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1960-03-02 第34回国会 衆議院 社会労働委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月二日(水曜日)     午前十時五十六分開議  出席委員    委員長 永山 忠則君    理事 大坪 保雄君 理事 田中 正巳君    理事 八田 貞義君 理事 藤本 捨助君    理事 滝井 義高君 理事 八木 一男君    理事 堤 ツルヨ君       池田 清志君    大橋 武夫君       亀山 孝一君    齋藤 邦吉君       中山 マサ君    古川 丈吉君       柳谷清三郎君    山下 春江君       亘  四郎君    大原  亨君       小林  進君    多賀谷真稔君       中村 英男君    山口シヅエ君       本島百合子君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 渡邊 良夫君         労 働 大 臣 松野 頼三君  出席政府委員         厚生政務次官  内藤  隆君         厚生事務官         (大臣官房長) 森本  潔君         厚生事務官         (社会局長)  高田 正巳君         厚生事務官         (保険局長)  太宰 博邦君         労働事務官         (大臣官房長) 三治 重信君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      澁谷 直藏君         労働事務官         (職業安定局         長)      堀  秀夫君  委員外出席者         議     員 齋藤 邦吉君         大蔵事務官         (主計官)   岩尾  一君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 三月二日  委員岡本隆一君辞任につき、その補欠として山  口シヅエ君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 三月一日  労働関係訴訟における労働組合当事者適格に  関する法律案堤ツルヨ君外三名提出衆法第  一号)  労働基準法の一部を改正する法律案堤ツルヨ  君外二名提出衆法第二号) は本委員会付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出第三号)  じん肺法案内閣提出第四号)  身体障害者雇用促進法案内閣提出第五五号)  失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法  律案齋藤邦吉君外二十三名提出、第三十三回  国会衆法第二三号)  厚生年金保険法の一部を改正する法律案田中  正巳君外二十三名提出、第三十三回国会衆法第  二四号)  日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案  (田中正巳君外二十三名提出、第三十三回国会  衆法第二五号)  船員保険法の一部を改正する法律案田中正巳  君外二十三名提出、第三十三回国会衆法第二六  号)  船員保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出、第三十一回国会閣法第一六八号)  厚生関係基本政策に関する件      ————◇—————
  2. 永山忠則

    永山委員長 これより会議を開きます。  去る十二月二十九日付託になりました内閣提出労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案及びじん肺法案、以上両案を一括議題とし、審査に入ります。     —————————————
  3. 永山忠則

    永山委員長 まずその趣旨説明を求めます。松野労働大臣
  4. 松野頼三

    松野国務大臣 ただいま議題となりましたじん肺法案及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び概要説明申し上げます。  労働者業務上の傷病に対する予防及び災害補償につきましては、一般労働基準法及び労働者災害補償保険法に基づいて実施いたしているところでありますが、けい肺はその予防が困難であり、一度かかると治癒しがたく、多くの場合労働基準法または労働者災害補償保険法により三年間療養補償を受けた後においてもなお引き続き療養を必要とするのでありまして、またこの点については重度外傷性脊髄障害けい肺と同様であるのであります。そこでこれら二つのものについては、その特殊性にかんがみ、関係労働者保護充実をはかるため、昭和三十年、けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法が制定され、石炭鉱山金属鉱山その他遊離けい酸粉塵を発散する場所で働く労働者に対して定期的にけい肺健康診断を行ない、その結果に基づき一定の者について粉塵作業からの作業転換をはかる等、健康管理について特別の措置を実施するとともに、けい肺及び外傷性脊髄障害にかかった労働者に対して、労働基準法または労働者災害補償保険法による打ち切り補償が行なわれた後さらに二年間引き続いて療養給付及び休業給付支給することとされたのであります。  しかるに、昭和三十二年秋ごろから、けい肺等特別保護法による給付期間が切れる者が生じ、しかもその大部分の者は依然として療養を必要とする状態にありましたので、とりあえずの措置として、昭和三十三年、けい肺及び外傷性せき髄障害療養等に関する臨時措置法が制定され、けい肺等特別保護法による給付期間が切れ、なお引き続き療養を必要とする者に対しては、昭和三十五年三月三十一日まで、療養給付及び傷病手当支給することとされますとともに、政府けい肺及び外傷性脊髄障害にかかった労働者保護措置について根本的検討を加え、昭和三十四年十二月三十一日までにけい肺等特別保護法改正に関する法律案国会提出しなければならないこととされたのであります。  そこで、政府といたしましては、昭和三十三年六月に、けい肺等特別保護法改正に関してけい肺審議会諮問をいたし、同審議会では一年有半にわたり審議検討が行なわれた結果、公益側委員意見を中心に、労使側委員意見を付した答申がなされたのであります。  続いて政府は、補償に関する問題につきまして、労災保険審議会にも諮問をいたし、その意見を聞いた上、けい肺審議会及び労災保険審議会公益側委員意見の線に沿い、これら審議会労使側委員意見をも考慮しつつ、慎重に検討をしたのであります。その結果、予防及び健康管理につきましては、最近における医学進歩粉塵管理に関する技術的研究成果等を基礎として粉塵作業に従事する労働者について適切な保護措置を講ずることとし、その対象についても、医学的にその実態が明らかにされて参りました石綿肺アルミニューム肺等鉱物性粉塵吸入によって生ずる他の塵肺を含めて、新たに特別法を制定すべきであると考えたのであります。また、補償につきましては、労働者災害補償保険法改正して、けい肺等特別保護法及び同臨時措置法補償に関する部分を吸収し、けい肺及び外傷性脊髄障害に限らず、潜水病放射線障害頭部外傷等類似の重篤な業務上の傷病にかかった者及び両手両足切断、両眼失明等重度身体障害を存する者に対して必要な補償を行なうため、これらの者に対する現行の一時金による打ち切り補償費または障害補償費にかえて長期給付を行なうことが必要であると考えたのであります。そこでそのような考えに基づき、それぞれ法律案要綱を作成し、再度、前者の法律案要綱についてはけい肺審議会会に、後者法律案要綱についてはけい肺審議会及び労災保険審議会会に付議いたしますとともに、後者については社会保障制度審議会にも諮問いたし、その結果に基づいて、じん肺法案及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案を作成し、昨年十二月二十九日に提案する運びとなった次第であります。  次に、それぞれの法律案について概要説明申し上げます。  まずじん肺法案について申し上げます。  第一に、現行けい肺等特別保護法では、対象けい肺に限っておりますが、この法律案では、現行法施行の過程を通じ、ようやくその医学的実態が明らかにされて参りました石綿肺アルミニューム肺等鉱物性粉塵吸入によって起こるその他の塵肺をも広く対象としたのであります。これらのものはいずれもその発生原因、治療の困難性等において非常に類似しておりますところから、同様に取り扱うべきこととしたのであります。  第二に、塵肺予防に関して、労働基準法及び鉱山保安法の規定によるほか、技術進歩に即応した粉塵発散抑制措置呼吸用保護具整備着用等塵肺予防のための適切な措置について使用者及び労働者双方努力義務を定めるとともに、使用者粉塵作業に従事する労働者に対して、塵肺予防及び健康管理に関し必要な教育の徹底をはかるべきこととしたのであります。  なお、これら予防に関する技術的措置につきましては、一般事業場における一層の促進をはかるために政府といたしましても積極的に技術上の援助を行なうこととし、衛生工学に関し学識経験を有する粉塵対策指導委員を新たに設けて、各事業場について実地に技術上の援助指導を行なうこととしたのであります。  第三に、労働者健康管理のために、使用者は常時粉塵作業に従事する労働者に対して、その新規就労の際及び三年または一年以内ごとに定期的に、または新たに肺結核にかかったことが明らかにされた者についてはそのつど、それぞれ塵肺健康診断を行なわなけばならないこととし、これらの塵肺健康診断の結果の資料は都道府県労働基準局長提出を求めまして、塵肺診査医診断または審査により労働者健康管理区分決定することとしたのでありますが、これは塵肺症状等決定一般に困難であることと、この決定の効果として、塵肺健康診断の回数が変わり、作業転換勧告等が行なわれることとなりますので、公の立場から公正的確にその健康管理区分決定を行なう必要があるためであります。  第四に、塵肺健康診断の結果、塵肺管理区分三の程度になっている者については、個々の場合の必要に応じ都道府県労働基準局長粉塵作業からの転換勧告して療養を要する段階に至らないよう防止措置を講ずることとし、また、この勧告に従って作業転換促進させるよう、使用者において粉塵作業から転換する労働者に対して賃金の一カ月分に相当する額の転換手当を支払わなければならないこととしたのであります。  第五に、作業転換勧告を受けた労働者について、使用者努力にもかかわらず作業転換が企業内において行われがたく、そのためにやむを得ず離職せざるを得ない労働者に対しては、政府といたしましては職業紹介職業訓練等についてできるだけ適切な措置を講ずるよう努力いたしますとともに、さらに進んでこれら離職した労働者のために就労機会を与えるための施設または労働能力を回復するための施設を設置経営いたしまして、その労働者の生活の安定をはかるよう努力いたすこととしたのであります。  第六に、この法律施行に万全を期するよう、塵肺予防措置等について一層の促進をはかるために関係研究施設等整備充実をはかるとともに、塵肺診断については中央、地方を通じて塵肺診査医を置きましてその公正を期することとし、また、労働省じん肺審議会を設置して塵肺に関する重要事項を調査審議することとし、法施行に遺憾なきょう期しております。  次に、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案について申し上げます。  第一に、現行労働者災害補償保険法では、業務上の傷病療養開始後三年を経過してもなおらない場合には、平均賃金の千二百日分に相当する額の打ち切り補償費を支払い、以後一切の補償を行なわなくてもよいことになっており、ただ、けい肺及び外傷性脊髄障害につきましては、けい肺等特別保護法及び同臨時措置法によりましてその後引き続き約四年間療養給付休業給付等が行なわれることになっているのでありますか、この改正法律案におきましては、けい肺及び外傷性脊髄障害に限らず、潜水病放射線障害頭部外傷等療養開始後三年経過してもなおらないすべての傷病について、必要の存する期間打ち切り補償費にかえて長期傷病者補償を行なうこととしたのであります。  第二に、以上のような長期傷病者との均衡をはかるとともに、外傷性脊髄障害等重度身体障害者に対する対策といたしまして、療養開始後三年以内に症状が固定した場合でも、半身不随、両手両足切断、両眼失明等労働能力を百パーセント喪失した障害等級第三級以上の重度身体障害を残す者については、従来の一時金による障害補償費にかえて長期給付金である障害補償費支給することとしたのであります。  第三に、長期傷病者補償及び長期給付金である障害補償費に要する費用につきましては、傷病特殊性使用者負担増加等を考慮し、長期傷病者補償については、労働基準法による打ち切り補償に相当する部分をこえる部分について、塵肺に関してはその四分の三、その他の傷病に関しては二分の一を国庫が負担し、障害等級第一級から第一二級までの身体障害者に対する長期給付金である障害補償費については、政令で定めるところにより、労働基準法による障害補償に相当する部分をこえる部分の一部を、国庫が負担することとしたのであります。  第四に、今回の改正による長期給付については、現行保険加入制度のままでは労災保険に加入していない事業場において業務上負傷しまたは傷病にかかった労働者で、三年間療養を行なっても傷病がなおらない者あるいはなおった後障害等級第一級から第三級までに該当する身体障害を残す者は、労働基準法による災害補償を受けることができるのみで、これらの長期給付を受けられないわけでありますので、このような場合に対する特別の措置といたしまして、その後かかる事業労災保険に加入するに至って、その事業主あるいはその事業場労働者の過半数が希望するときは、事業主から特別保険料を徴収して、労働者長期傷病者補償または長期給付金である障害補償費労災保険から支給することとしたのであります。  第五に、今回の改正は、けい肺等に対する特別保護措置根本的検討から出発したものである経過にかんがみまして、けい肺等臨時措置法が失効いたします昭和三十五年三月三十一日において、けい肺等特別保護法または同臨時措置法による療養給付支給を受けるべきである者であって、同年四月一日以降なお引き続き療養を必要とする者につきましては、経過措置として、この改正法律案による長期傷病者補償を行なうこととしたのであります。ただ、これらの者は、すでに労働基準法または労働者災害補償保険法による打ち切り補償を受けた者でありますから、これを、新たに三年の療養経過して長期傷病者補償を受けることとなる者に比較いたしますと、少なくとも打ち切り補償分だけは余分に給付を受けていることになりますので、それに相当する額を減額することとしたのであります。  第六に、長期傷病者補償または障害補償費のうちの長期給付金支給を受ける者が、同時に厚生年金保険法等障害年金または国家公務員共済組合法廃疾年金を受けることができる場合には、その者に対する当該長期給付金の額は、これらの障害年金または廃疾年金のうち、国及び使用者負担割合に相当する額を減じたものといたし、また長期傷病者補償及び障害補償費のうちの長期給付金につきましては、労働省で作成しております毎月勤労統計による全産業の労働者平均給与額が百分の二十以上変動した場合には、その比率を基準としてその額を改訂することとしたのであります。  以上申し述べましたこの改正法律案内容につきましては、他の社会保障制度と関連する問題もあり、将来社会保障に関する制度全般調整がなされる機会におきましては検討を加えなければならないと考えておりますが、そのような見地より国庫負担厚生年金保険障害年金等との調整及び賃金情勢の変動に伴う長期給付金の額の改訂につきましては、本法案に定める措置を当分の間のものとし、そのような機会検討して必要な措置を講ずることとしたのであります。  以上が、じん肺法案及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案提案するに至った理由及びその概要でございます。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。
  5. 永山忠則

    永山委員長 両案に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  6. 永山忠則

    永山委員長 次に去る二月十七日付託になりました内閣提出身体障害者雇用促進法案議題として審査に入ります。     —————————————
  7. 永山忠則

    永山委員長 まずその趣旨説明を求めます。松野労働大臣
  8. 松野頼三

    松野国務大臣 ただいま議題となりました身体障害者雇用促進法案につきまして、その提案理由及び内容の大綱を御説明申し上げます。  最近におけるわが国経済の進展により、雇用情勢一般に好転しつつあるところでありますが、身体障害者は、その障害のために就職機会が少なく、一般に比べ多数の者が失業または不完全就労状態に置かれているのであります。  政府といたしましては、これまで、職業紹介の強化、職業訓練充実等行政措置の推進をはかり、身体障害雇用促進努力して参ったのでありますが、なお、その就職は困難な実情にあるのであります。  諸外国の状況を見ますと、現在すでに十数カ国が身体障害者雇用について立法措置を講じており、また、昭和上年には、国際労働機関第三十八回総会において身体障害者職業更生に関する勧告が採択されているのであります。  これら諸般の情勢にかんがみ、労働省は、身体障害者雇用促進について根本的対策を講ずる必要を認め、各方面の意見を求めつつ鋭意検討を進めて参りましたところ、このたび成案を得るに至りましたので、ここに身体障害者雇用促進法案提出いたし、御審議を仰ぐこととした次第であります。  次にその内容概要を御説明申し上げます。本法案は、身体障害者が適当な職業雇用されることを促進することにより、その職業の安定をはかることを目的としておりますが、その具体的措置として第一に、身体障害者雇用促進するため、公共職業安定所は、求人者に対して、求人の条件についての指導雇用に関する技術的事項についての助言を行ない、また、身体障害者に対しては、就職後においても作業環境に適応させるために必要な指導を行なう等、公共職業安定所業務をさらに充実することといたしました。  第二に、身体障害者就職を容易にすることを目的として、都道府県は、事業主に委託して、身体障害者能力に適した作業環境に適応させるために適応訓練を実施することとし、これに必要な経費の一部を、国が補助することといたしました。  第三に、国及び地方公共団体等に対しまして、身体障害者雇用率を定め、任命権者はこの率以上であるようにするため、身体障害者採用計画を作成しなければならないことといたしました。また、民間の一般雇用主に対しましても、身体障害者雇用率を定め、雇用主は、この率以上であるように身体障害者を雇い入れるように努めなければならないこととし、公共職業安定所長は、必要があると認める場合には、百人以上の労働者を使用する事業所雇用主に対し、身体障害者の雇い入れ計画の作成を命ずることができることとして、その雇用促進をはかることといたしました。  第四に、通常の職業につくことが特に困難である重度障害者に対しましては、その能力にも適合する特定の職種を定め、これについては一般身体障害者雇用率とは別に重度障害者雇用率を定めることによって、重度障害者についてもその就職促進が円滑に行なわれるような措置を講ずることといたしました。  第五に、身体障害者雇用促進に関する重要事項を調査審議させるため、労働省身体障害者雇用審議会を設置することといたしました。  以上のほか、身体障害者雇用促進について、政府国民一般の理解を高めるため必要な措置を講ずるとともに、労働大臣身体障害者職業安定に関し必要な事項についての調査研究に努める旨を規定いたしました。  以上、この法律制定理由並びに法律案概要を御説明申し上げた次第であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御可決あらんことを御願い申し上げます。
  9. 永山忠則

    永山委員長 本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  10. 永山忠則

    永山委員長 第三十三回国会において提出され、本国会に継続されております齋藤邦吉君外二十三名提出失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。
  11. 永山忠則

    永山委員長 すでに本案趣旨につきましては、第三十三回国会において説明を聴取し、十分御了知のことと存じますので、この際これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 永山忠則

    永山委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  第三十三回国会齋藤邦吉君外二十三名提出失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律案、第三十三回国会田中正巳君外二十三名提出厚生年金保険法の一部を改正する法律案日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案及び第三十一回国会内閣提出船員保険法等の一部を改正する法律案、以上五案を一括して質疑を行ないます。質疑の通告がありますので、これを許します。田中正巳君。
  13. 田中正巳

    田中(正)委員 ただいま議題になっていますこの四法のうち、失業保険法の一部を改正する法律案の一点に集中をいたしまして、政府に若干質疑をいたしたいと思います。  そこで、まず昨日齋藤委員から厚生省に対しまして御質問があったと同じ趣旨でありますが、政府は、このたび船員保険日雇い保険、あるいは厚生年金保険一緒失業保険法の一部改正についても、これを一本の法案としてお出しになったのでありますが、私どもといたしましては、かようなそれぞれに性格の違った法律というものは一緒にいたさずに、それぞれ別個の法案提出すべきものであるというふうに考えているわけでありますが、政府はこの点についてわれわれと所見を異にいたしまして、これらを一本の法律でもってお出しになったのであります。これに対して、一体政府はこのような法案提出の仕方がよろしいというふうにお考えなのか、あるいはまたそうでないというふうにお考えになるのか、この点について一つ答弁を願いたいと思います。
  14. 松野頼三

    松野国務大臣 昨年の四月に提案になったものでございまして、すでにもう一年にならんとするものでありますが、当時の状況としては、御承知のごとく社会保険全般調整という趣旨から、こういうものを一本で出す方がよかろうという趣旨で出炭したわけであります。いまだに御審議中でございますが、どちらがいいかということは、これはいろいろ議論のあるところと思います。しかしこれは調整という意味で一本にされたのじゃなかろうか、こういうふうな考えでおります。
  15. 田中正巳

    田中(正)委員 労働大臣はこれらの各種社会保険調整、こういう御趣旨で一本にお出しになったというふうに御答弁になるのですが、確かにこの法案内容を見ますこと、それぞれの制度調整ないしは財政的な調整、こういったような金の面が先に出た調整というものは、これは否定すべからざるものがあると思うのでありますが、やはりこれらの社会保険それぞれのあるべき姿に向かって進むべきものであって、財政的調整が先に出るといったようなことでは、実は制度の今後の円滑なる、また健全な発達のためには取るべき態度ではないと私は思うのであります。なるほど財政的な調整ということも非常に大切な要素ではあると思いますが、それにも増して、それぞれか行くべき姿に進んでいくといったような格好でいかなければならないというふうに考えるときに、やはりこのような法案提出の仕方については、われわれはどうも納得がしかねるわけでありまして、私どもとしては、今後ともいろいろあるだろうと思いますが、一つさような態度は絶対お避けになっていただきたい。われわれが根本的に考えるところによりますと、一つ法案が出て、それと密接不可分な関連において、他の法案の一部を修正せざるを得ない。たとえば、ただいま出ております労働者災害補償保険法労働省設置法の一部を改正をしなければならないといったような程度においては、これは一本にお出しになることもあるいはよろしいかと思いますが、このようなそれぞれ違った制度についての改正を一本の法律に立ててお出しになる。特にまた労働省といたしましては、他省の法律でありますところのこれらの他の三法案一緒にお出しになるということについては、どうも私どもは納得できませんので、今後こういう点については十分一つ検討を相願いたい、かように思う次第であります。  次に、この失業保険法の一部改正法案の重大なる眼目でありますところのいわゆる政府の負担金の問題であります。従来失業保険につきましては、実は三分の一を政府か負担をすることになっておったわけであります。労、使、政府、おのおの三分の一ずつを出すといったような建前でずっときておったわけでありますが、このたび政府の負担分を四分の一に下げるといったような、従来にないような財政負担をするような格好になって参ったと思うのでありますが、これらについて一体政府はどのようにお考えになるか。もちろんこれについてはいろいろなやり方があると思いますが、従来からこのような制度については、それぞれ三者三分の一ずつ出すという大きな建前というものをこの際くずすことに相なるのであります。これらについて政府は一体どういう根拠で、どういうお考えのもとにここのような今までのやり方をくずして、このような方向に持っていこうとするのであるか、その辺について御答弁を承りたいと思います。
  16. 堀秀夫

    ○堀政府委員 今回の改正は、ただいま大臣から御説明いたしましたように、現行各種社会保険制度の費用負担の調整を行ないまして、それを基礎にして各制度の全体について均衡ある発展をはかろうとする趣旨でございます。国庫負担三分の一という問題につきましては、これは労、使、国庫、それぞれ三分の一を負担するというような考え方から、これも一つの筋かあるところであると考えます。各国の失業保険制度状況はどうであるかと申しますと、田中先生御承知のように、三分の一というふうに規定したところもございますし、それ以外の負担区分のところもございますけれども、要するに各国の失業保険制度の沿革、社会的、経済的事情等によりまして、いろいろ異なっておるところでございます。現在の国庫負担率を四分の一にした場合におきまして、収支見込みがどのくらいになるかと申しますと、昭和三十五年度におきまして一般失業保険では約百二十八億円の余裕が見込まれるわけでございます。これは保険料率を千分の十四に引き下げたものとして計算いたしまして、以上のような計算になります。保険収支に赤字が生じた場合には、国庫負担総額が保険給付総額の三分の一程度になるまで赤字額を補てんするということに政府案はなっておるわけでございます。このようにいたしますれば、最近の失業情勢のもとでは、三分の一を四分の一に引き下げましても対処し得るのではないか。(「給付内容をよくすればいいじゃないか」と呼ぶ者あり)そういう引き下げることにつきましては、失業保険だけの見地からしますと、一見後退のようにも見えますけれども、先ほど御説明申し上げましたように、国民年金制度の創設、それから国民皆保険の実施、このようなことか行なわれるこの機会に、全体としてその費用負担の調整をはかる、このような趣旨に出ましたことを御了承願いたいと思うのでございます。なお給付の点につきましてはいろいろな問題もございます。これにつきまして、政府といたしまして最初、昨年出しましたときの考え方といたしましては、給付の面につきましては、社会保障制度審議会等におきまして、他の社会保険との総合調整をはかりながらどのように発展させていくかということについて御諮問を申し上げておるわけでございますので、これらを待って善処いたしたい、このように考えておるところでございます。
  17. 田中正巳

    田中(正)委員 引き下げた理由等についてはただいま御説明があったのでありますか、ただいま、いろいろと不規則発言がありますが、かように政府の負担金を減らしてよろしいような状態であるならば、また減らさなければならないような状態であるならば、一つ給付内容の改善をしたならばどうであろうか、こういう意見も実は世間にあるわけであります。そういうこともあるのでありましょうから、そういう背景のもとに実は議員提出法律案として給付の改善をはかるような法律案が出ておるわけであります。その内容等についてはいろいろ問題があろうかと思いますが、それらの問題の詳細についてはまた後刻御質問申し上げるといたしまして、これらの議員提出法律案に盛り込まれたところの給付内容の改善と申しますか、政府原案に対するところの上向きと申しますか、こういったような点がいろいろあるのでありますが、これらについて一体政府はどのようにお考えになっておるか。また先ほど申しますように、一応の検討を終えてからお出しになるというようなお立場で、議員提出法律案に盛られた内容と一体どのようにあなた方は調整してお考えになるか、その点について御説明を承りたいと思います。
  18. 堀秀夫

    ○堀政府委員 政府の当初の考え方といたしましては、先ほど御答弁申し上げましたように、全体としての社会保険給付内容の総合的検討をいたししましてから考えたいと思っておったところでございます。しかしながら、最近の失業情勢雇用情勢、それから関係各方面の御要望等をあわせて考えてみますときに、当面このくらいのものはぜひやった方かいいではないかと思われる点が二、三あるわけでございます。今回議員提案になりました内容は、職業訓練期間中において失業保険の給付を延長するという点、それから特別に失業情勢の悪いような地域において広域職業紹介命令が出ましたときにおいて給付期間を延長するというようなこと、それから早期に就職いたしましたときには就職支度金を支給する、このような点でございます。これらはいずれも最近の情勢からいたしまして関係者が非常に緊急に要望しておるところでございます。これらの点につきましては、そのような情勢がございますので、政府といたしましては、これに対して異存はないところでございます。
  19. 田中正巳

    田中(正)委員 そういう内容を持った議員提出法律案が出ておりますが、ただいまの御答弁で、政府としてはこの点についてはさしあたりやっても差しつかえない、こういう御答弁のようであります。これらの問題について最近の雇用失業状態あるいはその他諸般の状況から見て関係者の間にも要望が強い、こういう御説明でございます。これらの内容については提案者の方にお聞きするのがあるいは至当かと思いますが、こういうような内容はちょっと拝見いたしますと、現在非常に問題になっているところの炭鉱離職者の問題と一番密接に関連があると思うのであります。もちろんこういったような炭鉱離職者等の方々に対する施策が必要であることは容易に想像ができるのでありますが、これは一体そういうものだけを対象にしているものであるか、あるいはまた他の一般のこのような状態が起こったときにもいろいろ適用するものであるか、その点について政府の御所信を承りたいと思います。
  20. 堀秀夫

    ○堀政府委員 最近の雇用失業情勢は、全般的に見ますと御承知のように順調に好調な歩みを続けておる、こういうことがいえると思うのでありますが、産業それから地域等の特殊な部分につきましては、御承知のようにいろいろ摩擦面が出ておるというきわめて微妙な情勢にあるわけでございます。特に炭鉱につきましては、ただいま先生御指摘のように、失業情勢は非常に悪い、このような情勢でございます。政府といたしましてはさきに炭鉱離職者臨時措置法案を提出いたしまして、これを目下実施に移しておるところでございますが、まだまだいろいろ問題があるわけでございます。そこでかりに今回の議員提案にかかる失業保険法改正が実施される暁におきましては、どういうようなことになるであろうかということを考えてみますと、これはあながち炭鉱離職者というふうに限っておりません。特にたとえば就職支度金というような問題につきましては、全般的な被保険者が対象になるわけでございます。また職業訓練中のものについて期間を延長するというようなことにつきましても、全般的に対象になるわけであります。それから特別な地域について広域職業紹介が行なわれる場合の給付の延長につきましては、これは政令の定めるところにより指定することになっておる。その基準も政令できめることになっております。これらの点につきましては、成立いたしましたときにおきまして、私どもといたしましては職業安定審議会等の御意見を十分伺いまして、基準内容考えたいと思っておるところでございますが、やはりその内容といたしましては、失業情勢が非常に悪いというところが対象になる。従いまして炭鉱離職地帯かその最も大きな対象になるであろう、このように考えられておるところでございます。それから職業訓練の問題につきましても、これは、やはり事実上炭鉱離職者というものがその中の大きな部分を占めるであろうということが考えられるところでございます。
  21. 永山忠則

    永山委員長 滝井委員
  22. 滝井義高

    ○滝井委員 議員立法はあと回しにして、船員保険法等の一部改正法律案について先に質問をいたします。  渡邊厚生大臣も御承知の通り、現在の内閣は政党内閣であります。船員保険法等の一部改正法律案を内閣が国会提出をするについては、十分与党の政策審議会なりその他と打ち合わせの上で御提出になっておると思うが、そう理解して差しつかえありませんか。
  23. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 この四法案を全部一括して提案をいたしたということには、私は前から多少無理があると、かように思っておったわけです。自然の姿で今度議員立法といたしましてばらばらにした、こういう方がこの法案審議の上からかえって便宜じゃなかろうか、こういうことであります。もちろん党の御意向等も伺いましたし、また政府といたしましてもその方が便宜である、こういう建前からいたしたわけであります。
  24. 滝井義高

    ○滝井委員 それならば、政府提案船員保険法等の一部改正案を御撤回になったらどうです。
  25. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 いや、ばらばらにやった方が法案審議の上から便宜であろう、こういうことで私どもおるものでありますから、このような議員立法にしたということに私ども異議はありません。
  26. 滝井義高

    ○滝井委員 実は内容か違うわけです。船員保険法等の一部改正法律案内容と、今回与党の方で出された四法と内容が違うわけです。全然同じものならばばらばらにしたらよかろう、こういうことになるのですが、内容が違うのです。だから政党内閣が閣議決定をし、与党の政策審議会の意向も聞いて出た法案と全く違ったものを今度は与党が出してくる。一部は同じですよ。しかし全部同じじゃないのです。そういうものは政党内閣の建前としては違うのです。それならばこの法案を与党で御修正なさったらよいのです。それとも政府が撤回するか、どちらかでなければならぬと思う。今までこういう出し方は例がないのです。それならば修正案で出すべきだと思う。気に食わないところがあるなら修正されたらいい。
  27. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 ともかく一応出した以上は、これは内容がさほど違っておるわけでもございませんから、十分御審議の上、今後この法案の結実をさしていただきたい、かように考えております。
  28. 滝井義高

    ○滝井委員 内容はさほど違わないということでなくて、たとえば失業保険の部門なんかは重大な修正を加えておるわけです。大いに違うわけです。予算がくっつくわけです。ところが、今度は船員保険失業部門は、どうなっておるかということです。これは与党が失業保険に加えたと同じような修正を加えますか。
  29. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 政府といたしましては、昨年の通常国会にお願いいたしまして、ただいま御審議政府案でありますが、施行期日その他については、今日になりますると適当でないものもあるかと思いますが、中身においては今日なお妥当なものと考えておる次第であります。議員の方で、議員提案でお出しになったものにつきましては、これまた別個であろうと思います。  なお船員保険関係について、議員立法で失業保険でお出しになったものとの関連でございますが、政府の方といたしましては、船員保険の現状からいたしまして、必ずしもああいう修正を今日の政府案につけ加える必要はない、かように考えております。
  30. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、何も船員と一般の労務者とそう区別する必要はないのですよ。もしあなたの方で、さいぜんの労働大臣答弁のように、この失業多発地帯の支給とかそのほかの給付の延長の問題は当然必要だ、われわれ受け入れる用意があるんだ、こういうことになれば、船員保険にもそれに見合った給付の改善をやるのが当然です、同じ失業保険ですから。しかも船員保険の方においては国庫負担を四分の一に下げるのでしょう。お下げにならないのですか。
  31. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 陸上の失業保険の関係におきましては、いろいろ失業の多発地区というようなことで、それに対して何か施策したらどうかという御議論はあり得るところであろうと存じますが、船員保険の関係におきましては、今日の状態においては格別失業の多発地帯というものもございませんし、船員の失業について格別新しい事態が起こっておるというふうにも考えておらぬわけでございます。この辺は陸上の失業状況と海上の労働者失業状況とか違っておる。こういうことから、私どもといたしましては検討はいたしたのでございまするけれども、今日のところは、船員保険の関係におきましてはそういう新たなるあれをする必要はない、かように考えておる次第であります。
  32. 滝井義高

    ○滝井委員 私は陸上と同じものをやれというのじゃないのです。陸上にそういう改善をやったならば、海上の方の船員についてもやはり何かそれに類似した改善をやるべきだという主張なんです。これは、四分の一に下げたことは間違いないでしょう。その点の御答弁がなかったのですが、下げておるはずなんです。
  33. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 下げる方は下げております。
  34. 滝井義高

    ○滝井委員 下げる方は下げて、議員立法では、一般失業保険には改善を加えた、船員保険にはやらない、こういうことで、明らかに厚生省の所管のものと労働省の所管のものと食い違うのですよ。一つの内閣が政策を出す場合に、与党が労働の方は気をきかしてやった、ところが厚生の部門はそれをやっていない、こういう片手落ちはないですよ。委員長、この問題については内閣の法案提出の問題もからまって参りますので、これはきょう、予算委員会はもう午前中で終わるはずですから、午後は一つ岸総理に、この前のお約束もありますから、来てもらいたいと思うのです。そして、政党内閣におけるこういう法案提出の仕方について、われわれは根本的に聞きたいのですよ。午後一つぜひ岸総理の御出席をお願いします。これはこの前のお約束もありますし、どうせ厚生をやるわけですから……。  次は、今度のこの船員保険法等の一部改正提出する理由として、各種社会保険を総合調整するということがいわれておるわけです。これは一体どういうことを総合調整されておりますか。
  35. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 御承知の通り国民皆保険と国民皆年金というようなことにつきましては、昨年の国会において国民健康保険法の全面改正が御審議の上通過いたし、また国民年金法も新たに通過いたしました。これによりまして、国民の希望して起りました医療保障及び所得保障に関しましては、まずまず二つの大きな柱が打ち立ったということかいえると思います。しかし政府といたしましては、それの内容についてはさらに充実をはかる必要かあり、また各種の医療保険なり長期保険が、それぞれの沿革的な理由はあるにしろ、今日発達いたしております。それについて相互間の調整をはかる必要がある、かような見解に立ちまして、ただいまそれぞれの制度全般にわたる総合調整のことについて検討もいたし、また内閣に設けられました社会保障制度審議会に内閣総理大臣から御諮問を申し上げている段階でございます。当法律案におきましては、そのうちのはしりと申しますか、さしあたり財政面につきまして若干の調整をはかりたいということでございまして、この国庫負担の問題あるいは保険料の問題というようなものにつきまして調整をはかりたい。もともと、この法律のうち、船員保険及び厚生年金に関しましては、二十九年の全面改正のときからいわゆる修正積立方式をとりまして、五年ごとに財政の再検討をして、漸次平準保険料率まで引き上げていく建前のもとにやっておりました。その時期と合わせまして、ごく一部であろうかと存じまするけれども、ただいまのような調整をいたしたわけでございます。
  36. 滝井義高

    ○滝井委員 大臣にお尋ねしますが、この前の質問以来、とにかく皆保険政策なり年金政策を遂行する上において、今年度から来年度にかけての課題というものは社会保険の総合調整をやることだ、もう一つは医療制度の根本的な検討をやるのだ、いわばこの二つが一番大事なんだということを、この前お認めになたわけですね。そこで、総合調整をやる、それには昨年以来社会保障制度審議会諮問をしております、こういう御答弁だった。従って、一体どういう工合に総合調整するのだということは、もうしばらくかすに時日をもってして下さいというのが大臣の御答弁だったわけです。そうしますと、そういうふうに、一方では諮問をしておさながら、一方では政府は総合調整をとやるのだといっておる。松野さんに、今この四法を、どうしてこういう法案出し方をしたのだと与党がお尋ねになった。そうしたら、それは社会保険各法の調整をやるためにやったのです、こういう答弁をされたのです。そうすると、あなたの方は諮問機関である内閣の社会保障制度審議会諮問をしておきながら、一方においては総合調整をしてこういう工合にやっております。これは矛盾するじゃありませんか。大事な四つの、年金なり船員保険なり日雇いの健康保険なり厚生年金というようなものを総合調整をやっているじゃありませんか。あと一体やるものは何が残るかということです。しかもこれは三十八年までいじらぬのでしょう。これを見ますと、三十八年三月三十一日までには所要の改正の手続をとる、こうしておりますが、一応これは暫定的なものであても、ここ二、三年というものはこれでいくわけですよ。そういう点で、あなた方の今までの言うことと、この法案出し方とは矛盾しているのですね。総合調整制度審議会の答申を待てやると言うかと思うと、一方においてはこういう総合調整をおやりになっております。これは一体どういう関係になるのですか。制度審議会の答申でまた総合調整が出たら、すぐまたこれは改正されるのですか。そういうことならばお待ちになったらいい。保険経済は黒字ですから、あわてることはないのです。総合調整も何もしなくていい。健康保険も黒字になっておる。日雇いだけなんです、困るのは。だから、日雇いは国庫負担をおやりになったらいい。これは総合調整との関係は一体どうなんですか。
  37. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 先ほど申しましたごとく、厚生年金保険及び船員保険の長長期部門につきましては修正積立方式をとっておりまして、漸次保険料率を平準の料率まで引き上げて参りたい、それも一挙にいたしますといろいろ支障を来たしますので、段階的に引き上げて参りたい、こういう政府の方針のもとに、二十九年から毎五年日ごとに財政の再検討をいたします。そこで一昨年から昨年にかけて検討いたしました結果、さしあたりその長期部門についての保険料率を一般男子の場合におきましては千分の五を引き上げたい、こういうことに相なったわけであります。しかしそれだけでもってやってもいいのでございますけれども、また片方において失業保険の部門につきましては、これは申し上げるまでもなく最近相当給付に余裕が生じました。かような点にいては片方で上げる場合、料率を上げるということはなかなかやはり政府としては考えねばならない面かございまするので、そういうようなものをなるべく国民なり被保険者の負担を軽くするという意味において、その間の調整をはかる。これは制度審議会に御諮問いたしましたときにも、それはまずよかろうという大多数の御意見で、これは是認されておるわけであります。ただそのときに社会保障制度審議会といたしましては——ただいまは料率の問題を申し上げたわけでありますが、そのほかに国庫負担の問題もあった。しかしこれだけではどうも自分たちとしては不十分だと思う。やはり制度全般について総合調整をいたすべき時期が来ているんじゃないか。従って政府社会保障制度審議会に対して、そういう制度全般について検討調整をはかるべきときであると思うが、そういう気があるならば当然この際諮問すべきでないか、こういう御意見がございました。私どもといたしましては、なるほどそれは考えておったところでもあり、御意見としとてもごもっともであるということで、追いかけまして総合調整に関して社会会保障制度審議会諮問をいたしました。こういう経緯でございます。従いましてこの法律案に盛っております分につきましては、社会保障制度審議会の答申を受けておる次第でございます。
  38. 滝井義高

    ○滝井委員 社会保障制度審議会の答申をお読みになると、必ずしも全般的に賛成とは書いてない。「要は、負担能力の分析にあることを忘れてはならない。全体としてわが国の社会保障の前進を図るために、各種社会保険に対する国庫負担のバランスを手直しする必要もあり得ようが、そのために、またその際も、各種共済組合をはじめ、その他の社会保険に対する国庫負担や整理資源の処理方法や、積立金のあり方等については、個々に制度をいじるべきではなく、総合的見地から、これを根本的に再検討する必要がある。つぎに、各種社会保険にいての法律改正に対する当審議会意見を述べると、厚生年金保険について、政府がその育成強化を図ろうとしていることは、妥当と考えられる。しかし、標準報酬、保険料率の改訂などについては、慎重な態度が望ましい。また国民年金との関係における通算調整も、忘れてはならない。」とこう言っておるのです。いわゆる前文は、これをおやりなさいとは言っておらぬのです。なるほどここにあるものについてはやむなく、具体的な諮問か出たんですから、これは賛成だ、反対だとは言っておりませんよ。しかし総合的な見地から述べた前文というものは、これは端的によろしいとは言っていないんですよ。船員保険法等の一部改正法律を去年の四月にお出しになっておって、今までこれが通らなくても、保険経済の運営に支障を来たしていないわけです。なぜ支障を来たしていないかというと、必要がないからです。一体これを速急にやらなければ、どこか火がつくところがありますか。これをやらなければ保険経済の運営が大へんだというものがあれば、お示し願いたい。
  39. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 ただいま社会保障制度審議会の答申を一部お読みになりましたが、そのもっとあとの方に、申し上げるのを控えますけれども、「基本的」云々ということで「早々に、当審議会諮問されることを要望する。」という段がございまして、これに基づきまして、政府としては全般についての総合調整の基本的構想について御諮問申し上げたいということでございますので、この点は申し上げておきます。  それからただいまの御質問の、この改正が一年延びた、延びたことによって何ら別に火がついておらぬじゃないかという趣旨の御質問であったかと思います。政府といたしましては、政府国会に御提案いたしました法律案につきましては、慎重な御審議はもちろんのことでございまするけれども、ぜひ早急にそれが御賛同を得て通過することを希望しておるわけでございます。一年間延びたということは、これは国会の御事情でございまするから、私どもはとやこう申し上げませんけれども政府としてはできるだけすみやかにこれを通していただきたいということを希望いたしておる次第でございます。格別個々の点について火がついておらぬじゃないかというようなことでざいますが、これは物事の考え方でございまして、私ども厚生年金保険法あるいは船員保険法法律の条文によって、いわゆる五年ごとに再計算をして、そうして修正積立方式によって平準料率にできるだけ早く引き上げていく、こういうことを私ども行政当局としては課せられておるわけでございまするから、その法律の規定に従って忠実にやって、その結果やはりある程度引き上げていただく必要があるということを考えたわけでございます。  それからもう一つには、給付内容につきまして、最近厚生年金保険なりなんなりの給付内容というものも、もう少しまだ食い足りない、もう少し魅力あるものにしなければならぬ、こういうことが言われておることは御承知のところと存じます。そういう点にかんがみまして、私どももちろん給付内容をよくするということは、同時に財政負担を伴うものでございまするから、それとの見合いを考えて参らななければなりませんけれども、できるだけすみやかにその内容をよくしていきたいということについては、私どもは火がついているとあるいは考えても差しつかえない問題ではなかろうか、かように考えておる次第でございます。  かような点からいたしまして、御意見は御意見として承っておりますが、私どもといたしましては相なるべくば、慎重御審議の上ではありまするけれども、早急に御賛同いただければありがたいと存ずる次第でございます。
  40. 滝井義高

    ○滝井委員 前段の方ですが、社会保障制度審議会はどういうことをいっておるかというと、どうも政府のやり方が、大所高所からものを見ていない。どうも当面の失業保険の国庫負担を下げるということに急にして、全般を誤っておるのだ、だから一つ社会保障制度審議会としては広く大所高所から考える必要があるぞ。だからお前の方で諮問を出せば、いつでも意見を聞きますぞといって催促しているのですよ。一番最後の方をごらんになると、「当審議会は、社会保障制度全般について、広く大所高所から、これらの諮問に応える用意があることを申添える。」こう書いてある。これは大内先生の方から催促をされて、あなたの方は、それなら出さなければいけないということで出しておる、そういう形です、この出ておる文書の結果を見ると。そうして今単なる理由は、五年ごとになるほど厚生年金は経済全般を検討しなければなりません。がしかしこれをやるならば、なぜ国民年金との調整をした上で出してこないかということです。当然国民年金との調整をして出してくるべきものなんですよ。国民年金との調整ということは、すでにこの答申の中にも、国民年金との関係、通算を忘れてはいかぬぞということをお書きになっておるでしょう。それをあなた方はまだ出してこない。それは総合調整の問題に関連してくるからなんですよ。そうしますと、今ここで厚生年金をいじくっていく、あるいは船員保険をいじくっていくということは、どういうところからきておるかというと、失業保険を、歴史的な伝統を持っている国庫負担三分の一というものをばさっと四分の一、二割五分に削られたということが一つの導火線です。それ以外の何ものでもない。そのために、労働者の全部が健康保険の一部負担の撤廃をしてくれという要望をするのに対して、日経連の要望にこたえて、わずかに十一億か二億の金を日経連に返して、それを今度は厚生年金に回さなければならぬという形に追い込まれているのです。これはまるきり総合調整じゃないのです。単に今までの保険の総ワクの千分の百十一の中のアンバランスを調整するだけの問題で、ちっとも日本の社会保障の前進になっていないでしょう。どこがなっていますか。なるほど厚生年金が今までよりか二割程度、結果として保険給付がふえるという点については、その部分は前進ですよ。しかし他の部分が押えられるならば同じことになってしまう。失業保険の部門なんかで国庫負担が出ないということは、日本の社会保障の前進を大きく阻害しているのです。この部門はあとでまた労働大臣に尋ねますが、そういう点で、どうも厚生省は針の穴から天をのぞくような政策をとっておる。こういうやり方ではだめですよ。しかも与党があなた方の出し方にけちをつけて、与党みずからわが道を行くという形をとっておって、内閣と与党とは全く違う道を歩いていることになっているのです。だからそういう点については、労働省考え方とあなた方の考え方とは、どうも総合調整の問題についても、意見の一致を見ていないような感じがするのです。今のような答弁では工合が悪いのです。  次に、私は日雇いの健康保険に関連をしてもう少しこまかくこの法案に入る前に、もう一つ聞いておきたいのは、あなたの方は最近、健康保険組合を通じて、久留米市で医療のアンケート調査をやったと同じような調査をやっていますか。この前、久留米で保険医療機関に対するアンケート調査をやりましたね。それと同じことをやっておりますか。
  41. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 私の方としてはやっていません。
  42. 滝井義高

    ○滝井委員 ここに「○○殿調査表記載御依頼の件××健康保険組合」ということが出てきておるのです。「御多忙中、誠に恐縮に存じますが、この度、厚生省及び健康保険組合連合会から医療制度の形質両面にわたる合理化問題を検討するため、当組合に、別紙調査の依頼がありましたので、何とぞ御協力下さいまして、調査表御調査の上、提出下さいますようお願い申し上げます。」こういう書類が出ておる。そして「記入上の注意 調査表の最初の枠内の項目、氏名欄の下のAは職種を示し、Bは学歴を示す。Aの職種はイからニまでの次の様に分れる。」これは調査を受ける人の対象を示しているわけです。「イ、専門的、管理的職種(役職にある者や技師等)ロ、事務的、販売的職種(一般事務員の他、販売、サービス従事者、保険等の外務員等も含む)、肉体的、労働的職種(技能工、生産工程従事者、運輸、輸送従事者)ニ、その他の職種(他の分類されない者、守衛、難役等)」こうなっておるわけです。今のは職種ですが、今度は「Bの学歴はイからハまで次の様に分れる。イ、義務教育、ロ、旧制中学校および新制高校程度、ハ、新旧大学および旧高専以上の卒業者、」こういうように調査被対象者の、いわば患者の学歴まで分けた調査なんです。実にこれは官僚的です。「2、調査の対象、医師より組合宛診療報酬請求明細書(診療月三四年八月—三四年十月の分)に基づき」病気は五種類を調査している。「虫垂炎、扁桃腺炎、ひょう疽、関節リューマチ、高血圧、以上五種類の疾病についての調査です。」そうして今度は「病院、診療所選好調査」というのがあって、詳細に「組合名、事業所名、所在地、被保険者氏名又は保険証記号番号、性別男女、年令、居住所」それから今度は上に言いました職種と学歴にマルをつけることになって「イロハニ」と書いてあるどの職種かにマルをつける。Bの学歴も「イロハ」にマルをつける。それから「傷病名、診療開始、昭和何年何月何日、医療施設名、入院外来の別、一部負担還元の有無」こういうことになっている。そうしてさらに詳しく分けているのです。「あなたは昨年中に上記の疾病で、上記病院又は診療所(医院、医務室)にかかった筈です。この病気に関連して次の間に答えて、必要な事項に記入して下さい。」として、これが大きな(I)(II)(III)と分かれて、この調査は実に詳細をきわめているのです。下にその調査事項がありますが、大きな(I)で言いますと、「いつからこの病気になりましたか」(II)の大きなことを書くと、「この病気で最初にかかった施設について記入すること。」施設を変わっているかもしれないからどの施設にいつかかったかということを詳細に書く。「この病気で最初にかかった施設から第二の施設に変った場合、変った状況、変った理由」というものが書いてある。それから「施設名、かかった科」耳鼻科とか外科とか、「所在地、自宅から要する時間、かかった期間」それから「この施設を選んだ理由について次の表の1から22迄、順次にマルをつける、」こういうことで、これは腕のよい先生がいるかいないか、先生か親切か丁寧か、いろいろずっと書いてあります。大きなAが施設を選んだ理由ですか、今度は「この施設を選んだことに関連して次の間に答えよ」ちょうど昔の高級役人の試験のマルバツと同じで、これは労働者を階級別に分けてこれを書かしいるのです。そしてこれは厚生省の要請と書いてある。
  43. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 厚生省の要請でなんとかと書いてございますか、私は実は全然思い当たらないのでありまして、私の方に関してはそういうようなことについて相談にあずかり、また私の方がそれを指導したということはございまん。ただ健康保険組合でございますから、健康保険組合が自分のところの組合員に対して、組合の運営に必要な資料を聞いて集めるということ、これ自体は、私の方でそれはいかぬというわけには参らないのであります。問題は、調査内容が不適当なものがありますならば、それはどういう意図でやったのか、そういうことによる影響というものを十分考えておるかどうかというような点については、私ども指導をする必要があろうかと思います。ただいまお読み上げになりましたのは、私実は今伺うのが初めてでございますので、あとでけっこうでございますから、それかどういう経緯であったのかということを御教示いただければ、私の方で調査するにはやぶさかでございません。
  44. 滝井義高

    ○滝井委員 そういたしますと、厚生省はこういうものは全然関知しないということなんですか。全然関知してないのですか。しておったらどうしますか、厚生省という名前と健康保険組合連合会の名前と二つ書いているのです。こういう調査をやられる患者もいい迷惑です。お前はこの病気でかかっておるだろう、だからこれを出しなさい。こんなむずかしいものを労働者に出させる権利が健康保険組合に一体あるかどうかということです。そしてこれが記憶違いで間違っておったら、一体どうするのかということです。私はこの前、久留米の国民健康保険もこういうことをやって御注意を申し上げておる。そうすると、またあとにこの健康保険組合が出る。そうしますと、こういうことを一々特高的なやり方をやるということになれば、これは今度は健康保険組合の会計を全部あなた方に洗ってもらわなければならぬですよ。一体それはどういうことなんだ。患者のかかったものをこれだけの詳しいアンケートを出すならば、全国の健康保険組合の経理から何から全部国会出してもらおう、こういうことをわれわれは言えるはずなんですよ。少なくとも国の事務費がいっておるのですから。一体こういうことをあなたは許されますか。こんな詳しいことをかかった患者に、お前は何月何日から何月何日までこの病気にかかっておるはずだ、これを答えなさい。まるっきり入学試験じゃないですか。指導上どうですか。健康保険組合が経理をやる上にこれが必要だということはわかりますよ。しかしこんなに詳細なものが必要なのか。しかもここには「医療制度の形質両面にわたる合理化問題を検討するため」と書いてあります。これは明らかに今の総合調整、医療制度の根本的な問題に関連してきておるわけです。それを監督官庁のあなた方が知らぬとは私は言わせられないと思うのです。一体久留米のときにどんな処置をとりましたか。久留米のときに私は御質問申し上げたが、そのあとどういう処置をしましたか。
  45. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 久留米市で先年でございましたか、アンケートを出して調査したことについて国会でも御指摘がありました。私の方も調べてみたのでありますが、どうもその内容についてはあまり適当でないものもあるということで、市の当日局においてもそれを認めまして、あれはさっそく回収いたしたわけであります。結局実施はしないで終わった、かようになったわけであります。それからただいまのは厚生省の指導でございますか、厚生省の何とかということでありますが、保険局——私は保険局に関して申し上げているわけですが、保険局としてはそういうようなことは指導もしておりませんし、もし相談にあずかっておるならば、当然あまり不穏当な、適当でないようなことは避けるようにということを指導しておるはずでございます。実はせっかくのあれでございますか、私ちょっとなお解せない点がございますし、それを調査してみたいと思います。組合自体はやはり組合の業務運営の上から、いわゆる一般的な実態を把握したいというようなことで、組合員について尋ねるということは、これはあっても組合の自由であろうと思います。政府としてそういうことを指導いたします場合には、御指摘のようにそこの内容目的と照らしまして、それは大して必要がないし、むしろそれによるいろいろな弊害というものが予想せられるというようなものについては、指導していくべきものと考えるわけでございますが、そのお医者さんにかかったということを聞くこと自体がどうであるということは、なおその中身を一度拝見させていただいて検討してみたい、かように考える次第であります。
  46. 滝井義高

    ○滝井委員 保険局長も御存じの通り、日本の健康保険というものは労務管理の一環として発展してきたものです。従って健康保険組合、特にこれは大企業が中心になるわけですが、大企業の労働者の諸君に健康保険組合から一々、お前の行った施設は会社や健保組合と特殊な関係があるか、そのほかに、その施設に行くときには、その施設のだれかにあてて紹介状を持っていきましたか、その紹介状のあて先は一体だれか、見てもらった医者かどうかということまで、身元調査みたいなことまで何でやらなければならぬか、こういうことが保険経済、医療制度に関係があるかということなのです。しかも今度はその保険者は医者の側に来て、その患者は一体ほんとうの病気だったですか、あいつはなまけておらなかったですかと、必ず医者の側にもやられることになる。そうしますと、これは体のいい思想調査です。こういうことを病気で弱い被保険者に、診療報酬の医者から出た請求書をもとにして、お前は盲腸かあるいはひょうそうか、へんとう腺炎でかかったはずだ、これを出しなさい、こんなばかなことはないですよ。これは強制的でないにしても、労働者でこういうものをもらえば、これは書かなければまたにらまれるかなと思うて書くことになるのです。書くと監査の対象になる、こういう形になる。そして医者の側に行って調べてみたのでは労働者の書いておるのと違っておるということになると、今度は自分が会社で迷惑をこうむらなければならぬという形も出てくるのです。こういうことは保険経済の運営に何も差しつかえないと思うのです。この前の監査のときにも医者の家に行って、医者の貯金が幾らあるか、私有財産が幾らあるか、どこの学校を出たか、こんなものは何で関係があるのです。保険医でいいじゃないかというのと同じです。これは「医療制度の形質両面にわたる合理化問題を検討するため、当組合に、別紙調査の依頼がありました」厚生省及び健保連から依頼があったということが書かれておるのです。もしこれが健保連だけで厚生省がなかったら、明らかに詐称です。しかもこれだけの綿密な調査をあなた方が全然知らないということは考えられない。こういうやり方が日本の医療制度の中なり、日本の社会保険制度の中で、二十世紀の後半に公然として行なわれておるというならば、われわれは何をか言わんやです。午後もう一ぺん質問しますから、もう一回調査なさって、やっておるのかやっておらぬのか——おそらくこれはあなた方がやっておらぬとは言えぬと思う。厚生省と名前が出ておるのですから、それは保険局が知らなければ医務局でおやりになった、どこかでおやりになっておるわけです。しかもこれは健康保険組合の調査ですから、医務局ではできぬはずです。これは保険局のだれかが了承してやっておるかどうかでなければ、私はこういうことは書けぬはずだと思うのです。それとも病院管理研修所か何かでやって起るか、しかしそういうところはこういうことをやる権限はあるとは考えられないし、保険局長が全然知らぬということは私は言わせない。午後まで持ちます。これもお貸ししますから、調査してもらいたいと思うのです。この質問の答弁ができるまで先の質問を進められません。総合調整の問題で、こういうようにやり方が非常に問題があるやり方でございますし、しかも与党と内閣との間にも意見の一致を見ておりませんししますから、その回答があって午後の質問を続けます。
  47. 永山忠則

    永山委員長 では午後二時まで休憩いたします。     午後零時二十分休憩      ————◇—————     午後二時二十一分開議
  48. 永山忠則

    永山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。滝井義高君
  49. 滝井義高

    ○滝井委員 午前中に御質問申し上げました、厚生省及び健康保険組合連合会から、医療制度の形質両面にわたる合理的題間を検討するために調査票の記載依頼が出ておるわけですが、これは厚生省は関知をしていない、こういうことでございました。しかし厚生省という名前が出ておるので、どういうことか調査をしてくれというお願いをしておったのですが、それに対する御回答をお願いしたいと思います。
  50. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 午前中の御質問の件につきましてさっそく調査してみた、その結果を御報告いたします。これは健康保険組合連合会から東京及び近辺の五千の健康保険組合の理事長あてに依頼をして出したものでございます。さっそく聞いてみたのでございますが、前々から二、三の学識経験軒に健康保険組合連合会として医療問題についていろいろ委託いたしまして、検討していただいておったのでありますが、たまたまその方々から、患者が病気になった場合に、ある特定の病院を選んだのはどういうことで選ぶかというような点、あるいはお医者さんを変えたという場合にはどういうようなことで変えたかということについて一つ研究してみたい、そこでそれの調査をしたい。それについては自分たちの名前で頼んでみてもなかなか協力もしてもらえないだろうから、一つ連合会の名前を貸してもらいたいというようなことでありましたので、連合会でやむを得まいということで名前をお貸しした、こういうことであります。  それで、調査の目的は、先ほど申し上げましたように、AならA、BならBという医療機関を患者がとったのはどういう理由なのか、自分のうちに近いとかあるいは親切であるとか、いろいろな理屈があるであろう、その理由を教えてもらいたい。それからまた医者を変えたという場合には、その医者をどういうわけで変えたかというようなことを調べたいということであります。そして、そういうようなものを調査するについては、それに必要な程度でよろしいということで、五種類の長期のものと短期のものとをとって、それぞれ各十例で、五種類ありますから五十くらいの例になる、それを東京近辺の五十くらいの組合にお願いをしたいということで、そのうちどれだけお答えが得られるか、どうかということはもちろんわからぬわけでありますから、これはどのくらい出るか別でございますが、とにかくそれぐらいを依頼した。その依頼の文章は、連合会からは、午前中にお話しのように厚生省からあるいは厚生省の希望によるとか何とかいう文句は一切入っておりません。要するに調査をしたいから御協力下さいますようお願いしますという簡単なあれで、それを受けて各組合が、その傘下の被保険者のうちでそれに該当する病気になった人に対して一つ協力してもらって書いてくれ、こういうこことであったと思うのであります。たまたまある組合において、厚生省と健保連からという午前中にお読み上げになったような間違ったものが出たらしい、こういうことであります。従いまして、それはある特定の組合の理事者の勘違いでありまして、それに○○殿へ、××組合からというふうな書き方をして、いかにもそれがひな形であるかのようになっておりますが、これは何らそういうものではないということか判明いたしたのであります。そういうようなことで、これは学識経験者がいろんな点について研究してみたいというようなことから、それについては自分たちの名前ではそういう調査をしようと思ってもなかなか協力が得られぬというので、連合会の名前を貸してくれということで出したわけであります。調査の内容はいろいろありますが、大体ざっと見たところでは、学歴とか職種とか、まだいろいろあるようでございますけれども、格別それによって医療機関と被保険者の間をどうこうしようという意図は毛頭ないようにも考えられます。私どももそういうことであるならば、御心配のようなことはないというふうに考える次第でございます。
  51. 滝井義高

    ○滝井委員 今の答弁の中でもわからぬ点がたくさんあるのです。まず第一に、健保連の名前を貸したということですが、そうすると健保連が調査をやる主体ではないのですか。
  52. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 ただいま私が申し上げました経緯は、むしろざっくばらんに申し上げた方がよろしかろうというので申し上げたのでありますが、依頼状を出したのは健保連の会長の名前で出したことは事実であります。
  53. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、調査の主体は健康保険組合連合会で間違いありませんね、依頼をして、その出た結果を分析するのは学者が自由に分析をせられるのでしょうが、医療制度の形質両面にわたる合理的な問題を検討するために調査を依頼した主体は健康保険組合連合会、これは間違いないでしょうね。こういう問題は、今局長さんはざっくばらんと申しましたが、ざっくばらんに一つ言ってもらいたいと思うのです。連合会なら連合会、はっきり言ってもらいたいと思います。
  54. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 先ほど申し上げましたよりに、実態は、健保連で研究をいろいろ前からお願いしている学者の方々が、自分のためにしたいということであります。しかしこの依頼票自体は健保連の名前にはなっております。
  55. 滝井義高

    ○滝井委員 学者に医療制度の形質両面にわたる合理的な調査を依頼しておるのは健保連ですから、主体は健保連と確認して差しつかえありませんね。調査の主体は健保連だとして差しつかえありませんか。そこをはっきりして下さい。
  56. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 調査の主体はむしろ学者の方だろうと思います。こういう調査によって何をねらうかということについては、これは学者の方々が自分の考えで、こういうものを今度調べてみたいということであります。従いまして、実質的主体はだれかと言われたら、むしろこの学者の方々であろう。そういう方々に医療制度について御研究をいろいろお願いしたということは、健保連でございまするけれども、その調査自体の実質的主体は、私は学者の方だと考える方が自然だと思います。
  57. 滝井義高

    ○滝井委員 それならば学者の名前を書いてやったらいいのです。学者の名前ならはわれわれは文句はないのです。健康保険組合連合会の名前か出ておるところに問題があるのです。学者の名前ならばいいんですよ。それは末高先生がおやりになる、あるいは中鉢先生かおやりになる。佐口先生かおやりになる、これならばいい。社会保障学者がおやりになるならば全面的に御協力してもかまわないのです。ところが健康保険組合といういわば一つの権限を持っておる組合が、しかも国家から補助金をもらっておる組合がこういうことをやるところに問題がある。それをあくまでも学者が主体でおやりになるというならば、学者の名前を堂々とお出しになったらいい。そういうことが自由に許されるのですか。学者がやるものを健康保険組合の名前を使ってやっていいのならば、われわれ国会議員の調査も、これから健康保険組合の名前を使ってやってもいいのですか、そうはいかぬでしょう。だから、あくまでもこの調査というものは健康保険組合連合会が主体でしょう。健康保険組合連合会の経費が出ておるのでしょう。どうですか。これは健康保険組合の経費は出ていないのですか。
  58. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 先ほど申し上げたことで大体おわかりいただけると思うのです。実質の主体について、こういう調査をしたいということ、だれかそれをねらっているかといえば、これは学者の方々であります。健康保険組合自体としては、先ほど申し上げましたように、自分たちの名前で組合に頼んでもなかなか思ったほどのデータも集まらないから、健康保険組合の名前で出してくれと言われたから出した、出したということだけをとらえれば、健康保険組合か出したということにも相なりましょうが、実質は先ほど申し上げたことで御了承いただけるかと思います。ただしその経費自体は委託費でございまするから、健康保険組合連合会で出しているわけでございます。
  59. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、局長のような言い方は成り立たないのですよ。経費は健康保険組合が出した、実質的な調査は学者に委託をしておるというならば、健康保険組合連合会じゃないですか。厚生省が金を出して学者にやったら、その調査の主体は厚生省でしょう。そういう場合、それを学者と言えますか。委託をしておるのですよ。学者は下請をやっておるだけじゃないですか。学者が自分が主体でやっておるならば、経費を自分が出してやる。学者がその結果を健康保険組合連合会に持ってくる、そうすると、健康保険組合連合会じゃないですか。  それからもう一つお尋ねします。これは厚生省は全然関係がありませんか。今の御答弁でないとするならば、厚生省という文字を全部消さしてもらいたい。厚生省は関知していないというならば、こういう書類が出ておるから、厚生省の名前を全部消してくれ、そうして厚生省の名前を書いている書類は全部撤回して下さい。よろしいですか。それはできるでしょうね。
  60. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 健康保険組合連合会が学者の方々に特に今度の調査を依頼する、あるいはそれを中心とするあれを具体的に依頼するということでありますならば、またそこに問題も出ようかと思いますが、私どもが聞いたところでは、とにかくそういう方が、社会保障ではいろいろな点がまだ研究不十分な点があるので、二、三の学者の方々にそういう方面でプラスになるようなことを一つ自由に御研究いただきたい、その経費はそこばくかもしれぬが、自分の方で持ちましょうということは事実であります。従いましてこういうテーマを選んで調査したいということは、健康保険組合連合会が特に考えてやったことではないので、その学者の方々が自分の研究や何かで、この面を一つ調査してみたいということでそれをやりたい、それをやるについてどうも自分の名前では工合が悪いから、健保組合の名を貸してくれということでございます。従いましてそこには健保組合自体がこういうことを調査したいということで動いた場合とは、ニュアンスが違うということを御了解いただきたいために先ほど申し上げたわけであります。  それから厚生省が関知していなければ撤回する云々というのは、これはある組合だけのことでございまして、従いましてそこの組合だけの問題であると思います。これは健保連でもそこに注意して直させたいと言っておりますから、私の方もそれはぜひそうしてくれ、厚生省は関知していないのだということで言ってございます。
  61. 滝井義高

    ○滝井委員 学者が調査をしたいということで健康保険組合連合会という名前を軽々に貸しますか。しかも経費を出しておるんじゃないですか。経費を出しておるなら自分のところで調査を委託しておるから、自分の名前を使うことは当然ですよ。そういう言いのがれをすることは許されぬと思う。この場合はこれは堂々と、やったならやった組合を一つ言って下さい。もしあなたが今のような答弁なら私は委員長に要求して、次会に健保連の安田会長をここに呼んでもらいたい。きょうでもかまわぬ、呼んでもらって理非曲直を明らかにする必要がある。こういう労務政策的なものを健康保険組合連合会がやるとすれば、僕らは健康保険組合の会計を全部洗わなければならぬ。同時にこれはあとの参考のために、局長にはあとで要求しますが、健康保険組合の収支決算、それから財産、これらのものを一つ全部出してもらいたいと思う。この調査のいっている五十組合の財産と決算、昭和二十七、八年ごろからこっち、健康保険法の改正されたこっち全部出していただきたい。こういう綿密な調査を労働者にやるからには、当然国会としては補助金を出しておるから要求する権限があります。五十の組合のこれの患者の調査をやるについて、組合の決算書と予算書、それから所有する財産、これを全部明細書をつけて、具体的にどこの何療養所を持っておるということを全部出していただきたい。  それから、ことしの健康保険組合連合会の予算の中から学者に委託する経費というものはどういう形で出ておるか、それをつまびらかにしてもらいたい。これを要求しておきます。そして委員長にお願いしますが、できればこの問題に関連して安田連合会会長を呼んでもらいたい。これは重大な問題ですから。あとでこれは理事会に諮ってもらって、ぜひ一つ要求してもらいたいと思います。  それから次に局長にお尋ねしますが、特定の人を名ざしてこれはやっておるわけです。今あなたの御説明では、一つの組合に五十人くらいである、こういうことなんです。そうしますと、そこに虫垂炎とか扁桃腺炎、ひょうそう、関節リウマチス、高血圧、これらの五つの病気について、一組合五十人ずつ出しておるわけですね。学者がやるのに、特に五十人というものを選んで名ざしてやる、こういうことは体のいい一種の監査ですよ。患者の実態調査です、ある意味では……。これは幾ら抗弁したって患者の調査です。これは監査をやるのと同じです。患者の実態調査をやるのと同じです。そして不正があればすぐ監査だ、こういくわけです。名前はなるほど学者に委託をしてやっておるのでこういうことになるのですけれども、だからこういう点については今のような時期に、医療制度の根本的な調査をやろうというときに、もう少し慎重にやらなければならぬ。やるなら堂々と学者の名前を出してやったらいい。これは今後必要だからよろしく頼む、堂々と学者の名前でやったらいいのです。それをしかも健康保険組合連合会の名前を使い、健康保険組合の理事者の中で、厚生省の名前を黙ってかたるなんていう、こういう理事者がおることは、すでに社会保険に対する認識を欠いておるのです。役所の名前を使わなければならぬという、こういう事大主義の理事者というものは、これは私はあとで調べます。どこの組合か調べて、その理事者も何なら一緒に呼んでもらわなければならない。いやしくも官庁の名前を便って労働者にこういう調査を押しつけなければできぬというような、そんな権威のない調査をして何になるのです。こういう点については、あなた方も健康保険組合のこの使った組合に対しては、厳重な抗議を申し込まなければいかぬですよ。それが連合会の責任なんですよ、連合会が監督しているのだから。連合会が自分の名前でやらしておって、連合会の名前の上に厚生省の名前をつけさせておるじゃないですか。それを間違っておったと言う。間違っておったなんて、文書として出ておるのですから、許されぬですよ。こういう点は、どうも太宰さんの保険行政というものはどこか抜かっておる。いわゆる日経連とそれにつながる健康保険組合連合会の言うことは、唯々諾々として聞くけれども、国民大衆の言うことを聞くことができないということでは、これは僕はからだを張ってやります。僕は一人でもやりますよ。からだを張って、そうして徹底的に健康保険組合を洗う。すでに安田さんの時代に事件か起こっておる。全部やめてもらって、そうして当時の監事がそういうところに行っておったら、断じて許さぬですよ。そんなばかなことがありますか。権力をかさに着て労働者にこんな調査をして、こういうことをやることは、連合会だって許されません。こういうことをあなた方が平気でやらしておるというなら、やってごらんなさい。一つ法案だって、私一人でがんばって通さぬから。こういうことを大目に見て、そうして国の補助金をもらっておって、事務費の補助金をもらって、平気でこういうようなことを学者にやらせておって、これは違反でありませんと言う。違反でないでしょうよ。しかしこれはどのくらい労働者を苦しめ、あるいは医療機関に疑いをかけるかわからないですよ。まるきりこれじゃ、保険の経済のために医療機関というものがあるんじゃないですか。この間私は久留米の問題で注意をしていなければ、こんなことは言いませんよ。久留米の問題で注意をしているから言うのです。久留米の問題は、保険者が、あそこは元社会党の杉本知事が市長をやっていますが、それか済んだあとで、連合会がまたこれでしょう。しかもこれは学者に調査さしたのでありますから、そんな言いのがれは私は許しません。だから、これは一つ連合会のこの配った五十の、二十七、八年以来の、健康保険法改正か問題になって以来の財産、それから決算報告書、予算、これらのものを一つ全部出して下さい。あなたの責任で出せますか。監督官庁ですから出せるはずです。
  62. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 まあ私は、確かにお話のようにこういう——先ほど私どもが呼んで聞いたところによると、先ほど申し上げた通りでありますので、学者の人が委託を頼まれて、自分たちはこういう調査をしたいというふうに思ったら、それは学者の名前で出すのがむしろ自然でありましょう。ただ、どうも自分たちの名前で出したのでは、なかなか各組合の協力も得られないというような考えから、連合会の名前で一つやってくれといわれて、連合会としては、それはやむを得ずよろしいと言わざるを得なくなったということも、私はある程度うなづける。それは学者の名前で出した方が一番、それは調べたい人の名前で聞くのですからいいと思いますけれども、それを特にすぐ取り上げてどうこうというほどのことは、私はないと思うのであります。  それからまた、労働者を苦しめるというお話でありましたが、それはこういうことを一つ書いて下さいといわれますと、その頼まれた人は、まああれでしょう、その件に関しては何らかの迷惑はあろうかと思うのであります。しかし、御承知の通り、健康保険組合でございまするから、これは何も事業主だけのものじゃないのでありまして、被保険たる労働者の人たちも一緒になって、この組合制度の運営の改善に努力しているところでございまするから、そういうことによって、いろいろ健康保険組合の内容もよくなっていくための調査だということなら、あるいは協力していただける。そういうようなことで、これは協力してくれるかくれぬかは、そのときのそれぞれの理事者の頼み方いかんにもよりますし、またそれを頼まれた人の協力の度合いいかんにもよってくるのだろうと思いますが、それは必ずしもそれをもって、労働者をただ苦しめるだけだというふうに私はとるのも少しこれはあれじゃないか、気持としてはそこまで考える要もないのじゃないかというようなことを感ずるわけであります。健康保険組合自体か特にこれをもって何らかの具体的なものをしようという意図があるならば、その意図自体については、私どもがあれする必要も場合によっては出てくるかもしれませんけれども、先ほど聞いたところでは、要するに、そういう人たちがそういうようなものについて勉強していきたいということでありまするから、さほど神経質になる必要もないんじゃないか、かように実は考えておるわけであります。久留米の例をおとりになって御指摘でありまして、久留米の例は、調査の内容自体もあまりどうも適切でなかったように感じます。まあ幸いあれは取りやめることにいたしたわけでありますが、これ自体、その中身自体に特にどうということは私はないと思うのでありまして、その点についてはさほどどうこうと久留米の例と同じように言う必要はないのじゃないか、かように考えるわけであります。
  63. 滝井義高

    ○滝井委員 健康保険組合は事業主のものだけでないことは当然でございます。当然でございますが、書いてくれと頼まれるのも、不特定多数の人にこれを配るものならいいのです。健康保険組合の全部の人に、これを書いて下さいと配るのならいいのですよ。ところが、特に五つの疾患を指定をして、そうしてその五つの疾患を指定するについては、診療報酬請求書から選んでくるわけです。この診療報酬請求書から選んだところに一つ問題があるのです。そうして、それから今度は、滝井義高なら滝井義高、太宰なら太宰という、こういうものにやってくるのです。だから、来た本人にしてみれば、こんな詳細なもの、わずかに扁桃腺で医者にかかったからというて、こんなものを書きなさい——最後の方を見てごらんなさいよ。この施設を選んだことに関連して、次の問いに答えよ、こうなっているのです。あたかも試験問題と同じです。答えよ、こうなっておる。それでしかも、その前のAの項なんかは、この施設は評判がよい、医療設備かよい、こういうようなことに、評判がよいか悪いかをやらなければならぬ。評判がいいか悪いかは、健康保険組合は何も関係がないじゃないですか。健康保険組合は、外の機関について評判がいいか悪いかを聞く前に、労働者はなぜ外の医療機関に逃げるか、自分のところにかからずに逃げるか、これを反省することが必要ですよ。健康保険の病院は、保険医療機関じゃないのですよ。これは健康保険のうち外にあるのです。だから、労働者が外に逃げないように自分のところをよくしたらいい。ところが、それが逃げるというのはなぜか。そこが評判か悪いからです。だから、評判の悪い自分の病院のことを、もっと内輪でやったらいい。そういうことを学者に調査させたらいい。よその病院のことを、一体あの病院に行くのにだれに紹介してもらったか、そうして行ったらその病院は親切だったか、看護婦は、どうだったか、こんなおかっぴきみたいなことを労働者に一々尋ねる必要がどこにありますか。そういうことは、私的医療機関のことですから、そんなこまかく尋ねる必要はないのですよ。一体あなたはなぜその病院に行ったかくらい尋ねたらいい。そうしたら、うちの病院は悪いから行ったと答えますよ。そのくらいでいいのですよ。よそのことはどうでもいいんだ。健康保険組合は自分のところをよくしたらいいんだ。それをよその病院のことをこんなにねほりはほり労働者に聞かれるということは、私はその根性がけしからぬ。そういう点についてもう少しやらなければいかぬと思うのです。もし健康保険組合がこういうことを平然とやるならば、出した五十の健康保険組合の内容を、国の補助金を出しておるのだから、今言ったようにまず出して下さい。その上で私は勝負します。全部の療養施設その他の社会福祉施設、そら予算、それか内容を交際費から何から全部出して下さい。決算と予算書を出して下さい。私は徹底的に洗うから……。それから同時に、厚生省のこの前やめた役人その他もどっかに行っておるわけでありますから、こういうような点も一緒に備考につけて出して下さい。この前問題を起こした健康保険ですから、われわれは大目に見ておった。しかしこういうことを患者にやって、体のいい監査の肩がわりのことをやるというならば、これは一つはあなた方に対する不信ですよ。これは健康保険組合があなた方に対する不信を表わしているのですよ。どうですか、局長、それを今出してくれますか。今私の要求した資料を出してくれますか。
  64. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 どうも私の申し上げ方についてなかなか御了解が得られないように思うので、非常に残念でありますが、これは別に監査をやっているという筋ではないのであります。先ほど来申しておりますように、その人たちが自分としては頼まれたし、医療問題についてはいろいろ研究したいことがある。そのうちたまたま、病気になったときに患者があるお医者のところへ行くのは、一体どういう理由が多いだろうかというようなことを研究してみたいということであろうと思うのです。そういう研究をすることがむだじゃないか、どうこうということは、われわれが言ったってしようがないと思うのです。そういう人たちがそういうことをやってみたいというなら、それがいわゆる法律とか公序良俗に反するという以外は、それをやっていただくのも差しつかえないのじゃないか。ここには別に久留米のようなひどいことの調査はしてございません。お話しのように、どうしてあそこのお医者さんへ行くがとか、腕のよい先生がいるとか、先生が親切だとか、あるいは医療の設備がいいとか、入院がいつでもできるとか何とかいうことが書いてあるわけです。そういうことをとって、健康保険組合としても反省するということをやって悪いこととは私は思いませんけれども、今回の場合はそういうこととは全然関係なしに、大体どういうようなことで行くであろうかということで、大よそ考えられる場合を考えて、私たちが病気になったときお医者さんに行く場合は、どういうわけでこのAというお医者さんを選んだか、Bというお医者さんを選んだか、大体こんなようなことのどれかであろうということで調べにかかったというだけのことであろう。問に答えよというのは試験問題のようだというようなお話でございますけれども、これは一番冒頭に、先ほど先生からちょっと貸していただいたのを読みましても、相当親切に、こういうことで調査したいと思うので、御迷惑だけれども協力してくれというような文章が書いてございます。それでもわかりますように、迷惑をかけるけれども一つ協力してくれという気持で出しておるのであろうということでして、これを労務対策とか何とかに使うということは、どうも私どもも、先ほど聞いていましたけれども、そういうことはさらさらないのじゃないか。そういう意味で、五十組合のどうのこうのという過去二十六、七年のものを出せということでありますけれども、そういう趣旨でありますので、これはもしできましたならば御了承いただきたいと思うわけであります。
  65. 滝井義高

    ○滝井委員 この前の高田さんの時代に事件も起こりましたし、健康保険組合の内容の調査をしなければならないということはかねがね考えておったのです。しかし幸いにこれはいい時期です。健康保険組合も、医療制度のいわゆる形質両面にわたる合理的な問題を検討しようとするならば、当然われわれも健康保険組合の財政的な面の調査が必要です。だから並行して、これを強行されるというならば、この五十の労働者の調査をやる組合の、健康保険が問題になったのは二十九年ぐらいからですから、二十九、三十、三十一、三十二、三十三、三十四と六カ年間をぜひ出してもらいたい。これは資料として要求する権利がわれわれは当然ある。なぜならば事務費の補助金が出ているのですから。速急に五十のものを出してもらいたい。それから健康保険組合連合会の予算も全部出してもらいたい、これが一体どういう形でまかなわれているか。これを全部出してもらいたいと思います。それから委員長、安田会長をぜひ呼ぶようにお願いしたい。この問題はきょうはやめておきますが、今後もこういう調査はおそらく至るところで行なわれるだろうと思いますけれども、医療制度の合理化の問題に名をかりて、不当に患者をこういうように苦しめることは、私は厚生省としては通牒を出して、やらしてはいかぬと思う。やらせるならば、もっと簡単なものでやらせるべきだ。特定の人を選ぶのでなくて、不特定多数の人に配ってアンケートを回収するならばよろしい。ところが医師の診療報酬請求書が出たものを対象にして出すならば、これはあなたが何と抗弁しようと監査につながるものだと疑われてもしようがない。今のような時代ですから、あるいは労務管理の一環としてやったと思われてもしようがない。患者はこのものを持ってくれば、必ず医者に持っていくのです。先生ちょっとこれを見て、先生の気づくところだけ書いて下さいと言ったのがおるのですよ。私は先生のところにいつかかったか忘れましたが、先生のところへいったか、たぶんリューマチか関節炎みたいなのでかかったことがあります、済まぬけれども先生の書けるところだけマルをつけて下さいと言うてくるのがおるのです。ある農協が調査をやったときに、私自身に持ってきたのを知っている。私はそういうものは出さなくてよろしい、出しなさんなと言ったことがある。これはそうじゃありません。これは持ってきたのじゃありませんが、これと同じような調査をやったんです。ある農協でやったら医者のところへ持ってきて、先生書いて下さいと言う。患者は何月何日ごろに行ったとか、自宅より時間がどのくらいのことは書けますけれども、何月何日、外来で行ったなんということは忘れている。だからこれは医者に行かなければ良心的なものは書けない。そうするとまじめな工員は、こういうものが名ざしでくると良心的になるから、医者に持っていって、先生のところへいつからいつまでかかりましたか、ちょっと教えて下さいということになる。君は何に書くんだ。実はこんなものが会社からきまして、これを書かぬで成績に関係してはいかぬから書きたいと思います。見せてくれ。先生が見てマルかつけられるところだけつけて下さい。そうか、おれのところは不親切だから書かぬといわれると困るので書くと言う。それなら先生マルをつけて下さい、そういう例を私は知っているのです。こういうことをやれば、それは一体どういうことになるか。結局保険者と医療担当者、保険者と患者の不信感を増すばかりです。これをやるならば堂々とやるべきだ。厚生省が名前を貸していないものを、厚生省の名前を使ったりするような保険組合自体、その理事長か認識不足ですよ。あなたが言われるように厚生省の名前を貸していないということならば、厚生省の名前を使ったこの健康保険組合はけしからぬです。そういう健康保険組合の理事長が、もし健康保険行政をやっているとするならば、これは失格です。だからそういう点を私は安田会長に尋ねたい。連合会でそういう医療制度のことをやりたいなら、堂々と厚生省にも相談しておやりになったらいいのです。あるいは療養担当者の団体にも、これをやりますぞ、だから協力してくれと、堂々とやったらいい。こういうふうにこそこそとやるから痛くもない腹をさぐられる。それは監査には関係ない、労務管理に関係ないと言ったって、われわれの方から見れば疑いを持たれる。疑いを持たれたら損でしょう。だから、きょうはこれ以上言いませんが、私はさいぜん言いました所信を貫きますから、これを配付している五十の組合のものを出して下さい。お願いしておきます。これは日雇労働者健康保険にも重大な関係があります。総合調整の問題で質問しているのですから、それが出てくるまでは私は質問しませんよ。社会党は質問しませんよ。お願いしておきます。
  66. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 こういう依頼をいたしました趣旨はなかなか信用できぬとおっしゃいますが、まさに私の申し上げた通りでございますので、これは御信用いただきたいと思います。それから組合自体は、先ほども申し上げましたように会社とは別個でございまして、組合としては被保険者と一緒になって組合ができておるわけでありまして、そこで調べようということでありますから、被保険者の方も、そういうような趣旨であればけっこうだということでこうなったものと私どもは思うのであります。たまたまある一つの組合が勘違いをして、そういう役所の名前を使ったので、私どもは迷惑をこうむっておるわけであります。それは先ほど答弁したように私の方から注意いたします。今どこの組合かということは調べないとわかりませんが、調べて注意いたします。そういうことははなはだ迷惑でありますから注意いたします。しかし先ほどのそういう組合の収支予算、決算なんかは、これは出してもよろしゅうございますが、やはり過去何年間のこととなりますれば、期間をかしていただかなければならないと思いますが、その間こちらの審議をストップするということは、どうか了承していただきたいと思います。
  67. 滝井義高

    ○滝井委員 出せるところでけっこうです。まず近いもので出せぬはずはないです。もしあなた方が出せぬというなら監督不行き届きです。健康保険組合の監査はおやりになっておるでしょう、保険局としては。だから決算書というものは必ずあるはずですよ。だからあるやつを印刷に回したらすぐできるはずですね。そんな膨大なものではないはずです。だからそれは言いのがれであって、しろうとならごまかせるが、絶対私はごまかせませんよ。だからそれをぜひ一つ出してもらいたい。これは総合調整の重大な問題ですよ。医療制度に関係ある重大な問題です。ですからぜひ出してもらいたいと思います。これで質問をやめます。      ————◇—————
  68. 永山忠則

    永山委員長 厚生関係の基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。大原亨君。
  69. 大原亨

    ○大原委員 先般の委員会で小林委員から、生活保護を中心といたします低所得者の問題につきまして質問があったのですが、私もさらに、若干重複する点があると存じますが、質問申し上げたいと思います。  生活保護基準を引き上げるとか、あるいは運営を適正化する、こういうふうな問題につきましては、今日までたびたび論義をされてきたところでありますけれども、私どもは、基本的には、所得倍増とか月給二倍とかいうことを政府はたび重ねて主張されておる、あるいは貧乏を追放するということを言われて起るわけですけれども、実際には、政策の上において国民の生、活水準を引き上げていくことに影響がある問題は、何といっても生活保護基準と、それからもう一つは、国が社会保障一つとしてやっておるところの失業対策事業賃金水準が非常に大きな実質的な影響を持っておると思うのです。そこで十年一日のごとくとはいいませんけれども、本年は若干の引き上げがなされましたけれども、厚生省といたしましては、生活保護基準の引き上げについて、基本的に大体どういうふうに意見をまとめられておるか。きょうは大蔵省の主計官の方で出席しておりますので、まずその点を最初に一つ御質問を申し上げたいと思うのであります。
  70. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 生活保護基準につきましては、基本的にどういう考え方をしておるかという御質問でございます。あるいは御質問に私お答えすることになるかなりませんか、疑義を持っておりますが、私どもといたしましては、生活保護法の基準というものは、まず物価が高くなればその物価に応じてやはり引き上げていかなければならない。これはごく普通のことであううかと思います。  それからその次には、これはいろいろ論議のあるところでございますが、国民の生活水準といいますか、消費水準が高まっていきました場合に、それに比例してというわけじゃございませんけれども、やはり生活保護基準の中で予定されております生活水準というふうなものをできるだけ引き上げて参りたい、かような考え方をいたしておるわけでございます。あとの点につきましては、いろいろ論議のあるところでございますけれども、私ども考え方としましては、やはりさような考え方をいたしておるわけでございます。従って過去におきましても、生活保護法が施行されましてから十数次の改正で引き上げをやっておるわけであります。終戦当時のインフレーションの非常に進みました時代には、物価に比例して上げるというような意味合いも含めまして、非常にたびたびやっております。ここしばらく前の、大体経済状態が安定をいたしましてからは、そうたびたびやっておりません。ただ昨年の四月一日から御存じのように、生活扶助だけで申しますと、三・二%でございますか、引き上げをいたしまして、引き続きまた本年の四月一日から約三%の引き上げをいたすという予定にして、ただいま御審議を願っておるわけであります。二年続けてやりますことは、最近のあれといたしましてはあまりない例でございます。大体基本的にはさような考え方をいたしております。  なお、今後の問題といたしましては、私ども国民の消費水準なり——その前に物価が一番問題でございますが、物価なり消費水準なりの動きを十分よく見つまして、そうしてかりにこれが上がっていくということであれば、できるだけそれに即応した基準の改訂というものを今後も努力をいたしたい、かように考えておるわけであります。
  71. 大原亨

    ○大原委員 ことしは厚生省の方は大蔵省にどれだけ保護基準の引き上げを要求いたしましたか。それで要求をそういうふうにされる際には、これは憲法第二十五条によって生存権を保障されておるのですから、国民生活水準をたとえば十年後には倍に引き上げようという場合には、確実に一つの政治的な目安を持ちながら、あるいは機構的、制度的な裏づけを持ちながら、生活保護基準を引き上げていく、こういう政府の政治的な意図が制度的、機構的にも保障されなければならぬと思う。単に大蔵省との力関係で、圧力団体がないから最後にはふっ飛んでいくような、そういうことじゃいけないと思うのです。そうしないと、いわゆる技術革新とか貿易、為替の自由化とか、そういうふうな国際的な日本経済が荒波にもまれるときに、やはり弱いところにずっとしわが寄ってくるわけです。だからその最低を国の政治の面において制度的に、機構的に保障するという、そういう一つの政治のやり方というものがなければ、私はやっぱりこれは置きざりになるのじゃないかと思うのです。大蔵省に対してどういう根拠で、どれだけ要求されましたか。
  72. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 大蔵省に対しまして私どもが要求をいたしましたのは、おおむね六%強の引き上げであったと記憶しております。その根拠を示せということでございますが、一口に申しまして、先ほど申し上げました生活水準が若干上がっておりますので、もう少し生活水準を上げたいということと、それからそれより以上に大きな要素をなしましたものは、御存じの国民の栄養所要量が改訂になったのでございます。この新しい年令別の栄養所要量に即応いたしまして、飲食物の方を増したり、こういうふうなのが大きな中身であります。それで今回御審議を願っておりまする予算に盛り込まれておりますものは、今の栄養所要量の方は、その通りまるまる見られておるわけでございます。生活水準をもう少し上げたいという点につきまして、いろいろ意見を交換いたしまして、今日の段階においては、この程度ということに両者の意見が一致をしまして、御審議をいただいておるような形で三%の引き上げということに落ち着いたわけであります。私どもこれで十分満足をしておるというわけのものでもございませんけれども、しかし今日の現状からいたして、従来あまりやっておりませんでした内容の改訂を若干は含んでおりまするので、これをもってやむを得ざるもの、かように考えておるわけでございます。
  73. 大原亨

    ○大原委員 大蔵省の方はどういう見解で御査定になりましたか。ちょっと答弁をして下さい。
  74. 岩尾一

    ○岩尾説明員 ただいま局長から御答弁がありましたように、御要求があったわけでございますが、特に生活保護というわけではございませんけれども、予算の要求というものは、各省とも、全体の財源あるいは昨年度の予算ということにあまり考慮をお払いになりませんで、かなり大きな要求が毎年出るわけでございます。厚生省にしましても、大体昨年の倍程度の予算要求が出ておったと思います。そういう状況でございまして、われわれといたしましても、この内容につきまして、できるだけ良識的に判断できる程度の検討を加えなければいけないということで検討を加えたわけでございますが、今お話がございましたように、単価補正につきましては三十四年度に大体三%程度の単価補正をやっております。そこで三十五年度におきましては栄養量の改善に沿い、単価補正という点は三十四年度にかなり見ておりますので、それ以外に内容改善というところでできるだけ見たいということで、若干の内容改善を、財源が許す限り見よう、こういうことでやっております。
  75. 大原亨

    ○大原委員 総論的な質問はできるだけ簡単にいたしますけれども、私は次官にお尋ねしたいのですが、今申し上げましたように、所得の倍増計画というのを岸内閣はやっておるわけです。月給二倍論というのは池田通産大臣、これは非常に具体的ですがね。そういたしますと、社会保障で特に生活保護の水準を引き上げていくということは、雇用政策あるいは雇った場合の賃金保障、最低賃金制度というものと、総合的にやはり密接な関連があると思うのですけれども、しかし何といっても生活保護基準というのか国民生活水準の一つ基準になっておるわけです。それについては、今栄養の問題について、あるいは消費水準の問題について、いろいろ検討した、こういうふうに言われるのだけれども、そういうことでは抽象的であって、最後には力関係になってしまって、大蔵省の中においてもそれを主張しようと思っても主張できない、政府全体の考えがそういうことになっていない、そういうことで、私はやはり国民生活水準の引き上げというものは、貧乏追放と同じように、途中で消えてなくなってしまう、先ほど申し上げたように、国際的なきびしい経済の荒波の中に入っていきましたら、弱いところにしわが寄ってくる、そういう点についてはやはり科学的な客観的な制度的な機構的な保障の制度をつけて、当委員会審議会その他拘束性のあるものにして、実態調査を国の責任においてやって、エンゲル係数やカロリーの計算その他について、お聞きしたいけれども、そういう根拠は私は大してないと思うから聞きませんが、そういうことについて、基本的にやはり考えてやるべきじゃないか、これは一つ政務次官の方から御答弁いただきたいと思います。
  76. 内藤隆

    ○内藤(隆)政府委員 ごもっともでございまして、政府といたしましては非常に科学的に考えてやっておるつもりでございます。さらに委員会とか審議会というようなものを作りましても直ちに効果が現われるかどうか、これは大へん疑問で、ことに社会制度審議会というものもあります。あるいはまた必要に応じまして厚生大臣の諮問機関であります社会福祉の審議会というものもございまして、その中には生活保護専門分科会というものもございますので、こういう方面を利用して意見を十分尊重すれば、あるいは目標に達するのではないかとわれわれは考えておる次第であります。
  77. 大原亨

    ○大原委員 それでは非常に不満足なんですが、私が申し上げておるのは、やはり生活水準あるいはエンゲル係数その他実際に生活保護者がどういう生活をしておるかという実態に即しながら最低を引き上げていくような、そういう客観的な一つの慣行なりきまりを作ってもらう、そういうことについて政府全体が努力しなければ、弱いところにしわが寄るという弱肉強食の政治というものは決して改まってこないと思う。もう少し審議会を作るというようなことについて、私は形式的なことは申しませんけれども、そういう点については考えていかなければ社会保障は前進しないと思うのです。だからそういうことを制度的に、機構的に、ということは、そういう資料が出てきたら、そういう政治の目標に向かってそういうことがちゃんと出て、これだけは大蔵省においても優先的にやるのだという方針でなければ、いつまでたってもこの制度はよくならないで、貧乏がたまってくる。私が社会局長にお尋ねしたい点は、最近生活保護者がそれからどういうふうに脱却しておるかということ、生活保護者の中から立ち上がって、ちゃんと自分で自立計画を立てておるという人がどういう工合になっておるか、それの数字上の裏づけがあれば御説明願いたいと思います。
  78. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 生活保護を受けておる方の中で、たとえば老人の単身世帯でありますとか、あるいは長期にわたって病気をしておる方でありますとか、そういうふうな本質的に稼働能力なり何なりにハンデキャップがありまして、非常に焦げついて長期にわたって保護を受けておる人もありますが、しかし生活保護法を受けておって、そういう保護を受けないで済むようになるという世帯もたくさんあるわけでございます。従いましてその数字がどういうふうな動態になっておるかということを私は今記憶をいたしておりませんけれども、その家庭の状態によりまして脱却していく方々、言葉をかえていえば生活保護法より以上の生活に更正をしていかれる方々も相当多数あるわけでございます。具体的にどういう例かあるかということでございますれば、これはまた具体的な事例も取り調べた上で御報告をいたしたいと思いますが、概括的に申しますると今のようなことでございます。
  79. 大原亨

    ○大原委員 私ども申し上げたい点は、現在の生活保護基準が非常にきびしい。一方、当然生存権を保障する憲法の趣旨に従っていろいろと問題点があり、そういう場合に、若干改善されている面もあるけれども、そうした運営の面において、法律を実施する面において考える面がたくさんあるんじゃないか、これから私それを逐次申し上げますから、これについて考え方をお答えいただきたい。  救貧政策とかいって、貧乏に突き落としていて、そうしてそれを救い上げるのだ、こういう態勢の中で悪循環しているのが今の生活保護制度だと思う。ほんとうに貧乏を予防する防貧政策、こういう面から法律全体を弾力性を持って運営していきながら——法律の予算は、これは義務的な支出でございますから、おそらく全部がそうだと思うから、そういう面について足りない点は大蔵省は十分理解して補っていく、こういう点で、基本的には保護基準を上げるということを私ども思量いたしますけれども、現状の段階において、たとえば勤労控除については、三級地が七百五十円となっておりますね。局長そうですね。
  80. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 勤労控除は基礎控除、特別控除がございまして、いわゆる基礎控除、毎月控除をしていくというものにつきましては、現在は月千三百円の範囲内で、職業によりましていろいろな区別がございます。職種別にまた地域別にこれをきめておるわけでございます。今七百五十円という金額をお示しになりましたが、今のようなきめ方をいたしておりまするので、地域によりまして職種によりまして、その月額が変わってくるわけでございます。なお特別控除といいまして、年末あたりにいろいろな臨時的な賞与等を勤労者におきましてはもらわれるような場合のことを考えておるわけでございます。さような場合には、年間を通じまして六千円の範囲内で職種別にあるいは地域別に、それぞれの額をきめておるわけでございます。なおこの千三百円、六千円という金額につきましては、これを若干引き上げたいという予定で目下検討を加えております。最終的な結論はまだ得ておりません。なお勤労控除に関連いたしまして、従来は認めておりませんでした、新たに就職した場合、しばらくの間はある程度勤労控除を認めるというふうな制度をも考えて参りたい、かようなつもりで目下検討をいたしております。これも最終的に金額等につきましては、まだ結論を出しておりませんけれども、さような心組みを持っておるわけでございます。
  81. 大原亨

    ○大原委員 今具体的な検討をしておる問題について御説明があったのですが、たとえば盆とかあるいは正月なんかに、四千円なら四千円の範囲内はよろしいとか、そういうようなことでは、実際に盆や正月を送っていけない。だからそれが借金になったりいろいろな形の赤字になったり、あるいは生活費を切りつめたりして、これまた再起する力を失わせる。あるいは娘が中学を出ると、今の話と関連するけれども、これを収入の認定の中に入れる。生活保護は世帯主義をとっておるけれども、ただ就職をしたその当分の間は若干の考慮をするというのでなしに、そういう娘さんとか、中学を卒業いたしました男の子にいたしましてもそうでありますが、ひとり立ちをしていく際には、その人には人権かあるのだから結婚もしなければならないし、あるいは娘さんだったらお化粧もしなければならぬから、だから生活費を入れろと言ったって、そういうことを計算するのは無理なわけです。だから親の場合は夫婦を一つの単位として考えるのはよろしいけれども、やはりもう少し弾力性を持たせて、結婚の場合にはどうするとか、あるいは就職の場合にはどうする、あるいは中学校を出て自立しようというような場合にはどういう控除の措置をとるとか、やはりこれから立ち上がるという場合における生活保護費の認定というものをもう少し緩和することを私は考えるべきじゃないかと思うのです。そういうことについて、さらに考えていかないと、貧乏になったら、生活保護世帯になったらいつまでも浮かばれない、こういうことになると私は思うのです。田中社会部長だって賛成だと言っておるじゃないですか。党の方が賛成だと言っておるのですよ。とにかく貧乏、生活保護へ突き落としたら、何でもかんでも、たんすの底まで、ごみまでさらっていく、そういうことであってはいけないと思う。それはだんだん改まっておるけれども……。  それでは私は具体的にお尋ねいたしますけれども社会局長、特別控除の金額を引き上げるとか、あるいは就職の際に考えるとか、そういう問題についてお考えの御様子だけれども、いつごろまでに、大体どのくらいを目標にしてやっておられるか、こういうことを一つ尋ねてみたいと思います。
  82. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 時期はごく最近のうちにきめたいと思っております。できれば四月一日から実施ができるように、それまでにきめたい、かように考えております。四月一日から実施ができまするような時期に取り行ないたい、決定をいたしたいと考えておるわけであります。金額その他につきましては、まだ検討中でございますので、この席で私から申し上げることは適当ではなかろう、かようと考えます。いずれにいたしましても、その金額がえらい、二倍になるとか三倍になるとか、さようなことは私どもとてもできることではない、若干引き上げたい、かような考えをいたしておるわけであります。
  83. 大原亨

    ○大原委員 これは政務次官に御答弁いただきたいのですが、たとえば中学校を出た男の子がだんだん自立していく、あるいは娘さんが結婚の準備をする、そのために就職すると、今まで中学生の子供があった者は三千円引いてしまうわけですね。そういうことは、やはり実情にそぐわないわけです。娘とかあるいはむすこの人権を否定することになる。憲法二十五条の精神からいって、私はこれはいけないと思うのです。普通の子供でしたら、卒業してひとり立ちしても、自分で生きていくだけでも足らないのですよ。だからそういうことから考えてみまして、その金額とがあるいは運営について、自民党の方も賛成だと言われるのですから、党も含めて一つ具体的に御努力をいただきたいと思いますが、次官の御所信をお伺いしたいと思います。
  84. 内藤隆

    ○内藤(隆)政府委員 御趣旨ごもっともでありまして、そういうように一つ努力をいたしたいと思います。
  85. 大原亨

    ○大原委員 一時扶助でございますけれども、たとえば家屋の補修の場合、雨漏りその他で年一万二千円くらいの範囲内で考えているのですが、そういう場合を考えてみますと、都会において家賃が高いということ、あるいはそういう支出か多くなって、それが生計費、食費等に入っていくということ、これは考えてみましたら家賃の負担というのが非常に大きな負担になっておる。家屋の補修費もその一部でございますけれども、そういう際にはやはり、ある一定の限度までは限界を引くことはあると思うけれども、家賃やあるいは家屋の一部の補修というような場合にはそういう予算単価で切ってしまわないで、ある常識的な限界というものはあるかもしれないが、その妥当な実費を補償するようにしないと、物理的に食費の中に食い込んでしまう。それがやはり立ち上がりを非常にそこなう、生活保護自体の趣旨というものが非常にそこなわれてくる、こう思うのですけれども、そういう点につきまして、家賃あるいは家屋の補修等について実費を補償するというような方向で——無制限の実費の補償ということはできないけれども、常識的な基準を設けて実費を補償するというような方向で一時扶助の問題を運営してもらいたいと私は思うが、いかがですか。
  86. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 家屋補修の問題につきましては、私正確に金額を記憶いたしませんが、確かに一定の基準の範囲内で認めておるわけでございます。ただその範囲内でおちつかない場合には、どうしてもできないというふうな場合で、しかも万やむを得ない場合におきましては、厚生省まで協議をいたしますれば、その実費を出して差し上げられるという道も開かれておるわけでございます。ただ家屋補修というようなことになりますと、これはなかなか今日の時期に家屋を補修すれば、ことによると何万円も何十万円もかかるわけでございます。その程度はあくまでも最低限度の生活を営む上において万やむを得ないという程度で物事を考えていかなければならないことは当然であろうと思うのであります。  なおまた家賃の方でございますが、今回の予算で住宅扶助の基準につきましては——それがすなわち家賃に当たるわけでございますが、引き上げをいたしませんでございました。出産扶助とか葬祭扶助につきましては、これはパーセンテージにいたしますと相当大幅な基準の引き上げをやりましたが、住宅扶助はそのままで実は据え置くことになっておるわけでございます。ただこれは将来地代家賃統制令等が改正になり、あるいは変更が加えられるというふうなことがかりに行なわれるといたしまするならば、その時期において何らかの措置考えたい、かように考えておるわけでございます。
  87. 大原亨

    ○大原委員 たとえば一時扶助の中で寝具とか衣料とかいうものがありますが、寝具の例をとってみますと、二人で一組ということになっている。そういう一つの内規がありましても、私は一応生活扶助の一時扶助としてはいいと思うのです。しかしたとえば炭鉱地帯なんかで、五人家族があっても一組くらいしか渡らないというのです。もう全部すってんてんになって板張りの中に寝ているようなときに、生活扶助を適用して、そういう規定があっても五人家族に一組くらいしか渡らないというような事実があるのですか。
  88. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 すべて生活保護法の基準というものは、これは非常に世帯数も多いし、世帯の状況も非常に違いますので、その基準の範囲内でその世帯に実際に必要なものだけという運用をいたしておるのでございまして、これはまた当然なあれであろうかと思います。扶助を受けておる世帯に二人に一組ずつのふとんを一齊に買いかえて新しくしてあげるというような画一的なものじゃないわけでございます。その家庭のふとんの状況を見て、そうしてとてもこれでは過ごせない、これだけ補充すればいい、こういうことでケース・バイ・ケースで決定をいたしていくべき筋合いのものでございますし、またさような運用をいたしております。従って基準がこうなっておるから全部画一的にそうなるのだというわけのものではございません。その点は一時扶助なりあるいはその他の扶助におきましても、基準以下で済む場合には基準以下でいく、こういうことになるわけでございます。従ってもしさような場合を想定いたすとすれば、今御指摘のような場合も起こり得るかと思います。これはそのケースを具体的に調べて判断をいたすべき問題だと考えます。
  89. 大原亨

    ○大原委員 こういうように具体的にお尋ねいたします。炭鉱地帯とかその他失業の多発している地域で、急速に生活の状況が変わっておるのです。これについては政府もいろいろ施策をやっておるわけですけれども、そういう場合に生活保護を適用する際に、五人の家族のところが、敷ぶとんもない、一枚のふとんしか入ってない、こういう状況で寝ているそういう実情の場合に、二人に一組という基準に従ってそういうふうな寝具の支給をすることはできないのか、これを私は具体的に一つ質問をいたします。一枚しかないのですよ。あるいは敷ぶとんほんとうにせんべいぶとん一枚で、それでからだを半分くらいはみ出して寝ている。そういう状況のときにこの基準は適用がないのかどうか。実際には金がないから出さぬというんだけどね。
  90. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 五人に一枚というようなことであれば、これは当然それだけをお聞きすれば一時扶助の対象に該当すると私は思います。
  91. 大原亨

    ○大原委員 そういう場合に、第一線のケース・ワーカーなり本人がそういうふうに申請すればよろしいのですが。生活保護は申請主義だろうけれども、そういうふうに申請すれば出るのですか。
  92. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 扶助の決定をいたすのは第一線の福祉事務所長でございます。福祉事務所長が必要なりと決定をいたしますれば、当然出るわけでございます。
  93. 大原亨

    ○大原委員 その場合には府県なら府県の予算のワクは拘束を受けませんね。
  94. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 一時扶助の運用につきましては、たとえば今の寝具の問題でも、それから家屋補修等の問題におきましても、各府県、それから各福祉事務所で取り扱いが非常に区々にわたりますと非常に不公平が生じるわけでございます。従って私どもの方におきましては、そういうばらつきを避ける意味におきまして、一応の目安として、おおよそお前の府県はいつからいつまではこのくらいの金額というワクを与えております。しかしそれでおさまらない、実情は今御指摘のようなケースであるということになりますれば、これは当然そのワクを広げてやらなければならないという問題が起こるわけでございます。その場合には私どもとしては十分考慮いたしたい。ただし御指摘のような顕著な場合で、何となくみんながやかましく言うから、一齊に炭鉱地帯の生活扶助家庭にはふとんを全部新しくやるのだ、かようなやり方では、私どもの方は追加を出さないつもりでおります。
  95. 大原亨

    ○大原委員 それで一時扶助の金が足りなくなったら、義務費だから大蔵省の方から出るでしょう。
  96. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 これは一時扶助とか医療扶助とか生活扶助とか、そういう区別はないのでありまして、保護法の金はいわゆる法律上の義務費という形になっております。八割という国の負担分は、さような取り扱いになっておりますので、かりに予算に不足を来たす場合には、それぞれその手続を踏んで追加をいたす、こういうことに相なるわけであります。ただ一時扶助の金が足りませんでも、あるいは片一方で余るということもございますし、一時扶助の金は余っても他の扶助において足りなくなる、こういうふうな場合もありますので、保護費総体といたしましては、今私が申しましたように、義務費という取り扱いに相なっておりますから、概括的に申せば、別に手続を踏んで、あとで地方に迷惑をかけないような措置は講じ得ることになっております。
  97. 大原亨

    ○大原委員 これは働く意思があっても働く場所がないとか——これは戦前の生活保護とは違うわけです。それから働く能力を持っていない、こういう人に対して生活保護や所得保障があるわけですから、最低生活を保障するという意味においてそれは当然だと存じますが、これは実際には大蔵省の方から医療扶助等につきましては、追加いたしておることもあるでしょうが、大蔵省の方が予算のワクをきめて、あなたの方も厚生省のワクをきめて、ずっとそれが下へいくものだから、第一線のケース・ワーカーはそれを押しつけるということになって、実際は出すべき金が出ないということになって、そうして立ち上がりもできなければジリ貧になっていく。こういうことは、私は一つの大きな機構の中で動いていく場合には、そうだと思うのですが、今社会局長が言われたような趣旨を生かすためには、やたらに奪い合うということでなく、実態に即しながら必要なものを確実に敏速に出していく、こういうことをやることによって、現在法律の範囲においても、非常にその水準は低いと思いますけれども、やっていける面があると思うが大蔵省はその点は御了解になっておりますか。
  98. 岩尾一

    ○岩尾説明員 先ほど社会局長からお答えいただきましたように、これはいわば予算上の言葉で申しますと義務費でありまして、使ったもののうちの八割というものは国があとで清算する、こういうことに相なります。本年もこの前御審議をいただきました第二次補正予算におきまして、三十四年度分の不足見込額というものを生活扶助の中に入れまして、これは予想的な数字でございますが、補正いたしております。さらに三十四年度の結果か不足であれば、三十五年度において清算をするということになるわけであります。
  99. 大原亨

    ○大原委員 生業扶助というのは、立ち上がり資金です。これを増額して、そして自分で内職の道具を買うとか、そういう場合には立ち上がれるような、そういう予算上の窓口を開いておくことが必要だと思うのですが、そしてこれはさらに増額をすることが必要だと思いますが、本年度の予算と、あるいは政府のお考えはいかがですか。
  100. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 生業扶助の一件当たりの基準は、一万二千円以内ということで運用いたしておるわけであります。この一万二千円という金額が少ないじゃないか、もう少し引き上げたらどうか、こういうような御意見だろうと思いますが、ごもっともな御意見だと思います。ただ御存じのように、かような問題につきましては別途世帯更生資金とか、それから母子福祉資金貸付とか、さようなちょうど生活保護法の生業扶助に当たるような別な制度がございまして、しかもこれにおきましては、相当な限度まで貸し付けし得る、しかも非常に長期、低利の金を貸し付けし得るという制度がございまして、これが相当活発に動いておりますので、それらの制度とも見合いまして、生活保護法の中におきましてはほんとうにミシンを習いに六カ月通うとか、あるいは何か職につく場合に小ぎれいな洋服の一着も作るとか、そういうようなごく手近な方途に出て、しかもこの程度でまかない得るものを一つこの対象に拾っていこう、こういうふうな運用をいたしておるわけであります。これが運用につきましてはいろいろ御意見もあろうかと思いますが、しかしとにかく生活保護法で何もかもやってしまうというふうに考えなくても、別にさような制度がある場合には、それらもあわせて世帯更生というものを全般的に見ていったらどうかと考えております。
  101. 大原亨

    ○大原委員 本年度の予算は幾らですか。
  102. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 五千四百万円です。三十四年度は三千九百万円で、約千五百万円の増額でございます。
  103. 大原亨

    ○大原委員 これは百六十万の生活保護該当者が立ち上がる際には、たとえば勤めに出るにしましても、一カ月分の就職の生活費が要るわけです。今までは事前にもらってやっておったわけだけれども、今度は就職しようといたしますと、仕事場を求めたら一カ月分の生活費が要るわけです。それから衣類もやはり整えなければいかぬわけです。それに子供の生活費もありますから、そういうことをずるずるとやっておると、また生活費に追い詰められているから、そういう道も探がし得ない。そのうちに生活保護だけにたよっていく、こういう結果になる。若干ふえたということはいいのですが、五千四百万円くらいでは焼石に水だと思います。これは一体何人に適用できますか。これはきわめてわずかなものです。これは一見むだのように見えても、こういうところに金をやっておくということが、やはり立ち上がる力を強めて、実際上生活保護の悪循環を断ち切る、こういうことになると思いますが、この増加については、次官御努力いただきたいと思いますが、どうですか。
  104. 内藤隆

    ○内藤(隆)政府委員 ごもっともでありまして、一生懸命に一つ御期待に沿いたいと思います。
  105. 八木一男

    ○八木(一男)委員 生業資金の貸付条件と世帯更生資金の貸付の条件はどのように違うのか、一つお答え願いたい。
  106. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 生活保護法の生業扶助というのは、ほとんど給与でございます。貸付の制度ではございません。片一方の方は、御存じのように貸付、こういうことであります。
  107. 八木一男

    ○八木(一男)委員 多分そうだろうと思って伺ったのでありますが、世帯更生資金があるからということを一つのこれが少ない理由の弁解の材料に使われたけれども、世帯更生資金の方は保証人が要る、担保が要るということです。それで生活保護を受けて、おられる方は、担保になるような資産を、補足性の原則で、それを処分しなければかけられないのが原則です。そうすると大体財産を持っていない。それから、生活保護を受けておられる方に保証をして下さる方はごくわずかです。そうなると世帯更生資金というものは、残念ながら実際上借りられないということになる。保護家庭が立ち上がられることは非常にいいことで、生活保護法の第一条に、自立を助長するということがちゃんと規定されているわけです。そういうことであれば、ほかに貸付制度があるということは一切抜きにして考えられて、それで生業資金のワクをふやすとか、そういうことをもっと急速にやられなければ、この点からの問題の解決も進まないのじゃないか。そういうことにつきまして、一つこれを進めていただきたいと思いますが、積極的な御返事を承りたいと思います。
  108. 高田正巳

    ○高田(正)委員 先ほど申し上げましたように、一応この基準は動かさないという建前にいたしておりますが、将来の問題として十分検討してみたいと思います。
  109. 大原亨

    ○大原委員 今の生業扶助につきましては、将来運営その他において必要がたくさん出てくるという実態が出た場合においては、やっぱり義務的な支出として追加できるのですが。私が努力してもらいたいと言うのはそういうことを言ったわけです。社会局長、私が言ったのはこういうことです。予算のワクは一応あるけれども、どんどん努力をされてそういう実態が出てきたら、そういう方面への運用を大蔵省も了解するような仕組みになっておると思うけれども、いかがですか。そういうことについて厚生省はおやりになっておりますか、こういうことです。
  110. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 法律上、予算の扱いといたしましては、生業扶助に要する経費もその他の扶助に要する経費も同じでございます。従って二、三の扱いはございません。ただこれは先ほど申し上げましたように、あくまでもただ金を給与するわけでございますので、給与をする場合に画一的にみんなに生業扶助を見てやる——それはもらわぬよりはもらった方がいいわけでありますが、さような画一的な扱いはいたさないつもりでございます。個々のケースをよく見まして、これはそのことによってのみ立ち上がり得る非常に妥当なケースであるという場合には生業扶助を支給して参りたい、かような扱いをいたすつもりでございます。
  111. 大原亨

    ○大原委員 医療扶助、出産扶助、これはいわゆる一般扶助とは分けて、一般扶助をもらっておろうがおるまいか、そういうボーダーランイ層の人に、ついて、必要があれば出すのですね。
  112. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 医療扶助、出産扶助は別に他の扶助と区別はございません。たとえば生活扶助を受ける人はこのくらいの人で、医療扶助を受ける人は少し高い人、こういうふうな区別はございません。水準というものは同じでございます。ただ生活はしていけるけれども入院費の方は月々は一万五千円は出せない、そのうちの三千円は出せるけれども一万二千円は足りないという場合には、一万二千円を出すわけでございます。従って、その医療扶助の単給の方におきましても、それから生活扶助を受けておる方におきましても、その生活水準は同じである、医療費だけが別になっておる、こういうことでございます。
  113. 大原亨

    ○大原委員 教育扶助の中で、教科書をただにする、保護するということがありますね。実際は教科書だけをむき出しにしてかついでいくわけにいかぬでしょう、さげていくわけにいかぬでしょう。カバンが要る、筆入れが要る、そういういわゆる学校の用具が要るわけですよ。私は、教育扶助というものは、そういう必要不可欠のものについては、そういうふうに解釈や範囲を拡大をして、カバンに対してもその他に対してもやるべきだと思うのですが、いかがですか。
  114. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 教育扶助は、若干大原先生誤解をしておいでになるようでございますが、これは月々小学校の何年、中学校の何年というふうに、学年によって金額に区別があるわけでございます。今御指摘になりましたような学用品とか通学用品といったものは、学年に応じて固定した金額できめてあるわけであります。それで、そのほかに教科書代とか学校給食費とか通学のための交通費の実費、こういうふうなものは別にこぶをつける、こういうことでございます。というのは、御承知のように教科書がきちっときまっておるわけじゃありませんので、学校によっていろいろ違うこともあるやに聞いておりますので、さような場合に応ずるために実費をこぶをつける、こういうやり方になっておるわけであります。
  115. 大原亨

    ○大原委員 そのこぶをつけるというのは、そういう教材については三〇%くらいまで補助する、こういうのですか。教育扶助は、たとえば習字用具とかそろばんとかランドセルとか帽子とかいうふうに、学校に行くということになれば、今までの生活保護の中の計算にはないけれども、これは必要不可欠だというものがあるわけですよ。親としては、子供を学校にやる際にはそれだけは絶対にやらなければいかぬというものがあるわけです。そういう最低のものについては、教科書以外についても実費を給付するようになっておりますか。
  116. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 実費を支給するのは、今私が申し上げました教科書代、学校給食費、通学のための交通費でありまして、その他の学用品とか通学用品、今先生が御指摘になりましたようなものは、それらを見込んで各学年に応じて月幾らという金額がきめてあるわけでございます。その金額が低過ぎてランドセルは買えないじゃないか、ランドセルにするかふろしきにするかというような、その金額については、ちょうど今きめてある生活扶助の基準か高過ぎる、低過ぎるという議論と同じような議論が起こり得るかと思いまするけれども、さようなものを想定をいたしまして金額を学年別にきめ、別に金額をきめることが不適当である教科書代、学校給食費、通学のための交通費の実費というようなものは、そのケース、ケースに応じてこぶをつける、こういう扱いをいたしておるわけであります。
  117. 大原亨

    ○大原委員 たとえば四級地であったら、月にそういう費用を一人八十円見る、そのくらいですか。
  118. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 四級地——最低の級地で小学校の一年生、この表の最低が八十円でございます。
  119. 大原亨

    ○大原委員 だがその実情が、非常に低くて、生活費に入っていっておるのじゃないか。だから、項目をきめて実費を出すようにすべきじゃないかと思うのですよ、ぜひ要るものについては、要るのだから。だから、単にこぶをつける、あやをつけるということでなしに、出すようにする。その渡し方なんですけれども、そういう世帯の親に渡すのじゃなしに、どういう方法か知らぬが、たとえば民生委員その他ケース・ワーカーというような人が品物を渡す、こういうことになるのですか、学校から渡すとか……。私は、実際に必要なものについては実費を計上して、ちゃんと親なら親から渡すようにすべきだと思うのです。子供なんですから、やはり教育なんですから、もう少し人間的に、全部を他人の御恩になっているんだということに子供をしないで、ちゃんとそういう制度があるんですから、やはり親なら親が渡すようにすべきじゃないですか。そうなっていないでしょう。
  120. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 大部分は家庭に福祉事務所から渡しまして、家庭で買うべきものは買い、学校に持っていくべきものは持っていくというやり方をいたしておるはずでございます。ただ地方によりましては、たとえば給食費のごときものは福祉事務所から学校に渡し、学校に持っていくという扱いをしておることもあるやに聞いております。
  121. 大原亨

    ○大原委員 今の点はやはり品物によって違いますけれども、しかし原則としては親からやる方がいい。僕なんか学校からもよく話を聞きますけれども、特別扱いみたいになっちゃいけない。扱いについては、そういう点には人間的に十分考えてもらいたい。この点は一つ次官も局長もうなずいておられますから、取り扱い方を気をつけていただきたい。進学とか修学旅行とか運動会の場合、そういう臨時支出の場合は考慮されておるわけですね。
  122. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 新しく学校に入るような場合には、学童服等を一時扶助で考えておるはずでございます。修学旅行や運動会の場合という仰せでございますが、これはただいまのところ生活保護法では考えておりません。修学旅行につきましては、文部省の方でたしか何らかの措置が講ぜられておるはずでございます。
  123. 大原亨

    ○大原委員 運動会等の場合だってこれは参加しないというわけにはいかないのです。だからこの点につきましては、どういう法の運用になりますか、私ももう少し研究いたしまして、また実情を聞きまして、一つ次の機会に質問なり要求をいたしたいと思います。それで、これらの費用を支給する際に、やはり支給の仕方なんですよ。これが私は非常に微妙な、大切な問題だと思うのですが、この点については支給内容が、たとえば母子加算なら母子加算は入っておる、この点の一時扶助は入っているとか、医療費についてはどれだけ入っているとか、そういう問題について中身がはっきりしないと、今の最低の生活保障をする義務支出という法律全体の組み立てがくずれてくるわけです。権利々々といって権利をやたらに主張することを私は言うわけじゃないですが、これは生存権として保障しているのですから、渡し方についても十ぱ一からげにして、ケース・ワーカーや民生委員に非常に御恩になっているような形でぽんと投げ与えられるようなことではいけない。やはりこれとこれをこういうふうに査定をして、国の方ではこういう規定に従って出しております、もらう方もきちっとわかる、こういうやり方をすることが実情に沿う。予算がないからふとんは五人家族で一組にしろ、こういう投げやりなことではなしに、実情に沿うような、あたたかい生活保護の運営ができるのじゃないかと思う。そういう問題については、法律の組み立てがそうなっているのですから、私は今日までちょいちょい聞きますけれども、そういう金の出し方が、査定をいたした結果出す仕方というものが民主的でない、あるいは法の趣旨に沿うていない。そういうことがあると、この法がせっかくあっても生きていかないような結果になると思いますけれども、この点の実情と御見解を伺いたい。これは理屈がよく通っている話ですから、次官の方から聞きましょう。
  124. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 決定の通知の場合には、その通知書の内容に、たとえば生活扶助が幾らとか、住宅扶助が幾らとか、医療扶助がある場合には自己負担分が幾らで扶助分が幾ら、かような内容を示して決定書を通知いたしております。そしてもしこれについて御不服のある場合には不服の申し立ての手続がとれますよということを付記して、さような扱いになっております。それからさらに詳しいことをお聞きになりたいということであれば、被扶助者からケース・ワーカーにお聞きいただけば御説明はいたすはずでございます。大体それによりまして今大原委員御指摘のような運用をいたしておるつもりでございます。
  125. 大原亨

    ○大原委員 その不服申し立ての際に、たとえば査定をしまして減額いたします。収入認定をいたします。それに対して不服がある、こういう際に査定をしてしまっておいて、そして不服を言え、こういうことではないでしょうね。不服の申し立てを許すという以上は、その手続期間はあるでしょうが、そういうことが生活の実態に即するという点から言えば不服だという申し立てをやる機会を設ける、不服の申し立てができますよということを示す。そしてそのやっている間は一定の期間を設けて査定はしない、こういうふうにするのが私は妥当だと思いますがいかがですか。
  126. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 不服申し立てば、これはほかの制度でも同じでございますが、行政庁の処分があってから不服申し立てということが始まるわけでございます。その処分の決定前に不服申し立てをするということは、不服申し立ての性格上あり得ないわけであります。大原先生が御要望になっておりまするのは、その扶助を決定する、すなわち行政行為を行なう前に本人の家庭の事情なり何なりをよく聞いて、十分実情に即したような決定をする必要があるのではないかということも含めて御質問になっていると思いますが、それはそのようにケース・ワーカーかやっておるわけでございます。事情を率直にお話しいただきませんと、いろいろ隠しだてなんかをいたしますと、かえって不利になるような場合がありますので、十分事前に事情をよく伺って決定いたします。  それからもう一つ、不服申し立ての間は決定をしないで保留しておいたらいいじゃないかという御意見もあるようでございますが、それは扶助を受けられる方々にとって不利なことになると思います。やはり窮迫な場合があるわけでございますので、一応の扶助金は支出して、あとでいろいろ不服の筋があれば申し立てをするということの方がむしろ親切な扱いではないか、かように考えるわけでございます。
  127. 大原亨

    ○大原委員 それは有利な場合と不利な場合があると思うのです。増額する場合には有利なんです、減額される場合には不利になる、こういうふうなことじゃないですか。その点はもう少し研究しまして、私が申し上げているのは、不服申し立てをするということはやはり理由があるのですから、その際には執行を停止する、こういう考え方でやる方が、保護を受けるのは本人なんですから、私は本人のためにもよろしいのではないか、あるいは実態に即するのではないか、こう思うのです。  もう一つは、社会福祉事務所というのは第一線のケース・ワーカーは大体全国で何人くらいあって、そうしてその増減の状況を聞かせてもらいたい。というのは、今度は民生委員の人に六百五十万円でバッジを出すのですね。ロッキードの五億円に比べれば安いものですが、それとか、あるいは心配ごと相談所というのが、非常に趣旨はいいんだけれども、できるわけです。予算も待遇も非常に悪くて心配がふえるのじゃないかと思うが、できます。ねらいはよろしいけれども、しかし、運営の仕方によりましては非常に大きな問題もあるわけです。今私が御質問いたしたいのは、社会福祉主事に対しましていろいろの意見が出ておる。私ども地方に行きましても、そういう第一線のケース・ワーカーにつきましては、民生委員等を含んでいろいろの意見がある。この問題は地方によりましては非常に誤ったやり方をやって、明らかに党派的なやり方をやったりしておるところもある。これは事実をあげましてまたの機会に御質問いたしたいと思いますが、たとえば教養とか、訓練、知識が足りないとか、こういう受ける方の側の批判がある。これは生活保護を受けておっても、元はちゃんと中小企業の経営をしたり、あるいはいろんな教養もあったりする人なんですから、幾ら貧乏して人の世話になっていても、ちゃんと見るところは見ている。逆に、待遇が悪くて人員が足りないから、過重労働で手か回らない、こういう社会主事側の意見もあると思うのです。裏返していえばそういう意見になると思う。ですから第一線のケース・ワーカーについては大きな責任を負わせているのですから、それだけの待遇をして人員を出すべきだと思うのです。大蔵省に対してもどんどん要求すべきだ。そういうことが正しい意味においてこの生活保護法に魂を入れることになると思うのです。人数が足りなくて不親切だとか、あるいはえこひいきをやって自分のことに利用するとか、ものを持っていかなければ出さないとか、そういう意見をたくさん聞くのですけれども、そういう第一線のケース・ワーカーについてのお考えはいかがか、これを一つ御質問いたします。
  128. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 ケース・ワーカーの数は、概数全国で一万内外であったと記憶いたしております。その増減はそう大して激しいものはございません。それから今御指摘になりましたケース・ワーカーをめぐるいろいろな問題、たとえば教養、訓練が非常に大事ではないかとか、あるいは過重労働になりはしないか、あるいは待遇の改善を考えてやる必要があるのではないかというふうないろいろの問題点を御指摘になりましたのですが、これらにつきましては私も大原委員と全く同様な考え方をいたしております。これらの点が、率直に申しまして十分な状態になっておると思っておりません。従ってこれらの点の改善につきましては今日も努力しておりまするし、なお今後も努力を重ねて参りたい、かように考えておるわけであります。  それから待遇改善その他について大蔵省に談判をしてという仰せでございましたが、実はケース・ワーカーは地方の職員になっておるのでございまして、郡部の福祉事務所におきましては県の職員、それから福祉事務所を設置しておりまする市におきましては市の職員ということになる。従ってその定数等も一定の基準法律で示して、大体の定数がきまっておるわけであります。ところが定数に対する充足率がたしか全国平均八六、七%程度しか参っておりません。私どもといたしましては定数を充足していただくように常々地方庁に対して必要な働きかけをやっておるわけでございます。なかなか地方にもいろいろな事情がございまして思うように参っておらない。この点は非常に残念に思いまするので、今後も十分努力を重ねたいと思います。さらにまた定数が一応基準できめてありますけれども、その定数も満たしておらないという実情でございますけれども、中定数そのものにつきましても、その後いろいろ事務がふえて参りましたので、非常に再検討しなければならぬ点がある。それらの点について非常に労働過重になっておるわけであります。この点は非常に私ども実情を心配いたしまして、地方の方々からもいろいろな御意見がございますし、何とか将来この問題については十分腰を入れて解決をいたさなければならぬ問題であろうかと考えておるわけであります。  さらに待遇の問題でありますが、そういうふうに非常に過重な労働をしいておきながら、待遇の点についてはあまり報われておらないということで、これにつきましても実は三十五年度から特殊勤務手当みたいなものを出していただくように、これは自治庁の所管でございまするが、こちらの方と交渉いたしまして、私どもの気持よりは若干下回っておりますが、一部財源措置等につきましてもとっていただいたということで、逐次やって参っておるわけであります。これらの点については私ども真剣によくなるように努力して参らなければならぬと考えております。ただ御指摘の、ものをもらわなければどうのこうのとか、あるいは党派の云々というようなこと、これはもしありましたならば絶対にいけないことであります。具体的な事例があったとすれば、これは私どもとしては十分それに対処する措置を講じなければならぬ、かように考えております。
  129. 大原亨

    ○大原委員 ちょっと今のところでお尋ねしたいのは、八〇何%しか充足してないというこことですが、その理由を聞きたいことと、非常に足を棒にして歩いているが、超勤手当なんか出ておるのかどうかという実情を聞きたい。  それから今のお話で、要保護者が社会党を支持しておるからやらないというようなことがあってはいけない、これは人権無視だし、法の平等からいってこういうことはあり得ないからこれはいけないということですが、これはどっちがどうなっても同じことです。これを選挙運動に利用したり、そういう者は不適格だから断固粛正すべきですよ。これはお話の通り当然のことですが、最初に私が申し上げた二つの点を御質問いたします。具体的に、八十何パーセントしか充足してない理由は何か。超勤手当を出しているのですか。どのくらい出しているのですか。超勤手当なんか予算はどのくらいあるのですか。
  130. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 起動手当は出しております。ただ、どのくらいの金額を出しておるかという御質問に対しましては、最初申し上げましたように、これは地方費でございますので、地方によりまして違うわけでございます。  それから充足率が十分いってないじゃないか、その具体的な原因は何か、こういう御質問でございますが、これはいろいろな事情があろうかと思います。都道府県あるいは市当局はいろいろ財政上の事情もございましょうし、あるいはその他いろいろな事情があると思われますから、一口に、こういうことで置いてなんだというふうに簡単に割り切れる問題ではないと思います。従って、私どもこれが解決につきましては、府県当局あるいは市当局に、生活保護法の事務監査等の結果、充足率を見ましてやかましく充足をしていただくようにお願いをし、またその措置の報告等も受けているわけでございます。しかしなかなか思うように簡単には参らないということは、事情がそう簡単でないということであるかと思います。  それから心配ごと相談所というのは、簡単に申し上げますと、市町村の社会福祉協議会を経営主体にいたしまして、そこで相談にあずかる方々は主として民生委員のうちの熱心な方にお当たりを願う、こういう建前でございます。もちろん民生委員以外の方で相談にあずかっていただいても何ら差しつかえはないわけでございます。それから事柄の内容は、別に制限は全然ございません。どういう問題でも、生活保護法にからまるような問題でございましても、あるいはその他の経済を離れたいろいろな問題でございまして、も、何でもそこで事情をお聞きをして、それぞれ関係方面にも連絡をし、物事を解決して参ろうというねらいのものでございます。それでこの相談所が非常に特色のありますのは、今申し上げたように、児童相談所とか身体障害者の更生相談所とか、厚生省関係にもいろいろ相談所がありますし、また市町村役場でもあるいは福祉事務所でも、それぞれの権限に関することでありますれば相談ができるわけでございますか、警察署等におきましても生活相談所を開設されておられます。しかしさような権限を持っている公のものか開設するというのではなしに、民間団体である社会福祉協議会が設置主体になりまして、そうして民間人であります主として民生委員の方々に相談に当たっていただく。従って悩みごとをさばいてあげるという建前よりは、悩みごとを聞いて一緒に心配をし、ことによったら泣いてあげる。そこから出発してそれぞれの悩みごとを解消するために、いろいろ権限を持っているところに連絡をし、あるいはまた、あらゆる社会資源をそれに動員して参るというふうな構想でございます。その辺が他の相談所とは若干異なるところでございます。
  131. 大原亨

    ○大原委員 第一線の福祉事務所に心配ごと相談所というふうな看板がかかるわけですね。どういう施設と人的構成あるいはその人の待遇というか、それに対する経済的な裏づけでやるのか、こういう点を一つお伺いします。
  132. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 場所は福祉事務所に看板をかけるつもりではございません。現にすでに各地で若干これに似たようなことをやっておられるわけでございますが、神奈川のある市におきましては、たしか医師会館か何かの一室を借りておられる。場所はどういうところでもよろしゅうございます。むしろなるべく入りやすい、肩の張らないような場所を、公の建物でございましてもあるいは民家の一隅でありまましても、どこでもよろしい。そういう場所を借り上げて、そうしてそこに働いて相談に乗っていただく方は、先ほど申しました主として民生委員でございますので、その人件費等は見ておりません。従って、費用は、そこに相談ケースの整理をするカードの箱であるとか、電話を一本備え付けるとか、そういう運営費を若干補助の対象にいたしておるにすぎないのであります。
  133. 大原亨

    ○大原委員 これから一応八木委員から関連質問がございますが、私の質問は一応終わったわけですが、生活水準を引き上げていただく、しかも合理的な基礎に従って政治の方向を示すような、そういう一つの客観性を持った、希望が持てるような、そういう引き上げ方をしていく、こういうことを要望いたすと同時に、運営については、これはもう法の建前からいきまして、法の建前に従って厚生省、大蔵省、その他一体となってやれば、改善できる面がたくさんあるということが、私、質疑応答の中でもわかりました。従って、それぞれの予算年度になれば、中身について御検討になると思います。なお私も議事録を調べて、実態をいろいろお聞きいたしまして、このことにつきまして、さらにもう一回御質問申し上げる機会を持ちたいと思うのです。きょう大臣はいろいろな都合でお見えにならなかったが、一つ大臣にお伝えいただいて、次の機会に私の質問を続けていきたいと思います。以上で私の質問は終わります。
  134. 八木一男

    ○八木(一男)委員 生活保護につきましては、渡邊さんがお見えになったとき、初めからまたお伺いするつもりでおりましたけれども、ちょっと関連してきょうお伺いをしてみたいと思います。  今大原委員と政務次官なり社会局長なりと質疑応答があったわけでございますが、そういう質疑応答のあった状態において、政務次官は、生活保護法のことについて、総体的にどのように考えておられるか、所信を伺いたいと思います。
  135. 内藤隆

    ○内藤(隆)政府委員 生活保護法の適用を受けるような階層がだんだんとなくなるようにこの問題は考えなければならぬ。さらにまたこの現行生活保護法を実施する上において、大原委員から質疑がございまして、ただいまいろいろと参考になる点もございましたが、要するに政府として助けてやるというような慈善的な考えではなく、これは当然国家として行なうべき施策であるというような根本原理に立っていきたい、かように私は考えております。
  136. 八木一男

    ○八木(一男)委員 生活保護基準を大幅に急速に引き上げることについて、原則的に政務次官のお考えを伺っておきたいと思います。
  137. 内藤隆

    ○内藤(隆)政府委員 御質問の御趣旨から考えまして、今これを大幅に急速に引き上げるというようなことは、いろいろ関連する点もございまして、さように運ぶことは困難だと考えます。しかしながら、さように大幅にこれが引き上げられるような線に沿うべく努力をしたいと考えております。
  138. 八木一男

    ○八木(一男)委員 大へん政治的な御答弁ですけれども、とにかく大幅に引き上げることが必要であるという御返事がいただけるかどうか。必要であると思う、でいいです。
  139. 内藤隆

    ○内藤(隆)政府委員 大幅というといろいろ問題がございまするが、なおさらに検討を加えていきたいと思います。
  140. 八木一男

    ○八木(一男)委員 大へん失礼な、なまいきな言い分でございますが、政府次官はあまりよく御存じないと思うのです。一つよく御研究になって、渡邊大臣のよい推進役としてこの問題を推進していただきたいと思います。  生活保護法を端的にいいますと、今度ちょっと基準を引き上げて、その内容がどうのこうのという御説明が高田局長からあるかもしれませんが、とにかく少し前までは一年に下着が一枚というような基準です。およそ人間の生活で、下着が一枚という生活は考えられない。ところがそういう基準なんです。ですから、一年に三%や三・二%上げる、そんなものでは全然話にならないです。幾分でも人間らしい生活に近つけるためには、急速に非常に大きな手を打たなければならない。そういう点でよく御検討になって、これは渡邊さんに直接また御質問いたしますけれども、政務次官、一つ極力推進をしていただきたいと思います。  政府は所得倍増論というようなことを言っておりますね。所得倍増論ということを言って、十年間に所得が倍増すると言っておるが、一般に農村は四割しかふえないというような議論が展開されております。所得倍増論ということを言うならば、一番先に生活保護法を受けておられる、政治の欠陥のために生活に困難をしておられる方々のことを考えると、三%では、複利計算にすればもう少し大きくなりますけれども、十年間で三〇%しかふえない。所得倍増とは非常に離れております。現在の基礎が一般的な生活水準と猛烈に違うわけです。ですから、ほかの点で一般的に所得倍増を考えるならば、生活保護を受けておられる階層に対しては十倍くらい考えなければバランスが合わない。こまかい御説明は局長からおありになろうと思うけれども、その点で、この問題は今の政府の手で非常に置きざりにされているわけです。それを今までの概念で、三%上げた、ちょっとやったんだというような概念ではいけないわけです。大体六%の要求をしたのが、大蔵省がなたをふるわれた。主計官、一生懸命やられたのでしょうけれども、そういうような政府であってはいけないわけです。そういうような政府なり与党の傾向を直すために、急速に全面的な御努力をしていただくことを御要望申し上げたいと思いますが、これについてもう一回御答弁を願います。
  141. 内藤隆

    ○内藤(隆)政府委員 御要望の趣旨ごもっともでございますが、いろいろ国家予算の関係もございましょうし、その他関連をした事項もありますので、大幅の急速なることは、ここで私が直ちにやろうという答弁のできないことを遺憾に思いますが、しかし御趣旨に沿うて努力をするということは十分にお答えできると思います。この点で御了承願います。
  142. 八木一男

    ○八木(一男)委員 政務次官としても、今のお立場としては普通そういう御答弁があろうかと思うが、先輩の政治家である政務次官には、そういうお立場を離れて、政治的に勇敢に物事を推進していただきたいと思います。予算もありますと言われました。予算のようなものは、いかようにでも作れる。私が大蔵大臣になったら三兆の予算額でも作って見せます。この基準を大幅に引き上げるようなことは、そんなに金がかかるはずはありません。三百億も見れば相当のものはできます。あえてロッキードの例を言わなくても、再軍備予算の例を言わなくても、租税特別措置法の例を言わなくても、やる気になったらできる。予算のこともありますということが一般的な御返事ですけれども、予算ということにかこつけて、すぐやることができないということは、やらないことと同じです。今厚生大臣のかわりに来られた政務次官一人を御追及申し上げるのは非常に恐縮でありますけれども、先輩の政治家である政務次官に、政府全体や与党全体の空気が変わるように、一つ努力をお願いいたしたいと思います。  その次に、ただいま大原委員の御質問の中で、予算のワクがきまって、これは義務支出だから、そういうことが出てきたら、さっそくそれは補正予算を組んでやるんだ、それは非常にけっこうであります。そういう建前でなければいけない。ところが予算のワクがあって行政上できないという御返事があるかもしれませんが、予算のワクが一応きまっておる、そうなれば各府県なり市町村なり、やはりワクにしばられる考えが今の行政上では起こる。そうなると、ワクをあまりはみ出したら調査をなさるのは当然いいと思います。ところがそれが失政というような気分をもってかかってくる、そうなると自分のほんとうの任務を忘れて、ただつじつまを合わせるために末端にいる人とか中間にいる人がそれを合わせる。あたたかい末端の人がいても、その上吏が自分の方はワク内でおさまったという考えをしたいために、下のあたたかい人を押えつけるということも起こるのですから、こういうワクという問題は今の行政上はほかのところでも行なわれておりますから、絶対にいかぬとは言えないけれども、ワクということで、下で仕事をしておる人またはそれを受けたいという申請をする人に対して、重圧にならないような最大の注意が必要だと存じます。それにつきまして一つ厚生次官と局長お二人から御答弁を願います。
  143. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 生活保護法の本質的な性格から申しまして、それから先ほど私からも、岩尾主計官からもお答えになりましたが、その諸経費の性格からいいまして、ワクで適正な運用をしばるということは絶対にいたさないつもりであります。しかし今御指摘がありましたように、予算の経理上あるいはそういうふうなことがあるかもしれぬから、十分戒心をしろ、こういう御注意でございますが、これは一つ十分戒心をして参りたい。ただこの点は一つ御了承を願いたいのですが、今までたとえば九州のある市あるいは九州のある県、全体でもそうでございますし、それか市なり町村なりに行きますとよけい顕著に出ておりますが、ここ一年間で生活保護法の対象者が二倍にも三倍にもふえたというようなこともあるわけです。もしさようなことをワクをもってこれをやっておるといたしますれば、さような結果は出てこないはずです。やはり私どもとしましては最初申し上げたようなつもりで生活保護法の運用をやっておるということは、さような例を見ていただきましても御了解はいただけるものと思いますけれども、しかしいろいろ事務の執行上、先生御注意になったような点、これは役人の何と申しますか通有性として、さような弊に陥るおそれもなきにしもあらずでございますが、その辺は一つ十分戒心をいたして参りたい、かように考えております。乱給もいたしたくありません。漏給もいたしたくありません。適正な運用を期して参りたい、かように考えております。
  144. 八木一男

    ○八木(一男)委員 今の御答弁で大体けっこうなんですけれども、さらに一つ……。今の御答弁にはほんとうの気持が現われているように思いますので、私はこれ以上そんなに申し上げたくございませんけれども、厚生省の本省から、大臣から、次官から、局長から、それから下にそういうものを扱う人は何段階にも分かれますから、そこで一人でも冷酷な人、自分の出世主義だけしか考えない人がいれば、それが遮断をされる。それが方々で受けられるのになかなか適用をしてもらえないということになりますから、念には念を入れて生活保護法の趣旨が徹底するようにやっていただきたいと御要望を申し上げます。  もう一つ、漏給ができることは絶対にいけないのですけれども、乱給の方はあまり厳格にすべきではない。それは行政官庁をあずかっておられる人としては、そういうことはうんと言えないかもしれません。言えないかもしれませんが、乱給の起こるということは、生活保護法自体か非常に実態に合わない苛烈きわまる法律であるということと、それの裏づけになっている予算その他の内容が非常に軽少であるということからこの乱給は起こる。ほかの乱給とは違うと思う。ですから漏給は絶対起こさない。それで厚生省本省で乱給と思われる点は、やはりこれは行政官庁の許す範囲のあたたかい配慮で、乱給としてきめつけずに、冷酷な法律できまったものを行政処置でできるだけあたたかいものにするという御配慮が賜わりたい。これはなかなかお答えしにくいことだと思いますけれども法律上の具体的な問題に対する欠陥は、行政上でできるだけカバーをするという考え方で一つやっていただきたいと思います。御答弁がなさりにくかったら、この点は御答弁をなさらないで、そのつもりでやっていただきたい。その程度のことを行政運用でできるだけやるということであれば、御答弁していただいてもいいですが、なさりにくかったらこれは御答弁いただかなくてもけっこうです。あたたかい気持でやるというような御答弁を伺いたい。  それでは、岩尾さん、いろいろ聞いておいでになりましたけれども、財政当局ですからいろいろなお立場があると思うのですけれども、大体生活保護法自体が非常に過酷な法律であることは、聰明なここにおられる方はみなおわかりのはずです。ですから漏給は絶対にないように、その点は行政的なあるいはまた財政的な考え方でやって、すべてその権利を持つ人が適用されるというところに最善の力をかけられる。それ以外にかすかの差で適用を受けておられる人を締めつけるというような考え方は絶対になさらないで、あたたかい配慮で一つやっていただきたいということを強く要望をしておきたいと思います。  その次に、高田さんにちょっと具体的なことでお伺いしたいのですが。扶助額が決定されて、扶助を受けられる人は受け取られるわけでありますが、そこで内容がわからないことが起こる。前よりは少なくなったとか、多くなると思ったところ多くならなかったというようなことが方々で起こりがちであります。そういうことに対して十分に納得がいくように、明細書をくれというようなことを言う方がある。それは当然なことでありまして、福祉事務所で明細書を出しておられたところがあった。ところが最近において本省からの指令で、そういうものを出すなという強力な指導をなさったそうですけれども、これははなはだ強圧的だと思うのです。そういうことは生活保護に非常な熱意を持っておられる社会局長の真意ではないと思う。そういうことではなしに、そういう方々が納得のいくように、むしろ積極的に明細書などを出してあげられるような行政指導をしていただきたいと思いますけれども、それについて社会局長の御答弁をお願いいたします。
  145. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 別に出すなという命令をしたわけではございませんが、見解を聞いて参りましたから、不適当である、こういうことをはっきり言いました。しかもそれは私の真意でございます。先ほど申し上げましたように、決定書には生活扶助が幾ら、教育扶助が幾ら、何々扶助が幾らという程度の内容は書いてございます。それからもし御不服があれば、不服申し立ての手続もあるということも書いてございます。それから御本人がいろいろ御不審の点がありますれば、ケース・ワーカーにお尋ねをいただければ、ケース・ワーカーは幾らでも御説明をするということはいたすつもりであります。ただこまかい明細得を扶助をするたびに全部によこせということにつきましては、これは私はなかなか事務的にも、先ほど申し上げましたように、全国的に見てケース・ワーカーというものは非常に過重労働に悩んでおる。かような事務的な事情からも、あるいは個人の秘密にわたることでもありますので、やかましいことを申しますと、かようなものを書いてそれを第三者が見たりなんかするというようなことになりますと、これまたいろいろ別の問題が起きて参りますので、今日やっておりまするようなことで私は今後もやって参りたい、かように考えておるわけでございます。
  146. 八木一男

    ○八木(一男)委員 高田さんが、出先の福祉事務所から意見を問い合わせてきたから、そのときにはそういう考え方でやられて、これが正しいというつもりでお出しになったと思うのですけれども、別のわれわれの話も聞いていただき、それを検討していただいて、もしそれにいいところがあれば、一回御返事になったことといえども、これは正しい意味で変更していただいてもいいのではないかと思う。そういう意味でお聞き願いたいんですが、いろいろの内訳を書いたものを渡してあるというお話でございます。私もつまびらかにしておりませんから、どういう形式か存じません。存じませんけれども、それが出ているのに、明細書がほしいということは、納得のいくような内容か出ていない計算書しか出ていないのだろうと思う。やはりこれについては国法で定まったものを適用されているわけでありますから、本人としては——そのままでわかっている人はかまいません、わからないでいい人でもわかった方がいいわけです。それからまた頭をひねってわかるよりはちょっと見てすぐわかる方が親切だと思う。事務量の問題は別にございます。ございますけれども、事務量を一応抜きにして考えますと、これは明細書があると派生的なことが起こると言われますけれども、あった方が本筋だと思う。派生的なことを起こさないためには、それを渡すときに注意すれば起こらないと思う。また福祉事務所の諸君もそれを渡すことによって何回も説明しなくともいいということになれば、それだけ事務量が減るということになる。事務量というものは書類の印刷だけではなしに、ケース・ワーカーがしゃべることも事務員に入る。その方がずっと時間がかかる。そういう方々が何らわからないので、人によっては憤激される方がある。それは事めんどうです。それの方が事務量がふえる。ですからそういう意味で、こういう明細書があってもいいのじゃないか。ただしこれは全国的にあった方がいいから、私としてはそういうものを出すべしという積極的な指導をなさってしかるべきだと思いまするけれども、やはりこの問題に当っておられる高田さんに対して、私は実際の衝に当たっていないで、そういうきめつけは遠慮をしようと思います。しかし具体的にそういうことをやっておられる福祉事務所に対して本省から、法律でも何でもないもので、うまくいっているところに、それはやってはならない、やらない方がいいというような指令は、少なくともこれはやめていただいて、実情に応じた明細書を出しておるところは出させるようになさったらいいと思います。それについて高田さんのお答えを一つお願いいたします。
  147. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 一ぺん言ったことをよく考え直してみて再検討するということについては、私は決してやぶさかではないつもりでございます。よくないとなれば、また私の考えが間違っておることであれば、これはいつでも改めます。ただこの問題は、先ほども申し上げましたように、ある程度の内容は書いてあり、それから本人には幾らでも御説明いたしましょうということを申しておるのでございまして、さような、ちょうど俸給を支給するときの明細書のように——これはまだ簡単でございます。ところが生活保護法の方はいろいろな加算かありましたり、いろいろ控除がありましたり、いろいろめんどうでございます。さような問題、事務的にもなかなか大へんでございますし、それからそういうふうな、どういう場合に加算がつき、どういう場合に控除がつくというようなことは、何も秘密にしているわけじゃないので、公にしているわけでございます。これは関係者は十分知っておられ、また知られる方途は幾らもあるわけでございます。そういうふうなことでもございますので、私は、若干出しておるところがあるかというお話でございますが、あるいはそういうところがあるかどうか承知いたしておりません。ただ、それを出すに至った経緯を聞いてみますと、これは簡単に進んで出しているのかどうか、その辺も若干疑問だと思っておりますが、私はこの問題は今日のところ、この間示しましたわが局の見解を変更するつもりは実はないのでございます。せっかくの八木委員の御説でもございますので、もう一度十分考えてみたいとは思いますけれども、私はさようなことは、これは今のままでけっこう生活保護法の趣旨に沿っておる、別に俸給をもらう、賃金とは性格が違いますから、十分生活保護法の趣旨に沿っておる。しかもそれが非常な冷酷無情な扱いであるわけではない。そこまで要求されるのは少し要求される方がむしろ行き過ぎではあるまいか、こういうふうな見解を私は持っておるわけでございます。一つ今後もよく検討いたしたいとは思いますが、ただいまのところさような考え方でございます。
  148. 八木一男

    ○八木(一男)委員 実際に今度生活保護の方で老齢加算ができたり母子加算があり、障害加算がある。そういうことが末端の事務の上で一つも忘れられないとは断言できないので、何件もの件数の中には誤りもあることであります。それでそういう誤りがもし起こったとすれば、それを起こした人に聞いたところで、そういうことはなかなか気がついて教えてくれないし、また人によってはあやまちを、自分の面子があるから、そんなことはないのだといって突っ放す場合もあり得る。不服、異議の申し立てについては一カ月以内にしなければならないということですから、やはり早く事情を知らないと、当然の権利のある人が受給されない場合も絶無ではない。またほんとはもらえると思ったけれども、法規の解釈上では今もらえないというようなことになっても、納得がいってもらえない場合だったらいいと思うのですが、納得がいかないで何もくれないのだということであったら、ただでさえ苦しい生活をしている人がそれだけの非常な不満な感情を抱くような原因を作ることば行政上はよくないと思う。ですから一つ今の、少なくとも最低に、その各福祉事務所でやっていることは法律違反でもないし政令違反でもないのですから、そういう精神からいって、やって悪いことではないのですから、ただ事務量がふえるということはあるかもしれませんけれども、別な意味で、そういうことがスムーズにいけば事務量も減ると思いますので、各自主性でやることについてもう一回お考えをいただきたいと思います。私も実情についてもう少し詳しく調べてみたいと思います。高田さんも調べていただいて、またこの問題については後に直接に委員会以外でお話をするなり、また委員会で御質問するなりしたいと思いますので、一つ検討していただきたい。  その次に、概括的にでも、いずれまた申し上げますけれども、先ほど大原委員の御質問で、教科書については別、学用品については教育扶助が出るというお話がありましたけれども、副教材費などは今全然出ておりません。玉で計算する計算器などは一つも出ていない。文部省で考えるべきであるかもしれませんけれども、結局そういう問題を文部省と厚生省で押し合いしては困ると思う。生活の最低は生活保護法で保障するということになっているし、その項目で教育扶助という非常に困った方々の子弟の教育のための部門があるわけですから、すべてほかの行政が非常に不十分であるときの補完は社会局で必ず埋めてみせるという覚悟でやらなければならない問題だと思います。ですからそういう問題について文部省でこれからやれるなら、そのときにまた変えてもいいのですから、即刻に少なくとも義務教育に関する限り、ほかの子供たちと同じように受けられるような内容のものにこの教育扶助を充実していただきたい。たとえば大原委員の言われた、つかみ金でやるために実際の現物と合わない、だから現物が使えないというようなことが起こらないように、修学旅行にみな義務教育で連れていくときにその子だけは行けないというようなことがないように、文部省の方で手当をしてもそれが十分でないために行けないことがありますので、そういう特に最低の生活であって、そこの子供たちが義務教育がほかの子供たちと同じように受けられないということはあまりにも気の毒でありますし、そういう点について、ほんとうの教育に関することも、ほかの制度にない部分は全部教育扶助で実際にかかる金額を埋めるというような行政をやっていただきたいと思います。そういう御努力を必ず急速にやっていただけるかどうか、御答弁をいただきたいと思います。
  149. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 先ほど申しましたように、教科書代とかそれから学校給食費とか学校に通う交通費というようなものは人によって違うので、私の方はそのものずばりで実費を払いますということで実はやっておるわけであります。問題になりますのは、その他の一般的に基準をきめて、いわゆる通学用品とか普通の学用品、鉛筆とか紙とかそういうふうなもの、たとえば今の計算機というような、そういう種類のものもその中に入ると思いますが、その基準が高いか安いか、今の金額で十分に買えるかどうかという議論かこれはあると思います。従ってこれらのことについての再検討は将来の問題として、私はやることについてはやってみたいと思います。それから文部省と厚生省の関係でございますが、私どもはなすり合いをするつもりはございません。簡単に申せば、それが義務教育の中身だというふうに文部省が割り切ってくれれば、私どもはそれに対応した費用は当然計上していきたいと思います。ところが小学校、中学校に通っているときにそういうことは起こるけれども、それが教育の中身であるのかどうか、その辺についていろいろ疑義のある題題があるわけであります。そういうふうな点が不明快でございまして、実際問題としてはかかるから、いろいろ運動会の費用をどうするのだとか、修学旅行をどうするのだというような議論が出てくるわけであります。しかし先ほど申し上げましたように、それが義務教育の中身であるというふうにいわゆる学校教育の方から割り切っていただくならば、それに要する費用は当然教育費用の中に見ていかなければならぬ、こういうふうに私は考えております。いずれにしろ御指摘のお気持は、教育扶助の金額できめてある学年別の経費ではなかなかまかなえないのじゃないかという、ちょうど生活扶助の基準か低過ぎるじゃないかということと同じ意味における御質問のお気持であると拝察いたしますので、その点につきましては将来の問題として十分検討して参りたい、かように考えております。
  150. 八木一男

    ○八木(一男)委員 生活保護法の基準自体が憲法に違反しておると私ども思いますけれども、それを抜きにして、まだ教育の面はもうちょっと考えていただかないとほんとうはけしからぬですよ。生活扶助で食べている者は、体力を消耗してかろうじて生きているわけです。生活保護法の第一条は、最低の生活を保障するために自立を助長するとかなんとかいうことが書いてある。体力を消耗してひょろひょろになって自立なんかできるものではない。だから生活保護法自体かとんでもない憲法違反だ。しかしきょうは関連質問ですし、この間から質問を続けて、まだ生活保護法に至っていないので、生活保護法自体の問題で御質問することは他日に譲りますけれども、おとながほんとうに栄養にならないものをうちで食べていても、これは別なところで食べるわけです。それもいかぬのですけれども、ほんとうに無垢な子供が行っていて、ほかの子は特にぜいたくな子供でなくて普通の子供でも、こっちの子供はほんとうにぼろぼろの服を着ている、冬でも上着をぬげばランニングのシャツしか着ていないということは、ほんとうに政治としては恥かしいことだと思う。そういうことが現実に行なわれているわけです。そういう子供がほんとうにほかの子供と白紙で一緒に教育を受けられなければならない。ところがそういう生活保護法の欠陥のために、修学旅行に行くときも、純心な子供が心が痛むような体制になっているわけです。ほかのことも根本的にいけないけれども、少なくとも外で無垢な子供が情ない思いをしないように、ひがんで、すなおな精神が伸びないような条件にならないように考えていただかなければなりません。教育扶助の内容など、こんなものは、主計官の方もおられますけれども、ほんとうに踏み切ったら大した金額ではありません。今すぐ踏み切るという決意を厚生大臣と大蔵大臣がされれば、こんなものは予備費で簡単にまかなっていけるくらいのものなんです。それか、検討を要しなければできない、来年度でなければできないということではほんとうの政治ではないと思う。そういう点で渡邊さんにお伺いする気でおりましたけれども、局長さんもぜひ推進をしていただきたい。政務次官は、とにかくそのくらいのことは政務次官の政治的の運命をかけても短期間に、少なくとも二、三カ月のうちに片づけてみせるくらいの御決意を、渡邊さんにかわってきょうは一つ表明を願いたいと思います。それができなかったら辞表をたたきつけても政治的信念を通すくらいの御決意の表明を願いたいと思います。
  151. 内藤隆

    ○内藤(隆)政府委員 要するに、せっかく子供が修学旅行なんかに行った場合に、かえってひがんだようになるということは大きな問題だと思います。しかしあなたの今おっしゃったような問題について政務次官である私が政治上の決意をここで表明したところが大した問題ではないと思うので、これは将来の問題として十分に検討させていただきたい、私はかように思っております。
  152. 八木一男

    ○八木(一男)委員 先ほどの社会局長の御答弁にありますように、この基準くらいは厚生省自体でできるのです。ですからあなたがやる気だったらできる。できないというのはやる気がないからで、これは一つ政務次官と局長さん、短時間にやるとおっしゃっていただきたい。
  153. 高田正巳

    ○高田(正)政府委員 生活保護法の基準の問題は、実は厚生省自体が勝手にやるわけにはいかない。費用が先ほど申し上げましたように義務費になっておりますればおりますだけに、やはり十分関係方面と相談をしてやらなければいけない。従ってこの席で直ちに引き上げるというようなことを言えと仰せになりましても、なかなかさようなわけには参りませんので、これは政務次官が御答弁になりましたように、将来の問題としまして十分私ども検討をして参りたい、そうして引き上げの方向に努力いたす、かように申し上げるよりほかにございませんので、御了承をいただきたいと思います。
  154. 八木一男

    ○八木(一男)委員 いろいろ申されましたけれども、これは法律事項ではないのです。行政事項なんです。ですからほんとうにやる気だったらできるのです。ですけれども、ここでは渡邊厚生大臣がおられませんから、これ以上の御答弁は無理かと思いますけれども、ほんとうはこの生活保護に関する限り、局長が捨て身になってやればできるし、政務次官が大臣のかわりとして捨て身になってやればできることなんです。ですからお二人に、この国会の末期ぐらいには、あなたの言う通りやることにしましたと言うことができるように、この国会中にそういう御答弁ができるようにやっていただきたいと思います。その相談相手である大蔵省の岩尾さんも一つそういうことに御協力願いたいと思います。一つ岩尾さんの御答弁をお願いしたいと思います。
  155. 岩尾一

    ○岩尾説明員 主計局といたしましては、厚生省の方から要求がございませんと検討することはできません。要求がございましたら十分検討はいたします。
  156. 八木一男

    ○八木(一男)委員 じゃ渡邊厚生大臣もおられませんし、時間も進みましたので、生活保護法の根本的な問題は日を改めてまた伺いますけれども一つ今申し上げた問題について熱心な御推進を強力に要望をいたしまして質問を終わります。
  157. 永山忠則

    永山委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後五時七分散会