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佐藤国務大臣 これはぜひ私の方からもお話しをして、御理解を得たいと思っておる点でございます。夏、準備預金
制度が発足した。これは、もうすでに在来の行き方だけでなしに、
金融側においても十分注意してもらいたいということを多分に含んだものでございます。それで、ある程度の効果が上がるかと実は思っていたけれ
ども、経済が膨張拡大する場合には、なかなかこの種の事柄だけで十分の効果を上げるものでもございません。その後経済の動向を十分見きわめておりますと、一部の物価が飛び上がるということもございますが、物価自身がジリ高である。毎回私
ども皆さんからお尋ねを受ければ、こういう景気上昇の際は物価が強含みであることは当然だ、こういう表現でその事態を
説明をいたしておりましたが、とにかくジリ高であるということは、これは
一つ見のがせない事柄でございます。このジリ高であるところへ持ってきて、たとえばゴム等の国際物資が急激に上がっていくとか、あるいは電気銅、アルミ等が相当高くなる。また、設備投資は、操業度が八〇%をこした
状況になって参りますと、全般として非常に設備投資の意欲が強い。これも、ものによりましては、もう一〇〇%というようなものが計算の仕方によっては出てくるというようになっておる。そうするとやはり設備投資は非常に旺盛でございます。それから、産業の面においての隘路がなくて大体バランスがとれておるから、強含みであってもあまり心配はないということを申しましたが、たとえば電力であるとか輸送の面においては、鉄道の沿線滞貨な
ども相当ふえて参っております。御
承知のように、一日四十五万トンの輸送力のものが、もうすでに百五十万トン以上になっておる。こういう事態である。電力などは、最近の渇水ということも影響しておりますが、冬季について、あるいは一部大都市等においては不足を招来するんじゃないか、こういうことを実はいわれる。そういうようになりますと、経済の動きについては非常に注意をしなければならない。日銀としては、銀行券の増勢、そういうことも
一つの問題でありましょうし、いろいろ勘案いたしまして、山際総裁は、
名古屋において、十一月の上旬でありましたか、
公定歩合引き上げやむを得ないかというような談話を実はされた。私は急速これを打ち消しました。これを打ち消しましたのは、この種の事柄は経済に非常に思惑的な動きを誘発する危険もある。これは私が申し上げるまでもないことであります。この公定歩合を引き上げても引き下げても、非常に経済に影響のあることでありますが、事前にそういうことがうわさされ、そしてそこに思惑を誘発することは、経済の異常な活動を招来しやすい。そういうことを考えてみますと、真意が誤解されることは非常にまずい、かように私感じましたから、山際君の
名古屋における談話というものを実は打ち消した。幸いにいたしまして、大体経済は本来の持つ力において行動しておる。いわゆる思惑をとめたという効果が十分出て参ったように思います。
ところで、経済状勢についてのいろいろの見通しを立てて参りますと、私
どもがこの一年の中で気をつけなければならないことは、やはり年末
金融、これは十分に考慮に入れなければならない問題であります。そういたしますと、公定歩合を引き上げるという時期、その時期をいかにするかということが
一つのポイントなんです。先ほど来申しますように、経済の動きそのものから見ますと、金利の経済調節的機能、これをやはり取り上げざるを得ない段階になっておる、かように考えますので、この点は、しばしば申し上げておるように、私
どもは国際金利にさや寄せするということを言っておる。そういう意味では低金利政策を堅持したい。しかし、一時的に金利の経済の調節的作用もあることは見のがすことができませんということを、毎
委員会等においてお尋ねには答えて参ったと思います。この長期についての
態度に変更を来たしたわけではございませんが、経済的な調整機能をここで発揮さす必要あり、実はかように考え、年末
金融についての混乱等も、時期がこの程度ならば支障はないだろう、こういう見きわめをいたしまして、今回の措置をとったわけであります。しかし、これは、先ほど
谷口副総裁からお答えいたしておりますように、どこまでも予防的の措置である。この点には変わりはございません。この予防的措置と申しますのは、
金融側にとりまして、準備預金
制度等で、常に日銀なりあるいはその日銀の窓口規制なりその他から、相当慎重な
態度をとっておりますが、企業者側あるいは資金需要者側の方から見ますと、同じ金利でそのまま持続して参りますことは、あらゆる警戒的な
意見を発表いたしましても、なかなか自粛自戒できるものではございません。やはり現実に金利自身が変動するということ、これこそは企業者側に対しても積極的な協力を求める、また今日の事態についての十分の注意を促す、そういう予防的効果をねらっての金利の引き上げでございます。そういう意味で、日銀総裁の談話を打ち消した直後、二週間たつやたたずでこのような措置をとったこと、これについて御批判をいただいておると思いますが、ただいま申しますように、経済の非常に敏感な点を考えて参りますと、責任ある
人たちはいろいろな思惑を誘発するような言動は厳に慎むべき事柄だ、こう私は考えておるのであります。また、今回の事柄は、これを抜き打ちにやられたと言われますが、この種の事柄が抜き打ちにやられるのは当然でありまして、これをもし抜き打ちにやらないとしますと、私
どもが心配するようないろいろな弊害を生ずる。従って、この種の事柄は、実行の段階まで厳秘に付されるのは当然のことであります。私は、その意味においては各方面の協力を得た、かように考えておる次第であります。