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1960-03-01 第34回国会 衆議院 社会労働委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月一日(火曜日)     午前十時五十七分開議  出席委員    委員長 永山 忠則君    理事 大坪 保雄君 理事 田中 正巳君    理事 八田 貞義君 理事 藤本 捨助君    理事 滝井 義高君 理事 八木 一男君    理事 堤 ツルヨ君       池田 清志君    亀山 孝一君       齋藤 邦吉君    中山 マサ君       古川 丈吉君    亘  四郎君       伊藤よし子君    大原  亨君       岡本 隆一君    小林  進君       五島 虎雄君    中村 英男君       堀  昌雄君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 渡邊 良夫君  出席政府委員         厚生事務官         (大臣官房長) 森本  潔君         厚生事務官         (社会局長)  高田 正巳君         厚生事務官         (児童局長)  大山  正君         厚生事務官         (保険局長)  太宰 博邦君         厚生事務官         (年金局長)  小山進次郎君  委員外出席者         議     員 田中 正巳君         厚生事務官         (保険局厚生年         金保険課長)  加藤 威二君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 二月二十六日  委員賀谷真稔君及び本島百合子辞任につき、  その補欠として岡良一君及び鈴木一君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員岡良一辞任につき、その補欠として多賀  谷真稔君が議長指名委員に選任された。 同月二十九日  委員佐々木良作君及び鈴木一辞任につき、そ  の補欠として木下哲君及び本島百合子君が議長  の指名委員に選任された。 三月一日  委員河野正君及び山口シヅエ辞任につき、そ  の補欠として堀昌雄君及び岡本隆一君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員堀昌雄辞任につき、その補欠として河野  正君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  厚生年金保険法の一部を改正する法律案田中  正巳君外二十三名提出、第三十三回国会衆法第  二四号)  日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案  (田中正巳君外二十三名提出、第三十三回国会  衆法第二五号)  船員保険法の一部を改正する法律案田中正巳  君外二十三名提出、第三十三回国会衆法第二六  号)  船員保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出)  第三十一回国会閣法(第一六八号)  厚生関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 永山忠則

    永山委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施薬に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますのでこれを許します。小林進君。
  3. 小林進

    小林(進)委員 大臣にお伺いいたします。この大臣の、昭和十五年度厚生省所管一般会計及び特別会計予算案についての説明明書でございますが、その説明書によりますと、昭和三十五年度の一般会計予算の総額が一千六百四十七億一千四百九十四万五千円、これを昭和三十四年度の当初予算比較いたしますると三百四十一億七千百八十九万円の増額になっておる、こういうふうに大臣は御説明になっておるのでございまするが、今度は厚生省からちょうだいいたしました一般会計歳出予算目明細書特別会計歳入歳出予算予定額目明細書によりましても、また厚生省所管予算要求額主要事項別調によりましても、前年度に対する増額の分は三百四十一億何がしになっていないのでございまして、二百五十五億八千何がしになっておるのでございます。その理由は、当初予算補正予算を加えたのと加えないのとの違いでございますが、ただ私は、同じ厚生省からお出しになります予算説明書の中に、そういう当初予算だけにとどめて格差をつけてお出しになられます説明の仕方と、そういう一、二、三次の補正予算も含めてこういう数字をお出しになる説明書と二種類あるということは、一体どういうわけか、その理由をまず大臣お尋ねをしたいのです。違いはわかります。補正の入っておりますのと入っておりませんのとの違いでございますけれども大臣予算説明書なんかには、従来のしきたり上、何か当初予算だけを計上して補正などというものを組まないという、そういう習性が一体あるのか。厚生省だけ特別、どうだい増額が三百五十億もあるということで、前年度よりよけいとれたということを誇示するために、PRをするために、何か作為的に追加予算なり補正を除いてこういうふうな特別の説明の仕方をおやりになったのではないか、その違いの趣旨を私は承りたいと思います。     〔委員長退席大坪委員長代理着席
  4. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 数字の点は事務当局から説明させていただきます。
  5. 森本潔

    森本政府委員 ただいま国会に出ておる書類の中で、当初予算比較をしたものと、それから補正を入れたものについて比較したものと二つあるじゃないかという話でございますが、大蔵省関係から出しております資料補正を入れたものについて比較をいたしております。それから厚生省関係で当委員会等説明いたしたものにつきましては、当初予算同士比較をいたしております。これは特別の意味はございませんので、当初予算同士比較の方が御理解願いやすいのじゃないだろうか、こういう気持でございまして、また従来からもそういう例にいたしておりますので、便宜さような取り扱いをさしていただいたので、別に大した意味はございません。
  6. 小林進

    小林(進)委員 これは希望でございますけれども、将来、特に大臣一般会計特別予算説明に当たられるときには、私どもが外部に出て演説するのと違いまして、最も正鵠を期さなければならないのでございますから、一般大蔵省関係並び厚生省でお出しになりました別途書類の方と常につじつまが合いますように、数字一つにしていただく方が、正鵠を期する意味において何かと必要かと思いますので、特に大臣説明書だけは当初予算によるべしというふうな別個の規定でもございませんければ、一つ将来はすべてが数字か同一になるようによく注意をしていただきたいと存じます。  次に移ります。厚生省の今年度の予算が昨年度に比して二百五十五億円も多い、こういうことで大臣も本会議の席上でも、これは十分予算である、十分考慮してあるということを再三繰り返して、非常に力強い御説明をいただいたのでありますが、大臣一体今年度の厚生省予算について御満足になっているかどうか。私は、相当御努力になった痕跡は十分認めるのでありまして、大臣の労を多とするに決してやぶさかなるものではありませんが、これで一体満足になっておるかどうか、ちょっと大臣お尋ねをしたいと思うのであります。
  7. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 決して満足をしておるわけではございません。ただ、本会議の席上におきまして、防衛費社会保障費より非常に増大しておるのではないか、こういう質問でございましたから、私の方は社会会保障費防衛費よりはるかに上回った。こういうふうに申し上げたのでございまして、将来も私どもは、この社会保障費社会福祉国家建設のためにますます増額いたさなければならぬ、かように考えております。
  8. 小林進

    小林(進)委員 実はここに厚生省から大蔵省へ御要求になりました要求額大蔵省査定額との表があるのでございます。これは私どもの党で調べたもので、重要な項目だけなんでございますが、その中でも、厚生省要求大蔵省から相当削られているわけでございます。これは何も厚生省だけではございません。各省全般大蔵省との関係でございますけれども、こういうふうに大額を削られたこと。中でも一番ひどいのは、保育児童間食費児童遊園増設費、それから母子センター設置費、これなんかずいぶんひどいですな。結核児童療育費補助骨関節結核児童のみでなく、一般結核児竜をも対象とするということで二億三千三百十九万円要求せられておりまするものが、カリエスのみということで、わずかに千九百九十六万円の査定に終わっておる。これは大臣の御要求の全く十分の一にも満たないというふうな残虐な査定をせられているような状況でございまするし、心配ごと相談所設置費、これは本年初めての計画でございまするし、どういう形でこれが運行せられていくのか、内容あとでお聞きしたいと思いますけれども、これも五千三百万円以上の要求が一千万円に終わっておる。授産事業振興対策費二億八千五百万円が一つもないということ、特に生活保護基準引き上げ、これは六・七%の引き上げ要求に対してわずかに三%の引き上げしか認められないという、こういう状態である。一々羅列していきますると時間の際限かございませんので、ほんの一例にとどめておきまするが、こういう大蔵省査定に対して、大臣一体どういうふうな御所見をお持ちになっておるのか、承っておきたいと思うのでございます。
  9. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 まことに小林さんの仰せごもっともでございまして、来年度はうんとがんばって、ことし頭の出たものに対しましてはより増額をいたしたい、かように考えております。ことしは特に国家財政の大きな見地からいたしまして、やむなく私どもはこれを了承いたしたような次第でございまして、私どもはこれで満足いたしておるわけではございません。
  10. 小林進

    小林(進)委員 私がいま一度この問題についてお伺いしたいと出思いまするこことは、内閣というものは連帯制でございまして、決して大蔵省厚生省、その他各省内閣の中に対立している存在ではございません。労使の関係でもなければ主従の関係でもないと思う。ただ毎年当初において各省予算出して、それが五割あるいは二倍くらいな各省予算提出をして、大蔵省査定して削っていくといったような予算組み方一体適当かどうか、これは総理大臣質問する問題でございますから別といたしまして、厚生大臣もやはり同じ内閣閣僚でございますから、国家財政、国の予算、そういうものは全部閣僚連帯責任において全部お知りになっているわけで、決して大臣厚生省だけの問題を知っていて、国家全般財政御存じにならないわけじゃない。国家予算、あるいは歳出歳入というものを何も御存じにならないわけじゃない。やはり国の現状というものをちゃんと見きわめた上に厚生予算というものは国家財政の中に、国家歳入の中に、歳出の中に、かくあるべしという確信のもとにお出しになる予算でなければならないと私は思います。それがこのように大蔵省査定のもとにずたずた切られて、それが見る影もないような姿にせられるということは、私はどうも厚生省の、あるいは厚生省だけではございませんで、各省含めてのことでございますけれども予算組み方自体か何かずさんなんではないかと思う。今非常に不満足であるという大臣のお言葉はございましたが、ほかの大臣に私はほかのところで聞いてみましたら、大体満足すべき予算をちょうだいいたしました、こういう答辨をされる大臣がある。大臣はうまいこと逃げられて、不満足とおっしゃっておりますからよろしゅうございますが、大体満足予算大蔵省からもらいましたと言う大臣がいる。それでは当初にお出しになった予算はどうなったのか。それは大体出せばこれくらいの査定を受けるだろうという予想のもとに出したものであるという答弁をされることもある。私はそれならば非常に不謹慎きわまると思う。そういう意味において、私は少なくとも予算を組むときには、厚生省予算をお組みになるならば、これはやはり最終予算だからあくまでも国家財政の中で、厚生予算としてこれだけのものは最後までとらなければならぬという確信あるものをお出しになると同時に、出したからにはその九九%までは獲得をするという杉でなければならないのではないかと思うのでございまして、大臣にいま一回大蔵省へお出しになった要求額一体当初の厚生省予算草案というものは、ほんとうに三十五年度の予算編成上、厚生省運営上なくてはならぬぎりぎりのものであったのか、大蔵省査定した予算厚生行政運営上そう支障のないものであるとお考えになっているのか、この大臣の基本的な考え方をお伺いしておきたいと思う。
  11. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 先ほども申しましたように、私はこの予算では満足いたしておりません。しかし国の総予算の一割以上になったというのは今年が初めてでございまして、そういう意味におきましては私は一歩前進したということで喜んでいるわけでございます。しかも防衛他費よりも上回ったということにおいて御了解を願いたい、かように考える次第でございます。やはり大蔵省は国全体の予算面から、資金源から見まして、どういうふうに各省に割り当てたらよいかということによりまして、しかも党内あるいは政府内の政策を中心といたしまして予算をつけるのでございまして、大蔵省もなかなかない袖は振れないのではなかろうか、かように考えております。まず今年は、今まで一割に満たなかったのが一割以上になった。たしか一〇%幾らでしたか、なりましたので、私どもはそういう意味において、今年からは福祉国家建設のために非常に増額するところの傾向に一歩も二歩も前進した、こういう意意味において喜んでおる次第でございます。どうか一つ何分とも野党の皆さん方の御協力を得まして、福祉国家建設のために、厚生予算というものは明年度においてはうんとまたとれるように、今までの御質問はすべて小林さんの激励叱咤のように私はとって、まことに感謝しておる次第でございます。どうぞそういうようなお気持で何分よろしくお願いいたします。
  12. 小林進

    小林(進)委員 先ほどから申し上げておりますように、今年度は補正を含めた昨年度の予算比較いたしまして、二百五十五億円ふえておるのでございますから、その意味においては大臣予算獲得の手腕をわれわれは了とするものでございますが、ただその内容を見ますと、その中で昨年の十月から実施をせられました国民年金、これはもう当然の増額といたしまして、昨年度は百十億であったものか今年度は十カ月分を含めて二百八十九億、そのためにこの国民年金だけで百七十八億、約百八十億円の増額と見ておるわけでございます。これはもう昨年度の予算から見て当然加えなければならないのでございますから、従って二百五十五億円にふえたといいながら、三十五年度の新規要求増額というものは、この二百五十五億から百七十八億円の国民年金を引いたものが、昨年度に比較しての新しい予算増額とまず見ればなけならないと思うのでございます。そういたしますれば、二百五十五億から百七十八億でございますから、大体七十億程度増額でございます。これを細密に見ていきますと、大体人件費増額かその中で過半を占めてしまうのではないか。そういたしますと、どうも厚生予算で特に目新しいものは見つからない、そういうふうな感じを受けるのでございますが、特に今年度厚生行政の中で大臣重点としてお考えになっておりますのは一体何であるか、これを一つ私はお尋ねをしておきたいのであります。
  13. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 ただいま御指摘国民年金、それから低所得層対策としてのいわゆる生活保護費引き上げ、それから環境衛生、それから国保、こういった面を大きな柱といたしておるような次第でございます。御承知のように厚生省予算厚生省政策というものは国民生活のあらゆる面に密着いたしておるものでございますから、特にこれは重点を置くとか、あるいはこれを軽く見ていいとか、こういうようなことは一がいに言えないのです。しかし政策面といたしまして、ただいま申し上げました四つの柱というような面につきまして、私ども予算面において割合重点的に考えておる次第でございます。
  14. 小林進

    小林(進)委員 ただいまおっしゃいました四つの柱の、その一つ生活保護費の問題についてお尋ねしたいのでございますが、この生活保護費は、低所得階層生活引き上げのためにわれわれの一番重点的に力を入れている政策でございまして、ここでわが党のことも言わせていただきますと、わが社会党では生活保護基準の五割引き上げをいたしまして、現在おります約八百万人のボーダー・ライン層対象に含めて大きくめんどうを見ていこう、そのためのわが党の予算組みかえ案の中には生活保護費のものとして、政府予算に加うる三百八十五億円の増額をわれわれは見ておる。これはわが党における基本的、革命的政策というふうにうたっているのでございますが、政府原案をしてわれわれのところまで近づいていただくということは困難といたしましても、私が先ほど申し上げましたように、厚生省の方では六・七%の基準引き上げ大蔵省要求されている。そのほかに期末の一時扶助の新設という、こういう二つの要求をあげているのであります。それに対してわずかに三%の引き上げしか認められていないのでございますが、これは局長でよろしゅうございます。一体六・七%の基準要求額内容と、それから大蔵省査定になりました三%の内容、その内訳を御説明をいただきたいと思うのであります。
  15. 高田正巳

    高田(正)政府委員 六・七%でございましたか、正確な数字をちょっと失念いたしましたが、六%余りであったと記憶いたしております。それと今回の三%くらいの引き上げの中身の相違という御質問でございますが、御承知のように生活保護法基準というのはなかなか複雑な計算をいたしますので、こまかいところは別といたしまして、大きな点は、私どもは若干生活内容改善というふうなことを要求いたしたのでございますが、その事柄としては大体今回の予算に取り入れられておるわけでございます。ただその取り入れられ方の程度が不十分であった、私ども要求には満たなかった、こういうことが一口に申せばいえるかと思います。いろいろこまかい点がございますので、一々それにつきましてただいま私が触れて御説明をいたしてますのは非常に煩雑になりますので、一口に申し上げればそういうことであろうかと存ずるわけでございます。
  16. 小林進

    小林(進)委員 この予算要求額主要事項別調をこの間御説明になったのは会計課長さんですか、その会計課長さんの説明の中でちょっとふに落ちなかったものがあったものですから、それをお聞きしたかったのですが、あのときにたしか、三%の引き上げは日本人の栄養基準量引き上げになって、カロリーが一千六百五十八カロリーになり、三十八カロリー増になったから、その分で一・四%の引き上げ、それから保健衛生費等引き上げが一・五%で、合計三%の引き上げを認められた、こういう説明をされたのです。そのときに私は、それでは一体厚生省要求の六%の中の何と何が否定されてこうなったのかというお話をお聞きしたいと思った。さっとやられてしまったものでありますから、それをお聞きしたかったわけでございます。——おわかりにならなければあとでよろしゅうございます。  それではあとにいたしまして、この生活保護費は昨年四月ですか、やはり三・二%お引き上げになったようでございますが、ただ主計指数によりますと、各国生計指数調査をして参ったのがございますが、それによりますと、一九五〇年から一九五九年の間において、各国のが全部ございますが、アメリカは二一%インフレ、毎年とぎれなく上がっておるという状態でございます。フランスなんか六七%上がっておる。その中で日本が四〇%の値上げをしておる。この四〇%の生計指数値上げに対して、生活保護の昨年度が三・二%、今年度で三%という、こういうわずかの値上げでは、同じ国の統計資料の中でもずいぶんちぐはぐなものができておるのではないか、一体こういう矛盾をどのようにお考えになっておりますか。
  17. 高田正巳

    高田(正)政府委員 昨年四月から三・二%引き上げをいたしましたのは、主として前日の改訂後物価が若干上がりましたので、その分を引き上げたわけであります。それから本年の四月から予定しております、今御審議を、願っております三%の引き上げは、先ほど申しましたように主として生活レベルといいますか、物価はあまり動いておりませんので、主として生活レベル引き上げるというのがおもな内容であります。若干新聞代のような公定価格の上がりましたものも含まれておりますけれども生活水準引き上げるというねらいを持った引き上げでございます。  今お引きになりました一九五〇年からの消費水準でございますか、あるいは物価指数でございますか、上がっておるわけでありますが、これは生活保護基準におきましても昨年と本年三・二%と三%引き上げをいたしておるわけでございますが、その前の一九五〇年ごろからの引き上げの幅を見ますれば、相当な引き上げになっておると考えております。ただ最近御存じのように経済状態経済の復興も非常にはかどりまして、国民消費水準が相当上がってきております。ごく最近の消費水準の上がり方と生活保護法基準のいわゆる生活内容改善の上がり方と見合いました場合に、一般消費水準の上がり方の方が急ピッチであるということにつきましては私ども承知いたしておりまして、できるだけ消費水準の上がり方と歩調をとって私ども基準内容を改訂いたしたい、こういう意欲を持っておるわけでございます。その一部が、ほんのわずかながら今回実現を見ようとしておるというふうなのが実情でございます。従いまして、これで十分だと私ども考えておるわけじゃございません。今後ともできるだけ生活内容引き上げ努力をいたして参りたい所存でございます。
  18. 小林進

    小林(進)委員 今の局長お話によりますと、何か新聞代も値上がりになったからというふうなお話がございましたが、生活扶助費の中に新聞は入っておりますか。
  19. 高田正巳

    高田(正)政府委員 新聞を購読いたす費用も見ておるわけでございます。
  20. 小林進

    小林(進)委員 入っておりますか。
  21. 高田正巳

    高田(正)政府委員 入っております。
  22. 小林進

    小林(進)委員 ちょっとどうも、私はその内容は詳しくは知りませんが、これは地域によって若干の開きがあると思いまするが、これは私、大臣新潟の出身でいらっしゃいまするから、新潟市の、国でおきめになりました、一人が一カ月食っていけるという基準額の表を切り抜きましたものを持ってきたのであります。それによりますと、米代が七百四十五円、魚介が二百九十五円、野菜が二百五十五円、調味料が四十五円、その他五十円。その他五十円の中に今の局長お話が入るのでございますかな。嗜好品、カッコしてお茶が一カ月十五円。一カ月十五円ですから、これは無理でございますな。被服費が九十円。タオル一本にもなりませんな。入浴代が一カ月四十五円、それから調髪代が八十五円。八十五円で頭を刈ってくれるところがありますかな。それから衛生代が三十円、そのほか部屋代が四百、五十円、光熱費が六百四十二円で、これは夏が三百円、計二千七百四十七円で、娯楽費とかそういう文化費と称するものが入っていないのでありまするけれども新聞代がこの中の一体どこへ入るのか、一つお聞かせを願いたい。
  23. 高田正巳

    高田(正)政府委員 ただいまおあげになりました数字は、おそらく新潟市における一人当たり数字だと思います。生活保護法基準は、御存じのように、一人当たりにいたしましても年令で非常に差別がございまするから、試みに申し上げてみますると、大体一級地の五人世帯というのをいわゆる標準としてとっておりますが、これで参りますと、飲食物費合計が、今回の基準で申しますと六千九百八十八円、それからその他の経費、これは世帯共通経費でございますが、世帯共通経費といたしまして二千四百三十二円五十銭、育児に関係する経費が二百円で、合計九千六百二十円ということになっております。それで、今御指摘新聞代というようなものは、その他の経費、すなわち世帯共通経費の中で雑費というものがございまして、標津世帯では五百四十一円計上してあるわけでございます。五百四十一円七十六銭でございますか、この五百四十一円余りの中に新聞を購読するというふうな経費が見てあるわけでございます。新聞を購読すれば、雑費として残るものが非常に軽少ではないかという御指摘があると思いまするが、まさしく実態はさようなことに相なるかと思いますけれども、ともかく、基準の算定の基礎には雑費というところで見ておるわけでございます。
  24. 小林進

    小林(進)委員 ただいまの説明でよく了承いたしました。私が少し勉強が足りなかった。  次に、その中で一日の食費が一切がっさいで四十六円八十三銭というのでございますが、これも六十才以上の新潟市の基準でございますけれども、あるいはまたこの食費も地域によって違うのかどうか、一体こういう値段がどこから出ているのか、その一日の食費を局長一つ説明を願いたいと思うのであります。
  25. 高田正巳

    高田(正)政府委員 生活保護法基準の立て方といたしましては、先ほど申し上げましたように標準五人世帯というものを想定をいたしまして、その世帯で、まず経費といたしましては、年令あるいは性別によって異なりまする各個人別の経費と、それから世帯共通経費とに分ける。それで、今御指摘の食費の方は、いわゆる個人別の経費になっております。一応六十四才の男、三十五才の女、それから九才の男、五才の女、一才の男というふうなものを標準五人世帯と想定をいたしまして、各人の栄養所要量が、別に栄養審議会の御答申等が出ておりまして、それぞれの年令に即した栄養所量が幾らかということがきまっておるわけであります。それで、今申し上げました該当の年令の栄養所要量に従って、その家庭としては幾ら総カロリーが要るかということを算出いたしまして、それをどうして満たしていくかということにつきましては、マーケット・バスケット方式によって、何がどれだけ要る、何がどれだけ要るというふうに計算をいたしまして、主食、副食、調味料嗜好品というふうなものに分類をいたして、それぞれ積み上げをいたしていくわけであります。その結果、主食費につきましては今の標準五人世帯で三千四百七十二円六十七銭、副食費につきましては二千九百五十五円四十三銭、調味料につきましては五百三十二円三十一銭、嗜好品につきましては二十七円六十銭というような計算をいたしまして、それを合計して先ほど申し上げましたように六千九百八十八円というものがこの標準五人世帯における飲食物費の総計の経費、こういう計算をいたしております。それでこれをもとにいたしまして、一月当たりの金額というものを各年令別に展開をしていくわけであります。これは所要カロリーか違いますから。さらにこれを一級地といたしまっして、地域差がございますので、その地域差にも展開をいたしていくわけであります。それで具体的な世帯に適用いたします場合には、この世帯には何才の男と何才の女とどういられる、しかもそれは何級地であるということになりますと、その表を広げて、何才のどうであるからこれは月飲食物費が幾ら、それから何才のどうであるから月幾らというふうに各人別の金額を足しまして、それに先ほど申し上げました世帯共通経費というものがございますので、これはまた別にこれとして計算はいたしてあるわけでございますが、その世帯の共通の経費の、該当の級地の該当の世帯人員に当たる経費が、やはり表ができております。それを加えまして、そうして一応生活扶助のその家庭の基準額というものをはじき出すわけであります。非常に複雑なことでございますが、さらにそれに加えまして、家庭によりましては加算をし得る家庭がございます。その加算をいたしましたり、あるいは働いております家庭におきましては、勤労によって得られる収入を、ちょうど税金の控除みたいに控除をいたします。さような操作を、その基準になるものに加えまして、最終的にこの家庭ではどれだけが最低生活費だということを実は計算をいたすような仕組みになっておるわけでございます。
  26. 小林進

    小林(進)委員 ただいま標準家族の生計費のお話がございましたが、ただいまの生活扶助と、今度今年度から準備をせられて、いよいよ来年度から出発をいたします国民年金の拠出制の問題ですが、拠出の国民年金か四十年後に至って月額三千五百円を支給されるということになっているのでございますけれども、その三千五百円と今の生活扶助費との関係、関連が一体あるのかないのか。四十年後の先でありますけれども、四十年後の三千五百円という費用が——これは今のは六十五才以上でございますね、年金は六十五才から三千五百円ということになるのでありますが、四十年後の月三千五百円が一体どこからはじき出されたのか。今おっしゃった、今日の生活扶助に対して、生活扶助の何か四級地の査定が二千何ぼという、その端数を切って月額二千円と見て、それに経済の成長率を一・五%と見て、四十年後の三千五百円という最低生活保障費が国民年金の形に出た、こういうふうな説明の仕方をしている人もいるわけでございますけれども一体この四十年後の三千五百円が老人生活を保障するに足るという自信のほどがどこから出てきたのかという根拠を一つお示し願いたいと思います。
  27. 小山進次郎

    ○小山(進)政府委員 結論から申し上げますと、三千五百円と生活保護費における最低基準額との間に特別な関係はございません。それからただいま先生が仰せになったその考え方は、実は社会保障制度審議会の答申における考え方でございます。この考え方は、現在の年金額を一応二千円と押えまして、その後における経済成長率のうち計算に入れられるものとして毎年一・五%を見て、それを伸ばしていく。そういう結果、結果的に何年か先に三千五百円になる、こういう出し方でございます。それから現在国民年金法で三千五百円ときめましたのは、これは去る通常国会の際に詳しく御説明を申し上げました通り、現在における普通の日本人の生活費が、大体いろいろの調査をもとにいたしますと一人当たり四千五、六百円程度になっておると思います。その中から共通費と認むべきもの四分の一を控除いたしまして三千五百円、こういうふうに押えたものでございます。従って、現在の制度におきまして計算上四十年先に三千五百円ということで収支を合わせておるわけでございまして、この点は八木先生がたびたび御追及になられておるのでありまして、当然この制度においては将来の発展が見込まれる、それを具体的に示したらどうなるかということが、実は今度十二月から始まります次の通常国会までにそういうものを示せという宿題になっておるわけでございまして、それを作業しておる、こういう実情でございます。
  28. 小林進

    小林(進)委員 次にいきたいと思います。今年度の生活保護費で予定せられておる人員が月百四十六万七千三百十人、こういうふうになっておりまするが、これは昨年度より少し数字が減っておるようでございます。年々減ってくるようでございますが、この数字の出どころを一つ説明願いたいと思うのであります。なおついでですから申し上げますけれども、この説明君には医療扶助の人員が入院月十八万三千九百十二件、こういうふうになっているようでございます。この数字の変動を一つ前年度、前々年度に比較いたしまして……。
  29. 高田正巳

    高田(正)政府委員 生活保護の人員につきましては、数字は今御指摘になりましたように六十万九千世帯、百六十七万二千人というあれを予定いたしておりますが、これは大まかに申し上げますと、昨年の三月から八月までの実績人員が毎月集計して出ております。それの平均の横ばい状態と見たわけでございます。三十五年度におきましても横ばい状態、かように見ましたのは一体どういう根拠かという御質問が出て参ると思いますが、それは実は生活扶助の人員は最近月々減って参る傾向にあるわけでございます。その傾向を延ばしますると、三十五年度におきましてはむしろ三十四年度よりは減らして組んでも、その傾向からいえばいいんではないかというふうな考え方も成り立ち得るわけでございます。ところが、御存じのように昨年の後半におきまして大災害もございましたし、あるいはまた炭鉱の問題でございますとか、そういうふうな生活保護法にかかってくるような方々が今後ふえてくるというふうなデータもなきにしもあらずでございます。もっともこれは去る臨時国会で御好じのような特別な措置が講ぜられましたので、むしろすでに昨年の扶助人員の中に織り込み済みで、今後は今までほどは出てこないという見方もできますけれども、一応それらのことも考えあわせまして、安全率を見まして、横ばい状態という考え方でいったわけでございます。  それから、住宅とか教育とかいうことの扶助人員でございますが、これらは大体今申し上げましたような生活扶助と同じような見方をいたしたわけでございます。  それから医療扶助の方の関係でございますが、医療扶助は年々増加をいたしておりますので、一口に申しますると、昨年の実績より入院につきましては大まかに申しまして五%増、外米につきましては三%増、こういうふうな組み方をいたしております。
  30. 小林進

    小林(進)委員 ついでにお尋ねしたいのは、生活保護が横ばいになっているとおっしゃいますが、その生活保護世帯と同じような生活水準にあるといわれる、私どもが一番問題にしているボーダー・ライン層です。これが一体厚生省は今年度大体何万世帝、何百万人とお踏みになっておりますか。それを一つお聞かせ願いたいと思います。
  31. 高田正巳

    高田(正)政府委員 生、活保護法の被保護世帯よりはちょっと上の世帯——同じようになれば、これは生活保護法になるわけでございます。それの数字は、厚生省の基礎調査によりますると、私は数字を覚えておりませんが、これは厚生白書にも載っております。たしか百六十八万世帯、人員にいたしまして七、八百万の数字だったかと記憶いたしております。
  32. 小林進

    小林(進)委員 どうも私は最近の基礎数字がわからなかったから今お伺いいたしたのですが、一九五五年の四月ではたしか百九十二万世帯の九百七十二万人というふうに厚生省は発表になっておられるようであります。そうすると一九五六年からながめればずいぶん減ったという勘定になるわけでございます。この数字は、今局長は正確な数字はおっしゃいませんが、百六十八万の七、八百万とおっしゃいましたが、ここらあたりに実は問題があると考えておるのでございます。貧乏などというものは固定したものではございませんから、国民全般の生活水準が上って消費経済が進んでいけば、十年前ならラジオやテレビは普通の生活の要素ではないかもしれませんけれども、消費生活を高めれば、テレビもラジオもみな一般の家庭生活の必要物資になって参ります。そういう生活向上に従って、この係数もやはりついて回らなければならぬ。そういう意味において、ボーダー・ライン層生活保護家庭も決して減っていないと私は見ておるわけなんですが、厚生省はどういう水準でおとりになったかわかりません。やはり今の生活保護法に基づいて、ちょっと上だという局長のお言葉に従ってとられたのかもしれませんが、ただそれに関連して私は次にお伺いしたいのは、保護率についてお伺いしたいのです。今も大体数字をお出しになったからこれでいいようなものですけれども一つ保護率をお示し願いたいと思います。
  33. 高田正巳

    高田(正)政府委員 これはずっと今まで経過的な資料があるわけでございますが、手元にありますのは十一月でございますが、保護率といたしまして、これは各府県で統計が出ておりますが、全国計をいたしますと一・八一七%でございます。千人のうちで一八・一七人、こういうことになるかと思います。
  34. 小林進

    小林(進)委員 そこで私は大臣に実はお伺いをいたしたいのでございますが、ただいま局長の御答弁のように、何か生活の保護世帯が横ばいしているというふうな御説明がございましたり、生活保護世帯よりちょっといいというふうなボーダー・ライン層も非常に減ってきているというふうなお話なんでございますが、どうも私ども調査によりますと、これは相当人為的に作られているという傾向——傾向という言葉も感じとして少し強過ぎますけれども、率直に申し上げますと、各府県別の統計は今そこでおありになるようでございますけれども、各府県の千分率が高いというと、その府県は厚生省からにらまれる。お前のところの保護世帯は少し高過ぎるじゃないか。生活扶助の家族が高過ぎるから少し減らせというような、査定が甘過ぎるというふうな形で厚生省からにられまるという、こういう一つの傾向がある。ところが今度は府県へいきまして、各福祉事務所の管内において、生活扶助を受ける比率が高過ぎるというと、今度は都道府県本庁からにらまれる。少し査定が甘過ぎるのではないか。これでは県の予算を食い過ぎるじゃないかというふうににらまれる。そのために今度は福祉事務所からは、その地域担当の福祉事務所に勤めているケース・ワーカーとか指導員に対する勤評が行なわれて、あまりあれも気の毒だから、これも気の毒だからといって生活保護の該当者を作ってくると、そのケース・ワーカーたちは、お前らはどうも甘過ぎる、これでは福祉事務所の率が高過ぎて国や県からおしかりを受けるという形ができ上がって、なるべくこれを押えて、生活保護の該当者はあるけれども、何とか的確にこれを適用して、生活保護法に当てはまらないように、当てはまらないようにやっていくという、これが長い間の厚生行政のしきたりになっている。大臣はこの点をどんなふうに御承知になっているか承りたい。
  35. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 先ほども申し上げましたように、私どもといたしましては、福祉国家の建設、社会保障制度の充実ということを大きな柱として銘打っておりまして、しかも厚生予算というものは逐年これを増加させて、そしてまたこれを増加しなければならぬいうことを主張しておるのでございますから、そういう御懸念は絶対ないと私は信じておりますが、もしもさような事実があるとすれば、今後またPR等によりまして、決してそういうことにならないように指導いたしたい、かように考えております。
  36. 小林進

    小林(進)委員 保護打ち切りを多く出して、保護率を引き下げた者が上司の覚えがめでたいという、これか一般の風潮であるということに対して、大臣はそういうことはないし、もしあるとすれば改めていきたいというお言葉でございました。大臣のお言葉ですからそれでいいようなものでございますけれども、事務を担当しておいでになります局長も、そういう風潮のあることを承認せられますかどうか、これも一つお伺いしておきたいと思います。
  37. 高田正巳

    高田(正)政府委員 よく、そういうふうなつもりでやっておるのじゃないかという御質問を受けるわけでございますが、決してさようなつもりでやっておるのではございません。生活保護法運用の理想といたしますところは、保護基準が高い低いの議論はこれはあると思いますが、その保護基準に満たない人は漏れなく、とにかく満たないだけのものを足していく、保護基準以上の人は一人も保護しないということでございます。従ってこれは府県別の、先ほど指摘になりました保護率等を御参照になれば十分おわかりいただけることでございますけれども、たとえば先ほど炭鉱のお話が出ましたが、九州のある府県等では保護率が非常に高い。ある市におきましては、ここ二年くらいの門に被保護者の世帯数が倍にも二倍半にもなっているところがございます。従ってさような実績というものを十分に御勘案していただけば、決して今御心配になっておるような運用をいたしておるのではないということが御了承いただけるかと思います。ただ生活保護、ことに生活扶助の人員というものは、生活保護法が施行されまして以来、最高のときには二百数十万というふうな保護人員を示したこともございますが、これがだんだん減って参っております。今日では、先ほど申し上げましたように、生活保護法全体で百六十七万で、生活扶助だけをとりますと百四十六万程度扶助人員になっております。これはなぜかと申しますと、もちろんわが国の経済状態がよくなって、困る人が比較的少なくなったということもございましょうし、それから経済の復興というものも十分その中に入っているわけでございますが、さらにいろいろな施策が行なわれまして、生活保護法に落ちてくる前にいろいろな施策によって救われていく。例をあげますならば、炭鉱の問題であっても、炭鉱離職者に対する何らかの措置がとられるならば、生活保護法に落ちてくる人は少なくなるわけです。これがとられません時期には、生活保護法に落ちてくる方々が多くなる、こういうことなのです。それと同じように、万般の社会政策的な施策、まあ国民年金等もその一つでございましょうし、あるいはいろいろな施策があると思うのでありますが、さようなものが逐次整備していきますと同時に、生活保護法に落ちてくる人たちというものはだんだん少なくなっていくという関係に相なるかと思います。またそれが望ましい姿である、かように私ども考えておるわけであります。しかしながら生活保護法予算を減らすために運用の面においてしぼるというふうなことはいたさないつもりでございます。御存じのように、この経費は義務費でございまして、足りなければ、たびたびお願いしておりますように、補正でお願いはできるわけでございますが、金の面から適正な施行をしぼっていくというふうなことは、厳に私ども自戒をいたしておるわけであります。また同時に乱給があってもいけないので、この点も十分自戒をいたしておるわけであります。
  38. 小林進

    小林(進)委員 もう時間もありませんから、私は生活保護法の問題はこれで打ち切りたいと思うのでありますが、ただ、ただいまも局長がおっしゃいましたように、権かに炭鉱等は、炭鉱離職者についての特別の保護法も臨時国会ででき上がりましたので、そういう特例法もありますか、私は全般的に見て、生活保護該当者が年々少たくなっているという言葉には、残念ながら賛同を表するわけにはわれわれの立場からは参りません。もちろん法の適用でございますから、乱発をいたしましてみだりに適用して、それに該当しない者までも該当せしめて、これを国家の費用で救う必要はございませんけれども、今日の段階においては、生活保護法の適用は至厳であるため非常に気の毒な人がまだ多い。私はもっとこれを緩和してもらってもよろしいし、なお午前中に申し上げましたように、その基準額というものは大幅に値上げをしていただかなければならない。これが明治時代や徳川時代ならば、生活保護基準額は多額に失するかもしれませんけれども、こういう費用というものは、年々国民生活程度の向上に従って最低基準引き上げていかなければならないのでありますから、今日をもってよしとせず、意欲的な力をもって率の引き上げを行ない、それから適用者も少しは大幅にゆるめて、法の涙も見せていただかなければならないところじゃないか、かように私は考えております。特に今年度は黄金の年などと言われて、黙って聞いていると、ばかに景気がよくて、岩戸景気だ、天照大神様が岩戸をお開きになって以来の景気であるというような話で、どうもおどり上がっておるようでございますけれども、残念ながら、われわれの周囲をながめてみたときに、そういう黄金の年を謳歌できるような人は少ないと思う。残念ながら、われわれ選挙をやっておりましても、われわれの周囲にはそういう岩戸景気をたたえているような人は少ないのです。農村なんかに参りましても、農村は保護法問題とは別かもしれませんけれども、五年の景気が続いた、六年の景気が続いたなどといいますけれども、だんだん貧富の差が激しくなって、新しい階層が生まれて、新し貧困者というものが生じている実情です。だからそういう意味において、黄金の年ならばなおさら黄金の年の陰で、日の当たらない場所で泣いている層は、決して厚生省のこの計数に表われた毎月百四十六万人などというものではない。われわれをして言わしむるならば、百四十六万への保護者、六十万の保護世帯の陰には、保護世帯の窓口を求めて——局長のお言葉をもってすればちょっと程度が上だとおっしゃるか、われわれをして言わしむるならば、生活保護者とほとんど同等のレベルにあるような気の毒な人たち、まだ八百万、九百万、一千万に近い人たちが、この狭い生活保護の窓口を目ざして争っておるというのが、私は黄金の一九六〇年の裏側の実情だ、かように考えております。ちょっと選挙演説みたいになりまして非常に悪うございますけれども、そういうことを大臣一つよくお考えいただきまして、この黄金の陰に沈澱しておる気の毒な層をいま少し引き上げていくという方面に一段の御努力をお願いいたしたい、かように私は考えておりますか、大臣の御所見を一つ承りたいと思います。
  39. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 小林さんの御意見はごもっともであろうと私は考える次第でございます。新潟出身の小林さんから新潟出身の私が激励をされて、まことにどうもありがとうございます。
  40. 小林進

    小林(進)委員 時間もございませんので、次は健康保険の問題についてかけ足で御質問を申し上げたいと思うのであります。  健康保険法の第十三条に基づく強制被保険者の問題でありまするが、これに基づく適用対象の事業所というものが一体幾つあって、現にこの十三条の法律によって活動をしている事業所が幾らあるか。総計と、それにまだ強制適用を受けていない事業所もありまするから、その比率を私は一つお聞かせ願いたいと思います。
  41. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 健康保険法の十三条には、大体適用事業所を列記いたしまして、それに使用される者を健康保険の被保険者とするということにはなっておりますが、そのうち政府管掌の分につきましてまず申し上げますと、三十三年度の末、二月末で、事業所数が三十一万四千三百十でございます。それから被保険者数は、同じく三十四年の二月末でございますが、六百九十三万四千九百五十八、約六百九十三万五千でございます。それが政府管掌のものでございます。それから組合管掌の方は、大企業は組合を作っておりますが、そこでは事業所の方は組合数でございますが、三十四年の同じく二月で一千一カ所でございます。それから被保険者の数でございますが、同じく二月末で申しますと三百九十五万四千七百九十七、この両者を合しましたものが大体健康保険の事業所数及び被保険者数でございます。
  42. 小林進

    小林(進)委員 どうも私の数字昭和三十一年の十一月の統計で、非常に古い数字でございますから、現在に適用はしませんけれども、私の質問したいというその要点をはずさない意味で例をもって申し上げるのでありますが、医療保障の基礎調査に基づいて申し上げると、強制適用を受けるべき五人以上の事業所が五十七万七千二百ある。その中で適用を受けている事業所が五五%の三十一万九千五百、これはきっと政府管掌、組合管掌両方を含めた数字だと思います。そうして未適用のものが四四・九%、二十五万七千七百もの多きに及んでおる。適用の労働者の数でいけば、千四百十六万三千人のうちに適用者か千百八十三万四千百人、これはちょうど今おっしゃいました六百九十三万と三百九十五万を足した数字に近いものが出ておりますけれども、強制を受くべくしてなおかつ未適用のものが二百三十二万九千人、こういう数字が統計に表われている。これはすなわち厚生省のサボタージュだと一方から非難が起きておるわけです。当然この十三条によって適正に適用すべき法律を厚生省がサボタージュをおやりになっているというような非難が出ているわけです。時間もありませんから、私はかいつまんで結論を急ぎますけれども、その未適用の事業所というものは、五人から九人を使っている事業所が七一・三%、十人から二十九人までの小さな事業所か二三・三%、三十人以上の事業所が五・四%になって、いわゆる規模が小さい、非常に低賃金な事業所というものは、みんな強制適用からはずされてそのままになっている。その中には、どうしても適用を受けて自分たちの健康を保障してもらいたいという意欲はあるけれども厚生省の方がちっとも積極的におやりにならない。ということは、こういう小さな事業場に勤めている従業員は保険率が少ないから、保険財政の黒字を保持していくためにはなるべくそういう安い掛金しかできないような者は置いていった方がよろしい、こういう潜在的な意欲が厚生省には働いているのじゃないか、こういうような考え方があるのでございますが、この点いかがでございましょうか。
  43. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 御承知の通り健康保険の適用を受けていないというものに二つの型があります。一つは飲食店とかサービス業というようなものでございます。そのほかにただいま御指摘になりましたのは、多分五人末満の零細事業場……
  44. 小林進

    小林(進)委員 いや、私は五人以上で強制適用をすべき事業場でまだ適用になっていない数字をあげたのです。当然厚生省か適用すべきもので未適用のものをあげたのです。
  45. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 そこで非適用の種類のもののほかに、ただいまお話しになりましたように適用さるべきものでありましても、われわれの方の手がまだ十分でないために漏れておるというようなものも、それは確かにございます。事業所数につきましては、大体私どもの推計でございますが、三十三年の八月末におきまして、そういう未適用の事業所が十二万六千カ所ほどある、従業員がやはり七十四万人ほどおるというふうに考えておったのであります。しかしその後大いに努力をいたしまして昨三十四年の八月におきましては、その未適用の事業所の数が十万七千ほどに減り、従業員も六十三万人ほどに減った、かように考えておるわけです。この辺につきましては、一つには私どもの方で大いに動員いたしまして、どこそこにそういう適用すべきものであって隠れておるものかあるというならば、それは一つ努力して発見して適用しなければならぬと思いますが、また別の意味におきまして、最近は従業員の方から、そういうある事業所に働きたいという場合において、そこに社会保険の制度が適用されているか、いないようであるならば行かないというような空気も漸次出て参ってきたということも聞くのでありまして、それはそれとして非常にけっこうなことである、そういう気運は一面から促進することにも相なります。それからもう一つの面は、国民健康保険の方が、大都市に、だんだん実施されてくるようになり、東京都でも昨年の十二月から国民健康保険ができる、こういうふうになっております。そこで大都市で国民健康保険を実施するとなりますと、いやが応でも従業未適用として漏れておったものが表に浮かんでくる。こういうことに相なりまするので、その点からいたしまして、私の方といたしましては、いわゆる従来なかなか手が回りませんでした未適用の人たちにも、ここ一、二年の間に非常に早くそういう恩典が及んでいくことであろう、かように考えている次第であります。しかし同時にわれわれの努力がさらに一段と必要となることは当然でございますので、この点は私どもとしてさらに努力して参りたいと思います。
  46. 小林進

    小林(進)委員 さすがに、今国民健康保険が実施されますから、そういう意味において小さな事業所、五人以上の強制適用を必要とする小さな事業所の方でもやっぱりだんだん健保に加入してくるという形が出てくると思いまするから、その意味においては厚生省も責任を追及されないで済むかもしれませんけれども、今まではこれを放任せられていた責任は私は十分責められるべきだと思います。まだ今日の現状でも、今のお話だけでも六十三万も強制適用をのがれている未加入者がいるというようなことは、正常な状態ではございません。一つ一そうの御努力をお願いしたいと思うのであります。  なお健保の問題で一番私どもか心配いたしておりまするのは、この委員会でもしばしば論じておりまする五人以下の任意包括被保険者の問題でございます。一体この五人未満の零細事業所に働く大体三百万人と推定せられている労働者の方が、政府管掌の被保険者として一体どれくらい今まで含まれているか、その五人米満の事業所の労働者の加入数をお聞かせ願いたい。
  47. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 五人未満の人たちの任意包括の適用の問題でありますが、大体従来から任意包括に入っております累計は、事業所数で四万三千、被保険者の数が二十八万五千人でございます。
  48. 小林進

    小林(進)委員 私が申し上げました五人未満の零細事業所に働く労働者の数が推定三百万人という数字はどうでございましょう。厚生省の推定数字は大体どれくらいのようにお考えになっておりますか。
  49. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 昭和三十一年の十一月の基礎調査の結果によりますると、大体五人未満のもので未適用の総数は百七十一万五千人ということになっております。
  50. 小林進

    小林(進)委員 これはどうも私ども数字と違いますが、私どもは大体三百万人。しかしこれは毎年ふえてきますから、ことしはこの厚生省の百七十一万なんという数字は、資料としてはちっとも価値がないと思うのです。それにしたところで、その中で二十八万五千人しか適用を受けてない、あとは全部締め出されているという現状でございます。これからいよいよ国民健康保険も実施せられまするから、ほんとうに医療保障から低額の所得者が全然投げ出されているというわけにはいきません。国民健康保険の恩典は受けましょうけれども、しかしわが国の医療制度というものは、今私が御質問をいたしましたことでも明らかなように、まだまだ低所得者、気の毒な労働者か全部医療保障から締め出されている、こういうふうに結論を付してもいいわけです。これは私は大臣の御趣旨じゃないと思うのです。大臣はやっぱり国民健康保険を御実施になりましたし、国民年金も実施になりましたから、だんだん日本の社会保障制度は好転しておるというふうにお考えになっておるかもしれませんが、今の五人未満、あるいは五人以上の事業所におきましても、そういう五人、十人、二十人というような小さな事業所に勤めている労働者は全部健康保険の適用を受けていないんですよ。強制もされていないじゃありませんか。そして野放しになって、事業主の保障も受けず、病気になったらこの世の終わりだというふうな悲惨な状態に投げ出されているのでございますから、この点も一つ大臣の方で十分下僚諸君を叱咤激励、監督を賜わりまして、こういう最下層の気の毒な労働者がほんとうに医療制度に均霑できるように、一つ特別の御鞭撻を賜わりまするようにお願いをいたしたいと存じます。  時間もございませんから、私は健康保険の問題はまだ幾つもありまするけれども、これは後日にすることにいたしまして、次の国民健康保険の問題について、一言でよろしゅうございますけれども、これはみんな仲間の諸君が質問をいたしましたから、ほんの結論だけを申し上げまするけれども国民健康保険の掛金は、全国平均して一世帯どれくらいになるか、これを一つお聞きしておきたいと思います。
  51. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 三十三年度の決算から出したのでございまするが、全国平均一世帯当たりの保険料調定額は三千三百十円でございます。
  52. 小林進

    小林(進)委員 私ども今年度あたりの趨勢からいえば、三十三年度から比べれば国民所得がふえていますから、一世帯当たり平均四千円程度になるのではないか、かように考えているわけでございまするが、来年度から国民年金を実施せられるのに四千円ずつの保険料率、これは保険税だ。一体今日のわが日本の国民状態からながめて、これはどうもすなおに実施せられるかどうかということを私どもは非常に懸念をしているわけです。私どもも事業に関係いたしませんから、これから国民の一人としていよいよ東京都の国民健康保険に入ったわけでございまするが、われわれもささやかな月給の中から何か年五万円、最高だそうでございますな。最高の五万円近くもとられるという、病気になることより、むしろその五万円に驚いて、いささか憂うつにならざるを得ない。相互扶助でございますから、私どもが五万円の保険税に驚いているようではまことに低額所得者に申しわけございませんけれども一体これがスムーズに行なわれるものかどうか、確信のあるところを大臣にお伺いいたしておきたいと思います。
  53. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 これは明瞭にお答えできませんけれども、今の横ばい状態からいたしますると、三千三百十円とさっき申し上げましたけれども、それよりもちょっとは上回っても、あまり上回らないのじゃないか、かように考えられますか、しかしこれは保険制度のことでありまするから何とも申し上げられませんが、国民所得がだんだん増大してくれば、これは当然やむを得ないことだ、かように考えております。
  54. 小林進

    小林(進)委員 国民年金局長がお帰りになったそうですので、それではこの次に国民年金局長にお伺いしたいと思います。これで終わりにいたしますが、ただ私は、文化国家と言われる国の仕事の中で、一番大きな基礎をなすものは社会保障だと思っております。ほのかに聞くところによりますと、北欧の諸国は、もちろん英国あたりでも、国民はあまり貯金なんかをすることを考えない。なるべく働いたら働いただけの金は生活を楽しむ方に使う。病気になっても国が保障してくれるじゃないか、年をとっても国が保障してくれるじゃないか、死んでも安心して極楽に行けるように葬式まで国が見てくれる。こういうような形ができると、貯金なんか必要なくなって、いかにして人生を楽しむかということで頭が一ぱいになる。そのためには働く労働者の八時間労働を七時間にし六時同にして、自由な時間をよけい持つ。そういうような形が先進国で動いているというのに、わが国の国民はわずかにもらった月給の中から何とか貯金をして、食うものも節用し、着るものも節用して、自分の生まれてきたのは楽しむことでなくて苦しむことだ、人生は苦にあるといったふうなことで一生懸命牛馬のごとく働くという風潮が出ている。私は人間としてこれは実に悲しいことでありますけれども、そういうふうな形を、これは英国並みにはいかなくとも、少なくとも病気や老いたる苦労からのがれる方向へ一歩々々前進さしてもらいたい。その前進さしていく政治の中心は厚生行政であり、その中核たる大臣の責任でいらっしゃるのであります。願わくは大臣に十年も二十年も厚生大臣をやっていただいて、英国並みのそういう社会保障制度を完備していただきたいというのが私どもの偽らざる気持でありますけれども、そうは参りません。参りませんが、せめて今私がささやかな時間で申しましたように、生活保護法の問題でも、国民健康保険の問題でも、あるいは健保の問題でも、やはり社会の底流に横たわっている一番気の毒なそういう人たちにまだ完全な保護、保障の手が伸びていない様子でございまするので、どうかそういう点も——一挙にはいきませんでも、除々にでも確実に前進していく方向へ、また予算をとっていただかなければなりませんし、基本的施策も実行していただかなければなりませんが、厚生行政の中には大臣気持一つで、大臣の手心によって生活保護法で三十万人や五十万人はすぐ適用されますし、百四十六万人を二十万人も減らせというお考えならば、基準行政の手腕によってすらっと適格者か減ってくる。これは自由自在でございますから、健保の問題にしても、五人未満でも五人以上でも、その方に主力を注いで、そういう気の毒な中小労働者に適用さしてやれと大臣が一言おっしゃれば、その方へ行政は伸びるのであります。ほうっておけばそのままで、大臣の指揮命令、一笑一びんが国の社会保障全般に大きく響いて参りますので、どうかますますこういう点に意を用いて、そういう気の毒な人が一人でも減るようにお願いしまして、私の質問を終わります。
  55. 大坪保雄

    大坪委員長代理 午後二時まで休憩いたします。     午後零時四十分休憩      ————◇—————     午後二時十一分開議
  56. 永山忠則

    永山委員長 休憩前に引き続き会会議を開きます。  休憩前の質疑を継続いたします。岡本隆一君。
  57. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 この間の予算の分科でお伺いしたいと思っておりましたが、時間がなかったので、その残りを二、三お伺いいたしたいと思います。  最初に厚生年金の積立金の運用の問題についてお伺いいたしたいと思います。これは昨年の委員会でもお尋ねした問題でございますけれども、この資金の運用の問題については、いろいろ改善していただかなければならないと思う点がございますので、重ねてお伺いするわけでありますが、原資の伸びがだんだん大きくなって参っております。三十四年度はおそらく六百億以上になるのではないかと思うのでございますけれども、大体三十四年度の当初には幾らであって、それでまた三十五年度当初はどれくらいに積立金がなろうとしておるのか、その辺のところをまず保険局長からお伺いしたいと思います。
  58. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 厚生年金保険の積立金の累積状況でございますが、三十三年度末現在で二千九百十八億五千万円でございます。それから三十四年度の分は、ちょうどことし三十五年の一月末現在で約三百四十三億八千五百万円ほどございまするので、合わせまして三千二百六十二億三千六百万円、大体ただいまのところ最近の資料としてはそうなっております。
  59. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 三十三年度の原資の増が五百三十五億であるのに、三十四年度が一月末——これは二月で締め切りになるわけですね、三月から計算するわけですね、健康保険も同じでしょう。そうしますと、あと残り一カ月であるのに三百四十三億であると、少し昨年度より減るように思いますが、間違いございませんか。ふえなければならぬと思うのです。
  60. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 資料は間違いございません。これからいわゆる年度末にかけて、いろいろ追い込みと申しますか、従来の納めるのがなかなかたまっておるようなところに、納めてもらうように努力中でございますから、大体額は、去年が御指摘のように約五百三十五億ほどになっておりますから、それより落ちることもちょっと考えられませんが、かりに落ちたとしても、そんなに大きな開きはない、これからあとちょっとの間に相当追い込んで、入ってくると思います。
  61. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 三十一年、三十二年、三十三年と、年々六十億、七十億程度ふえておりますので、おそらくことしもやはりふえなければならないと思うのでありますが、一応その数字はそのまま承っておくといたしましても、年々五百億以上年金の積立金か累積されていくわけでございます。この厚生年金の資金というものは、これは勤労者が積み立てている金であるから、従ってそれは相当勤労者の福祉のために使われなければならないという考え方から、還元融資の制度が出てきたのだと思うのでありますけれども、還元融資の資金の使いぶりを見ておりますと、どうも必ずしもそのような被保険者の福祉というよりも、政府の方でやはりいろいろ財政的な運用に持っていきたいという気持が非常に強いように思うのであります。自民党の政策の方針として、今後還元融資というものをどういふうな方向へこの積立金を運用していこうという考え方があるのか、その辺について大臣の方で、党の政策として還元融資をどう扱うか、この運用をどうするかということを一つ説明願いたいと思うのです。
  62. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 この問題につきましては、私の就任以来還元融資の自主運営ということについて、ずいぶん苦労している次第でございます。いまだにそこまで了解点に達しておりませんけれども、強い要望が各方面からありますので、この問題を安全、有利かつ被保険者の社会福祉のために、どうしても自主運営をいたして、被保険者のための福祉増進という方面に使いたい、かように考えておる次第でございます。
  63. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 厚生省としてはそういうお考えであることは、もう承っておりますし、それからまた大臣ももちろんそういうお考え努力を願っておるということも、新聞その他を通じて私はよく存じておりますし、また今仰せのような方向へ進んでいただきたい、こういうふうに思っておるのでございますけれども、それがなかなか実現されないのはまことに残念であると思うのです。それで今後とも党の政策立案方面の方々へ大臣からも大いに必要を説得していただきまして、そういう方向へ進んでいただくことを特に私はこの機会に重ねてお願いしておきたいと思うのです。そこで原資の伸びが年々五百億以上出ておるにかかわらず、還元融資として今被保険者のところへ返ってきておるのが大体一三・四%というふうな数字であって、きわめて僅少であり、残りは大蔵省の方で全部管理して預金部資金の方で運用されておるのでございますけれども、そのわずかに返ってきておるところの十三・四%の還元融資が、なおかつ非常に偏在的に使われておるということを私はこの前の委員会で指摘して、それについての是正を保険局長にお願いしておいたと思うのです。ところがことしの還元融資の行方を見ましても、私は一向改善あとがないように思うのでございますが、昨年私が特にその問題を指摘してお願いしておいたのでありますけれども、どういうふうな点についてことしは留意して改善しようというような努力をしていただいたのか、これは保険局長からお伺いしたいと思います。
  64. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 還元融資は御承知の通り一方において被保険者の積立金で、かつ将来の給付の財源になりますために、この積立金というものは安全確実に、同時にきわめて有利にということで、ただいまのところは政府としては資金運用部に委託しておるわけであります。しかし大臣が今御答弁されましたように、被保険者のいろいろな要望にも沿いたいということで始まった制度でありまして、だんだんといろいろ形が整っていきつつあるわけでございます。それについてはまた御批判もあろうかと思ます。これは将来とも検討してみたいと思います。  そこで昨年の御指摘は、たしか、いわゆる大企業の方にどうもいってしまうんじゃないか、その辺をもう少し中小企業の方に回せというようなお話があったかと思います。私も実はその点を考えておるのでありまして、御承知の通り還元融資の建前からいきますと、大体これは地方公共団体に対する貸付という形をとっておる、起債の形をとっております。それからまた地方公共団体を通じてそれぞれの事業所に貸し出しをする、こういうことに相なっております。そこで間接的でございますので、なかなか思うようにこちらのあれがすぐに実って参らないのでございますけれども、しかし、私といたしましては、大企業には直接貸してもいいだろう。しかし中小企業に対しては貸して、そこから一つ転貸してそこでやらせるということも、実際問題としてはなかなか困難である。そういうようなところは公共団体が多数の事業主の意を受けて、右総代といったような格好で公共団体でやってもらうよりほかに今のところはないんじゃないかということで、そういう方面には相当気を配ったつもりでございまして、何ほどかの効果は出てきたと思いますけれども、こういうようなものはすぐ一朝一夕というわけにも参りませんが、そういうような点については去年よりはことし、ことしよりは来年というふうによくして参りたい、かように考えております。
  65. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 還元融資の貸付はどこへどの程度金額を貸し付けるか、たとえば病院ならどういうふうなところへ貸し付ける、あるいはまた住宅ならどこの会社へ何戸分の融資をするかというふうなことを決定されるのは、どこで決定されるのですか。今のお話ですと、地方公共団体へそれぞれ一定のワクを渡して、その中で地方公共団体でもって自主的にそれぞれの事業場へ割りつけていくのか、あるいは保険局の方で地方公共団体からの申し入れを集めて、その集めたなにについて、一応ずっとこのリストをお作りになるのか、どちらなんですか。
  66. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 これは正確に申しますと、資金運用部の運用管理の一還としてやるわけでございまして、これは大蔵省の方でやることになっております。ただそういう還元融資の趣旨にかんがみまして、私どもも発言をさしてもらうし、また相談もさしてもらうし、また実際のことをよくわかっているのはこっちでございますから、こちらの都合を聞いてくれ、こういうことで、それから地方自経体を経由をいたします関係上、どうしても自治庁がそれの間に入って参りますというようなことで、三者協議というような形を今とってございます。地方の自治体は一応その窓口として、それぞれの県内のいろいろな要望を県の方で、私の方へ進達してくる。場合によっては荒ごなしぐらいはしてくれておるかと思います。しかしそれは一応私の方へ参ります。それからまた大蔵省は地方の財務局でございますか、そういうところに参るわでございます。それぞれのルートで中央の線に入って参ましたものを、またそたぞれのところでもって検討いたしまして、結局最後にそれの相談によってきめる、こういうことに相なっております。
  67. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 今のお話大臣もお聞き願ったと思いますが、還元融資が年々累積される額の一五%に満たない。しかもその一五%にも満たないような還元融資すら、なおかつ厚生省でもって自主的には運営できない。厚生省の所管として戻ってきている分すら、まだ財政投融資の運用のワクに入れられておって、相談さしてもらうのだ、こういうふうな弱いことであっては、これは全く年金積立金というものはほとんど大蔵省の方に運営を握られておるというにひとしいと思うのです。だからもちろんそれは目標として、またわれわれの希望としては、やはりこういうものは被保険者に直接返ってくるような運営、だから自主管理というふうに持っていくべきでございますけれども、しかしながらそれまでの段階として、せめて還元融資としてきまったものだけでも、やはりものの考え方として厚生省がお考えになるのと、自治庁、大蔵省考えられるのと、やはりそこに考え方に違いがございますから、だからこれはやはり厚生省で運営できるような方法を考えていただかなければならぬと思います。しかしながらこれはやはりそれぞれの所管の各省から出られた代表者というふうな形であると、私はこの運営というものはなわ張り争いといいますか、意見の食い違いといいますか、あるいはその他いろいろな事情も介在して私はうまくいかないと思うのです。だからこれには何かこの還元融資をどういうふうに使っていくかというふうなことを裁定するための委員会と申しますか、それにはやはり一番に被保険者の代表があると思う。また保険者の代表あるいはその他それに関係するところの団体かいろいろあると思います。そういうふうな適当なところから代表者を集めたところの一つの審議会というと大げさになりますが、しかしそういうふうな機関を設けていただきまして、そこで貸付の資金の運用を計画していくことを考えていただくべきだというふうに思うのでありますけれども、それについての大臣のお考えを承りたいと思います。
  68. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 先ほど大蔵、自治、厚生の三者によって話し合っておる、これはうちの局長はきわめて紳士的に建前を申したのでありますけれども、厚生年金の還元融資は厚生省がやはり指導的な立場をとっておりますので、十分それらの点につきましては御要望に応じたいと思っております。今審議会を作る、あるいは運営委員会といいますか、運用委員会といいますか、そうしたものは今のところまだ早いのじゃないだろうか、これがもうちょっと、三千億円のうちの半分でもこちらで使えるという段階になった場合には、いろいろ各方面の意見を聞いてみたいと思っておりますけれども、現在は資金運用部の審議会がいろいろ各方面の意見を聞いておりますし、そこに対しまして私どもとしても相当な強い発言力を持っておりますから、その点は御了承願います。
  69. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 私はこの運用の状況を見ておりますと、やはり被保険者の立場に立ったものの考え方というものが入っていないと思うのです。だから被保険者の立場に立った運用をしていただくためには、今の役所同士のいろいろな問題以外に、運用の委員会を作っていただく、そして被保険者の意見を聞いていただくというふうなことは将来の方向としてどうしても必要であると思います。今その問題について深く議論していてもなんでございますから、一つそういうふうな方向で進むようにもう一度考えてみていただきたいと思うのでございます。その理由としますのは、たとえばこの資金の年々の行方を見ておりますと、大体住宅と病院とそれから保健厚生施設と、三方面に分かれて軍用されていっております。三十一年、三十二年、三十三年の三年間の融資をれれぞれの用途別に分けていきますと、住宅については九十三億、病院について九十四億、ほぼ同額になっております。それから保健厚生施設という面で十億四千万円というふうに、合計が大体二百億ということになっております。そこでこの前の委員会でも私は指摘したのですが、保健厚生施設あるいは病院の用途というものは、行き先はほとんど大企業であり、少なくも大体それぞれの事業体において健康保険組合を持っておる、そういうところへ組合の病院であるとかあるいはその他のなにとしていっておりまして、一般の小さい事業場が利用できるような施設というものは、病院なんかでありましてもそれぞれの自治体の病院へ少しいっておるというふうで、大部分は大企業の方に病院の設立資金としていってあります。でありますから、病院及び保健厚生施設というものは、九割五分までは大企業へ奉仕しておるというのが実態なんです。それでは住宅はどうなのか。せめて住宅ぐらい被保険者ことに小さな事業場の従業員にも均霑しておるのかと思って住宅の行方を調べましても、その三年間九十五億の住宅の建設資金というものが、これまた同じような方針で運営されておりまして、中小企業には全然回っておりません。一方、私は今度建設委員になりましたので、住宅金融公庫の方から資料を取り寄せまして、産業労働者住宅という制度がございますね、その産業労働者住宅の制度のもとでどういうふうな資金の貸付が行なわれておるか、三十三年度と三十四年度とを見ていきますと、住宅金融公庫の方は幾分は——公庫から言っておることとは事実は多少違うかと思いますけれども、三百人以上の事業場と三百人以下のものとに分類をいたしますと、件数においては三十三年度には、三百人以下のものが二百二十四件で四九・八%、三百人をこえるものが二百二十六件で五〇・二%というふうに、大体半々になっております。それから三十四年度のなにも三百人以下の中小企業場においては二百八十七件で四九・七%、三百人をこえる大事業場に二百九十件で五〇・三%というふうに、大体半々になっております。戸数においては四分六のかね合いになっております。大企業の方には戸数が多く六割、それから小企業場の方には四割に足らないということになっておりますけれども、件数においては大体半々ということでもって、中小企業場にも産業労働者の住宅資金が相当潤っていくというふうな配慮が、住宅金融公庫の場合には行なわれておるのです。ところが厚生年金保険の還元融資については、安全有利という名のもとにそういう中小企業場はあぶなかしくて貸せません、だからということであるのかどうか存じませんが、ことしの住宅の一覧表を見ましても、私はこの中に従業員三百人以下という工場は見当たらないように思うのでございますが、そういう点について、もし三百人以上、以下についての分類された資料がございますなら御説明願いたいのです。
  70. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 過去の実績をとってみますと、大企業の方に相当ウエートがかかっておったのじゃないかというようなお話でありますが、これはいろいろ御意見もあると思います。私どももさような感じでおりますので、先ほどお答えいたしましたように、もう少し中小企業の方へこれを回すようにしたらどうかとわれわれとしても考えております。ただ中小企業の方はなかなかそれ自体としてはむずかしいし、またそれ自体に対しての要望も出て参りません。そこで集まって地方公共団体という一つの代表的なものにそれをやってもらうようになるべく進めて参りたいということで、昨年あたり——その前も努力はしておると思いますが、私としても昨年から努力したつもりでございます。昨年といいますか、今年度になりますが三十四年度の分につきましても、住宅の方では大事業所の事業主の方へ直接に貸し付けたというのが、住宅のワクのうちの約八六%でございまして、今度は中小事業主のために地方公共団体にお願いしてやってもらったというのが約一三・七%でございます。これ自体は、過去の昭和二十七年から始まりました全体として申しますると、住宅の場合には確かに圧倒的に事業主にいっておったのが多いようでございまして、地方公共団体にいきましたのは約五%ぐらいでございます。これが昨年あたりはそのように一三・七%までになっておりますが、こういうのはどうもすぐ出て参りません。地方から希望が出て参らねばどうにもしようがないわけでございまして、その辺は私どもの指導、PRということも大いに影響して参ろうかと思いますが、また同時にそれが浸透するまでに若干の時間がかかるのではないか。しかしいずれにしても、だんだんそういうふうにして地方公共団体あたりがそういう中小企業の事業主、被保険者のために、自分がやってやろうというような空気を醸成いたしまして、だんだんその方へも手を回して参りたい、かように考えておる次第であります。  病院などにつきましては、これは何と申しましても事業主の直営というのは、過去においても全体のパーセンテージというのは低いのでございます。やはり地方公共団体が多うございますが、しかし昨年あたりでも地方公共団体の関係も、何も地方公共団体は中小企業主ばかりじゃなしに、大企業のものも地方公共団体の施設に入ることもございましょうけれども、まあ私ども考えといたしましてはそういうように工場の直営病院というよりは、地方公共団体の病院の方にだんだんウエートを増してきた、こういうように言えると思います。
  71. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 地方公共団体を通じて建ててもらっているというふうなお話の住宅建設でございますが、ことしの貸付融資先の表を見ますと、たとえば北海道が百五十戸、それから山形県が四十戸、二本松市が二十戸、それから内郷市が四十八戸というふうなものがございますが、これは地方公共団体の職員のための職員住宅を建てておりますのか、あるいは公営住宅をこれによって建てておりますのか、どちらですか。
  72. 加藤威二

    ○加藤説明員 還元融資におきまして、地方公共団体が事業主体となっております住宅につきましては、これはその職員ではございませんので、要するに三百名以下の中小企業では、私の方の実施要領では単独には貸し付けられない。そういう場合には事業主体が寄り集まって、県とか市に依頼をして、県とか市が中小企業の事業主にかわって住宅を建てまして、そこに依頼をしてきた中小企業の従業員を入れる、こういう制度になっておるわけでございます。従いましてそういう地方公共団体へ私どもの方から融資をして建てた住宅には、中小企業の従業員が入っているということであります。
  73. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 そうしますと、地方公共団体にその意思があれば、それぞれの中小企業に呼びかけて、それでもってある程度まとまって還元融資を申し込めば、融資の対象になる、こういうことですね。そこでそういうことですと、地方公共団体も、あるいは一般の中小企業の方も、そういうことを知らないと思うのです。住宅金融公庫の産業労務者住宅の方は、やはり公共団体を通じて募集しております。新聞に申し込んでくれというような記事も出ますし、相当PRがききますから寄ってくるので、中小企業の率が伸びてきておる。ところがこの厚生年金保険の還元融資については、そういうなにが全然出ておりませんし、あるいはできればあなたの方から大体どの程度のワクを出すから、希望があれば集めてくれ、こういうようなことを各地方の公共団体に言うていかれたならば、その地方の公共団体の商工部とか、そういうふうな中小企業の対策を講じておるそれぞれの部局がございますから、そういうところがそういう仕事をやるだろうと思うのです。それを然っていて、そういうワクをお出しにならない、むしろあなたの方で歓迎されないから、勢いそういうふうなPR活動がやられない、従ってそういう希望者も出てこないというようなことになって、融資が偏在するのだと思うのですが、ことしはそういうふうな今までの方針を是正するために、一つ大きく各府県に呼びかけて、少なくともこの還元融資の半分は中小企業の住宅に振り向けたいから、うんと申し込みをとってくれ、こういうことを渡邊厚生行政一つ画期的な新しい方針として打ち出していただけませんか、どうでしょう。
  74. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 御指摘によりまして、その点はこれから事あるごとにPRいたしたいと思っております。しかし何しろ金額がわずかなものですから、これが殺到してきた場合には、なかなか容易ならぬことだろうと思いますけれども、そういう趣旨のもとに地方公共団体、あるいは地方の外郭団体等に対しまして、こういったものが借りられるのだということを徹底する趣旨で、一つ今後そのつもりで処置したいと思います。
  75. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 資金が少ないから殺到したら困るというふうなことでございますけれども、殺到してきたら全額中小企業に回していただきたい。こう私は思うのです。と申しますのは、たとえば健康保険の標準報酬を見ましても、政府管掌と組合管掌と比べていきますと、男で政府管掌は一万六千百八十一円、それから組合管掌は二万三千八百八十円というふうに非常に大きな聞きがございます。従って組合を作り得る程度の健保組合を持たないような工場の従業員、その中には相当大きな工場も含まれておる。だから従業員二十名や三十名、五十名というふうな小さな事業場の標準報酬というものはこれをはるかに下回るわけなんです。それほど低賃金で日々働いておるという人たちが住宅難に悩んでおる場合に、やはりこれはむしろ大企業の方には自分の方にそれぞれ余力もあるんだし、また金融の道もいろいろつくの、だから、大企業の方は自分の方の自力でもって従業員のいわゆる給与住宅というようなものはみずから左金的な努力によって建設させて、厚生年金の還元融資というものはそのすべてをそのような日々低給与に甘んじて働いておるというふうな——しかもそういう人たちの間にこそ住宅難の問題がひどいのです。御承知のように戦後住宅というものは非常に——私は住宅ほど不平等なものはないと思うのです。一番恵まれている者は、今言う大企業の給与住宅に、ただ同然の非常に安い家賃で住んでいる人が一番恵まれていると思います。公務員の住宅なんかもそのカテゴリーの中に入ってくる、だろうと思うのです。そして一番恵まれない人たちは、これは六畳一間、一畳について千円くらいのやみ家賃を出して二階借りをしたり何かしておる人たちです。これは零細企業に働いておる、非常に貧しい人たちに多いのです。そういう貧しい恵まれない人ほど不当に高い。これほど貨幣価値が、家賃ほど貨幣価値が違った形で支収われているものはないと思うのです。片方は同じ五百円の者がものすごくりっぱな家に済んでおりますし、その五百円以上、一畳について千円というふうなやみ家賃を払う人たちが非常に苦しい生活をしておるということです。この住宅の不平等というものを是正するということは、これはもう厚生省としても、単におれの方はそれは違う、それは係りが違う。住宅は建設省だから、厚生省はそんなことは知らぬというふうなものじゃないと私は思う。さればこそこの年金というものが住宅の融資に出ておると思うのです。だから庶民のそういうはなはだしい住宅難というものを解決するためには、厚生省の方も一はだぬいでいただかなければならぬ。それにはこの還元融資というものの使途というものを、特に住宅については——病院については、零細事業場で病院を建てるといってもできやしません。しかしながら住宅については厚生省の方の努力次第により、あなたの政府のやり方いかんによったら、これは零細事業場で働く人たちを潤す道が幾らも私はあると思う。しかもこれは安全有利ということをお考えになっているというふうなことでございますけれども、しかしながらこれは、貸しても、家というものはすぐつぶれるものじゃないのです。ことに鉄筋アパートでも建てれば、かりにその融資のなにが償還能力がなくなったとしても、それはまたよそへ売ることもできるのです。何ぼでも残りの分を次のものに振りかえていけば、どんなにでも回収の道は講じられるのです。だから、ほかの事業に貸し付けて返らない、償還が危ぶまれるということと住宅融資とは——不動産としてかっちりと残る建物でございますから、融資の安全とかそういうふうな点についてはそう懸念は要りませんから、これは地方公共団体を通じて全額中小企業、もっぱら中小企業向けにこれは回して、住宅建設に振り向けていく、こういうふうな意欲を、私は厚生省としては持っていただくというのが本筋ではないかと思うのですが、厚生大臣の御意見を承りたいと思います。
  76. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 なかなか傾聴に値する御意見でございますが、保険料の積み立てなんかから見まして、やはり非常に不安定な中に中小企業も中にあるわけでございます。保険財政全般と被保険者のことも考えまして……。これは厚生大臣の答弁ではございませんけれども、低家賃政策というものは住宅公団あるいは住宅金融公庫等において十分見ているわけでございますが、しかしその御意見は特に拝聴いたしまして私どもは何らか措置したいと思っております。
  77. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 大臣ももちろん御承知でしょうが、御参考までに、もう一度御認識願いたいのですが、これは健康保険についての統計でございますけれども、この社会保障年鑑の末尾についておる統計を見ての数字でございます。政府管掌が三十一万六千九百二十、約三十一万七千、事業場がある。ところが組合管掌のは一千十二です。このように事業場の数においては圧到的に政府管掌の事業場が多いのです。そしてまた被保険者につきましても、政府管掌の方の被保険者数は七百三万、それから組合管掌が四百万です。そういたしますと、その被保険者においても、被保険者の数の中でも約六〇%以上のものが零細事業場の人たちです。だから厚生年金保険の積立金というものはなるほど三千億あり、二千億あるといたしましても、その過半というものはやはり零細企業場の貧しい人たちが出した金が積み立てられておる。だからその過半というものは、そういう零細企業場の貧しい人たちに戻っても私は当然であると思います。しかも日ごろはなはだしい賃金格差があるのです。経済の二重構造に伴って、これはもう今は給与ははっきりとした二重構造ができております。給与の二重構造の中で、今度は実物給与として今の保険給付であるとか、あるいはまた住宅の給付であるとかいうふうなものが、また片方では大工場に働く人たちの方には非常にいい条件であり、零細事業者の人は実物給付も全然ないのです。現物給付もないのです。やはり社会保障というものは、これは一つの再分配でありますから、従って同じ労働者でありながら、一方においては、非常に恵まれており、一方においては非常に不遇な人があるとするなれば、せめて年金保険の積立金ぐらいはそういう人たちに有利になるように今後運営していただくことを私は特にお願いしておきたいと思うのです。  大臣三時までということでございまして、もう時間がございませんから、年金の問題はその程度にして、今度は児童福祉の問題に移っていきますが、最近だんだん女の労働者がふえていく。労働省の統計によりますと、最近の女子雇用労働者は六百十二万あるといわれる。それからそのうちでもって、その二割はいわゆる配偶者のある、結婚した人たちであるということでありますが、その中で大体二十才未満と二十才から二十五才の間と、それから二十五才以上とに分けると、それぞれ三分の一ずつである。こういうふうにいわれております、従って大体二十才から二十五才というふうな結婚適齢期あるいはまた結婚して間のないというふうな女子労働者というものは非常に今ふえてきておるのであります。従ってそれらの人にとっては結婚、出産というものが重要な関心の問題です。ところが、そういうふうな年代でもって結婚しましても、相手の配偶者の方も収入が少ないものだから、なかなかすぐに子供が生めないというので、やむなく妊娠しないような方法を講じて、ある程度何といいますか、家庭の建設をやっていく、あるいは余裕を作るのを待つというふうなことで、だんだん初めて出産をするという年令がおくれてくるのです。いわゆる高年の初産婦というものがだんだんふえてくる。ところが、高年の初産婦というのは、御承知のように、お産は難産になります。だから、やはり一番お産が軽いのは二十才から二十五才であると、医学的にはいわれておるのに、このごろは二十五才以上のお産というものがどんどんふえてきているわけです。従って私は、そういうふうな一番恵まれた、身体的に一番条件のいいときに若い人に結婚させ、お産させてやるべきだと思うのでありますが、それにはまたそれに伴うところの施設を政府の方で考えていただかなければならぬと思う。だから、お産の給付の問題を、この前の委員会で申し上げましたが、私は今度は、生んだ子供ですね、赤ちゃんですな、乳児を預かってやるような保育所というものを全国的にうんと広くばらまいて作っていただく必要があると思うのですが、それには、一時に多数の乳児の保育所を政府の方で作ろうといっても、なかなか資金的に問題があって、困難だと思います。だから、最近東京とかその他のところでぼつぼつ始められておりますような、二、三名程度で、保母をやってきたとか経験のある人、あるいは助産婦であるとかいうふうな人たちを募集して、そうしてそういうふうな人の家庭でもって二、三人の乳児を希望者には有料で預からせてやるというふうな制度を作り、そのあっせんと指導ですね、そういうふうなことを厚生省がやっていただくというふうな乳児保育制度というものを一つ作っていただいたらどうかというふうに思うのでありますが、厚生大臣のお考えを承りたいと思います。
  78. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 大へんけっこうな御意意見でありまして、現在もそのような方向で指導しております。
  79. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 里親の制度がございますけれども、やはり非常にうまく運営されております。私の選挙区の中にも、集団的に里親をやっている地方がございますけれども、そこへ預けられた子供は、非常にかわいがられて、親を慕っております。だから、そういうふうな希望者をお集めになりましたら、この里親の制度と同じように、私は割合にこれはうまく運営されると思いますので、厚生省の方もこの際踏み切って、これを有料で預かるという制度で、たとえていえば子供を持つ若い母親が三人ぐらいで、自分が一人ずつ子守を雇うとすれば、なかなか費用が高くつくから、三人共同でもって預けるというふうな形でいけば、一人千五百円か二千円程度でもって保育を頼むというようなことができますから、だからそういう制度でやっていただけば、指導のための事務費だけこれは予算化していただかなければなりませんが、保育費その他については、これはゆとりがございましたら、あるいはまたできるだけ努力して、ある程度経済的に困難な人のためには補助するというよなことを考えていただければ、一そうけっこうでございますけれども、とにかくそういうふうな制度として、今後できるだけ早い機会に、できればもう来年からでも、そういうものを厚生行政の中の一つの制度として出発していただきたい。特にこれはお願いしておきたいと思うのです。  それからもう一つ児童局長お尋ねしたいと思うのですが、ことしの予算の中にございます未熟児の養育費の補助でございますが、昨年度の千二百九十五人から三千四百四十人にふえております。昨年はもう予算が枯渇しておったのでおりますが、三千四百四十人程度にふやすだけで、これが運営できるのかどうかというふうに私思うのでございますが、局長の方から一つ説明を願いたいと思います。
  80. 大山正

    ○大山政府委員 未熟児の養育につきましては、昭和三十三年度から始めたのでございまして、本年度昭和三十四年度におきましては、まだ事業の実施当初であるということで、大体前年度と同じような額しか計上しておらなかったのでありますが、実績を見ますと、非常にこの仕事が伸びておりますので、来年度予算におきましては大幅に増額いたしまして、五千七百五十二万一千円というように予算でなっておるのでございます。御指摘のように、養育医療につきましては、本年度が千二百九十五人を予定いたしておりましたのが、来年度は三千四百四十人というようにふやすことにいたしております。それからなお、この養育医療は、大体千八百グラム未満の子供につきまして考えておりますが、千八百グラム以上につきましては、保健所からのいろいろな訪問指導を行なうということになっておるのでありまして、この方につきましても来年度件数をふやしまして、予算を計上しておるのでございます。従いまして現在各都道府県でやっていただいております実績から見ますと、大体この予算をもちまして未熟児の対策が相当伸びてやっていけるというふうに考えております。
  81. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 実は昨年の七月でございましたか、八月でございましたか、私、未熟児のこういう制度ができたというので、京都の日赤の未熟児のセンターを見に参りました。そのときに私が聞いて驚きましたのは、もうそのときに去年の予算を全部使っちゃって、新規に給付は全然できないのだということなんです。一昨年の十二月からですか、実施されましたのは。実施されて、それでもって一昨年の十二月から昨年の三月までの間に、昨年度の方は予算を使っちゃって、その次にまた本年度の方ももう開始すると一緒に、前年度の継続の人に全部食われてしまって、ことしになってからの新規給付というものはほとんどないというような事情を聞きまして、これはそんなことなら全く厚生省予算を立てられるときの未熟児の発生数というものに対する見込みに大きな狂いがあったんじゃないかというふうに、私は思いました。そこで病院側から病院の立場に立った説明を聞きますと、助産婦やあるいは保健所からは、半額国で見てくれるから入院しなさい、こう言われて入院してくるのです。ところがもうすでに予算は満配で給付できない。だから全額を患者の方で持ってもらわなければならぬ。ところが養育施設というものはなかなか金がかかる。月に一万円、二万円かかる。そういうことになって参りますと、これは非常な負担になって、病院側もその費用に非常に困るということなんです。だから今年は、それじゃそれがはたして矛盾なしにこの予算でやっていけるのか、あるいは今年も下半期になったらもうございませんとお手上げになる心配はないのか、そういうことを私は伺っておるのであります。
  82. 大山正

    ○大山政府委員 本年度につきましては、確かに御指摘のように予算の不足を生じましたので、他の費目から若干流用してまかないたい、かように考えております。来年度につきましては、先ほどお話し申し上げましたように、倍額以上の増を見ておりますので、大体これでやっていけるという見込みでございます。
  83. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 それじゃもし足りなければ追加要求される御用意がございますか。私は足りないと思うのですがね。今年も七月で食ってしまって、七月と言えば三カ月ですよ。三カ月で食ってしまって、そして今までにたまっている未熟児、たとえば四月一日現在に、前年度の繰り越し分の相当な未熟児がそういう施設の中に入っていると思うのです。そういう者にまず給付してやらなければならぬ、現在入院しているから。そしてどんどんと給付すれば、それから後また今年これから発生してくる未熟児に対するところの給付費というものはおそらく大きな欠損が出ると思う。のみならず、この未熟児の養育施設というものは、まだ実行に移されてから日が浅いから十分徹底しておりません。だから日とともに未熟児の届出がふえて、実数と届出数との間には大きな開きがありますから、この予算というものはもっと必要だと思うのです。そういう点について、やはり下半期になればまた今年と同じような矛盾が出て、医療機関の方も困れば、患者の方も半額を国から補助があるのだということで入院しているのに、全然補助がない、そのために非常な費用がかかるものだから困るということがおそらく出てくると思うのですが、その点あなたの方でさらに補正して、それに対する給付をりっぱにやっていただけるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  84. 大山正

    ○大山政府委員 未熟児の入院医療費につきましては、大体本年度は該当者の六分の一の人数の入院率しか見ておらなかったのでありますが、来年度におきましてはこれを四分の一に上げて総費用を計算いたしておりますので、全体といたしまして倍額以上になっておりますので、大体現在の実績の伸びを見ればこれでまかなえるのではないか、かように存じております。
  85. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 できるだけそういうふうに努力していただきたいと思います。  そこで、この問題について一つ保険局長にお伺いをしたいと思いますが、未熟児を保育器で保育した場合に、甲表には点数表の中に載っているのです。ところが乙表では点数表の中に載っておらないのです。これはやはり手落ちですか、それともどういうわけなんでしょう。インキュベーターを使用した場合の入院料……。
  86. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 ちょっと調べますので、あとでお答えします。
  87. 岡本隆一

    岡本(隆)委員 それでは、私は意見だけ申しておきます。甲表には十五点ついておるのです。ところが乙表にはないのです。それは未熟児は未熟児センターで保育されるのがいいには違いございませんけれども、しかしながら、ある助産所あるいは病院でもって未熟児が生まれまして、そしてそれが乙表をとっている病院だと仮定いたしますと、産婦は当分おりますね。ところが保育器に入れて保育するのに、赤ちゃんだけほかの病院というわけにはいかないです。だからどこの病院だって保育器を持っております。だから甲表の病院では、保育器で保育すれば十五点の保育器の使用料というものがあって、乙表の方の医療施設には保育器の点数が全然認められぬというふうなことは、これは非常に不当な差別で、不公平だと思うのです。だからこれは点数表を至急是正していただきまして、乙表においても保育器の使用を点数の上においてやはり認めるというふうにしていただくべきだと思いますし、またそうする必要がないというのなら、どういう理由でそういうことなのか、その御意見を承りたいと思います。  児童局長にこの機会に申し上げておきたいと思います。もうよく御存じでありましょうけれども、保育制度というものができましてから、未熟児についてはここまで参りました。未熟児を大切にするという……。私らの若いころには、子供がどんどんできるのだから、二キロ五百に足らぬのはあかぬと思え、こういうふうに言われまして、体重の少ない子供はだめですぜと医者も患者の方に言うし、頭から医者も親も投げているというのが昔の実情でございました。ところが今は、そういうふうな子供にも最大の努力をする風潮が出て参りましたし、ことに今この制度が打ち立てられましてから、そういう傾向が一そう強くなって、いかに月足らずで小さな子供でも、この世に生を受けたからには十分な保育の手を尽すというふうに風潮が変わって参りまして、私は非常にけっこうなことだと思うのであります。それだけにまた死亡率も非常に減って参っております。日赤の今の表なんかを見ましても、一般の乳児の死亡率と一キロ八百未満の子供と、あまり死亡率が変わらぬところまで低下してきたということを申しておりますし、さらにまた、未熟児の保育制度ができてから、脳性の小児麻痺の子供の発生率がどうも違うようだというふうな意見も聞いております。そうすると、今度精神薄弱者の福祉法が出るようでありますけれども、そういう点においても、できるだけそういう乳児のときに先天的ないろいろな障害を排除するという意味において、未熟児の養育施設というものが、単に未熟児というふうなその乳児だけの問題ではなしに、その人一人の生涯に対する大きな意義を占めてくると思いますので、未熟児対策については今後とも十分な努力をしていただくように、また、ことしのように予算が足りないために給付がほとんどの人にできないというような、羊頭狗肉のことにならないように、十分な施策をやっていただくようにお願いいたしまして私の質問は終わります。      ————◇—————
  88. 永山忠則

    永山委員長 第三十三回国会において提出され、今国会に継続されておりまする田中正巳君外二十三名提出厚生年金保険法の一部を改正する法律案日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案及び第三十一回国会において提出され、今国会に継続されております内閣提出の船員保険法等の一部を改正する法律案、以上四案を一括して議題とし、審査を進めます。     —————————————     —————————————
  89. 永山忠則

    永山委員長 すでに各案の趣旨については、第三十一回国会あるいは第三十三回国会において説明を聴取し、十分御了知のことと存じますので、この際、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  90. 永山忠則

    永山委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  以上四案を一括して質疑に入ります。質疑の通告かありますので、これを許します。齋藤邦吉君。
  91. 齋藤邦吉

    ○齋藤委員 ただいま議題となっております政府提案の船員保険法等の一部を改正する法律案、そのほか田中正巳君外二十三名提出のそれぞれの法案につきまして、厚生省局長一つお尋ねをいたしたいと思いますが、まず最初に厚生省の官房長に一つお尋ねをいたしたいと思います。  この政府提案の船員保険法等の一部を改正する法律案内容を見ますと、船員保険法、失業保険法、日雇労働者健康保険法、厚生年金法、さまざまな法律につきまして、それぞれの料率あるいは国庫負担というふうなものの改正を一本の形式で法律として政府はお出しになられておるようなわけでございますが、こういうふうな内容を持った法律を一本の形式でお出しになりました理由一つお示しいただきたいということがまず第一点。  それから、こういう例がいまだかつてあったかどうか、前例について、これは官房長の御所管でありますので、官房長にお尋ねいたしたいと思います。
  92. 森本潔

    森本政府委員 ただいま政府提案の船員保険法等の一部改正につきまして、その内容を見ると、厚生年金、船員保険、失業保険、日雇健康保険の四つの法案に関連しております。これをなぜ一本の法律で出したかというお尋ねでございます。これを一本にして出すか、四本の法律で出すかということにつきましては、これははっきりしたどちらでなければならないという理由はなかろうかと存じます。しかしながら、政府提案におきましてここに一本にいたしましたのは、若干の理由がございます。と申しますのは、この法案を提出いたします準備をいたしますころ、政府部内におきまして、各種の社会保険を総合的に調整する必要があるじゃないか。保険料の面、国庫負担の面、あるいは給付内容の面等から見まして、従来の沿革から見まして、必ずしも調整が十分とれていないという点がございますので、総合調整をする必要があるという意見が出て参りました。当時社会保障制度審議会に対しましても、内閣総理大臣からこの総合調整についての意見を諮問したような事情もございます。そういう見地から、この関係のございますところの四つの法案を総合調整するというような見地から御審議を願うというような気持で一本にしたのが第一でございます。  それから御存じのように、これらの四案はいずれも被用者保険でございます。保険料を払います事業者あるいは被保険者を含めますと、それぞれの保険の名は違っておりますけれども、出す人はいずれも同じでございます。どれかの保険の料率が上がる、あるいは他の保険の料率が下がるということは、同じ人に響いていくわけであります。それらのことを一括御審議を願うのが便利であろう、こういうような意見がございます。そういう見地から、今申しましたように総合調整という見地から御審議を願うのが適当であろう、それから御審議に際しまして、一本にしておく方が審議の便利があろう、こういう気持で一本にしたのであります。これが絶対に一本でなければならないというような理由はございません。  それから第二点の、同じようなこういう各種の法律を一本にして出した例があるかどうかという点でございますが、十分よくは調査いたしておりませんが、そういう例があろうかと存じます。ちょっと今思いつきを申し上げますと、たとえば補助金の制限に関する法律というのがございますが、これなんかの法律は、各政府関係の法律全部につきまして補助金整理の臨時特例の法律を一本の法律でやっておる。これなんかも、理論上はそれぞれの法律の一部改正で出すのでございますが、便宜一括して一本の法律で出しておる、かような例もあるように存じます。なおその他例もあろうかと存じますが、ただいま思いつきましたのは以上でございます。
  93. 齋藤邦吉

    ○齋藤委員 補助金等の整理に関するいろいろの例をお示しになりまして、前例があるというお話でございますが、これは財政当局の財政上の見地だけから見ての調整の法案であったのでありまして、それぞれ行政担当の面から見てのものではなかった、こういうふうに言えると思うのでございます。しかるにこの法律案は御承知のように社会保険全部について財政的な観点から調整をはかるということでありまして、これは社会労働委員会にかかっておる。すなわち補助金制度等に関するものについては補助金ということで別の委員会ではなかろうか、こういうように考えられるのであります。そういうふうなことからいたしまして、政府がお出しになったことでありますけれども、将来のために一つ官房長によく御注意を願っておきたいと思うのでありますが、総合調整けっこうです。総合調整という目に見えない抽象漠たる美字麗句のもとに、別の意図を腹蔵したものを総合調整と言われたら、総合調整という言葉が泣くわけでありまして、もう少し事の本体に即しまして、ほんとうに健康保険なりあるいは日雇い健康保険なり、船員保険なりというものをある一つの方向に基づいて総合調整するということであるならば、私は非常にけっこうだと思う。これを見ますと、こっちの財政がいいからこっちの国庫負担は下げる、こっちは悪いから上げるというような財政的な見地のみで、こういうことが総合調整であるというならば、行政そのものの調整ということがなくて、財政のやりくりのための、金のやりくりのための総合調整で、総合調整という意味がだいぶ違うのではないかと思うのであります。私どもは社会保障の拡充発展こそはわが国将来の大きな理想である、こういうふうに考えておるわけでございまして、どうか将来社会保障の発展拡充のためには幾多の総合調整、これはぜひやっていただきたいと思う。将来の方向としては労働省にあります失業保険なり、あるいはそういうものをみな持ってきた、ほんとうに大きな社会保障省を築くというような理想に燃えて官房長さん、保険局長さんがお進めいただくことをぜひともお願いしたいと私は思うのでありますが、そういうような考えを持っておりますので、どうか安易な道に将来はおつきにならぬように一つ御注意だけを申し上げておきたいと思います。  それから次に、今度は保険局長さんにそれぞれの法案につきまして、田中委員お尋ねするのがけっこうかと思いますが、政府提案のものと内容が同じでございますので、保険局長に簡単に二、三点各法案についてお尋ねをいたして参りたいと思います。  まず船員保険法の問題につきまして、失業保険金の支給に要する部門についての国庫負担を、今回三分の一を四分の一にするという改正をなされておるようでございますが、この問題は何も国際条約に拘束を受けるものでもなし、世界の諸外国の例を見ますと、さまざまな例がありまして、何も三分の一を四分の一に減らして悪いという理屈は一つもない。しかも、被保険者として保険金を受けておる側からいえば、これは政府側の金で、これが労働者側の金であるというペーパーのついてくるわけのものでもございません。そういう意味において、私は何もしいて悪いことじゃないとは思いますけれども、やはり労、使、政府、それぞれ三分の一が姿かいいということだけは言える、こういうふうに思うのであります。そこでお尋ねを申し上げたい第一点は、なぜ三分の一を四分の一に下げたかという点が第一点。  それから第二にお尋ねいたしたいことは、この制度は法律の明文にもありますように、三年間の暫定措置、三年目において慎重に宵検討して、また出し直す、そういうふうな内容の法案になっておるわけでございます。そこで、現在の保険局長気持としてはどういう形が望ましいかということについて、御意見があるならばお聞かせをいただきたいと思います。私は三分の一にしなければならぬとか四分の一が悪いとか、そういう意味じゃない。世界各国さまざまでございます。要するに失業保険が、被保険者に対してりっぱな失業保険の給付ができればいいのでございまして、何もこういうことにこだわる必要はないと思いますけれども、将来のおつもりとしては——私はやはりこれが望ましい形のような感じもします。そこで、三年先のことはわからぬといえばわからぬようなものでございますが、保険局長としてはどういう形が望ましいかということについて、御意見がおありでございましたらお聞かせいただきたい、こういうふうに存じます。
  94. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 船員保険の失業保険部門につきましては、御承知の通りそれに対する国の負担を三分の一から四分の一にいたしておるわけであります。これは陸上の労働者に対します失業保険法の規定と表裏を合わしたわけでございまして、陸上の方は労働省の方で御説明申し上げると思いますが、船員保険に関しましても、失業保険関係の費用は毎年相当の剰余がございまして、今日の段階で申しますれば、約二年以上のものは失業保険の積立金としてこれを保有しておる、こういう状況でございまして、その方面から言えば、財政としては非常に堅実であるということでございます。しかし、先ほどの御質問にもございましたように、今回政府として被保険者全般にわたって、まず総合調整の第一歩と申しますか、保険料の点なり、あるいは国の負担なりを調整するという段階におきまして、これは国が他の方へ力を入れるという関係もございまして、失業保険の関係は国庫の負担率を若干下げる、こういうふうにいたしたわけであります。国の負担を下げるといいましても、御指摘の通り、これすなわち被用者に対して直ちに給付内容が悪くなるとかいうような筋合いのものではございません。しかし、また同時に、そういうことが被用者の方々に対してもいろいろ心理的な影響を及ぼすであろうということも当然予想せられるわけでございまして、そういう面に対する手当といたしまして、先ほど指摘のように、これは一応あと三年間ほどにおいて再検討する、同時に、その間におきましても、毎年の失業保険の収支を見まして、大ざっぱに申し上げまして、支出が収入をこえるというような場合においては、国の負担は直ちに戻して、最高は元通りの三分の一までは戻すようにいたします。こういう手当をいたしておるわけでございまするので、いろいろ御意見はその人その人によってあろうかと存じまするけれども政府といたしましては、この際三分の一を四分の一にするということはいたし方ないことであろうかと存ずるわけであります。これはただいま申し上げましたように、三十八年までの間に再検討するということでございまするから、いわば暫定的な措置ということが言えようかと思うのでございまするが、形としてどういう形が望ましいかといわれましても、これは法律、制度の問題でございまするので、必ずしも云々というわけには参らぬと存じます。今までは、どちらかと申しますると、失業保険の関係につきましては、政府と事業主と被保険者三人が持ち寄るというようなことで、ごく簡単に三分の一ということで参ったわけでございます。それ自体はすっきりした形のようにとれるかとも存ずるのでありまするけれども、しかし、今日さような措置をとること自体も、政府といたしましては、現在の陸上及び海上の失業保険関係の積立金の状況にかんがみ、これはやむを得ないこととはいえ、また妥当なことであると考えているのであります。将来どういうものが好ましい姿であるかということは、政府として一がいには申し上げかねますが、しかし、従来の形が必ずしもすっきりしていないということではない、あれも一応形としては整ったものであろうかと存ずる次第であります。
  95. 齋藤邦吉

    ○齋藤委員 将来の形につきまして、政府の意思が何もきまっていない、それはその通りだと思いますが、私は、将来の問題としては、常識的に言うて、やはり労働者、経営者、政府、この三者が均分するのだ、こういう形が望ましいと思います。従って、三年間の検討を経て将来再検討の案をお出しになりますときは、制度の発展のためにはやはり形というものも大事です。どうかそういう形についても十分御検討を願っておきたいと思います。なお、そういう際には、やはり諸外国等の例も見まして、日本の失業保険で劣っている面もあるやに感ぜられるところもありますから、給付内容改善ということも頭に入れながら、やはり形のよい保険制度の発展ということで御努力あらんことを希望いたしておきたいと思います。  次は日雇労働者健康保険、これにつきまして、厚生省の非常に努力をせられた跡も感ぜられるのでありまして、深く敬意を表する次第でございます。すなわち、現在の法律の療養の給付及び家族療養費の支給に要する費用につきましては、四分の一の国の負担を十分の三、わずかではありますけれども国が持ち出しをする。それは当然日雇健康保険の財政考えての措置であり、非常に私はけっこうだと思います。それは現行法二十八条の二項です。さらに、予算の範囲内において傷病手当金、出産手当金の支給に要する費用についても十分の三まで認めるというふうに法定事項にいたしまして改善をはかられた点については、厚生省努力に対して深く敬意を表するものでございますが、この日雇労働者健康保険というのは、ほんとうに厚生省で御苦労なさっていると思います。これは労働者の実態をつかむことから申しましても、保険料の徴収あるいは給付のやり方等についても非常にむずかしい問題があると思いますが、まだ完全なる段階まで到達したとは言えないと思います。将来ともこの制度がさらに一そうよくなりますように御努力あらんことを望むものでありますが、ただ一点だけお尋ねをいたしておきたいと思いますのは、この日雇労働者健康保険につきまして、一般の健康保険と比較いたしますと、傷病手当金の支給期間とかあるいは療養の給付期間、これに非常に差がございます。差のあることもある程度はもとより当然だと思いますけれども、やはり医療ということから申しますれば、被保険者の希望を十分達成さしてやるという努力をしてやることも必要でありますので、将来こういう点について十分御努力を願いたいと思うのでございますが、こういう点についてどういう考えを持っておられるか。  もう一つの問題は、一般の失業保険については待期を短縮いたしておりますが、日雇健康保険の傷病手当金の待期につきましては短縮していないということでございます。その理由、並びに最初に申し上げました給付内容改善につきまして、局長の御所見を承らしていただきたいと思います。
  96. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 日雇労働者健康保険の制度につきましては、御指摘のように、これを健康保険の制度と比較いたしますとまだまだいろいろ不十分な点があることは私どももよく存じておる次第であります。これは、社会保障の立場からいたしますと、できるだけよくして参るように努力いたすべきであると存ずるのでございます。ただ、今日社会保険の制度という形をとっておるわけでございますが、それぞれの事業主、被保険者の方々に、やはり保険料というものを掛け得る限りにおいては掛けていただく。国ももちろん一半を負担するにやぶさかではございませんけれども、やはりそういうような点も検討の余地がございます。またその給付内容をよくするということにつきましても、まずそのどれから手をつけていったらいいかということもあるわけでございまして、この点については、実はなお根本的に検討しなければならない点があるように私ども考えておるわけでございます。さような点から、今年度においては、十分これの検討を済ますことができませんでしたけれども、この点については、厚生大臣の諮問機関であります社会保険審議会におきましても、やはりそこの健康保険部会も、日雇いの問題についてはみんなで一つ検討していこう、こういうことに相なっておりますので、その方の御意見も承りつつ、制度の内容改善に努めて参りたい。私ども非常に苦慮いたします点は、内容は確かに十分ではございませんので、これをよくするということについては努力せねばならぬ点が、これはもう明瞭にございます。しかし、一体どういうふうにその内容改善に必要な経費を支出するかということにつきましては、今日直ちに保険料を上げるというようなことについても、なかなかすぐに踏み切ることにも参りません。また国庫負担につきましても、今回十分の三に改正をお願いいたしまして、これによっても相当国庫負担は増でございます。しかし、これでも私どもまだあるいは足りないんじゃないかと思いますが、その辺のかね合いというものもあろうかと思うのであります。何もかも全部国の負担でもってまかなうということにも参らない点もございますので、そういう点もいろいろ十分検討して参らなければならないということでこれはなお引き続いて検討して参りたい、かように存じております。  それから第二番目の傷病手当金の短縮のことでございますが、これもただいま申し上げましたように、日雇いの中身をよくするための一つの項目であろうと存ずるわけでありますが、今日内容をよくするということにつきましては、先ほど指摘のように、傷病手当金の問題のほかに、療養の給付内容の問題もございますし、また制度といたしましては、そのほかにいろいろな点があるわけでございます。その辺との全部の総合的な根本的再検討、その一環においてこの問題も解決して参りたい、こういうようなわけで、今日取り上げておらぬわけでございます。一日間短縮するということにつきましても、やはり千何百万円かの支出になるわけであります。日雇いとしては、それをいつでもできるということでもございませんので、この点は、先ほど申し上げたように、根本的検討の際に取り上げてみたい、かように考えております。
  97. 齋藤邦吉

    ○齋藤委員 日雇い労働者の健康保険につきましては、非常にほんとうの低所得の階層の医療保険のことでございますので、どうかこの問題については真剣に一つ御検討願って、給付なり制度の改善のために、さらに一そう御努力あらんことをお願い申し上げておきます。  最後に、厚生年金法の改正の点につきましてお尋ねをいたしておきたいと思います。今回の改正案によりますると、保険料をある程度上げてはおりますけれども、標準報酬の額を一万八千円から倍の三万六千円に上げまして、そしてそれに伴うところの年金額を増額していく、こういう方向に進んで参りまして、厚生年金が、社会保険としてのほんとうの厚生年金というふうな姿にだんだん発展してきたということは、私非常にけっこうなことだと思います。  ところで、私は一つお尋ねをいたしておきたいと思うのでありますが、五人未満の事業所に対する適用の問題でございます。私が申し上げるまでもなく、保険局長十分御承知のように、こういうような中小企業と申しますか、零細企業の従業者、労働者というものの退職後の生活というものは、やはり相当困難な問題でございます。昨年の通常国会で中小企業の退職共済制度というものができた。結局それは、五人未満の事業所に対して厚生年金保険の適用ができなかったということが、やはり一つの大きな原因であった、こういうふうに考えられるわけでございます。いやしくも社会保険としては全国民すべてのものを対象としていく、医療保険は幸いにして、保険局長厚生省の非常な努力によって、皆保険ができ上がった、こういう時代でございますので、私としては、こういうふうな厚生年金についても、やはり働く労働者全部に対して適用がある、こういうふうにしていただきたい、こう考えておるわけでございます。そういうふうな意味から申しまして、五人未満の事業所等に対して、厚生年金の適用をなぜしなかったか。この法律は、先ほど来から御質問申し上げておりますように、保険料率だとか国庫の負担だとか、そんなようなことで、内容的な改善というものがあまりない、と言っては失礼かもしれませんが、まあないわけです。やむを得なかったと思いますが、やはり私は、将来拠出制の国民年金というものもだんだん始まってくるわけでございますので、どうかこの五人未満の事業所等に対しては、労働者をつかむことも事業所をつかむことも技術的になかなか困難だというような、通り一ぺんのことじゃなしに、やはり社会保険全般というものの発展のために、五人未満も考えていただくということも必要じゃなかろうかと思います。そこで、そういう点について保険局長の御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  98. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 五人未満の事業所に働く人たちの社会保険の適用の問題につきましては、すでに御承知の通り、厚生年金保険の問題ばかりではなしに、失業保険なりあるいは健康保険なり、各方面に問題があるわけでございまして、私どもとしては、前々健康保険の適用について御議論をいただいておりますように、今日の段階から見ますと、これは同じ被用者でございますので、何とかして被用者保険の系列にしてこれを捕捉いたしたいということは、かねがね思っておるのでございまするが、さていざとなりますると、やはり検討しなければならない点が、御指摘のように、そういう労働の形態である、雇用の形態である、あるいは賃金の形態であるというようなところにあるわけでございます。それで、今日までのところでは、なかなかそれを思い切って取り入れるというわけにも参りません。ことにまた、厚生年金といたしましては、大体労働者一人当たりの給与の月額が、いわゆる全常用労働者の賃金の総額と比べても、非常に少ないというようなところでございまして、さような点からいたしましても、零細企業にこの厚生年金保険の強制適用をいたしました場合におきまして、保険料というものをどれだけ負担していけるかというようなことについても、また考えねばならぬ点があるわけでございます。それで、今日のところでは、健康保険と同様に、現行の任意加入という制度を活用して参る、こういうことで、通り一ぺんとおしかりを受けるかもしれませんが、お答えせざるを得ないのであります。将来の問題といたしましては、やはり何とかしてそういう人たちもこの被用者保険の系列において取り上げるようにいろいろ考えてみたい、たとえば同業組合というものがありますれば、そういう人たちの共済を同業組合を通じてやるということによってはたしてうまくいくかということも、これは真剣に考えてみなければならぬというように考えておる次第でありますが、その点につきましては、なおしばらく検討さしていただきたいと思います。
  99. 齋藤邦吉

    ○齋藤委員 どうかそういうふうな意味において、五人未満の事業所等についての適用の問題も十分慎重に御検討いただきたいと思います。昨年できたばかりの中小企業退職共済制度、これは、五人米満のこういうようなところに適用されるということになれば、いつ廃止してもけっこうじゃないか、こういうふうな考えすら持っておるのでございまして、そういう点について、医療だけ国民皆保険そのほかは皆保険じゃないということではまずいのであります。せっかく国民皆保険という大きな旗じるしのもとに社会保障が進んでおるわけでありますから、どうか一つ御検討いただきたいと思うわけであります。  それと同時に、希望だけ申し上げておきたいと思うのでありますが、厚生年金がこういうふうに標準報酬の最高額が一万八千円から三万六千円に上がり、従って給付額も上がっていく、こういうふうな段階になって参りますと、ここに一つ問題になって参りますのは、私的退職金制度との関係という問題が必然的に起こってくる問題だと思っております。御承知のように、社会保険が発達しております国においては、私が申し上げるまでもなく、私的退職金制度というものは大体ないのです。私的退職金制度がなくして、社会保障としてのりっぱな厚生年金でカバーしていく、これがやはり社会保障の進展の姿だと思います。しかるに不幸にして今日までの日本の厚主年金が非常に微力であるということからいたしまして、また労働者の退職後の生活をどうするかというふうな問題からいたしまして、特に戦後、私的退職金の問題が労使間の協定によって非常に高くなってきた、そういうことで経営者側に対する一つ経済的な圧力も非常に高くなっておるような状況でございますので、これは保険局長の答えを求めませんけれども、厚生年金の将来の問題としてはやはり大きな問題だと思います。そういう意味において、何らかの機会会がございますならば、厚生年金の発展とにらみ合わせて私的退職金との調整ということを御検討いただくことを希望として申し上げておきたいと思います。  それから最後にもう一点だけお尋ねいたしておきたいと思いますことは、厚生年金積立金の問題でございます。もうすでに三千億を突破しておるのではないかと思っておりますか、この積立金は資金運用部に預託されて運用されておるわけでございますが、この問題につきましては昭和二十九年の厚生年金法の全面改正の際の両院の付帯決議におきましても、何とかこれの改善をはかれ、こういうふうな要望もあったところでございますので、この運用方法についてはさらに改善を要するものがあるのではなかろうかと考えております。厚生省にも、事務当局事務当局なりのお考えを持っておられると思いますが、これは賢明なる渡邊厚生大臣のお力をもってすれば大いに改善がはかれるのではないかと思っております。大臣の御決意を承る前に、厚生省のなまの御意見でけっこうでございますが、事務当局の御意見をお持ちでございましたらお聞かせいただき、またそういうふうなことについての厚生大臣の御抱負でも承らさせていただけば非常にしあわせだと思う次第でございます。
  100. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 三千億に及ぶところの厚生年金の積立金でございますが、御承知の通り資金運用部資金として大蔵省あるいは自治庁厚生省、三者の軍用審議会において目下いろいろと論じられておる問題でありますが、これは漸次厚生省の社会福祉施設、そういうところに還元融資の方向に前進拡大をしていきたい、かように考えております。自主運営の拡大をやっていきたい、かように考えておるような次第でございます。
  101. 堀昌雄

    ○堀委員 関連して。ただいま還元融資の問題についてお話が出ておりますが、私も還元融資の点につきまして少し大臣にお伺いをいたしたいと思います。  先ほど岡本委員からもいろいろとお話が出ておりましたが、私は還元融資について、特に病院建設事業に対する問題について伺いたいと思うのであります。病院建設事業に関連をいたしまして、厚生省と日本医師会とはいろいろな面で対立をしておられましたけれども、最近幸いにして和解の状態に達しておられるように新聞報道で承っております。そこで、一体これまでそういう問題について日本医師会と厚生省が対立をしておる基本的な点はどういう点にあるというふうに厚生大臣はお考えになっておるか、ちょっとそれから承って参りたいと思います。
  102. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 厚生省は主務官庁でありまして、やはり医療行政は厚生省が主にやっておる、こういうことでありますから、今まで対立しておったというふうには私は実は考えていない。多少意見の相違ぐらいはあったかとも存ぜられますけれども、しかしそれもよく話し合えばわかるのじゃなかろうか、かように私は考えておりまして、私は厚生大臣になりまして六カ月ちょっとでありますが、厚生省に参りまして、厚生省の役人の間には、医師会会に対して何ら不満もなければ、あるいはまた対立的な感情も持ち合わせていないことを私ははっきりと知っておる次第であります。
  103. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣は過去六カ月の御在職のことでございますから、そのように御理解になっておるかもしれませんが、実は日本医師会と厚生省との問題は相当古くから続いておるわけでありまして、その中に根本的に流れておるものは、厚生省が官公立の病院あるいは社会保険、そういう大きな力をもって私的医療機関を圧迫してくるのではないか、現実に非常に圧迫されておりますけれども、そういう問題と、私的医療機関の当然の要求であるところの診療報酬についてはいま一つ厚生省の方はあまり配慮されておらぬ、こういうことが私は対立を起こす——そちらは対立と見ていらっしゃらないかもわかりませんが、日本医師会側としては問題の根本にあるというふうに考えておるわけです。そこで、さっき大臣が御就任になって以来そういう考え方はないのだということになりますれば、まずやはり私的医療機関の現状を正確に御認識になって、厚生行政というものが私的医療機関に対して不当な圧力といいますか、あるいは被害を与えるといいますか、そういうことをもたらさないようにしていただくということが、基本的な考え方として、日本医師会と申しますか、医療担当者の団体である諸君と手をつないでいくという一番眼目でなければならない、私はこのように考えておりますけれども、その点についての大臣のお考えはいかがでございましょうか。
  104. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 もちろんさように考えております。
  105. 堀昌雄

    ○堀委員 そういたしますと、私は過去においてもずっと拝見いたしておりまして、これまでの委員会でもよく議論が出ておるところでありますけれども、現在の厚生行政がどうも二本立で動いておるような感じがしてしようがない。一つは保険局が発しておる、一つは医務局か発しておる。ところがこの二頭立の馬車は一向にたずなが十分に引き締められておらない。ややもすれば保険局の独走に終始しておるというのが過去における現実の姿だと私は理解いたしております。本日特に質問申し上げたい点もその点に非常に関係があるわけでありますが、医療機関の配置の問題であります。医療機関の配置については、現在医療機関整備審議会というものが地方に置かれておりまして、これは医務局の系列に属すると思いますが、そこで医療機関の配置というものを医務局系統で考えておるその地点で、何らこれに拘束されることなく保険行政が行なわれるというようなことがありとするならば、この点について大臣はいずれをどうしようというふうにお考えになるか、ちょっと承りたい。
  106. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 これは私は見ましたところ、今保険局と医務局の対立はございません。しかし保険行政というものがいわゆる医療報酬などにつきまして、保険財政の上からとにかく保険局の権限内にあるというようなこともございまして、私が参りましてからというものは、医務局も保険局も、省議をやるときにいつでも一緒になりまして話しておりますし、医療法等の改正によりまして、やはり大都市に集中的に大病院が作られるということも、適正配置等のことも私は考えておりますし、今度おかげ様で皆様方の御協力によってできることになりましたところの医療金融公庫などにおきはしても、これはひっきょういたしますに、還元融資が大病院に流れる、あるいは起債が流れる、あるいはそうした政府の補助的なものが流れる。しかし今度はやはり大病院の先生方も、あるいは開業医の先生方も、ひとしく自民の主流医であるという建前におきまして、これは医療金融公庫等によりまして、相当立ちおくれておるところの開業医の病室あるいは機械設備その他につきまして融資の道というものが漸次拡大されていったならば、自然私はわだかまりといいますか、今までのようないきさつは解消していくんじゃなかろうか、かように考えております。
  107. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣のお考えは私大へんけっこうだと思っておりますが、もし具体的に、そういう医療機関整備審議会で、ある地域には病院の建設は現在必要がないという状態がある、ところが保険局の方はそこに病院を建てるんだという問題が出てきた場合はどうなるのでしょうか。大臣にお伺いいたします。
  108. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 便宜私から先に申し上げます。多分お尋ねは、還元融資にからんで各府県に置かれます医療機関整備審議会に関連する御質問だと思います。これは私の方といたしましては、午前中にもこの点の御質問があったわけでありますが、地方から私の方へ進達して参りました場合におきましても、地方としてはたしてこの病院がどうしても必要なのかどうかということにつきましては、ただ私の方で検討するばかりじゃなしに、一応その地方の医療機関整備審議会がございますところにおいては、そこを普通通してきてもらいたいということにいたしております。また通してきてないという場合におきましては、私の方もその辺をにらみ合わせて考えるようにいたしております。別に医療機関整備審議会がどこの系列であるとか、そこのところは私らは何ら考慮しておりません。全部ひとしく厚生大臣の所管のもとの系列でございますので、その点を十分私どもも考慮して、きめます場合の大きな参考にしたい、こういうふうに思っております。
  109. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで大臣に重ねて今の問題について伺いたいのですが、医療機関整備審議会がここに病院を置くということについては今のところは保留だ、検討してみないとはたして必要かどうかわからぬというときに、今の局長お話によりますと、そういうことになっておるときには還元融資は原則として認めないということになるんじゃないかと思うのですが、今私がちょっと申し上げた医療機関整備審議会がそういうことを答申するというのは、ある土地に相当医療機関がある、実際それ以上必要がないんじゃないかという問題がなければ、あまり保留にはならないわけですよ。そういうことで保留しておる際に、片方で、保険行政の方がさっさと前へ出るということがもしあれば、それはやはり医療機関整備審議会の答申を待ってでなければ、その保険行政の方を少したずなを締めていただくということか、私は私的医療機関との立場で当面必要なことではないかと思いますが、大臣の御見解を一つ……。     〔委員長退席田中(正)委員長代   理着席〕
  110. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 その答申の内容にもよります。審議会があるのですから、審議会を尊重するというのが民主主義の建前でございますから、答申の内容にもよりますけれども、そういうような保留問題とされておるところには、私ども別に無理して金を出す必要はない、かように考えます。
  111. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで今度は、問題を少し具体的に伺いたいわけでありますが、昭和三十四年度厚生年金保険積立金還元融資実施要領というものができております。これは政府委員の方でけっこうでありますが、こういう実施要領、これは大蔵省と自治庁、厚生省が、三者合体してお作りになったものでしょうが、実際の実施と実施要領との関係というものはどのくらいシビアなものか、ちょっと伺っておきたいと思います。
  112. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 どれくらいシビアかと申しますと、大体実施要領の線に沿って実施しております。
  113. 堀昌雄

    ○堀委員 実施要領を見ますと、病院建設事業として融資事業の要件には、「新築、増築又は改築するものであること」これが一つ。二番目は、「都道府県の医療機関整備の観点から見て、その必要があると認められるものであること。」三つ目は、「建設地は原則として起債地方公共団体の区域内にあること。」四つ目は職員宿舎に関連するものですから、直接病院の建設に関係ありませんけれども、一番の「新築、増築又は改築するものであること。」これは当然だと思うのであります。二番目は、ただいま私が議論をいたしておりますところの、「、都道府県の医療機関整備の観点から見て、その必要があると認められるものであること。」これはやはり今大臣もおっしゃったように、医療機関整備審議会のあるところにおいては、その意見を尊重するということに尽きる。三番目は、「建設地は原則として起債地方公共団体の区域内にあること。」こういうことです。「原則として」というのが、初めになかったのがカッコして入っておるのですが、この原則としてというのはどういうことか承りたいと思います。
  114. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 別に特別な意味はないと思うのでありますが、大体地方公共団体を通じて融資することが多いわけでございますから、その点から申しましても、普通そこの区域内がいいんじゃないか。しかし、だんだんこういうふうに土地が得られないということがあるとすれば、必ずしもそれを押し通すわけにはいかぬと思っております。今までのところは、原則としてその方がいいんじゃないかということでございます。
  115. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、「建設地は起債地方公共団体の区域内にあること。」というのに、「原則として」というのがついたことは、何か例外規定があるという前提に立って——もし例外規定がなければ、「建設地は起債地方公共団体の区域内にあること。」ということは、以外に出られないということですから、非常にシビアですけれども、「原則として」なら、出られるということですね。出られるというなら、例外規定が何らかの形で予測されておるものではないか、ここに「原則として」というのを入れた以上……。どうでしょうか、今おっしゃるように、土地がそこになかったという程度のことでよろしいのでしょうか。
  116. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 これは御指摘いただいても、実は私の方でふしぎに思っているぐらいです。別にそんな深い意味はない。ただ病院とかなんとかいうことになりますと、相当まとまった土地が必要だ。昔は大体その地域内でまかなえたであろう。現在でも、今までの実績から申しますと、大体何とかしてその公共団体の地域の中でまかなっているのが多いようでございます。しかし考えてみますと、それでいかない場合も今後出てくることがあるんじゃないか、ただそれだけのことであります。ただしそれがうんと飛び離れた、何時間もかかるようなところに置くというようなことはどうかという問題は、これはまた別な意味で出てくると思いますけれども、私どもの方はただいまのところ別に深い意味はそこには持たしていないので、普通の意味考えております。
  117. 堀昌雄

    ○堀委員 そこまで伺ってから、ちょっと具体的な問題で大臣お尋ねいたしたいことは、実は兵庫県の西宮市に尼崎製鉄という会社が還元融資を受けて病院を作るということになってきた。そこで昨年の六月の二十二日の兵庫県医療機関整備審議会におきまして、仮称尼鉄病院に対する厚生年金還元融資の是非が検討されました結果、厚生年金還元融資による尼鉄病院建設の是非に関する結論はこれを保留するというふうに、はっきり昨年六月二十二日に医療機関整備審議会で決定をされて保留をされている。その保留されている事情を私がちょっと調べてみますと、実はこの地域は西宮市ではありますけれども、西宮市の一番東側の旧鳴尾町というところで、西宮市に合併された地域の中に建てられることになっている。この地域には現在工事中の施設を含めまして六百七十一床も実はベッド数がある。人口は三十四年五月で五万五千五百五十八名となっておりまして、医師の数その他を見ましても、人口一万に対する病床数は百二十一床で、厚生省の医療機関整備基準は大体一万に対して五十床くらいを考えておられることからすると、現状においてすでに二倍半くらい、医師の数も大体一万名について十五名くらいの状態にあって、この地域に新たに病院を設置するということについては問題があるということで、その医療機関配置の問題点から、実は医療機関整備審議会においてはこれがはっきり保留になっておったのです。ところが、保留になっておる限りはそういうものは還元融資の対象にならないのであろうと、実はこの地域のお医者さんたちが考えておりましたところが、最近になって三十四年度の還元融資が決定をして、三十四年度一千万円、三十五年度三千万円で尼鉄病院か作られるということが地元の人たちの耳に入った。そこで調べてみると、この問題に対してこの地域のお医者さんたちが西宮市長に陳情をして、すでに西宮市にも県立の病院も市立の病院も、その他多数の病院がある。川を隔て尼崎市には関西労災病院を初めとして多数の病院がある。いずれにしてもここへこういうものができたのでは、非常に地域の開業医としては圧迫を受けることになるからということで陳情をされました結果、所在地である西宮の市長は、還元融資を西宮市から申し出るということはお断わりするということを尼崎製鉄の方に断わった。そうして断わったものだから、尼崎製鉄はその本社所在地が尼崎であるということで、尼崎市を通じて還元融資の申請をしてきた。そうするとさっき私が議論をいたしておりますところの第三点、「建設地は原則として起債地方公共団体の地域内にあること。」というこの問題で、所在地の市長が断わって、その地方自治体としてはこれ以上にその地域の私的医療機関を圧迫することは望ましくないということで断わっておるにもかかわらず、隣の市は直接影響を受けないという観念で申請を出して、これが許可をされたということになると、この実施要領の最も重要な三つの項目の中の一番の新築、増築または改築、これは問題にはどれにしたってならないのですから、二番三番の適格要件をいずれも欠いておるというふうに私は考える。そういう適格要件を欠いておるにもかかわらず、そういうことがすでに実施をされ、実施をされるとどういうことが起こるかというと、第七の融資の条件というところで、この融資の決定を受けた事業主体はすみやかに当該事業に着手しなければならないというふうになっている。片方では医療機関整備審議会の方ではそういう設立は待て、保留だといっておるのにかかわらず、還元融資を受けたがために、これは着工をして、地ならしを始めているという事実が現実に起きているということです。そうすると、今までのお話を承っておることの中で見ると、大臣のお考えにも反しており、厚生事務当局の全般的な運営方針にも反しておることが、現実にはどんどんと執行されてくる。こういうことでは、やはり大臣が最初にお考えになったような私的医療機関が不当な圧迫を受けておるということのためにいろいろと問題が紛糾しておる際に、医療機関整備審議会は保留だからと思ってお医者さんたちは安心をしておったのですね。保留になっているから、ここで結論が出るまで待っている。この実情で、まさか医療機関整備士審議会はこれを認めないだろうと思って安心しておったら、寝耳に水に還元融資がきまって、もう地ならし工事を始めた。それも現在開業しておるあるお医者さんの家のまん前に建てて、どんどん地ならしを始めたとあっては、これは私的医療機関の諸君が、再生省というのはひどいことをやるところだ。日本医師会と何か上の方では話し合いをつけておるらしいけれども、下の方ではわれわれを圧迫することばかりを考えているのではないかという、そういう考えを持つのも私はあながち無理ではないような感じがする。そこで私はここまで問題が発展をしておる中で、大臣として一体こういうふうな状態をどういうふうに処理をなさろうとするか。最初にお話しになったことの筋を通していただくならば、私はやはり医療機関整備審議会の結論が出るまでは、これは当然保留にすべき問題だろうと思う。こういうふうに考えるのでございますけれども、その点はいかがでございましょうか。
  118. 加藤威二

    ○加藤説明員 具体的な問題でございますので、最初に私から経過を御説明申し上げます。尼崎製鉄の病院は、ただいまお話しの通り工場は尼崎市にございまして、その病院建設地の、住宅の方は西宮市にある。その住宅と工場との距離は非常に近い。ただその間が尼崎市と西宮市との境界線、川か何かであるそうでございますが、川一つ越えると西宮で、その住宅は西宮にある。工場は川のそばの、だから西宮市の近くの尼崎市内にある。こういう地理的状況だと伺っておったのでございます。そういう関係でございますので、私どもといたしましてはただいまお尋ねの建設は、なるべくなら起債地方公共団体の区域内にあった方がよいのでございますが、そういう近いところであるならば一応例外としても認めていいのではないかということを考えたのでございます。  それから第二点の医療機関の整備審議会の問題でございますが、この問題につきましては、その結論がまだ出ていないということは私どもは伺っておったのでございます。従いまして私どもといたしましては兵庫県の保険保の方に連絡いたしまして、その後この審議会の意見、答申といいますか、それはどうなるのか、その見通しはどうかというところを問い合わせましたところが、大体これは認可といいますか、そういう方針に固まりそうである、そういう見通しだという返事を得ましたので、私どもといたしまては一応融資の決定をしたのであります。しかしその後聞くところによりますと、なかなか結論か出ないということを聞いておりますので、われわれといたしましては、その結論が出るまでは着工は待てという指示をいたしておる段階でございます。
  119. 堀昌雄

    ○堀委員 実は今のお話でちょっと私疑問がありますのは、なるほど、地理的条件としてはおっしゃった通りなのであります。ところがこの還元融資の実施要領は、「建設地は原則として起債地方公共団体の区域内にあること。」とあれば、当然まず、なぜ西宮市長が出さないのかという問題が私は前段としてあるべきではないか。尼崎市が出してきた。だから最初に、実施と実施要領の間はシビアかどうかということを確かめたのは、シビアなら、当然あなた方の方では、所在地の、建てるところの市長がなぜ出さないのかということを点検されてしかるべきだ。そうして点検をなされば、この地域は市の実情として見ても、ここへ医療機関を置くのはあまりにも集中的に過ぎるから市としては出せないのですということがわかれば、それでは尼崎市から出してやってもいいということには私はならないと思う。だから私がシビアかどうか、「原則として」にこだわったことは、例外的なものを処理するならば、そこにはおのずから一つのルールがあってしかるべきです。私は何もこの問題について、尻崎製鉄が病院を作っちゃいかぬということを言っているのではないのですよ。よろしゅうございますか。尼崎製鉄の勤務者が自分たちの病院で十分な治療を受けることに私は反対はしない。反対はしないけれども、その病院を置く位置についてはおのずから他との関連において考えるべきじゃないか。厚生行政一般として考えるならば、ただいま大臣がおっしゃった考え方が私は正しいと考えておる。だから私はあらかじめ問題点を原則論として一つ伺って、そうしてこうやってきたら二つ問題が出てきた。その一つは、あなたの方は医療機関整備審議会が保留にしておって、そこで保険課に一つ話を聞いて、一体どういう方向に行くのかと聞いたら、それは認可の方向に行くという返事を得た。そこでこの医療機関整備審議会の関係者の名簿を見ると、どういうことになっておるかを読み上げると、兵庫県医師会長、兵庫県医師会副会長、兵庫県歯科医師会長、兵庫県薬剤師協会長、兵庫県医師会副会長、これらはみな医療関係者、学識経験者は、兵庫県議会議員として金沢万次郎、八木貫吾、それから兵庫県社会保障審議会委員、国立兵庫療養所長、済生会兵庫県病院長、兵庫県病院協会長、日本医療法人協会兵庫県支部長、兵庫県社会保障審議会長、神戸弁護士会台所属弁護士、診療を受ける立場にあるものというのは、日本労働組合総同盟兵庫県連合会、兵庫県町村会、兵庫県国民健康保険団体連合会理事長、健康保険組合連合会兵庫支部長、兵庫県市長会龍野市長、兵庫県民生委員連合会副会長、行政機関として、兵庫県衛生部長、兵庫県民生部長、神戸市衛生局長、こうなっておる。この顔ぶれで、今のそういう地域の意思が一致して強い反対をしておる状態の中で、これがまとまる方向にあるのだというようなことを答申したとするならば、一体保険課長の責任はどうなるのですか。それが二月に行なわれる医療機関整備審議会でもし、まだ決定しない、不適だというような結論が出たときには、その課長の責任はどうなるのですか。あなた方の方では信頼してやったというけれども、それが出るか出ないかわからないものについてやるということは、私は実施要領がシビアにやられていない証拠だと思いますが、それはどうなんですか。一つ局長の方からお答え願いたい。
  120. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 尼町製鉄の病院でございますが、工場自体が尼崎市にある。その工場自体に融資した場合、償還とかなんとかいうと、むしろこの場合は、どちらかというと西宮市が取り上げるより尼崎市として取り上げた方が本来ならすらっとした形になると私は思います。そこでたまたま尼崎市のあれでありますならば、尼崎市の市内に極力探すのが筋でございましょう。しかし御承知の通り尼崎市というのは非常に人口稠密なところで、おそらくそういう場所がない。たまたま自分たちの従業員の住宅か川の向こうの地にあったということでそういう運びになったのでありまして、こういうことは先ほど答弁申し上げたように、私はやはり今後とも門々あることと思います。私はそれをけしからぬということを言っておったのでは、これからはどんな——やはりそのときの実態を考えて、この際尼崎がそういうところに作りたいといってきたこと自体は、私は是認すべきではないかと考えております。  それから医療機関整備審議会の方は保留になったということでございまして、それは保留でけっこうなんです。それはそれで、ただ私どもの方では、大体三十四年の還元融資のワクというものをある時期が来ますとそろそろ割り振らねばならぬ。その場合に、これはもう保留になったのだから全然やめるのだということも一つの態度だと思います。ただ保留ということが否決されているならともかくでございますけれども、その辺のところがまだもやもやしておるということでありますと、私どもの方もいいとなったならばなるべくことし、来年は来年でまた要望がたくさん来ますから、なるべくさせてやりたいという気もございますので、一応ワクとしてはそういうところはきめるべきだ。しかしそれはまあ見通しのことでございます。これは保険課長を責めてもしようがないと思います。見通しはあくまで見通しにすぎませんので、やはり医療機関整備審議会等でいいという結論が出ません限りは、相変わらずそういうもやもやした状態でありますから、私どもの方としてはそれ以上は手は出せない、また出したくないということで、先ほど課長が言ったように、工事その他は私の方ではストップさしているわけであります。従って県の医療機関整備審議会において、いろいろ学識経験者の方がそろっておられるようですから、その人たちがさらにこれを御審議になってどういう結論を出すか、今軽々に私どもが予測して、あの場合、この場合ということを申し上げるのは差し控えるべきで、それが出るようでございますればそれによって私どもの方は検討して参りたい。この点はおまかせいただきたいと思います。
  121. 堀昌雄

    ○堀委員 済んだことについて今さらとやかく言ってもしようがありません。今後の問題として、考え方としては、大臣がさっきお答えになったそういうお考えの上で処理していただきたいということが第一点。  医療機関整備審議会が最近あるようですが、さらに保留にするということが起きるかもわかりませんし、だめだというかもしれないし、よろしいというかもしれない、この三つしかないと思いますが、だめだと言えばこれは取り消されることになるのか、保留となったらこのままでいくのか、そこらのところをちょっと伺っておきたい。ということは、今局長は、ことしの融資をやっといてやった方がいいということですが、これは継年度で、ことし一千万円で、来年三千万円出ているということですね。ですから私は、来年三千万円か出るぐらいなら、再来年が一千万円になったところでいけることだと思う。さっき大臣もおっしゃったように、皆さんが話し合いの中で理解に到達できるような民主的な運営を末端においてやっていただかないところに、私はこれまでの厚生行政に対する医療担当者の反発が必要以上に起きざるを得ない実情があると考えておりますから、その点については十分お考えを願いたいということと、もう一つ、これは大臣に伺いたいのでございますが、今の還元融資について、病院ができます。これはさっきも岡本委員が御質問になっておりましたけれども、全国的に相当大企業が病院を作っておりますが、大体みな都市に作る。還元融資でできている病院というのはほとんど都市にできる。現在都市はすでにそういうことで相当に医療機関の競争が激しくて、私どもはそれ以上に都市に要らないと思うぐらいなのに実は都市にどんどん集中している。これが一種の病院で、自分の会社の従業員だけを扱うということならば病院を作ったからといってそんなに不当な競争を引き起こさないのですが、この還元融資のルールにもありますけれども、その被保険者家族を診療して、差しつかえない限りは一般の診療をしていいのだ、こういうことになってきます。そうすると実際上はもちろんその病院固有のものをやりましょうが、なかなか実は病院固有のものの患者だけで成り立つような病院は私はないと思います。それは何万人も従業員がおりますところの富士製鉄とかあるいは八幡のようなところは別ですけれども、従業員が千人足らずというところで、その従業員がある一個所に全部家族とも住んでいるというなら例外でありますが、現在の都会地の工場の実情は、従業員が千人いてもその住所は非常にばらばらで、会社の病院に来ることは、多少の恩典があってもなかなか困難だというのが実情であります。さっきのお話のように、なるほど西宮市には尼崎製鉄の社宅がありますけれども、この社宅に従業員全部が住んでいるわけではない。尼崎にも住宅があって、ここにも住んでいる。神戸にも住んでいる。あっちこっちと全部その周辺に住んでいるわけですから、この病院が還元融資を受けたために金を返していかなければならないということになると、独立採算ということで、その地域の私的診療機関と過当競争を起こす危険があります。それでこの問題はどうなるかということは別としまして、こういう病院は還元融資の一種の病院として、もちろんその地域の医療機関の状態が非常に足らないところはよろしいけれども、ある程度以上稠密なところについては、これはもう一種病院以外は認めないというような考え方をお立ていただくならば、これは不当な競争を引き起こすこともないのですね。この点については、大臣今後いかにお考えになっておるか、一つ……。
  122. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 御説の通りでございますが、そうばかりとも限らない面もあるかもしれませんけれども、なるべくそういうような趣旨においてわれわれは行政措置を講じていきたいと考えております。
  123. 堀昌雄

    ○堀委員 大体大臣の方でもそういうことでお考えをいただいておりますから、これ以上はこの問題は申し上げませんけれども、最後に一つ、これに関連して、公的病院と私的診療所との関係でございます。どうも公的病院か——これはまあ私どもの地域をとりますと、関西共済病院とかいろいろありますけれども、公的病院ができまして、その公的病院が、とかく独立採算制を強要されるために、非常に不当な競争か起こる例がある。私は非常にふしぎでしようがないのは、これは厚生大臣の御所管じゃないかもしれませんが、労災病院に産科、婦人科の部が新設をされたということが最近起こった。労災で産科、婦人科の疾病があるかどうかという点が私は実は非常に疑問なんですが、労災病院に産科、婦人科か新設をされた。そうすると、それは労災の患者を見るのではなくて純粋にその地域の一般の患者を見るために産婦人科というものができる。ところが、労災病院といえども病院だから、置いたって別に差しつがえないだろうという議論が次に出てくるわけですね。だから、労災病院ができるなら、これは労災保険の患者を主体として扱うところだろうと私どもは理解しておったところが、何のそれはつけたりで、病院の維持のためには、外来の診療であれ何であれ、積極的にやるというような事実が現在出ておるわけです。そこで公的病院と私的なものとの関連ですね。特に公的で、多くの費用やあるいはその公共的な費用が入っておるものは、やはり私はそういうものでなければ見られないようなものに重点が置かれるべきであって、もうどこでもやれるものまでもそこで十ぱ一からげにやるということでは、私はどうも今の医療担当者と厚生省とのいろいろな問題の中に、新鮮な空気を持ち込むわけにいかないじゃないか。ですから皆さん方の方は、厚生行政の指導をなさるならば、それが、所管病院が労働省に嘱しておるのかあるいはその他に属しておるかは別個としても、厚生行政として見るならば、厚生省の指導が行なわれてしかるべきことだと思いますので、今後一つ大臣がせっかく医療担当者と仲よくやっていきたいというお考えの上に立っておられるならば、この公的病院の診療のあり方について、いま一つ積極的な指導をしていただくことが、私は非常に望ましいのじゃないか、こういうふうに考えておりますけれども一つ大臣の御所見を伺いたいと思います。
  124. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 なるほどしばしば聞く御意見でございます。それらの問題につきましても、私の省内におきましてもいろいろ話し合っておりまするが、指導面において、あるいは関係各省とも十分協議連絡をした上で、特に医療行政については、厚生省としては万全の措置を講じていきたい、かように存じております。
  125. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 明二日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十五分散会