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1959-12-09 第33回国会 衆議院 農林水産委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年十二月九日(水曜日)     午前十時二十四分開議  出席委員    委員長 吉川 久衛君    理事 秋山 利恭君 理事 田口長治郎君    理事 永田 亮一君 理事 丹羽 兵助君    理事 赤路 友藏君 理事 石田 宥全君    理事 芳賀  貢君 理事 小平  忠君       安倍晋太郎君    金丸  信君       倉成  正君    坂田 英一君       笹山茂太郎君    田邉 國男君       高石幸三郎君    綱島 正興君       野原 正勝君    松岡嘉兵衛君       松田 鐵藏君    八木 徹雄君       保岡 武久君    足鹿  覺君       角屋堅次郎君    金丸 徳重君       神田 大作君    栗原 俊夫君       栗林 三郎君    高田 富之君       中澤 茂一君    西村 関一君       松浦 定義君    小松信太郎君       中村 時雄君  出席国務大臣         農 林 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         農林政務次官  小枝 一雄君         農林事務官         (蚕糸局長)  大澤  融君  委員外出席者         参  考  人         (全国養蚕販売         農業協同組合連         合会会長)   田原  徳君         参  考  人         (長野養蚕販         売農業協同組合         連合会会長)  中村治郎君         参  考  人         (養蚕農民)  細井 金義君         参  考  人         (日本製糸協会         会長)     安田 義一君         参  考  人         (全国国用製糸         協会会長) 茂手木良兵衛君         参  考  人         (北辰蚕糸販売         加工利用農業協         同組合連合会北         水社会長)   滝澤 清見君         参  考  人         (日本生糸問屋         協会会長)   海沼 栄祐君         参  考  人         (日本絹人繊織         物工業会副会         長)      茂木 富二君         参  考  人         (日本生糸輸出         組合理事長)  肥田 啓治君         参  考  人         (横浜生糸取引         所副理事長)  小島周次郎君         専  門  員 岩隈  博君     ――――――――――――― 十二月九日  委員西村関一辞任につき、その補欠として金  丸徳重君が議長指名委員に選任された。 同日  委員金丸徳重辞任につき、その補欠として西  村関一君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 十二月八日  農業基本法制定促進に関する陳情書  (  第六五三号)  県外移出米助成金交付に関する法律制定促進に  関する陳情書(第  六五五号)  森林火災国営保険法の一部改正に関する陳情書  (第六五六号)  国有林原木払下げ等に関する陳情書  (第六五七号)  甘しよ価格対策に関する陳情書  (第六五九号)  同  (第六六〇号)  果樹農業振興法制定等に関する陳情書  (第六六一号)  同(第八〇六号)  同(第八〇七号)  果樹災害補償制度確立に関する陳情書  (第六六二号)  植林の雪害及び野兎による被害対策に関する陳  情書(第六六三  号)  開墾不適当な国有地合理的処理に関する陳情  書(第六六四号)  土地改良事業国庫補助基準引下げに関する陳  情書(第六六五  号)  自作農維持創設資金増額に関する陳情書  (第六六六号)  災害対策確立等に関する陳情書  (第六六七号)  積雪寒冷単作地帯振興臨時措置法効力期限延  長に関する陳情書  (第六六八号)  国有林野整備促進に関する陳情書  (第六七〇号)  防災営農振興資金融通臨時措置法制定に関する  陳情書  (第六七三号)  果樹園芸産業振興に関する陳情書  (第六七四号)  三とん未満小型底びき網漁業の許可わく撤廃に  関する陳情書  (第六七五号)  農山漁村振興特別助成事業費増額に関する陳情  書(第六七六号)  農林事業国庫補助に伴う地方公共団体の超過  負担に関する陳情書  (第七一七号)  高隈ダム建設に伴う水没地区民国有林払下げ  に関する陳情書(第七一  九号)  災害防除恒久対策樹立に関する陳情書  (第七二四号)  名神高速自動車道建設に伴う関連土地改良事業  補助率引上げに関する陳情書  (第七二六号)  沿岸漁業振興法制定に関する陳情書  (第七七一号)  黒糖の価格安定に関する陳情書  (第八〇五号)  甘しよ価格対策に関する陳情書  (第八〇八号)  開拓農家の経営安定に関する陳情書  (第八〇九号)  畑地土地改良事業推進に関する陳情書  (第八一〇号)  畑作改善畜産農業振興に関する陳情書  (第八一一号)  自作農維持創設資金の融資わく拡大に関する陳  情書(第八一二  号)  同(第八一三  号)  農家台帳整備強化に関する陳情書  (第八一四号)  土壤線虫撲滅対策に関する陳情書  (第八一五号)  農業法人法制化に関する陳情書  (第八一六号)  農山漁村振興促進に関する陳情書  (第八一七号)  昭和三十五年度農林関係予算増額に  関する陳情書  (第八一八号)  漁港の整備促進等に関する陳情書  (第八二〇号)  新農山漁村基本対策確立に関する陳情書  (第八二一号)  米穀登録卸販売業者新規更新措置に関する陳  情書  (第八二二号)  台風等災害による治山治水対策に関する陳情  書  (第八四七号) は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  繭糸価格の安定に関する臨時措置法の一部を改  正する法律案内閣提出第一号)に関し参考人  より意見聴取      ――――◇―――――
  2. 吉川久衛

    吉川委員長 これより会議を開きます。  繭糸価格の安定に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は右案について参考人より意見を聴取することといたします。  御出席参考人は、全養連会長田原徳君、長野養連会長中村治郎君、養蚕農民細井金義君、日本製糸協会会長安田義一君、全国国用製糸協会会長茂手木良兵衛君、北水社会長滝澤清見君、日本生糸問屋協会会長海沼栄祐君、——海沼栄祐君はおくれて見えます。日本絹人繊織物工業会会長茂木富二君、日本生糸輸出組合理事長肥田啓治君、横浜生糸取引所理事長小島周次郎君、以上の十名の各位であります。  この際参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。本日は、本委員会審査のため、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。厚く御礼を申し上げる次第であります。御承知のごとく、本案は、最近における生糸価格の推移にかんがみ、その安定をはかるため、さきに政府繭糸価格安定法により取得した生糸を同法によらないで売り渡すことができることとする必要があるとして、政府より提出されたのであります。本委員会におきましては、すでに数日にわたり政府に対する質疑を重ねて参り、その審査に万全を期するため本日ここに各位の御意見を承る機会を持った次第であります。何とぞ参考人各位におかれましてはそれぞれのお立場より本案に対し忌憚のない御意見をお述べ願いたいと思います。なお、御意見は、お一人約五分程度に取りまとめを願い、あとは質疑によりお答え願いたいと思いますので、あらかじめ御了承を願っておきます。  それでは、参考人の名簿の順に従いまして、田原参考人からお願いをいたします。
  3. 田原徳

    田原参考人 昨日の午後に、明日十時まで参考人として出てこいというお話でございました。従いまして、繭糸価格安定臨時措置法の一部改正に対する参考のために呼ばれたということはわかっておるのでございますが、それをどのように申し上げてよろしいのか、御質問があればお答えを申し上げたいと考えております。  ただ、それぞれの立場においてただいま委員長さんからのお話でございますので、全養連といたしましては、たびたび役員会その他の機関に諮りまして本問題に対する意見統一をいたしております。その一は、十月二十七日に、「政府の現段階における繭糸価格安定制度に対する措置は不満である。新しい蚕糸情勢に対処して生産費を基調とした繭糸価格安定帯を慎重に再検討することを要求するものである。よって此の際政府は早急に安定審議会を開催し、恒久的繭糸価格安定制度確立を期すべきである。」という決議をいたしました。  次に、なおその後の政府の処置に対しまして、十一月二十四日時局対策小委員会を開きまして、「一、政府繭糸価格安定に関する臨時措置法の一部改正法律案国会に提案しながら、安定法で買上げた生糸を法第十二条によって処分しつつあることは不当であり、承服できないところである。二、政府明年度最低繭価の設定に当っては飽くまでも繭生産費補償方式を堅持するための強力なる措置を講ずること。三、第二項の意志を結集するため早急に全国会長会議を招集する。」、こういう申し合わせをいたしたのであります。この申し合わせに従いまして、直ちに全国府県連会長会を招集いたしました。一部には大会を開いてこれが対策を立てるべきであるという意見もございます。しかし、数々の施策がすでに行なわれております今日において、大会を開いてといいましてもなかなかむずかしい問題がそこにありますので、大会にかわる会長会において以上申し上げましたような意見統一を見まして、この決議政府並びに出身県国会議員先生方お願いをいたした次第でございます。  以上が今日までの経過でございますが、全養連会長という立場において申し上げることは以上でございます。
  4. 吉川久衛

  5. 中村兼治郎

    中村参考人 私も全養連組織連の一人でございまして、これについて御意見を求められたので、これから申上げることにいたしたいと思います。  私は、繭糸価格安定法というこの法律は、蚕糸業に携わる者の護身用先方が立案して、そうして国会を通していただいたものだと確信をいたしておるわけであります。なおまた、今回改正されようとしております臨時措置法は、あくまでも昨年のような事態に処するところ考え方によって先生方に御配慮をいただいた臨時的なものである、こういうふうに私は承知をいたしておるのであります。かような見地に立って考えてみますと、あくまでもこの臨時措置法というものは昨年の事態に処する臨時的な考え方でございまするから、今日養蚕家に一千十二円五十銭の最低繭値でお前たちが作れ、こういうようなお話ではとうていでき得ない事情でございます。われわれは、この価格は、政府安定法というりっぱな護身用法律を持っていていただくのでございますから、あくまで臨時的なものだと私どもは解釈をいたしておったにもかかわらず、今回突如として、この安定法の中で買い入れたものを放出して最低値養蚕家にしいるというようなことは、私ども承知のできない事実だということで、私は反対をいたしておるのであります。はたして、一体、今日の物価指数から申しまして、一千十二円五十銭の繭値養蚕家にしいて、そうして一面では蚕糸業推進をはかっていけというような矛盾した考え方でやっていただくということは、これは養蚕家として非常に残念に思う施策でございまして、あくまでも、繭糸価格安定法という、この先生方に御配慮をいただきましたところ法律を私どもは順法して今日まで働いて参ったわけでありまして、今後ともこの法律を維持していただくようにお願いをしたいと思うのであります。しかるに、臨時措置法でこの根本的な安定帯を破ろうとするような考え方でいらっしゃるとするならば、これは間違ったことである。私ども養蚕家立場からは、繭糸価格安定法という法律蚕糸業に関するところの宝刀であると考えておるのでありまして、それをこの際破って、そうして価格を押えていこう、こういうようなことは、養蚕農民に対するところのしわ寄せが大きくなり、同時に、先生方の御配慮によりまして農産物価格生産費基準方式を採用しようとしていただく今日、全く蚕糸業だけは逆の立場をとっていかれるというような考え方にしかわれわれは受け取れないのでございます。こういうような、われわれ蚕糸業に対するところのりっぱな護身用の道具をこの際改正なさんとすることであるならば、あくまでもそれにかわるべき蚕糸業安定帯というものを御配慮いただかなければ承服できない。承服できないというようなことを申してははなはだ失礼でございますが、われわれ養蚕団体としてはあくまでもこれに反対せざるを得ないと思うのであります。同時に、あくまでもこれを改正なさんとするお考えがおありになるようでありますならば、われわれに代案を示して、今後こういうふうにするから、こういうところはお前たちもがまんしろということであるならば、これは国策として私どもは服従いたさなければならぬと思いますが、その代案もなくて、いたずらにこの安定帯を突き破ろうというお考えに対しては、あくまでも承服できないのであります。  これは余分なことを申してはなはだ失礼でありますが、実は、私の祖父に当たります者が、私の小さいころに、これからお前たちも大きくなったら、すべての事柄に関係をするから、よく気づいておやりなさいという忠告をしておることを、一通り簡単に申し上げて御参考にしたいと思うのであります。私の家は信州の松代藩の出でございまして、昔は護身用の帯刀を許されておったのでございますが、この刀を選ぶにはお上の許可がなければ選べなかった。どういうことかと申しますると、足軽名刀を許可すればいたずらに人を害していけない、こういうことで、正宗とかその他の名刀を持たせるときには必ず達人に持たせたのであります。足軽に持たせると非常に危害を加えるが、達人の侍に持たせると実に天下を風靡して護身用になるということを私はじいさまから聞いておるのであります。どうか、先生方におかれましても、私ども護身用にこの安定帯を設けていただいたのでございますから、何分その意味お願いを申し上げたいと思います。  私の申し上げることは以上であります。
  6. 吉川久衛

    吉川委員長 細井参考人お願いいたします。
  7. 細井金義

    細井参考人 私、農民の一人といたしまして、本日意見を求められまして参ったわけであります。農民として率直に現在の農民の声を先生方の前に申し上げまして、参考にしていただきたいと考えるものでございます。  まず、昨年の繭の不況による農民の実情というものは、非常に混乱したものがあったのであります。製糸家におきましては、繭はもう要らないんだ、幾ら繭を作っても、繭は必要ないんだ、こういうことで、農民は繭の処理に非常に困ったわけでございます。なお、政府は、何年か前までは、桑を植えなさい、繭を増産しなさいということで、盛んに植えさせたわけでございますが、昨年、今度は桑をこぎなさい、こういうものには奨励金を出すとかなんとか言って、農民にこがせたわけでございます。そういうわけで、農民はやむを得ず桑をこぎまして、転換作物として、桑のほかに何ら栽培の方法もない土地野菜を作り、ことしはネギが畑の方々に散らばっております。このネギが現在八キロ三十円というようなばか安い値段になっているわけでございます。しかし、ことしの繭の生産から言ってみますと、繭は非常に値がよかった。野菜に比べて繭は非常にいいものを、なぜ桑をこがして蚕をさせなかったんだ、農民の声は実に爆発的なものがあります。どうか、今度の安定法につきましても、ほんとう養蚕農民が安心して蚕を飼えるように、ぜひともそういうふうな面におきまして安心して養蚕業が営めるように改正していただけるならばけっこうでございますが、現在農民経済をまかなっておるものが実に養蚕業にあるわけであります。米麦の収入その他はほんとうに微々たるもので、過半数が養蚕収入によって農村経済を維持しているわけでございます。このような重大な養蚕業について、われわれ農民といたしましては、ぜひとも安心して蚕を飼っていきたい、こういう気持があるわけでございますが、先ほど申し上げました通り、桑をこげの、桑を植えろのというようなことでは、安心して蚕は飼えないわけでございます。桑にいたしましても、ことし植えて来年桑がとれるというものではございません。桑は植えて五年、六年たたなかったならばとれないわけでございます。その間養蚕業は中止してしまわなければならないわけでございます。そのような桑の栽培等におきましても、政府はもう少し親切に農民を指導していただきまして、蚕を飼えば養蚕農民経済ほんとうに豊かになるのだというような方向で、この法律案なり何なり、ぜひ養蚕対策を立てていただきたい、かように考えるわけでございます。  どうぞ、そういう意味におきまして、りっぱな安定法を作っていただけるようにお願いしたいと思います。
  8. 吉川久衛

    吉川委員長 次に、安田参考人お願いいたします。
  9. 安田義一

    安田参考人 私は日本製糸協会安田でございます。私の申し上げますことは幾つか前提がございますので、どうか御理解をいただきたいと、先にお断わりをしておきます。  ただいま中村さんから繭糸価格安定法護身用だというお話があったわけでございますが、これはいろいろな意味における護身用蚕糸業そのもの護身用でありまして、養蚕家だけの護身用ではない、実は私はそういうふうに考えております。今度の問題につきましても、その前提として、今後繭糸価格安定法をどういうふうに運用していくかということに非常に関連がある、かように考えております。昨年のことを顧みますと、最低糸価十九万というものは、私ども製糸家としては、マーケットの状況からいたしまして、これを守っていくということは無理だということで、しばしば当局にその引き下げ方をお願いをいたしたわけでございますが、当時といたしましてはそれが実現できなかった。大体、繭糸価格安定法価格のきめ方と申しますのは、皆様御存じ通り年度の初めに、法律では大体三月から五月くらいの間にきめることになっておるわけでございますが、まず次の年度安定帯というものを幾らにするか、最高最低糸価、並びに最低繭価幾らにするかということをきめまして、一年はそれをなるべく変えないというのがこの法律の建前であろうと思っております。しかるがゆえに、昨年のようなときでもなかなかこれを引き下げることができなかった。これは、私が申し上げるまでもなく、蚕糸関係をいたしております製糸あるいは問屋あるいは織物の製造並びに輸出、そういう方々は、本年度糸価が大体どの辺にいるかということをまずきわめまして仕事を始めるわけでございますから、やはり年度の中間におきましてみだりにこれを変えるということは影響が非常に大きい、私はこの安定法というものの運営をかように理解いたしておるわけでございます。そういう意味におきますと、本年政府安定法の糸を十八万で放出をしたい、こういうことを考えられたことは、政府といたしましては当然であろう、私はかように考えます。本年の初めに、繭糸価格安定審議会におきまして、臨時措置法によって取得した糸を十八万で売るということをきめる、これは事実上の最高糸価である、かように私どもは御説明も伺い、かつ、そう理解をいたしまして、十八万というものをきめたわけであります。従いまして、私は出席をいたしませんでしたが、昨年ミュンヘンにおきまして世界絹業大会がございましたが、いろいろの日本の代表の方が行きましても、やはり政府最高価格を事実上十八万としておる、こういう説明をいたしまして、先方と申しますか会議出席者も納得をいたしておるわけでございます。かような意味におきまして、私は、なるべくこの十八万という約束を守るべきである、かように考えております。  実は、製糸業の採算から申しますと、皆様御存じ通り、本年の晩秋は一万掛をこえております。一万掛と申しますと、繭もとだけで十六万でございますから、これを十八万で売るというようなことはとうてい考えられないのでございます。従いまして、私ども製糸業者といたしましては、目先のことを考えますと、これは少なくとも二十万、もうちょっと上ぐらいにしていただかなければ、そろばんがとれないのでございます。しかしながら、製糸業というものは、一年で私どもやめるわけではございません。今後何十年間、日本に繭が生産される限りにおきましては、私ども製糸業を営んでいかなければならぬ。かようにものを長期的に考えましたときに、海外並びに国内におきます生糸消費者の信用をそこなうというようなことが、はたして製糸業のためによいであろうか、かようにいろいろと煩悶、苦心をいたしておるのでございます。率直に申しますと、上げていただくことの方が目先のそろばんはよろしい。しかしながら、そういうことが根本的に蚕糸業のためであろうかということを深く憂慮いたしておるわけでございます。最近、シルク・ブームである、生糸は非常に売れるということを言っておりますが、そろそろ警戒警報が出ております。京都におきましては、織物問屋においては小売段階に物が流れない、非常にたまりまして、外交を北海道から九州まで出して売り歩くというような状態になっております。なるほど、昨日の生糸現物相場は三千三百九十円、これを換算いたしますと約十九万八千円でございますが、こういう生糸値段ではそろそろ消費が減ってくるのではなかろうか。現に、私は名前をはっきり申してもよろしいのでございますが、福井県の大聖寺の松文機業場、これは絹機としては日本一だと思いますが、もう三月以降は、生糸は高く、かつ値段が非常に不安定であるから、化繊、人絹にかわるんだ、こういうことを申しております。国内におきます機屋状況は、昨今絹ブームということで人造繊維化学繊維関係機屋さんがだんだんに絹に転換いたしておりますために、織物工賃が非常に高騰いたしております。一方化繊業者も何とかして機屋を獲得いたしたいというので、相互に織賃、加工賃を競争で引き上げをいたしておりますが、そろそろ向こうの攻勢に絹機が負け始めた、かような状況考えられるわけでございます。そういうような意味で、私は、この問題は慎重に取り扱わなければならぬ、かように考えております。  もっとも、繭糸価格安定法におきましては、異常な事態が生じたときには年度の途中でも変えられることになっております。そこで、変えるような需給状態であるかどうかということは、それぞれのお立場から御意見があろうかと思いますが、私は、本年に関する限りは大体需給はそれほど緊迫をいたしておらない、かように考えております。ごく大ざっぱに申しますと、生糸そのもの輸出並びに輸出織物国内消費等を合計いたしまして、本年の需要の見通しは約四十万俵ではなかろうか。それに対しまする供給は、今ここに問題になっております生糸そのものが放出されるといたしますれば、大体四十二万俵と推算をいたされますので、少し余るという計算を私はいたしております。  では、来年はどうするのだ、こういう御意見もあろうかと思いますが、これは、ただいま申しましたようにちょくちょく警戒警報も出ておりますが、ことしと同様ならばという前提なれば、私は、来年は少し緊迫をするのではなかろうか、かように考えております。しかし、これは本年と同じような需要があるならばということがついておるわけでございます。私ども機屋さんのふところの中のことはよくわからないので、あるいはおしかりを受けますかわかりませんが、輸出織物につきましては、私は、ものによりましては二十万ちょっと上でもまあ損はなさらないのじゃないか、しかしながら、二十万何千円とかとなりますと、やはり織物輸出が減ってくるのではなかろうか、かように考えております。ただいま非常に高い生糸が売れているじゃないかということでございますが、これは、先売りをいたしまして、糸の手当ができていない。高くても何でもやむを得ず買うのだ、こういう形が出ておるのだというように考えております。  時間もございませんが、もうちょっとお許しをいただきたいと思います。俗に、山高ければ谷深しということを申しますが、ここで極端な生糸値段の高騰というものがございますと、私は予言者ではございませんから口幅ったいことは言えないのでございますが、またまた政府がお買い上げになるというような時期が比較的早く来るような気がいたしてなりませんので、きょうはいろいろ輸出織物方々もおいででございますし、需給関係につきましては、これは私なりの考えでございまして、御反対の御意見もあろうかと思いますが、どうかよろしくお教えをいただきたいと思います。  以上でございます。
  10. 吉川久衛

    吉川委員長 次に、茂手木参考人お願いします。
  11. 茂手木三良兵衛

    茂手木参考人 私は、平均十かまの小さな、千三百の製糸企業者の代表でございます。小さな工場は、それぞれの立場において養蚕農家と直結しておるわけであります。従いまして、ただいま細井さんのおっしゃったように、養蚕業者が不安定であってはなりません。また、養蚕業者と常に運命をともにいたしておりますので、ほとんど養蚕業者に近い存在でございます。細井さんのおっしゃった、養蚕業者としては価格が不安定では困る、去年のようにひどい目にあっては困るというお言葉でありますが、全くそうであります。ここに蚕糸政策を確立せんければならぬという政府のお考えは、当然だと思っております。たとえば、養蚕にいたしましても、桑を植えて三年ないし五年たたなければ収穫期に到達いたしません。この収穫期に到達いたすべき際に、ただいま安田さんのおっしゃったように、山高ければ谷深しというような目にあっては、養蚕業者は立ちません。従って、われわれ業界も立ちません。ここに蚕糸政策を安定帯の上に置いていただきたいということで、これによって国際信用を確立するという政府のお考えに対して全幅の敬意を表するものでありまして、かように熱狂する相場に対して、手持ちのものがあるならば、これも市場に投入してこれを鎮静さすべきが政府の役目であろうと思うのでありまして、本法案を立案なさった。考えもここに存すると思います。養蚕業者としては、またわれわれ弱小製糸業者としては、安定帯の上に自分の業を営んで参らねばならぬという存在でありますので、いわば製糸業者ではありますけれども養蚕業者であり、養蚕業者であると同時に、その延長、最終産業である国用製糸協会でありますので、これらの面から考えますときには、どうしてもこれを安定帯に置かねばならぬと思うのでありまして、あるいは思惑その他の同等がありましょうけれども、この熱狂した相場を安定帯に取り戻すべき当面の責任が政府に存することと私は考えます。  かようにいたしまして、養蚕業者やわれわれのような弱小業者を擁護さるべき立場ではないかと考えておりますので申し上げますが、去年政府製糸協会百七十の企業者からは十九万円で買い上げました。しかも、そのとき製糸業者は、細井さんもおっしゃいましたように、ことしは繭は要らぬのだというようなお話でありまして、政府は誓約書を取って八千七百五十掛で十九万円の糸を買収した歴史があります。本年は各県の協定が大体九千五百掛で、一千掛高くなっております。十八万円の最高値段の際に一千掛高い値段で買い上げ協定ができております。すなわち、昨年の十九万円で政府がお買い取りなさったことは失敗であり、本年のところが至当であるわけであります。昨年は五万三千円という繰糸経費を認容して十九万円でお買いになっておりますが、これは現局長、現次官、現大臣がおやりになったのではなく、前任者がかように不当に高い糸をお買い取りになって、これによって蚕糸業を安定しようとはかったのでありますが、この方策に誤りがあったことを私は指摘せざるを得ないと思うのであります。それと同時に、われわれ千三百の企業者は、一すがも政府にお買い上げいただいておりません。しかも、昨年の春の八千七百五十掛の協定値段は、国用製糸協会としては買い取るべきである、これによってあるいは業者が損害をするであろうけれども、約束を実行すべき存在であるということのために、約百万貫ばかり買い上げまして、それによるところの損害が約二、三億円になると思います。これを当委員会の諸先生方お願いいたしまして、われわれの糸もお買い上げが願いたいということを申し上げたことがありますが、その際諸先生方からは、そうだ、それに相違ないと御賛同を得たことがありますけれども、それも一すがも買っていただけずして苦戦難闘した国用製糸協会の人々は、今や全く地位転倒いたしまして、セールスマン、バイヤー、ボイラーマンであるところのわれわれ業者は、自分の苦しいことは克服して、国策に順応して、蚕糸政策を安定せんければならぬという立場から、この間からしばしば政府及び国会等に陳情し、お願いいたして参ったのが実態でございまして、これは当然過ぎるほど当然の行動だと私考えております。  かようにして、蚕糸政策を確立することこそ、日本の養蚕農家及びわれわれの生命となるんではないかと考えておりますので、私の協会でも、役員及び総会等に諮って、政府の政策に順応することに決定いたして、過日来国会及び政府お願いをいたして参っておる次第であります。ゆえに、この際、この法を通過なさって、熱狂せる相場を安定帯に置くべき必要があるではないかと私考えております。  私、政策のことにまでタッチいたしてまことに申しわけありませんけれども、業の実態は政治と経済とのつながりがありますので、かように申し上げる次第であります。
  12. 吉川久衛

  13. 滝澤清見

    滝澤参考人 私長野県の組合製糸北水社の滝澤でございます。組合製糸というものは養蚕家の委託を受けまして生糸を作ることが商売でございます。  政府の去年作りました、考えましたことは、あの暴落の際に考えたことでございまして、安定帯価格というものはその当時は需給均衡価格であったようでございます。しかし、ここへきてからは、需給不均衡価格であると私は考えるわけでございます。しかも、この価格は、養蚕農家の繭生産費をはるかに割ったものでございます。これを強行していくという政府考え方は、国民所得を倍にしていくという政府考え方の中にあってただ農民だけが所得を半減していくという結果になるおそれがあるわけでございまして、矛盾もはなはだしいわけでございます。昨年最低糸価十九万円というものを守り得なかった政府の不手ぎわについては、海外からも非常に不信を買ったわけでございます。ことしこそは何とか安定していこうということで、福田先生初め大みえを張っておられるわけでございますが、内外の市場の動向、絹の需要というようなことについて把握が不十分であったり、需要を過小に見たということで、去年養蚕農民に桑園の整理を強要した。先ほどどなたかからも申されましたように、ひどい目にあったわけでございます。そんな縮小均衡方針というものをとったために、非常に底がたく伸びてきました需要に対して、不均衡を生じて現在に至ったわけでございます。今なおその方針を変えようとしない政策の不手ぎわには、私どもは驚かざるを得ないわけでございます。  政府は実勢糸価をはるかに下回る十八万円を法改正によって堅持しようとしておるわけでございますが、生糸の低価格政策だけが絹の需要を増大していくということには当たらないわけでございまして、低価格政策だけが絹需要の唯一の道であるということは、一を知って十を知らない政策であると私は考えるわけでございます。絹の需要開拓ということについては、ただ業界にまかせるということでなくて、政府みずからももっと積極的に開拓に努力すべきであると考えるわけでございます。  このごろ、安定法に基づきます生糸を法第十二条によって買いかえるとか申されまして五千俵ほどの安売りをいたしたわけでございますが、これに対しましては四万俵もの買い入れが殺到したことは御承知通りでございます。糸価安定どころではない。糸価不安定の結果を招来しておるわけでございまして、この政策がいかに誤っておるかということを雄弁に物語っておるわけでございます。実勢糸価をはるかに下回る十八万というような価格が時価だということには私ども納得できないわけでございまして、法に規定されているように、はたしてこの価格で買いかえができるのであろうかと私は非常に疑問でございます。もしできるとするならば、直ちに買い入れの措置をとっていただきたいと思います。そうすればおのずからはっきり答えは出るはずでございます。  法を改正しなくて法の拡大解釈でいいということであれば、何もこの臨時国会に提案する必要はないはずでございます。しばしば法を勝手に拡大解釈する政府のことでございますので、やりかねないことであると、非常に遺憾に思うわけでございます。法治国の一国民として嘆かざるを得ないわけでございます。政府側に立っております某有力議員さんは、政府生糸を保管しておると金利や倉敷もかかる、これを市中に放出すればそういう費用もかからないで済むということを言った方もあるわけでございます。しかし、その費用よりも、二十万で売れる糸を十八万で売ったということの国の損失額の方が、私の算術でははるかに大きいというふうに思うわけであります。その名前は申し上げませんが、そんなことを言う人もあるわけでございます。国有財産の処分というようなことから考えましても、この措置は全く適切でないというふうに考えるわけでございます。なお、この反面において不当の利益を得る者が生じておるわけでございまして、その反面、国家的の損失であり、やがてはこのしわ寄せが養蚕家や特に中小企業の製糸にしわ寄せされることは明らかでございます。従いまして、私は、この政策には絶対反対を唱えるものでございます。  私は、需要が今後の努力によってさらに続いていくというふうに考えるわけでございまして、政府の縮小政策というものが、やがて来年の春繭出回り期等において非常な挫折を来たすわけでございまして、今日にも増して需給の不均衡を生ずるということを心配するわけでございます。先ほどどなたか申されましたように、ここで法律を変えるということが、山高くして谷深しということになることを憂えるわけでございまして、蚕糸業の将来のために非常に嘆かざるを得ないわけでございます。また、某議員さんは、去年は機屋さんが、また輸出業者の人たちが非常に損をしたと言う。一体、去年一番みじめな、最低生活もでき得なかったものはだれでありましょうか。養蚕農民であったはずでございます。少なくとも、農林省の当局、また農林委員先生方においては、養蚕農民の生活ということについてもう少し愛情をいただきたいと思うわけでございます。強引にこの法案を改正いたしまして、生糸を放出するということになりますと、これに思惑等が加わりまして、糸価はますます不安定になってくる。こういうことが、やがて、十八万堅持ということよりも、さらに、海外から不信を抱かれる、非難されてくるということになるように私には考えられるわけでありまして、こうしたことが、せっかく芽ばえて参りました日本蚕糸業の芽をつむことになりはしないかというふうに憂えられるわけでございます。ここでこの法を改正するということを直ちにやめていただきまして、通常国会において、蚕糸業に携わるすべての人の頭脳を結集いたしまして、日本蚕糸業の将来のために抜本的な対策を立てていただきたいということを切望してやまない次第でございます。  私は、需要はまだ現状を持続できるというふうに考えられるわけでございます。先ほども申し上げましたように、このことについては、業界にただまかせるということでなくて、政府みずからも一つ大いに新しい絹の開拓に向かって努力してほしいということをお願いするわけでございます。  ここで十八万放出によって生糸を安売りすることによって、糸価が一時的には安定するでございましょうが、先ほどどなたか言われましたように、山高ければという、そのことを私は憂えるわけでございます。よって、こんな法案に対しては絶対反対を唱えるものでございます。  以上でございます。
  14. 吉川久衛

    吉川委員長 次に、海沼参考人お願いします。
  15. 海沼栄祐

    海沼参考人 私は、日本生糸問屋協会を代表いたしまして、意見先生方に申し上げたいと思います。生糸問屋業者は、生糸生産者と消費者の中間にあって、両方の事情によく精通しております。従いまして、蚕糸業の問題につきましても比較的公平な意見が申し述べられると思います。  私どもの業界の構成からまず申し上げますならば、日本生糸問屋協会は全国生糸問屋をもって組織しておりますところの協会でありまして、協会員の取り扱う生糸の数量は、輸出織物、さらに内地絹織物の原料糸の九割を取り扱っております。従いまして本年一月から十月までの生産されました数量が大体二十六万三千九百三十九俵、そのうち、内地で引き渡されました数量が二十二万四千九十俵、こういうふうな状態でありまして、生糸問屋が取り扱っておりますところの数量は十九万六千六百八十八俵ということで、全体の八割八分を生糸問屋が扱っ  ておるのでございます。  昨年、十九万円で糸価を堅持するという政府のたびたびの声明にもかかわらず、生糸価格は暴騰暴落を繰り返し、結果といたしまして、内外の生糸消費を著しく減退せしめたばかりでなく、生糸を取り扱っておりますところのわれわれ生糸問屋も非常な損害をこうむっておったのが現状でございました。  本年三月の繭糸価格安定審議会におきまして、臨時措置法で買い入れた生糸の売り渡し価格は十八万円と決定された。生糸最高価格は二十三万円に据え置かれたが、当時政府は十万俵の生糸を保有していたのでありますから、内外の生糸関係者はほとんど十八万円が実質的な最高価格であると確信しておったのでございますけれども生糸の先約定も、また織物の契約をしてきたことも、これによってやってきたのでございます。本年度生糸及び絹織物輸出が増進し、内地消費も増加したことは、内外の景気の好転といういろいろの原因はありますが、ことしこそは糸価が安定するであろう、こういうことで、内外の生糸関係業者、ことに消費者に安心感を与えたことが最も大きな原因であると確信ができます。     〔委員長退席、丹羽(兵)委員長代理着席〕 その意味におきまして、今日まで蚕糸局のとった十八万円堅持は、いろいろの批判もありましょうが、生糸消費の増進の立場から見まして適当な政策であったということが感じられます。  私の方の協会にいたしまして、今月の七日開催の常任理事会において、各地の綿業事情について率直な意見を述べさせましたが、現在の生糸価格では、輸出織物で採算のとれるのは軽目羽二重、さらにパレスくらいのものでありまして、その他の輸出織物はもう引き合わなくなったということになっておるのでございます。ことに、内地で最も生糸消費いたします丹後にいたしましても、また西陣にいたしましても、この十月以来の値上がりで消費は非常に減退をしてきておりまして、先ほど安田さんからも意見が出ましたごとく、機屋はことしは十月以前は採算はとれましたけれども、これは非常に安定しておったために活発な取引ができたということでありますが、十一月に入りましてからは、生糸は現在のように価格が騰貴いたしましたために、需要はだんだん減ってくる。ことに、京都の織物問屋筋には、小売が売れないために、小売問屋に行かないために、絹織物の滞貨は非常にふえてきて、織物生産地に向かって注文がないということで、すでに丹後及び西陣の機屋にも製品が停滞しておるということ、さらに京都の織物問屋にも相当数量の品物が停滞してきておるということが現実の状態でございます。  昨年の糸価の暴騰暴落を繰り返した際、私ども日本生糸問屋協会は、糸価を実勢で安定することが生糸需要増進上最も必要であるということを、国会の農林水産委員会、さらにまた政府当局者にもしばしば陳情をしてきたのであります。しかし、現在及び近い将来の実勢糸価幾らであるかと認定することは非常に困難なことであると思います。また、これは蚕糸業界のだれにも容易にわかることではないと私は確信をしております。でありますから、今後の政府生糸価格の問題や、また、さらに、売り渡しに対しましては、私は、この法案の国会通過を早くして、この業界を安定させる意味におきまして、業界の総意をもって決定しておるところ繭糸価格安定審議会等に、価格の面でありますとか、また放出の方法等に対しては諮問されることがこの際最も適切なことではないかということに考えております。なお、また、今日までの売り渡し方法については、実際の生糸需要者に行きませんで、一部思惑筋に入ったきらいが多分にございます。そういう思惑筋から実需要者が買っておるために、また非常に大きな損害も起きておることが実際の問題でございます。今後国内に放出する生糸に対しましては、伝統と経験の深いわれわれ日本生糸問屋協会の会員を十分に御利用願ってこそ正しい生糸の流れが行なわれていけるということは事実の問題であります。常に私は言っておりますが、蚕糸局及び農林水産委員会先生方が、日本生糸問屋協会の現実の姿、また、中間に立って潤滑油的な役割を果たし、さらにまた小さい機業家に対する金融問題等はわれわれ日本生糸問屋協会員がやっておるということを十分と御理解、御認識を願いまして、今後におきましては、生糸の正しい流れをさせるという意味において、十分と日本生糸問屋協会を活用していただきたいということを特にお願いを申し上げる次第でございます。  なお、いろいろ意見も持っておりますが、時間等に制約があるということを聞かされておりますから、先生方のお手元に、この間実は常任理事会等においていろいろ研究しましたことをプリントしまして届けてありますから、どうぞおひまを見ましてごらんを願いたいことを特にお願い申し上げます。  私から申し上げることは以上でございます。
  16. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員長代理 次に、日本絹人繊織物工業会会長茂木富二君。
  17. 茂木富二

    茂木参考人 私は、全国の絹人繊織物業者の中央団体であります日本絹人繊織物工業会茂木でございます。本日この委員会におきまして私ども業界の実情を申し述べさせていただくことを非常にありがたく存じておる次第でございます。     〔丹羽(兵)委員長代理退席、委員長着席〕  私ども業界は過去十カ年ほどにわたりまして不況のどん底に悩み続けて参った次第でございますが、政党の諸先生方関係当局において特段の対策をいろいろと立てていただきまして、ようやく業界が明るさを取り戻しておるような次第でございますが、ことに、今春も、生糸価格を実質上十八万円というところで頭を押えてこれによりまして糸価の安定が一応ここに確立いたしまして、海外からも相当な注文もあり、また国内の業者もこれによりまして生糸消費に力を注いできた。その間、織物研究に、また宣伝に、私ども業界はあげて努力をして参った次第でございますが、昨今に至りまして、一部の思惑業者の関係か、異常の価格の高騰によりまして、私ども業界は今度はまた非常なる混乱に遭遇する次第でございます。  実は、輸出の好調と申しましても、十八万円以下で糸が入るということを確信いたしまして約定を進めて参ったのでございます。従いまして、その後における高騰によりまして、織物はすでに何カ月も先物を売っておりますから、やむを得ず高い糸でも補充買いをしなければならない。その手当買いのために高いものを買うというために、機屋は非常な損失をしながら苦労しておる次第であります。ことに、内地におきましても、その他の化学繊維、ことに合成繊維のすばらしいものができておりまして、だんだんとこの方が進んで参りますために、絹の織物価格が高いと、売れ行きがまことに不振である。この点はいずれの産地でも今困難をいたしておりまして、ことに輸出の方におきましては、その後高い価格で算定をいたしましたものには、全く注文はとだえておるという次第でございまして、この絹に関連しました絹紡糸のごときも、実は十貫目建十万円のものが十数万となりましたところが、これも全く絶えて、今業界では、ほんとうに機場は遊び、やむなく合繊の方に変わらざるを得ないというような状況に置かれておる。これは絹織物を通して全般に言えることでございまして、この点につきまして何とかしてこの適正なる価格の安定が望ましいと私ども考えておる次第でございます。  この際、御参考までに、これは生糸と非常に深い関係があると思いますので、申し上げてみたいと思いますのは、オーストラリアの私どものような織物業者がたまたま来朝されまして私どもよく懇談の機会を得ましていろいろ伺いました。ただいま世界の各国をあげてこの合繊あるいはその他の化学繊維に非常に力を入れており、天然繊維であるところの毛と生糸はいつもそうした新繊維の的になって、絹に近いとかあるいは毛に近いとかいうような糸が次から次へとできておるときにあたって、オーストラリアではこれに対する対策はどうだと聞いてみますと、これは、毛にまさるといっても、実は、いまだに三割とかあるいは五割の混紡というようなことで、毛がよいことはわれわれは確信を持っておる、しかしながら、今までにこのオーストラリアが世界各国に占めておるところの市場を絶対失わないようにするためには、何としても他の繊維との競争に打ち勝つことだ、それには、毛の質をよくすることと、量を適正に作ることと、価格を上げないことなんだということで、ただいま人口の十七倍とかに羊を増殖いたしまして、適正なる数量にいたしまして、この世界のマーケットを押えていくということを力説されておったのでございまして、私どももこの点は参考にすべきだ。ただ一時の好調につられて価格を上げて世界の市場を失うようなことがあったらどうなるかということを心配するものでございます。  そこで、私どもがぜひお願いいたしたいことは、今度の安定法の一部改正をぜひとも一つ御決議をいただきまして、この実質上十八万以下で買えるような、そうした、業者も安定しまたその他取り扱い業者も安心をして扱えるような措置お願いを申し上げたいと思うのでございまして、私どもは、決して、養蚕家製糸家の御要望の価格を上げることをいじわるく押えるということは考えておりません。これは、共存の意味におきまして、この絹の好調をどうして持続せしめるかということが肝要だと思うのでございます。先般ストラスバーガーさんがおいでのときにも、まずこの絹の好調はアメリカで続くかと言ったところが、どうして続かせるかということはこちらから聞きたいと言っておりました。その通りでございまして、私どもは、ぜひともこの際そうした適切なる処置を願いまして、この生糸の好調がますます続きますよう念願してやまないのでございます。私どもの団体は、実は中間の消費者とでも申しますか、この生糸の三分の二を消費いたしておる団体でございます。どうぞ私ども意見も何とぞお聞き取りのほどをひたすらお願いを申し上げる次第でございます。  なお、非常に大事なことを申し落としましたことがございます。実は、御配慮いただいておる放出生糸が、私どもの必要とする業者に渡りませんで、一部の商社あるいは思惑業者の手に移るということは非常に残念でございます。これは、聞くところによりますと、商社の方では大へんな人数をその申請人として出して、その当たる率を多くするというようなことで、巧妙な手段でこの糸を受けているようでございますが、どうか、この点につきましては、実際上この輸出あるいは内需にほんとう消費をしておるところ織物業者にスムーズにこの糸が渡りますよう、この点をお願いを申し上げる次第でございます。  私の申し上げることは以上でございます。
  18. 吉川久衛

  19. 肥田啓治

    肥田参考人 私は、すべての産業というものは、生産消費がバランスがとれなければ健全に進まないと思います。ましてや、生糸は、非常に競争繊維の進出が激しくて、消費の方にいろいろ消費宣伝とか努力をいたしておりましても、なかなかに進みにくかったわけでございます。しあわせにも、ことしは、経済界がよくなったせいもございましょうし、また、先ほどどなたかおっしゃったように、糸価の安定、糸の値段が無理がなかったせいか、年度始まって以来ほとんど今までにないほど消費が伸展してきたことは、まことに業界のために御同慶だと思っております。これが進んで参っておったとたんに、この上値が切れてしまったので、それからは新たなものであまり海外の取引もはずまないというところになっております。従ってこの臨時措置法の一部改正というのは、この年度内におけるある一つの消費者全部の者に約束されたようなものをそごさせないための手段というふうに私は考えております。従って、少なくともこの年度内にその変化がないために、すみやかにこの問題が解決されることを希望するわけでございます。この問題は来年度になるといろいろと心配なこともあるのでありますが、来年度はまた来年度の新しい一つの情勢判断において業界との約束ができてくるわけであります。本年度進行中にこれを変更することはゆゆしい問題だと考えるわけで、この改正法に賛成いたすわけであります。そして、その供給の方法だとかいうことは、よほど慎重に、今まであったような害のないようにしていただかなければなりませんが、年度の途中でちぐはぐでごたごたもたつくということは大へん困ることであります。今後ともまた蚕糸業発展のために何らかの暴騰暴落を防ぐ制度はもちろん考えられると思いますが、いかなる案が出ましても、実際に年度の途中でごたごたするということになりましたならば、大がいの人はだれも日本政府のやることに信頼を持たないと思います。それは将来に非常に大きなマイナスを植えつけるものであって、この年度内はスムーズに一つのことが進んでいくために、この法案のできることが大事ではないかと思います。
  20. 吉川久衛

    吉川委員長 次に、小島参考人
  21. 小島周次郎

    ○小島参考人 横浜取引所の小島でありますが、取引所の意見を申し上げます。  取引所といたしましては、生糸の相場が自由であるということが最も望ましいことでありまして、生糸はあくまでも取引所の操作によりまして公定相場が作られるということを私としては非常に念願としておる次第でございます。しかしながら、取引所といたしましては、政府が一たんきめられた措置に対してはあくまでも協調しておるのであります。従って、二十四万円の繭糸の最高価格をきめられたときも、あくまでそれに協力いたしまして、絶対にこれに違反した行為はなかったのでございます。このたびの十八万円の政府の売り出し価格につきましても、取引所としては全面的に協力をいたしておる次第でございます。  しかしながら、相場が時により必ずしも予期した範囲内にとどまらないで一時的に安定帯を飛び出すことがあるのでございます。ことに、かような場合に、取引所といたしましては、売方は自己の防衛上踏み上げを余儀なくされる場合があるのでございます。かようなことが次々に行なわれますと、非常に思惑を助長するのでございます。今回政府の保有生糸を十八万円で取引所の渡し方に提供していただきまして、これを受け渡しにより決済をさせることが最も妥当であると考えられます。当局におきましても同じようなお考えでありましたので、受け渡しの各限月につきこれを保証願いまして、大体横神両取引所で所要量二万俵、これに対して当局も了解をせられまして、不当の相場を出さないように措置をとっておるのでございます。  なお、取引所といたしましては、現在の供用品は二十一中が根本でございましたのが、その場合に政府の糸が二十一中だけでは二万俵が足りませんので、十四中もこれを供用品として、八格を提供してこれに充当する、しかしながら、既存の建玉に対しまして供用品の変更をすることは異常なことでございますので、これも政府の御趣旨は命令と解しまして、その受け渡しの供用品を変更して、受け渡し品の確保の完全な措置を相互に講じたのでございます。従いまして、来年五月三十一日までの限月におきましては、いかなることがありましてもこの三つの条件が欠けましては、清算市場が全く収拾のつかない事態に陥るのでございます。これは取引所を利用される方々に思いがけない損害を与えるわけでございますので、この二万俵の糸の確保をぜひお願いする次第でございます。  なお、生糸の相場の低落した場合におきましても、取引所はその暴落の措置に当たりまして、その供用品規格を変更いたしまして、その当時四格であったものを二格に改めましたり、格のデニールその他につきましても検査内容を変えまして、暴落を防いだ例もございます。なお、取引所が現在まで政府といろいろ折衝したことを申し上げます。十月十四日に、蚕糸局長声明をもちまして、最近生糸の清算相場が投機性を濃くし、市場の先高不安を助長していることにかんがみ、蚕糸局は次の措置を講じて安定価格に万全を期する。一、清算相場の思惑高を防止するため、必要がある場合には取引所の受け渡し供用品の範囲拡大の措置をとらしめることがあるものとする。二、当月限につきましては受け渡し品の確保をはかるため政府生糸の売り渡し措置を実施しているが、先限、各限月につきましても受け渡し生糸を確保する措置を講ずる。かような蚕糸局長声明をいただいております。  十月二十一日には蚕糸局にわれわれ代表が呼ばれて参りまして、その結果、この供用品の先ほど申し上げました現在の二格のものを八格に拡大することを局の御命令と解しまして、それからこれを実施しております。これは、取引所といたしましては、先ほど申し上げました通り、既存建玉の供用品の範囲を変更するということは普通ではできないわけでございますので、それは局の御命令と解しましてこれを拡大したのでございます。  なお、取引所といたしましては、蚕糸局長の声明によりまして全限にわたりまして受け渡し品を確保することを容易にするために、会員全体の玉を全部制限をいたしまして、十一月十七日現在の建玉一万四千五十俵、これを横浜におきましては限度といたしまして、この政府臨時措置法の糸をいただきますように、この玉を制限したのでございます。なお、現在の建玉は一万四千五十俵でございます。  さような状態でございまして、かような現在の取引所の建玉に対します政府措置法によります糸がいただけませんと、取引所としては重大なる結果を来たすのでございます。横浜取引所は、全国における、世界における唯一の取引所でございまして、これが受け渡しが完了しない非常に不祥な結果が起こるようなことになると、蚕糸界全般に対する重大なる波紋を起こすのであります。この点を十分御了承願いまして、この確保ができますようにお願いしたい次第でございます。
  22. 吉川久衛

    吉川委員長 以上をもちまして全参考人意見の陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。質疑は通告に従いまして順次これを許します。  金丸信君。
  23. 金丸信

    金丸(信)委員 日絹の茂木さんにお伺いいたしますが、国際信用をなくして、世界市場をなくしては困るということは、これに携わる業界すべての人の考え方であろうと思うのであります。外国との取引におきまして、いわゆる十八万円べースで先契約をしておる量はどのくらいありますか。また、業者がこれに対する原料の手当をどのくらいいたしておりますか、伺いたいと思います。
  24. 茂木富二

    茂木参考人 ただいまお尋ねの数字は、はっきり把握はできませんが、いわゆる商慣例といたしまして、まず先契約をいたします。そうして、価格が安定しておりますれば必要な糸だけ買って出るのでありますが、その量ははっきりいたしませんけれども全国各地でございますので、いずれまた機会を得て十分に調査をしてみたいと思いますが、そういうのが各地からの声でございます。  それから、各輸出商の関係におきましては、輸出織物業者におきましては、その糸が安いときには注文がありましたけれども、昨今のような新しい価格において算定をいたしたものでは注文がなくなっておるのであります。これは糸の入手がはっきりいたしませんと注文が取れないために、業者は安い注文は見送っております。従いまして、きわめて商談が不円滑でございまして、機場があくというような状態に立ち至っておるのであります。
  25. 金丸信

    金丸(信)委員 政府の保管しております糸につきまして、これを放出する方法の問題につきましてはいろいろ意見があるわけでありますが、長年茂木さんが携わっております経験の上から見て、——これはわれわれは常識ではこう思うという考えも持っておりますが、しかし、長年この業界に携わっておるあなたの立場から考えてみまして、この生糸の放出の方法はどういうような方法をもっていくことが最適であるかというお考えがあろうと思いますが、この点を伺いたいと思います。
  26. 茂木富二

    茂木参考人 生糸の放出につきましては、いずれそれぞれの商社その他のルートもございますので、これは私どもも通してもらうことはけっこうだと思いますが、結局、安い価格で放出された糸にまたプレミアムが何万円つくというようなことで私どもが糸を受けねばならぬということでは、せっかく海外の注文があっても受けることもできないので、この点は、どうか私どもが放出価格で適正な——商社のマージンは当然あってしかるべきですが、そうした不当なるアップがつくことのないようお願いを申し上げたいと思うのでございます。
  27. 金丸信

    金丸(信)委員 この放出の問題につきまして、先般の政府の方針に対しましてはいろいろな非難の問題も耳にいたしておるわけでありますが、日本生糸問屋協会でいわゆる織物関係あるいは輸出関係を扱っておる生糸の量というものは非常に多い、七割何分かを占めておるという話も承っておるのですが、この協会が一番業者を把握しておると私は感じておるのですが、こういう問屋を通して政府の厳重な監督のもとにこれを放出していくということはどうかと思いますが、その点のお考えを承りたいと思います。
  28. 茂木富二

    茂木参考人 私どもは、糸を取り扱う糸商の団体と日本絹織物工業会とでよく折衝いたしまして、適正なる価格で真の消費者に十分に渡るように、また役所にも御配慮いただいて定めたらいいのではないかと思っております。適正な案はただいま持ち合わせがございませんが、大要考えられることはそう思っております。
  29. 金丸信

    金丸(信)委員 海沼さんに伺いたいのですが、きょうまでの政府生糸の売り渡し方法につきましていろいろ疑義があるようでありますが、長年この業界で御苦労なさったあなたのお考えを承りたいと思います。
  30. 海沼栄祐

    海沼参考人 ただいま金丸先生から御質問がありましたが、先ほど私の意見陳述の際に申し上げましたように、わが国の生糸生産されておりますところの八割八分まではわれわれ生糸問屋業者が扱っております。こういうここから考えまして、まず、この間政府が五千俵の生糸を放出したのは、その放出方法について非常に欠陥が多かった。従って、先ほどもどなたか申されましたように、五千俵の放出に対して、ある大商社は四千俵も申し込んだ。また、それが抽せんというような結果、多く申し込んだものには原則としてこれは抽せんでも多く当たるということが当然のことであります。そうした糸で思惑の商社に売り渡されたものは現在まだ倉に眠っておるということで、実際の機屋さんとかあるいは撚糸屋さんの当てにしておった者にはほとんどいかなかった。こういうような実情から考えまして、何と言いましても、うぬぼれたことや、さらに自己だけを満足させるという意味ではなくて、この生糸問屋は長年の経験を持っておるのでございます。こういう団体を利用してこそ正しい流れができるのではないかというふうに考えております。どうか、今後の方針にしましても、いろいろ方法もありましょうが、常にこれをもって天職としておりますところのわれわれ日本生糸問屋協会をあくまでも活用していただくということを、私は先生方お願いいたしたいと思うのでございます。
  31. 吉川久衛

    吉川委員長 金丸君に申し上げますが、質問者が非常に多いので、そのおつもりで、なるべく簡潔にお願いをいたします。
  32. 金丸信

    金丸(信)委員 承知しました。  いま一つ海沼さんに伺いたいと思うのですけれども、今後の生糸の売り渡し方法についてお話を承ったのですが、政府がここで手持ちを一度に放出するということによって一応の安定はつくという見方もありますし、また、放出して現状の価格を維持しても、政府考えているような方向にいかないというような考えもありますし、青天井になるんだという考えもある。私たちの一番心配するのは、青天井になったあとの養蚕というものが、農家が来年の繭を生産するときになっていわゆるがた落ちになるということを一番心配するわけでありますが、それに対していかようなお考えをお持ちですか、伺いたい。
  33. 海沼栄祐

    海沼参考人 この問題はなかなかむずかしい問題でありまして、おのおの業者間におきましても見解の相違がありますけれども、これは、常識的に考えましたならば、物が高くなるぞというときには、これは中へ眠らせておいてなかなか出さない。けれども、数量を多く出して、ために価格が安くなるというようなことになれば、今みたいな値段でなくて、いわゆる安定した値段でもって商売ができるのではないかということが、これは考えられます。そういう意味合いにおきまして、ここでどういうふうにしろということは、私の立場上申し上げられませんが、このことは、私は、繭糸価格安定審議会に今後の繭価の安定に対する諮問もされ、そうしてここでもって十分放出方法に対しても検討していただくことが一番妥当ではないかというふうに考えております。
  34. 金丸信

    金丸(信)委員 国用製糸茂手木さんに伺いたい。ここに、安田さん、滝澤さん、茂手木さんの御意見を承りまして、企業としては一番小さい国用生糸関係茂手木さんは政府原案に賛成であり、滝澤さんは絶対反対であるという御意見を承ったのですが、私は、むしろ茂手木さんが滝澤さんと同じように絶対反対であるべきだというお考えを持つべきではないかと思うのですが、茂手木さんのお話を承りたいと思います。
  35. 茂手木三良兵衛

    茂手木参考人 私は、業界を指導いたしまするのに、ただ単に業者の利潤によってのみ動くべきものではない、永久の考え方で業界を指導すべきだという考え方でありますので、私の団体におけるすべての理事たちは私と同一の歩調でおります。長野県の山岡君とか、群馬県の細井君とか、みんな同様でございまして、これは万やむを得ないことであります。私は、一言申し上げると、中澤先生や芳賀先生がそこにおられますが、(「おかしいよ、きょうは」と呼ぶ者あり)——いや、おかしくはない。これが当然とるべきわれわれの態度だと思います。かようにいたしまして、安定せる基盤においてわれわれは業を安定せる方向に進めて参るという考え方でありますので、私、これを申し上げておきます。従って、業界の指導者は同様な考えを持っておりますことをこの機会に申し上げておきます。
  36. 金丸信

    金丸(信)委員 養蚕農家として出席しております細井さんに伺いたいのです。私は山梨県の出身でありますが、山梨県の農家は、いわゆる政府の十八万という問題についてはいろいろの問題はあるわけでありますが、政府の持っておる生糸を放出することについては賛成だ、こういう意見も非常に強いのですが、あなたはどういうお考えか、承りたいと思います。
  37. 細井金義

    細井参考人 私ども農民立場といたしますと、結局、この安定法によって、従来は二十何万、最高価格が二十九万だったかと記憶いたしますが、それを十八万現行価格に引き下げるということは、われわれ蚕を飼う農民といたしまして、養蚕業に対して非常に不安を感じるわけであります。なぜならば、当然繭一キロ当たりの値段は下げられることになるからでありますが、そういうような政策につきましては農民の声としては、絶対許すべきものではない、ことしあたりの相場千七百円を最低限とした繭糸価格の安定を考えてもらいたい、こういうのが農民考え方でございます。
  38. 金丸信

    金丸(信)委員 ありがとうございました。
  39. 吉川久衛

  40. 高石幸三郎

    ○高石委員 ごく簡単にお尋ねいたします。  まず横浜取引所の小島さんですが、今、当限の相場と現物の相場は違う。当限は十八万だが現物は二十万しておる。どういうわけでそうなっているのですか。
  41. 小島周次郎

    ○小島参考人 先物の値段はやや一致しているわけですね。
  42. 高石幸三郎

    ○高石委員 当限が十八万で、しかも現物は二十万というのは、どうして差があるのですかと聞いているわけです。
  43. 小島周次郎

    ○小島参考人 それは、受け渡し現物を政府からもらうことになっております。
  44. 高石幸三郎

    ○高石委員 ほんとうのことを言って下さいよ。つまり、大臣もたびたび時価の問題でわれわれ委員の質問に答えている。当限は十八万、しかし現物は二十万であるから、時価はわからぬということを言っているのです。どうしてこうなっているのか、はっきり言いなさいよ。
  45. 小島周次郎

    ○小島参考人 政府の現物は大体当限に対して確保してもらうということになっております。
  46. 高石幸三郎

    ○高石委員 そうすると、当限に対してはどのくらい受け渡しの見込みですか。食い合わせがどのくらいで、受け渡しはどのくらいでするつもりですか。当限ですよ。
  47. 小島周次郎

    ○小島参考人 大体現在二千六百二十俵ですね。
  48. 高石幸三郎

    ○高石委員 現在食い合いは幾らですか。つまり、建玉は幾らですか。
  49. 小島周次郎

    ○小島参考人 二千六百二十俵ですね。
  50. 高石幸三郎

    ○高石委員 二千六百二十俵のうちで、現物受け渡しの見込みは。
  51. 小島周次郎

    ○小島参考人 受け渡しの見込みは二千六百俵ですね。     〔「大きな声で言って下さいよ」と呼ぶ者あり〕
  52. 吉川久衛

    吉川委員長 もう少し大きな声でお願いします。
  53. 小島周次郎

    ○小島参考人 大体二千六百二十俵でございますね。
  54. 高石幸三郎

    ○高石委員 そうすると、現在の建玉、売買の玉はすでに解けないということですね。から売り、から買いはないということですね。
  55. 小島周次郎

    ○小島参考人 最終におきましては多少変化があるかもしれませんですけれども、大体現在におきましては二千六百俵ですね。
  56. 高石幸三郎

    ○高石委員 そうすると、すでに政府が十八万円で当限は渡すことをあなたに確約しているから、当限では値が上がらない。しかし、現物の方はそういう保証がないから二十万を前後しているということになると、先ほど、あなただと思うのだが、需給関係は取引所を通じて公正な相場でなければならぬということをおっしゃったが、どちらが公正な相場ですか。現物が公正なのか、当限が公正なのか、どうなんですか。
  57. 小島周次郎

    ○小島参考人 政府の糸を確保できるという想定のもとに……。
  58. 高石幸三郎

    ○高石委員 そうすると、あなたの方はどうなんだ。公正な値段というのは、二十万を公正と見るのか、十八万を公正と見るのか。それを聞いているのですよ。
  59. 小島周次郎

    ○小島参考人 政府の糸を確保できる……。
  60. 高石幸三郎

    ○高石委員 それを言っているのではない。政府のことなんか考えたらだめなんだ。公正な立場で、どっちが妥当なんだ。
  61. 吉川久衛

    吉川委員長 高石君、委員長の許可を得て質問して下さい。
  62. 小島周次郎

    ○小島参考人 取引所の相場を妥当なものと考えます。
  63. 高石幸三郎

    ○高石委員 現物は取引所の相場じゃないですね。
  64. 小島周次郎

    ○小島参考人 取引所の相場を妥当と思っております。
  65. 高石幸三郎

    ○高石委員 すると、二十万の現物は取引所の相場じゃないというのですか。それを聞いているのです。当限の十八万はあなたのいう取引所の相場で、現物の二十万は取引所の相場じゃないのですか、こう聞いているのです。
  66. 吉川久衛

    吉川委員長 小島参考人、もしお答えができなければ、文書ででもよろしゅうございます。
  67. 高石幸三郎

    ○高石委員 よろしいです。
  68. 吉川久衛

    吉川委員長 高石君に申し上げますが、だいぶあとつかえておりますから……。
  69. 高石幸三郎

    ○高石委員 わかりました。それでは、それは保留しておきます。  もう一点、小島さんにお伺いいたしますが、先ほど来、われわれ重大な言明だと思うのですが、受け渡し上の現物として政府と約束して二万俵確保してあるということですが、これはほんとうですか。
  70. 小島周次郎

    ○小島参考人 政府の……。
  71. 吉川久衛

    吉川委員長 小島参考人に申し上げますが、先ほどあなたのおっしゃったことを尋ねているのですから、その通りであるとかないとか、はっきりおっしゃっていただきます。——それじゃ、よくお考えになって、あとで……。
  72. 高石幸三郎

    ○高石委員 それでは、先ほど言われたことがほんとうだとすると、あなたはだれと約束したか、これもついでに一緒に答えて下さい。ただ局長通牒であるとかいうようなことじゃ困るから。その二つと、いま一つは、それは政府の保有している、いわゆる安定法によって所有している四万幾つかのうちの二万俵であるかどうか、その三点について一緒に考えて返事して下さい。  それから、肥田さんにお尋ねいたしたいのですが、年度の途中で値段をごたごたされては困るというお話ですが、すると、昨年は年度の途中であっても実勢が違う場合にごたごたしたと認めないで実勢に合わせるように改正をしたことは適正だというのですね。どうして、十九万円を十四万円にするときは適正であって、現在、今年のような情勢のときにこれを適正に合わせるという場合に、あなたの考え方によるとどうしてごたごたというのですか。それを承っておきたい。あなたの感覚でどうかということを承っておきたい。
  73. 肥田啓治

    肥田参考人 昨年度は変えなかったじゃありませんか。最後まで十九万円で突っ張っていたわけであります。新年度から十四万円になったのであります。今年は今十八万円で進んでいるわけです。来年度になりますれば今度は新しいことであります。
  74. 高石幸三郎

    ○高石委員 いや、去年は十九万円がいけなかったから十四万円に直したことは差しつかえない、ことしは十八万円を万が一値を直すような事態が起こった場合にこれをごたごたというのですかどうですかと聞いておるのです。
  75. 肥田啓治

    肥田参考人 昨年度は十九万を変えなかったじゃないでしょうか。十四万円になったのは今年度になってからです。新しい年度に変えたわけです。われわれみな生糸年度でやっておりますから、繭価安定法生糸年度でやっておりますから、昨年の十九万円は変えておりません。新年度になってからです。
  76. 高石幸三郎

    ○高石委員 すると、あなたの言う生糸年度はいつからいつまでですか。
  77. 肥田啓治

    肥田参考人 六月から五月までです。
  78. 高石幸三郎

    ○高石委員 ことしの一月は三十三年度生糸年度じゃないのですか。
  79. 肥田啓治

    肥田参考人 三十四年度においてきめたわけであります。三十三年度は依然として古い制度であります。三十四年度で新しくなりましたから新しく変えたわけであります。
  80. 高石幸三郎

    ○高石委員 しかし、十九万円を十四万円に変えたのは、ことしの一月でしょう。
  81. 肥田啓治

    肥田参考人 はなはだあいまいで失礼いたしました。私、変えないと思いましたけれども、しかし、それでしたら、安定審議会を開いて変えたということは聞きましたですが、大体において、一つの年度の中で重大な変化のある場合におきましては、われわれの方では、大体為替とか平価の切り下げか何かでなければ、市況の動きではなかなか変えないと考えておりました。それが、去年は非常にひどいと思って変えたわけで、本年度の場合はまだ重大な変化があるというほど大きな変化ではないと思います。従って、これは、どなたからか先ほどおっしゃいましたように、どうなるかという問題はなかなかわからない。もしこの制度の意図がある程度出ますれば、あるいは糸価はある程度下がるかもしれません。そうしますと、経済の情勢の変化で、どっちかというと、比較的の問題から言いますれば、途中で変えるというところまで、それは認定の問題になりますけれども、それがはたしてそれだけ大きな問題であるかどうかということは、繭糸価安定審議会にかけなければきまらないと思いますが、大体において今私ども考えているのは、そうでないと思うから、途中で変えることは不適当だと考えてお答えしたようなわけです。
  82. 高石幸三郎

    ○高石委員 いずれにしても、では、昨年は改定したことを認めている、しかし、ことしは異常でないから別に考える必要はない、こういうわけですね。意見の交換じゃありませんから、承ってだけ置きます。  そうすると、茂木さんにお伺いしますが、今、肥田さんは、現在異常の状態でないとおっしゃっているのですが、これは異常の高騰だ高騰だということを先ほど来何度かおっしゃっているのです。異常の高騰だからどうも売れ行きがとまるとか、あるいはまた取引が停滞してしまったとか、織物業者がほかに転業するとかおっしゃったのですが、何をもって異常の高騰だとおっしゃるのですか。
  83. 茂木富二

    茂木参考人 御承知のように、実質上の十八万円に一応安定をせしめるということを今年の一月ですか定められて、またそれを取り扱う業者もそれを標準に商売を進めてきております。それからその標準以上に高騰いたしますから、異常の高騰と、こう申し上げたわけでございます。
  84. 高石幸三郎

    ○高石委員 そうすると、肥田さんの言う異常と、あなたの言う異常とは違うわけですね。その点はわれわれとしては困るので、異常の高騰とか異常の状況とかいうことに、人によってそう判断が違っては困るのです。ですから、この辺はよく研究をしておいて下さい。  いま一つは、放出すれは十八万円は必ず安定する、こういうふうに、政府が放出すれば十八万円はきっと安定する、こう信じていらっしゃるのですか。
  85. 茂木富二

    茂木参考人 これは、過去の商売の例からいきましても、高いと買い控えをされてしまいます。先ほど安田さんからもお話がありましたように、内需の方も各産地が売れ行き不振、また、それを買い取った問屋もその滞貨の処分に苦労しておる、それから、海外の方は、先ほども申し上げたように、高い生糸値段で算定をしたその価格では注文がない、こういう次第で、私どもは苦労している、こう申し上げておるのです。
  86. 高石幸三郎

    ○高石委員 私も簡単に聞きますから、簡単に答えて下さい。  要するに、政府が放出し切ってしまったあとでも十八万円で安定するかということを聞いているのです。
  87. 茂木富二

    茂木参考人 その点は、私どもここで明瞭にお答えはしにくいと思います。これは相場のことですからどなたにもわかりません。しかし、ものには一つの買いよい標準というものがありまして、それ以上に現在以上の高い値段を出したら、おそらく海外もついてこない、国内の第一消費が伴わないということになって、また再びこの生糸の売れ行き不振で苦労するようなことになるじゃないか、これを心配しておるわけです。
  88. 高石幸三郎

    ○高石委員 そうすると、茂木さんは十八万円で安定するとは思っていないというわけですね。
  89. 茂木富二

    茂木参考人 売りよい値段でないと……。これは十八万円でくぎづけだという意味ではございません。十八万以上では商売が成り立たない、その以下でやれば内需も輸出も商売になっていくということで、私どもは十八万円が絶対の安定価格と申し上げるわけではございませんで、それ以上では商売がしにくい、どうぞこういうふうに御解釈願いたいと思います。
  90. 高石幸三郎

    ○高石委員 関連して製糸協会の安田さんにお伺いしたいのですが、先ほど安田さんは、現在の一万掛以上の繭価だとすると製糸家は非常に損する、しかし国家の大局と生糸業安定のためにしんぼうするんだというお話で、大へんいいお心がけだと思って伺いましたが、そうすると、一体十八万円で売ることは損する覚悟でずっとおやりになるつもりか、それを一つ承りたい。
  91. 安田義一

    安田参考人 私は皆さんによく御説明が足りなかったかと思いますが、今の安定法をこういう形で維持するならば、これは海外に対しても国内に対しても政府は一つのオブリゲーションを背負っているのだから、オブリゲーションを果たさざるを得ないでしょう。しかし、それではお前たち損するのかといえば、私どもは、損したくないから、政府が十八万円でお売りになっても、二十万円で売りたいのです。また現実に売れているわけです。それでよろしゅうございますか。
  92. 高石幸三郎

    ○高石委員 議論をして意見を聞くのじゃないから、あなたのほんとうのお考えを聞けばいい。政府は十八万円で売れ、しかし私どもは勝手だ、はっきり言えばこういうことですね。
  93. 安田義一

    安田参考人 勝手だという言葉は少し言い過ぎかもわかりませんが、私、それじゃ少し私見をまじえて、逸脱するかもしれませんが御回答を申し上げます。ただいま政府が売らんとしておるところ生糸というものがはたして高値押えの力があるかどうかということは問題だと思う。あるかないかということは御想像にまかせます。ただし、私どもが一番いやなことは、安定法というものがあって安定帯がある。その途中でいろいろといじられるということは、正直な話、商売は困るのです。そこで、一たんきめたんだから何とか私どもはがまんを少しはするけれども、なるべくいじらない方が賛成だ、そう申しておるのでありまして、さっき前提ということを申し上げましたが、今後、何か私の聞くところによりますと、安定法は下はささえるけれども上はもうささえないというような御意見方々にあるというようなことを耳にしております。もしそういうことであれば、もう政府もオブリゲーションなんか守る必要はないでしょう。約束を破るなら、私どもも、早く破った方がいい、かように考えております。
  94. 高石幸三郎

    ○高石委員 それは、繭糸価格が二十三万円で今きめられておるのですから、あなたの方の誤解であって、二十三万円という安定価格がきめてあって、最高価格を維持しておる。しかし、実質上の最高価格は十八万円ということであって、これはあなたの方の誤解だ。それは一つ気をつけてもらいたい。と同時に、政府が十八万円で売る間は製糸家は売らないというようなこともちょっとわれわれは聞くのですが、大体製糸家生糸にしたものはどのくらい在庫がありますか。
  95. 安田義一

    安田参考人 それははっきりはわかりませんが、大体年産三十万俵とすれば、月二万五千俵程度が生産されます。そういたしますと、十二月はもう済んだと仮定いたしまして、五カ月ですから十二万五千俵くらいが製糸家が売らないで持っておる量と推定されます。しかし、生糸の取引は先物取引になっておりまして、ことしは、私ども実は、繭が高いものですから、よう売らないで、なるべく持っておる方が間近にくると高くなるものですから、そういう売り方をしておりますが、まず十二万俵近いものが未売りじゃなかろうか、かように考えます。これは私の推定でございます。
  96. 高石幸三郎

    ○高石委員 そうしますと、その次に、これは海沼さんですが、十九万俵お取り扱いになった数量は、全部生産品ですか、それとも政府臨時措置法によって買ったものも入っておりますか。
  97. 海沼栄祐

    海沼参考人 ちょっともう一度おっしゃって下さい。
  98. 高石幸三郎

    ○高石委員 ここにあなたの方で出されました生糸問屋取り扱い数量十九万六千六百八十八俵というのは、全部生糸生産者からお買いになったのか、それとも、政府臨時措置法ですでに四万何ぼ出しておりますが、これも入っておりますか。
  99. 海沼栄祐

    海沼参考人 そういうものも含まれております。
  100. 高石幸三郎

    ○高石委員 そうすると、生糸生産数量のうちで、これだけないのですか。どのくらい含まれておりますか、大体わかりませんか。
  101. 海沼栄祐

    海沼参考人 これは統計を調べますればはっきりわかりますが、ここで数量の記憶はございません。
  102. 高石幸三郎

    ○高石委員 それから、先ほど金丸委員からもお尋ねをしたようですが、あなたの御文書のうちの、十八万円が実質的な最高価格であることを確信し、生糸の先約定をし、織物の契約もしたとある。これは先ほどちょっとわからぬとおっしゃったのですが、大体わかるのじゃないか。生糸の先約定あるいは織物の契約はどのくらいなすっておるのですか。
  103. 海沼栄祐

    海沼参考人 それはこの中にも書いてありますが、七日の日に私の方は全国の常任理事会を開きまして、各消費地の関係者から詳細な報告を聞きましたところが、これらの方々の報告によりますと、政府が十八万円で放出して、とにかく、全部で十万俵あったものがまだ五万俵近くある、これは必ず放出ができるというようなことを基本にしまして約束して、半数くらいは原料の手当が大体できておるということは、福井、金沢、福島から来ました者から聞いております。
  104. 高石幸三郎

    ○高石委員 半数というとどのくらいかわかりませんか。
  105. 海沼栄祐

    海沼参考人 ただいま申し上げましたように、数量のことは、何ぼ約束して何ぼ原料不足しておるというところまでは突っ込んでは聞きませんが、大要だけはそういう工合に聞いております。
  106. 高石幸三郎

    ○高石委員 政府に聞けばこんなところはわかると思うのです。しかし、とにかく業界の先覚者のあなた方が、現在生糸糸価がこういう問題になっているときに、先約はどのくらいしているとか、あるいは織物の約束はどのくらいしているか、はっきりしないでこういう文書を出されると、われわれは迷うのです。出す以上は責任を持った確信のあるものを出してもらわなければいけないということを御注意申し上げておきます。これはできればなお調べてみて下さい。お願いします。  もう一つ、売方についていろいろの御希望があったようでありますが、われわれの方の考え方としても二つあるのですが、小島さんの返事によっては五万俵のうち二万俵は約束済みで、この間五千俵売れたから、あと残っているのは、われわれの数字によると、二万俵そこらしか残っていない。そのことは別にして、いずれにしても、政府安定法によって生糸を持っている間にあとの相談をした方がいいのか、出してしまったあとであとの相談をした方がいいのか、業界としてどうお考えになりますか。
  107. 海沼栄祐

    海沼参考人 経済界のことを詳しく申し上げると手間をとりますが、業者というものは、こういうふうな相場の動揺の多いものですと、勘を生かしてやるのです。従って、私も今までやっておりました経験からそういう勘でやります。そして、勘で先行きが高いとしますれば、これは買いもいたしますし、また、安いという見込みのものは安くても売るということですから、なかなかこの点はむずかしいところで、はっきりしたことは申し上げられません。
  108. 高石幸三郎

    ○高石委員 そうすると、これは、人によって、現在政府が上値を押えるだけの品物を持っている間に、ほんとうの実勢価格とにらみ合わせてきめた方がいいという説と、いや、売っちゃって、野放しにして、政府の手持ちをきれいにしてやった方がいいという意見とある。それは業界としてどっちがいいかをお聞きしたのですが、よくわからなければそれでけっこうです。  それから、茂手木さんは中小蚕糸業者ということでえらいお骨折りを下さってありがたいのですが、ただ、承りたいことは、価格を安定した方が養蚕農家に直結した者にとってはいいということもよくわかるのでありますが、われわれは、昨年は、十九万が最低だ、しかしどうも十九万円ではだめだからああいう措置をとらざるを得なかった。それで、昨年は十九万が妥当で最低線だということだった。しかし、ことしは十八万がほんとうに安定価格というふうに業者は認めて自分の生産工程を立てるのかどうか、これを一つお聞きしたいのです。
  109. 茂手木三良兵衛

    茂手木参考人 どういうお考えかわかりませんが、私は養蚕農家に直結をいたしておる存在でありますので、養蚕業者としては桑を植えて五年後でなければ収穫が得られませんので、安定せる基盤の上に経営をいたしておる。私は昔は全養連の幹部でありました。従って、今もその通り考え方でやっておるのでありますので、これはわれわれ養蚕に連関するところの業者もひとしく安定せる蚕糸政策の基盤の上において業を行ないたい、こういう考え方でありますので、どうかよろしく。
  110. 高石幸三郎

    ○高石委員 その考え方は、政府もわれわれも業界も全国共通なんです。現実の問題は、いかに安定させるかということが問題なんだ。去年は、十九万円で安定しないから、それでああいう措置をとった。それは別にして、ことしは十八万を最高に押えていきたいというのが政府考え方のように思う。これは大多数の需要家といいますか取り扱い業者の御希望なんです。その場合、あんたのそういった立場に立って、安定価格というものはどれを希望するか、農家のことを考え生糸業者のことを考え、さらに取り扱い業者を考えて、どれを安定した値段と認めるか、こういうのです。
  111. 茂手木三良兵衛

    茂手木参考人 ここで論議されますのは糸価によってのみ論議されます。この糸価によってのみ論議されることを、われわれ養蚕業者としては最も不快に感ずる。よろしゅうございますか、去年五万三千円の繰糸経費を加入した十九万円をとった。本年、それより一万円安い十八万円のときにどのくらいかといえば、九千五百掛であって、去年の十九万円のときより一千掛も高く売れる。これらの点、昨年とった施策がよくなかったということを申し上げておいたので、これを何も十八万円にしろということをわれわれは申し上げません。糸価によってのみ論ずる当委員会においては、まずよろしく繭糸価格のうち繭価格最低原価だけはお取らせ願いたい、これは養蚕業者の熱望であります。全国の繭の価格で一番下が私の県でありまして、千三百円になっております。養蚕の盛んな地帯、山梨、長野、群馬、埼玉県のことを申し上げますと、一貫目に換算いたしますと、群馬が千六百五十七円になります。埼玉が千五百二十六円になっております。私の県が千三百五十円になります。長野は千四百六十二円の統計が出ております。この平均価格くらいは養蚕農家へお取らせ願いたい。すなわち、千六百円ないし千八百円くらいはお取らせ願いたいと考えておりますので、ここで糸価の論議をなさることはほとんど問題になりません。これだけ申し上げておきます。
  112. 高石幸三郎

    ○高石委員 そうすると、茂手木さんの方は、繭の値段を積み上げて、生産農家が立つように、養蚕農家が立つような値段のうちから生糸をきめてこいというのですね。いわゆる生産費主義ですね。そうすると、必ずしも今十八万が安定だと見ていないのですね。
  113. 茂手木三良兵衛

    茂手木参考人 もちろん、十八万で安定するとは考えておりません。十八万であれば——私の県の生産費が一貫目千三百五十円であります。本年は私の県のごときは千八百円以上に繭を売っております。これからすると、ここに安定がなくてどこに安定があるか、これだけ申し上げておきます。
  114. 高石幸三郎

    ○高石委員 そうすると、千八百円から出た生糸値段幾らくらいになりますか。千八百円の繭を作って、あなたは製糸家でしょう、一体幾らになりますか。
  115. 茂手木三良兵衛

    茂手木参考人 繰糸経費でありますので、生産費とよく業界で言っておりますが生産費でありません。蚕が繭を作っておるものを外からむくだけの繰糸経費です。繰糸経費のごときは二万円から二万五千円であります。今は下物が多いので高くなります。従って、二万五千円あると十分でありますので、今の十八万円で養蚕農家はこの線で安定をお願いいたしたいというので、政府にこの要望をいたしております。それだけ申し上げておきます。
  116. 高石幸三郎

    ○高石委員 そうすると、茂手木さんは、製糸家立場で十八万円、先ほど安田さんは十八万円では損するかもしれぬということでしたが、あなたの方では損しなくていかれるわけですね。いいですね。  それでは、次に移ります。だいぶほかの方もいらっしゃいますので、簡単にお伺いしますが、細井さんから養蚕農家としての深刻な話を聞いて、われわれも傾聴したのでありますが、安心してやれるという繭価ですね、昨年一千十二円と聞きましたが、しかし、現在千八百円しているといっている。いわゆる所得倍増論に見合った農家の最低の繭価は一体どのくらいと見るのが適当とお考えですか。
  117. 細井金義

    細井参考人 私ども農民考える繭価の最低というのは、結局、結論から申し上げますが、三・七五キロ、いわゆる一貫目千七百円。と申しますのは、現在、桑苗が昨年に比して高く一本八円だというようなこと、また養蚕機械が非常に値上がりをつげておりますので、そういう関係で、どうしても三・七五キロ千七百円以上ほしい、こういうことであります。
  118. 高石幸三郎

    ○高石委員 それから、ことしは大体夏秋蚕は終わったようですが、来年の春繭に対して一体農家はどんな考えを持ってどのような方策をとらんとしておるか、それはあなたのお立場からわかりませんか。
  119. 細井金義

    細井参考人 現在養蚕農民考えておることは、結局、現在安定法が臨時国会に出ているようでございますが、これが最高十八万というようなことであっては、養蚕農民が養蚕をする意欲がなくなると思うのです。なぜならば、十八万の糸から算定した繭三・七五キロの値段はおそらく千四百円以下になろうかと思うのですが、こういうことでは、高い桑苗を買い、高い養蚕機械を買って、さらに桑を植えて五年も経過しなければ桑がとれない、こういうようなことから考えて、養蚕農民が蚕を飼う意欲が欠けて参りますので、養蚕業の振興というものはちょっと考えられないのではないかと思います。
  120. 高石幸三郎

    ○高石委員 そうすると、現実に農家は現在どういう情勢判断で春繭を作ろうとしているのか、政府の言う二割制限を守って相変わらずこれを抜いたままでいくのか、それとも、先ほどのお話通り、転換した、ネギは安くなった、もとの繭は高くなったから、ことしは政府の言うことにかまわずにどんどん作ろうという気がまえですか、それを一つ。
  121. 細井金義

    細井参考人 先ほども申し上げました通り野菜に転換しておる、ところネギが突如三十円である、こういうようなことで、養蚕業をやりたいという意欲は非常にあるのですが、現在のこの安定法による十八万円ということでは、どうもなかなかやっていけないのじゃないか、かように考えます。
  122. 吉川久衛

    吉川委員長 高石君に申し上げますが、あとにだいぶ控えておりますので、御協力をお願いします。
  123. 高石幸三郎

    ○高石委員 そうすると、来年のことはよくわからぬわけですね。  それに関連しまして中村さんにお伺いしたいのですが、ただいま細井さんは、生産農家として、繭の最低価格生産費に見合ったものがほしいというのですが、あなた方の業界全体としてはどうですか。
  124. 中村兼治郎

    中村参考人 私の考えといたしましては、先刻申し上げましたように、生産費を割らない安定帯をほしいということをお願いしたいと思っております。その生産費と申しますのは、ただいま茂手木さんから、長野県の繭生産費は千四百幾らというお話でございましたが、私の記憶するところでは、千五百六十五円ということが長野県の特に本年度生産費でございます。この線は確保するようにして安定帯を作っていただきたいという考え方を持っております。
  125. 高石幸三郎

    ○高石委員 それでは、田原さんに。いろいろ御意見も承ったのですが、政府が最近、生産費だけではいけない、いわゆる需給均衡の価格考えなければいけない、特に国際商品であり、せっかく芽ばえたのだから、需要を伸ばすためには需要者の立場考え価格をきめなければならぬということをしきりに言うのですが、養蚕連としてこの需要価格に対してどういう考えを持っておりますか。
  126. 田原徳

    田原参考人 需給均衡価格ということはいろいろな意味があると考えますが、端的に言えば自由価格同様のものになるのではないかというふうに考えまして、そこで、われわれがいろいろと諸外国の実情や現在の輸出状況等を勘案いたしまして、今日まで生糸生産費を割らないでもらいたいという要求をしておりますのには、いろいろ資料等ありますが、昨年は二十万一千八百四十一円という価格になっておるわけでございます。先ほどからの御論議をずっと聞いておりますと、十八万円という価格を非常に言われるのでございますが、これは現在の臨時措置法における最高価格でございまして、最低価格は十四万なのでございます。従いまして、十八万という金で繭生産が間に合うかどうかという議論をするときと十四万のときとは大へん違いまして、いつも最高ところにいるとは限らないものでございます。われわれが生産費ということでこの価格をあくまでも維持してもらいたいということをお願いいたしますのは、最近のいろいろな情等報を集めまして、この価格最低は当然のものではないか、——安定法によりますれば、生産費最低が八五%ということであったわけであります。ところが、生産費から二万円も下がった価格が、最高、こういうことはちょっと考えられないということであります。
  127. 高石幸三郎

    ○高石委員 わかりました。
  128. 吉川久衛

    吉川委員長 高田富之君。
  129. 高田富之

    ○高田(富之)委員 安田さんにちょっとお伺いいたしますが、先ほど、十八万円の政府糸の放出について、結論的には賛成だということであります。なお、国用糸の茂手木さんからは、十八万、生糸の加工費が二万円程度であるので大体その程度でいいというようなお話もあったのでありますが、安田さんの御賛成の論旨は、大体十八万でも実際のところはやっていけるので、今日この程度で安定すれば需用も伸びるだろうし、いい、こういうふうに製糸家立場で同じように理解してよろしいのでございますか。
  130. 安田義一

    安田参考人 私、何度も同じことを申し上げるようですが、積極的に賛成は決していたしておりません。安定法というものを将来変えるということならば、私はそういう約束も破ってもいいんじゃないかということをただいま申し上げたわけでございます。ただ、十八万円で引き合うかという御質問に対しましては、とうてい引き合いません。従いまして、内輪話のようになりまして申しわけないのですが、どうしても政府が十八万円というオブリゲーションを果たすということであるならば、それはまたそれで意味がある。しかし、私どもは、それで売れと言われても売れませんということを再三にわたりましてお約束申し上げておるわけでございます。もっと申し上げますれば、十八万円という約束を、最小限においてそういう顔も立てながら私どもがいかに損をしないようにするかということが、私どもの当面している大問題なんです。
  131. 高田富之

    ○高田(富之)委員 わかりました。  そこで、田原養連会長さんにお願いしたいのですが、去年は政府のああいった政策のため非常に養蚕家も困り、養蚕団体としても全力をあげての陳情活動等をなさったわけであります。これも、五年も十年も昔話ならともかく、ついこの間の話でして、また今度は幾らもたたないうちに、去年とはまるきり反対の方面からの政府のこういうふうな方策に直面いたしまして、これは去年と同様ないしはそれ以上の、養蚕業界にとっての非常に大きな問題じゃないかと思うのです。それで、先般会合等もしばしばおやりになったようでありますが、特に全国的な集会等において各地の養蚕家の代表者から——去年私は大会にお招きをいただきましてあの席に出たのでありますが、相当強い御意見で、田原会長辞任せよの声まで飛び出すようなものすごい盛り上がりを見たわけであります。全く当然だと思うのですが、ことしの場合もおそらく、去年とちょうど裏返しになりましたけれども、同じ立場ではないかと思うのであります。先般の会合にはお招きいただかなかったわけですが、大体全国的に見まして、養蚕家の偽らざる声というものはどの程度のものかということを、みんな知っているでしょうというようなことじゃなく、一つ率直に御披露願いたい、こう思うのであります。
  132. 田原徳

    田原参考人 御質問の趣旨は、全国意見は今の価格でいいかということですか、あるいは、安定法改正に対して反対か賛成かということですか。
  133. 高田富之

    ○高田(富之)委員 政府が今度は最高十八万円という形でやってきておるわけですね。これに対する養蚕家の反響というものはあなたの方で一番よく集約されると思いますので、その点を伺いたい。
  134. 田原徳

    田原参考人 十八万円というものに対しましては、先ほど全養連がたびたびの会合において決議をいたしましたものをなまのまま朗読をいたしましたが、これに対しましては不満であり反対であります。十八万円と申しますことは、この価格を設定される際に、大体において十四万円、そして安定帯の幅を四万円にするということで出てきた十八万円でございまして、十八万円がいいということになると、また十四万円がいいということと裏返しになってくると思います。そういたしますと、この生糸生産費においてどのような算定が出るかわかりませんけれども、現在はここに出てきておりますこの生糸生産費四万七千九百十一円の八一・〇九%といたしますと、三万八千八百五十円ですか、そういたしますと、繭の価格が一千十二円五十銭というふうになって参ります。先ほどからいろいろのお話がありましたけれども、なるほどある特定の県で特定の飼育法等によって非常に安くできるところもあります。われわれもまた一日も早く全国がそういうような安い価格生産されるようなことに努力はいたしておりますけれども、残念ながら全国の平均は十五万幾ら、これは農林省が御発表なさった価格でございます。千五百五十六円二十五銭というのは農林省が御発表になったということでございまして、千円という養蚕ではとうていやれないのでございます。従って、十八万円放出というものには反対である、こういうことであります。
  135. 高田富之

    ○高田(富之)委員 先ほど、小島さんでしたか、小さい声でよく聞き取れなかったのですが、約二万俵程度のものが各限月の渡し物として政府から保証されている、こういうお話があったわけであります。そこで、別に御意見や何かお聞きするわけじゃありませんので、あなたの実際御存じの事実だけを御返事いただけばいいわけなんですが、政府から受け渡し供用品の範囲を拡大することについての指示を受けましたね。そして、それも、これから先のというのじゃなくて、すでに取引の済んでおる既往のものにもさかのぼって受け渡し供用品の範囲を拡大するという指示を取引所として受けたというふうに聞いておりますが、そういう事実はございますか。
  136. 小島周次郎

    ○小島参考人 ございます。
  137. 高田富之

    ○高田(富之)委員 私ども農林委員会として、取引所のことはよく知らないので教えていただきたいのですが、取引所というものの性格から言いまして、そこの慣習なり何なりから言いまして、売買の約定ができておって渡す品物が違うものが渡ってくる、契約をしたそのあとになってから渡すものが変わってくるということは、ちょっと常識的に私ども考えましても非常におかしい感じがするのですが、取引所ではそういうふうなこともあり得ることなんですか、たとえば非常に異例のことに属する好ましからざることなんですか。
  138. 小島周次郎

    ○小島参考人 取引所といたしましては、現在の建玉の品物の供用品の変更はできないことになっております。今回の場合、政府の指示によりまして、その指示を私どもは命令と解しまして、総会で異例の扱いをしたのでございます。
  139. 高田富之

    ○高田(富之)委員 ぜひその点を教えてもらいたいのですが、そうしますと、それは取引所の何か規程になっているのですか。法律ですか、規程ですか。
  140. 小島周次郎

    ○小島参考人 業務規程には、既往の建玉に対する受け渡し供用品の変更はできないことになっております。ですから、取引所としては普通の場合にはできないのであります。ところ政府の指示を命令と解しまして、それにのっとりまして総会でもってそれを承認して決定したのでございます。異例の場合でございます。
  141. 高田富之

    ○高田(富之)委員 よくわかりました。そうしますと、それは理事長さんか何かにお話があったので、それを取引所の方で命令と解釈することになさったのですか。それとも、文書か何かで取引所に対して命令があったわけでございますか。
  142. 小島周次郎

    ○小島参考人 文書はいただいておりません。ただ、供用品の拡大でございますね、これにつきまして、先ほど申し上げました十月十四日に蚕糸局長声明がございました。これは新聞で御承知になったことと思いますが、十四日の声明に基づきまして、供用品の変更は政府が指示をして、私どもが指示を命令と解して、それを変更したのでございます。
  143. 高田富之

    ○高田(富之)委員 命令と解してというところは、会議を開いて、これを命令と解すべきだというようなことで、取引所の独自の判断で命令と解しておやりになったのか、それとも、理事長さんか何かが政府の方へ呼ばれるなり、あるいは行った機会に、現実にそこで命令として文書もしくは口頭で申し渡しを受けたので、これは議論の余地がないというので受けたものか、そこをもうちょっとはっきりさしていただきたい。
  144. 小島周次郎

    ○小島参考人 口頭で、命令と解していいかと念を押しまして、それでは命令と解してやりましょうということで受け入れたのです。
  145. 高田富之

    ○高田(富之)委員 そうしますと、それは理事長に対する政府側の正式な通告なわけですね。
  146. 小島周次郎

    ○小島参考人 そういうことでございます。
  147. 高田富之

    ○高田(富之)委員 それから、今の約二万俵という話ですが、売方の方へ必ず現物が十八万で回ってくるという約束というわけですが、これも、口頭で単なる口約束程度のものであるのか、相確実なものとして信頼するに足る文書か何かをもらっておるものか、これはかなり重要なことなんです。あなた方としてはどの程度の信憑性あるものとして受け取っておられるのか。
  148. 小島周次郎

    ○小島参考人 文書ではもらってございません。それは私も実は立ち会いまして、そのところで、——先ほど申しました十月二十一日に各限月の供用品の変更という申し渡しを受けて、その変更した場合に供用品を確保する、そういう言質をもらっております。
  149. 高田富之

    ○高田(富之)委員 そうしますと、それを、ちゃんと言われた通り命令と解して現実に変えてやっておるわけですから、当然その裏づけとしては、政府側として口約束であっても、その通りに現物は入ってくるものである、こういうことで運営されておるわけですね。
  150. 小島周次郎

    ○小島参考人 そういうことでございます。
  151. 高田富之

    ○高田(富之)委員 そうしますと、議論するわけじゃないのですが、多少心配がありはしないかと思うのです。万々一それが来なかったというようなことは、仮定の問題には答えられないと言えばそれまでですが、来なかったというような事態があった場合には、何かそのときの方法というようなものもお考えですか。
  152. 小島周次郎

    ○小島参考人 私としては考えておりません。それは確信しております。理事長は特に局長にたびたび念を押しまして、それは口頭でございますけれども、これに対して確認を得ております。
  153. 高田富之

    ○高田(富之)委員 それでは、次に、茂木さん、海沼さん、どちらでもけっこうなんですが、お伺いいたしたいのです。今までの政府の保有糸の出し方は、実需の方へ回ってこないで、思惑の方へ大体回ってしまって非常に遺憾である、何とか一つ実需の方へ回るようにしてもらいたい、これはごもっともな御意見だと思うのですが、ただいまお聞きの通りのことで、そういうようなこともあるわけなんです。あなた方としては、ぜひ実需方面へ確実に渡るようにしてもらいたいということでありますので、おそらくそういうふうな今質問応答のありましたような事情も御存じだったと思うのですが、あなた方としては、何かそういうことで政府側に抗議と言ってはおかしいですが、あなた方自体の立場から御要望なり何なりは政府に対してなすっておりますか。
  154. 海沼栄祐

    海沼参考人 これは文書をもって別段意見は申しておりませんが、口頭では蚕糸局へ向かって申しております。先ほどお話ししましたように、実際思惑の方にたくさん行って、そしてそれがまだ全面的に消費者に行ってなくて倉の中に眠っているという現実があるのです。今後においては、どうか一つ私ども長年生糸の販売をいわゆる天職としてやっている者を大いに活用していただきたい、そうしてこそ初めて正常ルートでもって消費者末端まで行くというふうな見解をよく局長さんには話をしておきました。
  155. 高田富之

    ○高田(富之)委員 そのとき政府側はどういうようなお答えをしておりましたか。
  156. 海沼栄祐

    海沼参考人 過去をふり返って見まして、今度の五千俵の放出はうまくなかった、従って、何とか実需要者に行くようなことを考えて今後はやろう、こういう話でございました。
  157. 高田富之

    ○高田(富之)委員 あなた方の目で見、お感じになって、今までの政府の放出の仕方で、たとえばどんな工合に思惑側はこれを受け取って利用したか、思いつくところを、人の名前は言わなくてけっこうですが、事例をちょっとお話し願いたい。
  158. 海沼栄祐

    海沼参考人 これは、先ほどもちょっと申し上げましたように、物価、ことに生糸というものは国際商品であり、内地需要も旺盛になってきまして、その間思惑でもって値段というものを動かしますから、こういうことで、先高いと見ればこれは買うことは当然でありますし、ことに、最近の情勢が、これは一部扇動的にやる者もありますけれども政府放出の価格よりは高いということですから、今の機構であればだれが申し込んでも売るという建前でもって、機敏にいろいろ考えて申し込んだ者は、先ほど申したように、ある商社は、五千俵放出に対して四千俵も申し込み、数多く申し込んだ者には数多く来ることは当然ですから、これが今回五千俵放出した結果が非常にうまくないという現実に現われたのでございます。ですから、この点に対しましても、われわれ業界といたしては、どうか、蚕糸業各界の人たちで構成された繭糸価格安定審議会、こういうものにも一応よく諮って、そうして業界代表の意見を聞いてやられることが、最も円満に適正にいけるのではないかというふうに私は考えております。
  159. 高田富之

    ○高田(富之)委員 率直な話、あなたがさっき御要望なすったという実需方面へ渡してくれということ、それはもっともな御要望だと思うのですが、その場合に、ただ抽象的に渡してくれと言ってもなにですが、大体の目安で、どの団体へどのくらい、たとえばあなたの団体ならあなたの団体でどのくらい渡してもらいたいという御要望をお持ちですか。
  160. 海沼栄祐

    海沼参考人 これは、先ほども御質問がありましたが、七日に私の方で常任理事会を開いての、そのときの報告の結果ですが、実際問題が、政府の十八万円放出というものを当てにして輸出織物業者もやりますし、さらにまた、内地におきましてもその通りで、大体、生糸につきましても織物にしても、工業者としては先約をして作るということが、これは長い常識になっております。そこで、やはり、政府放出の十八万円を割ったことにして繭業者も長期の約定をする。先ほど御意見がありましたが、その数量くらいは指導者として聞いておきそうなものじゃないかということを言いますけれども、やはり、われわれ協会としましては、大体の意見を聞くということで、何個売って何個足らぬのだということは聞いておりませんが、大体、福井県におきましても石川県におきましても、約半数は原料の手当がついておらないということでございます。しかし、商売人は、先ほども申し上げましたように、一つの勘と経験でもってそういうことをやりますから、実は横浜、神戸市場等も買いあおっておるということが現実の状態でございます。
  161. 吉川久衛

    吉川委員長 栗原俊夫君。
  162. 栗原俊夫

    ○栗原委員 いろいろ参考人の皆さんに御意見を伺ったわけでありますが、大体、今度いろいろ御意見を伺った法案は、政府説明によると、異常な価格の高騰が来ておる、そこで、安定法で買い上げた二十三万円でなければ売れない生糸五万俵ばかりを、安定法からはずして、そして臨時措置法で時価すなわち十八万円で売ろう、こういう法案であるわけですが、きょうお集まりの参考人の皆さんの中には、生糸そのもの生産ではなくて、十八万という一つの制約の外に立つ織物の方もおりますし、また、できた糸その他を扱う立場の人もおりますので、これは、そういう立場から見れば、おのずから立場が変わると思いますが、大きく蚕糸業の面から言えば、蚕糸業が衰微すればどの業界もうまくないのでありますから、お互いに十分引き合いつつ業界にどうやって繁栄をもたらすかという立場に立っての御意見であろうと思いますけれども、まず私がお聞きしたいのは、生糸を作り、あるいは繭を作るという立場に立って、なおかつこの法案に賛成という立場をとっておられる方にお聞きしてみたいと思うのです。  まず茂手木良兵衛さんにお尋ねするわけでございますが、先ほど御意見を伺いますと、まず私たちが養蚕をやり糸を作るには安定をしなければだめだ、こういうことを非常に強く御主張になっておる。安定をしなければならぬことはよくわかるのですが、引き合わない価格でも、安定さえすればいいのかどうか、この点を一つ明確にしていただきたいと思うのです。
  163. 茂手木三良兵衛

    茂手木参考人 私は引き合わない価格で物を売ればいいという考え方ではありません。ゆえに、私は、繭の生産原価を基礎として、この生産原価によってこれを買い取りまして、これによって業界を指導して参るという考え方でありますので、引き合わない価格で買うというのではありません。これは栗原さんはもちろん御承知でありますが、私は中小企業、ことに弱小企業の代表でありますが、それらの人たちがいかに苦心して自分の欠損をなくして参りつつあるかということも御承知であろうと思っております。従いまして、国が蚕糸政策を立てるときにこれに協力して、もってわれわれの長い安定を希望いたす考え方から、業界の人々とよく話し合いまして、このくらいならこうしようじゃないかというので、国の十八万円という本年の最高価格に従って動きたいというのがわれわれの業界の幹部諸君及び業界の意見でありますことを申し上げまして、安くして非常に損をするというのでは、これはできません。われわれの業界は、御承知通り、常に圧迫されつつある業界でありますので、中小企業というよりも弱小企業でありますので、常に圧迫されてはおりますけれども、弾圧されるところのわれわれの階層は、いかにしてこれをはね返していかねばならないかという考え方で経営いたしておりますので、ただいま申し上げるような生産費を二万五千くらいで上げたいという考え方であります。これは製糸協会の方も自動繰糸機になっておりますのでそこらの値段でできるかとは思いますけれども、これは四万幾らかで、これは空想であります。こんな空想の値段で本年のごとく千九百三十円というような最高価格の繭が買い取れるべきものではありません。これは、去年十九万円で政府がお買いになった失敗が、——製糸業者の百七十の企業者は十九万円で買ってもらっておりますので相当な利潤になっておる。この利潤と、品が薄かろうというような予想と、両方でこういう高価の繭価が出たのでありまして、かつて不当に取得したところの富が養蚕農家に返るのであって、ことしの価格は至当でないと私は考えております。ところが、これをある程度までカバーしたいという考えがあるのが今回の大へんな問題になるわけであります。これだけ申し上げておきます。
  164. 栗原俊夫

    ○栗原委員 もう少し質問に対して簡単にお答え願います。  先ほどのお話によると、繭は、安いところでも千三百幾ら、高いところでは千七百円でしたか、平均して千六百円、こういうことでありまして、あなたの説明によれば、糸は生産ではなくて加工資本の加工物だとおっしゃるわけですが、その糸にした加工費その他の費用を合わせて十八万円で十分やっていけるのだ、こういう建前で、時価すなわち十八万円を実質上の最高値段にするということに賛成したわけですか。
  165. 茂手木三良兵衛

    茂手木参考人 私は、——現今の晩秋蚕の取り入れ等から見ますると十八万円は赤字であります。これは安田会長と同様であります。赤字ではありますけれども、赤字を克服することこそ業界の役目だと考えておりますので、この点で栗原さんと意見が違っております。これは申しわけありません。
  166. 栗原俊夫

    ○栗原委員 次に、製糸協会の安田さんにお尋ねするわけですが、実は、今回の法案の内容は、一応時価すなわち十八万円で政府の保管生糸を放出するという建前になっておりますけれども、ねらいはなかなか大きいと私たちは受け取っておるわけです。それは、繭糸価格安定法の第三条に手を加えようという前提がここへ出てきておるとわれわれは考えておるわけであります。いわゆる生産費を維持するという繭糸価格安定の行き方を捨てて、需給均衡価格へ移っていく第一の飛び石だとわれわれは見ておるのですが、安田さんの御見解はいかがでしょう。
  167. 安田義一

    安田参考人 お答えいたします。  私は実はそこまで考えなかったわけでございますが、先ほど来申し上げております通り、私がこの案に賛成の立場をとっておりますのは、現行通り安定法が続く、こういう前提であるということをしばしば申し上げておるわけであります。私ども製糸家としては、ただいま二万円でできるとかいろいろなお説もございますが、ここ数年来ほとんど満足な加工費を取ったことがないというのが、私は製糸の実情だと思います。そういう意味におきまして、今後私ども生産費が完全にいただけないというようなことでは困る、こう申し上げざるを得ないと思うわけでございます。これでよろしゅうございますか。
  168. 栗原俊夫

    ○栗原委員 ただいまのお答えによって明らかになったのですが、それでは、繭糸価格安定法の第三条で大黒柱として立っておる生産費を償う安定帯、この建前が継続されるという前提に立って当面こうするということならば、消極的ではあるが賛成だ、こういうお考え方なのでございますか。
  169. 安田義一

    安田参考人 その通りでございますが、少し付言してよろしゅうございますか。——この問題は、率直に申しまして、事実上の最高価格ときめられた十八万というものを維持できるものならば維持したい、同時に、われわれは損をしないで糸を売りたい、そういう二つの妥協点が求められれば一番よろしい。これは天びんの問題だと思います。率直に申しまして、ただの目先だけのことを申しますれば、私どもも十八万は困るのでございます。しかしながら、長期的にものを考えた場合には、われわれはある程度は忍ばなければならぬ。従って、これは売り方の問題に関連してくる、かように私は思います。つまり、率直に申しまするならば、十八万は維持したということにして、実質はわれわれとしてはもっと高く売れるということを国会の皆さんに考えていただきたい。(笑声)
  170. 栗原俊夫

    ○栗原委員 安田さんは繭糸価格安定審議会委員さんであると思うのですが、ことしの三月、安定帯を作るときに、臨時措置法で買い上げたものを十八万で売るということについてはかなり論議があり、しかも、その論議の内容は、いろいろ政府に対して反抗する者もあるらしく、具体的な名前での発表を政府でもなかなかがえんじないで匿名で発表になっているわけです。しかし、主張の内容から言うと、これがどなたかは大体見当はつくわけですが、十八万を実際において事実上の最高価格である、こういうようにお考えになったのですか、あるいは、十八万円になれば臨時措置法で買ったものも売り出してもやむを得ないと考えたのですか、どっちなのですか。
  171. 安田義一

    安田参考人 正直なところを申しますと、私は十八万をその節反対をいたしました。十八万は安過ぎるということを申し上げたのでございます。これはいわば商売人の勘ということもございましょう。当時最低糸価は十四万百円、それで、その上下の幅を四万円ととりまして十八万というような御説明もあったようでございますが、その幅としては四万円では困るときがくるという、私は今になって私の言ったことが当たったと思っておるのでございますが、私は十八万は安過ぎるという主張をいたしました。それが第一点でございます。  第二点は、十八万でいいといって納得したかということでございますか、どういう御質問でございましたか。——当時の状況といたしましては、おそらくこの措置法の糸を十八万で売るような事態は来ないだろう、かように考えたわけです。これはひとり私だけではないのじゃないか。そこで、もっとよけいなことになりますが、ただいま、そういうことをきめましてからわずか八カ月でございます。かように糸価というものはむずかしいものでございます。従いまして、私がどうも割り切れないのは、今の相場が、八カ月後にまた高過ぎたということが起こっては困る、こういうふうに心ひそかに憂慮をいたしておる、かようなわけでございます。
  172. 栗原俊夫

    ○栗原委員 次に、生糸の大部分を扱っておられると称する生糸問題の海沼さんにお尋ねいたしたいのですが、政府では今度の相場を思惑々々と言っておるのですが、一体今度の生糸の相場はだれが作ったとお考えなのですか。生糸を持っている方がこれでなければ売れないとがんばっているので高くなってきたのか、あるいはその値でもいいから売れ売れと買い上げてきたのか、一体どっちなのですか。この点明らかに説明してもらいたい。
  173. 海沼栄祐

    海沼参考人 だれがそういう値段をつけてきたかということについて御説明申し上げますと、これは非常にむずかしい問題でありまして、実際問題として、商取引というものは、一人々々の考えによって、強気の者もありますし、また弱気の者もありますので、そこで価格が生まれるのだろうと思います。私どもが十八万円を維持してもらいたいということは、実は消費地の事情がよくわかっておる。先ほど申し上げましたように、丹後にいたしましても西陣にいたしましても、また十日町にいたしましても、十月から糸が高くなってきましたが、採算が不引き合いで転向しようというような意見が多くなっておる、そういうことを考えますれば、ここで値段を高くしてしまうと、内地においても売れないということも私は想像できると思います。輸出のことは肥田さんがいますけれども、現実に輸出におきましても十一月は十月より九千俵も少なくなっておる。さらに、内地の消費も、まだ数ははっきりわかってきておりませんが、そういうことを聞かされ、考えますから、なるべく相場の動揺をさせないで、中間にあって正しい公平な商いを進めていきたいというのが、私ども業界全体のものの考え方でございます。何にしましても、昨年を顧みまして、十九万円を政府が堅持する堅持するという糸が十四万円になってしまって、そうしてそのしわ寄せは扱っておる業者に来ておるのが現実の問題であります。そういうことであっては困る、安定をさせてもらいたいということが、常に忘れないところの私の念願であります。  これは肥田さんの部門になりますけれども、外国におきましても日本生糸が安定さえすれば幾らでも買うということは、世界絹業大会出席されました日本代表が帰ってくればいつもそれを言っておるのでありまして私どもが第一回の絹業大会出席しましたときも、やはりそういう意見が各国の商社に強かったのであります。それを思い、これを思い、どうか一つ安定させてもらいたいということが念願であります。
  174. 栗原俊夫

    ○栗原委員 なかなか無理なお尋ねをしたわけですが、やはり、制度的に最低価格を引き上げるということになれば、それ以下は売らないというので、高く売る、こういうことになりましょうけれども、今のあり方は、最低価格が上がってきたので値が上がって参ったわけではありません。売り手もあり買い手もあって、やはり売り手よりも買い手が先行したからおそらく値が上がってきたのではないかと私は思うわけなんです。  そこで、先ほどどなたかの発言の中に、安定法を根本的に改正して、下だけ守って上はのっぱずしということを聞きましたが、これは、率直に言って、蚕糸局から出た白書の中にも、生糸は必需品というよりもやはりぜいたく品、趣味品というような規定づけがなされております。私たちがこうした価格操作をやる制度の中で、かつて制低制高米価というのがありました。安い方は生産者を守る、高い方は消費者を守る、こういう立場で行なわれておるわけですが、生糸がそうした品物であるということになると、生産者の立場は守っていかなければならぬけれども消費者の方は制度的にどうしても守らなければならぬかどうかというと、これはある程度議論ができる場面ではないかと思うのです。また、一方、そういう意味において、安ければきっと売れるかというと、いつも笑い話にするのですけれども幾ら生糸を安くしても、内地でも野ら着の者は着ないということで、消費需要の場面でおのずからワクがある。こういうことなんで、基本的な問題になりますけれども、現に十八万円という最高値段ということも含んでおりますので、これらについて、一つ、安田さん、それから扱っておられる海沼さん、それから織物の方には上値も何もなくておったわけですが、茂木富二さんの御意見をそれぞれお聞かせ願いたい、こう思います。
  175. 安田義一

    安田参考人 ただいまの御質問の趣旨が私ちょっとはっきりつかめないのでございますが、価格はどの辺がよいかという御質問でございますか。
  176. 栗原俊夫

    ○栗原委員 ではいま一ぺんやり直しましょう。下値は、生産費に密着するから、これはどうしてもささえなければならぬけれども、上値は、消費者を守るためにどうしてもこれでなければならぬという根拠がなかなかむずかしい、——商売を守るという面はいろいろ論議がありましょうけれども消費者を守っていくという立場の意義はきわめて少ない、こういう面から言って、また、高くなればおのずから使わなくなる、自由価格の中にもいわゆる上値の操作ができる、こういう面から言って、上値を無理に守っていった方がいいのか、守らないでいいのか、この辺のお考えはどうでしょうか、こういう質問です。
  177. 安田義一

    安田参考人 よくわかりました。私は、ほんとうを言いますれば、そろそろ繭糸価格安定法というものはやめていただきたい。不当にいろいろな力が作用いたしまして自由取引ができない、かように考えております。ただし、繭は、これは農産物でございますから問題は別だと思う。これは、繭として、生産費基準方式でも生産費補償方式でも、政治的に非常に問題が起きるわけでございますから、生糸と切り離して繭というものについてはいろいろと施策を講じていただくべきだと考えます。しかしながら、一たび生糸という商品になりますと、私はいつも言うのでございまするが、一種の世界的な投機商品でございます。従いまして、蚕糸業振興審議会のときにたしか栗原さんから御発言があったと思いますが、安定法というものは小波は防げるが、伊勢湾台風のようなものはとうていこの法律では防げないというふうにおっしゃったと思いまするが、私の記憶違いであればごかんべんを願いますが、昨年は生糸の総生産額三百億円のうち約半分の金を使わんとしてなおかつ十九万円が維持できなかった。本年は高値を押えるのだ。幸いにもここに十万俵の生糸がございます。昭和二十七年以来政府が売るための玉を持ったということは昨年が初めてであります。玉なくして高値がはたして押えられ得るかということも問題でございます。従いまして、私は、高値はとっぱらえとまでは積極的に申しませんが、比較的力は弱い、再考すべき段階に来ている、かように考えます。
  178. 海沼栄祐

    海沼参考人 私の考え方も、大体今安田さんが述べましたような考えを持っております。これは私個人の見解でありますが、私どもの業界のうちにも、政府施策を守ろうというようなことで、昨年も、政府は十九万円を堅持するから協力しろということで、この十九万円堅持がくずれたために父祖伝来の生業も投げてしまった者も幾人か全国にございます。また、本回におきましても、実際現物を持っておって十八万円を堅持できるだろうという方針のもとに、われわれ業者としてはこの政府施策にあくまでも協力しなくてはならないという正しい正直な気持でやってきている者が、今日現実に損しておるということで、実は、先般の常任理事会におきましても、安定法なんというものは廃止してもらって自由にやるのがいいのではないかという意見も室は出てきておるのです。しかしながら、各業界の関係考えますときに、また、国際商品であって海外のことを考えますときに、需要が増進していくのは、この安定法によってあまり大きく相場が動かないことによって消費者が安心して買っておられるのが事実でございます。十八万円というところがいいか悪いかということは私はこの席では申し上げられません。私の方の協会は、生産地、消費地、集散地というような各業者、利害関係の反するところの者が会員になっておりますから、はっきりした見解は申し上げられないのですが、私の考えといたしましたら、もう安定法は要らない、しかし、養蚕農家は何といってももとをなすものでありますから、どうか価格だけで統制するのではなくて、こういう養蚕農家に対しては政府があるいは設備なりの点について助成するなり、健全に養蚕農家の採算のとれるような施策をとってもらいたいということを私は希望しております。
  179. 茂木富二

    茂木参考人 私は、織物を作るという立場から、ただいまのお話と異なる点が多少あると思います。真の需要者・消費者はもう一つ一般になるのでありますが、中間の消費者のような立場にもありまするので、この糸価の問題はきわめて重大でございます。前年実はこの生糸が十四、五万に落ち込んだとき、製糸協会の幹部の方々と私ども日絹工業会の幹部、それに織物商の協会の幹部の方と懇談をしたことがございまして、そのおりに、製糸協会の方々からは、この生糸消費がきわめて低調である、そうして相場がとめどもなく下がるが、これに対して何らかの振興策はないかということで、私どもは、この生糸に対してもう少しお互いに協力しなくてはいけないということになった。かつては、この関係にありましては、製糸家養蚕家あるいはわれわれが親しく懇談する機会すらなかった。化学繊維については、その会社の重役を初め、営業部はもちろんのこと、技術部あるいは社長まで出て、非常に、この消費のいかにすれば高まるかということについての懇談をいたしておるのであります。ところが、製糸の方は非常にその関係の連絡が悪かったのでありますが、ちょうどその御申し込みをいただいて以来、私ども絹人繊の工業会といたしましても真剣にこれを取り上げまして、各関係産地が熱心に研究をし宣伝に努力をして、ようやくこの価格も十八万円というところで一応価格最高値が定まるということにおいて、安心をして力を入れて今日までこの生糸の盛んになったことを喜んでおるわけでありますが、ここでまたこの価格がぐらついてきますと、直ちにこの消費の面にも影響があります。先ほども申し上げたように、海外の方から全く注文がとだえておる。ことに、米沢の方のお話から言うと、すでに海外から電報が来ておりまして、十八万円で出すということになってようやく力を入れて取り扱っておるときに、なぜまたこんな高い価格のものになるのだ……。
  180. 吉川久衛

    吉川委員長 茂木参考人に申し上げますが、もう少し簡単にお願いします。
  181. 茂木富二

    茂木参考人 こういう点につきまして、いろいろ産地への問い合わせもあるような次第でありまして、どうしても、私どもは、この価格は一つ安定に——いわゆる今度の十八万円を最高とするこの措置法をぜひともお取り上げいただきませんと、今後非常に業界としてこの生糸に対する消費の意欲がなくなり、自然に合成繊維その他の方に機場が移るようなことがあると、安田さんが先ほど御心配されるように、また再び、安くてどうするかということで、お互いにほんとうに苦しむことがあってはならない。こういう意味におきまして、この価格を維持し、この好調を続けますには、どうかこの価格を異常に高くしませんよう、くれぐれもお願いを申し上げる次第であります。
  182. 栗原俊夫

    ○栗原委員 ただいま茂木さんは十八万円を堅持しろということを強く主張なさっているわけですが、あなたは、農林省の方から出ている数字の中で、繭の生産費製糸の加工販売費を合わせて二十万を突破しておるということは先刻御承知のはずであるから、そういう仕事をしておる者に十八万円で糸を出せということを要求することは、政府が無理にやればやってできないこともありますまいけれども、普通の状態では、あなたの方の御希望は一応わからないでもありませんが、実際続けていかれるとお考えなんですか。
  183. 茂木富二

    茂木参考人 これは大へんむずかしい問題で、この繭の価格であるとかあるいは製糸の加工費であるとかを加算した価格幾らになるかということを土台にしていく場合にはそういう説になりましょうが、しかし、商品にはやはり買う人の立場がありまして、買う立場価格でなければ、原価が幾らかかるといっても、買手が買わなければ商売にならないのであります。そこで、今日繊維関係におきましても、生糸以外の糸は皆御承知のように決して高くはなっておりません。少し高くなればこれがまた適当に調整されておりまするし、ことに、絹にかわるというような名目のもとにいろいろ研究されている合成繊維のごときでも、だんだんとこの価格は引き下げられて、品質をよくしながら引き下げていくというのが現状でございますので、私どもは、そういう意味で、この生糸のいわゆる原価計算のことにつきましては、これは十分その当該業者の御研究によって引き下げることに努力してもらうことが何よりも業界のためにいいのじゃないかと考えております。
  184. 栗原俊夫

    ○栗原委員 これは小島周次郎参考人にお尋ねしますが、先ほど取引所の操作についていろいろやりとりがあったわけですが、実は三万俵政府安定法で買い上げたものを放出するからというような話があって、そういう中から二万俵がきっともらえるのだ、こういう御確信を持っておられるようなんですが、先般来の当委員会においても、五千俵出してみたけれども、あれには一応問題がある、従ってこれはやめているのだ、こういうことですが、それでもなおかつ御確信の上には変化がないのか。なお、その問題について、蚕糸局の当局から、まあ心配するな、法律はそのうちに通るのだから、受け渡しまでにはきっと来るのだというような話があったのか、何らかその確信の上には——一たん出すといって、しかも一部出してストップして、なおかつ確信を持ったその確信の根拠はどこなんですか。
  185. 小島周次郎

    ○小島参考人 先ほど申し上げました通り、十月二十一日のときに、格を拡大したときに二万俵確保するということを口頭で聞いております。
  186. 栗原俊夫

    ○栗原委員 そのことについて、一たん五千俵出したあと、どうも少し情勢が悪くなったというその情勢の中で、特別に蚕糸局の方からは連絡は何もないのですか。
  187. 小島周次郎

    ○小島参考人 今のところございません。
  188. 栗原俊夫

    ○栗原委員 それでは、私の質問を終わります。
  189. 吉川久衛

  190. 金丸徳重

    金丸(徳)委員 時間がだいぶ過ぎてしまいましたし、また、私がお伺いいたしたいと思いました部分につきましては、参考人意見表明後諸先輩からの質疑の中で大体明らかになりました。従って、一点だけお伺いをしておきたいと思います。  先ほどからのお答えの中で、安田参考人海沼参考人、ともに、本質的には最高制限というものはない方がいいのだ、しかし、好ましからざることではあるけれども、今までの関係も考慮する、もう一つは、安田参考人は、政府のオブリゲーションの関係ども考慮して、好ましくないけれども賛成するのだというような御表明があったのであります。この点は、最初の御意見を表明されたときとはだいぶ緩和されてきたように見受けられました。何か勝負がきまったような感じを持ったのであります。  そこで、安田先生に伺いたいのでありますが、今のような条件がもし満たされない場合においては、十八万円というものが二十三万とか二十四万とかいうことでなく若干動くということについてはどういうお気持を持っておられるのか、伺いたいと思います。
  191. 安田義一

    安田参考人 私の最初にお話ししたことと最後が少し違うというような御印象を得たようでございますが、私はそのつもりではなかったのですが、言葉が足りなかったと思うのです。と申しますことは、安定法というものが引き続き今の形で運営されるならばということは、初めからそうなのでございまして、要するに、率直に申しますれば、安定帯というものを生糸年度の途中で変えるということは好ましくない、こういう一点に立っておるわけでございます。先ほど、今年の一月幾ら幾らにきめたじゃないか、昨年の十二月の、たしかあれは年度の終わりですが、二十九日でございましたか、十四万百円ときめたじゃないかという御意見がございましたが、あれは三十四年度価格を昨年の暮れに早手回しにきめたわけでございます。そういう意味におきまして、できることでありますならば、途中で価格を変更するということはいけない、ことに、いろいろな関係業者に影響を及ぼすことが大きい、かように考えておりますが、しかし、製糸はそれで引き合うのかという御質問を受ければ、それは引き合わないのだ、引き合わないのだからして、実勢でわれわれが売ったからといって、お前は罰を犯していると言われても困る。また、先ほど来清算取引所の問題が出て参りましたが、清算取引所の価格というものも、それが十八万でなければ困るという考え方は少しおかしい。これは私はいつも政府御当局に申し上げておるのであります。  なお、不平を申し述べさせていただければ、最近、建玉の自粛制限ということで、一万四千何俵かに売り買いをとめております。玉が落ちなければ売れない。これはある意味では不当の騰貴を押えることになるかもわかりませんが、私ども製糸家といたしましては、売ることができない。もう四つに組んでがっちりとなっているというようなことは、これは今の相場から上へも下へもいかないということであります。こういうことでは、私ども製糸家といたしましては、製品の売りつなぎの場がなくなった、このように考えております。
  192. 金丸徳重

    金丸(徳)委員 大体の腹はよくのみ込めました。  次に、海沼さんにお伺いするのでありますが、先ほどあなたは、思惑などにかからないように、ついては八割八分も使っておるところのわれわれの意見を尊重して、——もっと言いますならば、われわれの手を通じて政府の糸が放出されるような形に持っていってくれれば賛成であるという、これは希望意見のようでありますが、申されたようであります。しかし、政府の今度のこの問題についての具体的な措置を見て参りますと、必ずしもそうでもないようであります。ただいま清算取引所の方にも若干の問題があるような工合でありまして、必ずしもあなたのお考えになるような条件で整うとも思われませんが、もし整わないというような場合においても、なおかつ十八万で出そうというこの政府案に御賛成になる腹でありますか。
  193. 海沼栄祐

    海沼参考人 これは、先ほども申し上げましたように、何といっても、天職でそれをもって生活をし生命としておる人の手によって流させましたならば、ほんとうに思惑等がなく、さらに、停滞しておることがなくて需要者にスムーズに行くという点から考え、さらに、最近の情勢として、先ほど申し上げましたように、内地の最も消費するところ段階である西陣におきましても、また十日町におきましても、先般来価格が高いために織物が売れない。今までは、言うまでもなく、日本経済も非常に成長しまして、政府考えておるより以上の成長をしてきて、好況ということで売れておったわけであります。このまま原糸が高くて絹織物値段が高くなれば、これは売れないことは火を見るよりも明らかになっております。十八万程度の値段でありましたならば消費は増進されておったのですが、なるべくその程度のところでもっていかれることがいいのじゃないかというふうな考え方で私はおるわけです。
  194. 金丸徳重

    金丸(徳)委員 大へん言葉がデリケートに聞こえますが、時間がかかりますからそれくらいにいたしまして織物工業の茂木さんにお伺いいたします。  あなたのお考えといいますか、御意見ははっきりしてよろしいのでありますが、ただ、私は、はっきりし過ぎて困るように受け取れる点もございます。先ほどどなたかの御質問の中でお答えの言葉によりますと、十八万円以上では商売が成り立たないというふうに言われておる。これは織物業者として商売が成り立たないというようにもとれるのでありますが、ここでは、織物業者ということではなくて、繭糸全体の業者としての立場が論ぜられておるわけであります。そこで、十八万円を越したのでは商売が成り立たないというふうに速記録には残るわけでありますが、この点をはっきりしておいていただきたい。織物業者としてはそうであるが、業者全体としてはどうであろうかということが問題でありますから、業者全体としてのお考えを承っておきたいと思います。
  195. 茂木富二

    茂木参考人 ただいまの御質問、私は実は織物業者の代表として招かれましたものですから、織物業者としての立場で申し上げたのでございまして、先ほども申し上げたように、蚕糸関係、いわゆる繭とか生糸の方とは別個の立場で申し上げたことをはっきり申し上げます。
  196. 金丸徳重

    金丸(徳)委員 時間がありませんから、肥田さんにお伺いいたします。  これは輸出の方の関係でありますが、輸出関係でも安いにこしたことはないということもわからぬではありませんが、去年あの騒ぎのときに私どもの耳に入ったことは、アメリカ市場においても、あまりに下げるということは必ずしも輸出振興のあれにはならないのだ、むしろ安定こそ大切であるというようなことで、下げる場合においてもかなりブレーキ的な考えを持っておられた業者もあったように承っておるのであります。この場合においても、私は安いことのみが輸出振興の原因ではないと思う。そういう意味におきまして、さっき肥田さんの御意見の表明の中には、今回の政府の十八万円で出したいというこの法案についてはっきりした賛否というものが表明されなかったように思うのであります。これは今後の審議のわれわれは大いに参考にしなければならぬ点でありますが、輸出業者として、将来の日本生糸の品質を向上せしめる、あるいは信用を確保するという意味において、農家の生産意欲もむろん考えなければならないという意味において、ここでどうしても十八万円をこすことがいけないことであるか、この点、もう一度私どもにはっきりわかるようにお答えをいただきたいと思います。
  197. 肥田啓治

    肥田参考人 私は、十八万円がどうだとか、さっき前安田さんもおっしゃいましたが、この問題を本年度どのくらいで売り渡すことがいいだろうというときには意見が分かれまして、私も十八万円、十九万円くらいがいいじゃないかと言ったわけであります。しかし、その問題は、さっき安田さんのおっしゃったように、だれも、五万俵持っているならばこの年度は十四万円と十八万円となったらこのワク内でたいていいくだろうという安心感をみな持ったわけです。今になりますと、法律上のいろいろテクニカルの問題とか、いろいろなものが出ますけれども、そのときに、みな、この年度は十四万円・十八万円の相場でいくだろうと思って、ここまで進行してきまして、絹織物も売れて生糸もよく売れて、今までないほど生糸の市場が発展したことは、われわれ日本の絹の将来のためにいいことである。そしてそれは、毎年度でございますけれども、その一年度にこういう工合な約束をしたならば、その年度内は絶対に変えないという方式になっております。それは異常な経済の変動があるときはまた変える場合もありますが、われわれいつも審議会なんかで聞いておりますと、それは平価の切り下げか何かで、経済上の景気の変動とかいうようなことくらいでは——大体業者だって経済の進むか退くかということぐらい考えるのはあたりまえであります。平価の切り下げとかで政府が安定価格をきめておったのを急に変えるということは、それは神様でもない限りわからぬ。変動が起きてしまっては困るから、年度内にきめたものは変えない、それでひたすら本年度一年を進行しつつある途中でこれが変わるということでは困るから、これは法律改正してでも十八万円のものを順調にしていくということが本年度のためにもいいし、先ほどから安定制度というものの今後の問題についてはいろいろ御意見もございましたですが、もしそれ安定制度というものが何か考えられるような場合にでも、もう今後日本政府のすることは何をするやらわからぬということで信用を失うことになると、これは、ただに今回のことではなしに、憂いを将来に残すと思います。そういう意味で、この十八万円がどうだとかこうだとかいうことについては、去年の安定審議会でこの問題は確定したわけでありますから、その確定した進みつつある過程において何か変更が起こるということは、そのために害の方が非常に多いという意味で、これの変更がないようにスムーズにいった方がよろしいという意味で賛成しておるようなわけであります。
  198. 金丸徳重

    金丸(徳)委員 その政府の約束を守らなければならない、またそれが自分たちも好ましいという御意見はよくわかりますが、しかし、今までのいろいろな専門家の意見を聞いておりましても、この政府の放出繭をそういう値段で出したところで、それで安定制度、最高価格が安定するのだという見通しは、少なくともこの中においてはどなたからも表明されておりません。のみならず、専門家の安田会長の御表明によりますと、四十二万俵くらいの需要はあるのだ、来年になってもそれほどあるかどうかわからぬけれども、かなりの需要があるのじゃないかということを言われております際におきましては、政府がそういうふうな約束を守ろうとしても、その約束は事実上——ほかの繊維と違って、夜業で設備を急造して需要に応ずることのできない繊維なんです。三年もしくは五年後でなければその効果は生じ得ない繊維であるだけに、政府がその約束を守るべきであるし、海外の信用を確保しようとしても不可能としますならば、ここで十八万円にこだわることがおかしいのではないか。あなたは十八万円を問題にしないのだ、こう言われておりますから、もうこれ以上議論しても同じでありますけれども、そういう意味で私はお伺いをいたしておるわけです。
  199. 肥田啓治

    肥田参考人 それは私も大へんよくわかりました。何もなくなったら、政府のオブリゲーションを果たさなければならぬのが果たす方法はないと思う。しかし、現実に物があって、それを出し惜しみして約束を破るというようなことは非常に不信だと思う。何もなくなったら、何をしようといっても、どんな約束をしようといっても、それが破れたあとでは、ちょうど先ほどのお話のように、防波塊を作っておるけれども、伊勢湾台風ではこれはどうにもしかたがありません。しかし、何ぼかしらぬ持っているものが、このときに出し惜しみをして、これはやらぬということになると、政府不信だと私は解釈いたす次第であります。
  200. 金丸徳重

    金丸(徳)委員 今の点、私は、歩み寄ることによって内需に若干のブレーキをかけまするならば、海外に対する信用がそれによって保持されるのではないか、こういう考えを持つものですからお伺いしたわけであります。これは議論になりますから……。  そこで、最後に私は、生産者の代表の方、細井さんでございますかにお伺いをしたいのです。  実は、今度の政府考え方をまとめるにつきましては、こういうことも根底にあるようであります。生産者はいろいろ努力を重ねて生産費を切り下げつつあるわけであります。そこで、長い将来についてはかなりのところ生産費の逓減がはかられるのだというようなことが腹の中にあって、「長い目をもって見れば」、こういうことを言われておるようでありますが、さて、実際の養蚕家としては、ここ三年五年に政府の理想通り生産費を低下する状況において拡大生産ができるものかどうか、実際家としてはどういうお見込みでございましょうか、お伺いをいたします。
  201. 細井金義

    細井参考人 生産費を切り下げられるかということにつきましては、結論から申し上げますと、ここ二年三年では当然できません。なぜならば、山の中で雨露の中にそのままほうり出すように飼っておくならともかく、蚕室を囲って、そして夜も寝ずにやるような現在の養蚕業であります。それで、従来も、もう十年くらい前は、米を収穫したわら、あの副産物によって蚕を上げるまぶしを作って、それをさらに堆厩肥にして桑園等に還元したようなこともあったわけですが、そういうようなことでは糸質が悪くて繭の品質が悪いというようなことで、現在は紙で作ったいわゆる回転まぶしという方法によって繭を作っているわけでありまして、品質の悪いものを作るのならばともかく、品質をさらによくしていこうということで生産費を少なくしようということは、当然できないと思います。
  202. 金丸徳重

    金丸(徳)委員 ありがとうございました。
  203. 吉川久衛

    吉川委員長 芳賀貢君。
  204. 芳賀貢

    ○芳賀委員 参考人の御意見を聞いていますと、大体、繭糸価格安定臨時措置法の一部改正に対する反対の御意見が、生産者の立場を代表する方を中心にして四名と、他の六名の参考人の皆さんはニュアンスの相違はありますが大体賛成であるというふうに承ったわけでありますが、しかし、その場合も、この繭糸価格安定法に基づいて買い上げた生糸安定法によらないで放出させようとするのがこの臨時措置法改正のねらいでありますが、この点に対してはあまり皆さんは触れておらないのじゃないかと思います。ただ、政府の現在手持ちしておる生糸を十八万円で放出することが妥当であるか、あるいは反対であるかというところに重点が置かれておると思うのですが、この法案の審議にあたっては、安定法こそがむしろ蚕糸業あるいは繭糸価格安定の基本的な制度なんです。臨時措置法というのは昨年の非常に異常な現象に対する応急措置としてできたことは御承知通りであります。ですから、この安定法を全く骨抜きにして、あってなきがごとき状態にすることを目的にした臨時措置法改正案に対して、はたして皆さん方はどういう角度でこれをごらんになっているかということを、もう一度お尋ねしたいのであります。  それから、特にこの二つを並べてみると、繭糸価格安定法の方は、これは、いわゆる生産費方式、繭価格から積み上げて生糸価格をきめる、上限二十三万、下限十九万ということになっておるが、臨時措置法の場合におきましては、これはいわゆる生産費方式ではないのです。結局、生糸価格というものを需給均衡の方式できめて、その場合には当然繭の価格というものは逆算されるということになるわけです。ですから、この際、この繭糸価格安定の今後の制度というものは、あくまで繭を中心とした安定制度でいくべきか、需給均衡方式でいくべきかという、この二つの岐路にこれは立っておるのではないかと私たち考え、このような内容を持った法案の改正に対しては、これは十分慎重を期さなければいかぬということで、今日まで法案の審議は非常に慎重に行なわれておるわけなんです。従って、この点について臨時措置法の簡単な一部改正によって安定法を骨抜きにしてしまう、そうして生産費方式を需給均衡方式に移行させようとする政府の意図に対して、反対の立場の方は態度が明確になっておると思いますが、この際もう一度、これは生産者の立場、あるいは製糸機能を持っておられるたとえば田原さん、滝澤さんの御意見をお伺いすると同時に、製糸業者の代表である安田さん、並びに国用の茂手木参考人から、これに対する御意見をお伺いするわけです。
  205. 吉川久衛

    吉川委員長 どうでしょう、芳賀委員に相談しますが、今おっしゃっただけ全部にしますか、それとも両方の代表……。
  206. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いや、四人ですね。
  207. 田原徳

    田原参考人 ただいまの御質問と内容において大へん似通った御質問がありまして、先ほどからお答えをいたしておるのでございますが、今回の法律改正は、安定法によって取得した生糸を、この法律によらずに、いわゆる臨時措置法によって定めた額で処分するというところだと了解しておりますが、この臨時措置法を制定されました当時の事情は、諸先生方参考人の皆さんもよく御承知通りでございまして、いろいろな事情があったとはいいながらも、十九万円堅持のために莫大な国費を投じまして、しかも、十万俵の糸を買い上げ、安定法によりあるいは臨時措置法によって約五万俵ずつの買い上げをいたしましても、その価格が下がって参ります。これではどこまでいったらとまるのかというようないわゆる最悪の事態においてこの価格が制定されたと考えております。ここに当時の諮問案を持っておりますが、三十三年十二月二十六日に、農林大臣三浦一雄先生のときでございますが、貴会に対して次の事項を諮問する、——これは、昭和三十三生糸年度に適用されている標準生糸最低価格及び最低繭価昭和三十四年一月十六日から下記の通り改定することについて貴会の意見を求める、と諮問をされたのであります。そこで、私どもは、皆さんからたびたび意見がありましたように、繭糸価格安定法というものが制定された当時は、糸価安定ということで輸出を増進することを目的として作られましたあとで、それだけでは生産基盤を確保するわけにはいかぬということから、繭の字を入れて、繭糸価格安定法にされました。これは養蚕経営の安定をはかるためこの法律の目的は二つあるというふうに考えております。従って、昨年の十二月の最悪の事態においてこの糸の価格を十四万円に引き下げるというときには、ずいぶんと議論があり、私どもは、生産者の代表として、絶対に承服のできないものであるということを数々の事例をあげて反対をいたしたのでございます。しかしながら、客観情勢は、法の中にもありますように、経済情勢や需給関係等を勘案して定めるということになっておりますから、いろいろな事情から、これほどまで国に御迷惑をかけた以上は、ここでこの価格に一応引き下げることはやむを得ないだろう、しかしながら必ずしも最低価格に膠着するものではないという考えで、私どもはやむを得ず承服したような形になったのでございます。そうして十四万円という価格が出たのでございます。  ところが、この事態において、四万円引き下がって、十五万円以下に下がったということで改定をされたのでございますが、この今回の糸の上値というものは、すでにそういうような事態から二十万円あるいは二十万五千円というような価格まで現実に出てきたのでございまして、このときの状態と現状がはたして同じようなものであるだろうかどうだろうか。経済事情あるいは諸般の情勢、需給関係においては、政府が今年度は六万俵以上足りないということを明確に出して、本日の新聞がそれを報じております。こういうような事情から、経済情勢は内外ともに非常な好転をしておる。この時期において、この最悪の事態において余儀なく引き下げられた臨時措置法安定法をまたぞろ改正して持っていかなければならぬかどうかということです。十八万円という価格を言われますと、何か十八万円が普通の価格だというふうなお考えのようでございますが、十八万円は最高価格でございます。これに対しましては、われわれ生産者団体としては、どうしてもこの生産費を償う価格ということを打ち出しておったのであります。各団体の方の御意見をお聞きいたしますと、昨年の引き下がってきたときには、あくまでも十九万円という価格を維持しなければならぬという意見があり、そしてまた、今回は、生産費は養蚕の方だけはそうやったらいいじゃないかというような御意見もございますので、われわれもまたこの点についていろいろと検討をいたしておるわけでございます。しかしながら、とにもかくにも、現状が、その最悪の事態にきめたいわゆる下値十四万、上値十八万でございますが、そこに引き下げねばならぬ状態であるかどうか、こういうことは、先生方の御判断によって御決定いただくことでございます。私から言えば、何といたしましても、生産費というものを基準として算定すると定められた繭糸価格安定法によってやっていただきたい。十八万円以上どれだけになったならばというようなことがいろいろ議論されるようでございますけれども最高価格生産費よりも二万円安いということは、法がある以上は、法が改正されればおのずから別ですが、ある以上はこれはおかしいのじゃないか。  それから、これはあとでどういう御質問があるかわかりませんけれども、ついででございますから……。本日の日本経済新聞に、農林大臣が発表をされました「恒久的な繭糸安定制度」云々ということが出ておりまして、「三十五生糸年度生糸需給は、今生糸年度中に放出する政府手持ち糸のかなりの部分が市中に滞留するだろうから、今の安定帯価格(一俵十四万—十八万円)が続けば、均衡状態を続けるだろう。」、こういうことを語っておられるのであります。この相当市中に滞留するだろうという数字は、先ほど申し上げましたように、本年の需給から割り出しまして、三万か四万俵というものが滞留するだろう、こういうことでございます。そのあとに放出の問題が出ております。全量放出されたということになりますれば、放出をされる価格がかりに十八万円であったといたしますれば、製糸としては、十八万円では採算が合わないということを安田さんが再三言われておりますが、合わないから売れないで、十八万円で売れるものは先に売れてしまう。政府の糸は市中に出てしまって、大臣が言う滞貨は製糸の倉の中にされるということが出てくるのではないか。こういうことになると、明年からの最高価格はどうなるかということなんであります。そういうことから言いますと、私どもとしては、この問題に対しては、どうしても生産費を補償する価格にしてもらいたい、こういうことを要求し続けているわけでございます。
  208. 安田義一

    安田参考人 臨時措置法繭糸価格安定法という二つの法律関係について御質問があったのでございます。  私は、臨時措置法は時限法でございますので、これはほうっておいてもいつかエクスパイアするではないか、かように考えております。先ほどの御意見と申しますか、御質問の中では、繭糸価格安定法政府は何かすりかえようとしている、需給均衡価格の方へ持っていこうという考えのためにこの糸を措置法の方に移して売るのではないか、それに対してお前はどう考えるかという御質問でございますが、私はそういう法令関係のことはよくわかりませんですが、問題を簡単にいたしまして、需給均衡価格がよいか生産費基準ないし補償方式がよいか、こういうことで私の意見を申し上げますれば、糸に関する限りは、生産費基準で原価を算出いたしましても、はたして買手が買うかということに非常な心配がございます。そこで、あくまで、需給均衡価格ないし生産費、どっちかということを突き詰めて参りますれば、価格操作については、やはり繭と生糸を切り離さざるを得ない、今かような考えになっております。
  209. 滝澤清見

    滝澤参考人 昨年の臨時措置法というものはどこまでも臨時的なものでございまして、蚕糸業がいまだかつて経験し得なかったようなあの大暴落をしたときのものであります。繭糸価格安定法というものは、少なくとも私たち養蚕農民立場としては養蚕農民の農業基本法にもひとしいもので、こうしたものを簡単に去年の異常事態できめられたように変えられては大へんであり、これに対して私は強く反対を申し上げているわけでございます。なおまた、生産費方式にいたしましても、たまたま今の需給関係生産費方式にも需給均衡価格にも合いつつあるわけで、ここで何も法を変えてこんなむちゃはしなくてもよいと思うわけでございまして、私はどこまでも本改正案に対しては反対をいたします。
  210. 茂手木三良兵衛

    茂手木参考人 私は、芳賀さんのように法律家ではありませんので、何もわかりません。そういうことは、先生方法律の建前をお考えになるときにお考えになるべきことであって、私ののような糸の生産をする者は、ただ単に業界の安定をこそ願うだけで、それ以外にお答えはできません。
  211. 芳賀貢

    ○芳賀委員 安定法の検討についてはいろいろ議論がある点でありましていずれ次の機会にまたおいで願うことにしたいと思います。  そこで、このような法律改正政府がやる場合に、われわれの常識的な判断としては、安定審議会を開いて審議委員諸氏のいろいろな意見を聞いて、それらを総合して改正の挙に出るなら出るということがしかるべきではないか、こういう声も当委員会では相当強いわけです。田原さんとか安田さんは審議委員であるというふうに察しておるのですが、そういう点に対して審議委員の皆さんの方から何か不満等は全然ないものであるかどうか、お伺いいたします。
  212. 田原徳

    田原参考人 私どもの団体といたしましては、当初申し上げましたように、すみやかに審議会を開いて適切なる対策を立ててもらいたいということを要望いたしたわけでございます。
  213. 安田義一

    安田参考人 この点につきましては、私ら、蚕糸局長に、審議会を開いてはどうかという申し入れをいたしたわけであります。局長の御返事といたしましては、価格を変えないのだから諮問しなくてもいいという解釈である、こういうことでありました。
  214. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたい点は、昨日の委員会で実は農林大臣が発言しまして、昨日の時限でありますが、現在の政府考え方は、もしもこの審議中の法案が成立した場合——これはあくまでも仮定です。その場合においては、この価格の浮動要因が除去された暁には、必ずしも十八万でなければならぬというふうには考えておらぬ、そのことは、今後法律改正が万が一行なわれた場合においても決して十八万円という固定した考えは持っておらぬということを、これは文書を通じあるいは委員会の発言を通じて農林大臣は実はこれを明らかにしております。そのことは、先ほど来各参考人の皆さんの中からも、もし政府が現在の安定法による手持ちの四万九千俵を市場に放出した場合においても、はたして十八万円の価格が安定されるかどうかということに対しては、皆さん方だれ一人として、それで大丈夫だ、自信が持てるという御意見はなかったように聞いておるのです。特に、安田さんの場合においては、そういうものはあまり効果がないじゃないか、それに期待が持てぬというような意味の御発言もありましたが、この点に対する見通しと、もう一つは、現在政府が五万俵持っておるということは、これは一つの拘束は受けておるけれども、やはり市場に対する供給力であるということには間違いがないわけです。これを万一全量放出した場合、それならば、明年度生糸年度、特に来年の春繭あたりの場合の価格の情勢とか推移というものは、何ら打つべき手がない状態の中において、はたしてこの十八万なら十八万の安定線というものは次年度に持続できるかどうかということに対しては、それぞれ皆さん方は懸念を持っておられると思うのでありますが、この点について、時間の関係もあると思いますので、田原さんと安田さんと、それからこれは一番敏感な反応のある取引所の小島さん、この三氏にお尋ねしたいと思います。
  215. 田原徳

    田原参考人 先ほど申し上げましたような政府発表による本年期末在庫が四万俵前後ということに相なっております。どなたの意見消費者といいますか、関係団体の方々の御意見を聞いても、この価格で最近は非常に注文が減ってきた、来年は非常にまずくなるんじゃないかというような御発言があったのでございますが、そうしますと、私どもといたしましては、はたしてその価格が維持されるかどうか。何といたしましても、ただいま論議されております十八万円は最高でございますから、この点に問題があるのでございまして、最低をこれだというならば、これはまた意見を別に申し上げたいと思います。生産費から八五%を支持するということになれば、大体最低がその辺になるのが安定法の建前になっておりますので、そこは一つ御判断におまかせいたします。
  216. 安田義一

    安田参考人 ただいまの御質問ですが、全量放出したらどうなるかという推定と申しますか観測でございますが、非常に問題はむずかしい。これは、先ほど来いろいろ各参考人の方から、先のことはわからぬと言わんばかしの御発言がありましたわけですから、全くの安田義一個人の相場観ということを御返事せざるを得ないと思います。当たるか当たらないかわかりませんが、私は、この全量がいろいろな制限なくして放出されるならば、相当市価は下がるであろう、かように考えております。ただし、十八万になるかどうかということにつきましては、私も必ず十八万になるとは申し上げかねます。と申しますことは、ざっくばらんに言えば、今、生糸関係者というものは、この四万何千俵の糸がどうなるかということにみんな一丁張っておるわけです。ですから、見方によれば、これが全部出ればもう出るものはないからといって、上がっていくという見方もある。同時に、それだけ出れば何といっても冷えるだろうという見方もある。先ほど田原さんは、この安い糸はみんな需要者が使ってしまって、製糸の倉に糸が残るだろうということでしたが、私もそういうふうに懸念いたしております。そうしますと、製糸はやはり銀行から金を借りておりますし、やはり売らなければならぬということになりますので、私は下へいく可能性の方がどうしても強い。ことに、先ほど来お話がございますように、二十万前後になりますと、何といっても生糸消費は減って参ります。ことに、これからシーズン・オフにも入るというような関係からいたしまして、かんかんの強気にはなれないわけでございます。これがお答えになっておりますかどうですか。市場観といたしましては、私は、下へいく力が強い、ただし、いろいろ話が出ておりますように、取引所も幾らかほしい、日絹工業会も幾らかほしい、あるいは輸出組合も先約しておるから幾らか糸がほしいということで、これがそういうふうにちりぢりになりますと、マーケットに与える影響というものは、数字的には四万何千俵が放出されるのですから同じではありますが、相場の上にはかなり違った形が一応出るのではないか、かように考えております。
  217. 小島周次郎

    ○小島参考人 取引所としまして御意見は申し上げられないので、全然個人の考えでございます。取引所には買手と売手がございまして、同数でございます。強気もありますれば弱気もあります。大体、政府の糸が全部売り出される場合には、私は、本年度需給関係からいきまして、最後には十八万を割るのじゃないか、非常に安い値が出るのではないか。ことに、現在の政府の手持ち糸には十四中が相当残っております。七千俵ばかり残っております。これはなかなか売れない。先ほど私御返事申し上げませんでしたが、当限の値段が是か非かというようなお話もありましたが、当限の糸が安いというのは、やはり十四中に対する需要がない。これは取引所のさっきの話と関係がありますが、取引所は糸はもらいましても、取引所は最終消費者でないので、これは必ずほかへ回るのです。ですから、取引所へ入ったものは必ず外へ出ている。必ずしも取引所自体で消費しないものでございますから、その点は御了承願いたいと思います。大体、私としましては、前途に対しましては強気ではございません。むしろ弱気で、十八万を下回る、一ぺんにこれが放出されればよけい安くなるんじゃないか、ぼちぼち出されればそんなでもないと思います。
  218. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたいのは、これは先ほど海沼参考人茂木富二さんからお話がありましたが、今までの政府の放出のやり方は、肝心な実需の方へ渡らないで思惑筋の方へ相当流れておる、そうなると、せっかく政府が安く政策的に放出しても、それが何らの実効があがらぬというような御意見がありましたが、その御指摘になったようなやり方といいますか、手口といいますか、その点に対して少し述べていただきたいと思います。どういうふうなことを政府がやらしておるか。指示してはおらぬとしても、容認しておるということになると思うので、その内容と、これに対しては、政府が全く無干渉にそういうことを今まではやらしておったかどうかというような点についても質問したいと思います。これは海沼さんと茂木富二さんにお答え願いたい。
  219. 海沼栄祐

    海沼参考人 これは、先ほど来申し上げてありますが、実際、先回の五千俵放出は、実需筋に行かないものが多く、製糸家にも入札されて製糸家の倉にも積んであるというようなことを、調査した者からよく聞かされております。これは、当然消費者に行くべきものが製糸家に買われて製糸家の倉に積んであるということは非常に不合理であって、こういう点を考えまして、実は蚕糸局長の方にも、私ども口頭をもって、今後の放出に対しては慎重に考えてやってもらいたいということを申し述べてあります。そういうことから考えまして、先ほど申しましたように、われわれ生糸問屋業者は真に生糸の流れというものに沿って正しく営業を続けておりますから、今後におきましても、天職として生命を打ち込んでおるところ全国生糸問屋を通してやっていただけば、過去のような失敗はなかろうということを私は確信しております。  なお、値段の問題に対しましては、先ほど申しましたように需要と供給から起こることですが、大体需要地の情勢から申し上げますならば、十八万円を維持してもらった方がよいと思いますが、こういうことに対しては繭糸価格安定審議会に諮って私はやるべきものだろうと考えております。
  220. 茂木富二

    茂木参考人 ただいまの御質問は、私ども生糸を買い入れる場合には、やはり取り扱いをされる問屋を通し、また地方の生糸問屋を通して買うのを例といたしております。この申し込みも、業者自体が申し込むというのはきわめて少ないと思うのでございます。そして、消費関係の皆さんがこれを受けましても、さて売るときには自由であるというようなことから、清算市場が大へん上の価格にあるときには、高い値を主張されて、やむなくそれを買わざるを得ないというようなことになることを遺憾に思っておるわけでございます。せっかくこうした輸出の増進にまた糸価の安定に放出をされるのでありますから、これは私どもの団体ではその業者の実績は明らかになっておりまして、輸出業者の方は輸出検査をし、内需の方もきちっと数量検査をいたしておりますから、大体の標準はつくのでございます。もちろん統制の糸ではありませんからこれを割当というわけにも参りませんが、限度なり目安は一応それによってつくのではないかと思っております。これらの配分については、また私ども団体においても十分検討し、また関係の役所とも連絡をいたして、公平を期するようにいたしたいと考えておりますが、要は、この糸の問屋の団体、これは当然このルートを通るはずでございますから、今後十分懇談をいたしまして、適正なる配分ができることかと考えております。
  221. 芳賀貢

    ○芳賀委員 今の問題は大事な問題だと思います。政府が昨年以来、たとえば繭の価格の安定のためとか、繭糸の安定のためとか、今度の一つの価格の安定の措置も、これは昨年から数えると、この財政的な国の負担というものは相当かさんでおるわけです。今海沼さんのお話によると、政府の放出の糸が製糸の方へも流れておる、こういうことは非常に大へんなことだと思います。製糸立場から見るとむしろ製糸を売り出さなければならぬのに、何のために政府が放出する糸を製糸の方でしかも十八万という安い値段で払い下げを受けなければならぬという事由というものがわれわれにはちょっとわからない。いろいろあると思うのです。経済の仕組みで、十八万で買えばすぐそれを二十万で売れるということにもなっておるのですから、そういうことになると、せっかく政府が安い価格で手持ちを放出しても、一部の思惑とか業者の不当利得だけのために政府が手持ちの糸を放出するということに終わるわけです。ここで安田さんをさすわけではないが、製糸関係政府の放出生糸を申し込んで買わなければならぬというような理由はどこにあるかということを参考までに聞かしてもらいたい。
  222. 安田義一

    安田参考人 私も今初めて製糸がだいぶ買ったという話を聞きまして、実はびっくりしております。もしそういう事態があるといたしますれば、交換生糸というものがあるのです。これは、昨年の乾繭共同保管によりまして日本生糸輸出保管会社が持っておりました繭を入札の方式で委託加工をやらせたわけであります。これは本年の十二月末までにその委託された繭に相当する生糸を保管会社へ持っていかなければならない。自分の手元の糸は二十万で売れるから、十八万の糸をとってそこへ持っていこう、そういうことを考えたのではないかと今考えているのですが、そういうことならば製糸が買うということもあり得る、かように考えておりますが、ほかに私はちょっと寡聞にしてそういうことをあまり聞いておりませんが、ここに製糸協会の事務局の者もおりますから、必要でしたらそういう事実があるかどうか聞いてみますが、ちょっとふには落ちない、かように考えております。
  223. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは、今の資本主義の経済の仕組みの中では、悪ではあるけれどもやればやれるということであろうと私は考えておるわけです。  時間がありませんから、最後に小島参考人にお尋ねしますが、先ほどの御答弁によりますと、十月二十一日付の蚕糸局長の声明によって確約された内容については、これは小島さんがるる述べられた通りでありますが、その当時の局長の確約というものは、当時まだ臨時国会も開かれておりませんから、二万俵というものは、臨時措置法によって政府が手持ちした五万俵のうちをさすのか、あるいは安定法によって政府が現在手持ちしておる四万五千俵をさすのか、その点に対してはどういうような話し合いになっておるか、お尋ねしたい。
  224. 小島周次郎

    ○小島参考人 私は法律的にあまり詳しくないので、政府が二万俵くれるというので、私はそれをうのみにして二万俵ということを確認しておるわけであります。
  225. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それはおわかりにならぬことはないと思うのです。二通りなんです。臨時措置法に基づいて政府が手持ちしておるのは、これは最高十八万ですでに放出しておる。十月二十一日の時限では、もう手持ちがあったかどうか実はわからないわけです。ですから、おそらく、蚕糸局長が取引所の理事長に確約された点は、現在政府がいわゆる繭糸価格安定法に基づいて手持ちしておる四万九千俵のうちから二万俵をお前の方にやるというような確約であったと、私は先ほどのお話を聞いて推定しておるのですが、この点は実に大事な点なんです。それで、だめ押しをするように聞こえるかもしれぬが、率直にお答え願いたい。
  226. 小島周次郎

    ○小島参考人 私は、今申し上げましたように、大体二万俵ということで、その具体的な内容についてははっきりしておりませんけれども、大体、生糸の先物という長い間のことですから、常識的に考えまして安定法の糸も含んでおる、かようにとっていいんではないかというふうに思っております。
  227. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは疑う余地もなく今の法案の審議に関係あることに間違いはないのですから、そこははっきりしておきますが、ただ、十月二十一日は——この国会関係を申し上げると、この臨時国会は十月二十六日に実は召集されて十二月十四日に終わるということになっておる。ですから、十四日までというとあと五日ぐらいしかないのです。従って、現在においても非常にわれわれとしても慎重を期して、衆議院段階委員会で今やっと法案の審議に入って、きょうは皆さん方の御意見を承ったという段階なわけです。常識的に考えると、あと五日で衆議院の委員会で十分な慎重審議を尽くして参議院に回ってこれが成立するかどうかということに対しては、実はわれわれとしても自信がない。そうなるとこの法律改正はできないわけです。できないと、せっかく小島さんの方で期待されておっても、この四万九千俵については十八万円では放出ができないということになる。そういうことになると、あなたの方は取引所の存立に関するようなことにもなるというような悲壮な発言がありましたが、それらの点に対してはどういうふうなお考えを持っておるのですか。これがもしだめならば、蚕糸局長の責任で損害を補てんするとか、あるいは取引所の今後の経営に対しては絶対責任を負うとか、そういうことになっておるのか、いかがですか。
  228. 小島周次郎

    ○小島参考人 その点は、私はそこまでは追及しておりません。
  229. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは大事なのですよ。この臨時国会に今法案がかかっておる。ところが、さっき言われた十月二十一日の局長声明というのは国会のない時期なんです。ですから、その時期に、安定法で手持ちしておる四万九千俵のうちからあなたの方へ十八万円で二万俵やれるという約束は、実際常識的に考えればできないのですよ。しかも日本蚕糸行政の担当責任者がそういうでたらめなことが言えるはずはないのです。ただそういうことだけに根拠を置いて信頼されてやっていくととんでもないことになるのじゃないかと、われわれとしては老婆心ながら実はお察ししておるのです。この点も非常に大事な点であるので、あなたは理事長ではありませんが、蚕糸局長と取引所との間においてかわされた具体的な約束事項の内容をできるだけ詳細にお述べ願いたいと思う。
  230. 小島周次郎

    ○小島参考人 先ほども申しました通り、十月二十一日のときに、供用品を変更するといったときに、変更するに関しまして限月に対して確保する、そういった言明を受けているわけです。
  231. 芳賀貢

    ○芳賀委員 きょうは皆さん参考人ですから、これ以上お尋ねはできないと思いますが、ただ、今の問題はこの法案を今後審議する上には非常に重要な点になるわけです。行政府の一役人が、法律改正とかそういうものを決定する力もなくて、取引所との間においてこういう不法な取りきめをするということは、われわれの通念から言って実はあり得ないことなんです。そこで、小島さんよりそういう事実があるということをお述べになったので、この点については、委員長に申し上げますが、後刻理事会を開いていただいて、小島さんの意見の陳述の問題等については、責任者の理事長がきょうは来ておられないので、後刻あるいは正式に理事長出席を求めるような手続をとるようなことをも委員長を中心にしてお計らい願いたいということをつけ加えて、私はこれで質問を終わります。
  232. 吉川久衛

    吉川委員長 中澤茂一君。
  233. 中澤茂一

    ○中澤委員 時間がだいぶたったから簡単に聞きますが、小島さん、命令だから規程以上のものだという法的解釈でもってやられたのだというときに、あなた方は取引所として商品取引所法の八十八条の規定を検討してこれを受けたのですか。明らかに、なれ合い取引禁止の規定の違反になっておる。
  234. 小島周次郎

    ○小島参考人 業務規程におきましては建玉に対する供用品の変更はできないわけです。ですから、取引所としては、総会でもいろいろ審議の的となりました。しかし、政府の指示によって、——指示をわれわれは命令と解釈する。それで、命令でなければそういうことはできない。取引所としてはそれは受け入れかねる問題であります。それで、命令としてそれを受けて、そして総会の承認を得まして、それでやったわけであります。
  235. 中澤茂一

    ○中澤委員 それはあなた方は規程だと簡単に考えている。ところが、取引所法の八十八条のなれ合い売買取引の禁止がここにある。八項目にわたって、こういうことをしてはいかぬぞという規定がある、法律がある。法律というものは命令よりも上なんですよ。だから、命令を受けたときに、なれ合い売買になるかならないか、この八十八条の規定を一項ずつあなた方が検討して、そしてなれ合い売買にならないという結論を出して取引所はやったかどうかということです。命令よりもこの八十八条の方が上位にあるのですから、これを検討したかどうか。
  236. 小島周次郎

    ○小島参考人 その点につきましては検討しなかったと思います。
  237. 中澤茂一

    ○中澤委員 これは、委員長、重大な法律違反をやっているし、これは大へんな問題になってきてしまった。これは、理事長参考人ではなしに証人として呼んで、法律違反をやって平然としているものに対して委員会は真相を明らかにしなければならぬ。  そこで、小島さんにお伺いするが、理事長の病気の状況というものはいかがなんですか。
  238. 小島周次郎

    ○小島参考人 理事長はもう全快しまして、たしかきょうは出ているはずであります。
  239. 中澤茂一

    ○中澤委員 取引所は平然と法律違反をやっている。そんな法律違反を平然とやるのなら、取引所などは閉鎖した方がいいと思う。そういう点については、後日理事長を当委員会参考人としてではなしに証人として召喚して、この問題を明らかにしたいと思う。  それから、この問題で皆さんの御意見を聞きたいというのは、今この問題について考え方がまっ二つに分かれている。政府考え方も、われわれの考え方も、あまり暴騰してはいけないということは一致している。ただし、その方法論において分かれておる。政府は、このごろ五千出したから、四万五千出せばかえって春繭価格は安定するという考え方なのです。われわれは、四万五千俵を出してしまったならば、もう春繭の価格には押えるものがないじゃないか、青天井になるじゃないか、そうすると、過剰設備の問題とからんでまた製糸が至るところで必ず引き抜き合戦をやってくる、過剰設備が四割もあって、それが整理されていないから、そういう合戦が起こってきたときに、この四万五千俵をもって頭から抜き打ち的にやって相場を押えていって大暴騰を防げということを政策的に考えているのがわれわれの立場です。その点において政府考え方とわれわれの方法論が完全に平行しているわけです。  そういう点について、安田さんが一番詳しいと思うのですが、あなたは、さっき、下がるだろうと言われ、また、どなたかは、出し方によれば十八万を割るかもしれない、そうおっしゃいましたが、安田さんの考え方はどうでしょう。春繭の混乱は、これを全量放出しても起きないという見通しですか、どういう見通しですか。
  240. 安田義一

    安田参考人 先ほども申し上げましたように、私は、十八万を割るとも考えておりませんが、やはり価格は下へいくだろう、かように考えております。別に数字的根拠はございませんが、今のままにしてかりに放出をしないということになりますれば、むしろ今上がってしまって、そうして一そう谷が深くなる。あるいは、春繭につきましては、いろいろな観測がございますが、本年は養蚕家の手取りというものは決して悪くはないと私は考えております。従いまして、来年度は春はおそらく増産されるであろうと見ております。その率につきましては、依然として桑園の改植、整理というようなことが行なわれておりますから、そうべらぼうにはふえないと思いますが、傾向としてはふえる。現在私どもが聞いておりますことには、鹿児島県、福島県、岩手県は来年はふえるという情報を得ております。主要養蚕県であります長野、山梨、群馬、埼玉につきましては、これはどうなるかわからぬということでございますが、常識的には若干ふえるであろう。同時に、糸価のいどころも高くなっておるので、何といっても消費は減退するだろう。こういういろいろな事情が錯綜いたしますれば、むしろ春は安い傾向にある。そこで、今ここで放出をいたしましても、高値押えの玉はないというような心配は起こらないのじゃないか。巷間伝えられるところによりますれば、一万俵残すとか、二万俵残すというような説もございますが、その程度ではやはり高値押えとしては微力ではないか、どうせ来年のために残すのなら全量残す方が高値押えにはむしろ効果的である、かように思います。
  241. 中澤茂一

    ○中澤委員 それでは、生産の問題ですが、これは中村さんでも田原さんでも全養連の役員だから御承知だと思うが、われわれの資料から推定したところでは、来生糸年度生産量というものは、順調に天候がよく最高にいって、三十三万くらいにしか押えられないのじゃないか、こういう見通しを持っておるわけですが、その辺どうでしょうか。
  242. 田原徳

    田原参考人 今年の総生産は三千万貫を割っておるわけでございます。今いろいろお話がございましたが、昨年の桑園の整理その他の関係から考えまして、増産をいたしましてもそうたくさん出る桑がありませんから、桑のないところにはそう出ません。大がい御説の辺じゃないかというふうに考えております。
  243. 中澤茂一

    ○中澤委員 安田さんにお伺いしますが、あなたの下がるという見通しは要するに、今放出しても春繭の混乱は来ないという御所見ですが、そうすると、来生糸年度需要見込みは、私もいろいろな方々の御意見を聞いておりますが、最低三十八万俵は需要がいくだろうという見通し、これは大体現行の相場を織り込んでその程度はいきはしないかという見通しです。甘く見る人は、三十九万俵から四十万俵いきやせぬか、そういうふうに見ている。そうすると、来生糸年度における供給不足は五、六万俵出てくると思う。その見込みについてはどうでしょう。そういう観点に立って考えた場合は、どうしても来年の春繭は非常に暴騰してくる危険があるという見方をするもので、われわれはこの法案に対して慎重なんです。その点についてあなたの見通しはどうでしょう。
  244. 安田義一

    安田参考人 これは、相場の見方ですから、見解はいろいろあろうかと思います。御指摘のように、来生糸年度は——先ほども、今のような状況が続くならばということを申し上げましたが、やはり三十八万俵ぐらいの消費があろうかと思います。そうして、ただいま田原さんから来年度の繭が三十三万俵というお話がありましたが、私は、もうちょっと多いのではないか、三十四万俵ぐらいと実は思っております。そこで、かりに全量の生糸が放出されまして、来生糸年度に繰り越されるものが二万俵と、これも推定でございますが、そういたしますと、やはり来年は二万俵ぐらいの供給不足が一応予想されるのは、数字的にはっきりいたしております。従いまして、それをマーケットがどう織り込むかということでございますが、糸価が非常に高くなりますれば二万俵ぐらいは調節ができる。高いから買わぬという状態が出てくる。従って、極端な暴騰は起こらないのではないか。これはものの見方ですから両説あるのは当然でございましょうが、ただ単に来生糸年度需給いかん、こういう御質問でございますれば、やはり、ものの見方でございますが、二万俵、人によっては四万俵という御意見があろうかと思いますが、おそらく供給は不足いたします。
  245. 中澤茂一

    ○中澤委員 さっきあなたもおっしゃったように、中途半端な放出はすべきじゃない、やはり、根本的に政策としてやる場合、——皆さんの立場は、何をやろうがもうかりさえすればかまわぬが、国の政策としてやる場合は、今全量放出して、春繭に押えるものが何もなくて、そして過剰設備がからんでおるから、買いあおりがきたというとき、政府がとる手がないじゃないか、だから、この段階においてはやはり放出すべきじゃない、春繭の混乱を防ぐために政府はこれをおもしに持っていて、春繭の団協がいよいよもめてきたときこれを出して価格を安定すべきじゃないか、こういうのがわれわれの考え方なんです。だから、先ほどあなたは、持っているなら全量持っていた方がいいという御意見も申されましたが、あなたの考えでは、あなたが農林大臣としてやる場合、どっちの方がいいと思いますか。
  246. 安田義一

    安田参考人 かりに私が農林大臣でございますれば、一応全量放出をいたしたいと思います。(笑声)
  247. 中澤茂一

    ○中澤委員 あなたは、繭糸価格安定法さえ、そんなものやめてしまえという御意見ですから、大体そういう御答弁になるとは思いましたが、そこで、これは生糸問屋海沼さんなり織物工業組合の茂木さんなりから答えていただきたいと思いますが、先月の輸出状況を見ても、一万三千八百俵ですか、有史以来の輸出もできておる。これはみな二十万という価格でできておるわけです。そういう現実から見て、どうも、海沼さん、茂木さんのおっしゃることがちょっとふに落ちないのです。皆さんのおっしゃることを聞けば、海外需要も内需も全然だめになってきてしまった、これじゃ先行きまつ暗だという御意見だが、海外の方はどうしてああいう有史以来の輸出量が出ていくのでしょうか。そういった見通しについてどうお考えなんですか。答弁は簡単に願います。
  248. 海沼栄祐

    海沼参考人 ただいまの御質問でございますが、先ほどから申し上げておりますように、価格が安定しておることと、それから、世界的に景気の好況でもって——大体ここで考えなければならぬことは、生糸日本だけで出るのでない。中共等におきましても相当生産されておりまして、しかも、これは、私が申すまでもなく、先生方承知通り、中共においては国家管理でやっておりますから、日本生糸よりは安く海外へ輸出しておる。こういう強力な敵がありますので、それやこれや考えて、あまり価格をいろいろにいじらないで、本年度だけは繭糸価格安定審議会とすればやらぬでいくことがいいのではないか、これは私の見解ですが、それやこれやでいろいろと蚕糸業の安定というところから考えての意見でございます。
  249. 茂木富二

    茂木参考人 私は織物だけについて答弁いたしたいと思います。織物の方の輸出は、先月はたくさんの取引ができたと申しましても、それは先月約定したものではなくて、そのものによりますが、三カ月前、長いのは半年も前から契約をしておるというような状況でありますから、たまたまその注文が重なった月には多くなるという結果であります。ただいまは注文がとだえておりますので、やがてその結果は暮れから出てくる、こういうことであります。そういうふうに一つ御了承願いたいと思います。
  250. 中澤茂一

    ○中澤委員 滝澤清見さんに一言聞きますが、去年あなたは日本代表として世界絹業大会に行って、いろいろ絹の情報を各国を回って調べてきたわけですが、あなたが去年欧州市場を回ってきた感じとしては、これが二十万という価格に上がれば、織物でも輸出が全部とまってしまうという感じを受けているでしょうか。それとも、政府施策いかんによればもっと輸出はふえると見てきたでしょうか。欧州市場をお回りになってきたと聞いておるが、どういう情勢でございましたか。
  251. 滝澤清見

    滝澤参考人 需要は当時非常に伸びるというふうに思ったわけでございます。案の定そんな工合に需要は伸びております。二十三万という値段はいずれにしましても、ある程度これが高値になりましても、需要は私は減退はしないと思います。なかなか底がたい景気の上に立って、なお絹というものについての新しい認識の上に立って、また技術的な改良の面に立って、消費は伸びておるわけでございます。さらに、政府の政策も、先ほども最初に申し上げました通り、ただ業者にまかせるということではなくて、新しい絹の需要開拓ということについてもっと力を入れて、ぐらぐらする蚕糸局等がこの問題を扱うのではなくて、場合によれば通産省あたりの専門家にお願いしてやるというような方針を打ち立てるならば、私は決して需要は減退することはないというように確信を持って申し上げる次第でございます。
  252. 吉川久衛

    吉川委員長 参考人よりの意見聴取はこの程度にとどめます。  各位には、長時間にわたり、しかも貴重なる御意見を承りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して私より厚く御礼を申し上げる次第であります。      ————◇—————
  253. 吉川久衛

    吉川委員長 参考人決定につきましてお諮りいたします。すなわち、ただいま審査中の繭糸価格の安定に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について、横浜生糸取引所理事長石橋治郎八君を参考人として、その意見を聴取することとし、出頭を求める日時につきましては委員長に御一任を願いたいと存じます。以上について御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  254. 吉川久衛

    吉川委員長 御異議なしと認めて、さように決定いたします。  午後三時半より再開することとして、これにて休憩いたします。     午後二時五十五分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕