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1959-11-05 第33回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年十一月五日(木曜日)     午後一時二十六分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 岩本 信行君 理事 宇都宮徳馬君    理事 佐々木盛雄君 理事 床次 徳二君    理事 戸叶 里子君 理事 松本 七郎君       愛知 揆一君    池田正之輔君       石坂  繁君    北澤 直吉君       椎熊 三郎君    野田 武夫君       福家 俊一君    前尾繁三郎君       森下 國男君    勝間田清一君       高田 富之君    穗積 七郎君       帆足  計君  出席国務大臣         外 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         外務政務次官  小林 絹治君         外務事務官         (アジア局長) 伊關佑二郎君         外務事務官         (アジア局賠償         部長)     小田部謙一君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 十一月五日  委員高田富之辞任につき、その補欠として栗  林三郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員栗林三郎辞任につき、その補欠として高  田富之君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国ヴィエトナム共和国との間の賠償協定  の締結について承認を求めるの件(条約第一  号)  日本国ヴィエトナム共和国との間の借款に関  する協定締結について承認を求めるの件(条  約第二号)      ————◇—————
  2. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 これより会議を開きます。  日本国ヴィエトナム共和国との間の賠償協定締結について承認を求めるの件及び日本国ヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定締結について承認を求めるの件の両件を一括議題とし、質疑を行ないます。質疑の通告がありますので、順次これを許します。床次徳二君。
  3. 床次徳二

    床次委員 今回ベトナム国との賠償協定が調印せられたのでありますが、これにおきましてわが国戦争賠償が終結するということに取り運ぶことはまことに望ましいのでありますが、しかしながらわが国民といたしまして相当負担をいたしますことにつきましては、十分なる検討を加えなければならないのでありまして、まずその賠償額が適正な額であるということ、なおその賠償が効果的に行なわれるためには適正なる政府に対して行なわれなければなりませんし、またその費途等におきましてはやはり国民の納得のいけるような費途に使われること並びにこれが両国の親善促進になるということが、国民としての関心であると思うのでありますが、まず問題となっております賠償額に関しまして伺ってみたいと思うのであります。仏印に対しましては当初平和進駐でありましたものですから、他国に比しまして戦争損害というものが著しく少なかったと思うのでありますが、今回三千九百万ドルという数字が出て参ったのでありますが、元来この戦争損害というものをどのように考えられ、どういうような戦争損害があり、またこの戦争損害はいつからいつまでの間に発生したものであるかということを伺いたいのであります。
  4. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今回の賠償にあたりまして戦争がいつから起こったかということでありますが、これは一九四四年の八月二十五日ドゴールがヴィシーに戻って参りましたときが、われわれとしては戦争の開始のときであると考えております。従いまして、翌年まで一年間戦争状態にあったということがいえるわけでありまして、その間日本軍といたしましても、五五年の三月には明号作戦という作戦をやっております。また六月には支那におりました軍隊が北部から入って参りまして、いわゆるイ号作戦を起こしております。そのために直接戦争損害が起こっておりますし、また同時に日本がその間に食糧その他を徴発いたしました関係によって、餓死者等相当に出ております。向こう側から申しますと、約百万人くらいの餓死者が出ていた、こういうことを言っております。むろんわれわれそういう数字をそのままに適当であろうとは考えませんが、少なくも二、三十万の餓死者があったのではないかということが推定されておるのであります。そういう損害に対しまして、向こう側といたしましては二億五千万ドルの賠償請求をいたして参ったわけであります。賠償交渉のことでありますから、われわれといたしましてはできるだけ最初少額金額から話し合いをいたしたわけであります。沈船引き揚げの中間賠償がその話し合いの第一歩であったこと申すまでもないのでありますが、同時に、フィリピン等に対しましても、中間賠償としての沈船引き揚げ問題が取り上げられておったわけであります。その後の経緯を経まして今回提出いたしましたような三千九百万ドルという賠償額に相なったわけであります。
  5. 床次徳二

    床次委員 今日になりますと、わが国民といたしまして、戦争損害に対する感じというものをなかなか認識していない。従って、戦争当時わが国が与えた損害に対して十分な認識をするということが、まず賠償額を納得する場合非常に大切なことだと思うのであります。ただいま御指摘になりました戦争、二回の作戦の問題、あるいは餓死者等ができたということでありますが、この損害額を大体どれくらいとして考えておられたかということを国民はじき考えたがるのです。しかし、この点は政府が、具体的に幾らの損害額であるということに対して大体不測を持って交渉に当たっておられたのであるか、過去数回各国に対する賠償の実例があるのでありますが、その交渉の際においてどういう方法で交渉しておられたかということもこの際あわせて聞きたいのであります。日本がそれぞれ各国に与えました損害賠償というものを腹に入れて、そうして相手方交渉されることはもとよりでありますが、大体の額につきまして見通しを持って交渉せられておるのだ、そうして、できるだけ安くと申しますか、日本側から申しますと、国民負担を考えて安く、先方からいうと、先方はできるだけたくさんということになったと思うのでありますが、この三千九百万ドルという額に落ちついたいきさつに対してお話をいただきたいのであります。
  6. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知のように、今回の賠償は、南ベトナムをわれわれとしては全ベトナム代表として認めておるわけであります。従って、南北を通じての損害であるということは、前提として申し上げておきたいと存じます。  そこで、従来の賠償経緯から見ましても、一応膨大な要求と申しますか、損害があったということをそれぞれの国からは言って参るのでありまして、インドネシアは百七十億万ドルというようなことを一応言うわけでございます。従いまして、むろんそういうような要求額をわれわれ頭に置いてやるわけではないのでありまして、われわれとしては、そういう問題についてはできるだけ一つ考え方を持っていかなければならぬこと申すまでもございません。が、しかし、同時に、損害査定ということは非常に困難でありまして、物的損害にいたしましても、現実査定ということは非常にむずかしい問題がございます。また、人的損害にいたしましても、その数等について正確な数字を収集するということはほとんど不可能なことであるわけです。まして、サンフランシスコ平和条約にありますように、精神的な点までも考えあわせていかなければならぬといたしますと、むろん、われわれがどの程度金額がまず合理的なものであるかということを損害額から見出していくということは、相当困難なことなんでありまして、従って、われわれとしては、一応そういうことを念頭には置きますけれども、しかし、日本財政事情もございますし、そういう賠償の性質として、ぜひとも払って償いをいたしませんければなりませんけれども、しかし、同時に、日本の今日の現状から言いまして、できるだけ少ない金額を払っていかなければならぬし、向こう側にも満足してもらわなければならぬ。そうして、誠意を尽してその点で話し合いをするというのが従来の賠償交渉の普通の過程でございます。従って、われわれといたしまして、できるだけ少ない金額から話し合いをいたしていくことは、交渉でありますから当然であります。従って、最初話し合いをしていきますときの金額が、それで適当だという金額であることは、交渉でございますからむろんございません。現実といたしまして、先方は二億五千万ドルという要求額を出して参ったのでありますが、しかし、そういう金額を払うことが適当だとはわれわれ考えておりません。また、他の例から見ましても、適当であろうとも思っておりません。従って、まず、向こう考え方を十分聞きました上で交渉を開始して、逐次いろいろな状況話し合いの上で歩み寄っていくというのが、今日までの賠償交渉経過でございます。しかも、それはベトナムにかかわらず、他の賠償についてもそういうような行き方で行っておるわけであります。でありますから、初めからどの程度金額が一番妥当なんだ、損害に対して、言う数字各人各様の見方があろうと思います。が、しかし、今申し上げたように、積算をいたして参ります基礎というものが必ずしもはっきりいたしておりませんので、諸般の情勢を勘案しながら交渉を続けていく。従って、ある場合にはそれが非常に長い交渉になっていくという経過をたどってきておるわけでありまして、大筋において交渉方針というものはそういうものであるということを私から申し上げ、また、細部につきましてはそれぞれ政府委員より答弁をいたさせます。
  7. 床次徳二

    床次委員 賠償交渉で、いろいろ額をきめます交渉というものが非常に困難であることはわかるのでありますが、なお、今回の交渉も、二億五千万ドルから三千九百万ドルに下がったということも、これは事実でありますが、当初わが国念頭に置いた損害額というものと、今回きまりましたところの賠償額というものとの間において、相当やはり開きがあるというよりも、当初念頭に置きました損害額よりもだいぶ少なくなっているという努力で、ふさわしいところに落ちついたということが国民を納得せしむるために非常に必要なことだと思う。かりに、先ほどの物的損害精神的損害を換算してみると、相当な額になる。それから見ると今度の額は非常に少なくなったので、この努力の跡をやはり国民に知らせることが必要だと思うし、また、国民がこれを理解しなければ、賠償は過大のものだという印象を受けると思うのでありますが、重ねて伺うのでありますが、当初予想された戦争損害というものから考えると、今回の賠償額ははるかに下回っておる、日本側から申しますとそういう額であるということを確信してよろしいのでありますか。
  8. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知のように、ただいま申し上げましたように、向こうが、たとえば人的損害というものを百万人くらいある、これに千ドルずっと仮定しても十億万ドルだというようなこりとを言っておるのであります。むろん、向こう側にいたしましてもその数字を固執してきているわけではございません。二億五千万ドルから始まっております。われわれが三千九百万ドルに終局落ちつけましたのも、今申し上げた過程からいたしまして、向こう側といたしましても一億五千万ドルということを相当長い間堅持していた時代もございます。われわれもとうていそういう金額では賠償に応じられないのでありますから、むろんそれをできるだけ意を尽くして削減することにいたして参ったわけであります。そういう意味から申しまして、二億五千万ドルに対して三千九百万ドルということは、私どもとしては過大だとはむろん考えておりません。
  9. 床次徳二

    床次委員 ベトナムのすぐ隣にありますラオスカンボジアにおきましては賠償請求を放棄いたしておるのでありますが、この二国の関係ベトナムとの均衡問題に対しましてはいかがでございますか。
  10. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 このラオスカンボジアは、御承知通り賠償を放棄いたしたわけであります。従いまして、全く新しい見地に立ちまして、賠償を放棄してくれた行為その他に報いるために、われわれとしては何か記念的な事業ラオスカンボジアにやるべきが適当ではないか。従って、そういう意味でありますから、この二つの国と今回の賠償とを比較いたしますことは、必ずしも適当ではないと思っておりますが、むろん賠償を放棄しないで、別個に賠償要求をいたして参りますれば、相当金額をやはり要求してきたのではないかと思うのであります。むろん戦争損害その他の関係がございますから、同じような立場とは必ずしも申し上げられませんけれども、しかし仏印三国としての立場にもおるわけであります。そういう意味でありますから、直接われわれがラオスカンボジアに対しまして感謝の意を表して出したものと、これとを比較することは、必ずしも適当だとは考えておりません。
  11. 床次徳二

    床次委員 なお賠償の額に関しまして、二つの問題について検討する余地があると思う。一つは、たまたまベトナムにおきましては、民間で調査中でありましたところの水力発電所建設計画があったのでありまするが、今回の賠償が、その大部分をもちましてこの発電所建設を実施することになっておりますので、ある一部におきましては事業家の利権を考えて振りかえたのだというような宣伝をいたしておるものもあるような次第です。従って、この点に対する誤解を十分解いていただく必要があると思うのでありまするが、決定せられた賠償額が、先ほどのような政府努力によって最低の数字できまって、そうしてその使途が後に発電所その他の建設計画になったのだ、こういうふうな順序であるのが当然だと思うのでありまするが、この間うわさされるような問題があったかどうかということを明らかにしていただきたいのであります。
  12. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知通り賠償協定をやって参りますときに、過去のいずれの国との賠償協定交渉もそうでありますけれども、むろん向こう側から損害程度を述べ、またそれに対する賠償要求の額をある程度出して参ります。そうして金額的には、われわれそれに対してできるだけ合理的に説明をし、交渉をしながら定めて参るのでありますが、他方賠償内容等につきましては、それぞれ賠償を受ける国が、こういうものを賠償としてもらいたいのだというような要求がいずれもございます。従って、フィリピンの場合でもインドネシアの場合でも、技術委員会と申しますか、そういう種類類委員が東京に来、あるいは現地におきまして、いろいろ賠償に上るべき種類プロジェクトを提出するのであります。御承知通り賠償はできるだけ日本原料を持っております品物から出していきますことが、また日本立場でもございます。原料を輸入したものをなるべく多額に使わないで、そうして日本でできるようなものをなるべく使って賠償をしていく。従って、そういう種類のものを日本側としても提供をすることが必要だと思うのであります。そういうような二つの面からの作業が賠償にあたっては続けられるのであります。従って、今回の場合におきましても、ベトナム側要求しておりまする賠償物資と申しますか、プロジェクトというものについては、それぞれベトナム側からもいろいろ順位をつけて出してきております。ただいま御指摘のありました発電所というものは、ベトナム側としては優先的な順位、第一順位に持ってきておるのであります。そういうことでありますから、われわれとしても、ベトナム側の希望をできるだけ聞いていきますことは当然であります。従って、金額はできるだけ減らすにしても、その内容については、ベトナム側のほしいようなものをなるべく充てていくということが適当だと思うのであります。ただいまの発電所の問題は、ベトナム側がかねてから非常にこれを要求しておりましたことは御承知通りで、この賠償の始まります前に、ベトナム側としては、発電所建設計画を立てまして、そうしてその設計というものを国際的に募集いたしたわけであります。フランスのコンサルティング・エンジニアと日本日本工営とがこれに応じたわけであります。その設計等につきましては、ベトナム側も、慎重に、国連の技術委員を招聘いたしまして、三人の技術委員検討の上で、日本側設計が適当であったという結論に今達しておったわけであります。そういう状況でありますから、ベトナム側がこの発電所建設というものに対して最優先的な順位を付しておりましたことは当然でありますので、われわれといたしましても、そういう点を十分考慮して参らなければならぬもので、一方では金額についての減額の交渉をいたしていく、また他方においては、向こうの希望しているものを対象にしていくというような形において、今回の賠償においても、それを主たる内容としてこの問題がきまったわけでございます。
  13. 床次徳二

    床次委員 国内におきまして、ベトナム賠償が過大だというような説もあるのでありまするが、すでにビルマ賠償額に対する再検討日本に申し入れておるのであります。今回のベトナム賠償に関連しまして、ビルマのいわゆる再検討要求に対して一つ根拠を与えることになるかどうか、この点について伺いたいのであります。
  14. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今回ビルマが再検討要求して参りましたのは、御承知通りビルマ日本との賠償協定の中にございます再検討条項を持ち出しておるのでありますが、その日本に対しての申し入れについては、インドネシアフィリピンを明示して参っておりますけれども、ベトナムについては何らの明示をいたしてきておりません。フィリピンインドネシア賠償ということを対象にいたしてやってきております。
  15. 床次徳二

    床次委員 賠償に関しましては、その金額が妥当であるということ、これに対していろいろ御主張があったのでありますが、次に、その相手方が正当なる代表であるということが必要な要件であるわけでありますが、今回、一部におきましては、ベトナム共和国はかいらい政権であるということを主張しておるのであります。これに対しまして、政府賠償相手方としてベトナム共和国対象としておりますることに対する根拠ベトナム共和国正統政府として認めるところの理由を述べていただきたいのであります。
  16. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知のように、フランスが戦後植民地をそれぞれ独立解放するという方針のもとに、仏印三国に対して処理をいたしたわけであります。その際、ラオスカンボジアと同じ立場において現在の全ベトナム国を領域とする地域一つベトナム国として認めて、そうしてそれに独立を付与して参ったわけであります。従って現在の政府というものは、当時バオダイベトナム国の首班でありましたが、その後選挙によって政体が共和制になって、そうして今日に至っておるわけでありますけれども、共和制になりました後、前のバオダイベトナム国のすべての権利、義務を引き継ぐことになっております。また同時に、フランスがその独立を認めました翌年でありますが、ラオスカンボジアにも同じような、現在の地域で処置をいたしたわけであります。そうしてその後、現在四十九万国がこの南ベトナム承認いたしておりますので、当然これがベトナム正統政府と見て差しつかえないと思っております。むろんその間に御承知通り北ベトナムにホー・チミンがおりまして、そうしてベナトム人民共和国を作っておるわけであります。しかし北ベトナムに対しましては十二ヵ国が承認をしておるだけでありまして、南ベトナムについては四十九カ国が現在承認をいたしておるわけであります。またジュネーブの会議におきましても、この南北軍事停止線というものは政治的な、あるいは領土的なことを意味してないということであります。従って南を承認している国としては、当然ベトナム共和国が全ベトナム代表する政府だと考えておるわけであります。あるいは北を承認しておる国は、北が全ベトナム代表する政府だと考えておるかもしれませんけれども、南を承認しております国としては当然そうあるべきだと思います。
  17. 床次徳二

    床次委員 多数の国が、あるいは自由諸国南ベトナム共和国承認しておる、またこれに対しましていわゆる共産グループと申しますか、これは北ベトナム承認しておるというのが現在の態勢だと思うのでありまするが、わが国立場から申しますると、フランス承認しておるのは、これは非常に重要なるきめ手ではないかということ、もう一つわが国といたしましては、平和条約におきまして直接の相手国が、前政権を受け継いで参りましたいわゆるベトナム共和国であるということ、これはわが国といたしまして強い理由になると思うのであります。従って今日におきましてわれわれがベトナム共和国正統政府と認めるといういうことにつきましては、これは理由のあることだと思うのでありまするが、北ベトナム人民共和国というものの法律上の地位性格というものがどういうものであるか。今日北ベトナムからいろいろと意見が出、これを支持する者があるのでありまするが、この北ベドナム共和国性格というものに対して御説明をいただきたいのであります。
  18. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま申し上げましたようにフランス仏印を解放して、そうして独立国家を作って、おのおの処理して参ります過程において、カンボジアラオスと同じように全ベトナム地域代表する政府として、フランスがこれをまず、御承知のように一九五六年ですか、アロン湾宣言というもので、これに全土を与えたわけであります。その翌年の三月にエリゼ宣言というものがありまして、フランスは明らかに全ベトナム代表する政府としてこれを処理いたしてきたわけであります。その結果先ほど申しましたように選挙を通じて共和制にはなりましたけれども、その共和国というものは前の国のあらゆる権利を承継して参っておりますので、当然歴史的過程からみましても南ベトナム政府が全ベトナム代表する合法的な政府であるということを申し上げられるわけであります。
  19. 床次徳二

    床次委員 北ベトナム地位についてさらに御説明をつけ加えていただきたいと思うのでありますが、その前に、立ちました機会に申し上げたいのであります。アジア諸国がこのベトナム共和国をいかに見ておるかということは、アジアにおりますわが国といたしまして大事なことである。一部におきましては、アジア趨勢北ベトナムを支持しておるにかかわらず、わが国だけが国際趨勢に反して南ベトナム共和国を支持しておることはおかしいじゃないか。かようなことをしておるならばわが国アジアの孤児になるということを宣伝しておるものがあるのでありますが、この点は事実上はたしていかなるものであるかということを伺いたいと思います。
  20. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 アジアにおきましては、韓国と国民政府フィリピンとタイとマレーが南の方を承認いたしております。ビルマインドネシアとインドがどちらも承認いたしませんで両方領事館を置いております。領事関係を結んでおると覚えております。
  21. 床次徳二

    床次委員 その事実は、今日南ベトナムに対してアジア諸国がこれを否定しておるという事実ではないのだということが言えると思うのでありますが、いかがでありますか。
  22. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 南ベトナムを否定しておるわけではないのでありまして、東南アジア各国も、承認はしておりませんけれども領事館を置いておるということであります。また。パキスタンのごとく両方承認しておる国もございます。
  23. 床次徳二

    床次委員 北ベトナム民主共和国よりわが国に対しまして、この賠償に関して何らかの意思表示があったかどうか。新聞で見ますと十一月一日にハノイの新華社電によりますと、北ベトナム政府藤山外相国会発言に対して抗議声明をしたと言っておるのでありますが、政府は何らかこういうものを受け取っておるかどうか。
  24. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 政府としては何の抗議声明も受け取っておりません。
  25. 床次徳二

    床次委員 抗議なりあるいはその他のものを受け取っておられないというのでありますが、北ベトナム人民共和国はどういうものであるかということを御説明いただきたい。
  26. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 北ベトナム人民共和国でありますか、これはむろん一つの構成団体であるということは事実だと思うのであります。従ってジュネーブにおきまして軍事的な休戦協定をやったわけであります。しかしながら先ほど申し上げましたような歴史的な経過からみまして、仏印三国のフランス植民地からの解放の経緯からみましても、当然現在のベトナム共和国が全ベトナム代表する政府である。ただそこに施政権の若干及ばない地区がある。そういう地方に北ベトナム政府が所在しておる、そういうことであろうかと思います。
  27. 床次徳二

    床次委員 ただいまの御答弁によりまして、北ベトナム政府の法律上の地位というものが明らかになって参ったのであります。従って北ベトナム要求に対する政府の処置というものがないのは当然でありますが、ただその主張に対しましては、十分に国民に対して、よく理解を求めなければならぬと思う点があるのであります。その数点について質疑いたしたいと思うのであります。これは北ベトナム人民共和国の国会常任委員会議長から、わが国の両院議長あてに要望書として提出されたものと承っておるのでありますが、第一は、ベトナムに対する日本戦争賠償支払いは、ベトナム全体に対する問題だ。南ベトナムだけでは効果がないということを考えておるようでありますが、これに対していかがお考えになりますか、承りたい。
  28. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私どもは賠償の支払いにあたりまして、先ほど申し上げましたようなベトナム共和国というものが全ベトナム代表する政府であり、かつフランスからの独立経緯からいってもそうでありますし、かつまた現在四十九カ国という国がそれを認めている点から見ましても、当然全ベトナム代表する政府だと考えられるわけであります。従ってそこに払います賠償というものが全ベトナムに及ぶことは当然でありまして、また同時にベトナム側におきましても、北ベトナムにおきます飢餓者その他の数字も入れてきているわけであります。そういうこともわれわれにらみ合わしまして、当然全ベトナムに対する賠償の支払いだ、こういうふうに考えております。
  29. 床次徳二

    床次委員 第二の反駁の点は、南ベトナムとの一方的な交渉というものは、ジュネーブ協定の精神及び国際法に反し、かつベトナム現実に一致しないゆえに無効である、かようなことをいっておるのであります。右に対してはいかようにお考えになりますか。
  30. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知のようにジュネーブ協定は休戦協定でありまして、政治的なあるいは領土的な境界線を画したものじゃないということが、協定にうたわれております。同時にその際行われました宣言によりまして、一日も早く統一の選挙を行なって、そうして統一さるべきだというのが、ジュネーブにおいての決定でございます。ところが御承知のように二年という期限を過ぎまして、一九五六年の六月でありましたか、当時ジュネーブ協定会議議長を勤めておりましたソ連とイギリスとがロンドンに集まりまして、そうしてこの選挙というものは、当分困難があってとうてい行われないんだということを南北ベトナム並びにフランスに通報をいたしております。  そういうことで今日までむろん統一ができておらぬのであります。しかし、その状況下におきまして、われわれとしては、ベトナムが、今申し上げました通りの経路と、それからサンフランシスコ条約に調印しておりまして、賠償請求の権能を持っておりますので、全ベトナム代表する政府としてこの政府とサンフランシスコ条約の義務をわれわれとしては履行しなければならぬ責任を持っておる、こう考えて賠償を全ベトナム代表として交渉をいたしたわけであります。
  31. 床次徳二

    床次委員 なおベトナム民主共和国側の主張によりますると、ベトナム協定に規定している通り南ベトナム当局はベトナム全人民を代表して日本政府交渉する資格がない、またベトナム民主共和国の人民及び政府は、日本政府南ベトナム当局に対する戦争賠償支払いは、日本及びベトナムの両国民の利害に反するものである、かようにいっておるのでありまして、なお今回の賠償協定の成立はベトナム民主共和国に対する非友好的な行為としておるのであります。かようなわけでありまして、いわゆる北ベトナムというものは今回の賠償協定に反対をいたしておるのでありますが、将来南北が統一せられました際におきまして、今回実施いたしましたところの賠償協定というものの効力いかんということについて、あらためて伺いたいのであります。
  32. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ベトナムが統一されますれば、当然統一されました政府がこれを引き継いで参りますことは、当然のことだと思います。従いまして、その結果として全ベトナムに及ぶことむろんであるわけであります。
  33. 床次徳二

    床次委員 将来の両ベトナムの統一の問題でありまするが、これはジュネーブ協定におきましても、バンドン決議におきましても、南北の統一ということに対しましては、大きな期待をいたしておるのでありますが、今回統一を待たずして賠償を実施するという、賠償協定を成立せしめるという考えは、どういう根拠に立つのか、伺いたいのであります。
  34. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど申しました通り、ジュネーブ会議において統一を希望し、それに対する共同宣言もございますが、しかし二年たちまして、当時の議長でありますソ連とイギリスが、とうてい現在の状態では選挙をやって統一することはできないのだ、当分できないということを明らかに通告いたしております。そういう見地に立ちまして、なかなか統一が困難であるということは事実でございます。従って、統一が困難である以上、それだけを理由にして、われわれとしてサンフランシスコ条約の調印国に対して、われわれの義務を果たさないというわけには参らないのでありまして、われわれといたしましては、サンフランシスコ条約の義務を忠実に履行していきたいという希望を持っております。
  35. 床次徳二

    床次委員 わが国といたしましては、今日までの国際信義に基づいて賠償を実施していこう、かように考えておるわけでありましょうが、北ベトナムといたしましては、この賠償実施によりまして北の方の人民に対して著しく不利を与える。すなわち、南の方の住民に対しまして戦争準備に対する利益を与えるのだということを強く主張しておるのでありますが、このためにかえって南北の統一を阻害することになるのじゃないか、さらにひいてはアジアの平和に害があるのじゃないか、かように宣伝をいたしておるのでありまするが、右に関する御見解を伺いたいのであります。
  36. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれとしては統一を希望しておることむろんでありますが、同時にサンフランシスコ条約の義務もはたして参らなければならぬこともこれまた当然でございます。しかも今回のベトナム賠償というものが、いろいろその中のプロジェクトを考えてみまして、永久にベトナムの全体に好影響を及ぼすような水力発電所等のものが建設されることになりますれば、全ベトナムの福利になることむろんでございまして、それが特に統一を妨げるということには考えられないと思います。
  37. 床次徳二

    床次委員 これは将来の統一する場合の仮定でありまするが、南が北を統一するというような形式になりますれば、きわめて事態は平穏でありますけれども、北が南を併呑するような事態を生じました場合におきましては、あるいは今回の賠償協定に対して将来の政府が異議を申し述べるということがあり得るかと思いますが、この関係はどういうふうに考えられますか、伺いたいのであります。
  38. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ジュネーブ会議の休戦協定にものっとって考えられますように、一方が何か他を武力で征服して統一するというようなことは考えられないわけでありまして、むろん話し合いもしくは選挙等を通じて統一国家を作っていくというのがジュネーブ協定の趣旨でございます。従って、そういう過程を経てできました統一政府は、北が併呑する、あるいは南が併呑するという種類のものでないことは当然だと思います。従って、われわれとしては、そういう統一政府ができましたときに、当然国際社会に対する権利義務を引き継いでいくと思うのでありまして、そのこと自体によって問題は解決し得るのじゃないかと考えております。が、しかし、かりに北が何か武力的なことをもって統一をはかってしまうというような場合に、私どもは、その後の問題としては、北が、そういうような種類政府賠償要求してきましても、これを払うべき義務としてはないように考えております。また、政治的に見ましてもその問題があろうと思います。
  39. 床次徳二

    床次委員 ただいまの御答弁は、国際法上におきましては、当然これは解決されておる。北の方が将来政治的な言いがかりをつければ言いがかりはつけ得るかもしれぬけれども、その程度にとどまるんだ、かように解してよろしゅうございますか。
  40. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 その通りでございます。
  41. 床次徳二

    床次委員 今回、北の方におきましては、一部の反対があることは御承知通りでありまするが、南ベトナムと申しますか、ベトナム共和国に対しまする賠償実施の結果が、わが国ベトナム国に対する貿易上に与えるところの影響についていかがお考えになるか。なお、将来両国あるいはアジアにおけるところの産業の発展等に関しているかようにお考えになりますか、伺いたいと思います。
  42. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ベトナムは、今後ベトナム建国の趣旨に従いまして、経済的建設その他活発な経済活動をして参ると思います。従いまして、日本ベトナムの間に友好的な関係がこれによって樹立されましたことによって、経済的な密接な関係が今日まで以上にさらに加わって参ることだと思うのであります。そういうことから見まして、われわれとしては、さらに通商航海条約締結とか、そういう基礎に立った上でそういう問題についても将来なお話を進めて参りまして、緊密な関係を経済的にも打ち立てて参りたい、こういうふうに考えております。
  43. 床次徳二

    床次委員 過去の実例から申しますと、一時北ベトナムの方におきましては、南ベトナム日本との交渉に関しまして、相当反対の意思を表し、場合によりましたならば、北ベトナムの貿易というものが相当影響を受けるのではないかということを見て参りました。ところが実際におきましては、大した影響を見なかったというわけでありまするが、今後におきまして、南ベトナムにおけるところの日本の貿易も、これは賠償によって好影響を受けるものと思うのでありますが、どういう種類のものが主として大きな貿易上の対象として発展の見込みがあるか、かような点を伺いたいと思うのであります。
  44. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 政府委員から答弁いたさせます。
  45. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 現在出ておりますもののおもなものは、繊維、それからそれに次ぎまして機械類等でございます。繊維が半数くらいを占めております。おそらく同じ傾向でもって貿易額が維持されるか、あるいは多少ふえていくということを期待しております。
  46. 床次徳二

    床次委員 今回の賠償に関連しまして考えなければならぬものは、仏印に対するところの特別円の支払いの問題であります。これが賠償問題であるいは二重払いになるのではないかということがいわれておりまするが、この特別円は元来どういうものであるかということに対する御説明をいただきたいと思うのであります。
  47. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 昭和十六年日本仏印に進駐をいたしますときに、貿易関係の決済あるいは進駐の費用の決済等に充てるために、フランスと日仏の基本的な支払い協定を結んだわけであります。それによりまして、その後の貿易決済、為替決済あるいは日本の調達した品物の決済等をいたして参ったわけであります。その支払いは金、米ドルで支払うことになっております。そこで当時支払いましたものは金で渡したものもございます。それから米ドルで支払ったものもございます。一九四四年の八月二十五日には金で渡したものが三十三トンあったわけであります。これは当時すでにフランス側に渡しておったわけであります。いわゆるイヤマークしておる金でございます。ですからフランスの金でありまして、たまたま戦争に入っておりますので船の輸送が困難でありますから、フランスがそれを本国に持ち帰っておらないで、日本銀行に預けておったわけであります。日本銀行に預けておりましても、これはフランスのものであります。でありますから、当然フランスのものを戦後運搬が自由になりますれば渡してやらなければならぬものであります。そのほかに八月二十五日の残高というものがあるわけでありまして、それが帳簿の残高が五億七千三百万円、それからドルで払わなければならぬものが四十七万九千六百五十一ドルということでございます。これを当時の約款からいたしまして、一〇・〇三倍というようなことにいたしますと、五十七億というような巨額な数字になるわけであります。ドルはそのまま引き渡しましたし、それから残高の整理をいたしたのであります。五十七億四千七百十九万円というような当時の換算に対しまして、交渉の結果十五億円に圧縮して支払ったということであります。ですから、当時十五億円と四十七万九千六百五十一ドルを払う。四十七万九千六百五十一ドルというのは一億七千二百六十七万円になりますので、合計十六億七千二百六十七万円払う。三十三トンの金というのはイヤマークした金でありますから、払ったとか何とかいうことでなくて、日本銀行から自分の物を自分で持って帰った、こういうことになります。
  48. 床次徳二

    床次委員 フランスとの関係は、特別円の支払いが済んだことによりまして、一応解決がついたことになっておりまするが、反面におきまして、このフランスに特別円を支払った時代におけるいわゆるベトナム国民に対する損害というものがどうなっておるかという点でありまして、これが将来ベトナム共和国よりさらに請求される余地があるのではないか、かように考えられまするがこの関係はどういうふうに処理せられておるか。将来におきましてはこの賠償協定の成立をもって一切べトナム共君国との関係は解決したのである、かように認めてよろしいのであるか。大体将来の国民負担に属することでありますので、重ねて伺っておきたいと思います。
  49. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今回の協定成立にあたりまして、ベトナム側からこれ以外の請求権というものは一切ないのだ、これで全部終わったのだということの一札をとっております。
  50. 床次徳二

    床次委員 以上いろいろ賠償について伺ったのでありまするが、今日ベトナム共和国に対する賠償に対していろいろの反対運動があるのでありまするが、その反対運動として私どもの手元に参りますものを見て参りますと、日本ヴェトナム友好協会、あるいは日越貿易会いわゆる北ベトナム関係のありますものは当然でありまするが、こういうものを初めといたしまして、日中国交に関するもの、日中貿易促進に関するもの、日朝貿易の問題等を中心といたしまして、大体同じ関連性をもった日中、日ソの関係の団体が中心となっておるように思われるのでありまするが、この運動はやはり北ベトナムを通じて行なっておるのでありまして、これがいわゆる見方から見ますると、自由圏に対する共産圏の立場という特殊な立場に立っての反対もあるように思うのでありまするが、これに対する政府の見解を伺ってみたいのであります。
  51. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいまのような経過で今回の賠償ができたのでありまするから、これに対して何か非常に反対が多くて、しかもその反対が今言われましたように主として共産圏に同情のあるような団体からの反対があるというお話でありまして、むろん北ベトナム地域というものは共産圏でありますから、そういう意味においては相当な同情的立場を持っておられる団体があるのかもしれないと思います。しかし、現在日本北ベトナムとの間の貿易関係も普通に行なわれておるのでありまして、昨年よりも若干ずつ伸びておるような状況でありますので、われわれとしては特に北ベトナムに対して何かのために反対が起こるというのはいささかおかしいと考えております。
  52. 床次徳二

    床次委員 理論的な賠償に対する批判以外に、ただいま私が述べましたような感情的と申しますか、特殊な立場からの議論も少なくないのであります。この点に関しましては、国民に対して今回の賠償について十分なる説明を要すると思うのでありますが、今回の賠償によりまして、ベトナム地域に対しましてはもとよりでありますが、アジア全域に対しましても相当よい影響を与え、わが国といたしましても、これによりまして戦争時代を脱却いたしまして、戦争賠償から新しい時代に入り得ると思うのであります。これは相当好影響を与えるものと思うのでありますが、この点に関する御所信を伺いたいと思うのであります。
  53. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本は国際社会に復帰いたしまして、そうして日本が復帰いたします基本的な平和条約に調印をいたし、その平和条約の義務を忠実に履行して参りますことは、当然国際社会に対する信用を高めることだと思います。同時にベトナム共和国賠償を通じて経済的繁栄を来たすことができますならば、当然これらのことは東南アジア全体に対して好影響を与えることはむろんだと考えております。
  54. 床次徳二

    床次委員 終わります。
  55. 岩本信行

    ○岩本委員 ちょっと関連して。この賠償をきめまする物的、人的、精神的損害ですが、百万餓死したとか、それが二十万であろうとかいうことでありますが、向こうの二億五千万ドルというのは、物的がどのくらいで人的はどのくらいという、何か根拠ある要求をしておりますかということと、日本では二十万人ぐらい餓死したかもしれぬという見積もりのほかに、物的損害というのがどんなふうに考えての処置であったかということをちょっと伺っておきたいと思います。
  56. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 従来の賠償から言いまして、向こう側にいたしましても、ある金額要求して参ります場合に、その金額内容で、これこれが物的である、これこれが人的である、これこれが精神的であるということは、特に分けていってきておりません。今回の場合においても同じでありまして、要するにこれくらい大きな物的、人的あるいは精神的被害があるんだ、しかしこの程度のことを何とか考えてくれないかというのが、現実の今日までの各賠償交渉先方側の言い分でございます。従いまして今二億五千万ドルの要求の中に、物的あるいは人的というものがどの程度にあるかということは、推測し得がたいのでございます。また日本側といたしましても、むろん当時の損害そのものを事こまかに調査いたしますことが不可能であることは、どこの場合でも同じでございます。ただこうした場合に、人的損害が多いあるいは物的損害が比較的多い、あるいは精神的苦痛が非常に多かったろうというような、いろいろな見方をすることはできます。しかし精神的苦痛に対し、それではどれだけコンペンセーションしたらいいのかという問題は、なかなか計算上は出て参りません。従ってやはり大きな見地に立ちまして、向こう側と折衝していく。そうして日本側負担能力も考え、また現地の損害状況等も、各国それぞれ比べながら、勘案して参るよりほか方法はないと思います。
  57. 岩本信行

    ○岩本委員 そうではあるけれども、たとえば被害を与えた方の日本から見て、物的の面でこうしたいというような、相当これはと思われるものを破壊したとか、特にこの場合、物的の面で損害を与えた調べはなされたか、あるいはわかっておりますか。
  58. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 政府委員から御答弁させます。
  59. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 物的面になりますと、やはり戦闘行為によるものがまず第一に考えられるわけであります。こ、れは二十年の三月に、フランス軍が当時現地部隊を合わせまして約五、六万おったのであります。三月九日に最後通牒を突きつけまして、これに応じないのでこれを武装解除いたしました。そのときに各地で戦闘を行ないました。それからその後六月ごろになりまして、主として今のホー・チミン軍の前進でありますが、これらが山岳地帯にこもってゲリラ戦をやっております。これの掃討作戦を一カ月余にわたってやっておりますが、このときは良民とゲリラ部隊の区別がつかない。そのために各地でもって部落を焼き払うというふうな損害を与えております。  それから物的損害の一番大きいのは、むしろ米軍の爆撃によるものが大きいのでありますが、これは日本軍が与えた損害でございませんから、この点は勘定いたしませんけれども、この物的損害という場合書に、これが完全に米軍のものであるか、一部日本軍が防戦したために起きた損害であるかというふうなものになりますと、なかなか区別がつかぬのでありまして、米軍のものと日本軍のものとがまざつてあるのであります。サイゴン地区においてもそういうものが多いのであります。その他大きな工場とか建物等を接収いたしております場合に、これがこわれぬまでも損害を与えております。その他道路とか橋梁とかいうふうなものも、もちろん損害を受けております。それから輸送機関も大体徴発いたしておりまして、そういう損害も与えております。一々これがどうなる、幾らというふうな計算はできませんけれども、向こうの方はそういう損害の結果としての生産の減退とか、貿易の縮小とかいうふうなものから数字を出してきております。二十億ドルという数字根拠にいたしましては大体は人的損害が十億、そういうふうな物的破壊の結果としての生産の減退、貿易の縮小というふうなものを十億というふうに、半々とみております。
  60. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 佐々木盛雄君。
  61. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 先刻来、同僚床次委員質疑を通じまして、ベトナム賠償の問題点というものが解明されたわけであります。私はもとよりこの賠償に賛成の立場に立つ者であります。ただこの賠償の問題に関します限りは、国民の貴重な税金にもつながつた問題でありますから、問題点や疑問の点、誤解の点、これを残したままではいけないと考えます。そういう意味におきまして、少しく基本的なことを承っておきたいと思うのであります。  まず第一に、私は賠償ということの本質を考えてみますと、申すまでもなくサンフランシスコ平和条約の第十四条によるものでございまするが、第十四条の規定を見ますと、日本賠償を支払う義務がある。しかしながら日本の現状は損害を与えた国に完全に賠償を払うだけの実力は敗戦国であってないのだ。こう書いてありまするが、連合国が希望するときは、生産、沈船引き揚げその他の作業における日本人の役務を提供することによって、与えた損害を修復する、こういうことをやればよろしいということが第十四条の規定であろうと私は思います。元来を言うならば、賠償というものは敗戦国日本として、日本で生産財を連合国へ提供するというようなものが本質ではない。つまり役務を提供する、それによって賠償はごかんべんを願いたいのだということが、この規定のように私は考えるわけでありますが、特にこの中にも書いてありますが、たとえば日本から品物を作って連合国へ賠償として出すときには、原材料というものを外国から日本へ入れて、それを日本が加工を加えて送り出すということが適当であるのだという趣旨が、第十四条の各所に書いてあります。かような点から考えますと、私はどこからこういうふうに賠償が変わってきたか知りませんが、だいぶ賠償形態というものが、サンフランシスコ平和条約の規定から変わってきたように思うのでありますが、この点につきまして、何もこれは今度のベトナムだけの問題でありませんで、そのことを私は深く追及するというわけではございませんが、この原則というものはいつごろからだんだん変わってきたものか、またどういう必要があってそういうふうに変わってきたものかということを、まず一つ承っておきたいと思います。
  62. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 詳しくは政府委員から御答弁させますけれども、御承知通り役務ということは純粋のサービスということだけに限定して考えませんで、サービスによるそれを含んだいわゆる生産物と解し得られるのでありまして、その条約の中にも特に原材料を日本以外のところから輸入する、ドルを使うということのないようなことになるべくやった方がいいということが書いてある事実からしても、いわゆる単純な個人のサービスということでなく、それによってでき上った生産物と解するのが適当であろうと考えるわけであります。むろんビルマ賠償以来、その点につきましてはそういう考え方のもとにこれを実行しておるわけであります。
  63. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 今の原材料を入れるのに外国為替を使う必要はないということを外務大臣は今説明されましたが、私はその逆の立場の解釈をするのですが、日本は外国為替まで使って原料を買い込んで、そうして日本で生産財を作って賠償に充てる必要はないのだ、こういう規定のように私はこの条項を解釈するのですが、条約局長はこれをいかにお考えになりますか。
  64. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの大臣の御答弁を補足申し上げますが、第十一四条は御指摘通り非常に厳格なる解釈もとることは可能であろうと考えております。むしろ起草者の意図はそのような厳格な解釈にあったのかもしれない、こういうふうに考えております。しかし実際に賠償ビルマ賠償から行ないますときに、この役務だけというふうに考えていきますと、賠償がにっちもさっちもいかなくなる。また解釈のしようによっては多少ゆとりのある広義の解釈も可能である。すなわち役務、サービスと申しますが、やはり生産財も、そのサービスが生産財に変わったものじゃなかろうか、そういうふうに考えまして、役務というところを純粋な役務だけに考えず、生産財の方面にも及ぼしていくことも広義の解釈として可能じゃなかろうか。ただここの末段に、原材料に外貨の負担をかけてはいけないということがございます。従いましてもしそれで大きな外貨の負担日本にかかるような場合は、もちろんこういうことをする必要はないと思います。しかしこれは相対的なものでありますが、外貨の負担が余りかからないというふうな程度でございますれば、生産財をもってこの賠償を十分行なっていくのが可能であるし、そのように解釈できる、こういうふうな立場賠償交渉の開始以来一貫して現在までとっております。たとえばフィリピンインドネシア賠償などもそのような立場に立ってきている次第でございます。
  65. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 十四条の解釈につきましては、ビルマ賠償をやりますときに、吉田首相が社会党の鈴木委員長の質問に対して、今の趣旨を答弁しておられるわけであります。今後の東南アジアとの経済提携を促進するためには、狭義の解釈によらず、むしろ広義の解釈をとって賠償交渉を促進したいと思います。
  66. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は吉田さんのようなそういう解釈でもけっこうだと思いまするし、実際のところを申しますと、この賠償問題を早く解決をして、そうして日本の当該地域に対する経済進出を早くしたい。こういう立場からも今度の賠償協定にわれわれは双手を上げて賛成をいたしておるようなわけであります。ただ先刻来申しましたように、賠償というものは日本が当然払わなければならぬものではあるけれども、しかしこれはできるだけ少ない方がいい。日本国民としては一文でも少ない方がいいのだ、そういう立場から考えますと、せっかくこういう規定があるのだから、この規定によって少しでも少ないように努力するのが当然のことではなかろうかと考えるわけであります。またその反面におきましては今おっしゃいまするように、少しくらいは無理をしても、早くこの問題は解決しておいて、そうして日本が経済的進出をするという、表面にはあまり出せた議論ではございませんけれども、そういうのも日本の政策としてはけっこうな考え方であると思うのです。しかしこの十四条の規定がだんだんとそういうふうに広義に解釈されて今日まで参ったのでありまするから、この問題をあらためてここで問題にしようという考えは毛頭ないのであります。しかしこういう点は何らかの機会に明らかにしておきたい、かように考えたわけであります。  ついででありまするから承っておきますが、そうすると今度は外国為替を使って原材料を入れて、それによって生産財を作り出す、たとえば発電所の機械のごとく、外国からスクラップや鉄を入れて、ドルで買って、それを作ってやるということにはなるのですか、どうですか。
  67. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 その点は、少しでも外貨負担がかかるようなことはしないというふうな厳格な解釈はとっておりません。従いまして外貨負担程度の問題でございまして、非常にその生産物の、またその生産物の中に占める外貨負担として日本負担する部分が大きいということになれば、考えなければいけませんし、そうでない限り一般的な負担能力を考えまして行なっている次第でございます。
  68. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 よくわかりましたが、それで今のそういう広義に解釈することも政策上必要であろうと思います。しかし一面基本的な線もできるだけ堅持していただきたい。この南ベトナム賠償交渉の初めから今日までの経過をたどってみますると、たとえば一九五三年には沈船引き揚げに関する中間協定の仮調印も行なわれておるわけであります。この第十四条にも書いてありまするように、沈船ということは、日本の連合国に提供すべき役務の最も代表的なものとして、ここに特に取り上げられておるわけであります。日本としては当然この沈船引き揚げ等のサービスの提供によって賠償負担を少しでも減らしていこうということに努力しなくてはならぬと思うのですが、今度のベトナム賠償の中には、沈船に関する項目が見当たらないように思うのでありますが、この条文のどこにそういうところがあるのでありましょうか。一つお教えを願いたいと思います。
  69. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今回の賠償にあたりまして、沈船引き揚げの中間賠償話し合いがあったわけであります。ところがイニシアルをいたしましたにかかわりませず、ベトナム側としてはそれを破棄いたしまして、そうして今日に至っておるわけであります。その間日本といたしましても、沈船等につきまして、そういうものを賠償の中に入れた方がいいじゃないかということも言ってきております。ただ向こう側から出されました、自分たちはこういう物がほしいのだというような順位をつけて参りました中には、沈船引き揚げということは非常に下の順位になっております。従って今回の賠償にあたりまして直接に賠償の文書の中に沈船ということは書き表わされておりません。しかし今の賠償協定の中で三千九百万ドルのうち、大体三千七百万ドルぐらいがダムに充てられるだろう、あと二百万ドルばかりがその他に充てられるだろうということで、機械センターその他となっておりますが、そういうもので、今後まだ沈船等についても何を入れるかというような問題については、実施にあたりましてさらに向こう側の希望も、またこちら側のそういうような今のお話の立場からの話も、実施協定では進めていくことになろうかと思います。
  70. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それではこういうふうに解釈すればいいのですか。今のお話によりますと、その他という中には、たとえば沈船引き揚げのごときものは含まれておるのだというふうに解釈をしておいてよろしいのでございますか。それとも全然この協定の中にはサンフランシスコ条約において例示されておりますようなこういう沈船引き揚げというようなこと、これが最も日本としては適当な賠償の方法だぞということがこれによって示されているわけですが、これが跡形もなくこの中にはないというわけですか。
  71. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろん機械工業センターその他という中には、今後賠償関係していろいろなものが出てくると思います。たとえば賠償ミッションの経費というようなものも出てくるだろうと思います。それらのものを何に充てるかというようなことは、二百万ドルの範囲内でもって大体きめていくこと、だと思います。この沈船につきましては、御承知通り先方側としては数回国際入札を自分自身で賠償とは別個にやっております。従って、そういうような状況から見まして、はたしてどの程度まで向こうがこれを強く希望してくるかはわかりませんけれども、今日までの経緯から申しまして、われわれといたしましても、できるだけそういう沈船引き揚げ等についても今後実施の部面については考慮していく、一とが適当であろう、こう考えておるわけであります。
  72. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は繰り返し申し上げますが、この賠償案には賛成なんでありますけれども、しかし賠償というものは、国民立場から言えば、できるだけ額が少なくなることを希望し、またわれわれ国会議員といたしましては努力しなければならぬと思います。また日本政府の皆さんとしても努力していただかなければならぬ。さような立場から考えますと、サンフランシンコ条約の第十四条の賠償規定の中において、連合国が日本にこういう特典を与えておるわけでありまするから、先方の希望順位ということもあるでありましょうけれども、日本としては、私は日本立場から大いにこの点は主張しなければならぬ問題だと思うのです。単に先方国の希望する順位にだけ日本が無条件に従うというのではなくして、こういう、平和条約に基づいてもちゃんと日本賠償というものの性質が書いてあるじゃないか、こういう立場に立って日本はかくかくかようなことをしたいのだという日本の主張を強く要求して、そこで話をまとめなければならぬと思うのでありますが、日本側はそういう希望は今日まであまりなさらなかったのですか。交渉の段階におきまして向こうが言わないから、希望してこないから、仕方がないからというわけで、日本側の方からこの問題を持ち出したことはなかったのでありましょうか。当然にもっけの幸いでありまするし、またこれがほんとうに日本に適したことでありますから、そういうような役務の提供、日本人の労務や技術の提供ということで、なるべく賠償をごかんべん願いたいという精神に立ってやるということが必要である。そういう外交交渉の途中においての努力というものはなかったのでございましょうか。いかがでございましょうか。
  73. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろんわれわれとしては沈船引き揚げに対して、フィリピンでもやったことでありますし、できるだけ努力をいたしてきていることは事実でございます。経過から申しますと、五二年の九月に、ベトナム政府は国際入札をいたしまして、そうして沈船引き揚げを賠償とは別個に進めたわけであります。ところが、その国際入札によりましてフランス人のローランというのに入札が落ちまして、その下請として日本人の業者が向こうにおもむきました。ところがその契約をベトナム側が不履行にいたしまして、行きました業者が非常な困難を感じたのであります。そこでその次に起こりました中間賠償にあたりましては、日本としてもぜひ沈船をやってくれということでその中間賠償交渉をいたして、そうしてイニシアルをいたしたわけであります。それによりましてそれが締結されましたので、しかもそれを日本の業者にやらせるということになって参ったのでありますから、その契約さえ向こうが履行して、仮調印したものを正式調印さえしてくれれば問題はなかったのでありまするが、それをさらに承認をいたしません。その間に日本から参りましたものは三隻ほどの船を揚げております。そうして千五百トンほどの鉄その他を持って帰っておりますが、その限りにおいては業者との契約は履行されておるのでありますけれども、その後向こう側としてさらに沈船契約、この中間賠償の契約を取りやめましてから後、さらに一九五六年十二月に再度国際入札として沈船引き揚げの問題を扱っております。向こう側としては、あくまでも民間の自由な企業の形においてこういうものをやって、賠償には乗せない、自分自身が国際入札等で人を探してやらせるというような立場をとってきております。われわれの方としては、従来のいきさつもありますし、そういう沈船引き揚げ等をなるべく賠償でやる、あるいはそういうことが適当じゃないかということは何度も話しておりますけれども、向こうとしてはそういう経過をたどっております。
  74. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 了解をいたしました。どうかこれからの交渉の段階におきましても、そういうサンフランシスコ  条約の精神にものっとったり、あるいはまたその他の点におきまして、ぜひともわが方の主張を強く外交交渉の上で打ち出していただきたいと思います。  それからこの三千九百万ドルの内訳が、三千七百ドルがダニムの発電計画であって、それからあとの二百万ドルが機械センターであるというように聞いておりまするが、発電所の方は大体わかりまするが、工業センターの内容は一体何でございますか。これもおそらくためにする宣伝であるとは思いますけれども、この工業センターで鉄砲だまを作るのだ、銃弾工場を作るのだ、兵器廠を作るのだということすら言われておるようなわけでありまするが、このことはもとよりなかろうと思いますが、この二百万ドルの工業センターの内訳をこの際明らかにしておいていただきたい。
  75. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 政府委員から御答弁させます。
  76. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 二百万ドル分の中身につきましては、まだはっきりしたものは何もきまっておりません。植村特使がおいでになったときのお話の中身を伺いますと、先方の希望というもの、それでこちらもそれならばといって、そういう考えならよかろうというふうな話し合いの中身としましては、今後ベトナムにおいていろいろな建設が行われます。それにはいろいろ機械を使う。そういう機械の修理をやる。それから車両も相当使われる。トラックとかバスとかそういうものの修繕、それからちょっとした部品くらいは作れるようにしようというふうな、その程度のことしかまだきまっておらないということでございます。まだ非常にばく然といたしております。
  77. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 そうするとこの二百万ドルということも、これこれの施設を作るにあたってこれだけ金がかかるということから、二百万ドルは出てきたのではなくして、一つかみに二百万ドルの範囲くらいの間で何かやれということでございますか。
  78. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 ただいまおっしゃる通りでございまして、一応二百万ドルの範囲内ぐらいで何かそういう必要なもの、純然たる民間のものであります。軍需とは全然関係ありません。今後どのくらい機械が入りますか、また建設が行なわれるかによりましても、どのくらいの修理工場が必要になるかということにもかかって参りましょうし、ともかくばく然として、考え方としては非常にいい考え方だということでいっておるのであります。まだ何らはっきりしたものはございません。
  79. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 そうすると、この二百万ドルの使途については、こういう設備を向こうとしては希望するとか、日本側としてはそういうのでは困る、こういうようにしなければ困るということについての金の使途について、大体工業センターということになっておるのですが、これをまたほかの目的に使ったり双方の合意が成り立てば、今後協議し得る余地は十分あるという性質の額のものでございますね。
  80. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 その通りでございまして、具体的に何をするかということは、今後この賠償協定が批准されました上で、実施に移りました際に、この相談をいたすわけであります。そのときにその方から余裕が出てくるということも十分考え得ると思います。
  81. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 今度の純賠償の内訳を見ると、生産物及び役務の供与というのでありますから、この三千九百万ドルの中には役務ということも入るわけでございますか。
  82. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 理論上は入っておるわけでありますが、今後その計画が具体的にきまって参りまして、どの分が役務になるか、どの分が生産物になるかというふうな点は今後具体的にきまるわけであります。
  83. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それでは次に、これに基づく借款協定ですね。この借款協定の総額七百五十万ドル、この内容をちょっと説明して下さい。
  84. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 これは、中身と申しましても確定いたしておるわけではございませんが、ダニムに要する資材というふうなものを向こうが買うための借款ということに一応予定しております。輸銀からの借款でありまして、それに基づきまして、ダニムの発電所建設に要するいろいろな資材を買うということになろうかと思います。
  85. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 この賠償協定の中の三千七百万ドルの発電所を作る費用、あとの借款の中から出て参りまする七百五十万ドルの額のどれを何に使って、どれを何に使うかということはあるのですか。それとも足らぬ分は借款にしたということですか、どういうことですか。
  86. 伊關佑二郎

    伊關政府委員 賠償協定の中に一応予定されております三千七百万ドルと借款の七百五十万ドルとこの両者を合わせまして、一期、二期の工事ができる、こういうことでございます。
  87. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 そうすると三千七百万ドルでもってダムを作るのであって、そしてあとの七百五十万ドルで何かそれに付属の機械を持ってくるというわけのものじゃないですね。
  88. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 そうではございません。二つを合わせまして、ダニムのを作るという見積もりに大体なっております。ですから機械をその七百五十万ドルの借款の中から持っていくとかなんとかということはきまっておりません。
  89. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 そうすると、ダニムの発電所計画そのものは三年間で完成するのですか。
  90. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 大体三年間で完成するものと予定されております。
  91. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 ダニムの発電所計画とかなんとかということについて、どのくらいな計画でいつごろできるとか、どの辺にできるのだということについて、何か御承知なんですか、そうい言うことは関知しないことなんですか。
  92. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 ちょっとその前に申し上げますが、今の完成時期は五年でございます。訂正いたします。ダニムの発電所といいますと、どこにあるということは大体わかるわけであります。
  93. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それからダニム発電所建設計画は何年計画で、初年度に何ぼ金を入れて、そうしてどのくらいのものができるかということについての大体のアウト・ライン——ここではアウト・ラインでけっこうだけれども、あなた方のところには何か詳細なプランニングがあるのですか、
  94. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 それは実施計画の際に詳細なことをきめることになっておりますので、今第一年度にどういうことをやり、第二年度にどういうことをやるというようなことはさまっておりません。
  95. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 三千七百万ドルよりも安く上がることもあるのですか。三千七百万ドルというものはもうきまってしまっているのですか。それともその発電所の必要なものだけに、たとえば三千五百万ドルで上がったら二百万ドルが余るというような、そういう性質のものではないのでしょう。
  96. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 これは三千七百万ドルくらいかかるだろうというふうに見積もられておりますが、何も三千七百万ドルに限ったものではありませんし、ことにこれは日本に対するビッドの形になりますから、安いものがビッドに成功するというわけでございますので、これは三千七百万ドルかかるか三千五百万ドルで終わるかはわからないわけであります。
  97. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 そうすると大体三千七百万ドルくらいかかるというので、あとはビッディングをやって、それに応募した日本の業者が参加して、そうして落札すれば、そこへ落ちるわけですね。そうすると、そのビッディングはだれがやるのですか。やはり日一本の政府がやるのですか、それとも向一こうから何かそういった人間が出てきて、向こう政府の責任でやるのでございますか。
  98. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 日本政府は契約の認証をするだけでございまして、ビッドをやるとかなんとかいうものは、相手国政府でございます。ベトナム政府でございます。
  99. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 大体わかりました。そうすると、入札に参加する商社というものは何か限定されておるのですか。どういうのが応募有資格者なんです。
  100. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 これは、ダムの建設の発電と申しますと、ダムの建設自体は大体請負業者だということは想像がつきますが、発電所と、やはり発電機械を持っていかなければならない。発電機械というのはもちろん一般の業者でございますから、これはほとんど資格は限定されることなく、一般の貿易業者あるいは製造業者、あるいは請負業者というものはビッドに参加するということになるだろうと考えます。
  101. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 そういう入札をやったり何かするのは、実際は合同委員会みたいなものがあって、そこで日本側と相談してやるのですか、日本と全然相談なくして、向こう政府だけが、サイゴンでやるのですか。それとも、それに参加するところの商社とかあるいは機械のメーカー等を日本側がリコメンドするというようなことがあるのですか。
  102. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 協定の中には、たとえば請負業者をとってみましても製造業者をとってみましても、向こうで、もし日本で的確な人をよく知らないという場合に、日本に推薦を求めてくる場合もございます。これは推薦を求めることがあるべしということで、推薦を求めなければならないという規定はございませんから、向こうの自由にもできるわけであります。  それからもう一つは、この条約承認されれば、実施細目に入りまして、多分合同委員会みたいなもので、向こうのミッションが出て、そこで東京で合議される、いろいろ協議することもあるかと思います。たとえばビッドをサイゴンでやろうか、東京でやろうか。あるいはサイゴンと東京で一緒にやろうかとか、そういうふうな微細な点を打ち合わせするということもあり得るわけであります。
  103. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 従ってその有資格者とか何とかということについては、まだ全然具体的なことは浮かび上がっているわけではないのでしょう。こういう点は特に疑惑などを持たれたりする大事な点でありますから、はっきりしておいてもらいたいのでありますが、そういう点もし日本政府向こうが照会を求めてきた場合にのみ日本から推薦するということであって、商社の選定その他についてはみな向こう政府がやることでありましょう。まだ今日のこの段階におきましては、何らそういうところには至っていないのでございましょう。
  104. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 現在の段階におきましては、向こうが推薦を求めてくるか、あるいはこないで向こうが勝手にやるか、あるいはどういうところからあれされるかということは全然きまっておりません。全くそれはそのときのビッドの結果によってやるということになります。それからまた日本政府が推薦するといいましても、過去の経験によりますと、日本政府が推薦いたしますとアウト・サイダーという問題が起りますから、大体それを代表する業界の組合というようなものに推薦をさせて、それを向こうに取り次ぐという形をとっておるのが例であるわけであります。
  105. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 よくとんでもないデマなどを飛ばす者がある。すでに商社をきめておるとか、メーカーに対して発電機を注文したとか、そんなことは全然ないのでございましょう。
  106. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 それは業者の間でいろいろベトナム政府の方に運動しておる者があるかもしれませんけれども、これは全然きまったことではありません。
  107. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それから経済開発計画のこの九百十万ドルというものの内訳は、何に使うかということについてはどういうことになっておるのでございますか。
  108. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 これは一応、尿素工場その他の計画というように交換公文ではなっておると思います。けれどもこれはそのときになってみないとわからないわけで、一応借款ですから、向こうの希望がありましたので尿素工場その他というのがございまして、これは全く私契約で持ってきたものを輸銀が法令の範囲内で便宜を与えるという、それだけの規定でございます。
  109. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それでは九百十万ドルというものについては別に内容があるわけではなくて、とにかく九百十万ドルだけは貸しましょう、こういうことになっているわけですね。
  110. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 これは非常に先方が尿素工場を作りたいということで、尿素工場という名前を出しておきたいというので、これには尿素製造工場の建設その他の計画となっております。しかもこれは相当たってからの問題で、業者がそういう契約を向こうと私的に結んだものを輸銀が法令の範囲内で便宜をはからってやろうというだけのことでございますから、そのときになってみないとわかりません。ただ先方は尿素工場を非常に望んでいるということだけは事実でございます。
  111. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 すると九百十万ドルの中で、尿素工場の占める割合というものはどんなものなんですか。
  112. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 これは今のところはわからないのでございますが、実際上尿素工場というものは、通常一年間に約五万トン程度生産するものでないと経済単位として成り立たないのだそうでございます。この五万トンを作りますためには約四十億か何かかかりますから、この尿素工場を向こうが望むということになれば、それ以外の余地はなくなるかもしれませんが、その点はわからないわけでございます。
  113. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 すると、どういう工場を作るとか何とかということは、コマーシャル・べースにのっとって日本の業者との間に話しを進めることであって、日本政府の関知するところではないということですか。
  114. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 この分は全くそうでございます。全く日本の業者と向こうの者とが話しを進めて輸銀に持ってくるということだけでございます。
  115. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 そうすると、経済開発借款については、別に実施委員会とか運営委員会とかというような、そういう相談する機構というものはないのですね。
  116. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 これに関しましては全くないのでございまして、ただ交換公文の中で、両政府借款の提供を関係法令の範囲内で用意しかつ促進する、ただこれだけが書いてあるだけでございます。
  117. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 その前の借款協定の方ではどうです。これも日本政府は何かそれの実施について発言する機会とか機関があるのですか。
  118. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 前の七百五十万ドルの借款につきましては、日本政府は輸出入銀行に資金を確保することができるように必要な措置をとるということがあるのでございまして、その差は、たとえば前の九百十万ドルの尿素の工場でございますと、たとい私契約ができましても、輸銀に持っていきましても、輸銀が金がないから貸せないということでそれで終わりなんでございます。ところがこの七百五十万ドルの方は、日本政府が資金を確保するというのは、輸銀にそれだけの資金を見てやらなければならぬ、輸銀としましては資金がないためにこれに応ずることができない、資金がないために断わるということはできない、そこに差があるわけでございます。
  119. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 これは一つ大臣に承っておきたいのですが、三千九百万ドルの純賠償ですが、この純賠償の内訳を見ますと、三千七百万ドルが発電所建設であって、あとの二百万ドルが工業センターであるという賠償額の使用内容から考えまして、むしろこれは借款協定とか経済開発協定というようなところへ、日本側というものは強く主張すべき筋合いのものではなかったかと思うのです。先刻来申しまするような、サンフランシスコ条約における賠償の性質というものから考えても、また日本人の立場から少しでも賠償の額を少なくしたいという考え方からいっても、むしろこの借款協定や経済開発協定、こういうことによって向こうに援助をしてやる、あるいは金を貸してやるのだ、こういうことだと国会の審議もきわめて楽なことでありますし、また日本立場からいえば、それを強硬に主張すべきだったじゃないかと思うのです。もとよりこれは主張されただろうと私は考えるわけでありますが、その点を一つ明確にしておいていただきたいと思うのです。そうでないと、世の中にはよくたまたまこちらの方で三千七百万ドルの発電所の計画があったのだ、それをコマーシャル・ベースのものを今度は賠償の中にすりかえてしまったのだというようなことを言う人があるわけですから、私が今申しますような借款とかあるいは経済開発という、そういう性質を帯びたものではなかろうかということを本質的に考えるわけでありますが、いかがでありますでしょうか。
  120. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知のように今日までの各国との賠償でも、いわゆる純賠償というものと経済協力関係のものと二つにわかれておるわけであります。むろん純賠償の問題をできるだけ低く計算して参りますことは、われわれとしても努力をしてきたわけでありますけれども、しかしすべてを経済借款というような形において賠償を解決するわけにいかぬことも御存じの通りだと思います。従いまして三千九百万ドルというものをできるだけの金額に圧縮してわれわれも交渉をいたしたつもりでありまして、そういう際において向こう側としては、インドネシアなりフィリピン賠償のごときでもそうでありますけれども、大体向こう側要求するようなものをいろいろ例示して参るわけでありまして、日本側といたしましても、こういうものは先ほど佐々木委員が言われましたように、外貨負担のかかるもの、かからぬものというようなことも関係がございますので、こういう生産物については必ずしも日本は応ぜられない場合があるのだというようなことも申して、そういうような向こうの欲している品目を削減していく場合もございます。そういうような関係から、向こうとして発電所建設したいという希望が盛んでありましたから、一応それを取り入れることは適当なことだと考えて参りましたし、ことに今回の場合には、何かそういうような永久に残って、発電によって利益を得る、しかも将来全土にわたって永久に潤いが得られるようなものができ上がりますことは、今回の賠償にあたっては大へん必要なことだと思うのであります。そういう意味におきまして、水力発電なり、機械工業センターなりというものが一応取り上げられてきておるわけであります。むろん先ほど御説明申し上げましたように、その他両国政府でもって合意するものということになっております。従って賠償ミッションの経費というようなものもこの中から捻出する場合もございましょうし、あるいは機械工業センターの計画が変わる場合もありましょうし、あるいは先ほどお話のありましたように、発電所計画がやられましても非常に安くでき上りますれば、その残余のものは他のものの。プロジェクトにさらに回し得る場合もあろうと思います。そういうようなことで、大きく考えまして、私どもはこれが一番適当であろう、こう考えたわけであります。
  121. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 よく了解をいたしました。  次に、先ほど来、これは床次委員からもお話があったことですが、今度は実際上南北二つに分かれておる、その南のベトナムとの協定を結ぶわけでありますが、この南ベトナムのゴ・ディンジェムの政権というものは暫定的な政権であるというふうに解釈をしておるのか、そうではなくて、これは永久的な政権として考えておるか、こういう点でありますが、ジュネーブ協定を強く主張する人々は——強くと申しますか、ジュネーブ協定をたてにとって、今度の南ベトナムに対する賠償支払い協定に反対する人々は、ゴ・ディンジェム政権というものは単に南の地方だけを暫定的に行政権を掌握しているにすぎないのであって、独立国というものではないのだというような立場を堅持しておられるようでありますが、その点についてはどういうふうな解釈をおとりになっておるのか。つまり暫定的な、一時的なものであって、やがてこれが統一とか合同とかいうことを前提とした、そこへいくまでの中間的な暫定的なものであるのだ、こういう考えか。そうではなくて、すでに南ベトナムというものが南北ベトナムを法律上も、事実上も支配するものであるという立場に立っておられるのか、この点を一つ明白にしておいていただきたいと思います。
  122. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ベトナム国の成立の過程、先ほども御説明申し上げましたように、フランス植民地解放をやりまして、ベトナムカンボジアラオスという三つの国を作って、そうしてベトナム国の範囲を南北を通じての範囲として認めて、これの独立を許したわけであります。その後選挙を通じまして共和国になり、ゴ・ディンジェムが大統領になったわけでありますが、それが前のベトナム国の国際的な権利、義務を全部引き継いでおります。そういう経緯から見まして、これは当然永久な全ベトナム代表する政府として認められるわけでありまして、その結果、四十九カ国が現在この国を承認しておるということに相なっておると思います。でありますからジュネーブ協定その他でいわゆる選挙が行なわれまして、はたしてゴ・ディンジェムそのものが大統領に選挙されますかどうかは別といたしまして、ベトナム国というものそのものは永久に存在していく、こういうふうに考えております。     〔「岸首相の答弁と全然違う」と呼ぶ者あり〕
  123. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それは今の藤山さんの答弁が私は正しいと思うのです。そうでなければ、暫定的なものに支払うというようなことはあり得ないわけでありますから、暫定的なものだというなれば、将来統一するのだ、統一したからは統一したものにまた払わなればならぬということになりますから、私は今の外務大臣の見解が正しいと思うのであります。そこでそういう立場からいうと、先ほど床次君のお話もあったように、将来かりにこれが統一することがあっても、統一された新しい政府、ないし統一されないままの現状においても、北の方の政府日本に向かって賠償請求権がないことは当然であるという立場に立たなければならぬ。そうすると、もし万が一現実にそういうことを請求してきた場合にはどうなさいますですか。
  124. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれは統一されました国家というものは、当然に現在のベトナム国代表している政府だと考えておりますので、今日の賠償協定がそのまま引き継がれることに相なろうと考えております。
  125. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 従って将来かりに統一された場合、ないし統一されないままでも、北の方の政府から日本賠償要求があっても、それは断固として拒否するという立場でございましょう。
  126. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 北ベトナムから要求がありましても、第一はわれわれとしてサンフランシスコ条約の調印国に対して賠償を支払う義務を背負っておるわけであります。そうして調印国というのは南ベトナムであります。南ベトナムが四十九カ国によって承認されている国家であるのでありますから、従ってそういう経緯から申しまして、北ベトナムからの賠償請求というものは請求権があろうとは思っておりませんし、われわれとして払う、またそれに応ずる義務もないと考えております。
  127. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 そういう議論から申しまして、中共と台湾との関係ですが、国民政府はすでに賠償を放棄しておるわけです。将来中共がこれを要求するようなことがもしありましたときは、もとより国民政府との間に済んでおるわけですから、これを払うという必要は毛頭ないと思うのでありますが、こういうことにも重大な関係のあることでありますし、疑問のある点でありますから、ちょっと御見解のほどを承っておきたい。
  128. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 ちょっと佐々木君に相談しますが、社会党と二時間ということに約束しましたから、あなたの発言がありましたら、引き続いて留保してけっこうですから、適当なところで打ち切っていただきたいと思います。
  129. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 わかりました。
  130. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろん台湾と今日では日華条約締結いたしまして、その際台湾としては賠償放棄をいたしております。従いましてわれわれといたしましては現在中国との関係においては賠償は放棄されておるものと、こう考えております。     〔「聞こえなかった、もう一回」と呼ぶ者あり〕
  131. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 中国との関係におきましては、賠償が放棄されているということを考えております。
  132. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 その点は外務大臣遠慮しないではっきり言って下さい。今の中共には日本に対する賠償請求権はないという立場でしょう。
  133. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 中共との関係におきましては、現在日華条約によりまして、台湾との間に話し合いがついておりますので、中共から請求されることはないと考えております。
  134. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私はこの質問によって賠償の実態が非常によくわかりましたので、これで打ち切りますが、最初に私が申し上げましたように、やはりサンフランシスコ条約の精神というものをくんで、これからの実施のときにおきましては、できるだけそういう立場も考慮しつつ実施をうまくやっていただきたいということの希望を申し述べまして、質疑を打ち切ります。
  135. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 本日はこれにて散会をいたします。     午後三時二十分散会