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1960-04-22 第34回国会 衆議院 国土総合開発特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月二十二日(金曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 寺島隆太郎君    理事 濱田 幸雄君 理事 松田 鐵藏君    理事 足鹿  覺君       池田 清志君    鴨田 宗一君       木村 守江君    進藤 一馬君       砂原  格君    田中 榮一君       高石幸三郎君    二階堂 進君       服部 安司君    毛利 松平君       小松信太郎君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁総         合開発局長)  藤巻 吉生君  委員外出席者         議     員 中村 梅吉君         農林事務官         (農地局参事         官)      庄野五一郎君         農林事務官         (水産庁漁政部         漁業調整課長) 木戸 四夫君         通商産業事務官         (企業局工業立         地課長)    柳井 孟士君         運輸事務官         (港湾局管理課         長)      岡田京四郎君         建設事務官         (計画局総合計         画課長)    佐土 侠夫君         参  考  人         (佐賀大学教         授)      田町 正譽君         参  考  人         (東京大学助教         授)      新澤嘉芽統君         参  考  人         (全国海苔貝類         漁業協同組合連         合会会長)   庄司  嘉君     ――――――――――――― 四月二十二日  委員秋田大助君、志賀健次郎君、丹羽兵助君、  坊秀男君及び松澤雄藏辞任につき、その補欠  として鴨田宗一君、砂原格君、服部安司君、毛  利松平君及び高石幸三郎君が議長指名委員  に選任された。 同日  委員鴨田宗一君、砂原格君、高石幸三郎君、服  部安司君及び毛利松平辞任につき、その補欠  として秋田大助君、志賀健次郎君、松澤雄藏君、  丹羽兵助君及び坊秀男君が議長指名委員に  選任された。 同日  理事志賀健次郎君四月二十二日理事辞任につき、  その補欠として島村一郎君が理事に当選した。     ――――――――――――― 四月二十一日  未開発地域における建設事業国庫負担率引上  げに関する請願鈴木善幸紹介)(第二五四  六号)  同(今井耕紹介)(第二六九八号)  未開発地域開発促進事業に対する国庫負担率  の特例法制定に関する請願本村守江紹介)  (第二七五一号)  中国地方開発促進に関する請願足鹿覺君紹  介)(第二七五二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事の互選  臨海地域開発促進法案川島正次郎君外五名提  出)      ――――◇―――――
  2. 寺島隆太郎

    寺島委員長 これより会議を開きます。  この際、お諮りいたします。理事志賀健次郎君より理事辞任いたしたいとの申し出がありますので、これを許可し、その補欠選任につきましては、委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 寺島隆太郎

    寺島委員長 御異議なしと認め、島村一郎君を理事指名いたします。     ―――――――――――――
  4. 寺島隆太郎

    寺島委員長 臨海地域開発促進法案を議題といたします。本案について、参考人より御意見を伺うことにいたします。御出席いただきました参考人は、佐賀大学教授田町正譽君東京大学助教授澤嘉芽統君、全国海苔貝類漁業協同組合連合会会長庄司嘉君であります。この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。本日は、御多用のところ御出席下さいまして、ありがとうございました。本委員会では、ただいま臨海地域開発促進法案審査中でありますが、各位の御意見を承り、審査参考にいたしたいと考えておる次第でございます。なお、御意見開陳の時間はおおむね十五分程度とし、忌憚ない御意見をお述べ願いたいと存じます。  最初に、佐賀大学教授田町正譽君の御意見を伺いたいと存じます。田町正譽君
  5. 田町正譽

    田町参考人 ただいま御紹介にあずかりました田町でございます。私は農業土木専門でありまして、干拓農地造成農業水利というようなことに関係しておりますが、一週間前、突然本委員会参考人として出席を求められましたので、何の準備もなくまかり由ましたようなわけで、何分九州という僻地におります関係上、見解が狭いために、あるいは焦点のはずれたこと乞申し上げるかもしれませんので、ありかじめ御了承を願っておきます。北九州工業地帯から山口県を初め瀬戸内海沿岸に、近年目立って発展して珍りました臨海工業地帯を見ますときに、海面を自由に輸送に利用し得るという点で、実にすぐれた工業立地条件」恵まれているということを感じておりました。これは、西欧諸国河川浬河の舟運に依存する工業地帯とは、輸送の便の面で雲泥の相違があります。大阪湾伊勢湾東京湾またしかツでありましてこの立地条件を完全」生かして、長期的計画のもとに、最も合理的な工場住宅配置並びに背板施設の整備を行なっていくためには、本法に示されているように、その地域々々に応じて基本計画を立て、それに従って調整しつつ推進すること臥、臨海工業地帯開発のために、まこと機宜に適したことであると存じます。  ただ、その運営にあたっては、どこまでも民主的であり、地方自治体の権限を十分尊重し、また、民生の安定を十分考慮し、資本主義の独走をある程度規制するというようなことが希望されます。今後工場規模はますます拡大せられる傾向のようでありますが、国土狭小人口過剰のわが国において、工場用地埋め立てによって海面に伸びるよりほかなく、また幸いにして、現在考えられておる湾奥部地域は、浅海であって、埋立工事は比較的容易でありますが、そこで直ちに問題になるのは、漁業に対する適正な補償と、その離職者対策であります。これについてはすでに論じ尽くされておると思いますので、省略いたします。さて、さきにちょっと触れましたように、瀬戸内海沿岸工業地帯を見ましても、あの広大な工場敷地は、もと耕地として造成されたものが大部分を占めておるように認められます。また、海岸地帯を離れた鉄道沿線や、都市近郊に非常な勢いで発展しつつある工場敷地住宅公共施設、学校、保健、娯楽等機関、それから道路鉄道等敷地となって壊廃しつつある既耕地面積は、年々一万町歩ないし一万五千町歩に及ぶことは、軽々に見のがし得ないところであります。わが国耕地面積は、全国面積のわすかに一四・五%、約五百四十万町歩にすぎません。全人口の四〇%は農業に従事し、その生産する食糧が、全人日を養っておるという状態でありまして、農家一戸当たりの耕地面積は一町歩に足らず、経営規模はあまりにも狭小で、人口増加とともにますます零細化をたどり、他産業に比し、とうてい太刀打ちできません。ただ食糧が保証されているというにすぎないで、農業土地をその基盤的資本とする企業には違いないのでありますが、企業ではなく、むしろ生業にすぎぬという感がいたします。農地の犠牲において工業が発達し、工業過剰人口過剰労力を吸収し得れば問題ありませんが、そこには必ず限度があり、いわんや、工業が次第に合理化していきますと、その限界は案外早く到達するのではないでしょうか。現在、有明海、伊勢湾その他遠浅の海岸では、干拓による農地造成が非常に強く要望され、農林省所管として国営もしくは代府県営として、多額の事業費を投じて行なわれつつあることは、御承知の通りでありますが、これが予算の制約を受けてなかなかはかどらず、いろいろの批判を受けておりますが、それが一カ所でも完成したときに、入植希望者が殺到して、その選考に全く手をやいております。それほど農民農地を場渇望しております。農業の所得は少なく、生活の水準の低いことを熟知しながら、それに対し強い執着を持っておること、特に生産力の高い干拓地を非常に希望しておる事実は、為政者として看過することはできないということを、国会の先生方に特に申し上げておきたいと思います。  本法は、主として臨海工業インダストリー地帯開発対象としておりますが、特例として九州では鉱業地帯、マイニングの地帯もあって、それが沿岸の、干拓と競合した例があります。これを国家的見地からいかに調節するかというような問題も、本法の定める審議会の処理に付すべき範囲に入るのではないかと存じます。円滑に調停するということが、すなわち、開発を促進することになると思いますので、御参考のために申し上げます。  実は昨秋、福岡県の柳川地先干拓計画と日鉄鉱業の石炭採掘とが競合になりまして、農林省対通産省が鋭く対立し、専門家を集めて意見を聞くことになりました。委員はもとより中立であるべきでありますが、おのおの専門の立場がありますので、長時間もみ合いました結果、干拓採炭も、いずれも国家的に見て重要であるが、同時に行なうことは技術的に非常に困難であるので、まず採炭を優先するということになりましたが、何分にも、委員技術的の権威者ではありますが、経済法律等専門家がおらなかったために、国民経済ないしは社会経済の面から分析して、それが正しかったかどうか、いまだ疑問であります。その場合、石炭は海底において掘りますが、その坑内に出入する施設は、陸上の水田をつぶして建設し、さらに採炭が進むにつれて、鉱員住宅地道路、その他の用地数十町歩陸上に要求しておりましたので、私は農地転用認可について質問しましたところ、農林省ダム水没地補償と同様に取り扱うような模様でありましたが、農民が多年努力を傾倒してようやく熟田化した旧干拓農地を、二、三百万円の補償金で買収して済むものかどうか、はなはだ割り切れぬ感がいたしました。それらの用地は、すべからく会社が海面埋め立てて作るか、しからざれば代替地干拓によって作るべきであると思いましたので、日鉄採炭施業予定地区七百町歩、これを採掘するのに五十年かかりますが、それを包括して、その外郭を取り巻く二千町歩の大規模干拓の構想を提案しました。これによって、採炭による陥没地はそのまま放置して、河水をこれに導入して淡水化し、容積四千万トンの貯水池として、その周囲に八百町歩耕地と五百町歩工場敷地を作るのであります。大干拓は、今後は農地造成だけでは成立しません。やはり工業と関連してやるべきであると思います。  これと同様な問題は、伊勢湾でも起こり得ると思います。でき得れば、工業地帯農業地帯と一括して計画することが有利であると考えられます。  また、いずれの臨海工業地帯としましても、工業用水飲用水をいかにして確保するか、最も憂慮される問題でありまして、地下水の汲み上げには限度があり、陸上からの引水は、農業用水と直接深刻な問題を引き起こしがちであって、この解決もまた審議会の重要な任務となりましょう。ダムを建設するとしましても、水没地農民に対して代替地を提供するために、干拓を行なうということも必要になっていくと思います。  なお、ちょっと簡単に、私のこの法律に対する要望を申し上げさしていただきたいと思います。それは、この基本計画樹立は、内閣総理大臣が各大臣と協議して立案しなければならないとなっておりますが、この内閣総理大臣といわれているのは、ここに直属する機関がおやりになるのだろうと思いますが、どうぞ最も権威ある方々によって、この基本計画が樹立されることを希望いたします。  それから、第三条の三に「建設大臣を通じて、」ということがございますが、この建設大臣は、おそらくただ窓口であるという意味かと存じますけれども、これは内閣総理大臣がおやりになるとすれば、経済企画庁長官が当たらるべきものではないかというふうに考えます。  それからこの審議会構成につきましても、最後に「学識経験のある者」ということがございますが、これにいたしましても、学識と同時に十分経験を持っていらっしゃるというような方をぜひお願いしたいと思います。私のごときは、学識はあるけれども、夫経験者であって、おそらく資格がないと思います。  そういうようなことをちょっとつけ加上えて申し上げます。(拍手
  6. 寺島隆太郎

  7. 新澤嘉芽統

    ○新澤参考人 私は土地改良技術をやっておりまして、そのほか、資源調査会専門委員といたしまして、工業立地計画に多少参画しておるだけでありますので、間違った意見を申し述べるかもしれませんが、そのときは質疑のときに訂正いたしたいと思います。  第一条の目的のところでございますが、「この法律は、経済の発展及び人口増加のすう勢にかんがみ、」というふうに、ばく然としたことが書かれているように感じられます。その内容を私考えてみますに、臨海工業地域を作るということは、あまり内陸部ではできないような工場、たとえば火力発電であるとか、製鉄であるとか、製鋼であるとか、石油精製であるとかというような、原料を多量に海外から求めまして、それをまた船積みにして出す、こういうような大規模工場立地として必要であるという、はっきりしたものであろうかと思います。従って、そういうようなことをはっきり出された方がいいんじゃないか。  それからこういうような臨海埋め立て計画というのは、地方庁あるいは地方公共団体が、みな自分の思惑でもって全国的に多数のペー。八丁・プランを持っております。これを優先的にどこを選ぶかということがはっきりいたしませんと、限られた財政状態のもとにおいては実行できないだろうと思います。従って、この法律は、まず一番大切なものは、全国的な配置をどういう順位においてやるかということを決定することでなければならないと思います。その点が欠けておると思います。  それから第三番目の点は、既存権利との調整、たとえば漁業権、あるいは臨海埋め立てをやりますと、当然工業用水の問題が出て参ります。たとえば伊勢湾埋め立てにいたしましても、工業用水がとれるかとれないかが、埋め立での立地をきめるものであります。その水利権ということになりますと、川からとらなければいけない。川ということになりますと、農業水利権との調整の問題が出て参ります。これがきまらなければ、埋め立て規模というものはきまらないわけであります。従って、この水利権あるいは漁業権との調整ということは、埋め立てが成功するかしないかのめどでありますから、こういう点をはっきり目的の中に――調整するということを大目的一つにあげなければならないものだと思います。  それから第四番目といたしましては、既存施設との調整の問題でございます。これはこのたびの伊勢湾台風の災害を見ましても、埋立地被害はそれほどでありませんでしたが、埋立地背後は大きな被害を受けております。それはどういうところに原因しておるかと申しますと、埋立地を作るというと、背後に今まであった堤防というものが要らないような感じがしてくるわけであります。ところが、高潮が参りますと、それが埋め立てくらいは乗り越えまして、背後に大きな被害を与える。従って、その背後地との境界に大きな堤防をやはり残さなければならないものだと思います。こういう点が、やはり既存施設をこわしてしまうような現象があります。あるいはまた、道路あるいは鉄道というようなものは、前面に大きな埋め立てができた場合には、現状ではおそらく、現在の東京のような状態になって、機能を失ってしまうことも予想されます。こういうように、既存施設との調整問題も、やはり埋め立て計画としては基本的な問題だろうと思います。こういう点も目的のところにはっきりと打ち出すべきであろうと思います。  それから第五番目といたしましては、他の諸計画との調整問題でございます。これはやはりただいま田町参考人が申されましたように、干拓計画との競合問題、あるいは地域全体としての都市計画の問題、それから工業用水の問題、道路の問題、また電力の問題、それぞれがみなそれらの中の構成要素として、埋立地というものがあるものだろうと思います。決して単独にそれ自体としてあるものではない。そうしますと、その全体計画の中においてそれらがどういうふうに組み合わさるかということ、それをはっきりと打ち出すものでなければならない。そういうものが、この目的を見た場合に、あまりにばく然としていてわからないのであります。  それからこの法律案を全体として拝見いたしますと、どうも審議会と、それから審議会のなすべきこととして地域指定基本計画、それだけのことが書かれておりまして、もう一つ具体的に書かれておりますのは、別の法律を定めて事業の施行に当たるということであります。こういうことでありますと、われわれといたしましては、意見を述べにくいのであります。なぜかと申しますと、具体的なことはほとんどない。ただありますのは、組織の問題だけであります。組織組織の大まかなことが二つだけきめられておるというのでありますと、この法律が成立した場合に、具体的にどう動いていくかということが想像できないわけであります。ただいま申しましたように、いろいろな問題もありますので、それがうまくいくかどうかということも、内容がわからないと、非常に意見を述べにくいわけでありますが、第二条以下のことにつきまして、感じたことを申し上げたいと思います。  この第二条におきまして第三条には関係都道府県知事意見を聞くとかいうようなことは書かれておりますが、第二条で、もう地域指定によって――先ほど申しましたように、地域を指定するということは、全国的な視野に立った配置順位によってなされなければならないという考え方に立ちますと、第二条のときに、すでに知事意見を聞く、それからまたでき得べくんば、公聴会というようなものを開きまして地元あるいは関係地域人たち意見を率直に聞くと同時に、こちらの政府の意のあるところを地方に周知せしめまして、合理的な計画であるかどうかということを、はっきり地元に周知せしめるような組織があった方がいいのではないかと思われます。  それから第三条につきましても、同様な意味で、地元の、たとえばこういう大きな計画がなされますと、いろいろの関連施設の問題が出て参りますので、たとえば伊勢湾をとりましても、必ずしも愛知県と三重県と岐阜県との意見が一致するとは考えられません。工業用水の問題をとりますと、愛知県と岐阜県とは全く利害が相反しております。こういう場合に、地元意見というものをなるべく最初から聞きまして、そしてそれが調整のとれるような計画を作らなければならないと思います。そのためには、基本計画の立案にあたりましても、その前に地域指定にあたりましても、地元の声があらかじめ反映するような組織が必要だろうと思います。  それから第四条になりますと、第四条では、やはり先ほど申しましたように、この計画が成功するかいなか、あるいはもっと安いコストでできるかどうかということは、工業用水農業用水との調整というような問題がうまくいくかどうかによって、きまると思われますので、その調整の問題を、第四条でも、基本計画にはそういう要素を重要なものとして考えてやるべきであるということを記載していただきたいと思います。  それから第五条では、具体的な調整をやる仕組みが書いてございますが、その場合に、たとえば河川法につきましては、おそらく農業水利権というようなものとの調整の問題であろうかと思いますが、この場合、農業水利権はほとんど慣行水利権でありまして、それと工業用水とをいかに調整するかということになりますと、慣行水利権内容については、現在の建設省知識は非常に低いものだと思われます。なぜかというと、明治から大正にわたりましては、大きな河川つけかえというような大工事をやりましたので、農業水利調整の問題をその当時の内務省の技術者は熟知しておりました。ところが現在では、そういうような行き方ではなくて、上流にダムを作ってやるというようなことですから、大きな河川つけかえ問題というようなものは出て参りません。技術者はほとんどそういう経験を持っておりませんので、おそらく河川法の中で、慣行水利権許可水利権と同様と見なすということで、裁判などで問題になりますが、建設関係では、その河川法所管官庁である建設省でありながら、慣行水利権については非常に知識が浅いように感じられます。むしろこの問題については、農林省の側に、農業水利を直接日常の業務といたしておる者の方が知識が深い。こういう点は十分――ただ河川法ということによって律せらるべきではないと思います。それから海岸法につきましても、先ほど申しました通り伊勢湾台風のような問題がありますので、堤防埋め立てとの相互関連というような問題でも、やはりそういう面が、重要な計画を作る場合の基本線になるかと思います。そういう点がはたしてこういうことだけで具体的にいくかどうかという点が、私はこの問題だけではわからないのであります。  それから第十条の審議会にかけるべき事項でございますが、それには先ほど申しましたように、産業適正配置を決定する――産業と申しますか、埋め立て適正配置全国的な配置を決定するということを、当然その調査審議内容とすべきではないかと思います。つまり、どこもかしこも適地であれば、それをすぐ審議地域として指定するというのではなくして、全国産業を十分検討いたしまして、優先順位つけてその配置をきめる、あるいは干拓との相互関係をきめる、こういうようなことは、当然審議会審議対象となされなければならないし、一番大切なことであろうと思われます。それからもう一つ審議会の仕事といたしましては、十六条に規定されております別の法律実施の問題ですね。別の法律できめるとなっている実施の問題は、当然審議会の重要な審議項目となるのではないかと思われます。それが欠けておるように思われます。  それから十一条の委員構成でございますが、これにはやはり技術的な問題が非常に重要でありますので、技術者をもっとふやさなければならないのではないか。十人では総合的な見方というものはできないのではないかという感じがいたします。それからこれは、私は資源調査会専門委員として参加いたしておりまして伊勢湾の報告を昨年出しましたが、あれなどを見ましても、資源調査会というものは、非常に客観的に、どこの利害にもわずらわされないような組織でありますから、科学技術庁の長官委員に加えるべきではないかと思われます。それからまた、資源調査会会長学識経験者として加えられるべきであろうと思われます。  こういうようなわけで、結論的に申しますと、どうも内容がどういうふうに行くのかわかりませんので、意見を非常に申し述べにくいのでありますが、この法律がもし間違った方向に行くならば、たとえば埋立地がなかなかできないとか、あるいはできても、それを企業が買ってくれないとかいうわけで、草がはえてしまったり、そしてまた、それが地域指定がされながら、財政的な裏づけがないために、実行できないままにずるずるとしておって、ほかの事業を施行するのが妨げられるというようなことになっては困ると思います。  これらの点が、この法案を見た私の感じでございます。(拍手
  8. 寺島隆太郎

  9. 庄司嘉

    庄司参考人 私は全国海苔員類漁業協同組合連合会庄司でございます。  本委員会におかれましてただいま御審議中の臨海地域開発促進法案は、臨海地域におきまする工業用地造成、それからそれに関連いたしまして、いろいろな諸施設が考えられますので、そういった施設の整備の実施を促進するための基本目的を持っておる、かように考えております。  そこで、この法案目的といたしまするところは、わが国の近代産業の発展あるいは人口増加、こういうふうな趨勢から見まして、私は必然の要請  であろうと思っております。また、従来海面埋め立てにつきましては、埋め立ての起業主体が県であり、あるいは市であり、また町村あり、会社あり、あるいは個人があるというふうに、非常にばらばらにやっていらっしゃったわけなんです。海面を生産の基盤といたしまして生活いたしております漁民の立場から見ますると、今申し上げましたように、ばらばらにやられておっては非常に困るのであります。そういう点から見ましたときに、今度の法案におきましては、大局からごらんになりまして、そうして総合的に、計画的に臨海地域開発をしよう、こういうことに相なっておると承知いたしております。つきましては、今申し上げました二点から見まして、本法案の御審議に対しましては、深く敬意を表しておる次第でございます。  しかしながら、この開発対象となります臨海地域――臨海地域ではないと思うのですが、臨地海域だろうと私は思いますが、この地域におきましては、零細な漁民がたくさん生活をいたしておりまして、もしこの計画に基づきまして――われわれがうわさとして聞いております範囲では、相当広大な計画があるやに伺っております。そこで、もしそういうことに相なりますと、零細な漁民の諸君は非常な打撃を受けるように相なるわけでございます。つきましては、この計画をかりに推進すると相なりまするならば、零細漁民の犠牲というものは、最小限にとどめるような施策が当然必要であろうと考えております。最近におきましてのわが国の水産業は非常に発展して参っておりますが、その大半というものは、資本漁業によるものでございまして、生産面から見ましても、八十数%を資本漁業の手によって握られておる。そうして自余の一七、八%が零細な業者によって生産されておるような状況でございます。そこで、もしこの法案が施行されまして、この計画実施されることに相なりますと、ここに生活いたしております業者は非常に困るわけであります。特に私の考えますことは、漁業生産の最近の傾向を見ますと、漁民層は増加いたしております。一方、資源はだんだんと枯渇いたしまして、そのアンバランスの中で生活をしておる。全国沿岸漁業の中で、ひとり浅海漁業だけが一番明るい窓になっております。もしこの一つの明るい窓を閉ざすということになりますと、ただ浅海養殖業だけではなしに、全国沿岸漁業に大きな影響があるのではないか、こういうことが憂慮されるような次第でございます。  そこで、もう一つは、この明るい窓を閉ざされることは、今申し上げました通り、非常につらいのであります。一方、漁民の立ち上がりと申しましょうか、あるいは職業転換と申しますか、そういう方途が講ぜられない現在にありましては、今申し上げましたような線で展開して参りますと、今後重大な社会問題を提起するだろうと思っております。特に私の考えますのは、現在の沿岸浅海増殖漁民の経営能力あるいは経営の才能、こういう点から見まして、海で働いてこそ一人前の仕事がやれます。ノリもとりますし、あるいは貝の採取もやりますけれども、これが一たび陸上に上がって参りますと、一人前の仕事ができないだろうと思うのであります。従って、漁業権に対する財産補償をしてもらうということがありましても、その金を十分に活用できないだろう。そうしますと、いずれは近い機会にこれは社会から転落していくことになるのではないだろうか。もとより、われわれといたしましてその点について十分配慮もして参らなければならないと思っておりますが、その点が最も懸念されるような次第でございます。現在行なわれております埋め立てば、公有水面埋立法によりまして漁民の同意のもとに合法的に行なわれておるのでございます。何分にも漁民の諸君が生活に窮しておるというような関係から、わずかばかりの補償金にも手を出すのでありまして、そこが非常に困ったことになっておりますが、これは不本意ながら、最後にはわずかばかりの補償金に目がくらむといいましょうか、同意をいたしまして、その結果というものは、最後に生活の行き詰まりになってくる、こういうのが実情であろうと思っております。そこで、こういうふうな情勢下におきまして、臨海開発促進法によりましての積極的な実施計画が表面に出て参りますと、さらにそれに拍車をかけまして、漁民の退嬰的な漁場の放棄というような事態になりはしないだろうか、こういうことが懸念されるのでございます。  それから、先ほど申し上げましたような浅海の漁場でございますが、この漁場そのものの生産と申しますか、津海漁場だけの生産は、年間約三百億円といわれ、あるいは五百億円ともい上れておりますが、相当な生産額になって、そしてそこに約二十五万人の従業員がおるわけでございます。この浅海漁場がもし全面的に埋め立てられるということに相なりますと、先ほども申し上げましたように、全体の沿岸漁業に影響する。また、かりに一部でありましても、御承知でございましょうが、浅海増殖業は種があるのであります。その種によって増殖をやっております関係上、種場を押えられますと、それに依存いたします各地の漁業者が非常に困るわけであります。ノリの種、貝の種、こういうのは全部、たとえば一組合に対して十カ組合から二十カ組合が依存関係を持っております。そういう点から見まして、われわれとしては非常に憂慮しておる。また、浅海地帯は御案内の通りモ場でございます。モ場というのは、稚魚の発生地である。そうすると、この稚魚の発生地を閉ざされるということになりますと、ますます資源の枯渇ということも起こってくるであろう、こういう点が一番心配されるのであります。そこで、私の考えといたしましては、漁民の生活の基盤である優良漁場はもちろん、ノリ、貝類の種場でありますとか、さらには今後期待されますような優良な漁場というものは、あくまでも存置いたしまして、わが国沿岸漁家層の生活の安定をはかるような社会的、産業的政策が必要であると存じますので、この点特に申し上げたいと思います。  一方、工業立地との調整の問題でございますが、不生産的な漁場もないとはいえませんので、そうした漁場を放棄いたしますことも、やむを得ないとは私は存じます。  以上申し上げましたような理由から、漁業政策、すなわち、原始産業と近代工業との調整という観点から、何らか別途に浅海増殖業、沿岸漁業を守るような立法措置をお願いといいましょうか、お考えいただくならば、大へんしあわせではないだろうかと考えております。もちろん、農林省におかれましても、そういう点はお考えはございましょうし、また、考えておらなければならないと思っております。  そこで、ただいま趣意を申し上げたのでございますが、法案について申し上げますと、第一条には「産業基盤の育成強化と民生の安定向上に寄与することを目的」となっておりますが、法律の全体を拝見いたしましたときに、やはりこれは調整的なものを多分に含んでおるのではないかと思うのであります。従いまして、先刻新澤参考人からもお話がありましたように、この調整ということをはっきり第一条に明記してもらうのがいいのではないかと思うのであります。  それから第二条におきまして、第一項に「内閣総理大臣は、臨海地域開発審議会審議を経て、臨海開発区域を指定することができる。」と書いてありますが、浅海漁業の立場から申し上げますならば、臨海地域開発審議会審議を経て、優良漁場を除く以外の場所は臨海開発地域に指定することができる、こういうふうな修正が望ましいと思うのであります。  それからもう一つは、第三条の第三項でございますが、「内閣総理大臣は、前項の規定により基本計画臨海地域開発審議会審議に付する場合においては、あらかじめ建設大臣を通じて関係都道府県知事意見を聞かなければならない。」と相なっております。そこで関係都道府県の知事意見を聞きました場合に、おそらく諸先生御案内の通り、各府県ともといっていいくらいの工場誘致の計画を持っていらっしゃるのであります。従いまして、この意見というものは、結局最終的には、浅海漁場はほとんど埋め立てられるやはり工場用地造成意見を答申するであろうと思うのであります。従いましてこの段階におきましての調整を考えてもらうという意味におきまして、先刻第二条で申し上げましたことを御考慮いただきますか、あるいは都道府県知事意見を答申する段階におきまして、何らか漁民の意思が反映するような法的な規定が必要ではないだろうか、こういうふうに考えております。  それから飛びまして、第九条におきましては、審議会の設置のことが書かれております。この審議会におきましては、一項から五項までの項目を審議することに相なっておりますが、むろん、この審議会におきまして、浅海漁業等と利害関係民との調整のことが審議されるとは思われます。この審議会委員の顔ぶれを見ましたときに、またこの法律案の大要を見ましたときに、やはり臨海地域造成促進するということに相なっております限りにおいては、この審議会においてどこまで浅海漁業の立場が守られるか、私は疑問であると考えます。そこで、第十  二条におきまして専門委員の制度がございます。この専門委員の制度はよろしいのでありますが、さらに、この専門委員の制度に、たとえば部会制度を設けまして、この専門部会と審議会と脈絡のある組織のもとに、漁業関係あるいは工業関係との調整審議してもらうということに相なりますならば、非常にけっこうではないか、かように考えております。  法案につきましての考え方は以上でございますが、なお、この臨海地域開発促進法案とは別の観点からいたしまして、沿岸漁業の振興という立場から、重要魚介類の種苗の供給水面、あるいは生産量の高い水面なり、将来において生産力が増大されるような優良漁場というものを指定いたしまして、その指定水域の総合開発計画を樹立いたしまして、漁業者擁護の諸施設実施すべきであろうと思うのであります。繰り返して申し上げますが、先ほど申し上げました臨海開発法案につきましての修正、並びに今申し上げましたように、この法律案とは別途に、沿岸漁業振興というふうな観点から、何らかの法的措置によりまして、優良漁場を確保していくべきではないだろうか、かように考えるわけであります。しかし、ただいま申し上げましたのは私の卑見でございますが、かりに優良漁場に指定したといたしましても、現実に現地の漁民が、いやこの漁場は放棄した方がよろしい、補償金をもらった方がよろしいというふうな意見があります限りにおいては、この漁民の意向を尊重いたしまして、浅海優良漁場と指定いたしましても、そのワクの中からはずすのが当然ではないだろうか、こういうふうに考えておるような次第でございます。  それから臨海開発法案におきまして、審議会においての意見調整をやる、また知事意見も徴する、あるいは公有水面埋立法におきましては、市町村埋め立ての許可申請が出ますと、市町村会の議決を必要とするようなことに相なっております。そこで、市町村会の議決、知事意見等、審議会におきまして二段にも三段にも意見調整がなされるかのように考えるのであります。法の形からいえば、これでけっこうでありますが、調整の手は漁民のところまで届かないような感じがいたします。その点につきまして特に御配慮をしていただきたいと存じます。  最後に申し上げますが、職業転換と、もう一つ補償の問題でございます。生活の基盤である漁場を失います限りにおいては、社会経済的な均衡を保つという点から、適正な補償をすることは当然であります。現在のところ、大体電発方式によりましてなされておりますが、力関係がありまして、なかなか思うにまかせません。そこで、これはどういたしましても、適正な補償基準というものを法律でもって作定してもらいたい。それで、漁民が、埋め立て問題が起こりました場合に同意するときに、適正な補償が確保されるようにお願いしたい、かように考えております。  それからもう一つは、職業転換の問題でございますが、これが非常にむずかしいことでありまして、一つの例を申し上げますと、昭和二十七年に、千葉市の蘇我という漁業部落が、東京電力の火力発電所を造成いたしますために、埋め立てをいたしました。そのときに、一戸当たり約百万の補償金をもらったのであります。もとより、これは職業転換の資金でございますが、京葉工業促進協会という団体がございます。そちらの発行しておるパンフレットを見ますと、百七十人の組合員の中で、職業転換をした者はおとうふ屋さんたった一人だということが書かれておるのでございますが、これは私の方の関係ではございません。京葉工業開発促進協会とかいう団体でございます。そういう点から見ましたときに、漁民はどうしているかというと、残余の狭い漁区べみんな密集いたしまして、そこでわずかばかりの生活の資源を求めておる、こういう形に相なっております。それほど職業鞍換の問題はむずかしいと存じまするので、この点につきまして、この法案の御審議にあたりまして特に御考慮下さることが適当ではないか、かように存じます。  大へんつじつまの合わないことを申し上げましたが、御参考になればしあわせであると存じます。(拍手
  10. 寺島隆太郎

    寺島委員長 これにて参考人各位の御意見の御開陳は終了いたしました。  御質疑はありませんか。――御質疑がなければ、参考人の御意見聴取は終わります。  参考人各位には貴重な御意見の御開陳をいただき、ありがとうございました。本委員会を代表いたしまして、私より厚くお礼申し上げます。  午前の会議はこの程度にいたし、暫時休憩いたします。     午前十一時二十一分休憩      ――――◇―――――     [休憩後は会議を開くに至らな   かった〕