運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1960-03-17 第34回国会 衆議院 社会労働委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月十七日(木曜日)     午前九時五十三分開議  出席委員    委員長 永山 忠則君    理事 大石 武一君 理事 大坪 保雄君    理事 田中 正巳君 理事 八田 貞義君    理事 藤本 捨助君 理事 滝井 義高君    理事 八木 一男君 理事 堤 ツルヨ君       池田 清志君    大橋 武夫君       加藤 精三君    加藤鐐五郎君       亀山 孝一君    川崎 秀二君       藏内 修治君    齋藤 邦吉君       志賀健次郎君    田邉 國男君       中村三之丞君    中山 マサ君       古川 丈吉君    柳谷清三郎君       山下 春江君    亘  四郎君       赤松  勇君    伊藤よし子君       大原  亨君    小林  進君       五島 虎雄君    多賀谷真稔君       中村 英男君    山口シヅエ君       本島百合子君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         厚 生 大 臣 渡邊 良夫君         労 働 大 臣 松野 頼三君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         厚生政務次官  内藤  隆君         厚生事務官         (大臣官房長) 森本  潔君         厚生事務官         (保険局長)  太宰 博邦君         労働政務次官  赤澤 正道君         労働事務官         (大臣官房長) 三治 重信君         労働事務官         (職業安定局         長)      堀  秀夫君  委員外出席者         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 三月十七日  委員河野孝子君、早川崇君、風見章君及び中嶋  英夫君辞任につき、その補欠として加藤精三君、  田邉國男君、小林進君及び多賀谷真稔君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員加藤精三君及び田邉國男辞任につき、そ  の補欠として河野孝子君及び早川崇君が議長の  指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法  律案齋藤邦吉君外二十三名提出、第三十三回  国会衆法第二三号)  厚生年金保険法の一部を改正する法律案田中  正巳君外二十三名提出、第三十三回国会衆法第  二四号)  日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案  (田中正巳君外二十三名提出、第三十三回国会  衆法第二五号)  船員保険法の一部を改正する法律案田中正巳  君外二十三名提出、第三十三回国会衆法第二六  号)  船員保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出、第三十一回国会閣法第一六八号)  失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法  律案八木一男君外十二名提出衆法第一七  号)      ————◇—————
  2. 永山忠則

    永山委員長 これより会議を開きます。  齋藤邦吉君外二十三名提出失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案田中正巳君外二十三名提出厚生年金保険法の一部を改正する法律案日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出船員保険法等の一部を改正する法律案及び八木一男君外十二名提出失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案、以上六案を一括議題とし、質疑を行ないます。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 けさの新聞を見ますと、岸・河野会談というのが行なわれておるように出ております。九時半の委員会が十時でなければ開かれないというのは、おそらく岸内閣の運命に関するような重大な会談が岸・河野会談で行なわれたためであろうと推定するのです。岸さんの三選がなるか、安保花道になるのか、岸内閣がのたれ死にするか、こういう大きな問題を論議したあとに、岸さんに船員保険法等の一部を改正する法律という、そういう大きな問題に比べたらどうもちょっとちっぽけな問題のような感じがしますが、これはなかなか民生安定に重大な関係のある問題ですから、岸・河野会談に注いだと同じ精力を私の質問にも注いで答えていただきたい。幾分津河野会談で感情の乱れがあるかとも、私医学者であり、心理学者ですから、ちょっとわかるのですが、しかしそれは一つ落ちつけて答えてもらいたい。これは冒頭におけるあいさつです。  そこでまず第一に、政党内閣における法律案政府なり与党提出をするときには、これは完全に意見の一致を見て提出しなければならぬものだ、こうわれわれは考えております。岸総理としては政党内閣においては、法律国会提出する場合は、現在どういう順序と手続でなされておるのか、それをまず御説明願いたい。
  4. 岸信介

    岸国務大臣 法律案出しますにつきましては、言うまでもなく政党内閣でございますから、政党意向も十分にくみ入れまして、政府におきましても最後におきましては閣議で決定して、そうして提案をするというふうにいたしております。
  5. 滝井義高

    滝井委員 与党意向も十分いれ、そして大所高所から検討して、閣議で決定の上、国会にも出してくる。そうしますと、実は昨年の四月に政府船員保険法等の一部を改正する法律というものを出して参っております。この法律の中では、船員保険法失業保険法日雇労働者健康保険法厚生年金保険法各種社会保険の均衡をはかるという意味においてこの四法案を一括して提出してきているわけです。ところが昨年の十二月になりまして、突如として与党側から、一括して総合調整見地から、政府提出いたしました法案を、今度はばらばらにして、船員保険法失業保険法日雇労働者健康保険法厚生年金保険法という形で出して参りました。しかもその内容を見ますと、船員保険日雇保険厚生年金はほとんどみな同じです。附則が幾分違うだけです。失業保険は、予算額にして三十一億円程度に及ぶ修正をして出して参っております。これは政党内閣として、こういうように内閣提出した法案というものとそっくり同じものをばらばらにして出してくるということになれば、当然与党政府一体のものなんですから、政府案を撤回するか政府案を修正するかして出すべきだと思う。ところが政府案はそのまま生かしておる。与党がまた別個の同じ内容法律ばらばらにして出してくる。こういうことは、政党内閣として、政府のものの考え方与党のものの考え方とが一致しない、こういうことになるわけです。これを出すについては、当然これは閣議でも与党がこういう法案を出すのだということを承知の上でお出しになったと思いますが、岸さんは一体こういうことで責任ある政党内閣政治をうまく行ない得ると思いますか。
  6. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど申しましたように、政党の大きな政策であるとか、あるいは政党の公約していることであるとかいうことを、内閣政党内閣である以上は、責任を持ってそれを法律なりあるいは予算にまとめて出すことは、これは当然やらなければならぬと思う。しかしながらいろいろ国会審議の運営上から見ていろいろな問題があると、それはやはり党として、審議上の便宜であるとか、あるいは国会対策の必要上から、いろいろな法案その他のものの扱いをきめるというようなことにつきましては、これは一々内閣がこれにタッチせずして、党の運営にまかすという点もありますので、今おあげになりました法案政府としては一括して出しておりますが、審議の都合上、党としてこう分けた方がよろしいという意味において分けておるというふうに私どもは解釈いたしておりまして、これはいわゆる今おあげになりましたような責任内閣議院内閣制度根本に触れるような問題だとは考えておりません。
  7. 滝井義高

    滝井委員 国会対策上あるいは法案審議の上で、そういうことをした方が非常に便利だ、そういうことの方が国会通りがいいんだ、こういう見地からやったんだろう、従って政党内閣法案出し方その他を侵すものではないという御答弁でございますが、実はこういう出し方をすることによって、三十四年度の予算に重大な減収を来たすことになるわけです。あるいはある一部においては非常に大きな支出増を来たす問題が出てきておるわけです。そうしますと、これは当然予算の編成その他にも関連をしてくるのです。一体厚生省関係で幾らの減収になり、労働省関係でどの程度予算に増が出るのか、資料ができておるはずですから、こまかいことはあと理事会でその資料出してもらいますが、その総額だけを岸総理の前ではっきり言ってみて下さい。
  8. 太宰博邦

    太宰政府委員 政府提案は昨年の六月ぐらいからを、多少の月の変動はありますが、成立いたしたならばいたしたいということで予算を組んでおります。それが今日まで成立いたしません結果、三十四年度予算上の計数の変動といたしまして、厚生年金保険では、歳入と歳出とそれぞれ差引いたしまして減が百三十六億三千五百万円、船員保険疾病部門は増が二千九百万円、年金部門の減が二億五百万円、失業部門歳入増六千百万円、失業保険は増が四十億二千百万円、日雇い健康保険国庫負担は、もし議員立法の方が成立いたしました場合には変動ありません。
  9. 滝井義高

    滝井委員 労働省の方を一つ
  10. 堀秀夫

    堀政府委員 労働省につきましては、ただいま厚生省の方から説明がございましたが、歳入が約四十億増でございます。
  11. 滝井義高

    滝井委員 岸総理、今お聞きの通りでございます。結局船員保険法等の一部を改正する法律というものは、昨年の六月から施行するということで出しておる。ところがそれが四本を一本にしたために必ずしも与党の満足を得るところとならなかったわけです。従ってこれは、法案国会を通過することができずに昨年末までやって参りました。ようやく与党が一本の法律を四本にばらして出すという事態になった。そういう事態になったために、三十四年度の予算厚生年金は今御説明通り百三十六億三千五百万円というマイナスを生じてきたということです。これはあとでもまた私触れますが、こういうように厚生年金だけでなくて、日雇い健康保険においても、船員保険においても、失業保険においても、とにかく億をこえる増減が出てきているということです。これは非常に重大な問題です。三十四年度の予算というものはすでに国会を通過して、もう三月三十一日で実施の終わる予算です。こういう状態になってきておるものが、何かうやむやのうちに国会を通されて、あとはもう終わりだというわけにはいかぬと思うのです。これは少なくとも政府与党とがすみやかに意思統一をはかって、もっと早くこれを修正するなら修正する、ばらすならばらすということをやらなければならなかった。ところが年度のぎりぎりになってこういう重大な法案変更をやるということは、内閣意思変更と同じです。一億か二億かの額ならば予備費か何かでやりくりがつくのです。ところが非常に長期の見通しに立っておる厚生年金というものに百三十六億の減収を来たすということは大問題です。給付の上にも大きな影響を及ぼす。これはすぐには起きないとしても、長い目で見たならば相当の影響を及ぼしてくるわけです。こういう点について岸総理としては、内閣最高責任者として、両大臣が横におられるのですから、当然両大臣の補佐を受けて、こういう問題をもっと早く閣議で問題にして善後策というものを講じておかなければならないと思います。それを一年以上も放置して、ぎりぎりになって問題を決着に持ち込まなければならないということは大へんなことだと思いますが、どうお考えになりますか。
  12. 岸信介

    岸国務大臣 これも法律案が私どもの希望し予定しておったように通過しなかった結果から生じたやむを得ないものでありまして、今御指摘がありましたように、今すぐこの厚生年金給付に差しつかえができるとか、運用ができないというふうな問題ではございませんで、これは法律が通らなかった結果としてやむを得ない結果だと考えるはかなかろうと思います。
  13. 滝井義高

    滝井委員 法律の通らなかった結果のやむを得ない結果だとおっしゃいますが、現実予算よりか百三十六億も減収になる、失業保険だって四十億の歳入欠陥が生ずるということになれば、当然それぞれの特別会計というものは組みかえをやらなければならない。それは長い目で見れば、厚生年金には三千億以上の積立金があります。失業保険の方は六億以上の積立金を持っております。そういう積立金を取りくずしていけばちっとも支障はありません。支障はないけれども、それによって、厚生年金給付の額なりあるいは保険料率というものが精密な計算のもとに行なわれてきておるわけです。これは岸さん御存じの通りでありまして、この百三十六億の穴が厚生年金にあけば、そういうところに狂いが必然的に出てくることになる。こういった点も、内閣がこういう法案を取りまとめる場合においては、やはりもう少し慎重にやってもらわなければいけないと思います。この点はどうですか。今後そういうことのないようにきちんとやは各閣僚を督励してやられることは当然ですが、同時に岸さんは与党総裁ですから、与党内閣とがきちんと緊密な連携をとって、与党がのまないものを無理やりに閣議で決定して押えつけるということは民主政治に反する。だから少なくとも与党政府とは緊密な連絡をとって、こういう醜態国会で演じないようにしなければならぬと思いますが、どうですか。
  14. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん内閣の首班といたしまして各省の間の連携を十分にとり統一をすることは必要でありますし、また議院内閣趣旨から申しまして、同時に私は与党総裁でありますから、そういう意味において与党政府との連絡について万全を期するということは従来も考えておるところであり、できるだけそういうことに努めてきておりますが、今後も十分にそういう連絡調整はとっていかなければならぬ、かように思います。
  15. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、三十四年度の予算というものは、国会出したものと全く違ったものになりますが、財政法上これはどういうことになりますか。組みかえて出すことになりますか。
  16. 岸信介

    岸国務大臣 これはほかの点にもあろうと思いますが、予算予算でございまして、予定しただけの歳入ができなかったら歳入減になる、あるいはふえた場合においては予定よりもふえた歳入増でありまして、特に予算変更するという性質のものじゃなかろうと思います。
  17. 滝井義高

    滝井委員 もう一つそれと同じ問題が出てきました。それは現在ここに船員保険法等の一部を改正する法律という法律が出ているわけです。船員保険総合保険でございますから、短期の保険長期保険とが含まれていると同時に、労災も含まれているのです。しかしこの内閣出し船員保険法等の一部を改正する法律は、船員保険部門については労災部門改正を何もやっていないのです。ところが今度は労働省の方は労働者災害保険法の一部を改正する法律というものをけい肺法関連をして出して参りました。そして松野さんの方はわれわれの方にこの法律は三月三十一日までにどうしても成立しなければ大へんなことになる、早く成立させて下さいといって松野さん大へん働きがけ国会にやっていらっしゃるわけです。そういうように労働省労災保険の一部改正けい肺法関連をして早くやってもらわなければ困るといって、もう法律を去年国会出してきました。ところが厚生省の方は船員保険法等の一部を改正する法律というものを現実出し、そして与党は、どうも一緒にして出し法律が気に食わぬといって船員保険法の一部を改正する法律を昨年の暮れに出したんだが、その与党法案の中にも政府出したものにも、労災部門は何も触れてないのです。そして労働省の方だけが触れている。そうしますと、今度政府労災保険の一部を改正した法律というものは、これは労災で三年間で病気が治らなければ打ち切りになるわけですね。ところがけい肺等は打ち切ったら大へんですから、けい肺特別措置法とか臨時措置法を作ってずっと延ばしてきているわけです。そして今度はそういう七年くらいじゃだめだから、もっと長く、生涯一つ見ましょう、こういう改正労災はやってきた。ところが船員保険労災部門は何らの改正をやっていない。そしてまだ国会にも三月三十一日が来ようとしているのに出してこないのですね。この点でも労働省労働省の道を行き、同じ労災部門厚生省厚生省の道を行ってまだ出してきていない。最近になってから、ようやく事態の重大に驚いて社会保険審議会とか社会保障制度審議会にかけている、こういう状態です。全く岸内閣政策というものは、民生の安定、弱き者、貧しき者、傷ついた者に対する政策というものはちぐはぐです。ばらばらです。与党与党の道を行き、厚生省厚生省の道を行き、労働省労働省の道を行っておって、全く右機的な連絡がない。それは前の四法において、さいぜん申し上げましたように、予算上に大きな変更を加えてわが道を行ったと同じ姿が再びまたここに出てきておるのです。この点についてはどうですか。そういうことは閣議で問題になりませんか。
  18. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 御指摘の点はごもっともでございまするけれども、私どもといたしましてはただいま技術的な検討を行ない、社会保険審議会社会保障制度審議会答申を求めつつあるところでございます。
  19. 滝井義高

    滝井委員 技術的な検討を行なうと言ったって、松野さんの方のけい肺法というものが問題になりまして、そして臨時措置法ができた。そしてその法律の中には、昨年の十二月三十一日までには必ず国会内閣法律を出せという条項が入っているのです。だから松野さんの方はあわてて昨年暮れに出しておる。従って当然労働省厚生省にそういうことも連絡をして、船員保険労災部門をやらなければならないのにやっていない。こういうところが明らかに社会保障政策における内閣の不統一をはしなくも暴露している。そうすると船員部門は救われないことになってしまう。一体こういうことが閣議で問題にならなかったのですか。
  20. 岸信介

    岸国務大臣 陸上労働者関係船員との間におきましてはいろいろ研究をしなければならない問題がある。私の聞いております限りにおきまして、特殊な技術的な関係もあるから、なお船員についてはさっきお話しになりました社会保険審議会やあるいは社会保障制度審議会の議を経て成案を至急得てこの国会提案する予定であるが、今御指摘のありましたように、労災法関係につきましては、どうしても早く出す必要があり、また成案を得ているからこの方を先に出すけれども、続いて船員保険については今言った点を検討して成案を至急に得てこの国会出して御審議願う、こういうふうな趣旨に私は聞いております。時目的に多少のズレがありましたが、これはそういう関係でございますので、政府としては両省の調整をとって処置するつもりでございます。
  21. 滝井義高

    滝井委員 総理はきょう初めてでしょうから、なかなかこれはむずかしいと思いますが、今から二年前にけい肺臨時措置ができるときに、すでに昨年十二月三十一日には法律国会に出さなければなりませんぞということになっているわけです。だから二年前にその問題ははっきりしているわけです。従って当然労働省としてはその準備に着々かかってきていたわけです。そうすると船員保険部門というものは厚生省にあるのだから、松野さんが閣議でそれを問題にしたら、渡邊さんもそれを受けてやらなければならぬ。あるいは松野さんなり渡邊さんを助ける役人諸君も当然そういうことは献言していかなければならぬはずなのです。ところがそれが行なわれずしてこういう形になると、船員保険法等の一部を改正する法律案をこの国会でまた通すわけです。またあと船員保険法の一部改正が出るのですよ。国会で、内容は違っても同じ法案を二回も三回も審議する、こういう醜態は演じてもらいたくない。まず船員保険法等の一部を改正する法律案政府提案が出る、それから船員保険法の一部を改正する法律案与党法案が出る。そして今度政府が追っかけて船員保険法等の一部を改正する法律案を出す。同じ政党内閣で、同じ船員保険法等の一部改正三つ法案を出すのですよ、こんなばかげたことはないですよ。国会というものは忙がしいのですから、事務の能率的な進行をはかろうとするならば、こういう点はもう少し閣内でチンと言えばカンというようなやり方をやらなければ困るのですよ。
  22. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 この船員陸上労働者につきましては事情が全く異なっておりますので、別個な研究を進めているような次第でございます。
  23. 滝井義高

    滝井委員 別個な研究と言っても、これは二年前からですから、今の段階になってはその言いわけにはならないですよ。同じ国会船員保険法の一部改正三つも出るなんということはだれが見ても醜態ですよ、こんなことはない。同じ法律一つ国会に三回も出てくるなんということはないです。  そこでこういう技術上の問題というものは、これは主として大臣を補佐する役人諸君がもう少し気をきかせることが一番大事なことだと思うのです。こういう点を見るとどうも役人のたががゆるんでいる、官紀が弛緩をしておる、こう言わざるを得ない。これは役人責任でもあるが、結局やはり岸総理責任にもなる。最高責任者ですから十分御注意を願いたいと思います。  そこで三十五年における厚生行政と申しますか、労働行政も同じだと思いますが、大きな目標は、やはり社会保険の各法を総合調整しなければならないということです。社会保険の各法を総合調整するという問題は、現在社会保障制度審議会においては昨年九月か十月のころに、あなたの方から大内先生に御諮問になって、今着々とおやりになっているわけです。やがてその総会が開かれて方向が出てくるわけですね。そうすると当然この方向というものは、日本経済の発展というものが、岸内閣になりましてから最近は所得倍増計画というものをお出しになって、非常に経済欧米諸国に比べて飛躍的な伸びをしている。だからその中で所得倍増をしていくが、同時にそれに見合う社会保障長期計画を立てて総合調整をやらなければならぬというのが、一つの既定的な方針のようにあなたも御説明になるし、渡邊さんもそういうことを御説明になるわけです。そうすると、今度こういうちゃちな四法をお出しになって、わずかに保険料率をちょこちょこといじる。そして国庫負担の三分の一を四分の一に切り下げる。これは後退しておる。そういう改正をやって当面を糊塗していくというよりか、今言ったように、厚生年金で百三、四十億の穴があき、失業保険で四十億の穴があいても、予算予算でございますから、今大して影響がない、こうおっしゃるならば、この四法の改正というものは当分延ばして——どうせ一年延ばしてきたのだから延ばして、そうして一つ根本的な総合調整の問題を、労災もひっくるめておやりになることの方が筋が通ってくる。こういうちゃちな中途半ぱな改正をやっておると、大内先生の方が絵をかくときにかきにくくなる、りっぱな答申出しにくくなる、こういう点をあなたは一体どうお考えになるかということです。これは今後岸内閣社会保障政策経済五カ年計画に見合ってお作りになるときに、大事な点になると思うのですが、その点はどうですか。
  24. 岸信介

    岸国務大臣 日本各種保険制度やあるいは年金制度というものが、発達の時期も違っておりますし、状態も違っておる、この間の総合的な調整をはからなければならないということは、今滝井委員がお述べになりましたように、私どももそういうことを考えております。そしてその根本の問題については、社会保障制度審議会諮問をいたしておるわけでありますが、今回われわれが御審議を願っておりますこの案は、この方向に対して私どもが一歩前進を事実上に示しておるところのものでありまして、このいろいろな内容の改善につきましては、その具体的な問題として、それぞれの審議会意見も聞きまして、政府のそうした事柄に対しては、大多数の御賛同を得ておる次第でありまして、そういう意味から申しますと、決してわれわれが調整をするということの基本方針と、これは矛盾するものではないのであります。さらにこれだけでもって、総合調整の基本が確定するとか、全部ができるというものではございませんで、給付内容の問題であるとか、あるいは各種年金間の通算の問題であるとか、いろいろ調整しなければならぬ問題がございます。これらの問題については、審議会答申を得てわれわれとしてはやりたいと思いますが、今回出しておる調整の問題も、それの一環としてお考えいただきたいと思います。
  25. 滝井義高

    滝井委員 それの一環として考えてくれということでございますが、相当岸内閣としてはこういう方面に力をお入れになりませんと、私が冒頭に御指摘申し上げました通り、事ごとに総合調整の問題がちぐはぐになってきておるということですね。これは実例をもって示したわけです。従ってぜひ総理としては経済五カ年計画に見合う長期社会保障計画を——これは渡邊厚生大臣もそういう意向ですから、御督励になって、これは経済五カ年計画をお出しになると同じように、すみやかに、やはり次の臨時国会あたりには内閣として社会保障制度長期計画というものを、こういう方向で持っていくのだというくらいの成案はお出しいただけますか。
  26. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどから申しておりますように、審議会審議をしていただいておるのでありますが、政府としては審議会の御審議をなるべく督促をいたしまして、結論、その答申を得て、できるだけ早く社会保障制度のそういった長期計画についての方針を明らかにしたい、かように考えております。
  27. 滝井義高

    滝井委員 ぜひ一つそうしてもらいたいと思います。  次に、時間がありませんからもう一つ大事な問題に触れますが、実は岸総理も御存じの通り、来年、三十六年の四月一日から拠出制の国民年金が始まります。現在問題になっている厚生年金はすでに三千億をこえる積立金ができました。そこで現在この厚生年金に加入しておる人は千三十九万あります。そして積立金がすでに三千億をこえてきたわけです。この三千億をこえる積立金を有利に活用することによって、百債や二百億はすぐにかせぐことができるわけです。三千億をこえておりますから、この積立金を一体どういうふうに運営をしていくかの問題です。内閣としては、厚生年金の、いわゆる零細な労働者諸君のふところから出たこの金の運用を、将来どういう方向に持っていくお考えでございますか。
  28. 岸信介

    岸国務大臣 厚生年金積立金については二つのことを頭に置いて考えていかなければならぬと思います。一つは確実にかつ有利に運用していくということが厚生年金の支払い、またその給付を確保する意味からいって絶対必要である。同時に今お話しのように、多数の人の零細な積立金によってできており、現在もやっております還元融資等の方法によってこれらの人々にこれを活用してもらって、そうして十分にそれらの人々の福祉が増進されるように考えなければならないと思います。いずれにいたしましても、われわれは一面において今安全かつ確実、有利にこれを運用していくということが、厚生年金の財政の上からいって必要であるとともに、できるだけたくさんの人々の福祉の増進に資するようにこれを考えていくという必要がある。還元融資の問題もそれでありますと同時に、預金部に一括してこれを運用する場合におきましても、できるだけその運用面において、間接的にも一般の福祉に向くようにこれを運用していくことが必要であろう、かように考えております。
  29. 滝井義高

    滝井委員 今までの政府考え方はそういう考え方だったのです。ところが最近になりましてから、そういう考え方だけではいかぬという論が閣内に起こってき始めております。これはどういう考え方かというと、現在資金運用部に厚生年金なんかは三千億以上預託をしておるわけですが、その金利が安いわけです。金利が安くて、しかもその積立金が直接被保険者、言葉をかえて言えば、国民の民生安定の方向に利用されていないというのです。利子が安いのだから、もう少し高くしてくれ、そうしてその運用を国民福祉の方に利用してくれという要望が厚生省を中心に、あるいは労働省所管の労働組合として起こってきているわけです。そこで渡邊厚生大臣に先日質問をいたしましたところ、ぜひこれは今大蔵省の資金運用部に預けておるそのお金を厚生省としては自主的に運用をしたい。これは従来からの要望であるが、強い要望である。そういう答弁をしているわけです。ところが今度大蔵省の方は、資金の運用というのは、これはやはり財政資金というものは一元的に国家的見地から運用しなければいかぬのだ、だから厚生省の言うようなことはいかぬということで、この委員会で未見がまっこうから対立をしたのです。特にきょう私が岸総理においでを願ったのは、このことなんです。こういう中で総理大臣が一体どういう裁断を下すかということなんです。現在保険料の収入が三十五年の予算で例をとってみますと、七百六十五億五千万円の保険料の収入があって、運用の収入は二百三十三億二千万円なんです。ところが岸総理の言われた還元融資のためには百五億しかやっていない。こんなことでは三千億の金を預けておって、利子が二百三十三億も生じておるのに、われわれの民生安定のために百五億ではとてもやっていけませんというのが渡邊さんを初め松野さんの所管の労働者全部の主張です。そうすると、佐藤さんの方はだめだ、こうおっしゃっておるわけですね。これをどう調整するかしということが一番大事な問題です。これはどう調整されますか。さいぜんのお考えは今までの時代ならばそれでいいのです。最近の情勢は違ってきた。これをあなたは内閣の最高首脳者としてどうやるかということです。
  30. 岸信介

    岸国務大臣 根本的に申しますと、私はやはり積立金というものは財政投融資資金の重要な資金であり、またこれを一括して運営することによって、日本の産業経済の発展を期するという意味から申しましても、最も効率的な運用ということは、一元的にやることがいいと思います。しかしながら、その運用に際して、こうした零細な人々の積立金でありますから、還元融資の方法によって、直接これらの積み立てをする人の福祉に資するようなことも考えていかなければならない。従って、そういう点において労働省厚生省意見等を十分に取り入れて、両方の調整をはかっていくことがいい。これは資金を別々の管理に置いて別々の見地からこれを運用していくということであると、やはり大きな見地から見て、国家産業経済発展の大きな意味において、国民全体の福祉というものを増進するという国家的の見地や、それからまた財政上から、大きな額でございますから、いろいろな金融市場やあるいは一般の財政の基礎から申しまして、やはり運用は一元的にするがいいが、しかしながら、その運用に当たってさらに還元融資等の方法によって直接積み立てた人々の福祉に貢献するような点についても、もう少し重点を置いて考えていく、こういうことで調整をとるほかはない、また調整をとることが最も望ましい、かように考えております。
  31. 滝井義高

    滝井委員 実は岸総理厚生年金一つの歴史的な悪夢を持っております。それは昭和十七年にこの制度ができて以来、この厚生年金でたくわえられた金というものは軍備の調達に使われたのです。ここなんですよ。そこで、今三千億の金がここにできております。一方今度は三十六年四月一日から発足する国民年金もすぐに莫大な積立金ができます。そうすると、これが今度あなたの内閣のもとでお作りになるいわゆる日米安保体制における軍需産業の拡充のために使われはせぬかという疑いが出てき始めたわけです。すなわち十七年にそういう苦い経験を持っておるものですから、日本の勤労者、厚生関係に従事しておる役人諸君は、そういうことがあってはいかぬ、だからこの国民年金なり厚生年金の零細な金というものは、やはり労働者福祉の方向に持っていかなければならぬじゃないか、だからこのままにしておくと、財政投融資で大企業にいって軍需産業の強化に使われるという疑いがある。だから、この際あなたとしては、これはそういう方向にいかないのだということを明白にしてもらうとともに、そのお金というものは労働者の福祉安定のために相当大福に——今たった百五億なんですから、もっと大福に厚生省に還元をして、そうして民主安定の方向に使うのだということをはっきりしてもらえば疑いが晴れてくるわけです。
  32. 岸信介

    岸国務大臣 過去においてあるいはそういった実例があったということが今後に対する不安を来たしておるということでありますならば、そういうことのないことを十分に明らかにすると同時に、ただわれわれがそれを声明するだけではなしに、現実に運用の面においてそういう事実がないのだということを示して、積み立てをしておる人々の十分な理解を得る必要があろうと思います。私どもは、決していわゆる安保改正によりまして、将来に向かって特に日本の軍備を拡充していくところの義務を加重するようなことは考えておりません。われわれの従来やってきておる方針通り自主的にやっていく考えでございまして、そういう意味から申しまして、特にかってあったような時代の軍備であるとか、あるいは軍需産業を他のものに優先して非常にこれを保護し助言して発達せしめるというような考えは持っておりません。従って、ごらん下すってもわかるように、この財政投融資は産業経済の基幹になるような仕事については、あるいは電気とかあるいは製鉄の事業であるとか、いろいろな基礎的な事業であるとかいうもの、また多くの労働者を必要とするいろいろな新しい産業等にこれが実際現実に融資されておりまして、決してそうした疑惑を生ずるようなことはいたしておりませんし、また将来もいたさないつもりであります。同時にそういうことを幾ら百万ぺん言うよりも、早く還元融資のなにを相当大幅に広げていって、そうでないという現実を示す必要があろう、そういうことにつきましては、現実の財政投融資の場合におきまして政府としては十分考えていくつもりであります。
  33. 滝井義高

    滝井委員 現在資金運用部の運用の状態を見ますと、実は長期の預託というものが非常にふえて参りました。長期の預託がふえれば資金運用部が利子をよけいに払わなければなりませんから、資金運用部のやり繰りというものは非常に苦しくなってきます。一方今度は資金運用部が投資をしておるところを見ますと、今から数年前までは総理の言われるような基幹産業に主としてつぎ込んできた。ところが最近は公共投資が多くなってきた、公共投資は高い利子で金を貸したらやっていけなくなる。道路とか港湾、上下水道、住宅ですからやっていけない。従って資金運用上矛盾が出てきた。厚生年金のようなところには高い利子を払わなければ文句が出てくる。貸す方には安い利子でなければ工合が悪いという矛盾が資金運用部に出てきた。厚生省としては利子が上げられないということで運用をうまくしなければならない。今度利子が出ることによって厚生年金で標準報酬を引き上げた、保険料率も引き上げた。そうすると二百二十五億なるものは、ことしも二百三十三億ですから三千億の金をちょっと有利に回せば、料率を上げなくても標準報酬を上げなくても、二百二十五億ぐらいの金は出る。二十年後の保険給付はよくなるという状態が出てきた。そういう現実の問題から考えてみますと、岸総理積極的にお考えになって、将来厚生年金の運用の問題については、まず国民年金なり厚生年金は軍備調達の方向には持っていかない、これは少なくとも民生安定の方向につぎ込んでいくという基本方針を明白にして下さい。もう一つは、本年は百五億組んでおりますが、来年度は、あなたが総理である限り責任を持って民生安定の方向を指示する、増加する、こういうことが御言明できますか。
  34. 岸信介

    岸国務大臣 今お話しの通り、最近におきまして住宅の問題であるとか簡易水道等に資金部の財政資金が使われておることは御指摘通りであります。私どもは将来におきましても、いわゆる過去にあったような軍備調達のためにこれを用いるということは絶対にいたしません。そのことは明白に申し上げておきます。  それからさらに、還元融資の額を相当思い切って上げるという方針は、私はそういう考えを持っております。しかし現実に何十億上げるかということは、来年のなにで十分これを引き上げることを私も決意しておりますから、どうぞ御了承願いたいと思います。
  35. 滝井義高

    滝井委員 還元融資のワクの拡大を来年度は必ずはかる、しかも軍備調達には国民年金なり厚生年金積立金は用いないということの御言明を得ましたので、これで私の質問は終わりました。
  36. 永山忠則

  37. 本島百合子

    ○本島委員 ただいま岸総理から社会福祉の面につきまして御答弁があったようですが、保険財政に関連いたしましての御質問はただいまやられてましたが、福祉国家を建設するという考え方、その点について岸総理は、私どもが見受けておりますと、少し違ってはしないかという感じがいたします。ということは、今日生活保護なりあるいはその線まで到達しないボーダー・ラインの人たち、いわゆる低額所得層といわれる人々、こういう人が最終的に願うことは保険であり、年金である。こういうことによって、ただいまこうした保険法の改正案が出されたと思うわけなんです。ところが四法改正をただ小手先でなさろうとして、根本的にほかの法案との調整がつかないままに今回提出されておるわけであります。そういたしますると、こういう低額所得層の人がやっとたどりついていって年金なり保険なんという恩恵にあずかろうという場合に立ち至ったときに、現実の面ではこれから漏れていく人がやはり出てくるわけです。こういう点で、大体今低額所得層はどのくらいあって、今後福祉国家の建設のためにはそういう人々に対してどのような施策をしたならば、日本の国における社会保障制度が完備していくかというような、根本的な理念をまず最初にお伺いいたしたいと思います。
  38. 岸信介

    岸国務大臣 低所得者の数につきましては、大体一千万というふうに政府の方では見ております。それではこれらの人々に対してどういうなにをするか。社会保障制度の大きな柱としては言うまでもなく健康保険、医療に対する国民の皆保険とそれから老齢になった場合における扶養するための国民年金制度というものを全国民に及ぼしていくこと、これが大きな二つの柱である。しかしながらそれに漏れるような人々に対してどうするかというこの低所得者の問題というのは、いわゆる生活保護に対する政策としてこれは考えていかなければならないと思います。この生活保護制度としましては、現在いろいろな制度があることは、私が申し上げるまでもなく本島さん御承知だと思います。あるいは身体の障害のためにそういう状態にある人に対する保護の問題であるとかあるいは夫を失った母子に対する問題であるとか、いろいろそういうふうな人々に対する福祉なりあるいはどうしてもそれに漏れるという者に対する最低生活を保障するというような制度によりましてこれをやっておるわけでありますが、その内容は、現在やっておる制度が十分であるとは私ども思っておりません。やはりこれは日本経済やあるいは財政の健全な発展とともにその内容を改善していくということが必要であり、またそういう考えのもとに過去におきましても、また今回におきましてもある程度の改善を行なっておるわけでありますが、そういう方策によって内容を将来においても改善していく、こういう方針をとっていきたいと思います。
  39. 本島百合子

    ○本島委員 総理は今重大なことをお忘れになったようでございます。こういう年金保険制によって救われていかない、漏れていく人をと私が聞いたことは、この社会保障という基本的な観念の中には、いわゆる失業者のない、完全雇用のしかれる世の中ができてきて、その中からこぼれていく人々に対する福祉施策とこうなってこなければならないわけです。そこでこの完全雇用という点で見て参りますと、雇用制度審議会の方からも答申があって、政府は大体十五年から二十年かかって日本の完全雇用は実施できるだろう、こういうことがかつて新聞に発表されたわけであります。そのことについて総理は、社会保障ということになれば、一方完全雇用という制度ができ、それといわゆる年金なり保険なりというものが合わさって人間の不幸というものが救われるわけなので、従いましてその完全雇用についてはどういう考え方を持ち、今後進めていこうとされておるのか、お伺いいたします。
  40. 岸信介

    岸国務大臣 完全雇用につきましては、根本的に言えば、やはり日本経済、産業を発展せしめていくということが基本になると思います。従来政府経済長期計画を立てて、そうして完全雇用を目ざして長期計画によって経済の発展を期していくということを考えております。またわれわれは今日国民所得倍増計画というものを審議立案中でございますが、これまた完全雇用を目ざしての計画でございます。完全雇用は、基本的に申しますと、やはり長期計画を立てなければならぬと思います。しかしその間において現在の失業者に対してはどうしていくかということになれば、公共事業や失業対策に関するところの応急的な処置をやはり基本的の方策と同時にやっていかなければならぬと思います。またたとえば石炭のような、最近において特に失業の生じてくるようなものに対しては臨時措置を講じて、基本的には長期計画によって期していく、こういうことを考えております。
  41. 本島百合子

    ○本島委員 そういう基本的な観念というものはだれも同じようなことを考えておるわけでございます。今日失業者の増大——政府は一応失業者は減少してきていると言われておりますが、現実には潜在失業者というものはふえて参っております。ということはオートメーション化により雇用を戦前におけるように必要としなくなった産業構造の中では、失業者はやはり増大してくる。  そこで私ども保険行政の中で特に考えていただきたいことは、皆保険になった、皆保険になったからそれで社会保障を一歩進めたんだ、だからいいんだ、こういう考え方、またそういう説明をよくされておるわけであります。ところが皆保険の中で見ましても、国民健康保険の例を一つとってみましても、健康保険における給付と国民健康保険における給付率は違うわけであります。そうしますと、同じ掛金をかけておって、しかも一般の職種に属さないところの国民健康保険にかかる人々は、半額は自分で持たなければならない。そうすると低額所得層というものは、今一千万人近くあると言われたのでありますが、日本の勤労者のうちで月額一万五千円前後という所得者は大体一千百五十万人からある、こういう統計が出されておるわけです。そういたしますと、こういう零細状態で働いている低額所得者というものは国民健康保険の方は払っている、払っているけれども、実際自分が病院に入る場合には半額は出さなければならない。かつて保険財政が赤字になりましたときに、いわゆる初診料の値上げ、診察料の値上げ等をなさいまして、保険財政がここまでたどりついてきた今日では黒字になってきた。だがこの保険料率を一応引き下げようというような法案が出されておりますが、そういうことをされてみましても、現実に病人の例をとってみれば、その病人が入院するときに、自分が半額持たなければならないという場合に、思い切って入れるかどうかということになります、入れないという人が多いわけです。低額所得者の中で一番痛ましいのは、入ればなおるということがわかっておっても、入るときに自己負担というものがあるから入れない、こういうことになって、結局は手おくれになっていく。低額所得者はいつでも下積みで、働く場合においても給与その他におきましても非常な低額である。また暮らしの中でも今申し上げたような差を受ける。病気をしても差を受ける、こういうことになって参ります。従って保険行政においては平等にしてもらいたい。これは国民ひとしく希望しておることだと思うのです。そこで健康保険の場合におきましても、国民健康保険はやはり健康保険と同額に全額給付、こういう形をとっていただけるかどうかということが一つと、それからもう一つは生活保護を受けております場合は、医療扶助は完全に受けられるわけなんです。ところがたまたまボーダー・ライン層になって参りますと、これは受けられないのです。受けられないから、そういう病気にかかりましたときのいわゆる費用というもの、これは自然自分が出さなければならない。御承知の通り生活物資は毎年毎年上がってきておるのです。これは岸総理もちゃんと知っておられると思いますが、そういう生きるための費用は全部貧富の差なく平等に支払っていく。そして結論的に病気に倒れたときは、お金を掛けておっても自分たちはやはり半額は持たなければならぬ、こういう矛盾が生まれてくるわけなんです。今回保険料率を引き下げられるということにおいて、大体二十七億円くらいの減額になるということを説明されたわけでありますが、こういうものがもしあるとするならば、むしろ私は国民健康保険給付率をもっと全額に近いだけを与えてもらいたい。そうすることによっていわゆる低額所得層の病気に対し、貧困に対しての手を打っていけるという感じ方を持つわけであります。こういう点についてどういうお考えを将来持たれて、保険行政におけるあらゆる法律調整をはかっていかれるかということを承りたいと思います。
  42. 岸信介

    岸国務大臣 国民健康保険とその他の健康保険との間にいろいろな点において不均衡があるというお話につきましては、さっきも申し上げた通り、各種の保険制度の総合的な調整をはかる場合において、なるべく給付内容その他につきましても調整のはかれるように考えていかなければならぬと思います。社会保障制度審議会でその意味において審議をさせておりますので、その点は将来十分考えていくべきである、こう考えます。
  43. 本島百合子

    ○本島委員 もう一点時間がありませんので、失業救済事業に働く人々、この人々は今日産業の景気がよくなってきたから多少失対事業から転換ができていっておる、こういう考え方でいられると思うのです。ところが現実に失対事業で働いている人たちは、老人と女が残されていっておる。健康で働ける人たちは割合に転換の機会を与えられているが、残されている人は老人と女、こういうことになっておる。この失対事業について、根本的に恒久化した雇用関係に持っていかれる意思があるかどうか。将来はそうしなければならないだろうと思うのです。すでに失対事業が始まって戦後ずっと今日までの経験を持って参りますときに、もう取り残されていっておる人たちは他に転業ができないわけなんです。しかも健康で働ける人はどんどんほかの場所に行かれるということになると、重労働といわれるような労働に女の人と老人が取り残されてきておる。そこでそういう失対事業というものを根本的に改革される意思があるかどうか。その場合に身分の安定というものを与える、そういった考え方に立たれるかどうかということを承りたいと思います。
  44. 岸信介

    岸国務大臣 失対事業につきましては相当長いいろいろな経験もありますし、また最近における失対の実情等も、本島委員のお話のような傾向にあると思います。従ってこれに対して根本的な対策を十分考えていかなければなりませんが、それについては労働省の方におきまして、審議会を設けてこのことを検討して成案を得ていきたいという考えを持っておる次第でございます。
  45. 本島百合子

    ○本島委員 これで最後にいたしますが、ただいま言いましたようにこの保険財政というものが黒字になりつつありますので、これを還元しろということを言われておるのは、やはりなべ底低額所得層、生活にあえいでおる人、こういう人はどこかで上げていかなければならない。上げる方途としてのいわゆる失対事業に対する考え方、それから低額所得層の健康保険に対する、病に倒れたときの考え方、これが貧しい人ほど金を払いながらその恩恵を受けることがないというのが今日の岸政権における施策なんです。従ってこれを根本的に切りかえていかなければならない。そのことについて私は質問したのでありますが、総理の答弁の中には、観念的な答弁だけで、いつどのような形において考えていこうという意欲が全く見受けられなかったことは残念だと思います。せめても先ほど言われたように、保険財政のいわゆる勤労者に対する還元ということについては、大幅に今後努力されることを要望いたしまして私の質問を終わります。
  46. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 ちょっと関連して。総理はなかなか社労の委員会にお呼び出しする機会がないわけなんです。私はこれは私の党の立場から特に伺っておきたいと思いますが、今本島委員が質問をいたしましたけれども岸内閣の悪い性格といたしまして、どうも厚生省関係労働省関係に対して非常に冷たい態度であります。これは含めて社会保障政策に対して岸内閣は非常に冷淡である。たとえば長期計画を他の部門ではお出しになっても、この中に当然織り込まれておらなければならないところの社会保障政策というものがその中に包含されておらないということは一般の人々が指摘いたしておる通りでございます。私はこの前に出されて参りました国民年金の問題にいたしましてもまことにけしからぬと思っておりますけれども保険の各種の法案をいろいろ検討いたしましたときに、将来の社会保障制度の中に一体岸内閣はどういう青写真を持っておるかということがいまだかつて明確にされたことがございません。青写真がないがゆえに、この保険四法のような問題が生まれてくるのでございまして、私は一つ岸さんに、この際もっともっと社労を中心といたしました社会保障問題につきましては重大な関心を持ってもらわなければならぬと思う。国家予算は、物を生んでいくものには、金もうけになるものには投資をするけれども、女、子供、病人だとか、なまのからだ、こういうものを持ったところの社会保障を中心とした政策に対しては、再生産されないからできるだけ国家のお金をつぎ込みたくないという意図が今年度の予算の中でも非常にはっきりいたしております。どうかこれは産業経済態勢の中においてできるだけ国民を働かせる、しかし左手の中に社会保障政策を持って、働き得ない者はこの中に愛情ときめのこまかい政治をやっていって、この両手の中にこぼれるところのないように国民を政治の力によって抱えていくのだというところの態勢がなければならぬと思う。どうも片手落ちでございまして、左手の、岸さんの政策がないところに、先ほどからの答弁を承っておりましても、総理ははなはだ自信がありません。自信のあることには大きな声をお出しになりますけれども、横の大臣に教えてもらってしょぼしょぼとやらなければならないという、答弁に自信がないということが明らかにわかっておるのでありまして、私は労働大臣、厚生大臣は大いに岸さんに対して御不満がおありになると思っております。一つ一千万の低額所得者、そして七、八百万になんなんとするところの失業者、潜在失業者、半失業者、こういうものを——一人の人間に対して三千円の収入しかないというところの、五人世帯一万五千円の低額所得者というものが千百五十万世帯も日本の国内にあるということは大きな失政であります。この千百五十万世帯を取り残した政治というものはあり得ないのでございますから、一つ大いに頭を転換していただきまして手落ちのないようにやっていただきたいと思いますが、社会保障政策につきましては、右手の産業経済政策を持っていらっしゃると同じように、この中に組み合わせていくのだということの意思をお持ちになっているのかどうか、私はないのじゃないか、こういうふうにときどき疑わざるを得ないことがございますので、ここで一応御見解を承っておきたいと思います。
  47. 岸信介

    岸国務大臣 本年度の社会保障制度に対する予算をどういうふうにわれわれが増額をしておるかということの一々をとってお考えになりましても、わが内閣がいかにこれに対して重点を置いているかということの一つの証拠になると思います。私は日本社会保障制度を拡充し、福祉国家を作るというのは、政治の目標であり、目的であると思います。そのためには、やはりそのことができ得るだけの国力、経済力を日本に持たせることが必要であるのでありまして、私どもはこの社会保障制度を無視して、ただもうかる仕事だけを作っておるのだというような考え方は、毛頭持っておらないのであります。産業経済を発展せしめて、そうして財政収入も多くして、社会保障制度をどんどんやっていけるようにしていくことが、われわれの考えでありまして、現に経済の状況なりあるいは財政の状況がややいい状況にありますので、最近におけるところの社会保障関係の費用を予算の上にいかにわれわれが増額しており、また社会保障制度の根幹として国民皆保険の問題あるいはまた国民年金の問題、その内容につきましてはなお改善を要する点が多々あると思いますが、これらはその制度を二つ立てて、それを柱とし、それからさらに各種の福祉政策というものをあわせ行なって、今申したような経済の繁栄とにらみ合わせてこれを拡充していくというのが、私の考えでございます。
  48. 永山忠則

  49. 八木一男

    八木一男委員 待つこと久しで総理大臣に御質問できるわけでありますが、とにかく一生懸命詰めてやりますので、詰めてやることについては最後まで御答弁を願いたいと思います。  総理大臣は福祉国家という言葉を今ほかの委員の御質問に使われましたけれども、私の考え方では、福祉国家というものは、まず働ける者が、たとえば自分の生産手段を持っていない者は完全雇用をしてもらうということがまず第一である。完全雇用は職を得るということだけではなしに、りっぱな賃金をもらい、りっぱな労働条件であるという、質と量をかね備えた完全雇用である。そうしてもう一つは、自営業者が、農業の場合でも中小商工業の場合でも、成り立つようにするということ、それからそのように働くいろいろの状態にない場合、老齢とか疾病とか失業とか、それからまた傷害とかあるいは子供をかかえた母子家庭、そういう場合には完全な社会保障制度でこの人たちが暮らしていけるようにする、そういうような点を全部完成することが福祉国家の完成であろう。さらにもう一つ、戦争の危険が全然ないような平和な日本、平和なアジア、平和な世界を作り上げるということが、ほんとうの国民の仕合わせを思う政治であろうと思いますが、その点について総理大臣は同じ意見であるかどうか。
  50. 岸信介

    岸国務大臣 全然同感であります。
  51. 八木一男

    八木一男委員 これらの点について申し上げたいわけでありますが、本日はおもに政府提案船員保険法等の一部を改正する法律案あるいは与党提出の四法、それからわが党提出失業保険及び職安法の改正案を中心に御質問を申し上げたいと思います。  今政府提案船員保険法等の一部を改正する法律案、それから自民党提出の四法、社会党提出失業保険法及び職安法の改正案の中で、一番問題になっておりますのは、政府案並びに自民党案の中の失業保険の部分、あるいは船員保険の失業部分、その部分です。私どもをして率直に言わしむれば、非常に改悪になっておる点が問題点になっている。それが中心であります。その点について申し上げたいと思います。社会保障制度につきましては、政府の方は一生懸命やるというお考えでございまするが、社会保障制度というものはどんどんと発展をしなければならない、拡大進歩をしなければならないと考えておりますが、総理も同じようなお考えであるかどうか。
  52. 岸信介

    岸国務大臣 十分均衡のとれた、調整のとれた健全な発展をすべきものであると思います。
  53. 八木一男

    八木一男委員 憲法二十五条の精神とそれからもう一つ失業保険法の精神、もちろん総理は条文そのものを御存じであるかどうかわかりませんけれども、その精神は失業者に対して生活の安定を得しめるということが大前提の精神である。失業者というものは、本則として前に生産手段を持たなかった労働者である。それが失業した場合には、それ以外の収入の見込みがないのが原則である。従って再就職して収入の道を得るまでは当然失業保険金というものは、その期間、再就職まで確保されることが一つの筋でなければならない。もう一つ失業保険金、日額の場合でも月額の場合でも、そういうものが少なくとも最低限度の生活を維持することができるというような金額でなければならないと思うが、それについて総理大臣はどうお考えでありますか。
  54. 岸信介

    岸国務大臣 そういう考え方を持っております。
  55. 八木一男

    八木一男委員 ところが現在の失業保険法は現行法においても、一番長いもので二百七十日という給付で打ち切られることになっております。それから金額の方は賃金の六割という標準で計算をされております。そういうものでは総理大臣が今お答えになった筋であるということとほど遠いものであります。ほど遠いということを当然お認めにならなければならない状態でありますが、ほど遠いだけでとめておくのでは、これは政治の前進はございません。福祉国家の建設をうたい、社会保障の拡大あるいは充実をいつも公約しておられる岸内閣としては、それを本来の筋に近づける努力を当然なされなければならないと思う。それについてこの改正案、われわれのいう改悪案は、それを逆行する方向を示しておる。そういう点について総理大臣の本旨と違う法律でありまするから、再考をなさる必要がある。総理大臣としてそういう意見が出たならば、当然考え直すというお考えにならなければならないと思いまするが、総理大臣のお考えを伺いたい。
  56. 岸信介

    岸国務大臣 決して私どもすべての制度が完全であり、この内容で満足しているわけではございません。従って改善を要する問題については十分検討をいたして、改善をしていく考えでありますが、やはり一面国家の財政ということも考えなければなりませんし、一般の制度の本質等も考えましてそれぞれ検討を加えて、逐次改善していく、こういうほかはなかろうと思います。なかなか一時にすべての問題を解決するというわけにはいかないのではないか、かように考えております。十分検討して将来内容を改善していくことについては、政府としても考えていかなければならぬことである、かように思っております。
  57. 八木一男

    八木一男委員 財政の点もございますし、そういう点で、理想の線まで、再就職まで一ぺんに伸ばせ、あるいはまた失業保険金を飛躍的に上げようといってもそれはいろいろと内閣の性質があって、財政上の理由があるからということで、なかなか一ぺんにいかないということは私ども知らないわけではありません。しかしそれができる機会にそれをしないということは、非常な怠慢であろうと思う。今まで失業保険給付というものは非常に劣悪なものであった。たとえば保険金額は六割である。賃金五千円のときに、六割の給付であれば、これは日額計算でありますが、月額にして一ぺんにわかりやすく申し上げますと、三千円にしかならない。三千円では奥さんと子供さんがあれば、一人当たり月千円ということになる。都会地の生活保護の一人当たりの金額の半額であります。(「五千円というのは少な過ぎる」と呼ぶ者あり)そういうことになるわけです。そういうような、生活保護の基準の半額になるような、そういう劣悪な状態にある。劣悪な状態にあることはけしからぬですけれども、それを直す機会に直すのであれば、幾分とも政府の態度もまた了承できるわけです。直せる絶好のチャンスに今至っているわけです。失業保険合計は黒字が累積して、六百億も黒字がたまっている。毎年黒字の基調はぐんぐん拡大をしている。政府の雇用拡大政策が誤りでなく、偽りでなく、インチキでないならば、黒字基調はますます拡大するはずである。それをインチキとお認めになって宣言なさるならば、また別な角度から申し上げますけれども、インチキでないならば、黒字基調はますます拡大をしていく。その黒字基調のもとになるものを維持していけば、当然劣悪きわまる状態を改善することができる。おそらく総理大臣は、非常に理想の方に近づけたい。野党はまたそういうことをどんどん言う。しかしながら、財政上の理由か、そういうことがあって、一ぺんにいかないという、一般的な社会保障に対する概念を持っておられると思う。一般的な概念については、その十分の一くらいは政府の立場もわからないではありません。しかしそういうようなことができるときにそれをしないでおこうということ、これは政府の公約を全然完全にはずして、そういうことをする意思はない、福祉国家を作る意思はない、社会保障をやる意思にないということを言わなければ、国民に対する重大な欺瞞だ。今はできる機会なのです。六百億円の黒字がある。黒字の基調は拡大していく。さらに政府の公約によれば、拡大する要素がある。こういうときに一つも改善していない。総理大臣はそんなこまかいところまでおわかりにならないかもしれないが、できるときに、しなければならないのにしないのは、大ぜいの人が総理大臣の目をくらましていると思う。もし総理大臣が知っていてそれをしないならば、岸さんは完全に今、ただいまから総理大臣の資格はありません。権力で信任を得るというけれども、良心があれば直ちに辞表を出されるべきです。もし良心がおありになるなら、今できるときにそれを直さなければなりません。総理大臣は、ほんとうに自分が良心のある政治家と思っておられるかどうか、それについての御答弁を願いたい。
  58. 松野頼三

    松野国務大臣 委員長……。
  59. 八木一男

    八木一男委員 総理大臣の答弁であります。労働大臣ではありません。
  60. 岸信介

    岸国務大臣 保険行政の技術的な問題、内容の詳細等について、またそれについての具体的な意見は、労働大臣よりお答えをすることにいたします。私自身が何か非常に社会保障制度に対して関心を持たない、あるいはそれについて良心を持たないというふうな御意見のようでありますが、私としては、先ほど申し上げましたようなことを、衷心から考えておる次第でありまして、決してこれについて良心を疑われるようなことは絶対ないと考えております。
  61. 八木一男

    八木一男委員 総理大臣が良心をお持ちになるという宣言をされた。良心に従って行動をしていただきたいと思う。良心に従って行動をしていただくために、今まで政府においても、政府の各部局あるいは閣議においても、総理大臣に良心に基づいて行動するような素材を与えておらなかったように思いますから、私が御説明を申し上げますので、直ちに良心によって判断して、その問題について適切な行動をとっていただきたいと思います。  失業保険給付というものは、元来再就職までやるのがあたりまえである。たとえばニュージーランドのような社会保障の発達しているところでは、完全に再就職までやるような制度が確立しております。政府の方は、インチキな、非常に国力のない、そういうことのあまり進んでいない国の例をあげて、短かい国があると申しますけれども、少なくとも発達している国は、再就職まで完全にされておる。  それからもう一つ金額の点であります。賃金に対する六割というものは標準であるというようなことを、インチキな学者、インチキな政府役人は言います。しかし、インチキというのは言い過ぎであるかもしれませんけれども、それのみではない。六割をかけるもとがある。わが国の賃金が、アメリカはもちろん西欧諸国よりも、はるかに低いということは、総理大臣すでに御存じの通りであります。その賃金にかける率が同じであっても、貨金が低ければ、非常に金額は少なくなるということになる。賃金自体が低いのにその六割になったら、低賃金でその日をかつかつに暮らしている人が六割に切り下げられたら、生活が非常に困難になるということは、まともにお考えになったら、頭のいい総理大臣はすぐおわかりだろうと思う。そういう状態にある。先ほどの例は一つ特異な例をあげた。与党の方から、非常に先輩である大橋さんからヤジが出ました。それは一つの一番、何と申しますか、著しい例を出し上げたわけでございますが、とにかくそういうものがある。五千円の例にしなくてもよろしい。やはり一万円の例にして、六割だと六千円である。家族三人あった場合に、これは平均すると二千円の生活費になる。東京都の生活保護の基準は二千円とんとんである。政府の強制保険で、失業のときの状態を確保するために失業保険法出しておる。強制適用で保険料を巻き上げている。それでいながら、それくらいの生活しか維持できない。こんなものは不完全で非常に不十分だということはわかり切っている話。それを直さなければならぬ。直すときには、われわれは反対だけれども政府にはいろいろな政策があって、国庫支出をたくさんつぎ込めないというような状態があって、今までストップをしておる。その点は非常にけしからぬと思うけれども、今まで済んだことだ。ところが、直せるときに直さないということは許せない。政府は今まで三分の一の国庫負担出しておった。その出しておった時代より今の方か経済情勢はよくなっている。出せないはずはないわけです。自然増収は二千五百億もふえておる。保険料負担にしても、事業主はその当時、千分の十六を出していた当時よりもずっと収入がよくなって、負担能力はある。私どもはむしろ国庫負担を上げて、事業主の負担する保険料を上げてもそれを直さなければならないと思いますし、総理大臣もほんとうにまともに考えられれば、そう考えられるのがあたりまえであるのに、上げるどころか下げる。今まで失業者をつぶし、ほんとうに放置していた。ところが、それが、放置しないでもう少しよくできるという絶好のチャンスなんです。その絶好のチャンスのときに国庫負担を切り下げて、負担能力の十分にある使用主の保険料を切り下げて、そうしてそれをストップさせよう。そんなことは理屈が通ることではないのです。総理大臣政策の大部分については私は大反対でありまするけれども、しかし総理大臣総理大臣なりに、日本の国をよかれかしとして政治考えようというつもりでやっておられるのだろうと思う。総理大臣はその事情を知らないで、間違った方向をよしとしてやったら、総理大臣政治家としての考え方、やりたいということと反すると思う。あなたはめくらにされておられるのです。少なくとも一部分でも目を開いて、めくらじゃない政治をやっていただきたい。この法律は完全にあなたをめくらにさせている。今御答弁を聞いても、詳しいことは御存じない。詳しいことを総理大臣に知らせないで、大蔵省の主計局長ぐらいにはねられて、そうして世の中の体制を悪くする。大ぜいの大衆の要望を踏みにじる。日本社会保障を逆行させる。そんなことは許されていいことではないと思う。総理大臣の本旨とは違うでしょう。さっき良心に従って政治をやると言われた。それが本旨であれば、これは断じて再考慮していただかなければ、総理大臣はみずから政治家として不適格を示したことになる。総理大臣は適格と信じていられるはずだと思う。それであれば直ちにこの問題の再検討政府に命ずべきである。その点についての確固たる御返答をいただきたいと思う。
  62. 岸信介

    岸国務大臣 御質問は二つの点にあったと思います。それは、今回出しております失業保険に対する国庫の負担率を、現行の三分の一から四分の一に引き下げたことがけしからぬということと、現在あるところの失業保険制度給付内容というものがきわめて不適当なものである、この内容を改善すべきだという、この二つの点にあると思います。  それで、第一点の万につきましては、これは私もいろいろな議論があろうと思います。反対論ももちろんあるでしょうが、しかし政府としては、社会保障制度審議会に諮って、実は今回国民健康保険に関する皆保険制度の方針も立ったし、それから国民年金制度も立った、こういう際に、やはり各種の制度の間の均衡をとっていくという考え方のもとに出発したいという方針に対しては、大部分の方が賛成されましてここに出すことでありまして、反対論のあることは私は十分なにしますけれども、そういう専門家の間でもって審議したわけであります。  それから、第二の点につきましては、これは内容の不完備な点が私は現在もあると思います。これを改善しなければならぬと思います。しかしこれは単なる慈善事業ではございませんで、やはり一つ制度として考えるならば、ただ私がこの良心だけでこうするのだという性質のものではなしに、やはり専門家があり、この制度についての利害得失、いろいろなものの点から十分一つ専門的に検討をしていただいて、その結論によって方向内容を改善するということは——私は現在のものが満足であるとは思っておりません。だから、これを改善していかなければならぬという考えを持っておりますから、そういう意味において審議会等におきまして十分一つ審議をしていただいて、その結論によってこれを改善していきたい。
  63. 永山忠則

    永山委員長 八木君、約束の時間が参りましたので、結論を急いで下さい。
  64. 八木一男

    八木一男委員 総理大臣に伺います。総理大臣が良心のある政治家だったら、これだけ重大な問題に、私に対してあと三十分や四十分の応答をする良心をお持ちになっていると思う。(「総理大臣の都合じゃない」と呼ぶ者あり)総理大臣の都合だ。(「国会の都合だ」と呼ぶ者あり)国会はわれわれが質問を要求して、やっているのだ。総理大臣の都合が悪いからやめろというのは、君たち、いけないのだ。(「総理大臣を責めるのはおかしい」と呼ぶ者あり)総理大臣を責めるのじゃないのだ。総理大臣がりっぱな政治をやる機会を与えようと思ってやっているのに何だ。  岸内閣総理大臣にその点について伺います。私どもは真剣にこれを討論している。総理大臣も真剣に国会の討議に参加して、政治の誤まりなきを期するのが政治家としての使命であろうと思う。そういう考えをお持ちになっているだろうと思う。区々たる議会運営で総理大臣が答弁を打ち切って帰られるなら、総理大臣政治を語る資格はありません。委員長は何と言おうとも総理大臣はここにいてよろしい。若ぞうであろうとも八木一男の質問に堂々と応答するという気持を表明していただきたい。そうならば委員長与党理事も、そういうことを言う必要はない。与党総裁であり総理大臣である以上、堂々と野党の質問に対して答弁をするという態度を表明してもらいたい。その点の質問です。
  65. 岸信介

    岸国務大臣 私は私のただ個人的の理由でもってこの審議をおろそかにするとかあるいは答弁を避けるというようなことは毛頭ありません。ただ問題は、私の今聞いておるところでは、参議院の方の審議との時間の持ち合わせの関係上からきていると思います。私は時間の許します限り御質問に対しましては私の信念をもってお答えするつもりであります。その点はむしろ委員長同士の関係におきましてどういうふうな約束をされておるか、私はそれに従って行動します。
  66. 八木一男

    八木一男委員 参議院で要請をしているのはデモ規制法であります。これは予算関係のある法律で、政府与党の方はこの審議を促進していこうということをさんざん野党に要請をしてこられた。その意味において今総理大臣に質問をしているわけであります。でありますから、断じてこの質問が終わるまではいてもらわなければなりません。それでは質問の本題に移りますから、委員長、断じて打ち切りをしてはいけません。
  67. 永山忠則

    永山委員長 結論を急いで下さい。
  68. 八木一男

    八木一男委員 総理大臣としての善意を表明されたいろいろの御答弁は、政治家として、とにかく今聞いた範囲においては、非常にまじめに努力をされようという気持を看取いたしました。ただ総理大臣政策の大半については私は大反対でございますが、その問題についてはそういうことになります。  この問題の背景を一つ申し上げないと、総理大臣としては御理解がつきにくいと思う。失業保険という問題の前にお伺いしましたように、福祉国家を作るためには完全雇用政策が行き届いて、労働者が就職の機会を得ることと、もう一つは賃金その他の労働条件ができるだけよくなるということが一つの大きなテーマだということを総理大臣も確認をされたわけである。ところがこの失業保険のストップということがそれと逆行を示すわけです。政府の方では一部分非常に間違った考えがありまして、失業保険給付しても、失業保険で楽々食べて就職をしないであろうというような誤まった考え方をする政府の人があるように、御答弁をいただきまして私は推測をしております。それではいけないのであって、政治を担当している岸さんにしても、いろいろ審議をしているわれわれにしても、日本国民は勤労の意欲を非常に持って、勤労あるいはその他の仕事によって自分たちでほんとうに自分の生活を確保する最善の努力をする。その仕事を通じて国家社会に役立つというような積極的ないい気持を持った、ほんとうによい国民であると私どもは信じて政治をやらなければならないと思う。ところが失業保険金をやればなまけ国民になって、その間遊んで食っているというような間違った考え方、また非常に非人情な冷たい考え方でこの問題に対処してはいけない。ところがそういう考え方が一部あるように推測できる。そういう考え方考えないでいただきたいと思う。ところで失業保険金というものを、条件をよくすればどういうことが起こるか、悪くすればどういうことが起こるかというと、悪くして失業保険金の金額が少ない、すぐ切れてしまうということになれば、労働の安売りが起こる。もうあと十日間で切れる。切れればどうなるかということを考えれば心があせります。また金額が少ないから毎日食えなくて、子供がもう少しおいしいものを食べたいとねだれば、何とかしてこれを打開したいということを考えるのは人情です。そうなると自分はこの仕事に適さない。あの工場は労働管理が悪くてからだをこわす、賃金が上がる見込みがない。自分の働く能力よりもぐっと安い賃金で抑えられているというふうに考えても、やはり一生懸命悪い劣悪な状態で就職を探さなければならぬということになるわけです。それが私どもの分析では資本家のつけ目なんです。困らした状態において労働を安売りさせる。ほんとうに常用工じゃなしに臨時工でこき使うということをすれば、低賃金で資本家の方はもうかります。自民党は資本主義政党であるということは知っておりますけれども日本の国家の政治を担当される総理大臣は、少なくとも表向きの建前に資本家のためにだけ政治をやるという建前をとっておられないはずです。多くの国民のためによい政治をやるという建前をとっておるはずです。その多くの国民のおもな部分である労働者の失業保険というものが悪くて、再就職のために最も劣悪な状態で就職しなければならない。これがよければ、自分の適した職業に、自分の満足はいかないにしても、納得する労働条件で働くということになる。こういう保障が悪いために労働の安売りになる。それが資本家のつけ目である。総理大臣は資本家のつけ目の通り資本家のきげんをうかがって、労働者はせっぱ詰まって労働の安売りをし、非常な労働強化をして結核になり、将来の発展がなくて絶望的な労働をするということをお好みかどうか。好んでおられるなら別であります。好んでおられないならこれは考え直していただかなければならぬ。好んでおるかどうか伺いたい。
  69. 岸信介

    岸国務大臣 そういうことを好む人は私は何人もなかろうと思います。私自身ももちろんそんなことは考えておりませんが、しかし今おあげになったような傾向も一面においてあることもこれは事実であろうと思います。だから考えなければならぬ。また日本人は勤労意欲があってなまけ者にはならないということも私は日本の国民性だと思いますが、しかし失業保険を受けている者の一部において、われわれがときどき耳にするのは、パチンコに行っておるというような——これも非常な例外の例かもしれませんが、そういうものが絶無であるということも言えないのです。だから制度を立てていく場合におきましては、いろいろその国の社会の状況なり国民性なり、また制度本来の趣旨というようなものを十分検討していかないと、ただ何を上げたらそれでいいのだ、内容を六割を七割もしくはどういうふうに上げたらいいのだ、あるいは期限を何日延ばしたらこれでいいのだ、再就労するまでやればいいのだというふうにすぐ即断することは、私はいろいろ点から考えなければならない。だから専門家に十分一つ検討していただいて、今八木君の言われることもごもっともであり、そういうものを私は奨励して資本家の利益をはかろうとか、その思うつぼにはまらせようというようなことは毛頭考えておりません。
  70. 永山忠則

    永山委員長 一分許します。
  71. 八木一男

    八木一男委員 そんなことは承知しません。
  72. 永山忠則

    永山委員長 時間は三十分の約束でございます。約束は済みました。一分ほど許します。
  73. 八木一男

    八木一男委員 委員長委員長。よけいなことを言わないで僕の言うことを聞いて下さい。
  74. 永山忠則

    永山委員長 約束です、一分ほど許します。一分たったならば中止いたします。
  75. 八木一男

  76. 永山忠則

    永山委員長 一分ほど許します。
  77. 八木一男

    八木一男委員 委員長と言っているのに聞かないのか。
  78. 永山忠則

    永山委員長 一分ほど発言を許しました。一分がきましたら中止します。     〔八木一男委員「勝手にしろ、総理大臣は、こういう議会運営だ、自由民主党の総裁は、与党がこのような議会運営をやることをほんとうに……」と呼ぶ〕
  79. 永山忠則

    永山委員長 暫時休憩いたしまして、理事会を開きます。     午前十一時三十一分休憩      ————◇—————     午後二時二分開議
  80. 永山忠則

    永山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  休憩前の質疑を続けます。滝井義高君。
  81. 滝井義高

    滝井委員 船員保険法等の一部を改正する法律案並びに与党提出をいたしております船員保険法の一部を改正する法律案に見合う四法を一括して御質疑をいたしたいと思います。  そこでまず第一に、与党提出失業保険の方から政府の見解を二、三尋ねてみたいと思うのです。そのまず第一は、職業訓練施設に入所した者に関する給付の延長の問題でございますが、職業訓練施設に入所した者にこの条項を適用する場合に、現在炭鉱労務者の訓練手当との併給は考えておるのですか。
  82. 堀秀夫

    堀政府委員 訓練手当との併給は考えておりません。
  83. 滝井義高

    滝井委員 次には最近駐留軍の離職者、たとえば芦屋のようなところで急激にアメリカ軍の移動が始まりまして、大量の失業者ができて参るわけです。そうしますと、芦屋のようなところは交通的にも非常に便利の悪いところでございますが、ああいうところの駐留軍の離職者が北九州その他の職業訓練所に通っていくのもなかなか大へんだと思うのです。そういう場合にはああいう場所に職業訓練所を作り臨時に職業訓練をやる、そして失業保険がない人あるいは失業保険の切れる人に職業訓練手当を支給しながら、離職者対策を完全にやっていくというような構想は労働省としては考えておるのですか。現在職業訓練所はそれぞれ炭鉱離職者の多いところにはあるわけですが、これはやはり一つの郡市に一カ所くらいずつしかないのですから、たいがいそれは中央部にあるわけです。そうすると駐留軍の離職者が出たとか、あるいは炭鉱が閉山になったというと一挙に五百人とか千人とかの失業者が出る。その五百人とか千人とかの人たちの中で失業保険を持たない人が職業訓練所に通っていくことも大へんなんです。そういう場合には便宜的に、炭鉱なら炭鉱、駐留軍なら駐留軍のもとおったところには家屋その他りっぱな施設があるわけですから、それを利用して、たとえば旋盤とか大工、左官というようなものを教えれば、ただそこに教える先生だけが行けばいいというような問題が出てくると思いますが、労働省は今後そういう突如として出て参る集団的な離職者についてはそういう便宜をおはかりになる意思はあるのですか。
  84. 堀秀夫

    堀政府委員 まずお尋ねの駐留軍関係でございますが、これは中央、地方の駐留重離職者対策協議会におきまして、関係各省密接に連絡をとって、離職される方々の配置転換に遺憾なきを期したい考えでございます。具体的に申し上げますと、たとえば芦屋地区につきましては、現在芦屋地区に訓練所の分室がございます。この芦屋分室の内容を拡充いたしまして収容人員の増加をはかるということを考えております。それからこれと並びまして、ただいま御指摘のありましたような駐留軍関係の施設であるとかその他の施設の利用等についても、調達庁と連絡の上最大限の便宜を供与するという考えたのでございます。なおそのほかの産業におきまして集団的な離職者が生ずるというような場合におきましては、炭鉱離職者については先生御承知のような措置をとったわけでございますが、今後これに準ずるような問題が起きましたときには、それぞれそれに応じまして関係幾関と密接な連絡をはかりまして遺憾なきを期したいと考えております。
  85. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、芦屋のようなところにおいてはその地区に訓練所を作る。炭鉱でAならAという炭鉱が閉山になって、そこに一挙に千人の失業者が出てきた。そうしますと、その人たちが訓練所まで通うというのは失業保険だけではなかなか大へんなんですね。従ってその炭鉱の中の建物を利用して、もし要請があればそこに訓練所の分室でも作ってやれる、こういう政策は推進できますね。
  86. 堀秀夫

    堀政府委員 そのときそのときに応じて遺憾なきを期したいと思います。たとえば炭鉱離職者用の訓練所には付属の寄宿舎を設置するようにしております。そのほかにおきましても、ただいま先生お話のような事態が起きましたときには、そのときそのときに応じて弾力的な措置を考えていきたいと考えております。
  87. 滝井義高

    滝井委員 ぜひそういう措置を講じていただきたいと思います。  次は、松野労働大臣にお尋ねしますが、今回与党の方でお出しになりましたこの法律によりますと、今局長から御説明のありました通り、訓練手当と保険金とが併給されていないということですね。夜間百三十円、昼間二百三十円のものでは、やはり安んじて職業訓練につけないという傾向があるわけです。失業保険と併給されておりますと、まず食う方は失業保険でやってもらおう、自分の勉強の力は訓練手当でやっていくのだ、こういう気持がわいてきて、非常に能率を上げることができると思うのです。それから同時に、失業保険が切れてから職業訓練所に行って、職業訓練を受けて再就職するということになると、これは労働省指摘されておるように、失業の期間が長ければ長いほど就職の条件が悪くなるわけです。この際どうですか、さいぜん午前中の御説明でもあったように、今度労働省は一年この法律が通らなかったために四十億の収入増が出てきたわけです。そうしてこの与党提出でも三十億そこそこらしいのですが、そうすると約十億か九億の金がしっぽによけいに入ってきたわけです。その分一つ善政を施す意味において、失業保険と訓練手当と併給をするという政策を——これは今度は無理だと思いますが、こういう法律が出ておりますから。近くそういう構想をお打ち出しになる意思があるかどうか。
  88. 松野頼三

    松野国務大臣 当面の問題は、滝井委員の御指摘の問題ですが、炭鉱離職者の訓練手当の方をふやせという声が実は非常に強いのです。私もこれについては将来改正したいという意思表示をしております。片一方の方が、大体失業保険が三百五、六十円に炭鉱の場合は当てはまります。訓練手当は二百三十円、どちらかというと訓練手当の増額の方が、感じとしては私は優先しなければならないんじゃないか。ことに炭鉱離職者の場合は失業保険の切れた方が大部分であります。今回与党修正が出ますと、新たにそういうものが入りますけれども、大体失業保険の切れた方が炭鉱離職者には多いものですから、その訓練手当の修正という方が先行する立場にありやせぬか、こういうふうに私は考えております。
  89. 滝井義高

    滝井委員 まあ苦しい財政の中からやるのですから、政策の順序としてはすでに今まで訓練手当というものがなくて今度新しくできたわけですから、従って失業保険が切れておる炭鉱離職者が多いでしょう。従ってその人たちに二百三十円なり夜間百三十円の訓練手当をまず第一に増加をしていき、そうしてその政策がある程度浸透した場合に、今度さらに失業保険と併給の問題を検討するということは、順序として私はそれでいいと思います。ぜひ一つそうやっていただきたいですが、そうしますと、夜間百三十円、昼間二百三十円の訓練手当というのはどの程度増額する御意思があるのですか。
  90. 松野頼三

    松野国務大臣 金額は今回は予算通りましたからあえていじるわけに参りませんが、援護会の運営の中においていずれ経営審議会とか運営委員会というものもございますから、援護会の運営の内部においてこれは検討してもらうように、私の方はそんな気持でお話ししているわけであります。
  91. 滝井義高

    滝井委員 まあ額は聞きたいところですが聞きますまい。一つぜひ援護会の運営の中で百三十円、二百三十円の手当はある程度増額をしていく。そうするとこれは今年度の年度途中から増額をやるという、こういう決心ですね。
  92. 松野頼三

    松野国務大臣 これは政府予算ではございませんから、三十五年度中において検討をいたすようにただいま私の方からも要請をしております。
  93. 滝井義高

    滝井委員 三十五年度中にぜひ一つ実現していただくようにお願いをいたしておきます。  次は、この職業訓練施設に入所している者に対する失業保険給付を延長する場合のその金額、これは失業保険をもらっている金額をそのまま延長していくことになりますか。
  94. 堀秀夫

    堀政府委員 その通りでございます。
  95. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、政府としては、この与党提出の、訓練施設入所者の給付延長の対象人員と金額はおよそどの程度と見ておりますか。
  96. 堀秀夫

    堀政府委員 大体対象人員といたしまして約五千人、これは見込みでございますから実際やってみないとわかりませんが、約五千人。これが給付を要する経費約三億五千万円と見込んでおります。
  97. 滝井義高

    滝井委員 対象人員五千人で、給付が三億五千万円だそうでございますから、一応承っておきます。そうするとこの訓練期間が一年以内の者に限ることになっておるわけですね。一年以内ということになりますと、その高度の技術を身につけることがだんだん困難になると思うのです。私は失業保険審議に入る三、四日前、冒頭に、日本における雇用労働者の質の変化について御質問を申し上げたわけです。そうして最近における日本の雇用情勢は、電力にしても近代的な石油化学にしても、雇用労働者というものは、高等工業を出たような、工業的、理科的技術を有しておる者が非常に不足しておる。そういうことになりますと、これからの職業訓練もある程度訓練手当を出し失業保険も延長をするということになれば、失業者にも早期に訓練所に入るという指導をやることによって、一年以上の技術訓練を要した労務者でなければ、雇用趨勢から考えて、私は役に立たないのではないかという感じがするのです。この点、今回は議員立法でとりあえずステップ・バイ・ステップということで第一歩を踏み出したのだ。こういう意味で一年以内に限ったと善意に解釈したいのですが、これは現在の雇用情勢を考えて、高度の技術者を必要とするという日本経済の実情から考えて、もう少し延ばさなければならぬと考えますが、その点労働大臣はどうですか。
  98. 松野頼三

    松野国務大臣 御趣旨のような感じを持っておりますが、今回は特に訓練所の内容変更して、なるべく一年以内に高度な技術ができるような内容変更を実はただいまはかっております。従ってある程度技術を持った方は、いきなり二年生に入っていただく。初期の方は一年に入っていただいて、基礎訓練は一年で済みますから大体できる。同時にできれば十カ月くらいで基礎訓練を終わって、二カ月くらいを実務に合わせるような補足訓練という方向に進むべきではなかろうか。これは実は教材と教える先生の質の問題であります。総合訓練所はただいま私の申しました方向に進んでおりますが、全国にまだこの普及が至っておりませんので、なるべく訓練所の訓練期間と内容に私はこの問題を前進させていきたい。そうして一年で一応基礎訓練からある程度の高等訓練まで入れる程度に訓練を進めて参りたいという方向にやはり改善すべきだと考えます。
  99. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、ある程度実力のある者は、一年を飛び越えて二年生に入れるというような、そういうシステムに今の職業訓練所はなっておりますか。
  100. 松野頼三

    松野国務大臣 ただいまの総合訓練所はそうなっておりません。基礎訓練から高等訓練をあわせてやっております。こういう制度ができますと、おのずから基礎訓練を経た方で、いわゆる科学技術の進歩に伴う高等訓練という分類が出て参りましょうし、今回この与党の修正案が通りますれば、訓練所の内容もその方向に合わせることが、私は雇用市場に合わせるものだ、こういうふうな考えを持っておるわけであります。
  101. 滝井義高

    滝井委員 ぜひそういうように一つ職業訓練全般というものを、日本の雇用における求人側の質的な好みの違いというものに対応した訓練制度をぜひ確立していただきたいと思います。同時にその訓練制度というものは学校教育とも無関係ではないのです。先般職業訓練法をここでいろいろ質問をいたしましたときに、当時の文部大臣は衆議院議長をやりました松永東先生でございましたが、労働省の職業訓練と文部省の教育課程との関連というものが少しも連絡がとれていないのです。当時ずいぶん松永さんに質問をしたのですが、はっきりした答弁が出てこなかったのです。今後ぜひ松野さん、職業訓練課程と学校教育課程、それから実力のある者は途中からでも職業課程の高度のものに入れるという仕組みを一つ考えてもらいたいと思います。  次は、給付日数の延長に関する特別の措置でございますが、一体給付日数を、失業多発地帯において労働大臣が広域職業紹介活動を命ずる、その命じた者に対して、どの程度の延長のワクをお認めになるのですか。
  102. 堀秀夫

    堀政府委員 議員提案の修正案によりますれば、その内容、基準等につきましては、労働大臣が職業安定審議会意見を聞いて定めるということになっております。そこでこの法案が成立いたしましたならば、労働省といたしましては、職業安定審議会を至急招集いたしまして、その御意見を求めた上で決定いたしたいと思っておりますが、大体われわれの原案といたしましては、この場合において約二カ月程度給付延長を行なうことが適当ではないか、このように思っております。なお具体的には職業安定審議会の御意見を伺った上で定めたいと考えております。
  103. 滝井義高

    滝井委員 労働省当局としては、給付日数の延長については二カ月程度だ、その最終的な結論は職業安定審議会意見を聞く、そうしますと、この項目に該当する対象人員とその金額は一体どの程度になりますか。
  104. 堀秀夫

    堀政府委員 これも基準のきめ方によりますが、われわれの大体の考え方といたしましては、失業保険の全国の受給率に比べて著しく高い地区をこのような地区に指定いたしたいと考えております。見込み人員は約二万五千人、この措置に要する見込み経費は約七億円程度を見込んでおります。
  105. 滝井義高

    滝井委員 失業多発地帯でございますから、失業保険の受給者は非常に多くなるわけでしょうが、二万五千人、経費七億円ということです。そうしますと、この場合に失業多発地帯で、職業安定法の一部を改正して労働大臣が広域職業紹介活動を命ずるのですが、その広域職業紹介活動というのは、具体的にはどういうことですか。
  106. 堀秀夫

    堀政府委員 ただいまの職業安定法の建前といたしましては、職業紹介は求職者の住居地を変更しないということを建前にして紹介を行なうことになっております。しかし一定地域に多数の失業者が集中して滞留しておりまして、そのためその地域内でこの失業者を就職させることが困難となる場合が予想されますので、この場合においては通勤圏内への就職あっせんという原則にこだわらずに、積極的に他地域に就職を促進するための措置が必要であると考えるわけでございます。そこでこのような場合には、労働省が中心になって、失業者多発地帯の求職者に広範囲にわたり計画的に職業紹介活動を実施することが必要となるわけですが、これがいわゆる広域職業紹介という考え方になると思います。広域職業紹介計画内容といたしましては、いろいろな内容が中に入ると思いますが、まず第一に、他地域にどのくらいの求職者を就職させることを目標にするか、それから今度は受け入れの方におきまして、その都道府県別に就職をあっせんする目標がどのくらいであるか、第三に、それをどのくらいの期間で行なうか、それからその次に求人者の選定基準をどのように扱うか、それから求職者の選定基準をどのように扱うか、それからそれと並んで、求人開拓あるいは求人連絡等、この広域職業紹介の計画を達成するために関係都道府県ではいかなる措置をとるか、以上のようなことを内容といたしまして、労働省から都道府県にお願いいたしまして、計画的に職業紹介を広範囲の地域にわたって行なおうということになっております。
  107. 滝井義高

    滝井委員 現在、炭鉱地帯における失業多発地帯、あるいは駐留軍労務者の失業多発地帯として指定されたものについて、今のような広域職業紹介計画というものをお立てになって、どの程度の成果を具体的に上げておりますか。
  108. 堀秀夫

    堀政府委員 広域職業紹介活動は、炭鉱離職者臨時措置法によりまして、初めての試みとして実行いたしたわけであります。これにつきましては大体法律実施後二月末日までに炭鉱離職者約二千二百人につきまして、広域職業紹介の結果によりまして就職をさせております。その内容を大体産業別に申しますと、就職先は土建関係、鉄鋼関係、機械関係、金属関係というようなところが多くなっております。またその就職場所は東京、神奈川、大阪、兵庫、愛知、岐阜、山梨というようなところが最も多く、それに続いて全国的に求職者があちらこちらに就職しておるという状況であります。
  109. 滝井義高

    滝井委員 土建、鉄鋼、機械、金属という中で、やはりどのようなものが最高ですか。
  110. 堀秀夫

    堀政府委員 私がただいま申し上げました順序でございます。すなわち土建が一番多く、鉄鋼、機械、金属がこれに次いでおります。
  111. 滝井義高

    滝井委員 実は広域職業紹介において土建業の就労が一番多いということは、結局土建業自身が非常に定着性のない労務を必要とするのです。トンネル、道路、港湾、これはジプシーのような者なんです。その工事が終わればまた次の飯場に行く。こういうような状態は、やはり若い間はいいのですが、御承知のように炭鉱離職者というものは四十才以上の者がだんだん多くなってきつつある。従って子供もおり奥さんもおり、そうして子供はすでに中学あるいは高等学校まで行っておるというようなときに、父親がジプシーのような生活をするということは一家にとっては重大な生活転換になるわけです。生活の変革をもたらすわけですね。これは国民生活全体から考えましても必ずしも好ましいことではない。こういうところに広域職業紹介というものの一つの欠陥が出ておると思います。そういう広域職業紹介をやる場合には、広域職業紹介の計画を、職業安定法の十九条の二か何かに出ておりますが、これを立てるときには、やはり職業訓練計画にマッチしたものでなくちゃならぬと思います。訓練を受けてそうして広域職業紹介をする。そこに行けば住宅もあって、そこで安住の地が得られるのだ、こういう形でなければいけないと思います。そうして土建業のような、力仕事をやってしばらくして移動するというようなものは、やはり筋骨隆々たる若い労務者をそれに一時的にやる、そしてひまを見て訓練をさせながら安定的なものに切りかえていくという方法をやらないと、炭鉱離職者——このエネルギー革命というものは急激に起こってきたのですから、そこまで労働省はいかなかったと思うのですが、こういう点労働大臣としてはいかがですか。
  112. 松野頼三

    松野国務大臣 土建業もだんだん内容が変って参りまして、最近は機械を使うとか相当高度なものが非常に要求が多いので、機械を使う技術者が一番ほしいわけであります。同時に、この東京に就職しました者も、大体東京における建築及び埋め立て工事というのを対象にいたしております。滝井委員のおっしゃいましたのは山梨県、山梨県に参りました者は災害復旧ですから、永続だけとは私も考えておりません。しかし大体東京、名古屋の土建業というのは相当最近高度なもので、ビル建築というものがその対象になっております。ジプシーみたいなものだと言われればそうですが、だんだん土建の性質も変わって参りました。そういう意味で私たちも土建業を——今日百七十万の雇用を持っているのは日本で単位産業では最高かもしれません。従ってこういうのは一つの産業の犠牲ですから、土建業がいけないとは一がいに言えない。同時に土建業の中の質の改善をはかるべきじゃなかろうかという方向で、私たちの職業訓練はそれに合わせた訓練が今日は非常に要求をされております。
  113. 滝井義高

    滝井委員 とにかく世の中が非常に急激に変わりつつありますから、職業訓練にしても紹介のやり方にしても一つ適宜適切に抜かりなくやっていただきたいと思います。  次はこの広域職業紹介活動によって職業のあっせんを受けることが適当と認められるその受給資格者についておやりになることに法案がなっておるわけです。この受給資格あるものと認定をする基準、ここが問題になってくると思うのです。今私が土建業で申し上げましたように、これは四十才以上の人を、職業はないのだ、だから、広域職業紹介で土建に行きなさいといって、どんどん送っておりますと、その家庭というものは全く破壊されておる。われわれは、こういうあたたかい家庭生活まで考慮をした政策というものが打ち出されていかなければならぬと思います。不安なく労働をしてもらうという形でなくちゃならぬですね。そうすると、そのあなた方の選ぶ資格の基準、これはどうお考えになりますか。
  114. 堀秀夫

    堀政府委員 広域職業紹介の対象となる求職者は、その広域職業紹介活動命令が出ました地域に居住する求職者であって、他地域への移動の意思があり、かつ移動することが可能であるということが必要であろうと思います。その場合に、先生ただいま御指摘のように、いろいろ家庭の事情あるいはその他の関係からいたしまして他地域への移動が不可能である、あるいは非常に困難であるというようなものについては、これは広域職業紹介活動でなしに、その地域において就職のあっせんをする、こういう考え方でおるわけでございます。この点につきましては、やはり職業安定審議会等におきまして、具体的にその内容をきめて参りたいと思っておりますが、要するにその地域における求職者の方々にとって、なるべくあたたかい気分をもって対処するという考え方で臨みたいと思います。
  115. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、この給付日数の延長を川職業安定審議会にかけるにしても、およそ二カ月程度で二万五千人、七億円だと申しますが、これはやはり延長する期間は当該本人が今までもらっておった保険金がそのままいく、こういうことですね。
  116. 堀秀夫

    堀政府委員 その通りでございます。
  117. 滝井義高

    滝井委員 次は就職支度金の問題です。就職支度金で失業保険の所定の給付日数の三分の一を、逆に言えば残したものについては五十日、それから二分の一から三分の二未満は三十日、こうなっているわけですが、これは一体どういうことを基準にして三十日、五十日が出てきたのかという点ですが、ここらあたりの腰だめ的な数字でこういうことをやられたのではないかと思いますが、政府としてはこういう点はどうお考えになりますか。
  118. 堀秀夫

    堀政府委員 この修正案にかかりますこの制度は、受給資格者に対しまして早期再就職の意欲を喚起して、なるべく早い機会に再就職するように促進をはかるということがねらいであろうと思います。そこでただいま早期再就職の障害になっておりますのは、就職いたします場合に、やはりいろいろ雑費がかかる。住居関係もかかりましょうし、あるいは新しく入職するわけでありますから、衣服その他の雑費もかかるであろうと考えられます。そこでその際におきまして原則としては一カ月程度、それからもっと早く就職するような場合には、就職の意欲も非常に大きく、就職活動も非常になさっておる場合が多いであろうと思いますので、その場合にはさらに五十日程度を支給することが適当になるのではないか。就職の際にいろいろ雑費がかかるけれども、その金がないので早期就職ができないというのが一つのネックになっておるのではないかと思いますので、そういう点のネックを除外していくというのがこの修正法の趣旨であろうと考えております。
  119. 滝井義高

    滝井委員 ほんとうの支度金で一カ月分程度をやるということでこういうことになったのだろうということでございます。政府は今後行政運営の上でどういう御解釈をおとりになるかという点ですが、失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案の第二十条の六に「その移転について特別の事由がないと認められるものには、所定給付日数を超えては失業保険金を支給しない。」とありますが、その事由というのはどういうことを意味するのですか。
  120. 堀秀夫

    堀政府委員 この点につきましても、職安審議会等の御意見は十分伺って基準を定めたいと思いますが、大体われわれが考えてみますと、離職に伴って住居を変えなければならないということになって、結局よその地域を探したけれども、住宅がない、そこでその地域の事情が悪いということがわかっておっても、やはりその地域内に住宅を求めなければならないということで移転を行なったというような場合、それから家族がその地域内に居住しておって、家庭の都合等もあってどうしてもその家族と同居しなければならないというので、失業情勢が悪いけれどもその地域に転入してきたというような場合、あるいはお父さんやお母さんが死んで、そこで家庭事情が急に変わったということで、郷里の失業情勢で悪いけれどもそこに帰らざるを得ないというふうに認められるような場合におきましては、やはり余儀ない事情があると思われます。そこでそういうふうな場合には、これは特別の事由がある、このように考えまして、今の特別措置の適用をしてあげていいのではないか、このように考えます。
  121. 滝井義高

    滝井委員 ぜひ一つそういう親心は出していただきたいと思います。  次は、就職支度金の三十日に該当する者の人数と金額、五十日に該当する者の人数と金額を伺いたい。
  122. 堀秀夫

    堀政府委員 この点につきましては、実はいろいろ積算しておりまするが、どうもあまりはっきりした三十日が幾ら、五十日が幾らというような数字はちょっとお答えできません。そこでわれわれの方といたしましては、大体次のような見込みを立てております。過去の実績からいたしますと、受給者に対しまして就職率が全体といたしまして六・六%くらいでございます。そこで今度この制度ができますると、三割くらいはふえるのではないだろうかというふうに見込んで計算いたしますと、年間におきまして予想人員が大体三十七万人というふうに見込んでおります。これに要する経費が約三十八億円、ただし反面この措置によりまして就職が促進されて、保険の受給期間が短かくなるという減少分が予想されます。これを約十八億円と見込んでおりますが、結局三十八億円から十八億円を引きました二十億円程度が、給付の増加になるのではないか、このように見込んでおります。
  123. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、今私が御質問申し上げました職業訓練施設入所者に関する給付延長制度の創設と、給付日数の延長に関する特別措置等の新設と、就職支度金制度の確立で、総領正確なところ幾らになりますか。
  124. 堀秀夫

    堀政府委員 総額三十億二千六百万円、約三十一億、このように考えております。
  125. 滝井義高

    滝井委員 三十億二千六百万円だけ政策が前進したことになったわけです。  そこで大臣にお尋ねをしますが、政府提出をいたしました船員保険法等の一部を改正する法律案は、一貫して国庫補助を三分の一から四分の一に下げるということが、今度のこの法律の柱になっているわけです。ところがその柱を、今回与党出したこの議員立法一つ破ったわけです。それはどういう点で破ったかというと、給付日数の延長に関する特別措置の分新設については、国庫負担は三分の一をすることになった。この点については、あなたの政策に対する重大な変更を行なったのですが、これはどう御説明をし、どう理解をされておりますか。
  126. 松野頼三

    松野国務大臣 ちょうど政府案は、一年二カ月前の情勢で出しましたので、その後における情勢が客観的に変化をした、その変化に応じて与党の方が今日の事情に合うような制度を出された、それがちょうどこの修正案という形になっておりまして、政府案は全然修正案を否定しているわけではありません。政府案プラス・アルファというのが修正案でございますから、やはりこれは改善であれば、与党であろうが政府であろうが、全国民のためを考えれば、いたずらにそういうことにこだわらぬでいいのではなかろうか。これで平行線は同じだ、一本のレールを二本引いてもらったというような感じで、方向はやはり東の方を向いているのですから、異論はなかろうと思います。こういうことで、政府は異議なしという閣議決定をしたわけでございます。
  127. 滝井義高

    滝井委員 なかなかこれは苦しいところでございますが、いいことでございますから、われわれもこれ以上は追及いたしません。  これで失業保険の方は大体横におくことにして、一つ最後に厚生省厚生年金の脱退手当金の問題です。これは非常に大事なことですから、与党の皆さん方もちょっとお待ちをいただきたいと思います。  脱退手当の恩恵を受ける人は女子なんです。ところがその女子の勤務年限というものは非常に短かい。結婚や病気その他で女子が会社をやめるわけです。やめますと同時に、会社では自動的にその女子に脱退手当金の請求をやってあげるところがある。そういうことになりますると、厚生年金法の七十一条をごらん願いたいと思います。七十一条には、「脱退手当金の支給を受けたときは、支給を受けた者は、その額の計算の基礎となった被保険者であった期間は、被保険者でなかったものとみなす。」こうなっていて、脱退手当金をもらうと、その間は被保険者でなくなることは当然なんです。ところが「健保ニュース」という雑誌がありますが、これはあとでお見せいたします。その中に「”私は全く知らないのだ”脱退手当金の請求と受領」というのがあるのです。ある人か結核で療養をしているわけです。長期療養者ですから、会社が途中で首にした、首にすると同時にいろいろ退職の関係で判こを会社に預けておったのですが、会社は慣例として女子が退職したときにはみんな脱退手当金をもらうものだ、こういう慣例があるらしいのです。そこで脱退手当金をこの人ももらうんだということで、いつの間にかぽんと脱退手当金の請求をしたわけです。そうするとその人は結核ですから、今度はあとになって障害年金の請求をやったわけです。ところがあなたは障害年金請求の資格はありませんよ、脱退手当金をもらっているからということなんです。本人は長期療養で病院に入院している。会社は自分でとったわけではない、これは悪意はないのです。会社はちゃんと本人の両親に送っているわけです。従って家庭としては、今まで傷病手当金をもらっているのだから、これも傷病手当金だろうと思っている。脱退手当金といったって、女子は四千円くらいしかないのですから、傷病手当金だと思っているわけです。しろうとですから、この金が障害年金か、脱退手当金か、傷病手当金かどうかということは家族にはわからない。自分の娘に傷病手当金が来たぐらいに軽く考えておった。ところかだんだん病気が長くなるので、結核は障害年金の受給資金ができますから、請求したら、あなたはだめですよとなったわけです。こういう点、厚生年金の脱退手当金に対するPRというものができていない。ですからみんな脱退手当金をもらえるということを知らない人もあるし、脱退手当金を選ぶか、障害年金を選ぶか、それとも老齢年金を選ぶかという選択の点についても無知です。こういう点に対するPRと申しますか、これはもう今後国民年金なり厚生年金が全国民的な規模で広がっていくことになれば、厚生省は相当金をかけてでも全国労働者に——特に脱退手当金の対象になる女子に普及する必要があると思うのです。日本の女子は二年か三年でやめる人が非常に多いのです。二年以上すると脱退手当金はつきますから、こういう点一体どういうようにお考えになっているか、こういう事例は多いから「健保ニュース」では「ニュースストーリー」として載せているわけです。私も経験があるが、非常に大きな問題なのです。
  128. 太宰博邦

    太宰政府委員 厚生年金の女子の被保険者の脱退手当金のことですが、お尋ねのケース自身は私はまだよく読んでおりませんけれども、間々まれにはそういうこともあり得ると思うのでありまして、今のお話ですと、判こを預けておったとか、これは本人の方にも若干の手落ちはあるかと思いますが、しかし全般的に申しまして、こういう人たちのために常にこういう方面の制度内容とかいうものをPRする必要があることは、まさに御指摘通りだと私どもも存じております。それでところによりましては、たとい会社から出て参りましても、念のため本人にもう一ぺん当たるという手の届いた方法をとっておるところもあると存じまするけれども、この点につきましては将来さらに注意して参らなければならぬと思います。脱退手当金制度そのものは、いろいろ通算の際に問題になりますけれども、そういう制度そのもののPRについては今後一そう力を尽くして参りたい、かように存じております。
  129. 滝井義高

    滝井委員 厚生大臣に特にお願いしたいのですが、国民年金が普及した来年度から本格的に拠出がされてくる。それから厚生年金も一千万人をこえる労働者に適用されていくのですが、この制度内容について国民は非常に知らないです。これはわれわれ議員もなかなか年金というのはむずかしくて知りません。だから厚生省としては年金に関するやさしいパンフレットぐらいを出して、それを要所々々には配付をして、そうして年金制度を普及せしめていかないと、来年度になりまして、国民年金の拠出の保険料が集まらないという事態が起こりますよ。  それからもう一つは、これは炭鉱に集中的に起こった問題があるのですが、自分は坑内夫だと思い込んでおったのです。ところが今度いよいよ年金をもらう段になったら、君は坑外夫だということになった。こういうことが二、三年前に古河系の炭鉱に起こったのです。労働者自身が、自分は坑内夫になっておるのか、抗外夫になっておるのか知らない人がずいぶんおる。昭和十七年にこの制度が本格的に発足して以来なおそういう状態ですから、こういう点については一つ事務当局に十分意見をお聞きいただいて——年金問題の普及というものは相当大事だと思うのです。これは保険料がそうしないと集まらぬという問題が出てきますから、還元融資の問題、自主運用の問題と合わせて、国民的な世論を喚起して、渡邊厚政というものを大きく前進せしめるためにぜひやってもらいたいと思うのです。
  130. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 御趣旨通りいたしたい、かように存じております。
  131. 柳谷清三郎

    ○柳谷委員 ただいま議題となっております六法案に関する質疑につきましては、これをもって打ち切られんことを望みます。     〔八木一男委員提案者たる田中君やその他の提案者に質問をしないで打ち切るというのは、失礼じゃないか」と呼ぶ〕
  132. 永山忠則

    永山委員長 柳谷君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  133. 永山忠則

    永山委員長 起立多数。よって六法案に対する質疑は終局いたしました。  ちょっと速記をとめて下さい。     〔速記中止〕
  134. 永山忠則

    永山委員長 速記を始めて下さい。      ————◇—————
  135. 永山忠則

    永山委員長 この際、五島虎雄君外三名より日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案に対する修正案が提出されておりますので、提出者よりその趣旨説明を求めます。五島虎雄君。     —————————————
  136. 五島虎雄

    ○五島委員 日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案に対する修正案の理由を説明いたしたいと存じます。これは日本社会党及び民主社会党を代表して申し上げます。  まずこの修正案の原案は皆さんのお手元に配付されてありますけれども、その修正案の内容は、第一点といたしまして、傷病手当金の支給を療養のために労務に服することができなくなった日から起算いたしまして「第四日」から行なうものとすることであります。  第二点といたしましては、出産手当金の支給限度を「二十一日」とすることであります。  以上が修正案の内容でございますから、慎重に御審議の上皆さんの御賛同をお願い申し上げたいと存じます。
  137. 永山忠則

    永山委員長 本修正案に対する質疑はないようであります。  この際齋藤邦吉君外二十三名提出失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案田中正巳君外二十三名提出厚生年金保険法の一部を改正する法律案日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案、船員保険法の一部を改正する法律案並びに八木一男君外十二名提出失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案、以上各案はいずれも国会法第五十七条の三の規定に該当するものでありますので、内閣意見があれば、この際意見を求めることにいたします。松野労働大臣
  138. 松野頼三

    松野国務大臣 自由民主党より提案になった法案は、政府提案法案内容をすべて取り入れたものであり、かつ政府提案法案内容に付加されている事項は、最近の雇用、失業の情勢から見て、関係者から特に要望されておる内容であり、また失業保険経済の上から見ても支障がないので、政府としては異存がないという見解であります。社会党提案法案のうち職業訓練期間中の給付期間の延長、特定地域の指定による給付期間の延長、就職仕度金制度の創設、日雇いの待期日数の一日短縮については前述の趣旨から異論がないが、その他については今直ちに賛成いたしがたいと存じます。
  139. 永山忠則

  140. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 日雇労働者健康保険法の一部改正案の日本社会党、民主社会党共同修正案に対しましては、やむを得ないものと認めます。     —————————————
  141. 永山忠則

    永山委員長 引き続き齋藤邦吉君外二十三名提出失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案田中正巳君外二十三名提出厚生年金保険法の一部を改正する法律案日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案並びに船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出船員保険法等の一部を改正する法律案、以上各案を一括して討論に付します。通告がありますので、これを許します。八木一男君。
  142. 八木一男

    八木一男委員 私は日本社会党及び民主社会党の両党を代表いたしまして現在議題になっております六法案中、政府提出船員保険法等の一部を改正する法律案並びに齋藤邦吉君外二十三名提出の自民党案の失業保険法並びに職安法の改正案、それから田中正巳君外二十三名提出船員保険法の一部を改正する法律案につきまして反対をいたしまして、日本社会党の失業保険法及び職安法改正案に賛成の意を表し、なお厚生年金並びに日雇労働者健康保険法については非常に微温的であるけれども、賛成の意を表するものであります。以下その理由を申し述べます。  その理由の主点は、失業保険法改正に関してであります。船員保険法に関しても、その中の失業保険の部分の改正についての意見であります。憲法二十五条の精神に従ったら、あるいは失業保険法の第一条の精神から考えまして、失業保険給付は当然に失業者の生活安定をはかることを考えるわけでございまするから、その本質から考えて、失業期間中、再就職まですべての期間を失業保険金を給付をしてその生活の安定をはかるのが本筋であります。その点について、現行失業保険法については非常に劣悪な内容があってけしからぬということがちまたの声であります。もう一つは、失業保険金の金額は千分の六十というような金額であって非常に少ない。しかもそのもとになる賃金が、日本の国は残念ながら政府の諸政策の間違いのために非常に低い。アメリカに対しては九分の一、西欧諸国に対しても何分の一というような低い状態にある。その低い賃金をもとにして千分の六十をかけたような失業保険金額では、失業期間中の生活を安定させることはできない。これは当然のことである。だれが考えてもあたりまえのことである。そういう状態から考えて、失業保険法並びに船員保険法の失業の部分については、当然急速に、あらゆる努力を重ねてこの給付の増大に当たらなければならない状態にある。もちろん国庫負担の増額あるいは保険料の増率も考えてそれを上げていかなければならない状態にあるのにかかわらず、政府はその点について怠慢きわまる態度をとっておる。ところが失業保険会計あるいは船員保険失業保険の部分については最近非常に黒字が増して参りました。政府は、実際にやるかどうかは非常にまゆつばものであるけれども、雇用を増大させるという方針を世の中に訴えて、もしその通り増大ができるものであるならば、現在の黒字基調はますます拡大するはずである。そういう状態においては会計上というような、そういう逃げる議論は成り立たないのであって、そのような黒字基調をもとにして、非常に劣悪きわまった失業保険内容を改善するのが当然である。再就職まで失業保険給付をやる、あるいは低賃金の状態から勘案して、失業保険給付率を高めるというのが当然である。また日雇い失業保険については、その金額をできる限り大幅に引き上げるということも当然である。それにもかかわらずその重要点をはずして失業保険法改正案を出してきた。日雇いの一日待期減少というような、ごく部分的な前進と見られる部分があるけれども、しかしながら総体において、国庫負担を三分の一から四分の一に下げるというような重大な改悪を考えている。国庫負担があってこそ失業保険の本則に従った拡大ができるのに、そのような国庫負担を今遮断するというようなことは、政府や自民党が考えている福祉国家の創設あるいは社会保障の拡充という公約からは全然逆な方向である。政府与党もその公約に違反したことをこの法案提出によってあるいはこれを強行しようということによって明らかに天下に声明したことになる。まさに、今不規則発言があったように、腹を切らなければならない状態になる。腹を切るのがいやであるならば、与党諸君もこの採決に当たってわが党あるいは民主社会党の正当な議論に同調せられまして、このような悪法案を否決されるのがあたりまえである。われわれは与党の議員の良識を信じて否決されるということを考えておる。しかしながらこれを否決されなかった場合には、政府のみならず与党の方も良心がないということを断ぜざるを得ない。  次にこの問題は、もう一つの点で重大な問題をはらんでいる。政府が金を出し惜しみをして社会保障を後退させるというようなことだけでは、ほんとうに国を背負って立っている労働者を圧迫をして、一人利益を壟断して日本政府を実質的に支配している独占資本に奉仕して、その利益をますます拡大をし、労働者の搾取を拡大しようという考え方がこの中に入っている。失業保険給付率の引き下げ、千分の十六を十四にするということは何ということであるか。保険料を下げるというようなことをイージー・ゴーイングに考えるものではない。保険料を下げればいいという考え方は、社会保険がなければいいという考え方に通ずるのである。安ければいいというような考え方は、社会保障を担当する人の言うべき言葉ではないと思う。社会保険が完全な形になって、失業保険が再就職まで完全に保障される、給付金が当然なところまで引き上げられる、あるいはすべての社会保険が一部負担とかあるいは本人負担というものがなくなって、完全な形になって初めて保険料の引き下げということは前進の意味考えられる。それまでの保険料の引き下げということは社会保障の前進ではない。全般的にそうではない。しかもその保険料の引き下げで利を得るのはだれか、大もうけにもうけている一人独占資本がもうけるのである。労働者の社会保障を拡充してもらいたいという希望はそこでストップされて、大ぜいの大資本家、大経営者がその負担を免れるのがこの改悪案の性質である。しかもまた失業保険給付からストップされることによって、この劣悪な失業保険給付最大限二百七十日しかもらえない。しかもあの低賃金の六割しかもらえない。日雇い失業保険失業保険金に至っては、その一級ですら家族がある場合には生活保護を下回るというような貧弱な内容、このような失業保険金では、労働者は自分の適切な職業を選びたい、当然労働者の権利を認められるような職場に働きたい、そのような希望を捨てて、飢えに泣く家族のために労働の安売りをしなければならないということになるのである。そのようなことを、この法案政府与党考えている。  所得倍増とかいろいろと耳にいいようなことを政府は言っておるけれども給付の引き下げでますます社会保険料に支出するものが少なくなる。その点でも、もうかるような一握りの経営者の所得倍増倍増どころか所得十倍を考えて、低所得者、ほんとうに働いて国を背負って立つ労働者諸君所得を幾分でも上げようなんということは考えておらないということが、今度のこの失業保険法の改悪案で明らかにされたわけである。所得倍増というようなうそ偽りのおこがましい看板は直ちにこの場でおろすのが至当である。悪いことはやってもよい、——よくはないけれども、やろうとするならば、私は悪いことをやるんだと宣言してやりなさい。極悪非道なことをやりながらそれがいいことのように言う。そのような間違った政治が行なわれておる限り、日本国民のしあわせはありません。悪いことはやらない方がいいけれども、やるんならば、悪いことをやりますと言えば、それに対する批判が起こる。悪いものに砂糖をかぶせて、毒に砂糖をかぶせて、これは甘いから食いなさいというような卑怯な態度は許されないものである。このように、政府提出船員保険法等の一部改正案は、実に極悪非道の法律である。  それを中軸にして、いささかの甘いものをつけ加えた齋藤案、失業保険改正案、これも本質的に何ら変わりはない。砂糖がないよりはましだけれども、しかし、その中の猛毒は同じである。その意味において、政府提出船員保険法案は絶対に反対をするし、また、齋藤邦吉提出失業保険法の一部改正案も、幾分の甘さはあっても、その中の猛毒を考えるときに断じてこれは賛成することができない。そのような間違った法律提出された方も、まさに賛成しようとする方も、どうか今考えていただいて、国民のためにこのような法案は皆さんの良識で否決して、日本社会党が懸命に考えた、失業保険法の底上げをする、あるいはまた失業保険給付期間を延長する、二年以上の就職をした人は三百六十五日まで失業保険給付期間を延長する、月約一万円、日額にして三百三十円までの給料に当たる部分については十分の八の利子をかけて失業保険計算をする、あるいはまた、日雇失業保険失業保険金を一級二百円を二百二十円にする、あるいはまた二級の百四十円を百八十円にする、それに齋藤君が一生懸命に考え幾分の甘さを加えた、職業訓練中の者については給付期間を延長する、失業多発地帯については労働大臣のいろいろな判断によってこれを延長することができる、あるいは支度金を出すことができる、あるいはまた日雇失業保険の待期日数を一日減少する、このような、現在の段階において政府の非常にけちな財政政策でもやり得る最大限度において考えたこのような法律については、われわれはまさに妥当な法律であると考えておるわけである。与党諸君も、一般予算を大幅に改正する内容であれば御賛成になりにくいお立場があろうと思いますけれども、現在の国庫負担をそのままに置き、保険料率をそのままに置けば、年間に二百十一億の黒字が出ることは明らかに推定されているわけであります。そして、このような給付をやるためには二百八十億か九十億で足りる。失業保険会計には六百億の黒字がある。その間には、社会党が内閣をとれば完全雇用を実施する。自民党の内閣でも雇用増大を叫んでおられる。従って、失業保険の黒字は拡大するので、政府の一般的な財政基本政策を変えないでも、失業保険の底上げ、日雇い失業保険金の増額、あるいはまた失業保険給付日数の延長ということは実現可能でございます。どうが、与党の賢明な先生方、この本旨には変わりはないので、この点をお考えになって——われわれは反対であるけれども政府の財政基本政策にはあまり支障がないことである。しかも失業保険の本旨に沿うたことが今の現在で楽にできる。この楽にできるのを、楽にできないような国庫負担減少あるいは保険料引き下げというような方向にはならないように、最後の瞬間でございますが、どうかお考えをいただいて、私どもの懸命に考えた案に御賛成を願い、与党の尊敬する齋藤さんの案でございますがそれは否決、そして、政府案を否決して、失業保険が前進する態勢になっていただくよう、御協力下さるよう心からお願い申し上げる次第です。  そのような意味で、私ども日本社会党と民主社会党は、政府原案の船員保険法等の一部改正案に絶対に反対、齋藤邦吉提出失業保険法及び職安法改正案に絶対反対、また、田中正巳提出船員保険法の一部改正案に絶対に反対、わが党案に全面的に賛成、そして厚生年金保険法並びに日雇労働者健康保険法改正案並びにその修正案、これは非常に微温的ではあるけれども、将来において大勢の方の良識によってこれが前進することを期待しつつ、現在一歩前進がありますので、この点については賛成の意を表明するものでございます。
  143. 永山忠則

    永山委員長 以上で討論は終結いたしました。  まず、齋藤邦吉君外二十三名提出失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  144. 永山忠則

    永山委員 長起立多数。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  次に、田中正巳君外二十三名提出厚生年金保険法の一部を改正する法律案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  145. 永山忠則

    永山委員長 起立総員。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  次に、田中正巳君外二十三名提出日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案について採決するのでありますが、本案については五島虎雄君外三名より修正案が提出されておりますので、まず修正案について採決いたします。本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  146. 永山忠則

    永山委員長 起立総員。よって、本修正案は可決されました。  次に、ただいまの修正部分を除く原案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  147. 永山忠則

    永山委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。  次に、田中正巳君外二十三名提出船員保険法等の一部を改正する法律案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  148. 永山忠則

    永山委員長 起立多数。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  ただいまの議決の結果、内閣提出船員保険法等の一部を改正する法律案は議決を要しないものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  149. 永山忠則

    永山委員長 起立総員。よって、本案は議決を要しないものと決しました。     —————————————
  150. 永山忠則

    永山委員長 この際、大坪君より、齋藤邦吉君外二十三名提出失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されておりますので、その趣旨説明を求めます。大坪保雄君。
  151. 大坪保雄

    ○大坪委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、齋藤邦吉君外二十三名提出失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案に対しまして附帯決議を付するの動議を提出いたします。  まず、その附帯決議の案文を朗読いたします。    失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案齋藤邦吉君外二十三名提出)に対する附帯決議   失業保険は被保険者が失業した場合にその生活の安定を図ることを目的とするものであること及び最近における賃金の実情にかんがみ、政府は一般失業保険の低額保険給付及び日雇労働失業保険失業保険金日額について、すみやかに検討の上、その引き上げについて成案を得るよう努力すべきである。  以上でありますが、読んで字のごとく、あらためて御説明を要しないと存じます。  何とぞ満場の各位の御賛同によってこの附帯決議を御決定いただくようにお願いを申し上げます。
  152. 永山忠則

    永山委員長 本動議について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  153. 永山忠則

    永山委員長 起立総員。よって、齋藤邦吉君外二十三名提出失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案に対しましては、大坪委員の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、労働大臣より発言を求められておりますので、これを許します。松野労働大臣
  154. 松野頼三

    松野国務大臣 ただいまの附帯決議の御趣旨に沿って善処いたします。
  155. 永山忠則

    永山委員長 なお、柳谷君より、田中正巳君外二十三名提出厚生年金法の一部を改正する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案に対しそれぞれ附帯決議を付すべしとの動議が提出されておりますので、その趣旨説明を求めます。柳谷清三郎君。
  156. 柳谷清三郎

    ○柳谷委員 自由民主党並びに日本社会党、民主社会党共同提案にかかる厚生年金保険法の一部を改正する法律案に対する附帯決議の案文を朗読いたします。    厚生年金保険法の一部を改正する法律案に対する附帯決議   厚生年金保険が勤労者のための年金制度の中核たることにかんがみ、政府は、将来これが給付内容の改善に努めるとともに他の年金制度との通算調整を含む総合調整についてなるべく速やかに結論を得るようにすべきである。   また、政府は、厚生年金保険の運営に関し、特に、次の諸施策の実現に努力すべきことを要望する。  一、適用範囲を従業員五人未満の事業所へ拡大すること。  二、積立金の管理運用については、特に拠出者の意向を反映しうるものとするとともに、還元融資の枠を拡大すること。  三、老人ホーム等の福祉施設を増設し、年金受給者が年金により老後の生活を営みうる方途を講ずること。  四、年金受給権を担保とする金融の途を講ずること。  以上案文でありますが、これに対しては特に説明を要しないと思います。  次に、わが自由民主党からの船員保険法の一部を改正する法律案に対する附帯決議の案文を朗読します。    船員保険法の一部を改正する法律案に対する附帯決議   政府は、厚生年金保険及び失業保険の改善の検討に併せ、船員保険についてもこれに見合う検討を行い、すみやかに成案を得るように努力すべきである。  これについてもあらためて説明を要しないと思います。以上。
  157. 永山忠則

    永山委員長 本動議について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  158. 永山忠則

    永山委員長 起立総員。よって、田中正巳君外二十三名提出厚生年金法の一部を改正する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案に対しましては、柳谷委員の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、厚生大臣より発言を求められておりますので、これを許します。渡邊厚生大臣
  159. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 全会一致の趣旨を尊重いたしまして検討いたします。
  160. 永山忠則

    永山委員長 なお、ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告共の作成等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  161. 永山忠則

    永山委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  本日は、これにて散会いたします。     午後三時二十五分散会