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滝澤参考人 私
長野県の組合
製糸北水社の
滝澤でございます。組合
製糸というものは
養蚕家の委託を受けまして
生糸を作ることが商売でございます。
政府の去年作りました、
考えましたことは、あの暴落の際に
考えたことでございまして、
安定帯価格というものはその当時は
需給均衡
価格であったようでございます。しかし、ここへきてからは、
需給不均衡
価格であると私は
考えるわけでございます。しかも、この
価格は、養蚕農家の繭
生産費をはるかに割ったものでございます。これを強行していくという
政府の
考え方は、国民所得を倍にしていくという
政府の
考え方の中にあってただ
農民だけが所得を半減していくという結果になるおそれがあるわけでございまして、矛盾もはなはだしいわけでございます。昨年
最低糸価十九万円というものを守り得なかった
政府の不手ぎわについては、海外からも非常に不信を買ったわけでございます。ことしこそは何とか安定していこうということで、福田先生初め大みえを張っておられるわけでございますが、内外の市場の動向、絹の
需要というようなことについて把握が不十分であったり、
需要を過小に見たということで、去年
養蚕農民に桑園の整理を強要した。先ほどどなたかからも申されましたように、ひどい目にあったわけでございます。そんな縮小均衡方針というものをとったために、非常に底がたく伸びてきました
需要に対して、不均衡を生じて現在に至ったわけでございます。今なおその方針を変えようとしない政策の不手ぎわには、私
どもは驚かざるを得ないわけでございます。
政府は実勢
糸価をはるかに下回る十八万円を法
改正によって堅持しようとしておるわけでございますが、
生糸の低
価格政策だけが絹の
需要を増大していくということには当たらないわけでございまして、低
価格政策だけが絹
需要の唯一の道であるということは、一を知って十を知らない政策であると私は
考えるわけでございます。絹の
需要開拓ということについては、ただ業界にまかせるということでなくて、
政府みずからももっと積極的に開拓に努力すべきであると
考えるわけでございます。
このごろ、
安定法に基づきます
生糸を法第十二条によって買いかえるとか申されまして五千俵ほどの安売りをいたしたわけでございますが、これに対しましては四万俵もの買い入れが殺到したことは御
承知の
通りでございます。
糸価安定どころではない。
糸価不安定の結果を招来しておるわけでございまして、この政策がいかに誤っておるかということを雄弁に物語っておるわけでございます。実勢
糸価をはるかに下回る十八万というような
価格が時価だということには私
ども納得できないわけでございまして、法に規定されているように、はたしてこの
価格で買いかえができるのであろうかと私は非常に疑問でございます。もしできるとするならば、直ちに買い入れの
措置をとっていただきたいと思います。そうすればおのずからはっきり答えは出るはずでございます。
法を
改正しなくて法の拡大解釈でいいということであれば、何もこの臨時
国会に提案する必要はないはずでございます。しばしば法を勝手に拡大解釈する
政府のことでございますので、やりかねないことであると、非常に遺憾に思うわけでございます。法治国の一国民として嘆かざるを得ないわけでございます。
政府側に立っております某有力議員さんは、
政府が
生糸を保管しておると金利や倉敷もかかる、これを市中に放出すればそういう費用もかからないで済むということを言った方もあるわけでございます。しかし、その費用よりも、二十万で売れる糸を十八万で売ったということの国の損失額の方が、私の算術でははるかに大きいというふうに思うわけであります。その名前は申し上げませんが、そんなことを言う人もあるわけでございます。国有財産の処分というようなことから
考えましても、この
措置は全く適切でないというふうに
考えるわけでございます。なお、この反面において不当の利益を得る者が生じておるわけでございまして、その反面、国家的の損失であり、やがてはこのしわ寄せが
養蚕家や特に中小企業の
製糸にしわ寄せされることは明らかでございます。従いまして、私は、この政策には絶対反対を唱えるものでございます。
私は、
需要が今後の努力によってさらに続いていくというふうに
考えるわけでございまして、
政府の縮小政策というものが、やがて来年の春繭出回り期等において非常な挫折を来たすわけでございまして、今日にも増して
需給の不均衡を生ずるということを心配するわけでございます。先ほどどなたか申されましたように、ここで
法律を変えるということが、山高くして谷深しということになることを憂えるわけでございまして、
蚕糸業の将来のために非常に嘆かざるを得ないわけでございます。また、某議員さんは、去年は
機屋さんが、また
輸出業者の人
たちが非常に損をしたと言う。一体、去年一番みじめな、
最低生活もでき得なかったものはだれでありましょうか。
養蚕農民であったはずでございます。少なくとも、農林省の当局、また農林
委員の
先生方においては、
養蚕農民の生活ということについてもう少し愛情をいただきたいと思うわけでございます。強引にこの法案を
改正いたしまして、
生糸を放出するということになりますと、これに思惑等が加わりまして、
糸価はますます不安定になってくる。こういうことが、やがて、十八万堅持ということよりも、さらに、海外から不信を抱かれる、非難されてくるということになるように私には
考えられるわけでありまして、こうしたことが、せっかく芽ばえて参りました
日本の
蚕糸業の芽をつむことになりはしないかというふうに憂えられるわけでございます。ここでこの法を
改正するということを直ちにやめていただきまして、通常
国会において、
蚕糸業に携わるすべての人の頭脳を結集いたしまして、
日本の
蚕糸業の将来のために抜本的な
対策を立てていただきたいということを切望してやまない次第でございます。
私は、
需要はまだ現状を持続できるというふうに
考えられるわけでございます。先ほ
ども申し上げましたように、このことについては、業界にただまかせるということでなくて、
政府みずからも一つ大いに新しい絹の開拓に向かって努力してほしいということを
お願いするわけでございます。
ここで十八万放出によって
生糸を安売りすることによって、
糸価が一時的には安定するでございましょうが、先ほどどなたか言われましたように、山高ければという、そのことを私は憂えるわけでございます。よって、こんな法案に対しては絶対反対を唱えるものでございます。
以上でございます。