だと思います。そういう意味において、これ以上見解の相違でありますから申し上げませんが、あまり法の技術的な観点にとらわれることなく、将来の職業安定行政発展のために努力をしていただきたい、こういうふうに感ずる次第でございます。  と同時に、ただいまお答えになりました安定所の窓口の身体障害者職業相談員あるいは紹介官あるいは協力員、これは非常にけっこうなことであります。安定所の窓口において親切に、こうした気の毒な方々が安定所の窓口に行っても、僕の相談するところはどこだろうということがすぐわかるようにしてやることが必要だと思います。そういう意味において、これは希望を申し上げておきますが、この法律が成立いたしました暁にいろいろな省令等をお作りになるでしょうが、皆さん方は、そういう役所の窓口のことはこれは内部のことだから手引きを見ればわかるのだ、これは皆さん方の役所の執務の便宜にはなるけれども、一般国民は手引きなんというものは知らない。一般国民は何を見るかというと法律であり、政令であり、省令である。ということであってみれば、せっかく今局長さんがお述べになりました身体障害者職業相談員あるいは紹介官あるいは協力員、こういうようなこともできるだけ政令なり省令なりに書いて、やはり安定所の窓口の努力の姿というものはこういう形で努力していきたいのだという形も私は必要ではなかろうかと思いますので、将来政令なり省令なりをお作りになるときに、手引きにばかりしまっておかないで、一般公衆の目につくような形において御心配いただければけっこうではないかと思います。この点は希望を申し述べておきたいと思います。  次は、第三章の適応訓練、これは私は非常にけっこうだったと思います。労働能力の落ちておる身体障害者に対して、いきなりある工場、事業場にほうり込む、これではやはりその作業環境になれない。作業環境に適応させることを目的とした訓練、これは私非常にけっこうな考え方だったと思いますが、この適応訓練についてお尋ねを申し上げてみたいと思いますことは、国民年金法のいわゆる身体障害者福祉年金との関係であります。御承知のように昨年十一月から国民年金法が拠出金なしの福祉年金として開始され、身体障害者に対して福祉年金として月千五百円支給されるということになっておるわけでございますが、そうした人たがこの適応訓練を受ける際にどうなるか、もちろん年とった方、若い方、福祉年金にはいろいろありますが、若い方が受けた場合にこの適応訓練の手当をどうするか、これは性質が違うのでありますから、年金をもらっておる方々にもこの手当を支給するということは当然じゃないかと思いますけれども、条文としては何もはっきりしたものを書いておりませんので、この点をどういうふうに処置されますか、承りたいと思います。
  113. 堀秀夫

    ○堀政府委員 まず最初に孤児、片親児に対する就職促進の問題、それから安定所の窓口整備の問題につきましては、ただいまの御意見まことにごもっともに思いますので、われわれとしては熱意を持って一つ検討さしていただきたいと思います。  第二番目に、適応訓練の際に国民年金法等に基づく年金が支給されるときにどのようになるかというお尋ねでございますが、適応訓練と申しますのはただいま御指摘のありましたように、身体障害者についてその他力に適合する作業の環境に適応することを容易にさせるということを目的にして行なわれるものでありまして、その際都道府県は事業主に委託してこれを実施する。その適応訓練を実施することにつきましての補助を行なう。それと同時に、適応訓練を受けるにつきましての必要な経費の一部を負担するという意味で手当を支給するということになっております。大体適応訓練は六カ月程度といたしまして、事業主に対する補助は一カ月五千二百五十円、手当は千円程度ということを考えております。それを半分々々国と都道府県が負担するという形にいたしたいと思っております。従いまして、今のような考え方でございますので、国民年金法等に基づく年金が支給される場合にも当然これは併給すべき問題である、このように考えております。
  114. 齋藤邦吉

    ○齋藤委員 年金との併給、非常にけっこうなことでございます。  次に第四章の雇用問題についてお尋ねをいたしたいと思いますが、身体障害者の雇用という問題は、単なる雇用情勢の上から、あるいは失業情勢の上からといったふうなもので割り切れるものではない。やはり身体障害者というものに対して、傷痍軍人を含めて、すなわち国民の一人々々に対して平等に自立自営の精神を持たすように指導していくということは国家の方針であり、こういうものから身体障害者に対する雇用促進というものになってくるのだと思います。そういうことであってみれば、身体障害者の雇用については特に国や地方公共団体がほんとうに率先して雇うように努力をしていかなければならぬと考えるのでございます。しかるに最近までの労働省が行政措置でおやりになって参りました身体障害者の雇用の状況等を見ますと、どうも国や地方公共団体の力が低調ではないか。これはあるいは私、数字を読み違えて申し上げているかもしれませんが、そういう感じがする。これはとんでもない間違いです。要するに国が身体障害者の雇用について努力をしようということは、単に雇用情勢あるいは失業情勢という国と関係のない経済情勢下において問題を考えるべきものじゃない。むしろそれを無視して、たとえば今日のように失業者がはんらんしておるという情勢にもかかわらず、身体障害者は特に考えなければならぬという国家の意思でこの法律はできている。ということであってみれば、ほんとうに身体障害者に対しては国や地方公共団体は率先して雇うという熱意と努力が示されていかなければならぬと私は思います。局長さんとしてはそういう熱意と努力を続けられると思いますが、そうしたことは大臣にも聞かなければならないことかもしれませんが、安定局長としては率先して雇ってもらう、こういう熱意と努力とを捧げていただきたい。そういう意味合いから、この第十一条の仕事のやり方について一つお尋ねをしてみたいと思います。  やはり労働省という役所は縦割りの役所ではない、横断的な任務を持っておるところの役所である。ということであってみれば、各省庁が身体障害者の採用計画というものを作成するときに、これに真剣に参画して努力していかなければならぬと私は思う。そういうことを言ったら失礼かもしれませんが、各省庁は、まあできるならば雇わぬで済ませたい、こういう気持があるかもしれない。しかしこの法律が通った以上は、従来の労働省以上の力を持って臨んでいかぬとこの条項は実際に動きません。行政措置でやっても成績が悪い、法律を作っても同じだということであれば、ほんとうに国家の意思というものは国民徹底しない。しかも官庁に徹底しない、率先して雇うべきところの国が雇わぬ、これではこの法律というものは死んだ法律になる、空文になる。そういう意味において、どうかこの十一条の運営については真剣に努力していただきたいと思います。  同時に採用計画の作成につきましては、労働大臣はほんとうに責任を持って参画をしていただきたい。  そこでこの法律を見ますと、第十一条には、各省庁は「政令で定めるところにより、身体障害者の採用に関する計画を作成しなければならない。」作成するのは各省庁、労働大臣はどうしているのだ、こういうことです。作成するにあたっての労働大臣の働き工合というものはどういう働きをするのか何も書いてない。「政令で定めるところにより、」と書いてある。採用計画の作成にあたって労働大臣はいかなる任務を果たされようとするのか。それはおそらく政令で出てくるのでしょうが、一つ政令の内容をお尋ねいたしたいと思います。
  115. 堀秀夫

    ○堀政府委員 ただいまの、身体障害者雇用促進については国、地方公共団一体等が率先して範を示すべきである、この御意見につきましてわれわれ全く同感でございます。諸外国の例を見ましても、やはり国その他の公共団体におきましては、民間よりもまず率先して実行するという仕組みになっておるところが多く見受けられるのでございます。われわれといたしましてはこの法案を作成するにあたりましても、この十一条にありますように、国、地方公共団体等におきましては必ず身体障害者雇用率以上になるようにするため計画を作成しなければならないという義務を義務づけたのでございます。民間よりも一段と強い義務を課しておるというのも、そのような考え方を取り入れておるわけでございます。しかし問題はこれを実施する際の運用にあることは御指摘通りでございます。われわれは今後この法律が成立いたしましたならば、さっそく身体障害者雇用審議会を開催いたしまして、その御意見を聞いて、政令を各省庁と相談の上策定したいと考えておりまするが、ただいまの御審議に現われましたような御意見は十分体しまして、一つ各官庁の協力を積極的に求める考えでございます。  そこで政令の内容につきまして、われわれのただいま考えておるところを「申し上げますると、まず第一に身体障害者雇用率でございますが、これは国、地方公共団体等におきましては、大体原則として一・五%程度をさしあたり指定したいと思っております。民間等におきましては一・三%程度にいたしたいと思っておりますが、これもやはり国、地方公共団体におきましては民間に率先垂範するという考え方に立って、率を多少多くしたいと考えております。  それから第二番目に、政令でその計画を作成する手続等をきめる予定でございますが、この政令の中には、各任命権者が計画を作成するにあたりましてはあらかじめ労働大臣に協議もしくは通報するというような、事前の連絡協議をぜひ規定いたしたい。これによりまして労働大臣は、事前にまずその任命権者が作成しようとしておる計画がはたして適当であるかどうか、身体障害者雇用促進にあたって国、官庁が範をたれるという意味で適当かどうかという点を一つ十分見まして、われわれとしても積極的に意見を申し上げて参りたいと思っております。なおこれについて計画を作成して実施するにあたりましては、十二条によりまして実施状況等を通報させあるいは勧告するというような手続をとっていきたい。いずれにしましても、まず事前に政令で労働大臣への連絡手続というものは、絶対われわれ規定いたしたい、このように考えておる次第でございます、
  116. 齋藤邦吉

    ○齋藤委員 ただいま安定局長の第十一条運営についての熱意のほどを承りまして、非常に心強く感じました。十一条はほんとうに動くような条文でなくちゃならぬ。これが動かなければ、一般民間会社に対して雇え雇えと言ってみたって、官庁があのざまじゃ何だ、こうなる。第十一条がやはりこの法律中心なんだ。そういう意味において、この条項がほんとうに力強く動くように熱意を持って努力していただきたいと思います。特に第十一条の「政令で定めるところにより、」この内容について、身体障害者採用計画の作成にあたって事前に労働大臣に協議させる、あるいは通報させる、労働大臣の同意なくしては、やはりこういう採用計画というものはできないのだ、ここまでいかなければ労働省は労働全部を扱っている役所らしくならぬです。そういう意味において、採用計画の作成にあたっては労働大臣と協議をして、同意がなければ計画はできないのだ、一つそのくらい強い労働省になっていただいて、この法律中心である十一条が力強く動きますように努力をお願い申し上げたいと思います。  それから次は——もう一、二で私質疑をやめます。あまりりっぱな法律でありますので質問する事項もないようでありますが、念のために一つお尋ねをいたしたいと思いますのは、身体障害者雇用審議会、この第十九条の内容でございますが、これを見ますと「委員は、労働者を代表する者、雇用主を代表する者、身体障害者を代表する者」とありますが、私これでけっこうだと思いますが、この身体障害者のうちでやはり非常に大きな比重を持っていますのは——私は差別する意味で言うのではないが、実態的に大きな、内部におけるところの一つの数を占めておるのは傷痍軍人。そこでこの身体障害者を代表する者の中に、やはり傷痍軍人の代表を入れるべきではなかろうかという感じがいたすわけでございますが、その点について御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  117. 堀秀夫

    ○堀政府委員 今回の法案が成立いたしまして実施される場合に、その対象になります身体障害者のうち、傷痍軍人関係は現在大体十四万人程度おられるわけでございますが、さしあたり八万五千人くらいの方がこの法案の対象に該当するであろうとわれわれは考えております。非常に多い対象の方がお入りになられるわけでございます。身体障害者を代表するものの方には、ただいまお話のような傷痍軍人の方もわれわれとしては入っていただきたいと思っております。
  118. 齋藤邦吉

    ○齋藤委員 それから最後に一つだけお尋ねをいたしておきたいと思いますが、この法律の適用の身体上の欠陥の範囲というものが別表にずっと一、二、三、四、五、こういうふうに上がっているわけでございますが、やはり身体障害者の諸君は一々この条文を読んで安定所の窓口へ行くわけでもなし、安定所の窓口でも一々この条項に照らして、あなたは両眼の視力それぞれ〇・一以下のものとか、一眼の視力が〇・〇七以下のものとか、安定所の者が一々々見るわけでもない。そこでこの法律の適用のある一体障害者であるということについて、やはり何か簡便な確認の方法というものを常識的に考えておく必要があるのではないか。こういうことを考えてみますと、やはりこの適用を受ける者は、いわゆる身体障害者福祉法の適用を受ける者も大半ありましょう。それから福祉法の適用を受けない傷痍軍人の諸君もあるだろう、こういうふうに考えられる。そこでこの身体障害者であるということをすなおに確認できる方法としては、身体障害者福祉手帳あるいは傷痍軍人については傷痍軍人手帳というものがある。もちろんこれは国が認めたものではないかもしれませんけれども、そういうものを活用して、お互いに便利に利用できるような仕組み、傷痍軍人の方々も利用しやすい仕組み、さらにまた安定所の窓口においても、「両耳の聴力損失がそれぞれ六〇」何とかと、こうむずかしいんでは、なかなか容易じゃない。そこで身体障害者であるということをどういう方法で安直に確認するか。これはやはりこの法案の審議の際にはっきりさしていただきたいと思いますので、その点についての御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  119. 堀秀夫

    ○堀政府委員 本法案の別表を定めるに当たりましては、まず第一に身体障害者福祉法の別表というものを参考にいたしました。身体障害者福祉法の別表に該当する方は、全部この対象に入ることになっております。しかしそれだけではやはり十分でございませんので、現在の恩給法等に基づきまするいわゆる項症、款症という症状がございますが、原則としてその第三款症以上のものはこれに入れるという考え方で、別表を整理して作成したわけでございます。  従って、まず第一に身体障害者福祉法の福祉手帳を、持っておられる方は当然この別表に該当するわけでございますから、それを提示されれば、職安の窓口としてはそれを本法の対象になる障害者として扱っていきたいと思っております。そのほかに追加されて含まれる者につきましても、それを説明する適当なものがあれば、それをもってかえていきたいと思っております。そうなりますと、この傷痍軍人の場合でございますが、傷痍軍人については傷痍軍人手帳がございます。その中に、都道府県知事の証明する戦傷病者証明書というものが入っておるわけでございます。都道府県知事が、次の症状に該当するということで、はっきりと証明する内容が入っておりますので、これをお持ちの方は当然これに該当するということになります。三款症未満は別でございますが、三款症以上の方につきましては原則としてこれに入るという考え方で、職安の窓口におきましては、ただいま申し上げました身体障害者福祉法に基づく福祉手帳あるいは傷痍軍人手帳で都道府県知事の証明のあるもの、その他適当なる機関が出したもので、この別表に該当するという証明があるもの、これらのものをお持ちの方は、本法の対象になる身体障害者として扱うことにいたしたい考えでございます。
  120. 齋藤邦吉

    ○齋藤委員 最後に一つ希望を申し上げておきたいと思うのですが、冒頭に申しましたように、この法律については、いろいろ考えてみれば、ああもしてほしい、こうもしてほしいと思います。そういう意味においては多少の不満もある。しかしながら、こうしたことを、ほんとうにむずかしいいろいろな問題を克服されてここまでこぎつけたということで、やはり政府の努力というものは私は深く評価さるべきだと思っております。しかし、問題は、この法律が通ったあとにこれを動かすという努力が私は何としても一番大事なことだと思います。特に身体障害者については、自立自営の精神を強めるということが根本です。本人がひがむことなく、また外部の者もひがませないように、自立自営の精神をお互いに持たして、りっぱな職業人としてやれるのだ、またりっぱにあの人はやっているじゃないか、こういう空気を作っていくことが非常に大事だと私は思います。そういう意味において——安定所のやる仕事には、日雇い労働者の問題、失業保険の問題あるいは新規学卒の就職の問題、いろいろ重要な仕事があります。こういうことは、例を引いてはおかしいかもしれませんが、日雇い労働者のようにわんさわんさと押しかけて騒ぐと、新聞に出る。こっちは、これはなかなか騒ぐ人じゃありません。ほんとうにお気の毒な方々です。その方々を集団的に世話しようといったって、これはなかなかできません。ほんとうにそう言っては悪いのですが、日雇い労働者は十ぱ一からげにして、お前はあっちの現場だ、お前はこっちの現場だ、身体障害者はそれはできない。一人々々についてめんどうを見るという努力が必要だと思います。そういう意味において、安定局長以下全国の安定所の職員が一人残らずあたたかい気持で身体障害者一人々々のめんどうを見る、この熱意が、この法律をほんとうにりっぱな法律にするかどうかの分かれ目だと思う。そういう熱意と努力がなければ、これは一歩前進の法律であっても、空文です。死んだ法律になります。どうか将来ともこの法律の改善のために努力をいただきたいと思いますが、同時にこの法律を動かす熱意と努力——身体障害者一人一人についてほんとうに親身になって、自立自営の精神を養い、一般雇用主の諸君にもそうした意識を植えつけていく、こういうことが根本であると思いますので、どうか、局長さん、課長さん方は非常に御熱心な方々ばかりですが、その局長さん、課長さんの熱意を全国一万数千の安定所の職員にも移して、一人々々の身体障害者を親身になって世話する、こういうふうに一つやっていただきたいということを希望を申し上げまして私の質疑を終了させていただきます。
  121. 堀秀夫

    ○堀政府委員 ただいま身体障害者の雇用促進に関する非常に御熱意のある有益な御意見を承らせていただきまして、われわれ全く同感に存ずる次第でございます。本法成立の暁には、ただいま御指摘のような積極的な熱意をもって、われわれ職安行政に携わる職員、全員協力いたしまして身体障害者の雇用促進に全力を傾注したい考えでございますので、よろしくお願いいたします。
  122. 永山忠則

    永山委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後三時五十七分散会