○滝井
委員 あなた方は
法律の条文ではそうして分けられるわけですね。しかし
監査を受ける本人については、実際問題としてそれは分けられないですよ。だからそこに立法の無理があるのです。それだったら病院のようなものの立法の建前と、個人のそういう一人のものの立法の建前と別建にしておかないと、こういう問題が出てくるのです。これは根本的な
法律問題ですから、とにかくここに欠陥があることは明らかなんです。しかも四十三条の十のこの条文をお読みになっても、なかなかすっきりしないでしょう。読めば読むほどすっきりしないところが多いのです。
もう一つこれに関連しますが、この前金銭出納簿、医薬品の購入払い出し簿、こういうものはあなたはやらないのだとおっしゃった。ところがこれは
保険薬局なり
保険医療機関につき検査をする場合は、帳簿書類その他の物件を検査することができるので、これは帳簿書類の中に入るのです。従ってお前の貯金通帳を持ってこい——金銭出納簿を持ってこいということは、貯金通帳まで発展するのです。この条文はそういうことになっているのです。館林さんはそういうものはやっていないとおっしゃるけれ
ども、
法律の建前はやるようになっている。出先の機関はみな大体やっている。だからこういう点についての認識、それから立法との食い違いというものがあるわけです。だから、こういう点はいずれにしても
監査の問題を改正する場合に当然考えなければならぬ点です。そこで私は、大臣が時間がないそうですから、大臣に少し
実態を知っておいていただきたいので具体的な質問に入っていきますが、現在
監査官の形を見てみますと、
監査官は、
法律上は違いますが、実質的には裁判官と検事の形を両方、もろ刃の剣を持っておるのです。いわばこの
監査官、技官の意思によって大体方向がきまってくるのです。もちろん最終的には
医療協議会になっていきますが、きまってくる。従ってこの技官の
態度というものは、裁判官の形であり、
調査員の
調査に基づく、今度は悪いところをあばき出す検察官の役割をやるのです。実質的にはいわば二枚鑑札を持っているのがこの
監査官なんです。それでその
監査官の形は大体峻厳型、もう実に峻厳きわまる叱吃激励をする形があります。今度は温和型があります。それから
指導をしていこうという
指導型があるのです。大ざっぱにいって大体こういう三つの型があるのです。そこで
加藤君の場合、今度の相沢先生の場合でも、
自殺に追い込んだのはどういう型かというと、峻厳型です。これは技官の名前を言うと技官の人権侵害になりますから、帰ってゆっくり二人の技官にお会いになってみるといいです。この二人の技官とも全国に定評があります。大体叱吃型です。非常に峻厳型です。大きい声を出します。大体そういう型です。そういう形にあったところにノイローゼが起こっています。いわゆる神経衰弱が起こって
自殺に追い込む、こういう形です。これが大体
監査官の形です。
さて今度は受ける側の形です。受ける側の場合は大ざっぱにいって三つある。これは今後の
監査の上において非常に大事なことです。まず一つは
監査官のお説に対して御無理ごもっとも型です。何でも
監査官の言うたことは、そうでございます、全くその通りでございますと、何ら積極的に自己の意思の表明をすることなく、御無理ごもっともという形です。これが一つです。それから第二の形は、
監査官がいろいろ
患者の
実態調査をもってぐんぐん弱点をついていきますと、強硬に自己の
診療報酬の請求書なり
診療録をたてにとって、とにかく強硬に反抗していく強硬主張型です。これは
監査を受ける
医者の第二の形。第三の形は、
監査官の質問に対して今度は逆に
監査官に食いついていく形がある。そんなあなたの言うことは間違いだという、間違った処置があれば、そういうことは
自分の
保険医の現在の立場からやむを得なかった、こういうように強硬に主張していく、いわゆる逆攻勢質問型と申しますか、
監査官に逆攻勢をかけて質問をしていくという形があるのです。
そこで今度は、そういうものを
監査官はどういう形で見るか、
監査官の側からその三つの形を見るとどういうことになるかというと、まず逆攻勢質問型、逆に
監査官に質問をしていく形の人は
診療に熱意があって、
監査官はこれは大した人だ、頼もしい先生だ、こう思うのです。こういう反応が
監査官に現われてくるのです。それから第二型の、
患者は当てにならぬ、おれの
診療録と明細書が正しいんだという強硬主張型は
監査官の心証を害するのです。このやろう、なんといういやな
医者だ、こういう反応が
監査官に現われてくるのです。ところが第一番の、
監査官の説は御無理ごもっともですという形では、
監査官は、この人間はなんとかいしょうのない先生だろう、よくまあこんな人に
患者さんがたよれるなという
感じを持つのです。そして
自殺型というのは、まずこのかいしょうがないと思われる御無理ごもっとも型に出てくるのです。
そこでさらにこれをこまかく分析していきますと、第一の御無理ごもっとも型で出てくるのはどういう
診療報酬をやっておるかというと、これは全部ではありませんが、大体大局的に見て、そういう人の請求書は、奥さんが書くか、看護婦が書くか、
事務員が書いております。従ってこれは科でいえば非常に
患者の多い、簡単な処置で朝からわんさと
患者の詰めかける眼科や耳鼻科にこういう形態が多く出てくるのです。その場合に一番問題になってくるのは、
患者の
実態調査の中から、
患者の記憶が正しいか正しくなかったかということ、これが一番問題になるのです。
患者の
実態調査を基礎にしてやるのですから……。従ってまず
患者に尋ねる場合には、注射は何本打ちましたか、往診は何回受けましたか、お薬は何回もらいましたかということが、
患者の
実態調査で一番問題になるのですから、
患者の記憶が問題になるのです。そこで今後
監査の爼上にのせる
医師の
患者の
実態調査をやられる場合には、私はある程度療養担当者の団体との
協力において、非常に大幅な
不正請求その他があるというならば、そういう
患者に対してもし
調査をやられる場合には、療養担当者の側と一緒に行ってやるだけの寛大さが必要だと思うのです。これをやらぬところに問題が出てくるのです。だから私がこの前言ったように、その
患者の証言がもしうそであった場合には、一体これは偽証罪になるかならぬかということなんです。ところが
患者は、全くうそを言うつもりはなくて言っておる場合もあるのです。記憶が薄らいで、錯覚を起こして、三本の注射を五本してもらったとか、あるいは逆に五本してもらっても三本だったとか、こういう錯覚が出てくるのです。ところがそれは
患者さんの方にしてみれば、陳述書に判まで押されて持っていかれておるのですから、今度は
自分の記憶間違いというものについて、
患者が神経衰弱になる問題が出てくるのです。しかも特に草深きいなかにおいては、その
自分の
診療を受けた先生が
監査にかかるというようなことになったら、
調べてごらんなさい、必ず
患者は
医者のところへ行く。
患者のところへ社会
保険出張所から
調査に来ると、今度はその明けの日は
医者のところに行って、先生、実はどこかおそろしい官庁の人が私のところに来て、根掘り葉掘り先生の
診療のことについて聞きましたけれ
ども、私はわからなかったからこう答えておきました。もし先生に迷惑がかかったら、済みませんがこらえて下さいよと言って断わりに来る、そういうのがある。だからこの
患者の
実態調査というものがきわめて重要な問題になってくる。
それからもう一つ問題になってくるのは、この前私が申し上げまして、大臣はその改善を言明されたことでありますが、差額徴収の問題です。この差額徴収の場合で一番問題になるのは、いわゆる実費の場合です。同時に差額徴収で
監査官が一番困るのは、
入院の差額徴収です。現在健康
保険では
入院の差額徴収は認めているわけです。だからこの前私がここで申し上げましたように、この病棟は健康
保険の
患者は扱いませんと書いている
保険医療機関さえある。ところがこれは論理的にいえば、その
保険医療機関は、
保険医療機関としては健康
保険の違反をやっていることになる。ところがそういうものについては
厚生省は何もできない。何もやっていない。なるほどそれは別かもしれないけれ
ども、
保険医療機関全体については、健康
保険を取り扱わないといっておるのですから、これは明らかに
法律違反です。そういう場合のほかに、
入院料について差額徴収をやった場合が、
監査のときになかなか決断が下しにくいことになるのです。あるいは
入院料というのはこみになっているから、
患者にはわからない場合が出てくるわけです。こういう点が
監査について非常に問題になってくるのです。
そこで、私はこの際具体的にやっていきたいのですが、
患者の
実態調査というものについて、大臣は一体どう改善をされるおつもりなのか。改善する意思があるかないかということが一つ。それから差額徴収について、やはりこの際明確にする必要がある。この二点についてもう一回大臣の御答弁を明白にこの場で得ておきたいと思います。