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1959-11-09 第33回国会 衆議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年十一月九日(月曜日)     午後二時二分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 岩本 信行君 理事 佐々木盛雄君    理事 床次 徳二君 理事 戸叶 里子君    理事 松本 七郎君 理事 森島 守人君       石坂  繁君    菊池 義郎君       北澤 直吉君    椎熊 三郎君       森下 國男君    柏  正男君       堤 ツルヨ君    穗積 七郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         外務政務次官  小林 絹治君         外務事務官         (アジア局長) 伊関佑二郎君         外務事務官         (賠償部長)  小田部謙一君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 十一月七日  沖繩の刑法並びに訴訟手続法典反対に関する陳  情書(第九四号)  日本非核武装宣言等に関する陳情書  (第九五号)  沖繩周辺海域における米軍演習場撤廃に関する  陳情書(第九六  号)  在外同胞帰還問題解決に関する陳情書  (第九七号)  韓国抑留漁船員救出に関する陳情書  (第九八号)  韓国抑留船員救出等に関する陳情書  (第九九号)  日韓問題解決に関する陳情書  (第一〇〇号)  日韓漁業問題解決に関する陳情書  (第一〇一号)  沖縄周辺海域の航行及び漁ろう禁止反対に関す  る陳情書(第一  〇二号)  日ソ平和条約締結促進に関する陳情書  (第一〇三号)  日中国交回復に関する陳情書  (第一〇四号)  日中関係打開に関する陳情書  (第一〇五号)  同(第一〇六号)  日中国交回復及び貿易促進に関する陳情書  (第一〇七号)  千島、歯舞諸島墓参実現に関する陳情書  (第一〇九号)  同(第一一〇号)  日米安全保障条約改定促進に関する陳情書  (第一一二号)  同  (第一一三号)  同  (第一一四号)  同  (第一一五  号)  同  (第一一六号)  同  (第一一七号)  同  (第一一八  号)  同  (第一一九号)  同  (第一二〇号)  同  (第一二一号)  同  (第一二二号)  同  (第一二三  号)  同  (第一二四号)  同  (第一二五号)  日米安全保障条約改定反対に関する陳情書  (第一二六号)  同  (第一二七号)  同  (第一二八号)  同  (第一二九  号)  同(第一三〇号)  同  (第一三一号)  同(第一  三二号)  同  (第一三三号)  同  (第一三四号)  同  (第一三五号)  同  (第一三六号)  日米安全保障条約に関する陳情書  (第一三七号)  在日朝鮮人帰国促進に関する陳情書  (第一三八号)  同(第一三九号)  同(第一四〇  号)  同(第一四一号)  同(第一四二号)  同(  第一四三号)  同(第一四四号)  同  (第一四五号)  同(第一四六号)  同(第一四七号)  同(第  一四八号)  同  (第一四九  号)  同(第一五〇号)  同(第一五三号)  同(第一五四  号)  同(第一五五号)  同  (第一五六号)  帰国朝鮮人借財支払に関する陳情書  (第一五一号)  在日韓国人北朝鮮送還反対に関する陳情書  (第一五二号)  原水爆禁止運動に関する陳情書  (第一五七号)  原水爆実験禁止等に関する陳情書  (第一五八号)  同(第一五九号)  同(第一六〇号)  同  (第一六一号)  同(第一六二号)  同(第一六三  号)  同(第一六四号)  原水爆製造実験使用及び日本核武装反対に  関する陳情書(  第一六五号)  サハラ砂漠における原水爆実験阻止に関する陳  情書(第一六六  号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  日本国ヴィエトナム共和国との間の賠償協定  の締結について承認を求めるの件(条約第一  号)  日本国ヴィエトナム共和国との間の借款に関  する協定締結について承認を求めるの件(条  約第二号)      ――――◇―――――
  2. 小澤佐重喜

    小澤委員長 これより会議を開きます。  日本国ヴィエトナム共和国との間の賠償協定締結について承認を求めるの件及び日本国ヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定締結について承認を求めるの件の両件を一括議題に供します。  質疑の通告があります。これを許します。床次徳二君。
  3. 床次徳二

    床次委員 私は前会一般的な質問をいたしたのでありますが、なおその機会に質問の漏れました点について若干補足質問をいたしたいと思います。  第一に、前会、賠償基礎となりましたところの戦争損害の時期、また額についてお尋ねいたしたのでありますが、これは平和進駐から戦争状態に切りかえられて、その戦争状態に入ってからの損害であるというふうにお答えがあったのでありますが、いかなる時期から戦争状態に入って戦争損害の時期の計算になるか、この点についてもう一度お話をいただきたいと思います。
  4. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 一九四四年の八月二十五日から終戦時までの損害でございますが、詳しいことは政府委員から答弁いたさせます。
  5. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいまの点は、一九四四年八月二十五日のときからフランスとは正式に戦争状態に入った、このように法律的には観念いたしております。と申しまするのは、ちょうどその時期にドゴール連合軍とともに大陸に上陸しまして、そしてパリを回復しまして、前の政権ペタン政権を倒して、国際法上にも正式に政府としての地位をそこで確立いたしました。その時期から戦争状態に入ったもの、このように観念いたします。
  6. 床次徳二

    床次委員 今のフランス政府政権の移動の問題でありますが、これに関しまして他に別の見方もあるように思うのでありますが、その見解はいかがですか。
  7. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいまの点でございますが、フランス側は、ドゴールがやはり昭和十六年の十二月八日から日本戦争関係にあるんだというふうな説もございます。しかしながらこの説ですが、やはり戦争宣言とか戦争の開始とかいうような重大な問題はさかのぼることはできないというふうに私は考えられますし、それが一つの国際法上の通説であろうと考えております。また当時はドゴール国際法上正式の政府としての地位を有していなかった次第でございます。御承知通りフランスドイツの進入を受けて、そこで降伏をいたしまして降伏条約締結いたしたのでありますが、そのときにフランス側ペタン内閣が成立したわけでございます。ところが前の内閣国防次官でございましたドゴールはこれを不満として英国に渡った次第でございますが、当時ドゴール自身もロンドンにおきまして自由フランス運動というふうに自称しておりました。みずからも政府であるという主張はしていなかった。また英国その他の諸外国からも何ら政府としての扱いを受けていなかった次第でございます。一方ペタン政府フランスの憲法上の正式の手続を経てそこで成立いたしまして、わが国はこれと平和関係にあったわけでございます。またこのペタン政府は、諸外国、たとえば米国なんかは正式にこの政府承認し、これと外交関係を維持していたわけでございます。一方、ドゴールの方はフランス国民委員会——初め自由フランス運動と称しましたが、その後一九四一年の九月二十五日になりますとフランス国民委員会というふうに名前は変えております。しかし扱いは同じでございます。さらに翌年になりますと、このドゴール委員会のみならず、北アフリカにもやはりダルランを主席とするドイツに反抗する団体が組織されております。そしてさらに翌年とこのドゴールダルランが合流いたしまして、解放フランス国民委員会というふうな委員会を作っておりますが、しかしこの時期におきましても、諸外国からも政府としての扱いを受けていないわけでございます。その後一九四四年六月になって、初めて臨時政府というふうに自称いたしまして、二カ月後の八月二十五日になって、パリを回復しておる。このような事情でございますので、パリを回復したときからが正式の政府地位を持つに至った、このように考える次第でございます。
  8. 床次徳二

    床次委員 右の状態によりまして、日本フランスと正式に戦争状態に入ってからの損害であるということが明らかになったと思います。いかなる損害が出たかということは前会の御答弁によりますと、仏印に対して日本から討伐を行なった、また地方におけるゲリラ部隊に対する討伐が大きな戦争損害であり、その他物資あるいは労務等関係における損害であるという御説明があったのでありますが、これらの損害ベトナムの各区域にいかなる分布の状態になっておるかということを御説明いただきたい。大体の見当がおわかりでしたら……。
  9. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 戦闘損害につきましては、最初の三月九日の戦争は全地区にわたっております。それから六月のゲリラ部隊掃討戦、これら主として北部山岳地帯、それから餓死者北部の方に出ております。しかし、餓死者が出るくらいでありますから、餓死寸前の者というような者が出ております。病人も出ております。それらは全土にわたっておる、そういうように考えております。それからせんだって申し上げました工場の接収とか、接収してこれを他の軍用工場に転換する、あるいは建物を接収する、こういうふうなことによる損害となりますと、むしろサイゴン地区等司令部の所在地でありますので、多いのではないかと思います。それから全般的に見まして、経済交通運輸というものが完全に杜絶いたしまして、そのほかに輸送機関というものも、トラックにしましても車両にしましても日本軍がほとんど全部徴発をいたしたのであります。こういうことによりまして経済活動が完全に麻痺しておりまして、それによる損害生産の減退その他の損害となりますと、これは全体にわたりますけれども、一番経済活動中心地でありました、ことに司令部が存在しまして、多くの物資買付を行なっておりますサイゴン周辺、こういうところに多いのではないか、こういうように考えます。
  10. 床次徳二

    床次委員 ただいま御説明になった戦争損害に対して、この損害を評価するというと幾ら幾らという数字基礎のもとに賠償額計算されたということになると、非常に国民にわかりやすいわけでありますが、実際においてはそういう交渉の方法がなかった、実はそういうふうな計算で予想したよりも非常に低い数字でもって賠償額が結論的にはきまっておるわけなんであります。しかし、その数字関係がわからないために、非常に大きい損害賠償額を払うかのような印象を与えておる。ここに問題があると思うのでありますが、ベトナムに限らず、あるいはビルマフィリピンその他インドネシア等におきまして、先方要求額と実際に妥結いたしました損害賠償額との比率等権衡はいかようにお考えになっておりますか、御説明を聞きたい。
  11. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 まず最初ビルマにつきましては、先方は一応三十五億というふうな当初要求をいたしておりまして、二億になっておりますから、十七分の一くらいになっております。次のフィリピンにつきましては八十億というものに対しまして五億五千万、十五の一くらいになります。それからインドネシアが百七十二億に対しまして二億二千三百万か四百万、これは約八十分の一近くになります。それからベトナムの場合は二十億に対しまして三千九百万で、四十分の一以下、こうなりますが、もちろんその最初に出ました要求というものにも非常に詳しいものとか、みな同じようなものをあげて要求しているというわけでもありませんから、これを同列において比較することは無理かとも思いますが、大体あらゆるものを網羅して先方は出しております。ただいま申し上げました比率がそれほど狂うことはなかろう、こう考えております。
  12. 床次徳二

    床次委員 先方要求額に対して相当の減額になっておることは、賠償交渉の努力の結果だと見られるわけでありまするが、内部的に考えまして、わが国が与えた損害額と妥結いたしました賠償額のつり合いの関係が大事だと思うのであります。この点は、わが方といたしましてもいかなる程度のことを内心考えているかということを明らかにするわけにいかない、これが外交交渉でありますから、当然なことだと思うのでありますが、この各国間の損害に対する賠償額、結果として支払います賠償額比率の割合ですか、このつり合いは大体権衡がとれている、今日ビルマが再検討約款によりまして要求しておりまするが、しかし全般的にはつり合いがとれているという自信が政府はおありになるのでありましょうか。
  13. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 大体のところ、今お話しのように向うの要求額というものもいろいろまちまちでありますしいたしますから、正確なことは申し上げかねますけれども、しかし今大体において調子がとれているのかといえば、大体において調子がとれている、こう思っております。
  14. 床次徳二

    床次委員 次に賠償相手国の問題でありますが、予算委員会等で問題となっておりまする全権資格等は、私はこれは問題がないと思うのですが、ただ明らかにしておきたいのは、ベトナム国、今日のベトナム共和国というものに対して、日本がいかなる時期に承認という結果を来たしておるか、承認したという事実があるか明らかにされたい。
  15. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 われわれといたしましては、ベトナム国及びこれを代表する政府といたしまして、サンフランシスコ会議調印のときが、すなわちこれが国家及びその政府を正式に承認した時期である、こういうように考えております。
  16. 床次徳二

    床次委員 ベトナム国サンフランシスコ条約に参加しておるということ、この参加に対しまして、資格審査とでも申しますか、その損害賠償要求の権利を有すること、並びに平和条約に参加する資格があるということの認定は、これはどこでいたしたものですか。
  17. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 サンフランシスコ会議には、米英連合いたしまして、日本戦争状態にあった国々、これを招請したわけでございます。そこでこれらの国が出てきて平和条約を審議かつ調印したわけでございます。その際の代表につきましては、全権委任状会議の開催前に提示いたしまして、御承知通り全権委任状審査会議が行われまして、そしてその国を正式に代表する正当な全権委任状であるということが認められた後に、その結果が会議に報告され、そしてその会議ではだれも異議を唱える者がなかった、こういうふうに記録に載っております。以上の手続を経まして、正式な全権委任状を持った代表調印することによりまして、その国に対して日本賠償の義務を負うということになる次第でございます。
  18. 床次徳二

    床次委員 ベトナム全権がだれであろうと、国家自体としては、平和条約におきまして、当然わが国戦争損害に対する賠償相手であるということが明らかになっておる。なお批准という行為によりまして日本承認をしておるのでありますから、今日においてベトナム共和国に対する賠償根拠に対しては問題がないことが明らかになっておるわけでありますが、ものの見方によりまして、いろいろとこれに対して非難があるわけです。一番大きな問題は、ジュネーブ協定の際における根拠が、北ベトナムと申しますかホー・チミン政府に非常に有利なように聞こえて、ホー・チミン政府正統政府としてジュネーブ協定が取り扱ったかのごとく判断せられておるのでありますが、右の見解に対する政府の統一的な見解を伺いたい。
  19. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ジュネーブ協定は、当時の戦争状態を休止するという休戦協定が、とにかく戦闘行為を停止するというのが、主眼でありまして、ジュネーブ協定によって、国際法的な国家のステータスとかそういう問題を決定されるというような目的の会議では全然なかったと考えております。従いまして、もっぱら戦闘停止という見地に立つところの協定でございますので、その国家の独立、承認、そういう問題には、影響は受けないものである、こう考えております。
  20. 床次徳二

    床次委員 今後賠償実施にあたりまして、いかなるものを賠償実施対象とするかということにつきましては、これは実施協定によるわけでありますが、いろいろとこれに対しまして、軍事施設的なもの等が使われるのだということがうわさされております。このうわさの根拠に対して説明を求めたいのであります。
  21. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今回の交渉にあたりまして、まだ、実施協定批准後に両方で協議いたしますものですから、どういう種類プロジェクトが今後採用されるか、またどういう種類生産物賠償対象になるかということは、今後の問題であると思います。しかし、交渉の過程におきまして、むろん従来各国とやっておりましたように、賠償を受けます側の希望と申しますかあるいは要求する物資なりあるいはプロジェクトなりに対して、十分な考慮を払いますことも必要でありまして、そういう点について、フィリピン賠償の場合におきましても、専門家が相寄りまして会議を開いたわけであります。そしてその際は、むろん日本で特別にドルを使って輸入して、そしてそれを原料として生産するようなものは日本側としてはなかなか同意はできないというような大ワクの話をいたしますから、大体プロジェクトなり生産物の内容がきまって参ります。そういうような積み上げ方式としての話し合いはいたしておるのであります。その際出てきたものに御承知通りダニム水力発電所の建設、あるいは機械工業のセンター、あるいは経済借款では肥料工場というようなものを向うが優先的に順位として要求をいたしておるわけであります。従いまして、その優先順位の強いものを一応こういう協定の中に書いてありまするが、実際のこれからの実施段階になりましては、それが動く場合があるだろう、こう存じております。
  22. 床次徳二

    床次委員 ベトナム共和国——南ベトナム賠償協定実施の結果相当の利益を得て、民生が安定し産業が向上する、これはとりもなおさず北ベトナムからいうと、自分の競争相手が力を得るし、勢力が強くなるので、好ましくない、かような意味においての反対根拠は納得できるのでありますが、そういうことがあり得ることが予想できるのでありますが、なお今回の賠償にあたって、過去において行なわれたところの中間賠償、すなわち沈船引き揚げの問題が円満に実施できなかったということに対して、各方面において相当の不平があるし、またいろいろと損害を受けた人たちもおるように思うのでありますが、この中間賠償協定が一向進行しながら、これが成立し得なかったということに対する経過、またその理由を御説明願いたいのであります。
  23. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 中間賠償におきまして沈船引き揚げの問題が取り上げられ、仮調印をいたしましたけれども、それが正式調印に至らずして破棄されましたことは、われわれも遺憾だと思っております。その間の経緯については、詳細を政府委員から説明いたさせます。
  24. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 一九五三年にこれはインドネシアフィリピン等に次ぎまして中間賠償沈船引き揚げ協定ができたのであります。たしか仮調印をいたしましたのが九月かと思います。それをどういうわけか、先方といたしましては正式に調印いたしません。五五年の末になりましてこれをたな上げするということを言って参ったのであります。この理由につきましては先方説明いたしません。こちらが聞きましても何も言わない。そこで推測するより仕方がないのでありますが、別途その前から民間の方で手をつけておりました。その方でいけばそちらでやろうかというふうな気もあったかも存じませんし、あるいはくず鉄の値段の上下というふうなことも影響したのかもしれません。これははっきりわかりませんが、いずれにしろこちらが催促しましてもこれを正式調印しない。そして五五年の十二月になりましてこれをたな上げする。そしてたな上げしました上で正式な賠償交渉をしようということを申してきております。一九五六年の一月に正式交渉が始まっておりまして、そこで二億五千万ドルというふうな数字を出しております。その後ずっとこの額をめぐりまして、これを下げるべくこちらとしては交渉いたしておるわけであります。その間ダニムとかいろんなプロジェクトが出ております。その際に沈船の件も向うから申しておりますし、こちらでもまたこれを言っております。しかし順位としましては常に低い順位にあります。そこでこちらの賠償額の方が少ないわけでありますから、こちらはなるべく金額を少なくしようということになりますと、順位の低いそういう沈船というものは入ってこなかったということであります。
  25. 床次徳二

    床次委員 今のお話のような経過でもって沈船賠償実施に至らなかったわけでありますが、しかしながら、関係業者においてはこれの成立を期待していろいろな事業に手をつけておるのじゃないか。そのような意味において、ある程度までの損害も負担しているんじゃないか。従って、そういう立場の人が従来の沈船引き揚げを除外した賠償に対しては、好意的な態度を持たぬのは当然だと思うのでありますが、その間の業者というものははたしてどういう立場——やはり相当損害を受けておって今日泣き寝入りの形になっておるのかどうか、伺いたいと思います。
  26. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 その間の経緯につきましてはアジア局長から説明いたさせます。
  27. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 一番問題になりますのは北川というあれでありますが、これは中間賠償の前に、すでに一九五二年ベトナム側でもって沈船引き揚げ国際入札をやりましたときに、当時まだ日本人としては無理でありましたので、フランス人名前入札しまして、その下請としてこれを落としておるわけであります。ところがこれも一応落札が決定していながら、その北川が準備をいたしまして向こうに参りますと、なかなか上陸をさせてくれぬ。これは入国査証は持たずに行ったわけでありますが、先方が急ぐからすぐ来いというので参りますと、入国査証がございません、向こう上陸を許さない、あるいは持っていきました材料のダイナマイトを一時向こうが預かるということで、作業に取りかかることができない。そういうことでもって損害をこうむっております。それからその後向こう日本大使館側で口をききまして、この入札の方は正式調印をいたしまして、仕事を始めておりますが、向こうがあまり好意的でないのでなかなか仕事がうまくいかぬ。結局五五年の六月で期限が一応切れた。これも大使館が口をききまして十二月に延ばしましたけれども、その間にくず鉄の値下がりというふうなこともございまして、かなり損害を受けております。ですから、日本政府としてはその間このことに特に責任があるという問題ではございません。むしろ政府としましては、いろいろと大使館を通じてめんどうを見、それから中間賠償のこの協定におきましても、北川向こうと契約しておりましてまだ実施しておらぬものは、その中間賠償で引き継いでやってやる、賠償としてやれるような規定までも設けておったのであります。これも先ほど申し上げましたように、向こう正式調印をしないために実施不可能になっております。そこでその間に相当損害を受けた。それから正式の賠償が一九五六年から始まりまして、その後にまた向こう国際入札をいたしております。これも北川が別の名前で、ほかに宮路といいますかこれと一緒になりまして、日本海事という会社で最高額でもって落札しておるのでありますが、これをいまだに向こうが決定をいたしません。そこでそれもペンディングになった、そういうふうな状況でありまして、北川としましてはかなり損害がございます。これにつきましては政府の直接の責任という点はございませんが、向こう側がなぜかそういうものをはっきりしない。向こうの方が悪いのであります。それにつきまして、一般の外交交渉として早くやるようにということを申しておりますが、しかし、ただそれだけで相当損害を受けておるようでありますから、その損害に対して、ただ今の国際入札が決定して事業をやったからというだけで北川が立ち直っていけるかどうか、相当債権者もございますし、できれば向こうが希望して参りまして、何とか今度の賠償額に余裕でもございますれば一応考えてやるべきではないかということも考えておるわけであります。
  28. 床次徳二

    床次委員 終わりに一言。今度の賠償によりまして、ベトナム共和国並びに将来のベトナム全域が利益を得ることは明らかだと思うのでありますが、この賠償の成立に対して、周囲の各国がいかなる態度をもってこれを期待しておるか。いわゆる共産圏におきましては北と同じような態度をとっておることは予想できるのでありますが、その他の国々は、日本ベトナム共和国との賠償の成立に対して、好意的な態度を示しておるかどうか、全般的の立場からお伺いいたしたい。
  29. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今回のベトナム賠償交渉成立は、サンフランシスコ平和条約の義務を日本としては履行するという国際信義の立場に立っております。従いまして、この賠償交渉の成立したことは、他の東南アジアの国に対しても日本条約上の信義を守るという信頼感を得ておると私は確信をいたしております。
  30. 小澤佐重喜

    小澤委員長 岩本信行君。
  31. 岩本信行

    ○岩本委員 一、二点お伺いします。賠償は、すでにフィリピンインドネシアビルマ、この三カ国が条約締結された。さらに今度ベトナムも追って承認されるものと思うわけでございます。これでこの四カ国で、この間の戦争賠償というものは一切完了した、こういうふうに見てよろしいかどうか。と申しますことは、たとえば中共のごときは——台湾政府は別でございますが、平和条約がまだできない、いずれは平和条約のできることを期待するわけでございますが、賠償問題に関する限りは、今回のこの条約をもって日本とすると完結した、こういうふうに見てよろしいかどうか、この点を一つお答えを願いたい。
  32. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今回の賠償締結によりまして、条約上今日まで義務を負っておりますものに対しては完結をいたしたものであろう、そう思っております。
  33. 岩本信行

    ○岩本委員 仏印三国のうちラオス、カンボジアは賠償請求権は放棄した、要するに請求は今後ない、こういうことでございますが、いわゆる仏印進駐というものは、ラオス、カンボジアも含んだもの、こういうふうに考えますが、やはりラオス、カンボジアもベトナム同様の被害を当時日本として与えておったものかどうか、この内容について御説明願いたい。
  34. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 ラオスもカンボジアも、いずれも約三カ所くらいのところに日本軍の部隊、ごくこれも小さい部隊でありまして、一個中隊程度のものが入っておりました。大体飛行場の関係とかその他でございますが、戦闘行為等はほとんど行われておりません。むしろ全然ないといっていいのではないかと思います。またラオスやカンボジアでは、仏印におきまするような調達というふうなものも行なっておりません。それからその他の米軍による爆撃を受けるということもございませんので、これはごく小さな部隊がほとんど何らの問題を起こさずに平和的におったにすぎない。ですから損害というものはほとんどないというふうに私は考えております。
  35. 岩本信行

    ○岩本委員 この間の戦争日本と交戦国、もちろんこの交戦国の中にも宣戦布告をした国及び戦争状態にあった国、こういうことになっておりまして、その後の文書等によっていろいろ出ておりますが、一体日本へ対して宣戦布告した国がどことどこか、あるいは宣戦布告はないけれども交戦状態だったという国はどことどこか、これは今日御説明をいただくのはあるいはどうかと思いますが、もしなんでしたらあとで御報告願いたい、かように存じます。お答えができればここでお聞きしたいと思います。
  36. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 詳細なことは後ほど正確な資料について調べましてお答え申し上げます。宣戦布告した国で一番明瞭にわかっておりますのは英米蘭の三国であります。それから平和条約に招請を受けまして、これに調印することによりましてこの国とわれわれは戦争状態にある、いかなる形式によってそれが発生したにせよこれとわれわれは戦争状態にある、こういうわけになる次第であります。これは御承知の通りであります。ただその至る経緯がどういう経緯であったかということにつきましては、後ほど資料をもって御説明申し上げます。
  37. 岩本信行

    ○岩本委員 けっこうです。
  38. 小澤佐重喜

    小澤委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後二時三十三分散会