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1959-11-18 第33回国会 参議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年十一月十八日(水曜日)    午前十一時一分開会   ―――――――――――――   委員の異動 本日委員青木一男君、大和与一君及び 曾祢益辞任につき、その補欠として 青田源太郎君、阿具根登君及び東隆君 を議長において指名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り    委員長     小林 英三君    理事            大谷藤之助君            佐藤 芳男君            館  哲二君            西田 信一君            秋山 長造君            亀田 得治君            鈴木  強君            千田  正君            杉山 昌作君    委員            青山源太郎君            青柳 秀夫君            泉山 三六君            太田 正孝君            木暮武太夫君            小林 武治君            斎藤  昇君            下條 康麿君            杉原 荒太君            手島  栄君            武藤 常介君            村松 久義君            湯澤三千男君            米田 正文君            阿具根 登君            占部 秀男君            木村禧八郎君            久保  等君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            永岡 光治君            松澤 兼人君            松永 忠二君            辻  政信君            原島 宏治君            曾祢  益君            田上 松衞君            加藤 正人君            岩間 正男君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君    文 部 大 臣 松田竹千代君    農 林 大 臣 福田 赳夫君    通商産業大臣  池田 勇人君    運 輸 大 臣 楢橋  渡君    建 設 大 臣 村上  勇君    国 務 大 臣 赤城 宗徳君    国 務 大 臣 石原幹市郎君   政府委員    内閣官房長官 松本 俊一君    法制局長官   林  修三君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 加藤 陽三君    外務省アジア局    長       伊関佑二郎君    外務省アジア局    賠償部長    小田部謙一君    外務省アメリカ    局長      森  治樹君    外務省条約局長 高橋 通敏君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省理財局長 西原 直廉君    大蔵省為替局長 酒井 俊彦君    水産庁長官   西村健次郎君    運輸大臣官房長 細田 吉藏君    運輸省港湾局長 中道 峰夫君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    日本国有鉄道総    裁       十河 信二君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和三十四年度一般会計予算補正  (第2号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十四年度特別会計予算補正  (特第1号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十四年度政府関係機関予算補  正(機第1号)(内閣提出、衆議院  送付)   ―――――――――――――
  2. 小林英三

    委員長小林英三君) これより委員会を開会いたします。  まず、委員の変更について御報告申し上げます。本日曾祢益君、大和与一君及び青木一男君が辞任をいたし、その補欠といたしまして、東隆君、阿具根登君及び青田源太郎君がそれぞれ選任せられました。   ―――――――――――――
  3. 小林英三

    委員長小林英三君) 昭和三十四年度一般会計予算補正(第2号)、同じく特別会計予算補正(将第1号)、同じく政府関係機関予算補正(機第1号)を一括して議題といたします。  この際、ただいまの委員長及び理事打合会の結果を御報告いたします。本日は、まず最初亀田得治君より、一昨日の同君の質問についての藤山外務大臣答弁に対し、特に十分間の質問を許すことにいたしましたので、御了承をお願いいたします。亀田得治君。
  4. 亀田得治

    亀田得治君 外務大臣に対してお尋ねいたしますが、一昨日の私に対する米軍行動範囲に関する答弁、それと昨日、外相真意ということで出されましたものとの内容、これが非常に食い違いがある。そういう立場で、私はこの際、若干質問をするわけですが、時間がきわめて制限されておりますので、これまでのような不明確なことじゃなしに明確に問いに対してばっぱっと答えてもらいたい。  最初に、昨日のような、外相真意という声明が出された経過、これを明確にしてほしい。
  5. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 昨日予算委員会を終わりまして、曾祢委員質問答えて出ましたあとで、党の七役の会議がございましたから、そこに出席いたしまして、そうしてその際、亀田委員の御質問に対する私の答弁についての事情の説明をしてもらいたいということがございました。従って私としては、きのう曾祢委員にもお答えいたしました通りのことを申して、そして退席をいたしたわけであります。
  6. 亀田得治

    亀田得治君 この声明文を出す前に、米国側との打ち合わせでもされたんですか。
  7. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 米国側とは打ち合わせをいたしておりません。
  8. 亀田得治

    亀田得治君 声明文文章はあなたがお作りになったものですか。
  9. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私自身が書いたものではございません。
  10. 亀田得治

    亀田得治君 だれが書いたのです。
  11. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 幹事長の方で書かれたものでございます。
  12. 亀田得治

    亀田得治君 あなた自身国会における答弁を訂正されるのに、ほかの人に書いてもらう、そういうことをする人、いますか。手続自体がおかしいですよ。みずから筆をとって明確にされるのが当然だ。どうなんだ。
  13. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は昨日の曾祢委員質問に対して、亀田委員の御質問と同じような質問がありましたので、それに対して、私の考え方を明確にこの委員会の席上で申し上げております。従って私はそういう報告をいたしたわけでありまして、そのこと自体が私といたしましては、今申し上げたような考え方で言っているわけでありますから、一向に順序が違っているというふうには考えておりません。
  14. 亀田得治

    亀田得治君 そんなことじゃだめです。内容には責任持ちますね。
  15. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は、私が説明した通りに大体書いてあると思いますので、これに責任を持つことはできます。
  16. 亀田得治

    亀田得治君 大体とはどうなんです。あなたの真意が多少でも曲がっていたら困るでしょう。私が答えを受けた立場からみたら、曲がっているとみている。大体とは何です。多少でも違うならば、明確にしてほしい。
  17. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私の真意は別に違っておりませんが、文章の一々については、私全部自分が書いたのじゃないから、そういうことを大体と申し上げたのでありまして、内容については、私はこの通りにきのうも答弁をいたしておりまして、変わってないと思っております。
  18. 亀田得治

    亀田得治君 じゃ責任は持つわけですね。
  19. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 責任を持ちます。
  20. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、この朝日けさの朝刊の一面に出ているこの文章で、間違いありませんか。
  21. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 朝日の文革とは同じだと思いますが、もしあれならば、ここに持っておりますから、お読みしてもよろしゅうございます。
  22. 亀田得治

    亀田得治君 読んで下さい。
  23. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 「米軍は、日本基地極東の平和と安全の維持のため使用できるのであるが、この場合、極東というのはフィリピン以北地域を考えている。そして新安保条約目的は、日本の安全及び極東における平和及び安全の維持に貢献することにあり、米軍行動はかかる目的によって限定を受けるのである。しかも米軍国際連合行動又は自衛権の発動としてのみ行動することが新安保条約基本であり、米軍行動するのは、平和と安全がこの地域内において侵されている場合に限られる。すなわち、米軍行動範囲は直接地域的な面から制限せられている訳ではないが、条約基本精神及び目的から限定されているのである。以上の点からして、米軍行動も自ら概ねこの極東地域でとられることになるのは当然である。なお、極東の平和及び安全の維持という観念は現行条約と同様であるが、新条約においては、作戦行動の場合の事前協議ということでさらに制限されている訳である。」
  24. 亀田得治

    亀田得治君 以上の点から、米軍行動は「おのずから」という言葉が入っておりますか、新聞には書いてありませんが。そういうことは、はっきりやってもらわぬと時間がたつから。「おのずから」が入っておりますか。新聞には入っておらない。
  25. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 「以上の点から」ですね。「以上の点からして、米軍行動も自ら概ねこの極東地域でとられることになるのは当然である。」
  26. 亀田得治

    亀田得治君 内容について多少開きますが、米軍行動もおおむね極東でとられる、こういう趣旨になる。「おおむね」というのを具体的にわかるように説明して下さい。
  27. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の条約におきまして極東の平和と安全ということが日本の平和と安全にもやはり必要であり、影響があるということからして、極火の平和と安全ということが言われておるのであります。従って、極東地域内におきまして何か混乱が起るというようなことは、日本の平和と安全にも影響がある場合があるわけであります。従って、そういう問題については協議をして参らなければならないと思います。直接影響がない場合もありましょうし、ある場合も当然あろうと思います。その場合に、もし米軍が出動するということになりますれば、今文章で申し上げておりますように、その極東の地代内が主であることはむろんでありまして、それ以上に、むろん理論的にはどこにでも行けると思いますが、しかし行動をする範囲というものは、それに限定されるべきが当然だと考えております。従って、事前協議の場合に、当然そういう地域内で活動するということ以上には出ないということが、「おおむね」という意味と解釈すると言ってさしつかえないと思います。
  28. 亀田得治

    亀田得治君 「おおむね」というのは、極東その地域について「おおむね」と言っておるのじゃないですか。根拠について「おおむね」と言うのですか、どちらですか。
  29. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 地域について言っておるのでありまして、根拠と言いますと、その行動の原因とか何とかいう意味でございますか。
  30. 亀田得治

    亀田得治君 根拠ですから、目的ではないのですね。
  31. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) はあ今の地域……
  32. 亀田得治

    亀田得治君 これは前回も確かめたのですが、そのことにも若干関連しますが、そうすると極東から多少はみ出してもいい、そういうふうなことになりますね、地域的に「おおむね」ということになると。
  33. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) はっきり東経何度とか、きのうも曾祢委員にもお答えしたつもりでありますが、東経何度とか、北緯何度というようなはっきりした線は必ずしも引けないと思います。でありますから、その意味においてはある程度極東というものをむろん定義して参りますし、アメリカ側と同じ考え方で、きのう可御説明申し上げましたように、アメリカのし院に対する説明日本国会に対する説明が食い違わないようにして参るつもりでおりますが、しかし、その限りにおいて、今申し上げたような地域でありますから、若干のでこぼこはそれはやむを得ない、作戦行動の場合にあり得る、その通りに出るということは予想しておりませんし、また、そうすることが適当だとは考えておりません。
  34. 亀田得治

    亀田得治君 極東という概念、この間説明を受けたのですが、これは地域的に厳格に言いますと明確じゃないですね。南の方は明確ですが、北の方の説明は場所で言いますと不明確でしょう。どうなんです。明確にできるならしてもらいたい。
  35. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この間、フィリピン以北大陸沿岸及び日本の周辺における治世ということを大体申し上げたつもりでおりますのですが、そういう意味において、むろん最終的には完全な打ち合わせをしまして明確にいたして参りたいと思っております。
  36. 亀田得治

    亀田得治君 普通私たち言葉通り沿岸と言うと、ほんとうに海洋の狭いところです。まさかそういう意味ではなかろうと思う。どうなんです。
  37. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん海岸線という意味とは解してはおりません。
  38. 亀田得治

    亀田得治君 だから、そうすると、相当な幅を持ったものです。どの程度にそれは柵を持っておりますか。
  39. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) そんたに広い幅を持って考えてはおりません。
  40. 亀田得治

    亀田得治君 まあ、ともかく極東自体が不明確なんですね、説明が。そこへ「おおむね」がくっつくわけですから、これも不明確。だから、きわめて不明確なんですよ。まあ、しかしその点は不明確でよろしいが、そこで今の御説明通りでありますと、ともかく大陸沿岸からはそんなに遠くない、こういうふうに一応解釈できるわけです。だが、そうなりますと、十六日における私の賢明に対する答え、これは非常に食い違いがあるのです。食い違いないとあなた考えておりますか。
  41. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は食い違いがそうあると考えておりませんですが。
  42. 亀田得治

    亀田得治君 そうじゃない、多少でもあるでしょう、そうないということは。全然ないというのですか。
  43. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 全然気持の上、御説明内容から言いまして、ないと思います。ただ答弁いたしましたときの言葉の二ュアンスがあったかもしれません。しかし、私の申し上げております真意につきましては変わっておらぬと思います。
  44. 亀田得治

    亀田得治君 そんなことはないですよ。たとえば、あなたがなかなかはっきりこの前は範囲として答えなかったから、端的に私が範囲限定されるのかされぬのか、極東外に出ていいのか悪いのか、こう端的にお聞きしたところが、あなたはむろんアメリカ軍としては自由に出られると思う、こうはっきり言っておる。この際のあなたの言い方はきわめてはっきりしていた。しかも、私がその前後にしゃべっておることは、私の聞きたいところは沿岸地帯なんかを聞いておるのじゃない。中国の奥地なり、あるいはソ連奥地なり、そういうところまで目的が明確であれば行けるのか、そういう立場でこの前後というものは私は聞いておる。委員の方もこれは皆知っておる。それに対して、あなたがそうだ、こうはっきり言ったわけです。限定はついておりますよ。極東の平和と安全のためということがはっきりしていなければならぬ。それはまあよろしい。その限定のついておることは聞いておる。だから、そういう目的がはっきりしておれは行ってもいいということについてははっきり言っておる、あなたは。ところが昨日の声明、それに対して今釈明を受けたわけですが、それによると、地域的にはきわめて狭いところなんです。違っておるじゃないですか。違うものを違わぬと言ったって、また押し問答になりますが、どうなんですか。あのときはそう言ったけれども、川島さんに帰って叱られてこういうふうにしたというならば、これはまた一つ説明になります。違うものを違わぬと言ったってだめですよ。
  45. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は一昨日の亀田委員質問に対して、奥地まで行けるとか、モスコーまで行けるとかいうことを申し上げたつもりはないのであります。(「モスコーとは言わんでも、奥地まで行けると言ったじゃないか」と呼ぶ者あり)それじゃ、もし――理論的にはそういうことが考えられるかもしれないけれども、しかし、今度の条約には、極東の平和と安全ということが特にうたってあります。基地を貸与するのにもそれが上にうたってあるわけでありますから、従って、それに対して制約があることは当然だとわれわれ考えておるのでありまして、その点について、あるいは御説明が足りなかったかもしれません。従って、もし御説明の足りないところがありましたなら、それは私の不行き届きだと思いますが、私の真意は、初めからそういうことで申し上げているつもりであったわけであります。
  46. 亀田得治

    亀田得治君 あなたは速記録をごらんになったでしょう、外務大臣
  47. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は、まだ亀田委員速記録は見ておりませんけれども、いずれ拝見しまして、もしそういうふうな誤解の起こるような点がありましたら、今申し上げていることが正しいと、また、きのうの曾祢委員にもそういうふうに申し上げたと私は記憶いたしておるのであります。
  48. 秋山長造

    秋山長造君 議事進行。ただいまの亀田委員外務大臣とのやりとりは、これはこの間のやりとり速記録を十分に調べてそして正確な基礎の上に立ってやりとりをやらなければ、今の外務大臣のような……、この問、奥地まで行くということを確かに言われた、われわれもはっきり耳に残っている、それを、そんなことを言った覚えはないというようなあいまいなことから出発して幾ら問答を続けても無意味だと思う。事がきわめて重大ですからね。だから、この間の速記録を取って、つぶさに検討した上で、あらためてこの問題を究明していただきたい。委員長一つそのように善処をお願いします。
  49. 小林英三

    委員長小林英三君) 今の外務大臣答弁を私も聞いておりますが、今申し上げていることが一番正しいんだということを、はっきり言っておられるんですね。
  50. 秋山長造

    秋山長造君 今言っておることが一番正しいと言ってもじゃ、この前の速記録は全部うそかということになる。だから、やはりこの前の速記録から出発しなければ、これは今どうこう言っても話にならぬと思う。だからこの前の速記録はどう言っておる、今、外務大臣はどうおっしゃっておる、その間にどれだけの食い違いがある、というようなことをはっきりお互いに確認した上で質疑を続けていかなければ、問題の解決にならぬと思うんです。事はきわめて重大ですよ。重大ですからね、これはそのようにぜひ取り計らっていただきたい、委員長
  51. 小林英三

    委員長小林英三君) 外務大臣、今の亀田君の質疑に対しまして、秋山君からおっしゃったような議事進行発言があったんですが、これに対して、この機会にいま少し明らかに一つ……。
  52. 秋山長造

    秋山長造君 議事進行。これは、委員長がそういうことをおっしゃるのは、かえって混乱させると思うんですよ。やはりこれは、すべて委員会発言内容というものは速記録に取ってあるんですから、しかも、その速記録が一番権威あるものというようにお互いに確認し合った上でやっているんですから、やはりこの前の速記録を調べた上で、あらためて質疑応答を続けるということにした方が一番順序として私は正当だと思うんですよ。しかも、この間の外務大臣発言で、あれだけ各新聞――われわれだけじゃない、名新聞なんか全部われわれと同じように聞いて、同じような解釈で、同じように大きく取り上げているんですからね。天下の世論をこれだけ騒がせておる問題を、ただ外務大臣ここで、そういうことを言ったかもしれぬけれども、今言う方が正しいというようなことで、ただ通り一ぺんの、そういう言いのがれで事を片づけられては困る。きわめて重大ですよ、大陸奥地までどんどん行けるというようなことを、かりそめにも外務大臣がおっしゃっておるわけです、確信をもって。それを今、そんなつもりで言ったのじゃないということを、通り一ぺんで言われてお茶を濁されては困る。ですから正確に、この間はどう言われたか、今、外務大臣はどう言ったか、これを議事録を調べて、理事会でもう一ぺん検討した上で、あらためて委員会を開いて下さい。
  53. 小林英三

    委員長小林英三君) 秋山君の議事進行に対するお話は、委員長よくわかります。わかりますが、その速記録を見なければこの予算委員会が運営できないような話でありましたから、私は亀田君の質疑に対して、外務大臣は認めておられるようですから、認めておられるのは認めていいと私は思う。それで申し上げたのです。それを、速記録を見ない以上はこの予算委員会が運営できないというようなあなたの御発言のように聞いておりましたから、私は亀田君の発言に対して、外務大臣は認めておられるのですから、それで私はそういうことを言ったのです。
  54. 秋山長造

    秋山長造君 そうすると、外務大臣は、この前おっしゃったことは全部誤りだったということで、否定されておるのですか、そうじゃないのでしょう。
  55. 小林英三

    委員長小林英三君) ですから、私は外務大臣に要求しておる、はっきり発言してもらいたいと。
  56. 亀田得治

    亀田得治君 これは質問じゃないのです、私の希望ですが、私も十分というああいう打ち合わせで約束になったから、そのつもりで来た。しかし、その違いを私ただしたいと思っておるのに、肝心の外務大臣速記録も読んでおられない。はなはだ残念です、これは。私は当然その七役会議でも、速記録などを根拠にしてされたものと……曾祢君の速記録だけじゃだめですよ。だからそれは私はやはり、違わないと言ったって、速記録をまだ見ておらないと、先ほどおっしゃったのじゃ、これはちょっと私も次の質問をするのに戸惑っておるところです。
  57. 小林英三

    委員長小林英三君) いや、亀田君の今の御発言はよくわかります。従いまして、外務大臣に先ほどから亀田君の御質問に対する内容について、もう少しはっきりと御答弁を願いますと……
  58. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私が亀田委員質問に対して御答弁申し上げた真意というものは、本日申し上げておることと若干二ュアンスの違いはあるかもしれませんけれども、真意は変わっておらないつもりなんでありまして、きょう申し上げておることで、私の真意だと御了解願いたいと思います。(「秋山君の動議はどうなさるのですか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  59. 小林英三

    委員長小林英三君) 動議じゃない、議事進行でずよ。委員長は処理しておるじゃないですか。委員長予算委員会を運営していればいい。ちゃんと処理している。どういうことが悪いというのですか。
  60. 鈴木強

    鈴木強君 議事進行委員長、要するに、亀田委員が十六日に発言した質問の中で、極東範囲について藤山さんに質問したわけですね、そのときに藤山さんは、亀田委員中共奥地あるいはソ連等も含まれるかと、こう聞いたのです。そうしたら、その通りだと答弁したのですよ。そこで今、私はそう答弁していないと藤山さんはおっしゃっておる。だから食い違いが出てきておるから、その点を明らかにすること、こういうふうに秋山委員が要求しておるのです。それで、藤山さんのほんとう真意がどこにあるかということが、外務省から出した声明の中にはっきりあるのです。これは幹事長が書いたそうですが、ここにこう書いてあるのです。「すなわち米軍行動範囲は直接、地域的な面から制限されているわけではないが、」こう書いてある。そうすれば、さっきあなたがこの前の質問で言ったように、中共ソ連も、この文面からいっても、そう認めているのですよ。それで、きょうはそうでないという二ュアンスでもって話をするから、食い違いが出てきておる。だから委員長、この際一つ藤山さんがこの前の委員会答弁したことと、今食い違いがあるのですから、その点を明らかにするために、議事録を読んでいただいて、それを明確にしていただかなければ、ここで質問を続行できないということですから、ぜひ委員長はそういうふうにして下さい。
  61. 小林英三

    委員長小林英三君) あなたの議事進行についての今の意見はよくわかります。きょうは亀田君に第一番に御質問を願ったということは、けさ理事会で御相談申し上げたように、一昨日の亀田君の質問に対する外務大臣答弁内容と、新聞に出ておったいわゆる声明といいますか、それとの間に二ュアンスが違う、食い違いがあるように思うから、この点を明かにさしてもらいたいということで、今やっておるわけです。そうでしょう。それが明らかになれば私はいいと思うから、今、外務大臣発言を許しました。
  62. 鈴木強

    鈴木強君 議事進行委員長委員長の裁量で、われわれは協力しているのですからいいわけですが、あなたの言っておるように、われわれの意見はわかると、こうおっしゃる。問題は、今理事会で相談した格好で進んできたわけです。きたんだが、肝心の極東範囲の問題について、十六日には明らかに亀田委員は、中共、その他ソ連ということも、地域を明確に指定して質問したのですよ。そうしたらその通りだとおっしゃった。きょうはそうでないと言うでしょう、藤山さんは。だからそこに食い違いがあるから、その食い違いのある事実を、この際明らかにしてもらいたい。それには、やはり議事録を読んでおらないのですから、議事録を読んで、確かに自分がそういうことを言ったか、言わなかったかということを明らかにしてもらわなければ困る。それは委員長がおっしゃるように、きょう現在において藤山外務大臣が言っておられることは、われわれもわかります。わかりますけれども、その間における食い違いというものは明らかにあるのだから、それを明らかにしてもらいたいために、われわれは議事録一つ読んでもらいたい。そして議事進行してもらいたい。こう言っておるのですから、ぜひ委員長そういうふうに進めてもらいたい。
  63. 小林英三

    委員長小林英三君) おっしゃることはよくわかります。よくわかりますから、委員長は、亀田君の質疑中でございますが、印刷局から一昨日の亀田君と外務大臣との質疑応答速記録を取り寄せますまで、一時亀田君の質疑は保留いたします。   ―――――――――――――
  64. 小林英三

    委員長小林英三君) 前回に引き続いて総括質問を行ないます。
  65. 千田正

    ○千田正君 私はまず第一に、総理大臣にお伺いいたします。  きょうの委員会の劈頭、このような問題で紛糾するということは、私は政府の内部におけるこの日米安保改定問題に対する統一した見解がコンクリートになっておらないのじゃないかということと、きのうから本日にかけての各新聞社に発表しました七役会議の意見というものは、これはやはり政党の総裁として、総理大臣は非常に重大に考えてもらいたい。与党と政府との間に、完全な一致の意見もみないままに、この予算委員会等において重大なる発言をされるということは、非常に国民に誤解を生ずる、こういう点につきまして総理大臣の御見解をはっきりしていただきたい。
  66. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) もちろん安保条約につきましては、各種の問題がございますから、党内及び閣内におきましても、それぞれ重要な問題につきましては意見の統一をいたしておりますことは、これは当然でございます。ただ先ほど来の質疑応答にも現われておりますように、私どももそういう場合もございますが、その御質問に応じて、私どもがお答えをする言葉であるとか、あるいはそのときの前後の関係から、ときにわれわれの言おうとしておること、考えておることが、そのまま表現できないような、あるいは誤解を生ずるような場合も実はあるのであります。また新聞等にそれが報ぜられて、いろいろな疑問、疑惑を生ずるというようなこともあり得るわけであります。従って、そういう場合において、あらためて党及び内閣におきまして、さらにわれわれの考えを再確認して、そうして誤解を解くというような必要も、国会の議事の進行しておる上におきましては、必要が生ずることも私はあり得ると思います。いずれにいたしましても、今千田委員が御指摘になりましたように、何か党なり、あるいは政府なりにおいて、安保条約の問題について、意見が統一されておらないというようなことは絶対にないのでありまして、私は党の総裁であり、総理として、そういうことにつきましては十分に統一をとって臨んでおるわけでありまして、そういうことにつきましては、今申しましたような経過から、そういうことが再確認されていく、なおあらためて明確にするというようなことの必要が生ずることは、これはいろいろな問題についてあり得ると思います。これは決して不統一であるというようなことではないのであります。
  67. 千田正

    ○千田正君 しからば、そういうような声明に似たようなことを発表するのは、むしろ幹事長等に書かせないで、外務省外務省と、政府を代表して、この外交問題に対する正しい声明を出すべきであって、それは外務省当局が、大臣が責任をもって、さっきの答弁のように外務省の見解をはっきりすべきであって、党の七役会議であるとか、あるいは幹事長がそれを発表するということは、はなはだ僕は不見識だと思う。この点につきましては外務大臣はどうお考えになりますか。
  68. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 国会等で答弁いたしておりますことにつきまして、いろいろ何か誤解があったような場合に、幹事長からどういう答弁をしたのだということを聞かれますことはまあ当然なことじゃないかと思うのであります。それについて、私としては、昨日ちょうどこの予算委員会が終わりましたあとであります。亀田委員に対する自分の答弁真意も、また曾祢委員に対するその日の答弁につきましても同じ考えであって、こういう真意のもとに答弁をしているのだということを伝えたわけであります。それを適当に発表されるかしないかということは、これは幹事長自身の御判断によることだと思うのであります。
  69. 千田正

    ○千田正君 今の言葉に対してはいずれ亀田君からもいろいろな点から御質問あると思います。私は現実的な問題としまして、先般来集団的防衛と個別的防衛に関しまして、特に政府が言うておりますところの個別的防衛は自分らの領土内、日本の領土内においてのみに限定されている、こういうふうに承知しておりますが、さようでよろしいわけですね。
  70. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本が攻撃されましたときに、当然日本としては個別的な日本自衛権が発動することになると思います。これは当然なことであります。そこで日本基地をアメリカに供与いたしておりますので、そこにありますアメリカの軍隊の諸機関が攻撃されることは、日本基地を攻撃しなければできないことでありますから、従って日本の領土、領空、領海を侵して攻撃をされるわけであります。その場合にアメリカ自身自衛権の発動をいたしますし、日本としても自衛権の発動があるわけであります。そういう意味において、個別的な自衛権が協力する態勢になることは当然起こることでありまして、そういう意味にわれわれとしては解釈をいたしております。
  71. 千田正

    ○千田正君 吉田内閣以来、保守党内閣が千島列島は日本の領土である、こういう見解をとって、ことに南千島におけるところの歯舞、色丹、そういう問題に対しては、あくまで日本の領土であるという見解のもとに、かつて日ソ問題の交渉の際におきましても、その問題はペンディングになっている。南千島の防衛に対しては、日本は個別的防衛という立場で、これは防衛するのか、あるいは今の安保改定に基づくところのいわゆる集団的防衛ということでアメリカにまかせるのか、一体これはどういう観点に立っておられますか。
  72. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本が千島に対して日本の領土権を主張しておりますことはお話の通りであります。ただこの問題はまだソ連との間に解決をいたしておりません。従って日ソ平和条約ができますときに、これは解決される問題として残されております。従って今回の安保条約におきましても、施政権のない地区を条約地域として除外いたしておりますので、従って今回の条約地域の中には入っておりません。
  73. 千田正

    ○千田正君 もう一回はっきりしていただきたいのは、亀田君に対するお答えが、遠く中共の奥にもあるいはもっと先あるいは先般の概念的な地域を越しても行かれるのだというような意味を、あるいは誤解であると外務大臣はおっしゃっておりますが、しかし新聞等においては、そういうふうな意味の発表もされておるようです。これの場合、実際の作戦行動その他におきまして、ミサイルの基地がはるか遠いところで、現在の科学の兵器がもうはるか遠いところにおいてその基地が存在しておるというような場合においては、今の限定されたあなたの方の言うおおむね、おおむねというような限界から越えて、はるかにその基地をたたかなければ戦争の効果を、あるいは壊滅することができないという問題が起きた場合の考え方については、どういうふうに考えておりますか。
  74. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本基地をアメリカに供与するというのは、極東の平和と安全及び日本の平和と安全を維持するために供与いたします。従って極東の平和と安全を存するような事態が起こりましたときには、むろんアメリカ軍は出動することになる場合があると思います。その場合でも、日本基地から飛び出すものは極東範囲内を主としておおむねと――先ほどのは当然のことだと思います。アメリカ軍としては、いずれの基地からいずれに出ることもそれはできると思います。
  75. 千田正

    ○千田正君 私はきわめて限られた時間でありますから、一応この問題は次の機会に譲ります。  次に、本日の新聞に一せいに発表になっておりますところの運輸省、国鉄の問題で、東海道新幹線に政治家ができたと、こういうような見出しで岐阜県の羽島の問題が起きております。これは運輸大臣にお伺いいたしますが、当初末京―大阪間にはこの特別急行の発着駅は九つだけ設置する、こういうことを国鉄も発表しておられました。ところが今度もう一駅が追加されて十駅になる、一体そのかつて発表したのと今度もう一つ加えたという理由はどこにあるのですか、どういうためにそういうものを加えたのですか、はっきり御答弁いただきたい。
  76. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) お答えいたします。国鉄がきのう運輸大臣のもとに、中間駅を十駅にしたいという申請がありまして、きのう認可をいたしたのであります。それは国鉄自身が十駅が妥当と信じて申請してきたものであると思うのでありまして、私もまたそれが妥当だと信じてとりましたのであります。
  77. 千田正

    ○千田正君 もっと詳しく説明しないと、運輸大臣、非常にこれは国民の誤解を受けておる。新聞の発表によるというと、あなたの属しておりますところのいわゆる与党の幹部が、強硬に運輸省並びに国鉄に向って陳情、制圧を加えた結果、これが一つ加えられた。しかもこの駅なるものは、岐阜からはるか遠い人口はわずか四万、最近合併したばかりの市町村である、ようやく市になったばかりである。そういうところに新駅を加えなければならない理由は非常に薄弱であるとわれわれは考えるのでありますが、どういうわけでそういうものを作ったのか。たとえばあなたの方の副総理あるいは副総理級の人たちが強硬にあなた方に制圧を加えれば、あなた方の方は唯々諾々として新駅を一つでも二つでも加えるというような、そういうふうなルーズなことをやっているのですか、はなはだ私どもは疑問を持たざるを得ないのでありまして、その点をはっきりしてもらいたい。
  78. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) 御存じのように、新幹線は直線コースをもって、できるだけスピード、約二百キロのスピードでやる、三時間で大阪まで行くというのが基本になっておるのでありまして、岐阜県県民をあげて超党派的に要求いたしておりますことは、岐阜市にこれを通るようにしてもらいたいという希望があるのでありますが、これは岐阜市を回りますと約百億、工事費で百億並びに時間にしまして十三分から十五分の時間を要して、少くとも国鉄が立てました基本的な直線コースということは、はずれるのであります。この点について強い要望がありましたが、これはいかに政治力が問題であろうとも、聞くわけにいきません。従ってこの問題は、私の方では聞くことはできないのでありますが、ただ御存じのように、この九つあるいは今十になっております駅というものは、この線路の上を走りまする急行、つまり普通の急行が通る駅でありまして、この駅にどういう汽車をとめるかということは、国鉄もまだ技術的に乗客その他を通じて回数等をきめることであると思うのでありますが、神奈川県は二つの駅があるし、同時に愛知県も二つの駅が予定へれ、静岡県は三つの駅があり、滋賀県、京都等もおのおの一つずつの駅がありまして、岐阜県を相当長い距離通過いたしまして、土地買収その他等もありますが、そういう問題に協力を願わなければならぬ岐阜は全然駅がないということになれば、その点についていろいろと百五十八万の岐阜県民等の要望守もありますから、今の申し上げました岐阜市に、こいつを三角形の二辺を回るようなことはこれは絶対に聞くわけにいかないが、やはり国鉄も岐阜県民の行五十万の人たちのサービス等も考える必要があるから、この新線の、きめました既定線の中において国鉄が妥当と認める、言いかえてみますれば、乗客その他等を勘案して、この地点が妥当だというふうに認めた地点に国鉄がこれを設定したいという申請がありましたので、これを許したような次第であります。
  79. 千田正

    ○千田正君 新線あるいは新しい停車場を設置する場合においては、人口の稠密、文化のセンター、あるいは乗降客の数、貨物の取り扱いの数というものは厳定した一つの厳重なる基準があるはずであります。この羽島駅というのはどれだけの人口であって、どれだけの乗降客が一体乗り降りするのですか、そういう規定をはっきりあなた方は守っておられるかどうか。
  80. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) 羽島駅――羽島駅はまだきまったことじゃないと思うのですが、今新聞その他に出ていますが、これで見ますると三万六千二百三十三人でありまして、大垣が九万四千、岐阜市が二十六万四千、こういうことになっておりまして、岐阜から新線までが十五キロ、大垣から新線までが十キロ、こういうことになっておるのであります。駅を設ける場合にどういう基準でやるか、御存じのように人口が一万のところも、やはりとまるところもあれば、いろいろ国鉄自体の操作その他によってきめると思うのでありますけれども、この点は国鉄側が、どこへどうするかということをきめることと思いますので、国鉄当局に一つ説明さしたいと思います。
  81. 千田正

    ○千田正君 国鉄総裁は見えておられますか、国鉄総裁にお伺いするのですが、ただいま運輸大臣からお答えがありましたが、今度予定される新駅、かつてあなたの方は九つの駅を、東京、大阪間の特急の寄る駅をきめて発表されました。最近また一つがふえる、それが岐阜県の羽島ということを、一応新聞に発表されております。  ところが、よくこれを見るというと、乗降客の数も、はなはだ不明確である、しかも羽島駅とそれから岐阜との間は、相当の距離がある、それから道路も舗装されておらない、こういうようなところに、はたして乗降客なり、あるいは貨物が十分収集できるかどうか、そういう一般的な良識のもとにおいて、羽島駅がはたして適当であるかどうかというのは、はなはだ疑問であります。  こういう問題を私は解明していただきたい、どういうわけで、羽島駅にきめたのか、ただ国鉄の利益だけというばかりでなく、岐阜来全般あるいは岐阜県のみならず、国民のあらゆる便宜の点から、ここを選んだとするならば、はなはだその基準において欠けている点があるのじゃないか、そういう点から、一応総裁の御答弁をいただきたいと思います。
  82. 十河信二

    説明員(十河信二君) 東海道、東京、大阪間約五百キロの新軒線につきましては、初めから、まあ大体、駅は十以内ということを予定しておりました。それで今お話のありましたように、どこに駅を置くかということは、国民の需要といいますか、乗降客がどれぐらいあるかということ、並びにまた運転技術上の必要、こういう点から研究いたしまして駅をきめるのであります。それで最後まで十にするか九つにするかということはいろいろ議論があったのであります。ところが豊橋から名古屋、米原、こう行く、あの駅間距離が、みんな長いのがずっと続くのでありまして、それで御承知のように東海道の新幹線は、特急は名古屋だけとまって、東京、大阪岡を大体三時間で走ることができる、スピードは二百キロ程度出して三時間で、最も安全に最も経済的に最も早く走れる三時間程度の時間で大阪へ着くように特急を出す、そのほかに、特急だけではいけない、特急のいろんな駅に乗降する方の御便宜をはかって、特急のほかに急行を走らせなければならぬ、急行と特急と速力が違いますと、途中で行き違いをするとか、何とかという運転上の必要が起こってくるのであります。それが、今の名古屋から米原までの間約七十キロばかりありますが、少し長過ぎるので、その間列車をひんぴんと出すためには、一つどこか駅が必要だということが最後にきまりまして、そういうふうに申請して認可になったのであります。  いろいろ、発表したことが変ったじゃないかということを世間で言われるんでありますけれども、初めから五百キロ、十駅以内ということで、御承知の通り現地をいろいろ調査したり、測量したり何かすることがあるもんですから、どこに駅ができるんだとか何とかいうことを世間の人が想像して、新聞にも、いろいろなことを書かれるんで、私たち実は困っているんでありますが、発表いたしましたのは、最後に運輸大臣の承認を待て、昨日発表したのが正式の発表でありまして、発表が別に変ったわけではありません。そういうことを御了承を願いたいと思います。
  83. 千田正

    ○千田正君 どうも、運輸大臣のお答えも国鉄総裁の発表も、まことにわれわれは良識で判断に苦しむのでありますが、急行というものは、長い距離を短い時間で走るために急行は置かれてあるんであります、しかも待避駅をあまり作らぬために複々線というような、鉄道は、いろいろ無理をしてでも川地を拡張して、そこに鉄道を敷いておるのであって、そこに無理をして待避駅を、あるいはえらい人からの弾圧だか強制か知らぬが、そういうふうな立場に置かれたような誤解を国民に紹くようなやり方は、私は国有鉄道としてやるべきじゃないと思う。  一体、鉄道審議会なんというものは、こんなものは、あってもなくてもいいようなものにしか思えない。あなた方が、たびたび運輸委員会等において発表しているいわゆる鉄道の設置あるいは駅の設置等に対しては、おのおの基準を示しておられます、どうもこの基準には、これは当てはまらないように思う。私は十分に、こういう点において反省していただきたい。きょうは峰岡がありませんから、あらためて他日お伺いいたします。  さらに総理大臣にお伺いいたします。総理大臣は、先般海外旅行をされるに際しましては、外国の各重要な首脳部にお会いして、そうして十分国際的な観点の視野を広げてきて、日本に帰って万全な政策をやりたい、こういう御希望で、勲章も七十幾つかお持ちになってお出かけになったようでありますが、特に私は総理が行かれた国々のうちで、英国におけるところのマクミラン首相との間の会見は、相当私は重要な会見ではなかったか、私はそう思うのであります。で、マクミラン首相との会見の内容については、詳しくはわれわれは知りませんが、外電その他の報告によるというと、岸総理大臣としましては中共政策、中共政策に対して日本考え方、総理大臣としての考え方を十分にマクミラン首相に徹底さして、了解の一致を見た、こういうふうに、首相は日本に来ても発表されたようでありますが、それに対しまして、英国の国会におきましては、労働党の諸君から、マクミラン首相が質問を受けた。日本の岸首相との間の問題について、中共問題に対しては、日本の総理大臣と完全に意見が一致したそうだが、ほんとうかという問題について、相当物議をかもしたのでありますが、この内容について総理大臣が差しつかえない範囲内で、はっきり私の方に表明していただきたい。どういうお話をなされたのか、どの点で一致されたのか、そういう点を、はっきりお答えを願いたいと思うのであります。
  84. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 私が、この夏ヨーロッパ諸国並びに中南米緒国を訪問いたしまして、各国において話し合いをし、両者の考えの一致したもの等に対しましては、その際に共同声明等において、これを明らかにいたしております。もちろんこうした会談におきまして、一切のことを公表するということは、外交の話として、すべてを明らかにすることができないことは言うを待たないのであります。またマクミラン首相と私が話し合いましたことにつきまして、いろいろの誤解や、あるいは論議を生じましたことは、私、非常に遺憾に考えているところでございます。私は、マクミラン首相とは、日本と英国との問におけるところのいろいろな諸懸案の問題を話したことはもちろんであります。また国際情勢について、国際情勢の分析、またヨーロッパにおけるところの当時の情勢からみまして、ジュネーブ会談等のことに関しての事柄についてマクミラン首相から、いろいろ話を聞いたことも事実であります。また日本のアジア諸国に対する関係等について、私から、いろいろと日本の考えを申し上げたことも事実でございます。その際に、中共に関する日本の従来とっております政策の考え方を詳細に説明いたしました。ただ、世間でいろいろ誤り伝えられたことは、もしくは論議を生じたことは、このことに対して、マクミラン首相がどう言ったとか、こう言ったとかという点が、いろいろと論議の的になったと思います。私は日本立場として、しばしばこの国会等を通じて明らかにいたしております対中共の政策の考え方基本について詳しく説明をいたしました。これがマクミラン首相との会談の骨子でございます。
  85. 千田正

    ○千田正君 はっきりお答えが出ないのは残念でありますが、総理大臣山は、しばしば日中間の問題につきまして、国会の御答弁も、また予算委員会においての御答弁にいたしましても、向こう側は、岸首相は敵視政策をとっている、こう言うのでありますが、総理大臣は、敵視政策はとっておらない、静観主義をとっているのだ、静観の立場でいるんだ、こういうことをおっしゃっております。  先般、私は中国を訪ねた際に周恩来首相と、たまたまこの問題について、いろいろ話し合ったのでありますが、中国側が誤解しているのじゃないか、岸首相は、敵視政策というようなことを表面とっておらぬと言っているのだ。ことしの春の浅沼氏が帰って参ったときの、いわゆる政治と経済の分離できないという理論に対して、相当強い意味から言えば、分けて考えなければならないんじゃないか、自分は灘観するんだ。こういうことを岸総理は言っているんだが、これに対しては、あなたの方は、どう考えるんだということで問い詰めたわけであります。ところが周恩来首相は、こういうことを言っているのですね。どうも岸さんのやり方は、われわれからみれば、敵視政策のように見えるとしか思えない。ということは、われわれが友好の立場で手を結ぼうと言うと、岸総理は、これはおれは静観するんだ、手をこまねいて静観するんだという態度は、これはある意味において拒否の態度である、いわゆる手を差し伸べた、握手を求めたときに、手を出さなかった場合、手をこまねいて静観するんだという態度は、少なくとも善意の態度ではない、われわれは、こういう態度を一つ考え直してもらえないか、むしろアメリカと接触することもいいだろうし、当然のことだから、そういうことはかまわないのであるが、中国との間はお互いに握手し合うことによって、いわゆるいろいろな将来誤解を生ずるようなものは払拭できるのじゃないか、こういうことを、強く要求することを伝えてほしいということを言っておりましたが、この点について、総理大臣の静観主義というものは、すなわち中共との間に手を結ばないのだ、一応、向こうが態度をはっきり変えてこなければやらないのだ、あくまで、そういう静観主義、あるいは向こうからいえば、はっきり拒否的な態度で進まれるのかどうか、その辺を、はっきりお答えを願いたいと思うのであります。
  86. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 私は対中共の関係におきまして、現在の状態は、両国のために、これは非常に望ましくない不幸な状態である。これを打開していかなければいかぬということは常に一貫して考えてきておるのであります。この打開するについては、両国が、おのおの両罰の置かれている立場、その国際的な関係というものを、十分に両国が理解し合って、そうしてお互い立場というものに対して尊重し合っていく、そうして国交をなにしていかなければならない。今、中共立場と、また日本立場につきましては、違う関係がいろいろとあると思います。  具体的に申しますというと、第一の問題は、私は台湾の問題について、日本の置かれておる立場というものをですよ、これは、中国の方から望ましいか望ましくないか、そういうことは、中共としては非常に困るということであるかどうかは別として、現にこれとの間に、平和条約を結び、友好関係があり、これとの間の一切の外交関係が樹立されておる、そのもとに、日本は国際社会の一員としての義務を果たし、そうして友好関係を続けておる。これは現実の事実である、日本が置かれておる現実の立場であるということを、やはり認識し、そうして理解してもらわなければならない。また同時にわれわれは、中共が共産主義国であり、ソ連との間において、いろいろな条約関係があり、それが日本として望ましくないことであっても、これは、既存の事実としてわれわれは尊重し、理解し、そうして両国の友好親善の関係を、どうして築き上げていくかということを考えていかなければ私はならぬと思うのであります。  そういう意味において、私は従来からも申しているように、今の現状のもとにおいては、それは、いろんな政治との関係という意味におきましても、これはいろんな、政治という観念が非常に広いことでありますから、いろんな内容を持っておりますが、とにかくこれについては、われわれが文化的な交流であるとか、あるいは経済上の交流であるというようなことを積み重ねていくことが、現状においては最も両国のために必要な友好関係を進める上においていい道じゃないかというのが、私ども従来から、ずっと一貫して考えておることであります。それは、決して中共に対して敵視政策をとっている、あるいは静観ということを申しておりますのも、実は私は中国との間に、こういう関係は望ましくない関係である。どうしても将来に向かって、友好親善の関係が作り上げられるように努力しなければならない。そこで、いろいろこういう際に誤解を生ずるようなことや、あるいはかえって両国の関係を、今言ったような基本的な理解の上に立ってお互い立場を尊重し合うという気持を作り上げる上からいって、それに、むしろいろいろな支障を来たしたり、あるいはそれの上において誤解を生ずるようなことはとってはならぬという意味において、私は静観ということを申しておるのであります。決して、向こうから友好親善の関係を結ぼうというものを、私は静観だから一切の関係をとらないというような意味において、拒否する意味において、私は静観と申しておるのじゃございませんし、また、そういう立場はとっておらないのであります。  ただ、今言ったような前提を、お互いが理解し合って、そして、われわれの親韓友好、関係を、こういうふうに築き上げていくことができるか、それには、現在いろいろの向こうの主張もありましょうし、また、われわれの考えもありますけれども、そういう問題になっておるところのものは、しばらくおいて、そして問題のない経済の問題や、あるいは文化の交流とかいうようなことから積み重ねていくことは、私は両国のために、友好関係を築き上げる上において必要であり、また、最もそれがいい道であるという考えのもとに静観ということを申しておるのであります。
  87. 千田正

    ○千田正君 まことに、その通り真意であるならば、僕は、総理は、かりに一番いいのは、海外にお出かけになったのだから、中国にもみずからが飛び込んでいくくらいの気魄を持っていただきたい。それができないならば、総理の代理を、総理の意を体するほんとうの代表を送っても、そういう問題の解決には大いに努力していただきたいと思うのであります。それで、フルシチョフがこの三月、パリを訪れる、それから一方には、米国のニクソン副大統領が中共を訪れるということが、最近各方面から、そういうニュースが伝わってくるのであります。当然、アイクと、それからフルシチョフとの間の話し合いが、国際的には非常な緩和の方向へ向かってきておる。要するに、平和への道が徐々に開けておる、開けつつある。こういうときに、日本は、一方においては仮想敵国を想定しての軍事同盟のような安保条約の改定が行なわれるということは、非常に一面においては誤解を生ずる。むしろ、隣人の誤解を解く上からも、総理のかわりになる代表者――総理が行けば一番いいのでありますが、そういうことができないとすれば、総理の代表者のような人たちが行って、そうした世界の雪解けの中に、日本のとるべき態度を、ある程度は声明もし、あるいは打診もする。そうして大きな国際的な視野から、日本の国民の将来の命運を守るという、対処すべき、大局からの考えを持つべきじゃないかと考えますが、総理大臣は、この点はいかがでございますか。
  88. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 国際の情勢が話し合いによって懸案の事項を、従来の未解決の問題を解決しようという機運が動いておることは非常に望ましいことであり、また、これはぜひ、その傾向を助長していかなければならぬことはお説の通りであります。中共との関係につきましても、こういう国際情勢というものを話し合って、お互いの間におけるところの不信の気持をなくし、そして理解を深めて、協力関係、親善関係を作り上げていくということは、これは私は方法として、当然従来も頭の中にあったことでありますが、今後も考えていかなきゃならぬことだと思います。  それをいかなる時期に、いかなる方法によって、いかなるきっかけを求めてやるかということは、要するに、私が従来、静観ということを申しておるところの一つ内容になっておるわけでございます。今直ちに私が参るとか、政府の代表者を送るとかということについては、私はまだその時期でないと思っております。考え方としては、今申したような考えで、今後といえども、日中間のこの関係を改善していくということに努めたいと思います。
  89. 千田正

    ○千田正君 時間がなくなったものですから、一問だけ農林大臣に――外務大臣と農林大臣に、一言お尋ねいたします。  最近、沖縄周辺において、米軍がミサイルの演習のために、海難の中に、新しい禁止区域を作る、そういうことを一方的に日本側に通告してきたようでありますが、従来、この周辺には非常に日本の漁場として、ことに九州、四国、それから中国、あるいは最近におきましては、愛知県、静岡県等の漁船まで、この周辺に出漁するのでありますが、ここをミサイルの基地として、演習場所として、海洋に、一方的に禁止をする、あるいは日限を限るかどうかわかりませんけれども、そういうことのために、漁民が出漁ができない、操業が停止される、こういうことでありますが、これに対しましては、先般来、九州あるいは四国、その他の関係の漁民が、非常に苦しい立場に追いやられるから、ぜひ、この問題は、許諾しないでくれ、われわれは賠償がほしいとか、何がほしいとか、そういうことは毛頭考えておらないのだ、これは、われわれの生活の壊滅であるから、何としても、この演習地だけは撤去してもらいたい、こういう強い陳情が来ておるのであります。  先般も、この点を水産庁並びに外務省のアジア局長その他にお尋ねをいたしましたところが、なかなか、はっきりしたことをおっしゃらない。そうして、ある場合においては、これはやむを得ないじゃないかというような外務省の見解、それから農林当局としては、どうしても、ここをやられるというと、御承知の通り、李承晩ラインも締め出しを食って、さらにまた、中国との問題も解決しておらない、ここに、もう一つの禁止区域を設定されるということは、漁民にとっては、行くところがないのだ、生活が壊滅するのだ、これはどうしても、これだけは承服ができないという強い念願なのであります。  それで、この点について、外務大臣はどういうふうな受け答えをされておるか。また、農林大臣としては、これはもう、何としてもあなたの管轄下にありますところの漁連の被害であります。ここを、もう締め出しを食ったならば、九州、四国あるいは中国の漁民というものは行くところがない。さなきだに、沿岸漁民、あるいは海洋に進出するさえもでき得ないこういう人たちが圧迫を受けておる今日において、この問題は、重大な問題であると思いますので、農林当局としての農林大臣の御答弁をいただきたい、お二人の御答弁をいただきたいと思うのであります。
  90. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本の漁業者の利益を十分守っていきますことは、これはもう外務省としては当然の任務でありまして、従って、今起こっておりますそうした問題について、われわれが十分な努力をもって交渉していかなければならぬことも、むろんのことでございます。そうして日本の漁業者の利益のために、また、その立場を守るということを、できるだけ主張して参らなければならぬと思っております。しかも、農林省にも、そういう考えがあるわけであります。われわれは、農林省と十分協議の上、その内容なり資料なりによりまして、そうして交渉をいたすことに至ることは当然でございます。農林省と食い違っておるということはないわけであります。
  91. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) お話しの通り、沖縄周辺のミサイル演習場、これはカツオ・マグロ漁業といたしまして非常に有望というか、大事な所なんでございまして、これはなかなか重大な問題と考えております。農林省といたしましては、これは外交交渉でございまするから、外務省に外交の折衝はお願いいたしまするが、私どもの立場といたしましてはミサイル演習場というようなものは設けない、これはやってもらいたくない、かような建前で、強く交渉して参りたいということでお願いいたしておる次第でございます。
  92. 千田正

    ○千田正君 時間がありませんので、いろいろな問題はまた次の機会にして、私の質問をこれで終わります。
  93. 小林英三

    委員長小林英三君) 千田君の質疑は終了いたしました。   ―――――――――――――
  94. 小林英三

    委員長小林英三君) 次は加藤正人君。
  95. 占部秀男

    ○占部秀男君 議事進行
  96. 小林英三

    委員長小林英三君) 占部君、何ですか。
  97. 占部秀男

    ○占部秀男君 予算委員会ではいつもそうなんですが、昼飯の時間をいつも忘れているように思うんで、やはり規定の時間は規定の時間として、きっちりとして、飯を食べてそしてゆっくりやっていただきたい。休憩にしたいと思います。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  98. 小林英三

    委員長小林英三君) もう毎日非常に皆さんに御努力を願っておりまして、いろいろの何もありますから、続行いたします。加藤正人君。(「休憩、休憩」「人道問題だ」と呼ぶ者あり)
  99. 加藤正人

    加藤正人君 人道問題などという声があるようでありますから、できるだけ私は、時間をセーブするために、口早に読み上げるような調子で質問をいたします。  私に対する、この問題に対するお答えは、非常に簡単なことでありますから、先ほどの外務大臣との応答のうちにニュアンスがどうとかいうような、ああいう複雑なことは起こって参りません。そういう意味一つ、やるとかやらぬとか、反対だというようなお答えでけっこうであります。あらかじめ申し上げておきます。私は、貿易と為替の自由化という点に焦点を集めまして、以下数点にわたって、総理並びに関係大臣に質疑をいたしたいと思います。  IMFあるいはガットの総会を契機といたしまして、今やわが国における貿易と為替の自由化が本格的に推進される機会となりまして、去る十一日にもかなり大幅な輸入制限の緩和が発表されましたり、あるいはまた、対外経済法とも仮称せらるるような、新しい外国為替貿易の管理法が検討されているように伝えられておることは、それ自体といたしましてはもちろんけっこうなことであると思うのであります。自由化ということは、当面わが国に若干の苦痛を伴うものであるにいたしましても、大目的には、わが国を含めた世界全体の貿易の拡大をもたらすものでありますから、わが国にとってまことに好ましいものであることは、今さら申すまでもないのであります。しかしながら、この自由化ということは、戦後のわが国経済界が当面する最も重大な画期的な課題であります。それだけに、これが断行にあたりましては、十分慎重な態度が望まれるゆえんであります。いたずらに自由化という美名によって猪突猛進するというようなことは、これは許されぬと思うのであります。かかる観点から現在までの経過を見ておりますと、その準備態勢の整備ということについては、どうも政府の配慮にいささか欠けるところがありゃせぬかと、それに何となくわれわれは不安を感ぜざるを得ないものがあるのでございます。  先ほども申しました通り、この自由化移行の問題は、わが国経済の画期的な革新であり、アメリカの圧力があるから、あるいはまた、ガットの強い要請があるからといって、ただあわてふためいて、十分な準備態勢のないままに猛進するというようなことは、あるいは笑いを後世に残すようなことがないとも限らぬのであります。これは、非常な不準備、不用意にこれを敢行いたしました場合には、あるいは昭和五年の金解禁直後にわが国経済にもたらされたような、あの混乱がないとは言えないのであります。外科医が大手術をやる前には、あらかじめ十分患者の体質を検査して、あるいは強心剤を打つとか、とにかく適当なる手当を施すのは、これは常識であります。最近の新聞で見たところでありますが、通産次官が、経団連で貿易の自由化について決議したということを批評して、一方で経団連がいろいろな条件をあげておりながら決議などしても、それはへっぴり腰の決議であるというようなことを言って嘲笑したというのでありますが、そのいろいろな条件、注文というものは、おそらくその予想される激変に備える用意でありまして、これは当然の処置と言わねばならないと思うのであります。それをやゆするようなことは、はなはだ私は不謹慎であって、遺憾しごくだと思うのであります。私は、このような見地から質問をいたしたいと思うのであります。  まず、企業の体質の強化という問題について、総理並びに大蔵大臣に伺いたいのであります。自由化ということは、申すまでもなく、今までぬくぬくと言ってきた温室から抜け出して、冷たい外気ににわかにさらされるということであります。従いまして、その準備態勢としては、何よりもまず、温室で育ってきた弱い体質を強化しておかねばならないというわけであります。日本産業の体質が幼いということの最も端的な現われは、その資本構成の不健全さに見られるところであります。すなわち、ちょうど戦前の逆の比率であるが、法人たると個人たるとを問わず、大部分が借金に依存しているというようなことは、何といっても健全とは申しがたいのであります。また、日本産業の体質の強化を必要とする他の面は、設備の近代化ということであります。産業技術の日進月歩の今日、古い陳腐化した機械設備をいつまでも使っているようでは、とうてい激甚な海外競争に打ち勝っていくことは望みがたいのであります。もちろん、このような事柄は、企業家みずからがやらねばならないものであることは、これはもう申すまでもないのでありますが、現在のわが国の税制がこれを阻む大きな役割を果たしていることは、周知の通りでございます。自由化に臨むわが国産業の体質強化のため、一日も早く税法を改正すべきではないかということ、すなわち、増資免税制度の復活と、また耐用年数の短縮がそれでありますが、聞くところによりますというと、政府では、明年度は一切減税を行なわないという方針をきめたようであります。明年度は減税を行なわないという方針自体には、私も賛成でありまするが、しかし、だからといって、オール・オア・ナッシングとでもいいますか、真に大局的に必要なことまでも取りやめてしまうというような考えも、これはどうかと思うのであります。その点はどうでありましょうか。また政府は、現在の産業に十分国際的競争力が自由化をしてもあるという判断をされておるのでありまするか。この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  100. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。為替、貿易自由化の方向に政府が踏み切っております。その考え方についての議論は省略させていただきます。それで、自由化をいたします場合に、国内産業に及ぼす影響、これはもう、ただいま御指摘になりましたように、十分に慎重にその対策を立てまして、しかる上に自由化の方向に踏み切るべきこと、これは申すまでもないことだと思います。ただ問題は、その準備ができたあとだとかいうことと方針の決定と、そのいずれが前後になりますか。やはり自由化の方向に踏み切って準備を進めるということでないと、いつまでも準備は進まないのじゃないか。ただいまのような経済状況のもとにあること、これは非常に、お話のうちにもありましたように、温室の中に育っておるのでございますから、これはやはり踏み切っていくという、その基本的な考え方を堅持し、そのための準備を進めていくということでなければならないだろうと、かように私ども考えております。その意味で、経済の体質改善ということについては、しばしば私どもも主張し、協力を求めて参っておりますが、この体質改善は、各方面から総合的に検討すべきであることは、申すまでもないところであります。従いまして、この税制を含めての施策の問題であるとか、これは御指摘の通りでありますが、この税制の面で、具体的に資本構成の是正をはかるために、増資免税を復活したらどうか、こういう御意見のように伺いますが、資本構成の是正に役立ちますためには、増資免税も一つの方法かと思いますが、後に少しその点について私どもの所見を申し伝えますが、やはり資本構成の是正に役立つようには、企業課税のあり方全般について検討することが必要だろうと思います。さきに国会の御承認を得まして発足いたしております税制調査会等も、そういう点に十分検討を加えるということで、ただいま税制調査会を中心にして鋭意検討いたしておるところであります。また、耐用年数の改訂につきましては、従来から検討を加えておるところでございます。  ところで、御指摘になりました増資配当免税制度の問題でございますが、これは、しばしば今までの機会で申して参りましたように、現行の配当控除の制度がございますし、また、法人問配当の益金不算入の制度もございます。こういう制度をそのまま残しておきまして、配当免税措置をまたこの際復活するということは、これは私どもとしては賛成しかねるのでありまして、もし今ありますような制度とあわせて、そうしてそこに改正すべきもの、あるいは縮減すべきもの等を勘案しろということでございますれば、これは、税制調査会が三つをあわせましていろいろ検討いたしておるところでございます。従いまして、ただいま申し上げますような制度そのものを残した上に、さらに増資免税の措置をとるということは、税の建前から見まして、他の法人税や所得税等の考え方から見まして少し手厚過ぎる、こういうように私どもは考えておるのでございます。そういう意味で、この点は賛成しかねます。また耐用年数の改訂につきましては、かねてから検討を加えておりますが、ただいまの御意見の趣旨にもございましたように、ことし減税措置を予算編成の際に採用するかどうか、これは、いわゆる予算編成の基本方針、作成の基本方針に触れる問題でございます。ただいままでのところ、まだ予算編成の基本方針ができておりません。ただ、一般的に申しまして、来年度の歳入歳出の予想等から見、ことに災害対策に対しまして多額の費用を必要とする、こういう点から見まして、来年度耐用年数の問題を取り上げることが果して適当なりやいなや、私どもただいま決心しかねておる、こういう状況でございます。
  101. 加藤正人

    加藤正人君 お答え伺いましたが、こにかく自由化を非常に一方に急がれておるのでありますから、今言ったような手続が相当時間がかかると、自然自由化もそれに正比例しておくれるようになるのでありますから、その点も十分お考え下すって、なるべく早く自由化に対処できるような態勢をとるように急いでいただきたいのであります。  それから減税の問題でありますが、税制調査会に付議するということでありましたが、これは三年目標と聞いておりますが、三年後に答申があって、その後立法し、これを実施するということになりますと、おそらく四、五年後でなければこれが実施できないというようなことになりますと、自然やはり合理化が、自由化がおくれるようなことになりますので、われわれは、とにかく早くその態勢に入ることを望むものでありますから、これに政府も合わすように、一つ急いで促進をお願いしたいと思うのであります。  次に、民間の自主調整機能の強化について伺いたいのでありますが、現在の為替管理の果たしておる役割と申しますものは、単に国際収支面のチェックばかりではなく、外貨割当を通じて需給の調整、生産秩序の維持という産業政策をも担当してきたわけでございまするが、自由化の暁には、当然これにかわって民間自体で自主的に調整をはからねばならなくなるということは、これは申すまでもないところであります。そのためには、現在の独占禁止法や輸出入取引法を大幅に改正する必要があるわけでありますが、政府にはたしてその決意があられるやどうか。これは、総理にお伺いをいたしたいのであります。私をして言わしむれば、これが改正できないようであれば、全く完全なる自由化などというものは、これはとうてい期し得られないと思うのであります。いたずらに産業界を混乱に陥れるだけであると思うのであります。この際、はっきりとした総理の御決意のほどを承りたいと思うのであります。
  102. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 自由化の問題につきましては、先ほど来お話がありましたように、これに即応していくことが日本の経済の大局的の発展の上から望ましいことであり、ただ、それにはいろいろな準備を必要とするということも、御意見のあった通りであります。今、独占禁止法と輸出入取引法の改正についてどう考えるかという御質問でありましたが、独占禁止法につきましては、かねて御承知のように、この法制を検討をいたしまして、今の経済界の実情に合わしめるように改正の案を得て、国会にも提案をいたしましたが、いまだ成立の運びに至っておらないのであります。私どもは、やはりこの独占禁止法、輸出入取引法を常に日本の経済、産業の実情に合って検討をし、必要な改正につきましては、さらに具体的な案を定めまして、国会の御承認を得るように努力したい、かように思っております。
  103. 加藤正人

    加藤正人君 そこで、通産大臣にお伺いいたしたいのでありますが、独禁法なり輸出入取引法が将来改正されるといたしまして、問題はアウトサイダー対策でございます。従来は、勧告操短などをやる場合には、違反者には外資の割当、外貨を割り当てないという、すなわち一種のペナルティの方法があったのでありますが、比較的それで実効を期し得たのでありますが、民間の今後需給調整というようなことになりますと、なかなかそれがそういかない。結局アウトサイダーのために全体の足並みが乱れ、結局弱肉強食的な自由競争にならざるを得ないのが憂慮されるのであります。完全な自由競争ということ、それにつきまして、これも一つのいき方でありまするが、今日のわが国では、雇用対策あるいは中小企業対策という社会政策的な制約がありまして、さようなことは望まれないのであります。こういう意味で、法律を改正するにしても、アウトサイダーの規制ということには特別の配慮が必要である、こう私は思うのであります。この点につきまして、通産大臣の御見解を承りたいと思います。
  104. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げますが、アウトサイダーの規制につきましては、各産業ごとにいろいろ問題がございますので、私は、自由化を実現するためには、こういう問題につきましても特に検討を加えなきゃならぬと思っております。
  105. 加藤正人

    加藤正人君 次に、金融の中立性をめぐる問題についてお聞きいたしたいのでありますが、自由化の暁には、金融の果たすべき役割と申しますものはひとしお重大になると想像されます。この意味におきまして、現在日銀法の改正をめぐって、金融制度調査会の内部で検討を行ないつつあるのでありますが、金融の中立化をめぐる問題は、これははなはだ重要でございます。それで総理に伺いたいのでありますが、この問題をめぐる二つの意見、すなわち、一つ、金融は政治から中立でなければならない。一つ、金融といえども政府が責任を持って行なう経済政策の重要なる一環でありますから、金融に対しても政府は責任をとり得る態勢にしなければならない。いずれも私はごもっともな意見であると思います。しかしながら、理屈はともかくといたしまして、ここによく考えてみなければならないことは、政府の行なってきた従来の財政経済政策というものは、あまりに童この振幅が大きくて広くて、そのため日本経済の景気の波もあまりに大きかったということであります。これは何に原因したか、言うまでもなく、それは内剛の改造があまりにひんぱんであり、また選挙が非常に多かったという、わが国の特殊事情に基づくものがあったと思うのであります。このことは、戦後の西ドイツのそれと比較してみれば、あまりにも明瞭である。西ドイツは、とにかくエアハルトに一切をまかして、長年の間そういう方面の政策の変化がなかったということが、非常に西ドイツを強化した大きな原因であると思うのであります。しかも、こういうわが国の悲しむべき特殊事情が早急に解消される見込みのない現状を考えますると、理屈はとにかくとして、金融は政治から中立であった方が無難であると私は思うのであります。聞くところによれば、大蔵省側では、ずいぶん調査会の委員に働きかけておられるようでありまするが、何もなわ張りにこだわらなくても、運営でやっていけばいいのではないか。政府は、といっても、何も岸内閣だけを批判するのではないが、反省すべきものは反省する必要があると思いますが、この点、いかがでございますか。
  106. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) いわゆる金融の中立性という問題につきましては、いろいろと論議があることは事実でございますが、言うまでもなく、政治が不当に金融に干渉するというようなことが望ましくないことは、これは言うを待ちません。しかし割り切って、この金融というものが、しからばといって、国の財政経済政策と大局的に何ら関連のないものかというと、そういうわけにもいかないと思うのであります。要は、私は、一番必要なことは、今言っているように、政治が不当に干渉することは、これはいけませんけれども、やはり政府と中央銀行の制度とが緊密な連絡のもとに活動していくということが必要なのである。おのおのの分をこえないような協力をしていくということが適当である、かように考えております。
  107. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 少し補足いたします。  ただいま総理からお答えがございましたが、この中立性が日本銀行法改正に伴いまして、いろいろ論議されている。この点は、まことに私はけっこうなことだと思います。ただ、今御指摘になりましたように、金融は政治から完全に切り離して、中立性、政治は一切関与しない、言いかえますと、政治は金融政策については責任を持たないというようなわけには私ども割り切れない。別に大蔵省が権限争いするわけではございませんが、今の政治の責任、これはやはり、財政金融政策を通じての経済全般についての責任が最終的にあるものだと思います。この意味におきましては、いわゆる中立性というものも、いわゆるこの金利の問題だとか、あるいは公定歩合の問題だとか、これがしばしば国会においても論議されますが、これらの点について、大蔵省的な感覚で一々指図することは、これはなるべく差し控えるべきだと思います。そういう意味においての金融独自の権限において処理できる範囲は、もちろん拡大して参りたいと思いますが、政治と完全に切り離すということはできない。そういう意味におきましての中立性であるならば、私ども十分取り入れるつもりでございます。そういう意味で、別に権限争いとかあるいは権限拡張だとか、こういうような考えは持っておりません。誤解のないようにお願いいたします。
  108. 加藤正人

    加藤正人君 ただいまの大蔵大臣の御答弁で、よく了承いたしました。時間がもうありませんので、あまり時間を食い込むことは慎みたいと思いますから、次に、私は一挙にこれを読み上げてしまいますから、適当に御答弁を願います。  設備の規制をどうして行なうかという問題、これは通産大臣に伺いたいのですが、今後繊維原料の輸入自由化が早晩日程に上ってくることと思われますが、その場合、現在行なっている設備規制との関連をどのように考えるべきか。AA制を取り入れる以上は、設備規制を廃止して自由競争にゆだねるという考え方も成り立つと思うのであるが、繊維産業は常に過剰設備と過当競争に悩まされており、また、輸出の安売り防止という観点から、国内の生産秩序を保つ必要があるので、現在の繊維工業設備臨時措置法に基づく設備制限は、これを続けていく必要があろうと思う。この場合、一つ、時限立法たる臨時措置法を恒久化すべきかどうか。二、制限を続けるとすれば、現行制度に何らかの修正を加えるべきかどうか。三、現在の外貨割当制のおかげで設備制限の実行が確保されているのが、AA制に移行すれば、当然やみ紡機がふえるということとなるおそれがある、これをいかにして防止するか等の諸点について、政府はどう考えておられるか。  次は、協定貿易について大蔵大臣に伺いたい。外貨に乏しい国々との貿易にあたって、その収支じりをバランスさせるために、不利な商品でもあえてこれを買いつけねばならないという事情で行なわれておる協定貿易については、自由化が国際的な大差としてとうとうとして押し進められ、また、第二世界銀行も設立されるということになったこの機会に、貿易はあくまでもコマーシャル・ベース、自余の問題は借款の供与あるいは繰り延べ払いという方法でというふうに割り匂って、できるだけ協定貿易は廃止するという方向に対処すべきではないか。もちろんこれは、一がいに言い切ってしまうことはできない面もあろうが、しかし、原則としてはそういう考え方で臨むべきであると思う。見解はいかがでございますか。また、借款供与あるいは繰り延べ払いの問題と連関して大蔵大臣に伺いたいが、円為替の導入問題も漸次日程にのぼすべき時に近づきつつあるように思うが、この点はいかがでございますか。  最後に、目下大蔵、通産両省間で研究中であると伝えられる対外経済法の大体のアウト・ライン、考え方を大蔵大臣から、また、現在開かれているガットの総会の今日までの経過、これは、萩原代表が力闘されておるようでありますが、例の三十五条援用撤廃の問題の今後の政府自身の目通しについて、外務大臣からお伺いしたいと思う。  以上で私の質問を終わります。
  109. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 繊維関係設備の規制法は続けて参ります。また、必要に応じて修正もいたしたいと思います。また、やみ紡機の防止につきましては、十分万全を期したいと考えます。
  110. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) オープン・アカウントは、ただいま残っておりますのは、ギリシャ、台湾、朝鮮、だけでございます。順次これを減らしていく方向でやって参っております。また、円為替導入の問題も時期の問題だと思います。これもちょうど為替貿易の自由化と同様に、いろいろ準備することもございますが、また同時に、導入したあとの弊書等、これに対する対策も十分考える。まだ、ただいますぐというわけじゃございませんが、そういう時期は来なければならないものだと、かように考えております。また、為替貿易の管理法等は、御承知のように、非常に古い法律でございますから、これは今後検討いたしまして、新しい、近代に沿うようなものにしたいということで、根本的に町検討をただいまいたしております。これは、民間の学識経験者の協力も得まして、ただいま十六氏の方に委嘱いたしまして、いろいろ検討いたしておるところであります。成案を得しだい国会の御審議を得たい、かように思いまして、ただいま準備を進めておるわけでございます。
  111. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ガットの東京総会におきましては、三十五条援用の問題につきまして、日本側といたしましては、十分各国にその実情を訴えて、これを提唱いたしたわけであります。今回の総会においては、大体日本支持の立場を十六カ国がとって演説をいたしておりますのでありますから、空気から申しますと、だんだんよくなっておりますけれども、ただ、今度のガット総会でそういう議決を得られなかったことは残念でございますが、次回、来年の六月に開かれますガット総会の議題にさらにしよう、こういうことになったわけであります。現在、御承知の通り、十四カ国が援用しておる国でございますが、そのうち、最近、ただいまデリケートな段階でございますから、直接国の名称は差し控えたいと思いますけれども、東南アジアで一国、アフリカで一国、今三十五条の問題を話し合いがつくように進行しております。御承知の通り、豪州につきましては、三年という期限が来年の七月に参ります。従って三年たちますれば、来年七月には、豪州はこの問題が解決できるのではないかと思います。われわれとしましては、引き続きできるだけの努力をして参りたい、こう存じております。
  112. 千田正

    ○千田正君 関連して。ただいま外務大臣から、ガットについてのお答えがありましたが、通産大臣から一つ、ガットが今のような外務大臣のお答えのような状況でペンディングになっているとすれば、国内の産業に及ぼす一つ影響等に対し、また将来の見通し等に対して、通産大臣はどうお考えになっておりますか。
  113. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 今度のガットの総会で、わが国で問題になりましたのは、やはり自由化に進むべしということでございます。特にドル地域に対する差別待遇を早急に撤廃しろということが直接の問題、そうして片一方は、ガット三十五条の問題は、われわれは従来できるだけ早い機会に自由化に進みたいという考えを持っておりましたから、その方針を鮮明すると同時に、先般ある程度の自由化をいたし、また今後も、対ドル差別の分は来年三十五年度の早期にこれを撤廃する、こう考えておるのであります。なおガットの問題、三十五条を援用しておる国におきましても、関税につきましては、そうひどく差別待遇はいたしておりません、税率におきまして。今の十四カ国のうちでも、外務大臣が話しておられまするように、だんだん私はほどけていくのじゃないか、そういう意味におきましてもわれわれは貿易の自由化、また輸出が特に特定国に特定の品物がずっと流れ込むというようなことをとりやめるよう、国内態勢を整えていきたい、こう考えておるのであります。
  114. 小林英三

    委員長小林英三君) 加藤君の質疑は終了いたしました。  二時から再開することといたしまして、暫時休憩をいたします。    午後一時七分休憩    ―――――・―――――    午後二時十八分開会
  115. 小林英三

    委員長小林英三君) これより委員会を再会いたします。  まず、午前中保留されておりまする亀田君の質疑を続行いたします。亀田君の残り時間は三分間であります。
  116. 亀田得治

    亀田得治君 お聞きの時間ですから、すぱっとやって下さいよ。  私が午前中に指摘した通りでしょう、議事録は。
  117. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 速記録を見て参りましたけれども、私の答弁全体を通じまして、今先ほど御質問のありましたような、中共奥地であるとか、ソ連まで行くということを申してはおりません。しかし、私の質疑応答の中の答弁というものが、はなはだはっきりしてなかった点は、ある程度私も認めざるを得ないのでありまして、従いまして、はっきりここで御答弁を申し上げる方が適当だと思います。  そこで、先ほども申し上げたと思いますけれども、日本基地としております――日本の供与しております基地を使用しているアメリカ軍が――日本を直接攻撃した場合、その場合にはむろん協議が必要でありますけれども、出て参りますこと当然だと思います。その範囲は必ずしも極東に限られておらぬのであります。しかし、極東に何か起こりました場合にそこに出て参りますのは、当然極東の平和のためにわれわれ基地を供与しておるわけでありますから、その出動範囲というものは極東に限られること当然でありまして、おおむねという、まあ字を申し上げたと思いますけれども……。そして、しかもそれは事前に協議をされるということになっております。この点ははっきりいたしておりますので、申し上げたいと思います。
  118. 亀田得治

    亀田得治君 ソ連、中国の問題は、私がそういう意味でお問いをしたのに対して、あなたは否定しない立場答えておるんです。そういうふうに指摘しておきます。  それからもう一つ、私は、あなたがおっしゃった、アメリカ軍としては自由に出られると思うと――これははっきり速記録に載っているじゃないですか。こういうことが基礎になって、あとのことが注釈がついてるだけなんです。これが大前提、あなたの答えの始まりにこれが出ている。矛盾してますよ。
  119. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) その点は、あるいは非常に誤解があったかと思いますが、むろん、日本基地としておりますアメリカ軍は今申したようなことでございます。しかし、アメリカ軍として――この条約には関係ございませんけれども、他の方面から出ることは、これは何らの制約がないということは申すまでもございません。
  120. 亀田得治

    亀田得治君 議事進行。これは私の質問答えておらない。その前に私が聞いておるのは、つまり、目的さえ明確であれば枢束外に出れるか出れないかと、このことを聞いておる。それに対する答えなんです。だから、そんなあなた、そういうことに関係のないアメリカ軍は自由に出れるか出れぬか、そんなことじゃない。問題になっておるそのアメリカ軍のことを聞いているんですよ。それに対する答えとして出ているんで、もっとはっきり言うて下さい。
  121. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) あるいは当時の答弁が先ほど申し上げましたように、私としては若干疎漏であったかもしれません。がしかし、今申し上げたようなことがわれわれの真意でありまして、決してそれに違ってはおらないのであります。あらためてそれを確認いたしておきます。
  122. 亀田得治

    亀田得治君 訂正か取り消しかなんかなさるわけなんですか、どういう意味なんです。
  123. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私の答弁に疎漏があって、十分な御理解を得なかったような答弁でありましたなら、その答弁はきょう申し上げたことにかえていただきたいと思います。
  124. 亀田得治

    亀田得治君 その矛盾はいずれまた別な機会にゆっくりやりましょう。私、今速記録を読み上げたら時間がないですから。  そこで、きょう御説明をいただいたんですが、米軍が、あなたがおっしゃるような工合に行動を縛られた場合、非常な高速の飛行機あるいはミサイルなどが発達してきておる今日、そういう軍事行動というものは成り立ちますか。
  125. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 少なくも、今回の条約においては、そういう状況のもとに行なわれることになるということであります。
  126. 亀田得治

    亀田得治君 前の条約局長の西村さん、この人が「安全保障条約論」を書いておる。この中で「条約上は極東限定されるのでなく、極東の平和と安全のためならば、極東地域の外に出て行動してさしつかえないことになると」、これは、軍隊の使用地域と、その防衛地域といいますか、それとを区別して書いておるところの議論なんです。条約論としてはこういうことになることは、あなたは認めますか。これは外務省条約の先輩です。
  127. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 西村氏のそれは意見だと思います。しかし、われわれ今回の条約を作っておりまして、交渉に当たっては今言ったような点で話を進めておるわけでありまして、さよう御承知をいただきたいと思います。
  128. 亀田得治

    亀田得治君 これは西村氏の個人的な意見じゃないですよ。安保条約なり、平和条約を実際に直接交渉に当たった人でしょう。その人がそのときの記録などをまとめて書いておるんです。はっきりしているじゃないですか、立場というものは。個人的なものと見れぬでしょう。
  129. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の条約上におきましては、今御説明申した通りのことで進めておるわけでありまして、むろん、非常な極東に大きな脅威があるとき、別の基地から――日本以外からアメリカが、今お話のようなそれで剛に合うかという場合にそれはあり得るかもしれませんけれども、しかし、今回の条約――日本との条約においては、日本基地から飛び出す場合には、その限りにおいて、今申し上げた限りにおいて交渉を進めておるということでございます。
  130. 鈴木強

    鈴木強君 関連。藤山さん、こういうふうに私質問しますから答えて下さい。われわれは、安保条約の改定を前提にして日本基地を提供する。その基地を使って米軍が出動する場合のことですよ。あなたが言うように、ハワイからソ連を攻撃しようが、どこを攻撃しようが、それは自由なんです。そういう論議とこの問題をごっちゃにしてもらっちゃ困るのです。あくまでも安保条約によって基地を貸与する、協定によって日本が貸与した基地から米軍行動する場合のことをいうのです。そういう場合に、けさ自民党が発表した中身を見ましても、やはり米軍の自主的な行動権というものに対する含みを持たせておるのですね。米軍が独自の立場でどこをやろうが自由だけれども、条約の中に極東の安全と平和ということが入るから、その極東というものの限定をどうするかという論議になるわけです。そこで、フィリピンの北、あるいはあなたのおっしゃるような地域になると思いますが、しかし、その地域極東でしょう。その極東の安全と平和を保つということであって、かりに極東の平和と安全がソ連の……これは例でありますが、たとえばモスコーならモスコーから爆撃してきた――きたことによって極東の安全を脅威されるでしょう。その極東の安全の脅威を防ぐために、要するに、安全と平和を保つために米軍が出動していくということになると、たとえばソ連に行ってもいいという解釈になるでしょう。だからそこのところが非常に不明確なんですよ。だからあなたが極東という地域をはっきり限定して、そうしてその中において直接米軍行動できるのだ、こういうふうなことにはっきりしてもらえば問題は解決すると思うのだが、あなたがどうも固有の米軍の自由権というものをミックスしたような格好で答弁されるからわれわれはわからなくなってしまうのです。そうすると、今言ったような極東の安全と平和のために、どこから来ようが――ロンドンから来ようがパリから来ようが、極東の安全があぶなくなったときに出て行ってもいいという解釈になる。そういう点が非常に不明確なんです。ですから、極東地域については多少解釈上問題があるかもしれない。何度から何度ということはできないかもしれないが、いずれにしても限定した極東という地域に限って、それ以上は米軍がどういうことがあっても行けないのだということになるのかどうかということを私ははっきりしてもらいたいと思うのです。  それからついでですから、もう一つ聞きたいのですが、項前協議の問題については法的な根拠がないということでもって、先般来から非常に問題になっておるのですが、まだその交渉の経過については資料が出てきておりません。そこで、私は結論だけ伺いたいのですが、きょうの六時と七時のNHKのラジオ放送を聞いておりますと、米軍の出動については日米間に同意を要する、こういうことについては大体意見が一致したらしいというようなニュースなんですよ。これは現状非常に大事な問題ですから…そうなって、それがメモになるか、あるいは条約締結の際の日米合同の声明書になるか知りませんが、そういう形ではっきりと制約できるようなものができるかどうか。ニュースによると、意見が一致してきたというようなことがありますからね、そういう点を一つこの際お聞かせいただきたいと思うのです。
  131. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今御質問のありました点でありますけれども、先ほどからはっきり申し上げておるつもりでありますが、日本米軍に対して共地を供与する、これは日本の安全平和と同時に、極東の平和と安全のために供与するわけであります。従って、日本におりますアメリカ軍というものが極東の平和と安全に出動する場合、極東の平和を維持される地域ということに限られることは申すまでもございません。でありますから、そう御了解いただいて差しつかえないと思います。  第二の点につきましては、今回の委員会質疑を通じても申し上げておりますように、協議が成立するためには合意が必要なんだ。意見が一致しなければ協議が成立しないのだという建前をもって、原則をもって、両方ともその原則で話し合いをいたしております。ただどういう種類のものに作り上げるかということについては、今日まだ申し上げる段階ではございません。
  132. 岩間正男

    ○岩間正男君 ちょっと関連して。
  133. 小林英三

    委員長小林英三君) 岩間君、簡単に願います。
  134. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は今の問題はやはり明らかにするために、極東地域から出て、そうして作戦行動をすることはできない、こういうふうにはっきりうたうことができなかった原因はどこにあるのか、この点を明確にしてもらいたい。そうすればこの問題は明らかになってくる。どこにあるのです。これは日本としたら、当然はっきりそれをうたうのが正しいと思う。もしあなたたちの条約を認める、そういう立場に立っても、あなたたちの真意だったら、その真意を通すのならば、できないというふうな限定を明確にするのが当然だと思う。ところがそれができない。それが任意におおむねなどということで、実際は米軍の自由な行動を認めておる。暗黙に認めておる。こういうふうな形をとっているのですが、この原因はどこにあるのですか、これを明確にしてもらいたい。
  135. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) これはただいま申し上げましたところで私は明確になっておると思うのでありますが、日本基地は、日本の安全と平和及び極東の安全と平和に対して供与するわけでありますから、従いまして、それによって一つの限界ができて参ります。同時に、作戦行動に出て参ります場合には、さらに事前に協議することによってそれを縛るわけでありまして、その意味においてはっきり限界ができておると考えております。
  136. 小林英三

    委員長小林英三君) 亀田君、続行願います。あと時間は幾らもありません。
  137. 亀田得治

    亀田得治君 具体的に聞きます。かりに中国や、ソ連奥地に在日米軍基地に対する攻撃基地があって、それが攻めてくる。こういう場合には在日米軍は中国、ソ連奥地を攻めていいんでしょう。
  138. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 在日米軍というものは、第一義的には日本を守ることであります。従いまして、日本を守るために非常な努力をしてもらわなければならぬと思います。そういう意味におきまして、そういう際に遠方になるべく出ていかないことは当然なことと思います。日本を守るためには近くにいてもらわなければなりません。また、極東の平和と安全を守る上におきまして、今申し上げたように、極東範囲内で行動をしてもらわなければならぬのでありまして、また、それをすることが日本の平和と安全にも有効だと考えます。今お話のように、先ほど鈴木委員からも何か混同しては困るというお話がありました。今お話のようなかりにケースがありましたら、米軍が他の基地から飛んでいくということは考えられると思いますけれども、日本基地からそういうところまで飛んでいくということは考えられません。
  139. 亀田得治

    亀田得治君 最後にします。それじゃ攻撃されてもそのままでおるのですか。軍を認めている以上は結論として、やはりそういうことになるでしょう。奥地に共地があって、そこから攻撃してくるわけですよ。どうなんです。もう一ぺんはっきり聞いておきたい。そういう場合でも、いや出ないのだというふうにはっきりあなたおっしゃるのならそれでよろしい。はっきり言って下さい、もう一度。  それからもう一つ本日の解釈ですね。こういうことはやはり議事録等で何か明確なものがあるのですか、ないのですか。あなたのいつもの例の調子で、性質上こういうふうに当然なるべきだということなんですか。どっちか簡明に言って下さい。時間が終了しましたから、不明確だとあなたの責任ですから、もう一ぺん聞きますよ。
  140. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいまのお話の奥地基地があるかないか私どもは知りませんけれども、奥地、かりに非常な奥地から何か攻撃を日本自体にしてきたという場合に、日本のいわゆる極東の平和と安全以外に日本に直接の攻撃があった場合、それはそれに対して報復することができないとは言えません。しかしながら、そういうことをすること自体が適当であるかどうかということは、その点は事前協議によってきめざるを得ないわけで、しかし、極東の平和に何か紛乱が起こった場合、その場合には日本から出ていけないと、極東範囲内だけにしか出ていけない、こういうことであります。  それから今お話のいわゆる事前協議あるいはこういう問題について何か会談途中に一定の話し合いをしながら進めていくか――むろん先ほど申し上げましたように、事前協議につきましては、協議が成立するためには、合意が必要とするという話し合いをいたしまして、その前提のもとに、こういう字句の問題その他の問題を進めておるわけでございます。
  141. 亀田得治

    亀田得治君 お答えがまたはずれておる。私は事前協議のことを聞いておるのではない。つまり出動の範囲の解釈について、何か文章上のそういう議事録等の根拠があるかということを聞いておるのです。
  142. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今申し上げたことは、交渉上の過程においてわれわれそういうことを基礎にして話し合いをいたしておるわけであります。
  143. 亀田得治

    亀田得治君 議事録はないのですか。
  144. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 前回も申し上げたと思いますけれども、われわれは話し合いをしておりまするとき、むろんその日の話し合いについてどういう話をしたということはまとめて参りますけれども、まだ議事録というものではありません。
  145. 亀田得治

    亀田得治君 この程度にします。
  146. 小林英三

    委員長小林英三君) 亀田君の質疑は終了いたしました。引き続きまして総括質問を行ないます。小林孝平料。(「関連々々」と呼ぶ者あり)秋山長造君。
  147. 秋山長造

    秋山長造君 ちょっと関連して。  実は先ほどの亀田君の御質問に対する御答弁とそれから先ほどの千田委員質問に対する御答弁とを聞いておりまして、外務大臣のきのう自民党から発表された発表文についての外務大臣の御答弁はちょっと食い違っておるのですね。と申しますのは、この亀田君の質問は、きのう自民党から発表された、この声明文に対して外務大臣責任を持つかといったら、全面的に責任を持つという強い発言があった。ところが、その後千田委員から同じような質問があったら、それは政府の当局者が発言したことについて自民党の方で、与党の方でいろいろな意見が発表されることは御自由だというような御答弁があった。そこでこの問題は事が外交上の問題で、本来われわれは政府自身責任において発言さるべき問題だと思う。こういう性質のものは。だからこういうことをその政党の方で発表されるという――発表されることは自由にしても、その効力その他から考えますと、私はちょっと疑問を持たざるを得ない。政府の責任において政府がおやりになるのがほんとうだろうと思う。  そこで第一にただしておきたいのは、こういう性質の問題について見解を発表されるのは、あくまで政府が、政府の外交権を持たれるところの政府自身責任においておやりになるのが本筋ではなかろうかということです。これについてお答えを願いたい。それでもし、いや、それはきのう自民党の方で発表された通りでもいいということで、もし万一にも御答弁が出てくるならば、第二の御質問として、それでは自民党から発表されたこの米軍の出動範囲についての声明に対してはこれは政府が全面的に責任を持つ、すなわち言葉をかえて言えば、この声明文というものはこれは政府自身の統一見解である、この件に関する統一見解であるということを確認されるのかどうか、これは今後の審議にも重大な関係があるし、また、私どもが今後いろいろなもの、政府なり与党なりから出てくるところの声明文、発表文等を受け取る場合にもこれは重大な関係がありますので、この両点について明確にお答えをしていただきたい。
  148. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この党が発表しました――幹事長が発表しましたこれは、先ほども申し上げましたように、私が私の解釈、真意というものを説明して、それがそのまま出ておりますので、私としては責任は持てると思います。がしかし、同時に、政府として、こういう問題について統一的な解釈を発表することはやる必要もある場合もございましょうし、またしかし、党が発表したものがことごとく政府の意思をそのまま代表しておるというものでは常時ないかもしれませんが、この点に関しましては、私が説明をいたしたそのままをよく意を尽くしていると思うのであります。従って、これに対して責任は持てるわけであります。(秋山長造君「委員長委員長」と呼ぶ)
  149. 小林英三

    委員長小林英三君) じゃあもう一回。
  150. 秋山長造

    秋山長造君 お許しを得ましてもう一度お尋ねしますが、ただいまの点はどうも一つぴんとこないところがあるのですがね。ほかの一般の川島幹君長のいろんな問題についての発表なんかを言うておるわけじゃない。この米軍の出動範囲に関するきのう発表された川島幹事長声明文について質問しておるのです。これは資料として要求しましてそちらからいただいた声明文だからこれは確実なものです。これについて全面的に責任を持たれるのかどうか。すなわち言葉をかえて言えば、この声明文内容というものは、米軍の出動範囲に関する解釈としては、これはもう政府としていわば統一見解、政府の確定的な解釈であるかどうかということを聞いておるのですから、それについてはこれはもう外務大臣のみならず、総理大臣から一つはっきり責任を持った御発言を願いたいと思う。これはやはり今後安保条約の問題でいつも問題になることですから、いやあれは党の方で勝手にやられたのだというようなことを言われてお茶を濁されたら困る。だからはっきりして下さい。この発表された声明文については少なくとも総理大臣、外務大臣は絶対責任を持たれるのかどうか、はっきり答弁して下さい。
  151. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほどの御質問は、これに対しては責任を持つのかということでありましたから、私はこの私の真意を伝えましたその真意が十分よく出ておりますので、これはそのまま政府の意見として差しつかえないと私はこう申したわけでございます。
  152. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 外務大臣がお答えした通りであります。   ―――――――――――――
  153. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林孝平君。
  154. 小林孝平

    小林孝平君 私は、本日は南ベトナムに関する賠償の問題について政府にお尋ねいたします。この問題は非常に各方面から政府にただされておりますが、政府から明確なる御答弁がないままに今日までに至っておりますが、私は本日はいまだ比較的取り上げられない問題を別の観点から政府にお尋ねをいたしたいと思います。  最初にちょっと質問に先だちまして総理大臣にお尋ねいたします。去る十一月の六日の参議院本会議において、佐多議員の南ベトナムは全ベトナムの正統政権ではないのではないかという質問に対して、総理は「今日四十九カ国がベトナム共和国政府を承認しておりますのは、これは全ベトナムを代表する正統政府として承認しておるわけであります。」と南ベトナムの正統性を主張されているわけでありますが、これは今でもそうお考えになりますか。
  155. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) さように考えております。
  156. 小林孝平

    小林孝平君 これは私はそれならば、総理から本会議において訂正していただかなければならないと思います。それは今日南ベトナムを承認しているものは四十九カ国、北を承認しているものは十二カ国となっております。これは総理のおっしゃった通りであります。しかし、このうちパキスタンは南を承認としているし、北も承認しております。従って四十九カ国がすべて南ベトナムを統一政府として承認しているものではありません。総理大臣がこういうことを答弁されているのに、しかもこの午後には、外務大臣は、衆議院の予算委員会でパキスタンは両方を承認しているということをおっしゃっているのです。こういう答弁食い違いはどうなっているのか。それから事務当局は、こういう明らかなる食い違いをそのままにして、今日まで参議院の本会議における総理大臣の答弁の修正を要求しておらないのは一体どういうわけか。
  157. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 四十九カ国と十二カ国と申し上げたのは、両方からパキスタンを落としているわけであります。パキスタンを入れますれば南が五十、北は十三ということになります。
  158. 小林孝平

    小林孝平君 そうしますと、このパキスタンは両方を承認している。この四十九カ国のうちパキスタンと同じように北は北、南は南という立場で南だけを承認しているという国もあるのではないかと思うのです。この四十九カ国のうち、そういう国があるのかないのか。
  159. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 四十九カ国のうちベルギーだけが南を承認するということをはっきりつけ加えております。その他はそういうことは申しておりません。
  160. 小林孝平

    小林孝平君 大体その調査はどういうふうにしてお調べになっておりますか。
  161. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 四十九カ国につきましては、ベトナム政府の五八年八月七日の発表を、サイゴンの大使館が調べたものであります。
  162. 小林孝平

    小林孝平君 それでも間違っているじゃありませんか。ベルギーは南だけを認めているわけです。そうしますと、総理大臣が、この四十九分国が南ベトナムを統一政権である、正統政府であると認めているとおっしゃったのは、やはり間違いじゃありませんか。どうなのですか。あなたはそういうことをはっきりわかっていてなぜ総理大臣に答弁の修正をしないのですか。参議院における答弁は何を言ってもいいと考えているのじゃないですか。
  163. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 参議院を無視しているわけでは全然ございません。われわれとしては、できるだけ慎重な調査の上に立って御報告しているわけです。
  164. 小林孝平

    小林孝平君 今の問題の答弁はしないのですか。
  165. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今条約局長の御説明した通りでございます。
  166. 小林孝平

    小林孝平君 外務大臣はちょっと疲れて頭がぼんやりしているのではないですか。私はそんなことを言っているのではない。条約局長の言ったことと総理大臣の言ったことと違っている。それを言っているのです。
  167. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) われわれ事務当局が最初作りました資料を総理に差し上げてありましたから、総理はそれによってお答えになったのでありまして、その後の訂正を申し上げなかったのは、事務当局の間違いでございます。
  168. 小林孝平

    小林孝平君 それはまだ今日まで、参議院の本会議場における訂正の申し込みがないのはどういうわけなのですか。そういう補佐の仕方でいいのか。そういう考え方だから、川島幹事長にしかられるのです。しっかりしたらどうかね。
  169. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) ベトナム共和国の方は、全体を代表するものとして自分は承認を受けたというふうに発表しておりますが、ベルギーの方に確かめますと、南と限定しておると、こう言っておりますし、ベトナムで聞きますと、全部全体を代表するものとして自分は承認されたということを初め申しておったのです。それによりまして申し上げたのであります。
  170. 小林孝平

    小林孝平君 総理大臣は、今条約局長が言ったのをどう考えられますか。あなたの答弁と全然違うのです。
  171. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 私は、もちろん、外務省の調べました資料に基づいて答弁をいたしておるのでございます。従って、その資料において、その後において事実が私の答えたことと違う、最初の資料と違う事実が現われましたならば、適当な機会に訂正すべきだと思います。
  172. 小林孝平

    小林孝平君 私が言いたいのは、そういうことではないのです。ほんとうはこれからのことが言いたいのです。総理は、この四十九カ国が承認したのはすべて正当政府として承認したのだということを根拠にして、重要なる根拠にして、賠償の基礎にされておるのです。その根拠がくずれておるということを私は申し上げたいのです。これは最も重大な根拠にされておるのです。その点は、総理はどうお考えになりますか。
  173. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) ベトナム政府として全ベトナムを代表する正統政府であるという根拠が、唯一の根拠が、それであったわけではございません。また、四十九カ国が、さらに調査した結果四十八カ国になったからといって、私の論拠はくつがえるものではない、かように考えております。
  174. 小林孝平

    小林孝平君 それならば、なぜ四十九カ国というようなことで堂々とやったのですか。四十九カ国と十二カ国ということを比較して、われわれを言いくるめようとされたのです。まあこんなことは、私はもっと本論がありますから、時間をこんなことでとりたくありませんが、大体アジア局長は、今、サイゴンで調べた、こういうふうに言い、その後ベルギーがそうでないということがわかった。大体、身元調査をやるのに、本人の話だけでほんとうにする人がありますか。大体、結婚の相手方を調べるのに、本人に、あなたは品行方正ですか、夜遊びますかというようなことを聞いて、はいそうですかといって、それで結婚する人がありますか。それと同じじゃないですか。身元調査というものは、ほかの方からちゃんと調べなければいけない。サイゴンの南ベトナムだけを相手にしていれば、今のようにべらべらとベルギーなんかが脱落してくる。いまに四十九カ国が十カ国になり、五カ国になるかもしれぬ。どうですか。外務省の役人の頭はその程度かね。
  175. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) ただいまおっしゃったように、五カ国とか十カ国に減るというようなことは絶対にございません。
  176. 小林孝平

    小林孝平君 なぜないか。今、現にあったじゃないか。それならば、私はこの際、ベトナムについて、南北両政権をそれぞれ承認している国名、承認年月日、二重に承認している国名はどうなっているか、お伺いいたします。
  177. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 四十九カ国をあとでリストで差し上げてもよろしゅうございますが、十二カ国と……。両方を承認しております国は、パキスタンとインドネシアとインドの三国でございます。それからイラクにつきましては、南を承認いたしておりますが、北につきましても、インプリシットリーにリコグナイズする、黙示的に承認する、こういうことを申しております。
  178. 小林孝平

    小林孝平君 私の言ったことはそうじゃない、全部。こういう、答弁をそうして、同じことを二回言わして、それがみな質問の時間になつちゃ困まります。時計を勘定する人は、ちゃんとそういうのを勘定しないように。こういうことをやって、同じことをやっておれば、十ぺんやれば時間は十倍かかることになる。私が今言ったのは、ベトナムにおける南北両政権をそれぞれ承認している国名です。答弁になっていないじゃないですか。
  179. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 米国、五五年十月二十六日、フランス、英国も同じ口付でございます。オースラリア、ニュージーランド、タイ、日本、イタリア、それから中華民田、五五年十月二十七日、それから大韓民国、同日付、オランダが五五年十一月一日、フィリピンが十一月二日、スペインが三日、キューバも同じ、ハイチが四日、ボリビアが六日、エクアドルが六日、ブラジルが十一月八日、リベリア、ニカラグア、チリが同じ、ルクセンブルグ、十一日、アルゼンチン、十二日、コスタリカ、十三日、カナダ、十四日、ラオス、十五日、ビルマ、十八日、ベルギー、二十二日、オーストリア、二十三日、西独、十二月五日、バチヵンが五五年の十二月七日、南ア連邦、十二月十四日、ホンデュラス、十二月二日、それからベネズエラが十二月十五日、グアテマラ、同日、コロンビノが五六年一月六日、スーダンが五六年二月五日、ジョルダンが五六年二月二十一日、ポルトガルが五六年五月二十四日、デンマークが五七年三月一日、レバノンが同年三月五日、ガーナが三月六日、モロッコが六月十八日、チュニジアが八月三日、マラヤが八月三十一日、スイスが五八年四月一日、スエーデンが七月三日、イラクが八月二日、それからパキスタンとインドネシア、これが両方を事実上承認しておりますが、これはパキスタンは五四年十二月二十一日、インドネシアが五五年二月一日、インドがたしか五六年――これは日付がちょっとわかりません。それから北ベトナムでありますが、中共が五〇年一月十八日、それからソ連が一月三十一日、北鮮が二月二日、チェコスロバキアが二月三日、ポーランドが二月四日、それからルーマニアが二月七日、ハンガリーが同日、ブルガリア、二月十一日、アルバニア、二月二十日、東独、五八年三月、モンゴールは五四年十一月七日、ユーゴスラビアが五七年三月十日、東独が五八年三月、以上であります。
  180. 小林孝平

    小林孝平君 日本はいつ。
  181. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 日本は五二年の平和条約調印のときでございます。
  182. 小林孝平

    小林孝平君 だから、五五年と言ったでしょう、日本は。
  183. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 日本は五五年……。そうでございます。間違えました。ベトナム共和国のできたときでございますから、日本は五五年の十月二十六日です。
  184. 小林孝平

    小林孝平君 間違いないですね。
  185. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) はあ。
  186. 小林孝平

    小林孝平君 私は、本論に入る前に聞いているのに、今ごろからこんなことでは、先が思いやられますよ。  次に、これもまだ本論でありませんけれども、ちょっとお尋ねいたしますが、日本はいつ南ベトナム政権を全ベトナムの代表政権として認めたか。今、五五年の何月と言われましたけれども、間違いありませんか。あなたはその後平和条約調印のときと言われましたが、この五五年が正しいんですか。
  187. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) ただいまの点は、日本のベトナム国及びベトナム政府の承認は、サンフランシスコ条約調印のときでございます。すなわち一九五一年の九月八日であります。その後政体の変更がございまして、ハオダイの政府からゴ・ディエンデイエムの政府に変更になりました。そこで、政府の承認としまして、ただいまアジア局長が申しました日付に政府の承認をやっております。
  188. 小林孝平

    小林孝平君 このサンフランシスコ条約調印のときと、それから五五年の関係はどうなっているんですか。現にアジア局長もサンフランシスコ条約のときを言ってみたり、五五年と言ってみたりで、はっきりしないじゃないですか。五五年は南ベトナムだけを認めたのではないですか。
  189. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 国家の承認と政府の承認を同時にいたします。これはサンフランシスコ調印のときでございます。そこで、そのときに政府とそれを代表する全ベトナム国家を承認しております。その後政府が変更いたしました。それが政体の変更でございますから、国際法上は、こういう場合はさらに政府の承認をやるわけでございます。これは御承知の通りでございます。その政体の変更としての政府の承認を五五年に再び行なう、こういうことになります。
  190. 小林孝平

    小林孝平君 私は、こういう問題を論議するのが本旨でありませんから、次に移りますが、これらの問題は非常に疑義がありますから、また適当な機会にやります。  そこで、かりに、政府が言っているように、サンフランシスコ条約は南べトナム政権を承認した、こう言っておりますが、一体サンフランシスコ条約にそういうベトナムを承認する義務を規定しているのかどうか、そういう義務がそれによって出るのかどうか、その点をお尋ねいたします。
  191. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) お答えいたします。もちろん、平和条約には承認云々という文言はございません。ただ、平和条約に調印いたしますことは、これによりまして重大な平和条約の条項に基づく権利義務関係に入ることでございますから、相互にそれを国と政府との承認ということの前提なしには考えられない次第でございます。
  192. 小林孝平

    小林孝平君 先ほど申し上げましたように、これらの問題は後刻やりますが、そこで、それならば、サンフランシスコ条約締結当時のバオダイ政権は、ベトナムにおいてどの程度の実効的な支配を持っていたかということをお尋ねします。
  193. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知のように、フランスが植民地を開放いたします際に、それぞれラオス、カンボジアとともに、仏印の地域を分けまして、そうして今のベトナム政府というものを作ったわけであります。むろん、話し合いによって作った。その前に、ある時期に、北の方のことを話し合いをした場合もございます。しかしながら、事実上の独立国家としての承認はいたしておりません。その後戦争等が起こりましてそうしてフランスは北を相手にしないということに相なったわけであります。そういう経過をたどりまして、一九四八年の六月にアロン湾宣言というものができまして、そうしてさらに翌年三月エリジェ協定によりまして、そういう経過を経て、フランスは全ベトナムを代表する政府としてバオダイ政府を認めたわけであります。その後今申し上げたような順序によりまして、英米その他がこれを全ベトナム代表として承認した過程がございます。右の事情からいたしまして、現在のベトナム政府が全ベトナムを代表するということは明らかだと考えております。
  194. 小林孝平

    小林孝平君 私のお尋ねしておるのはそういうことでなくて、どの程度の実効的な支配を持っておったかということを具体的にお尋ねしておる。少しも実効的な支配がなかったのではないか。
  195. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん、当時ベトナムにおきましては、お話のように、いろいろな兵力による争いもございました。従って、その争いによって地域的な変動が若干ずつあったことも事実でございますが、しかしながら、当時ベトナム全土を代表する国家としてこれが認められたということは間違いない歴史的な事実でありまして、その辺につきましては、そういう点から見てわれわれは全ベトナム代表政府だと、こう言い得ると考えております。
  196. 小林孝平

    小林孝平君 大体、答弁になっておりません。当時のバオダイ政権はフランスの占領している点だけの支配者であった。しかし、この点といえども、昼はフランスの天下、夜はホー・チミンの天下であったと、あなたの外務省の一九五四年のインドシナという本にちゃんと書いてあります。こういう事実をあなたは認めるのかどうか。ちっとも実効的な支配が及んでいないとうことは、外務省の出しておる文書にでております。また、同じ外務省のアジア局が監修いたしましたこのベトナム共和国便覧を見ますとバオダイ政権は事実上、ベトナム主権は北ベトナムに主権はほとんど及ばず、南ベトナムすらも完全に把握していなかったと、これに書いてある。そのほかいろいろ書いてあります。あなたの外務省がこのバオダイ政権はちっともこの実効的な支配をしていない、わけのわからないものであった、こう書いてある。こういうものを承認するということができるのかどうか、そういうことは誤りではないかということをお尋ねいたします。
  197. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 当時のベトナムの状況でございますが、御指摘の通り、戦闘もございます。従いまして、種々戦闘の移動はあったと悪います。
  198. 小林孝平

    小林孝平君 私は外務大臣に聞いているんだ。君は何だ。外務大臣……。
  199. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 御指名を受けましたものですから、お答えを申し上げます。そこで、そういうふうな実際の事情はございましたが、サンフランシスコ条約によりまして、この独立と同時に政府を承認したということになりました。(「だめじゃないか、外務大臣」と呼ぶ者あり)
  200. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほど来御答弁申し上げておりますように、むろん戦争状態にもございました。そういうような関係からいたしまして、必ずしも全ベトナムに施政権、支配が及んでいないということは、それは認めざるを得ないと思います。しかしながら、今申し上げたような経過から、われわれとしてはそれを全ベトナムの統治団体として承認することが当然であることはむろんでございます。
  201. 小林孝平

    小林孝平君 私は、この問題は非常に重大でございますから、いろいろお尋ねしようと思いましたけれども、こういう不勉強の方にお聞きしても満足の答弁が本日は得られないから、十分勉強していただいて、あらためてお尋ねいたします。大体、藤山さん、あなたは最近の答弁は、はぐらかしたり、八百代言だとヤジられるような答弁をなさっておりますが、どういうつもりなんですか。あなたが政界に人られるとき、絹のハンケチではだめだ、ぞうきんになれというようなことを言われて、そういうことに使嗾されて旧式政治家に今や堕して、そういう答弁をされておりますけれども、それではだめです。ぞうきんはたくさんあるのです。絹のハンケチだから、稀少価値としてあなたは尊とばれ、場合によれば総裁にもならぬものでもない、こういうわけです。ところが、この間からの答弁を見ておれば、全く旧式政治家で、答弁をはぐらかしてばかりいる。事務当局に至っては、これは不勉強の代表のようなものです。従って、私は、本日そんなことをやっておりますと、肝心の本論にはいれないことになりますから、この程度でこれはやめますけれども、私はこの際申し上げておきたいことは、こういう新聞があります。  ベトナムの新聞、この新聞を見ますと、岸首相の政府は、サイゴンのベトナム共和国政府が北から南まで二千五百万人を代表しているものであると認めた。こういうことを認めたことは、ベトナム共和国が全ベトナム領土を合法的に代表する政府であるということを世界中で最初に認めた国である、と書いてあります。ほかの国はだれも――さきの身元調査によればそういうことになっておるかもしらぬけれども、このベトナムのサイゴンの新聞すら、統一の正統政府であると認めたのは日本だけであると、こう言っております。日本国会では、いかにもこの南ベトナムが統一正統なる政権であると、こう言っておられますけれども、これはおかしいと思うのです。従って、こういうことをいつまで申し上げてもきりがありませんから、もっとよく御勉強願いまして、明確なる御答弁をお願いいたします。  そこで、いよいよこれから私は問題の本論に入りたいと思います。それは、こういうふうに先般来政府はこのベトナム問題についていろいろと御答弁なさっておりますけれども、ことごとく無理です。私もその無理であるということをきょうやろうと思いましたけれども、やめますが、要するに、政府答弁からすれば、いかに南ベトナムを正統政府と見ることが不当であるかということがわかるのです。しかも、問題はこれだけではないのです。いろいろこれは不都合なことがあって、賠償を支払うという根拠はない、こういうことになる。辻委員がこの間も指摘されたことも、その一つでありましょう。それを政府が強弁して、そうして賠償を強行しようとしているのは、そうしなければ政府の顔が立たない、あるいは政府としては困るという重要な原因があるからだと私は思います。そこで、以下この重要な問題がどこにあるかということを一つ申し上げたいと思います。  大体、国会の承認も受けず、調印もされない前から、その使途が詳細にきまっていて、しかも、その使途から逆算されて賠償金額がきめられている。南ベトナム賠償は、世界にも先例を児ない全く不思議な政治的な産物であります。まことに不可解な問題でありますので、国民は全然納得がいかず、疑惑の眼をもってこれを見守っておるわけであります。そこで、われわれはどうしてもこの点を国会の審議を通じて国民の前に明らかにしなければならない義務があると思います。これから本論に入って、問題の核心をつくことにいたします。今までと答弁は今度は違いますよ。  そこで、過日の本会議でも佐多議員が指摘したように、昭和三十二年九月、政府が南ベトナムに植村甲午郎氏を派遣し、その後岸首相がさらに現地に行かれた結果、急にこの賠償が決定的になったといわれているが、植村氏は一体どういう資格でどういうことを交渉されたのか、それを具体的にお伺いいたします。外務大臣に。
  202. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 植村君は、九月でございましたか、政府の、私の特使としてベトナムに行かれました。そうしてベトナム交渉を受け持たれたわけであります。植村君は、前からベトナムに旅行もされておられましたし、という関係もあり、それまでの経緯におきましても、十分賠償の交渉の責任を担当することができる人として、私はそういう処置をとったわけであります。
  203. 小林孝平

    小林孝平君 私が言っているのは、どういうことを交渉したのかというのです。具体的に……。
  204. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 当時、まだ、むろん初期の交渉でございますから、金額も何もきまっておりません。従って、向こうに参りまして、向こうの要求なり何なりを聞きながら、十分交渉の下準備をするという立場において、特派されたわけであります。
  205. 小林孝平

    小林孝平君 それじゃ、手ぶらで行ったわけですね、何ら資料なく。
  206. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 手ぶらというわけではございませんが、むろん、当時において沈船引き揚げその他の経緯がございましたから、その上に立ちまして、どの程度のことが適当であろうかということを、また当時向こう側は、二億五千万ドルから一億五千万ドルぐらいまで下がっていったという経緯もございます。そこらの点につきましても、まだ交渉の余地があるわけでありまして、われわれとしてはそういうものをすべて受け入れるわけには参りませんので、下準備の交渉という意味において打診に行ったわけであります。
  207. 小林孝平

    小林孝平君 総理にお尋ねいたしますが、植村氏はあなたと最も親交ある経済界の代表者の一人でございますが、なぜこういう人を選ばれたのですか。こういう下打ち合わせをやるなら、もっと具体的な数字を持って交渉するのが当然であって、こういう植村さんのような方をなぜ派遣されたか。
  208. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) ベトナムと日本との間の賠償交渉というものは、サンフランシスコ条約が調印されました直後から、ベトナム側は日本側に賠償を要求をしてきておったのでございます。この間におきまして、向こう側からもしばしば特派的な人がこちらへ来て、また日本の方からも向こう側の意向を打診するためにいろいろの交渉が行なわれました。特に賠償の問題につきましては、言うまでもなく、日本の経済力、日本の支払い能力というようなものも頭に置いて、その賠償額をきめなければならぬことも当然であります。また、日本側から提供する役務というような場合におきまして、それが日本の産業経済から見て適当なものであることを要することも当然であります。そういう意味におきまして、従来から日本に参りました特使等も、日本の財界とも接触をし、向こう側の要望を伝えて、また日本側の実情等につきましても長い間におきまして折衝があったのでございますが、われわれは最後にこの賠償問題を、インドネシアの問題を解決するとともに、サンフランシスコ条約によるところのこの賠償金をきめて、そうして東南アジア諸国との間におけるところの戦争中及び戦後の問題として、そういう問題を片づけて、さらに友好親善の道を開いていくということが、両方、また東南アジア全体のためにも望ましいこととして、長いこの交渉の結果におきまして、向こう側の要求と、そうして日本側の考えというものの間に非常な大きなギャップがある。これをなるべく縮めていく、そうして適当なところで妥結しなければならない。そういう際に、従来からのそういう経緯も考えまして、日本の経済界の実情もよくわかっておる人をさらに出して、向こう側の意向等を具体的に打診することが適当であるという考えのもとに、植村君を外務大臣の特使として派遣したわけであります。
  209. 小林孝平

    小林孝平君 この植村さんをなぜ派遣されたかということは後ほどまたお尋ねいたしますが、こういう人を派遣されますから、賠償はもうかるものだこいうことを国民が考えて、疑惑を持って見るようになるのだろうと思います。現に、これは、外務省の中でも、賠償はもうかるものだというような考え方を政治家や実業家は持っていることに対して、非常に不満を持っておる人々が多いのであります。私は、との外務省の人たちの答弁が実に拙劣であるのは、この政治家に対するレジスタンスの一つではないかと思うのです。こんなに頭の悪いのが外務省に入っているはずがないのじゃないかと私は考えるのです。  そこで、お尋ねいたします。昭和二十九年夏、南ベトナム企画庁長官トラン・ハン・チェット氏が来朝しておりますが、彼はどういう目的で、いつからいつまで日本に滞在されましたか。
  210. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 五四年に見えたということは、私は存じません。五四年でございますか。
  211. 小林孝平

    小林孝平君 昭和二十九年です。
  212. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 純賠償の交渉は五六年の一月から始まっておりますので、その前になりますが、ちょっとどういう目的か存じません。
  213. 小林孝平

    小林孝平君 これは賠償に非常に重要な関係があるのです。そんなこと、わからないはずはないのです。外務大臣にお尋ねいたします。
  214. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) トラン・バン・チェットという人が来たということについては、私は存じておりません。
  215. 小林孝平

    小林孝平君 いるのか、いないのか。語尾がはっきりしません。
  216. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私はトラン・バン・チェットという人が日本に来たことを存じておりません。
  217. 小林孝平

    小林孝平君 外務省、これは重要な問題ですから、いつからいつまで来て、そうしてだれが会ったかということがわかっているはずなんです。わかっていないと、次の質問ができないのです。
  218. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 先ほども申し上げましたように、純外債の交渉は五六年の一月から始まっておりますので、その前に参りまして、賠償に関係があったかどうかもわかりませんし、われわれは存じません。
  219. 小林孝平

    小林孝平君 なぜアジア局長はいばっている。わからぬところがあるなら、わからないならわからないでいいのだ。わからないのをいばる必要はない。
  220. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) いや、そういう趣旨は毛頭ございませんで、ただ純賠償に関係があるかどうか、そういう人が来たかと……。純賠償には関係がなかったと思いますし、そういう人が来たかどうかということは存じません、ということを申し上げたのです。
  221. 小林孝平

    小林孝平君 これはあるのです。あるから、これから私が言えば大へんなことになりますから、それをあなたが言わなければ、なお大へんなことになります。どうです。委員長、督促して下さい。そのくらい準備していなきゃだめです。
  222. 亀田得治

    亀田得治君 議事進行小林君の方で、こういうことで再々立つと、時間の都合で困るから、それで議事進行で申し上げるのだから、お答えにならないのであれば、小林君の方から、それに関連した事実を指摘するから、それを参考にして一つ調べてもらいたい、答えてもらいたい、こういうことですから、だから答えるようにして下さい。これは持ち時間からはずして、事実を指摘して下さい。
  223. 小林孝平

    小林孝平君 これは、私が質問するには、これが調べてないと、あなたの方でこれはびっくりしますから、お調べになっていないと、なお困るのです。そこで、私は、こういうことはわかっておるはずなんです。そこで、それを言いますから、やって下さい。  今のトラン・バン・チェットはどういう人に会っているのか。それから、この賠償と最も密接な関係のある日本工営の社長の久保田豊氏は、外務省との関係はどうなっているか。これは今でも答えられるでしょう。一緒でいいです。  そこで、この久保田豊氏は、この二十九年の九月二日、トラン・バン・チェット氏と都内の芝の某料亭において会談をされているのです。ご存じでしょう。久保田豊さんはこの電源工事をやられるのです。この賠償の今の三千七百万ドルでもってやられる。この久保田さんは、都内の某料亭でもって、九月二日にトラン・バン・チェツト氏と会われている。これは久保田さんだけではないから、申し上げている。  それから、さらにもう一つは、久保田氏も、昭和三十二年二月の下旬に、ビルマからの帰途、サイゴンに立ち寄って、チェット氏を訪問しましたが、そういう事実を知っているかどうか。それみな一緒に調べて下さい。  それから、さらに、そのとき大南公司の代表松下光広なる人物と会って、この岸本商事の専務と三人で懇談して、松下氏の案内でもって南ベトナムの主席のゴ・デイェンデイェム氏に会った事実を知っているのかどうか。それから、さらに、同年の四月、南ベトナムの建設大臣ニエン・バンホワイ氏が来朝している。これはいろいろの発音がありますのでね。ニエン・バンホワイ氏が来朝しているが、どういう目的で来たのか。そのとき外務省当局その他といろいろ打ち合わせが行なわれたと思いますが、その内容はどうなっておるか。  こういうことがわかりませんと、私の御質問ができないのです。私はでたらめ言っているのじゃないのですよ。今も、この委員会で間違ったことを言うと悪いと思いまして、久保田豊さんの邸宅は渋谷の代々木富ヶ谷町にありますが、賠償御殿といわれているのです。その久保田さんの賠償御殿というような言葉委員会でむやみに発言しては悪いと思いまして、ただいま私は実地検証してきたのです。それだけの準備をしてやっているのです。だから、あなた方も私たちの質問答えるために、それだけの準備はしてもらいたい。そうして、しかもこれがわからぬはずはないのです、外務省は。委員長にこれをお願いします。
  224. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま御指摘の事実につきましては、私ども関知しておりません。何らの記録等もございませんし、そういう事実があったかないかも存じておりません。久保田豊氏が日本工営の担当者であるということは、われわれも存じておりますが、直接外務省と何らの関係があるということはありません。
  225. 小林孝平

    小林孝平君 私は、この一貫したあれを調べてもらいたい、資料として。外務大臣はわからぬかもしれないが、事務当局はわかるのです。
  226. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 最後にお話しになりましたこの計画復興大臣、これはエカフェの代表として来ております。その前にお話しになりました人と久保田氏の関係、これは外務省として全然関与しない問題でありまして、従って何も調べておりません。
  227. 小林孝平

    小林孝平君 この久保田豊氏は全然外務省と関係ありませんか。
  228. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 全然関係はございません。
  229. 小林孝平

    小林孝平君 これも外務官僚の賠償に関するレジスタンスの一種か知りませんけれども、資料くらいは整えておいた方がいいと思うのですね。  そこで、大体この賠償の問題は、当初は、今はなくなられました重光葵氏を中心として、賠償でなく経済協力援助でやりたい、またやれるという見通しの話が相当進んでおったわけであります。藤山さんが外務大臣になられる前です。けれども、あなた、その時分のことを知らないといって済まないですよ。ずっと引き継ぎなんですからね。この調題は前に出たチェット長官が、私が先ほど申し上げましたチェット長官が来朝の際にも、非公式に日本側から話が進められて、賠償では短期間において回田の経済開発をやることができない、しかもあのときにはすみやかに経済開発をやる必要がある、だから経済協力援助等でもって早急に産業開発を行なうべきである、ということを進言されていた。これは外務省の人たちが知らないというのはおかしいです、工合が悪いから。知らないと言っているのです。そうして、その話の一環として、この電源開発の専門家として久保田史氏がそのチェット長官に紹介されているのです。そもそも、この久保田氏がこの賠償問題に登場したのは、このときが初めてなんです。そうして、その結果、九月二日に、都内の芝の某料亭において、久保田氏とチェット長官がいろいろ懇談をした。その通訳をした者が岸木商事の専務であります。  私がこのくらい知っているのだから、外務省が知らないはずがないじゃないか。そんなことでよく外務大臣が勤まりますね。外務省は知らないと言っているけれども、これは入管で調べればすぐわかることなんです。さってく調べられたらどうですか。この人間が役所にたくさんいるのも、国会にいろいろの問題が起きたとき、それに間に合うようにちゃんと人がいるはずなんです。そんなことぐらいは、私も知っておりますが、そういうふうに、すぐ調べたらどうですか。
  230. 亀田得治

    亀田得治君 議事進行について。小林君の質問に非常に関係もあるので、すぐ調べるようにして下さい、入国の事実だけでも。全然知らぬというのは、そういう覚悟ではだめです。これだけのことはやっておきなさい、名簿を見たらわかるのだから。委員長、しっかり指揮して下さい。
  231. 小林英三

    委員長小林英三君) だれの入国ですか。
  232. 小林孝平

    小林孝平君 委員長、そこにおるのは、小林君といって名前を呼ぶだけではない。私の言うことを聞いて、そうして指揮しなければならない。名前を呼ぶだけなら、だれでも勤まるのです。トラン・バン・チェット。
  233. 小林英三

    委員長小林英三君) 外務大臣は知らぬというのですが……。あなたの質問を続行して下さい。(「調べればわかる」、「帳簿に載っていなかったら、密輸だ」と呼ぶ者あり)外務省は、トラン・バン・チェットという人が二十九年の八月か九月の間に来たということは、わからぬですか。――今調べさせますから、その問質問を続行して下さい。今調べさせますが、相当時間はかかると思います。
  234. 小林孝平

    小林孝平君 私は、さらにこの問題を御質問する際に、それによって質問のやり方が違ってくる点がある。これを一つお願いをいたします。  この久保田豊氏は、ことしの三月十八日でしたか、衆議院の外務委員会に呼ばれて、いろいろ証言をしております。それと私が調べましたこととは、非常に違いがあるのです。従って、それらの点をあれこれ考えまして、質問をするのに、将来、久保田さん並びに植村さんというような人に話をする機会があるかどうかによって、私の質問のやり方が違うわけです。従って、この際、私は当委員会に、ぎょうとは申しません、適当な機会に、植村甲午郎氏、久保田豊氏、それから松下光広氏の三人を参考人または証人として喚問をして、われわれに話を聞かせてもらいたい、こういうことをお願い申し上げます。それを直ちに相談されまして、そうしてそういうことができるかどうか、それによって私の質問の仕方は違いますから……。
  235. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっと、議事進行小林君の手持ちの質問材料というのは、なかなか複雑怪奇なようですし、そういう貴重な質問を条件がそろわぬままでやるというのも、やはりわれわれ問題だと思いますから、ちょうど幸い入管の方で今調べておるわけですから、暫時休憩をしてもらって、三人、証人または参考人で調べられるというふうな要求等も出ているわけですから、若干、その辺一つ理事会で御相談ずるような機会を持ってもらいたいと思います。(「異議なし」「反対」「休憩」「続行」と呼ぶ者あり)
  236. 小林英三

    委員長小林英三君) それでは、そのトラン・バン・チェットという人の入国については、法務省の入国管理局の所管でありますから、今同局で調べ中であります。しかしすぐどうこうということは、今申し上げられません。
  237. 亀田得治

    亀田得治君 だから、その間だけ、ちょっと……。
  238. 小林英三

    委員長小林英三君) ですから、小林君の御質問はこのまま続行をお願いした力がいいと思いますが。
  239. 小林孝平

    小林孝平君 私は、亀田君の動議委員長がやられるのに参考に申し上げますが、私は、その参考人の話を聞けるかどうかによって、このやり方が違うのです。そういう話が聞けるなら、ざっとやるし、もし聞けないなら、徹底的にやる、だから、それを聞けるか聞けないか、一つ……。
  240. 亀田得治

    亀田得治君 このまますわっているのは、総理大臣も、芸のないことだし、ちょっと休憩してもらいたい。
  241. 小林英三

    委員長小林英三君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  242. 小林英三

    委員長小林英三君) 速記をつけて。  ただいま小林君の質問中、お話のありました件につきましては、後刻理事会協議することにいたします。  小林君の質問の続行をお願いいたします。
  243. 小林孝平

    小林孝平君 要するにですね、先ほども申し上げましたように、芝の某料亭でもってチェット氏と久保田豊氏が懇談をしまして、翌年、御承知のように、久保田氏はビルマの賠償による喧源開発工事もやっておりますので、ビルマに私は翌年行くから、その帰途サイゴンに立ち留り、具体的にいろいろ打ち合わせをしましょう、こういうふうに確約されたわけであります。そこで当時、久保田氏はトラン・パン・チェット氏に、自分が権威であるというふうに、わしが適任者であるというふうに思い込ませる資料は何であったかというと、戦時中に日本が調査いたしました仏印資源調査団の報告書の電力編をもとにしてこの信用を博したわけです。そこで翌年の三十年二月の下旬に、久保田氏は約束の通りビルマからサイゴンに行き、チェット氏を訪ね、さらに南ベトナムの主席ゴ・ディエンディエム氏に会ったのであります。このとき松下氏と相談をいたしまして、これはこの仕事を確実に自分がやるようにするにはどうしたらいいかと考えまして、これはビルマ等の例から考えましても、賠償にすれば確実にこれは自分の仕事になる、こういうふうに考えまして賠償の活を持ち出し、賠償のワク内でダニムの工事をなし得るよう自分が努力したいと申し出たのであります。  ここに至っていよいよこの賠償の問題がクローズ・アップされ、重光葵氏等が考えておった経済協力でもってやろうという線が立ち消えになったわけであります。ここに――外務大臣はそんなことは前のことでわからぬとか、事務当局はいろいろ言うけれども、根源はここにあるんです。これをいかに具体化して、確実に三千七百万ドルの工事をやるようになったかというところが問題なんです。これはあなた方に質問をすればいいのですけれども、お答えになりませんので仕方なく私が話をしておる。政府は一体この事実をどう見ますか、この辺の真相についてどういうふうに考えられるか、私はお尋ねをいたしたいんです。外務大臣、御答弁が何かありますか。
  244. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私の承知しております範囲では、日本工営の久保田氏はベトナム側の要請に応じましてダムの設計をいたしたわけであります。この設計はむろん国際入札でありまして、フランスもこれに参加をいたしました。で、その入札の結果をさらにベトナム側としては国連の技術員の人に調査させて、そうして久保田さんの日本工営の方が設計が適当であろうということになりまして、そうして計画したという事実を知っております。
  245. 小林孝平

    小林孝平君 そんなことは国会答弁で言われているので、そんなことで承知するなら、私がわざわざここでやる必要はないのです。そんなことじゃないのです。この辺の真相について、南ベトナム政府の某高官から日本の某氏に寄せられた手紙が明らかにこの事情を物語っております。これを一つ御参考にお見せいたします。……これは親書でございますからお見せするわけにはいかないのははなはだ残念でございますけれども、南ベトナム政府の某高官から某氏にあてられた手紙でございまして、その内容の写しの一部でございます。これをお見せすれば非常にぴったりくるのですけれども……。一九五五年二月の二十八日サイゴンでもって発信されたものであります。いろいろ問題がありますけれども、差しさわりがございますので……。この手紙を見ますと、あまり差しさわりのないところを申し上げますと、久保田氏は次の条件のもとにこの仕事を取るチャンスがある――いろいろ書いてあります。  その中に、戦時賠償のワク内で出資するよう申請するようにすればよい、そうすればこの仕事が完全に取れることになるであろうと書いてあるのです。これは重要なことでないかと思うのですね。これがだんだん発展しているのです。  そこで、私が先ほど久保田氏の証人喚問を言いましたのは、この三月衆議院の外務委員会でお話しになった、わしは経済協力でやるつもりだったが、いつの間にか賠償になった、こういうふうにお話しになっておりますけれども、それは事実に著しく相違いたしております。それでなお同氏は、サイゴンから帰国されましたとき某所で左のようなことを語っております。サイゴンでいろいろの話を言われましたあと、確実にこの事業を取るためには関係当局にあることをしたらいいということを暗にほのめかされた、こういうことが書いてある。これは国会速記録でございませんけれども、ここに記録があるのです。私は、国民の血税をもってする賠償の問題が、こういうことからいよいよ具体的になっていったということは非常に問題ではないか。国民の全部は――大衆はですね、懸命ですよ。何かあるなとみんなは現実にどういうことが行なわれたかということはわからぬけれども、これはくさいと、現に自民党の中にでも、こんなベトナム賠償なんかおかしいといってそっぽを向いていられる方はたくさんあると聞いておる。現に河野一郎氏あたりは、はなはだ申しわけありませんが、岸さんは金払うことばっかりやつていると言ってアメリカに行かれたそうであります。こういうようなことで、これは非常に私は問題であろうと思います。さらに、このあと久保田氏は南ベトナムより三月十八日帰国しまして、各方面――関係方面に報告するとともに、日本工営のダム調査に乗り出しの準備となったわけであります。さらに同年四月来朝いたしました、先ほど申し上げましたトラン・バン・チェット建設大臣と話し合い、賠償のワク内にダムの発電工事を包含すべきであると、日本側当事者として――この当事者というのはちょっと複雑な表現でございますが――進言しておるわけであります。結局、日本工営は賠償のワク内ということでダニム工事の設計の仕事を獲得、実施し、莫大の設計費を得たといわれております。この設計によって電源開発本工事の事業予算が組まれ、これは三千七百万ドル、邦貨にして百三十三億円でありますが、これが組まれ、そうしてそれがそのまま今度の賠償の全額になっておるのです。これがそのまま日本側の賠償の主要部分を占めておるということはもう一部周知の事実なんです。これを外務当局は知らぬとか何とか言ったって、これは問題になりませんよ。  さらに御参考のために申し上げれば、久保田豊氏は、ビルマのバルーチャンの電源工事は彼が設計している。これが賠償によってやっているのです。この監督をしている。さらに入札は鹿島組でありますが、日本工営はその電源工事もやっています。また、インドネシアのカリブランタスの灌漑並びに発電工事も賠償に関係がある。この工事も設計調査をやっている。この東南アジアにおける日本の賠償関係のことごとくが彼の手を染めている事業です。莫大の利益をおさめているといわれております。しかもその利益は全部われわれ国民の血税ではありませんか。しかも今回は、これは賠償でやるんだから金は出してもいいじゃないかというので調査費を取っている。そこで、私は普通の場合ならお聞きしませんよ、設計費として受け取った金は結局賠償の中から出されるのだから、われわれの血税でありますので、久保田豊氏がこの設計料として受け取った金は幾らであるか。一説には八千万円あるいは一億円といわれております。一体これは幾らになっておるのか、具体的にお尋ねをいたします。このくらいのことは……、私は外務大臣にお尋ねいたします。
  246. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 久保田氏が今申し上げました設計料として取ったのは、われわれ聞いておりますのは、四十四万五千ドルというふうに聞いております。
  247. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林君、先ほどのトラン・バン・チェットの入国の件についてアジア局長から調べがあったそうであります。
  248. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 法務省入国管理局にお聞きいたしましたところ、二十九年八月三十一日から九月二十三日まで日本に滞在いたしております。
  249. 小林孝平

    小林孝平君 これはそんな金額ではないのです。これはもう周知の事実なんです。そこで私は、これは予算に関係がある、われわれの税金を賠償として支払う、そのうちから払われるのだから、私はこういう点が明らかにされないとさらに問題を進展させるわけにはいかないと思うのです。従って、先申し上げたように、本人に来てもらって、そうしていろいろ実情を聞いてその上でまた質問をしたいと思うのです。どうなんですか、聞いただけじゃだめですよ、どこで調べた……。私はこんなことは、ほんとうは私の性格からあまりやりたくないのです。そこで先ほども申し上げましたように、世に賠償御殿というようなことを言われて、渋谷、代々木冨ケ谷町に久保田さんのお宅がある、そうしてその付近の人が賠償御殿と言うのみならず、外務省の役人すらもそういうことを知っておられる。また、これは広くそういうことは言われている。これはあなた、この東南アジアの賠償に関係して彼がそういうことになったのではないかと、こういうことでありますので、私はこの予算の審議上そういうでたらめな金もうけが行なわれるようでは、予算委員会の使命にも反すると思って私はこの質問をやることになったのです。それでさっきも申し上げたように、いささかも誤まりがあってはならぬと思って、他国の某高官の手紙まで御披露してやるというようなことはいろいろ差しさわりがありますが、私は念には念を入れて各方面から調査いたしました。先ほども申し上げましたように、賠償御殿のようなことを軽々しく言うのはいかぬ、われわれ貧乏人だから、ちょっとした家に住んでいても賠償御殿などと言うのだとひやかされても困ると思いまして、この委員会の直前に自動車で渋谷まで行って、現実にこの目で見てきているのです。そういう準備をして私はお尋ねしているのでありますから、外務省当局も十分一つその辺を考えられ、将来、そうだったのかというようなことがないように一つしてもらいたいと思って私はやっているのですから、もう少し資料を整えられて御答弁を願いたいと思います。
  250. 小田部謙一

    政府委員小田部謙一君) 久保田豊氏がバルーチャンの設計工事をいたしていることも事実であります。また、カリブランタスの設計工専をいたしていることも事実であります。これは久保田豊氏の従来の経歴が示します通り、発電のコンサルタントとして有数な者であるからと思っております。なおまた、ベトナムのダニム・ダムの設計調査費用の四十四万五千ドルと今大臣が申し上げましたが、内、外貨と現地通貨といたしまして両方ともすでに商業契約で金は受け取っております。
  251. 小林孝平

    小林孝平君 この四十四万ドルというのは邦貨に直せば一億六千万円、実に莫大な費用なんです。だからこういうことが経済協力でやれるものを、わしが仕事をやるからそのために賠償にしろ、賠償にすれば結局日本から金がくるのだから幾ら取ってもいいというようなことは、しかも言いたくはありまえんでしたが、先ほど申し上げたようなこともあって、非常に問題じゃないかと思うのです。そこで私は、もう少しよくその辺をお調べになって、私はこれ以上……、先ほどからいろいろお尋ねした点も調べてありませんから、お調べになって……、そうして私はお尋ねいたしたいと思うんです。(亀田得治君「これで一応小林君のを打ち切って下さい」と述ぶ)あと保留しまして……。
  252. 小林英三

    委員長小林英三君) どうですか、いいですか。理事者君、残りは保留をしておいていいですか……。(「保留でけっこう」と呼ぶ者あり)  小林君の質疑時間は一分半ばかり残っておりますが、このまま保留いたしまして、次の質問に移りたいと思います。   ―――――――――――――
  253. 西田信一

    ○西田信一君 私は、まず貿易及び為替の自由化に関連をいたしまして、数点について質問をいたしたいと思います。  まず、お尋ねをいたしたい点は、大蔵大臣は財政演説におきまして、貿易の自由化を促進する、こういう方針をお示しになりまして、関係各界に対しまして、積極的な必要な態勢を整備してもらいたいという希望を国民に述べられました。この積極的な必要な態勢の整備ということは、具体的にどういうことを申しておられるのでございますか、その点をまずお聞きいたしたいと思います。
  254. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御承知のように為替貿易を自由化いたして参りますと、国際競争は非常にはっきりし、また激甚になる。この点は容易に想像のできるところでございます。従いまして、企業自体が十分その国際競争にたえるように体質の改善をやってほしい、また政府もそういう意味においてあらゆる面から施策を考慮して参る、こういう考え方でございます。
  255. 西田信一

    ○西田信一君 業界に対して体質改善の準備を進めるようにということは、具体的に内容はわかりませんから明確でございませんけれども、そういう趣旨はよくわかるのでありますが、そこで私はこの貿易の自由化という世界的趨勢に対しましては、日本もその圏外であり得ないことはよく理解ができるのであります。しかしながら、これに対しまして、業界のそういう態勢整備ももちろんこれは大事なことでありますが、同時にやはり国の政治というものがこれに対しまして十分な配慮がなければならないと考えるものでございまして、まずそういう意味においてお尋ねをいたしたいのでありますが、第一にお尋ねをいたしたいのは、関税政策についてでございます。  日本の関税率というものは、これは占領時代に、まあいわば一方的にきめられたままであると思うのです。で、貿易の自由化に伴って、この関税政策というものは、産業政策的な立場に立って全面的な改正をする必要が、こういう貿易の自由化という面からきわめて今日は必要ではないか、かように考えるのでございまするが、この関税率の問題を中心とする関税政策について、大蔵大臣はどのように考えておられまするか、並びに通産大臣の御見解も伺っておきたいと存じます。
  256. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 為替貿易の自由化、これの実施に移します場合はいろいろ考えなければならない点がございます。その第一は、自由化したる後に日本の国際収支は十分それにたえ得るかどうかという問題でございますが、この点は、今日の外貨準備高をもっていたしますれば、従前のような心配は一応解消したものだ、かように考えます。そうして国際競争の場裏にわが国の産業も参加して、それでひけをとらないようにするということは、やはり体質を改善いたしまして、価格あるいは品質の点において十分競争ができるようにするということ、こういう考え方でございますが、そういう意味で、合理化を推進するとか、あるいは近代化を推進するとかいたすわけであります。しかしながら、同時に、この自由化をいたしました後、国内産業に及ぼす影響、国内の特別な保護政策をとっている産業に、これに一体どういう影響があるのかということは、今御指摘のように考えなければならないのであります。それを関税の制度によってカバーしたらどうか、こういう考え方もあることもわかりますが、これも限度のある問題でございまして、本来から申しますならば、関税障壁を設けないで、自由な競争力を持ち得る、そういう状態に経済状態を持っていくことが私どものねらいなんであります。そこで、関税方面におきましても、部分的に、それぞれ修正して参るものはございます。その点が特にガット総会等でいろいろ議論されるところであります。で、最近この価格差の調整、貿易が自由化された暁において価格差をいかにして調整するか、こういうことがしばしば論議されるわけであこのごろの発展ぶりは非常なものでごります。その点では企業の合理化を進めることによって、私どもは価格差を縮めていきたいということを考えますが、同時に、ある程度関税もそれに加味したらという意見もある、これは私ども承知いたしております。しかし、価格差調整のために関税を大きく取り上げることは、本来の自由化の方針から見まして、私は不適当だ、かように実は考えております。
  257. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 貿易の拡大と自由化、しこうしてまた国内産業の保護ということは、相反する状態でございますが、私といたしましては、貿易の拡大、自由化の方に進んでいきたい。しこうして、そのために起こりまする摩擦につきましては、これは二つございます。日本の産業の合理化、発展と、そうしてある程度の関税、こういうことであると思うのであります。その点は日本の産業貿易発展のために、できるだけ摩擦を少ないようにやっていきたいと考えております。
  258. 西田信一

    ○西田信一君 ただいまの御答弁の中に、産業合理化ということをお述べになっておられますが、これは当然考えられるべきでありまして、私はここで聞きたいのは、国内におけるところの問題ではなくて、国際的な視野に立つところのまあ合理化あるいは競争力の涵養、こういうことが必要であると思うのでありますが、政府の日本の産業構造をこういう立場からどういう方向に持っていこうとされるのか、できますならば具体的に一つ伺っておきたい。
  259. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 各種の産業によりましていろいろ違っております。競争力を強めるために今まで施策をして参っておったのであります。しかし、なかなかそればかりではいかない。産業の合理化、機械化と申しましても、やはり私は一番日本の輸出に対して障害になっているのは、国内金利の高いということが非常な影響を及ぼしておることと思います。従いまして帝業関係のわれわれといたしましては、各産業につきまして合理化をはかるとともに、大蔵省に向かってできるだけ金利の軽くなるようにということを念願して話を進めておる次第であります。
  260. 西田信一

    ○西田信一君 金利の問題にお触れになりましたが、後刻この問題はお尋ねをいたしますが、そこで貿易の自由化ということは、これは世界的な趨勢である。このことはだれしもいなめないのでありますが、ところがその反面、一面におきまして、ヨーロッパにおきましても、あるいは南米におきましても、あるいは北米地域におきましても、それぞれ共同体としての、何といいますか、国際的分業ブロック経済と申しますか、こういうことが、これがはっきりいたして参っておるわけであります。そういう世界的な趨勢の中にありましてアジアにおきますところの、いわゆるブロック経済あるいは共同体としての国際的分業というようなことが、これが成り立ち得るかどうか、可能であるかどうかということに対する見解を通産大臣から伺いたい。
  261. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お話の通り欧州におきましては六カ国の共同体、そうしてまたイギリスを中心とした七カ国の自由連合、いろいろございます。ことに六カ国の欧州経済共同体のざいます。彼らはアフリカ方面の自分の国々の関係とやはりブロックをまた広めようといたしております。そういたしますると、共同体の方で原材料の輸入が東南アジアよりもアフリカにとられるということになって参りますると、なってきつつございまするが、そうなりますると、やはり東南アジアの国々は困るだろう。われわれは自分の置かれた立場において東南アジア諸国ともっともっと緊密な経済協力をはかっていくべきだと考えておるのであります。
  262. 西田信一

    ○西田信一君 私はただいまの通産大臣のまあお考えは妥当であると存じまするが、そこで東南アジアは、今御承知の通り後進地域であることは門煙いない。その後進地域といわゆる経済相互援助という形においてこのブロック経済を成り立たせていかなければならないと考えるのでありますが、実際問題といたしまして後進地域であるこれらの東南アジアとの貿易関係におきましては、双務的な貿易方式のメリットと、それから先ほど来世界的趨勢であるところの貿易の一般的自由化、こういう問題とは非常に矛暦する面を持っておると思う。こういうつまり自由に貿易をいたしますると、これは物の安いところから物を買い、高いところに物を売るということになると思いますが、こういう点におきましては、東南アジアのブロック経済というものは、いわゆる後進地域との関係、この関係というものは非常に実際の面におきまして矛盾する、こういうことになると思うのでありますが、この矛盾に対してどういうふうに処理されようとするか、その点のお考えを伺っておきたいと思います。
  263. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お話の通りでございまして、御承知の通りここ二、三年東南アジアの方は輸出が伸びない、また輸出品の価格が下がって非常に困っておられるというような状況でございます。われわれといたしましては、できるだけのいわゆる資金援助と申しますか、物資を送ってかの国の開発をはかり、彼らが自己の力で日本の物を輸入していけるような方法を講じていきたいと思います。また、われわれの考えのみならず、御承知の第二世銀という問題も起こっております。またドイツにおいては、相当外貨がたまっておるので、東南アジアの方へ資本の進出をしていきたい、先般もシャハト氏が来られまして、こういう提案もわれわれにせられたのであります。われわれも非常に賛成であります。日本の力のみならず他国の力と協力して東南アジアの開発をしていきたいと考えておるのであります。
  264. 西田信一

    ○西田信一君 産業合理化をはかっていくための重要なポイントといたしまして私はまずあげなければならぬのは技術の面、それから労働の面、それから先ほど通産大臣が申されました金利の面並びに税制の面、これらの諸点がこれは重大なポイントとして考慮を払われなければならぬと考えるのでありますが、そこで経営体としての体質改善をはかっていく、またその意味におきまして自己資金の充実をはかる、こういうためには、やはり私は税制の面からもこれは相当考えてやらなければならぬ点が多いと思うのでありますが、こういう点に対しまして大蔵大臣は何かお考えがございますかどうか、お伺いをいたします。
  265. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) もちろん税制のあり方、これは十分考えなければならないことでございます。昨年税制調査会の設置につきまして御賛同を得まして、その際にやはり企業課税のあり方全般について十分検討していくということをきめまして、ただいま調査会の審議を進めておる次第でございます。午前中に加藤委員からも御質問がございました。その際もできるだけ早くというお話でございます。私どももこの税制調査会当初出発いたします際、大体三年ぐらいかかるだろうということを申しましたが、全部が終了するまでもなく、必要なものから、きまったものからやはり順次取り上げていくという考え方でございます。
  266. 西田信一

    ○西田信一君 私は通産大臣と全く同じ考えを持つものでありますが、企業における金利という問題は、きわめてこれは体質改善上大きな要素を占めると考えるものでございます。ことに金利と申しましても、ただ単にこの金利というものは、あらゆる企業の面に金利が累積をいたしておるということを考えますときに、金利というものは、これは非常に軽視できないものであると考えるのでありますが、最近銀行の標準金利の引き上げであるとか、あるいはまた公定歩合の引き上げとかいうことがかなり話題に上っております。で、大蔵大臣は過般公定歩合の引き上げ等は考えないという御声明をなさったようでありますが、しかしながら、なおかっこういう問題が低迷いたしておることは事実でございまして、私はむしろ先ほど通産大臣が申されましたように、日本の金利水準と国際金利水準とは非常に今懸隔があることは、これはだれびともわかっておることでありますが、こういう意味におきまして、むしろ私は金利の引き上げという時期ではなくて、金利政策といたしましてはあくまでも低金利政策というものが堅持されて、そしていわゆる国際金利にだんだん近寄って参る、こういうことが根本的に考えられなければならないと考えるのでございます。かつて、戦前におきましては、国の予算を組む場合に、公債政策がとられておった。公債政策がとられておったときには、これはいわゆるその面の金利の支払いということがやはり国の経済の上から考えなければならぬのでございますからして、この低金利政策というものが大蔵当局におきましても相当強調されておったが、最近、戦後におきます国の予算の上に公債というものが取り上げられておらない今日におきましては、どうも何といいますか、この低金利政策というものがともすれば忘れられがちになるんじゃないか、こういうふうに実は見られる面が決して少なくないのでございまして、この貿易の自由化をめぐるいわゆる金利政策というものは、国民に一つはっきりお示しを願いたいと思うのでありますが、もちろんこれは時の経済の流れに応じまして、いわゆる金融調整上の措置というものは、これは決してやつてならないとは申しませんけれども、いわゆる金利政策の大筋というものは、低金利政策というものが堅持されるということがはっきりしなければならないと思うのでありますが、大蔵大臣の御見解を一つはっきり伺っておきたいと思うのです。
  267. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 金利につきましては、私、大蔵大臣に就任いたしまして以来、国際金利水準にきや寄せするという基本的な方針を明示いたしまして、その線を今日まで堅持して参っております。順次わが国の金利は下がって参っております。一方、アメリカ等の金利がだんだん上がってきたという状態でございますので、その差は比較的縮まってきておるということでございます。しかし、これは申すまでもなく、誤解のないように願いたいのでありますが、これは長期的な基本的方針としての金利のあり方についての私どもの方の考えであります。やはり金利は、ただいまの御意見のうちにもありましたように、短期的には、秤済活動に対する調節的作用、これを持つのでございますから、そういう意味において、ときに上下することがあるだろうと思いますが、これは、やはり長期的に見ますならば、国際金利水準にさや寄せしていく、そういう方向へ進んで参る考えでございます。
  268. 西田信一

    ○西田信一君 貿易の自由化と合わせて、当然これは為替の自由化ということが並行して行われなければならぬということは考えられるわけでありますが、そこで、そうなりますというと、どうしても外資の流入ということが、これは多くなって参ることは当然であろうと存じます。その結果といたしまして、金利差が非常にあるという現状におきましては、外国資本によるところの、何といいますか、日本の産業に対する一つの実権を持つといいますか、これを押えるといいますか、こういうようなことが懸念されないではおれないと思うのでありますが、これらに対するところの予防措置というものを、どのようにお考えでございましょうか、伺っておきたいと思います。
  269. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  外資導入につきまして、従前におきましては為替収支の関係から、いろいろの制限等寸を考えたこともございます。しかしながら、最近の情勢等から見ますと、国際収支の面からということは考えなくて、経営の面から、最近の経済情から見まして、また国際情勢等から見まして、外資が入ってくることは、私どもは歓迎すべきことじゃないか、かように思っております。
  270. 西田信一

    ○西田信一君 外資が入ることは歓迎すべきことであるということでありますが、その反面におきまして、何といいますか、岡内産業に対する外国資本の何といいますか、圧力といいますか、そういうことが懸念をされるというふうに考えるのでありますが、そういうことに対して、何らかの対策といいますか、予防措置というようなものが考えられなくてよろしいか。こういうことを引き続いてお答えを願いたいと思います。
  271. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 外資法で認めておりますのは大体三割見当というようなことで、経営権については一応の見通しは立っておるようでございます。しかし、最近の情勢から申しまして、やはり株式そのものを持ちたいという非常に強い熱意が外国資本の中にあるようでございます。ただいまも申し上げるような点で、名事業別に、やはり適当に考慮していきたいと思います。
  272. 西田信一

    ○西田信一君 もう一点大蔵大臣にお聞きいたしますが、先ほど来の御答弁によりまして、産業界が貿易自由化に耐え得るところの体質を、みずから諸般の面から備えていかなければならぬことは当然でございますが、しかしながら、今日、日本の産業が、いわゆる金融依存経済でありますだけに、私は、金融機関そのものの、これの体質改善といいますか、合理化といいますか、こういうものも決して忘れてはならない。最近の銀行その他の経営状態から見まして、こういうことは言い得るのではないかと考えるのでありますが、金融機関の体質改善といいますか、合理化、この面について大蔵大臣はどのように御指導なさる御方針でございましょうか。
  273. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 大蔵省といたしましては、お説の通りだと思いますので、金融機関の内容を充実さすことについて特に注意して指導しておる状態でございます。
  274. 西田信一

    ○西田信一君 私は、この貿易自由化ということは、これは日本の将来にとって喜ぶべき方向であろうと存じますが、その反面におきまして、自由化によるところの、まあ一部産業に対する影響、これは決してなおざりにできないと考えるのであります。ことに私は、中小企業等に対するところのしわ寄せというものは、これは十分に警戒を要すると存じます。さらにまた、特に農業あるいはこの鉱業――山の方の鉱業、こういう方面に対する影響というものが、これは相当深刻であると考えるのでありますが、こういう弱い産業に対する、脆弱面に対する影響を、どのように考えていかれるか。この面を一つ伺っておきたいと思うのでございます。
  275. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま御指摘になりますように、自由化と申しましても、各産業別にそれぞれ私どもが注意していかなければならない点があるわけでございます。大きく申しては国際的な競争力の問題がございますし、また、業者間相互の過当競争を防止することも、これはもう申すまでもなく大事なことでございます。また、ただいま御指摘になりました国内において特別に保護をいたして参っております産業、特に農業等につきましては、価格差の調整問題を特に私どもは気をつけていかなければならない、かように考えております。鉱業の面におきましては、おそらく一番今すぐ頭に浮かびますものが石炭鉱業の問題だろうと思います。外国炭などがそう自由に無制限に入ってくることなどは、普通には考えられません。原料炭自身につきましては相当の数量をきめておりますが、一般普通石炭等は、これはほとんど入ってくるものがございませんし、そういうふうなことで、それぞれの産業についての特殊性を考えまして、それぞれ考えていかなければならない。ただ冒頭に申しましたように、何でも関税障壁でこれを片づけるということは、本来の自由化の基本的精神を失うものだと、かように考えますので、やはり一面産業自体も経営の合理化等をはかりまして、そうして、国際競争に耐え得るような力を養ってもらいたいものだと、同時にまた私どもとしては、その時期的な問題として関税等もある程度考えていくということにならざるを得ない、かように考えております。
  276. 西田信一

    ○西田信一君 この機会にちょっと承っておきたいのでありますが、それは、政府の金融機関のうち、この前の本委員会におきまして、私は大蔵大臣に質問をし、大蔵大臣はこれに対し善処を御約束下すった問題でありますが、それは、ただいまの低金利政策と関連する問題でございまして、それは要するに後進地域開発のために特に政府が特設した金融機関、具体的に申しまするならば東北、北海道の後進地域を開発するための特別な金融機関がございます。これが非常に金利が高いために、この開発遂行上相当の障害がある。これに対しましては十分一つ引き下げについて考慮を願いたいということを申し上げまして、考慮を約束されておったわけでありますが、特に私今日お尋ねをいたしたいのは、この北海道東北開発公庫の金利の問題でございますが、これが現在九分になっておる。ところが、同じ開発のためのいわゆる開発銀行の金利は、平均いたしますと標準金利は九分でありますけれども、政策金利適用が大部分でありますから、六分八厘何んぼになっておるのであります。これがほとんど同じ目的であり、一つ地域を限ってのこういう特設機関でありますが、こういう高い金利は、これはなかなか産業振興上非常な隘路になっておる。この地域に対しましてはどうも適当でない、かように考えておるのでありますが、ところが、公庫の経営状況を見ますというと、もう始めてから、二、三年目で国庫納付金ができるという状態になっておる。これは今年度できるのであります。来年度も同じ金利で参りますならば、現在政府の出資金というものはずっととまっておりますが、これで自分でまかなって、なおかつ国庫納付金ができる。いわゆる政府の出資金に対する配当金に私は相当すると思うのでありますが、これが本年度分すでにでき、来年度は現在の原資をもって参りまするならば、おそらく七分か八分の国庫納付金ができる、出資金に対しまして。その次の年になると一制何分あるいは二割近い国庫納付金、国の出資に対する配当ができるという格好になる。これはそのような恵まれない地域の経済人が、高い金利を払って、その余りが国にはね返ってくるということになるわけでありまして、これはまあ一つの金利引き下げの余地があるという具体的な例を申し上げたのでありますけれども、これはその経営内容がそういう状態であるということでありまして、それよりも根本的な問題は、こういう所ではもっと低金利な金融をしなければ、ほんとうの産業開発がむずかしい。ことにいろいろ悪条件がありまして、せめて金利がもう少し、一分ぐらい下がらなければならぬのじゃないかと思いますが、具体的な問題、内容を申し上げましたので、きっとおわかりいただけると思いますので、こういう問題に対するかねての御検討は、どのように進んでおりますでしょうか、お伺い申し上げたいと思います。
  277. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 政府関係の金融機関あるいはまた北海道等につきましては北海道東北開発公庫等の金利の問題でございますが、ただいま国庫納付金が出たからと、これはもっと金利を下げてもいいじゃないか、こういう御意見のようでございますが、金利そのものは、これら政府特設機関にいたしましても、一般金利とやはりにらみ合いのもとに実は金利がきまっておるのであります。特殊なものについての政策金利はもちろん見て参りますが、政策金利の範囲がどの程度になるかということは別といたしまして、その納付金がだんだん出たから金利を下げてもいい、こういう議論は、私ども実は賛成しかねておる。これはやはり一般金利との関連において考えていくべきであるというのが本来の筋であります。しかし、私ども北海道、東北地帯を開発することの必要なことはよくわかっておりますし、また、今日納付金まで出るように成績が上がっておると申しますことは、非常にこれらの機関の資金がよく使われておるということだろうと思いますが、この金利の問題と資金量の問題と、この二つの問題から、やはり産業開発にどういうふうに寄与するか、十分に考えて参りたいと、かように考えております。
  278. 西田信一

    ○西田信一君 ただいまの御答弁に対して繰り返してお尋ねをいたしませんけれども、誤解がございますといけませんので……。私は、納付金ができるからこれが金利引き下げのおもなる理由であると申し上げておるのではないのでございまして、そういう面からも十分余地があるが、根本的にお考えを願うべきであり、しかも、政策金利と申しますると、私はこういう考え方もできると思うのであります。北海道、東北のような、いわゆる後進地域で資源のある所の開発ということは、これはいわゆる地域金利という立場における政策的な見方ということも、これは決してできないことはない、かように考えておるわけでございまして、そういう意味におきまして、一つ経営の現況からも御検討の余地は十分にあるのではないかというふうに考えますから、十分の御検討を希望いたしたい。このことはさらにお尋ねはいたしません。時間もございませんから、次の問題に移って参ります。  これは後ほどまとめて総理からお答えをちょうだいいたしたいと思うのでありますが、しかしながら具体的に事実を申し上げませんとわかりにくいと思いますので、私は最近のこの人口の過度集中というようなこと、これは人口だけでありません。産業の過度集中ということに結びついて参るわけでありますが、こういう傾向が非常にひどい。このことを一、二の具体的な例を引き出しまして、そうしてさらに総合的な政府の施策についてお伺いいたしたいと思うのでありますが、その具体的な例として、最近の東京周辺におけるところのこの人口の増加、また、これに伴うところのいろいろな交通の災い、交通禍、こういう問題は、これは無視できないと考えるのであります。私は、これは政府のいろいろなリポートを中心にして調べてみますと、たとえば自動車の問題を一つ取ってみまするならば、東京都におけるところの自動車の増加というものは、これは驚くべきものがございます。現在東京都内だけで四十五万台の自動車が登録されておる。それから東京につながる隣接の府県を合わせますというと八十三万台の自動車が動いておる。そうしてこの自動車が、さらに驚くべきことには、東京都では毎月七千五百台から八千台ふえておる。東京の周辺の県を合わせますとこれが約倍。そうしますと、月に一万数千台ずつふえておる。年には十四、五万台ふえるわけです。こうやって参りますと、現在でもほとんどときには新橋から八重洲口まで車で行って一時間もかかるというような状況。こういう状況においてこの上どんどん車がふえて参る。これは車だけのことを問題にするのではありませんけれども、これは人口の過度集中の一つの現われとして、私は重視しておるのであります。ところが、この車のふえておるだけではなくて、交通事故なんというものは非常にふえておる。統計を取ってみますと、昭和三十二年には二万二千件でありました東京都の交通事故が、去年は十万件にふえておる。四倍にふえておる。死傷者の数はどうかというと、これは今度の伊勢湾台風でだいぶこれは大きな人的被害がありまして、死者、行方不明、死傷者合わせると四万八、百四十九人だけれども、東京都だけで交通事故の死傷者が四万四千四百八十人、伊勢湾台風を上回るところの――死んだ人の数は少し少ないけれども――こういうような死傷者が出ておるのです。しかも交通吾故は十万九千七百五十一件、東京都だけで、こういうことでございまして、周辺を合わせたならば、おそらく相当のことでありましょう。こういうことは、伊勢湾台風のようなこういう大災害に対しましては、これは世間の耳目を大きく集めておりますけれども、このように四万何千人も東京都だけで死傷者が出ておる。これは忘れられておる。顧みられておらないことであって、これは決して小さい問題ではないと思う。こういうようなことで、しかもどんどん自動車がふえて参る。私は、運輸大臣とそれから建設大臣であり、また首都圏整備委員会委員長である村上さんにお尋ねいたしたいのでありますが、一体、このように自動車行政とそれから道路行政というものがばらばらになっておる関係だと思いますが、このようにどんどんふえて参る、きりなくふえて参るんだが、一体、自動車を走らせる許容の面、道路の限度はどうなのか、あるいは許可とか登録なんというものは、どんどん、どんどん景気がよいから自動車はふえるでございましょうが、こういうことは野放しにしておいていいのか。運輸行政の立場あるいは道路行政の立場から、まず一つ両大臣からこういう問題についてどうお考えになっておるのか、お伺いしたい。
  279. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) お答えいたします。最近における東京都内の交通の激甚さは、御指摘の通りであります。従いまして、これの根本的な解決をはかるためには、何としても人口の集中、過度集中を、これを阻止することが肝要であろうと思いまして、ただいま首都圏整備委員会等におきまして衛星都市を建設いたしておりまして、工場あるいは学校等をできる限り郊外に分散するというようなことも一つの方法であろうと思います。しかし何と申しましても現在の立場から申しますれば、この輸送力の強化ということが第一であろうと考えまして、地下鉄の建設促進あるいはまた帝都高速度道路の建設等、これらに対しては私どもは積極的にこれを建設するように努力いたしておる次第であります。なお交通の整理につきましては、標識等の整備をはかりまして、十分交通の整備ができるようにはかりたいと、かように考えております。
  280. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) 西田委員の仰せられますように、最近の都市中心の人口の増大というものはおそるべきものがあるのでありまして、ことに東京周辺における人口の増大からくるあらゆる混乱を起こしていることは御指摘の通りであります。従いまして、運輸省といたしまして第一に今考えておりますことは、今の東京周辺における自動車の問題でありますが、これは都市交通審議会の答申等を参考にいたしまして、地下鉄道の増強を初めとし、国鉄、私鉄のハスを通じて総合的な計画を立ててやりつつあるのであります。ことに東京周辺の自動車の増加は御承知の通りでありまして、全く野放しにならない段階にきておるのであります。従って路線ハス等につきましても連行の回数の増加、路線の変更、事業計画等につきましての変更につきましては、すべてこれを認可制といたしまして、かつ必要によって港湾委員会、道路管理委員会及び東京都の意見等を徴して交通の安全の確保に努めておるような次第であります。しかしながら自家用車がまた非常な勢いで増加しておりますので、御指摘のように既存の道路許容量というものが限界線、全く飽和状態に達しつつあるのでありまして、この点はどうしても首都高速道路網の建設をすることが必要であり、またその線に沿うて今日着手しておるような次第であります。運輸省といたしましては、この高速道路を通じまして直線のバスを通す、一般交通街路からその交通量を転移せしめる、こういうことを考えておりますし、また都心部及び周辺の数カ所にバス・ターミナル等を設置いたしまして、現在のハスの輸送網の合理化をはかりつつあるのであります。なお自動車が、今おっしゃいましたように、毎月八千台くらいずつふえておりまして、十万台をこえるという状態でありますから、これに対する対策及びこれをどうするかというような問題がありますが、御存じのように自勤車の発達というものは経済拡大の一つの反映でありまして、これを、日本におきます自動車がどういうことになっておるかということを一言ここで申し上げますと、三輪以上の自動車の保有高は現在一三・一人に一台、アメリカは二・六人に一台、イギリスは八・八人に一台、西独は一七人に一台、全世界の平均は二五人一台、これはアフリカも含めて、そういう状態になって、保有の割合は日本としてはまだ非常に低いのであります。従いまして自動車の増加ということは経済の発展から当然これは許容きるべき問題でありますから、今御指摘になりましたようなこれを受け入れる態勢を総合的に立てる必要があるということで、都市交通に関するいろんな諸般の問題を考えておるのでありまして、三十三年度に始まりました新道路整備五カ年計画を推進することと、昭和三十二年五月に駐車場法を制定いたしまして、建設省と協力をいたしまして路外駐車場の整備等を促進いたしておるのであります。また、昭和三十四年自動車ターミナル法を制定いたしまして、ターミナルの建設等もやっておるのであります。地下鉄の問題も今申し上げましたように……、ちょっとこの機会に地下鉄のことを申し上げたいと存じますが、地下鉄は東京都営によります一号線押上―馬込間、十七・三キロ、帝都高速度交通営団による二号線北千住―中目黒間、五号線の中野から東陽町、大手町―下板橋間の新線の建設に努力いたしております。四号線、新宿から方南町―荻窪の線も今計画しておるような次第であります。  以上御報告申し上げます。
  281. 西田信一

    ○西田信一君 両大臣からお答えがございましたが、私も大体そういうことは承知しているのです。しかしながらこういう状況では、これはとても……、いかにそれはアメリカといいましても、アメリカのたとえば事故だって十倍もある、しかもあるいはそういうことでよろしいのかということをお聞きしたがったのでありますが、たとえばこれは自動車だけでなく、国鉄だって三倍も四倍も詰め込んで、アルバイトの若い人を雇ってうしろで押し込んでおるというような現状である。  そこで一つ時間がございませんから次の問題に移って参りますが、最近また運輸省、あるいは通産省、あるいは建設省がいろいろ考えておられるいわゆる臨海工業地帯は、これは大へんけっこうだと思います。この臨海工業地帯は、今度の伊勢湾台風等の経験に徴しまして、これは当然高潮対策が考えられなければならぬことは当然でありますが、このことはお尋ねいたしませんが、この臨海工業地帯の造成ということが、私はこういう人口の過度集中をむしろ緩和する、またこれは国民所得の公正な配分という点から考えましても、当然そうなければならぬと思うのでありますが、そういう方向に立ってこのような臨海工業地帯造成ということを考えられるのであるか、伝えられるところによりますと、最近東京湾に大きな埋め立てをやって、そうして人口を何百万もまたふやす、こういうことがいろいろその方面において考えられたようでありますけれども、私はこういうような、現在におきましてもこういう状況であるにかかわらず、こういうようなことがさらに実施されました場合におきますることを考えますというと、恐るべきものがある。ことにそういう状態におきまして、かりに不幸にして東京都におきまして予想外の、想像しない天災地変等が起きた場合のことを考えますと、これはりつ然たるものがございます。そこでこのような臨海工業地帯の造成についても、一つ方針を持っていなければならぬと思うのでありますが、これに対しまして運輸大臣あるいは建設大臣等から御方針を伺っておきたい。
  282. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) 臨海工業地の造成の問題、港湾局において全国にそれをやっておりますのは、今御指摘のありましたような都市に集中する危険と申しますか、経済的いろんな面においての考え方から、やはり経済構造を全国的に配分するというような点に相当の重点をおいて港湾局といたしましては臨海工業地帯の造成をやっているような次第でありまして、東京都におきまする膨大なる埋め立ての問題等がありますが、これは首都圏整備委員会の計画によりまして、基本的な構想がここによって行なわれておるのでありますが、今おっしゃいました点等は、各省ともよく打ち合わしまして、そういう点をくみ入れまして善処いたしたいと思う次第であります。
  283. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 臨海工業地帯の土地造成につきましては、少くとも自然に逆らって土地造成をいたすのでありますから、十分高潮対策、あるいはまた地震、あるいは地盤沈下等を考慮に入れまして、なお、今回の伊勢湾等のこの経験を生かしまして、あくまでも完璧な土地造成をする必要があろうと思っております。
  284. 西田信一

    ○西田信一君 ちょっと御答弁が私の希望とはそれておりますけれども、時間がございませんから次に移ります。  そこで、一つ自治庁長官もおられますから、私は地方自治体という立場における東京都等の、すでに九百万をこえておるこの東京都の人口状況から見まして、これを無制限に伸ばしていくというようなことが、地方自治の立場から果してどうなのか。それからもう一つ、首都圏整備委員長をしておられる建設大臣に伺いますが、先ほど東京湾埋め立てば首都圏整備委員会の方で計画しているのだということを運輸大臣がお答えになりましたが、そういうようなマンモス都市をさらに大マンモス都市に作り上げるというようなことが、日本して日本の産業構造の上から、あるいは人口の問題から適当なのかどうかということに対する御見解を伺っておきたいと思います。
  285. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 東京湾等についての埋め立て計画につきましては、首都圏整備委員会で研究はいたしておりますが、今直ちにこれをどうしようという段階にはなっておりません。従いまして、先ほどお答え申し上げましたように、ともかく郊外地に衛星都市を作って、そうしてこの人口の緩和をはかりたいと、かように考えておる次第でございます。
  286. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) ただいまお話になりましたような超大都市の発生につきましては、私もかつて東京都の経済局長なり、行政を担当しておったことがあるのであります。当時、疎開その他によりまして、四、五百万くらいの人口になったこともあるのでございますが、あまりに大きい人口、過大都市になりますと、食糧の配給の面、あるいはまた清掃、屎尿問題、各般の総合行政の上から、憂慮すべき問題があるということが、当時やかましく論じられておったのでありますが、まだまだ過大都市の傾向になっておるのでありまして、この点はやはり地方団体といたしましても、ある程度の総合行政の上から限界があると私は考えておるのでありまして、先ほど来各大臣からもいろいろ御答弁が行なわれましたような方向にいくべきではないかと考えております。
  287. 西田信一

    ○西田信一君 ただいまの問題につきまして、締めくくりとして総理から伺っておきたいのでありますが、私はこの辺で相当思いきった措置をとらなければならないと考えます。同時に、この制限の面における措置だけではいけないのでありまして、これが国内における産業分散、人口分散という立場から、これはもっと積極的な手が打たれなければならないと考えるのでございまして、建設大臣が申されましたような、東京周辺に人を散らばすというような、そういう消極的な問題ではないと考えるのでありますが、東京都のある種の人口制限、こういうことを実施するお考えはおありにならないか。さらにまた、これら人口制限に伴うところの産業の分散、人口の分散ということに対して、思い切った一つ政策を打ち出されるお考えがおありにならないかどうか、総理のお考えを伺っておきたいと思います。
  288. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 人口の過度に大都会に集中する、特に日本におきましては、東京を中心に非常に過度に人口が集中いたしておるのでありまして、一千万に及ぶことも遠くなかろうというような情勢であります。そのために、先ほど来いろいろお話があり、またわれわれが日常経験しているようないろいろな困難な問題が出てきておる。ただ単に交通であるとか、あるいは配給の問題であるとかいうだけに限らず、広く社会全般に関するこれは私は重大な問題だと思います。かねて首都圏の問題は、東京の周辺というふうに非常に狭い面ではなくて、相当広い範囲にわたって、ある面からいえば全関東にわたって衛星都市の建設の問題を考えて、東京におけるそういう集中した人口というものを分散して、過度に一カ所に集まるところのいろいろな弊害や、また欠陥を補おうと考えておるわけであります。ところが、なかなか都会に集中する傾向は、日本だけじゃなしに、各国とも実はこれに悩んでおるようであります。私この夏にイギリスに参りましたときに、最近ロンドンで、ロンドンの周辺の数カ所に衛星都市を建設している状況の一つを見て参りました。その一カ所が約二十万人くらいの人口を持つような都市を七、八カ所も作って、そうしてロンドンの中に集まっている人をそこに分散させようという計画も立てられておるようであります。ところが、いろいろその内容を見てみましても、必ずしもロンドンにいる人がそこへ行くんじゃなしに、ほかのいなかからそこへ集まるというような傾向であって、必ずしも最初目的であるロンドンの市民の数をそういうふうに分散するという効果も上げていないようで、非常に居住の自由を制限し、画一的に、ある権力をもってやるということであれば、これは別ですけれども、そうでない限りにおいては、あるいは教育の施設であるとか、あるいは病院の施設であるとか、その他娯楽の施設であるとか、あるいは大きな産業施設というものを大都会一カ所に作らずに、なるべくこれを分散するような政策をとって、そうして自然に人口が一カ所に集まることを防止することが私は一番いいだろう。なかなかこれは法律を設けて、一切入って来ることを禁止するとか、あるいは強制的に疎開させるというべき性質のものではないと思います。従って今の首都圏整備の計画や、さらに今後日本の経済の発展に伴って工業地帯を作っていくというような場合、また日本におきましては、比較的後進地域といわれている東北や北海道等におけるところの産業の基礎になるような施設であるとか、あるいは社会、教育上の基本的な施設というようなものをできるだけ分散するような方針をとり、後進地域の経済が発展するような基礎的の政策をとって、都会集中、特に東京に集中することを防いでいくことが必要である。また東京都内においての現在のいろいろな弊害につきましては、いろいろ交通の問題についても、先ほど来お話のあった方法やその他の方法によって考えていきたい、こう思っております。
  289. 西田信一

    ○西田信一君 総理の御答弁に私も大体同感でございまして、これを法律をもってただ制限するということだけではこれはいかぬと思いますが、ロンドンの例を引かれましたが、全くその通りであろうと思います。そこで、先ほど私も北海道、東北近隣の問題を申し上げたのも、そういう考えであったのでありますけれども、一つぜひそういう方向に強力に踏み切っていただいて、たとえば臨海工業地帯の建設でも、そういう観点から一つ計画を立てていただきたいということを希望申し上げまして、この問題は一応終わることにいたします。  次に、私はこの間東南アジアを回って参りまして、非常に感じたことが数点ございます。この東南アジア開発の問題についてこれから二、三点お伺いいたしたいのでありますが、岸総理が東南アジア開発には非常に熱心であることはよくわかりますし、私も東南アジアを回って見まして、岸総理の足跡が非常な効果をもたらしたこともよく見聞して参りましたが、しかしながら、向うの連中の申しておりますのは、今ほんとう日本が手を伸ばしてくれなければ時期を失する、こういうような声が各国で聞かれたわけでありまして、そういう意味から申しまして、私は先ほど東南アジアの経済ブロック等をお尋ねいたしたのもそういう意味であります。この際、一つ思い切った東南アジアの開発の日本の政策というものが立てられなければならないと考えるのでございますが、こういう点に対する総理のほんとう一つお考えを伺っておきたいと思います。
  290. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 東南アジアの問題は私も非常な関心を持ち、また現地に参りましていろいろな状況を見て、これが開発を促進して参ることがあらゆる点から非常に重要視しなければならない。特に日本といたしまして、同じアジアの地域にあり、そしてごらん下さればわかるように、相当に国民生活の水準が日本と比較して低い。まだいわゆる後進国として低いと私は思います。こういう状態を早く、その国民生活の水準を高めるような施策をとらなければならない。ところがなかなか新興の国であって、いわゆる民族精神に燃え、新興の国として意気盛んでありますけれども、なかなか実力がこれに伴ってないという点が、私はこれらの地域に対する共通の悩みだと思います。その点において考えなければならぬのは、一つはこれらの地域においては、なかなかいろいろなまだ未開発であるところの資源を蔵しておる。この資源を開発するならば、これによってこれらの国々の産業力、経済力というものがついてきて国力が増す。さらにそういうことを考えてみると、それではどうしてそれができないかといえば、それには一つは技術の点が私は非常に劣っている、この技術力をどうしてこれらの国々に作り上げていくか。もう一つは開発に必要な資金の問題を考えなければならぬと思います。さらにこれらの技術や資金を利用して、そうしてその上に産業基盤であるところのあるいは交通問題であるとか、港湾の建設を進めて、さらにその国が包蔵しておるところの天然資源を開発していくならば、相当に私はその経済力というものは上がり、国民生活の水準も上がる。従って購買力もできて、われわれ日本としてもこれらの国国を重要な市場として、ともに栄えることができるのではないか。そこで日本がそういうこれらの地域に欠けておるところのものを、われわれがどういうふうにして協力していくかということを具体的に考えていくことがわれわれの務めであろう、こう思います。しこうして、言うまでもなく、これらの地域のある部分においては、われわれが戦争の際にいろいろな事態から国民感情を害している点もございます。またそうでなしに、独立ができたことに対する感謝の念を持って日本人に対している地域もございます。またいろいろな国々によって事情も多少の辻いもございます。従って日本としては、私は謙虚な気持でこれらの国々の経済力の基盤を作り上げることに協力をし、これらの国々のいわゆる国作りにわれわれも協力をして、そうしてそれらの国々の希望を達せしめるという一つの心がまえをもとにして、今欠けておるところの技術力及び資金の面におけるところのものを、どういうふうに具体的に作り上げていくかということを考えていくべきである、こういうふうに全体の構想として考えております。
  291. 西田信一

    ○西田信一君 私は昭和三十三年度から設けられました東南アジア開発協力基金でありますが、これが三十三年、三十四年、五十億のものが全然使われないままに蓄積されておるということを実は見まして、この東南アジア開発基金ができた事用もわかっておりますけれども、残念な気持がいたすわけでありますが、こういうふうに輸銀にただ積んであるだけの基金であってはならないと思うのでございまして、これはどういう事情でこれが使われないでおるのかわかりませんが、この際いかがでございましょうか、この五十億、利子を加えると五十二億になるのでございますが、こういうものはもちろんこれで十分とは思いませんが、少なくともこれは一つ基金を取りくずしまして、積極的な東南アジアの開発のために使う御意思がないかどうか、総理並びに大蔵大臣から伺っておきたいと思います。
  292. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 東南アジア開発基金についてのお尋ねでありますが、これは御承知のように法律によりまして、東南アジア開発協力のための国際的機構に対する出資ということがきめてございます。これに充てるものとしてちゃんと法律にきまっておりまして、そうしてこの国際的機構ができるまでの間は、将来当該機構の出資に振りかえることができる性質の国際的協力による投資に使用するものとすと、法律で目的がはっきりその使途が明定されておるのでございます。今日までその法律に明定されているような適当なプロジェクトがないために、これを使うことができておらないということでございます。最近はすでに御承知のように第二世銀の発足等のこともございます。また東南アジアについては、わが国の特殊性から、わが国自身がいろいろ考えている点もあることだと思います。それらの点を合わせまして、ただいまいかにこれを使うか、今後考えて参りたいと、かように考えます。
  293. 西田信一

    ○西田信一君 第二世銀の問題も起きているということは承知しておりますが、私は少なくとも東南アジアの開発のための基金としてこれを設定いたしたのでありまするからして、これが一つも該当がなかったということでありますけれども、もっとこれを東南アジア各国が率直に手を差し伸べてもらいたい、こういう希望にこたえまして、何らか有効な使い道を一つ御考慮願いたい、こういうふうに実は希望を申し上げるわけでございまして、これ以上は繰り返して申しません。  そこで、私は東南アジアの経済協力もいろいろやっておりますし、決して何もやっておらないということを申すわけではありませんけれども、しかし、東南アジアに対しては、ただ目先のことばかりでなく、将来にわたっていろいろ考えるべきものがあると思うのでありますが、ことに東南アジア各国から留学生の希望が非常に多いのです。火はインドネシアからも大量の申し込みがある。この問私がフィリピンに参りましたときも、四名の国安の留学生で、留学生には一千名の申し込みがある、こういうことでございまして、少なくともこのような留学生を大量に受け入れる、こういうような方針を一つ立てていただきたい。現在東南アジアから来ている岡安留学生はわずか数十名で、私費留学生を合わせましても八百名くらいであり、戦前に比べますと問題になりません。少なくともこの十倍か二十倍というものを受け入れるというようなことが、これは賠償なんかの関連においてもできることでありましょうし、いろいろな面から可能であると思うのでありますが、これに対するお考えはどうであるか。これは窓口がたくさんにあって、どうもうまくないようでありますが、窓口を一本にできるならして、そうして強力な施策によって留学生をよこしたいという要望にこたえたらよろしいと思うのでありますが、文部大臣もおられるようでありますが、文部大臣、それから総理から一つお考えを伺っておきたいと思います。
  294. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) 東南アジアに関する留学生のただいまのお話は、全くお話の通りであり、しごく同感でございます。現在のところでは、国費をもって外国の留学生を招致いたしております数は、わずかに七十名、うち東南アジア方面は五十人に足らないというような状態でございまして、つとにわが国は東南アジアの開発、経済協力というようなことをうたっておりながら、また御指摘のように東南アジア開発の基金も用意しておりながら現在の状態にあるということは、まことに遺憾であります。従ってこれはどうしても飛躍的な考えをもってこれら諸国の国作りの助けをするために最も基盤的なものは、結局その若き子弟を教育するにあると思うのでありまして、これらの受け入れ態勢を十分にしていき、同時にこれらの学生を受け入れるについては責任をもって十分に協力をなし得るための設備、施設、その他を整備いたしまして、受け入れ態勢を十分に強化していかなけりゃならぬと考えている次第であります。なおこれは私は豪州の外務大臣ケーシー氏に伺ったことでありますが、戦前においては豪州に東南アジアから来る学生は十数人に過ぎなかった。しかるに数年前の話でありますけれども、すでに一万人をこしておる。その多くはむろん私費で行っておるわけでありますが、これはもちろん言葉の関係――豪州では英語を用い、また東南アジアの諸国も英語を用いているというようなわけでありまして、フランス語のわかる東南アジアの諸国はフランスへ多く行くというようなこともありまして、その点でわが国におきましても言葉の点で非常に難儀をして、はなはだしきは神経衰弱に陥って、むなしく学習を終えずして帰るようなものもあるというようなことでありますけれども、この間もインドネシアの外務次官に私は会いまして、戦後初期に東南アジアの少数の学生が来、インドネシアからも来た、それらの者は帰っていって、きわめて今日インドネシアにおいて有用なる地位を占めている、相当に重視されておるというようなことから、最近また、より多くの学生を受け入れてもらいたいという要請もある、こういう慕情でございまするので、この点については極力一つわが国の大学その他高等学校、そういう方面の整備をしていただかなきゃならぬ、これらの方面からの学生の目ざすところは理工系の学生が最も多いのでありまして、こういう点につきましても、十分に今度の予算につきましても、科学技術関係の予算を相当要求いたしておるようなわけでありまして、この点に一つ御協力を願いたいと思いまするし、なおわが国の外国の留学生に対する待遇というような点につきましても、いろいろと考えていかなければなぬと、かように考えている次第であります。
  295. 西田信一

    ○西田信一君 お考えは全く同じなんだが、しかしインドネシアからも二千名も来たいと言っており、フィリピンからも千名も来たい、おそらく合わせますというと万をこす希望があるにかかわらず、松田文部大臣、わずか来年は百名しかあなたの方で予算要求をしておらぬようでございますけれども、こんなことでは問題にならない。戦前におきましては中国からだけでも二万名もとったということでございますから、やはり私は東南アジアの大きな将来の日本との経済交流を考えましても、この際学生をうんと受け入れるというようなことは思い切ってやるべきだというふうに考えるわけでございまして、当然あわせて待遇の問題も考えていかなければなりませんが、一つ文部大臣、来年のことに御協力を願えるとおっしゃいましたけれども、そんなちっぽけなことに協力するのではなくて、もっとでかいことをやって、一つわれわれに協力を求められるのはけっこうですけれども、そういうことじゃ問題にならぬと思うのでありまして、一つ、これは総理大臣並びに大蔵大臣に特にお願いを申し上げて、質問をいたしませんから、希望をいたしておきます。  次に、突拍子もないようなことをお聞きするようで恐縮でありますが、総理にちょっと伺っておきたいのでありますが、私はこういうことを考えている。実は来年は万国議員連盟の会合が東京でございまして、たくさん見えるようでありますが、私は各国の国会議員の連中と東南アジアでいろいろ話し合って参りまして感じて参りましたことは、東南アジアの国会議員同士で一つ何か集まり、従って話し合いをやろうじゃないか、こういう声がありました。できるならば、私は東南アジアの例か議員の集まり、グループ、議員連盟でも何でもけっこうでありますから、そういうものを作って、一つ話し合うこともこれから大いに必要だと思うのであります。これは何も総理にお尋ねする質問ではないと思いますけれども、総理はこういうことに対してどのように一つお考えになりますか。できるならばそんなことも一つやってみたいという気持もあるのでありますか、どういうことでございましょうか。
  296. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 万国議員全汝が東京に来年開かれるのを機会に、乗南アジアの諸国との間に、一つ特別に議員の何といいますか、会合を催すようなことの御意見でありました。私は趣旨としては賛成でございます。そういうこともまあ議員同士でお話しになり、具体化されることを希望いたします。  それからもう一つ、きつき、重大な問題でございますから、教育問題について、ちょっと私からも申し上げておきます。これは二つ考えなければなるまいと思うのです。一つ日本の従来の大学その他の施設を利用して、そこに留学するという問題でございます。これは日本の大学の施設等の関係上から申しましても、非常に多くのものを、ことに理工科の方において受け入れることは、なかなかむずかしいと思います。しかし、できるだけこれはそういうことに応ずるように、日本の大学や高等学校その他の現在の施設が、これにできるだけのことをやるというふうにしていかなければならぬと思います。しかしこの数は非常に大きなものになり得ない。ところが先ほど私申し上げました特に技術面において、これらの国々が開発されていくためには、技術力をつけなければならぬ。そういう技術の習得を主にした大きな施設を、特別に日本としては考える必要がある。現に多少技術センターというようなものを各国にも設けて、これに協力をしておりますが、日本に相当大きなものを建てて、そうして各国から希望されるものを収容して、フィリピンはフィリピンで一つ一緒になって共同生活をして、必要なものを習得する、インドネシアの人はインドネシアの何かグループになって、そういうものを受け入れるような施設を考えていく必要があるだろう、これをどういうふうに具体化するかということについては、なお検討を要すると思いますが、そういう特別の施設をする必要がある、こういうふうに両方あわせていきたい、こう思っております。
  297. 西田信一

    ○西田信一君 私はこの間、東南アジアを回りまして感じたことは、非常に東南アジアにいる在外公館の方々が苦労しているのであります。しかもそれは人数におきましても、十分の一ぐらいの人数で、実際の仕事の量は、もうはるかに多いのであります。こういう方々のこの苦労というものは並み大ていでないようでありまして、人員の不足あるいは予算が足りない、こういう面が非常に多いようでありますが、これはもう少し一つ、在外公館が十分な活動ができるようなことを考えてやっていただかなければならぬことを痛切に感じて参りました。それからもう一点は、在外公館が従来戦前にあった大事なところでも、いろいろな関係があると思いますが、領事館その他できておらない。これは非常に不便を感じているようでありまして、少なくとも東南アジアにおける経済提携あるいは開発を考えるならば、少なくともこの在外公館を十分にです、十分と申せませんまでも、もう少し足りないところを補って公館の数をふやす、あるいは人員をふやす、もう少し十分活動できるように、みんな私財をなげうって、帰るときにはたくさんの借金を背負ってまでも帰っているという、実際在外公館の苦労を考えますと、外務大臣おられませんけれども、これは何か考えてやらなければならぬ問題だと思うのですが、総理はどのようにお考えでありますか。
  298. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 私も東南アジアの諸国に親しく参りましたときに、西田委員と同様な感じを持ったところが多いようであります。なかなか住宅の上にすら非常に不便を感じておりその他いろいろな点において不自由な住活をしながら、しかも少数の人間で日本に非常に大きな期待とそうして日本に対する希望を寄せられておる国に駐在しておるのでありますから、非常な激務であり、また気候等も、そういうふうに生活の状態等も悪いと、どうしてもこれを充実していかなければならぬという考えのもとに、いろいろ私が外相を兼ねておる時代からこれに力を入れておるわけであります。何分にもこういう問題は一挙にこうするというわけにいきませんから、やはり年々順を追うて整備していくという考えのもとに進めていきたいと思います。
  299. 西田信一

    ○西田信一君 東南アジア関係でもう一つお聞きしたいのでありますが、それはこの東南アジア、つまり海外におけるいろいろな活動あるいは経済協力、こういうことも非常に大事でありますけれども、留学生を初め、国内におきましても、いろいろな東南アジア開発のために協力し寄与しておるところのまじめな民間団体も相当ございます。これらのものも相当苦労しておる。私も実はある有力な団体で非常に実績を上げながら苦労しておることを承知しておりますが、こういうものはできるだけ一つ、これはその活動に対してその活動ができるように育成助長してやる必要があると思うのでありますが、こういうことがほとんど忘れられておるというふうに考えますが、大蔵大臣どうでございましょうか、こういうものに対しまして何か少し考えてやるというお考えはございませんか。
  300. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 来年度予算はまだ査定中でございますので、外務省自身のうちで、そういう点に協力費としてどういう程度計上し得るか十分考えさしていただきたいと思います。
  301. 西田信一

    ○西田信一君 時間もございませんから、最後の問題をお聞きしたいと思います。  それは今やかましくなっておる競輪の問題でございます。実はこの競輪のいろいろな弊害等については、申す必要がございませんから申し上げませんけれども、戦後の戦災都市復興ということにねらいを置いた競輪でございますが、まあいろいろな社会悪と申しますか、こういう弊害が出ておるのでやかましくなっておると思うのでありますが、そこでまあ十数年もたっておるのでありましていろいろ廃止の論もあるようであります。これに対しまして過般国会で池田通産大臣は、まあ競輪は一つ一挙には参らないけれども、だんだん開催日を減らしていくようなお考えをお述べになったようでございますが、これは私は大へんけっこうであろうと思うのでありますが、こういうことは一つ通産大臣のお述べになりましたことは、政府としてのまあ統一された御見解であるかどうか、一つお伺いしたいのです。
  302. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お話の通りもともと戦災都府復興という関係から起こってきたのでございます。昨日の新聞に、兵庫県知事がこれを廃止する、また戦災都市の会長であります姫路の市長も同感の意を述べておるような状況でございます。各般の問題がございますので、地方財政あるいは機械工業振興等、また特に競輪関係当、直接関係者六万人、家族を入れれば十八万人、こういうふうな状況でございますので、今後競輪のあり方につきまして、私は通常国会に自分の考えを出して御審議願いたいと考えておる次第でございます。
  303. 西田信一

    ○西田信一君 通産大臣のお考えで、通常国会までには何らかの対策をお示しになるということでありますから、それでけっこうと思いますが、実はきのうかおとといの新聞に、廃止の世論をよそにどうのこうのというような新聞記事が載っておりまして、こういうことでは、ちょっと実際のお考えがどうなのかという一つの疑惑も生ずると思いますから、特にお聞きをしたわけでありますが、そこで自治庁長官にお尋ねをいたしますが、これは自治庁のお考えもおそらくはそういう方向にあるのだろうと思いますけれども、だんだん競輪を廃止の方向に向けていくためのいき方、手段といたしまして、いろいろな方法があろうと思います。しかしながら、自治庁のお考えとして私の伺っておるところでは、もうからない、収益の上がらないところからやめていこうというようなお考えがあるように伺うのでありますけれども、これはどうかと考えるのでありまして、通産大臣はどういう御方針をお示しになるかわかりませんが、私は利益の上がらない所からやめていくとかというようなことでなくて、もう少しもう一歩進めて、漸減の方針というものが全部の競輪に対して同様に行なわれるということが適当であろうと考えるのでありますが、どういうお考えでございましょうか、さらにまたこれは競輪の開催日数を減らすとか何とかによって漸減の方向をとって参りますれば、これはさしあたり地方財政に影響があることは当然でございます。その場合に地方財政に影響のない所からだけやるとか、あるいはもうからない所からやるということでは適当ではないと思うのでございまして、もしこれが漸減の方針をとるとするならば、地方財政の影響に対して特にやはり考えてやる必要がある、こういうふうに思うのでありますが、自治庁長官はどのようにこの問題をお考えでございましょうか。
  304. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 競輪の問題につきましては今までいろいろ論議がされておるのでありますけれども、御承知のように、昭和三十年と三十三年の閣議の方針に基づきまして、自粛競輪をやっておるということは御承知の通り、それから今あなたが御指摘になりましたようなあまり収益の上がらない所をだんだん整理するようにしたらどうかと、こういう気持でおりますることはその通りであります。  それからこれは今西田委員も言われたのでありますが、競輪関係の年間の収入というものは大体八十億前後でありまして、地方財政の全体からみればきわめて小部分なんであります。しかしこれをやっておる団体にとってみれば相当大きな関係を持っておるのであります。そこで私は、そういう団体の財政が競輪に大きくおぶさるような、そういう関係をなるべくないように指導をしていきたいと、競輪というものをやらなくても、その団体にそう大きなひびが入らないというような方向に指導をしていきたい、という私は考えを持っておるのであります。通産大臣が先ほど申されましたように、今までの方針のようにできる限り漸減の方針で進んでいきたいと私は考えております。
  305. 小林英三

    委員長小林英三君) あと幾らもありません。
  306. 西田信一

    ○西田信一君 大体それでよくわかりましたが、この問題は私が与党の立場でこういう質問をしたのは非常に誤解を招くといけませんし、考え方というものははっきりお示しになった方がよろしい、他の問題では反対でありましょうが、この問題は野党諸君も非常な御協力でございますから、一つこういう問題につきましてやはり国民の世論にこたえるように、一つ政府でも御善処を希望いたしまして私の質問を終ります。
  307. 小林英三

    委員長小林英三君) 西田君の質疑は終了いたしました。   ―――――――――――――
  308. 小林英三

    委員長小林英三君) 次に原島宏治君。
  309. 原島宏治

    ○原島宏治君 災害対策の問題につきまして少々お伺いいたします。  まず、岸総理にお尋ねいたしますが、自衛隊を災害地に出動さして救済に当らせろ、それを主要任務の一に加えてほしいということは、今国会を通じて、また国民の声といたしまして強く要望されておるのでありますが、この問題について総理はどういうふうにお考えになるか、その点まずお伺い申し上げます。
  310. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 自衛隊の主たる任務につきましては自衛隊法で定められております。私は自衛隊の本来設けられた趣旨は、日本を直接、間接の侵略から防衛するというのが自衛隊の本来の任務であると思います。これは憲法で自衛権を持ち、自衛隊というものを置きました趣旨からもそう考えるべきだと思います。しかしながら同時に災害等の場合において、人命の救護であるとかあるいは財産の保護というようなことに任ずることも、またその任務として自衛隊の上にかかっておりますし、さらにその出動の場合につきましても、いわゆる災害出動の場合につきましても規定が設けてありまして、これを運用することによって、そういうことの不幸の場合におきまして十分に自衛隊の活動ができる、かように考えております。
  311. 原島宏治

    ○原島宏治君 では防衛庁長官にお尋ねいたしますが、今回の伊勢湾台風に対しまして自衛隊はいつ出動なされたか。またいつ活動に入られたか。そしてしかも最も初めの活動はどういう点におかれたか。そうした点についてお答え願いたいと思います。
  312. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 自衛隊といたしましては二十六日の晩から待機をいたしまして、二十七日に最初に守山部隊が出動いたしました。
  313. 原島宏治

    ○原島宏治君 その出動は現地からの要請に基いたものか、あるいは自発的に行動したものか、この点お伺いします。
  314. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 御承知のように要請を待って出ることにはなっておりますが、要請を待たずにも出ることになっております。最初に出たのは要請を待たずに現地に出たが、その後は知事の方の全体の情勢を見ての要請に従って出た次第でございます。
  315. 原島宏治

    ○原島宏治君 自衛隊はもちろん陸、海、空の三つに分かれておりますですが、伊勢湾台風に際しましてこの三者がそれぞれ出動したと思いますが、あの際にはこの三つはどのような任務で行動されたか、その点お願いいたします。
  316. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 最初は人命の救助、財産の保護で、人命救助につきましても五千人以上になっているかと思います。それからだんだん災害の状況に従いまして、堤防が欠壊しておりますのでその堤防の潮どめ工事、こういう方面に主力を集中してずっと続けておる次第でございます。
  317. 原島宏治

    ○原島宏治君 仰せの通り堤防の欠壊あるいは輸送そうしたこと、あるいけ道路のいろいろの雑物等を取り払う、そうしたことについてあの災害が起こってからしばらくたって非常に活躍したことは、私もよく承知しておるのであります。ところが、確かに自衛隊の来たのは災害の翌日あたりに見えておるようでありますが、非常に少数であるし、ほとんど最初のころは実践行動にも移ったようにも見えない。今言ったような問題はずっと後の事後の処置でして、当座の急を要する場合にあまり活躍がなかったように見える。私もさっそく現地に行ったのでありますが、そして自分のこの目で見またいろいろな人の話も聞いたのでありますが、南区あたりの様子でいいますと、二十六日から二十八日まではほとんど姿を見なかったという状態、二十九日ごろになってボートに乗った自衛隊の姿を見た、三十日ごろになって三十人乗りぐらいの大舟艇に乗って罹災者の収容を始めた、というような状態が大体の様子だったように思える。また港区方面の様子ではほとんど姿を見ない、ずうと後になってからやってきたというようなことがこの現地の人の声でありまして、防衛庁長官は前々から現行法で災害時に自衛隊を使用できると言っておりますし、今、総理もそういう話でございましたが、そういう現行法を生かしてそれができるならば、もっと早く効果的な行動がとれたのじゃないか、こういうふうにまあ私たちは思うわけなんでございますが、その点いかがでございましょうか。
  318. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 確かにお話の通りだと私も思っております。ただ近くに大部隊がおりませんでしたのでその準備等で少しおくれた、こういうことに相なっております。でありますので私どもといたしましても、今次の災害ばかりじゃありませんが、建設隊あるいはまた施設隊、あるいは通信等の部隊等も相当強化し、あるいは訓練、装備、資材、こういう点も災害のために使えるようになお整備したい、こう考えております。  なお、今次の災害にかんがみまして、一つの出動の体制を整えておくべきだ、たとえば東京方面あるいは大阪方面に大災害があった場合に、どことどこの部隊がまずかけつける、こういう出動の体制を日ごろから整えておくのが必要だと、こういうことで、部隊等につきましてもそれぞれ命令をしておるような次第でございます。
  319. 原島宏治

    ○原島宏治君 災害のあとになって泥を片づけたり、あるいはこわれた堤防を直す、そうしたことも非常に大事なことであり、自衛隊の非常に活躍したことではございますが、ああした大事件の際に最も大事なことというのは、一刻も早く出勤してそれだけ人命の救助に当たる、そして秩序の維持に当たるということが、これは大事だと思う。今回の伊勢湾台風を見ましても、現地の公共機関なども相当やられている。またそこに勤めておる公務員自体も、屋根をはがされたり、あるいは水がつかっちゃって、自分のことに非常に時間を取られ、そのことに夢中になっているような状態、従って、まあいろいろ通信機関等も破壊されてはおりますが、何しろ一時は機能が麻痺したような状態になって非常な混乱だったと思うのです。そうしたときに、組織力を持ち、機動力を持った、しかも頑強な自衛隊員が早急に出動するなら、どんなに助かるかわからない。防衛庁長官としては、現行法で十分同に合うと、こうおっしゃっている。なるほど、自衛隊法にそのことを書かれてあるわけでありますが、現行法でいくならば、あの程度の行動しかできない。それが限度だと、こういう解釈をしてよろしいでしょうか。
  320. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 何にいたせ、今度の伊勢湾台風は非常に大きな災害でございました。でありますので、災害が発生した当時の状況を把握すること、こういうことが非常に大事であったのでありますが、状況の把握が非常に困難な状況にあったのです。でありますので、先ほど申し上げましたように、今度の災害の状況等にもかんがみまして、訓練とか装備とか、あるいは資材の点、こういう点に相当力を入れる。また三十五年反の概算要求などもいたしておりますが、施設部隊、処設部隊等を増強する。それから先ほども申し上げましたように、日ごろからそういう災害があったときにはどういうふうな形で出動するかと、こういう用意、訓練をさしておくということにしまするならば、法律の改正というようなことでなくて、今度の災害でもずいぶんやりましたが、それは初めのころは少しお話しのような点がありましたけれども、私は法律の改正とか、そういうことを待たずしても、これは運用の上において機能を果たせるように期待し、またできると、こういうように考えております。
  321. 鈴木強

    鈴木強君 ちょっと関連。今の災害派遣の場合ですが、自衛隊法八十三条の二項で、地方自治体の知事あるいは政令で定むる者が要請をしない前に自衛隊が出動することができることになっておりますが、そこで、今回の台風の場合、直ちに出動されたその自衛隊、あなたの判断で、具体的にお尋ねしますが、七号台風が襲来したのがちょうど八月十四日の午前六時ごろだったのですね。それでそのときにあなたの方から直ちに判断をして、出動をするというような命令を出されたのですか、それともそういう場合には、各現地の部隊長が判断をして通句に出動したのか、その点をちょっとお尋ねしたい。
  322. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) お答えします。知事の要請だけということだけでなくて、市町村長その他でも、要請に応ずるわけであります。私の方としましては、現地の部隊の判断によって、災害のあったときには出てもよろしい、こういうふうにあらかじめ申し渡してあるわけでございます。今度の場合におきましては、県等に連絡員がおりまして、その状況を見て、連絡員と部隊と話し合って、私の方から命令を出さない前にも出たことがあります。あとになりましてから大きく動員した場合には、私の方から全国の部隊に対して動員をかけた、こういうことになっております。
  323. 鈴木強

    鈴木強君 大へん具体的な問題で恐縮ですが、山梨県の身延という町がございますが、そこの町長に私は九月の初めごろに聞いた話ですが、非常に被害が多かったものですから、ある部隊の――私特に名前は言いませんが、ある部隊の責任者が参りまして、町長はぜひ出動してもらいたいということで、了承して帰ったのですけれども、そのままで全然ナシのつぶてだった。非常に町長は怒って、自衛隊に対する反感を持っている。こういう話を聞いたのですがね。こういうことが具体的にあるとすれば、これは大きな責任問題になると思うのですが、今お話によると、現地の責任者に絶えずそういうう連絡をしておるそうですから、せっかくそれじゃ頼みます、やりましょうと言って引き受けて帰った責任者が、そのまま全然出てこないということは、これは問題でしょう。確かに道路その他の決壊がひどかったですから、それを非常に骨折ってかけつけてくれたわけですから、その点は非常に感謝しておりましたが、あとの処理が非常にまずかったのですね。具体的に私はあとから責任者の名前等を申し上げていいのですが、そういう問題等もありましたので、一つ今後のそういう事態に対する措置の問題に関連して、十分銘記しておいてもらいたいと思う。そういうことのないように私は今後十分注意してもらいたいと思う。これはもう事実ですからね。
  324. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 身延の派遣のことはこういうことになっております。山梨県の災害派遣につきましては、その当時県の対策本部におきまして一括して、優先順位を定めて自衛隊に要望されてきたわけであります。身延はそのとき優先順位の最下位にありまして、県の対策本部は自衛隊に対して、身延には災害派遣の必要なしと、こういうように示されましたので、自衛隊としては災害派遣を一切実施しなかったのであります。なお災害発生と前後いたしまして身延に対しましては、災害派遣と別個に、今お話し中の身延町の南部の中学校の整地作業として建設部隊が派遣されることが要望されております。これには出たのでありますが、それと一緒になったようなことであります。しかしお話の点はよくこれから注意します。
  325. 鈴木強

    鈴木強君 南部というのは身延町じゃないですよ。南部町というのがある、別に。だから全然違うんですよ。長官、身延には全然入ってない、約束してから……。
  326. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) それと混同されておったように私も考えますが、お話しの点はよく注意いたします。
  327. 原島宏治

    ○原島宏治君 時間の関係上、あと一つ自衛隊のことについてお聞きしまするが、この自衛隊法の第三条には任務が書かれてありますが、その中に、「必要に応じ、公共の秩序の維持に当る」、こういう文句がありますが、この内容というのはちょっとどういうふうになっておるか、お教え願いたい。
  328. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 治安が相当混乱する、こういう場合には、必要に応じまして警備等に当たる、こういうことになります。
  329. 原島宏治

    ○原島宏治君 災害の場合もいいわけですね。
  330. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) もちろん含んでおると思います。
  331. 原島宏治

    ○原島宏治君 今までの状況を見ますと、確かに法的にはできる。自衛隊が災害の場合には直ちに出動もできるという法文は、任務の上からいっても、八十三条からいいましても、はっきり規定はされておりますが、要はこの防衛庁長官としましても、自衛隊を十分活動させて、そして一刻も早く治安維持に当たり、人命の救助に当たるということは望んでおることと思いますので、どうか一つ、私も現行法で十分できると思います。これを活用しまして、そしてこの国民の要望にこたえていただきたい。また、そうすることが自衛隊の精神といいますか、あくまでも国土の安全を期しておるわけでありまして、自衛隊というものがそうした性格のものであることを内外に示す上においても重大なことだと思う。  その問題は以上でして、次にお聞きしたい点は、干拓地や同一水系における施工というものが、建設省、農林省、運輸省あるいは地方自治体と、さまざまに分かれていることがいろいろな障害をなしている点をしばしば論じられているわけでありますが、その結果について政府は反省しておられると思うのですが、総理並びに関係大臣の所見をちょっと伺いたいと思います。
  332. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 今回の伊勢湾台風における海岸堤町の被害を見まするというと、その所管が、あるいは運輸省の所管の海岸堤防であったり、あるいは農林省所管の干拓地の堤防であったり、あるいは建設省所管のものであったりというふうに分かれておることは事実であります。従来といえども、この関係におきましていろいろ連絡はとっておりますが、特に今回のこの復旧につきましては、関係省の同に協議会を作り、さらに民間の学識経験者も入れて、これに対する堤防の高さであるとか強度であるとか、施工の方法というようなものを打ち合わせて、それらの間に規格上の相違を生ずるというようなことのないように努めております。また一つの河川が、いわゆる森林の砂防と河川の一般砂防というような点におきまして、建設省の所管であり、また一部は農林省の所管であるというような関係がございます。しかしながら、一つの水系におけるはんらんであるとか、あるいは全体の治水の関係を考えますというと、その間に十分な連絡をとらなければならぬこと、言うを待たないのでありまして、こういう点に関しましても、従来もとっておりますが、特に今回の経験にもかんがみまして、今後一そう緊密な連絡のもとにこれらの計画を立て、その施行に当たるようにいたしたいと思います。
  333. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) ただいま総理からお答えのありましたように、行政目的はそれぞれ違っておりますが、しかし関連する部分につきましては、緊密な連絡をとって事業を遂行いたしております。
  334. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ただいま建設大臣からお答えした通りであります。
  335. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) 御指摘のように、やはり農林の干拓及び建設省、私の方の運輸省、これが三位一体とならなければ、どの一角が破れましても、大きな被害を受けましたことは、今回の伊勢湾台風において明白になっておりますので、これを契機として、それらの点に緊密な連絡をとって、そうして万全の策を講じたいと思っておる次第であります。
  336. 原島宏治

    ○原島宏治君 協議も行なわれ、緊密な連絡が行なわれるという話ではありますが、実際問題としては、金の関係があるのか、その他の事情によるのか、どうも各省間の仕事がちぐはぐになって、効果が非常に薄れるという声はしばしば聞いておることであります。そうした点をもっと各省間で有機的な連絡をとって、効果的にする方法はないものかということを考えておるのでありますが、まあ建設大臣代表して一つ……。
  337. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 御指摘の点は心配のないように、各省間で十分緊密な連絡をとって施行して参っておりますし、また今後も、先ほど総理から御答弁のありましたように、高潮対策審議会等を設けまして、十分抜本的な、設計等について打ち合わせをいたしておるような次第でございます。
  338. 小林英三

    委員長小林英三君) 時間がもう十分ありませんので、もう一問……。
  339. 原島宏治

    ○原島宏治君 いろいろの今までの弊害からいって、いっそのこと、一切のセクショナリズムをやめて、一本化した機関によって、恒久策を進めるという方向に持っていったらどうかという声が非常にあるのでありますが、この点はどうでありましょうか。また、すでに先輩諸氏によって、国土省とか、あるいは国土開発省とかいうものについて要望されておると思うが、その点について一つ、これは総理からお願いいたします。ついでに聞いておきますが、できないとしたら、その理由のおもな点はどこにあるか、それを一つお願いいたしたいと思います。
  340. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 行政機構の問題につきましては、いろいろ、行政機構の改革という問題は政府としても常時検討をいたしておるのであります。しかし、これはただ一面だけを見て行政機構の改革ということをやることは、またいろいろな支障を生ずるのであります。本来、各省の仕事というものは、どう分けましても関連があり、一体に協力をするということでないと、どの仕事でも、厳格にいうとできないと思います。そうしますというと、各省にいろいろと分かれて、横の連絡をどうするか。十分、港湾の行政を統一するというような問題もございますし、あるいはまた、自治省を作れというような議論もございます。たとえば青少年対策一つをとって考えましても、これも各省に分属をしておるというようなことから見ましても、なかなか行政機構をどういうふうに改革していくかということは、慎重な総合的な検討をしなければならぬと思います。しかし、いずれにしても、治山治水の問題、ことに今回の伊勢湾台風の経験にかんがみまして、災害復旧の仕事を実現していく仕事はもちろんのことでありますが、さらに大きく治山治水、国土の保全という問題に関しては、一つの総合的な抜本的な計画を立てて、これに対する財政の裏づけ等についても十分一つ検討して、通常国会に提案しようということでございます。ただ、今言うような各種の点から行政機構というものは考えて参らなければなりませんので、この際、直ちにそういう国土省というようなものを作るというようなことにつきましては、なおあらゆる点を検討しなければならぬ、かように思います。
  341. 原島宏治

    ○原島宏治君 最後に一つ要望いたします。国土省というようなものを作ることについては、首相の言う通り、相当困難な問題もあろうかとは思います。私はセクショナリズムというものの弊害というものは、形の上ではなくて、つまりここは建設省がやるから、ここは農林省がやるからというようなところからくる弊害は、実はこれは簡単なものだと思う。それよりも根本にある、こうしたことに携わる人々の間のセクショナリズムの精神、これが悪いんだろうと思うんです。省と省との間、あるいは省と地方自治体との問、こうしたところは、ほんとうにこの目的観を国民の幸福というものに置き、河川あるいは港湾そのものをほんとうにりっぱなものにしていくという考えに立ちまして、お互いに連絡し合い、助け合い、そうしていくならば、もっともっと、私は、今のままでも連絡のとれた、りっぱな政策というものが打ち出されていく、こう信ずるのであります。どうもそうした点に欠けるところがある。これは私は政治に当たる者の最も大事な面と思います。  時間がございませんので、以上希望を申し上げまして、私は終わりといたします。
  342. 小林英三

    委員長小林英三君) 原島君の質疑は終了いたしました。  明日は午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時十一分散会