○
八木(
一男)
委員 私は
日本社会党及び民主社会党の両党を代表いたしまして現在議題になっております六
法案中、
政府提出の
船員保険法等の一部を
改正する
法律案並びに
齋藤邦吉君外二十三名
提出の自民党案の
失業保険法並びに職安法の
改正案、それから
田中正巳君外二十三名
提出の
船員保険法の一部を
改正する
法律案につきまして反対をいたしまして、
日本社会党の
失業保険法及び職安法
改正案に賛成の意を表し、なお
厚生年金並びに
日雇労働者健康保険法については非常に微温的であるけれ
ども、賛成の意を表するものであります。以下その理由を申し述べます。
その理由の主点は、
失業保険法の
改正に関してであります。
船員保険法に関しても、その中の
失業保険の部分の
改正についての
意見であります。憲法二十五条の精神に従ったら、あるいは
失業保険法の第一条の精神から
考えまして、
失業保険給付は当然に失業者の生活安定をはかることを
考えるわけでございまするから、その本質から
考えて、失業期間中、再就職まですべての期間を
失業保険金を
給付をしてその生活の安定をはかるのが本筋であります。その点について、現行
失業保険法については非常に劣悪な
内容があってけしからぬということがちまたの声であります。もう
一つは、
失業保険金の金額は千分の六十というような金額であって非常に少ない。しかもそのもとになる賃金が、
日本の国は残念ながら
政府の諸
政策の間違いのために非常に低い。アメリカに対しては九分の一、西欧諸国に対しても何分の一というような低い
状態にある。その低い賃金をもとにして千分の六十をかけたような
失業保険金額では、失業期間中の生活を安定させることはできない。これは当然のことである。だれが
考えてもあたりまえのことである。そういう
状態から
考えて、
失業保険法並びに
船員保険法の失業の部分については、当然急速に、あらゆる努力を重ねてこの
給付の増大に当たらなければならない
状態にある。もちろん
国庫負担の増額あるいは
保険料の増率も
考えてそれを上げていかなければならない
状態にあるのにかかわらず、
政府はその点について怠慢きわまる態度をとっておる。ところが
失業保険会計あるいは
船員保険の
失業保険の部分については最近非常に黒字が増して参りました。
政府は、実際にやるかどうかは非常にまゆつばものであるけれ
ども、雇用を増大させるという方針を世の中に訴えて、もしその
通り増大ができるものであるならば、現在の黒字基調はますます拡大するはずである。そういう
状態においては会計上というような、そういう逃げる議論は成り立たないのであって、そのような黒字基調をもとにして、非常に劣悪きわまった
失業保険の
内容を改善するのが当然である。再就職まで
失業保険給付をやる、あるいは低賃金の
状態から勘案して、
失業保険の
給付率を高めるというのが当然である。また日雇い
失業保険については、その金額をできる限り大幅に引き上げるということも当然である。それにもかかわらずその重要点をはずして
失業保険法の
改正案を
出してきた。日雇いの一日待期減少というような、ごく部分的な前進と見られる部分があるけれ
ども、しかしながら総体において、
国庫負担を三分の一から四分の一に下げるというような重大な改悪を
考えている。
国庫負担があってこそ
失業保険の本則に従った拡大ができるのに、そのような
国庫負担を今遮断するというようなことは、
政府や自民党が
考えている福祉国家の創設あるいは
社会保障の拡充という公約からは全然逆な
方向である。
政府も
与党もその公約に違反したことをこの
法案の
提出によってあるいはこれを強行しようということによって明らかに天下に声明したことになる。まさに、今不規則発言があったように、腹を切らなければならない
状態になる。腹を切るのがいやであるならば、
与党の
諸君もこの採決に当たってわが党あるいは民主社会党の正当な議論に同調せられまして、このような悪
法案を否決されるのがあたりまえである。われわれは
与党の議員の良識を信じて否決されるということを
考えておる。しかしながらこれを否決されなかった場合には、
政府のみならず
与党の方も良心がないということを断ぜざるを得ない。
次にこの問題は、もう
一つの点で重大な問題をはらんでいる。
政府が金を
出し惜しみをして
社会保障を後退させるというようなことだけでは、ほんとうに国を背負って立っている労働者を圧迫をして、一人利益を壟断して
日本の
政府を実質的に支配している独占資本に奉仕して、その利益をますます拡大をし、労働者の搾取を拡大しようという
考え方がこの中に入っている。
失業保険の
給付率の引き下げ、千分の十六を十四にするということは何ということであるか。
保険料を下げるというようなことをイージー・ゴーイングに
考えるものではない。
保険料を下げればいいという
考え方は、
社会保険がなければいいという
考え方に通ずるのである。安ければいいというような
考え方は、
社会保障を担当する人の言うべき言葉ではないと思う。
社会保険が完全な形になって、
失業保険が再就職まで完全に保障される、
給付金が当然なところまで引き上げられる、あるいはすべての
社会保険が一部負担とかあるいは本人負担というものがなくなって、完全な形になって初めて
保険料の引き下げということは前進の
意味で
考えられる。それまでの
保険料の引き下げということは
社会保障の前進ではない。全般的にそうではない。しかもその
保険料の引き下げで利を得るのはだれか、大もうけにもうけている一人独占資本がもうけるのである。労働者の
社会保障を拡充してもらいたいという希望はそこでストップされて、大ぜいの大資本家、大経営者がその負担を免れるのがこの改悪案の性質である。しかもまた
失業保険給付からストップされることによって、この劣悪な
失業保険給付最大限二百七十日しかもらえない。しかもあの低賃金の六割しかもらえない。日雇い
失業保険の
失業保険金に至っては、その一級ですら家族がある場合には生活保護を下回るというような貧弱な
内容、このような
失業保険金では、労働者は自分の適切な職業を選びたい、当然労働者の権利を認められるような職場に働きたい、そのような希望を捨てて、飢えに泣く家族のために労働の安売りをしなければならないということになるのである。そのようなことを、この
法案で
政府や
与党は
考えている。
所得倍増とかいろいろと耳にいいようなことを
政府は言っておるけれ
ども、
給付の引き下げでますます
社会保険料に支出するものが少なくなる。その点でも、もうかるような一握りの経営者の
所得倍増、
倍増どころか
所得十倍を
考えて、低
所得者、ほんとうに働いて国を背負って立つ労働者
諸君の
所得を幾分でも上げようなんということは
考えておらないということが、今度のこの
失業保険法の改悪案で明らかにされたわけである。
所得倍増というようなうそ偽りのおこがましい看板は直ちにこの場でおろすのが至当である。悪いことはやってもよい、——よくはないけれ
ども、やろうとするならば、私は悪いことをやるんだと宣言してやりなさい。極悪非道なことをやりながらそれがいいことのように言う。そのような間違った
政治が行なわれておる限り、
日本国民のしあわせはありません。悪いことはやらない方がいいけれ
ども、やるんならば、悪いことをやりますと言えば、それに対する批判が起こる。悪いものに砂糖をかぶせて、毒に砂糖をかぶせて、これは甘いから食いなさいというような卑怯な態度は許されないものである。このように、
政府提出の
船員保険法等の一部
改正案は、実に極悪非道の
法律である。
それを中軸にして、いささかの甘いものをつけ加えた
齋藤案、
失業保険の
改正案、これも本質的に何ら変わりはない。砂糖がないよりはましだけれ
ども、しかし、その中の猛毒は同じである。その
意味において、
政府提出の
船員保険法案は絶対に反対をするし、また、
齋藤邦吉君
提出の
失業保険法の一部
改正案も、幾分の甘さはあっても、その中の猛毒を
考えるときに断じてこれは賛成することができない。そのような間違った
法律を
提出された方も、まさに賛成しようとする方も、どうか今
考えていただいて、国民のためにこのような
法案は皆さんの良識で否決して、
日本社会党が懸命に
考えた、
失業保険法の底上げをする、あるいはまた
失業保険の
給付期間を延長する、二年以上の就職をした人は三百六十五日まで
失業保険の
給付期間を延長する、月約一万円、日額にして三百三十円までの給料に当たる部分については十分の八の利子をかけて
失業保険計算をする、あるいはまた、日雇
失業保険の
失業保険金を一級二百円を二百二十円にする、あるいはまた二級の百四十円を百八十円にする、それに
齋藤君が一生懸命に
考え幾分の甘さを加えた、職業訓練中の者については
給付期間を延長する、失業多発地帯については労働
大臣のいろいろな判断によってこれを延長することができる、あるいは支度金を出すことができる、あるいはまた日雇
失業保険の待期日数を一日減少する、このような、現在の段階において
政府の非常にけちな財政
政策でもやり得る最大限度において
考えたこのような
法律については、われわれはまさに妥当な
法律であると
考えておるわけである。
与党の
諸君も、一般
予算を大幅に
改正する
内容であれば御賛成になりにくいお立場があろうと思いますけれ
ども、現在の
国庫負担をそのままに置き、
保険料率をそのままに置けば、年間に二百十一億の黒字が出ることは明らかに推定されているわけであります。そして、このような
給付をやるためには二百八十億か九十億で足りる。
失業保険会計には六百億の黒字がある。その間には、社会党が
内閣をとれば完全雇用を実施する。自民党の
内閣でも雇用増大を叫んでおられる。従って、
失業保険の黒字は拡大するので、
政府の一般的な財政基本
政策を変えないでも、
失業保険の底上げ、日雇い
失業保険金の増額、あるいはまた
失業保険給付日数の延長ということは実現可能でございます。どうが、
与党の賢明な先生方、この本旨には変わりはないので、この点をお
考えになって——われわれは反対であるけれ
ども、
政府の財政基本
政策にはあまり
支障がないことである。しかも
失業保険の本旨に沿うたことが今の現在で楽にできる。この楽にできるのを、楽にできないような
国庫負担減少あるいは
保険料引き下げというような
方向にはならないように、最後の瞬間でございますが、どうかお
考えをいただいて、私
どもの懸命に
考えた案に御賛成を願い、
与党の尊敬する
齋藤さんの案でございますがそれは否決、そして、
政府案を否決して、
失業保険が前進する態勢になっていただくよう、御協力下さるよう心からお願い申し上げる次第です。
そのような
意味で、私
ども日本社会党と民主社会党は、
政府原案の
船員保険法等の一部
改正案に絶対に反対、
齋藤邦吉君
提出の
失業保険法及び職安法
改正案に絶対反対、また、
田中正巳君
提出の
船員保険法の一部
改正案に絶対に反対、わが党案に全面的に賛成、そして
厚生年金保険法並びに
日雇労働者健康保険法の
改正案並びにその修正案、これは非常に微温的ではあるけれ
ども、将来において大勢の方の良識によってこれが前進することを期待しつつ、現在一歩前進がありますので、この点については賛成の意を表明するものでございます。