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高田なほ子君 私ばかり質問しても長くなりますから、この一問で終りたいと思います。
最後に伺っておきたいと思います。大へん
大臣も、この
受け入れ態勢の問題についていろいろな御所見をここに御発表していただいて、私は非常にありがたく思います。また、こういうお気持の
法務大臣とともに私は歩んでいきたいという気も今非常にしているわけであります。お伺いしたい最後の問題は、収容されている
子供の
保護費の基準というものは果してこれでいいかどうかという問題、それは、悪いことをした
子供たちであり、また大して金持でもないわが国のことでありますから、何もぜいたくなことをさせよと私は力説しているわけではないのであります。しかし、少くとも
少年の
犯罪の動機というのは、非常に単純な動機が多いと思う。つまり未完成なるがゆえについに罪に陥ってしまうという、いろいろな彼らを囲む
社会的な家庭的なそういう諸条件の崩壊の中にこの
少年犯罪というものが起きてくるということは、これは私が申し上げるまでもないわけで、さればこそ、この
少年保護の問題については、あたたかい、再生をして健全な
社会人に育て上げていくという、この精神に徹しなければならないのではないか、こういう
意味合いから
考えると、現在の
収容児の
保護費の基準というものは若干低過ぎるのではないか。一日二十四円内外の副食費である。二千四百カロリーのカロリーは取っていると
説明をしておるし、私もそう信じたい。しかし、実際見ると、大へんにお粗末過ぎるのではないかという気がする。凶悪な問題が起る
原因の中に食料等があげられているということは、これはかなり問題にしていいところではないか。特に一年間のおやつ代が一人、百円と聞いております。甘いものを好む
子供たちにとって、一年に百円のおやつ代で、それでいいんだろうか、これは、ぜいたくを言えばきりも限りもございませんが、何とかこうした
保護基準というものについて御検討が願いたいということが
一つ。彼らに希望を与えるためには、希望あらしめるような
対策を収容中に講じなければならない。特に映画の鑑賞等については、これは
相当考えなければならない問題ではないだろうか。このことも、費用は一体これでいいのだろうか。また、彼らの使う鼻紙は、一日たった四枚です。びろうな話でありますが、果して四枚の紙でもって足りるのだろうか。男の子であれ女の子であれ、鼻紙一日四枚というのは、きわめて非常識な
保護基準ではないだろうか。四カ月かに一個の石けん、これで果していいだろうか。もう少し、もう少しです。たくさんとは私は言いません。もう少しあたたかい目が彼らに必要なのではないか。ジェット機を作るのに一億数千万円の金が要りますが、ジェット機を一台節約するならば、彼らにもっとあたたかい手が伸べられそうです。そうでなくても、もう少しこの
子供に対して、なぜ
犯罪に陥ったのか、彼らを裁く権利のある者は一体何人ここにおるのかという、この
子供たちを
犯罪に陥らせた
社会的な諸条件というものを謙虚に
考えるならば、もう少し、もう少しこの
保護費の基準というものは上げて、彼らにあたたかい目を向けてやっていいのじゃないか。
予算の折衝中であると承わっておりますが、岸内閣の閣僚の中に、彼らの
保護費の基準というものがどうなっているかということを知っている
大臣が一体何人いらっしゃるでしょうか。担当の
大臣だけではなく、すべての
おとながすべての
子供に責任を持たなければ、日本の国の将来は明るくならないと同じように、全閣僚が不幸にして罪に陥った
子供たちのためにあたたかい目を向けてやる態度こそ、彼らを更生させる何よりの私は近道ではないかと思う。幸い
予算編成の時期でありますから、どうか
一つこのことについて、
大臣の再度の御考慮をわずらわしたい。
さらに第二の問題としては、大分の特別
少年院を視察して痛感したことであります。彼らのうちには、この暑いのに、一きれのスイカも入る余裕がない。しかし、彼らは、
悔悟の念に燃えながら、一生懸命に農園の栽培をしておりました。そうして
おとなの頭よりもっと大きなスイカがたくさんたくさん彼らの手によって収穫されております。彼らは裸になって汗水を流しながらこのスイカは何キロ、そうしてこれは幾ら幾らというふうに、マジックインクでもってずっと目方をメモしながら、廊下の所にずっとスイカを並べておりました。私は院長に、どうですか、このスイカは彼らの口に入りますかと尋ねてみたところが、いや、現在の
制度では、このスイカは一応政府が買い上げることになっている。
院児に食べさせるためには、きょうの副食費を節約して買い上げることでなければ、これを食べさせることができないのだと答えております。私も人の子の母であります。食べたい盛り、育ち盛りのあの
子供たちは、スイカの甘みを旱天の労働の中にどんなに欲しておるかを私はしみじみ感じさせられた。できるならば、ああいう農作物を
子供に食べさせることができないならば、ああいうものは作らせるべきではないと思う。残酷です。少くとも
少年院が農園作業を行うならば、直接口に入る物は作らせるべきではない。もし作らせるならば、あれが
子供の口に入るような、せめて副食物になる夏季の果物ぐらいは自給自足の体制を、この目で見てやって、これを口に入れてやるというような思いやりのある方策が必要ではないか。何もかにもその園の農作物は全部院自体の自由にせよと、そういう暴論を私は申し上げるつもりはちっともございません。やはりこれは政府の監督下に置かれなければならないことは百も承知です。けれ
ども、どうかスイカやマクワウリ、トマトのような、見ればすぐ口に入るような、そうして食べ物の食べたい、おやつも食べたい、甘味もほしい、あの育ち盛りの
子供たちの日の前に、汗水流してすいかの作業をさせるような残酷なことだけはさせてもらいたくない。こういうようなあたたかい思いやりがあればこそ、
子供たちというものが私はやっぱり再生していくのではないかというふうに
考えるのです。
機会がありますから、大分の特別
少年院の
院児の反省記録と申しますか、感想文と申しましょうか、反省記録の一部を所長さんにおねだりをして送っていただきましたが、児童たちのこの反省記録の全部を読み上げることはできませんでしたけれ
ども、以上、私が申し上げたことを裏付けするような
子供の心情がるるとして書かれておるわけであります。まあ二、三読んで、皆さんとともにこの問題の本格的な
解決のために取っ組んでいただけるように、
一つ私は読んでみたいと思うのです。これは八月の暑い日に、私
どもちょっと伺ったときのことでありますが、「東京から八月一日に参議院
法務員の人が当院を見学にこられ、帰る時僕達が一番喜ぶ映画を昨日見せてもらい心から感謝致しました。私達が悪い事をしてきているにもかかわらず、温い目で見て下さった事がなによりさきに感謝する次第です。
昨日の映画の中で主人物が自分の望みを最後までやってのけた意志の強さをみならい僕も今度
社会に出る時は一人前の
社会人として小さい望みでも最後までやりとうす意志の強い人になって帰るように頑張ろうと思いました。小さい望みでも最後までやろうと思う勇気と元気をあたえてくれたのも
法務員の方々の温い心のおかげと本当に心から感謝しております。」これは所長が気をきかして、まあ私たちの視察のあとに、こういう方が来られたということで、映画を見せてくれたのだろうと私は推察するわけです。次に、「先日東京より、当
少年院に見廻りにこられた人は高田先生と言われていた。僕は謹慎にいました。
初て顔を見ました時、——これは私の顔を見たらしいのですが、初めて女の先生の顔を見たときに、「自分のお母さんに良くにているなと思いました。その先生が僕達の為に自分達の一番楽しみである映画を見せて下さり大変嬉しかった。
あの時に先生が自分にお母さんのもとに早く事故なく帰らねばと言われた時は本当に後悔しました。あの時の先生の顔は本当にお母さんににていたと思う。
また映画は本当に感謝して見せていただきました。大変面白かったです。大変有難とう御座居ました。」それからその次に、これは考査寮の下村
少年というのが書いております。「八月初に、東京から参議院
法務委の方が当院を色々と寮舎別に回って御見学をなさいました。又お帰る時院生の皆様にと御金をおいて行かれました。又自分達が一番喜ぶ映画を昨夜見せてもらいました。自分達が悪い事して院生の修養
生活の道を歩いている僕達に温い目で見て下さる事をなによりさきに心より感謝いたします。
昨夜映画を見学し夜ふとんの中でもつくずく有り方さを感じ本当に有難度う御座居ました。」それから吹田
少年というのがおりますが、この吹田
少年は、「今日も朝から天気の良い一日であった。
午前中はいつもの
通り彫刻の作業があった。自分は今日から「猿」の彫刻を始めた。以前に小便小僧を完成したので今度の猿も小便小僧に劣らないものを作りたいと
考える。大体一週間位で仕上げたいと思う。
作業が終って帰寮してから参議院の高田先生が寮舎におい出になり僕に色々話しかけて来れた。特に小便小僧が良く出来ていると言われた時は嬉しかった。先生は御忙しい処を切角この
少年院までおいで頂きその上僕達に色々励ましの
言葉をかけられ故郷の年老いた母が自分の帰りを首を長くして待っているのを思い出し明日からの
生活に一段と励ましをつけてくれた。
午後は入浴があり、夜の余暇時間は室内で楽しいレクリエーションがあった。
今日も一日無事で過せたことを感謝します。」たくさんありますけれ
ども、謹慎にいる
子供たちも、これは松岡
少年という
子供ですが、「謹慎も解除になり明日頃は再び寮舎にかえって皆なと楽しい
生活が出来る様に成るだろう。つまらない事で事故を起し先生方に迷惑をかけてしまった。
今日は参議院の高田先生が僕等の
生活を見に来られた。そして特殊寮にもおいでになって僕に佐々話して来れた。僕は人の前では余り良く話しきらないので困った。それでも一生懸命頑張りなさいと言はれた時はお母さんが励まして来れたようで今度こそどんな事があっても真面目になって見せると心に誓った。
午後は入浴があり図書館で本を借りた。
明日も頑張ります。今日は本当に僕にとって良い一日でした。お父さんおやすみなさい。」(松岡
少年日誌)
まだございますけれ
ども、時間の
関係上省きます。いかに彼らが愛情に飢え、いかにかれらがあたたかい目を望むか。この
少年を
ほんとうに正しい
社会人に戻してやろう、そうでなければ再犯がふえていく、そうでなければ
犯罪が倍加していくという悪循環の中に、岸内閣が
青少年問題の本格的な
解決のために取り組んでいるところに、私
どもは双手をあげて賛成しますが、何よりもかによりも、この非行
少年としてこういう院の中にとらえられなければならない
子供たちの再起のためには、どうか
一つ法務大臣の非常なるがんばりを期待してやまないわけであります。
以上で質問を終ります。