○北山
委員 私は日本
社会党を代表して、
政府提出の
災害関係補正
予算につきまして、
政府はこの際最善の方法としてこれを撤回し、わが党が提案をしておる要旨に基づいて、すみやかに編成替を行ない、再提出することを要求するものであります。
この動議の要旨、内容の詳細につきましては、配付しました印刷物をごらん願うことといたしまして、私はその大安を御説明いたします。
われわれが編成替を求める理由の第一点は、今回の
災害に対する
予算としては、この補正
予算はきわめて不十分であるということであります。
政府が当初金は惜しまないと言明し、あるいは
昭和二十八年度
災害を下回らないような
措置を講ずると言明しておりましたが、この言明に違反をいたしまして、この補正
予算では
災害復旧の早期の完成も、罹災者の援護もまことに心細いという点であります。この伊勢湾台風等本年の
災害は、
死者、行方不明五千七百三十四人、負傷者三万七千七百五十五人、家の全半壊
戸数は十五万六千戸、公共土木
施設の
被害は千四百八十億円、農林水産
施設の
関係は七百八十六億円、農作物は六百六十二億円、文教
施設六十三億円、交通通信
施設百五十億円という膨大な損害になっておるのでありますが、これ以外に数千億円に上る
民間被害があって、中部産業の中心を襲われて、農林、水産、商工の産業
被害、その甚大なこと及び
被害が長期にわたって個人
災害の深刻な点など、きわめて特殊な性質を持っておるのであります。従いまして、われわれとしては、これらの年中行事的な
災害の発生を防止する基本的な政策の確立と、
災害立法の恒久化を要請すると同時に、農地農業
施設、公共土木
施設の工事は、従来の三割、五割、二割の進捗比率にとらわれず、早期完成をはかって、特に従来の原形復旧主義を排して、今後の
災害に備えて改良復旧主義をとるように要求したのでございます。しかし、基本政策や恒久立法の問題は次の国会に譲るといたしましても、今次補正案のごとく、事業の進捗率を二五%程度にとどめ、改良復旧となるべきいわゆる
災害関連事業費を事業費のわずかに八%とし、その補助率の引き上げを認めないということは、復旧の早期の完成と改良復旧の熱意を欠くものとして、まことに遺憾にたえないところであります。
次に、
政府案の欠陥は、
民間被害、個人
被害への
対策が貧弱なる点であります。今回の
災害関係費三百四十四億円のうちで、大部分は河川や堤防や道路、港湾、学校等のいわゆる
公共施設の復旧費でありまして、直接罹災民に対するものはまことにりょうりょうたるものであります。たき出し等の応急
災害救助費二十四億円を除くならば、
世帯更生資金が一億五千万円、
児童保護費が四千万円、国民健康保険の助成が七千七百万円など、まことに貧弱きわまるものでありまして、
厚生大臣は生活に困る者に対しては
生活保護法で救うと言っておりますけれ
ども、
災害のための
生活保護の
予算は一文も
増額しておらないのであります。もちろん農林漁業、国民金融公庫、中小企業金融公庫等のワクは若干ふやしましたが、これを利用し得るものは一部にしかすぎません。むしろ借りる必要のない者が利用して、その必要な者が各種の条件からはずされるというような今までの
実情から見ましても、不十分と言わなければならぬのであります。国や地方団体がみずからの
施設を復旧することはむしろ当然でございましょう。
災害対策の根本の問題点は、家をこわされ、家財道具を失い、収穫を無にし、一時的にせよ、生業の道を閉ざされた多数の罹災民に対して、生活立ち直りの方途を講じてやることが、特に
民間被害の甚大な今度の
災害の場合においては、
対策の根幹をなすべきものと
考えます。われわれが罹災者援護法案を提案し、
市町村の窓口としまして、
被害のはなはだしい者に最高十万円の生活再建資金を貸上付け、二年据置、十年償還で国がその利子を負担することとして、また犠牲者の弔慰金、罹災者に見舞金を支給することとしておるのはこのためであります。現在国会の内外にわたって
施設災害復旧の高率補助のための、いわゆる
激甚地指定問題のみが声高く論議されておりますが、遠く被災地にあって援助を求めておる数十万罹災者の声なき声を忘れてはならないと信ずるものであります。この点につき
政府及び与党の各位は、個人
被害に冷淡な従来の方針を改め、罹災者援護法あるいは生活保障特別
措置法につきまして、真剣に検討されるように切望してやまないものであります。
次には
公共施設災害の高率補助の点でありますが、
政府が一たん二十八年災を下回らないと言明しながら、地方財政の好転を理由に、これを渋っておるのは、まことに納得ができないところであります。地方財政は、
昭和三十一年、三十二年は好調でございましたが、昨年来逆転をしつつありますことは、昨年度の府県の財政収支が百十四億円の赤字であり、
昭和三十二年度百六十八億円の黒字であったことに比較いたしますれば、激しい変動を生じておることは、自治庁の発表によりまして明らかでございます。また本年、明年の地方財政が楽観を許さないものであることも、また自治庁指摘の通りでございまして、地方財政の好転どころか、悪化の道をたどっておるという現況と見るのが正しいのであります。ことに
民間災害や産業の
災害のはなはだしい状況におきましては、今後地方税収の減少やら、あるいは単独
災害復旧の負担のために、財政窮迫に転ずることは明らかでありまして、
災害前の事情を基準として補助率をきびしく制限することは適当でないと信じます。われわれは
災害復旧の全額国庫負担を理想といたしますが、少なくともわが党提案の通り、
昭和二十八年災を下回らない
措置を
要望するものであります。
次の問題は、石炭離職者
対策についてであります。今日、石炭鉱業の危機が重大な段階に達して、労使が死活の闘争を続けつつあるときに、
政府が石炭政策の確立をしないで、資本家の、首切り合理化攻勢を傍観し、危機のしわ寄せを一方的に炭鉱労働者にかぶせて、その責任をとらない態度は、断じて容認することができないのであります。われわれは、わが国の石炭鉱業を、国民のものとして守り抜く決意のもとに、抜本的
対策を強く
要望いたしますが、また同時に、新規失業者の発生を防止し、かつ当面の離職者に対しましては、徹底的な
措置を
要望し、就労
対策事業費、転職の資金、失業特別手当、自立更生資金等の大幅な
増額を要求するものであります。
以上は編成替を求める重要な問題点でありますが、以下各部門について簡単に述べますならば、第一に
災害関係費は、
政府案三百匹十三億七千匹百万円に対して、組替案は八百三十八億七千四百万円でありまして、そのうち
災害復旧事業費は、建設、農林、運輸を合わせて、
政府案に対して百六十四億円の増加であり、これによって進捗率は四五%、補助率九割を確保せんとするものであります。
次の伊勢湾高潮
対策事業費は八十三億六千万円、
政府案よりも若干進捗度を高め、かつ今後の
災害を考慮いたしまして、改良を二割程度見込んでおります。
第三の
災害関連事業費は、
政府案に対して三十二億円増の四十一億三千五百万円を計上し、河川については
被害額の八%、農業用
施設、林道、漁港については、総事業費の二〇%を見込み、進捗率も大幅に引き上げたのであります。
次の緊急治山及び砂防事業費は三十七億三千九百万円として、補助率は九割、進捗度も相当高めたのであります。
また公営
住宅については、八千一百戸として十億円の増、公立文教
施設の補助率も九割として、所要の経費を見込んでおります。
次に前述の罹災者援護法の所要額は百三十五億円、ほかに生活保障特別
措置法による二十一億円を計上し、民生安定をはかるため特別の考慮をいたしております。
その他
激甚地の失業
対策事業費、失業保険特別会計の補てん、育英費、体育
施設復旧費、環境衛生
施設、医療
施設、
社会福祉施設の復旧について、も、それぞれ
増額をはかっておるのであります。
また農林省
関係については、農林水産共同
施設の復旧費、救農土木費も
増額しましたが、共同利用小型漁船建造費の補助は十トン未満のものに
対象を拡大して、十一億四千五百万円の
増額となっております。
なお、緊急排水事業費は全額国庫負担といたしております。
中小企業に対しましては、特に勤労性事業の特別資金利子補給十億円を計上するほかに、商工中金への利子補給を二倍にし、中小企業共同
施設復旧費に二分の一の補助を行なうことといたしております。
石炭
対策としては、緊急就労
対策のほかに、転職移動資金、また公営
住宅費の補助、失業特別手当等々、六十四億七千五百万円を見込んだのであります。
以上のほか、予備費について二十八億円とし、また財政投融資の原資として
一般会計から二百三十億円を出資することとし、歳出合計は千三百四十四億七千八百万円、
政府案より七百三十億円の
増額となったのであります。
この財源としましては、租税、税外収入は
政府の見積もり通りとし、防衛
関係費は、今後の装備その他の経費の打ち切り、節減三百億円を見込んで、他の既定経費の節約につきましては、
災害復旧振替の公共事業等わずかに十億円のみとし、また接収貴金属は、本年度内
政府帰属に特定し得る見込み分として百五十億円を見込んでおります。そのほか不足分につきましては、外国為替特別会計資金のうち三百四十六億三千五百万円を取りくずすことといたしたのであります。
財政投融資につきましては、国民金融公庫、中小企業金融公庫、商工中金等、それぞれ
災害、年末融資を若干ずつ
増額をし、
政府案五百一億円に対して四百六十六億円の増となっておりますが、その原資といたしましては、
一般会計出資二百三十億円、他は資金運用部及び産投会計の
内部振替によって充当することといたしておるのであります。
従って、一覧表のうちで、原資の純粋の組替案の合計は七百三十一億円、純増分は二百三十億円となることを御了解願いたいと思います。
以上が編成替を求める動議の概要であります。
最後に防衛費の既定
予算を三百億円削減することは乱暴ではないか、あるいはまた接収貴金属の売却、外為会計資金の取りくずしはインフレの原因とはならないかという
意見につきまして、一言触れておきたいのでありますが、防衛費の節減は、もっぱら今後使用調達すべき分の節約としたのでありまして、決して不可能なものではなく、また最近特に高まって参りました世界的な軍縮の潮流や、
災害地住民の中に自然に発生して参っておりますところの、「自衛隊よりも国土建設隊を」という素朴な感情にこたえるゆえんでもあると信じます。むしろ、われわれがかねて主張しておりましたように、自衛隊をやめて、平和国土建設隊に切りかえておったならば、今回の
災害の相当部分を未然に防ぐことができ、また
災害予算補正もこのような膨大なものとはならなかったであろうことを指摘しておきたいのであります。
インフレの
対策につきましては、
政府の有効適切な金融政策によって対処することができると確信をいたしております。大企業に対しては、過当な設備投資や滞貨融資の尻ぬぐいを財政投融資あるいは日銀の貸し出しで行なって、株や不動産の不健全な投機を放任し、また
政府みずからが公共料金の引き上げをやったり、高物価政策をとりながら、
災害対策予算の膨張のみをインフレ原因とすることは、きわめて当を得ないというべきでございます。
災害は天災にあらず、人災であり、政災であるとすらいわれております。われわれは、国政の責任を分担するものとして、今回の
災害に対して、再びいたずらに政治の貧困を嘆ぜしめないことを深く決意をいたしまして、あえてこの組替案を提出したのであります。何とぞこの共通の
考えの上に立って満場の御賛成を期待し、趣旨の説明を終わるものであります。(拍手)