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1960-02-17 第34回国会 衆議院 社会労働委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年二月十七日(水曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 永山 忠則君    理事 大石 武一君 理事 大坪 保雄君    理事 田中 正巳君 理事 八田 貞義君    理事 滝井 義高君 理事 八木 一男君    理事 堤 ツルヨ君       池田 清志君    亀山 孝一君       藏内 修治君    柳谷清三郎君       山下 春江君    亘  四郎君       赤松  勇君    伊藤よし子君       大原  亨君    小林  進君       五島 虎雄君    本島百合子君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 渡邊 良夫君         労 働 大 臣 松野 頼三君  出席政府委員         厚生事務官         (大臣官房長) 森本  潔君         厚生事務官         (保険局長)  太宰 博邦君         厚生事務官         (年金局長)  小山進次郎君         労働事務官         (大臣官房長) 三治 重信君         労働事務官         (労政局長)  亀井  光君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      澁谷 直藏君         労働事務官         (婦人少年局         長)      谷野 せつ君         労働事務官         (職業安定局         長)      堀  秀夫君  委員外出席者         厚 生 技 官         (保険局医療課         長)      館林 宣夫君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 二月十六日  戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正に関す  る請願大橋武夫紹介)(第二〇五号)  同(福井順一紹介)(第三〇五号)  同(相川勝六紹介)(第三五三号)  同(木村俊夫紹介)(第四三三号)  社会福祉関係予算増額に関する請願西村英一  君紹介)(第二五〇号)  一般職種別賃金増額に関する請願吉川久衛  君紹介)(第三〇三号)  けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護  法の一部改正に関する請願園田直紹介)(  第三〇四号)  同(五島虎雄紹介)(第四三六号)  戦傷病者のための単独法制定に関する請願(相  川勝六君紹介)(第三五四号)  同(金丸信紹介)(第三五五号)  同(山口六郎次紹介)(第三五六号)  同(木村俊夫紹介)(第四三二号)  社会福祉事業法の施行に関する請願菊川君子  君紹介)(第三五七号)  国民健康保険療養給付率引上げに関する請願(  菊川君子紹介)(第三五八号)  日雇労働者健康保険法の改憲に関する請願(菊  川君子紹介)(第三五九号)  同(北條秀一紹介)(第三六〇号)  同(角屋堅次郎紹介)(第四三四号)  市町村、労働組合等の行う職業訓練に対する経  費負担に関する請願菊川君子紹介)(第三  六一号)  同(北條秀一紹介)(第三六二号)  同(角屋堅次郎紹介)(第四三五号)  昭和三十五年度国家福祉関係予算確保に関する  請願相川勝六紹介)(第四三〇号)  戦傷病者医療制度確立に関する請願木村俊  夫君紹介)(第四三一号)  業務外災害によるせき髄損傷患者援護に関す  る請願五島虎雄紹介)(第四三七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件  厚生関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 永山忠則

    永山委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。質疑の通告があります。これを許します。小林進君。
  3. 小林進

    小林(進)委員 労働大臣にお尋ね申し上げるのでございまするが、先般「第三十四通常国会が開かれるにあたり、」というまくら言葉で、大臣労働行政の運営についての御所信を承わったのでございます。大臣が御就任になりましてから一回まとまった御所信を承わりたいとかねがね非常に希望いたしておりましたが、その機会がなくて、ようやく基本的な大臣のお考えをお伺いする機会を得たわけでございまするが、率直に申し上げまして実は私は非常に落胆をいたしました。もしこの御所信大臣自身がお認めになった御演説であれば、私は大臣労働行政に対する考え方というものを非常に疑わざるを得ないのでありまするし、これがだれか大臣の側近の官僚が書いた所信書をそのまま大臣がお読みになったものとすれば、その官僚労働行政高級官僚としては資格がない。大臣、そういう者は左遷されるか、少くともこういう重要な所信表明の執筆をさせる資格のない者として、再教育をしていただかなければならないと思う。私は決して行政権を干犯をしたり、何も役人を感情的に締め上げようなどというようなさもしい気持で申し上げているのではないのでございまして、私は言葉は非常にやわらかいのですけれども、腹の中では泣いているのであります。率直に申し上げますと、私はこの所信をずいぶん読ましていただいた、十数回読ましていただいた。しかし十数回拝見をいたしましても、この中にほんとうに労働省らしい感覚一つも出ていない。第一には、労働行政の第一の目的経済発展に積極的に貢献することでありますと言って、ずっと読んで参りますと、これは通産大臣大蔵大臣経済大臣所信表明ですよ、決して労働大臣所信表明じゃない。労働行政というものは何か、労働行政というものは経済発展に積極的に貢献するためにあるのだ、こういうものの考え方である。それから長期計画のための雇用拡大ということが盛んに言われていますが、雇用拡大は何だ。これは長期経済計画のために雇用拡大をする必要がある、こういう見出しです。だんだんまた見てくると、雇用質的向上という言葉があるが、雇用質的向上は何のためにやるのかといったら、それは労働者のためじゃないのだ、急速な経済拡大科学技術の進展のために雇用質的向上が必要だ。みんな経済中心です。労働者のために災害防止をおやりになるとおっしゃる。まことにありがたいと思って文章を読んでいくと、その災害防止労働者のためじゃない、企業繁栄のため、資本家企業繁栄のために災害防止が必要なんだ、こういうふうに大臣所信は書いてあるじゃないですか。あなたはこれを持っていましょう。これは全部労働行政というものが、いわゆる経営者資本家日本産業発展経済のためにこそ必要だという、この文章はそれで終始一貫している。こういうものの考え方は、通産大臣大蔵大臣経済企画庁長官くらいのところでよろしいのであって労働大臣からこういう所信をお聞きするとは、私は今まで予想だにしなかった。大臣はお若くいらっしゃいまするし、頭脳も明晰でいらっしゃいまするし、春秋に富んでいらっしゃる。新しい労働感覚を持って、労働者福利厚生あるいは労働者職業安定のために、労働大臣の重責をになっていただいているものと、実は私は非常に好意的に考えておりましたけれども、この所信を拝見してあぜんとしたのであります。  そういうことで、はなはだどうも大臣の前でなんでありまするけれども、私は、私自身も勉強が足りないのかと思いまして、一体労働省というものは何のためにあるのか、労働省設置法というものを研究させていただきました。労働省組織令なるものも、私は一生懸命拝見させていただきました。しかし労働省設置法には、そういう経済企業発展のために、産業助長のために労働省というものがあるのだということは書いてありません。労働省設置法の第三条に「労働者福祉職業確保とを図り、」これが労働省労働省として設置されている任務であり、目的であるというふうに私は解釈いたしまするが、第三条には(労働省任務)と書いてありますね。そして「労働省は、労働者福祉職業確保とを図り、」という、その任務を遂行することによって、「もって経済興隆国民生活の安定とに寄与する」、こういうふうに書いてあるのでありまして、やはり労働省は通産省や大蔵省や農林省や、そういう経済庁とは違っているところが、この法律には明らかになっている。決して経済興隆だとか国民生活の安定というものが、労働省設置目的でも任務でもない。目的任務とは、労働者福祉です。労働者職業確保です。この任務を遂行せられることによって、その成果を上げることによって、経済興隆国民生活の安定に寄与する。ところがこの所信を見ますると、全く逆になっている。そういうような考え方労働行政を進めている限りは、私は労働行政に関する限り、日本はどうしても近代国家の様相を備えることはできない。非常に感覚が古いという気持を抱いたのでありまするが、大臣一つこの私の質問に対する偽らざる御心境をお聞かせ願いたいのであります。いや、あれは気のきかない官僚がいみじくも大臣意思に反して、こういうつまらない所信を書いて申しわけないから、そういうものは私がしかりおくというふうにお答え願えるならば、まことにけっこうでございます。どうか一つ適当にお気持のままお答え願いたいと思います。
  4. 松野頼三

    松野国務大臣 この所信表明は、御承知のごとく私の所信表明ですから、私の意思に沿って文章を起案させたわけであります。従ってこれは私の所信でございまして、事務官僚文章は書きましても、内容としては私の責任でございます。  なお小林委員のおっしゃるように、労働省設置法はその通りで、私も労働大臣になってからその気持労働行政をやっております。しかし今回書いたのは、今日の経済状況の変化に対処しての話でありまして年がら年じゅう、一生涯私はこの思想でいるという意味ではございません。ちょうど本年は——三十四年、三十五年という時期は、非常に日本経済的大きな発展と申しますか、大きな変革のあるとき、この際、労働省労働者の質と労働条件向上をはかるべき年だという感覚が、この言葉の中に入っているわけで、いたずらに産業政策ばかり私は議論したわけではございません。たまたま三十四年の後半期、三十五年という時期は、経済発展の目ざましいときだ。ただ経済発展に指をくわえておってはいけない。この経済発展の大きなにない手が労働者でなければならない。逆に言うなら、経済の基礎だという感覚を私は盛ったわけであります。もちろん、これは労働省設置法に基づく労働大臣所信でありますから、言葉は、あるいは経済——経済という言葉が書いてありますが、根元はどこだといえば、労働者福祉労働条件向上と、そうして労働者地位向上という感覚から経済をながめると、日本経済はこういう状況だから、これに対処して労働者働き場所あるいは本年の任務というものは、こういうところから進んで労働条件向上をはかるべきだ。私が日本労働問題で一番心配しましたのは、少なくとも学校を終えて、あるいはある年令に達して、そうして日本生産をしようという意欲に燃えている人たち雇用の場がないというほどみじめなことはないのであります。従ってその次の労働条件というのは、あるいは順序をつけるならば、まず働く場所と、熱意のある若い青年諸君たちに職を与えたい、これが私の就任以来の念願であります。皆さん方国民の中に溶け込んでおられる代表者の方ばかりで、おそらく何十という履歴書をお持ちにならぬ方はないだろうと思います。国民の一番気の毒なのは、熱意を持っておりながら働く場所がない者、これに場所を与えること、これが政府労働大臣としての第一の任務であります。そうしてその中において、今度は質の向上をはかっていくべきだ。これが労働省のみならず、政治の中心じゃないかとさえ私は考えたわけであります。そのとき経済がたまたま発展しておる。この際労働条件というものよりも、まず雇用拡大を期していきたい、そうして労働条件向上をはかっていきたい。それにはやはり経済拡大生産性向上がないと雇用状況拡大はございません。生産性向上以上に賃金上昇をねらっても、これはなかなか無理なことであります。やはり生産性向上につれて賃金上昇雇用拡大というものをはかることが一番安定した経済事情だという感覚から書いたので、言葉だけおとりになれば、小林委員の御指摘のように、あるいは労働省的感覚が薄いと御指摘になるかもしれません。しかし私の思想はそういうものをのみ込んだ上で、最近の経済事情変革につれて労働者及び労働省というものの方向を示せば一番いいのじゃないか、この時期をねらったわけであります。基本的に言えば、労働省設置法による労働者福祉、これは申すまでもないことだということを実は根に持ちながら感覚を書いた。この文面からごらんになれば経済が多過ぎる、これはおっしゃる通りであります。しかしそれはわかり切ったことだ、その上で今日の社会情勢労働事情経済事情発展が大きく影響する。この際、労働者というものがこの経済発展により以上大きな役割を果たして、地位向上と、不景気のときにはいろいろな問題もありましょうが、こういうときに、私は雇用拡大地位向上をねらっていきたいというのが実は私の偽らざる気持であります。  第二番目には、いくらそういう政策をしましても、なおかつ日の当たらない場所にある家内労働者、あるいは今回提案を予定しております身体障害者という方は、実は今までの統計上に入らない方、あるいは賃金としてまことにみじめな方で、これは今日の労働行政に見のがされた大きな層でございます。それで今回は身体障害によって非常にお困りの方に対する雇用促進法というものを検討し、今まで最低賃金法の中にもまだ触れなかった家内労働というものに今回触れていきたい。この二つは、できればこの国会中に適当な措置をして基本的なものを作っていきたいということを実は第二番目に書いたわけであります。従って第一項をごらんになれば、御指摘のごとくおしかりをいただきましょうが、第二項をごらんいただくと、一、二合わせるとどうやら私のねらっているところもおわかりいただけるだろう、こう考えております。
  5. 小林進

    小林(進)委員 今の大臣の御答弁をお聞きいたしまして、雇用拡大、質の向上のために経済発展に積極的に協力したいのである、そういう趣旨だというふうなお話がございましたが、そういうお言葉の上では、聞いておりますと、なるほど私どもは了解できるのでありますが、この文章それ自体からは、何としても今の大臣の御答弁のような感覚は出て参りません。私自身だけの牽強付会な質問ではいけないものでありますから、私はこれをそのままほかの委員諸君にもみな見せて、どう思っているかと聞くと、みなそう言っております。なおかつ私は外部人々にもこの所信を見せました。同時に外部だけじゃない。私はあなたの前任の大臣所信表明文章とも比較対照してみました。これはやはり前例にもないのです。実に変わっている。これ以上言いますと、どこかまた被害者が出てくると悪いから言いませんが、いかにしてもこういう所信文章前例にもないのです。これは私どものように言葉を追及して真意をお尋ねできる機会に恵まれている者はいいけれども、これがそのまま流れていったら大へんです。そういうことですから、どうか一つ将来とも所信表明をなさるときには、あまり大臣の今の御説明とかけ離れたような文章にならないように、世間誤解を招くことのないように、大臣は十分御注意いただきたいと思います。  私がお尋ねしない前に、二点を柱としてとおっしゃる、その第二の問題について大臣は今お触れになりました。家内労働とか身体障害者のために特別法規を設けたいというその気持、これは第二の柱だとおっしゃいますけれども、私はこれを読みまして、実は奇異な感じに打たれた。というのは、私は決してあげ足取りではございませんが、「経済発展大勢に取り残された人々にあたたかい援護の手を差し伸べることであり」という、この「援護の手を差し伸べる」という言葉が、私はどうしても納得できません。労働省援護庁じゃないというのが私の考えでございます。援護庁じゃない上に、憲法の二十七条には、「すべて国民は、勤労権利を有し、義務を負ふ。賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。」というふうに書かれておりまして、すべて国民は働く権利義務を持っている。決してお情けを受けて、援護の手を差し伸べてもらって、お恵みを受けて働かしてもらうなどという、そういう立場労働者はあるわけじゃないのであります。自己責任によらずして社会の罪、公共その他の原因によってもしその人が職業を失うというなら、むしろ身体障害者であるならば、その人は当然社会国家に対して勤労権利を要求する基本的な権利を持っているし、また政府はそれに基づいて当然職業を与える義務を持っているのです。ところがこれによりますと、まるで援護庁です。お情けをもって、慈恵的、恩恵的に職業を与えてやる、ここではこういう書き方、説明の仕方なんです。これは言葉の問題じゃなくて、やはり根底に流れる思想というものが、どうしても私は近代的な労働行政を担当せられる感覚じゃないと思うんだ。これはまことに重大問題です。そういうことでございまするから、労働大臣は、労働省がいつ一体援護庁になったのか、この点を一つお聞かせを願いたいと思うのでございます。
  6. 松野頼三

    松野国務大臣 憲法論はいろいろございますが、御承知のごとく、おっしゃる通り憲法の規定もございますように、雇用というのは雇う方の権利と雇われる方の権利というものは五分々々だ。従って雇用される権利もあれば雇用者が雇う権利もあるというのが憲法の精神で、雇用自由論の原則になるわけです。しかし、そういう自由な立場であるならば、それは五体すべてそろっておる方とそうじゃない方とは、おのずから社会的感覚によって——憲法論じゃありません。憲法論では、国民としては平等であります。しかし、その人々生活事情によってはやはりそこに大きな差がある。その差のためにこの権利の主張もできなければ、あるいは権利の享有もできない。そのためにはやはりそこに何らかの継ぎ台をするとか、お守りするとか、お助けするという政策が生まれてきてもいいんじゃなかろうかというので、援護という言葉は、今申しましたようにお助けして、お守りするという意味でありまして、ただ援護庁援護というよりも、そういう事情の方をお助けしてお守りするという意味援護という言葉を使いまして、この言葉語源は百科辞典をお引きになればいろいろなことが出て参りましょう。そういう援護庁援護といいますか、いわゆる援護という言葉を上から与えるという意味ではなしに、お助けしてお守りするという意味で、やはりあたたかい労働行政としてはそれでいいのじゃなかろうかということで援護という言葉——援護という言葉は私自身気になりました。援護庁援護という言葉と非常に似ているから気になったけれども、お助けしてお守りするという意味援護——ほかにお助けするという言葉を書いてもいいのですけれども、何だか助けるという言葉があっては、いろいろな意味においてかえって御迷惑をかけるようなことになってもいけないし、援護という言葉はそういう意味で、政府としてはお助けしてお守りする政策として、今回身体障害者関係のものを出したい、こういうわけでありますから、言葉語源はいろいろありましょう、私も気になった。援護という言葉厚生省言葉で、労働省言葉として使うのはどうかと思ったのですが、よく調べてみますと、必ずしもそういう一辺倒的なものでなくてもいいのだ。援護という言葉をたまたま使いましたが、これは社労委員会皆さんには耳ざわりの言葉、これは労働省言葉じゃない、私もそういう気がいたしました。しかし今回の場合は、家内労働とか身体障害者考えると、やはり何となしにそういう感覚になってくるのです。やはり身体障害者のことも——どっちかというと、身体障害者福祉法厚生省の所管です。そこに職業問題を加味するのですから、ある場合には厚生省と同じ法律を使わなければなりません。身体障害者福祉法の適用を実は今回の職業の方の雇用促進法の中には書いてあるわけでありますが、同じ法律である場合は生活援護となり、ある場合は職業援護となるという意味もありますので、私もこの言葉をいろいろ研究しましたが、なるほど厚生省と似た言葉になりますけれども内容を見ると身体障害者福祉法、本来は身体障害者雇用促進法、しかもその基本福祉法に当てはまる方を生活援護と、私の方は職業援護というふうな言葉になるかと私は考えたわけであります。いろいろ字句上においては御疑問もございましょう。しかし思想としては、そういう思想が流れて書いたので、私は文章がまずいものですから、誤解を招くかもしれませんが、一つ一つ解明してみれば、この一つ一つが御納得いただけるのではなかろうか、こういうふうに考えます。
  7. 小林進

    小林(進)委員 大臣は、身体障害者のためにあたたかく助けてお守りをするという、そういう意味で書いたのだというお言葉でございますが、この第二の「経済発展大勢に取り残された人々」という言葉の中には、身体障害者だけというふうには限定されておりません。これはいわゆる日の当たらない産業だとか、あるいは斜陽産業等のために、やはり標準賃金その他をもらえない、そういう待遇を与えられない人々は全部この中に入っておると思うのでございまして、この文章から受ける感じは、これはやはり社会の罪あるいは世の中の罪、そういう客観的な情勢のために取り残された人々が全部含まれると私は思う。自己が勤勉に労働に従事しながらも、なおかつ社会から残されていったそういう人々、こういう脱落者没落者か何かにお恵みをたれるというふうな、どうもそういう言葉をもって表現しておる。このことはやはり労働に対する大きな侮辱の意味思想が含まれておる、こういうふうに解釈をせざるを得ないわけであります。よしそれが身体障害者あるいは内職者家内労働者だけであったとしても、どうも援護という言葉の裏には、労働というものを軽視したりあるいは労働というものの価値を認めない、まだ封建的な思想の残滓を見ざるを得ないのでありますけれども、しかし大臣はそういう気持ではないとおっしゃるのでありますから、まさかこの言葉の問題で三時間も五時間も議論したところで話が進みませんが、労働行政や人に職業勤労機会を与える言葉として、私はやはりこういうお言葉は慎重に御使用を願いたいということを御希望を申し上げざるを得ないのであります。  そう申し上げておきまして、私は次に論旨を進めていきたいと思うのでありますが、なお私はこの所信表明をお聞きして、実は大臣としては、確かに重要な項目を羅列をせられたというふうにお考えになっているかもしれませんが、私ども国民の側からすれば、こういう限られた所信の中ではもっと重点的に考えてお聞かせを願いたいという問題がある。今世間の人は普通、通常国会安保国会と申しております。なお予算委員会等にも安保条約とあわせて経済自由化の問題が叫ばれておる。それで、働いておる労働者一般人々は、この安保条約安保国会といわれて毎日論争せられている、この安保問題が一体働いているわれわれ労働者にどういう影響がくるのか。経済自由化世界のあらしになって吹きまくっている。予算委員会、本会議等でも、経済自由化というものは世界の思潮上これはやむを得ないといわれるならば、これは一体働いているわれわれ労働者にどういうふうに影響してくるか。もし三十四年度、三十五年度の議題をとらえるとするならば、労働行政の面から、これが一番大きな問題ではないか。雇用拡大とおっしゃる、あるいは質の向上とおっしゃる問題に合わせて、一番重要じゃないか。ところがこの所信表明を拝見いたしますと、経済拡大ということをいっているけれども、そういうわれわれ国民の側からお尋ねしたいという問題はどうも見当たらない。最後に参りましてほんの一言ばかりございました。ちょっとお待ち下さい。——ともかく経済自由化の問題は、何かほんのちょっと言ってあるだけで、まあ書いてないからなおさらこれは残念の至りでございますが、この安保条約が締結をされまして、ために労働者は大企業の合理化という名のもとに一つ労働強化が行なわれるのじゃないか、あるいはまた首切りが行なわれるのじゃないか、低賃金政策が強行せられるのではないか、というふうな一つの脅怖におそわれておるのでございます。そこへもってきて岸総理大臣が一月十九日に、ああやってアメリカへ行かれて、ハーター国務長官と判こを押されて日米安保条約を締結せられて、そして共同声明をアイクと一緒に発表をせられた。その共同声明の中にやはり経済の協力というものをうたっておられて、だんだん両国の貿易の障害をなしているようなものを除去するというふうに言っておられるのであります。一月十九日ワシントンにおいて日米共同声明を発せられたが、その中にはこういうことをいっているのです。「さらに勝手気ままなかつ不必要な貿易上の新たな制限を防止することにより、また現存する障害を除去するため積極的措置をとることにより、世界貿易を継続的に、かつ秩序だって発展させることは両国の福祉発展に不可欠であるとの信念を再確認した。」こういうようなことをお約束をされてきて、いよいよ国内では自由経済、国際的には自由貿易、自由為替というふうに切り、日米の経済をさらにフランクなものにする、開放的なものにする、こういう約束をして来られた。それがちゃんと三十五年度のわが日本国家財政の面にももはや現われてきておるのであります。これが一体労働者の上にどんな工合にはね返ってくるのか。これはわれわれにとって重大な問題でありますけれども、悲しむべし大臣所信の中には一言もこれに触れてない。一つ明快な御所信を承りたいと存ずる次第であります。
  8. 松野頼三

    松野国務大臣 ちょうどこの四ページのところに「また最近の貿易自由化に伴い労働者にそのしわ寄せが来ることを防ぐためにも、中小企業における労働条件向上をはかることはきわめて肝要であります。このような状況からいたしまして、労働基準法の適正な監督を通じて重点的、段階的に法の趣旨の実班に努めるほか、最低賃金制、退職金共済制の普及、失業保険の小規模事業所に対する適用の拡大等の施策により、中小企業労働者福祉を増進したいと思っております。」といい言葉が実は出ておりまして、相当長く書いたわけであります。その趣旨とするところは、今おっしゃるように、貿易及び貿易の為替の自由化というのは、日本経済的に言うならば大きな問題だと思います。また国会でも議論になることは当然であります。同時に私は、経済の中で労働者が占める地位というものが非常に大きい、こう考えると、労働政策及び労働の問題には非常に大きな影響があると私は今でも考えております。従ってつい先般の経済閣僚懇談会におきましても、貿易の場合は常にその問題を提議しております、労働者に対する影響を忘れて貿易というものは成り立たない。また日本労働力くらい世界に誇り得るものはない。質において量において精神において、私は世界に誇り得るものだと思います。質においては相当な労働力がある。また量においてもこれは世界に負けない。しかも心においては、勤労意欲というものは世界中に私は誇り得るものだ。従って労働力に関しては、量、質、精神、いかなる国にも負けないと私は思います。  日本経済がなぜこういうふうに諸外国から大きな重圧を受けるかといえば、やはり資源の問題だと思う。資源が日本に少ないために、常に輸入に仰がなければならない。また輸入するために、今度は常に輸出のために相当苦労しなければならない、これが私は日本経済の置かれた一番大きなハンディキャップだと考えます。しかしこれを乗り越えていかなければ日本経済発展はできない、またこれだけの大きな労働力の活用はできないという観点から立ちますと、今回の貿易自由化というものは、大体日本は原料輸入が多い。すでにこの二年間数百品目の自由化をいたしました。それは大体において原料品であります。多少製品はやっております。製品といえばレンズとかある程度機械とか、将来はおそらく近いうちにはテレビという問題も出て参りましょう。そういう製品も多少自由化の方向に進んでおりますが、大体において日本の方が製品でまさっておるものばかりであります。写真機など自由化いたしましても、日本の写真機の方がより優秀だといえば、自由化などというものにはほとんど影響されない。そういうふうに製品は少ないと思いますが、ほとんどのものは原料であります。また将来ともにこの傾向は変わらないと思う。原料を輸入した結果から見ますと、この三年間やはり経済活動が活発になっております。原料の輸入がふえるということは、日本生産がふえる。消費の方はいろいろ議論がありましょう。しかしとにかくそういう結果が出ておりますので、私の方としては、労働省としては、貿易自由化の過去を考えてみると、必ずしも今直ちに悪い影響はございません。将来になると今度はまた問題が起きて参ります。一番大きな問題は、来年では綿花、羊毛というものがあります。今の予定で参りますと、三十六年になっておりますが、こういうことになったときには、やはりある程度私たちは警戒を要する問題が出てきはせぬか。第一におっしゃるように、基準法違反によって、相当労働者を圧迫するという心配も出て参ります。しかし最近、実はまだ自由化されない今日でも中小の繊維業者においては、相当労働基準法違反の傾向を私たちは見のがすわけに参りません。まだ自由化されておりませんが、それにしても今日ある程度やはり生産競争の場面を忘れるわけに参りません。またもう一つ逆に言うと、繊維業は生産競争のあまり、優秀な女工さんの引き抜き競争が今日始まっております。引き抜きということは、雇用条件からいうとプラスであります。引き抜く以上はいい条件でなければ引き抜けない。従ってある繊維工場では、三百名、四百名というものが、集団的引き抜き競争が行なわれているのが現状であります。これは労働省からいうならばプラスであります。引き抜くということは、労働力が足りないのだ。それだけ雇用条件は必ず上がるという要素を含んでおるわけです。逆にいうと、またある時期においては、いわゆる基準法以上の労働者を酷使するという工場も見られるわけであります。そういうことを考えると、私は自由化というものは、直ちに労働者にしわ寄せがくる場合もあるかもしれないが、逆に雇用拡大して、そして生産性が上がれば、賃金上昇するという関係も確かに出ております。この両々相待って、私どもはよく注意をしなければならないという意味で、基準法の適正な運営によって、そういう基準法違反はやるな。同時に賃金上昇をはかるためにも、生産拡大していくことはけっこうだ。そういう要素が、私はまず第一に貿易の自由化というものを真剣に考えて参りますと、プラスの要素がだいぶある。そして、手放しには喜んでおられないぞという感覚で今後の推移を見守っていきたい。今のところは大体順調に雇用の方も拡大しております。賃金も平均して上昇しております。それじゃこれでもうほうっておいていいかという、そうはいかない。今後の監視、監督を基準局を通じてやるように、今回の基準局長会議で特に私は話をしております。雇用拡大賃金上昇は喜ぶべきことだ、しかしこれだけにたよっておると、今度は基準法違反による過剰な労働力が出てくるぞということを注意しておりますが、基準局としては、おそらく今後は貿易の拡大経済の進行につれて基準法の適正な運営を監督する時期だと思います。昨年はどうか知りません。ことしからは基準局はその方面に集中をいたしまして、基準法厳守を私はさせたいと思っております。ことに婦人少年という、身体的にハンディキャップのある婦人少年には、特に基準法によってこれは重点的にやるべきではないかということを考えておりまして、ことしの基準局長の全国会議では特に強調したわけであります。それは何かといえば、そういう傾向を忘れてはいけない。経済拡大のあまりに、ややもすればしわ寄せをそういうところへ持ってきてはいけない。雇用経済が活発になりますから確かに拡大いたしますが、そういうところが私の今心配のところであります。従って今後を私は手放しで喜んでおりません。しかし大きなプラスの要素のあることも、これは間違いありません。またこれを拡大することは、労働省としては賛成であります。そうして大いに消費もふやして参りたい、そうして賃金も上げて参りたい、それがやはり経済拡大でなければいけない。日本国民所得の拡大は何かといえば、勤労所得の拡大が大きな要素であります。今、国民所得の中で勤労所得は五十数%になっておる。一時は四十何%でした。この四、五年の間に五十数%、勤労所得が全国民所得の中に占める率は、うんと拡大して参りました。(「なぜ減税をしないか」と呼ぶ者あり)こういうところを考えるならば、税金の話は大蔵大臣の方として、労働省としてはそういうところを実は考えております。
  9. 小林進

    小林(進)委員 貿易自由化の問題について労働者がどういうふうに圧迫を受けるかということに対しては、大臣から原料輸入の面からの一つの見通しのお話がございましたが、われわれはそれと同時に一方外国資本の導入に基づく労働の圧迫というもの、過当競争というものが考えられるのではないか。おそらく将来、大臣の今もおっしゃるように原料だけを日本が輸入をして、製品を売るという、そういう立場からくる中小企業者への圧迫と同時に、日本はいわゆる世界——私はこれから御質問申し上げますけれども、やはり世界では日本労働市場が一番安い。大臣のおっしゃるように、労働の量と質と精神において、実に世界一の労働力を持っている。しかも賃金が安いのですから、それが自由化すれば、自由貿易の名において、どんどん外国資本が導入されて、外国資本でこの労働力を使って、そうして安い製品を作るという、そういう一つの自由貿易の形ができるのではないか。おそらく今度アメリカの資本が日本へ非常に流れてくるのではないかという懸念がある。そういうことに対する労働者立場は一体どうなるのか。こういうこともあわせてわれわれは非常におそれているわけでございますが、そういう見通しに対する大臣のお考えをお聞きしておきたい。特に中小産業、あなたのおっしゃるラジオとか、テレビとか、雑貨とか、いわゆる中小企業に関する、オートメーションではない方へ、だんだん外国資本が入ってきて、日本産業が、また労働者がそういうことで苦しむおそれがあると思うのでありますが、この点をお伺いいたしたい。
  10. 松野頼三

    松野国務大臣 外国資本の問題で一番大きな問題は、資本競争の場合には、外国資本に対するプラスとマイナスが非常に大きく影響する。それでは実は労働者に対してどうかということも労働省として常に研究いたしておりますが、しかし労働者だけの立場から申しますならば、労働基準法及び労働法というのは、かりに外国資本であろうが、外国人であろうが、日本におる以上はその国内法の適用がございます。外国資本だけ除外をするのだ、基準法も除外をするのだとか、あるいは最低賃金を除外をするのだということはありません。従って資本ということ、産業ということは、労働者からいうならば、その労働条件は変わるわけではありません。逆に言うならば、工場がふえればそれだけ雇用がふえるという傾向が出て参ります。むしろ外国資本だからといって法律が、あるいは賃金雇用が特別扱いされるということは、これは非常に大きな問題であります。しかし労働基準法というものは外国資本であろうがなかろうが、また外国人が支配人であろうがなかろうが、国内の法律というものは平等に適用いたします。従って労働者に対する福祉というものは何ら変わらないと私たちは考えております。資本競争になりますると、これはいろいろ問題が出て参りましょうが、今は労働省立場からいうと、外国資本であろうがなかろうが、いい雇用で、いい賃金ならば、これは労働大臣としてとめるべきものではないと思います。逆にそういうふうに私たち労働省立場としては考えております。
  11. 小林進

    小林(進)委員 私は労働条件が外国資本のもとに変わるとか変わらぬとかいうことではなしに、そういう外国資本の導入に基づく労働市場の品質が、決して日本労働者の低賃金や過当労働を打破する方向ではなしに、むしろくぎづけする方向にそれが動いていくのではないかということを非常におそれているわけでございますが、そういうことをやっておりますと時間がだんだんなくなりまするし、まだ大臣に御質問をしたい問題を三つばかり持っておりまして、それから官房、労政、基準、婦人少年、それから安定局と、それぞれ所信表明についてお尋ねしたい問題を持っておりますので、この問題はこのままにいたしまして、次に参ります。  それは賃金問題についてでありますが、この賃金問題は、これは労働行政においてはしょせんついて回らなければならぬ一番基本的な問題でございます。これは何も三十五年度とか三十六年度に限った問題ではございませんが、しかしやはり重大問題であります。この賃金問題について、たしか三十三臨時国会にも私は大臣にお尋ねいたしました。一体日本賃金世界水準のどこにあるのかということをお尋ねしたのでありますが、大臣は非常に巧妙な答弁で、高くもあり高くもなし、安くもあり安くもなしというような、そういう禅問答みたいなお答えで終わっておるのであります。これではどうも勝負になりませんので、私はきょうは違った角度から大臣にお尋ねしたいと思うのは、去年から今年にかけて賃金に対する相当価値のある資料が三つ出ているのです。一番古いのは、例の外務省がガットの総会に出した、「日本労働条件について」というパンフレットです。それからいま一つは、一月の二十一日でございましたか、総評が発表いたしました一九六〇年度賃金白書、「日本の低賃金の実情その他について」、こういうものを出された。それからまた一月二十五日には、日経連が、「長期安定賃金政策について」というものをお出しになったわけでございます。きょうは外務省の役人に来てもらったらよかったのだが、私は実にけしからぬパンフレットをお出しになったと思っておるのでございますが、この三つの賃金資料に対しまして、私は労働大臣というより労働省の率直なる御見解をお伺いいたしたいと思うのであります。
  12. 松野頼三

    松野国務大臣 第一の、ガット総会の外務省のあれですが、おそらくこういうことが議論になっておるのじゃないかと思います。国際的に見て日本賃金は高いか安いかということ。その中を見ますと、こういう言い方が一番端的だと思うのです。これは一九五七年か八年の基準で、じゃ今の各国の賃金をアメリカのドル換算で単純にやったときにはどうなのか。単純にドル換算でやったとき、アメリカは二ドル七セントくらいであります。イギリスが六十四セントくらいであります。ドイツが五十一セントくらい、日本は二十六、七セントになりましょうか。この計算から見れば確かに安い。それじゃ国民所得から割ってみたらどうだろう。国民所得は、日本を一にするとアメリカは八であります。イギリスが四、西ドイツが三であります。それで二十六、七セントで二ドル七セントを割りますと、大体八倍に近いのです。そうすると、アメリカの国民所得の割から見ると、日本賃金というものは、国民所得が八分の一、賃金が八分の一ですから大体見合う。それじゃイギリスはどうか。国民所得は日本の四倍で、賃金は二十六セントの四倍になっているかというとなっていません。イギリスの国民所得は四倍でも、賃金日本の四倍以下であります。この国民所得から見ると、日本賃金は安いと言えません。アメリカとは八倍で八分の一、イギリスとの場合、四倍のくせに賃金は四分の一じゃありません、もっと上であります。西ドイツも、国民所得は三倍でありますけれども賃金の方は三倍ありません。日本の方が割高になっておるのです。そういう両面から私は議論できると思うのです。また今度は逆に、この八年間の賃金上昇率を見てみましょう。おそらく外務省はガットにそれを出したのではないかと思うのでありますが、この八年間の賃金上昇率を見てみますと、その当時を一〇〇としますと、日本は一六五くらいに上がっております。アメリカは一三三くらい、イギリスは一五五くらい、西ドイツは一五六くらいで、上昇率から見ると日本は四カ国の中ではこの八年間に一番上がっておるのです。それを見れば、日本賃金は安くない、どんどん上がってきておるのだという議論が出てくると思うのです。だから賃金理論はどこからするかというのがなかなかむずかしい。また物価を見ていただけばわかるのです。日本のエンゲル係数はずっと下がって四〇そこそこであります。これも必ずしも悪い条件にない。だんだん実質所得がふえているという一つの統計になっております。物価は、アメリカは大体この三年間ばかりに八%上がっております。日本はこの三、四年に三、四%くらいしか上がっておりません。そういうふうに生活水準から見るとか、国民所得から見るとか、いわゆる単純に為替ベースから見るとか、いろいろ議論が出てくると私は思います。それで高いとか安いとかいう統計は、そこから総合して言わないと……。国民所得以上に賃金を払うということは、これはできるもんじゃありません。それではコスト・インフレであるし、そんな片ちんばな経済はどこの国でも成り立たない。そうして賃金というものは、その国におけるいわゆる生活水準の問題、国民所得の問題、生産の問題から、どの程度が妥当かということを各国がきめるべきじゃないか。従って私は高いか安いかといえば、高いところもあるし、安いところもある。しかし日本はもう少し上げていきたいというのが私の念願であります。上げるにはいろいろな前提要素がありましょう。国民所得も必要でありましょう。生産も必要でありましょう。貿易も必要でありましょう。生産性も必要でありましょう。経済拡大も必要でありましょう。そういうところから議論するといろいろな議論が私は出てくると思います。総評の賃金白書、賃金構造を私は批判いたしたくはございません。しかしここには統計のとり方にいろいろな問題があることだけは私は感じております。いいとか悪いとかは各人の議論であります。私は一がいに賃金論でこれがいいと言える権威者は日本中に見当たりません。それくらい賃金というものは議論の多いところです。また労働問題で一番大きな問題は、私は賃金問題だと思う。労働条件というもの、また労働争議というものは賃金が一番大きな要素になることは事実であります。従って賃金が妥当かどうか、それは日本中の学者に聞いたって解明できる者は一人もいません。中山中労委会長さえも、賃金問題にはなかなか軽々に触れられるもんじゃありません。これは世界中そうです。諸外国そうです。そこの国の賃金を幾らが妥当かといって、今が高いのか安いのか、これが妥当だという目標を定める者は私はどこの国にもいないと思う。またそれができれば非常に前進だと思って、私も非常に苦労して、日本賃金はいかなる賃金が妥当かということを一生懸命、あらゆる統計をもって研究さしております。いずれ近いうちに私の個人の考えとして発表できる機会がある、発表いたしたいと思います。しかしこの影響はいろいろございます。影響はありますが、私の言うその賃金理論を全部の産業が賛成してくれるならば、労使も賛成してくれるならば、賃金基準というものは私はできると思う。しかし労使が賛成しないものは、労働大臣がいくら言ったって空念仏だから私も言いません。労使が賛成してくれるなら、こういう要素とこういう要素とからみ合わせると、賃金というものはこうあるべきだというものを私は近いうちに出せると思うのです。しかし労使が聞かないならば、またそれに批判を加えてどうだこうだ、それではみそもくそも一緒になってしまう。それではせっかくの私の思想も生きてこない。総評の賃金論も傾聴すべきものはたくさんあります。しかし統計上において、一つの統計だけにとらわれたためにいろいろ議論が出てくるという感じを私は持っております。また日経連の問題は、これは日経連の問題で、私もあえて批判はいたしません。それも理論としては一つの方向であります。しかしこの方向をどうして実現するかということが問題であります。しかしこれは何のものさしではかるのだ、どういう数字できめるのだということはなかなか出てこない。エンゲル係数だけでは賃金はきめられません。賃金水準の向上、それはどこまで向上させることが妥当か、これも議論のあるところであります。最近の勤労者の支出を見ますると、やはりエンゲル係数が減って参りました。今一番高いのは住宅経費であります。その次は家庭の雑費であります。教養費、娯楽費などの家庭雑費というのが、最近の消費者世帯の統計を見ると、これが非常に多くなっている。一番多いのは住宅と家具、家具がだいぶふえました。それから家庭雑費として教養費、娯楽費というのが非常にふえておる。だから、それだけ生活水準というものが上がってきつつあることは間違いない。エンゲル係数で、食い物にばかり使っておった家計費というものが、最近はだんだんいわゆる住宅に使われる、畳をかえるとか、ふすまをかえるとか、あるいは家具を買うとか、ある程度の余裕が出ています。そのために電気器具も売れる。もう一つは本とか映画とかいう娯楽費が非常に最近はふえてきた。これは当然なことであります。人間の生活は牛馬じゃありませんから、楽しむという余裕がなければ生活水準は向上しません。傾向としてはそういう傾向が今出てきておるのです。ただ、どこまででいいんだということは、これはだれも言えるものじゃない。従って総合的なことを考えながら、賃金というものは生産の中できめていくべきだ。生産の中できめていかなければ、生産にはみ出す賃金を要求しても、それは無理であります。産業がつぶれてしまう。といって産業ばかり重視して労働者を酷使すること、これは許せません。そこのかね合いがなかなかむずかしいという意味で、おそらくガットの問題とか総評の問題とか日経連の問題になってくると思います。私はあえてどの批判もいたしません。しかし賃金はいろいろ問題が多いということだけ御了解いただいて、高いとか安いとかいうよりも、どの数字をとるかによって議論が分かれてくるということを私は考えて、何とか引き上げていきたいというふうに考えております。
  13. 小林進

    小林(進)委員 いろいろ承りましたが、外務省が出したこのパンフレットヘの批判ですが、今大臣のお話を承っておりますと、外務省の「日本労働条件について」という主張が最も正しいようにお伺いしたのでございまして、これはどうも私は幾らかでも思い上がった外務省のこういう——ここにもありますが、美濃部亮吉氏は、外務省がよくこういうパンフレットを作ってガットの会員に配って恥ずかしくないと思われるほど完全に間違っている内容の結論を引き出した。パンフレットだと思われるといって、まことにこれは日本の恥を国際的にさらしたものだというふうにまで極論をせられておるものを、労働大臣が、それがいかにも正しいもののように裏づけされるということは、これまた私は日本労働行政を担当せられる人として、実に悲しいです。先ほども大臣がおっしゃったように、何か終戦後からのいわゆる労働賃金上昇率、実質賃金上昇率は、日本が一番高いじゃないかというふうな御説明になりましたけれども、これは、ここにもいっているように、私もそうだと思っているのでありまするけれども、終戦直後の日本というのは、例のインフレによって、日本の実質賃金が急速に低落して、戦前を一〇〇にいたしますと、その半分以下四八まで下っている。その四八まで下った賃金基準にして、その上昇率がドイツよりも、英国よりも、アメリカよりも少しカーブを急激に描いたからといって、これで日本賃金が実質的に一番高くなっているというふうな、こういう宣伝をせられるその外務省のずうずうしいものの見方に対して、大臣がそれを了承されるなんということは、私は労働者に対する考え方が、どこか冷たいものをお持ちになっているんじゃないかと思うのでございますが、どうしても賛成をするわけには参りません。なお一時間の各国の賃金の比較をおっしゃいましたけれども、私は何も各国の賃金の比較で、日本賃金が高いとか安いとか言っているのではない。一つのものの中に占める労働賃金は一体何%か、外国に比較して日本はどうか、こういうことを私どもはお聞きしているのであって、なるほど賃金のとり方はいろいろありましょうけれども、結果的に見てやはり日本賃金は先進国として安いということを、もう大臣は明白に言っていただいていいと思いますが、どうでございますか。明白に言っていろいろな考えがあるとか、いろいろの取り方があるとか、それは中山さんでも勘定ができないとかいうことではなしに、ほんとうに安いのじゃないですか。しかも最近の趨勢からながめて、企業の利潤の中に占める労働賃金の比重というものはだんだん少なくなってきているのではないですか、どうですか。一つそこら辺、率直に言っていただけないものかと思うのでありますが、大臣はことしの所信の中にも賃金問題はちょっとも触れていらっしゃらないけれども、何といっても日本のすべての問題の中心は低賃金にあるというこの考え方は、労働行政を担当していらっしゃる大臣として、もう結論を勇敢に出していただいてもいいのじゃないかと思いますが、いかがなものでございましょう。もうむずかしい議論はいただかなくてよろしゅうございます。そのものずばりで、世界の先進国に比較いたしまして、日本はやはり賃金が安いんだというふうな結論をお聞かせ願いたいのであります。
  14. 松野頼三

    松野国務大臣 先ほどのガットの統計は、その一つの統計をとったんじゃなかろうか、こういうわけで支持するとか、それが間違っているという意味ではありません。いろんな統計があります。その一つの統計をとればこういうものが出て参るのでありまして、私はあえてその統計を弁護するとか批判するのではないのであります。私は外務省の内容をまだよく見ておりません。そのときは見ましたけれども、今宙に覚えておりませんが、おそらくそういうような統計がいろいろあるのでありますが、その統計の一つをとればそういう理論が出るのではないか、こういうわけで、あえて弁護もいたしませんし、間違っているとも言いたくない。御承知通りどの賃金をとるかということも、非常に生産性が高まっている産業一つをとって高いとか安いとか、またいわゆる付加価値の少ない産業をとって高いとか安いとかいうことも議論が出てくると思います。一般的に私は、日本賃金は目下のところについては引き上げていきたい、こういう理論がありますが、じゃ高いのか安いのかと言われますと、先ほど説明しましたように、どの産業をとってどうだといえば、高い安いはあるだろうと思う。とにかく日本で一番賃金的に労力で苦労されているのは何かといえば家内労働であります。これは大へんに苦労されております。またその加工賃が非常にに私は今でも安いと思っております。またある労働者を見ると、非常に安過ぎると思うものもあります。そういうところに基準を置けば確かにこれは安いと思います。しかしどの産業でどうだと産業別にやってみると、高いのもあれば安いのもあるというわけで、付加価値から見ると、賃金論とか、これまた別な角度が出て参ります。生産性から見ると、これまた賃金論というものがそこへ出てくるわけで、どのものさしで高いか安いか、生産性で高いか安いかというならば、日本はまだ生産性が上がっておりませんから高くありません、ということは言えますが、そのものさしはどこだと言われると、結局そこに議論が出てくると思う。家内労働の加工賃は非常に安いと言えば、じゃ繊維はどうだということも出て参りましょう。賃金が高い安いということはとにかく、労働者福祉賃金向上をはかるために一つ一つ可能な限度から私たちはその問題を解決していかなければならぬというので、小林委員の御期待に沿うほどさっぱりいきませんけれども、これで大体七〇%ぐらい御期待にこたえられるのではなかろうかと私は考えております。
  15. 小林進

    小林(進)委員 賃金論争も、あまりくどくやっておりますと時間もありませんが、しかし賃金生産性から見て妥当かどうかを判断するという考え方は、これは大臣のお話を聞きっぱなしにしておきますとあとで非常に障害が出ますから、私は賛成するわけにはいきません。賃金というものは、生産性などとかかわりなく、賃金賃金ですよ。人間が生きるに必要なものです。家族が生きるに必要なものです。最低の娯楽も楽しめば、やはり家族の教育費も含んだものが賃金であって、その賃金をまかなえないようなものならば、生産をしなければいい。事業を成立しないものとしてやめるべきだ。私は、生産が高まらないからといって、生産に見合うように払うべきものが賃金であって、生産をまかなうためには、その賃金が飢餓的賃金でもよろしい、生存を脅かすようなものでも、それが賃金であるというふうな考え方が、今でも流行したら大へんだと思う。その意味においては、大臣の今のお言葉は非常に誤解を招くおそれがありますから、私は賛成をするわけには参りません。どうか一つ生産性から見て賃金の当、不当を判断するという考え方は、私はおやめ願わなければならないと思うのでございます。  その賃金問題はそれじゃそれくらいにしておきましても、それならば日本賃金が安くない、高いのもある、業種によってそれぞれ違うんだとおっしゃるならば、一体ガット加盟の十四カ国から、日本は低賃金による安価な輸出をしているからけしからぬ、こういうことで貿易上の差別待遇を受けているという問題、これを労働省はどういうふうに反駁されていくのか。現実にわれわれはこういうふうな一つの烙印を押されているのであります。ほかに、昨年アメリカの労働組合AFL、CI ○は、低賃金国からの商品輸入制限を決議しておる。低賃金の安い商品が大量に流入し、同種商品の生産に携わるアメリカの労働者生活を根底から脅かしているといって、そういうふうな輸入の制限の決議をしているのでありますが、その中に日本も含まれている。こういう問題を大臣は一体どういうふうにお考えになるか。私どもは何もこの労働委員会委員室で問答しているわけではなくて、現実に、もう世界のそういう一つの世紀の舞台から、われわれは低賃金という烙印を押されて、それで排撃を受けているではありませんか。これを納得せしめるような客観的な理論を、世界的に通用する理論を、私は大臣にお聞かせを願いたいと思う。
  16. 松野頼三

    松野国務大臣 いわゆる為替換算でいうならば、先ほど御説明しましたように非常に安いのです。そういう計算で外国が日本生産を起こすならば、その賃金で同じ製品ができるならば、ある場合にはアメリカ以上にいい製品ができるでしょう。機械と材料を持ってきて、日本の優秀な労働力を使えば、アメリカ以上にいい製品ができるでしょう。それが最近の問題だと私は思う。それから見れば、確かに、先ほど申しましたように、為替換算でいえば日本は非常に低い方です。しかし日本の国内産業賃金ベースを議論するときは、外国からきた、ただ単純な為替換算できたときとおのずから感覚が違うと思うのです。しかし私は日本の一番大きな問題は、やはり輸出貿易の中でも大きな玩具とか、いわゆる手工業、手による産業というものが非常に問題があると思う。これは輸出もまた大きいものである、中小企業による輸出品が非常に多いものですから、中小企業による輸出品の中で、手工業あるいはマス・フロができないものは、日本は確かに世界の市場を圧迫するくらいの大きな輸出能力を持っております。そこに換算をすると、これは家内労働とか加工賃とかいう問題が議論になってくると思うのです。その場合には、これが臨時工というものになるかもしれません。それを私たちはあえて外国に弁明する意味ではありません。私たち自身の手で考えるときに、こういうふうに家内工業に対する加工賃の問題を、もう少し衛生的に、あるいは最賃法によって——あるいはそういうものの使っている常用、臨時雇というようなところに労働搾取があってはいけないということを考えるわけでありまして、大企業とか一般のものは、おそらく貿易輸出市場においては議論は少ないと思う。賃金は高いという意味ではありません。賃金論争の焦点からいうとそういうものではなかろうかというふうに考えるわけで、私たちは何も外国から指摘されたとか——外国もずいぶん間違っていることをしてきているのじゃなかろうかと思う。その意味で先ほどからくどくど申しましたように、賃金はその国その国の経済能力の中における賃金——アメリカと同じ国民所得があれば、日本もアメリカと同じ賃金を払えるだろうと思う。それを単純に言われると、非常に議論が輻湊しやしないか。といって、そういうところを指摘されるということも、私たち自身も、やはりそういう印象を与えることはいいことではありません。一つ一つ誤解なら解明していく。政策としては、国民所得をふやすためには、何といっても国民賃金上昇ということも大事な要素であります。それが経済拡大だと私も思う。従って、賃金上昇させることは一つ経済拡大であります。  もう一つ私が考えなければならぬことは、雇用の数であります。二千万人の労働者が今おりますが、これを二千四百万、二千五百万にふやすこと、底辺をふやすことも総国民所得の増大になります。一部の賃金上昇するより、総体的に国民賃金というものを考えなければいけないということから議論していきますと、これは御希望通り答弁がなかなかできませんけれども、これはいろいろ議論の多いところだから、私の思っているところを端的に申しますと、私は労働大臣として、すべてに雇用を起こしていきたい。一部の特殊産業賃金が上がるよりも、全部の労働者雇用賃金が安定することが望ましい場面も出て参ります。今統計的にいきますと、一番高いものは電気産業、金融、こういうところが高い。こういうところが幾ら上がりましても、いわゆる恵まれざる労働賃金が上がらなければ、意味としては非常に少なくなって参ります。今、産業別にいえば、繊維、木材、食料品加工というものは、割に低い方の賃金であります。従って、私たちは、賃金のどこをとってどうするということは、一つ産業産業によって変わるものですから、私は、そういうことを全然違うといいますか、そういう場面もある、しかしそこだけが全部に及ぶのでない、こういうような考えでやっております。
  17. 小林進

    小林(進)委員 時間もありませんから先にいきますが、私は、この賃金問題は、大臣説明を了承できない。私は、実は総評が出しました一九六〇年度賃金白書の、低い日本賃金の実情、この大きな一、二、三、四、五に至る一項目ずつの大臣の批判をお聞きしたかったのです。低い日本賃金の実情分析が一体当たっているのかいないのか、低賃金での大きな格差、これは外国との比率あるいは大企業と小企業との差等々の分析、男女別と本工、臨時工別の賃金の格差というような、少なくとも日本の組織労働者が、真剣にあらゆる資料をもって書いたものですから、私は大臣から一項目ずつ御批判をいただきたいと思うのでありますが、時間がございませんければ、大臣一つどうでしょう。この総評の白書に対して、文書で御回答願えませんでしょうか。それくらいやはり労働省熱意を持ってもらった方がいい。回答ができないならば、私は公文書にして発表してもらってもいいのです。ここに経済企画庁の調査局長の金子美雄氏が勇敢に談話を発表しておる。総評と日経連の賃金白書に対し、実に勇敢に談話を発表しておるけれども、談話ではだめですし、これがまた事実お役人様の考え方ならば、これは実に大へんだ。実に何でもないところだけはうまくできておる。ほめたり何かしておりまして、何でもあるところを全部けなしたりして、こういうことでもやっていたら次は一つ次官ぐらいになるだろうと思って、きっと金子さんも将来のそろばんを置いてお考えになった談話でしょうけれども、こういうことじゃいけません。これは労働行政基本的な問題ですから、こういう基本的な問題についてやはり組織労働者は真剣に考えている。経営者も真剣に考えている。それぞれ良識に片づいてこういうものを出しておる。その調停役である、中間に位する労働省が、こういう真剣なる一つの白書に対して、意見も述べなければ批判もできないというようなことじゃ、労働省としての権威を失うものであり、存在の価値を失うものであります。そういう意味においても、良心に誓って恥じざるものを文書として御回答いただきたいと思うのでございます。
  18. 松野頼三

    松野国務大臣 なかなかむずかしい問題で、総評がお出しになったもの、日経連のお出しになったものを批判するということはなかなか困ります。もちろんお聞きいただけば私はお答えしますけれども、これを総合的に——ことに総評のものは一つ政策としてお書きになったものです。その政策をあえて批判するという必要もございません。一つ一つ聞いていただけばそれに対してお答えはしますけれども、総合的に総評の賃金白書に対抗して労働省がこれを書くというようなことは、まだそんな機構も、まだそんなに仕事も——なかなかむずかしいことですからこれはごかんべんいただいて、ここにおいて私の意見を申し上げたい、こう考えております。
  19. 小林進

    小林(進)委員 大臣、ここにおいて回答とおっしゃいましたけれども、もう大臣行かれるのでしょう。ほんとうにきょう一日中私と論議して下さるというならば、私は克明に一章々々御質問し、答弁していただきますけれども、時間がないのだ。午前中君のために来たようなことを言っておきながら、質問があればお答えしますと言ったって、それはとてもだめです。私は、何も総評と日経連の白書に対して批判を述べろ——そういう言葉に対してもし大臣が慎重にかまえるならば、それは要りませんけれども、全然総評の白書にも日経連にも関連なし、外務省にも関係なしに、労働省自体が一体賃金に対してどういう見解をお持ちになっているか。いわゆる労働省賃金白書と称するものを一つ早急にお出し願いたいと思います。
  20. 松野頼三

    松野国務大臣 御趣旨のようなことは、労働省としては当然やります。労働白書という名前にいたしておりますが、これは労働省の見解として毎年一回必ず出しております。従って、あの中に「賃金」として明確に労働省考えを出しております。毎年六月に出しております。これが私の方の公式見解であります。
  21. 小林進

    小林(進)委員 あれは私も拝見しておりますけれども、私が資料としていただきかねるものです。味もなければ毒気もなし、われわれにはちょうだいしかねる。ああいうことで労働省労働賃金に対する見解を察知せよと言われたところで、われわれはいただくわけにはいきません。少なくともそのスタイルは、労働白書のようなああいう実にわけのわからぬ形態じゃなしに、いま少し親切に現状を分析をしながら、労働賃金だけに関するいま少し親切な白書を出していただくわけにはいかないか、こう思うのです。行政庁ですからいろいろ差しさわりがあると思いますけれども、差しさわりがない程度でよろしゅうございますから、これはどうしてもいただかなくてはなりません。
  22. 松野頼三

    松野国務大臣 労働協会というものがちょうどございます。これは御承知のごとく、労働協会設立のときに、政治的に中立であって、労働大臣が一々指示したり、あまりこまかいことを言うなという条件でこれは議会を通過いたしまして、それ以来、私は労働協会に特別に関与したり、指示したりしておりませんので、これが一番中立的な機関であると私は考えております。従って、その労働協会でも研究いたさせましょうし、私の方ももちろん研究いたしますので——承知のごとく賃金はなかなかむずかしい問題でありますから、一朝一夕にはなかなか議論ができませんけれども、しかし、やはり逐次賃金論というものを明確にしていかなければ、私は日本賃金論争は絶えないと思う。従って、できるだけ逐次これを解明すべきだと私は思いますので、労働協会あるいは労働省、いずれかで一つよく研究をして御報書いたすようにいたします。
  23. 小林進

    小林(進)委員 それでは今の大臣の御答弁を私深く胸に刻んでおきますので、労働協会を主管する労政局長の方でも、今の大臣答弁が直ちに実現せられるように、早急に一つお願いをいたしたい。大体あなたの方の仕事は回答が一番おそいのです。二カ月か三カ月たって、物事を忘れるころに回答がきますけれども、そういうことがないように、事は迅速をとうとびますので、迅速に一つお出しを願いたいと思う。  次に、大臣にお伺いしたいのは、先ほどからいろいろあげておきましたけれども、潜在失業者の問題でございます。これが私は今年度の労働行政の中のやはり一番重点ではないかと思うにもかかわらず、所信の中にはあまり出てこなかった。完全雇用政策についても何も言明がない。新聞紙上その他に伝うるところによれば、一九六〇年は黄金の年だ、岩戸景気だということがいわれておりますけれども、その陰には依然として膨大な潜在失業者があることは明らかな事実でございます。そこへもってきて、新規に就職戦線に出る者が——中学卒業生は今年は求人側が圧倒的でありますから、そういう異例な形もありますけれども、大学卒その他にはやはり労働戦線に対する大きな狭い道がありますし、さらに、私どもが今一番心配をいたしておりますのは、経済の合理化に伴う、日の当たらない産業から輩出してくる失業群でございます。合計して一千万人とか一千百万人いるというのでありますけれども、これに対して大臣はどういうふうにお考えなのか。私は、臨時国会のときにも何か雇用長期計画というか——防衛庁などはああやってちゃんと防衛庁の六カ年計画を出して、大蔵省につっつかれて引っ込めて、来年からあらためて防衛五カ年長期計画を出すということをやっている。これは最近の世界的な、また日本の各省とも非常な流行でありますので、私は長期計画などというものがあるならばむしろ労働省こそそういう長期計画というものを立てて、経済のいかんにかかわらず、きちんとした計画のもとに完全雇用の目標に向かって進めていくくらいの着実な労働政策があっていいのではないか。一体潜在失業者の問題について、わが社会党では、PRをやるわけではありませんが、われわれをして政権を担当せしめるならば、年間に少なくとも二百万人にだけはきちっと職場を与えて、少なくとも五カ年計画によって完全雇用を完成するという着実なる政策をとっていきますけれども大臣はこういうことを一体どういうふうにお考えになっておるかを私はお尋ねをいたしたいのであります。
  24. 松野頼三

    松野国務大臣 先日も滝井委員の潜在失業者に対する御質問がございまして、いわゆるいろいろな統計を御説明いたしました。その統計のとり方は、所得は五千円以上と以下に分けて、五千円以下を潜在失業者にするというとり方もございます。あるいはこれを世帯別に分けて、世帯が幾ら以上のものは不完全失業者だ、こういうふうなとり方もございます。また本人の希望とか、あるいは本人々々に調査をいたしまして、これじゃ少ないから追加の仕事をほしい、今の仕事は賃金が安いから仕事をかわりたい、あるいは全然仕事がないのだというふうな、個人々々の調査によって統計を出したものもございます。大体三つくらいが柱であります。先般厚生省の厚生白書においては、大体世帯別の統計がおそらく出たのじゃなかろうか、それが百七十万世帯くらい厚生白書か何かに出ておったように記憶いたします。それに四人かけますと、やはり七、八百万人という数字になりましょう。また先般の雇用審議会でも六百何十万人という数字をお使いになったこともございます。ただ個人々々の希望をとって参りますと、二百四十万という数字が出て参ります。労働省で統計をとって参りますと二百四十万、これは今の仕事では不満足だ、収入が少ないからほかに仕事をほしい、内職をほしい、今仕事がない、こういうふうな三つの要件を合わせますと、二百四十万という数字も出て参ります。従ってこの潜在失業者のとり方の議論が大いにある。しかし農村は農村で別にとって参ると、またいろいろ御希望があるかもしれません。いずれにしましても二百四十万というものが私たちが考えて、仕事につく能力者です。全人口じゃありません。全人口は別であります。労働力として二百四十万というのが、一番私たちは妥当な数字だと思う。家族人員でありますと、これは別な話であります。労働人口としてとるならば、二百四十万というのが労働省で一番権威ある妥当な数字じゃなかろうか、こういうふうに考えております。しかしこういうものは、やはり潜在失業者として、なるべく雇用の場面に、安定雇用にこれを持っていかなければならない。この中には農村も入っているでしょう。従って農村人口の移動を見ると、逐次都会の雇用者に変わりつつあります。これも潜在失業者の大きな改善の道であります。同時に雇用者の中で不完全な就業をしておる者に対して、臨時雇いから常雇いにという道も、一つの完全雇用、いわゆるほんとうの意味の完全雇用への道ではなかろうか。ただ完全失業者の数からいいますと、日本は二千万人の中の五十万人ですから、パーセンテージからいうとわずか一・何%くらいにしかならない。生産年令人口が四千何百万で、四千何百万の中の五十何万ですから、完全失業者の数からいうと世界の統計でも少ない方の統計が出て参ります。私はあえてある統計ばかり言うわけではありません。そういうふうなことを考えて、私たちは、やはり保守党としては、経済拡大という大きな長期計画の中に、雇用の場面を確実に占めていきたいという雇用計画を今立てつつあります。来年は先般企画庁から発表いたしましたように、九十万というのが三十五年度の数字で、それに合わせて今後十年間の長期計画を立てました。それに合わせて完全雇用の、いわゆるほんとうの意味において雇用の安定を私たちははかっていきたいという計画を、いずれ今回の経済計画の中には明らかにいたしたいと思っております。三十五年度は九十万というものを先般企画庁から発表いたしました。まだ時間は少しかかりますが、その方向に私たちも雇用というものを安定させていきたいと努力をしているわけであります。
  25. 小林進

    小林(進)委員 私は大臣からいろいろ不完全失業の内容について承ったのですが、問題は不完全失業者の定義なんです。定義の置き方によって二百四十万になったり、百七十万になったり、一千百万になったり、一千万になったりするのです。最近不完全失業の定義をこういうふうにとっているのですが、これはどうですか。不完全失業をはかる指標として、所得賃金と就労時間と就業形態、この三つから見ていって、その中で特に所得賃金を収入の面から取り上げて、そして潜在失業者の数を数えていく。一般に今この労働人口が失業あるいは産業予備軍に腐しているかいなかを決定する要件として次の二点をあげるということです。一つは、標準的な賃金——これはどうしても私は労働省から標準賃金というものを出してもらわなくちゃいけないと思うのですが、標準賃金をもらって標準の労働条件で働いている労働者に比較して、それより低い賃金で、それより悪い条件を与えられているということなんですね。それを全部潜在失業者という勘定に入れる一つの見方です。この低い賃金、より悪い労働条件を与えられておる者、これが潜在失業者という一つの条件、いま一つは資本の労働者需要に応じて可動的であるという条件、今食えなくて仕方がないから安いけれども働いているので、標準の賃金があればいつでも移動していけるという可動性を持っている、こういうのをみな潜在失業者の条件にするという、この二つの条件を出しておるわけなんです。そして今労働大臣の言われるような完全失業というのは、労働省はむずかしいことを言っておりますけれども——最終の一週間の一時間も働かぬとか、いろいろなことを言っておりますけれども、ともかく大体今までの定義ですと、所得がゼロなことが完全失業ということになるわけですね。そういうようなことでは、完全失業者がぜひ生存していくのに、所得がゼロならどこかの社会保障で収入を得るか、たれかから恵んでもらうか、さもなければ人間生きるためにはどこかにしがみつかなければならぬのですから、どこかにしがみついて何がしかでも金を取れば、もはや労働省の計算では完全失業じゃない、不完全失業であり、潜在失業になるのであって、われわれの側から言わせれば、まだ完全失業者というものは幸いの方だ、むしろ就労の関係からいえば、潜在失業者、不完全失業者の方にこそほんとうに悲惨な階層がいるのであって、完全失業者なんというのはその意味においてはむしろ恵まれていますよ。何も仕事をしないで、だれかが食わしてくれるからのうのうとして生きていける、そういうのだけを完全失業者といっておる。労働省が完全失業者を五十万、六十万と言われます。けれども、しあわせなる者はその五十万なり六十万であって、何か仕事がなければ生きていけないといってしがみついているそういう者も含めて、潜在失業者の中にこそ私はほんとうに気の毒な人がいると解釈する。それが今も言うように二百四十万という考え方じゃなくて 一つの標準の賃金と標準の労働条件に満たされない者を全部潜在失業者と見ていく、この見方を持って私は潜在失業問題を処置してもらわなければならないのではないかと考えているのです。これに対する労働大臣の御見解を一つ承りたい。
  26. 松野頼三

    松野国務大臣 日本の場合は家族制度というものが御承知のごとく日本特有なもので、必ずしも全部が分家をするというわけじゃございません。ことに農村ではその傾向がよけい見られるわけであります。従って農村の場合は、いわゆる兼業農業をどう取り扱うかということが一つの大きな問題だと思います。しかも日本労働人口はほとんど四〇何%は農村でございます。この中にいわゆる不完全就業者という層が非常に多いことは、これは認めざるを得ません。この農村の所得というものは必ずしも売上金ばかりが所得じゃございません。やはり農村の所得調査というものはなかなかむずかしい。いわゆる兼業農家というのが日本に多い。そこに問題点があるわけで、所得だけならば、戸主は農業をしておる、その子供は次男、三男のうち一人が五千円でもいいから役場に働くという形態が非常に多いのであります。所得だけからいうならば、これは確かにその所得水準からいって下かもしれません。しかしその家族の生活から見れば、家族総体の所得も考えなければならないのではないか。そういうふうに考えて参りますと、統計のとり方をどこに置くか。戸主であって、家族何人で、ほかに兼業していない、そして一生懸命就職活動したけれども少しの所得もない、それを月の一番最終の一週間をとったのが完全失業者の数であります。所得活動をしていないという者、就業活動してない者はこの中に入らない。じっとしている者は完全失業者の中に入っておりません。従って恵まれた方ではございませんで、一生懸命就業活動してなおかつ最終一週間の間に所得がなかった方というのが完全失業者の五十六万ということであります。仰せのことはよくわかりますが、もう少し構造の内容というものも検討さしていただいた上で、私どももより以上正確にこの問題を把握していきたい。今可能なことは一生懸命やっております。それでも不完全だと私は認めますから、より以上正確にやるには、縦横あらゆる要素を把握しなければならない。統計も、本年は特に予算面におきましてもそういうふうなことを私は考えております。
  27. 小林進

    小林(進)委員 問題はたくさんありますから、またあらためてお伺いすることにいたしますが、私はその完全失業の問題なんかも、少なくとも就職の希望がなかったとか要求がなかったとか、いろいろ条件をつけて、あまりものを狭めていくというよりも、これは日本一つの恥部ですよ。恥ずかしい部分ではあるけれども、やはり拡大鏡に当てて勇敢に出すというところに私は労働行政の前進があるように思いますので、これをいま少し私の言うくらいな基準に立って、潜在失業者の数を改めてもらう。縦からも横からも科学的に調べ上げるとおっしゃいましたから、私はその言葉を非常に尊重いたしまして御期待申し上げまするけれども、こういう統計をいま少し正確に出してもらいたい。特にその出し方は、先ほど私が言いましたように、そういう希望がない者は潜在失業者じゃないようなことを言わないで下さい。大臣もそうでありましょうが、就職依頼の履歴書を持たされて困っているけれども、そういう人は新しく職を求める人であって、農村や都市なんかには、政府やまともな機関に就職を希望してくるなどという、政府を信頼しておる者はまだいい方です。あきらめて個人的にぼつぼつ探し回っておるけれども、なかなか表面へ要求を持ってこない、そういう者がたくさんいます。それから同時に、先ほどおっしゃったように、勤めていながらも追加要求をするとか職場の転換を要求するとかいう者がどこの職場にも二割や三割ある。そんな者も潜在失業者に数えていい。特に雇用審議会の答申資料の、三十四年五月の東京都の独身青年男子の標準生計費七千五百六十円を基準として、水準未満の雇用者が計七百三十八万人いるといわれておる。こんな者なんかもみんな潜在失業者の中にほんとうは勘定していいと思う。そしてこういう者も含めてどう処置するかというのが私は新しい労働行政でなければならないと思っておるのでございます。  私はお伺いしたいことはたくさんありますけれども、参議院の方から迎えに来ておるといいますから、大臣に御希望だけ申し上げておきますが、潜在失業者の問題については、潜在失業者の実数調査とその生活程度、これを一つ明らかにする資料を政府からちょうだいいたしたいと思います。  それから今年度の労働省の予算を拝見いたしますと、統計調査の予算二億六千万円ですか、昨年よりちょびっとしかふえていない。こういう機構は労働行政基本ですから、根本的に大きくして、そして統計というものを着実にとることからやっていただきたいと思います。私は松野労働大臣の実績として、この統計調査機構の拡充を一つやってもらいたい。そして今申し上げます潜在失業者や不完全失業者、あるいは家内労働者——家内労働者なんて特に正確な統計は出ておりません。あやふやな資料をもらいましたけれども、さっぱり出ておりません。こういうことも、私どもが何をお尋ねしても快刀乱麻で、さっと資料が出るような拡充をやって、少なくとも労働行政だけは近代的な様相を示してもらいたいと思うのです。大臣が何と言われても、わが日本国家機構は決して先進国家の様相を示しておりません。これは中進国というか、後進国に毛のはえた程度というか、これをやはり近代国家の様相まで持ってくるには、松野労働大臣任務やまことに重しといわねばならぬのであります。どうかそういうことをお考え下さいまして、一段と御奮闘賜わりますことをお願いいたします。
  28. 松野頼三

    松野国務大臣 どうも御鞭撻いただきましてありがとうございました。
  29. 小林進

    小林(進)委員 労政局長に伺いますが、大臣所信表明の中に、労働組合運動ないし労使関係は次第に健全化の道をたどっていますというふうな所信表明があるのですけれども、私どもにはちっともそういうふうに考えられない。何を根拠にこれが健全化しておるとおっしゃるのか、そういうことをお伺いしたいのです。それが一つ。  それから、今の労働運動は私どもから見るとむしろ非常に取り締まりが強化せられて、どうも経営者労働組合運動に介入する傾向が非常に強くなってきた。これははなはだ古いのだが、私にはないものだから、労政局長にお願いするのですが、ピケに関する次官通達、これは労働省が三十三年十月二十四日にお出しになったものですが、職員の労働運動に対する管理対策要綱、こういうものを一つ資料で出していただくようにお願いしたい。  それから、私どもが各官公庁に参りますと、経営者側で出している文書がある。それがやはり不当に介入したり、労働組合を誹謗というか間接に圧力を加えるような、そういう内容の文書が最近非常に配布せられておるけれども、そのような弾圧的な態度に対して一体労政局はどのような処置をおとりになっているか。  それから、特に労働運動の取り締まりに直接関係する各省の通達、私もこれを持っておるのですが、各省に何か労働運動を取り締まるような通達が出ております。その配布先、内容等を一つお調べ願いたいと思う。労政局長、これはあなたの重大な仕事ですよ。一つぜひとも資料をちょうだいいたしたいと思うのでございます。  それから、これはILOの問題と一緒に、大島さんはきょうおいでになりませんけれども、やはりこれは労政局長でしょうな。ILOに関係して法規の改正、これは労働問題懇談会に依頼するとかなんとかおっしゃいますけれども、それはどういう法規の改悪を企図せられておるか。——改悪と言っては少し言い過ぎかもしれません。改正でございますが、どれくらいのものを企図せられておるか。どの法律とどの法律——公労法だとか地公法とか、あるいはその他の関係法規をお聞かせ願いたい。  時間がなければあとでもけっこうでございますが、そのほか私はたくさん持っているのですけれども、あまり言っても何ですから一つ一つ出しますから、今のところは労政局にその程度のことをお願いしたいと思います。
  30. 亀井光

    ○亀井政府委員 大臣所信表明の中の、近来労働組合が健全化の方向をたどっておるという言葉をお取り上げになりまして、健全化というのはどういう意味なのか、あるいは自分は必ずしもそう健全化が達せられておるとは思わないという御質問の趣旨だと思いますが、大臣所信の中で健全化の問題を取り上げましたのは、一般の大企業におきまする労使関係を主体として申されておるわけでございます。終戦直後のあの混乱の時代を振り返ってみますると、われわれとしまして幾多教えられるものがあったわけでございます。たとえばいろいろな血なまぐさい事件も起こって参りまするし、あるいは人民裁判、生産管理というふうな非常に激烈な労働運動が行なわれたことは先生も御承知通りでございます。そういうふうなことと比べますると、毎年労使関係というものが大企業におきましては安定化をたどっておる。また公労協の例をとりましても、特に一番その先頭でございました国鉄の労使関係というものも、二十九年から三十年、三十年から三十一年というふうに、三十一年を峠としましてだんだんと健全化の方向に向かっておるのだということを申しておるわけでございまして、その中で、ただし中小企業につきましては、昨年以来いろいろこの労使関係の中に問題点があるのだということ、健全化の大きな流れの中ではありまするが、中小企業の方にはまだ問題が残っておるのだ、そこで中小企業の労使に対して十分労働教育を徹底して、今度は中小企業を重点にして労使の健全化という方向に進んで参りたいという施策を労働大臣としてはお述べになっておるわけでございます。  第二の、労働運動に取り締まりが強化されて、使用者側の介入が激しくなってきておるのじゃないだろうかという御質問でございます。これが支配介入の問題が具体的に現われて参りまするならば、これは労組法の七条の不当労働行為ということで是正されて参るのでありますが、そういう形で現われないまでも、使用者側の非常に精神的な圧迫あるいは無形の圧力というふうな形で組合側に相当の介入的な手段が講ぜられておることは、中小企業の労使関係の中でわれわれも率直に認めざるを得ないものがあるわけでございます。こういうふうなものに対しましては、その具体的な問題をとらまえて、あるいは一般的には労働教育という立場から説得をし、あるいはまた教育して参ってきておるのでございます。従いまして、本年の労政行政の中心というものは、中小企業の労使安定ということに置かれておるのでございます。予算の面から見ましても、昨年わずか百万円程度の予算でありましたのが、本年におきましては二千六百万円程度の要求をそのまま大蔵省として認めておるわけでございます。それほど労政行政におきまする中小企業の労使安定というものを大きくクローズ・アップいたしまして、来年度のわれわれの重点施策に持って参りたい。それによって、今先生の御心配になりまするような使用者側の態度に対しましても、われわれとして教育を通じて是正をさしていきたい、かように考えておるわけでございます。  ILOの問題、これは八十七号の批准に伴う国内法の問題かとも思いまするが、またお話の中には、今労使関係法研究会でやっておりまする研究問題、両方お含めになっての御質問だと思います。労使関係法研究会は、この前も御説明申し上げましたように、現在の労使関係法の運用の上でいろいろ問題点がございます。またすでに過去十余年の歴史、あるいは経験から見ましていろいろな問題点がございます。さらにまたILO八十七号条約を批准するとすれば、たとえばユニオン・ショップの問題だとか、チェック・オフとか、いろいろ労使団体の自主運営、相互不介入の原則から見まして、必ずしも適当でない条文もあるわけでございます。そういうふうなものを総合しまして問題点を指摘していこう。直ちにそれが改正につながるというものではございませんで、十二人の委員さん方でただいま問題点の指摘について調査研究をされておるという段階でございます。  それからILOの八十七号批准に伴う国内法につきましては、先般大臣から滝井先生の御質問に対しましてお答えしました通りであります。
  31. 小林進

    小林(進)委員 何か労使関係対策費、これは僕の考え違いかな、三千七百九十四万、昨年が四千八百八十一万五千円という数字は違いますか。
  32. 亀井光

    ○亀井政府委員 中小企業の労使関係安定促進に必要な経費、それは昨年が態度測定の経費を含めまして四百二十五万一千円でございます。それが本年におきましては二千九百二十三万四千円という五倍程度の増額になっておるわけでございます。労働省から御配付いたしました昭和三十五年度歳出予算の概要という印刷物がございます。その十三ページをごらんいただきますと出ております。
  33. 小林進

    小林(進)委員 それから労働基準局長おられますが、これは大臣にお伺いしたかったのだが、これは定期異動でおかわりになったのでありますか。労働省の高級官員の人事異動は定期に行なわれるのか、不定期に行なわれるのか参考のためにお聞きしたかったが、御本人にお聞きするわけにいかないからよろしゅうございますが、これはあとで大臣にお聞きすることにしましょう。  次に、これはさっきも大臣が言われましたから大体御趣旨はわかりましたけれども労働基準監督行政について中小企業を主体にしてことしは大いにやろうとおっしゃったのでございますけれども、私どもその点非常に憂慮しているわけです。特に労政局長なんというものは法規を守らねばならぬといって、全逓の年末闘争なんかでも法律問題を非常にやかましく言われた。その点は非常にけっこうですが、言われるならば、人を責めんとするわれみずからも法を順守しなければならぬ。ところが同じ労働省の中にも、労働基準法が正しく行なわれているかというと、何もあなたの前任者を責めるわけじゃありませんけれども、行政監督官によってこれくらい幅広く行なわれている法律はないのですよ。実際正しく行なわれていますか。——行なわれていない。けれども、その面において、やはり過渡期ですから仕方がないのでありますけれども、ことしは合理化の問題が盛んであり、自由化の問題が叫ばれるときに、中小企業に働いている労働者を保護してやるという立場に立って労働基準監督行政というものは峻厳に法規に基づいてやっていただかなければならぬと思っていますが、新局長新任の御所見を承りたいと思います。
  34. 澁谷直藏

    ○澁谷政府委員 先ほど大臣からも御答弁がございましたように、私どもといたしましては特に貿易の自由化というような問題が身近な問題として差し迫っておる現在及び今後におきまして、労働基準法を日本経済の実態、特に中小企業の実態を見ながら、これを厳正に運用していくということが非常に重大な問題となっておるわけでございますので、先生の御指摘のように私ども全力をあげて法の適正な運営に努力して参る所存でございます。
  35. 小林進

    小林(進)委員 御趣旨を承りましたから、今度はおいおいに具体的な事例をもって次の機会にまたお伺いしたい。時間もございませんから、大所信表明をありがたく拝聴いたしまして、次へ移ります。  婦人少年局の問題について、婦人の内職の定義を私はお聞かせを願いたい。それから内職の施設、内職のあっせん業者というのはどのくらいの人員がいるものか。それから内職の定義と同時に、内職に従事しておる人は一体どのくらいいるものか。それから内職の施設、これは労働省が直接おやりになっておる施設じゃなくて、全国の施設を含めて、公私合わせて一体内職の施設はどのくらいあるのか、その程度。時間がなければあとでよろしゅうございます。  第二番目には、男女の賃金の格差は毎年々々激しくなってきておるのでございますが、この資料は私のところにあります。これに対して婦人少年局としては一体どういう手をお打ちになるか。格差を縮めてもらわなければ、だんだん日本労働行政が反動化しつつありますので、そういう点をお聞かせ願いたい。  第三番には、少年労働者の犯罪者がふえておるのですが、例の小松川の夜間学生も、やはり労働者立場で働いておる。そういうハイ・ティーン労働者の犯罪が毎年増加しておるのですが、そういうことに対する施策について伺いたい。  それから、これは去年の例ですが、長野市の旧市街で、世帯が三万世帯あるそうですが、その中で家内労働の希望の調査をしたら、一万一千世帯、大体三七%が内職を行なっておるという事実があったのです。編みものとか、洋裁とか、和裁とかで、黄金景気といっても、庶民階級にはそういう黄金の恵みがこないで、内職をほしい、家内労働をやりたい希望が全国的に一般化しているのですが、こういう家内労働の希望をどういうふうに満たしていくかということです。私ども新潟県ですが、新潟県でもおそらく推定五、六万世帯がこういう何らかの内職というか、家内労働に従事したいという希望があるのではないかと推定しますけれども、こういうことに対する婦人少年局のお考えをお聞かせ願いたいと思うのであります。
  36. 谷野せつ

    ○谷野政府委員 ただいまのことでお答えさせていただきます。  先生の御質問の第一の内職の定義でございますが、婦人少年局内職者の調査を実施しておりますので、この場合の定義を一応いたしたのでございます。内職を広く含めまして、家内労働という範疇に考ることができるのでございますが、家内労働の中には専業的な家内労働と、それから家庭内職とあるわけでございまして、一応私の方では家庭内職を主体として調査を実施いたしております。この場合に、製造業者もしくは仲介人から資材を受けまして、自己が選んだ場所、大体家庭において加工その他の作業をしてその業者へ返し、その間において工賃を得るものを家庭内職というというような、正確な文章ははっきり覚えておりませんが、そういう趣旨で家庭内職をつかんで調査を実施いたしました。  それから第二の、業者でございますが、現在どれくらい家庭内職を出している業者があるかははっきりいたしませんけれども婦人少年局昭和三十年から内職公共職業補導施設を、昭和三十四年度の現在において十六カ所運営いたしております。これは地方の公共団体で運営しているわけでございますが、ここの施設が大体業者を把握して内職者に内職をあっせんする仕事をいたしておりまして、その間において内職業者をつかみました調査の数がわかりますので、その数だけ申し上げておきたいと思いますが、大体十三万六千ほどの事業場を調査いたして把握いたしております。このうちで内職者に内職をあっせんするような仕事をいたしておるわけでございます。  それから内職者数につきましては、全国の調査がございませんで、この内職公共職業補導所が出発いたします前に東京、大阪、愛知において、普通住宅地区を対象にして、内職家庭がどれくらいあるかという調査を実施いたしました。その結果によりますと、都市において大体九%ないし一〇%、たとえばその当時東京で百二十三万世帯ございましたので、約十万世帯あったという数字が出ております。全国的にいろいろな調査を推計いたしてみますと、百五十万世帯くらいあるのではないかというふうに私どもは把握いたしておるわけでございます。  それから男女の賃金格差にどういう手を打っているかという御質問にお答え申し上げたいと思いますが、先生のおっしゃられるように、男女の賃金格差は昭和二十五年を境にしてだんだん開きが大きくなっているわけでございまして、現在四〇%くらいの程度になっているわけでございます。この賃金の格差を起こす事情については、婦人労働者の特殊性からくる問題が相当多いのでございまして、たとえば女子の労働力としての特質の、年令が若いとか、また勤続年数が短いとか、従事している仕事の性質が単純作業であるとか、いろいろ複雑な事情がございまして、この賃金格差を生じているわけでございます。しかしこの格差それ自体、男女同一賃金の違反であるということには考えられないわけでございまして、男女同一賃金の問題については基準局が厳正に法を執行していて下さいますので、私どもといたしましては、この法に不備のあります場合に基準局に注文申し上げる立場をとっているわけでございます。しかし、現在こういう賃金格差があるということは、婦人労働のほんとうの地位向上という点から考えますと私どもは好ましいと思っておりませんので、たとえば男女同一賃金の問題を進めるについていろいろ障害となりますような事情ども調査いたしますし、さらに婦人労働者の自覚並びに職場での婦人の取り扱い方、賃金を前提にするような、就業の機会に女子を高めるための啓蒙などの仕事といたしまして、年々調査を実施いたしまして、事業場の労使の参考にしていただきますと同時に、年間働く婦人の意見を伺い、またいろいろな情報機関などにもお願いいたしまして、この格差を縮めるための積極的な啓蒙活動をいたすことによって、この格差をだんだん少なくするように努力をいたしているわけでございます。  第三番目の、年少労働者のうちに犯罪者が増加しているというお話、確かに青少年の犯罪の増加と同時に、働いている少年の中に問題があることを私ども承知いたしております。結局この問題は、大企業に働いている年少者は、さまざまな点で福祉などの問題が恵まれているわけでございまして、特に中小企業に働いている年少者などが、条件が好ましくないために早期離職などをいたしましたり、あるいはその間に福祉施設などが伴っておりませんために悪に染まるような機会もございますので、私どもといたしましては、特に中小企業の年少労働者の保護と福祉を強力に進めて参りますために、今年度におきましては年少労働者福祉——企業組合の中で自主的に中心となって年少者の保護並びに福祉考えていただく方を企業組合の中に置いていただくことをお勧めいたしまして、この方々によって年少者が悪に染まる機会が少ないように保護並びにレクリエーションその他の仕事を積極的にやっていただくように進めて参りたいと思っておるわけでございます。  それから長野県の調査でございますが、三万世帯の一万一千世帯は、先ほど申し上げました率からいうと非常に高いと思います。非常に希望者が多いが、その希望者をどういうふうにしていく政策をとっているかという御質問であろうと思いますので、お答え申し上げたいと思います。内職の問題につきましては、特に就業の機会を円滑に進めて、仕事のほしい人にできるだけ中間の過程を少なくして仕事を与えるという政策を進めることが必要であると思いまして、内職公共職業補導所の予算をお願いいたしまして、今年度は五カ所増加していただきまして、二十一カ所になるわけでございます。従来から、仲介の手数料を省くことによって直接公的に内職者に仕事を与えるという仕事を進めて参ったのでございますが、私どもといたしましては、この内職という仕事の性格からいたしまして、どうしても内職で食べなければならないような方、ほんとうにほしい方に的確に仕事がいくように、さらにまた内職という仕事をどういうふうに考え——今後の産業政策その他にらみ合わせまして、どういう仕事をどういう人に与えたらいいかということの検討も進めて参りまして、内職の仕事がほしい人に的確に渡るように、この施設の運営を進めて参りたいと思っているわけでございます。
  37. 小林進

    小林(進)委員 どうも大へんありがとうございました。まだ質問はたくさんありますし、安定局長にも申し上げたいのでありますが、時間が経過いたしましたので、後日あらためてお伺いすることにいたします。
  38. 永山忠則

    永山委員長 午後二時まで休憩いたします。     午後零時四十九分休憩      ————◇—————     午後二時四十四分開議
  39. 永山忠則

    永山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の通告があります。これを許します。滝井義高君。
  40. 滝井義高

    ○滝井委員 昨日の続きでございますが、昨日御質問申し上げておきました、まず第一に国民健康保険の療養給付期間を転帰までとしておった場合に、それを三年なら三年に保険者が短縮をするという場合——延長する場合は知事とその条例の改正について協議をすることになるが、短縮の場合は協議をしなくてもいい、こうなっておるわけですね。これは立法者の精神としてはそういう精神ではなかったと思うのです。ところが今度は厚生省の方で政令をお書きになるときには、延長の分だけを協議事項にされておるわけですね。これは一体どういうことでこうしたのか。これは立法者の意思に反しているじゃないかというのが第一の質問の要点です。これから先に一つお答えを願いたい。
  41. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 国民健康保険は大体名市町村において実施しているのが原則でございまして、市町村の当局としては、当然自分のところの市町村民の福祉をはかるためにそのことを考えていくということは前提として私も差しつかえないと思います。従いまして、全部市町村の条例にまかせるということにしてもいいのでございますけれども、ただ保険財政の関係につきまして、新しく給付の内容拡大するというような場合において、それが保険財政の方にどういうふうになるか、そのためにあとになって保険が破綻を来たすというようなことも従来間々あったものでございますから、そういう点の懸念において、この政令にそういう場合に知事の承認を得る、こういうふうにいたしたわけでございます。
  42. 滝井義高

    ○滝井委員 延長すれば財政に破綻を来たすということもあり得ると思います。しかし住民の側から考えてみますと、給付の期間を短縮されるということは重大問題なんですね。しかも一家の家計にとっては、今までは転帰まで見てもらえると思って計画的に治療をしておった、ところが途中で三年まで——もちろん既得権はそういうことはないと思いますけれども、そもそも加入をするときにもそういう考えのもとに加入しておった、ところがそれが途中で三年に短縮されたということになると、住民は大恐慌なんですね。私はこういう点は、社会保障の段階においてどうもちょっと納得がいかないところがあるのです。これは、あなた方がそういう工合に延長のときだけを重んじて短縮のときを軽視しておるということは、やはり困ったことだと思うのです。この点、もう一回適当の機会に検討していただきたいと思うのですが、大臣どうでしょうか。
  43. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 十分検討の上、一つ結論を出してみたいと思っております。
  44. 滝井義高

    ○滝井委員 これはもうすでに政令でそういうことを出しておるわけですから、あやまちがあれば改めるにはばかってはならぬと思いますから、御検討願いたいと思います。  それからもう一点は、地方税法で市町村民税の減免をされた者は国民健康保険に加入をさせないことになっておるわけです。国民健康保険条例準則の五条に、「(被保険者としない者)」「次の各号に掲げる者は、被保険者としない。貧困のため市町村民税(特別区民税)を免除されている者及びその者の世帯に属する者」となっておる。貧困のために市町村民税を免除されておる本人とその世帯に属する者、いわば家族は、これは被保険者となることができない。そうしますと、国民皆保険において、特に大都市に国民皆保険政策を実施していこうとする場合に、一番問題なのは、いわゆる低所得階層なのです。しかもそれらの層は移動が多い、なかなか把握しにくい、こういう問題がある。ところがその人たち国民健康保険に加入ができないということになると、この数は相当のものになると思うのです。一体厚生省は、東京とか大阪とか福岡とか名古屋とか京都というような大都市に、どの程度国民健康保険に加入の資格のない者があると考えておりますか。
  45. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 地方税法によりますと、市町村民税の免除をいたします者、大体最初から非課税の対象にいたします者は、生活保護法の生活扶助を受けているものでありまして、その他のものはまず市町村民税の対象とする。しかしそれもまた現実に納められぬという場合で免除する場合もございます。大体そういう体制になっておりますので、市町村民税を決定いたします場合において、生活扶助を受けている者以外は大体市町村民税の対象になる、そういうふうに私ども考えております。ただしその年度の途中において、またそういうところに陥る者もありましょう。それはそのときから非課税の対象にされる、かように考えております。
  46. 滝井義高

    ○滝井委員 生活保護を受けておる者は当然対象になる。ところが地方税法の二百二十三条に市町村民税の減税というのがあるのです。これはお調べになっておると思いますが、ゆっくり読んでみますと、「市町村長は、天災その他特別の事情がある場合において市町村民税の減免を必要とすると認める者、貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者その他特別の事情がある者に限り、当該市町村の議会の議決を経て、市町村民税を減免することができる。但し、特別徴収義務者については、この限りでない。」こうなっておる。そこでこの条文からいきますとまず疑問が起こるのは、「貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける着」ということです。公の扶助というものは生活保護法だと思います。私の方の扶助は一体どういう場合があるのか。私の扶助を受ける者は、減免されておるわけですから国民健康保険の対象にならないわけです。あなたの方の所管の国保の被保険者としない例として、一体どういう場合がありますか。
  47. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 地方税法の三百二十三条には、お説のような条文があると思います。ちょっと詳しいことを申し上げるわけに参りませんが、現実には私の扶助を受ける者というのは、私の方では今ちょっと思い当たらないわけであります。そういう公私の扶助を受ける者について市町村民税を減免することができるということになりますれば、その場合においてはおそらく国民健康保険の保険税の方も同様な取り扱いをされるのではないだろうか、かように考えております。
  48. 滝井義高

    ○滝井委員 同様な取り扱いをされますが、その者は国民健康保険には加入できないということになる。それは市町村民税の減免をされた者は被保険者としないのですから。
  49. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 免除されている者、これは落ちるわけであります。減額されている者は入る。
  50. 滝井義高

    ○滝井委員 私が言うのは、地方税法に公私の扶助を受ける者と書いておりますから、一体今の日本の立法形態の中で、地方税法にこういう明文を書いておって、公のものはわかる、ところが私のものを受けておるという場合に国民保険の対象にしないという理論的な根拠は一体どこから出てくるかというのです。これは皆保険政策というものを考えた場合に、私は出てこないような感じがするのです。これは現実に大阪でも実は問題になっておるところなんです。公私の扶助というその私とは一体何ぞや。わからない。あなた方も今わからないとおっしゃっているが、わからない。こういうわからないものの入っているものを、今度はこの条例を作る場合に、頭からかぶせて、減免を受けている者は被保険者にしないのだ、こういう書き方になっておるわけです。これは少しこまかになりますけれども、不要な要素を含んでおるのですよ。それは、今度はこういう場合をもう一つ考えてみますと、今生活保護を受けている人あるいはこれから生活保護に転落したという人は、国民健康保険の被保険者から除外されるわけです。ところが非常に貧乏だ、しかしまだ生活保護を受けるところまではいかぬ、市町村民税も免除してあげておきましょうという生活保護の単給の場合があると思うのです。これは市町村民税を納めていないのです。その単給の人は国民健康保険に入れないのかどうかということなんです。単給をやるときはどういう決定をするのかというと、ミーンズ・テストをやるわけです。ミーンズ・テストをやって、なるほどあなたは一文も負担することができないということになれば、全額国持ちの医療券を出すわけです。ところがこの者がミーンズ・テストをやった結果、五百円負担することができる、千円負担することができるということになると、一部負担の決定をして医療券を出すわけです。そうするとその人が一部負担の決定をされたならば、もしもその人が国民健康保険の被保険者であれば、その保険証によって半額が全部免除されて、そうしてあと半額は保険者が見てくれるわけですから助かるわけです。ところがその者は国民健康保険に加入ができないという悲劇が起こって、その人たちは現金で支払うことができないので、みんな公的医療機関は未収になっておる。特に精神病院ではこういう事態が起こっておる。これはこの前私がここで指摘をしたわけです。この最終的な支払いの責任は一体だれが持つのだということになって、高田社会局長は、それは国は持ちません、本人が持つべきなんだと言われた。そうすると、本人が持つとするならば、本人は千円を払えるという福祉事務所が決定したにもかかわらず、それを払わないのだから、福祉事務所の認定違いではないかという私は主張をしたのですが、それがなかなか通らないのです。現在そういう未収が精神病院を中心としてたくさんだまっておる。しかもその一部負担金のほとんど、六割なり七割が未収になっておる。それが積もり積もって、ここ四、五年をずっと累計しますと、国立病院では二十五億からの未収が出ております。益谷行政管理庁長官が指摘したことを私もこの前大臣にも言いました。こういういわば保険の谷間、保険の盲点になっておるものも大都市にはあるということでしょう。この点については、おそらく国民年金の拠出制が出た場合に、その対象者はもっと多いのだが、実際に把握できるのは三千万から三千二、三百万ではないかというような数字が出ておったと記憶しておりますが、私は大都市にこれができた場合に、そういう家族もひっくるめて四、五百万くらいの盲点の人が出るのじゃないかという感じがするのですがね。この点はどう解決しておりますか。
  51. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 国民健康保険はやはり保険料をかけて、そして給付も受ける、これが原則だと私は思います。その保険料を最初から全然かけることができないという方、これは現実には今の場合でいきますと市町村民税の非課税の対象になる、こういう人たちでありまして、この人たちはそういう意味国民健康保険からはずされます。そうでない方は大体国民健康保険法の方で何ほどかの保険料は出していただく建前になっております。たまたまその人が病気になって生活保護に陥るというようなことになりますと、それは国民健康保険法の保険料を納めることが事実上できなくなっている。これは国民健康保険法の方で保険料の徴収免除というような措置を講じておるわけであります。それが長く続くようになりますれば、これは生活保護の方へ移って、国民健康保険の方とは一応縁を切る、こういうふうに私どもは今割り切っているわけであります。生活保護法の中で何がしかのものを本人が持つという意味の一部負担というお話でしたが、全額給付でない、一部給付というような場合はあると思いますけれども、私の方はその問題とは一応別個に考えているわけであります。
  52. 滝井義高

    ○滝井委員 この問題はなかなか議論のあるところでございますが、大都市における国民皆保険政策を推進する上において相当の無保険の人が今後やはり出てくるということです。これは一つ、そういう保険のない人のないように、すべて何らかの形で保険に入れていただきたいと私は思うのです。その場合に、あなた方は一挙に生活保護で救えばいいとおっしゃるけれども、ミーンズ・テストという難関があって、簡単に生活保護の医療扶助のワクの中には入りにくいという隘路があるわけです。そこでそういう人たちについてはやはり保険の恩典に浴させておいて、その人のかわりにたとえば国が保険料を払い込んでやるというような政策考えられると思うのです。どうせ医療券を出して見てやるとするならば、やはり一応保険という対象の中に入れておいて、安心さしておく必要があろうと思う。そしてなお自己負担分についてどうにもならぬというなら、ミーンズ・テストをして医療券を出すというような何か制度にしておかぬと、どちらにも入れぬ、そして谷間に落ち込んでおるという盲点が今の制度ではできておるのです。だから社会党の政策では、今後やはり生活保護の対象の人たち国民保険に全部入れておこう、そしてその分は国が保険料を払っておこう、そうしますと半額だけは払えるのですから、あとの半額の自己負担分について医療券その他で考えていけば問題が解決するというわけですが、生活保護から国民健康保険、国民健康保険から生活保護に移るときに必ずブランクがそこにできる。これは日雇いだって何だってみな同じです。従ってそこにブランクのできない制度を一つ考えて下さい。  そういうことで終わりますが、さいぜんの地方税法の「公私の扶助」という「私」の方、これは法律に書いておるからには何か具体的にそういうものがあると思うのですよ。そこで、これはあなたの方と自治庁と一ぺん打ち合わせてみて、そういうものがあるのかどうか、もう一ぺん御検討を願いたいと思います。  次に、昨日の質問の過程で出たいわゆる一本化の問題でございます。私は、中央社会保険医療協議会あるいは臨時医療制度調査会の行き詰まりを打開するのは、診療報酬点数表の甲乙二表の一本化という、このものが一つの大きな障壁だから、ここから解決の糸口を見出していくべきだと思う。大臣は、調査会なり医療協議会の方は三月末までには何とか発足せしめたい、根本的な打開は一本化だ、一本化についても一つ考えてみようというお話があった。そこで私は、一本化については、昨年七月以来いろいろ問題が起こりましたが、考えておったわけです。そこで、その私個人の考えも少し述べながら大臣の所見を要綱的に承ってみたいと思うのですが、甲乙二表を一本化する方法は、大体大きく分ければ六つくらいあるようであります。一つは、世にいう現在の乙表なら乙表で一本化する方法です。一つは甲表で一本化する方法です。すなわち、乙表を全部抹殺してしまう、そうすると甲表だけが残る、あるいは甲表を全部抹殺してしまう、そうすると乙表が残る、こういう、甲表で一本化する方法、乙表で一本化する方法、二つの方法があります。第三番目は、甲でもない乙でもない新しいものを白い紙の上に書くという方法が一つあります。もう一つは、今度は昭和三十三年十月に戻るわけです。そして、十月当時の点数表、現在の乙表の基礎になった点数表ですが、その点数表に戻して、単価を八・五%に上げていく、一円上げていく。すなわち乙地区の十一円五十銭を十二円五十銭に、甲地区の十二円五十銭を十三円五十銭に、こういう案があります。もう一つの方法は、昭和三十三年十月に戻して、当時議論されたのは注射と投薬が不合理だということだったので、注射と投薬だけを合理化して、単価を今言ったように一円だけ上げる方法がある。もう一つの方法は、もうすでに甲表と乙表が実施されておるのだ、歯科は甲表をとっておるのだ、こういう現状認識に立って、この段階でうまく話をまとめようとするならば、それは今や両者の和解以外にないという、和解なんです。大ざっぱに言ったらこういう六つの案があるのです。そこで私は、いろいろ客観的な情勢を分析して、今の段階でいくとすれば一体どれが一番いいだろうか、政治というものは政治家が泥をかぶる必要がある、右顧左眄しておったらものは解決しないと思う。だからこれは客観的な情勢を見て、これが一番いいと思ったら、そのいい方向に向かって政治を推進していく以外にないのじゃないかという感じがいたします。そこで私は今の六つばかりの案をいろいろ検討してみました。ここでどの案にしたらどういう隘路があるということになりますと、あといろいろ検討する上に問題が出てきますが、私はそれらの六つの案を検討した結果、私個人として見ると、やはり物事をうまくおさめていくならば、言葉は悪いが、甲乙両表の調整案と申しますか、和解案と申しますか、そういうものがいいんじゃないかという感じがするわけです。そこでそういう和解案、調整案を作るということになると、それを作る場合に今の点数表で一番困るのは、甲表はとにかくとして、乙表で困るのは、小数点以下があって、事務が複雑になるということです。そこで請求に非常に間違いが多い。これは過去のまるい時代の請求と、今度の小数点がついた請求の返戻の数を見ると、おそらく返される数がふえていると思うのです。そこで、一本化した点数表を具体的に作る場合には、甲乙両表を合理的に調整をして、端数のないまるい数字——まるい数字といっても、十点とか十五点とかいうことじゃなくて、三点とか四点とか五点とか、こういう端数のない数字にして、事務の簡素化をするという第一の心がけが必要じゃないかと思うのです。大臣も、一本化はやらなければならぬ、早くやるのだとおっしゃっておるのですが、大臣、こういう点についてはまず第一にどうお考えになりますか。
  53. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 ごもっともなように感ぜられますけれども、今ここで直ちに私が、さようでございますというようなことにつきましては、いろいろな実態調査、その他等ともにらみ合わせ、あるいは各界からの資料等も集め、研究さしておる次第でございますので、とうとい御意見として十分に参考に資したい、かように存じます。
  54. 滝井義高

    ○滝井委員 私が大臣にお尋ねせんとすることは、少なくとも今後作られる点数表は小数点以下があるというようなことでは困るじゃないか。たとえば会社の重役でも、今みんな健康保険を持っております。一九六〇年度の二百万も三百万もするクライスラーに乗って診察にやって来ます。そうすると、多分耳の片側の処置は二・五点だったと記憶しております。二十五円ですね。そうすると、そのクライスラーに乗って連れて来た重役の嬢ちゃんが見てもらうと、十二円五十銭払えということになる。家族ですからね。そうすると、今の世の中で五十銭を集めるというのはなかなか大へんなことなんです。こういう問題があるわけですね。そうしますと、これはやっぱり、なにかまるい数字にして、あんまり銭なんかつかぬような工合にできれば一番いいのですが、これはある程度やむを得ぬことかもしれませんけれども、端数のないものにするということ、こういう点は大臣賛成でしょう。
  55. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 ごもっとも御意見だと私も思いますけれども、何しろ私もこういう端数はどういうふうにするかということにつきましては、しろうと考えなものですから、今ここに事務当局もおりますし、傾聴すべき御意見として事務当局に検討さしてみましょう。
  56. 滝井義高

    ○滝井委員 おそらくこれは常識だと思うのです。そこにかって有名な厚生事務次官として鳴らした亀山先生もおいでておりますが、先生自身が病院経営に当たって、今の端数の多いのはいかぬということを先生自身もおっしゃっていますよ。  次に、当然端数は削るべきだと思うのですが、あなたも一本化するということはおっしゃっておるわけですから、一本化する場合には、私はやはり一つの時点をとらなければならぬと思うのです。これはかつて医療費体系を作るときも一つの時点をとったのです。昭和二十七年の三月、十月の時点をとって調査をやったわけですね。その場合に、やはり総医療費に変化を与えてはいかぬのだ、たとえば総医療費二千億なら二千億というそのワクには変化を与えてはいかぬのだ、同時にそのワクの中で、今まで活動をしておる、診療に当たっておる病院、診療所という個々の医療機関の所得にも変化を与えてはいかぬのだ、こういう原則を立てられたのですよ。こういう原則は、今後一本化を考える場合に当然考えなければならぬ要素だと思うのですが、そういう点はどうお考えになりますか。
  57. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 大体こういう改正をいたします場合において、そのときの情勢にもよると思いますけれども、ある場合には、総医療費をふくらますということが、前もって関係者の間に了承されている場合もございましょう。またある場合においては、そういうことは了承されない、今の総医療費のワクの中でやれということが言われることもあると思います。しかし、同時にまたその改正をいたしますと、医療費の総ワクがふくらみます場合においては、比較的措置はやさしいかもしれませんが、医療費のワクはふくらまざるを得ないんだというようなことで中をいじることに相なりますと、いじった結果として、必ずやある部分がふくらむ、そうするとそれと反射的にある部分がへこまざるを得ないというようなことが起こりまして、そういうことのために、医療費のワクをそのまま押えて点数改正をすることはなかなか容易でないということが、過去においても私どもも経験しておるわけでございます。従いまして、もし医療費のワクをふくらまさないでもって中の点数なり内容をいじろうといたしますならば、これはよほど関係者の方々の間に十分なる了解が得られておりません限りは、これはどうしてお最後までの間において破綻してしまうのではないか、かようなことを、今承っていて感じたような次第であります。
  58. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、保険局長の方で一木化する場合には、医療費のワクはふくらませる方針で一本化する方針ですか。
  59. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 これは先ほど申し上げましたように、関係者の方々の意向次第にもよるわけでございますが、常識的に私どもは、こういうものに手をつけました場合には、若干であろうとワクがふくらむということにどうもなるような感じを持っております。
  60. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、厚生省の方針としては、過去の経験にかんがみ、総医療費のワクをふくらまさないということをきめておっても、ふくらむという結論になる、こういうことのようでございます。それならば一応ふくらませないという原則は立てていないと、話が進まぬのではないかと思うのです。たとえば二十七年の三月、十月に、厚生省自身が医療費体系をお作りになったときも、当時の担当局長であった曽田さんは、やはりこういう原則を立てた。あなたは、当時は児童局長だったと思う。それで、あるいは直接関係がなかったかもしれませんが、立てたのです。ですから、結果はなかなかあなたのおっしゃるようにきちっとはいかないかもしれませんが、原則は、総医療費のワクの中で話を進めていく。個々の医療機関の収入にそう大きな変動を与えない。今、極東の範囲が問題になっています。いわゆる安保条約四条における協議をする極東の範囲と、六条による米軍が出動する極東の範囲というのは一致するかどうか、岸さんは一致すると言っておった。ところが藤山さんはおおむね一致します、こうなった。私は、あれはわれわれの運命に関する重要なものだから、おおむね一致するというような言葉では困ると思うのですが、これはそうこのワクがふくらんだからといって人間の命には関係がないわけですから、おおむね一致するという程度でいいのではないでしょうか。どうですか、今までのあなた方厚生省の過去の実績は、こういう実績でわれわれに説明してきたのですよ。きょうになると、あなた方は総医療費のワクの中ではできぬ、ふくらむのだ、こうなると、過去の厚生省のやり方と違うことになるわけです。だから私は、原則としては、総医療費のワクの中で個々の医療機関の収入に大きな変動を与えないこの程度の原則というものは、やはり認めて入っていかなければならぬのではないかと思うのですが、そういう原則を立ててもふくらむからだめだ、こういうことになるのですか、そこらあたりはどうですか。
  61. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 先ほども答弁申し上げましたように、過去の経験に徴してみまして、こういうものを改正するということは同時に合理化することでございますので、極力目の子でもっていいかげんなことにならないようにしようと思いますと、今の医療費のワクを動かさないでやることはなかなかむずかしい。あまりそれにとらわれますと合理化の方がどうもなおざりになりがちでございます。原則的ということで、それはおおむね大体どの辺のことをいうかということにもなるのでありますけれども、やはりその点は、あらかじめこの関係者の方々に十二分に頭の中に入れておいていただいて了解を取りつけておいてやるというのでないと、ともするとあとになって話が違うとかいうようなことも起こりがちではないか、こういうことを心配するわけです。
  62. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、過去の経験によれば総医療費のワクの中で個々の医療機関に大きな収入の変動を与えないということで話をしても、なかなかそうはいかぬ実例が多い。従ってそれをやるとすれば十分関係者に納得の上で話を始めなければいかぬ、これが厚生省基本的態度だ、よくわかりました。  次は、十五人委員会というのが厚生省に、三十三年の十月の甲乙両表を作る前にできておったと思うのですが、あれは一体今はどういう工合になっておりますか。
  63. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 あれは御承知通り三十二年でございましたか、甲乙二表を中央社会保険医療協議会に諮問いたしました際に、いろいろな事情日本医師会、日本歯科医師会の意見を聞く機会がなかったということで、特にそのあとで両者の意見を聞くために集まって懇談をしたということでございまして、それは一応それだけでたしか終わって、今日は何ら動いていないと思います。
  64. 滝井義高

    ○滝井委員 あれは閣議了解で作ったものですか、大臣の私設機関的なものですか。
  65. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 別に十五人委員会とか何とかいう名称は持っておりません。巷間にそういうことを言う人もいるということです。ただ私どもは先ほど申し上げたように、両医師会の意向を聞くために何人かが集まって懇談し、その意見を聞いた、こういうことでございます。
  66. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、昨日も厚生大臣がお答えになったように、医療協議会なり、臨時医療制度調査会を三月末までくらいに発足せしめていく、同時に一本化も目鼻をつけたい、こういうことになると、どこか中心になってそういうものをやるところができておらなければならぬと思うのです。厚生省はそういうものはどこでおやりになりますか。保険局自身がおやりになりますか。それとも何かそういうものを、一応あらかたの結論を出すために別なものでもお作りになってやるのか、この点はどういうお考えですか。
  67. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 昨日大臣の御答弁に、いろいろ滝井委員からの御質問の点については、十分考えていこうというような趣旨のお答えがあったと思うのでありますが、この一本化の問題は申し上げるまでもなく関係する団体、方面が相当ございます。そこで一本化をするということにつきまして厚生省だけが突如として案を考えて、それを医療協議会あたりに出しましても、これが必ずしもスムーズにいくというしろものではない。むしろ今日の段階におきましては、この甲表、乙表という二表があることがよろしくないから、できるだけ合理化された一本の案にしようということについて関係団体の各方面の意見が建設的に一致してくる、その一本化する中身についてはそれぞれの立場の意見の違いはありましょうけれども、とにかくそういうことに一本化していこうじゃないかという各方面の意向がそういう方向に建設的に集まって、まとまってくるということが、私どもとしては何をおいても一番大事なことであると思います。そういう点につきましては、今日の段階では残念なことには必ずしも十分でない。従いましてそういう点については大臣の指示も受けて、極力そういうふうな人たちの志向を相談もし、懇談もして、そういう方向に機運ができ上がってくるというところで、初めてそれから作業に取りかかる、まあその作業に取りかかるにつきましては、あるいはこの厚生省考えるということになるかもしれませんし、あるいは医療協議会の中で、また専門的なことでやるというようないろいろな考え方はあると思う。しかし何と申しましても基本は、そういう関係者の方でこれを一本化しようという機運において一致してくれるということが何としても前提で、これさえ確保できますれば、あとは比較的仕事というものはいくのじゃなかろうか、かように考えておるわけであります。
  68. 滝井義高

    ○滝井委員 ちょうど世界で雪解けだということに対して岸総理が、いやそうじゃない、世界は今や武力の均衡の上にある、こういう岸総理の認識があなたで、社会党の認識が私というような今の答弁だ。私は情勢は作らなければできないと思うのです。少なくとも医療問題については、今の情勢は一人でできる情勢にはないのです。だからどこかが主導権を握って作らなければならない。だから私はさいぜん冒頭に申し上げたように、大臣の言うように、三月までには大事な医療制度の調査会を発足せしめる。中央社会保険医療協議会が現実に軌道に乗っていない、機能を喪失しておる、この医療協議会の機能を回復せしめ、軌道に乗せるためには一体どうしたらいいかというのがこの問題の発端なんですから、そうすると関係者が雪解けをみんな認識をして、そうして一つの土俵に上がって、さあ相撲を仲よくとりましょうということを待つのでは、三月の医療協議会の発足、医療制度調査会の発足というものはできないですよ。そこで問題は今日の段階というものを認識をして、そうしてこの認識の上に立って、一体日本の皆保険政策社会保障を前進せしめるためにはどうしたらいいかといえば、これは七団体だって、あるいは医療担当の団体だって、みんな社会保障を愛し、日本国民医療の前進を願わない者は一人もいない。この点については一致しておるのです。一致しておるならば、この一致点を基礎にして、一つみんな裸になって土俵に上がって下さいということをやらなければいかぬと思うのです。その上がる問題は一体何なのか。それはすでに国民健康保険の連合会が議決をしておりますよ。今のような甲乙二表の状態では、国保の末端の事務機関というものは大へんだ、すみやかに一本化してくれ。これは保険者の団体のチャンピオンの国保連合会が言っておる。時期はまさに雪解けが来ておるのです。少なくとも今後日本の九千万の国民の中の四千八百万人が三十五年度末には国民健康保険に入ろうとしておる。少なくとも国民の半分を占めるものの団体が一本化を早くしてくれ、こう言っているんですから、まさに雪解けです。行司がすっと軍配を引けば相撲が取れる段階です。そこでその軍配役は一体だれがやるのだ、これは渡邊厚生大臣、あなたですよ。あなたが少しは泥をかぶるかもしれません。しかし私は初めに予言をしておった。厚生大臣の寿命というものは、長ければ一年、短いと七カ月か八カ月ですよ。だから渡邊さん、あなたが少しは泥をかぶっても、日本社会保障の歴史に、あるいは厚生省の歴史に、これは特筆大書される問題です。そういう意味で、今日の段階では合理化された一本化は必要なんだ。必要なんだが、意見の一致ができるかどうか、こういう局長の消極的な退嬰的な考え方ではだめです。これは一つ意見の一致をさせる情勢を作らなければならない。そのためにはみな土俵の上に上がって下さいという行司役を渡邊さんがやらなければならない。それをやる場所は何なんだ、かつて十五人委員会がその役割を演じたが、今度は十五人委員会を使うか、あるいはもっと別なものを作ってその役割をさせるか。出た結論を今度一体どこに持っていくか。その持っていき場所は、それは法律的には社会保険診療報酬について、少なくとも今の日本法律機構の上で審議をするものは、これは中央社会保険医療協議会以外にない。ところがこれは機能が麻痺してしまっておるのだから、この機能も同時に回復させるということが第二段階の問題として、この問題を審議する過程の中で作っていかなければならないわけです。そうしますと、前もってそこにそれぞれの関係者の意思の統一をはかり、土俵に上がってもらって話し合いがぴしっとできたならば、今度はその結論を持って医療協議会に入っていく、そのときには半数の委員もぴしっと任命できる段階が私はくると思うへぼ将棋じゃないけれども、四つ、五つくらい先の手まで読んだ対策というものを立てていかなければならないと思うのです。そういう意味で、こういう考え方でいけば保険者の団体の意向もちっとも無視されない。どうですか、十五人委員会というものを作ったが、現段階でこの事態をほんとうに雪解けをりっぱにさせていく——もっとも八田君の意見によると、雪解けといったって、南の方は雪が解けるとなだれになるし、北の方は凍りつくという説もありますよ。八田君が何かそんなことを書いたのを読んだことがある。雪解けといっても南と北は違うという説もありますが、今度は利害がある程度一致する人々です。なぜならば医療協議会が開かれていない、根本的な医療制度の改革もできていない、こういう大きな氷山が前に立ちふさがっているときですから、みなが一つ寄って、前面に立ちふさがっている厚い氷の壁をたたきこわさなければならないというならば、みんなが力を合わせる以外にない。だからみんなにそこに寄ってもらって話し合いをして一本化のある程度の結論を出して、これは私の案によれば十日もあればできますよ。長くても一カ月あればできます。従って、そういう意味で、大臣、この際一本化のためにフランクに日本社会保障を前進させるという、その情熱のみで集まってもらって、一切の過去の行きがかりを水に流して、そうして話し合う一つのグループというものを作る必要があるのじゃないか。そうしてそのグループの話し合いが意気投合したならば直ちに医療協議会を軌道に乗せていく、こういう方法が私は今の段階ではとり得る、しかも残されたたった一つの道だと思うのですが、大臣、どうですか、今の私の説明を聞いて……。
  69. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 お説の通りでありまして、今までいろいろな経過的あるいは歴史的とでもいいますか、いろいろないきさつがございましたが、しかしながら、今や大分各方面の理解というか機運というものが燃えて参っておりますので、私は各方面に対しまして、話し合いの場を作ることが先決である、こういうことを申し入れておりますので、話し合いの場によってお互いに民主的にこれが事を運んでいきたい、こういうことで鋭意努力中でございます。
  70. 滝井義高

    ○滝井委員 物事にはやはり加速度というものをつけなければいかぬと思うのです。従って糸口が見えてきたら、さっそくその糸口から今度は精力的に追求し、押していかなければならぬと思う。これによって急速に私は加速度がついて問題は解決できると思うのです。そういう意味で、今私の主張に対して大臣は、ぜひそういう雰囲気を作って共通の場の中から打開をしてもらいたいという御意見です。全く私の意見と同じですから、ぜひ一つ間髪を入れず、お帰りになったら、すぐ今夜でもその構想を深夜静かにお練りになって、二、三日うちにはその構想をぴしっと出すくらいの迅速な政治をやってもらいたいと思うのです。  それからもう一つ、この前同僚の河野君が地域差の問題をここで質問したのです。あなた方は地域差を廃止するのだとおっしゃった。時期はいつと言わなかった。しかし、今地域差で必要とする財政的な資金と申しますか支払いの額というものは、一年間にどの程度ありますか。
  71. 館林宣夫

    ○館林説明員 甲表で五%、乙表では八%でございます。それでこれをならして引き上げるとすれば、総医療費の三%前後の差額と思います。政府管掌七百億といたしますと、二十一億程度であります。実際は七百億余でございますが、計算の簡単なために……。
  72. 滝井義高

    ○滝井委員 これで私も安心したのです。その額が私は非常に多いのじゃないかと実は心配しておったのです。そこでこの地域差を二カ年計画でやるべきだと私は思う。この二カ年計画でやるについて、その財源は、予算委員会でいずれやりますが、約束の三十億を取り戻してもらいたい。渡邊厚生大臣は知らないかもしれないが、三十億出すことを約束しておったのですから、池田さんなり一萬田さんがかたい約束をしております。これは速記録にも載っておる。あなたの方は、あの千億に削られたときに、その速記録を持っていって予算折衝をやっておるのです。私は知っておる。当時の保険局長は高田さんだった。次長が今の年金局長の小山さんだったでしょう。われわれがとった言質を基礎にして予算折衝をやっておるのです。それが負けておりますが、これは公約違反なんです。そこで地域差が、甲が五%、乙が八%、三%の差額で、政府管掌二十一億程度だとすれば、これは私は二カ年間でできると思う。これは今の御説明で明らかです。三十億もらわなくてできると思う。そうしますと、大体今私は、一本化について端数をなくしてまるい数字にしていく、同時に一本化した場合には医療機関の収入に増減を与えぬ、総医療費のワクを変えない、地域差を少なくとも年次計画二カ年間くらいで撤廃していくんだ、こういう質問をしたわけです。これで一応医療協議会さえ通れば一本化ができることになるわけです。そのかわりあなたに政治的に共通の土俵を作ってもらわなければならぬ。ほんとうの土俵に上がる前に、いわゆるトレーニングをやる土俵を作ってもらわなければならぬ。そうして機が熟したならば、本土俵の医療協議会に上げていく、こういうことになる。もちろん現在の医療協議会というもの、これは再検討しなければならぬものなんです。これはすでに私がここでいろいろ述べておりますから繰り返しませんが、おもな点は、現在の医療費というものがもはや一国の予算編成をゆるがす程度に重大なものになってきたということです。総医療費三千億をこえるということは、単価を一円引き上げても一国の予算をゆるがす程度になってきたのですから、現在の医療協議会のあり方でいいかどうかという検討の問題がある。それから国民健康保険法なり健康保険法の改正によって、保険医療機関というものが新しく概念として出てきたわけですが、機関の、地域を代表するものが医療協議会に入っていない、そういう点から、医療協議会は再検討しなければならぬ。その再検討は一応この問題が終わったあとでいいと思う。とりあえず現段階では、今の医療協議会を活用して、とにかく医療協議会という本土俵にすべては上げて、一本化だけは必ずやる、これが一段階です。そうすれば二段階は、ことしの予算で千四百万円の医療経済の調査費が計上されておる。医療経済の具体的な実態調査をやっていくためには、少なくとも全国の医療機関の全面的な協力を得ないとほんとうの実態的な調査ができない。それは二十七年の三月と十月調査というものは曽田さんが心血を注いでやった調査でしょう。しかし、それはアインヴァントが入ってきた、苦情、異議が入ってきた。それはどうしてかというと、療養担当者の団体が関知していない。それは間違いであるという異議が入ってきた。そこでそういう異議が入ってきたものを基礎にして医療費体系を作ったところに現在の混乱の根本的な原因があったわけですから、今度はそういう過去の轍を踏まずに堂々と、やはり日本の医療機関にそれぞれの部署で全面的に協力をしてもらう必要があろうと私は思うのです。その協力を得るためには、前段の問題で、やはり和気あいあいのうちに相撲がとられておるという姿をまず作っておくことが必要なんですね。そして第二段階の調査になってくるわけです。そうするとその調査は、あの予算を組むときに説明したように、ことしの十月なんということになると、これはもう時期がおそいです。そこで、雪解けは今や急速に進みつつあるのですから、これに加速度をつけ、促進をするためには、むしろ私は五月といいたいところですが、五月にできなければ少なくとももっといい——今、何か調査をやるのには三月と十月あたりが一番いいのだというのですが、十月というのはあんまり患者の多くないときなんですが、いいとおっしゃいます。しかしまあそれは、私はこの段階ですから、科学的な烱眼をもってやるならば、あえて五月であろうと八月であろうと、そう大して変わりはないと思うのです。従ってこの時期を繰り上げてやる。そうして根本的な調査が終わったならば、それを基礎にして、日本の医療費のあり方、日本の専門技術者としての医師、歯科医師、薬剤師の技術料というものは一体どういうものでなければならぬかという根本的なものを、その五月か八月か十月の調査できちっときめていくわけです。同時に、今まで問題になっておる点は、物価が上がった、国民所得が上がった、生活水準が上がった、その場合に専門技術者の技術料を一体幾ら上げるかという、これが確立されていないところに混乱が一つあるのです。従って、今度は根本的調査とともに、その補正の計数と申しますか、いわゆる国民所得の上昇生活水準の上昇、物価の変動につれて技術料を直し得る一つの原則と申しますか、指数と申しますか、そういうものをも同時にここで確立をしなきゃならぬと思うのです。そういう第二段階の作業というものは、これは少し時間をかけてじっくりやる。とりあえず現在の雪解けを促進をして、日本の医療が、皆保険政策というものが、三十六年の四月一日には軌道に常々と乗っておるという、こういう姿をとらなきゃならぬと思うのです。  そういう点について、私は今当面の対策と、同時に根本的なものとを述べて質問をしておるわけですが、大臣どうですか。その後段の、すでにことし千四百万円という予算が、これはもう修正をすることはありませんから、予算が通ればあなたの手元に入ってくるものなんです。今あなたのうしろにおられる牛丸審議官の手元にこれは入ってくるんです。いわゆる経済調査と、それから臨時医療制度調査会の実質的な経費がありますから千四百何ぼだと思いますが、そういうものが入ってくるわけです。そうすると、これをやっぱり保険者、被保険者、療養担当者の団体の全面的な協力で、有効に活用しなきゃならぬと思うのです。そういう意味で、今のような二段階方式をとらなければ、この雪解けというものが最終的にほんとうに水になることはできない、こう私は思うのですが、その点はどうですか。
  73. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 先ほども申しましたように、各方面の理解ある協力にお願いいたしまして、そうしてできるだけすみやかに話し合いの場を求めたならば、私はあなたのおっしゃられるような方向に、あるいはそうした時期も比較的世間で見るよりも早いんじゃないか、かように考えている次第であります。
  74. 滝井義高

    ○滝井委員 比較的早いんじゃないかと思うということでなくして、やはり大臣の決心、昨日も申し上げましたように腹のくくり方によりますから、やはり早くするんだ——私は情勢というものは、人間が作るものだと思うのです。同時にその情勢の中から、人間は作られるものだと思います。弁証法的な言い方になるかもしれぬけれども、やはりわれわれ人間は社会によって作られ、同時に社会はわれわれ人間を作りつつあるものなんです。そういう意味において、あなたは昨日、三月までには医療協議会も医療制度調査会も発足せしめていく、こうおっしゃったのですから、その前の段階というものはそれの前に発足しないと、あとの段階が発足できないと思うんですね。そういう点で、四月一日くらいには新しい点数が日本の医療の上に輝かしい光をもって動いていくという状態を、ぜひ一つ作ってもらいたいと思うのです。そうしますと、ちょうど内閣改造が行なわれても、なお渡邊厚生大臣には非常に大きな重要な任務が課されておるというので、われわれ社会党もあなたの留任運動を、先頭を切って同時にやるということになるわけです。これは、おそらく日本社会保障に関心を持っている人は、全部もう一ぺん一つやってもらいたいということになることは、私は確実だと思うのです。で、四月一日号くらいを目途として、一つぜひその一本化をやってもらいたいと思うのです。きょうはわざわざ質問をするためにこうして書いてきたのです。同時に初診料あたりも十点くらいとか、こういうふうに点数までも実は書いてきましたが、私にこれを全部作れというならば、私は十日くらいで全部の点数をやってしまうのです。しかしそこまでやるのもおかしいと思いまして、まあまあ凡例にしたのです。しかし基本的なものの考え方をこういう場合に腹をくくってやれば、これはわけはないのです。太宰保険局長以下俊秀雲のごとくあなたの下におるわけですから、その人たちが頭を少し働かせて、そうして外部の諸団体の御協力と、それから専門学者の協力を得れば、これは立ちどころにできると思うのです。重ねてお尋ねしておきますが、三月末くらいまでには一本化のために大道を開いていただける、こう確信してよろしゅうございますか。
  75. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 三月末くらいまでを目途といたしまして、懸案の医療制度調査会を持ちまして、それが解決すれば、やはり医療協議会といったものも自然と軌道に乗ってくるんではなかろうか。あなたは昨日、甲乙一本化の問題が先決じゃないかと言われましたけれども、今の情勢からは、やはりいろいろ学識経験者等を網羅いたしまして、医療制度の根本の問題を最初に検討する医療制度調査会というものを先にさせていった方が現実政治の上に穏当であろう、かように考えておりますので御了承願います、
  76. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、ちょっと昨日と違ってきたわけですね。私は、その認識は、一本化を先にやらぬと医療制度調査会というのは動かないと見ています。だから昨日、大臣はそういうことにしたいと言ったんだけれども、きょうはまた、岸さんじゃないけれども、ちょっと答弁が変わってきたんですね。
  77. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 そんなことはありませんよ。速記録を見ていただけばわかりますよ。
  78. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、あなたはどうですか。医療制度調査会を先にやって、そうしてその調査会の中で一本化をやる、こういうことですか。
  79. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 今問題になっておるのは、医療制度調査会が発足することによって、それらのものがやはり並行的に、あるいは多少時間のずれがありましても徐々に解決していくんじゃないか、なるべく早期に私はやりたい、こういうことでございまして、医療制度調査会は三月末くらいまでを目途として、そうして各階層の方々の御参集を願いたい、こういうことでございますから、どうぞ誤解のないように一つお願いいたします。
  80. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、さいぜん太宰さんと私との間に一問一答をやりました。とにかく今雪解けなんだ、それを促進しなければならぬ、そのためには、医療協議会というものがまだルートの上に乗っていない、従ってその前にやはり一本化のために懇談をする十五人委員会というものがあるが、これを活用するか、あるいは別個の何かそういうものを作らなければいかぬのじゃないかと言ったら、まさにその通りだということをあなたもおっしゃったし、太宰さんも、そうなんだと、こうおっしゃっているわけでしょう。そうすると、それを作るということは、同時に、一本化への道をも開き、医療制度調査会が軌道に乗る道をも開くことになるわけなんです。その点は間違いないんでしょう。
  81. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 医療制度調査会の問題は、私どもは今早急に開きたい。それから甲乙一本化の問題につきましては、昨年十一月の決議もございまするし、厚生省の歴代大臣の方針でもありまするので、これもできるだけすみやかに処理いたしたい、こういうことで今苦心をしておるところでございます。
  82. 滝井義高

    ○滝井委員 くどいようですが、こういう問題は、保険者とか、被保険者とか、医療団体にあまり気がねをするといけないです。大臣はあつものにこりてなますを吹くというような気がねの仕方をしておるのです。それが私は厚生行政の停滞した原因だと思う。やはり思っていることをずばり言った方がいいと思う。そうして、言ったことによって反応が起これば、その反応を見てまたみんな集まってもらったらいいのです。ところが大臣がはっきり言わないものだから揣摩憶測して、ちょうど群盲象をなでるような状態になってしまう。大臣がああ言ったからああだろう、こう言ったからこうだろう。象の鼻と足は違いますよ。それじゃいかぬと思う。こういう場所で、ここまで問題が来たなら、やはりはっきり言う必要があるのです。私は、医療協議会なり医療制度調査会を軌道に乗せるためには、一本化をやります、それじゃやるならば一体いつやるんだ、それは医療制度調査会より先にやるか、あるいはあとにやるならば具体的にどういう方向であとでやるのだ、やはりこういうことをはっきり言う必要があるんです。そうすると、前の段階では、そういうものを土俵に上げる雰囲気を作るためには話し合いの場を作らなければならない、こうおっしゃっている。話し合いの場所を作れば、そこで当然一本化の問題が出てくるのです。そうして、一つ場所ができれば、医療制度調査会と、医療協議会と、一本化の問題と、三者が並行して進みますよ。こういうものです。ところがあなたのように、医療制度調査会を先にやるのだ、そして一本化はあとでやるんだ、こういうことになると、私は問題は進まないと思います。だからそういう点で、前の段階のそういうものを順当に進めていく潤滑油的な役割を演ずる何か話し合いの場というものは、厚生省がどこかにこれはお作りになるんでしょう。前の段階でお作りになるということだったのですよ。また話が変わるんですか、どうですか。その点もう少しはっきり言って下さい。
  83. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 話し合いの場を作ることは、私どもは今盛んにその努力をいたしております。従いまして、その話し合いの場が今度正式には医療制度調査会にもなる。医療制度調査会になれば、ただいまあなたがいろいろ申されたような医療協議会の問題も出てくるでしょうし、甲乙一本化の問題も出て参りましょう。それらはここにはっきり順位をつけて、ここで明言はできないと思うのです。
  84. 滝井義高

    ○滝井委員 それ以上追求しませんが、とにかくこれはお互いに理解だけは共通の理解をしておかぬと、大事なことですからあとで間違いが起こりますからね。そうしますと、あなたとしてはお互いの話し合いの場というものはやはり作りたい。それが一番先行していう、そうしてその話し合いの場の中から医療制度調査会の委員の人選とか、そういうようなものも具体的に出てくるだろう。そうして各界の学識経験者なり——この前はあなたは三つ言いましたね。療養を担当する側と、受ける側と、財政学、経済学の権威をも含めた学識経験者二十人以内をもって作るというのが医療制度調査会だったのです。これはあなたの言ったことを私はみな暗記しておりますよ。そうなるわけですから、従って先行した話し合いの場から医療制度調査会ができる。そうすると、その話し合いの場には当然一本化の問題も出てくる、こういうことになる。同時にその中から今度は、それは前後はあるかもしれないけれども、医療協議会の十二人の委員の任命の問題も出てくるだろうし、同時にそういう十二人の委員の任命のできなかった根本的な問題は、病院側から多賀さんの問題が起きてくる。私はざっくばらんに歯に衣を着せずに具体的に申し上げますが、こういうことになってくると思うのですよ。そうすると、これは天下周知の事実ですから隠す必要はないのです、厚生大臣の、厚生行政担当の責任者としての大臣からその責任において、やはりこういう工合にこの壁はたたき割っていくという方針を示さなければいかぬと思うのですよ。あまり貝のように閉じこもっておっては、とても行政の進展はできませんよ。だから医療金融公庫をお作りになった、監査問題をお片づけになった、その次にはもっとより多くそれらのものをひっくるめて重圧になっているものをどけなければいかぬと思うのです、私はそれから先よけいのことは申し上げませんが、一つ共通の話し合いの場だけは先行していく、この理解だけは一致しますね。それから先ほどあなたの言うように、医療制度でもいいですよ、それが先に進むならば。その次に今度は一本化の問題ができるということでもかまわぬです。私はそこまでは譲歩してかまわぬです。どうです、その認識は政府とわれわれの間に一致点を認めていいでしょうね。局長頭を振っておるようですが、どうですか。
  85. 渡邊良夫

    ○渡邊国務大臣 大体お説のような方向で進んでおるわけですが、なかなか関係者も多いことでございまするので——やはり現実政治として、ある一方に雪解けがあって、一方に氷結するような事態が起こらないように私は持っていきたい、かように考えて、多少憶病じゃないかというようなふうに見えるかもしれないけれども、憶病になるのが最も勇気が要るのであるということを私はつくづく感じている次第でございますから、何分の御協力をお願いいたします。
  86. 滝井義高

    ○滝井委員 よくわかりました。昔の人が、最も暗いときが最も暁に近いときだ、こう教えてくれましたが、おそらく今が一番あなたの苦しいときだろうと思う。しかしあなたの一番苦しいときが、またあなたにとっては最も東に太陽の輝くときに近いときですから、一つせっかく今の通り努力して下さい。
  87. 永山忠則

    永山委員長 次会は明十八日午前十時より理事会、十時半より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後三時五十七分散会