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1959-12-12 第33回国会 参議院 外務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年十二月十二日(土曜日)    午前十時四十九分開会   —————————————   委員異動 本日委員小林孝平君辞任につき、その 補欠として坂本昭君を議長において指 名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     草葉 隆圓君    理事            井上 清一君            剱木 亨弘君            苫米地英俊君            吉田 法晴君    委員            青柳 秀夫君            梶原 茂嘉君            笹森 順造君            杉原 荒太君            永野  護君            堀木 鎌三君            加藤シヅエ君            坂本  昭君            佐多 忠隆君            森 元治郎君            大和 与一君            石田 次男君            佐藤 尚武君   国務大臣    外 務 大 臣 藤山愛一郎君   政府委員    外務大臣官房長 内田 藤雄君    外務省アジア局    賠償部長    小田部謙一君    外務省アメリカ    局長      森  治樹君    外務省条約局長 高橋 通敏君   事務局側    常任委員会専門    員       渡辺 信雄君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○日本国ヴィエトナム共和国との間  の賠償協定締結について承認を求  めるの件(内閣提出衆議院送付) ○日本国ヴィエトナム共和国との間  の借款に関する協定締結について  承認を求めるの件(内閣提出、衆議  院送付)   —————————————
  2. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) ただいまから外務委員会を開会いたします。日本国ヴィエトナム共和国との賠償協定締結について承認を求めるの件、日本国ヴィエトナム共和国との側の借款に関する協定締結について承認を求めるの件、以上衆議院送付の両件を一括して議題といたします。昨日に引き続き、質疑を続行いたします。
  3. 石田次男

    石田次男君 今国会ベトナム賠償につきましては、衆参両院相当長期にわたって議論がかわされてきたのでありますが、私の見たところでは、衆議院におきましては、法理論法理論論議中心であったように考えられます。特に政府答弁の方は、ほとんど法理論一本やりであったために、国民に十分納得させ、満足させることができなかったように考えられます。また、本委員会におきましては、今までは主として賠償内容についての質疑が多かったように見受けるものであります。しかも、与党側即時支払賛成立場から質問しておられるので、どうも疑問がはっきりしない。また野党側としましては、初めから反対立場質問を申し上げておられるために、共通広場というものがなく、結局押しつめると見解相違立場相違、こういうことで、どうも並行線をたどってしまいまして、どうしても共通広場ができてこない。それも、もちろん立場の上から、一理ある行き方とは存じますけれども、しかし私は、それだけでは、国民諸氏に対しまして問題の検討が足りないと考えているものでございます。それで私は、きわめて常識的なことでございますが、賛成反対ということは、十分質疑を尽くした上で決定さるべきである、こう考えまして、わきから長い間質疑応答をお伺いしてきたものでありまして、私は、これから申し上げる質問に対するお答えが十分納得できれば、いさぎよく賛成を申し上げたい、また、どうしてもお答えが納得しかねるとなれば、反対を申し上げたい。会期延長、法案の自然成立というようなことを抜きにしまして、そういう態度で臨みたいと思っておりますので、どうか外相の御親切な答弁をお願いしたいと思います。  さきに申し上げました通りに、衆議院の方では、法理論法理論論議が盛んでありました。これは当然そうなければならぬのですが、しかしながら、そうすると半面に大きな欠点が生まれてくる、これもやむを得ないじゃないかと思います。すなわち答弁には実情を直視しまして、客観的なを事実、法理に含まれていない事実を、率直に問題検討の大事な要素として取り入れる、こういう態度がなくなってしまうという欠陥が出てくるのでございす。現に、ベトナム南北実情から故意に遠ざかるような傾向を、私は感じてきたのでございます。そこで私は、ベトナム日本、世界の実情法理論とは必ずしも一致しない実情を考えながら、政治外交の将来も考えながら、実際論立場から二、三お伺いしたいと存じます。また、本委員会では、端的に賠償内容に対して突っこんだ質疑その他が論じられて参りましたが、まだ問題を本質に引き戻して行なわれた質疑は少なくないように存ずるものでございます。ですから、今申し上げた実際論とともに、お伺いする焦点を本質問題に引き戻しまして、しかも、そこに質問をしぼって、お伺いしたいと思っているものでございます。どうか一つわかりやすく率直なお答えをいただけるように、大臣にお願いしたい。  まず第一に、政府、それから外務大臣としましては、実情、特にベトナムの歴史的経済的な、また国家構成法理論以外の実情は、大幅に無視なさるのか、また、今申し上げたような実際面も十分尊重なさるのか、まず第一にその点をお伺いしたいと存じます。
  4. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の賠償にありまして、むろん賠償支払いますことでありますから、御指摘のありましたような法律的な立場を、やはり十分われわれとしては検討して参らなければならぬことは当然でございますが同時に、現在、今お話がありましたような国際情勢の上に立ち、また、日本が今後考えていくという面も見、かつ、南ベトナムが、実態として、われわれ、全体のベトナムを代表する国家としてあるという事実の問題にも基礎を置いて、そうして問題を考えておる次第でございます。
  5. 石田次男

    石田次男君 この賠償問題は、ビルマフィリピン、インドネシアの場合とは全く違っているので、そこから国会紛争が起こっているのだと思うのです。国民の世論がもやもやしているのも、結局ここから起こっていると思います。ですから、まず紛争のよってくる点を明らかにしまして、より正しい解決策を発見したい。問題点を明らかにして、紛争を解きほぐしていかなければならないと存じます。そのために、問題を分析してお伺いいたしたいのですが、まず、ベトナム賠償支払い義務そのものについても、一つだけ疑問点があるのですが、それは後ほどお伺いすることにしまして、要するに支払い義務についての疑問が晴れますと、まず、支払い義務そのものについては、だれも異存がなくなるわけです。ですからそうなると、いつかは、どのベトナム政府かに、何がしかの金額のものを、日本のだれかの政府から支払わなければならない。そこで、長い間審議を続けてきた現在となりましては、問題の根本は、支払い相手として、現在のゴ・ディン・ジェム政府が適当かどうか、ここにかかってくるのでありまして、支払い時期と、それから賠償金額及びその内容の二点も、なるほど大事でありますが、今となっては、第二次的な問題点だと私は考えるものでございます。この点につきまして、外相大局観をお伺いしたいのです。
  6. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は、かねて申し上げておりますように、ベトナム共和国成立の歴史的な事実の問題、それは、すなわちフランス領でありました仏印三国の解放の歴史的な事実の上に立ちまして、南ベトナム共和国が全ベトナムを代表する国として認めておるわけであります。しかも、そのベトナム共和国が、サンフランシスン条約賠償に対して調印をいたしておりますので、われわれは、それに対して支払わなければならぬ義務をしょっておるというこの事実、そうして現状におきましては、国際社会におきましても、四十九カ国がこれを承認しておるという事実、そういう事実の上に立ちまして、今お話しのように、大局から見まして、当然ベトナム共和国に払うべきものだという結論を得ておる次第でございます。
  7. 石田次男

    石田次男君 結局今になりましては、ずいぶん衆議院の方でも長くやって参りましたし、参議院でも相当時間をかけておりますので、結局この問題の中心点は、南に払うのが適当かどうか、そこのところからさえはっきりすれば、あとはそう問題はないのじゃないでしょうか。
  8. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま申し上げましたような理由、そうして南に払いますことが、全ベトナム国民に対する支払いになるということでありまして、たとえばジュネーブにおきます会議におきましても、将来統一されるべきベトナムというものを予想はいたしておりますけれども、御承知通り統一が非常に困難である、すぐにはできないという過程におきましては、やはりベトナム共和国を全体を代表する国と認めて━━むろん四十九カ国以外の国はベトナムを、南の共和国を全ベトナムを代表する国と認めておらん国も御説明申し上げている通りございますが、少なくもわれわれはそういう━━ベトナム共和国が全体を代表している国として認められておる以上、統一がありましてもむろんそういう状況もとに引き継がれていく、むろん政府内容そのものは、人その他がかわってきましても、そういう形において統一されていく、こういうふうに見ておる次第でございます。
  9. 石田次男

    石田次男君 ちょっと……、そこをお伺いしているんじゃないですがね。それは、藤山さんは南へ払うんだ、これは初めからわかっています。それから、社会党あたりは払うな、これはわかってます。で、結局、払うんだ。いや、払っちゃいかんと、その問題の焦点は南の性格からきているんじゃないですか。それがはっきりすれば、あとはそう問題ないんじゃないですか。
  10. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今申し上げたような性格から見て、私は南に払うのは適当だということを考えているわけなんです。
  11. 石田次男

    石田次男君 それはわかっているんですよ、初めから。そこを聞いているんじゃない。それはわかっているんですよ。要するに、国会審議のトラブルの焦点というのは、南に払うか、南に払うのがまずいか、そこにかかってきてこんぐらがっているんじゃないですか。結局、支払い内容とか、いつ払うとかということは、この相手の問題が解決すれば、あとそう重要な問題じゃなくなってくる。しかし、問題の焦点はここにあるんで、そこさえ解ければ、あと大体審議は尽きるんじゃないかと思うんです。その問題点を聞いているんです。そこのところはどうお考えになります。
  12. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) つまり、御質問の要旨は、南に払ったことが全ベトナムに払ったことになるかと、こういう御質問の趣旨でありますか。
  13. 石田次男

    石田次男君 いやいや、そうじゃないんです。国会審議焦点が、どこが解決すればより正しさが求められるかと、その点から支払い相手さえはっきりすれば━━それがいいのか悪いのかと、それがはっきりすれば国会の疑点というものは大半晴れるんじゃないかとお伺いしているんです。
  14. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) つまり、どちらに払う方がいいかということがはっきりしていれば、それで問題が一つ解決するんだと、こういう御質問であれば、私どもは今までの論議を通じて申し上げております通り、南に払えばそれが適当であって、それによって問題は解決するんだ……。
  15. 石田次男

    石田次男君 それはわかっていますよ。この紛争根本は、結局、南に払うのが妥当か、今の南に払ってはいけないというのか、そこのところがはっきりすればベトナム問題の大半は解決するんじゃないかと、問題の焦点を聞いているんです。
  16. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 南に払う方がお前は適当と思うかということでなしに、南に払う方が合理的と申しますか、実際に適しているんだと、こういう御質問であるかと思いますが……(「もう少し質問を解明してくれませんか、私らにもわからないから」と呼ぶ者あり)
  17. 石田次男

    石田次男君 結局この問題は、ビルマフィリピンの場合と違うのですね。なぜこじれておるか、そのこじれておる根本というものが、南が妥当なものか、それから南はまずいのか、この論争でこじれておるのでしょう。ここのところがはっきりすれば、あと支払い金額内容、それから時期の問題、それは大体第二義的な問題になるのじゃないですか。
  18. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今お話通りだと思うのでありまして、南に払うのが適当か、そうでないかということは、まあ社会党方々とわれわれの論争焦点になっておるということだと思います。そこで政府としましては、南に払うのが妥当であるという見解を表明いたしておるわけでございまして、それにつきましては、どうして南に払う方が妥当であるかということになろうと思います。(石田次男君「それはまたあとでお伺いします」と述ぶ)それでは社会党とそういう意見対立があるという事実は私も承知しておるわけでありますが、従ってわれわれの考え方社会党方々と事実認識の上において違うということであろうと思うのですが、その点、まあさらにお聞きをいただけば、申し述べたいと思います。
  19. 石田次男

    石田次男君 今のお答えを伺うと、やはり問題の焦点は、この南の政府妥当性、ここのところにかかってくることは認めていらっしゃるように思いますが、それでよろしゅうございますか。
  20. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) はあ。
  21. 石田次男

    石田次男君 それじゃ次に移ります。  そうしますと、支払い金額とその内容につきましては、これもいろいろ疑問がありそうですが、社会党委員方々相当質問していらっしゃいますし、また私一人が膨大な官僚機構である外務省相手に聞いて見ても、そんなに突っ込んでいけませんから、この点はやめておきます。ただ政府としましては、的確な正しい賠償額算定基準となるべき正確な戦争損害額日本側独自の立場で把握することができなかった、これはもちろん南北対立とか、戦後十四年にたっておるとかいう、こういう二つの条件が嫌になっておりまして、これにさえぎられてやむを得ないと思いますけれども、その点は同情申し上げるのですが、事実としては残念ながら正確な自主的な損害額資料を持つことができなくて、そのために疑問をよけい生んでいるように観察されるのですが、この点はいかがですか。
  22. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知通り政府日本政府の見ておる算定額というものを資料としてお出しいたしませんことが疑問を生んでおるということは、あるいはそういうふうに考えられるかもしれません。ただ日本政府がそうした正確な資料を出し得ないという理由は、今日まで申し上げておりました通り、事実上の問題として、これらの物的並びに精神的苦痛というものを計量することは非常に困難でございます。従って個々にそういうものを計量するということは、ほとんど不可能に近いわけであります。また不可能に近い中でそれをやりまして、かえってこの交渉に当たって日本が有利にそれを展開するというわけには参らないのであります。従ってこういう交渉に当たりましては、従来ともそういう的確な資料を集めて、そうしてそれを集大成するということなしに仕事を継続してきた、こういうことでございます。
  23. 石田次男

    石田次男君 先日ちょっとお伺いしていましたら、南ベトナムの方から出してきた資料土台にして、それをもとにして検討なさったようですが、それに間違いございませんか。
  24. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の場合におきましても、南ベトナムから出して参りました資料を一応参考にいたしまして、そうしてやりましたことは事実でございます。
  25. 石田次男

    石田次男君 向こうから出てきたのが一応こっちの資料の基本になっているので、そのほかはあまり独自の調査で出た資料というのはなかったように伺っていますが、いかがでしょう。
  26. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん南ベトナム共和国から出て参りました資料等を判断いたしますために、各方面にいろいろ調査をいたしたことは事実でございます。しかしながら、いろいろ調査をいたしましても、必ずしも的確な数字がつかめません。しかしそれらの調査を一応念頭に置きまして、ベトナム側の出してきた資料をわれわれも検討し、査定することにいたしたのは、これは事実でございます。そういう固まった集大成されたものは作っておらないということを申し上げておるのであります。
  27. 石田次男

    石田次男君 それはどちらのほうの比重が重いんでしょうか。
  28. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん賠償を払います場合に、日本側としては、先方からの申し出を尊重はいたしませんければなりませんけれども、しかし賠償を払う日本といたしましては、日本側の考えておりますこと、あるいは日本側が乏しいながらも調査いたしましたことを基準にして、向こう側資料を判断するということは当然のことでございますから、日本側がこの査定に当たりましても、そういう交渉に当たりましても、そういう態度をとってきております。   —————————————
  29. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) ただいま委員異動がございましたから、御報告申し上げます。小林孝平君が委員を辞任され、その補欠として坂本昭君が選任されました。   —————————————
  30. 石田次男

    石田次男君 今お伺いしているのは、賠償額の方ではなくて、そのもとになる戦争損害額の方の資料なんです。実際の結論としては、こっちで調査した方に比重があるのか、または向こうから出してきた方に比重があるのか、外務省の方の取り扱い取り扱いの上の比重をお伺いしているのですが。
  31. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん日本賠償の責任を果たすわけでありますから、向こう側の出してきたものを、ただそのままに承認するわけにはいかぬのであります。従って損害額算定に当たりましても、乏しい調査を集めながら、それを念頭に置いて査定して参るわけでありまして、日本側の方のウエートが重いということは申すまでもございません。
  32. 石田次男

    石田次男君 どうもはっきりお答えいただけないで困るのですがね。そうすると、とにかく相手であるベトナムの方から出てきた資料相当大きな、何といいますか比重を占めておる。そうしますと、その分だけはやむを得ない立場資料でありまして、相手の国から与えられた資料でございまして、これが日本側算定資料土台になっているわけですが、相手から与えられたものでは、どうせ相手に有利なにおいがつきまとうにきまっているわけであります。そこで、南ベトナムの方から損害額と称して日本に与えてよこした資料について、それをより正しく是正して、日本側として自信の持てる資料にするために政府外務省はどのような努力を払っていらしたか、そこを国民に明らかにする義務があると存じます。一つ国民全体が納得できるように、どのようにその資料もとにして日本側自信の持てる資料にしたか、ここの努力一つあかしていただきたいと思います。
  33. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私が先ほど申しましたように、ベトナム共和国から出して参りました資料というものは、それは向こう側の主張でありますから、従ってこれを日本側考え方でもって是正して見て参りますこと、すなわち日本側考え方中心にしてこの交渉をやったことは申すまでもございません。そういたしますためには、むろん損害額というものを決定的につかみますことは困難でございますし、いずれの賠償の場合におきましても、終戦後の混乱時代もございます。従って現地調査等を一々いたすわけにはむろん参らぬのでありまして、しかしながらベトナムにおきましては日本公館もできておりますから、公館を通じて概略の調査もいたしましたし、あるいは当時の状況等につきましては、帰還された方々についてそれぞれ多数の方に御意見等も伺って、そしてわれわれとしてはそういうものから判断して、われわれの判断をきめて参ったわけでありまして、その点につきましては相当努力をいたして参ってきたと、こう考えております。
  34. 石田次男

    石田次男君 この賠償額をきめるに対して損害額もとにして話し合いをする、それももちろんあったと思いますが、どうせ賠償額というものは、戦争損害額には及ばないのだから、そういようなことで、賠償額をきめるには両方の政治折衝で折れ合いをつけた、そういう面はございませんか。
  35. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん今回の賠償に当たりましても、他の賠償のときの例と変わっておるわけではございません。ことに損害というよりも、与えた苦痛というものは、これは金銭的評価をいたしがたいものでありまして、そういう面の解決については、今お話のような政治折衝と申しますか、そういう言葉が正しいかどうかはわかりませんが、そういう一般的な意味において政治的に問題を解決するということになろうと思います。なお日本側といたしましては、かねて申し上げております通り、この折衝に当たりまして、やはり日本の財政上の負担能力というものも考えて参らなければなりませんし、また他の賠償請求国とのつり合いということも念頭に置いて参らなければなりません。そういう点は損害といいますよりは、今のお話のいわゆる一般的政治的な観点に立ちまして問題の解決をはかったということでございまして、従って政治的な観点で問題を解決したことはむろんでございます。
  36. 石田次男

    石田次男君 支払い金融支払い内容については以上でやめておきます。  次に、支払いの時期の問題に移りたいと思います。政府はこの賠償を先に延ばすことはいけないと主張しておられるようですけれども、なぜ延ばしてはいけないのか、今まで伺ったところでは、その理由は、一つ義務上の問題として、南北統一の見通しがつかない将来まで延ばすことは国際信義に反する、何べんもそうおっしゃっているようでございます。また、もう一つ理由は、南を正統政府と認めていることと矛盾するから払わなければならないのだ、こういう法理論でおっしゃっているように思われるのです。この二つをあげていらっしゃるようですが、それでよろしいか、もし間違いや不足があったら、そこを直して簡単に項目をあげて、即刻に払う必要性、延ばされない理由を説明していただきたい。
  37. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 大体石田委員の言われました点に尽きると思うのであります。われわれといたしましては、お話のように南北統一ができますことは望ましいことでございますけれども、今日まだそういう状況には容易に達し得ないという実情から見ますと、われわれとしてはサンフランシスコ条約義務を長年にわたって放置し、向こう側の要求を拒絶して参ることは適当でないのでありまして、すでに交渉も七年以上も継続いたしております。従ってわれわれとしてはそういう義務を果たしますことが適当と思います。むろん大きな観点から申せば、将来戦後処理というものを日本としても一日も早くやって、そうして少なくとも前向きの外交に進むべく努力するというような準備をしなきゃならないと思うのであります。戦後の処理というものはできるだけ早く片付けたい、こういう大きな観点もございます。
  38. 石田次男

    石田次男君 それでは、一つには、国際信義に反しないという正当な理由があったら、支払いを延ばしても差しつかえないと、こういうことになってきませんか。
  39. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん、国際信義の問題というのは、サンフランシスコ条約に調印したという結果起こってくる義務をわれわれが一日も早く履行するということが、国際信義を立てていきます上において必要だと思うのであります。ことに、ベトナム共和国をわれわれは正統政府として認め、サンフランシスコ条約に調印いたしておりますから、それを通じて全ベトナムに払いますことは、日本国際信義を立てるゆえんだと思っておりますので、その意味から申して、われわれはそういう処置をとって参るわけでございます。
  40. 石田次男

    石田次男君 外相のおっしゃることは、長い間伺ってきまして、よくわかっておりますから、そうではなくて、支払いのためには国際信義を重んずる。一つには、南を正統政府と認めているから、こういうふうにおっしゃっているわけですが、それでは、一つには、国際信義に反しないというはっきりした正当な理由ができれば、延ばしてもあながち差しつかえないのじゃないか、こう思われるのですが、どうでしょう。
  41. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) やはりこうした義務ことに戦争後の処理というものは、できるだけ早く解決をいたすべきが適当であろうと、こう考えておりますので、そういう意味においては、できるだけ早く解決すべきではないかと、こういうふうに思っております。
  42. 石田次男

    石田次男君 政府のおっしゃることはそうなんですがね。これからいろいろ議論を重ねていって、もし国際信義に反しないんだ、そういうような面が出てきたら、延ばしたって差しつかえないでしょう。
  43. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん、時期をいつにするかということは、いろいろな御見解があるかとも思いますけれども、すでに平和条約に調印いたして以来七年以上も経過いたしております。従って、終戦後すでに十三年も経過しておるのでありまして、現在としては、できるだけ早くこれらのものを片づけますことが一般的な国際信義を保つゆえんだと、こう私どもは考えておるわけでございます。
  44. 石田次男

    石田次男君 外相は、早く払うのが国際信義を立てるゆえんだと、こうおっしゃっていますが、そうではなくて、それはもちろん、いろいろ考えてそうおっしゃるのでしょうけれども、しかし、延ばしても国際信義に反しない、そういうような具体的な議論が成り立ったならば、延ばしても差しつかえない、そういうふうには考えられませんか。
  45. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) まあ早くするか、おそくするかというようなことは、むろん若干それは幅はございましょう。しかし、やはりわれわれとしては、できるだけ早くやることが国際信義に応ずるゆえんだと、こう考えておるわけでございます。
  46. 石田次男

    石田次男君 何べんお伺いしても同じですね。じゃもう少し砕いて参りますけれども、先に申し上げた通りに、この外交問題を考えるには、法理論一点ばりでもおかしくなりますし、また、そうかといって、実際論ばかり振り回しても、もちろん片寄るわけでございます。さらにその上に、外交全体の将来も考えた政治論的な立場も加えまして、法理と実際、政治の三つの論義を重ねまして、このかね合いの上で考えたら、より正しさが求められると考えられるのでありますが、この三点から、角度を変えて練り直してみますと、どうも政府のおっしゃっている国際信義論は、片寄っているように思うのでございます。南北統一の見通しがつかない、予見されない将来まで支払い義務の履行を延ばすのは国際信義に反する、こうおっしゃっているのでありますが、これでは簡単過ぎて、一見なるほどと思われるのですが、しかし、よく検討してみますと、本質が言葉のあやの中に隠されてしまっているように思うのであります。そこで国際審議そのものを考えて、砕いてお伺いしたいと思います。  まず賠償問題、これは、サンフランシスコの平和条約から端を発しているのですから、わが国が支払い義務を履行するかどうか、その点については、総じては世界全体が見ていますし、別しては平和条約調印の諸国が見ているわけでございます。だから、賠償もやめた、払わないと言えば、これは世界の国際間の信義に反するわけでありますが、また、相手であるベトナムに対しまして信義に反することになるのでありますが、また、ベトナム国民全体に対して信義に反するのでございますが、しかしながら、こっちは払うのだという態度をはっきりしているのですから、しかもその上に、肝心の相手政府がどうも疑問があるので、万人が見て、相手支払いを受け入れるに足りるりっぱな政府になるまで待ってくれ、支払い義務の履行の責任上ちょっと待ってもらいたい、こういうことになるのなら、いくら延びても国際信義に反しないと、こう考えるのですが、いかがでしょう。
  47. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本としてサンフランシスコ条約義務を履行します場合に、相手政府がしっかりしてないとか、しっかりしているとかいうことを非常に強く主張するわけには参らぬのじゃないかと思うのであります。むろん、相手政府がりっぱな政府であることが望ましいことは望ましいわけでございます。そういう意味において、われわれもあれにいたしますけれども、しかし、日本自身が相手政府が強いとか弱いとか、いいとか悪いとかいうことを言うのは、いささか僭越ではないかと、こういうふうに考えております。
  48. 石田次男

    石田次男君 相手政府が悪いと言っているのじゃないのですね。それから、現実に南北二つ政府がありまして、そこから何べんも議論が繰返された通りに、どうもすっきりしない。ですから、もう少しすっきりするまで、こっちの義務履行の責任上待ってもらいたい、こういうことならば、少しくらい延びたってかまわないのじゃないでしょうか。
  49. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今日実際問題としては、相当延びてきております。また、御承知通り、ロンドンにおきまして、ジュネーブ協定の議長国でありましたソ連とイギリスとが、この統一というものはなかなか困難だということを言っております。そういう実情からみまして、私どもといたしましては、やはり早くこれを解決するためには、現在四十九カ国が承認しておりますような、われわれまたサンフランシスコ条約の調印国でありますベトナム共和国を対象にして、この問題を解決いたしますことが適当であろうと、こういう見地に立っておる次第でございます。
  50. 石田次男

    石田次男君 じゃ、もう少し突っ込んでお伺いしたいのですが、ビルマフィリピンやインドネシアの賠償は、ベトナムとは比較にならない多額のものでございます。日本は誠意を持ってこれを払う、そうきめた。この誠意は、世界中が認めていると思うのですが、少なくとも外相はそう信じていらっしゃるのだろうと思うのですけれども、どうでしょう。
  51. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろんビルマフィリピン、インドネシア等にわれわれが賠償義務を履行したことについては、日本がやはりサンフランシスコ条約の責任を果たしていくという意味において認められていると存じております。
  52. 石田次男

    石田次男君 まあよけいなことですけれども、もし藤山さんがこの三国に対して払った分の義務履行の誠意、国際信義というものを相手の国や第三者の国々がろくに認めてくれない、こういうふうに見られたら、これは大へんです。ベトナム賠償についての国際信義云々なんということは、とても即時支払い踏み切り理由とはならないことになってしまうわけであります。ですから、世界に対する国際信義はすでに十分に立っている。だから、あとベトナムに対する支払いが、極端におかしくないならば、延ばしても少しも世界各国への信義は欠けない。現に今日まで相当延びているのですから、ここ一年、二年、三年くらい延びたからといって、そう国際信義に欠けるものじゃないと思いますけれども、どうでしょうかな。また、現実にベトナム南北に分かれておりますし、南へ払っても━━たとえこれから工業センターを作っても、ダニム・ダムを建設しても、その工業センターの生産品にしましても、ダニムの電力にしましても、絶対北には及ばない。これはだれが見ても及ばないのでございます。ところで、肝心の戦争被害というものは、南じゃなくて、大部分は北に与えたものでございます。また、ベトナム国民の大体六〇%は北の力にいまして、南の政府反対をしています。北からは、現にせんだっても参議院へ抗議を申し入れてきている。  また、南と北の政府は、法理論はしばらくおいて、実情を比較してみますと、どっちにも軍配を上げられないような状態にある。むしろ国力としては北の方が強い、優勢だと、こういうふうにさえ伝えられているのでございます。そうしますと、少なくとも多額の金を払って、六〇%の国民から反感を買うような賠償はまだ払えない、こういう世論があります。この世論には、十分に道理があると思うのです。そして急いで払えば、逆に半数以上のベトナム国民に対する信義に反する、こういう声も否定できなくなってしまうわけであります。何もこれは、共産主義者とか、そういったシンパの人たちの声じゃなくして、厳正な学者の人たちが研究した上での声であります。ですから、南への賠償を延ばすかわりに、南に対しては、経済援助とか、借款協定とか、こういうことで十分南を尊重していくと、そういうような善後処置さえつけられるならば、支払いの無期延期論も十分成り立つと思うのですが、どうでしょう。
  53. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 若干石田委員のお説と平行になるかもしれませんが、南の方と経済協力その他をやっていけば、賠償は無期延期になってもいいというふうに考えますことは——私は必ずしも適当だとは考えておりません。むろん、現実の事態が残念な状態にありますことは、私どもも認めざるを得ないのでありますが、しかし、同時に、賠償を通じまして、これが将来建設的なものに寄与して参りますれば、全ベトナムの人たちにその恩恵が将来は必ず分け与えられるものでありまして、本質的に北に対して悪影響を与えるものとは考えられないのでありますから、そういう意味から考えましても、やはりわれわれとしては、できるだけ早い時期にそうした問題を取り上げまして、そうしてやって参りますことが適当ではないかと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  54. 石田次男

    石田次男君 今のお答えですと、南へ払えば、将来恩恵は北にも及ぶと、そうおっしゃっていますが、はたしてそうでしょうか。十七度線ではっきり分かれている現在は、絶対北には及ばないと、これはわかっています。しかし、政府の方としては、この支払い理由として、どうも遠い将来まで南北統一する見通しがつかぬと、一面でこうおっしゃっているわけです。見通しがつかぬとおっしゃるならば、これはいつまでたったって及ばないのです。それを今、いつか将来南の賠償の恩恵が北に及ぶと、こうおっしゃっておりますが、それは矛盾しませんか。
  55. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん、この現状においてなかなか統一が困難だという事態がありますことは、先ほど申し上げた通り、であります。しかしながら、南を全体のベトナムを代表する政府と、われわれは認めておるわけであります。そこに賠償義務を支払うのでありまして、その支払われましたものが建設的な方面に使われますれば、必ず将来いつの時期にかは、その影響が北にも及ぶということは、これは当然考えられることだと存じております。
  56. 石田次男

    石田次男君 政府は、早期支払いを言うときには、もう半永久的に統一の元通しがつかぬと、こうおっしゃるのです。それで、今の御答弁では、払っておけば将来必ず北に行くと言うのですが、その将来は、一体いつの将来なんですか。
  57. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) そういうような時期的な問題は、むろんむずかしい問題でありまして、いついつとは申し上げかねますけれども、むろんこれは、できるだけ早くわれわれも統一されることが望ましいことでありまして、また、一つのいわゆる政府ができることが望ましいことであることむろんでございまして、そういう意味から言いますれば、われわれとして、永久にそういうことが起こらぬと考える必要はないわけであります。われわれは、現在の実情に応じてわれわれの賠償責務を果たしていくということ、しかもそれは、われわれとしてサンフランシスコ条約の責任を果たすことでありますから、その意味において、できるだけ払える時期にこれらの責務を果たしていくという一方の面もあることむろんでございまして、そういう意味において考えておるわけでございます。
  58. 石田次男

    石田次男君 しかし、そうお答えになりますけれども、片方では統一の見通しがつかない、こうおっしゃっているのですね。そうすると、南への賠償の恩恵が北に及ぶという見通しもつかないのじゃないですか。これは矛盾しませんか。言葉のあやじゃだめですよ。実際問題として……。
  59. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私どもは特に矛盾しておるとは思ってないのでありまして、将来統一されないと、だれも断定する時期には達しておりません。統一が非常にすぐには困難だということであります。統一されないという断定は、またできておらぬのでありまして、そういう意味からしても、矛盾しておるとは思っておりません。
  60. 石田次男

    石田次男君 しかし、さっき伺ったら、南北統一の見通しがつかない将来にまで延ばすのは国際信義に反すると、こうおっしゃっておるのですね。そうすると、どうも恩恵が北に及ぶというのは詭弁になりますな。そうして、かりに一歩譲って、無期延期論は、これはひどいとしましても、もう少し情勢を見ていても、少しも世界からの非難はないと思われます。また、そのうちに二大陣営の対立の雪解けが実際に端緒につかないとは限りません。これは将来の問題ですから、どっちともきめられないわけです。また、アメリカの大統領選挙から、どんな情勢が生まれてくるか、これもわからない。われわれの推測は、単に「だろう」にすぎないわけですね。また、ベトナム南北政府のどっちかがぐんと片方を引き離して成長するかもしれない。また、政変か何かがきっかけで、南北対立そのものに効きができてこないとも限らない。ですから、統一の見通しがないと、こう言って、早期支払い理由に立てられる政府見解は、これは独断論になるのじゃございませんか。ですから、もう少し様子を見ていても、世界に対する信義というものは少しも欠けるものではないと、このように考えられますが、どうでしょう。また、全ベトナム人に対する信義にも欠けないわけであります。また、今後の外交のもって行き方一つでは、南ベトナム政府に対する信義も欠かなくても済む方法がある。また、日本国内の反対勢力に対して、決定的な回答を与えられないでいる政府の力にもなるんじゃございませんか。ですから、もう少し情勢を見なさいというのは、少なくとも即刻支払い説よりはすぐれた考え方だと思いますけれども、いかがでしょう。今払わなければ南を正統政府として承認していることと矛盾する、この根拠についてもおかしいのですけれども、この点は南北の比較論が大きくからまっていると思いますから、また別にお伺いいたしたいと思います。もう少し情勢を見ても少しも国際審議に反しない、こういう意見と、今払うのはかえってよくない、こういう世論について、お答えいただきたいと思います。
  61. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) やはり、私どもとしては、サンフランシスコ条約義務を履行するわけでありますから、いかなる時期においてもその承認をいたし、あるいは署名をいたした国との間に、この問題を解決いたさなければならぬのであります、そういう意味におきまして、われわれは今のベトナム共和国を全ベトナムを代表する政府として認めて、これと交渉いたしておるわけであります。従って、どういう事態になりましても、それだけは解決していかなければならぬことは、一面において当然のことなんであります。そういうことから、われわれとしては、むろん国際信義立場は考えて参らなければならぬわけであります。むろん、一年とか二年とかいうよりも、できるだけ早く解決したいと考えております。
  62. 石田次男

    石田次男君 どうも、政府の立てていらっしゃる国際信義とかいうのは非常にあぶないのですけれども、次に移ります。  実は、この支払い延期論なんかが出てくるところが、ゴ・ディン・ジェム政権の実情にあるわけです。また、そのほかの反対論の出所も、南方政権そのものの性格にあるのです。ですから、ベトナム賠償根本は、初めに申し上げた通り支払い相手として今のゴ・ディン・ジェム政権が適当かどうか、ここにかかってくるのじゃないかと思います。そこで、お伺いしたいのですが、急いで払おうという藤山さんは、今のゴ・ディン・ジェム政権は支払いの受け取り手として十分適当な内容と資格を持っていると考えていらっしゃるのか、またはいろいろ不備な点もあるのだが、現状としてはやむを得ない相手だ、こう考えておられるのか、またそのほか別に考えていらっしゃるのか、その辺の御所見をお伺いしたいと思います。
  63. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん、われわれとしては、歴史的過程から申しましても、あるいは国際間の認められております立場からいいましても、特に不備な相手だとは考えておらぬのでございます。ただ、第二次大戦以後それぞれ独立した国が、なかなか先進国のような状況になっていないことは、これはいずれの国でもいろいろあるわけでありまして、そういうことだけを指摘するわけには参らないのではないか、こう考えております。
  64. 石田次男

    石田次男君 不備な相手でないとおっしゃっておりますが、それでは、十分適当な内容と資格がある、こういうふうに考えていらっしゃるのですか。
  65. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん、私どもは、先ほど申し上げましたように、建国の歴史的な過程から申しましても、あるいは国際社会における認められております点から見ましても、特に不備な相手だとは考えておらぬのであります。ただ、それぞれの国の状況というものは、今申し上げましたように、先進国のように独立した早々の国が必ずしも十分な体制を持っていないということはございましょうけれども、しかし、われわれがかねて申し上げるような見地からして、特に不備であろうとは考えておりません。
  66. 石田次男

    石田次男君 そうすると、特に取り立てて不備な相手ではないが、また十分な体制は持っているとは思われない、こういうような、どうもあいまいな御返事で、納得しかねます。そこで、この南方政権をいろいろ論議していきたいと思いますが、その前提として、一つだけ法理論を伺いまして、それで質問を打ち切っておきます。  一九四五年の春に日本軍がインドシナ三国のフランス軍を武装解除しまして、それとともにバオダイが日本政府日本軍の承認と援助でベトナム帝国の独立を宣言した、こういうことになっておりますが、この通りで誤りはございませんでしょうか。また、もしこれが事実ならば、この政権はかいらい政権ではございませんか。世界には通用しない、国際法上では通用しない政府ではなかったでしょうか。
  67. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 終戦直後でございますか、そのような事実があったという報道、情報と申しますかは聞いております。
  68. 石田次男

    石田次男君 直前……。
  69. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 直前そういう事実があったということは聞いております。ただ、それに対しまして、日本政府としてそれを承認したとか、日本政府として何らそのような態度をとったことはございません。また、法理論といたしましても、それは占領中でございますし、いかなる場合でも、主権はフランス本国と申しますか、フランスが主権を持っている地域でございますから、独立の場合はフランスと話し合いの上で行なわるべき問題だと考える次第でございます。
  70. 石田次男

    石田次男君 実際、バオダイがベトナム帝国独立を宣言した、これは間違いございませんか。
  71. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) そのような事実があったということは承知いたしております。ただ、それは、ただいま申し上げましたように、国際法上の効果としては何ら効果があるものではない、このように考えておる次第でございます。
  72. 石田次男

    石田次男君 日本軍はそれを応援をしていたのですか。これはかいらい政権ですよ。
  73. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 当時、日本が正式にこれを取り上げて、承認したりあるいは応援したという事実はございません。これは現地におきまして、事実問題としてそういうようなことが行なわれたという事実は開いております。
  74. 石田次男

    石田次男君 その後一九四五年の八月に日本の無条件降伏とともに、ホー・チミンがハノイでベトナム民主共和国の建国を宣言しております。その直前に当たる八月二十四日にバオダイは、情勢が悪いと見て、被侵略国の王となるよりは独立国家の一市民たらんと、こう声明して退位したと伝えられておるわけですが、間違いございませんか、事実として。
  75. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) そのような事実がございましたことはございました。
  76. 石田次男

    石田次男君 また、その面後に、ホー・チミン等の要望で、バオダイがホー・チミン政府政府顧問に就任した。これは事実ですか。また、その後香港に亡命しておるが、これはいつですか。
  77. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) ホー・チミンの顧問となったということ、その事実はございます。それから香港にも、いつでございましたか、香港の方に行ったということも事実でございます。
  78. 石田次男

    石田次男君 それはいつですか。
  79. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) ちょっとはっきりした事実、手元に見つかりません。後刻また調べて……。
  80. 石田次男

    石田次男君 そうすると、火曜日あたりまでお願いします。  ホー・チミンの建国宣言の翌年ですね、一九四六年の三月に、フランスはホー・チミンのベトナム民主共和国に対して、自身の政府、議会、軍隊、財政を有する国として、フランス連合のワク内における独立を承認した。これは事実でしょうか。
  81. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) ただいま御指摘の点は、一九四六年三月六日の予備協定と申しますか、その協約のことだと考えております。ただ、そこで独立を承認したという独立という言葉はございません。自身の政府、議会、軍隊、財政を有するフランス連合のワク内にインドシナ連邦を構成する自由国として承認する。こういうような内容であります。
  82. 石田次男

    石田次男君 その後、同じ一九四六年の十二月に、フランスはベトナム民主共和国政府機関などの接収を要求したために、一九五四年七月のジューネーブの停戦協定のときまで、フランスとホー・チミンとの泥沼戦争が続いたが、その戦争のまっ最中である一九四八年の春に、香港に亡命していたバオダイをサイゴンに呼び戻しまして、臨時政府を結成させた。そうして、翌年の一九四九年三月にバオダイのベトナム国を承認したが、実権は何一つ与えていなかった。これは事実でしょうか。
  83. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) ただいまの点は、一九四八年の六月の六日双方共同宣言を署名いたしておりまして、そこでフランスは厳粛にベトナムの独立を承認いたしております。その後、翌年の四九年の三月八日に、さらに詳細な独立協定締結している次第でございます。
  84. 石田次男

    石田次男君 その詳細な独立協定というのですかね、それはどんな内容になりますか。司法権とか軍事権とか、外交権とか、そういう点はどうなっていますか。
  85. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) ただいまの協定内容でございますが、司法権その他軍事権、これは制限を受けております。ただ、制限と申しますのは、フランス本国とベトナム国と双方がフランス連合を構成いたしまして、そのフランス連合のワク内で諸般の政治を行なうというふうな原則規定になっておる次第でございます。
  86. 石田次男

    石田次男君 諸般の政治内容は。
  87. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) まず、外交権でございますが、外交は、ただいまのフランス連合のワク内におきまする一般の方針に従って外交が行なわれる。それから、司法権につきましては、フランス人とベトナム人相互間の問題につきましては、混合裁判所というのができまして、そこで処理されるというような規定でございます。それから、軍事権におきましては、ベトナムも軍隊を持つ、しかし、ここしばらくの間は軍隊の総指揮権はフランス軍が掌握するというような大体の原則的規定でございますが、そのような関係になっている次第でございます。
  88. 石田次男

    石田次男君 今の御答弁は、私の持っている資料とちょっと違うのですがね、どちらがほんとうになってきますやら。承認したというのは事実なんですが、それから五年たって一九五四年の五月にジュネーブで停戦会議が開かれた、あとの六月に、初めてバオダイのベトナム国に対して司法と軍事と外交の諸権限を譲って、ベトナムの完全独立に関する条約とフランス連合との協力に関する条約に仮調印したが、当時からのフランスの相次ぐ政変で、ついにフランス国会で批准されずに現在まできておる、こういうふうになっておるんですが、これはどうでしょう。
  89. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) その点も事実でございます。それは一九五四年六月四日の協定であろうと考えます。しかし、この協定で初めて独立いたしたわけではございませんので、先ほど申し上げました一九四八年、四九年の協定によりまして、正式の独立の承認が行なわた。ただ、その後ベトナム側もフランス連合のワク内におけるあり方について不満足でありました。従いまして、さらにそれを改定するために、この五四年の協定が結ばれた次第でございます。
  90. 石田次男

    石田次男君 批准の点は……。
  91. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 従いまして、批准は行なれずに、それは効力を発効せずに現在に至っておるわけであります。
  92. 石田次男

    石田次男君 効力を発効しなければ、軍事権、司法権、外交権はないですね。
  93. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) それは先ほど申し上げました一九四九年のエリゼ協定の規定が適用になるわけでございます。それから、先ほどの、バオダイが香港に行ったのは一九四六年の三月でございます。
  94. 石田次男

    石田次男君 どうもはっきりしないのですがね。一応条約の仮調印は済んでおるまでは一致しました。それから、批准せずに現在まできておる、こうなりますと、批准というものの意味がなくなるんじゃないですか。日本の問題でなくて、フランスの問題なんですけれどね。
  95. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 従いまして、その前の四八年、四九年の条約が有効であります。しかしまた、その後事実問題といたしまして、そこにございます権限もフランス側が逐次ベトナムに事実問題として移譲して参りまして、今日に至ってはそのような制限も全然なくなった次第でございます。
  96. 石田次男

    石田次男君 今日の問題はいいですが、要するに、フランスが初めてバオダイのベトナム国に司法権、軍事権、外交権の諸権限を譲ったのは一九五四年、こういうふうになるんです。そこからちょっと疑問が起こるんですけれども、ずっと申し上げてしまいます。そうしますと、フランスが、一九五一年にサンフランシスコ平和条約当時は、まだバオダイの政権に外交権を与えていなかった、こういう論も成り立つわけですね。そうしますと、バオダイ政府外交権がない。これはバオダイの方も承知しておる。バオダイ政権を四十九カ国が承認したのは一九五〇一年の二月ですから、その承認というのは外交権のないままの政権としての承認で、サンフランシスコ平和条約締結当時はそのままの承認状態で臨んでいるんじゃないか、こうも考えられるわけです。そうなりますと、バオダイ政府が対日平和条約に調印に来たというのは、日本の方から見れば招かざるお客であったし、押しつけられたお客であったという疑問が出てくるわけです。国際法の上から権利のない国が調印に来たということになりませんか。
  97. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) ただいまの問題でございますが、一九四九年のエリゼ協定の規定でございます。これは御指摘のように、ベトナム締結した条約が最終的に有効になるには、フランス連合の機関でありますオー・コンセーユと申しますか、高等理事会と申しますか、それの承認を受けることになるわけでございますが、事前にその承認を受けまして、それによって有効になるわけでございますが、そのような制限と申しますか、協力関係がございましても、それによって外交権がないというふうには解せられません。十分な外交権があるわけでございますが、内部におけるフランス連合の組織としてそのような手続がとられている、こういうふうに解している次第でございます。
  98. 石田次男

    石田次男君 最後に一つ。そうしますと、一九五四年の六月に初めてベトナムに司法、軍事、外交の諸権限を譲って、ベトナムの完全独立に関する条約とフランス連合の協力に関する条約に調印した。これは全然むだなんですか、国際法上何の意味もないのですか。
  99. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) この条約によりまして、その後そのような協力関係と申しますか、内部的な手続が全部解除になったというわけではございません。これは発効いたしません事情でございます。その後、事実的にフランスとベトナムとの関係はエリゼ協定を離れて処理されて、そうして現在に至って完全に独立になった、━━完全と申しますか、そのような手続はなくなってしまった、このように解しております。これは、この五四年の協定と申しますのは、そのフランス連合の内部におけるベトナムのあり方についてさらに再考慮しようというフランス連合との関係に関する条約、これが今の条約で、この条約が常非に主体をなしていると考えますが、これにつきましても双方の意見が一致せずに、ついに発効を見なかった、このように考えております。
  100. 石田次男

    石田次男君 エリゼ協定と、今申し上げたこの条約との関連ですが、そうしますと、一九五四年当時にはバオダイのベトナム国がはっきりした司法、軍事、外交の諸権限を持っていたと、法的にはっきりそう言えるのですか。
  101. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) その点は、やはりエリゼ協定で、先ほど申し上げたような相互制限または協力関係があったわけでございます。それがずっと続いてきておりましたが、途中におきまして、一九五四年この条約ができます前後を通じまして、ベトナム側もそのようなフランス連合のワク内の手続規定があることは非常に不満であったというふうに聞いております。従いまして、その後の折衝を続けていくうちに、事実上そのような拘束を離れまして、そうして現在においては完全な独立となった、このように解しております。
  102. 石田次男

    石田次男君 事実上離れたと言いますが、それは今のゴ・ディン・ジェムになってからじゃないですか。今聞いているのは、バオダイの方なんですが。
  103. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) バオダイ時代からそのような動きはございまして、そうしてバオダイからゴ・ディン・ジェムにかわっていくうちに、漸進的発展、変更と申しますか、そのような変更が行なわれてきている次第でございます。
  104. 石田次男

    石田次男君 最後にもう一つ。事実事実と言いますけれども、それじゃ国際法というのは全然役に立たなくなってくるように思うのですがね。
  105. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 今御指摘の点、いずれの場合におきましても、四八、九年の方にできましたエリゼ協定でございますが、この協定におきまして、すでにもう外交権は完全に認められているとわれわれは考えている次第でございます。
  106. 石田次男

    石田次男君  われわれはそう考えているとおっしゃいますけれども、それならば、なぜフランスが一九五四年に至ってこの条約を結んだのですか。おかしいのじゃないでしょうか。これは、ないから結んだのでしょう。
  107. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 外交権は完全にございまして、そのような手続規定が、フランス連合のワク内においてそういうふうにしようという手続規定があったわけでございます。しかし、そのようなフランス連合のワク内に存在する仕方というのが、フランス側もベトナム側も十分に満足のいく問題でなかったもんですから、そういうふうなフランス連合のワク内の存在の仕方というのを再考慮するということがその後議せられまして、このような関係から協定草案というのができ上がったわけでございます。しかし、いずれにしましても、外交権と申しますのは当時エリゼ協定からでございまして、このような外交の制限または手続規定というのは、たとえば英連邦の組織内における各国なんかもおのおのそういう事態がございます。そのような意味合いにおきまして、ベトナムも当時からすでに外交権は持っておったと、このように考えております。
  108. 石田次男

    石田次男君 今のことは、ちょっと承服できかねることがございますので、時間がないと盛んにまわりから責められておりますから、きょうはこれでやめておきますが、もう一回その点お聞きしたいと思いますので、詳しい資料一つ提出していただきたいと思います。このエリゼ協定と今申し上げたこの条約の関係のいろいろの書類があると思うのです。その書類をぜひほしいと思いますけれども、大体いつごろ提出し、いただけますか。
  109. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) それに関連する資料は提出もいたしておりますが、ただいまのことをもう一ぺん検討いたしまして、もし不備なことがございましたら、さらに御提出いたします。
  110. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 今の御質問者の方からはごもっともの話だと思うのですが、政府は答えておられるのだけれども、どうもはっきりせぬもんだから、そういうことが起こるように私が聞いておって思うのです。それは、外交権の存否それ自体と、存否の問題が決した後にそれの更新についての意見とか一定の内部的な要件、そこをはっきりしておけば、その根拠を示されれば、今の問題は解明すると思うのです。
  111. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  112. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 速記を始めて。
  113. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 われわれは、ベトナム賠償の実態が、あるいは軍事工場を作るとか、あるいはマイクロウエーブに関連をするとか、ベトナムにおけるアメリカ軍等の軍事力の強化に使われる、そういう意味においては、これからの安保条約の改定、安保体制の強化というものと関連があるという観点から、ベトナム賠償について従来質疑をして参ったんでありますが、ベトナム賠償審議しております最中に、国連軍の行動に関連をして、吉田・アチソン交換公文が安保条約の改定後、新しい軍事同盟の締結後についても交換をせられるだろうということで、昨日来大きなニュースにもなり、あるいは国民の大きな関心になっておりますだけに、これについてお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、まず、吉田・アチソン交換公文と同じような交換公文なりあるいは了解が安保条約の改定に伴ってもなされるのかどうか、これをまずお尋ねいたしたいと思います。
  114. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の安保条約の改定にあたりまして、従来ありました国連軍に対する協力という問題につきましての吉田・アチソン交換公文というものは、存続されることになろうと思っております。
  115. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 そうすると、ワシントンの大使館筋から報道せられました吉田・アチソン交換公文の内容は、新安保条約に関連をして、条約に織り込まれるかあるいは交換公文になるか知らぬけれども、取り入れられるという報道を肯定をされました。そうすると、従来政府は、事前協議ということで、アメリカ軍の行動は日本人のあるいは日本の知らない間に勝手に行動を始めて戦争日本を巻き込む、こういう危険があるというわれわれの主張に対して、いや事前協議によって日本はそうした戦争の危険への巻き込まれ方はこれを阻止することができる、協議は同意を含むのだから、そこでわれわれは同意をしない、従って勝手な行動はできぬ、あるいは戦争の危険に突入することはないという答弁をしてこられましたけれども、国連軍として行動するならば、これは協議の対象にもならぬ。従って、自由に日本に断わりなしに出動をし、あるいは朝鮮その他において戦闘行為を始めることができる、その後はあるいは対抗的な軍事行動がとられて日本戦争に巻き込まれる、こういう事態が起こってくるという心配は、これは単に心配だけではないのではございませんか。
  116. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の事前協議の問題を話します前に、日本の基地におります国連軍も事前協議の対象になるという原則的了解のもとに、私どもは話を進めておるのであります。その趣旨に従いまして今後のこの交換公文の取り扱いをいたしていく、こういうことでありますから、われわれとしては今のワクからはみ出しているというふうには考えておりません。
  117. 森元治郎

    ○森元治郎君 失礼だけれども、もう一回その前段の方を……。聞きそこなっておりますから。
  118. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の交渉にあたりまして事前協議の問題を進めて参ります場合に、国連軍として日本にあるアメリカ軍もこの事前協議のワクにかかるという原則のもとに、われわれは話し合いを進めておるのでありまして、最終的にその原則にのっとりましてどう交換公文を書き表わしていくかということは、今後の問題になります。
  119. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 そうしますと、今の答弁について二つお尋ねしたいのですが、一つは、条約ではなくて交換公文で車前協議を要件とする、こういう形の上は吉田・アチソン交換公文のようにこの交換公文でおやりになる、こういう点が一つあると思います。それをもう一ぺん確かめておきたい。  それから、もう一つは、国連軍の事前協議の対象になる、こういうことであったかと思いますが、そうですね。
  120. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の取り扱いにおきまして、重ねて申し上げますと、事前協議の問題を話しておりますときに、国連軍としてのアメリカ軍も事前協議の対象になる、そしてそれは朝鮮事変に関する限りであることは申すまでもないのでありますが、そういう原則的な了解のもとにこの事前協議というものを進めております。従いまして、この事前協議をどういうふうに書き表わすかということは、吉田・アチソン書簡の扱い方につきまして、その際それを明記していくということになろうかと思います。まだ条約及び行政協定問題点についてやっておりますから、今後の取り扱いになろうと思います。
  121. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 行政協定の一部を除いて、条約の内容についてはほとんど合意に達したと今まで言われましたが、実は重大な問題が残っておったということが、報道、また今の答弁によってわれわれは知るわけですが、交換公文の中でうたいたい、それから国連軍としてのアメリカ軍をも事前協議の対象の中に入れる。国連軍としてのアメリカ軍の範囲について今ちょっと触れられましたが、その最後のところは別にお尋ねするとして、駐米の日本大使館から報ぜられているところによると、吉田・アチソン交換公文と同じような内容のものが、この安保条約の改定にあたって取りきめられるだろう、交換公文の中に織り込まれるだろうということを、こういうことを報道しております、そうすると、念のため交換公文を読み上げますと、「平和条約の効力発生の後に一又は二以上の国際連合加盟国の軍隊が極東における国際連合の行動に従事する場合には、当該一又は二以上の加盟国がこのような国際連国の行動に従事する軍隊を日本国内及びその附近において支持することを日本国が許し且つ容易にすること」、こういう国際連合の行動については、国際連合の行動に従事する軍隊を日本の国内及びその付近において支持する、それを日本が許しかつ容易にする、こういう意味内容が同じように織り込まれるかどうか。こういうことが言われているのですが、その内容については変更はあるのですか、それともないのですか。
  122. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま申し上げましたように、日本の基地におります国連軍としてのアメリカ軍が行動をする場合、その他の問題は別でございますけれども、その場合におきましては、事前協議のワクに入るという原則的な了解のもとに、私どもは事前協議を理解して、そして話を進めてきているわけでございます。その原則的な立場に立ちまして、吉田・アチソン交換公文を残すか、あるいはそれをどういうふうにするかという問題は、今後これを折衝して参るわけでありますけれども、吉田・アチソン交換公文そのものを残して、こういう訂正を加えることが適当であろうかと、現状では考えております。
  123. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 その内容が一番問題でありますが、一番最初にお尋ねしたときには、新聞その他で報道をせられておるように、駐米大使館筋が吉田・アチソン交換公文と交換公文の内容をなす今言う国連軍の行動を国内及びその付近において支持することを日本国が許し、かつ、容易にすると、国連軍の行動を支持する、こういう意味協定が安保条約改定に当たっても取りかわされるのかどうか、こういうことをお尋ねをしたわけであります。それに対して外相は、当初、そういう吉田・アチソン交換公文と同じようなものを安保条約の改定に当たっても交換公文として取りかわす、こういう最初の御答弁でしたから、内容についても関連をしてあとでお尋ねをします。今、内容はどうなるかわからぬ、こういうお話です。最初のあなたの御答弁と明らかに異なります。どうなんですか。
  124. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は別に違っておると思っておりませんが、先ほど来申し上げておりますように、何か新聞紙上に出ております国連軍が事前協議のワクからはずれるのだということは、国連軍としてのアメリカ軍が事前協議のワクからはずれるというようなことはございません。原則的に、われわれは国連軍としてのアメリカ軍がこのワクの中にあるという了解のもとにその話を進めてきておるわけであります。それをどういうふうに吉田・アチソン書簡を扱うかという問題については、先ほど来申し上げておりますように、今後の折衝によってそのまま生かして、そういう条件をつけて参るか、あるいは新しくそういうものを作るかという点については、まだ何とも申し上げかねるわけであります。今後の問題でございます。
  125. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 事前協議の対象にしないということは言っておられる。しかし、条件をつけて吉田・アチソン交換公文の内容を、この問題についての内容を生かすかどうかは今後の話だ、その問題は生かすかどうかというところに大へんな問題があるわけです。おわかりになりませんか。最初御答弁になったのは、私が安保条約の改定に伴って吉田・アチソン交換公文のような、この交換公文をさらに取りかわされるのかどうか、こういう御質問をしたところが、それは交換公文で同様な取りきめをしたい、こういうお話ですから、それでは、先ほど読み上げましたけれども、国際連合軍の行動を支持する内容を含む今度の改定に伴う交換公文でやられるのかと、こう言ったら、その答弁は少しぼけて参りました。はっきりして下さい。
  126. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 少しもぼけておるとは思っておりませんのでありますけれども、要するに国連軍というものは現状でも朝鮮事変に関する限りでございます。従って、吉田・アチソン交換公文をどういうふうに扱うかということはやはり問題として残ります。従って、それを扱います場合に、やはり連合軍としての米軍は事前協議の対象になるという原則的了解のもとに、それを扱って参るわけでございまして、その原則に従いまして協議に服すような処置が、生かして参ります場合にも、あるいは新しく作る場合にも当然起こって参ります。
  127. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それでは国連軍については、国連軍についても協議の対象にする——今は対象にしたいという表現のようでしたけれども、そうしますと、国連軍に関する交換公文は取りかわすだろうが、それは吉田・アチソン交換公文の中にあるような、国連軍の行動については支持するという建前から、従来協議は行なわれておらなかったけれども、しかし、今後については協議の対象にする、したいという希望を持っておられる、こういうことと、それからその点についてアメリカ側との間にすでに合意に達しておられるのかどうか、その点を一つはっきりして下さい。
  128. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知通り日本は国連によって平和維持を考えているわけであります。従って、国連の決議によりまして行動されるものに対しては、できるだけ協力をして参るということは、これは国連のメンバーの国としても当然のことだと思います。ただ今回の場合におきまして、国連軍としてのアメリカ軍が、あるいは日本にいるアメリカ軍がそういう行動をする場合もございますから、その場合には事前協議のワクに入るという原則的了解、意見の一致のもとにこの問題をどう扱うかということを定めて参る、こういうことでございます。
  129. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 国連軍についても協議の対象になるかどうかについて協議が成立しているのかどうか、その点はっきりしていませんでしたから、その点についてもう一ぺんはっきり御答弁願いたい。  それからもう一つは、国連の行動については協力をしなければならぬという建前を今お話しになったので、そうすると、協力をしなければならぬ建前に立っての協議というものは、これはノーということはおそらくないでしょう。協議というが、おそらく協議は形だけで、向こうの要望通りになるという、実態参がなるという点については、これは御否定にならないんじゃないですか。
  130. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん国連の決議によります行動については、国連を中心にしてわれわれは考えていかなければなりませんから、できるだけ協力することは当然でございます。これは世界のいずれの国も、国連の決議に対してはできるだけ協力していくという立場をとるのは、これは当然だと私は考えております。しかし、日本におります米軍が国連軍として行動する場合には、事前の協議のワクの中に置いて、そうして事前協議を受けるという原則的な、先ほどから申し上げておりますように、了解をもって事前協議の話を終わっているのでありまして、それをどういうふうにこの交換公文の扱い方において表現していくかということは、先ほど来申し上げましたように、これからやりますことでありますから、詳しく申し上げるわけには参らないのであります。
  131. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 前段の答弁は、合意の点ン……。
  132. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ですから、先ほど来申し上げておりますように、事前協議の交換公文の話をいたしますときに、国連軍としての米軍もこの事前協議のワクに入るのだという合意のもとに、話し合いのもとに決定をいたしてきているのでありまして、従って、そういう決定のもとにこの吉田・アチソン書簡をどういうふうにしていくかという問題は出てくるわけでございます。
  133. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 そうすると、国連軍の行動に対しては、これを支持するという建前から事前協議にかけると言われますけれども、その事前協議というものがきめて弱いものである。あるいはこれを事実上拒否する場合はないであろうというぐらいに、要求されたら、はい、すぐさようでございます、あるいは、同意いたします、ということになろう、その危険性は多分にあるという点はこれは明らかになりました。最後に、あとに同僚議員も質問いたしますから、最後に一つお尋ねをしておきたいと思いますが、国連軍というのは、これは朝鮮動乱に関係をしてきた国連軍に限るのか、それとも今後新たな事態が起こってそして行動する場合にも、国連の決議があれば、国連軍として同様に取り扱うということになるのかどうか、その点をお尋ねをしておきます。
  134. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この点はむろん今回の朝鮮事変に伴います関係においてでありまして、国連の総会の決議が中近東で国連単を使うとか、いろいろ、どの場合でも国連……、そういうものを含めての意味ではございません。
  135. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 これはあるいは中近東だとかなんとか、そういうものはもちろん問題にならぬです。しかし、アメリカで考えられいるNEATOあるいはSEATO等の関係については、これはそうはいかぬと思います。可能性について、たとえば従来の表現のように、日本国及びその付近において云々という点からいいますと、あるいは台湾であるとか、あるいは問題のベトナム等についても問題が起こって参ります。実際に、これらの地域、台湾の地域、あるいはベトナム等にも、日本の飛行場から戦闘に参加した、あるいは補給物資輸送をした点等の事実がはっきりございますから、日本の周辺において、これは安保条約の適用の地域の範囲の問題とも関連してくる重大な問題ですから、もう一度具体的に念を押しておきたいと思うのですが、朝鮮だけに限るのか、あるいは今後国連において決議がなされれば、あるいは国連軍ということになれば、それについて同様の支援を与えるという気持がおありになるのかどうか、その点についてあらためて確認しておきたいと思います。
  136. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 現在ははっきり申し上げて、国連におきまする朝鮮事変に対する決議だけでございます。将来国連がそういう決議をしたときにどういうふうにするかということは、これは別問題でございまして、新たな問題としてそれは考えるべきだと思います。
  137. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 どうも今の質疑応答ではっきりしないのですが、吉田・アチソン交換公文は存続をするのだというふうなことをお答えになっておりますが、申し上げるまでもなく、この交換公文は安保条約の署名に際して取りかわされた交換公文であります。それが存続をするということは、形式的にそのまま存続をするということになるのか、ただ、先ほどのお話通りに、その精神が存続をするということなるか、もし条約の体裁からいえば、その精神が存続をするのであるならば、必ず新しい新安保条約と同時に、同じ趣旨のものを盛り込んだ交換公文が取りかわされなければ、完全なこの趣旨を遂行するということにならないと思いますが、まず形式的なその点をお尋ねをいたします。従って、アメリカから、アメリカの駐米日本大使館から伝えられてきた電報によると、吉田・アチソン交換交文の趣旨を盛り込んだ新しい交換公文を取りかえることが問題になっているのだということを非常に明瞭に言っているのでありますが、この点はどういうふうになっておりますか。
  138. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私どもは先ほど来申し上げておりますように、朝鮮事変に関係する吉田・アチソン交換公文というものを、現在の実情においては存続させて、これに何らかの解釈を加える、交換公文をつけますか、あるいは新しい何か交換公文を作るかという問題につきましては、現在まだこれからの問題として討議いたします。しかし、先ほど申し上げましたように、いずれにいたしましても、夢前協議というもののワクの中に、日本にいる国連軍としての米軍が入るという原則的同意に達しておりますから、その限りにおいては同じだと考えております。
  139. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そこが非常な重大な問題だと思うのですが、事前協議の問題と、事前協議を前提にする限りは、さきの吉田・アチソン交換公文は、事前協議を前提にする限りは完全に矛盾をしたものであって、そういうことは成り立たないはずのものだと思うのです。その点は後ほど内容的にさらにお尋ねをして参りたいと思っておるのですが、従って、今おっしゃるように、これは新安保条約の締結に際して、新しいもしそういう趣旨を何とかお考えになるのならば、新しい交換公文をやられる以外に問題はないし、どうも今のお言葉によると、新しいものをおやりになるようにしかとれない、それがほとんど確定的なことじゃないのかと、こういうふうに思います。しかも、もしそういうようなことをおやりになるのならば、これはまた、それ自体として非常に重要な問題でありますから、これまであなたがもうほとんど原則的な問題は全部話し合いがついてしまったのだと、特に安保条約に関する限りは、行政協定の二、三の手続的なものはあるいは残っているかもしれない、それもほとんど済んだ、ただあとは文句の問題だけだというふうにして全部問題が済んだようにおっしゃっておりましたけれども、しかし、何らかの変更を加えて新条約改定、新条約締結に際する交換公文を取りかえられるならば、それはまだ重要な問題がいまだ済んでいないんだし、先ほどからの、従来これまでお話しになったことは、総理の話も、あなたの話も全くうそだと、非常に重大なことを隠しており、それがきまっておらないにかかわらず、すでにきまったように国会答弁をしておられるとしか思えないのですが、その点はどうなんですか。
  140. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほど申し上げました通り、私どもは原則としては吉田・アチソン交換公文を残して、そうしてそれに対して今申し上げましたような新しい重要な問題であります事前協議の問題によってこれを規制していく形をとることが適当だと考えておりますけれども、これからの交渉のことでございますから、その点はまだはっきり申し上げかねることでございます。
  141. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それならば、そこではっきりなったことは、この交換公文の扱い方に関する限りは、まだ完全な意見の一致を見ていないのだ、少なくとも今向こうのアメリカの大使館が報じておることが、新しいものを取りかわすというのがほんとうであるか、新しいものを取りかわすかどうか、とにかくこの問題は未解決のままなんだ、これが今問題になっておるのだということだけは間違いのない事実として確認をしてよろしゅうございますか。
  142. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほど吉田法晴委員の冒頭の御質問にもお答えしました通り、吉田・アチソン交換公文というものを残して、そうしてその原則的な重大なしかも問題であります事前協議の問題について、それをどういうふうにしていくかということが、これが一つの大きな点だと思います。従って、それらの問題について、何か私どもが特に秘めていたということはないのでありまして、事前協議の話をいたしますときに、それだけの日本としてのとるべき措置は原則的に話し合いをいたして今日まで来ておるのでありまして、従って、何か新聞紙上にありますようにワクから抜けているのだというような表現は私は当たらないと、こう考えております。
  143. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 その点はきまっておらない、そこが非常にはっきりしておると思いますが、それでは形式的な問題は、さらにもっとあとで追及をすることにして、内容の問題に入りますが、先ほどから吉田委員質問に対して事前協議の問題は国連軍をも対象にし得るのだ、これをひっくるめて事前協議の問題を考えているのだというふうなお話でありまするが、一体あなたは、それじゃこの交換公文なるものをどういうふうな、趣旨、どういう内容のものであるとお考えになっているのですか。これを正確に読めば、そういうことが事前協議の問題と全く矛盾をすることが非常に明瞭だと私は思うのですけれども、どうも私が勘違いをしているか何かわからないので、一応まずそこから御説明を願いたいと思います。
  144. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) われわれは、先ほど来申しておりますように、国連軍としてのアメリカ軍ということを申しているのであります。アメリカは安保条約によりまして日本の基地を使用いたしております。従って、そういう意味においては当然国連軍としてのアメリカ軍も事前協議の対象にすべきだと、こういう考え方でおるわけであります。その点について矛盾はないと考えております。
  145. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 いや、その吉田・アチソン交換公文の内容、趣旨、何を規定しているかということをお尋ねしているのですよ。それを読めば、事前協議なんという問題が問題にならないことはあまりにも明瞭じゃないか、この内容、規定から言って。これがどうもその事前協議の対象になり得るということをこっちが主張し、さらにアメリカがそれを了承したなんということは、私には毛頭考えられないことなんですが、こっちが主張されること自体がまず第一に間違いだし、それから、かりにこっちから主張されたにしても、アメリカがそういうことを了承する必要はないと私は考えるのですが、しかし、この点はその両方をはっきりしていただきたいことと、さらにそれを明瞭にしていただくために、一体、交換公文は内容的に何をきめ、何を考えておられたかということを、もっと内容的に具体的に御説明を願いたい。
  146. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほど来申しておりますように、日本の基地におりますアメリカ軍が、ある場合には国連軍としての性格を持つわけでございます。でありますから、そういう場合にいろいろな疑義を生じ、あるいは誤解を生じ、あるいは行動について問題がある場合があろうと思います。従って、日本におります国連軍としてのアメリカ軍に対しては、やはり事前協議のワクの中に置きまして、そうして国連軍としての行動をとるのか、アメリカ軍としての行動をとるのか等については、やはりはっきりさせなければならぬのが日本立場ではないかと思います。従って、その問題について、事前協議のワクに入れるということについては、米国側において原則的に了解をいたしております。
  147. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そういう答弁になると、もっと問題は重大な問題になってくるのですよ。在日米軍が、ある場合には国連軍になり得るのだというようなふうにお考えになれば、在日米軍がもう全部同時に国連軍なんだということになるわけなんですね。一体、国連軍とは、今、朝鮮事変に関連をして、国連軍とは何ぞや、内容的にどういう装置、配備になっているか。従って、在日米軍とそれから国連軍との関連いかんという内容的な問題は、これから後ほどさらにいろいろお尋ねをしようと思っているところですから、その点はもっとあとへ譲りますが、しかし、外務大臣がそういうふうにルーズにお考えになっていれば、これはさらにもっと非常に重大な問題になってくることだけは、あらかじめ申し上げておきます。それから先ほどの問題に移りますが、どうも吉田・アチソン交換公文の内容なり何なり、何を規定しているかを、詳しくはっきり、的確に━━詳しくでなくてもいいですが、的確に、内容的なお答えがないので、これはまず政府委員の方にお尋ねをしたいと思います。一ぺん御説明を願います。
  148. 森治樹

    政府委員(森治樹君) 吉田・アチソン交換公文は、武力侵略が朝鮮に発生いたしましたので、国連の決議に基づきまして、国際連合統一司令部というものが設置されたわけでございます。で、日本国としては、国際連合統一司令部に対して施設及び役務を、国際連合加盟国で軍隊が国際連合の行動に参加しているものに提供することによって援助をするということを、第一項で規定いたしておる次第でございます。第二項で精神的な規定といたしまして、今後も武力侵略はあるかもしれない。従いまして、日本国といたしましてはそういう国連の行動に原則的に援助を与えるという一般的な、精神的な規定を設けておりまして、この具体的な範囲は、それぞれ安保条約なりあるいは国連軍の地位に関する協定によって規定されておる次第でございます。
  149. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それならば、今お話のように、国連の安保理事会の決議あるいは総会の勧告等によって国連の統一司令部が設置されて、それが軍事行動をやるということが第一にはっきり決議をされ、勧告をされてきておることが第一点、その場合に、日本は施設及び役務をこれらに提供をして、軍事行動を支持し、援助するということが第二点、それが非常にはっきりしておると思うのですね。それならば、そういう行動を支持し援助する場合に、日本が、それに対して━━国連軍自体の作戦行動その他について━━いろいろな意見を差しはさむ等々をすることができるのかどうかという問題なんです。そういうことは全然できないという建前をもってこの国際連合統一司令部なるものができているのじゃないか。国際連合統一司令部は、アメリカ軍が最高の司令官であります。それに各国が参加をしておる。日本は軍隊を持っておらないから、それに参加をしていない。従って作戦行動については何らの発言権は日本はないわけだと思うのです。その点はどうですか。
  150. 森治樹

    政府委員(森治樹君) 国際連合統一司令部というのは、ただいま佐多委員のおっしゃいました通りに、日本はこれに加盟していない次第でございます。従いまして、日本としてはこの国際連合統一司令部が行なう作戦に対して口出しをなすべき立場にない次第でございます。しかしながら、この軍隊が日本で役務を使い、あるいは施設を使います場合には、日本としては独自の立場から、これに対して発言権を有する次第でございます。
  151. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そうじゃなくて、これにはっきり書いてあるように、国連軍は朝鮮における軍事措置をとることができるのだ。その軍事措置をやる場合に、日本は基地なり役務を提供をするのだということが書かれているんです。これが趣旨じゃないですか。それなのに、事前協議をして、それをこの場合には出さないとかこの場合には出すとかいうようなことは、もはやこれでは完全に封ぜられておるということです。従って、これはなるほどその安保条約にそういう事前協議その他のことが考えられていなかった時代であるから、あるいはこういう交換公文もなされたかもしれませんけれども、今度新条約においては事前協議その他の条項を入れられるというのだから、入れられるならば、こういう形での交換公文なるものはもはやあり得ないことだ、ましてや先ほど大臣がおっしゃったように、在日米軍でなくて在外の米軍、これが国連軍なるものがいるわけですよ。この国連軍が日本の基地を使うということは、これでもうちゃんと規定をされているんだから、それを制約をするというわけには、少くともこの交換公文を認める限りは、できないです。作戦行動を……。さらにもっと内容の問題から申し上げてお尋ねをしますが、これは特に外務大臣にお尋ねをしますが、一体まず国連軍というのは、現在ある朝鮮動乱に関連する国連軍というものは、装備配備がどういうものだというふうにお考えになっておるか。さらに、その国連軍なるものが在日米軍の中に国連軍がどういうふうに介在をし、それと日本の在日米軍との関連がどういうものであるというふうにお考えになっておるのか。そこを一つ明瞭に御説明を願いたい。
  152. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 現在日本におります米軍というものが、朝鮮におります国連軍と、配備、装備の状態が違っておることは申すまでもないとわれわれ存じております。日本におります米軍が、国連軍として配属されるかされないか、あるいはそれによって出勤するかしないかというような問題は、やはり事前協議によってわれわれは承知いたさなければならぬと思います。
  153. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 いやそこはちっとも説明になっていないんです。一体在日米軍はどういうものがいて、そのうちのどれが今は国連軍なのか、まずそこからお聞きしましょう。
  154. 森治樹

    政府委員(森治樹君) 在日米軍といたしましては、一昨年のアメリカの指揮系統の改正以来、現在では在日米軍は陸軍、これは座間にございますが、それから第五空軍、それから在日米海軍というものによって編成されておるわけでございます。国連軍といたしましては、この一昨年の機構改革の際に、従来の極東司令部というものが改変されました際に、日本に従来ありました国連軍の司令部というものが朝鮮に移りまして、日本には、ただいま後方司令部と申しますか、リア・コマンドというものが座間にございまして、その他若干実動隊が立川に所在するという状態でございます。
  155. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 お話のように、朝鮮に主力部隊があり、第八軍、これが今国連軍として向こうにおると思いますね、そうしてその国連軍の司令官が京城におる。この第八軍の一部補給隊が日本の座間にいて、司令官ターレイ少将の指揮下にいるのが、これが本来の意味の在日米軍の国連軍ですね、そこのところははっきりしておりますね。それからもう一つ、今、局長がおあげになった極東におけるアメリカの戦術空軍、このうちの第五空軍、これは今のお話では国連軍だとおっしゃいますが、どうなんですか。
  156. 森治樹

    政府委員(森治樹君) ただいまお答え申し上げました通りに、ただいまいわゆる朝鮮における国連の統一司令部のもとに指揮系統上所属いたしておりますのは、座間にあります後方司令部と立川における一部実動隊でございます。第五空軍が国連軍の一部であるかどうかということは、現在はそういう国連軍の一部をなしてはおりません。
  157. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 立川における一部というのは、今おっしゃった第五空軍の主力、これが立川におりますね。
  158. 森治樹

    政府委員(森治樹君) ただいまのところ、ちょっとお答えが誤解を招いたかと思いますが、立川における実動隊と申しますのは、タイの輸送隊のことを私は申し上げたのでございます。
  159. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 タイの輸送隊というと、それはそれでは第八軍の輸送関係の部隊を言っておられるのですか、第五空軍の輸送関係を言っておられるのですか、どっちですか。
  160. 森治樹

    政府委員(森治樹君) 朝鮮にあります国連統一司令部の指揮下にある部隊でございます。
  161. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 それならば、その韓国における国連軍なるものは、どういうものがあるというふうにお考えになっておりますか。
  162. 森治樹

    政府委員(森治樹君) 韓国におりますアメリカ軍は、大体現在五万程度といわれております。詳細なことは私どもも承知いたしておりませんけれども、大体五万程度といわれております。その他トルコあるいはタイあるいはイギリス、豪州、ニュージーランド、フランス、カナダ、ギリシャ、エジプト、フィリピン等の連絡部隊と申しますか、連絡の一団がおるというふうに承知いたしております。この関係からタイの輸送部隊が立川におるものと承知いたしております。
  163. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 今お話のように韓国には現在米第八軍を主体として、あとはほんの名目的な雑部隊が、外国のものがいる。これは第八軍が主体となって、マグルダー大将の指揮下にあるのが第八軍、そうしてこれが国連軍を名乗っておる。ところが、私があなたのお話でわからないのは、第五空軍に付属しておるところの日本の立川の輸送部隊もまた国連軍だとおっしゃるから、それは私の理解によれば第八━━アメリカの極東戦略における戦術空軍の一部隊、第五空軍、この指揮命令系統は私はマグルダーとは違うのだと思うのです。従って、そこのところをはっきりまず国連軍とは何ぞやということを、韓国において、日本において、はっきりさしていただきたい、こういうことを言っている。それが明瞭でないのです。
  164. 森治樹

    政府委員(森治樹君) 私は先ほども申し上げましたように、立川にある国連軍と申しましたのは、タイの少数の部隊を国連軍と申し上げたわけでございまして、私の承知いたしております限りでは、第五空軍は現在国連統一司令部の構成部隊じゃないというように私は了解いたしております。
  165. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 そこのところが実は私にははっきりしないので、第五空軍の主力は京城に置いて、日本、台湾、沖縄に散開をしているのが例の戦術空軍━━第五空軍だと思うのです。これがしかし京城に主力を置いておるので、一体これの指揮は、私はおのずから別だということははっきりしておるように思いますが、これが一体国連軍かどうかということがよくわからないのですが、先ほどのお話によると、外務大臣なんかによると、日本における在日国連軍なるものは、今申し上げたように私のあれでは、第八軍のごぐ一部の輸送部隊だけが、これは国連軍、従って、この国連軍の配備、装備に関して問題が起きたときに、これも事前協議の中に入るのだとおっしゃるけれども、先ほどのように交換公文によれば、少なくとも国連軍である限りは、何らの制約なしに基地の提供をし役務を提供しなければならない、こういうことになる。さらにあなたの言われるように、いや日本の在日米軍はほとんど全部国連軍なんだ、あるいは国連軍にかわり得るのだということになれば、今度は問題は、大体現在の国連軍と称せられるものとマグルダー大将の配下にある京城にある国連軍なるものと、その他のアメリカ極東戦略で配備されておるところの戦略空軍やあるいは太平洋軍や、あるいは第七艦隊等が一体どういうものであるのか、あなたのおっしゃるように、在日部隊、その他にいる部隊が国連軍なんだと、あるいは少なくとも国連軍になり得るのだとおっしゃるならば、これは全アメリカ極東軍が国連軍だということになるのですよ。今、日本にいる海上部隊あるいは空軍部隊等は太平洋司令官の配下にあるもの、あるいは第七艦隊の配下にあるもの等があるわけですから、これは在日部隊が全部国連軍であり、あるいは国連軍になり得る、しかも、従って極東戦略配備全体が極東軍になり得るのだと、そしてその戦時行動については、軍事措置については基地、役務を提供してあらゆるあれをしなければならないのだということになると、すべての在日米軍が全部出動していくことが可能である、あるいはそれだけでなく、在外の極東軍全体が日本の基地を使って軍事作戦なり軍事行動を行なえるということになるわけなんです。これも非常に重大な問題になるわけだと思います。従って、もしあなたがこの事前協議の問題なり、特に交換公文の問題、それから極東軍の問題等をそんなにルーズに考えながら交渉しておられるとなれば、非常に大へんな、もってのほかの問題になる。これらの点も大臣はどういうふうにお考えになっているのか、伺いたいと思います。
  166. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 何かをちょっと佐多委員誤解しておられるのじゃないかと思うのでありますが、先ほどアメリカ極東軍の問題、また佐多委員も御了承あったと思うのですが、日本におりますアメリカ軍というものは、ハワイにおきます指揮下にあるわけであります。国連軍の指揮下にあるのは、先ほど御説明した通りであります。
  167. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ハワイの指揮下にあるから国連軍の指揮下にあると言われるのですか。
  168. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) いえ、そうじゃありません。先ほど来も申し上げましたように、国連軍の指揮下にあるのは、アメリカ局長が言ったような兵隊だけしかいないのだと、あるいは機能だけしかここでやっていないのだ、その他のものは国連軍指揮下に現在ないことは当然でございます。ただ、われわれが事前協議の問題を論じますときに、御承知のように朝鮮事変に対して国連の決議ができております。でありますから朝鮮事変の以外の場合に、どこまでも国連軍が、朝鮮における司令部が、決議の範囲を逸脱して行動するとはわれわれ考えておりません。新たな国連の決議ができますれば別でございますけれども、現状においてそういうことだと思います。そういうようなことが起こりました場合に、われわれとしてはアメリカの在日軍が国連軍に編入されるかどうかということが起こって参ろうと思います。平素は国連軍指揮下にある軍隊ではないにいたしましても、何か事変が起こってくるときに国連軍指揮下に編入される、その他の問題が起こってくるかと思います。従って、日本におりますアメリカの軍隊が出動するというような場合に、われわれはそれが果たして国連軍の指揮下に入ったものであるか、入ってないかというようなことも、事前に承知することが必要だろうと思います。そういう意味においては、われわれやはり事前の協議を必要とするというので、先ほどの事前の協議は要らないのじゃないかという御議論には、ちょっと私違うのじゃないかと思います。
  169. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 時間がないそうですから、私はこれでやめますが、非常に重要な問題ですから、問題はあとに残して、来週早々に一ぺん総理大臣、防衛庁長官をお呼び願って、それらお三人突き合わせて一つ審議することを要求をしておきます。
  170. 森元治郎

    ○森元治郎君 私は、もう時間がありませんから簡単です。もし国連軍と在日米軍と区別できるものならば━━はっきり区別できるもの、できないもの、わからないもの、こういうものがおありかと思うので、それを事務当局の方で資料にして渡していただきたいと思いますが、いかがですか。
  171. 森治樹

    政府委員(森治樹君) 私どもの方としてもできるだけ資料を整えることにいたします。
  172. 森元治郎

    ○森元治郎君 それから外務大臣に念を押しますが、今問題になっている交換公文の対象になるものは、国連軍として日本にあるアメリカ軍、こういうことでございますね。
  173. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 国連軍として行動するアメリカ軍であります。
  174. 森元治郎

    ○森元治郎君 それからこの交換公文は、従来の吉田・アチソン交換公文に示してあるように、地域は朝鮮に関係するものであって、極東ではない。それからもう一つ伺いたいのは、一体、これは国連軍出動のときに大へん問題になったのですが、安全保障理事会で問題になった現在ある国連軍というのは、国連憲章にいうところのむずかしい意味の四十三条かどっかにあったと思うのですが、そういう意味の国連軍であるのか、ソ連その他が批判し、一部の学者が批判するような、ほんとうの憲章にいう国連軍ではないのか、ただ政府側の一方的見解だけでけっこうなんです。
  175. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) ただいま御指摘の点は、厳密な━━厳密なと申しますか、この憲章の第七章に従いまして設置され、行動するところの国連単ではございません。しかし総会の━━安保理事会の決議、安保理事会の勧告に基づいて行動する軍であります。広い意味の国連軍と言っていいと考えます。
  176. 森元治郎

    ○森元治郎君 それでは、この間この委員会で、外務大臣から交換公文が二、三あるようなお話があったので、しかも来月十六日ごろ調印をワシントンでされるというので、どういう項目か、もうお話しになっても、当然お話しすべき時期であろうと思うのでお伺いしますが、条約本文があり、行政協定がある。条約本文には例の重要な装備と配備に関する交換公文がある、ここまではわれわれは承知しているのですが、続いてこういう関係する協定、諸協定議事録などはどうなるか、一つ一つ伺います。  日本国における国連の軍隊の地位に関する協定(昭和二十九年)及び日本国における国連の軍隊の地位に関する協定についての合意された公式議事録、これはこの条約改定にあたって影響を受けるのか、どうなりますか。
  177. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 影響ございません。
  178. 森元治郎

    ○森元治郎君 それから日米間の例の相互防衛援助協定、これはどうなりますか。
  179. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 影響ございません。
  180. 森元治郎

    ○森元治郎君 続いて、日米間の相互防衛協定第一条に基く装備返還に関する取りきめも、本条約がそういうふうであるならば、影響はないのですね。
  181. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) 影響ございません。
  182. 森元治郎

    ○森元治郎君 日米安保条約、第三条に基く行政協定第十八条3(d)に関する交換公文、続いてこれは別ですが、岡崎・ラスク交換公文、この二点。
  183. 高橋通敏

    政府委員(高橋通敏君) ただいまの点は、新協定の中に入ります。
  184. 森元治郎

    ○森元治郎君 ただいまというのは、安保条約第三条に基く行政協定第十八条、前の方ですね。これは新交換公文ですか、新しい交換公文ですか。
  185. 森治樹

    政府委員(森治樹君) それはたしか私の記憶だと、費用の分担のことを規定した交換公文だと存じますが、それは新しい条約、条約と申しますか、新しい、行政協定のかわりになる条約に書き込むことになると存じます。
  186. 森元治郎

    ○森元治郎君 新しい何ですか。
  187. 森治樹

    政府委員(森治樹君) 新しい行政協定にかわるべき条約の中に書き込むことになると思います。こういうふうに考えております。
  188. 森元治郎

    ○森元治郎君 それから岡崎・ラスク交換公文は。
  189. 森治樹

    政府委員(森治樹君) これは、現在懸案になっておる施設を具体的に解決することによってなくしたいという考えでございます。
  190. 森元治郎

    ○森元治郎君 それからこれは藤山外務大臣とマッカーサーの三十二年、一昨年の安保条約と国連憲章との関係に関する交換公文、これはどういう影響を受けるか受けないか。
  191. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) それは本条約の中に規定されると思います。
  192. 森元治郎

    ○森元治郎君 規定されるということは吸収されるということですか、これはなくなるのですね。
  193. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) そうです。
  194. 森元治郎

    ○森元治郎君 けっこうです。ありがとうございました。
  195. 大和与一

    ○大和与一君 事前協議に在日国連米軍が入るということは、原則としてということを大臣はたびたび言われたのですよ、初めのころに。あとからそれをごまかして言われて、合意になったと言われたけれども、これは一体絶対のものでないのですか。原則として事前協議のワク内に入るのであって、原則以外のことがあるのですか。
  196. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) はなはだあるいは私の表現があれでお聞きづらかったと思うのですが、そういうワクの中に入るという原則をきめたわけです。ですから原則としてと申すのは、そういう意味で言ったわけでありまして、ですから今後の取り扱いにおいてはそういう扱いになっていくと、こういうことでございます。
  197. 大和与一

    ○大和与一君 今の詳しいことはあとからに……。そうすると、逆に言うと、いかなる問題も事前協議のワク内に入る。そうするともう一つ、事前協議ではやはりこれは弱いから、いわゆる拒否権と申しますか、こういう明確なやはり取りきめを今からでもやっていいと思うのですが、そういうお気持はないか。
  198. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私はたびたびあらゆる機会に申し上げておりますように、協議が成立するためには合意が必要でございます。従って、協議という字を使って参るつもりでおります。
  199. 大和与一

    ○大和与一君 もう一つ。日米合同委員会の取りきめか何かに、可能な限りですか、何かそういう言葉がちょっと入っておったように思うのですけれども、これが一つの抜け穴になっているのじゃないかというふうに私たちは考えるわけなんです。それがここに、原則としてという言葉じりをとらえるわけじゃないけれども、やはり瞬間的に起こる最悪の事態、こういう場合には、てんでこれは事前協議はつかみどころがないし、力がない。それがやはりいかにも、日米合同委員会の可能な限りというふうな言葉があったかと思いますが、これとつながっているような感じを非常に受けるから、はっきりと事前協議ならば拒否権を持つというふうに、国民にちゃんと明示すれば、これはやや明確になると、こう思うのですが、日米合同委員会の取りきめのことは、内容、条文というか、それとは関連がないか、あるいはそのことについて国民に対して疑いを持たせないか、これを最後に一つ聞いておきます。
  200. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は、条約、行政協定を通じまして、今申し上げたような立場でもって話し合いをいたしておりますので、その点は明確だと、こう考えております。
  201. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 議事進行。時間がございませんので、答弁のあいまいな点を追及することができません。委員の諸君で発言を希望される向きもございましたけれども、きょうはこの程度にするということで実は押えたわけであります。ぜひ来週総理も御出席願いあるいは防衛庁長官も御出席を願って、引き続きこの問題について質疑論議をすることを強く要望いたしまして、きょうの質問を終わりたいと思います。
  202. 草葉隆圓

    委員長草葉隆圓君) 本日は、これにて散会いたします。    午後一時十六分散会    —————・—————