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1959-11-11 第33回国会 衆議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年十一月十一日(水曜日)     午後一時四十五分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 岩本 信行君 理事 菅家 喜六君    理事 佐々木盛雄君 理事 椎熊 三郎君    理事 床次 徳二君 理事 戸叶 里子君    理事 松本 七郎君 理事 森島 守人君       愛知 揆一君    池田正之輔君       宇都宮徳馬君    菊池 義郎君       野田 武夫君    福家 俊一君       森下 國男君    山村新治郎君       岡田 春夫君    柏  正男君       勝間田清一君    田中 稔男君       帆足  計君    穗積 七郎君       堤 ツルヨ君  出席国務大臣         外 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         外務政務次官  小林 絹治君         外務事務官         (アジア局長) 伊關佑二郎君         外務事務官         (アジア局賠償         部長)     小田部謙一君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君  委員外出席者         大蔵事務官         (主税局税関部         長)      木村 秀弘君         大蔵事務官         (理財局外債課         長)      半田  剛君         厚生事務官         (引揚援護局         長)      河野 鎭雄君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 十一月十日  委員高田富之辞任につき、その補欠として岡  田春夫君が議長指名委員に選任された。 同月十一日  委員竹内俊吉辞任につき、その補欠として菅  家喜六君が議長指名委員に選任された。 同日  理事中曽根康弘君六月十八日委員辞任につき、  その補欠として菅家喜六君が理事に当選した。 同日  理事宇都宮徳馬君同日理事辞任につき、その補  欠として椎熊三郎君が理事に当選した。     ————————————— 十一月十日  在日朝鮮人帰国促進に関する請願(羽田武嗣  郎君紹介)(第一七〇号)  同(松平忠久紹介)(第一七一号)  同(山口好一紹介)(第一七二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  日本国ヴィエトナム共和国との間の賠償協定  の締結について承認を求めるの件(条約第一  号)  日本国ヴィエトナム共和国との間の借款に関  する協定締結について承認を求めるの件(条  約第二号)      ————◇—————
  2. 小澤佐重喜

    小澤委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。理事宇都宮徳馬君より理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小澤佐重喜

    小澤委員長 御異議がなければ、さよう取り計らいます。  この結果、本委員会理事が二名欠員となりましたので、この際理事補欠選挙を行いたいと存じますが、慣例によりまして委員長より指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 小澤佐重喜

    小澤委員長 御異議がないようでありますから、理事に    椎熊 三郎君  菅家 喜六君を指名いたします。      ————◇—————
  5. 小澤佐重喜

    小澤委員長 日本国ヴィエトナム共和国との間の賠償協定締結について承認を求めるの件及び日本国ヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定締結について承認を求めるの件、右両件を一括議題といたします。  質疑の通告があります。順次これを許します。岡田春夫君。
  6. 岡田春夫

    岡田委員 予算委員会におきますベトナム賠償問題の私の質問に対して、岸総理大臣並びに藤山外務大臣も必ずしも明快な答弁をいたしておりません。そこでこれに関連をいたしまして、きょうは質問を続行いたしたいと思います。  質問に入ります前に、この前予算委員会藤山外務大臣から明言をいただいておりますけれども、ベトナム賠償の基礎になりました戦争損害調書、並びに、今まで賠償協定締結をされまして、それによって現在実施されております関係国戦争損害調書提出していただくことになっておりましたが、この点はわれわれが審議を続行いたします意味において非常に重要な関係がございますので、大体いつごろ資料として御提出になるか、この点をまず第一にお伺いをしたいと思います。
  7. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 調書につきましては、二、三日中に出せるだろうと思います。
  8. 岡田春夫

    岡田委員 これは非常に重要でございますので、二、三日中というお話がございましたが、やはりこの調書が出て参りませんと具体的な審議ができて参りませんので、事務当局として間違いなくその程度でお出しになれますか。伊關さん、いかがでございますか。
  9. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 大丈夫でございます。
  10. 岡田春夫

    岡田委員 やはりこれも資料関連するものでございますが、私のきょうの質問の第一点は、沈船引き揚げ協定関連する問題から入って参りたいと考えております。  今さら私からお話を申し上げるまでもなく、昭和二十八年の九月の十六日に沈船引き揚げ協定がたしか仮調印されたはずでございますが、この交渉がいつから始まって、どのような経過で、九月の十六日にはどういうことになっているか、これに関係をいたしました人々といいますか、日本政府代表として参加をいたしました人はだれであるか、こういう点についてまず第一にお伺いをいたしたいと思います。
  11. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 交渉が始まりましたのは、たしか五十三年の六月だと思います。そして九月の十何日かに仮調印をいたしております。わが方で交渉参加いたしましたのは、大野参事官、ただいま英国の大使、それから卜部アジア局第三課長重光条約局第三課長、この三人でございます。
  12. 岡田春夫

    岡田委員 きわめて簡単な経過の御答弁がありましたが、もう少し詳細な経過の御報告をもしいただけまするならお願いをいたしたいと思います。
  13. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 要するにほかの国、フィリピンインドネシア等ともその少し前から沈船の引き揚げ交渉をいたしておりました。そこで同じような形でベトナムともいたしたわけであります。これにからみまして、どういうふうに沈船のあれを見るか。先方賠償要求総額二億五千万ドルの一%ないし二%というふうなことを言い、当方としましては、そうじゃないんだ、沈船というもの、これも賠償額のある程度の部分にしたいのだというふうなことを言ったりしておりますが、そういう点はございますが、その他の点では交渉経緯と申しましてもそれほど別に変った点はありません。
  14. 岡田春夫

    岡田委員 それではあまり御報告をしたくないようでありますから、具体的に伺って参ります。  仮調印イニシアルされたわけでありますが、日本からは先ほどお話しのように大野参事官イニシアルされておると思いますけれども、その他の国々——国々と私は申し上げますが、その国々イニシアルをいたしておりますか。
  15. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 国々と申し上げましたのは、私はフィリピンインドネシアのことを申したのでございまして、この場合は、こちらは大野先ほどのあれでありまして、先方の当事者はフィン・バン・ジェム土木局長ル・ジェニセール仏臨時代理大使ドジャン仏大使館一等書記官、こういうのがベトナムから出て交渉いたしております。
  16. 岡田春夫

    岡田委員 私が国々と申し上げましたのは、今あなたの御答弁通りに、ベトナム代表としては、フィン・バン・ジェム代表、もう一人はフランス代表としてル・ジェニセール代表、この二人が代表として署名をしておるのではないかということを伺ったのですが、間違いありませんか。
  17. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 どうも私自身よく読んでおりませんので申しわけございませんが、日本側は奥村当時の次官、向うは今のフィン・バン・ジェム、そういうふうになっておりますが、あるいはほかにフランスの人がやったのがありますか、ちょっと私調べた範囲ではそういうふうになっております。
  18. 岡田春夫

    岡田委員 この点についてはまだはっきりわからないようですが、たしかル・ジェニセールフランス代理大使が実は一緒イニシアルをしておる。ということは、あなたはその当時その担当課にはおられなかったわけですから、ある程度やむを得ないけれども、きょう私は午前中に引き揚げ協定の問題を質問いたしますと通告をいたしてありますから、一つ調べを願っておきたかったのでありますけれども、賠償交渉が始まりましたときに、初めから日本ベトナムとの間で沈船引き揚げ交渉を始めたのではなくて、フランスドジャンという大使日本との間に交渉が始まったはずであります。この点は御存じございませんか。
  19. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 その通りであります。
  20. 岡田春夫

    岡田委員 ドジャンという大使はどういう立場において沈船引き揚げ交渉参加されたわけでありますか。
  21. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 当時には向こう在外公館がございませんので、向うのかわりに事実上やったと思います。
  22. 岡田春夫

    岡田委員 しかし、在外公館がないということだけが理由にはならないと思います。たとえばソビエト日本との交渉の場合においても、日本の国内には日ソ共同宣言ができる前においては、御承知通りソビエト代表機関というものはありませんでした。しかし、これについてはロンドンあるいはモスクワその他において交渉をやったのでありますが、やはり賠償交渉あるいはこういう重要な問題につきましては、直接当事国同士交渉すべきだと思いますが、あなたの方で先ほど答弁ができなかった点にも関連をいたしまして、フランスがなぜ日本ベトナム賠償問題の一つである沈船引き揚げ協定交渉参加をしておったか、その事情を明らかにしていただきたいと思います。
  23. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 在外公館がございませんし、従来の関係からいって事実上フランスに頼んだ。そうして調印の際には向こう側が出ておるのですから、実際問題として差しつかえないのではないかと思います。
  24. 岡田春夫

    岡田委員 先ほどイニシアルの、仮調印の問題については、これはあと答弁をされますか、資料として御提出になりますか、どうですか。
  25. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 この点は後ほど調べました上で……。
  26. 岡田春夫

    岡田委員 先ほど伊關さんの答弁によると、もっぱら日本在外公館がなかった理由をもってのみフランス代表がまず交渉に応じたというお話ですが、それだけの理由でございますか。
  27. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 フランスベトナムとの関係におきまして、エリゼ協定でありますか、フランスがある程度の外交に対しまして関与をする権限を持っております。たとえば条約締結するときには通報を受けるとか、私は詳しいことは存じませんが、そういう意味からいきまして、そういう関連もございます。
  28. 岡田春夫

    岡田委員 これは高橋さんに伺っておきますが、フランス憲法は一九四六年の十月に第四共和国として憲法が制定になっておりますが、その中で憲法の第六十条に、フランス国家としての領土の規定がございます。その中に幾つかの領土の分類があるわけでありますが、沈船引き揚げ協定の当時あるいは講和条約の当時におけるステートオブベトナムという、国といいましょうか、私は国とは言わないのでありますが、一応百歩譲って国といたしておきましょう。国は、憲法六十条のどの地位に当たっているのか。この点については、私は六十条のエタ・アソシエ、これに該当すると思いますが、いかがでございますか。
  29. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 御承知のようにカンボジア、ラオスそれからベトナム、ともにフランスの本国とともにユニオン・フランセーズ、フランス連合を構成しております。従いましてフランス連合を構成している一員としての地位を持っている、このように考えます。
  30. 岡田春夫

    岡田委員 いや、私の伺っているのは、憲法六十条に規定する、その中のどれに当たりますかと伺っているわけです。
  31. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 エタ・アソシエでございます。
  32. 岡田春夫

    岡田委員 伊關さん、よく覚えておいて下さい。これはエタ・アソシエという立場においてフランス参加したわけでございます。フランスはそういう権限のもとにおいて参加しているということを、はっきりその前提に立ってお答えにならなければならないし、イニシアルをしたのも、その意味においてイニシアルをしておるのであります。この点はいかがですか。
  33. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ちょっと補足させていただきますが、ただいまのエタ・アソシエ関係沈船引き揚げにおける代表関係、その関係からエタ・アソシエの問題の点御指摘になったかと考えますが、この沈船引き揚げ交渉におきましては、ジェムというベトナム代表は、ベトナム政府正式代表でございまして、沈船引き上げ協定調印する権限を持ってということを交渉の段階において声明いたしております。
  34. 岡田春夫

    岡田委員 ステートオブベトナムの正式の代表である。しかしそれと同時に、それではあなたにもう一度伺いますが、ル・ジェ二セールというフランス代理大使署名をしておるとするならば、これはどういう地位ですか。フランス代表するものでありますか、あなたのおっしゃる通りですよ。フランス連合代表としてフランス代理大使署名している。——時間がかかりますから、もう少し補足しましょう。それはなぜならば、エリゼ協定の中の外交権継承関係に基づいて生まれてきていることであります。ですからここでは、フランス署名するというのは当然なんであります。この点はいかがでございますか。私の意見は正しいと思うのですが、違いますか。
  35. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 それはいかなる形でも署名はできると考えております。すなわち、エリゼ協定に従った一つやり方。そのやり方もいろいろな広いやり方があるかと考えております。
  36. 岡田春夫

    岡田委員 それはちょっとあまりにもばく然とした答弁ですね。それでは私もう一度伺いますが、日本ドジャンというフランス大使との交渉に基づいて、そうしてステートオブベトナム日本との間で、まず賠償交渉をやろうということになったわけですね。そこで、それでは、バンジェムという人がサインをしているとするならば、フランスと、バンジェムという人の間に、何らかの権利継承関係賠償問題に関しても起こらなくちゃならないわけですね。その点は私申し上げておる。私そうではなくて、サインのときにはフランス一緒サインしているというところに、フランス連合の中におけるステートオブベトナム地位が明らかに現われているではないかということを申し上げているわけです。ですから、あなたのように、その場合、いろいろの場合というお話ですと、私の質問に対する答弁にならないわけなんでありまして、こういう点はもう少し明確に御答弁を願いたいと思います。
  37. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいま御指摘の点は、フランス側——フランスと申しますか、フランス代表が必ず参与しなければならないということはないというように考えております。
  38. 岡田春夫

    岡田委員 まあこの点は、この点ばかり論議しておっても始まりませんから、進めます。  私の記憶では、その仮調印をいたしました条文は、確か四カ条であったと思います。そしてそれに関連して付属文書もあったはずでありますが、これをもう少し具体的にお話を願いたいのと、仮調印をした以降における経過はどのようになっておりますか。
  39. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 条文は四条でございます。仮調印をいたしましたあと経過と申しますと、仮調印をいたしましたので、正式調印をするようにとこちらから盛んにせっついたわけでございますが、どういう理由か、これは先方が明瞭にいたしませんが、結局五五年の十二月でございますか、それをたな上げにして、そうして賠償の本交渉をしたいということを申し出たわけでございます。
  40. 岡田春夫

    岡田委員 この間の衆議院の本会議におきまして、松本七郎議員から、沈船引き揚げ協定に関して合意議事録があるはずだ、これを資料として提出してもらいたい、こういう要求を正式に出しておるわけでありますが、この資料提出がいまだにございません。これについて藤山外務大臣、いかが処理されておられますか、この点をまず伺いたいと思います。
  41. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 事務当局で出すことに相なろうかと思います。
  42. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃどうも——藤山さんは実業家だから、言葉がきわめて円滑で、出すことに相なろうかと思います。というのでは、出すんだか出さないんだかわからないのであって、出すのですか、出さないのですか、この点ははっきりと御答弁願いたいと思います。
  43. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今の答弁ではっきりしていると思うのですけれども、出すようにいたしております。
  44. 岡田春夫

    岡田委員 合意議事録提出される。そこで、それに並行いたしまして、伊關さんにお伺いしますが、仮調印をいたしました条文それ自体も御提出になりますか。
  45. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 条文の方は提出いたします。それから合意議事録につきましては、もうちょっと読ましていただきまして、全部お出しできるかどうか。私は大臣に差しつかえないと申し上げましたが、今事務当局の方では、交渉経緯にかかって秘密にしなければならぬものがあるかもしれぬ、こう言っておりますから、もうちょっと検討さしていただきます。
  46. 岡田春夫

    岡田委員 委員長にお伺いいたします。外務大臣提出をすると言うのに、行政担当者提出できない——これは、われわれはどちらを聞いたらいいのですか。私は外務大臣言葉を信じますが、伊關局長の方が外務大臣より上なんですか。
  47. 小澤佐重喜

    小澤委員長 それは御承知通り……。
  48. 岡田春夫

    岡田委員 ですから、こういう外務省部内の不統一は、厳重に御注意を願いたいと思います。
  49. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろん外交交渉の内容でありますから、出せるものと出せないものとあることは、当然だと思います。今回の場合は出せると思います。
  50. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、藤山さんが再度出せるとお話になりましたから、私は藤山さんの方がやはり局長より上だ、こういうように確信をいたします。(笑声)  そこでもう少し経過をお伺いいたしたいのです。六月の、——あなたはおられなかったから御存じありませんけれども、六月の二十五日から交渉が始まりまして、たしか七月の初旬に至るまで五回交渉をやっております。ところがその交渉が済んでから、先ほどからお話の、ベトナム代表であるジェムという人は、七月の八日に日本を立ってステートオブベトナムに帰っております。そうして交渉ニヵ月間そのまま中断になっております。そしてこの交渉中断の二カ月間のあとで、再開されたのは九月の四日であります。この九月の四日までニヵ月間ブランクになっておる。ところがこの沈船引き揚げ協定交渉は、日本側の当初の予想によりますと、六月に交渉が始まったら、まあ一週間か二週間できまるであろうと考えておったのだが、突如としてジェム代表が帰国されたという事情については、これは今度沈船引き揚げ交渉に非常に深い関係があるのですが、これはどういうわけで帰ったのですか。この間の事情お答えいただきたいと思います。
  51. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 当時の交渉関係者がおりませんので、調べました上でお答えいたします。
  52. 岡田春夫

    岡田委員 この点もまだお調べになっておらないようですが、これは一つわれわれの審議に非常に関係がありますので、早くお調べになって、答弁または資料として御提出を願いたいと思います。  その当時大蔵省でこの沈船引き揚げ交渉を進めて参りました主たる担当局といいますか、それからその当時の方の名前がもしわかりましたら、お答えいただきたいと思います。
  53. 半田剛

    半田説明員 理財局外債課長であります。私は昭和三十二年七月二十二日から現在の地位におりますので、その当時の仕事にタッチしておりません。賠償関係大蔵省の窓口としては理財局であります。それから沈船引き揚げのときに大蔵省の局、課長がどなたであったかは、ちょっと今わかりかねます。
  54. 岡田春夫

    岡田委員 それでもう一つ伺いたいのは、その当時の担当局長並びにその関係者、これはあとでけっこうですが、お答え願いたい。  それからその当時のそういう方がおられるとするならば、当然交渉についても大蔵省としての記録があるはずでありますが、これはどうなんですか。
  55. 半田剛

    半田説明員 大蔵省としましては、沈船引き揚げに限らず、賠償問題につきまして大蔵省としての書類はもちろんございます。
  56. 岡田春夫

    岡田委員 これはあなたにも沈船問題をやりますと申し上げてありますからお調べになってきておられると思いますが、その当時の大蔵省態度は、インドシナの地区においてはほとんど戦争行為がなかった、これが第一点。第二の点はピアストル貨債務、いわゆる特別円ですね。ピアスドル貨債務は金塊の引き渡しによって大部分清算済みである、残りのドルと円については平和条約第十五条による返還要求があるから、その他の賠償請求権となるような損害はほとんどないとした、このような点が大蔵省の省議できまっているはずでありますが、この点はいかがですか。
  57. 半田剛

    半田説明員 先ほど申し上げました通り、当時タッチしていなかったものですから、記憶がございません。
  58. 岡田春夫

    岡田委員 この点はお調べいただいて、あとで御答弁を願いたいと思います。  その次は、この中にございますが、その当時の新聞を詳細に調べてみても、みんなが書いている。各社とも書いているのに全然うそのことを書くこともありませんし、私自身もはっきりした確証を持っておりますので、私は申し上げますけれども、特別円について、平和条約第十五条に基づく返還要求があったということは書いてありますが、これは事実でございますか。
  59. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 はたして十五条に基づく返還要求であるかどうかということははっきりわかりませんが、十五条に基づくものによりますと、九カ月以内に出さなければならないことになっております。そこでそれに基づいた請求であるかどうかということははっきりしておりません。
  60. 岡田春夫

    岡田委員 それはどの国からございましたか。
  61. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 フランスでございます。
  62. 岡田春夫

    岡田委員 その点フランスから返還要求があったのは、当然これは政府要求するんですから、文書によって要求されておると思いますが、それは間違いございませんでしょうね。その文書は当然お調べの上で、何条であるかも書いてあるはずでありますが、この点ははっきりしていただきたいと思います。
  63. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 文書がございますから、それではあと提出いたします。
  64. 岡田春夫

    岡田委員 御提出が願えるようでありますから、それでは、九月の四日に交渉再開になっております。これは再開後第一回の交渉でありますが、このときに、ベトナム代表は二カ月間向こうへ帰ってきたものでありますから、この日本の主張に対してベトナムは全面的に歩み寄ったということが明らかになっております。この点はいかがですか。
  65. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 その辺のところもよく調べました上で、御返事いたします。
  66. 岡田春夫

    岡田委員 これは一つ藤山さんも御注意願いたいんですが、私たち社会党態度は前から再三申し上げておるように、今度の五千五百六十万ドルという賠償協定は、前に昭和二十八年にきまった二百二十五万ドル沈船協定で済んでおったのに、いつの間にか二十倍になっちゃった、これはおかしいじゃないかということを盛んにわれわれは言っておるわけです。そうすれば、あなた方は、私がやりますということを事前に通告したら、沈船協定のことを来るなということくらいはお調べ願わないと、きょうになって、そのときの模様はあと調べまして御報告しますと言ったら、これは審議はいつまでたっても済みませんよ。あなたは二十五日までに審議上げるということを再三言明になっておられますが、これはどういう根拠で言っておられるんですか。
  67. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は別に二十五日までに上げるというようなことを言っておるわけではございません。むろんできるだけ早く上がりますことは好ましいことと思います。その意味において外務省においてもできるだけその依頼に対しては協力し、お答えができるように勉強をしなければならぬことはむろんでありまして、事前に御通告をいただけばできるだけの勉強はいたします。
  68. 岡田春夫

    岡田委員 きょう答弁を留保されました点が実はたくさんあるのでございますが、藤山さんの責任において、この次の委員会か、この次の私の発言の機会までにすべてを答弁させられ、あるいは資料として提出をされる、こういう決心がございますかどうか、もう一度念のために伺っておきます。
  69. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 当時の直接関係者が残っておりません。従いまして、現在の局長以下そういう当時の事情にはなはだ詳しくない場合がございますので、書類上の調査その他でありますから、御質問のようなこまかい点になりますと、落ちる場合があることはやむを得ないことだと思いますが、できるだけ審議を促進する意味からしましても、十分な勉強をいたして出てくるように今後いたしたいと思います。
  70. 岡田春夫

    岡田委員 しかし藤山さん、それではあまり理由になりません。私もそのときの沈船引き揚げ協定の当事者でありませんから、しかもあなたの方では資料はふんだんに持っている。私は手もない一人で調べているのですよ。あなたの方は何十人、何百人の外務省を持ちながら、私に聞かれてもさっぱりわからない。直接の当事者じゃないからということは理由にならないでしょう。もう少し御勉強願いますように具体的に私はお願いしているわけですから、この点は一つお願いしておきます。  そこでもう一つ。あなたの方でお調べいただくために私は非常に親切に具体的にあげていきますが、その再開までの懸案事項としてきまっておったものにはいろいろありますけれども、その中には、少なくともベトナムの対日請求権の根拠について、第二点は戦争が始まった時期について、第三点は戦争損害の算定について、この点が日本の主張とベトナムの主張とが、七月の八日にベトナム代表が帰るまでに意見の一致しなかった点であります。その他の点もございますが、この三点について、九月四日でベトナム側が全面的に日本側の主張に歩み寄ったわけであります。こういう三つの点についてぜひ詳しい御答弁を願いたいと思うのです。それで私はきょう特にここで申し上げておきますが、九月の四日の会議というものは非常に重要な意味を持っております。この点は審議を進める意味でもあなたの方はぜひとも御協力を願いたいのであります。私具体的に意地悪く言いませんが、そのときに意見の一致を見た点は少なくともニヵ所あります。この点は事実かどうかを一つ伺いしたいのでありますが、第一点は日本ベトナムに支払うべき賠償総額はきわめて少額のものとする。これの意見の一致を見た。第二の点は沈船引き揚げの範囲はできるだけ制限する。この二つが九月四日に意見の一致を見ているはずであります。従ってわれわれが言うのは、二百二十五万ドル以上たとえ出ても、何千万ドルというものが出るわけはないというところに一つの論拠があるわけです。ですから九月の四日の会議の内容を詳しく御答弁を願いたいと思っております。
  71. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 べリー・スモールという言葉を使っておるのは事実でございます。ただそれに対しまして、向こうは初めにこの沈船賠償の二百二十五万ドルというものは全賠償額の一%ないし二%というふうなことを言っておりました。これは日本代表がこの非常に小さい、ベリー・スモールということを言ったのでありますが、これに対しまして向こう代表はそれを聞きおきまして、そしてこの賠償の総額についてはこの段階においては討議しない、こういうことを討議したくないということを言っております。それから初めの一%か二%にしか当たらないと言ったその発言は撤回しておるというようなことであります。
  72. 岡田春夫

    岡田委員 それは九月の四日の会談における記録でありますか。それはあとではありませんか。
  73. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 九月四日でございます。
  74. 岡田春夫

    岡田委員 この点は非常に重要なので、もう一度御確認を願っておきますが、日本の方から言ったのは当然なんであります。ところがこれについて原則的に了解を与えたから会談が再開できたはずであります。二カ月半もベトナムに帰っていろいろ打ち合わせてきて日本の主張に対して一応原則的に歩み寄りを示したから、実はこれについて交渉再開できるようになったわけであります。こういう点についてももう一度いろいろ御調査になる点もございますので、これに関連してあとで御答弁願ってもけっこうでありますが、この点はこの程度で私はきょう押えておきます。この点は非常に重要な点でありますので、あとで重ねて質問をいたしますから、お調べの上で用意をしていただきたいと思います。  そこでその次の点は、先ほど協定文の中には金額の明示がないはずであります。金額の明示は合意議事録にあるはずであります。
  75. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 第一条の二項に二百二十五万ドルをこえないものとするということは書いてあります。
  76. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ私の調べ間違いかもしれませんが、二百二十五万ドルをこえない範囲ということは協定の第一条にあるのですか。合意議事録ではありませんか。
  77. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 協定の第一条であります。
  78. 岡田春夫

    岡田委員 その点はわかりました。それならば、先ほど松本七郎君の資料要求関連して大臣要求をいたして御回答をいただいておりますが、協定文並びに合意議事録はぜひとも早急に御提出を願いたいと思います。特にこれは仮調印で効力を発生して締結されたものではないわけですし、向こうが一方的に破棄したわけでありますから、これは当然この経過を詳細に国会に報告をされてもかまわないことだと私は思います。もし必要があればこの経過については秘密会を開いてでも御報告いだだいてもけっこうであります。再度私は念を押しておきますが、この協定文、合意議事録先ほど申しました諸点につきましてもう少し突っ込んだ御答弁を願うように、資料として提出できますようにお願いをいたしておきたいと思います。いかがでありますか。
  79. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 外交交渉文書でありますから、申すまでもなく出せるものと出せないものとございます。先ほど申し上げたものにつきましては、出して差しつかえないものは出すことにするのは当然であります。
  80. 岡田春夫

    岡田委員 一応私が今申し上げたのは、沈船引き揚げ協定関連して資料がなかなか出ておりませんので、審議を促進するために資料要求としてその前段的な話をしたわけでありますが、その次は国籍の問題に入りたいと思うのであります。この国籍の問題は私はきょうは取り上げたくなかったのであります。この前の政府側の答弁によって二重国籍であるというような答弁をされておる。それが新聞紙上を通じて、いかにも二重国籍というものが正当であり、私の主張が間違っておるかのごとき印象が一般に与えられております。それだけに私は私の論拠は間違いないという確信の上に立って、もう少し実は伺いたいわけであります。ですから少々しつこくなりますが、この点はそういう事情にあることを御理解の上でお聞き願いたい。これはあなたの方ではお調べはまだしておられないかもしれないが、私の方では調べておりますが、フランス国籍の人は何もトラン・ヴァン・フー首相だけではないわけであります。一九四八年から例のアロン湾宣言といって、藤山さんが常に言われておるあのアロン湾宣言以来ゴ・ディンジェム大統領に至るまで、バオダイ政権のもとで——これはこの前申し上げましたがバオダイは総理大臣の任免権を持っております。バオダイの任免によってかわりました総理大臣は全部で八人であります。この八人の中でフランス国籍だけしか持っておらないと私が考える者は五人ないし六人であります。残りの二人ないし三人がフランス国籍でないというような実態であります。特にトラン・ヴァン・フー氏の前の人、そのあとの人は両方ともフランス国籍であることは事実であります。そうなって参りますと、私の言いたいのは、八人の歴代内閣の総理大臣フランス国籍であるとすると、これは明らかにかいらい政権じゃないか。これはだれの目から見たって明らかではないかということを具体的に私は言いたい。そこでその一例としてサンフランシスコ条約調印をしたトラン・ヴァン・フー氏の例を取り上げたわけであります。そこでこれは高橋さんにお伺いした方がいいんじゃないかと思いますが、この前まだお調べになっておらないというお話がございましたが、トラン・ヴァン・フー氏の出身地はどこになりますか。
  81. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 コーチシナでございます。
  82. 岡田春夫

    岡田委員 この前私が御質問いたしましたときに申し上げましたが、インドシナ地区で、ベトナム地区においてトンキン、アンナンは保護国であった。コーチシナは植民地であった、これは明らかだと思いますが、いかがでございましょう。
  83. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 お説の通りだと思います。
  84. 岡田春夫

    岡田委員 それからもう一つは、ステートオブベトナムの国籍は一九五五年に国籍法が実施になったということをこの前御答弁になりましたが、これも事実でございますか。
  85. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 その通りでございます。
  86. 岡田春夫

    岡田委員 外務省の配付いたしました国際条約集、条令集の中に、御存じの通りに「国籍法のてい触についてのある種の問題に関する条約」というものが一九三〇年四月の十二日へーグで署名をされておりますへーグの署名条文の第二条、国籍の準拠法という点を一つ高橋さんごらん願いたいのでありますが、「個人がある国の国籍を有するかどうかに関するすべての問題は、その国の法令に従って決定する。」このように書いてあります。従って、この法令ということは、具体的な例をあげて申しますならば、日本では国籍法、それぞれの法律に基いて公布実施されたものが、これが法令であると思うわけであります。こういう解釈をせざるを得ないと思いますが、この点はいかがでございますか。
  87. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 その通りだと思います。
  88. 岡田春夫

    岡田委員 それではトラン・ヴァン・フー氏は一九五五年に実施されました国籍法によっていつベトナムの国籍を取得されましたか。
  89. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 その御指摘の点は、一九四八年にアロン湾宣言で独立しまして、それからさらにエリゼ協定で独立の詳細な規定が行なわれたわけでございます。そこでこれは新しい国が初めて独立することでございますから、その独立した地域の国々は当然その国の国籍と考えられ、こういう条約は独立した後の問題として、国内法の整備としてそういう国籍法とかその他ができてくる。従いまして独立早々の当初においてはそういうことがない。しかし、ないということは、その人は国籍を持っていないということではないと考えております。
  90. 岡田春夫

    岡田委員 それでは国籍は四八年のアロン湾協定、もっと厳密に言えば四九年のエリゼ協定によって一応国籍ができたという解釈をとられるのですが、そういう解釈をすると五五年の国籍法を作る必要がないじゃないか。すでに初めから国籍があるのだから……。これはどういうわけですか。
  91. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 これは御承知通り、国籍の技術的な詳細な点がいろいろございます。そういう問題はやはり法令的に整備しなければならない、こういうふうに考えている次第でございます。
  92. 岡田春夫

    岡田委員 トラン・ヴァン・フー氏は、一九五五年の国籍法に基いた国籍の手続をしておりますか。
  93. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 五五年の協定に従って手続していると私は考えます。しかし、当時はそうでございますが、五五年後その国籍法に従ってどういうふうになっているかということはちょっと私どもわかりません。
  94. 岡田春夫

    岡田委員 それでは今の答弁にちょっと思わず間違って答弁されている点があるのじゃないかと思うのですが、思いますというのは、四九年のあれで手続したというのですか、五五年ですか。
  95. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 二重国籍でございますから、五五年の国籍法では、そういう点を整理する規定がございます。それに従ってどちらかの国籍をとった、こういうふうに考えております。
  96. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃおかしいじゃないですか。あなたの御答弁はおかしいですよ。その二重国籍だという断定を先にされたわけですね。ところが二重国籍の断定をされたならば、五五年の二重国籍の整理のときには、当然取得していなければならぬでしょう。私はとっておらないと言っておるのですよ。あなたの方は、とっているかどうか、どちらかですというのでは、これは答弁になりませんよ。
  97. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 一九五五年の協定では、フランス国籍を選ばない者はベトナム国籍であるというふうなどちらかの手続をすることになっております。従いまして、その手続に従って、どちらか一つになっている、こういうことでございます。どっちになっているかはわからない。
  98. 岡田春夫

    岡田委員 それではあなたのおっしゃるのは、御答弁だけを伺っていると、五五年になったらフランスだけになった、こういう意味ですか。それ以前は二重国籍であった、こういう意味ですか。
  99. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 そのようにどちらかに決定するために五五年の協定ができ上ったわけでございます。
  100. 岡田春夫

    岡田委員 それでは四九年なり、そのときに国籍としての何らかの法律なり法的拘束力があるものがなければなりませんね。それはあるのですか。
  101. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 その点は先ほど申し上げました通り、独立いたしましたので、そのどちらかと申しますか、その地の人々はみなその国の国籍をとった、こういうふうに考えております。
  102. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 それは解釈じゃありませんか。法的な効果がありますか。法的な措置をとらないで国民が国籍を持ったということはありますか。それは法的効果はないじゃありませんか。(「ない国籍をどうして適用するのだ」と呼び、その他発言する者多し)名前はあえて言いませんが、前副議長が、私がいろいろ質問をしているのに妨害している。これでは、私は委員会の進行をできるだけ慎重にやろうとしているのに、こういう形では私は審議できません。委員長として一つ十分に御注意を願いたいと思います。
  103. 小澤佐重喜

    小澤委員長 どうぞ皆さん御静粛に願います。
  104. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 先ほど申し上げました通り、独立いたしますれば、当然その国の国籍を持つ、あとの国籍法でこれは整備される。いかなる独立国でも、一番初めから、独立する前から国籍の詳細な規定があるというわけにはいかない。そうなりますと、独立したときに国籍を持つものであると考えざるを得ない、これは当然の考え方であろうと考えます。
  105. 岡田春夫

    岡田委員 しかし高橋さん、そういうことを言われるけれども、七年もたっているわけですね。しかも確かにその人はベトナムの人ということは言えますよ。それから別な意味では、おそらくベトナムの人とは言わなかったと思う。インドシナの人と言ったと思う。インドシナの人種であるということは、これは人類学上の問題ですね。法律上の問題ではありませんね。その人は本来国籍を持つ占有権を持っている。占有権というのは岸さんなんかの好きな言葉だ。それを持っているというわけで、それによって法的な権利義務の関係が具体的に規定されますか、どうなんですか。藤山さん、あなたの答弁、この間統一見解を発表されたのですが、条約局長が苦しんでいるのに、あなたはもっとはっきり言っていただきたい。
  106. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は、独立国ができまして法制整備をしない限り、やはりその国に住まっております人がその国の国籍をとるのはあたりまえだと思っております。そうしてそれが法制整備によって、その法制上の資格をとるというのは、これは当然じゃないかと思っております。
  107. 岡田春夫

    岡田委員 とるのはあたりまえですよ。しかしその人は、先ほどから私が言っておるようにインドシナ人という人類的な意味の人種であって、国籍という限りは法的な権利義務の関係を保証され、その関係を持つということですよ。その国籍法というものがないのに、法的な権利義務の関係はどこから生まれるのですか。あとでできたときには、ありますよ、その当時においてどこにできますか。そんなことは人類学上の話ですよ。あなたのお話は国際法や法律の話じゃありませんよ。
  108. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は岡田氏と見解が違うかもしれませんけれども、独立をしましていろいろな法規が整備してない、その期間において、その人類学上の、そのときに住まっております人が、その国の人であるということは当然なことでありまして、ただそれが法制上整備されてない、従ってその国の人であることを欲しない人は、あるいはそういう整備されましたときに離脱するというような方法が考えられるかもしれませんけれども、そこにおります人がその国籍を持つという待遇を与えられることは、私は当然なことじゃないかと思います。法律的にはわからなくてもそうです。
  109. 岡田春夫

    岡田委員 私が伺っているのは、今国籍の問題だというその国籍が問題なのです。ベトナムの国籍もなかったのですよ。その点あなた知らないのです。知らないからそんなことを言っているのです。法的に拘束をし得る国籍としてありましたか、ないじゃないですか。藤山さん、ないということは認めますか。
  110. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 戸籍法がない以上はないのです。五五年までは戸籍法がないのですからないのです。それはわかっておる。しかし国が独立した以上は、その戸籍法も整備されなければなりません。従って戸籍法が整備されますれば、そこに住まっておる人はその戸籍法に従って手続をして正式な戸籍を取得するでしょうけれども、それまでの間やはり無国籍人というわけではないと思います。その国の人は一応その国の人として認められるのは当然なことだと思います。
  111. 岡田春夫

    岡田委員 ないということは今はっきり言われました。ないということをはっきり言われたならば、法律上の国籍がないということならば、法律上の二重国籍ではないではないか。フランス籍ではないか。明らかじゃありませんか。だれが見たって明らかじゃないですか、二重国籍というのは間違いじゃありませんか。藤山さん、法律上の二重国籍はありますか、ないでしょう。どうです。
  112. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 先ほど来御答弁申し上げておりますように、国際法的には独立によって取得したのである、このように考えなければならないと思います。戸籍法とかその他の問題はその国の国籍とは別であると私は考えております。国際法上のレベルにおいて考えます場合には、独立していなければならない。国籍法ができるまで、その国民自体の国籍が定まらないというわけにはいかないと考えております。
  113. 岡田春夫

    岡田委員 それは重大な間違いですよ。そんなことを言われるといけないです。そのあとに「無国籍のある場合に関する議定書」というのがありますね。それは一九三〇年四月十二日のへーグでの署名です。あなたはそういういいかげんなことを言ってはいけない。法的にベトナムの国籍がない場合、フランスの国籍しかないという場合、その人が——これは第二条をごらん下さい。「締約国は、前条に掲げた原則及び規則を、この議定書の実施後、」要するに時間がなくなりますから言いますが、そのベトナムの人が本来持つべき国籍という法律上の国籍を持たないで、フランスの法律上の国籍を持ってこの人が外国に行って、この人の身元を保護するという場合には、これはへーグ条約に基づいて国籍のある国、前において国籍のある国にその責任を負わなければならないという規定になっている。その場合どうですか。ベトナムの国籍に基づいてやりませんよ。フランスの国籍に基づいてやりますよ。これは法律上二重国籍ではなくて、明らかに単一国籍であるということを立証しているじゃないですか。どうです。フランス植民地の籍はあってもベトナムの籍なんかないです。
  114. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいまの点でございますが、外国に行きます場合に、無国籍ともう一つの二重国籍の場合では、その国籍の所属国がそれぞれ保護の任に当たる、こういうふうに考えております。
  115. 岡田春夫

    岡田委員 ですからフランスの国籍というものが法律上明定されている、その人はフランスの国籍によってされるのです。あたりまえじゃありませんか。
  116. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 その際にベトナムの国籍も持っておる、こういうふうに考えます。
  117. 岡田春夫

    岡田委員 それは国際法上法的に有効でしょうか。国籍法はフランス国籍というのが有効じゃないでしょうか。法律上のことは何らないじゃないですか。ありますか。国籍としての手続をアロン湾協定以降においてしておりますか。
  118. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 それは諸外国がベトナムの独立を認めておりますれば、やはりフランスベトナムの国籍それぞれの国籍を認めておるようになるかと思います。
  119. 岡田春夫

    岡田委員 そんなことは答弁になりませんよ。それでは五五年以前に国籍の手続か何かやりましたか。やらないでしょう。
  120. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 たびたび同じことを申し上げて恐縮でありますが、やはり独立とともに国籍を持つ。それから五五年の協定は、国籍の詳細な点をはっきりといたしておると思っております。
  121. 岡田春夫

    岡田委員 この点については、おそらくあなたの方で調べてないのでしょう。さっきも一九五五年の国籍法できめましたかと聞いたら、この点お調べになっておらない。私の方は調べておるからこう言っているのですよ。ですから、私が二重国籍じゃないと言っているのに対して、あなたが二重国籍だとおっしゃるなら、その挙証責任はあなたの方にあるわけですね。そうすると、一九五五年の何月何日のでこれはこのようになりましたということをやはり挙証してもらわなければ、どっちから見たってこれは私の方が正しいので、あなたの方はただ観念的に言っているのにすぎませんよ。
  122. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 独立とともに二重国籍ができますので、その協定によりまして、それを特定の時期以前の場合、また特定の時期以後の場合どうするか、どちらを選ぶか、そういうふうな協定ができ上った次第だと考えております。
  123. 岡田春夫

    岡田委員 これはあなたの方が挙証の責任を明らかにしない限りは、また別な機会に質問をいたします。あなたの方でコーチシナまではお調べになったけれども、今度は一九五五年の国籍は取得していますかと言ったら、それはまあということですから、もっと反証をあげて挙証責任を明らかにする場合には、藤山さんもっとはっきり、ここは国会ですからね、何月何日にこうなっておるとはっきり言ってほしい。私はこうなんだと言っているのだから、政府としてはもっと準備をして、これはこうなんですよというくらいの準備をしなくちゃなりませんよ。それじゃあなた協定審議をする場合だって、一つも話にならぬじゃありませんか。もっとこの点は一つ藤山さん、関係者に対して厳重に厳命をされて、はっきりと答弁のできるように一つお願いしたいと思います。
  124. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 何月何日に、五五年の国籍法によりまして取得したなんていうようなこまかい点につきましては、事前にあらかじめ御通知がなければ私は答弁は非常に困難なことだと思うのであります。もしそういうものがございましたら、事前に一つ御通知を願いますれば、私の方もよく調べるようにしたいと思います。
  125. 岡田春夫

    岡田委員 それは私も今度はできるだけ通知はしましょう。しかしこんなに国籍法が問題になっているのですから、二重国籍などというようなことを言うためには、先ほど結局法律的に国籍がないのだということをあなたはお認めになった。そうしたら観念的に二重国籍があったということになる。(椎熊委員「事実的にはない」と呼ぶ)だから観念的にある。法律的にはないでしょう。(椎熊委員「そのときには法律はなかったのじゃないか」と呼ぶ)ともかく……。  委員長、どうも私は同郷の人だからあまり言いたくないし、また記録には残したくないから言わないのですけれども、政府のかわりに答弁されるとちょっと困るのですがな。
  126. 小澤佐重喜

    小澤委員長 どうぞ皆さん御静粛に願います。
  127. 岡田春夫

    岡田委員 それでは進めます。第三点にお伺いいたしますが、わかり切ったことはわかり切ったこととして進めますけれども、多数国間の条約は、これは締結した場合に、国家または政府承認を必ずしも意味しないですね。しかし二国間条約の場合には、両国がお互いに相手国に対して国家または政府承認ということを前提にしない限りは締結はできませんですな。これはそういうことになりましょう。条約ですよ。
  128. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 一般的には多数国間条約と申しますか、その締結のために国際会議に一堂に会合することはお互いの承認意味しない、こういうふうに一般的には考えられていると思います。それから個別的には、これはたびたび申し上げましたように、協定の種類、その内容にもよると思いますが、重大な協定では、これは当然承認を前提とする。承認を考えられなければ締結をできないものであると思います。
  129. 岡田春夫

    岡田委員 私のお伺いしたのは、二国間条約のことを言ったのです。多数国間は大体あなたの御答弁通りでよくわかりました。二国間条約締結する場合、お互いに相手国の政府あるいは国家がこれを承認しているという前提なしには、条約締結はできませんでしょう。
  130. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 これはすべての条約がそうであるということはできないと思います。おのおの個々の条約の内容を検討しなければわからない問題だと思います。
  131. 岡田春夫

    岡田委員 少くとも、これは戦時においては一応別ですつね。しかし平時の場合においては条約と名のつく限りは、政府協定とかこういう場合はまた一応別としても、狭い意味条約という限りにおいては、これは当然国家並びに政府というものの承認を前提としない限りは締結できないんじゃありませんか。どうですか。政府はないのだけれども条約は結ぶのだというようなことは二国間条約でございますか。
  132. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 条約という名前がそうであるから、すぐそれがただいま御指摘のように承認した政府を前提としなければならないというふうに一般的に言うことはできない。やはり、条約その他約束の内容を個々に検討してみなければわからない、こういうふうに考えます。
  133. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、それは条約とか協定とかいう言葉だけではなくて、相手国を拘束することを締結するということになりますと、これはやはり一つ条約ですね。この場合には、相手国を拘束するというのは、相手国が承認してないのに拘束できるものですか。
  134. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 これはもちろん相手を拘束いたしますが、その相手が国とか、どういう国であるかというような問題とは別といたしまして、そのような権利義務関係が特定の相手方に対して生ずるということは考えられます。
  135. 岡田春夫

    岡田委員 いや、私の言っているのは、特定の義務関係を生ずるというのは相手という客体があるということを前提にしているわけですな。
  136. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 その通りでございます。そういう、事実としてそういうものがあるということでございます。
  137. 岡田春夫

    岡田委員 第二点は、これは、現在の政府は民族の独立を尊重するということを常に言っておられますね。そこで、現在の政府が、現在の日本の岸内閣の政府承認する場合の要件、これは具体的にどういう形で承認の要件を明らかにしておりますか。政府承認の要件というのはわれわれ通念として持っておりますけれども、国際法上の通念、これは違うものであります。具体的にこれは一つ外務大臣からお答え願いたいと思いますが、新政府承認の要件を明らかにしていただきたいと思います。
  138. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろん、国際法上の通念に従ってわれわれは考えていくということでございます。
  139. 岡田春夫

    岡田委員 国際法上の通念という場合には、私はこのようにとっておりますが、実効ある権力が及んでおるということですね。それから自立した政府であるということ。それから国際法を守るという意思があること、この点もありますね。大体この三つが政府承認の要件になっていると思いますが、この点はいかがでありますか。
  140. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 御指摘通り、私も国際法上はその三点が要件であろうと思います。ただ、要件が備わったならばこれは承認しなければならないという、義務としての要件でない。承認するかどうかは各国の政策の問題でございまして、もしその要件を備わっていないのに承認したら、時期尚早の承認として、国際法上の義務違反が起こるのだ。しかし、その要件が備わったからといって承認しなければならないということはない、こういうわけでございます。
  141. 岡田春夫

    岡田委員 これは非常に明快な御答弁をいただきました。それで、これは藤山さんに伺いたいのですが、民族の独立を尊重するということになると、国連憲章の中で民族の自決権というものがありますが、この民族の自決権というものを、日本政府は民族の独立を尊重するというのですから、当然尊重されるわけでしょうね。
  142. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろん、民族の自決権というものを尊重することは当然でありまして、独立をする場合に、民族的な意欲が盛り上がった国ということは、今日の時代において当然のことだと思います。
  143. 岡田春夫

    岡田委員 実は、この前の予算委員会において私は一つの主張をいたしたわけでございます。バオダイ政権といわれているステーツ・オブベトナムというものは、少くとも、サンフランシスコ講和条約の当時においてはかいらい政権であった。このことは外務省資料において明らかであるという断定をいたしたわけであります。ところが、この点について、藤山外務大臣は、かいらい政権ではないということを月曜日の委員会答弁しておる。かいらい政権ではない理由として、フランスベトナムとの条約エリゼ協定継承関係に基づいてかいらい政権ではない、こういうような答弁があったわけであります。ところが、私の伺っておるのは、そういう条約関係ももちろん重要でありますが、それだけではなくて、先ほど高橋さんに伺いましたように、政府承認要件として、その実体において合法政府としての、かいらい政権ではないという意味の実体を持っておらないということを私は明らかにしたわけであります。外務省資料においてもかいらい政権であるといっておる。そこで、藤山さんに伺いたいのは、実体の上においても、法律関係においても、一応、あなたの御意見としてはかいらい政権ではないという断定を下されるならば、講和条約の当時、サンフランシスコ条約の当時において、ステーツ・オブベトナムのバオダイ政権は、実体の上においてもかいらい政権ではないということを具体的に、あなたは、挙証されなければならない。この点について実体の上でもかいらい政権ではないという具体的な御意見を伺いたいと思います。
  144. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 かいらいということが非合法といいますか、そういうふうにわれわれ解しておらぬので、よくかいらい政権とか何とかいわれることは、どこに親しい、だれが援助しているというような意味にとっておるわけだと思いますが、そういう点について見方はいろいろあるわけでありまして、そういう点から申しまして、ある人はかいらいと言い、ある人はかいらいでないと言うこともいえるだろうと思います。だから、法的に成り上がってきて、歴史的経過を持って立ち上がってきている国の政府というものは、そういう意味においてかいらいではないということは、私は、当然ではないか、こう思っております。
  145. 岡田春夫

    岡田委員 政府承認の要件として、先ほど高橋さんが答弁したように、実体上要件に沿わない政権である。もしそれを承認しているならば尚早の承認であるということになるのだが、これは藤山さん、実体の上でいかがお考えになっているのですか。
  146. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 当時ベトナム全部をラオス、カンボジアと分けて独立さしたわけであります。そういう意味において、地域的にも全ベトナム代表者としてなっております。あるいは人口上の要件、そうして、だれを立てるかということの、その人の問題は別として、合法的に政府を成立さしております以上、要件は整っているのじゃないかと私どもも考えております。
  147. 岡田春夫

    岡田委員 私はこの点をこの前ずいぶんいろいろやりましたので……。あなたは、整っているのじゃないかとお話になりますけれども、先ほどお話の中で、ベトナムの全領土を実際支配する法的関係があるというお話ですが、この点についても実は問題があるのです。これは私あとで言います。  それでは具体的に伺いますが、実効ある支配権が全ベトナムに及んでおりましたか。これはサンフランシスコ条約の当時の話です。
  148. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろん新しく国が独立する場合に、いろいろ地方的な騒乱もございましょうし、部分的には及んでない場合もあろうかと思います。しかしながらそれが政府として合法的に成り立ったものでありますから、当然そういう要件を備えておると思います。要件を備えておればこそ、一九五四年二月にはイギリス、フランス等も同じような承認行為をいたしたわけでありまして、私どもはそれと同じような見解を持っております。
  149. 岡田春夫

    岡田委員 私は実効的支配権が及んでおったかどうかということを実体の問題として聞いているんで、あなたは、法律的にあったから及んでいるのじゃないかと思う、こういうお話ですから、これは答弁の食い違いなんです。なぜ私がそういうことを言うかというと、ここにまたあなたのところの本がありますから、本ではっきりしますが、昭和二十七年の「戦後におけるインドシナの政治情勢」ここにもはっきり書いてありますね。「越南領域の三分の二を越盟側の支配下に置かれ、かつ完全独立に距たりあるそのステータスは民族主義者の参加を阻んでおり、」ということで、この中の後の方に、ベトナム・バオダイ政権というものは三分の一しか実効ある支配権がなかったとはっきり言っているじゃありませんか。これはどうなんです、間違いなんですか。
  150. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 当時の事情においていろいろな見方があったと思います。全部に及んでいたと見る人もありましょうし、あるいは一部分騒乱があったということもいえると思います。しかしながらおそらく一九五〇年に各国がこれを承認いたしております。そういう伏況のもとにおいてサンフランシスコ会議にも出席をいたしておりますので、みなそういう見方をしていたということは当然だと思います。
  151. 岡田春夫

    岡田委員 それではこれは外務省の見方が間違っている、こういうことになるわけですね。あなたは全体として実効的支配権は及んでおらないというのではなくて、及んでいるのだ、こういうお話ですか。この本は間違っているわけですね。
  152. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろん私は、先ほどから申しておりますように、一部に騒乱があったり何かしたことはあったと思います。しかしそのこと自体、必ずしも全部の要件が欠けておったというわけではないと思っております。
  153. 岡田春夫

    岡田委員 私の聞いているのは実効的な支配権です。それじゃ実際に支配権が全部に及んでおったのですか、及んでないじゃありませんか。少なくとも戦闘状態があれば、全部に及んでおったなどということはいえないわけですね。しかも政権が樹立されたのは戦争が始まってから三年目ですね。及んでおるということはいえないじゃありませんか。どうして及んでおりますか。
  154. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 部分的には戦乱もあり、あるいは指導権の及ばなかったところもあったということは、先ほどから申し上げております。しかしそういう部分的な戦闘があり、あるいは若干の地域に支配権が及んでいないといいましても、この国が承認されるべき国際通念の上に特に欠けているとは思いません。
  155. 岡田春夫

    岡田委員 あなたはそういう答弁技術ではだめなんです。具体的にあと伺いますが、戦争が始まってから三年後の戦乱の中でこのバオダイ政権ができたのでありますから、実際に実効的な支配権が及んでおったのは、常識で考えても占領地域内だけじゃありませんか。ホー・チミンの占領しておる地域においては実効的な支配権が及ばないのはだれが見ても明らかではありませんか。それではそれは違うお話になりますか。
  156. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知のように、当時すでに三十ヵ国も承認しております。そういう意味から申しましても、みなそういう国際通念に従って承認してきておるわけでありまして、それに特別にそういう状況下において異論をはさむ必要もないと思います。
  157. 岡田春夫

    岡田委員 私の質問に答えて下さい。私は何ヵ国が承認したとかなんとか言っておるのではありません。占領地域内しか実効的な支配権が及んでないじゃないかということを言っておるので、それについてホー・チミンの地域の中に及んでおらないということは、だれが見ても明らかじゃありませんか。そうでしょう。それを聞いているんですよ。
  158. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 そういう状況であると岡田さんは言われておりますが、私も若干の部分はむろん戦乱があったということを認めておりますけれども、しかし今のような国際通念からいって、要件がないかといえば三十万国が要件があるものとして認めておると私も申し上げておるわけであります。
  159. 岡田春夫

    岡田委員 これはあとの問題ですが、それでは憲法にかわる政令第一号、これは一九四九年七月一日付政令第一号です。これはステートオブベトナム——べトナム国の憲法にかわるべきもので、この中には領土というものに確定がございません。——ありますか。
  160. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいま御指摘の点は、独立しましたときの一九四九年のエリゼ協定にその限定はいたしております。
  161. 岡田春夫

    岡田委員 政令第一号にはございますか。
  162. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 領土の確定はないと思っております。
  163. 岡田春夫

    岡田委員 領土の確定のないのは事実であります。  それでは今高橋さんの言われたエリゼ協定によって領土の確定がございますか。その条章を明らかにして下さい。
  164. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 エリゼ協定の第一部と申しますか、ユニテ・デュ・べトナム——ベトナムの統一というところで、北、中及び南ベトナムを全体の領域としまして、そういう領域についての主権をフランスがバオダイに認めたということになると思います。
  165. 岡田春夫

    岡田委員 そのあともう少し読んで下さい。そのあとが問題だ。「しかしコーチンシナの越南の他部分との結合は関係住民若しくは、かれらの代表者たちの自由なる審議の後でなくしては合法的に達成せられたとは看做され得ない。」とある。この結合はいつありましたか。
  166. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 一九四九年の六月六日だったと思います。
  167. 岡田春夫

    岡田委員 一九四九年六月六日にどういう形でありましたか。
  168. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 フランス本国の議会を通過して公布されたわけであります。
  169. 岡田春夫

    岡田委員 関係住民の自由なる審議あとですよ。関係り住民はどのような措置をとったのですか。
  170. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 それは、その前にコーチシナの地域議会ができまして、その地域議会の意思に従ってそれは終了したことであると考えております。これはコーチシナの問題でございますが、御指摘がありましたものですから、そういう歴史的な事実があるということを申し上げたわけであります。
  171. 岡田春夫

    岡田委員 今高橋さんのお答えはコーチシナの議会の問題ですね。トンキン、アンナンとの結合についての自由意思のあれはないじゃないですか。
  172. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいまの点はコーチシナの点だけをこの協定では申しておりまして、トンキンの方は申してないと思います。
  173. 岡田春夫

    岡田委員 そんなことはありません。結合というのはその三者の関係住民が自由なる意思を明らかにしなければ、法的効果を持たないのですよ。コーチシナだけいかに決定したって……。それじゃ藤山さん、伺いますが、日本がアメリカも南米もそれからヨーロッパも全部住民の意思においてこれは日本のものであるという意思決定をしたら、アメリカも南米もヨーロッパもこれは全部日本のものだ、こんなこと言えますか。そんな話ありませんよ。それぞれの国が意思決定しない限り有効ではありませんよ。藤山さんいかがですか。これははっきりしているじゃないですか。
  174. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 高橋条約局長から答弁いたします。
  175. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいまの点ちょっと誤解があったかと思いますので補足させていただきますが、コーチシナの住民の意思云々、それから国内手続というのは、コーチシナがフランスの直轄植民地でございましたので、それをフランスの国内手続としてベトナムの方に結合させるというための手続であると考えております。ベトナム自体はコーチシナが含まれることは当然の前提としておった、こういうふうに考えております。
  176. 岡田春夫

    岡田委員 それはそういう解釈をされるだろうと私は思っていたんですよ。それはそうじゃないんですね。というのは実効的支配権を見ればわかると思う。トンキン、アンナンの場合には、特にバオダイ政権の実効的支配権はなかったわけです。ですからサイゴンが中心になっているんでしょう。だからこれはトンキン、アンナンにおける実効的な支配権を明確にするという意味で、自由な審議がなければならぬ。これがないんですよ。ないんだからこれは実効上においては統一というものが行なわれておらないということを立証しているんですよ。
  177. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 これはエリゼ協定の第一部の前段を読みますれば、トンキン、アンナンでありますか、それとコーチシナとその実効的云々という問題でなくて、当然それがベトナムを構成するものであるという前提に立った条約でありますし文言であると私は判断いたしております。
  178. 岡田春夫

    岡田委員 それはそういう解釈だけでは不十分であります。これはあと一つ私とあなたの速記録を対比してごらんになったらはっきりわかると思いますが、そういうことはいわゆる前段の趣旨としてあるのであって、ここで規定されているのは、いわゆる関係住民の意思表示が大切なんです。その点が別にないわけですね。藤山さん、これはよく覚えておいて下さいよ。岡田の言っているのは何だかわからないということになっては困るので……。こういうことになっている。それでエリゼ協定によっては、必ずしも結合というものが明らかにされておらないわけです。実効的支配権、領土の確定というものがないわけですね。  それでは次に進んで、自立した政府の結合ということについてお伺いします。一九五一年サンフランシスコ条約の当時において憲法、あるいは議会がステートオブベトナムにございましたか。
  179. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 先ほどの政令第一号で、そういう問題は将来決定をするということになっていたと思います。
  180. 岡田春夫

    岡田委員 ない。  それから政令第一号において、政府というものが暫定政府であるということが明らかになっている、これも間違いございませんね。
  181. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 そのように私どもは政令を読んでおります。
  182. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ自立した政府機構じゃないじゃないですか。これは憲法もなく、議会もなく、それから政府も暫定政府であり、一定の領土を支配した実効的支配権は及んでおりません。実体上としてはこれは自立した政府とは言えないんじゃありませんか。
  183. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 その点は先ほどから申し上げたと思いますが、独立の過程にあるものでございますから、そういう国会や、そういう問題はなかったという期間も、これは当然あったろうと考えております。
  184. 岡田春夫

    岡田委員 独立の過程でありますから自立したものではないということに、藤山さんなりますね。
  185. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ちょっと補足してお答えをいたします。独立の直後でございますので、そのような問題はなかった。ベトナムが一九四八年及び九年の協定によりまして独立いたしまして、その独立の直後でございますから、すぐに国会やその他のことが整備しているというわけにはいかないということであります。     〔「向う政府のことを一々日本答弁することはないじゃないか」と呼び、その他発言する者多し〕
  186. 小澤佐重喜

    小澤委員長 どうぞ静粛に願います。
  187. 岡田春夫

    岡田委員 これはいろいろ答弁の問題があれになりますが、藤山さんもこれは御存じだろうと思うのですが、これはあなたのところの本に書いてあるのですよ、ベトナム民主共和国というのは九月の二日独立の宣言をやったという事実を。そしてその国の存在しているという事実をこの間岸さんは予算委員会答弁されましたね。この点間違いございませんね。そうでしょう。藤山さん聞いておられたんじゃないですか。藤山さん間違いないか念を押しておきます。
  188. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 政府委員から……。
  189. 岡田春夫

    岡田委員 それはちょっと困ります。ちょっと待って下さいよ。これは予算委員会での岸さんの答弁藤山さん間違いありませんね、と言っているのですから。
  190. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 岸総理とあなたとのどういうようなあれがありましたですか。どういうような応答がありましたか、ちょっと言っていただきたいと思います。
  191. 岡田春夫

    岡田委員 そうですが、わかりました。速記録がありますから——いいですね、岸さんの答弁速記録十一月六日付の九ページ「今申しましたように、その事実はそれを認めます。」こうはっきり言っていますね。私が認めますかと言ったら認めますとはっきり答えております。これは事実なんでしょう。
  192. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 それはフランスと北ベトナムという意味ですか。
  193. 岡田春夫

    岡田委員 そういうことですか、私さっき言ったつもりですがね。あなたの外務省の発行している本を通じて、ベトナム民主共和国というものが九月の二日に独立の宣言をやったですね。建国の宣言を九月の二日にやったのですが、そのことがあなたの本にベトナム民主共和国の成立、とはっきり書いてある、これはどうかと聞いたら、その事実は認めます、そのようにお答えになっているのです、岸さんが。それは事実ですね、とこう言っているのです。お聞きになったでしょう、一緒におったのですから。
  194. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 それは調査資料にそういうことが書いてあるということを総理は言われたと思うのです。
  195. 岡田春夫

    岡田委員 その事実はそれじゃないのですか、調査資料に書いてあるというのは。事実はないのですか、あるのですか。
  196. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 総理の答弁されたのは、そういうふうに私は考えております。
  197. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ藤山さんはどうお考えですか。その国が建国宣言をしたのは事実でしょう。
  198. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 それはそういう北ベトナム民主共和国というものが自分でもっていろいろな宣言をしたろうと思います。ですからその中にそういうものがあったかもしれません。
  199. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃそういうことの措置が行なわれたのは事実なんでしょう。
  200. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今申し上げましたように騒擾を起こしております、あるいはそういうような運動をしております団体が、自分の立場を声明するようなことはいろいろ言ったと思います。ですからそういう声明をしたとすれば、そういうことは事実あったかもしれません。
  201. 岡田春夫

    岡田委員 それではこの本に書いてあるのは事実ですね。  それで続いて伺いますが、その本に書いてあるのも事実だし、この本では一月の六日に全地域に及ぶ選挙が行なわれた。コーチシナにおいても行なわれた。それから三月の三日に第一回の国会が開かれた。十一月に憲法が正式に制定された。こういう事実が明らかになっておりますが、これは藤山さんではなくて局長でもけっこうですが、こういう事実のあったことはお認めになりましょう。
  202. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 法律的な問題とは別にいたしまして、そういう事実が行われたということは承っております。
  203. 岡田春夫

    岡田委員 それで伺いますが、これは藤山さんにお答え願いたいのですが、ベトナム民主共和国というものが建国の宣言をやって、全地域に実効的な支配権の表われとしてコーチシナを含めて、全体において選挙が行なわれて、その代表である国会議員が三百人、ハノイにおいて第一回の国会を三月の三日に開いて、憲法が正式に制定された。これがベトナム共和国ですね。ところがそれができたのが一九四五年から六年の経過です。それから三年たって、その年の秋に戦争が始まって、三年たってエリゼ協定が作られて、そしてバオダイ政権なるものができた。このバオダイ政権なるものは講和条約調印のときにおいても、憲法もなければ議会もない。政府も暫定政府である。いまだかつて領土に対する全域にわたっての実効的な支配権を持たない。この二つを比べてみて、どちらがこれは正統政府だと思いますか、実効的な支配権の点において。実体としてどちらが正統政府であり、どちらがかいらい政権か。だれが見たってはっきりわかるじゃありませんか。
  204. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろん一部の政府——政府と申しますか、団体が自分のためにそういうようないろいろな手続をとったということはあり得ましても、このこと自体が全ベトナムを支配するものとして合法的に認められるか、認められないかということは全然別問題だと思うのでありまして、やはりそれらの実体につきましても三十数ヵ国が承認しているというのは、三十数ヵ国がそういう実体を必ずしも十分なあれでないと認めているからこそ、三十数ヵ国が逆に南の方を認めている、これは事実なんであります。そういう事実の上に立ってわれわれは判断するよりほか方法はないと考えております。
  205. 岡田春夫

    岡田委員 しかしそれではあなたはそうお話しになりますが、先ほど民族の自決権を尊重するとお話しになっていました。民族の自決権の観点に立てば、ベトナム民主共和国は正式に全域を支配して、国会、憲法を持ち、そして政府を正統政府として、正式の政府として持っているなら、これは民族自決権において認めるのはあたりまえじゃありませんか。あなたはこれを認めないなら、民族自決を認めないということですよ。どうですか。
  206. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 民族が自決することはわれわれは好ましいのですが、どういう方法で自決していくかということになりますればやはり各国が認めるような方法によって自決していく方法をとることが、これがわれわれとしては適当な方法だと認めるよりほか仕方がないと思います。
  207. 岡田春夫

    岡田委員 それでは政府承認というのはそういう要件のみならず、政治的な要件というのが非常に大きい、そういう政治的な要件が非常に大きいので、要件それ自体も否認される場合もあり得る、こういうことですな、
  208. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 必らずしも要件全部を否認するわけではございませんけれども、承認行為というようなことはやはり政治的な考慮が入りますことは、当然だと思います。
  209. 岡田春夫

    岡田委員 それでは伺います。私ここに持っていますが、それではそういう政治的な要素に基づいてやられた、その政治的要素というものは非常に問題であるということについて外務省の本は、これは何もこの一冊だけじゃありません。ヴィエトナム便覧にも出ております。すべてに出ておりますが、こういうようにしてステイト・オブベトナム承認するに至ったきっかけをなしたのはアメリカである、イギリスがまず承認をして、このあと続いて東南アジアの諸国が続々と承認する予定であったのだが、東南アジアの諸国は、タイを除いたそのほかの国は全部承認しなかった、仕方がなくてアメリカがイギリスと一緒になって承認をしたんだが、こういう経過の中でこの外務省の本は書いております。外務省の、これは一例ですが、このほか「ヴィエトナム便覧」に全部書いております。昭和二十九年の「インドシナ三国の政情」というのですが、このようなアメリカのとった措置についてこのようにいっております。「アメリカのこの根本的外交政策の歪曲は、」歪曲と書いてあります。政治的なことは、こういう非常な歪曲をやったわけですね。歪曲によって承認が行なわれたということになりますね。
  210. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 いろいろ見方はございましょうけれども、われわれとしては英米その他が承認いたしまして、そうしてサンフランシスコに出て条約調印したのでありまして、そのときに調印と同時に承認行為が行なわれたということになっております。特別にそういうような政治的考慮を加味して承認したということではございません。
  211. 岡田春夫

    岡田委員 私の伺っておるのは、こういう外交政策が政治的に歪曲されたんだということを外務省の本は書いておるのですが、これは間違いですか、ほんとうですか。
  212. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 調査資料でありますから、いろいろの見方を伝えますことは当然なことだと思うのであります。そういう意味においていろいろな説が書いてあろうかと思っております。
  213. 岡田春夫

    岡田委員 これは調査資料といいましても、ヴィエトナム便覧というのは町に売っておるのですからね。だから外務省の本というのは全然信用できないというのですか。そうなると、外務省の本というのはどれもこれも例をあげれば幾つもあるのです。そういう形で外務省資料というのは全然信用できない、そういうことをわれわれが考えてもよろしいのですか。そういうことですね。
  214. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私どもは資料として正確を期するためには、いろいろな意見を書き加えることは当然だと思います。従いまして、むろん外務省でも全知全能でございませんから、間違う場合もありましょうし、あるいは書き落としもありましょうし、いろいろございましょうけれども、そう不正確な信用のできないようなものを出しておるとは思っておらないわけであります。いろいろな意見を忠実になるべく書いていくということが必要だと思います。
  215. 岡田春夫

    岡田委員 もう一点だけこの点に関連して伺っておきますが、かいらい政権についてはこの前外務省資料を通じて私は申し上げましたが、外務省はかいらい政権であるという点は、私がこの前取り上げた以外にも書いてあることが明らかになりました。やはり昭和二十八年のこの本において、「インドシナ三国の地位」です。これの七ページから八ページについて特にこれは非常にはっきりしておるので申し上げておきますが、「ヴィエトナム、カンボディアおよびラオスのいわゆる『インドシナ三国』は待望の独立を獲得したが、『フランス傀儡政権』として、いまだに内外から鋭い批判を受けている。」かいらい政権ですよ。かいらい政権である。「すなわち国内的には」特に聞いて下さい。「国内的にはヴィエトナム国に対するホー・チー・ミン政権の抗争は依然熾烈で、一般大衆はホー政権を支持していると伝えられ」ホー政権の方を大衆は支持しておる。「さらに国際的には西欧諸国はインドシナ三国を承認しているが、かつて同じ運命にあった東南アジア諸国はいまだに承認を肯んじていない。」しかもまた「その理由がインドシナ三国を『フランスの傀儡政権』とみることにあるのは前記の通りだが、ではその実態はどうか。」といって具体的に書いてあるのです。かいらい政権の実態ですね。「こうした顔ぶれがヴィエトナムに対し、『傀儡政権』の風評」その前にありますが、省略をいたします。「こうした顔ぶれがヴィエトナムに対し『傀儡政権』の風評を高くさせていることは否めない事実であるが、法律的にみてもインドシナ三国は厳密な意味では『独立国』としての内容をもっていない」、ここに書いてある、どうです。「との印象があるのをまぬかれない。」とはっきり言っているじゃありませんか。これがサンフランシスコ条約時代におけるバオダイ政権の実体である、そうではないと言われますか。あったんでしょう。あったんでしょう。
  216. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 かいらい政権というものが合法政府でない、あるいは非合法だという意味においては、私は先ほども申し上げましたように、かいらい政府ではないということを申し上げます。その政府の首脳者がむろんフランスから独立する場合ですから、フランスが相当な援助をしなければ独立を達成できないのであります。そういう仕方をかいらいだと見るか見ないかということは、これは別の問題だと思います。
  217. 岡田春夫

    岡田委員 じゃこの本とは違うというのが藤山さんの考えですね、サンフランシスコ条約の当時……。しかも先ほど私当初に申し上げたように、歴代の内閣、八代のうち五人ないし六人までがフランス国籍で、本来の国籍を持った者は二人か三人しかいない。これがかいらい政権でなくて何ですか。明らかに占領下においてフランスに使われた政権じゃありませんか。それじゃこの点を一つと、第二の点をお伺いいたしましょう。  この前、松本七郎君が本会議質問したでしょう。昭和二十年の三月九日に日本の軍隊がクーデターを行なった、それは三月の九日。三月の十二日にこのバオダイがバオダイ帝国なるものを日本の援助によって作られた。このバオダイ帝国というものはかいらい政権ですか、どうですか。
  218. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、フランスが自分の植民地内に保護国なりそういうものを独立させますときに、フランスが十分な世話をするということは当然だと思います。それをかいらいと見るか見ないかということは、それは見方の問題でありまして、今の資料の中にもそういう印象があるという書き方がしてあるようにお読みいただいたわけでありますが、やはり印象があるということでありまして、そのこと自体が合法的に法律的過程を通ってできた政府を否定するものではないと私は考えております。
  219. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ私の第ニの点の質問ですね。日本がバオダイ帝国を作ったのは、これは日本が世話をしたわけですね。世話をするのはあたりまえだ。これはバオダイのベトナム帝国というのはかいらい政権ではなくて、これも正統政府ですか、そういうことになりますか。
  220. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろん戦争日本が世話したか、世話しないか、どの程度世話したかということは問題でございましょう。しかしその場合に、事案問題として、はたして全ベトナム代表していたかどうかという問題について、合法的に成り立っておれば合法政府でありますし、それが合法政府であった以上、日本が世話したか、世話しなかったかということによって、かいらいと見るか見ないかということは別の問題じゃないかと思います。
  221. 岡田春夫

    岡田委員 しかしこれはバオダイのベトナム帝国という場合には、日本が世話をして全域に対して実効的に支配権を一応持ったのですよ、世話をしたということについては問題はあるけれども……。これはかいらい政権ではないというのですか。あなた自身は、あったならば、なかったならばと二つの例をあげておるが、もう一週間も前に、松本七郎君が質問しておるじゃないですか。あのときに答えられなかったが、どちらですか。
  222. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 当時の事情は私詳しく存じておりませんけれども、今お話しのように、全ベトナムを支配していたのだというお話でありますれば、それは合法的に成立していた。それが日本の世話でできたかできないか、日本の世話でできたからかいらい政府だということは別の問題ではないかと思っております。
  223. 岡田春夫

    岡田委員 では合法政府ですか、どうですか。
  224. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 当時の事情を詳しく存じませんから、今あなたが、全ベトナムを支配しているのだ、従ってそういうような要件がそろっているのだ、ということであれば、あるいは合法政府かもしれません。私はその当時の事情を詳しく知りませんから、これ以上議論を申し上げるわけにいかぬと思います。
  225. 岡田春夫

    岡田委員 そんなことじゃだめですよ。これは支配しているという事実だけ見れば実際に支配しているのだから……。ただ日本の世話、フランスの世話ということにかいらい性がある。(「君がそう思っているのだ」と呼ぶ者あり)これは私だけがそう思っているのじゃなくて、明らかにバオダイ自身がはっきり言っているじゃありませんか。この間、松本七郎君が言ったじゃありませんか。かいらい政府の皇帝になるよりも、独立国の一平民たらんというのがバオダイ自身の退位宣言の中にあったと言っているじゃありませんか。これはかいらい政府だからそう言っているのですよ。同じじゃありませんか。フランスのバオダイ政府日本のバオダイ帝国と同じじゃありませんか。(「違う」と呼ぶ者あり)どういう点が違うのですか。
  226. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 フランスがバオダイに対して干渉、世話をする、そういうことははなはだ迷惑だ。フランスがいろいろ親切に世話をするのは迷惑だということであれば、それはバオダイ自身フランスのそういうような世話は迷惑なんだから因るのだ。その関係において、おれはかいらいじゃないぞ、というような言葉を使うかもしれません。しかしそれと正当に歴史的に譲られてきた条件とは別個の問題であって、かいらい政府というのは、今言ったように何か自分のやることについてむやみにいろいろ、好意的でありますかどうかわかりませんけれども、とにかくやることについて指図する、それはめんどうだということだと思います。     〔「もっと本質論でやれ」「ソ連でさえ、君の祖国でさえ、黙っていたんだぞ」と呼び、その他発言する者多し〕
  227. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  228. 岡田春夫

    岡田委員 静粛にならなければやりません。     〔発言する者多し〕
  229. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。どうぞ岡田君。
  230. 岡田春夫

    岡田委員 委員長、こういう状態ではやりません。
  231. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静かにして下さい。
  232. 岡田春夫

    岡田委員 次の問題に入って参りますが、今までの政府答弁によると、サンフランシスコの会議調印をしたから、ステートオブベトナムは全ベトナム代表する正統政府である、このように答弁をされておると思いますが、この点はいかがですか。
  233. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 その通りでございます。
  234. 岡田春夫

    岡田委員 それは平和条約の何条において明らかに出てきておりますか。
  235. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 平和条約全体と申しますか、これは当然平和条約から——平和条約調印することによって、当然そういうふうに考えるということになります。
  236. 岡田春夫

    岡田委員 それは正統政府ということがあっても、全域を代表するということはどこに出ておりますか。
  237. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 そのような国として、サンフランシスコに出てきて、調印をしたということでございます。
  238. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ具体的に伺いますが、ステートオブベトナムが連合国の地位を取得したことに、二十五条によって、なると思いますがいかがですか。
  239. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 その通りだと思います。
  240. 岡田春夫

    岡田委員 ステートオブベトナムが連合国の地位を取得したけれども、全地域を代表するということはこれによって明らかではありません。条文に書いてあるのは「この条約の適用上、連合国とは、日本国戦争していた国又は以前に第二十三条に列記する国の領域の一部をなしていたもの」——「もの」は、これは英文の場合ステートとなっています。その国ですね、「ものをいう」。領域の一部をなしておったということだけで直ちに全ベトナム代表するということにはなりません。この点はいかが解釈されますか。
  241. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 これは領域の一部をなしておって、そこから独立した国という意味でございます。従いましてこの条約全体、いかなる国でございましても、この署名国と申しますか、調印国で、その領域がどういうふうな国であるかということは、これは当然の前提として、平和条約では問題にしないところだと私は考えております。
  242. 岡田春夫

    岡田委員 いや独立の問題は別ですよ。私の言っているのは、全ベトナムの領域を代表するということを言っておるのです。領域の一部をなしていた国という場合には、これは南ベトナムの地域だけの一部をなしておった国を意味するかもしれない。全ベトナムを直ちに代表するということは、これによっては出てこない。講和条約参加しないから、ベトナム民主共和国の北の方が参加しないから、これは国家としてはあるけれども、講和条約調印をしなかったのであって、これによって国家の存在が否定されたということにはならない。なぜならばソビエトとの条約はどうですか、あるいはインドはどうですか、インドはこの条約には参加してない、しかしながら講和条約参加しておらないからインドという存在はないということがその当時において規定されたことにはならない、そうじゃありませんか。ここにおいて何ら全ベトナム代表するということはこの二十五条の解釈からは出てこないと思うが、どうですか。
  243. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 これはベトナム——エ二ー・ステートという言葉になっております。従いましてステートベトナム国として独立したその国がここで署名をしたということでございます。そこでそれは当然の前提として全ベトナム国、ベトナムの国であるというふうに考えております。
  244. 岡田春夫

    岡田委員 ステートというのはあなたこの前予算委員会答弁されたじゃないですか。ザ・デモクラティック・リパブリック・オブベトナム、これもステートである。あのときフランス語のエタと言ったじゃないですか。同じですよ。どこにこれが全ベトナム代表するということになりますか。二十五条の解釈は出てこないじゃないですか。
  245. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ホー・チミンとの協定ではエタ・リーブルという言葉を使っております。エタ・リーブル、これは英語に訳すればステートという言葉になるかと思いますが、ステートという言葉であるから、この場合のステートという言葉は国家であると私は考えております。当時の協定は、あの協定の前文からながめますと、あそこにはステートという言葉を使ってありますが、あれは自治的な州であるというふうに考えざるを得ない。あれは協定の前文かち出てくるところの解釈でございます。
  246. 岡田春夫

    岡田委員 そういう解釈はあなたの勝手な解釈ですよ。エタ・リーブル、自由な国家、あなたのさっき言ったステートオブベトナムに対して、エタ・アソシエと言ったじゃないですか。エタ・アソシエとエタ・リーブルとはどういうふうに違うのですか。ここにあるステートという言葉は、この場合に両方に使ってあるエタというのはどういうふうに違うのですか。これは明らかに、ステートという点においては国家というのと同じですよ。しかもここで明確に領域の一部と書いてあるのだから、これが全ベトナム代表するということには必ずしもならないじゃないですか。北ベトナムの地域というものに、たとえば私が百歩譲っても、十七度線以北において、ザ・デモクラティック・リパブリック・オブベトナムというものがあったとしても、これが参加しなかったということは、国家の存在というものを否認したことにはならないですよ。インドの場合と比べてごらんなさい。この領域というものは十七度線以南である。そのステートオブベトナムというものを認めたんだ、その解釈だって出てくるじゃないですか。全ベトナム代表するというものは直ちに二十五条によって出てきません。
  247. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 その点は先ほど申し上げました通り、独立宣言のアロン湾宣言とエリゼ協定によって、ベトナム国という領域は全ベトナム代表する国であるということがはっきりしております。そういう国としてフランスとの協定で、主権を譲渡して独立した、その国がこのサンフランシスコの調印にもおもむいた、このように考えております。
  248. 岡田春夫

    岡田委員 そこへ、あなたまたもとへ戻されるなら、先ほどの結合と関係住民の意思はどうするか、その点がはっきりしない限りは、これは全地域を代表するということにはならぬじゃないですか。それは先ほど説明した点では、コーチシナの住民の意思は明らかになった。そしてトンキン、アンナンの自由意思というものは明らかになっておらぬじゃないですか。結合の関係は具体化されておらぬじゃないですか。それじゃ法律解釈からいったって、全ベトナムということがいえぬじゃないですか。どんなことをいってもそういえませんよ。
  249. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 これはエリゼ協定の第一部のユニテ・ド・ベトナムで、ベトナムは北ベトナム、すなわちトンキンでございますが、それとアンナン——中部ベトナムのアンナン、それからコーチシナの結合によって構成されると定義されるところのベトナム、こういうふうな規定となっております。さらに人民の意思云々の点でございますれば、特にコーチシナだけをあげまして、コーチシナがベトナムに結合されるには、ただいま御指摘のようにリーブル・コンシュルタションと申しますか、同地域の住民の意見を求めねばならないという規定がエリゼ協定にあり、この手続を経て、フランス国会の承認も経て行なわれたわけであります。ただしコーチシナの場合はその通りでございますが、ほかのところは少くとも法律的にはそのように当然のこととして考えておる次第でございます。
  250. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ法律解釈だけ伺いましょう。二十五条のこの列記する領域の一部という場合は、これは全域の場合もあるし一部の場合もありますね。それはどうですか。
  251. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 この一部と申しますのは、本国から独立する場合でございます。独立するからそれで一部といっておるわけでございます。一部の大きさが、それはいろいろあるかもしれません。しかしこの一部というのは、フランスから、または本国から独立するところの一部である国ということの意味であると思います。
  252. 岡田春夫

    岡田委員 しかしその一部という解釈からは、それは独立という問題は出てこないでしょう。独立がどのくらいの地域で独立ということとは別に、一部という法律解釈は全部の中の一部という意味でしょう。だからこの法律の解釈からすると、十七度線の北かもしれないし南かもしれないじゃないですか。ただ私の言いたいのは、あなたの方の政府の見解としては、この条約に基づいて日本政府は全ベトナム代表として認めたんだというこの法的措置というか法的承認日本政府がこれに基づいて別途にやったということでしょう。これからは出てこないですよ。
  253. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 条約全体から考えますと、われわれはそのような国として——先ほどの一部云々の問題は別でございますが、ベトナムという国はどういう国であるかというと、そういう国として調印したのである、こういうふうに考えております。
  254. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ伺いますが、私はもうこれははっきりしておると思うのですよ。この一部からは出てこない。あなたの言っておるのは、独立とかなんとかいうのは「もの」ということから出てきておる。ステートをいっておる。一部をいっておるのじゃない。一部というのは「もの」の中の、ステートの中の領域を表わしておる。一部という言葉はそうでしょう。そうじゃないですか。エニー・ステート、原文だってこう書いてあります。二十五条にはっきりしておるじゃありませんか。領域というものが本国の領域の一計だ、こういうことでしょう。しかしステート、「もの」というものから独立の問題が出てきたでしょう。一部ということそれ自体にはこれは何も全域ということを意味しておりません。そうじゃありませんか。これは法律解釈からいったらはっきりしておるじゃありませんか。
  255. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 御指摘のように、その字句解釈としてはそうでございます。しかし全体として調印ということになりますと、実はそのように考えておる次第でございます。
  256. 岡田春夫

    岡田委員 それは日本政府の解釈ですね。法律それ自体からは出てこないのですよ。条文としてはその通りなんです。  そこで私、進めますが、政令第一号においては、領土は不確定であるとあなたは御答弁になった。それかつらフランスベトナム協定エリゼ協定によって、私はこの結合関係についてはあなたとまだ意見がはっきり食い違っております。関係住民の意思表示の問題については違う。しかし私が百歩譲って、たとえばエリゼ協定においては全ベトナム代表するということになっても、国内の規定によるところの領土というものは不確定である。先ほどあなたはこのステートというものの領域の問題は、国内上の問題であるからと言ったでしょう。政令において不確定じゃありませんか。
  257. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 不確定と申しましたのは、そういう憲法やその他の基本規定に、領土はどこからどこまでであるということが書いてない、こういうことでございます。
  258. 岡田春夫

    岡田委員 そこで全ベトナム代表するということを、日本政府で法的に確認した事実はございますか。
  259. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 サンフランシスコ条約調印したときに、そのような国として調印したと思います。
  260. 岡田春夫

    岡田委員 サンフランシスコの会議において、トラン・ヴァン・フー氏は代表として出ていますが、全域を代表するとは言っておりませんよ。そうすれば、日本政府だけが勝手に全域を代表したというふうに解釈した。しかも調印をしたことによって、その承認があるということは、消極的な承認意味します。積極的に全ベトナム代表するということにならないじゃありませんか。法的にベトナム民主共和国というものを排除するという何らかの規定がありましたか。法律上ないじゃありませんか。
  261. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 これは先ほど申しましたように、四八年、九年で独立しまして、ベトナム国というのが、そのベトナム国を代表する政府として、サンフランシスコ条約において調印が行なわれて、当然のこととしてわれわれは考えている次第でございます。
  262. 岡田春夫

    岡田委員 それは日本政府の解釈であって、ベトナム民主共和国という国を否認した事実にはならないでしょう。否認をしたところの法的具体的な措置がありますか。
  263. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 はっきり具体的に否認するというようなことはございません。ただ一つの国においては一つ政府、われわれは二つの国、二つの政府ということは考えておりません。この場合にサンフランシスコ条約に、ベトナム国及びその国の代表として調印が行なわれた、このように考えております。
  264. 岡田春夫

    岡田委員 それは一つの国の中には一つ政府、この限りにおいては私もその通りですよ。しかし私の言っているのは、この条約では二つの国があったということにもなるではないか。そして否認するという具体的な法的措置、何らかの国際法上の措置をとっていない限りは、否認したことにならないじゃないかと言っているのですよ。
  265. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 われわれは一つの国、及び一つ政府として、そのベトナム国という国を認めているわけでございます。
  266. 岡田春夫

    岡田委員 それではどうするのですか。これは私のパスポートです。私のパスポートには、藤山さん、あなたがサインしている。サインの中に、ベトナム民主共和国日本語で書いてある。うしろに、ザ・デモクラティック・レパブリック・オブベトナムと書いてある。これは国じゃないのか。あなたが書いたのだ。あなたがサインしておる。はっきりパスポートを見せましょう。私だけではない。たくさんパスポートがありますよ。柏君もそうだ。伊藤よし子さんもそうだ。これでもうそだと言うのか。国家として承認しているじゃないか。これを明らかにして下さい。これは藤山さんに伺いましょう。あなたがサインしているのだから、明らかにして下さい。国家として承認している。パスポートに国家としてあるじゃないか。(「行きたいというからサインしてやったんじゃないか、行かせてやったんじゃないか」と呼び、その他発言する者あり)うるさいぞ。委員長、注意して下さい。こういう人がいるから、困るじゃないか。答弁できないじゃないか。
  267. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  268. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 承認していない国でありますから、むろん日本としてベトナム民主共和国を認めておりません。しかしその土地に行く方の便宜をはかる意味においては、相手のところに入ります以上、そういう称号を使わざるを得ないかと思います。
  269. 岡田春夫

    岡田委員 そういう事例はたくさんあっていいのですか。そういう事例として作っているのであって、国で法的な承認はないですよ。国というものの存在を認めているから、書いているのでしょう。国としての存在を認めているのでしょう。これは違うのですか。国ではないのですか。国と書いてあるじゃないですか。あなたはどうしてこれは国ではないと言うのか。国でないという反証をあげなさいよ。いいかげんなことを言いなさるな。
  270. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれとしては法律上の国として承認いたしておりません。
  271. 岡田春夫

    岡田委員 法律的なことは言っていない。事実は国としてあるでしょう。あるから書いてあるのじゃないですか。国じゃないのですか。国じゃないか、国じゃありませんか。明らかに藤山さん答えなさい。あなたがサインしたのだから……。
  272. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国と書いてありましても、法律的にわれわれは国としては……。     〔発言する者多し〕
  273. 岡田春夫

    岡田委員 法律上の問題じゃないですよ。国じゃないか。国じゃありませんか。これを違うというのですか。私のパスポートですよ。はっきりしておりますよ。違うのですか。
  274. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 それですから今申し上げております通り、われわれとしては国家として承認はいたしておりません。承認していない国に行かれる場合に、パスポートを用意する場合には、そういう便宜上の処置をせざるを得ない場合があると思います。なお詳しいことは条約局長から……。
  275. 岡田春夫

    岡田委員 私の言っておるのは、国という事実があるということを認めたことになるじゃないかということを言っておるのです。そうでなかったらパスポートの意義というものは……私自身日本国民であり、そうして日本国民が相手の行く先の国に対して、私自身の身柄を保障してくれということが書いてある。向こうに対して、何も国でもないものに対して、勝手に書いてあなたはやったのですか。国があるから書いたんでしょう。違うのですか、どうなんですか。政府としてはっきり言いなさいよ。
  276. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 パスポートの問題でございますが、それはパスポートの発行上の手続としてそういう行く先を明示する必要がございます。従いましてそのような名称をここに書いて行く先を明示した、こういうことになります。
  277. 岡田春夫

    岡田委員 行く先ならばなぜ北ベトナムと書きませんか。それでもわかりますよ。ベトナム民主共和国と、国ということが書いてあるじゃないですか。ハノイと書いたっていいじゃないか、私はハノイに行ったのだから。なぜ国と書いて保護を頼んだのか。その政府に対して保護を頼んだじゃないですか。     〔発言する者多し〕
  278. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  279. 岡田春夫

    岡田委員 あなたが再三言われるので、私は速記に名前を残したくないと思ったから、ある人はと言っておる。それなのに、このようにここにいる二人の人がこのようにヤジっている。これでは私はもう審議はやりませんよ。こういう状態では審議はできない。委員長保障して下さいよ。     〔発言する者多し〕
  280. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  281. 岡田春夫

    岡田委員 委員長、ヤジらないということをはっきりしてくれない限り私は審議ができない。
  282. 小澤佐重喜

    小澤委員長 責任を持ちます。
  283. 岡田春夫

    岡田委員 委員長として責任を持ちますか。(発言する者あり)まだ言っておるじゃないか。理事の諸君、休憩して下さいよ。こういう状態じゃできませんよ。私だって生理的に限界があるから……。冗談じゃないよ。議場を整理して下さい。     〔「休憩々々」「休憩する必要なし」と呼び、その他発言する者多し〕
  284. 小澤佐重喜

    小澤委員長 それでは発言者が生理的現象があるそうでございますから、十分間に限って休憩をいたします。     午後四時一分休憩      ————◇—————     午後四時十九分開議
  285. 小澤佐重喜

    小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。岡田春夫君。     〔「委員長、定足数が足らぬよ」と呼び、その他発言する者あり〕
  286. 岡田春夫

    岡田委員 これはちょっとひどい。委員長、これはちょっと注意して下さい。——休憩前に続いて質問を続行いたします。  先ほど私が質問いたしまして、答弁がたしか留保になっていると思いますが、これについて藤山さん、なにか御答弁——質問中にちょっとごたごたが起きまして、藤山さんが答弁される声が私も聞きとれなかった。それでもう一つ、これは一般的にお願いしたいのですが、先ほど同僚議員の同じ委員の中から、君の声は聞こえるけれども藤山さんの声は聞こえないという非常に強い御注意がうしろの方でございましたので、藤山さんも温厚な方ですけれども、もっと大きな声を出してやっていただきたいのです。これは私の希望でございますが、一つ答弁を願いたいと思います。
  287. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 できるだけ大きな声をいたしますけれども、岡田さんみたいにいかぬかもしれません。  パスポートを出しますときには、地域的な名称としてこれを使いますので、国と書いてありましても、決してそれを承認したりなにかいたしておる関係はございません。
  288. 岡田春夫

    岡田委員 私は、パスポートを出したのは、国というものの存在——法律的な意味ではなくて、国というものがあるから、だから民主共和国ということを書いたんだと思う。その国を法律的にあなたが認めておるとかどうとかいうことは一応別にいたします。一応別にいたしますが、この旅券に関する限り、この国に対して、私の身元の保障を頼んだのだ、こういうことをいわざるを得ないと思うのです。これは何も法律的な効果あるなしという問題は一応別にして、これは国というものの存在を認めているから、こういうものを出した。事実上存在しているという事実を認めているのだと私は思うのです。この点はどうですか。
  289. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 法律的に認めておりませんから、国としての正式の資格を認めているわけではございません。地域的な、便宜的な名称として、旅行される方にそういう名称で出しているわけであります。
  290. 岡田春夫

    岡田委員 しかし、これが及ぼす効果ですね、パスポートの及ぼす効果というものは、国というか、あなたのおっしゃる言葉によると地域ですな、地域に対して私自身の身元の保障を頼んだということになりますが、それでは、法律的に認めておらないけれどもも、その地域の政府に対して頼んだということになるのですか。
  291. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 条約局長から説明させます。
  292. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 身元の保障を頼むということは、その地域の政府とか、そういう意味じゃございません。やはりその地域々々の一般的に権限を持っている機関というものにそういうふうに保護を頼むという趣旨であろうかと考えております。
  293. 岡田春夫

    岡田委員 しかし、それでは答弁は非常に不十分だと思います。ここにライセンスもあります。私の調べた限りでは、ライセンスは非常にたくさん出ております。大体今までにベトナム民主共和国と書いたライセンス、過去二年間にわたって横浜税関、神戸税関、門司税関、その他一切の主要な港における税関はベトナム民主共和国というものをはっきり認めてこのライセンスに対して承認を与えております。これは当然通産省も認めている。そうすると単に外務省だけではなく、通産省、大蔵省——税関部の人、だれか来ていますか。——それではまず大蔵省から伺いましょう。  ここにあるのは、五九年の十月十五日の門司税関の検印がありますが、ベトナム民主共和国というのははっきりこのうしろに書いてあります。仕向地、デスチネーション、国と書いてありますよ、仕向地としてハイフォン、国としてデモクラチック・リパブリック・オブベトナムと書いてあります。このライセンスに関する限りは国を意味しておりますね。
  294. 木村秀弘

    ○木村説明員 ライセンスの発行は通産省で行われておりますので、税関といたしましては、輸出申告書あるいは輸入申告書の欄に所要事項を記載していただく。それで、その申告書にございます国というのは、先ほど外務省から御答弁ございましたように、必ずしも法律上の意味ではなくて、仕向けられた地域をさすのでございます。従って、たとえば関税の関係につきましても、便益関税を与えるというような場合には、単にベトナムという名称を使っております。
  295. 岡田春夫

    岡田委員 しかし、ここで国というのは、仕向地、そして国とありますが、これは法律的にはないということは、承認をしてないということを理由にして言われておるのでしょうが、しかし国であるという事実の存在はお認めになるのでございましょう。
  296. 木村秀弘

    ○木村説明員 ただいま申し上げましたように、申告書の記載欄はどこの地域へ向けられた品物であるかということを貿易統計に記載する、掲上する必要がございますので、その地域を特定するに足りれば、それで目的は達するわけでございます。従って、申告書の国の欄に記載されたために、その国を法律上認めたかどうかということは、これは別問題かと思います。
  297. 岡田春夫

    岡田委員 私もそれを言ってないのです。法律的の承認ということについては、またあとで論議するのです。統計上必要であるからということになると、ベトナム民主共和国という申請を出せば、統計の上では地域ですか、あなたの言うことでは、こういう地域のものとして統計が出るわけでしょう。いかがですか。そうですね。
  298. 木村秀弘

    ○木村説明員 そうでございます。
  299. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ通念として、ベトナム民主共和国という地域を国として一般に認められておりましょう。
  300. 木村秀弘

    ○木村説明員 国としてと申しますか、事実上の仕向けられた、あるいは仕出された地域として認めておるわけでございます。
  301. 岡田春夫

    岡田委員 それはあなたの御見解で、統計というものは全国的あるいは全世界的に出されるわけですね、必要があれば。ベトナム民主共和国という統計は、国連の統計に出された場合には、あなた個人の意思あるいは日本政府の意思としては地域であっても、それは国としての扱いになりますね。
  302. 木村秀弘

    ○木村説明員 統計上は、ただいまここに外国貿易概況という税関で輸出入をまとめました統計を持って参っておりますが、南ベトナム、北ベトナムというふうに区別する場合もございますし、あるいは単にベトナムといって全般を総称する場合もございます。要するに、ただいま申し上げましたように、どことの取引であるか地域的に特定ができれば統計の目的は達するわけでございますから、特定する目的で国というものが申告書欄にあるわけでございます。
  303. 岡田春夫

    岡田委員 ですから、法律的な点は一応別にしているわけです。あなたは今北ベトナムという地域、南ベトナムという地域——ベトナムというようにあなたおっしゃったのなら、これも地域であって国家ではないわけですね。
  304. 木村秀弘

    ○木村説明員 これは統計の目的から申しまして、単にフランスという場合と、それからフランスの植民地のどこそこという場合とございまして、統計の目的からしますと、なるべく地域をこまかくいたしまして、どことの取引であるかということを跡づける必要がございますので、全然法律の問題とは別に、そういう地域的な意味で国名をあげておるわけであります。
  305. 岡田春夫

    岡田委員 国連の統計においてベトナム民主共和国という統計を私は見たことがありますが、あなたごらんになりましたか。
  306. 木村秀弘

    ○木村説明員 私ちょっと記憶ございません。
  307. 岡田春夫

    岡田委員 そういう事実がございます。そればかりじゃありません。これは藤山さんに伺いますが、この前あなたの方で答弁をいただいておりませんが、同じことを申しているのですから、今度は答弁して下さい。ここにあるのは国連ILO、FAO共同調査のリポート、いつやられたかというと一九五五年十一月から一九五六年二月、アメリカ人のカーター・グッドリッチを団長とする経済調査団、これの正式報告であります。この中に国についての限定があります。もう一度読みますが、「かつてモネ・プランで」モネ・プランというのはフランスのプランですね。「ヴェトナム全土の工業化が考えられたことがあるが、それに予定された工業は主として北部ヴェトナムに予定されていたため、ヴェトナムが分割された今日、到底役に立たなくなってしまった。ヴェトナム共和国は自国の領域内で新しく工業化を再検討せねばならなくなった。」ここで私の藤山さんに答えていただきたいのは、「ヴェトナム共和国は自国の領域内で」云々ということです。このあとで自国の領域内という具体的な事項が場所を書いて書いてあります。これは十七度線以南を意味しております。国連のこういう正式調査報告には、ベトナム共和国というものは全ベトナムではない、十七度線以南であるということを明らかにしておりますが、これについていかがですか。
  308. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知通り、国連においては種々な統計を出しておると思います。
  309. 岡田春夫

    岡田委員 統計ではない、調査です。
  310. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 調査書を出しておると思います。むろん国連は加盟八十二ヵ国でありますので、いろいろな立場の国があることは当然だと思います。われわれが南ベトナムを合法政府だと認めるという立場におりますけれども、そうでない立場の国もあろうかと思います。そういう意味では国連において適当な名称を地域的に使う場合があると思います。そういう意味におきましていろいろな名称が使われているだろうと思います。
  311. 岡田春夫

    岡田委員 それは何を名称と言われたのか、私、その意味がわからないのです。ベトナム共和国という名称のその領域というものは十七度線以南といっている。ですから、全ベトナムとは国連では言ってないわけですね。それを言ってないので、その点について日本政府の見解と違うわけですから、国連の方は十七度線以南だけで、日本政府だけが全ベトナムと言っていることになるのではございませんかということを言うわけです。
  312. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本ばかりがそう言っているわけじゃございません。四十九ヵ国がそう思っているわけであります。
  313. 岡田春夫

    岡田委員 国連の方がこのように十七度線以南と言っている事実は、はっきりしているわけですね。
  314. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今私はその書類を存じておりませんから、どういうふうに国連がそれで扱っているかは存じませんけれども、しかし、われわれ四十九ヵ国は南ベトナムが全ベトナム代表する政府であるということを了解いたしておるわけでありまして、その意味におきましては、われわれの見解は変える必要はないのじゃないかと思っております。
  315. 岡田春夫

    岡田委員 藤山さん、やっぱり速記録も読んで下さい。私、先週の六日の予算委員会でこれと同じ事項について質問しているわけです。ここを読んだわけですが、そのときあなたの御答弁がなかったわけです。時間の関係があったので、あのときは私はそのまま進めたわけです。あなたが今度ここでベトナム共和国は自国の領域内で云々ということを言っているのならば、国連としては十七度線以南だ、しかし日本政府として、アメリカその他があなたのおっしゃるように全ベトナムと言っている、このようにおっしゃるなら、国連の方はこう言っているんだから、国連の方は十七度線以南ということを言っているんだということは事実なんだから、これは仕方がないわけですね。そうでしょう。
  316. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国連が、南ベトナムなり何なりを十七度線以南ということに決定したということはないと思うのであります。便宜的にそういう調査報告の中にはそういうことが書かれておるかもしれませんけれども、国連自身がそういう決定をしたことはないのでありますから、国連の公の意思ではないと思います。
  317. 岡田春夫

    岡田委員 私はあなたの御答弁では不十分だと思います。なぜならば、南ベトナムの地域を全ベトナムという決定もしておらないし、十七度線以南という決定もしていない。ベトナム民主共和国が十七度線以北だという決定もないし、全ベトナムという決定も国連ではしていない。ただその具体的な実例として、通念としてベトナム共和国という領域は十七度線以南ということがはっきり国連報告にあるのだから、これを言っているのですが、しかし、こればかりを言っていてもしようがないから次に進みます。これは今度自民党の出したPRの本にも書いているのですが、一九五四年の六月四日に、半独立国であったステートオブベトナム——六月四日というのはジュネーブ協定の最中ですが、このときに完全独立の協定フランスとの間に結んだ。これは有効に成立したと書いてある。そこで高橋さんに一つお答え願いたいのですが、この点はその通りでありますか。確かにイニシアルはしておりますが、効力は発効しておらないはずであります。
  318. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 その通りであります。
  319. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ藤山さん、自民党の方ですから言っておきますが、あの点は自民党に直させていただきたい。あれは努力を発生しておりませんので。  これは高橋さんに伺いますが、今日の地位は一九四九年三月八日のエリゼ協定に基づく法律的な継承関係がそのまま継続されていると私は解釈すべきだと思いますが、いかがですか。
  320. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 そのままではございません。その後いろいろ発展を遂げております。
  321. 岡田春夫

    岡田委員 それはそのままというのは五二年の幾らかの修正がある、そういう意味ですね。
  322. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 その後いろいろこれを実施する協定が行なわれておりますが、それもいろいろまた無効になったりその他廃止されたりいたしまして、五四年のジュネーブ協定以後また変化を来たしております。
  323. 岡田春夫

    岡田委員 基本的には四九年の協定以後において五三年の七月三日に覚書が出されているだけであります。覚書に対してベトナム政府の見解発表があっただけで、公的には、四九年以降においてそれに基づく手続上のいろいろな問題はありましたけれども、条約の基本としては四九年三月八日のものがジュネーブ会議までは続いておるし、その以降についてはまたあと伺いましょう。四九年の状態においてきめられた条約がそのまま続いているのがフランスベトナム関係だと思いますがいかがですか。
  324. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 それまで大体そのように解しております。
  325. 岡田春夫

    岡田委員 それでは具体的に伺いますが、もう一度自民党の諸君には御了解をいただきたいと思いますが、フランスベトナム協定の中で、司法権について一つだけつ伺います。これは司法権というのは言うまでもなく主権作用の中の最も重要な三権の一つであります。エリゼ協定の中で司法権は制限されているだけではなくて、明らかにこれは治外法権の制度になっておると思いますがこの点はいかがですか。
  326. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 エクゼ協定では、フランス本国人が関連する問題その他の問題では、ミキスト・コートと申しますか混合裁判所で裁判されるというふうに考えられております。ただこれをどういうふうに一つの治外法権と見ますか、これはやはり混合裁判所でそういうふうな解決をいたしておる、このように考えております。ただいずれにしましてもエリゼ協定につきましては四八年六月五日の独立ということには、そのときに完全に独立した、これは変わらないところであろうと考えております。
  327. 岡田春夫

    岡田委員 それではもう一度具体的に念を押して伺いますが、フランス人はフランス法の適用を受ける、この点は明らかでございますね。
  328. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 これはフランスベトナムとの協定でございます。従いまして、実はわれわれこの協定は第三者として研究する次第でございますが、私どもが研究いたしました点ではそのような条文がございます。
  329. 岡田春夫

    岡田委員 高橋さん、そんな無理を言わなくても四十七条に書いてある。司法協定四十七条で、個人の身分はその国の法律によって規定されると書いてある。だからフランス人はフランスの法律——ただそこで一つ伺いたいのは、ベトナム人はフランスの法律の適用を受けませんか。
  330. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 協定の解釈の問題でございます。エリゼ協定条文の解釈でございますが、受けないと考えております。
  331. 岡田春夫

    岡田委員 それではこの点は治外法権、司法権の行使の問題で重要でありますので——受けないというのは間違いであります。これはあとでまた研究して御答弁願ってもけっこうであります。司法協定の四十四条をごらん下さい。四十四条には「フランス国家を害するが如き重罪、軽罪についてはフランス刑法が適用される。」これはベトナム人にも適用される、国家の利益に反する行為があった場合には重罪のみならず軽罪も適用を受ける、これはベトナムの国に対して忠誠を誓っておっても、ベトナムの国の国法とフランス国法の利益が相反する場合においては、フランス法の適用を受ける、これは治外法権ではありませんか。いかがでありますか。
  332. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 これは治外法権という言葉の問題ではないかと思いますが、そのような規定が存在することは、これは御指摘通りだと思います。ただそれは、そういうふうなフランス連合のワク内の国でありますから、フランス本国とベトナム、ラオス、カンボジアはフランス連合を構成しております。従いましてそのような関係から、いろいろそういうふうなお互いのそのような制限があるというようなことも考えられることだと思います。
  333. 岡田春夫

    岡田委員 しかし司法権の制限、ベトナムの国の司法権に対して何らかの制限を受けているのは事実でございましょうね。
  334. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 事実でございます。
  335. 岡田春夫

    岡田委員 外交権、軍事権についても同じように制限を受けているのも事実でございませんか。
  336. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 いろいろ制限がございますが、しかしこれはフランスベトナムとの協定の問題でございますし、これは制限と解釈するか、これを協力と解釈するか、いろいろな問題があると思います。
  337. 岡田春夫

    岡田委員 協力という意味はいろいろ説明はありましょうけれども、ベトナムの本来持つべき権利、主権を自由に行使し得ないという意味において制限でしょう。そうじゃないですか。これは協力ですか。
  338. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 それは先ほど申し上げました通り一九四八年の六月五日にベトナムの独立をフランスは厳粛に宣言しております。そこによりましてこれが独立国として正式に成立したと考えます。ただ独立国と申しましてもそれはいろいろな形態もあるかと考えております。従いましてたとえば英連邦におけるカナダの地位、英連邦における濠州の地位、それからフランス連合におけるこれらの地位というものはいろいろの問題がありますが、これは独立であることには間違いないと考えております。
  339. 岡田春夫

    岡田委員 独立は独立として御答弁願ってもいいのですが、不完全独立ですね。カナダよりも主権の制限があるわけでしょう。カナダよりも主権に対する制限のあるような不完全独立じゃありませんか。完全独立と言えますか。もし完全独立ならば、自民党のパンフレットにあるような五四年の完全独立協定を結ぶような必要はないのじゃないですか。ですからこれは不完全独立でしょう。少なくとも一九五四年六月四日協定よりも不完全な独立が四九年には与えられているのでしょう。
  340. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 フランス連合のワク内に入っております。そしてその制限を受けています。それを不完全独立という言葉で御表現になりましたが、そういう意味におけるエタ・アソシエという地位における独立だと考えております。
  341. 岡田春夫

    岡田委員 それはあなたの解釈は間違っています。六月四日にはフランス連合の中に入る別な協定がはっきりできております。フランス連合に入っているという点は同じであります。五四年六月四日も四九年のときも同じであります。このことだけをもって完全、不完全の意味をなすのではありません。それならば六月四日の完全独立協定を結ぶ必要はないじゃないですか。フランス連合に入っているか入ってないかというのは、どっちも同じなんです。いわゆる主権の制限についての制限をゆるめるかゆるめないか、言葉をかえていうならば、完全独立か不完全独立か、この点の違いがある。もしそうでなければあとでそういう主権の制限をゆるめるような協定を結ぶ必要はないじゃありませんか。
  342. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 英連邦の例もございますし、同君連合の例もございますし、その他いろいろ条約で制限を受けている例もございます。しかしそれはやはり独立であるという一般通念においては独立国であると考えられておる。またそういうふうに考えてきておる。フランスエタ・アソシエの側もそういうふうに考えてきているのであると考えております。
  343. 岡田春夫

    岡田委員 それでは角度を変えて伺いましょう。これはやはり外務省の本であります。——その点は私は了承しませんよ。はっきりしておきますよ。別な点で伺いますが、これは外務省の五七年のインドシナ、この中の一番うしろの年表は、これは非常に便利でありますから使うのですが、私もこれは正確だと思いますが、ジュネーブ協定の済んだあとに、フランス国はベトナム民主共和国と新たに協定を結びました。これは経済文化に関する条約であります。時期はいつかというと五四年の十二月の九日と十二月の十五日であります。これによって明らかに、最初に前提としてあなたに伺ったように、二つの国の間で条約を結ぶ限りにおいてこれはフランス自体は相手のベトナム民主共和国というものを承認するという前提に立って条約締結が行なわれる。これは事実であります。あなたはこういうことを言うと、おそらく答弁をこうするでしょう。これは一つの交戦団体的地位にあるからです……。交戦団体ではありません。なぜならばジュネーブにおいて休戦協定が結ばれた限りにおいては、これは戦争状態は終結をいたしております。その以降において交戦団体という法的地位はありません。しかも交戦団体なら戦時国際法の適用でなければならない。とするならば、これは平時状態における条約締結であるならば、フランスは明らかにベトナム民主共和国というものを承認する前提に立って条約締結している。日本は、藤山さんはさっきから四十九、四十九と言って、いつも同じことを言うけれども、その四十九の中にフランスは入っている。フランスは明らかにベトナム共和国と言われているゴ・ディンジェム政権——これは私は有効であるかどうかについて非常に批判を持っておりますが、ともかくもフランスとゴ・ディンジェム政権との間に条約があるとしても、それと同じにベトナム民主共和国、これとフランスとの間に二国間条約が結ばれて、フランスは二つの国家の存在を、国家としての政府承認を認めているということになると思う。そうでなければ一つの領域の国家の中に二つの政府承認を認めるはずはないからです。この点について藤山さんいかがお考えになりますか。
  344. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 おそらく交戦団体としての休戦協定をジュネーブでやったわけであります。その事態の上に立ちましてフランスとしては経済関係の交流をやるためにそういうことを結んだと思いますが、そのこと自体がフランスが北を承認したという事実ではございません。
  345. 岡田春夫

    岡田委員 それはあなたの解釈ですね。日本政府の解釈ですね。あなたはそういう交戦団体地位云々といったって、戦争を終わっているのに、交戦団体としてどうして協定できますか。戦時国際法の適用をするんですか。大体経済協定、文化協定は交戦団体と協定なんか結びませんよ。そんな話はありませんよ。国家の承認というものを前提としているから協定を結んでいるのじゃありませんか。二つの国家の承認ということになっているのじゃありませんか。これは明らかじゃありませんか。どうです。
  346. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は今の経済的なそういうような問題について便宜協定を結びますことそのことがすぐにフランスが北を承認したということには考えられないと思います。
  347. 岡田春夫

    岡田委員 それではどんな場合に承認したことになるんですか。そんなことをおっしゃるなら、どういう場合には承認して、どういう場合には承認しないというんですか。
  348. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 フランスがどんな意味承認するかしないかということは、今日われわれの関知するところではないのでありまして、フランスは経済的に協力関係のためにそれを結んだ。しかしそのこと自体がこの承認という第一歩であると解するかどうかは別問題だと思います。
  349. 岡田春夫

    岡田委員 それは国際法を知らない人に聞いていてもわからないから、高橋さんに聞いた方がいいと思うのだが、明らかにこれは国家並びに政府承認を前提としての条約締結ですよ。あなたがどういうように解釈するなんということは、フランスはどうも思っておりませんよ。問題は、フランスベトナム民主共和国ステートオブベトナム、ないしは現在のリパブリック・オブベトナム、この二つを認めており、日本の場合には全ベトナム代表するものとしてステートオブベトナムだけしか認めてない、北の方は認めてない、こういうことにならざるを得ないと私は思うのだが、こういう点についていかがですか。日本の場合には全ベトナムというのはわかっていますよ。しかしフランスの場合には、条約締結をしている限りにおいて、二つの政府というものを認めている。国家というものは別であるということを認めている。これは明らかにしているじゃありませんか。これはもし何なら条約局長どうぞ。
  350. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 フランスは御承知通り植民地を解放して独立さしたのでありまして、従っていろいろな権益が残ってもおりましょうし、そういう点に扱いの必要がありますから、フランスとして当然経済的な問題についてはある程度話し合いをする場合もありましょうけれども、そのこと自体が承認の第一歩だということには、前提だというふうには、私はまだ考えておりません。
  351. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 補足させていただきます。ただいまの点でございますが、これはフランスの意図いかんにかかる問題でございまして、フランスはただいま御指摘のような意図は持っておりません。やはり一つ政府全体のベトナムという意図を持っております。
  352. 岡田春夫

    岡田委員 そんなことはありませんよ。何によって立証しますか。
  353. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 これはそういうふうなフランスの意図をわれわれは承知しておるわけでございます。それからもう一つ、ただいま御指摘になりました協定でございますが、ちょっとそれは正確な情報に基づいているのではないようでございます。それからもう一つは……。
  354. 岡田春夫

    岡田委員 私は別なものを持っていますよ。
  355. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 それは外務省のものでございますね。
  356. 岡田春夫

    岡田委員 いや、別なもの……。
  357. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 それは向うにジュネーブ協定後における北の方におけるフランスの経済的ないろいろな権利がございますから、それを何か確保しようというような意味の、そういう協定を結んだ、このように考えています。
  358. 岡田春夫

    岡田委員 法律的にそんな解釈はどうしたって出てこないでしょう。それはみなが聞いている限り、はっきりしていますよ。そういう解釈は出てきません。しかしそればかりこだわっていてもしようがないからやりますが、先ほどから藤山さんが言っているのは、ベトナムの全域にわたる正統政府、法律的にはそのように代表するものだということをお答えになるならば、藤山さん、私があなたによって発行されたパスポートでハノイに行って、私自身が危害を受けた、あるいはまた税関部で出したライセンスによってこの品物がハイフォンに着いた、そのときにこの品物が損害を受けた、この請求権というものは、あなたは法律的に言うならば、当然ゴ・ディンジェム要求しなければならないでしょう。コ・ディンジエムに要求するのですか。私があそこで危害を受けた。その日本が持つ外交的な請求権は、ベトナム民主共和国を認めないならば、ゴ・ディンジェム要求するのでしょうね。これははっきり伺っておきます。
  359. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現実に政権が及んでいない場所があるということを先ほども申し上げましたが、その限りにおいて、そういうことが起こりました場合、そういう請求をいたすことは事実上できません。それですから、やはり法律的には請求権はあると思っております。
  360. 岡田春夫

    岡田委員 請求権はどこにあるのですか。ゴ・ディンジェム要求しなければならないでしょう。法律的にはコ・ディンジエムしかないのですから、ゴ・ディンジェム要求するのでしょう。
  361. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ゴ・ディンジェム日本承認いたしておりませんから……。(笑声)岡田委員「ゴ・ディンジェム承認していないのでは困るじゃないか。それじゃ話にならないよ。」と呼ぶ)いや失礼いたしました。あまり大きい声で言われますから、つい……。(笑声)  やはり損害がありました場合には、むろん請求をしなければならぬ場合がございましょう。それは事実問題として、そのときに政権があるところに請求するのが当然だとは思いますけれども、しかしそういうことが事実上できないのでありまして、従って、その限りにおいては現実には行なわれないことだと思います。詳しいことは条約局長から……。
  362. 岡田春夫

    岡田委員 それでは請求権はないという意味ですか。今の藤山さんの話で、法律的には当然唯一の全ベトナム代表する正統政府がゴ・ディンジェム政権であるならば、ゴ・ディンジェム請求しなければ法的な効果として現われないじゃありませんか。
  363. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 法律的には、御指摘通りベトナム政府に対して請求できるという問題でございます。ただ、現実にできるかできないか、どういうふうにしたら現実に満足できるかというのは、別問題でございます。
  364. 岡田春夫

    岡田委員 法律的にはその通りならば、現実的な実効としては、それは実行し得ないということですね。実体的には実行し得ないということですね。どうですか。
  365. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 それは法律的には南ベトナム政府請求しますが、現実的にできるかできぬかということは、これは別の現実の問題でございます。
  366. 岡田春夫

    岡田委員 それはおかしいじゃありませんか。賠償戦争損害を北まで含めているじゃありませんか。あなたはどういうようにして北ベトナム戦争損害を確認できますか。現実には北ベトナム損害は確認できないじゃありませんか。どうなんですか。その解釈は同じじゃありませんか。それは話になりません。
  367. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 法律的には全ベトナム代表いたしておりますから、われわれの方の法律的な請求というものは、ベトナム政府にしておかなければならぬと思います。
  368. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ、法律的には南ベトナム請求するわけですね。それでよろしいわけですね。たとえば私自身のたくさんの荷物の損害が今後において起こった場合には、あなたは、北ベトナムに起こった損害を南の政府要求するわけですね。これはもう一度確認しておきますよ。
  369. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 法律的にはその通りでございます。
  370. 岡田春夫

    岡田委員 藤山外務大臣、今条約局長がそう言っておりますが、法律的にはその通りですか。
  371. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 法律的には条約局長が言った通りかもしれませんけれども、実質的にはその権力が及ばないところに起こっておるのでありまして、そういう点について問題はなかなか懸案になろうかと思います。
  372. 岡田春夫

    岡田委員 懸案になっても、事実において法律的には要求しなければならないのでしょう。ベトナムの北の地区についての戦争損害についても払うと言うのでしょう。別な角度で言いましょうか。払うときに、支払いは北の分まで南に払うと言っておいて、日本請求する場合には、南から請求できないというのはどういうことですか。あなたは商業人、経済人として、それで商売が成り立ちますか。おかしいじゃありませんか。
  373. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 それでありますから、ただいま申し上げましたように、南に請求いたしますけれども、懸案となるということを申し上げたわけです。
  374. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ、ベトナムが統一するまでは懸案は解決できませんね。
  375. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 それはわかりませんです。解決するかもしれません。
  376. 岡田春夫

    岡田委員 そういうことならば、問題は未解決としてこの点は留保いたしますが、それではあなたにもう一度伺っておきますが、ステートオブベトナムは全ベトナム代表するものであるという日本政府態度はいつからきまったのですか。
  377. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 先ほど申し上げたと思いますが、サンフランシスコ条約調印したときでございます。
  378. 岡田春夫

    岡田委員 それ以降において具体的な承認をしている事実があったらどうしますか。
  379. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 それ以後の具体的な問題はないと思いますが、ちょっと思いつきません。
  380. 岡田春夫

    岡田委員 これは藤山さんに伺っておきますが、おそらくきょうは答弁できないと思うので、あと答弁は留保してもいいのでありますが、——厚生省の人はだれか来ておりますか。——それではもう少し厚生省が来るまでやりましょう。それでは藤山さんに伺っておきますが、全ベトナム代表する正当政府はゴ・ディンジェムである。ゴ・ディンジェム政権ですね。ということになれば、請求権が起こった場合においては、それは法的にはゴ・ディンジェム政権に要求しなければならない。そこで伺いますが、あなたのいろいろな答弁資料を見ると、北ベトナムはどんどん今後貿易は発展するのだ、こういう話を盛んに言っておられますが、この条約によってベトナム共和国は全ベトナム代表するということになって参りますと、貿易協定というものの主体は、ベトナム民主共和国を認めないことになりますから、貿易協定がこれによって切れてしまう場合が起こり得る。その場合には、日本政府が全ベトナム代表するということを言い切ったことによって、北ベトナム日本の貿易の協定が切れるのでありますから、日本政府が責任を負いますね。
  381. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 北ベトナムとの貿易が途絶するか途絶しないかということは、何とも申し上げかねます。しかしながら貿易をやることについては、われわれとしても努力して参ることは当然であります。
  382. 岡田春夫

    岡田委員 法的に認めないところに貿易をやるというような、そんな虫のいいことはできますか。それこそがあなたの敵視政策です。それが敵視政策です。法律的には認めない、貿易だけはよろしい。片方にあいくちを持って、片方にそろばんを持っている、これが敵視政策です。明らかじゃありませんか。     〔発言する者多し〕
  383. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  384. 岡田春夫

    岡田委員 あなたの方が法律的に認めないということによって、貿易が中断になるんですよ。それは間違いありませんね。どうです。向こうがやめたんじゃなくて、あなたが原因を作ったんです。そうじゃないですか。
  385. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知通り、ジュネーブ協定においても、統一ベトナムを希望しております。従ってわれわれも統一を希望することにおいてやぶさかでございません。しかしながら現実の事態から申しまして、また南をわれわれは承認いたしておる立場からいたしまして、当然南を全ベトナム代表する合法政府として認めて処置することは当然なことだと思います。従って貿易関係においては、事実上の問題として、それらのものをできるだけ扱っていくという事実上の問題は起こってくると思います。
  386. 岡田春夫

    岡田委員 賠償協定について、請求権の留保の宣言をベトナム民主共和国がしているのは、あなた御存じでしょう。
  387. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 何かニューデリーで声明があったとか、いろいろなことを言われております。はたしてどの程度の声明をいたしておりますか、直接私の手元に声明が届いているわけでもございません。そういう点についてははっきりいたしておりません。
  388. 岡田春夫

    岡田委員 あなたはおかしなことを言いますね。承認してないのに届きますか。それはあなたは何らかの形で外交機関を通じて聞くよりしようがないじゃありませんか。外交機関を通じて聞いているのは、ごく最近だって留保の宣言をしておるじゃありませんか。これも御存じないですか。ニューデリーで言っているのは、請求権の問題に関連しますけれども、それだけのことを言っているんじゃありませんよ。統一後の問題について言っている。今日は請求権について明らかに留保するということを宣言している。
  389. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど私が申しましたのは、新聞その他でいろいろなことを言っておるというふうに了解をいたしております。しかし、それがはっきりしておらないことも事実であります。
  390. 岡田春夫

    岡田委員 今の経済協定が切れてしまうということは、日本が全ベトナム代表するのは法的には明らかにゴ・ディンジェム政権であるということになれば——そうでなければあなた、請求権だってないわけでしょう。いわゆるベトナム民主共和国政府に対して請求権すらないわけでしょう。それでは切れるということだって問題がないことじゃないじゃありませんか。あなた、それだけの決意があってやっておるのでしょう。切れたってやむを得ないということでやっておるのでしょう。腹の中の希望では続けてもらいたいと思っても、日本の法律は法律的にこういう措置をとるのだから仕方がない、こういう腹を持たなければなりません。日本の責任においてそれが行なわれるのではありませんか、明らかではありませんか。
  391. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれとしては、もちろんベトナムを南の方を合法政府に認め、そうしてそれに対して各国ともそれを承認をしておりますし、われわれとしてもそれに対して賠償も払うということにサンフランシスコ条約で義務を負っておる。従ってこれを忠実に実行することは、当然のことを当然にやることであります。それに対して北がきげんを悪くするということがあり得ないとは申し上げかねますけれども、しかし現実に貿易の問題等につきましては、将来統一まででもできるだけやっていきますことは必要だと思うのであります。事実の問題としてわれわれとしてはそういう問題を扱っていけばよろしいと思います。
  392. 小澤佐重喜

    小澤委員長 岡田君に申し上げますが、厚生省の河野引揚援護局長が見えておりますから……。
  393. 岡田春夫

    岡田委員 もう一点だけ伺いますが、あなたはそれは希望ですね。希望ですけれども、法的には要求できないでしょう、貿易をやろうということは。なぜならば、ベトナム民主共和政府を法的に認めていなければ、法的に要求できないでしょう。請求権までないと言っておるのに、要求はできないのではないですか。
  394. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 現在あります貿易協定は、民間協定であります。政府間の協定ではありません。これの更新を向こうは拒んでおる。しかしながら貿易は行なわれておるということであります。それでありますから、民間がまた更新しようということは、これは自由でございます。
  395. 岡田春夫

    岡田委員 そんなことは知っておりますよ。それはあなたが民間でやることにその場合は責任を負わして、政府は知らぬ半兵衛、こういうことですか。法律的に要求できないのではないですか。法律的に要求ができないから、民間でやっておるのではありませんか。民間が主体ではなくて、法律的に日本政府がやらせないというので、民間がやっておるのではないですか。
  396. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 北ベトナムを国家として承認する意思はありませんから、承認になるような協定を結ぶ意思は政府にはありません。そうでない事実上の貿易ができるような何らかの協定を結ぶ、民間でできるということならば歓迎しております………。
  397. 岡田春夫

    岡田委員 この点はまだ私はあとで問題にいたしますけれども、全ベトナム代表するということを正式に明らかにしたのは、日本が初めてであります。これはうそではありません。あなた方それを知っておるか知らないか。ここに私持ってきておりますが、南ベトナムの新聞がここにあります。この中ではっきり、賠償協定に基づいて日本が全ベトナム代表するということを言った最初の国である、こうはっきり言っておる。(「どこの新聞だ」と呼ぶ者あり)南ベトナムの機関紙ではっきり言っております。あなたの方は前に承認しておるとかなんとか言っておりながら、フランスとの協定についてもあいまいになっておる。日本が全ベトナム代表するということをはっきりしたのである。それによってこのことが明らかになったことによって、ベトナム民主共和国の方の貿易の協定が切れる、民間貿易を認めないということになれば、あなたの責任ではありませんか。政府の責任ではありませんか。政府ベトナム代表するというのを初めて言った。そういう新聞を見たことはありませんか。
  398. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 そういうことを初めて言ったということになるかどうかしりませんが、日本は初めからそう思っておるわけです。
  399. 岡田春夫

    岡田委員 思っておることと法律行為をやることは別であります。主観的に何を思おうとあなたの自由です。あなた自身がどうしようというのは、私は干渉できません。法律行為をやるから問題なんであります。法律行為として、協定の具体的な内容として全ベトナム代表する。特になぜこれが問題になるかというと、ジュネーブ協定後において初めて行なった点において問題がある。全ベトナム代表するということを明らかにしたのは日本が最初であるという点で、これは非常に問題がある。ジュネーブ協定を明らかに無視したことになると思うが、この点はいかがでしょうか。これに関連して伺いますが、ジュネーブ協定の最終宣言の第十二項にはっきり書いてある。アメリカもこれを守っているのですが、国内においてすべての干渉を慎しむことを約束する、その国内というのはどれを受けるか、ジュネーブ会議の各参加国を。国という限りはここではベトナム民主共和国も入っておる。そうすると、国内の事項、内政干渉は慎むということだが、その場合に出てくる国というものは、十七度線以北のことを意味しておる。十七度線以北のことを、全ベトナム代表するといって、日本が勝手に南の地域に北まで含んでいるといっていることは、明らかに北に対して内政干渉じゃありませんか。内政干渉に基づいて賠償が払われる、これは明らかにジュネーブ協定違反じゃありませんか。
  400. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ジュネーブ協定は御承知通り、将来の統一をうたっているわけであります。従いまして、現在においてベトナム政府が全ベトナム代表するというふうに考えていることを否定するものではない、こういうふうに考えております。
  401. 岡田春夫

    岡田(春)委員 統一は第七項ですよ。私のいっているのは十二項ですよ。十二項の答弁に七項の答弁をしたところで通りませんよ。ここには国内問題の干渉と書いているのですから、これは明らかに国内の干渉でしょう。賠償協定による干渉は明らかじゃありませんか。
  402. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 国内問題に干渉云々とありますが、ベトナム国はあくまでもベトナム一つとして考えております。従いましてそれが干渉問題云々ということは起こらないと考えております。
  403. 岡田春夫

    岡田委員 これは内政干渉です。これについては私は質問を留保します。あと引揚援護局長が来ておりますが、昭和二十五年当時は局長はどなたですか。
  404. 河野鎭雄

    ○河野政府委員 事務局の組織も非常に変っておりますが、二十五年は田辺局長であったかと思います。
  405. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃおそらくきょうはわからないと思いますが、これをはっきりしておきます。外務大臣、聞いておいて下さい。昭和二十五年に、日本の軍人がまだ二千人向こうに残っていると考えて、日本政府代表して、インドシナ戦争の最中にサイゴンに渡ってフランスと話をつけて、相手側であるベトナム民主共和国政府に、日本人の帰国を要請した事実がある。知っているでしょう。それは御存じありませんか。
  406. 河野鎭雄

    ○河野政府委員 私そういった話は、実は局長になる前のことでございますので、承知いたしておりません。
  407. 岡田春夫

    岡田委員 日本国政府日本人の引き揚げの問題について、相手国の政府と、申し入れをして話し合うということは、国家並びに法律的な承認意味しておるじゃないですか。明らかじゃありませんか、どうです。国は存在しないのにそんな交渉はできますか。そんな話はありますか。
  408. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 国際法上の見地から申しましても、またそういう話し合いをするということは、それによって直ちに承認とか国際法上のレベルという問題が起ることではないと考えております。実際上の必要によって、そういう問題を解決する必要に迫られて話をしたということであります。
  409. 岡田春夫

    岡田委員 国家として存在することを認めているんでしょう、政府自身が。
  410. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 それは国家として認めて、国際的な行為として、その国家とそのような交渉を行なったというふうに考えるべきではないと思います。
  411. 岡田春夫

    岡田委員 これは法的な意味ではなくて、事実上の承認意味するのでしょう。どうですか、大臣、事実上の承認じゃないですか。
  412. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 便宜上それらの問題を審議するために、相手側と交渉することは、必ずしも事実上の承認だとは思いません。
  413. 岡田春夫

    岡田委員 あなたは都合のいいときだけ事実上の承認だという。日本政府代表して、向うに行ってベトナム戦争中の相手方に対して交渉するのに、事実上の承認意味しないといって交渉したら交渉になりますか。そういう事実があるじゃありませんか、明らかじゃないですか。
  414. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま申し上げ通り考えております。
  415. 岡田春夫

    岡田委員 この事実について明らかにお調べ下さい。私はここではっきりしておきます。日本政府の命令に基いて、そしてベトナム民主共和国政府に対して、日本人の引き渡しについて交渉しておる。これは事実上の承認意味する。それでなければ政府というものはないことになる。なぜならば、交戦中でありますから、何らかの書面があるはずです。交戦中の相手方のところに行って、あした会って何か話をしようじゃないか、そんなことはありっこない。向うが本気にしませんよ。当然日本政府から書面を持っていっているはずです。それの書面には民主共和国というものがない限りは向うは受けつけません。これははっきりしているでしょう。この点をお調べ下さい。事実上の承認意味しておるじゃないですか。これははっきり申し上げておきましょう。名前もはっきり申し上げておきます。これは私の調べておる限りにおいては、第二次世界大戦中において、インドシナの地区における、ベトナム地区における司令官であった土橋勇逸中将が、日本政府の命令を受けて行ったはずである、どうです、明らかじゃありませんか。そして事実上の承認行為が行なわれたじゃないですか。こういう事実もあなた方は忘れておるか知らないが、明らかにしていただきたい。この点において御答弁願います。私は辻資料じゃありません。相手国で、相手側の人が、だれが会っておるか、はっきりしておきましょう。それは明らかに事実であります。向こうの方では少将が会見をいたしております。その少将に会見したときに、向うにいる日本人が会っております。日本人が会っているから、これは明らかに事実であります。これは事実上の承認意味している。これはお調べを願いたいと思います。それではこの点についてお調べを願って、後刻また日を変えまして、お答えをいただいた上で私は質問を続行したいと思います。その他の点全体について私は納得ができませんので、質問はすべて留保いたします。特に沈船協定については非常に不勉強でありますから、一つ藤山さんよく督励して勉強していただきたい、私はもっとやりたいと思ったけれども、やめました。すべてを留保いたします。
  416. 小澤佐重喜

    小澤委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後五時三十分散会