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1959-11-17 第33回国会 参議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年十一月十七日(火曜日)    午前十時五十五分開会   ―――――――――――――   委員の異動 本日委員重政庸徳君、東隆君及び森八 三一君辞任につき、その補欠として青 柳秀夫君、田上松衞君及び加藤正人君 を議長において指名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     小林 英三君    理事            大谷藤之助君            佐藤 芳男君            館  哲二君            西田 信一君            秋山 長造君            亀田 得治君            鈴木  強君            千田  正君            杉山 昌作君    委員            青柳 秀夫君            泉山 三六君            太田 正孝君            草葉 隆圓君            小林 武治君            斎藤  昇君            下條 康麿君            杉原 荒太君            手島  栄君            苫米地英俊君            武藤 常介君            松村 久義君            湯澤三千男君            米田 正文君            占部 秀男君            木村禧八郎君            久保  等君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            永岡 光治君            松澤 兼人君            松永 忠二君            大和 与一君            辻  政信君            曾祢  益君            田上 松衞君            森 八三一君            岩間 正男君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君    文 部 大 臣 松田竹千代君    厚 生 大 臣 渡邊 良夫君    農 林 大 臣 福田 赳夫君    通商産業大臣  池田 勇人君    運 輸 大 臣 楢橋  渡君    郵 政 大 臣 植竹 春彦君    労 働 大 臣 松野 頼三君    建 設 大 臣 村上  勇君    国 務 大 臣 赤城 宗徳君    国 務 大 臣 石原幹市郎君    国 務 大 臣 中曽根康弘君    国 務 大 臣 益谷 秀次君   政府委員    内閣官房長官  椎名悦三郎君    内閣官房長官 松本 俊一君    法制局長官   林  修三君    防衛政務次官  小幡 治和君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    科学技術政務次    官       横山 フク君    外務省アジア局    長       伊関佑二郎君    外務省アメリカ    局長      森  治樹君    外務省条約局長 高橋 通敏君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省主税局長 原  純夫君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    気象庁予報部長 肥沼 寛一君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和三十四年度一般会計予算補正  (第2号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十四年度特別会計予算補正  (特第1号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十四年度政府関係機関予算補  正(機第1号)(内閣提出、衆議院  送付)   ―――――――――――――
  2. 小林英三

    委員長小林英三君) ただいまから委員会を開会いたします。  まず、委員変更について御報告をいたします。十一月十七日、重政庸徳君及び東隆君が辞任し、その補欠として青柳秀夫君及び田上松衞君がそれぞれ選任せられました。   ―――――――――――――
  3. 小林英三

    委員長小林英三君) なお、本朝の理事会で、昨日の亀田君の外務大臣に対する安保改定交渉経過資料要求について協議いたしましたが、結論に達しませんので、適当の時期さらに理事会で協議することにいたしました。    〔小林孝平君「委員長議議事進行」と述ぶ〕
  4. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林君。
  5. 小林孝平

    小林孝平君 私は、昨日の亀田君の質問に対しまして、外務大臣答弁が行なわれましたけれども、この答弁に関しまして委員会の運営上非常に重要な問題が生じましたので、政府所信をただしたいと思います。  それは、昨日亀田君は事前協議事項に関連いたしまして……。
  6. 小林英三

    委員長小林英三君) ちょっと小林君、発言中ですが、議事進行でしょう。
  7. 小林孝平

    小林孝平君 議事進行です。
  8. 小林英三

    委員長小林英三君) あなたが質問するわけじゃないでしよう。
  9. 小林孝平

    小林孝平君 質問するわけじゃないのです。そういうことがあったから――こういうことなんです。こういうことを言っているのです。そういう事前協議事項について質問をいたしました。その際に、装備変更について亀田君は質問されました。相当長時間にわたって重要なる質疑応答がかわされました。その際に、亀田君は装備の重要な変更ということについて質問をいたしました。ところが、外務大臣答弁に立たれまして一瞬ためらわれましたけれども、重要な装備変更ということで繰り返し御答弁があったわけであります。われわれの今まで承知している限りにおいては、国会において政府がら何ら正式な資料をいただいておりませんけれども、この装備変更については、「装備の重要な変更」ということで条文が交渉されると承知いたしております。また数回の本会議並びに委員会における質疑応答も、「装備の重要な変更」といううことで討議が行われておったのであります。ところが昨日、外務大臣は、重要な装備変更」という御答弁があったのであります。これは、「装備の重要な変更」と「重要な装備変更」ということは、重要な相違があるわけです。きわめて重大な問題であります。私は、いつからそういうふうに原案が日米両国交渉において変更になったのかということを政府はこの際明らかにする必要があると思うのであります。また、そういう変更がないのにもかかわらず昨日こういう御答弁があって、私は、もしそういう変更がなければ、条約局長なり法制局長官がおられたのでありますから、昨日中にこれは御訂正があるものと思って私は聞いておったのでありますけれども、本日まで御訂正がない。御訂正がなければ、これは「重要な装備変更」ということに変わったのだろうと私は思いますから、この点を明らかにする必要があると思うのであります。これは、私が質問しているのではありません。この委員会にそういう明確な御答弁があってしかるべきじゃないかと思います。さらに、もしそういう変更がないのにもかかわらず、亀田君の、装備の重要な変更ということに対して、外務大臣はみずからその答弁台において、ためらわれながらも、重要な装備変更という答弁をやられたとするならば、あなたは議員のこの質疑をいいかげんのものであると、こんなものはその場限りに過ごしていけばいいのだと、こういう考え方でこの委員会に臨んでおられると考えるより仕方がないと私は思うのであります。この点をさらに明確にしていただきたいということと、さらにもう一つは、こういうふうにこの重大な問題を、装備の重要な変更と、重要な装備変更ということは、非常に重大な差があって、重要なる問題であります。この問題をこういうふうにいいかげんな論議政府側から行なわれておる原因を考えてみますと……。
  10. 小林英三

    委員長小林英三君) 小林発言中ですが、委員長要求して下さい。議事進行ですから、委員長要求して下さい。
  11. 小林孝平

    小林孝平君 委員長あわせてやるのです。そこで、あなたがそういうことをおっしゃると、今後の質問がいよいよ混乱するのじゃないか、委員長はあまり議員発言を抑正すると……。
  12. 小林英三

    委員長小林英三君) 抑圧はしておりません。
  13. 小林孝平

    小林孝平君 それならばこれからやります。そこで、こういう食い違いができて、委員会審議が、私か心ならずも議事進行をやらなければならない事態が生ずるのはどこからきているかと申しますと、これは資料政府が出さないからであります。国会においていろいろ重要な論議をされておりますけれども、その論議の根拠は、われわれは新聞条約草案でもって質問をしている、政府はこれとは別にしっかりしたもので答弁をしている、こういう珍無類の答弁というものは国会史上にいまたかってないのではないかと思います。これはやはり政府はちゃんとはっきりした資料を出していろいろの説明をし、これに対して質疑をするという方法を請じなければならないのではないかと私は思います。現に本会議並びに委員会において、新条約の第五条にこういうことが書いてある、これは……。
  14. 小林英三

    委員長小林英三君) 発言中ですが、議事進行なら簡単にやって下さい。
  15. 小林孝平

    小林孝平君 議事進行なんです。委員長は従来の委員長に見ないような独裁的な……。
  16. 小林英三

    委員長小林英三君) 独裁的じゃありません。
  17. 小林孝平

    小林孝平君 どうしてそういう態度をとるのですか。
  18. 小林英三

    委員長小林英三君) 議事進行ならば要点を言って下さい。(「発言の途中で委員長何か言っちゃいけませんよ」と呼ぶ者あり)発言の途中でも申し上げます。
  19. 小林孝平

    小林孝平君 心ならずもやらなければならない事態になったのは、政府やり方が悪いからでしょう。総理大臣ももっともだというような顔をして聞いているじゃありませんか。そこで第五条にこういうことが書いてある。これは第六条との関係はどうだといって聞くと、藤山外務大臣は、第五条の、これはこれこれであるというように、われわれが新聞から引用している第五条と、あなた方のほんとうの第五条と一緒になって本会議あるいは委員会において論議されておる。こういうことは国会審議上、先ほども言ったように、帝国憲法以来例がないことなんです。私はこの際委員長に申し上げますが、こういうことはすみやかに軌道に乗せて政府資料を出し、そうしてわれわれはその資料に基づいて論議をするということでなければおかしいのじゃないかと思います。そこでこれは議事進行でございますが、先ほど申し上げましたように、藤山外務大臣から明確にこの委員会に、前日の経過を、どうしてそういうことになったかということを明確にお話しになる必要があると思います。
  20. 小林英三

    委員長小林英三君) ただいま小林君から議事進行について委員長に御要求がありましたが、外務大臣小林君の議事進行に関する御意見に対して、適当な機会に善処されんことを希望いたします。(「直ちにやる必要がある」「今やりなさい」と呼ぶ者あり)   ―――――――――――――
  21. 小林英三

    委員長小林英三君) 昭和三十四年度一般会計予算補正(第2号)、同じく特別会計予算補正(特第1号)、同じく政府関係機関予算補正(機第1号)を一括して議題といたします。前回に引き続き総括質問を行ないます。曾祢益君。(「外務大臣からやりなさいよ、おかしいじゃないか」「言葉が間違っておるのを、ちょっとやりなさいよ」と呼ぶ者あり)適当の時期に……(「条約言葉が違っておるのは大へんじゃありませか、ちょっとやりなさい」と呼ぶ者あり)曾祢君、ちょっと待って下さい。ただいまの小林君の議事進行に関する件につきまして、外務大臣から発言を求められておりますから、発言を許します。
  22. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 昨日の亀田委員の御質問に対しましてお答えしました中に、ただいま御指摘のような点がありましたならば、若干違っておると思います。むろん今回の条約文は最終的には作成されておりませんけれども、作成する今の段階において申し上げられますことは、装備の重要な変更ということをわれわれは考えておるのでありまして、御質問、かけ引きの問題、いろいろありましたんで、あるいは私の言葉が若干違ったかと思いますけれども、そういう点で、装備の重要な変更ということでございます。
  23. 曾禰益

    曾祢益君 私は、先般本会議における総理並びに外務大臣施政方針、さらにはその後に行なわれました外務大言安保条約に関する中間報告質疑応答を通じまして、政府がこの重大な安全保障条約改定問題についての何らの明確なる所信、これを明らかにしておらないことをはなはだ遺憾とするものであります。従いまして、私はこれからこの安保条約につきまして、特に藤山外務大臣中間報告を基礎としながら、以下総理並び外務大臣に対して若干の点を御質問申し上げたいと思います。またその中で特に防衛庁長官に伺う点については、その点を明確にしますから、その点についてのみ防衛庁長官からお答えを願いたいと思います。全般については総理並びに外務大臣からそれぞれお答えを願いたいと思います。  まず第一に伺いたい点は、外相報告によりますと、昨年の九月故ダレス長官に初めて今回の安保条約改定交渉をされたときに、内容的にいうと、アメリカ日本防衛に対する援助義務を明確にすること、日本の負うべき義務憲法の範囲内に限らるべきこと、条約運営に関し日本発言権を強化し、特に在日米軍配備及び芸備の重要な変更、並びに極東の平和及び安全の維持のため日本の施設及び区域を作戦的目的に使用することを事前協議条項事項とすること、条約に一定の期限を設けること、大体この四つ、あるいは細分いたしますと、五つばかりのこの希望条項を申し入れ、その他現行条約現状にふさわしくない諸点に所要の改正を行ないたい、こういう申し入れをされたというのであります。このような要項に分かって、九月ダレス長官に申し入れたということは今回初めてわれわれは伺ったのであります。少し皮肉な言い方かもしれませんが、この要項なるものは、今日もうでき上がりつつある安保条約内容から遡及的にこういうものを作ったような気もするのでありまするが、それほど明確なこれらの五項目ばかりについての要項をはっきりお出しになったとするならば、当然にこれは重大な問題でありまするから、これを出される前に自民党党議がきまり、また閣議においてこの要項決定されて、その上に外務大臣交渉されたものと考えるのでありまするが、はたしてそれらの手続がとられたかどうか、まずこの点を伺いたいと思います。
  24. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 昨年九月ワシントンに行きまして、ダレス長官とこの問題につきまして、話し合いをいたしますときは、むろんはたして安保条約改正されるかどうか、まあ改正を向うが応諾するかどうかということについては確実ではございません。従いまして、従来われわれが考えておりますような点、ただいまお話のありましたような点です。アメリカ日本防衛義務を持っておらないじゃないか、あるいは内乱その他についての項は、現状においては不適当ではないか、あるいは期限の点については、やはりこういうものを期限を定めてもらわなければ困る、また核兵器持ち込み、あるいは自由に極東の各地に作戦ができるというようなことに基地を使うということについては、ある程度の制限を設けてもらわなければ困るじゃないか、こういうようなのが、一体われわれ日本国民として考えて、いろいろ問題になっている点なんだ、そういう点を一日も早く改正してもらいたいのがわれわれの希望なんだということを、ダレス長官と話をいたしたわけであります。そして、それらについての日本国民の感情、また、私が申し上げたと思っておりますけれども、過去においていろいろ議会等論議を通じて私どもも知っているような点について、いろいろ懇談をいたしたわけであります。その結果、ダレス長官が応諾をいたしたのでありまして、その初めの交渉開始することになったのであります。その交渉事前には、特に閣議等決定はいたしておりません。
  25. 曾禰益

    曾祢益君 外務大臣は、今、この改定についてダレス氏と会う前に、果して彼が応諾するかどうかわからなかった、従って懇談的な態度で、日本国民が不満とするこれこれ、これこれの条項を述べた。その述べた中に内乱条項がありましたが、ここには一つも書いてありません、内乱条項のことは明確に……。それから、いま一つ、そういう懇談をされたというのとは全然違って、故ダレス国務長官と会見し、条約改正交渉開始を提議した。いやしくも外務大臣から国務長官に、条約改正交渉開始を提議した、これは正式の交渉ですね。次に条約改正に関する日本希望条項を申し入れた。これは完全な正式の外交交渉になっておる。その外交交渉に出した希望条項は何かというと、ここに四点はかりはっきりあげられている。今あなたの言われたように、どうなるかわからないから、まず小当たりしてみようというようなことが実情であったとすれば、この中間報告に書いてあることはうそになる。そこで、私が今伺ったところによると、こういう重大な交渉、しかも正式交渉を申し入れた、四つ五つのこっちからの希望条項を申し入れておきながら、その希望条項内容について、事前閣議なり党議決定がなかったと、そういうあいまいな態度でやられたのですか、どうか。これは総理並びに外務大臣からお答え願いたい。
  26. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん、当時アメリカに行きましてダレス長官と会見することは、こちらから申し入れておったわけであります。その話の内容、たとえば極東の情勢、その他いろいろな懇談をするという場合に、こういう話もしてみたということは、むろん閣議報告をしておりますし、また帰ってからも、その点について報告をいたしております。しかし、それらの一々について正式な閣議決定があったということではありません。
  27. 曾禰益

    曾祢益君 総理大臣からのお答えがないのですが、そういう外務大臣が腰ため的に大体どんなものだろうという態度に、この重大な安保改定をまかして、閣議決定もなしに、またそのバツクにある――政党内閣ですから、いい悪いは別として――党議もきめないでこの交渉に臨まれる、そういうことが、あなたがみずからこれをいいと思っておられるのかどうか、これを伺わしていただきたいと思います。
  28. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 外務大臣が申し上げておりますことは、特に昨年の九月参ります際に、形式的な閣議決定とか、あるいは党議決定というようなことに手続をとっておらなかったということを申し上げているのであります。わが自由民主党におきましては、かねて政策根本として、安保条約改定の問題を重要な政綱に掲げておりまして、そのうちいろいろ問題になる点等につきましては、従来も党議として、党の方針としてこの問題を取り上げて参っております。もちろん昨年の九月の藤山ダレス会談というものは、いわゆる安保改定に関する正式交渉という性格では私はなかったと思います。もちろん、ダレス国務長官外務大臣が会う場合におきまして、日米間のいろいろな問題について話し合う、その際に、かねてわが党としても党の方針としてきめているし、私がその前年アイゼンハワー大統領と話し合ったときにも問題になっておる安保条約改定の問題について、アメリカ側の意向を打診するということは、そのときの藤山外相の訪米の一つ目的になっておりまして、それは閣議が了承しておるはずでございますが、今申すように、いわゆる交渉事項として形式的な閣議決定はなかったと、こういうのであります。
  29. 曾禰益

    曾祢益君 そういうでたらめな外交交渉というものはあり得ないと思います。いやしくも責任ある保守党内閣として、安保条約改正するというのならば、どういう点を、どういう方向改正するということがまず党議できまり、閣議できまって――打診の段階は別ですよ。いやしくもダレスと会って、提案する以上は、それがきまってなくちゃならぬ。自民党やり方岸内閣やり方は、そういうことが全然きまっていない。ことしの五月三日になって初めて安保並びに行政協定改定自民党要綱ができた。交渉は九月の段階においてすでにやられている。そういう状態ですから、まあ他党のことだからかまわないようですけれども、その後に至っても党内の議論がきまっていない。これは党内の間近だから、私たちはかまいませんが、国民はそんな無責任な、安保改定基本方向もきめないで、ずるずるべったりアメリカ交渉するなんというやり方に、たれも賛成はしていません。  そこで、特に私がこの際なぜそういうことを言うかということを御説明申し上げながら御質問したいのですが、この要綱希望条項を見ますると、すでに最初から、アメリカとの話において、在日米軍配備並びに装備の重要な変更及び極東の平和と安全のために日本基地を使うことは事前協感にする、こういうことをもう頭からきめておるわけです。一体、自民党――保守党立場に立っても、安保条約改定しようというのならば、ほんとうにこの常時駐留ということが絶対に必要なのか、それが好ましいのか、また、駐留目的日本防衛に限って、極東への出動というような問題をこれはやめてもらうというような基本的な問題から、まず安保を肯定する立場に立ってのそういう基本的な改正方向ということを、十分に党内において議論し、国民に徹底せしめ、閣議においてきめてから、この安保改定に手をつけるというのが、これが常道じゃないですか。それをやらずに、しかも外務大臣ダレスに小当たりして見、それを了承しているけれども、その初手から、これらの重要な問題について、安保改定一つの骨格がきまってしまう全くずるずるべったり交渉をしておったということが、今や明白になったと思うのですが、この駐留問題等について真剣なる討議を、日本の将来のことを考え保守党立場からいってもやられたのかどうか、これを伺いたい。
  30. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど来お答えしているように、私の方――この自由民主党におきましては、党の立党のときから、その政策重要要綱として、安保条約改正の問題は、これを党の基本方針一つに取り上げて参っております。その根本は、日本アメリカとの関係をできるだけ対等なものにし、日本自主性を回復するという方向においてこれをやるということは、党の政策方針としてすでに決定をしてきておることでありますし、また、それに基づいて、党は、立党以来しばしばアメリカとの間にも話をしておったのでございます。そういうことであり、その方向のもとに改定話し合いを正式に始めようということが、昨年の九月におきまして決定をしたわけであります。もちろん、交渉内容等につきましては、またその経過等につきましては、それぞれ適当な連絡をとりながら進めて参ったわけでございます。今御質問の、日本のこの防衛安全保障の意味から、一体常時駐留の問題が日本にとって適当であるかどうかという問題に関しましては、私ども日本の置かれておるこの事態状態、並びに日本国内における自衛力関係から申しますというと、このある程度の常時駐留は、日本にとっても、日本の安全を保障する上からも適当であるという考えのもとに、私ども交渉をいたしております。しかしながら、すでに私が一昨年参りましたときに、陸上部隊日本からの駐留を撤退するというような方針もきめております。また、日本におけるところの駐留軍漸減方針につきましても、話をいたしております。そういう状況のもとにおいて、やはり常時駐留ということ、ある程度の駐留は必要である、こういうことが私どもの初めからの考えでございます。
  31. 曾禰益

    曾祢益君 常時駐留が必要であるというはっきりした割り切り方であったように伺うのですが、私は、必ずしもそうでもなしに、ずるずるべったり交渉に入り、全く指導性計画性一貫性がないような感じがします。しかし総理は、とにかく今の現状においては、常時駐留といいますか、陸上部隊漸減は別として、空軍、海軍の駐留が必要だと認めておるようでありまするが、それほどの期間まで必要と認められておるのか、この見解を伺いたいと思います。
  32. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 期間ということは、なかなかこれ――私、二つのなにがあると思います。常時駐留の問題は、日本における自衛力の増強の現状と国際情勢の二つの点から考えなきゃなりませんので、今、期限をいつまでと言えということにつきましては、私は明確に言うことはできないと思います。
  33. 曾禰益

    曾祢益君 この新条約期限は十年ということに考えておられるんですから、少なくとも十年ぐらいは要るというお考えのようですが、私はこれは非常に間違っていると思いますけれども、論争ですから、次に移ります。  申し上げたいことは、そういうふうに、今すでは私は証明されたと思うのですが、全く計画性のない、そういういいかげんな態度でこの交渉に入った結果、いつの間にか、私の言葉で言えば、基地貸与協定的な性格である今の安保条約、その改正と言いながら、バンデンバーグ決議を軸とする相互防衛条約の方にふらふらと入ってしまって、今日に至っておるんじゃないかと思うのであります。すなわち、政府計画性がない、見通しがない、場当たりであったということが、きわめて明瞭になったと思うのでございまするが、しかし、最後にこれは質問としてもう一ぺん伺いますが、駐留の問題についても、私申し上げているように、二つ問題がある。今国論がこの安保問題に大きく分かれているときに、こういう経緯はあったけれども、またあとに申し上げるような国際情勢の変化もあったのでございますし、国論も、いつまでもこの駐留を望んでいないことは明白なんでございますから、あえて国論の帰一を求めるという見地から、もう一ぺんお考えになって、駐留期限を、これを限定する、そうして少なくとも、近き将来において有事駐留に切りかえる、もしそれができない場合においては、少なくとも、非常に今問題になっておりまする極東の平和と安全のための出動という、これをやめさせる意味で、駐留目的日本防衛に限るというふうに限定されるお考えはないか、もう一ぺん明確にお答えを願いたいと思います。
  34. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 駐留の問題につきましては、私が先ほどお答え申し上げた通りでありますが、あるいは情勢が進んで、有事駐留の方法で、日本の内外の情勢が適当であるという場合においては、そういうふうに切りかえることも頭に置かなきゃならぬと思いますけれども、しかし現在においては、私はそう思っておらないのであります。  第二の、極東の平和と安全に寄与するという目的をやめて、日本の安全、日本防衛だけに限定したらどうかという御意見でありますが、これまたしばしばお答えを申し上げておるようにやはりわれわれは、この今日の日本状態考えてみまするというと、日本の安全というものと、極東の平和と安全というものとの間におきましては、きわめて密接な関係があり、極東の平和と安全なくして、日本の安全だけが保たれるというように限局して考えることはできない情勢であると思います。従って、日本のこの安全を保持するためには、日本防衛と、それと不可分の関係に立つところの極東の平和と安全ということをも安保条約目的とすることは適当である、こういう考えでございます。
  35. 曾禰益

    曾祢益君 日本の平和と安全と、極東の平和と安全が完全に不可分一体であるならば、協議条項は無意味になると思いまするが、この点はあとで質問することにいたしまして、第二点に移りたいと思います。それは、今申し上げましたように、安保改正交渉がきわめてずさんな、何らの計画性一貫性と見通しなしに行われて、しかも最初の交渉からすでに一年以上の経過を経ておるわけであります。その間における国際情勢の推移、特に冷戦緩和の徴候、さらにはお隣りの中国、中共の動向、軍縮の進み方、極東における非核武装の重要性、これらの新しい情勢にかんがみまして、もっと、安保条約をあのまま改定するということに真剣なる再検討を要する段階にきていると思うのでございます。冷戦緩和については、いろいろな見方もございまするけれども、また政府が言うように、現在なお両陣営ともに防衛努力と集団安全保障体制をゆるめないということは、これはある程度肯定されるといたしましても、これは今の安保条約安保体制といいまするか、これを無条件即時に廃棄できない、こういう保守党立場を一応肯定するとして、今度やろうとしているのは、今の安保を続けるということじゃないのです。これは政府答弁は、いつでもこの点を意識的にすりかえて、ごまかしている。そうじゃなくて、今の安保という寝ている子を起こして、しかもそれを――繰り返し申し上げまするが、さらに能動的、積極的な相互防衛条約、これはいかにあなたが口でごまかしても、これは相互防衛条約内容と形式を備えているものに違いないのでありまするが、そういう改定を行なおう。これは何ら理由にならぬ。現状においてはまだ雪解けに全面的に信頼できない。従って、今安保はそのままにしておくというのなら、まだこれは一つの理屈でありましょう。これを特に強化する。特に強化した軍事同盟にするという理由というものは、何ら発見できないと思うのですが、この点についてはどうお考えであるか。外務大臣及び総理大臣からお答えを願いたい。
  36. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私ども、この現在の安保条約が制定され、また、その制定の当初におきましても、その後におきましても、この現在の安保条約というものは、アメリカ一方的であり、日本自主性が認められておらないし、また、安保条約そのものの内容等におきましても、アメリカ日本に対していろいろな権利は持つけれども、一体義務の点なんかについてもきわめて不明瞭であるというようなこの点等々、不合理な点につきまして、いろいろと締結当時からその後において論議されてきたことは御承知の通りであります。私どもがこれを合理的な立場において改正したいということは、従ってずっと考えて参ってきておったことでありますが、今お話のように、この条約改定内容を検討していただくならば、一体、日本が負うところの義務が、実質的にどれだけふえているかという、現行の問題から考えてみると、私どもはふえないという考えを持っております。従って、いわゆる相互防衛条約という言葉からいわれる一般の通念は、日本が侵略された場合に相手国が助けてくれると同時に、相手国が侵略された場合においてもこちらが助けるというふうな、広い意味を持ったものが一般的の相互防衛条約考え方であります。しかしながら、初めからこの改定日本憲法の範囲内においてやるということが大前提になっておりますから、日本の負う義務というものが、従来の自衛権で当然考えられなければならぬ範囲以上には出ない建前になっておりますし、バンデンバーグ決議の問題につきましても、私どもがこれによって新たな防衛努力を義務づけられるという性質のものではないのであります。そういう意味から申しまして、私どもは、現在の安保条約の不合理を改めることであって、今お話のように、何か非常に関係を強めるというふうには、実は考えておりません。
  37. 曾禰益

    曾祢益君 日本の、新条約によって負うところの義務が、実質的にふえている、ふえていない等については、あとでさらに内容の点で御質問いたしまするか、そういう形式論では済まないのであって、やはり雪解けの方向に進んでおるとの状態にかかわらず、憲法の特殊性はあるけれども憲法の特殊性の中においても、これは基地貸与協定から相互防衛条約に変わったこの事実は、非常に大きな対外的な意味を持つことは否定できないのでありまして、このような雪解けの際に、そういうような相互援助条約方式に切りかえて軍事同盟的性格を強める、こういう国はどこにもないということを指摘しておきたいと思うのでございまするが、少くとも総理は、東西首脳会談までこの情勢を見送る、こういうお考えはないか、もう一度伺いたいと思います。
  38. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 条約改定交渉をいたしましてから約一年かかっておりますので、その間においてのいろいろな国際情勢の変化、あるいは国際上の出来事等があったことも事実であります。しかしながら、私ども根本の見方として、われわれが自由主義国の立場を堅持して、そうして日本の安全を保障し、また、それによって世界の平和に寄与しようという基本に立って、日米の協力によって、日本の安全、極東の平和と安全が保たれていくということが最も望ましいことであるというこの考えにつきましては、終始一貫して、それが国際情勢の変化と決して矛盾、逆行するものじゃないという見通しのもとに交渉を続けて今日に参っておりまして、私はこの見方は問違っておらないという考え、確信に立っておりますから、今、特に東西両巨頭の会談まで待つとか、あるいは、しばらく今後の国際情勢の変化を見るまで持つというふうな、私は考えは持っておりません。
  39. 曾禰益

    曾祢益君 詳しい点は、あとで質問いたしまするが、こういう国際情勢の推移から見て、少なくとも、期限を十年間にするということは全く不当である。一年の予告をもってこれが改廃できる。あるいは、条約期限内における改廃条項を設けるということは当然たと思うのですが、これに関する御意見を伺いたい。
  40. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の条約締結に当たりまして、期限を十年として、そうして廃棄条項を作る。そこで期限が長いかどうかという問題が最初に議論されたと思います。私どもといたしましては、現在の状況からいいまして、こういう条約が安定的な若干の年月を保持しなければならぬ建前からいいましても、十年というのは必ずしも不当に長期であるとは考えておりません。ただその間に何かいろいろ情勢も変化してくるのではないか。従ってそういう情勢に応ずるような、何か方法をつけておいた方かいいのではないかという御議論が一面あると思います。むろんわれわれとしては、今後国際情勢の変化が全然ないとは考えられませんし、また、将来とも巨頭会談その他を通じて、平和に対する世界各国民の要望というもの、あるいはそれに伴う国連の平和維持機構というようなものが進んで参ることを念願しておることはむろんでございますが、しかしながら、そういう画期的ないろいろな変化が起こりますれば、当然こういう条約というものは再検討されるわけでありますし、また変化に応じなければならぬ場面もございましょう。しかし、それは当然そういう時期に、両国が友好親善関係の間において話し合いをし、また、両国が平和を希求している限りにおいては、こういう問題について話し合いができるのであります。特にそういう条項を設ける必要は現在ないと、こう考えております。
  41. 曾禰益

    曾祢益君 この問題については、あとで内容に触れてさらに御質問いたします。  次に、情勢の進展と変化について重要な点は、何といってもお隣の大陸、中国の問題であります。中共側が安保改定に対して非常に警戒的である。また、その対日断交のおもなる理由を安保改定に置いているということは、これは否定できない事実であろうと思います。私どもは、中共の対外的な高姿勢、チベット問題、あるいは中印国境紛争などについての態度をいいとするものではありません。また、安保についても、先方の誤解もあるでございましょう。しかしこの際、今申し上げたように、総理の陳弁にかかわらず、安保改定は何といっても能動的な、積極的な集団保障に切りかえるわけでございまするから、これをやっておき、日中関係はどうなってもかまわないという政府態度は、きわめて無責任だろうと思うのであります。ソ連のフルシチョフが、渡米後の新事態に応じまして、フルシチョフが中国の北京に参って、やはり基本的には紛争の平和的解決ということに非常に大きな力を発揮しておると思うのであります。それがどの程度まで効果を発揮したか、これは今後の進展を待たなければわかりませんけれども、基本的にはそういうふうに世界があげてこの西の緊張点であるベルリン問題、東の緊張点である台湾海峡の問題、これらをすべて、少なくとも戦争によらざる解決に努力している、こういう場合に、一体、政府安保条約改定をしてしまって、そしてしかも万が一にもその事態にかかわらず、米中関係の紛争が起こった場合に、日本がいかなる立場に立つか、これについて国民に明確にこのようだから安心なんだと、これを出さないで、ひたすら安保改定を断行する態度は、これはほんとうに無責任きわまると思うのであります。ことに、これまた細目はあとで申し上げまするが、極東の平和と安全のための米軍の出動に対する日本の拒否権云々は、これは実際問題として条約上成り立たない、もし米中紛争になったならば、日本の安全のごときは、これは現実にはふっ飛んでしまう、この点をわれわれは銘記しなければならないと思うのであります。  そこでもう一つ問題になる点は、この世界の軍縮の進展がきわめて望ましいことでありますし、さらに核実験禁止協定の進展に対しても一つの見通しが明るくなってきている今日、この世理の軍縮進展、特に核クラブを三大保有国以上に広げてはならない、これこそ世界平和のかぎであろうと思うのであります。この点で、私どもが、いな世界が心配しておりまするのは、極東における中国の核武装化の問題であります。もとよりこれは真相はわかりません、わかりませんけれども、万一、中国が核武装化してしまう、もしそういうことになったならば、これは実際、日本がいかにアメリカとの間の安全保障条約で守ってもらおうと思っても、日本の安全は中国の核武装化によってこれは根底から脅かされることは明瞭であります。私はその点を考えますときに、この際、政府がいたずらにこの経緯を追って、行きがかりにとらわれて、日米安保条約改定、しかもその軍事同盟化に走るのは、ほんとう日本安全保障にはならない。政府としては、当然に、何回も国民から要求しているように、日本みずからが核武装化しない、この点を明確にすることによって、さらに中国の核武装化を、これをどうしたら食いとめられるのか、これは日中両国だけでもできません。従って軍縮の進展、これらの問題にからんでこの問題を何とか解決していくという努力こそが、真の日本安全保障の道ではないかと思うのであります。それをしないで、ただ安保条約だけを改定すれば、これが安全なんた、これは国民が一人として納得しているものはありません。この中国の核武装化、またそれを防ぐための日本の非核武装化についての見解と、そういう見地から安保条約をもう一ぺん考え直すべきだという私の見解に対する総理の御所見を伺いたいと思います。
  42. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日本を核武装しないということは、従来からもしばしば明確に申し上げております。特に安保条約の上から申しましても、アメリカの核兵界持ち込みに対しても、私どもははっきりとこれを認めないということを申しておりますが、条約上、現在のこの安保条約においては、そういうことを一体拒否する、日本の意向によってアメリカが行動しなければならぬという基礎はどこにあるのだというふうな御質問も、従来しはしば出ておるのでありますが、もちろん従来におきましては、日本アメリカとのこの友好関係からいい、日本が明確に核武装しないし、核兵器の持ち込みをしないということを明言しておることを尊重して、そういうことはないんだということを申しておりますけれども、それをさらに今回の条約改定におきましては、重要な項目の一つとして、明権に日本の意思に反してそういうことのできないようにしようというのが一つ目的になっておることは御承知の通りであります。そういうふうに、日本は核武装しないし、核兵器の持ち込みを認めないという方針で進んできております。  また、中国の核武装の問題、私どもは核兵器そのものはやめるべきものであるという主張に立って、あるいは原水爆の実験に反対し、あるいはまた核兵器の製造禁止や、これらの問題についても常に国連を中心にわれわれの主張をし続けてきておるのであります。もちろんこの核兵器の最近におけるところの非常な、異常な発達から、この核兵器を所有しておる国においても、これがさらに広く世外各国において持たれるということの危険性、さらに持っておる国同士の間におきましてもどうするかという問題については、御指摘のようにいろいろな努力が払われておって、これを制限していくという方向に気運が動いておることは、私どものかねての主張の方向に向いておるものだと私ども考えております。さらにこれを推進するようにあらゆる努力を続けていかなければならぬと思います。ただ中国が核武装するかどうかという問題になりますというと、これはもちろん中国が決定する問題でありますけれども、今言ったように核兵器そのものに対する世界の各国のこれに対する態度というものに対して、私どもは国連中心にその主張をいたしてきておるわけであります。そういう世界的の、国際的の協力によって、私はこの核兵器というものを、そのものをなくするようにこれは努力していかなければならぬ、従ってそれの武装をする新しい国ができることに対しては、やはりそのわれわれの念願から申しますというと、望ましくないことであるのみならず、それは国際協力によってそういうことを阻止していくように努力をしていかなければならぬ、かように思っております。
  43. 曾禰益

    曾祢益君 私がこれだけ誠意を尽くして国際情勢の変化、冷戦緩和の徴候、中国の動向、軍縮、核武装の問題等から、もっと真剣に安保条約考え直せと言っているのに、まことに総理答弁は形式的であり、こっちは勝手なことをやるんだ、あとは野となれ山となれと言わぬばかりの態度であって、はなはだ不満であります。時間がありませんから次に移ります。  条約内容について若干点御質問いたします。第一に伺いたいのは、藤山報告の第三項でございまするが、これによると、個別的にまた相互に協力して、武力攻撃に抵抗するためのそれぞれの能力を憲法の範囲内で、維持発展させるとの意図を両国が表明する、こうなっております。そこで第一に伺いたいのは、「それぞれの能力」とありまするが、これはたとえばNATOその他すべての条約がほとんどそうでありまするが、「それぞれの能力」というのは、「個別的又は集団的能力」と同じであるか、違うのか、この点を伺いたいと思います。
  44. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 「それぞれの能力」と申しますことは、NATO等にあります集団的能力とは違ったものであります。個々の国それ自身がやる努力ということでございます。
  45. 曾禰益

    曾祢益君 「それぞれの」というのは、もとよりそれぞれの国のという意味でございますが、そのそれぞれの国が持っておる能力、防衛能力が個別的能力と集団的能力と二つあるということが、これが相互防衛条約の趣旨であります。その場合の集団的の防衛能力というものは、あなたは否定されるのですか、否定されるとすれば、なぜ否定されるか、その根拠を示していただきたい。
  46. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本としては個別的能力というものを持っておるわけでございます。集団的な防衛能力というものは持っていないわけでございます。
  47. 曾禰益

    曾祢益君 その理由はどこにあるか。
  48. 林修三

    政府委員(林修三君) この点は御承知の通りに、いわゆるバンデンバーグ条項とも関連する点でございますが、日本といたしましては、やはりこれは日本憲法の建前から申しましても、日本の安全を守るために必要な防衛力を持つということは、これは肯定されるわけでございますが、その以上に越えて日米共同の防衛能力ということまでを持つということについては問題がございます。従いましてこの点についてはNATOその他の条約にございますような個別的または集団的能力という言葉をむしろ避けまして、それぞれの能力ということをはっきりさせたい。日本及び米国のそれぞれの能力ということにしたい、かように考えておる次第でございます。
  49. 曾禰益

    曾祢益君 もう一ぺん明確に伺いますと、そうすると、日本も個別的能力しか持てない。アメリカも個別的能力で、集団的能力はこの条約に関する限り持てない、こういう解釈ですか。
  50. 林修三

    政府委員(林修三君) 日本については、憲法の範囲内においてさようでございます。アメリカにつきましては、これはいわゆるそれぞれを発展させるというこの条約についてでございますので、それ以上持っては悪いということは、これはどこにもないわけでございます。アメリカアメリカとしての能力を持つということは、これは当然アメリカの問題でございまして、少くともアメリカとしては自分の能力はそういうことでやるということでございます。
  51. 曾禰益

    曾祢益君 そういたしますと、日本の場合は日本の個別的能力、すなわち自衛軍、アメリカの場合はアメリカの軍隊と、日本の軍隊と両方合わしたのを、アメリカの方は全部両方統合したような防衛能力を持てる、こういう解釈でございますか。
  52. 林修三

    政府委員(林修三君) さようではございません。私の申しましたのは、アメリカはいわゆるアメリカの国法に従って自国の軍隊をどの範囲に持つかということについては、自国のそれぞれの国法に従ってやるわけであります。アメリカの軍隊の規模につきまして、アメリカが自分でどの程度のものを持つかということについてはアメリカ憲法に従って持つということだけでございます。
  53. 曾禰益

    曾祢益君 おかしいと思うのですけれども、次に、それに関連してさらに伺いますが、そうすると、日本が相互に協力してというのですから、アメリカと協力して防衛能力――それぞれのが、個別的の能力だと断定されましたが、外国と協力して防衛能力を維持、発展させるということが、これが一体、憲法の範囲内にということを言っておりますこのこと自身が憲法に反するのじゃないかと思いますが、これは外務大臣から明確に御答弁願います。
  54. 林修三

    政府委員(林修三君) 憲法の問題ということで御質問でございましたから、その点ちょっと私からお答えさしていただきたいと思います。これはここでは個別的にまたは相互に協力してということは、まさにこれは方法を言っておるわけでございまして、方法手段としては、日本は自国の経済力、あるいは産業力によってそういうことを維持するということも考えられます。従来行なわれておりますようなMSAの援助、その他のことによって米国の援助を得て日本の個別的能力を維持し発展させる、こういうことも考えられる、つまりその方法を言っておるわけでございます。
  55. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま法制局長官答弁で要を得ておると思います。要するにそれぞれの能力をお互いに自分の憲法の範囲内で維持していくわけでございます。それについていろいろな協力関係と申しますか、向うの新しい知識を吸収したりあるいは協力していくということは考えられるわけでありまして、そういう点については特に憲法に違反しておるわけではございません。
  56. 曾禰益

    曾祢益君 NATO条約では、協力でなくて共同してとなっているのですが、それを協力してということによって、いわゆる指別的能力に外から助けてもらうだけだ、こういうカムフラージュをやろう、こういうお考えでございますか。
  57. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 特にカムフラージュというのではございませんので、考え方か違っておる立場においてこういうような字句を使っておるわけであります。
  58. 曾禰益

    曾祢益君 もう一つこの点で伺いますが、それば藤山さんの報告の中にはなかったのですが、おそらく条約のテキストには、このほかに自助及び相互援助によりという字句が入るかと思うのですが、この点はどうなっておりますか、明確にお答え願いたいと思います。
  59. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) まだ最終的に草案が確定しておりません。しかしながら自助及び相互援助というような言葉は用いることになろうかと思います。
  60. 曾禰益

    曾祢益君 その場合に相互援助により云々ということになって参りますと、また元へ帰りまして、いかに個別的能力なんといっても、外国と協力、さらに相互援助によりということになると、能力の持ち方によってやはり集団的能力というバンデーバーグ決議の精神がそこに現われてくるし、さらにこのことが、ひいてこの危機に対する共同防衛義務の根源になろうと思うのですが、それにもかかわらずやはり相互援助という言葉をお入れになるつもりであるかどうか、お伺いいたします。
  61. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 要するに今申し上げたことは、方法を言っておるのでございまして、いわゆる共同してというような意味とは全く違ってくることは当然でございます。
  62. 曾禰益

    曾祢益君 お答えになっていないのですが、私が申し上げました相互援助によりが入ると、やはり集団的防衛力を持つことになり、さらにそのことがひいて共同防衛をするということの根拠にすら援助によりという言葉が入るとなるのではないか、この点に対するお答えを願います。
  63. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま御質問の点は防衛能力の問題だと思うのでありまして、集団防衛というのとは違っておるとわれわれは考えております。
  64. 曾禰益

    曾祢益君 明確を欠いておりますが、次に移りまして、第五項について伺います。第五項について、政府側の御説明によりますと、日本の施政権下にある領域において武力攻撃があった場合には、日米共通の危険に対処するため憲法の規定と手続に従って行動する、こう書いておけば、これでアメリカ日本防衛義務が明確化したんたと、こういっておられるわけでございます。もしそうならば、そのアメリカ日本防衛義務に対応する日本在日米軍防衛義務は一体どういうふうになるのか、この点を明確に、アメリカたけ義務を負って日本の方には義務がないということは、これは理屈にならないじゃないですか。
  65. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本基地が攻撃されますことは、日本の領土、領空、領海を侵して、しかも日本の土地が攻撃されることでありますから、これは当然個別的自衛の問題として起こってくるわけでございますから、日本としては個別的自衛の見地からその手続をとって参るわけでございます。
  66. 曾禰益

    曾祢益君 お答えになっていない。私が伺いますのは、あまり明確でない表現によってアメリカ日本防衛する明確な義務を負うと、これに対応する日本義務は何かというと、その養務の方はすりかえて在日米軍アメリカ基地に対する攻撃は必ず日本の領土権の侵害になるのだから、日本の個別的自衛権を発動することになるのだ、これは義務の問題を権利にすりかえた御答弁です。しからば個別的自衛権と称する問題は、これは一体アメリカに対する応援の義務にならないか。
  67. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 個別的自衛権をそのときに発動するということ自体は、アメリカの攻撃に対する、何といいますか、有力な支持になろうかと思います。しかしながら日本としては、個別的自衛権の発動でいくわけでございます。
  68. 曾禰益

    曾祢益君 あなたの御報告によると、新条約は実質的に何ら新しい義務を負うことになっておらない。これはさっき総理大臣からも、実質的には何ら新しい義務を負うことになっておらない、こう言っておられる。実質的には新しい義務を負うということにはならないというのは、実質的には日本の個別的自衛権でカバーされるからという意味と思います。もしそうならば実質的には何らの義務を負うことにはならなくても、形式的にはやはり在日米軍に対する攻撃に対しては、これは日本に対する攻撃と同様にみなしてこれを応援する義務があるのだ、義務はあるのだ。義務はあるのだけれども、それを裏返して説明すれば、日本の領土に対する個別的自衛権の発動だから、その実質的には負担にならないのだ、こういう意味なんでしょう。だから、やはり義務を負っていることは認めるのでしょう。どっちなんですか。
  69. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん実質的にわれわれは日本の個別的自衛権の発動によって行動するわけであります。しかしながら、同じような場所で同じように攻撃された場合に、形式的にはむろんそういうような行動が一致してくるわけでありますから、防衛の能力、防衛が一体になってやれる、やるという形にはなろうと思います。
  70. 曾禰益

    曾祢益君 そんなことを聞いているのじゃないのです。これが条約上の義務になるのか、よしその義務内容が、あなた方から言わせれば日本の個別的自衛権の発動であっても、発動するということは権利であるとともに条約上の義務じゃないですか。その点をはっきりしておいていただきたい。
  71. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん日本の国土が攻撃されましたときに、日本が個別的に自衛権を発動するということはこの条約における義務であることはもちろんであります。
  72. 曾禰益

    曾祢益君 そういうもし義務があるとすれば、これは日本防衛するための権利なんですから、やはりアメリカ軍を助ける義務がなければ意味をなさない。日本国土防衛という建前で立ち上がるけれども、やはりアメリカ軍を防衛するという義務になるのでしょう。その点はっきりして下さい。
  73. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん日本防衛することは日本自体が個別的自衛権でもって発動するわけなんであります。従ってそれは日本としての当然条約上やるべきことなのでありまして、そのこと自体がアメリカ軍に対して義務を負っているという意味ではございません。
  74. 曾禰益

    曾祢益君 そうすると、さっきは義務であるといい、今は義務でないという。もし日本がこのいわゆる防衛出動をやる場合には、日本の領土を防衛するための権利を発動したにすぎないのであって、アメリカ軍応援の義務でないといたしましょう。そうすると、あなたが前段で言っておられる、日本におけるアメリカ軍が日本領土が侵されたというので兵器をとって戦うことも、これはアメリカの個別的自衛権か集団的自衛権でしょうけれども、権利であるけれども日本防衛義務は明確にしてないじゃないですか。どこに明確にしてありますか。
  75. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろんこのアメリカ軍の、アメリカの持ちます義務というものは、そういうようなときに防衛するということを宣言するということによって明確にしていきたいと、こう考えているわけでありまして、その意味においては条文作成の上においてはっきりしてくることになろうと思います。
  76. 曾禰益

    曾祢益君 委員長から注意して下さい。これは私の質問に対する答弁になってないじゃないですか。時間をとられるばかりです。アメリカは、政府はこれは明確に日本防衛義務を負ったと、この文章で。ところがこの内容を追及すると、アメリカ軍は日本において集団的自衛権を行使するだけなんです。義務にはなっていないじゃないですか。どっちなんです。
  77. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん形式上におきましてそういうふうなことを宣言するということでありますれば、義務を負ったと解釈して当然であろうと思います。
  78. 曾禰益

    曾祢益君 それならば、日本の場合にどうして義務がないのですか。日本の方だけは義務を負わないで、領土防衛の個別的自衛権を発動するだけでございます。アメリカの方は外国領土を防衛するところの集団的自衛権もあるかもしれないけれども、それは同時に条約上の義務だと、同じ条約の中で同じかくかく宣言すると言っておきながら、片っ方は義務を負わない、片っ方は義務を負う、そんなばかな条約はどこにありますか。例があったらその例を出して下さい。
  79. 林修三

    政府委員(林修三君) これは私から申し上げた方が適当かと思ます。ただいまお話になっております、つまりNATO条約その他の方式とこれは大体同じでありますが、つまりそういうことをやることを宣言するという言葉でありますか、宣言するという言葉は、普通の何と申しますか、国内法でいいますと何々しなければならないというほどの、いわば義務という意味の義務規定ではございませんで、そういう場合には、アメリカとしては集団的自衛権を発動することを引き受けているということだと思います。それから日本はもちろんこういう場合には個別的自衛権を発動するということを宣言する、こういう意味でありまして、これがいわゆるよその国の相互防衛条約あるいは集団安全保障条約におきましてもこれをお互いのいわゆる義務と呼んでおるわけでありまして、そういう意味においてそれぞれの権利の発動を引き受けている、つまり条約でお互いに宣言している、そういう意味において私は義務の規定だといわれておるのだと思います。
  80. 曾禰益

    曾祢益君 それならば外務大臣はこの中間報告を取り消し、直していただきたい。この宣言をすることによってアメリカ日本防衛義務は明確化された、こういっておる。これを取り消しますか、どっちですか。
  81. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) それは取り消す必要はないと思います。
  82. 曾禰益

    曾祢益君 だって理屈になっていないじゃないですか。実にずさんというか不誠意というか、全くこれは国民を、愚弄するもはなはだしい。アメリカ防衛義務を認めさせたというのがこのほんとうのPRの最大の文句なんです。ところが条約的に法律的に追及していくと、これも実はアメリカ義務をはっきり負っていない、こういうことが明確になったと思うのですが、私は負ってもらうことが目的じゃありませんから次の問題に移ります。第六項と第八項に移りたいと思います。  きのう亀田委員から非常に鋭い御質問がありましたので、私もそのあとを引き継いで、さらに明確にしておきたい点がございます。  第一に、現下の情勢では常駐が依然必要であるということがいわれましたが、いかなる状況においてその必要があるかということについての質疑は終わりましたから一応次に移りまして、総理外務大臣も、極東の平和と安全なくしては日本の平和と安全はあり得ないということをよく言われるのです。もしそういうことの論理でいくならば、すべて極東の平和と安全のためというアメリカの行動は日本の平和と安全と不可分なのであるから、これは、全部これを是認しなければならない、こういうことになろうと思いますが、これは一体どういう意味であるか、明確にしていただきたいと思います。
  83. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本極東、まあ極東という概念の中におると思います。従って日本の平和と安全というものは、むろん日本の周辺、極東事態が安穏であるかあるいは安穏でないかというようなことから影響されることはこれは当然なことだと思のでありまして、日本の平和を考えます場合に、そういう意味において極東の安定ということが望ましいことであるわけであります。がしかしながら、極東の平和を維持するということのためには程度の問題があることむろんでありまして、そういう意味においてわれわれとしてはその程度を考えていくことは、これは当然なことたと思います。日本に直接侵略がある場合はむろんのことでありますけれども、しかし周辺に起こりました事態というものに対しては、その事態を考慮して参らなければならないものだと思います。
  84. 曾禰益

    曾祢益君 なんだかよくわかりませんが、少くとも不可分一体ではないということを言っておられるらしいのですが、次に、私もアメリカが常にいわゆる侵略的な戦争をやろうなどという建前で伺っておるわけじゃありませんが、外務大臣報告によりますると、アメリカ極東における行動は国連の行動の一環として侵略に対抗する場合のほかは憲章五十一条の自衛権の行使の措置として行なうのであるから、それでまあ心配要らないのだというようなことを言っておられます。もしそういうことでいくならば、アメリカがそういう個別的ないしは集団的の自衛権を行使した場合には、われわれは無条件にこれは賛成する、こういうことになろうと思うのですが、はたしてそうであるか、お伺いいたしたいと思います。
  85. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) アメリカが国連憲章に準拠してそして行動することは、われわれ友好国としてのアメリカに対する信頼だと思います。しかしながら、そうかといって、アメリカかそういう行動をとりますときに、日本基地を使うか使わないかというような問題については、われわれといたしましても、やはり考えて参らなければならぬ点があろうかと思います。
  86. 曾禰益

    曾祢益君 きのう亀田君から御質問になったように、第六項並びに交換公文第八項に関連する極東の平和と安全のため云々でありまするが、私は、第六項においては、極東の平和と安全のためにアメリカが出撃する権利がある、はっきりある、ただ、その権利を行使する場合に、日本事前協議するのだと、権利はあるのです、向うは。ただ、それをやる場合に事前協議をするのだというのが交換公文の趣旨だと思う。はたしてそうであるかどうか、伺いたい。
  87. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この条約の取きりめの趣旨に従ってアメリカ軍としては行動をし、それについてわれわれも事前に協議する、こういうことになろと思います。
  88. 曾禰益

    曾祢益君 私の質問に対して、明確なるイエス、ノーをおっしゃっていただきたいと思います。
  89. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今申し上げた通りだと思います。
  90. 曾禰益

    曾祢益君 それは困りますよ。はっきり返事して下さい。第六項で権利を認め、第八項の交換公文でその権利を行使する場合に協議するというふうなごとにしている。権利はすでにある、出撃権は、第六項で、そうでしょう。
  91. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん、現行安保条約でもそうでありますが、今回の条約でも、日本におりますアメリカ軍が出ていくということについては、それは極東の平和と安全という場合に出ていけるわけであります。でありますけれども、しかし、それは当然そういうことではいけない、事前協議ということをして、日本の意思をいれて参ろう、こういうわけでございます。
  92. 曾禰益

    曾祢益君 第六項によらずとも、現在の安保条約でも、権利はすでに持っているのです、出動権は。ただ、それを抑制するために交換公文で事前協議とやっているのでしょう。従って、協議が整わない場合には、これは権利のある方が権利を行使することは自由ですね。
  93. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 協議でありますから、協議が成立いたしませんければ出て参りません。
  94. 曾禰益

    曾祢益君 それでは、第六項において、極東の平和と安全のために、いわゆる寄与するために駐留するのですから、目的からいって出撃権があるということは否定するのですか。
  95. 藤山愛一郎

    ○国粉大臣(藤山愛一郎君) 第六項ではそういうふうに書いてありますけれども、条件付であることはむろんであります、協議事項がありますから。
  96. 曾禰益

    曾祢益君 しからば、協議整わざる場合に出動しないということの明確なる根拠を示して下さい。
  97. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 協議が成立するためには、お互いに意見が一致する、いわゆる合意がなければなりません。従って、その場合には出て参らないと思います。
  98. 曾禰益

    曾祢益君 違います。協議が整わざる場合にはどうなるかということを聞いております。
  99. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 協議整わない場合には出て参りません。
  100. 曾禰益

    曾祢益君 その証拠を示して下さい。
  101. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 協議というものは、その成立のためには合意を必要とするわけでありますから、合意されなければこれを実行することはございません。
  102. 曾禰益

    曾祢益君 そういう解釈が国際法なり法律のあれとしてどこに根拠があるのか、これを示して下さい。アメリカとの会談において了解事項がはっきりできているというなら、その根拠においてお答えを願いたい。
  103. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) アメリカとの交渉において協議というものが成り立つためには、お互いに意見が一致しなければならぬという建前の上で話し合いをいたしております。
  104. 曾禰益

    曾祢益君 それはごまかしです。協議することは、意見が一致する場合もある、しない場合もある、それならば合意とするのがいいのであって、これは全然答弁になっておりませんが、ほかの同僚諸君からも御追及があろうと思いますから、全く不満であることを表明して、次に移ります。  私が伺いたいこの問題のいま一つの点は、極東の地位――範囲でありますが、もう一ぺん明確に御説明を願いたい。
  105. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 大体フィリピン以北、日本を中心とした地域、こういうふうに考えております。
  106. 曾禰益

    曾祢益君 そういう不明確なことでは困ると思います。いやしくも日本の安全に非常に関係がありますし、いわゆる協議事項に関連することですから、その場合に、たとえば、もちろん朝鮮は含むんでしょうけれども、海陸でどこまで含むのかを明確にしていただきたい。
  107. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん、この極東の概念というものが現在まで確定的にきまっておるわけではございません。しかも、これらの問題について東経あるいは西経というような標準を作ることも困難だと思います。従って私といたしましては、交渉の過程において、極東というものを大体フィリピン以北、それから大陸の沿岸、日本を中心にした沿岸、こういうふうに考えております。
  108. 曾禰益

    曾祢益君 こういう重大な二国間あるいは多数国間の相互防衛条約、いわゆる安全保障条約の場合に、条約地域がそんな不明確な例があったら、これを一つお示しを願いたい。
  109. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) これは、いわゆるこの根幹をなす条約地域ではございません。でありますから、アメリカ日本とのしかし解釈が一致しなければなりませんので、私どもとしては、その解釈は一致さしていくことに当然なります。
  110. 曾禰益

    曾祢益君 条約地域に二つあることはお説の通りです。最も狭義の条約地域は、日本に施政権のある領土ということになっております。しかしいま一つ条約上の地域は極東なんです。しからば、たとえばNATO条約はどうなっておりますか。西大西洋といっているけれども、それは必ず西大西洋におけるアメリカの領土とか何とかはっきり明確化されているんです。出撃の範囲といいますか、出撃の目的の限定ですか、その極東が、そんな不明確な条約の例があったら一つお示しを願いたい。
  111. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今日までの話し合いで今申し上げた話し合いをいたしておるわけでありまして、むろん、これがアメリカの上院に対する説明日本の議会に対する説明とが食い違っては相ならぬことは当然であります。従って、そういう点については話し合いをきちんとさせるべきは、私ども考えておる点であります。
  112. 曾禰益

    曾祢益君 しからばこの点は少なくとも、地図まで出さなくとも、最後の場合には極東の地域は明確にされるものと思います。またそうでなければならぬ。ただ残念なことには、それは目的なんであって、きのうの亀田君に対する御答弁の中にも、アメリカ軍は、目的極東の平和と安全、しかし出動は、一たん事ある場合にはどこまで行くかわからぬ、こういうお話でしたが、従ってそうなってくると、出動地域といわゆる条約上の極東の範囲とはまた別になるんですね。その点はどうなっておるんですか。
  113. 小林英三

    委員長小林英三君) 外務大臣にお願いいたします。語尾が少しはっきりしません点がありますから……。
  114. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん、いわゆる条約地域という意味では、私ども先ほど狭義の条約地域のことを条約地域と申し上げておるわけです。従って、条約地域と出動地域という意味ではお答えしかねるわけでありますけれども、しかし、アメリカ軍が極東の平和と安全のために行動する範囲が必ずしもいわゆる極東の範囲と一致するということでないことは、これは当然のことだと思うのであります。しかし、それがどこまで行ってもいいかというと、それは問題にならぬのでありまして、やはりそのときは協議によってきまっていく。日本自身が攻撃されました場合に、アメリカがやはり日本を守るために行動半径をどこまでにするかという問題と同じような意味におきまして、必ずしもいわゆる今の極東の範囲から一歩も出ないのだというような厳格な解釈をとるべきでないと思います。しかしながら、そうかといって、それをどこまでもそういうことのために出るということは、事実問題としてはあり得ませんし、また、そういう問題については、われわれもむろん協議をしていくことになろうと思いますから、当然限定されると思います。
  115. 曾禰益

    曾祢益君 二つ問題があります。一つは、日本を守るために、アメリカ軍がいわゆる日本防衛のための措置として、あるいはその自衛権として、あるいは日本を攻めてくる方の側の奥地まで攻めることがあるだろう。これは、自衛権の範囲というものは、そういうことかあろうと思う。戦争になってしまえばね、そのいい悪いは別として……。そのことを今聞いていない。極東の――日本を守るためではありませんよ、極東の平和と安全の行動の際に、それと同じように、どこまで行ってもいい、ソ連の本拠を突いてもいい、そういうことになろうということになる、あなたの言っているのは……。それを一々、だからそんなことをきめないでおいて協議する、これは無責任もはなはだしい。協議が整わなかったならばどうするか、この問題が必ず残る。拒否権はないとわれわれは見ている。従って、極東の平和と安全のための措置であっても、それが少なくとも極東以外には行かないのだ、こういう原則がきめられなければ、これは協議した場合、弱い方が負けてしまうことにきまっておる。そんなことでは理屈にならない。従って、極東の平和と安全のための措置は、事実上その行為においても、それは極東に対するアメリカ軍の出撃に限るのだ、こういうことにするおつもりはないか。あらためて伺います。
  116. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん、この条約極東の安全ということは、先ほど来申しておりますように、日本との関連においてわれわれは考えて参らなければならぬわけであります。従って、極東自体の防衛のためにそういう遠方に出ていくということは考えられないのでありまして、原則的には、むろん極東の地域内ということが主体であることは申すまでもありません。
  117. 曾禰益

    曾祢益君 非常に不明確ですが、次に移ります。  この第六項においては、「日本の施設及び区域の使用を許す」ということになっておりますが、どういうふうに使うかということは限定しておりません。ところが、第八項の、交換公文になりますと、極東の平和と安全のための作戦行動をするために施設及び区域を使用するときには協議をしなければならない、こういうことです。そうすると、作戦行動とその他の行動とをはっきり分けている。一体なぜこれを分けたか、この点を御説明願いたい。
  118. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本基地作戦行動に使いますことは、みだりに使いますことは適当でないと思います。従って、われわれとしては、作戦行動に限ることにし、そうしてそれを事前協議の対象にすることは当然のことじゃないかと思います。
  119. 曾禰益

    曾祢益君 注意して下さいよ。私の言っていることは、作戦行動に使う場合だけを協議の対象にするのはなぜか。その他の軍事行動があります。補給その他があります。それは協議の範囲内にしていないのかということを聞いている。
  120. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん、作戦行動だけでございます。
  121. 曾禰益

    曾祢益君 防衛庁長官に伺います。  日本基地作戦行動に使うときだけ相談する、その他のアメリカ軍の行動については相談しない、こういうことになってくる。じゃ作戦行動とは他の軍の行動とどこが違うか。これを一つ説明願います。なんだったら、辻君に証人になってもらいます。
  122. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 作戦行動について協議するということは、主として極東の平和と安全に関達しておると思います。その点について、まだ補給その他についての協議につきましては外務大臣の、第四の条項によって協議の対象になる、こういうふうに思います。
  123. 曾禰益

    曾祢益君 作戦行動と補給行動との違いを、一つ例をあげて御説明願いたい。
  124. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本基地から軍事的破壊力をもちまして破壊行動に飛び出す、あるいは日本から出ていくという場合をわれわれは想定いたしております。
  125. 曾禰益

    曾祢益君 そうすると、日本基地から軍艦、飛行機が飛び出す場合には、アメリカの全部これは作戦行動だ、必ず協議事項の対象になりますか。
  126. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今申し上げたように、破壊的な軍事行動をするために出ていくという場合には、当然その中に入ります。
  127. 曾禰益

    曾祢益君 破壊的軍事行動というのを説明して下さい。
  128. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 攻撃に行くと申しますか、鉄砲の撃ち合いに行くと申しますか、そういう意味で戦闘行為に参る場合のことを申します。
  129. 曾禰益

    曾祢益君 直接戦闘行為に関与しない場合、軍隊の移動あるいは軍需品の輸送等については協議事項に入らない、こういうことですか。
  130. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この交換公文にやりましたのは、一般協議から特殊のそういう事態を摘出いたしまして、そして協議をすることになっておりますので、交換公文に現われているのは、今申したところでございます。
  131. 曾禰益

    曾祢益君 だから、ほかの、補給等については勝手たるべし、こういうことですか。
  132. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 一般協議によって協議を行なうわけであります。
  133. 曾禰益

    曾祢益君 一般協議の内容説明して下さい。
  134. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 一般協議は、まあ今回の協議事項の場合と申しますか、あるいはいろいろな場合に協議をされると思います。アメリカ軍がここにおりますことにつきまして、あるいはそういうような極東の紛争が起ったような事態、そういう問題について一般的に数多い協議が行われると思うのでありまして、一般的な協議というものは、全面的にこの条約の実施に当っての問題について協議するわけでございます。
  135. 小林英三

    委員長小林英三君) 曾祢君、時間が参りました。
  136. 曾禰益

    曾祢益君 総括的な協議ではなくて、具体的に、たとえば、不幸にして台湾海峡に事態が起こった、そういう場合に、補給基地として日本が使われることについては、それをとめるのですか、とめないのですか、どういうことですか。
  137. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん、今回の条約というものは、日本の平和と安全を守る、または極東の平和と安全というものを希求してわれわれやるわけでありますから、そういう点について、その目的によっては、むろん今お話のようにイエスと言う場合もありましょうが、ノーと言う場合も一般協議によってはある、こういうことでございます。
  138. 小林英三

    委員長小林英三君) 時期がありません。――じゃもう一点……。
  139. 曾禰益

    曾祢益君 もう一点、続けて質問だけをさせていただきます。  第一は、この期限の問題でありますが、御承知のように、NATOは、もうすでに締結以来十年たっております。従って、いわゆる一方の一年間の予告で再審理ができる状態になっております。また、これに対抗するワルシャワ条約、これはたしか二十年の期限だったと思います。また中ソ友好同盟相互援助条約は、これは三十年の期限、しかしこれらの条約、あるいは非常な特定の例を除きまして、私の承知している限り、特にアメリカが当事者である条約で、一応無期限にしておるけれども、一年間の予告でこの廃棄ができる、あるいは全米条約の場合はたしか二年の予告だったと思いまするが、こういうものでないものは一つもない。これは米韓、米比、米・台湾条約のみならず、SEATOでもアンザスでもそうです。一体いかなる理由でこれにもかかわらず十年のいわゆる固定期間を設けなければならなかったか、全く意味がないと思う。NATOはもうすでに再審議状態はいつでもできる。しいて中ソ友好同盟が頭から三十年だと、これと対抗するという性格をただ表わすために、条約を十年間の固定期間を設けているとしか思えない。ほかにアメリカの集団安全保障条約、今申し上げたような以外に、どういう十年なり、そういう長い固定期間の条約があるか、これをお示し願いたい。これが第一点であります。これは外務大臣に伺います。  それから最後に、私は以上の質疑応答を通じまして、まことに私自身も突っ込みが足りない、これを申しわけなく思いまするが、時間の制限もあるのでやむを得ない。政府安保条約に対する態度が初めから今日まで一貫性計画性もなければ、保守党保守党なりの、当面アメリカの協力を得たいという立場に立っても、何らの見通しも計画性もない、このやり方であったことが一つ。第二には、一年前の状態と今日までの状態根本的に変わっている。従ってその情勢の変化に対応した行きがかりにとらわれない見地で、この際もう一ぺん白紙に戻ったつもりで再検討する必要がある。これは明瞭だと思います。一々個々の内容についても、今の答弁を通じてきわめて不明確な問題ばかりである。事実上今の安保条約に比べてこの方がましだという点すらこれは言えないのではないかというくらいきわめて協議条項内容等が不明確である。こういうふうに考えられるのでございます。従いまして、総理に、くどいようでありまするが、この際はっきりもう一ぺんお答えを願いたい。どうしてもあなたはこの相互防衛条約方式にいかれるという、これをおやめにならないのか。相互防衛条約方式だけはこれをやめるというお考えに、静かにみずから省みて、日本の将来を考えて、もう一ぺんそこに立ち返る余地がないのかどうか。  これは同じことでありまするが、巨頭会談や軍縮の進展を待って、いきなりやめろとは言わないにしても、少なくともそれまで調印を待つべきではないか。これは国民の良識の示すところだと思うのであります。  第三に、同じことでありまするが、中国問題はそのままにしておいて、台湾問題というあの非常な危機をそのままにしておいて、そうして協議条項で何とかといってごまかしていくというような、こういう態度でなく、中国問題に対する目鼻をつける、まずその努力をして、その間は今の安保条約でがまんするというのが、これは保守党立場に立っても良識ではないかと思うのであります。  第四は、先ほどるる申し上げましたように、この極東における軍縮、極東における核武装地帯を広げない、これは何といっても産業が発達した、科学が進歩した日本と中国の責任です。この極東の武装化の問題と安保の問題をとらえて、新たに安保を進めればいいという考え方をやめていただきたいと思うのですが、もう一ぺんその点に関する熟慮の上に立ったお答えをいただきたい。  以上申し上げましたように相互防衛条約方式はやめにしないか、以上のいろいろな点から少くとも交渉をしばらく凍結して、なし得るならば白紙に還元しろ、こういう私は国民の声があろうと思うのです。もし、以上申し上げたことをすらどうしてもできないというならば、きのう同僚亀田委員が申されたように、少なくともあなたのへ理屈は別として、この春の参議院選挙は率直に言って、自民党も社会党もすべての候補者が安保条約を正面に出して戦っておりません、これは事実です。従ってそういうような状態で昨年の四、五月ごろの総選挙で全部がまかされたからこのまま政治家の責任、国会議員の責任で安保をやるのだ、これはファシズムにも通じかねない危険な思想です。これだけ重大な問題であるならば、あらためて国民の信に問うということが、これが当然の憲政の常道だと思います。私は従って、繰り返し申し上げたいのでありますが、ぜひこの点はもう一ぺんお考え直して、いわゆる仮調印をする、イニシアルをした、案文がこれで確定した、しかし調印はしない、その段階において、次の政府はだれがなるのだ、この確定した案文によって民意に問うべきではないか、すなわち衆議院の解散は調印前にやるべきである。こう考えまするが、これらのことについての明確な御所信を伺いたいと思います。まず外務大臣からお答えを願います。
  140. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 期限の十年、他の条約というものにはいろいろあるかと思いますが、大体ただいま曾祢委員の言われたのが実例だと思います。従って米韓、米比なりあるいはアンザスなりは、一年の予告ということはございます。しかしそのこと自体はそれぞれ成立の過程がありまして、また当事国の事情もございましょう。われわれといたしましては、この種条約を作りますことはやはり一定安定期間を持って、そうして相互信頼の上に立ってこれを運営して参るということが、一番安定した日本の平和と安全を維持する方法だと思うのです。むろん情勢が変わりますれば話し合いによって変更することはできるわけであります。そういう点から見まして十年ということが適当であろうと、こう考えました。
  141. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 国際情勢の過去一年における変化、また将来における見通し等からこれを白紙に還元する、あるいは調印を延期するということに対しましては、私が先ほどからお答え申し上げているように、私どもはこの安保条約改定を阻止するような変化があったとは考えておりません。従ってそういう意味においてまたそういう変化があるとも考えません。われわれはあくまでも日本の安全を守り、平和が他から直接、間接侵略を受けないという状態にして置くためにこの安保体制を持つことが適当である、そうしてそれを、従来論議されているような諸点において、日本自主性日本立場を明らかにする条約に入ることを、このためにやめるという考えはございません。  第二点の、この安保条約改定が核武装につながるような議論が世の中にもありますし、また曾祢委員の御質問の中にも、そういう意味においての御質問に対しましては、私が先ほど明確に申し上げている通り、むしろこの条約ができることによって、核武装を日本がしないということをわれわれの責任において明確にし得ると考えております。また、あくまで核武装はしないものである、また世界における軍縮の問題やあるいは核兵器の問題に関しましては、従来一貫してとってきておるように、われわれは世界の平和のためにそういう危惧を増進するようなものについては、この安保条約改定の有無にかかわらず努力していきたい、この改定によってそれが変わっていくことは絶対にないのであります。  また最後に、どうしても安保条約を調印し、改定するというのなら、まず調印前に解散して民意に問えという御議論でございますが、これは私がしばしばお答えを申し上げているように、私自身そういう考えを持っておらないということを明確に出し上げておきます。
  142. 小林英三

    委員長小林英三君) 曾祢君の質疑は終了いたしました。   ―――――――――――――
  143. 小林英三

    委員長小林英三君) 次に杉山昌作君。
  144. 杉山昌作

    ○杉山昌作君 私はただいま出ておりまする補正予算に計上されておる歳入の見積もりと、それに関連いたしましてすぐに問題になるであろう来年度予算の収支の見通しについてお尋ねをしたいと思います。  今度の補正予算の歳入の増額は御承知の通りに五百三十八億になっておりまして、そのうちで租税及び印紙収入が四百九十億、専売益金が二十五億、その他が二十三億ということになっておりますが、実はこの租税、印紙収入の四百九十億、まあ大ざっぱに五百億というのでありましょうが、これが少し見積もりが内輪に過ぎはしないかという気がいたすわけでございます。もちろん政府の方では、この租税、印紙収入の増収見込額につきましては、詳細な説明書を配付されまして、各税目それぞれに説明がついております。まあしかし、われわれが全般を総括的にながめるときには、必ずしも一つ一つの税目によるよりも、むしろ総体的に達観した方が、時代に合う場合も非常に多いかとも思います。また現に、そういうやり方をしておるわけであります。そのやり方では、今日一般に用いられておるのは、経済成長率に対してどうかということなんです。これまでには一般に経済成長率よりも五割オーバーぐらいの伸びを示すだろうということが一般のようであります。ある専門家が最近ずっと研究しておるところによりますと、あるいは六〇%以上のオーバーをするんじゃないか、具体的には、三十四年度経済成長率が一一%であるならば税の伸びは一七・七%、三十五年度が六・六%の伸びであるならば一〇・八%の税収の伸びがあるだろうというふうな計算をしている専門家もありまして、まあそこは六割か六割三分かは別として、まあ五割が大体普通じゃないか。大蔵省あたりでもそういうふうなことを、かねて何かの機会におっしゃったように思っております。    〔委員長退席、理事館哲二君着席〕  そういたしますと、三十三年度と三十四年度、ことしの経済の伸びは一一用、まあこの一一%よりもっと多いだろうという説が多いのでありますが、一応一一%にしますと、税の伸びは一六・五%になる、五割のオーバーとしても。そういたしますと、三十三年度の租税の実収か一兆三百億円でありますから、三十四年度の税収見込みは一兆二千億円ぐらいになるはずなんです。ただし、これは今度の災害による税収の減を見ておりませんが、その税収の減は、政府から先刻出された資料によりますと、これが大体九十六億と見ているようであります。従いますと、大体一兆千二百億から、九十六億、約百億ですから一兆千百億になるわけでございます。そういたしますと、三十四年度の当初予算は一兆千二百億円でありますから、ここで七百億円ぐらいの税収が伸びるということになっていいわけですが、政府の方ではそれを四百九十億、五百億ということになっていまして、二百億円ぐらい内輪に見ているようであります、まあ五百億、総額で六百億の子算を作るときの税収の五百億、それが二百億というと、相当な違いのようでありまするが、ここらについての達観的な見方について、大蔵大臣はどんなふうなお考えを持っておられますか。
  145. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。杉山委員は大蔵省にも関係された方でございますから、税の点については、大へん詳しくていらっしゃると思います。しかし、今回の補正予算を組みますにつきまして、増収見込みを一体幾らに計上できるか、これは大へん私ども苦心をいたしたところであります。で、私、ただいまおあげになりました数字より以上の実は成長率を予定したのでございます。御承知のように、当初予算の編成の当時は、経済の成長率は六・一%と申しますか、一〇六・一と、こういうことでございましたが、今回はこれを大幅に上回る一一二・五というものを実は基準にして増収分を計算いたしたのであります。従いまして、法人収益の増加あるいは個人給与所得の増加、酒、大衆消費等の消費の増加、相当の額を見込んで、今次の災害による影響をも考慮してこの補正予算の自然増収額というものをきめたのでございます。同時に、その際に、やはり本年はこの災害による減収分というものもあるだろうということでございまするので、この減収分もやはり考慮に入れなければならぬ。ただいまも御指摘になったと思います。それともう一つは、所得または消費の発生時期と実際に租税が収入される時期とのズレでございます。これは、法人については、まあ決算期の問題がありましょうし、また、納期の問題がありますし、徴収猶予等の問題もございまするから、これらの点をも勘案いたしまして、実は各税目別に詳細に検討を加えた結果この程度、相当苦しい思いもするが、この程度ならいいだろうということで、私ども最終的に増収見積もりを作ったつもりでございます。別に、特に自然増収を低く見積もるというようなことをいたしたつもりはございません。なお、必要ございますれば、主税局長に詳細を説明さしたいと思います。
  146. 杉山昌作

    ○杉山昌作君 大蔵当局が予算を組むときに、財源をもし過大に計上いたしまして、財源不足というようなことになっては、これは一大事でありますので、慎重にやる、むしろ内輪にやるということは、これはまあ常道でありましょうから、そういうふうなお考えもごもっともでありましょうし、また、すでに、ここで二百億財源があるのないのと申しても、予算も提出されているし、一応の経費はこれで見ている、もしどうしても足りなければ、また次に補正予算もあり得るであろうというようなことでもあれば、この予算に対しては、この二百億をとやかくここであげつらって、財源を持ってきて歳出をふやせというようなことは申しませんが、ただこの問題は、実は、次の、来年度の予算の収支を一体どう見るかというようなことに引っかかってくると思いますので、すでに来年度の予算については、政府といたしましてもあるいは与党の自民党といたしましても、計算をされていると思いまするが、まあ今のような考え方から、いきまして、私は、来年度は相当な税収の伸びがあるのではないか。一般には千五百億円ぐらいとか、最近では千七、八百億円くらいという数字が新聞に出ておりますが、まあ今申し上げましたような私のやり方でやっていくと、二千億ぐらいは十分出るんじゃないかというような見当をつけておりますので、まあそれらを考え合わせまして、来年度の一つ歳入の増の見積もり、租税がどうなる、その他がどうなる、これに対して減収もありましょうし、また歳出の方では自然増もありましょうししますが、その大まかな来年度の見通しをお示し願いたいと思います。
  147. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。大へん時期的にむずかしいお尋ねでございます。御承知のように、なるほどことしの景気は非常によくなりました。そこで、大法人の関係のものは、九月決算で大よその見当がつきます。しかしまだ十二月における中小法人の関係だとか、あるいは申告の模様等を十分勘案いたさないと、税収入のうちの半分以上を占めます中小法人、そういう関係の一般のもの予想が実はつきかねておる次第でございます。そこで、今まで大蔵大臣として申し上げ得ることは、まあ千五百億は下らないだろということを実は申し上げております。それからさっき今のように、杉山さんのように非常に私どもちょっと納得がいかないように思う程度の過大な見積もりもされる方もあろうかと思いますが、今申し上げ得るのは、非常にまあ確定的と言うか、それは下らぬだろう、まあこの程度のものを言い得る程度でございます。そうして、まあ問題はこの税の自然増収が、ただいま申し上げるように、未定部分、推定部分が相当ある。また、今回の災害による減収をいかに見積もるかということ、また一般景気の上昇に基づいての消費の面でどういうように耐久消費財等が消費されているか、こういうことも考慮に入れなければならないし、あるいは税外収入が幾らになるか、こういうことももちろん勘案していかなければならぬことだと思いますが、同時にもう一つ歳入の面で非常に大きな変化は、御承知のように二百二十一億に上るたな上げ資金がなくなったこと、さらにまた、剰余金の面におきまして、六百億以上のものが減になる、この二つが非常に歳入の面では大きなマイナスでございます。そうして支出の面におきましては、昨年の法律実施等による一年間の当然支出増と申しますか、そういうものも相当予想される。こういう状況でございますから、収入の面においてもまだまだそれからもっと数字を固めなければならないものもあるし、ところが支出の面については相当はっきりした当然増がある。まあこういうことで来年度予算編成、なかなか苦しい状態でございますが、私ども最近の経済の伸びが幸いにして安定を保っておる、また来年におきましても、この状態を持続し得るというような見通しに立っておりますので、まあ非常に苦しい状況ではございますが、この来年度予算と取り組んで参るという考え方でございます。お尋ねのありました点について、非常に不明確なお答えをしてまことに恐縮でございますが、事柄がただいま申し上げるように、今日の段階におきましては幾つも推定をしなければならない。そういう時点であることを一つ御了承願いまして、私のお答えを御了承いただきたいと思います。
  148. 杉山昌作

    ○杉山昌作君 まあ、そういう時点だということも、私は知らないわけじゃございませんで、各省との関係あるいは党との関係、なかなか予算の取り合いというようなことにも関連いたしますので、非常にお立場上さもあらんとは考えます。しかし、むろんすでに数字はお持ちになっておりましょうとは思いますが、そういう意味で数字はさらにお尋ねいたしません。    〔理事館哲二君退席、委員長着席〕 われわれも一応の数字は私なりに作っておりますけれども、これはまあ私の単なる見積もりでありまして、それが権威あるものでもありませんから、それもあれですが、ただ、私は今のように非常に困難だというお話しでございますが、そうすると、政府としてはまだ言っていなかったけれども、与党としては本年度、来年度ですか、七百億円程度の減税ということがこの春以来公約ということでありましょうか、とにかくわれわれはそういうような宣伝的なあるいは意見の発表なんかも伺っているわけですが、一体この七百億円の三十五年度減税というような問題は一体どうなりましょうか。特にそのうちでも一番われわれというか、世間でも問題にし、また一部は政府筋においても実行するかのように伝えられた耐用年数の改訂による減税というようなものがあるかと思います。こういうような一切の減税というようなことについては、今日はどんなふうなお考えを持っておられましょうか。
  149. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 今日党におきましても非常に急いでおりますもの、また政府におきましても急いでおりますのは、予算編成方針を作ることでございます。ただいま党におきましても、そういう意味でこの予算編成方針と取り組んでおられることだと思います。与党内でも、政府におきましても、ただいまは臨時国会中でございますし、また十分の検討ができておりませんが、これまたもう適当なときには予算編成方針を考慮しなければならない、こういう実は段階になっております。そういう際でございますが、いずれはそういう際において明確にさるれことだと思います。ところで、ただいま七百億減税というお話をなさいましたが、これは私の記憶ではこの三十四年度予算編成の際に実施をいたしましたものがいわゆる七百億円減税だ、かように考えておりますが、その後減税についてのお話は、党内でいろいろ御検討していらっしゃる、かようには伺っておりますが、いわゆる七百億減税というような数字を明確にしての減税目標というものは、まだ出ておらないように思うのでございます。で、これは党内にも税制調査会が設けられまして、いろいろ検討しておられます。あるいは新聞においては、その減税は緊急やむを得ないものにとどめるとかという意味で、いわゆる相当多額の金額を表示したものを示さないというように新聞記事には出ておりますが、ただいままでのところ、まだ予算編成方針が確立されておりませんので、これからの問題ではないか、かように私は理解しております。
  150. 杉山昌作

    ○杉山昌作君 これから予算の編成方針をきめるんだというので、むしろそういう場合の方がいいと思うから、私希望をつけ加えながら質問申し上げますが、数日前に、減税は今のようではっきりしたものがないんだ、むしろ逆にたばこの値上げあるいは酒の消費税の値上げ、われわれ国民としては減税になるんだろう、税金がここ数十年間相当に減税をされてきているけれども、まだ重いから再び減税があるんだろうと思っているときに、逆に増税だというふうな新聞記事が出ております。これは佐藤大蔵大臣も、臨時的のものならば、それも一つの方法かもしれぬと言って、暗にそれを取り上げようかというような御意図があるやのような新聞が出ておりまするが、ここらのいきさつ、あるいは蔵相のお心持をお話を願いたいと思います。
  151. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも未確定な問題について私見を申し上げますと大へん恐縮でございます。新聞記事にいろいろのことが出て参りますが、記者の諸君もなかなか引き出すことがうまいものですから、いわゆる公式発表だとか、あるいは公式意見という形ではございませんが、いろいろの話がその時おりに実は出て参るのであります。これは正面に申し上げます。で、何と申しましても、今日当面いたしておりますものは、大きな十五号台風の踏始末、三十四年の災害の金額はいかにも膨大な金額である。千九百億といい、あるいは二千億だといい、しかも五千名以上の人命を失っておる、こういう意味で災害ということが非常に大きな政治問題になってきていることは、これはもう御承知の通りだと思います。そこで毎回言われます。ことは、また当委員会等を通じましてもしばしば言われますことは、治山治水の根本対策を立てろとか、長期基本対策を立てろとかいうことを御指摘になり、政府も、また与党もあげてやはり国土荒廃、またそれから引き起こされる惨害に対して、何としても、これについて対処すべきだ、こういう強い要望が出ております。また過去におきましても、しばしばそういう御意見が出、そうしてそのつど政府も非常な決意のある表明をして参りましたが、いずれもこれが実現をしておらない。これは一体なぜかと申しますと、結局財政的な裏づけのないこの種の計画は、結局計画倒れになっておるということに一言にして尽きるんではないかと思います。私ども治山治水あるいは災害対策というものを十分考えますと、いわゆる財政的裏づけというものが、これはどうしてもなければならない。科学的あるいは総合的、技術的にいろいろの検討を加えることは容易でございますが、やはり財政的裏づけがなければならない。そういう意味からいろいろ各方面で工夫されておる。先ほど来お話のありましたように、来年度の財源はなかなか困難だ。一方どうしても健全財政は貫きたい、せっかくこれたけ経済がよくなったのだから、こういう機会に間違いがあっちゃ大へんだ、やはり健全財政は貫きたい、こういうように考えて参りますと、どこかで財源を作りたいと、こういう意味でいろいろな議論が出て参っておるだろうと思う。そういう意味からただいまいわれるような、酒というお話はただいま初めて伺うのでございますが、たばこの話が一部にあったことは、これはもう事実でございます。そういうものが長期にわたってということは、これはもちろん全般の負担の問題から見まして、これは容易にきめ得ることじゃない、これは短期でも問題がある、そのように私は考えますが、そういう意味で治山治水計画、これをほんとうに遂行する、こういう場合の財源確保としていろいろな点が工夫された。そういう意味から、ただいまのような新聞記事等が出てきた、こういうように私は理解いたしておる次第でございます。
  152. 杉山昌作

    ○杉山昌作君 実はその酒も、新聞によりますと、ピースは五円の値上げ、一級酒の一割増税、酒の方が二十億だという記事が出ておりますので、それはいいですが、問題は先ほども申し上げましたように、国民はまあ減税をこそ望んでいるときに増税するということは、まことに私たちとしてはふに落ちないし、しかも、その増税というようなことが今大蔵大臣も申されたようないろいろないきさつあるいは事情あるにいたしましても、増税をやるときには、どうしても私は政府側として二つの問題をはっきりしてもらわなければならない。一つの問題は、経費の徹底的な節約といいますか、そういうことを考えて、これだけぎりぎりにやっても足りないのだということと、もう一つは、現打の税制でも、取れば――取ればと言うとはなはだ言葉は悪いのでございますが、見積もりのしようによっては、これまでいくのだということをやりまして、それでもなお足りないから、そこに増税という問題が起こるのだと、こうあるべきだと思う。ところが、今日までの予算の編成のやり方なんかを拝見しますと、必ずしもとことんまでそういうふうな節約というふうなことをやったかどうかということに対して、われわれは疑問を持つ場合が多い。まあ一番いつでも問題になっておりますのは、補助金の問題かと思いますが、本年度におきましても補助金は当初予算で一般会計が三千五百八十五億、特別会計で五百九十九億、合計して四千百八十円億というような膨大な補助金が出ておりますが、この補助金の中に相当部分が不要不急であろうということは、世間でだれもが言っておることなんです。これは大蔵省としては今日までもしばしばその整理ということを唱えられておっても、なかなかその実行ができないのです。二十九年度の予算のときに相当大がかりな太鼓をたたいてやっても、そのときに減ったのはたった百二十億、しかもその百二十億のうちで、他の費目等への組かえ等も入っておりまして、ほんとうに減ったのは四十億足らずというふうにも承知いたしております。こういうふうなことが一方にありしまして、総花式な予算の組み方をやるということをやっておきながら、そうして、いや財源が足りないから増税といって、これは国民はどうしても納得ができない。それから先ほど初めに申し上げました現行の税制で一体幾ら歳入があるかということにつきましても、やはり増税をするという以上は、初めに申し上げましたような、やはり筒一ぱいの見積もりをしていただかなければならない。そこに隠し財源をおきながら、しかも一方増税ということであれば、これまた国民としても納得かいかないと思いますので、先ほどから佐藤蔵相これから予算をやるのだということでございますので、ぜひ一つ今度の予算を組む場合には、今言ったような経費の徹底的な節減と現行税制による見積もりを一ぱいにするということをやつて、それが足りない場合に初めて増税ということにやっていただきたい。それで治山治水の特別会計を作るためには、臨時に簡易なたばこの値段の引き上げをやるんだというふうな安易なやり方では、非常に国民は納得しないだろうと思います。これは一つ総理もせっかく御同席でございますので、予算の編成について一番の総括者であるという意味において、ぜひ一つ増税の問題がなくてもそうでありますが、増税の問題をもし口にでもされるのでしたら、今申し上げたようなことをぜひ一つ実行をして、国民をして納得いって納めるべき税金を納めるんだというふうなことに導いていただきたいと思いますので、この希望に対しまして総理の御所見を伺っておきたいと思います。
  153. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 戦後ずっと長い十数年間の歩みを見ますと、一時非常に高かった税金に対しまして、数次の減税が行なわれてきておる。なお国民の負担は相当高いので、従って、国民負担を軽減して国民生活の向上をはかり、またそれが同時に国力の充実に資するように持っていくということは、われわれ自由民主党の一貫した政策でございますが、いろいろな事情で、もちろんそういう減税を年々計画的に相当多額にやり得るかどうかということは、いろんな財政状況から考えなければならんと思います。しかし、逆に増税するというような場合におきましては、今杉山委員が御指摘になりましたように、予算全体に関してわれわれが十分に検討をして、増税しなければならない理由またそれに対して国民が十分に納得するような方法を講じなければならんことは当然であると思います。今日の、今度の予算編成にあたりましても、杉山委員の今の御意見に対しましては、私は全面的に賛成するものでありまして、そういう方針のもとに将来も進んでいかなければならん、かように思います。
  154. 杉山昌作

    ○杉山昌作君 もう一点、これは今の問題と関係はないのでございますが、ついでと言っても失礼ですが、大蔵大臣に伺いたいのですが、先般専売制度調査会というものが設置されまして、たばこの専売制度をどうするかということを審議されているようです。一体これは何のために審議会を作ったのだとお伺いしたい。というのは、専売公社ができましたのが昭和二十四年の六月、その翌月にすでに専売制度の調査会というものが一回できて、それから二十九年に公共企業体合理化審議会というのができております。それから越えて三十二年の八月に公共企業体審議会というものができております。三回とも専売制度をどうするか、存続するかあるいはやめるか、存続すればどういう点を改正するのだという点を慎重に審議しております。二回は内閣にできております。一回は大蔵省にできております。三日も審議会をいたしまして、それぞれ答申をしているにもかかわらず、大蔵省というか、政府は何にもしていない。廃止した方がいいという答申があっても、廃止に踏み切りもしない。これだけを改善した方がいいという答申があっても、全然改正も何もやっていない。今日まで十年間三回やったが三回とも何にもしていない。そこでまた、今度大蔵大臣の諮問機関として委員会を作ったが、何をするつもりか、何をさせるつもりでやったかということなんです。実はこれは委員の諸君がどういうふうに苦労されようが、政府かどういうふうに委員会をリードしようと、また何回やろうと、丁寧な方がいいと言うかもしれませんけれども、一番迷惑をいたしておりますのは、専売公社におりまする職員と専売事業に直接関係をしているタバコの耕作者あるいはたばこの小売人その他の関係業者です。この人たちはこういうような審議会ができますと、これは今度はどうなるのだ。おれたちの首はどうなるのだ。自分たちの商売はどうなるのだということで非常に心配をしております。そのたびに大会を開いて対策を立てる、陳情をするというような、非常な真剣な運動を展開しているのでありまするが、それを、やらせておいて、しかも今申し上げますように何回やっても、ただ開きっばなしでほうって置くということであると、これは単なる人騒がせに終わる。私は別に委員会はどういう答申を出したらいいたろうとか、その答申が出たらその通りにやった方がいいだろうとか、専売はやめた方がいいかやめない方がいいかという結論は申し上げませんが、とにかく委員会を作る以上は、政府はその答申を聞いた上で、自分の意見をはっきりして、それで今後の施策をやっていくということでなければならぬと思うが、何という答申が出ても聞きぱなし、それでまた世間がちょっと何か言うと、それ委員会だ、審議会だということになる。まるで政府に一体定見があるのかないのか、何をもって一体やっておるのか、やるのは政府の勝手と言うかもしれませんが、やられるために、今言ったように多数の人が真剣に心配をしておる。この心配をぜひなくするような方向に持っていっていただきたい。具体的に出し上、げますと、今度審議会でどういう答申が出るか存じませんが、答申が出た上においては、政府としては、それを御検討の上で採択するかしないか、一部修正するか、いかようでもよろしゅうございますが、すみやかにはっきりした意見をきめて実行をするものならしてもらいたい。しないならしないでそれをはっきり宜明して、しかる上は、少なくとも事態が相当に変わるまでは、もうこんな人騒がせな、思わせぶりな審議会は作らないのだというだけのはっきりした考え方で、今度の審議会の跡始末をしていただきたいという注文を申し上げておる。一応大蔵大臣の御意見伺います。
  155. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。結論といたしましては、杉山委員の結論と同じことでございますが、専売制度協議会、これの第一回の答申は、御承知のように、民営移行は時期尚早である、これは第一回であります。で民営に移行しろとか、それは民営反対だ、こういうわけのものじゃございません。民営移行は時期尚早である。二回目は何と言ったかというと、とりあえずこのまま存続させる、問題はとりあえず、なんです。そういうことで一回、二回とも十分なことが出ておらない。第三回におきましては、別途調査機関を設けて慎重に対策を考究すべきであるというのが三回目の答申でございます。政府はこの答申を十分尊重いたしまして、ことしの九月二十三日ですか、第一面の専売制度調査会、これを開催して、もう四回開催いたしておりますが、これはただいま申し上げるような答申案に基づき、同時に三十二年十二月の公共企業体審議会、その答申に基づいてやっておるのでございます。これがただいま申し上げましたように、右か左かはっきりした結論をやはり出していただくことが望ましい。とりあえずだとか、あるいは今日は時期尚早だとかいうことでなしに、やはり研究の結果、権威のある答申をお願いしたい。そういうために、今までの機関が不十分ならもっと調査機関を設けて、もう一度一つやってみろ、そういう答申でございますので、ただいまやっている。しかし、これはどういう結論が出ますにいたしましても、私どもはせっかく権威のある各界の方にお集まりをいただいて、そうして審議を願うのでありますから、その審議の結果を十分に尊重して参るつもりでありますし、そうして十分今の専売事業として扱われているその事業関係の面におきましては、あらゆる面で工夫をいたしまして、そうして国民に迷惑のかからないように、いな積極的に国民の要望に沿い得るように、十分指導して参るつもりでございます。いずれにいたしましても、こういう問題が長い間中途半端になっている、ことに専売公社ができましたのが、御承知のように二十四年のスキャップで最初スタートしておりますから、そういう関係で、その基本的な性格についての検討が当時十分行なわれていないということで、今日になお尾を引いているという形でございます。しかし、これはもうできるだけ早く結論を出しまして、そうして安定した状況のもとにもっていきたい、かように実は考えております。ただ、誤解のないように願っておきますが、ただいまの調査会は専売公社自身でやっておることだと思いますので、専売公社自身におきましては、ひとりその中身の問題も、性格だけの問題でなしに、各方面にわたっての答申を得てそれを実施に移して参る、こういう考えであること、この点をつけ加えておきます。
  156. 杉山昌作

    ○杉山昌作君 大蔵大臣のおっしゃることよくわがりましたが、ただ非常に誤解があるというか、大蔵大臣がそういうことをおっしゃるから、今のように何回もほうりっぱなしにしておく。今度の審議会は専売公社でやっているのではない。今年の春の国会で法律を改正いたしまして、大蔵省設置法を改正して、それによってやっているのであります。そういうことも大蔵大臣御存じないし、それから今度のやつは、この前の審議会でさらに委員会を作れといったからやったという、その続きのようなことをおっしゃっておりますが、今度の審議会の初めのときのごあいさつには、一体前の審議会の結論から始まるのかという今度の審議委員質問に対して、いやそうではないのだ、そうではなくて、もっと広い立場から専売制度をやめた方がいいか、やめない方がいいか、基本的にもやってもらいたいということをおっしゃっているのです。そういうふうなことを言っておりながら、今のようにいやこれは前のやつの続きだから前のやつをほおかぶりしているわけではない、まだ続きをやっているのだという言いわけをしたり、法律できまっているものを、あれは専売公社がやっているものだというような、大蔵大臣がそれだけしか関心を持っていないということに、専売公社は非常に不満を持っているのだということを申し上げて、私は質問を終わります。
  157. 小林英三

    委員長小林英三君) 杉山君の質疑は終了いたしました。  午後は二時十分から再開することといたしまして、暫時休憩いたします。    午後一時十九分休憩    ―――――・―――――    午後二時二十六分開会
  158. 小林英三

    委員長小林英三君) これより委員会を再開いたします。  休憩前に引き続きまして、質疑を行ないます。
  159. 岩間正男

    ○岩間正男君 午前中の質問を聞いておったんでありますが、これは連日のお疲れもあると思うのですが、非常に答弁が歯切れが悪い。はっきりしない。国民に向かってもっと明快な態度を表明される、そういう点で答弁を要領よく明快に答えてもらいたいと思います。  そこで、まず最初にお聞きしたいのでありますが、安保条約改定の問題に関連してでありますが、最初にお聞きしたいのは、一昨年の六月に岸総理アメリカを訪問された。その際、安保改定について交渉した。しかし、このときはアメリカはあまり色よい返事をしなかったのであります。それが、昨年の九月に藤山外相が渡米したときに、急速にこの問題が具体化した。その問の変化、これは変化がなくてはならない、この変化をどういうふうに見ておられるか、岸総理にお伺いしたいと思います。
  160. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私が訪米をいたしましてアイゼンハワー大統領と会談したときに、その前年も、安保条約改定の問題について日本側の意見が開陳されましたので、同様な意見を開陳したのであります。それに対して、とにかくいきなり改定ということについてはなお検討を要するものと思う、しかし運営の面その他安保条約から起こってくるところの各種の問題について審議、協議するために、日米共同の安保委員会を作ろうという提案がされまして、その提案に基づいて委員会が設けられ、いろいろな運営上の問題や、また現行安保条約の問題につきまして、いろいろと話し合い委員会において行なわれたのであります。その情勢に甚づいてさらに昨年藤山外相がワシントンに参ったときに、この問題を提起した。いわば私とアイゼンハワー大統領とのこの会会談によりまして、安保条約改定への足がかりとして、安保委員会が設けられたというふうな経過から見まして、私は、一連のその委員会におけるところの、両国において取り上げた問題、また懇談したことについて、ようやくアメリカ側日本側の多年にわたる要望を受け入れるようになったと、かように考えております。
  161. 岩間正男

    ○岩間正男君 ただいまの答弁がありましたが、これはなかなか、その通りではないと思う。安保委員会はなるほど作られました。しかし、ここでやったことは、国民には不明瞭です。ただ一つ明らかなことは、サイドワインダーを入れるときに協議した、こういう事実だけ残っております。その経過は明らかであります。私がお聞きしたいのは、そういう内部事情よりも、国際情勢の変化があった。この国際情勢のこの一年間の変化を、どういうふうにつかんでおられるか、この点を明確にしてほしい。
  162. 岸信介

    国務大臣岸信介君) しばしば、私は、国際情勢の見通しや実態の把握につきましては、そのつど国会においてわれわれの所信を述べております。私は、根底として、日米協力して日本の安全を守っていくということについて、その必要及びそれを、体制を持続していくことの必要性につきましては、いろいろな問題が、国際上の変化いかんにかかわらず、それには関係なくそういう必要は一貫してあるもの、こういうふうに従来もお答えをいたしておりますし、また私はそういうふうに考えております。
  163. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうもそういう点で明晰な把握がないと私は考えます。この一年間といいますと、ちょうどあなたが一昨年六月渡米された。それから、そのあと、八月にソビエトのICBMが発表されました。これは大へんな衝撃をアメリカに与えた。しかし、アメリカの指道者はひた隠にしこれを押えた、そんなばかなことはないと。十一月になった。人工衛星が打ち上げられた。人工衛星は平和的なものであります。兵器じゃない。しかし、あれだけの力を持ったものなら、大陸間弾道弾なんかをやすやす成功させておるだろうということを世界に示した。こういう態勢の中で、アメリカの戦略が変わったのじゃないですか。これは明らかな事実です。国民も知っています。こういう態勢をひた隠しにして、そうして安保改定の問題を内部のそういう問題だけだ、こういうふうに話しても、国民は納得しないと思う。いわばアメリカの戦略の変更、これが最大の問題だ。そして、あわよく日本要求もあってそれを抱き込んだ。だから、最後になって積極的になった。こういうふうに思いますが、あなたはどう思いますか。これは外相も首相も答えてもらいたい。
  164. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 安保条約改定内容につきましては、私どもすでにしばしはお答え申し上げておる通りであります。安保体制が現在あることも、岩間委員の御承知の通りであります。私は、この安保条約改定ということとアメリカのいわゆる戦略体制、あるいはアメリカのいろいろな戦略というものとの関連におきましては、そういう変更があったものとは考えておりません。
  165. 岩間正男

    ○岩間正男君 あなたはそう言われるだろうと思っていましたが、そういう観点、私の申しました戦略上の変更という点からこの条約を見ることなしには、全く明らかにならないのです。しかし、ここで論議をやっておる時間もありませんから、これはこれだけにしはして、私は第二にお聞きしたいのは、憲法安保改定の問題です。  第一に、バンデンバーグ決議の精神を一方でうたっておる。そうして、一方で憲法を尊重するということをあらゆる機会にあなたは言っておられるわけですね。一体、これは私は火と水だと思うのです。バンデンバーグの決議と、それから日本憲法というものとは、どんなにしたって一緒にすることはできない。火と水なんだ。これを一緒にして、そして憲法の範囲内でやる、こういうふうに言っても、これは了承できないと思うのですが、この点いかがですか。
  166. 岸信介

    国務大臣岸信介君) バンデンバーグ決議と憲法とが火と水のように相いれないものである、こういうお話でありますが、私は、バンデンバーグ決議で、日本安保条約に関連を持つ範囲内において、またわれわれが改定条項として取り上げておる範囲内におきまして、決して今御指摘になるように相反しておるものたとは考えておりません。
  167. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういう答弁では、これは実態が明らかにならぬと思います。それでは、なお重ねてお聞きしますが、あなたは憲法を尊重するということを言われます。憲法の範囲内でやる。これは国民の反対論を静めるためにこういうことを言っておられることはわかる。しかし、一体どうでしょう、岸内閣憲法を今まで尊重してきましたか。たとえば警職法の問題をあげると、あれは憲法違反じゃないですか。第二に、どうですか、あなたは憲法の拡張解釈を今までやらなかったですか。最近どうです。たとえば、小型の核兵器は自衛のために必要だという解釈は、憲法のどこを押せば出てくるか。こういうふうに憲法に違反したことをやっておる。憲法違反をやり、憲法の拡大解釈をやっておる。そうすると、憲法を尊重するといって、バンデンバーグの精神が憲法を侵犯しないようにするのだ、こういうことを言っておる。憲法そのものが今のようにどんどん変えられておる。こういうことになったならば、これは全く一つの、これによって確実に保障し得ることはできない、こういうふうに思うのですが、この点どうですか。
  168. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 憲法を国の最高法規として、これを順守しなければならぬことは当然であります。政府もまたそういうつもりで、すべて行動いたしております。今、警職法の改正の問題を憲法違反なりという岩間委員のお話でありますが、私どもは決してそうは考えておらないのであります。むしろ、警職法の改正によって、多数の平穏な市民生活というものの安全な、安静な状況が最近いろいろな面から侵されている、それを守ろうという趣旨において、われわれは改正しようと考えております。従いまして、これは憲法違反だと私は考えておりません。また、憲法の解釈を特に故意に拡張して云々というようなお話がございましたが、私どもはそういう態度をとっておらない。憲法の解釈につきましては、あくまでも憲法の解釈として正しいと考えていることをわれわれは主張しているだけであります。
  169. 岩間正男

    ○岩間正男君 天下周知の事実だし、それから国民のそれに対する世論もはっきり現われている。これはどういうふうになったか、あなたはこの前の  警職法ではっきり体験したことである。依然として同じことを言っておられる。私は、岸総理は改悛の情がないと思う。昨年の今ごろを思い出して下さい。改悛の情がないと思う。依然として同じことを言っている。あれは憲法違反です。だから、あのように大きな国民の戦いになったのです。こういうことをやり、憲法は再びじゅうりんされている。これは衆目の認めるところです。しかも、どうですか、最近政府条約優先説をとってきております。憲法の上に条約を置く。これは砂川判決あたりに現われている。これに対する政府態度、そういうものを見れば明らかであります。この根拠はどこにあるのか、条約優先説の根拠について伺いたい。
  170. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 憲法条約関係においては、学説上いろいろな議論のあることは御承知の通りです。しかし、政府条約優先説をとっているというようなことはございません。
  171. 岩間正男

    ○岩間正男君 多分そのような御答弁だと思いましたが、最高検の上告趣意書を見ればわかる。また、自民党の出しているところのPRの、安保改定の宣傳文書の中にも書いてありますが、これを知らないとは言えない。その上に立っている政府が、口をぬぐったとしても、これは私は了承できないと思います。条約優先説、こういうものによって今安保改定がなされようとしている。こういうことを一体、あなたは正しいと思うのかどうか。条約優先説をとらないとあなた言われたのですが、そんならどういうふうな態度をとられるのですか、この点を明らかにしていただきたい。
  172. 岸信介

    国務大臣岸信介君) しはしば説明出し上げている通り、安保改定の規定におきましても、憲法の範囲内でやる、あるいは憲法の規定に従うというようなことを明瞭に、当然のことでございますが、それをさらに明確ならしめるような規定を作ろうというのも、われわれの憲法を尊重し、憲法を順守するという精神の表われであります。  なお、憲法条約関係についての法律的論議につきましては、法制局長官からお答えさせます。
  173. 林修三

    政府委員(林修三君) 従来の政府の申しておりますところは、今御指摘になりました自由民主党のPRの資料にも載っておるところと大体同一でございます。これは御承知の通りに、憲法条約関係につきましては、学説上、憲法優位説、条約優位説が両方あるわけでございます。あるわけでございますが、従来のわれわれの考え方といたしましては、これを必ずしも一元的には考えておりません。いわゆる条約と申しましても、いろいろなものがあるわけであります。いわゆる、何と申しますか、国際自然法と申しますか、要するに確立された国際法規、そういったものはやはり憲法がその法秩序として受け入れているのだ、かように考えるわけであります。たとえて申せば、外交官の治外法権というようなものは、これは当然に憲法がその秩序の中に受け入れておるものである、こう考えるべきだと思うわけであります。すべて裁判所に出訴できるという問題に対するこれは例外になりますけれども、これはやはり国際法秩序がそこは優先して働くものである、かように考えております。それからもう一つは、逆に二日間の政治的、経済的な条約、こういうものがあったから、直ちにそれによって憲法改正されるかということになりますと、これはやはりそう簡単には言うことができない。やはりそういう場合においては、憲法を優先して考える。憲法違反のような、そういう二国間条約を結ぶべきではない、かように考えるべきだということを言っておるわけであります。もう一点は、これも蛇足でございますが、従来、たとえば降伏文書あるいは平和条約というような一国の安危にかかわるような問題に関する件におきましては、これは必ずしも、憲法条約とを比較してみた場合には、やはり条約が優先するという場合はあろう。これはこういう三点に分けて、大体、従来言っておるわけであります。
  174. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは藤山外相に伺いますが、憲法優先説をとっているのは世界でどういう国ですか、条約優先説をとっているのはどういう国ですか、ちょっと二、三指摘して下さい。
  175. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) いろいろ学者がおりまして、そういう説がございます。従って、どの国がどうということは……。むしろ、その一国の中においても、いろいろの学者がそういう説をとっておると思います。こまかいことについては、法制局長官から御説明いたします。
  176. 林修三

    政府委員(林修三君) これは私、今すぐどこの国どこの国といって申し上げるだけの記憶がございませんが、御承知のように、第二次大戦以後、自国の憲法はいわゆる、何と申しますか、主権制限と申しますか、国際法秩序というものを国内法に受け入れて、それを優先的に考えるという傾向が強くなっておることは御承知の通りであります。わが国の場合におきましても、御承知のように、憲法第九十八条二項において、確立された国際法規及び条約は、これを誠実に遵守しなければならない。その解釈として、いわゆる条約優位説をとる学者が相当多いことは御承知の通りだと思います。一面には憲法優位説をとっておる学者もあるわけでございますが、そういうことでございます。政府の言っておりますことは、さっき申しましたような場合々々を分けて考えておるわけでございます。世界的な傾向といたしましては、いわゆる国際法秩序というものを憲法の中に受け入れていくというような、いわゆる主権制限というような形を取り入れた憲法が最近多くなりつつあるということは言えると思います。
  177. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは社会主義国、あるいは民族独立、立ち上がっている国、こういうところは憲法優先説です。それから、アメリカとか、そういうところでは、これは条約優先説で、国際的な支配を強化するためには、どうしたって帝国主義的な支配を強化するためには、条約優先説というふうになってくる。安保条約の形が全くそういう形で現われておると思う。私は、この問題を、問答をここでやっておる時間はありませんから、次にお聞きしたいのですが、大体憲法の上に条約を優位させる、これは日本の現実で、実は今の政治情勢の中で必要になってきたのではないか。つまり、憲法改正しようとしても、なかなかこれは岸内閣の力では改正できない。今、当分の間改正できない。しかし、一方では原子戦略態勢を国内でどんどん作っていかなければならない。そうしなければ、あなたのいう自由主義国家群に編入する態勢をとることができない。そうなると、何か憲法に優先してこれを抑えて、そうして、しかも既成事実を作っていく手段が必要になってくる。  こういう形で、あの砂川の上告問題というものは、これは私は非常に重大な問題をはらんでいると思うのです。現在の憲法ではとてもできないことをやりたい。それで、憲法で禁止されている再軍備の問題、核武装化、戦力の保持の問題、あるいは戦力の国内持ち込みと、こういうことは非常にこれは憲法の中では困難だ。そこで、憲法の上に優位する条約を、いわゆる安保条約をここで改定するという形で、このことをやろうとする。安保改定のねらいの中に、はっきりこのような一つの面が指摘されると思うのでありますが、この点はいかがですか。この点は総理と、それから外相から答えてもらいたい。
  178. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今、岩間委員の御指摘になっておるような意味において、私ども安保条約改定をしようということは毛頭考えておりません。
  179. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私ども総理の言われた通りでありまして、この改定の歴史的な交渉の過程から見ましても、そういうことを考えておりません。
  180. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、憲法を絶対的に優先して考えるというのですか。
  181. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 憲法に違反するような条約は絶対に結ばないという態度を、政府は一貫してとっております。
  182. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは、ここで論議をやると、今の安保条約憲法に違反していないのだというような形になる。しかも、火と水を一緒にして、それを何とか調和させるのだという言葉の上の魔術を使っています。しかし、現実はそういうことになっていないと思う。バンデンバーグ精神と、それからどうして日本憲法が一緒になりますか。戦力の保持を禁止して、戦争の体制をやめているこの平和の憲法が、どうして一方で戦力の増強を義務づけているバンデンバーグの決議と一緒になりますか。これは奇術でもできないことですよ。しかし、言葉であなたはうまくやろうとしている。しかし、事実はどうか。事実はそうなっていない。私は、今度の十年間の期間というものも、憲法改正の問題と深い関係がある。なかなか、ここ数年で日本憲法改正はできない。日本の平和勢力、婦人や青年、あらゆる層が、この憲法改正に反対している。この態勢の中では、急になかなか憲法改正することはできない。しかし、アメリカの要請は強い。原子戦略の要請は強い。世界の戦略態勢は変わった。こういう態勢の中で、アメリカの国防長官も言っているように、極東の防波堤にしょう、そういうねらいさえある。そういう態勢を、あなたは協力という名前でやろうとしている。そういう中で結局、やはり憲法に優位するような安保条約を結ぶということが、一つの大きな政治的ねらいになっているということが、あなたがどういうふうに話そうと、事実が証明している。国民は明らかにこの事態を知っております。世界の平和を守る人たちも、この点を知っております。こういう点は、あなたの詭弁にまどわされてはならぬと思う。こういう点では、真剣に反省してほしいと考えるわけです。どうですか、これは。
  183. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど来お答えを申し上げておる通り、私は詭弁でもなければごまかしでもない。われわれが正しいと考えておることでございます。
  184. 岩間正男

    ○岩間正男君 次に、それでは事前協議の問題について質問します。きのう来、事前協議の問題、拒否権があるのだということを藤山外相がいろいろな形で述べられておる。しかし、あるのだという根拠は、法律的には全然わからなかった。きょうもそれが繰り返されておりますけれども、やはり依然としてこれは明らかにされていない。そこで私はお聞きしたいのですが、きのうの論議の中でも出たんですが、これは資料という格好で出たんですが、アメリカ側がはっきり拒否権があるということを認めているのですか。それをあなたは確約して、明確に向こうの承認を得て、合意に達しておるのですか。この点、はっきりお答え願いたいと思います。
  185. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 協議の場合をお答えする前に、拒否権という言葉だけは一応申し上げておかないといけないと思うのですが、多数が協議をして、そうして多数が賛成した場合に、少数でもってそれを破るというのが拒否権であって、二人の間の相談のときには拒否権という言葉は使わないことたけは、前提として一つ御了承いただきたいと思うのであります。  協議が成立するためには当然合意が必要でありまして、話し合いがつかなければ協議というものは成り立たない。われわれは、その解釈の上に立ってこの交渉をやっておるわけであります。
  186. 岩間正男

    ○岩間正男君 珍しく拒否権については定義づけましたね。これは今までの答弁の中でめずらしいのですが、しかし、あとの方がおかしいですね。今、そういう立場に立って交渉している。そうですか。これはアメリカはまたはっきりした確約をしてないのですか、どうなのですか。つまり、協議に達しない場合は、これを一方的に拒否する権利がある。このことをはっきり認めるのですか、認めないのですか。これは非常に重大ですから、はっきりおっしゃって下さい。
  187. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) たびたび申し上げておりますように、協議が成立するということのためには、話し合いがつかなければならない、合意にならない。でありますから、一方が反対し一方が賛成をいたしましても、それは協議は、合議はできない。協議がととのわない。協議がととのわなければ、実行されないことになるわけです。従って、いわゆる拒否することができるということを、われわれは申しておるわけです。
  188. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は、そういう長屋談議を聞いているのではありません。これははっきりした法的な根拠について聞いているのですが、この点について質問しても、あなたはきのうから、明確に何一つお答えになることができないのですから、もう少しこの次まで検討して、明確にお答えされるようにしてもらいたい。  ただ、ここで明らかなことは、アメリカが、はっきり、あなたの言われておる一つの拒否をする、そういう権利について認めていないのだということは、今の答弁で明確になりました。これは明らかにしておきます。  第二にお聞きしたいのですが、これも事前協議の問題でありますが、先ほどの交換公文の第二項のあとの方、つまり、「日本国の領域内における施設及び区域を日本防衛以外の目的作戦行動に使用する時は、それらに関して日本政府事前に協議するものとする。」、こうなっております。ところが、この文でよくわからないから、これはよくお聞きしておきたいのですが、日本の施設や区域を使うときには、これは事前協議になっていますが、これは軍隊について書いてないのですね、完全に。アメリカの軍隊がこれは動くときどうなのです、作戦を起して。これについては事前協議があるのですか、ないのですか。なぜこのことをうたわなかったのか、この点を明らかにしていただきたい。
  189. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の条約において、この施設、設備等をアメリカに供与するわけでございます。その上に当然軍の行動が行なわれるわけであります。でありますから、そういう場合に、作戦に出るというようなときには、当然に日本と相談するということが明らかだと思います。
  190. 岩間正男

    ○岩間正男君 もう一度。今のはちょっとわかりません。あとの軍隊はどうなのですって。
  191. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 施設をアメリカ軍が使うわけです。その使ってるところから飛び出す、あるいは出動する。空ばかりでなくて、歩いて出る場合もありましょうし、そういうものがとにかく作戦行動に行くという場合には、当然協議はしなければならない。事前協議が行なわれるということになります。でありますから、当然軍が動くときには協議になるわけです。
  192. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は、施設、区域と軍というものは、やはりこれは違うのだから、そのところはっきりこれは明記しなければならないと思うのです。それなら、なぜ入れなかったのです。これなら、施設、区域だけのことについては相談する。軍の移動については相談しなくていいんだ。当然伴うのだ――。これは全くしろうと解釈になる。そんなことは、これは国際的な条約では話にならぬと思うのです。もう一ぺん説明していただきたい。
  193. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 施設も当然作戦的に使用される場合には相談するということになっておるのでありまして、どういう御質問ですか、よく私もわかりませんが、軍が作戦行動のために施設を使用し、あるいは出撃するという場合には、事前に協議をする、こういうことであります。
  194. 岩間正男

    ○岩間正男君 防衛庁長官の見解を聞きます。
  195. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 交換公文におきまして、日本領域以外に対して作戦行動するために米軍が日本の施設及び区域を基地として使用する場合、これが交換公文の事前協議の対象になっていますから、軍が行動することは含まれておることは当然でございます。
  196. 岩間正男

    ○岩間正男君 今の解釈でいいのですか。これは軍の行動についてなぜ明記しなかったのか。はっきりさせておかなければ、将来非常な禍根を残すのではないか。どうですか。その米軍の行動については触れないというのが正体じゃないか。もうこれはたなに上げておいて、区域や施設については事前協議をするというのが、ほんとうのねらいじゃありませんか。今のような答弁でできますか。
  197. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) そうでありません。今のとは違います。日本の領域以外に対して作戦行動をする、これはアメリカ作戦行動をする。その場合に、日本の施設及び区域を基地としてする場合、そういう場合に事前協議の対象になるということでありますから、お尋ねとは違っております。私の答えることがほんとうです。
  198. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはくどくても、明記するのが当然だ。これがわからない。別の解釈も成り立ちます。こんな不完全な条文ではだめだ。この点検討してもらいたい。先ほど曾祢君の質問の中で問題になったのですが、作戦行動を起す。――この作戦行動というものは一体どういうことになるのですか。補給の問題と、それから作戦の問題と出ましたが、補給基地としてこれを使う場合には事前協議をするのですか、しないのですか。もう一回お聞きしたい。
  199. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 日本の施設及び区域を基地として作戦行動をする場合には、交換公文による事前協議でやるわけであります。補給基地として使用される場合には、これには入っておりません。従って、補給基地として使用する場合には、交換公文による事前協議に入っておりません。しかし、外務大臣が御報告いたしました要綱の第四項に一般的協議というのがありますが、一般的協議として日米両国条約の実施に関し随時協議をする、こういうことでありますから、この協議として取り上げられることはできる、こういうことになります。
  200. 岩間正男

    ○岩間正男君 重大ですね。そうすると、一般協議というのは事前協議ではないのです。事前でないから、事後になりますね。事後協議ですか、補給基地を使う場合。
  201. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 事前も事後も入ります。(笑声)
  202. 岩間正男

    ○岩間正男君 委員長、ちょっと注意して下さい。何のために事前協議ということが入っているのですか。そうでない、事後です。一般協議と事前協議の差別を言って下さい。はっきり言って下さい。
  203. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 一般協議の中に、補給基地として使う場合のことも含まれておるのであります。補船のことについて事前に協議するが、事後に協議するのか、そういうことでありますから、事前に協議する場合もありますし、事後にわたる場合もある、こういうことを申し上げたのであります。
  204. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは非常にあいまいで、事後の場合もある。――これは大へんなことだと思う。そうすると、近代戦で作戦をやる。しかし、私はさっき辻さんに聞いてみましたが、専門家に。作戦に補給を含まない作戦というものはないそうです。狭義の作戦か、広義の作戦かと言ったら、しかられた。そんなものはない、補給を含まない作戦というものはない。――そうしますと、どういうことになるのですか。近代戦はボタン戦です。ボタンをぴゅうっと押す、そういう格好でやってしまって、そうしてここから補給をする、そういうことをやって、あと事後協議して何の役に立ちますか。もう一ぺんこれについて、外相、それから防衛庁長官、はっきり答えて下さい。
  205. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 四項に出しております協議というのは、日米がいろいろ常時協議をしているわけであります。むろん国際情勢一般から軍事的な協力関係の問題、つまり在日米軍があります以上、それに関する諸般の協議もいたしておりますが、そういうものを協議機関を通じて常時協議をいたしておるわけであります。この交換公文の協議というものは、特に事前にしなければならぬということをうたっております。そしてその問題は、今申し上げたように、装備の重要な変更であるとか、あるいは作戦であるとかいうようなものは、これは必ず事前にしなければならぬということで、しかも、その問題を取り上げて協議をするということをうたったわけであります。
  206. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) もちろん事後にわたることは避けたいと思いますが、随時協議するということになっていますから、その随時を活用することが一番適当であると思います。(「事後協議などと言っても、それは事後承諾だよ、拒否権はないんだから」と呼ぶ者あり)
  207. 岩間正男

    ○岩間正男君 うしろから声がかかっていますが、そんなばかげた答弁では、これは許せない。しかも、これは補給の問題、補給基地を使うんだということで、何ら事前に協議しないで、しかも、実質的にはどんどんと作戦に使うことができる、この点が私はここで明確に指摘しなくちゃならぬということです。重大な問題です、これは。事前協議はうたっておるが、これは純粋な作戦だ。さっきの外務大臣説明では、これは純粋な突っつき合いをやるときだけだ。これだけが作戦行動だと、こう言ったそうなんですが、そうでないところの行為は、これは全部補給の問題だというふうに解釈すれば、会言ったようなごまかしはきくわけです。これは重大な問題じゃないですか、どうですか。しかも、日本とアジアの戦略配置を見れば、アメリカが指揮系統を一切握っておるんですよ。こういう態勢の中で一体事前協議なんていうことはナンセンスなんだ。何ですか、この条約の交換公文でこういうごまかしをやるということは、これは許すことができないと思うんです。この点について明確に総理外相答弁していただきたい。
  208. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 協議はむろん当然常時行われるのでありまして、問題が起る前に話し合いをしていくということは当然なことであります。しかし、今のたとえば核兵器というような装備の重要な変更と、あるいは作戦変更というようなものに対しては、特にそれらのものを取り出して、そうしてはっきり交換公文でさしていくというのがわれわれの目的であります。決して交換公文にしたことがごまかしでもなんでもございません。
  209. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 交換公文に特にあげておりまする二項につきましては、日米両国の間において特別の取りきめをして事前協議ということを明確にして、そういう義務を、アメリカがこれをせぬようにアメリカ側にはっきりさせるということが趣旨でございます。
  210. 岩間正男

    ○岩間正男君 全くこの交換公文てやつは、暗箱ですよ。問題になりそうなのはこの中にみな投げ込んで、そしてこれを糊塗しようという意図がはっきりしている。いわんや、この第一事前協議だとか、一般協議だとか暫定協議とか暫時協議というようなことが、しかも、実質的に純粋な作戦、このときだけやるというんた。それ以外は一切協議の形が事後になっている。こんなものは協議でもなんでもない。しかも、事前に協議すると、これに対する拒否権は明確ではない。そうするとどういうことになりますか。全くこれは米軍の言うままに、彼らの言う通りになってしまうということです。この問題についてどうです、お考えは。もっと追及されることもあるんだが、時間の関係から私はこのくらいにしますけれども、結局、日本に米軍があり、日本に米軍基地がある限りはこういう事態はこれはのがれることはできないという、こういうところに落とされている。ここに安保条約の姿があると思います。  私は第三に、その次にお聞きしたいのは、この交換公文の第二の問題です。これはMSAの修正との関係の問題です。伝えられる条文によりますと、交換公文の二によると、相互防衛援助協定、つまりMSA協定の修正について規定しています。この条文によるとこう言っている。「新条約の発効に伴って所要の変更が加えられなければならないので、当然行なわなければならない、その修正について両国は合意する」と、こう言っています。しかし、どういうことですか、これは所定の変更というのは。所要の変更とは何ですか、当然行なわなければならない修正というのは何ですか。その内容は何です、この問題を明らかにしていただきたい。
  211. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今の御質問は何かMSAの協定に関する御質問だと思いますが、現在まだそういう問題について触れておりません。われわれとしては、そういう種類の交換公文まだ作っておりません。
  212. 岩間正男

    ○岩間正男君 この問題はどう処置されるのか、関係十分ありますよ。MSAの文、見てごらんなさい。内容見てごらんなさい。このままで放置されません。どうでしょう。
  213. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) お答え申し上げます。たとえばMSAの問題でございますが、この問題は実体的には関係ないと思います。たとえば条約上の問題として、技術的な問題としては前の安保条約を引用している点が国内法令やその他にございますから、そういうのは条約上、または国内法令の整備の問題としては考えなければならないと思います。そういう意味におきましてはいろいろ変更のところがありますが、条約的な、そういう技術的な意味におきましてMSAも安保条約を引用している点はありますが、実体的な問題としては関係がないと、こういうふうに考えております。
  214. 岩間正男

    ○岩間正男君 伝えられる案文、交換公文の第二というのはそういう意味ですか。字句的な、形式的な修正、そういうものを意味していますか。
  215. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) ただいま御指摘の伝えられる案文とか、その他私は拝見いたしておりませんから、(岩間正君「新聞に出てますよ」と述ぶ)ちょっとその新聞の点は、こちらで全然私は承知いたしておりません。
  216. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうですが。関係ないと言ったが、この人は。この人は条約局長でしょう、あなた……。とんでもない話です。見てごらんなさい。MSAと関係ないですか。これは大へんなことになると思う。私はこのままいったら現状でも、この条約ほんとうに発動した場合にどうなりますか、これは大へんなことになる。わが国の資源、人力、産業、経済貿易等、すべてをあげて日本の軍備をアメリカの軍備増強に役立てられる、その義務を負わされている。だから、これをそっくり残しているMSA協定には触れないで、しかも、字句だけは修正しておく、字句修正でこの問題は残しておく。しかし、今度の案文の全文を見てごらんなさい。経済協力、それから二条の後半、三条のバンデンバーグ精神がうたわれているところを見てごらんなさい。こういう形で日本の経済協力とか、そういう形で実際は安保態勢に即応するところの経済態勢、産業態勢がとられ、一切のものをあげてこれに協力する、こういう態勢がちゃんと残されている。この問題には触れていない。これは重大な問題です。
  217. 小林英三

    委員長小林英三君) 岩間君、時間が参りました。
  218. 岩間正男

    ○岩間正男君 こういう形で交換公文の中でMSAの問題は、まるで条文を読んだらわかりません。あとでこれは変える、今、騒ぐと大きく騒がれるから、これはこのままにしておく、しかし、これをほんとうは変えて、二国の合意ができたらそれを認める、こういうことを約束している、こういう交換公文はあり得ないと思う。重大な問題だと思います。
  219. 小林英三

    委員長小林英三君) 岩間君、時間が参りました。
  220. 岩間正男

    ○岩間正男君 今、結論をつけてますから……。これについて、やはりもっとはっきりした態度外相、首相から表明してほしいと思います。
  221. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) まだ、どういうものが出ておりますか、われわれの手元でそういうものをやっておりません。ただいま条約局長が御説明申し上げました通り、MSA協定は現行安保条約に関連をもっております。従って、その関連の点を何か考慮しなければならぬということは考えておりますけれども、どういうふうに非常に強化するとか、あるいは何か交換公文で新しくつけ加えるとかいうようなことの御指摘があったようですけれども、そういうことは考えておりません。
  222. 小林英三

    委員長小林英三君) 時間が参りました。
  223. 岩間正男

    ○岩間正男君 一体どうされるというのですか。時間が参りましたが、最後に一つだけ許していただきたい。われわれ小会派で時間がないものですから、ほんとうは時間が非常に少ないことが残念なんですが、最後にこれだけ答えていただきたいのです。MSA協定は今後どうされるというのですか。これは今までお調べになりましたか。関連を明らかにされましたか。内容を検討されましたか。これが、新しい安保条約の中でどのような一体機構を持てば持てるというような問題に関連して、そういう問題についてこれを調べられましたか。それでなしに、ここへ持ってきて、ただ字句上の修正をやるだけだ、こういうようなことで行政協定さえ騒がれている、どうもこれはうるさい、MSA協定まで騒がれたのではちょっとうるさいから、これはちょっと暗箱の中に入れておこう、これが交換公文の精神になっているように思うのですが、これはどうされるのですか、あなた方、はっきりこれを説明していただきたい。これをこのままにして、字句修正だけでこのMSA協定はこのままでほおかぶりでいったら、大へんなことになる。これははっきり、第三条あるいは第二条の後半あるいは全部、この安保条約の発表されているこういうものの関連ではっきりこれは指摘せざるを得ない。これはどうです、MSAをどうするかということ。これは私の最後の質問です。
  224. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) MSA協定につきましては、ただいま申し上げましたように、新しくできます安保条約との関連を明らかにして残置するつもりでおります。
  225. 小林英三

    委員長小林英三君) 岩間君の質疑は終了いたしました。   ―――――――――――――
  226. 小林英三

    委員長小林英三君) 次に、鈴木強君。
  227. 鈴木強

    ○鈴木強君 委員長要求大臣、全部来ておりますか。
  228. 小林英三

    委員長小林英三君) 要求大臣は間もなくみな参りますから……。
  229. 鈴木強

    ○鈴木強君 私はおもに災害関係について質問いたしたいと思います。  最初に、審議の参考にしたいと思いますので、先般、総理は各国を視察されましたが、それらの国々において、特に防災政策と申しますか、そういった点についてどういうふうにやられておりますか、お調べになりましたら一つお聞かせいただきたいと思います。
  230. 岸信介

    国務大臣岸信介君) お答えいたします。  特に、私は今回の旅行におきまして、各国の防災政策につきまして特別の調査をいたしておりません。
  231. 鈴木強

    ○鈴木強君 非常に残念に思います。少なくとも、外遊される場合に、いろんな目的もあると思いますが、特に、日本のような災害の多い国では、従来からその点が指摘をされておったところですから、ぜひ見て来ていただきたかったと思うわけでありますが、これはお調べになっておらないとすれば仕方ありません。  それで、今度の災害が、非常に、世間では天災といい、あるいは人災といい、いろいろいわれておるわけでありますが、総理はこの今度の災害に対して、天災だというふうにお考えになっておるのか。
  232. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん、今回の十五号台風による各種の被害は、この台風が原因でございますので、その意味において、天災であることは言うを待たぬと思います。しかし、しからばこれがあれほど大きな被害を生じたのであるけれども、これに対してあらかじめ、こういう点においてこういうことをしておったらこれだけの被害はなかったであろう、こういう点において、われわれは将来も考えなきゃならないというような、いろいろな今回の体験からそれを検討して、私どもは反省しなければならない点も多々あると思うのであります。また、将来のこの災害の対策を行なう上におきましても、また、日本国土全体に対しましても、その体験からくるものは十分生かして、政策の上にこれを取り入れていかなきゃならない。こういう意味において、従来のこの施設につきまして、遺憾な点等は十分検討して改めて参りたい、かように思っております。
  233. 鈴木強

    ○鈴木強君 総理も、過去の国としての施策について欠ける点があったとすれば、この点については人災といえる、こういうふうに私は理解いたします。  そこで、台風災害のあとの政府の措置でありますが、九月の二十六日に、御承知の通り、伊勢湾台風の襲来がありまして、政府が対策本部を中部に作りましたのが二十九日であります。ちょうど、現地に益谷本部長が行かれたのが一週間目、総理はそのあと十月の三日の日に行かれておるわけであります。こういった点に対して、国民の感じとして、もう少し的確な対策が、大きな、態勢というものがもっと早くできなかったか、こういうふうな不満があると思うんですが、そういった点について、あなたはどう考えておられますか。
  234. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今回の十五号台風につきましては、二十六日にその被害がございまして、いろいろな機関からの情報を集め、情報によりまして、二十八日に中央においてさっそく対策協議会を開きまして、これに対する対策をきめ、協議し、二十九日に現地に対策本部を置いて、本部長の前に副本部長として石原自治庁長官を急派して、そして対策を立て、引き続いて、益谷本部長が現地に参りまして対策を進めたわけでありまして、私が参りましたのもその翌日でございまして、これは、いろいろな対策本部における対策や、あるいは情報等につきましても、できるだけ不便がなく、金を集めて、そしてある程度の、一番必要なことは、現地において急を要する救護その他の緊急措置でございます。そういう点については、今申しますような手配を私どもさっそく行なったのでございます。いろいろな御批判もあるかと思いますけれども、私はきわめて今回の措置は迅速に行ない、また現地における対策本部並びに各機関がほとんど昼夜不眠の努力を続けてきたことに対しましては、私はその措置につきましては、相当に今回は迅速かつ強力に行なった、かように考えております。
  235. 鈴木強

    ○鈴木強君 政府の方はそうおっしゃいますが、実際に罹災を受けた直接の方々や、また国民全般から見て、非常になまぬるかったじゃないかというそしりのあることは事実でありますから、その点は見解の相違でありましてかまいませんが、それでは次にお伺いしたいのは、わが党が八月二十一日臨時国会の召集を憲法によって要求したわけでありますが、これは御承知の通り六号・七号台風、山梨、長野等の被害はかなり甚大でありました。従って既定予備費を使っておやりになるとしても、それぞれの特別措置等をやらなければ万全な対策ができませんので、一日も早く臨時国会の召集をすべきである。こういうことから、八月二十一日に要求したわけでありますが、どうもその点、われわれとしては九月中に開いてくれという国会が十月二十六日になっておりまして、非常に残念に思っておるわけでありますが、特に岸総理が山梨にいらっしゃったときにも、現地で、まあ心配することはないというようなお話もしておるわけであります。従って県当局や県民は総別のそのお言葉に非常に信頼をして、何とか早く手が打てられるだろう、こういう期待を持っておったわけであります。知事は、そういう意向もありますので、東京にも来て、いろいろと関係各省を回わってみたが、なかなか具体的な措置はできないということで、県民はできるたろうと思う、知事は来て各省を回わってみてもできない。これは当然のことであります。具体的な措置がありませんから。そういうふうなことで、非常に中に立った知事もお困りになったようでありますが、こういうとき、何といっても臨時国会を召集しなければ、私は解決のできないことだと思いますので、こういった点で、どうしてもう少し早く臨時国会の召集ができなかったのか。
  236. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 長野、山梨等の風水害につきましては、私もその当時現地を調査いたしまして、これに対する緊急の対策をそれぞれの官庁に命じて行なわしめたわけであります。しかも、当時は相当額の予備金がございましたので、予備金支出によって応急の措置を私は講ずることができたと思います。もちろん立法措置等におきまして不十分な点もあったかと思いますけれども、しかし、それらの手続における応急の救済の、復旧の問題に関しましては、私は当時の状況からいえば臨時国会を開かなくとも行ない得ると、また臨時国会を開くというようなことで、相当に各省がそのことに――臨時国会を開くための準備等に精力をさくよりも、現地の要望に応じて、最も緊急に予備金等を支出してすることが適当であるという考えのもとに特例を当時出したわけであります。ただ、いろいろな具体策を作ります上において、御承知の通り、幾らそう申しましても、現地の査定であるとか、あるいは復旧に対する具体的の地元の要望等をどういうふうに取り上げていくかというような問題につきましては、それぞれの責任官庁において折衝しなければならぬことは言うを待たないのでありますが、しかし、当時の事情としては、当時の災害に対しましては、臨時国会を開かなくともこれに対する応急策がとれたと、かように考えます。
  237. 鈴木強

    ○鈴木強君 それは非常に認識の相違だと思います。適切な措置がとれたとあなたは見ておるわけでありますが、私たち直接現地をつぶさに見て参りました際に、そういうことは言えません。非常にこれは残念なことだったと私は今でも思っております。それから総理も、今までの施策の欠除については、大綱としてお認めになっておりますが、現在の災害救助法によりますと、中央にあなたを会長とする中央災害対策協議会というものを作ることになっております。地方には知事を会長とするものが作られておりまして、これは常置することになっておりまして、災害時に直ちにそれが行動に入る、こういうことが建前だと思います。そこで特にお尋ねしたいのは、地方災害対策協議会については、災害の事前予防措置としての活動をいろいろやることも大事でありますが、その中に、あらかじめ災害救助の基金を積み立てておかなければならない、こういうふうに義務づけられておりますが、そういった点について、政府はどういうように地方災害対策協議会というものが基金を適切に積み立てて、そういう非常事態に対して、適切な活動ができるようにやられておるかどうか。それの把握はどうなっておりますか。総理御存じですか。
  238. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 災害救助法が発動されまして、厚生省関係といたしましては、すでにこの補正予算を組む前に、十四億の金を予備費から支出をいたしまして、応急対策を講じたような次第でございます。
  239. 鈴木強

    ○鈴木強君 いや、そういうことを聞いているんじゃないんですよ。地方災害対策協議会というものを常置しておかなければならぬ。その中には災害救助基金というものを積み立てておくということが義務づけられている。これについて政府はそういうことが実際にやられているかどうかということを知っているかということを聞いているんです。厚生省だけでない。
  240. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 各府県においてそれぞれその基金を持っておりますような状況になっております。それで、それに対する国の負担分は、予備費または補正によってこれを補う、こういうことになつおてります。
  241. 鈴木強

    ○鈴木強君 もしこの地方災害対策協議会が、法律に示されたようなことを実際にやっておれば、もう少し適切な私は救済活動ができたと思う。あなたは勘で言っているんですか。どこの県がどれたけ積み立てているか調べておりますか。数字をもって一つ答えてもらいたい。
  242. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 各府県それぞれ事情が異なりますが、その資料につきましては、今ここに明確にお答えできません。
  243. 鈴木強

    ○鈴木強君 そういうことですから、平素の災害に対する心構えというものが全くなっておらぬ。法律もあるわけですから、不満足な法律であっても、もう少しその法の運用については適切な指導と監督を政府は私はやる義務があると思う。そういう点で私は非常に今の御答弁は不満に思いますが、具体的な資料が今ないそうですから、あとから一つ出していただきたいと思います。  それから次に、行政管理庁長官にお尋ねしますが、本年の八月に名古屋地区の行政管理局が水防態勢について非常に貧弱なものだということを鋭く指摘した。これは勧告ではないらしいんですが、そういう趣旨の警告をお出しになっておりますが、このことについて行政管理庁長官はこの事実をいつ知りましたか。その内容はどういうことか知っておりますか。
  244. 益谷秀次

    国務大臣益谷秀次君) 行政管理庁の名古屋管区で、本年三月、愛知県における水防態勢、また水防活動について調査をいたしました。調査の実態を報告書にまとめまして、八月の終わりと記憶いたしておりますが、愛知県のそれぞれの機関にそれを送付して説明をいたし、結局それが警告になっておるというようなことであります。いろいろこまかいことは記憶いたしておりません。高潮の問題にまず触れておると思います。水防態勢に非常に遺憾な点があった。今後の台風の来襲を予想いたしますると、まことに不十分であるという結論に達して、実態報告書としてそれぞれ配付いたしております。しかし、何分九月台風までに日がなお浅い警告でありますので、徹底しないといううらみがあります。愛知県の水防に対する実態調査は以上の通りであります。
  245. 鈴木強

    ○鈴木強君 行政管理庁というのは、大体どういうことをやっておられるんですか。私はいつもこの委員会で行政管理庁の活動について質問いたしておるわけでありますが、これは確かに任務としてやられることはもう明確にきまっているわけですし、今ごろこういう勧告を出すこと自体がおかしいのであって、もう少しこういう勧告が早く出せなかったものかどうか。これは行政管理庁の怠慢だと言われてもこれは答弁がないでしょう。どうしてもっと早くこういう点を指摘できなかったか。
  246. 益谷秀次

    国務大臣益谷秀次君) 行政管理庁は、あらゆる行政の監察をいたしております。水防態勢については、愛知県はただいま申しましたような事情であります。復旧工事だけのものは、そのつど監察をいたしております。行政管理庁は水防ばかりが職務じゃないんです。
  247. 鈴木強

    ○鈴木強君 もちろんそうです。
  248. 益谷秀次

    国務大臣益谷秀次君) いろいろあらゆる行政の監察をいたしております。水防に関する勧告をいたしたのは、昨年の伊豆地方の災害、これに対する水防の組織あるいは活動、また同時に、気象行政についての勧告をいたしております。さらに本年の山梨県の台風の監察を今行ないつつあります。
  249. 鈴木強

    ○鈴木強君 どうしてやらないんですか。
  250. 益谷秀次

    国務大臣益谷秀次君) なかなか手が回らないんです。
  251. 鈴木強

    ○鈴木強君 人が足りないんですか、予算がないんですか。
  252. 益谷秀次

    国務大臣益谷秀次君) 正直に申しますとその通りであります。予算も足りないだろうし、それからいろいろの中央で決定いたした調査をいたしておりまするから、気象の行政とか、あるいは水防行政のみに携わっておることができないのは遺憾といたします。  なお、今度の台風の実情にかんがみまして、愛知県と三重県については徹底的にあらゆる方面の監察を今行なわんとしつつあります。山梨県はただいま申し上げた通りであります。
  253. 鈴木強

    ○鈴木強君 人が足りない、予算がない、開店休業だということになる。それでは開店休業にならないような措置をとらなきゃいけないでしょう。そうしてあらゆる分野にわたって行政の監察ができるようにやることがあなたの使命でしょう。そういう点を、歴代の内閣もそうですが、特に長官が、私たちいつ質問しても適当な答弁をして、人が足りない、予算が足りないということで逃げている。そうして災害が起きたらそのあとから追っかけて、今ごろ山梨の七号台風が起きたあと監察をしている。こんなでたらめなことはありませんよ。もう少し適切な監察をして、そうして政府を側面的にバツク・アップする態勢を作るのが行政監察の任務ですから、もう少し私は真剣にその機構等あるいは運営について、まずい点は十分完璧ならしめるように、副総理である益谷長官に特にお願いをしておきます。その中で特に高潮対策について勧告されておりますが、昭和十九年、二十一年の三河地震、あるいは東海地震等によって問題になりました海部郡の、あの海岸の一帯は〇・六メートルから〇・八メートル地盤が沈下している、そういう事実があるわけですね。それに対して予防措置というものが何らなされておらない、こういうことがこの高潮対策に対する政策の欠除として指摘をされている、これは重大問題です。後ほどこれはまたいろいろ触れますが、とにかくこういう政策の欠除というものが、今日約六千名の尊い人命を失い、百五十数万の人たちが犠牲者になっている。まさにこれは人災ですよ。防げば防げる道がたくさんあったと思う。にもかかわらず、政府の施策の欠除がこういうことになっていることを、私は非常に遺憾に思います。そこで行政管理庁長官はこの勧告を出され、しかも建設工事が計画施行については建設省、農林省、運輸省、いろいろと錯綜しておる。そこにはなわ張り争いが出てくる、そういうことでせっかく護岸堤防を築いても、あとからも指摘をしますが、ながなか工事についての統一的な企画設計ができない、こういうことがあると思いますが、こういう点について行政管理庁長官はどういうふうに機構、運営を考えたらいいか、御研究になっておりますか。
  254. 益谷秀次

    国務大臣益谷秀次君) 行政管理庁は予算が足りないで仕事ができないとかいうようにお聞きのようでありますが、予算の範囲でできるだけの監察をいたしております。ただいまの海山堤防の問題でありますが、これはいろいろ各省のなわ張りだとか、あるいは設計が違っておるとかいうことにだいぶ非難があるようであります。それにかんがみまして、今回の政府は各省の技術上の首脳者を集めまして、そうして各省ばらばらにならないように、ちぐはぐな設計を作らぬようにという考えから、伊勢湾台風対策協議会というものを設置いたしまして、緊密に各省の連絡をとることといたしております。
  255. 鈴木強

    ○鈴木強君 その伊勢湾台風協議会を作って、緊密な連絡をとっておやりになるわけでありますが、それは現在のこの制度上ですね、この是正ではなくして、要するに運用上そういう方法をとられるということですが、それでうまくいきますかどうか。それでは私は不十分だと思うのです。ですから今後に向かって、その統一的な設計、企画というものを、ある官庁が責任をもってやれるような態勢を作らなければいかぬと思いますが、そういう点について長官はどうお考えでございますか。
  256. 益谷秀次

    国務大臣益谷秀次君) 特殊の機関を作るかどうか、今検討中でございます。とりあえず伊勢湾等の台風に、高潮対策に対する協議会を作りまして、そうして各省の技術の最高のものを集めて、設計その他技術上の連絡を緊密にいたして参るのですから、防災上も適当な協議会であろうと、かように思っております。
  257. 鈴木強

    ○鈴木強君 次に、この今度の災害の被害についてでありますが、農林、建設、運輸、郵政、それから厚生関係、文部、それと防衛関係、この各大臣から、風水害の被害の総額で、皆さんが査定するかしないかこれはよくわかりませんが、いずれにしてもその被害額をまとめて、臨時予算の要求を大蔵省にしたと思うのですが、その要求を直接された額ですね、各省から要求された額、それに対して大蔵省が幾ら査定をしたか、要求額から幾ら削減されているかという、この一つ状況をお聞かせいただきたいと思います。
  258. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 今回の補正予算の決定に至るまでの当初におきましては、査定が現地査定で、まだ終了いたしておりませんので、大蔵省との間に多少の被害額に対する食い違いはありましたが、その後この補正予算の決定に至る時期になりまして、大蔵省と緊密な折衝をいたしました結果、その大蔵省も、建設省の要求に対してはちっとも……大体同じ額になりました。従って、総額におきましては、千三十億であります。
  259. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) お答えいたします。農林関係の公共土木、農地、農業用施設、被害総額は五百三十六億円、こういう報告を県当局から得ております。それに基づきまして、大蔵省と相談をいたしまして、これを査定いたした額が三百四億でございます。それに対してこれは数年度にわたるのでありますが、所要の復旧の経費の国費として考えているものが二百五十億。それからその初年度でございますね、初年度の所要額は六十二億九千六百万円、かように相なっております。
  260. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) ちょっと私、申し落しておりました。それは補助災害で直轄と伊湾湾台風と合せまして千三百三十五億五千万円であります。
  261. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 厚生省分といたしましては、二十四億の災害予備費並びに八億の復旧費、計三十二億ということになっております。その他それまでに災害発生と同時に使いました厚生省分といたしましては、すでに十四億の予備費の中から使っているわけであります。それでこのたびの補正におきまして、総額といたしますというと、四十六億ぐらいに相当しております。
  262. 鈴木強

    ○鈴木強君 僕の要求しておるのは、各省から大蔵省に要求をして、話を聞いても全然査定されていないような報告をしておるのですね。そうでなく、各省から大蔵省に要求して、その額が補正予算で幾らになったのか、そういう点を一つ明確にしていただきたいのですが、その点委員長一つ……。
  263. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 農林省から大蔵省に要求したという額につきましては、補助率の問題とか、進度率の問題とか、さようないろいろな前提条件がありますので、政府内部のことでこれは申し上げることはできないので、それでありますから私が申し上げましたのは、府県から受けました損害の報告額は幾らであり、それに対して大蔵省と農林省で相談いたしました査定額は幾らであり、それに対して今回お願いしております予算は幾らであると、かようなことをお話ししておるわけであります。
  264. 植竹春彦

    国務大臣(植竹春彦君) 郵政省といたしましては、補正予算を要求したものは何もありません。(「被害は」と呼ぶ者あり)損害の総額は郵便局舎関係四億ありますが、そのうち二億三千万円は建設勘定で、残りの一億七千万円は庁費の関係でありますので、四億でありますから、損勘定で支弁いたしましたので、要求しないで処置ができたわけであります。電電公社関係は二十八億四千四百万円、そのほかに五億四千六百万円ありますけれども、この五億四千六百万円は三十五年度の予算要求でありまして、補正には要求しておりません。それから二十八億四千四百万円の方は、内訳がこの八億が既定経費でもって支弁し、二十億は増収分で支弁いたし引き当てておりますので、何ら要求するものかなかったわけであります。
  265. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) お答えいたします。防衛庁としての損害、陸上自衛隊におきましては、二千四百二十一万、海上自衛隊が二千七百万、航空自衛隊が七千九百万、全体で一億三千万余でありますが、予算は要求しておりません。
  266. 松田竹千代

    国務大臣松田竹千代君) 文部省といたしましての被害総額は、公立学校におきまして都道府県からの報告金額は四十九億円になっております。文部省ではこの金額を基礎としまして、被害報告額に対する申請率、また、これまでのいろいろとたびたびの災害の場合の査定率並びに被害激甚地域の指定等を基礎としまして、大蔵省といろいろ折衝いたしました結果、査定工事費を二十九億円と見込みまして、これに対する国庫負担金額を二十一億六千万円と予定いたしました。この半額の十億八千万円を今年度分として負担してもらうということになっております。なお、私立学校につきましては府県からの報告の総額は六億円となっております。文部省としては、この金額に対して、これまた従来のたびたびの実績に徴しまして、また、激甚地域のいろいろの事情を勘案いたしまして、二分の一の国庫支出を受けるということになっております。これに対して、さらに私学振興会等からの融資を、その額の二分の一を受ける、こういう額になります。
  267. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) 伊勢湾台風の海湾の被害の総額は六十億でありまして、三重県、愛知県両県の被害だけでも約四十五億に上っているのであります。それからこの海湾に対する災害の問題は、根本的に改良復旧という意味から、あとでちょっと申し上げますか、大蔵省と今いろいろと折衝をいたしているのでありますが、国鉄の点を申し上げますと、国鉄が被害の総額は四十六億七千万円に達しておりまして、運賃の減収額約九億円を入れますと五十五億七千万円になっているのであります。なお、私鉄の被害でありますが、私鉄の被害を受けたものは十八社に及んでおりまして、その総額は十六億八千万円、運賃の減収額、六億七千万円を入れますと二十三億五千万円になっているのであります。国鉄の補正につきましては、復旧予算をいろいろと折衝いたしましたが、一般の財源、財政等との関係がありまして、今回は補正を国鉄は出さなかったのであります。なお、私鉄につきましては、これは銀行連合協会等において復旧融資等のことをやっておりますし、また、近畿鉄道、名古屋鉄道につきましても、開発銀行に対する融資等のあっせんをやりつつあるのでありまして、一方、名古屋市電の被害につきましては、起債の点を折衝しているような状態であります。
  268. 鈴木強

    ○鈴木強君 非常に政府は不親切ですよ。今私の質問に対して、ややお答えいただいたのは文部大臣だけなんです。あとは大蔵省と話し合いをしてきめました、それは政府の内部事情ですから言えませんなんということ、どういうところを押してそういうことを言うのですか、そういう答弁でいいんですか、私は少なくとも今回の被害に対して、建設省は建設省としてどれだけ被額が上がってきたか、それに対して査定する方法はあるでしょう。そうして現実にこれだけほしいという金をあなたは確信をもって大蔵省に要求した、その大蔵省に要求した額がどれだけになったかということを私は聞きたい。新聞にも書いておりますように、何かしらあなた方の方では、大蔵省の方で何か抑えられる、あまり膨大な金を出してきた、相当な金になっておりますが、その金に対して、あまり大蔵省が奔走したというようなことを世間に知らせたくないというようなことから、あえて被害額についての的確なところを伏せているような気もするのです。私は国会を通じてそういう点を明らかにしたいと思って質問をしたのですが、建設大臣の答弁なんてなっておらぬです。国会を侮辱するもはなはだしい、それは査定する率もいろいろあるでしょう。しかし、あなたが予算折衝する場合に原案を作って大蔵省に持っていくはずです。そういうものが大蔵省と話し合いの中で、政府の内部事情ですから言えませんなんということをどうしてあなたはこの国会で言えるか、侮辱するもはなはだしい。
  269. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 政府の機密に属することだから答弁できないということを私は言った覚えはありません。
  270. 鈴木強

    ○鈴木強君 失礼しました。農林大臣の方でした。これはどうも大へん失礼いたしました。
  271. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 政府か概算といたしまして政府部内で、たとえば農林省から大蔵省に要求する、ことに災害の場合におきましては、まず第一に災害の基礎になる数字が刻々に動くわけです。先ほど申し上げました数字も今日確定したわけでございまするが、概算を要求する段階におきましてはどんどんと動いておるような状態です。それから補助率を一体どうするかという点につきましても、これはどうしようか、ある一省たけでは考えがつかない点があるんです。そういうようなことで、これはまあ最高の補助額をもちまして一応計算いたしましたものを大蔵省に出します。それから進度率につきましても、私どもといたしましては、初年度は五ぐらいのところをやろうという気持を持つのは当然でございます。しかし、これは、まあいろいろ相談をいたしましょうというような意味合いにおいて、いろいろな前提をもちましてこれくらいのものを議論の対象というような意味で大蔵省に出すものでございまして、これを申し上げることは――別にこれは機密事項だからどうのこうのというのじゃありません、まあ、申し上げても意味のないことであり、かえって誤解を招くおそれがあるというような意味合いにおきまして申し上げることを差し控えたいと、かようなことを申し上げた次第であります。
  272. 鈴木強

    ○鈴木強君 建設大臣は大へんどうも失礼しました。あらためてここで取り消しておきますから……。  福田さんは、幹事長をやられたこともあるものですから、政党とあなたが大臣になってからの感覚というものがごっちゃになっている。、たから、あなたがいろいろ、逃行過程ですからなかなか的確につかまれないでしょう。しかし、今度の補正に対して農林省としてはこれだけほしいんだという、やっぱり省としての考え方があると思う。そういう点を幾らの額になったのか、そして、それに対して大蔵省ではどれだけ削ったのかということを、端的にいえば私は聞きたいんですよ。そういうことは言えないんですか、ここで。
  273. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) それはただいま申し上げましたように、いろいろ前提かあって、まあ過程というほどではございませんけれども、中間的な話を大蔵省とするわけです。最初に申し出た全額につきましても、あとから次次とつけ加えるものもあるし、差し引くこともあるというような状態でございまして、これを申し上げましてもこれは意味がなく、かつ、かえってこれは誤解を招く数字であると、かような意味合いをもちまして申し上げない次第であります。
  274. 鈴木強

    ○鈴木強君 誤解を招くことはございません。やはり日本国民であるし、日本の金ですからね、その使い方に対してどうなったかということがはっきりすれば何も誤解は起きないんです。むしろそういうことを伏せておくから誤解も起きるんです。  で、私は時間の関係でさらにこれを追及できませんので、委員長一つ今、私が申し上げました問題を資料としてぜひ出していただくようにお願いしたいと思います。  それで、今度は総理にちょっとお尋ねねしますが、あなたは、全国の知事会議から、今度の台風十五号等を含めた救援対策に対して、約七十項目にわたって要求を出しているんです、あなたのところにも行ったと思いますが、これはごらんになりまし大か。それから、非常に被害の多かった東海三県の知事さんたち、あるいは長野、山梨等の知事さんたちもそれぞれ合同していろいろ要求が出ていると思いますが、そういったものをあなたごらんになってますか。
  275. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 利は、一応は書類を受け付けておりますけれども、それぞれの関係の責任者の方へ渡しておりますので、内容につきましては詳しく記憶いたしておりません。
  276. 鈴木強

    ○鈴木強君 非常に残念に思いますが、今度の直接の被害をこうむった各県の知事以下、関係者初め、具体的にその地域の実情を勘案して、この点をこうしていただきたいという強い要望を含めた要求的な陳情が出ておるわけです。これに対して内容を十分御理解なかったということは非常に残念に思います。ですから岸総理施政方針の演説の中でも言われておりますように、今後この救済に対しては万全の策を立てる――現地の名古屋でそういうようなことを言っておられるわけです。相当大規模な予算補正をしなければとうてい救えない、こういうことを言明されておるわけです。そこで、そういったことに関連をしていろいろな要請が出てきておると思うのですが、そういう要請を十分御理解いただかないで、今度の立法措置を二十四やられておりますか、七十のうち二十四というと、これはもう半分にも達しないわけでありまして、そういう点を見ましても、今度の具体的な救済措置というものが非常に不完全であるということが言えると思うのですね。あなたは非常に災害地に行かれても激励をし、さっきから申し上げておりますように、力強く立ち上かってもらいたいということを言っておられる。その裏には総理として万般の対策を立ててやろうということがあったと思うのです。にもかかわらず、具体的に出ておる点を見ると、そういう点が欠けておるように思うのです。十分だと思っておられるのですか。
  277. 岸信介

    国務大臣岸信介君) この臨時国会を召集して、この災害対策の問題を最も重要な案件として御審議を願います以上、その補正予算にいたしましても、あるいはこれに関する災害対策についての特別措置等につきましては、政府それぞれの関係の責任を持つところに十分督励をいたしまして、真剣に検討して、今回の対策について遺憾なからしめるような私どもは確信のもとに補正予算及び特別措置を講じておる次第でございます。
  278. 鈴木強

    ○鈴木強君 それでは途中でありますが、科学技術庁長官が所用があるそうですから先に質問をさしていただきます。  今度の伊勢湾台風を中心とする未曾有の被害を受けたわが国が、災害予防ということに対してもう少し科学的な見地から完全な対策を立てなければならぬということは、あなたも非常に力強く言われておるようでありますが、現在のところ、観測用の飛行機一台ない。レーダーにおいても非常に貧弱です。それから電子計算機一つないという、こういうことですから、的確な予報の伝達事自体がうまくいかない。基礎になる設備が非常に、欠けておるわけです。そういう点について、科学技術庁長官としていろいろ御研究いただいておると思いますが、どういう方策がいいとお考えになっておりますか。
  279. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) お答えいたします。台風の予防及び防災に関しましては、台風が発生いたしますのはマリアナ群島付近、それが発達して沖縄付近まできて、それから北西の偏西風に会って東に転向してくる、それが日本本土に上ってくる、こういう経過をたどっておりまして、まず第一には北上してくる台風を正確につかむということが大事であります。ところが、あの辺は戦争に負けて基地を全部失いましてレーダー網が整っておりません。そこで、とりあえず沖縄と同じところにある、つまり日本が潜在主権を持っております南大東島に強いレーダーを作りしまして、それでまずつかまえるということを今努力しております。これは外務省を通じましてアメリカと折衝しておりまして、大体日本の要望に沿って向こうはやってくれる様子でございます。それから日本本土に接近して参りましたら、室戸とか、紀州の山の上とか必要なところにやはりレーダー網を設置いたしまして、本土のどの地点に上陸するかということを正確につかむことが必要であります。その意味で、今度はとりあえず緊急なものとして、室戸にレーダーをつけてもらうことにいたしました。  その次に重大な問題は、今度起こりました高潮の問題でありますが、資源調査会におきまして、有明湾、大阪湾、それから伊勢湾、東京湾等につきまして、かなり綿密な調査をして、どの程度の高潮が来るかという科学的な調査をやったことがあります。ある程度の数学の公式までできておりましたが、しかし、それはまだ必ずしも正確とは言えませんので、海の深さとか、湾の大きさとか、方向とか、そういうようなものをさらに詳細にきわめまして公式を確立して、それと同時に、刻刻と来る台風の強さ、風の強さ、それからミリバール、そういうものを正確にはかってその公式に入れて、数値予報をするということが非常に重大だと思います。たとえば、今までの警報ですと、高潮が来るという警告であります。しかし、風の強さなんかは、所によって三十メートルの突風が吹くとかということでありますが、高潮の関係は、何メートルから何メートルくらいの高潮が来ると言うことが今までできなかったわけです。これができるようにたりますと、最低四メートル、最高六メートルのものが来るから注意しろといえば、堤防が五メートルならこれはあふないということで、だれでも逃げ出すということです。ところが、今まで機構の不整備や、あるいは人員の不足、それから観測データーの不足等がありまして、そこまで手が回りませんでした。これからはその辺に力を入れまして、潮の高さをはかる検潮所とか、あるいは今申し上げたレーダー綱とか、それから各測候所におけるそういう観測をする人員をふやすとか、それから、できましたら市町村、地方団体、ラジオ等に連絡をする防災気象官というようなものを設けまして、専門に、地方団体その他に連絡をとって、どういう措置をしたらいいかということをやさしく解説するような措置が好ましいと思っております。そして、とりあえず、検潮所を三カ所、大阪湾、伊勢湾等に今度作りまして、それからレーダーも室戸に作ることになりました。防災気象官、その他の恒久的な対策は、来年度予算で正規にとれるように今努力している最中であります。  そういうような総合的な措置をこれから講ずるとともに、もう一つ大事なのは、台風を事前に何とか処理する方法はないかということです。今まで、月へ人間が行くなんというとみんな笑ったものでありますが、近ごろは笑えなくなったと同時に、台風を事前に処理するということも必ずしも夢ではないようです。気象庁の荒川博士や皆さんいろいろ御研究願いましたら、アメリカのハリケーン・プロジェクトかなんかを見ますと、台風の上にドライ・アイスをまいてエネルギーの構造を変換させ、そうして方向を転換させるというような研究がかなり進んでおります。また、人工降雨については、豪州においてまた非常に進んでおります。こういうような問題については、国際協力をこれから行ないまして、日本もその研究に追いつくようにいたしまして、事前処理ということを一つの課題として努力をして参りたいと思っております。そのために気象庁に台風研究部というものを来年度から設けまして、本格的な研究に入るようにいたしたいと思っております。
  280. 大和与一

    ○大和与一君 関連。今の長官のお話ですが、南大東島から室戸岬までの間に海があるわけですね、現在定点観測をやっている、これが去年だったか、二つの点に定点があったのですが、それを最近一つに減らしていることを運輸委員会で聞きました。ところが、これをふやすことの方が大事なのであって、海の中に生きた目があるのだから。そのことを一言も言わないのはどういうことなのか。これはむしろ運輸大臣にお昇ねしたいのですけれども、二つの定点があったのを一つにしてしまった。逆にこれはふやさなければならない。一体そういう要求を、大蔵省と話し合って、ふやす意思があるのか、大蔵省はうんと言わないのか、その辺を運輸大臣にお答え願います。
  281. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) 定点観測の問題は、先般の運輸委員会において気象庁が答えましたように、大体、大蔵省に対しましてもいろいろと折衝をいたしておりますが、いろいろな観点から、これを一つに減らしても大体の性能は落ちないという一つの法則を説明いたしておりましたが、私は専門家でないから、忘れましたが、そういうことを言った。あなたはこれを聞いたでしょう。(「はっきり言いなさい、しめくくりを」と呼ぶ者あり)それでは気象庁の方に説明させます。
  282. 肥沼寛一

    説明員肥沼寛一君) 定点観測というのは、戦時中アメリカとヨーロッパの間の航空輸送の問題で、大西洋でたくさん定点を置きまして、たしか十四点ぐらいたと思いますが、実施したものでございます。航空が主とした目的でありまして、戦後、アメリカの要請によりまして日本でも二点実施いたしました。その後、飛行機が非常に発達いたしまして、定点が非常に金がかかるということから、大西洋でも現に減らす方向になってしまいまして、この減らすのに対しては、ヨーロッパ側で不賛成でございまして、アメリカ側は自己の負担を軽くする意味で減らす方向でございます。その協定によりしまして、たしか九点現在実施しております。それと同じような状況によりまして、大西洋でも減らす方向になりまして、日本で二点実施していたのが一点になったわけでございます。今後、高層の観測を海の上でもやるということは非常に大事なことではございますが、定点が非常に金がかかるということと、一方で航空機が非常に発達いたしまして、海上の在来の資料を船が観測していたと同じような状況で航空機が観測して通報するという方向に現在変わりつつあります。そういう意味で、定点がふえることは希望するところではありますが、一方で航空機の資料が十分入って参りますれば、これを補うことは十分可能だと存じます。
  283. 大和与一

    ○大和与一君 関連して。今の御答弁はちょっとおかしいですよ。今まででもアメリカの軍が気象については協力してくれている。その情報は持っておられる。それ以外にやはり定点が必要だといって国会答弁しておられる。だから、われわれはもっとふやさなければいかぬということすらも応援をしたつもりです。それが今のお話によると、気象には大して関係がない、こういうお話だとだいぶ違う。そうだったら、はっきりとそんなものは大したことはないのだ、今までそれはもうむだだったのだ、ということすら言えるわけです。ですから私はその点をもっと、ほんとうはふやすことの方が現在の災害を抜本的に防ぐためにやはり必要であるのだ、――ここであるかないかということをはっきりおっしゃって下さい。そうでなければどうも話がおかしい。それで、その予算を一体出そうとしていないのが、出したけれども、聞いてもらえないのか。(「予報は正確じゃないんじゃないか」と呼ぶ者あり)
  284. 肥沼寛一

    説明員肥沼寛一君) 予報が正確でないということは現実でございます。それを粘度を上げるためにわれわれ非常に努力をしているわけでございますが、定点観測は確かに重要なものではありますが、非常に広い、日本の国内で申しますと、百数十カ所の測候所がございますが、海上に一点、二点ふえても、これはプラスにはなりますけれども、それ以上に非常に数の多い飛行機の方が有効になりつつあるというのが現状でございます。現在アメリカでやっております気象隊は、毎日、日本の周辺を哨戒して気象観測をやって、気象庁にも通報してくれております。ここでいろいろ問題になるのは、台風の観測でございますが、グァム、沖縄、横田の気象偵察隊が台風のときに観測しているのが新聞などで報ぜられまして一般に認識されておるわけでございますが、毎日、日本の周辺を飛行機が哨戒しております。
  285. 千田正

    ○千田正君 関連質問。ただいまの気象庁のお話は、はなはだわれわれは納得できない。それは定点観測は戦後においてもアメリカと共同のもとに日本の海洋に二点置いてあった。現在は一点でありますが、その一点のうち北海道の東南地区にあったところの定点観測というのは、アメリカとの協議の上にやめてしまった。日本が財政的な事情のもとにやめた。やめた結果どういう問題が起きたかというと、洞爺丸の遭難事件が起きた。そのときでさえも、識者はあの日定点観測があったならば、ああいうような不幸な事態は起きなかったであろうということを強く主張しておる、こういう点について運輸省はどういうふうに考えておりますか。財政が十分あって、そうして置くべき所に置いてあったならば、ああいう不幸な事態は起きなかった。これは運輸省として十分反省する必要があると思う。
  286. 肥沼寛一

    説明員肥沼寛一君) 定点観測が一点あったかなかったかのために洞爺丸の事件が起こったとは思っておりません。あれは二十九年の九月二十六日の午前十一時にすでに警報を出しておりまして、これは警報の通りに台風は移動しております。で、定点観測の重要な理由は、非常に広範囲の気象の大勢をつかんで、今後どう変わるかという大筋の決定に非常に大事だと、こう申し上げているわけでございます。
  287. 鈴木強

    ○鈴木強君 この今の定点観測のことですが、日本の場合は非常に貧弱でして、「あつみ」ともう一隻何か観測船がありますが、何か半月交代くらいでやっておられるのでしょう。これも非常に不完全ですし、総体的にこの気象庁の予算を見ましても三十数億くらいの金しか年間ない。実際に業務執行に必要な金というのは十億円にも足らない。これもロッキード二台にも満たぬような金なんですよ。たから、気象行政に関して非常におくれているのですね。たから、今、当面災害緊急対策、今出たようなこういう予報対策等、庁舎一つ見たって実際獄舎みたいで、私テレビなんか見ますけれども、狭い部屋の中でごたごたやってたんじゃしょうがない。人員の点なんかも、いろいろもう少し気象行政というものを完璧になるように、これはやはり裏づけをしてやらなければならぬと思います。ですから、そういう裏づけを十分考えていただいて、これは運輸大臣の所管ですから、そういう点も一つこの機会に考えていただきたいと思います。  それから中曽根長官は非常に勉強されておるようでございますが、海上における気象の観測ですね、こういったものが今アメリカとの間で飛行機を借りてやっているわけですが、これじゃいかぬと思うわけでありまして、やはり独自な日本の観測機くらいのものは一機、二機持っていていいと思いますね。そういった点あなたは何か飛行機を使ってやるというようなことをちょっと新聞なんかで見たのでございますが、その点お触れになっておらなかったので、一つ大事な点ですから聞かしてもらいたい。
  288. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本が自分の飛行機を持ってやることは最も好ましいと思いますので、この間の閣議でもそういうことが問題になりまして、岸総理発言で、特に防衛庁でそれを至急検討して米軍の方にどういう順序でやるか、ちょうどレーダー・サイトを順次日本に移していっているように、こちらの力も順次訓練して受け継ぐように努力していこう、こういう赤城防衛長官答弁がありまして、防衛庁当局においては、これからその趣旨で努力をしていかれるものと思います。飛行機を持つということは私は非常に重要視したいと思いまして、これはぜひとも実現したいと思っております。
  289. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) ただいま鈴木委員から申されました気象庁の強化は、災害の防止の上に一番の緊急な問題でありまして、従いまして、本年度は三十八億でありましたが、来年度は六十二億を要求いたしております。極力その強化に努めたいと実は思っておるような次第であります。
  290. 鈴木強

    ○鈴木強君 大蔵大臣はいつも財布のひもを締めているんですが、締めていいところと締めてならぬところとつぼがあるんですが、気象行政は割と貧弱ですから、運輸省が、大臣がお持ちになっている構想あるいは中曽根さんがお持ちになっておるような構想を実現するためにあなたはどういう協力をしておりますか。
  291. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま来年度予算編成にあたりましていろいろ苦心しておる最中でございます。
  292. 鈴木強

    ○鈴木強君 時間がありませんので、できるだけ一回の答弁で大体了承できるように一つ大臣にお願いしたいと思います。ですから、そういう構想をお持ちなんですから、これからおやりになることですから、もちろん確定したことを私は聞こうとは思いませんが、あなたとして協力できるものかどうか、そういう点ですね。
  293. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 予算編成の際に一つ一つあげてお答えするわけには参りません。ただいま皆様方の御意見も伺っておりますし、十分私どもも慎重に対策を考えるつもりでございます。
  294. 鈴木強

    ○鈴木強君 これは非常に大事なところですから、ですから、大蔵大臣としても協力するという立場で私はあなたが答弁されたと思いますから、そういうふうに理解しておきます。  それから自治庁長官にちょっとお尋ねしたいのでありますが、今度の災実の被害に対して、どうしても財政的に地方自治の方にしわ寄せがいくと思うのですが、この点は同僚の占部議員の方から専門的にもっと詳しくお尋ねがあると思いますので私は簡単に触れておきますが、今度の大蔵省の予算編成に対する態度を聞いておりますと、地方財政が二十八災当時よりもよくなっておる。ですから国庫の補助率につきましても、二十八災程度のものをやればむしろそれ以上になる、こういうお話のようでありますが、しかし、今度の特別措置法等を見ましても、今、大蔵省で言っているような思想がずうっと入っておりますために、二十八核当時がら比べまして、海岸堤防の国庫負担分を政令指定地域に限って一律に八割にする、こういう点は確かに多少なり前回の措置よりは前進していると思うのです。しかし、総体的にどうも補助工事の方で地方自治の方に相当にしわ寄せがいくように思うのです。この点自治庁長官としてはこれでいいというように考えておられるのでしょうか。特に自治庁で地方公共団体の起債の特例分として二百億円を要求したようでありますが、それが百六十億円ほどしか承認されておらないわけですね。そういう点もからんで今後非常に地方財政の圧迫になると思うわけですが、そういう点に対して自治庁長官は何か具体的にお考えになっておる点がございますか。
  295. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) お答えいたします。今回の大きな災害の跡始末が地方財政に禍根を残さないように、私といたしましても、まあでき得る限りの努力をいたしておるのでありますが、政府におきましても各種の特例法を設けることになりまして、補助率等もいろいろ上げておるのであります。さらに今回は交付税も予算補正によりまして相当増額に相なったのであります。特別交付税に回し得るものも今度の補正で約四十一億ございます。それから従来から当然、年度末近く配付する特別交付税の中でやはりこの災害関係に回し得るものも二、三十億あるのであります。それらの特別交付税を配付をする。それから起債につきましても、現年災害に対する従来から予定されている起債のワクが三十五億あるのであります。今回百六十億増ワクが認められまして、起債のワクとしても私は大体これでまかない得るのではないかと考えております。いろいろ御指摘になりました小災害につきましても、かつて前にはワクを下げて補助をするということになっておったのでありまするが、今回は起債を認める。しかしその元利は将来起債の償還でみていく、こういういろいろの措置が講ぜられておるのでありまして、私はただいまの観測では大体これでまかない得るのではないかと思っております。むしろ三十五年、今後の地方財政に対してどういう措置がとってもらえるか、こういう問題がむしろ大きい問題でありまして、これらの問題につきましてもできる限りの努力をして地方財政に大きなしわが寄らないように、また地方財政の健全化の方向に進み得るように努力を続けていくつもりでおります。
  296. 鈴木強

    ○鈴木強君 長官は何とかやれそうだということでありますが、今の起債の点を一つ考えましても、あなたの希望した通りのものが実現していない。従ってかなり困難が予想されておりますので、この点は一つ十分今後施策を考えていただきたいと私、思います。  それから大蔵大臣に、少し具体的な問題で、あなたの方がどうも少し査定がきびし過ぎるというような私は気がいたしますから、ちょっとお尋ねいたしますが、今度の伊勢湾の高潮対策で建設省が九十七億要求したのに対して、あなたの方では四十七億円にこれを切った。それに債務負担行為によって約七億円を加えておりますから、九十七億に対して五十四億円になっております。これではおそらく、来年の六、七月ごろは波浪期になりますし、さらにそれに加えてシーズンになってくるということで、私たちは改良工事ではなしに、要するに原形復旧くらいの工事に終わってしまうのではないかという危惧を持ちますが、この点は建設省、大蔵省どうですか、大蔵大臣は少しきびし過ぎたのじゃないかと思いますが、建設省はそれでやれますか。
  297. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 伊勢湾台風についての伊勢湾沿岸の海岸堤防の問題だと思います。御承知のようにこの原形復旧の点につきましてはこれは問題はございませんが、これを改良復旧いたしますについてどういうような構造にするとか、どういうような高さにするとか、あるいは幅はどうするかと、こういう点が実はまだきまっておりません。この点につきましては建設省ももちろん技術陣を動員いたしまして、外部の技術陣を動員いたしまして、それで十分に検討を加えてそれで適正なものにするということでございますし、大蔵省ももちろんその方針に賛成をいたしているわけでございます。同時にまた関係の農林あるいは運輸等も、海岸堤防の問題といたしましては、同一の考え方でその規模をきめていくということになるのでございます。先ほどいろいろ各省大臣にお尋ねになりまして、査定を加えたとかいうような御懸念から、要求は幾らかというようなお話をなすったことだと思いますが、ただいま申し上げました伊勢湾海岸堤防で非常にはっきりいたすのですが、やはりそれぞその規格と申しますかそういうものについて未定の部分がございますので、そういう意味でこれはもう少し総合的に検討してしかるべき金額、そういう意味の予算はただいまのところはまだ計上されておらないのが実情でございます。
  298. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 伊勢湾の海岸堤防及びその河口に面する地域についての災害復旧につきましては、来年の台風期までに原形復旧まで持っていきたいと思っております。それに対する予算といたしましては今回の補正によって十分まかない得ると、かように考えております。
  299. 鈴木強

    ○鈴木強君 その原形復旧ということでは非常に不十分なので、今大蔵六日から今後の総合的な施策についてのお話がありましたが、それもわかりますけれども、今ここでああいう被害を受けた直後に、やはり恒久的なものを入れて建設をして進めていきませんと非常に問題があると思うので、私は来年のことは保証できませんから特にこういうことを言うのですよ。こういう原形復旧的なものでやられて、来年今度波浪期となりさらに台風が来たという場合に、せっかくやりかけた工事が全部流れてしまって、もとのもくあみになる危険性がないとはいえないでしょう。だからもう少し改良復旧を加えて、基本的な方針をおきめになってやられる方がいいのじゃないかと、こう私は思うので念を押しておきたいのです。大丈夫ですか。
  300. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) もとより、この伊勢湾に面する防潮堤につきましては各省、建設、運輸、農林の三省が高潮対策審議会を作りまして、それぞれの見地から科学的にこの堤防の高さあるいは構造、強度等については十分総括的に検討いたしまして、その高さを決定し構造を決定して参ります。それまでのともかく来年の台風期までには、原形までの高さにはどうしても上げておかなければならないというのが私ども考えであります。そして抜本的な海岸堤防につきましては、これらを決定いたしまして、ただ単にこの三省だけの協議によるばかりでなく、民間からも十分学識経験者等にも諮りまして、いろいろな意見を総合いたしましてこの堤防の高さを決定して、将来再びかようなことのないようにいたしたいと思っております、それまでの工事進捗率といたしましてはこれ以上の金は私は必要ないものとかように思って今回の補正予算を決定いたしたい次第でございます。
  301. 鈴木強

    ○鈴木強君 非常に時間が制約されますから多くを具体的に聞けませんが、たとえば今度の大蔵、建設省との予算折衝の中で、締め切り工事の単価にしても建設省は二十万円なきゃだめたと、こういうのに対して大蔵省は、これは一メートル単位でありますが十五万円だ、こう押えられてしまうわけでしょう。堤防の高さにしたって運輸省は七百五十必要だと、こういうのに対して大蔵省はその金の面から六百七十だと、こういうふうにやられてしまうわけですね。だからこの折衝の中でいろいろと私たちが調べてみると、こういう具体的な例があるのですが、これは今お話によると来年度さらにかさ上げなんかするのじゃないかと思いますが、そういう趣旨のことも大蔵省が考慮して、将来建設省がお出しになった基本線をお認めになって、補正予算においてはとりあえずこういくんだ、こういうふうに理解していいのですか。
  302. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) ただいまの補正予算の折衝の間におきまして、締め切り工事の一メートル当たりの単価等についての御指摘のような開きのあったことは事実であります。しかしながらその後大蔵省は十分現地を調査いたしまして、これは十分それだけがかるだろうということで、今回の補正には建設省と全く相一致した単価が盛られておりますし、また将来の恒久対策につきましては十分私どもの方でも大蔵省に要求いたしますし、大蔵省としてもこの伊勢湾等の海岸堤防の重要性にかんがみまして、必ずわれわれと相一致した意見によって三十五年度予算等は決定するものと、かように思っておる次第であります。
  303. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま建設大臣がお答えした通りでございまして、私どもも権威のある機関に諮ってその構造等をきめていく。すでに伊勢湾沿岸の高率補助等の法案も災害委員会に提出いたしておりまして、その改良部分についても補助率等もきめております。この点は御信頼いただきたいと思います。
  304. 鈴木強

    ○鈴木強君 まあこの点は折衝の過程でそういうお話があったので、あと今の二人の大臣のお話でよくわかりました。一つぜひとも、建設省がせめてほしいというところまでは了解が達しておるようですから、そういう点で一つ来年度予算も考えていただきたいと思います。それからあといろいろありますがこれは省略しましょう。  一つ大蔵大臣、財政投融資の面で約五百一億措置しておりますが、非常に現地からはかなり強い要求がまた出ているのです。現に国民金融公庫の場合でも資金の増額をしてくれという意見が出ております。例を愛知県にとりますと、現在四十億ぐらいの申し込みがあるそうなのであります。さらにこれが六十億になる、こういうような予想も立っておりますので、もう少し何とか資金を増額してもらえないかという要求があるのですが、これはいろいろある公庫のそれぞれの立場から出ていると思いますか、特に私そういう強い要望を聞いておりますものですから、国民金融公庫に限ってちょっとお尋ねをしておきたいのですが、多少何とかできる道はないですか。
  305. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたしますが、今までの財政投融資の実情から見まして、ただいまのような御要望が一部にあるやに伺いますけれども、全般といたしましては比較的順調に貸し出しが進んでおるように思います。もちろん資金といたしまして年末融資のワクもございますし、あるいはまた第四四半期の資金も持っておりますので、いろいろ工夫の余地はないわけではございません。実情をよく調べた上で善処したいと思います。
  306. 鈴木強

    ○鈴木強君 厚生大臣にお尋ねしますが、この応急仮設住宅建設計画というのが十月の十六日の閣議できまっております。一万五千戸お建てになるようでありますが、これについても大蔵省が多少八万円から二万円上げて十万円にしてくれた、これは私敬意を表しておりますが、一万五千戸実際に建てることにきまっておりますが、現地の実情を見ますと、どうも敷地等がなかなか思う所がない。何か遠い所へ行って畑の中へ建てるというようなこともいろんな不便もあるでしょうし、そういう点で名古屋市に割り当てた五千戸でも、年内におそらく三千も建たんのじゃないかという予想も立っているのですが、こういう点はどうでございましょうか、敷地のあっせん等少しあなた方の方でめんとうを見てやる必要があると思うのですが、この点はどうでございますか。
  307. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 敷地のあっせん等につきましては、ただいま私のところまで報告は来ておりません。しかし当初建築資材が交通が思わしからぬ原因によりまして非常におくれたことは事実でございますが、特に名古屋市の場合におきましてはこの二十日までに大部分完了いたし、そしてこの十一月の二十八日までには全部完了いたすところの手配の報告になっております。
  308. 鈴木強

    ○鈴木強君 いやにあっさり自信のありそうなことを言われるのですが、もうちょっと私は現地の実情を御研究いただいて、そうして今私が指摘したような点についてできるだけの協力をしてやっていただきたいと思います。  それからこれはちょっと問題かと思いますが、とにかく六千名からの死者が出て百五十万からの犠牲者がある大きな台風被害だったのですから、公共土木あるいは政府が補助すべきものはございますが、個人的な災害については何ら補償の道はないのですね。これは言い出せば切りのないことであって非常にむつかしい話だと思いますが、何か私は田畑を流され、うちを流されてどうにもならぬ、というような非常に苦境に立った人たちがたくさんおるわけですから、せめてそういう人たちに多少の見舞い程度のものでも贈るようなことがほんとうの政治のあり方ではないかと思うんですね、非常に苦しい逆境に立つときにこそ多少のものでも政治のありがた味というものが身にしみると思うんです。そういう点で何か厚生大臣はお考えはないでしょうか、いい知恵はないでしょうか。
  309. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) ただいままで火災、落雷あるいは地震等のこういう天災等の場合におきましても、そうしたような措置が講ぜられなかったという関係からいたしまして、ただいまのところはやはり何といたしましても他の金融措置、たとえば厚生資金のワクの貸付あるいは償還期限の延長とか、あるいは母子福祉資金とか、あるいはまた特に困っている方々につきましては生活保護法の適用等の拡大等によりまして、そういう措置をとっておりまして、ただいまのところそのような見舞金あるいは援護的な措置というものは考えておりません。
  310. 鈴木強

    ○鈴木強君 農林大臣にちょっとお尋ねをしておきますが、果実に対する救済でございますが、これが今天災融資等を見ましても適用除外になっておるわけでありまして、これには農業共済の補償制度もないわけですね。ですから今度山梨県あたりで非常にブドウ、ナシ、リンゴ等が一挙にやられまして、それによって生計を立てている人たちがどうにもならないという実情に置かれておるわけです。特別措置法を見ましてもそういう点が何も出ておらないんですが、なかなかむづかしい問題だと思いますが、そういう点に対する融資の道を何かお考えになることはないでございましょうか。  それからもう一つは、農業災害補償法を改正して、その中に果実の被害を入れてもらいたいと私は思うんですが、そういうふうなことに対して御研究していただいておりますか、それから見通しはどうでありますか。
  311. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 果樹は今後の日本農業の方向といたしまして一つの非常に重要な課題になっておる次第でございます。特に柑橘類のような輸出向きのものにつきましては私ども非常に大きな期待を持っておる次第でございまして、これに対しましては積極的な助成の方策をとらなければならぬ、かように考えております。さようなことから融資を中心といたしまして、果樹栽培を助成するということを根幹とした、果樹振興法を来国会に提案いたしたいというので、目下その構想を進めておる次第でございます。災害に当りまして、果樹は桃栗三年というがごとく非常に果実の収得まで時間がかかりますので、特殊な考え方をとらなければならぬというので、あるいは助成施設を講じますとか、あるいは融資につきまして、たとえば農林漁業金融公庫の融資につきはしては、今まで短かった融資の年限を七年という長期の償還期限に引き延ばすとかいろいろやっておる次第でございますが、大体果樹対策といたしましては融資を中心にいたしまして回復をはかりたい、かように考えておる次第であります。
  312. 鈴木強

    ○鈴木強君 ちょっと飛び飛びになって恐縮ですが、厚生大臣、もう一つ国民健康保険が全国的に十二月一日から実施されるようになっておるわけですが、この実施を控えてたとえばおひざ元の東京都あたり々見ておりましても、約半数の区はまだ未決定であるというようなことから、十二月一日実施が非常に危ぶまれておるわけですが、厚生大臣はこれをどういうふうにごらんになっておりますが、何か心配されておりますか。
  313. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 先般東京都条例の公布によりまして、東京都と医師会との間に話が決定いたしまして、十二月一日からこれが発足することになっております。
  314. 鈴木強

    ○鈴木強君 大丈夫ですか、間違いありませんか。
  315. 渡邊良夫

    国務大臣(渡邊良夫君) 間違いありません。
  316. 鈴木強

    ○鈴木強君 時間がありませんから、次に、農林大臣にもう一つお伺いしたいのですが、今度の国会に農地被買収者問題調査会法案をお出しになっておりますね。これは前回審議未了になったものですが、非常に問題のある法案でありまして、われわれはよもや今度の臨時国会にこういうものを出すとは考えておらなかったのですが、どうもあなたの方では旧地主階級の圧力が相当加わってきて、どうにもこれは出さなければならぬところにきているような気もしているんですが、片や一面予算が通っているからということを理屈にして、今度お出しになっているんですが、これは非常に問題の法案ですから、撤回をしたらどうかと私は思うんですが、それはもう圧力でどうにもならぬですか。
  317. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) お話しの農地被買収者問題調査会法案、これは本年度の予算にその調査会の費用を計上しておるというような関係から、どうしても今国会に出さざるを得ないと、かような考えをもちまして提案をいたしました。これは調査会法案でありまして、まあ買収によりまして生じた各種の社会問題を調査すると、かようなことで、そう問題にされる必要はなかろうと、かように考えます。
  318. 鈴木強

    ○鈴木強君 これは福田農林大臣、そうはいかぬのですよ。予算が通っておるが、これは、災害で金がないときですから、むしろあなたはそっちにお回しになって、そしてこれはもう何といったって旧地主階級が安い金で手放しておりますから、その補償をせいということなんです。その補償ができぬから、まああなたの方では調査会を作って調べてみると、こういうことで押えておるのが真相ですから、そういうものをこの非常災害時に法案を出して通すということは非常識ですから、私はまあ撤回したらどうかというふうに申し上げたんです。まあ撤回しないということですから、これはもうどうにもならぬ。われわれは反対するだけです。  それで時間の関係で私非常に残念ですが、激甚地の指定問題でもう結論だけ私は大蔵大臣に伺っておきたいんです。いろいろ紆余曲折を経まして激甚地の指定がございました。十六府県については正式にきまりましたが、あときめられた政令基準によって市町村段階はこれからきまっていくわけですね。当初大蔵省では激甚地の指定をどの程度にお考えになって補正予算を組まれたのか、その後十二日の日に最終的に政府態度がきまって、かなり、大蔵省がお考えになったよりも以上に地域が拡大されたと私たちは聞いているわけです。そういたしますと、当然それに伴う予算的な措置が必要になってくると思うのでありますが、これに対してわが党はぜひもっと第二の補正予算をお考えになって下さいと、こういうことを申し上げておるのでありますが、きのう亀田委員もちょっと触れておりましたが、大蔵大臣はまあ必要ないと思う、しかしそのことについてはこだわらないと、こういう御答弁をしておるのでありますが、しかし私が質問するように、当初あなた方は大体どういう程度の見当で一つ激甚地を考えて予算を組まれたのか、それから今度拡大されてどの程度予算が必要になってくるのか、これは資料を出してくれと言ってあったんですが、出なかったんですね。参議院の審議段階ではぜひ私たちは具体的にこの市町村とこの市町村が適用になる、こういうふうにはっきりしてもらえばこれは一番わかるわけですが、その点はどうでございましたですか。その予算編成当時とその後の状況ですね。
  319. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 予算編成当時におきましては、大体六割程度の地域について激甚地の指定がある、こういうような予算の計上をいたしたわけであります。ところで最後に激甚地指定をいたしましたその基準によりますと、今お話しになりますように愛知、岐阜、三重を初めとしての十六府県、これはもうその府県が来年の県工事並びに市町村工事等について、別に定める算定方式に合うものは、この激甚地指定を受けるところでございますから、その他の府県、県ですか、その他の県について県内の市町村工事等についてその基準に合うものがあるかないかということでございますが、まあそういう点をいろいろ調べているというのが今、現状でございます。で、できるだけ早くお示ししなければならないのでございますが、御承知のように今回の予算の一番申し上げにくい点とでも申しますか、臨時国会を急ぎ、予算提出を急いだ結果、全災害地についての査定を終っておらない、現にまだ湛水地域で実地調査のできないようなものもある、こういう点もございますので、相当推定の部分が入っております。そういう推定の部分が入っておる際に、ただいま御要求になりますような具体的な町村をあげますことは、万一その町村が落ちるようなことでもあれば大へんな混乱を引き起こす、従って基準の適正なりやいなやの御審査を十分いただきまして、そうして実際の工事量あるいは府県工事、市町村工事とか、あるいは災害の実情とか、これを十分勘案して参りたいというのが今の建前でございます。従いましてその具体的な市町村をあげることができないことを御了承いただきたいと思います。しかして私どもの大体の見通しで申しますと、公共土木につきましては、当初六〇%と見ましたものが、六七%、七%前後になるのじゃないか、大体その六割の一割程度のものがふえるのじゃないか、だから六七%前後、こういうことになるんじゃないかと思います。また農業関係におきましては、農地、農業施設においては、これは七一%くらいの数字になるのじゃないかと、かように考えます。そこでまあそれだけのものが出ると、提案した予算でまかなえるかどうかという問題になるわけでありますが、当初からこの予算編成の際に、まあこの点が非常に苦心をいたしておりまして、今回の予算では、ごらんになりますように、本費に計上している災害復旧費もございますが、予備費の中に五千億も、大体災害復旧費に引き充てると、こういうように予想しているものがございますし、さらにまた国庫債務負担行為等で三十六億も議決をお願いするとか、こういうような未定部分がございます。ただいま申し上げるように、最初予定した範囲が拡大され、金額がふえる、かように申しましても、金額的には初年度としては私ども大体数億程度ではないだろうか、かように考えますので、それなら今計上いたしております予算で何とかまあまかなえるのじゃないか。そこに三十億ばかりの普通予備費が計上してございますが、それにあまりさわることなしに、大体まかなえるのじゃないか、かような実は考え方をいたしておるのであります。ただいまもお話しがございましたが、今回の予算は申すまでもなく現に起きている災害に対する復旧費でございますので、この際に災害の金額がふえたり、減ったりするわけでもないのでございます。財源に合わして査定をするというようなものじゃなくて、現に起きている災害に対しての対策をたてるのでありますので、一般の予算編成の際のように財源がないからこれはできないとかいうわけのものでは実はない。この点を十分御了承賜わりまして、私どもも今日御審議いただいております予算では、とにかくまかない得るもの、そうして先ほども建設大臣が申しておりますように、農地につきましては、来年の作付に間に合うように、また河川、海岸等におきましては、台風襲来前に一応の形が整うような工事が進むように、一応工夫を、いたしたつもりであります。もちろん本年度の予算だけというわけではございません。あとの通常国会会でさらに御審議を賜わります来年度災害復旧予算におきまして、四、五、六月の三月分ぐらいのものは当然計上しなければならない、その中に入るわけでありますが、それらの工事を合わせてみますと、今申すような復旧目標を達成し得る、そういうような観点に立っておるわけでございまして、ただいま御指摘になりました点でございますが、さような意味から、私どもは今回の予算で十分まかない得る、かような確信はいたしておりますが、今回の災害報告にいたしましても、次々に出て参るものがあったり、あるいは工事、企画等においても、改良部分等もまた出て参りましたりいたしますので、申し上げ得るものは、災害対策であるから、事実を無視するというふうなことはいたしませんということを実は出し上げておるわけでありまして、ただこの際に、予算は、そういう意味でこだわるわけではございませんが、私どもは、第二次補正を出すつもりかと言われれば、ただいまのところでは、その考えはございませんが、ただいま申し上げるように、十分事態に対して、事態が変わって参りますれば、それに対して対処するだけのことは、当然政府の責任として考える、こういう気持でございます。
  320. 鈴木強

    ○鈴木強君 まあ大臣の答弁は、そこいらだと思うのですが、私らの方から、こういう確認をしてよろしゅうございますか。衆議院段階においても、この問題は激しく論争になったのですが、あるいは予算審議に当たって、態度をやはり明確にきめる必要があると思う、われわれとしても。  従って大臣のおっしゃった趣旨は、多小あなたの方からいえば、臨時国会の召集自体も早かったというような感じをお持ちになっていると思うのです。総体的な被害額の査定と、それと今後の長期の考え方を織りまぜて最終的にどうするか、最終的に確定したものを出したかったと思う。ところが、十月二十六日召集されて急いで予算を作ったというということで、未確定部分がたくさんある。ですから、あなた方が確信をもって、災害に対しては、これだけの予算でよろしいのだ、こういうふうな確たる、だれが何といっても大丈夫と、そういうところまでの自信をお持ちになれないと思う。今言われたように、次から次へと――まだ湛水しておるところもありますし、被害がふえてくるわけですから、そういう中でおきめになったものですから、具体的に激甚地の指定をやってみて、今の予算では、なかなかむずかしい、こういうことになってくれば、当然補正措置を次にする、こういうふうに解釈しておいてよろしいですね。
  321. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 少しニュアンスが違います。と申しますのは、私どもは、今回御審議をいただいておる予算には、十二分の自信は持っております。自信を持っておる今日でございますが、しかし新しいものが出たという場合に、それを無視するようなこだわった考え方はしておらない、こういうことでございますから、少しニュアンスが違うかと思いますが、御了承いただきたいと思います。
  322. 鈴木強

    ○鈴木強君 そうすると、一応自信をもって作った、しかしまだ十分な被害の額がまとまっておらぬ、これは事実でしょう、そうでしょう。そういうものが一つの要素と、もう一つは、激甚地の指定というものは、あとからきまったものでしょう。だから、それによって数億ふえるというような判断をあなたはしておる。実際に各市町村に当てはめてみなければ幾らになるかはっきりできない。私たちは今それを出してもらって、それで大丈夫だということになれば、私らはそれでいいわけですよ。それをお出しにならないものだから、非常にわれわれは心配するわけです。  だから、実際にやってみて足りなくなったときには補正を組まなければならぬ、そういうふうに言っておる。ニュアンスは、そういう意味でしょう。
  323. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま、未定の部分がございますし、推計の部分があることは、これは、私が御指摘するまでもなく、その点は、意見が一致いたしていると思います。  しかしながら、それが非常な大きい部分であるかどうか、そこに、一つの食い違いがあるだろうと思います。御想像なさるように推定部分が非常に多い、だから、お前の方はだめじゃないか、こういうようなお気持があるかと思いますが、私どもは、その推定部分は比較的小部分だ、かように考えますので、そういう意味から申しまして、十分の自信を持っておるということを申し上げるわけであります。しかしその事態が変って参りました場合に、私ども善処するのは当然でございます。
  324. 鈴木強

    ○鈴木強君 時間がなくなりまして……。  ここで私は、岸総理にお尋ねをしたいわけでありますが、今度の台風のよって来たる被害の原因についても、当初申し上げましたように、かなり人為的に防げる道がたくさんあった。その点が欠けておった、従って今後、そういうことのないように、あなたは全責任をもって対策を立ててもらいたいと私は思うのです。それには、まず治山治水に対する根本的な対策を考えていただきたい。それと同時に、さっき問題になりました事前の予防対策としての気象観測行政の完璧な確立をする、それからこの台風警報というものを的確に伝達されるような道を、新聞、ラジオ、テレビ、あらゆる報道を通じて間違いなく早く伝達できるように、そういう考えがあるかどうか。  それから最後に、そういう人為的な、いろいろな施策をしても、なおかつ受ける被害ですね、これがいわゆる天災ということだと私は思うのであります。そういうようなことが起きたときに、これを救済するような方法をあわせて考えていただきたいと思うのです。これに対して一つ、最近治山治水特別会計を設けろとか、あるいは政府の方では、治水会計だけは設けるとか、こういうようなことを私たち聞くわけですが、そういった御所信も含めて、一つ総理から恒久対策に対して、お答えをいただきたいと思います。
  325. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今回の災害にかんがみまして、また過去、戦後年年繰り返しておる災害も考えてみますると、日本の国土の保全に対して、われわれが総合的な見地から、はっきりした計画を立て、そしてその計画に従って、これが実現できるように予算の裏づけ、また制度、法律等を完備して参らなければならぬということは、私ども、今度の災害に関連して痛感するところであります。  その意味において、かねて国会でも申し上げておりますように、そうした治山治水、あるいは防潮、またはいろいろな関連しての科学的な、あらゆる施設というようなものを総合して、根本的対策を次の通常国会に提案をしたいということを申しておりますが、その際におきましては、あらゆる点から総合的に検討をして対策を立て、またこれが実現に必要な予算の裏づけや制度の完備等につきましても、十分一つ考えて、御審議を願いたい、かように思っております。
  326. 鈴木強

    ○鈴木強君 その治山治水のあれは、治水会計は……。
  327. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今、私がその計画を実施するに必要な予算的措置と申しておりますが、今ここで特別会計作るとか、あるいは会計をどうするとかいうようなことは、具体的に申し上げる段階ではないと思います。  しかしただ、従来におきましても、治山治水についての五ヵ年計画であるとか、十ヵ年計画であるとか、いろいろ政府においても検討をいたし、また計画等も、ある程度研究の結果持っております。しかし必要なことは、それを継続的に、強力に実施するところの予算的裏つけや、あるいは機構、法制、制度等が完備しないというと、計画倒れになるおそれがあると思います。今回の体験にかんがみ、そんなことのないような、あらゆる検討をしない、今日のところにおきまして、具体的にどうするのだといわれると、まだそれを申し上げる段階ではないと思います。
  328. 鈴木強

    ○鈴木強君 国土を守るのには外敵の侵入、よくあなたが言うように外からの攻撃、これもあるかもしれません。しかし、と同時に今現実に起きているこの自然的な、天災的な災害を防ぐということを、私はあわせてやらなければいかぬと思う。皆さんは、われわれからみると憲法違反の自衛隊をやっているのですが、それを作る場合でも、国内の国力に応じた自衛力を拡大するのだと、こうおっしゃっておるのですが、しかし、それにしても、私たちは、先ほど来、いろいろ指摘されておりますように、天災地変に対する恒久的な対策、こういうものが非常に欠けておることが、今日の悲劇を毎年々々見ていることだと私は思いまして、非常に憂えるものであります。通常国会には、具体的な方針をおきめになってお出しになるようでありますから、ぜひ国家行年のために、災害防止対策に対して一つ積極的な、しかも国民が、ほんとうに支持できるような、そういう具体的な対策を立てて出していただきたい、私は、そう思います。これはまあ要望にすぎません。  それから、通産大臣がお見えになったので、池田通産大臣にお尋ねしますが、先般近畿の例のタービーの六八百長事件がをありまして、その真相が国民に伝わるに及んで、今やああいった社会悪を出すような競輪制度はやめてくれという世論が高くなってきていると思うのですよ。  先般、あなたは、衆議院の委員会で、競輪の開催日を少し減らそうというようなことで、ニュアンスとしては、多少縮小しようという気持を持っておられるようですが、どうも、一万には国民の、そういう世論があり、あなたが、そういう話をするのですが、現実には、これは自治庁のお役人も、そうだと思うのですが、高級官僚連中、それから通産省の連中が、どうもああいった賭博競輪を擁護するような言動を吐いているように私たちは仄聞するんです。これは、あなたの思想から言ってもおかしいと思う。あなたは大体競輪については、どうお考えですか。廃止すべきであると私は思うのですがね、どういう御所信ですか。
  329. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 競輪につきまして、最近とみに、いろいろ議論が起こってきておることも承知いたしております。ことに、昨日の兵庫県知事のあれから、今日の新聞も、いろいろ出ておるのであります。私は、こういう問題につきまして、十分検討を加えて、ことに最近、競輪審議会に諮問いたしまして、根本的に一つ考えてみたいと思っております。
  330. 鈴木強

    ○鈴木強君 いいですか。
  331. 小林英三

    委員長小林英三君) 時間がきましたから……。それじゃもう一問だけ。
  332. 鈴木強

    ○鈴木強君 慎重に検討するということなんですが、それじゃ、ちょっとわからぬのですよ。どういう、あなたは考えをお持ちですかということを私聞いておるのですから、あなたが、こういう考え方をもって慎重に検討していきたい、こういうふうにお答えいただきませんと、さっぱりわれわれ、どうなっているのかわからぬのですよ。あなたが委員会答弁されているように、少なくとも回数を減らして、縮小の方向にいこうという思想をお持ちになっていると思う、もっと進んで、こういうものは廃止した方がいいというようにお考えになっているのかどうか。  これは一つ自治庁長官、あなたも一緒に答弁してくれませんか。
  333. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私は、競輪というものにつきまして、これを助長しようとが、新たに設けようとかいうような気持は持っておりません。しかし、現在の状態で、これをどうしていくかということにつきまして、今私の考えを申し上げることは、少し早いと思っております。
  334. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 競輪につきまして、地方財政との関係がいろいろ問題になっておるのでございますので、私は、競輪というものに、地方財政が大きくおぶさっておるというような形は、なるべくないように指導していきたいと考えております。
  335. 小林英三

    委員長小林英三君) 鈴木君の質疑は終了いたしました。   ―――――――――――――
  336. 小林英三

    委員長小林英三君) ただいま、委員変更がございましたので、御報告をいたします。  森八三一君が辞任いたし、その補欠といたしまして加藤正人君が選任せられました。   ―――――――――――――
  337. 小林英三

    委員長小林英三君) 次の質疑者は青柳秀夫君。
  338. 青柳秀夫

    青柳秀夫君 私は、災害関係についてお尋ねを申し上げます。時間が相当たっておりますので、簡単に申し上げます。  ことしの台風は、非常な災害をもたらしましたが、中でも第十五号、いわゆる伊勢湾台風の被害は、ほんとうに空前でございました。私は、自分が愛知県におりますので、特に痛感をいたしたのでございまするか、あれほどの被害は、おそらく日本ができてから初めてじゃないか、かように考えておるのでございます。政府におかれましては、直ちに名古屋に災害の対策本部を設置されまして、益谷総理が本部長、石原自治庁長官がその代理として非常に御活躍を願いましたことは、まことに適切な措置でございました。また、岸総理初め閣僚が、それぞれ実地に視察をいただいたのでございますが、中でも、総理は、当時現地においでになりまして、そうしてあの大災害をながめられまして、多数の犠牲者に対しましては、哀悼の意を表せられるとともに、非常に不安でありましたあの当時の一般の災害者に対して、皆さん安心をしてください、政府としては十三号台風以上の手厚い措置を講じての万全を尽くすから、災いを転じて福となすという気持で奮闘してくださいと、かような激励の言葉がございました。  私は、ここでお尋ねをいたしたいのは、今度の災害の根本と申しますか、その中心である岸総理のそのお気持、御信念というものが、あの当日時のお言葉と現在と変わっておらんかとうか、その点でございます。これは日がたてば、いろいろのことがゆるむというか、変わる場合があるのでございますが、私がかようなことを申し上げますのは、実は、今度の災害の一番の中心でございましたのは、いわゆる激甚地の指定ということでございます。これは、結果的には、東海三県も全部激甚地に指定になりました。しかし、その過程におきましては、あるいは愛知県、岐阜県というようなものが、それからはずれるのじゃないか。これは新聞記事その他の風説といえば風説でございましょう。しかし、一般の県民というようなものは、新聞によりまして、非常な不安をいだいたのでございます。私は、これは経過をそのまま申し上げておるわけでございまするけれども、できるだけこういう問題につきましては、人心を安定させて、そうして復興対策を進めることが、政府としてなすべきことである。総理が、しっかりした信念をお持ちになっておれば、ああいうことが都内からは出なかったのじゃないか、かように思いまして、はなはだ失礼かもしれませんけれども、まず初めに総理の今回の災害に対するお考えをお述べを願いたいのでございます。
  339. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 今回の伊勢湾台風につきましては、さきほど来質疑応答においてもお答えを申し上げましたように、政府としては、できるだけ緊急にこれに対応すべき措置を講じて参りまして、さらに、臨時国会を開いて、そうして補正予算並びに特別措置に関する御審議を願っておるわけであります。今度の災害が、いろいろな意味において従来の災害と異なった特色を持っており、また、そういう意味において、深度の深い災害を多数の人々に与えておるという実情にかんがみまして、これが復旧救済並びに将来に対する対策につきましては、政府として十分な措置を講じて、そうして被害地の人々の人心を安定し、またさらに復興のために立ち上がられるようにしなければならぬことは言うを待ちません。  そういう意味におきまして、私が当時、現地を視察いたしまして感じ、またこの災害に対して政府として責任を持って対処して、今申しましたような目的を十分に達成するような措置を講じなければならぬと考えまして、補正予算を組み、特別措置を作り、国会の御審議を願っておる。もちろんその最後の条が決定いたします途上におきまして、御承知の通り今回の災害は、従来のおいて例を見ないような、現地において、なお冠水の広範囲のものがあるというような、いろいろな事情から、調査等におきましても、十分に実情を把握しかねた点もあるのであります。そういうために、あるいはそれぞれの地方におきまして、いろいろな人心の不安を起こすようなことが伝えられたり、あるいは想像されたりしたようなことがあったことも、これも事実でございましょう。私はその点におきましては、まことにやむを得なかったとは言え、遺憾でございますけれども、結論として、われわれが御提案申し上げている各種の補正予算及び措置につきましては、私どもは、先ほど来申し上げたような考えのもとに御提案申し上げているのでありますから、十分御了承の上、御審議を願いたいと思います。
  340. 青柳秀夫

    青柳秀夫君 総理のお気持は、よくわかりました。くどいようでございますけれども、私は当時の災害と、この前の十三号のときと比べますと、十三号のときも、ずいぶんひどかったのでございますが、当時の死者は百十一名、今回における死者は東海三県でございますけれども四千七十一名――非常な災害でございました。もうこういうことは、あまりくどく申し上げることは控えます。しかし実際、全く空前の状況でございますので、あれが世界的にも各地に大きなニュースとなって行き、同情のある金品も海外からきているという際に、一番ひどいあの地方が、かりに抜けたらどうなるかということを心配して申し上げたわけであります。  そこで、お尋ねを申し上げたいのは、今総理のお言葉にも、現に、まだ水につかっている所があるというお話でございますが、これは実際なんでございまして、私、ここに立っておりましても、今、津島方面の浸水している人のことが胸の中にあるのでございます。  そこで、一言お尋ねいたすのでございますが、もう五十三日目でございます。九月二十六日から今まで水の中につかり通し、こういう津島地方の人の気持になりますと、何としても一日も早く、一時間も早く、水が引いていくようにしてもらいたいということを念願しているのでございます。この点につきましては村上建設大臣も、さっそくおいでになりまして非常な御活躍を願い、また自衛隊等も出動されまして、ほんとうに何といいますか、涙ぐましいお働きがあった、それによりまして、水も仮締め切りができまして相当引きました。しかし、私がお尋ねするのは、今残っております所は、一体いつになったら、ほんとうに仮締め切りができて、水が引くのか、私、地元の人の立場に立って、一つお聞きをするわけでございまして、はっきりお答えを願いたいのでございます。
  341. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) お答えいたします。  私どもは、御指摘のように一口でも、あるいは一時間でも早くということを、あの災害当時から念願いたしまして、政府といたしましては、ほんとうに総力をあげて締め切り排水にかかった次第であります。しかし、決して弁解するわけではないのですが、あの広い範囲、しかも、まことに私どもとしては、初めて見るようなひどい被害の個所の状態でありましたので、私が、当時申しました、四十五日ないし五十日には締め切りを完了するということを、一日の日ですか申しましたが、大体、その私の申しましたのは、現地を調査しないで、何か目標を与えなければ、あの方々がどういう気持でいるかわからないので、何らかの目標を与えようというので、徹夜して、徹宵して大体の予定を立てましたのが四十五日ないし五十日というのでありましたが、大体、それに向って自衛隊その他の手も借りまして、集中攻撃をいたしました結果、今日、相当その予定した日に近く排水あるいは締め切りが完了しつつあるのであります。ただいまも残っております部分といたしましては、海部北部地区は、御承知のように本月十日に締め切り完了いたしまして、二十三日には、排水が全部完了するということになっております。従いまして津島市方面は、もう非常に水が引いて参りまして、もうここ一日二日で路面を見るということになろうと思います。それから最も災害のひどかった海部南部でありますが、これは十一月末までに締め切りを完了するということを、たびたび報告いたしましたが、各地の攻撃を終わったその部隊が、ここへ引き揚げて参りまして、集中的に作業を行なっておりますので、私の予定したものよりも四、五日ぐらは早くなるだろう、かように思っております。それから木曾岬におきましては、九日に締め切りが完了いたしましたので、十八日には、排水が完了の予定であります。長島北部は、もう八日に排水が完了しましたが、これはテレビ等によって御了承のことと思いますが、私は、この十一月末日ということを一応予定いたしたのでありましたが、その後、非常な勢いをもって復旧に努めましたので、大体、十六日には締め切りが完了する予定にいたしておったのであります。ところが、破堤部分を縮小していきますと、非常な洪水のようなことで、どうしても、二、三日あるいは二日ぐらいはおくれるのではないかということが、けさ連絡があったのでありますが、これも、たとえ二日ぐらいおくれましても、二十五、六日までには排水が完了するものと思っております。桑名地区におきましては、大体、締め切りその他一切、十二日に完了いたした次第であります。
  342. 青柳秀夫

    青柳秀夫君 一日も早く、排水が完了することを特にお願いを申し上げます。  そこで、私がお伺いいたしたいのは、今回の災害の中心と申しますか、起こりましたのは、要するにあの海岸堤防が破壊したからでございます。また、その途中の河川からの浸水があった、かようなわけございまして、この予算に出ております伊勢湾の高潮対策事業費という、今度予算に御計上になっておりますこの堤防がりっぱに完成すれば、今後は、ああいう心配がなくなるというので、いろいろ重要な事項がございますが、これはあの伊勢湾台風についてはこの項目は一番の生命線でございまするので、その点について要点だけをお伺いしたいのでございます。  なお、時間もございませんので、私の希望もまぜて申し上げますが、私としてはやはり今回は一つ一本にこれを作っていただきたい。従来、建設省、農林省、運輸省あるいは県とか市とか、いろいろな工事をやられまして、規格もまちまちであり、そういう欠陥から、高潮、台風のときにああいう災害が起こったのでございまして、前の十三号のときも相当りっぱなのができまして、これは役に立ちました。しかしあの工事が終わっておらない個所とか、あるいは今申し上げましたような各省の仕事が別々のために災害を受け、浸水した地域があるのでございまして、今回はぜひそういうことのないように、思い切って一つこの堤防をりっぱに――りっぱと申しますか、そういう災害を防げるようにしていたたきたい。かような意味において政府当局、大臣のお考えを伺いたいのでございます。
  343. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 伊勢湾につきましては、特に予算の編成におきましても、別に伊勢湾だけを取り上げて予算編成いたした次第でありまして、われわれもこの伊勢湾の重要性にかんがみまして、この海岸堤防が来年の台風季までには原形の高さまで上げることができるような予算措置をいたしております。そうして先ほども申しましたが、堤防の高さ、あるいは構造、強度等につきましては、これは十分建設、農林、運輸、この三省におきまして、高潮対策審議会というようなものを設けて、ここでもうすでに幹事会が毎日のように検討いたしております。これに加うるに民間の学識経験者等にも相諮りまして、科学的にこれを検討いたしまして、今後再びかようなことのないように進めたい、かように思っております。予算におきましては、事業費といたしましては、大体地元の方の関係から申しましても、七十九億ぐらいの予算規模になっておりますので、これを来年度の予算の決定まで、私どもが十分この事業を続けましても、決して金に不足を来たすというようなことはないということを私確信いたしております。
  344. 青柳秀夫

    青柳秀夫君 その点について一言申し上げたいのでありますが、この予算の説明にもございますが、これは原形復旧ではなしに改良復旧というので、工事の施工についてはさらに追加してもいいというような意味のことがここに書かれてございますが、私は、せっかくお作りになるならば、一つ思い切っていいものを作っていただく、それで厚みがふえますと、それだけ耐久力も強いわけでございまするので、できれば一つあれを道路になるようにできないものか、そうしますと、今度の災害でも、道路が低いために全部罹災者も困りまして、またその後の交通もできなかったのでございますけれども、堤防の上を自動車が通れれば、これはもう役に立つわけでございます。そういう意味におきまして、幅が広くなりますけれども、何とかして自動車が通れるようにしていたたけないか。これはせっかく三省の連絡会議、あるいは民間の方も入るというようなお考えでございまするので、ぜひ一つあの地帯から名古屋の方にわたっての堤防はそうしていただきたい。これは運輸大臣もおいでになっているけれども、名古屋港の惨害は非常なものでございまして、あの辺の、また中の運河といいますか、あの付近の道も非常に低いのでございます。ですから、あれに対する堤防が高くなれば、そこが道路として使用できるという、一挙両得ということにもなりますので、どうか一つその点についてのお考えを一言お漏らしを願いたいのであります。
  345. 村上勇

    国務大臣(村上勇君) 堤防を道路に活用するということは、これはもう例のないことではありませんし、十分検討する必要があろうと思っております。ただ、勾配の関係とか、あるいはまた曲線の、カーブの関係ということも考えられる。またその堤防を何トンという、十トン以上あるような貨物自動車等が通って、その堤防に影響を及ぼすか及ぼさないかというような点も考慮に入れまして、十分検討してみたいと思っております。御指摘の点はよくわかりましたが、これはただ、今そういたしますということは申し上げられませんけれども、十分検討した上で適当に考えてみたいと思っております。
  346. 楢橋渡

    国務大臣(楢橋渡君) 青柳委員がさいぜん申されました伊勢湾の防潮堤等につきまして、農林、建設、運輸等の一元化をもって総合的にこれをやるような処置をとったらどうかというお話がありましたが、建設大臣もお答え申し上げましたように、これは各省それぞれの持ち味といいますか、たとえば建設省は河川関係をおもにやっておりますが、御承知のように農林省は干拓地をやっている、私の方は港湾をやっている。港湾の関係は、波に対する、つまり土木といいますか、そういう工事に対する専門的な立場等もありますので、やはり一画の、たとえば干拓地がくずれれば、たちまちにして浸水してしまう。あるいは河川も同じでありますから、どうしてもやはり農林及び建設、港湾の私の方と、ほんとうに緊密に連絡をとって、すべてがやはり不統一のないように補強しなければ、私は危険だと実は思うのでありまして、それに対して、今回のこういう事態を顧みまして、その辺に深く思いをいたして、総合的な対策を今緊密に立てておるような次第でございます。  なお、防潮堤につきまして、今御指摘になりました道路等の問題も含めて、今研究をいたしておるような次第でございます。一方、約九キロの波を防ぐ防潮堤を湾の入口に築いて、波のエルギーを減殺しようというような計画もしておるような次第でございます。
  347. 青柳秀夫

    青柳秀夫君 次に、激甚地の指定についてお伺いしたいのでございますが、これは先ほど鈴木委員が大蔵大臣に質問されましたのとやや似た趣旨でございますが、実は、率直に申し上げますと、今回の災害と見合って予算が組まれてきた。そのために激甚地の指定の基準というものが、予算の金額のきまった後に、あとからきまったようになっておりますので、ほんとうの建前から言えば、激甚地の指定基準ができまして、その上で予算をお組みになるのがほんとうだと思っております。それが逆になっておりますので、そこで、激甚地指定の区域が広がったといいますか、初めより多くなっておりますと、この予算の方が逆に少ないのじゃないか。先ほど大蔵大臣も、その予算は、それに拘束されぬで、指定の方をその通りやるから心配要らぬというお言葉でございましたが、私どもとしては、大臣はそうおっしゃっても、やはり予算というものが一定の金額できめられてしまいますと、どうしても、いわゆる査定のときに圧縮されまして、せっかくの激甚地指定になったけれども、予算が少ししかないからだめになるという心配がございますので、その点についてのお考えをいま一度お漏らしを願いたいのでございます。
  348. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど鈴木委員のお尋ねに対しましてもお答えいたしたのでございますが、今回の予算は、ひとり激甚地の基準がきまらないばかりでございません。総額そのものにつきましても、すでに御承知のように未査定分、調査を終了しておらない分、そういう際に予算を組んだのでございまして、ただそういう総体の額につきましても未査定分がある。さらにまた当初予定いたしましたのが大体六割程度の事業分を考えておりましたが、今回さらにそれが公共土木についてその一割程度で六七%前後、また農地において七一%前後ということになりますと、ややふくらんで参ります。しかし今回の予算、この災害予算は、基本的に申しまして、現実に生じております災害に対する対策でございます。この災害の方が先行いたすのでございまして、私ども査定においてこれを手かげんしようといたしましても手かげんしようかないのであります。この点では私どもも、一般の予算編成の場合とは全然考え方を変えまして今回補正予算を提案いたしておるのでございますから、どうかその点御心配のないようにお願いいたしたいと思います。
  349. 青柳秀夫

    青柳秀夫君 その点は大蔵大臣のお言葉を信用いたしまして、実際の査定についてできるだけ一つ実地に即するようにしていただきたいと思います。  次に、自治庁長官にお尋ねしたいのでございますが、これは、今度の災害で自治体が相当な財政的に苦しい立場に立って参りました。例を申し上げますと、名古屋市のような、これは相当財政的には恵まれた大都市でございますが、それでも災害救助関係におけるいわゆる法律の対象外の費用というようなものがいろいろ出まして、そういうものを合わせますると十七億以上にもなっておる。これはこういうところでこまかいことは申し上げませんけれども、たとえば学童がたくさん被害をこうむりまして、学用品を配る場合に、全壊あるいは流失のもの、こういうものについては全額支給、ところが床上浸水とか、そういうものについては半額ということになっておりましても、実際市が配る場合に、片っ方からお金を取るということもできないというので、やはり実際においては全部配っている、こんな例がございます。あるいは相当人が死にましたので、埋葬費の基準は四千三百円となっておりましても、実際はその倍ぐらいかかっているというような持ち出しがございまして、そういうものをいろいろ集めますると、現在までに十七億以上もかかっている。こういうわけでございまして、こういう災害に伴うやむを得ざる費用を一つ、先ほど長官のお言葉にございましたが、特別交付税の方でお考えを願いたいということが一つでございます。  それからいま一つは、逆に入ってくる方は減っているのでございまして、租税その他の減収あるいは手数料その他の減収が十二億円ぐらいになっているようでございますが、こういうものに対しては歳入欠陥を埋めるための起債という点についてもお考えを願いたい。これは各被害町村が多いのでございますが、その点についてはっきり一つ考えを伺っておきたいのであります。
  350. 石原幹市郎

    国務大臣石原幹市郎君) 特別交付税の配付にあたりましては、一応の基準があるのでありまして、災害査定総ワクの何%とか、いろいろあるのでございますが、私は今回のいろいろ災害の状況にかんがみまして、今いろいろお話しになりましたように、表面に現われないようなものもやはり相当あると思いまするので、地方の事情も十分御報告を願いまして、実態に即した交付税の配付をしたい。私も、貴重な交付税でありまするので、みずからやはり目を通し、筆を入れてでも配付したいと、こういう考えでおります。  それから歳入の減少につきましては、一応特別交付税などでまかない切れないので、さらに歳入欠陥がある。税の減免であるとか、あるいはその他の必要によって減収、歳入欠陥を生じたというものについては、今回の特例法で歳入欠陥債というのを認めております。財政法の規定にかかわらず欠陥債を認めている、こういう措置をとりまして、その償還についても将来ある程度のめんどうを見ていくと、こういうことで対処しております。
  351. 青柳秀夫

    青柳秀夫君 池田通産大臣がおいでになりますので、中小企業関係についてお伺いをいたしますが、大体におきまして、この中小企業の関係の災害における措置というものが、農林関係より非常に低くなっております。それは従来のいろいろな事情によるのでございまするが、今回はいわゆる中部の経済圏といいますか、非常に中小企業の盛んなところが打撃を受けましたので、その被害額なんかは非常に多いのでございます。こういう中には農林関係の施設と比べますると不合理の点があるわけでございまして、例を申し上げますと、水産物の加工場のようなものも、漁業組合がやっている場合は、それに対しては相当な災害復旧の補助がある。貯木場なんかについても森林業者のものには補助があるけれども、こういうものが木材業者であるという場合には何もない。水産加工の方もやはり業者の場合はないというふうに、隣り合って施設があって、両方倒れても、片っ方は手厚い、片っ方は薄いというような状況がございます。この点につきましては、中小企業もほんとう日本においては大事な仕事でございますし、方が弱いのでございますから、一つ何とか方法を講じていただきたい。中でも金融の問題が出て参りますが、これはもう他の委員会等においても伺ったんでございますが、どうかこの金融の点をできるだけ早く簡単にやっていただきたい。どうもこの金融機関というものは、信用のある大きなところには早くやるでしょうけれども、こういう場合において、どうしても弱いわけでございますから、国民金融公庫にいたしましても、これはまあ割合評判がいいのでありますが、中小企業金融公庫というようなものになると少しむずかしくなって参ります。それから、その他の金融機関になると、一般の市中銀行というのはなおむずかしいわけでございます。しかし、私は一つの例で申し上げますと、先ほど水につかっておるという津島市のことを申し上げましたけれども、これはもう大臣も御承知のように、日本における毛織の一宮とともに二大産地でございまして、輸出品等非常に作っておる。これが全部水浸し、四千幾台の機業の機械が全部潮水につかって、一つももうおそらく役に立たぬでしょう。全く全滅しておる。こういう人を、一体どういうふうにしたらいいかという点についても、なかなか私はむずかしい問題でございまして、何かいい方法があれば、こういう人に新しく機械を買う資金々融通していただきたい、かように思って、それらについてのお考えをいただきたいのでございます。  なお、いま一つは、あの辺が、台風を受けた地帯がいわゆる伊勢湾の臨海工業地帯でございまするので、これは将来の計画になりますけれども、この台風を機会に、政府において臨海工業地帯として育成できるように御指導を願うといいますか、そういうふうにしていただきたいという、この二点についての一つお答え願いたいのでございます。
  352. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。農林等原始産業と中小企業等の予算を出す場合においての違い、これはお話しの通りに、やはりその産業自体からくる点もございます。また沿革的のところもあるのでございます。私は、今回の災害にかんがみまして、御審議願っておりますように、できるだけの金融措置を講ずるよう措置いたしたのございます。ただいままでの貸付状況は、最近非常に順調に参りまして、十一月五日で二十八億ばかり出ておりました。五日ごとにとっておるのでございますが、相当順調に、中小企業金融公庫、国民金融公庫あるいは商工中金、こういうふうにどんどん出ていっております。信用保証協会の活動も相当効果があるのではないかと思っておるのでございます。  今回の災害にかんがみまして、中小企業の共同施設の災害が相当ございます。私は、御承知の中小企業振興資金助成法、これによりましての、いわゆる無利子の貸付をやっていきたい。同時に商工中金から三百万円以内におきましての低利の貸付を勧奨しておるのであります。今後、中小企業全体の傷害、その他の施策につきましては、十分御期待に沿うよう努力していきたいと思います。  津島の問題は、私は情報を取っただけでございますが、調査してみますと、大体三百工場ぐらい被害を受け、その三百工場における織機が三千五百台という調査でございます。全然使われないのが千台ないし千五百台という報告を受けております。十三、四億円の災害、これは私は、千台ないし千五百台につきましては、早急にこれを補給しなければなりませんので、織機メーカーと話をいたしまして、水が引きましてから優先的に出すようにいたしております。また、金融につきましても、大メーカーの方は市中銀行の方で、中どころは中小金融公庫が主としてやり、零細な方面につきましては、やはり組合を早急に作ってもらいまして、またこの際は組合ができなくても、できるという見通しがついたなら、商工中金から融資をするように通産局長に指示しておるのであります。  原始産業の問題は、私は四日市の富田というところに、いろいろな魚族の加工業者、これは組合を作っておりませんから、通産局長に早く組合を作るようにしむけて、商工中金から出せるように指示しておったのであります。  臨海工業地帯の問題でございますが、今回の災害におきまして、私は今後建設あるいは運輸等十分お考えを願いまして、たとえば今お話しになりました防潮堤をこしらえることも必要でございましょう。また臨海地の工場はできるだけ建築物を高目にする。またその付近の労務者の住宅なんかにつきましても、今度の経験から考えて相当考慮しなければならない。また、至るところ地盤沈下の問題もございます。これはその原因はいろいろございますが、工業用水を地下水によるなどということも相当の原因がございますので、こういう点を十分検討して、私は工場の安全を保つことをはかっていくということを考えなければならぬと思っております。
  353. 青柳秀夫

    青柳秀夫君 私は、今回の災害がまことに甚大でございまして、いろいろ政府にお尋ねしたい点もあるのでございますけれども、もう相当時間もたっておりますし、各項目につきましては、別の委員会等でも質疑が行なわれておりまするので省略いたします。しかし、私が特に最後に申し上げたいのは、愛知県だけを見ましても、その被害額が、県の調査によると三千百二十九億、そのうち公共事業の方は五百八十億でございまして、民間の被害が二千五百四十九億というふうになっております。これは私どもがここで建設大臣あるいは農林大臣なり通産大臣なり、自治庁長官なりにお願いしておるのは、多くは公共関係の問題について多いのでございますけれども、しかし実際の被害というものは、ここにある二千五百四十九億というふうになっておりまして、まあ村でいえばその村全体の力がほとんどなくなってきておるわけであります。これは水につきましても、二日や三日水についたのならともかくでありますが、一週間なり十日、ことに今のようにもう五十日、六十日も塩水についておりますと、村の人も妙なふうになりまして、もう経済力もなくなりますし、気力もなくなりまして、ほんとうに村自体が精神衰弱というか、全身衰弱になっておるのでございまして、そういうところに向って、健康な村、力のある村と同じように、公共の関係がこれだけの被害だからやれるのだろうと思っても、それはやれないのです。まあこれは別の例でございますけれども、いろいろな寄付を集めたって、もうそういうところでは寄付なんて集まりっこないのであります。そういう意味におきまして、私は最後にお願い申し上げたいのは、今後いろいろの点において政府からお知らせあると思うのです。激甚地その他についての工事の査定等がございますけれども、こういう場合でも、その村自体、全体の切り方というものを見て、そこが全部壊滅して、全部家が水につかったといえば、もう普通の個人々々それだけで手一ぱいですよ。なかなか私は大へんだと思っております。どうか政府当局におかれましては、むしろこの災害民の立場にお立ちになりまして、そういう人に同情し、激励するという意味において一つ査定をして、りっぱな予算なり工事をやっていただきたいのでございます。  私はもちろん、国の予算というものが、これは税金といいますか、貴重な金でございますから、むだなところにむやみに出していただきたいということをお願いはしておりません。しかし、何といいましても、今度の災害は全く空前でございまして、何とか特別の措置を法的にも、また法的でなければ、別の意味においてでも何とか工夫をしてやっていただきたい。これは政府全体としてお考えを願いまして、一日も早く立ち直って、日本の発展に尽し得るようにしていただきたいのでございます。どうか一つ各省の事務当局にも強くその点を御指示になりまして、先ほど総理がおっしゃいました気持、また各大臣がおっしゃっておるような、そういうあたたかい気持をもってこの災害の処理に当たっていただきたいということをお願いいたしまして、私の質問を終わることにいたします。(拍手)
  354. 小林英三

    委員長小林英三君) 青柳君の質疑は終了いたしました。明日は午前十時より開会いたします。本日は、これにて散会いたします。    午後五時五十九分散会