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1960-05-13 第34回国会 衆議院 運輸委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年五月十三日(金曜日)     午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 平井 義一君    理事 天野 公義君 理事 生田 宏一君    理事 關谷 勝利君 理事 井岡 大治君    理事 久保 三郎君 理事 土井 直作君       高橋清一郎君    長谷川 峻君       福家 俊一君    村瀬 宣親君       兒玉 末男君    館  俊三君       内海  清君    菊川 君子君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 楢橋  渡君  出席政府委員         運輸事務官         (大臣官房長) 細田 吉藏君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      山内 公猷君  委員外出席者         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  廣瀬 眞一君         日本国有鉄道副         総裁      吾孫子 豊君         日本国有鉄道常         務理事         (新幹線総局         長)      大石 重成君         日本国有鉄道常         務理事     中村  卓君         日本国有鉄道常         務理事     兼松  學君         日本国有鉄道常         務理事     磯崎  叡君         専  門  員 志鎌 一之君     ――――――――――――― 五月十三日  委員淺沼稻次郎君辞任につき、その補欠として  兒玉末男君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案内閣  提出第一二三号)      ――――◇―――――
  2. 平井義一

    平井委員長 これより会議を開きます。  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、参考人招致に関する件について、お諮りいたします。本案について参考人を招致して意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 平井義一

    平井委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、参考人人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 平井義一

    平井委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、参考人を招致する日取りは、理事会の申し合わせにより、来たる十七日火曜日の予定になっておりますので、御承知おき願います。     ―――――――――――――
  5. 平井義一

    平井委員長 これより質疑を続行いたします。質疑の通告がありますので、これを許します。兒玉末男君。
  6. 兒玉末男

    兒玉委員 私は、国鉄当局にお伺いしたいのですが、最近国鉄赤字線区の問題が非常に問題になっておるわけでございます。先般三月の二十二日から新線開業しました枕崎線等の実態も調査いたしまして、国鉄経営あり方について、やはり根本的に検討すべき段階にきているように感ずるわけであります。新聞その他当局資料によりましても、現在国鉄経営している線区のうち、営業線が二百二十五線あるわけでありますが、そのうち赤字線区が二百十線で、黒字線区はわずかに十五線区しかない、こういうふうな状態で、営業係数状態におきましても、大体ほとんど二〇〇から三〇〇、ひどいところは係数が一〇〇〇をこえるというような状態にあるわけでございますが、このような状態を維持するならば、年々赤字増加する一方でありまして、このような状態の中において、この赤字線区に対する対策について、国鉄当局としてはどのような将来に対する対策をお考えになっているか、お伺いしたいと思います。
  7. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 ただいまお尋ねのございました通り国鉄の各線区別収支状態というものを見てみますと、二百二十五線のうちの十五線、キロ数にいたしまして約四千キロに当たるところが黒字で、残余の一万六千キロ、二百十線というものは赤字であるという姿になっております。その赤字線区のうちの約半分、八千キロほどは、間接費を除けば一応そろばんがとれておる。しかし、八千キロほどは、直接費すらもカバーすることができないというような程度の状況でございます。それで、国鉄の将来の経営を安定させますためには、やはりこれらの赤子線区赤字を解消する、あるいは少なくともその額を少なくさせるということに対して、いろいろな方法を考えなければなりません。まず第一番に考えておりますことは、やはりできるだけ冗費を省いて、経営を徹底的に合理化するということを考えております。そのための手段といたしまして、今日の輸送情勢に合わせまして、ある程度、たとえば貨物駅の集約というようなことも実施しなければならないというふうに考えまして、ただいまいろいろ検討をいたしておりまするし、また、これも線区のいろいろな客観的な条件によることでございますか、場所によりましては、現在の鉄道線路を撤去して、これを自動車に置きかえるというようなことが、合理化方策に、赤字軽減方策になるという場合もございます。そういうようなことも検討いたしておりまするし、それからまた他の方法といたしましては、ただいまもお話に出ました九州の山川線のように、ある程度擬制キロを設定いたしまして運賃収入増加をはかるというようなことも方法一つであるかと思われます。なお輸送財源と申しますか、国鉄のこれはどの線区についても当てはまることでございますが、やはり少しでも収入増加せしめますために、旅客、貨物誘致をはかる、それらの線区に対する輸送量増加によって増収を期待するというような努力をいたしますことももちろんでございます。いろいろな方法はあると思いますが、それらのいろいろな手段を総合的に検討し、かつ、できるだけ効果の上がる方法を選びまして、少しでも赤字を減少せしめるように、そして将来の国鉄経営安定に寄与せしめるように現在努力をいたしておりまするし、今後なお一そう努力いたしたい、そのように考えておる次第でございます。
  8. 兒玉末男

    兒玉委員 今副総裁の御意見を聞いておりますと、結局、赤字をできるだけ少なくする手段として、冗費節約経営合理化あるいは非採算線区のバスヘの切りかえ、または財源としての収入増加をはかるための客貨誘致ということを言われておりますが、もちろん、これは積極的な政策としてわれわれも賛成できるわけでありますが、国鉄経営全体の赤字最大原因がどこにあるか、その点についての副総裁見解を承りたいと思います。
  9. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 国鉄赤字原因はどこにあるかという非常に大きな問題についてのお尋ねでございますが、一口にお答え申し上げることはなかなかむずかしいかと思います。やはり根本的には、国鉄というものがかつては陸上交通機関の中の王座を占めた、いわゆる独占的な地位に置かれておったのでございますが、他の交通機関の発達、経済事情の変遷というようなことによりまして、いわゆる国鉄の持っております陸上輸送機関としての独占的な地位が失われたということが根本の原因であると思います。国鉄独占的な地位がなくなったのにもかかわらず、独占前提にした社会的、経済的その他いろいろな制約国鉄に加えられておる。大きな問題といたしましては、ただいま御審議をいただいております運賃制度の問題などはその最大なものの一つでございましていわゆる国鉄運賃というものは、負担力主義原則によって運賃体系が作られておるわけでございますが、これはやはり国鉄陸上輸送機関の中の独占的な地位にあったという姿が前提になって考えられることでございまして、今日のように独占性がすでになくなっておるという時期には、当然いわゆる、原価主義と申しますか、輸送のコストというものに見合った運賃体系に変えられなければならないということから、ただいま運賃法の御審議を願っておるようなわけでございます。大きな目で見まして、これなどは国鉄を囲んでおります客観情勢変化というものに合わせるまず一番にやらなければならない処置ではないかというように考えておる次第でございます。なお、いろいろ申し上げますと切りがないことになるのでございますが、独占体制前提としての公共的な負担というものが、これもしばしば問題にされておることでございます。たとえば、運賃について各種の公共負担というようなものが、三十三年度輸送実績をもとにして計算してみましても五百三十億というような額に上るということがいわれておるのでございますが、これなども国鉄独占企業であったということが一つの背景にあってこういう公共負担を課せられておるのでございまして、この点はやはり客観情勢変化に即応してこのような運賃面における公共的な負担をどうするかということについて、国鉄自身検討いたしますが、政府国会等におかれましても御検討をお願いいたしたいというふうに考えておることの大事な問題の一つでございます。そのほか、業務上のやはり独占体制前提にしたと思われるような公共的な負担がいろいろございます。たとえば、先ほどもちょっと御指摘があったかと思いましたが新線建設、その多くが直ちにはとうてい採算がとれる見込みがないというようなところも、やはり国鉄の公共的な使命ということから、新線建設をせざるを得ないというようなことも問題でございますし、また先ほどの御質問にありましたような非常に赤字の大きい線区そのままの姿で今経営をしなければならないというようなことも、やはり業務面における大きな負担になっておると思います。それから、鉄道本来の仕事ではございませんけれども国鉄自動車に対しましてこれまたいろいろな制限が課せられておりますが、こういうことも問題であると思うのでございます。  大まかに申し上げまして、これはやはり国鉄の公共的な使命という点からきていることだとは思いますが、国鉄がいろいろ採算を度外視した投資をしなければならない。一方において独立採算ということを厳格に要求されておるのでございますけれども独立採算ということを一方において要求されながら、他方において採算を度外視した投資をしたり、あるいはまた、採算を度外視した仕事を続けていかなければならぬというようなところに、国鉄経営が非常にむずかしくなってきた大きな原因があると思うのでございます。  なおそのほかこまかく申し上げますればいろいろな制約なり負担なりがございますけれども、それらの多くのものは、やはり国鉄というものが陸上輸送機関王座を占めておった、独占的地位にあった当時の姿を前提にして課せられたそれらの負担が、今日の社会情勢変化に即応するように改められていないというところに大きな原因があると思います。と同時に、しかし国鉄自身経営者並び国鉄職員全体の考え方という面におきましても、反省すべき点は多々あると思うのでございまして、やはり何と申しましても、企業意識に徹するということで今まで足りなかった点が多々あると思いまして、それらの点について私どもは深く反省をし、少しでも国鉄企業体として独算制を確立していかなければならないのだということに対する内部合理化、またわれわれ国鉄従業員努力による増収方策というようなことにつきまして、なお正そう努力いたさなければならない面がこれまたたくさん残されていると考えております。  いずれにいたしましても、今日の国鉄経営状態というものの将来を考えますと、率直に申し上げましてまことに前途暗たんたるものがあるのでございまして、先ほども申し上げましたようないろいろな手段を今後さらに根本的に検討を加え、また政府その他関係方面からの御協力と御援助を得まして国鉄将来の経営を安定させるように努力いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  10. 兒玉末男

    兒玉委員 今赤字原因となっている根本的な問題について説明を受けたわけでありますが、私はやはり現在の国鉄あり方というものが、高度の公共性と一面においては企業といういわゆる独算制という両面の立場を持っている、ここに非常に経営上の矛盾が生じているように感ずるわけです。先ほど総裁が言われました企業性に徹するという面におきましては、資料によりましても、昭和十一年の職員の一人当たり業務量というものが、指数で示しますと、一〇〇とした場合に、終戦当時の一九四六年で九九、それから一九五八年、昭和三十三年におきましては一八四というように、ほとんど倍近くの係数を示しているわけです。そういう点から私申し上げますならば、職員の一人当たり業務量というようなものはこういうふうな指数が示す通り非常に増加しておる。こういう点からいきますと、国鉄企業面に対する積極的な政策というものはこの職員業務量が明らかに小しておるわけであります。やはり赤字の本質というものは高度の公共性という立場から非常に高い賃率による割引を行なっているということと、それから新線建設というものがほとんど赤字線であるということがはっきり予想されながら、これが鉄道建設審議会によって決定されて、そしてそのしわ寄せ国鉄自体で背負っていかなくてはいけない、こういう経営上の本質的な問題を改革をしなければ、この赤字の根本的な改革はできないのじゃないか、私はこういうふうに感ずるわけですが、この点について副総裁並びに大臣見解を承りたいと思います。
  11. 楢橋渡

    楢橋国務大臣 ただいま兒玉委員が御指摘のように、国鉄の今日の赤字つまり行き詰まりと申しますか、そういうことは、やはり一面公共性において非常な過度の割引その他を要請され、一方にはまた商業ベースをもってやれないという建前があります。従って運賃その他もまた一面からいえば、自由な立場に置かれない、同時に後進地方その他のために新線建設等が要請される、こういうことから国鉄が二律背反と申しますか、苦しい立場に追い込まれておる。従って、これを赤字線だからやめたらいいじゃないかということも、公共性という線からそうばかりもいかない。やはり公共性立場からいって、この白洲について日本の全体の国土開発といいますか、そういう立場からいってもこれは認めなければならない。そこで問題は公共性独立企業体としての行き方とをどう調和するかという問題でありますが、これは国鉄だけで片づけようとしても片づけ得ない問題でありますし、じゃ運輸大臣としてこれを片づけろといっても、なかなかこの問題の解決は私だけの力でもできない立場にあるので、やはりこれは政府国鉄というものを一体どうするんだということを国の立場から一つ十分に考えてもらう。御存じのように暫定割引一つの問題にしても、農林水産委員会では猛烈なる反対があってこういう特別割引でも手がかけられない、各省の大臣がこれに対してまた反対するというような状態等もありますので、今私の方の事務当同等にいろいろ整理させておりまして、これをやはり内閣で取り上げさせる。いろいろな資料を整えましたら、さしずめ経済閣僚懇談会でこの問題を持ち出して、そこで一ぺんフリーにこの問題を掘り下げて考究しようということを考えて準備をしておるような次第であります。そうしなければなかなかこの問題は片づかない。たとえば運賃法兒玉さんも御存じのように、外国では運賃裁定審判所みたいなものがありまして、そこで公正な立場でやる。あるいはフランスのようなところは国が十分めんどうを見るというような立場もとっておる。各国の例等を見ましても、やはり公共性企業体としての調和をどうするかということは国が十分その辺の調節をやって、矛盾はあるけれども矛盾を緩和して、そこに一つの有機的な経営ができるような方途を講じておる等の先例もありますので、そういうことも勘案いたしまして、抜本的にこの問題について取り組みたい、こういうように実は思っておる次第であります。
  12. 兒玉末男

    兒玉委員 大臣のその構想は了とするわけですが、たとえば国鉄借入金状態を見ましても、昭和三十一年に千九百七十九億、三十二年度に二千百六十二億、三十生年度には二千五百四十億と全く雪だるま式に長期あるいは短期の借入金をもって借金をしながら経営をやっておるわけであって、私はこの改革についてはきわめて急を要する問題だと思うわけです。そこで借り入れ対象も、たとえば郵便年金とか、郵便貯金とか、こういうような利子の低い国家資金等をこの際十分利用すべきではないか、こういうようなことを考えるわけですが、これは経営上の担当である副総裁の方からお答えを願いたい。
  13. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 現在の国鉄経営にとりまして、御指摘のように多額の外部資金に依存しなければならない、その利子が年々大きなものになっていくということも、国鉄将来の経営を安定せしめる上から考えますと非常に重要な問題でありますことは御指摘通りでございます。現在は御承知のように一部はいわゆる鉄道債券によって資金を調進し、一部は資金運用部から借入金をさしていただいておるわけでございますが、本年度は特に東海道新幹線建設等関係もございまして、世界銀行からの借款もお願いするというようなことで今資金調達計画を立てておるわけでございますが、この資金調達につきましての借り入れ条件その他につきましては、相当国鉄性格ということを考えられまして、比較的低利で資金を調達できておるというふうにも言えるかと思います。しかしなお他の政府関係事業等でより有利な条件資金運用部資金借り入れを認められておるような例もございますし、私どもといたしましては、これらの借り入れ条件等につきましても、今後いろいろ政府当局の御検討もお願いしたいと考えております。幸い先ほど大臣からお言葉のありましたように、国鉄経営の将来の安定ということをどういうふうにして実現するかということについて、本格的に政府としてもお取り上げの上御検討請願うというお話でございますので、そういう際に賞金調達条件問題等につきましても、これは当然一つ検討対象にしていただきたいというふうに考えておる次第でございます、
  14. 兒玉末男

    兒玉委員 大臣にお伺いしたいのですが、先ほど大臣も少し触れられたわけですけれども、これだけの多くの赤字をかかえておる国鉄が、たとえば学割にしましても九割近くの非常に高率の割引をしておる。その他身体障害者あるいは団体割引通勤割引、こういうふうに公共的な問題あるいは政策的な面において相当割引をとっておるわけです。こういう点については当然私は国家補償すべき性格のものであると思うわけです。先ほどフランスの例もとりましたが、資料によりますと、昭和百三十三年にフランスとしては大体運賃割引補償金が百九十九億フラン、それから国家分担金というのが九百四十七億、運賃値上げによる補償金が二百二十二億、これだけの国家的な補償をして、さらに全体的な立場から生じた赤字の三百億、こういう面についても国が補償を見ておる。こういう非常に徹底したところの補償政策をとっておるわけです。このような点から考えましても、八十年間の伝統を誇る国鉄に対する赤字線等地域住民の執着は非常に強いものがあるわけです。同時にまたこういう公共的な立場からの運賃割引政策に対して多くの人たちが恩恵に浴しておるわけですが、反面そのしわ寄せ国鉄経営の中の赤字となっておる。いわゆる国鉄内部における極端な経営合理化、あるいは人減らしという従業員犠牲において行なわれておるということがこの統計でも明らかにされたわけです。こういうような点について大臣としてもう少し具体的に、あるいは積極的な構想というものを、私は明らかにしていただきたいと思うわけですが、この点に対する見解を承りたいと思います。
  15. 楢橋渡

    楢橋国務大臣 ただいま御指摘のありましたように、たとえば学割で九割もやっておる、その他身体障害者等についても割引をやっておる、文部省あるいは厚生省その他各方面にまたがって、国鉄犠牲においてこういう割引をされておるということは現実の事実であります。従って、この問題は、やがて提案します経済閣僚懇談会等につきましても、国鉄側からも出ていただきまして、つまり国鉄のそういう公共割引をやっておる各細目についての性格等検討し、そういうものから一つの帰納的な結論を出して、いかに国にかわってこういうことをやっているのかというようなことも逐次明日にして対策を立てたい。兒玉さんがおっしゃったようなことはごもっともでありまして、私も最近専門委員が参られました外国例等を見まして、国鉄から出ました文献等を見まして、これは大いに一つ国鉄の根本的な対策を立てる必要があるということで、目下いろいろと具体的な問題を考究しておるような次第でありまして、そういう点も十分に分析して、その性格等をよく見きわめて、国の考えるべきことは考えるという方向に持っていきたい、こういうふうに実は考えております。
  16. 兒玉末男

    兒玉委員 次に私は新線建設の問題について、若干具体的なことについてお伺いしたいと思っております。昭和三十二年の「交通技術」という雑誌が出ておりますが、この中で、本社の建設局建設線課長ですかの原口さんが書いた中に、「昭和三三年度建設線の展望」という中で、こういうふうなことを結論づけておるわけです。これは建設屋の専門的な立場からでありますが、「新線建設費政府出資原則とし、止むを得ず借入金などによりすかなう場合は利子補給がなされるべきだと思う。これらの補償措置政府へしばしは要請をしているが、まだ実現を見ないのはまことに遺憾である。」こういうふうな総合的な結論を出しているわけです。それにまた、今年度から新線建設については、今までの着工の二十五線にさらに十一線が加わって、三十六線が着工の段取りになっているわけでありますが、先般営業を開始しました枕崎線につきましても、私は具体的な数字をあげて指摘したいと思うのでありますけれども相当利子ということで、赤字の大体八割近くを占めておるわけです。この点については先般の建設審議会においてもそういうふうな大体の結論が出されているやに伺っているのでありますけれども、この新線建設投資に対する、あるいは借入金に対する利子補給だけでも早急にその措置をとるべきだ。現にあれだけ大きな疑獄事件を発生した海運に対しましてもやはり和子補給をすることにきまっているわけでありますが、高度の公共性を持つ国鉄についてはなおさら、大体この建設の意図というものも国鉄意思ではなくて建設審議会のいわゆる政治路線といわれるような押しつけによるところの新線建設であるわけでありますから、なおさら政府としては早急にこの利子補給等の面について着手すべきだと思うのですが、この点に対する大臣見解並びに国鉄当局の意向を伺いたいと思います。     〔委員長退席天野(公)委員長代理   着席〕
  17. 楢橋渡

    楢橋国務大臣 新線建設赤字線ということは、御存じのように、鉄道建設審議会から要請がある。それはやはり後進地域における開発鉄道公共性というような立場から、要請されてくる問題でありますので、従って、新線建設についての利子補給はしてもらいたいというわけで、本年もいろいろと折衝をいたしましたが、不幸にして成功することができなかったのであります。鉄道建設審議会からもその勧告を受けておりまして、総理大臣、あるいは局長、長官、大蔵大臣等にもその旨を私の方からも申しておるのでありまして、この新線建設に対する利子補給という問題については、やはり運輸当局といたしましても極力努力してその実現を期したい、こういうように思うのであります。ちょうどこの前の委員会におきましても、主計局佐藤次長等が出まして、相当にここで論戦が行なわれておりましたが、大蔵当局もそういう点について十分に認識させる必要があると実は私も思っておるのでありまして、この点は十分に御意思を尊重して努力をいたしたい、こう思います。
  18. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 ただいま大臣の御答弁にございました通りの事情でございまして、国鉄といたしましては、御質問のように、せめて建設関係の費用の一部なりとも政府出資をお願いいたしたいということを予算編成の前にお願いしたこともございますし、また新線建設費利子補給というようなことについてもお願いいたしました。いろいろ政府の御理解あるお力添えもあったのでありますが、最後の結論としてはお認めいただけなかったということになりまして、その点はまことに残念に思っておりますが、今後国鉄経営安定方策について根本的に御審議願います際にこのこともあわせて御検討をお願いいたしたい、かように考えております。
  19. 兒玉末男

    兒玉委員 鉄監局長にやはり新線建設に関連する問題についてお伺いしたいのでありますが、三月二十二日から営業を開始しました指宿新線、通称枕崎線と言っておりますが、ここに特別運賃制度をとっているわけである。そして、具体的に運賃の金額を申し上げますと、西頴娃から山川の間まで普通運賃ならば四十円のところを、七十円という非常に高率の運賃を取っているわけです。しかもこの特別運賃を取っている理由として、新線建設の区間が赤字である、それを補償する意味において地域住民負担において少しでもそれを穴埋めしようとする、この精神は私はきわめて遺憾であると思うわけです。そういう非常に交通の恵まれなかった地域人の犠牲においてそういう赤字の穴埋めの足しにするということは、国鉄全体の立場から考えましてもきわめて矛盾したやり方だと思うわけであります。この点についてしかも三月三十一日の国鉄の「労働ニュース」によりますと、この特別運賃があたかも画期的な制度で、当然であるかのごとき表現でPRされていることは非常に遺憾だと思うわけです。この特別運賃制度というものはすみやかに普通運賃制度に返すべきであって、これによって生ずる赤字というものは当然――枕崎線の場合は年間約五千六百万という利子国鉄犠牲によってやっているわけです。そういう点からしましても、わずかに年間収入八百一万円しかない中において、地域住民犠牲においてこういうことをすることは不当だと思うのですが、これに対する局長の見解を伺いたいと思います。
  20. 山内公猷

    ○山内(公)政府委員 枕崎線につきましては、御指摘のように、一般の国鉄線と違いました営業キロをとっているわけでございます。これは鉄道建設審議会でただいま御議論になったような問題をいろいろ御審議をしていただきました中で、鉄道建設審議会意見といたしましては、ただいまいろいろ御質疑のありましたように、国におきましてはまずこの鉄道建設の投下資本に対する利子補給を考え、また、利用される上においてほかの線より幾分の御負担を得て国鉄赤字を少しでも少なくしてでも建設はやっていくべきであるという御意見であります。御承知のように、今までの鉄道建設の歴史を見まして、今般国鉄が手をつけております東海道新幹線というような線は、また特別でございますが、ほかの鉄道におきましては、いかなる鉄道を敷きまとても、大体において十年くらいは赤字であるというのが通例でございまして、現在でもあるわけでございますが、私鉄の建設線につきましては、六分に至るまでの補助をやっておる、建設補助というものが戦前から戦後も引き続いて行なわれておるわけでございまして、大体どの線をやりましても、赤字であるというのは常識でございます。しかし、この線によりまして地方が開発されて、漸次黒字になるというのが、鉄道の歴史であるわけでございます。  それで、国鉄におきまして、こういう特別な営業キロを設定するということは、実はこれは国鉄総裁だけの権限で行なっておるものでございますが、われわれといたしましても、好ましいものとは思っておりません。できるだけこういうものはない方がいいということは考えておりますが、この点も、いろいろ御指摘になりましたように、国鉄財政が豊かであれば、総収入対総原価の関係で決済していけばよろしいわけでありますが、先刻来副総裁がいろいろ御説明いたしておりますように、あらゆる点において経費を切り詰め、収入をふやすということ以外に、国鉄の財政を持っていく方法がありませんので、好ましからざるものでありますが、それでも新線ができて経営をする状態になっておるのでございますので、こういった制度をとらざるを得なかったということでございます。
  21. 兒玉末男

    兒玉委員 局長の説明で私は納得できないわけでありまして、大体先ほど来副総裁等なりあるいは大臣の答弁にもありますように、特に私は新線建設に関する限りは、この枕崎線のわずか十七・七キロの営業キロの中において、先ほどの数字は少し違いましたけれども、資本利子が五千百五十七万円という非常に大きなウエートを占めておるわけです。しかも年間収入の大体六・五倍という高率を示しておるわけでございまして、そういうふうなその地域の住民の自己犠牲による特別運賃によっても、ほとんどその影響というものは、国鉄全体の立場から見れば、微々たるものであるということがはっきりするわけですから、今後また、着工中の線を含めて三十六の線が営業を開始するとするならば、おそらく私は、枕崎線の例を前例として、次々にこの特別運賃制度が拡大されていくという危険性というものが多分にあると思うわけであります。同時にまた、この新線建設に非常に期待をするところの地域住民というものも、この運賃制度の差別的な取り扱いについては、現地の枕崎沿線においても非常な不満を持っておるわけです。同時にまた、鹿児島管内においては、日南線あるいは国分線等も営業開始の見通しにあるわけでありますが、特に南九州地帯、全国でもビリから一番、二番という非常に県民所得の低い地域においては、鉄道以外に交通機関のほとんどたよるべきもののないところにおいて、この鉄道運賃といえども、非常に大きな負担になるわけでありまして、鉄道を通してやるから高い運賃でもがまんしろ、このやり方こそ、私はやはり独善的な官僚的な行き方じゃないか、このように感ずるわけでありまして、今後このような特別運賃制度については、将来の新線についてはこれをとるべきでない、こういうふうに私は感ずるわけですが、将来の新線建設営業に対する局長の見解を承りたいと思います。
  22. 山内公猷

    ○山内(公)政府委員 ただいま申し上げましたように、これは運輸省が指令をいたしましてやっておる制度ではございません。国鉄が自己の財政的な見地からやむを得ずやっておる制度でございまして、私どもも、現在におきましては、やむを得ないと考えておるわけでございます。鉄道建設につきましては、根本的にいろいろ御意見があるということは、われわれも十分拝聴いたしております。ただ、地元の非常に強い要望があるわけでございまして――ただ要望があるからといって敷くというわけではないわけでございますが、この点につきましては、現在鉄道建設審議会において非常に真剣な御討議をいただいております。その御討議は、大体現在の状況において、すべてを鉄道をもってその地方の交通の要請を満たすということは、はたして正しいのかどうか、自動車をもって代行できるのではないかという御議論も、相当強く反映いたしております。が、この点につきましては、運輸省といたしまして、鉄道を敷くのがいいか、バスあるいはトラック運送でいいのかということは、単に国鉄営業面からのみ議論をすることも妥当ではない。結局、これは国民経済的に見まして、自動車運送によった方が国民経済的に利益であるか、あるいは鉄道によった方が利益であるかという全体的の見地からこれを決定すべきであるということで、先般の鉄道建設審議会におきましても、理論的な一般的な基準というものを、一応、十分ではございませんが、出しまして、議論をしていただいておるような状態でございまして、要は、国鉄がやはり公共的な使命を持っておりますので、そういう面を満たしつつ、なお現在鉄道の財政状態を効果して、どういうふうにしてこういうものを国民の利益と鉄道経営状態と調和させていくかということに苦労いたしておるわけでありまして、その一端としてわれわれが強く要望いたしておりますのは、先刻来御指摘のありました鉄道地殻に対する利子補給あるいは出資ということを、強く財政当局に要望いたしておるわけでございます。
  23. 兒玉末男

    兒玉委員 副総裁にお伺いしたいのですが、今の局長の説明を聞いておりますと、特別運賃設定の責任は鉄道当局にあり、こういうふうに言われるわけでありますけれども、この点は、多少国鉄当局の、何といいますか、運輸省なりあるいは大蔵省等に対する積極性がなくして、結局自分たちが作らしたのだから仕方がない、そういうような、この特別運賃制度については、国鉄当局の運輸省等に対する、そういうふうな制度をとるべきでないというような強力な働きかけがないのではないかというふうに私は感ずるわけですが、その点に対して副総裁見解を承りたいと思います。
  24. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 国鉄といたしましては、先ほど山内局長の答弁にもございましたが、少しでも赤字の程度を減らしたいということのために、いろいろな方法を全般的にも考えておるわけでございまして、その方法の一環として、こういうような新規開業路線についての特別運賃というようなものを作らしていただいたわけなんでありますが、これにつきましては、建設審議会におきまして昨年の十一月九日の日に御決議がございまして、その御決議では、「今後の新線については、その健全なる運営に資するため開業後一定の期間特別運賃を設定することを適当と認める。」というようなことでもございましたし、はたまた、国鉄自身としては、少しでも収支状態を改善したいというようなことから、特別運賃を定めさしていただいたようなわけでございます。ただ、今後のこれらの新規開業されるであろう新線の問題、あるいは今後建設に着手されるであろうような路線というようなところに対しましては、先ほどもちょっと言及いたしましたが、国民経済的な見地から見て、鉄道によるのがいいのか、自動車によるのがいいのか、その辺のことも十分検出を加えまして、国鉄のためにも、また国民経済的にも、一番いいと思われるような方法をお考えいただきますように、政府初め関係の御当局にもお願いをいたしまするし、私ども自身としても研究をいたしていきたいというふうに考えております。     〔天野(公)委員長代理退席、委員   長着席〕
  25. 兒玉末男

    兒玉委員 私は赤字線区のそういう当局の苦しい立場もわかるわけでありますが、先ほど来申し上げておりますように、少なくとも新線建設借入金に対する利子補給実現した場合には、この特別運賃というものはすみやかにもとに返すべきだ、このように感ずるわけですが、その点に対する当局見解を承りたいと思います。
  26. 山内公猷

    ○山内(公)政府委員 実は新線営業係数その他を十分見まして、われわれは利子補給、それから営業キロ程という二つの方向をとっておるわけなんでございまして、もしも利子補給をやったといたしましても、大体におきまして、詳しい数字は覚えておりませんが、赤字の四〇%程度が消える程度でございまして、これを利子補給だけで国鉄があと全部やるということも、現在の状態ではなかなか困難な状態があるので、われわれがその問題を考えましたのは、国におきましても利子補給をしてもらう、利用される住民も一部負担をしていただく、国鉄もある程度の犠牲を払うという、一つの行ないをやりますのに、みんなが和協力してやっていくという建前をとらざるを得ないわけでございます。ある新線が引けまして、貨物なり旅客なりが一定限度に達するまでは、やはり現在の国鉄状態でございますと、そういう制度は必要ではないかというふうに考えております。
  27. 兒玉末男

    兒玉委員 今の見解には私はきわめて不満であります。  それで次に私がお伺いしたいのは、たとえば枕崎線の場合にいたしましても、現在南薩バスというのが片道十ですから結局十往復走っておるわけです。それから国鉄バスが十四往復ですか、こういうように往復の私鉄並びに国鉄のバスが走っておるわけです。しかも鉄道線路を敷かれている地帯というのは西頴娃を除いてはほとんど畑の中を通っておる。そして駅の周辺には全く人も見当たらなければ家も見当たらない、こういうように列車だけが原野を走っておるような状態で、これでは私はわざわざ遠くの駅まで来て乗るという人はないと思うのです。これは当初国鉄が考えたか、あるいは建設審議会が予定線にされたかわかりませんが、線路の設定にあたって、その辺の人口、人家の配置とか、そういうような問題をもう少し考えてそうしてやるべきじゃなかったか、おそらく常務理事なりあるいは副総裁が現地を見られたらよくわかると思うのですが、全く畑の中を通っていて、これでは利用するはずがない。それから、そういう競合路線のバスが二十何往復も走っておるのですから、こういうところに建設をやる、今後枕崎までの延長、さらに将来、指宿、伊集院、枕崎間をつなぐ構想があるように聞いておりますが、枕崎までの道床はできております。あとレールを敷くだけでございますから、さらに赤字を累増していくばかりでありますが、会後の延長、それから伊集院までの南薩鉄道の買収を含めた当初の計画である観光ルートとしての使命は、全線開通しなければ意義がないと思うのですが、これらの将来に対する展望についてお伺いしたいと思います。
  28. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 枕崎線の今後の建設ということにつきましては、建設審議会にもお諮りいたすことが問題として出てくるかと思いますけれども、ただいまのところでは、さらに続行して線路を延ばすということに予定されておるわけでございます。ただ、今お話のございました南薩鉄道の買収というようなことも、将来は問題として出てくるかと思いますけれども、その点につきましては、まだはっきりしたことはさまっておらないように存じます。しかしいずれにいたしましても、このような線区経営状態というものが近い将来において好転するということは、率直に申し上げて考えられませんので、国鉄としましては、これの経営をできるだけ赤字を少なくするという方針で考えていく以外に道はないと思います。将来全体としての経営の安定方策というものが確立されまして、国鉄経営の将来に明るい見通しが得られるようになりますれば、地方において不経済な線区経営するということも、国鉄の公共的な使命という面から、これはまたできるだけのことをいたしていくべきものではなかろうかと思っておりますが、さしあたりの問題といたしましては、極力簡素な経営形態をとりまして、また収入の方は少しでもふやすように努力するということ以外にないように考えております。
  29. 兒玉末男

    兒玉委員 次に枕崎線に関してでございますが、これは今後全国に官業を開始する新線にも関連ある問題でありまして、四月八日の朝日新聞の鹿児島版においても――私も現地に行きまして、西頴娃の町当局並びに学校関係等の代表、議会代表とも直接面接しまして、いろんな問題を聞いたわけでありますが、そういうこまかいことはいずれにいたしましても、客観的にいえますことは、やはりまず運賃が高いということが一番の不満になっておるわけであります。これは四月八日の朝日新聞の鹿児島版を見れば、おそらく鹿児島の人はとっておると思いますので、よくわかると思うのです。それから手荷物が全然一緒に取り扱いをされておらない。西頴娃だけでありまして、あとの三つの委託駅でも、その設備はしてあるようでございますが、現在取り扱いをしておらない。それから、この終着駅の西頴娃等においては、鹿児島までの直通ができるということで相当の予算の節減もしたそうでありますが、残念なことには鹿児島までの直通は上りと下りが一本ずつであって、しかも向こうの用事を済ませて帰るには午前中でないとない、というように非常に不便であって、せっかくの新線開業の意義というものがきわめて薄い。しかも運賃についても非常に不満だというふうな苦情が末端の四頴娃の駅長にはしょっちゅうきておって、仕事も手につかぬくらいだ。これは営業局長の問題だろうと思いますけれども、今後新線開業にあたってこれらの点を考えて指導すべきではないかと思いますが、現在四往復でありますが、この点に関する見解を承りたいと思います。
  30. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 枕崎線の列車のダイヤのことにつきましては、ただいま先生のおっしゃった通りで、現在四往復やっております。鹿児島直通だけは一日一往復でございますが、開業いたしました後の利用者の割合等を見ますと、開業当時は割合にお客さんも多かったのですが、やはり半月くらいいたしますとずっとお客さんが減って参りまして、大体計画通りのお客さんしか乗っていただけないというような情勢でもございます。今後鹿児島直通客が非常にふえる、地元の方から具体的なお客さんの増加の現実等の問題がございましたら、十分それは――特に建設線だからどうこうという問題でなしに、全般的な輸送改善の一つの問題として取り上げて参るつもりでございます。
  31. 兒玉末男

    兒玉委員 次に、これに関連しまして、これは特異なケースとして、ちょうど三月の半ばから、山野線と宮之城線の管理所が設置されたわけです。一方指宿新線においては、八百一万円の予定収入に対して六千四百八十八万の赤字というふうな、ものすごい赤字をかかえながら新線開業をしている。ところが宮之城線の管理所設置に伴うところのこの経費の節減というのは、どういうふうな数字になっているかと申しますと、第一期において十四名ですかの人を減らして、わずかに三百二十万くらいしか経費の節減はできない。盛んに全国的に、管理所設置を通じて、鉛筆一本、消耗品の使い方まで事こまかく指導しながら、あるいはまた踏み切りの無人化あるいは駅員の無配置というふうに、非常に無理な形でこういう経営合理化をしても、わずかに三百四、五十万しか節約はできない。もちろん私は節約をすることに反対はしないわけでありますけれども、一方においては、同じ管内において六千四百万も赤字を出す。おやじが一生懸命苦労して金をためても、どら息子がばか遊びをするようなことが、現実に同じ符内において起きているわけです。こういうような点から考えますならば、もう少し経営合理化を――しかもサービスだサービスだと言っておりますけれども、現実に駅に駅員を配置しないで、あるいは踏み切りに人を配置しないで、決して私はほんとうの意味のサービスはできないと思うわけです。こういうふうな面の合理化ということについて、人減らしだけがあたかも合理化の最先端をいくかのような方式がとられることについては、私は非常な矛盾を感ずるわけでありまして、当局側の合理化の進め方について、もう少し私は本質的なものを考えるべきじゃないかと思うのですが、これらの点に対する見解、並びに今度の管理所設置においても、大体平均五万円以上の高い月給を取っている人を、三人も配置した。この点は、一万円程度の若い人を入れるとすれば、逆に十人ないし十二、三人程度の人が入れられる、こういう勘定にもなるわけであって、私たちが経験上あるいは客観的に見ても、ポスト作りのための管理所設置であるかのような印象を非常に受けるわけです。こういう点に対する見解を承りたいと思います。
  32. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 国鉄の現在の経営の上において、何と申しましても、人件費の圧迫ということが一番大きな問題でありますことは、よく御存じ通りでございまして、全体として人件費の膨張というものをどういうふうにして押えていくかということは、経営方策として大きな課題になっているわけでございます。それには、やはり他面では、いろいろ新規事業その他でもって新しく必要な人員を配置しなければならないというところもございますので、国鉄四十五万といわれております総体の人員の中でできるだけやりくりをいたしまして、必要な部面に必要な人を配置し、人間を減らし得るようなところは、いろいろ他の方法もあわせ考えましていわゆる配置転換を行なうというようなことで、人件費の膨張を抑制するような方法をとっておるわけであります。その一つ手段といたしまして、地方の支線区等におきまして、それを一つの小さな経営単位のような姿にして、それぞれの線区経営合理化をはかるということは、これまた相当な効果も現実に上がっておりますので、管理所でありますとかあるいは運輸区でありますとか、あるいは管理長であるとかいうふうなものを配置することによって、今まで相当合理化の実績も上がってきております。そういうような意味で、ただいま例をお引きになったお話では、何か老齢者の給料の高い人の救済場所にそれを使ったかのようなお言葉もございましたけれども、決してそんな意味ではございませんので、やはりそういうような支線区一つの単位の経営責任者としては、相当経験もあり老練な職員を配置する必要もございますので、そういう年配の人も置かれておると思うのでございます。全体としまして、これらの支線区合理化手段として、管理所や運輸区の設置を行ない、あるいは管理長というようなものを置いたことによりまして、今まで相当の成果が上がっておりますので、これらの点につきましては、私どもとしてはなお今後も、できるだけ支線区合理化をはかるという方策は続けていきたいと思っております。しかし、何と申しましても、これらの支線区合理化ということによって得られます利益というものは、絶対額という面から申しますとそれほど大したことにはなりませんので、やはり幹線区輸送増強あるいは経営改善ということが大きく響きますことは当然でございますから、今まで特に赤字のひどいといわれておった支線区について、ただいま申し上げましたような方策をとってきたわけでございますが、幹線区の方でも、今後収支の改善のための努力を続けていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  33. 兒玉末男

    兒玉委員 この宮之城の管理所設置の場所においても、地元で相当の反対もありましたけれども当局側の強引な、警察官の導入等もやりまして開所式をやったように新聞にもておりますけれども、それまで無理をして合理化をやっても、わずかに三百万そこそこだ。しかも今後赤字線区が次々に、三十六線出てくるわけでありますが、結局赤字ということははっきりとわかっておりながら、そのしわ寄せ従業員人減らしあるいは地域住民へのサービスの低下、こういう形の中で合理化が進められるということは、新線建設の問題と相矛盾した形で合理化が進められておると思うわけです。同時にまた志布志管理所の場合においても、交通新聞等において非常に成果が上がっておる。――これは数字の上で確かに上がっておると思いますけれども、その陰には、従業員のオーバー労働による、たとえば団体募集なりあるいは客貨誘致、こういう陰の犠牲において積み上げられておる。もちろん前だれがけの奉仕の精神でいくといえばそれまででありますが、やはり人間である以上は、国鉄の労働者といえどもサービスの限度というものはあるのじゃないかと思うわけです。たとえば保線区の工手さんなり線路工夫の人たちが切符の集改札を加勢するというようなほほえましい状態があるということを、ある新聞でも見ましたけれども、私はこれは本筋をはずれたやり方ではないかと考えるわけであります。しかし現実に事業を切り詰めたところの管理所管内の従業員としては、やはりネコの手でも借りたいという実情の中からそういう情景が出てくるわけでありまして、もちろん協力をしてもらうということを拒む理由はないにいたしましても、そのことが当然であるかのような印象がだんだん深まっていく。このことは、国鉄労働者の現在の一人当たり業務量というものが、統計が示しておりますように、昭和十一年の一八四%という倍近い能率を上げておるわけでありますから、これ以上の無理な人減らしは避けていくべきであって、むしろ真の意味の経営合理化というものは、労働時間の短縮なり労働量の軽減をはかることこそ、私は近代的な産業における合理化の真意じゃないかと思うわけであります。そういうような新線建設に伴うところの赤字しわ寄せというものが一方において国鉄労働者の無理な経営合理化によるオーバー労働によってなされていく、あるいは地方民へのサービスの低下によってなされていくということはきわめて遺憾であり、この本質的な問題についての今後の構想について、私は副総裁見解を承りたいと思っております。
  34. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 従業員の労働生産性と申しますかが戦前等に比較いたしまして決して落ちていないのみか、相当上がってきておるということにつきましては、今お話のございました通り、私どもも大いに感謝しておる点でございます。それがために労働負担が過重になるというふうなことのないように、労務管理の面におきましてはその面から十分注意をいたしていく考えでおる次第でございます。同時に地方的サービスの低下ということがやはり問題ではないかという御指摘がございましたが、この点もお言葉の通りであると思いますけれども、この点は先ほどもちょっと申し上げましたが、地方の支線区等におきましては、むしろほんとうの意味の地方的なサービスを向上させるということのためには鉄道を撤去して自動車に置きかえるということの方が地方的サービスがよくなるという場合もあり得ましょうし、また現に前に線路があったところを自動車に置きかえて、その結果地方の方にも喜んでいただいておるというようなところもございますので、地方的サービスの問題につきましては、今後はあまり鉄道ということにとらわれないで、全体として輸送サービスというものがどうしたらよくなるかというようなことについて、国鉄も研究いたしますけれども、地方の方々の御理解も得まして、国民経済的に一番いい方法をとっていただくようにお願いいたしたいものであるというふうに考えております。
  35. 兒玉末男

    兒玉委員 あと二、三問で終わりたいと思います。次に、この管理所の運営の問題で非常に――今は影響は出てないと思うのですが、国鉄全体の統計から見ましても、いわゆる平均レールの上を通過するトン数ですね、この指数というものが昭和二十六年が一六〇で、昭和三十三年も大体一八〇という高率の指数を示しております。一方修繕費の方は、最高の昭和二十八年が大体百五十億くらい、ところが三十三年度においては百億程度に落ちておるわけであります。全く通過トン数の指数と、それから修繕費の指数というものは逆の形になっているわけです。そういう影響は、たとえば管理所設置の場合におきましても線路の補修費等が極端に減らされている。そのために現存の管理所長としては非常に成績を上げていいかもしらぬけれども、これから五年、十年と、だんだん長期にわたって線路自体が非常に弱まってくるということが保線関係の一致した見解になっているわけですが、国鉄全体のこの修繕費の減少ということと、一方通過トン数の増加に伴うところのアンバランスということについての見解を私は聞きたいと思うわけです。特に東海道なり山陽等の重要な線区においてはその必要性が痛感されるわけであります。この点について、管理所における非常な節約の無理がそういうような、特に線路保存の面において重大な事故の発生する危険性というものが、今二、三年はありませんが、今後五年、十年先に必ず起きてくる、こういうこと私は感ずるわけでありますが、このような面について見解を承りたい。
  36. 兼松學

    ○兼松説明員 ただいまの兒玉先生の御指摘通り、修繕費が比較的に押えられてきておることは事実でございます。これには二つの原因があります。基本的に申しますならば、経営費が非常に、人件費の増大と、収入の源泉は同じ運賃の単価でございますので、非常に苦しくなって、しわ寄せが修繕費にいっておるということで、人件費のしわ寄せがいっているという点もございますけれども、これを補いますために、一面におきまして線路の強化という資本投下をいたしております。たとえば東海道線で申しますならば重軌条と交換をするとか、あるいはまくら木を全部コンクリートにかえて、下に砕石を入れて完全な線路を作る。こうすることによって線路自体の構造を強くいたしまして年々の補修費を減らすようにということで、修繕費はかからないが資本はかかるという安全度の高い方式にもよっております。また車両につきましても修繕費の出かった木製車を廃止いたしまして、もとの経費は多少高いけれども修繕費の安い鋼製車を作っていくというような形で、科学と技術の進歩。資本の投下によりまして安全度を増して修繕費を節約するという努力もいたしております。ただ御指摘のありました南九州の諸線区等につきましては、まだ近代的な投資というようなものが入っておる段階ではないと思います。むしろしわ寄せの段階の方が多い面もあるかと存じますが、これらも次第に両方から相待って、安全度を下げないように、そしてまた修繕費はできるだけ機械化その他の方法によりまして、経費を安くして安全度をそこなわないようにいたしたい、こういうような努力をいたしております。安全度の方では以上のような姿で対処はいたしておりますけれども、全体としての予算のワクとしては仰せの通りのようなことになっております。
  37. 兒玉末男

    兒玉委員 あと二間になりますが、一問は、四月の七日ではなかったかと記憶いたしますが、営業係数の二〇〇前後以上のところを線路をはずしてバスに切りかえる、こういうことを放送で総裁談話の形で、NHK等も取り上げたわけでありますが、これによって私は今から作られるところの新線もほとんど係数は二〇〇以上といいますか、二〇〇よりもしになる。こういうようなことを大体予想されておるわけでありますが、そうなりますとせっかく莫大な金を入れて線路を作りながら、これをまたこわしてバスに切りかえる。全くさいの川原の石積みみたいたことを今後やっていくとするならば、今後ますます国鉄の財政は雪だるま式赤字がふえるばかりではないかということで、特に私の宮崎県の場合においても妻線と日ノ影線がその対象になるということが報道されまして、非常に衆としても驚いておるわけでありまして、これらの線区は将来電源開発なりあるいは高森への延長を通じて今後の見通しも立っておるわけでありますが、そういう面の一つの心配と、それから今後の新線係数が二〇〇以上になるということが明瞭であるわけでありますが、こういうような先般の総裁談話等の問題について、一つ総裁のはっきりした見解を承りたいと思います。
  38. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 先般新聞に出た問題とおっしゃるのは例の五十線の問題だと思うのでございますが、あれは別に国鉄当局として積極的に発表したというわけでもなく、また総裁が談話を発表したというようなことでも実際はございませんでしたので、新聞記者会見の際にそれらの問題についての二、三の質疑応答のようなことはあったようでございますが、その際非常に勉強家の新聞記者の方が、国鉄審議室でいろいろ検討しておりました資料をいわばスクープされたようなことがもとになりまして、そういう研究しているものがあるならみんなにも見せろというような話になって、あの資料国鉄の記者クラブの諸君にお見せした、こういうことでございます。それで、その中身はと申しますと、これはいろいろな仮定を置きまして、審議室の方で今研究をしておるわけなんでございますが、一応の目安としまして、線区別に見て、貨物がその単位線区について一年間の取り扱い数星が十八万五千トン以下、旅客が白四十万人以下というようなところは、国民経済的な見地から見て、むしろ自動車の分野であるというふうに目される線区ではなかろうかということで、ただいま申し上げましたような線区を、貨物十八万五千トン以下、旅客百四十万人以下というような基準で拾ってみますと、それがたまたま五本線になった。キロ数にいたしまして大体千六百キロほどになるわけでございます。五十線の線区が、この基準に合うと申しますか、あげられたわけでございまして、具体的に実際にこの五十線区について直ちに線路を撤去するとかしないとかいうようなことを、もちろんきめておるわけでもございませんし、また国鉄限りでそのようなことがきめ得る性格の事柄でもございません。ただ、私どもといたしましては、何とかして国鉄の全体の収支を改善し、安定させるために、どうしたらいいかというようなことを、いろいろな面から検討をいたしておりますので、その一つ方法として、一応の目安を置いて考えてみたのがあの五十線である、こういうことでございます。具体的にどうするかということについては、なお今後十分検討をした上できめたいと考えておりまするし、またそのように地方の支社等にも指図をいたしまして、検討を加えさせておるという段階でございます。
  39. 兒玉末男

    兒玉委員 衆後に意見を含めて申し上げたいと思うのですが、今までの質疑の中から私が感じますことは、国鉄経営あり方というものを根本的に変えるべき段階にきているということ。そのことは、新線建設がもたらすところの負担が非常に大きい。それからもう一つは、やはり政策的あるいは、政治的な、面から、あるいは公共性から、非常に高率の運賃割引によって、国鉄赤字相当大きな原因をなしている。こういう問題を、一つ私は、根本的に再検討すべき段階にきているので、早急にこれの解決に努力をしてもらいたい。それから、経営合理化赤字解消の一環として行なわれますところの管理所設置については、少なくとも私は、駅員を無配置にするということは、その地域住民相当な反対をしようと思っておりますし、また、実質的に数字の面においては確かに営業成績が上がって、経費の節約はできたにいたしましても、その裏側には、相当国鉄労働者の犠牲、あるいは地域住民へのサービスの低下ということを、本社としても十分に検討しまして、ただ審議室等のその机の上の、頭の中だけの計算ではなくて、やはりこれを利用する人たち立場というものも十分にくみ入れて、今後の対策を講じていただきたい。同時に、この一環として行なわれます貨物の集約制度については、後日質問することにいたしておりますが、この点も、昨日いろいろと当局の方も来ていただいて討議をいたしたわけでありますけれども、やはり現在これに並行する道路等の整備ができない今日、あるいはまた鉄道以外にたよるべき機関のない地域など、非常に多くの問題を含んでおりますので、この合理化政策の一環として行なわれます貨物の集約制度につきましても、十二分に地方住民の意見をしんしゃくしながら、これの制度化をはかっていただきたい。このことを御要望申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  40. 平井義一

    平井委員長 久保三郎君。
  41. 久保三郎

    ○久保委員 時間もだいぶたちましたから、簡単に申し上げます。これは、鉄監局長並びに副総裁お尋ねしたいのですが、ただいま提案になっております運賃法の改正は、国鉄性格を変更する第一歩であるのかどうか。先ほどお話にも出ましたように、国鉄当局としては四十五万を、全体として企業性に徹しなければならない、こういうお話であります。企業性に徹するということは、企業の目的を完全に達成することだとわれわれは了解する。企業の目的を達成するためには、ただそれだけでは裏づけがございません。やはり企業財政というか、そういうものの確立が不可欠な条件です。企業財政の確立というのは、言うまでもなく、その企業の再生産を確保するということだ。ところが、今も御質問にありましたように、今日一番大きな問題は、何といっても裏づけになる企業財政の確立ができないというところに大きな問題がある。そのために、本来の国鉄事業の使命達成に、主体的な条件では、残念ながら限界がきておる、こういうふうに考えるわけであります。限界にきたとすれば、二つの方法以外にない。その一つ方法は、言うまでもなく、本来の事業の性格を変えていくか、もう一つは、本来の使命達成を押えつけている外的、客観的条件を変えていくか、この二つに一つだと思う。ところが運賃制度調査会の答申からも類推しまして、今回の運賃法の改正は、客観的な諸条件を変更させるということにはちっとも相ならぬ、いわゆる主体的な条件を変えていくということになっていく、こう思うのです。だから、そこで私がお尋ねしたいのは、国鉄本来の事業というものの性格を変えていく第一歩であるのかどうか、これを前提としてお伺いしたいと思う。
  42. 山内公猷

    ○山内(公)政府委員 今回の国鉄運賃法の改正が、国鉄性格を変える第一歩であるかどうかという御質問でございますが、非常にむずかしい御質問で、簡単にお答えすることも困難であろうと思うわけでございますが、国鉄企業性に徹するということは、とりようによりましてはいろいろ解釈ができるわけでございますけれども、これは国有鉄道法の第一条にありますように、国鉄公共性企業性というものを、両面、完全なる姿において調和して持たなければならないというのが理想的な姿でございます。その場合に、国鉄がなぜ企業性というものを現在強調しておられるかといいますことは、元来国鉄というものはすでに公共性があるのだ、その上に企業性の面が足りないという点を反省されておられるのではないかと思います。学者が講義をするようなことを申し上げまして非常に申しわけないわけでございますが、コーポレーションに移りますのに二つの行き方がございまして、アメリカにおきますような、私企業の面から公企業に移った過程の行き方と、それからヨーロッパに多く見られますような、国家経営であったものがコーポレーションに移った行き方という二つの行き方がございまして、それぞれやはり、その本来持っていた性格相当強く出るようでございます。アメリカの公共企業体の方々にもいろいろ御意見を伺ったことがあるわけでございますが、向こうに行きますと、逆に公共性を強く発揮しなければならないということを、非常に強く力説されておることを聞きまして、私は非常に興味深く思ったわけでございますが、本来国鉄というものは公共的なものであり、国民もそう考えております。ただ、これは一つ一つ経営行為といたしましては、やはり経済的な企業性を発揮していかなければならないというところに大きな問題があるわけでございますが、それではこれが完全に行なわれるかと申しますと、ただいま先生御指摘のように、そういう公益性を発揮する面におきましても、企業性を発揮する面におきましても、いろいろな制約がありまして、この制度本来の考えているような方向には十分いっていないとわれわれも反省いたしておるわけでございます。そこで、国鉄自体としてやり得る範囲も、この国鉄の組織からいって割合に狭い、これはもう御指摘通りだろうと思います。これは政府、国民の御理解によりまして十分そういう面を発揮していかなければならないというふうに考えるわけでございます。それで一番問題になりましたのは、先ほど来副総裁がしばしば繰り返して申し上げておられますように、国鉄の主体的な状態相当変わってきた、それは従来国鉄独占企業であって、価格の形成におきましても、独占企業におきますところの価格の形成理論というものは割合に簡単でございます。一つの目的を達するような価格の形成ができるわけでございますが、現在では半独占というか、そういう言葉以上に独占性というものがくずれてきた。そこで、この運賃法というものが、独占形態のもとにおける運賃価格決定の方式に従っておりましたために、ますます一般の競争機関との関係におきまして、国鉄経営を将来とも危殆ならしめる要素を非常にたくさん持っているということで、十分ではございません、今度の改正におきましても、十分これによりまして国鉄運賃性格が正常化したとわれわれは考えておりませんが、その正常化の第一歩を踏み出したという程度の改正をお願いいたすわけでございます。ただ、ここでわれわれも反省いたしておるわけでございますが、国鉄だけを考えて国鉄の問題を論ずるわけにいかないわけでございまして、何といいましても、日本の社会、経済に非常に大きな影響がありますので、国鉄だけのために運賃制度というものに急激な変化を来たすということの影響もまた相当大きなものがありますので、これは漸を追って改善していかなければならないと思うわけであります。今後の国鉄運賃あり方は、今回の運賃法におきまして踏み出しました。新聞等においては一歩を進めたのではなくて半歩を進めたと批評いたしておりますが、こういう方向がやはり国鉄の将来の運賃あり方である、その意味におきましては、ただいまのお話のように、国鉄の主体的な体質改善の一つ方法として取り上げた問題であるとわれわれは考えております。
  43. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 ただいまの鉄監局長の御答弁に大体尽きておるのでありますが、現在の国鉄といたしましては、このままでは、端的に申し上げて将来がない、どこかで壁を突き破って外的条件の方をも変えていただかないと、このままでは国鉄に将来がないということになると思います。それで、今度の運賃法にいたしましても、先ほども申し上げましたし、山内局長のお話にもございましたが、すでに独占性というものを喪失した国鉄としては、やはり運賃体系というものを原価主義に一歩でも近づけるということが、将来これ以上収入を減少せしめないためにも、どうしてもやらなければならないことである。たまたま、外部のいろいろな学識経験者によって構成されました運賃制度調査会等におきましても、今の国鉄運賃制度というものは合理化すべきものであるというような御指摘をいただいておりますので、それらの事情を考えまして、今度の運賃制度の改正をお願いしておるような次第でございます。どこかで壁を突き破る、今回の運賃法の改正の程度では、ただいま久保先生も申されましたように、客観的条件を変えさせるというほどのものではないかもしれませんけれども、しかし、これ以上ほうっておけば悪くなるものを、少なくともある程度これによって阻止できるという効果は確かにあると思いますので、その意味で改善すべきものはほかにも多々あると思いますけれども、そのうちの重要な一つ方法としてお願いしているようなわけでございます。
  44. 久保三郎

    ○久保委員 ちょっと用語の使い方が悪かったので、私のお尋ねすることと少し違って了解されているのじゃないか。客観的条件というのは、悪い意味での政治力で不良資産を押しつけられるという現実、それからもう一つは、悪くはないけれども、誤った政策でそのまま放置されている公共負担、こういうものを先ほど客観的条件というか外的条件、こういうふうに申し上げた。そういう意味で、この壁を突き破ること今日不可能だと考えていわゆる主体的な運賃構成を変えていこう、こういうふうに一歩踏み出したのか、こうお尋ねしたのです。これが一つ。  もう一つは、先ほどの御答弁にある通り、提案理由にもありましたように、われわれも、今日国鉄は遠くの昔の独占性は失いつつある、また、はっきり申し上げて失ったと断定してもいい。これは認める。独占性を失ったならば、直ちにそいつに企業性をつるませて、運賃性格とは収入目的のみである、こういうふうに考えていいのか、それが正しいか、正しいとすれば、ここに大きく国鉄は変貌しなければならぬ、こういうふうになるわけです。そういう点をお尋ねしたいのです、前提として。
  45. 山内公猷

    ○山内(公)政府委員 質問の趣旨を取り違えまして申しわけございません。第一段の、そういう政治的な制約がどうしてもとれない、そのために国鉄が七体的な面だけで解決しようとしたのかという御質問でございますが、私は国鉄の置かれている状態におきまして、国鉄自身がなし得る限度は、先ほど申しあげましたようにそう広くない。これのみでは国鉄の将来のあり方というものの確立はむずかしいのではないかと考えております。それで、企業性ということをいいます。と、いかにも公益性を没却したような考え方にとられるわけでございますが、たとえば、私ども間違っているかもしれませんが、こういうふうに解釈しております。定期運賃の面におきましては、法律におきまして五割以上の割引をしろ、そういう規定になっております。これは国家から与えられました国鉄の位置といたしましては、いかに国鉄の財政状態が悪くても五割は引きなさいということでございますから、五割を引くまではどうしても国鉄の義務としてやらなければいけないのじゃないか、それ以上の割引というものは、これは国鉄の余力があったときにやるべき問題である、その辺に公共性の限界というものが一応法律的にもこの面では明らかになってきているのじゃないかというふうに解釈しています。その面が先生のおっしゃる客観的な情勢という面にも一部当たろうかと思いますが、そのほか、今までいろいろ御質疑がありました新線建設におきます利子補給の問題でありますとか、いろいろ解決しなければならない問題がたくさんございます。それで、これは国鉄先ほど来申し上げました主体的な合理化あるいは経営能率の向上、生産性の向上というものを政府といたしまして要望しますとともに、政府がやるべきことも相当あるのではないかというのが先ほど大臣がおっしゃっておりましたことでございまして、この点につきましては大臣も非常に強い決心を持っておられまして、われわれもその作業を命ぜられているわけでございますが、経済閣僚懇談会にわれわれの意見も出して政府として検討してもらうという段階になっております。現在まだ具体案がございませんので、これ以上御説明することはできないのでございますが、何とかして運輸省におきましてもこの壁をぶち破りたいという熱意に燃えているということは、大臣の命令のもとにやっておることでございますので、申し上げて差しつかえないかと思いますが、十分そういう点は今後努力をして参りたいと思っております。  それから運賃の面でございますが、これも先ほど申し上げましたように、コマーシャリズムに徹した運賃を作るということでは、このような運賃法の改正では非常に手ぬるいものでございます。その場合に、運賃の塔本原則といたしまして、原価を償うことということになれば、これは貨物の面でいいましても、トラックと同じように一本道にするということが、非常に極端な意見になるわけでございますが、これを十二等級を十等級にしてそう大きな変革をしないということは、これも先ほど申し上げましたように、ただ国鉄だけの運賃をどうすればいいということではいかないので、やはりこれによりますところの日本の社会経済の影響というものも十分考えながら、できるだけ将来とも原価主義に近づいて、貨物の面でいいますと、対抗機関であるトラックとも対等に戦える――われわれは民間企業国鉄運賃の面において不当に圧迫するということはもちろん考えておりませんが、やはり対等に適正貨物を――鉄道に適正な貨物鉄道に、トラックに適正な貨物はトラックに移るようにするのがわれわれの運賃政策として最もよろしいのではないかと考えておりますが、現在の状態では非常にその点がアンバランスな国鉄貨物運賃の等級制度になっておりますので、これをわずかに変えたというわけでございまして、これによってトラックに行った荷物が十分帰ってくるということは考えられませんが、減っていく荷物を十分防止できるとも考えられない、ある程度引きとめられるという程度の改正をやったわけでございまして、その面におきましては、微温的だという御批評はあろうと思いますが、単に国鉄運賃だけを考えるわけにいきませんので、やはりその及ぼす影響をいろいろ考えながら、国鉄当局もこの貨物運賃なり旅客運賃なりの改正を考えられた結果、現在におきましては一応この程度が妥当ではないかということで御提出申し上げたわけでございます。
  46. 久保三郎

    ○久保委員 今回の運賃法改正が微温的だとか積極的だとかいうことにはまだ判断がつきかねているのです。この前提お尋ねがはっきりしなければ――性格が変わったのであるということになりますれば、なるほどこれは微温的だと言える、そうでないと言えるならまた別というふうに機械的に割り切ります。まだその結論はいっていませんから、一つこれからお尋ねすることをそういう前提でお答えをいただきたいと思います。  それで独占性が失われたから、トラック、ハスとの競争をやらなければならぬ、それに耐える力をまず運賃体系の中でも相当考えていきたい、こういうお話のようであります。これは運輸省自体の責任かと思うのでありますが、しかし実際いうと、国では無理かもしれません。あなたも御案内の通り運賃性格というのは収入目的のみをもってやるものではないでしょう。しかも国鉄運賃性格でもう一面忘れてならないのは、結局輸送用役の適正配分ということだと思うのです。ところが、独占性が失われて、国鉄運賃性格だけでそういうことが可能かどうかというと、これは御指摘通りなかなかむずかしい。むしろ現在あるいは将来の展望に立って輸送分野というものをやはりある程度調整していくという規制がなくてはならぬ。現在は早くいえば、輸送力を非常にむだにしておる、ロスが多いという面はあるわけですね。これは将来も多くなっていく。それから、たとえば内航船と石炭輸送問題等も最近はやや回復したかと思うのでありますが、内航船が貨物運賃に押されて手をあげていくというような傾向も今日まで続いておる。そういう一重投資なりロスというものをどういうふうに適正に配分していくかというようなものがまず前提にならなければならぬと私は思う。それは国鉄運賃法だけで考えていくのではできないということでありましょうが、少なくとも国の動脈としての国鉄はその使命はあるわけです。それをやはり考えてもらわなければならぬ。ところが運賃法の提案理由を見ておると、そういうものが一切おかまいなしで、さっき言ったように企業性に徹するということは、いわゆる企業財政を確立するということに一歩でも半歩でも前進するのだ、こういう空気といいますか意見にずっと支配されてきておる。これでは性格はもう変えるほかはないじゃないか。公共性というのはいろいろありましょう。そこに社会に対して輸送用役を提供するというのも一つ公共性、商店を開く、商品販売も広範にいえば公共性ですよ。そういう意味の公益性はある特定のもの以外はどういう事業でも達成しておるわけです。ところが国鉄が従来使命としてやらねばならぬ公益性というのはそうじゃない、もっと狭められた公益性だと思う。先ほど御質問がありましたたとえば枕崎線の問題は、あなたが御答弁になったように、これは地方開発のため、これは公益性です。これをやるというのです。やらなければならぬ使命だと思う。ところが、実際はそうは言うが、性格は変えていきたい、変えていかなければならぬという気持が濃厚に出てきておる。だから現在ある公益性を自分から放棄して、いわゆる過当競争の渦巻の中に入っていこうという傾向があると私は思う。たとえば集約輸送の問題が一つ。自分がレールに乗って集めてきておる、今日の窓口を閉鎖して他に追いやってしまう、これは輸送の事実の問題にもなりましょうが、極端な言い方をすればそういうことが言える。あるいは閑散線の合理化もそういう傾向がある。これはどれ一つとっても合理化という名のもとのいわゆる公共性発揮、いわゆる誤った企業性の発揮、こういうようにも見られる部面が多いわけです。  そこで私が言いたいのは、今回の運賃法改正は、これは運賃法の第一条の四つの原則があるわけです。この原則の中に、その二番目に、「原価を償うものであること。」ということになっておる。今回の提案も原価を償うという原価主義に置きかえてきたでしょう。これはいなめない事業です。そうだとすれば先ほどからのお話通り、ここで運輸省、いわゆる政府は、あるいは国鉄は、その性格を変える、変えなければならぬ状態にある。なるほど運輸大臣が今答弁されたように政府も思っておるというが、今年三十五年度の予算を見ても、なるほど財政投融資はあったでしょう。ところが利子補給の三億足らずの金、あるいは新線建設の百億の出資はびた一文持ってこない。この現実は、しかも三十五年度の予算は、この運賃法改正が通らぬければ、特に貨物収入の面においては予定収入には近づけない。これは予算審議の際にも申し上げた。貨物の列車キロはふえないのに貨物運賃収入は七二%の増加になっておる。列車キロは二%くらいの増加になっておる。当時貨車の運用効率を向上するからというのだが、私もしろうとだからよくわかりませんが、運用効率向上でか運賃収入が上がるはずがない。列車キロにまず土台を置く。だから、そういうことを考えるというと、どうもこの四つの原則のうちの一つだけである。しかもこの運賃制度調査会は、この原則は現状には即さない、ここで修正するのが正しい。この四つの条件のうちの三つはもう現状に適さないから修正すべきであるという御意見。これもいろいろな情勢を見られて、学者その他権威者がお集まりになったのであります。特にその中で指摘されておるのは、そういいながらも、国鉄努力だけでこの企業は持っていけない、国鉄使命は達成できないから、政府はめんどう見ろということをいっているのです。それは、わずかに一縷の望みをかけていっている。だから権威者も学者もあなたたちも、全部が客観的な条件を、いわゆる壁をぶち破るということは不可能だという前提に立った運賃法の改正、こういうふうにわれわれは見ている。これではわれわれは困る。というのは、なるほど今度の運賃法改正では、見ようによれば大した影響もないかもしれません。しかし、見ようによれば、これは大へんな要素を含んでおる、こう思います。これはあとで、まあ各論というか、そっちの方でやります。そういう要素ばかりでなくて、この調査会から出てきた答申、これで今度の運賃法改正に乗らない部面が相当ある。乗らない部面は運輸大臣の認可事項であり、国鉄総裁の権限にまかされている。これは一連の傾向として、いわゆる一連の方法としてやっていかざるを得ないのじゃないか。  そこでお尋ねしたいのは――そういう性格論はもうやってもしようがないですから――この答申に盛られたものは、今後これに引き続いてやっていくことになるのか、これをまずお尋ねしたい。
  47. 山内公猷

    ○山内(公)政府委員 今回の改正も、その答申に基づきまして考えておるわけでございます。ただ御提案申し上げました運賃法の中には盛り込めないものもございますし、また法律によらなくて済むものもあるわけでございまして、今後答申の趣旨を尊重してやって参りたい、かように考えております。
  48. 久保三郎

    ○久保委員 そうだとすれば、先ほど言ったように、運輸大臣なりあなたの答弁は、運賃に関する限り、もう用がないということですね。用がないというのは、大臣もさっき言ったように、いわゆる経済閣僚懇談会でもやっておるが、閣議の場所に移しているというお話ですけれども、これは要らないですよ。たとえば、一番問題になる定期の問題でも、これはやっていけばずいぶん合理化といいますか、進歩します。そこに私は問題があると思うのです。今回提案のものは布石というか先行するもの、あとからくるものがこわい。これはなるほど学者その他が寄り集まって、衆知を集めてやったことでありますから、現状としてはあるいはやむを得ない線かもしれません。ところが、これによって、利用するあるいは旅客あるいは荷主というものは、今日の段階でこれを容認するだろうかという問題が私はあると思う。  もう一つは、先ほどから繰り返し言うように公益性。公共性というものは、これでは逆に退歩しつついくではないか、こういうふうにわれわれは考える。この点はどうです。
  49. 山内公猷

    ○山内(公)政府委員 その点は御指摘通りでございます。答申に盛り込まれたものをすぐさま完全に実施をすれば、われわれの方は用がないという御指摘はごもっともだろうと思います。ただ先生御指摘通り、そういうものを実現するにいたしましても、その間の時と方法、また利用者の理解、そういう点においていろいろまだ問題があるだろうと思っております。そういう点を逐次解明して、国鉄の財政状態、これは現在だけでなく、将来の財政状態も見通して、国鉄の健全な発達をはかるにはどうしたらいいかということが問題でございまして、そこに出ておりますのは結論でございますが、その結論をいかにしてスムーズに実現していくかということが、われわれに課せられた大きな問題である、かように考えておるわけであります。
  50. 久保三郎

    ○久保委員 時間もありませんからもう一点だけお尋ねしておきますが、あとでどうせ繰り返し御質問申し上げたいのですが、この四原則ですね。現状には即さないから修正することが望ましい、こう答申されておるわけです。しかし、この調査会としては、運賃の決定にあたっては原価を償うことというようなことを基本として、その他の三原則については、勝手といっては語弊がありますが、これを現状に即応するように解釈して、その趣旨を適宜加味していくべきである、という答申をなされておる。加味していくといっても、一挙に原価を償う原価主義に置きかえられるはずもございません。これは大へん失礼かもしれませんが、あと残った三原則は、これは自動的にくっついておるようなもの。適宜加味されていくということは、今度の運賃改正法にも出てないし、あるいはこれ全体から見ても、どうも出ていないように、われわれはひがみかもしれませんが見ています。そこで、こういう修正することが望ましいという答申があったが、運輸省としては、これはどういうふうに考えておられますか。
  51. 山内公猷

    ○山内(公)政府委員 運賃決定の原則といたしましては、今まで長い間いろいろ学者が議論しておりますが、具体的にありますのは、原価主義であるか、負担主義であるかということか一番大きな問題でございます。これは交通論としてのいろいろの議論のあるところでございまして、この原価主義負担力主義というものをどうあんばいしていくかというところに、いろいろな運賃が出てくるわけでございます。その点、私も、実はこの四原則は、これでいいか悪いか今具体的に答えろと申されましても、ちょっとわからないところがあるわけでございますが、ただわれわれ見ておりますのに、この運賃法の出ました昭和二十三年という時代の背景を考えますと、非常にインフレの高進をいたしておった時代でございまして、やはり法律を作りますと、どうしても当時の社会的情勢、経済情勢というものが非常に大きくクローズ・アップされて出てくるわけでございますので、そういう背景を考えなければいけないと思うわけでございますが、四条件というものを一体運賃にどうとるか、どう適用されるかということを具体的に説明するということは、なかなかむずかしいのではないか。われわれ政府当局といたしまして、国鉄の申請のありましたときには、やはりこういう四つの条件というものを頭に置いて審議をするということでございまして、御答弁にはならないかもしれませんが、その運賃制度調査会でいろいろ御議論のありましたのは、運賃論としての御議論でございましてやはり社会的な背景というものにおいて、その時代々々に国鉄に何が強く要請されておるかというところをわれわれは見て灘賃というものを考えていくのがいいのではないか、そうすると、これを改める必要があるかないかということは、やはりそういう状態において議論していかなければならないわけでございまして、まあ直ちにどこをどう改めたらいいかということが、ちょっと私もここで御答弁するほどまだ勉強いたしておりませんので、今後さらに検討いたしてみたいと思います。
  52. 久保三郎

    ○久保委員 それでは勉強するというから、せっかくの勉強ですから、次の機会にお剛かせを願いたい、かように思います。  そこで鉄監局長、運賃の立て方といいますかについて御意見を伺いたいと思いますが、原価主義がいいか、あるいは負担力主義がいいかということでありますが、運賃法の精神は、これは原価主義です。私は運賃の立て方は原価主義でいくべきだと思う。これに徹しろというのです。ただし、原価主義を貫くものは、この四原則のうちの第二番、第二号ですね。あとの三つが公共性を織り込め、こういうふうにも解釈します。ただし、この三番目はとりようによっては、これは「産業の開発に資すること。」こうなっていますから、そうなればこれは従価主義というか、そういうものも考えろという意味で、これはできたのかもしれません。今日の状況では、そうではなくて、いわゆる通例の産業の発達というふうに考えればよろしいのではなかろうか。だから私は負担力主義は、これはやるべきじゃない、原価主義でいくべきである、こういうふうに考えます。あとの三つの条件はこれに付加されるものである、付加されねばならない。そこに国鉄運賃の特殊性があろうと私は思うのです。たとえば先ほど言った公正妥当なものというので、枕崎線に特殊な運賃料金を課するということ、こういうものも論議のあるところです。こういうものと産業の発展と、一番と三番をからみ合わせた場合に、はたして枕崎線の特殊運賃というものが正しいかどうか。このときに原価主義と競合する場面がある。その判定はどこでやるかというと、これは総括原価が方式なんですね、全体の原価、その方式です。そうだとすれば、そういうものは二と三とかみ合わせの方で決着をつけるべきではないか、こういうふうにもわれわれは考える。いずれにしても今回の運賃改正法というのは、出てきた法案だけでは問題は少なかろうとは思いますが、これが一連の答申に基づく第一歩であるということになりますれば、われわれも十分お尋ねもして解明もしてから一つやっていきたいと思うので、一つ懇切なる御説明をいただきたい、こういうように思います。  きょうは時間がありませんから、あとに延ばします。
  53. 平井義一

    平井委員長 次会は来たる十七日火曜日午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後零時五十三分散会