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1959-12-04 第33回国会 衆議院 社会労働委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年十二月四日(金曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 永山 忠則君    理事 大石 武一君 理事 大坪 保雄君    理事 田中 正巳君 理事 八田 貞義君    理事 小林  進君 理事 五島 虎雄君    理事 滝井 義高君 理事 堤 ツルヨ君       池田 清志君    大橋 武夫君       亀山 孝一君    川崎 秀二君       倉石 忠雄君    河野 孝子君       齋藤 邦吉君    中村三之丞君       古川 丈吉君    柳谷清三郎君       山下 春江君    伊藤よし子君       大原  亨君    岡本 隆一君       河野  正君    多賀谷真稔君       八木 一男君    山口シヅエ君       今村  等君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         労 働 大 臣 松野 頼三君  出席政府委員         大蔵政務次官  奧村又十郎君         通商産業政務次         官       内田 常雄君         通商産業事務官         (石炭局長)  樋詰 誠明君         労働政務次官  赤澤 正道君         労働事務官         (職業安定局         長)      百田 正弘君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   岩尾  一君         大蔵事務官         (銀行局特別金         融課長)    磯江 重泰君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 本日の会議に付した案件  炭鉱離職者臨時措置法案内閣提出第三一号)      ————◇—————
  2. 永山忠則

    永山委員長 これより会議を開きます。  炭鉱離職者臨時措置法案を議題とし、審査を進めます。  質疑を行ないます。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 今非常に問題になっております石炭鉱業離職者を救済するために、政府は今回炭鉱離職者臨時措置法案を国会に十一月十四日に提出をいたして参ったのですが、それについてわれわれは鋭意いろいろの角度から検討して参りました。本日最終段階になりましたので、特に総理に来ていただきまして、炭鉱離職者臨時措置法案と関連をして、今後の石炭産業をどういう方向に持っていくかというような根本的な問題をも、あわせてこの際内閣の意向をお聞きして、そうしてこの法案に対する最終的なわれわれの態度を決定したい、こういうことができょうは総理においでいただいたわけです。  総理も御存じの通り、最近新聞社会面を開いてみますと、毎日きわめて大きく炭鉱労使双方の紛争の問題、あるいは炭鉱地における炭鉱離職者の非常に悲惨な生活状態というものがマスコミで取り上げられておるわけです。こういうように炭鉱の問題というものが今日ほど大々的に取り上げられている時代は、終戦後の石炭傾斜生産で大事だという時代を別にしてなかったと思うのです。それから今度ほど労働者が、産業全体の問題を自分の首に結びつけて考えておるという時代も、またないと思うのです。そういう意味石炭産業の姿というものは、われわれが非常に注目をしなければならぬ状態だと思うのです。その状態に対して、エネルギー革命であるとかあるいは石炭危機であるとかいう言葉で、そういう姿が現わされておるわけです。岸総理はこの石炭危機というものを、内閣の最高の責任者として、一体どういう工合に認識をせられ、把握をせられておるかということをまず冒頭にお聞かせ願いたいと思います。
  4. 岸信介

    岸国務大臣 石炭の問題はきわめて重大な様相を呈してきております。この問題がただ一時的の経済界不況であるとか一時的の理由、また労使双方の間における主張の相違から一時的にきておる問題であるというふうな事態でないことは言うまでもないのでありまして、石炭鉱業というもの自体が、日本だけじゃなしに、欧米各国におきましても最近の科学技術の発達やその他から、エネルギー源の変更・推移というようなものに関連して大きく影響されている問題であると思うのであります。御承知のように最近の経済界全体は好況を呈しておりますが、大きな産業として石炭及び海運関係は依然として不況であるけれども海運と違ってさらに石炭の問題については事態が非常に深刻な性格を持っておる。しかもこういう状況でありますけれども、単にこのエネルギー源として、ただ経済的に、いわゆる価格の上から石炭を使うよりも重油を使った方が利益である、あるいは最近のいろいろな機械その他技術上のなにからいって、いわゆるエネルギーが固体から流動的なものに変わってきておるというような、このことだけからこの問題を考えるわけにいかない。この問題は、日本にあるエネルギー資源としては、何といってもやはり依然として一番大きな資源である。それから日本経済が、どうしても全体として外貨という問題が非常に大きな日本経済基礎をなす問題である。従ってわれわれはあらゆる面において外貨を節約し、なるべく国際収支関係のバランスというものを基礎にやっていかなければ、経済全体の運営ができない。それからさらに日本労働人口のふえていくこと、人口問題から考えてみて、非常にたくさんの労力を使っておる石炭鉱業というものの意味は、ただ単にエネルギー源というだけでなしに考えなければならない面がある。こういうことをあわせて考えてみますと——しかも科学技術の進歩をわれわれは全然無視することもできないし、さらにエネルギー源経済性ということを無視してやるということも、これは日本が国際的な経済の間に立ち向かっていく上からはできないのであります。それらの関係をいかに調整し、いかなる道をここに作り上げるかということ、これを作り上げなければ結局石炭に対する根本的な策は立たないのであります。  以上申し上げたような見地からこれに取り組んで、政府としては根本的にこの石炭鉱業というものが将来成り立っていき、また成り立たせるようにしていく、そうしてこれに関係しておる経営者もまた労働者も、これによって将来に対する十分な希望を持ち得るような一つの方針を考えなければならない。これはただ単に石炭の山で石炭を掘るというだけじゃなしに、経済性等にかんがみましては、輸送の面もあればあるいは販売の面もあります。それからまた技術面におきましてもなお研究すべきものがあるように私は考えるのであります。いずれにしても、非常に困難な問題ではございますが、以上申し上げたような重要性を持っておるものとして、政府としては真剣にこの問題に取り組んで検討いたしておる次第でございます。
  5. 滝井義高

    滝井委員 さすがは青年の時代からずっと商工省に育った岸総理だけありまして、私たちと認識を全く同じくしました。石炭日本における重要なエネルギー資源である、しかも輸入燃料というものが外貨の面と大きく結びついておるという点、同時にそういう面から石炭資源というものはやはりある程度、相当評価して考えなければならぬ、労働人口の増加の傾向にかんがみ、雇用の見地から石炭産業というものはやはり高く評価せられておる、こういう三つの非常に重要な点を岸総理指摘をせられ、そしてそういう重要な中で、今世界に進みつつある技術革新、同時に経済そのもの一つ法則を持って進む経済性、こういう技術革新経済性を今言った三つの問題とどう調和していくかということが今後われわれが石炭政策を進めていく上の一番重要な問題だ、その点についてはこの際、経済性を問題にする場合は輸送あるいは販売機構技術の面、こういうものを十分考慮をして、石炭産業が成り立ち、その石炭産業に従事する経営者労働者希望を持つような方向に一国の政策というものを進めていきたいという、この言を聞いて、これから先の質問は実は要らぬ感じがいたしました。全く敬意を表したいと思います。  そこで、今のそういう総理の御説明には私は敬意を表するわけですが、客観的な情勢というものは非常に違った状態が出ておるという点です。違っておる点が出ておりますので、そういう点について今のような基本的な立場に立つ総理の具体的な御答弁を一々得ていきたいと思うのです。それは、現在政府石炭資本家考えておるようなことをわれわれが客観的に見てみますと、とにかく非能率炭鉱をつぶす、閉山をしていく、それから人数が多いのだから大量の首切りをやっていく以外にない、これが現在の日本石炭産業を建て直すただ一つの道だ、すなわち石炭危機からの出口は大量の首切り以外にないのだ、そして首を切った失業者をまあ何か姑息的なことで社会問題の起こらないように措置をすれば、それでもって政治のやることは足りたのだ、こういう感じがどうもするわです。こういう点については、今の基本的な立場に立って岸総理はどうそれを弁明せられ、どうそれが間違いであるという御説明をしていただけますか。
  6. 岸信介

    岸国務大臣 これは今に始まったことじゃございませんが、日本産業というものを見ると、資源賦存状況から見ても、欧米その他の国々に比べて、石炭資源賦存の天然的、自然的の条件が非常に悪い部分も少なくないのであります。いろいろな関係でそういうものも採掘されておるけれども、こういう情勢になってくるならば、非能率な、いろいろな点から考えてみてとうてい成り立つことのできないような炭鉱は、やはり閉鎖する以外に私は方法がないと思います。これに対する措置が現在のやり方で十分であるかどうかということは考えなければならぬと思いますが、ただ、大きな山において、そうでない山の状況において多数の首切りが出ておるということは、私もこれは非常に憂慮しておる状況であります。御承知通り炭鉱のこれらの経営自体が行き詰まってどうにもならぬ、あるいは山全体が成り立っていかないから、今度はわれわれから見ると、将来経営の仕方、やり方いかんによっては、先ほど言ったような見地からぜひ存続をし、将来に希望を持つような経営状態においてやっていかなければならぬという山までも、現在の形においては少なくとも一時山を締めてしまわなければならぬような状況にまできているものがある、こういう状況であります。  この問題に関して、それではどうこれに措置していくべきかということはけ、われわれがとっておる自由経済見地からいうと、まず第一に経営者が真剣に考なければならぬ。またさらに山の運命をになうておる労務者との間における——私は、ほんとう労使ともに真剣に考えられる問題であり、また考えてもらいたい。それを第一段においては政府としてはとにかく支持していく。そしてその得たところの結論、両方の間の話し合いというものをわれわれは尊重していくというのが、実は基本的態度でございます。しかし、労使の間の話が円満に、もしくは適当にいかないような場合に関して、あるいは労働委員会やその他のものがあっせんするということも考えられなければならぬと、今日の状況においては考えております。欧米山等から見ますと、一人当たり出炭量というものが、日本の平均は欧米のなにからいうと相当な開きがあるように私ども聞いております。こういうことはあらゆる意味において経営者労働者も、ともにこの生産性を上げることについて考えてもらうことがこの際必要であろう。もちろんこの問題は、ただ単にそれから割り出して、一人当たり出炭をどうするために今の鉱山労働者が多いからそれを減せばいいのだというふうに、簡単に数学的に割り出すべき問題じゃないと思いますけれども、以上言ったような態度で、今日相当数離職者を出すことは、現状の石炭業というものを見ると、これはまたやむを得ない事情じゃないか。従って、やはり離職者に対する援護の措置政府としては考え措置しなければいかぬというのが私の今の考えであります。
  7. 滝井義高

    滝井委員 非能率炭鉱閉山し、あるいは大山で多数の首切りが出ておる。これは今の段階では、労使双方が十分考えてもらって、生産性を上げる方向に持っていってもらわなければならぬ、こういうお説でございます。もちろん能率の悪い炭鉱というものは、資本主義経済法則に当てはまらないので、それが脱落をしていくことはある程度資本主義を認める限りやむを得ないと思います。当面石炭の問題については、今の総理のいろいろな御説明から考えてみましても、三つ方面に非常に特徴的なものが現われております。一つは、いわゆる非能率炭鉱閉山もひっくるめた合理化をめぐる労使の対立の問題でございます。これは言葉をかえていえば、日本石炭企業一つ生活の現われ方の問題になるわけですが、これは資本家の側から言えば、企業経済的に存立するためには、人員整理をやらなければどうにもならないんだ、そういう資本家主張に対しては、資本主義の世の中においてわれわれがこれに反対することはできても、強制的にそれをやめさせることはなかなかできないと思うのです。しかし一方、今度は首を切られていく、あるいは閉山されていく労働者の側から考えてみますと、これは自分生活権が脅かされることになりますから、生活防衛のために、憲法で保障している労働三権を行使しながら、ある程度自分の身を守っていくことも、これは非難できないと思うのです。そうしますと、そういう二つの労使争いの中から、現実の問題としては大量の離職者が出てきておることは事実です。これは何としても否定することはできません。しかもその大量の首切りというものは、いわば社会的な不安あるいは治安問題にまで発展をするという客観的情勢が出ておるならば、国家はそれに対して相当効果的な手を打たなければならぬことも、これまたさいぜんの岸総理の御言明等から見ても当然のことなんです。ところが昭和三十年の九月に合理化法が実施されて以来、一体政府はそういう社会的な不安に対していかなる手を打ったかというと、ほとんど手を打っていないというのは、これは岸総理もお認めになると思うのです。現実なんです。そこで、おくればせながら今回離職者法を出すことになったのですが、この重大な社会不安を醸成しようという段階において、効果的な処置というのは、なるほど離職者法一つですが、私はどうもこういうことだけでは足らないという感じが非常に濃厚なのです。と申しますのは、たとえば今度、総理もお読みになったかどうか知りませんが、日経連の方から出ましたところの石炭離職者対策を見てみましても、一万人の特別訓練隊をこの際作って、大々的な職場転換をやるべきだという主張があるわけです。われわれ社会党でも、この際自衛隊漸減方式をとって、平和国土建設隊を作るべきだ。もちろんこういう炭鉱離職者その他もこの中に入れて、そうして自衛隊を退職した人も入れながら、国土災害防止のために建設的なことをどんどんやる、そうしてそこから技術を身につけさせる、こういう相当長期の安定をした職業炭鉱労務者を転換する道を、この際政府考える必要があるのではないかと思うのです。離職者法があるいはその一歩だと言えないこともありませんが、それだけ先の大きな見通しというものは、法案の中においてはその片鱗だに現われていなのです。こういう点について一体どうお考えになりますか。
  8. 岸信介

    岸国務大臣 従来から、滝井君よく御承知だと思いますが、鉱山労働者が離職した場合において他の仕事にこれを転業せしめるということは、理屈の上からはあるなにが出てくれば、こういう仕事を作るんだからその方に行くんだ、あるいは統計数字から見ると、一方においてそういう離職者が出ても、これだけの仕事労務者が就労できるから云々というようなことでは、実は解決しないのであります。特に特殊なものであり、また鉱山労働者は、われわれから言うと非常に地下労働というものの苦しさ、またみじめさを感じますけれども、またそこに離れ得ない愛着を持っているというようなことから見ますと、やはりこれから出てくるところの離職者に対しては、国が相当積極的にこの配置転換なり、他の方面に転職、就職することについての訓練やこの世話をしなければ、実際はなかなか実現しない問題である。今度のなにから申しますと、とにかく欲すると欲せざるとにかかわらず、現在直面している石炭鉱業から相当多数の離職者が、しかも比較的短時日の間に集団的に出てくることを考えてみますと、一面において国がそうした訓練あっせんを積極的にやることと同時に、他に比較的向くところの仕事考えなければ、ただどこかにお世話しますというようなことだけでは私はいかぬと思うのであります。私ども今回の災害にもかんがみて、治山治水国土保全に関する基本的な方策を定めて、三十五年度の総予算の上にも大きくこれを作り上げていこうという考えを持っております。従ってそういう仕事を結び合わすというようなことも当然考えていかなければならぬと思います。またかねてわれわれ国土開発の上から大きな役割を持っておる道路建設であるとか、あるいは鉄道建設というようなものとも、有機的に結びつけていく。ただ一方にこういう仕事があるから、それになにするのだというようなぼんやりしたことではなしに、具体的に結びつくようなあっせん並びに政府のお世話というものが私は必要である、かように考えている次第であります。
  9. 滝井義高

    滝井委員 実は今私がそういうお尋ねをいたすのは、新聞報道等を見ましても、大体炭鉱離職者の行き先というものは、干拓地とか開拓地への優先入植とか、移動式組み立て小屋を持つ失業対策土木事業、それから財政投融資の中の電源開発公団住宅建設有料道路建設、こういうところなんです。ほとんど住宅も何も作ってくれないタコ部屋みたいなところに住んで、そして不安定な土木工事をやって、ジプシーのごとく山から山を歩く、こういう形なのです。これでは社会の中にあたたかく炭鉱離職者を包容してやろうということではなくて、社会の中から外へおっぽり出すという感じを受けるわけです。  そこで今、何か総理長期見通しとおっしゃいましたが、長期見通しに立って、やはりあたたかい住宅もついているような転換できる職場、安定した職場、こういうものをやはりこの際ほんとう政府石炭政策——ある程度首切りもやむを得ない、それから中小炭山閉山もやむを得ないということになれば、そういう積極的なところを考えていただかなければならないという感じがするから、そういうことを申すわけです。  そこで、そういうことも考えてもらいますが、もっと根本的なもう一つの面として、労使双方争いが今石炭産業一つ現象として大きく現われておりますが、同時に今日本の国内では、もう一つ現象が現われてきている。それは、この際こういうように大きくなった石炭問題について、やはり根本的な対策を確立しなければならぬという国民的な世論の高まりが出てきているわけです。これはもちろん産業としての石炭鉱業というものを一体どうするかという、これは内閣政策の問題に関連してくることだと思います。そういう政策問題として出てくるわけです。そうすると根本問題をやるときに、われわれが今論議をしたような緊急就労対策現実炭鉱失業者をどうするかという問題も緊急の政策問題としては出てきますが、もっとその底流は石炭産業の将来をどうするか、こういうことになってくると思うのです。そうしますと、長い見通しで見てみますと、石炭産業が今までよりか飛躍的に拡大生産をされていくということは考えられない、これはわれわれもそういう気持がいたします。拡大生産をされることは非常に困難だという情勢の中で、現実に何万人かの首切りが行なわれております。これから三十八年までになお大手で六万人、中小で三万七千人、職員も入れると約十万前後の首切りが行なわれるわけです。これはまさに、一体石炭産業の根本的なあり方をどうするか、あまり見通しもつかないままに、いわば人員整理あらしがここ四、五年続いていくということは、私は許されないことだと思うのです。石炭産業というものが飛躍的な拡大生産ができない、その中で人員整理あらしが吹き続けるとするならば、ここに必然的に、一体石炭産業というものに対して国としては根本的にどうするかということになってくると思うのです。その場合に、自由経済だからそのままというわけにいかぬので、そういう形になると何らかそこに、さいぜん岸総理冒頭に述べられたように、この産業に従事する労使双方希望を持てる政策をとるとすれば、やはりある程度保護助長政策をとる以外にないと思うのです。根本的な石炭対策を樹立するとき政府保護助長政策を今後とっていくかいかぬか、この態度の決定が大事だと思うのです。これに対し岸総理内閣責任者としてどういう態度をおとりになりますか。
  10. 岸信介

    岸国務大臣 将来石炭鉱業が、今滝井委員が申されましたように、私も飛躍的に拡大生産されるというような事態はなかなか期待できないと思います。ただ問題は、一番現実に競合しておるエネルギー源として、石炭産業不況の原因をなしておるものは油との関係だと思います。世界の油の生産状況を見ますると、各地における油田の開発がなお相当急速に行なわれておる状況から考え、また最近の、これは一時的かもしれませんが、運賃の問題等を見ますると、相当油が急速に石炭を圧迫しており、そうしてこれの不況を非常に促進しておるという事実はいなむことはできないと思います。それを自由競争だ、自然に放任しておくということになれば、私が最初に申し上げた日本における石炭鉱業の意義というものがそれによってじゅうりんされる。この間の関係を私はやはり調整していかなければならぬ。やはり私ども考え方としては、エネルギー源として炭主油従という考え方のもとに、この間のことを調整していく。調整する方法としては、いろいろな問題がございましょうが、なお具体的に検討していかなければならぬと思いますが、炭主油従という頭でもって、ある場合には産業に対するいろいろな金融その他の面における保護助長考えよう、あるいは重油その他油の進出に対する関係においてある程度制約する方途も考えていくということとあわせて総合的に考えていなければならぬ、こう思っております。
  11. 滝井義高

    滝井委員 今総理が御指摘になりました通り、結局石炭産業の根本的なあり方の問題をわれわれが考える場合には、必然的にそこに非常に象徴的に現われてくるものは、総理の言われましたように重油との競合を一体どうするかということが第三の現象として一番大きく現われてくると思うのです。そうすると、今総理炭主油従の今までとってきました政策というものを当然推進していかなければならぬ、こういう御見解に到達したわけであります。そうしますと、今油に対しては、これはたとえば西ドイツあたりにおいても、最近は一キロリットル当たり三十マルクですか、約二千五百円の消費税をかける、こういう政策を新しくとってきておるわけです。そうしますと、日本におきましては現在あります関税の問題、いわゆる現行の一〇%の公定従価税率重油で六・五%、それから原油で二%程度に今引き下げておるわけです。これはやがて期限が切れて元に戻らなければならぬ状態であると思いますが、これは依然として持続をしていくお考えがあるのかどうか。これは大蔵省の方に先にお聞きしたいのです、大蔵省どうですか。
  12. 奧村又十郎

    奥村政府委員 お答えいたします。御指摘のように、現在関税定率法におきましては一〇%の関税がかかることにはなっておりますが、臨時措置として、御指摘のように重油で六・五%、原油で二%、こういうことになっております。そのような臨時措置が行なわれました事情は、今までは石炭の需給がうまくいっていない、石炭が比較的不足しておった時代が続きましたので、その間定率法では一応一〇%ではあるが、安価な燃料を輸入する意味において臨時措置で低めておったわけであります。それでお尋ねの今後どうするかということでありますが、これは予算編成とも関連いたしますので、ただいま検討しております。いずれ政府予算案を作るときまでに、この一〇%に復帰するかどうかという結論を得たい、こう考えておる次第であります。
  13. 滝井義高

    滝井委員 炭主油従政策総理はおとりになると申しましたが、大蔵当局はなかなか答弁が慎重で、予算編成まではっきりしないと、こういうことです。実は政策というものはあまりぎりぎりになって手の中を示すと、こういう産業危機に直面をしたときには、手を打つことがあと手あと手になってくるわけです。従ってこういう政策というものは、その財源の問題とも重要な関連を持つわけです。従ってこういう問題は予算編成の二、三カ月くらい前までに政府というものは、これはこうやる、これはこうやる、やらないならやらないということを示すことが親切なやり方だと思うのです。あと手あと手に示すためにいつも政策がおくれまして、タイムリーな対策が立たないという点もあると思うのです。今お聞きの通りでありますが、関税の問題、それからもう一つ重油ボイラーの規制の法律が来年の十月には切れることになることは御存じの通りです。これらの二つの問題をひっくるめまして、総理としては一体炭主油従政策をおとりになるという御意見でありましたが、腹がまえとしてはこれをどういう方向に持っていかれる御方針でありますか。
  14. 岸信介

    岸国務大臣 炭主油従の方策をとる上から申しますと、一応考えられるのは、滝井委員の御指摘になりましたように、重油についてのボイラー規制法が来年の十月で期限がきます、これを延長するかどうかという問題がございます。また重油の輸入関税に関して臨時特別措置でこれを軽減をいたしております。これはたしか期限は来年の三月までになっておると思います。これらのものをあわせて考えなければならぬ。今のドイツの消費税をかけておるというお話、これは私どもいろいろな情報を得ておりますが、まだ法律としては成立していないようでありますが、そういう考え方もあると思います。これらのものをあわせて根本対策として考えなければならぬと思います。今私自身として、御質問でありましたが、直ちに規制法はどうするのだ、あるいは関税の方はどうするということを具体的に申し上げることは、まだその時期に達しておりませんが、十分にそれらの問題をあわせ検討いたしまして、私が申しておる炭主油従政策、これは今回の、もしくは将来に向かっての炭業に対する態度としては、ただ口先だけで炭主油従を言うだけでは済まないのでありまして、相当具体的な政策でもって炭主油従措置を講じなければならない。今言ったような問題はあわせてその方針に従って十分一つ検討していきたい、かように思います。
  15. 滝井義高

    滝井委員 重油ボイラー規制法なり関税の問題は、炭主油従の大方針のもとに従ってその方針を決定するということでございます。できるだけ一つすみやかに決定をしていただきたいと思います。  大蔵省の問題はあと回しにして、先に首相に対する質問をやらしていただきます。  次に、日本におけるエネルギーの消費構造というものが急激に変わっております。そうして日本くらい海外燃料に依存をする状態が急速に進行しておる国はありません。これは総理御存じの通りです。先般、一昨年でございましたか、通産省の出した長期エネルギー政策の中を見てみましても、昭和五十年になると四割八分だけ外国燃料に依存する形が出ておったわけです。このテンポが幾分ゆるくなったとしても、昭和五十年ごろになると、約半ば程度のものが外国燃料に依存しなければならぬ、こういう形になる情勢にあることはわれわれは否定することはできないと思います。そうするところのテンポが非常に早いために、雇用の問題に対する対策というものがいつもおくれがちなんです。そこで今度はおくればせながら離職者法案を出してきた、こういうのが真相だろうと思います。その状態を見ても、緊急就労対策事業をやるとか、職業訓練とか、援護会の設置というような、きわめて小手先の、いわばどろなわ的な対策に終わっておる、こういう批判が強いわけです。そこで当面は一体石炭産業はどういう方向に進むべきかということになりますと、それは具体的な合理化対策をきめていく過程で、エネルギー政策そのものの中で石炭というものの位置づけを一体どうするかということが一番大事だと思うのです。なるほど炭主油従だ、こういう抽象的な言葉では、石炭の方が主で従は油だということはわかるのですが、一体海外燃料依存の政策というものをどの程度に押えて、そうして国内の燃料に重点を置くか。冒頭総理が言われた、石炭というものは重要産業であり、しかもそれが重要産業であるということは、国内の資源であるという点だと思うのです。そうしてしかもそれが多くの労働力を持ち、外貨との関係がある、こういうことから帰結して参りますと、一体エネルギー政策の中における石炭の位置づけをどうするか。それは反射的に日本エネルギーのいわゆる外国経済の依存度というものをどの程度に押えていくかという、この問題に関連してくると思います。ここらあたり、基本的な方針として一体石炭の位置づけというものをどう考えておるかということです。
  16. 岸信介

    岸国務大臣 長い目で見て、日本エネルギー源としての石炭を、どういうふうに日本経済発展に使命を持たせるかということは、これは長期計画を立てて、これの見通しをつけていかなければならぬと思います。ただその間においてわれわれが非常に考えなければならぬことは、言うまでもなく産業経済の問題といたしましては、いかなる場合においても、非常に急激な変化を起こさしめるようなことはいかぬと思います。いわゆる炭主油従と申しましても、今から五年前における見通しと、今日における状況というものを考えてみたときに、五年前にはこういうことを想像してはいなかったと思う。そういうふうに変化が起こってきますが、その場合において、その変化をできるだけ日本経済において急激な形において受けないようにしていく。いわゆる失業者が出ましても離職者が出ましても、それが非常に急激に集団的に出るというようなことは、これはまた経済界におきましても非常に大きな問題を生ずるわけでありますから、できるだけその変化というものを急激に起こさしめないようにしていかなければならぬ。そこで私どもがこのエネルギー源の問題を考えるときには、どうしても総合的にこのエネルギー源というものを検討して、この間における一つ長期にわたる見通し一つの計画を立てていかないといけない、かように考えておるわけです。一応経済計画についての見通しもございますけれども、われわれが今検討いたしております、十カ年間に国民所得を倍増したという目標のもとに考えておる計画におきましては、先ほど来言っている炭主油従ということを頭に置いて、どういうふうに日本経済を十年間に発展させていき、またその間において石炭がどういう地位を占めるように持っていくかという計画を十分検討していきたい、かように考えます。
  17. 滝井義高

    滝井委員 長期見通しに立って炭主油従政策をおとりになるということでございますが、現在世間でいわれておる石炭対策石炭に対する考え方を分けてみると、大体三つあると思うのです。その一つとして代表的な意見は、東大の脇村義太郎氏の見解です。これはもう非常に石炭はだめだという議論に立っておられるわけです。そうしてもう石炭重油に太刀打ちができない、重油自身が危機なんだ、やがて次には石油ガスなり原子力の燃料が出てくる、当面の問題は石炭産業をいかに埋葬するかということがわれわれの問題なんだ、こういうずばり割り切った非常に極端な議論です。そうして、いかに埋葬するかということが問題だが、そうでないとするならば、これは今の段階石炭を救おうとすれば、石炭の国有化以外にないのではないかという、こういう極端な一つの議論があります。  もう一つの議論は、これは北炭の萩原さんです。この人員整理というものは極端にやっちゃいかぬ、この際石炭産業人員整理というものは自然減と配置転換でやれ、そうして配置転換は、ある程度能率の悪い炭鉱を閉鎖したならば、能率のいいところに配置転換をしていくのだ、こういうものの考え方です。そうして各国とも非常に石炭産業に対しては保護政策をとっておるのだから、日本でも体質改善というものは国家的な指導で一つおやりなさい、こういう意見です。  それからもう一つは、今の岸さんの言葉にも片鱗が出て参りました。それから池田さんもそういう言葉でございますが、今労使双方が大体争いをやっている、だから労使双方がある程度の見通しの結論をつけてこい、そうすればそれにのっとって政府はある程度のことはやりますよ、こういう言い方なんです。そうすると、それを今度は資本家側に言わせますと、労使双方の話もつけたいのだけれども、まず政府の方が根本的な石炭対策を出して下さい。そうすれば、その出してくれたワクの中でわれわれは労使双方の話をつけます、こういうようにどちらにも責任のないような、責任のなすり合いのような形が行なわれておる、こういうことです。それでこれは必然的に労働者に一切のしわ寄せがきて、離職者がほっぽり出されるという結果になってくる。こういう三つの論というか、見方というかが今日本に流れているわけです。私はこれは岸総理に対する最後の御質問になるのですが、いずれにしても今までの日本石炭産業というものは、資本主義のもとにおける非常な自己中心的な運営の仕方をしたことも事実です。それから政府石炭政策に対する終戦以後の状態を見ても、これは一貫をした、今総理の言われるような、長期見通しに立った政策はございませんでした。二年ぐらい前に長期エネルギー政策を発表した、ところがあれは私たちが試案で発表したので、責任のあるものではありません、という言い方をした。事業主側に言わせると、政府があのように発表したから、あれにのっとってわれわれは縦坑を掘ったり、うんと資金をつぎ込んで増産態勢を作ったのだ、そういうところもどうもお互いに責任のがれのことを言っておる。政府のいわゆる石炭政策の無方針ということも災いしておるわけです。そこでこの際こういう深刻な事態の中で、国家のかまえというものが必要なんです。今三つの議論が行なわれておるが、国家のかまえとして、最終的な結論は、もうこの方針をきめたならば一貫をして、——もちろんしばらくといっても私は五年、十年とは言いません、少なくとも三十八年ぐらいまでの見通しというものはこの方針でいったら変わらないのだという国家のかまえを、この際、この法案をわれわれが衆議院を通すにあたって、内閣としての御方針だけを、一つ聞かしておいてもらいたいと思います。
  18. 岸信介

    岸国務大臣 今御指摘のありましたように、石炭鉱業に対するいろいろな見解があると思います。今回援護法に関する法案を提案して御審議を得ておりますが、これは実は石炭鉱業に対する政府の根本的対策考え方というものを示しているわけではないのであります。とにかく今起こっておるところの相当大量の失業者、また続いて、われわれがどういう方策をとるにしても、とにかく予想しなければならない相当多数の数字につきましては、いろんな見方があるようでありますが、必ずしも世間で言っている通りをわれわわは考えているわけではありませんけれども、何がしかの離職者が出る、これに対するとにかく緊急の措置として出したわけであります。別に石炭対策に対する根本の問題は、私どもは通常国会までにその結論を得て、これを提案したいということを申しておるわけです。そこで政府としてどういうふうに根本的に考えているかという御質問でありますが、実はまだその結論を、正直に申し上げますが得ておりません。しかし私の考えでは、従来われわわは自由主義経済立場をとっており、また現在のこの時期におきましては、一応経営者労務者との間におけるところの話し合いによって、その山の成り立っていく基礎一つ話し合ってもらって、その基礎に山のことを考えていくという態度をとっておることは、根本的にはそういう考え方でございます。しかしながら私はそれだけで、今後の石炭鉱業に対していくということは、これはできないのだ、どうしてもさらに一歩国が入っていって指導するという立場をとらなければならないんじゃないか、それが保護政策としてどういう具体策をするか、あるいは指導性をどの程度に持つかというような点につきましてはなお検討を要すると思いますが、ただ経営者労務者の話し合いにまかして、その結論によっておれの方はなにするというだけではこれは済まない問題であるという考え方を持っております。具体的にどこまで国が入っていくかということについては、なお検討した上において通常国会で御審議を願いたい、かように思っております。
  19. 滝井義高

    滝井委員 内閣のかまえがわかりました。これで岸総理けっこうだと思います。それではあと関係各省にやりたいと思います。  これは大蔵省でございますが、御存じの通り今度のこの炭鉱離職者臨時措置法案の一番大事な援護会の予算でございますが、この中で整備事業団から三億円の金を今度は出すことになっております。整備事業団というのは、これはトン当り石炭業者が二十円ずつ出す、同時に開発銀行の利ざやで、整備事業団というものはそれらのものを財源として運営をせられておるところでございます。ところが今度、なるほど整備事業団が炭鉱を買い上げると、そこに失業者は出ることは確実です。ところが全く目的の違ったこの炭鉱離職者臨時措置法案の中に出てくる援護会に整備事業団が三億の金を出していくということは、どうも筋違いの感じがする。本来の目的というのは、整備事業団というのはこれは炭鉱を買い上げて、そうして債権者に対して負債があれば炭鉱の負債をかわって払い、あるいは労働者の未払い賃金あるいは石炭企業者に貸金や資材代その他の貸しがあればそういうものの処理、鉱害の復旧、現実は鉱害の復旧が第一でございますが、こういうことをやるのが整備事業団の仕事でございますね。ところが今度三億円のお金をお出しになっておるわけですね。この点については池田通産大臣にも私御指摘を申し上げまして、これは今年は出しておるからやむを得ぬが、来年度からは当然こういう経費というものは整備事業団から出すものではなくて、一般会計から出してやるべきだ。なるほど今年度は三億出しております。しかし来年度以降大々的に援護会が活動を始めて、そうして何万という離職者の処理を手厚くやろうとするならば、これは整備事業団から金を来年度も出させることは筋違いだと思うのですが、あなた方は来年度もやはり依然として整備事業団から金を出させるおつもりなのかどうか。
  20. 奧村又十郎

    奥村政府委員 お答え申し上げます。整備事業団の目的や性格については、これはまた所管大臣からお聞きをいただきたいと思いますが、少なくとも石炭産業の整備、特に採算に合わない炭鉱を整備するということにつきましては、これはどうしても離職者の十分な援護ということは不可分のもので、これは企業者においても十分考えていただかなければならぬと思うのであります。その趣旨に沿いまして今度の法律に基づいて離職者の援護会というものを法律で作る。この援護会の趣旨は法律にもありますように政府と、また整備事業団などの、つまり要するに事業主との協力によってできるだけあたたかい離職対策をやろう、こういうことで移住資金その他この法律にありますように、ほかの産業における離職者と比べるとかなり手厚いことを計画しておる次第でございます。そこで事業主におかれても整備事業団などによって十分の、できるだけの資金を出そうという誠意があるならば、一つ政府もそれに呼応して金を出す、こういうことでありますから、大蔵省としましては来年度におきましても、この援護会の資金について全部政府が出すということは考えません。やはり法律にもありますような趣旨で、整備事業団を通じて事業主からも相当の御負担を出していただく、かように考えておる次第であります。
  21. 滝井義高

    滝井委員 事業主からも金を出してもらいたいと言うけれども、事業主の出す金は、トン当たり二十円は事業団の仕事を遂行していくために出す金なんです。御存じの通り現在整備事業団の納付金というものは三億以上の未納ができてきております。これは取り立てる事業団が非常に苦労しておるわけです。そうしますと、現在事業団の鉱害復旧の状態を見ても、金が足らないでしょう。事業団は事業団本来の仕事をやるために十分の金がない。十分の金のない事業団の金を、今度は離職者対策の方にまで回すということになると、事業団本来の目的の仕事ができない。しかも法律では附則に「事業団は、援護会に対し、その業務に必要な費用に充てるため、政令で定めるところにより、通商産業大臣が定める額の交付金を交付しなければならない。」というふうにきちっときめてしまっておるわけです。そうしますと事業団が仕事が遂行できなくなった場合には政府が金を出すのかというと、事業団に政府が金を出す道がないじゃないか、こういう矛盾が起こっておるわけです。本来の目的を遂行できない形に事業団を追い込んでいって、そこから金を巻き上げていくという政府やり方は私はけしからぬと思う。だからこれは法律にこう書いておるけれども、一体来年度は幾らくらい事業団からあなた方は、大蔵省は金を出させるおつもりですか。これは一般会計に幾ら出すかという関連が出てくるわけです。幾らくらい事業団から金をお取りになるつもりか。トン当たり二十円、来年度の出炭量は五千万トンで、二十円かける五千万トンは十億円ですか。これだけしか金はいかないわけです。百パーセント取り立てても十億円しかいかないのですよ。それと、開発銀行の利ざやというものと一緒になるのですが、利ざやは結局国が出したような形のものなんですね。そうしますと、石炭業者が出した十億円の中から今年は三億出しておるが、来年は一体何億出すつもりなのかということなんです。これはあなたの方に直接関係がないならば、通産省、大蔵省のどちらかに……。援護会の仕事をする上に一番大事な財源なんですよ。ことしから半分出す、六億のうちの三億を出しているわけですから、幾らそれに出すか。これは来年度予算編成で検討中ですということは私は言わせられないのですよ、法律できまっておるのですから。「政令の定めるところにより、」と書いてあるから、ことし三億お出しになっておる。一体どういう工合の出し方をして三億になるか。第四・四半期に三億円出せば十二億円出さなければならぬということになる。これは一体どういうことになるのですか。
  22. 奧村又十郎

    奥村政府委員 この法律に基づく援護会が、この国会でこの法律が成立いたしますとすぐ発足するわけでありますが、これは年度の途中からでありますから、来年度の予算においては平年度に見なければなりませんから、ことしの補正予算における三億の補助を、来年度においてはもっと増額しなければなりません。幾らになりますか、これはただいま検討しておるわけであります。そこで整備事業団の方は、来年度は国の補助に対応するだけの資金が事実上出せないではないかという、こういう御意見でございますが、整備事業団は単に不況炭鉱の廃鉱と申しますか、休止と申しますか、それだけの仕事のように見えますけれども、しかしそういう不況炭鉱を廃止、休止するということが残存炭鉱のあるいは炭鉱業者、あるいはその従事する労務者のためにもなるわけです。石炭産業の安定のために資するわけですから、そういう趣旨からいたしまして、この離職者対策においても整備事業団は積極的に協力を願いたい。そこで、それでは整備事業団の資金が足りないではないかということでありますが、これは私は運営のやり方によることでありまして、労働大臣にもお願いいたしまして、できるだけ御協力を願いたい、かように存じておる次第であります。
  23. 滝井義高

    滝井委員 どうもおかしいのです。私の言っておるところが十分御理解できていないのではないか。では通産省にお尋ねしますが、一体事業団の一年間の予算財源ですね、これは幾らあるのですか。
  24. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 大体一年間に一トン当たり二十円としまして、約十億円入って参ります。それから中小企業金融公庫並びに開発銀行、二つの金融機関から大体二分五厘の利ざやをこちらの方に回していただくということで、六億程度毎年入っております。  それから先ほど滝井先生の御質問の中に、非常に鉱害関係等で金がなくなって本来の事業の遂行ができないのじゃないかというお話でございましたが、確かに今までの実例では鉱業権者と被害者との間で話がすっかりついたというようなことで事業団が鉱業権を譲り受けたそのあとで、実は鉱害の処理が十分に済んでおらなかったというようなことのためにいろいろ問題を起こしている点がございまして、それらのために、その問題の個所全部を復旧するためには、当初よりもある程度よけい金が要りそうだというようなことは事実でございます。これは今までの買い方、できるだけ万全を期したつもりでございますが、若干人数の不足といったようなことのために、必ずしも被害者一人々々についての実情の調査ということが十分でなかったという点もございますので、それにつきましては目下事業団の中における鉱害関係の陣容を強化するということ等によりまして、できるだけ事業団が買い上げるまでに鉱害関係者等をはっきりさせて、債務超過のもので買えないものは買えない、買えるものはこの程度まで買えるという見通しをはっきりさせるということによりまして、今後事業団が本来の事業を遂行するのに、金の面で行き詰まってできないということのないようにやっていきたい、そういうように考えております。
  25. 滝井義高

    滝井委員 事業団の本来の目的遂行のできないことのないようにやっていくということになりますと、この十六億円の中から、一体来年度どのくらいの金の余裕があるのですか。幾ら余裕がありますか。余裕だけ言ってもらえばいい、出す出さぬは別として。
  26. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 来年度幾ら出せるかということは、現行の三十六年の八月まで納付金をとるという規定のもとにおける余裕はほとんどないというふうに存じます。これはこの前申し上げた通りであります。従いまして、この前の本委員会で御説明申し上げたと思いますが、来年度以降どうするかということは石炭の基本対策というものの確立というものと相待って、この次の通常国会で必要な予算措置を講ずるものについては予算措置、あるいは立法の措置というものを講じて、必要なだけの法的あるいは予算的な裏づけをするように、目下事務的にいろいろな面で検討しておるところでございます。今の段階におきましては、今のままの法律を全然いじらないということでは、来年度事業団から出る余裕はまずないというように考えております。
  27. 滝井義高

    滝井委員 大蔵省、お聞きの通りです。これは十六億円ぐらいでは、とても来年度何億と出す金はないわけです。そうしますと法律を延長する、今三十六年の多分八月までしか法律がないわけです。それを三、四年延長したところで、延長すればその分買い上げのワクをふやすことになりますから、今の三百三十万トンに百万トンふやして四百三十万トンになったのですから、さらに百万トン伸ばさなければ、この非能率炭鉱の買い上げということは進まぬわけです。そうすると延長してワクを増加するが、やはり財源のゆとりというものは、そう莫大に年々出していくものは出てこないのです。そうすると必然的にこれは一般会計から出さざるを得ないということになります。それは今鉱害復旧の遂行が十分でないということをお認めになっておる。実際十分でない。被害者は皆泣き寝入りをしておるのだ。百万円をもらわなければならないところを五十万円あるいは四十万円あるいは二十万円ぐらいで皆泣き寝入りをして調印をしてもらって、どうにか済ましておるという実情です。だからそういうものを本来の鉱業法に基づくあるいは臨鉱法に基づく原形復旧をきちっとやるということになると、とても整備事業団のこのくらいの金では足らぬというのが現状です。だからここから金をかすめとって離職者対策に持っていくこと自体が無理なんです。だからこういう点について大蔵省は来年度予算編成のときに十分考えてもらって、整備事業団からあまり金を巻き上げないようにしてもらいたいと思うのです。奥村さん、どうぞそういう点をお考え願いたい。  それから特にもう一つ開発銀行の利子です。これは今納付金の分については二分五厘負けておるわけです。現在石炭産業を根本的に立て直すためには金利、特に開発銀行の金利をどうするかということが非常に大きな問題だと思いますが、これについて大蔵省はどうお考えになっているか。
  28. 奧村又十郎

    奥村政府委員 お答え申し上げます。開銀からの石炭産業に対する融資の金利について今後どうするかということでありますが、これは石炭産業だけでなく、海運産業への融資の金利も現在問題になっておる次第であります。そこで開銀といたしましては、資金コストの関係から、六分五厘をこれ以上引き下げるということは、開銀の事情としてできかねるのであります。そこで二分五厘の補給、これをどうするかということも起こってくるわけであります。しかし来年度予算編成に際しましては、この石炭産業不況をいかに打開するかは、先ほどいろいろ御議論のありましたような大きな問題の大体の方向をきめなければ、こういう問題も具体的に解決はできないということでありますので、ただいまそれら総合して、予算編成と関連して検討中でありますので、まことに恐縮でありますが、今はっきりした御答弁はできない、検討中ということで御了承願いたいと思います。
  29. 滝井義高

    滝井委員 どうも大事なところにくると、検討中々々々になりますが、次は税制の問題です。  御存じの通り、現在石炭産業には鉱産税が一%かかっておるわけです。それから坑道等に、特に私は坑内資産の坑道を問題にするわけですが、固定資産税が一・四%かかっておるわけです。池田通産大臣は大胆率直に、通産大臣の立場としても、個人の立場としても、これは廃止すべきだ、こういう明確な結論をここにお出しになったわけです。しかしこれは内閣全体の問題があるが、通産大臣として、あるいは池田個人としては廃止したい、大蔵省出身の主税局畑のベテランである池田さんは廃止すべきであると明言されたのですが、あなたの方は一体それをどう考えておるか。
  30. 奧村又十郎

    奥村政府委員 鉱産税は、御承知通り地方税の中の特に市町村税でございます。自治庁の所管でありますが、便宜私から申し上げます。鉱産税をかりに廃止するとするならば、結局交付税などの計算の基礎になりますから、あるいは国の方からこれに対する何かの財源の補助をしなければなりませんから、結局大蔵省にも深い関係がありますので、お答えを申し上げる次第であります。  どうするかということでありますが、先ほどの関税を一〇%に復帰するかどうかその他すべてまだはっきりした御答弁ができないのは残念でありますが、先ほどの御質問にもありますように、この石炭産業不況をどう打開するか、それに関連して離職者対策をどうするかということがこの臨時国会で取り上げられ、政府としてはっきりした方針を立てるのは来年度の本予算においてきめるべきものと思うのであります。先ほどの総理からの御答弁にもありますように、本来は石炭産業の事業主がまず真剣にこの問題と取り組んでいただきたい、そうしてこれに対して政府が適切な施策を考える、こういうことでありますので、諸般のこれらの問題については、そういう事情から決定がおくれておりますが、ただいま申し上げるような事情によって、来年度予算編成に際して、全般総合して決定する、こういうふうにいたしたいと考えておる次第であります。
  31. 滝井義高

    滝井委員 せっかく大蔵省に来てもらいましたけれども、何も検討しておらぬ。やはり予算を編成する二、三カ月前にこういう基本方針というものはきめておくことが、政策を出す場合に国民大衆に対する親切というものですよ。ぎりぎりになってしたのでは、一年の計は立たぬということになってしまう。もう少しこういう問題は一つ早目に決定してもらいたいと思います。  次には、これは法案にあることです。今度の法案で、緊急就労対策事業については五分の四の補助をすることになっております。ところが御存じの通り、その単価は八百五十円、そうするとこれは、一応の基準的な労働省の見解によれば、賃金は三百五十円程度になるでしょう。それから資材費が三百円を少し上回るでしょう。その他、用地買収費その他事務費等をひっくるめて二百円、こういうことです。これは八百五十円ということになりますと、普通の失業対策事業費が四百七、八十円くらいですね。それから特別失対が千二百円で、ちょうど中間くらいになる。そうしますと、これはどういうことになるかというと、簡易な道路舗装くらいの仕事しかできないわけです。そうすると、今まで筋骨隆々、五百円とか千円とか一律に取っておった炭鉱離職者の諸君というものが、この八百五十円の緊急就労対策事業に雇われてくるわけです。そうすると、三百五十円の賃金というものは生活保護とあまり変らぬわけです。東京を例にとって失礼ですが、標準世帯だったら、東京は今一万七百円か八百円くらい行きます。そうすると、三百五十円だったら、これは二十五日働いても八千五、六百円くらいにしかならぬ。こういことになるでしょう。こういうことでは、自治体で具体的に仕事をおろす場合に、簡易近路の舗装くらいなら、すぐ仕事は終わっちゃう。ここでこの金をある程度上げなければだめだという要請が自治体に非常に強いわけです。この点についてあなた方は、来年度においては、少なくとも特別失業対策事業の千二百円前後まで上げる意思があるかどうか。これは労働省あたりは、ぜひ何かそういう点は考えたいという意見なんですが、問題は、財布の口を押えているあなたの方は一体どうだ、こういうことですね。
  32. 奧村又十郎

    奥村政府委員 ただいま御指摘のように、一般失業対策におきましては、いわゆるニコヨンと申しますか、労務の単価は三百円余り、資材費、事務費を入れて四百円余り、こういうことになります。特別失対は資材費、事務費を含めまして千二百円、大体今度の緊急就労は八百五十円ですから中間である、八百五十円では筋骨隆々たる炭鉱離職者には気の毒ではないか、こういうことでございますが、緊急就労は、これは本来の離職者対策ではない。この法律にもありますように、なるべく他地域で、広域職業紹介で、できるだけ定職についていただきたい。ただしそれまでの暫定的措置として生活安定のために、こういうことであります。といたしますとニコヨンの対策とあまりかけ離れたんでは、生活安定を目的といたしますのに、筋骨隆々としておられるからもっとそれよりもずば抜けてよくということになると、均衡がとれるかどうか。そのほか御承知の公共事業などについては、請負事業でありますから、やり方によっては単価千五百円にもなっております。従いまして、これはみな府県でやりますから府県で取捨撰択して、できるだけ善処願いたいと思います。なお八百五十円の単価をどうするかということについては、これは来年度予算編成については、労働省の方と十分検討いたしたいと存じておる次第であります。
  33. 滝井義高

    滝井委員 奥村さん、炭鉱地の実態を十分御認識になっていないと思うのですが、実は筑豊炭田では一たびニコヨンに入ると、ニコヨン大学をなかなか卒業できない。ニコヨン大学入学以来十年間、まず大学生というわけで、大学院に行けないのです。そしてニコヨン大学に入学するのでも志願者が多くて大へんな状態なんです。従って今度の八百五十円の緊急就労対策事業費ができてきますと、おそらくここに殺到してきます。殺到してきますが、じゃ今度は緊急就労大学に入った場合にし一体いつ卒業できるかという見通しはないと思うのです。現在広域職業紹介をやっていますが、住宅がないためになかなかうまくいかない。一昨日も福岡県知事をここに参考人として呼んて意見を聞きましたが、住宅がついて家族も一緒に呼びたいという募集が七世帯か八世帯あった。ところがそういう家族も一緒に呼んで住宅があるということになりますと、百世帯くらいの志願者が殺到するわけです。ところが単身で行くということになると、なかなかだめです。こうおっしゃっております。従って今のあなた方の財政状態からいって、そういう政策は一挙になかなかとれないのです。じゃ住宅まで建ててやってくれという修正案を出したけれども、自民党さんは、それはむちゃだ。むちゃだという一言ではねつけられてしまう。そうするとやはり緊急就労大学に殺到する。そしてニコヨン大学で十年も卒業できぬと同じように、緊急就労大学も卒業できないことになるのです。そうすると、ここはやはりある程度効率的な仕事を相当賃金を払ってやる方向考えていかなければならぬ。簡易舗装道路工事くらいでは人間をだめにしてしまいますよ。そういう点から考えて、やはり希望の持てるものに切りかえていく必要がある。これは五年間の暫定措置ですからいいじゃないですか。そして筋骨隆々たる希望の持てる人間として保っておいていただかぬと、長く破れた炭住の中に住まわして生活保護法すれすれの生活をさしておったら、人間というものは希望がなくなって、あすこに沈着する以外にないという気持になってしまうのです。これは現実になっておるのです。そういう国民を作らないためにも、やはり相当金を出す必要があるという意見なんです。ある程度金を出してもらいますと、今度は五分の四では、残りの五分の一の市町村なり地方自治体の負担が大へんになってくるわけです。この点については、これはなるほど用地買収というものに相当金がかかる。それから労務者の運賃、トラックその他の運送費に相当金がかかるのです。こういう経費は全部市町村持ちになる、あるいは自治体持ちになるわけです。そうしますと、なるほど表面は五分の四の負担をしてくれますが、実質は自治体が総経費の半分を持たなければならぬという結論になってくるわけです。そこで自治体の持った経費については、これは起債を考えるとか、あるいはその起債をやったあとの金については、交付税で元利補給を見てやるとか、こういう政策をとっていただかないとなかなか自治体というものは、単に石炭産業失業者ばかりでなくて、いろいろの失業者が他におりますから、これはなかなか政策がうまく遂行できないという険路ができてくる。お隣におられる松野大臣は、できるだけ起債で今努力中ですと言い、それからその起債をした跡始末については、交付税で努力中だという御説明があったんですが、自治庁も地方自治体が苦しくなれば大へんですからすぐ賛成します。問題は、大蔵省がそういう起債というようなものについて、理財局あたりがある程度考慮しないと、労働省がいかに努力をし、力んでも、うまくいかぬということになるのです。だから、あなたの方はそういう点について一体親心があるのかどうか。
  34. 奧村又十郎

    奥村政府委員 ただいまお尋ね緊急就労対策事業については、府県が行ないまして、国が五分の四の国庫補助をいたし、残りの五分の一の府県の負担については、起債で国がめんどうを見ろ、こういう御趣旨でございますが、特別交付税で見るべきか、起債で見るべきか、本日は自治庁の担当の方がお見えでありませんので、また後日その点はお聞きいただきたいと思いますが、特別交付税で見られなければ起債で見るとかなんとか、どちらかの方法でこの府県の負担は軽減するようにいたさなければならぬと考えております。
  35. 滝井義高

    滝井委員 ぜひ起債か特別交付税か、どちらかでやって、もう府県の負担がほとんどゼロになる程度にまで御尽力をお願いしたいと思います。  あと二点で終わりますが、次には大蔵省の金融の問題です。この援護会の仕事の中に、独立して事業を行なおとする炭鉱離職者に対して生業資金の借り入れのあっせんを行なうことになっておるわけですが、一体これは金融部門を担当する大蔵省としては、どういう構想をお持ちなのか伺いたい。
  36. 奧村又十郎

    奥村政府委員 具体的には、これはこの法律を国会で成立させていただきまして、これに基づいて援護会が成立して援護会の業務方法書などで具体的に明確になることではなかろうかと思っております。しかし考えられますことは、独立して生業を営まれる方々に対する政府の融資の機関といたしましては、まず国民金融公庫が適当であろうと思います。中小企業金融公庫もありますが、これは資金が比較的多額に上りますから、国民金融公庫でやりますならば、御承知通り大体生業資金は五万円、それから普通貸付、これは三十万程度から百万円ぐらいまでは貸すということで、独立してなさる生業にもよりますので、金額は個々に適当にきめなければならぬと考えるわけでありますが、これの貸付について援護会が十分あっせんする。具体的方法は援護会の業務方法書でおきめになる、こういうことになるのではなかろうかと考える次第であります。
  37. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、業務方法書を担当する労働省と厚生省にお聞きするわけですが、こういう形で生業資金は国民金融公庫五万、普通の貸付は三十万から百万、これは自分で独立した仕事を何かやりたいということになると三十万から百万のものになってくるわけです。ところが、奥村さん御存じの通り炭鉱労働者というものは筋肉労働者としてずっと働いてきた、そうして失業したわけですから、そう財産を持っておるわけではないし、有力な保証人を持っておるわけでもないわけですから、必然的にだれかここに信用保証でもしてくれないと、国民金融公庫の窓口というものは狭い門になってしまうわけです。そこでこういう条項を入れたからには、ほんとうは国民金融公庫ということでなくて、援護会が貸付の業務でもやってもらったらと思いましたが、これは与党さんの方でなかなかうんと言わない。しかし君らがそう言うのなら、保証問題はどこかで考えなければいかぬといっているわけです。そうしますと通産省、労働省はこの保証の問題というものをどう考えておるのか伺いたい。
  38. 松野頼三

    ○松野国務大臣 昨日もここで通産大臣がお答えしましたように、さしあたり各府県の信用保証協会に対する援護会の連絡ということが第一に行なわれましょう。もう一つは、援護会自身がその推薦と方法についてのあっせんが十分やられますならば、もちろん信用保証協会においても取り上げやすいでしょうし、いきなりここで保証ということはしませんけれども、いわゆる手続とか推薦とか、あらゆる形であっせんをするというのが今回の趣旨でありますので、そういうことが今日考えられることで、個人としては最高百万円あるいは本人の退職金の問題、御本人の生業の種類の問題、そういうことを選択することもあっせん一つの大事な仕事ではなかろうか。そういうことを総合して、この援護会というものがお世話をするわけであります。
  39. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、中小企業者でない炭鉱労働者が信用保証協会に行っても、すぐに保証してくれないことは、これはわれわれが信用保証協会へ行ってもなかなか信用してもらえない。それよりなお条件が悪いのです。そうしますと、これはやはり援護会あたりで信用保証の問題を具体的に、積極的に取り上げなければ、中小企業の信用保証協会に行ってやってくれといっても、現実問題としてはなかなかだと思うのです。ここの答弁としてはそういうことで済まされるかもしらぬが、現実問題としてはそうはいかない。そうすると、どこかで別個の信用保証の機関というものを考えなければいかぬと思うのです。そうすると、この法律の建前から言うと、援護会以外にないと思うのです。そうしないと国民金融公庫は絶対貸しませんよ。その場合に、信用保証の問題が出てくると、国民金融公庫のほかに労働金庫というものがクローズ・アップされてくるわけです。だから国民金融公庫、労働金庫、それからもう一つは厚生省の世帯更生資金——炭鉱離職者はボーダー・ライン層です。だから民生委員その他の手続があれば借りられるということが出てきますから、こういう国民金融公庫と労働金庫と世帯更生資金の三つくらいのところで、援護会がある程度積極的に損失補償でも、全部を補償しなくても、五割くらいのものは補償しますぞというくらいの積極的な対策がないと、これは空文に終わるおそれがあるわけです。こういう点について通産省なり労働省は積極的におやりになる意思があるのかどうか。今の松野さんの答弁だと、顧みて他に責任を転嫁するような感じがするのですが、あなたの所管のもとにおける信用保証を援護会あたりでやれるかどうかということですね。
  40. 松野頼三

    ○松野国務大臣 援護会であらゆる方法考えあっせんをいたします。ただ労働金庫になると、これは労働金庫法の目的が雇用者ということになっておりますので、あるいは多少疑義がございますけれども、今の厚生省の世帯更生資金、あるいは中小企業あるいは国民金融公庫、あらゆる方法を通じてこの援護会がみずから窓口となってあっせんするということは、実は相当信用になるわけであります。保証する線よりも、援護会が書類をまとめて推薦、あっせんをするということは相当のプッシュになるわけであります。それを個々に行ってはなかなか受け付けてくれませんので、援護会が特に選択をしてあっせんをするという意味において信用の度合いが強いのではなかろうか、こういう趣旨でやることが一番妥当であろう。一つにきめて保証するのだということをきめてしまいますと、いろいろな問題で、その使途がすべてそちらの生業資金に流れてしまう、それでは困ります。すべての産業を見ながら、個々の家庭を見ながらあっせんするということが、実はおっしゃるように非常に大きな推薦と信用になるわけでありますから、今日これが一番妥当であると考えておるわけであります。
  41. 滝井義高

    滝井委員 援護会の方で積極的にそういう政策をとっていただければ、大蔵省の銀行局におきましても、国民金融公庫なり中小企業金融公庫なりにそういう指導はしてもらえますね。
  42. 奧村又十郎

    奥村政府委員 ただいま労働大臣からお答えになりましたように、援護会の方で積極的にあっせんをして下さるようでありますならば、現在各府県にある信用保証協会の活用そのほかいろいろな方法によって具体的に融資のあっせん、あるいは進んで保証の方法考え得るのではなかろうか、かように存じますので、そのように援護会が積極的に方針をきめて参りますならば、大蔵省といたしましては、国民金融公庫その他の金融機関において、この法律の趣旨に沿うように、大いに融資をいたすようにいたしたいと考えております。
  43. 滝井義高

    滝井委員 これで終わります。松野大臣最後に、これは法律の解釈の問題を、この前参考人の方からも指摘を受けましたが、「次の各号に該当する炭鉱離職者に対して行うものとする。」という二十三条の二項の三号、「昭和二十九年九月一日以降において一年以上引き続き炭鉱労働者として雇用された経歴を有すること。」という、この「一年以上引き続き」ということは、同一の炭鉱でなければならないのかどうかということです。
  44. 松野頼三

    ○松野国務大臣 二十三条の規定における「一年以上引き続き炭鉱労働者として雇用」というのは、必ずしも一つの会社という意味の限定ではございません。失業保険法とは多少違いまして、やはりその性質上、炭鉱労務者として一年以上現実におった、会社をかりに移動したということでも認めてよろしい、こういう趣旨で、割に広い解釈をとっております。
  45. 滝井義高

    滝井委員 そうしますとA炭鉱に六カ月おった、それから失業保険をもらって切れたらまたB炭鉱に八カ月勤めた、こういう場合にこれを通算して「一年以上」と認めてもらえますか。
  46. 松野頼三

    ○松野国務大臣 今のように相当長期間これが休んで、失業保険を六カ月ももらったということになれば、「引き続き」という解釈には多少当てはまりません。一カ月くらい休んですぐ次に行ったという程度ならば、「引き続き」という解釈に当てはまりましょうが、半年休んだとか六カ月失業保険をもらったということになりますと、ある程度切れたという考えになりますので、そこまでは解釈いたしておりません。
  47. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、そこに失業保険というものが入らずに、六カ月勤めた、その間は失業保険をかけていなかった、二カ月置いて八カ月山に勤めたという場合には、「引き続き」にはだめですか。
  48. 松野頼三

    ○松野国務大臣 失業保険の規定をそのまま適用するという考えはございません。一カ月休んでまた次に行った、また一週間休んでまた次に行った、これは失業保険の対象にはなりませんが、社会通念上この程度のものは「引き続き」という解釈をとりたい。通算してみれば、一年のうち十カ月以上は転々としながらも炭鉱労務者として従事した、こういう程度ならば社会通念上「一年以上引き続き」と解釈してもいいと思います。そういう意味からして、厳格に失業保険法をそのまま適用する考えはございませんが、社会通念上、常識的に一年のうち十カ月以上は働かれたというならば、かりに転々としましても労務者に該当してよろしいと考えます。これは特に規定をどうするかということは、そう厳格に法律で書くのも——各個人々々の家庭の事情もありましょうから、なるべく解釈を各本人に適合するように解釈をしたい。社会通念の上に立って、十カ月以上はどんなに転々とされても勤労をしていただくというのが常識ではなかろうか、こう考えます。
  49. 滝井義高

    滝井委員 終わりました。ありがとうございました。
  50. 永山忠則

    永山委員長 これにて質疑は終局いたしました。     —————————————
  51. 永山忠則

    永山委員長 炭鉱離職者臨時措置法案を討論に付します。——討論がないようでありますので、直ちに採決に入ります。  炭鉱離職者臨時措置法案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  52. 永山忠則

    永山委員長 起立総員。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。     —————————————
  53. 永山忠則

    永山委員長 ただいま大坪保雄君より、炭鉱離職者臨時措置法案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まずその趣旨の説明を聴取いたします。大坪保雄君。
  54. 大坪保雄

    ○大坪委員 私は自由民主党、日本社会党及び社会クラブを代表いたしまして、ただいま議決いたされました炭鉱離職者臨時措置法案につき、附帯決議を付するの動議を提出いたします。  まず、附帯決議案の案文を朗読いたします。     炭鉱離職者臨時措置法案に対する附帯決議  政府は、炭鉱離職者臨時措置法の実施に当り、左の諸点に留意すべきものとする。  一 一般職業訓練所の運営費については、その負担割合を引き上げるよう努力すること。  二 炭鉱離職者援護会に労使その他関係方面の代表者よりなる運営協議会を設けること。  三 生業資金の借入に係る債務の保証については、できるだけすみやかに成案を得るよう努力すること。  四 炭鉱離職者緊急就労対策事業については、その効果的実施を行い得るようこれが改善を図ること。  あらためて多く御説明申し上げる必要はないと存じますが、本法の実施にあたりましては、当面、ただいま議決されました法律案によって目的は達成し得るものと思いますけれども、この法律の立法目的を真に所期のごとく達成せしめるため、これが円満、適切なる運営を今後において行なうことについて、いささか補足をした方が適当でないかと思われるような事柄がなきにしもあらずと存ずるのでございます。  たとえば一に申しましたその負担割合の引き上げの問題でございますが、日本石炭産業の今後の見通しというようなものからいたしまして、産炭地において失業者がさらに続いて発生するおそれが多くあるわけでございますから、そういう場合においては、その地方公共団体が緊急就労対策事業を行なう上において地方団体の負担を非常に増大していく、地方団体の負担に耐えなくなるということもおそれられるのでありますから、その割合を引き上げることは将来においてさらに考究する必要があるではないか。また炭鉱離職者の援護会設置の当初の目的を円満に遂行し得るようにするためには、これが民主的にかつその地方の実情に即応して運営がなされなければならぬのであります。そういうことのために、将来労使その他関係方面からなる運営協議会というようなものを設けるということも必要になってくるのではないか。そういうことをやはり考慮する必要がある。また、ただいま滝井委員の質問にもございましたように、離職者が生業資金の借り入れをしようという場合に、ただいまのところ各方面あっせん等において十全は期し得ると思うのでございますけれども、あるいは将来そのあっせん程度では十全を期し得ないということになるおそれもあろうかと思われます。そういう場合にはある程度債務の保証をどこかでしてくれるということも必要になってくるのではなかろうか。そういうことも一つ検討する必要がありますから、その点についてはすみやかに成案を得るようにいたしたい。また事業費等も、これもただいま論議がございましたが、現状はこれでいいと思うのでありますが、将来は再検討をしなければならぬ時期もあるであろうというようなこと等からいたしまして、この法案を審議するに際して、三派の委員諸君の炭鉱離職者に対する深い老婆心から、こういう附帯決議を付して政府に要望しておくことが適切でないか、こういう考え方に基づいたものでございます。  どうか各委員の御賛成を得まして、満場一致で御決定下さることをお願い申し上げる次第であります。
  55. 永山忠則

    永山委員長 ただいまの大坪保雄君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  56. 永山忠則

    永山委員長 起立総員。よって本案には附帯決議を付することに決しました。  この際、労働大臣より発言を求められておりますので、これを許します。松野労働大臣。
  57. 松野頼三

    ○松野国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、その実現に努力いたすつもりでございます。
  58. 永山忠則

    永山委員長 なお、ただいま議決いたしました炭鉱離職者臨時措置法案に対する委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 永山忠則

    永山委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時二十六分散会。      ————◇—————     午後零時二十六分散会。