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1960-02-19 第34回国会 衆議院 決算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年二月十九日(金曜日)     午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 鈴木 正吾君    理事 井原 岸高君 理事 押谷 富三君    理事 鹿野 彦吉君 理事 田中 彰治君    理事 小川 豊明君 理事 高田 富之君       愛知 揆一君    大倉 三郎君       神近 市子君    久保 三郎君       森本  靖君    山田 長司君  出席政府委員         検     事         (大臣官房経理 大澤 一郎君         部長)         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      小室 恒夫君  委員外出席者         検     事         (入国管理局次         長)      近藤 忠雄君         会計検査院事務         総長      大澤  貫君         会計検査院事務         官       保岡  豊君         (第二局長)         会計検査院事務         官       平松 誠一君         (第五局長)         最高裁判所事務         総長      横田 正俊君         判     事         (最高裁判所事         務総局経理局         長)      栗本 一夫君         日本開発銀行理         事       安永 一雄君         専  門  員 黒田 久太君     ————————————— 二月十八日  委員保岡武久君、淡谷悠藏君及び坂本泰良君辞  任につき、その補欠として森清君、河野密君及  び森本靖君が議長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十二年度一般会計歳入歳出決算  昭和三十二年度特別会計歳入歳出決算  昭和三十二年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和三十二年度政府関係機関決算書  昭和三十二年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和三十二年度国有財産無償貸付状況計算書  昭和三十二年度物品増減及び現在額総計算書      ————◇—————
  2. 鈴木正吾

    鈴木委員長 これより会議を開きます。  昭和三十二年度決算外三件を議題といたします。  田中彰治委員より発言を求められておりますので、これを許します。田中君。
  3. 田中彰治

    田中(彰)委員 この間、委員長のお取り計らいで、九州電力不正入札疑いがあるとして、資料提出開発銀行通産省公益事業局長にお願いしたのですが、資料決算委員会へ出されました。委員長もごらんになったと思いますが、これは全くほんの一片のあれであって、とてもこういうことじゃ満足できないのです。そこでちょうど本日会計検査院事務総長おいでになっておりますから、私は概要を申し上げ、そしてこの資料のもう少し詳しい資料要求したいと思います。  そこで話は前に戻りますが、開発銀行の融資した金、世界銀行から金を借りるために国民の保証した、国民に深い関係のある金、国民責任のある金が四百二十億以上九州電力にいっていることは、去年の暮れの決算委員会において開発銀行から証明されております。私の方にも資料がございます。これだけの大きな金を、国民責任ある金を九州電力が借りて事業しておるのですから、その社長及び重役方々は、仕事に対しては公正でなければならない。十分なる責任を持って仕事をしていただかなければならない。これは監督立場にある公益事業局長もよく御存じであります。国民の金を代理して貸しておられる開発銀行でも、これは承知しておられることと思います。そこで、九州電力というものは、これ一度ではなくて、昭和三十一年に上椎葉ダム工事をやるときに、ここに会計検査院事務総長おいでになっておりますから、御記憶あると思いますが、この工事がおくれて、そうしていろいろなところに迷惑をかけた。それのみでなく、工事をやったあとが非常に漏って、これもまた非常な迷惑を及ぼした。しかも、請負においてはどうかと申しますと、十一億七千四百七十四万三千円の請負金額に対して、増加した分が二十二億八千四百四十二万三千円、請負金額の倍の増加ならばいいのでございますが、増加の方が請負金額の倍にもなる。そうして期日がおくれ、ダムが漏ったというので、これは問題が起きた。そこでこの決算委員会がこれを取り扱おうとしたときに、いろいろな圧力と申しましょうか、嘆願と申しますか、いろいろな問題がございましたのと、非常に決算委員会も当時忙しかった、ほかの仕事がたくさん山積しておったので、注意を促しただけで、これをここで審議しなかった。そうすると、こういう問題が起きているにもかかわらず、また鹿島組火力電気請負をその次に随意契約のようにしてやらした。おかしいじゃないかといって調べたところが、二十二億八千四百四十三万三千円も増額してもらったこの金が、当時ここの会長をしておった吉田さんの女婿にあたる麻生君のところに何億と流れた。今通産大臣をしておる池田氏のところにも金が流れた。そういう関係上、どうしてもこの火力電気工事をやはり鹿島にやらせなければならぬというので、これをやらした。そういうことは困ったことだと思っていると、この九州電力に内紛がございまして、昨年平塚という副社長がやめた。これを契機として、火力電気のとき六千五百万の佐藤社長洋行費を出した、あるいはここへ金がどれだけ流れた、なにしたというものを全部数字をあげて、日にちまで入れて、そうしてこれをそこらじゆうに怪文書として配られた。われわれは決算委員会として、非常に恥ずかしいような状態でありましたから、佐藤社長に、そういう写しをとって、今後注意された方がいいと言って注意を促した。すると、今度この一ツ瀬ダム工事が行われることになった。そこでこういうものに対しても、世間からあなたがいろいろのことを言われているのだから注意をして、ガラス張りの中でやられた方がいいということをやはり注意しておった。しかるに、その注意——これは見たことでもなければテレビにとってある、ラジオにとってある話でもありませんから、そのままを信じていいかどうかわかりませんが、何を国会あたりで騒いでいやがるんだ、おれのところの親分はだれだか知っておるか、池田通産大臣じゃないか、おれが九電の社長として一切をちゃんと押えてあるから何の心配もない、重役なんか、ぐずぐず言うのなら言ってみろと言っておる。この議論が起きたときに、重役を暴力をふるってなぐったという事実もある。これはなぐられた重役が言ってきているのだから事実だ。そういうような争いまでして、結論にどんなことをしたかと申しますと、佐藤社長が上京して、築地の栄屋という料亭に彼が行って、そこで池田通産大臣と五回ないし六回会りた。そこで今度の一ツ瀬ダム最低価格幾らかということを電話でもって栄屋からかけて聞いておる。そこで土木部長幾らだということを言ったけれども、重要だと思うから上京してきておる。その上京した翌日、鹿島建設の原という九州支社長が上京してきておる。そして最低価格のものを出して、これから五分切り落とすから、これの線において入れろというので入札をさせた事実は、これは間違いございません。これは委員長お許しになるなら、この話を全部聞いた者をここへ証人として喚問してよろしい。そこで松永安左衛門が、前田建設を世話した責任があるからというので、これが佐藤に会いたいと言ったが、なかなか会わなかった。けれどもこれも二、三回会って、いろいろ相談をした結果、この松永さんにはほんとうのことを言わなかった。そこで熊谷が妥協をするといったものだから、その熊谷にはその線を知らした。だから、熊谷入札は、会社予定価格と一銭も違わず、ぴしっと入っておる。そして前田建設松永に言われて——松永は、おれがお前を紹介したのは欲得だけで紹介したのではない、有明ダムアーチダムに使った機械があるから、それを持っていってやれば安くできると思っておったのと、九州電力の生みの親はおれだ、だから九州電力にいい仕事、安い仕事をしてもらえばいいというのでおれが紹介した、しかるに、どうも佐藤やり方がおかしい、だから、お前が思い切って安く入れろというので、前田が一億七千万ばかりの安いところに入れておる。そこでこの入札を終えて開いてみたところが、前田が思ったより安く入れたものだから、どうしたらこの安い前田をけって鹿島にきめられるかというので、バンド制というものを入札してからきめたものだ。これは公益事業局長、よく聞いておかれた方がいい。開発銀行もよく聞いておかれた方がいい。私はそれを聞いたから、この間会計検査院のここにおられる事務総長のところにお伺いして、一日も早く会計検査院の手で、この九電の四百二十何億の責任ある国民の金の乱脈ぶり調べていただきたいということを言ったのだが、この会計検査院にもどんな手が回っているのか、どんなことをしているのか知らないが、なかなか調べていない。そこにこういうものが行なわれておる。これが事実とするならば、時の通産大臣である監督権を持った者が料亭で会って、そしてこの入札内容をきめて、そこから献金をとったというような——私は献金をとったのは見たことがないが、これは二億やったといううわさだ。そういうものが事実とするならば、僕はこれは大へんな問題だと思う。しかるに、資料を出せといって要求したら、公益事業局長はここでずいぶんうまいことを言われたが、こんな赤ん坊が見るような資料で一体いいと思いますか。あなたが資料を出すときに、監督官庁として少なくとも決算委員会に呼ばれたのだから、私にあれだけのことを言われておるのですから、あなたがもう少し監督を正しくやられれば、こんなうわべの資料は出ないはずだ。また、開発銀行もその通りだ。政策的に日平産業なんかに金を貸すときに、ああいうような厳重な調べ方をし、その他にも、何か政府から干渉があると、金を貸したところの会社に対しては、国税庁も及ばぬような調べ方をするにかかわらず、私が決算委員会資料要求するときに、あれだけの資料要求には少し過ぎたような弁明をしているにかかわらず、この開発銀行から出てきた資料は一体何ですか。あなたの方でこれしか出ないというなら、今日まで開発銀行が金の取り立てをするために、あるいはいろいろなことを整理するためにやられたその調査の内容を、ここで暴露してもいい。これは国家の問題になりますよ。こんなものを出されて——委員長が幸いにしておとなしい人だからこれで済むだろうが、私が委員長をしたのでは許さない。何ですか。それであなた方がこれより資料をとれない、これより何もできないのだ、これより監督できないのだと言われるならば、ここでそういうことに対して回答していただきたい。私は、あなた方の答弁によっては、これに対して生命を賭して闘う。また、会計検査院もその通りだ。会計検査院が独立してああやっておるのは、国民責任ある金、こういうものがこうやって乱費されていろいろなことをされておるときに、これを公正な立場に立って調べるのが会計検査院だ。  もう一つ、私は公益事業局長に申し上げておくが、こういう例があるということをはっきりさせるために、公益事業局長から、上椎葉の当時の請け負いした契約、その内容調べて報告していただきたい。会計検査院でも、ここに一回指摘されたことがあるのだから、当時の指摘事項をここに報告していただきたい。これは少し古いけれども、こういうことをして、こういう手段でやるのだという……。  もう一つ公益事業局長に申し上げておきたい。わずか二十八億かそこらの請負に、重役相談して九億という金をよけてとっておる。この二十八億の請負が今度鹿島に落ちたら、増し金をするために九億という金をよけておった。それもちゃんとわかっておる。請負金額が、会社予定額が二十八億八千万円、このむずかしいダムをやらせるのに九億の金をよけてとってある。そうしてきまったら、この九億を増し工事に使うためにとってある。しかも、公益事業局長御存じでありましょうが、アーチダムというものは非常にむずかしい問題で、フランスでこのアーチダムが崩れた。世界でも驚くような大きな被害を出している。今、世界でこのアーチダムに対して問題が起きている。そういうむずかしいダムをやるのに、二十八億八千万円の工事に九億の金を隠しておる。私の申し上げておることは、世間から聞いたうわさではございません。会社の中にもりっぱな人間がおって、いざとなればこの決算委員会に対して証人になってもけっこうでございますという人が、私のところへ情報を持ってきているのだから、間違いありません。こういうようなことが行なわれていいのか、悪いのか。しかも、その佐藤が今アメリカの世銀へ行って、公益事業局長を利用し、通産省を利用し、通産大臣を利用し、開銀を利用して、あたかも電力料金を上げてもらうようなことを言って、そして金を借りることに奔走しておる。私は、日本の国民の一人として、国会議員として、あなた方の今日の返答によっては、きょう長文電報で、この国会で問題になっておる実態を世銀に打ってやる。委員長お許しにならなければ、決算委員会理事田中彰治ではできませんが、国会議員として、国民の一員として——国民が保証する金を借りに行っているのだから、佐藤九州電力会社社長として借りたり、佐藤個人が借りたりする金でない。佐藤のこの借款が成立をすれば、国民自分の税金で保証しなければならない。そういうことをさせられないから、私は電報をきょう打ってやる。  そこで、開発銀行方々は、これより資料を出せないと言われるのか、もう少し調べて出すと言われるのか。公益事業局長も、これより出せないと言われるのか、もう少しその事情を調べてと言われるのか。池田通産大臣名前を出したのだから、おっしゃって下さい。いかに上司といえども監督権のある人が、請負をするのに、栄屋という料亭に何回も行って会って、そうして最低金額を書いてその請負をしたというようなことが、もし広がるならば、大へんな問題だ。私は、これが問題になったら、君が証人に出るかと言ったら、決算委員会に呼んでいただけば、ちゃんと証人に出ますとはっきり言っておる。また、会計検査院事務総長も、このまま放任されるのか。さっそく九電のこの国民の金に対して、ほんとうに正確に調査されるのか。この三人の方々の誠意ある答弁をいただきたい。
  4. 小室恒夫

    小室政府委員 前回の委員会でお答えいたしました通り、普通でありますと、個々の入札等について直ちに役所側監督権を発動するとか、介入するとかいうことはないのでございますが決算委員会でお尋ねがございましたので、直ちに九州電力責任者を呼びまして、入札についての経緯を詳しく書いて署名入りで出すようにということを要求いたしました。そしてそれを御提出いたしたわけであります。私は、御要求のあった必要な資料は出したつもりでおります。
  5. 田中彰治

    田中(彰)委員 あなたの方から今ここに出ているものは、私があなたに申し上げたもののほんの一片です。私が要求したように、この入札には疑惑がある、不正があるから、これに対して九州電力を呼ばれて、こういうことを決算委員会で言っておるからといって、あなたがその実情をお聞きになって、そうしてそういうものに対する資料であれば、こういうものは出ないはずです。私は、あのときにも通産大臣のことはわかっておったが、言わなかった。そこで彼に、僕が決算委員会名前を言うと責任が出てくるが、君は証人に呼んだら出るかと言ったら、間違いなくこられて話をされたし、電話をかけられたことは全部知っておりますから出ますと言ったから、きょう申し上げておる。あなたのところの大臣が、佐藤と会っていろいろ話もしておる。これは土木部長を呼ばれればわかる。いろいろ話をしておる。鹿島も会っておる。それだから、これに疑惑を持っておる。どうなんだ。九州支店長の原も出てきた。栄屋という料亭もわかっておる。これに対してあなたはこれより出せないとおっしゃるのですか、もう一回調べてみて出すとおっしゃるのですか。それから上椎葉の当時のこういうようなものが、ここで問題になった。これは通産省のあなたの監督範囲だ。そういうものの資料を一応調べて提出されるのか、されないのか。提出されないなら、委員長にお願いしてこの委員会に諮ってやってもらうよりしようがないが、どうなんですか。
  6. 小室恒夫

    小室政府委員 ただいまの池田通産大臣に関連したお話については、私は一切伺っておりませんから、その点は何とも申しかねますけれども上椎葉についての資料は、これは当時もおそらく会計検査院その他に出した書類でありますから、これは御要求があればいつでも出します。
  7. 田中彰治

    田中(彰)委員 あなたは、九州電力監督範囲におる。そうして田中彰治が、料亭名前まで言って、そうして原という名前まで言ってまた土木部長名前まで出した。そういう事実があったか、なかったかということをお調べになって、ここへ出すことはできませんか。
  8. 小室恒夫

    小室政府委員 その点については、私から御答弁する限りではないように思います。
  9. 田中彰治

    田中(彰)委員 それはおかしいじゃないですか。あなたが公益事業局長として監督されるのに、しかも、国民の金を使って請負をするのに、しかも、アーチダム一つ崩れれば民家に大きな被害も与えれば、あるいは人命にも関するような問題も出てくる、そういうような問題が起きて、しかも、その実例がフランスにあって今騒いでいる、あなたの方も研究されておるはずだ、それに、二十八億八千万円ばかりの仕事に九億の金をよけておいて、そういった談合よりもっとひどいようなことをやったやつをここで指摘されながら、あなたがそれを調べるあれはないとおっしゃるならば、今後電力会社にどんなことがあっても、あなたはその範囲しかできませんか。公益事業局長はそれでいいのですか。
  10. 小室恒夫

    小室政府委員 役所監督やり方というものはいろいろあると思うのですけれども、私ども調べまして、疑惑があり、不正があるということが、私ども感じで濃厚になって参れば、ずいぶん詳しい調べ方をすることもあると思いますが、本件について、ただいま御指摘のような事実があったか、ないかというようなことを、私の立場でもって調べるつもりはございません。
  11. 田中彰治

    田中(彰)委員 それはおかしいじゃないですか。あなたが悪いこととおっしゃるのは、どういうことをおっしゃるのですか。会社の金を使ったとか、横領したとかいうことは、これは小さいことだ。国民責任ある金を借りておって、しかも、その仕事アーチダムというむずかしいダムをやっておる。そのダムフランスでもって決壊して、人類に大きな被害を及ぼしたような問題が出ておる。その請負をするのに、二十八億円に対して九億もよけておいて、しかも、請負なんというものは、これは法律によって、ちゃんと指名入札ができるわけだ。それにもかかわらず、その公正な入札監督官庁のあなたの上におる池田通産大臣が、料亭でもってその社長と会って、そうして土木部長を呼んで、最低価格を聞いて、請負者を呼んで相談をして、そうして線を引いてやったというようなことが、ここの問題に出ておる。しかも、それの事実については、証人に出ますという人まである。それをあなたはそのまま黙視されるのか。それはなるほど検察庁が被告人調べるような、留置権とか、そういう強圧権はないでしょうが、一応あなたが、こういうことを言われているが事実かどうかということをお調べになって、そうしてここべ来て御回答される誠意があなたにないということは、おかしいじゃないですか。それであなた、公益事業局長が務まりますか。おかしいじゃないですか。それだったら、何をやってもいいのですか。今後電力会社は、その請負においてどんな不正を行なおうが、何しようがいいのですか。あなたがそういうお考えだから、佐藤が言っておる。おれが何しようと、通産局はおれに指一本さし切れぬ。開発銀行もその通りだ。まあ多少こわいのは、会計検査院あたりほんとうにやるならなんだけれども、これも開発銀行が防波堤になってくれるから、おれはこわくないということを言っておる。私、この前に申し上げたはずだ。おかしいじゃないですか。これを国民が聞いてどう言いますか。われわれの納めた金を四百何十億も使いやがって、そういう不正なことをやっておる。それにもかかわらず、そういうものでだんだんと経費がかかるようになると、電力代の値上げという問題で解決する。そのときに、あなた方がやはりいろいろな書類を作って、そうして会社の要望に達するようになさる。監督の方はしないというのはおかしいじゃないですか。
  12. 小室恒夫

    小室政府委員 ただいま申し上げた通り、不正があったという前提で調べる場合には、ずいぶんこまかいことを聞かなければならぬ。かりにそういう疑いがあれば、そういうことがあると思います。ただいま私の方は、この入札に不正があったという感じを持っておりませんから、従って、そういう立ち入ったことを言うつもりはございません。
  13. 田中彰治

    田中(彰)委員 そうすると、ここに証人があって、不正があったということがわかったら、あなたは責任を負いますね。どうですか。
  14. 小室恒夫

    小室政府委員 そのときの状況善処いたします。
  15. 田中彰治

    田中(彰)委員 善処とは、どういう善処ですか。そういうような者が寄り合ってこういうことをしてこの入札に不正があった。あなたはここでないと言われるが、証人を出してそういうことがあったら、善処とは何だ。
  16. 小室恒夫

    小室政府委員 そのときの情勢で善処いたします。
  17. 田中彰治

    田中(彰)委員 善処とは何だ。辞職して国民にわびるというのか。ただあやまるというのか。善処とは何だ。
  18. 小室恒夫

    小室政府委員 善処という言葉が適当だと思います。
  19. 田中彰治

    田中(彰)委員 どういう工合に適当なんだ。善処とはどういうことが適当なんだ。
  20. 小室恒夫

    小室政府委員 私の適当な言葉善処だと思います。
  21. 田中彰治

    田中(彰)委員 善処とは何だ。どういう善処をするのか。あらかじめそういう不正があって証拠があがって、どうするかと言われたときに、善処するとは何だ。
  22. 小室恒夫

    小室政府委員 不正があったとはただいまのところ考えておりませんので、こういう状況においてそういう御質問に対してお答えをするのには、日本語では善処という言葉が適当だと思います。
  23. 田中彰治

    田中(彰)委員 不正があると言って、金額まで言って指摘しているじゃないですか。それに対してあなたは、私はないと思うと言うけれども、もしそういう証人が出て、あったとするならば、職を辞してわびるとか、国民声明書を出して自分の不徳をわびるとか、そういう善処に対しては方法をとらなければならぬのに、ただ善処とは何だ。善処には、いやそれはまことに済まなかったという善処言葉もあれば、国民に堂々と各新聞にでも発表して不徳をわびる、そういう善処もある。あなたはないと言うが、私はあると言って指摘しておるのだ。この速記録の前で指摘しておるのだ。証人も出ると言っておる。きのう証人のところに行ってきた。証人と二人だけではいけないと思い、九州選出国会議員を立ち合わせた。それだからきょうやっておるのだ。これまで言ったら、その善処に対するあなたは回答ができるはずだ。善処するとはどんな善処だ。
  24. 小室恒夫

    小室政府委員 そのときの状況で、私の判断した適当な措置をとります。
  25. 小川豊明

    小川(豊)委員 この開発銀行の金は国家の金ですし、それから世界銀行から借りるとしても、これは国が保証する金なんです。従ってこれは非常に公正に使われなければならぬと思うのです。そこで今田中委員がこういう重要な発言をしておるのですから、この発言は、まさか田中委員個人発言をしておるのではなくて、田中委員が、国民にかわってこの問題をただそうとして発言をしておると私は思います。これも間違いない。今そういうふうに事例を具体的にあげて質問をされたのだから、あなたの方も、あなた自身の主観でそういうことはないと思っておるというのではなくて国会で、この席上でそういう発言がされた以上は、これは田中委員国民にかわって問いただしていることなのですから、それを基礎にして、あなたの方でもっと調査をして回答をするという立場をとらるべきではないか。今善処論になって何か大へん激論があったが、その前に、あなたの方も、調査しないということはおかしいと思う。そういう重要な発言があったならば、私は今まで考えておらなかったけれども、そういう発言国会でなされた以上は、私の方でも十分に調査をして御回答しますと言うのが、私は、やはりあなたの立場としてとるべき態度だと思います。
  26. 小室恒夫

    小室政府委員 ごもっともなお尋ねであります。提出いたしました文書は、これは責任をとってもらう意味で、赤羽副社長の署名捺印で、正式の文書として提出いたしたのであります。その文書を提出するまでに、私のところに赤羽副社長を招致いたしまして、その事情を聞いております。調べた上で、これはただ口頭で私が聞いたのでは最後の責任がとってもらえないから、文書でもって提出させるということで、はっきりした文書を提出さしたわけであります。その間において、私は不正があったという感じを受けておりません。それだけのことを申し上げます。
  27. 小川豊明

    小川(豊)委員 その赤羽副社長をあなたが呼んで書類を出させた。それはそれでよろしい。しかし、その後に、きょうここで、田中委員から、さらに重要な具体的な事例をあげて質問されておるのですよ。これは今まであなたは気がつかなかった、そういうことは考えなかったけれども、こういうことがこの席上で言われた以上、それに基づいて、あなたの方ではさらに調査をして御回答しますということが、あなたのとるべき態度じゃないか。私はそう言っているので、それは出せないということ、そういう事実はないとあなたが断定することは、これは非常に乱暴な断定じゃないですか。やはりそういう事実をここで指摘するからには、田中委員も十分責任を持ってこれを指摘しているはずです。たとえばここに出てくる佐藤社長、あるいは池田通産大臣、それぞれ身分のある人であります。一身上の重大な問題、そういう問題を発言するからには、田中委員責任を持って発言しなければならない。また、責任を持って発言していると思う。そういう状態の中で、あなたは局長としておれはそう思わないから、そのことについては調査をする必要はないのだという態度は、とるべきでなくて、やはりあなたは、そういう事実が指摘された以上、私はそれに基づいてさらに調査をして御回答をしますというのが、あなたのとるべき態度ではないか。これはどうですか。
  28. 小室恒夫

    小室政府委員 ただいま小川委員が御指摘になったように、池田通産大臣の一身上の重大事であるならば、これは池田通産大臣に直接聞いていただきたいと思います。私の方は、どういうところでだれとどう会ったということを調べて回答するという筋の話ではないような感じがいたします。
  29. 小川豊明

    小川(豊)委員 それは私の言ったことを誤解している。解釈違いしているのです。池田通産大臣の問題なら池田通産大臣に聞けばいい、それはそうです。そうですが、この問題はそこから生じた問題であって、この入札に公正でない、不正があるということを指摘しているのです。その入札が適正であるかないかということは、これはあなたの立場じゃないですか。その点をあなたが、発言されたことに基づいて、もっと調査して報告すべきで、池田通産大臣が、何か二億もらったとかもらわないとか、料亭で会ったとか、これは池田さんに聞けばいいけれども、その入札が適正であったか、なかったかということを、今現に例をあげて指摘されているのだから、そんなことはないとあなたが言い切る筋合いではないと私は思う。私どもだって、聞いておっても、まだ田中さんの言うことが事実であるかどうか、これもよくわかりません。しかし、わからないから、これを調べて報告するのが当然あなたの任務じゃないですか。池田通産大臣に聞けというような、そんな言い方でなく、その入札が適正であったか、不正があったかということを、これは当然あなたが調べるべきでしょう。そうじゃないですか。
  30. 小室恒夫

    小室政府委員 御承知のように、発電所やあるいはダム等の建設工事についてだれを担当者にきめるかということは、いろいろな手続があると思うのであります。現実のことを申しますと、電力会社は、相当多くの部分を、いわゆる特命という形で一社に限って初めから適当なものをきめて、そこと会社の予算とを照らし合わせて話をきめるという例がかなり多うございます。これは御承知かと思います。たとえば、私の方でたまたま監査した三十三年の上半期の水力発電所等の建設は、八割方特命でやっております。評ろん、競争入札でやる場合もあります。競争入札でやった場合も、必ずしも最低の値段で落としていない場合もあります。これはやはり過当競争を防止するというような点もありますし、会社責任において会社の経営陣の責任において相手方を選ぶということは、やむを得ないというふうに考えております。ただいまのところ、私どもは不正があるという感じを持っておりません。
  31. 小川豊明

    小川(豊)委員 私、そういうことを言っているのじゃないのですよ。特命でやろうと競争でやろうと、それは会社責任においてやるということはいいです。けれども、その入札自体に不正があるということは、当然監督責任上、あなたは公正にやらせるのがあたりまえでしょう。特命とか競争とかということではなくて今指摘された、こういう不正があるということに対してあなたは初めから、ないのだ、ないのだ、なぜそういうことを言い切れるのです。あなたの立場としては、調査をして報告をするというのが立場じゃないですか。私は、そういうことを聞いているのです。なぜ調査ができないのです。
  32. 小室恒夫

    小室政府委員 先ほども申し上げましたように、会社の、日本におる最高の責任者を呼びまして事情を詳しく聴取して、しかる後、必要な部分を正式の文書にして提出さして、その写しをこちらに出しておるわけであります。決して調査してないで、私の感じだけを申し上げておるわけではなく、十分事情を聴取した上でもって、ただいまの御答弁をいたしておるわけであります。
  33. 田中彰治

    田中(彰)委員 あなたは、ただ赤羽という副社長を呼ばれて、事情を聞かれて、ここへ出された。あなた、赤羽というのは会社重役です。佐藤の子分である。これは悪いことをしましたとは言いっこない。あなたは、私の方であらゆるものを指摘してあるのだから、私の方からこういうこと、こういうことがあると言われれば、まだほかの人、関係者があるのだから、土木部長を呼んで聞かれるとか、あるいは私にその料亭のだれが証人かと聞かれて調べるとか、あらゆることをして、あなたは、やはりここで指摘されたんだから、私はこの事件を指摘しているんだから、回答される義務があると思う。  それから開発銀行に聞いておきますが、あなたの方で、開銀の金を貸すにも、あるいは世銀の金を貸すにも、通産局というものはなしにして、通産局からの何の指示も紹介も何にも関係なくして、あなたの方で九電とやられるのか、あるいは通産局がいろんな書類とか何かに対して関係するのか、その点はどうなんですか。
  34. 安永一雄

    ○安永説明員 私の方で融資いたします場合は、電力の融資につきましては、御承知の通り、電源開発調整審議会におきまして、開発地点が一応きまるわけであります。それから、通産当局からこういう地点を推薦するという御推薦を受けまして、それから私の方の実際の仕事が始まるのであります。
  35. 田中彰治

    田中(彰)委員 公益事業局長、あなた、国民をばかにしているのじゃないか。金を借りるときに、君たちが、審議会を通してこういうものに金を貸してやれという指示をしているのじゃないですか。その大切な国民の金が不正に使われて入札されたということを、あらゆる証拠をあげているのに、ただ、一介の赤羽を呼んで聞いたからそれでいいんだで済むのか。それだから、私はこの前の資料要求するときに、佐藤が、通産局なんというものは私の子分であって、私に何もできないものであるということを言ったということを指摘しておるじゃないですか。それを裏書きするのが金を貸すときに、あなたは知らないで、関係しないで、開発が貸しているなら、今のあなたの答弁でいいかもしれない。やはり通産局が指示しているじゃないですか。金を借りたり電力料を上げたりするときにあなたが指示しながら、そういうことについて不正があるというときに、ただ一赤羽を呼んで、そしてこうだということで出したら、これで満足だと思われるのか。私どもは、この資料では満足しないから、いろいろの例をあげて、言いたくないけれども名前まで言って、こういうことがあるのか、どうだと言っているのです。あなたの答弁は何ですか。あなたは九州電力さえよければ、彼を信じてやることにおいて国民の金が四百二十億もめちゃめちゃになってもいいのですか。少し恥じなさい、どうなんです。
  36. 小室恒夫

    小室政府委員 佐藤社長の渡米している留守中においては、赤羽副社長九州電力の最高責任者で、一赤羽ではありません。会社を代表して責任を持って答えのできる人を招致して、私が直接話を聞いて、しかる後にその必要な部分を文書にして、署名、捺印をさせて出させたのでございます。これが正式の九州電力としての態度ということは、私は当然の順序ではないかと思います。
  37. 田中彰治

    田中(彰)委員 あなたは、ほんとうに頭がどうかしているな。赤羽の言った、あなたの書いたこんなものではものにならぬから、私は委員長に聞いたんだ。委員長は非常に公平な、どっちかというと消極的な人だけれども、これじゃ田中君、だめだよと、委員長も言っているんだ。それで、どうせ佐藤はあなたを掌中に入れているんだから、あなたは公益事業局長として何事もできない。おれからいろいろなことをしてもらっているから何もできないと言う。それじゃあなたがやりにくいから、栄屋通産大臣にも会った、土木部長を呼んだ、電話で照会した、九州鹿島支店長も来た、そうして相談してきめたということを言っている。そういう事実が出た。あなたは、通産大臣のことまで聞かぬでもいいが、もう一度ほかの副社長を呼んで聞くとか、土木部長を呼んで聞くとか、その他あなたがお確かめになるのに、あなたがお考えになればわかるはずだ。あなたは、前田を呼んで聞くとか、熊谷を呼んで聞くとか、そういうことをするのがいやだとおっしゃるのか。そうしたんでは、九州電力に不利になる。不利になると、日常お世話になった恩人を敵視しなければならないからいやだとおっしゃるのか。公平な役人だからやるとおっしゃるのか。何百億の金を貸すときに、通産省が指示して、貸してやれと命令している。それが不正に使われたというのではいけない。しかも、アーチダムが漏ったりしたら、人命にも関することだ、そういうことならば、一応調べて報告すると、あなたみずから進んで言われるのがあたりまえじゃないか。何ということだ、それは。少し恥じなさい。どうなんです。
  38. 小室恒夫

    小室政府委員 私は、何ら恥じるところがないと思っております。なお、赤羽副社長のほかに、瓦林副社長が上京しておりましたから、私は、ついでながらこのことについて質問しております。それだけ申し上げておきます。
  39. 田中彰治

    田中(彰)委員 恥じるようなことはないとは何ですか。国民の金を四百二十何億も持っていって、そこで不正が行なわれているのに、ただ一方的なことを聞いて、そうして恥じないとは何だ。もしこの証拠があがったとしたら、あなたは男として責任をとりますか。善処なんて言わないで、やめるとか、国民に謝罪するとか言ってごらんなさい。どうなんです。
  40. 小室恒夫

    小室政府委員 先ほど来申した通り善処いたします。
  41. 田中彰治

    田中(彰)委員 それから、佐藤があなたを子分だから何もできないと言っているのだから、われわれはその間に不正があると見ている。もしなかったら、田中彰治を告発しなさい。あなたもりっぱな役人じゃないか。彼らと食事をともにしておらない、物一つもらっておらない、りっぱだったら、私を告発しなさい。どうなんだ。
  42. 小室恒夫

    小室政府委員 御答弁の限りでありません。
  43. 田中彰治

    田中(彰)委員 会計検査院事務総長にお尋ねしますが、九州電力をお調べになりましたか。
  44. 大澤貫

    大澤会計検査院説明員 ちょっと前に申し上げたいのですが、会計検査院の検査は、どなたかが検査してくれるなとか、あるいはどなたかが検査してくれということで、検査するわけではございませんことは当然でございまして、先ほど田中委員のお話で、どなたかが検査してくれるなというからしてないじゃないかという御発言がありましたが、そういうことは全然ございませんから、その点、御懸念なさらないように願いたいと思います。  さて九州電力開発銀行の融資に関する件でございますが、その点は、開発銀行九州支所は相当重要な検査個所でありますので、毎年検査をやっております。ことしももちろん検査する予定でありましたところが、たまたま田中委員からいろいろ話もありまして、どうせ検査するのに参考になりますので、そうしたことを参考にいたしまして、先週出発いたしまして、現在九州開発銀行の支所、国民金融公庫の出張所、その他を検査いたしております。おそらく来週ごろに帰京する予定で検査しております。なお、検査いたしましても、ただいまお話しのようなことがはたして判明するかどうかということになりますと、御承知の通り会計検査院の検査は、開発銀行に提出されておる書類、それからいろいろな報告、その他に基づいて検査をいたしておりますので、ただいま伺ったような事実があったとして明らかになるかどうか、ないとして明らかになるかどうかということに対しては、ちょっとここでは、あらかじめでございますから、申し上げかねるという状態であります。そういう状態であります。
  45. 田中彰治

    田中(彰)委員 そこで委員長も御承知の通り、この問題はこういうところに乗り上げたのですが、委員長証人を呼ぶことはきらいらしいのですが、私は重大なことだと思うんです。そこで一つ開発銀行の捜査を、もちろん理事会でお諮り願って、一つ早く繰り上げていただいて、そうしてこういうりっぱな証人がここべ出て証言するというのだから、証人を許していただいて、証言してもらって、この点を明らかにしていただきたい。これを委員長にお願いして、私の質疑は打ち切ります。
  46. 鈴木正吾

    鈴木委員長 理事会でいずれとくと相談した上、今の田中君の御発言善処いたします。……。
  47. 鈴木正吾

    鈴木委員長 次に、昭和三十二年度決算外三件中、裁判所及び法務省所管を順次議題とし、審査を進めます。  まず、裁判所所管について、会計検査院当局より説明を求めます。保岡第二局長
  48. 保岡豊

    保岡会計検査院説明員 三十二年度裁判所関係の不正行為について説明いたします。  一号は、大阪高等裁判所の領置物取扱主任官の補助者が、主任官の金庫から刑事領置金九十七万五百円を領得したものであります。  二号は、名古屋高裁金沢支部の刑事部証拠品係が、領置金の送付を受けて、受け入れ手続をしないで七十四万四千九百八十四円、また処分のため領置物主任官から成規の受領証を引きかえに受け取った十八万二千三百二十九円と腕時計一個を、また領置物主任官をだまして領置金四十万五千八百九十一円を領得したものであります。  三号は、大阪地方裁判所の資金前渡官吏が架空名義で三百九十六万二千百二十八円を、また二重使用などで四百三万千二百六十四円の預託金を引き出して領得したものであります。  四号は、福岡地方裁判所の歳入歳出外現金出納官吏が、架空の名義により小切手を振り出しまして、二百四十七万七千二百円を領得したものであります。  以上概要の説明を終わります。
  49. 鈴木正吾

    鈴木委員長 この際、国会法第七十二条による最高裁判所長官の指定する代理者、最高裁判所事務総長横田正俊君及び同事務総局経理局長栗本一夫君より、出席発言を求められておりますので、これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 鈴木正吾

    鈴木委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。横田最高裁事務総長
  51. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 ただいま会計検査院の御報告で、不当事項として四点掲げました事項につきましては、御指摘通りでございまして、国民の信頼をつなぐことに最も意を用いなければならない裁判所におきまして、このような不正事項が起きましたことは、私どもといたしましてまことに遺憾でございまして、この委員会を通じまして、国民の皆様におわびを申し上げる次第でございます。  指摘されました事項の原因につきましては、一口に申しますれば、監督上に非常に不十分な点があったということを認めざるを得ないわけでございます。この点につきましては、従来から、この監督機構の充実等のために、人員あるいは経費の獲得につきまして、大蔵省の方と予算折衝もいたしておりますが、まだ十分な結果に至っておりません。そのような点が、やはりおのずから監督不行き届きというような結果を招来いたしておるものと考えられますが、いずれにいたしましても、非常に申しわけないことでございます。  この四つの事項の内容、それからそれに対します事後改善措置につきましては、後ほど経理局長から詳しく申し上げさせていただきたいと存じますが、一般的な対策といたしましては、やはり監督の強化ということにつきまして、従来も十分注意を用いて参りましたが、今後監督者の会同、研修などを行ないまして、万遺憾なきを期したいと考えております。それから事務機構の充実につきましても、従来ともいろいろ創意、工夫をこらしておりますが、たとえば二人以上の者に牽制的に事務を処理させるというような方法をもう少し考、えまして、人員不足のおりからではございまするが、ある程度の監督の実をあげたいと考えております。根本的には、やはり職員の綱紀の粛正ということが大事なことでございます。この点につきましても、一段と留意をいたして参りたいと思います。いずれにいたしましても、裁判所といたしまして、四件もの不正事項を指摘されましたことは、まことにお恥ずかしいことでございます。あらためてまたおわびをいたす次第でございます。なお、先ほど申しましたように、詳細につきましては、経理局長から詳しく御報告をいたさせます。
  52. 鈴木正吾

    鈴木委員長 次に、質疑に入ります。質疑の通告がありますので、これを許します。小川豊明君。
  53. 小川豊明

    小川(豊)委員 この一から四までの指摘された事項があるのですが、その前にお尋ねしたい。会計検査院の報告は、みな何某々々と書いてありますが、これはあなたの方で名前もわかっているわけなんですが、これはどういうわけで姓名を入れないのですか。何某というのはどういう理由なんですか。会計検査院指摘された中で、ほとんどが何某——会社名前が出ていますが、個人はみな何某となっているが、何某でなければいけない理由があるのですか。どういうわけですか。
  54. 保岡豊

    保岡会計検査院説明員 特に理由はございません。前から某ということで出しておりますが、今度三十三年度に報告いたしておりますものの中には、夫婦で共謀的にやったのもあるものでございますから、これは郵便局でございますが、そのときには、名前を出してけじめをつけてございます。別に某でなくてはいけないというのではないですけれども、長年の例によりまして、某でやってきたものであります。
  55. 小川豊明

    小川(豊)委員 こういう指摘されるようなことについては、何某というといかにも軽く取り扱ったようで、これはむしろもっといろいろな機関に働いている人たちに対する反省、自粛を促す意味から、名前を入れるべきじゃないか。何か何某というと、寛大に取り扱っているという感じを与える。それも悪いことじゃないが、これはやはりそうすべきじゃないか、こう思うのです。  そこで、この裁判所の職員の一から四までの不正行為ですが、これは金額として、千二百七十七万円という多額な金額になっている。これは司法職という厳正な職務を執行するところとしては、非常に綱紀の紊乱ということを思わせるのです。そこで、こういう事務を担当する書記官ですが、こういう者の採用にあたっては、もちろんちゃんと保証人というものはづけてあると思うのですが、採用にあたって、保証人をつけることになっていますか。そしてそれは完全に励行されておりますか。
  56. 栗本一夫

    ○栗本最高裁判所長官代理者 お答えいたします。採用いたします際には、もちろん身元等を調査いたしまして間違いのないように努めるわけでございます。それから保証人も、身元保証一人のようなものはもちろんつけておりますが、しかし、これは金銭上の責任まで負うような趣旨のものじゃございませんで、これはおそらく各官庁ともさようではなかろうかと考えております。
  57. 小川豊明

    小川(豊)委員 こういう巨額の金が不正に領得されてしまっておる。そしてこの報告を見ると、まだ百七十四万円——一割しか補てんされていない。民間会社等であるならば、金銭上の補てんということを十分に考えて保証人をつけますから、そこで弁済責任というものは保証人にまで及んで、完済されているのが普通なんです。ところが、役所の場合——これはあなたのところばかりじゃない、役所の場合には、保証人が、今あなたの答弁通り、ほとんどおざなりの保証人になっているから、千二百万円に対してまだ百七十四万円——一割です。この報告書が出て一から、その後において補てんされたと一思うが、それじゃ、この一千二百万円に対して、どれだけ補てんされましたか。
  58. 栗本一夫

    ○栗本最高裁判所長官代理者 四件につきまして個々的に申し上げますと、最初の大阪高裁の市岡某と書いてございますが、これは市岡賢明と申しますが、市岡賢明の分につきましては、被害金額九十七万五百円に対しまして、一万七千七百二十二円収納いたしました。残額につきましては、昨年の九月二十六日に裁判上の和解が成立した、このようなことになっております。結局、九十七万に対しまして現実に回収いたしましたのは、一万七千七百二十二円というわずかな金額でございます。  次に、名古屋高裁金沢支部の北島孝雄という者でございますが、これは被害金額百三十三万六千七百四円に対しまして、五十四万三千九百七十四円という、半分には足りませんが、四割程度のものを回収いたしております。残額につきましては、やはり昨年の九月二十一日に、裁判上の和解が成立いたしております。もちろん、月賦で払う、さような裁判上の和解であります。  次に、大阪地方裁判所の西岡潔という者でございますが、これは七百九十九万円余り、こういう金額でございますが、これは結局、本人の資産状態その他から、回収ができませんが、これもやはり昨年の三月三十一日に徐々に回収していくという裁判上の和解が成立いたしております。  それから最後に、福岡地方裁判所の秋根義介の件でございますが、これは被害金額二百四十七万円余りに対しまして、ほぼ半額に相当いたします百二十七万千二百円というものを回収いたしております。残額につきましては、やはり昨年の三月二十七日に、裁判上の和解が成立いたしておる、かような状況でございます。
  59. 小川豊明

    小川(豊)委員 そこで、あなたの方では鋭意努力中であると言うが、よくいったので、半額まではいかないが、半額近くまでいった。しかし、大口のものはごく少ない。そして裁判上の和解をしたから、これ以上やりょうがない、こういうことになっておるのですが、やはり責任としては、与えた国損であるから、これは回収するということが大切なんです。その人に対する処分、これももちろん必要でしょうが、回収するということが大切なんです。そういう点から言うと、さっき言った保証人というものの制度を、あなたの方では、おざなりでなく、そういう事件が起こったときには、経済上の責任を負える人を保証人にするということは、考えていけないことなのでしょうか。考えるべきじゃないかと思うが、あなたの方では、今でも考えておりませんか。
  60. 栗本一夫

    ○栗本最高裁判所長官代理者 これは、やはり公務員に対します一般的な問題だろうと思いますので、私の方でもなるべく検討はいたしたいと思いますが、ただいままでのところは、先ほどお竺弔えいたしましたように、財産上の責任まで負うような保証人はつけてない状態でございます。
  61. 小川豊明

    小川(豊)委員 そうすると、これはごまかし得ということになってしまう。  それからいま一つは、これを見ると、発生から発覚までみな何年かかかっておる。こういう長い期間、あなたの方でこれがわからなかったということはさっき事務総長は、監査機構を充実して云々と言われていますが、こんな長い期間行なわれていることがわからないということは、裁判所自体の監査機構というものはなつちゃいない、こういうふうに極言されても、これはやむを得ないじゃないですか。この点について、今後具体的にはどういうふうになさるつもりでしょうか、この点お尋ねいたします。
  62. 栗本一夫

    ○栗本最高裁判所長官代理者 御指摘通りに、かなり長い時間にわたって発覚しなかったのでございまして、その点われわれ関係者といたしましては、まことに恐縮に存じておる次第でございますが、この四つの中で一番長く行なわれましたのが、大阪地方裁判所の西岡潔の分でございますが、これにつきましては——この件に限りませず、この四つの件につきましては、発覚と同時にすぐ具体的にそれぞれの手当をいたしまして、かような事態が起こらないようにいたしました。具体的に申し上げればいろいろございますし、御質問があればまたお答えいたしますが、とにかく裁判所といたしましては、当該事項につきましては、直ちにさような事態が生じないように手当をいたしたつもりでございます。特に大阪地方裁判所の件について申し上げますと、これは結局本人が帳簿その他の書類をきちんと整理いたしておりました関係上、なかなか発覚がしにくかったのでございます。結局これに対する改善措置といたしましては——これは国選弁護人に対する報酬等を領得したような形になりますので、しかも、それが弁護士会の事務局長あたりの、つまり受取人の判を預かったというようなことをやっておりました関係上、なかなか発覚がしにくかったのでございます。さような特殊事情もございましたので、その債権者の印鑑を預かるというようなことは、この事件につきまして、厳に禁止いたしました。もちろん、その他の裁判所に対しましても、さような事態を生じないように厳重に注意いたしますとともに、事務処理についての相互牽制機構をさらに徹底いたしまして、あるいは監査の強化をはかるというようなことをいたしまして、大阪地裁につきましては特別な手当をいたしたつもりでございますが、その他の件につきましても、こまかく申し上げるといろいろございますが、要するに再びかような間違いを生じないように、厳重に手当をいたしたような次第でございます。
  63. 小川豊明

    小川(豊)委員 次に、今事務総長がおられるから、事務総長でいいと思いますが、裁判所にも判事等の定員制といいますか、そういうものがあるだろうと思いますが、これはありますか。
  64. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 あります。
  65. 小川豊明

    小川(豊)委員 あるとすると、どのくらいあって、今これが充足されているのかどうか。さらに、充足されていないとするなら、これはどういう理由でそういうふうに不足しているのか、またそれに対する対策、この点をお尋ねしたいと思います。きょうは、なるべく委員会を早くやめたいということだから、あなたの方でも簡単に御答弁願いたいと思います。
  66. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 定員は、ちょっと正確な数字はあとで申し上げますが、現在判事、判事補、簡易裁判所判事を通じまして、数十名の欠員がございます。これは、実は御承知のように、裁判官は、すぐに求めることが困難でございまして、御承知の司法試験を通りました者を二年修習させまして、それが判事補になり、その人が十年たってやっと判事になるというようなことで、手間がとれますので、他の給源の一つの弁護士会等、在野法曹からとります方は、給与の関係等からいたしまして、なかなか招致することが困難であるというようなことで、ただいま申し上げましたような欠員が出ておるのでございますが、幸い、ことしになりまして、ちょうど新しい研修制度を始めましてから、それで育ちました人々が、かなり多く裁判所の方へ来るようになりまして、ことしの春ごろには、その定員のほぼ——若干まだ欠員が簡易裁判所方面で残りますが、ほぼその欠員を補充できるという見通しがついているわけでございます。
  67. 小川豊明

    小川(豊)委員 私はしろうとだからわかりませんが、裁判官の待遇というものは、あまりよくない。だから、裁判官になっても、みな弁護士の方べ出てしまう。今あなたは、在野法曹からとると言うけれども、これも収入の面から見たらなかなかなり手がない。だから、裁判官は非常に欠員になっているということを聞いているのですが、これに対する対策というものは、これは事件がそのために延び延びになる結果になるのだから、十分にあなたの方で立てるべきではないかと思う。  それから書記官とか、私はよく言葉はわからぬが、そういう補助的な職員が相当いるわけです。これらの人の待遇は、一般の行政職員の待遇と均衡のとれた待遇をしておるのですか。裁判所は低いのじゃないですか。
  68. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 他の官庁の一般職員に対する関係におきましては、職員の中の書記官あるいは家庭裁判所調査官というようなものにつきましては、二号調整というようなものがついておりまして、むしろ高くなっておるということでございます。ただし、われわれといたしましては、仕事の性質上、もっと待遇をよくすべきであるというようなことからいたしまして、なお今後ともその方面に向かいまして努力は続けたいと思いますが、他の官庁に対して劣っておるというようなことは決してございません。
  69. 小川豊明

    小川(豊)委員 これは他の官庁に対する誹詰みたいになって大へん悪いのだが、失礼だが、他の官庁には幾らか役得というものがある。あなたの方にはそういうものがないので、この点をよほど考、えていかないと、裁判の威信、公正という点からも、他の職員から比べれば、四件だから大したことはないように見えるが、しかし、少なくとも裁判所として四件を出したということは、名誉な話じゃないので、こういう点からも、ただ取り締まりとか監督機構の充実ばかりでなく、誇りを持ち、責任を持ち、希望を持ってやれるような対策を立てるべきではないか。  それから次に、裁判所の判事は地方に転出するのを非常にきらっているということをわれわれは聞かされるのだが、そういう事実があるのか、ないのか。もしそういう事実があるとすると、身分保障も大切なことだが、裁判所の人事交流というものはできなくなってしまう。それともう一つは、中央だけが頭でっかちになってしまって、失礼な言い方だけれども、地方には人材がないということにもなりかねないので、こういう弊害というか、これを除去するための対策は、どういうふうに立てておられるのか。
  70. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 御指摘のように、地方に転任をするということをきらう風があることは事実でございます。御承知の身分保障がございます結果、やはりそういう関係が見られるのでございますが、これにつきましては、先ほど触れましたように、職員般の給与をもっとよくするということが一つでございまするし、なおその他に、具体的に申しますと、官舎の問題等、そういう環境の設備をよくするということが非常に大事なことになって参りまして、この点も不十分ながらいろいろ努力をいたしております。なお最近は、身分保障はございますけれども、ここ数年におきましては、割合に地方の方にも出ております。たとえば北海道等にも、かなり進んで若い人が行ってくれるというような傾向も見えております。私どもとしては、それらの待遇をよくする方面に力を注ぎますと同時に、進んでよその土地にも行ってもらうというような気風を裁判所の中に作りたいと考えております。
  71. 小川豊明

    小川(豊)委員 私もっとお尋ねしたい点があるのですが、時間もないし、ほかの方もあるようですから、あと一、二点でしまいます。  ここ二、三年の新聞記事等を見ておると、たとえば水戸であるとかあるいは新潟、横浜、名古屋、こういうところの裁判官の行状というか、行為というものは、かなり批判されている。あなたの方でそれぞれ処分しているのですね。処分しているのだから、事実あったと思うのですが、こういうことは、やはり綱紀の弛緩を思わしめること非常に多い。国民から裁判の公正、裁判の威信を疑われるようになったら、大へんなことなんです。こういうことをなからしめる措置といいますか、そうなると抽象的になるのですが、こういう裁判官の行状に対する監督、査察の制度というのは、どういうふうに立てられておりますか。     〔委員長退席、押谷委員長代理着席〕
  72. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 具体的にただいま私の知っておるものも若干ございますが、そういうやめてもらわなければならない人が若干出ましたことは、非常に遺憾でございます。これはしかし、根本的には裁判官が自分の職責に目ざめまして、そういういやしくも国民の目に触れるような非行のないように、自粛自戒してもらわなければならないと思いますが、なおこれらの問題につきましては、御承知のように、裁判所におきましては、かなりひんぱんに裁判官その他の職員の会同を開きまして、東京に集めます場合もございまするし、あるいは高等裁判所管内で、いわゆるブロック別に会議を開きまして、それらの士気の高揚、綱紀粛正というようなことにつきましても、いろいろその会同を通じまして、お互いに話し合っておるようなわけでございますので、まれにはなはだ困ったような事例もございますが、今後はそういうことが絶対にないようにいたしたいと考えます。
  73. 小川豊明

    小川(豊)委員 やはり裁判官も人間ですから、これに対して完璧を求めるというようなことは、われわれは考えていないわけなんです。やはり士気の高揚とかいう精神的なことばかりでなく、裁判官の身分を保障すると同時に、それに対する待遇等も考え、十分に希望の持てるようにせないと、こういう問題が出て、裁判の威信というものを汚す結果になる。これは御留意願いたい。  それから裁判官が何か宿直制を廃したために、午後九時以降の令状は、書記官が裁判官のうちにそれぞれ行って令状をもらわなければならないようになっている。こうした書記官等は、過重労働をしいられる形になって、これについては書記官と判事の間に問題さえ起こっている。不平がかなり強く出ている、こういうことも聞いております。そういう事実があるのか、ないのか。それからあったとするならば、なぜこの裁判官の宿直は廃止しなければならないのか。これは、経費の関係で廃止しなければならないのか。その理由はどこにあるのか。その点をお伺いしたい。
  74. 栗本一夫

    ○栗本最高裁判所長官代理者 裁判官が令状関係のことで宿直いたしておりました事例が、前はあったのでございますが、最近は、ただいま私の知っております限りでは、あまりやっていないのではないかというふうに——指摘通り、あまりやっていないように聞いております。東京地方の例をとりますと、私の知っております範囲内におきましては、午後九時までは裁判官も書記官も在庁して令状指示にあたっておる。九時過ぎますと、今御指摘がありましたように、裁判官は自宅べ帰る。ただしかし、その日、その日につきまして、当番の裁判官がきまっておりまして、九時以降の令状は、その当番の裁判官のところへ書記官がとりにいくというふうになっておるように、私は聞いております。ただし、正確に一今調べてきたわけじゃありませんので、最近は変わっておるかもわかりませんが、しかし、変わったという話も耳にしておりませんので、大体さようになっておるのではないかと思いますが、しかし、私の聞いております範囲では、書記官が裁判官の自宅べ令状をとりにいくということについて、トラブルを起こしたというようなことは何も聞いてないのでございますが、一応円滑にいっているのではないかというふうに考えておるわけであります。
  75. 小川豊明

    小川(豊)委員 それはあなたの方で何もないと言うが、これは九月の毎日新聞、これに「深夜の令状は取り次がぬ、東京地裁労組怒る」こういうようなことが出ている。あなたは知らないかもしらぬが、こういう問題があるだろう。僕も、これについては、ほんとうにそういう大きなトラブルがあるか、ないかまでは知らないが、そこで僕がお聞きしたいのは、宿直制度というものがあった、それを廃したのは、何の理由で廃したかということです。予算の関係、経費の関係で廃したのか、必要がないので廃したのか。必要がないので廃したならば、こういう問題が起こるはずがない。もし必要があるなら、こういうものを廃さなければならないところに、何か経費上の問題か、制度上の問題があっただろうと思う。その点をお聞きしておる。
  76. 栗本一夫

    ○栗本最高裁判所長官代理者 先ほどお答えいたしましたように、初期のころは、東京だけに限りませんで、地方の裁判所におきましても、宿直をしておったような事例があったと思うのでございますが、それが大体最近におきましてなくなりましたのは、やはり警察官等とよく連絡をいたしまして、大体そう夜中にとりにいかなければならないような事件は非常に少ないものでございますから、大体九時ごろまで在庁すれば、ほぼ大部分は間に合う。あ]とわずかな例外がある程度で、従いまして、やはりさような関係から、九時以降は、例外的なものは裁判官の自宅べとりにいくというふうに改めたのではなかろうか。ちょっと今正確には調べてみませんとわかりませんが、私は、さように了解いたしておるわけであります。
  77. 小川豊明

    小川(豊)委員 私、その答弁にちょっと不満なんです。そういう事例があったというけれども、宿直するとするならば、一つの制度でしょう。だから、宿直するということになっておれば、みな宿直すべきです。それを廃止するというなら、やめる理由があって、宿直しなくてもいい、こういうことになって宿直は廃止されているので、たまたまそういう事例があったのを承知しているが、なくなった。そういう制度をやめるからには、それだけのはっきりしたあれがなければならぬと思うんです。なお突っ込んで、それならば、九時過ぎの令状の請求されたものはどれだけあったかということもお聞きしたいんだが、ほかの方の質問もあるし、時間の関係もあるから、私ここでやめますが、そういう答弁ではなく、もっとあなたの方で、ここべ出られるのですから、その点の調査をなすっておいてくれるのがほんとうじゃないか、私はこう思うんです。きょうは、私の質問はこれでやめます。
  78. 押谷富三

    ○押谷委員長代理 神近市子君。
  79. 神近市子

    ○神近委員 大体今小川委員の御質問で要点が明らかになったと思うんですけれど、会計検査院にお尋ねいたしますが、この四つのケースが今出ておりまずけれど、全体として裁判所関係は何件くらい御調査になって、この四つが出てきたんでしょうか。
  80. 保岡豊

    保岡会計検査院説明員 御承知のように、裁判所関係の検査個所といたしましては、千二百三十五カ所くらいございまして、そこから書面検査に対する証拠書類が出て参ります。それを検査いたしておりますが、それに加えまして実地検査を、千二百三十五カ所のうち、その五・九%に当たる七十四カ所についてやったわけであります。そこで、ここに掲げてある四件は、はなはだ申しわけない次第でございますけれども、私どもが発見したものではないのでございます。前の二件は、会計職員ではないのでありますけれども、あとの二件は、第三号は資金前渡官吏、四号は歳入歳出外現金出納官吏、会計職員プロ。今治でございますので、これは私どもの職責といたしまして、発見すべきものであると考えております。ことにこの三号は、実際にこの犯行期間において、実地検査を現地においてやっております。それなのに、従来歳入歳出外現金の方に問題があったものでありますから、この前渡資金関係を相当手を抜いたということがありまして、私ども、この点については、もうちょっとそこに行けばわかったのではないかという反省もいたしまして、その後十分に気をつけておるわけでございます。
  81. 神近市子

    ○神近委員 事務総長にお尋ねいたしますが、この裁判所事務官というのは、研修所出身でお採りになるのですか。
  82. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 これはやはり試験をして採るのでございます。けれども、研修制度は、裁判所事務官あるいは書記官につきましては、一応は採りましてから後に研修所に入れて、いわゆる養成をいたしましたり、あるいは実務をやりました後に研修をするということで、ちょうど司法修習生の場合のように、一応採りまして、そこで研修をするというようなことにはなっておりません。ただし、かなりめんどうな試験をして採用することになっております。
  83. 神近市子

    ○神近委員 最初は事務官の補くらいから始めて、相当の年数を責任の地位にお置きになるときには、二年なり三年なりという見きわめがついてから御任命になるのですか。
  84. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 裁判所書記官と家庭裁判所調査官につきましては、まず書記官補として採用いたしまして、それがいろいろある程度の事務をしてから、試験を受けまして書記官になる、あるいは先ほど申しました研修所に入りまして、それを出ましてから書記官になるという段取りを踏んでおります。裁判所事務官につきましては、やはり入りましてから、ある程度たちましたところで昇任試験という試験がございまして、昇任試験でだんだんに上へ上がって参るわけでございます。ことに会計事務とか、相当重要なポストにつきますには、やはりかなりの年月をたってからそういうものにつくようになっております。
  85. 神近市子

    ○神近委員 これを拝見していると、どろぼうしたり詐欺をしたりするのは、相当犠牲を払って、あるいは危険を冒してやらなくちゃならないけれど、非常に安易にこういうことが行なわれておる。たとえば大阪の方は、ずいぶん長いようですけれど、やろうと思えば、百万近くの——福岡の方は二百四十七万ですけれども、たった六カ月のうちにごまかしができているというようなこと、これを見ますと、こういう知能犯というか、知能をもってやることは、非常に楽な非行じゃないかと考える。これが七十四件一御調査になって、それでたった四件しかはっきりしないということですけれども、このあとのまだ手が伸びないところにも、同じようなことがあちこちで行なわれているんじゃないか。そうであれば、裁判所の機構というものが、どこに一体抜け穴があるのか。あるいはどこに盲点があるのか。今小川委員から人員不足だということがしきりに話題に上っていましたけれども、人員不足のためなのか、それとも、さっきおっしゃったように、課長なり係長なりという人たちが印形をこういう事務官に預けておくということから起こるのか、その辺、どういうことになるのですか。この前も、判決を書記に書かせるということで問題があったことがあるのですけれども、代印をさせるということがこういうことを生んでいるのじゃないかというふうに考えられるのですけれども、こういうことが起こってからは、その代印を押させるということはやめていらっしゃるのか。または、相変わらず、めんどうだからそれを委託していらっしゃるというふうなことなんですか。今こういう事件が、まあ法務省関係はこういうふうな批難事項は年々少ないので、昨年も私はそれを拝見したのですけれども、非常にたくさんな官庁のうちでは一番清潔にやっていらっしゃるということはわかるのですけれども、ただ、せっかくの裁判所の機構に、こういうことが年々何件か起こるということ、それはどういうところに盲点があるのかということを考えていただいた方がいいと思うのです。その代印、委託捺印というふうなことが、全般的に行なわれておるのでしょうか、それを……。
  86. 栗本一夫

    ○栗本最高裁判所長官代理者 私からお答え申しますが、本件の四つのうちにおきましては、他人の判を預かってやったというようなことは、これは大阪地方裁判所の分で、結局受取人であります弁護士会の事務総長の印を預かっておった、こういう希有の事例があったわけでございましてその他のものにつきましては、他人の判こを預かっておった、それを利用したという案件ではございません。  なお、先ほど御指摘のように、福岡地方裁判所の分は、わずかな期間に一挙に二百四十七万というような金額が出たじゃないかとおっしゃるわけでございますけれども、これは期間から見ますと、まさにその通りでございますが、これは架空の小切手を偽造いたしました関係上、それが一つの小切手が百二十七万ほどでございまして、この事件は百二十七万ほどの金額が回収されておりますが、これは二回目に振り出しましたものは、最初の分を、何と申しますか、弁償するために弁償するというと少しおかしいのですが、最初の分を糊塗しますために、また第二回目の小切手を振り出した、さような案件でございまして、何回かにわたってやったというわけじゃない、一挙にかようなことをいたしました関係上、短期間内に金額が多くなったような形になっておるわけであります。  なお、どうして本件のような——四つほどのものでありますが、かような事態が起こるか。裁判所としては、われわれも十分反省いたさなければならぬわけでございまして、この四つの件につきましては、先ほど御説明いたしましたように、直ちに具体的に措置をとりまして、再びさような事態が生じないように、厳重に手当をしたつもりでございます。一般的に申しまして、会計職員が多少手が足りないということは、どこの庁でもさようなことだろうと思うのでありますが、裁判所といたしましても、年々会計職員の増員等について予算上の請求はいたしておるのでございますけれども、各省と同じように、なかなか実現は困難でございます。しかし、手不足という点も、それだけが原因だとは申せませんが、確かにあるかに考えますので、今後も増員等にはいろいろ尽力いたしたい、かように考えておるわけでございます。
  87. 神近市子

    ○神近委員 裁判所の名誉を守るためにいろいろお考えになっているということは、今おっしゃったことでわかるし、またなかなか増員がむずかしいということ、それは年々私も法務委員会にいてわかっておりますけれども、また最近あなたの方は、労働組合との間に何か時間延長に関して非常にもめているということはないのですか。この文書によりますと、三十五年度の予算を作るにあたって、四千名の書記官、調査官の勤務時間を一週四十四時間制から一週五十二時間制に変更して、週八時間ふやすというようなことを今お考えになっているということなんです。なるほど、手当はふやしてあります。今まで受けている本俸比八%の調整額を一六%にふやして、裁判官補佐官として裁判官の仕事を手伝ってもらう、こういうことなんですけれど、予算がたくさんもらえないために、人員をふやすことができない。これは今のこの事項の会計部員の増員ということとは別に、全体としてそういうことが今起こっている。そこにはさまれて、今皆さん御苦労なさっているということなんでしょうと思うのですけれど、現在与えられている勤務者の権利を命令一つで変えていくということを、あなた考えていらっしゃいますか、どうですか。この問題をお扱いになるところはどこですか。事務総長ですか。また時間が、土曜日なんかも、零時半なのを四時までにする。それから、八時半からというのも、ちょっとなるほどなと思っていますけれども、大体官庁は九時ごろから始まるのじゃないかと思いますが、裁判所は八時半。けっこうだと思うのですよ。けれども、それで退庁が五時なのを六時までというのは、ちょっと労働過重じゃないかと考、えているのです。これをまた一時間ずつ延ばす、そうなりますと、相当お役人として過労に陥られるということは、私どもにも想像できます。タバコを吸ったり、お茶を飲んだりというような階級の方々でないとすれば、相当勤務が忙しければ——忙しいからまた時間も延長なさるのでしょう。一体これはどうなさるつもりなのか。もう少ししっかりして、ほかの官庁に比べると、予算が少ないのですから、何とかもう少したくさん予算をもらって、日本の裁判事務がはっきりと確立されて、スムーズにいくように、大臣なり一長官なりに要求なさることはできないものですか。はたから見ていて、歯がゆくてしょうがない。ほかの各省は、いろいろな因縁だの何だのでどんどん予算がふえていくのに、本省だけが、きちんとまとまっていて、そうして悪いこともあまりなさらない。それで貧乏くじを引くということは、ただ見てもいられないんですが、何とか方法がないんですか。そうして、こういうふうに勤務者に荷を重くするというふうなこと——今まで毎年批難事項が少ないということは、確かに私どもは認めています。それでいてそういう目にお会いになるということは、私ども何か気の毒のような、歯がゆいような気がするんですけれど、この問題は、一体どういうふうに処理なさるおつもりなんですか。一つその点のお覚悟を聞かしていただきたい。
  88. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 裁判所の予算につきまして、非常に御同情ある言葉を承りましてありがたく存じます。同時に、私どもも力の足りないことを今さらのように痛感いたす次第でございます。先ほど御指摘の裁判所書記官の出務時間を長くいたしまして、一方において待遇給与を増すというこの問題は、われわれといたしまして、長年かかって、われわれの前任者時代から非常に検討して参った問題でございます。いずれ神近先生には、法務委員会等で詳しくお聞き願いたいと存じますが、要するに、ただいまの裁判所の仕事というのが非常におくれておりまして、これは民事、刑事ともでございますが、いわゆる憲法の考えております適正でかつ迅速な裁判ということから、ほど遠い状態にございます。裁判官は、先ほど御指摘がございましたように、そう急に増員するわけには参りませんが、その不足の人員をもちまして、実に非常な努力をいたしております。その裁判官の片腕となります者が、裁判所書記官でございます。家庭裁判所で申しますと、書記官のほかに、また家庭裁判所調査官というのがございまして、これが全く裁判官の片腕となりまして、一身同体のような形で仕事をして参ってもおりますし、また今後ますますそういう態勢で仕事をしてもらいたいというふうに考えるわけでございます。そうなりますと、勤務時間の延長ということは、なるほど、その点から申しますと、労働過重ということで、私どもといたしましても、まことに忍びない点がございますが、しかし、今の裁判の状態を何とか切り抜けまして少しでも国民の要望に沿った司法機関にこれを直していくためには、ここに相当な覚悟タ持って臨まなければならないということで、いろいろ考えました結果、いわば裁判官の側近とも申すべき裁判所書記官、また裁判所調査官につきまして、今御指摘のような手段をとった次第でございます。もちろん、一方におきまして職員の増員ということも必要でございますが、この点にはいろいろ制約もございますし、また増員ということになりますと、なかなか待遇をよくするということも困難でございますので、あれやこれやを考え合わせた結果、そういう手段に出たわけでございます。この裁判所の立場をよく御理解いただきまして、少しでもよい裁判に向かうように、御理解を賜わりたいと思うのでございます。いずれ法務委員会におきましてこれにつきましては、私どもの気持を申し上げるつもりでおります。
  89. 神近市子

    ○神近委員 この前の裁判所の原本ですか、それを代書させたという問題が起こったときも、大騒ぎして、ピケを張ったり何かして、大量の馘首者だの戒飭者だの出していらっしゃる。今度も、これは今申し上げたように、あなた方の長官の努力の仕方が足りなかったということも言えると思うんですよ。予算を十分に必要なだけとれなかった。それでとれないから、しょうがないから、下部の者を労働過重にするというふうなことになるんです。私は、その点で、やはり国民の信頼を受けている裁判制度でありますから、国家としても十分な給与を上げて、仕事がスムーズにいくように——いろいろ私どもも知っている問題があってここにはこんなに金が要らないだろうなというふうなところにはいっているんですから、必要な金を要求なさるということについて全省が一致して御努力になれば、国民にも訴えて、とれないことはないと思うんです。その不足の分を下部に向けるというようなことは、私は、これはお考えが誤まってやしないかというふうに考えるのです。  もう一つ、最近の裁判が非常にスピーディにいっている。一日に二十五件も三十五件も判決が出るというようなことが起こっていますけれど、そうなると、裁判でも、みんなの腹がまえ一つで、スピーディにやろうと思えばやれたのではないかというふうな感じを私どもするのです。一時は七千件もたまったそうですが、今日は五千件程度だ。それで一つここでスピードを出してやろう、そういうふうなことは、手加減で一体できるものなのか。今までは念入りにしていたのを、今度はざっとやっておこうということでやれるのか。それとも、もう長年手なれてきたので、スピードも出るようになったのか。技術者と同じようになったのか。それは非常にけっこうだと思うんですよ。その点では、私は抗議を言っているのじゃないんですけれど、今までだってスピーディにできたなら、なぜ早くからスピーディになさらなかったのかということが、私の疑問なんです。急にこのごろ調子がいいということが伝わっていますので、その点は一体どういうことなんでしょう。
  90. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 ただいまおっしゃいましたような審理の迅速ということにつきまして非常な努力を、ことに第一審の刑事の裁判官が中心となりまして努力をいたしておりますことは、御指摘通りでございます。なるほど、今まで何をしておったかという反対のおしかりも売ろうかと思いますが、やはりこの制度には、ことに刑事裁判というものは、戦後だいぶやり方も変わったような次第もございまして、十年ほどたちましたが、まだまだ創意工夫をこらすべき余地が相当あるようでございます。そういうところに、これは全部とは申しませんが、一部の裁判官が特別な努力を払ってやっております。これはもちろん検察庁、それから弁護士会方面の十分な理解がございませんと、なかなかこうは参りません。ことにまた、先ほどお話ししました裁判官の手足になります職員も、これに打って一丸となってやりました結果が、ああいうことになってきておるわけでございます。ああいうことをできれば、だんだん広めて参りたい。刑事事件ばかりじゃなく、民事事件につきましても、みんなが気を合わせまして、迅速化をはかりたい、こういうことがわれわれの念願でございまして、幸いに第一審ばかりでなく、裁判所全体の中にそういう気持が徐々に盛り上がりつつありますので、私どもとしましては、そういう傾向をできるだけ助長いたしますように、また最高裁判所の事務総局の者といたしましては、それに必要な手当をしてあげたいというふうに考えております。
  91. 神近市子

    ○神近委員 今手当の話がありましたけれども、労働時間が二〇%も延長されているのに、手当の方はずっとおくれているということが、みんなの反対意見の一つの事実となっております。それで、今あなたがおっしゃったように、調査官、書記官というものは、裁判官の手足である。両者一体となってやらなければ能率は上がらないというふうなことを、今おっしゃっております。そのためにも、ぜひ下部の人たちに不満を抱かせないような御配慮が必要だろうと思うのです。それから裁判の能率が非常に上がるようになったのは、上部と下部とのチーム・ワークがうまく行くようになったからだと今おっしゃったんですけれども、下部の人たちの勤務時間の延長にマッチして、裁判官諸君、あるいは長官やあなた方も、その時間を延長なさったんですか。そして今までどうもあまり能率が上がらなかったのは、上の人があまりよく動かなかったというようなことがあるのですか。今の御説明の中に、そういうようなことがちょっと感じられたのですけれども、今までは腰をあげていないで、いすの上にすわって、手足のように書記や調査官を使っていた。だけれども、これではならぬというので腰をあげたから、能率が上がるようになったというように受け取れたんです。これは私のひがみかもしれませんが、急に能率が上がる。これは非常にけっこうなんですよ。今までの怠慢が私は問題だと思うので、そのことを伺っているんです。
  92. 横田正俊

    ○横田最高裁判所長官代理者 能率が非常に全般的に上がることを念願するものでございますが、今仰せられました、裁判官などの勤務時間も延長されたかどうかという点でございますが、御承知のように、裁判官は勤務時間を超越した一つの職務でございまして、裁判官につきましては、法律上勤務時間というものもきまっておりませんし、従って、また超勤と申しますか、超過勤務手当というようものが全然ないのでございまして、いわば裁判官は役所におりましても、家におりましても、終始裁判のことを考えており、また、そのために、時間的に申しましても、かなり多くの時間を裁判ということのために使っておるのでございます。こういう特殊の裁判官の手足というためには、やはり裁判所書記官も、家庭裁判所の調査官も、普通の一般の公務員とは違った勤務態勢をとってほしいということが、やはり今度の問題の根底にあるわけでございます。
  93. 押谷富三

    ○押谷委員長代理 裁判所所管につきましては、この程度にとどめます。
  94. 押谷富三

    ○押谷委員長代理 次に、法務省所管に入ります。法務省所管につきましては、会計検査院の批難事項も別にないようでありますが、一応検査の概要につきまして検査院当局の説明を求めます。保岡第二局長
  95. 保岡豊

    保岡会計検査院説明員 ただいまお話にありましたように、検査報告に掲げて報告いたすものはございません。その検査の途中におきまして、非常に小さい役所が多いものですから、なれないことをしておりまして、これが不正行為につながるというようなこともありますので、そういうのは十分注意をいたしまして、それを軌道に乗せるということはいたしております。また、三十二年度中に全額補てんされましたものですから、掲げてはおりませんけれども、七十二万円ばかりの不正行為も発見いたしております。以上であります。
  96. 押谷富三

    ○押谷委員長代理 質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許します。小川豊明君。
  97. 小川豊明

    小川(豊)委員 簡単に一、二点お伺いしたいと思います。三十二年度の指摘はないのですが、三十三年度になると出てくる。そこで三十三年度の決算で論議せられるでしょうが、ただ、お聞きしたいのは、この三十三年度に出ているのは、四年とか、長いのは十年もかかってやられている。こういう長い間不正事実が行なわれていながら、どうしてこれを発見できなかったか、こういう点に一つ疑問を持つので、これは内部の監査機構というものを、法務省では一体どういうふうに立てておられるのか、これらの点をお尋ねしておきたい。
  98. 大澤一郎

    大澤(一)政府委員 ただいま御指摘のございましたように、三十二年度の決算では、批難事項として指摘を受けるような大きな事故はなかったのであります。三十三年度に至りまして、前年度より引き続きました不正事項がございまして、われわれといたしましては、まことに申しわけないと存じている次第でございます。かような不正事項の絶滅につきましては、機会あるごとに所管の庁に対しまして注意を与えておる次第でございます。また、各所属の庁におきましても、機会あるごとに綱紀の粛正に意を用いている次第でございます。たまたま三十三年度の事故におきましては、数年にわたった大きな事故が発見された次第でございます。まことにわれわれの監査の至らなかった点を深く反省し、おわび申し上げる次第でございます。今三十三年度の批難事項について資料を持ち合わせておりませんので、詳細なことは三十三年度の検査報告書についての御質問のときに御答弁申し上げたいと思いますが、今記憶しておりますところでは、われわれといたしましては、経理事務につきまして、金銭の動きというものにつきましては、必ず相互牽制組織をとるように指導しまして、一つの金が動きます場合には、二人以上の手を経てそれが出ていくという組織をとっておるのでございます。さような人員配置もいたすように指導をしておりまして、現在各庁におきましては、人員は少ないのでございますが、それぞれ必ず二人以上の手を経て、相互牽制のもとに事務が処理されるという方針をとっている次第でございます。たまたま三十三年度の御指摘を受けております東京入管、あるいはまた横浜法務局の小田原支局というような事故につきましては、その監督の責にある総務課長あるいはまた支局長とかいうものが事故を起こした張本人でありまして、さような意味合いで、その下僚とその支局長ないしは課長というものの相互で事務をとるようにしておりました関係上、上司の命と申しますか、これはおれがやるからと言われたために、下の者がその事務の相互牽制の一端の事務を上司にまかして結局一人がその一つの事務を専管するというような形に相なりました。それが、この大きな事故になった基だと考えている次第であります。そこで、かような事故の発見のおくれましたのは、つまり支局長とか総務課長というような責任ある地位の者でございまして、平素の業務成績がきわめて優秀でありますし、また、過去におきましても、さような間違いのない者がかような監督者の地位におるものでありますから、所属の長といたしましても、やはりこれに対して相当信用し過ぎておったというようなこともございますし、また本省からも経理事務の監査に参っておりますが、日常の事務の処理方法が、毎日おるわけではございませんので、はたして一人でやっておるかどうかということが発見できなかった。組織表を出させますと、相互牽制の組織と表面ではなっておるが、事実上一人がやっておったというようなことで、発見がおくれましたような次第であります。その詳細につきましては、三十三年度の検査報告書の際に、詳細に御答弁申し上げます。
  99. 小川豊明

    小川(豊)委員 もちろん、それは三十三年度に指摘されたことだから、三十三年度に聞けばいいのですよ。ただお聞きしたいのは、こういう事故をなからしめるためにも、内部監査なり、査察なり、そういう機構というものは、当然作られてあるだろう。それがどういうふうに作られているか。このことは、三十二、三十三年に関係なしにお尋ねしておきたい。
  100. 大澤一郎

    大澤(一)政府委員 経理事務の監査につきましては、われわれ本省におきまして年二回に分けまして所管各庁を回っておるわけでございます。しかしながら、法務省所管の庁は、検察庁、刑務所、あるいはまた法務局、保護観察関係の保護観察所、あるいはまた公安調査庁、全国に本庁だけで四百数庁ございます。それに、順次実地に臨みまして経理事務の監査を行なっておるわけでございますが、いかんせん、予算の限度もございますし、また人員の制約もございまして、一年に二回ということにも参りかねますので、会計検査院が実地監査をなさいます計画とにらみ合わせまして、なるべく均等に回りますように、三年ないし四年目に一回本庁に経理事務の監査ができるように回っておる次第でございます。しかし、これは本省の経理部におきまする経理事務の監査でございますので、その所管々々、組織々々につきまして、たとえば検察庁を例にとりますと、最高検察庁におきまして、管下の高等検察庁及び地方検察庁、これをやはり数年計画で、三年ないし四年に一回の割合で回れるように、監査を実施いたしております。しかし、これも経費がございませんので、一般事務の指導あるいは監督というようなことで各地方に行きます場合に、それを兼ねて実施するわけであります。また、高等検察庁におきましては、管内の地方検察庁の本庁を中心に、これは年一回は必ず監査をします。また、各地方検察庁におきましては、管下の区、支部検察庁等につきましても、経理事務のみではございません、一般の業務監査と兼ねまして、少なくとも年一回は実地に検査をするという方法で、その他の各組織につきましても、大よそこれに準じた方法で、できる限り経理事務の不正の早期発見、未然防止ということに努めておるわけでございます。
  101. 小川豊明

    小川(豊)委員 この点は、また三十三年度にすぐ入るのだから、そのときにお尋ねします。  会計検査院にお尋ねしますが、法務省の報償費というのは、検査をやっていますか。
  102. 保岡豊

    保岡会計検査院説明員 検査をいたしております。報償費の一部分は、普通表彰するという意味の報償費がございます。これは普通に検査をいたしております。ところが、情報関係のものに報償費を出すという場合は、普通その先々まで検査することは——できるのでありますけれども、そういうことをいたしますと、その目的をそこなうということになりますので、実地に検査いたしましたときに、どういうふうに使っておるかということを聴取いたしまして、それによりまして、予算の目的の通りに使っているということの心証を得まして、検査を了しておる、こういう次第でございます。
  103. 小川豊明

    小川(豊)委員 まあ実際はやっていない。そこで、この公安調査庁の調査官の調査活動費、これは大きいのです。三十二年度に三億一千六百万円ある。この検査を一体あなたの方でやっているのか。これは現行の検査方法でできるのか、できないのが。また、やっているか、いないか、こういうものを調査しているのか、いないのか、ここからお尋ねしたい。
  104. 保岡豊

    保岡会計検査院説明員 調査活動費におきましても、ただいま申しました報償費の分と同じような検査を行なっておりまして、支出官から取り扱い責任者に渡し、そうして取り扱い責任者が領収書をとる、これが普通の証明になっております。取り扱い責任者は、それを毎月々々受け払いを明細にして、払いは何の目的で払い出したか、そこまでは証拠書類としてわれわれの役所に提出する。そうして実地検査に参りました場合に、その使いようが、先ほど報償費のときに申しましたように、その予算の目的に使われているということの心証を得まして、検査を了している次第でございます。むろん、支出官のところには、最終の情報提供者の領収書もときにはあることはございます。しかし、その名前とか番地とかは書いてございませんので、その通り使ったという心証がありますれば、そこで検査を了する、こういうことでございます。
  105. 小川豊明

    小川(豊)委員 御答弁を聞いていると、わかったような、わからないようなものだが、心証を得ているというのは、一体これはだれが心証を得ているのか。これはあなたの方で行って聞いてそういうものは予算の目的に使われているだろう、こう判断して、それ以上は突っ込まない、こういうことなんでしょう。  そこでこの調査官の調査活動費、これは実際には機密費的なものであると了承しているから、そう深く追い込めないが、検査院として、三億一千六百万という膨大な金の検査は、もっと厳密にすべきなのか、しなくてもいいのか、するとするならば、どうしたらいいのか、そういうあなたの方の所見というものをお尋ねしたいと思います。
  106. 保岡豊

    保岡会計検査院説明員 おっしゃいますように、三億一千六百万円が各ブロックに分けられまして、ブロックの公安調査局長が支出官になって、取扱い責任者に渡しておるわけでございますが、そこから先のことは、ただいま申しましたように、そういうふうに使われたということをわれわれの方で確認できないかもしれませんけれども、心証を得るということを先ほど来申しておりますが、その程度にとどめておる次第でございまして、情報を提供させるところの一人々々までということは、どうも私ども考えますのに、それを破壊することになるので、それはやめておる、こういう次第でございます。
  107. 小川豊明

    小川(豊)委員 それ以上聞かない方がよいし、答弁もしない方がいいでしょう。  そこで次に、出入国管理、これは法・務省の所管でしょう。出入国管理というのは、どうも法務省一本でやっておるのか、これは外務省の関係ももちろんあるでしょうし、警察もあるだろうが、所管としてはどこになるのですか。
  108. 近藤忠雄

    ○近藤説明員 局長が留守でございますので、かわって私からお答え申し上げます。出入国管理行政につきましては、主管といたしましては私の方一本でございまして警察も外務省も直接の責任者ではございません。
  109. 小川豊明

    小川(豊)委員 所管としてはあなたの方が一本だが、これは許可したりなんかしたりするのは、外務省も必要になってくるだろうし、何か聞くところによると、二本なり三本なりの形で管理が行なわれていて統一がとれない、末端にいくと、非常に困っておるという話を聞くのでありますが、そういうことはありませんか。あなたのところで完全に一本にするならするという必要は感じないわけですか。
  110. 近藤忠雄

    ○近藤説明員 先ほどお答え申し上げましたように、私の方が一本でやっておりまして、外務省も警察も、これには関係はないわけでございます。ただ、査証事務というのが外地において行なわれるわけでございます。これは、御承知のように、在外の公館におきまして、外国人が入国する際に、そこで一応日本へ入ってくることについて、入ってきてもいいかどうかというので、在外公館に一応推薦をしてもらうという意味の、法律的にはそういう意味の性格のものでございます。それで、その査証を受けた者につきましては、こちら側ではそれを受けまして、一応こちらで審査いたしまして、その上できめていくという建前になっております。
  111. 小川豊明

    小川(豊)委員 聞くところによると、密出入国というのは最近非常に多いという。それは事実多いのか、数字の上にそういうのがたくさん表われてきておるのか。表われてきておるとすれば、あなたの方ではその対策はどういうふうにお立てになっておるか。
  112. 近藤忠雄

    ○近藤説明員 先ほどの点、ちょっと補足して申し上げます。日本人の出入国につきましては、外務省が旅券を発給する建前になっておる。私の方の所管の関係では、一応外国人の関係になるということを御了承を得たい。  それで先ほどの御質問でございますが、外国人の出入国は、御承知のように年々ふえておりまして、そのふえ方は、かなり大きなカーブでふえつつあるということが一青えると思います。
  113. 小川豊明

    小川(豊)委員 出入国がふえていく、これはけっこうなんです。密入国、密出国がふえているのか、ふえているなら、これはけっこうなことじゃないでしょう。従って、ふえておるならば、これに対する対策はどうとられておるか。あなたの方が一本でこれを管理するならば、あなたの方の責任としてこれをお答え願いたい。
  114. 近藤忠雄

    ○近藤説明員 不法密入国の関係は、全体といたしましては、必ずしもふえ  ておるというふうには見ておりません。特に日本における密入国の一番大きなのは、朝鮮人、いわゆる韓国人がほとんど大部分でございます。その大部分の数字を一応手元にございますので申し上げますと、昭和二十六年が一番多うございます。そのときには三千四百九十五名でありましたが、その後若干の変化はございますが、逐次減りつつある。二十七年におきましては二千五百二十八名になっておる。二十八年になりますと二千二百二十四名、二十九年になりますと千四百九十七名、三十年になりますと千四百三十四名、三十一年になりますと千百十七名、三十二年になりますと二千七十名、若干ふえております。三十三年は、さらに減りまして千四百三十八名、昨年度はまだ全部の統計が出ておりませんが、昨年九月までの分につきましては、私の手元に持っております資料では七百二十九名、こういう数字になっております。これは朝鮮人に関しての数でございますが、それ以外の数で問題になるのは、中国人がある。中国人の数字は、今私の手元に正確なものを持っておりませんが、数字的に申しますと、これは朝鮮人に比較にならぬほど少ない数字でございます。今私の記憶で申し上げて、正確でございませんので恐縮ですが、昨年の九月の統計だったと思いますが、朝鮮人の密入国が約三十名程度でございました。そのとき、中国人の密入国は一人というふうになっております。そういうような割合でございまして、一応表面に出たのはそういう数でございます。ただし、このほかに潜在した密入国者があるかもしれませんのでございます。一これは、残念ながら、われわれの数字にはとり得ない。  それからもう一点、御質問にお答えをしなければならない点は、その密入国した人間に対する対策、あるいはそれに対する管理の関係はどこになるかという問題でありますが、不法入国者は、御承知のように、一応刑罰法令に触れることになるのでありますので、それで各地のそういうものを取り締まる警察と海上保安庁、そういうものが一応検挙の対象になり得るわけでございますので、対象にしておるわけでございます。入国管理局といたしましては、一応予算の人員の件もありまして、全国べそれを捜査にいくということは不可能でございますので、それで、われわれの仕事が出入国港においての仕事になる建前になっておりますので、出入国港においての、その出入についての管理につきましては、われわれも責任を持って処置しなければならない、こういう建前になっております。申し上げますれば、要するに刑事事件としての検挙の関係と、もう一つは、わが方が直接管理をするという面におきましての、港における密入国の対策、こういうことになっておるわけでございます。
  115. 山田長司

    ○山田(長)委員 ただいまのに関連して伺っておきたいのですが、国民の不安になるような、たとえば捜査当局で調べておった犯人、あるいは殺人未遂の事件の犯人、こういう犯人が姿を消して逃亡している。まるで日本は野放しの犯罪被告人の国のような状態ではないかというようなことがいわれているわけなんですが、一体こんな形で犯人が平気で出入りをすることのできるような状態というのは、どこにあるのですか。
  116. 近藤忠雄

    ○近藤説明員 成規の旅券を持っております外国人につきましては、それが出国をいたしますについては、港に正確に出てきまして、審査を受けて出国をするにつきましては、現在の法令におきましては、まだ犯罪の容疑者であるとかいうような関係でありますれば、それはチェックできない建前になっております。ただ、逮捕状を発行されたとか、あるいは収監状が発行されております者の身柄の確保される措置に出ます場合につきましては、これは一応そういう拘束をいたしまして、出国させないことにできる建前になっております。御説のごとく、犯罪の容疑者の段階でありますと、やはり本人の基本的な人権の面もございますので、一応そういう点で、身柄の正確な逮捕状とか、あるいは収監状とか、令状がないと逮捕ができない、こういう建前でおるわけでございます。
  117. 山田長司

    ○山田(長)委員 ときどき耳にすることなんですが、商社の場合に、軍の飛行機を利用して出入りをするとか、あるいは軍の飛行機を使って、いわゆる羽田とか横浜とかいう場所を通らずに出入りをする者が為るといわれていますが、こういう場合は、出入国の管理局としては、どういう取り締まりの対象になっているのですか。
  118. 近藤忠雄

    ○近藤説明員 行政協定の該当者でありまする軍人、軍属、そういう者につきましては、一応、わが国の出入国港に指定されておりまするところ以外の基地から出入りすることは、認めておるわけでございます。それ以外の者の出入りにつきましては、一応先方から通報を受ける形になりまして、それで一応事前に審査いたしまして、出入りを許す、こういう建前になっております。
  119. 山田長司

    ○山田(長)委員 そうしますと、実は昨年グラマン、ロッキードの調査のときに、日本の政治家がアメリカベ行ったというような場合に、これが東京都下の飛行場から立ったというような場合は、臨時に軍人なり軍属なりに嘱託をされて旅行したというようなことになるわけですか。
  120. 近藤忠雄

    ○近藤説明員 実は、その点は、私具体的なケースについてどういう取り扱いをいたしたか存じておりませんでございますが、日本人が出国するにつきましては、一応旅券を持ちまして、その旅券につきまして、わが方が、たとえば立川でございますれば、あそこに出張所を置いてございますので、そこで審査を受けさせて出国さす、こういう建前をとっております。
  121. 山田長司

    ○山田(長)委員 かりにこういう場合において、普通関税取り締まり等の取り締まりの仕方ではなく、まことにゆるやかな取り締まりになっておるという話でありますが、どういう点でそういう差別をなされるのですか。
  122. 近藤忠雄

    ○近藤説明員 関税関係につきましては、私の方の所・管でございませんので、よく存じ上げておりませんですが、出入国の関係につきましては、人の問題につきましては、特にゆるやかにするというふうな取り扱い方はいたしておらないつもりでおるのでございます。
  123. 山田長司

    ○山田(長)委員 外国人の、犯罪捜査上に上がっておる者、あるいは裁判の判決寸前の者、あるいは判決を受けた者等の場合も、もし出入国管理の衝に当たる者が厳重にこれを取り締まったとするならば——現在すでに新聞の伝うるところによると、外人が二十三人も逃げておるという話でありますが、こういうことであるとするならば、ずいぶん国民は生活不安の中に置かれると思うのです。また来ている外人も、そういう点では非常に簡単にものを考えるのじゃないかと思うのです。二月十一日の朝日新聞を見ますと、米国陸軍の制服を着た者が、夜の七時十分ごろ、銀座一の伊勢伊時計店でダイヤモンドの入っている指輪二個、時価十四万円を店先に出さして、店員が電話をかけているうちに持って逃げたという、まことに奇怪な事件があるのですが、こういうことも、外人が日本に来ておって、敗戦国であるというようなことから、犯罪を犯して平気でいるというような印象が国民に与えられているんじゃないかという気がするのですが、こういう点についても、やはり差別をつけることなく、厳重な取り締まりがなされないと、これからもこういう事件が次々に起こるんじゃないかという気がするのです。被告の逃亡とか、あるいは判決寸前に逃げていったというような事件が、どうも日本人の場合にはそんなことはなかなか理解ができないのですけれども、どんなことで起こってくるのですか、刑事局長一つ伺っておきたいと思います。
  124. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 ただいま御指摘のように、捜査中あるいは公判中、あるいは刑の確定を見て執行をこれから受けなければならない者が、国外に逃亡してしまうという事例がありますことは、私ども立場からいたしまして、非常に遺憾に考えております。これを防ぐ方法といたしまして、入管令の問題がございますけれども、入管令の法的不備という点もないではございませんが、先ほど近藤次長からも若干触れたと思いますけれども、出国の場合には承認をするというだけでございまして、出国の可否を審査する、わが国にとって不利益な状態があるならばこれをとめるという権限は、現在の入管令の建前からいたしまして、ないようでございます。そういたしますと、現実に査証を持って入国管理官の前に現われた以上は、特に査証に疑問のない限りは、これは許さざるを得ないというのが、入管令の建前のように考えるわけであります。そこで、そういう容疑のある者が、現実に入管の審査官の前に出ないようになっておる状態が、審査を受けられない状態なんです。そうすると、身柄が逮捕されておるとかいうことが、現実の問題としては出国を阻止する唯一の理由になってくるわけです。身柄がそこに現われないためには、逮捕されているというようなこととか、いろいろ事情があると思いますが、そうなってきますと、入管令の問題じゃなくて、国内の取り扱いの問題ということになって参ります。捜査中におきましては、身柄を逮捕して捜査することもありますし、あるいは在宅のまま取り調べをするということもございます。日本人でございますれば、外国へ飛んでいってしまうということはなかなか困難でございますが、外国人でございますと、ちゃんと査証を持っておる場合には、不利だということになれば、身柄が逮捕されていない、そういう時期を選んで逃げてしまうということも、これは現行法上阻止することがすこぶる困難でございます。そういうことを察知しておりますれば、また何らかの手当や方法も講ずるということもありますけれども、現実には、そういう場合に逃げていくということになると思います。公判中におきましても、保証金を積んで釈放になっておる場合があるわけであります。そういう場合に、今のように査証さえ持っていれば、不利だと思えば出ていく。例の俳優の出ていったといわれてこれは出ていったかどうかわかりませんが、出ていったといわれる事件も、そういうふうに考えられるわけです。それから刑の判決の言い渡しを受けて確定をいたしました者は、これはもう日本の法律に従って執行しなければなりません。これが在宅でございますと、召喚状を書きまして、執行の手続に入るわけでございますが、その間身柄が在宅になっておりますので、羽田に行って、正当な査証を見せて、帰ります、こう一青えば、入管の審査官はこれを阻止する方法がないというのが現状でございます。向こうに出ていってしまった者は、どうやってそれじゃ取り返すかということになるわけであります。そうなって参りますと、犯罪人の引き渡し条約を結んでおりますのは、現在アメリカだけでございますが、そのアメリカに対して、犯罪人の引き渡しを要求するということになると思います。これとても、外国に行っております1日本でさえも見のがしてしまったような犯人が、アメリカにうまく入ってしまってまたもぐり込んでしまえば、なかなか向こうの官憲の手で取り押えるということも、すこぶる困難でございましょうし、実効を上げるのはむずかしいわけでございます。その他の条約のない国につきましては、外交交渉を通じましてその実現をはかるのでありますけれども、これまた条約がないのでございますから、向こうがいやだといえばそれだけの話です。いわんや朝鮮、中国というような国になって参りますと、南朝鮮につきましては、事実上、日本人は南朝鮮に自由に行けない状態になっております。北鮮はもちろんであります。そういう関係で、外交交渉の道もすこぶる狭くなっておる、こういうことで、ごらんのように、まことにそういう場合には自由に、ルーズに行なわれておるような印象を与えるわけなんで、これは私どももはなはだ遺憾に存じております。何とかこの間の、人権の侵害にならないような方法で、しかも国の権利を保護するという立場で、何らかの方策を講じなければならぬと思っておりますが、法の不備もありますけれども、実際問題として、そういうような扱いでございます。たとえば、いろいろ議論のあるところでございますが、保釈なんかします場合に、査証は裁判所が預かっておくとか、あるいはそれを裁判所が預かるということができなければ、その国籍のある国の領事に預けることを条件にして保釈を許すとかいうようなことも、私ども内部的にはいろいろ議論してみておりますけれども、これもなかなか実現困難だというようなことで悩んでおるのが実情でございます。
  125. 山田長司

    ○山田(長)委員 関連で法務委員会の所管のようなことを伺って大へん恐縮でございますけれども、ひんぴんと起こってくる外人の非難されるような事項について、ただいま伺って非常に盲点があることはわかっておるのですが、やはりこれは何とか至急にこの盲点の除去に努力してもらいたいと思う。銀座の宵に起こっている事件なんというものは、実際、店員が今のはどろぼうだということであとから追跡しても、外人なるがゆえに、だれもあの人通りの多い混雑の中で、現行犯の犯人を取り押えることができずに逃がしてしまった。こんなことがあがらなかったというようなことになりますと、来ている外国人が付和雷同して、次々こういうことを起こさないとも限らぬと思うのです。今のお話を伺って盲点がわかったのですが、これは至急に何とかこれが解決のために御努力をしてもらいたい、私はこう思います。どうぞお願いいたします。
  126. 神近市子

    ○神近委員 ついでといってはまことに恐縮でございますが、入管の方がおいでになっているので、ちょっと伺いたいのです。いろいろ手続が非常にめんどうだということはわかるような気がいたしますけれども、密入国の人が、自分で出てきて、そして密入国でございましたということで、これを正規のものに認めていただきたい1日本で生まれて、日本で育って、日本人に協力したために中国にいられない、それで入ってきて何年も隠れていたというケースなんで、たまたま私の選挙の地区でございまして、私のところに持ってきましたから、まあ間もなく解決はつくだろうと思うのですけれども、それでも、ほぼ一年近くかかるのです。一体そういう場合に、どういう手続で——これはたくさん要るだろうと思うのですが、ごく簡単でけっこうですから、一体どういう手続をなさって、どういうところでこれが決定されるか。昨年の末にずいぶん早く、だれでも正月はほがらかに迎えたいという気持で、片づけてくれと言ってきましたけれども、お役所もさぞお忙しいだろうと思って、私は押えて待たせておいたのですけれども、間もなく解決しそうで、私はこのことで文句はないのでございます。だけれども、東京入管に行ってみますと、こんなに書類があるのですから、それを順々にしていたら、また半年かかるか、一年かかるかというようなことを言われるのですけれども、一体どういう手続が必要なのか。やはり人員の不足で、お手が回らなくて、なかなか事務上のことがおできにならないのか。ごく簡単でけっこうですから、どういうことをなさるか、項目を一つあげていただきたい。
  127. 近藤忠雄

    ○近藤説明員 密入国をされた方が自首をされますと、一応、所在の管轄の入国管理事務所というものが全国に十二ございますので、そこへ参りまして、自首をされるわけであります。それに基づきまして、入国警備官が調査に着手いたすわけでございます。その調査に着手いたしまして1入管令の建前は、普通の刑事訴訟法の感覚とは逆でございまして、一応本人の自首がありましたら、身柄を収容するというのが建前になっております。そこで警備官が一応調査をいたしまして、さらに、訴訟法の感覚から申しますれば判事に当たります審査官というのがあります。その審査官がそれを受けまして、審理をするわけであります。その審理をする際には、口頭審理と申しまして、普通の訴訟と同じような構造で証人を呼びましたり、あるいは証拠をそろえたり、そういう手続をするわけでございます。そういう関係で、かなり時間を食うわけでございます。それで一応審査官で判定いたしましても、その審査官の判定に不服がありますと、さらに本人の異議の申し立てをすることができることになっております。その異議の申し立てによりまして、特別審理官というのが調べまして、これはさらに法務大臣に異議の申し立てができる、こういう建前になっております。それの上に、最終的に法務大臣がそれに対する裁決をやる、こういう建前になっております。そういう関係で、かなり手続的に長い一つのプロセスが要るわけでございます。同時に、最終的に今神近委員の御希望のように許可してもらおうということになると、密入国についての許可と申しますのはこれは、普通は退去を強制するのが建前であるわけでございます。それをさらに許可しようというのは、そういうふうな数次の異議の申し立てをしまして、最後に法務大臣のところに上がりまして、法務大臣の裁決によりまして許可をする以外に方法はない、こういうことになりますので、かなり時間が要するわけでございます。
  128. 押谷富三

    ○押谷委員長代理 法務省所管につきましては、この程度にとどめまして、本日は、これにて散会いたします。     午後一時十四分散会