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木村禧八郎君
政府の出しました昭和財政史ね。それから、これは
自分が書いたものでおかしいのですが、大陸のインフレーションを
研究した、「インフレーションの
研究」という本があるのです。当時私も調査に行きました。この臨軍費のまかない方は、
日本のインフレーションを大隆に転嫁する一つの方式なんですよ。預け合い勘定というのは、軍票を出す場合には、いろいろなその特殊条件によって出し得ることがありますし、出し得ない、
現地通貨を使った方がいい、しかし、軍票を出した場合、
日本が裏づけ物資を送らないと、軍票の価値が暴落すれば、対外的に
日本の
経済力が、これは戦争
経済力は消耗したと、そういう、なるべく軍票を使わないで、そうして
現地通貨を使って、そうして
日本のインフレーションを
現地住民に転嫁する、そういう方式をとったのが預け合い勘定です。従って、そういう
経済的な見地から言えば、それに金約款というのがあるのはおかしいですよ。ですから、それは正金とインドシナ銀行との預け合いでしょう。片方に貸しをし、片方に借りをして、預け合いですから、幾らでも帳面つければどんどん預け合いできて、そうして札が足りなければ、
日本からどんどん札を刷って送ってやって、そうして
現地の通貨をまかなったんですよね。これが預け合い勘定というものなんです。従って、それにゴルド・クローズなんかあった日には、これは大
へんな問題です。ですから、一応その国際条約の、平和条約の七条、十四条(b)項、それから十八条
関係からいって、十九年八月二十五日以後のものは、これは全部無効であるという
立場に立てば、金約款の問題なんかも何もなくなっちゃうわけですね。ですけれ
ども、しかし、実際はそうでない。あとで
質問しますが、十五億われわれが払うについては、やはりこの問題が関連してくると思うのです。そういうことから言えば、それから三谷・ラバル交換公文にも、この解釈によりますけれ
ども、
日本にとって有利な
立場をとるとすれば、金約款を否定して五億七千万円で打ち切っちゃっていいわけなんですよ。なぜこれを主張しなかったかということですね。だから、われわれとしては不当に払った、払うべからざるものを。国際条約から言えば、平和条約の七条からいって、十四条(b)項からいって、十八条からいっても、戦後の債務は、これは放棄されたものなんです。それでまた、金約款というものは合理的に否定し得る根拠がある。昭和十九年四月以後は、実際に金約款というものがあるはずがない。あれば、金をイヤマークしていなければならぬ。だから、不当に払った、
政府は。五億七千万円でいいものを、十五億円払っちゃったんです。ですから、
国民に七億円ぐらいの負担をよけいにかけてしまった。不当払いです。これは、
政府に重大な責任があると思うのです。この点について、
外務大臣は責任をお感じにならぬかどうか。