○
参考人(
太田利三郎君)
昭和三十二
年度における
業務の
概要につきまして、大体補足
説明を申し上げます。
三十二
年度の初めには、
政府の経済政策はかなり積極性を帯びたものでございます。すなわち、財政面では千億減税千億施策を打ち出しまして、経済面でも電力、鉄鋼、輸送力等の隘路を解決するためにこれらの部門の増強をはかり、
産業基盤の強化を目的とすることが経済の柱でございます。しかしながら、三十二年二月以降の国際収支は急速に悪化を示しまして、一方設備
投資及び在庫
投資は依然として衰えを見せませんでしたために、三十二年三月及び五月に、
日本銀行は再度にわたる公定歩合の引き上げを行ない、次いで六月には、
政府におきましても、国際収支改善対策を決定しまして、特に設備
投資の抑制に乗り出しましたので、わが国の経済政策は一変して、強固な
引き締め政策に移行することとなったのでございます。
引き締め政策の効果は比較的短時日に現われまして、国際収支は十月には黒字に転ずるようになり、経済の基調にも次第にデフレ的な現象が生じて参りましたので、第四
四半期に至りまして、
引き締め政策も漸次その運用に若干の
弾力性が加味されるに至りました。
以上の経済情勢を背景といたしまして、本行の貸付規模は当初六百億円でございましたが、三十二年六月閣議決定しました「国際収支改善緊急対策」の一環としまして、
財政投融資計画は、総額にして一割五分をメドとして繰り延べを行なうこととし、本行に対しましても、その貸付規模の一割に当たる六十億円の貸し付け繰り延べが要請せられまして、貸付規模は五百四十億円となったのであります。従いまして、本行の運用
計画も、継続工事等を中心とする、きわめて慎重な運営に移行せざるを得なかったのでございます。しかしながら、
年度の後半に至りまして、電力、石炭等の重要部門においても
資金の確保が困難となりましたので、
財政投融資繰り延べ復活措置の一環として、電力、石炭等に対する
資金手当てを中心としまして、三十七億円を復活することとなりました。さらに電力には新たに五十億円の追加
融資が認められました結果、運用規模は六百二十七億円となったのでございます。その内訳は、電力生百億円、海運百九十二億円、その他百三十円億円でございます。
本行の三十二
年度貸付運営の特徴をあげますると、第一に、重要
産業に対する
融資が依然として集中化、
重点化の傾向を見せましたこと。第二に、石油化学に対する貸付と合成ゴムに対する出資が行なわれまして、化学工業に対する
資金の供給が合成化学を中心として行なわれましたこと。第三に、三十一
年度から着手しておりました特定
機械工業に対する貸付が本格的に行なわれまして、電子工業に対する貸付も取り上げられましたことなどでございます。
三十二
年度における既件
貸付金の
回収は、
開発資金――これは
開発銀行になりましてからの
資金貸付でございますが、これが百十九億八千二百万円、見返り承継債権が七十八億一千三百万円、復金承継債権五十億九千七百万円、
合計二百四十八億九千二百万円のほかに、外貨
資金貸付
回収六億九千九百万円を含めまして、
検査報告の
通り、総計二百五十五億九千百余万円に上ったのでございます。
次に、
決算の
概要につきまして申し述べますと、今
年度は百七十八億七千九百万円余の純益金を計上し、法令の定めるところによりまして、この
利益金の二〇%を法定準備金として積み立て、残額百四十三億三百余万円を国庫に納付いたしたのでございます。
また、
年度末における貸付残高は、各
資金合計で四千四百七十二億二千五百余万円となりまして、このうち五十七億一千五百余万円が約定の償還
条件に対し延帯となっておりまして、この延滞は、むろんそのまま
回収不能というものはございませんで、現にその後も
回収せられ、三十四年九月末日現在では、総貸付残高五千三百七十八億円余に対しまして、延滞額は五十億円余というように減少いたしておる次第でございます。
次に、御参考までにその後の
業務を簡単に申し述べます。三十三
年度におきましては、貸付規模は、総額六百二十億円とし、その内訳は、電力二百五十億円、海運百八十億円、一般
産業百九十億円と予定されたのでありますが、その後
計画造船実施上の必要から、海運向けといたしまして十億円を追加せられ、貸付規模は結局六百三十億円となった次第でございます。
最後に、本三十四
年度の貸付規模を申し上げますと、電力二百五十億円、海運百八十億円、一般
産業二百五十億円、
合計六百八十億円と予定されております。
以上簡単でございますが、本行
業務の
概要を申し述べた次第でございます。