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1960-03-17 第34回国会 衆議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月十七日(木曜日)     午前十時二十八分開議  出席委員    委員長 小泉 純也君    理事 加藤 精三君 理事 佐々木盛雄君    理事 床次 徳二君 理事 山村新治郎君    理事 戸叶 里子君 理事 松本 七郎君    理事 竹谷源太郎君       池田正之輔君       石坂  繁君    菅家 喜六君       椎熊 三郎君    野田 武夫君       福家 俊一君    黒田 寿男君  出席政府委員         外務事務官         (経済局長)  牛場 信彦君         外務事務官         (条約局外務参         事官)     藤崎 萬里君  委員外出席者         外務事務官         (大臣官房審議         官)      三宅喜二郎君         大蔵事務官         (主税局税制第         一課長)    塩崎  潤君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 本日の会議に付した案件  関税及び貿易に関する一般協定へのスイス連邦  の暫定的加入に関する宣言締結について承認  を求めるの件(条約第三号)(予)  所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国インドとの間の協定締結につい  て承認を求めるの件(条約第七号)      ————◇—————
  2. 小泉純也

    小泉委員長 これより会議を開きます。  関税及び貿易に関する一般協定へのスイス連邦暫定的加入に関する宣言締結について承認を求めるの件及び所得に対する租税に関する二重課税回避のための日本国インドとの間の協定締結について承認を求めるの件の両件を一括議題といたします。質疑の通告がありますので、順次これを許します。松本七郎君。
  3. 松本七郎

    松本(七)委員 同僚議員からも質問する用意をいたしておりますが、私は今までのガット加入関連して、一点だけお伺いしておきたいと思います。  それは今議題になっておる、このスイスガット加入の問題で、日本として一体これがどれだけの実益があるかという点について、少し具体的な、実益と思われる点をあけて御説明願いたい。
  4. 牛場信彦

    牛場政府委員 スイスが今度ガットに仮加入いたすことになりまして、日本スイス国との間にガット関係に入るということの一番大きな現実並びに将来のポテンシャルな利益といたしましては、スイスがこれによって、日本に対して最恵国待遇法律的に約束いたしまして、いわゆる三十五条を援用いたさなかったわけでありまして、従いまして、今後スイス日本に対して、勝手に差別待遇することはできないという効果が出たわけであります。これは一番大きな効果であると存じます。それから具体的には、関税交渉の結果によりまして、わが方も譲許いたしましたけれども、先方から相当の譲許をとっておる。わが方がスイスとの交渉におきまして直接とりました譲許は、サケ、マスのカン詰、これは税率引き下げを約束させました。マグロ、サンマのカン詰、これは据え置く。ミカンのカン詰、これは引き下げる。それから毛製手袋絹製ショール類、この二つとも税率引き下げをさせたわけでありまして、これは直接の効果であると存じます。それから、わが国がガット加入しておりまする間接の効果としましては、今回スイスとほかの国との間で関税交渉を行ないまして、お互いに譲許をし合った、それに全部均霑ができるわけであります。従いまして、スイスから直接得た譲許金額——金額と申しましても、スイスから直接得ました譲許に該当します品目スイス向け輸出金額は、年間で二百十六万八千ドル程度であります。これは一九五七年です。それからそれ以外の国から得ました譲許、これは間接的に得ました譲許に該当します品目輸出額というものが、大体九百六十万ドルということになっておりまして、これが具体的な利益であると存じます。
  5. 松本七郎

    松本(七)委員 欧州共同市場との関係はどういうふうに見ておられますか。
  6. 牛場信彦

    牛場政府委員 スイスは御承知通り欧州共同市場には入っておりませんで、もう一つの方の自由貿易連合という方に入っております。自由貿易連合の方は、域内関税はだんだん下げていって最後にはゼロにするわけでありますが、域外に対しては各国おのおの独自の経済政策をとるということになっております。今後域内関税が下がるに伴ないまして、域外に対する関税もだんだん下がってくるということをわれわれも期待いたしておるのでありますが、最終的には幾分の差別が残るということにはなると存じます。
  7. 松本七郎

    松本(七)委員 共同市場自由貿易連合と、それからアメリカとの三者の関係が最近かなり微妙なものがあるように思うのですが、その状態を少し御説明願いたいと思います。
  8. 牛場信彦

    牛場政府委員 共同市場は、御承知通り昨年の七月一日から発足いたしまして、すでに等一回の域内関税引き下げを行ないました。この七月一日に第二回目の引き下げを行ないます。これに対しまして、自由貿易連合は本年の三月ごろから発足いたしまして、この七月一日にやはり第一回の域内関税引き下げを行なうということになっておるわけであります。そこで、さしあたりの問題は、共同市場ないしは自由貿易連合というものが、域内関税引き下げていくに従って、域外の国に対して差別待遇が生じてくる。これは最終的には、もちろんガットの規約の範囲内におきまして、域内国域外国との間に、ある程度差別を生ずることは仕方がないのであります。そうでなければ共同市場などを作る意味がないわけでありますが、過程においては、できるだけその差別を少なくしていくということにアメリカは非常に興味を持っておるわけであります。これは日本も同じ立場であります。そこで、少なくとも現在過渡期におきましてだんだん下がっていく関税、その引き下げ効果は、域外諸国に及ぼすべきであるというのがアメリカ主張でありまして、現に共同市場は第一回の関税引き下げガット加盟国全部に及ぼしたわけであります。ところが共同市場自由貿易連合との間には、おのずから利害対立がある。そこでこの利害対立解決する方法といたしましては、昨年イギリス欧州全体を含む自由貿易地域というものを提案いたしまして、一年間交渉したのでありますが、結局主としてフランスの反対によってつぶれました。つぶれた理由は、要するにイギリス考え方は、先ほど申しましたように、対外的には各国の独自の経済政策を維持しながら、域内的には関税をなくすという考え方でありますので、具体的に言いますと、イギリス英帝国諸国との間にあります英連邦特恵関税というものの利益は自分で保持しておきながら、ヨーロッパの中において関税をなくしていく、そういう利益も同時に享受したいということで、これはフランスなどから言いますと非常に虫のいい考え方であるということで、この考え方は拒否されたわけであります。ところが一方において共同市場がだんだん固まって参りますので、それに対抗する意味で、自由貿易連合というものができた。従ってこの自由貿易連合というものは、それ自体の経済的要請というよりは、むしろ共同市場との間の、将来の交渉の際における地位を固めるためにできたというふうに解釈してもいいんじゃないか。しかしながらその二つのかたまりができますと、その間に当然対立が激化することも予想されるわけであります。そうなっては、ますます域外の国に対する差別が激しくなるのではないかというので、アメリカが乗り出しまして、昨年の暮れから工作をいたしまして、ことしの初めにパリで二十カ国、アメリカカナダも入ってヨーロッパの国全部が入りまして会議をいたしました。そしてその結果、共同市場自由貿易連合との関係調整のために委員会ができたわけであります。これがアメリカカナダヨーロッパの国全部、それにガット事務局長、それから共同市場の方の委員会の代表、これだけが集まりまして、最初の会議をこの三月の末に開くことになっております。しかしながら現状におきましては自由貿易連合が、ことにイギリススウェーデンなんという国は、依然として昨年失敗しましたヨーロッパ地域をカバーするような、自由貿易地域というものを主張しておるようであります。これに対してフランスは絶対反対しておる。アメリカもどちらかというと共同市場の肩を持ちまして、共同市場は非常に政治的な意味を持っておるので育てていきたいのだが、それ以外に、さらにヨーロッパがほかの格好で固まって、域外に対して差別待遇をするのは絶対に困る。共同市場以外の問題はすべてガットのワク内でもって、最恵国待遇べースでもって解決されなければならぬというのが、今のところのアメリカ主張のようであります。従いまして、最近共同市場側でも、自由貿易連合側でも、大臣会議を開きまして、いろいろ研究しておるようでありますが、なかなか解決策が見つからない。今のところ考えられますのは、さしあたり七月一日に行なわれます関税引き下げ相互に均霑さして、そうしますとその次の段階というのが一年半先になります。従いまして一年半の余裕を得て、その間に解決策を検討しようというようなところに一応落ちつくのではないかという観測が有力のようであります。
  9. 戸叶里子

    ○戸叶委員 関連。今の御説明を伺ったのですが、スイス自由貿易連合の中に入っていて、日本と今度はこういうふうな宣言締結するわけなんですけれども、自由貿易連合に入っていながら、日本とこういう関係を結んでも、何らそこに影響はないものでしょうか。
  10. 牛場信彦

    牛場政府委員 これは影響はないと思います。自由貿易連合にただいま入っております国のうちで、スウェーデン、ノルウエー、デンマークという国は、いずれも日本との間にガット関係にあるわけであります。ただイギリスとオーストリアは、日本に対して三十五条を援用しておる、こういう関係になっております。
  11. 松本七郎

    松本(七)委員 フランス関係もさることながら、自由貿易連合共同市場関係で、やはり今後注目しなければならぬのは、イギリスと西ドイツ関係じゃないかと思いますが、この両国の関係は、この譲許を中心に今どういうふうに進展をいたしておりますか。
  12. 牛場信彦

    牛場政府委員 英独関係は、最近政治的にいろいろ言われておりますけれども、経済的には非常に密接でございまして、ことに戦後は、最近急に貿易量もふえてきております。従いまして本音を申しますと、イギリスドイツも何とかしてヨーロッパ全体を包含するような組織ができればいいと思っておるんじゃないかと思うのであります。ただイギリスは、一方においてコンモンウェルスというひもがついておりますし、ドイツは、また他方におきましてフランスとの関係が非常に大事であるということで、両方ともそういう英独の間の関係だけでない、それよりももう少し重要な関係に引っぱられておるものでありますから、なかなか解決策が発見しにくいということがあるんじゃないか。しかし共同市場自由貿易連合対立すると申しましても、各国内容を見てみますと、いろいろあるのでありまして、従いまして全体としての対立関係をあまりに重要視することは誤まりじゃないか。やはり国によってはその表面的の対立にかかわらず、実際は緊密に経済的にも交流をしていくという状況があると思います。英独の間は大体そんなような関係に立つんじゃないかと考えております。
  13. 松本七郎

    松本(七)委員 欧州経済対立状況下にあって、アメリカ貿易為替自由化政策が今後進む、その中で日本がどういう地位を占めるか、また今後どういう見通し外務省としてはこれに対して持っておられるか、貿易為替自由化の問題との関連で御説明願いたいと思います。
  14. 牛場信彦

    牛場政府委員 さしあたりのところ日本立場アメリカと全然同じようなわけでございます。つまりヨーロッパだけがまとまって域外に対して差別待遇するということは困る、共同市場なるものはガット規定で認められておるのであるから、その限りにおいてはいたし方がないし、また共同市場が実際に彼らの言っておるように自由貿易のためのものであるということならばけっこうであるけれども、それ以外の差別待遇ということは困る、これはその点ではアメリカ日本とは同じ立場にあると存じております。単にアメリカのみならず、カナダ、それからオーストラリアニュージーランドというような域外の国とは利害関係を一にしているわけでありまして、現にガット等におきましてはヨーロッパに対して域外国というものは常に緊密な連絡をとって監視をしておるわけでございます。それから今後アメリカ主張いたしましたような委員会、それから、あるいはOEECが改組されてそれが何らかの世界貿易上における役割を果たしていくということになりますと、これは日本としてももちろん無関心ではいられないわけでありまして、何らかの形においてそういうような機構と少なくともアソシエートしていくということは考えなければならぬ。その際に一番今障害になっておりますのは、ヨーロッパの相当有力な国が多数日本に対して、ガット三十五条を援用いたしまして、ガット関係に入ることを拒否しておるということでありまして、この状況を何とかしてまず打開することが、そういう一つ機構——おそらくそういうものができますれば、世界における高度に発達した工業国というものを全部含むというようなことになりまして、それに日本がアソシエートするための一番必要な前提条件ではないかと思います。外務省といたしましては、この三十五条問題の解決を全力をあげて推進いたして参りたいと考えておりまして、現在各国とすでに交渉を始めておるところでございます。その三十五条問題の解決にはいろいろの前提がございますけれども、そのうちの一つは、やはり日本貿易自由化ということであると考えます。現在日本輸入制限というものが、世界の目から見ますと非常にきびしいということ以外に、不合理であり、かつ不分明なところ、わからないところがあるということを理由に、この間ガットの総会などでも抗議されたところであります。もちろん外貨がふえてきて、国際収支が楽になれば輸入制限は緩和しなければならぬ、これはガット上の義務でありますが、それ以外にやはり現在の制度をもっと合理的にして、どこから見ても、とにかく日本はこれこれのものはこの程度に買うのだということがわかるようにしてくれというような要求がございますので、その点はぜひ一日も早く直していき、そしてそういうことによって先方に対しても日本市場というものに対して大きな期待を持たせれば、これは先方もまたわが方のものに対してその市場を開放していく、これは当然のことになってくると思うのであります。
  15. 松本七郎

    松本(七)委員 現在この三十五条問題で交渉しておる国はどこどこですか。
  16. 牛場信彦

    牛場政府委員 ただいまイギリスとはもうすでに三年来通商航海条約交渉をいたしておりまして、その眼目は、通商上における最恵国待遇の供与ということでございます。通商航海条約ができれば、直ちにその三十五条援用を撤回するかどうかという点、この点はまだこれからの問題でございますが、さしあたりその最恵国条項をどういう格好でもって供与するかという点につきまして、近くイギリス側から具体的な案の提出があることになっております。それからオランダ、ベルギー、ルクセンブルグつまりベネルックス三国、これとも近く具体的な交渉に入ることになります。それから一方におきましてオーストラリアニュージーランド、これは日豪通商協定によりまして三年以内に三十五条援用撤回交渉に入ることをきめておりまして、ことしが三年目に当たりますので、おそらくこの五、六月のころにその交渉が始まると思っております。それからもう一つ後進国のうちで日本に対して三十五条を援用しておる国がある。これは主として昔の主権国、つまりイギリスでありますが、これが三十五条を援用しておりますために、そこから独立しましてガット加入いたしますときにガット規定上、宗主国、昔の主権国法律的地位を引き継ぐということで自動的に三十五条を援用してしまったような格好になっております。たとえばガーナでありますとか、マラヤがそうでありますが、これは理屈から言いましてもおかしいのでありまして、彼らが特別の必要があるから三十五条を援用しておるのじゃなくて、そういう歴史的な産物にすぎないのであります。これは別の観点からただいま援用を撤回させるように交渉いたしております。
  17. 松本七郎

    松本(七)委員 一部にはすでに貿易為替自由化政策関連して、先ほどから問題になった欧州経済ブロック化、これも考えあわせて、アジアにおける経済ブロック化の必要を唱える向きもあるようですが、これらの点については外務省はどういう観測をされておりますか。
  18. 牛場信彦

    牛場政府委員 アジア共同市場というような問題につきましては、これは私どもはある程度勉強もいたしておりますし、また各方面においていろいろ研究なさっておるように承知いたしておりますが、現状におきましては、やはり何と申しましてもアジア域内においてアジアの国が相互にやっておるいわゆる域内貿易の量というものが非常に少ない。そうして各国ともまだ経済の発達の度が低くて、いわゆる低開発国の様相を呈しておりまして、日本だけが工業国ということで立っておるという状況でありますので、これを一気に一つのものにまとめ上げるということは、なかなか実際問題としてむずかしいのじゃないか。またもしそういうことをやりますと、これは工業国であり、先進国であり、経済力の面におきましても一番進んでおる日本が、一番過当な負担を負わなければならぬ状況になるということも考えられるわけでありまして、もちろん将来の可能性としまして十分比較検討しなければならぬ。また日本としては、アジアというよりもむしろ先まで延ばしてオーストラリアとかニュージーランドという国まで含んだようなものも何か考えられないかということも、研究題目としては非常に重要なことであると存じますので、さしあたりのところどうもそういう可能性は少ないというふうに考えております。
  19. 小泉純也

  20. 戸叶里子

    ○戸叶委員 提案理由説明の中に「スイスは、かねてからガットに参加したい意向を表明いたしておりましたが、スイス国内政策上及び国内法上、一般協定規定を完全に実施することができない」とあるわけでありますけれども、その国内政策上というものは一体何を指すのか、そして国内法上というものはどういうことをいっているのか、伺いたいと思います。
  21. 牛場信彦

    牛場政府委員 国内法上の理由は主として二つございます。一つは、スイス国産保護のために一部農産品輸入制限を行なっております。これはほんとう保護目的のための輸入制限でありまして、ガット一般規定から申しますと、国際収支上の理由がない限り輸入制限ができないということになっておりますが、その義務をそのままでは受諾できないということ、これが第一の理由であります。それからもう一つは、通貨政策上の理由でございまして、スイス国際通貨基金義務を受諾できないような事情にある、と申しますのは、もしスイス国際通貨基金に入りますと、各国からスイス・フランを貸してくれという需要が多くなるであろう、その結果、通貨が増発になりまして、国内にインフレが起こる、そういう理由でもって国際通貨基金に入ることができないということを申しておるのであります。ガット規定によりますと、もし通貨基金に入っていない国がガットに入ります際には、通貨基金協定類似内容の特別為替取りきめを作らなければならぬということになっております。その特別の為替取りきめもスイスは作ることができない、この二点がございますので、さしあたり正式加入ということでなくして仮加入ということになったわけであります。しかしながらこの二点とも、スイスは今後ともだんだんこの差別を撤廃して参って、なるべくガット規定に近づいていくということになっております。それからまたそういう差別をしている過程におきましても、他国の利益を害しないように、平等に差別を適用して参るということを約束いたしておるわけであります。従いまして、スイスの仮加入ということは、期限付になっておるわけであります。
  22. 戸叶里子

    ○戸叶委員 国内政策上というのは何ですか、今のことに関連しているのですか。
  23. 牛場信彦

    牛場政府委員 スイスは憲法に基づきまして、国家の安全または国民の保健上の見地から、酒類穀類飼料等若干の品目について輸入制限を行なっております。これが法律上のものでありまして、それから先ほど申しました政策国際通貨基金類似協定を作れない、これが政策上の理由であります。
  24. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、今御説明がありましたように、期限付加入するということになったわけでございますけれども、その場合に、暫定的に加入するときの権利義務関係と、それから正式に加入するときの権利義務関係というものは、どういうふうになるのですか。
  25. 牛場信彦

    牛場政府委員 規定の上で申しますと、スイスガットの第十一条及び第十五条、つまり第十一条は国際収支理由がない限り輸入制限ができないという規定であります。第十五条というのは、国際通貨基金に入っていない国は国際通貨基金類似内容の特別為替取りきめを作らなければならない、この二つ規定を留保しているわけでありまして、従いまして、この二つ規定日本スイスとの関係におきましても、仮加入の間は適用ないということになります。もっとも十一条の規定のうちで、留保しておりますのは、先ほど申しました酒類穀類飼料という若干の農産物に関する限りであります。
  26. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、当然これが仮加入から実際に正式加入になってきますと、もう一度宣言というものは国会にかけ直すことになるわけですか、そのままずっと正式加入という形をとられるわけですか。
  27. 牛場信彦

    牛場政府委員 正式加入の際には当然再び関税交渉が行なわれると存じます。関税交渉の結果日本関税譲許をいたすということになりますれば、それは国会の御審議の対象となります。
  28. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、暫定的になっているわけですけれども、正式加入する見通しは近いわけですか、どうでしょうか。期限がありますか。
  29. 牛場信彦

    牛場政府委員 期限は御承知のように二年になっておりますが、ただいまのところ、はたして二年以内にスイスほんとう正式加入できるようになるかどうかという点は、ちょっとわれわれ疑問に思っております。そういう場合には、おそらく仮加入のさらに延長ということになる可能性も相当あるのじゃないかと考えております。
  30. 戸叶里子

    ○戸叶委員 日本とほかの国との間にこういうふうな宣言締結をしている場合には、おそらく大体正式加入だったと思うのですけれども、そういう場合とスイスとの場合とでは相当の差が実際問題としてあるわけでしょう。
  31. 牛場信彦

    牛場政府委員 ただいま仮加入になっておりますのは、カンボジアスイスイスラエル及びチュニジアということでありますが、カンボジアイスラエル及びチュニジア正式加入のための関税交渉加盟国の都合で間に合うように妥結できなかったという理由で仮加入しておるだけでありまして、この三国ともこの次の九月から始まります関税交渉に参加いたしまして、それで関税交渉が妥結すれば正式加入ということになります。これはほんとうの暫定的なものでございます。それと比べますと、スイスの場合は今申しましたように原則的な留保をいたしておりますので、性質はだいぶ違います。
  32. 戸叶里子

    ○戸叶委員 次に、日本の国の、ヨーロッパの国と競合するような最も顕著な生産品はどんなものか、そしてその市場はどこであるかを伺いたいと思います。
  33. 牛場信彦

    牛場政府委員 いつでもいわれますのは、繊維品、その次には陶磁器でございます。繊維品ヨーロッパ全体に相当たくさん出ております。陶磁器は、各国制限がきついものでございますから、量としてはあまり出ておりませんが、おもなマーケットはドイツイギリスあたりでございます。
  34. 戸叶里子

    ○戸叶委員 さっきちょっと松本委員からも触れられたのですけれども、欧州共同市場の問題です。欧州共同市場に対する見通し日本外務省はどう考えていらっしゃるのでしょうか。たとえばベルギーとかオランダ、あっちの方に参りますと、欧州共同市場というものは大へんに大きく伸びていくので、日本にとって大へんな問題になるというようなことをいっておられる人もおりますし、またほかの方に行きますと、いや、あれは大したことじゃないというふうにいわれる人もあるわけですけれども、日本外務省としては一体どんな見通しを立てていらっしゃるのですか。
  35. 牛場信彦

    牛場政府委員 私ども、欧州共同市場というものは予定通り発達して参るだろう、最近の傾向を見ますと、むしろ予定より少し早目に固まっていくのじゃないかと考えております。その結果といたしまして、単に関税面における差別待遇の問題のほかに、企業の合理化あるいは産業の分業というような関係からいたしまして、共同市場の中の企業は相当競争力が強くなるだろう、またアメリカ等からの投資もふえまして、共同市場経済力はむしろ当初要求していたよりも強くなるのじゃないかと考えております。従いまして、われわれといたしましては、一方において差別待遇が大きくならないように、これは域外の国と協力いたしまして監視をいたしますと同時に、具体的に共同市場に対する日本の輸出をどうしていくかというようなことを研究していかなければならないと考えております。もちろん共同市場が固まりました結果として生産が伸び経済が成長するということになりますれば、貿易の量もおのずからふえるわけでありまして、そうすれば日本が入っていく余地も当然ふえて参るというふうに考えております。
  36. 戸叶里子

    ○戸叶委員 共同市場の問題は、やはり私は十分時間をとっていろいろ質問しなければならない問題があると思うのです。今伺っただけでも想像以上に非常にいろいろな影響があるだろうというようなこともおっしゃっている。それで相当重要視しているわけなんですけれども、それに対して日本外務省も何かの方法を考えなければならないというふうに言われておりますけれども、考えなければならないと言っていらっしゃる間にどんどん共同市場の方の計画というものは進められていくわけでして、やはりこれに対してどういうふうな具体的な対策をもって日本貿易の発展ということを考えるかというような策を出していかなければならないのじゃないかと思うのですが、その基本的なものぐらいはお持ちになっていらっしゃるかどうか、これが一点と、それから共同市場が発足いたしまして、今まで日本の国に及ぼした何かの影響というようなもの、これがあったら伺いたいと思います。
  37. 牛場信彦

    牛場政府委員 基本的な政策といたしましては、第一歩としましては、先ほどお答えいたしましたようにガット三十五条の援用問題、これを解決することがどうしても必要であろうと思います。たといそれが急にできないまでにいたしましても、とにかく各国との間に最恵国待遇を取りつけ得るような交渉を行なっていく、これがわれわれ今一番力を入れているところでございます。それはむしろ日本独自の問題でございまして、日本が主としやらなければならぬ。しかしながらこの問題につきましても、私はやはりアメリカカナダを初めといたしまする域外国との間に協調をはかりまして、ガットの場におきまする論議なども利用いたしまして、強いプレッシャーをかけていくということが必要であろうと考えております。それと同時に、これは域外国全般的な観点からいたしまして、共同市場が成立するに伴って、最終的には、幾分生じ得る運命にあるところの域外に対する差別というものをできるだけ小さくしていくという努力をしなければならぬわけでありまして、この点におきましても米加あるいはオーストラリアあるいはその他の低開発国全部と力を合わせまして常に監視をし、かつ圧力を加えていくということをやらなければならぬと思っております。
  38. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、さっき松本委員が触れられましたように、これに対抗するといいますか善処するというような意味で、アジア関係共同市場というようなものを作っていくというような案をお持ちになっていらっしゃるのでしょうか。
  39. 牛場信彦

    牛場政府委員 これに対抗するという意味では、私ども実はアジア共同市場というものを、もし可能であるとしても考えてはおらないのでありまして、アジアにおきまするいろいろな経済的な要請から実際にそういうものが可能であり、かつ作った方が全部のために利益になる、これはアジアだけではなくして世界貿易の発展ということのために利益になるということであるならば、これを積極的に推進すべきだというふうに考えております。
  40. 戸叶里子

    ○戸叶委員 共同市場貿易自由化の問題はあとで他の機会に伺うことにいたしまして、東南アジア諸国ガット加入していない国はどこでしょうか。
  41. 牛場信彦

    牛場政府委員 北の方から申しますと、韓国、中国、フィリピン、アフガニスタン、カンボジア——これは今度入ります。ベトナム、ラオス、タイ、それだけであります。
  42. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それらの国が近いうちに入るような可能性はあるわけでしょうか。
  43. 牛場信彦

    牛場政府委員 タイあるいはフィリピンなどにつきましては、そういうような見解も一部には持たれておるようでございます。
  44. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今安保条約審議が盛んに行なわれているわけですけれども、あの二条でだいぶアメリカ日本との間の経済的な提携を強めていくということを政府が宣伝しているわけなんです。そこで、ちょっとそれに関連して伺っておきたいことは、米国の日本に対する貿易制限現状と、それから将来のそれに対する日本見通し、この点を、大臣でないとちょっと無理かもしれないのですけれども、伺いたいと思うのです。参考に伺っておいて、あとで安保委員会でそれをもっと詳しく聞きたいと思います。
  45. 牛場信彦

    牛場政府委員 これは事実だけを簡単に申し上げます。  ただいま輸入制限運動ということをよく申しておりますが、アメリカでもって具体的に関税委員会等にかかっておりますのは、一番大きなのは農業調整法二十二条という問題でありまして、つまりアメリカの綿花が輸出補助金を受けております関係で、国外における紡績業者が国内におけるアメリカの紡績業者よりもアメリカの綿花というものを安く買っている。その安い綿花を使って作った製品がどんどんアメリカに入ってくるのは困りますから、その綿製品に付加税を課してくれ、こういう申請がアメリカの業界から出て参りまして、それで目下関税委員会にかかっております。公聴会が終わりまして、近く大統領のところに関税委員会の勧告が出て参る、そして大統領がこれをどうするか、そこで裁決されるということになるわけでございます。そのほかダンピングの問題が二、三あります。そのうち一番大きなのは鉄鋼製品のダンピング問題でありまして、これは去年の三月ごろに提訴がありまして、いろいろ調べてみました結果、やはりダンピングの容疑があるというようなことで、去年のたしか十二月の十何日だったかと思いますが、関税評価を差しとめるという措置を行ないました。これは要するにダンピングだということになりますと、ダンピング税がかかります。従いまして先方の輸入業者としては非常に損をするわけでございますが、そういうことがきまるまでの間、一応関税の評価を差しとめまして、幾ら関税を払ったらいいかわからぬという状況になるわけでございます。そうして、実際上その商売がやりにくくなる。これは先方の財務省の管轄でありますが、財務省が行ないましてなお調査をいたしております。これも近いうちにダンピングでないという決定が下ることをわれわれとしては非常に希望もし、またそういう意味交渉をいたしておるわけでございます。そのほか二、三、まだこまかいもので関税委員会にいわゆるエスケープ・クローズ適用問題として出ておるのでございますが、いずれも日本にとりましてそれほど大きな関係のあるものではございません。従来いろいろ騒がれておりましたが、実際に向こうが関税を上げましたのは体温計と金属洋食器だけであることは御承知通りであります。
  46. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今、綿製品と鉄鋼製品の制限の問題を説明されたわけですけれども、近い将来においてそういう問題を解決するというような見通しをお持ちになっていらっしゃるかどうか。具体的な見通しは何もないということですか。それとも近いうちには解決しそうだという具体的な見通しがおありでございますか。
  47. 牛場信彦

    牛場政府委員 端的に申しますれば、今アメリカの議会に出ておりますいろいろな輸入制限法案、これは相当勝手なものが出ておるわけでございます。これは毎年の例でございますが、これがたとえば今年の議会でもって成立するという見込みは、私はまずないのじゃないかと思っております。これは、今年は大統領の選挙もございますので、おそらくアメリカの議会は七月の早々には休会になるだろうということで、その間何も起こることはないだろうというふうに観測いたしております。  それから、関税委員会にかかっておりますものは、関税委員会というのは独立の性格を持っておりまして、行政府としてもその決定を左右できないことは御承知通りであります。その決定が勧告として大統領の手元まできたときに、大統領として、今までの例を見ましても、必ずしもそれを採用しないで、自由貿易のラインに沿って決定を下しておられることは御存じの通りでありますし、私どももそれを期待して参りたいと思っております。明年以降のことになりますと、これは今度の新しいアメリカの政府というものがどうなるかということによって、幾分また変わってくることがあるかとも存じますが、現在のアメリカ国際収支の逆調という点からいたしまして、保護貿易の声が相当強くなってきていることは事実でございます。しかしまた他方、それに対してアメリカの行政府が非常に自由貿易の原則を守って保護貿易の声に対抗して努力しておるということも、これは十分認められるところであります。私どもも、そういう自由貿易の方の陣営に力をつけるように、日本としても今後の貿易政策を考えていけば、日本にとって非常に痛いような制限が実際に具体化するということはないものと私どもは信じております。
  48. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は、きょうは事務当局の方ですからそれ以上のことはいろいろ申し上げないのですが、もう一つ伺っておきたいことは、アメリカ日本の製品に対して輸入制限をするものは大体二つあるわけですね。数量を制限するのと、もう一つ関税の引き上げということと両方なんですけれども、大体アメリカはそのどっちの方法をよけいにとろうとしている傾向があるか、この点の見通しをちょっと伺っておきたいと思います。
  49. 牛場信彦

    牛場政府委員 業界の方は、数量制限を最も希望しているわけです。しかし数量制限といいますのは、大体において法律を通すかあるいは民間国防法と申しますか、ああいうような法律でやるか、そういうことでないと実施の方法がありませんので、今までのところ行なわれましたのは関税引き上げだけでありますし、今後ともやはり関税引き上げ以外の方法は私はなかなかむずかしいんじゃないかと思っております。
  50. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、もし関税引き上げということになりますと、ガット関税との関係はどういうことになってきますか。
  51. 牛場信彦

    牛場政府委員 これはむろん引き上げた分だけはほかの方でもって下げなきゃならぬわけでありまして、従いまして先般体温計の関税を引き上げられましたときにも、われわれといたしましてはその代償を要求いたしまして現在なお交渉をいたしております。
  52. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、結局アメリカとの貿易見通しというものも、今度の安保条約締結されても経済条項で大したことがないというような結果になるように私は思うわけなんですけれども、そこまで事務当局の方に伺ってもどうかと思いますから、一応この程度で質問を打ち切っておきます。
  53. 松本七郎

    松本(七)委員 次は二重課税の防止条約ですが、今まで結んだ二重課税防止の協定の実施状況を少し御説明願いたい。
  54. 塩崎潤

    ○塩崎説明員 御存じのように、わが国は次のような国と租税条約を結んでおります。一番最初に結びましたのが、所得及び遺産に対しますところの二重課税防止条約で、これはアメリカとの間に結んでおります。これが一つございます。第二は、スウェーデンとの租税条約であります。スウェーデンとの条約を結びました関係上、北欧三国との関係からノルウエー、デンマークと租税条約を結んでおります。なお昨年パキスタンとの間に租税条約締結したことは、御存じの通りでございます。従いましてアメリカ二つと数えますればちょうど六つの租税二重課税防止条約があるわけでございます。  この租税条約状況につきましては、パキスタンとの租税条約の御審議を願う際にも御説明申し上げたわけでございますが、最も課税問題が起こりますのは、経済交流の密接なアメリカとの間の関係でございます。北欧三国の関係は、アメリカその他の国に比べまして密接な経済関係がまだ少ないわけでございますので、そう複雑な租税問題は起こっておりません。なお最後に結びましたところのパキスタンとの間の租税条約は、両国間の経済交流の促進をはかる見地から結んだわけでございますが、パキスタンとの間の経済交流はまだ十分に進んでおりません。今後経済交流がますます密接になるにつれまして、条約に基づきますところの関係が起こってくるのではないか、かように考えております。  一般的に租税条約締結の実績でございますが、種々の投資奨励あるいは二重課税防止の規定がございます。そのほか一般的に考えられますことは、この租税条約締結によりまして、両国間で実際問題として行政上起こりますところの各種の租税上の紛争の問題でございます。これを解決する点におきまして、相当好影響がある、こう見ております。アメリカとの関係におきまして結びました租税条約に基づきましても、日々発生いたしますところの租税問題につきまして、こういう所得日本源泉と見るかどうか、アメリカ源泉と見るかどうか、これらにつきましてしょっちゅう私どもとの間に交渉が行なわれております。  それともう一つ、東南アジア諸国との間におきましては、租税行政が必ずしも私どもの考えておりますような条件で行なわれてないことは、御存じの通りでございます。そのために現在経済投資まで、まだいっておりませんけれども、各地に進出いたしますところの商社あるいは在外企業との間におきまして、租税問題が実際の行政問題として起こるわけでございます。これは租税条約を結ぶことによりまして、こういうものは課税するのは少し酷ではないか、あるいはこういうものは課税しても適当ではなかろうかというような、所得源泉のきめ方その他を両国間におきまして合意に達することによりまして、解決をいたしておる状況でございます。これらによりまして、条約に現われない面の租税問題の解決が相当スムーズに行なわれておる。パキスタンとの間におきましても、そういう見地から相当な実績をおさめておる、こういうふうに考えていただいてもいいんじゃないか、かように考えております。非常に大ざっぱな説明でございますが、具体的なケースで御指摘がございますれば、どういうふうにこの租税条約が適用され、どういうふうにこれが解決されておるかという点をお答え申し上げたいと思いますが、一応前置きといたしましては、この程度の御説明をいたしておきます。
  55. 松本七郎

    松本(七)委員 それで、おもな紛争になったような事例というものがありましたら、少しあげていただきたいと思います。
  56. 塩崎潤

    ○塩崎説明員 お答え申し上げます。御存じの通りに一番むずかしい問題は、産業上、商業上利得の課税でございます。商品が、たとえばアメリカから日本に持ってこられて売られる、あるいはデンマークから日本に持ってきて売られる、逆に日本から向こうに持っていって売るような場合がございます。それからまた商品のみならず種々の技術提携等が行なわれまして、それに伴いますところの人間が相互に交流いたします。そういう関係で問題が起こるわけでございますが、最もケースの多いものは、現在の産業上、商業上利得の関係のきめ方といたしまして、恒久的施設ある場合に課税する、こういうことになっているわけでございます。わが国の国内税法では、事業があれば課税するとなっておりますが、条約ではそれが恒久的施設がある場合に課税する。この事業と恒久的施設との関係、なかなかむずかしい問題でございますが、いかなるものが恒久的施設に該当するかどうか、このあたりの観念が非常にむずかしいわけでございます。たとえばアメリカにおきまして本店がありますところの会社が、日本に子会社を作ります。日本の子会社が日本で機械を注文いたしましてインドに送るというふうなケースがございます。条約を見ますと、恒久的施設がある場合に課税するわけでございますが、単なる購入の場合には課税しないという規定一つございます。単なる購入の場合は、付加価値部分が少ないという国際租税法的な考え方からきておると思いますが、単なる購入とは何ぞやというような問題が非常に問題になります。そこで日本で販売が行なわれたならば、単なる購入にならないのであるかどうか、このあたりが概念的に非常にむずかしい問題でございます。そのあたりをどういうふうに課税したらいいのかどうか、相当ケースもございまして、私どもも悩むところでございますが、具体的なケースにつきましてこういうものは単なる購入であろう、日本におきまして商品の売買契約も行なわれないし、また日本におきまして船積みがされたような場合には、むしろ日本では課税されずにアメリカ本国で相互課税するようなことになるのではないかと思いますが、こういうようなケースは一つではございませんで、相当発生いたしております。こんなふうなこまかいケースにつきまして、種々のケースがございますが、それらの問題につきまして、私どもは条約に従い、あるいは条約の文面だけではなかなか解決できない場合には、向こうとの間の話し合いによりまして解決しているのがその実情でございます。
  57. 松本七郎

    松本(七)委員 日印間にはいわゆる恒久施設と目されるものはどのくらいあるのでしょう。
  58. 塩崎潤

    ○塩崎説明員 恒久施設の概念でございます。この日印租税条約を読んでいただきますと、事務所、支店、商品販売所という概念ではなくして、長期の建設工事を請け負って、インドで事業をする。こういう場合にはおそらく御存じの通り、飯場を恒久施設というかどうかは別といたしまして、事業所の概念には当たらないというのが普通の概念だろうと思います。インドでたとえば発電所の契約をする。それは日本でおそらくこういうプログラムにおいてやるというのが一切用意されまして、日本の技術者が行き、インドで労務者を雇いまして、あるいはインドで資材を購入いたしまして発電所を作る。こういうものも非常に長期にわたった大規模な建設工事ならば恒久施設になっております。こういうものは現在のところあまりございませんけれども、そういうものまで恒久施設になっておりますし、あるいはまた日本の企業のために専属的に販売契約に従事するといったものも、たとえインド法人でありましても、日本法人の恒久施設と見るというふうに、他の条約に比べて若干広い面がございますので、それらを含めまして計算することは困難でございますが、現在私どもが普通に考えております恒久施設としてはあるいは支店であり、事務所であるといたしますと、現在のところ支店がインドに九つございます。それから駐在員事務所、この駐在員の概念がなかなか、普通の商業活動を営んでおるものであるか、単純なる調査をしておるか、そこの調査はむずかしいわけでございますが、六十三ございます。なお恒久的施設といいますか、恒久的施設よりもむしろインド自体の居住者といいますか、インド自体の法人というか、インド法律に基づきまして作られましたところの現地法人の数が四つございます。なおインド日本にありますところの恒久施設は非常に少ないわけでございまして、支店が四つとインド資本によりますところの現地法人は現在のところ見当たっておりません。駐在員事務所の数は現在のところわかっておりませんが、何と申し上げましても日本経済地位から見まして、インドに持っております日本の恒久施設の数の方が多い状況でございます。
  59. 松本七郎

    松本(七)委員 日本にあるインドの恒久施設は何を目的とするものでありますか。
  60. 塩崎潤

    ○塩崎説明員 お答え申し上げます。おそらくインドの支店は販売を目的とする支店だろう、かように考えております。
  61. 松本七郎

    松本(七)委員 それから今までのこの条約と今度の日印間の条約は形式、内容全く同じですか。
  62. 塩崎潤

    ○塩崎説明員 御承知通りにOEECと申しますか、ヨーロッパ共同市場のお話しが先ほど出ておりましたが、租税条約の型をOEECが統一しようというような運動はございます。ところが現在御存じの通り租税条約は二国間の租税条約となっておりまして、相手方によりましておのおの型が違っております。私どものカテゴリーを見ますと、先ほど申し上げましたようにアメリカ一つの型、もう一つは北欧三国に対しますのが一つの型、もう一つはパキスタンとの間の今まで締結いたしました一つの型でございまして、約三つあると考えられておるわけでございますが、今度締結いたしました目印間の租税条約は、この三つのいずれとも異なった型を示しておると一般的に言えると思います。なおその中でももちろん教授、教員の交換とか学生とか研修生とか短期滞在者とか、そのあたりの規定はもう同じでございますが、日印租税条約の一番の特色といたしましては、経済交流関係を促進するための租税条約規定が、今までの締結いたしました他の三つの租税条約の型と根本的に違っておるのでございます。その点を申し上げますと、御存じの通りに、インドでは五カ年計画とか種々の経済開発計画をもちまして、自国の資本のみならず、外国の資本まで導入いたしまして経済開発を進めておるわけでございます。そのためにインド国内税法には、それに対しまして誘因と申しますか、インセンティブを与えるような国内税法に基づきますところの特別措置があるわけでございます。たとえば一例を申し上げますと、外国の金融機関あるいは外国政府からインドの生産的事業が借り入れました借入金に対しますところの利子、あるいはインドの生産的事業が、たとえば日本の生産会社からプラントを輸入いたしましたときの延べ払いの利子、これらにつきまして政府の承認を受けますれば免税ということがインド国内税法にございます。こういう税法がございまして、インド国内開発計画を税の面から進めているわけでございます。ところが御存じの通り世界各国租税条約がない場合には、各国におきまして外国におきます投資に対しましても当然課税が行なわれておる、これはもう当然の税法の本質的な生命でございまして、どこの国に投資いたしましても、その投資から上がりますところの所得日本で総合いたしまして課税するというのが国内税法の建前でございます。従いまして、インドで先ほどの規定によりまして、インドにプラントを輸出いたします。そうして日本の生産会社がそのプラント輸出に対しましてとる利子が、インドで今の規定によりまして免税されます。しかしながら日印租税条約がない場合には、日本では向こうで免税されておりましても、それが免税なかりしものとして三八%の法人税を課税するわけでございます。インドの非居住者に対しますところの法人税率は六三%でございますが、六三%がインド国内税法では政府の承認を受けますと全く無税となりまして、たとえば百万円の利子は百万円で日本に返って参ります。日本ではこれに三八%とるわけでございます。そういたしますと、インド政府に言わせますれば、せっかく国内経済開発のために外国資本にまで誘因を与えた、恩恵を与えたものが、日本政府の税法によってまた取り返されるではないか、これでは誘因にならないというわけで、インドの結びますところの租税条約の型は、ほんの経済交流促進の手段と考えまして、インドで免税いたしますれば、日本政府ではその免税によりますところの利益を取り返せないような方法を作ってくれというのがインドの態度でございます。それで今の考え方では、インドの税金が日本税率よりも高いものでございますから、六三%を免除したならば六三%かかったものとして、インド政府ではそういう特例がないものとして日本では受け入れてくれ。そういたしますと、日本では国内税法に税額控除の制度がありますから、六三%と三八%を比較いたしまして、六三%が高いものですから、これはもう二度ととらない、こういうふうなことになっておりますが、そういうふうに見てくれないか。かりにこれを、インド税率日本の三八%の法人税より低くて二五%であったということになりますれば、二五%はかかったものとしてみてくれ。二五%かかったものとして百万円のものを七十五万円で、まず手取り額で参りますが、百万円で日本でみまして、二十五万円だけはインドで払ったと見まして、残りの十三万円だけ——三八%の三十八万円、マイナス二十五万円の十三万円だけ日本政府で納めるようにしてもらいたい。これが最近の傾向といたしまして、後進国先進国と結びますところのタックス・スペアリングといっておる型でございますが、この型を要望いたしまして、私どももその型に従いまして日印租税条約はその型ででき上がっておるわけでございます。この型は何も日本だけがインドと結びました特例ではございません。アメリカが結びました特例もこういう型に従っております。ドイツそれからスウェーデン、これもそういう型で、若干表現は違っておりますけれども同じような型で、タックス・スペアリングの型で租税条約を結んでおります。パキスタンとの間にはそういう関係はございません。しかし最近利子条項につきまして私どもと話が行なわれました際は、そういう形で日本の貸付金の投資というものを奨励するならばタックス・スペアリングを認めてくれ、こういうふうなことを言われております、それが大きな特色でございます。
  63. 松本七郎

    松本(七)委員 パキスタンになくして、インドでそれを初めて作ったというのはどういうわけですか。パキスタンのときに、締結当時はまだそれは問題になっておらなかったのですか。
  64. 塩崎潤

    ○塩崎説明員 お答え申し上げます。パキスタンとの租税条約の際に、パキスタンとの間におきまして、一昨年と昨年でございますが、二度議論いたしましたときにも、そういう話は若干出ました。しかしながら、パキスタンがさきに米国との間に結びましたところのタックス・スペアリングの規定が、米国の上院で、その点が認められなかったのでございます。と申しますのは、パキスタンの国内税法が変わりましたために、それでは意味がないではないかというのが真意であったかと聞いております。そんなような関係で、パキスタン自体も、その点あまり熱心ではなかったと思います。しかしながら、パキスタンとの間には、経済交流を促進するために、相互に税金を下げていこうという、普通の北欧型と申しますか、アメリカとの間にもそんなような規定がございます。そんなような型の、経済交流促進の譲許税率と申しますか、税率を下げました規定を設けておりますが、タックス・スペアリングの規定は設けなかったわけでございます。しかしながら、それは一つの条件がございまして、おそらくパキスタンにおきましての考え方が、日本との投資促進のために、税金を条約上軽減はいたしておりますけれども、軽減の幅が非常に少ないという点も一つあったかと思います。先ほど申し上げましたように、インドの六三%のものを免除するという場合は、フェーバーが非常に多い。こういう場合には、日本も歳入を失うようなタックス・スペアリングが適当であるという考え方がもう一つ成り立つと思います。パキスタンとの租税協定は、一例を申し上げますれば、配当につきましてはわずか四分の一しか軽減しない。わずか四分の一程度の軽減でスペアリングを認めるかどうか、この点は私は疑問だと思います。根本的には、国内税法の建前からいいましても、どこの国に投資いたしましても、あるいは国内に投資いたしましても、かりに法人でありますれば、三八%でなければならぬということに対するところの大きな例外になるので、よほど外国の国内税法を吟味し、その国内税法によるところの、あるいは条約でもいいわけですが、軽減の仕方が、経済開発計画に即応して、その軽減の仕方が相当大きければ、スペアリングを講ずることも非常に意味があるかと思いますけれども、今まで締結いたしましたところの日パ租税条約では、まだタックス・スペアリングを認めるような型ではない、かように私どもは考えております。ただし、先般私どもが参りまして。パキスタン政府との間で交渉いたしました利子条項については、相当大幅に軽減する、その場合日本政府が、せっかくパキスタンが恩典を与えたものを、日本税法で取り返すというようなことはやめてくれということになっておりまして、スペアリングの動きがあることは、今後いずれ御審議を願う機会があるかと思いますが、そういう状況でございます。
  65. 松本七郎

    松本(七)委員 日印間に今度結んだと同じようなものを、インドは他の国とは締結しておりますか。
  66. 塩崎潤

    ○塩崎説明員 インドは、すでにスエーデン、それからドイツアメリカと、大体同じような型の租税条約締結いたしております。
  67. 小泉純也

    小泉委員長 次会は公報をもってお知らせすることといたし、本日はこれにて散会いたします。     午前十一時三十四分散会