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1960-03-16 第34回国会 衆議院 社会労働委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月十六日(水曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 永山 忠則君    理事 大石 武一君 理事 大坪 保雄君    理事 田中 正巳君 理事 八田 貞義君    理事 藤本 捨助君 理事 滝井 義高君    理事 八木 一男君 理事 堤 ツルヨ君       池田 清志君    大橋 武夫君       加藤鐐五郎君    亀山 孝一君       川崎 秀二君    齋藤 邦吉君       中村三之丞君    中山 マサ君       早川  崇君    古川 丈吉君       山下 春江君    亘  四郎君       赤松  勇君    伊藤よし子君       大原  亨君    五島 虎雄君       多賀谷真稔君    中村 英男君       本島百合子君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 渡邊 良夫君         労 働 大 臣 松野 頼三君  出席政府委員         厚生政務次官  内藤  隆君         厚生事務官         (大臣官房長) 森本  潔君         厚生事務官         (保険局長)  太宰 博邦君         厚生事務官         (年金局長)  小山進次郎君         労働事務官         (大臣官房長) 三治 重信君         労働事務官         (職業安定局         長)      堀  秀夫君  委員外出席者         議     員 八木 一男君         厚生事務官         (保険局次長) 山本浅太郎君         厚生事務官         (保険局健康保         険課長)    加藤信太郎君         厚生事務官         (保険局厚生年         金保険課長)  加藤 威二君         厚生事務官         (保険局船員保         険課長)    戸沢 政方君         厚 生 技 官         (保険局医療課         長)      館林 宣夫君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 三月十六日  委員賀谷真稔君辞任につき、その補欠として  中嶋英夫君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 三月十六日  失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法  律案八木一男君外十二名提出衆法第一七  号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法  律案八木一男君外十二名提出衆法第一七  号)  失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法  律案齋藤邦吉君外二十三名提出、第三十三回  国会衆法第二三号)  厚生年金保険法の一部を改正する法律案田中  正巳君外二十三名提出、第三十三回国会衆法第  二四号)  日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案  (田中正巳君外二十三名提出、第三十三回国会  衆法第二五号)  船員保険法の一部を改正する法律案田中正巳  君外二十三名提出、第三十三回国会衆法第二六  号)  船員保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出、第三十一回国会閣法第一六号)  健康保険法等の一部を改正する法律案滝井義  高君外十六名提出衆法第四号)      ————◇—————
  2. 永山忠則

    永山委員長 これより会議を開きます。  齋藤邦吉君外二十三名提出失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案田中正巳君外二十三名提出厚生年金保険法の一部を改正する法律案日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出船員保険法等の一部を改正する法律案及び滝井義高君外十六名提出健康保険法等の一部を改正する法律案、以上六案を一括議題とし審査を進めます。質疑の通告がありますのでこれを許します。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 船員保険法等の一郎を改正する法律案について質疑を続行いたしますが、客観情勢は、政府提出船員保険法等の一部を改正する法律案通りそうな情勢でございません。与党提出をいたしております船員保険法の一部を改正する法律案をばらした四法案の方が通る情勢が濃厚になってきておる。政府案が三月三十一日までに通らず、与党案が通った場合に、昭和三十四年度の予算に一体どういう影響を及ぼすか、これを御説明願いたいと思う。
  4. 太宰博邦

    太宰政府委員 政府案は昨日申しましたように昨年の三十一国会提出いたしたものであります。もしその政府案通り当時通っておりますれば、施行期日関係等から三十四年度予算の方に若干の、保険料の収納とかあるいは給付の改善等影響があるはずでございますが、今日に相なって参りますと、おそらく三十四年度の関連においては、もう年度末に近づいておりますので、従いましてまあ政府案が通らず逆に議員提案の方が通ることになりましても、三十四年度予算関連します限りは影響はほとんどないと申し上げて差しつかえなかろうかと思います。
  5. 滝井義高

    滝井委員 ほとんど影響がないというのはおかしいと思うのです。これは全部それぞれの法律経過措置があるわけです。特に船員保険法等の一部を改正する法律案附則の第一条をごらんになりますと、「この法律中第一条及び第四条」、第一条というのは船員保険法等の一部を改正する法律の第一条で、第四条というのは厚生年金保険法の一部を改正する法律の第四条です。「この法律第一条及び第四条並びに附則第二条から附則第五条まで、附則弟七条から附則第九条まで及び附則第十一条から附則第十八条までの規定昭和三十四年六月一日から、」云々と書いてあります。これは六月一日から実施することになっておりますね。そうしますと今度は議員の方の与党提案はどういうことになるかというと、厚生年金で見るならば「この法律は、公布の日から起算して三箇月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。」こうなっておる。そうしますとこの法律がぎりぎり三月三十一日に通ってしまうと、公布の日というものは施行期日が三カ月以内だからずっとおくれる。従ってこれは全然三十四年度には実施されないことになっちゃうのです。そこに大きな違いが出てきておるわけですね。これは三十四年度予算に全然影響がないということは考えられないわけです。従ってこの前の御説明では、厚生年金でいえば標準報酬、それからその他改正によって、五百五十五億が七百八十三億になるのですね。二百二十七億の増収になるわけです。こういうものが全然だめになるわけです。従ってたとえば厚生年金について見ますれば、二百二十七億収入が増加すると考えておったのが、徴収がないのですからなくなるわけです。なくなるということになれば、保険経済にそれだけ大きな——二百二十七億といえば保険経済では大きいですよ、運用の利子に匹敵するものなんです。だからこれは保険経済影響がないどころじゃない、大ありなんですね。だからこの附則施行期日その他が変更することによって当然大きな影響が三十四年度予算に現われてくるわけです。従って日雇いにどういう影響が現われ、船員保険にどういう影響が現われ、厚生年金にどういう影響が現われるか、数字をもって一つお示しを願いたいと思うのです。
  6. 太宰博邦

    太宰政府委員 政府の案は、今日の段階に相なって参りますと、施行期日等につきましては、もし政府案でいくということになりますと、やはり若干の修正をお願いしなければならなくなってくる、こういうことになると思います。
  7. 滝井義高

    滝井委員 私は修正をお願いしなければならぬということはわかりますが、客観情勢は、政府船員保険法等の一部を改正する法律案基礎にして三十四年度予算を組んでおるわけです。ところが今国会通りそうな情勢なのは、与党の方の法案です。そうしますと、これは公布の日から起算して三カ月をこえない範囲政令で定める日から施行します。これらは端的に申し上げまして一部ですが、施行期日は全部まちまちになっておりますが、船員保険法等の一部を改正する法律案附則の一条及び四条に関する限りは三十四年の六月一日からこれを施行する形になっておるわけです。そうするとこれだけでも大きな予算狂いです。歳入歳出に大きな狂いができてくるわけです。そうするとこういう歳入基礎にして計算をしておる厚生年金自体にはやはり大きな狂いが出てくるわけです。そうでしょう、二百二十七億の歳入というものがなくなるわけなんですから。従ってこれは三十五年度の二百三十三億の運用収入に見合うものなんですね。これだけのものがなくなっちゃうんですから、保険経済に重大な影響を及ぼす。これは年金だけの経済じゃない、他のものにも同じですよ。だから一つ、今ここで言ってもなかなかすぐは数字の答弁はできないと思いますから、議員立法を通すことによって三十四年度にどういう影響を及ぼすかということを、午後までに一つ表にして出してもらいたいと思います。  それで大臣、おわかりだと思うのです。片方は、三十四年の六月一日から実施している、議員立法の方は、三カ月をこえない範囲内において政令で定める日から施行するのですから、実際はずっとあとになって、三十五年の四月一日になるのですよ。これは参議院を通るのに、今の情勢ならそう簡単にすぐは通らぬですよ、社会党の態度やその他もありますから。大会のときは休むのは慣例ですから、ころばぬ先のつえで言っておきますけれども参議院でも、デモ規制法だって何だってとまってしまいますよ。だから、そういうのがありますから、大臣どうですか、またほかに質問を続けますけれども、今の数字を午後委員会冒頭に出してもらえますか。
  8. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 とりそろえてお目にかけます。
  9. 滝井義高

    滝井委員 とりそろえて出していただくそうですから、ぜひ一つ出していただきます。この質問はそれまで留保しておきます。  次は日雇労働者健康保険船員保険関連をして監査の問題をこの機会に少し尋ねておきたいのです。  最近、日本医師会日本歯科医師会あるいは厚生省との間に申し合わせみたいなのができております。私も厚生省からその申し合わせをいただきましたが、三十五年二月十五日に申し合わせができておるようでございます。この監査の問題は、今後の日雇健康保険運営船員保険運営にも重大な関係のある問題で、あに健康保険だけではないのです。従って、まずその申し合わせ内容について、国会を通じて国民に明らかにしておいてもらいたいと思うのです。
  10. 太宰博邦

    太宰政府委員 これは昨年の臨時国会等におきまして、当委員会でもいろいろ御論議がありました保険医保険医療機関監査をめぐって痛ましい事故が起きた。それに関連してと申しますか、私ども前々からも考えておったのでありまするが、従来そういう監査によって明らかになった事故内容を検討してみますと、もう少し事前にわれわれが指導を適切にやっておったならば、そういう大ごとにならないで済んだのではないか、こういうように思われることがございまするので、これは一つ指導という方向にさらに徹底をすることを考えたらどうであろうか、かように考えておりましたところ、関係医師会の方からも、やはりそういうようなことについて考えるべきではないだろうかというようなお話もありましたので、ちょうどそれでは一緒に考えようじゃないか、こういうことになったわけであります。  それから相当の月日はかかりましたけれども、ようやく本年の一月でございますか、厚当省、日本医師会及び日本歯科医師会という間に申し合わせ一つできまして、これからこういう方向で協力して、連絡を密にしてやっていこうということに相なったわけであります。従来は保険医療機関につきましては、厚生大臣指導監督権限と責務を持っております。これに基づいて、医療監査要綱あるいは指導大綱というようなものができておるわけであります。この行政庁指導監査する権限は、これは何ら動かすものではない。またただいまのその指導監督大綱でございますところの監査要綱及び指導大綱それ自体も、何ら動かすものではない。ただ指導大綱の実際の運営やり方をさらに改善をする、こういうことが今回のねらいでございます。それにつきましても、さらに行政庁は力を入れて指導徹底を期する、また関係医師会歯科医師会も、それぞれの会員について自主的に指導に努めるように努力する。そこでこれは自主的にやるわけでございますが、行政庁の方と連絡をよくして、この実効が相待って上がるようにしよう、こういうことが第一点でございます。  それからその指導やり方につきましては、やはりほんとう指導の実が上がるためには、できるだけさしで指導するということが必要であろうということで、努めて個別指導というものを行なうようにする。そして順序としては、やはりそういう必要のあると思われる人々から優先的に行なえるように指導する。それからそれの個別指導やり方につきましても、必要がある場合には、この患者実態調査を行なって、それをもって指導するということがやはり必要になってくる。これもよろしかろう。ただしそれが特に医師患者との関係に悪い影響を及ぼさないように十分注意してやる必要がある。またその調査というものは、指導徹底するためにやる調査でありまするから、かりにその調査の結果いろいろな事例が出ましても、直ちにその結果をもって監査対象にするというふうなことは原則としてはしないようにしよう。しかしそう申しましても、その事例から、あるいは他との均衡その他から、これはやはり黙視し得ない、指導段階では済まし得ないというようなものは、さらに調査を継続いたしまして、その結果によって適当な措置をとる、こういうふうにいたしまして、何らかの間違いということがありましたならば、指導段階においてなるべく直していくということがねらいでございます。ただしそう申しましても、やはり数多くの人の中には、間間大きな間違いをする人がないとは限らない。それはそれとして監査をせざるを得ないであろうが、原則として通常はその指導に重点を注いでいく、こういうようなことの申し合わせができたわけでございます。私どもこれによりまして、今後できるだけこういう第一線の機関を督励して指導の実益が上がるように、そして保険医療におきましてたまたま何かの間違いがあったとすれば、それはごく初期の段階において是正するものは是正していただく、そういうことによって大きなことにならないようにできるだけ努力していこう、こういうことが中身でございます。
  11. 滝井義高

    滝井委員 社会党健康保険法の一部を改正する法律として、監査に関する法律を御提案をして、今政府及び与党提案の四法案とともども委員会付託審議をされる状態にあることは御存じでしょうね。
  12. 太宰博邦

    太宰政府委員 冒頭に、委員長からそういうふうに言われております。
  13. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、今おっしゃったようなことは法律にはどこにもないですな。どうして法律改正をしないのです。今おっしゃったようなことをやるならば、どうしてこの法律改正しませんか。
  14. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 行政措置で間に合う、かように存じておる次第でございます。
  15. 滝井義高

    滝井委員 それがそもそも間違いのもとなんです。法律でうたってないようなことを行政でできる、できるといってやるところに、日本政治官僚化が問題になって、政党の政治というものがうしろにいってしまうんですよ。今のようなことが必要だとするならば、これはやはり法律でぴちっと書くべきだと思うのです。だから社会党は身をもって、今の申し合わせ事項法律で示したわけです。どうですか大臣としては。社会党は、今の通り法律を作っておるのです。今行政でやると言った、その通り法律を作っておるのですが、この社会党法律を通す御協力を政府として願えましょうか。
  16. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 私どもは、先ほど申しましたように行政措置でけっこう運営ができるだろう、かように存じておりますので、それを認めるとか認めないとか問題にしておりません。
  17. 滝井義高

    滝井委員 認める認めぬの問題ではなくて、今おやりになることは法律には出ていないんですよ。今の監査要綱とか指導大綱というようなことは、全くわれわれ国会議員の関知しないものです。国会の関知しているものは、健康保険法のこの法律ですよ。そうだとすれば当然法律で明記すべきだと私は思うのです。それを明記せずにどこかでこそこそとやるということは、これはわれわれこうやって聞かなければ、今のようなことをやったことはわからないのですから、国会が知らぬようなことをどこかよその団体とやって、そうしてこれはこういうことになりました、行政措置でやれますというものもおかしいのです。そういう話し合いがぴちっとついたら、それを法律軌道に乗せて、折り目を正して行政というものが行なわれなければならないと思うのです。そうでないと間違いが起こるのです。太宰さん、今あなたのおっしゃったような申し合わせを前にもやったことはありませんか。
  18. 太宰博邦

    太宰政府委員 昭和三十二年でございましたか、この指導大綱を作りました場合において、やはりそれの具体的な運営につきまして、医師会歯科医師会申し合わせをやりました。
  19. 滝井義高

    滝井委員 それに何と書いてありますか、一つ今の申し合わせ参考のために全部読んでみて下さい。その当時の三十二年の申し合わせをお読みになっていただきたいと思うのです。大きな声で大臣によく聞えるように……。
  20. 太宰博邦

    太宰政府委員 これは「一、指導を行うに当っては、知事は医師会歯科医師会側と協議して計画を樹て、個別指導に際しては、両者相協力して行う。医師会歯科医師会は右の指導に積極的に協力するものとする。一、指導の際発見せられた不当事項については、直ちにこれを監査対象とすることなく、指導によってその改善を求めるものとする。但し、指導を行っても改善が行われない場合は爾後において適切な措置を講ずるものとする。」こうあります。
  21. 滝井義高

    滝井委員 その通りです。今あなたの御説明になったことと、あとでお読みになったこととどこが違いますか、本質的に同じじゃないですか。こういうように、三十二年に申し合わせをやっておる。お互いに協力して指導します、そうして指導した結果、すぐにそれは監査にはかけませんとちゃんと書いてある、それと同じような、今度これを少し言葉を変えて敷衍したようなことだけじゃないですか。三十二年にやったことが実行ができなかった、それは行政申し合わせだから実行できないんですよ。これを法律にきちっとやって、初めて今度これは大衆のものになり国民全般の血と肉になるのです。行政行政範囲にしか出ないのです。国民のものになかなかなりにくいのです。それはどうしてかというと、国会という最高の機関を通っていないからです。もしあなた方がそれをほんとうにおやりになるならば、法律で出すべきです。これは一体どうして法律で出せないか。社会党が出せる法律をどうして政府で出せないか、法律で出せない理由を一つ言ってみて下さい。
  22. 太宰博邦

    太宰政府委員 これは法律的な根拠は、健康保険法で申しますと四十三条の十でございまして、それは御承知の通りです。その根拠に基づいて、あと厚生大臣行政権にまかせられておることでございます。そこで厚生大臣といたしましては、指導監督いたします場合のまず大綱といたしまして、監査要綱なり指導大綱をきめる。これについては法律規定によりまして中央社会保険医療協議会に諮問してきめたわけでございます。これは行政大臣にまかせられた権限で、それをやっておるわけでございます。それに基づいて、その実施を円滑にするために関係団体とも協議するということは、これまた厚生大臣として当然できることでございますので、あえて法律としてこれを論議すべき必要はない、かように考えるわけでございます。
  23. 滝井義高

    滝井委員 それならば、こういう申し合わせなんか必要ないじゃないですか。申し合わせなんかやらなくたって、大臣行政範囲でできるならば必要ない。申し合わせを三十二年にやったけれども、間違いが起こったでしょう。間違いが起こって、また同じような申し合わせをして間違いが防げるというギャランティが何かありますか、われわれに与えられますか。法律ならば、これはわれわれが関知しておる。われわれが関知しておるから、われわれはあなた方のやったことをきちっと監視する責任がある。ところが申し合わせでは国会は関知していないのです。申し合わせでは関知できない。だからこういう申し合わせができて、これを軌道に乗せることができなかったので、われわれは今度法律でこれをきちっとはっきりさせた方がいいだろう、こういう形なんです。法律ならばこれははっきりするのです。ところが医師会歯科医師会との申し合わせだけならば、医師会歯科医師会強制加入じゃないのですから、これに人っていない会員がおるのです。法律ならば日本国民九千万のすべてに、しかもすみずみにわたってこれは規制をしていける。ところが申し合わせではそうはいかぬという欠陥が出てくるのです。だから、こういう申し合わせができたならば、それにのっとってやるべきです。私は四十三条の十は監査であり、四十三条の七は指導であるということは、もう百も知っております。一あなた方がこういうのを出しておるのも知っておるけれども、三十二年の申し合わせと今度と一体どこが精神が違いますか。文句もほとんど同じだ。三十二年の申し合わせが実行できなかったからといって、新しい申し合わせをして事がなるなんという安易なものじゃないと思うのです。だから、こういう大事な問題は、国会与党野党共通の問題として問題にして、そうしてしかも関係団体申し合わせができたならば、フランクな気持でそれを法律として出してくるというのが当然です。法律は何も簡単な法三章が法律なのじゃない。近代の立法というのは、かゆいところに手が届くようにわかりやすく書くというのが法律の形態になっているのです。今あなたがお読み通り三十二年七月の申し合わせと今度の申し合わせとは大して違わない。そうしますと、具体的にお聞きしますが、あなた方は指導をおやりになるというが、一体どういう種類指導をおやりになるのですか。具体的に指導種類を……。
  24. 太宰博邦

    太宰政府委員 これは先ほど申し上げました社会保険医療担当者指導大綱、この線に基づいて指導をいたすつもりであります。
  25. 滝井義高

    滝井委員 指導種類はどういう種類がありますかと言っておるのです。
  26. 太宰博邦

    太宰政府委員 ちょっと聞き違えしたかもしれませんが、集団指導個別指導、こういうことですか。
  27. 滝井義高

    滝井委員 あなた方は先般全国の技官会議保険医指導監査実施細目を明示していますな。     〔委員長退席大石委員長代理着席〕 それによりますと、指導種類は三種類ある。一つ行政庁の行なうもの、二つが共同で行なうもの、三、団体の行なうもの、こうなっているのです。これは館林医療課長演説をしておる。保険局長演説しておる。その館林医療課長演説の中にあるのです。指導種類はその三種類があると書いてあるでしょう。
  28. 太宰博邦

    太宰政府委員 今回の申し合わせによりまして、行政庁は当然法律上の権限として指導する。これは医師会会員であろうとあるまいと、保険医療機関であり、保険医療担当者であります場合にはなるべく一様にいたします。それから医師会歯科医師会は、それぞれ会の設立の目的の一つといたしまして会員指導に努めてもらうということはけっこうなことであろう。しかしながらこれは任意加入の制度でございまするから、会員外に対する指導というようなことはできない。それからまた会員でございましても、今日の医師会の性格から申しまして、強制的に指導に服するということをどうしてもいやだという会員がありますれば、その限りにおいては指導ができなくなりますが、大多数の場合には指導ということに服すであろうと考えます。しかしこれは医師会会員だけの範囲であります。そういうふうに、両者がその間に連絡を密にしてやろう、こういうことでございます。
  29. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、種類行政庁の行なうものと、医師会歯科医師会、その団体の行なうものと、行政庁医師会歯科医師会団体と協力して行なうものと三つあるということは間違いないですね。
  30. 太宰博邦

    太宰政府委員 そういう場合があるということでございます。
  31. 滝井義高

    滝井委員 場合があるというけれども、そうしますと、どういう場合に三本の刀を使い分けますか。大刀、小刀、中刀と三本の刀をさすことになるのですが、どういう場合に医師会指導し、どういう場合に官庁が指導し、どういう場合に共同指導するのですか。
  32. 太宰博邦

    太宰政府委員 両者の関連が出て参りますのは、先ほど申し上げましたように、医師会会員の場合において、行政庁指導する、それから医師会の方も会員に対して会の方から自主的に指導するという場合があるわけです。そういう場へには、お互いが初めによく協議いたしまして、私は、できるだけ指導に力を注いで、その実を上げるためには、やはり初めから計画をある程度立て、両者が相談してやらないと、なかなか指導徹底しないと思う。数多くの人でございますので、それを徹底させるためには両者が相談してきめるということでございます。従いまして、具体的にはその土地その土地の状況及び指導する能力等をにらみ合わせて、そこで地方の県と医師会とが相談して、大体こういうふうにしようというふうにしてきめてもらえばいいと思うのです。両者が一緒にやるということは、やはりそれぞれあるときには行政庁がこの法律上の権限として指導する、ある場合には医師会会員に対して会としての立場で指導するということになりますけれども、やはり指導の実が上がりますためには、大体そういうやり方なり、その程度なりというようなものが一本になっておった方が望ましい、呼吸が合っておった方が望ましい、こういようなことから、場合によりましては、両者が一緒にやることによりまして、その辺のお互いの指導の心がまえ等に食い違いを来たさないようにするために両者が一緒にやるということも考えたらどうか、こういうことでございます。
  33. 滝井義高

    滝井委員 どうも今の説明では、指導種類が三種額あるのだが、その使い分けがはっきりしないんです。行政庁がやる場合は一体どういう場合におやりになるのか、それから医師会がおやりになる場合はどういう場合か、両者が協力してやるというのは一体どういう場合にやるのかということなんです。それが限界をはっきりしておかないと、医師会指導したわ、翌日はまた官庁が来て指導したわ、その翌日は今度両者でやったというのでは、医師はやはり日々応接にいとまなしということになる。これはお互いに連絡をとるとかなんとかいったって、日本全国医師会も多いし出先の機関も多いから、そこらあたりは、こういう場合は官庁が指導する、こういう場合には自主的に医師会指導におまかせしょう、こういう場合には両者でやるというように、これはけじめをはっきりしておかぬと、忙しい医者を休ませなければならぬ。監査をやる場合は、私はなるべく日曜日にして下さいということをこの前申しておいたが、あとで見ると、日曜日じゃない日を選べと書いてある。「日時、場所の選定——できるだけ休日はさける。」こう書いてある。「但し、特に希望があった場合は差支えない。日時は予め通知する。」こういうことになって、休日は避けることになっておる。医師会が今度の申し合わせ社会保険医療担当者指導大綱の方針に沿って自主的に会員指導に努める、こうなっておる。そうしますと、医師会が自主的に指導をやるというのは一体どういう形態で、どういうものについて自主的にやるのか、こういう問題が出てくるわけです。官庁が今度は指導大綱によってやる場合はどういう場合か、それは書いおります。あなたの方で訓辞しております。両者共同でやる場合は一体どういう場合か。これをもう少しはっきりしておかぬと、お互いに意見の食い違いが出てきます。これは官庁がやるのだ、これはおれの方が自主的にやるのだ。対象は同じ人間ですよ。ここらあたりの関係をもう少しはっきりしておいてもらわなければいかぬ。それを納得のいくように御説明できますか。こういう三種類の場合がありますというだけでは済まされぬですよ。
  34. 太宰博邦

    太宰政府委員 三種類々々々とお話しでございますけれども法律上の権限に基づいて指導し得るのは行政庁だけでございます。先ほどから申し上げておりますように、私ども行政庁法律上の権限に基づく指導をフルに動かしてやるつもりでございます。しかし数多くのお医者さんもおられることでありますし、また医師会歯科医師会もその設立の目的からいたしまして会員貝に対しての指導に協力するということであれば、会員に関する限りはこれは非常にけっこうなことであるから一緒にやろう、こういうことになっておるわけであります。従いまして行政庁の場合はどういう場合ということは、やはり本来ならば行政庁はどういう場合でもやることができるし、やらねばならぬわけでございます。ただそういう能力の関係から、必然的にそうしますと指導する人が少なくなって実が上がらなくなる、そこで今のようなことにしたわけであります。その場合に両方がその指導やり方等に食い違いができることをなるべく避けたいという意味において、ある場合においては両者が一緒に協力してやる、そして大体やり方なり、こつなり、程度なりというようなものについて均衡が保たれるようにしておくということも必要である。どの程度にそれをやったらいいかということは、これを一々中央から私の方がこううやれ、ああやれと言いましても、日本全国の各地の情勢のいろいろの食い違いというものもあるわけです。そういうことまで中央から言うてやる必要はない。これだけの方針を流しておきますれば、あとはそういう点は原地においてそれぞれ医師会なりと相談をいたしまして、そしてお互いの考えを話し合って、ある程度しかるべくスムーズにいくものと私どもは考えているわけであります。
  35. 滝井義高

    滝井委員 太宰さん、今あなたがかみしもを着て答弁したことがあなたの本音ですよ。指導というものは行政庁だけしか権限はありません。これなのですよ。だから幾ら申し合わせをしたって、三十二年にも申し合わせをしたけれども、うまく実施されなかった。今度やはり同じような申し合わせをしたが、指導ができるのは行政庁だけだ、医師会なんというものは指導はできないのだ、こういうことなら何でこんな申し合わせをしましたか。自主的に指導をやりなさいといっても、申し合わせだけで絵にかいたもちです。権威は何もないじゃないか。だから私は、そんな申し合わせをするならば医師会指導権があるということを法律に書きなさいというのです。大臣どうですか、今の局長の御答弁です。あなたが医師会との中に入って雪どけだとかなんとか、各界ではいろいろの意味で非常に高く評価されている。ところが局長の方はほかのものには指導権がないのだ、行政庁だけしか指導権はないのだとおっしゃっている。ところが申し合わせでは自主的に会員指導に努めよと書いている。館林さんの演説は何と言っておるかというと、個別指導は官庁が重点にやる、集団指導団体にまかしてよろしいと言っておる。行政の第一線の専門家がまかしてよろしいというなら、集団指導医師会ができるんだということを法律にはっきり書いてどうして悪いか。ところが今のあなたのように、それはだめだ、かみしもを着れば、指導行政庁以外にはできないというなら、この申し合わせはほごですよ。だからここまであなた方が譲歩されてああおっしゃるなら、自浄作川をその団体に付与してどうして悪いか。それだけの太っ腹がなければ国民皆保険は遂行できない。あなたがそれだけ太っ腹を持って行政をやらぬということになれば、あなたについて考えなければならぬ。今のような答弁ではこの申し合わせはほごです。何で今まで半年以上もかかってこんな申し合わせをしたかと言いたくなる。これは政治的な答弁ですから、大臣から。厚生大臣、ここが一番大事なところです。
  36. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 行政権は当然私どもが持っておるわけです。しかし、先ほど太宰局長が申しました三通りの場合もある、これはやはり民間の人々の意見もわれわれが聴取することにおいて、そこに調整をとっておる、こういうことでありますから、どうぞ誤解のないように。
  37. 太宰博邦

    太宰政府委員 補足して申し上げます。指導権は行政権として厚生大臣法律上与えた権限でありますが、これを今直ちに委譲するというようなことは実は私どももまだ考えておらないわけであります。また今回の申し合わせにつきまして医師会の方もそれを自分たちにくれということは申しておらないのであります。そういう権限が委譲されない限りは、今回の申し合わせは絵にかいたもちではないかというお話でありますが、これは私ども自信を持ちましてこの指導の実を上げて、この保険医療やり方が将来明るくなるというようにやっていけるという自信を持っております。また医師会の方も十二分にそれに協力しよう、こういうふうになっておるわけであります。私どもといたしましては、それが御心配のような単なる申し合わせで、何らの意味がない、そういう筋合いのものでも決してなく、また今後の実績においてそれを証明していけるという自信があるということを申し添えておきます。
  38. 滝井義高

    滝井委員 言葉は重宝なもので、おそらく三十二年に質問してもそういうようなことを言っておったと思う。たまたま三十二年はうかつ千万にもわれわれがこれに日をつけて質問していなかったので、前の局長がそういうことを言っておらなかったことが幸いなんです。どうも今のようにやはり指導権はおれの方にあるんだ、しかし、実際にこういうものをお与えになるだけの雅量があるなら、法律で与えたらいいのです。それを与え得ないのはなぜか。信頼していないからです。信頼のないところに行政の円滑化はありませんよ。  次の質問に入りますが、指導の実を上げるために、まず順序としては、さしで個別指導をやる。そうしてどうも個別指導で問題があるならば、患者実態調査もやる。そうしてその場合には医師患者との間に悪影響を及ぼさぬようにする、そして指導徹底をさせるためには、従って調査がそういう場合には必要になってくるんだというようなことをおっしゃった。そこで一つ大事な点が抜けておる。これは太宰さんがしろうとたることを示す。指導をやるためには何が一番大事かというと、診療報酬請求件です。請求件は一体どうしますか。請求書はずっと基金に送り込むのですが、個別指導をやるときに一番大事なのは診療報酬請求書をまず医師会が見るということです。そうでしょう。これは一体どうするのですか。
  39. 館林宣夫

    館林説明員 お話のように指導を行なう際には診療報酬請求明細書は非常に重要な資料でございます。
  40. 滝井義高

    滝井委員 その通りです。今一番大事だと答弁しました。これは大臣、この申し合わせをするときには、診療報酬請求書は今医師会を経由していっているのですが、これを医師会は見ていいのですか。大臣の判断で一つ……。
  41. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 見ることはできません。
  42. 滝井義高

    滝井委員 そうしますとこれは指導はできないじゃないですか。指導で一番大事なのは請求書だとおっしゃった、その一番大事なところの請求書というものは医師会は見ることができなくて、素通りですよ。医師会がみんな集めるのです、それを見ることができない。そうすると一体医師会は請求書も見られぬで何で指導するのですか。保険医監査や何かは水増しがあったり計算が違っておったりするときにやるのじゃないですか。  その前に太宰さんにお尋ねしますが、この申し合わせの中に出てきておる、個別指導を行なうこととする、ただし指導を特に必要とするものについては優先的に行なうよう留意するという場合に、この優先的に行なうものはどういう人たちに個別指導を優先的に行なうのですか。
  43. 太宰博邦

    太宰政府委員 これは平たく申しますれば、過去におけるそのやり方、あるいは保険氏としての経験が未熟であるとかなんとかいうことで、指導をいたします場合においても、それぞれの全部の人について個別指導ということは不可能でございます。そういう場合においてはまず一番先に必要と思われる人、こういうことでございます。しかし具体的にどういうようなものさしがあるかということでございますれば、たとえば基金でもって審査の際にしばしば注意を受けておる、あるいはしばしば査定を非常に多く受けざるを得ないという人、あるいは件数点数などの関係で特に他の医療機関と大きな違いがあって、それがどうも納得できぬというふうに思われるような人、あるいは今申しましたように過去において指導とか監査とかを受けて事故があった、そういう人がその後どうなっておるか、あるいは逆に今度は保険医療機関になりたてであって、きわめて経験が残いために間違いを起こす可能性がある、そういう人が一応のものさしになろうかと思います。
  44. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと過去におけるやり方保険医の経験未熟、基金から注意を受ける、件数点数異常というように三つ四つあげましたね。これを全部判断するのは何ですか、請求明細書ですよ。——館林さんはうんと頭を振ってますよ。そうすると大臣医師会が自主的な指導をやることはお認めになりますね、医師会が自主的に指導するとき請求書を見て差しつかえありませんか。自主的な指導というものは医師会の自由です。集団指導も認めた、集団指導医師会にまかせる、こういうことですから、医師会会員が持ってきたのを全部集団的に集めて一人々々のものを見ながら間違いを直すことはいいのでしょう。この点……。
  45. 太宰博邦

    太宰政府委員 医師会指導は、先ほど申し上げましたように法律上の権限でない、会としてその会員指導するということでありますから、その指導やり方あるいは指導し得る限界等につきましては、やはり法律上の制約が伴う場合があると思います。そういうものについてはこれはやはり医師会としても当事者の了解でも得られるというなら格別でございまするが、そうでない場合にはある程度の制約があることはいたし方がない。しかしそういう点がありましても今日の状態においてはやはり相当指導していただく、また指導の成果が上げられる分野が相当あるのであります。医師会指導というものがこれによって無意味になるということは毛頭ないのであります。
  46. 滝井義高

    滝井委員 私が言っているのは、指導で一番大事なのは何だと言ったら、館林さん、答えないけれども首を振って、診療報酬請求明細書が一番大事なところだ、こうおっしゃっている。そうすると、自主指導をやる場合に明細書を見てよろしいかどうかということなんですよ。それのイエス、ノーを言ってくれたらいいのですよ。いいですか、館林さんが「社会保険医療担当者指導監査について」という方針を説明した中に——これは館林さんの下の中原事務官が具体的には説明していますね。その中で、「個別指導を優先的に行うもの——(一)基金、国保審査委員会で屡々注意を受けたもの又は書類の不備返戻の多いもの、(二)保険課の諸調査(傷病手当金調査等)の際、診療内容に屡々問題を生ずるもの、(三)請求明細書の事後調査で再照会されたもの、(四)過去に戒告、注意を受けたもの、(五)過去に指定又は登録取消しを受け、再指定又は再登録されたもの、(六)初めて指定又は登録されたもの。」こうなっておるのです。そうすると初めて指定登録されたものの指導というものはまず何が一番大事かというと、請求明細書ですよ。これを医師会が見て指導する権限医師会に与えなくて指導なんということは、木によって魚を求むるたぐいですよ。太宰さん、これは保険局長の資格がない、全くないです。これであなたが指導の実を上げることができると言うなら、木によって魚を求むるよりなお困難なことをやれということですよ。こういう大事な点が現在行政の盲点になっている。これをもってあなた方が日本の社会保険が大きく前進するなんて考えたら大間違いです。何でこれをやらせないのですか。これはどうしてできないのですか。館林さんが認め、しかも優先的に指導するには請求明細書がなければならぬということはここに証明しておるじゃないですか。しかもそれは医師会を経由して基金に出しているのです。基金に出すときに医師会がこれを自主的に見て、そしてやれば、全部間違いが起こらぬで済むのです。つえというものはころんでからつえを与えたんじゃおそいのですよ。ころばぬ先のつえというのが日本の昔からのことわざじゃないですか。それを医師会には自主的に会員指導に努めなさいと書いておるくせに、その自主的な指導の中には、請求書は見てはいけません、——請求書を見ることが指導で一番大事だということを一方では言っておいて、一方ではそれを見てはいかぬ。支離滅裂じゃないですか。思想分裂、精神分裂です。そういうことではわれわれは納得ができないのです。専門家のあなた方どうですか、請求書を見ることが一番いいでしょうが、どうですか。館林さん、あなたは専門的な立場から局長なり大臣にきちっと言わなければだめですよ。
  47. 館林宣夫

    館林説明員 お尋ねのように問題があるわけでございます。請求明細書には患者の秘密事項に属する部分がございますので、その取り扱いは行政庁としても慎重を要するわけであります。ただしお話のように、指導に際して請求明細書が重要な資料であることもまた間違いないことでございまして、その点で医師会におきましても個別指導のような特別な指導を行なう際に請求明細書を必要とするであろうと思われるわけでありますが、そういう特に必要とするような場合には、請求明細書を資料として医師会側に貸してやるということもやむを得ないことであるかもしれませんが、その場合には当然に患者の氏名がわからないような何らかの扱いをして貸与する、このような方法を行なうべきである、かように考えております。
  48. 滝井義高

    滝井委員 またあなたも少しとぼけた答弁をしておる。医師会に貸すというときは審査の終わったあとでしょう。指導というものは、審査をやる前に、これを出すときにやるのが指導なんですよ。医師会を経由して基金に出して、減点か増点か知らぬがやられて、そしてそれを指導したんじゃおそいんですよ。請求書を出して、それがまだ基金に行く前に指導して間違いを直し、そして間違っておるところは書き直して出させることが一番の指導ですよ。それによって指導の実は上がるのですよ。あなた、そんなとぼけた答弁をしちゃだめです。それならあなたも資格がないです。  そういう点については請求書が一番大事だということを今おっしゃった。ところがそれには患者の秘密があります。それじゃ今度の申し合わせで、患者の秘密は指導をやれば必然的にわかってくるんだが、それはどういうことで防止することにしていますか。
  49. 館林宣夫

    館林説明員 従いまして今回の通達並びに都道府県保険課長会議の指示におきましても、特に患者の秘密保持に熱するような注意をいたしたわけでございまして、指事に当たりましても、必ずしも患者の名前を知らなくても、指導のできないものではないわけであります。     〔大石委員長代理退席、委員長着席〕 カルテと請求明細書との照合は被保険者番号でできないわけではございませんので、指導の際にはそれらの点に十分留意してやるようにという点は、私どもも十分検討の上で指示いたしたわけでございます。
  50. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと医師会に事前に請求明細書の過誤を正させる、こういうことも指導の一番大事なところなんですから、秘密を守るように指導したらいい。そうでしょう。それを守ってもらえさえすればいい。だから、そういう問題があるので、法律できちっと書かなければいかぬと言うのですよ。あなた方は、自分の方の指導その他は、患者の名前を伏せたり、患者の秘密保持のために、医師会患者調査の立ち会いは断わるとか、こういうことを言っておるが、それならば法律にきちっと書いたら一番よくわかる。こんなもの、事務官に演説をさしておって、それで能事終われりとするからこういう間違いが起こるのですよ。  大臣、今御説明通りですよ。指導で一番大事なのは、請求書が出るときに間違いを押えて直させるということです。これはころばぬ先のつえです。これが完璧になれば、監査の門は審査によって開かれる。審査から始まるのです。従って審査の前に予防しなければならぬ。厚生省はどうも病人の出たことばかりに頭を使って、予防行政というものが抜けておるから、こういう点まで大きな穴があくのですよ。もう少しこういう点に留意しなければだめです。どうですか、医師会の自主的な会員指導の中で請求書を見てもよろしいか悪いか、これを一つはっきり答弁して下さい。それは基金に出したものが返ってきたものを見るのじゃ指導にならないのですよ。なっても、それはもはや半分くらいの指導の価値しかないということです。だから、まず出すときに、全部秘密を守るということを建前にしてやる。そのためには私は、法律的な基礎を与えなければいかぬ、こういう考え方なんです。それが今言ったように指導の最大のかなめだとするならば、扇にかなめが抜けておったら、これはだめなんですよ。扇はかなめがあって初めて扇としての役割を演ずる。ばらばらっとなっておってごらんなさい、処置なしですよ。大臣、どうですか。今専門家の館林さんが言う通り指導にはやはり診療報酬請求明細書を見なければならぬ、一番大事なところだとおっしゃる。これが、医師会の自主的な指導で見る必要がないのだとおっしゃるなら、一体医師会はどういう指導をやったらいいか、こういうことになります。大臣、どうですか。
  51. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 明細書を作る前に要綱についての指導ということは私はいいと思います。
  52. 滝井義高

    滝井委員 大臣にもう少し明細書その他の実物を見せてやらなければだめですよ。こういう大事な問題をやるときに、あなた方だけが、下でこういう技官会議に出て、みな、いばって演説したか、謙虚な態度で演説したか知らぬが、演説しておる、大臣は請求明細書の内容もよく知らぬということではいかぬです。こういう大きな問題になっておるときには、請求明細書の現物を持っていって、こういう工合にしてやるのですということをきちっと大臣に示さなければだめです。各医師がどういう工合にしてこれをどこへ出すかという、実態を大臣説明して、事前の審査はこう、基金の審査はこうと、きちっと御説明申し上げておかなければいかぬですよ。そうしないと今のようなとんちんかんなことになる。局長、あなたの手元だけでこういう大事な問題を処理してはいかぬ。申し合わせができたら、その申し合わせの表面のつらだけを見せないで、その奥に横たわっておるところを大臣にもう少し克明に御説明申し上げておかなければ政党政治は行なえませんよ。とにかく、診療報酬請求明細書は全然見てはいかぬ、こういうことなんですか、どうですか、局長さん。
  53. 太宰博邦

    太宰政府委員 この診療報酬請求明細書を、当該患者の秘密にわたることでございますので、患者の了解でも得ているならば格別、それでない限りは、私は見ることは適当ではないと思う。従いまして、支払い基金に請求いたします場合に医師会を経由してやるということは、私どもは適当ではないと考えております。それからまた、そういうものを見る権限を今の医師会に与えたらどうかというようなお話でございまするが、今日の段階においてはまだそういうことをすることは適当でない、これは任意団体でございまして、まだ国師会に入ってない人がたくさんおられるというようないろいろな点からも考えまして、そういうことを指導なりすることを法律上の権限としてただいま医師会に与えることはまだ適当ではない、かように考えております。
  54. 滝井義高

    滝井委員 診療報酬請求川細君が医師会を経由することが適当でない、こうおっしゃいましたね。今医師会を経由しているのですよ。それはやめさせるのですか。
  55. 太宰博邦

    太宰政府委員 しておらぬはずであります。もししておるところがありますればもう一ぺん検討いたします。
  56. 滝井義高

    滝井委員 現在みな医師会に集めて医師会が持っていくのです。われわれのところは福岡県ですが、みな持っていっている。そうしなければ大へんですよ。きちっと六口にみな集めて一括して基金に持っていくのですから、一人々々が送っておったらどこにいくかわからぬですよ。大事なお金ですから。請求明細書というのは金券と同じです。しかもそれは秘密を含んでおるお金です。それで金と引きかえてくれるのですから。それは各医師会みなやっておりますよ。基金に直送はしておりません。それは医師会がちゃんと見なければ、今言ったように請求の間違いや何か事務的な間違いがあるといけないので、全部やっている。今から二、三年前までは、われわれはみな地区で審査をやっておりました。現在東京都なんかやっているのじゃありませんか。国民健康保険医師会を経由しなければならぬことになったでしょう、東京都は。どうですか。
  57. 太宰博邦

    太宰政府委員 各地で一括して、ただ中を見ないで素通りしていくというならば大したことはない。中を見て送っていくということでありますならば、私どもとしては検討してみなければならぬ。どうしてそういうようなことになっているか、——私はおそらくそういうことにはなっていないと思います。その点は調べてみます。
  58. 滝井義高

    滝井委員 中を見る見ないじゃない、現在医師会を経由するということは事務的に中を見るということになるのです。東京都の国民健康保険はどうなっておりますか。東京都の国民健康保険は今度十月からきちっときまったでしょう。基金に直送していますか。わからなければ国民健康保険課長を呼んで下さい。
  59. 太宰博邦

    太宰政府委員 調べてあとでお返事いたします。
  60. 滝井義高

    滝井委員 すぐに国民健康保険課長を呼んで下さい。なっておるはずです。こういう大事なところをもう少ししっかり腹に入れておってもらわなければだめですよ。勉強が足らぬですよ。あなた方はそれが商売じゃないですか。そういうようなことがきちっとわかってなくてどうしますか。  次には小集団の指導ということがあるのです。これは一体どういうことですか。
  61. 館林宣夫

    館林説明員 十人か二十人を一カ所へ集めまして指導するやり方でございます。普通でありますと一日に五名内外を個々に相当時間をかけて指導するわけでありますが、それほど個人々々に時間をかけないで、内容によりましてはそれらの人々に共通に説明をし、また内容によりましては個々に一部は見るというような指導の方法でございます。
  62. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、どういう人が個別指導を受け、どういう人が小集団指導を受け、どういう人が大集団指導を受けるのですか。大集団というのは小集団より大きな集団ですね。これは医師会にまかしていいのか、あなたの説明によると、集団指導医師会にまかしていいと書いてあるのですね。個別指導に重点を置け、ところが個別指導は能率が上がらぬ、だから県の実情によっては小集団指導を加味してよろしい、こうなっておるのです。どういう人が個別指導でいき、どういう人が小集団指導でいき、どういう人が大集団指導を受けることになるのか、これは、個別指導を行なう人はこういうものを優先的にやるのだということは、さいぜん言ったように、中原事務官が説明していますね。今太宰局長も説明しました。それはわかります、優先的にやるということは。ところが今度小集団指導に優先的にかかるものはどういうものですか。
  63. 館林宣夫

    館林説明員 個別指導は必ずしも優先的なものばかりではございません。理想的には全医療担当者に対しまして個別指導で行なうことが望ましいわけであります。ただし事務能力上必ずしもそのようには急速にはできませんので、何年かに一回は個別指導も受けられるようにというような計画を基本的には持って行なうべきである、かように考えます。そこで最初に個別指導の計画を立てるにあたりましては、優先的なものをまず先にやる、残りの部分は能力がありますれば医師会等と十分連絡をとりまして、地区別に実施をしていくか、あるいはさらに診療内容の平均から上下に隔たるような人から実施をしていくか、そのような多少の区別をつけて優先的な実施を考えてもいい、これは個々に現地で十分医師会側と連絡をとって計画を立てて、現地に即した方法がよろしい、かように考えております。
  64. 滝井義高

    滝井委員 個別指導集団指導と小集団指導というのは別に大した区別がなくて、個別指導をやる人は、特に中原事務官が説明しているような条件のものは優先的にやっていこう。そうすると医師会が行なうのは主としてあなたの説明では集団指導をまかせる、こういうことになっておるが、個別指導はまかせないのですか。
  65. 館林宣夫

    館林説明員 医師会に特別な計画があって個別指導をやっていこうということであれば、別に行政庁の行なう指導に差しつかえがない限り、もちろん医師会個別指導を行なっていいし、またその方がむしろ行政庁としては望ましいと思っておるわけであります。
  66. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、その場合の個別指導の具体的なやり方を少し具体的に説明してみてくれませんか。どういうことを個別指導するのか、医師会がやる場合と行政庁がやる場合とこれは当然違うだろうと思いますから。
  67. 館林宣夫

    館林説明員 医師会指導を行ないます場合と行政庁指導を行ないます場合とは本質的には相違はございません。ただ入手し得る材料の範囲が違うわけでございますので、行政庁の方がしさいな点にまで指導が行き届くであろう、かように思うわけでありますが、指導やり方としましては、先ほどお話のありました、もしも支払い基金等で注意を受けておる、あるいは査定を受けておるというような点がありましたら、その内容を十分時間をかけて、本人の説明を聞く、もし不当でありますれば、その旨を告げて、今後直してもらう、こういうことをするわけであります。また他の医療機関と違った独特の治療方針をとっておるというような点がありますれば、それらの違いの点も指摘して、一般的な診療方針に変えるようにしていただく、また調査内容と請求との食い違いがありました場合には、食い違いがあった旨を医療担当者に告げて、もしも医療担当者側に間違いがある場合には直してもらいたい、こういうような注意をしていくことになるわけであります。その最後の部分は、カルテと請求明細書との食い違いは、医師会指導する場合でも、もしも十分な注意をもって患者の秘密事項が漏れないようなことでこれらの資料が手に入れば、医師会といえどもできるわけでありますが、患者の実調の結果請求明細書に食い違いが生じた場合には、これは行政庁でないとできないかもしれません。これらの点が行政庁医師会指導との違いであろうかと思います。基本的には指導大綱の線に沿って医師会もやるということでございますし、保険医療機関として守るべきことを指導してもらうということになりますので、あまり大きな違いはないと思います。
  68. 滝井義高

    滝井委員 どうもますます画竜点睛を欠く感が深くなってきた。と申しますのは、支払い基金から注意を受ける、そうして本人の意見を聞く、次回からそれが直っておるかどうか、こういうことが問題ですね。さらに独特の治療をやっておる、そんなもの独特の治療は保険ではいけませんから一般治療に直しなさい、直っておるかどうか、これは個別指導をやる場合には一体何を見たら一番はっきりするのですか、請求明細書でしょう。前の月に神経痛に独特の注射をしておった——私のところにもおりましたよ、ノボカインを至るところに打つのですよ、そうしてホルモンの注射をやる、ザルブロをやる。これは独特の注射だ。門前市をなす。ところがこんなものを保険は絶対認めませんよ。ホルモンをやって、ノボカインを痛いところに打ってやって、ザルブロを打てば熱くなって、一時はほっとして、すっと直った感じがする。そして門前市をなす。ところがこれは認めない。認めないが注意をする。やっぱり出ていくのです。だから今度医師会が見て、君だめだ、こんなものを出したら、また君の監査をやり、注意を受けるから直しなさいという。そこで返しちまう。ところが今のあなたの御意見では、独得のものをやっているが、これを基金にやってしまうというのですけれども、また減点、また監査なんですよ。ここなんです。長らくあなた、これで飯食っておるのだから、前もってそれを基金の前に直してやるのが指導でしょう。これが親心というものですよ。それをわざわざ今度は、また基金までやっておって、そうしてまた返して、お前いかぬ、監査対象だ、患者調査だということでは、やたら役人をふやすばかりです。こんなことは国民の血税を浪費するばかりです。医師会に前もって見せたらいいんじゃないか。それだったら法律で見る権限を与えて、医師会が悪かったら医師会法を話し合って改正したらいい。それをやらずして、あなた方があなた方の権限の内部だけでものを解決をして、そして日本の医療行政というものはおれたちの権限と権力でなければできぬというその思い上がりが、私に言わしめれば間違いなんですよ。指導というものは、これはもう罪が起こってから指導したのでは間に合わないのです。わかり切っておるでしょうが。今のあなたの御説明で、ますますその感を深くしてきた。そしてそういう個別指導やり方ではますます直りにくい。われわれの肉体だって、あなたもわれわれも医学を習ったでしょうが、赤血球と白血球がからだの中にあって、ばい菌が入っても、それが自浄作用をやってくれるから、われわれは少々のばい菌が入ったって健全でやっていけるのです。医師会の内部だってそれくらいの良識はありますよ。良識は指導している。だから悪いものがおれば、みずから切るだけの力を持っておると思うのです。歯科医師会だって同じ、薬剤師会だって同じです。それくらいの信頼感をあなた方が与え切らずして、それだけの腹がなくて保険行政指導をするというのは、私に言わしめればおこがましい。断じてできないのですよ、そういう方針では。私は今から太鼓判を押しておく。それで二年のうちにこういうやり方で問題が起こったならば責任を追及しますよ。きょうは私ははっきりと言っておく。この前三十二年に同じことをやって、あやまちが出て、今度申し合わせをした。それでは万全の態勢ができたという今のおそらく言明ですから、それで間違いが起こったらお二方の責任を追及しますということを、ここで私ははっきりと言っておきます。大臣はそのときおらないかもしれませんが、その点は一つはっきりしておきます。  次は個別指導をやって、患者実態調査に入りますが、これは一体どういう条件がそろったら、個別指導から患者調査に入るのですか。
  69. 館林宣夫

    館林説明員 個別指導から患者実態調査に入る場合は、個別指導の際になお患者の実態を調べた上で、もう一度指導をした方がいい、かように考えた場合、あるいは一たん指導をしておいて、その指導は口頭で指導したのであるが、それが実際に十分理解されておるかどうかということを実地で示していただいて、なお直すべき点があれば直してもらう、このようなことを考えた場合にしばらくたってからの調査をする、こういうような場合でございます。従って個々に、これはこれこれこういう条件がそろったから、患者実態調査をこの際して指導した方がいいかということは、個々の事例できまることでございまして、特別にこまかい条件というようなもので考えていくべきものではない、かように考えます。
  70. 滝井義高

    滝井委員 指導大綱のどこに患者調査をやるということがありますか。
  71. 館林宣夫

    館林説明員 指導大綱には患者調査については触れてないだけでございます。別に調査をやるともやらないとも書いてございません。従って指導の際には調査を行なわないとも、指導の際には調査を行なうとも書いてないわけでございますが、その点は今回は調査を加味していきたい、こう考えたわけでございます。
  72. 滝井義高

    滝井委員 それならば指導大綱を変えたらどうです。指導大綱なんて書いてありますが、「個別指導においては、個々の保険給付及び保険医療に関する事務並びにその診療内容について書類等を閲覧し、懇切丁寧に、懇談、指導を行う。」と書いてある。患者調査するなんて書いてない。この通りです。それならば今度三項に新しく書いたらいいのです。指導大綱に書かぬことを、医師会との申し合わせ監査要綱指導大綱でやりました、これを一歩も出るものではございませんという答弁を一番冒頭にしておる。ところが今度ははみ出たものをやる。指導大綱には患者調査の患の字も書いてない。「事務並びにその診療内容について書類等を閲覧し」と書いてある。これは一体患者調査じゃないでしょう。患者調査ができるのは九条の二ですか、九条の二でできるでしょう。これでやるわけですよ。こういうものが出ていく場合は、これは特別の場合ですよ。だからどうもあなた方は立法者の精神を簡単に曲げて、何でもかんでもおれらの権限だというふうに高飛車にものを考えていくのはおかしい。それだったら医師会と話し合って指導大綱を変えていらっしゃい。指導大綱はこんなものは出ていない。監査には出ていますよ。指導監査ではない。四十七条の七と四十三条の十一とは、厳然としてわれわれ立法者は区別している。それだったら社会保険診療担当者指導大綱の五の「方法」の中にもう一項3を入れて、そういう場合には患者調査も行ないますということを書かなければいかぬ。そうしてその上で指導をいたします、これが指導大綱です。ところが指導大綱には書いてないことを今新しくつけ加えておやりになろうというのです。あなた方はこれを金科玉条として、第一線の技官がお持ちになってこれでやっておるのでしょう。そうでしょう。これは、館林さん、書いていないでしょう。
  73. 太宰博邦

    太宰政府委員 指導の実を上げますためには、場合によりましてはやはり患者調査というものによって、患者調査をしないと明らかでないこともあるのでございます。従いましてそういうことは指導を行なうという場合においては当然従来からもここにおいて禁止されてはいない、こういうふうに私ども考えております。
  74. 滝井義高

    滝井委員 禁止はされていない——法律の九条の二にあるのだから、私は禁止されておるとは言ってない。これが指導大綱として末端の技官なり事務官がこれを見てするためには、ここにもう少し丁寧に書いてやったらどうですかというのです。三十二年にできたこれを変えたらどうですかというのです。建設的な意見を述べておるのですよ。それが必要だとおっしゃるのですから、それならば太宰さん、あなた間違いないようにしなければいかんですぞ。指導の実を上げるためには、指導大綱に書いてない患者調査も必要でございますというならば、法律にない医師会の診療報酬請求明細書を見る権限を事前に与えた方が指導の実が上がるじゃないかというのです。あなたの方は、大綱に書いてないことも指導の実を上げるためにはやらなければならぬというならば、一つ今度こういう申し合わせが出て自主的にやらせるということで、実がもっとよく上がるという方法があるならば、それをとることはなおよろしいことでしょう。医師会にやらしたらいい、医師会がやるだけの適切なものでないとさいぜんあなたは御説明になったけれども、これは武見日本医師会長が聞いたらかんかんになっておこるかもしれません。ふざけたことを言うな、おれたちは資格があるのだと言うかもしれません。これは水かけ論になるでしょう。それならば医師会法をどういう工合にしたらよいかという問題が次に出てくるのです。それならば法律を作ったらいい。こういう方向一つ向いて下さいという法律を、話し合って作ったらいい。だからやはり実の上がるように機会をとらえて、一歩々々やっていくことが必要なんですよ。指導大綱に何も権限はないと私は言わない。権限はあると言っておる。九条の二によってある。けれども指導大綱には書いていませんぞといっておる。こういう大事なところを指導大綱になぜ書かないんだというのです。個別指導をやるんだ。そうして診療録も事務的なことを聞きますぞ、よく懇談しますぞ、こういっておる。そしてそれが間違っておって、なお必要ならば私たちは患者調査をやって、さらにもう一ぺん個別指導をやりますぞということを書かなければならぬ。しりが抜けておる。あなたたちの今の意見ではそうでしょう。だからこういう点もう少し、これを出すのならば、今度の申し合わせに基づいて、こんなちゃちなものじゃなくて、きちっとしたものでお出しなさい。こんな大きな問題になっておる。簡単にお考えになっておるけれども、人間が二人死んでいるんですよ。今のままでいくと、まだ死にますよ。だからこういう点もう少しあなた方は腹がまえをしなければ、この前なんか私が監査要綱質問をするのに、課長が事務監査を間違えるような状態ですから処置ないです。もう少し自分たちが作ったものは、すみずみまできちっと態勢を整えておかなければだめです。どうもこういう形では行政庁には実際まかせられぬですな。  そうしますと、今館林さんの御説明になったようなことで、患者調査をおやりになる。しかしその患者調査というものは、指導大綱には出ていない。だからこれは一つ将来わかりやすく指導大綱に載せるなら載せて下さい。そうすると個別指導をおやりになり、患者調査をおやりになるが、今度は指導監査との関係はどうなるのですか。
  75. 太宰博邦

    太宰政府委員 医師会に事前に審査をさせるというようなことでございますが、これは私が先ほど御説明申し上げた通りで、別に個人のことをとらえてどうということはないことは御承知の通りであります。  それからただいまの質問でございますが、指導監査とについては従来と何ら変わりはない。ただ私どもは極力指導徹底することによって、事故がかりにあったとしてもそれを芽のうちに是正するということによって、監査によって処分するというような事例を極力少なくしたい、こういうことでございます。
  76. 滝井義高

    滝井委員 指導監査とが今まで通りで、一つも変わらぬというなら問題ないのです。何も申し合わせなんかやる必要はない。指導監査が今度は変わってきたわけでしょう。今までと変わってきたんじゃないですか。同じですか。どうもこれは私少し違ってきたような感じがするのですが、同じですか。館林さん、今度の申し合わせによっても今まで通りにすぱっすぱっと監査に入っていくのですか。だいぶん変わってきたんじゃないですか。指導を強化するために監査にかかっていくというのは今までと少し違ってきたのではないですか。
  77. 館林宣夫

    館林説明員 指導徹底をはかれば監査にかかるような人も自然に少なくなることと思われるということで、結果的にはそういうふうになっております。
  78. 滝井義高

    滝井委員 その場合に一番問題になってくるのは、患者実態調査でございますが、一体患者実態調査というのは、個別指導の場合は何人ぐらいおやりになるのですか。
  79. 館林宣夫

    館林説明員 申し合わせの三項の前段にあります指導のための患者調査は、それほど多数を必要としない、かように思っております。
  80. 滝井義高

    滝井委員 それほど多数を必要としないといっても、行政庁個別指導を行なった上でなお必要がある場合には患者実態調査を行なう、こうなっておるのですから、およそのめどをつけておかぬと、診療の報酬請求書全部を調査するなんということは大へんなことにもなるし、そうなるとこれは個別指導の域を脱してくるのでしょうね。監査の領域とほとんど同じような状態が出てくるのです。こういうところは申し合わせでお互いに意思の疏通をはかっておかなければ、ここではっきりさしてもらわなければならぬと思う。一体どの程度をやるのですか。
  81. 館林宣夫

    館林説明員 事例によって必ずしも数を限定できないわけでございまして、大きな医僚機関であれば多数の患者調査が要りましょうし、あまり診療件数の多くない医療機関であれば、それほど多くを必要としないということで、数の問題は必ずしも限定して言うわけには参らないわけでございますが、今私が申しましたのは、その前段の調査の方でございまして、今お話がありました、必要がある場合に、さらに患者実態調査を行なうという部分の調査は、あまり多数でないけれども、相当数はやるべきであろう、かように思っております。
  82. 滝井義高

    滝井委員 あまり多数でないが相当数なんといっても、そういう指導の仕方というのはやはり困るのです。大体審査委員になっておったら、この医者は大体どの程度のインチキがあるかということはすぐわかりますよ。僕も経験がありますが、すぐわかります。二、三カ月見ておったら、この医者は少し水増しがあるということは、専門家ですからすぐわかります。そうするとおよそ何人ぐらい調べたらわかるということぐらいはあなたの方から末端に指導しておらなければならぬ、そんな行政というものはないんですよ。大体幾らぐらいですか。話し合いはきまっているのでしょう、あなたの方では、そういう個別指導をやる場合には大体どの程度のものを見なければならぬくらいのことは。それもきまっておらぬのですか。
  83. 館林宣夫

    館林説明員 指導のための調査でございますと、五名ないし十名程度で差しつかえはなかろうと思います。ただし、今お話のありました、さらに必要があって患者実態調査を行なうという場合の調査は、相当厳密な調査を必要としますので、それよりさらに多数を必要とする、かように考えております。
  84. 滝井義高

    滝井委員 個別指導の場合においては、五人ないし十人、さらにそれ以上に必要とする場合は五人ないし十人より幾分数が多くなる。だいぶわかってきました。  そうしますと、個別指事は、一体医療機関の数として一年間にどの程度おやりになりますか。個別指導をおやりになる数……。
  85. 館林宣夫

    館林説明員 事務能力の点もございますので、これはちょっと一がいに私ども申しかねると思うのでございます。多ければ多いほどいいということで指示はいたしておりますけれども、これは実際に実施してみますと、各県ごとに相当な違いが起こる。多いところはあるいは三割、それ以上もできるかもしれませんし、少ないところはそれよりだいぶ少ないというようなことにもなろうかと思いますが、今のところどの程度ということはちょっと申し上げかねると考えます。
  86. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、多いところで三割、まあ事務能力の点があるから、それ以下のところもある。こういうことになると、中原事務官は三十五年度で全保険医療機関の二〇ないし三〇%に個別指導を行なう、こう指示しておるのです。事務官の方が課長や局長よりえらいらしいですね。国会で課長さんや局長さんや大臣が答弁できぬことを、全国の保険課長会議で堂々と指示されているから、世の中は石が流れて木の葉が沈むような状態になっておる、これが厚生省の実態かもしれませんね。悲しむべき実態ですよ。そうしますと、中原事務官の言によれば、二割ないし三割の保険医療機関指導する。保険医療機関となっておる。保険医療機関個別指導をやるというが、指導大綱のどこに書いてありますか。
  87. 館林宣夫

    館林説明員 この雑誌の記事は別といたしまして、主として指導に来てもらうのは、その医療機関で診療に従事する医師、特に管理者たる医師が最も多いかと思います。
  88. 滝井義高

    滝井委員 この説明でも、保険医療機関と療養担当者と両方やることになっておるのでしょう。あなたは、この大綱をよく読まなければいかぬですよ。「対象指導は、すべての社会保険医療担当者対象とする。」機関とは書いてないでしょう。——一の目的には書いてあるけれども、三の対象には書いてない。対象になぜ書かないのです。一には以下云々と書いておるけれども、あなたの答弁でも、管理者とおっしゃった。だから、そういうみそもくそも一緒にまぜるような行き方ではいかぬのです。これは違うでしょう。自分たちが、法律ではっきり保険医療機関保険医と区別しておるのに、機関と医者を一緒にしてもいいのですか。それだったら、健康保険保険医療担当者と全部直して下さい。健康保険で、機関保険医と二つに分けなければだめだということが、あなたたちの所信だったでしょう。ところがこういう場合になったら、今のように前に一緒に書いておるんだという。それなら違うでしょう。指定の条件も取り消しの条件も、保険医機関は違うのですよ。そういうような考えでおるから、第二薬局の問題が出てくる。第二薬局を何と指示しておるかと思ったら、これがこの前の答弁と違った指示をしておる。「病院構内に設置する第二薬局については、薬事法上の薬局と認められたものであれば、指定を拒否できない。」と書いてある。そして「保険薬局の調剤料の審査・支払の際、処方箋の内容に問題があった場合、薬局に責任はない。師医の明細書と突き合し、適正方を指導する。但し、薬価基準以外のものが調剰された場合は、薬局の責任である。」こういうようなことが書いてあって拒否できないから、保険局はこういうような形を認めていくのですか。大臣はこの前、文部省と検討して善処する、国務局はそういうものは好ましくない、こういう答弁をした。明らかに療養担当者と保険医療機関とは違うのでしょう。それだったらこれをきちっと分けなければ、前に一緒に書いておるんだといっても、われわれは今までこれは一緒でないと見ておる。一緒に扱うなら、これからは保険医療機関保険医とは一緒だと、カッコで法律を全部直して下さい。これは、病院の悪事が露見をして、呼ばれるときには、管理名の院長が呼ばれるし、やった保険医が呼ばれるのでしょう。そうすると、院長が呼ばれるときは機関として呼ばれるし、片一方は療養担当者あるいは保険医として呼ばれてくるのです。はっきり区別しておかぬと、こちらも担当者だということになると院長だけ来ればいいのですか。そういうわけにいかぬでしょう。こういう点はもう少しはっきりしておかぬと、こういうところから間違いが起こってくるのです。前に、目的のところに、両方のものを一本に書いておるということならば、健康保険法を全部保険医療担当者として下さい。そうすれば健康保険は二重指定というものはなくなってしまうのですから……。毒づくようになるけれども、そういう点はもう少し折り目を正してきちんとやってもらわなければ困るのです。  もう一つ、さいぜん太宰局長の御説明の中にもありましたが、調査の結果で適切な措置をとるということがありました。この申し合わせの五項にも、さらに調査の上、必要に応じて適当な措置をとることと書いております。この適当な措置とは一体どういうことですか。
  89. 太宰博邦

    太宰政府委員 これは、さらに調査をいたしました結果を総合判断いたしまして、やはり指導において済ましていいものは極力指導で済ます。しかしその結果として、これはやはり監査にかけなければならないというふうなものにつきましては、これは監査に持っていく、こういうことであります。
  90. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、適当な措置というのは監査ということですか。もう少しはっきり説明してくれませんか。調査の上、必要に応じて適当の措置をとるというのは、監査にいく場合と、もう一つはどういうことになるのですか。
  91. 太宰博邦

    太宰政府委員 これはその結果を総合判断いたしまして、指導でするか、あるいは場合によりましてはまた監査にいく、このいずれかをとっていく。指導にする場合もあり、場合によっては監査にする場合もある、こういうことであります。
  92. 滝井義高

    滝井委員 そういう場合は、もう少しはっきりしておいてくれませんか。どういう場合に指導に回わして、どういう場合に監査に回わすかというけじめですね。これは申し合わせをしたからには恣意的にやられちゃ困るのです。社会党の今度の提案では、それは政令で定めることにしておる。四十三条の十で質問やら書類の審査をやるわけです。それから第二段階では、立ち入り検査、それから出頭命令が出るわけです。これは監査を二段にしておるわけです。第一段から第二段にいくという場合は、質問やら書類の提出を頑強に拒否する、それから指導しても再度悪事が続いていくというような場合、それから第一段階でいろいろ調査をしたけれども、書類ではどうしてもやはり根が深いということが大体明白だというようなときに第二段階になることにしておる。あなたの方で、この適当な措置監査指導という二つに分かれるというならば、一体どういう場合には監査、どういう場合はもう一ぺん再指導に回わす、これははっきりしておかなければならぬのです。これは行政官として当然の義務ですよ。われわれだってそういうふうに分けておる。第一段階監査から第二段階監査にいくという場合には、そういう悪質な者以外はだめなんだということをはっきりしてきておるわけです。だからこういう場合には何か基準をはっきりしておかなければいかぬのですよ。こういう点については、どうも中原事務官もはっきりしていないようにあるのですが、どうですか、基準があれば一つ……。
  93. 館林宣夫

    館林説明員 これはなかなか基準できめることのむずかしいものでございまして、何で調査をし、何で不正があったからといいましても、不正の内容にもよりますし、例数できめることもできませんし、また金額でそれらのこともきめられない。また故意にはなはだしい不当を行なうというようなことを実際詳細に文字で形容することはむずかしいわけでございますので、やはり個々に検討した上で指導によって直していくことが適当と思われるものは指導による、それ以外のものは監査、こういう区別をせざるを得ないわけでございます。
  94. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、必要に応じて適当な措置をとるというのは、指導監査があるということだけで、そのけじめはあなたの方はつけ切れぬ。ケース・バイ・ケースでやるよりしようがないということですな。
  95. 太宰博邦

    太宰政府委員 詰めて申しますと、その実態をにらんできめるということで、なまじっかものさしみたいなものを作ると、かえってそれが実態に合わないようなことも起こるということでございます。全体の精神に照らして考えて参るべきものだと考えます。
  96. 滝井義高

    滝井委員 はなはだ政治的になってきた。これは行政ですから、あまり政治的じゃ困るのですよ。かゆいところに手の届くような指導があり、そこにはきちんとしたものさしがあるときにおいてのみ初めて行政というものは輝きを発するのです。それをその場その場で政治的にやると、変に政治的に利用されてしまう。こいつはにくらしい、大きな声で反駁しやがる、えい監査だ、こういうことになるのです。そこにはやはりきちんとしたものさしがなくちゃいかぬ。ものさしを見つけようとすればすぐ見つかるのです。われわれがやったように、たとえば悪質である——あなたの方だってずいぶん監査のとき不正があったとかなんとか書いておる。あれをもう少し具体的に書いてみたらいい。患者二十人調査をしてみて、その中の八割も不正があったようなものは監査だというような工合にしておいたらいいじゃないですか。そうして第三項か第四項に、その他特に必要なるものとかなんとかいう少し弾力的な条項を入れておいて、できるだけ前の条項でいくように、きちんとした条項でいくようにしておいたらいいのですよ。どうもこれはなかなかあいまいですな。  官公立の病院の医師指導はだれがやるのですか。
  97. 館林宣夫

    館林説明員 これは行政庁が行なうようになると思います。
  98. 滝井義高

    滝井委員 官公立病院の医師諸君も医師会に入っておりますが、医師会個別指導できますか。
  99. 館林宣夫

    館林説明員 医師会が講習会等を行なう場合には、官公立の病院の医師会員たる医師は出席して指導を受けることも多いと思いますが、おそらく医療機関に対する指導も含めて、この場合の指導行政庁が行なうようになると思います。
  100. 滝井義高

    滝井委員 厚生省が行なう理論的根拠は……。
  101. 館林宣夫

    館林説明員 これらの医療機関に勤務しておる医師の必ずしも大多数が医師会員でもございませんし、結果的にはやはり行政庁が行なう指導を受けるようになると思います。
  102. 滝井義高

    滝井委員 結果的じゃなくて、その病院の医師が全部医師会に入っておるならば、その医師会員を医師会個別指導できるのでしょう。できないのですか。——またここで一つ悪事露見かな。
  103. 館林宣夫

    館林説明員 大きい病院等の医療機関でありまして、それに従事しておる医師が全部医師会員であり、また医療機関側も医師会の行なう指導を受けて差しつかえないということであれば、医師会指導を行なう場合があるわけでございます。
  104. 滝井義高

    滝井委員 おかしいですね。これは一体何の申し合わせですか。病院であろうと診療所であろうと私的医療機関であろうと公的医療機関であろうと——これは今後日本の皆保険政策を順当に遂行するために、監査なり審査なりというものが非常に大きな問題になる。だからこれを順当にやるためには、公私の別なく医師会に自主的に指導をやりなさい——拒否すれば別ですよ。拒否すれば私的医療機関だって別ですから、拒否することが前提でなくて、やることを前提にしているのでしょう。みなが協力してそういう指導を受けることを前提にしているのでしょう、話し合いは。また指導大綱はそういうことを前提にしてお書きになっているのでしょう。そうしますと、公的医療機関だって何であろうと、これは医師会が自主的にやることは差しつかえないのでしょう。どうですか。今の御説明ではどうも行政庁がやることになると思います。こうおっしゃっておるのだが、そうするとまたこの問題で日病と医師会と分断するのですか。
  105. 太宰博邦

    太宰政府委員 ただいま医療課長が申し上げたことで明瞭でありまして、その医療機関の方で医師会指導を受けようということであれば、医師会指導してもいいと思います。
  106. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、中原さんの指導は取り消してもらわなければならぬ。「官公立医療機関、組合病院等は行政庁が行う」こう書いてある、これはうそですか。今の説明と違う。こういうように堂々と、これは三月二日ですか、演説をされておる。国会の答弁と違ってきておる。それならば、希望すれば医師会がやってもよろしいと書かなければいけない、演説しなければいけない。これはどうですか。
  107. 館林宣夫

    館林説明員 行政庁指導計画の中に入れておくようにということでございます。
  108. 滝井義高

    滝井委員 そんなばかなことはないのですよ。何で行政庁指導に入れなければならぬのですか。官立病院の医者は何で医師会に属していけないのですか。医師会指導を受けていかぬのですか。何で行政庁指導計画に入れなければいかぬのですか。そんなばかなことはないですよ。大臣、ごらんの通りです。あなたが知らないうちに、こういう行政指導が行なわれておる。勝手に一事務官が国会の答弁と違うことを堂々ともうすでに演説で述べておる。そういうことを全国の技官に言っておる。指導官というのは技官ですよ。それに演説している。それを撤回しなさい。撤回しますか。官公立病院といえども、平等に、これはどこでも指導を受けることは当然ですよ。医師会に入っておるならば、医師会医師会員のための自主的な指導をやるのでしょう。官公立病院というものは行政庁がやるのだ、その計画の中に入っております、そんなばかなことはないですよ。そういうように官尊民卑の思想をあなた方が持っておる限りは日本の皆保険というのはだめです。やり出しなさい、演説をいま一ぺんやり直しなさい。きょうの答弁とずいぶん違っておりますよ。こんなでたらめなことはないですよ。どうですか、官公立の病院というものはなぜ行政庁がやらなければならぬのですか。何で日本医師会に官公立病院も自由にやってよろしいと言えないのですか。何か特別なわいろでも官公立が持ってきたのですか。
  109. 館林宣夫

    館林説明員 ただいま申し上げましたように、多くの場合、官公立病院には医師会員ならざる医師がおるわけであります。従って一応行政庁指導計画の中に入れて実施をするように——もちろんその医療機関医師会指導を受けることを納得し、また行政庁指導計画と医師会側の指導計画と連絡をとった上で、この場合は医師会指導してもよろしいということであれば、別に医師会指導を行なって悪いという指示もしておりませんし、また行政庁のみが指導をするという指示をしたのでもございません。一応官公立の多くの医療機関においては医師会員でない医師が相当多いから、行政庁指導計画の中に入れておくように、かような指示を行なったわけであります。
  110. 滝井義高

    滝井委員 それが独断ですよ。そういう演説をして、そういう計画を発表すれば、公的な医療機関というものはすでにそうでなくてさえも医師会とみぞができつつあるのですから、そうなればわれわれは医師会など行きませんぞ、こうなることはきまっておる。あなた方はそういう行政の機微というものをわきまえていないのですよ。一方に大臣が一生懸命日本の医療行政の伸展のために雪解けに努力する、役人は下の方で全く逆の方向に問題を進めていくのでは、まるきり支離滅裂じゃないですか。こういうことではだめです。しかも保険医療機関保険医と一緒にやるのだ、こういうことになって管理者がさいぜんの答弁のように出てくる、こういうことになれば、医師会指導を受けたいと思ったって行かないですよ。行政庁がやるのだ、おれの計画にお前入っておるとこう言えば、あなた方が権力を握っておる。公私医療機関予算も握り、財政投融資も握っておるということになれば、行こうといったって行かれぬじゃないですか。だから権力ある者はこういう指導の面においては謙虚でなくちゃならぬ。自由におやり下さい、どちらでもよろしい、官庁が好きなら官庁、計画に初めから入れるのじゃないのです。それだけの謙虚さがないところにどうも——私実はこの演説を読んでみて、これは大へんな演説だと痛感しておるのです。独断ですよ。こういうことで指導がうまくいって、不正が減ると思ったら大間違いです。そんなものは何にも役に立ちやせぬ。私は断言しておきますが、そういうかさに着たやり方ではとても問題はうまくいきません。  今回のこの申し合わせを契機として指導徹底をされ、それによってある程度監査を受けるものが減ってくるということでございますが、監査の様式は今までと変わった方法をおとりになりますか。
  111. 館林宣夫

    館林説明員 御質問の意味を取り違えておるかもしれませんが、この前お話のありましたような点を十分配慮しまして、監査を受ける人があまり圧迫感を受けないような配慮をいたして参りたい、また弁明も十分よく聞くようにというような扱いをいたして参りたいと思っております。
  112. 滝井義高

    滝井委員 患者実態調査ですね、これは具体的には患者のどういうものを調査しますか。どういうものというのはわかりかねると思うのだが、ここに「監査事務について」という、この演説はだれの演説でしたか、これはやはり中原事務官の演説ですね。「医師一人当り二十人以上やる。(国民健康保険も同様)」と書いてあるわけです。それで「調査は雇員、若いものは避ける。福祉事務所職員や市町村職員にやらせない。保険課で充分確めた資料でやる。医師会の立会いの必要はない。証拠書類は一括して整理する。」と書いて、そして医療費の受領証から一部負担金を記入した日記帳から家計薄までもやることになっておるのですね。この前も私は医者の家計簿、貯金通帳、株券、財産まで言ったら、そういうものはやらぬという頑強な御否定をなさっておったけれども、はしなくもこの演説の中には出てきたですね。日記帳から家計簿、そして裏づけの証拠を固める、こうなっておる。こういうところまでおやりになるのですか。これは家宅捜査をやらなければならぬことになるわけですね。
  113. 館林宣夫

    館林説明員 患者調査の結果は特に影響するところが甚大でございますので、医師の利益を保護する意味においても十分慎重に行なう必要があるわけであります。間違った結論を出すような軽々しい調査ではいけないということから、十分慎重にという意味合いで説明したものでございまして、内情必ずしもそのような資料を必要とするわけではございまんが、十分慎重な調査を行なうようにという指示を行なったわけであります。
  114. 滝井義高

    滝井委員 今までの実績はどうですか。今までの実績では、患者調査でそういうものを調査しておりましたか。
  115. 館林宣夫

    館林説明員 おそらくそういうものを調査の材料に使ったことはほとんどございません。従いまして、これは雑誌の記事でございますから実態と違う点もあるかと思いますが、ごくまれな場合の説明をしたわけでございまして、通常はそのようなことは要らぬわけであります。
  116. 滝井義高

    滝井委員 今まで実績がないのに、新しく申し合わせができて、そうして指導なり監査をやろうというときに、事務官がやるのだということを演説しておるのです。雑誌の記事だからというけれども、これはおそらくその原稿ですよ。それに間違いないです。あなたもそれを見ておると思うが、やっておる通りです。  それで結局監査というのは、今までよりか懇切丁寧に聞くというだけの違いで、さいぜん監査は今までと同じだとおっしゃったのだが、やる態度その他はみな同じということになるでのすか。何かほかに変わったところはありませんか。
  117. 館林宣夫

    館林説明員 監査上の配置とか監査の際の態度等は今回十分注意をしたわけでございます。必ずしもそれらの点は今お手元にあります雑誌には出ておりませんけれども、私どもは特に十分注意をしてそれらの点の指示を行なったわけであります。また監査の結果の処分につきましても、指導で極力直していくというような基本的な今回のものの考え方を加味して十分事に当たるようにという心がまえも示してあるわけであります。
  118. 滝井義高

    滝井委員 厚生省日本医師会並びに日本歯科医師会との三十五年二月十五日の申し合わせ基礎にして一時間半か二時間ばかり御質問申し上げましたが、どうも保険局当局はこれについてもしっかりした腹がまえと、皆保険政策の順当な遂行へのあたたかい熱意と申しますか、特にあたたかいという形容詞をつけたいのですが、それが欠けておるのですね。それから監査の実を上げるためにも、診療報酬請求明細書を事前に十分見て、その間違いを直さしていくという大きな点について目をつむっておる。こういう点についてはもう少し積極的にこれをやる必要があると思うのです。われわれも法案を出しておりますから、与党さんでも四つの法案をお通しになるならば、社会党のも一つくらいはぜひ通してもらいたい、こう思うのです。今の質疑応答によって、大体診療報酬請求明細書を事前に見るということがきわめて指導の実を上げる上に重大なポイントであることが明白になりました。  この機会に二点だけ大臣にお尋ねしておきたいのですが、この前の予算委員会で御質問を申し上げました大学構内における第二薬局の問題の処理はその後どうなりましたでしょうか。
  119. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 目下検討をしております。
  120. 滝井義高

    滝井委員 これは保険行政上重大な問題でございますから、すみやかに結論を出してもらいたいと思うのです。検討々々と言われるが、こんなものそう長くかかる問題じゃないのですから、法律的にすぐはっきりするわけです。それで信州なら信州の医科大学の違反がありますと、その保険医療機関を呼ぶと、保険医療機関と一緒に保険薬局がついてくることになる。保険医療機関とは、土地と建物と医師療機械、器具、設備、そしてそれに働いておる従業員とそれに対して経済立法である健康保険法なり国民健康保険法が働いたとき、その総合体を保険医療機関とこういうことになるのです。保険薬局というのは太宰さん、みんなが自由自在にここで調剤を受けられるところを保険薬局というのでしょう。
  121. 太宰博邦

    太宰政府委員 その通りと思います。
  122. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、大学の病院の建物の中に保険薬局がありますと、その大学の廊下は天下の公道と心得ていいわけですね。大学側が、あんたは大学のあれに来ている患者じゃないから入ってはいけないと受付で言っても、それは営業妨害になるのですね。そういうことをお考えになったことがありますか、天下の公道と見ていいのでしょう。
  123. 太宰博邦

    太宰政府委員 まあ大学という一つ機関の中でございますから、それは天下の公道ということは私としてはどうかと思います。ただし私の方といたしまして保険薬局の指定をするかせぬかということにつきましては、法律上大体こういう場合という特定のあれを除きましては私の方はやはり指定していくという建前を今日はとっているわけであります。ですから薬局としての開設の許可がありましたものが、保険薬局になりたいとやって参りました場合においては、この点はある程度しゃくし定木だとおっしゃるかもしれませんけれども、こういう点についてはそれぐらいの方がいいので、それを個々あまり裁量の余地を残さないようにして、向こうで出て参りましたならば、私の方の法定の欠格条項でもなければ認めるという立場で今日あるわけであります。ただしこれが実態としていろいろ問題があるのではないかというこの前の御質問でありました。これは薬局、医務局あるいは文部省というようなところに関連いたしますので、ただいま大臣から御答弁がありましたように今検討されておるところでございます。
  124. 滝井義高

    滝井委員 すみやかに一つ検討して下さい。この国会が終わるまでにもう一回尋ねますから。  それから療養費の乙表で出たものを甲表で払っておった。これは改めるという大臣の御説明があったのですが、これは改めるようにきちっと方針を流しましたか。
  125. 館林宣夫

    館林説明員 お尋ねの日雇いに関する療養費払いの扱いを改めて乙表の医療機関から出たものは乙表で療養費払いをするという帆走は目下起案中でございます。
  126. 滝井義高

    滝井委員 そういう方向でやるということですね。——了承しました。  実は則内事務官が二日目に演説している中で「乙表機関でも甲表で支払うのは不合理であるという疑問が出ているが、療養費払いは慣行料金が建前である。」だからいいというような意味のことを言っております。しかしそれはぜひそういう方向でいくということですから、これについてはこれ以上追及しません。では午前中はこれくらいで……。
  127. 永山忠則

    永山委員長 午前中はこの程度にして、午後二時まで休憩いたします。     午後零時四十五分休憩      ————◇—————     午後二時二十八分開議
  128. 大石武一

    大石委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。八木一男君。
  129. 八木一男

    八木一男委員 船員保険法等一部改正案やその他の問題に関連しまして、松野労働大臣にお伺いをいたしたいと思います。  まず最初にお願いをしたいのは、この非常な希代の悪法案ができましたのは倉石労働大臣の時代からでございましたので、松野さんは新しい意味で、昔からの悪い伝統にとらわれずに一つ御答弁を願いたいと思う。松野さんにまず前提としてお伺いしたいことは、労働大臣として、ごまかい一つ一つのことは一ぱいありますけれども、労働者にどのような政治をしこうというふうにお考えでいらっしゃいますか、一応御答弁いただきたいと思います。
  130. 松野頼三

    ○松野国務大臣 私が就任以来、私の念願としておりますのは、雇用の安定と労働条件の向上とそうして日本経済の発展におくれないように労働者というものが前進していくことだ、こう考えております。
  131. 八木一男

    八木一男委員 雇用の安定と労働条件の向上、従って労働者の生活の安定というようなことは、まさに一番労働行政の志向する点として大事なことで、それを第一義的に考えていただいているのは非常にけっこうだと思います。しかしながら、残念ながら雇用の安定がまだ完成いたしておりませんし、そういうことで失業者が多い、半失業者が多いという状態に対して、失業者に対してはどのようにお考えですか。
  132. 松野頼三

    ○松野国務大臣 失業者にとっては、早く雇用の道を求められるように政府がお手伝いする、また御指導する、あるいは訓練するということが一番私がやるべき当面の問題じゃなかろうか、こういうふうに実は考えております。
  133. 八木一男

    八木一男委員 雇用ということで端的に表現されましたけれども、もちろん失業者は職を得る、雇用された者になるということが一番希望でありますし、その点に政治を進めていただかなければなりませんけれども、雇用といっても名のみの雇用であって、たとえば賃金が低いとか、非常に労働条件が悪いとか不安定であるとか、そういう雇用では意味が少ない。従いまして雇用を促進するという意味の中には当然、先ほどの一般的な御答弁と関連いたしまして、量的な雇用と同時に質的な雇用、両面をお考えであろうかと思いますが、労働大臣の御所見を伺いたい。
  134. 松野頼三

    ○松野国務大臣 量的な雇用と質的な雇用というのは、両方とも欠くべからざるものだと思います。
  135. 八木一男

    八木一男委員 委員長、ちょっとこの状態では困ります。厚生大臣のほかに与野党の委員を招集していただきたいと思います。二名では定数を欠くことはなはだしい。
  136. 大石武一

    大石委員長代理 今集めさせます。
  137. 八木一男

    八木一男委員 船員保除法等の一部改正案というものは、この前の通常国会から出ているわけでございますが、私どもの考え方では、これはめったにない、希代の悪法だと考えておるわけです。労働大臣は、最初出されたのは倉石さんのときでございますから、責任を継承するという狭義のお考えでなしに、新しい意欲の盛んな労働大臣として、この船員保険法等の一部改正案は、私どもは非常に悪い法律だと思いますが、労働大臣はいかにお考えで、今審議についてこちらに要請されているか、一つ伺いたいと思います。
  138. 松野頼三

    ○松野国務大臣 一年二カ月前に出しましたこの法律を、今から振り返ってみれば、それはいろいろ議論がありましょうし、私も意見がないわけじゃございません。しかし、一年二カ月前に出した法律が早く通って、そして次の段階に進むべきだと私は思うのです。その一年二カ月前の法案を今ごろいい悪いと議論をして、ここでとやかく言うよりも、前進すべき事態じゃなかろうか。私はこの一年二カ月の間に情勢が変わったと思う。ことに石炭の問題などは一年二カ月前には出ておりませんでした。昨年これは非常に大きな問題として出てきた。またこれは今後も続く問題だと思います。従ってその一年二カ月の間に絶対変わってないかといえば、雇用条件は前進したところもあれば、また逆に後退したところも今日は出てきております。従ってそれはいろいろ議論がございましょうが、早くこの法律が通って次に進むべき道をいくことが私は今日最善の道だと思います。その一つの現われとしては、与党からこの一年二カ月の間の変化を見て、そういう感覚のもとに修正案というものをお出しになったのじゃなかろうかと拝察するわけでありますが、政府としては一年二カ月前の法案を——今一番残念に思うことは、どうしてこんなに時間がかかったかということであります。早く通して早く先に進みたいものであります。従って、これはやはり前大臣からの引き継ぎですから、これは批判はいたしませんけれども、願わくは一日も早く通して、先の新しい労働行政に前進をしたいというのが今日の念願でございます。
  139. 八木一男

    八木一男委員 わかったようなわからないような御答弁ですけれども、早く通して進みたいと言うが、通らなかった理由をお考えいただきたい。いなかで議会の状態を知らない人は、与党は何でもかんでも通す、野党は何でもかんでも反対するというように言われておりますが、国家にとって当然必要であると思われるものは、与野党一致して通している法律が大部分である。問題のある法律だけがいろいろ論議の的になる。おくれるということにそれだけの問題をその中にはらんでいる。しかも前代未聞の、予算関係する法律でありながら、継続審議にはなりましたけれども、去年も審議未了に終わって、臨時国会でも二回も何も審議されなかったというような法律には非常に重大な問題がはらんでいるということをお考えにならなければいけないわけです。与党に賢明な方がおありになって、それを無理押ししようとなさらなかった。そこに非常に変なものを含んでいる。野党がどうしても通さないでおこうといまだに思っているのは、それだけのものを含んでいるからであります。それならば早く通して先に進めたいということではない。早く通せば後に、そのときよりも先に進まない、後退してしまうという内容を含んでいるわけであります。前責任者である倉石君に対する友情もありましょう、同党としてのよしみもあろうけれども、何千万の国民に対する労働大臣の責任はそれよりもはるかに大きいわけです。倉石君が何を言おうと、どんなに面子を失墜しようと倉石君自体が失敗をしたのであれば、その面子の失墜するのはあたりまえであります。それがまた倉石君が政治家として発展するもとになるわけであります。失敗をしながらも、それにごまかされて、同僚の小さな見地のよしみで守り育てられて、そのような悪い政治が前進するとすれば、倉石君自体にとっても、政治家としての進展はそれでとまります。倉石君の問題なんかどうでもいい。岸内閣にとっても、前の誤りを正さないというならば、岸内閣自体もかなえの軽重を問われる。そういうことを判断なさる責任は現労働大臣にある。誤りは正さなければいけません。それだけの理由のあるものは撤回をして出し直すのがあたりまえである。それをもし撤回をする理由がないとおっしゃるならば、労働大臣は労働行政を担当される資格はないと思う。これからいろいろ申し上げまするけれども、労働大臣はその聰明といわれる頭をもって判断すれば、この法案は後退であるということははっきりおわかりになるわけであります。おわかりになりながらやれないとおっしゃるのは、その辺の原案を出した局長連にごまかされている。そういうことではりっぱな労働大臣とは言われません。前に出たものはそれでいいのだということでは、ほんとうの労働大臣として勤まりません。誤ったものは今直ちに閣議を開くことを要求して撤回する、そのような覚悟でこの問題を検討されなければなりません。この問題についてそれだけ真剣に御検討になったかどうか。
  140. 松野頼三

    ○松野国務大臣 それは当然引き継ぐときには検討をいたしました。いろいろこれは議論の多いところであることは私も承知しております。しかし絶対これが後退である、有害だという判断は、私はこれは意見の分かれるところではなかろうか。確かに議論のあることは私も承知しておりますが、その議論が絶対的なものかどうかということは、これはまだ今後の問題あるいは今日の問題においても議論の分かれるところであります。従ってそういう心配のないように、前進した労働行政を打ち立てたいというのが私の念願であります。もちろん私も、必ずしも私のいうことが百パーセントだとは思っておりません。しかしそういう心配のないように、次々ほかの施策もあわせて労働行政をやらなければならない。失業保険法だけが労働行政のすべてでないことは御承知の通りであります。しかしそういう不安があるならば、不安のないように直しながら、今後の労働施策をしていくことが妥当だと思います。その一つ与党修正という形で出てきたのではなかろうかと思うわけであります。従ってこの一点をとって議論するのではなく、総合的に考えなければならぬ。私はそういうふうな意見でこれは引き継いだわけであります。
  141. 八木一男

    八木一男委員 厚生大臣がお見えになりました。御要務があるところを無理にお呼びして恐縮でありますが、船員法保険法等の一部を改正する法律案については、労働省と厚生省と共同の責任を持っておられます。従いまして真剣に質問することに対しては、どうか両省で聞いて両省で御判断を願いたい。厚生大臣にもさっきの考え方を労働大臣と御一緒に聞いていただきたいから、もう一回復習をしたいと思います。  渡邊厚生大臣に聞いていただきたいのですが、今までの労働大臣の御答弁は、基本的に労働省の雇用の促進、それから労働条件の改善、そういうことを主体として考える。なお残念ながら雇用の政策が完全にいっていない現在、失業者がいる。その失業者に対しては雇用の促進をやる。雇用の促進は量的なものであると同時に質的なものも考える。すなわち労働条件がいい、具体的に言えば賃金がいい、安定している、そういうことも考えるという建前で労働行政上の方針を明らかにされたわけであります。この御答弁はまさに九十九点くらいであろうと思います。かなりいい御答弁だろうと思います。それにつきまして、船員保険法等の一部改正案が非常に悪い法律である、倉石忠雄君のごとき一個人との仁義などを重んじないで、岸内閣のために、日本の全国民のために、この悪法を撤回したらどうかということに対しましては、非常に微温的な御返事であって、必ずしも悪いものとは思わないというような御返事でありました。その前に、一年有余にわたりましてこれが審議をされながら、与党も強行採決をされようとされなかったということにつきましては、この法案に非常に重大な点があるということを申し上げた結果、その答弁として労働大臣はこのようにおっしゃったわけであります。これから続けますが、関連して厚生大臣にお伺いしますから、どうかよく御一緒に聞いていただきたい。  労働大臣の先ほどおっしゃいました基本的な労働行政——船員保険法等の一部改正案と、さらに与党とおっしゃいましたけれども与党齋藤邦吉君の提出された失業保険法等の一部改正案は、本質的にそう変わりありません。しかしこの二つの法案は、労働大臣の労働行政の基本方針と大きく反しているわけです。どこが反しているか、お気づきになりませんか。
  142. 松野頼三

    ○松野国務大臣 失業保険法の一部改正については、反しているとは私は思いません。御承知のごとく、これは待期日数の減少とか、あるいは比率の引き下げとかいうものも含んでおりますから、失業保険法改正が全然労働行政に相反した法律だとは私は思っておりません。
  143. 八木一男

    八木一男委員 非常に聰明と伺って、私も聰明だと思っておる松野労働大臣としては、この問題の御理解はあまりにも乏しいと思う。焦点がはずれております。待期日数の問題、これは一つの重要点でありますが、船員保険法等の一部改正案の問題の重点はほかにあるということは御承知のはずです。問題をそらされても私どもは知っておりますから、そらさせませんから、この重点を御答弁を願いたい。その点で、非常に基本方針と反している点がある。船員保険法等の一部改正案の中の、具体的に申し上げれば失業保険のところです。
  144. 松野頼三

    ○松野国務大臣 この国庫負担の引き下げの話が、ちょうど失業保険と船員保険が同じような印象を受けます。失業保険につきましては、たびたび申しましたように、失業保険の非常に健全な財政がございますから、いわゆる被保険者及び労働階級に対して、何らこれによってサービスの部面で引き下げるということでございません。これは会計の問題であります。従って、会計が非常にに不十分なときは三分の一までさらに引き上げるという附則というか、新しい条項がついておりますから、これは私は会計の問題だと思うのです。労働行政そのものに——それが三分の一が四分の一に引き下がったからといって、直ちにそれでは給付金額が違うかというと、それは変わりありません。これは会計の健全性からくる問題であるということで、私は何らこれについて疑問を持つわけではございません。
  145. 八木一男

    八木一男委員 とらわれずにお答えを願いたいと申し上げておりますので、その点は一つじっくりそしゃくしていただきたいと思うのです。政府案を守る立場ばかりでは筋が通らないのです。これはいまだかつて見たことのないでたらめな法律です。それを理解して答弁していただきたいと思うのです。  まず失業保険法の部分あるいは船員保険法の失業の部分を今一応重点としてお伺いしますが、そのほかに、先ほど料率の引き下げというのがありましたね。料率の引き下げについてはどうお考えですか。
  146. 松野頼三

    ○松野国務大臣 千分の十六を千分の十四に引き下げております。これはもちろん負担の軽減ですから、どちらかといえば、その徴収者、被保険者からいえば負担の軽減になるということであります。
  147. 八木一男

    八木一男委員 そうすると、被保険者から見て有利であるというふうにお考えでございますか。
  148. 松野頼三

    ○松野国務大臣 給付金額が同様ならば有利になるわけであります。
  149. 八木一男

    八木一男委員 まず、先ほどおっしゃいました会計上の問題であって、制度が悪くならないからとおっしゃったが、それが根本的に間違いであろうと思う。大体失業保険というものはどういう性質のものか、失業保険法の第一条をごらんになったら、失業中の生活の安定をはかるということになっておる。この基本法は憲法第二十五条だ。憲法で保障された、健康で文化的な生活を維持する、それがもとになって、健康保険であるとか、失業保険であるとか、年金であるとか、そういう制度が組み立てられておるわけであります。一方医療保障の方は、病気のときに、自己負担がなしに、あるいは少なくして、完全な医療の措置を受けられるということが目的で医療保障が行なわれておる。所得保障は、年金とか失業保険とか、そういうものです。所得保障というものは、所得能力がいろいろな意味でなくなった場合に、これを保障して、その間の生活の安定を期するのが社会保障の組み立てであります。厚生年金国民年金も失業保険もそうである。それからまた健康保険にある傷病手当金もそうである。これは所得保障の範疇にある。所得保障というのは、所得がなくなった人にそういう保障をして——社会保険のシステムである場合もあれば、ほかの場合もありますけれども、大体において日本では社会保険のシステムで発達しておるわけです。それでやることになっておる。はっきり言えば、所得がなくなったことに対する補てんなのだ。それならば、その中の失業保険というものは、失業ということで賃金がもらえない。もちろん労働者として働いているのであるから、ほかの生産手段、農地とか、商店とか、工場とか、そういうものを持っていない人が原則である。従って、賃金がなくなったならば、生活の根源がなくなるわけです。しかも政府の雇用政策が完全ではないので、すぐ転職、再就職ということは非常に至難である。そういう状態においての失業保険でありますから、再就職までの失業の期間中、失業保険でこれを補てんするというのが当然の原則だ。失業保険というものはそういうものであります。それが現在の失業保険は、現行法においては、一番長い人が二百七十日しかない。その次が二百十日、それから百八十日、ひどいのは九十日というような短い給付期間しかないわけであります。そんなもので失業保険が完成したというふうに思っておられるならば、これは社会保障を語る資格なし。労働者の保護を語る資格もなし、政治を語る資格もなし、社会保障を語っておる自民党の党員である資格もないと思う。労働大臣は、そういうようなくだらない人間ではないと思う。りっぱな、将来大政治家として大成をなさる人物であろうと思う。そういう人物が、給付が今と同じだからそれでいいのだというようなお考えでは、今後の政治を担当する資格はおありにならないと思う。ほんとうは持っておられるのに、倉石君なり、その辺の局長連への義理で、自分の政治的見解を狭め、ひいては自民党の信用を失墜する、ひいては岸内閣のかなえの軽重を問われるというようなことは、ほんとう政治家としての態度ではありません。そういうものではいけないという答弁が当然あってしかるべきだ。それについて、労働大臣の御意見を伺いたい。
  150. 松野頼三

    ○松野国務大臣 いろいろな政治全般についての御意見ですが、失業保険だけがすべての社会保障ではございません。そこにやはり失業保険の範囲と、他の保険制度というものの範囲をいろいろかみ合わされておるのが、今日の日本の社会保障制度が非常に多岐多様にわたっている姿ではないかと思うわけです。失業保険だけですべての生活を安定させるというわけには参らないと思います。当初から失業保険法及びその契約がそうなっていないからであります。非常に長い間勤続された方が急に職を失う、次に転職のために何とかどうしても失業保険でまかなわなければならないという期限が私は失業保険の最高限であるべきだ、こう思うわけであります。世界の水準を見ましても六カ月というのは短いわけではございません。四十日なんという国もあるわけで、何も諸外国がその通りだから日本がそれでいいというわけではありませんが、一応水準としては平均六カ月というのは世界の水準に達しているわけであります。従って、失業保険だけですべてを、社会保障がこれ一本だというなら議論もございましょうが、そういうわけじゃないわけです。ほかに健康保険の問題あるいは国民年金の問題、いろいろあるわけであります。その中の一つが実は失業保険です。従って失業保険はそういう意味で、いわゆる保険料率というものもきまっているわけであります。だからその契約に従ってあるいはその制度に従って今日政府がやるのですから、これを二年に延ばせば万全かというと、そういうわけでもありません。それよりも早く雇用の道に前進させるということが実は雇用政策の中心であって、失業保険でどんどんまかなって、一生涯失業保険で暮らせればいいじゃないか、これは雇用からいうと幸福な事態じゃないのです。逆に今度は失業保険の雇用面における影響を見ますと、失業保険が短いほどいい雇用になっている。失業保険が長いといい雇用にならない。これは御承知の通りなんです。職をやめて翌月に次の職につかれる方はいい雇用です。これが三カ月、四カ月、一年もたつとだんだん条件が悪くなるのです。従ってできれば労働省は早く、失業保険が満期にならぬうちに雇用の道に進んでもらうように指導することが実はいい雇用政策だと思う。失業保険をだらだらもらっているということは、雇用面からいうと幸福な事態じゃありません。それよりも失業保険の翌月一般の雇用に行かれる、これを私たちは理想にしている。六カ月あると、六カ月までは就職活動がおのずから不活発だというので、なるべく早く雇用にいっていただきたい。しかし、残余の期間が惜しいじゃないかというような話がありますから、与党修正案というのが、そこにお気づきになって、そうしてそれじゃあとの残額は支度金で差し上げましょう、そうすれば早く雇用に向かわれるであろうというので、自民党の賢明な修正案の趣旨はそこをねらったのじゃないかと私は思います。だから失業保険というのは雇用面から言うと促進なんですから、できれば私は失業保険は三カ月以内で済む方が国家的にいえば幸福な事態です。そういう意味で、長い方がいいかというとそうはいきません。できるだけ短くして雇用の道に進むことが私はいい道だと思うのです。
  151. 八木一男

    八木一男委員 雇用の問題との関連というものはこれからじくじく申し上げます。それでまたそういうことについての御答弁を伺いますが、長くなってしょうがないからそこまでいかない。しかしこの与党修正案のことをおっしゃるのは、政府としてはおっしゃる資格がないと思う。あなたは与党の政調会のメンバーとして出て来ておられるのじゃない。与党のことは与党に聞きますから——与党修正案は悪いとは言っておりません。われわれも改正案の中にあります三つの点ですね、これは悪くはありません。しかし、悪くはありませんけれども、失業保険の改悪が——これは悪い点が百とすれば、いい点は一くらいのものです。その一くらいのもので百を包もうとしたって、悪い点は外に明らかに見えます。そのような薄いものでかぶせたって、極悪非道の鬼がきれいなお姫さんのべールをかぶっているということは一目瞭然とわかるのです。そんなものを援用に使ったところでわれわれの質問をとめることはできませんから、この点は観念して、よけいなことを言わないでまともな返事をしていただきたい。  それで政府委員にちょっと伺いたいのですが、失業保険の給付の、たとえばデンマークとイギリスとニュージーランドとフランス、これはどのくらい期間があるかということを教えてもらいたい。
  152. 堀秀夫

    ○堀政府委員 給付期間につきまして、ただいま御指摘の資料はちょっと手元に持ち合わせておりませんが、私が今手元に持っております資料で申し上げまして、あと抜けました部分はすぐ……。
  153. 八木一男

    八木一男委員 聞いたところだけでいいです。よけいなところは言う必要はありません。
  154. 堀秀夫

    ○堀政府委員 カナダが三十六日でございます。ギリシャが五十日、オランダが……。
  155. 八木一男

    八木一男委員 そんなところは聞いてない。聞いたところだけでいいです。
  156. 堀秀夫

    ○堀政府委員 ただいま御指摘になりました国につきましては、手元に資料を持っておりませんので、すぐ取り寄せまして後刻御答弁申し上げます。
  157. 八木一男

    八木一男委員 社会保障の比較的完成しておるといわれているニュージーランドやイギリスやデンマークの資料なしに、労働大臣に、四十日の国があるというでたらめな答弁をさせるものではないです。そういうでたらめな答弁で国会がごまかされると思ったら間違いです。ギリシャがどうだとか、日本よりはるかに程度の低い国の例を述べる必要はありません。労働大臣、四十日なんというばかの一つ覚えみたいなそんなものを持ち出して答弁しようと思ったら大間違いです。そういうことで、失業保険給付を、たとい世の中にどんな国があろうとも、再就職までするのが失業保険の本則です。それを知らなければ失業保険とか社会保障を論ずる資格はない。これは私ははっきり言います。どんなに抗弁されても、そういう気持のものであるということを肯定なさらなかったら、これは労働大臣ほんとうの社会保障も労働行政も知らぬということになる。  それでほかの問題に移りますが、今度は金額の方であります。金額の方も、今の水準は賃金の六割であります。賃金の六割ということは、六割に生活を縮めなければならないということです。憲法では、健康で文化的な生活を保障しなければならない。失業保険では、強制適用で保険料までとって、失業のときの生活の安定に資するという目的の法律を強制適用して、無理やり保険料までむしり取っておいて、そうして六割給付です。そんなものが理想的なものであるというような判断であっては、これは労働行政を語る資格はありません。当然給付率を上げなければなりません。それについてのお考えを伺いたい。
  158. 松野頼三

    ○松野国務大臣 失業保険は、これはもともと失業保険の立て方が、日本は六割を基準にして失業保険法ができておるのですから、これを急に給付を上げるというならば、徴収率も上げなければならない、相関関係のあるものであって、日本の場合は六割を基準に失業保険をきめておるのですから、六割を急に変えるならば、すべての法律を変えなければいけない。いきなり給付だけを七割にするということでは保険財政は持つものではありません。またそういうことが急にできるものではない。やはり保険は長い目で見て、保険係数というものを基準にやるべきものであると私は思う。従ってそう急に大きな改正を、今ここに金が余ったからといって急に給付を上げるということでは将来はどうなるのだ、やはり貴重なお金を被保険者から預かっておる立場ですから、今日の失業者ばかりでなしに永遠の失業者のことも考えなければならないので、将来ともこれは長い目で見ていただかなければならない。今日六割で別に高いとは思っておりませんが、大体六割というのは国際水準に達しておる、この辺が一つの基準ではなかろうか、私はこう考えております。
  159. 八木一男

    八木一男委員 今の御答弁を正しく理解をいたしますと、給付率を上げるなり給付金額を上げるということは原則的には賛成である。しかし会計のことがあるから、ちょっと余ったからといってそう軽々に上げることはできない。上げることについては考慮するというふうな御答弁であったと理解してよろしゅうございますね。
  160. 松野頼三

    ○松野国務大臣 被保険者からいえば高いに越したことはない。しかし今日の失業保険法は六割という基準に徴収率をきめ給付金額をきめてやっておるのですから、これを七割、八割に上げるというなら、徴収率から何からすべてを改正しなければ、ただ本年黒字だからすぐ八割に上げるということは軽率過ぎる、こういうことを申し上げておるわけであります。
  161. 八木一男

    八木一男委員 上げるとすればということは、上げ得れば上げたいというお考えですか。それとも上げるのには全然反対ですか。
  162. 松野頼三

    ○松野国務大臣 今日の徴収率から見れば、千分の十四ということになるならば六割というところが妥当であろう。もしこれを千分の二十に上げていいとおっしゃるならば、これは将来給付金額も上げていいという議論になるでしょう。しかし千分の十四という徴収率をきめた範囲では六割というところが妥当でありましょう、こういうことでございます。
  163. 八木一男

    八木一男委員 千分の十四というふうなことは日本法律では通っていないのですよ。おこがましいですよ、そんなこと。どこに法律がある、千分の十四の法律が。
  164. 松野頼三

    ○松野国務大臣 政府が一年二カ月前に提案したのは、千分の十四というのを提案しておるわけでございます。
  165. 八木一男

    八木一男委員 そういう政府独走ではいかぬですよ。これは法律事項ですよ。法律事項は国会の協賛を経なければ、国会で議決を経なければ通らない。現在あくまでも千分の十六ですよ。千分の十六の時点で論議をしなければいけない。それを勝手に政府が千分の十四にしてやりたい、それをやらなければ倉石君の仁義について面子が立たない。そんなものは国の政治じゃありません。法律はあくまで千分の十六ですよ。
  166. 松野頼三

    ○松野国務大臣 現行法は千分の十六であります。従って千分の十六で六〇%という契約を今日やって、それで保険経理ができているわけでありまして、従ってこの水準においては六〇というのが妥当ではなかろうか、こういうわけであります。
  167. 八木一男

    八木一男委員 しからば千分の十六で、可能であればやりたいということですか。
  168. 松野頼三

    ○松野国務大臣 千分の十六で六〇%というものを基準にやっているのですから、私はその範囲内ではこれが妥当だ、こういうわけであります。
  169. 八木一男

    八木一男委員 千分の十六で非常に黒字が出た。それでこの問題が起こった。労働省の腰弱の連中ががんばり切れないで大蔵大臣に負けて、倉石君が閣議でぼやぼやしておったためにこういうことがきまった、そんなことはみんな知っている。労働省としてはそんなことはしたくないという考えがあった。ところが、一番のキャプテンが腰抜けで、ほかのことばかり考えておるからそういうことになった、そういうことなんですよ。松野君が悪いとは言っていない。しかしその悪いことを踏襲すれば、松野君も同じように悪人になる、腰抜けになるのですよ。人の責任を無理におっかぶるようなことをせられなくてもいいのです。また厚生大臣の方も、こんなに悪い法律と心中するようなことをしないで、厚生年金と日雇いだけ出せばいいのです。労働省と厚生省は極端に連絡が悪過ぎている。しかしこういう悪いことだけは連絡がいい。そんなばかな話はあったものじゃない。  ところでもとに戻りますが、今の十六でありますから、十六であれば、当然保険金の底上げとか全体の引き上げということは今のところ可能なんです。黒字が出たからといって軽々に何とか言われましたけれども、失業保険の黒字傾向は数年間ずっと続いているわけです。しかも労働大臣は雇用の拡大に努めておられるわけでしょう。雇用を増大したら失業保険が減ってくるのは常識です。この黒字をもって給付改善に充てられないというんなら、労働大臣は労働行政と言っていることを逆行させて、失業者をふやす政策をとろうとしている、あるいは岸内閣は失業者をふやす政策をとろうとしている、それであればその答弁は一応筋が通ります。そうだということが言い切れますか。岸内閣と松野労働大臣は失業者をふやす政策をとっているんですか。     〔大石委員長代理退席、藤本委員長代理着席〕
  170. 松野頼三

    ○松野国務大臣 失業者をふやすどころでなしに、私の就任以来、あるいは昨年以来見ますと、失業者はどんどん減って、御承知のごとく失業保険の受給率は約三十数万に減っております。今までは大体五十万前後だったものが、最近は毎月十万くらいずっと減っておるのです。これを見れば、失業者が減る政策がどんどんどんどん浸透してきたことであって、失業保険をさわるから失業者がふえるとかいうものじゃないと思う。雇用政策というのは、失業保険だけで左右されるものじゃございません。失業保険にかかる方は一番不幸な、実は綱にこぼれた方なんです。そういう意味では、失業保険をさわったからといって雇用がふえる、ふえないということは、それは私は議論が多少違うんじゃなかろうかと思うのです。
  171. 八木一男

    八木一男委員 雇用の問題との関連あとでいいますからいいです。雇用増進のために失業保険を作るなんという、齋藤案の百分の一くらいのことを拡大解釈して、うんとふえるような返事ばかりしなくてもいい、減っているんですから。そういうことじゃなしに、齋藤案の助けを借りて答弁するような政府じゃ腰が弱いですよ。もっときぜんたる態度で政府案の答弁をして下さい。今、失業者は減らしてきたというふうに確信をもって言われた。非常に手ぬるいと思いますけれども、失業者が少しずつ減ってきたことは悪いことじゃありません。だから、幾分は御自慢のことも割引しながら、聞いておいてもいいですけれども、とにかく減ってきた。これからも減らすつもりで一生懸命やられるでしょう。そうしたら、今の黒字基調がもっと続くということは当然見通されるわけです。失業保険を雇用問題と関係して言うのはちょっと変だと言われるけれども、そんなことを言っているんじゃない。雇用を増大させ失業者を減らす政策をとられるならば、失業保険の黒字はますます拡大される、こっち側から言っているんです。拡大するのは認めますね。認めなければ雇用は拡大されないということになる。雇用を拡大して失業者を減らすという政策をとる限りにおいては、失業保険は黒字の傾向を増してくるということは三才の童子でもわかる。それはお認めになりますね。
  172. 松野頼三

    ○松野国務大臣 当然雇用の拡大を中心にやるのですから、失業保険というものは年じゅう赤字になるというふうな政策を私はとる考えはございません。
  173. 八木一男

    八木一男委員 質問そのままお答え願いたい。ほかのことについては、またその答弁のあとで御意見を言われるのは、非常に賢明な労働大臣の御意見ですからつつしんで拝聴はいたしますけれども質問をそらして答弁なさらずに、質問のことについて答えてからほかのことを言っていただきたい。雇用拡大政策をやり失業者を減らす政策をやれば、失業保険の黒字基調は拡大するとお認めですか、お認めじゃないですかということを聞いている。そ  のことだけをお答え願えれば、あとは拝聴してもいいと思うのです。
  174. 松野頼三

    ○松野国務大臣 経済を拡大して、雇用を拡大して失業者をだんだんなくするということが私の政策の中心であります。従って失業保険がだんだん赤字になるという考えは私は持っておりません。
  175. 八木一男

    八木一男委員 まともに答えてもらいたい。赤字になるなんということは聞いてないんですよ、黒字基調が拡大するかどうかということを聞いているんですよ、拡大しないならしないで、そうおっしゃっていいんですよ、また質問を続けますから。雇用拡大政策をとって、失業者減少政策をとって、それが実効を収めれば失業保険の黒字基調は拡大するであろう、これは世の中の通念であります。それを認めるかどうかということを聞いているので、赤字がふえるかどうかという遠回しでなく、日本語として単刀直入に、直接法でお答え願いたい。
  176. 松野頼三

    ○松野国務大臣 ただいまもお答えしましたように、雇用が拡大して失業者が減って、そうして経済成長がふえれば失業保険というものが悪化するというふうなことは、私は長期に見れば……。
  177. 八木一男

    八木一男委員 悪化するかどうかということを聞いているのではない、悪化という言葉を使わないで答えていただきたい。それは直接法の方が問題がはっきりするんですよ。黒字基調が拡大することを認めるやいなやということを聞いているんです。ノーかイエスか、どっちかを答えていただけばいいんです。
  178. 松野頼三

    ○松野国務大臣 それは黒字子基調というものを堅持するということは、私は当然だろうと思います。
  179. 八木一男

    八木一男委員 そういうことですから、三回も四回も言わせないで、すぐ答えていただきたい。回りくどい御答弁をなさっても私は承知しませんから、はっきり答弁して下さい。それで黒字基調が拡大する、そうなれば、さっきおっしゃったように今黒字が出ている、黒字の累積がある、これから拡大するということになれば、保険料をいじくらなくても給付の改善ができるんじゃないか、そのくらいのことがわからないんですか。
  180. 松野頼三

    ○松野国務大臣 そこがまた少し意見が分かれてくるところなんです。私どもは失業保険金を長く払うというようなことが雇用政策にいいものじゃないというのです。失業保険金は、三カ月、四カ月の間の雇用を求められるという方向に全部の政治を向けるべきだ、ここで少し意見が違ってくる。あなた方の方は、今の御意見は失業保険をもっと長くやればいいじゃないかという御意見で、私たちの方は失業保険を長くやるよりも雇用の方に早く吸収することがいい政治だ、その方向にすべて持っていきたい、かりに失業保険の黒字が顕著になってだんだんふえてくるならば、雇用推進の方にこれを向けていきたいというのが私の結論なんです。
  181. 八木一男

    八木一男委員 けっこうです。その一面においては、雇用推進というのは労働省の行政全体で考えなければいけない。内閣全体で考えなければいけません。その一番大事なものを失業保険に結びつけて、失業保険だけで片づけようなんというのは、およそこれは本末転倒ですよ。——ほかの方をごらんにならないでけっこうです。御答弁の前に必要でしたらお待ちいたしますから、それからお調べになって、質問の最中は一つ私の言葉を聞いておっていただきたい。松野さん、御答弁の前に幾らでも待ちますから、それからお調べになって下さい。  そういうことで、雇用の促進ということは、労働行政全体、内閣の政策全体でやらなければいけない。それを失業保険にかこつけるのは、卑怯というか何というか、話になりません。雇用の増大ということが、職業安定所に通っておる者について、幾分失業保険金の給付をふやすとか仕度金をふやすとか——これは齋藤案のことでしょう。これはかまいませんよ。やられたらいい。ほんとうにやろうと思えば、おつけになったらいい。それほどいいと思ったら、すぐ撤回して、政府案としておつけになったらいい。政府案がおつけになっていないのに、そんな自民党の齋藤案にかこつけて、斎藤さんの頭で切り抜けようなんて、そういう考え方はいかぬですよ。それほど熱心だったら、撤回して、つけて出しなさい。その点についてはちっともわれわれは反対しません。しかし、それはやってもいいけれども、さっき、こういう状態の中で失業する人は一番気の毒な人だとおっしゃった。速記録にも載ってます、政府が雇用拡大政策を確信をもってやっておられるけれども、われわれから見れば底抜けである。所得の増大も少しは行なわれつつある。そういうことで、ほかの人は就職し、月給もふえようかという傾向にあるときに、失業群にほうり出されて就職もできない、そういう人もやはり考えなければ、これはおかしい。所得倍増論を政府はでかでかと掲げているけれども政府の所得倍増論は、収入のある人の収入はますます三倍、五倍にして、ほかの人のはとめおく政策だとわれわれは理解しておる。政府はそうじゃないとおっしゃるかもしれない。もしおっしゃるならば、就職をしたり月給の上がっている人より以上に気の毒な状態にある失業者の生活について、ほんとうは就職をしている人や月給の上がる人より以上の率でいかなければ、所得倍増論はこんなひん曲ったものだということになるのですよ。ならないためには少しは考えなければいけない。たくさん考えなければいけないけれども、岸内閣や松野さんに私はそれほど期待はしません。少しぐらいは考えなければ、これは岸内閣、松野労働大臣も、全然面子はない、資格もない。ごまかしにしても、ごまかしが言い切れるくらいの材料は持ってこなければだめだ。底上げを少しでもするとか、給付を少しでも増す。そうでなければ所得倍増論というのは、日の当たる人にますます日を当てて、日の当らぬ人にはますます日光を遮断して、死ぬやつは勝手に死ね、幸福なやつはますます謳歌してどんちゃん騒ぎをしろという政策としか見えない。そう言われるのがいやだったら、こういう機会にお考えを変えなければだめじゃないですか。僕はあした岸さんに言いますよ。岸さんに僕が聞いたら、松野さんはそう言われるかもしれないが、僕はそうじゃない、全体の所得倍増を考えておる、直すべし、とおっしゃるかもしれない。そういうことを岸さんに教えないのは、松野さんの責任だ、その辺の局長の責任だ。岸信介さんは頭はいいかもしれないけれども、幾ら頭がよくたって全部がわかるはずはない。失業保険の改正案、船員保険改正案がこんな悪いものだということを、与党の連中が遮断をして一つも岸さんに伝えないから、われわれは懇切丁寧に説明する機会が一ぺんもなかった。説明したら岸さんは、ほかではずいぶん悪いことをする政治家——われわれから見たら悪いことをする政治家であるけれども、この問題について、もし良心があるなら、いいことをしたいというお考えが岸さんにもあるから、そういう機会を労働大臣は岸さんに与えなければならぬ。それが岸内閣の閣僚としての責任です。それを、悪いことをよさそうに見せて押し切ろうとするのは、閣僚としての資格がありません。岸さんに対しても、ほんとうに同志としてのお考えがあるなら、そういうあやまちを犯させないように、横着しないで、悪かったら悪かったとして元に戻さなければならない。どうですか、失業保険の給付をこれだけの絶好のチャンスに——黒字がたまっている。労働大臣の話によれば黒字がなお拡大しようとしている。そういうときに、少なくとも岸内閣で、松野労政というものは、会計々々ばかりいって、その会計内でやれることくらいはやっておかないと、ほんとうに言っていることとしていることと全然違うことになる。松野さん、岸さんはそこまで逆なことはやるはずがない。あなたが説明すれば変えられるはずだ。倉石君はなまけてぼやぼやしていたから変えられなかった。あなたの聰明な頭で熱心に説明すれば、それはあとに残さないだろうと思う。岸信介君のいい頭にそれを期待したい。あなた方は同志だ、同じ閣僚だ、もっと同志愛を持って岸君をかばってあげなければいけない。それを悪いことをほおかむりして、目隠しをして、これでいいのです、そういうようなことではいけない。失業保険の改正と称するこの改悪の機に、改悪を少しでもなくして、少しでも給付をふやすという決意を御表明いただきたい。
  182. 松野頼三

    ○松野国務大臣 所得倍増、いろいろ御意見がありますが、じっくり見ていただけば、そういうふうな悪い方向には進みません。ちゃんと均衡のとれた国民所得というものに手直しを私たちはいたします。それは自信を持って申し上げます。今いろいろ御意見がありますが、その御意見のようなことは考えておりませんし、この問題はりっぱに前進をいたします。  なお失業保険の問題は御承知のごとく、たびたび申しますように、失業保険というよりも雇用の安定なんです。失業保険をだらだらといつまでもやることがいいことか、その基本は私はそうは思わない。その意味で、失業保険というものは六カ月というものを基準に九カ月までやるわけでありますから、その範囲内でより以上いいような雇用をやることが政治じゃなかろうか。これを延ばすというならば、政府は何もしないから延ばすのだ、消極論になる。私たちは積極論にこの問題を考えております。従って九カ月を十一カ月に延ばす、これは消極論です。ますます失業者がふえてきて方法がないというならば、これはおっしゃるように社会保障的に延びていかなければならぬ。今日はだんだん減ってきている。これにはなお拍車をかけて、一般雇用の拡大と安定に資するという方向政府がとるのは、ほんとうの親心のある政治じゃないかと私は思う。失業保険は六カ月しかない、十カ月にしたらいいじゃないか、これではだんだん雇用条件が悪くなる。その間にいい雇用条件に向かうように、すべてのものを持ってくることが私は政治じゃないかと思う。そのために非常に黒字ならば、その徴収による負担率を軽くしてあげる。日雇いの方は待期日数が長ければ短くしてやる、こういう手直しはいたしますけれども、基本がそっちにいかなければ雇用は安定しないし経済の拡大はできないと思う。失業保険で経済の拡大をはるかことはできません。やはり雇用の力で、生産によって日本経済を拡大する。そうして雇用を増進していく。消費をふやして日本のすべての経済をそういう方向に向かわなければいけないのではないか。従って所得倍増計画は私は十分やれると思います。日の当たらない方はじっとして、日の当たる者だけ三倍、五倍ふやす、そういう意味では断じてございません。
  183. 八木一男

    八木一男委員 松野さんはほんとうに僕は頭がいい人だと思います。頭がいい人だと思いますが、政治に対するほんとうに正しい熱情を持っていただきたいと思う。頭がよくて言葉の言い回しがよくて、野党の追及を押えて悪法を通して、それで政治家として満足されるかどうか、よくお考えいただきたい。同じような年で、私も若造でございますが、非常になまいきのように思われるかもしれませんが、ほんとうに僕は松野さんに期待しておりましたが、がっかりしております。がっかりさせないように考えていただきたい。雇用の問題については、私は全部反駁する用意がありますけれども、これから逐次申し上げます。  大体雇用のことで失業保険をそらそうとしておられますけれども、それならば齋藤君の考えた案——齋藤君は一生懸命考えられたでしょう。ああいう案くらいつけておけばまだ考えられたといわれる。それで与党としては出しているが、政府としては一つも出ていない。船員保険法の一部改正の中の失業保険の部分には一つもない。それなのに雇用増進のために考える、こんな言いのがれはあったものではない。幾ら言葉の言い回しをよくやられても、それでは松野さんの政治の信念を疑われる。そういう信念の疑われる答弁をなさらない方がいいと思う。
  184. 松野頼三

    ○松野国務大臣 私の言いましたのは、齋藤案を受け売りして言っておるのではありません。三十五年度予算を見ていただけば、失業対策及び職業訓練に非常な重点的施策をやりました。それは私は齋藤案だけを言うのではないのです。三十五年度政府予算を見ていただけば、今までかつてないくらい職業訓練、それからもう一つは石炭離職者というものをあわせて考えていただけば——私の申しましたように、石炭離職者対策もそうです。一部の非常な斜陽産業的な石炭に離職者が出たというので、これに特別な保護立法を与えたわけです。これを失業保険だけでやればいいかというと、それじゃ温情のある政治じゃありません。失業保険にも限度がある。従って石炭には特別立法をもって、そのあらゆる面を含めた政策をとってやるわけです。従って失業保険だけの議論よりも、総合的に私がやっております労政を見ていただけばわかるのだ。失業保険だけがその焦点だ、そうじゃありません。私の言っているのは、何も齋藤案を受け売りして言っているのじゃない。本年の訓練手当の問題を見ていただけばわかる。そういうことをあわせて私は言っているわけであります。
  185. 八木一男

    八木一男委員 それはわれわれに言わせればスズメの涙ほどで、問題にするに足らないけれども、労働大臣は労働大臣として雇用促進のために御努力になった気持が幾分、ほんのスズメの涙ほど頭が出ておることは認めてもいいのです。そういうつもりでやっておられるのはいいけれども、それと失業保険と何の関係があるか。やったらいいのです。やったらいいけれども、失業保険の改悪をする理由は一つもない。雇用をよくするために失業保険を悪くしていいという理由は一つもない。そんなことは答弁にならない。  本論に移りますけれども、大体日本国民ですよ。われわれの同胞ですよ。同胞を非常に怠惰なもの、あるいはいろいろなものに甘え過ぎるもの、自分の生活を立てる、あるいはまた社会的に意義のある行動をするという意欲のないものとして、愚民としてみなしている。同じ同胞をそういうような人間としてみなす政治じゃいかぬ。あなたの御答弁になった中にそういう点があります。国民を愚昧なる国民であるという政治をやられることは間違いです。政府の中にはそういう考え方がある。特に公務員と称される官僚機構の中にはエリート意識があって、国民を愚昧、あるいは逆選択などをやる悪人という考え方で行政をやっていこうという考え方がある。民主的な政治家である松野さんはそういう態度であってはいけないと思う。そういう人たちの影響をあなたは受けておると思う。それでは民主国家の政治家として発展しません。将来総理大臣にもなっていただこうという方に、そういう考え方の政治を進めていただいては困る。国民を愚昧なる国民である、そういう考え方で御答弁が出てくる。
  186. 松野頼三

    ○松野国務大臣 それはどこを御指摘になったのかわかりませんが、日本の労働者、日本の勤労者は世界一の量と質と精神を持っております。従って貿易自由化の前に、同様に私は労働力の自由化を叫んでいるのです。貿易自由化と同様に労働力の自由化をすれば、日本のこの大きな労働力と技術と精神は、断じて世界競争に負けないということを私は常々唱えているのです。愚昧どころか、世界に誇り得る労働力だと、私は自信を持って申し上げます。のみならず、これはすでに国際機関にも発表しているのです。国内で言うだけではありません。日本の労働力自由化というものは、実は世界に訴えているのです。その一つの例を見ても、私は今日そのような気持もなければ、答弁の中にそのような言葉が一言半句も入った覚えはございません。
  187. 八木一男

    八木一男委員 そういうお考えでやっていただくのに、御答弁に明らかに入っておるわけです。失業保険をたくさんやれば、長いことやれば、就職しないであろう、失業保険に甘えて、その間失業保険で食うであろう、そういう考え方が根底に明らかにひそんでいるわけです。そういうような、国民をばかにした行政をやるものじゃありませんよ。日本の勤労国民はだれも早く就職したいのです。自分に適した職業で早く就職して、家族の生活を安定さして、勤労をもって社会のために貢献したい。そこまで言葉を考えているかどうか知らないけれども、善良なる日本国民は、勤労国民は、そういう意欲でやっているわけです。早く就職したい、働いて生活を安定したい。そして仕事を持っているという誇りを持って生活したいという考え方をみな持っているのです。そういう国民だとお認めにならなければいけないと思うけれども、どうです。さっきの御答弁はそういうふうにお認めになったのですか。
  188. 松野頼三

    ○松野国務大臣 私はそんな精神で言ったことはありません。先ほど言いましたのは、失業保険金が長くなればなるほど雇用条件が悪くなるのだ。従ってなるべく早く、失業保険が切れないうちに雇用を進めることが、雇い主にも雇われる方にもいいのだという精神を私は申し上げたのです。いたずらにだらだらという意味じゃありません。同時にそういう気持からいうと、失業保険金をいたずらに長くやるよりも、雇用促進の方がほんとうの親心なんだという話です。
  189. 八木一男

    八木一男委員 話をそらせないで下さい。雇用促進が親心なのはわかっていますよ。雇用促進はどんどんやったらいいでしょう。失業保険の会計なんか一つも心配しないで、全部黒ばかりで、支払金が少しもないくらい雇用拡大をやったらいいでしょう。それすらできないで、雇用拡大があるから失業保険はどうでもいい、そんなことはだめです。雇用拡大ができていないから失業保険の存在の意味がある。従って失業保険を完全にしなければならない。雇用拡大をやる、やると言葉だけで、やられていない。いないのに雇用拡大をやるから失業保険はどうでもいいのだ、そんなことではだめです。雇用拡大はどんどんやられたらいいのです。そして失業保険なしの時代を早く作っていただきたい。雇用拡大をやれば失業保険の黒字が出る。雇用拡大をやっているのに、その機会がない気の毒な人が失業保険給付を確保するということはあたりまえである。そういう状態であればどんどん黒字が出るから、どんどん再就職することも、賃金の率を上げることもできるわけです。会計上とか何とか言わなくても、ほんとうに自信があれば再就職まで失業保険をどんどん延ばして、賃金の十割としたところでできるのです。自信もないくせに雇用拡大、雇用拡大と言って、雇用拡大をやるから失業保険はどうでもいいのだ、そんな矛盾した話がどこにありますか。もう一ぺん申し上げますが、失業保険が長くなればなるほど雇用の条件は悪くなるというのは、これは根本的な間違いです。これは松野さん御自身でお考えになったのか、その辺の公務員の人がそういう知恵をおつけになったのか、おっしゃっていただきたい。
  190. 松野頼三

    ○松野国務大臣 雇用が拡大して安定するから失業保険が要らないというわけじゃありません。いかに雇用が最大限に拡大しても失業保険は必要であります。これがなくなる国はありません。ある場合には摩擦失業ということも出て参りましょう。私はそんなことを言っているわけじゃありません。同時に今日の失業保険被保険者、労働者に赤を負担させるような改正案ではありません。同じような期間、同じような金額を払うのです。ある場合には待期日数を一日改善しているのですから、そういう極端な場合を政府案には含んでいるわけじゃございません。同時に、先ほどの失業保険金が長くなれば就職率が悪いというのは統計上です。役人が教えたわけじゃありません。先般の炭鉱離職者の就職状況を調べたときに、失業保険給付金を長くもらった、失業状況の長い者ほど次の再就職の条件が悪い。これは統計のお話をしたのです。従って過去においてそうならば、これは用心しなければならないということの研究の結果であります。
  191. 八木一男

    八木一男委員 失業保険金を長くもらった者が就職が悪いということは普通の常識で、就職の機会が少ない人は、縁故が少ないとか、健康でないとか、技能を持っていない、そういう人が就職の条件が悪い。従ってそれがおそくなる。従って失業保険金の給付を長いこともらうということは世の中の常識です。統計に出ているのは当たりまえです。そういうことは自然なことなんです。紹介してもらう人がいない、からだが弱い、技能を持っていない、そういうことであれば就職の機会がおそい。おそい人は当然失業保険金をもらう権利があるから長いこともらう。そんなことはあたりまえです。だから、失業保険金を意識的に長くさせれば雇用の条件が悪くなるということとは違う。ところがそういう普通の状態のことをすりかえている。そういうこととは違う。就職の条件の悪い、就職のできないような人は、失業保険を長くもらうのはあたりまえです。それと失業保険金をもらう期間が長いから就職ができにくくなるということとは違うのです。そんなことを同じに考えたら変です。もしそれをほかの人が教えたとしたら、間違いだとしかって下さい。違うのです。もう一つの点を申し上げますと、逆なんです。失業保険の給付期間が長いとか、給付の金額が多いということは、雇用条件上絶対に必要なんです。失業保険金が少ない、失業保険の給付期間が少ない、もう切れる、あるいは切れなくても、六割では食えないということになれば、いやいやでも、自分の労働力をダンピングして就職する。それが、最初に申し上げた質的な雇用と逆になるわけです。食えなければ、就職するときには——松野さんが失業したら考えられるでしよう。自分の性質なり、技能に適したところに就職したい、あるいは自分の居住地に近いところ、通勤できるところに就職したい、賃金のいいところに就職したい、労働条件のいいところに就職したい、安定したところに就職したい、これは全部の国民の基本的な希望でしょう。そういう条件を下げて、悪い条件のところに就職しなければならないということは、生活に追い詰められたときにそういうことになるわけです。失業保険金がもっと高いものになり、もっと安定して長く給付されれば、そのあいだにじっくりと自分の条件に適したところを探すことができる。ところがそれがない。背水の陣である。もう二、三日で子供が飢えて死ぬ、それは極言であるかもしれないが、そういう状態に追い込まれるということになったら、自分の条件に適さない、そこで働けばからだを弱くして、早く健康を失するかもしれない、あるいは自分が一生懸命やってもうだ  つが上がらないところであるかもしれない、基本的な人権を押えられるような、猛烈な労働管理の悪いところであるかもしれない、それでも押して、賃金を安売りして妻子のために就職しなければならない。それが低賃金のもとです。あなたは今、雇用条件のときに、量的の雇用、質的の雇用ということを労働行政として考えると言われたはずです。その労働省の基本方策と違う方向に行っている。失業保険の給付が悪いということ、よくならないということでそういうふうになる。私の申し上げたことが、松野さんがすなおな心で聞いていただけば、まともであるということはおわかりだと思う。それを雇用のために、雇用のためにということをさっきから言っておる。この問題は逐次申し上げようと思ったから、黙っておりましたけれども、雇用々々と言うけれども、それをほんとうにお考えになると、逆なんです。そういう意味でも失業保険法というものは給付をよくしなければならない。しかもよくする絶好のチャンスなんです。今六百億円も黒字がある、黒字基調はどんどんふえる、松野さんの善政で雇用はますますふえる、そのときに給付を変えないでどうなります。
  192. 松野頼三

    ○松野国務大臣 それで失業保険というのが、六カ月、九カ月という長からず、短かからずの期間にきめてあるわけであります。一カ月、二カ月では、今おっしゃるように、非常に無理なこともあろうから、勤務年数に応じて六カ月、九カ月という期限がある。これが六カ月が七カ月になったらいいかというと、必ずしもいいわけではありません。従って、六カ月、九カ月という一つの基準をもって、千分の十六によって今日失業保険という一つの保険会計が成り立っているのです。それはいろいろな議論もあると思います。もちろん長くて高額にこしたことはありません。しかし、今日まで千分の十六ということでずっとやってきておるのですから、その契約の範囲内において、今日改善すべきところは改善しょうし、また引き下げるところは引き下げようし、そしてこの保険というものを守っていこう。そのほかのことは、政治があわさっていかなければならない。失業保険だけ直せば、すべての労政がよくなるかといえば、そうじゃない。失業保険は労政の中の一部なんですから、その一部の問題として私たちとしては考えると同時に、ほかには、先ほど申し上げましたように、石炭の離職者には別な法律を作るべきである。これをすべて失業保険にあてはめるわけにはいかない。ほかに必要なら必要な労政をとればいいのであって、失業保険にすべてをしわ寄せして、これさえよくなれば、雇用条件が全部よくなるということじゃなかろうと思います。
  193. 八木一男

    八木一男委員 失業保険で雇用条件を全部よくしろと言っていやしない。雇用条件、雇用条件ということは、松野さんが言い出したことなんです。雇用条件をどんどんよくなさるのはよろしい。スピードがなさ過ぎてけしからぬと思っているくらいですから、大蔵省と大けんかしてでも、大蔵省となぐり合いしてでももっとよくなさい。またよくしなければならない。そういう雇用をよくしようと考えておられるのに、たとい失業保険であっても、それと逆行する方向とる必要はない。  それともう一つは、あなたは雇用々々というふうに、そっちへベースを持っていこうとするが、今の審議はあくまで船員保険法の一部改正で、失業保険の問題です。失業に対してどう対処するか、そう問題を一つの大きな問題として、失対事業とともに失業保険という問題があるのだから、失業保険の論議が中心です。それをあなたは、無理に雇用の方に引きずっていって攻撃を避けようとしておられるが、かりにあなたのベースに乗って、雇用の土俵において考えても、大間違いであるということがはっきりした。ほんとうのベースの失業保険として考えたら、失業保険というものは再就職まで保障するのが当然の道である。そして金額というものも、たくさんの方がいいということはあたりまえです。それを、雇用々々ということで、それをしなくてもいいのだというのは大間違いです。大体賃金の六割基準だと言っておるが、日本の賃金はどのくらいですか。アメリカに対して何分の一ですか、ドイツに対して何分の一ですか、イギリスに対して何分の一ですか、御存じだったらお教え願いたい。
  194. 松野頼三

    ○松野国務大臣 日本が一にすればアメリカが八、ドイツが二、イギリスが二・二くらいです。
  195. 八木一男

    八木一男委員 うしろから資料を出しているが、それをごらんになって下さい。
  196. 松野頼三

    ○松野国務大臣 それでは明確に申せば、一九五七年の統計によれば、日本が二十七セント、アメリカは二ドル六セント、イギリスが六十四セント、ドイツが五十一セントです。それからもう一つ、賃金ばかりの比例ではいけないので、国民所得もあわせて申し上げておきます。アメリカは日本の八倍、ドイツが三倍、イギリスは四倍です。賃金とあわせて国民所得も申し上げておきます。
  197. 八木一男

    八木一男委員 国民所得について、ごていねいに教えていただいてありがとうございました。私も知らないではございません。とにかく賃金はそういうふうに低いのです。そういうふうに賃金が低ければ——日本はほかの諸国と比較して大体六割くらいの水準だと、御用学者なんか言います。だから日本の社会保障もこのくらいでいいじゃないかと、厚生省関係でもよく言うのですが、それは厚生省や労働省と意気の通じている御用学者連の言うことで、そんな学者にだまかされてはだめですよ。とにかく賃金というもの自体が低い。そうしたらそれを十割出したところで、アメリカの六割のはるか何分の一かであるし、ドイツの六割よりはるかに少ないわけです。元のかける数字が少ないのです。ところがそれで生活をするのです。失業保険は、賃金の少ない者は、どんなに少なくてもその率でやるということになれば、生活を切り下げて、健康をそこなうような生活になる。しかし、憲法の二十五条をはるかに下回るような生活になってはいけないわけです。失業保険法の第一条の基本的な目約にも、「生活の安定を図る」と書いてある。だからそういうことは許されない。そういうことになっておれば憲法違反です。賃金の六割では少ないのです。日本の賃金の少ない者は、非常に少ないということは御存じでありましょう。五千円くらいの者では、六割であれば、日給計算になるかもしれないが、三千円くらいになる。それで奥さんと子供さんがいる三人家族では、一人月に一千円当たりにしかならない。生活保護法の都会地基準の半分ですよ。失業に対処するために、保険料を強制的に納めさせられて、そして失業した者が、東京の生活保護世帯の半分です。従って、生活保護をダブって受けなければ生活できない。そんな状態です。それを、この黒字のときにもう少し上げてやることはできないか。もう少し長く延ばしてやることはできないか。一番長くて二百七十日間でとまってしまう。一年以内に簡単に就職できると、労働行政を担当せられている以上言いたいでしょうが、ちまたの失業者一人々々に聞いてみなさい、そんなに簡単に就職できるものじゃありません。そう考えたら、いかに給付が低いかということがおわかりになるだろうと思います。大蔵大臣がはびこっておるから、国庫負担をいきなり五割上げてやりたいと思って、松野さんが良心を発揮して一生懸命になっても、そんなことのできないことは、われわれもわかっているから、そこまで申し上げませんが、しかし現在の保険料率で非常にたくさんできる余地があるのです。そのできる余地だけでもなさらなければ、ほんとうに悪い行政だと思う。倉石さんとの意地なんてお捨てになって、ほんとう国民のためにいい政治をとっていただきたい。ほんとうに松野さんが決心されれば、岸さんにお話しになれば問題は変わります。そういう点で、給付の改善に踏み切るという御意思を御表明願いたい。それだったら少しでもいいです。改善するということで、これは与党の方から修正案を出されてもいいし、与党の手続が間に合わなかったら、われわれにお話し下されば、政府の意に沿うた修正案を出してもいいのです。何もがあがあ討論して、政府の政策が悪いなんていうことをどなりたいわけじゃない。国民のために少しでもよくなればいい。われわれの面子はとうとびません。労働省の方で少しでもほんとうの給付を上げるというお気持を出されなければうそだ。出されれば問題は解決します。出されないで、多数で押し切られるらしいけれども、それは国民的抵抗が起こるということをお考えになっていただきたいと思う。これについての御答弁を願いたい。
  198. 松野頼三

    ○松野国務大臣 たびたび申しますように、この法案はすでに政府がいろいろ慎重審議の上提出いたしたものでありますから、これはぜひ通過させていただきたい。また日本の賃金は確かにまだ高い部類には入っておりません。何とか一つ上げていきたいというので、終戦以来ずっとやっておりますが、戦後においては相当上がってきた。上がって参りましたが、諸外国から見ればまだまだ今後の問題が残っているだろうと私は思います。この法案については、もうすでに政府がきめまして提案しておりますことであるし、今後のことを期して今回は一つ早急に通過させていただきたいと思います。
  199. 八木一男

    八木一男委員 ほんとうに情けないと思うのです。涙の出るほど情けない。政府がきめたから、一年前に出しているから、何がなんでも通してくれというのでは政治じゃありませんよ。政府の方がゆとりある態度を示されれば、与党の賢明な諸君——賢明な諸君は今いなくなってしまったが。もっと直したいという考えを与党の方ですからお持ちになっているのです。それを閣議できまったから、一年前に出したからどうでもこうでも通してくれ、こんなことでは、極端に言ったらお話にならないじゃありませんか。子供がスピード違反のような自動車競争に出かける。もう三日前に約束したから、何でもかんでもおやじさんかんべんしてくれ、死んでもかまわない、人をひき殺してもかまわない、猛烈なハイ・スピードで飛ばすのだと言われるときに、松野さん、親御さんとしてとめられるでしょう。それを、きめたんだから悪かろうが欠点があろうが、どうしても通してくれ、そんな無理が通るような政治であってはいけない。個人の家庭であれば、親ばかちゃんりんで、むすこがそれほど行きたいのだったら、あぶないと知りつつ出す親があるかもしれないが、国の政治はそうであってはいけない。九千万のいろいろな子を預かっている。政府も預かっていると同時に国会も預かっている。だからそういうことじゃ困ると思う。これは今までそういうやり方政府与党もやられておりました。そういうことをひっくり返すということは相当の勇気が要ります。勇気が要るけれども、わずかのことです。松野さんに、そのわずかのことをひっくり返すだけの勇気は持っていただきたい。お隣におられる渡辺さんにも御援助願いたい。
  200. 松野頼三

    ○松野国務大臣 これが非常に危険な自動車遊びということならとめましょうが、この法案はそんな危険なものじゃございません。天気のいい日にピクニックに行きたい、健康上いいからいいだろうということであって、そんなに危険なものじゃありません。給付をそんなに悪化しているものじゃありません。ただあなたの理想に近づいていないという議論はありましょうが、今よりも悪化しているのではないのです。どちらかといえば前進しているところもあるのですから、そういうものをあわせていただいて御議論いただけば、そんなに悪化じゃありません。これは自動車遊びじゃありません。もう少し安全なものだと思います。
  201. 八木一男

    八木一男委員 例は悪いかもしれませんが、自動車遊びにすれば、天気のいいところを走ろう、ハイキングに行こうというふうに御理解かもしれません。まあ天気の方は、今はいいように見えていますけれども、すぐあらしがくるかもしれない。けれどもそういうことを言って、あした、あさってに入学試験があるのに。補習をしておけばそこへちゃんと入学できるかもしれないのに、もう勉強が飽きた、行くということで、次の次の日には落第して、親も子も泣いてしまうということにもなろうかと思う。そういうようなことです。自動車でカミナリ族が全部ひっくり返って、人をひき殺すというところまではいかないかもしれませんが、少なくともそういうことで、大学に進学して一生懸命勉強する道が一年か二年とどめられる。社会保障が前進する機会が、こういうばかなことでふらふらなさって四、五年とどめられるということになる。そういう意味で悪い。これはとどめられるわけです。だからそういうことは、やはり親御さんとしてはやってはいけない。国民政治をあずかっておる人は、国民にやはり親心を持っていなければならない。国民である子供の方が利口なのに親の方が我を張って、これはきめたんだ、おれはがんこおやじだ、子供がどんなに言おうとおれはがんこなんだ、知らぬ、この通りやるんだということでは政治ではないと思う。今のお考え方はがんこおやじの考え方です。松野さんはがんこおやじではなくて、若いそうそうたる理解あるおやじさんになれるはずの人なんです。それについての見解はどうです。
  202. 松野頼三

    ○松野国務大臣 まあそういう御意見もありますので、この法律は三十四年から三十六年までやって、その結果三十八年までにはもう一度、がんこおやじだったら反省しろという意味でちゃんと期限がついているわけであります。三十四年から三十六年まで三年実施して、そうして三十八年までに、反省すべきところ、改正すべきところがあれば改正しろということがちゃんとこの法律に出ているわけであります。だからそういう御意見もありますから、そういうふうな意味で幅を持たしてあるので、しゃにむにこれを押し通すのだという意味ではありません。三十四、三十五年は天気がまず大丈夫だ、なお気候すべてに関連して、三十八年までにはもう一度検討しろという趣旨でありますから、その趣旨で考えるべき機会はちゃんとあると思うのです。今日直ちに議論しても、それは議論の分かれるところだと思います。
  203. 八木一男

    八木一男委員 がんこおやじのことですけれども、がんこだからひどいことになるぞということは制度審議会や何かで言われたのです。それでがんこなくせに、おれはがんこではない、もしがんこだったらあとで改めるということを入れられたわけです。がんこおやじ自体が、そんなに自分でもがんこかもしれないと認められるような状況なら、ほかの人もみんながんこおやじだと思っているのだから、そんな間違ったことは初めからやる必要はない。誤って後に改むるにはばかるなかれということは悪くはないけれども、初めから誤まらない方がいい。初めから誤っていると世の中は思っておる。ただがんこおやじだけが、誤っておるかもしれない、誤ったら二、三年後に変えると言っている。もしがんこおやじでないというのなら、自分でもそうかいなと半分思いかけたものを、無理に強行する必要はないじゃないですか。今のものでやっておいて、それで考える、それががんこであったかどうかを考える。しかもあなた方、社会保障の総合調整について今諮問しておられるわけでしょう。まあこれについても諮問をして答申を得た言われるかもしれない。ところが船員保険法の一部改正は、社会保障制度審議会始まって以来の現象を示したのです。今まで一本の答申ができなかったことはほとんどありません。ところがこれは答申ができない。政府の強圧あるいは哀願、そういうようなことをさんざなすったにかかわらず、ああいうような結果になった。そういうような歴史があるのですよ。制度審議会で一本の答申ができなかったということはめったにないですよ。大内兵衛さんの円満な人格で、いろいろ異論があっても一本にまとめてやるというような運行がずっとされておる。ところがこれだけがいかなかった。それだけ悪い要素を示しておる。だからがんこおやじもちょっと悪いかなと思った。悪いことを改めるにしくはありませんが、悪いことは今からやらない方がいい。それで一つ、これを撤回するとか、そうでなければ少しでも給付をよくすることを入れるとか、せめてこれくらいにするから了承して下さいというような、言葉はよくないかもしれないけれども、そういうように内容を少し変えてくるとか、そういうふうにお考えになったらいいと思う。非常になまいきで、年は同じでも議員としては大先輩である松野さんに非常に恐縮でありましたけれども、そういう意味で一つ御再考願いたい。
  204. 松野頼三

    ○松野国務大臣 今回はぜひ一つこれを通過さしていただきたい。もうすでにこれは昨年二月の問題で、いきさつは御承知の通りなんです。昨年の予算編成と同時に組んでいるものをこよみをさかのぼってやるということは、これは容易なものじゃございません。同時に長所短所というものはおのずからあるわけで、全部が悪いというわけじゃない。いいところもあるのですから、長短あわせて一つお考えを願いたい、こういう考えでございます。
  205. 八木一男

    八木一男委員 そんなことでは困る。とにかくそういうふうに断定をせられずに、良心的たらんとしておられる政治家として野党の意見を——これだけ腹を割って一生懸命申し上げておるわけです。普通の場合だったら、ばり雑言、政府は反動ででたらめでけしからぬということを言うのだが、そういうことはしたくない。反動だと言いたいけれども政府が反動的なことをしていただかない方が国民のためにいいのだ。野党としては、政府が反動的なことばかりしてくれた方が、政府が早くつぶれるからいいかもしれない。けれども国民のために幾分でも反動を食いとめたい、後退を食いとめたい。それで一生懸命申し上げておる。もしお宅の方に政党利己心なり、政党に基づいた内閣の利己心のかたまりだけしかないということであれば別でありますけれども、幾分でも国民のための政治を考えられるならば、少なくとも今通すのだ、通してほしいということだけをおっしゃらずに、じっくり今晩お考えになられて、その結論を総理大臣に申し上げられて、あした総理大臣から積極的に、自由民主党はたとえば前に出したいきさつがあろうとも、いささか考える点があればこれを撤回して出し直すにやぶさかでない、そのような民主主義の常道をいくのだ、正しい政治をやるのだということを日本のためにやっていただきたい。それでなければ政治は直っていかない。そういうことがこれだけ申し上げても一つも実現できないのならば、日本政治は二つに分かれて将来激突するという方向に進まざるを得ない。野党がどんなに誠意を込めて申し上げても一つも耳をかさない、多数で押し切るのだということならば、議会というものは必要ありません。選挙があったときに、次の選挙まで独裁政権を与えればいい。あなた方は独裁者の下請になればいい。議会というものがある以上は、審議をして、当然の審議が行なわれて、いろいろなことがあったら、政府みずからが野党の意見を聞いて変えようとなさるのがあたりまえなんです。それを一つも変えないでただ押し通すということでは、政治ではないと思う。一つじっくりお考えになって、あした岸さんがおいでになるまでに、何分正しい前進の方向を、日本政治がよくなる方向のいささかでもいいですから御努力を願いたい。一つそれについての御答弁をお願いしたい。
  206. 松野頼三

    ○松野国務大臣 政府案としてはすでに出したものでございますが、いろいろな情勢もありましょう、与党にもいろいろお考えもございましょうから、いろいろ勘案して——私は社会保障がこの問題でそんなに破壊的な悪影響を受けると思っておりません。改善したところもあるのだ。しかしこれは意見の分かれるところで、必ずしも私の言う通りにお聞きいただけないかもしれない。私たちもやはり与党というものもありますから、政府与党と一体の上に立って話も聞くときは聞きましょう。しかしこの法案政府でも一年二カ月前に出したのですから、長い間議会におられればわかるように、そう急に私が前から引き継いだものに意見を加えるということは不可能であります。私が議員席におればそれはまた別個な立場もありましょうが、政府の一員として今日おるときは、なかなか行政というものはあと戻りして直すことはできません。従って、この問題についての意見はいろいろ皆さん方にもございましょうけれども、今回は一応政府案を出しました。あと与党でお考えいただくことがあれば与党がお考えいただけばいいのであって、政府としてはこれ以上の権限と力はあるものではありません。そういう意味において、非常に悪いものじゃないのですから、いいところもたまに見ていただいて、お互い議会政治のために前進すべきだ、こういうふうな考えで、広い意味で将来とも期待を願いたいと考えます。
  207. 八木一男

    八木一男委員 今の御答弁では、やはりどうしても与党の閣僚として小さな立場を固持されておるようでありますけれども、もう一回、今度は御答弁は要りませんが、私がさっき一生懸命申し上げたことをいろいろとそしゃくしていただいて、今晩中にいい御返事が出ることを期待したいと思います。渡邊さんにも、今お聞きになった通りでありますけれども一つ労働大臣の決意を、同僚あるいは年輩としては先輩として促すように御努力を願いたいし、またその決意がなされたときは、労働大臣とともに閣議の情勢が変わるように御努力を願いたい。渡邊さんの御答弁をいただきたい。
  208. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 ただいま労働大臣が申された通り、すみやかに御審議あらんことを願いまして、社会福祉政策を推進するわが党内閣といたしましては、将来にわたって研究いたしたいと思っております。
  209. 八木一男

    八木一男委員 まだ申し上げなければならないことがたくさんあるのですが、来週、再来週にわたって個々に申し上げますが、一つだけ小さな具体的な問題について申し上げたいと思います。  よくなった点があるとおっしゃったが、そのうちの一つは、日雇い失保の待期日数の減少の問題だろうと思う。これは社会保障制度審議会が一昨年の秋、船員保険法の一部改正案を出されたときに、中西君とか百田君が一生懸命説明されました。それから政府側の立場に立った、あえて言いますけれども御用学者は、実際の給付の改悪がないのだからまあまあいいじゃないかということを言われた。そこで大いに論戦になりまして、そういう社会保障学者といわれる人が何というばかなことを言うのか。失業保険の給付にはエスカレーター条項というものがある。日雇い失保が黒字になった場合には自動的に一時減らさなければならぬ。ところが国庫負担が三分の一から四分の一減ったから、この黒字条件が減ってしまうではないか、現実の改悪ではないかということを申しました。学者はまだごちゃごちゃ言っておりました。しかし局長連の悪口ばかり言いますが、今度はほめたい。前職安局長であります百田さんが、その議論に、それはそうだという考えから、この点は説明がどうしてもできないということで力説されたと思います。それで政府案として日雇い失保の待期一日減少ということが自動的に出されて参りました。そういうふうに非常に有名な学者ですけれども、専門でありながら現実的な後退がないなんていう異論を吐くことがある。野党側から出ている議員がそれを指摘したことがある。よく政府で、学者の意見はどうであるとかいうことを援用されるけれども、学者の意見よりはるかに野党の意見の方が政府の誤りを正すという気魄を持っているし、焦点をついていることが多いということをお考えいただきたいと思う。今後労働行政、厚生行政でそういう野党の意見を取り入れてやれば間違いがない。きめてしまって、野党の言うことは何も知らないから通すということでは、労働行政、厚生行政に同遅いを起こす。野党は政府攻撃ばかりいたしません。与党が考えられると同じように国民のための政治を考えておる。そういうような相当の法律を出すときには、野党に非公式でもいいからお話しなさる必要がある。そこで反論が出ればかみしめられて、御自身でいいと思われることもありましょう、しかしこれはこの程度でとどめなければいけないと反省されるときもありましょう、そういうことを一つもなさらずにやられる。これからいろいろな法律が出されるときには、こういうような考え方があるがということを、前に労働大臣なり厚生大臣から言われて、それらについての論議をここでされて、積極的に求められて、そういうことを参考にして立案をされれば間違いが一番少ないし、こんなにぎゃあぎゃあ声を大きくて、与党は早く通したい、野党はしんどい質問をせんければならぬ、総理大臣を出してぎゃあぎゃあどなる、そんなばかなことがないように、野党の意見を相当重んじて考えていただかなければならないと思う。それについての労働大臣厚生大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  210. 松野頼三

    ○松野国務大臣 やはり一緒におりますと、大体野党の方の意見はわかるものであります。正式にお伺いすることもあるし、個々にお伺いすることもあるし、その手続はその場によって違いましょう。また制度審議会があるものは、そこにも野党の意見も十分反映しているわけであります。また関係組合の方も入っておられる審議会が多いのですから、あらゆるいろいろな方面でそれをお聞きして、万遺憾なきを期さなければならない。同時に政府部内のまとめ方、与党のまとめ方もなかなか苦労のあることでありますから、そういうものを勘案して、もちろんまっこうから野党を無視するという考えはございません。しかしやはり政府部内、与党部内というものをまずまとめることが実は第一の問題である。同時にその中に、きめるときに、野党の御意向というものは、こういうように各審議会に出ればその意向をお伺いします。やはり政治は幅広くやることは私賛成であります。しかし今回はいろいろの問題もありましょう、御意見があるところもありましょうが、まあ一つ相当長い期間議論も尽くしておるのですから、よろしくお願いをしたいと思います。
  211. 八木一男

    八木一男委員 そんなに低姿勢にならなくても、私後輩でありますから、もっとざっくばらんにおっしゃっていただいてけっこうです。ほとんど議論は尽くしていないのです。この前の通常国会では一つも議論にならない、臨時国会でも一回もない、本国会になってまだ正式に滝非先生が自分の御質問の分量の約一割か二割をなさっただけで、私今日初めて労働大臣に御質問申し上げたのです。まだまだ提案者の齋藤さんに、審議の重要な案件である与党案について十分に伺わなければならない。労働大臣にもこれの五倍くらい、こまかい条文の一条々々についてこれから伺っていかなければならない。ですからそんなに早くはいきませんから、それだけは御覚悟願いたたいと思う。もし厚生大臣が早く通したいとお思いになったら、これは与党の方の関係で失業保険というような希代な悪法とは心中をならさずに、厚生年金保険法日雇労働者健康保険法の割に問題の少ないものの審議を先に進めるよう要請なされば、これはある程度早く通ると思います。ところが失業保険の部分を抱いておる船員保険法あるいは失業保険法というような非常に問題の多い法律は、これは非常な抵抗のあることを御覚悟願いたい。どうぞ労働大臣は、御自分の方の倉石君以来の間違いでやったこのことを厚生省に心中を迫らないように、厚生省の悪いときもずいぶんありますけれども、まだこの問題に関しては厚生省の力がましだと思う。厚生省と一緒に無理心中をしようというようなことを厚生省に申し込まれないように、また厚生省はそんな変なことにこだわらずに、自分がいいと思った法律の審議の促進を与党なり野党なりに御依頼になるというふうにしていただくことがいいと思います。松野さんがそばにおられますから、不人情なやつだと思われるから御答弁しにくいでしょうけれども、それは不人情でもいいのです、不人情でもかまわない。これは倉石君の間違いであって、松野さんも少し間違いですけれども、倉石君なんかに義理立てる必要はない。渡邊さんは失業保険と心中するというような考え方でなしに、ほかの問題の審議を与党議員の方なり野党のわれわれなりにいろいろ御協力願いたいという態度で進められることが必要だと思います。  労働大臣にもう一回もとに戻って伺わなければならぬことがある。労働大臣は、保険料の引き下けが被保険者にとって非常にいいことのように考えておられるけれども、これは間違いであります。どういう意味で間違いか、聰明な労働大臣ですから私が申しあげなくてもおわかりだと思いますので、この点について御答弁いただきたい。
  212. 松野頼三

    ○松野国務大臣 保険料の引き下げは、負担軽減という意味では確かに被保険者にとってプラスだと思います。その意味では間違いない、これはプラスだと思います。
  213. 八木一男

    八木一男委員 保険会計がバランスをとられる以上、もし国庫負担が三分の一なり四分の一なり固定しているとすると、もう一つの財源である保険料収入が多ければ給付の当然の拡大が行なわれる。保険料収入が少なかったら赤字でそのまま続いていくか、給付の縮少の危険性があるということになる。そうなると保険料の引き下げということは、被保険者にとってよくない。労働大臣は今給付を固定して考えて、下げればいいということをお答えになった。その時点でいえばそういうことになる。給付を固定したら保険料は安い方がいい、それはあたりまえだ。相対的に考えれば、保険料が大きければ給付をよくすることができるし、保険料が少なかったら、赤字でつなぐにしても、給付は後退する危険性が出てくる。ですから保険料を下げたいという考え方は非常に間違った考え方です。保険料負担を減らすということをどんどんつづめていけば、失業保険制度なりあるいは健康保険制度なり、そういう社会保険はない方がいいということになる。失業保険制度なり健康保険制度が必要だということは、国庫負担をたくさんやってもらいたいのですよ。ただそのほかに保険料を納める。そういう財源をもって、失業なり疾病というようなときに、その一連の人がそういう事態に対処できる財源を確保するために保険料をとっている。その保険料がただ安ければいいというような考え方は、社会保険の否定思想になる。これを下げたらいいという時点は、今のようにとめて考えて、最後のストップ点までいけば下げた方がいい。たとえば再就職まで失業保険は完全に給付する、失業保険金は賃金の九割九分まで保障する、あるいは健康保険は一部負担を全部なくして家族まで十割給付する、制限診療をしない。そういうところまで完全な形になれば、それ以上は保険料は下がった方がいい。それまでは、被保険者にとっては保険料が下がるよりはむしろ給付がよくなる方がいい。それを、そうじゃない方がいいというのは、被保険者ではなしに、雇用主——雇用主は失業者にはならぬ、従って給付は受けない。また便法で行政的に扱っておるけれども原則として健康保険においても医療給付は受けないのが法律の建前になっている。雇われ重役のときは行政的に労働者として扱っていることは、悪くはありません、それはいいけれども、基本的な法律の概念としてはそういうことになる。自分は給付は受けない、保険料負担の半額は雇用主が負担しなければならない、下がればいいというのは雇用主の考え方です。被保険者すなわち労働者にとっては、下がるのじゃなしに給付が上がることが必要なんです。また社会保障というものはそういうものなんです。それを保険料を下げるということが一つの善政のごとき言い回し、これは松野さんも御存じの通り、今の給付を同じとしたならば下がった方がいい、そういう理屈はわかりますけれども、そうじゃなしに、そのことははずして、下げることは全体的に悪くないというようなお考えでは、社会保障というものの御認識がないことになる。従ってそういう方々が社会保障の関係行政を担当しておられると、ストップすることになると思います。それについての御意見……。
  214. 松野頼三

    ○松野国務大臣 事業主が千分の一、被保険者が千分の一下がるのです。いわゆる給付の前進ということを理想に掲げていえば、給付の前進が先で保険料の引き下げはあとだという意見もありましょう。給付が今日固定しておれば、保険料の引き下げというのは確かに負担の軽減にはなるわけであります。そのものさしの置き方で議論が違ってくる。と同時に、制度になれば、社会保障すべてはどういうものかということは、社会保障制度のあらゆる面を検討しなければならぬ。失業保険だけで社会保険というわけには参らない。あらゆるものを、横の面も見た上で議論が出てくるのじゃなかろうか。片一方の方は後退せずに、片一方が負担が軽くなった、その面においては確かに軽減であると同時にこれは改善である、なるべく保険料を少なく給付を多くすることが私はすべての保険における一つの形態ではなかろうかと思う。保険料を上げて給付を上げるというよりも、保険料を上げずに給付の前進が理想である。同時に私は、今回は給付を悪化させずに保険料が下がるならば、下がった部分だけは改善といえるのじゃないだろうかと思います。
  215. 八木一男

    八木一男委員 改善とはいえないのですが、そこは何回議論しても平行線ですから、それも一つきょうのお考えの中にじっくり入れておいていただきたい。上げろとは言っておりません。政府の考えで上げると言えば、幾らでも日経連の抵抗があることは知っております。しかし、下げて給付の前進の機会をストップさせるということは、あまりにもえげつない。労働大臣は労働者の福祉厚生を考え、雇用の安定増大、生活の安定を考えている立場でありますが、失業保険の改悪は結局雇用主である日経連のような団体の負担を減らす。そして失業者の給付が前進する機会をストップする。おまけに、そういう悪い失業保険であれば、労働者は家族の生活につまされて、自分の健康を虫ばむような悪条件、低賃金で働くことになる。日経連の連中は、そういう安賃金でこき使えば、搾取で差額は多くなるからもうかります。結局失業保険法改正は大資本家の擁護政策であり、労働者を弾圧する政策なんです。少なくとも労働省の考えるべき政策じゃありません。通産大臣がそんなことを言うんなら、どうせ通産大臣は資本家の味方だと思うけれども、労働大臣はそういうことじゃ困ると思う。これも今晩一つじっくりお考えになっていただきたい。  それからもう一つ健康保険の問題。この間も申しましたけれども、歴代の労働大臣——松野さんだけではありません、労働大臣は社会保障について実に不熱心です。労働者の弾圧政策については一生懸命にやられますけれども、社会保障については不熱心です。労働省の管轄が失業保険だけであろうと、社会保障全般は労働行政関係がある。健康保険なり、日雇労働者健康保険なり、船員保険なり、全部関係がある。ところがそういう点について一つも発言をなさったことがないように思われる。一部負担論なんというのは、労働大臣厚生大臣となぐり合いしてでも食いとめなければならないところなんです。歴代の労働大臣は何にもしておらない。幾ら注意申し上げても馬の耳に念仏です。馬みたいな労働大臣ばかりです。もっと人間みたいな労働大臣になってもらいたい。実は健康保険の料率の引き下げですね、これは大間違いだと思う。この同厚生大臣がこっちに来られて、厚生大臣とだいぶ論議をかわしたわけですが、松野さんは社会保険審議会で保険料の料率値下げのことで大議論があったことを御存じかどうか。
  216. 松野頼三

    ○松野国務大臣 社会保険審議会の審議の模様は申し伝えを受けております。
  217. 八木一男

    八木一男委員 それでは、保険料値下げの反対論者の主要論点はどうであったか御存じですか。
  218. 松野頼三

    ○松野国務大臣 それは健康保険の場合ですね。——そのこまかいことは聞いておりません。
  219. 八木一男

    八木一男委員 だから困るのです。歴代の大臣がそうですから、松野さんだけを責めませんけれども、もっとそういう点について関心を持っていただきたい。松野さんくらいの頭をもってすれば、関心があってやる気になればすぐわかるはずです。ですから、一つ今御説明しておきます。今すぐ覚えていただきたい。  健康保険という問題は労働者に非常に関係の深い問題です。健康保険法の改悪というのが二年ほど前に強行されたんです。そのときに強行された改悪点は何かというと、一部負担をふやすということです。一部負担というのは二つありまして、入院町の一部負担と初診時の一部負担です。初診時の一部負担は五十円だったのを百円までとれることにした。非常に安いものは七十円という場合もあるのですが、そういうふうにした。それから入院時の一部負担というものを作った。これが二年間くらい、けんけんごうごう大騒ぎして、国会の審議がストップになって委員会差し戻しになったことは労働大臣も御存じだろうと思う。それほどの大問題であった。その大問題にもかかわらず与党が無理やりに押し切ったというのは、健康保険が赤字で赤字で、どうにもこうにもならない、ひっくり返りそうだからというのが理由だった。ところが、押し通したときにはすでに黒字に転換をしていた。黒字に転換をしているのに、赤字だ赤字だとうそをついて押しまくった。社会保障制度審議会が答申をしたときには、その前の年に出したときには、赤字だ赤字だ。その次には答申なしですりかえてごまかして通そうとした。制度審議会で問題になって、そこで赤字だ赤字だとうそをいっている。黒字の基調が出ているわけです。それを赤字だといって通した。そんな赤字で、健康保険までひっくり返ってしまって破産するなら、しょうがないから最小限度の一部負担なら涙をのんで、という言葉はなかったですけれども、そういう気持で、やむを得ないという答申が、非常な反対があったにかかわらず、比較的多数で通った。それをもとにして、社会保障制度審議会という最高の審議機関でも言っているからということを援用して、それで通した。通したら、そういう経過は違うじゃないかといいましたら、そうじゃないのだ、赤字だけが理由じゃなしに、一部負担を上げる理由があるということである。その理由というのは何かというと、安くしておくとたくさん医者にかかってしょうがない、そうすると注射や何かして費用がかかってしょうがない、高くしておけば見せにくる者が少ない、そういうことであった。それは健康保険のはき違えでありましょう。医療というものは、早く診断して早く病気をなおさなければならぬ。ほうっておいて、かぜを肺炎にしてから見ても何にもならぬ。肺炎になってからでは、それだけ国民も苦しむし、医療費も多くなる。医療の常識は早期診断、早期治療だと思う。それには早く見せなければならぬ。それを、初診町の一部負担を多くしておそく見させようとする。健康保険の逆行です。それで困るのは患者であります。健康保険というものは、労働者と使用主と両方が保険料を負担している。国の方は、なまけて、つまみ食いして、保険料をだんだん減らしておる。それで、そういう制度を作ったのは、病気になったときにすぐ見てもらって完全に病気をなおしてもらえるように作ったのです。またそれをみんなが希望したのじゃなくて、そういうことだから入れといって強制加入にして、俸給袋から無理やりにふんだくっている。払わなければ差し押えを食うわけです。法律的な違反に問われるわけです。だから、五十円さえ出せば見てもらえると思って、そのつもりで、無理やりにとられてもみながまんしておる。丈夫な者はとられてつまらぬといっておるけれども、国できまったものはしようがない。ところがそれを赤字という理由でぽんと上げた。松野さんは非常に裕福な家庭に育っておられるから、百円の金はそんなに大したものじゃないと思っておられるでしょうが、そうじゃない。貧しい家庭では重大問題です。私は貧しい時代がありました。十円、二十円の金に困ったことがある。困っていたときには、まず第一に子供が学校にいっている、学校の先生は幾ら持ってこいという、そっちの方に金を出すために、女房に渡してしまうのです。この二十円は何に使おうと思っていたのがなくなってしまう。次の子がまた持っていくと、隣のうちから借金しなければならぬ。子供だけには恥ずかしい思いをさせまいとする。そういうような家庭では、今度はからだが悪くて見てもらいたいときでも、一部負担の五十円、百円がないから、腹痛だけれども明日になったらなおるかもしれない、暖めてなおそうということになる。そうしますと、これが考え違いで盲腸だった、暖めたために化膿してひどいことになる。ときには命にかかわることもある。かぜで大したことはないと思っておったのが肺炎で死ぬこともあれば、死ななくても非常に苦しむ、そういうことがある。一部負担の値上げはそういうことを招来するわけです。そうであるからいけないと言うとしかし赤字で健康保険財政がつぶれてしまう、破壊されてみなだめになってしまうということを盛んに言われるから、最小限度のものはやむを得ないと答申が出た。ところがそのときにはごまかして、もう黒字になっておる。黒字になっておるのを赤字だ赤字だといって無理やりに通そうとした。そして最後に追及されれば、そういうへ理屈をいってごまかしておる。これなんかも変なんです。患者の一部負担を受益者負担みたいな考え方でさせるなら、こんな健康保険制度はなくしたらいい。みんな自分で貯金してその金で見てもらえばいい。社会保険というものは連帯制で、保険料を払って病気になったときは安心して見てもらえるという建前でやっている。それを、患者は見てもらえる、得しているんだから百円出させる、そういう考え方だったら、健康保険は全部解体したらいい。それで病気で注射してうんうんうなって、金を五十円使わした、百円使わした、四百円使わしたから得だと思っている。病気になりたい者はありはしない。この被保険者というものは労働者です。労働者がそういうひどい目にあっているにもかかわらず、労働大臣一つもこの点に触れない。最も聰明で政治に熱心である松野さんすら、さっき質問したらほとんど御存じない。労働基本権の問題、弾圧の問題を考えるより、こういうことを考えるのが労働行政の大事なところです。厚生省の所管であろうと、同じ国務大臣として閣議でそういうことを論議されるわけですから、当然厚生大臣をカバーしなければならない。厚生大臣が一部負担をなくしたいと思っても、大蔵大臣の頑迷なやつがいけないと言った場合、何を言うかといって厚生大臣と連合して大蔵大臣を圧服してもとへ戻さなければいけない。そのときに労働大臣一つもこういうことについて御理解がないということでは、非常に頼りない話だ、情けない話だ。そういうことについて即刻十分に勉強になって、こういう労働者に関係のある健康保険が非常にとんでもないこじつけの理由で悪化されて、今黒字になったからもとへ戻せるのに戻そうとしない。  一部負担の悪い制度を廃止しないで、保険料の値下げというような日経連がもうかるようなことを強行する。労働者や患者を考えないで、日経連のことばかり考えるのは政治ではない。厚生大臣も労働大臣もしっかり考えてもらいたい。事業主はぐんぐんもうけている。保険料を下げるような心配は断じてない。それを事業主や日経連の圧力で保険料を下げて、それが労働行政か。そんなばかなことでは社会保障制度を論ずる資格はない。それについて労働大臣厚生大臣の御意見を伺いたい。
  220. 松野頼三

    ○松野国務大臣 当時は、三年くらい前ですか、私が大臣になる前に、窓口徴収の問題はよく存じています。当時はたしか健康保険は、私の記憶では非常に赤字で、政府が三十億かの金を出して三年間にこれを改正する。当時はたしか厚生大臣は川崎厚生大臣だと記憶しています。(八木一男委員「川崎厚生大臣のときの七人委員会は悪人だよ」と呼ぶ)この問題はよく知っております。それは健康保険の財政というものはすべて保険者の財政なんですから、制度そのものは保険者の制度なんですから、制度と個人というような考えで、一体で考えるべきだ。いろいろ議論はありましたが、窓口徴収の初診料はたしか百円だったと記憶しております。入院のときは一日五十円だったと思います。今はどうなっているか知りませんが、当時の記憶はそうだったと思います。あのときは鳩山内閣ですから、労働大臣は千葉さんです。当時私も野党でしたから、あなた方と一緒によく議論したので知っています。しかしあれは条件つきで賛成したので、今後政府が十億ずつ出すのか出さぬのかという議論で条件つきで——私も当時はあなた以上に激しくやった時代もあるわけです。今回の場合とあれとは少し違うので、あのときは緊迫した財政の赤字で、大体健康保険は黒字で政府管掌が非常に赤字、国民健康保険は赤字だが健康保険は黒字基調を保っておった。あのときには診察がふえて保険料率を改定するのかどうかという時代でした。保険料率を上げるよりも窓口徴収という思想でいこう、保険料率を上げることは容易じゃない、徴収制度の改正でいこうじゃないかというのが一つの案だった。しかも緊急で永続のものじゃない、そういうものだった。お話を聞けば思い出がある。それと今回の問題とは多少違いますけれども、今回は悪化しているわけじゃない、前進です。一つの足だめだと考えて今後失業保険は前進します。しかしある時期においては一つの足だめという時代ですから、八木さん理想のような大きな家を建てるには少し私も自信がありませんが、この問題が済めばずっと前進いたします。この問題が済まないと悪い劫種を残して、いつまでも前進しないですよ。そしてこれが悪化しているというなら、どんな劫でも取り除かなければならない。ところが悪化ではありません。足踏みというところで、それにはいろいろなものがあるわけで、中には前進もあれば、おっしゃるようにいろいろな問題を含んでおります。しかしこれは後退とは私は言い切れない。まあ百歩譲れば地固めだな、こういうような感じですから、そんなに悪化ではありません。将来これが下がったら取り戻すのに大へんだ、そんなものじゃないと思う。やはり昨年の予算編成の当時社会保障の一つの調整という意味でおやりになっておる。今になればまたいろいろな問題が出て参ります。しかし一つ早く済むものは済ましていただいて前進の方に私は進みたい。健康保険の問題は、私は当時もちろん労働大臣ではありませんでしたが、関心を持っておりました。私の記憶に間違いなければそういう情勢だったと記憶しておる。私も野党でしたからあなた方と一緒によく勉強したものです。全然無関心であるわけではありません。
  221. 八木一男

    八木一男委員 失業保険に戻りますが、非常に悪化なんです。足踏みだとおっしゃったが、足踏みなら、今まで自動車に乗ってきておりた、自動車は取っ払われて持っていかれた、国庫負担の三分の一から四分の一の間だけです。そうしたらこれから前進しようというのに、足が痛くなっても乗りものに乗れないわけです。二年後に返ってくるかもしれないといっても、自動車は金ですから、ほかの者が使ってしまってなかなか返さない。ですから後退なんです。前進の道ははばまれておる。足踏みはしておるが、今まで乗ってきた自動車はほかの者が持っていって返しはしない。二年後に返せるかもしれないといっても気休めですよ。憶病未練な倉石さんがほかの強盗に脅迫されて持っていかれて、何も取り戻そうという努力はされなかった。まだ見えておるのに、その次の松野さんも取り戻しに行かない。あの辺に見えておる、行ってみると消えてしまって取り返しができない、そういうことです。ですからじっくりお考えいただきたい。  健康保険の問題でこれから渡邊さんにも御質問しますし、あした岸さんにもしますが、渡邊さん以上に聰明な熱心な政治家でいらっしゃるけれども、なかなか一人ではしゃべりにくい。大蔵省というやつが、何も政治のことを考えないくせに、ドル箱だけ握ってそっくり返っている時代ですから、やはり二人でかかっていかないと、あんな連中はドル箱をめったにあけない。頑迷固陋の態度を排するために労働大臣厚生大臣と同調して、労働者の利益ですから、一部負担と制限診療をなくするように、一部負担と制限診療が焦点なんですから、それをなくして完全な診療をするように厚生大臣に協力して、厚生大臣がちょっと忘れておったら、こんなことじゃいけないとしりをたたいて、厚生大臣が勇ましく行かれたらあとから応援する、そういうことの御決意を一つ聞いておきたい。
  222. 松野頼三

    ○松野国務大臣 足踏みというよりも地固めくらいではなかろうか。また自動車を持っていかれたといっても、ちゃんと預かり証は先に取ってある。もし赤字が出たら三分の一まで負担するという公正証書以上の法律、そういう預かり証があるから、持っていかれはしません。これは公正証書でなくて法律で、ちゃんと四分の一、赤字が出たときはその会計年度において三分の一までは戻しますということが書いてあるから、従って足踏みにあらずして地固めくらいだと思う。持っていかれはしません。ちゃんと証文がある。しかもこれは百パーセント法律ですから、それは大丈夫です。あぶない証文や口約束ではありません。これはもう法律でちゃんときまっているのです。
  223. 八木一男

    八木一男委員 赤字が出たから今ストップしたというのが給付の建前ですよ。ですからそんなものは、自動車を戻しても、一時間に三キロぐらいしか走れないスピード制限つきのそういう自動車を買ってくるだけです。自動車に乗るのは、早くしょうということです。給付を拡大するということです。現在の給付をストップさせて、それで赤字が出るというのでは何にもならない。また今やるのだったら、あなたがおっしゃるように黒字基調だから、どんなに給付をストップさせても赤字が出っこないのです。自動車はそういう美名のもとに盗まれたということです。人がよ過ぎるということです。そういうことでしょう。だからそれは断固として、今見えているのだから、あらゆる立場で取り返さなければ男といえないでしょう。健康保険について御協力願えるかどうかはっきり聞いておきたい。健康保険の一部負担を廃止する、制限診療を撤廃する、十分な診療をするというふうに労働大臣厚生大臣と協力して一生懸命やられるかどうか。
  224. 松野頼三

    ○松野国務大臣 それは所管大臣厚生大臣のお話を聞いてから、私も十分厚生大臣の御意向に沿うようにいたしますが、まず厚生大臣の御意向を伺わないと、私は何ともお返事できません。よく厚生大臣の御方針に私は協力いたすつもりであります。
  225. 八木一男

    八木一男委員 厚生大臣にはこの同だいぶ質問したのですが、厚生大臣は物わかりがよくて、一部負担をなくするようにすると言っておられる。だけれども大蔵省という難物があるから、口を引っぱられて、あまりはっきりした答弁はできない。その難物退治のために一緒になって一生懸命やっていただけるかということは、労働者のために、波邊さん個人のためではない、労働者のためですから、労働者の責任なのです。やっていただけるかということを伺いたい。
  226. 松野頼三

    ○松野国務大臣 厚生大臣のお話を将来ともよくお聞きして、それから協力しなければなりません。まだお聞きしておりませんし、いろいろ問題もありましょうから、その後において私はお返事いたします。
  227. 八木一男

    八木一男委員 では労働大臣に対する御質問は、今度は船員保険法等の一部改正を一条々々やりますから、まだ三週間くらい質問分を持っておりますので、その質問を、もし長ったらしいから早く済ませたいと思われましたら、今晩、さっき申しましたようにじっくりお考えをいただいて、総理大臣並びに松野労働大臣から、前向きの気持を実際に表明した御意見が出れば、それで三週間も質問する必要はありませんから、今晩じっくりお考えになって、いい方向へ持っていっていただきたいと思います。それがいかなければ三週間はやりますから、一つ御答弁を十分に御準備になっていただきたいと思いますし、さらにまた斎藤自民党提出者、厚生大臣より、もっと発展的な御意見を伺える可能性は十分にあると思います。齋藤さんに十分にお伺いいたしますから、そのときもずっとお立ち会い願うことを一つ御要求申し上げておきます。その方も一つ齋藤さんが積極的に御答弁なさったときに、政府の方で御意見を変えるということをなさらないで、自民党の労働行政に対する、失業保険行政に対する熱意に後から水をぶっかけないように、お願いしたいと思います。まだ少し言っていただきたい点がありますが、労働大臣はそれだけに……。   次に厚生大臣の方にお伺いをいたします。   厚生年金一つお伺いをいたしたいと思いますので、小山年金局長をちょと呼んで下さい、年金関係がありますから。——それでは小山年金局長が来るまで日雇労働者健康保険について伺います。  日雇労働者健康保険につきまして、政府が今度船員保険法等の一部改正案の中に、この改正というものを出しておられる、また田中正巳君の案で与党案が出ておる、その案について、るる御質問を申し上げたいと思います。これは同僚であり、敬意を払っている同志でございます滝井君からずいぶんと御質問があったように思われますけれども、私はいなかったことがありましたので、同じような、ダブった質問になるかもしれませんが、その点は一つ御了承を願いたいと思います。  日雇労働者健康保険につきましては、非常に給付が劣悪な状態にございますけれども厚生大臣はこれについていかがお考えでございましょうか。
  228. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 日雇健康保険の給付でございますが、現在の日雇保険の収入の性質上、この給付の内容というものは将来の問題で、現在はやむを得ないと考えております。
  229. 八木一男

    八木一男委員 将来の問題で、現状はやむを得ないとおっしゃるけれども、とにかく給付が劣悪なことはお認めになるわけですな。
  230. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 必ずしも十分でないと考えております。
  231. 八木一男

    八木一男委員 その大臣答弁をよくなさいますけれども、必ずしもなんておっしゃらないで、劣悪であるということは一目瞭然ですから、はっきり劣悪だとおっしゃったらどうですか。ほかのものは三年なのに一年しか医療給付がない、片一方傷病手当金は十四日しかない、それで劣悪じゃなくてどうするのですか。そんなこそくなことは——太宰局長の書いたものをごらんにならないでお答えになっていただきたい、こっちは知っておりますから、お答えになっていただかなければ話が進まないですよ。
  232. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 国民健康保険よりはまだ多少いいと思います。
  233. 八木一男

    八木一男委員 また太宰さんが入れ知恵をしました。太宰さんの入れ知恵はしばらくお断わりをしたいと思います。厚生大臣に御質問を申し上げているのですからね。厚生大臣は全部知ってなくても僕は別に追及しない。基本的な考え方を国務大臣に伺っているときに、厚生省当局が出るとほんとうの論議にならない。日雇労働者健康保険はお聞きの通りです。労働者の健康保険の比較をなさるならば、労働者の健康保険の中軸である健康保険の比較においてなさるのが当然であります。問題をすりかえて、性質の非常に違う国民健康保険の比較において、それよりましだ、そういうようなひん曲った御答弁は審議をごちゃごちゃさせるだけです。率直に御答弁願いたいと思います。
  234. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 各保険制度上、これは調整をとっていかなければならぬ、かように考えております。
  235. 八木一男

    八木一男委員 それでは健康保険で三年の給付があり、日雇労働者の健康保険の給付が一年であり、傷病手当金が日雇労働者健康保険は十四日にとどまっておる、そういうことで劣悪であるとお認めになるのかならないのか。
  236. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 必ずしもよいとは考えておりません。
  237. 八木一男

    八木一男委員 これも遠回しですが、まあ前の答弁よりましですけれども、同じことを、どうしても言っていただくまでは聞きますから、遠回しじゃなくて、何回も言わせないで答えて下さい。知らないことを聞いているわけではないし、これからの厚生大臣のお考えを聞きたいために聞いているから、前段を聞いているから、遠回しにおっしゃっても承服できませんからね。必ずしもよくないとおっしゃったけれども、それを劣悪とお認めになったものと理解をして話を進めてよろしいのでありますか
  238. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 あなたの御意見としてお聞きしておきます。
  239. 八木一男

    八木一男委員 三年より一年の給付が劣っている、これは日本語の常識だったら明らかですよ。劣っていることは悪いことです。何カ月給付になっている傷病手当金よりも十四日しか給付ができないのは、給付において劣っていることは明らかだ。そっちの方が悪いことは明らかなんです。従って劣悪だ。あなたの言葉として聞いておくという、そんな回りくどいことをおっしゃらず、劣悪は劣悪だと言いなさい。幾ら必ずしも何とかじゃないとおっしゃっても、それが三年なら三年にすぐしていただくならいいが、現在一年と法律に書いてある。だから劣悪なんです。
  240. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 日雇い保険の性質上そうならざるを得ないのであります。しかし、われわれは将来国民皆保険の建前上、制度の上から大いに検討いたさなければならぬ、かように思っております。
  241. 八木一男

    八木一男委員 厚生大臣は、健康保険制度について、国民健康保険健康保険という柱、この二つを認めて医療行政を運行されていると思いますが、それについていかがですか。
  242. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 さようでございます。
  243. 八木一男

    八木一男委員 そういう建前でありまする以上、労働者の健康保険と労働者以外の健康保険と分けて考えたらいい。これは歴代の厚生行政の柱です。そういう観点において厚生行政を考えて理解していかなければならぬと私ども考えております。それが当然の今までの歴史であります。従って日雇労働者健康保険というものは労働者の健康保険との比較において考えていかなければならない、論議をされていかなければならない。国民健康保険とごちゃごちゃにして考えるということは間違いであります。それについてどうですか。
  244. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 御意見の通りでございます。
  245. 八木一男

    八木一男委員 そういうことで、日雇労働者健康保険健康保険に比して非常に劣悪である。やはり労働者である以上、同じような給付をさせなければならない。そういう方向で少なくとも前進がされなければならない。それについて渡邊さんのお考えを伺いたい。
  246. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 先ほども申しましたように、現在の制度といたしましては、日雇健康保険というものは、保険財政の上からいたしましてもこれはやむを得ませんが、将来は漸進的にこれを考えていかなければならないと思います。
  247. 八木一男

    八木一男委員 大へんけっこうな御意見でございました。その点は全面的に——全面的じゃない、半分ぐらい賛成でございます。漸進的では少しスピードがにぶいのでありまして、急速にやってもらわなければならない。そこで、なぜ財政的に現在前進ができないかという理由について、どうお考えですか。
  248. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 日雇健康保険という、収入において一定のワクがはめられている以上は、これはやむを得ないものでございます。
  249. 八木一男

    八木一男委員 端的に申し上げますると、日雇い労働者は収入の少ない労働者です。従って、保険料の多額の負担には耐えられないということで保険料が組み立てられているわけでございます。それは当然のことです。しかしながら、健康保険制度から考えまするときに、収入の少ない者であっても、収入の多い者であっても、病気を回復するためには医療給付が同じようなものが要するということは保険の考える常道であります。そこに非常に難点があるということは私も考えておりますが、厚生大臣もそのようにお考えでしょうか。
  250. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 保険制度と社会保障政策、こういう両面から考えていきたいとかように考えております。
  251. 八木一男

    八木一男委員 その難点を打開するには、根本的にはどういうふうに考えたらいいか、お考えがございませんか。
  252. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 具体的にはいろいろ社会保険審議会なりあるいは社会保障制度審議会において検討をいたさせたいと、かように考えております。
  253. 八木一男

    八木一男委員 もちろん各審議会の意見をお聞きになるのはけっこうでありますが、厚生行政の最高の担当者として、やっぱり大きな筋を出していただきたいと思います。ただし厚生行政は多面に分かれておりまして、御就任後相当の時日にしておりますけれども、御繁忙で、すべてについて御検討になるひまがなかったかもしれない。従って、この問題を非常に熱心に検討しているここにおられる滝井義高さんなり私なり、また与党田中君なり、そのほかの諸先生方の御意見を十分聞いていただいて立てられなければ、社会保険審議会と社会保障制度審議会の意見だけを聞いてればいいということでは、問題が早く進みません。  そこで一つ意見を聞いておいていただきたいのですが、なぜそういうふうにできないかというと、一方国民健康保険においては貧しい人も富める人もみな入っている。従って、今の保険料徴収の方法では収入割りとか資産割りというものがあって、たとえば私は国民健康保険に入っておりますけれども、一年間に四万円ぐらいの保険料を取られている。これは社会保険のために取られてもかまいません。そういうことで収入の少ない人にその金が回っているわけです。またそういうことで一つの財政が持っているわけです。ところが、労働者の健康保険においてはいろいろと制度が分かれている。収入の少ない日雇い労働者は日雇労働者健康保険として別個に置かれている。従って、普通の健康保険なり、政府管掌なり組合管掌なり、そういうところより保険料収入が少ないから、財政が苦しくなるのはあたりまえなんです。そこで、それをほかの保険のように調整するものは何か。調整するものは、制度を統合しない限りにおいては、国庫負担によってのみ調節ができる。そういうことで、一割からだんだん上がって、現在医療給付に対して二割五分、もう一つは傷病手当金に対しては三分の一の国庫負担が行なわれているわけでございますが、それがはなはだ少ないために、健康保険が三年であるにかかわらず日雇健康保険は一年しか見てもらえない、非常なアンバランスを生じておる。そういう点、もっと調整機能をしっかりしなければいけないわけです。そのようにお考えになりませんか。
  254. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 被用者保険は非常な多岐に分れておりますので、この点については沿革の理由にもよりますけれども、将来極力整理統合いたしていきたい、かように考えます。
  255. 八木一男

    八木一男委員 多岐にわたっておりますから、そこでよく考えられなければならないのは、今、大体国民健康保険に平均して二割五分の国庫負担をしておられる。それならば、当然、同じ国民といたしまして労働者の方にもそれと同じような国庫負担をしなければならない、そうお考えになりませんか。
  256. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 現在すでにやっていると思います。
  257. 八木一男

    八木一男委員 私は労働者の健康保険と申し上げた。日雇労働者健康保険と申し上げたわけではない。労働者の健康保険の場合には、そのつかみ金がぐんぐんと減って、この間滝井さんからいろいろと攻撃を受けられたはずです。組合管掌の方には何もありません。労働者全体には健康保険の国庫負担はほとんどないと同じであります。これは松野労働大臣関係がありますから聞いておいていただきたいと思います。国民健康保険には国庫負担がある。同じ国民である労働者の健康保険にそれがない。日雇労働者健康保険にはありますけれども、総体的に国庫負担がない。つかみ金の三十億がだんだん減って、十億、五億と減ってきた。とにかく確固とした国庫負担がない。これは国民すべて一視同仁という政治の立場からすれば間違いであります。間違いであるのを直す。直すためには、労働者の健康保険制度が一本でない。だから、非常に財政が豊かな組合管掌、今二割五分、それと同じ国庫負担をしろということは言っておりません。していただいてももちろんけっこうですけれども……。労働者全体に——国民健康保険に二割五分の国庫負担をしているのだろうから、人数が同じとしたら、人数割りでよろしいですけれども、同額くらいの国庫負担を労働者にしたらいい。ところが制度が分かれている。国民健康保険では全部が一緒になっているから、金持もたくさんの保険料を納める、貧乏人はちょっといい。ならされて給付が一緒になるという作用をしている。労働者の方は制度が分かれている。非常に日の当たる産業の方は組合管掌になる。そのほかのものは政府管掌になる。日雇い労働者は日雇労働者健康保険で固められている。保険料の上がるもとが、収入が少ないから、保険料だけではいけない。それを国庫負担で埋めるという現象をやられている。その埋めるという現象を労働者総体で考える。国民健康保険が二割五分をやっている。労働者総体にそのくらいの金額をやるとしたら、それで収入の少ない部分に厚みをかければ問題は解決する。そうなれば、労働者総体の受け取るべき国庫負担をつぎ込めば、日雇労働者健康保険の国庫負担は、社会保険だからおかしいと言われるけれども、九割九分国庫負担したってできる。そういうことをすれば、給付が一年しかない、肺病がやっとなおりかけたというのに追い出されて、また再発するという、そんなばかなことはなくなる。傷病手当金が十四日間、出産手当金が十四日間。労働基準法で産前産後の休みは八十四日間ある。それをカバーする出産手当金が十四日間しかない。そんなばかなこと、労働行政に全然マッチしない健康保険がある。そういうような内容を変えることができる。従って、日雇労働者健康保険法は少なくとも、八割、九割の国庫負担をして、一般の健康保険と同じ給付になるように急速にしなければならない。それにもかかわらず、厚生省は四割国庫負担案を出しながら、ぼやぼやして大蔵省の議論に負けて、なぜそれを撤回したか、なぜそれを通せなかったか、そのような弱腰では厚生省を預かる資格はございません。四割国庫負担を急速に取り返す覚悟ありやいなや。
  258. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 四割というわけにもいきませんから、現在三割の漸進的な一つのことを考えております。労働者全般につきましては、やはり制度の上の総合調整を考えまして、将来は大いにこれを検討いたし、総合調整でその方針を確立いたしたい、かように考えております。
  259. 八木一男

    八木一男委員 隠れみのを作ったらいけない。それほど総合調整が大事だと思うなら、失業保険の改悪なんか撤回されたらいい。それは政府の国務大臣ですから、あなたも関係がある。それほど総合調整を重んじるなら、船員保険法の一部改正案を撤回なさい。そっちは総合調整を打たずしてやられるなら、そうして改悪を一方でやられるなら、ちょっとくらいの改正くらいやらなければ、政府の資格はないじゃありませんか。いいことは総合調整を待つ、悪いことは総合調整を待たなくてもやる。そんなでたらめな総合調整の使い方はあったものじゃない。日雇労働者健康保険法を職を賭しても急速によくなさる決意があるかどうか。
  260. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 漸進的に私どもはよくいたしたいと思います。
  261. 八木一男

    八木一男委員 本年度の日雇労働者健康保険法ですね、これは非常に給付はストップしています。ただ国庫負担が、二別五分と三分の一をならして三割になる。幾分金額はふえておりますが、十億にならない。二億か三億、四億くらい。まあこれは数字を見ればわかりますから……。そのくらいのことでは、給付が一年ということも少ない、出産手当金が十四日ということも少ないということは、カバーできない。赤字をちょっと埋めただけ。一つも給付の前進になっていない。赤字などはあなた方が勝手に考えればいい。社会保障というものは給付を前進させることが目的なんだ。給付をさせるために国庫負担が必要ならば、大蔵大臣とけんかしてもとらなければいけない。赤字解消のためちょっと上げたぐらいでは、それは前進にはなりません。四割国庫負担案をほんとうに押し通せなかったのは非常に残念でありますけれども一つ四割といわず五割くらいの国庫負担をこれから急速に進められる強力な御意思があるかどうか伺いたいと思います。
  262. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 御意見のほどは十分わかりますけれども、財政上——われわれ今年は三割を要求いたしましたのも、いわゆるその趣旨によるものでございます。
  263. 八木一男

    八木一男委員 厚生大臣の善意はわからないことはありませんけれども、三割というのは去年から要求しております。去年の船員保険法等の一部改正案というこのインチキ法律案を通すという建前から、去年から皆さん要求いたしております。三割では前進ではありません。ことしはたしか四割を要求されたはずです。なぜそれを突っぱり切れなかったか。非常な自然増収が見越されているときに、そのくらいのことは——日雇労働者健康保険は、そんなに対象人員も多くないし、給付も多くない。四割にしたところでその金額は、国家財政からいったら大したことはない。それを、ただバランス論で大蔵省に押しまくられるわけです。四割では筋が通らないというようなことで押しまくられておられるのじゃないか。金額自体にしたら、厚生大臣ほんとうに熱意を持っておられて、労働大臣がぼやぼやしておられないで援助されたら、そのくらいなら大蔵省は圧服できる。ほんとうに出すとなれば、四割くらいは予備費でも出せます。それをバランス論、今までの非常に悪い、困っている、それを急に変えることはどうであろうかというようなバランス論、悪い状態を急に変えたらいけないというのでは、政治の前進はない。悪いところは悪いでぐんと上げなければいけない。それを、ほかが一割でこっちがたくさん上がったらバランスを失するというような大蔵省のやり方で、押えられたのじゃないかと、これは非常に僭越でありますけれども思います。ほんとう厚生省が強腰でなかったから押えられた。今度は一つ強腰でやっていただけますか。
  264. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 大いに一つこれからあらゆる方面の御要望に沿いまして努力いたしてみたいと思います。
  265. 八木一男

    八木一男委員 同僚の滝井君の御質問で傍受しておりましたけれども健康保険の出席手当金というものは日雇労働者健康保険についても当然入れなければならない、そういう問題について、どういう御答弁をされましたか。
  266. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 日数を多少ふやすつもりでございます。
  267. 八木一男

    八木一男委員 出産手当金ですね、どのくらいふやされるつもりですか。
  268. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 一週間ぐらいな見当を目ざしております。
  269. 八木一男

    八木一男委員 労働大臣にお伺いします。さっき申し上げたように、労働基準法で産前産後に休める日にちは、産前及び産後四十二日、合計八十四日のはずだと思います。厚生省の方で、出産手当金があまり短い、だから直そうという努力をしておるわけであります。それで十四日を一週間延ばそう。延ばされることは非常にけっこうだと思います。大蔵省は頑迷固陋ですから、それでも相当の勇気を持ってやっておられるだろうと思う。しかしこういうことでは非常に乏し過ぎるので、基準法の線と同じような出産手当金を出さなければならない。金の裏づけがなければ、婦人労働者は子供をかかえているからかせげないのです。そういうことで、ほとんうに労働行政とマッチしないわけです。そういう点で厚生大臣に非常なお力添えを願いまして、厚生大臣が、一週間といわずもっとたくさんできると大蔵省に対して説得できるという自信をお持ちになるように、一つ厚生大臣に対する御協力を願うということについて、労働大臣として意思表示をせられたい。
  270. 松野頼三

    ○松野国務大臣 よく研究してみます。また、この基準法のやつは、何も月給をやらないというのじゃないのです。休暇を与えるというのですから、これは有給休暇を理想としておるのですから、給与の問題については、これは有給休暇を理想として基準法できめているわけです。
  271. 八木一男

    八木一男委員 それは基準法の精神です。日雇い労働者でありますから、休んだらもらえないのであります。だけれども、そういう方の労働者に産前産後をそういうふうに考えているんだったら、当然同じように、全労働者が四十二日ずつ前後で休めるというような建前にしなければいけないと思う。休むのには、それだけ出席手当金がもらえなければ生活ができないから、実際に休むことができるという建前で、出産手当金というのは当然八十四日になるべきだ。一ぺんに八十四日は、大蔵大臣やわけがわからぬ連中が多いですから、むずかしいかもしれませんけれども、とにかく二週間が一週間延びても、あまりに僅少ですよ。一つ厚生大臣も元気を出していただいて、もっと大幅に延びるように御努力を願いたい。それに対する厚生大臣の御所見を伺いたい。
  272. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 先ほど申し上げた通り、さように努力いたしつつあるところでございます。
  273. 八木一男

    八木一男委員 それとともに傷病手当金の方もやはりもう少しというか、できるだけお考えを願いたい。傷病手当金というのは、御承知の通り、病気になって治療を受けているときの給付でありまして、現金給付であります。日雇い労働者の人たちは生活が非常に困っておりますから、お医者さんに、休んで病気をなおしなさいという医療上の指示をいただいた場合でも、給料が入らないと困るということで、失業保険ではそのとき自分が病気で休んだら失業保険に入れませんから、やはり傷病手当金というものは入らない。金が入らないと、子供が飢えかけておれば、薬を飲んで安静にしなければなおらないぞとお医者さんに言われても、目の前の子供の泣き声を聞いたら、やはり出て働くことになる。そうすると、なおりかけた病気がぶり返す。そうすると、日雇労働者健康保険関係にさらによけいの医療給付をしなければならない。赤字のもとを作るわけです。日雇労働者健康保険の赤字のもとを作らないように、また労働者がほんとうに早く病気がなおるように、その間の生活がある程度保てるように、そのためには傷病手当金をもう少し延ばしていただく必要がある。二週間でなおる病気ばかりではありません。肝臓が悪いといえば一カ月も休まなければならぬ。結核ならもっと長い。そういうこともある。そういうことで、傷病手当金の延長についても一つ積極的にお考えを願いたいと思いますが、どうですか。
  274. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 現在傷病手当金は二百円だと思います。二百円は一応日雇い労働者の日給の約六割に相当するわけです。それで、私どもといたしましては現存のところやむを得ないのじゃなかろうか、かように考えておりますが、期間の延長につきましては将来の問題として検討いたしてみたいと思います。
  275. 八木一男

    八木一男委員 検討でも、ないよりましですけれども、どうか一つできる限りにおいて——これは大蔵省の壁がありますからできないこともあるでしょうが、できる限り延ばすようにしたいというような御返事を賜わりたいと思います。
  276. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 今直ちに延ばすということはできないと思います。くどいように申しますけれども、将来の問題として検討いたしてみたいと思います。
  277. 八木一男

    八木一男委員 その将来はいつごろですか。臨時国会にでも考えていただけますか。
  278. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 それは今のところ申し上げかねます。
  279. 八木一男

    八木一男委員 問題の焦点はおわかりになったと思います。それを御努力で打開なさることはいいことであるということは御同感であろうと思います。いいことである以上、できるだけ至急に実現のために最大の努力をしていただくという御返事を一つ、非常に心あたたかい政治家としての渡邊さんの口から、ぜひまげて今承りたいと思います。
  280. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 これは私どもはできるだけそのようなつもりでおります。
  281. 八木一男

    八木一男委員 医療給付の問題についてさらにお伺いしたいのです。  健康保険の方で三年も医療給付があるのに、片一方が一年、しかも国民健康保険でやはり原則として三年というふうになっておるのに、一年では、社会保険としてはあまりにバランスが欠けておると思う。これについて、将来急速に延長されるお考えが当然あられなければならない。それについてのお考えを付いたいと思います。
  282. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 私どもといたしましては、国庫負担の増額も、また保険料の国庫負担につきましても将来考えていきたい、かように考えております。
  283. 八木一男

    八木一男委員 松野労働大臣に、今医療給付期間の延長、それから傷病手当金の延長、出産手当金はさっき申し上げましたが、それらの実現のために、国庫負担の増額について厚生大臣が御意見をおっしゃったが、御協力願いたいと思いますが、御所見を伺います。
  284. 松野頼三

    ○松野国務大臣 厚生大臣が言われた通りでございます。
  285. 八木一男

    八木一男委員 次にほかの問題に移りたいと思います。  国民皆保険を実現されようとすることは、国民をして、病気のときに何らかの保険制度がいつもあって、それで半額の人もございますけれども、全額負担しないで、国民のたれしもが医療給付を受けられる、従って半額くらいの用意をしておけば経済上の心配はないという態勢を日本国中に作り上げようというお考えのもとに国民皆保険制度を作ってやっておいでになるのだと思うが、それについて、もし違っておりましたら違う、合っておりましたら合っておるということをお答え願いたいと思います。
  286. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 社会保障政策を推進する上におきまして、国民皆保険を作りました以上は、当然御意見のような御趣旨でございます。
  287. 八木一男

    八木一男委員 そこで、前にも滝井委員からお触れになったと思いますけれども、そこに非常な穴ができるわけであります。現行法のままで国民健康保険が来年でき上がる、それから日雇労働者健康保険との関連で、国民健康保険の被保険者であって、たとえば農家の人であって、それが都会に出て職安の労働者という場合に、現在二カ月、二十八日、六カ月、七十八日に満たなければ保険給付ができないようになっておる。そうなると、二カ月間そのままであれば国民健康保険の適用も受けられない、日雇労働者健康保険の適用も受けられないという穴ができます。この問題は国民皆保険の建前からは非常にまずいことだと思う。その穴を埋めるための最善の努力をされる必要があると思いますが、それについての御意見を伺いたいと思います。
  288. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 当然でございます。
  289. 八木一男

    八木一男委員 その穴を埋める方法を一つ急速にお示めし願いたいと思う。また、そういうことを今から実現するために具体的な措置をお願いしたいと思います。
  290. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 これは技術的になかなかめんどうな点でございまして、これは八木さんのしょっちゅう言われます山林労働者、こういう面につきましては特に事務当局でそうした点につきまして検討いたしております。
  291. 八木一男

    八木一男委員 今の点、全然穴があかない方法で——山林労働者の場合はもちろんお願いいたしたいと思いますが、今適用されておる日雇い労働者の場合穴ができる。それは技術上はいろいろの問題がございますけれども、皆保険政策上非常に工合が悪いので、穴が一つもあかないように、これはぜひ勇断を持って制度をお考え願いたい。それについての概括的な御返事でけっこうです。
  292. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 なかなか技術的にめんだうだと思っております。しかし、国民皆保険制度の建前といたしまして、できるだけそうした谷間のできないような仕組みにこれを研究させるべく、事務当局で現存やっております。
  293. 八木一男

    八木一男委員 でき得れば事務当局で急速に御検討になって、この日雇労働者健康保険改正案がここで通過するかどうか。政府案は船長保険法の改正などがあります。与党田中君の案は、日雇い労働者は単独の案になっておりますが、どちらが審議されるにしろ、それが通過すれば、そういう穴が埋まるのですが、それまでの間の穴が埋まるように、一つそういう点追加して入れていただけば、初めから非常に心配がなくなるわけです。そういう御努力を願えますか。
  294. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 技術的には大へんむずかしい問題でありますので、これも研究中でございます。
  295. 八木一男

    八木一男委員 できる限り間に合わしていただかなければ困ると思います。検討を急いでいただきたい。急いで悪い案を作らないで、完全に穴があかないという方法で考えていただきたいと思います。試案なるものを私ちょと伺ったことがございますが、その中で一部穴があく試案がございます。それでは問題が解決したことになりませんので、そういう穴のあかないように、頭のいい人がそろっておるわけですから、特に気の毒な人がひどい目に合わないように、ぜひとも急速によい案を考えてやっていただきたい。  小山君見えておりますか——これから厚生年金保険法について伺いたいと思います。厚生年金保険法については今度改正案をお出しになっておられますが、大体今二割ぐらいの給付率の引き上げという目標の法律だと伺っております。現在の厚生年金の給付の平均金額が二割きっちりになるのか、何割増しになるのか、これは事務局でけっこうですから伺いたいと思います。
  296. 太宰博邦

    太宰政府委員 現在、三十四年の十月末の数字が一番新しい数字でございますが、あとで申し上げますが、大体今四万二千円ぐらいだということでございます。月額で三千五、六百円というところでございます。そこでそれが現在の人でございますれば、そのうちの報酬比例分が大体二割ふえるわけでございますから、たとえばこちらの試算でございまして、平均標準報酬が一万二千円の人が二十年で約三千六百円くらいになります。——失礼しました。先ほどのあれは、四万一千五百円、月三千四百円くらいです。それが大体といたしますと、三千六百円の人が三千八百四十円ぐらいになるということですから、二百四十円ぐらいになる。ただし、今回御承知の通り、報酬比例分を引き上げることにいたしますから、現在一万八千円という非常に低い点をとっておりますが、その上をとる人があるので、これからの人は相当大きくその差が出て参ると思います。
  297. 八木一男

    八木一男委員 厚生年金の国庫負担金は一割五分でございましたか。
  298. 太宰博邦

    太宰政府委員 そうでございます。
  299. 八木一男

    八木一男委員 そこで国民年金との比較なんでございますが、これは厚生大臣にお伺いしたいと思います。国民年金法が施行されまして、今福祉年金だけであって、来年の四月から拠出年金ができ上がる。福祉年金は特別なんでございますが、拠出年金というものが、労働者の厚生年金と比較さるべきものだと思います。拠出年金の方は大体六十五才から三千五百円だ。こちらの方はもう少し年限が低いのでございますが、とにかく今の金額で、御承知の通り月額にして三千四百円、平均二割増しで今度の案では三千八百円ということになるわけです。労働者の厚生年金が先に発達しましたのは、これはもう一々御質問申し上げると長くなりますから、私どもの考え方を先に申し上げますと、それだけのよるべき理由があった。健康保険制度が先に発達したことも、よるべき理由があった。その理由は何かというと、労働者は生産手段を持たない、農地を持たない、工場を持たない、あるいはまた商店を持たないということでございますので、病気になったときには自分の賃金がとれないと生活的にストップしてしまう。従って傷病手当金が必要である。また従って労働者本人の場合十割給付が必要であるというようなこと、それからまた失業した場合に、ほかの生産手役を持たないから、やはり失業保険が必要である。老齢になったときにも、農地とか商店を持っていないから、退職年金という制度でございますけれども、その中に一部老齢年金という考え方がもちろん入っております。老齢で所得能力がなくなった場合の補てんとしての年金が非常に必要の度が多かった。そういうことのために、いろいろの経過を経て早く年金というものができ上がった。それで年金というものは老後の保障をするものだ。ですから全国民にそういうことをしたらいい。けれども、今の厚生年金の基準にしても、国民年金の四十年後の三千五百円の基準にしても、こんなものは老後の生活を完全に保障するものとはだれもおっしゃるはずがない。また政府側もそういうふうにおっしゃりはしない。一助になるくらいの気持であるこれがほんとうに一人当たり、現在の貨幣価値で換算してわが党の案の国民年金のように、最低でも七千円、しかも六十五才でなくて六十才から支給する、これは国民年金の場合です。労働者年金の場合も同様な条件である。そういうことであればまだいいのですけれども、それでもまだ少ない。健康で文化的な老後の生活を送ろうとすれば、現在の貨幣価値で少なくとも一万、二万というようなものが一生涯保証されることによって、初めて年金制度というものが確立されるわけです。そういう状態になったら職業のいかんを問わず、けっこうである。そこまでに至らない状態、非常に不足な状態にある場合においては、やはり年金の必要度の多い人に厚みをかぶせていくことが必要であります。本人は老齢になってそういう仕事はできないにしても、農家の場合には、むすこに農地という、熟田という生産手段が残されておる。商店というものが残されていれば、娘でも奥さんでも、やはりそこから収入を上げることができる。ところが労働者の場合にはそれがない。当然そういうような年金というものが非常に重大な要素となる。そういうことで、厚生年金というものが先に発達したわけです。ところで厚生年金が、国民年金法ができます前に三千四百円というベースです。国民年金の方は将来の問題でありますからゼロです。ゼロであったところが三千五百円のベースまで上がった。当然完全な状態でない以上は、必要の度の多い労働者の年金をもっと上げられていかなければならない。それにもかかわらず、このような上げかでは非常に少ない。これについての厚生大臣のお考えを伺いたい。
  300. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 これは減免制度も考えられておるようなわけでございます。
  301. 八木一男

    八木一男委員 厚生大臣質問の意図をちょっとはき違えてお答えになったんじゃないですか。減免と言うが、保険料のことを言っておるのではない。給付の金融が、国民年金が前にゼロであったときに三千四百円、労働者は三千四百円が先にできたのは、もちろんそういう生産手段を持たない、老後の非常に不安であるという条件から生れてきておる。従って国民年金が三千五百円の条件になれば、労働者の年金はもっとたくさんにしなければほんとうの状態に合わないのではないかということを申し上げておるのです。それについての質問です。
  302. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 現在ここで明確にお答えする段階に至っておりません。
  303. 八木一男

    八木一男委員 それでは政府委員太宰局長と、それから関連ある政府委員小山局長のとらわれない御意見を一つ伺いたいと思います。
  304. 太宰博邦

    太宰政府委員 お尋ねの厚生年金の給付は、さらに多くしていく必要があるのではないか、こういう御趣旨かと思いますが、これは私どももその通りに考えております。先ほど御質問にございましたように、こういう年金だけで老後の生活が百パーセントに保障されるということは望ましいことだと思いますが、とても現実の問題としてはそこまで参りません。しかしそれにいたしましても、相当生活のささえになるくらいにはして参りたいということで、その点から考えてみまして、今日の厚生年金の給付も私どもはなお改善の余地はある、かように考えております。しかしながら、同時にこれは保険制度でございますから、それには当然今の被保険者の方々にも保険料を気ばっていただく必要がある、国も相当の額をてこ入れする必要がある、こういう意味合いでございます。それにつきましては、これは逐次内容をよくして参りたい。今回の内容改善それ自体は、先ほど申し上げましたように大体二割程度でございますけれども、これも将来上げて参りたいと思います。
  305. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 ただいま保険局長が言われた通りでございます。
  306. 八木一男

    八木一男委員 そういうふうに上げなければならないということが厚生年金の係の太宰局長のお考えであります。また関連の深い年金局長も同じようなお考えです。厚生大臣のお考えを一つ伺いたいと思います。
  307. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 将来にわたりまして、そうした傾向をたどらなければならないということは、社会保障制度を推進する上において当然だろうと思います。
  308. 八木一男

    八木一男委員 関連のある、労働者保護の立場にある労働大臣の御意見を伺いたいと思います。
  309. 松野頼三

    ○松野国務大臣 厚生大臣と同じ考えであります。
  310. 八木一男

    八木一男委員 先ほどの御答弁の中から、上げなければならないけれども不十分であるということは、十分認められておるわけでありますが、不十分な原因は何かというと、厚生年金保険法は一割五分の国庫負担、国民年金は三分の一の国庫負担、政府の言い方によれば五割国庫負担という言い方でありますが、われわれの言い方をもってすれば、三分の一の国庫負担、これは間違いないと思います。老齢の年金保障というものは、国民に負担の率がかかってはいけない。国民健康保険の例もそうであります。労働者の場合には使用者負担があるから楽だろう。だから国民健康保険の方に国庫負担をよけいするんだというようなことばかり政府側は言っておる。そういうことが通るものだと思っておられる。国庫の支出をそういうような働く者に対して出しているいろいろ保障するときには、一視同仁でなければならぬ。その中で貧しい人に、たとえば日雇労働者健康保険法に国庫負担をたくさん集めて厚みをかけようとしてやる、そういうことなら納得できる。職種の別によって、農民にはたくさん、労働者には少ない、そういうやり方はやるべきでない。貧しい人に厚みをかけるやり方、これは一般的にいい。農民であろうと労働者であろうと何でも同じであります。ところが職種別に、制度別にその厚みのかけ方を違えておる。これは非常な間違いだろうと思います。その間違いまですっかり厚生大臣は検討しておられないだろうと思いますが、明らかに間違いです。間違いを正そうとすると大蔵省の抵抗がある。そういうことではいつまでたっても政治が直らない。そういうことを直すためには厚生大臣はもちろんやらなければならない。労働者が非常に弾圧されておる。非常に不利なものになっておる。従って労働大臣は非常な覚悟を持って厚生大臣に援助をされなければならぬと思うのです。それについての厚生大臣、労働大臣の御意見を伺います。
  311. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 将来はいわゆる総合的な調整をとりまして、国庫負担というものは漸次増額していきたい、かように考えております。
  312. 松野頼三

    ○松野国務大臣 厚生大臣と同じであります。
  313. 八木一男

    八木一男委員 そういうことで、必ずしも三分の一の国庫負担に厚生年金をしていただきたいとは申しておりません。逆な不公平を示してはいけません。これは厚生年金の方が幾分金額が高いわけですから、実額が同じくなるように、たとえば一割五分のままでありましても、平均が八千円くらいになれば実額にして似たようなものになるわけです。高いものに同じような率をかけておれば、そっちの方に厚みがかかってしまう。実額が同じになるような配慮でそういうバランスをとっていただきたい。そうなると厚生年金の方の国庫負担率が少ないか、あるいは給付金額が少ないかという問題、国庫負担率を一割五分のままでもけっこうですが、給付金額をふやせば、それにかかるもとの金額が多ければ、一割五分と片方の三割三分とバランスがとれる。そういうことで厚生年金の金額を引き上げること、もちろん国民年金の金額も引き上げなければいけない。しかしそのバランスをほんとうの実態に即して保ちつつ引き上げていくというような考え方に立ってこの問題に全力をあげていただきたい。今回の改正案は非常に不十分である。それを直すお考えをもちろん持たれなければならない。その問題についての総合的なお考えを伺いたい。
  314. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 先ほどから申しました通り、将来にわたりましてさような方法で検討いたしてみたいと思います。
  315. 八木一男

    八木一男委員 そこで今度国民年金の問題になりますけれども国民手金の方で、労働者の配偶者に対しては任意適用という妙な適用をしてある。国民年金法が出て参りますときに、労働者の配偶者が強制適用になっていないということを指摘いたしました。これは橋本龍伍君が厚生大臣のときにどういう考え方か、こんなことではけしからぬではないかと言ったら、お気づきになりまして、任意適用という制度をとられましたけれども、任意適用というものは、御承知の通り国民年金法にございます免除規定、これが適用されません。そういうことでは非常に不公平である。労働者の配偶者であろうとも、低賃金の労働者の配偶者であったら免除の適用を受ける条件に当てはまる場合は当然である。それが任意適用で勝手に加入したのだから免除はしてやらない、国民をばかにしたやり方である。一視同仁のやり方ではない。これは当然変えてもらわなければならないし、労働者の福祉をほんとうの任務とされておる労働大臣としては、こういう点にお気づきになってやはり助言をされなければいけないと思っております。労働者の配偶者だけがあらゆる年金法からはずれておる。そのもとの理由は、遺族の年金があるから、労働者が死んだ場合に遺族として奥さんがもらえるからといっても、労働者の奥さんはそういう非人間的な人間ではありません。亭主が死ぬのを望んでいる奥さんなんか一人もいない。御主人も長生きして、自分も長生きして、ともしらがで、両方とも当然年金をもらって老後を楽しみたい、これが当然の考え方であります。しかるにかかわらず、労働者の配偶者は遺族年金だけでがまんしろ、その人の老齢年金は要らない、そういうような政府年金政策であります。労働者保護の立場の労働大臣は、こういうことにお気ずきになり、そういうことはよくないと言われるのが当然であるのに、歴代の労働大臣は社会保険についてはほとんど零点に近い。松野さんは一つ優等生になっていただいて、そういうことをしっかりやっていただきたいと思います。
  316. 松野頼三

    ○松野国務大臣 国民年金はまだ一部実施でありまして、全面実施ではございませんので、今日はまずその緩急順序に応じて、一番必要なところから適用になるという意味で、何ら今日遺族保障のないところからさわるのだというふうな方向でこの問題が検討されたのじゃなかろうかと私は推察するのでありますが、将来ともにこの問題は全面適用及び拡大のときには当然議論になることであろう、こういうふうに私は考えておるわけでありますが、昨年、国民年金伏ができた当時は私は総理府におりましたもので、所管ではございませんので、直接担当はいたしておりません。当時は審議会は私は担当しておったが、法案には関与しておりません。私がずっと労働大臣でおれば、将来ともにこの問題は必ず発言いたすつもりであります。
  317. 八木一男

    八木一男委員 少し御理解が間違っておると思います。無拠出国民年金はもうこの三月三日から実施されているわけです。国民年金法は去年通ってしまっている。来年から実施の要件もきまっているわけだ。きまっているときに、労働者の配偶者が不当な取り扱いを受けている。だから直さなければならぬ。こういう間違いがあるので、来年自民年金法が四月から施行されるまでに検討して国民年金法の改正案を出されるということは、厚生大臣は前向きの姿勢で臨んでおられるのですが、その前向きの姿勢で改正案を出されようとするときに、難物は大蔵省です。これを退治るために、一つ労働大臣厚生大臣と御協力になって、変なことじゃなくてよくなるように、もっと御理解を深めてやっていただきたいと思います。
  318. 松野頼三

    ○松野国務大臣 よく検討して善処いたします。
  319. 八木一男

    八木一男委員 そういうことで、これは具体的な方法としては厚生年金保険法の中でやっていただいてもいいのです。厚生年金保険法の中で、配偶者に対する遺族保障ではなしに、その老齢保障をやっていただいても差しつかえございません。そうなれば国民年金法の任意適用ということも考えられる。またもう一つの方法としては国民年金法の強制適用です。これはどちらがいいか、われわれも考えは持っておりますけれども政府にはりっぱなスタッフがおいでになりますから、十分に御研究になっていただきたいと思います。少なくともそういうものをほったらかしにしておいてはいけないということを十分にお考え願いたいと思います。  次に、年金の問題に移りましたから、通算の問題について一つ国民年金の通算の問題につきましては、一昨年の九月、社会保障制度審議会に厚生省から諮問されました。非常に急を要するというので、二日間徹夜に近い状態で審議をして答申を出しました。この問題は非常にむずかしくて、失礼ででございますけれども一ぺんではわからない。じゅずつなぎ方式、小山さんはそういう命名をしておられる。われわれは凍結方式という名前で呼んでいる。それを御答申申し上げたのを別の名前で呼んでいるわけでありますが、両方とも同じです。その方式は次善の策でございますが、少なくともその方式くらいは保ってもらわなければいけない。その内容の一番大事な点は、労働者が職場が変わったときに、たとえば厚生年金保険法では二十年たたなければ年金を支給される権利ができない。ところが十年でやめてしまってよそのところへ行ってまた働く。今厚生年金で一般の局間産業では通算されることになっておりますが、通算されない職場、あるいは通算されない職業——労働者から農民に変わった、商売人になったというような場合には、今まで納めた保険料がかけ捨て、あるいはかけ捨てに近い状態になる。脱退手当金制度はありますけれども、非常にそれは損なのです。そういうことでは年金制度の健全な発達はできませんし、制度なんかどうでもいいけれども年金を受け取る人の老後の保障はされない。制度よりも個人が問題です。そういうことでは困る。困らないようにするためには年金制度中、通算制度というものが最も大事なものになっている。今逆算されているのは厚生年金保険と船員保険の間のわずかなものです。それを完全にというくらいは厚生省も少しは考えておられる。ところがそれでは足りない。労働者と農業の従事者、あるいは零細企業者、あるいは自由業者、あるいは家庭の婦人、そういうところまで完全に通算しなければこの問題の完成はできない。そういうことを小山さんが今一生懸命頭を痛めて考ておられるわけでありますが、それを完全にするためには、まだわけのわからない連中の抵抗がある。そういうわけのわからない連中の抵抗を排除するためには、厚生大臣、労働大臣の偉大なる政治力をかりなければならない。この点で御両所のほんとうに勇敢な前進のお約束を願えるかどうか。
  320. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 本問題につきましては現在研究いたしておりまして、大体今年の半ばごろくらいまでに大体の結論を得たいと思っております。拠出制が施行されまする明年の四月までには何らか法的な措置を講じたい、かように考えております。
  321. 松野頼三

    ○松野国務大臣 厚生大臣と同じ考でございます。
  322. 八木一男

    八木一男委員 労働大臣は直接担当しておありにならないから、少しはおわかりににくいと思いますけれども、労働者保護上非常に大事でございますので、至急に御検討願います。この問題は、御承知の通りおたくにはたくさん権威者もおられますので、一つ御検討になって推進をお願いしたいと思います。  そこで特に重点になりますことは脱退手当金の問題です。     〔藤本委員長代理退席、委員長着席〕 脱退手当金といって、たとえば途中で厚生年金——国民年金の場合も似たような場合が起こると思いますが、二十年経てば権利が発生するわけです。十九年以下だと脱退手当金ですが、脱退手当金というものの計算が非常に不当、不利です。というのは厚生年金は、使用主の納めた保険料、労働者が納めた保険料、国庫負担、その三つから財源が形成され積み立てられている。途中で遺族やなんかに配分されますけれども、その残りが高等数学的に計算されて、残りが二十年から幾らということになっている。そこで途中でやめた人は当然国庫負担分の権利も持ち、使用主からもらった分の権利も持っているにかかわらず、それが全然取っ払われる。自分の納めた保険料に利息をつけたくらいで、これだけやるからお前はぽいということになっているのが今の脱退手当金なのです。ところが途中で職場をやめるということは不幸なのです。健康上の理由か何か、いろいろなことで非常に不幸だ。将来も不幸だ。その不幸な人が老齢になったら老齢年金が一番必要なのです。その人の年金の権利が遮断されて、脱退手当金という一時金でほうり出される。凍結方式をとれば、小さいながらいろいろな年金を合わせてじゅずつなぎになるのです。使用主の出した分、国庫負担分が削除されては何にもならない。それで社会保障制度審議会の凍結方式、厚生省のいわゆるじゅずつなぎ方式の真意は、それであってはならないというので、途中脱退者には、使用主の出した分、国庫負担として出すべき分が権利としてちゃんと計算をされて、その金額が脱退手当金となって、それが年金化されて、そうして今までの十五年分の年金をほかのところに行ってももらう。それが五十五才で始まるものもあれば六十五才で始まるものもある。結局において六十五才をこえればこれがじゅずつなぎになって、そういう老齢の年齢になったときにそれが加算された相当な年金になって老齢が保障されるという方式、そういう方式であるので、その脱退手当金、現在の非常に不当不利な、一番気の毒な人を押し詰めて、この人の当然の権利をしあわせな人が剥奪するというような形式で計算されている脱退手当金そのままで通算制度が行なわれたら、これは魂が入らない通算制度になる。それを直さなければならない。それを直すためには、幾分の国庫負担は覚悟してもらわなければならぬ。二十年後の人は当然の権利として法律上期待権、既得権として確保される。期待権、既得権を侵害することはできない。ところが脱退者に対してそれだけ不利な条件をつけることは、社会保険の制度で非常にいけないことだ。それを直すためには補てんをやはり国庫負担でしなければならないということになる。そういうことを社会保障制度審議会は答申をしているわけです。これは局長、まさかそれを間違って御説明にならないと思いまするけれども、大蔵省あたりはひん曲げて解釈をして皆さんにそういうことをおっしゃったら、ひん曲げた解釈で主張をする、そのときに、断じてその間違いであるということを、厚生大臣、労働大臣は大蔵省を説得して、当然の通算制度が行なわれるように御努力になっていただかなければならない。それについての御決意を伺いたい。
  323. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 保険制度の性格といたしまして、あるいはまた財源上、これは現在の脱退手当というものはどういうふうに取り扱われる方がいいかということについては、かなり重大な問題じゃないかと考えております。これは詳しいことは政府委員から御説明いたさせます。
  324. 松野頼三

    ○松野国務大臣 保険の経理の基本だろうと私は思うのです。当時あるいは末高さんでしたか、社会保障制度審議会からも、国民年金に関しては同じような答申を受けまして、それは保険計数の計算の非常に大きな基本だったのです。それによって保険のすべての財源とかいうものが全部変わってくるのです。従って社会保障そのものの制度から言うならばお話の通りだと思いますが、保険の徴収率とかそういうことからはっきり勘案して考えるべきだ。しかし思想としてはおっしゃるように、脱退されるとほとんど積立金プラスわずかだったと私も記憶します。ほとんど積立金に幾らか足す程度で、利益というものは非常に少ない。あれはぎりぎりが十五年でしたか、一番下になるともっと少なくなる。その辺は非常に議論の多いところだったと私は記憶しますが、それは担当の厚生大臣からいきさつはお聞き願いたいと思います。
  325. 八木一男

    八木一男委員 厚生大臣も労働大臣も、問題が複雑だし、突然申し上げましたからはっきり御答弁をいただけませんけれども、とにかく社会保障制度審議会に政府が諮問をされた。社会保障制度審議会は末高君も来られまして、末高案はあのとき否決になりましたけれども、大内さん、藤林さんから、われわれチンピラを加えまして、一生懸命二日間徹夜状態でやったわけです。そうして結論が出た。当然日経連の代表であって、第一生命の重役である斎藤君も入って、その人たちも納得して——おそらく藤本さんもおられたと思います。そのとき与野党ともに、労働者も資本家もともにこれが最大の結論であるとして出した結論なんです。それにそういう要件が入っておる。それを一方的な解釈でひん曲げないような状態で、社会保障制度審議会にわざわざ諮問され、一生懸命出した答申が、根本的な方向で通算制度が確立されるように、厚生大臣、労働大臣、御努力を願いたいということであります。申し上げたことは、小山さんには事情を全部御承知であります。首を縦に振っておられます。横には決して振っておりませんから、その点で一つ厚生大臣と松野さん、積極的に一生懸命努力するというお返事を賜われば幸いだと思います。
  326. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 社会保障制度審議会ではそのような答申を出しております。その解釈につきまして何かまちまちのようにあなたのお話では聞こえるのでありますが、政府といたしましてはできるだけその真相、答申の内容を検討いたしまして、先ほど申しましたような保険制度の性格、財政上の建前からいたしまして、できるだけ将来の問題について検討したいと思います。
  327. 八木一男

    八木一男委員 私が言うと、何か政府が困ることを言うように誤解して御答弁になっておられる節があるが、そうではない。言うときははっきり言う。大内さんを初め、藤林さん、末高君などは政府側です。末高君、藤林さん、今井一男さん、斎藤さん——ここにおられる斎藤さんではありません、日経連の代表の、数理の一番大家として自負しておられる方です。その人たちが賛成しておられる。藤本さんもおられた。そういうことできまったことであった。社会保障制度審議会設置法第二条第二項に「内閣総理大臣及び関係大臣は、社会保障に関する企画、立法又は運営大綱に関しては、あらかじめ、審議会の意見を求めなければならない。」という厳然たる規定がある。審議会の答申が尊重されなければ、当然内閣として責任を追及されなければならない。尊重されるのが建前であるけれども、それを厚生当局の担当者を通すために一生懸命に研究をしておられるのだけれども、大蔵省というわけのわからぬ連中がよけいな差し出口をすることがあるかもしれぬので、そのときには労働大臣なり厚生大臣なりの有力な閣僚が当然尊重しなければならぬ。厚生省の原局が一生懸命通そうとしていることが通るように、積極的に努力を願いたいということをお願いしておるわけであります。ですから警戒してものを諮るというようなことをなさらないように、率直に御答弁を願いたいと思います。
  328. 松野頼三

    ○松野国務大臣 わけのわからない議論には断じて戦います。
  329. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 御趣旨の線に沿ってやっていきたいと思います。
  330. 八木一男

    八木一男委員 それでは、すべての法律規定、条文ごとにやれば三、四週間はかかりますし、船員保険はまだ一言も言っておりませんし、厚生年金日雇労働者健康保険についても質問があり、田中さん及び斎藤さん、そういう政府原案の熱心な提案者に対して十分に熱心に御質問を申し上げなければならぬのでありますが、きょうは時間が迫りましたから、あと一つ申し上げまして、きょうのところは質問の百分の一で終わりたいと思います。  そこで厚生大臣一つお願いがございます。山林労働者に対して、日雇労働者健康保険法の適用について何回も実情を懇切に御説明を申し上げてお願いを申し上げておるわけであります。もちろん厚生省としては検討を要する問題だろうと思いますが、一つ前向きにできるだけ早く御検討下さって、そのような日雇労働者健康保険の擬制適用を熱望しておる人たちの希望に沿っていただくように御努力を願いたいと思います。一つあたたかい御返事をお願いいたします。
  331. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 擬制適用の問題でございますが、これはなかなか実態がつかみにくいのでございますけれども国民皆保険制度の前提といたしまして、できるだけ御趣旨に沿うて、事務的に早くこれの結論を出したいと思います。
  332. 八木一男

    八木一男委員 その点、どうもありがとうございました。それでは保険局長も、保険局次長も、健康保険課長も、各課員の方も、各局員の方も、厚生大臣の今のあたたかい御答弁をお伝えになっていただいて、厚生大臣の御趣旨、厚生大臣のあたたかい政治の実現するように御努力下さるよう御要望を申し上げておきます。太宰さん一つよろしくお願いいたします。  それから次に、これはちょっと順序がはずれてしまって恐縮なんですが、松野さんに一つ文句を言わなければならぬことがあるのです。最後になって文句を申し上げるのは恐縮なんですが……。労働脚の政府委員の方おられますね。日雇労働者失業保険法のエスカレーター条項は第何条でしたか。
  333. 堀秀夫

    ○堀政府委員 失業保険法三十八条の九です。
  334. 八木一男

    八木一男委員 失業保険法第三十八条の九ですね。「労働大臣は、毎月末においてすでに徴収した保険料総額とすでに支給した保険給付総額の三分の二に相当する額との差額が、その月及びその前三月の四箇月間に支給した保険給付総額の百分の百を越えるに至ったと認める場合、又は百分の五十を下るに至ったと認める場合は、前項の通算して六日又は継続して四日の日数(その自数が、本項の規定により変更されたときは、その変更された日数)について、各々一日を減じ、又は加えるものとする。」という条文がございます。私の知っている範囲においては、この条文はすでに適用されておらなければならないものでございます。それにもかかわらず今までの待期は一日減らされないままに押し通してしまって、今度法律に待期を一日減らすということは出ておりますけれども、しかしながらこれは当然エスカレーター条項を発揮して減らしていただかなければならない。特に対象者は非常に零細な給料、非常に零細な不安定な職業にある。そのような労働者、その人たちが待期一日減少を非常に熱望していることは御承知の通りなんです。現行法の体系上できることです。しなければならない義務のあることが放置されているということは非常に遺憾であります。その点について労働大臣の御所見を伺いたい。
  335. 堀秀夫

    ○堀政府委員 お話のような規定が三十八条の九の末項にあるわけでございます。これにつきまして、今回の政府の案によりますると、お説のように待期を一日減少する、縮少する、このようなことになっております。そこで今回の法案におきましては、この条項を削ることになっております。その趣旨とするところは、待期を一日減少する、それであとの問題につきましては、先ほども説明申し上げましたが、三十四年から三十六年までの収支状況を、これは一般と日雇いとそれぞれ別建でございますが、別々に検討いたしまして、それによりましてこの待期の問題についてはっきりした結論を出したい、このように考えておるわけでございます。
  336. 八木一男

    八木一男委員 将来の問題については、また各論のときに論議をいたしますけれども、現行法上待期を減らさなければならないにかかわらず減らしていないのは、非常に重大なことであろうと思うのです。それについて労働大臣の御意見を伺いたいと思います。
  337. 松野頼三

    ○松野国務大臣 計数のことですから、局長から答弁させます。
  338. 堀秀夫

    ○堀政府委員 失業保険法運用につきましては職業安定審議会にお諮りいたしまして、重要問題についてはそれによって運用しておるわけでございます。このような三十八条の九の末項の規定がございますが、最近の状況にかんがみまするときに、一日増加したりあるいは減少するというようなことをいたしますると、日雇いの失業者側にとりましても、非常に不安定な状況を打ち出すというような意見が非常に強くて、結局今までこの条項を発動したことは、だいぶ前においてはございますが、最近におきまして発動しておらないわけでございます。しかし最近の状況にかんがみまするときに、待期の減少ということは日雇いの失業者の要望でもありまするので、とりあえずこれを一日短縮するということにいたしました。その後の問題につきましては検討いたしまして遺憾のないように、さらに改善について努力したい考えでございます。
  339. 八木一男

    八木一男委員 この条項を適切にすれば、当然待期を一日減少する、今は黒字の状態にある、それはお認めになりますね。
  340. 堀秀夫

    ○堀政府委員 ただいまの状況からいいますれば、そのようなことになります。
  341. 八木一男

    八木一男委員 私は政府追及ばかりしようというわけじゃないのです。労働大臣、こういうことなんです。すでに今の条文で一日減らせるのです。減らさなければいけないのです。職業何とか審議会と言われましたけれども、ここでは、審議会の意見を経てとか聞いてとか、一つも書いてない。労働大臣の責任においてやらなければならないことがやられてない。これはもういいです。済んだことをぎゃあぎゃあ言ってもしようがないので、よくしてもらえばいいのです。別にそれだけ猛烈に追及はいたしませんけれども、こういうことになっておるわけです。  そこでもとに戻りますが、船員保険法の一部改正案はお宅の方ではいい点がある、一日待期などはいい点の一つであるから通して下さいと言っておるけれども、こういうインチキがあるわけです。一日待期は減らせるのに、それはほおかむりしておいて、それを今度失業保険法の中に入れて、ほかのことは猛烈に悪いが、そういういい点もあるからがまんして通して下さいというのはちょっとおかしいと思うのです。これも今晩じっくりお考えになる要件の一つにしておいていただきたいと思います。これはわあわあ言いたいところなんですが、僕はわあわあ言うのはほんとうは好きじゃないのです。よくしたいために言っておるのです。済んだことはどうもしようがないが、これは明らかに労働者の権利の侵害です。黒字があるといっても、それは行政運用が怠慢であったために労働者の中の一番気の毒な、就労日数が少なかった日雇い労働者の中で失業の状態が多かったものがもらうべき金が政府の失業保険特別会計の中に黒字として残された。その黒字はごく少ないものでありましょうけれども、これが理由にされてほかの方に持っていかれて、そういう黒字があるから保険料率を下げてもいいのだというような理由の一つに援用されておる。それでもうけておるのはだれかというと経営者です。ぼんぼんもうけておる。非常に気の毒な人が当然もらうべき金がそういう怠慢によって搾取されておる。それを理由にして使用主の出すものが大負けに負かされておる。そういうことが行なわれておるのですが、それでは困る。そうお考えになりませんか。
  342. 松野頼三

    ○松野国務大臣 今回の改正は日雇いと一般と、二つの問題であります。日雇いの会計と一般の会計とは別個にしております。従ってこれが黒字だからといって、一般の失業保険の問題とは会計は別にしております。従って当然こういう条項と同時に今回そういう条項を恒久化する法律案を出しておるのです。これが黒字だからというわけではありません。全然別会計にしておりますから、その趣旨はおのずから別だと思っております。
  343. 八木一男

    八木一男委員 会計は別だとおっしゃいますが、国庫負担でつながって、おるわけです。国庫負担三分の一を四分の一にしたという理由は、一般の失業保険会計の部分も日雇い失業保険の会計の部分も四分の一でやっていけるであろうということの間違った議論に援用されてこういう間違ったインチキ法案になったのです。国庫負担の点でつながっておるのです。あなたの御答弁は非常に頭のいい御答弁だと思いますが、頭がいいということといい政治とは違うのです。そういうことでなしに、間違った、怠慢であった、悪かったということを率直に認めていただきたいと思います。
  344. 松野頼三

    ○松野国務大臣 三分の一、四分の一はつながっております。同時にこの会計は別々であります。同時に赤字が出たときも別々に処理いたします。従って、その比率はそうだが、その内容については一緒くたにしておるわけではありません。ちゃんと部内では整理して、赤字も整理いたします。全部が赤字でなければいけないというわけではありません。日雇いが赤字のときには、四分の一が三分の一として適用になるわけであります。従って、法律から見れば、表面は一緒ですが、内容運営はおのずから違ってくる、こういう意味で、あたたかい政治をやりたいと思います。
  345. 八木一男

    八木一男委員 非常にあたたかいということをよくおっしゃるけれども、それをほんとうに心の底にしませておいてほしいのです。少なくとも日雇いの方の三分の一は残すというくらいのことは考えてもよかったと思うのですよ。国庫負担というものは一般会計からくる。一般会計の財源は直接税が相当の財源になっておる。累進課税が多い。累進課税というものを負担するのは、日の当たる階級が負担する。国庫負担が少なければその連中はもうかる。一ぺんに四分の一にしなくてもいいじゃないか。日雇い失業保険をもっとよくしなければならぬ点がたくさんある。少なくとも、そういう点は大蔵省との論戦に負けて倉石君がへこたれたとしても、松野さんみたいな精鋭な方が失地回復をして、日雇いの分を三分の一残すというくらいの成果はあげられるはずなんです。それをそのままほったらかされては困る、こういう問題があると思う。これについては、明らかに失業をするような人に損を与えておる。これは当然責任を追及されていいことであります。ほかの委員の方々が追及されるかもしれません。追及するのが当然だと思う。追及しなければ私も任務を怠ると思いますけれども、一応解決の方法として、私の試案ですけれども、それだけの分を、それだけのことを考えられて、当然失業がないように、日雇い失業者の就労のワクを、この穴埋めに、あなたが考えた案よりも一つ足して、就労日数の多いような予算を獲得される考えがあるかどうか、あるいは年末手当や何かをふやされまして、これを埋められる考えがあるかどうか。それがなかったら、あたたかい政治なんて言える資格はない。一番生活の低い日雇い労働者で、しかもそこで職安の紹介がとれなかった失業状態にある人、その人たちの当然もらえる金をひねり取っておいて、穴埋めをしなかったら、これは全く冷たい、氷みたいな政治になる。そういう状態があるんだからということが、一つのりっぱな理由であります。ところが就労日数を、もし二十五日にこのままに今度は要求して通される御決意であったら、それを一日を加えて二十六日にする。夏季手当あるいは年末手当を幾ら幾らに、それならそれにそれだけの分のそういう人たちの損した分を加えて、それだけのことを要求されて、職を賭して通される、そういうような覚悟をされなければ、この怠慢の補てんはつきません。済んだことを戻ってやられるという御意思であれば、戻って追加払いをしていただいてもけっこうであります。しかし、それが行政上むずかしいものであれば、少なくともそのような意味で補てんされ、あたたかいという言葉を言われておりますけれども、少なくとも実態において氷のような冷たいものでない、そのような政治はとってもらいたい、その意味での御答弁を願いたいと思います。
  346. 松野頼三

    ○松野国務大臣 今回は三十五年度予算を御審議いただいて、二十八円の値上げをしたわけであります。就労日数は二十一・五日、また年末、夏季手当について一日増というのは、三十五年の方向としても御審議いただいて、御賛成をいただいておるわけでありますが、この範囲を越えるということは、予算の執行の中でなかなかむずかしいのではなかろうか。善処するところがあれば善処いたしますけれども、一応予算範囲というものは、まだ三十五年四月から、今からやるのですから、その範囲内で何らか方法が出てくるという時期があれば、それは私も善処いたします。今日のところは、まだそれをあらかじめ予言するわけには参りません。一応御審議いただいた線でいく以外にはなかろうかと思います。
  347. 八木一男

    八木一男委員 衆議院で予算案は通りましたけれども参議院ではまだ通っていません。確定しておりません。やろうと思えば今でもできるのですけれども、それはなかなか御無理でありましょう。ですから、補正予算のときに組むなり、夏季手当のときに、大蔵省がけちけち言ったときに、こういうことがあるのだからそういうことを埋めわ合せしなければならないということで、当然夏季手当のときに考えられ、就労のワクを何日ふやされるという強力な理由として、そういうことに最大の努力を願いたいと思います。そういう御努力をなさるという御答弁を願いたいと思います。
  348. 松野頼三

    ○松野国務大臣 御意見はよく拝聴しておきます。
  349. 八木一男

    八木一男委員 拝聴ではなしに、一つこの点は厚生大臣の御答弁を見習っていただきたいと思う。言うとあと何とかだということで警戒をしておられますが、拝聴でなしに、僕はもっと大きな声で追及してもいいのですけれども、確かにそれは手落ちですよ。ですから、それを埋め合わせるために、少なくとも、確約はできなくとも、最大の努力を尽くしますというくらいのお言葉は賜わらなければ、これは引き下がれないわけです。
  350. 松野頼三

    ○松野国務大臣 まあよく考えて、行政に遺漏なきをいたします。
  351. 八木一男

    八木一男委員 実はきょう厚生大臣と労働大臣のお忙しい方を二人並べていただいて御質問したので、だいぶその点は異例であったと思う。異例であったと思うけれども質問を通じて、厚生行政と労働行政が非常に関連があり、両大臣がそろっていないと解決しにくい問題があるということを、なまいきな私の言い分でございまするが、御理解をいただけたと思う。その意味では、特にすべての面でございまするが、社会保障関係の労働者が非常にそでにされている状態ということをなくすために、両大臣が協力して持っていかれるというようなことをしていただきたいと思いますが、これを両大臣どちらからでもけっこうでありますが、御答弁願います。
  352. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 労働大臣とは公私ともに密接な関係にありますので、この点は御安心をしていただきたいと思います。
  353. 松野頼三

    ○松野国務大臣 ただいま厚生大臣が言われた通り、公私ともに密接な関係がございますから、今後とも連絡を密にいたします。
  354. 八木一男

    八木一男委員 それから、あとで申し上げたいと思いますが、申し上げにくいのですが、最近厚生省の方で諸陳情について非常に冷酷な態度をとられておる。それは会わないというようなことをよく言っておられる。これは大臣官房がきめておられのか何かわからないけれども、そういう現状であります。私ははっきり確認をいたしております。これはちまたの声であります。厚生省は非常にその点で冷酷である。ところが厚生省は非常に問題が多い。問題が多いからそういう陳情が多い。従って、行政官としては、ほかの仕事があるから困るというようなお立場がおありになるでしょう。おありになるでしょうけれども、問題の多いいろいろなセクションを担当しておられる方としては、やはり国民の声を聞くという立場を立ててもらいたい。特に厚生省行政は、ほかの通産省みたいに、業者みたいな自分の力を持っている人ではない、ほんとうに国家行政によって何らかの仕事をしてもらいたいという熱望を持って切願をしてくる人が多い。それに対して非常に不幸な民の声を聞かない、われわれの指導する通りついてこいという態度が見えて仕方がない。私のひが目であれば、厚生省の各局長さんにあやまってもけっこうでありますけれども、私はこれはひが目ではないと思う。そういう点について一つ厚生大臣に厳重に戒めていただきたい。政府はやはり国民政府である。各局も国民の局だ。ところが厚生省の担当は非常に弱い人たちが多い。弱い人たちだから、あるいはたまに無理解な願いもあるかもしれぬ。しかしそれは非常に困った立場からなる切望である。そしてほんとうにその十中九までは当然の要望であるとわれわれは思う。それを話すのはめんどうくさい、会わないというような態度が多いと思う。渡邊厚生大臣は非常にフランクにお会いになっていただいておるが、厚生大臣のようなお気持をほかの方々にもっと持っていただかないと、厚生大臣ほんとうの厚生行政に対する気持が、厚生省全体に行き渡らない、厚生大臣と逆の方向をとる、そういう点をぜひお考えをいただきたいと思います。  それから、これは労働省、厚生省両方ですが、国会の答弁、そういうことをいやがるという傾向が少しある。そういうことでは困る。いろいろな用事にかこつけていやがる。重大な四法案が出ておる、そういうときには、少なくとも行政庁の長官としていろいろしなければならないことがあることはわかっております。わかっておりますけれども、そういう案を通そうというときには、当然答弁の任に当たらなければならぬ、いついかなるときも答弁の任に当たらなければならぬという決意を持っておらなければならないと思う。それを大臣の御意思であるかどうか知らないけれども、きょうはかんべんして下さいというようなことを、官房あたりで言うことがある。そういうことでは国会の審議はできません。そういうことにならないように、これは厚生大臣が各部局を御指導になっていただきたい。非常に僭越なこと、言いにくいことを申し上げましたけれども、それ以上例をあげれば幾らでもあげられますが、これは言葉を控えます。全体にそういう傾向が非常に蔓延しておると思いますので、そういう指導厚生大臣がしていただきたい。御答弁願いたいと思います。
  355. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 御趣旨をよく体します。
  356. 八木一男

    八木一男委員 それでは大へんおそくなりましたし、質問はたくさん残っておりますから、まだ数週間ほどやらしていただくつもりでおりますので、きょうの質問は百分の一ほど済んだのですけれども、ここで一応きょうは終わりたいと思います。      ————◇—————
  357. 永山忠則

    永山委員長 この際、本日付託になりました八木一男君外十二名提出失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。     —————————————
  358. 永山忠則

    永山委員長 まず提出者より趣旨の説明を求めます。八木一男君。
  359. 八木一男

    八木一男議員 ただいま議題と相なりましたわが党提出失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由並びにその要旨を御説明申し上げます。  本案の目的は憲法第二十五条失業保険法第一条の精神に従ってその給付の改善をしようとするものであります。元来失業保険制度は失業者の生活の安定をはからんとするものであり、従ってその保険金給付はすべて再就職まで支給されかつ支給される保険金はでき得る限り就職時の賃金に近くなるべきことが本則であります。それにもかかわらず現在の給付期間は最長のもので二百七十日であり、給付日額はわが国賃金水準が先進諸国に比してはなはだしく低位にあるにもかかわらず、その六割の水準をもって決定されており、最高日額が三百円で押えられていること、日雇失業保険金の日額が、二級はもとより一級の場合ですら、扶養家族二名以上もある場合は生活保護基準より下回るなどの実態を考えるとき、その内容の劣悪さに慨嘆せざるを得ない状態にあります。内容改善は当然国庫負担増を主体とし、場合によっては保険料引き上げも考慮して行なわれるべきでありますが、現在のごとく失業保険特別会計の黒字の多大の累積ありかつ黒字基調の延びつつあるときは、それをあげて給付改善に充てるべきことは、およそ失業保険というものを正しく考えるもののすべての結論であります。  われわれは右の考えに基づき給付改善をはかろうとするものでありまして、その内容大綱は、まず第一に給付期間の延長であり、二カ年以上同一事業に被保険者として雇用されていた者は現在それぞれ被保険期間五年未満百八十日、五年以上十年未満二百十日、十年以上二百七十日となっているものを、すべて一律に三百六十五日にしようとするものであり、それに伴って、第十八条の支給期間を一年より一年六カ月に延長しようとするものであります。  第二に、失業保険金の日額の引き上げであり、現在は賃金百額に百分の六十を乗じたものを基準としているのに対し、賃金日額中三百三十円までの金額に対しては百分の八十を乗じ三百三十円をこえる金額に対しては百分の六十を乗じた額の合計額を失業保険金日額とすることとし、その最高金額を現在の三百円より七百円まで引き上げることといたしたのであります。  第三に、日雇い労働者の失業保険金の日額を現在一級二百円、二級百四十円でありますのをそれぞれ二百二十円、百八十円に増額しようとするものであります。  第四に、日雇失業保険の待期日数を現在継続四日通算六日と相なっておりますのをそれぞれ一日を減らし継続三日通算五日といたすわけであります。  第五に、失業者多発地帯において労働大臣が広域職業紹介活動を命ずることができるようにし、そのため職業安定法の一部改正をなし、その場合労働大臣が一定の条件のもとに給付日数の延長をなすことができるよういたしたのであります。  第六に、一定の条件のもとに公共職業訓練を受ける失業保険受給資格者に対する給付延長をはかろうとするものであります。  第七に、失業保険金受給資格者が失業後早期に就職した場合に、一定の条件のもとに就職支度金を支給する制度を新たに設けることにいたしたのであります。  以上が改正内容の要旨でありますが、これを実現するためには当面国庫負担は現状の通り三分の一、保険料は現在の千分の十六を維持することをもって可能であるが、さらに、この法案と一体をなすものである現在継続審議中の第三十一回国会衆法第九号、健康保険法、労働者災害補償法、失業保険法及び厚生年金法の一部改正案すなわち五人未満事業所の社会保険強制適用の法案の具体化等のため、さらに国庫負担を増すべきものであるとのわが党の意見を明らかにして本提案説明を終わる次第であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに大乗的にお考えをいただきまして、満場一致御可決あらんことを心から要望するものでございます。(拍手)
  360. 永山忠則

    永山委員長 本案の質疑は後日に譲ります。      ————◇—————
  361. 永山忠則

    永山委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。医薬品の配給秩序確立に関する問題について参考人より意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  362. 永山忠則

    永山委員長 御異議なしと認め、さように決しました。  なお、時日及び参考人の選定につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  363. 永山忠則

    永山委員長 御異議なしと認めます。  明日は午前九時半より開会することといたし、本日はこれにて散会いたします。     午後六時十八分散会