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1959-11-14 第33回国会 衆議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年十一月十四日(土曜日)     午前十一時開議  出席委員    委員長 小川 半次君    理事 上林山榮吉君 理事 北澤 直吉君    理事 西村 直己君 理事 野田 卯一君    理事 八木 一郎君 理事 井手 以誠君    理事 今澄  勇君 理事 田中織之進君    理事 佐々木良作君       青木  正君    池田 清志君       池田正之輔君    内海 安吉君       江崎 真澄君    岡本  茂君       加藤 高藏君    川崎 秀二君       北村徳太郎君    久野 忠治君       倉石 忠雄君    小坂善太郎君       小林かなえ君    佐々木盛雄君       椎熊 三郎君    周東 英雄君       田中伊三次君    床次 徳二君       二階堂 進君    橋本 龍伍君       保利  茂君    松浦周太郎君       水田三喜男君    山口六郎次君       山崎  巖君  早稻田柳右エ門君       淡谷 悠藏君    太田 一夫君       岡  良一君    岡本 隆一君       加藤 勘十君    角屋堅次郎君       北山 愛郎君    黒田 寿男君       河野  密君    島上善五郎君       楯 兼次郎君    中村 高一君       成田 知巳君    三鍋 義三君       小平  忠君    鈴木  一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         法 務 大 臣 井野 碩哉君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君         文 部 大 臣 松田竹千代君         厚 生 大 臣 渡邊 良夫君         農 林 大 臣 福田 赳夫君         通商産業大臣  池田 勇人君         運 輸 大 臣 楢橋  渡君         郵 政 大 臣 植竹 春彦君         労 働 大 臣 松野 頼三君         建 設 大 臣 村上  勇君         国 務 大 臣 赤城 宗徳君         国 務 大 臣 石原幹市郎君         国 務 大 臣 中曽根康弘君         国 務 大 臣 益谷 秀次君  出席政府委員         内閣官房長官 松本 俊一君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         建 設 技 官         (河川局長)  山本 三郎君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 十一月十四日  委員稻葉修君、床次徳二君、山本猛夫君、阿部  五郎君、石村英雄君、岡田春夫君、小松幹君及  び西村榮一辞任につき、その補欠として二階  堂進君、池田清志君、小林かなえ君、岡本隆一  君、太田一夫君、三鍋義三君、角屋堅次郎君及  び小平忠君が議長指名委員に選任された。 同日  委員角屋堅次郎辞任につき、その補欠として  中村高一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員池田清志君、池田正之輔君内海安吉君、  加藤高藏君、小林かなえ君、佐々木盛雄君、椎  熊三郎君、二階堂進君、太田一夫君、岡本隆一  君、中村高一君及び三鍋義三辞任につき、そ  の補欠として床次徳二君、綱島正興君、船田中  君、三浦一雄君、山本猛夫君、古井喜實君、井  出一太郎君、稻葉修君、石村英雄君、阿部五郎  君、小松幹君及び岡田春夫君が議長指名で委  員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十四年度一般会計予算補正(第2号)  昭和三十四年度特別会計予算補正(特第1号)  昭和三十四年度政府関係機関予算補正(機第1  号)      ————◇—————
  2. 小川半次

    小川委員長 これより会議を開きます。  昭和三十四年度一般会計予算補正(第2号)、同特別会計予算補正(特第1号)、同政府関係機関予算補正(機第1号)、以上三案を、一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。田中織之進君。
  3. 田中織之進

    田中(織)委員 私は社会党を代表いたしまして、本予算委員会最後質問に立ったわけであります。実はこの委員会の今までの質疑を通じまして、私どもの党といたしましては、岡田春夫君が取り上げましたベトナム賠償の問題に関する本委員会における外務大臣答弁が、その後外務委員会において大きく変わってきておる、こういうような問題が出ておるわけであります。それからさらには小松君が取り上げました次期戦闘機機種決定にあたりまして、ロッキードの一機当たりの購入価格の点が明確ではないのであります。赤城防衛庁長官は一機百万ドル以上——国民の税金をもって買う戦闘機についてこういう無責任な決定はないとわれわれは考えております。その後参議院委員会、あるいは内閣委員会における同僚諸君の追及に対して、何と一機百三十万ドル以上につくというような数字政府当局から出ておるという事態でありまして、わが党といたしましての最後の締めくくりの質問をいたすにあたりましては、当然これらの問題について私は触れなければならぬと思うのでありますけれども、私に与えられた時間の関係もございますし、それらの問題は外務委員会あるいは内閣委員会その他の委員会においてすでに審議も始まっておりますので、そちらの方に譲りまして、私は災害予算一本について今まで明らかでない点を取り上げて政府答弁を求めたいと思うのであります。  ただこれも災害対策関係がございますけれども、いわゆる同和部落に対する問題が、今度の災害にあたりましても実は大きく出てきておるわけであります。一番端的な問題といたしまして、現在なお浸水いたしております三重県の長島町に松ヶ崎部落というのがございます。戸数五十戸の部落でございますけれども、全部落実は建物が流出をいたしまして、現在まだ水は引いておりません。     〔委員長退席西村(直)委員長代理着席〕 五十戸の部落死者四十八名という実に惨たんたる被害を受けておるわけであります。そういう関係がありますので、この問題だけは若干災害だけというわけに限定できないかもしれません。この同和問題についてだけは一つ災害関係のない分野においてもお答えを願いたいと思います。そのことを最初に断わりまして、まず同和問題につきましては主として厚生省で扱っておりますので厚生大臣から質疑を始めまして、この点については特に総理からも明年度施策関連をいたしまして御答弁をわずらわしたいと思います。  まず最初厚生大臣に伺いたいのでありますが、今私が申し上げました長島町の松ケ崎部落が最も代表的なものでございますが、そのほか名古屋市の南区の西旗屋町、それから現在なお浸水をいたしておる愛知県の津島市の関係部落、こういうふうに私の手元にあるだけでも京都府で五カ所、三重県におきましては松ケ崎を初めといたしまして実に七部落桑名郡の深谷町の第四区は五百戸の関係部落であります。奈良県の五条市の大島という地区、私の和歌山のかつらぎ町の災害、これは今度の激甚地指定を受ける条件にもはまっておるわけでありますが、この中にも旧笠田町の二部落がこれまた全戸床上浸水でございまして、家屋の流失したものもあるような状態であります。農地その他の関係におきましても、和歌山県の場合は奈良県と同じように流木のために耕地が全然だめになっておるわけであります。そういうような関係を調べておるわけでございますが、特に厚生省におきましてはこれらの関係につきましてどういう調査をされておるのか、この際一番最初に伺いたいと思います。
  4. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 特にひどかった三重県の七市町村、それから長野県、あるいは名古屋地区の一部につきましては、もちろん水没地帯の長期に及んでいますところにつきましては災害救助法の延長をいたしておるのでございます。特に全部落流失いたしたところにつきましては、これは応急仮設住宅あるいはまた配給救援物資等追加支給等をやっておるわけでございます。私ども同和部落といたしまして特に講じなければならないということは、いわゆる隣保館、あるいは共同浴場あるいは共同便所排水路、あるいは保育所等の今度の被害につきましては、今まで二分の一の国庫補助を三分の二にいたしたい、かような予算を組んでおるわけでございます。明年度におきましては、特にモデル地区の十六カ所以外につきましても、厚生省といたしましては各省関係一般同和対策部落に対しまして八億六千、モデル地区につきましては八億五千、厚生省の分につきましては、モデル地区に一億、一般につきましては三億を計上いたしまして、特別な対策を講じたい、かように考えておる次第でございます。     〔西村(直)委員長代理退席委員長着席
  5. 田中織之進

    田中(織)委員 それは私も資料を持っておりますので、順次伺いたいと思うのですけれども明年度においてそういう施策を講じられようと特に考えておられる厚生省として、今度の災害にあたってそういう対象部落がどういうような被害を受けておるかということについて調査せられたことがあるかどうかという私の質問が、まず、対策を講ぜられるにいたしましても、被害の状況をどう押えておるかということに関連をいたすわけでありますから、その意味で伺っておるので、厚生省の方では被害激甚地において、いわゆる同和部落のどこどこがどういう被害を受けているという点をつかんでおられるか。調査ができていなければできていないでいたし方ありませんから、その点をまず明らかにしていただきたい。
  6. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 特に同和部落に対しまして特別な調査ということはいたしておりませんが、同和部落に対しまして極度に災害がひどかったということは、三重県の七市町村長野県の一町村でございます。
  7. 田中織之進

    田中(織)委員 私が先ほど申し上げた関係で、近いところでは愛知県の、現在まだ浸水をいたしておる津島市におきましては、相当広範に関係部落被害を受けておるわけであります。三重県と長野県のことを今言われましたけれども奈良県の五条市の大島という、紀ノ川の上流、川沿い部落でございますが、ここは戸数二百六十戸、全部落浸水をし、死者も十名内外のものが出ておるわけであります。それから三重県の関係におきましても、先ほど申し上げました長島町の松ケ崎桑名郡の桑名町の一部、桑名郡の深谷町の第四区、これは五百戸であります。それから松阪市におきましても、松阪市の庄、丹生寺、向笹川、こういうような部落が非常な被害を受けておるのであります。特にこの場合に、長島町の松ケ崎部落のような形で五十戸のものが一軒も残らずに流れてしまって、それでいて部落人たちは水が引いたらそこに自分たちの住むところを再建しようとしてかかっておるのです。そこで、今厚生大臣が述べられました、明年度におけるモデル地区といたしまして十六カ所の計画——これはまだ計画の段階でありますけれども、やっておられる。私はその場合に、こういうモデル地区を作ることはどうかという問題は後ほど伺いたいと思のでありますけれども、かりにそういうモデル地区を作るという計画をお進めになるといたしましたら、今度の災害で全部落流失をした、なお現在浸水しておるというようなところにまず優先的にそういう施策を講ずべきではないか。これは来年度において総額二十四億の予算をもって厚生省を中心にして同和対策を強力に推進しようということを計画されておるわけでありますが、私はそれと同じアイデアをもって、まずこの災害で最も被害を受けたところにそういう処置を講ずべきではないかと、かように考えるのであります。そういう点については今の厚生大臣答弁では私納得をしかねるのでありますが、実情をもう少し調べて、そういう施策をまず災害地から講ずるという考えをお持ちにならぬかどうか、この点を伺いたいと思うであります。
  8. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 明年度におきまするところの計画はすでに私どもが準備を進めておるのでございますが、ただいま災害の激しかった同和地区に対しても優先的に措置を講ずべきである、もちろんわれわれは災害の激しかったところに対しましては、やはり災害救助法やあるいはまた災害地に対する特別立法によりまして、何ら他の被害地と区別なく、同様の措置によってこれを講じたい、かように考えておる次第でございます。
  9. 田中織之進

    田中(織)委員 私がこの問題をしつこく伺うのは、こういう部落被害というようなものも今度の予算対象になっているいわゆる公共施設の中には入らないわけなのです。従って今度の災害の特徴といたしましては、なるほど二十八年災害に匹敵する公共施設に対する被害を受けております。受けておりますけれども、そういう国が今度の予算でやろうとしておるような対象にならないところの民間被害というものが非常にたくさんあるわけなのです。そういうようなものについては若干は予算はとっておられるわけであります。しかしこれでは私、問題にならぬと思うのです。私の調べたところによりますと、いわゆる民間のそういう災害に対するものといたしましては、厚生大臣がこの間説明をいたしました世帯更生資金貸付補助として一億五千万円、児童保護費増加分が約四千万円、それから国民保険助成費として七千七百万円、それから社会福祉施設という、これも施設の復旧でありますが、この関係で一億三千万円、合計いたしますると四億円に足らない金額しか直接的に民間災害に対するもの——もちろん国民金融公庫その他の関係で融資をされる、あるいは生活保護資が今度三十四億円でありますか、増額をされております。この部分は災害関係生活保護の適用を受けなければならぬ人が相当ふえておる関係から、若干を生活保護法保護資増額によってカバーしようとされておるわけでありますが、民間被害産業関係施設その他の関係のものを別といたしましても、家財道具の流失であるとか、あるいは住宅流失をしたところについては仮設住宅が与えられることになっておりますけれども、それにしても六千戸しか予定されておらない、こういう関係では十分それらの需要に応ずるわけには参らないのであります。ことに現在なお浸水しておるというような地域にあります住宅につきましては、当然その水が引いたあと、人間が住めるようになるためには相当大幅な改造なり改修をしなければならぬ、そういうような関係のいわゆる民間災害については、全然行なわれていない。全然と言っていいほど今度の政府対策の中には取り上げられてない。その最も端的な表現が、全部落の五十戸が流失して四十八人も死人を出したという、こういう未解放部落に集中的に現われてきておると思う。そういう関係から見て、民間被害に対して国が思い切った処置を講じなければならぬことは、先般来わが党の楯君なりあるいは与党の田中伊三次委員なりが強調されてきておるわけであります。それに対して、そういう民間のものについては国からどうこうということは今のところ考えていない、こういう答弁総理からもなされたままになっておる。私はそういうことではいけないという観点から、この未解放部落の特に被害の激甚であったところを抜き出して申し上げているのですが、そういうことについての考えを、厚生大臣としてどうされようとしておるのか、このことも含めて一つお答えを願いたい。
  10. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 一般同和対策に対するところの施策費といたしまして、先ほど申しましたような八億六千万というものが明年度において考慮されているわけでございます。それでありますから、その中にありまして、私どもは、重点的に総合的な施策を特にひどかった同和地区に対しましては十分考慮していきたい、かように考えております。
  11. 田中織之進

    田中(織)委員 どうも僕の申し上げておる意味厚生大臣は理解しておらないようであります。その民間災害の問題については、後ほど総理からも答弁を伺いたいと思いますが、同和対策明年度における問題を盛んに厚生大臣が述べられますから、その点について、私一、二問質問を続けたいと思います。  私の手元にあるのは、ことしの九月の十五日に内閣審議室から出ました昭和三十五年度における同和地区事業計画試算表でありますけれども、出ております。それには、ただいま厚生大臣がお述べになっているように、十二部落でありますかが、全国十六カ所の同和地区を取り上げまして、そこにいわゆるモデル地区として徹底的な環境改善その他の関係を行なわれる。その関係のために、今厚生大臣が述べられましたように、モデル地区関係が約九億円ですか、十四億ですか、計上される計画を立てておるわけであります。私は、全国にいわゆるこの同和部落とされているものが、これは厚生省調査によりますと若干数字が違う。われわれの調査によりますと、全国に六千部落ある。六千部落の中を毎年かりに十六ずつそういうモデル地区を作っていくといたしますと、一体六千部落を、政府考えているような、これからやろうとするような形でこれに改善を加えていくということになると、何十年かかるか、実にかすみのかかったような感じがいたすのであります。それからモデル地区に指定されて、相当多額の国費を投じて改善を加えられるところはよろしい。それ以外の部落に対する対策というものが並行的に進められなければ、部落の中のいい一部のものだけは非常によくなるけれども、それ以外の部落というものが現在のような状態に取り残されていくということになると、部落内部対立というような問題が、やはりこれは全国的に起こってくることが心配になるわけであります。そういう点から見て、明年度において、この関係で約十五億、一般関係に約九億円、全部で二十四億円、同和対策として投ずることが計画をされているようでありますが、そういうことでは、全国にある六千部落をわれわれが要求しているような形で一般の水準に引き上げていくということには、非常にほど遠い施策にしかならないと私は思うのでありますが、一体この点について、厚生大臣として、そういう根本的な問題についてお考えになったことがあるかどうか、この点をお答え願いたい。
  12. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 部落間におきまして、モデル地区と非モデル地区というようなことで対立を起こすというような、そういうような選び方はやっていないわけでございます。いわゆる全同対にいたしましても、あるいは部落解放同盟にいたしましても、そういう面から御要望がありましたいわゆる地区に対しまして、要するに地元の負担等もあることでございますから、かかる地点から私どもは選びまして、そうしていわゆる内閣にありますところの同和地区閣僚対策懇談会、あるいはまた自民党の中にありますところの特別委員会等のこの指導要綱等に基づきまして、これは政党政派とかいったような思想的な、そういうような関係から全然超党派的に考えまして、いわゆる盛り上がるところの各地区の御要望によりまして、こういう地区選定をいたしたのでございまして、われわれは十カ年間の計画において、三百億を今目途といたしまして計画を立案中なのでございます。漸次これは一般並びにモデル地区というものにつきまして、公平な意味におきまして、われわれは地区選定を、各方面意見を総合いたしまして決定いたさんとしておるのでございます。
  13. 田中織之進

    田中(織)委員 肝心の災害に関する、どうしてもこの質問でたださなければならぬ問題がたくさんありますので、非常に残念でありますけれども、私、この同和問題は、いずれ別の機会に尋ねることにいたしまして、この点について、今厚生大臣が述べられたように、全同対の話も出て参りました。ところが、全同対に、少なくとも関東の埼玉県であるとか、群馬県であるとか、長野県、これは現在加盟しておらない。それから厚生省から、昨年におきましても、向こう三年間に、こういう地区についてどういう施策を講ずるかということについて通達が出ておる。ところが、これはことしの春の予算分科会で、私がその当時の坂田厚生大臣に伺ったのでありますけれども、そういう通達が出ても、該当事項なしという府県からの回答があるわけです。あるいは全然回答のないようなところもあるわけなのです。ところが私らの調査したところによりますと、岩手県、秋田県、山形県、こういう従来東北地方には同和地区はないとされておったところにも、幾つかのやはり部落があるという関係で、現実部落のわれわれが持っておる台帳を持ってきて、こういうようにあるんだけれども、それらの県からは該当事項なしといった回答がきている。そういうようなところまで、これは調べてもらわなければ、どうにもならないことなのです。それから、今部落解放同盟とも相談をされたようなことを申されますけれども、私解放同盟全国書記長ですけれども、この地区選定の問題については、私らは何も相談を受けていない。今おっしゃられるように、この問題は超党派的に国として早急に取り上げなければならぬという厚生大臣考え方には、私も敬意を表します。しかし現実にはそういう形ではこの計画が進められておらないところに、先ほど申しましたように、部落の分裂というような、部落内部にまたみぞを作るような結果になる。また実情はそういう点から見て、厚生省としてもとっておられないのです。だから、私どもは、もう三年も前から、特に岸内閣になりましてから、部落問題のまず実態を調査をし、どういう施策を国として講じなければならないか。日本民族の構成というものは、民族学的に言って複雑なものではないのであります。何も同和部落人たちは中国その他にある少数民族でも何でもない。同じ日本人でありながら、封建時代身分差別のために、今日なお不当な差別待遇を受けておる。こういうところに問題があるわけですから、これを解決をする意味で、まず民間の各方面の代表をも網羅したところの官民一体のこの問題の審議会を設置してもらいたいということを要請もいたしました。予算委員会なり社会労働委員会で、私なり八木一男君なり、参議院におきましても、社会党関係議員諸君から、この問題を取り上げまして、総理も設置を約束されておる。ところが、内閣の中に同和対策関係閣僚懇談会なるものができて、一応政府内部連絡はできておりますけれども民間でこの六千部落にそれぞれ影響を持っております私ども解放同盟というものが、こういう大事な企画に参画する機会も与えられていない。こういうことで、政府部内の連絡機関としての閣僚懇談会ではだめなのです。今厚生大臣が御答弁になっているような内容の問題についても、いろいろ問題があるわけなのです。私は災害予算の問題についての質問に移りますから、ここでそういう今度計画された閣僚懇談会自民党の中に同和対策議員懇談会ができ、政調の中にも特別委員会を持って積極的にやっておられること、敬意を表しておる。それが合同対という民間のあるいは地方自治体の連絡体と一応縦の系列ができておるように見えるのですけれども、それでは厚生大臣の言われる超党派という関係で、野党のわれわれの意見というものがこの問題に反映しないのです。そういう関係から、この点は総理もたびたび約束せられておるわけなのでありますが、いまだに設置されないでありますけれども、今度の災害問題等関係部落が特に大きな被害を受けて、全部落流失するというような惨たんたる被害を受けるような地区部落が位置しているので、水が出れば浸水する。今度のようなことになれば、ほかのところは水が引けば何とか家の格好だけでも残っておりますけれども、長鳥町の松ケ崎部落のごときは跡形もないという状態になっておる。こういう点から見て、これらの問題についてやはり特別な対策を講じていただかなければならぬことになると思うでありますけれども、この際同和対策関係のために、官民一体となったところの特別委員会と申しますか、審議会というか、そういうものを内閣に設置してもらいたいと思うのでございます。私はきょうはそこまで質問をする考えがなかったので、いつの委員会総理がこう答弁されているという資料を持ってきておりませんが、二回にわたって総理八木君の質問に対して設置を約束されておるのでありますが、今度の災害を契機にして、そういう運びに進めていただきたい思いますが、この点についての総理のお考えを伺っておきたいと思います。
  14. 岸信介

    ○岸国務大臣 同和部落の問題は、私どもきわめてこれが対策を立てることは重要な問題であると考えております。いろいろな民間にも団体があり、また各方面の御意見が出ておることもよく承知いたしております。そうしてこれは各省にも関係をいたしておることであり、広く各方面意見も聞いて対策を立てるということが私は必要であると思います。この意味において、あるいは内閣にそういう官民を網羅した審議会あるいは調査機関等を設ける必要があるという御意見につきましても、従来しばしば承っておるのであります。私はその御趣旨には反対するものではございません。ただ、この問題に関して、まず内閣関係閣僚の懇談会を置き、わが党といたしましても決して一党一派の立場からではなくして、国全体の問題としてこれを重要な問題として考究をいたしており、またその間におきまして解放同盟等の大会も行なわれ、決議、要望等も十分に承知をいたしておりまして、これらを資料として、今日の段階におきましては、関係閣僚が十分に連絡をとって対策を作るということが適当であろうということを考えて、今日まできておるわけでございます。今御質問の中にもありましたように、こういう同和部落におきまして、今回の災害によって特に甚大な被害を受けている地域について、その復興等に関しましては、十分一つ各方面のことを総合して対策を講ずる必要がある、かように考えております。ただ、今の段階において直ちに審議会——御趣旨は私先ほどから申し上げておるように、従来も同感を表しておるのでありますが、今日の段階においてはなお関係閣僚の懇談会におきまして、もう少し問題を具体的にしていく必要があり、それが最も適切であろう、かように考えております。
  15. 田中織之進

    田中(織)委員 実は政府が、自民党の政調内の特別委員会寸の関係を通じて、明年度において施策されようという問題は、これは部落問題の根本的な解決の上から見れば一つの前進ではありますけれども、一歩誤まると差別を拡大再生産するような危険性をはらんでおるのであります。その意味で、この問題についても再検討を加えてもらわなければならぬ問題があるわけです。これは文部大臣にもあるいは自治庁長官にも関連する問題でありますけれども、先ほど申しましたように、きょうはそれを掘り下げて伺う時間はありませんので、そういう観点からも、現在ある閣僚懇談会政府内部連絡機関から一歩進めたところの、ほんとうにこの問題を今日の時代に根本的に解決をして、次に生まれてくる子供たちにはこういう苦々しい経験を味わわさない、こういう角度で問類の処理を進めていただく意味において、総理も趣旨に賛成せられておるのでありますから、積極的に委員会を設置していただくようにさらに御努力を要請して次の質問に移ります。  そこで今度の災害の復旧のための補正予算の問題に入りますが、一昨日ようやく被害激甚地の指定基準が発表せられたわけであります。きょう資料としてその基準を見ますと、なお問題があるわけであります。その点について逐次質問を申し上げますが、その前に私ども社会党といたしましては、災害対策の問題について本日の午後わが党の災害予算はこれだけのものを組んでもらいたいというものを出しますが、それはこれでは不十分だという考え方の上に立っておるわけであります。そこでこの予算ではもちろん足りないと、こういう考え方の上に立って御質問を申し上げるわけでありますけれども、その後いろいろの報告なり調査も進んでおると思いますので、まず建設大臣に建設省関係災害復旧予算というもの、これは被害総額と査定額、それから今度の激甚地の指定基準に基づいてやる関係予算はどの程度になるか、一つ建設大臣、農林大臣、運輸大臣、文部大臣という順序で各省別のものを各省大臣から示していただきたいと思います。
  16. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 今回、当初予定いたしておりました基準よりやや高めの基準をきめたわけでございます。それに伴いまして農地の関係において約二億でございます。それから林道の関係におきまして約千二百万円程度の増額を必要とする次第でございます。(「農業施設はどうした」と呼ぶ者あり)農地及び農業用施設において二億円程度であります。
  17. 小川半次

    小川委員長 田中君、運輸大臣は今出席しておりませんが……。
  18. 松田竹千代

    ○松田国務大臣 文部省といたしましては、被害総額は、公立学校施設におきまして四十三億四千万円、公立社会教育において一億二千万円、公立体育施設におきまして五千五百万円、私立学校において約六億円、国立学校施設において二億六千万円、合計五十四億二千五百万円、なお台風七号の被害四億八千万円、その他被害二億三千万円となっております。三十四年度の予算額といたしましては、公立文教施設関係十億八千万円、社会教育施設四百二十五万円、私立学校五千三百万円等でございます。こういう状態になって合計約十一億四千万円ということになっております。
  19. 村上勇

    ○村上国務大臣 こまかい数字になりますので、政府委員からお答えいたさせます。
  20. 山本三郎

    山本政府委員 お答えいたします。建設省関係の公共土木施設被害額は直轄、補助を合わせまして千三百三十五億の報告額でございます。それに対しまして国費を算出いたします査定率等をかけまして国費を算出いたしまして、本年の所要額はその二五%を計上しておるわけでございます。それから特例法の適用地域は六〇%ということで計算いたしておりましたけれども、今回の地域指定によりましてそれが六、七%ふえるではないかということに相なるわけでございます。(「金額々々」「今度で幾らふえるか」と呼ぶ者あり)金額にいたしますと、六、七%といたしますと、約三億程度でございます。
  21. 田中織之進

    田中(織)委員 今農林、建設、文部の三大臣からそれぞれ答弁を願ったのでありますが、数字が明確でないのです。それでは大蔵省からわれわれに提示した資料に基づいて数字を伺いますから、これよりどの程度ふえたのか明確にしていただきたいと思います。これは十一月の四日に大蔵省から当委員会に出した資料で、お手元にもあるだろうと思うのですけれども、建設省関係の公共土木施設被害報告額が千百四十三億千六百万円、査定見込み事業費が八百八億七千二百万円、現行法による国費の所要額が六百十六億千七百万円、その内訳を河川費、治山、漁港、港湾、こう四つに分けて数字が示されておるのでありますが、これに基づいてどの程度、このままの状態なのか、これは予算を編成するときのものでありますけれども、今度の指定地の基準の決定に従いまして、当然これが変化を見ておると思うのです。今の被害総額、たとえば建設省の関係では報告額が千三百三十五億だ、大蔵省の報告では千百四十三億ということで、二百億も被害の報告額に食い違いが出てきておるわけです。これらの点はどっちがほんとうなのか、一つお答えを願いたい。
  22. 石原幹市郎

    石原政府委員 数字の問題でございますので、便宜私からお答えを申し上げます。お尋ねの点の公共土木施設、十一月四日にお配りをいたしました資料におきまして千百四十三億でございます。先ほど建設省の河川局長が千三百四十億というふうにお答えになったのでありますが、これは伊勢湾の関係は御承知のように高潮対策事業費といたしまして、災害関連と一本にいたしておりますから、これは別建てにいたしまして、それを除きましたもの、それが千百四十三億で、以下にごらんの数字が出るわけであります。それに対しまして、小計というところの右の欄、特例法の加算で九十五億七千万という数字が出ております。これは今ごらんを願っておりますように被害報告額総額でございます。三・五・二なら三・五・二という割合をもって施行せらるべき総額でございます。それに対しまして先ほど来農林、建設両当局からお答えをいただきました今回の基準によりましてどれだけ増加するかという額は、この九十五億という分に対しましてこれを初年度分の二五というパーセンテージを乗せましてそれに対しまする増加額というふうにお聞き取りを願いたいと思います。
  23. 田中織之進

    田中(織)委員 この表には直轄事業の七十五億、それから伊勢湾の高潮対策関係が別になっていることは私も承知しておりますが、今建設省から河川局長が述べられたこれは被害額でありますけれども、千三百三十五億というものは、これに対する建設省としての査定見込額は幾らになるのです。
  24. 村上勇

    ○村上国務大臣 ただいま計算したものを持って参りますが、ただいまの千百四十何億と申しますのは、いわゆる補助災害だけでありまして、これに直轄災害の百四十二億というものが加わりまして、千三百三十五億ということになっております。それの査定額が大体七六%くらいになっておりまして、それに執行残を〇・四%かけまして、そうしてその出た数字に対して六〇%は大体高率補助の八割、それからあとの残りは三分の二というようなことで計算を出して、その総額を出した次第であります。
  25. 田中織之進

    田中(織)委員 今建設大臣がお述べになりましたもので割り出した数字を正確に答えていただきたいと思います。
  26. 村上勇

    ○村上国務大臣 当初の数字と多少増額されておりますので、なお今精密に数字を算出いたしまして、御報告いたします。
  27. 田中織之進

    田中(織)委員 実はそういう数字を、ほんとうはあれだけの基準も発表されているのですから、そういう資料を実は出して下さいということを、これはおととい大蔵大臣から基準を発表になった直後のわが党の佐藤觀次郎君の質問でその資料を要求して、もうきょうで三日目なんです。まだその算出ができないというようなことでは、予算案をきょう午後やろうといっても無理じゃないですか。(「今そろばんをやっている」と呼ぶ者あり)そろばんをやっているというても、これは……。
  28. 山本三郎

    山本政府委員 お答えいたします。今直轄補助の災害の分が千三十億ございますが、報告額は千三十億でございまして、それに対しまして申請率それから査定率、事務費、事業費等を加えまして、総体の国費が四百九十六億九千万ということにいたしておりまして、それに対する二五%、さらに特例法の適用を考えまして事業費を出しておるわけでございます。
  29. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 お手元に配付いたしました十一月四日現在の数字、これはただいま田中委員お引きになっておるので、私が中身を御説明するまでもないことだと思いますが、この「注」に書いてありますように、直轄事業と伊勢湾だけは除かれております。そこで被害報告額は千百四十三億、これに対して査定見込事業費は八百八億、かようになっております。今回の予算の全体につきまして、いつも申し上げておることでございますが、今回の災害全国にわたり、しかも今日なお長期湛水をしておるところがある。かような関係で、全部を精査するわけになかなか参りません。その意味である程度の見込みがいずれの部分にも入っておると思います。そういう意味から予算の総額にいたしましても、一応計上いたしておるものがございますし、さらにその不足分を予想いたしまして予備費に五十億程度入れておる。そういう意味でこの数字そのもの、これはもちろん大蔵省だけが出したわけではございません。建設省、関係省と十分相談の上で出しておりますけれども、ただいま申し上げるような未定部分あるいは推定部分が入っておること、この点は全般として御了承おき願いたいと思います。
  30. 田中織之進

    田中(織)委員 おそらく建設省の方で査定見込額、それが現行法による国費の所要額というものが、公共土木の関係についても数字を言えないという点は、大蔵省が出した十一月四日の資料と額が違うからだと、私はそういうふうにしかとれないのです。この数字とは違うでしょう。
  31. 山本三郎

    山本政府委員 先ほど私が御説明申し上げましたのは、この数字とぴたっと合っておるわけでございまして、そのほかに伊勢湾と直轄の災害が別にあるわけでございます。
  32. 田中織之進

    田中(織)委員 そうすると、今度の政府決定した基準に基づいて激甚地の指定が行なわれてくるわけなのですが、その関係から見たら、当年度においての予算額というものはこれと変わらない、そういうふうに建設省は考えておられるのですか。
  33. 山本三郎

    山本政府委員 その点は地域指定の問題が拡大されましたので、先ほど申し上げましたように、六〇%見ておりましたのが六五%ないし七〇%になるという想定をいたしますと、国費にいたしまして三億くらいよけいに要る、それは予備金で考えてもらうということでございます。
  34. 田中織之進

    田中(織)委員 その点は佐藤觀次郎君の質問に対して大蔵大臣も大づかみに大体一割程度はふえるということを答弁されているのです。肝心の建設省が五、六%程度しかこの既定の計上しているものよりふえないということでは、災害地人たち——基準はいろいろ国会の各党の意見をいれてふくらましたけれども、肝心の予算そのものは、現行法の関係のもの、また当初政府考えておった基準に基づくもの程度で押えるんだということになれば、何で激甚地指定の問題をやかましく言ったか意味をなさなくなると思うのです。建設大臣それでいいのですか。
  35. 村上勇

    ○村上国務大臣 建設省としては、今回の地域指定によりまして増額される分が大体六、七%くらいに計算が出ておるのであります。昨日ようやく決定いたしましたので、各府県等の地域の標準税収入とかいろいろのものを割り出して計算して参りますと、非常に手間がかかりますので、大づかみにして六、七%くらいの増ということに見当はついております。
  36. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 お答えいたします。ちょっと基準について私の話と建設大臣の話が違っておるようですが、建設大臣は全体についての増加割合が六、七%、かように申しておるわけです。私は、大体六〇%は特例法を受けるであろう、これが大体一割程度ふえるだろう、かようなことを実は申したわけです。六〇%の一割はちょうど六%に当たるわけであります。この点では両省の間の食い違いはないのであります。ただ、基準が全体での基準をいきなりとられるからただいま申し上げたようなことになるわけです。私は六割の程度でお話をしましたが、これが一割程度ふえるだろう、六割が一割程度ふえるということは六%、これは大体そろばんが合うのでありますが、このそろばんが合うということとは別にいたしまして、この機会に、お手元に配付いたしました資料について少し説明を加えさしていただきたいと思います。  御要求がございまして、公共土木施設特例法地域指定基準該当率並びに農林水産施設災害特例法の地域指定基準というものを、一応表を作ったわけでございます。ところが、この点は、大へん申しわけがないのでございますが、県もはっきり書かないで、A、B、C、D、Eと、かように五つの県に仮想のA、Bで表現をいたしたりしまして、全体についての表が実は出て参りません。しかしながら、今日まで毎回申し上げておりますように、今回の災害で全体の実情を把握することが少しおくれておる、そういう意味で、どうも全体についてのものを急速にお手元に差し上げるわけにいかない。この点では私の方も非常に遺憾に思いますが、非常に早急の間に今日まで出ております資料について、一応これならば、試算ができるという県を単位にし、しかも、それでもなおかつ幾分か推定も入っておりますが、それらのものを取り上げて、ようやく五つの県だけの試算を試みてみたわけであります。ところで、この内容は今後あるいは幾分か変わてくることもあるだろうと思いますので、具体的に県の名前をあげないでA、B、C、D、E、かようにいたしたわけであります。それらの点は、大へん短い期間にこの種の表を作ったことでございますし、また事態そのものがただいま申し上げましたように不明確な部分がございます。そういう点からこの点を御了承賜わりたいと思います。この数字等から大体推定いたしてみますと、第一の表に出ておりますように、公共事業費の方については、この五県だけで推定をしたところで——これは正確には申し上げかねますけれども、該当率は六七・九ということに数字がなって参ります。この五県だけで六七・九、約八%。それから、次の表が農林水産施設関係でございます。これが七一・一%。今まで六〇%と申しましたものが七一・一になる。この方は約一割近くになるということでございます。これは、ただいま申し上げましたように、この表自身を作りましたことに対しまして、私どもも非常な確信のある表ではございません。そこで、特にお断わりいたしておりますように、「注」の(1)、(2)、(3)、(4)、これは公共事業、農林については(1)、(2)、(3)、この「注」をあわせて読んでいただきますとこれらの推定部分があるということが御了承いただけるではないか。この際に、この時点において私どもが一応推定し得るものがこの表でございます。この点を御了承いただきたい。この点で、ただいま申し上げましたように、六七・九というようなことに公共土木がなる。それで、今回提出いたしました表と、これの「注」の部分はある程度増減がある、かように考えていただきまして、そうして十一月四日にお手元に差し上げました表と関連をつけていただく。この十一月四日に差し上げました表で、ただいま総額について不明ではないかということでございましたが、今大蔵、建設両省の意見は一致いたしております。これによりますと、特例法による増加額総合計で九十七億二千百万円、かようになっております。この総合計の九十七億二千百万円、公共土木はそのうち六十三億九千六百万円、約六十四億、それから農林水産施設は三十一億、こういう基礎数字をお考えになりまして、今の率を当てはめていただくと大よそのものが出るだろう。しかし、何と申しましても金額そのものの問題でございますし、この際、率自身にも幾分かの変動が予想されている今日でございますから、私どもは、ただいま申し上げる程度で一つ御了承がいただけないか、かように考えている次第であります。
  37. 田中織之進

    田中(織)委員 大蔵大臣は、おととい佐藤君に述べられた点を上手に訂正してきた格好なんですけれども、それでは引き続いてこの十一月四日に出ました資料に基づいて、なお私の不審に思う点をただしたいと思うのです。今特例法による増加額が九十七億二千百万円。この表にはそうなっている。そうすると、建設省関係のもの大体六〇%、それから農林省関係のもの同じく六〇%に押えたときの増加額が九十七億二千百万円、こういうことになるのですか。
  38. 石原幹市郎

    石原政府委員 ただいまのお尋ねにお答えいたします前に、先ほど建設省の方の数字が合わないというお尋ねがありましたことを簡単に申し上げます。それは、先ほど御指摘のございました十一月四日の公共土木施設数字と、先ほど建設省河川局長が報告せられた千三百三十四億という数字が合わない。それは、今お手元にお持ちでいらっしゃると思いますが、十一月四日の公共土木施設の河川等という数字があります。そこに千三十億九千九百万円、これが建設省関係でございまして、以下、治山、漁港、港湾とございます。その河川等の千三十億に対しまして、先ほど私がお答え申し上げましたように伊勢湾関係が抜けておる、伊勢湾関係は補助におきまして百六十一億、直轄におきまして七十四億、そのほかに一般の直轄が六十八億ございまして、その二本を合わせてみますと千三十一億、百六十一億と百四十二億合計三百三億をつけ加えまして千三百三十四億という数字になりますので、先ほど概略にお答え申し上げましたように、この千三十億という数字と建設省が申された千三百三十四億という数字は伊勢湾と直轄が抜けておる。これは補助事業費ということに書いてございますので、その差額だというふうに一つ御承知をいただきたいと思います。  それからただいまのお尋ねの件でございますが、公立文教を含めまして九十七億二千百万円、公立文教を除きまして公共土木、農林水産及び都市の関係におきまして九十五億七千万円、この数字は先ほど申し上げましたように、被害報告額に対しまする見込みであります。従いまして今後三・五・二という割合でやって参ります事業費の総額でございますから、従って初年度分といたしましては御承知のように三・五・二の二五%、初年度二五%になりますからこれに二五%を乗じました数字が初年度の額であります。(「二割八分五厘と違うじゃないか」と呼ぶ者あり)なお二割八分五厘との関係におきましては、これはいつか大臣から御答弁をいただきましたように、いわゆる緊要ならざると申しますか、七〇%の緊要工事につきまして三・五・二という従来の率がございます。これはすでに確立されたルールでございます。それに対しまして残りの三〇%のいわば緊要でないと申しますと語弊がございますが、七〇%の残りの三〇%につきましては従来は初年度四%でございます。合計二五%というのが従来の初年度の率でございます。これはもう数年にわたりまして三十一年に法律が出まして以来、その率でやっておるわけであります。それに対しまして、二八%半ということを見ましたのは、これは残りの数字を三〇%四年間に半分いたしますと、七月半に相なります。緊要工事以外の工事三〇%を四年間に半分いたしますと、七%半に相なりますので、それに緊要工事の七〇%の三〇%、二一%、これを加えますと、二八%半という数字に相なります。そのうち二五%を毎年度の予算に計上いたしまして、残りの三%半は国庫債務負担行為合計二十九億というもので別にお願いを申し上げておる、こういうことであります。
  39. 田中織之進

    田中(織)委員 また新事実が出てきた。三・五・二の比率は債務負担行為その他の関係があるから実質二八・五%を予算化する、こういう答弁であったと思うのです。それがきょうになると、先ほどから建設省の方も大蔵省の方も一貫して二五%に押えたという点は、これは明らかに国民をだましておることになる。今主計局長がここ数年来のしきたりだと言われるけれども、しきたりであるならば、一番最初に三・五・二の比率だ、しかしながらことしは債務負担行為という形で三のうち一・五に相当する部分が債務負担行為の中に入っておるのだ、そういう意味で二八・五を予算化した、こういうように従来までこの委員会で述べてきていたのが、きょうになって二五%とは一体どういうことですか。この点は大蔵大臣からお答えして下さい。それは国民をだましていることになる。われわれ予算委員をだましていることになる。
  40. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 今回は二八・五%を考えておる、これは間違いございません。そこでただいまの説明が不十分であり、あるいは誤解を招いたかと思います。毎回申し上げておりますように、本予算として計上したもの、予備費とさらに不足分について債務負担行為の三十億というものを計画して、そうして二八・五になるように、しかもその二八・五というパーセンテージ、パーセンテージにとらわれるばかりではなく、農地におきましては来年の作付に間に合うように、また台風襲来前に一応の工事が格好がつくようにということを計画いたしております。その意味におきまして、毎回細説明いたしておりますように、本年店内の予算だけではそれだけはできません。しかしながらさらに次の通常国会に提案いたします予算によりまして四、五、六というような三カ月分のものを考えて、ただいま申し上げるような工事目標計画を立てております。この点は間違いございません。
  41. 田中織之進

    田中(織)委員 大蔵大臣述べられても、あとで速記録を調べればわかると思うのだが、明らかに従来この予算委員会政府側が説明してきているものを、きょうになってやはりこの数字を動かさないんだという建前に立って、あなたたちは二八・五%から二五%に下向したものだ。そこで私は別な角度からここに政府が出している数字について、——かりにあなたたちの言う二五%の線にしたって、公共土木、これは建設省関係ですね。現行法による国費の所要額が六百十六億一千七百万、これに特例法による前の基準によるものを含めても、六十三億九千六百万円加えますと約六百八十億ということになるのです。ところが別の予算書から拾って参りますと、河川等の関係が百二十七億三千万円、それから治山関係二億二千万円、漁港関係、これは農林省の関係ですが、その関係を含めまして、本年度においてやるものが百三十八億六千万円ということになる。六百八十億のうちでことし百三十八億をここに計上したということになると、一体それは何%になるか、ちょうど二割じゃないですか。二〇%じゃないか。これに今度の基準に基づいて、激甚地指定でやりました形でいけば、ものによると九割も国が負担しなければならぬものが出てくるわけです。そういうことになると、実質的にはまだ五%やそこらは私は減ると思う。従って今言う二五%としても五%の開きが出てくるし、今度発表された政府決定した基準に基づいていくということになれば、私はこの予算の形からいえば、工事量というもの——三・五・二の比率というのは工事量の問題です。災害復旧を初年度三割、来年度に五割、三年目に二割を残そう、こういうことになれば、工事量が、この大蔵省から出された数字から見ても二〇%にしか当たらない。それを今度の基準で高率の補助をやるということになりますとうんと事業量が減ってくることになりますが、一体それで押し切るつもりですか。
  42. 石原幹市郎

    石原政府委員 数字の問題でございますからお答え申し上げますが、十一月四日に御配付を申し上げました資料でごらんを願いますと、現行法によります国費所要額七百九十九億という数字がそこに出て参っておるわけであります。それに対しまして特例の数字が九十五億という数字が出ておるわけであります。それに対しまして予算に今回計上いたしました分は、直轄と補助とを加えまして、本費に載っておりますものが百七十八億ございます。それに対しまする既定予算の予備費をもちまして充当いたしました分が四十六億、それに対しまして補正の予備費の中におきまして、これに引き充てておりますものが二十四億でございますから、合計をいたしますと二百四十八億という金額が今申し上げました七百九十九億プラス九十五億七千万というものに対応する初年度の額であります。これが三・五・二の割合を超過いたしておりますのは、直轄につきましては、御承知のように、五割計上いたしますことに相なっておりますので、初年度それを見た分に補助工事の二五%が加わるということに相なっておるのであります。
  43. 田中織之進

    田中(織)委員 この数字は補助事業についてのものなんですから、またここの「注」の中に入っている直轄事業の関係だとか、伊勢湾の高潮対策というものははずした数字で、七百九十九億九千百万円、それに九十五億七千万円を加えたものが、今主計局長の言われるように百七十八億本年度にこの予算の中に出てきておる。私の計算では百七十二億にしかならないのでありますけれども、かりに百七十八億といたしましても、これを合計しますと、約九百億になるのです。九百億で、ここの数字で出てくるのが百七十八億、百八十億だとしても、これは二割切れるではないですか。少なくとも金額の点からくればそういう形になるではないですか。それだから、ここは補助関係だというてあなたたちは逃げておられるのだから、補助関係のもので予算の面では二割しかできないことになるではないですか。
  44. 石原幹市郎

    石原政府委員 お答えを申し上げます。ただいま申し上げました二百四十八億という数字が直轄及び補助を含みました数字でございまして、そのうち直轄を引きました補助の分は二百五億七千五百万という数字に相なっておるわけであります。それで先ほどごらんを願いました特例を含みます金額とのにらみ合わせにおきまして二五%をやや切りますのは、これは従来から農地、農業用施設につきましては、高率の分を全部当該年度中に計算をいたします。これは計算が比較的簡単でございますから計上いたしたのであります。それに対しまして公共土木の方につきましては、これは各個の計算がおくれる分がございますから、従って、高率に当たります分は翌年度に計上いたすという率になりますので、ただいま御指摘のような事柄に対しまして、私がお答えを申し上げております七百九十九億プラス九十億に対しまして二百五億という数字を計上いたしました。これが今二五%ということで申し上げました数字の内容になります。
  45. 田中織之進

    田中(織)委員 主計局長は二五%切れるという、私の申し上げているのは二〇%切れるのです。この数字からいえば、はっきりしているではないですか。七百九十九億、これを八百億として、九十五億七千万円加えて、それであなたの言われる二百五億にしたところで、二〇%そこそこにしかならないではないですか。そこへ持ってきて、今度発表になった基準に基づいていけば、税収との関係被害額を押える、そういうような押え方というものがいいかどうかということは、災害対策特別委員会でも、税収に関係なく、やはり災害を受けたということについて考えなければならぬという意見等も出ているのでありますが、かりにその基準に基づいて、——従来政府として考えておった被害総額が平均税収の二倍の場合を、今度は平均税収を上回る場合という形で出て参りました関係から、当初予定していた三県から、適用府県も、もちろん全面的ではないということで大蔵大臣は逃げておられますけれども、十六府県になっている。市町村は特別に指定するわけでありますから、その混合方式でいくといたしましても、この基準からいえば、まだこの予算額はふえなければならぬ。ふえなければならぬという点をかりに考慮の外に置くとしても、この予算では、結局もっと査定を厳格にするとか、いろいろそういう問題が出てくるから、災害地としては一番この内容的な点に関心を持ってきておると思うのですけれども、大蔵大臣いかがでしょう。
  46. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 今回の災害対策につきまして、大蔵当局の考え方が一部誤解を受けておると申しますか、予算委員会を通じましても、あるいは災害対策特別委員会等を通じましても、大蔵省は予算を先にきめて、その範囲に工事をぶち込んでいるではないか、こういう御意見をしばしば実は伺うのでございますが、さような考えを毛頭いたしておりません。私どもはどこまでも現実を尊重いたしまして、現実被害額をいかにしてこれをまかなうか、こういう意味で実は財源を捻出いたしたわけであります。私どもは今日、予算総額にいたしましても、なお未定、推定を要する分がある、こういう意味でございますので、そういう点を考慮して税収入その他も計上いたしましたが、さらに既定経費の削減をはかるとか、あるいはまた債務負担行為をここに計上するとか、あらゆる工夫をいたしまして財減を調達いたしておるのであります。この点は今までもしばしばかようなお尋ねを伺いますが、私どもは、今回当面いたします災害については、全力を注いで災害対策の万全を期すというか、遺憾なきを期したい、一日も早く民心の安定をここに招来したい、こういう意味で努力をいたしております。従いまして、予算の取り扱いそのものにおいても、基本的に、財源を各方面から捻出いたして参りましたが、同時にまたその査定等についても、今日までも査定についてのいろいろの御要望はございます。どうもあたたかい気持を持たないとか、先に予算総額をきめて、それに縛るつもりではないか、こういうふうなおしかりも受けておりますので、特にその点では注意をいたして参っております。基本的な考え方において同じような立場に立って大蔵省が予算を編成した、この点だけは十分御理解をいただきたい、かようにお願いをいたす次第でございます。
  47. 田中織之進

    田中(織)委員 なおほかにも明らかにしなければならぬ問題が出ているのですが、今大蔵大臣も言われるように、予算の金額をきめて、それから逆算したのでないということになれば、この予算そのものでは無理があるということはお認めになるのですね。その無理があるということになれば、まあこの臨時国会はこの予算を一日も早く通すというところにあると思うのですけれども、引き続いて通常国会も開かれるわけですから、本年度中の私が申し上げている事業量の問題も、政府と私の言うことがお互いに水かけ論になっているけれども、あなたたちが出された数字に基づいて私が計算した工事量も二〇%にしかならない。また高率補助の適用が今回の指定基準によって広がっていくのですから、この予算額にとらわれていくということになれば、もっと事業量は少なくなってくる。後ほど伺うつもりですけれども、そんな形では、来年の五月の植付に間に合うように、あるいは台風襲来時期までの間に、とにかく同じことを繰り返さないだけのものをやることは困難なのではないか。台風の時期は八月、九月、ことしのように七月にもう大きな台風が来ている例もありますけれども、かりに植付の関係の五月を例にとるといたしましても、四月、五月の予算は、これは来年度の予算にしか出てこない。勢い各府県は、予算がないままに、二十八年災害のときでもそうでしょう、植付に間に合わせなければならぬ、こういう関係から見て仕越し工事をやっちゃうのです。その金は当然次の年度で予算がつけられるということですから、借り入れるけれども、これは府県がそういう災害関係でやるからといったって、金融機関は無利子で貸してはくれない。そういう利払いのために府県財政の赤字が続いてきている。これが実情ではないかと思うのです。そういう関係から考えて、これはこの臨時国会はやむを得ないとしても、通常国会で、来年度の本予算との関係で、今大蔵大臣も認めるようないろいろな意味で無理のある点は、これは是正しなければならぬ。またこの補正予算が出ている間に通常国会で第二次補正を出すということは、これは大蔵大臣言明できないかもしれぬ。しかし何らかそういう処置を講じなければ無理があるということは、大蔵大臣もお認めになると思うのですが、いかがでしょうか。
  48. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 無理があるとか無理がないとか申しますと非常に理屈っぽくなります。今回の災害が各地に非常に甚大な被害を与えておる。これはひとり社会党の皆様方ばかりではございません。与党のうちにおきましても、今回の災害に対しては従前の災害対策よりももっと十分手厚い災害対策を立てろ、そうして重ねてこの災害を引き起こさないように十分にやれと、こういうことをずいぶん絶えず指導を受けておるわけであります。私どもは先ほど来申し上げますように、事実に対する予算を実は組んだわけでございまして、この点は毎回、今までも一貫してお答えいたしておりますように、ある程度の余裕を見た数字を私どもは計上いたしておる。先ほど激甚地指定の問題から御議論が出発いたしておりますが、大体補助の対象になるものが、まず六割としてみて、これではたしていいか悪いか、そういう点について、激甚地指定がなお残っておる、こういう意味で、これをいかに予算のうちに織り込んでいくか、この点が私ども当初から実は非常に苦心をいたしたところであります。幸いにいたしまして、この御審議の途中において激甚地の指定の基準をお示しすることもでき、まずこれならばというようなお気持、これで十分だとは申しませんが、筋が一応立つかなあというようなお気持が一部にあるやにお見受けするのであります。こういう意味でこの点の扱い方に、当初予算編成に非常に苦心をいたしたところであります。そこで今回激甚地指定の基準をお示しいたしまして、この予算でこれがまかなえるかどうか、これを十分検討をいたしておるところであります。しかしながら今回の予算の編成当初からぶっかっておりますように、被害の全体についての査定を全部終了はいたしておりません。また大きい部分、長期湛水地区あるいは海岸堤防等、相当多額の費用を要するもの、あるいは直轄工事、これに関連する地方工事等の部分が残っております。そういう意味で、私どもはただいまのところこれでまかなえ得るものだ、かように考えておりますので、在来から次の補正予算などは考えておりませんということを実は申して参っております。しかしながら先ほど来基本的な態度として私が大蔵省の態度を申し上げておりますように、予算を先に作って、支出をこれにぶち込んでおるわけではございません。一般の歳入歳出の場合の一般予算の作り方とは、この場合は違っておりまして、現実に起きておる損害、災害、それに対する対策でございますので、この事実そのものをまず十分認識して、それに対する対策を立てるというのが災害予算の本来の性質でございます。そういう意味で私どもは事実そのものを無視してかかるつもりはございませんが、ただいままでのところでは、一応今回提案いたしまして御審議を願っております予算案で私どもは一応間に合うものだ、かように実は考えておる次第でございます。
  49. 田中織之進

    田中(織)委員 一応大蔵大臣の立場からはこれで十分だと言わざるを得ないでしょう。しかし私が指摘している点は、腹の中では大蔵大臣、あなたはえらいところをつかれているという気持なんでしょう。だからこれを早期に成立させることにわれわれ協力します。協力するが、これを実施の過程で当然私は穴があいてくると思うのです。この予算で通常国会になった場合に——そういう機会があったから、それでまた臨時国会でも開けということであれば問題だと思うのですけれども現実にそういう問題が、私出てくると思うのです。その場合には大蔵大臣どうするのですか。
  50. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいまお答えいたしましたので私の気持はわかっていただけたかと思ったのですが、重ねてお尋ねでございますから申し上げます。私どもは事実を無視する考えは毛頭ございません。だから事実そのものはこれはもう冷厳なる事実でございます。私どもそういう事実が出て参りますれば、それはもちろんそれについて考えなければならないと思います。これは申すまでもないことだと思います。今日までこの災害地の方々はもちろんのこと、ことに災害地の方々ばかりではございません。全国の皆さん方、与野党を通じて今回の予算措置で十分か、こういうことをずいぶん詰めておられますが、私どもはもちろん大蔵当局として確信のある案を出したと思います。しかしながら工事が進捗する、あるいは調査が全部完了する、そしてしかるに上にはっきりこの予算でまかなえないものが出てくる、こういう現実に当面すれば、当然政府の責任においてそういう場合に考えることはこれはもう申すまでもないところであります。私ども考え方も、一般予算と違いまして災害予算災害対策でございます。現実被害災害、この事実に対する対策でございますので、それの所要の金額はあらゆる工夫をして調達しなければならない、このつもりで政府は取り組んでおる、この事実をさらに重ねて御披露いたします。ただいま申し上げる通りでございます。
  51. 田中織之進

    田中(織)委員 それでは予算の実施過程あるいは調査が完了したというような段階において、現実の問題としてこの予算でまかない切れないというような場合には、政府の責任において善処する、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  52. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 新たなる事実が出た場合にこの予算でまかなえない、かように考えました場合には、政府政府の責任において善処することはこれは当然でございます。
  53. 田中織之進

    田中(織)委員 新しい事実、これは災害をこれからふくらませるわけでけないのでありまして、災害被害の押え方、また復旧をどの程度に急ぐか、こういうことに関連して起こってくる問題で、現在起っておる問題でも、私この予算では無理だというもう一つの問題をそれでは指摘いたしましょう。  ここでちょっと建設大臣と農林大臣と厚生大臣の三大臣からお答え願いたいのですけれども、今度の予算を組むにあたって、大蔵省との折衝の過程で、これは予備費で出すから、あるいはそういう意味で法律には載せないでもらいたい、こういうような約束をされたものがあるでしょう。建設省の関係でどういうものがありますか。農林省の関係でどういうものがありますか。厚生省関係では公衆衛生の関係で保健所の関係であるとか、あるいはインフルエンザ対策関係ども、これはもう現に被災地にはインフルエンザが流行しておるのです。そういうところの対策の問題なんかはこれは予算の中には出てこないが予備費でということで、大蔵省との間に話ができておるやにわれわれ仄聞するのでありますが、そういう関係はどれだけありますか。
  54. 村上勇

    ○村上国務大臣 公共土木としてはございませんが、予備費の中からと申しますと、調査費等はまた予備費でというような話はいたしております。
  55. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 除塩関係の経費は本質には計上いたしておりません。なお非公共のこまかい補助金につきまして若干予備費に計上する予定のものがございます。なおそのほかに今回、ただいまお話の激甚地の指定を拡大いたしました結果、必要なるものは予備費で支出する、かようなことに相なると存じます。
  56. 渡邊良夫

    渡邊国務大臣 厚生省関係といたしましては、環境衛生施設費あるいは伝染病予防施設、あるいは国立病院施設、こういうものの復旧は予備費ということになっております。
  57. 田中織之進

    田中(織)委員 十一月四日に大蔵省から出した資料によると、「その他」の点で「国立文教施設災害復旧、文化財災害復旧、屎尿処理、塵芥焼却場、火葬場等、国立療養所災害復旧、保健所建物等災害復旧補助金、検疫所建物等災害復旧、農地地辻防止事業、災害関係調査費、牧野復旧、その他」これは全部予備費でまかなうということが出ております。それからさらに、建設大臣は今公共土木の関係は予備費の関係ではありませんと言うのですけれども、十月の三十一日大蔵省から委員会に出てきた資料の中で、公共土木災害に十一億一千万円、道路災害で三千万円、これは予備費で支出を予定分といっている。この予備費というのは、今度の予算に盛っておる予備費ではなくて、既存の予備費という意味なのか、その点をあわせて一つお答えを願いたい。
  58. 村上勇

    ○村上国務大臣 十一億何がしは既定予備費であります。
  59. 田中織之進

    田中(織)委員 私が今前段に伺った点はいかがですか。今申し上げたものを予備費で支弁するという形になっている、この予備費は、今度の国会に出ておる八十億の中から出すという意味ですか、その点大蔵省からお答え願いたい。
  60. 石原幹市郎

    石原政府委員 予備費八〇億のうち五十億が災害関係だということは、従来も申し上げた通りであります。ただいまお尋ねの国立文教施設災害復旧以下幾つかの項目でございますが、これは五十億の災害関係の予備費の中で見るという頭でございます。
  61. 田中織之進

    田中(織)委員 この五十億の中で国立文教施設復旧以下の関係に予定される金額は大体どのくらいですか。
  62. 石原幹市郎

    石原政府委員 これらの項目につきましてはまだ相当資料の不備な点が多いものでございますから、各省といたしましてもあまり内訳のついた十分な要求にもなっておりませんので、これらの金額につきましては一部の要求につきましての数字はございますけれども、これから時間をかけてだんだん固まって参りますので、固まった暁におきまして、この災害関係の予備費の中から支出いたしたい。今それら各項目がたとえば何百万円、何千万円という数字にまで詰めておりません。
  63. 田中織之進

    田中(織)委員 今主計局長が述べられましたように、災害関係と見込んでいる五十億の中にも、すでに予備費でその中から支弁すると予定したものが幾つかあるわけですね。そういうことになりますと、この予算説明にありますように、伊勢湾対策関係等の問題につきましては、やはりこれから水の引いたあとのこういうような関係は、当然予備費でまかなっていかなければならない。その意味で今度の指定基準に基づいてふくらまってくる部分を予備費でまかなう。予備費の大半以上のものは、いわばひもつきのものだと思う。予備費で出すからもう法律には出すなという関係のもの、大蔵省が各省に約束したものが、私は大半あると思う。そういうことになりますと、この  既定の、計上しているものでまかなえない部分は予備費でやるといっても、予備費によって支弁できるものはおのずから金額が縮まってくると私は思うのです。そういう関係からも、一般関係の三十億があるではないかといっても、幸いにこれからそういう予備費を支弁するような事態がなければよろしいけれども、これはほんとうはこういう形のものがすでに発生している。これから起こるかもしれないというものに対して予備費という財政法上の取り扱いが認められておるけれども、今度のように、調査なり積算の基礎、そういうものが明確でないから予備費で支弁することを認めてくれということで、災害の特殊事情だからわれわれはこの点についても見のがすつもりですけれども災害が起こってすぐの国会であるということならばともかく、二カ月も経過して開かれているこの予算委員会で、すでに二カ月前あるいはそれ以前に起こった災害関係のものを予備費で支弁するというようなことは、私は邪道だと思う。災害だから特殊的なものとして認めますけれども。ことに総説の中に、「この予備費は既発生の災害対策分であって現在までのところまだその所管別事業別割振等について、検討を加えなければ確定できない経費」これが主なのです。こんなことをおくめんもなく、財政法にのっとってやらなければならぬ大蔵省が書くということ自体がおかしい。これは財政法違反です。しかしわれわれは今度の災害の特殊事情を考えてこれ以上追及しませんが、先ほど申し上げたように、五十億のうちすでに大半のものが支出を予定されておるということになると、先ほど私が大蔵大臣にくどいようですけれども伺うところの、この補正でまかない切れないものは、何も新事実が発生するのでなく、現に発生しておる事実関係からそういう事態が表面化してくる、われわれはそういうふうに考える。先ほど大蔵大臣に尋ねた意味はそこにある。予備費の点、これは非常に無理な問題です。しかもそれはすでに予定されておる。今度決定した基準に基づいてどの程度ふえるか、それをあなたたちは、衆議院が予算を通すか通さぬかというせとぎわになっても言わないけれども、問題は非常に無理であるという点を申し上げておく。いかがですか。
  64. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 今回の予算提出はただいま田中委員が御指摘になりますように、本来の予算編成から見ましてやや技術的に不十分だと言われる点、これは私ども毎回お話し申し上げておるように、そういう点がございます。予備費の中に多額の災害復旧費を予定しておるということ自体は、明らかに御指摘の通りだと思います。しかしながら今回の災害につきましては、その特殊性と申しますか、緊急にこれに対する対策を立てるという意味でやむを得なかったことだと思います。私ども事務当局につきましてもこれは特に督励をいたし、また現場の工事に当たっております者も、不眠不休で実は災害の仮締め切りその他の工事に専念をいたしております。また社会党の皆様方もそういう意味では一日も早く予算を作らしてやろう、そうして被災地の方々に一応の安心を与えてやろう、こういう意味で御協力を願っておることも私ども感謝いたしておるところでございます。  ところで、ただいま予備費に五十億がある。さらに一般予備費として三十億がある。この三十億に手をつけることがいいか悪いかという問題が一つあると思いますが、先ほど来申し上げますような激甚地の指定基準が変化になりまして、これをどうしてもまかなっていく。これはもう現実の問題でございます。これから新しい災害が起これば別でございますが、起きた災害についての跡始末の問題でございます。そういう意味の点で、一般の予備費支出を予想される事態、そういうものに非常に重圧を加えるようなことなしに、この三十億に手をつけることで格好がつくかどうか、こういう点が一つあるのでございます。私は先ほど来、予算編成当初から非常に苦心をした点がこの五十億の予備費計上だということを申しましたが、これで私はまず一応まかなえばしないか、かように考えますが、考えられないような事態が起きました場合には、さらに私ども工夫をする。また一般予備費として計上されておるものに手をつけて、その後の事態発生によって予備費が不足を来たす、こういう場合になれば、当然私ども政府の責任において引き続く国会等においてこれに対する善処した策を御審議願うということは、これはもう当然だと思います。ただ、今予想される事態そのものから申しますと、ただいまのところで一応格好がつきはしないか。しかしそれにこだわるつもりではございません。この点は先ほど来はっきり申し上げておりますように、政府はこだわった議論をするつもりではございませんから、この点を十分御理解いただきたいと思います。
  65. 田中織之進

    田中(織)委員 もう一つ伺いたいのは、先ほど一番最初同和対策の問題でも触れたのでありますけれども、いわゆる今度の予算公共施設に対する——これは国なり市町村なり、そういう公共団体のものなのですから、それの復旧のために国費を費やすということは、これはもう当然のことなのです。だれのためでもない、国自体がやらなければならぬ。ところが個人の責任において今後立ち上がっていかなければならぬ。家財道具をまるきり流失してしまった、あるいは水は引いても家へ入るためには修理もしなければならぬ。そういう関係のいわゆる民間災害、これが非常に大きい。愛知県等があれだけの被害を受けておりながら、なかなか激甚地指定愛知県が入らない。これは政府の見るのは公共施設災害復旧だというところにある関係で、若干の金融的措置は講じておりますが。問題は、もうすでに日本の国力も充実してきて、国民年金が不十分ですけれども頭を出したような情勢なのです。災害、その意味において天災ですが、これによってほんとうに立ち上がることの困難な状態に置かれている人たちに、私の方は別途この国会にいわゆる罹災者援護法、あるいは生活保障法、そういうものを出しております。これらの問題について、今までの委員会における答弁では、厚生大臣もまだ見舞金等の問題について意見があるけれども結論に達していない。しかしもう災害があってから二カ月になります。ここらでその問題については結論を出してくれることを罹災民がどんなに待っているかという点を考えまして、この点については特に総理から、これらの民間災害について現在やっておる金融措置、そういうものよりも一歩進めたところの——私らの方が出しておるものは、十万円を限度として、これは市町村が起債を認めてもらって金を借りる。その利子を政府の方で補給する。今後二年間据え置いて十年間でなしくずしで返せるような形、これも全然国がくれてやるわけのものではない。しかしそういう形でやることも、当面金さえあればこれは立ち上がれるという状況にあるところから、そういう手を差し伸べてはどうかということで罹災者援護法案を議員提案で出しておりますが、これらの点については、政府内部でも、この委員会でたびたび与野党から提示されている問題ですし、また災害対策の問題について、総理も現地にさっそく行かれて、金に糸目をかけずに一日も早く立ち上がれるようにするということを言明されたのですから、私は衆議院を予算が通過する段階において、この取り残されている問題について一つ総理からいい返事をいただきたい。
  66. 岸信介

    ○岸国務大臣 災害について個人が非常な被害を受けておる、これに対して国が何らかの方法を講じて、そうしてこれらの人々がその不幸の中から立ち上がって復興に全力を注ぐことができるようにする方法を考えるべきであるというこの考え方につきましては私どもも特に今回の被害地の状況等を見まして、そういう考え方はしなければならぬと思います。ただその方法として、あるいは国が補償するとか、あるいは見舞金を出すとかいうような方法によるべきかどうかという点につきましては、従来私がこの委員会においても答弁を申し上げた通りでありますが、この考え方には二つあるだろうと思う。いわゆる生活そのものの根拠を失い生活ができないというような、一般的な生活必需品だとか生活家財がなくなり住宅がなくなってとほうにくれるというような人々に対する施策と、それから小なり大なりの違いはありますけれども、それぞれ産業に従事されておる。その産業をいかにして回復せしむるかという問題と、大きく分けると二つ考えていかなければならないと思います。一つの点は、従来ありますいわゆる生活保護に関する施設なり、あるいは一般社会保障の制度として、あるいは世帯更生資金の問題であるとか、あるいは母子家庭に対する従来あるところの貸付の問題であるとか、あるいは健康保険等の納めなければならぬ問題に関する扱いであるとかいうような、従来ありますところのいろいろな制度を活用して、できるだけその金額もこれを従来の一般のやり方よりも拡大していく。また貸付の条件やその他の方法につきましてもこれを緩和して、そうして生活の点において国が援助を与えるという考え方、また産業の面については、農業については農業に対するなにがありましょうし、中小企業、商工業に対しては、国家が従来設けておるそれについてのいろいろな金融機関がありますから、これらに対する金融のワクであるとか、資金の額をふやす、あるいは貸付条件を緩和するというような方法によって、一方においては生活の基礎に対する国としての援助を考え、また産業の立ち直りについては、そういう金融の制度を活用することによって助けるという考えで、今回もできるだけの対策は私ども講じておるつもりでございます。しかし一般に、今田中委員が御提案になったような、あるいは生活援護に関してさらに強力なこういう場合における制度を考えるという問題に関しましては、各般の関係を十分に一つ検討してみる必要がある。いろいろな災害もございますので、十分に検討を要する問題ではないか、かように思っております。
  67. 田中織之進

    田中(織)委員 それではだいぶ時間も超過しましたので、この一問で私の質疑を終わりますが、質問を終わるにあたって、現地の災害対策本部長であられる益谷総理も見えておられますので、津島市など現在まだ湛水地域の、いわゆる潮どめ工事のその後の進捗状況、津島市などおとといあたり二寸ほど水が下がったということがいわれておるのでありますが、その点を一つ明らかにしていただきたいということ。  それから大蔵大臣に最後質問として伺いたいのは、先ほどもちょっと触れましたように、来年の五月の植付に間に合うように工事をやらなければならぬ関係がありますので、来年度の本予算にこの災害関係がどのように計上されるかということは、——予算は突発的事情がなければ年度内に成立するということでありますけれども、政治は水ものでありますからどういうごとにならぬとも限らぬ。しかしそういう場合に、やはり罹災地としては見通しを持っておきたいのは無理からぬ点だと思うのであります。そういう意味で来年度の本予算災害予算をどの程度計上する考え方であるか。なおこの際この予算が、こういう段階になれば大蔵省としても本予算の編成に本格的  に取り組まなければならぬ関係がありますけれども災害による減収というものも、これは見通しをつけなければならぬと思うのです。そういう関係から来年度の予算編成に関連して、一時的だけれども、与党の中ではたばこと酒の値上げ問題を今検討を加えつつあるというようなことも伺うのでありますが、政府はどういうように考えておるか。  それから来年度の予算にやはり関連して、国民として災害との関係で一番問題にしておるのは、先般もこの委員会で問題になりましたところの第二次防衛計画、いわゆるロッキードの百八十機、練習機を入れて二百機ですか、この第二次計画を予定通り三十五年度から政府はやるのか。来年度の予算との関連で、これは直ちに飛行機ができてくるわけのものではないと思うのでありますけれども、初年度をどこに置くかということは、やはり来年度の予算に非常に深い関係を持ってくると思うのでありますが、その点についてどういうように大蔵大臣としてお考えになっているか、この際あわせてお答えをいただきたい。
  68. 村上勇

    ○村上国務大臣 私から締め切り、排水についてお答えさせていただきます。ただいま御指摘になりました津島地区は、これは海部北部の地帯でありまして、この地域は十日に締め切りが完了いたしまして、大体排水は二十五日と予定いたしておりましたが、今朝の報告によりますと、二十三日中には排水が完了する予定に相なった次第であります。特に津島市におきましては、上流において特別な排水施設をいたしておりますので、この津島地或は、二十三日を待たないで十分排水が行なわれるものと考えております。海部南部は、御承知のようにこれは一番最悪な個所でありますが、先般佐藤議員にお答えいたしました当時は、十一月末日までに締め切りを完了するというようにお答えをいたしておきましたが、その後督励した結果、二十四、五日の干潮時を利用して一斉に締め切りを完了いたしたい、かように思っておる次第であります。なお木曽岬は九日に締め切りが完了いたしましたので、十八日には排水を完了の予定であります。それから長島南部につきましては、北部は八日に排水が完了いたしましたが、南部は、これも非常におくれたところでありまして、末日までかかる予定でありましたが、十六日に締め切りを完了の予定で、二十五日までには排水を完了する予定に相なった次第であります。桑名地区等は、十二日に排水が全部完了ということに相なった次第であります。
  69. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 お答えいたします。先ほど来この補正予算を出すことにつきまして、政府当局考え方は明確になって参ったと思います。そこで御承知のように災害対策は、来年度の予算編成の場合にこれが大柱の一つであること、これは間違いなく私どももさように取り上げるつもりでございます。その点は今までしばしば本委員会を通じてお答えいたしたところであります。ところでこの災害対策につきましては、すでに災害復旧の率について基本的な考え方もございますから、その線に沿って所要の金額を計上する、こういうことには最善の努力をするつもりでございます。  そこで私ども予算を編成いたします場合に、来年度予算編成においても、ことし同様どうしても貫かなければならないことは、やはり健全財政であるという、この一線は守り抜きたいつもりでございます。そういう意味から、災害対策予算はともかくとして、この災害から、われわれが今後の構想として、さらに治山治水について基本的な長期計画を樹立する、こういう問題を取り上げた場合に、はたして今考えられる歳入でそういう計画に対処し得るかどうか、こういう問題があるのだと思います。そういう意味から大蔵大臣がたばこの値上げに賛成したとか、ある新聞によりましては、五円上げることにきまったとかいうような記事すら実は出ておりますけれども、もちろんかような問題は非常に重要なポイントでございますので、大蔵大臣として簡単な発言などするわけのものではございません。しかし新聞ではさような意味の報道をいたしております。与党内の一部におきまして、この治山治水の長期計画と本格的に取り組むために特別財源をやはり必要とするのではないか、これは今後の問題として考究すべきものだ、こういうような意見があることは事実でございます。すでに御承知のことだと思いますが、毎年々々甚大な災害をこうむってきておる。これに対しての災害発生後の処置だけでは、政治といたしましてもいかにも不十分である。こういう意味から事前の対策を樹立すべきではないか、そういう意味で長期治山治水計画を立てるべきである、そういう議論が非常に強くなっておりますし、こういう際でございますし、また一般の経済等も好況に向かっておるこういう際であるから、特別財源を見つける方法はないか、こういうような考え方からただいまの、あるいはたばこだとか酒だとか、比較的負担力ありと考えられるようなものが議論に上っておるのではないか、かように私は実は想像する程度でございます。もちろん国民の負担増になることでございますから、十分慎重に扱わなければならないことでございますが、同時にまたその金額、これが歳入が非常にはっきりした、甚大なる災害を引き起こす、人命を損傷する、こういうような事態に対応するための所要なものだというような意味においてまじめに研究されておる、かように私は考えております。しかしまだ具体的に進んでおるものではございません。  次に、第二次防衛計画、ことに次期戦闘機決定等をもからめて、次期防衛計画というものが云々されております。その点ではやや誤解があるのではないかと思いますが、次期戦闘機そのものはすでに第一次防衛計画の一部として計画されたものでありまして、この実施がおくれておるというのが現在の実情でございます。同時にまたその内容等におきましても、一応計画されましたものが第一次にはあるいは戦闘機三百機、かようにいわれたものが、今回は機数を二百機に落としておる、こういうように三分の一減というようなことでございますので、これは第一次防衛計画の残りの部分であるということ、この点で、いわゆる第二次防衛計画とは別途のものである。この点を明確にいたしておきたいと思います。そこで第二次防衛計画という言葉がしばしば国会を通じ、あるいは新聞等にもときどき散見するのでございますが、私ども大蔵当局として防衛庁と第二次防衛計画について具体的に話し合った事実はございませんし、また国防会議にも第二次防衛計画がかかった事実はないのであります。申すまでもないことですが、防衛計画は国防会議でその計画を樹立することになっておりますから、この国防会議にかからない今日、第二次防衛計画を云々する時期ではもちろんございません。防衛庁自身といたしましては、本来の職掌柄、おそらく絶えず防衛計画についての検討はいたしておることだと思います。あるいはそういう点についての感覚等が第二次防衛計画というような言葉として現われておるのではないかと思いますが、政府としてはただいまそういうものを具体的に持っておるわけではございません。一般的に申しますならば、来年度予算編成にあたりまして災害対策、これを大柱にいたしておる際でもありますし、また健全財政を貫く考え方でございますし、そういう際に防衛費を激増さすというような考え方は全然持っておりません。しかして、ただいま政府において交渉を持っております日米安全保障条約、この安全保障条約の改定がきまりますと、おそらく従前払っております防衛分担金というものは、今後は払わなくていいことになるだろう、かように考えますと、防衛費の関係において国内にみずから使い得るものが防衛分担金の分がある。これはやはりそれだけのものははっきりしてくる。そういうものが在来は米軍に支払われた。こういうものが防衛庁の関係として使われるということは、これは容易に想像のできることでございますが、総額といたしましての防衛費の激増、かようなことについては、私どもはただいま賛成しない、かような立場でございます。
  70. 田中織之進

    田中(織)委員 ただいまの大蔵大臣の答弁によりますと、明年度の本予算におきましては治山治水、いわゆる災害の根本的な対策に重点を置いて予算を編成せられる。いつも大きな災害がありますと、よく治山治水の五カ年計画だとかなんだとか出ますけれども、ちょっとその災害がのど元を過ぎると、そのいうようなものがいつの間にかテンポがのろくなってくるのがここ十年ばかりの歩んで来た道だ、とそういうように私には思われる。今度のこれだけ惨たんたるもの、この次には東京湾だろう、やれ千葉県だろう、房総半島だろう——この間も水田君が、この次はこっちに来るだろうと県内に言っておいても大体間違いない、どうもそんな予感がするといって話しをされておりましたが、そういうこともこれは当然予測しなければならぬことですから、明年度予算にやはり一切のものを集中してもらうことが、今度のこういう災害で消耗し、また伸びていくもののテンポがおくれるということの両方をあわせて考えれば、私非常な損失だと思うので、その点は一つ徹底的にやってもらいたい。その立場から、次期戦闘機の問題は第一次防衛計画の一部をなしているのだ、こういうことでありますけれども、第一次防衛計画のこれから実施する面をもひっくるめまして、われわれは防衛費は憲法違反だという立場に立っておるわけでありますが、政府の立場においても、今大蔵大臣が言明された線をくずさないようにやってもらいたいということを最後要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  71. 小川半次

    小川委員長 以上をもちまして質疑は終了いたしました。  午後三時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時十八分休憩      ————◇—————     午後四時十九分開議
  72. 小川半次

    小川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  田中織之進君外十五名並びに佐々木良作君外二名よりそれぞれ昭和三十四年度一般会計予算補正(第2号)、同特別会計予算補正(特第1号)及び同政府関係機関予算補正(機第1号)の編成替を求めるの動議が提出されておりますので、この際両動議を議題とし、順次その趣旨説明を求めます。北山愛郎君。     —————————————
  73. 北山愛郎

    ○北山委員 私は日本社会党を代表して、政府提出の災害関係補正予算につきまして、政府はこの際最善の方法としてこれを撤回し、わが党が提案をしておる要旨に基づいて、すみやかに編成替を行ない、再提出することを要求するものであります。  この動議の要旨、内容の詳細につきましては、配付しました印刷物をごらん願うことといたしまして、私はその大安を御説明いたします。  われわれが編成替を求める理由の第一点は、今回の災害に対する予算としては、この補正予算はきわめて不十分であるということであります。政府が当初金は惜しまないと言明し、あるいは昭和二十八年度災害を下回らないような措置を講ずると言明しておりましたが、この言明に違反をいたしまして、この補正予算では災害復旧の早期の完成も、罹災者の援護もまことに心細いという点であります。この伊勢湾台風等本年の災害は、死者、行方不明五千七百三十四人、負傷者三万七千七百五十五人、家の全半壊戸数は十五万六千戸、公共土木施設被害は千四百八十億円、農林水産施設関係は七百八十六億円、農作物は六百六十二億円、文教施設六十三億円、交通通信施設百五十億円という膨大な損害になっておるのでありますが、これ以外に数千億円に上る民間被害があって、中部産業の中心を襲われて、農林、水産、商工の産業被害、その甚大なこと及び被害が長期にわたって個人災害の深刻な点など、きわめて特殊な性質を持っておるのであります。従いまして、われわれとしては、これらの年中行事的な災害の発生を防止する基本的な政策の確立と、災害立法の恒久化を要請すると同時に、農地農業施設、公共土木施設の工事は、従来の三割、五割、二割の進捗比率にとらわれず、早期完成をはかって、特に従来の原形復旧主義を排して、今後の災害に備えて改良復旧主義をとるように要求したのでございます。しかし、基本政策や恒久立法の問題は次の国会に譲るといたしましても、今次補正案のごとく、事業の進捗率を二五%程度にとどめ、改良復旧となるべきいわゆる災害関連事業費を事業費のわずかに八%とし、その補助率の引き上げを認めないということは、復旧の早期の完成と改良復旧の熱意を欠くものとして、まことに遺憾にたえないところであります。  次に、政府案の欠陥は、民間被害、個人被害への対策が貧弱なる点であります。今回の災害関係費三百四十四億円のうちで、大部分は河川や堤防や道路、港湾、学校等のいわゆる公共施設の復旧費でありまして、直接罹災民に対するものはまことにりょうりょうたるものであります。たき出し等の応急災害救助費二十四億円を除くならば、世帯更生資金が一億五千万円、児童保護費が四千万円、国民健康保険の助成が七千七百万円など、まことに貧弱きわまるものでありまして、厚生大臣は生活に困る者に対しては生活保護法で救うと言っておりますけれども災害のための生活保護予算は一文も増額しておらないのであります。もちろん農林漁業、国民金融公庫、中小企業金融公庫等のワクは若干ふやしましたが、これを利用し得るものは一部にしかすぎません。むしろ借りる必要のない者が利用して、その必要な者が各種の条件からはずされるというような今までの実情から見ましても、不十分と言わなければならぬのであります。国や地方団体がみずからの施設を復旧することはむしろ当然でございましょう。災害対策の根本の問題点は、家をこわされ、家財道具を失い、収穫を無にし、一時的にせよ、生業の道を閉ざされた多数の罹災民に対して、生活立ち直りの方途を講じてやることが、特に民間被害の甚大な今度の災害の場合においては、対策の根幹をなすべきものと考えます。われわれが罹災者援護法案を提案し、市町村の窓口としまして、被害のはなはだしい者に最高十万円の生活再建資金を貸上付け、二年据置、十年償還で国がその利子を負担することとして、また犠牲者の弔慰金、罹災者に見舞金を支給することとしておるのはこのためであります。現在国会の内外にわたって施設災害復旧の高率補助のための、いわゆる激甚地指定問題のみが声高く論議されておりますが、遠く被災地にあって援助を求めておる数十万罹災者の声なき声を忘れてはならないと信ずるものであります。この点につき政府及び与党の各位は、個人被害に冷淡な従来の方針を改め、罹災者援護法あるいは生活保障特別措置法につきまして、真剣に検討されるように切望してやまないものであります。  次には公共施設災害の高率補助の点でありますが、政府が一たん二十八年災を下回らないと言明しながら、地方財政の好転を理由に、これを渋っておるのは、まことに納得ができないところであります。地方財政は、昭和三十一年、三十二年は好調でございましたが、昨年来逆転をしつつありますことは、昨年度の府県の財政収支が百十四億円の赤字であり、昭和三十二年度百六十八億円の黒字であったことに比較いたしますれば、激しい変動を生じておることは、自治庁の発表によりまして明らかでございます。また本年、明年の地方財政が楽観を許さないものであることも、また自治庁指摘の通りでございまして、地方財政の好転どころか、悪化の道をたどっておるという現況と見るのが正しいのであります。ことに民間災害や産業の災害のはなはだしい状況におきましては、今後地方税収の減少やら、あるいは単独災害復旧の負担のために、財政窮迫に転ずることは明らかでありまして、災害前の事情を基準として補助率をきびしく制限することは適当でないと信じます。われわれは災害復旧の全額国庫負担を理想といたしますが、少なくともわが党提案の通り、昭和二十八年災を下回らない措置要望するものであります。  次の問題は、石炭離職者対策についてであります。今日、石炭鉱業の危機が重大な段階に達して、労使が死活の闘争を続けつつあるときに、政府が石炭政策の確立をしないで、資本家の、首切り合理化攻勢を傍観し、危機のしわ寄せを一方的に炭鉱労働者にかぶせて、その責任をとらない態度は、断じて容認することができないのであります。われわれは、わが国の石炭鉱業を、国民のものとして守り抜く決意のもとに、抜本的対策を強く要望いたしますが、また同時に、新規失業者の発生を防止し、かつ当面の離職者に対しましては、徹底的な措置要望し、就労対策事業費、転職の資金、失業特別手当、自立更生資金等の大幅な増額を要求するものであります。  以上は編成替を求める重要な問題点でありますが、以下各部門について簡単に述べますならば、第一に災害関係費は、政府案三百匹十三億七千匹百万円に対して、組替案は八百三十八億七千四百万円でありまして、そのうち災害復旧事業費は、建設、農林、運輸を合わせて、政府案に対して百六十四億円の増加であり、これによって進捗率は四五%、補助率九割を確保せんとするものであります。  次の伊勢湾高潮対策事業費は八十三億六千万円、政府案よりも若干進捗度を高め、かつ今後の災害を考慮いたしまして、改良を二割程度見込んでおります。  第三の災害関連事業費は、政府案に対して三十二億円増の四十一億三千五百万円を計上し、河川については被害額の八%、農業用施設、林道、漁港については、総事業費の二〇%を見込み、進捗率も大幅に引き上げたのであります。  次の緊急治山及び砂防事業費は三十七億三千九百万円として、補助率は九割、進捗度も相当高めたのであります。  また公営住宅については、八千一百戸として十億円の増、公立文教施設の補助率も九割として、所要の経費を見込んでおります。  次に前述の罹災者援護法の所要額は百三十五億円、ほかに生活保障特別措置法による二十一億円を計上し、民生安定をはかるため特別の考慮をいたしております。  その他激甚地の失業対策事業費、失業保険特別会計の補てん、育英費、体育施設復旧費、環境衛生施設、医療施設社会福祉施設の復旧について、も、それぞれ増額をはかっておるのであります。  また農林省関係については、農林水産共同施設の復旧費、救農土木費も増額しましたが、共同利用小型漁船建造費の補助は十トン未満のものに対象を拡大して、十一億四千五百万円の増額となっております。  なお、緊急排水事業費は全額国庫負担といたしております。  中小企業に対しましては、特に勤労性事業の特別資金利子補給十億円を計上するほかに、商工中金への利子補給を二倍にし、中小企業共同施設復旧費に二分の一の補助を行なうことといたしております。  石炭対策としては、緊急就労対策のほかに、転職移動資金、また公営住宅費の補助、失業特別手当等々、六十四億七千五百万円を見込んだのであります。  以上のほか、予備費について二十八億円とし、また財政投融資の原資として一般会計から二百三十億円を出資することとし、歳出合計は千三百四十四億七千八百万円、政府案より七百三十億円の増額となったのであります。  この財源としましては、租税、税外収入は政府の見積もり通りとし、防衛関係費は、今後の装備その他の経費の打ち切り、節減三百億円を見込んで、他の既定経費の節約につきましては、災害復旧振替の公共事業等わずかに十億円のみとし、また接収貴金属は、本年度内政府帰属に特定し得る見込み分として百五十億円を見込んでおります。そのほか不足分につきましては、外国為替特別会計資金のうち三百四十六億三千五百万円を取りくずすことといたしたのであります。  財政投融資につきましては、国民金融公庫、中小企業金融公庫、商工中金等、それぞれ災害、年末融資を若干ずつ増額をし、政府案五百一億円に対して四百六十六億円の増となっておりますが、その原資といたしましては、一般会計出資二百三十億円、他は資金運用部及び産投会計の内部振替によって充当することといたしておるのであります。  従って、一覧表のうちで、原資の純粋の組替案の合計は七百三十一億円、純増分は二百三十億円となることを御了解願いたいと思います。  以上が編成替を求める動議の概要であります。  最後に防衛費の既定予算を三百億円削減することは乱暴ではないか、あるいはまた接収貴金属の売却、外為会計資金の取りくずしはインフレの原因とはならないかという意見につきまして、一言触れておきたいのでありますが、防衛費の節減は、もっぱら今後使用調達すべき分の節約としたのでありまして、決して不可能なものではなく、また最近特に高まって参りました世界的な軍縮の潮流や、災害地住民の中に自然に発生して参っておりますところの、「自衛隊よりも国土建設隊を」という素朴な感情にこたえるゆえんでもあると信じます。むしろ、われわれがかねて主張しておりましたように、自衛隊をやめて、平和国土建設隊に切りかえておったならば、今回の災害の相当部分を未然に防ぐことができ、また災害予算補正もこのような膨大なものとはならなかったであろうことを指摘しておきたいのであります。  インフレの対策につきましては、政府の有効適切な金融政策によって対処することができると確信をいたしております。大企業に対しては、過当な設備投資や滞貨融資の尻ぬぐいを財政投融資あるいは日銀の貸し出しで行なって、株や不動産の不健全な投機を放任し、また政府みずからが公共料金の引き上げをやったり、高物価政策をとりながら、災害対策予算の膨張のみをインフレ原因とすることは、きわめて当を得ないというべきでございます。  災害は天災にあらず、人災であり、政災であるとすらいわれております。われわれは、国政の責任を分担するものとして、今回の災害に対して、再びいたずらに政治の貧困を嘆ぜしめないことを深く決意をいたしまして、あえてこの組替案を提出したのであります。何とぞこの共通の考えの上に立って満場の御賛成を期待し、趣旨の説明を終わるものであります。(拍手)
  74. 小川半次

  75. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私は社会クラブを代表いたしまして、政府提案の今次予算補正三案に対しまして、これを不満として、わがクラブ独自の組みかえ要求の動議を提出するものであります。  組替案の内容は、印刷物としてお手元に配付してありますので、概要の説明もこれに譲りまして、私は、ここでは主として財源論を中心といたしまして、政府原案並びに社会党の組替案に対しましていささか批判を加えながら、御説明をいたしたいと存じます。  まず政府原案に対する反対理由から申し上げますと、政府原案は、第一に、財政政策として一体いかなる方針のもとに編成されたのか全く不明確なのでありまして、首相は答弁に当たりまして、災害予算はこれで十分である、第二次補正をする必要は全くないと、臨時国会当初から言明されているのでありますが、災害対策経費の支出のかぎとなる激甚地指定の基準が決定されたのは、御承知のようにまだ一昨日の午後、かろうじて自民党の総務会で承認されて、本予算委員会で公表されたものであります。しかも予想を上回るゆるやかな指定基準を被害地域全域の六割に適用し、しかも進度は年度内に三割を堅持するというのでありますが、その保証は全く政府より明らかにされていないのでありまして、この辺につきましては、この予算委員会におきましても、また災害対策特別委員会におきましても、その中の質疑応答におきまして、大蔵大臣は全く自信のなさを示しておられるのでありまして、私ども遺憾にたえないところであります。従って政府予算編成を見ますと、一体財源の制約をまず置いて、そしてそのワクの中で災害予算を作り上げるというやり方をされたのか、それとも、その財源の制約の有無にかかわらず、災害対策経費なるものはこの程度でよいのだ、災害予算をあまり重視し、これを増額することはかえって冗費を生み、あるいは地方財政を圧迫するのではないか、こういう観点で考えておられるのではなかろうかと思われるほど基本的な態度が不分明なのでありまして、私どもは、今次の補正予算編成を通じまして岸内閣予算編成に対してますます不信の念を深めたわけであります。われわれの見るところ、補正財源として外国為替特別会計のインベントリーがあります。この資金を円資金にかえて一般会計予算経費に組み入れることにつきましては、財政学者のうちにはいろいろと意見があることは承知しております。しかしながら、これが使用し得る財源であることは、大蔵大臣も予算委員会で認められ、また社会党組替動議でも支持しているところであます。要は、このインベントリーを災害復旧事業に使用しても、財政インフレを起こさず、国際支払いに支障を与えず、しかも国富の蓄積となし得る経済見通しと政策プランを持っているかどうかの政治信念の問題だと私は思うわけであります。また租税収入の自然増につきまして、政府災害による減収分を差し引いて四百九十億円を計上いたしておるのでありまするが、われわれはこの自然増の伸びの推定根拠につきましても政府を信用し得ないのであります。昭和三十年度以来の決算を見ますと、歳入対歳出の差額、すなわち歳入超過は、昭和三十年度の一千八十二億円が最低額でありました。政府の説明によりますと、本年度の税収の増加は前年度同期に比べまして、九月末までに五百五十四億円であり、これは四月から九月までの半年分でありますから、これを一年分に直すと、年間千百億円の増収となる。しかるに本年度の税収見込みは、昨年度実績より九百億円多く見積っていたのだから、差し引き純自然増は千百億円から九百億円を差し引いた二百億円にすぎない。それを四百九十億円も計上したのだから、自然増収和としては精一ぱいである、こういうふうな態度を政府は説明でとられておるのであります。しかし、これは政府が自分の都合のよい面の資料だけを取り上げて説明されているものだと私どもは思います。  政府は本年度経済の成長率を、当初の六五%を一一%に改訂いたしております。しかも政府は常々国民所得の伸びに対する租税収入の伸びは平均一・五倍と常識的にみなしていると言明しているのであります。しかも最近の経済動向は、通産省が十日に発表いたしましたごとくに、昨年度に対する本年度の鉱工業生産の伸びは、去る四月に一〇%と予測したものを九月には二四%に改訂いたし、さらにこれを修正いたしまして二五、六%にいたそうと発表いたしております。すでに政府の改訂拡大した経済見通しそのものの再改訂、再拡大が必要になっているのであります。  新聞によりますと、租税の自然増の見積もりをふやすということは苛斂誅求になると、社会党の側からは批判が出ているようでありますけれども、これはおそらく社会党の威信にかけても私は誤りではなかろうかと存ずるわけであります。われわれは本年九月決算期以来、大法人活動が飛躍的に大きな収益を上げている事実を注目いたしております。また、明年三月期決算にはさらに収益増となる情勢にあることを確かめております。政府当局の相も変わらぬ財源隠匿政策に対抗して、当然国の収入になるべき大企業の租税負担を正しく評価することがわれわれ革新政党の当然の任務かと存ずるわけであります。  かかる観点に立ちまして、私どもが本年度の自然増を推定いたしましたところ、本年度租税収入総額は一兆二千百四十六億円が可能であり、これより税制改革による減収百三十三億円を差し引いた一兆二千十三億円と、政府の当初予算の計上額であります一兆一千二百十四億円との差額、すなわち八百億円が本年度の租税自然増であると確信をするのであります。これより災害の減収分百二十億円を差し引いた六百八十億円が見込み得るというふうに私ども考えるのであります。われわれは年度内に当然期待し得る租税収入、すなはち生産活動と健全な国際収支じりの裏づけのある租税収入を確保し、これをもって当面の災害予算の財源に充てることを要求するものなのであります。この点、政府案は財源補正の面でもきわめて不誠実と言わざるを得ないと存じます。  何ゆえに政府がこのように歳出入の両面にわたってあいまい不鮮明な、不明確な予算編成を行なったのか、これは私どもは言うまでもなく、第一には、政府はすでに今から明年度予算編成に当たっての財源難に陥っているからだと存じます。第二には、そういう財源難があるにもかかわりませず、政府はついに官房長官談話として、明年度は防衛六カ年計画の実施を中止すると公表をしたのではありますけれども、それにもかかわらず、ロッキード戦闘機の購入と製造には莫大な予算をつぎ込むことをすでに方針決定をいたしておるわけであります。このように政府は、明年度は国土保全の名を表面に打ち出しながら、実は着々と軍事予算の実をあげんとしているのでありまして、このような基本方針のもとでは、今回の災害予算に十分な財源を振り向けることは当初から困難であったと言わざるを得ないと存ずるのであります。  今回の補正歳出のもう一つの柱となっている石炭離職者対策費につきましても、全く同じような政治的理由のために、全く無力な対策が並べられてあるだけでありまして、私どもは遺憾にたえないのであります。わが社会クラブは、保守政治のもとにゆがめられた補正予算案に反対をせざるを得ないのであります。  また社会党の組み替動議につきまして、ただいま御説明も承ったのでありまするが、災害対策費と石炭関係離職者対策費につきましては、周到な分析のもとに組替増額の努力がされた点につきましては多大の敬意を表するものであります。しかし残念ながら、財源補正の面では、私どもは全く非現実かつ緊急に間に合わないのではないか、こういうふうに考えまして、同意いたしかねるのであります。すなわち防衛関係費で三百億円を削減する根拠は全く明らかにされておりませんし、また接収貴金属で百五十億円の財源を予定されておりますけれども、これから非特定の所有者から申請を受け付けて、今年末までに所有者不明の接収貴金属を一般会計予算歳入に繰り入れることは、事実上困難でありまするし、この期間を年度末に間に合わせようとするならば、個人所有権侵害のおそれさえも出てくるのではなかろうかと考えるわけであります。  われわれは社会党の示されたような、現実に財源となりがたいものを当てにするものではなくて、現実に可能な政策をもって政府に実行を迫り、これを行なわしめんとするものでありまして、かかる観点に立ってわが社会クラブは政府案に対する組替要求の動議をお手元に配布しておりまする資料の通りに立案をいたして、これを動議として提出いたした次第であります。各位の御賛同をお願いいたしまして、説明を終わりたいと存じます。(拍手)
  76. 小川半次

    小川委員長 これにて趣旨説明は終了いたしました。     —————————————
  77. 小川半次

    小川委員長 これより田中織之進君外十五名提出の編成替を求めるの動議、佐々木良作君外二名提出の編成替を求めるの動議を一括して討論に付します。西村直己君。
  78. 西村直己

    西村(直)委員 私は自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題になっております社会党並びに社会クラブの組替案に対しまして、自民党を代表して残念ながら反対の意見を申し上げたいと思うのであります。  討論に先立ちまして、今回の未曽有の災害で非常に打撃を受けられました被災民に対しては深甚なる御同情の意を表するのでありますが、同時に、一日もすみやかにこの予算措置が行なわれるということが、心からのあの人たちの念願ではないかと考えておるのであります。  そこで組替案でありますが、それには政府原案に触れつつ組替案を御批判しなければならぬと思います。政府原案の方は、原案が出ます前から、もう災害が起ると同時に、実情に即しまして予備費の支出、地方交付税交付金の繰り上げ交付、つなぎ融資をやっておりまして、相当手は打ったのでありますが、しかし今回の災害が非常にひどいというので、特に二十八年災害と同様な特別立法描出を講じ、被害激甚地に対して補助率を大幅に引き上げ、あるいは国庫負担率を引き上げる、工事の進捗率を事業全体に対しておおむね二八・五%、災害予算においては三百四十四億のほか予備費の追加額八十億のうち五十億円程度を災害分に充てる、さらに国庫債務負担行為として三十六億円を予定しておるのが政府原案であります。もちろんそれ以前に当初予算の予備費を五十五億円流用いたしております。そして災害関係経費の総額は四百八十五億円に達するのであります。これが政府原案であります。また財政投融資の面におきましても、総額五百一億、あとう限り農林、水産、土木、住宅、あるいは中小企業、いろいろ適切に考えられております。組替案の中には、個人災害とか民間災害とかは、これを一般会計の方からもやれというような御意見がありますが、われわれの方としましては、できる限り低利の融資によってこれを解決して参りたい。こういう政府提案に対しまして、一挙に多額の金をいわゆる一般会計から出すということについては賛成できないのであります。もとより被災地の窮状を思いますると、すみやかでかつ完全ないろいろな手を打つことはだれしも願うのであります。しかし、一面国の財政の果たす役割というものも、責任ある政府あるいは政党としては考えて参らなければならぬ。そこで財源の点も考えまして、ただいたずらに予算規模を拡大さえして人気をとればいい、こういう考え方ではいけないと思うのであります。  災害激甚地の指定の基準につきましても、政府は、少くとも原則として二十八年災の基準を下回らないという考慮のもとに、この経験を生かしまして適正公平を期して慎重な検討を重ねて決定をされたことは皆様御存じであり、われわれおおむね妥当だと思うのでありますが、もちろんこの災害対策の根本につきましては、本補正予算だけでは事足れりと申すものではありません。治山治水事業、高潮対策等に対しましては、次年度以降の予算におきましても国土保全の立場から、政府もしばしば言われておりますように、積極的な政府災害対策が打たれると思い、これに期待を持つわけであります。  災害関係以外の原案におきまして、予算措置としましては義務的、法律的なものもあります。また、地方交付税交付金の中には、八十五億円の増のうち、二十億円が特に被災府県分に充てられております。残り四十一億円は特別交付金としてこれまた被災府県を重点として考慮されているのであって、地方債の政府引き受け百六十億円の増加と相待って、被災府県に対する所要財源の確保には相当配慮がなされていると思います。  石炭鉱業に対しましても、ただいま組替動議でお話が出ましたこの緊急措置につきまして、世界的なエネルギー革命に対処して、エネルギーの総合対策が検討される段階にあることはもちろんでありますが、この問題の解決が一朝一夕に単に政府の力だけで行ない得るものではなく、広く民間産業界その他関係者の努力と協力が必要であって、ある程度の日にちを要することは異論のないところであろうと思います。そこで今回は政府の原案の方では、とりあえず炭鉱離職者の生活困窮の現状にかんがみて、これらの人たちの再就職の援護、地方公共団体が行なうところの離職者の緊急就労対策事業等に対して補助を行なう、こういう措置を講じたのであります。これによりまして大体炭鉱労務者二万一千人程度は救済され、将来において鉄道新線の建設等もありますので、そういうところにも吸収していきたいという方途が考慮されておるのであります。  こういうような原案の考え方に対しまして、財源としては、政府原案の方は租税、印紙収入の自然増収を大体穏当な計算で四百九十億円、税外収入の増加が四十八億円、その他既定経費の節約七十六億円等は、できるだけ安定した確実な財源の確保をもってまかなわれる。そうして健全財政の筋だけは通していこう。そこでこの予算をやりまして、一部ではむしろ社会党あるいは社会クラブの御意見とは違って、これでさえも財政インフレの危機がありはせぬかというような声もあるのでありますが、これに対して私どもとしては、こういう点については政府も補正予算を組むに当たって多分に考慮して、この程度に財源をとられたと考えるのであります。  これに対して社会党、社会クラブから提案された組替案の中で、特に社会党の方から先に御批判申し上げたいと思うのでありますが、政府案に比べて七百三十億円の増額、千三百四十四億円となっております。それから災害復旧事業の進捗率を、政府の二八・五%と言われるのに対して四五%の進捗率を見込んで組んである。しかし、もう本年度もわずか四カ月あまりの期間でありまして復旧事業が年度内に四五%進捗して、予算が全部消化できるということは過去たびたびの経験に照らしましてもとうてい考えられない。ここいらはちょっと社会党の常識を疑う点であります。また財源の点に見ましても、防衛庁費の削減三百億円となっておるが、これはもうあえてここで論義いたしません。もう社会党のお家芸でありますから、これに対してはかれこれ言うことはなく、もうわれわれとしては根本理念が逢う。おそらくそのために社会党の方も二つに分かれつつあるのじゃないか、こう考えるのであります。  さらに外為会計の資金三百四十六億円の取りくずし——これはわが国の国際収支が好調を続けており、これとともに輸出入信用状等の動向が活発でありますから、この際に外為会計のインベントリー・ファイナスンを取りくずすということは、わが国の貿易経済の現状と将来を無視したものとして、私どもは容認できないのでありまして、この点も社会党に一つ御反省を願いたい。これは社会クラブさんも同じであります。  また、接取貴金属の国庫帰属分の一部を財源にお使いになるようでありますが、これは本委員会において大蔵大臣が説明されておりますように、まだ国と民間との持ち分がはっきりしていないのであって、それの処理には相当の時間がかかる。これを補正予算の財源に充てることは不確定である。従って、このような不確定な財源を持ち出してくるところに、社会党組み替案の無責任さを露呈しておると思うのであります。特に千三百億円のここで補正を組めば、当然われわれとしてはやはり財政インフレの危険がある、景気過熱を生ずる。せっかく政府与党が苦労してここまで安定経済と健全財政を持ち込んできたのに対して、これをこわしてしまえば、むしろせっかく金は組んでも仕事は何にもできないという水泡に帰するというおそれがないではないのでありまして、この点は社会党の組みかえ案に対してはわれわれ賛成できません。  同時に社会クラブの方の組みかえ案であります。これは今まで触れました点についても、この案にも賛成ができないということは皆様御納得がいただけるのでありますが、ただ社会クラブは現実政党だというので、さすがに防衛庁費には手を触れてない。やはり世界の現実の情勢をよく御認識しておられると思うのであります。願わくは、今後ますます現実政党として私どもが協調できるような案をお示し下さることを御期待申し上げまして、反対の理由とする次第でございます(拍手)
  79. 小川半次

    小川委員長 淡谷悠藏君。
  80. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 私は、ただいま提案されました昭和三十四年度予算補正(第2号、特第1号及び機第1品)の編成替を求めるの動議に対し、日本社会党を代表してわが党の動議に賛成し、社会クラブの動議には反対する討論を行ないます。  伊勢湾台風を初め、各地を襲った今年の災害は、近年まれに見る惨烈をきわめたものでありまして、昭和二十八年度災害に匹敵する大きな被害を与えたものであります。岸総理災害発生とともに現地におもむき、深く同情の言葉を述べるとともに、政府はあらゆる手段を尽くし、金に糸目をつけないで早急に対策を立てることを約束いたしております。ただいま西村委員のおっしゃったいわゆる人気取りの約束だけではなかったことと私は信ずるのであります。これはまさに当然のことであります。今回の災害は不可抗な天災によるものとばかりは言い切れないものがたくさんあったのであります。自衛に名をかりて無用な軍備に多くの予算を取られたために、治山治水はもとより、あらゆる公共施設は荒れ、復旧工事は進まず、加うるに政治の腐敗、官僚の堕落が、災害防除工事にさえ幾多の不正粗雑なやり方をしてきましたために、災害の跡が直らないうちに重ねて災害をこうむるのは悲惨を繰り返して参りました。さらに民生安定の策がなかったために、一度災害をこうむれば、自力をもって立ち上がることができないほど、疲弊を深くしていたのでありまして、このたびの災害は天災にあらずして人災であるという声を聞くのももっともなことであります。このような災害に対して、政府は全力をあげ、一日も早く復旧を急ぐことの必要なことは論を待ちません。しかるに災害世地では被災者のきげんをとり、政府や与党の力を誇示しておいて、さて実際に組まれた補正予算を見ますると総額はわずかに六百十四億、うち災害関係が三百四十三億、金に糸目をつけないどころか、まことにたよりない措置といわざるを得ないものであります。しかも日本始まって以来の石炭不況に際し、職を失った多くの人々に対する万全の措置を講ずべき費用はわずかに七億円、とうてい社会不安を取り静めるに足る費用ではございません。  わが党の組替予算は、これまでの政府がとり来たった姑息にしてその場しのぎの方針を一擲し、毎年襲来する災害に対し、性こりもなくあわてふためいて特別立法を講ずるの愚をやめ、恒久的立法により、災害に応じて自動的に発動する恒久立法に根底を置き、災害を常に繰り返すことなき恒久対策を、しかも迅速に実行すべく、災害対策費として八百三十八億を計上しております。特に民間災害が大きかったので、民生安定には十分に意を用いて、住宅施設災害復旧費を約倍額にし、被災者援護費に政府が全く予算を見ていないのに対し百三十五億を計上し、緊急失対事業費にも新しく十三億余を盛っております。さらにまた原形復旧を建前として行なわれたこれまでの災害復旧の方針は、災害に対して何ら防除の力とはならず、年々災害を繰り返して国費を乱費するにすぎないものであるという批判にこたえて、思い切って改良復旧に踏み切り、河川、農地、都市、農業用施設、治山、林道、漁港、港湾等の復旧費に思い切った増額を断行せんとするのは、災害の恒久対策に心強い前進を示す、まことに時宜を得た予算であります。地方財政の窮乏はなはだしい今日、政府の補助率ではとうていこの大災害復旧の負担にたえるはずもないので、その補助率を高め、民間災害、特に中小企業者などに対する被害に対しては大幅に融資を断行して、急を救うことに配慮していることも、まことに行き届いた措置であります。特に政府がその施策に逡巡しているために、冬迫る今日、いまだに海水の中にふるえている多くの人々のいることを思うときに、災害対策に必要なことは即応実施であることに、この組替予算は十分配慮して作られております。すなわち、伊勢湾高潮対策事業費も二十二億を増額し、その他農地、農業用施設、公共土木施設等の復旧工事施行の予算を、従来の方針である三、五、二の比率を一擲して、復旧の早期完成をはかっておることは、今回の災害を受けた人々のみならず、災害復旧に対する年来の要望にこえたものというべきであります。石炭不況の対策について、わが党の組替案は政府案の十倍に近い六十四億余を計上しております。炭鉱離職者の緊急就労対策事業費補助を初め、石炭対策の基本的な諸施策についてその予算を新しく見込み、問題の抜本的な解決をはかるとともに、当面急を要する離職者に対し徹底的な措置をとって、生活の不安をなくし、人心を安定させる方法を考えて組まれております。救農土木費、共同利用小型漁船建造費など大幅に増額しましたことも、緊急な対策とともに、将来にわたる生活の安定を十分に考えた親切な、建設的予算という立場がよく現われたものであります。  政府案の倍額をこゆる千三百四十四億というこの組替補正予算の財源の求め方は、わが党年来の主張である防衛費の削減三百億に求め、ほかに接収貴金属百五十億、外国為替資金特別会計の取りくずし三百四十六億に求めておることも、まことに当を得た処置であります。政府が平和に向かう世界の大勢に逆行して再軍備をあせり、自衛に名をかりて無益有害な戦闘機の製造や核兵器まがいのものの導入に狂奔し、しかも使用できないほどの多くの軍需品を高価に買い込んでおることは、会計検査院などによってさえ繰り返し指摘せられておるところでありますが、国内防衛産業の育成助長のために奪われる多額の財源が、今日の民生圧迫と災害とをおびき寄せていることは、すでに国民の声となって非難を集めております。今回の災害に活躍した自衛隊が、被災地の人々のみならず、国民から好意と愛情をもって迎えられたのは、決して再軍備的自衛隊の行動によるものではなく、わが党の主張である平和国土建設隊的行動によってのものであることを思うならば、組替予算による防衛費の削減も、国土建設と災害救援に専心する自衛隊の行動に何ら不自由を感じさせるものではなく、先考違反のそしりを受けながら時代おくれの兵器購入にうき身をやつして、台風観測機の一台も持たず、ヘリコプターも災害に役立つほどに持っていない政府の非情を恨む国民に対する当然の罪滅ぼしというべきであります。あるかないかわからない侵略に備えて費やす防衛費を、現実災害に打ち砕かれている国民のために、将来の災害に備えて使うことは正しい自衛の第一歩であります。  ただいま佐々木良作委員からわが党の防衛費削減に対して、はなはだ非現実的な施策であるという御非難がございましたが、この多額の不用費、多額の防衛費の実体を十分に認識し得ない暴論と思うのでありまして、むしろ租税等の自然増はさらに百九十億を見込みながらも、政府が削減した防衛費三億にさえ手をつけ得なかった社会クラブ案には、まことに同調しがたいものがあるのであります。その他投融資においても、これまで資本家のためには低利長期で惜しみなくやってきたのでありますから、まさに危険に直面し、寒さと飢えにさらされている人々のために組替に現われた増額は喜んでなすべきものと信じます。接収貴金属につきましても、金の茶がまや金のふろおけの所有権は尊重されても、零細な国民が献納したものをその国民に返す道はないでしょう。一体所有権はどの面に尊重されるのか、これもやはり佐々木委員の非難のまことに当たらざるを示すものでありまして、私はわが党の動議に賛成し、社会クラブの案に反対する理由を述べまして、以上をもってわが党の補正予算組替動羨に対する賛成討論といたしますが、このたびの災害はひとり国土、財物を破壊したばかりでなく、とうとい人命五千を奪い去っている事実を直視しまして、この際今までの陳腐、低調な災害対策になじむことなく、党派を越えてわが党の提案の動議に賛成し、災害による惨事を再び繰り返さぬ誓いを新たにしていただくことを心から希望いたしまして、全員の御賛成を願って討論を終ります。(拍手)
  81. 小川半次

    小川委員長 鈴木一君。
  82. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 私は社会クラブを代表いたしまして、社会クラブ提出の補正予算案組替動議に賛成し、日本社会党提出の組替動議に反対をいたします。  社会クラブの組替動議の内容は、政府案の内容の欠陥を是正し、第一には真に災害復旧に役立ち得る予算、第二は罹災者並びに死亡者に対しましても、国の責任を果たし、援護金や弔慰金を支給し得る予算、第三には石炭関係離職者の皆さんに生活の援護と職業保障について万全を期し得る予算に組みかえんとするものであります。すでに社会党はもちろん、自民党委員各位もよく御承知のように、政府の計上いたしました三百四十三億円の災害関係予算と五十億円の予備費では、政府の示した高率適用の基準を実際に実施することは、明らかに不可能なのであります。すなわち経費が不足するのであります。もしこれ以上財源がないというならば、われわれも政府補正予算案を次善の策として認めなければならないのでありますが、補正財源といたしましては社会クラブ組替動議が示していますように、本年度の租税、印紙収入においては、政府の見積額を上回る自然増収を計上することが可能なのであります。最近の経済動向はこれが可能であることを実証しておるのであります。また社会党も組替案で示しておるごとく、外為会計のインベントリーは一部を一般会計補正財源に繰り入れることは法律的にも直ちに可能でありますし、財政的にも外為会計に何らの支障も来たさないのであります。すなわち現実的に補正財源として活用し得るものなのであります。もし政府が真に災害対策、石炭離職者対策といたしまして、誠意をもって対処するならば、これらの財源を活用するのが当然なのでありまして、社会クラブの組替動議こそが、現在の財政事情に即応した最も積極的かつ現実的な予算編成の方針であるのでありまして、われわれが全面的に支持するものであります。従って社会クラブといたしましては、ここで政府に対し社会クラブ案通り政府案を組みかえることを強く要望するものであります。  次に社会党の組替動議に反対の理由を明らかにいたします。社会党は社会クラブ案に上回る災害対策並びに石炭離職者対策の経費を計上し、政府案の補正予算規模六百十四億に対しまして、実に一千三百七十九億円の規模に組みかえ、おおむね七百六十億円を上回る補正予算を要求しております。われわれも財源さえあれば社会党のような大幅な経費計上に賛成するのでありますが、残念ながら社会党案の歳入組替動議の内容を見ますと、防衛関係費で三百億円を削減し、接収貴金属関係で百五十億の繰り入れを見込んでおります。しかしながら現実の財政措置といたしまして、かつまた現実の行政処理といたしまして、防衛関係費よりいかにして三百億円を削減するのか、これを明らかにし、しかもこれが実施可能な措置と認められた場合にのみ、この三百億の削減は可能実現なのであります。ところが社会党は具体的な削減方法を何ら明らかにしておりません。これでは、目前の災害対策その他の財政措置といたしましては、現実的な組替動議とはなり得ません。従ってわれわれはここに賛成しかねるのであります。また接収貴金属関係より百五十億円を繰り入れる案につきましても、不特定の所有者に帰属するものを正式に国の歳入に繰り入れるための手続をどうするのか。これは国民の所有権をどう見るのか。民法上、憲法上の大問題なのでありまして、このような手続がはたして年度末までに必ず間に合うという保証のない限り、これは財源として計上することはきわめて危険であります。従って財源としてはまことに不安定かつ不適当なものであります。私はこのような非現実的な財源措置のゆえに、社会党の組替動議に反対するものであります。  最後社会党の御批判について、一言触れたいと思います。社会党はわがクラブ提出の三十四年度補正予算組替案に反対する第一の理由といたしまして、わが会派が見込んでおります自然増収を苛斂誅求なりと批判しておりますが、これは事実の認識を誤った、検討不足に基づくものであります。われわれは自然増収の見積もりにあたっては、広く学者の意見を求め、権威ある機関を動員いたしまして、冷静かつ客観的にその算定を行なったのであります。従ってこれによって厘毛たりとも税の増徴を来たすものでないことを確信いたします。われわれはあるべき財源を公正かつ客観的に把握し、これを財源に充てたのにほかなりません。第二に、社会党はわが組替案に反対する理由といたしまして、防衛費を削減しなかった点を指摘されておりますが、これは全く荒唐無稽の論理であります。わが国の防衛に対する基本的方針の差異及びそれについての具体的政策内容の賛否について、その方針がそれぞれ分かれるといたしましても、すでに議決された予算案は、議決された通りに執行されるべきものであります。われわれは基本的に議決された予算を、その年度内にみだりに変更すべきものではないと考えます。このことは単に一事不再議の原則にもとるだけではなく、院の権威を守る上にも重要なことであります。第三に、社会党政府案に賛成し、わがクラブ案に反対する態度をとっておりますが、この点に至っては社会党の無方針、無原則を完全に暴露したものにほかならないであります。社会党提出の組替案は、政府案のすみずみに至るまで組替を行なっており、その内容は政府案とは根本的にその見解を異にしておるのであります。すなわち社会党はその予算措置において、より近いわが会派案に反対しながら、逆により遠い政府案に賛成するということは、きわめて矛盾した態度といわなければならないのであります。このことに一言触れまして、私の討論を終ります。(拍手)
  83. 小川半次

    小川委員長 これにて討論は終了いたしました。     —————————————
  84. 小川半次

    小川委員長 これより採決に入ります。  まず田中織之進君外十五名提出の編成替を求めるの動議を採決いたします。本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  85. 小川半次

    小川委員長 起立少数。よって田中織之進君外十五名提出の編成替を求めるの動議は否決されました。  次に、佐々木良作君外二名提出の編成替を求めるの動議を採決いたします。本動議に替成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  86. 小川半次

    小川委員長 起立少数。よって佐々木良作君外二名提出の編成替を求めるの動議は否決されました。     —————————————
  87. 小川半次

    小川委員長 次に補正予算三案を一括して討論に付します。小平忠君。
  88. 小平忠

    小平(忠)委員 私は社会クラブを代表して、政府提出の補正予算三案に反対の意向を明らかにするものであります。  政府案の歳入補正、すなわち財源措置については、先ほどわがクラブの佐々木委員の指摘した通り、政府として当然計上し得る財源を放置しているのでありまして、われわれはこのような政府の怠慢を断じて許すことはできないのであります。また、政府案の歳出補正面を検討いたしますと、われわれが絶対に見のがすことができないのは、第一に災害関係費の編成についてであります。  今回の政府原案の一般会計歳出は六百十四億円でありまして、そのうち災害関係費は、予備費のうち五十億円を加えて、三百九十三億円、つまり歳出総額の六四%を占めております。しかもこれが支出につきましては、政府はあらかじめ進捗率はおおむね三〇%であり、高率適用地域はおおむね被災地全体の六割程度であると基準を示しましたが、予算の配分を行なうにあたって最も肝心な、要素となる高率適用を行なうべき被害程度の基準につきましては、一昨日ようやく決定されたものであります。そこで、この最も重要なる基準に基づいて予算を配分した場合、はたして計上されている予算額だけで十分であるという保証は全くないのであります。これは大蔵大臣の答弁に見る通り、全くあいまいもことしているのであります。  第二に、われわれは政府災害復旧事業について、なぜに進捗率を三〇%で押え、高率適用地域を被災地全体の六割に押えたのか、全く理解に苦しむのであります。大蔵官僚流に申しますならば、災害対策費は三カ年に分割して、三・五・二の割合に配分すべきものときめ込んでおります。さらに、本年度は十二月以降に予算が執行されるのであるから、総事業費の三〇%程度の執行が限度であると説明しております。しかしながら愛知等三県というところは、北海道のように冬期間復旧事業が渋滞することはあり得ません。また交通運輸の面から見ても、あらゆる復旧建設を投入することも可能であります。また予算措置としても、補正予算総則によって年度内に使い残り金を生じた場合は、これを全額継続費として翌年度に使用し得るよう措置することも可能であります。従って進捗率三〇%は、政府の決意次第ではもっともっとさらに伸ばし得るのであります。また高率適用地域につきまして、政府は大体六割の地域を見込んでいるようでありますが、被害総額があくまで中間報告であって最終報告ではない点、並びに復旧事業が原形復旧ではなく根本的に改良復旧を目標とすべきである点、この二点より見るならば高率適用地域は当然八割程度を見込むべきであります。  次に、石炭離職者対策費につきましは、援護会が中心になって離職者の生活と就職の世話をすることになっておりますが、援護会の機能は弱く、しかも離職者数も査定を過小評価しており、これは炭鉱の山元現場のお気の毒な現状を無視した対策と言わざるを得ないのであります。  また財政投融資の面におきましても、中小企業、農林漁業、住宅金融の各面において、災害復旧の現実の要求を満たし得るものではありません。われわれは、政府案がこのような原案のままでは、残念ながら反対せざるを得ないのであります。  以上、申し述べまして、反対の討論を終ります。(拍手)
  89. 小川半次

    小川委員長 西村直己君。
  90. 西村直己

    西村(直)委員 私は自由民主党を代表いたしまして、先ほど組替動議の討論の際に申し述べました趣旨によりまして、政府原案へ賛成の意を表します。(拍手)
  91. 小川半次

    小川委員長 井手以誠君。
  92. 井手以誠

    ○井手委員 私は日本社会党を代表して、三十四年度予算補正三案に対し、先刻大蔵大臣が予算執行にあたり不足を生ずる場合は、政府の責任において予算措置を講ずるという言明を期待し、不満足ながら賛成の意を表する次第であります。  伊勢湾台風を中心とする災害対策並びに石炭鉱業離職者対策は、社会党提出の予算組替案が最上のものであると信じておるのでありまするが、残念ながらただいま少数否決となりました。政府原案は、公約を大幅に下回わっておりまするし、予算に不足を生ずることは、これは明らかであります。たとえば、現行法による公共施設の国費所要額は八百二十億円に対し、当初特例法による増加額は九十七億円、その範囲は六割と申しておりましたが、実際はその六割が三割程度にすぎないことは数字でも明らかであります。しかも私ども予算積算の基礎である指定基準の発表を迫りました結果、適用範囲は相当拡大されたのでありまするが、その結果、適用範囲は六割六、七分程度に増大することになりました。さらに政府は、今年度二割八分五厘の進工を約束しておるのでありますが、政府提出の資料によりますると、昭和三十四年発生災害復旧補助事業国費所要見込額、調によりますれば、査定見込み事業費一千百億円、現行法による国費所要額八百十九億円、こういう数字になっておりますが、この査定見込み事業費一千百億円、これに対する現行法による国費所要額八百二十億円、これに適用範囲が広がり、さらに予備費を加えるといたしましても、予算に計上されておる額は、わずか百八十三億円でございまするから、いかに努力してもその進工率は二割程度にしかすぎないと私は思うのであります。  かように検討して参りますと、高率補助の適用範囲が拡大され、公約通り二割八分五厘の工事を行なうことになれば、予算に不足を生ずることは必至であります。  さらに、政府原案は、民間災害対策がほとんどありません。一方、石炭鉱業離職者対策は抜本的対策を講じ、新規失業者の発生を防止するとともに、当面の離職者に対し、徹底的処理を行なって、民生安定をはからねばなりませんのに、政府原案はきわめて不十分であります。しかしながら、事、災害対策でありまするし、現実の緊急な事態に備えねばならぬ事情を十分考慮いたしまして、私ども社会党は、政府がすみやかに災害対策、石炭鉱業離職者対策の第二次補正予算を提出されんことを強く要求して、政府原案に賛成する次第であります。(拍手)
  93. 小川半次

    小川委員長 これにて討論は終了いたしました。     —————————————
  94. 小川半次

    小川委員長 これより採決に入ります。  補正予算三案を括して採決いたします。原案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  95. 小川半次

    小川委員長 起立多数。よって昭和三十四年度一般会計予算補正(第2号)、同特別会計予算補正(特第1号)、同政府関係機関予算補正(機第1号)は、いずれも原案の通り可決いたしました。  委員会報告書の作成につきましては、先例によりまして委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  96. 小川半次

    小川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。   本日はこれにて散会いたします。     午後五時三十分散会