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1959-12-22 第33回国会 参議院 外務委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年十二月二十二日(火曜日)    午後八時三分開会   —————————————   委員異動 本日委員木村禧八郎君及び石田次男君 辞任につき、その補欠として佐多忠隆 君及び辻武寿君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     草葉 隆圓君    理事            井上 清一君            剱木 亨弘君            苫米地英俊君            吉田 法晴君    委員            青柳 秀夫君            梶原 茂嘉君            後藤 義隆君            笹森 順造君            杉原 荒太君            永野  護君            野村吉三郎君            加藤シヅエ君            小林 孝平君            佐多 忠隆君            森 元治郎君            大和 与一君            辻  武壽君            曾祢  益君            佐藤 尚武君   国務大臣    外 務 大 臣 藤山愛一郎君   政府委員    外務省アジア局    長       伊関佑二郎君    外務省アジア局    賠償部長    小田部謙一君    外務省条約局長 高橋 通敏君   事務局側    常任委員会専門    員       渡部 信雄君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○日本国ヴィエトナム共和国との間  の賠償協定締結について承認を求  めるの件(内閣提出衆議院送付) ○日本国ヴィエトナム共和国との間  の借款に関する協定締結について  承認を求めるの件(内閣提出、衆議  院送付)   —————————————
  2. 井上清一

    理事井上清一君) ただいまより外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について報告いたします。本日、木村禧八郎君及び石田次男君が委員を辞任され、その補欠として佐多忠隆君及び辻武寿君が選任されました。   —————————————
  3. 井上清一

    理事井上清一君) 吉田法晴君外五名から、外務委員長草葉隆圓不信任動議提出されましたので、委託を受けました理事の私が、委員長職務を代行いたします。  外務委員長草葉隆圓不信任動議議題といたします。  提案者から、動議趣旨説明を求めます。
  4. 吉田法晴

    吉田法晴君 私は日本社会党を代表して、外務委員長草葉隆圓君の不信任動議趣旨説明をしなければならぬのを大へん遺憾に存じます。  前外務委員長鹿島守之助君がベトナム賠償問題を審議しようとする直前、草葉隆圓君に交代をせられました際にも、本委員会あるいは議運等についてもいろいろ問題になりました。私ども鹿島君が本ベトナム賠償の問題に直接関係をし、ベトナム賠償の内容をなしますダニム・ダムの工事の請負者の一人となっておられることが、委員長更送の一つ理由ではないかと想像をいたしました。もう一つは、温厚な鹿島守之助君にかえるに、議運委員長として議事運営になれ、あるいは強行突破をするのにふさわしい委員長として自民党において更迭をされたのではないか、こういう点から警戒をし、あるいは問題にいたしたのでありますが、この更迭の際に抱きました疑問が、その後委員会審議を通して実際に現われて参ったということを参議院のために、あるいは参議院外務委員会のためにきわめて遺憾とするものであります。  衆議院においてこのベトナム賠償問題が審議せられますや、審議をすればするほど疑問と疑いとがだんだん大きくなり、あるいは拡大して参りました。損害が軽微であるにかかわらず、国民の血税二百億を余る金でもって賠償しようというこのベトナム賠償不当性がますます明らかになって参りました。戦争損害については何一つ資料を出すことができない、こういう事態も明らかとなって参りました。あるいは鶏三羽という南ベトナム賠償損害の軽微さというものも、審議すればするほど明らかになって参りました。あるいは損害軽微な南ベトナム賠償を払っても、その効果は北に及ばぬという点も明らかになって参りました。かいらい政権であったバオダイ政権の代表として、トラン・バン・フー氏が平和条約の調印をする権限がなかったということも明らかになり、あるいは日本フランスとに対してその独立を実現し、フォンテンブロー協定やあるいはジュネーブ協定等によって国としてベトナム民主共和国が認められ、賠償請求権を持っておるならば、国として認められたベトナム民主共和国にこそ賠償請求権があるという点も明らかになった。あるいは南ベトナム政府は、ジュネーブ協定によって統一選挙までの臨時地域的な管理政府であるという点が明らかになり、あるいは統一を促進すべき南北統一を妨げ、バンドン精神に違反し、そして賠償が、軍事援助の実際であるこの賠償実体からして南北統一を妨げ、あるいはジュネーブ協定に違反するものであるということが、この賠償実体であるという点も明らかになって参りました。こうした審議をすればするほど疑問が生じ、疑問が拡大し、あるいは国民の疑或が拡大せられたさなかに、質問を残しながら強引な打ち切りが行なわれ、参議院に回付せられたわけでありますが、私ども国民の輿望にこたえて、参議院こそその良識を発揮して十分な審議をすべきである、こう考えて委員会に臨んで参ったのであります。委員会委員長も、あるいは理事諸君も、委員も、あげて参議院がこの疑惑に満ちておるベトナム賠償問題について十分な審議を尽すべきだ、こういうことで参ったことは私がここで繰り返すまでもございません。しかも、二十七日まで会期を延ばすかどうかという関頭に立っては、外務委員長は、草葉委員長外務委員会の実情は大幅に会期を延長する必要がある、こう主張したにかかわらず、その後の運営は全くこうした参議院の使命を達成するための慎重審議を一方的に進め、あるいは審議を途中で打ち切るというような与党的な、疑問を押し殺し、あるいは審議権を発揮させないような運営に終始されて参りました。  この委員会審議を通じて、戦争損害についても明白でない。あるいは戦争開始日についても同僚森委員から、あるいは工業所有権に関する関連をしてではありますけれども戦争開始の時期は一九四一年十二月八日だという戦争開始の時期が政府の公示として行なわれたという指摘もございました。戦争開始期について政府の主張が何ら根拠のないという点が明らかになり、あるいは沈船協定関連をして三百三十五万ドルの特別円支払い賠償が実質的に片づいたという当時の協定精神政府説明にかかわらず特別円支払いを不当にフランス側に支払ったために、ベトナム側の抗議にあい、賠償が不当にふくらんで参ったという経緯等も順次明らかになろうといたしました。特に特別円問題については二重支払い、あるいは戦後の決済、八月二十五日で締め切られ、そこで清算なされたという外務省説明にかかわらず、その後戦争中の特別円支払いについてもこれは決済がなされており、二重支払い疑いが十分あるということは、漸次木村委員質問を中心にして明らかになって参りました。あるいはベトナム賠償をめぐって汚職の疑いあり、あるいは不正な不当な支払い、あるいは運営がなされるのではないか。あるいは名は賠償であるけれども、実質的に造船所あるいは軍事工場等を通じて軍事援助がなされているのではないかという疑問がますます大きくなって参りました。こうした審議を続ければ続けるほど疑問が大きくなり、そして国民疑惑が拡大するばかりであり、特に政府愛知官房長官談話を否定した藤山外務大臣答弁愛知官房長官談話との間に矛盾があり、政府統一的見解と称せられるものとの間に大きな食い違いがあると指摘をして参りました途中、岸首相の両岸にわたる、両方を生かそうという強弁と、これを突こうとする私ども質疑のその途中において、突如として質疑打ち切り、あるいは昨日をもって質疑を打ち切ろうとする与党の強引な作戦をそのまま実行しようとする態度が本委員会に現われて参りました。委員諸君の間には残っている疑問をもっと明らかにし、審議会期の延べられた最後まで十分審議を尽くすべきだという意見が支配的であったにもかかわらず、疑問を押し殺し、あるいは拡大する疑惑を明らかにするために審議を続けるべきだという参議院外務委員会の全体の意思を、与党の都合と一方的な運営によって押し殺そうとする露骨な態度が、昨日の外務委員会等を通じて露骨に現われて参りました。われわれは参議院権威のために国民疑惑にこたえ、十分な審議を尽くすべきだというまじめな態度で終始して参りましたけれども、かくのごとき国民疑惑を圧殺し、あるいは審議権を多数を頼んで一方的に押し殺そうとする委員会運営に対しては、断固としてこれを阻止しなければならぬ、こうわれわれは考え、昨日不信任動議質疑打ち切り発言の途中において出したわけでありますけれども、依然としてこの不信任動議に対しても不当な取り扱いをなそうと今日までして参られました。私ども参議院のよき伝統を守り、そして国民の前にその任務を果たすためには、外務委員長草葉隆圓君の不信任動議提出し、皆さんの御賛成を得て、参議院任務を全うして参りたいと思うのであります。同僚諸君の、参議院権威のために、民主主義を守るために、国民の疑問を解いて参る参議院任務のために、御賛成あらんことを切にお願いをいたしまして、草葉委員長不信任動議趣旨説明とする次第であります。(拍手)皆さんの御賛成を切にお願いをして、趣旨説明を終わる次第であります。
  5. 井上清一

    理事井上清一君) これより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  6. 曾禰益

    ○曾祢益君 私は、ただいまの吉田委員提出されました不信任動議賛成いたします。  簡単に理由を申し上げます。今回、本ベトナム賠償問題に関する審議に当委員会で取りかかりまして以来、私は理事会等において常に申し上げておったのは、本件に関する審議はあくまで尽くさなければならない。同時に、われわれ参議院良識にかけて、いわゆる自然成立の、ごときことは断じて避けるべきである。かような意味草葉隆圓委員長が昨日の段階まではきわめて錬達堪能なる方法によって柔軟なる審議をされたことは、これは了といたします。しかしながら、昨日社会党諸君がまだ審議の過程において、質問の継続中において審議を突然打ち切る、かようなやり方は、断じてわれわれとして賛成できないのであります。そういう意味におきまして、ただいま吉田君の提出されました動議のいろいろな点において、理由については必ずしも全般的に賛成しがたい点もありまするけれども、まさに委員長がこの与党党利党略に従って昨日をもってこれをどうしても打ち切ろう、こういう議事運営最後にやられた。しかも、あの混乱状態におきまして——これより先に行なわれた社会党大和委員から提出されました休憩の動議には、私は趣旨が立たないと思って反対いたしました。しかし、同時に質疑打ち切り動議に対しては、当然に私は良心にかけて反対するつもりであったけれども動議の出された途中において混乱状態の中においていかなる採決が行なわれたかも明らかでない。このような採決の仕方、あるいは議事運営やり方ということは、私としては断じて承服できないのであります。本来ならば、その採決をもう一ぺんやり直すと、こういうことが委員会権威を高めるゆえんだと私は信じて疑いません。しかし、各会派のいろいろなお話し合いによって、社会党諸君動議提出して、それに対する採決を行なう。質疑打ち切りについてはこれはあったことと認める。ということになったのでありますから、その点は私は今さら異議を申し立てませんけれども、かかる意味において、今吉田提出動議に対して賛成意思を表明するものであります。
  7. 井上清一

    理事井上清一君) ほかに御発言なければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 井上清一

    理事井上清一君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。外務委員長草葉隆圓不信任動議賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  9. 井上清一

    理事井上清一君) 挙手少数と認めます。よって本動議は否決れさました。  委員長復席お願いいたします。    〔理事井上清一君退席、委員長着席
  10. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 井上委員長代理理事にかわり、これより私が委員長職務を行ないます。  私のまことに不なれのため皆様に御迷惑をおかけ申し上げました点、皆様の御協力を賜わりまして委員会を円満に運営していきたいと存じまするので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。   —————————————
  11. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) この際、外務大臣仏印特別円に関する答弁について疑義を抱く向きもございまするので、この際、藤山外務大臣からその見解を明確にお述べ願いたいと存じまするが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 御異議ないものと認めます。さよう決定いたしました。
  13. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先日の当委員会におきます私の発言中に誤解を生じた点があるやに思われますので、ここに政府確定見解を申し述べます。  仏印特別円の問題につきましては、終戦時において残っておりました四十八万ドルと十三億円の特別円残高を一切処理するという方針で日仏間で協議したのであります。ところでこの仏印特別円に対し、日仏間の開戦が及ぼす影響については、日本側見解フランス側見解は必ずしも一致したわけではなかったのでありますが、終局的には四十八万ドルと十五億円とを支払うことにより、この債権債務関係に一切処理をつけることに合意いたしたわけであります。昨年の愛知官房長官発言は、この趣旨を述べたものであります。先般の私の発言は、この交渉にあたっての日本側法的見解を述べたものでありまして、両者は発言の角度が異なるだけで、趣旨において食い違ったものではございません。  これまでの政府見解は、この発言によって御了承を願います。   —————————————
  14. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 日本国ヴィエトナム共和国との間の賠償協定締結について承認を求めるの件、日本国ヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定締結について承認を求めるの件、以上衆議院送付の両件を一括して議題といたします。  これより両件の討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願いたいと存じます。
  15. 森元治郎

    森元治郎君 私は日本社会党を代表して、ただいま本委員会にかかっておりますベトナムとの賠償協定及び借款協定に関して反対討論をいたします。  その前に、ただいまの藤山外務大臣の御見解は、一九四四年八月二十五日以降、政府の言う特別円に関する戦時債務をその清算において認めたことを意味するものでありまして、戦争開始日に対する政府の従来の答弁を全く無意味にするとともに、戦費調達に使った特別円債務賠償の二重払いを認めたものでありまして、きわめて重大でありますることをここに申し上げておきます。  続きまして、賠償協定についてのわれわれの反対の論拠を申し上げます。  この二つの協定が今国会にかかってから約二ヵ月近く審議を重ねましたけれども、その経過を見ますると、いよいよもって疑惑は深まるばかりでありまして、わずかにはっきりしているのは、このベトナムに払う理由は、平和条約十四条に言うわが国の義務であるという一点だけであります。その他は、つけばつくほどどうも疑惑が深まって、これでは、われわれ日本人の税金を払って、しかもベトナム人に喜ばれないような協定賛成するわけには参りません。  まず、交渉態度でありまするが、どうも商売のような感じを持って臨んでおるということは、インドネシア、ビルマあるいはフィリピンの場合にも強く感ぜられるところであります。もうかる商売である、国費をもってやる商売のような印象を全般的に国民に与えておる点が、われわれの納得のいかない点であります。  その次には、正統性、いわゆるわれわれが支払う対象であるベトナム国が、真にわれわれが常識的に見るベトナムという国の正統政権であるかということであります。しかしこれは私たち見解は、やはり一九五四年のジュネーブ協定にも、この国は、暫定的、行政管理的性格を持った政府であって、やがては北ベトナム民主共和国との間に選挙が行なわれて、統一国家ができるんだ、それまでの暫定的性格を持ったものであると断ぜざるを得ません。(「その通り」と呼ぶ者あり)従って、これに賠償を払うというのは尚早であり、間違いであるということであります。  次に、戦争損害賠償額の算定であります。この賠償はどのくらい払うか。政府は二百億円をベトナム側協定をいたしましたが、衆議院でも、われわれ参議院でも、この点は特にどこに損害があったんだろうか、条約で御承知のように、第十四条において、戦争中に与えた損害苦痛に対して賠償は支払われる。しからばどこにその損害があって、どういう苦痛があったんだろうかと、われわれはお尋ねをいたしましたけれども、この点についてはついに明確なる御答弁がありません。たとえば地域的には北のこの辺、トンキン地域ではこのくらい、アンナンではこのくらい、カンボジアではこのくらい、あるいは人間に対してはどう、物件に対してはどう、あるいは一九四一年と——昭和十六年ですね——起算して、あるいは政府の言う戦争開始日である十九年八月二十五日をとってみても、年度々々にどのくらいというふうな精密なものが用意され、研究さるべきでありますが、これがなされていない。その理由として、なかなかつかみにくい、しかしわれわれはいろいろな人からお話を伺って、まあこの辺でよかろうという腹づもりで交渉したと言う。それはけっこうではありまするが、交渉に臨むにあたっての、せめても国民に対しての説明のためには、これこれの人、これこれの時代にこういう資料を集めた結果、この辺が妥当と思うのだという資料が提示さるべきでありまするが、全然これがなされていないで、ただ単に金額交渉したというところに間違いがあります。向こうでは初め二十億ドルと言い、二億五千万ドルと言う。それを何でも安ければいいんだというところへ話を持っていってしまって、私たち条約で、戦敗国として残念ながら支払う、賠償を払う態度としては、きわめて不謹慎、軽卒、無準備で、国民に対しては相済まないことを政府はやっているのであります。従って、戦争損害もわからない、苦痛あるいは損害というもののあれがないのですから、幾らということもできない。ただ単に金額が安ければいいというところに話を持っていってしまったということを、私たちは認めざるを得ません。とうとう御回答がありませんでした。この点が、一番国民に、庶民にわかりやすい賠償支払い理由であるのでありまするが、とうとうなかったということは遺憾であります。  それから戦争開始日、これはいつからいつまでに与えたものかということで、当然問題になると思うのでありまするが、政府はこの問題を、昭和十九年の八月二十五日、この日をもってフランスとの間に戦争状態が発生したと見る、法律的立場をとる、その日をもって状態発生の日だという建前、心組みでおりますと、こういう答弁であります。しかしながら、戦争開始日というものをいやしくもきめる場合に、そのような心組みとか、立場というこの御説明では不十分であります。政府としては、何月何日をもってフランス戦争状態に入ったのだと、確定的態度をもって臨まないということの疑惑は、とうとうきのうの日まではっきりさせられないで終わってしまいました。フランス側は十二月八日と言う。私たちは、もし国際法でいうところの、宣戦は一方的宣言によって効力があるのだから、すなわち宣言を発した側のフランスの言う十二月八日という日であろうかとも一応は考えまするが、しかしながら、ペタン政府が倒れ——日本政府中立関係を持っていたペタン政府が倒れ、ドゴールになり、その植民地である仏印というものは、日本との間には共同防衛議定書があり、いろいろ複雑な関係はありましたがもしこの日が一般国際法でいうところの一方的宣言でなくて、勝手に動かせるというならば、私は昭和二十年の三月九日、すなわち最高戦争指導会議松本俊一全権大使に訓令を発して、ドクー総督最後通牒を突きつけた日が最も法律的に、かつ現実的に妥当した日ではなかろうかと思う。政府は八月二十五日と言い、あるいは二十年三月九日、あるいは十六年の十二月八日、もしこの日をとったなら損害はどうだというその区別すらもとうとう明らかにしなかった。また、われわれは、去る八日、工業所有権の戦後措置令に関する通産省告示で、昭和十六年の十二月八日がフランス戦争開始百だとなっているではないかと御質問申し上げましたが、これは工業所有権だけの適用に関する告示であって、一般国際関係を律するものではないという御答弁が、私が退場したあと速記録に載っております。そうではありますけれども、私も研究してみて、そうではありまするが、同時に、当時の情勢は、日本経済再建工業所有権という問題をはっきりしなければならぬという要請と、連合国側要請が二つ合致しまして、当時のSCAP——最高司令部から覚書をもらって、二十五年の九月に出したということは、これはやがて平和条約の中に当然織り込まれるべきものであるという意味であります。織り込まれたならば、これはフランスとの戦争開始日は何条かと多分十五条の方の関係に入るかと思いまするが、そこで、フランスとの戦争開始日は十二月八日と明記されたはずであったという事情も、これはよくお考えにならなければならぬ。われわれは、政府は三枚舌を使って、戦争開始日が三つも四つもあるようなことでこの国会をお済ましになったという責任を、われわれは追及しなければならぬ。いつ始まったかわからなくては、起算日がわからなくては、戦争損害も、その額も、算定することはできないということであります。  それから特別円の問題。これは非常にむずかしい問題で、両院とも必死になって、われわれは研究もし、質問も申し上げましたが、まず最初に申し上げなければならぬことは、政府答弁政府の御説明は、世論をミス・リードしたということであります。ミス・リードした。問題の所在をごまかしている。われわれをさんざん引きずり込ましたということを、私はこの数日来しみじみと理解ができたのであります。そこで、きのうの本委員会においてその質問をやろうとした瞬間、打ち切り動議が出たわけであります。どういうミス・リードをしたか。私たち質問の重点は、戦争開始日昭和十九年の八月二十五日としたならば、戦前債務だけ払えばよくて、それ以後の特別円は払わなくてもいいんじゃないかと。三月九日だったらどうだろう。昭和十六年十二月八日だったならば、おそらく政府が言うように、九千万円でフランスとさよならができたんじゃないか。こういうふうなことをわれわれは必死になって質問をしたけれども、問題はそこではなかった。どういう点かというと、フランス平和条約の第七条も、十四条も、あるいは十八条も、そんなことは問題じゃない。自分がサインしておきながら、問題にしない。あるいは日本政府が言うところの戦前だ戦後だというような法律的見解と実際の問題とは戦ってもこれは取り上げない。ただ、われわれフランスが、あなたにお貸しした戦前、戦中、特に昔から、ビシー時代から、日本にさんざん頼まれてお貸しした、融通してあげたあの百数十億、あるいは五十億とか、はっきりしませんが、とにかくその金を返してくれればいいんだ、とこういう交渉であります。そこで、政府としては、それはできないというので、いろいろな法律論で戦って押し負けてしまって、結論は、とうとう先ほど外務大臣からお話のあったように、四十八万ドル、十五億円というところで手を打ったのだ、こういうことになって、きのう総理大臣にお伺いしますと、君は、森君は、社会党は、損をしたのじゃないかと言うが、向こうが五十億と言うのを十五億まで下げたのだ、こういうことで、大へん値切った努力をしたようにおっしゃるが、そこはフランスに払うべき理由のないものを払ったのですから、むしろ、十五億円のマイナスであります。この金は当然ベトナムにわれわれが支払うか、あるいは支払う努力をしなければならぬはずの性質であると思います。しかも、私たちが尋ね得なかった点は、打ち切りのためにですよ、委員長、それは当時は国際司法裁判所に提訴しようかということが、政府部内で問題になり、一万田大蔵大臣も、昨年二月の八日の衆議院予算委員会において、出せば負けるかもしれない、勝てる確信がないのだとおっしゃいましたが、一体、だれが集まって提訴しようとしたか、どの学者が、外務省のだれが、政府のだれがどういう検討をし、その経過はどうか、だれが勝てると言ったか。どの学者、どの局長があるいは負けると言ったか。その経過、こういうものが当然明らかにされなければならなかったが、これはとうとう明らかにされない。私が申し上げるのは、もっと大きい点は、それほどフランスが無理じいしてくるならば、いかに今から二、三年前の話でありましても、なぜ、日本の新聞、天下に公表して、フランス側の言い分はこういうふうだ、条約をお互いに締結しておきながら、しかも、条約の規定は関係しない、戦前も戦後もない、こんな無理じいをしてかかってきておるのだから、どうか国民助けろと言えば、自民党も、社会党も、あらゆるものがこぞってフランスに向かって、その無理な言い分に戦ったであろうと思う。何にも隠さないで——こっそりやった、しかも、国会承認を得ないということは、これはけしからぬのであります。本委員会で徹底的にやることはできませんでしたが、問題は長く残りますので、私はあくまでこれを追及するつもりであります。社会党としても満足することはできないことを残念に思います。  それから南ベトナムに払うということは、これは両国の親善と民生の福祉に貢献するところ多大であるんだ、こういうことをおっしゃっておりますが、南ベトナムに対するアメリカあるいはその他の国の援助というものは軍事費が多い、従って、予算の、政府説明によりますと、国で軍事費が五割以上出る国はソビエトと対立するアメリカを除いては韓国その他であります。しかもひよわいベトナムで、人口一千万ぐらいのベトナムで、その七割ぐらいを軍事費に使われて、そこへもってきて今度の二百億円の内容はダニム水力発電所とその他の工業センターその他となっている。ダニム水力発電所はやがてサイゴン付近の民衆にあかりを供給するであろうと言いますが、これはこの軍事援助の状態と非常に国力のひよわいベトナムにおいて直接民衆の各家屋に電燈がつくことには利用されません。これは軍需的工業にこの電力が利用されることは当然であります。また工業力においても同じような形式のものが日本の東洋精機の小銃弾のプラント輸出のごときはとうとう政府も小銃弾としては知らなかったと御答弁があったように、こういうものが出ている。二百億というものはこのようなダニムの水力発電所あるいは工業センターというものから逆算されたということは、決して社会党が柄のないところに柄をすげた議論ではないのであります。  最後に、賠償交渉はこれで終わるというのが政府答弁でありますが、ビルマから早くも再検討要求がされてきて、裏の方ではビルマは氣の毒であったということもあり、このベトナム賠償が終わった暁には——おそらく批准が終わったあとということでしょう。正式交渉において五千万ドルの贈与、プレゼントをして、向こうの気分をやわらげようとかかっておるようであります。ベトナム賠償二百億円がどのくらい高いかということは、このビルマ側のあのまじめなおとなしい申し出によっても想像がされる。それのみでない、債務というものはイギリスとの債務もまだ終わっていない。中共の対日賠償請求権も無気味な沈黙を守っておる。不発で現在おりまするが、いつどうなるかわからない。韓国の日本に対する請求権も残っておる。アメリカのガリオア、イロアも残っておる。これから賠償が始まるのであります。このような不明朗な経過、何人をも納得させないやり方、急いでやる、どうも一般業者のためにやむを得ずやった既成事実を正当化するための賠償と断ぜざるを得ないのであります。この際はこれをやめて、政府もおっしゃるように、南北統一は希望するところであるというのでありまするならば、世界情勢にさおさして、今しばらく待って両ベトナムの満足のいくような賠償をすることが最も日本国民のため、ベトナムのため、東南アジアのためになるかと思うのであります。  こういう意味において、本件に対しては絶対反対をせざるを得ないのであります。
  16. 井上清一

    井上清一君 私は、ただいま議題となっております日本国ヴィエトナム共和国との間の賠償協定及び借款に関する協定締結につき承認を求めるの二件に関し、自民党を代表し賛成の意を失するものであります。  日本はサンフランシスコ平和条約第十四条によりまして、日本が占領し、損害を与えた連合国に対しまして賠償を支払う義務があるわけであります。この賠償の義務の履行は、いわば日本の国際社会への復帰の条件とも申すべきものでありまして、日本といたしましては、損害を受けた連合国が要求す出るならば、すみやかに交渉に入り、誠意をもって賠償問題を解決することは当然の義務でもあり、国際信義の問題であると思うのであります。平和条約が発効いたしましてからすでに七年有余を経ておる今日、今回のベトナム賠償平和条約に基づく最後賠償であることも考えあわせますれば、日本といたしましては、できるだけすみやかにベトナム賠償を解決しなければならない国際義務を負っておることは今さら贅言することを要しないのであります。  ただこの場合賠償を支払う相手国のベトナムに、事実上南北に二つの政府が存在しておる関係上、賠償支払い南北統一まで待てというような議論が出てくるのでありますが、国際情勢の見通しより見て、ベトナム統一が早急に行なわれる可能性がほとんどないことはだれしもが認むるところでございまして、ベトナムに対する賠償支払いを、今後何年したら統一ができるかわからない日まで引き延ばして履行しないということは、平和条約上の義務や国際信義に反するものであることは明らかであります。しこうして、日本がサンフランシスコ平和条約に基づいて賠償義務を果す相手は、平和条約に調印、批准をいたしましたベトナム全体を正当に代表する政府としてのベトナム共和国政府でありますことは、国際法上から見ますれば疑いをいれないところであります。もし将来ベトナム統一政府ができました場合にも、現在のベトナム共和国政府ベトナム全体を代表する政府でありまするからして、この政府の負った国際法上の権利義務は当然にその後にできたベトナム政府に継承され、従って、当然現在の賠償協定統一後の政府に対しましても効力があるわけであります。  次に、賠償損害を与えた連合国に支払うべきものでありますが、この戦争損害ベトナム自体に少なく、しかも大部分の損害は北であり、南の受けた損害は微々たるものであるから、今回の賠償額は過大であるというような議論も聞くのであります。しかしながら、この点につきましては、南ベトナム日本の兵站基地であったという関係から、南ベトナムが大きな物的損害をこうむったという事実は、政府が引用されました米、ゴム等農産物の受けた損害によりましても、その一斑をうかがい知ることができるのであります。なお、この賠償がいわゆる南ベトナム地域の損害だけに対するものではなく、全ベトナムに対するものであることは、政府説明により明らかにされたところでございますが、今回の賠償総額はこのベトナム戦争によってこうむった損害とわが国の負担能力及び他の賠償請求国との間の振り合いを勘案して、種々困難なる交渉の結果妥結したものでありまして、実際にベトナムのこうむった損害に比較して、それをはるかに下回る額であることは言うをまたないのであります。  次に、今回わが国がベトナム共和国に対して支払う賠償が、米国による対南ベトナム軍事強化のための援助の一端をになうものであるとの議論をなす者が一部にありますが、これは全く事実に反するものであります。すなわちわが国は今回の賠償実施として、ベトナム経済の発展と国民生活の向上に大きく寄与する諸計画実現のための生産物及び役務を供与するのでありまして、これが南ベトナムの侵略的軍事力を強化するためであるなどとの議論は全く事実を歪曲するものと言わねばなりません。たとえば、今回の協定により一応その実施が予想されておりますダニム水力発電所建設計画は、出力十六万キロワットで、これが実現いたしますれば、サイゴンの電気料金は現在の約八分の一になり、また、ベトナム国民経済発展の基礎をなす諸産業を興すためにも不可欠であると言われております。また、伝えられる機械工業センターの建設も戦後独立して間もないベトナムの技術水準向上のために大きく貢献するものと考えられるのであります。  一部に、今回の対ベトナム賠償支払いは、一九五七年三月末にフランスに対して支払われたいわゆる仏印特別円と二重払いになるとの議論がありますが、これは日本国フランスとの間の協定に基づく戦前債務決済の問題と、サンフランシスコ平和条約第十四条(a)項に基づく義務の履行としてのベトナムに対する賠償支払いとを混同するものであります。すなわち、特別円問題は、わが国とフランスとの間の仏印に関する商業的債権債務関係をこれによって一切解決したものであり、他方、対ベトナム賠償は、わが国がベトナムに対して与えた戦争損害及び苦痛に関してサンフランシスコ平和条約第十四条(a)項の義務履行としてベトナムに支払われるものでありまして、全く別個のものであります。従って、以上の二つの問題の間には何ら二重払いの問題は起き得る余地がないものであります。  以上述べましたところによりまして、私は、今回の賠償及び借款に関する二協定締結はきわめて適切であると考えるものであります。ただ、賠償国民の多大なる負担により実施されるものであります以上、政府国民の世論を尊重しつつ、その実施及び運営のため慎重なる考慮を払い、その協定内容等に関しましても国民に十分なる理解を求め、国民の期待に沿うべく鋭意努力せられんことを切望いたします。終わりに、将来本件賠償の実施がベトナム経済開発の発展と国民生活の安定向上に寄与し、さらにはわが国と同国との友好親善関係、経済提携を一そう増進せしめ、もってアジア諸国民の繁栄のためにこの賠償が大きく貢献することを念願して賛成討論を終わる次第であります。
  17. 曾禰益

    ○曾祢益君 私は社会クラブを代表いたしまして、ただいま議題になりましたベトナム賠償並びに借款のこの二協定に対する反対討論を展開いたしたいと存じます。  反対の第一の、そうしておもなる理由は、この賠償が南北二つの政権に分かれて相争うところのベトナム国の現状を無視して、事実上南ベトナムのみを代表するところの、ベトナム共和国政府に対してなされるからであります。  われわれはサンフランシスコ平和条約に定められたわが国の賠償の義務は、正当なる求償国に対してはこれを実行しなければならないと信じます。しかして、現在のベトナム共和国政府の前身であるベトナム国政府がサンフランシスコ条約の調印国であって、求償国の資格を持っておった事実も否定しません。しかしながら、その後北ベトナム政権、すなわちベトナム民主共和国政府が、そのフランスとの戦争を通じまして、そうしてジュネーブ協定で確認された通り、現在では十七度線以北を支配するところの力を持っているこの事実もまた否定できないところと信ずるのであります。しかもジュネーブ協定に基づく自由選挙による南北統一は、世界にまたがる冷戦の現状から見て、実現の見通しは残念ながら、全く立たないというのが実情であります。  従って、一つの民族国家に二つの相争う正統政府が存在している事実を無視し、一方の政府に対して、国家と国家との間の戦争終結の基本要素である賠償を実行することは、かりに冷戦を激化するというそしりはしばらくおくといたしましても、他日統一が実現した場合、あるいは逆に、完全なる国家分裂が起こった場合に、累を残すことになることは明らかであろうと存ずるのであります。  この点に関する政府説明は、単に国際法の通念によって、正統政府に対する債務の弁済は統一国家に引き継がるべきであるという一つの主張にとどまるのであって、一般的通念としては、通常の場合には、かかる主張に一理があるといたしましても、分裂国家の場合や、ことにこれが共産政権によって相引き継がれるような場合には絶対通用しない。このことは、外交史から見て明らかな通りでありまして、従って、この政府の陳述は、全く一方的主張にすぎないことは争う余地のないところと信ずるのであります。加えて、ベトナムの場合は、北ベトナムがすでに明確にこの賠償反対しておる事実から見まして、政府の主張は法理的にも不備であり、事実においても無理であることは、言を待たないと信ずるのであります。  われわれは賠償は前述のように最終解決でなければならず、しかも国民の税金によってまかなわれるものでありまするから、将来二重払いのおそれがあり、ないしは少なくとも国際紛争の種を残すようなあいまいな状態で実行すべきでは断じてないと信じ、この賠償反対する次第であります。  ただ、ここに明らかにしておきたいことは、われわれのこの賠償に対する反対理由は、ベトナム共和国に対する政治的な反対とか、逆に、北ベトナム国政府に対する政治的支援の意味ではないということであります。さらに、われわれは、いつ実現するかもわからない南北統一まで、一切の賠償や経済援助をも差し控えるべしということを主張するものでもございません。われわれは南であれ北であれ、ベトナム国国民に対して、不幸なる冷戦の現状からして、賠償の義務履行はできないということを了解せしめ、そして、南北を問わず経済援助をやっていくべきではないか。特に日本承認した南ベトナム、すなわちベトナム共和国政府に対しては、日本政府賠償にかわる借款、経済援助等によってこの実をあげることをもっと真剣に説得すべきであると信ずるのであります。これこそまさしくサンフランシスコ平和条約の義務を尊重しつつ、しかも冷戦に逆らわず、東南アジアの新興国民との親善を増進するただ一つの方法でありまして、これは良識あるすべての日本国民が考えておるところであると信じて疑わないのであります。  かかる意味合いから、われわれは政府に対して再考をうながしたにかかわらず、全く反省の色を示さないのでありますので、私は今回の協定については、賠償協定のみならず、借款を含めてこれに反対するものであります。  反対の第二の理由は、本件賠償フランスに対する旧仏領インドシナ関係特別円などの支払いどの関係がきわめてあいまいであり、かつ、少なくとも一部は二重払いの疑いが濃厚であるからであります。  政府説明は、一方においては仏印関係フランスに対する支払いは一九四四年八月二十五日、すなわちドゴール政権のパリ入城の日であり、日仏間の戦争開始の日以前の債務に限ると言っておきながら、他方ではフランスの主張に屈しまして、その後の終戦当時までの支払い残高をも含み、従って戦争中の債務をも包含することを認めておるのであります。  われわれは他面において、南ベトナム側から日本政府に対して、特別円支払いと金塊の引き渡しの要求があったことを知っておりますとともに、結局において、今回の賠償のうちには、開戦後のインドシナ銀行残高に対する支払いが二重になっているということは否定できないと信ずるのであります。このゆえにわれわれはかかるずさんな賠償支払い反対いたします。  反対の第三の理由は、本件賠償の実施が北ベトナムとの貿易に累を及ぼし、かつビルマ賠償の再検討に波及するおそれがあるという実際上の見地に基づくものであります。周知のように南べトナムとの貿易は主としてICA資金に支えられた輸出片貿易であり、これに反し北ベトナムは地下資源の賦存から見て、今後の経済開発の進展と相あわせ考えるならばきわめて有望な輸出入市場であります。北ベトナムの本件賠償に対する政治的反対はしばらくおくといたしまするとも、賠償実施の結果、日本が北ベトナムとの貿易を失うことは、わが国の貿易経済上その不利不便は決して少なくないと信ずるのであります。さらに本件賠償がビルマ賠償に及ぼす影響については、すでに明らかな通りビルマ政府から賠償協定に基づいて再検討の申し出が日本政府に対してなされておるのであります。われわれはビルマとの賠償協定締結された当時のビルマ社会党政府が、大きな英断をもってわが国との永続的な友好のために賠償協定に踏み切ったことを高く評価するとともに、正直者がばかを見ないようにするため、その後の日本政府賠償に対する態度に照らして再検討を行なうことは当然であり、われわれとしても好意的考慮を払う用意を持っております。しかし、それならばこそ、ますます本件賠償のような二重払いのおそれのあるむだづかいは、これは厳に慎むべきであると信じ、よって本件賠償反対するものであります。  以上の反対理由の外、戦争損害が南より北に多かったということ。戦争開始の日付けについても首尾一貫しておらないこと。賠償のおもなる目的がすでにダニム水力発電所建設費に引き当てられ、その建設費総額がほぼ賠償総額に見合うといったところから起こった疑惑などがあげられておりますが、要するに根本問題としては、政府が本件賠償問題並びにインドシナ銀行に対する債務支払いの問題の当初から、確たる自信と十分なる準備と決意なくして、漫然とこれらの協定締結し、しかも国民良識に反して十分なる説明をなさず、ひたすら多数の力を頼んで、本国会における協定強行突破をはかったところに政府の根本的な誤まりがあることをこの際強く指摘しておきたいのであります。  以上の理由に基づいて、私はここに本件両協定案全部に対して明確なる反対意見を表する次第であります。
  18. 佐藤尚武

    ○佐藤尚武君 私は緑風会の代表といたしまして、現在問題になっておりまする対ベトナム共和国賠償協定並びに借款協定に対しまして、賛成の意を表するものであります。  私は、日本といたしまして第一に重点を置かなければならんことは、日本締結しました国際条約に対して徹底的に忠実でなければならないと思うのであります。終戦以来六年も長い時間をかけまして、ようやく締結しましたあのサンフランシスコ条約に対しましては、徹底的にこれを尊重しなければならんということは当然の話であります。従いまして同条約賠償条項につきましても、日本はその規定を忠実に守らなければならんということになるのである。ベトナム国が当時サンフランシスコ条約に参加し、成規の手続を経てこれに署名し、かつまたこれを批准した国であるとしまするならば、日本は同国に対しまして賠償の義務を負うということに問題はございません。ベトナム日本に対して、求償権を持っておったということも争うべからざる事実でございます。しかして、その賠償条項によりまするならば、これらの求償国に対しまして、日本はすみやかに賠償交渉に入るということを義務づけられておったのでありまして、事実、日本は同国と賠償交渉に入ったのであります。すみやかに交渉を開始するということは、単に交渉を開始すればそれでいいのだというわけでは断じてあり得ないのであり、すみやかに協定に達しなければならない努力をしなければならないということも問題はございません。  かくして、日本政府は同国との間の協定に達すべく努力を続けてきたのであります。それにしても数年の長い時間をかけて、ようやく今回賠償並びに借款協定に調印することができたというわけであり、この賠償並びに借款協定におきましての金額の問題について、かれこれ外務委員会審議の間において大きな問題が提起されたのでありました。私はこの賠償額の決定というものは、両国交渉の結果、妥協に達したその妥協額であるということを認めるものでありまして、およそ賠償交渉にあたりましては、そういうやり方でもって協定に達する以外に方法はないというふうに感ずるものでございます。相手国はできるだけ多くの賠償額を欲しましょうし、日本はまた自分の支払い能力を考えまして、できるだけ少ない額にとどめようとするのが、これは当然の話であります。その間に一定の基準に従って、そうして賠償額を算定するというようなことはとうていあり得ないことでございます。むろん日本政府といたしましても、この交渉に入るにあたりましては、自分としてのおよその目安はあったに相違はございません。しかし、先ほども申し述べました通りに、その額の決定は、まさに両国折衝の結果ようやく到達し得たその額であり、これだけならば日本も負担することができるという、そういう金額に到達して初めてこの協定が成り立ったというわけでありまするからして、私は大よそこの額は相当なものである、適当なものであるとこれを承認するものであります。  私はまた、今度の対ベトナム政府との賠償をもちまして、日本政府として外国に対して負担すべき賠償の最終条約であるということについて、委員会審議の間にも私は政府に念を押したのでありまして、この点私、日本として明確なる態度をとらなければならないという考えであります。すなわち、日本賠償の義務を負わなければならぬ相手は、サンフランシスコ平和条約の調印国に限る、調印国の中で日本に対して求償をしてきたその国々に限るということであります。その点は徹底的に、私は日本として明確な態度をとらなければならぬと思うものでございます。ベトナム共和国が、今その賠償によりまして日本との間には協定ができたので、この協定をもって私は最後賠償協定とすべきものであると確信し、かつまた政府もその考えであられるように承知いたしております。現在の、ベトナム共和国がサンフランシスコ平和条約締結当時のベトナムの正当の継承者であるということ、これは疑う余地はございません。その現在のベトナムの領土が将来どうなろうとも、どういうふうに変更があろうとも、それは日本の関するところでは断じてあり得ないというように私は信ずるものでございます。さもなくして、サンフランシスコ平和条約に調印しない、調印国以外の国のことまで考えるというようなことでありましたならば、とうてい日本の存続は許されなくなるとようことをわれわれとしては、はっきり認識しなければならない問題であると存じます。  私は、今度の賠償協定によりまして、日本は、与えられたる資料によって見まするというと、年々二百七十億もの、巨額の負担をして参らなければならぬ。それも一年や二年の問題でなく、十年ないしは十数年の間その負担を続けていかなければならぬということであります。しかも、これはあり余った金をそちらに向けるというわけじゃなく、国民の血税をもってこれを支払っていかなければならぬということであります。無意味にこの巨額の金を国外にばらまき、砂の上に水をまいたような結果におちいるということであってはならないのは、当然の話であります。私はこの賠償を支払うのにあたりまして、ベトナム共和国との関係はもとよりのこと、東南アジア地方に対しましての日本の国際信義を厚くし、国交を増進し、関係をいやが上にも良好にしていくということに努めなければならぬということは、当然であると同時に、また、この協定によってベトナム自身大いな利益を得るということは当然でありましょうが、日本もまたこの協定によって、そして賠償支払いによってその結果として得るものがなければならぬと思うのであります。と申しますることは、この賠償支払いは、つまり日本のある見方から言いまするならば、日本の生産物の広告になると思うのでありまして、賠償物資の供給によって、日本の物資に対しましての相手国の認識というものも深まりましょうし、従って、日本の生産物の販路の逐次広がっていくということにもなり得るわけであり、また、その見返りとしましては、相手国の物資の日本輸入ということも容易になろうかと思うのでありまして、こういうような方面において、日本はできるだけの努力をしなければならない。そうして、相手国が利益を受けると同時に日本もまた利益を受けるというような方面に政府は真剣な努力を払い、そして、国民の負担を軽減せしめる、長い間に軽減せしめるということを考えなければならないと思うのであります。そういうふうな考え方からいたしましてやりまするならば、努力次第によっては二百七十億の賠償額は負担しまするけれども数年の間にはあるいはその倍額が日本に返ってこないとも限らないということを私は希望するのであります。  こういうような以上述べましたような理由並びに希望を持ちまして、私は本件賠償並びに借款協定に対して賛意を表するものであります。
  19. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) ほかに御意見もないようでございますから、両件に対する討論は終局したものと認めて御異議はございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 御異議ないものと認めます。  それでは、これより両件の採決に入ります。  日本国ヴィエトナム共和国との間の賠償協定締結について承認を求めるの件  日本国ヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定締結について承認を求めるの件  以上衆議院送付の両件全部を議題といたします。  両件を衆議院送付通り承認することに賛成の方の起立を願います。    〔賛成者起立〕
  21. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 起立多数でございます。よって、両件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、両件の本院規則第七十二条により、議長に提出すべき報告書の作成については、これを委員長に御一任願いたいと存じまするが、御異議はございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  22. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたしました。  本日は、これにて散会いたします。    午後九時十五分散会