○
政府委員(
小田部謙一君) それでは、
補足説明といたしまして、今度の国会にかかりました
日本国と
ヴィエトナム共和国との間の
賠償協定、
日本国と
ヴィエトナム共和国との間の
借款に関する
協定と、この二つのものが大体どういう内容であるかということを御説明いたします。
まず、
日本国と
ヴィエトナム共和国との間の
賠償協定に関してでございますが、この
前文から参りますと、「
日本国及び
ヴィエトナム共和国は、千九百五十一年」云々という字が書いてございますが、その
前文は、
フィリピンのときの
前文と同じものでございます。なお、ここでちょっとつけ加えますと、「
日本国と
ヴィエトナム共和国との間の
賠償協定」という方は、
インドネシアと
日本国との
賠償協定の条文とほとんど大体一致しております。ただ、この
前文は、
インドネシアが
平和条約を新しく
日本国と結んだときのものを引用してなく、
フィリピンの場合と同じような文句が引用してございます。
それから第一条に参りますと、第一条におきまして、
日本国は、現在において百四十億四千万円に換算される三千九百万
アメリカ合衆国ドルに等しい円の価値を有する
日本国の
生産物及び
日本人の
役務を、五年の
期間内に提供するということになっております。これは、そのほかの
協定と同じように、現在においてこれこれに換算される
ドルということで、
ドルがその
基準になっておるわけでございます。それから、その次の第二項には、その
支払い方法は、どういうふうにして
支払うかということが書いてございます。すなわち、三千九百万
ドルを、最初の三年間におきましては毎年一千万
ドル、それから次の二年の
期間におきましては、
残り分四百五十万
ドルづつというふうになっております。この点、その他の
賠償協定におきましては、大体
ビルマの場合は一億
ドルで、毎年三千万
ドル、それから
フィリピンの場合は五億五千
ドルですが、結局十年間二千五百万
ドル、その次の十年間は三千万
ドルということになっております。また、
インドネシアの場合は端数がございますから、
最後の年はその端数というふうになっておる次第でございます。
それから第二条に移りますと、第二条は、まず、
日本国の
生産物及び
役務を
日本が提供するといいますが、そのものは
ベトナム共和国政府が
要請してかつ、
両国政府が合意するものでなければならないということが書いてありまして、その次に、「これらの
生産物及び
役務は、この
協定の
附属書に掲げる
計画の中から選択される
計画に必要な項目からなるものとする。」となっておりまして、この
協定の一番
最後に
附属書というものがございまして、その
附属書の中に、一応「
水力発電所の建設」「
機械工業センターの設備」、3として、「両
政府間で合意されるその他の
生産物及び
役務の
供与」ということになっております。それでございますから、この
協定が発効いたしました場合に、
べトナム政府が
要請し、かつ、
両国政府が合意するものは、この
附属書の中から選択されるということでございます。ただ、従来の
解釈によりまして、1、2、3と
附属書ではなっておりまして、必ずしも
向こうが
水力発電所を
要請しなくても、
機械工業センターを
要請しなくても、
最後の「両
政府間で合意されるその他の
生産物及び
役務の
供与」ということで、その他のものが何でもできるというふうに
解釈されております。
それから
附属書のことでございますが、その他
フィリピンとか
インドネシアの
附属書は、非常に網羅的のものが出ております。ただ、こういうふうに三つを限っておりますのは、
賠償協定ではございませんが、それに似たカンボジヤとの
経済協力協定の中には、「一
農業技術センター、二
種畜場、三両
政府間で合意されるその他の
生産物及び
役務の
供与」ということになっております。
それからその次には、
賠償として
供与される
生産物は、
原則として
資本財とする。ただし、
ベトナム共和国政府から
要請があったときは、
資本財以外の
生産物を
日本国から
供与するというようなことを合意することができるということになっております。これもその他の
協定にございます。それから、この二条の二項に関しましては、参考として提出されております「
日本国と
ヴィエトナム共和国との間の
賠償協定に関する
交換公文」というのがございまして、そのうちの二、「
賠償協定第二条2にいう
生産物に関する
交換公文」というのがございます。それに基づきまして、
資本財以外の
生産物の
供与というものは、それは、「現在において二十七億円に換算される七百、五十万
アメリカ合衆国ドルに等しい円の額をこえないものとする。」これは一応
最高限というものがきめてあるわけでございます。ここで
資本財以外の
生産物の
供与と申しますのが、いわゆる
消費財というものでございます。ただしこの
消費財と申しましてもいろいろ種類がございまして、また、
消費財という定義がなかなかわかりにくいものでございまして、たとえば、
ビルマに提供しておりますイワシの
カン詰のような
消費財もございますし、それから、トラックとか自動車のような、ある場合には
生産に寄与するというような
消費財というのもございます。ただ
資本財以外であるということです。
資本財以外の
生産物を
日本から
供与することができるということになっております。
それから第二条の第三項は、この
協定の
実施上の注意でございますが、これは、第一番に、
通常の
貿易が阻害されないように
実施されなければならない。それから第二番目に、
外国為替上の
追加の
負担が
日本国に課せられないように
実施されなければならないという二つの要件が書いてございます。これに大体基づいて、先方からいろいろ
要請がございました場合、従来の三国の例でございますと、
生産財の場合で申しますと、
資本財の場合ですと、大体
通常の
貿易が阻害されないわけでございますが、
消費財を提供いたします場合は、
通常の
貿易が阻害されるおそれがあるということでございます。もちろん、
通常の
貿易が阻害されると申しましても、今まで全然行かなかった
消費財をこの
賠償で提供する場合に、はたしてこれをもし
賠償で提供しなかったならば
通常の
貿易で行くんではないかというような議論ではありませんので、たとえば、
綿製品とかその他大きいものについて
向こうの
要請が万一あった場合に、それが従来の
貿易を阻害しないかというようなことを考えるわけでございます。もっとも、
実施していくうちに、たとえば、
ビルマのように、
日本から買う米が少ないために
外貨が少ないとか、
向こうの
外国貿易、
日本以外の国から買う
外貨が少なくなったために輸入が全般的に減っているというようなことは、これはその場合の
賠償で提供してはいけないということを厳格には決して書いてございません。
それから、その次の
外国為替上の
追加の
負担と申しますと、
日本から大体提供されます
資本財でございましても
消費財でございましても、ある程度の
外貨は必要でございます。これは、原料がほとんど
外国に仰いでいるという
情勢でございまして、ある程度の
外貨は必要でございます。そこでたとえば、ここで申しますのは、
日本の普通の
資本財なり
消費財にどれだけ
外貨の
負担が要るかというような大体統計がございます。その普通の
外貨の統計の。パーセンテージを特にこえないように、あるいは特別の
外貨をそのために割り当てない。割り当てるようなものは従来拒否してきたわけでございます。たとえば、特別の
外貨を割り当てますといいますと、船を
向こうが注文してきましても、もちろん船には
外貨の
負担が要るのでございますが、その船のある
エンジンの部分だけは
英国製の
エンジンを使ってくれとか、あるいはスイスの
エンジンを使ってくれ。そのために特に
外貨の割り当てをしなければならない。市場でこれを獲得しようとしても普通には獲得できない。そういうようなものの場合には、これを拒否するか、もしくはその
外貨の部分だけ先方に
負担をしてもらうということにしてやっております。
それから第三条の
規定は、いわゆる
実施計画でございまして、この
協定が発効いたしますれば、いろいろ細目の取りきめもございますが、その後
向こうが毎年度々々々
実施一
計画を出して参りまして、その
実施計画につきまして、
日本が、たとえばこれは
通常の
貿易を阻害するかいなか、それから
外国為替上の
追加の
負担が要るか要らないかということを一々審査しました上で、そうしてこれはいいということになれば、
実施計画というものはできるわけでございます。
あとに述べます
賠償契約というものは、この
実施計画の中にそれがあげられていなければならないということになっております。
その次が第四条の
規定でございますが、第四条の
規定の第一項は、これはいわゆる
間接方式面接方式といわれまして、そのうちの直接
方式の
規定でございまして、
契約の
当事者は、
ベトナム共和国政府と、それから
日本国民またはその支配する
日本国の
法人と直接に
契約をするということになっておりまして
政府はこの
契約の
当事者ではないということになっておるわけでございます。
政府の
仕事は
認証するという
仕事でございまして、
認証し、これを
支払うという
仕事でございますが、直接
方式という
契約をとるわけでございます。これは、
ビルマの
賠償協定以来この形式をとっているわけでございます。
それから第二項には、
賠償契約は、どういうふうなときにこれを
賠償契約と呼ぶか。それから前に申し上げました
通り、
契約は
ベトナム政府の当局と
日本国民もしくは
日本国の
法人でございますが、それを
認証するその
基準はどうするかということが書いてあるわけでございます。その
基準の
一つとしては、(a)この
協定の
規定に合っているかどうか、それはあるいは
実施計画にはありましたが、さらに
契約の段階に行きまして、
外貨負担が多いとか少ないとかいうことが詳しくわかってくるわけでございます。それから(b)は、両
政府がこの
協定の
実施のために行なう取りきめのための
規定、この
協定の中でいろいろこまかい取りきめがあるわけでございます。
認証手続とか、その他こまかい
手続があるものでございますから、その取りきめのこまかい
規定、及び(c)当該時に適用される
実施計画、つまり
実施計画の中に入っていなければならない。そういたしますと、これを
日本政府が
認証をいたしまして、そうしてこの
認証を得た
契約を
賠償契約と呼ぶわけでございます。
それから、ちょっと飛びまして、三項に行きます前に、その
あとの方の第四条四項の、「一の
規定にかかわらず、
賠償としての主産物及び
役務の
供与は、
賠償契約なしで行うことができる。ですから、
通常の場合は
賠償契約というものでやるのでございますが、
賠償契約をやるのができないものというものがあるのでございます。それは
賠償契約なしでやることができる。ここに入りますものは、たとえば、ことに
ミッションがありますと、その
ミッションの経費をどうするか。
ミッションの経費でも、この場合は何も
賠償契約を結ばなくてもいい。もう
一つは
銀行手数料、これは
銀行を通じて、いろいろ
銀行に
賠償勘定を設けたり、
銀行へ取り立てとか
支払いを受けさせる権能を
使節団が授権するわけでございますから、その
手数料、そのようなものは、これは
賠償契約なしで行なうことができるということが書いてあるのでございます。
それから元に戻りまして、第四条の三項は、これは
仲裁に関する
規定を含まなければならないということになっております。そこで「両
政府間で行われることがある取極に従って
商事仲裁委員会に解決のため付託される旨の
規定を含まなければならない。」ということになっておりまして、これは、たとえば
フィリピンの場合などでは、
交換公文によりまして、この
商事仲裁というのが、
日本の
商事仲裁委員会——ジャパン・コマーシァル・アービトレーション・アソシエーションにかけるということを合意しております。それから次は、「両
政府は、正当になされたすべての
仲裁判断を最終的なものとし、かつ、執行することができるものとするため必要な
措置を執るものとする。」ということになっておりますが、
日本としては、
民事訴訟の
規定並びに
仲裁判断の効力に関する
条約にも入っておるため、特に
措置をとる必要はないと考えております。
それから第五条は、
支払いをどうするかということになっております。「第一条の
規定に基く
賠償義務の
履行のため、
賠償契約により第六条1の
使節団が負う債務」というのは、これは
賠償契約によるものでございます。それから「前条四の
規定による
生産物及び
役務の
供与の費用に充てるための
支払を、」
あとに述べる
手続に基づいて
日本政府が
支払う、その
支払いは、
日本円でするということが書いてございます。
それからその次の
規定は、
賠償義務の
履行というものは、どういうときに
履行が終わるのであって、どの
限度まで終わるかと、その時点並びに免責ということが書いてあるのでありまして、「
日本国は、前項の
規定に基く円による
支払を行うことにより及びその
支払を行った時に、その
支払に係る
生産物及び
役務を
ヴィエトナム共和国に
供与したものとみなされ、」ということが
規定してありまして、円による
支払いを行なったときに、その
限度内において
賠償義務を果したということになるし、またその
支払いを行なったときに、詳細に申しますれば、小切百手を
賠償勘定を持っておる
銀行に
支払ったときに、その分だけは、義務を
履行したというふうに
解釈をされております。
今までは実体的な
規定でございますが、第六条は、その
契約をする相手方の機関ということが
規定してございます。すなわち、第六条の一項は、「
ヴィエトナム共和国政府の
使節団が、この
協定の
実施を
任務とする同
政府の唯一かつ専管の機関として
日本国内に設置される」、これは、現在におきましても、
フィリピン、
ビルマ並びに
インドネシアは
使節団というのが
日本にございます。
それから二は、その
使節団の事務所は
東京に設置されるというふうに書いてあります。
インドネシアの
協定によりますと、
東京並びにその他二国間で合意される他の場所ということが書いてございますが、現実には
東京のみに置くことになっております。これは、
賠償額も両国に比しましては小さいし、
東京にのみ設置される」いうことに書いてあります。それから、
使節団の
任務を
遂行するにあたりましては、
不可侵権を持つとか、暗号を使用することができるとか、それから直接その
任務の
遂行のために使用される
不動産は、
不動産取得税及び
固定資産税を免除されるということが書いてあります。それから、
関税に関しましても、公用のために輸入する財産は
関税その他の
課徴金を免除されるという
規定が書いてございます。
それから第六条の第四項は、「
ヴィエトナム共和国の
国民である
使節団の長及びその
上級職員二人は、
国際法及び
国際慣習に基いて一般的に認められる外交上の特権及び免除を与えられる。」ということを書いてあります。ほかの
協定では、
上級職員の数を合意によりふやすことができるということが書いてありますのは、数が多いということを予想して書いたものでありますので、これはそのままになっております。
それからその次は、
使節団長、
上級職員以外の職員も、
外交官特権は与えられないけれども、自己の職務の
遂行について受ける報酬に対する
課税を免除されるとか、
日本国の法令の定めるところにより
関税並びに輸入については
課徴金を免除される、
引っ越し荷物だとか、
携行品だとか、その他に対する
関税を免除されるということが書いてあります。
それから第六番は、これは前のところで、
賠償契約はこれを
仲裁判断によって決定するということが書いてございますが、紛争が
仲裁によって解決されなかった場合とか、もしくは、その
仲裁判断が
履行されなかったときは、
最後の
解決手段として、
日本の
管轄裁判所に提起することができる、この場合は、この訴訟の
手続の目的の用にのみ、
使節団の長及び
上級職員がその
限度において
外交特権の制限を受けるということが書いてございます。
それから第七項は、裁判の執行にあたりましても、「
使節団に属し、かつ、直接その
任務の
遂行のため使用される土地及び建物並びにその中にある動産は、いかなる場合にも
強制執行を受けることはない。」ということが書いてございます。
それから第七条の第一項は、「両
政府は、この
協定の円滑なかつ効果的な
実施のため必要な
措置を執るものとする。」、行政的におのおの便宜をはかるということが書いてございます。
それから第二項は、
賠償は
日本国の
生産物並びに
役務を提供するものでございますが、現実に
向こうにおいていろいろなそれでもって
仕事をするという場合、それはわが方は金を出すことができないという立場をとっておりますために、現地の労務とか資材とか設備とかを提供するということになっております。たとえば、ガソリンであるとか、あるいはダムを作るとすれば、砂利であるとか、そのようなものは
ベトナム共和国が提供すると、こういうことになっております。
それから三は、普通の
規定でございます。
四は、「
日本国の
国民及び
法人は、この
協定に基く
生産物又は
役務の
供与から生ずる所得に関し
ヴィエトナムにおける
課税を免除される。」、これは二重
課税を避けるという意味でこの
規定がございます。
それから第五は、
日本国から
生産物を出しても、その
生産物が
ベトナム共和国の領域からほかの国に輸出されないということを書いてあります。これは、ほかの
協定にもそのままございます。
第八条は、
合同委員会というものを設置すると書いてございますが、
使節団と
日本の
賠償部長との間に会議を定例的にやっておりまして、そうしてその結果を
日本政府に勧告を行なうということになっております。
第九条は、この
協定の
実施に関する
認証の
手続とか、
支払いの
手続とか、そういうものを両
政府間で協議して決定するということになっております。
第十条は、これは、この
協定の
解釈及び
実施に関する紛争が起こった場合にどうするかということが書いてございます。
大体これが
賠償協定の方でございますが、この
賠償協定に付属しまして、
一つのいわゆる
生産物に関する
交換公文は御説明いたしましたが、第二番目の
賠償協定の
実施に関する細目に関する
交換公文は、これに付加してございますが、これは大体、
賠償協定を
実施するために、
認証の
手続だとか、その他が書いてあるのでございます。そこで、一、二重要な点を述べますと、
賠償契約というものができまして、その
交換公文の1
賠償契約というところでございますが、「
認証を得るため
日本国の権限ある当局に提出されるものとする。」と、この
手続は「
原則として十四日の
期間内に行われるものとする。」と、「
原則として十四日」ということになっておりますが、これは従来の例でも延びることはあるということでございます。そうして、従来の
インドネシアなどの場合には、この十四日以内というのは、本文の方に入っておりますが、ここではこちらの方に入れました。
それからもう
一つは、二項には「
賠償契約は、
日本円で
通常の
商業上の
手続によって
締結されるものとする。」ということが書いてございまして、とにかく一方の
当事者は
向こうの
使節団でございますし、それから一方の
当事者は
日本人並びに
日本国民でございまして、御承知の
通り、
日本国民のときには、
過当競争というものがございますから、どうしても
ミッションに乗じられるというようなことが起こるおそれがある、その場合でも、
政府といたしましてはこれは
通常の
商業上の
手続、
通常の
商業上のフォームか
賠償契約かによってでなければ、特に
日本側に不利であって、これは
通常の
商業上の
契約だと認められないようなものは、これを
認証する際に、これは変えてくれという折衝する余地がここに残っておるわけでございます。
それから第三項は、これはどの細目
交換公文にありましても、
実施の責任は、
使節団と
契約当事者である
日本の
国民または
法人が負うものとするということになっておりまして、
契約の
実施に関するクレームだとかその他が出ました場合には、
日本政府に出すのではなくして、
契約の
当事者たる
日本の
国民または
法人に出すということになっております。
それから第四番目は、業者推薦の
規定でございますが、
向こうは
日本国政府は一応
国民及び
法人を、適当だと思われる
国民及び
法人を推薦をすることができる、ただし、この推薦を受けた者のみが拘束される、
向こうは拘束はされないけれども、
日本の事情がわからない場合において、あるものを作るのにどの業者がよいかということを推薦を求めてくることがございます。この場合は、従来の
日本の慣行ですと、大体その業界に頼みまして推薦をさせましてその結果を
日本政府が通知をするというような形をとっております。
それからその次の
規定は、
賠償契約に付随しまして輸送の問題が起こる、保険の問題が起こる、検査の付随的な問題が起こる。このときでも
賠償から
支払うものは、
日本国民またはその支配する
日本国の
法人によって経営されているものでなければならないということになっておりますから、たとえば
日本船で運ばない場合は、これは
賠償から落とし得ない、それから
日本の保険にかけない場合は、これは
賠償では
供与することができない、それからまた、検査機関も、たとえば国際的な検査機関に頼むというような場合は、これは拒否するということになっております。
それからIIの「
支払」の
規定は、これはこまかい
規定でございまして、
賠償契約ができて
認証しまして、これを期日が来まして
支払うときには、どういうふうにするかという
手続が書いてあるということでございます。
それからIIIも、これは
使節団のことでございまして、あまり重要な
規定ではないと思います。
そこで
賠償協定の御説明を終わりまして、次に、
日本国と、
ヴィエトナム共和国との
借款に関する
協定ということに参りたいと思います。
この第一条は「(七、五〇〇、〇〇〇
ドル)に等しい円の額までの貸付を、」三年の
期間内に、
ヴィエトナム共和国に対して行うものとする。」ということになっております。これは七百五十万米
ドルにひとしい円の額まででございますから、必ずしも七百五十万
ドルにいかなくてもいいのだと
解釈されるものだと思っております。
それからその次は、「前項の貸付は、この
協定の
規定に従い、両
政府が合意する
計画の
実施に必要な
日本国の
生産物及び
日本人の
役務の
ヴィエトナム共和国による調達に充てられるものとする。」まず、
賠償に関連してこれは起こった問題でございますから、大体両
政府が合意する
計画というものが出てきます。それに必要な
日本国の
生産物及び
日本人の
役務を調達に充てるということになっております。
それから第二条に移りまして、貸付の各年次の
限度額を毎年度両
政府が協議して決定するということになっておりますが、現実に貸付の
当事者となりますものは、この場合は
日本の方は輸出入
銀行でございます。輸出入
銀行とべトナムの
ミッションの方で、これをいろいろ、
ベトナム政府の方で、いろいろこれを相談するということになって、この
協定で相談することになっております。
それから第三条は、「
日本輸出入
銀行と
契約を
締結するものとする。」ということになっておりますが、その中の第三条の二項が重要な
規定でございまして、「
日本国政府は、
日本輸出入
銀行が前項の
規定に従って
締結される
契約に基いて貸付を行うために必要とする資金を確保することができるように、必要な
措置を執るものとする。」これは七百五十万
ドルを三年でございますから、これが毎年幾らになるということは、一応はっきりきまっておりませんが、第一年度だけは幾らにするということは、この
交換公文の参考として付しました中に入っております。この中の、現在において九億円、三百五十万
ドル、それだけの額を、
協定が発効しました第一年度に確保するという義務があるわけでございまして、それは
日本が輸出入
銀行に対する予算と、それからこういう財政投融資などの
計画を行なうときに、この七百五十万
ドルの三分の一だと思います。その額だけはあらかじめ考慮して、これを輸出入
銀行に確保しなければならないということでございます。それでございますからして、ほかのところと違いますのは、輸出入
銀行というものは、金がなくなれば、いつでも断われるのでございますが、ベトナムに対してこの七百五十万
ドル、これは三年間でございますが、それに関しては、金がないからといって断わるということはできない。その他の条件がうまくいかないということで、現実に
借款ができないということ、これはあり得ると思いますが、少なくとも金がないという理由では、断われないということになっておると思います。それと非常に似たような
規定は、
ビルマとの
賠償協定の
借款の中に、五千万
ドルの中の二千万
ドルだけはいわゆる
政府が提供するという条項が入っておりますが、それと類似の義務を持っておる
協定だと思います。
それから第三条の第三項は、
向こうが、これは
借款でございますが、
借款を
支払う場合にどういう
措置をとるかということが響いてあるのでございまして、
日本国の関係法令の
規定に従って、
ドルを売ってやるとか、そういうようなことが書いてございます。
第四項もそういうふうでございます。
それから第四条の
規定は、実際上、貸付は
法人と
向こうの
当事者がやるのでございますが、実際上
計画との関連もございますので、
計画との関連におきましては、毎年度
政府と協議をするという条項になっております。
それからちょっと申し忘れましたが、この
借款に関しましては、参考の
交換公文の中の、
日本国と
ヴィエトナム共和国との間の
借款に関する
協定第一条及び第二条に関する
交換公文がございまして、その第一は、「同
協定第一条に関し、
借款は、ダニム
水力発電所建設
計画に充てられるものとする。」ここでははっきり、ダニム発電所建設
計画というものが中にございます。