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賀屋政府委員 この問題は、接収貴金属等の処理に関する法律案を御
審議願う際、再三御
質問のありました点でございます。そのときの
お答えを繰り返して申し上げますが、
御
指摘の
通り、この法律は大へん難航いたしまして、再三継続
審議になったわけでございます。不幸なことに昨年の通常
国会のときには、衆議院は通過しておりましたが、参議院の御
審議が会期中に終りませんでした。これは総選挙の
関係もあったのですが、そのために継続
審議ということにもならず、一時法律が廃案になったという時代があったのであります。ちょうどその空間の時代におきまして、たまたま御
指摘の
通り、百円銀貨の製造用の素材である造幣局の手持ちの銀が非常に払底いたしたのであります。そこで、これは国の通貨政策からいたしまして、百円紙幣はなるべく作らない、今後は百円は銀貨でいくという大
方針が流れております。それに伴いまして、銀の素材をどうしても必要とするということになったわけでございます。法律といたしましては、接収貴金属というものは、これは
駐留軍が戦後において強権をもって占有を移したものであるということで、これは所有権の
関係は何ら変更するものではない。すなわち接収は没収にあらずという基本的な立場に立った法律でございました。ところが、接収されました銀その他につきましては、接収したときと同じ形で今日まで保存されるものと、そうでなくて接収しました甲のもの、乙のもの、丙のもの、これをたとえば保管のしやすいように溶解をいたしまして、
一つのインゴットの形にするということで、持ち分は確かにあるのであるけれども、どの部分がAの持ち分であるか、Bの持ち分であるか、これがはっきりしない。そういう
関係者が非常に多数でありまして、これは民法の一般原則である共有物の分割ということ、これは当事者で協議をいたしまして、持ち分を確定するわけでありますが、当事者の協議がととのわないときには裁判所にきめてもらう、こういうことになるのでございますが、こういう手続はとうていとることができませんので、そこで特別な民法に対する例外法を作りまして、そういうふうな、不特定物と呼んでおりますが、いろいろな人たちのものが混合しておるものの分け方について、特別な規定を設けたわけでございます。しかしながら、私どもは先ほど申しましたように、没収ではないということでございますので、たまたま接収いたしましたときと同じ形でそのものが残っておる。しかもいろいろな接収した進駐軍のレシートでありますとか、接収中の
管理の記録でありますとか、いろいろの証拠
資料等からいたしまして、それがAならAの所有物であることがはっきりしております分については、これは理論的には法律の規定をしいて必要としないという解釈をとっておったわけでございます。ただ、こういった進駐軍の没収によって、一時膨大な貴金属が接収せられ、それが講和条約の発効とともに日本
政府に返されてきたのであるから、これに対するいろいろな巷間疑惑の問題がございましたので、この点は法律上、あるいは厳密にいえば法律の規定が必要でないかもしれないけれども、これを処理するには
一つの特別な法律でもって、
国会の御
審議を経て、どういったものが幾らそういった
関係にある貴金属であるかということを明るみに出して、法律の適用をしてこれを処理するのが適当であろうということで、先ほど申しました不特定物につきましては当然法律が必要であるのでございますが、特定物につきましても、できるだけ法律の成立を待って処理したいという
考えであったのでございますが、国家的な別の通貨政策という要請から、どうしても銀を必要とするということでありますれば、しいて法律的な純粋な解釈からいえば規定が必要でないそういった特定物につきまして、だれが見てもこれがはっきりとしておるものであれば、先に
政府がこれを使うのもやむを得なかろうということで、処理をしたのでございます。
政府だけが使って、それではそういうものが
民間にもあったらどうするかということを言われるのでございますが、
民間の方々の中で、接収されてそのものが特定の形で残っておるか、あるいはほかの人のものと混合されて不特定の形になっておるかということは、ごく偶然のことでございまして、特定の方たちだけに先にお返しするということも行政
措置としては適当ではなかろうということで、これは新しい
国会が成立すれば、当然法律も提案するつもりでありますから、いましばらくお待ち下さいということで、待っていただくことにしました。国のものにつきましては、やむを得ずそういう使い方をしたわけであります。
それは銀貨についてでございますが、前例がないわけではございません。
昭和二十八年でございましたか、最初わが国がIMFに加盟いたしましたときに、これは一定額の金を分担したわけでございますが、その金を納めますために、やはり接収されておりました国の所有の金十五トンをこれに使うということにしたのでございます。
そういうふうにして、法律が継続
審議にでもなっておる際でありますれば、できるだけそれを待ってということでございますが、当時、昨年の七月でありますが、この法律の廃案中にどうしても銀を使う必要が起こったということで、異例の
措置としてとったわけであります。当時といたしましても、できるだけこれは慎重にということで、閣議
決定を経ましたのみならず、いわゆる
民間のその方の
資料の鑑定等についての知識経験者といたしまして、あるいは法制局の方、技術者、あるいは学者の方たちのお集まりを願いまして、膨大な
資料に基きまして、この金は明らかに
政府の所有しておった金であるということを認定をいたしまして、返還
措置をとったわけでございます。
なお、その後に再提出になりました法律の中には、附則に一項を設けまして、
昭和二十七年の四月二十八日からこの法律の施行の日までの間に返還したものがあれば、その明細をこの法律の施行後すみやかに公告する、そうして
民間の他の利害
関係人がそれについて
異議があれば、訴訟その他の手続を起こすことができるようにということを
考えまして、そういった条文を
一つ新しくつけ加えたわけでございます。