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1960-04-20 第34回国会 衆議院 議院運営委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月二十日(水曜日)     午後一時四十六分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 菅家 喜六君 理事 佐々木盛雄君    理事 長谷川 峻君 理事 松澤 雄藏君    理事 三和 精一君 理事 柳田 秀一君    理事 下平 正一君 理事 池田 禎治君       天野 公義君    砂原  格君       服部 安司君    毛利 松平君       木原津與志君    小林  進君       阪上安太郎君    八木  昇君       小沢 貞孝君  委員外出席者         議     長 清瀬 一郎君         副  議  長 中村 高一君         議     員 佐々木盛雄君         議     員 長谷川 峻君         事 務 総 長 鈴木 隆夫君         法 制 局 長 西澤哲四郎君     ————————————— 四月二十日  委員木下哲君辞任につき、その補欠として小沢  貞孝君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国会審議権の確保のための秩序保持に関する  法律案(第三十三回国会衆法第二二号)(参議  院送付)  条約承認権に関する調査小委員長報告  条約承認権に関する件  次回の本会議等の件      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより会議を開きます。  まず、条約承認権に関する調査小委員長から、報告のため発言を求められております。これを許します。菅家喜六君。
  3. 菅家喜六

    菅家委員 去る三月十八日の委員会において、小委員会審議経過を一応中間報告として申し上げておきましたが、その後の小委員会経過について簡単に御報告申し上げますと、四月一日に小委員会を開会しまして、さきに御報告申し上げておきました条約承認権について論議する項目を取り上げまして、順を追うて論議を進めることに小委員会ではいたした次第であります。  そこで、第一の問題は、憲法第四十一条と第七十三条との関係についてでありまして、言いかえれば、要するに、国会承認権は、国会が国権の最高機関であり、唯一の立法機関である性質から由来するものであるか、あるいは、行政権固有権限としての条約締結権に対して国会がこれに関与するにすぎないものであるかという問題であります。小委員会といたしましては、この問題を、論議を進めていく第一の問題といたしたわけでありまして、各党おのおのそのまとまった意見をこの機会に開陳をして論議を進める、こういうことに小委員会では決定いたした次第であります。  従いまして、本日は、全体の委員会において、さきに申し述べました趣意により、各党意見を御開陳願えれば非常にけっこうでありますが、しかし、小委員長としての考えは、これは非常にむずかしい法律問題でありますから、必ずしもきょうこの意見をここで開陳してもらわなければならないというふうにも考えておりません。大体、小委員長考えとしては、国会に無数に、疑問のある問題が法律問題として残っております。承認権の問題は、今回特別委員会からこの委員会に付託されたのでありますが、この法律的に疑問のある問題の結論を急いで出さなければならないとは考えておりません。結論を出さなくてはならない場合とは、二つしか場合がないと思う。一つは、ただいま開かれておる安保特別委員会から当委員会に対して、さきに貴委員会に対して依頼をしておった修正権の問題の結論を出さざる限りにおいて、特別委員会審議は進められない、こういう申し入れがあった場合において、当委員会としてはその結論を出さなければならないと思う。もう一つは、具体的に修正案という建前に立って修正の動議が出た場合には、この問題は、どうしても具体的に解決しなければならない。私は、今日までの国会経過にかんがみまして、国会法議員逮捕要求承認の件の問題のときでありますが、これは国会法にも二つ議論があった。承認を与えるか与えないか、イエスかノーかだけである、こういう議論がありましたけれども、別に結論に到達しておりませんでした。ところが、ちょうど当時有田二郎君の逮捕要求がありましたときに、具体的の問題にぶつかったので、当委員会としては結論を出さざるを得なくなった。そこでお互い論議を尽くしまして、私どもは、いわゆる期限をつけて承認をする、一方では、期限をつけることは、条件であるから、いけないという議論がありました。しかし、ここで論戦を戦わした結果、当委員会決定といたしまして本会議にかけて、本会議で討論をいたしまして、院議としてこれが決定を見て先例に残っておるのでありますが、このような事例から考えてみまして、今後具体的にふつかったときには、当委員会として処理しないわけにいかない。この二つを除いた以外には——法律的に学者の間にも二つ意見があり、あるいは学者以外の研究者の間にも二つ意見があり、国会においても二つ意見があるところの、承認するにあたって修正権ありやなしやという法律問題の結論を当委員会において急いで出すということには私は考えていない。以上二つを除いたほかに、当委員会として、あるいは少委員会としては、将来の参考資料としてお互い研究したものを記録とし、残しておくという程度で、次に具体附の問題が出てきたときに、われわれの調査研究したものがその資料になれば非常にいいのではないか、私はこういうふうに考えております。つけ加えて一応私の考え方を申し上げておきます。
  4. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ただいまの条約承認権に関する調査小委員長報告に対し、何か御発言がありますか。——それでは、順次発言を許します。まず、柳田君。
  5. 柳田秀一

    柳田委員 今、菅家委員長から述べられておることは、大体において了承いたしますが、結論の出し方については、今、二つあると言われましたが、私はその二つのほかにまだあると思うのです。それだけではないと思う。その出し方は、今ここで述べる時期ではないと思いますけれども、しかし、二つだけではない。別に菅家さんの発言を否定して言う意味じゃありませんけれども、それだけまず最初に申し上げておきます。そこで、この問題を研究する上において、衆議院では、こういうような問題の決定は、何といっても衆議院法制局長最高地位にあるのですから、法制局長にお尋ねをいたしたいと思うのですが、条約締結権というのは、内閣国会連帯責任の問題であるのか、これは内閣固有権限であるのか、どちらですか。
  6. 西澤哲四郎

    西澤法制局長 ただいまの御質問でございますが、この問題につきましては、学説上から申しましても、今お話のありましたような共同行為の説もございます。また、効力要件という説もございます。また、政府側見解は、これはただ単なる国内の手続であるというような説もございまして、多数説というようなものは、学説としては実は見当たらないのでございます。そういった実情にあることをお答え申し上げておきたいと思います。
  7. 柳田秀一

    柳田委員 学説のあることは、小委員長も言われた通りですが、少なくとも衆議院法制局長地位にある以上は、独自の見解で、率直に、しかも自信を持って答弁できるのでなければ、いたずらに曠職のそしりを免れぬと思うのです。  それでは、条約締結という行為は、具体的に何と何ですか。
  8. 西澤哲四郎

    西澤法制局長 条約締結ということにつきましては、外交交渉から調印、それから批准までを含む行為だと考えております。
  9. 柳田秀一

    柳田委員 具体的に全部言って下さい。
  10. 西澤哲四郎

    西澤法制局長 外交交渉、それから調印、それから批准、ここまでを含むものだと考えております。
  11. 柳田秀一

    柳田委員 国会承認はどうです。
  12. 西澤哲四郎

    西澤法制局長 国会承認は、批准の中には入っていないと考えております。
  13. 柳田秀一

    柳田委員 そうすると、条約締結ということは、外交交渉をやる、そして調印をやる、そして批准をやる、それだけでいいのですね。条約締結とは、一体具体的にはどういう事項を含むか、こういう質問ですが、今あなたは、外交交渉と、調印と、批准だと言われましたが、その三つでいいのですね。
  14. 西澤哲四郎

    西澤法制局長 その通りだと考えております。
  15. 柳田秀一

    柳田委員 そうすると、「条約締結に必要な国会承認について」という憲法の第六十一条がありますね、これはどうなりますか。
  16. 西澤哲四郎

    西澤法制局長 結局、それは承認権性質に関する問題だと考えておるわけであります。
  17. 柳田秀一

    柳田委員 私は、条約承認権の問題でなしに、条約締結を言っておる。締結とは、どういう行為をいうのかと言っておる。締結に必要な行為としてここに条約承認権があるのですから、そうすると、条約締結ということは、外交交渉、これはわかります。それから調印、これもわかります。そうしてその次に、私の私見では、国会承認、さらに批准書交換、こういうことですね。それが私は条約締結だと思うのですが、そうではないのですか。
  18. 西澤哲四郎

    西澤法制局長 私の考え方では、七十三条の「締結」という中には、国会承認という行為は入っていないと考えております。
  19. 柳田秀一

    柳田委員 七十三条には、こういうふうに書いてあるのです。「条約締結すること。但し、事前に、時宜によっては事後に、国会承認を経ることを必要とする。」従って、批准の問題は、七十三条では、ないのです。七十三条の、三は、条約締結のことを書いてあるのです。「但し、事前に、時宜によっては事後に、国会承認を経ることを必要とする。」批准のことは、七十三条には一行も書いてないのです。批准のことは、第七条に「内閣の助言と承認により、」「批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。」こういうことも書いてありますが、これはどうなんですか。
  20. 西澤哲四郎

    西澤法制局長 私は、七十三条の「条約締結すること。」という中には、批准書交換も当然に入っているものだというふうに理解しているわけでございます。ただ、批准書交換をするにつきましては、批准書の認証という意味におきまして、七条の規定があるものだと考えているのでございます。
  21. 柳田秀一

    柳田委員 そこで、六十一条の「条約締結に必要な」、その「必要な」というのは、七十三条を受けて、これを一必要とすると書いてある。七十三条には、「国会承認を経ることを必要とする。」それを六十一条では「条約締結に必要な」——ネセサリー・コンディションですね、それが国会承認ということですね。そうでしょう。そうなってくると、私は、国会承認ということも締結の一部だと思うのですが、これはどうですか。
  22. 西澤哲四郎

    西澤法制局長 六十一条の規定は「条約締結に必要な国会承認」ということになっておりますが、もちろん、この締結の全体の行為でありませんが、締結の最後の締めくくりの意味における批准ということの前に国会承認が必要だという意味に私は考えているのでございます。国会承認が、この条約締結行為の中に入っているものとは考えていないのでございます。
  23. 柳田秀一

    柳田委員 そうすると、六十一条の「条約締結に必要な国会承認」この「国会承認」は、締結承認ですか、条約承認ですか、どちらですか。
  24. 西澤哲四郎

    西澤法制局長 私は、この六十一条参の文字通りに、やはり締結に必要なというふうに理解いたしております。
  25. 柳田秀一

    柳田委員 そういうことを聞いておるのじゃなしに、六十一条は、条約締結承認をするのか、条約承認するのか。たとえば、われわれがよく議運で人事案件をやっておりますね。これは任命を承認するのか、候補者承認するのかということとやや軌を一にすると思う。だれだれを何々に任命するということをよく国会でやりますが、われわれは候補者承認するのか、それとも、そういう者を任命することに対して承認するのかということとよく似ております。これは条約締結承認するのか、それとも、条約承認するのか、ここが私はこの問題の分かれ道だと思うのですが、それはどうですか。
  26. 西澤哲四郎

    西澤法制局長 今の御質問でございますが、私は、その点については、先般来問題になっております、条約そのもの審議対象になるかどうか、議案なりやいなやという問題と関連して当然考えなければならない問題だと思いますが、私は、あえて、条約締結について承認を求める件という、あのものだけが議案だとも考えておりません。条約も一体をなして審議対象になっているものだと、かように考えております。
  27. 柳田秀一

    柳田委員 私の言うことをもう一ぺんよく聞いて下さい。「条約締結に必要な」、ここで切ります。その次は「国会承認——「国会」はここで略しますから「承認」、前に切ったところの「条約締結に必要な」の「必要な」も切ります。そうすると、字句をつづめまずと、「条約締結承認については、」こういうふうになってくるので「必要な」とか「国会」とかという言葉を略すると、条約締結国会承認するのか、条約承認するのか、その点が問題になってくると思う。条約締結承認するのか、条約承認するのか、どちらなんですか。
  28. 西澤哲四郎

    西澤法制局長 国会としての立場は、条約そのもの承認ということももちろん入りましょうが、その条約を含んだ意味における締結、これを承認するものだと考えております。
  29. 柳田秀一

    柳田委員 そうすると、先ほどの言葉に矛盾が出てきて、外交交渉と、調印と、そして国会承認と、批准、これが締結という行為ということになって、前後撞着すると思うのですが、これはどうですか。それはおかしいじゃないですか。——法制局長は答弁できぬようでありますから、今そちらの方で私語がありましたが、ゆっくり考えてまた答弁していただきたい。
  30. 八木昇

    八木(昇)委員 私は、だいぶ前に質問をしかけておりました事項について、二点ばかり、この際、法制局長にお伺いしたいと思います。  一つは、憲法第六十条の事項でございます。第六十条には、御承知のように、「予算は、さき衆議院に提出しなければならない。予算について、参議院衆議院と異なった議決をした場合に、」云々と、後段が続いております。続きまして次の条の第六十一条には、「条約締結に必要な国会承認については、前条第二項の規定を準用する。」と、こう書いてあります。そこでお伺いをいたしたい点は、第六十条と弟六十一条との関係ですが、この違いは、予算は、先に衆議院に提出しなければならない、しかしながら、条約については、必ずしも衆議院にまず先に提出しなければならないとは書いてない。参議院先議という場合もあり得る。そういうわけだからして、第六十条の第一項については、これは予算に限った事項である。それ以降の後段事項については、六十条の後段全文が、そのまま「条約締結に必要な国会承認」の場合のやり方を示しておる、こういうふうに当然理解をされるわけですが、その点は間違いないでしょうか。
  31. 西澤哲四郎

    西澤法制局長 お説の通りだと考えております。
  32. 八木昇

    八木(昇)委員 そうなりますると、条約締結に必要な国会承認やり方ですね、国会での議事の進め方、運営やり方、これはすべて第六十条の後段の示すところによってやっていく、こういうことに当然なってくる。そうなりますると、この六十条後段の冒頭に「参議院衆議院と異なった議決をした場合に、」と書いてありますが、参議院衆議院と異なった議決をしたというのはどういう意味か、具体的にその点をちょっと御説明を願いたい。
  33. 西澤哲四郎

    西澤法制局長 この六十一条と六十条二項との関係につきましても、御承知のように、学説が非常に分かれております。これらの点は、もちろん、私といたしましては考え方もございます。しかしながら、小委員会においてそれらの点も研究の題材に残っておることでございます。私としては、私個人の考え方はこの際は御遠慮申し上げる方が当然ではないかというふうに考えているのでございます。
  34. 八木昇

    八木(昇)委員 大学か何かの教室で憲法研究をしておる場合ならば、それは、こういう学説もある、こういう学説もある、どれが決定的とは必ずしも言えないというようなことで済むかもしれません。われわれは、毎年々々この憲法並びに国会法に基づいて国会運営をしておるのですから、どの解釈でか運営しなければならぬわけでしょう。ですから、過去においては、いかなる解釈運営されてきたか。結局、「参議院衆議院と異なつた議決をした場合」と表現をしてあるということは、ほかの法律表現でも、否決の場合だけを意味していない。参議院衆議院送付案を否決した場合、こういう表現をしてあれば別ですよ。そうでなくて、「参議院衆議院と異なった議決をした場合」、こういう表現をしてあるということは、衆議院参議院送付をした案件修正議決したか、あるいは否決したか、そういったもろもろの場合をさしているということは、当然そう理解をされなければならないので、そこで聞いておる。これは、衆議院法制局長が、われわれがこの法によって実際の運営を毎日やらなければならぬのに、自分の見解を述べることができないというわけにはいきません。あなたの考えを述べていただきたい。
  35. 西澤哲四郎

    西澤法制局長 私は、先ほど申し上げましたように、小委員会でこのことが研究の議題になっておりますから、御遠慮申し上げる方がよくはないかと、こう申し上げたのでございます。私は、もちろん、今お話がありましたようなことは、六十一条は当然予期しておるものだというふうに考えております。
  36. 八木昇

    八木(昇)委員 今のお答えで、私が指摘したようなことを当然予期しておる、こういう法制局長のお考えのように承りましたので、その点はそれで了承をいたします。  そこで今度は、同じ六十条の後段のところに「参議院衆議院と異なった議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見一致しないとき、」と書いてありますね。そこで、両院協議会というものを開く意味についてお伺いをいたしたい。協議会というものは、一体どういうことをやる任務を持つのか。
  37. 西澤哲四郎

    西澤法制局長 両院協議会の本質につきましては、両院意見一致しなかったものについて、協議をして成案を得るというところにその目的があると考えております。
  38. 八木昇

    八木(昇)委員 それは少しく抽象的な表現ですから、さらに具体的に伺いますが、片方の院はこの案に賛成片方の院はこれを否決した、こういう場合に、両院協議をせよということがありますね。あるいは、片方の院は、原案にそのまま賛成片方の院は、それを修正して議決したという場合がある。その場合にも、両院協議をしてここに何らかの意見一致をはかるようにしろ、すなわち、協議という意味は、片方の院の意見を他の一方の院が全面的に受け入れる、そういうための協議ではなくて、その両院がいろいろと協議をして、妥協によってそこに何らかの意思の一致をはかるということを目的として協議というものは行なわれるものである。それが協議会任務である。両院意見の食い違うところを妥協をはかって、そこに一つ一致点を見出すようにやれというのが、協議会任務ではないかと私は理解する。その点を伺っておきます。
  39. 西澤哲四郎

    西澤法制局長 お説の通り考えております。
  40. 八木昇

    八木(昇)委員 そういうことになりますと、結局、国会が、条約の問題について両院意見が合わぬときには、そこに具体的な意見をつき合わせて、そうして妥協案を成立させる、すなわち、条約政府原案、あるいはその他、出されました原案に対して、そこに修正点を見出し、そして修正議決をすることに達するような努力をしろということで、協議会を開けということを憲法第六十条は命じておる、こういう当然の帰結になりませんか。
  41. 西澤哲四郎

    西澤法制局長 具体的の場合におきまして、それが修正という形になって現われることもあるかと考えます。それ以外の形になって現われるようなこともあるのではないかというふうにも想像もされますが、やはり修正ということが考えられると思っております。
  42. 八木昇

    八木(昇)委員 もう一点お伺いをいたします。ここで国会法の方に移りたいと思うのですが、国会法の八十五条に、この前ちょっと質問をしかけておった問題ですが、「予算及び衆議院先議条約について、衆議院において参議院回付案に同意しなかったとき、」云々と書いてあります。回付案意味を説明していただきたい。回付案というのは、どういうことなんですか。
  43. 西澤哲四郎

    西澤法制局長 回付案意味は、参議院において、衆議院から送付した案と違った議決をした場合に、こちらへ送り返してくるものを意味していると考えております。
  44. 八木昇

    八木(昇)委員 その違ったという意味は、どういう意味ですか、具体的に……。
  45. 西澤哲四郎

    西澤法制局長 もちろん、修正という意味でございます。
  46. 八木昇

    八木(昇)委員 一応質問を終わります。
  47. 菅家喜六

    菅家委員 ただいま、修正権問題について、御両君から種々法制局長質問があったのでありますが、いずれも適切な御質問のようでございます。この機会にこれを法制局長にここで長い間質疑応答してみましても、まだ法制局の方で考えておらないようなこと、研究しておらないようなこともあるやに聞き取れるので、この際、法制局長に私の方から条項を示して、統一した見解をまとめられるならまとめていただきたい。それは法制局ばかりでなく、衆議院として一応そういう見解を持っておる心要が今回生じてきたのではないかと思う。衆議院衆議院独自なものであって、各党意見とか、そういうことにとらわれず、やはり立法機関法制担当者事務担当者としての意見というものがあってしかるべきだと私は思う。そのためには、議長なり副議長なりの意見も加わってよろしいものであると考えるのであります。そういうものは、どうしても一致しないものがあるなら別でありますが、一致せる見解を持っていてもらうことが、今後この案件審議していく上においても必要なことであるから、項目をあげますから、次の小委員会なり本委員会で、この項目に対する見解をできるだけまとめて、お答えを願うような資料を作っていただきたい。西澤さんに今項目を申し上げます。  条約修正権性質ということで一つ見解をまとめていただきたい。これに付随した、ただいまの御質問にあったようなことも含まれることになると思います。それから、内閣批准に対し授権する行為であるかどうか、こういう問題。それから、一般の議案議決権と同様の内容を持つものであるかどうか。それから、承認権対象、これは、この間委員会できめた対象ですから、新聞でごらんになっていると思う。それから、承認権行使の能様、これも新聞に出ております。その一つは、承認、不承認だけであるか、あるいは修正——部分的修正とか、字句の変更とか、削除、可分とかいうようなことを含むのですが、そういうことができるかどうかという問題。それから、条件付あるいは留保付承認ができるか、こういうことです。それから、附帯決議付承認とはどういうことであるか、そういうことは可能かどうか、まず、きょうのところは、そのくらいのところを——これはある程度新聞にも出ておりますが、小委員会審議の方法として議決した条項ですから、これらについては、やはり法制局が中心になって、ここに事務総長がおいでになるが、事務総長もこのことでは深く研究されておる、議長また法律家であり、副議長も長い議会の経験者である、それらの方が集まって、見解だけは、統一したものができるならば、衆議院としての見解を持っておった方が私はよろしいと思う。これは各党意見とは別個の問題であります。各党がそれに対してどういう態度をとるかということは、別の問題であります。私どもは私どもで、これに対する意見はいつでも開陳できるものは持っております。きょうこれをやろうと思って持ってきたのですが、きょうやるのは不適当だから、原稿はそのままにしておきます。各党ともそういうことだろうと思う。  委員長、きょうは、法制局にそういうことの研究統一見解を求めておいて、承認権の問題はこの程度にとどめて、デモ規制の方に移るようにお計らいを願いたいと思います。
  48. 池田禎治

    池田(禎)委員 菅家さんの御提議に別に異議はありませんが、私の方で一つ法制局長に申し上げておきます。  憲法第七十三条の「三 条約締結すること。但し、事前に、時宜によっては事後に、国会承認を経ることを必要とする。」この解釈、これは、原則として、事前国会審議をゆだねるべきである、こういう見解をとる。「時宜によっては」ということは、これはやむを得ぬ場合は、こういうふうにわれわれは解釈をするのですが、法制局見解はどうでしょうか。
  49. 西澤哲四郎

    西澤法制局長 池田さんのお説の通りに、私は、事前がやはり原則なものだと考えております。やむを得ないときには事後に、という意味理解いたしております。
  50. 池田禎治

    池田(禎)委員 なお、先般の委員会で、あなたは外国の例を引かれて、どこそこの国においては修正権がないとか、留保権もないとかいうことを言われましたが、私は、先般注意を受けて、エール大学の、ハンド教授の「アメリカの上院における条約に関する権限」というものを拝見いたしました。この中において、アメリカの上院は拒否権を持っておる、修正権も持っておる、留保権も持っておる、のみならず、アメリカの大統領は、進んで、憲法の条章において、条約の交渉そのものについては、上院の助言により、その同意を得て条約締結する、こういう項目まで入れてある。あなた方はこういうものを勉強されたかどうか。キューバがどうとかいうようなことを言われましたが、日本と安保条約締結すべき当事国たるところのアメリカの上院の、条約に関する修正権とかいうものは、これだけある。これをあなたはお読みになったかどうか知りませんが、私はこれを見て実に意外なものを感ずる。アメリカの国会において、これだけのものが許されておる。こういうものから見て、あなたのこの前の答弁というものは、私は全く子供だましの議論だと思って、正直に言って、憤慨にたえない。こういう資料を全員に配付することも、菅家君が提唱したものと同様にやっていただきたい。あなたは、この点について、まず、アメリカの上院に修正権があり、留保権があるということについて御承知でありますか、どうですか。
  51. 西澤哲四郎

    西澤法制局長 アメリカの上院におきまして条約に対して修正権を認めていることは、確かでございます。また、留保を付して承認するという方法もとっていることも事実でございます。現にアメリカの上院の規則には、条約に対する修正案の取り扱いまで詳細に規定されております。その事実は確かでございます。
  52. 池田禎治

    池田(禎)委員 そういたしますると、今まで、法制局見解は、私個人としては持っているけれどもということを、あなたはよく口にされるけれども、こういうことは、個人の見解では困ります。それで、先ほど菅家君が言ったように、法制局統一見解というものをこの次には披瀝していただきたい。個人の見解とか、そういうことでなく、法制局統一見解というものを本委員会において披瀝していただきたい。そうしなければ、ものによっては言い、ものによっては黙る、そんなことでは、国会法制局の権威いずこにありゃ、まるで内閣法制局に対して国会法制局はたじたじとなっておるという格好で、一方的な行政府の法制局見解というものを常に中心にしなければならぬということは、まことに悲しむべきことでありますから、この点を私はこの際重ねて明らかにしておきます。同時に、私は、アメリカの上院では、外交上非常にたくさんの権限を与えられておることを考察するときに、どうしてそれが日本だけできないのか。率直に言いますと、私はいわゆる憲法学者でもなければ、国際法の学者でもありません。ただ申し上げておりますることは、いわゆる新憲法の前においては、外交大権というものは天皇にあった。これは枢密院の批准を必要とするくらい、きわめて厳格なものであった。外交は天皇の大権に属しておった。ところが、今日、憲法というものは、かように主権を国民に与えて、国会最高の機関として、国の唯一の立法機関と明記しておる。この段階において、国会において修正することも、留保をつけることもできないというなら、内閣というものは全く一つの独裁である。こういうことが多数でできる、従って、国会においてそういう権能がないということは、これはどう考えても、私は立法府の常識論として考えた場合、これは不当だと思う。ですから、憲法第七十三条の「事前」ということが最も大原則でなければならぬ。これはあなたも申されておる。ところが、「時宜によっては」という、何分の一か何。パーセントかを占める部分に籍目して、政府は、議会などにかけたらめんどうくさいから、先にやってしまって、この条章の中にある何。パーセントかの部分だけを大きくクローズ・アップして、こういう条項があるのだから、われわれはやった。1安保条約のごときは、言うまでもなく、国の安危に関するような重要案件です。今私どもが、政府これだけのものをやろうとするなら、国会は解散しろ、あるいは国民の声に聞け、こういうことを言っておる理由というものは、ここから出発しておる。あなた方の見解は実にあやふやだ。その点は実に情けない。この際私は、根本的の統一見解を明らかにしてそうして本委員会において質疑に答えられるような用意をお願いしておきます。私は以上をもってきょうは終わります。
  53. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 他に御発言ございませんか。——では、条約承認権に関する問題についての論議は、本日のところ、この程度にとどめたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  54. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     —————————————
  55. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 次に、国会審議権の確保のための秩序保持に関する法律案を議題といたします。
  56. 下平正一

    ○下平委員 このデモ規則法に関連して、議長さんに社会党としてお伺いをいたしたい諸条項がありますので、議題に入ってしまいますと議長さんなどは工合が悪いと思いますから、議題に入る前に、社会党の、議長に対する関連した質問一つ許していただきたいと思います。
  57. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 よろしゅうございます。
  58. 木原津與志

    ○木原委員 このデモ規制法に関連して、ちょっと議長さんに所信をお伺いしたいのです。と申しますのは、議長さん御承知のように、昨年の砂川事件のときに、最高裁判所が、条約あるいは法律、こういったようなもので高度の政治性を持っておるものは、これが憲法違反かどうかというような点について裁判所は審議をしない、こういうようなことが憲法違反かどうかというようなことは、もっぱら政府並びに国会がこれをきめるのだ、こういった重大な判決をいたしました。そこで議長さんにお伺いしたいのですが、法律案について憲法違反であるかどうかということは、最高裁判所がきめるのではなくて、国会みずからがきめるのだというようなことになっておるのでございますから、当然、国会の中に——条約あるいは法律について、違憲の疑いがあるものは、今後でもどんどん出てくるわけです。これについて何らか国会としての審議機関を持たないわけにはいくまいと思う。そこで、そういう場合について、国会が違憲かどうかということを審査する機関を、社会党としては必要と考えておるわけなのですが、これについて議長さんはどのような所信でおられるか。今のような形のままで、法律あるいは、条約は単に委員会審議だけで憲法違反の点も含めてやっていくのだという御見解か、あるいはまた、最高裁の判決に基づいて、国会に違憲であるかどうかの判断が専属しておるという立場に立って、国会がみずから違憲審査についての何らかの機関を持つべきじゃないかと思うが、こういう点について議長さんの所信をお伺いしたいのです。
  59. 清瀬一郎

    ○清瀬議長 砂川事件の判決のテキストはここに持っておりませんから正確に言えませんが、しかしながら、あの裁判で、高度の政治性のものについては最高裁で判断をしないといったようなことはあったと思います。立法府と司法部は別でありますから、わが国会が、国のために起こった問題はことごとく国会自身の責任で解決すべきものだと思っております。自後において、それが憲法に反するやいなや、法律問題となれば、最高裁判所で決することは、御承知通りであります。最高裁判所が自後の法律解釈をきめるからといって、われわれ国会憲法の問題について論議すべからずということは、決してない。国会の最善の良心に従って憲法問題を審議していいのであります。私に対するお尋ねでありますから、私個人として次のことは答えますが、私は、どの委員会も、また本会議も、自己の責任において、憲法に合するやいなやをきめる権限があるのでありますから、そういう問題をきめるために特別な機関を国会内に置く必要は、私はなかろうと思います。
  60. 木原津與志

    ○木原委員 さらにお尋ねいたします。国会の各委員会あるいは本会議で、違憲であるかどうかという点について判断すればよろしいという御趣旨のように承りましたが、この点については、くどいかもしれませんが、委員会で、そういう違憲かどうかというような点について研究し、議論をするというようなことは、従来の例から見ましても、なかなかやりにくいのです。従って、やはり国会の中に、そういった点について審議する委員会なり、あるいは部会というようなものでも作って、そうして誤りのない立法権の行使をやるということが今後は必要だと思うので、さらにその点について議長さんのお考え伺います。
  61. 清瀬一郎

    ○清瀬議長 国会は、国の最高機関であると同時に、最高責任者でございます。すべて国会議員は、いかなる問題に遭遇しても、全責任をもって良心的にこれに対処するの権限があり、また義務があると思います。別に憲法問題だけはどこかの委員会できめていくといったようなことの必要は、私はなかろうと思っております。
  62. 木原津與志

    ○木原委員 そこで、議題になりましたデモ規制法律案について提案者にお伺いするのですが、今私が違憲立法の審査ということで議長さんにお問いしたわけなのですが、この法律そのものが、私は憲法違反じゃないかという見解を持っておるのです。そこで、なぜ憲法違反の疑いがあるか、憲法違反かということについて、提案者の所信をお伺いすわけなのです6六法を見ていただきたいのですが、憲法の第十章は、御承知のように、最高法規ということを規定しておる。最高法規の中の、第九十七条に、「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去、幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」こういう規定があります。言いかえれば、基本的人権が最高法規だということを規定しているのです。そうすると、こういうような、基本的人権が国の最高法規だということを規定した憲法は、私どもまだよその国に例を見ない。私の知っておる限りでは、基本的人権が最高法規だということを規定した憲法は、どこの国にもないわけです。アメリカ、イギリス、西ドイツ、私、三つ見ましたが、そういう規定はない。ここに、私は、日本国憲法の一番の背骨といいますか、シンボルが出ておると思う。そういうような立場に立ってものを考えなければならぬのですが、提案者は、基本的人権が最高法規だということを規定したほかの国の憲法の条章を御存じならば、ちょっと教えていただきたい。
  63. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)議員 私は別に憲法学者でもございませんし、各国のものをつぶさに調べておるわけではございませんが、今あなたのおっしゃいましたような点につきましては、あらかじめ承知をいたしております。
  64. 木原津與志

    ○木原委員 そこで、基本的人権を法律によって規制するという場合が、憲法にはニカ条あるわけです。いわゆる公共の福祉によって、その必要のために法律で規制することができる規定がニカ条ある。憲法二十九条及び憲法二十二条、すなわち、所有権と居住権、これは、公共の福祉ということが条文で前提となっておりますから、法律によって事前に規制をすることができるようになっておるのです。そのほかの国民の基本的人権というものは、先ほど申し上げた人権の最高法規という点にかんがみまして、法律によってもみだりに事前抑制はできないのだという考えを私どもは持っておるのですが、提案者はいかがですか。
  65. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)議員 まず大前提として、基本的人権はいかなるものによっても侵害されることのないものであるという前提については、私はこれを肯定いたしております。そういう立場から申し上げるわけでありますが、しかしながら、今御指摘の点のみならず、基本的人権が何人によっても侵害せられない、文字通り基本的なものであるというだけの理由によって、他人の権利を侵害してもかまわぬというものではなかろうと思います。大体、国民の権利及び義務の規定の条章は、憲法の第三章でありますが、その第十一条、第十二条及び第十三条をお読みいただければわかると思いますが、お説のように、「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」ということが規定されております。しかし、第十二条、第十三条をごらんいただきますと、第十二条に「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」とも規定されております。また、第十三条におきましても、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」こういうふうに規定されておるわけでありますから、従って、この点の存在いたしておりますこともまた、国民として、基本約権利を追求する反面、忘れてはならないところではなかろうかと思います。
  66. 木原津與志

    ○木原委員 今、提案者の見解が述べられましたが、公共の福祉のために国民はこれを乱用してはならない、こういうような規定は、これはいずれ学者あるいは知識人を呼んで、この点についての説明を公聴会で聞く機会があろうかと思いますが、この点は、国民が基本的人権を擁護するために、行使するために、公共の福祉に従って乱用してはならないという、倫理的な義務を課しておるものではないかと私どもは思う。この規定に基づいて、法律によって事前に抑制をするというようなことは、これは法の乱用であって、できないことであると私らは考えますが、その点どうですか。
  67. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)議員 基本的には、あなたのおっしゃいますように、基本的な権利でありまするから、これをみだりに事前に規制するということは、憲法の建前上おもしろくないと思います。しかしながら、一定の基準を設けて、また、明白な規定を設けて、ただいま申しましたような、公共の福祉や公安に害を及ぼすというような場合について規制措置を講ずるということも、必ずしも違憲ではないと考えます。現にそういうことのために違憲でないという、合憲の判決も出ておるわけでありまするし、私は、事前に一般的に許可制度を採用するというようなことは、あるいは憲法の建前からいって違憲の疑いもあろうかと考えますが、こういう合理的な、かっ明白な基準を設けての事前の許可制度というものをとっても、決して違憲ではなかろうと思っております。
  68. 木原津與志

    ○木原委員 事前に許可制を設けるということが違憲であるかどうかという点については現在最高裁判所で審理をされております。原審の東京地方裁判所その他の裁判所でも、公安条例によってデモを許可制にするということは、全面的に基本的人権を事前に抑制するのだということで、憲法違反で無効だという判決も出ております。これについて、違憲であるか合憲であるかということが、やがて最高裁で決定される段階にきておりますが、おそらく合憲か違憲かという判決は、ことしの夏過ぎ、秋ごろには私は下るのじゃないかと思う。そうなりますと、この法案を見てみますと、東京都の公安条例を前提にしておる。公安条例に基づいてデモが許可された、その許可したデモを、この法規によって、議長の要請によってこれを禁ずる、あるいは警告するということになるわけですね。そうすると、その許可が憲法に合っておるか、あるいは違反しておるかということが、今問題になっておる。その問題になっておる許可制を前提として、この法律が今立法されるわけです。これは自民党の提案でございますから、おそらく成立しましょう。成立した暁において、その前提となっておる東京都の公安条例が違憲だという判決が下されるということになれば、今われわれが審議しておるこのデモ規制法の成立の基礎が失われてしまう。そうすると、公安条例が違憲で無効なんだから、それを根拠として立ったこの法律は、成立の基礎を失う。土台がもうなくなってしまうわけです。そうなってくると、今急に、あなた方に言わせれば、必要があるんだとおっしゃるかもしれませんが、そういうような根拠になっておる公安条例が、違憲かどうか今さまようておる。その違憲かどうかの条例を根拠としてこの法律を作る必要が一体あるのかどうか。もしこれが違憲だということになれば、この法律は土台からくずれてしまう。条例がくずれたから法律がくずれるというような、こんな不格好なことがあったのでは、国会の立法権の最高性というようなものは土台からなくなってしまう、私はそう思う。だから、この法律を今すみやかに可決する、成立させるというようなことについて、慎重な態度をもって臨まなければならぬと思うのですが、この点についての提案者の御見解を承りたい。
  69. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)議員 公安条例に対して、合憲と違憲の判決が出ておりますことは、御指摘の通りであります。しかしながら、今御指摘になりましたように、最高裁の最終判決が、あなたのお説によりますと、秋ごろには出るではなかろうかというお話でありまするが、これはいつになるかわかりませんけれども、下級裁におきまして、違憲と合憲の相異なる判決が出ておりましても、最高裁の最終判決が出ない現段階におきましては、やはり公安条例というものは有効に存在しておるものと考えるべきでございます。その限りにおきまして、それを前提として今回のいわゆるデモ規制なるものを立法するということも、決して法律上不都合であるとは、私ども考えておりません。  また、第二点の、かりに東京都の公安条例に違憲判決が下って、東京都公安条例が無効となった場合においては、ただいま審議を願っております本法にも影響してくるのではないかというお説でございまするが、その通りだと思います。どういう内容の判決が下るかによって具体的には変わって参りますけれども、大ざっぱに申しまして、東京都公安条例が憲法違反であるという判決が下りました場合において、これは東京都公安条例に基づくところの条件の変更、許可の取り消しを対象といたしておりますから、その条項に関する限りにおきましては、本法は実際作用しなくなって、死んだような状態に置かれると思います。しかし、その他の問題につきましては、これは何らの影響を受けるものではないわけであります。私たちは現下の情勢にかんがみまして、かりに東京都の公安条例が無効であるということになったといたしましても、その他の方法によって、今日の国会審議権の公正な確保のためには、こういう立法をすることがぜひとも必要であろう、かように考えるわけでありますから、これを撤回しようというような考え方は持っておりません。
  70. 木原津與志

    ○木原委員 許可制が違憲だということになれば、土台がなくなってしまう。     〔「なくなった場合のことを心配する必要はない」と呼び、その他発言する者あり〕
  71. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 お静かに願います。木原君の発言中です。
  72. 木原津與志

    ○木原委員 そこまで考えて立法しなければいけない。根本的に基本がなくなってしまうということになれば、立法することを考慮しなければならぬと思うのですが、その点どうですか。
  73. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)議員 ただいま申し上げた通りでありまして、これは各条項の逐条審議にでも入りますれば、その際に具体的にお答えしようかと思いますが、もとより、東京都の公安条例を前提といたしておりまするから、都の公安条例に対してかりに違憲の判決が出たという場合を想定いたしましても、いかなる内容の判決が出るかということによって、本法への影響もおのずから変わってくるわけであります。そこで、かりに東京都公安条例がいわば全面的に無効になってしまう、かようなことを仮定いたしまするならば、公安条例に基づいて集団行進等の許可の取り消し、もしくは条件の変更ということが認められておるわけでありますから、その項目に関する限りは、先刻申しまするように、本法において影響を受け、実際本法が動かなくなると思います。具体的に申しますならば、第四条の第一項、従って、それを受けた第五条の第一項くらいは動かなくなるかと考えまするが、残余の部分につきましては、これは何らの影響を受けるものではないのでありまして、私たちは、その残余の部分をもってしても、今日のこういう情勢から見まして、ぜひとも必要な立法である、かよりに考えております。
  74. 木原津與志

    ○木原委員 第四条を受けて第五条があるわけですね。第四条が影響を受けるということを提案者はおっしゃいましたが、第四条が影響を受ければ、第五条も当然影響を受けるわけです。そうすると、この法律は中身が何もないじゃないですか。ただ残るのは、第七条の、懲役五年の問題ですが、これも、四条、五条が影響を受ければ、なくなってしまうわけです。そうなれば、この法律はどうにもならぬ法律になってしまいはせぬかと思いますが、その点どうですか。
  75. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)議員 だいぶ木原さんには誤解があろうかと思いますが、第四条の第一項に影響があるということを申したのであります。従って、第四条第一項を受けて第五条第一項に影響があるということを申したのであります。従って、第四条第二項、第三項並びに第五条の第二項には何ら影響はございません。私たちは、どちらかといえば、むしろ第四条の第二項、すなわち、具体的に申しまするならば、「集団示威運動等が行われ、又はまさに行われようとする場合において、その行為により国会議員の登院と国会審議権の公正な行使が著しく阻害され、又は阻害されるおそれがあると認められる場合においては、両議院の議長は、警視総監に対して、その集団示威運動等につきその制止のために必要な措置を要請することができる。」ことになっておりまするし、その要請を受けた警察官が、みずからの職権を行使するほか、必要な限度において、それらの行為に対して警告を発し、またはその行為を実力を行使することによって制止することができるのでありまして、この点は厳然として残るわけであります。この点こそ、われわれはぜひとも必要な点であると考えております。
  76. 木原津與志

    ○木原委員 デモ規制の始まりを私調べてみたのですが、昭和二十一年の一月十二日に、当時松山に米軍の二十五師団が駐在しておったのであります……     〔「松山と国会と違う」と呼び、その他発言する者あり〕
  77. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 お静かに願います。
  78. 木原津與志

    ○木原委員 その二十五師団の司令官が、当時の米よこせのデモを禁止するために、七十二時間前に届け出をしろという布告を出したのが、デモ規制の始まりだと私は考えております。しかも、この松山の司令官が出したデモ規制の布告を、当時GHQで、不当だ、国民の人権を侵害するということで、カメンスキー少佐の名前でこの命令を取り消しておる。占領中に、占領軍でさえ、そのデモ規制を一たん布告したが、これを取り消したというような事実があるわけです。その後、アメリカから戦略爆撃調査団が日本に来まして各地を歩いたときに、このデモを規制する措置を講じろというようなことで、地方の各県が、文書によるデモの届け出を要求した、これがデモ規制の、地方における始まりということになっておる。こういう歴史を見ましても、デモ規制を立法によってやるということの可否……(発言する者多し)これについては、あなた方多数党の人たちも十分賛成していただきたいと思います。その点どういうお考えですか。
  79. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)議員 そういうようないきさつのあったことも、うすうすながら承知をいたしております。しかし、これは国会の周辺の秩序保持のための法律でございまして、内容は、国会議員が自由に登院ができるように、そして国会内部における審議権が公正に行使できるようにというのでありまして、今のお説とはだいぶ事情が違うかと考えます。しかし、御指摘のような事情でできたというようなことにつきましては、重ねて、うすうすながら知っております。
  80. 柳田秀一

    柳田委員 議事進行。本案は、御承知のように、提出者は議院運営委員会の自民党の理事五名になっております。そうして賛成者としては、自民党の議院運営委員会委員と自民党の国会対策の責任者が賛成者になっておられるわけです。従って、これは自民党としては、議院運営委員会にこの法案を出して、そうして社会党、民主党に審議をしてくれといってここに出してきておられる。審議してくれといって出してきておられるあなた方が、ここで不規則発言をするのは——ほかの法案と性質が違うことは、少なくとも国会運営の衝に当たっておる議運の方は一番よくわかっておるはずだ。この取り扱いに関しては、十分そういうふうに取り扱っていただきまして——あなた方自身が、まるで、こっちが質問しておるのを横から妨害するようなことは、一体何のために提案しておるのか、審議してほしい、こう出ているんですから、これは一つ慎重な御態度を望みます。
  81. 服部安司

    ○服部委員 あなた方といえば全体になってくるんですが、それはどういうことなんですか。そういうことははっきりしていただかなければならぬ。
  82. 柳田秀一

    柳田委員 たとえて言えば、賛成者には天野光晴君、服部安司君、みな賛成者になっておられるのです。ですから、あなた方は広い意味の提案者です。提案者が質問者に対して横からとやかく言われるということは——ほかの内閣提案の法律と違います。議運の方はそれくらいのことはおわかりと思いますから、どうぞ審議に対して慎重な御態度を委員長に要望しておきたい。
  83. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 今の柳田君の御発言まことにごもっともでございます。さよう取り計らうことにいたします。
  84. 木原津與志

    ○木原委員 きょうはこれで保留しておきます。
  85. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 次に発言の通告がございます。民社党の小沢貞孝君。
  86. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 こまかい審議に入る前に、私は議長、副議長にお尋ねしたいことがあるのですが……。
  87. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっと申し上げますが、議長は、今科学技術庁の会合がありまして、そこに行っておるので、あしたの機会にでも議長にお尋ねいただくなら、そういう機会を作りますが、副議長だけならおりますから……。
  88. 小沢貞孝

    小沢(貞)委員 両方いなければ都合が悪いのです。
  89. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 その部分はあしたにして……。
  90. 池田禎治

    池田(禎)委員 僕は、議長が本委員会をどういうわけで退席されたのか、その理由がわからないのですが……。
  91. 鈴木隆夫

    ○鈴木事務総長 私から申し上げますが、科学技術庁で、科学技術振興週間とかいうことで、きょう表彰式がございますので、議長に祝辞をもらいたいということで、議長も出席して、三時五十分ころまでその式がかかるそうでございます。それに出席をして祝辞をお述べになることになっております。
  92. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  93. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 それでは速記をとって下さい。  国会審議権の確保のための秩序保持に関する法律案の質疑につきましては、明日十一時からこれを続行することといたします。     —————————————
  94. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 次に、次回の本会議の件についてでありますが、明日本会議を開くこととし、なお、その開会時刻につきましては、ネパール皇帝陛下が午後二時に国会を訪問され、本会議を傍聴されることとなっておりますので、午後二時といたします。従いまして、次回の委員会は、明日午前十一時から理事会を開き、理事会散会後に委員会を開き、本日の国会審議権の確保のための秩序保持に関する法律案の質疑を続行いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後三時十二分散会