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1959-09-22 第32回国会 参議院 法務委員会 閉会後第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年九月二十二日(火曜日)    午前十時三十九分閉会   —————————————   委員の異動 九月七日委員植竹春彦辞任につき、 その補欠として宮澤喜一君を議長にお いて指名した。 五月三十一日委員林田正治辞任につ き、その補欠として杉原荒太君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     大川 光三君    理事            古池 信三君            後藤 義隆君            高田なほ子君            石黒 忠篤君    委員            杉原 荒太君            横山 フク君            赤松 常子君            千葉  信君            市川 房枝君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    警察庁刑事局捜    査課長     秦野  章君    警察庁保安局長 木村 行蔵君    警察庁保安局保    安課長     中村 隆則君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○派遣委員報告検察及び裁判運営等に関する調査  の件  (暴力犯罪及び少年犯罪対策に関す  る諸問題に関する件)   —————————————
  2. 大川光三

    委員長大川光三君) これより委員会を開きます。  まず、検察及び裁判運営等に関する調査を議題といたします。  初めに参考人出席要求についてお諮りをいたします。  少年犯罪対策に関しまして、来たる十月九日、第一回の参考人意見を聴取することにいたしたいと存じますが、さよう決定することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大川光三

    委員長大川光三君) 御異議ないと認めます。それでは、参考人の人選につきましては、委員長に御一任願いたいと存じます。
  4. 大川光三

    委員長大川光三君) 本日は、去る七、八月、検察及び裁判運営等に関する調査といたしまして、最高裁機構改革問題、少年犯罪対策売春防止法運用関係諸問題、めいてい犯罪対策、及び法務関係施設につきまして南九州並び北海道地区委員派遣を行なっておりまするので、その報告を聴取することにいたしたいと存じます。  それでは、まず南九州班につきましては私から、派遣委員を代表いたしまして、南九州班現地報告をいたします。  南九州班は、私と古池理事及び高田理事の三名が派遣委員となり、西村専門員及び、天久調査員を随行して、去る七月二十七日から八月一正まで一週間、熊本鹿児島の二県においては、最高裁判所機構改定少年犯罪対策めいてい犯罪対策売春防止法運用に関する諸問題等を、また宮崎県においては、最高裁判所機構改革刑務所視察を、大分県においては、少年犯罪対策めいてい犯罪対策売春防止法運用に関する問題等をそれぞれ調査して参りました。調査に当りましては、最高裁より長井総務局総務課長、同じく会江事務官が同行せられました。また現地関係者からも貴重な資料が提出される等各方面から甚大な協力にあずかりました。特に深甚の謝意を表する次第であります。  以下、調査事項について順次説明いたしまするが、時間の関係上なるべく簡単にとどめ、詳細は、報告書に譲りたいと存じます。  最高裁判所機構改革に関する問題についての現地裁判所側見解は、この問題が法曹界や国会において検討調査されるようになったのは、昭和一、十七、八年ごろ最高裁判所未済事件民刑事を合わせて約七千件の大きに達し、一件処理が著しく停滞したことが機縁となって起ったものでありまして、かかる状態を放置することのできないことは当然であり、また、各関係庁においても、改革案が考えられるのも、決して理由のないことではありませんが、しかし、一方新憲法下最高裁判所には、従来の裁判所に付与せられていなかったいろいろの権限、たとえば違憲審査権のごとき重大な権限が付与せられているのであり、最高裁判所改定は、その使命と性格に密接な関係を有し、かつ、これに影響を及ぼす点の多いことを十分に考慮し、しかも、きわめて慎重になさるべきものでありますことに最近は、最高裁判所未済事件数も、昭和三十三年末には四千件弱に減じ、この四千件のうち二千件は、上告して最高裁判所から最高裁判所に持ち込まれるまでの語録の作成、書類の整理、印刷等に四カ月かかる、いわゆる機構院手持ちでありまして、実質上の手持ちではありません。従って、事件停滞の意味における機構改革必要性はなく、それよりも、第二審を強化して下級審裁判を不服とする上訴事件を減らすことが急務であるとする意見のようであります。  検察庁側といたしましては、大体機構改革については、裁判所側見解と同点見でありますが、上告範囲法令違反まで拡張するならば、第二十八回国会に提出された政府案に同調する旨の付言がありました。  また、弁護士会側は、これに反し、国民基本人権に甚大な影響を及ぼす、第一、二群の裁判に不服があっても、時間的、経済的理由地理的事情から、上告審に持ち込むことができないことがある。すなわち一、二審の裁判に真に承服して、不服申立を中止したのであればよいが、実際は、いろいろの事情上告を思いとどまることが国民実情である、従って、最高裁判所未済事件が減ったからといって、直ちにその機構改革必要性がないとは認められない、口弁連の構想である最高裁判所裁判官増員三十名と上告範囲の拡張、すなわち上告範囲現行法上告理由法令違反をも含ましめるべきだと強調いたしておりました。  次に、項目別に説明いたしますと、違反審査権の内容及び運用あり方については、現地方々は、具体的事件を通じてのみ審判の対象となし、抽象の運用は、裁判官全員をもって構成する合議体でなすべきものであること、すなわち、現行法通り裁判性格に適合するものとし、また上告範囲裁判官数等については、裁判所及び検察庁側現行法通り、すなわち、上告範囲憲法違反判例違反等に制限すべきで、法令違反を含めないこと、また裁判行の数は、現行の十五名を限度として、増員には反対であり、弁護士会側は、上告範囲をさらに広げて、国民要望である法令違反まで含ましめ、裁判官の数は三十名に増員し、大審院制度に復元すべきであるとの反対見解が述べられました。  次に、いわゆる中二階的上告裁判所制度採用の可否及びその上告裁判所判決に対する不服申立制度あり方については、裁判所弁護士会側はその必要件を否認し、検察庁側は、上告範囲を拡張しなければならないものとすれば、事情やむを得ないものとして採用するもいたし方がないものとし、また、右上裁判所判決に対する、不服申立制度も考慮する必要がある旨の意見を開陳しておりました。  次に、少年犯罪対策に関する問題、すなわち少年年令引き下げ検事先議制等についての裁判所側見解は、少年心身ともに未発達で、矯正可能なものであるから、矯正施設及び職員充実強化をはかり、なお少年犯罪凶悪化多発化するようであれば、そのときにさらに検討すべきものであるとの意見が述べられました。これに反して取締り当局である検察庁及び警察弁護士会側では、現下の少年犯罪凶悪化多発化年長少年に多くして、これらの者は、心身ともに発育し、事理を弁識する能力も成人と何ら変るところなしとなし、さらに民法七百三十一条、児童福祉法第四条等や外国立法例をあけて、特に外国においては、十八才未満少年法適用年令としている国が多いことを理由といたしまして、年令引き下げ検事先議制採用を強く主張し、また、家庭裁判所決定に対する検察官異議中立制または抗告制採用についての意見は、ともにその採用必要性を認める向きが多かったのでありますが、ただ、熊本地方裁判所並びに同家庭裁判所は、異議申立抗告制採用については同調しておりません。鹿児島地方裁判所及び同家庭裁判所は、抗告制は、少年事件にふなれな高等裁判所裁判官の手をわずらわすことになり、不適当である旨の意見が述べられました。  次に、めいてい犯罪対策に関する問題でありますが、この問題については、各地とも関係法令に何らかの手当を加える必要があるとする意見でありました。そのめいてい犯界者類型を大略次の三類型に分類されると現地では見ております。すなわち一は、犯罪の目的で飲酒し、または犯行を容易ならしめるための飲酒をした犯罪者、二は、偶然のめいていによる犯罪者、三は、飲酒すれは犯罪を犯しやすいことを認識していながらあえて飲酒をした犯罪者に分数され、このめいてい犯罪処罰をどうするかということになりますが、一ないし三のいずれの類型に属するかによって処罰にも寛厳があり、従って、一の数型の犯罪者に対しては厳罰をもって臨む。二の類型犯罪者に対しては、場合により責任を軽減する。三の類型型の犯罪者に対しては、従来過失犯として取扱った判例があるので、右類型犯罪者に対しても、原因において事由なる行為法理論を成文化して、加罰根拠を明白にすることが望ましいこと、また、保安処分についても、収容処分のほかに保護視察的な非収容処分をも考慮する必要があることや、さらに一部には、薬物の施用による犯罪者処置についても、めいてい犯罪者同一に取り扱い、保安処分等を考慮する必要がある旨の意見が開陳されました。  次に、光市防止法運用に関する問題でありますが、まず、本法全面施行昭和三十三年四月一日から昭和三十四年三月末日までの各県の検挙状況を見ますると、熊本が百八十三件、鹿児島が四十三件、大分が百四十件であります。その内訳は、第五条違反勧誘等、第六条違反周旋等、第十一条違反場所提供、第十二条違反売春をさせる業等でありますが、その筆頭が売春婦で、売春助長行為者がそれに次いで多いのであります。その処理状況を見ますると、立法の趣旨にのっとり、売春婦処罰より保護更正の面に重点を置き、売助長行為者に対しては厳格な態度で臨まれておることがうかがわれます。次に、売春婦のひもまたは暴力団との関係については、熊本鹿児島及び大分の各県においては、特に目立つほどではないが、二、三その事例があったことを認めております。この種の事件は、立証がきわめて困難であるため、取締りにちょっとでも行き過ぎがあると、直ちに人権問題を惹起するおそれがあり、従って、取締りを容易にするため、被告人立証責任を負うように立法処置を講じてもらいたい旨の意見が開陳されました。保護更生施設の面も、各県とも大体完備されておりますが、食糧費等予算が少く、一日のカロリーを補給するのに非常に苦心しておるような実情で、その増額を要望しております。婦人更正資金もある程度活用されておりますが、いまだ十分とは認められませんでした。さらに、一時保護または婦人保護施設入寮の際、要保護女子子供を持っておる場合に、その子供生活費基準として早急に認めることや、精神薄弱者の取扱いに困却しておるので、適当な対策を樹立してもらいたい旨の要望がございました。鹿児島県では、鹿児島市塩屋町にある、元赤線地帯視察の際、元業者から次の陳情を受けました。すなわち、私たちは、転業して旅館業を経営しておりますが、分業不振のため施設の改造及び温泉旅館を計画し、温泉を掘さくしております。しかし、これらに要する資金がなく、県または国に対し貸付金貸付を希望しても、貸付条件がきびしいため、なかなか希望が達せられないことや、固定資産税売春業を営んでいた当時と現在も同額を課されているから、これらの点について是正方要望いたしておりました。  また、宮崎家庭裁判所及び同簡易裁判所は、元地方裁判所焼け残りの老朽の建物を使用いたしておりまするので、その予算を来年の裁判所予算に計上するように当局とは話し合いができておりますが、国会においても、その実現方に協力よされたい旨の要望がありました。また、大分地方裁判所においては、全国司法部職員労働組合大分文部代表者から、第一審強化に伴い裁判所一般職員の地位の向上及び人員増加を、要望し、その方法の一つとして、現在の最高裁判所事務総局の各局長課長及び各高等裁判所事務局長裁判官をもって充ててあるが、これを裁判所事務官をもってかえること、また、裁判所職員には、他行庁に例を見ないほど多種多様な試験が行われているので、この試験側々を全廃または緩和されたいこと、及び大分地方裁判所庁舎をすみやかに改築されたい旨の陳情がありましたから、申し添えておきます。  以上をもって私の報告を終ります。  次に、北海道班につきまして、石黒君から御報告をお願いいたします。
  5. 石黒忠篤

    石黒忠篤君 私から北海道班現地調査につきまして御報告を申し上げます。  この班の調査課題は、少年犯罪めいてい犯罪売春関係の三つでありますが、北海道班は、米田委員及び辻委員と私とが当ることになりまして、奥村調査員を伴い、八月十二日から八日間にわたって、函館釧路千歳及び札幌各地において調査項百に従いまして現地調査を行なって参りました。  私は、用務の関係上八月の初句を希望したのでありますが、ほかの委員方々の御都合で、先ほど申し上げましたようなことになりました。従って私の直接参加いたしましたのは函館釧路の二つだけでごめんをこうむったのであります。辻委員が貫いて御調査をして下すったのでありますが、御都合上御欠席になりましたので、はなはだ不適任であると思いますが、私から御報告申し上げることにいたします。  少年犯罪対策問題につきましては、八月十三日、十五日、十八日と、函館釧路地方裁判所及び札幌高等裁判所におきましてそれぞれ問題に関しまして調査をいたし、売春防止法運用についても、関係方面をまじえまして調査懇談をいたしました。八月十四日に函館少年刑務所及び函館少年鑑別所視察し、十七日は千歳少年院北海少年院とをそれぞれ視察をいたしました、また、売春問題調査といたしましては、十七日に千歳市をおとずれ、事情を聞き、最後に、同十八日午後北海道庁でめいてい犯罪対策問題及び売春防止法運用の両件につきまして調査懇談をいたしたのであります。そのことをこれからお話したいと思います  なお、申し添えておきますが、本調査に当りまして、最高裁事務総局家庭局の沼辺第一課長及び同総務局今江事務官が終始同行をして下さいまし、て便益をはかって下さいましたことを御報告いたしておきます。  私から御報告申し上げます第一は、少年犯罪対策に関する問題についてであります。まず、各地少年犯罪事情でございますが、函館地方でも少年犯罪の数は非常に増加しておりまして、同地ガ検察庁管内の本年度前半受理件数は、三十年度同期に比較いたしまして約三・四倍でございます。特に輪姦事件検挙率が高くございます。昨年中の凶悪犯粗暴犯は三十年の三・八倍に達したといわれております。また、釧路地方検察庁管内では、近時季節的に漁夫の集散がきわめて激しくありまして、そのために年少漁夫暴行傷害事件が続出するというありさまであります。昨年の同庁における事件受理人員が二十八年の三・五倍強でありまして、一昨年と比較いたしまして、強制わいせつ強姦事件が二倍、傷害は一・七五倍というふうに増加をいたしております。年長少年犯罪は、二十九年から三十二年までの期間に、全少年事件数の五一%ないし五五%を示しており、結局凶悪粗暴犯年長少年によって行われているというふうに、本地方では見られるのであります。  一方札幌家庭地裁判所は、年長少年非行について、管内の傾向といたしても強姦わいせつ等悪質犯、恐喝、暴行等粗悪犯一般的増加現象は認められますが、北海道警察本部の昨年一年の調査結果では、年長少年非行増加率か四%であるのに対しまして、年少少年、特に十四才から十六才未満少年が三十四%、十六才以上十八才以下の少年が約一五%と、それぞれ増加率を示しておりまして、少年非行増加は、年長少年の方よりもむしろ年少少年のそれに見ることができるということを主張しておるのであります。少年犯罪実情について、各主張の立場と基準とが同一でないために、正確な判断が困難であると認められたわけであります。  その次に、適用年令の問題について申し上げますが、十八才未満に引き下げることを主張する検察庁側意見裁判所側意見は対立をしております。さらに、検察庁側といたしましては、年令引き下げが実現しない場合は、せめて十八才以上の少年凶悪犯等に限りまして検察官先議権を認めるががよかろうという意見が有力でありました。釧路地方検察庁では、年長少年道路交通違反事件だけでも先議権を認めるべきであるという意見が強くございました。家庭裁判所決定等に対する検察官異議申立抗告制度採用というようなことにつきましては、少年側必要的付添制度条件に、裁判所は同流する意向を明らかに示しておるのであります。  さらに、少年法改正問題点といたしまして、検察庁側執行猶予判決を受けた犯罪少年には重い保護処分に付し得るよう考慮すべしという意見がございます。また、検察官意見家庭裁判所処理結果の不一致、とりわけ不開始、不処分の比率は高いとの批判に対しまして裁判所側は、一々その根拠をあげて、反対をいたしました。後者の批判に対しましては、裁判所は、治安維持への考慮は十分に払っており、自信があるということで反論をしておったのであります。また、最近の少年交通犯の激増にかんがみまして、犯罪少年雇用主をも処罰し得る両罰的規定必要性少年に対する罰金刑換刑処分制度を主張する札幌地方検察庁に対しまして、札幌家庭裁判所は、処理実情を訴えて、反対をしているのが目立ったところでございます。  次に、少年道路交通違反事件は、全国的に急激な増加を示しておりますのでありますが、函館の場合もこれと同様でありまして、本年度上半期におきまして、全交通犯の三一・五%を少年犯が示しておるのであります。その三判が無資格運転であるという現状であります。また、少年交通違反事件は、少年法適用からはずしまして、行政犯とした方がよかろうという意見各地検察庁裁判所から出ました。また、少年法二十条による検察官送致事件中に罰金刑事件を含ましめる必要があるという意見裁判所にございました。  次に、千歳少年院及び北海少年院視察は、現在の少年矯正施設がいかに、不完全なものであるが、北海道特殊性からも早急に改善強化を要するかを十分にわれわれに認識させたのでございます。  まず、千歳特別少年院でありますが、ここは、昭和二十七年旧海軍の施設を転用した関係上、少年院向き建物では全くございません。現在、同院南学寮は、部屋の仕切りのため、便所、洗面所はございません。仮設的置便器ビニール配管等を行なっている状態であります。院内の天井は、四百五十坪にわたってしっくい天井壁が落ちております。またはその憂いがある状況にあるのであります。また、石炭庫がないので、石炭は戸外にさらされておって、熱管理上、カロリー低下、流失、沈下には施すに手段がないという状態であるのであります。寒冷地であるのに、野菜の貯蔵も、火山灰上中にただ埋めているといったような方法をとっている状態でありまして、凍結、腐敗、高位購入を余儀なくされておるような状況であります。その他農機具倉庫収納舍、糞尿ため設備独居寮々舎の設備等のはなはだ不完全であること、あるいはないこと等が、同院における著しい点だと思うのであります。教官十九名で百十五名を収容しておりますが、やがて収容人員は百三十名に達するであろうと見込まれておるのであります。そこで、職員の不足から、超過勤務手当支給率は、昨年度二九・六%であって、職員宿舎の増設が強く必要を認められておるのであります。  北海少年院の方は、初等中等医療少年院として道内日取大の収容定員二百六十四名でございますが、八月十五日現在では一・四五倍、すなわち三百八十三名の過剰収容状態であります。ことに初等寮は、それを上回る二・七倍の、いわば過剰拘禁にもひとしい状態であります。しかも、中等寮等とは分離されておりません。いがぐり頭少年たちが狭い板の間に十四人も押し込められておる部屋というようなことでは、身柄拘束に終始いたしまして、矯正の実も期しがたいと痛感せられました。なお、ここでは、独居房と申しましても、三人平均の入居が普通のこととされているのであります。また、ここは昭和十七年の建築でございまして、年々建物の腐蝕及び破損がはなはだしい状態で、早急改築の必要が認められたのであります。  函館少年鑑別所では、最近の少年犯罪では、暴力と性の事件が目だっております。同所の機能発揮の職責上からも、鑑別矯正可能な初犯少年が少く、身柄拘束再犯少年が多くある状態であることを嘆いておりました。同時に、施設の完備と収容期間の延長を望んでおったのであります。この鑑別所施設も、実に手狭な、暗い、そして大ぜい一緒に入っておるというようなことで、まことに鑑別所というものにふさわしからぬひどい状態にございました。  次に、少し一般的に申し上げてみたいと思いますが、以上は、少年犯罪対策問題等に関しまして、外地の意見のあらましをただいままで申しましたが、増加実情、これに対する対策に関しましては、検察庁裁判所意口の相違が認められました。その理由は明らかでないところもございますが、司法的視野から、厳罰主義保護主義かの点は重大であるといたしましても、現在の少年犯罪増加は、心身発達日本青少年が、一般社会生活面における急激な消費文化膨張——スポーツでありますとか、セックス関係でありますとか、あるいは見る方も、スクリーンの関係でありますとかいうような面から多く影響を受けているものであることを認めざるを得ないのであります。そうであるとすれば、現行少年法が成立した当時の理想を今日もなおしばらく見守って、両親であるとか、あるいは教師、社会福祉関係者等地域社会組織的活動青少年非行総合的科学的分析の結論の上に立った少年矯正保護施設充実を強化するということが先決問題ではないかと存ぜられるのであります。  第二に、めいてい犯罪対策問題について申し述べてみたいと存じます。  北海道におきまして、めいてい犯罪と称せられる事件は、昨年度警察の一調べによりますと、刑法犯罪中六八五%を占めまして漸増の仰向にあるのであります。その七五%は粗暴犯となって現われており、地域的には、札幌方面だけでも全道の四五%の数を示しております。警察保護室設置状況も見ましたのでありますが、これはおおむね妥当と見られたのであります。全保護者の約三分の二を占める泥酔者保護も適当に行われておるように見受けたのであります。飲酒めいていによる犯罪対策につきましては、裁判所検察庁等において積極的意見の開陳は別段ございませんでした。刑事責任の有無の判断は、実際上も非常に困難があるものと感じさせられたのであります。また、刑罰以外に保安処分など何らかの矯正改善施設は必要であることを主張した意見がもっぱらであったのであります。  第二に、売春防止法運用の問題について申し上げます。  防止法の一部施行前の北海道売春業者八九十一二名と売春婦三千四百五十九名は、昨年四月以降全部転廃業をいたしたことになっておりますが、実際は、潜在売春婦として、本年六月現在で約七百名がいる、こういう見込みであるのであります。都市中心千歳、名寄、帯広等自衛隊駐屯地、小樽、函館釧路等の海港及び道内益温泉地帯売春が行われておるものと解されます。  法律施行後の発布形態といたしましては、街娼、旅館、アパート、船内においての自前売春基地接客婦売春温泉地芸妓等派出売春があげられますが、このうち自前売春が多くありまして、手口が巧妙化し、捜査に困難をもたらし、その間ひもが介在いたしまして、売春事犯の助長、婦女子の更生を阻害しておるという状況であるようでございます。  警察取締りの点からは、勧誘事犯として増加をし、昨年四月から本年六月までの総検挙人員が千百十五名のうちの六二%を示しております。このことは、検察庁の受理件数にも顕著に現われておるのであります。さらに、検察庁売春事犯処理上考慮すベき点として、越訴中の約九〇%が略式請求による罰金で処理されておるという実情があげられまして、売春の悪循環ではないかとの批判を感ぜられておるようであります。  婦人の保護更生のための施設及び活動はまだ十分とは申されないようでありまして、婦人相談所は札幌に一カ所、全道でたった一カ所であります。また、婦人保護施設として札幌市外に道立の手稲向静学園というものがあるだけで、五十名定員のところが、現在は十一名しか人っておらないで、各地北海道婦人補導院の開設が望まれておる、こういう状況であります。また、売春婦に対しまする更正資金貸付につきましては、昨年度は、資金ワクの二百二十五万円の二四・七%の貸し出ししか行われておらなかった。道庁では、当局に対して貸付手続の簡素化、便宜化等を要望しておる実情であるのであります。  終りに、性病予防対策について一言申し添えておきますが、患者数は、昨年度は三十一年度の五分の一に統計上減少しておるものの、実数を把握することは困難であります。各地でその対策に苦慮しているのであります。  売春防止法の全面的施行を契機に、売春事犯は潜伏の傾向にありまして、かえってわずかな街娼、自前売春の勧誘事犯が日立っているにすぎません。暴力売春ないしはひもの対策についても、将来考慮を払うべきであると存じますが、警察取締りも一つの転機に際会しているものと思われるのであります。それとともに、知能指数平均値が七六・七で境界線級のものが半数以上を占めている北海道売春婦、ひいては全国の転落女性に対しまする更生保護対策は、精神薄弱者対策とともに、やがて国家的に強力に推進されねばならない社会政策の重要課題の一つであると考えさせられる次第でございます。  以上をもちまして大略の御報告といたしますが、いろいろの資料を調査員の方で整理をしておりますから、何なりと御参考下さるようにお願いいたします。
  6. 大川光三

    委員長大川光三君) ありがとうございました。  ただいま派遣委員からそれぞれ報告がございましたが、これにつきまして、派遣委員及び政府当局に対し御質問のおありの方は、御発言を願います——別に御発言もなければ、派遣委員報告に関しましては、一応この程度で終了することとし、それぞれの調査事項につきましては、今後別に調査を継続することにいたしたいと存じます。
  7. 大川光三

    委員長大川光三君) この際、高田委員から、去る十一日新宿で行われました殺人事件に関連して、殺し屋なる名称その他総括的な点について発言を求めておられますので、これを許します。
  8. 高田なほ子

    高田なほ子君 けさの朝日新聞の社会面のトップ記事でありますが、十一日に、新宿の盛り場のまん中のコマ劇場の横で、ぐれん隊の殺人事件が報道されております。捜査四裸の方では、この問題についていろいろと御捜査の途中であるようでございますが、問題は、ぐれん隊の仲間に引きずり込まれて八時間後に請け負わされた仕事が殺し屋という仕事、その殺し屋という仕事で、上京して間もない青年が殺人事件を起したということは、これは容易ならざる問題であります。私は、最近のテレビ、それからいろいろのマスコミの中に、殺し屋という名前が出てくるのをしばしば拝見いたしまして、まことにこれは危険きわまりないことであるが、現実に日本にも、このような殺し屋というものが存在するということになれば、これは容易ならざる問題である。警視庁の方の意見では、最近のこの町の暴力組織の中での特筆すべき傾向である、こういう傾向に対しては緊急に対策を練りたいというような意見もここに付記されてあるわけでございますが、一体そのぐれん隊の中に殺し屋というようなものはどういうような状態でもって存在されているのか、また、その殺し屋というものに対してどういうような措置がとられておるのか、こういうような一般的な問題についてお尋ねをしておきたい。本問題がまだ捜査中であるというのでございましたならば、これは御答弁の必要はございませんが、一般的な問題としてこの捜査課の方でも重要視されておるわけでありますから、以上の質問にお答えいただきたいと思います。
  9. 秦野章

    説明員(秦野章君) ただいまお尋ねの具体的な事件としての新市の件の捜査の経過につきましては、まだ十分承知しておりませんので、一般的な問題としてお答申し上げたいと思うのですけれども、まず殺し屋という言葉なんですが、これは、実際にいわゆるやくざの世界などで、そういう言葉が使われておるかどうかというような点につきましても、まだ十分私どもわかっておりません。今お話がございましたように、テレビや映画の中とかいうもので私どもも散見することはあるのでありますけれども、問題は、そういった社会的な実態がどうなのかということなんでございますが、普通の殺人事件で、そういう例はむろんないわけでありますいわゆる教唆犯というものは、人をして殺させるのでありますけれども、いわゆる普通の教唆犯というようなものには、そういうようなものはないのであります。ただ、犯罪の実際の姿の中に、いわゆるやくざの世界などでは、自分で殺さずに、子分とかなんとかいうものに殺させるというような例はたまたまございます、これは、殺し屋という言葉が当てはまるかどうかはともかくといたしまして、犯罪の捜査の面におきましては、殺人事件があった場合に、結局そういうような背景があるかどうかという点につきましては、慎重にこれを検討いたしまして、下手人が逮捕せられましても、ほんとうの首謀者はその背後にあるというような場合は状況からわかるのでありまして、そういう場合には、徹底的に背後関係を追及するという態度をとっておるのであります。いわゆるやくざの世界などでは、ままそういう例はございますけれども、特に最近そういう例が多くなってきたというようなことは、今のところ、私どもの見たところでは、目立ったものはないように考えております。
  10. 高田なほ子

    高田なほ子君 ただいまの御答弁ですと、私どもが心配していることに対しては、かなり安心のできるような御答弁でございます。しかし、まあ最近のいろいろの世情の傾向を見ておりますと、ぐれん隊の中での殺傷事件というものがきわめて多いわけであります。しかし、下手人を逮捕し、背後関係を糾明していけば、別に大したことはないというような御答弁でありますが、どうも、現実問題と当局の方の見方が食い違っているように思うわけであります。私は、こういう事件が起ることを好みもしないし、こういう事件増加することも決して好みはしません。けれども、最近のテレビや映画には、さっき申し上げたような殺し屋の存在というものが非常に大きくクローズ・アップされている。そうして最近の非行少年の傾向は、こうしたいろいろの映画とかまたは雑誌とか、そういうものの影響を受けながら殺傷事件に転落していくようなことが往々にして見受けられるわけであります。昨年でしたか、ちょっと忘れましたが、関西の実業家を殺しにかかったのは、やっぱりうしろにある何々組の親分が教唆をして、そうして子分が、いうところの殺し屋の役に立ち回ったということも承知しておるわけでありますが、あれはまあ大きな実業家の問題でありましたから、新聞等にも出ておりますけれども、どうも最近の傾向を見ると、チンピラがうしろからそそのかされて、そういう傷害件に関係している、こういう傾向が多いのではないでしょうか。それを殺し屋という名前をつけるということについては、それはいろいろの疑問があるかもしれませんけれども、いうところの背後にある、命令をしてそういう殺傷事件に誘い込んでいく、こういうような傾向は最近ふえているのではないかという気がしてならないのです。しかし、当局はふえていないというようなお話でありますが、その点いかがなものでしょうか。重ねてお尋ねいたしたい。
  11. 秦野章

    説明員(秦野章君) やくざ、いわゆる暴力団、こういうものの関係で殺人事件が起きますというと、そういう背後関係があるかないかということは、当然私どもとしては関心を持ちまして、そういう世界の殺人は、ともすればそういう形態のものが多いのでございます。そこで、暴力団の結局取締りの問題に関連すると思うのでありますが、ただいま警察といたしましては、特に暴力団の取締りに主力を注ぎまして、全国的に取締りを徹底しておるのでございます。盛り場とか、あるいはまた、その他暴力団の活躍するような場面には、特に特別な取締り態勢をしきまして、結局この種勢力というものに徹底的な圧力を加えていくということが、この種事犯を全滅するゆえんであるというふうに考えざるを得ない。そういうことから、取締りを徹底しておるのでございます。その結果、暴力団の実勢力というものが少くともふえておるということはないのじゃなかろうか。私どもの検挙の数字は逐年増加しております。それから、実態調査というものを私どもやっておりまするが、実態調査の数は若干ふえておる。この実態調査の数がふえるという関係は、私どもの解釈といたしましては、今まで警察の視線に上っていなかった者が、警察取締りの強化、調査の強化ということで、新しく視野に入ってきたというような関係で若干ふえておる。実数がふえておるかどうかという問題については、これはまあ客観的には、そういうもの以外に数字がございませんので、実態を見て、町の状況、盛り場の状況、その他実態を見て、ある程度判断をしていくということになるのでございますけれども、一ころから見ますというと、盛り場等のいわゆる暴力状況も幾らかはよくなっているのではないかというふうに見られると思っておるのであります。しかし、お説の通り、ある種の大きなある暴力団は、取締りによって中には壊滅したものもございます。しかしながら、やっぱり新しい勢力が登場してくるという関係もございますので、これはむろん楽観もできませんし、ますます取締りを強化するという態勢でいかなければ、とうていこの種事犯というものに対する根絶を期しがたいのでありまして、この点につきましては、今後ますます取締りの態勢を固めて、結局この種勢力というものの、圧縮をはかっていく、圧迫をしていかなくちゃならないというふうに考えて、目下全国的に取締りを強化しつつあるわけでございます。
  12. 高田なほ子

    高田なほ子君 突然の質問でありましたから、いろいろ御資料等もおそろいにならないのじゃないかと思いまするが、まあ私は、警察当局の怠慢をどうだこうだという意味で質問しているわけじゃないのです。ただ、殺し屋というものが、どうも最近のいろいろの映画とかテレビの中に、必ず毎日一つぐらい出てくるのですね。この殺し屋というものの存在、そこに持ってきて、この最近のいろいろの組織されたチンピラぐれん隊というやつ、そういうものの中にもこういう殺し屋というものが出てきているものとすれば、まことにこれは恐怖に価することであるので、そういう意味から、殺し屋の実態というものを実は伺っているわけなんです。私は、自分の住所が池袋でありますが、池袋の西口あたりは、ずいぶん警察当局も重要視されておるようでありますが、なかなかどうして、付近の純真な若い人、それから婦人、こういう者は、最近でも、池袋の西口へは近寄るな、こういうような合言葉もあるくらいに、このチンピラぐれん隊が闊歩している。相当これは警察も力を入れている所らしいのですが、そういう目をくぐって、やはり純良な市民がおそれなければならないような現実が白昼、行われているとするならば、ここにある朝日の、この殺し屋というような存在もこの陰にあるのじゃないか。非常に危険なので、こういう質問をしておるわけでありますが、当局の方では、そういう殺し屋が現在ないのだとこういうことであれば、これはまた、われわれ大いに安心していいわけでありますが、最近の傾向については、当局の力でも、こういうことを必ずしも杞憂であるというふうには感じておられないわけでありますから、一つ一そう、こういう殺し屋などの出現、殺し屋というような名前が使われるような現実、こういうものについては、徹底的に一つ御捜査願ってチンピラばかり追わないで、このうしろに教唆扇動する、こういう者をやっぱり徹底的に追っていかなければ、純真な、上京してから間もない、組織の中に引き込まれてから八時間後に大それた殺人を犯すというようなことになるわけですから、背後にある大物、こういうものに対して徹底的に一つ取締りをされることを強く要望するわけであります。  質問は、以上で終ります。   —————————————
  13. 大川光三

    委員長大川光三君) 次に、先般赤松委員から御発言がございました飛び出しナイフの規制問題につきまして、この際調査をいたしたいと存じます。  本日は、関係当局から、説明員といたしまして、法務省矯正局総務課長佐藤昌之氏、同じく刑事検事佐藤佐藤治右衛門氏、警察庁保安局長木村行蔵氏、同じく保安局防犯課長町田充氏、同じく刑事局捜査課長秦野章氏、保安局保安課長中村隆則氏の方々が出席されております。  御質疑のある方は御発言下さい。
  14. 赤松常子

    ○赤松常子君 この前の法務委員会で、ちょっとこのことについてお尋ねしたのでございますけれども、時間もございませんでしたし、また、関係当局の方が見えなかったものですから、きょうに持ちこされたわけでございます。  最近の少年犯罪にからみまして必ずと言っていいくらい、飛び出しナイフが用いられている。これは、かつて、三十国会でございましたが、当時「暴力教室」という映画がアメリカから入りまして、この影響が非常に日本の青少年に、悪く波紋を描いて急に飛び出しナイフが社会の話題になったわけでございましたことは、御承知の通りだと思います。そのとき、これはやはり国会で取り上げまして、これは地方行政委員会の問題でもございますので、一応、ちょっとむずかしい名前の法律でございましたが、刀剣類取締法の一部改正、これが俎上に上ったのでございますけれども、要するに、私どもの立場としては、全面的に製造も禁止したい。販売も禁止したい。それに、山ってこれを処理することが根を絶つわけですから、こういうことを中心に論議したのでございますけれども、御承知のように、単に刃渡り五・五センチ以上のものを所持してはならない、こういう非常にゆるやかな結論になったものでございますが、必ずしも犯罪はそれ以上のものでなければならないというわけではない、それ以下のものが最近非常に犯罪に用いられていることは、御承知の通りと思います。で、特に最近は公安委員会、東京都及びそれ以外の府県の公安委員会からも、この飛び出しナイフの全面製造及び販売禁止を要望されているのでございますが、当局としては、早急にこの問題にどう取り組もうとしていらっしゃるのか、お伺いしたいと思っております。
  15. 木村行蔵

    説明員(木村行蔵君) お答申し上げます。  ただいまお尋ねの件につきましては、すでにいろいろな事情について十分に御案内であることと承知いたしております。この銃砲刀剣類等所持取締令を改正しましたのが三十年の十月であります。そのときに、事は私たちの方では、原案といたしましては、飛び出しナイフ、それの刃渡りの長さいかんにかかわらず、一応全面所持禁止という形で原案を出したわけでございます。しかし、まあいろいろ審議の過程におきまして、参議院におかれまして、現物を取り寄せまして——長さのいろいろに違った現物を取り寄せまして、検討され、判断されまして、一応五・五センチをこえるもの、刃渡り五・五センチをこえるものについては所持を禁止と、こういうふうな内容に変りまして、修正して改正案が通りました。これは、一つの問題は、自民党と社会党両党におかれまして自社共同で修正案を出された事情等もございまするが、これは、国会のそういう重要な一つの決定であれます。私たちの庁も一応は——一応といいますか、十分にその自社両党の一致した修正案というものの当時の事情については、十分に尊重申し上げなきゃならぬかと思います。それが一つの問題でございます。  それからもう一つは、確かに飛び出しナイフのうちで五・五センチをこえないもの、改正後の現行法で所持禁止になっていないもの、これが相当使われております。大体の状況を申し上げますと、こえるものが一とすれば、こえないものが二くらいの割合で使われております。そういう状況でありますので、まあ全面禁止と、長さのいかんにかかわらず全面禁止ということも、一つの大きな踏み出しではないかと思いますけれども、ただいま申し上げたような事情と、それからもう一つは、飛び出しナイフ自体が非常に便利なものでありまして、社会的効用も全然ないとも申せない点もあります。また業者の製造のいわゆる事業の自由といいますか、あるいはその発展といいますか、そういうものも考えなければなりません。万般いろいろな状況を勘案して現在としましては、警察庁におきましては、調査中というのが実態でありまして、どっちに踏み切るかということはまだ未決定であります。  また、先ほど各県の公安委員会、おもに大都市の公安委員会、大府県の公安委員会から、飛び出しナイフの長さいかんにかかわらず全商的禁止をしてもらいたいと、こういう要望が正式に出ておることは事実でございます。そういう事実ありますので、いろいろ慎重に検討しておるというのが事実でございます。
  16. 赤松常子

    ○赤松常子君 もちろん、今社会的にいろいろこの必要性のある職場も確かにございます。それも、御承知のように、電線の修理及び敷設の場合とか、あるいは船に乗っていらっしゃる方々も、やはりこの飛び出しナイフを使う業務が非常にあるということ、承知をいたしておりますけれども、これも、それは必要でございましょうけれもど、そう一般性はないと私ども考えるわけでございまして、だからといって、社会的にそれが販売を許される理由にはならないと思うのです。そういう特殊の業務の方には、そういうルートで渡ればいいのであって、またそれは、何と申しましょうか、だからといって、一般の市販に出ていいという理由にはならないと思うのでございます。  それから、あなたのおっしゃるその業者の業務、職業の自由、選択の自由、これもさることながら、やはりこういう社会の犯罪の大きな原因をなしている職業というものは、いつも言われておりますように、やはり公益の立場から、公安の立場から、非常に検討されていかなければいけないということ、私ども、ほかの場合にもたくさんあることで、現に売春防止法のときなどに、業者の職業が禁止されるというようなこともあり得ることなんですから、単にそういうことでこういうことが許されていいかどうか、もっと検討したいと思っております。  それからまた、よくいわれることは、輸出をされていて外貨の獲得に相当貢献しているからという理由もよく業者がおっしゃいます。調べてみますと、なるほど一億円くらいの外貨は、これによって入っていることもわかっておりますけれども、これは私、また立場をかえて申しますと、その輸出先は、多くアメリカだということも聞いております。そうすると、アメリカにこういう少年犯罪の原因を作る飛び出しナイフが日本から入っていくということが、向うの社会及び向うの母親たちがどう思っておるかということ、私どもは、ただ外貨獲得がこれでできるからいいということが、国際的に見て私どもは許されないのじゃないか、こういういろいろな理由も、今私ども考えているわけでございますが、そういう、悪になる種を外国にまで売り出すということも、私はもっと考えてみていいように思う。こういうことから少し当局としてもお考え下さって、この問題に強い態度で臨んでいただきたいと思います。それは、さまざまな立場もございましょうけれども、特に少年犯罪の激増が非常に憂えられている、それにこれが使われている、こういう現状に立って、もっと強くこれの研究を進めて下さって、せめて今度の通常国会には、今申します全面禁止の線を打ち出していただけるようにならないものかどうか、もう一度お尋ねしたいと思います。
  17. 木村行蔵

    説明員(木村行蔵君) 先ほど申し上げましたように、慎重に検討いたしておりまして、今のところ全面禁止に踏み切るかどうかというところまで、実際率直に申し上げて、まだ私たちの方では腹がきまっておりません。ことに通常国会までという時期を限られますと、よけいそれは申し上げにくいのでございます。ただ、こういう事情もありまして、少し数字を申し上げると、おわかりかと思いますが、殺人とかあるいは傷害、恐喝、いわゆる凶悪犯粗暴犯、これが昭和三十一年中に十二万六千六百四十一件発生しております。その中で、飛び出しナイフも含めて、日本刀以下刃物類を使ったのが、用いてそれを敢行いたしましたのが一万一千六百七件、約九%、その中で、刃物類の中で、一番たくさん犯罪に、こういう粗暴、凶悪犯に使われておりますものがあいくちでございます。これが約一一%、一割一分くらい、飛び出しナイフは約九%、それから、刃物類を全然用いないで、無所持で、何も凶器を用いないで殺人あるいは粗暴犯を敢行した、これが九万五千、五百七十件、まあ大部分が凶器を用いずして人を殺している。こういう事情もありますので、ことにあいくちの場合は、これは長さのいかんにかかわらず全面所持禁止、それでも一番たくさん使われているという事情もありますので、いろいろな事情を慎重に検討しておるのであります。お尋ねの件について、全面禁止の改正をするかどうかというふうなお尋ねに対しましては、現在検討を進めておるということ以上には申し上げられないということを、まことに印しわけないと思いますけれども、そういう状況であります。
  18. 赤松常子

    ○赤松常子君 それは、いろいろな立場の相違で、意見のあることはよくわかりますけれども、せんだって、私警視庁に参りまして、青少年課を訪問して、最近の不良玩具の一応集められた実情を拝見いたしました。ほんとうに少年の想像性及び好奇心へは興味でもって、自分でいろいろ新しい玩具を作っていたものもそこに陳列されていたのです。やはりそれに一番少年の想像性を刺激いたしておりますものが飛び出しナイフであったようでございまして何か、示唆を受け、一つやってやろうという気持が、非常に危険な玩具を自分自身で作っている。その影響を与えているものが飛び出しナイフであるというような私は感じを受けたのでありまして、現われているものすら危険であるのに、またそれを助長するような影響を持っているこの飛び出しナイフに関しては、ただ一般、私ども見のがしていい理由にならない。もっときびしくこれに対する考え方をもって、子供をそういう危険な玩具に近づかせないように、あるいは犯罪を少しでも防止するようにしたいと思うのでございまして、ただできているものを問題にするより、もっと広く、これから示唆を受けて子供が不良化に傾いていくということも強く考えたいと思うのでございます。今おっしゃるように、通常国会まではとても考えていないというお言葉、私、大へん失望したのでございます。せんだって、ある婦人団体から、この飛び出しナイフの禁止の陳情書が参りましたのを、法務大臣に直接お届けしたときに、法務大臣が、考えてみよう、社会悪の根源になる、こういうことに対し、もっときびしく考えてみようとおっしゃって下さっておりますが、今、当局のお考えが非常に私たよりなく、失望いたしておりますが、もっとこれに対して、プラス、マイナスの点から御考慮いただきたいと、強く、要望いたしておく次第でございます。
  19. 高田なほ子

    高田なほ子君 当局の今の御意見を聞いて、確かに赤松先生と同じような感じを私持つわけです。  ご承知でありましょうが、今の御説明のように、私ども社会党に属している者は全面禁止を主張しているので、当局の方では、当時の法制定の場合の社会党の態度というものを指摘されておるようでありますが、当時と、それから脱会の少年犯罪の傾向、非行少年の傾向、そういうものが毎年のように変ってきており、やはり母親たちからは、この飛び出しナイフの危険性というものが強く実は指摘されてきている。でありますから、この状況というものは、今そういうふうに、法制定の当時よりはずっと変ってきておるというようなことが重要な問題になっているわけですから、当局の方でも十分にこれは研究をして、全面禁止の方向に行かれることが望ましい。しかし私は、まあこれを必ずしも法を改正なさらなくとも、何か行政措置でもって、この危険を防いでいこうというような熱意があれば、できないわけはないのじゃないか。先ほど粗暴犯の中で、ナイフその他の刃物による殺人、傷害、脅迫事件が数字的にあげられておりますが、十二万六千六百四十一件のうち、ナイフその他のものでの傷害事件が一万一千六七件というふうにあげられて、この中での飛び出しナイフを使ったものは九%であるというような数字があげられているわけです。しかし、この九%という数字は、当局の方に大きな事件として届出があったもの、また、警察当局がこれにいろいろの指導を加えたもの、そういうものが九%である。単に中指を傷つけたとか、それからほっぺたにかすり傷を負ったというようなことは、親同士が事を荒立てないで、話し合いでもって、事件事件としないでおさめておるので、ここに出ている飛び出しナイフ使用による障害事件が九%だから、この飛び出しナイフを全面禁止することについては時期尚早である、またはその他の理由で、次の国会にはこれは出せないというようなことを言っておられますが、現状はもっともっと、やはり母親の身になって、この全面禁止の方向に行くような行政措置がされるべきではないか。念のためお尋ねしておきますが、銃砲刀剣類等所持取締法の第四章の雑則の中で「あいくち類似の刃物の携帯の禁止」、この二十二条では、「何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、あいくちに類似する刃物を拐帯してはならない。」現状の飛び出しナイフの危機がすべての母親によって心配をされているときに、この二十二条を少し拡大解釈すれば、「あいくちに類似する刃物を携帯してはならない。」こういうような条項を拡大適用しても、行政措置で相当の成果はあげられるのではないかというような感じを持つわけなんです。私は専門家でありませんから、「あいくちに類似する刃物」という、その範疇については、これはわかりませんですけれども、やはりこれは、あくまでもこの法の精神は、危険なものを持っている人に対しての危険を他に及ぼさないための収締り法でありますから、当然この二十二条の法を解釈して、そして行政措置でもってこれがいろいろの有効な段がとられないとは私考えられないわけなんです。この点について御意見を伺わしていただきたいと思います。
  20. 木村行蔵

    説明員(木村行蔵君) いわゆる法で定めた条文については、なるべく拡張解釈することは、少し行き過ぎになりますので、したくありませんけれども、ただ、行政指導というのがありまして、事実上いろいろ指導して、また向うの方で承諾する、自発的に提出させる、こういうことで、五・五センチ以下のもの、あるいはあいくちに類するもので、解釈上入らぬものもあるかもしれませんが、そういうものを出させるという行政指導はだいぶやっております。
  21. 中村隆則

    説明員(中村隆則君) 私からお答え申しげます。  法の一条で、あいくちは全面的に禁止されておるわけでございます。従って、この関係からしまして、あいくち類似のものは、類似の形をしておるものはやはりいかぬという考え方で第二十二条は規定されておる、こう考えております。
  22. 高田なほ子

    高田なほ子君 大へんお役所的な答弁で、残念でありますが、これは、あいくちというのは、法でもって禁止していることはここに書いてあるのですが、ここの雑則の中に、さらに「あいくち類似の刃物の携帯の禁止」、「あいくちに類似する刃物を携帯してはならない。」大へんこれは、法の精神をこの条文でもって一そう徹底させるためにこういうような条文が入れられたのだと私解釈するわけです。現行でもってその飛び出しナイフの刃渡り五・五センチ以下のものは、これは法に抵触しないわけですが、四五センチでも、開けばこれはあいくちに類似する刃物になると、これは解釈できないこともないわけだ。でありますから、これは、取り締るというのは、その反面からいうと、保護するためにこういう取締りをしておるのでありますから、保護の面が必要であるといった場合には、この取締りの解釈は、拡大解釈されても一向これは差しつかえないのじゃないか。要するに私たちは、子供が、遊び道具に法に抵触しない飛び出しナイフを持って歩いている、これがたまたま最近傷害の傾向が多くなったために、母親が心配して、当局にも陳情しているというありさまでありますから、法が五・五センチ以下のものは禁止していないからといっても、二十二条を適用すれば、当然保護するというような建前で徹底させることができるのじゃないかというような気がするわけです。この十条では、「所持の態様についての制限」がここに書かれておりますが、たとえば銃砲でも、安全装置をしなければならない、おおいをかぶせなければならない、または容器に入れておかなければならないというふうに、大へん親切な取締りの規定があるわけです。これは、とりもなおさず無事の人に殺傷を、迷惑をかけないために、このような親切なこまかい取締り規定があるわけでありますから、法は、五・五センチ以下のものを合法であると評しても、現行がそれにそぐわないということになってくれば、やはりこの法律の精神というものは十分に尊重せられて、しかるべき行政措置をもってしても、この危険にさらされているものを救ってやるというような建前をとっていただくことが望ましいのではないか、このように考えます。  再度御答弁をわずらわしたいことは、「あいくち類似の刃物の携帯の禁止」、「類似する刃物」、こういうように、飛び出しナイフの法定外のものを認めることは不可能であるかどうか、この点についての御意見を再度伺っておきたい。
  23. 中村隆則

    説明員(中村隆則君) 今、いろいろと御意見を承わったわけでありますが、第二条の関係でいいますと、五・五センチ以下の飛び出しナイフは差しつかえないと、こうはっきり書いてございます。現任の飛び出しナイフは、五・五センチ以下の規格を守っておるわけでございます。それで、二十二条との関連においてこれをどういうようにやるということは、拡大解釈はできるだけ慎しみたいというような気持からしまして、今のままの法では困難であろうと思います。
  24. 高田なほ子

    高田なほ子君 法解釈はその通りで、やたらに法は拡大解釈されては、これは困るのですけれども、現状のありさま、そのありさまから、多くの民衆がこうしてもらいたくないというようなことがあれば、しかるべくやはり行政的な指導の面というものは強化されていいんじゃないかという、そういう意見なんです。だから、何もこの二十二条を適用するとか、二条がどうであるとかいうようなことを表面に打ち出す必要はないけれども、しいて言うならば、この二十二条でもこのような親切な規定があるのだから、五・五センチ以下の飛び出しナイフについても、しかるべく指導の面が強化されるようにということを要望する立場に立っておるわけです。そういうことはできないとおっしゃるのですか。
  25. 中村隆則

    説明員(中村隆則君) お言葉を返すようでございますが、もしその飛び出しナイフがいけない、使用を禁止したいということが決定されるならば、やはりそれは、明確な法律の改正の措置等、そういったことによって国民の指導をすべきではなかろうかと、こう考えますので、二十二条の解釈によって、現在いいとなっているところの飛び出しナイフについて、いろいろな指導をしていくということは避けたいと考えております。
  26. 高田なほ子

    高田なほ子君 じゃ、法律改正をしなければ、現在いろいろ問題の起っている飛び出しナイフについては、当局はもうノー・タッチで行くというような態度ですか。それとも、現状の子供たちの間に危険であると母親が騒いでいる、この事態に対して、やはり幅のある指導をされていこうとするのでありますか。私は、当局は、人をふん縛るばかりが能じゃないと思うのです。やはり保護の面についても、相当に幅広い解釈をしながら、一般の国民要望に沿っていくという態度こそ望ましいのです。法律改正がないのだからそれができないというようなことは、これはちょっと、私としては合点のいかない問題なんです。まあお立場上そうおっしゃるのかもしれませんが、これは大臣に伺うことにして、少しあたたかく心がまえをしてもらいたいと思うのです。法律改正をしなければ何もできないというような言い分は、ちょっと私は納得はいきません。
  27. 木村行蔵

    説明員(木村行蔵君) 高田委員のお気持は非常によくわかるのでありますが、現在少年犯罪というものは、一番多いのは殺人、それから強盗というような凶悪犯、それから粗暴犯が目立ってふえております。この少年犯罪だけでなしに、犯罪を犯す以前の御承知のような虞犯少年、これは、警察関係だけでも、七十二万人昨年タッチしております。それらの犯罪以前の問題としては、おそらく五・五センチ未満の飛び出しナイフについても、いわゆる補導の形においてそれを供出させる、あるいは持たせない、こういうことは、単に法律だけでなしにやり得る手はあると思いますので、できるだけそれは活用したいと思いますが、ただ、向うは、言うことを聞かない、法律では所持禁止にしておりませんから、ここいらに一応の限界はあります。しかし、まあお気持のほどはよくわかりますので、ことに親にとりましては、子供が殺人をしたり、人を傷つけたりということは大へんな問題ですから、できるだけこの数多い、七、八十万の虞犯少年の中には、凶器所持というのが一番多いのですそれから、先ほどもちょっとお話が出ましたけれども、不良団加盟というのが実に多いのです。そういう問題について、やはり補導の過程において、今おっしゃるような趣旨はできるだけ行政指導としてやりたい、いわゆる強制でなしに、補導としてできるだけ進めていくつもりであります
  28. 赤松常子

    ○赤松常子君 先ほどから伺いまして、私大へん失望している次第でございますが、いろいろこれと取っ組んでみてまだ材料がそろわないから結論が出ないという立場なのでしょうか。それとも、いろいろ研究なさってみて何かある点にこだわって、ひっかかりがあって、それでたたずんでいらっしゃる、それから進まないという状態なのでしょうか。何かもっと熱意を持ってほしいと思うのであります。その点について、何にこだわっていらっしゃるのか。あるいは十分調査ができていないのか。やがてはやろうと思っておいでになるのか。われわれのこの全面禁止について、ちょっと当局のそこの点をもう少しはっきり伺いたいと思っております。
  29. 木村行蔵

    説明員(木村行蔵君) 全面禁止いたすについての材料は、今その可否について、最近の情勢に応じて調査中であります。これは、まだ十分にいろいろな角度から調査しなければなりませんので、今、赤松さんからおっしゃいましたような、完全な調査ができ上っていないというのが一つの。ポイントであります。それから、もう一つの。ポイントは、率直に申し上げまして、三十年の参議院におきまして、自社両党の共同一致で修正されているわけでございます。これが大きな問題であります。これは御賢察いただきたいと思います。
  30. 赤松常子

    ○赤松常子君 えらいそれにこだわっていらっしやいますが、その際、法務委員会では、全面禁止を主張したわけなんでありますけれども、地方行政委員会の立場で、何かそのときに、業者の主張が少し取り入れられ過ぎたということが突如だろうと思うのであります。今、高田委員がおっしゃいましたように、当時とはだいぶ違っておりますし、外貨獲得、業者がそれにおもにこだわって製造のワクをはずしてもらいたいという主張がそのときあったように聞いているのであります。そういうことも、今申し上げますように、外国にまで悪の種を輸出するということは、決して日本としては名誉ではないと思うのでありますし、私どもも、党内において一そうそういう点を広げてよく意見もまとめてみたいと思っておっておりますけれども、それだけにこだわっているということも、今の状態で適当でないと思うのであります。もっと、そちらさんでも、持たない方がいいとは思っておいでになると思うのであって、犯罪を助長しないようにしてもらいたい。これは皆思っていることだと思うのであります。問題は、目的に向かってそれぞれの立場で進んでいくようにしたいと思っております。もっとこう、熱意を持ってこの問題と取っ組んで、早く結論を出していただきたいと思って、お願いしておきます。
  31. 古池信三

    古池信三君 先ほど来、同僚の委員からいろいろお話がございましたが、私も、殺人あるいは傷害というような凶悪犯罪の防止という点につきましては全く同感です。これは、母親というような立場からのみではなく、国民全般として、少しでもこういう凶悪犯というものは少くし、われわれが平和な、平穏な生活を楽しめるようにしていかなくちゃならぬということについては、毛頭これは異論がないことであります。重大な関心を持っているわけです。ただ問題は、具体的に、しからばどうしたら犯罪の防止ができるかということでありまして、これは、非常に私はむずかしい問題だろうと思います。先ほど政府の当局から御説明があったように、殺人、傷害というようなことに使われる凶器としては、単に飛び出しナイフばかりじゃなしに、あるいはあいくちであるとか、その他出刃ぼうちょう、刺身ぼうちょう、あるいは日本刀も使われていることがありましょう。従って、そういうようなものを総合して犯罪の予防対策というものは立てるべきでなかろうかと、こう思うわけであります。しかも、むずかしいことは、そういうような刃物類というものは、一方において、悪くするとそういう凶器として使われる場合があると同時に、一方においては、日常生活の上において必須のものとして使われる場合も多いのでありますから、単に犯罪行為に用いられている点だけを考えて、一般にわれわれが利便を受けて使っているという面を、これも等閑に付するわけにはいかない。その辺の調整をどうしていくかということが問題の中心であろうと、私はそう考えるわけです。そこで、この銃砲刀剣類等所持取締法という法律があって、これには非常に詳細な規定がなされておるわけてすけれども、たとえば第三条において、各号に該当する場合以外は、銃砲または刀剣類を所持してはならぬという規定があるのにかかわらず、現在相当所持しておるやに思えるのですが、一体これに対する取締りというものは、ほんとうに厳格になされておるのか。あるいはそういう取締りに抜けたところというか、緩慢なところがあるのじゃないかというような気もいたすのですが、そういう点についてはどうでありましようか。一つ御説明をいただきたいと思います。
  32. 木村行蔵

    説明員(木村行蔵君) この銃砲刀剣類の所持禁止に違反する携帯あるいは使用につきましては、刑事局とも関係がありますが、暴力団の検挙あるいは少年犯罪の捜査、補導の場合、それはもちろん犯罪物件としては全部領置して取り上げますが、それ以上についても、事件が起った、犯罪にからんででなしに、銃砲刀剣類に関する供出の大きな運動をたびたび展開しまして、それを供出させると、日本刀、あいくち、あるいは飛び出しナイフというようなものを、相当大がかりにたびたびやっておりまして、むしろ非常な熱意を持ってやっておるのが実情であります。そういう状況でございます。
  33. 古池信三

    古池信三君 この法律によりますと、ずっと罰則がついておるようでありますが、犯罪が起って、その犯罪に使用された凶器というものが没収されるということは、これはもう当然なことだと思うのですが、そういう犯罪が何も起らないで、ただこの法律に違反して所持しておった、あるいは携帯しておったというような場合に、それを取り上げるとか、あるいは法に従って処分するというような事例は相当にあるのかどうか。そういうような数字的な何か資料があったら、示していただきたい。
  34. 木村行蔵

    説明員(木村行蔵君) 今御質問の点で、犯罰と関連なしに、ただ所持している場合、これはもちろん法律違反でございますが、これについて所持だけで取締りをし、それを取り上げている場合が相当あると思いますが、遺憾ながら手元に資料がありませんので、また後日提出いたしたいと思います
  35. 古池信三

    古池信三君 犯罪が起ってからその使用された凶器を取り上げるというだけでは、これはもうすでにおそいのであってむしろそれ以前に、たとえば十五センチ以上の刀剣あるいはあいくちというようなものは、これは、もういつそれが犯罪に使われるかわからないという、きわめて危険な状態にあるものと認められるわけですから、これに対する法の適用による取締りをよほど厳重にやれば、私は、いろいろ皆さんが心配されておるようなことがよほど防止できるのじゃないかというように思うのです。この点については、一つ一そうの取締りの励行をお願いしたいと思います。それから、そういうわけでありますから、ただこの際飛び出しナイフだけを取りしげてしかも、刃渡りを議論するということは、むしろこれは枝葉末節じゃないかと、はなはだ、言い方は不穏当ですけれども、もっと大きな立場で、厳重に取り締る必要があるのじゃないかということを私は主張したいと思います。  そこで、刃渡り五・五センチということは、すでに法律にも規定されておりまするし、先年の法改正の際にも、いろいろ慎重審議されてこういうふうになったのだろうと思うのです。そこで私は、もう一つお尋ねしたいのは、飛び出しナイフを使って犯罪が行われた今までの数年間の例によって、五・五センチ以下の飛び出しナイフを使った場合がどのくらいあって、それから、五・五センチをこえる飛び出しサイフを使った犯罪がどのくらいあったかというような、数字的な資料があるかどうかということも、一つお尋ねをしたいと思うのであります。
  36. 木村行蔵

    説明員(木村行蔵君) ただいま手元に、三十三年中における、一番最近の状況でございますが、これの飛び出しナイフ使用状況犯罪そのほかの条件について申し上げますと、三十三年中に事件発生件数の中で、飛び出しナイフを供用したものが約千二百件、事件発生の件数として申しあげると千二百件その中で、発生しましても検挙に至らないものもありますので、検挙に至ったものが約九百七十七件、約千件ばかり検挙になっておりますが、その検挙の中で、たとえば一件で、一人で何回か飛び出しナイフを使って事件を起している場合もありますので、その検挙になった件数のうちで、飛び出しナイフを使用したナイフの数、物件数、これが九百十七件でございます。この九百十七件のうちで、刃渡り五・五センチメートルをこえるものが三百九件、これが全体の約三四%、九百十七件の一四%に当ります。それから問題の五・五センチメートル未満のもの、それは六百八件、物件数六百八件で約六六%でございます。そういう状況で、先ほど高田委員から御質問のありましたことに答えまして、一対二というふうに申しあげましたのは、大体そういう状況でございます。
  37. 古池信三

    古池信三君 三十三年度の使用はただいま伺いましたが、それで、その飛び出しナイフによる傷害の度合いとか、そういうことはわかりますか。たとえば、殺人をしたか、あるいは相当な重傷を与えたとかというようなことですね。
  38. 木村行蔵

    説明員(木村行蔵君) 傷害の度合いは今のところございませんけれども、大体千二百件の内訳を申し上げますと、凶悪の度合いといいますか、こういうものは御推察いただけるかと思いますけれども、一番悪質な殺人、これが六十二件発生しております。その中で使用された飛び出しナイフの数が五十七個、物件として五十七でございます。それから、比較的多いと思われて悪質なものは強盗、普通の強盗でございますが、これが百九十六でございます。相当の数になっております。その百九十六件の発生件数のうちで、件数に関連しまして、物件のナイフの数は百二十二でございます。それから強盗傷人というのがございますが、これはやはり現実にけがをしておる、これが五十七件、発生件数のうちで、物件数が四十一ございます。それから強姦というのがございます。これは、発生件数四十二件のうちで物件数が、三十。それから傷害、まあ殺人とか強盗とか強姦ではありませんで、傷害、けんかとかその他の関係、これが四百七十八件でございまして、物件数は四百三十五。それから恐喝、これが三百六十四件の発生件数で、物件数が二百二十六であります。一番よく使われておるのは傷害、それから恐喝、その次に強盗あるいは強盗傷人、こういうふうな状況であります。
  39. 古池信三

    古池信三君 ただいまのは、飛び出しナイフ使用の場合の犯罪と承知しますが、普通のナイフを使用して、そういうふうな犯罪を行なったということはございますか。
  40. 木村行蔵

    説明員(木村行蔵君) ただいまそういう統計は、まだここにももちろんのこと、私どもの手元の材料としてはまだそれをとっておりませんが、必要だろうと思いますので、さらに研究を進めて参りたいと思います。
  41. 古池信三

    古池信三君 私が先般飛び出しナイフをいろいろ見たことがあるのですが、たとえば非常に刃が鋭くなっておる。刃の先端が鋭くなっておるとか、あるいは開いた場合に、もうそれが簡単にもとへ戻らないような装置があるというようなものを見たのですが、そういう点について、たとえば、その先端の刃の角度をもう少し緩和するとか、あるいは割合に簡単に一たん飛び出したナイフをさやに納めることができる装置とか、そういうようなことをもし、工夫すれば、よほど今心配されておるような点が緩和されるものかどうか。こういうような点について研究されたことがありますか。
  42. 木村行蔵

    説明員(木村行蔵君) 私も現物を見ましたのですけれども、これは飛び出しナイフじゃありませんけれども、今までの飛び出しナイフは、これを突きましても戻らないで固定して、非常に殺傷能力が強いんですけれども、最近製造業者の方でもいろいろ工夫しまして、こうぶつかるとすぐ戻る。こういうのは突けないわけです。突くと自分の方が危ない。ですから、これを使用すると、逆にこういうふうになって、刺すことはむずかしいような、工夫をしておるように思われます。ただ切先は、これはまだ私は現物を見ておりませんけれども、あるいは工夫しておるかもしれません。
  43. 古池信三

    古池信三君 そういうようないろいろな研究すべき点がたくさんあると思うのです。ですから、今後十分そういう点を研究していただきまして、あくまでもこれは犯罪防止ということは大事なことなんですから、その目的に沿うように、十分なる御検討をいただきたいと私は思う。ただ簡単に法律で全面禁止といいましても、その所持の取締りということが十分にできないんでは、これは何にもならぬことですから、そういう点をも見合ってまた一方においては、平和的に日常生活に使うという面が、これは非常に多いんですから、そういう点も十分に生かして考えて、そうして調整をとりながら、なおかつ犯罪の防止もやっていけるというような、そういうあらゆる点を御考慮の上、この問題については、じっくりと取り組んで進んでもらいたいということを私は、要望いたします。
  44. 大川光三

    委員長大川光三君) 本件についての調査はこの程度にとどめます。次回は、十月九日午前十時より、少年犯罪対策について調査を進めるため委員会を開きます。  本日は、これをもって散会いたします。    午後零時三十六分散会