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1959-11-05 第33回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年十一月五日(木曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 小川 半次君    理事 上林山榮吉君 理事 北澤 直吉君    理事 西村 直己君 理事 野田 卯一君    理事 八木 一郎君 理事 井手 以誠君    理事 今澄  勇君 理事 田中織之進君    理事 佐々木良作君       青木  正君    池田正之輔君       稻葉  修君    内海 安吉君       江崎 真澄君    岡本  茂君       川崎 秀二君    久野 忠治君       佐々木盛雄君    椎熊 三郎君       周東 英雄君    田中伊三次君       床次 徳二君    橋本 龍伍君       保利  茂君    松浦周太郎君       三浦 一雄君    水田三喜男君       山口六郎次君    山崎  巖君     早稻田柳右エ門君    阿部 五郎君       淡谷 悠藏君    石村 英雄君       岡  良一君    岡田 春夫君       加藤 勘十君    北山 愛郎君       黒田 寿男君    小松  幹君       島上善五郎君    楯 兼次郎君       成田 知巳君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君         文 部 大 臣 松田竹千代君         厚 生 大 臣 渡邊 良夫君         農 林 大 臣 福田 赳夫君         通商産業大臣  池田 勇人君         運 輸 大 臣 楢橋  渡君         郵 政 大 臣 植竹 春彦君         建 設 大 臣 村上  勇君         国 務 大 臣 赤城 宗徳君         国 務 大 臣 石原幹市郎君  出席政府委員         内閣官房長官 松本 俊一君         法制局長官   林  修三君         警察庁長官   柏村 信雄君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         厚生政務次官  内藤  隆君  委員外出席者         運 輸 技 官         (気象庁予報部         長)      肥沼 寛一君         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十四年度一般会計予算補正(第2号)  昭和三十四年度特別会計予算補正(特第1号)  昭和三十四年度政府関係機関予算補正(機第1号)      ————◇—————
  2. 小川半次

    小川委員長 これより会議を開きます。  昭和三十四年度一般会計予算補正(第2号)、同特別会計予算補正(特第1号)、同政府関係機関予算補正(機第1号)、以上三案を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。楯兼次郎君。
  3. 楯兼次郎

    楯委員 私は主として災害について質問をいたしたいと思います。なお、地域的なあるいはこまかい法律の問題につきましては、特別委員会がございますから、その方にお譲りをいたしまして、主として基本的と思われる問題について質問をいたしたいと思います。  まず第一に私がお伺いをいたしたいのは、これは十月の二十五日の新聞でありますが、災害が起きてから一カ月たっておりますけれども、四分の一が水びたしである、こういうことを新聞は報じております。その後の詳細につきましては、私よく存じ上げておりませんけれども、なぜ水害が起きてから  一カ月以上になるのに潮どめ工事ができないのか、これは私ばかりでなく国民全体がこの工事の遅滞について多大な疑惑を持っておると思いますので、なぜできないのか、この点をまずお伺いをいたしたいと思います。
  4. 村上勇

    村上国務大臣 お答えいたします。今回の愛知、三重両県下のいわゆる海岸堤防の破堤は従来かつて見なかったような大被害でありまして御承知昭和二十八年の十三号台風の破堤個所は帯状でありましたので、比較的その締め切りが容易であったのであります。しかし今回の破堤個所はその間口も非常に広範にわたって約十九キロ余にわたっておりますと同時に、その奥行きも数キロにわたるというように非常に深い。そのために干潮と満潮との、いわゆる河川で申しますれば、毎日の水害というような状態でありまして、非常に仮締め切り工事に困難を来たしておるということは、現状をごらんいただきますれば御了承いただけると思います。それほどに災害の規模がかつてない非常に大きなものであった、あらゆる努力を傾注して締め切り工事に邁進いたしましたが、その災害の傷口が大きいためにかような状態であるということを御了承願いたいということであります。
  5. 楯兼次郎

    楯委員 私は新聞総理やあるいは建設大臣が現場へ行かれたいろいろな言葉を、ここで取り上げようとは思いませんけれども被災者についてはあたたかい、何をおいてもとにかく復旧をしなければならないという非常に強い決意を当時表明をされておるわけです。私ども考えますと、そのように政府にかたい強い決意があったならば、困難ではあるといいながら、日本の全土木の知能を結集をしていけば、そう、ことし一ぱいであるとか、あるいは二カ月以上も潮どめができないというようなことは考えられないわけです。これは各閣僚言明する言葉と実際の行動が伴っておらないように私はとれるわけでありますが、一体この潮どめ工事は今の見通しとしてはいつ完了をするのであるか、お伺いしたいと思います。
  6. 村上勇

    村上国務大臣 楯委員も御承知のように、たとい十九キロの破堤個所がありましても、これが河川堤防でありますならば、どんな手段でも講ぜられるのでありまして、あるいは一カ月前後で十分仮締め切り工事が終了し得ると考えられます。しかしよく現地をごらんいただいたと思いますが、御承知状態でありまして、あらゆる努力を続けて参っております。従いまして私ただいまの予想では、われわれがすでに幾たびか発表いたしておりますように、本月の末日までには仮締め切り工事は完了するものと、かように思っておる次第であります。
  7. 楯兼次郎

    楯委員 困難なことはよくわかりますけれども、今の建設大臣答弁ではどうしても私は納得することができぬと思います。といいますのは、今月の末という一応の目標を立てておられます。従ってわれわれしろうと考え考えますと、では人員なり機材なりを二倍に動かせばこれは半分でできるではないか、こういうように私はとれるわけでありますが、一体潮どめ工事をやる順序といいますか、動員、機材運搬等はどういうようなことでやっておられるか、お伺いしたいと思います。
  8. 村上勇

    村上国務大臣 工法につきましては私もしろうとでありますので、十分なことはお答えできないと思いますが、しかし御承知のように、よしんば従業員を何千人入れましても、潮どめ工事はほとんどサンドポンプに制約されておりますし、そのサンドポンプの収集につきましては、あの台風の翌日からあらゆる方法を講じて、国内にあるサンドポンプの使用中のものまでも無理をしてあの地区に集結いたしたのであります。従いまして当初の予定よりも相当上回った二万一千七百馬力というだけの、日本のほとんど手持ちの二分の一に相当するだけのものをあの地域に集結いたしたのでありますが、送電線が切れているとか、いろいろなことで、この仕事の施行にあたってはずいぶんな隘路がありました。しかしその険路も克服して、今日私は十分その成果を上げつつあると思っております。この詳細な工法等につきましては、なお御必要があれば政府委員をしてお答えいたさせたいと思います。
  9. 楯兼次郎

    楯委員 それでは端的にもう一度お聞きしたいと思いますが、簡単に言って物がないのか、人が足らないのか、あるいは物と人を動かす金が足らないのか、一体どちらです。
  10. 村上勇

    村上国務大臣 結局国内におけるサンドポンプの集め方というものが、この大被害日本国内に保有しておるものとのつり合いが多少とれなかったところはあったと思います。しかしながらそのサンドポンプもただいまのところ十分に間に合ってやってきております。しかもいわゆる盛り土と申しますか、サンドポンプの力に比例した人と資材というものがマッチしていかなければ、ただ人だけ多くそこへ投入いたしましても、それだけではその実をあげることができないということは、楯委員も御承知通りであります。  それから工費につきましては、これはもう絶対に——かつて総理が金に糸目をつけないから、ぜひともこの災害を一刻もすみやかにというその趣旨に沿って、この締め切り工事につきましては十分予算を投入いたしておりますので、この点については私は絶対に御心配ないと思っておます。
  11. 楯兼次郎

    楯委員 それからもう一つ私は建設大臣にお聞きしたいと思いますが、この災害が起きましてから、仮堤防を作るのに相当資力のある大きい土建業者に請け負わせればいいのを、いろいろな選挙等のなれ合いから、地元の小土建業者に請け負わせるというような関係で、締め切り工事がなかなか進捗しない、こういうようなことを聞いたわけであります、また新聞でも読んだわけでありますが、そういうことはないかどうかお聞きしたいと思います。
  12. 村上勇

    村上国務大臣 その点につきましては、実は海部地区工事愛知県の方で手がけております。従いましてその業者についても私は大体は承知しておりますが、わらをもつかむというような危急の際でありましたから、あるいは今楯委員の言われるようなことがもしあったとすれば、そういう点において多少の遺憾な点があったかとも思いますが、私の承知しておる範囲の業者は、あの工事に対して十分その力を持っておる、かように私としては思っております。
  13. 楯兼次郎

    楯委員 時間を食いますので次に移りたいと思いますが、私は先日こういうことを雑誌で読んだわけです。それは海岸堤防については非常にオランダが進んでおるというので、オランダ技術者日本へ来たときに、海岸堤防についてのいろいろな知恵をかしてもらいたい。こう言って日本技術者が話をしたときに、いや日本のこういう技術というものは世界に劣っておらない、教えるものは何もない。ただ改めなくてはならないのは官庁のなわ張りである、官庁のなわ張りをなくすればりっぱなものができるでしょう。こういうことを言ったという記事を読んだのであります。これは順を追ってあと質問をしていきたいと思いますが、今度の災害堤防決壊、あるいはこれの修理その他について、建設省あるいは農林省あるいは運輸省等における予算のぶんどり合い、なわ張り争いがこういう悲惨事を起こしておる大きな原因になっておるのではないか。これは私ばかりではない、大半の国民がこのことを心配し、異口同音に指摘しておる点です。こういう事実をあなたは認められるかどうかお答え願いたい。
  14. 村上勇

    村上国務大臣 海岸法によりましてその主管が幾つかの省に分かれてはおりますけれども、しかしながらこの海岸堤防等につきましては、各主務大臣がそれぞれ緊密な連絡のもとに工事を強力に施行しておりますので、ただいまのところ私といたしましてはその不安がないものと思っております。
  15. 楯兼次郎

    楯委員 では私は総理にお伺いをしたいと思いますが、今度の決壊個所各省堤防継ぎ目が一番弱かった、こういうことが言われております。ただいま私が申し上げましたように、幾ら建設大臣のような弁明をされましても、こういう工事に対する各省のなわ張り争いから非常に損をしておる、被害を受けておる、こういうことは争われない事実であると思いますが、この点について率直な総理答弁をいただきたいと思います。
  16. 岸信介

    岸国務大臣 私は楯委員の御質問のように、各省所管継ぎ目のところが非常に問題であったというふうには実は聞いておりませんが、しかし従来海岸堤防につきまして、干拓地農林省、普通の海岸については建設省、さらに港湾については運輸省というふうに所管が分かれておることは事実であります。予算の編成にあたりまして、今楯委員お話のように、ぶんどりとかいうようなお話がございましたけれども、これはそれぞれ予算全体のなにを見て、海岸についてどういうふうにするか、港湾をどの程度に修築するかという方針できめておりまして、必ずしも役所の狭い意味におけるぶんどりというようなことは、この点において私はないように思います。なお工事施行について、現実にどういうように連絡をとっておるかという点につきましては、私も技術的に詳しいことはまだ十分検討いたしておりませんけれども役所としては、今建設大臣が申しましたように、十分各省連絡をして工事をするというように従来聞いております。  なお、技術的の具体的の工事そのもの連絡につきましては、関係大臣から適当にお答えするようにしたいと思います。
  17. 楯兼次郎

    楯委員 それはまたあとでいろいろお聞きしたいと思いますが、次にお聞きしたいのは、きのう被害報告をいただきました。これは昨晩でありましたので、なかなか私どもではすぐ計算ができなかったのでありますが、本年度被害報告査定見込み、それから国庫負担等をこれは大蔵大臣だと思いますが、お聞かせ願いたいと思います。きのう報告が出ていますから。
  18. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 事務当局から説明させます。
  19. 石原幹市郎

    石原政府委員 本年度の十六号台風までの公共土木施設並びに農地農業用施設につきましての被害額は、今仰せられました、昨日御配付を申し上げました災害報告の中に千九百六十二億という金額が入っております。その千九百六十二億六千万円という数字から出発をいたしまして、それに対します申請額、これは従来の見込み、それから査定をいたします従来の率七割五分程度かと思っておりますが、それにあと国費の率というような従来の大体率をかけまして、それに直轄四河川につきまして促進加算をいたしておるというような加算の点、以下を加えまして予備支出分を差し引きまして出ました額が百七十八億という補正計上額、そのほかに予備費に計上してあります分と合わせまして二百二億程度のものに相なっております。
  20. 楯兼次郎

    楯委員 今の二百二億というのは、国庫負担による全額ですか。
  21. 石原幹市郎

    石原政府委員 ただいま申し上げましたのは、災害復旧事業費公共土木並びに農地農業用施設につきましての数字を申し上げましたので、これ以外に、たとえば災害関連でございますとか、あるいは災害救助でございますとか、これは予算の説明でもって別途申し上げておりますように、三百四十三億という金額が今回の補正をもちましてお願い申し上げておりまする災害関係であります。それ以外になお予備費に五十億足らずあるということを大蔵大臣もおっしゃっておられるわけで、これは三百九十三億という数字になっております。
  22. 楯兼次郎

    楯委員 どうも主計局長答弁は頭が悪いのか、私わかりませんが、私のお聞きしておるのは、たとえば昭和二十八年の場合に被害報告が二千七百八十一億、それから査定見込みが二千十一億、国庫負担現行法によるもの、特例法によるもの合わせて千七百億、こういうことになっておるわけです。本年度被害報告査定見込みあるいは国庫負担はこの二十八年の災害のときの計算方法でどれだけになるのか、こういうことをお聞きしておるわけです。
  23. 石原幹市郎

    石原政府委員 ただいまのお尋ね被害報告千九百六十二億に対しまする総国費、これは基本額におきまして八百二十億という金額に相なっております。
  24. 楯兼次郎

    楯委員 それではその国庫負担のうち、現行法によるものと特例法適用をなさんとしている金額幾らであるか、お聞きしたいと思います。
  25. 石原幹市郎

    石原政府委員 ただいま申し上げました国費額基準率国費額でございます。その国費額が八百二十億三千万円という数字になるわけでありますが、それに対しまして当年度加算額を、今ちょっとここにございますから申し上げますが、当年度加算額は、今申し上げましたのは、基本額、いわゆる三分の二の率でございます。従いまして、現行法のもとにおきます例の八割、九割あるいは十割に達するというスライデング・スケールになっております加算額、その計算をいたしてみますと、今年分が五億五千万、それから今回の特例をもって計算をいたしました分が二十四億という数字になっております。
  26. 楯兼次郎

    楯委員 それでは次にお伺いをいたしますが、昨晩の夕刊によりますと、きのうもこの委員会で論議をされました地域指定激甚地指定でありますが、建設省の方は大体九県に適用してもらいたい、こういう要求のようであります。ところが大蔵省は七県にしぼりたい、こういうことでまだ意見の一致を見ておらないようでありますが、そういう状態下において、数字のことは申し上げませんけれども、この特例法適用による金額というものが出てくるかどうかという点をお伺いしたいと思います。
  27. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 昨日もお話いたしましたように、調査その他が相当おくれております。先ほどお尋ねがありましたように、締め切りのできていない部分もある。ことに今回は海岸部分でございますと、アプローチが非常に悪い、そういう関係でまだ全体の正確な数字をつかむことは実は困難な次第であります。しかしながらそれをつかんだ後に予算を出すということでは民心の安定上も遺憾だ、かように考えますので、私ども災害の総額の報告を受けたものから大体八割見当部分特例法適用を受けるだろう、こういう一応の想定のもとに今回の予算を実は作っておるわけであります。  そこで問題になりますのは、いろいろなお現地について査定を要する分もありますし、あるいは設計等につきましても、現地で詳細な調査を完了しなければならない部分も残っております。また激甚地そのものについても、ただいま御指摘になりますように、まだ基準をはっきりきめておりません。ただいまその基準といたしまして、予算を編成いたします際に大体六割見当特例法適用を受けるものであろう、こういう想定予算を編成いたしておりますが、その考え方から見まして、公共土木については、これは地方団体財政にこの負担力ありやいなやということを十分考えなければいかぬ。とにかく国も苦しい状態である、地方も苦しい状態である、そういう場合にこの補助が適正であるためには、今の地方団体財政力等も十分考えなければならない。しかし農地及び農業用施設の場合には、これは地方団体負担力の問題ではなくて、農家一戸当たりの負担力の問題であります。こういう意味で、それぞれの基準を一応考えておりまして、その基準に合うか合わないかということでその結論が出てくるのでございます。別に私どもは、七県にしぼるとか、あるいはこれを九県にふやすとか、こういうような議論をしているわけではない。今の地方自治体の財政力等が今回の災害復旧に十分対応し得るものなりやいなや、それだけの力があるかどうか、そういう基準を一体どこに置くかというのがただいまの激甚地指定基準でございます。従いましてこの公共土木農地農業施設災害に対する基準は、ただいま申し上げますように負担個所相違からこの基準が違うということを一つ御了承おき願いたい。  この地方団体の状況は、従前におきましてもいわゆる後進県というものがあるし、あるいは工業県というものがあるし、それから交付税配分等につきましてもそういう点は過去においても十分勘案されて参っております。またこの災害復旧に際しましてもこの災害復旧を進めていく、その場合に国の負担地方団体負担、そういう点に均衡を得せしめる、こういう意味では地方団体財政力基準に十分取り入れる、これは当然だろうと私ども考えます。問題は、非常に広範に全国にまたがっておる今回の災害でありますし、各県の事情を十分精査いたしませんと、私ども考えておるように特例法を公平にしかも適正に適用するという点にもしも疎漏がありましてはあとでいろいろ問題を起こすだろう、こういう意味で私どもは慎重な態度をとってただいま関係方面といろいろ折衝をしておるという段階でございます。  それで予算審議をお願いいたしますのに大事なこの点が明確でないということでいろいろ御批判をいただいておるのでございますが、私どもこういう点から予備費のうちの約五十億程度の金は災害復旧に回すものだ、こういう点も考えておりますし、また工事を進捗さすという意味においては債務負担行為の限度をおきめ願いまして、そして災害復旧に万遺憾なきを期していく、そして私どもがねらっております農地においては来年の作付に間に合うように、また河川等の改修に際しましては来年の台風襲来時期までに何とか一応防ぎ得るようなものまで復旧工事を進めたい、こういう考え方でございます。ただその際にもう一つお断わりいたしておきますが、ことしの会計年度は三月一ぱいでございますから、三月一ぱいまでに作付台風に対する対策が全部完了するということはあるいは議論が残ろうかと思いますが、来年の通常国会において御審議をいただきます来年の災害対策費と合わせてただいま申し上げますような作付に間に合わすとか、あるいは台風襲来前に一応形をつける、こういうところを目途にして予算を計上いたした次第でございます。
  28. 楯兼次郎

    楯委員 大蔵大臣答弁を聞いておりますと二つの疑問が出てきたわけです。それはまだ地域指定基準がきまっておらない。従って予備費五十億並びに債務負担行為という項目はあるけれども地域適用いかんによっては第二次補正予算を組まざるを得ないであろう、こういう点が一つ。  それから、今度の災害が起きてから少くとも二十八年災を上回る措置をする、これは政府がたびたび言明をされておりますし、あるいは出先に参りました各閣僚も盛んに強調しておられるわけです。そういたしますと、地方財政とにらみ合わして適用地をきめていくという大蔵大臣言明とは大いなる相違があると私は思うのですが、少なくとも二十八年災の適用基準から緩和といいますか、上回った考えでこの地域指定をやってもらわなければ、これは政府の公約といいますか、言明と大いに反すると思うのですが、この二点についてお伺いをしたい。
  29. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 昨日もこの予算工事を遂行して遺憾なきを期し得るか、そういう意味では予算が足らない場合にどうするかというお尋ねを各委員かり伺いました。そのとき政府確信のある点を御披露いたしました。私どもは今回の予算をもちまして十分まかない得るもの、かように確信をしておりますので、今第二次補正という点は私どもは別に考えておりません。この点は昨日お答えした通りでございます。次に、二十八年災に上回る措置をする、こういう点についての具体的な内容についてのお尋ねでございます。今回の災害は、二十八年災とあらゆる点で比べられておりますが、この二十八年災自身は、先ほども御報告にありましたように、金額的には今回を上回っておる金額でございます。しかも、当時におきましては十分の制度等もできておらない、そういう意味におきまして、工事進行率などは非常に低度のもので、そのために二十八年災はいつまでも復旧しない。つい最近になりまして、二十八年災がようやく完了する、こういうように復旧が非常におくれて参りました。しかし、その後におきまして、災害復旧対策も重要なる事業については三年で完成する、いわゆる三・五・二の基準考える、しからざるものについてはまず四年で完成するという基準ができまして、大体災害復旧基本的計画は立っておるのであります。今回はこの三・五・二の基準を上回る実は進行率をまず計画いたしたわけであります。問題は二十八年災の当時の国庫補助の点で、あるいは今回の特例法等は二十八年災の補助に及ばないのではないか、これは大体考え方が違いはしないか、こういう点であろうかと思いますが、私ども工事を進捗さす、そうして災害復旧すること、これが第一の重点であります。第二に、二十八年災におきまして、各種の特例法を設けました。しかし、その後におきまして、二十八年災の特例法についてはいろいろの批判がございます。会計検査等におきましてもこの二十八年災の各種の扱い方が不適正であるというような批難も受けておる。また国会等におきましてもこの二十八年災の扱い方については、その後それぞれその扱い方を全部御承認をいただいたとは思いません。その後そのつどこれを適正化し、そうして一部については恒久立法化して参っておるのが今日の状況であります。今回の補助につきましても私ども災害復旧が最も大事なことでございますが、国費の使い方におきましてはやはり適正であることが望ましい。二十八年災にとりました各種の措置、これは実際問題として、あの種の措置でありますれば、いずれをも非難することができないような事態に実は立ち至ったのでございます。そういう意味で今回もこの二十八年災と同じような特例法考えると申しましたが、これは必ずしも二十八年の補助率をそのままというところまでは私ども考えたわけではございません。少なくとも地方自治体の負担——財政的に非常な危機を招来するとか、あるいはまたそのために災害工事復旧がおくれるとか、こういうことはしない。そういう意味におきまして私ども考え得る適正な道を考えるということで今回の特例法を今提案し、先ほど来のような激甚地についての意見も申し上げている次第であります。私は今回の措置におきましてあるいは特例法を他の委員会でも御審議いただいておりますが、二十八年災のときの補助率よりも低いものもございます。また同時にその補助率よりも高いものもございます。たとえば改良工事であるとか、あるいは関連工事等についての助成方策につきましては二十八年よりも進んだものを出しております。こういう点を総体としてお考えを願い、さらにこの災害自身の復旧の進行度について一つ十分御理解をいただきたい、かようにお願いをいたす次第であります。
  30. 楯兼次郎

    楯委員 いろいろ大蔵大臣はむずかしい答弁をされますが、大体被災地の人々の受けておるのは、私が先ほど申し上げましたように、悪くても二十八年災と同じような取り扱いがされる、率によっては高いのも低いのも私はあると思いますけれども、問題は激甚地地域指定質問しておるわけです。この指定基準については、二十八年のときの指定基準、条件といいますか、それと同じものを採用してもらわなければ、政府自体の言明と反するではないか。これはむしろ与党の諸君の方が災害地に対して顔向けがならぬと私は思う。どうですか。こまかい、今の特別立法の率の高い、低いということは別として、激甚地指定については、常識的に昭和二十八年災に適用した条件を下回らないということを地域指定をしていく条件にする、こういうことはできぬのですか。
  31. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 この点は大事なポイントでございます。先ほど来基本的に申します助成をいたしますことは、地方団体財政にどういう影響を与えるか、地方団体負担が非常に過重になるかどうかという一つの問題でございます。地方自治体の財政状態は、二十八年災を起こしたときと、三十四年度、今日の状況ではよほど変わっております。二十八年災の際は、二十七年は地方財政は総体としては赤字でございます。また三十三年は、金額はわずかとはいえ、これが黒字に変わっております。こういうように地方財政状態に変化がある。また交付税の制度あるいは特交の制度その他も整備されてきておる。こういう関係で、地方財政状態は、二十八年災を受けたときとは違っておる、この点を十分勘案していただきたいのであります。私どもは別に特に率を下げる、こういうことは考えておるわけじゃございませんが、国並びに地方団体の協力で災害復旧に当たる、そういう場合に地方団体負担が非常に過重される、そして地方財政に非常な負担を残す、その結果、工事の進行が非常に遅延する、こういうような事態があれば、これは私どもも当然考えを変える筋でございますが、ただいま申し上げるような考え方から見まして、私どもはただいまの適正な基準というものが二十八年のときのそのままである必要はない。それをとることはむしろ国の負担が非常に過重される、こういう感じがするのでございます。
  32. 楯兼次郎

    楯委員 これは水かけ論になりますが、おそらく与党の諸君からあと災害対策に対して質問があると思いますが、これはなかなか承知しないと思います。これは与党の方にあと引き続いて私がやってもらうようにお願いしておきたいと思います。  それから農林大臣にお伺いしたいと思いますが、きのうの答弁でも、あるいは大蔵大臣答弁でも、来年度作付に間に合うように云々、こういう答弁がありましたが、そういたしますと、いわゆる三・五・二の災害復旧の比率を二年で完成されるという確信に基づいてああいう答弁があったのかという点が一点。それから農林関係地域指定については、昨日の質問でも、はっきりきまっておる、こうだということをおっしゃいましたが、その一戸当たりの金額を、私はちょっと聞かなかったのでありますが、幾ら金額から上回った場合に適用していくか、その金額をお伺いしたいと思います。
  33. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 農林関係施設の進度でございますが、これは初年度が、二十八年では大体一九%くらいになっています。今回は二八・五%といたしまして、それで大体来年の作付には間に合う、かようなことを考えておる次第でございます。  それから第二に激甚地の区分でございますが、これは一戸当たり六万円をこえる……(「この前三万円だったよ」と呼ぶ者あり)この前は三万円でございます。しかし三万円という額は少し低過ぎるのではないかという批判もありますので、さような状況を考慮いたしまして、六万円といたした次第でございます。
  34. 楯兼次郎

    楯委員 実際今向こうで声があったように、かくかくの言明あるいは政府の声明とはだいぶ違う。だんだん質問をしていきますと、だいぶ金額に違った面が出てきます。たしか二十八年は三万円以上というように私は記憶いたしておりますが、これでは与党の諸君の方が承知しないんじゃないですか。これでは二十八年を上回るどころの騒ぎじゃないじゃないですか。これは一つ反省をしていただかなくちゃいかぬと思うのです。  私の時間がだんだん過ぎていきますので、これはあとで与党の諸君から質問があると思いますので課題にしておきまして、次に移りたいと思いますが、実は社会党の方では、今度の災害予算はまず一千億以上なければ被災地域の方が承知しないだろうというわけで組みかえ案を用意いたしておるわけでありますが、大蔵大臣のきのうからの答弁では、閣内が統一できてこの補正予算でいいんだ、こういうようなことをおっしゃっておりますが、われわれが漏れ聞いておるところによりますと、農林省やあるいは建設省の要求と大蔵省が押えた金額には大きな隔たりがあると私は思う。  建設大臣にお聞きしたいと思いますが、これは建設大臣としては言いにくい話でありますが、たとえば伊勢湾の高潮対策建設省は九十七億の要求をした。これが負担行為を入れて五十四億円に値切られておるわけです。しかしわれわれが現地の人の話を聞くと、これでは来年の六、七月ごろの波浪期に再び押し寄せてくる潮に対してほんとうに安心しておれるだろうか、こういう危惧を相当持っておる、こういうことを聞いておりますが、言いにくい話でありますが、来年度確信を持った満足な堤防ができるかどうか、お聞きしたいと思うのです。
  35. 村上勇

    村上国務大臣 お答えいたします。建設省予算要求は高潮対策に対して九十億程度でありましたが、それは私どもといたしましては、四月、五月までに一挙に原形復旧まで持っていこうという予定でそういうように入れたのでありましたが、三月の末には予算が通過する、そうすると四、五、六月の仕事ができるということになりますと、大体今度の補正では債務負担行為等を入れますと七十九億になっております。従いまして、これだけあれば来年の出水期までには十分間に合っていけるという確信を私は持っております。
  36. 楯兼次郎

    楯委員 建設大臣としてはそういう答弁をせざるを得ないだろうと思いますが、たとえば一メートル当たりの単価あるいは堤防の高さにおいても、大蔵省とはだいぶ意見が食い違っておるようです。これはきのうも質問があったのでありますが、どうしても私どもはわからないのは、建設省は確かにこれだけなければ安心ができぬ、そういう技術的な面から主張をされておるにもかかわらず、ただ金庫の方の関係からそういう貴重な意見というものをしぼる大蔵省の態度というものが、私どもわからないわけです。これがたとえば経済成長率がどうだとか、金融の引き締めがどうだとか、的確にそろばんに乗ってこない問題なら、あるいは一割や二割増減があっても私はいいと思うのです。いいとは言いませんけれどもやむを得ないと思うのですが、これはもうオール・オア・ナッシングです。一つこわれれば何千人という人が水につかり、死亡するのでありますから、こういう点だけはやはり技術者である建設省の意見に大蔵省としては同調していくのが当然だと思うし、総理言明その他閣僚の当時の言明等から見ても当然だと思う。それを予算がないから——私はあると思うのですけれども、ないないと言ってしぼるというような大蔵省のやり方は、また災害を再び繰り返す基礎を作っておるようなものじゃないかと思うのですが、どうですか。これは岸総理に、こういうことがあっていいものであるかどうかお聞きしたいと思います。
  37. 岸信介

    岸国務大臣 予算の編成にあたりまして、これは従来の例から見ましても大蔵省と各省との間に要求並びにこれの査定折衝ということが行なわれていることは、御承知のような慣行があります。自然、各省の要求額を大蔵省において査定し減額するという結果になることが多いと思いますが、今回の補正予算を編成するにあたりましては、とにかく未曽有の惨害を受けたことであり、被害地におけるところの民心の安定並びに生業の復興ということを主眼に考えなければならぬという意味において、私どもはこの編成にあたりましては、従来大蔵省が考えたような、また従来の慣行のようなやり方でなしに、できるだけ実情に即して、必要な経費はこれを盛るという方針で編成をせしめたのであります。もちろんいろいろな点におきましても、技術上の点もありましょう、また地方における要望にそのまま沿っていない点もあろうと思いますが、私は全体といたしまして、今回の災害に対して先ほど申したような民心を安定し、その生業を助けていくという意味における予算としては、十分にこれが盛ってあるという確信のもとに編成して提案をいたしておるわけであります。
  38. 楯兼次郎

    楯委員 私は、相当有力な雑誌に出ておった一つの例をここで申し上げたいと思いますが、元建設省の中部地建の局長であった立神弘洋氏がこういうことを言っておるのです。伊勢湾台風被害が大きかったのは予算をきびしくしたせいだ、昭和二十八年の十三号台風あと堤防を作るのにずいぶん予算を削られた、予算がないので堤防の裏をコンクリートで張れなかったところもあった。そういうところが今度やられておる。こういうことを言っておる。これは新聞、雑誌は信用ができぬとおっしゃるかもしれませんけれども、今度の結果から見て、私は事実であったと思うのです。だから少くとも高潮堤防くらいは、なぜ技術者である建設省の意見を聞いてやれないのか。私は、直ちに人命財産に影響のあるこの問題をほかの問題と同じように値切るという手はないと思う。しかもこれだけの大問題を起こした堤防でありますから、建設省の方もそう山をかけて要らない金まで盛って要求したとは考えられないわけです。どうですか、大蔵大臣
  39. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 いずれ工事設計その他につきましては建設大臣からもお答えがあるだろうと思いますが、私、今回の予算を計上いたしますにあたりましては、現地におきまして私もあらゆる努力をするというお話をいたしました。そこで実はあらゆる努力をいたしました。幸いにして今回の予算案につきましては各省と直接の話し合いができましてこれがまとまったのでございます。経過の話を申し上げるのはどうかと思いますが、私は、今回の予算は、そういう意味におきましては今まで経験を見ないような非常にスムーズに予算が成立したと思います。こういう意味では、各省の主張を私どもが非常に切り下げたという感じは持っておりません。ただ、今海岸堤防の問題につきまして、あるいは七メートル五十だとか六メートル五十だとかいうような点で相当の開きがあった。この点は予算編成の途上におきまして、そういう議論があったことは私も否定するものではございません。しかし、これは今後の経験といたしまして十分信頼のおけるように各方面の意見を徴してきめようということで、建設省でもいろいろ計画をしておられるものがございますから、この点でただいま御指摘になりますように非常にこれをしぼったというような感じは実は私は持っておらない次第であります。
  40. 楯兼次郎

    楯委員 大蔵大臣はきのうからそういう答弁を繰り返しておいでになるのですが、私は建設省としてもそんな不見識な予算要求をすることはないと思う。たとえばもし要求より査定で二百億削られて、再び来年もう一回この惨状を繰り返したならば建設省の責任はどういうことになるか。あのときにはっきり自分たちが確信を持って安全であるというだけの予算をとってくれたなら、こんな惨害はこなかった——私はそういうことがあってはならないと思うのでありますが、これも来年のことは予測することはできないのです。建設省はそういう不見識な予算要求をしたのですかどうか、お聞きしたいと思います。
  41. 村上勇

    村上国務大臣 楯さんから大へんどうも建設省に対する御声援をいただきまして感謝いたします。少なくとも私は、私が納得のできない限りこの予算は受けなかったつもりであります。たとい私の立場はどうなろうとも、あの悲惨な状態を目にして十分あれを承知していながら、私は絶対に大蔵省が何と言っても受けなかったはずであります。御承知のように当初におきましては、締め切り工事等につきましての一メートル当たりの一次単価が相当開きがありましたが、その後大蔵省も実地を精査された結果、私どもの要望とほとんど違わない、いわゆる補助災害に対して三十三億、直轄災害締め切りが八億五千万、これは大体建設省の要求と大同小異であります。恒久施設につきましては、ただいま大蔵大臣も触れましたが、いわゆる堤防の高さについていろいろと議論はいたしました。しかし、その議論は結局原形復旧までしか工事の進捗力はでき得ないであろう。そのためにこれから堤防の高さを今建設省と大蔵省が議論をするときではない。従って、これは各省にも関係のあることだし、また日本のあらゆる学識経験者等にも研究してもらう機関を作って、そうしてそれらの慎重な審議によって将来再びかような状態を繰り返さないような抜本的な工事をしようじゃないか。そのためには私どもが大体仮定のもとに堤防の高さをきめておりましたが、一応われわれも、これはなるほど全国的に学識経験者等の意見を参考にし、また高潮の点につきましては気象庁等の有力な意見も参考にして決定する必要がある、こういうことで、恒久的施設につきましては一応両省の間に話し合いがついた次第であります。従いまして、今回の海岸堤防及び海岸に面した河川復旧事業につきましては、大体補助災害もあるいは直轄災害もともに五〇%程度、いわゆる来年の出水期までには原形復旧までは完成するというだけのものがこの予算に盛られておりますので、それ以上金をいただきましても、結局工事の進捗力がそれ以上できない、かように私は思っております。従って直轄河川につきましては、われわれは海岸堤防等は何とかして二カ年で完成して将来憂いのないようにいたしたい、こう思っておりますので、御了承願います。
  42. 楯兼次郎

    楯委員 時間の関係で次に進みたいと思いますが、大蔵大臣は金がないということを盛んに言われておりますが、われわれはあると思うのです。過熱とかインフレという問題は別にして、金はあると思う。きのう増収見込みについてほかの委員からいろいろ質疑がありましたので、この点は省略いたしたいと思いますが、外為、インベントリーを使いたくない、きのうの答弁でこういうことを言っておりますが、一体インドネシアのあのいろいろ疑惑を生んだ賠償には、あなたの方の都合のいいときには使って、こんな災害になぜ出すことができないのですか。ああいう自分の都合のいい、工合のいいときにはこの金を適用しておいてそうして災害等の非常時に対しては使いたくない、これはどういう見解ですか。
  43. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今楯さん御自身がお尋ねのうちにもお触れになりましたように、あるいは過熱だとかインフレだとかいう議論があるがという、この点は、私ども今の健全財政はできればこれを維持したい。しかも災害復旧に間に合うならば、その危険まで冒してということは私ども賛成ができないのであります。昨日もお尋ねがございましたから、一言これは使いたくないという結論だけを申しました。それならばインドネシアは一体どうなんだという御議論でございますが、インドネシアは御承知のように帳簿上の整理でございます。別にこれがいわゆる日銀引き受け云々だとか、あるいは増発というような問題にはなっておりません。こういう点を十分御勘案願いたいと思います。今回の災害復旧予算が不十分でございますれば、これは私どもどんな方法でも考えてやらなければならないでしょう。しかし今回はあらゆる面で工夫をいたしまして、外為会計に触れなくても一応事足りる、こういう状況になったのでございます。従いまして、議論の存するような金は使わない方がいい、これが私ども考え方でございます。
  44. 楯兼次郎

    楯委員 大蔵大臣は十分であるとおっしゃいますが、十分でないから言っておるのです。おそらくほかの閣僚でも泣き寝入りの状態であると思うのです。初めの要求ほど支出が願えなかったというので、やむを得ず建設大臣等もああいう答弁をしておられるのであろうと思うし、足りないと思います。  それから本会議で、接収貴金属のうち財源に充てるものがあるじゃないか、こういうわが党の質問に対して、大蔵大臣はそれはないというような答弁をされておりますが、おかしいじゃないですか。あるじゃないですか。
  45. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 接収貴金属の問題につきましては、あるいは本会議の私の答弁は不十分であったかもわかりません。過去におきましてIMFの出資なり、あるいは歳入への二十四億等を計上いたしましたが、これらのものははっきり政府のものとしての特定物でございます。特定物についての処理は大体これで片づいたということを実は申しておるのでありまして、まだもちろん政府の持ち分は残っております。今度は不特定物について政府の持ち分あるいは民間の持ち分、そういうものをきめていかなければならないのであります。その問題は、あの接収貴金属等の処理の法律によりまして今後片づけて参るわけであります。この方は、その不特定物の処分に関する問題でございますので相当時間を要する。全然政府の持ち分がないというようにお聞き取りでございましたならば、その点はこの機会に訂正さしていただきますが、現実の問題として直ちにこれを使い得るような状態でない、この点は変わりがないのでございます。この点は補足説明をさしていただきます。
  46. 楯兼次郎

    楯委員 この民間に出す金は、たしか私の記憶では、発効になったのは六月一日ですか、七カ月で締め切って支払う、出す、こういうように記憶しているのです。だから、七カ月でありますと、ことし一ぱいでしょう。だから、ほんとうに政府にこの金を使うという意思があれば、ことし一ぱいで大体民間の方の処理はできるのであるから、作業を急げばこのうちの金が相当程度使えるというように私どもにはとれるのでありますが、どうですかこの点。
  47. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 被接収者の返還請求期限が十月三十一日までとなっております。それから所有者の返還請求、これは十二月三十一日まで、こういうことになっておりますので、この返還請求が出まして、それから手続をするわけでございますから、そういうものを今日取り上げますことは、私ども、確定財源としては非常に心配だ、かように思います。
  48. 楯兼次郎

    楯委員 時間が来ておりますので次に進みますが、きのうの夕刊を見てごらんなさい。また、これは新聞であるからどうこうとおっしゃるかもわかりませんが、池田通産相が、大蔵大臣は来年度予算で財源がない、ない、とおっしゃっておりますが、幾らでもあるじゃないかと言っている。通産相は、前の大蔵大臣は堂々と天下に公表しているじゃありませんか。だから、あまり金を締めるのもほどほどにしていただきたいと思う。しかも災害復旧というような、これは普通の状態ではないのですから、総理大臣言明をされているように存分——本会議の演説を読みますと、災害対策に対しては全く間然するところのない演説をされているのです。物はある、金はある、もう十分出してやる、現地へ行かれまして総理はこういう意見を発表されているのですから、ほかの問題とは違うのです。だからそうきんちゃくを締めずに、災害復旧についてだけは十分金を出していただきたいと私は思いますが、時間が来ますので次へ進みたいと思います。  ここで私は先ほどから各大臣の御答弁を聞いておりますと、災害復旧に対する従来の三・五・二の比率、これを早く二年くらいでものによっては完成をしたい、速度を速めたい、こういうような答弁をされているのでありますが、この建設省の書類を見ますと、本年度まで三・五・二の比率で災害復旧をされたということはないのです。ありません。今ありますこの資料をちょっと見ましても、まだ昭和二十八年の未復旧が残っております。本年度三百五十七億、過年度災害は二十八年が九%、二十九年が八%、三十一年が一三%、三十二年はようやく三年目に入るわけでありますが、三四%も未復旧工事が残っているのです。だから、災害が起きたときには物と金とはどんどんやれ。岸さんなんかは、もう法律なんかあとで作ればいい、まず復旧しなさい、こういうことを現地で発表なさっておりますが、これは災害が起きた当時、まだのど元を通るときにはそういうことが盛んに言われますけれども、今申し上げましたように、もう一、二年たつと災害復旧というものは等閑視されてしまう、こういうのが実例でありますから、今後は三・五・二の比率にとらわれずに、先ほど大臣がおっしゃいましたように復旧をどんどんと進めていくべきであると思うのでありますが、こういう過去の実例から比較をいたしまして、将来の復旧に対しまする総理大臣のお考えをお伺いしたいのです。
  49. 村上勇

    村上国務大臣 三・五・二で災害復旧が完成するということは、御承知のように三十年に立法措置ができたのでありまして、その三十年からの災害復旧は十分完成する予定であります。その以前のものがいささか残っておるのは御指摘の通りであります。
  50. 岸信介

    岸国務大臣 従来御指摘のように災害復旧というものが年々延びていっておる。ことに終戦後ずっと相次いで災害が起こっており、そうしてこれが完成しないうちにまた災害を受けるというような事例も少なくなかったのであります。御指摘の点につきましては、そういう点から三十年に三・五・二という法律でもって災害復旧基準がきめられたものであります。しかし、この基準がその通りに全部いっているか、あるいはその基準にやはりおくれるものがありはしないかという点に関しましては、これはそれぞれの施工に当たる官庁において十分に検討をして、これの基準に当たるように進めていかなければならぬ。また今回の災害に対しましては、先刻来関係大臣が御説明申し上げているように、ある種のものについては、必ずしも三・五・二という基準にとらわれずに、それ以上に工事を進捗せしめるというような方策もとる考えのもとに、補正予算が組まれておると私は承知いたしております。しかし楯委員お話のように、ややともするとわれわれは災害の当時のなまなましい気持を忘れてしまう、あるいはその完成等につきまして、自然おくれがちになるというようなことについては、一つ十分に留意していかなければならぬ、かように思っております。
  51. 楯兼次郎

    楯委員 先ほど建設大臣は三十年からとおっしゃいましたが、まだ昭和二十八年の愛知、三重県の海岸は、本年度一三%残っておると建設省は言っておるわけだ。  それから私は次の点をぜひ一つ考えていただきたいと思います。それは災害が起きますと、もう相当の日時を費やして特別立法を作っております。私ども災害を受けた被害県の一人でありますが、災害が起きるとその処置をしなければならないのに、幹部は東京の方の陳情が忙しくて、留守になってしまうのです。非常な人手不足であるのにもかかわらず、肝心の人が中央に対する陳情運動で手抜けになってしまう。だからこの特別立法というものは、災害程度に応じて自動的に適用をしていくように、恒久的なものに変えた方が私はいいと思うのです。その適用は、これはあなたの方の機関でしかるべく審議してやっていくということにして、災害の起きるつど、こういう要らない陳情費と日子を費やしては、かえって私は復旧がおくれると思うのでありまして、これを災害程度に応じて自動的に適用していく、これが一番いいと思うのですが、この点について総理大臣、どうお考えになりますか。
  52. 岸信介

    岸国務大臣 今回の災害につきましても、今楯委員の御質問のように、私も、従来現地の人々が東京に陳情等に出てきて、せっかくの応急の施設等がおくれるようなうらみが非常にある、ことに交通通信等の被害を受けておる現状からかんがみまして、現地にそういうことを処理する機関を作る必要があると考えまして、中部日本災害対策本部というものを愛知県庁の中へ置いて、東京からそれぞれ責任者が行ってこれを処理するという方法をとったのであります。今お話のように、災害に対していろいろ処置すべき事柄を基本的に定めておいて、そうして災害の事情に応じてこれが発動できるような基本的立法、制度を立てておく必要があるのじゃないかという御議論につきましては、私ども各種の点から目下検討をいたしております。一つ十分に検討いたしまして対策を立てたい、かように思っております。
  53. 楯兼次郎

    楯委員 それからいま一つの問題でありますが、きのうも、私有財産といいますか、個人の損害については国家補償はやらない、こういうような総理答弁であったわけでありますが、私は弔慰金であるとか見舞金程度のものは、こういう大災害については国家としてもめんどうを見てもいいじゃないか、こういうふうに思うのです。それからいま一つは、金を相当貸してやる、貸し出し予算を広げたとおっしゃいましても、金を借りるには、保証人が要る、あるいは担保が要る、あるいは月収が幾らでなくては貸せないというような条件があって、なかなか長期間かかるのです。だから、災害救助法が打ち切られる、そうすると次の金を借りるまでに相当期間がたって、生活資金というものはもう枯渇してしまうわけです。だから、どうしても今ある条件でなくて、たとえば無利子であるとか非常に長期にするとか、そういう罹災者援護法的な特別法というようなものの制定が必要じゃないか、これはもうみんなの世論です。先ほど申し上げましたように、死亡者に対しましては遺族に弔慰金を何がしか出す、あるいは罹災者に対しては国家として見舞金を何がしか出す、こういうぐらいのことは措置されてもいいのじゃないか、こういうふうに考えますが、総理はどうお考えになりますか。
  54. 岸信介

    岸国務大臣 罹災者に対しての援護について遺憾なからしめるような法制なり考えなければならぬという点に関しましては、これまた私も、罹災者の援護については遺憾のないように努力していかなければならぬと思います。ただ今の、死亡した人に対しまして弔慰金であるとか、あるいは罹災者に対して見舞金を国家が出すということにつきましては、これは私昨日一応お答え申し上げましたが、そういうお考えにつきましても大いに耳を傾けなければならぬ点があると、私も思います。しかしそういう制度を立てるということになりますと、国として広く、あらゆる場合を考えないというと、こういう災害に対してだけ出すということはなお考究を要するというふうに思っております。
  55. 楯兼次郎

    楯委員 それでは次に進みますが、よく災害は天災にあらず、人災あるいは政災である、こういうことをいわれておりますが、私はまあ六、七割は全く人災であり、政災であると思います。きのうも名古屋市の一農民がいよいよ政府を相手取って損害賠償を訴えておりますが、これは岐阜県にもあるのです。つまり今まで竹がはえておりました堤防建設省がたまたま直した。直したことによって竹のはえておるところは残ったけれども、修理した堤防は抜けてしまって、養老町は二回も水が入っておるわけです。だからこういう問題が起きてくると思うのですが、確かに私は人災あるいは政災の要素が多いと思います。そこでお伺いしたいのは、何といっても治山治水対策に相当な熱意を注がなければいけないわけです。戦時中、あるいは戦後、この治山治水事業が手抜かりになった。従って三十一年度物価水準で見ても、昭和九年から八年間の損害七百八十億、二十一年から三十年までの十カ年の被害は二千四百億というふうに建設省ははっきり出しておるわけなんですね。これは治水治山事業が犠牲にされてきた、こういうことを物語っておるわけでありますが、この終戦以来、治山治水事業というものが、災害の起こるごとに強調されながら、二転、三転をしておるというのはどういうことですか。最近では、高潮堤防予算を加えて新々五カ年計画というものを建設省の方はお立てになっておるようでありますが、災害のときには、先ほど申し上げましたように、非常に国会においても治水治山というものが強調される。ところがやれ基本対策の何年計画を作った、あるいは三十一年には治山治水事業五カ年計画を作られた。それが二割ぐらいしか実行されず、伊勢湾台風で今度は新々治山治水五カ年計画を作る。なぜ一貫してやられぬのですか。今までこの計画が順調にやられておれば相当国の損害は減少をしておったはずであります。ところが看板は掲げるけれども予算が伴わない。従ってまた水害が起きると練り直し。その原因は一体どこにあるのですか。お聞きしたいと思います。
  56. 村上勇

    村上国務大臣 歴代の内閣が戦後この治山治水については深い関心を持って、それぞれその当時の国の財政とにらみ合わしてこれが対策を講じたことは当然でありますが、しかしながら、この対策もやはり財政の都合等によって今日われわれの十分満足し得る状態でないのであります。昭和二十八年にこの治水事業対策を樹立いたしまして自来その線に向かって政府は苦しい中から相当予算をつけて参っておりますけれども、国土のこの現状から考えまして、どうしてもこれだけでは抜本的な治水、いわゆる防災対策というものはできないというので、本年二月に関係閣僚懇談会を置きまして、地水事業五カ年計画につきましては、緊要度の高いところからこれの事業を遂行するということで、目下それに向かってその緊要度の点についての検討をいたしております。私は、来年度予算にはぜひともこの重要度の高いところから事業を遂行できるようにいたしたい、かように思っておる次第であります。
  57. 楯兼次郎

    楯委員 私は時間がありませんから過去のことはもう繰り返しません。総理にお伺いしたいと思いますが、三回目の治山治水対策です。これはほんとうにおやりになる意思があるのかどうか、私はやってもらわなくちゃ困ると思うのです。どうですかその点は。
  58. 岸信介

    岸国務大臣 今回の補正予算はいわゆる応急の対策でございまして、災害予防のための治山治水、国土保全についての根本的対策につきましては、かねて申し上げておる通り、来年度の総予算からいわゆる年次計画をはっきりときめて、そうして根本対策を抜本的に立ててこれを遂行する決意でございます。これは次の通常国会にその案を提案する考えでございます。
  59. 楯兼次郎

    楯委員 それでは大蔵大臣にお聞きしたいと思いますが、私ども新聞承知をしておるところでは、大蔵大臣は反対である、こういうことを言っておられますがどうですか、今の総理言明とあわせて。
  60. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 どういう点が反対でありますか。今のお尋ねちょっとわからないのですが、何が反対だということですか。
  61. 楯兼次郎

    楯委員 治水治山五カ年計画については反対の意思だ、こういうふうにわれわれは新聞で読んでおるわけです。だから、これは新聞云々ということが言われますから大蔵大臣の本意をお聞きしたい。
  62. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 別に私治山治水対策に反対ということを申したことはございません。先ほど総理からもお話がございましたように、国土保全なりあるいは災害についての対策は十分立てるという考え方でございます。昨日も予算の規模等についての来年度予算についてのお尋ねがございましたが、来年度予算の編成は非常にむずかしいと思っております。そこで私ども、緊急度あるいは重要度、これを十分勘案して予算を計上したい、かように考えておりますが、この災害対策はもちろん予算編成の大きな柱である、これは私ども承知いたしております。御了承願います。
  63. 楯兼次郎

    楯委員 次にお伺いしたいのは、今次の大災害で自衛隊の諸君が大活躍をいたしました。しかしこれは、社会党が従来から唱えておりますように、自衛隊を国土建設隊に改編をせよ、これは社会党の従来からの持論です。関係閣僚は自衛隊の活動を非常に高揚されておりますが、現地の罹災者が自衛隊に感謝をいたしておるのは、社会党が言っておりますいわゆる国土建設隊の姿に対して感謝をしておるんだ、こういうふうにわれわれは考えておるわけです。あとで申し上げたいと思いますが、われわれ社会党と政府考えとは幾分違うとは思いますけれども、現実に毎年々々災害は起こるわけです。いわゆる政府考えておる仮想の敵じゃなくて、現実に毎年々々台風のために国土が侵略をされておるわけでありますから、当然国土防衛のためからいって、これは社会党のいう国土建設隊に自衛隊を改編をした方がいい。これは単に社会党の議論だけでなくて、最近日本全国からこういう声がほうはいとして起きておるのは赤城長官も御承知だと思うのです。そういう方向に改編の意思が、これは答えは同じだと思いますがもう一回私はここで念をついておきたいと思いますが、改編をする意思があるかどうか、まず総理にお伺いしたいと思います。
  64. 岸信介

    岸国務大臣 しばしば同様な御質問にお答えを申しておりますように、私は自衛隊そのものの本質は、やはり自衛隊法に書いてあるように、直接間接の侵略に対して国土を守っていくというところにある。しかし同時に、天災地変等に際しまして人命の救助であるとかあるいはいろいろな復旧等に対して出動ができることになっております。十分そういう点につきましての出動を時宜に適するように行なって目的を達していくということが適当である、かように考えておりますから、自衛隊全体を国土建設隊とかいうふうなものに改編するということは適当でないと思います。
  65. 楯兼次郎

    楯委員 この問題はもう国会ごとに毎日論議されておりますから簡単にいたしたいと思いますが、たしか私は十月ごろであったと思いますが、防衛庁の名前は申し上げませんけれども、幹部がソ連、中国が日本を侵略することは九九%ない、こういうことを堂々と天下に公表されておるのです。ただし、侵略をしないという保証がないから一%の危惧があっても軍備を備えておかなければいけない、こういう記事を読んだのです。防衛庁の幹部すら、岸内閣が仮想敵国としておる国々の日本の侵略は九九%あり得ない、こういうことを公表されたのです。あとの一%のために軍備を増強するという考え方なら、これは道を歩いておって——きのう映画俳優の高橋何とかいう人が自動車事故で死んでしまいましたが、道も歩けないということになる。防衛庁の幹部すら日本の国を侵略をしないということを天下に公表をされておるのでありますから、私は自衛隊も国土建設隊に転換をすることはあたりまえじゃないか、こういうふうに思うわけです。それから大体月の裏側を撮影するような国を仮想敵国としておったところで始まらぬと思う。  それからきのう三宅委員がいろいろ国際情勢のことを質問があったわけでありますが、私ども承知いたしておる限りでも、来年度ソ連はあの会談以来予算は膨張したけれども軍事費はふやさない。予算規模からいえばこれは減額です。それからアメリカの方も来年度は五億ドル軍事予算を減額をする、こういうことを言っております。それから国連における軍縮決議の共同宣言、それからこの間米国の上院外務委員会ですか、あそこに提案をされました民間調査報告書によれば段階を迫って中国を承認せざるを得ないだろう、承認をせよ、こういう示唆を与えておるということを私ども承知をしておるわけです。だからあのフルシチョフ・アイク会談以来岸総理がいかに評価しようとも、確かにこれは常識的に考えて、東西の雪解けというものは急速度に大きくなってきておる、こういうふうに私は考えるわけでありますが、こういう点からいって、もう少しこの自衛隊に対する考え方を変えなければいかぬのじゃないか、こう思うわけですが、再度答弁をわずらわして申しわけありませんが、一つ世界の雪解けに対しまして、もう一回総理の認識と自衛隊に対する考え方をお聞きしたいと思います。
  66. 岸信介

    岸国務大臣 その問題もしばしばお答えを申しました通りでありますが、私は東西の間の対立の現状が、また東西間に存しておるところの幾多の未解決の問題が、話し合いによって解決されるという方向へ各国とも真剣に動いておるというこの事実は、私も非常によく認識をいたしておりますし、またそういうことによって武力行使、戦争というものが回避されることを心から望んでおるものであります。しかし今日の現状から、直ちにそれでは各国が軍備を全面的に撤廃し云々という情勢であるか。また日本の自衛隊の現状というものが、これらの大国の軍備と競争しておるものでないことは初めから明らかでございます。従って私はこの防衛費にいたしましても、各国が国民所得の上にあるいは予算の上に盛っておる比率と、それから日本がこの方面に費やしておる額の比率というものは、日本が非常に小さいことも御承知通りであります。また災害に際して、自衛隊がああしたりっぱな働きをし、地方民に歓迎をされるゆえんも、やはり自衛隊の本来の精神によって本来の使命に従って平素訓練をされておるということが非常に大きく役立っておるものだと私は思います。こういう意味において、やはりこの際日本の自衛隊を建設隊というふうなものに全面的に改編するということは私は適当でない。ただ災害のしばしばあることを考え、またそれに対する出動の機会が多いということを考えまして、その方面に必要な資材であるとか、あるいは平素訓練をするというようなことにつきましては、一つ防衛庁においても十分考えていくべきものである、かように思っております。
  67. 楯兼次郎

    楯委員 われわれは自衛隊の三条の主任務に、災害の出動を加えよ、こういうことを主張しております。なるほど災害にも派遣をするという項目がありますけれども、主任務に自衛隊の災害出動ということを加えるということは、心がまえとそれからこれに対する整備というものが違ってくると思うのです。しかも過去国民が自衛隊というものを親しく見たのは、二十八年、三十一年、毎年の災害のときにのみ多数の自衛隊の出動が国民の目に映じておる。そういう点からいって、主任務にこの災害出動を加えた方が、心がまえと整備が違ってくる、こういうふうに私たちは考えて主張をいたしておるわけであります。  もう時間がないようでありますから、最後に一点お伺いしたいと思います。それは気象観測の問題ですが、災害の起こるごとにレーダー網の装置であるとか、いろいろ気象観測隊を設けよという言葉がここで言われます。しかしこれがなかなか設置をされないので、この災害を契機としてぜひ一つ万全の対策をとっていただきたいということと、それから今台風に対する観測報告をアメリカの気象偵察隊から受けておるわけです。防衛庁長官、気象台長でもいいのですが、一体アメリカの気象偵察隊というのはどのくらいの範囲、規模でやっておるのかということをお伺いしたいと思うのです。
  68. 肥沼寛一

    肥沼説明員 お答えいたします。米軍は極東に気象偵察隊というのを三カ所に持っております。一つはグワムであります。一つは沖縄、もう一つ日本の横田であります。ここで飛行機の機数は私はよく知りませんけれども、たしか横田では十二機くらい飛行機があると聞いております。その他の二カ所も大体似たような数字かと思います。そこで観測をしましたものは台風などの移動に従ってグワムで観測し、沖縄で観測し、次に日本の近海では横田で観測いたしまして、資料は府中の米軍の基地へ参ります。そこから気象庁へ連絡して参ります。
  69. 楯兼次郎

    楯委員 そこでこれは、気象観測機を備えるということは相当費用が要ると思います。気象台では僕はできないと思うのですが、このアメリカ軍による気象観測機を防衛庁で日本のものとして整備をしたらいいと思うのですが、こういうことはできませんか。防衛庁長官どうですか。
  70. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 御承知のように軍関係のレーダー・サイトはアメリカ軍から日本の方へ引き渡しを受けましてこの気象観測の方も引き渡しを受けるような事態になれば非常にけっこうだと思って話はしておりますが、なかなかむずかしそうです。そこでそれならば自衛隊の方でそういう飛行機や何かを持ってやったらどうかということの御意見と思いますが、今のところ重複することと、いろいろ関係があります。そういうことで実は気象庁ともそういうことは検討いたしておりますが、今直ちにということはちょっとむずかしいように感じております。
  71. 楯兼次郎

    楯委員 グラマン、ロッキードの論争を聞いて国民は苦々しく思っておるわけでありますが、せめて気象偵察隊くらいにこういう飛行機は回していただきたい、このことを総理にお願いをして質問を終わります。(拍手)
  72. 小川半次

    小川委員長 午後一時三十分より再開することといたして、この際暫時休憩いたします。     午後零時二十二分休憩      ————◇—————     午後一時五十九分開議
  73. 小川半次

    小川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。早稻田柳右エ門君。
  74. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員 昭和三十四年九月二十六日の晩、東海地方を襲いましたいわゆる伊勢湾台風に際しましては、岸総理を初め政府並びに内外朝野各方面より寄せられました御好意に対し、罹災地の住民になりかわりまして厚く御礼を申し上げる次第であります。なお、いち早く中部日本災害対策本部を名古屋に設置せられ、益谷副総理石原自治庁長官を中心として関係当局のとられました不眠不休の救援措置に対しましても深く感謝をいたす次第であります。  災害対策については、先日来すでに諸般の質疑が展開せられておりますが、私は主として災害をこうむった全国の罹災者が待ちわびておる具体的施策に関しお尋ねいたしたいと思います。なるべく重複を避け、理屈を抜きにして率直にお尋ねをいたします。同一案件について再質問をさせないように、罹災者によくわかるよう本委員会の議場を通じてお答えを願いたいと思います。私のお尋ねする案件は、岸総理を初め建設、大蔵、自治庁、通産、郵政、文部の各省各般にわたっておりますが、大臣でなくてもよろしゅうございます。法案の内容や予算の内訳がよくわかっている関係当局から解明してお答えを願いたいと存ずる次第であります。  第一にお尋ねをいたしたいと思いますることは、災害対策に関する法案は四十数本にわたっておりまして、災害のつどこれが立法をしなければならぬという法案もあります。いざというときに間に合いません。これでは災害のあった場合、国民の困る場合が多うございまするので、これを総合統一して一本の立法にしてはどうかという議論が多いようでございます。政府においてもそういうお考えがあるやに伺っておりまするが、岸総理の所見を伺いたい。さらにこの立法を次期通常国会に御提案なさる用意があるかどうか、この点について伺いたいと思います。
  75. 岸信介

    岸国務大臣 今回の災害に対する応急措置といたしまして、補正予算及び特別措置に関する立法等必要な案件をこの臨時国会に提案して御審議を願っておりますが、かねて申し上げておる通り、この災害に対する基本的な抜本的な対策を立てて、そうして将来に向ってこういうことが繰り返されないように根本的な方策を立てなければならぬと思います。それにつきましては、通常国会にこれを提案するつもりでありますが、それには国土の保全に関する治山治水あるいは防潮等を含めた広範囲な施策を総合的に、また科学的に検討して、これに対する対策を立てる必要があると思います。それはこれを裏づける予算が必要であると同時に、立法の措置としましても、そういうことに応じて今回われわれが体験したような惨害を再び繰り返さないように、また災害に際して応急にとるべき措置につきまして万遺憾なからしめるような基本的な法制の制定も必要であると思います。そういうことを目下政府におきましても、あらゆる点から検討を加えておりますので、次の通常国会には、そうした予算並びに立法の両方の措置をあわせて提案をいたしたい、かように考えております。
  76. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員 次にお尋ねしたいのは、先般来総理もお答えになっている総合的復興対策の樹立に関してでございます。御承知のように伊勢湾台風は、愛知、岐阜、三重三県にわたりまして史上空前の災害を与え、三県の被害は、現在判明したものだけでも死者四千二百六十三名、行方不明五百十九人、負傷三万三千三百三十七人に上り、その被害総額は実に五千二百六十五億の巨額に達しております。この地域は、御承知通り中部日本における産業文化の中心でございまして、名古屋、四日市を初め、いわゆる伊勢湾臨海工業地であります。将来再び災害の発生を防止するとともに、この臨海工業地帯の安全と発展を期するためには、各方面の衆知を集めまして、海岸線の恒久防災と、木曽、長良、揖斐三川の治山治水並びに利水を考え、さらに道路、港湾、鉄道等の交通計画をも織り込み、農工商一連の総合的復興をはからなければならぬと考えますが、岸総理の御所見を伺いたいと思います。
  77. 岸信介

    岸国務大臣 御意見のように、今回伊勢湾台風を受けました地域の中心である愛知、岐阜、三重の三県、いわゆる伊勢湾に臨んでいる地域の総合的な対策というものは、御趣旨のような点に留意して将来立案していき、またこれを実行していく必要がある、かように思っております。
  78. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員 総理も私の考え方に御同意のようでありますが、伊勢湾一帯は千葉県の工業地帯とともに臨海工業地の造成には最適地であると言われております。ただいまお尋ねいたしました総合復興計画には、この際中部復興開発局を設置されることが便利ではなかろうかと思います。午前中の楯委員質問に対しまして、各省からはお互いになわ張り争いはやらないと口では言っていらっしゃいますが、さて実際になりますと、なかなか改めることは困難でございまして、伊勢湾のごときも、海岸堤防建設省と県と市町村、干拓堤防農林省港湾運輸省と管理組合、商工に通産省と、それぞれ責任が分れて不統一になっております。よってすみやかに統一機関を作って、真の復興開発計画を立てることが喫緊の要務ではないかと思います。総理はこれに対してどんな御所見でありますか、伺いたいと思います。
  79. 岸信介

    岸国務大臣 従来の建設につきましても、御指摘のように各省に権限が分かれておることもあるし、また中央と地方公共団体との協力関係もございます。こういうことをいかにして有効適切に実行するか。特に中部地方の、この地域の重要性にかんがみて、それを強力に将来立案、実施するということは最も必要であると思います。ただ、そのために今御指摘のありましたような特別の機関をこの際直ちに作るというようなことにつきましては、私は、なお各般の関係を検討しなければ、その面からだけ申し上げることはいかがかと思います。各種の事情、また各方面の意見等も十分検討いたしまして、適切な方法を講じて復興を一日も早く、しかも復興した後におけるこの地域の重要なる意義を十分に発揮するようにしていきたい、こう思って検討をいたしていきたいと思います。
  80. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員 地元でも中部復興開発局を作ることを強く要望をいたしております。北海道開発局の実績等にも徴せられまして、ぜひそうした構想を具現していただくようにお願いをいたしたいと思います。  次にお尋ねをいたしたいと思いますことは、海岸堤防の高さと強さについてでございます。これは建設大臣伺いたいと思いますが、伊勢湾の海浜に大堤防を作って、こうした災害を再び起こさせないようにしたいという御構想のように伺っておりますが、建設省考え方伺いたい。
  81. 村上勇

    村上国務大臣 海岸堤防につきましては、従来の考え方を一応改めまして、将来再びかようなことのないように、実はその堤防の高さあるいは強度等につきましては十分検討いたして参りたいと思っております。この海岸堤防は、御承知のように農林省あるいは運輸省等にも関係がありますので、この三省で海岸堤防対策協議会を設けまして、民間からも学識経験者等にお集まり願って、その上で十分な研究をして抜本的な措置を講じて参りたい、かように考えている次第であります。
  82. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員 いろいろ御検討を願えておるようでございますが、全国の海岸堤防及び河川堤防は広大な背後地の人命と財産の安全を保護する重要な役割を持っております。その高さ、構造、強度は災害防止に大きな影響があるのであります。全国の災害を見て痛感いたしますることは、過去の台風災害の教訓を無視したため、人災によって貴重な人命と巨額の国費を失ったことであります。例を上げますれば、今回のごときも十一億の巨額な金を投じておりまする鍋田干拓地が、わずかの金を惜しんだためにあの大災害を引き起こしております。地盤沈下を無視した知多南部の海岸線もまたしかりでございます。かような点から考えますると、この際、高さと強さにつきましては十分御検討をいただき、予算単価を十分に見積って実情にかんがみた工事を施されることこそ賢明な策であると考えます。この点について重ねて建設大臣の御所見を伺いたいと思います。  それからもう一つは、わが国は全国的に地盤沈下をいたしておるようでございまするが、地質調査にあたっては、わずかな予算で遅々として進まぬ感があります。この際、全国的に地盤沈下の実情を調査せられまして、今後の海岸堤防築造にあたっては、沈下する地盤と対比して、その高さ、強さ等を設計のうちへ入れることが必要ではなかろうかと思いまするが、こうした地盤沈下調査をなさる意思はあるかないか、この二点についてお尋ねをする次第であります。
  83. 村上勇

    村上国務大臣 海岸堤防の強度あるいは構造、高さ等につきましては、ただいまお答え申し上げた通りでありまして、この点十分慎重を期して、将来再びかようなことのないようにいたしたいと思っております。なお、地盤調査につきましては、従来も続けて参ったのでありますが、今回はことさらこの地盤調査予算等も獲得いたしまして、十分な調査をして、将来の対策を講じて参りたいと思っております。
  84. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員 次にお尋ねいたしたいのは、改良復旧と関連工事についてでございます。昨日加藤鐐造委員の御質問にもありましたが、これは重要な問題でございますので、さらにお尋ねをしたいと思います。  政府は、従来原形復旧を原則としていらっしゃった。日進月歩の今日、原形復旧は退歩的でありまして、毎回災害を繰り返し、国費を乱費するだけであります。世論は強く改良復旧を要望しておる現状であります。公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法第二条第三項に、災害にかかった施設を原形に復旧することが著しく困難または不適当と認めるときは、これにかわるべき必要な施設をすることを目的とするものにつき、この法律の適用について災害復旧事業とみなす、こうあります。従いましてこの際、この法文にもあるように、これからの復旧工事はすべて改良復旧に踏み切るべきであると考えます。現在計画していらっしゃる状況並びに今回の予算措置がどの程度まで改良復旧に踏み切っておられるか、そしてどんなふうに世論にこたえる具体的な考え方を持っておられるかという点を伺いたいと思います。
  85. 村上勇

    村上国務大臣 従来原則といたしましては原形復旧ということになっておりますが、再災害を受けるおそれのあるような場合、またどうしてもこれだけの強度を保っておかなければいけないというような場合には、その災害に関連いたしまして十分改良復旧をいたして参っております。またこれからも大いにこれをやって参りたいと思っております。なお、今回の補正予算の中におきましても、相当額のこれに対する関連事業費、改良復旧費というものが入っておるのであります。特に木曽川並びに木曽川下流のこの伊勢湾の海岸堤防につきましては、直轄河川にも、あるいはまた補助工事におきましても、十分この点を取り入れて予算要求をいたした次第であります。
  86. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員 今回の予算措置にあたっては、改良と関連工事に十分留意したというお答えでございまして、大へんにけっこうに存じまするが、由来改良工事と関連工事につきましては、普通の災害復旧工事補助率とは補助金の率が大きな開きを持っておる。従いまして、原形復旧の分はがっちりできる。しかし、これに改良を加えたものと関連をいたしておるものについては、補助率が非常に低い。そのために金を少なくかけたところが災害の根幹をなす場合が多い。今回の災害につきましても、半田市の山方新田というところがある。一番最初に全国に報道せられて、人命を多数失ったところであります。この海岸堤防はえんえんとして長蛇のごとく、万里の長城のようなすばらしい海岸堤防でございまして、だれが考えてもくずれるなどとは思わなかった。ところが、あとから検討をいたしてみますると、この大堤防に関連したわずかばかりのところが、金を惜しんで土まんじゅうを作っておる。それが今度の大災害のもとになりまして、せっかく多くの金を費やしておりまするのに、残念ながら全部破壊をした。こういう実情等から考えましても、関連事業と改良事業に対しては、けちけちせずに、すっきりした形で金をかけるべきであると私は思います。かような意味から、今後関連事業と改良工事につきましては、補助率を災害復旧と同率にするお考えはないか、これについて御所見を伺いたいと思います。
  87. 村上勇

    村上国務大臣 今回のこの大災害にかんがみまして、建設省といたしましても、公共土木施設復旧に対する特別立法を提案いたすことになっております。その内容をここで御説明申し上げればよろしいのでございますが、一応その御質疑に対してお答えいたしますが、補助災害につきましても、地域指定された場所につきましては、関連あるいは改良復旧については十分国の負担率を引き上げるということにいたしております。特に伊勢湾方面の海岸堤防等につきましては、それが補助事業でありましても、この重要性にかんがみまして、十分関連あるいは改良復旧等も、今回初めてなされた処置でありますが、国の負担率を引き上げることにいたしております。
  88. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員 建設大臣は専門家でございまして、私どもよりそうした面にはよく精通をしていらっしゃいますが、詳細な点は予算の分科会でまたお尋ねをするといたしまして、次に移ります。  次は、災害激甚地指定についてであります。先般来これはしばしば質問が繰り返され、しばしばお答えをいただきましたが、どうも判然しない。そこでもう少し罹災民によくわかるようにお答えをいただきたいと思います。まず第一に伺いたいことは、災害激甚地指定にあたりましては、各省別々になさるのか、あるいは国全体を一本でなさるのか、まずこの点を伺いたいと思います。  それから次は、この指定にあたりましては、公共土木の施設に対しましては標準税収入が基準になっておると伺っておりまするが、この標準税収入なるものは、その年のものか、あるいは過去三年にさかのぼってきめておるのか、その辺の基準をはっきり伺いたいと思います。  それから昭和二十八年災にとらわれました臨時立法措置並びに予算措置と、今回のこの全国の災害についてとっておられまする三十四年度災の激甚地指定基準、あるいは二十八年と対比いたしましてこういうふうにするのだ、この前はこういうふうにやったが、今度はこういうふうにするのだという、こういう点をよく国民にわかるように御説明をいただきたいと思います。
  89. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 激甚地指定につきましては、本日の午前中にも、また昨日もお答えした通りでございます。ただいまいろいろと関係方面と協議中でございまして、まだ最終的に決定したわけではございません。そこで被害激甚地をきめます場合に、非常にはっきりいたしておりまする問題は、農地あるいは農業施設、それと公共事業、この二つの問題でございますが、公共事業の場合は御承知のように地方団体負担するといいますか、地方団体が施工主体になるわけであります。国と公共団体が一緒にやるわけでございます。従いまして、公共土木の場合には標準税収入が一つ基準ではないかと思います。国は変りがございませんが、工事を受ける地方団体、この財政状態がまちまちでございますから、そのために同じような考え方をいたしましては災害復旧が進まないという場合もございます。そういう意味から地方団体財政状態を十分勘案しなければならない。こういう意味で標準税収入というものが問題になるわけであります。この標準税収入は、もちろん災害を受けた年、前年の標準税収入、これを取り上げている、かように考えております。また農地あるいは農業施設の場合でございますと、これは地方団体自身の負担と申すよりも、農家自身の負担になるわけでございます。そういう意味で一戸当たりの農家の負担幾らになるかということを基準考えて参るということでございますので、この点では公共土木の取り扱い方と、あるいは農業関係の取り扱い方、これは基準の立て方が違います。これは性質からくる当然のことではないか、かように考えます。  ところで二十八年と今回の場合、一体どういうように考えるかというお尋ねでございますが、二十八年災の場合と今日とは、楯委員お尋ねにも私お答えいたしましたように、工事負担いたします地方団体財政状態がよほど変っております。従いまして、従前同様の率をこの際適用することは私どもは適当ではないんじゃないかと思う。御承知のように国ももちろんでございますし、また地方ももちろんでございますが、災害復旧のために非常な出費をいたすのでございますから、国、地方の間の権衡はやはり考えなければならない。国自身が主体になって工事復旧はいたしますけれども地方自身もこの災害復旧について十分協力する。こういう場合には、地方団体自身も応分の力を持ってこれに協力することが、災害復旧としてあとに問題を残さない適切なる災害復旧の遂行ということにも相なるのではないか、かように考えます。そこで今回考えております行き方は、二十八年災の場合の基準になりましたのは、当時これが初めての試みでございますので、とりました損害額その他等については相当区分けをする必要があるのじゃないかと思うのでございますが、二十八年災におきましては、その県なら県内に生じました全災害と標準収入とを比較したのであります。しかし、先ほど申し上げますように、公共土木については、各地方団体財政力考えなければならないから、税収入ということを考えなければならないが、農民の場合はこれとは別だから、この災害は別個にとりはずすべきじゃないか、こういう考え方のもとに、今回は基本的にとりましたデータもかえていく、こういう考え方でおるのでございます。この点ははっきり申し上げますが、国が負担する場合、また地方団体負担する場合、その地方団体負担を国が高率補助で援助する、こういうことはとりもなおさず地方団体財政力に国が力を与えるということでございます。この点では、地方団体自身の財政力が十分復旧にたえ得るかどうかということをよく考えなければならない。ここに私どもの苦心があるのでありまして、そういう意味でなお十分各地の実情等を精査いたしまして、最終的に基準を作りたい、こういうことでございます。まだただいまそういうことを発表する段階になっていないことを、まことに申しわけなく思いますが、どこまでも高率補助が適正に、また公平に取り扱われるようにという意味で、地方財政状態を十分勘案してきめたい、かように考えておる次第でございます。
  90. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員 大蔵大臣の御苦心のほどはよくわかります。先般来、適正公平にやるから心配はかけない、こうおっしゃっていますので、そのお気持はよくわかりますが、私どもが心配いたしますることは、法案の審議中は、私どもがあれこれと言っておりますからまだよろしゅうございますが、法案が通りました暁、今度は政令で出される。政令が出てしまったときに、町村別々にいろんな議論が起こってくる、あるいは各府県ごとにいろんな議論が起こると思う。そこで大きな紛争を巻き起こすおそれがありますので、私は事前にはっきりしたものさしを作り、そのものさしに当てて、こういう基準でやるんだから心配はないというふうにしていただきたいと思うのでございます。  例をあげますと恐縮でありますが、私どもの伺っておる範囲内における尺度で目盛りをいたしてみますと、今度の災害で、どなたの口からも、一番災害の大きかったのは岐阜県であり、愛知県であり、三重県であるといわれておる。そのうちでもひどかったのが名古屋市であり、四日市であり、さらに木曽岬であり、輪中であり、養老であったといわれておる。ところが、今お話のありました税収入を基準といたしましてものさしを当てますと、この税収入は過去の収入をもとにしてお作りになったものだと思うが、災害で流失をしたり全壊をいたしまして、今やこの地帯は担税力というものはほとんどない。この担税力のないところが、過去のものさしによってはかられるということになりますと、健全なる工事を行なうことは私はできないと思う。いわゆる工事能力がないのじゃないかと私は思う次第であります。ここに思いをいたしますと、このものさしを変えていただくということが一つ考え方でございます。すなわち、過去にさかのぼらずに、これから三年の間の税収入を基準とする、あるいは今回の災害救助費の高を基準とするというようなことにでもなりますれば、一応納得をいたすことと思いますが、過去の収入のみを基準にして目盛りをせられます場合は、必ず私は問題が起ると思う。  著しい例をあげますると、まず名古屋は税収入が非常に多うございます。従って、これは完全に脱落をいたします。さらに対岸の四日市は、もちろんこれは脱落をいたします。それから今もなお水をかぶっております津島市あるいは佐織町、あるいはその付近一帯は豊饒な農村地帯でございまして、税収入が多い。これも完全にこの指定の中に入ることはできません。岐阜県へ参りますと、あの水をかぶって大災害と報ぜられた養老郡一帯も入りません。こういうようなことになった場合、世論がこれを許すかどうかという問題です。あれだけ騒がれ、史上空前の大災害であったといわれたところが、まくらを並べて脱落するということに相なりますと、これはゆゆしい問題に相なると思います。この点を私は心配いたしまするがゆえに、御検討を願うに当たりましては、今回御採用になると漏れ聞いております混合方式について、さらに一段の検討を加えてもらいたい。そうして公共土木以外の公共施設及び民間の被害も甚大でございましたので、公共土木施設のみを基準とされることなく、災害の全部を計算せられまして、そうして比率を定められることがいいんじゃないかと思う。さらにまた、先ほど申し上げましたように、災害救助費及び他の公共施設復旧費を加えて補正さるることが、最も公平ないき方ではなかろうかと私は思うのであります。何とぞこの激甚地指定にあたりましては、後日に問題をかもさないように、できればこの予算委員会あるいは災害対策特別委員会の開催中に、はっきりした基準を定められまして、そうしてこの委員会に内示せられ、各委員の了承を得た上で発表を願いたいと思います。何らの相談なくして、政令でぴしゃっと発表せられることがありといたしますれば、これは納得のできないことになり、残念ながら私どもは承服をすることができない、こういうことに相なるおそれがありますので、そういう諸問題についての大蔵大臣の、情理かね備わる御答弁伺いたいと思います。
  91. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御意見並びにお尋ねの点は、しごくごもっともだと思います。私は先ほど来申し上げますように、政令だからといって、この点が国会の論議なしに、また審議を受けないで政令が公布される、かように私ども考えておりません。もちろん皆様方にも十分お話しを申し上げたいと思います。問題は、私どもは今結論を急いでおりますが、いましばらく時間をかしていただきますならば、必ず結論を出しまして、具体的にお話しをする機会があると思います。ただ、今のお話の点で、別に議論をいたすわけじゃございませんが、災害当該年度をとったという点について、これは災害が起きたから減収で困るじゃないか、かように言われますが、この減収部分につきましては、あるいは交付税が交付されるとか、あるいは赤字につきましては赤字補てんの起債の方法が認められるとかいうことでございますので、いわゆる財政収入そのものは、一応確保されるのであります。ことに今後の三カ年にわたってその税収入と、被害総額を比較しろというようなお考えになりますと、高率の決定の時期が非常におくれて参ります。この点は、私どもちょっと賛成いたしかねます。問題は、標準税収入のとり方が、あるいはただいま御指摘になりましたような地域等について、いわゆる標準税収入とはぴったり合わないにいたしましても、あるいは一団体で非常に多額の災害復旧費を負担しなければならない、そういうことを地方団体として短期間に処理するということは、いかにも酷である。こういうようなことも私どもは考慮の中に入れて激甚地というものを決定しなければならぬということで、いろいろ苦心しておる最中でございますので、いましばらく具体的な内容についての説明を預からしていただきたい。この点を御了承願いたいと思います。どこまでも皆様方の御意見を十分拝聴いたしまして、そうしてまた全国的にそういう基準適用いたしましても、どこからも不平が出ないような、こういうものをぜひとも考えたいということで、せっかく苦心している最中でございますので、何とぞよろしくお願いいたします。
  92. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員 大蔵大臣の御苦心のほど重ねて感謝いたしまするが、ここに新聞の切り抜きがありますが、総理を初め、各関係の方々が現地にお見舞に来ていただいた。そのおりに記者会見にあたって、談話として発表せられましたお言葉がきちっと収録されております。おそらく罹災者はみなこれを読んで、随喜の涙を流したであろうと私は思う。ところが、今伺いますると、どうも二十八年災より今度の方が歩が悪い、こういうことになりはしないかという心配が私ども起こってきた。信じ切っておる罹災民を、信じ切っておる人たちをだますということは非常な罪悪なんだ。私は、そんなことは万々あるまいと思いますが、どうか一つこれらの信じ切っておる罹災民が感謝の涙にむせぶような立法と予算措置をとっていただきたい。ことにこの激甚地指定にあたりましては、格段の留意を要望してやまない次第でございます。  時間の関係もありますので、次に移りますが、次は、さきにも楯君からお尋ねのありました事業実施年度でございます。これも災害の起こる大きなもとになっておる。十三号台風のごとき、三年間でやるべきものがいまだにできていない。この予算措置をやらぬでほってあったところから起こっておるという現実にかんがみまして、どうしても事業実施年度の速度を早めていただきたい。大蔵大臣は二八・五の速度でやるから心配ないとおっしゃる。どうぞこれは繰り上げはしても繰り越しをしないようなお考えで、予算措置をしていただきたいということをお願いいたす次第であります。  それから補助率でございますが、これもほんとうを言えば、二十八年災と今度のやり方とを、私はきちっと表にして持ってきてみました。一々これについて主計局長あたりから私は聞きたいと思う。またこれが地方各町村等においては、自治団体においては一番聞きたがっている問題でありますから、これを解明していただきたいと思いますが、しかし、それはいたずらに時間を費やすばかりでございますから、分科会に譲りまして多くを申しません。申しませんが、二十八年災より下回っておるのが相当ある。これは非常に私は遺憾だと思う。どうか一つこれはもう一ぺん御検討をわずらわしたいと考える次第であります。  それからもう一点、お尋ねとお願いをしておきたいと思うことは、いよいよ工事が始まりますと、全国各地より罹災地に工事請負人がやって参ります。十三号台風の実例でございますが、全国から参りました工事人が資材を買う、現地で物を買う、あるいはまかないをする、食糧を買う、あらゆる資材を現地で調弁した。そうしてお金をもらうというと、そういうものは不払いのままで帰っておる。かくのごとき者が、しかも建設省あたりから紹介できておる。県で聞くと、あれは建設省から紹介してもらったんだからおれの方で断われない、こう言っておる。けしからぬことだと思う。災害地域災害をかけておる。こういうことがあってはまかりならぬと思います。今回の災害にあたりまして、こういう不当な理不尽な業者に対しては、紹介をしたり指名をしたりすることのないようにしたいと思いますが、こういう面についてのお考えを伺っておきたいと思います。
  93. 村上勇

    村上国務大臣 御指摘のような面があるといたしますならば、それは資格のない者に仕事をまかしたということであろうと思います。今回の海岸堤防等の非常な重要性にかんがみまして、今回の工事施行にあたりましては、十分その業者の資格等を検討した上で施行して参りたい、かように考えております。
  94. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員 公共土木事業につきましては、もっと掘り下げて伺いたいのですが、制約された時間がありますので、せっかく各省大臣に御臨場願っておりますから次に移りまして、なるべく簡単にお尋ねをいたしたいと思います。  次は農林省関係でございます。今度の災害にあたりまして各種の立法措置がとられておりますが、農林省でおとり下さいました諸法案は、農民に非常に大きな福音をもたらしておりまして。深く感謝をされております。しかし、まだその内容を知らぬ者が多い。従いまして恐縮でございますが、農林省から、今度立法をされ、あるいは本予算をもってここに提案しておられます各法案について、よくわかるように簡単な解明をいただきたいと思います。
  95. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ただいま提案いたしておりますのは三つでございますが、第一は、塩害を受けた農地の除塩事業の助成の特別措置に関する法案でございます。その要旨は、九月の暴風雨で塩害を受けた農地につきまして、地方公共団体または土地改良区が施行する除塩事業に対し、国庫補助十分の九、ただし、客土事業だけは二分の一でございますが、それを行なう、こういう趣旨のものでございます。それから第二は、七月、八月の豪雨と八月、九月の暴風雨、それから九月の降ひょう、それによりますところの被害農家に米穀売り渡しの特例をいたそうという法律案でございます。飯米が著しく不足する被害農家に安い価格で米穀を売り渡すことができるようにしたい、かような内容でございます。それから第三は、漁業者の共同利用に供する小型漁船建造に関する特別措置でございます。内容は、九月の風水害で小型漁船が沈没などで著しい被害を受けた場合に、その共同利用に供する小型漁船を漁業協同組合に建造させるため補助金を出そう、これは都道府県にも通ずるものでございますが、さような趣旨でございます。  なお、明日あたりになりますか、提案を予定いたしております法案の第一は、天災融資法の改正に関するものでございます。その要旨は、家畜及び家禽の購入資金、小型漁船の建造取得資金につきまして融資の道を開く、これが策一点でございます。それから七月、八月、九月の災害につきまして、被害農林漁業者全体につきまして、従来の融資ワク十五万円を二十万円に引き上げる。それから畜産等を業としておりますものにつきましては十五万円から三十万円に引き上げる。それから果樹栽培者につきまして十五万円から三十万円に引き上げる。それから畜産専業者、ウナギ、真珠、これらのものの融資額を十五万円から五十万円に引き上げる。そういう特例を定めるほか、果樹栽培者についての貸付につきましては、償還期限を今まで五年であったものを七年に延ばそう。かようなことを内容とするものでございます。  それから次に予定しておりますものは、七月以降の風水害被害を受けました農林水産業施設、農地及び農業施設でございますが、その災害復旧事業に関する特別措置法案でありまして、これはしばしばお話がありますところの農地農業用施策といわれるものであります。それは激甚地につきまして補助率の引き上げを行なうほか、被害激甚の開拓地の住宅、農舎、畜舎などの入植施設、水産動植物の養殖施設、災害関連事業などを補助対象といたして高率補助を行なうということを内容としておるものでございます。なお、以上のほか、漁港、治山施設それから海岸災害復旧、それからいわゆる排土排水また林野に堆積いたしました土砂の排除等々につきましては、建設省と共管の法律案でございますが、いずれ提案に相なるものでございます。またさらに農地の小災害につきましては、昨年の例にならいまして、ただし補助率は二十八年度の率でございますが、地方公共団体に起債をお願いして、その復興をしてもらうということにいたしまして、自治庁の方から法律案の提案があるわけであります。  なお今、早稻田委員から二十八年度災害以下じゃないかというような御疑念を持たれて、いろいろお話がございましたが、農林施設におきましては、二十八年度災害以上にいろいろなことをやっております。二十八年度を下回るというものは、実際上私どもは、今問題になっておる激甚地基準の問題以外にはない、かように考えておるのですが、上回る措置といたしましては、開拓につきまして従来は家屋が半壊をいたしたというような際は、二十八年度におきましては補助対象にいたしておりません。今回はそれを取り入れる。また農舎、畜舎などにつきましても、激甚地以外の分につきましては二十八年は補助対象にいたしておりません。今回はこれを補助対象にいたし、また救農土木ということもやりますが、これは二十八年にはやっておりませんが、今回は相当これを積極的にやる考えであります。それから漁民に対しましても、ただいま申し上げました法律案、これは二十八年にはやっておりませんが、今回特にさようなことをやる。それから今回は二十八年度と違いまして、特に壊滅的打撃を受けたという部落に対しましては、包括補助を行なうわけであります。その復興を助成するというふうなこともやるわけであります。それから、天災融資法につきまして今申し上げましたが、これも二十八年度にはかような特例はやっておりません。今回の措置でございます。また排水に関する高率補助、これも二十八年はやっていない。今回九割の高率補助をやる、こういうようなことになりますので、これは総理現地での二十八年災を下回らないというふうな言明にまさしく合致しているということを申し上げましてお答えといたします。
  96. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員 農林大臣の数々の御配慮に対しては感謝をいたす次第でございますが、思うに、今度の農林省における災害復旧措置は行き届いたやり方で、幅をうんと広めておる。しかしながら、奥行きということになりますと、どうも深度が浅い、こういうことになるのじゃないかと思う。すなわち、問題になります二十八年災には三万円以上の災害を拾った、今度は六万円にした。大蔵大臣言葉をかりて申しますと時代が違ってきたのだ、世相がよくなった、だから六万円に上げたって仕方がないということでありますが、農村の実態を把握いたしますと、二十八年災ごろは、魚にいたしましても、米にいたしましても、やみの流行時代だった。このころは相当農村は潤っておった。ところが今や平常に復しまして、安い米、安い麦、バレイショを作っておっては勘定に合わない。魚もまたしかりで、今じゃ売れない魚が山積しているという現状、この農村の窮迫状態と対比いたしますと、むしろ二十八年災のときの方が農村や漁村は富裕であったと私は考える。にかかわらず、この基準が上がって参ったということは、すなわち深さを失なったという結論に相なると思います。これは非常に遺憾な点でございまするが、お願いできれば、さらに大蔵省と折衝を重ねられまして、罹災民がなるほどよかったと安心をいたすような措置をとっていただきたいと思います。  そこで一つお尋ねをしたいと思いますことは、共同利用の小型漁船でありますが、二十五隻以上の船舶を持つ組一合はその対象となっておる。それ以下の、二十四隻以下の組合はどうなるかという問題が一点。それからもう一つは、自作農創設資金を増額したりいろいろな措置をとっていただきましたが、今度は農村の被害が非常に大きいのです。一村で、千戸くらいのところで三百戸くらい全壊しているところがある。だから、もう少し自作農創設維持資金をふやすことができないかという問題。それからもう一つは、自然災害でございます。由来人は自然災害というものを忘れておる。政府は公共施設に対しては補助をしたり起債を許したりいたしましたけれども、自然災害は勝手にしろということであった場合が多うございます。山くずれであるとか、風倒木であるとか、あるいは河口のはんらんであるとか、はげ山対策なんかほったらかしだったが、こういう自然災害にも御留意を願っておるやに聞いておりますけれども、こうした非公共施設に対する農林省の御配慮のほどを重ねて伺いたい。  それからもう一つ申し上げたいことは、今度は農村の住居がたくさんつぶれまして、住宅金融公庫のお世話になる場合が多いのです。これは、三里も八里も離れておる山の中から市街地に出てくるということは、交通が途絶している今日非常に不便なのです。だからこそ全国の農業協同組合連合会からぜひ住宅金融公庫の窓口を至近な距離に作ってもらいたい、こう言っておる。すなわち農業協同組合の信用組合連合会を各県で一カ所ずつ窓口にしてもらいたい。そうすれば、信連の窓口を通じまして、全国の単位信用組合がその窓口となる。これは非常に便利な方法であると思う。ところが大蔵省に反対の声がございまして、実現しないやに聞いておる。これは悪いことじゃないのですから、速急にやってもらいたいと思いますが、御意向はいかがでございますか。  以上伺いたいと思います。
  97. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 漁船につきましては、一組合二十五隻以上沈没その他の被害を受けたようなものに高率補助といたすわけでありますが、二十四隻以下のものであるといえども、一組合において被害率が七五%をこえるというものにつきましては、これは補助の対象とする、さような考えを持っております。  なお、さような基準でも当たらぬというものにつきましては、先ほども申し上げましたように、天災融資法の貸付対象といたしまして、その方で十分カバーできる、そのように考えておる次第でございます。  それから、自作農の資金につきましては、全国から要望が非常に多いのでございます。この要望を参酌いたしまして、従来百億円でありましたものを、今回は百三十億円に拡大いたすわけであります。これでおおむね各地の要請にこたえ得る、かように考えておる次第でございます。  なお、自然災害というのは小災害お話と承ったのでございまするが、小災害につきましては、昨年の立法例に従いまして、市町村に起債をお願いする。そしてその市町村に復旧事業をやっていただく。ただ昨年と違いますのは、昨年はその起債をする額が、農地につきましては五〇%、農業用施設につきましては六五%だった、こういうことになっておったのであります。それを今回は引き上げまして、激甚地につきましては九〇%、一般の地帯につきましては昨年の%でやる。いずれの場合におきましても全額をあとで国庫がこれを補充する、かようなことになっておる次第でございます。この制度の運用によりまして、おっしゃられる自然災害といいますか、小災害はおおむね復旧し得る、かように考えておる次第であります。
  98. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員 いろいろありがとうございました。  次は、中小企業対策につきまして通産大臣の御所見を伺いたいと思います。通産大臣はしばしば罹災地へおいでをいただきまして、いろいろ御懇篤なるお見舞をいただいて感謝をいたしておりますが、何といっても中小企業対策の一番大事なことは、金の問題でございます。金融の問題でございます。昭和二十八年災のおりには、その立法中に政府機関、市中銀行を含めて融資の窓口とせられましたが、昭和三十年の諌早災害以来中金と中小企業、国民金融公庫の三庫にしぼって貸し出しをしておられますが、市中銀行を除外せられました理由をまず伺いたいと思います。  それから次は、国民金融公庫は非常に成績を上げておる。これは罹災民に非常に喜ばれております。本店から総出でやっておっていただきますが、これは感謝の的でございます。しかし中小企業金融公庫は、罹災民ばかりではない、地方ではどうも受けがよくない。それはきわめて不親切であって、取引のないものなんかはてんで相手にしない、こういう状況であります。さらに市中銀行等へ問い合わせて、一ぺんでも不渡りを出したものは相手にしない、こういっておる。これでは庶民金融機関としての機能を十分発揮できないと思いますが、こういうことに対してどんなふうにごらんになりましたか。通産大臣に伺うのは恐縮でございますが、一つありのままをお聞きいたしたいと思います。さらに監督官庁であります大蔵大臣は、これに対してどんなお考えを持っていらっしゃるかを伺いたい。  もう一つ一番困ったのは、中小企業問題を研究すればするほど困るのが、零細企業者に対する対策でございます。実は私ども地元で困り果てておりますが、大企業や財産のあるもの、信用のあるもの、あるいは好況産業に携わっておるもの、親会社のしっかりしておるものはみな救われております。そしてまた協同組合がしっかりしておるものも、商工中金が非常によくやってくれておりますので、これで救われておりますが、残念ながら救われないものはだれも相手にしない零細企業であります。今度の災害ではこれが一番多い。いろいろ苦心をせられました結果と思いますが、国民金融公庫は実情にかんがみて、当該市町村が保証をするならば貸そう、こういうことにまでなってきた。大へんけっこうなことでございますが、町村の役場へ参りますと、そんなことは困るというので、保証しないのです。そのために借りたくても借りられないという方々が非常に多い。そこで私は、これは一つ政府部内で御相談を願って、市町村は保証をせなければならぬという何か政令措置でもとっていただき、その市町村の保証に対しましては政府が再保証する、そういう措置をとっていただくことができないかどうか、以上の諸点について伺いたいと思います。
  99. 池田勇人

    池田国務大臣 お話のごとく二十八年災害につきましては、一般金融機関に対しても特別措置をとることを講じたのでございまするが、実績から考えまして、私は今回はそこまでそういうことをするよりも、政府関係の方で積極的にやった方が早道じゃないか、こういう考えのもとに、政府関係三金融機関並びに不動産銀行に対しての措置をとることにいたしたのでございます。国民金融公庫は相当成績を上げております。十月末までに四億数千万円すでに貸し出しをしております。中小企業金融公庫はこれまた十月末までに十億余りの貸し出しをすでにいたしております。御承知通り、中小企業金融公庫は代理貸しが大部分でございまして、直接貸しは今まであまりなかったのでございます。従いまして今回の災害に際しましてはほとんど直接貸しになるのでございまするから、事務におきまして幾分渋滞の点があるかと思いまするが、われわれといたしましては、理事を派遣するとか、職員をふやす等、できるだけの措置をとるようにいたしておりますので、ただいまは軌道に乗りまして、先ほど申し上げましたごとく、十月末で十億余りでございます。今後も相当出ることと考えておるのでございます。  次に、零細企業の問題につきましては、国民金融公庫等の活動を願うのでございますが、何と申しましても、こういう場合には組合によっての金融が一番ではないかと思います。昨年の伊豆半島の災害のときにおきまして、伊東市は全体の組合をこしらえまして早急に貸し出しをした。従って私は今度参りましても、たとえば四日市なら富田地区の零細な魚の加工業者は組合がないようでございますが、早く組合を作ってみんな共同資金で借りるようにしたらいいだろう。通産局長においてもそういうような手配で進んでおるのであります。市町村に零細企業者の保証というところまでいかなくて、私は組合を組織して業者自体が助け合っていくことが、やはり零細企業の立つべき道だと思いまして、その方向で進んでおる次第でございます。
  100. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員 ありがとうございました。  もう二点伺いたいと思いますが、一点は、先ほどお聞きいただけましたように、農林省は今度の災害にあたって、農民に対して非常に行き届いた手配をしておった。ところが通産省関係は、同じ協同組合でありながら、ただ商工中金から融資を受けることのできるぐらいのことで、何らの恩典に浴していない。今一番罹災者で困っておりますのは、商店街、あるいは商工組合の公共施設であります。そういうものの復元に対して非常に困っておる。これは農林省と同じような御措置をとっていただきたいと思う。わけても一番被害の大きいのは、商店街の公共施設でございまして、街路灯であるとか、あるいはアーケードであるとか、ネオンであるとか、アーチであるとかいうようなものは、もの軒並みに倒れております。そうしてこれに対する融資を頼みにいっても受け付けてくれない、補助金をもらいたいといってもくれない。これは建てるときには、大体どこの県も県なり市なりが若干の助成をしておるようでありまするが、これは今のところどうにもならない。同じ国民でありながら、しかもいつも商工業者と農村とがつり合いに出される、片方が恩恵に浴することが多くて、片方が何らの恩恵を受けないということは、これは片手落ちである。私はこういう公共施設に対しても十分配慮してやるべきであると思いまするが、通産大臣はどうお考えになりますか。
  101. 池田勇人

    池田国務大臣 農村に対するいろいろな措置と、中小企業に対しまする措置とは、御承知通りかなりかけ隔てがあるのでございます。これは事業の実態、または沿革的問題からくることと思います。しかし私といたしましても、中小企業の共同施設につきましては、災害の場合に相当の措置をとるべきだという考えを持っております。今回の災害につきまして、御承知の中小企業振興資金助成法、こういうものを活用いたしまして、補助金を重点的に回すように処置いたしますと同時に、商工中金を通じまして、組合関係につきましては低利で三百万円までの分は出せるようにいたしております。また、復旧につきまして、今後われわれとしてもできるだけの措置をとっていきたい。将来の問題といたしまして、中小企業の共同施設につきましては、私は何らかの措置をとるべきだという考えを持っておりますので、財務当局等と相談いたしまして、今後は適当な措置をいたしたいと思います。
  102. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員 大へん御理解あるお言葉をいただきましたが、今申し上げましたうちで、商店街の施設ですね、これだけは焦眉の問題なんですから、何とか大蔵省と話し合いの上、できれば今国会中に追加して補正してもらう、そうしてこの国会に提案してもらうということに願えれば大へんけっこうだと思いますし、どうしても願えぬ場合には、こういう商店街に対して融資のできるように道を開いてやっていただくようにお願いをしたいと思います。  そこで、もう一つ、これもどうも通産大臣承知ないことだと思いますが、経済企画庁の発表いたしております去る二十四日の月例報告を読んで見ますと、こう書いてある。「中京地区の生産比重は、全国の約一割である。綿製品、陶磁器、毛織物、合板、石油等集中された台風のためにやや減少の程度で、復旧の速度が速いから何ら増産に支障はない。」私は、いやしくも国の経済の根幹をなします経済企画庁が、かくのごとき現実に遊離をいたしました発表をするということは、驚き入ったことである。電話で追及いたしますと、経済企画庁の長官は今留守だという。これは通産省でやったことだというようなことを言っておる。けしからぬと思う。今度のあの大災害を、やや減少の程度で、復旧の速度が早いから何ら減産の心配ないというような考え方で、国の経済を担当しておるなんということは、私はけしからぬと思う。こういう点については、おそらく通産大臣は御存じないと思いますが、この月例報告は、国内ばかりじゃありません。外国にも参るものであります。外国人ですら今度の災害には非常な同情を寄せておる。救援物資を送っておる。そんなところへこんな月例報告が行ったらどうしますか。こんなことであってはならぬと思いますので、一つこれは厳重に御警告をいただきたい。御承知のように、今度の台風地帯は、繊維、鉄製品、雑貨、陶磁器、毛織物、綿製品等の集散地でございまして、災害の甚大なることはもう新聞等で書いてある通りである。私の調査いたしましただけでも、半田市の織物、一宮の織物、今でも水をかぶっている津島の毛織物、あるいは陶磁器、あるいは名古屋市の南部の貴金属、非常な数量に上り、しかもこれは水びたしになって、とうてい一年や半年では回復することができないという現状にある。この実態の上に立って一つ通商産業の運営をしていただきたいと思いますが、御所見はいかがですか。
  103. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほどの商店街におきます共同施設につきましては、商工中金より、申し上げましたように復旧資金を出すことにいたしておりますし、三百万円までは六分五厘の低利にするようにいたしておるのであります。ただいまの月例報告につきましての御質問でございますが、お話しの通り、名古屋地区におきましては、全国生産の一割五、六分を占めております。しかし、九月の生産あるいは十月の生産は、国全体から見れば大したことはない。たとえば、綿織物は名古屋地区は二割五分でございますが、被害を受けた工場が他に工場を持っておるときには、封緘の機械をはずすとか、いろいろな復興対策を講じております。また、レーヨンなどは名古屋地区が全国の七割五分でございますが、これも昨日からフル操業に入りまして、長い目で見てみれば、局部的には非常な被害でございますが、全国の生産ということになって参りますと、企画庁の報告でいいんじゃないかと考えておるのであります。
  104. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員 信頼しておる通産大臣の御答弁ですから、これ以上追求はいたしません。  時間がありませんので、大至急、次は税金の問題なんですが、大蔵省においては、税の減免措置についていろいろ御配慮を願っておるようでありますから、これは抜きにいたします。地方税でございます。石原長官は、現地において昼夜兼行御努力を願ってみんな感謝いたしておりますが、地方自治体はこの問題を心配しておる。地方交付税とか交付金、これが百九億予算に計上されておりますようですが、これが災害地の各府県に大体どんなふうに割り振りされるかという明細を、今でなくてもけっこうです、本委員会の開かれているうちに一つそれぞれ配付をしていただきたい、こう思います。  それから、再建整備途上の自治団体に対してはどんな措置をとるか。それから、地方税の減免に伴う財源難についてはどんな措置をとられるかということを伺いたい。私は、なるべく被災地重点主義をとってもらいたいと思う。聞くところによると、大蔵省は被災地重点主義であるけれども、自治庁は通常通りの配賦を主張していると伺がっておりますが、そういう点に対してのお考え伺いたい。地方災害地は、申すまでもなく、非常に復旧に金を使いまして、穴のあいておるところが多いようでございます。それで、この地方財政救済について恒久的お考えがあるかどうか。それから、地方交付税または特例法によります補てん方法について、これも自治体が安心するようにお聞かせをいただきたい。それから、起債分について、元利償還額が交付税基準になっておるようでありますが、今回の特別立法による改良費、関連事業費にも同様に扱かってもらえるように思っておりますが、どうか。まだたくさんありますが、まずこれだけのことを伺いたいと思います。
  105. 石原幹市郎

    石原国務大臣 ただいまの御質問にお答えいたします。  まず、地方団体が、いろいろ地方税の減収とかその他によりまして歳入に欠陥を生ずる面につきましては、できるだけ特別交付税等を重点的に配分いたしまして、そういう事態が起こらないように努力をしたいと思いますが、なお歳入欠陥を生ずるものにつきましては、歳入欠陥債という起債を認めることにいたしまして、将来その元利の償還については、交付税の際の基準財政需要額に一部を算定してめんどうを見たい、こういう考えであります。  それから、交付税の問題でありますが、交付税につきましては、大体今回の補正予算で特別交付税に回るもの約四十一億ばかりあると思うのであります。それから、すでに予定されておる特別交付税災害地に回り得るものが二十億ないし二十数億あると思います。それらを、私の考えといたしましては、災害地の被災の限度に応じて重点的に配分したい、こういうように考えております。再建団体につきましては、災害について特別再建団体にどうするという措置はないのでありますが、今回、御承知のように、各種の特例法を設けまして、補助率をできるだけ高率にするという措置を講じ、あるいは特別交付税をできるだけそういうところに配分するようにする、あるいは歳入欠陥債を認めるとか、起債のワクも今回相当ふやしまして、こういう災害復旧等に関連する起債につきましては、その元利償還について、大部分を将来の交付税の算定の基準財政需要額に見ていこう、今回の災害地方財政に禍根を残さないようにあらゆる措置を講じていきたい、かように考えております。
  106. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員 このあと文部大臣警察庁長官、郵政大臣とお三方に伺わなければなりませんが、時間がありませんので、一括してお尋ねをしたいと思います。まず文部大臣にお願いしたいと思います。  日本のごとく自然の脅威にさらされておる国は、いつどこから災害が襲ってくるかわかりません。そこで天災教育と申しますか、災害教育と申しますか、常に心がまえを持たせておく必要がある。ヨーロッパのオランダのごときは、常に災害ということを念頭から去らせない。小さな子供のうちから、堤防を大事にしなければいかぬ、災害があったらこうせねばならぬと教えておると伺っております。わが日本を見ると、芝生がほしければ川の堤防から削って持ってくる、土がほしければ堤防をこわして持ってくる、こういうようなことに相なっておりましては、いつ襲ってくるかわからない災害に備える心がまえができていないように思いまするが、私はこれを契機に、台風の教訓を生かして、文部省においては、災害に対する心がまえ、堤防の愛護あるいは災害対策等につきまして、社会科の科目の中へでも織り込んで、未然にこれを防ぐような対策を講ずる御意思はないかということを伺いたいと思います。  それから次は、今度文部省の施設災害復旧につきまして、十一億何がしの予算が盛られておりまするが、どうも起算の根拠が過小見積もりしてあるように思いまするが、間違いはないかどうか、こういうことです。それはなぜこんなことを言うかと申しますれば、今度の災害の特色はいつもと違っておる。普通の場合は、災害報告が各地方団体からやってくると、きのうもお説のありましたように、大体これを六割限度に見る。それでよかったわけです。予算は余ったわけです。けれども、今度の災害は、交通途絶あるいは浸水区域が広いがために、いまだに把握することができない。同時に、あとからあとから送って参りまする数字が大きくなる。聞くところによると、文部省が今度の起算の根拠とされました数字は、第一報で来たものであって、これから現地査定をされると、どんどんふえると思う。その場合は、予備費でもって補正してもらうように大蔵省とむろん話をしていただけると思いまするが、万全の措置をとる意味において、この際一つ根拠を伺っておきたい。  それからもう一つ伺いたいことは、離島振興法等の適用されておりまする島であるとか、あるいは海岸線に沿っておりまする村々の学校でございまするが、これは潮のために非常に早く朽ちる。ところが貧乏なところが多いから、ほとんどこれは木造で、ひどいものが多い。私はこういう機会に、全壊したものはもとよりでありますが、半壊のものも四分、五分のものも、地元が熱意を持って参りますところに対しては、一つの避難所を作ってやるというような広義なお考えでもって、鉄筋なり、あるいはそれに該当する施設をしてやるように御指導をいただきたいと思いまするが、文部大臣の御所見を伺いたい。  それからもう一つ政府は常に私学振興を口にしておる。しかしながら、今度の私学の被災は相当大きい。しかるに、わずかに一億二千何がしの金でございます。これではあまりにもかわいそうだと思う。私学法第二条にあります学校はもとよりでありますが、幼稚園であるとか、保育園であるとかいう施設が非常に多い。これが今みな水びたしになっておるところが名古屋あたりは多うございますが、こういう諸施設に対しましても、一つ涙のある方途を講じていただきたい、いわゆる愛の政治をもって臨んでいただきたいと思いまするが、文部大臣の御所見はいかがでございますか。
  107. 松田竹千代

    ○松田国務大臣 早稻田さんの、きわめて御真摯な御態度で、特に今回の、おっしゃるように未曽有の災害をまのあたりごらんになっての御心配でございます。第一問の、災害に対して、これが起こった場合に、ろうばいせずに適当な処置がとられるように、学校等において常に児童にその心がまえを持たしておかなければならぬのではないかということは、まことに同感でございまして、文部省におきましても、すでにそういう訓練などをいたしております。また改訂教科書などにおいても、小中学校ともその点について留意をして、適当な指導をいたしておる次第でございます。  また二問の点でございますが、今回の予算積算は、各府県からの被害報告額四十九億円を基礎として、従来の査定比率、特別法の適用等を考慮いたしまして、全体の負担金を一応二十一億円と算定してこれを三十四年、三十五年の両年に折半いたしまして、十億六千万円としたものでございます。  第三問の離島の問題、また御指摘のような沿岸あるいは島というようなところの災害に対しましては、どうしてもこの際、学校というものはお説のように、現に避難所のようなことにもなっておるのでありまするし、またさらに事あるときには、何かと学校の付近が社会の本部のような形にもなっておるのでありまして、そういうところの学校に対しては、特に堅牢な鉄筋コンクリートのものにしなければならぬではないかというお説に対しても、われわれは同感でございまして、できるだけそういうような考えをもって処置いたしたいと考えておる次第であります。それで、今回の学校の復旧に対しましては、できる限り改良復旧ということを目標としてやっていきたい、こういう考え方でありまして、従来は、全壊の場合三〇%まで改良復旧ということであります。また半壊の場合には、予算積算上は改良復旧になったことはなかった。実際においては、少しはやむを得ずそういうことになった実例もありまするけれども予算の上ではそういうことはなかったのでありますが、今度は三〇%まで半壊に対しても認められ、また全壊に対しては六〇%まで認められるというところへ来たのでありまして、改良復旧に持っていくということに対しては、相当の前進をしておるというふうに考えております。むろん全部というところまではいきませんけれども、大体相当の進展ができるのではないか、かように考える次第であります。  もう一問の私学の問題につきましては、これも教育上非常に大きな部門を担当いたしておるのでありまするから、これに対しては特にお願いをして、極力やりたい。たとえば幼稚園のごときは、従来のやり方でも、また今度の措置におきましても、初めはなかなか、これは従来例のないことでございましたから、ちょっとわれわれも心配いたしたのであります。しかし幼稚園も私立の幼稚園が非常に多いのであります。公立の幼稚園に比して非常に数が多い。しかも多くのものはなお学校法人にもなっておらない。学校法人になっておるものにはこういう場合によく救済の対象になるのでありまするけれども、私立のものに限っては従来その例を見なかったのでありまするけれども、公立と同様の措置をとってもらう。なお一般私立学校に対して私学振興の方の金をも融資して万全を期したい、かように考えております。
  108. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員 文部大臣より御懇篤なる御答弁をいただきまして感謝いたします。  そこでもう一つ文部大臣に、これは御答弁いただかなくてもけっこうですが申し上げておきたい。それは文部省関係で自治体泣かせという言葉がよくはやっておる。どういうことかと申しますると、文部省の、天災に対しましては文部省は常にこれを四つに分けておる。すなわち第一は校舎、敷地、門とかへいとかいう付属建物、教材、こう四つに分けております。災害があった場合十万円が単位になっておるようでありまするが、その一つ一つが十万円に達しない場合は査定から漏れるというのが文部省の従来の行き方でございました。このために非常に自治体は泣いておる。何という文部省は情けないことをやると言っておりまするが、伺えば今度の災害に対しましてその非を改めて、この四つの区別をやめて、一つにしぼって一校当たり十万円以上のところは災害の対象にするということになったのであります。全国の関係者は非常に喜んでおる。こうすれば起債なりあるいは補助の恩恵に浴することができると言っておったにかかわらず、最近聞くところによりまするとどうも文部省と大蔵省との話し合いができない。またもとのもくあみで、もとの姿になりそうだという現実でございます。これは大蔵大臣もお見えでございまするので、各学校が金がないために、自治体が出さないために、PTAであるとかあっちこっち寄付を集めておるという姿を御明察いただきまして、ぜひこれは文部省の要望いたしておりまするように、一校当たり十万円、こういうことにしていただくように私は切にお願いを申し上げる次第でございます。  さらに次に移りまするが、次は警察庁長官伺いたいと思う。すなわち天災に対する非常準備についてでございます。今度の災害で私が一番痛感したことは、名古屋市の場合です。名古屋市に大災害がある、たき出しをやらなければならぬというので、二十九日の日にたき出しをしようとした。百二十万食を必要といたしましたが、愛知県の倉庫の中には米は全然ないというので、ようやく各業者からかり集めて十八万食を出したと伺っております。あとで究明いたしてみますると、愛知食糧事務所の中には非常用の乾パンがたくさんあった。ところが二年間も保有しておったので、もう災害がないだろうというので自衛隊へこれを回してしまった。その直後にこの災害があってこういう醜態を演じたと伺っておりまするが、東京であるとか大阪であるとかいう大都会に対しましては、治にいて乱を忘れずで、災害がないからといって災害は忘れたころに参りまするので、常に新しいものとかえては保管をさせておくことが必要であると思う。さらにろうそくであるとかマッチであるとか脱脂綿などというものはほとんどなくて非常な不便を感じましたが、こういう面に対して警察御当局は非常に苦心をなさったと伺っておる。なお警察当局や自衛隊あるいは全国の学生諸君が、今度の救援措置に非常に活動してくれた。宗教団体も非常に活動をしていただきましたが、そういうヒューマニズムに徹した姿は実にとうといが、一つ警察御当局においては、こういう救援準備についても常に怠りない配意を上願いたいということが一点。  次は水防計画であります。全国に水防計画というものがあるが、今度の災害でこの計画はふっ飛んでしまった。これは警察庁長官の管轄ではないかもしれませんが、常にこの面にも治安維持の立場から御留意をいただきたい。また今後どんなお考えを持っていらっしゃるかということが伺いたい。  それから戦前には水上警察というものがあった。どこの県にもあったけれども、最近は水上警察は影を失っておる。これも今度の救援にそごを来たした原因であると私は思う。すなわち愛知県のごときわずかに二そうしか船がなかった。昔でしたら水上警察があって、みんな巡視船を持っておる。船であるとかあるいはポンプであるとか、資材というものは常に準備をしておかなければならぬ。こういう面についても警防上の御所見を伺いたいと思う。  それからもう一つ、交通の途絶いたしました場合、トランジスターがなくて困ったところがあります。遠隔の罹災地との連絡はほとんどつかない。海部郡の災害にしましてもあるいは養老郡の災害にしましても、四日も過ぎてから東京で知ることができた。一番早くわかったのは半田市だけでございました。半田市には幸い無線の設備があった。だからあそこは早くわかったわけでありますが、その他はわからなかったというようなことを考えますると、超短波による連絡機関を必要といたします。最近この電波が自動車にも一台々々割り当てられるような時代である。それに何ぞや、警察であるとかそういう治安当局に対しての割当はどうなっておるか。これはあとで郵政大臣にも聞こうと思っておりまするが、こういう面に対しての現在の警察御当局の姿、将来に対するお考え伺いたいと思います。
  109. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 お答えをいたします。まず災害に対しまする準備でございますが、警察といたしましては、年間の災害警備対策というものを各府県ごとに作りまして、これについての訓練等を実施いたしておるわけであります。今度の災害につきましては、特に規模が大きいという見通しでありましたので、警察庁におきまして二十五日の午後五時全国の管区局長並びに警察本部長に対しまして、非常災害に対する警備体制の具体的な確立ということについて指令をいたし、おおむね二十六日の正午ごろまでに各府県その態勢に入ったわけでございます。特に愛知、三重、岐阜の三県等につきましては、災害発生時までに、すでに愛知において三千五百名程度、岐阜、三重についてはおのおの千名程度の非常要員を、危険地域その他に配備をいたしておったのでございます。その後災害の起こるにつれまして、救護措置また避難誘導等について万全をはかって参ったわけでございますが、実はただいまお尋ねのたき出しでありますとか、そうした食糧物資の配給であるとか、そういうふうなものは現行法におきましては、災害救助法によりまして知事、市町村長の系統で責任を持ってこれに対して——実際問題としましては、配給等について市町村が非常状態にある場合において、警察がこれを実施するというようなこともございましたが、建前としてはそういう体制に現在なっておるのでございます。  また水防計画につきましても、現在現行の水防法におきましては、やはり避難命令等を出す権限は府県知事、府県知事の命令を受けた府県職員、市町村長という系統になっております。もちろん警察といたしましては、警察法二条によります人の生命、身体、財産の保護という重要使命がございます。また緊急の場合におきまする避難命令を警職法四条によって規定されておるごとく、必要に応じて警察として独自の見解で措置をとることはもちろんございますが、建前としましては側面的に水防についてもこれを応援するという体制になっておるわけでございまして、これらにつきましても今後運用上あるいは制度上についてもさらに検討を加えて参りたいというふうに考えます。  第三の水上警察につきましては、これは警察が国警、自治警に分かれました際に国警はボートを持たないという建前になりまして、自治体警察だけがこれを持って、それが現在の府県警察に引き継がれておりますが、その後実際ただいま御指摘のように、各種の警察活動に水上の船というものが必要であるということで、毎年大蔵省と折衝をいたしまして、逐次整備をいたしておるわけでございますが、まだわれわれの望む十分なところには行っておりませんが、水上警察についてもわれわれとしては今後さらに整備をはかって参りたいと考えておるわけであります。  最後の通信の問題でございますが、通信につきましては戦前は全く有線電話施設のみでございましたが、戦後短波無線通信、それから超短波無線電話、超短波の多重無線電話というような新しい技術を導入いたしまして、通信施設を整備し、警察の活動の能率化をはかっておるわけでございます。しかしながらこれもいろいろ予算上の制約もございまして、もちろん十分ではございませんが、今回の災害におきましては、例のひどい三県についてだけ申し上げますと、有線電話については警察本部と警察署との間では約七〇%が被害を受けた。また警察署と駐在所、派出所等につきましては七五%というものが被害を受けておる状況でございまして、有線にたよることができない。従いまして、有線の復旧も要所要所は一両日中にいたしたわけでございますが、主として無線にたよらざるを得ないということで、ただいま御指摘の超短波無線電話等を活用いたしたわけでございますが、現在までにこの超短波のパトカーは一千台にまだ満たない状況でございますので、十分の活用はいたしかねております。これも本年度からの五カ年計画で急速に整備をはかって参りたいというふうに考えておるわけでございまして、いろいろ財政上の都合もありますが、ただいま御指摘のような点につきましては、私ども今後施設の整備、また運用、制度上の検討を重ねて参りたいと考えておる次第であります。
  110. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員 警察御当局の御苦心に対しましては深く感謝をいたしますし、なおお尋ねしたいこともありますが、また次の機会にしまして、もう一点だけ伺いたい。  それは郵政関係であります。今度の災害で市内線が十八万六千回線、市外が五千四百回線不通になりました。すなわち東海道一帯は一線も電話が通じなかったということでございます。これに対しまして電信電話当局が非常な努力をしてくれた。現在水びたしになっておるところへ移動電話を持って行ってやってくれるというような状況を見ると、非常に御当局に感謝をいたします。さらにまた郵便でありますが、水の中を配達をしてもらう姿、これを見ておると全く郵政当局に感謝をいたしまするが、今日なお不通になっておる電話が相当あると思う。どんな形になっているかということを伺いたい。それから郵便地区あるいは郵便の配達系統等をこの機会に変えなければならぬと思う。町村合併以後あまり変っていない。これは電信電話もそうですけれども、速急に切りかえて非常態勢に応ずるようにしてもらいたいと思いまするが、郵政大臣のお考えはどうか。それからもう一つ、電信電話には第二次五カ年計画というのが目下進行中でありますが、今度の災害で大幅に予算改訂を行わなければならぬと思いまするが、一体どれくらい金がかかって、どんなふうに予算をふやそうと考えていらっしゃるか、一応伺っておきたい。もう一つは、今警察庁長官からもお話のございました無線の電波の割当、周波の割当につきましては、今まであまり水防とかあるいは天災に対する配慮が私はなかったように思う。この機会に台風の教訓を生かして、北海道から九州のすみずみまでいざというときに備えて電波の割当を一つ整備しておいてもらいたい、こう思いまするが、郵政大臣のお考えはどうか。以上の点について伺います。
  111. 植竹春彦

    ○植竹国務大臣 お答え申し上げます。ただいまの電話の回線が東海道全部だめなように伺いましたが、三重県の方と名古屋までは大丈夫で、名古屋から先、三重県の方を回ります幹線は御指摘の通りでございますが、幸いに今回は岐阜の方を回ります幹線が大丈夫でありましたために、西の方面との連絡台風の最中も完全にとり得たというふうな状態でございます。また御指摘の回線の数でございますが、全部で三十九万七千百六十一回線が確かに被害がございました。まだ現在でも名古屋方面の回線といたしまして、名古屋の南部の千二百回線、愛知県の海部郡が一千回線、それから三重県の富田局の管内が千七百回線まだ回復いたしておりませんことはまことに遺憾でございますが、目下鋭意この回復に努めておるところでございます。  それから電波の割当でありますけれども災害等非常の場合には非常無線通信の協議会ができておりますので、この協議会では毎年中央におきましても、地方的の協議会の地方支部におきましても訓練をいたしまして、そうして一応災害等につきましてはそれに応じた処置をとることになっております。具体的に申し上げますると、この協議会は郵政省、建設省、国鉄、運輸省、また日本赤十字社、専売公社、アマチュア無線連盟、その他そういったような無線の免許を得ました団体等が集まりまして、協議会を作っておりましてやっておりますので、今のところは電波の割当はこれにつきましては困難を感じておりません。それらの団体が本来の放送目的を超越いたしまして、一朝有事のそういった災害の際には、災害対策関係の放送と申しますか、通信をしてもよろしいということになっておりますので、電波の数あるいはその割当については別に今のところは心配がないわけでございます。  それからもう一つお尋ねは電信電活の五カ年計画でございますが、不幸中の幸いと申しますか、今回の電信電話に関しまする被害状況が、金額にいたしますと二十八億確かにございましたわけでありますけれども、この二十八億は損勘定で、あるいは今年の予算の総則の第二十二条を適用いたしまして、それで成績が増強いたしました余力をもちましてその災害に充てたい。それからまた建設勘定の六億にいたしましても、債務償還の弾力分でもって充当いたしましたために、特に今後の五カ年計画に支障を来たすことがないと考えましたために、第二次五カ年計画はすでに御披露申し上げました計画に従って遂行する見込みになっております。以上お答え申し上げます。
  112. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員 時間も参りましたのでこれで終わりたいと思いますが、いろいろ御懇篤な御答弁をいただいて大体了承をいたしました。  最後に一言申し述べておきたいことは、私ども東海三県選出の参衆両院の国会議員は、東海三県災害復興連絡協議会を結成いたしまして、いかにしてこの災害を復興するか、また今もなお泥海に孤立しておる人々、肉親も財産も家屋も失ってぼう然自失をいたしておりまする罹災者等に対して、生きる希望をいかにして与えることができるかという点について苦心をいたしておりまするが、種々協議の結果、次の申し合わせをいたしました。ここで朗読をいたします。   今次の伊勢湾台風災害対策については、その被害状況を適確に把握し、首相以下政府首脳部が現地においてなされた言明に反することのなきょう諸施策を実施すること、即ち  一、二十八年災の際に実施した諸方策以上の線を確保すること      (高率補助、小災害対策等)  二、復旧については、改良復興を原則とし、再び同一災害を繰り返さないよう措置すること  三、地域指定に当っては、被害の深度を充分考慮し、立法措置並びに予算措置を完全に行うこと右申し合せます。  これが東海三県国会議員の同じ思いの結集でございます。こいねがわくは政府並びに同僚諸賢の御協力と御理解によりまして、これが実現のできまするよう特に御願いを申し上げて、私の質疑を終わることにいたします。(拍手)     —————————————
  113. 小川半次

    小川委員長 八木一郎君より関連質疑の申し出があります。この際これを許します。八木一郎君。
  114. 八木一郎

    ○八木(一郎)委員 私は関連質問でありますから、一問にしぼって簡単にお尋ねをいたします。しかし答弁は、総理、大蔵、建設各大臣から一件、農林大臣から数件にわたって要求いたしたいと思います。  佐藤大蔵大臣は、政府災害予算対策として意を用いた点は、第一に民生の安定及び生業の再建をはかったことである、このため特に農地については、明年の作付に支障なからしむることにし、これらに要する経費として百七億円を計上した、こう言われておりまするが、ただいま早稻田委員より述べられた伊勢湾被害三県下だけでも、農地の流失、喪失の面積は六千町歩、湛水面積は三万八千町歩、農地の施設においては八千カ所、海岸河川堤防決壊は百九十一カ所、三万六百メートルという驚くべき広地域にわたって惨状を呈しておるのでありますが、中でも特に激甚な壊滅的な被害を受けた開拓、干拓地、たとえば鍋田干拓のような場所においても、海水に沈んで失ったかえるべくもなきとうとい若人の命、またまだ行方不明になっておるのが多数あります。しかし生命も財産も土地も家財もみな失ってしまったが、ふるさとがないというこの地においても、政府はこれらの干拓地に、明年の作付に支障のない程度まで再建復旧確信があるかどうか、確信を持って臨んでおるというならば、予算的裏づけをもとにして説明をしてもらいたい。すなわち今生き残った被災者たちは、この寒空を収容された学校、寺等で寝起きをしておりますが、身寄りもなければたくわえもない、家もなければ土地もない、こういうあわれむべき状態のままでありますので、待っておるのはあたたかい政府の思いやりある対策だけであります。私は罹災者のその声なき声をここに訴えながら、こうして壊滅してしまった開拓地のこの事業の将来についても、今後に対処して一体どうしようと考えておるのか、おざなりな答弁でなく、真摯な態度で、真剣なお気持を国民の前に明らかにしていただきたいと思うのでございます。あるいは開拓、干拓事業は臨海工業地帯にでも変えたらどうか、根本的に考え直したらどうだというような説をなす人もあります。しかし政府はこれが復旧に全力を尽くして、これまで以上に開拓、干拓の持つ戦後の使命を貫いてやっていくというかたい御決意があるかどうか。これはひとり被災者だけでなく、全国の干拓、開拓関係地方の方々が心配をしておる点であります。私のところにも電報に手紙に、たくさんの訴えを毎日のようにもたらしてきておる事実があるのであります。  一体わが国における干拓の歴史はきわめて古いのであります。しかし過去における干拓地は、いわゆる干がた地が海へ前進して、その背後地を守りながら、これらの地帯の民生の安定、経済社会の発展に寄与するというのが歴史の事実であります。だからこそ政府農林省は、農村青年建設隊の施設を生かして、ここで訓練をした青年を二、三男対策の一環だとして開拓、干拓地に入植させて、単に農業の生産に寄与するだけでなく、経済的な面を考えるだけでなく、領土、国土の造成保全のための使命と役割をも果たさせておると思うのであります。しかしその埋めておりまする、拡張しておりまする面積は、調べてみますると、毎年つぶれ地として工場あるいは住宅等に転用されてつぶれてしまいまする田畑二万町歩の半ばにも達しておりません。かなりな国家的な財政的な犠牲、国民の献身的な努力を注いでおるにかかわらず、住宅や工場につぶれてしまう農地の半分も造成しかねておるというのが実態であります。こういう際に、この問題の、干拓、開拓の事業の将来に対する政府の所見をこの機会に明らかにしていただきたい、こういうことを要求いたしたいのでありまして、政府農林省の青年建設隊の、入植をしていない建設隊員にして、せっかくの使命をも果たさずに、被災者となって生き残っておる人もありますれば、死んでしまった人もあります。これらの方々に対する見舞金なりあるいは生活保障なりについて何らかの考慮があるかどうか。次に、生き残った被災農家の諸君は、営農の収入は皆無である、そうして生活をどうしてこれから守り抜こうかととほうにくれた姿は、はや四十日は過ぎておりまするけれども、押し迫る年の暮れ、来春の植付までにはというところに希望をつなごうとしておるのでありますが、これらに対する建設、救農的な事業の内容について説明を求めたいと思うのであります。  要するに干拓、開拓事業については、国は特定土地改良工事特別会計法施行以来、七年完成を、両院の院議の決定もあり、国民に約束をして、ただいま三年目に入っておるかと思います。あと四年を待ってこれらの計画は完了するはずになっておりまするが、残工事を四年間に、全国の開拓、干拓関係のこの特別会計法に基づく事業は、継続予算をもってしてもりっぱにやり抜いていきますという決意政府にあるかどうか。これによって計画的に国民のこの方面に働く方々の支持を得ることができると思います。  以上は大体農林大臣に尋ねたい点でありまするが、海岸堤防施行に関しまして、昨日、本日にわたる熱心な質疑応答の間にだんだん理解を深めることができましたが、今朝の新聞によりますると、海岸堤防基準をきめる方向が決定をした、その一は、従来の堤防の高さをさらに一メートル前後高くする、その二は、堤防の背後の被覆もコンクリートにする、つまり裏側がコンクリート化していなかったために、さんたんたる災害を受けたのを補強する、第三は、堤防の中心にコンクリート土台を入れる、あるいは両わきに土台を築くというような図面入りの中部日本新聞の記事を見たのであります。私も十三号台風昭和二十八年度災害に遭遇し、六十年このかたないような津波の被災を受けた一人でありますが、またぞろ六年も待たずして、その数倍にも及ぶというような災害地に生を受けておりまして、堤防に関しては、しろうとでありますけれども、非常に関心が深い。具体的な例もたくさんありまするが、要するに、建設省農林省運輸省も、国も県も市も町村も、すべて海岸堤防——これは河川堤防に続いておりまするが、その基準を設定をして、堤防建設者はだれである、何月幾日だれの責任において建設したということまで明示して、二度と再び、海岸堤防の構築が済んだ以上、破堤のうき目は見ない、こういうところまでやり抜いていただきたいというのが私の期待であるし、念願するところであります。今年のような大台風は、そうそうやたらに毎年やってくるものではないと思います。と同様に、二十八年も思っていた。ところがまたぞろやられてみますると、来年やってこないという保証はどこにもないわけなんです。そうしますと、こんな台風なんかは、最も率直に素朴に考えますると、岸さんはちょうど名前が岸ですけれども、護岸工事を、岸をしっかりさえすればいけるのじゃないかという声は当然だと思う。これは一つ思い切って、もう海岸に関する限り心配は要らないというところまで、今申し上げたような設定基準に基づいて、一連の工事担当者が、だれがやっても大丈夫だというところまで、この伊勢湾台風被災の中から、何とかこの道は開けぬものだろうかということを考えておるわけであります。専門家によりますると、日本のような、四面海に囲まれて、山は険しく、川は短し、雨はどしゃ降りの集中豪雨型であって、一気に下流に押し流される、台風災害条件のまことに備わっておるこの国で、大蔵大臣の言う民生の安定と生業に安んじていけるというのには、せめて岸だけは、堤防だけはしっかりしたものにしてしまうということが絶対必要じゃないかというふうに思い詰めますと、何より大切なことは、今までやってきたようなこうやくばりはやめて、継ぎはぎでいくことを再検討をし、きびしい反省を加えまして、過年度災害に次ぐ過年度災害、こういう過年度災害をこま切れ予算でつくろっていくということは、今回限りやめてしまう、ここまで決意をなさる意思はないかどうか、こういうことです。政府は、災害復旧について決して出し惜しみはしておりません、財布の底をはたいてやっておりますと言いますが、私は出し惜しみの問題や、財布の底をはたくというのが問題ではないと思う。今申しましたように、海岸に囲まれておる国土の保全と、国民が安んじて生業にいそしむことができるまで、堤防工事、護岸工事を事前対策としてやってしまう、こういう決意によって国政を見るということが何より大切だと思うのであります。村上建設大臣は、五年間に三千五百億かけるならば、毎年一千億円の災害を減らすことができるということを述べておると聞いております。専門家の大臣が自信と信念を持ってこういう結論に達しておるとするならば、私はこの際災害克服のために、勇気をふるって、決断されて、三十五年度予算編成に臨むということが国民の期待と待望に沿うことだと思っておるのでありまして、災害対策は恒久的に根本的にやるとまで述べられた岸総理大臣現地における言葉、また本会議における決意のことが、おざなりでなく、真摯な態度で臨もうとしておられるかどうか、この点のお答えを要求して私の質問は終りますが、答弁はそれぞれ具体的にはっきりとお答えを願いたいと思います。
  115. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 鍋田干拓につきましていろいろとお話をお伺いしたのでありますが、ああいう悲惨な事態が起こりましたことは、まことに遺憾千万なことでありまして、私もこの際つつしんで弔意を表したいと存ずる次第でございます。特にお話しになりました農村建設青年隊の隊員が十名鍋田干拓におきまして生命を失いましたことは、くれぐれも残念なことでありまして、この弔慰方につきましていかにいたすかということは、私も初めから苦慮しておった次第でございます。私もいち早く現地に参りまして——現地には近づけませんから、船で洋上からごあいさつを申し上げたような次第でございますが、何としてもこの失われた方方、また生き残った方々に対しまして最善のことをしなければならぬということを考えた次第でございます。なくなられた方々のうち、農村建設青年隊の青年は、災害の四日前に到着して、災害の防除に挺身中に生命を失ったというような方でございますので、すでに県当局とも相談をいたしまして、何らかの処置をしなければならぬと考えて手続を進めておる次第でございますが、お話の次第もここでありまして、さような感をさらに深くいたす次第でございます。さようなお話に基づきまして、なおこの方法につきましては検討し、善処いたしたい、かように存ずる次第でございます。  鍋田干拓を復興するかどうかということは、これは相当の問題でございまして、当初は他にあの干拓地を移転すべきではないかという声もありましたが、地元民の皆さんの御意見を承りますると、どうしてもあの地に復帰したい、かようなお考えのようでございます。私もその地元民の御意思を尊重いたしまして、これを現地において復興するという決意をいたした次第であります。すでにさような方針、決意に基づきまして工事を進めております。最も困難な工事でありますので、来年の一月になると思うのでございますが、締め切り排水を完了いたしたい。その後におきまして、塩分の除去その他の耕地の復興に取りかかるわけでございますが、しかしそのつなぎをどうするかという問題があるわけでございます。私は、さようなことも考えまして、一般的ないろいろな対策もありまするが、そのほかに、特に鍋田におきましては、仮住宅を建てる計画を進めておるのであります。集団バラックと申しますか、仮住宅を建てて、十一月中には完成する予定でございますから、全部の生存者にここへお移りを願うわけであります。そういたしまして、排水の仕事またさらに耕地の復興の仕事、さようなものにお手伝いを願いたい。これを国の助成と地元の皆さんとの相協力した形において復興していきたい、かように考えておる次第でございます。この堤防農林省所管をいたしておりまするが、堤防につきましては、応急のものは一月末にただいま申し上げましたようなことになるのでございまするが、さらに工事を進めまして、来年の台風期までには原形復旧程度のものはでき上がるわけでございます。同時に、これと並行いたしまして、改良計画といいますか、将来の復興をどうするかという検討を進めております。あなたの今申されたようないろいろな構想が、もう形をなしつつあるような状態であります。その構想も頭に置きながら、来年の台風時までの応急復旧工事は進められるわけでございますから、引き続きまして本設計に移りまして、今年と来年の二カ年をもってこの工事を完了するということにいたしたいと存じておる次第でございます。  なお、鍋田干拓地を今後どうするかというようなお話でございますが、復旧いたしました上は、もう御安心願って一つやってもらう。そうして干拓地と申しますれば、これは日本農業全体といたしましてただいま曲がりかどに来ておるというような話も出るくらい、今後この農法をどうするかという岐路に立っておるわけでありますから、白紙に絵をかくというような立場にもある。この鍋田干拓地は全国農民の模範であり、先頭に立つという意気込みと実態とをもって建設に邁進できるという形のもとにおいてこれを復興していきたい、かように考えておる次第でございます。  最後に、かような干拓、開拓の長期計画をどうするかという話でございまするが、私は、かねがね申し上げておる通り、農村の人口をどうするかということを非常に大きなテーマと考えておる次第であります。その一環といたしまして、またその中でもきわめて重要なる地位を占めるものといたしまして、開拓、干拓の計画は熱意を持って進めていきたい、かように考えておる次第でございます。
  116. 村上勇

    村上国務大臣 災害防除の基本的なものは、何と申しましても、大台風の来襲前に施設を完備しておくということが緊要であります。従いまして、今回の伊勢湾台風等のこの経験にかんがみまして、私どもは将来かような災害を再び繰り返すことのないような施設をやらなければならないと思っております。堤防の強度あるいは構造また高さ等につきましては、しばしばお答え申しましたように、十分検討いたしました上で、いよいよ仮締め切りを終了いたしまして、恒久施設に取りかかりました際には、その結論を得まして、今後は断じてかようなことのないようにいたしたいと思っております。少なくとも、不肖でありますけれども、国土保全の任に当たっております限り、今後私は抜本的な施設をいたしまして、いわゆる今日のこの災いを転じて福となすような施設をして、民心の安定をはかって参りたい、かように思っておる次第でございます。
  117. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今回の災害復旧にあたりましては、前々申し上げておりますように、農地にあっては来年の作付に間に合うように、また台風襲来前に一応の形が整うようにということを目途にいたしまして、予算の面においてそういう目的を達することができないようなことのないように、十分私ども配意いたしたつもりでございます。今後におきましても、農林、建設両当局と緊密な連携をとりまして、この点について十分の効果を上げるように努力して参るつもりでおります。
  118. 岸信介

    岸国務大臣 今回の災害に対する対策につきましては、各所管大臣よりお答えを申し上げた通りでありますが、私は、次の通常国会には、災害対策に関する根本的な恒久的な対策を立てて、これに対して必要な予算の裏づけと、また法律制度の制定、確立というこの二つの方法によりまして、将来再びこういうことのないように、国土の保全について従来言われております治山治水というだけでなしに、さらに防潮の問題もちろんでございますが、台風に対する科学的な研究や措置というものもあわせて一つ根本的な基本的な方策を立てていく、こういう決意でおります。
  119. 八木一郎

    ○八木(一郎)委員 終わりました。
  120. 小川半次

    小川委員長 明日は午後一時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十三分散会