運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1959-11-18 第33回国会 衆議院 国土総合開発特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年十一月十八日(水曜日)     午前十時二十六分開議  出席委員    委員長 寺島隆太郎君    理事 島村 一郎君 理事 二階堂 進君    理事 野田 武夫君 理事 松田 鐵藏君    理事 足鹿  覺君 理事 館  俊三君       秋田 大助君    進藤 一馬君       田中 榮一君    丹羽 兵助君      橋本登美三郎君    松澤 雄藏君       兒玉 末男君    田中織之進君       長谷川 保君    竹谷源太郎君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁総         合開発局長)  藤巻 吉生君  委員外出席者         議     員 中村 梅吉君         衆議院法制局参         事         (法制次長)  三浦 義男君         総理府事務官         (経済企画庁総         合開発局総合開         発課長)    玉置 康雄君         総理府技官         (経済企画庁総         合開発局特別地         域開発課長)  紀本 正二君         農林事務官         (農地局参事         官)      正井 保之君         農林事務官         (農地局管理部         管理課長)   長田 秋雄君         農林事務官         (水産庁漁政部         漁業調整課長) 木戸 四夫君         通商産業事務官         (企業局次長) 磯野 太郎君         通商産業事務官         (企業局工業立         地課長)    柳井 孟士君         建設事務官         (計画局総合計         画課長)    佐土 侠夫君         建 設 技 官         (河川局開発課         長)      小林  泰君         参  考  人         (全国知事会千         葉県知事)   柴田  等君         参  考  人         (日本大学教授         国土総合開発研         究所長)    鈴木 雅次君         参  考  人         (全国漁業協同         組合連合会専務         理事)     岡  尊信君         参  考  人         (国民経済研究         協会理事長)  稲葉 秀三君         参  考  人         (朝日新聞社国         土総合開発調査         会委員)    比佐 友香君         参  考  人         (全国農業会議         所事務局長)  大坪 藤市君     ————————————— 本日の会議に付した案件  臨海地域開発促進法案川島正次郎君外三名提  出、第三十一回国会衆法第六七号)      ————◇—————
  2. 寺島隆太郎

    寺島委員長 これより会議を開きます。  本日は、臨海地域開発促進法案について参考人各位より御意見を伺うことにいたします。  この際、一言申し上げます。  参考人方々には、御多用中のところを本委員会に御出席下さいまして、厚く御礼申し上げます。本委員会では、ただいま臨海地域開発促進法案審査中でありますが、各位の御意見を承り、審査参考にいたしたいと考えておる次第でございます。なお、御意見開陳の時間は、おおむね十五分程度といたし、概括的、かつ重点的にお述べ願いたいと存じます。  これより順次御説明願うことといたしますが、その順序は勝手ながら委員長指名によって御発言願いたいと思います。なお、御意見発表ののち委員側から種々質問があろうかと存じますが、お含みの上お願いいたします。  この際、お知らせいたします。全国干拓促進協議会副会長の古賀俊夫君は、急病のため出席できない旨連絡がありましたので、御了承を願います。  最初に、全国知事会柴田等君より御意見を伺いたいと存じます。柴田等君。
  3. 柴田等

    柴田参考人 ただいま御指名をいただきました千葉県知事柴田等でございます。ただいま当委員会におきまして御審議されております臨海地域開発促進法案に関しまして、意見なりお願いを申し上げたいと存じます。  最近の日本経済の著しい伸展に伴いまして、臨海工業用地の需要が急激に増加しつつあることは、御承知通りでございます。通産省が最近出しました資料によりますと、大体今後十年間に臨海地域だけで八十万坪程度の新しい工業用地が必要であろうという所見が出ておるような実情でございます。しこうして、これらの臨海地域に新しく建設されます工場は、最近の技術の進歩なりあるいは経営規模拡大等によりまして、各会社は非常に膨大な土地を要する模様でございまして、現に千葉県で今約二百万坪の土地埋め立てをいたしておりますが、そこに十一社の工場が確定いたしております。これら十一社の用地は、最大のものが約三十万坪、最低のものが一工場で十万坪、十万坪から三十万坪程度用地を要求しておる状況でございます。こういうことからいたしまして、相当大規模土地が大量に必要とされてくるということが考えられるわけでございます。ことに臨海地域は、物資の輸送なり、原料の輸送につきましても、新しい港湾等を自由に作ることもできます。こういう意味におきまして、臨海地域工業立地として重要性が非常に大きく現在浮かび上がっておりまするし、今後もこれが継続するものと考えております。私どもの聞いておるところだけでも、東京湾地域で今後四千万坪程度埋め立てがいろいろ計画されておるようでございまするし、また、伊勢湾におきましては一千五百万坪程度計画があるように承っております。瀬戸内海沿岸におきまして約六百五十万坪、岡山沿岸地区において約六百万坪、大阪、播磨地区において約三百数十万坪、九州地方において約五百三十万坪、このような大きな計画が各地に計画立案されておるようでございますが、これらのことは、現在主として地方公共団体等が、各地域々々におきまして、その自治体としてのいろいろな産業開発計画等に基づいてやっておるわけでございまするが、私どももこれをやっておりまするが、これにつきましてはいろいろ困難な点がございます。  まず第一に、臨海工業地帯を造成するにつきましては、各関連地域におきまして総合的なマスタープランと申しますか、どうしてもそういうものがなければ、結果において、あるいは建設の途中におきましても、いろいろな問題が起こるわけでございますが、これらにつきまして、全体的な総合開発計画的なものが、その関連地域を通じて行なえることが必要である。これは私ども、水の問題なり、あるいは交通施設の問題なり、あるいは土地の配分その他につきましても、そういうことを感じておるわけでございます。それらの点につきまして、今回の臨海地域開発促進法では、国が全体としてのマスタープランをまず作るというようなことでございまして、従来われわれが欠陥と考えておる点がそこに行なわれるわけでございますから、それらの点も私ども賛成を申し上げる次第でございます。  それから具体的な問題としてわれわれが非常に困っておる問題は、水の問題でございます。工業地帯の死命を制すると申してもよろしいものが工業用水でございますが、この工業用水の必要にして、かつ十分な補給ということを考えました場合に、地方自治体だけの力では、とうてい十分なこれらの計画は立ちがたいのでありまして、先進工業地帯でありまする京浜地帯にいたしましても、あるいは京阪神地帯にいたしましても、あるいは北九州等にいたしましても、この工業用水の問題で非常に困っておる事情がございます。また、私ども千葉県の事情から考えてみましても、たとえば利根川につきまして、建設省調査によりますと、百三十億トンの水が年間に流れておる。現在利用されておるものは十五、六億トン程度でございまして、総量の一二%程度しか利用されていない。そういう利根川につきまして、私どもが水を利用するとして、県でいろいろな計画を立てましても、他府県との競合がございまするし、農業用水との競合がございまするし、また渇水時、増水時等の関係もございまして、相当な水が数字的には利用できるということになっているにもかかわらず、これらが利用できない。あるいは、霞ケ浦に五億トンないし八億トンの水があるといわれておりまして、これが十分に水として利用されておらないのでございまするが、これの利用計画というものは、千葉県だけの立場からいいますと、とうていその計画が立たないわけでございまして、茨城県と寄り寄り相談はいたしておりますが、そういうものがなかなか簡単にいかない。こういう水の面等につきまして、どうしても国の力によりましてこれらの水の総合利用ということを考えていただく必要がございます。最近の状況では、地下水を非常に使う形がございます。千葉県においても地下水を使用しておりまして、千葉県ではまだ地盤沈下等は起こっておりませんが、これは先進工業地帯でありまする京浜なり京阪神等では、地下水過度破片によりまして地盤沈下が大きな問題になっております。こういうようなことも相当規制をしていただきまして——現在地下水についての取水につきましては、法的な規制というものはほとんどないのでございます。千葉県では、あらかじめ各関係工場相談いたしまして、地下水をとる、いわゆる深井戸と申しますか、こういうものを掘る場合には、関係会社が県とともに協議をいたしまして、これ以上はおのおのの工場において地下水をとらないというような方向で自主的にやっておりますが、この地下水を法的にはっきり統制するような法規は、現在ないようでございます。  こういう全体の関係を総合いたしまして、水の問題につきまして積極的な政策を国としてとっていただきたいということを考えておりますが、今回の臨海地域開発法によりますと、関連施設の整備というようなことがございまして、そこでは、いわゆる水の問題なり、あるいは交通の問題なり、その他大きく取り上げていただくようになっておりますので、私どもはこういう点に十分力を入れていただきまして、マスタープランができますれば、土地造成そのものはある程度地方団体もできますが、今申しました水の問題、交通の問題その他は、地方団体だけではとうていできないわけでございますから、これらの点につきまして、十分国家的な立場でおやりを願いたいと思うわけであります。ただ、これは先ほど申し上げました通り千葉県におきましてもそうでございまするし、あるいは東京都、神奈川県その他の地域におきまして、通産省の調べによりますと、全国的には二十数カ所で、やはり各県なり、あるいは市なりにおきまして埋め立て計画を持っております。こういうものと非常に深い関係がございますので、これの今後の法律決定なりあるいは運用につきましては、私どももいろいろ御希望申し上げまして、ぜひこれをお聞きいただきたいという幾つかの点がございますので、法には基本的には賛成でございまするが、それらのわれわれの希望の点をお聞き願いたいと存じます。  第一点は、法律によりますと、臨海地域というものを内閣総理大臣指定することになっております。その指定された臨海地域につきまして、開発基本計画というものを審議会がきめるということになっておりまするが、法律関係では、その基本計画をきめる際に、関係知事意見建設省を通じて徴する、意見を聞くことができるというような書き方でございます。ところが、これは私が申し上げるまでもなく、各県といたしましては、自分地先埋め立ていたしまして、そこに産業なりあるいは公的なり私的ないろいろな施設が新しくできまするその基本計画等につきましては、非常に重大な関係がございます。従いまして、単にこの計画について意見を聞くということでございまするけれども、私どもとしましては、第一の、指定につきましても、また計画につきましてはもちろん、知事の、端的に申し上げますれば、同意を得るといいますか、知事もそう無理なことを言うことはないわけでございますが、この法案によりますと、指定については全然知事は無関係な形になっております。計画につきましては意見を聞くことができるという程度でございますので、私どもといたしましては、その指定につきましても、その地域全体の関係におきまして知事は重大な関心がございます。基本計画につきましては、もちろん非常に重大な関係がございますから——意見を聞くということは、ある意味においては、同意を得るということに近い、法的にはそういうことになるのかもしれませんが、そのところははっきり、同意という言葉が適当でなければ、協議という言葉でもよろしいかと思いますが、単に意見を聞くという程度では、私どもは非常に自分地域、個所につきまして心配でございますから、もう少し積極的に、同意を要するとか、協議をするとかいうようなふうにお書き願いたい、そういうふうにそこを改めていただきたいということが第一点でございます。  それから第二点は、臨海地域開発促進法におきましては、開発審議会というものが、非常に大きな権限と申しまするか、そこで基本的ないろんなものが決定されて、それに基づいて内閣総理大臣がいろんな命令を発するということになると思いますが、この臨海地域開発審議会委員の内容を見てみますと、府県知事というものがその中に入っておらないわけでございます。私どもは別に自分権限を振り回すということではございませんが、重要な基本計画を定める審議会、また臨海地域指定する基本をきめます審議会というものには、やはり関係府県知事港湾の場合には港湾管理者ということになるわけでございますが、関係府県知事なり、あるいは場合によりましては港湾管理者委員に入れていただきまして、その計画決定等審議につきましては、関係府県知事等をその審議の中に入れていただきたい、かように思っております。相当員数が多いのでありますから、あるいは代表ということもあり得ますし、あるいはその問題ごと臨時委員というようなことでもやむを得ないかもしれませんが、方法論としてはいろいろあると思います。法律の上では府県知事というようなことは全然出ておりませんので、そこはやはりある程度府県立場も尊重していただくという意味におきまして、関係府県知事というようなものを委員の中に入れていただきたい、かように思っております。  それからいま一つは、非常に具体的な問題でございますが、臨海地域埋め立てをいたしますにつきまして、非常に大きな問題としては、やはり漁業補償並びに漁民対策の問題がございます。私ども埋め立てをいたしますのに、長い場合は、一カ所の埋め立てをするのに一年から一年半くらい補償の話し合いに手間をとります。一番長い場合には、二年くらいかかった場合がございます。しかも、これには御承知のように何らの根拠法がございません。電源開発法につきましても補償の場合の一つの例がございますが、そういうものを一応頭におきまして交渉いたしまして、数十回あるいは百数十回の会合を重ねて、やっとその結論に達するというような状況でございますので、これは非常にむずかしいことではございますが、今度の開発促進法そのもの、あるいはそれに付帯いたしまして、重要な漁業補償に関する基準と申しますか、そういうものをお考え願いまして、そうしてこの交渉につきまして法的な根拠を与えていただくということが非常に必要でありますし、また、この臨海地域促進法に基づきましてできます事業団——公団なり特別会社ができることに今度おそらくなると思いますが、これらの公団なり特別会社仕事をされる場合におきましても、漁業補償の問題は非常に大きな困難にぶつかるのではないかと思います。その意味からいたしましても、漁業補償というようなことに対する一つ基準的なものを法定する必要がどうしてもある、かように考えます。さらにまた、これらの漁民に対しましては、単に金銭的な補償をやって済むものではございませんので、補償をやりましても、そのあとにこれらの漁民をいかに転業させるか、あるいは新たなる漁業に進出させるか、他の仕事の方に転出させるか、そういう漁民対策というものがどうしても必要でございます。これらのものにつきましても、補償基準を定めますと同時に、漁民の転業なりその他の対策というものがどうしても必要でございますので、これらの点から考えますれば、これは私としてはよけいなことかもしれませんが、この審議会にやはり労働省関係方々も入ってでいただきまして、漁民対策というものも真剣に国も考えるのであるというようなことも、どうしても必要な事項ではないかと存じます。  それからいま一つは、新しく特別機関というものが、この開発法そのものに規定してございませんが、いずれそういうものを作るということが規定してございます。これはどういう機関になるか私どもは存じませんけれども、これに基づいて作られます新しい事業団というものは、各県の地先におきまして、われわれと非常に関係の深い土地の造成なり、あるいは関連施設の整備なり、その他の開発仕事を継続しておやりになるわけでございますから、それらの特別機関につきましては、地方自治体は重大な関心を持たざるを得ませんし、また、それに対してある程度発言権と申しますか、端的に申し上げますと、参画させていただき、出資等のことがある場合には、関係地方団体もその出資をいたしまして、その一員としてわれわれも直接にそれらの事業の一部を担当するようなことにいたしたいという考えを持っておるわけでございます。これがどういう形になるかわかりませんが、事業団体にわれわれもある程度資本的あるいはその他の方法によりまして参画させていただきたいということでございます。  最後に、これは私どもとしては非常に重大でございますが、現在地方自治体がすでに計画をいたし、着手しておるものもございますし、千葉県で申し上げますと、現在約二百万坪着工して進行中でございますし、これに引き続きまして約三百五十万坪というものも近くやろうといたしまして、関係工場その他と相談をいたし、すでに関係工場その他からいろいろな申し入れが相当参っておる地域が三百五十万坪ほどございますし、その他、市と相談いたしまして、今計画に乗せようという地域が、そのほかに約五百万坪程度ございます。これらの地域につきまして、われわれは何もかも地方自治体でやるということではございませんが、千葉県で申し上げますと、少なくとも三千万坪くらい埋立可能である。その地域で今われわれが計画しておるところが約七、八百万坪ございます。これらのところにつきましては、事業団ができましても、事業団とわれわれは十分連絡をとってやりますが、地方自治体が現にやり、あるいは今後も地方自治体にやらせてしかるべき地域等につきましては、やはり事業団相談いたしまして、地方自治体にそのまま継続させてやっていただきたい。これはもちろん、国が立てられました基本計画マスタープランの規定といいますか、その計画に従ってのことになりますが、現在県が計画し、もしくは近くやろうといたしておりますそういうものにつきましては、マスタープランの範囲内において、事業実施はやはり地方自治体にやらしていただきたい部分が相当ございますので、このことも、事業団体ができた後の話でございますが、十分御考慮下さいまして、事業団地方自治体と共同して参られますよう一つ考えをお願いしたい。  これらの点がおもな希望の要点でございます。私どもが最も希望いたしております国家的な、総合的なこういう方面に御進出をしていただき、資金面なりその他の面につきましても、国ができるだけこれに対してやろうというような今回の法律に対しましては、私どもは心から賛成でございますので、ただいま申し上げましたような希望を十分お考えいただきまして御審議いただきますようにお願い申し上げる次第でございます。
  4. 寺島隆太郎

  5. 鈴木雅次

    鈴木参考人 本法の中心課題であります臨海工業地帯造成に関する学問は、わが国において初めて体系づけられて、わが国において発達した独特の工学でありまして、しかもこれを実際に適用し、あるいは施行するには最適の、また最良の条件がわが国において特に恵まれているのであります。従って、わが国臨海工業地帯は、国際的に見たる工業立地優位性におきまして、諸外国のとうてい追従を許さないという点を特に御認識を願いたいと思うのであります。諸外国における重要なる工業地帯立地は、それぞれの国が多年の努力によりまして築き上げた国内運河網に点在いたしておるのであります。ところが、わが国におきましては、地形上、国内運河を築造することは不可能でありましたし、幸いにして国土をめぐらす長大な海岸線がありますので、それに沿うての工業地帯が配置されますなら、わが国をめぐる海洋を、あたかも外国における運河機能と同じように利用することができるのであります。たとえば、製鉄工業立地関係について考えてみましても、西独工業地帯外国鉄鉱石を持ち運びます場合には、まず大きな航洋船によりましてエムデンの港に持ってくる。そこで国内運河用のはしけに積みかえるのであります。それから西独が最も自慢しておりますドルトムント・エムス・キャナルを通って工業地帯に持ってくるのでありますが、その間十日を要するのであります。かような国内運河を通る時間というものは、生産コストに影響するところは実に大きなものがあります。わが国におきましても、製鉄の場合の生産コストの原単位のうちで、荷役あるいは運搬賃の占める量は実に四二%に及ぶのでありますから、これをできるだけ施設面において少なくすることが、国際的に市場価格を下げるゆえんであり、最も効果のある手段であると存ずるのであります。しかも、日本臨海工業地帯によって運河化された日本をめぐる海洋というものは、言うまでもなく世界市場、あるいは世界原産地に直結いたしておりますので、これは諸外国における国内運河に配置された臨海工業地帯に比べて、わが国臨海工業地帯がいかに優秀であるかということは、言うまでもないところであります。また最近、世紀の大土木事業としてカナダが着手しておる例のセントローレンス川の運河化でありますが、これによりまして、アメリカ五大湖地方アメリカの地中海に化したと自慢いたしておりますが、ここを通ることを許される船は、一万トンにすぎないのであります。わが国臨海工業地帯におきましては、ペルシャ湾から十万トンの石油を積んだマンモス・タンカー以上のものを直接工場地先に横づけして荷役することができるのであります。さらに、セントローレンス川にいたしましても、あるいは先ほど申しました西独運河にいたしましても、なおソビエトで最も自慢をいたしております、あれほど力を入れてきた国内運河にいたしましても、これは十二月になればみんな閉ざされて、五月までは機能を中止するのであります。しかるに日本臨海工業地帯におきましては、年じゅう稼働することができるのであります。さらに、工業規模が逐次どこの国でも拡大いたして参ったために、今までのように国内の地場の資源を対象にした小規模工業では、国際的に競争ができないのであります。かくして、工業規模は拡大し、またこれに必要な原料を運ぶ船も大きくなり、また原産地外国の遠いところに求めるということになりましたので、ますますわが国臨海工業地帯優位性というものは卓絶いたしておりまして、すでに西独工業地帯のごときは、日本工業立地から見ればもう陳腐化したということが言えるかと思います。  このように、国土開発のための諸施設整備のうちで、日本の特に恵まれた唯一最大の長所を総合的に、また効率的に伸ばすことこそ、わが国経済発展の最も有利、有効の道であると思うのであります。しかるに、こういうような方面に対する今までのわが国の施策というものはきわめて貧困でありまして、たとえば資金面におきましても、今までは主として一般の地方債の準公共事業部門の僅少なるワクのうちのまた一部によってまかなっていたというありさまであったために、わが国の近時伸びてきた工業発展の需要を用地の方がまかない切れないという実情にあるのであります。まして今後、わが国の国民所得の増大に対応しての工業整備に先行して施設しなければならない臨海工業地帯の量などは、とても及びもっかないところであります。こういうような場合におきまして、強力にこの事業の推進を意図し期待するこの法案の成立は、私の最も望むところであります。  特にこの際申し上げたいことは、今日わが国工業地帯造成の所要量についてであります。これはわが国工業の伸びが、主として新長期経済計画に基づく伸びを勘案して計算いたしておるようでありますが、さらにこれが国民所得を増大しようということになれば、それは訂正されなければならぬと思います。それよりもっと大きな問題は、今までの既成の工場の陳腐化といいますか、多少そういう傾向にあるものを、体質改善のために、また新たな効率の高い適地を選ばなければならぬのでありますから、そういうような所要量もさらに加えなければならぬ。こういうようなことから見ますれば、今一般にわが国において考えられております臨海工業地帯開発の量よりも、もっと大きいものが要求されるであろうと思いますので、特に本案のような促進を趣旨とする法律は、一そう必要度を増すものと存ずるのであります。  私の研究所では、まことに未熟ではありますが、数年間にわたりまして、臨海工業地帯開発の効果の測定のための方法論を、不十分でありながら追究いたしております関係上、その算定式に用いまして、たとえば大分県鶴崎の臨海工業地帯六十五万八千坪の実際の効果計算をいたしたのであります。それによりますと、大分県の現在の総生産額に対しまして、県民の総生産所得は一六・五%増すのであります。さらに、県民の配分所得に至りましては、八・四%増と相なっておるのであります。それと同じ算定方式を使いまして、岡山県の依頼によって、水島の臨海工業地帯二百三十四万五千坪の効果を計算いたしましたところ、実に県民の総生産額の増におきましては四二%、それから配分所得の増に至りましては二六%と相なったのであります。これらの大きな効果の数字をごらんになっても、いかにわが国臨海工業地帯開発が、関係地方の繁栄と県民福祉の増進に至大の影響があるかということがおわかりと存ずるのであります。従って、現在各府県におきましてはそれぞれ臨海地域開発のことを熱望されておりまして、工場誘致に全力を傾倒しておりまする理由もここに存ずると思うのであります。こういうような地方的の熱烈な希望の中にありまして、全国的に見て、最も適正なる工業を最も適正なる地域に配置するのに、いかにして調整するかということは、きわめて至難の課題であると思います。それには、強力なる解決のできるような、たとえばこの法案によって設置される審議会の権威というものに期待するところが実に大きいのであります。  臨海工業地帯開発の算定式につきましては、今まで述べましたように、各地域の効果計算をいたすのと、もう一つ、全国的に適正なる配置をやるための算定式とは幾らか違うのであります。すなわち、全国的に巨視的に計算いたします場合には、単に産業上の効果、たとえば総生産額とか、あるいは配分所得とかいうものを最大に持っていくだけでは足りないのでありまして、そのほか、たとえば雇用の増大であるとか、あるいは輸入に対するある種の制限であるとか、または人口の適正なる配分というような、各種の国政上望ましい諸条件が加わってくるのであります。その間において最も効果を上げる計画を立てなければならぬのでありまするが、これには、いわゆるオペレーション・リサーチ法によって算定することが必要であります。こういうような場合に適用できる算定式は一応でき上がっておりまするが、これはまだ学問研究の段階でありまして、今直ちにこれを用いまして実際上の施策の指針とする、そこまで御採用願うというまでには至っていないのであります。まだ数年間、真摯なる学問の追究と反省と、さらにたびたびの試算をやった後でないと、そういうところまではいかないと私自身思っているのであります。  こういうように、数値に基づく正確なものさしが今すぐ得られないという段階におきましては、もっぱら本法に規定されておりまする審議会委員の厳正なる、良識ある判断に待つよりほかに解決の道がないと思うのであります。その際もし、俗にいう政治的あるいはその他の情実やコネの圧力というようなものが働くといたしまするならば、これは純正なる結論は得られないことに相なるであろうと思うのであります。本法の対象である臨海地域開発が、わが国国土開発上に影響するところまことに大きいことにかんがみまして、本法の運営に際しましては、特に慎重なる注意が必要であると思うのであります。  なお、現在わが国臨海地域の発展を阻害し、あるいは制約する最大公約数は、先ほど柴田参考人からもお話があった通り工業用水の量の問題でございます。従って、水源の確保の目当てのつかないような臨海工業地帯の造成は結局砂漠を作るようなものであります。この用水のほか、港湾埋め立て、それから道路、鉄道あるいは農業との関係、あるいは、北海道のような後進地方の第二次産業の促進といったような問題とか、いろいろ関係する要素が非常に多いのであります。それらが今政府機関としては各省に所管が分かれておりますので、そういうものがいかに完全に総合され、調整されるかということが問題でありますが、そういうものが十分ハーモナイズして、初めて本法の所期の目的が達せられるのでありますから、関係の各省が本法の施行によって最も協調が円満にできるような仕組みであり、しかも強力であることを望むのであります。  なお、このたびの伊勢湾の台風による災害にかんがみまして、臨海地帯開発に若干の不安を持ち、またその促進法に対して多少いろいろ意見を持つ向きもあるようでありますが、大体水域を押しのけて、人間のために利用できる陸域に変えるには、土木の手段としては二つの方法があるのであります。それは第一は干拓式、第二は埋め立て式であります。干拓式は、海底をそのままにして、まわりに防潮堤を築き、水をかい出す、埋め立て式は、満潮面よりも高く土を盛り上げて陸地を作る、この二つの様式があるわけでありますが、臨海工業地帯におきましては当然埋め立て式が採用されるわけであります。そこで、かりに異常の高潮が襲来いたしましても、もともと高い地区でありますから、一時水がのっても、直ちにこれが排除される、陸地が現われる、こういうことになるのであります。従って、その被害は、干拓によって発達した低地よりも、はるかに少ないということが言えるのであります。しかも臨海工業地帯のための用地の場合には、この地底よりも少しかさ上げをすれば、これは絶対に被害が除かれるのであります。絶対安全が確保できるのであります。一般に重化学工業の設備投資というものは、臨海地の場合におきましては、面積一坪当たり平均七万円あるいは八万円くらいの投資が行なわれる場合が多いのであります。かりに、高潮の対策といたしまして、敷地面を今までの計画よりもさらに一メートル上げる——一メートル上げるということは珍しいのですが、かりに一メートル上げるといたしますれば、その工費は坪当たりで七百円、八百円で足りるのであります。そうなりますと、全体の臨海工業地帯に対する設備投資の一%にすぎないのであります。かような小さな投資を加えることによって、高潮に対して絶対安心のものができるのでありますから、高潮対策といたしましても、これほど実現性があって、効果的なものはないと思うのであります。さらに、干拓地としてすでに発達した低地がうしろにあるといたしましても、前方に高い埋立地ができることになりまして、後方の在来の低地の安全性は当然増すものとみなければならぬのであります。伊勢湾台風によって教えられるところは、臨海地域開発促進法の施行に対するブレーキでなくて、むしろアクセラレーターであったのであります。  これを要するに、臨海地域開発は、特に日本に恵まれた自然条件を活用し、また一方、重化学工業、なかんずく賃加工的工業の拡大発展のため、ひいてはやがて国民の配分所得の増大のため、まず重点的に施行しなければならない、国土開発上最大施策の一つと確信するのであります。よって、それを効率的、総合的に強力に推進することを企図する本法案の成立には、私は最も賛意を表するものであります。しかし、その影響があまりにも大きいのにかんがみまして、本法の運用につきましては十分に意を用いまして、各省間の円満なる調整をはかって、全国的に見て適正なる産業の配分が行なわれ、それによって人口の望ましい配分が行なわれることを期待いたしまして、私の意見の開陳を終わる次第であります。
  6. 寺島隆太郎

  7. 岡尊信

    ○岡参考人 この法案が、わが国経済の発展及び人口増加の趨勢に対処するため、臨海地域における工業その他の用に供する土地造成、利用及び関連施設の整備を、計画的に、総合的に推進し、調整していくことを目的としたものであり、大局的に見て、国土の合理的利用、産業基盤の育成強化をその趣旨としているのであります。従来は公有水面埋立法によって、各県がそれぞれ埋め立てを実施して工場誘致をするというような状態から考えてみますと、進歩というべきであろうと思いますが、これが実施せられますと、漁場埋め立てが促進せられ、沿岸漁業者がその生業の場を失い、生活の道を断たれる事態が発生するのであります。よって、抜本的な施策が、本法案の実施にあたって明確に打ち出されなければ、いかに本法案の意図が、国家的に、かつ大局的見地に立つものだと申しましても、漁業者といたしましては、無条件には賛成できないのであります。次に申しますような施策がもし考えられるにおきましては、先ほども申した通り、従来の埋め立てよりもよいというように考えておるのであります。  まず第一には、埋め立て実施に際しては、水産業に対する犠牲を最小限度にしてもらいたい。経済の目ざましい発展成長と、人口の増加の趨勢に伴い、工業用地、住宅地等の確保のために土地造成の必要は理解できるが、巨額の費用を投じ、特に沿岸漁業者に著しい犠牲をしいる臨海地域埋め立てのみにその方向を求めることなく、わが国産業中最も高価な漁業とされている浅海漁業の犠牲を最小限度にすべきだと思います。  本法案が成立した暁には、相当広範囲に漁場埋め立てが進行することが正当化されて参りますが、たとえば東京湾をその一例にとってみますと、埋立適地と称せられる浅海地帯においては御承知のように、ノリ、貝類の生産が盛んであり、その実情を数字をあげて御説明しますと、以下申しますことは昨年の統計でありまして、ノリが最も不作の、最もできの悪いときの統計でありますが、東京湾中千葉県沿岸は、漁家数が一万二千八百九十三戸生産高が二十七億九千四百万円、東京都は三千三百戸、十九億二千八百万円、神奈川県は二千四百五十七戸三十億百万円、これを合計いたしますと、一万八千六百十の戸数で、総額が七十七億二千三百万円にもなっております。さらに、これに同海域に関係のある十トン未満の漁船漁業の生産を加えますと、実に九十二億円になる。これは農林統計でありますが、実際上は百億以上の生産をあげておるのであります。しかも、全国的に見ましても、昨年度の沿岸漁業臨時調査によりまして明らかになっておりまする通り、沿岸漁家層の最近における浅海養殖漁業に依存するウエートは、年々増大して参りました。しかも、本事業は沿岸漁民にとって、他の漁船漁業等よりその生産性がはるかに高く、漁業所得の実質的増加の役割を果たしており、すでに農林漁業基本問題調査会、漁業制度調査会等の審議過程におきましても、本事業の積極的推進こそが、漁家経済向上の大きな要素となる点が指摘せられており、昨今所得倍増というようなことが叫ばれております現在、かかる貴重な漁場が埋め立てによって喪失することは、ひとり漁業内部の問題だけでなく、国民経済的見地からもきわめて重大といわねばなりません。  ここに私は昔の例を申し上げますが、太平洋戦争前に日本海軍が空軍の基地を千葉県に求めようとしたときに、海軍が秘密裏に調査して、適地として、また埋め立てが簡易にできる土地として、金田村付近を指定してこられたが、この土地は東京湾でも最もノリの生産が多いところであるから、それによって数千の漁民が職を失う、この犠牲を何とか少なくしてくれないかというようなことを申し出ましたところ、海軍は、それでは、ちょうど木更津には埋め立て計画もあるから、木更津へ持っていこうというので、木更津に持っていきまして、この沿岸漁業の損失を少なくしたのであります。従って、私どもはこれに対しては漁業補償というようなことは当時主張を避けたのであります。そうして漁業生産の犠牲を少なくしたのであります。  次に、この問題を議する際に、工業用地のほかに、住宅用地、農業用地あるいは市街地というようなことを考えられておるようなことが、説明の中にあるようでありまするが、これは住宅用地とか、市街地とか、農業用地とかいうものをやる場合には、内陸地について少し考えを起こしていかなければならないじゃないか。今東京の二十二区の総面積中一三・四%というものは田、畑、樹園地であります。こういうようなものは多くは名目的のものであって、実際上は使われてない。かりに使いましても、きわめて生産の少ない田畑と思うのであります。そのほか、有閑地あるいは原野、山林、旧軍用地等が相当あります。そうしてしかもそれが現今の地価相場の高騰、異常なる土地ブームの根源をなしておる土地資本の投機となっておりますので、これらを抑制するために、宅地の所有限度の制限と申しますか、これは少し言い過ぎかもしれませんが、そういうようなことを考えるとか、あるいは住宅の立体的建設等を積極的に国が考えるならば、こういう臨海地域埋め立てというようなものは工業用地としては必要であるかもしれませんが、住宅用地なり、市街地なり、その他としては、内陸地に考えを及ぼすことができないだろうかというようなことを考えておるのであります。  次に、明確なる漁業対策が打ち出されてない。これは柴田参考人からも言われておりまするので、詳しくは申しませんが、この法律案は埋め立てに関する計画と調整の法律でありまするから、これにいろいろの修正や、いろいろの要望を書き加えることはどうかと思います。そこで今までのたとえば補償問題をとってみますと、補償は、いわゆる公有水面埋立法の五条でありまするが、これに補償を受ける権利者というようなものが指定してある。その指定は「漁業権者又ハ入漁権者」というような、大正十年に作った法律でありまして、当時の漁業状態と今日の漁業状態とは違っておりまするので、これらの問題はいつの時代にか整理しなければならぬと思います。そのほかはどうしてあるかといいますと、防衛庁補償の要綱によるもの、あるいは電源開発、あるいは土地改良事業に伴う補償によるもの等々、種々雑多でありまして、この補償の実態も各地各様で、統一されておる基準がなく、政治力が強い場合、あるいは漁民の圧力の強い場合というようなことによって、多くなったり少なくなったりするということは望ましいことではないと思います。でありまするから、この埋め立ての企画と調整を抜本的にこれによって決定することが必要ではないかと思います。  次に、地域指定に至るまでの漁業者の意思を尊重する点が欠けております。先ほど柴田参考人からも、関係府県知事意見を聞けというような御意見がありましたが、ごもっともと思います。これを一つ考えてもらいたい。しかも、本法案のごとく大局的見地から国の経済政策、産業政策を打ち出すために犠牲となる漁業並びに漁場補償の実施につきましては、完全な補償が行なわれるよう明確な措置をとっていただきたい、こういうようなことであります。  次に、漁民の就業対策、これも柴田参考人からお話がありましたから、略しておきます。  次に、開発基本計画関連施設中には、ただ条文の中に「関連施設」云々と、わずか十数字をもって盛られておるのでありますが、これは非常に重要なことであります。でありまするから、この点については、あとで法律の改正その他について申し上げまするが、これを入れていただく。次に、漁場埋立完成後になおその地先水面に開拓、育成すべき漁場のある場所には、政府の施策によって養増殖事業等を推進し、その漁場を守るようにいろいろの施設を作っていただきたいと思います。  そこで、しからば今申しましたことで、この臨海地域開発促進法をどういうように直していただいたら、われわれの目的が達せられるか。お手元に書いたものを差し上げてありまするが、まずこういうように直していただきたい。  第一は、第三条第三項に、建設大臣が地方長官の意見を聞くと書いてありまするが、これは調整法でありますので、建設大臣の専管であるかのごとき字句を使わないで、ここは私は、経済企画庁長官が、各関係省と相談の上、その案を出すようにしていただくことが必要ではないかと思います。  第二には、第四条の関連施設、十数字で書いてある、その他関連施設ということでありますが、これを明らかにしていただきたい。今までは地方公共団体の埋め立て事業でありましたが、あるいは今度は特別機関公団式によっておやりになると思いますので、従来は予算にとられたり、あるいは方々からの意見でだんだん何しまして完全な埋め立てができてない。護岸にいたしましても、いかなる台風にも、いかなる高潮にも耐えられるような護岸を作るというようなことも、もちろん実施上の問題でありますつるが、その他の関連施設としては、工場、下水道等から排出される汚水等の処理施設、これは非常に重要な問題でありまして、今東京もそうでありますが、一番大きな問題は大阪であります。大阪の淀川が、京都から流れてくる賀茂川その他の水によって汚染されて、今や淀川の水では、化学工業の重要な工業は大阪においては工場不適地になるのではないかと思っております。こういうように工場に必要な水、現在でも大阪といたしましては、琵琶湖の水でも持ってこなければならないのではないかということもありますが、汚水を処理する施設、たとえば八幡製鉄あたりでは、この工場で使った水を浄化して、さらに工場の用水に使っておる。アメリカあたりではほとんどそういう施設をしておる、それでそういうような施設、あるいは海岸保全施設交通施設港湾施設及び漁港施設というようなものも、日時に関連施設として計画の中には必ず入れるというふうに書いていただきたい。それから用排水施設並びに電気ガスの供給施設、これもこの基本計画の中に当然入れるべきである。それから水産資源保護法による保護水面の管理に及ぼすべき障害の防除に必要な施設、そのほか、産業基盤の育成強化または民生の安定向上に必要な諸施設を入れるというようなことを——これは十数字をもって埋めておる関連施設なんという字でなしに、第四条の次に一つ条文を入れまして、関連施設というものを入れていただきたいと考えております。  それからもう一つは、これも柴田参考人からお話があったところでありますが、既存事業の利益の尊重ということであります。これは今までのような公有水面埋立法によるもの、あるいは閣議決定でやるというようなことでやらないで、政府または第十六条の特別の機関その他の者は、基本計画の樹立及びこれに基づく事業の実施にあたっては、みだりに当該臨海開発区域における水産業その他の事業の円滑な実施に支障を及ぼすことのないようにする等、これらの事業の利益を尊重し、やむを得ない理由により支障を及ぼす場合においては、損失の公正な補償その他必要な措置——この必要な措置というのは、柴田参考人が申されたのですが、必ずしも金ばかりのことではありません。あるいは土地を与えて農業に転換させるとか、あるいは他の地区に漁船を大型化してやるとかいうようなことも考えてやらなければならないのではないか、こういうふうに考えております。  もう一つ、第五集中に調整規定がありますが、その調整の規定のところに、及び基本計画がこれらの処分または事業に重大な影響を及ぼし、またはその円滑な実施に支障を及ぼすおそれのあると認めるときは、内閣総理大臣審議会意見を聞いて調整をはかるというようなことを——埋め立てに関する場合の調整だけでなしに、こういうようなものに対する場合も、内閣総理大臣審議会意見を聞いて、審議を経てやらなければならないというようにやる。今申しました条文の例は、御承知通り電源開発促進法にもあります。「工業用水の不足、木材の流送の支障、さく河魚類の減少その他の事由により損失を受けた者があるときは、当該電源開発等を行う者は、その者に対し、公正な補償をすることに努めなければならない。」また、国土開発縦貫自動車道建設法、及び同施行令というようなものにもそういうような規定があるのでありまするが、どうぞ今申しました点だけはこの法律に盛り込んでいただきたいということをお願いいたします。こういうものができた暁は、直ちにこの事業そのものは、前にも申いました通り、今までの各公共団体でやっていた埋立事業を、さらに総合的、計画的に促進できるものと思いますので、そういうようなことができた暁には、私どもはこれに対して異議を申し述べるものではありません。
  8. 寺島隆太郎

    寺島委員長 質疑の通告がございます。順次これを許します。長谷川保君。
  9. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 今だんだんと貴重な御意見を拝聴したのでございますが、私がまず伺いたいことは、岡漁連専務理事にお伺いいたしたいと思います。  従来もずいぶん各地で漁場になっておりますところを埋め立て、干拓等をいたしまして、工場を作ったり、港湾を作ったり、耕地を作ったり、いろいろなことをしておりますけれども、今度のこの法律で私ども心配します一つの重要な点は、これは非常に強力な機関で押しまくるという形になりますから、漁民諸君が非常な損害を受けて反対なんだけれども、つい権力の前に押しまくられてしまったということになって、生活が危殆に瀕するということがもしあると、これは非常に困るということを心配しておるわけであります。そこで、今までもそういうような埋め立てや干拓やいろいろなさって、あるいは工場ができたとか、いろいろなことがございますが、従来の御経験で、漁民がそういうような被害を受けました場合に、漁民の生活が損害を受けるような事態に立ち至った例が相当あるだろう、つまり別な言葉で言えば、補償されたでありましょうが、その補償は十分であったかどうか。そのあと漁民諸君が生活を正常に続け、あるいはよりよく豊かに発展させるということに支障があったというような実例がたくさんあるかどうか。そういう点についてあなたの御経験を伺いたいと思います。
  10. 柴田等

    柴田参考人 ただいま長谷川先生からのお話の点でございますが、その点は、今までの私どもが実際にそうでございました。五つくらいの漁業組合といろいろな折衝をいたしましてやっておりますが、計算の方法は、大体ノリ、アサリ、ハマグリ等につきまして年間の純益というものを見まして、大体その十カ年程度のものを出す。そのほかに、その地域におきまして特に希望しておる公共的な事業あるいはそれに類するような仕事を、別に、純粋な補償と離れまして、その地域によりまして若干いたしておるという方向で補償の問題をやりますと同時に、その漁民が漁場全部を失った場合と、一部を失った場合と、両方ございますが、全部失うような場合におきましては、少なくとも一人は必ず就職させる。というのは、そこへ参ります工場なり、あるいは新たにできまする住宅地その他につきまして、工場に就職させるなり、住宅地においては適当な仕事を与えるなり、いろいろな方法を講じておりまして、一軒々々漁民の家庭の実情を調べまして、就職を要する人がどのくらいあるかということを全部調べます。ある一つ地域の例を申し上げてみますと、一昨年と昨年の初めにわたりまして、補償しました約八百戸ほどの漁家について調べ、先般町長からもいろいろな報告を聞きましたが、大体八〇数%はどうにか就職ができるようになっておりまして、約二〇%弱がまだ残っております。そういうことで、補償いたしますと同時に、どうしてもその中から最低一人ないし二人は就職させてあげるということを今までやっておりまするので、現在の段階では、補償の結果が非常に不満であったということはまだ起こっておりませんけれども、しかしこれはよほどその辺をやりませんと、いろいろな問題が起こるかと思います。今回の促進法に基づきまする会社等の事業の施行につきましては、そういう点に十分に関心を持っていただかなければならないと考えているわけであります。
  11. 岡尊信

    ○岡参考人 今の長谷川先生の御質問は、今までに損害を受けて非常に困った例はないかということでありますが、漁民というものは、まず第一に、どんなに収支が償わないような漁業であっても、その土地からよそへ出ていくということを非常にきらう人種であります。そういうようなことで、場所によってみんな違いますが、ある程度補償金というものが、今のような、騒げばよけいもらえる、政治力が強ければよけいもらえるというようなことでなしに、先ほど申したように、法律の上で基準を作っていただく。そうすれば、補償金を取るために非常な日にちと経費を使わないで済む。そんなことをするひまに、漁業転換のことを県庁なり政府なりと考えるようにしていくべきではないかと思います。例といたしましては、狩野川の干拓でありますが、二億何千万円かの補償金は、そのまま家庭に渡さないで、その組合員を株主とする一つの遠洋漁業会社を作って遠洋へ出す、あるいは、石川県における巴潟という干拓の仕事に私は関係したことがありますが、これは半農半漁でありますから、埋め立てをした土地を一町歩なり五反歩なりを補償としてやって、一つ農業に転換させたらどうか、外洋へ出て行けない漁民でありまするから、そういう措置を講じました。とにかく補償という問題と、跡始末という問題と、漁業の転換なり、あるいはそういうことに政府が力を貸していただければ私はいいだろうと思います。ただ、その補償が、力関係でいたしたのでは、どうにもなりませんから、法律にそういう条文を置いてやっていただきたいというのが私の考えであります。
  12. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 柴田さんのただいまのお話でありますけれども、大体昨年、一昨年の例だと、八〇数%は就職したそうですが、私も漁民の実態を全然知らぬわけではございませんけれども、長年漁業をやっておりました漁民というものは、ちょっとほかには使い道がない、ほかに行って仕事の転換をするということはほとんどできない。ことに外洋に行く漁民はそうだと私は見ておる。今お話しのは、おそらく漁民のうちの二男とか三男とかいう人々がおもに別の仕事について、非常にいいことになったということであろうと思うのでありますけれども、どうでございましょう、千葉県などの実態としましては、従来漁業をやっておった者が他に転換ができておるのでしょうか。それとも、二男、三男というような人ができておるのでしょうか。二男、三男という人ができた場合だとしますと、従来漁業をやっておりましたうちのおやじさんとか、あるいはおかみさんというものは、非常に困る事態になっているのじゃないかというようにも考えられるのでありますけれども、それらの家の収入というものは従来と比べてよくなっておりましょうか、どうでございましょうか。ただいまの八〇数%の方の事情は、どんなふうな事情でございましょう。
  13. 柴田等

    柴田参考人 ただいまの点は、具体的には私も調査をして参りませんので、必要がございますれば、また委員長の方に調書を出してもよろしゅうございますが、就職は、二十才から三十才程度の人は大体就職ができますのと、今申しましたのは半農半漁が相当ございますから、その農業の方に専心するというような方向になっておる者もございますし、それから年配が四十をこしておる方々は、守衛と申しますか、そういう方面で会社工場から参りますので、そういう方面にいっていただく、それから住宅地に店を持たせるというようなこと、そういう方向でやっておるのでございます。私が先ほど申しました調べた地域では、一戸当たり二百万円ほど補償金を出しております。ですから、そういうものを経済的に積み立てまして、その収入と、それから従来ほどの収入はないにいたしましても、何らかの仕事をやって収入が得られるという、両方をうまくコンビしてやれば、そう大きく収入が減るということはないかと思います。ただ、私どもが心配しておるのは、漁民にそれだけの相互的な、経済的なあれがございませんので、むだづかいするとか、いろんなことがございまして、一時は、半分なら半分は県が預かって、利息だけ払ってやるような方法をやったらどうかということを言ったわけでありますが、なかなか多数の漁民の中にそういうことがまとまりませんので、そういう面で、先ほど岡さんもおっしゃいましたが、何か事業をやりましても、失敗すると大へんでございますから、よほど安全なことを考えなければなりませんが、そういうこともある程度考えたらどうかというような気持もいたしております。約千数百の漁民に対する補償を何回かに分けていたしておりますが、現在のところは、非常に大きな具体的な不満は出ないで、そのかわり、県も一生懸命、就職その他のあっせんをしているというような状況でございます。もし必要でございますれば、委員長の方に、わかっているだけ資料を出したいと思います。
  14. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 ただいまのような、二百万円というような補償が入ってきて、一面では非常にけっこうなことでございますけれども、同時にまた、あまりそういうまとまった金を持たなかった漁民諸君が、競輪その他にむだづかいしてしまって、結局数年後にはどうにもならない。電源開発補償を受けた連中のを調べていってみますと、やはり五、六年すると無一文になっているようなのが多いというように私どもは思うのですけれども千葉県あたりそういう御経験は非常に多いのでございましょうか。そういうような補償をもらったが、結局五、六年後になったら無一文になってしまった、また生活に困るというような、そういう例はあまりございませんか。千葉県などいかがでございましょう。
  15. 柴田等

    柴田参考人 そういう点を私どもも非常に心配いたしまして、漁業協同組合なりあるいは漁民の間に委員会を作りまして、そういう金をできるだけ銀行に預けるとか、漁業組合が預かるとか、むだづかいしないということで、お互いにそういうことを戒め合うということをいろいろやっておりますけれども、今先生がおっしゃったようなことが今後起こらないということはちょっと言明できないような状況でございます。しかし、できるだけいろいろな会議ごとにそういう経済の問題について話し合いをしておりますから、そうしてお互いに漁民同士行き合っておりますから、現在の段階ではそうむだづかいしてしまうというような事態はほとんど起こっていないのではないかと思いますが、決して安心してはおれないと思っております。
  16. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 岡さんの方では、今のようなことについては実例はどんなものでございましょうか。先ほどお話しの狩野川の補償の問題などでは、実は今のお話とだいぶ違った事態になっているように私は聞いているのです。というのは、遠洋漁業の方に転換をするように、その補償金で船を買いましたけれども、乗っているのは、その漁民諸君でなくて、よその諸君が乗っている。従来の漁民はそこから収益の分配を受けるというような形になっているが、その分配がこないというようなことで、最近は少し騒いでいるというように伺っているのです。だから、長い間の職業を失わすのはなかなか大へんなことが起こってきて、結局不幸なことになるというのが漁民諸君の通例ではないかと私は心配しているのですけれども、全漁連の方として、ただいまのような、補償はもらっても、結局無一物になってしまうというようなことで、非常に困るというような事件がありましょうかどうか。どうも今柴田知事さんの御危惧になっている点が案外多いじゃないかというように心配するのですが、全漁連といたしましてはどんなふうに考えておりますか。
  17. 岡尊信

    ○岡参考人 狩野川の遠洋漁船の問題、最近私も先生のおっしゃったようなことを聞いておりまして、はなはだ遺憾に思っておりますが、これは御承知のように、今まで三トンか五トンの船をあやつった経験しかない小漁民を、三百トン、五百トンの船に乗せても、これは能率が上がらないことはわかっておるのでありますから、大部分はやはり専門家を雇ってきて入れなければならぬということであります。しかし、利益の配分を受ければ、金を持っていて使ってしまうよりいいじゃないかというようなことであります。そこで、この補償ということが、金銭補償ということで、漁民も農民もそうでありますけれども、持ちつけない金をたくさん持って、急にぜいたくになってしまったという事例はたくさんあります。そうして数年ならずして元のもくあみになったという例はあるのでありまして、私どもの指導としては、今言ったように、農業に転換可能の漁民に対しては農地をわけてもらうというようなことが、干拓などの場合にはできます。埋め立てではできるかどうかわかりませんが、そういうようなことをするとか、あるいは柴田知事さんの言われたように、商店を持たして、その売り上げの収入利益をもって将来食っていけるようにし向けることが必要であると思って、私どもが中へ入った場合は、金銭補償よりも、何か物的補償をしてくれぬかというようにやっております。
  18. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 柴田さんの御意見をもう少し伺いたいのでありますが、今度の法案は、先ほど御指摘の通り、非常に大きな権力を集中いたしまして、そして大きな権力を持って推進されるということになりますが、先ほどお話しの臨海地域指定あるいはまた基本計画の設定について、私どもも、これは関係の都道府県の代表者の方々の主張が十分ここに入れられる方策を立てないと、非常に重大な問題になると考えておるわけで、先ほどの御指摘の通りだと思うのです。そこで、先ほどお話のような関係都道府県知事同意を得るということをここに入れれば、その点はよほど緩和されるのではないかというように思うのでありますが、ただ、同意を得るというようなこと、及びこの審議会委員関係知事臨時委員としてでも入れるというような程度で、この問題は万遺憾ないとお考えでございましょうか。その程度に直せば、知事会等の御意向といたしましては、大体これをのんでもいいというような御意向になっておりましょうか。これについての御意見知事会ではまだないのでございましょうか、いかがでありましょうか。
  19. 柴田等

    柴田参考人 実は、私も全国知事会を代表する意味で参ったのでございますが、御連絡が数日前でございましたので、全国の各知事と具体的に相談する時間がなかったのであります。ただ、東京湾の、東京都知事でありますとか神奈川県知事とは何回かこの問題について話しまして、そして、きょう申し上げた件、今長谷川先生のおっしゃった点のほかに、施行する事業団にも直接ある程度参画さしてもらいたいという点等もございますし、また、現に府県でやっており、またやろうとしておるようなことは、マスタープランの範囲内において府県でそのままやらせてもらいたいというような意見、それらの点につきましては、三都県におきましては大体一致したところでございます。ただ、それ以外に、中京なり、関西なり、瀬戸内海なり、その他でいろいろ計画がございますが、それらの方々とは御相談をする時間がなかったので、全然相談なしに参ったのでございますが、私の想像ではそういう臨海地域を造成いたしまして工場その他を持ってくるというようなことについては、各県知事とも相当な関心を持ち、また実際それを実行いたしておりまするし、また、少なくとも東京湾の千葉県等におきましては、漁民方々も、ある程度、そういうことにわれわれも協力せざるを得ない、そういう時勢になってきたという、そういう機運も、全部とは申しませんが、幾つかの漁業組合でもそういう気持を持っておられますので、先ほど鈴木さんもおっしゃいましたが、運営その他につきまして長谷川先生が御心配の点が非常にございますから、それらの点を十分考えに入れてやっていただくということでありますれば、これは想像でございますが、全国の府県知事連中も大体同様な意見ではないかと私は推測いたしておりますが、正式には委任を受けてきておるわけではございませんので……。
  20. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 鈴木先生に伺いたいのでございますが、先ほどお話のように、工業用水の問題は、今後、われわれにとっては当面している非常に重要な問題だと思うのであります。この工業用水関係と、こういうような臨海地域工業地帯開発の問題とかは、お宅の研究所等におきましては、全国的に十分調査研究ができておるのでございましょうか。その関係についてはどの程度の客観的な、学問的な研究がなされておるのでございましょうか。
  21. 鈴木雅次

    鈴木参考人 工業用水の量についての学問的な研究があるかどうかというお話であります。これは非常にむずかしい問題で、また、学問の研究対象としても、私どもの専門のうちでは最重点を置かなければならない問題であることを痛感いたしております。そこで、日本全体の雨量とか、そういうものを一応調べ、そしてそれの利用し得る量がどのくらいであるかということを、重要なる水系について最近当たってみたことはあります。実はこれは私どもの研究所でやってみたのであります。その結果は、企画庁には申し上げたのでありますが、今数字は覚えておりません。大体日本は淡水の量は相当にあるのでありますが、しかし、利用せずにそのまま海に流しており、無効放流という量が大きい。パーセンテージを占めております。それですから、今後工学なりあるいは政治の力によりまして、無効放流を有効に活用するということに持っていけば、これを利用する臨海工業地帯に対応する量ぐらいは出ると思いますが、しかし、これはなかなかむずかしい問題で、かりに学問的に出ましても、そういうようにはたして統制ができるかどうかということは、これはかかって政治力に待たねばならない。社会情勢やいろいろなファクターが入って参りますから、これはなかなかむずかしい問題でありますが、大体において十分人智を尽くし、努力いたしますれば、今考えておりますような臨海工業地帯あるいは臨海地域開発に対応するような水量は出るものと思っております。
  22. 寺島隆太郎

    寺島委員長 足鹿豊君。
  23. 足鹿覺

    足鹿委員 大体長谷川委員の御質問で、私のただしたいと思っておったことも質疑応答があったようでございますので、若干補足的にお尋ねをしてみたい。  最初に鈴木参考人に伺いたいのですが、この法案がねらっておりますのは、臨海地帯の総合的、計画的な開発ということにあることは私どもはわかるのですが、現在国土総合開発法あるいはその他関係法案がたくさんありますが、むしろ、国土総合開発法というものが浮かされてしまって、そして次々と出てくる部分的なこの種の法案によって空文化している、こういう傾向に大体あるのじゃないかと思うのです。しかも、このような法案が議員立法で当委員会に付託されているという点、私どもは、この法案重要性にかんがみて、必要があるものでありますならば、むしろ、これは行政庁の責任において、各省が十分に事前に連絡調整をして、そして手抜かりのない、政府の責任において提出すべきではないか、こういう見解を持っております。鈴木参考人はこの法案賛成の旨を先ほども公述されたのでありますが、そういう私どもの感じについて、この種の重要法案が——立法府でありますから、議員立法を軽しとするような考え方はわれわれ持っておりませんが、むしろこれを契機として、関係のある各地方公共団体の長、あるいは関連のある団体、各省が、この際よく打ち合わせ、検討をして、むしろ練り直して、そしてこの趣旨を十二分に生かして、今あなたも御指摘されましたいろいろな問題をよく織り込んで、時間をかけて、真剣に、あるものに仕上げていく、そういうことが妥当な、必要な措置ではないかと私どもは思うのですが、この法案に若干の意見を付して賛成をされるということに対して、学者として、今私どもが心配しておるような点について、心配なし、そういう断定をお下しになることができるでありましょうかどうか、その辺を一つざっくばらんに御意見を承りたい。
  24. 鈴木雅次

    鈴木参考人 この法案は、カテゴリーとしては、やはり国土総合開発の一連の問題を対象にしているものと思うのであります。国土総合開発法は、御承知のように今もう数年運営されておりまするが、その成果といいますか、その力というものは、御承知のような状態であります。ところが、臨海工業地帯開発というものは、国土総合開発のうちでも一番大きな問題であり、しかもその開発が国民の福祉に影響するところきわめて大きいということになりますれば、そこに焦点をしぼってその問題を解決し、促進するための法律ができてもいい、現在の国土総合開発法の実績なり運営の状態から見まして、実際問題としてこういうものがあっていい、こう思っております。  それから私の賛成いたしましたのは、この法律の条文については、大局的といいますか、全体的に見てけっこうである、こういう意味であります。しかし、この運営については、今後いろいろの問題が起こるのではないかというふうに思っております。そういうようなものがはたしてこれでうまくいくかどうかということについては、まだ十分研究はいたしておりませんが、大局を規制するというか、あるいはこの事業を促進するという大体論としては、まずこの法律はできていいではないか、むしろそれを契機として次の第二段の、たとえば実施機関であるとか、いろいろそういう法律がだんだんできてきていいのじゃないか、しかしそういうものができなければこれの趣旨は貫徹しませんから、当然急速にそういう問題に立法の作業が発展していいではないか、こういうように思っております。私、一応学校の教師としての考え方としては、現在の段階においてはまずこれは成立さしていただきたい、むしろそれを契機として次の具体的な法律を御制定下さる、こういうようにしてやっていただきたい、こう思っております。
  25. 足鹿覺

    足鹿委員 もう一点、それに関連しまして柴田参考人なり鈴木参考人の御両氏に伺いたいのですが、工業の特定地域に対する過度集中の問題、これを総合的な国土開発なり工場の配置等で適正化していくということも、この法案のねらいの一つ基本的にはあると思うのですが、現実の問題としては、むしろこういう法案は過度集中を促進する結果をもたらすのではないか、こういう心配があるわけです。ただいまも柴田参考人がおっしゃったように、寄り寄り相談をしておられるのは、千葉、東京、神奈川の三県であります。しかし社会的、経済的、政治的諸条件、あるいは資源的、労力的な面、いろいろな条件が整備されないところにいかに工場地帯を増設しましても、それはペンペン草がはえて、いつまでたっても開発をされない。従って、現在諸条件が整っておるというのは、千葉であり、東京であり、神奈川である、あるいは伊勢湾であり、その他大阪近辺、こういうことにならざるを得ない。従って、その地積を埋め立てをし、工業地帯を造成をしていけば、ますます現在の過度集中に拍車を加えていく結果をもたらすのみであって、その面においてはある程度の成果を上げても、過度集中の排除、工場の適正配置、そういう面においては逆な結果が出てきはしないか、こういう心配を私は持っておる。その一つの生きた証拠として、九州の宮崎県に富高町というところがある。現在は日向市、そこに細島の臨海工業地帯埋め立てが数年前に完成をし、私どももその現地を見てきました。ところが、当初考えておった工場一つもこぬ、現在もくるめどがないというので、荒漠たる埋立地が、何ら農地にも利用されない、住宅にももちろん利用されない、もちろん工場もこぬ、そのまま数年放置されておる。これは知事なり市長は責任を感じられて、その市長のごときは、もし工場誘致ができなければ、自分は責任を負ってやめる、こうまで言っております。しかも天然の良港の臨海地帯でありますから、港としても条件が備わっておるとわれわれは見た。ところが、海外との問題、東南アジアあるいはそれに関連する海外市場との関係考えずして、いわゆる南九州地帯において何ほどの工場の増設ができ、また発展が期待できるか、こういう点に関連をすると、これは一つの国の外交政策なり、経済政策なり、貿易政策というものに関連なくして、ただ単に簡単に地帯を作ったからといって工場ができるものではない。そうすれば、一方においては漁民を泣かせ、失業させ、そうして相当の犠牲を払い、しかも巨額の経費を投じたものが利用されないで放置されるという、経済効率の上からいっても、非常にまずい結果が現に各所に出ておる。従って、僻地なり、あるいは経済条件が整っておらないところに埋め立てをしましても、それはとても利用価値が当面出てこない。従って、利用価値のあるところからということになれば、過度集中を促進する結果に通ずる、こういうことになると思うのです。私は、この法案が第十六条関係で、東京湾の埋め立て、あるいは千葉、あるいは神奈川県沿岸の埋め立てを主として当面着手される構想にあることは承知しております。そのことそれ自体にとやかく言うわけではありませんが、法案自体のねらいとしておる趣旨とはおよそ違った方向へだんだんいくのではないか、そこに私は非常に問題があるように思いますが、そういう懸念はないか、これを是正するためにはどういうふうにしたらいいのか、そういう点、これは柴田さんに伺うよりも、鈴木さんに御意見を伺うのが適当かと思いますが、いかがでしょう。
  26. 鈴木雅次

    鈴木参考人 臨海地域開発は、既成の大工業地帯ばかりに集中するというようなことであってはいけないと思います。御説のように、これは全国全般を見て、最も適正なる産業の配分並びに人口の配分がなされなければならぬと思うのであります。それで、実情は現在発達しているところに集まりはしないかというお話であります。これはもちろん市場に近い、あるいは工業の例のコンビネートの必要性から、当然既成の工業地帯のところにくることを希望するものが多いわけであります。しかし、一方においては既成の大工業地帯では、先ほどお話しになりました日本臨海工業地帯の死命を制しておりまする水の問題で、どこでも逼迫状態に至っておる、こういうような状態から、そうなかなか拡大を許さないのであります。先ほどの日向臨海工業地帯は、なるほど、工業地帯としては実に優秀な、施設としてはいいのであります。また水も、若干農業用水を転換して臨海工業地域へ対応するように平仄が合っておりますので、これは当然くると思います。ただ、時期が約数年延びたというだけで、将来必ずあそこにはりっぱな近代的の新鋭工場が立つものと私は見ておる。ただ、時期が延びているというだけのことで、多少時期のタイミングについては、スペキュレーションのような感もあることはありますが、しかし大きな目で見れば日向港といえども、必ずこれは発展して、しかもあれは宮崎県における産業発展の一つの橋頭堡というか、いわば一大基地になると思っております。ですから、あれは決して計画を誤ったとか、事業を誤ったというような種類のものでない。これはもうタイミングの問題ですが、そういうふうに考えております。しかし、今のような点ももちろん現象としては起こっておりますから、これを全国、全体を見て、最も適正なる配置をするということが、この法律の運営でなければならぬと思う。決して既成の工業地帯ばかりに集めるというような原因になってはいけないと思います。しかし、この条文を見ると、決してそういうふうに——私はそれはまあ学究者のまことに至らない知恵からそういうふうに判断したかと思うのでありますが、条文から見れば、そういうふうに思っております。ただ、その運営が実際にどうなるかということにつきましてはあるいは御心配になるような点があるかと思いますが、そういう点は特に戒めて運営をする必要があると思います。
  27. 足鹿覺

    足鹿委員 柴田さんに今のに関連して伺いたいのですが、われわれの聞いておるところでは、当初全国知事会においては、非常にこの法案の制定促進をやられた。いよいよ法案ができ上がったという場合においては、地方自治体権限その他の点について相当不十分な点があるので、さらにまた、私どもいただいておりますが、本日御要望になったような要望書を提出されるような経緯になったというような話もあります。さような経緯はともかくとしまして、少なくともこれは全国知事会の総意としてやられる以上は、少なくとも現在想定され得る臨海工業開発地域考え、また、計画を持つ都道府県意見を十分に徴されて、そして遺憾なきを期せられることが必要ではないかと思うんですが、もう少しその範囲を広げられ、慎重に検討されて、十分われわれも御意見を承りたいと思いますが、そういう御配慮はないでしょうか。
  28. 柴田等

    柴田参考人 ただいまのお話、ごもっともでございまして、先ほど申し上げましたように、私はそれを十分確かめるだけのあれはございませんで参ったわけでございますから、近くこの御審議の途中において、そういう必要があると存じますから、全国知事会長にも相談いたしまして、そういう相談の機会を持ちたいと思っております。ただ、大体座談的に話しておりますところでは、やはりこういうものを希望しておる空気はあるようでございますが、はっきりいたしますために、近くそういうあれを相談してやってみたいと思っております。
  29. 足鹿覺

    足鹿委員 私どもが大ざっぱに見たところでも、相当各都道府県においてはこの種の計画を樹立し、また、ただいまも申しましたように、実施して完成したところすらある。これは私の私見なんですけれども、むしろそういう都道府県、これからそういうことをやろうという県の計画を、実地に即応した計画を出さしめて、それを中央の総合的な観点からよく調整して、漁業権その他との摩擦等についても十分の措置を講じて、しかる後この種の法案は出しても、私はおそくはないと思う。問題は、十六条関係公団法が、予算との関係で予算に頭を出している、その関係で非常に急いでおられるのではないかと思う。それならそれで、それは別途の観点からこれをやらなければ、その問題を急ぐあまり、この法案審議を疎漏にするということは、私は間違いではないかと考えております。別にこのものを審議未了にするとかなんとかいう考え方ではない。どう考えてみても、どうも納得のいかぬ点がたくさんあるので、特に今、その機会を作ると、こういう柴田参考人の御意見でありますので、十分御検討願いまして、もう一度御意見を聞かしていただく機会を作りたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  それから、これは小さなことですが、御要切になりました第三条関係、あるいは第七条関係、その他方々に「関係地方公共団体」という字句が出ておりますが、地方公共団体とは、都道府県、その埋め立て地先の市町村、こういうことに解釈してよろしいですか。
  30. 寺島隆太郎

    寺島委員長 足鹿君に申し上げます。午後は提案者に出ていただいて、説明を求めることにしたいと思います。
  31. 足鹿覺

    足鹿委員 きょうは参考人意見を聞くのであって、提案者は、参考人意見も聞かないし、姿も見せはせぬではないですか。そういう不熱心なことで、こういう重大な法案審議する気ですか。そういうことではわれわれは納得できません。第一、きょうの参考人の貴重な意見を徴するのに、提案者はみずからも出ない、代理者も出ないというようなふまじめなことがありますか。そういうことについては、もう少し良識を持ち、誠実な態度をとってほしいと思うのです。これは提案者でなくても、この法文関係について「関係地方公共団体」という字句が出てき、それについて柴田参考人から御意見が述べられておるので、きょうは知事会の代表として出ておられるのだが、しかし知事会のみならず、関係地方公共団体とは市町村をも含まれるかどうか、そういうような御意見を持っておられるかどうかということを聞いておるのです。参考人意見を聞くんです。
  32. 柴田等

    柴田参考人 法律解釈の問題がどうなっておるか知りませんが、私どもは、地方公共団体の中には、関係の県及び市町村を含むものと思っております。
  33. 足鹿覺

    足鹿委員 これは工場ができたとき、あるいは農地その他のものが造成されたとき、税収入の関係その他で非常に大きな問題、利害関係が出てくる。ですから、やはりはっきりとした見解を、提案者から聞くことも必要でありますが、少なくとも法文を検討されて、修正の希望を述べておられる意味において、御意見を聞いておるわけであります。  それから、その同意を得るということを非常に力説しておられたのですが、同意を得る場合は、公有水面埋立法等の従来の例からいきますと、まず知事は市町村長に意見を求め、市町村長はその議会に諮って意見を求める、こういう手順になろうかと思います。都道府県においても、都道府県議会に意見を求めて、そうしてさらに同意かいなかを決することになろうかと思います。そうした場合に、同意方法として、これは非常に大事な問題だろうと思うのですが、何か柴田さんの方で特別なお考えがございますか。従来のような、そういう一般的な手続でよろしいとお考えになっておりますか。
  34. 柴田等

    柴田参考人 この同意を要することをお願い申し上げた点は二点ございまして、指定基本計画でございますが、指定の場合でも、どの地域までそういうものをやるかということは、やはりその関係の市町村、県も非常に関係がございますから、それらの点につきましては、審議会の方からお話がございますれば、関係の人を集めて相談をいたしまして、代表して知事なら知事というものが、同意するとかしないということを申し上げる。基本計画につきましても、大体関係の者と相談をいたしまして、そういうことをやりまして御答申申し上げて、御同意を得る。その手続が、従来の手続と今回の手続が特に違うというふうには別に考えておらないわけであります。
  35. 足鹿覺

    足鹿委員 これは非常に大事な点になろうかと思うのです。この点は、その手続なり同意方法等についてよく御検討願って、また次の機会に御意見を聞かしていただきたいと思います。  それから、先ほど長谷川委員の御質問に対して、資料提出の意思があるということでございましたが、先ほどお話しの漁業権の補償の実例等をぜひ資料としてお示しをいただきたいと思います。
  36. 柴田等

    柴田参考人 承知いたしました。どの程度の具体的なはっきりした資料ができるかわかりませんが、できる限り一つ調べまして、御報告申し上げます。
  37. 足鹿覺

    足鹿委員 それから最後に岡参考人に伺いたいのですが、漁業補償あるいは漁民対策という点については、私どもも同感であります。そこで、先ほどのお話を聞いておりましても心配ではありますが、どういうことを具体的にやるのか、やはり先ほどもお話があったように、その場所により、その条件によって、補償が非常に高低がある、これは非常に遺憾なことだろうと思うのです。それを適正に補償していくためには別の根拠法を作れということでございますが、それについて岡さんの御構想、御準備がございますか。また、従来漁連としていろいろお調べになった漁業補償あるいは漁民の転業の実際の事例、そういうようなものをお調べになったものがありましたら、きょうは時間もございませんので、書面等で御提示をいただきたいと思います。それが一番中心になろうと思うのですが……。
  38. 岡尊信

    ○岡参考人 私の今日申しましたのは、大正十年にできた公有水面埋立法の中の、補償を受ける権利者というようなものが、漁業権者とか入漁権者とかいうようなことに限られていますが、今日の実情と合わない。少なくともその水面において漁業権を営む者に対して、その漁業の損害を補償してもらう、今日はだんだんそういうようになっております。例のアメリカ軍の演習地における補償というようなもの、調達庁の基準を見ても、そういうようになっております。調達庁関係補償基準とか、電源開発補償基準とかいうように、まちまちにできておる。それを、こういうようなものをやるときには、何とか漁業補償に対する基準というものを、法律で定めるか、特別法を作って定めるというような方法によってやっていってもらいたい。それで、その基準の内容というようなことにつきましては、今までかなり実例があります。これは非常に高低があります。資料としては出せないこともありませんが、大体千葉県の今までの埋め立てなどのは、むしろ柴田参考人千葉県知事としてお出しになるわけで、私どもが出すとしても、その資料をもらって出すようなことになるのですから、それで足りるのじゃないか。その他の県のいろいろなこういうものに対する補償の内容というようなものは、調べて、その範囲だけということになります。ただ問題は、補償ということをはっきり一つ基準を設けていただきたい、こういうことでございます。
  39. 足鹿覺

    足鹿委員 よろしいです。
  40. 寺島隆太郎

    寺島委員長 午前に御出席願いました参考人各位からの御意見聴取は、この程度にとどめます。  参考人各位には、御多忙のところを御出席下され、貴重な御意見を開陳いただきまして、まことにありがとうございました。本委員会を代表しまして、私から厚く御礼申し上げます。  午前中の会議はこの程度にいたし、午後一時三十分まで休憩いたします。     午後零時二十七分休憩      ————◇—————     午後一時四十一分開議
  41. 寺島隆太郎

    寺島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  臨海地域開発促進法案を議題とし、引き続き参考人各位より意見を聴取することといたします。  この際一言申し上げます。  参考人方々には、御多用のところ本委員会に御出席下さいまして、厚く御礼申し上げます。本委員会では、ただいま臨海地域開発促進法案審査中でありますが、各位の御意見を承り、審査参考にいたしたいと考えておる次第でございます。なお、御意見開陳の時間は、おおむね十五分程度といたし、概括的、かつ重点的にお述べ願いたいと存じます。  これより順次御説明願うことといたしますが、その順序は、勝手ながら委員長指名によって御発言願いたいと思います。なお、御意見発表後、委員側から種々質問があるかと存じますので、お含みの上お願い申し上げます。  それでは最初に、国民経済研究協会理事長の稲葉秀三君より御意見を承りたいと存じます。なお、稲葉参考人は、都合により二時ごろ退席いたしたいとのことでありますので、質疑はこの際特に続けてお願いいたしたいと存じます。  それでは稲葉参考人
  42. 稲葉秀三

    ○稲葉参考人 それでは簡単にこの法律に対する私見を出さしていただきます。  まず第一点といたしまして、私は本案の提案の趣旨には賛成でございます。何となれば、この提案理由書にもございますように、経済の自立再建をはかり、民生の福祉を増進する、そのために国土を最大限に開発をするということを支持したいと思うからであります。なお、日本の現状を見ておりますと、人口の趨勢と、さらにまた経済の動き等からいたしまして、工業用地の確保とか、さらに市街地の建設土地に対する需給調整ということを、今までよりももっと格段に進めていかなければならぬ必要がある、こう感じるからであります。このように提案の趣旨には同感でございますけれども、過去におきます国土開発法の運営、またそれに関連するいろいろな法律の運営のあり方、また、行政その他のことを考えますと、本案の今後の実行ということにつきましては、いろいろ問題があると思います。特に国土開発委員会関係をされております国民代表の皆様方に次のような点を御配慮願いたいと思いますので、その点を簡単に申し上げさしていただきたいと思います。  まずその一つとして申し上げたい点は、たしか昭和二十五年だったと思いますけれども国土総合開発法というものが実行されました。そして重点的に日本国土を総合開発をするということになりました。ですけれども、率直に申しまして、その趣旨やねらいというものが今日までほとんど完全に達成をされている、こういうふうには感じ得られない次第であります。しかも、若干の事例をあげますと、特定地域開発というものにつきましては、日本の特定地域を選んで、そしてでき得る限り経済開発や住民福祉というものを増進をするというねらいになっておったわけでございますけれども、特別に予算がついたというわけでもない、国の重点的な施策が行なわれたというわけでもない。さらにその地域指定を見ておりますと、その後どんどんと地域が追加をされて参りまして、今では日本の総面積の六〇%がその特定地域になってしまう、このようなことになっております。それからさらに、国土総合開発法という総合法の線と並行いたしまして、北海道とか、東北とか、九州の特殊地帯の開発、それから首都圏整備と離島振興、こういったような法律ができ、運営をされております。さらには、これは国土開発とは直接関係はございませんけれども、私どもは一環の法律もしくは行政措置として考えておりますのに、特殊土壌対策とか、港湾整備とか、道路とか、その他の建設計画というものがございます。そこで申し上げたい点は、はたしてこのような総合開発法と、特殊立法というものがいろいろ行なわれたけれども、ほんとうに国土総合開発のねらいが現在までにどの程度前進したかと申しますと、私は、その法律の趣旨にもかかわらず、前進をしていない、このように言わざるを得ないのであります。この点は、何も評論家的な立場で言うことではなくて、最近経済企画庁が出しました国民生活の地域的分布、それからそれの原因分析というものを調べて参りますと、ますます地域別に経済較差が起こっている、所得較差が起こっているという事実を無視することはできないのであります。私はこの臨海地域開発促進法を何とか促進してほしいと思います。ですけれども、かりに今まで行なった国土開発というものがそのような状況になって、そうして個々の立法と全体の立法との間に関連性がなくて、さらにこれが追加をされるといたしますと、今後この趣旨がほんとうにうまく動くかどうかということは疑問だと思います。  そこで申し上げたい点は、やはり乏しい国民の税金を分け合って重点的にその経済開発を進めていただくということであれば、やや現在有名無実になっております国土開発法というものをほんとうにやり直して、そうして個々の特殊対策というものを考え直して、もう少しやはり予算もつけて、弾力的に動かすという立法をここででき得るなれば来年度国会にお出し願って、そうしてこういう臨海とか農業とか、そういうものを含めて日本の経済の重点的発達と均衡化に努力をされるということをしていただきたい。というのは、どうも今までの政治を見ますと、重点的ということは口で言われますけれども、ますますばらばらになっていく、こういう傾向がございますので、何とぞほんとうの国土開発の線に沿って、総合的な立法とか、予算措置とか、行政のあり方というものを御検討をわずらわしたいと思います。  その二点として申し上げたい点は、やや卑近のことになりまして、また事実を私どもはほんとうに真相的に把握をいたしておりませんので、このようなことを申し上げるのは、しかも国民の代表であられる皆様方に申し上げるのは、きわめて恐縮であり、僣越かもしれませんけれども、この法案につきまして、次のようないわゆる評判が高いということであります。それは、東京湾とか、伊勢湾とか、北部九州等の、主として日本の基礎産業その他を伸ばしていく地帯の臨海土地造成ということを基礎づける立法になっているけれども、これの一番大きなねらいは、実は東京都の大埋め立て計画をやって、そうして東京湾を半分以上埋め立てて、そこに新しく東京都を作る、そうしていろいろなことをする、こういったようなことを基礎づけるための基本立法なのだという評判が高いということであります。私はそれの真相はわかりません。ですけれども、ここでお考え願いたい点は、私は、やはり東京をもっと経済的に促進をするため、神奈川、東京都、千葉県にわたりまして、いろいろ臨海土地の造成をしていくということにつきましては異議はございません。ですけれども、もっと大きな計画を持って、そうして日本の国民所得の半額といわれる四兆とか五兆とかの金を使って東京湾を埋め立てて、そして日本のほかの方の発展をおくらすということについて、はたしてほんとうに国土開発になるかどうかということにつきましては、疑点なきを得ない。なお日本では、いろいろ考慮をいたしますと、まだ狭いながらも工場が誘致できる、発展できる土地がたくさんあると思います。そういったようなことを配慮をしていただきたいし、また原則的に私は、東京都はもはやこの辺の人口のところでよいので、ほんとうに国土開発ということをお考え下さるならば、後進地帯の開発をどうするのか、それからさらに進んでは、将来東京都から学校とか、あるいは工場の、ある部門を減らしていく、こういったような形の措置こそとらるべきであって、どうもその辺が真実であるといたしますと、趣旨には賛成ですけれども、この法律の適用その他につきましては問題があると言わざるを得ません。  その三といたしまして、この法律は、議員立法ということもございましょうけれども法律手続が割合簡単になっておるという感じがいたします。戦後の立法といたしましては、でき得る限り政令やそれに対するいろいろなものが、法律の中に織り込まれているという形をとっていただきたいと思うのであります。それからもう一つ感じます点は、ここでは、趣旨と、それをするための計画の作成、それの討議という形になっておりますけれども、問題はこれを具体的にどのように進めていくかということであります。聞けば、特別の土地造成公団が将来でき上がるのだとか、国の予算も相当これに重点的に使われる、それから財政投融資も集中する、さらに外資も入ってくるということになるわけであります。そうすると、ほんとうに日本国土開発するということになれば、やはり全体の資金のワクと、その中にこれをどの程度考えるのか、それを具体的にどうするのか、こういったようなことをも含めて一つ皆様方の御審議をしていただいて、その上にこの法律に対する態度というものを決定していただく必要があるのではないか。それからもう一つ申し上げたい点は、この法律審議会委員には、会長が総理大臣で、ほとんど経済関係の各省大臣が委員として御参加になっております。形はいかにもりっぱなものだと私は思います。ですけれども、これは委員会できめて、政府が受けて、そして閣議決定をするということになっておるわけでございますから、むしろそういったような構成をとらないで、やはり学識、専門の技術者その他をもとにしてやって、それを政府が受けて立って、経済閣僚懇談会できめていく、閣議で決定をしていく、こういったようなことをすべきではないか。その意味におきましては、やや行政と立法との混淆、こういう感じがいたすという次第であります。  最後にもう一つ申し上げたい点は、私は今までの国土開発関係仕事のあり方というものを見ておりますと、やはり民主主義の世の中でございますから、各地域、各業種の主張というものが非常に強く出て参ります。そしてその人たちは、自分土地が、自分の業種がこうなるのが一番日本のために正しいんだというふうにお感じになって御主張になるわけであります。それを各地域の代表者である皆様としては、何とか受けて立って推進をしていかねばならぬといったようなことになるのも、私は必然的な経過だと言わざるを得ません。ですけれども、総合的に国土開発をする、限られた国民の税金の中でやるといたしますと、やはりその内部において相当調整をしていく必要がある。重点的というのは、言葉の面ではやさしくも、実行するということについては非常にむずかしいと言わざるを得ない。そうすると、それを具体的にどのように進めていくかということが中心であります。そこで、過去の国土開発仕事を見ておりますと、この審議会にはそういうことはございませんけれども、やはり国会議員さんその他がお入りになっておる。入った以上は、やはりいろいろ自分のことを御主張にならねばならぬという立場に立たれる。その結果はやはり全体が総花的になり、うまくいかないということになっております。ですから、一つ今後につきましては、ほんとうに乏しき金を分け合って進めていくという趣旨におきまして、私が一番初めに申しましたように、もうこの辺で日本国土開発全体のあり方を再検討するのだ、それをしていくのだということをお考え下さると同時に、もっと合理的、数字的な裏づけを持って国土開発をやっていく、そうしてあまりにも当面の産業や経済の事情にこだわらないで、長きにわたって日本の経済全体が平均的に安定成長するのだ、こういう方式にお進め願いたいと思います。  以上が私の大体の感じであります。趣旨には同感であります。決してこれを廃案にしろということを申し上げるわけではございません。ですけれども、今私が申し上げました問題が、私も事実各府県に御協力をいたしまして、財政や公共事業や、それから国土関係土地の造成等の仕事をいたしておりますので、皆様方の御苦労はほんとうに身にしみてよくわかる次第でございますけれども、ぜひとも御考慮あらんことを切望いたします。
  43. 寺島隆太郎

    寺島委員長 先ほども申し上げました通り、稲葉参考人は途中で退席されますので、質疑を続けて行ないます。竹谷源太郎君。
  44. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 稲葉さんにお伺いいたしますが、東京都を今以上大きくしてはならないということについては、私も同感で、東京都はこれくらいが限度で、これ以上大きくしてはならないということを考えるわけでありますが、しかし日本産業、特に工業が、東京、大阪、これを核として、明治以来発展をしてきている。その傾向は今もなお続いておる。そういう情勢下にあって、ますます臨海地帯は工業立地条件がよろしいというようなことから、東京湾の埋め立てというようなことが議題に上ってきておると思うのでありますが、どうもこれ以上東京を大きくするのはいけませんし、またどうしても臨海地帯でなければ工業はいかぬものかどうか。工業を分けてみると、二割ぐらいが臨海地帯、二割は山地帯、あとの六割はどこへ持っていってもいいんだ、こういう説もあるのですが、一体こう臨海地帯にばかり工業を集中させなければ、日本産業は発展しないものでしょうか、どうでしょうか。
  45. 稲葉秀三

    ○稲葉参考人 お答え申し上げます。実は私は初め後進地域計画に相当御協力を申し上げておったのでありますけれども、その後頼まれまして、千葉県とか、四日市とか、東海地方とか、そういったようなものの立地条件調査というものをいたしております。そうすると、御存じのように、日本工場誘致あるいは工場建設というのは、今のところ、政府の命令だけではいかぬ、やはり企業がそろばんを出していくという形になります。そうすると、案外、私がかつて考えておりましたよりも、工場誘致におきます消費地的な要因が強いということであります。それから第二点として特に私が最近感じますのは、御存じのように、最近、石油化学とか、あるいはそのほかの化学工業とか、鉄鋼業とか、電力関係、こういったようなものがやはり工場建設をしていく。そうすると、既存の地帯で、しかも臨海の埋め立てをすると、後進県でいろいろおやりになるよりも案外土地が安い。それから、御存じのように、伊勢湾とか、東京都というものは、湾の中の湾という形になっておりますことと、それから遠浅になっております関係上、御存じのように、だんだん工場が大型になりますと、海運その他の輸送施設が要ります。そうすると、七、八千円の土地、ときには五千円以下の土地で、二万トンや三万トンのスーパー・タンカーとかスーパー・カゴができるという形になります。そういたしますと、自然そういったような地域に対して工業が集中するということになります。  ところで、ここで皆様方にお考え願いたい点は、それでは、そういうような情勢はいつまで日本の中で続くだろうかということであります。そうすると、東京都にどんどん人口が集中する、あるいは北九州や大阪周辺に集中いたしまして、ここでは、もうすでに現われておりまするように、工業用水がない、それから、関連産業を持ってくるには労働費が非常に高くなり過ぎる、そのほかに、地盤沈下が起こる。それから、せっかく工場がりっぱにオートメーションになっても、運んでいくのに道路その他が障害になって、だめになる。主として工業用水、労働力その他の関係で、先にはもう一ぺん、かつて私ども日本の平均成長ということでプッシュをいたしましたような後進地域に行かざるを得ない。そこで私の申し上げたい点は、今東京や名古屋その他につきまして、やめろということはできないと思います。そして二百万坪とか三百万坪とか、ある程度土地を選定して伸ばしていく。それからさらに港湾や陸上施設あるいは倉庫の問題に対して解決をしていただく。しかし、かりに伝えられるような東京都中心の立地条件を将来もっともっと生かした形において、四兆とか五兆を費して利根川の上に大きなダムを作る、それから東京港に大きなものを作るということになりますと、大体私どもの推算では、日本の公共事業全体に使われまする国費が二千億円、地元負担合せまして三千億円見当でございます。さらに民間の投資が、機械から何からみな合せまして一兆五、六千億円といわれておりますけれども、この意味土地造成とか何かに当たる経費というものは、それほど大きいものではない。そうすると、どうしても五年や十年でしなくちゃならぬ、しかもインフレなしにしなくちゃならぬということになりますと、初めの趣旨はよくても、将来にはもうほかの方ががたがたしてしまう。日本の経済力から申しますると、そういう形になってしまうだろう、そうしてその先には、せっかく作った本のが動かしも、いじりもできないということになる。そういうふうなことを考えますと、むしろある程度そういう先進地域に補助や計画性を与えねばならぬ。けれども、それと並行して、次の日本のために重点的に土地造成とか港湾とかいうものをやっていって、そうして人口の動態と同時に、県民所得の分布というものをやっていく。特に、御存じのように、長期的に見ますると、日本の農業が非常にむずかしい条件に立たされます。そう言いましても、私は決して大都市周辺の工業立地をむやみにしろとは申しませんけれども、その次の段階に打つべき手をお考え願うということが、国土総合開発の上では必要だ。特に私が全体の立法にしてほしいと申し上げまするゆえんは、むしろ農業や漁港と一般の港との関係をどうするのか、あるいは農地と工業用地とのあり方をどうするのか、農業関係工業との交流をどうするのだ、こういう根本的なことを解決しないでは、日本国土開発や民生福祉はできない。それが今までのはあまり一つ一つになり過ぎて、結局だめになっておったのじゃないかということであります。
  46. 寺島隆太郎

    寺島委員長 二階堂進君。
  47. 二階堂進

    ○二階堂委員 お急ぎのようでございますから、一問だけ……。はなはだ当を得ない質問かと思いますけれども、一点は、この審議会の構成について御意見がございました。これは率直に申しまして、私もいろいろ意見を持っておる一人なのです。審議会の中に大臣が十名も入っておる、しかも、そこできめた計画が閣議決定になるというようなことは、ちょっと筋が通うないのじゃないかと考えております。そこで、もし稲葉さんがこういう審議会の構成を担当しておきめになるとすれば、どういうような階層の人、どういうような方々をこういったメンバーに持っていったういいかということが一点。  それからもう一点、東京湾の埋め立て、人口集中の問題は、これ以上東京都を大きくすることはどうかと思います。私は鹿児島でありまして、特にこういうところにこそ、やはり工業立地条件、産業地域差をなくしていくということを考えていくべきではないかと思いますが、しかしながら、現在東京湾におきましても、地方の自治体、県等がそれぞれ計画を立てて埋め立てをやっております。これがいろいろ企画も不統一になるし、それが結果においてどういうことになるかということは、おのずからわかっておりますが、そういうものを、それではやめろということは、現在の制度ではできない。そこで、そういうようなことから、国が一つ計画を立てて、ある程度規模を設けて埋め立てをやり、工場誘致をやるということから、こういうような考えが出てきたのではないかと思いますが、こういうようなことから考えてみまして、さらに東京湾を埋め立てて大きな工業地帯を作るということはどうかと思うのですが、しかし現在やっているようなこういうまちまちの計画をどういうようにしたらいいかというようなことについて、非常に簡単なことですが、ちょっと御意見を承りたいと思います。
  48. 稲葉秀三

    ○稲葉参考人 簡単にお答えを申し上げます。第一点の、審議会の構成ということにつきましては、やはり諮問機関にする、しかし相当権威のある諮問機関にする、そうして大体それの構成は、各界の代表者と、中立的な学識経験者にする。しかし問題は、やはりでき得る限り、技術者と、それから経済関係産業関係の人々の意見を聞いていただく、こういう形が合理的なのではないかと思っております。そうして同時に、私の申し上げるような形で総合的な立法ができて、ある程度予算措置のワクができましたならば、それと、今までの国土開発とか、それから特定地域開発とか、九州その他の開発、こういったようなものを漸次総合化する、こういうようなことで、やや中立的なものに改変をしていただきたいということでございます。  それから第二点として申し上げたい点は、私が本案を支持いたしますのは、まさに今二階堂さんがおっしゃった点も申し上げたいので、何も東京都に人口を集中するのが目標じゃない。けれども、ある程度東京や名古屋その他のことを考えますと、主として、割合埋め立て立地条件のよいところで二百万坪とか三百万坪を描いてやっていく、そうしてややもっと具体的な、港湾と輸送との関係の調節をするということは必要であろうと思います。しかし、それはあとのことを考えると最小限にとめるべきであって、そこに何兆というお金を持っていくということは、将来ほかの地域に対する影響と国民経済に対する影響を阻害する、そういうような観点から、この案にもございますように、今までは市町村限り、府県限りでできておったのを、何万坪以上と限定して、こういうところに出させて、全部計画を御検討になって、しかも御検討になる場合には、道路とか、港湾とか、鉄道とか、そういったようなことを総合的にごらんになって調整をされて、一番費用が安くかかって便益を得るというようなことをチェックしていただくことは、きわめて望ましいことだと申し上げたいのでございます。
  49. 館俊三

    ○館委員 関連して。稲葉先生の説に私は同感なんですが、審議会のことについてお話がありました。これは聞き違いかもわかりませんけれども、行政と立法が混淆される疑いがあるというお話がありましたね。大へんなことだと私は思うので、ことに総理大臣が審議会の実力者になっている関係、その辺のことで簡単にお済ましになったようですが、ちょっとお話を伺いたいと思います。
  50. 稲葉秀三

    ○稲葉参考人 私も、皆様方ほど専門家ではございませんけれども、いろいろ政府の審議会その他に関係いたしますと、最近はやはり各省その他の利益の調節がむずかしくなりまして、そして内閣に審議会が移っていくという傾向が非常に強いのです。たとえば、農業その他の問題についてもそうです。それと同時に、あとの実行とか、権威づけということを考えて、いわゆる行政の担当を委員になさるという傾向も出ておりますし、また国会議員さんをお入れになるという傾向も出ております。その全体について、特に前者について申し上げますと、むしろ私は、そういう形ではなくて、やはりただ諮問をして答えて、そして政府がそれに対して責任をとる、と同時に、責任をとるにあたって、主として与党ということになりますけれども、与党とも御相談になるという形が望ましい。何でもかんでもそこできめてやっていくということになりますと、いかにも民主主義的なようでございますけれども、民主主義ではないじゃないか、こういう感じを現実の場から感じさしていただいているということを率直に申し上げましただけで、別にそらむずかしいことはないわけでございます。その点一つ御了承を得たいと思います。現に私は、もう自分の時間のほとんど六〇%というものは政府の委員会仕事にささげておりますので、よけいにそういったような感じを持つということを、やや強く申し上げただけであります。
  51. 寺島隆太郎

    寺島委員長 稲葉参考人には、委員長より厚く御礼を申し上げます。  次は、朝日新聞社国土総合開発調査会委員の比佐参考人にお願いいたします。
  52. 比佐友香

    ○比佐参考人 私は、臨海地域開発促進法に対しましては、基本的には賛成の態度をとるものでありますけれども、今日までの国土総合開発のやり方、運営の仕方、それから出てきますところの経済的効果、そういうようなことから考えてみまして、この際は若干の注文を申し上げてみたい。今度の臨海地域開発法案も、今までの国土総合開発法のような、効果の薄い法案になることを避けますために、どういうことをしなければならないかというふうなことについて、若干私の意見を申し述べてみたいと思うのであります。  御承知のように、日本は海面を干拓して国土の造成を今日までやってきた。干拓しては堤塘を作り、堤塘を作ってはまた干拓するというふうなことで、日本国土が時代とともに発展していったのでありますが、従って、発展していく国土というものは、大半、現在でもいわゆるゼロ・メーター地帯であります。あるいは海面よりもっと低い、所によっては二メートルも低いところに人間が工場を営み、生活を営むというふうな状況になってきたわけでありますから、こういう発展の方向というものは、おそらく日本としては必然的な現象かもしれませんけれども、同時にまた、悲しむべき宿命であったとも言えると思うのであります。御承知のように、伊勢湾台風で被害をこうむったところは、全部いわゆるこの低地帯、ゼロ・メーター地帯であったわけでありますから、そういうことを避けて臨海地域というものを開発する方途は何かというふうなことからまず考えていきたいと思うのであります。  御承知のように、今日まで東京は、江東地区、これも有名なゼロ・メーター地帯であります。そこにあれだけの工場とあれだけの人間が住んでいる。しかも全然統一なしに、無計画にあそこに生活と経済とが営まれている。それをそのまま放置されている。そういう状態になっているにもかかわらず、今後の臨海地域開発というものが、第二の東京、第二の名古屋、第二の大阪を作るというふうなことになってははなはだ困るのでありますが、それを避ける方法はないものか。これは必ずしもないとは言えないと思うのであります。しかしながら、簡単にただ土地埋め立てて、そこに工場を作って、住宅を作る、それで臨海地域開発されたというふうに考えられますと、今までの失敗をもう一ぺん繰り返すことになりますので、こういう臨海地域開発につきましては、幾つかの計画を同時に並行して行なわれなければ、ほんとうの意味での開発にならない、つまり宿命的な悲劇を生むような開発にしかならない、このように思うのであります。  そこで第一番に、臨海地域開発の場合に考えなければならないと思いますことは、いわゆる工場の配置計画だと思うのであります。どういう工場をどういう地点に置くのか。それから第二は、工場背後の陸上交通、輸送の計画であります。せっかく工場はできましても、陸上輸送の隘路のために、荷物がさばけない。すでに現在東京はそういう状態になっているのでありまして、東京の場合は、現在といたしますと、むしろ埋め立てよりも、陸上交通路の整備の方が重要なのではないかとすら思うわけであります。第三は、工業用水の整備であります。御承知のように、工業用水というものが産業界の問題になりましたのは、ここ数年来のことでありまして、それまではほとんど地下水を使っておった。そのために、東京にいたしましても、名古屋にいたしましても、大阪にいたしましても、特に尼ケ崎のごときは、ひどいところになりますと、二メートルくらいの地盤沈下を見せて、大谷重工業のような、海岸にありましたような工場は、御承知のように、煙突だけを海面に残して、あとは全部海面下に水没したような状態にあるわけでありますから、臨海地域開発の場合には、何をおいてもまず工業用水の整備計画を同時に並行していかなければならぬと思うのであります。その第四といたしましては、住宅、文化施設その他のいわゆる都市計画も並行に進んでいくことが望ましい。第五には、今度の伊勢湾台風によりまして教訓を得ましたところの、防災施設計画であります。臨海地域開発の場合には、防災施設計画は絶対に避けることができないものでありまするから、こういう諸点と並行して地域開発をやっていきませんと、今までのように、伊勢湾台風で受けたような被害を二度も三度も味わわなければならないことになるのではないかと思うのであります。  御承知のように、臨海工業といいましても、最近の傾向を見ますと、非常にたくさんの敷地を必要といたします。御承知のように、製鉄企業におきましては、もはや百万坪の土地を要求します。従って、関連産業を入れますと、百五十万坪、二百万坪という土地も必要ということになって参るわけでありますから、その大工場の間に中小工場が点々と散在する、そとに住宅ができるというふうなことになりますと、これは名古屋の惨害をもう一ぺん繰り返す直接の原因になるわけでありますから、工場の配置計画はよほど慎重に考えていかなければならぬことじゃないかと思うのであります。御承知のように、名古屋の南区は一番被害の激しいところでございまして、あの地区だけで千七百人くらい死んでいるのでありますが、その死んだ原因は、あの地区の西側にありました八号地の貯木場の中に貯留されておりましたラワン材が、高潮を受けて防波堤を突き破って町中に流れ込んでいった。しかも、流れ込んでいった南区一帯は、いわゆるゼロ・メーター地帯で、非常に低いところでありましたために、惨害の比率が非常に強かった。こういうことも、工場の配置計画の誤りからきておることであります。名古屋市に事情を伺うと、ゆくゆくは別なところに貯木場を設置する計画であったけれども、その計画の進まぬうちに今度の惨害を受けたのだということでありまして、名古屋も知っているのでありますが、これは東京の場合におきましても同時に言えることじゃないかと思うのであります。従って、臨海地区における工場の配置というものは非常にむずかしい問題でありますと同時に、どうしても適正な配置計画を作らなければいけない、このように考える次第であります。  それから、こういう工合にいろいろな計画が同時にスタートして、そしてその計画自体がタイミングを合わして進んでいきませんと、いつまでたっても経済効果が出てこないということはよくあることでありまして、埋め立てはできたけれども工業用水が準備されないために、いつまでたってもそこに工場が誘致されない。現に岩手県の大船渡の場合はそうでありまして、現に埋め立ては数年前に完了しているのでありますが、工業用水計画がこれに伴いませんために、いまだに工場が建てられておりません。また逆のこともあるのでございまして、常磐工業地帯は、工業用水のためのダムを建設いたしまして、おそらく今年中には完成すると思うのでありますが、いまだに土地整備の方には手がついておらない、そういうふうなちぐはぐに計画が進みますと、いつまでたっても工場ができず、期待されたところの県民所得の向上ということもあり得ないわけなのでありますから、これらの計画はいずれも並行的に、段階を追ってタイミングを合わせて進んでいくことが必要じゃないかと思うのであります。  それから第二に申し上げたいと思いますることは、科学技術をもっと尊重していただきたい、こういうことであります。特に埋め立て計画につきましては、海底土質の調査をもっと科学的に究明して、その上で計画を立てていただかなければならぬということであります。御承知のように、埋立計画の代表的なものといたしましては、かつて加納久朗さんが発表し、それをさらに練り上げた、産業計画会議の東京湾埋立計画というものは、皆様御承知通りであります。先ほど稲葉さんも若干お触れになりましたけれども、約四兆億の金で、大体東京湾、横須賀と富津をつなぐ線以北の東京の内湾を三分の二を埋め立てまして、そこに約二億坪の土地を造成するという計画であります。しかしながら、計画としてはまことに雄大なものでありまして、人の気持を振興するには役立つと思うのでありますが、よほど科学的に究明いたしませんと、なかなかおいそれとこの問題に飛びつくことができないような気がするのであります。御承知のように、隅田川は、荒川放水路を中心にいたしまして江戸川との間、あの間は、御承知のように、大昔は渓谷であった。従って、現在はあそこは沖積層であります。ひどいところになりますと、四十メートルくらいの泥、その泥の上に埋め立てをやってはたしていいかどうかということにつきましては、今の学界でもおそらく定説はないのじゃないかというふうに伺っているのであります。実は先ごろ建設省の建築研究所長の竹山謙三郎さんにお話を伺ったのでありますが、そういった泥の層、いわゆる沖積層が三十メートル毛あるところになりますと、その上を埋め立てて家を建てましても、木造の場合は、地震に非常に弱い、また、鉄筋コンクリートにいたします場合も、非常に建築が困難であるという御意見を持っておられたわけであります。そういうことになりますと、せっかく二億坪の埋め立てをいたしましても、そこにどういう建築物を作るのか、こういう問題はもう少し科学的に究明してからでないと、結論を軽々に出すべきではないというふうに私は考えるのであります。まして、沖積層でありますから、地盤はどんどん沈下いたします。泥の層でありますから、長い年月の間には泥自体が収縮して、そうしてどうしても一メートルや二メートルの地盤沈下はあるわけであります。あそこの埋め立てをやる産業計画会議計画に従いますと、大体埋め立ての高さは、APプラス五メートルくらいにするのだということでありますが、これが五十年間に二メートル下がったといたしますと、APプラス三メートルの高さしかないわけであります。そういたしますと、今度の伊勢湾台風のような強さの台風が来まして、大体高潮並びに波浪の合計が八メートルだといたしますと、五メートルをオーバーするわけであります。そういう状態も考えて防災施設を作らなければならぬのでありますから、この計画はよほど慎重に科学的に究明した上で、具体的なプランを作っていただきたい、こういうふうに考えるのであります。たとえば鍋田の干拓地は、御承知のように、今度の伊勢湾台風で惨たんたる被害を受けて、堤防という堤防はほとんど全壊にひとしいのであります。ただわずかに免れたのは、鍋田川かう海に突き出しているいわゆる河岸堤防、これだけでありまして、そのほかの、海面に面したところの堤防は寸断されているのであります。その堤防は大体七メートル三十の高さの堤防で、農林省自慢の堤防だったのでありますが、それですらそれだけの被害を受けているのであります。はたして農林省がその堤防を作るにあたりまして科学的に十分に究明したかどうか。ただ、今までの高潮の最高記録は四メートル八十だった、それに対して若干の余裕を見て七メートル三十にした、これなら防げるというだけのことであれだけの堤防を作ったのかどうか、そうでなしに、何度か堤防実験をやった上で、確信に基づいて作られた堤防なのであるかどうか、私は現状を見て若干疑問なきを得なかったのであります。今度の鍋田地区の復興につきましても、最近は、鍋田自身というよりは、むしろ名古屋の港を守るために、あそこに、鍋田の開拓地先の堤防の先の方かう、こっちの知多半島の知多町まで、約九キロメートルの防波堤を作る、この防波堤の高さは八メートルにする、そうすれば高潮を防げるのではないか、こういうふうな考えで運輸省がその案を発表し、運輸大臣もたしか議会でそういう計画を持っておるということを言ったように考えるのでありますが、しかしはたしてこの計画もほんとうに科学的に実験をして、その上で検討に検討を重ねた上で発表された案なのであるかどうか。単に思いつきに、多分八メートルならいいだろう、七メートルの堤防をこされたんだから、八メートルの堤防にすればいいだろうというので、そういう発言をされたのか、私ははなはだ疑問に思うのであります。こういう問題は災害を生むもとなのでありまして、鍋田の七メートル三十の堤防にいたしましても、農林省では、絶対大丈夫だ、いかなる事態が起きても大丈夫だということを言って、入植者を安心さしていたわけであります。今度また、七メートルをこされたから、八メートルの堤防なら大丈夫だろうというので、八メートルの堤防を作って、これは絶対大丈夫なんだと言って、安心してその上に経済施設を営んでいた。ところが、その八メートルの堤防も破壊されるというふうな事態が起こりますと、再びこの惨劇を繰り返すわけでありますから、ほんとうに八メートルで大丈夫なのであるかどうか。また、高さだけでなしに、堤防の幅、堤防の基底、そういうことにつきましても十分に科学的に検討してから意見を発表していただきたい、このように私は考えるのであります。  そういたしますと、まことにこの臨海地域開発というものはたくさんの重大な問題を含んでいるわけでありますから、この法案に基づいて、この開発計画審議いたしますところの臨海地域開発審議会の任務というものは、非常に重大なものになると思うのであります。そこで、私はこの審議会について若干の注文があるのであります。今日まで、この資料にもありますように、いろいろな開発関係法案は全部同じ文句でできておりまして、みないずれも、この開発審議会の議を経てこれを決定する、こういうふうになっているわけでありまして、単なる審議機関、諮問機関として存在しているわけなのでありますが、はたしてこれでいいのかどうか。今まで全部そういうことで政府が案を立てて、それを審議会にかけて、審議会はまあ大体において賛成している。ほとんど格別こまかいデータも持っていないのでありますから、おそらく現実に反対することはできないでありましょう。大ていの場合は、事務局が提案したものをうのみにして、そのまま政府の決定ということになって実行されております。従って、今までの総合開発というものは、格別大きな効果を出していない。それにもつながる問題だと思うのでありますが、ここで私は、この審議会の性格を、単なる諮問機関審議機関以上に、立案機関にしてみてはどうかというふうに考えるのであります。と申し上げますのは、今まで申し上げました臨海地域開発というものについては、これこれの計画と同時に行なわなければ経済効果は出し得ないということが前提になっていまして、こういう大きな計画になりますと、これは官庁の役人諸君の能力以上の仕事ではなかろうか。一省、一局、一課の仕事にしては大き過ぎはしないか。なるほど、堤防を作るについては建設省の役人がいいでありましょうし、農地を作るのには農林省の役人がいいでありましょうけれども、そういう計画を一切総合したものとして、そうしてできるだけ早い機会に経済効果を持つという観点から考えますと、今の各省のお役人の能力以上の仕事ではなかろうか。むしろ、この審議会にしかるべき人材を集めて、審議会自身が立案計画をして、それを政府に持ち込んで、政府が閣議決定をして議会に協賛を求める、そういう形式の方が物事がスムーズに運ぶんじゃないか。おそらく現状の行政機構のもとにおきましては、各省から案が出る、それを経済企画庁が一応統一、調整するという建前になっているでありましょうが、これは皆様御承知のように、経済企画庁の部局長以上は、いずれも各省からの出向職員であります。いずれもひもがついておる。従って、農林省から出た企画庁の局長は、まずまっ先に農林省を代表して意見を述べるでありましょう。つまり、ものを統一し調整しなければならぬ機能を持つ経済企画庁が、すでにひもつきの人事できまっているということになりますと、一体計画の調整はだれがやるのかというふうに考えざるを得ないのであります。今日までの各特別地域の総合開発というものは、思うような効果を出していない、十分な経済効果を出していない。その根本原因は、だれもこの計画を調整しない、そこに帰するのが至当ではなかろうかというふうに考えているのであります。つまり、臨海地域として、二億そこそこにいたしましても、東京湾を相当大規模埋め立てるということになりますと、これはもち企業としては大企業であります。そういう大企業を統裁するところの能力は、現在の各省の役人の力にはまだまだないと言って差しつかえないのではないか。おのおの仕事の職分が違うのでありますかう、そういうことには訓練を受けていない。むしろ、そういうことに訓練を受けた人を審議会のメンバーとして選んで、十分にそこで検討して、各省の意見が出て参りましたならば、その各省の意見を適切にそこで総合し統制して、一日も早く経済効果を出すような仕組みに持っていったらばどうであろうか、このように考える次第であります。私は立法事務手続につきましては全然しろうとで、何もわからないのでありまするから、はたしてそういうことにするには、どういうふうに法文をあんばいすればいいかということについては、全然存じ上げません。しかし、気持の上からいえば、私はそういうふうな審議会にしていただきたい、これを申し上げるために実は本日ここに出向いたような次第であります。大へん失礼申し上げました。これで終わります。
  53. 寺島隆太郎

    寺島委員長 次は、全国農業会議所事務局長の大坪勝市君。
  54. 大坪藤市

    ○大坪参考人 農業会議所の大坪でございます。  本日議題になっております臨海地域開発促進法の問題につきましては、前お二方の御意見同様に、私といたしましても、本法律案の趣旨につきましては賛成を申し上げるものでございます。と申しますのは、本法律案の目的が、経済の発展並びに人口増加に対処いたしまして、土地を造成し、そこに工業を興し、諸般の産業を伸展させまして、日本経済の安定と産業の振興に資するということでございますから、本法律案の趣旨については全面的に賛成でございます。  なお、農業自体の立場から見ても、現在、御承知のように、農業におきましては、いろいろ価格の問題でありますとか、あるいは技術振興の問題とかありますけれども、農業自体の内部におきましても、いわゆる過剰農村人口の問題、あるいは過小経営の問題、この二つの問題はうらはらでありますけれども、現在の農村問題の大きなガンとして各方面から論議せられているのでございます。価格政策の問題その他いろいろな問題もありますけれども、農業自体におきましても、この農村の過剰人口の問題並びに過小経営の問題は、今後大きく取り上げなくてはならぬ問題であると思うのでございます。そういう意味合いから、一面において、できるだけ土地を造成いたしまして、農家の反当たり経営面積をふやす、同時に、過剰農村人口を工業に吸収する、こういうことが、農業政策自体といたしましても、今後取り上げていかなければならぬ宿命的な問題でございますので、国民経済の一般的な進展、それに基づく農村人口の吸収という点からも、本法律案につきましては、趣旨としては全面的に賛成いたす次第でございます。  ただ、法律案の内容につきまして、各条を追って考えて参ります場合に、そこに多少の疑問の点と申しますか、あるいは不明確な点が多少見受けられるのでございます。この点が、今後この法律案の運営の問題、ひいてはこれが農業上にいかなる影響を及ぼすかという点につきましていささか疑問があるし、また同時に、運営の面について慎重を期せねばならぬという問題に関連してくると思うのでございます。  まず第一に疑問の点といたしましては、第二条に、内閣総理大臣が臨海開発区域を指定するということになっておるのでございますが、この第二条はおおむね手続を規定しておるのでございまして、内容といたしまして、どういう基準でどういう地域指定するかということについては、何も触れていないのでございます。従って、第二条は手続規定でございますので、そういう基準なり範囲が明瞭でありません。翻って、指定基準なり範囲は、第一条の目的からおのずから現われてくる、こういうことになるだろうと思うのでございますが、第一条の目的自体にいたしましても、たとえば「臨海地域における工業その他の用に供する土地の造成」ということになっておりまして、その他の目的に供する土地ということになりますれば、もちろん、住宅地なり、その他の公共用的な土地の造成も目的とするでありましょうけれども、また当然農地も含むものと考えまするが、そういう点が、第一条との関係におきましてやや不明瞭でありますので、これが今後の運用の面におきましては、農業水利の問題あるいは農地の転用等の問題に関連いたしましていささか疑問の点が残ってくると思うのでございます。何かもう少し第二条の範囲なり基準なりについて規定する必要はなかろうか。もちろん、これは審議会において十分審査されまする問題でございまするので、その審議会委員の構成いかんによりましては、全くこれは杞憂にすぎないかとも存ずるのでございまするが、そういう点において多少の疑問が残って参ろうかと思うのでございます。  次に、この臨海開発区域として指定されますところにおきまして基本計画を樹立するのでございますが、第三条の関係におきましても、どういうような基本計画を作るかということにつきましては、ほとんど触れておらないのでございます。第四条で、第一条の目的を達成するために必要なる計画を作るんだ、こういうことになっておりまするが、先ほど申し上げましたように、第一条におきましても、目的につきましてやや明瞭を欠く点がございますので、この内容を一切審議会にまかせるというようなことになっておりますところに多少の疑問——あるいは運営におきましてこれは当を得ますならば、農民といたしましても何ら疑義の念を差しはさむことはないと思うのでございますが、そういう点につきまして多少の疑問が残るのでございます。特に第四条の後段におきまして、関連施設につきましては指定地域以外にもこれを及ぼすことになっておるのでございまするが、その範囲なり基準につきましても非常に明瞭を欠いておりますので、たとえば利水の問題あるいは農地転用の問題等につきましては、この範囲がどの点まで及んでいくかということにつきまして、そこに多少の疑問の点が残ってくるかと思うのでございます。  次に、この計画を実行する機関といたしましては、必要な場合には必要な特別の機関を作るということになっております。もちろん、この機関の設定につきましては、あるいは特別の法律なり何なりができましょうし、また、それについては審議会の議を経るということになっておるのでございますが、この特別の機関の問題につきまして、どういう機関を作るか、また、この機関とその計画の中の他の部分、つまり、特別の機関が実行する部分と、特別の機関が実行しない他の部分との関係はどうなるかという点につきましても、疑問が残るのでございます。当然これは、特別機関が実行しない残りの部分につきましては、従来の方法によってこれを実行するというふうに考えるのでございまするが、それらの点につきまして多少の疑問の点が残って参ろうかと思うのでございます。  以上申し上げましたような、すべて、この法律の運用につきましては、審議会の議を経て決定をするというようなことになっておりまするので、審議会の構成というものが非常に重要な要素になって参ることになるのでございます。農業という面から見て参りますると、この臨海開発区域の指定の範囲、あるいは基本計画の内容というような点から見ました場合に、背後地の利水問題あるいは農地問題、あるいは干拓の問題、こういうような問題につきましていろいろな問題が残って参りますので、この審議会の構成につきましては、産業の均衡ある発展をはかるという立場から、どうしても農政に詳しい委員を必ずこれに加えていくということが必要じゃなかろうか、かように考えるのでございます。同時に、この中におきまして、農林大臣というものの権限、これは基本計画を作るときに、関係大臣に協議をするということに相なっておるのでございまするが、その関係大臣が、当然産業大臣としての農林大臣も含む、かように考えるのでございますが、それらの点につきましてももら少し明瞭にした方がよくはなかろうか、かように考えるのでございます。  最後に一点申し上げたいと思いますのは、先ほど申し上げましたように、現在の農村問題で究極の解決しなければならぬ問題といたしましては、いわゆる人口問題、過小経営の問題と考えまするので、これらの点を今後の産業の発展に応じて解決して参りまするためには、工業の都市集中化ということばかりに専念をいたしますれば、今の稲葉先生のようなお話になりまするので、工業の地方分散化、それによる農村の過剰人口の吸収、また地域間の所得の均衡、こういうような問題を解決して参らなければなりませんので、工業の地方分散化という立場から、この臨海地域開発の問題につきましても、国土の総合開発的な見地から運用して参られるように特にお願いをいたしたいと思うわけでございます。  以上数点申し上げましたが、趣旨といたしましては、本法案につきまして賛成するものでございます。
  55. 寺島隆太郎

    寺島委員長 以上で午後に御出席願いました参考人各位の御意見の御開陳は一応終わりました。  委員より質疑の申し出がありますので、順次これを許します。二階堂進君。
  56. 二階堂進

    ○二階堂委員 ちょっと簡単に三点ばかりお伺いをいたします。比佐参考人にお尋ねをしますが、第一点は、先ほどもちょっとお尋ねいたしましたが、審議会の中に相当閣僚が入っている。閣僚が入ることがはたして妥当かどうか、これは簡単でございますが、どういうような御意見か。  それから第二点は、国土総合開発が非常におくれている。これにはいろいろ原因があると思います。もとより、国家の財政上の都合もありますでしょう。しかし、総合的な計画推進というような点についていささか私は疑問があるのではないかと考えます。この点につきまして、先ほどお述べになりました意見にもございましたが、こういうような膨大な計画は各省の事務当局の能力を越えた一つの問題だ、こういうことでございます。そこで私は、各省にこれをまかしておったのでは非常にうまく進まぬのではないか、国土総合開発法ができて、その計画が思うようにいっていないというもう一つの原因は、やはり総合的な、こういうものを推進する機構が整備されていないというところにもあるのではないかと思います。そこで、こういうものを推進するには、国土省といったような、総合的にこういうような計画を樹立して、そうして推進していくような機構がまず整備されることが大事じゃないかと思うのです。この国土省といったようなものを作ってやろうということについてのお考えを第二点にお伺いいたします。  第三点は、二、三回この法案の大まかな審議委員会でいたしておるのでございますが、社会党の諸君は、この法案をちょっとごらんになりまして、非常に政党色の強い法案だといわれる。私は必ずしもそうでないと思っておりますけれども、そういうことをおっしゃるのは、少し何と申しますか、ひじけた意見ではないかと私は思うのですが、これはもとより土地埋め立てをやりまして、産業立地の条件を作っていくということは、国家、国民経済の発展向上の上にきわめて重大なことである。従って、私はこういう法案を作っていくということは、何も与党、現在は自由民主党でありますが、自由民主党だけが党勢拡張のためにやっているということにはならぬと思います。そういう意見をお述べになる方もございます。しかしながら、参考人は、この法案をちょっとお調べになりまして、はたしてそういうようなお感じがあるかどうか、これはちょっと変な質問でございますが、一つ率直な御意見を聞かしていただきたい。なお、第一点につきましては、大坪さんからも、審議会委員の問題についてちょっと御意見を伺っておきたいと思います。
  57. 比佐友香

    ○比佐参考人 第一点についてお答えいたします。先ほど申し上げましたように、私は、審議会というものは、本来ならば立案機関でなければならぬ、その方が計画をうまく遂行することができるんだというふうに考えているわけでございまするが、この審議会委員として閣僚が入っていていいかどうか。閣僚が入りたければ、入れたっていいんじゃないか、閣僚が出ないで次官に出てこいというのであれば、それでもいいんじゃないか、しかし各省を代表する案を持って出てもらいたい、ただ漫然と出るのでなくて、ほんとうに専門的な知識を持って審議会に出てもらいたい、そして農林大臣ならば農林大臣が出て、農林省の案を持ってくればいいのであります。それを各委員が検討して、農林省案と建設省案と運輸省案をつきまぜた、渾然とした、統制のとれた案を作ればいいのでありますから、大臣が出ようと、次官が出ようと、局長が出ようと、これはあまり問題にしないでいいんじゃないか、そのかわり、各省を代表するほんとうの案を具体的に説明できるような能力のある人、そういう人でなければ、委員としては適格じゃない、このように私は考えております。  第二の、総合開発審議会の整備という問題を突き詰めていくと、国土省というふうな機構になりはしないかという御質問でありますけれども、必ずしも国土省の必要は現在のところないんじゃないか、国土省を作らなくても、総合開発機構というものをもっと合理的に運営していくことのできる方法はほかにもあるのじゃないか、またそういう問題について、もう少し政府部内でも検討すべきじゃないか、今一気に国土省に持っていくにつきましては、実は私はまだほんとうに本質的な勉強はしておりません。答えは留保したいと存ずるのであります。  それから第三の、この臨海地域開発促進法案が、政党色があるというふうな印象を受けたかどうかということでありまするが、私は実はそういう御質問を受けるまで、政党については何も考えておりませんでした。ただただ、この法案の基礎をなすものは科学の尊重だ、そのことだけを考えておりましたので、政党のことにつきましては何の感想もございません。
  58. 大坪藤市

    ○大坪参考人 ただいま審議会委員の問題につきまして御質疑がございましたが、申し上げますまでもなく、臨海地域指定、並びに指定された地域についての基本計画、この地域指定並びに基本計画の内容に関連いたしまして、農林関係といたしましては、内部におきましては、干拓の問題、あるいは漁業の問題、それから漁港の問題、そういうような問題がございまするし、また区域の外にあたりましては、おそらく農業水利の問題、あるいは農地転用の問題、こういうようないろいろな問題が関連をいたしまして、この計画の内容なり範囲によりましては農漁民に相当の影響があると考えるのでございます。もともと本法案の最終的なねらいとしておりますのは、産業の均衡ある発展という立場をとっておられると思いますので、この審議会委員につきましては、ほとんどこの法案の運用は審議会の議を全面的に待つというようなかっこうになっておりますので、そういうような観点から、農林関係の専門的な知識を持っておられる方々をどうしても委員に任命していく必要があるのではないか、こういう意見であります。
  59. 二階堂進

    ○二階堂委員 くどいようでございますが、私は、大臣は各省の具体的な案を持って審議会にもちろんおいでになると思います。ただ問題は、私が非常に疑問に思うのは、もちろん学識経験者等も含めて十名、そのほかの委員も入っておるわけでありますから、かまわぬわけですが、現在で申しますと、現在の閣僚は審議会にも出ておる、そうして基本計画をいろいろ検討する、それをさらにその現職の大臣が加わっておる閣議で決定をするということは、どうも手続上と申しますか、何かそこにちょっと妙な感じがするのですが、そういうことについては比佐参考人はどういうふうにお考えになりますか。
  60. 比佐友香

    ○比佐参考人 私は、先ほども申し上げましたように、大臣であろうと、次官であろうと、局長であろうと、あるいは研究所の所長であろうと、だれが委員になってもかまわぬじゃないか、閣議は全体として政府の方針を決定する機関でありますので、閣員であり同時にまた審議会の一員であったといたしましても、実はあまり矛盾を感じないような気がするのでありますが、私の申し上げたいことは、審議会には各省の代表が入る、その代表は、次官でも大臣でもいい、そのかわり、代表である限りにおいては、ある程度まで技術的な問題についてもマスターしてもらわなければ困る、だれかが質問しても、それはだれだれ課長を呼んで聞こう、それはだれだれ課長を呼んで聞こう、これでは審議会は満足に運営されないわけですから、各省の事務をほんとうにマスターしている次官、大臣であれば、審議会に入っても差しつかえないんじゃないかというふうに考えております。
  61. 寺島隆太郎

    寺島委員長 足鹿覺君。
  62. 足鹿覺

    足鹿委員 最初比佐さんに伺いたいのですが、いろいろ御研究の深い、うんちくある御意見を聞いて、非常に参考になったのですが、本法制定の緊急性についていかようにお考えになっておりますか。と申しますのは、第十六条によって、先ほども意見がありましたように、特別の機関を設置し、それに実行せしめる、こういうことになっております。従来の本委員会審議を通じて見ますと、必ずしもこの十六条によってできるものが直接工事に手を出すのではなくして、また請負その他のものにすぐ代替する構想のようにわれわれは見ておるのでありまするが、そこになりますと、本法それ自体は——先ほどの稲葉参考人といい、午前中の参考人意見といい、趣旨そのものには別に異議はない、しかし、法全体の構成、あるいは開発諸法の従来の実績、いろいろな点から見て、この際大きく検討し直さなければならぬという意見が大体一貫して流れておるように思うのであります。そういう点から見まして、一日を争って緊急に法を制定しなければならぬという必要を私どもは発見するのに苦しむのであります。ただいまの比佐さんのお話を聞いてみましても、輸送関係との関連工場の配置の面、あるいは工場用水の問題、都市計画を中心とする住宅その他文化対策との点、あるいは科学技術の尊重、そうしたような諸条件を十分慎重検討しなければ、そうしてそれとのタイミングをよく考えなければならぬという御意見でありました。私も全く同感であります。といたしますと、この法案自体は緊急性に乏しい。しかし、十六条が持っておる趣旨というものは、提案者なり関係者は非常にお急ぎになっておるようでありますが、それとこれとは私は別ではないかと思う。基本法は十分慎重審議をしていかなければならないということは、各参考人意見すべてがそういう意見であります。そういう点から、私どもは本法の緊急性ということについて非常に考えさせられておるのであります。そういう面から、第十六条との関連においても、緊急にこのものを成立せしめていくには、まだ諸条件が十分に整備されておりませんし、また検討も足っておらぬ、こういうふうに私どもは見ておるのでありますが、この点について一つ意見を伺いたいと思います。
  63. 比佐友香

    ○比佐参考人 この法案を今出すことが、はたして時期として当を得たものであるかどうかということからの御質問だと思うのでありまするが、私は若干の意見を申し上げましたけれども、根本的には、この法案が実は早く成立してほしいというふうに考えているものの一人であります。と申しまするのは、伊勢湾台風の災害、あれを見て参りまして、しみじみ海岸防災というものは全然法的体系をなしていない、野放しのままで災害を受けている状態だということを感じておりますので、もしそういう点にまで企て及ぶことができる法案であるならば、こういう法案は早く成立さしていただきたい、こう考えるのであります。いろいろ伊勢湾台風の災害について教えられるところが多かったのでありまするが、今までの水防法、これも高潮に対してははなはだ無力であった。災害救助法、これも無力であります。人命救助に至っては、ほとんど施すすべなし。さらにその後の復興計画にいたしましても、これぞという基準がない。まして、海岸全体を守る法律、海岸法が二、三年前にできましたけれども、これも単に護岸の法律にすぎない。そういたしますと、総合的に海岸、特に低地帯を守る法律というものはないわけであります。もし、この臨海地域開発法案におきまして、そういう点につきましての何らかの施策をとることができるようなことになれば、非常にけっこうなことではないか、そのように考えておる次第であります。しかして、緊急に特別の機関を設けることの可否いかんということでありまするが、もしも高潮対策、災害対策、そういう言葉をも包含してこの審議会審議するんだということでありまするならば、私は、なるべく早くできた方がいいんではないか、ただ、先ほど稲葉参考人が言われましたように、いろいろなうわさとして、この法案を足がかりとして東京湾の大規模埋め立てに乗り出して、だれがその利権を得るかというようなことのうわさ、そういうことにつきましては、私は実は何ら関知しておりませんし、また関知する気もありませんので、この際はこれだけのお答えにとどめておきたいと存じます。
  64. 足鹿覺

    足鹿委員 御存じのように、この法案は前々国会において本委員会に付託され、そのまま十分なる審議をしないままに継続審議となって、今国会においてようやく審議が始まったばかりであります。従って、伊勢湾台風あるいはそれに前後する台風前の提案でありまして、別に今比佐参考人が指摘されるように、伊勢湾台風等の対策をもこのものが含んでおるとは、私ども委員全部が解釈しておりません。ことしの春の提案でありますから、審議の必要上、そういう性格を、新しく伊勢湾台風等の教訓を盛り込んでこの法案審議に当たり、またこの法案に対処するということになりますと、これはいよいよもって緊急性という点から軽率な審議はできない、そういうことにも通ずると思うのです。これは別に議論するわけではありませんけれども、とにかくこの法案はことしの春出ておりますので、今比佐参考人が指摘されたような、伊勢湾台風等によって生じた経験をこの法案によって解決しようといち直接の意図はない、そう私どもは解釈しております。従って、別の意味をこの法案に持たせるか、あるいは伊勢湾台風等に対する教訓を解決していくためには、別の災害防止基本法とか、あるいは別な構想も政府にあるやに聞いてもおりますし、それとは直接関係はありませんが、海面を埋め立てるという点においては、今度の伊勢湾台風とは直接関連が出てくる、今後の仕事をしていく上において大きな関連が出てくる、こういうふうに解釈しておるわけです。  そこで第十六条との関係をまずお聞きしたいのですが、実施機関の構想です。現在愛知用水等は、外資の導入等の必要から、特殊な法人であるところの公団の方式をとっております。しかし、八郎潟その他の大規模な農地の干拓事業が現在政府の手によって行なわれておりますが、これは特別会計の方式によって、オランダの技術を導入してりっぱに設計もでき、実施が進んでおることは、御案内の通りであります。特別会計方式によるか、あるいは公団方式によるか、あるいは今うわさされておるような東京湾開発の株式会社といいますか、会社法人方式によるか、こういう問題が出てくると思うのであります。資金対策とか、あるいは人材を集めていく上において、会社方式でなさる場合もありましょうし、それはいろいろ利害得失があろうと思いますが、大体この種の実施機関を、国以外の公団または会社その他の方式によるのがいいか、国が直営で、ほんとうに良心的にじかに手をおろしていくのがいいか、そういう点では、二階堂委員からも御指摘になった国土省的なものが一面に伴わなければならぬと私どもは思っておるのでありますが、実施機関の構想について御意見があったら一つ承りたいと思います。
  65. 比佐友香

    ○比佐参考人 私はなるべく政府の仕事は少なくして、そして政府以外の機関仕事を多くするような仕組みにすべてを持っていきたいという気持を持っておるものなんでありまして、たとえば愛知用水公団のような場合は、公団方式でよかったと思います。あれが政府の手、たとえば、あれは農業用水関係事業であるからというので、農林省の手にかかってあれをやるということになりましたならば、現在の速度よりはもっとおそいんじゃないかという気がするのであります。従って、あれは公団でよかった。ただ、公団の首脳を構成する人事に若干弱い点があったのではないかというふうな印象は受けておりまするけれども公団組織なら公団組織で、あれでよかったんじゃないか。今度の場合におきましても、政府みずから手を下すよりは、あるいはそのほかの方法の方がいいんじゃないかということをばく然と考えている程度でありまして、特に株式会社がどらだ、株式会社公団制度との優劣の問題というふうなことになりますると、今申し上げる知識は持っておりませんです。
  66. 足鹿覺

    足鹿委員 もう一点、審議会についていろいろと御構想を承ったのですが、立案機関とすべきだという御意見であります。この立案機関とした場合には、それに伴う専門の調査機関とか、その他、研究機関とか、あるいは事務機関というものが当然付属さるべきではないか。この法案のどこにもそういう字句はない。そういう点で、私ども法案審議に手をつけてはおりますが、随所に非常に足りない点が多々あるのであります。審議会自体の構成、また性格を考えていく場合において、諮問機関たると立案機関たるとを問わず、調査あるいは研究等、それに必要な事務、そうした機関なくして、この審議会は当然の任務を果たし得ないと私ども考えておるわけなんですが、その点について何か一つ
  67. 比佐友香

    ○比佐参考人 私は日本の政府が作る各種の委員会審議会というものに対して、常々疑問を持っているのであります。審議会にかけてこれを通した、委員会にかけてこれを通したということになると、きわめて民主的な手段をとったという印象を受けまするために、自然そういうことになると思うのでありますが、実際は事務当局の案をうのみにする機関にすぎないという印象を受けているのであります。ところが、イギリスなんかの場合におきましては、委員会を作ると、その委員会が非常に強力なものである。御承知のように、イギリスは長い間例のスモッグで悩まされたのでありまするが、現在はもうスモッグで悩まされるようなことはなくなったのであります。と申しまするのは、公衆衛生の医学界の長老でありますサー・ヒュー・ビーバーという人を委員長にいたしまして、非常に強力な委員会を持ったのであります。と申しまするのは、自然、工場の煤煙防止装置を作らなければならぬわけでありますから、相当財界に影響があるというので、財界の指導的な人物数名を委員の中に加えております。そしてそのビーバー委員会決定したものは執行権を持つ。しかしながら、これは個人財産に毛影響があるわけでありまして、どこの家庭でも、工場でも、煤煙防止装置に何らかの手を加えなければなりませんから、相当金がかかります。その金は政府が補助するというところまできめて、それを委員会がしょっちゅう監督している。こういう機関ができましたために、機関自体が精力的に作用することができて、とうとうあのロンドンの有名なスモッグを征服してしまった。このくらいの強力な委員会日本にも必要なんじゃないか、こういうふうにしてできるいろいろな開発関係審議会の場合におきましても、この程度の強力さは持ちたい。ただ、政府案はこうだから、御賛同を願いますと言われると、若干の質問をして、それに賛成してOKにしてしまうというふうな今までのやり方をする限り、少なくも国土開発関係におきましては、十分の成果をあげることができないんじゃないか、このように考えておる次第であります。
  68. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 大坪さんにちょっと伺いたい。先ほど、私聞き違いだったかもしれませんが、埋め立て等をやって土地ができて、そこに工場ができる、そうすると、国土がそれだけ広くなるから、従って、農地も狭まらない、消極的に減らない、それから農村の過剰人口を吸収してもらえる。それらの理由によって、これは大へんけっこうな法案である、このように承りました。これはこの法案に直接関係はしませんが、国土全体の開発の問題、あるいは国民経済の問題から、われわれの審議上、農業会議所の専門家の意見を承りたいのであるが、そういう御意見であるとすれば、農業だけでは、農民の生活向上、あるいは所得の増加ということはなかなかむずかしいので、農業者の他の職業への転換を積極的に進めるべきである、こういう観点である。そのためには、農村を離れて——農業を離れるという意味じゃなくて、農村を離れて都会に集中してもやむを得ない。このようにして農村人口が減り、農地はなるべく減らないようにして、そして一人当たりの農民の所得を増加する、この傾向がよろしい、そういうふうによろしいとは言わなくても、日本の農村の実情からやむを得ない、このようにお考えであるかどうか、その点をお伺いしたい。
  69. 大坪藤市

    ○大坪参考人 大体の趣旨といたしましては、御質問の要旨の通りと私は信じておるのでございます。と申し上げますのは、何といたしましても、日本の過小農経営という点につきましては、これを農家所得、農家の農業上の所得によって、農家が国民生活水準に達するような生活を営み得るような農業形態に、どうしても最終的には持っていかなくちゃならない、かように考えておりますので、一面におきましては、内陸におきまする開墾あるいは干拓、同時に外部に対しましては移民の問題、こういうふうに、内部におきましての土地の造成、同時に農業者の農業移民、こういうような政策を並行いたしますと同時に、他面には、農村の潜在的な過剰人口というものをできるだけ工業方面にも国内的に吸収いたしまして、各農家に相当の経営規模のある面積において農業を営ませそれによって機械化も自然と進み、農家の所得も進む、こういうふうに持っていかなければ、究極といたしましては、価格の問題にいたしましても、あるいは技術の指導の問題にいたしましても、おのずからそこに一定の限界があります。これを解決いたしますためには、どうしてもいわゆる適正規模の農家の創設ということを今後の終局の農政の指標として持っていかなくちゃならぬ、こういうふうに考えております。私どもといたしましても、いわゆる工業の発展を国内的に促進することにつきましては賛成する次第でございます。
  70. 竹谷源太郎

    ○竹谷委員 御趣旨はわかりました。そこで、干拓をやってそれだけ農地がふえる、これはむろん農地の面積が拡大するのであるから、農業には非常によいのでありますが、この中にさえ、離農——ことに東京、大阪などにどんどん人口が集中する。そこに農村の人々が集まってくるということになると、離農という現象ができてきて、ますます日本の人口の配分がへんぱになり、産業並びに所得が一方に偏するということになる。しかし、それだけ農村人口が減って、一人当たりの所得がふえていく。一方において生産性が向上してくる、一戸当たりの面積が適正規模になって増加するから、機械を利用するなり、あるいは経営、生産の向上ができる、これはよくわかるのでありますが、それよりも、先ほど比佐さんの、原則論としてはこれは賛成だが、やり方がむずかしい、こういうお話を聞いているうちに、私はやはり反対じゃないかと思ったのですが、今足鹿君の質問に対しては、やった方がよい、こういう御意見であるということで、逆に私の考えとは別な結論が出たようでございました。比佐さんのお話を承っても、オランダのような海面下でもございませんでしょうが、ゼロ・メートルのような変な干拓地をたくさん作ることは、金もかかるし、またいろいろ将来の災害の危険もある。こういうときに、北海道なり、九州なり、四国なり、東北なり、そういう残された未開発地をもっと活用する手段に出る。東京湾埋め立てに四兆円もかかるとすれば、これをもって陸上交通に金をつぎ込めば、農村から一時間くらいで通勤のできるところに適正な工場の配置等がなされて、離農せずして、農業者ではないが、従来通り農家におって通える、そして所得が上る。今農村所得の三分の一は農業外収入でありますが、この農業外収入が三分の二にもふえて、事実上農業者は、農業に直接従事する人は少なくなるが、農村の人には農業外収入が増加して、農村の生活が豊かになる、そういう日本の社会を作る方が、農村政策としてもいいのじゃないか、このような感想を私は抱くわけでございます。むろん、これがためには、その農業のセンターが各地方になければならない。北海道にも、東北にも、裏日本にも、四国にも、九州にもなければならぬ。それと関連して、方々に適正に分散された工場に、直接、農民が居を変えずして、職業を変えて農業外収入が得られる、こういうふうに持っていく方が、より妥当な日本の社会ができるのではないかへんぱな発達をして、そうして先ほど稲葉さんのお話にあった通り、今のところ、東京や大阪は経済的に後進地方よりもかえって工場の経営が引き合う、そういうことでございまするが、いろんな物理的な関係から、あるいは経営上の間接経費が非常にふえるというような点からも、かえって密集地帯が工業経営上不利益になる、採算も合わないという時代がくるかもしれないということをおっしゃいましたが、そういう全体の見通しから言うと、そのために日本の農村の人が移動すると、大へんな住宅払底でございます。今は二、三百万戸でございまするが、これが焼けたり老廃したりして、新築していかなければならぬ。そうなると、今後十年間に八百万戸くらいの家を作らなければならぬ。その上に農村の人口が大量に移動するということになると、住宅建設に大へんな大投資が必要になる。そういうような点から見て、農村の問題としていかにこの法案をお考えになっておられるか、この機会にお尋ねしたいと思うのであります。
  71. 大坪藤市

    ○大坪参考人 ただいまも御意見がありました通り、もちろん、農村人口の吸収ということにつきましては、いわゆる農村地帯に工業を興しまして、それによりまして農村人口が農業以外によって所得を得る、こういう形態が最も望ましいと、私もただいまの御意見通り考えるのでございます。本法の問題になって参るのでございまするが、本法の規定自体といたしましては、臨海地域につきましても、提案者の趣旨といたされましては、東京、大阪あるいは名古屋というようなものを頭に描かれているかもしれませんけれども、その点は想像の程度を出ませんが、この地域指定の問題につきましても、これは今後、いわゆる都市の工業の地方分散というようなことも、この法律の運用いかんによっては可能なわけでございます。運用いかんによりましては、東京でありますとか、大阪でありますとか、たださえ交通事情その他いろいろな弊害のありまするととろに、もっとたくさんの人間を集中する、こういうようなことになるのでございまするが、運用によりましては、これは地方分散的なこともできないわけではなかろうと思うのでございます。従いまして、先ほども申し上げましたように、東京、大阪、北九州、こういうような点に集中をするということにつきましては、国土総合開発というような観点から、そういうような方向ばかりに進まないで、大いに地方分散をやってもらいまして、それによって農村人口を吸収するということは、これは全般的な立場から、とってもらわなくちゃならない、かように考えるのでございまして、本法自体の問題といたしましては、いわゆる趣旨としては、臨海地域におきまする工業の発展をはかるということでございまするから、そういう面にも農村人口が多少でも吸収できる、こういうような趣旨から賛成をいたす次第でございます。
  72. 寺島隆太郎

    寺島委員長 参考人各位からの御意見の聴取は、この程度にとどめます。  参考人各位には、御多忙のところ御出席を賜わり、貴重な御意見の御開陳をいただきましたことに対しまして、まことに感謝にたえないところであります。本委員会を代表いたしまして、私より衷心御礼を申し上げます。  次会は、来たる二十日(金曜日)午後一時より開会することにし、本日はこれにて散会いたします。     午後三時二十五分散会