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1959-11-17 第33回国会 衆議院 災害地対策特別委員会農林水産等小委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年十一月十七日(火曜日)     午前十時五十三分開議  出席委員    小委員長 綱島 正興君       今井  耕君    大坪 保雄君       坂田 英一君    田口長治郎君       丹羽 兵助君    足鹿  覺君       角屋堅次郎君    塚本 三郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 井野 碩哉君         農 林 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         農林政務次官  大野 市郎君         農林事務官         (農林経済局         長)      坂村 吉正君         農林事務官         (農地局長)  伊東 正義君         農林事務官         (振興局長)  増田  盛君         林野庁長官   山崎  齊君  小委員外出席者         災害地対策特別         委員      金丸 徳重君         災害地対策特別         委員      佐藤觀次郎君         法務事務官         (訟務局次長) 青木 義人君         農 林 技 官         (食糧庁業務第         一部長)    諌山 忠幸君         農 林 技 官         (水産庁次長) 高橋 泰彦君         農林事務官         (水産庁漁政部         長)      林田悠紀夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十四年九月の暴風雨により塩害を受けた  農地除塩事業助成に関する特別措置法案(  内閣提出第二号)  昭和三十四年七月及び八月の豪雨、同年八月及  び九月の暴風雨又は同年九月の降ひょうによる  被害農家に対する米穀の売渡の特例に関する法  律案内閣提出第三号)  昭和三十四年九月の風水害を受けた漁業者の共  同利用に供する小型の漁船の建造に関する特別  措置法案内閣提出第四号)  天災による被害農林漁業者等に対する資金の融  通に関する暫定措置法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一九号)  昭和三十四年七月及び八月の水害又は同年八月  及び九月の風水害を受けた農林水産業施設の災  害復旧事業等に関する特別措置法案内閣提出  第二六号)  昭和三十四年八月及び九月の風水害による任意  共済に係る保険金支払等にあてるための資金  の融通に関する特別措置法案内閣提出第二九  号)  天災による被害農林漁業者等に対する資金の融  通に関する暫定措置法の一部を改正する法律案  (角屋堅次郎君外十六名提出衆法第二号)  農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助暫定  措置に関する法律の一部を改正する法律案(角  屋堅次郎君外十六名提出衆法第三号)  農業協同組合整備特別措置法の一部を改正する  法律案角屋堅次郎君外十六名提出衆法第四  号)  農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案(  角屋堅次郎君外十六名提出衆法第五号)      ————◇—————
  2. 綱島正興

    綱島委員長 これより災害地対策特別委員会農林水産等委員会を開会いたします。  内閣提出昭和三十四年九月の暴風雨により塩害を受けた農地除塩事業助成に関する特別措置法案外五件、及び角屋堅次郎君外十六名提出天災による被害農林漁業者等に対する資金融通に関する暫定措置法の一部を改正する法律案外三件の農林水産関係議案を一括して議題とし、審査を進めます。  前会に引き続き質疑を行ないます。ただいま金丸徳重君より小委員外発言を求められております。これを許します。金丸徳重君。
  3. 金丸徳重

    金丸(徳)委員 私は、山梨県に生まれて、今度の災害につきましては、山の災害の甚大なることに今さら驚かされたものでありますので、その立場から、若干農林当局所信をお尋ね申し上げ、今後の措置についてのお願いをしておきたいと思うのでございます。  今度の災害は、空陸海といいますか、その三方面より言ってみますれば侵入された形でありまして、完膚なきまでに国土を荒らされておるのであります。そのために、海からの侵入に対しては、今度の予算その他につきましても、相当額予算を持ち、特別方法をもって今後における侵害を防止する措置がとられておるのでありますが、同様に、空からの風の侵害につきましては、いかんともしがたいものもありましょうが、陸といいますか、山からの侵入に対しましても、相当決意及びこれに対する具体的なる措置方法が講ぜらるべきであり、また非常な努力をされんとしておる跡も見られるのでありますが、ただ、今回の災害激甚地指定などにからみまして、当初農林省が計画なさっておられたような方針及びスケールにおいて、各方面からの侵害に対して全面的に十全な措置を講じ得るまでには至らないのではないか。そしてこの心配につきましては、先般来の予算委員会及び当委員会等において、つぶさに、また繰り返し究明されておるところであって、政府におきましても、この間の事実につきましては、この事実を承認しつつ、今後においてその足らざるを補うための措置を講ぜられる決意をも表明せられておるのであります。そして今までの質疑応答その他において明らかにされましたことは、何と申しましても、当初の激甚地指定の範囲が広められたために、結果的に見ますと、予算が足りないということは、もうだれしも否定しがたいことのように思われます。私は、そういう中において、その足りない予算しわ寄せが、特に改良復旧あるいは寒冷地災害対策について、従来各委員会などにおいて表明されておったところの政府の大方針——今までの単なる原形復旧主義ではなくして、改良主義を大きく取り入れて、今後再び災害の起こることをなくなす方向努力するという大方針、及び関連災害復旧などについて、あるいは災害関連事業などにつきましても、なるべく広くこれを当てはめて、そうして現地災害対策の万全を期したいというようなこの二つのことについて、必ずしも当初の所信通り進み得ないのではないか。予算ワクが狭められたといいますか、被害地がよけいになって、予算が足りない。従って、災害復旧そのものについては、なるほど従来通り方針及びスケールにおいて進み得るといたしましても、大眼目であるところの改良事業にまで広く手を伸ばしたい、関連事業にまで広く及ぼしたいというこの政府の念願は、ここで大きくゆらいでくるのではないか。言ってみますれば、しわ寄せがその方面にいくのではないかというような気がいたしてならないのでありますが、この点につきましては、どういうお見込みでございましょうか、政務次官から御表明願えればありがたいと思います。
  4. 大野市郎

    大野政府委員 ただいまの御指摘被害激甚地指定の問題などを含みまして、予算委員会におきましても、予算ワクの問題でいろいろ論議が行なわれたようでございます。私の承知いたしますところでは、一応予備費その他にも盛ってあるので、補正の必要を認めないが、新しい事実でそういう必要性が出た場合には、善処をするということを大蔵大臣も答えておるようでございます。その点については、われわれもこれを信頼して参りたいのでございますが、来年度予算に関しての御意見もただいま一緒に出たのだと思います。改良復旧並びに災害関連関係を充実しろということは、当委員会の御意向であり、また、農林省当局としては、当初よりその精神で折衝しておったのは間違いがございません。ただ、将来の見通しについての心配はないかという御説でございますが、この点については、予算ワクがそう楽でないことはお互いよいよわかりますので、この点、その主張を貫きますには、格段の努力が必要だと覚悟いたしております。従って農林省としての折衝の覚悟は一そう固めて当たる、かように御了解をいただきたいと思います。
  5. 金丸徳重

    金丸(徳)委員 改良主義を取り入れなければならないという方針関連事業をなるべく広く取り上げなければならないという方針、これについては今までの考えと何ら変わるものではないということが、かたく言明できますかどうか。そして今後そういうことについて、具体的にやりたかったけれども、実は予算関係があってやれない、あるいはもう少し広く進めたかったけれども、査定を厳重にしなければならないので、手をつけるのは次年度もしくは次々年度にまでいかなければならないのだというようなことがないのかどうか、もう一度言明を願いたい。
  6. 大野市郎

    大野政府委員 今年度の、ただいま予算を参議院の方に送っていただきましたあの案件につきましては、改良復旧あるいは災害関連の問題は八%まで広げることになっておりますので、そういう問題に対しては、大蔵大臣予算委員会言明もございますので、われわれは信頼して、それの実現をお約束できると思います。来年度の問題ということになりますと、いろいろ予算の幅がありますので、紆余曲折、努力を要することと存じます。
  7. 金丸徳重

    金丸(徳)委員 こういう大問題につきましては、一気にどうこうということにも参らないと思います。問題は、今後における農林当局の御尽力、御努力を願わなければならないことでありますが、もう一点、私どもが非常に心配いたしますことは、そのような中におきまして、しわ寄せ——しわ寄せというと、そんなしわ寄せはせぬつもりだというようなお答えがあってしまえばそれまででありますけれども、しかし、事実問題としては、ワクの狭い中において広く仕事を進めなければならないという現段階におきましては、その苦しみのしわ寄せが結局地方の小災害に及んでいくのではないかという心配を持つのでございます。たとえば、農地改良復旧災害復旧におきましても、何十町歩、何百町歩というような大きなものに対する災害に対しては、これはだれしもが気がつくことであり、だれしもが力を入れることであり、そういうことについて云々ということはあるまいと思います。ただ問題は、二町歩とかあるいは五町歩とかいうような小さいところで、それもあちらこちら離れておる山合い、谷間農地団地における災害が、結局は予算ワクの小ささというようなことの影響を受けてあと回しにされるというようなことがあっては、これまた大へんなことになりはしないかと思うのでございます。今度の災害によって十分現実に証明されたところでありますが、山合いの農地災害が、結局それを下流の広い団地の方に持ち込んできて大きな災害をもたらしておる。それで山合い、谷間農地をしっかりこしらえておくというようなことこそ、私は災害を再び起こさせないための大事な措置ではないかと思うのであります。ところが、そういう小団地と申しますか、小さな災害に対して、今度の予算しわ寄せが及んでいって、取り残されてしまう、あと回しにされてしまうというようなことがあっては大へんだと思うのでありますが、この辺のお見通しはどうでありましょうか。
  8. 大野市郎

    大野政府委員 小災害の問題は、従来山地の問題には比較的一般の関心が薄い時代がございましたので、御心配はごもっともでございますが、今度の河川のはんらんの形式、それが治山根本問題につながることははっきりいたしておりますので、小災害根本を押えるための治山治水には、相当力を入れて、今回も予算措置ができてございます。御心配の、小さな災害が連続してあるような場合に、目につかないために置いてきぼりにならないかということでございますが、この点は、そういうことのないように極力われわれも努力いたしますが、ぜひまた、各位におかれましても、現地の問題に対しては、十分に一つ教えていただきまして、ともどもにそういうことのないように守っていきたいと思います。
  9. 金丸徳重

    金丸(徳)委員 小災害は忘れてはならぬという御決意でおられますので、その点基本的には安心いたすのでございます。ただ、御承知のように、山合いの小村の理事者と申しますか、そういう人たちは、今度の災害対策などにつきましても、個人災——農地であっても個人災じゃないかということになりますが、たとえば、現実死亡者が出た、あるいはうちが倒されてしまったというようなことのために、その方に奔命これ努めなければならぬような状況に立ち至っておりまして、農地災害復旧というようなことについては、村人から騒がれましても、なかなかそれに食いつけないような実情にあるのであります。そんなことはないはずだとおっしゃるかもしれませんが、実際山の中に行っていろいろ聞いてみますと、手が及びかねるんだというようなことから、中央に対する、あるいは県当局に対する要望なり、陳情なり、その他のことがおくれがちなのであります。そういうことについて、やはり中央から大きくかけ声をかけていただいて、今度の災害については、このときこそ小災害を忘れずに、いな小災害を先に手をかけるんだ、山合いの忘れがちのところに一そうの力を入れるんだというような態度、及びその実があってほしいように思うのでございます。この点少ししつこいお願いではありまするが、もう一度おっしゃっていただきたいと思います。
  10. 大野市郎

    大野政府委員 ごもっともでございます。特に努力を傾注させまして、それらの小災害ができるだけ多く完結するように努力をいたします。
  11. 金丸徳重

    金丸(徳)委員 そこで、小災害につきましては特に力を入れていただくというお答えがございましたので、それに信頼申し上げるのでありまするが、さて、農地災害復旧につきましては、これは特に山合いの農地災害においてそれが見られるのでありますが、美田変じて砂れき、川原となるというような現実の場面は、随所に見られるのであります。そうして、これを再び昔の美田に返すのか、それとも、これをまた別な方法で畑にでもするのか、林地にでもするのか、果樹園にでもするのかなどにつきましては、ずいぶん現地においても苦しんでおるところであります。また、今後具体的な工事計画が進むに従って、いろいろの案が出て参ることと思います。そこで根本方針といいますか、基本考え方といたしましては、どうやら、わが国の農業も今までのような食糧増産第一主義食糧対策という時代から一歩進んで、やや別な広い面で考えを進めていってもいいのではないかというようなときになったのであります。そこで、畑作転換というような声が強く地方の方でも聞かれ、ささやかれておるのでありますが、このようなときにおきまして、さて、それではもとの美田にすることよりも、田畑にした方がより簡単であり、あるいは、より効果的であろうかという考え方事業計画を進めるといたしましても、今後、畑作などにつきまして農林省がどの程度のあたたかみ、あるいはいい策を持ってそれをバック・アップして下さるかいなかについて、やはり若干の心配を持つのではないかと思います。この際、従って、金はかかっても昔の水田にすべきであるというような意見もございましょうし、この際一つ畑に変えようじゃないかという意見もあろうかと思いますが、そういうような小団地における耕地の転換などについて、今後どのような方針及び援護措置といいますか、援助策をお持ちになっておられるか、基本的な御構想を承っておきたいと思います。
  12. 大野市郎

    大野政府委員 ただいまは小団地の問題を特に御指摘でございますが、この畑作転換と申しましても、今の災害を受けた場所に対しては、その特殊な事情もそれぞれございましょうから、一般論では当たらないかと思いますけれども、個別的に、現地状況によって、たとえば、とても客土をしてもまたやられてしまうというふうな地形のところもございましょうし、それなら、いっそ水を引かないで畑地にして小高くした方がいいという場所もございましょう。いろいろ変化があると思います。これは、現地でやはりそれぞれきめねばならぬ問題だと思いますが、一般論としましての畑作転換という考え方は、実は湿田乾田化という考え方がむしろ基本じゃないかと思っております。それで、食生活変化に伴ってその着想が生まれて参りますが、それは結局、湿田乾田化しておけば、その植付の品種についてはいかようにでも変化ができますので、たとえば、石川県の畑とたんぼの輪換を現在やっておられる地域がございますが、ああいうような形にまでいけば理想ではないか、かように考えまして、食生活転換というものを頭の中に置きながら、土地改良はやはり従来の形で強力に進めるべきである、こういう考えに現在はまとまっておるのでございます。
  13. 金丸徳重

    金丸(徳)委員 そこで、基本的には湿田乾田化するということに主たるねらいがある。その点は、私もそれでいいように思うのでありますが、今度の災害機会といたしまして、部分的には、従来の美田が、条件変化によりまして乾田化したところもありますし、それからまた、そうでなくとも、従来の湿田乾田化する機会がきたというような面もございます。それは御承知のように、非常に山くずれがありましたために土砂下流に持っていく、その持ってきた土砂湿田地帯客土とでもいいますか、それをすることによって湿田が乾田地化するような面も出て参りました。これは私の方の盆地におきましては随所に見られる現象であります。これを河川改修とからみ合わせて土地改良事業一緒にやっていかれるならば、ずいぶん一挙両得、もしくは三得の結果をもたらすのではないかと思うのであります。そういう場合においては、土地改良事業を広く、あるいは強く進める意味において、建設省河川改良事業とからみ合って大きく取り上げていただく御方針がおありかどうか、承りたいと思います。
  14. 伊東正義

    伊東政府委員 今災害関連しまして、ほかの省との関連土地改良を行なうかどうかというお話でございますが、今さしあたっての災害復旧予算にそこまで——どの分はほかの省との関係であるとかいうようなものを、具体的には持っておりません。しかし、先生、おっしゃいましたような、ほかの河川改修一緒にやれば土地改良がうまくいくというようなところがございますれば、これは団体営とか、その他の予算をうまく使って、なるべくそういう土を利用して何かやるというようなことができますところは、考えていきたいと思います。
  15. 金丸徳重

    金丸(徳)委員 私が冒頭にお伺い申しました点、関連事業などについては、できるだけしわ寄せを受けるどころか、この機会に広く取り上げていただかなければ、というようなことにからんでくるわけであります。この機会におきまして、従来の考え方を一歩進めていただいて、災害対策といいますか、災害復旧としては少し幅が広くなるのではないかという考え方があるかもしれませんが、これを広く国土という点において、建設省とからめてやると、まさに災害復旧事業として取り上げ得るものと考えますので、特にこの点、私は強く御要望申すのであります。  大体、以上私の要望といいますか、災害対策についての所信の御表明を願ったのですが、最後に、一つ政務次官から、こういう点について今度の予算が足りなければ——まだ足りないことは確かで、私ども現地において個々に考えてみますと、どうしてもその心配が抜け切れないのでありますが、今後において十分努力されるということ、さらに次年度、次々年度におきましても一そう強く山の災害土地改良とからみ合わせて、あるいは河川災害とからみ合わせて、災いを転じて幸いとする方向に進むのだという決意表明をいただきたいと思うのであります。
  16. 大野市郎

    大野政府委員 ただいまの金丸委員の御意見通りに、災害復旧を完成するためには非常な努力が要ると思いますが、先ほども申し上げた通りに、予算委員会大蔵大臣から、「新しき事態で予算の不足の場合には、さらに善処する」という力強い表明もございましたので、現地復旧を担当するものといたしましては、当然その完遂をお誓いするわけでございます。来年度予算に対しては、なお一そうのいろいろな苦痛があると思いますが、これまた、災害復旧完遂のためでありますから、同様なる趣旨で極力御趣旨に沿うように努力をいたします。
  17. 綱島正興

  18. 角屋堅次郎

    角屋委員 今回の台風十五号を中心にいたしました六、七号以来の災害対策につきましては、すでに政府からも関係法案が全部提案され、さらに、わが党からもそれぞれ独立立法提案をされまして、熱心な審議が行なわれておるわけであります。同時に、私も、過般来農林水産関係の問題について、あるいは農林大臣、さらにそれに関連して建設大臣大蔵大臣等にもいろいろ質疑を続けてきたわけでございまして、昨日は、わが党の足鹿委員からも農林水産関係の問題について具体的な点を掘り下げて質問があったわけでございます。私は、この機会に、政府から提案されました法案と私どもから提案をしました法案との対比の中において、いろいろ重要な点について問題を掘り下げて、ある程度お伺いしたいと思うわけでございます。  そこで、まず、今度の災害対策で最も大きな焦点の問題になりました被害激甚地規定という、いわゆる政令で定められる地域の問題に関連してでございますが、この点については、御承知のように、政府の方では過般この基準をきめられまして、国会にも提示があったわけでございます。私どもとしては、この政府提案に対しまして独自の見解を持ち続けながら、最終的な本特別委員会におけるところの前進に実は期待をかけておるわけでございます。そこで、農林水産関係被害激甚地規定基準ということで問題のありますのは、御承知のように、昭和二十八年の災害のときにとられた基準というものと、今回の昭和三十四年度台風十五号を中心にしてとられております基準というものの間に、その条件ファクターに相違が出てきておるわけでございます。言うまでもなく、昭和二十八年度災害のときには、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助暫定措置に関する法律に基づくところの附則第三項による政令によって指定される地域指定基準というのは、まず第一に、農地災害復旧事業費災害農地耕作者数で割ったもの、さらに農業用施設災害復旧事業費受益農地耕作者数で割ったもの、さらに農協の組合森林組合水産業協同組合、こういうものの所有する、いわゆる共同利用施設、あるいは開拓地におけるところの施設、こういうものを施設利用者当該市町村の区域内に住所を有するものの数で割ったもの、この合計額が三万円をこえる市町村、これが一つの問題でございましたし、林道の問題については、林道復旧費災害林道の総延長で割ったものが一メートル当たり三百円をこえる市町村、さらに漁港につきましても同様なことで三万円という基準がきめられておりまして、四番目として、災害農地農作物植付不能、減収量が平年作の三割をこえる面積が百町歩をこえ、当該市町村の全農地面積の一割をこえるものというのが第四番目にあり、第五番目として、公共土木施設等事業費標準税収入をこえる市町村、第六番目として、災害救助費用標準税収入の百分の一をこえる市町村、こういう六項目の前提条件に立って暫定法附則第三項による被害激甚地指定が二十八年災のときには行なわれたことは、御承知通りでございます。今回は、すでに示されておりますように、農地農業用施設について総額を被災農家戸数で除しました一戸当たり災害復旧事業費が五万円をこえる市町村、さらに長期湛水地域というものを新しいファクターとして取り上げる、こういうのが農地農業用施設適用条項であり、林道については、従来の三百円を四百円に上げる、こういう形をとっておるわけであります。  そこで、この機会にお伺いしたいわけでございますが、従来は、いわゆる三万円の単価を出す場合、今回でいえば五万円の単価を出す場合に、共同利用施設というようなものが計算の中に含まれておる。ところが、今回はこれが除外をされておる。また、第四項の災害地農作物植付不能、減収量が平年作の三割をこえる面積が百町歩をこえ、当該市町村の全農地面積の一割をこえるもの、こういう、農林水産関係のある問題の条項というものも削除されておる。そして政府の説明等によりますると、農地農業用施設の五万円の問題にしても、あるいは林道の、決定をされて参りました四百円の問題にいたしましても、これは物価指数の上昇等からすれば、こういうふうな形になってくるのだというような説明をしておるわけでありますが、この辺の、いわゆる農林水産関係被害激甚地をきめる基準を決定した基本的な考え方、これを昭和二十八年と対比しながら、どういうふうな分析、検討の上に立って結論的にこういう結果にされたのか、その科学的、数字的な根拠について、この機会にお伺いしたいと思います。
  19. 伊東正義

    伊東政府委員 便宜上、私から農地農業用施設関係について申し上げます。  今先生のおっしゃいましたように、二十八災のときには三万円ということになっております。たとえば、農地農業用施設につきまして、林道基準にかかれば農地農業用施設でも差しつかえないというような、いろいろ関係が薄いと言っては語弊がありますが、林道にかかれば農地もいいというような選択基準があったことは御承知通りでございます。今回それを改正いたしました農地農業用施設についての基準は、やはり、これは個人の農家の負担ということを中心にして考えていくべきでなかろうか、市町村でなくて、農家の負担というものを基準にして考えたらどうかというようなことから、農地農業用施設の被害につきまして、関係戸数で除して、五万円という基準を実は作ったわけでございます。五万円でございますが、これは二十八災当時、実は農村における臨時雇用賃金の指数をはじいてみますと——これは災害復旧の大部分が賃金の支払いが多い関係上、これをはじいてみますと、約三割三分くらいで四万円くらいの数字になって参ります。それから、そのほかで、実は二十八災でやりましたときに、激甚地が九割近いものになって、非常に広過ぎはせぬかというような批判も実はございまして、そういう観点からも五万というものを出してきたのでありますが、これで参りますと、私どもの方で、新市町村について一応県の報告を基準にやってみますと、その九割ほどの対象になる事業費は七三%くらいになるんじゃないかというふうに、実は考えておるのであります。これは新でありますから、旧市町村という方が有利という場合には旧市町村でやりますので、そういうものでやれば、もう少し上回るかもしれません。ただし、これは査定の結果ではございませんので、数字的には若干動くかと思いますが、大体そのくらいのものはカバーできるのではないかというような観点で、五万というものを作ったわけであります。  それからもう一点、湛水の問題でございますが、これは二十八災では、今、先生がおっしゃいましたように、農作物の被害を一つ基準にいたしておりますが、実は今回の災害の特殊性といいますか、非常に湛水地帯が多いというような関係から見まして、そういうものを新しい基準に入れて考えた方がいいのではなかろうか、これは五万円になりませんでも、湛水の排水の規定の適用のある地域につきましては、一つ九割というものを入れたらどうかというようなことで、新しい基準を入れたわけでございます。これは先ほど申しました七三%のワク外でございますから、そういうものを入れますれば、この数字も若干上がってくるだろうというような見地に立ちまして、一応先生がおっしゃいましたような五万円、それから湛水地域の適用のある地域というようなことを今のところは頭に置きまして激甚地に指定しようというような考えでございます。
  20. 角屋堅次郎

    角屋委員 先ほど質問申し上げました中で、共同利用施設等が、御承知のようにこの前の計算の中に入っておりますね。これは今度は農地農業用施設だけで計算をする、こういう面でも、いわゆる計算に含ましめる要素というものが大きく除かれております。御承知のように、今度の台風十五号の被害の実相を考えてみますと、もちろん高潮等による海岸地帯の被害、これが非常に甚大な姿で現われておると同時に、風が昭和二十八年度災害のときの風速とはまるきり違って、風速が五十メートル、六十メートル、ひどいところになると七十メートル近い風が出ておる。そういう関係で、これは単に共同利用施設ばかりでございません。個人の家屋その他も含めてですが、非常な大きな被害が生じておることは御承知通りであります。共同利用施設の被害がきわめて甚大であるときに、こういうものを除外して、そうして農地農業用施設だけで単価を出している。やはり、なるべく被害激甚地指定するところを格安に済ましていこうということだろうと思いますが、これでは今度の台風十五号の性格というもの、これは単に高潮、高波等を伴って海岸地帯に被害の激甚な姿を与えたばかりでなしに、風害によるところの大災害、こういうものをやはり無視していくといいますか、軽視していく、そういう姿が計算の基礎の中に現われておりはせぬか。なぜ、こういう共同利用施設という問題を除外されたのか。御承知のように共同利用施設の再建のためには、これはやはり受益者の農家等が、当然災害復旧の負担分として、補助率でかけられた以外のものについては負担をしていかなければならぬ。こういう形になって参るわけですから、そういう点から見ても、これは当然含ましむべき要素だと思うのですが、なぜこれを除外されたか、そういうところをお聞きしたいと思います。
  21. 伊東正義

    伊東政府委員 共同施設の問題でございますが、今、先生から御指摘がありました風だけが比較的強かったという地帯につきましては、私ども比較的農地農業用施設自身の被害は割合に少ないのではなかろうか、これは予想の問題でございますが、そういうような一つの判断もいたしましたし、今、先生のおっしゃいました共同施設につきましては、これは先ほど申し上げましたように、農地農業用施設の被害の復旧というものは、その災害のありました農家単位でものを考えていった方がいいのじゃないだろうかというような考え方、また、御承知のように六万円というものをやりました場合にもいろいろ議論したのでございますが、あまり関係戸数というものをたくさん入れてくるような場合には、またその基準が農民にとって不利になることもありゃせぬかというようなこと、それから先ほど申し上げましたように、農地農業用施設につきましては、やはり農地農業用施設の被害というものを中心考えた方が理論的に正しいのではなかろうかというようなことから、それは一応除外しまして、共同施設は共同施設としましての別な基準を打ち立てたような次第でございます。
  22. 角屋堅次郎

    角屋委員 農林大臣、法務大臣が見えられまして、過般来懸案になっております足鹿委員の質問がありますので、私の質問はそれが終わったあとにしたいと思います。
  23. 綱島正興

  24. 足鹿覺

    足鹿委員 昨日、質問を留保いたしております農林大臣並びに法務大臣に対する質問を若干いたしたいと思います。  最初に、農林大臣にお尋ねをいたしたいのでありますが、本委員会に付託されております昭和三十四年八月及び九月の風水害による任意共済に係る保険金支払等にあてるための資金融通に関する特別措置法案並びにこれに関連をしまして、風水害と建物共済の問題、それから農業共済補償制度の抜本的改正の問題、この二点についてお伺いをいたしたいと思うのであります。  今回、非常な風水害が訪れまして、従来農業共済組合が任意事業として行なっておりました建物共済に対して、農業共済基金からその資金融通の道を臨時応急の措置として開かれることになりました。やむを得ざる措置として、私どももでき得る限りすみやかに被災農民に金が届くように審議を促進いたしたいのでありますが、これは、わが国の農業災害補償制度あるいは今後風水害保険について国がどういう態度をとるか、こうした基本的な問題を含んだきわめて重要な問題でありますので、大臣より明確な御答弁を願いたいと思うのであります。すなわち、従来からもたびたび大臣に申し上げておりますように、現在の共済組合が行なっておる建物任意共済は、その掛金率の上からいき、あるいは支払い契約の限度の面から見ましても、その安全性に乏しいということをわれわれは常に指摘してきまして、この点については、早急に懸案の農協との一元化の線で踏み切るか、あるいはまた、別途に基本的な方針を立て直すか、何らかの方法をもってしなければ、異常の災害の際には支払い不能等の重大事態を起こすであろうということをしばしば警告もし、指摘もし、今日に至ってきたのであります。たまたま今回の災害において、私どもが従来指摘してきたことが残念ながらその通りになっちまった。私どもは、農民のためにその安全性と支払いを確実にして、真にこの建物共済の名に値する安全な保険設計の上から、農民の信頼にこたえるように今後この制度を確立していかなければならぬと思うのでございます。そういう点から、とりあえず臨時応急の措置をとられたことにつきましては、やむを得ざる措置としてわれわれもこれを了承いたすのでありますが、現在問題になっております農協あるいは一般損保等との関係はきわめて重大になってくると思います。聞くところによりますと、大蔵省は、今月の十日、風水災保険実施について五項目の意見の申達を求めております。それによりますと、五項目の末尾には、需要に十分に応じ得る風水災保険は、純粋の民営保険として成り立つかという題目によって、風水災保険を民営として運営するとしても、国による何らかの措置、たとえば国による再保険または補償等を必要とするか、その場合いかなる措置によっていかなる保険を実施することができるか、次いで、風水災保険は国営または公営とすべきであるかという基本的な問題について意見の申達を求め、十二月十日を期して結論を出すことを連絡しておるのであります。こういう動きの面から見ましても、今回、農林省がとられた措置は全くの暫定臨時の応急措置として、今後この機会根本的に風水害と建物共済、それと国との関係、特に農民は土地に永住しておりまして、家を失い、たんぼを流されましても、その土地から離れることができない、そういう意味から言いましても、特に農家の建物共済との関係においては、従来の経緯から見ましても、農林省が責任ある基本方針を立てて、すみやかなる機会に必要な法的その他の措置を講ずべき責任があると私は思うのでありますが、これに対する農林大臣基本的な御所信を承っておきたいと思います。
  25. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 農業災害の問題につきましては、かねて足鹿委員特別の御検討、御心配にあずかっておりまして感謝しております。今回大風水害が起こりまして、お話のように、被災地におきましては、その支払い資金に不足を生ずるというものが五件ばかり出てきておる次第でございます。それに対しまして法律案で御審議をいただいておるわけでございまするが、共済基金の方から、さしあたり融資をするということにいたしたのでございますが、これは私の考えとしましては、臨時応急の便法であるという考えでございます。これをもちまして前例といたしますとか、あるいは恒久的な考え方方向を示しますとか、さような考え方は毛頭持っておりません。建物共済という事業そのものはきわめて困難な問題であり、今までも民間の火災保険会社におきましても手をつけかねておったような次第でございまするが、それに対しまして農業共済が取り組むということでございますから、そこには幾多の検討すべき問題が伏在しておるというふうに考えておる次第でございます。今回の経験に徴しまして、支払い資金というものが大きな災害に対しまして不足をするということは、これはどうしてもあり得ることであります。従って、その料率なり、あるいは保険の限度額なりについては、これはもう少し保険数理的な検討を要するとともに、これに対しまして国家がどういう立場をとるべきかということも検討しなければならぬ。さらに第二には、農家という特殊な階層の建物を対象とする保険制度であるという関係上、その保険事業主体というものがいかなるものであるべきかという問題も検討しなければならぬというふうに考えておる次第でございます。  そこで、かねがね御意見等もありまするが、農業災害補償の制度全般につきまして、今や再検討しなければならぬという時期にきているというふうに考えておる次第でございます。各方面の農家におきまして、今の農業補償制度にはあき足らぬ、しかも、国は百二十億円に近い金を出しておる、国がそれまでの負担をしながら農家が不満を持つという制度、これはやはりどこかに問題が伏在するのではあるまいかというので、かねて農林省におきましてもこの制度全体に対する検討をしておった次第でございます。その検討の一環といたしまして、建物共済につきましても、どういうことがよろしいのかというふうな根本的な検討をすべきものではあるまいかという考え方を持っております。しかしながら、さしあたり、その検討を待たずとも、料率の問題でありまするとか、あるいは保険契約の限度額でありますとか、さような問題は早急に結論を経過的に出していかなければならぬ、かような考えを持っておる次第でございます。
  26. 足鹿覺

    足鹿委員 大臣の御構想、よくわかりました。そこで、ただいま御答弁で、農業災害補償法の改正問題との関連においてお触れになりましたので、この際、私も第二点として伺いたいと思っておったのでありますが、関連してあわせて伺っておきたいと思うのです。これは、今までこの論議を何十ぺんも繰り返してきておりますので、結論だけ申しますと、現在政府考えておられる農業災害補償法の改正に対する態度については、私どもは、大臣就任当時からのこの重大な問題に対する公約と少し方向がずれていやしないかと思うのです。少なくとも、この問題が先国会以来論議をされ、衆参両院の農林水産委員会で附帯決議までつけられ、抜本改正の線を早く出して実現しようということになっておる。ところが、聞けば政府内部に研究会のようなものをまず当面置いて、そうして役人だけで研究をする、そこで何らかのものを作業して、今度一般の学識経験者その他必要な人を加えて調査会とか、協議会とか、審議会とか、いろいろな形式でしょうが、そこでさらに本格的な検討をやる、こういうふうに伝えられておるのであります。がしかし、従来私どもは保利農林大臣の際に、制度改正審議会を作って三カ月余にわたって熱心な検討をやった、そして、その中間答申もやって政府にそれをお示しをし、検討を求めたのでありますが、その後、今日までそのままになって実現しておらない、こういう経過から見まして、要は、事務家が寄っていろいろ検討して、そのものの上に調査会を設けるというようなことではなくて、これは長い間の経緯と、それから異常な風水害によってこの制度に対する関心が高まっておる今日、政府なり、あるいは国会が一つ方向考えておることはもうわかっておるのでありますから、それに対して政治的な裁断を大臣が下され、その一つ方向に向かって事務当局に作業せしめる、あるいは学識経験者のたっとい意見を求める、こういうふうにして固めていかなかったならば、これはいつまでたってもできません。特に団体間の建物共済の一元化の問題をめぐって非常に問題もありますし、これを調査あるいは審議ということに日にちを費して、その出た結果でやるということでは、私はとうてい問題にならぬと思います。特にこの問題が取り上げられたのは、昭和二十八年の大災害のときに衆参両院の両院協議会まで開いて決議をされたことであります。それがいまだに実行されておらぬ。今度も昭和二十八年災にまさる大きな災害を受けて、この制度に対して大きな関心が集まっておるときであります。これを、また調査に調査で日をおくらして、昭和三十五年の暮れの通常国会を目途として法案提出などということは、今までの経過から見まして許されません。これは、どうしても来たるべき三十四通常国会中に——なかなか作業もありましょうが、来年の五月まであるわけでありますから、その国会中に改正の案を出さるべきものだと私は思う。当初にお出しなさいとは申しません。それは無理でありましょう。が、少なくとも、来年の国会が五月まであるその間に問題をまとめて、そして制度の完璧を期していく、懸案の問題を解決していく、こういうことがなされなければならぬと思うのであります。昨日事務当局から答弁を求めましたが、私の質問に対しては、事務当局の答弁する余地がないのでありまして、どうしても大臣の決意によってこの際断を下してもらいたい、こういう点から質問を留保しておるのでありまして、従来から十分経緯は御承知でありますので、くどくは申し上げません。今の問題に対して確固たる御所信を御披瀝願いたいと思います。
  27. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 足鹿委員農業共済制度の抜本的改正に関する御熱意につきましては、御趣旨のほどは重々私も同感でございます。しかしながら、これは足鹿委員もよく御承知と思いまするが、ある方向が出たといたしましても、これを具体的な制度として施行するということは相当事業でございまして、普通の法律案のように、簡単に法律案だけで片づくのだというわけにも参らぬ性格のものでございます。さようなことで、積み重ね作業というようなものを今省内でやっておりまするが、近くこれを各界の権威の人にも御相談をいたしまして、だんだんと方向を具体的にまとめていきたい、かように考えておる次第でございます。それで、来国会中に法案を出したらどうか、こういう重ね重ねの御意見でございまして、私どももそれは考えてみておるのではございますが、ここではっきり来国会中これを提出いたしますというお約束はまだいたしかねるのです。しかしながら、御意見のほどは私は全く同感でございますので、さような方向に向かって全力を尽くすということだけを申し上げたいと思います。
  28. 足鹿覺

    足鹿委員 最後に、ちょっと御注意申し上げておきたいのですが、この災害補償制度によって、このたびの災害を受けた人々が共済金をこれからもらいます。そうすると、あまりにもその金額が少ないのに、もらった者が不満を起こす、もらはない地帯はますますもって不満が高ずる、こういう事態に必ずなると思うのです。従来からあるこの制度そのものをつぶしてしまえという意見を持った政党もあります。その人々が農民に迎合して、この制度をつぶす運動を起こしております。私は、そういう地帯にも行って、少なくとも、政府も、今までの経過から見て、通常国会にこの問題に対する改正案を出さなければ、この制度が崩壊寸前の危機にあるということは知っておるはずだし、これは与野党の問題ではなく、必ずそういうふうに持っていって、この制度がほんとうに農民のためになるようにしなければならぬから、不満があっても、やはり、そういうやめてしまうということは考え直す必要があるということを私は説いて回った。たまたま耕作細目書も出さぬ、掛金も払わぬという地帯を私は二日がかりで講演をしました。ところが、その地帯が今度ばっさりやられ、収穫皆無の大洪水にたまたま襲われたというようなめぐり合わせになっておるわけであります。そういう点から見まして、もらってももらわなくても、この制度には不満がうっせきしておるのです。これをじんぜん日を延ばすということでは、おそらく各地に崩壊現象が現われて参りますし、私どもも、いつのことやらわからぬということで、この制度が立ちぐされになることは忍びません。従って、われわれも大きな決意をもって政府にその決意をせしめるだけの行動をとりたい、かようにも思っております。で、これは今日まで煮詰まってきた問題だから、ただいまの大臣の誠意ある御答弁によって、私も一応これ以上は申し上げませんが、非常に重大な段階にきておるということだけは肝に銘じていただいて、今御答弁になった点を、ぜひもう少し強く事務当局を勉励され、あなた自身も決断をされて、御善処願いたい。このことだけを申し上げて、農林大臣への質問は、災害補償制度の問題については一応これで終わりますが、あとで、法務大臣にこれからお尋ねして、その関係でちょっとお尋ねします。  この間、今月の七日に、この委員会の全体会議の際に、私は総理大臣にお尋ねをしたのです。それは、すでに御存じでしょうけれども、国家賠償法の適用の問題です。その際、天災と国家の責任の問題、それの具体的な問題としまして、このたびの干拓堤防等の大決壊によってなくなられた犠牲者に対して、国家が賠償法を発動してこれを救済し、死者に対して若干の慰めをすべきではないか。それができなければ、他に見舞金をそれに準じて出すとか、とにかく、もう少しこの問題に対して検討すべきではないか。すでに名古屋におきまして訴訟を提起しておる者もあるし、また東京都内にあっても、ある区役所におきましては、水門流失の責任を問われて、書類送検を受けておる公務員もある。こういうような情勢から見て、終戦後、昭和二十二年に初めてこの法律ができてから、いまだ一ぺんも適用された事例がなく、従来は、災害等によっては、お上の御慈悲によって、あるいは恩恵的に見舞金とかその他の点で解決しておった。ところが、当然今度は、国の施設あるいは管理に瑕疵があったときには国は賠償の責めに任じなければならぬという立法の趣旨に従って、恩恵的ではなくして、堂々と国家賠償が受けられる、こういう民主立法ができておる以上、これを少なくとも今回のごとき異常な災害に際しては適用すべきではないか。特に干拓堤防等の決損、あるいは海岸堤防等の決壊によって貴重な人命を失ったはっきりした人々に対しては、特にこの問題の適用が必要であるし、また流木その他によって、名古屋地帯おいては、思わざる犠牲者がたくさん出ておる。こういう点からも、当委員会においては、他の委員からも、この問題が提起されて、政府の決断を迫っておるのでありますが、何しろ、この委員会は寄り合い世帯と申すと語弊がありますが、各委員会から出ておりまして、深く掘り下げていくことはできぬ。私は、学者なり、また現地の生存者の中から、実情を知っている者を当委員会に招致して、参考人としてその意見を聞き、この法律によれば、その当事者が瑕疵あることを立証して訴訟を提起しなければならぬことになっておりますが、しかし瑕疵があったかなかったか、堤防決壊に立ち会っておった——特にこの鍋田干拓の場合は、青年隊が堤防を守るために堤防に寄ったために、全部やられてしまっておる。こういう気の毒な実情等もありますが、だれもその現場のそのときの瞬間の実情というものを知っておる者はない。こういう経過から見て、立証の方法がつかぬままに、あるいは訴訟をしていく手続等が繁雑、その他めんどうくさいというような点もあって、そのままうやむやになる傾向があるのではないか。法律の建前が、被害者、当事者が瑕疵あることを立証して訴訟提起するという立場になっておりますから、なければ法律上いたし方がないということになる。しかしそれでは済まされないものがあるのではないか。たとえば昭和二十六年に京都の平和池が決壊をして、その当時は初めてのケースだそうでありますが、三十一戸が流され、十二戸が半壊をし、田畑三十町歩が流失をした。そのときに訴訟が提起された。そこで京都府は、まあまあということで調停の労をとって、示談が成立をして、総額二千万円の見舞金といいますか、弔慰金が出されておる。これは明らかであり、きのうあなた方の法務省の民事局長でありますかからの御答弁でも、私のこの事例を御承認になっております。そういう事例等から見まして、これは提訴があったから京都府が動いた。しかし、このたびの場合は、名古屋その他に二、三の提訴があるのみである。それは、そういう被害者が広地域にまたがり、そういうことよりも、当面どうして生きていくか、どうして当面この生計のめどを立てるか、飢えと寒さにどう対処するかということに没頭しておりますから、まだその余裕がありません。これはもっと人道上の問題からいっても、人権擁護の面からいいましても、こういうときには何らかの措置がとられて、そして恩恵的ではなくして、堂々と被災者に、——命のかわりに金をもらって命が戻るわけではありませんが、やはりそこに国がある程度のお見舞をする、こういう考え方から、法律そのものの適用とは関連はございませんが、むしろ、あなたが訴えられておる当面の責任者なのでありますから、あなた自身が政治家としての立場から、この問題に対して善処せられる責任もあり、私は必要があると思うのです。法律上の適用では二、三件しか出ておりません。出ないものには、法律の建前からは出ないのであります。しかし、瑕疵があったか、なかったかということについては、私も調べたものがあります。しかし、その立証の方法はありません。ですから、干拓堤防の中に無底管が入るべきところに五百メートルも入っておらなかったとか、あるいは干拓堤防の上部にも基部にも亀裂があったとか、いろいろ現地で生き残った人々が申してきております。しかし、その立証方法は何らありません。そういう点から見まして、ないままにほおかぶりするということはないのではなかろうか。従来、法務大臣がこういう問題の中に入られるという事例はないと思いますが、少なくとも、史上最大の災害において出た犠牲者に対して、何らかの御善処をされる必要があるように私は思うのであります。あまりこまかいことは申し上げません。今まで何べんも言っておりますし、報告も聞いておられると思いますので、この際、大臣から、私が今述べたことに対して何か善処せられる御意思があるかないか、どういうふうに考えておられるか、御所信を承っておきたい。
  29. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 足鹿委員の御質問の御趣旨はよく私も承っております。御承知のように、国家賠償法は民事責任でありまして、民事上の責任を国家として負うということが規定されております。御指摘のように、河川または道路の堤防などが瑕疵があって決壊して損害を与えたときに、民事責任を持つということになっております。これは訴訟上の問題でございますので、この訴訟の当事者になりますことも、行政法で、法務大臣としてそういう民事上の責任に対しての争いに対して被告となるという建前になっております。従って、法務大臣が、非常にかわいそうだ、だから何とかしてやりたいと思いましても、民事上の責任でございますから、勝手に法務大臣としていろいろな気持から動くわけには参らない建前になっておるわけでございます。従って、訴訟なくしては国家賠償法の適用は起こってこないという建前になっております。御指摘の京都の平和池でありますか、あの問題が今までの例としてただ一つの国家に対する賠償法を適用した訴訟じゃなかろうかと思いますが、これも原告が主張するように、管理上の瑕疵があったように見受けられるのであります。それで示談が成り立ちまして、二千万円とおっしゃいましたが、千百三十八万円で示談ができまして、あの問題は片づいたわけであります。今度も二件ほど訴訟になっております。訴訟になりますれば、これは法務大臣としても被告として調査もいたしますし、いろいろその問題について親切に扱っていかなければならないと思うのでありますが、訴訟なくして、この問題に対して解決していくということは、政治問題として考えなければならないと思うのであります。政治問題としては、今度臨時国会まで開いて諸種の特別立法をして、二十八年災と同じような扱いを被災者に対してやっていきたいという政府の気持、これがいわゆる今足鹿委員の言われるような政治的な配慮でありまして、実は、私も三重県出身でありますから、被害県の政治家の一人としての立場にありまして、何とかして、できるだけ被災者に対してあたたかい気持を持っていきたいという気持を持っておりますけれども、法務大臣としての立場から、これを自由勝手にそういう気持で動くというわけには参らない立場にございますので、その点は御了承をいただきたいと思うのであります。でございますから、民事上の責任と政治上の責任と、この二つをやはりはっきり区別していただきまして、そうして、この問題は善処していくほかに私としても道がないということをお答え申し上げたいと思います。
  30. 足鹿覺

    足鹿委員 そういうことになるわけなんですが、これは平和池なんかと違いまして関係者が非常に多い。その人々からみな訴訟が提起されなければ、今大臣がおっしゃるようにどうにもならぬ。適用が受けられないことになることは私もよく存じておるのですが、すでに訴訟が提起されておるわけでありますから、昨日も局長は訴訟をなるべく早めて、調査も的確にぐんぐん進めて、結果を早く出したいということを言っておられました。けっこうだろうと思うのですが、一つの事例が出ますれば、みんな右へならえの気持になるでしょう。問題は、法務当局として訴訟提起を奨励するわけにもいきますまいし、早くやれとも言えませんが、出たものを促進をされて一つの画期的な事例を出されるということは、私は、この問題を解決していく端緒として、一番大事な問題だろうと思うのです。当面大臣としての御所信は承ったわけでありますが、私はその訴訟の結論を早く出すということに対して善処をされたいということ、それから政治上の問題としては、臨時国会を開いていろいろな法案を審議しておるということであります、それはその通りでありますが、あなたは岸内閣の閣僚として、史上空前のこの災害に対して、法はあり、その法に該当することを立証することができなくて、そのまま放置されておる事実をもう少し大きく重視されて、明らかに海岸堤防や流木や干拓堤防など一つ施設が決壊し、しかも瑕疵として断定できない場合でありましても、施設あるいは管理上必ずしも十分だったということは言えないと思うのです。そういうこのたびの被害の事実について、政治家としてこの問題に対する見舞の措置その他は、当然法務大臣という方ではなくて、国務大臣として御善処される必要があるのではないかという意味を私は最初から言っておったのであります。法務大臣としてはその衝に当たっておられるし、また実情も一応わかっておられる。そういう立場から、国会でもこれだけ問題になったわけであります。私のほかにも、他の委員からもたびたび追及されております。少なくともそういう決意を持って対処してもらいたいというのが私の真意でありますので、法務大臣としてこの問題をおやりになる限界は御説の通りでありますが、国務大臣として対処していただきたい。  特に農林大臣におきましては、今までもいろいろ措置は講じておられると思いますが、この真因は十分検討されて、当面出たものに対する必要な措置——それからこの問題に対しては、部内に責任者が出るというようなことで、私は放置すべきじゃないと思う。日本の干拓政策そのものに、この問題に対する原因を突きとめ、的確な対策を立てない限り、大きな支障が出てくると思います。そういう点からも、十年を経過しており、だれが設計したか、だれが実施の監督の責任を負い、工事はどういうふうにして進んだかということをわれわれが知るのもとても容易ではないと思いますが、少なくとも部内に相当の機関等を設けられて、この問題の所在を的確に把握されて今後に対処され、また当面出た青年隊の諸君を初め、その他に対しても十二分なる措置を講ぜられたいと思います。すでにいろいろな措置はとっておられると思いますが、さらに御善処をお願いいたしたい。これで私の質問を終わります。
  31. 井野碩哉

    ○井野国務大臣 二つの御指摘でございますが、その点をお答え申し上げたいと思います。  訴訟をできるだけ早く片づけるように法務大臣としての努力をしろという点、これはお説の通り、訴訟になりました以上は、被告でございますから、被告の立場におきましてできるだけすみやかにやりたい。御承知のように、今裁判自体が、実は法務大臣に監督権もなければ、関与する権限もない。これは裁判所の問題でございますから、裁判所としてできるだけ早くやってもらいますことを、こちらとしてもいろいろ頼むよりほかに道はないのでございますが、被告としましては、いろいろの調査上、向こうも立証するでございましょうし、こちらもいろいろの証拠を出さなければならぬわけでございます。それには建設省にも農林省にも、法務大臣として訴訟上いろいろ調査をお願いする道も法律で開けておりますから、そういう点を十分に活用しまして、すみやかに調査をして訴訟上の遅延をできるだけしないように努力したいつもりでおります。  それから第二点の、法務大臣としてではなしに、閣僚としてもっといろいろ政治的な考慮を払えというお言葉でございますが、私も、先ほど申した通り三重県の出身でございますので、今度の災害には非常に関心を持っております。閣内におきましても、出身地というばかりでなく、災害自体に対しまして、二十八年災よりもひどい災害でありますので、あれ以下にすべての政府の施策がなるようでは困るという意味におきまして、農林大臣にも建設大臣にも閣内においてもいろいろお願いをいたし、大蔵大臣にはことにいろいろの事情を申し上げ、そうして現地を見ていただきまして、相当に今度の対策はでき上がったと存じております。従って、政治家の立場におきまして、閣内において努力を今までも十分して参っておりますことを御了承願いたいと思います。
  32. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ただいまの足鹿委員の私に対するお話は、まことに私も同感ですから、その通り善処いたします。
  33. 綱島正興

  34. 角屋堅次郎

    角屋委員 農林大臣に対する質問は山積をしておるわけでございまして、過般もいろいろ御質問申し上げたのでございますが、午後また参議院の予算委員会関係で少し時間をあけられるそうでございますから、特にこの機会に、重要な二、三の問題についてとりあえず御質問を申し上げたいと思います。  これは過般の農林大臣に対する質問でも申し上げた、長期湛水地帯の除塩に関する問題ですが、数日来私三重県の方へ帰る機会がございまして、名古屋からバスで益生まで行く途中、いまだに水につかっておる蟹江あるいは弥富、長島にかけてのあの地帯を見たわけでございます。法律の除塩の問題を作る段階でこの前も申し上げましたが、稲を刈ってそして除塩作業をやる、こういうふうなことをおそらく想定されておられるのではないかと思いますが、現実に水の引いたところを見ると、稲が泥んこになって、全く見るもむざんな状態になってしまっておる。これを刈るためにはやはり相当の労力がかかる。ことに長期湛水地帯でございますから、今日までも徹底的にいためつけられておりますし、とりあえず労賃でも何でもかせいで急場をしのがなければならぬ、こういう実態にあって、田等は放置されるという形勢になっておるわけです。私どもは、今後除塩作業をやっていく場合には、どうしても稲刈りを、困難だけれどもやって、それについてはやはり必要な助成をして、そして今後の除塩に支障なからしめる、こういうふうな考え方に立って、除塩の問題を考えていく必要があるというふうに痛感をしておるわけです。そこでこの前も申し上げましたように、除塩についての助成をする法案は、四項目に限っておりますけれども、その次に一項目を加えて、その他除塩に付帯する事業、こういうふうに政令の中でその作業を指定するといたしましたならば、収穫皆無の全く泥んこになった稲の刈り取り等につきましては助成を行なう、こういうあたたかい措置を真剣に考えてもらう必要があるのではないか。現地から参っております要望等では、今回除塩の法案で追加することを切望しておるわけでありますけれども、それがいろいろ検討されるのであれば、障害物除去の法案の中で、これは換金価値が全くなくなってしまったのだから、木材が田畑に重なっておる、いろいろなものが重なっておるのと同様な状態に解釈しても差しつかえないのではないか。だから排土法の障害物除去でやってもらってもいいし、あるいは除塩の助成措置でやってもらってもいいし、ともかくもこの問題については十分助成をして、現地の要請にこたえてもらいたい。過般この問題を取り上げてやりましたときにも、いろいろお伺いしたわけでありますけれども、大体が、局長あるいは大臣どころは非常に熱意を示されておるようにお伺いをしておりますが、法案の作成に当たった者あるいは直接のところでは、面子にこだわっておるかどうか知りませんけれども法案を作るときに、実際に水の引いたところを見れば——あの当時はまだ湛水をしておったわけですが、実際に水の引いた姿を見ると、実にさんたんたる状態です。しかも稲を早く刈ってしまわなければならぬ。そうでないと、たとえば今後農作業をやる場合にも、耕耘機の作業にだって差しつかえるという状況になっておる。いろいろ今後の農作業の問題とも関連して参りますから、この点については、そう提案された法文にこだわらずに、これに付帯事業として追加をされるか、あるいは排土でやるか、いずれにしても、愛知から岐阜、三重にかけての長期湛水地帯の、稲を刈って事後除塩作業をやる、こういう建前に立っての考え方を、もっとあたたかく措置してもらいたいと思いますが、どうでございましょうか。
  35. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 ただいまのお話につきましては、過般も同様のお話がございましたが、いろいろ検討してみたのです。そうしますと、とにかく政府の今の考え方によりますと、稲についておる塩気を含めまして、塩分〇・一%以上のものは、この事業の対象にするということになっておるわけです。問題は、その稲を畑から取り除く必要があるかどうかという問題になってくるのではあるまいかというふうに考えられる次第でございます。技術家等にも慎重に調べてもらったのでありますが、技術的な見地からいいまして、その塩分のついた稲をかりに敷き込みいたしましても将来の農耕に影響はあるまい、塩分というものは稲についておろうが泥についておろうが、同じくこれは自然水で除去されてしまうのではあるまいか、その除塩事業について補助すれば、稲についておる塩分の分もカバーされるのではあるまいか、こういう一応の結論が出ておるわけなのです。さようなことで、実際問題としては、お話のような問題は解消というか、補助事業として効果をおさめ得るのではあるまいか、かような考え方を持っておる次第でございます。
  36. 角屋堅次郎

    角屋委員 福田大臣が、いつのまにやら役人根性的な見解で、こういう答弁をされたというのは意外です。大臣は実際に現地にも行かれたわけですが、今日弥富から蟹江、長島付近の広範にわたって泥んこになった稲の状態、あれを見られて、なお今後の除塩作業と関連をして、これは敷き込みをやってしまったら大差ないんだとかなんとかいって済まされる問題であるかどうか。これはやはり真剣に考えてもらわなければならぬと思うわけであります。今日、御承知のように自動耕耘機や何かを使うわけですが、全く支障なく今後の除塩作業が——除塩にはなま水をかけたりなんかしなければならないから、泥んこになった場合に、それが全然支障なくできるかどうかということが、この際やはり問題として起こってくると思う。稲を刈るには、ひどいところには八人くらいの人数がかかるということになる。簡単にいけば三人くらいで済むと思うが、反当たり幾らになるかという問題についても、千二、三百円から千七、八百円もあればいける。その何割を助成するかという、いろいろな問題があるでしょう。しかし長期湛水地帯というものは、おのずから範囲が知れているわけです。御承知のように、面積としては広範囲にわたりますけれども地域はおのずから限定されておる。そういうところに助成金を除塩と関連をして考えるならば、九割なら九割の助成金を出して稲刈り作業をやってもらう。そして自後の除塩を来年の植付期までに完成させる。これは農政の立場からすれば当然考えてしかるべきだと思う。法案を作る過程においてはそういうところまで実態がわからなかったけれども、今日ではそういう実態が出てきておるし、現実に、長期湛水地帯の今日水の引いてきておるところの農民の間、あるいは農政を指導している自治体の立場からも、除塩の要望が強く出てきておる。だからこれについても、試験場で研究したらどうだったとかこうだったとかいうような単なる機械的な考え方ではなくて、真剣に検討してもらいたい。これは排土という解釈でいくか、あるいは除塩の付帯事業でいくか、それは法案の取り扱い上いずれに関連されてもいいのですけれども、この問題はやはり現地の要望にこたえて善処してもらいたい、こういうふうに痛感をして帰ってきたわけです。
  37. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 お話を承っておりますと、塩分の問題じゃないのですか。塩分の問題じゃなくて、株が残っておって、それを除去しなければ農耕に支障があるというふうな問題が起こっておるというわけですね。塩、塩とおっしゃるものですから、私の方は塩の問題をおもに研究いたしたわけでございますが、お話の点は、なお実情をよく承りまして検討はいたしますが、塩の問題といたしましては、ただいま申し上げたような実情に考えておる次第でございます。
  38. 角屋堅次郎

    角屋委員 この問題は、十分一つ大臣に検討して善処してもらうということで、時間の関係もありますので、次に、今度の風水害で、山の関係が風倒木その他で非常にやられておるわけですが、恒久的な治山治水対策から見ても、それらのところの風倒木を処理したあとの造林という問題が起こってくるわけです。造林の問題について、きのうも地元の渡会あたりから、町長以下大挙来ておりましたが、その話を聞きますと、造林の助成の問題については、従来農林、畜、水産業関係補助金等交付規則、こういう関係で補助をなされてきた。そうして造林補助の問題については、四割のうちの四分の三を国が助成して、四分の一を県が義務負担として助成をすることになっておるというふうに聞いておるわけです。現実には、それぞれ造林の苗木とかいろいろなことで点数制をとって、補助の率としては二割から六割の範囲内にわたっておるそうですけれども、いずれにしてもこれは農林省関係の取り扱いの問題でございますが、この問題に関連をして、三重県のように、台風十五号を中心にして甚大な被害を受けて、これからあらゆる方面災害復旧をやっていかなければならぬという前提に立った場合に、造林は現地側が強く要望しているし、これはまた恒久的な治山治水の面からも当然やらなければならぬ。ところが、三重県の財政が許さないために、四分の一の補助の義務づけをされたんでは、せっかく林野庁の方から割当をおろそうとしても、三重県側としては、財政の事情で受け切れないという問題もできてくると思う。私はそういう点に関連をして、そういう地方自治体の財政状況と見合った弾力的な運営というものは、やはり真剣に考えてもらう必要があるんじゃないか、実はこういうふうに思うわけです。激甚地指定の問題で、私どもは三重県や愛知県等の場合においては、少なくとも公共土木については一本の県指定というものがくる、当然そうくるべきだと思っておったところが、県の看板をはたいて、市町村の計算をし、そうして該当市町村分をということになってくると、財政上の負担は、予期したものより相当かさまってくるという問題が出てくる。農地農業用施設、その他文教用施設等を含んでくると、地方財政に及ぼす影響は相当なものがございます。そういう実態から見て、造林の助成問題について県の義務負担というふうな考え方については弾力的に運営して、もっと国が温情ある措置をとる、こういう前提に立って、各県々々の実態に応じて助成考えてもらいたいと思うのですが、いかがでございましょう。
  39. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 この災害関連いたしまして、今後治山治水対策をどうするかということが大きな政治的な宿題になってきておるわけです。農林省といたしましては、昭和初期の安定した山の状態というものに復元をするということを基本方針として、治山治水の長期計画を立てるということを今やっておるわけでありまして、せっかく大蔵省とも話し合いを進めておるわけなんです。それに関連いたしまして木を植えるという問題も起こってくるわけでございますが、これもお話しのような次第もございますので、来年度予算の問題として、ただいま相談をいたしておる最中でございます。さよう御了承をお願いいたします。
  40. 角屋堅次郎

    角屋委員 この問題は、単に三重県ばかりでなしに、岐阜、愛知から、長野、山梨あるいは奈良にかけて全般的に関連のある問題だと思いますので、やはり各県の財政状況と見合って、積極的な治山治水対策の一環としての国の助成策というものについては、今御言明のように一つ真剣に検討して、現地の、造林をやって今後の治山治水に対処したいという熱意にこたえるように考えてもらいたいと思います。  時間の関係もありますので、果樹関係の問題については本委員会でもあまり論及されていないわけですけれども、御承知の愛知県、あるいは岐阜県の場合でも、三重県の場合でもそうですが、三重県に例をとれば、南牟婁あるいは志摩から度会にかけての地帯は、これから果樹をさらに前進させていこうという態勢と、ここは旧来の果樹の本場であるわけです。こういう地帯が壊滅的な打撃を受けておるわけです。承りますと、政府の方では来たるべき通常国会に果樹振興法案というのを出すということで、よりより検討されているということですけれども、せっかく農業経営の多角化ということで果樹に乗り出した矢先に、たとえば志摩から度会にかけて約三千町歩のミカンを今後計画的に推進をしていこう、この第一歩のときに今度の台風十五号に見舞われ、出鼻をくじかれたという実態もあるわけですが、この機会に大臣から、災害復旧関連して果樹に対するところの助成措置の問題と、将来の果樹振興という観点からの問題について、所信をお伺いしてみたいと思います。
  41. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 果樹に関しましては、この災害でも、あるいは助成をいたしますとか、あるいは農林漁業公庫からの貸し出しの道を拡大するとか、いろいろな政策をとっておるわけであります。それで果樹全体といたしましてのことを考えてみますと、それは今後の日本の農業一つの新しい方向を作るものである、かような考え方をいたしておるわけであります。ことに、その果樹の中におきましても輸出に向くというような甘橘類、かようなものは特に助成していかなければならぬ、かような考え方をとっておる次第でございます。さようなことで、この助成方法は融資を中心でいくことが適切だというふうな考え方でございますが、さような果樹に対する融資の方法というものが秩序正しく行なわれることが今後望ましいということで、お話しのように、果樹振興法というものをただいま検討いたしております。この構想、相談ができますれば次の通常国会に御審議を願う、かように考えておる次第でございますが、特に輸出に向くところの果樹を中心にいたしまして総合的な助成考えたい、かような方針をとっておる次第であります。
  42. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 関連して。福田農林大臣にちょっと先ほどの塩のことに関連してお尋ねしたいと思うのです。先日も陳情しましたように、私の方の湛水地帯には特殊な産業が二つあるわけです。一つは金魚の養殖で、御承知のように、金魚は奈良県の郡山と、東京の砂町と、私どもの弥富町が日本の三大金魚場でありますが、これが水につかりまして壊滅的な打撃を受けました。これはウナギと同じように、先日も足鹿君からお願いいたしましたが、ぜひ五十万円くらいに融資を上げていただきたい。もう一つはボラ養殖、東京ではあまりボラを食いませんが、私どもの方ではボラの養殖を盛んにやっておりまして、六十軒くらいあると思いますが、これも同じように壊滅的な打撃を受けましたので、これの融資のワク一つウナギと同じように考えていただきたい。これだけ関連してお願いします。何とか考えていただけるかどうか。ぜひ一つ……。
  43. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 まだ結論を得ませんが、なお検討いたしたいと思います。
  44. 綱島正興

    綱島委員長 大臣は、午後はよその委員会に呼ばれておりますので、事務当局からお答えをいたしますが、よろしゅうございますか。政務次官はおります。  それでは、午前中はこれにて休憩いたし、午後二時三十分より再開いたします。     午後零時三十七分休憩      ————◇—————     午後二時四十五分開議
  45. 綱島正興

    綱島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。角屋堅次郎君。
  46. 角屋堅次郎

    角屋委員 午前中農林大臣がおいでになって、足鹿委員から質問があったのでちょっと中断になりましたが、質疑を続行いたしたいと思います。  午前中に申し上げました、まず被害激甚地指定の問題でございますが、この点について、今度新たに長期湛水地帯、こういうのを入れられ、これが公共土木等の国庫負担法の場合にも、県の場合、市町村の場合のいずれの工事にも、長期湛水地帯が大きな要素として入って、その地区については高率適用になる。さらに農林水産関係暫定法関係においても、長期湛水地帯が重要な要素として新しく入っておる、こういうことになっておるわけですが、私は今度の台風十五号等の災害の実態から見て、長期湛水地帯を、公共土木においても農林水産関係においても、高率適用の一つの要素にされること自身にはもちろん賛成するわけでございますが、問題は、長期湛水地帯という、結局基準の問題でございます。承りますと、一週間以上その関係市町村で三十ヘクタール以上の湛水の場合に適用しよう、こういうふうに承っておるわけでございます。そうなりますと、湛水の場合の水深の問題、あるいはまた一カ月も二カ月も長期にわたって湛水をしておる地区と、一週間程度の湛水地区との関連の問題、こういう、実際上長期湛水地帯を重要な一つの新しい要素として加えたということになりますと、その要素に加えざる他の地域において、当然被害激甚地に公共土木の場合でもなるべき条件を持っておるけれども、入らない。たまたま関係市町村で今のような条件に合致して、被害激甚地指定を受ける、こういうアンバランスの点が出てくる危険性も私はあろうと思う。もちろん、二カ月も二カ月半も長期湛水しておる地域については、これはそういうアンバランスの問題はきわめてないと思いますけれども、一週間、三十ヘクタール以上という一つ条件が、公共土木の場合にも農林水産の場合にも無条件に入ってくるということになると、今度は、先ほども午前中触れましたように、農林水産関係においても、従来とってきた六項目の要素というものがほとんど削除されまして単に農地農業用施設の被害が、被災農家との関連において五万円をこえる場合、こういう一つ条件だけにしぼられてくる。こうなると、私は現実の問題として、アンバランスのできる危険性を含んでくるのではないかということを心配するわけです。そのためには、やはり従来入っておった暫定法の場合の「その区域内にある農地で水害等により農作物植付が不能となったもの及び水害等により農作物減収量が平年作の三割をこえるものの面積が百町歩をこえ、又は当該市町村の全農地面積の一割をこえる市町村」、大体これに加わって入ってきたとも考えてよかろうとも思いますけれども、この方が市町村という場合を考える場合には、通常の例としては妥当な基準のとり方ではないかというふうな気がするわけですが、長期湛水地帯を要素に入れた場合の具体的な取り扱いについて承りたいと思います。
  47. 伊東正義

    伊東政府委員 今御質問のあった五万円のほかに、長期湛水という一つ基準を入れたわけでありますが、これは五万円でいろいろやってみまして、これは一応の試算でございますが、実は湛水しおりまして、水は引いたがあまり災害復旧はないというようなところが出て、何か常識と合わぬような結果が出るのじゃなかろうかというようなことも実は心配いたしまして、一つ基準として、非常に長い期間水をかぶっておるというようなところについては、特別考える必要があるであろうというようなことで、実はこの基準を設けたわけでございます。今おっしゃいましたように、大体の基準としましては、一週間、三十ヘクタールというような基準考えておるわけでございますが、全国的にやってみますと、実は五万円というようなことで、大体のところは、いわゆる激甚地といわれているようなところは、入るのじゃなかろうかというふうに思われますが、現実の問題につきまして、特に三重県あたりの湛水地域で、これは入らぬようなところも出てくるんじゃないかというおそれが実はございましたので、あの辺の湛水地域を頭に置いてこれを作ったわけでございます。基準は、おっしゃいましたように、一週間、三十ヘクタールというようなことを実はやっておりますが、これにつきましては、大蔵とは、まだ最終的には実は話のつかぬ点がございます。一週間以上湛水している地域だけにするか、自然排水のままにすれば一週間以上かかるところを、機械排水したために、五日で排水が終わったというようなところまで入れるかということにつきまして、若干まだ意見の合わぬところがございますが、大体その考え方としては、一週間、三十ヘクタールというようなところでやっております。この基準は、実は現在の暫定法の応急復旧をやりますような場合にも、こういう基準を設けまして、一週間、三十ヘクタールというようなことでやっております。ただ、先生のおっしゃいました水の量とか、そういう一定の量の水とか、そういうものには、あまりこまかい基準は実は作りたくないという考えでおります。
  48. 角屋堅次郎

    角屋委員 激甚地の指定の問題については、私は農林水産関係激甚地指定について政府から出しておる項目の中で、午前中指摘しましたように、共同利用施設というふうなウエートが全く削除されたという点、あるいはまた、先ほど述べましたような被害農地の減収の問題、あるいは全耕地面積との関連の第四項の問題が削除されたというようなこと、これはやはり災害の実際の姿から見て、大きな問題になろうと思います。いずれこれは最終段階において、与党との協議の機会があれば、十分にやはり検討を加えてもらいたいというふうに私ども希望しておるわけでございます。そこで、この激甚地指定の問題と関連をして、私ども例の天災融資法における被害農家あるいは被害林業者、被害漁業者、あるいはさらにそれに特別の被害の農林水産関係の業者、関係者、それとの関連において特別被害地域、こういうふうな天災融資法のそれぞれの区分における融資がなされるわけでございますが、私ども災害の場合の農林水産関係の負担能力、こういうものを見る場合に、やはり激甚地等の指定の場合、いわゆる政府で出して参りましたような今回のような考え方においても、あるいは二十八災のときにやったような考え方のような場合においても、被害の実相を一つ現わしておる天災融資法におけるようなこういう相関関係、こういうものについてもやはり科学的に検討して、いわゆる農家あるいは林業者なり漁家の負担を軽減する、こういうことにならなければいけないんじゃないか。天災融資法でいろいろ規定をしておるところの被害農林水産関係者の問題については、それはやはり個々のそういうものの被害を現わすと同時に、特別被害地域というところに指定されてくるというと、その地域のやはり被害の実相というものを示しておる。従って、そういうふうな被害の姿の中で、借金までしなければならぬという姿に追い込まれておるところの関係地域の農林漁業者に対して、負担能力がどうかということを考える場合には、やはり別の項目で被害激甚地だとして指定をして、それで画一的に取り扱ってしまうということでは手落ちができるんじゃないかということを、私はこの機会に検討してみる必要があるだろうと思う。そこで、被害激甚地指定という問題と、天災融資法における今言ったような問題との相関関係、そういう上に立って被害激甚地についての高率適用の配慮、こういうことを検討されておったかどうかという点をお伺いしたいと思います。
  49. 伊東正義

    伊東政府委員 今先生がおっしゃいましたように、この被害激甚地考えます場合に、いろいろなファクターをとりまして、総合的な基準を作って考えるというのも、これは私は一つの行き方かと思います。農林省としましても、将来の問題については、そういう点はもう少し検討を進めたいと思います。ただ、われわれやりました過程におきましては、農地局だけ申し上げますと、開拓その他についても実は全然別な基準考えております。ものによりまして、そういうふうに実は基準を別個に、それに最も適したような基準考える必要があるんじゃなかろうかというようなことで、開拓あるいは農地農業施設について、全然別な考え方をいたしたような次第でございます。先生がおっしゃいましたように、天災融資法の関係をこれに入れてやるかどうかということも、実は一つの案として考えたわけでございますが、われわれとしましては、総合的な基準を作るということは実は将来の問題といたしまして、現実の問題として、そのおのおのの目的に合った基準一つ考えてみようじゃないかというようなことでやりました次第で、先生のおっしゃいましたことは、私はこれは将来大いに検討する価値のあることであろうということで、将来検討してみたいと思います。
  50. 角屋堅次郎

    角屋委員 将来の検討ということになりますと、今回の災害に理屈の上では間に合わぬということになるのですけれども、私はやはりそういう配慮がなされて、法律の適用にあたっては適正公平の原則でやっていくということが必要だろうと思う。特に今回十五号の台風災害の実態から見て、長期湛水地域というものが、公共土木の場合でも、農林水産関係の場合でも、無条件に入ってくるという一つの要素になっておる。そのこと自身には私どもはもちろん反対をいたしませんけれども、しかし実際にそれと匹敵するような他の条件というものが、よくファクターが整理されればされるほど、落ちていくんじゃないかということを心配する。そういう意味で、先ほど被害激甚地指定の場合に、天災融資法との相関関係、そういうものの中で、周到なる準備によって適正な適用ということが考えられなければならない。でないと、やはりどういうファクターを入れるかどうかということがいつも論争になる。もっとやはり自信がある、だれが見ても納得する要素において高率適用をするということにならなければならぬ。それで、今度の考え方においても、やはり三万円にきめるにいたしましても、あるいは五万円できめるにいたしましても、要は地元負担の能力ということが基本になるわけですから、それであればあるほど、先ほど申したようなことが十分配慮されてしかるべき問題であろうと思う。そこで、この機会に、現行法の暫定法の場合に、例の政令指定する基準ということで、八万円、十五万円、こういうふうな問題等もあるわけです。理屈からいくと、これはまあ、私は先ほども午前中に指摘しましたように、五万円にしたのは、やはりなるべく整理をしようということで、私どもから見れば引き上げたと見るわけですけれども現実には、労賃の値上り比率その他を見てやったということを、局長は説明されたわけでございますが、そうなってくると、八万円、十五万円という問題も、これは皆さん方の考え方からいくと、固定した問題ではなくて、そういう説明の前提条件に立てば、変動の要素を持っておる、こういうことに私はなり得るのじゃないか。農家経済の実態から見て、結局、八万円の問題にいたしましても、十五万円の問題にいたしましても、それぞれ説明がつけられまして、八万円の限界の場合は、これは高率補助の限界という解釈からきておるし、十五万円の場合には、負担能力の限界という意味からこれを取り上げておる、こういうことになるわけですけれども、これらの問題についても、農家経済の推移と関連をして検討をしておるということであるのかどうか、この機会にお伺いしておきたいと思います。
  51. 伊東正義

    伊東政府委員 理論的には、今先生のおっしゃいました通りでございます。八万、十五万にいたしましたのは、農家経済調査から出しまして、この程度までは農家が災害復旧の場合に負担できるだろうということで、やったわけであります。昨年の狩野川の場合には、恒久的に、農地につきまして十五万以上九割ということにしたわけであります。先生おっしゃいましたように、この問題は、理論的には、農家経済調査その他が変われば、変わってくるという性質のものでございます。しかし、今われわれの方では、八万、十五万にまで触れまして、これを動かすということは考えておりませんが、これを将来上げるとか下げるとかということは、理論的にはこれは出てくる問題であるというふうに考えております。
  52. 角屋堅次郎

    角屋委員 災害復旧の場合に、県、市町村あるいは地元として、一番関心を呼ぶのは、もちろん高率適用の被害激甚地に当たるかどうかという問題もありますけれども現実に査定の場合に、地元の改良復旧への要望というものがどこまで織り込まれるかどうか、これが一つのやはり大きな問題になるわけであります。私どもが本委員会等で、再度災害防止のためには積極的に改良復旧をやらなければならぬ、そのために、わが党といたしましては、暫定法の一部改正という姿において、積極的な改良復旧を取り上げるための法律改正を出したわけでございますが、現実政府の方から出て参っておりますのは、今回の災害に対する特例法案ということであって、暫定法には全然手を触れていない。これはまことに、私どもからすれば残念でございます。しかし、それはそれといたしまして、最近のほうはいたる改良復旧主義を原則にすべきだ、こういう声に呼応して、現地農地農業用施設等の改良復旧の場合でも、あるいはまた漁港その他公共土木等の改良復旧等を取り上げる場合でも、査定の採択基準というもの、これは従来からの伝統のままで現地の査定に行かれるのか、あるいは今度の災害の実態、あるいはまた最近のほうはいたる改良復旧の意欲というものに呼応して、建設省の場合でも、運輸省の場合でも、あるいは農林省の場合でも、十分なる検討を加えられて、今日実施をしておりますところの緊急査定、あるいは通常の場合の査定というものに行っておられるのであるかどうか。この点については、農地農業用施設関係農地局長から、林野関係の問題については林野庁長官から、水産関係の問題については水産関係から、いわゆる査定の採択基準というものが、旧態依然たる従来の基準で取り上げられておるのであるか今度の災害の実相と最近の改良復旧のほうはいたる世論にこたえて、新しい査定基準というふうなものにおいて対処されておるかどうか、その辺のところを具体的に一つ関係者からお伺いしたいと思います。
  53. 伊東正義

    伊東政府委員 査定基準につきましては、大蔵省とも話しまして、改善を加えるということを今まで実はやっております。このたびの災害になりましたので特に査定基準を今までよりも変えるということは、実はいたしておりませんが、今度の予算で御審議願っておりますように、激甚地につきましては、特に災害関連の補助率も上げるというようなことも考えておりますし、特に伊勢湾につきましては、むしろ改良復旧を原則とするような考え方予算の要求もいたしております。そういうような態度で予算の要求をいたしておりますので、農地局としましては、査定に出ていく人々につきまして、今申し上げましたような態度で査定をするようにということで、話をしてございます。実は法律の問題もあったわけでございますが、現行の法律でも原形復旧が困難である、不適当なときには、これは改良復旧でやるということで、現行法でもいけるということで、一応暫定法法律改正は御審議願わないような次第になったわけでございますが、予算その他につきましては、先ほど申し上げましたような考えでりますので、査定に行く者につきましては、先ほど申し上げましたような態度でやるようにということで私から伝えております。
  54. 山崎齊

    ○山崎政府委員 林野庁の、特に林道につきましては、建設省関係の道路、特に県道とか町村道の災害復旧関連もありますので、そういうものとのアンバランスなり、考え方の相違が出ないようにという点を主体にいたしまして、現在大蔵省と折衝中であります。その線がきまれば、さらにまたその線によって査定をするといういき方をとりたいと考えております。
  55. 林田悠紀夫

    ○林田説明員 水産関係被害激甚地指定につきましては、たとえば、養殖施設を例にとってあげてみましても、二十八年災のときには一件当たり三万円というふうに使途について金額できめておりましたが、今回は実情に沿うように考えまして、二割以上の被害というふうに災害地の実情に応じてやっております。  漁港につきましては、大体先ほど農地局長から御説明がありましたような考え方をいたしております。
  56. 角屋堅次郎

    角屋委員 今、各局長、長官からお伺いしましたところでいきますと、現地査定の基準というものについては、真剣なる検討が加えられていないような感じがするわけです。現実にそういうこともおそらくあろうと思うのですが、私ども現地査定の状況というものを聞きますと、従来からある程度の前進ということが、必ずしもないわけではありませんが、どうも私どもが期待しておるような大きな前進という、そういう形が必ずしも出ていない。これはまあ改良復旧をやるということをいいましても、現実災害関連の総工事費に占めるところの予算というものの比率、従来の農地農業用施設の八%、五%を、全体を八%にしたという程度、これでもって積極的な改良復旧をやるといっても、予算の制約を受けるということは私はあろうと思う。私どもは補正予算の組みかえをやる場合に、少なくとも積極的な改良復旧ということを正面切ってやるということであるならば、災害関連という問題については、最小限二〇%くらいのものを織り込まなければ、積極的な改良復旧をやろうとしても事実上の問題としてなかなかむずかしい、こういうふうに提唱したわけでございます。そういう点で、やはり農地農業用施設にいたしましても、あるいは漁港関係にいたしましてもそうでございますけれども、最近非常にほうはいとして改良復旧ということが叫ばれております。伊勢湾の高潮対策その他非常に世論の注目を引いておるところについては、これはもう改良復旧は積極的にとらざるを得ない。とらざるを得ないといっては語弊がありますけれども、当然やらなければならぬということになっておる。しかし、その他目に見えない地域災害の場合でも、再度災害の防止のためには、現地側では強い改良復旧への意欲というものを持っておる。また県、地元においても、積極的なそういうための設計を真剣に検討して立ててきておる。ところが、それが各省や、あるいは大蔵省立ち会いのもとにおいて、ずたずた切られていく。根本的な問題は、やはり私は、暫定法にしても国庫負担法にしても、政府がはっきり改良復旧というものを建前にするのであれば、基本法の改正をやって、方針としてそういうものをとるのだということを示し、同時に、その見合いにおいて、予算等においてもはっきりそういう改良復旧を含めて、災害関連についてはもっと大きく前進をさせる、両々相待たなければ、なかなか再度災害防止のための改良復旧の前進ということは、言うべくして困難だというふうに思う。そこで政務次官にこの機会にお伺いしたいわけでございますけれども、やはり今日の災害の実態から見て、積極的な改良復旧をとるということは、政務次官も十分御認識のところでございますが、そういう前提に立つ場合においては、今回は、本年度の七、八、九月の風水害あるいは大水害に対する特例法という形で済まされようとしておりますけれども、通常国会等の機会に抜本的に、やはり農林水産業施設災害復旧に関する暫定法の問題について、今言った考え方に基づくところの改正案、こういうものを積極的に出されるお考えがあるかどうかということについて、この機会にお伺いしておきたいと思います。
  57. 大野市郎

    大野政府委員 この改良復旧考え方は、毎回申し述べますように、かたい意思を持って主張を続けておるのでありますが、今回も災害関連の五%、八%を延べ八%にするにあたりましての政府部内における折衝におきましては、なかなか予算の総額の制約の問題があったために難航いたした事実がございます。従いまして、理想として改良復旧をやりまするには、われわれとしても、これを法文化する必要があるという意見相当強く出たのでありますが、また一面、同じ部内におきましても、現行のいわゆる困難もしくは著しく不適当なるもの、こういういわゆる法文の解釈で従来も一部運用しておったが、これを強く伸ばすということでやれるのじゃないかという意見が、今日では、実は結果的には勝ったわけでありまして、今回はその形で法案の改正を出さないままで予算措置が講ぜられた次第であります。従いまして、福田農林大臣が提唱しております、災空運関する抜本的な恒常法を統合的に作ろうという考え方を打ち出しておりますが、その中に、ただいまの改良の問題を法文として入れるかどうかということは、まだ検討中の段階でございます。しかしながら、御趣旨のほどは、われわれは同感な点が多々ございますので、そういう恒久立法にこれらを統合いたしまするときには、ぜひこれを重要な検討項目に主張したいと存ずる次第であります。
  58. 角屋堅次郎

    角屋委員 伊勢湾等の高潮対策予算として、農林省関係で八億四千二十五万円というものが御承知のように追加予算の中に組まれておるわけですが、建設省関係で組んでおる伊勢湾等高潮対策、それから農林省関係で組んでおるもの、あるいは運輸省関係で該当するもの、こういうものが現実にそれぞれ各省間に、海岸法の関係で所属の関係もありまするから分かれていくわけですけれども、そこで、実際の海岸災害復旧をやる場合に、各省間の協議ということも施行の場合にやらなければならぬわけですが、地元側では、農林省関係災害復旧をおまかせすると、どうも補助率その他の関係で地元負担が重くなる。むしろ建設省あるいは運輸省、そういう他のところに仕事をやってもらった方が、地元としては歓迎だ。あるいは工事の施行の場合においても、これは三重県の北部あるいは愛知県の南部の例の干拓地の、城南とか鍋田とか平坂とか碧南とか、ああいう海岸堤防なんかは、農林省関係の海岸堤防がやられたので非常に注目を引いたということもあろうと思いますけれども、どうも世上、農林省の漁港その他の海岸関係の施行は強くない、建設省あるいは運輸省の方ががっちりしておる、こういうふうなこと等もあって、いろいろ問題にされていることは御承知通りであります。そこで本予算の中に組まれておる伊勢湾等高潮対策の問題については、これは過般来私が建設大臣あるいは農林大臣にお伺いした際にも、小委員会になってから建設委員会でも確認をされたということを承っておりますが、三重県の場合で言うならば、三重県の熊野川、南牟婁の南端から桑名市の北端まで、つまり三重県の海岸地帯は全部伊勢湾等高潮対策の中に入る、こういうふうに確認がされておるわけでございます。そうなりますと、この予算予備費との見合いにおいてさらに前進をしなければ、海岸保全の完全を期することができない、こういう姿になるのではないかと思うのですが、その辺の取り扱いの問題について関係者からお伺いをしたい。
  59. 伊東正義

    伊東政府委員 御質問になりました点でございますが、伊勢湾につきまして将来最終的にどういう海岸堤防を作るか、あるいはどういう工法でやるかということにつきましては、先生のおっしゃいますように、これは全部何省といわず一緒にやるべきだと思います。実は海岸堤防につきましては、海岸法が昭和三十一年にできましてから、農林、建設、運輸の間では設計基準というものを作りまして、同じ基準で海岸堤防をやっていこうということになっております。今度の災害にかんがみまして、伊勢湾につきましてどういうものを最終的に作るかということは、実はまだきまっておりません。今申し上げましたように、関係三省の連絡会議できめまして、最終的なものに持っていくという考えでおります。今予算を御審議願っておりますのは、われわれの方としましては大体原形復旧のところまで一応持っていって、そのあとで最終的なものを作りたいという考え方で、予算の要求をいたしておるような次第であります。
  60. 角屋堅次郎

    角屋委員 この海岸地帯の災害復旧は、私ども聞いておるところでは、来年の台風期までに現状のかさ上げまで持っていく、自後改良復旧の問題をやっていく、従って、過般来の質問の中においても、海岸の設計基準の問題については、さらに審議会等を作って十分科学的な検討の上に立って災害復旧をやっていくんだ、こういうふうに聞いているわけですが、現実現地の査定の状況等をいろいろ聞いて参りますと、高潮によって非常に被害の起こった三重県で言うならば、鈴鹿以北の海岸地帯、こういうところでは積極的な改良復旧という意欲で関係省ないしは大蔵省の立ち会いもなされた。ところが、志摩から南北牟婁にかけての漁港等を中心にした海岸地帯の査定官の来る気持としては、これは当時の高波等によって非常に激甚な被害を受けたけれども、やはり原形復旧という頭が相当にこびりついておって、なかなか積極的な改良復旧への前進がないということを、私ども地元から聞いておるわけです。これは非常におかしいのであって、今度の台風の性格上、内海であった伊勢湾の三重県の北部から愛知県にかけては、非常に甚大な影響を高潮で受けましたけれども、太平洋に直面をしておる熊野灘の海岸地域としては、今回も非常な災害を受けましたけれども、これからでも、大しけになれば絶えず災害に見舞われるという実態にあるところでありまするから、むしろ、ふだんの状況からいけば、内海よりも、太平洋の荒波に洗われておるところの方が災害の危険性が多い、こういうところから見て、積極的な改良復旧というものは、伊勢湾等高潮対策考えられておる三重県全体の海岸地域、これはもう愛知県の場合でも、三河を含んでの海岸地域で積極的に進められなければならぬ、こういうふうに思うのですけれども現実現地に聞いた考え方というものは、当初承るところによりますと、大蔵省との話し合いでは、事実高潮で長期湛水等の生じたところに集中的に適用しようという頭があった。その頭というものが、今日愛知、三重の全地域にわたっての考え方で、再度災害防止の海岸復旧をやるのだというふうに確認されても、現実現地に来る査定官の頭はそういうふうになっていない。これは、やはり是正する必要があると思うのですが、その点についてはどういうふうに指導されておるか、お伺いしたいと思います。
  61. 伊東正義

    伊東政府委員 今、先生のおっしゃいましたように、どこまでの地域を伊勢湾にするかということは、実はだんだんきまりかけておるのが、最近でございます。そういう実情がございましたので、先生のおっしゃるようなことが、つい近い過去においてあったのじゃなかろうかということを私も感じます。それで、今度協議会を作りまして、伊勢湾の適用地帯全部のことを検討いたすことになっておりまして、どの地域はどういう構造の堤防ということの結論を出しますので、われわれとしては、その結論を待った上で最終的な措置を講じたいというのが、基本的な態度でございます。
  62. 角屋堅次郎

    角屋委員 開拓関係の問題につきましては、農林大臣も、特に今度の災害の実相から見て、相当開拓関係についての対策を配慮されて、幾つかの施策を実施されようとしておるようであります。たとえば、暫定法における家屋あるいは農舎、畜舎等を農業用施設とみなして助成する問題にいたしましても、あるいは融資関係における政府の一億出資の問題にいたしましても、その他、いろいろあるわけでございますが、これのみをもってしては、戦後緊急の間に入植をした開拓農家の立ち上がりには十分とは言えないのじゃないかと思う。今度の台風十五号では、三重県、愛知県、岐阜県等が中心舞台でございまして、私も国政調査で愛知県、岐阜県を回り、あるいはまた、三重県は直接地元でございますから、三重県等を回りまして、どこでもひどいのでございますけれども、経済基盤の弱い開拓地においては、立ち上がりに非常に困難を来たしておる。これは、もう開拓者の経済調査を見るまでもなく、大体粗収入三十万以下が大半という今日の実態から見て、東北、北海道における。パイロット・ファームの農家は別として戦後緊急開拓五カ年計画等で入植してきたような人々の被災というものは、非常に悲惨なものです。そこで開拓者の災害復興のために、農林省として、具体的にどういうふうに対処しようとしているのか。被害の実相はこうであり、これに対する対策としてはこういうふうな手を打っておるという点を、この機会に集約して一つお話し願いたいと思います。
  63. 伊東正義

    伊東政府委員 開拓につきましては、特に干拓をも含めて六号、七号台風以降、かなりの被害が出ております。農作物その他も入れて約六十億くらいの被害じゃなかろうかというふうに私ども見ております。これも調査によって若干また変わって参りますが、そういうふうな見通しを持っております。それで、今までにやりましたことは、先生も御承知のような、干拓地に入りました人につきましては、緊急住宅を施設いたしますとか、あるいは、特に東海三県につきましては、住宅金融の便をはかりますために、自作農資金の前渡しを開拓者についてはやるというようなことも、実はいたしたわけでございます。しかし、これでは十分でございませんので、今御審議願っております開拓者の住宅なり、あるいは農畜舎につきまして、二十八災当時と同じような手段を講じたいということで、暫定法にも、激甚地に限りましては住宅家屋の全壊のみならず、従来やりませんでした半壊までも含めまして九割の補助をしたいというふうに考えております。これにつきましては、激甚地は大体開拓農家の住宅で被害がありましたものが十戸以上、あるいは、もう一つ基準としては、入植者の一割以上というふうなところを広く激甚地と指定いたしまして、そこでは九割以上の補助をいたしたいということを考えております。それから、激甚地以外のところにつきましても、これは住宅につきましては全壊、半壊について五割、農舎につきましては、全壊分について五割の補助をしていくということで、まず、住宅なり農舎、畜舎というような施設復旧をはかって、営農の安定をはかるようにしてあげたいということを実は考えております。  そのほかに、今御指摘がありましたように、開拓者資金融通特別会計法によりまして、特別会計に一億また借り入れをふやしまして——これは、従来開拓者が基本営農資金として三分六厘五毛という一番安い金利で営農資金を借りていたわけでございますが、今度の災害で、また再入植と同じような状態になっているというような人につきましては、もう一度安い三分六厘五毛の金利の基本営農資金を貸してあげたらどうだろうかということを考えております。これは、本年度、三十四年度の補正予算についても考えておりましたが、来年度におきましても、実はことしの災害地については、そういうことも、できたら考えてあげたいというふうに思っております。  それから、そのほかの金融の手段といたしましては、天災法によります融資ももちろんございますが、特に九月中の災害に対して自作農資金三十五億くらいのものを、全国の融資のワクとして考えたいというふうに思っておりますが、その中で、開拓者につきましては、約五億程度のものを考えていったらどうだろうかというふうなことも実は今考えております。  そのほかに、昨日問題がありました救農土木につきましても、開拓地では五割国庫補助ということでなくて、全額国が負担いたします建設工事だけを開拓地でやったらどうだろうか、そして、少なくとも、それで開拓者に賃金の入ることを考えたらどうだろうか。これは三億の救農土木の中で、大体一億というものを開拓地に予定いたしておりますが、そういうことも開拓地については実は考えておるわけであります。  災害につきましては、直接はそういうことを考えておりますが、来年度予算におきましては、ぜひ、今までの資金の非常に債務償還のおくれておりますもの等につきまして、農地局としましては抜本的な、思い切った措置を講じたいということで、予算の要求は今いたしておるような次第でございます。大体開拓なり、干拓につきまして今とっております措置は、そのようなことでございます。
  64. 角屋堅次郎

    角屋委員 従来家屋等の問題の際に、入植年限の問題あるいは粗収入の限度、こういうことがいろいろ論議の対象になりまして、この条件を緩和していかなければならぬ、それに半壊等も含むという問題も、御承知のようにあったわけでございますが、それらの点は、今回は被害激甚地指定を受けた地域については、そういう入植年限あるいは粗収入の点は全然抜きにして全部が対象になる、こういうことであるのかどうか。さらに、開拓の振興農家等の問題で、従来はそうでなかったものでも、今回の災害によって、やはりそういう対象になり得る、こういうものの取り扱いをどうするかということもありましょうし、天災融資法の関係にいたしましても、あるいは自創資金の問題にいたしましても、いろいろあらゆるルートから開拓者の場合には金を貸しておる。こういう旧債の借りかえ等の問題についても、今次災害関連をしてどう処理をされようとするのかこういう開拓の関係の問題については、ずいぶんいろいろな問題が山積しておるわけです。また、今後の営農指導のためには、種子の問題その他家畜の問題にいたしましても、いろいろ助成をしなければならない問題も山積しておるでしょう。こういう問題につきましても、もう少しお話を願いたいと思います。
  65. 伊東正義

    伊東政府委員 今おっしゃいました問題、幾つかあるのでございますが、今度の災害によりまして、従来の債務が償還できぬという人につきましては、これは現在行なわれております国の債権等の元利に関する法律というのがございますが、この規定を活用いたしまして、償還を延ばすということを特別会計の債権については考えていきたいというふうに思っております。それから、自作農資金その他につきましても、おのおの災害の場合には貸付条件の緩和ということがございます。それもやっていきたいというふうに考えております。それから、住宅を考える場合に、粗収入を考えるかということでありますが、住宅につきましては、こういう基準考えております。従来よりも幅は広げまして、入りまして五年くらいの人は全部拾っていこう、六年以上経過いたしましても、振興農家ということで振興計画を立てておる人は、これはまず拾っていこうじゃないか。そのほかに、六年以上経過して振興農家になっておらぬという農家の人につきましては、本年災害を受けまして、農作物の被害が七割以上あるというような人、あるいは、これは連年でございますが、昨年も住宅がこわれた、あるいは、住宅はこわれぬが、作物の災害が四割以上あったというような人を拾っていったらどうかということで、大体私ども見通しとしましては、八割くらいのものがこれで対象になるのではなかろうか。その他の人は、融資その他で考えたらどうかというふうに実は考えておる次第でございます。
  66. 角屋堅次郎

    角屋委員 農地局長にはまだたくさん質問がありますが、先ほどちょっとお話しになりました救農土木事業関係につきまして、実は、きのうでしたか、八木委員の方からもこの問題の質問がございました。現実に、岐阜の多芸輪中等の場合におきましても、あるいは愛知県の長期湛水地帯、三重県の木曽岬、長島、あるいは桑名、川越等、その他にも及んでおりますが、そういう地域の救農土木事業の具体的計画というものの額等を見ますと、はたして、本年度予定しておりました三億円ということで十分現地の要請にこたえ得るのかどうか。さらに、これは単にそういう長期湛水地帯ばかりじゃなしに、今、局長もお話しのように、開拓地の場合にもこれを広げる。さらに、私どもは、単にそれはそういうことばかりでなくて、こういう関係のものを、山間部の被害激甚地についても、あるいは漁村等の被害激甚地等についても、実態に見合って、これはむしろ救農というよりも、私どもは興農といった方が現地の罹災民の気持からすればぴったりするのじゃないかというふうにさえ思う。名前は簡単なものでございますけれども、何か救農というと、生活扶助じゃございませんが、救ってやるのだというのではなしに、やはり罹災民を振い起こして再建をしていくのだ、興農土木事業とか、あるいはそういうふうな気持の方が、簡単なことのようですけれども、いいじゃないかと思いますが、そういうふうに考えてくると、農林省の方で大蔵省に当初予算の要求をされましたときには、全国的の被害の実態の上に立って現金収入、そういうことを配慮しながら三十億近い予算要求をされておる。これが相当程度通るということになりますと、単に三県のみならず、各地にある、そういう要請にこたえることが私はできるのだろうと思う、それが三億円程度に切りつめられたということになりますと、せっかく、今度の災害でそういう新しい線を打ち出されたということについては、深く敬意を表しまするけれども、この額そのものがきわめて僅少であるために、現地の要請に十分こたえ得ないということが現実の問題として起こってくるのじゃないか。でありますから、これは予備費等の流用の問題も出てくるわけでありますけれども現実に救農土木の現地側の要請に対処して、どういうふうに予算の運営をやっていかれるか。さらにまた、きのうも八木委員から出ておりましたように、現地の悲惨な姿からいきますと、五割補助程度でもってやっていくという考え方を揚棄して、高率適用等の場合に準じて、少なくとも九割の補助を行なって積極的な興農土木事業として推進をしていく、こういうことが、私は農政の基本としてなければならぬじゃないかと思うのですが、それらの問題についてお伺いしたいと思います。
  67. 伊東正義

    伊東政府委員 まず、金額の点でございますが、先生おっしゃいました三十億というようなことを言った時代もございます。これは全国的に一応試算をしてみようじゃないかというのでやった段階もございました。大蔵省との話し合いの過程におきましても、過去においてやりましたのは全部これは冷害、ほとんど大部分が冷害でございます。農地復旧もないというようなことでやっただけでございまして、今度全般的に風水害だからといって救農をやるということはなかなかむずかしいというようなことで、結論的には、冠水地域中心としたような考え方で三億というものがきまったのでございます。金額的にはそうでございますが、今、先生のおっしゃいました山間部とか、いろいろ問題がございます。これは私ども、三億で激甚地の救農が全部やれるとは実は思っておりません。これは先ほど申しましたように、開拓の建設工事とか、あるいは区画整理というようなことを内容とするのでございますが、このほかにも、農林省でやります仕事の中には林道復旧でございますとか、あるいは治山事業、われわれの方からいうと農地農業用施設復旧ということがございます。河川関係につきましても、また道路の災害復旧もございますし、いろいろな角度から収入ということを考えるべきではなかろうか。三億だけで、われわれもこれで全部やれるとは考えておりません。そういう総合的な考え方で、救農といいますか、興農といいますか、やるべきだと私は思っております。現実の問題としまして、補助率の問題がございますが、これも実は過去の救農土木の補助率が全部五割でございます。われわれは、今、先生のおっしゃいましたように、これをもう少し高くしたいと考えたこともあったのでございますが、結局補助残につきましては、公庫融資を考えていくという処置をとりまして、そうして大体これは賃金収入が六割くらいでございますので、何とかこれでその地帯の救農はやっていきたい、そのほかに、とれるものは農地なり、農業用施設復旧でとりまして、あわせてやっていきたいというのが、われわれの考え方でございます。     〔小委員長退席、今井小委員長代理着席〕
  68. 角屋堅次郎

    角屋委員 共同利用施設関係で、これは前に大臣にも申し上げたわけでございますが、現実に前進をさしてもらいたいと思うのは、新農村の農山漁村建設総合対策の補助事業等でやった共同利用施設、これは法人格とか、法人格でないとか、いろいろ論議もあるようでございますけれども、そういう問題の共同利用施設についての政府の案でいきますと、激甚地は九割その他の場合は五割、こういう対象での補助、助成ということ、さらに、実際に従来からやっておる農協、漁協あるいは森林組合等の倉庫、共同作業場等の問題に加えて、事務所等の問題についても、これはやはり共同利用施設の中に含めて善処してもらいたいという要請が非常に現地側では強いわけでございますが、そういう問題もございます。要は、私どもとしては、前者の問題については、農林漁業等の組織する団体等で政令指定するものの共同利用施設、こういうものについては補助の対象にするということで含めてはどうか、さらに、事務所等の問題については、この機会に法令の中に含めて適用してはどうか、こういうことを提唱しておるわけでございます。こういう共同利用施設等の問題については、先ほど激甚地の指定の問題で私が触れたわけでございますが、二十八年災のときには、これらを含めて三万円という合算額になったわけでございますけれども、今回は、こういう共同利用施設等については計算の基礎から除外されておる。ところが、風速六十メートルもあった十五号台風によるところの三県の各地における被害の実態から見るというと、こういう共同利用施設、ないしはそれに準ずるものの災害というものはきわめて多い。これが今言われておるような帳簿価額とかなんとかいうことで、現在の価額が幾らかというようなことでやられるというと、九割とか五割とかいわれてみたところで、現実には、もらう金は僅少であるということになる。実際に災害復旧するのに幾らかかるか、それに対して補助がなんぼになるか、こういうことでないというと、その自余の分については罹災民の負担にかかってくるということにも相なるわけであります。そういういろんな点から見て、この機会に、やはり共同利用施設等の問題については、価額評価の問題についても、あるいはこの範囲の拡大の問題についても、積極的に考えていくということが必要じゃないかと思っております。この点について、一つ再度お伺いしたいと思います。
  69. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 ただいまの共同利用施設の問題についての角屋委員の御質問にお答え申し上げます。  共同利用施設といたしまして補助をいたします対象は、御承知のように、協同組合農業協同組合等の所有にかかるものを中心にいたしておるわけでありまして、この範囲を、その他に拡大するということに相なりますと、所有権の確認等も非常に困難でもございまするし、また、個人施設との限界も非常に不分明でございまして、補助事業として実施をいたす場合に、いろいろ困難な問題があるのじゃないかというようなことで、従来とも、協同組合農業協同組合、漁業協同組合あるいは森林組合等の所有にかかるものを対象にしてやっておりますわけでございまして、その他の協同組合の所有でないような組合以外の共同利用施設につきましては、御承知通り公庫融資というような道もございまするし、また、個人施設につきましても、同じく農林漁業金融公庫からの融資も考えておるというようなことでございまして、特に今回の災害の場合には、これらにつきましても、二十八年災と同じように非常に高額の補助になるというような事情もございまするので、一応、範囲といたしましても、こういう程度で考えていくべきではないかというふうに考えておりますわけでございます。また、農協あるいは漁協等の事務所を対象とする問題につきましては、これは、もちろん農協あるいは漁協等におきましていろいろ災害復旧のために金も要ることと思うのでございまするが、大体生産あるいは経営に直接関連するところの共同利用施設中心にしていこう、こういうような考え方で今まで運用してきておるのでございまして、こういう建前からいたしましても、今回も特にこれについて範囲を拡張するという必要はないのではないか。特に協同組合等におきましては、いろいろ系統金融というような道もございまして、事務所の復旧等については、そういう方面からある程度援助を受けるというようなこともございますし、また、今回の場合には、この前も御説明申し上げました通り、農林中央金庫等におきましても、災害復旧のための特別措置考えまして、あるいは金利についてもある程度のめんどうを見るとか、そのほかいろいろの便宜をはかっておるというような事情もございまするので、従来の建前で進んでいくことが適当ではないかというふうに考えておるわけでございます。  また、この補助をいたしまする場合の復旧の強化の問題でございますが、この問題につきましては、もちろん施設復旧ということが中心でございまするので、再建価額に対して、これについての何割かを補助するというような考え方もあり得ると思うのでございます。実際打ち割ったことを申し上げますると、私たちといたしましても、再建価額に対して何%かの補助をする、こういう考え方で行ったらいいのじゃないかというようなことでいろいろ検討したのでございまするが、全体の歩調からいたしまして、全部非常に高額な九割補助というようなところまで上がるのでございまして、今までの現行法では大体二割の補助、こういうような規定になっておりますのを、九割補助と、非常に高額に上がりますものですから、そういうことで、ほかの補助施設とのバランスから言いましても、一応従来の建前を踏襲して、そうして高額の補助をやる、こういう考え方で行きたいというふうに考えたわけでございます。
  70. 角屋堅次郎

    角屋委員 共同利用施設の問題については、これは何も今回だけ九割補助をやったということでなく、局長御承知のように、二十八年度災害のときにも、やはり付則でもって、これらの問題については九割で対処しておる、こういうふうに私ども承知しておるわけであります。でありまするから、要は、災害の広さ、深さ、こういう実態に即応してこういう特例法等の考え方が出て参るわけですから、私どもは、共同利用施設の現行法の二割という問題についても、何回かの災害に直面したときの委員会で、最小限これは五割に直すべきじゃないか、農地農業用施設とのバランスの上に立っても、二割というのは、対大蔵省関係の折衝の中で古くからいろいろ大蔵関係が固執してきたために二割の低位に置かれたのであって、現実には、五割程度が通常の場合妥当であろう、従って、今回の災害の場合、激甚地九割、その他の場合五割というのは、これは何も特別の配慮をしたということではない。二十八年災の例もあるし、また、現実の実態から見てもそうです。これは農協にしても漁協にしても、あるいは森林組合にいたしましても、そういうものの諸施設というものは、いわばその地域におけるところの農林漁業者のセンターとしての大きな役割もしていかなければならぬ。協同組合の精神というものを拡大強化、推進していくためにも、これらのものは育成強化こそすれ、これが後退していくということについては、お互いに配慮していかなければならぬ。こういう建前から見ても、これは今言ったような考え方に立つのは当然のことだと思うのです。  そこで、先ほど局長のお話の中には出ませんでしたが、農山漁村建設総合対策等の補助事業の問題に関連して、所有の問題についての所在が明確であるもの、明確でないもの、いろいろ言われましたが、あるいは法人格を備えておるもの、法人格に準ずべきもの、いろいろ取り扱い上には検討すべき問題があるかと思いますけれども、せっかく新農村建設計画等でやってこられて、それらの施設災害を受けて壊滅的な打撃を受けた、こういうものについては、やはりそういうものを推進された政府の立場においても、これらの災害復旧についてあたたかい手を伸べるというのは当然の気持だろうと思う。こういう点から再度後者の問題も含めてお伺いしたい。
  71. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 初めに評価の問題でございますが、この点は、仰せの通り現行の二割というのが、二十八年にその通りであったということではございませんで、現行の二割については、各方面からいろいろ不満もあるわけでございます。しかしながら、今度の法律案にもございますように、大体二十八災に持っていくということを一応目途といたしまして、いろいろやった関係がございまして、一応被害の激甚地は十分の九、その他の地域については十分の五ということで、二十八災とのバランスもとれるという考え方もございますので、その内容については一応そのときの方針を踏襲する、こういう考え方をとったわけでございます。だから実態は二十八災と同じに持っていった、こういうことになるわけでございます。その点一つ御了承いただきたいと思います。  それから新農村建設に関連する問題で、新農村建設に伴ういろいろの施設につきましては、おのおの該当するいろいろの方法によって、救済の措置もございます。たとえば非常な激甚地で、壊滅的な損害を受けた部落というような場合にこれに対する特別な再建のための補助というようなことも考えておりまするし、それから該当するものについては、公庫の融資その他もあるわけでございます。なお公庫の融資をいたします場合におきましては、この新農村の関係のものについては組合の転貸も認めるということで、特例的な措置も今回とることにいたしまして、できる限りの措置を講じて、今までやっておりまする新農村建設が、この災害のために非常に大きな打撃を受けないで復旧して進んでいくようにということを考えております。   [今井小委員長代理退席、小委員長着席]
  72. 角屋堅次郎

    角屋委員 自創資金の問題について過般お伺いしたのですが、これはやはり現地の要請からいくと、農林漁業金融公庫の融資計画の中で四十七億程度——現在の十四号、十五号に対処する資金ワクとして二十九億程度では、先ほど農地局長から開拓の融資ワクとの関連の問題が出ておりましたが、きわめて不十分だということは明らかだと思う。そこでお伺いしたいのは、これが現地の実情等から見て、どうしても増額しなければならぬという場合には、公庫の資金計画の中においてまだゆとりがあるのかどうか、その辺のところをお伺いしたいと思います。
  73. 坂村吉正

    ○坂村政府委員 自創資金は、御承知のように非常に要望も強い資金でございまして、これについては、ほかの資金の項目というか、ほかの用途に向けられますところの資金よりも、特にいろいろ実情を考えまして、県の調査その他を主体にして検討を加えまして、そして大体三十億というところで今年度はやっていけるのではないか、こういう見当をつけておるわけでございます。先般この委員会におきまして、農林大臣からも答弁がございましたが、やはり農家が立ち上がるために最小限度必要なものは、とにかくああいう低利な融資をしていくということはぜひとも必要でございますけれども、これは補助金ではなくて金を借りるのでございます。だから今後の問題も十分考えまして、この融資等については考えていかなければならない、こういう工合に思うのでございます。非常に低金利でございますので、これがあまり無計画に借りられるということになりましても、実際問題としては農家の今後の負担ということもあろうかと思いますので、そういう点も十分考えまして、今後の問題としても農家が困らないというようなことで考えていきたいと思っているわけであります。そういう意味から申しますと、一応現在のところでは、三十億ということで大体まかなえるのではないかというふうに考えているわけであります。
  74. 角屋堅次郎

    角屋委員 自創資金の問題は、それではだめだと思う。現実に地元あたりでは、いろいろこういう資金の要請があって、むずかしい手続の書類も作って、それがたくさん出てきている。しかも無方針でそういうものをやっておるのじゃなくて、一定の計画のもとに指導して、そしてそういうものの受付書類がそれぞれ出てきている。それを見ても、相当離れているという実態にある。二十九億程度のもので十四号、十五号に対処するという中で、愛知県、三重県、岐阜県等では、その中の何ぼがこの三県に渡るのか、また他の県ではその前にやられたところも含めて、まだ不十分だからほしいというので、殺倒しているのが今日の実態だと思います。私はこの機会に深くこの問題に触れる時間の余裕もございませんが、先ほど聞きましたように、二十九億なり三十億ではきわめて不十分なことは明らかでありますから、公庫の資金計画の全体の中で、ことしは百四十数億の中の八割程度の資金計画ということをやって、来年度に少しゆとりを持っていく、こういうふうな、この前のときも触れたような計画の内容でありますから、そういう問題にも食い入って、現地の要請にこたえるということにならなければ、この問題の処理ができないと思う。そこでこの機会政務次官に、今の問題についてお伺いしたいと思います。
  75. 大野市郎

    大野政府委員 自作農資金資金の手当の問題につきましては、実は御指摘の事柄がございます。過年度災害などにつきましても、それぞれの県から実情の陳情などもいろいろ受けておりまして、その運営に、ただいま局長の申し上げたような、なかなか自信のあることは言えない状況を、私も知っております。それで自作農の分け方の政令の内容などにつきましても、まだ検討を要すべきものがあることをいろいろわれわれとしては発見しております。ただ御承知通りの突発的な大きな災害でありましたために、原資のワクその他が非常に窮屈でありまして、そういう関係から今回も公庫の資金の運用その他についても、借入金をして、出資でない形で一部をまかなうような実態でございまして御指摘の自作農の資金融通につきましては、われわれもぜひもっと拡充を望むものであります。その努力も続けて参るつもりでございますが、十分であるということは、局長は申しましたけれども、私としてはこの点そう言い切れないものがございます。従って、努力を続けますから、現状においての国家財政の総ワクの上から、今回の予算措置として予算をお通し願った直後でございますので、その点お含みをいただきまして、含みを持って今回は一応御了承いただきたいと思います。
  76. 角屋堅次郎

    角屋委員 了承というわけにいきませんが、これはわれわれの方から、政府出資八十億ということで、全体の運営に支障のないようにという提案をしておるわけですが、いずれにいたしましても、政務次官お認めのように、二十九億や三十億で、十四号あるいは史上空前という十五号台風現地の事情に対処するということは、できないのは明らかです。御承知のように、三県で百二十九億という需要が出てきておる。それが地元ではいろいろ現地指導をして、大体その三分の一程度のところに圧縮をして、いろいろ書類の申し込みをやっている。それがさらに、二十九億なり三十億なりを三県以外のところに割り振るということになってくると、一体三県は何ぼになってくるのか。二十億あるいは二十四億といわれておるけれども、そう簡単にいかないと思う。そういうことで、とどの詰まり、こういう問題については、農林漁業金融公庫の全体の資金計画の弾力的な運営ということを、やはり当面の問題としては考えなければならない事態に立たされておる。これはきわめて不十分だということは、政務次官お認めのようでございますから、現地の実態から見て、この点については十分一つ今後検討、推進を願いたいと思います。  それでは次に、林野庁長官の方にお伺いをしたいと思います。午前中も造林関係の問題について、いわゆる今度の災害復旧のために、現地側では、風倒木等を処理したときには造林をしなければならぬという強い意欲に燃えておる。ところが現実にこの造林をやる場合に、四分の三国の補助、四分の一県の責任補助というようなことで、いろいろ三重県の場合には三重県の財政から見て、そういう拘束を受けたのではきわめて困難だ、そういうことで、これらの問題については、今後来年度予算編成等の問題も含めて十分検討したいということでありましたので、この問題については今後の推進に一つ期待をいたしたいと思います。  そこで、先ほども林野庁長官といろいろお話をしておりましたところ、緊急治山、あるいはその他森林開発公団でやってきた、奈良県や三重県の今日までの三十億程度の事業量のうちで、今度の場合、心配したけれども、実際に被害を受けたのは一千万円を少しこえる程度だった、こういう話等も承ったわけでございます。緊急治山の問題について、二十八年災の場合の九割補助と、今日考えておる三分の二補助という問題で、いろいろまだ林野庁長官としても、対大蔵の折衝をやられているやに聞いておるわけでございますけれども、今度の場合においては、単年度だけの緊急治山じゃなしに、今後三年なり四年なりという年次計画そのものをやっていくという点については、従来よりも一歩前進をしておる、こういう説明も承っておるわけでございます。しかし治山治水の抜本的な対策という面から見て、この前もどなたかから強い要請がございましたが、やはり高率の九割補助という点について、積極的な努力お願いしたいと思うのです。現在のこの問題に対する情勢についてお話しを願いたいと思います。
  77. 山崎齊

    ○山崎政府委員 緊急治山事業につきましては、二十八年度におきましては、お話の通り災害の起こりました当年度におきまして九割の補助を行ない、自後の年の事業分につきましては、一般治山事業という考え方に基づきまして、三分の二の補助率で運用されたのであります。この三分の二の残りの三分の一の、いわゆる県費負担につきましては、四五%の起債を認め、それの五七%を基準財政需要額に算入するという行き方でいったのでありますけれども治山事業が計画的に行なわれないという一番大きい障害が、いわゆる災害の発生しましたときにだけ緊急治山を行ない、次の年から経常的な治山に持っていくというところにあったが、三十四年度におきましては、補助率は三分の二ではありますが、緊急治山事業としてきめられました事業量については、これを経営の仕事の別ワクという形にいたしまして、三年ないし四年間におきまして計画的に実施するという新しい制度ができましたことは、先生から今お話がありましたように、治山事業としては非常に進歩したとわれわれも考えておるのであります。本年度三分の二の補助をいたしますけれども、その自後の県の負担分につきましての措置、並びに特別措置をとる府県をどういうふうにしてきめるかという問題が、現在残っておるのであります。私たちは災害激甚県については、そういう措置をとってもらわなければいかぬというように考えておりますが、一部にはまた、激甚であって、しかも県財政が貧窮な県についてのみ適用すべきではないかという意見もあるわけでありまして、両者の調整を本日も事務的に行なったわけであります。いまだその結論には到達しない状態でありますけれども、われわれとしましては、今後さらに折衝を続けまして、何とか今週一ぱいくらいには最終的な結論に達したいと考えておる次第であります。
  78. 角屋堅次郎

    角屋委員 緊急治山の対象県というのが、大蔵省では十県と言っている。林野庁長官の方では、いや十県では困る、あるいは十三県、十五県というふうなことで、いろいろ折衝がなされておるやに聞いておるのですが、この激甚の県の指定という問題の基本的な基準を、どういうふうにとって話を進めているのか、その辺のところを一つ
  79. 山崎齊

    ○山崎政府委員 激甚な県ということに対します考え方は、やはりこれが全部県営事業であるという観点からいたしまして、県の基準税収入との関係、並びに、全国的な視野から見まして、激甚というものの金額をどの程度に置くべきかという二点について、現在折衝を続けておるという状況であります。
  80. 角屋堅次郎

    角屋委員 これ以上のことは、中身はある程度承知をしておりますが、まだ決定をしておりませんから……。今の緊急治山の問題については、単年度でなくて、数年にわたって計画的に推進をしていくという考え方は、私は非常にけっこうであると思うのですが、補助率の点について、過般来も強い要請がございましたし、与党内部においても、これが前進については陰の協力をしておるやに聞いておるので、この点については今後さらに大いに努力してもらいたいと思います。  水産庁の方の関係で、過般もお伺いをした漁船関係の問題でございますが、この前農林大臣にお伺いしましたときには、政令できめるところの一漁協二十五隻の喪失漁船の問題、あるいはまた七五%の喪失漁船の全体のものに対する比率の問題、これは必ずしも固定しているのではなくて、今十分検討しているところだ、さらにまた漁業保険がかかっていないものを対象に当初考えておった、ところが、必ずしもそれに拘泥せずに、漁船の保険のかかっておるものにも範囲を広げて検討してみたい、こういうことも言っておられました。また、これはまだ変わらないのじゃないかと思いますけれども、十トン未満の動力船、無動力船を対象にするというふうに前進をさせたらどうだということについては、依然として五トン未満ということに固執されているのじゃないかと思いますけれども、いずれにいたしましても、今度の漁船の被害というのは、私ども承知しておるところでは、愛知、三重あるいは北海道、あるいは長崎、その他の県にも、それぞれ被害が出ておるように承っておるわけですが、この零細な漁村の実態から見まして、二十五隻とかあるいは七五%とか従来いっておったような形では、せっかくこれはいい構想で立てられましても、現実の要望に十分こたえることができない。私どもは、そういう点で、漁船について政府は特例法を出されましたけれども、前々から農林水産常任委員会でいろいろ審議した結果、暫定法の中のこれを施設関係に加えて対処したらどうだ、こういう考え方で改正法案を私ども出したわけでございます。これらの問題は、やはり三隻に一隻というとり方の問題にしても、いろいろ問題が多い。この条件緩和ということについて、現在の段階でどこまで前進をしているか、お伺いしたいと思います。
  81. 高橋泰彦

    ○高橋説明員 このたびの小型漁船の問題につきまして、ただいまいろいろ御指摘をいただいたのでありますが、現状におきまして大体見通しを得た点をお答えいたしたいと思います。  まず協同組合を単位といたしまして、二十五隻以上の修理不可能船のある場合に、八割の補助の対象とするという点に関連いたしまして、それ以下の隻数の場合はどうなるかという御指摘の点でございます。御指摘のように、過日大臣が七五%については検討の余地があるというお話をいたしたわけでありますが、その点につきましては、七五%という率がかなり窮屈な率だという点もございます。ただいまのところ、この七五%という率を五〇%に下げるということで、大体話が進んで参っております。従いまして、特に協同組合でありましても小さな漁業協同組合におきましては、御指摘のように、相当の被害があっても二十五隻に達しない場合があろうかと思いまするが、その点は、率を下げることによりまして、かなり被害があった漁業協同組合を救済することができるというふうに見ておるわけであります。  次の点は、漁船保険に加入しているものについては、この算定の基準ないしは補助対象にしないという問題がありまして、それについては過日大臣から、その点も考慮してみたいというようなお話があったわけでありますが、その点も関係方面に折衝いたしまして、一応漁船保険に入っているということで不利になるようなことのないように、言葉をかえますと、漁船保険に加入していることないしは未加入であることにかかわらず算定し、ないしは補助対象にするということに大体見通しを得たわけでございます。  それから小型漁船の規模を十トン前後にしたらというような点の御指摘があったわけでございますが、この点も、現在の沿岸漁業の漁家層の中心的な船の大きさがやはり三トン前後ということでございますし、また被害の程度を見ますと、特に三トン前後の船に被害が集中しておるというようなこともございますので、私ども考えでは、やはり五トン未満というような格好でその条件をきめ、補助の対象にする方がいいんじゃないかというふうに考えておるわけでございます。しかしながら、この型の船が一番いいとは思いますが、場所によりましては、必ずしも三トン前後の船が標準的な一番いい船とは言いがたい場合もあろうかと思いますので、ここら辺につきましては、原則はあくまでも三トン前後の船ということにはいたしますが、特例としては、それでは適切でない地帯につきましては、若干の裁量の余地を残しておきたいという考えで目下検討中でございます。
  82. 角屋堅次郎

    角屋委員 今の次長さんのお話を聞いておりますと、一方において五〇%に喪失率を下げたということがあるかと思うと、従来五トン未満というふうに私ども承知しておりましたのが、三トンというところが基準になるように聞く。一方が前進すれば他のところはまた後退をしてくるというふうな感じが今いたしたわけですが、この機会一つ、今政府考えておる五トン未満なら五トン未満の喪失漁船——大破については、御承知のように、喪失漁船と一対一に取り扱うというふうに承っておるわけですが、これは政令でいろいろ解釈をきめるように聞いております。そういういわば今回助成の対象に考えておる漁船数、それからさらに例の漁船の建造単価という問題についても、動力船、無動力船についてそれぞれ単価を予定しておられる。これは現地の漁協としては新しい前進の行き方でございますから、やはりいろいろ問題を含んでおりますので、そういう点についてさらに具体的な御説明を願いたいと思います。
  83. 高橋泰彦

    ○高橋説明員 まずこの政令規定される場所のいろいろな問題点についてでございますが、この被害船の算定その他については、五トンを基準にして算定いたしてみたいと思っております。  それから漁業協同組合が共同利用漁船ということで建造する場合の原則としては、三トンの動力船と無動力船、これを基準にいたしたいというふうに考えているわけでございます。  なお御指摘単価の問題でございますが、一応積算の基礎といたしているのは、たとえば三トン、これではディーゼルの十五馬力を想定しております。この場合の船体につきましてはトン当たり七万円、それからエンジンにつきましては馬力当たり三万円、これを想定しています。従いまして、三トン、十五馬力型では一隻六十六万円、これを積算の基礎にしております。それからなお、無動力船のうちの若干については動力化をはかりたいということも考えておりましてこの場合の一つの積算の基礎としては、一・五トンとして馬力が七馬力、この場合の基礎としては、船体につきましてはトン当たり七万円、それから機関につきましては馬力当たり三万円といたしますと、一隻三十一万五千円というふうに考えられます。それから無動力船につきましては、このたびも相当の被害があったわけでありますが、これも通常の外海における無動力船と、内湾のノリなどに使用される無動力船との間に、若干開きがございますので、両者を若干区分いたしまして、大きい方は〇・七トン型として、この場合のトン当たり単価五万円といたしますと、三万五千円となります。それからノリベカのように小さいものにつきましては〇・五トンといたしまして、この場合の一隻が二万円ということを積算の基礎にしておるわけでございます。
  84. 角屋堅次郎

    角屋委員 漁協単位に喪失漁船とか、あるいは喪失率ということを考えておられるのですが、現地ででは、激甚地指定は県や市町村ということで多くの問題は処理されるので、市町村単位ということで広く掌握してもらったらどうか、こういう意見も出ておるわけです。要は条件緩和の問題でございまして、今日小型漁船について補助をするという大きな前進はけっこうだと思いますけれども、沿岸漁業の今日の実態から見れば、ある意味においてはおそきに失したとも言えると思う。そういうふうな条件緩和の際に、一漁協単位ということでなしに、もう少し範囲を拡大をして考えてみてはどうか。同時に、先ほどのノリ等の養殖の問題等についてのてんま船みたいなものにも、助成の配慮がなされておるわけですが、三重県の志摩方面から南北牟婁にかけての真珠の小型の船等に対しても、これを含まれて処理をするということであるのか、これは全然別個の性格に考えておられるのか、そういうことについてもお伺いしたい。
  85. 高橋泰彦

    ○高橋説明員 お答え申し上げます。まず第一点は、今回なぜ個々の漁船を補助の対象にしないで、漁業協同組合の共同利用という点だけを対象にしたかという御質問でございますが、これは従前の例によりましても、個々の漁船につきましては、やはり融資が本体ではないかと考えられるのでございます。しかしながら、今回の被害は非常に甚大でございますし、これを漁船の建造能力から見ましても、急速に補てんすることがなかなかむずかしい状況になりますので、相当の期間内、かなり不自由な格好で漁船が運航されるようなことも考えられるわけでございます。従いまして、そのような状況のもとで考えられることは、現に乏しい船で被害を受けた漁業協同組合では現在もやっておるわけですが、やはりある程度漁業協同組合が船を管理して、それをフルに動かすというような考え方が妥当ではないかというのが、一つ考え方ではないかと思われるのであります。それからもう一点は、このような沿岸漁業の災害の集中した地帯におきましては、一口に融資といっても、実態としてはなかなかそのようには参らない。この二つの点から、このたび小型漁船につきましては、特に漁業協同組合が船を持って、それを多少不自由ではございますが、共同利用という格好でフルに動かして参りたいという考え方をとったわけでございます。従いまして、この趣旨が、金融ではやっていけないような特に災害のひどい漁業協同組合に対する特別措置という点に、ポイントがあるのではなかろうかと考えられますので、その間全部の漁船についてのある補助額ということではなしに、ある程度被害激甚な漁業協同組合を単位にして、それに対して高率の補助をやっていくという建前をとるのが、現在のところ妥当ではないかと考えた次第でございます。
  86. 角屋堅次郎

    角屋委員 政府提案しております法案考え方で、漁船の共同化をやっていこうという構想は、一つの進んだ考え方だと私も思います。問題は、沿岸漁業の個々の漁業者の経済が、災害から回復して力を持ってくる場合に、漁協のもとで三人に一人の割合で建造した漁船の将来をどう取り扱うか。住宅関係でいうならば、第二種公営住宅等の場合に、これはいわゆる住宅の耐用年数といいますか、それの四分の一の期間を過ぎれば個人にそのときの時価で売り渡してもよろしい、こういう考え方が御承知のようにあるわけですが、今度のいわゆる共同化を、あくまでも推進するという立場で前進させていこうというのであるか、あるいは今回の小型漁船の補助の場合に、当面そういう考え方はとるけれども、長い目で見れば、経済の回復とともに、それぞれ適当な対象にそのときの時価で売却していく、こういうことを想定されておるのか、将来の問題についてもう少し伺いたい。
  87. 高橋泰彦

    ○高橋説明員 まず第一点は、このたびの小型漁船の共同利用措置は、一体その共同化を促進、推進するのであるか、またはあくまでも応急的な措置であるかというような御趣旨の御質問だったと思いますが、この点につきましては、やはりただいまのところ、あくまでも応急的な措置であろうというふうに考えております。しかしながら、当面の建造能力の不足に対する応急的な手ではありますが、それじゃ全然共同化という意味をなさぬのかといわれると、必ずしもそうではないのではないだろうか。従いまして、この共同化ということにつきまして、あまり過信するものではございません。しかし、現実の漁村で、漁船につきましても共同化の方向の事例が若干ございます。従いまして、もし今日とりました応急的な措置が、そういう今漁村で芽を出しておる共同化の方向に役に立つものであるならば、それはそれとしてけっこうなことであろうというふうに考えるものでございます。しからば、将来共同化の芽を出すところもあろうし、またはそれでは不自然になるような、やはり個人で漁船を持ちたいという場合もあるだろうという答えになるわけですが、そういたしますと、将来どうするか、こういう御質問だろうと思います。それにつきましては、もしたとえば指導船ないしは漁業協同組合の自営船という格好でそのときにまで残るものとすれば、私としては、今にわかに個人に売るということをきめる必要もない。従いまして、いいものがそのままずっと残っていくことならば、そのままの格好で協同組合が所有し、管理し、組合員に使用させるということもあってよかろう、こう思います。ただし、御指摘のように、全部の組合が必ずしもそういう共同化の方向に一〇〇%乗り得るものとは思いません。従いまして、御指摘のように、場合によっては組合員個人に船を持たせた方が、漁船の管理上ベターなことがあり得ると思います。従いまして、現在できるであろう協同組合が持つであろうその漁船が、そういう情勢の場合には、組合員個人に譲ることもあり得るだろうというふうに想定しています。いずれにしても、この問題はかなり応急的な措置ではありますが、いろいろな意味を持つことに相なろうかと思いますので、今後のそういう動向を私どもとしては非常に慎重に見ながら、その情勢によって、ただいま言うように協同化の方向に進むものと、またそうならない場合の処分につきましても、検討を進め、きめて参りたい、かように考えておる次第でございます。
  88. 角屋堅次郎

    角屋委員 増田振興局長は、災害では台風下に立っておるように考えておるわけでもありませんでしょうが、振興局の立場から、今次災害に対する営農指導とか、あるいは永年作物の果樹、その他を含んでの災害関連した今後の助成指導、こういうことについて、振興局としての今日の方針考え方についてお伺いしたいと思います。
  89. 増田盛

    ○増田政府委員 御存じの通り災害それ自体に対する復旧中心にした施策も必要でございますが、その後の営農指導も大事なことでありますので、一般的に災害直後の営農関係の指導に関しましては、県にあります農業改良普及員を中心といたしまして、いろいろ御活躍を願っておるのは周知の通りでございますが、特に今回の予算におきましては、激甚被害部落の農作業等の共同施設を積極的に取り上げまして、これに対して助成をすることにいたしておるのであります。振興局といたしましては営農指導が中心でありまして、それに畜産、蚕糸等の諸施策を含めまして、総合的な援助をいたしたい。その施策に対しては、共同化の性質上、単に一時的な災害発生当時あるいはその直後だけの問題ではないのでありまして、今後長い間災害後の農業経営のあり方に対して、いろいろな影響もあり、従って、これに対して綿密な指導をする必要があろうと思うのであります。その他振興局といたしましては、もみあるいは麦の種等を失いました被害激甚部落の農家に対する種子確保の施設、それから従来市町村が保有しておりました共同防除機具の復旧等に対しましても、援助をいたすことになっておるわけであります。とりわけここで申し上げたいのは、果樹振興とからみ合いました、果樹の被害に対する復旧対策でございますが、元来果樹の被害に対しましては、新しく改植をするという手段を含めまして、融資を行なうにいたしましても、やはり農林漁業金融公庫の資金をもって長期的にこれを見て参るのが、妥当と考えるのでございますが、今回は、災害でございますので、災害の性質上、天災融資法でこれに対する償還期限あるいは据置期間の延長、貸付限度の引き上げ等によって解決いたしたいと考えておるわけでございます。  根本的には、災害たるといかんとを問わず、果樹振興の線に沿いまして、全く新しく改植する、あるいは老齢樹を改植する、これに対して政府がいかにこれを援助するかという問題が根本でございます。これに対しましては、私ども着々構想を練っておるわけでございます。現在のところ、果樹振興対策に関する要綱も省内で決定を見まして、これに基づきまして、果樹農業振興法を通常国会に提出すべく、省内で検討を進めておる次第でございます。
  90. 角屋堅次郎

    角屋委員 永年作物あるいは果樹の問題等については、午前中農林大臣にもお聞きしたわけでございますが、特に十五号台風の見舞った愛知県は、果樹の非常な本場でありますし、岐阜県も富有柿等は非常に有名でございます。三重県の場合においても、南の方の志摩あるいは南勢、南島から南牟婁にかけて、従来から愛知県あるいは静岡県に匹敵する果樹の本場があり、これからまたさらに三千町歩のミカンの拡大計画というふうなものの構想もあって、いろいろ農林省の方にお願いしておることは御承知通りでございますが、従って、こういう果樹の問題についても、今申しました果樹振興法等の関連において、積極的な施策を講じ、農業経営の多角化、体質改善、こういうことに大きく前進をしてもらわなければならぬ。時間も相当おそくなりましたので、果樹方面の具体的な問題についてさらにお伺いすることは避けますが、特に今度の被害では、そういう果樹関係、あるいは三重県でいうならば茶の関係というような方面に大きな被害が出ておるわけでありまして、そういう面で万遺憾なきを期してもらいたいと考えるわけであります。  振興局関係の問題として、前にも申し上げたことがございますが、長期湛水地帯のこれからの新しい町作り、村作りをどうするか、これからの新しい営農方式をどうするかという問題に関連をして、いわゆる海水面よりも低い地域におけるところの、たとえば住宅一つの問題をとらえても、三重県あたりでもいろいろ各方面意見を聞いて、一階を物置にして二階に住居をかまえる。こういう住宅建設を考えたらどうか。これは耕地の集団化あるいは共同作業等の問題と関連をして、個々の住宅の問題の場合にも、やはりそういう地域における新しい農家の住宅はいかにあるべきかとか、あるいはまたばらばらにある農家の家の位置というものも、宅地を造成し、土を盛り上げて集団化する。それに対してはやはり政府の適当な助成等も行なって、再度災害の防止の一助にするというようなことについても、この機会に真剣に検討すべきじゃないか、こういうことか、よりより今度の害災から出てきておるわけであります。こういう新しい町作り、村作りとしての営農の今後の方針、あるいは住宅等の生活改善の面も含めて、どういうふうに検討を加えておられるか、その辺のところをもう少しお伺いしたいと思います。
  91. 増田盛

    ○増田政府委員 ただいま災害後の村作り、町作りに関しまして、きわめて示唆に富んだ御意見がございましたけれども、私どもも実はやりたいことはいろいろあるのでございます。現在の段階におきましても、まず営農面に中心を置いて指導をいたし、しかも、県の計画を積極的に求めているわけでありますが、生活改善の部面に関しても、営農面と並びまして、将来の建設計画に対して深く考えなければならぬと思うのであります。大体先ほど申し上げました被害激甚部落の予算面に関しましては、これは共同作業が中心でございまして、あくまでも共同作業をする。あるいは動力耕耘機、脱穀機等々の営農面の共同化。また畜産に関しましては、養鶏面におきまして、共同育雛をする、あるいは共同養鶏をする、あるいは養豚の部面の共同化、それから蚕糸局関係におきましては、養蚕関係、稚蚕共同飼育、こういうものが取り上げられているわけでありますが、こういうものを取り上げていく場合におきましても、今後の農耕地の利用法、それから拠点となる住宅の配置等が当然問題になってくるわけでございまして、先年大災害をこうむりました狩野川台風の被災地帯で、その後の状況がどうなっているかということを、私過般視察いたしたわけでありますが、やはり大災害をこうむった程度が深ければ深いほど、単なる作業の共同化の問題から離れまして、生活の共同化の面まで考えなければならぬという点を痛切に感じてきております。しかも、そういう災害地のアフターケアといいますか、これは災害直後ではもちろん不十分であるし、一年たっても二年たっても、十分技術的な、あるいは経営面に関する指導も必要だということも痛感しております。こういう考え方に基きまして、現在被害の最も激甚な部落の所在する府県に関しましては、いろいろな積極的な計画の提出を求めておりまして、まだ未提出でございますが、今後そういう点に十分留意いたしまして指導いたしたいと思います。
  92. 角屋堅次郎

    角屋委員 新しい営農建設の方向ということについては、今十分検討の段階というふうに承ったわけでございまして、これは、最近の農業法人化等の問題とは出発点は違いますけれども、要するに、これからの農政の方向をどう持っていくかという方向と見合って、被害激甚地等、台風で非常な破壊を受けたところについては、同じような、旧態依然たる村作りをするのじゃなくて、新しい村作りの方向、営農の方向、今局長が言われました生活の共同化ということまで含めて、そういう積極的な推進の方向を検討する段階にきておると思う。現実に三重県あたりでは、そういう面においては積極的に計画もし、推進もしたいということでやっておりますが、今日までの農村の伝統的な考え方というものがあって、その推進の過程では、若干問題もあるようであります。しかし、これは長い目で見て、出発の第一歩に問題がありましても、十分な理解と協力を得てそれを推進していく、こういうことが考えられなければならぬと思う。その問題については、局長も言われるように、一つ大いに雄大な構想——と言っては何ですけれども、新しい農政の方向と見合って、振興局関係でも積極的に考えて、現地側の指導に当たってもらいたい。  なおまた今の問題に関連をして、これは必ずしも振興局の直接の関係とばかり言えませんけれども、例の長期湛水地帯における除塩の問題等が出ておりますが、この問題に関連をして、現地側では、この除塩の試験研究についてはっきりした機構、体制を作って、今後万遺憾なきを期するような方策を考えてもらいたいという強い要請等も出ておるわけであります。こういう機会をのがしては、そういう除塩問題等を含めてのいろいろな研究はできないわけですから、被害激甚地の今後の営農なり、作物等に与える影響はどうかという問題に対処する体制を、早期に整備してもらいたい、こういうふうに思うわけですが、この点については、一つ政務次官の方からお考えを承りたいと思います。
  93. 大野市郎

    大野政府委員 除塩の効果を試験をするようにという御趣旨でございましたが、まことに妥当でございます。これはこの機会に当然やらなければならぬことでございますので、相談いたしまして進行いたします。
  94. 角屋堅次郎

    角屋委員 食糧庁の方からも非常に長時間お待ちのようでございますけれども、すでに時間も相当過ぎまして、先輩同僚委員の御協力を得て質疑を進めて参りましたが、この機会に私の方で協力をいたしまして、本日の質問はこの程度にいたしたいと思います。
  95. 綱島正興

    綱島委員長 本日は、これにて散会いたします。明日は午前十時半より開会いたします。     午後四時四十八分散会