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1959-08-31 第32回国会 参議院 法務委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年八月三十一日(月曜日)    午前十時三十一分開会   —————————————   委員の異動 八月十日委員江田三郎辞任につき、 その補欠として大河原一次君を議長に おいて指名した。 八月十一日委員山口重彦辞任につ き、その補欠として米田勲君を議長に おいて指名した。 八月二十八日委員亀田得治辞任につ き、その補欠として加藤シヅエ君を議 長において指名した。 本日委員米田勲辞任につき、その補 欠として山口重彦君を議長において指 名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     大川 光三君    理事            古池 信三君            後藤 義隆君            高田なほ子君            石黒 忠篤君    委員            横山 フク君            赤松 常子君            千葉  信君            辻  武寿君            市川 房枝君   国務大臣    法 務 大 臣 井野 碩哉君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    法務省刑事局長 竹内 寿平君    法務省矯正局総    務課長     佐藤 昌之君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  の件  (法務行政基本方針に関する件)   —————————————
  2. 大川光三

    委員長大川光三君) ただいまから委員会を開きます。  本日は、検察及び裁判運営等に関する調査といたしまして、法務行政に関する質疑を行いたいと存じます。まず法務大臣から、重要諸問題の基本方針について御抱負をお述べ願いたいと存じます。
  3. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) ただいま法務省関係におきまして重要問題と考えられます事柄は、最高裁機構の問題、少年犯罪に関する問題、また売春法の適用の問題、そのほかに総合研究所運営問題等がございます。これらにつきまして、簡単に私から所信の一端を申し上げたいと存じます。  まず、少年法改正の問題でございますが、これは、私、法務大臣に就任いたしましてから一番大事だと思いましたのは、少年犯罪が最近非常に激増して参りまして、しかも、その犯罪性質が非常に悪化しているように思いまするので、この点に関しまして、第二国民として次の国家を背負う意味におきましても重要問題であり、自民党自体も、青少年対策重要政策一つとして大きく取り上げております問題でありますので、この問題の解決につきましては、自分も極力努力をいたしたいという気持で今日臨んでいる次第でございます。この問題は、法務省といたしましても、一昨年以来やはり重要問題の一つとして大きく取り上げて、いろいろの研究をして参っております。また、その施設等につきましても、拡充ははかりつつありますが、何分犯罪増加の趨勢から、十分でないことは明らかであると考えられますので、この点に関しましては、今般この秋に検事長並びに検事正会議を開きますから、その際にもこの問題を処理をいたしまして、十分研究をいたしたいと考えておりますし、また、中央青少年問題協議会等関係機関とも密接な連絡をとりまして、そうしてこれに対する対策十分研究したい、こういうふうに考えております。総合研究所におきましても、先般予算をとりました際の趣旨にかんがみましても、またその後の運営におきましても、青少年犯罪につきましては十分重要視して、この問題をテーマとして取り上げていきたいと考えておる次第であります。  次に、売春問題でございますが、これも法を施行しましてから一年半になりますが、相当に実効はおさめております。おさめておりますが、何分にも非常ないろいろな議論のあった法律でございますし、実施後の運営につきましても十分でない点のあることは、これは認めざるを得ません。従って、最近におきましては、あるいは単純売春の問題でありますとか、あるいはひもつき問題であるとか、いろいろ問題は出ております。しかし、これらは、まだ施行後一年でございますから、すぐ今しからば売春法改正するかどうかということにつきましては、やはりこういった刑罰法規行政法規と違いまして、そうむやみに変えるべき性質のものでもないと私ども考えておりますので、十分研究は重ねております。またその成績についても、いろいろ調査いたしておりますが、そういった意味におきまして今日では臨んでおるわけでございます。  それから、最高裁判所機構改革の問題につきましては、これは先般、昭和三十二年の二十六国会において法律が出まして、その法律審議未了に終って今日に、至っておりますが、これらは、その当時の事情と多少情勢に変化がございます。その当時は、非常に最高裁事件が多くたまりまして、そのために最高裁機構を改革しなければならぬということが一つの大きな理由でございましたが、今日では、その当時から見るというと、事件も半減しておりますし、そのための必要性というものはよほど薄らいできたように思います。しかし、弁護士協会等議論しておりますいわゆる三審制の問題とからんで参りますと、またこれは別の議論になるのでございますが、これらの問題は、弁護士側最高裁側あるいは法務省側、三者の意見の一致を見ませんと、なかなか法制としても議会通過が困難でございますので、最近におきましては、ときどき三者が寄りまして、いろいろ相談し合い、何らかまとまる点があればその方向に向って進んで参りたい、かような方針で臨んでおります。  法務総合研究所の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、最近の犯罪現象から見まして、青少年犯罪を初めとしまして量質ともに悪化の傾向をたどっているように認められますので、こういったことに対して、一貫した総合的施策を強力に進めなければならないということで、犯罪対策を十分立てるために、昨年予算をとりまして、この機関が出発したわけでございます。その後におきまして、いわゆる従来の法務研修所機構刑事政策研究部門を加えますことによりまして、総合的な刑事政策のいろいろな研究を進めております。現在におきましても、これらの研究部門において各部長が担任いたして研究を進めている。これは相当の今後も成果をあげ得ると私は信じておりますが、何分にも予算が不十分でございますので、本年もこの点についても十分考慮を払っていただきたい、かように考えております。  なお、最近不動産不法占拠の問題が、戦災都市を中心としまして、土地建物不法占拠によって民事的救済が十分でないので、一方では正当な権利者が無法者のために苦しめられる。また他方では、自力救済によって不法に占拠された土地を取り返そうとする権利者とそれに対抗する占拠者とが、しばしば暴力に訴えて解決しようという事件が発生を見ているばかりでなく、これに暴力団が介入するという憂慮すべき事態が生じております。これまでもこういう不法状態をなくする努力が続けられて参りましたが、ここ二、三年来各地戦災地方一体、商工団体をはじめ各方面におきまして、土地建物不法占拠を窃盗と同じように処罰することその他の立法的解決を求める声が高くなって参りましたので、事務当局調査研究を命じて検討中でございます。ただ、不動産不法占拠を刑事的に取り締ることになりますと、不動産に関する民事的紛争に好ましくない影響を与えることもないわけではございませんので、この点に関しては、慎重に考慮いたしているのでございまして、なるべく早く一つの成案を得たい、こういうふうに考えております。
  4. 大川光三

    委員長大川光三君) それでは、これより質疑を行いたいと存じます。御意見並びに御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  5. 高田なほ子

    高田なほ子君 ただいま法務大臣から、法務行政の基本的問題について御説明を承わったわけですが、率直に申し上げると、やや具体性に乏しいので、ちょっと失望したような気もするわけであります。従って、こちらから御質問申し上げて、それにお答えいただけば、一そう具体的にお考えがつかめるのではないかという気がいたしまして、特にこの少年問題についてお尋ねをしたい。  少年法改正について、最近の少年犯罪量質とも増加している傾向について述べられています。そうしてまた政府は、これらの対策については、施設等についてもきわめて不十分である、かような点についても述べておられるわけであります。従いまして、現在の予算の中で、この増加する青少年犯罪についての施設等については、相当予算というものも見込んで、計画的な施設というものを増加するなり、あるいは定員増加するなりというような方向をおとりになるだろうと実は思っておるわけであります。従いまして、大ざっぱでけっこうでありますが、今度の予算は、すでにだんだんの御折衝中であるとお察ししているわけであります。この凶悪犯罪増加に対する施設等について、もう少し具体的な御説明を賜わりたいと思います。まずその点をお尋ねします。
  6. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) 今回法務省予算としましては、やはり重要政策一つとして、少年問題を大きく取り上げております。従って、予算としましては、一本にまとめまして、少年対策に関する予算を大蔵省に要求するわけでございまして、従って、その方面は、単なる設備ばかりでなく、あるいはその予防方面、あるいはこれを指導する方面、あるいはいろいろの検査と申しますかをする方面等につきまして予算を組んでおるのでございます。設備だけに関しましては幾ら組みましたか、これは事務当局の方から御答弁を申し上げます。
  7. 佐藤昌之

    説明員佐藤昌之君) 施設関係につきましては、まだ計数が正確には出ておりませんけれども少年院の現在収容人員増強等にかんがみまして、必要な個所に増設を要求いたしたいと考えております。これは、たとえば北海道、東北、東京あるいは四国といった関係少年院は、現状ではとうていまかなえないような情勢でございますので、この各地につきましては、一つ少年院増設考えたいと思っております。それからなお、旧来の施設につきましても、非常に老朽の施設が多いようであります。かような点の整備充実という点についても、十分一つ予算の面でも手当をお願いしたいというふうに考えております。  この予算の要求の数字でございますけれども、全部くるめまするというと、大体三億程度の数字になるであろうというふうに考えております。
  8. 高田なほ子

    高田なほ子君 必要な施設増設等については、それぞれの数字が、また場所が具体的に考えられておるようであります。  次に、最近の少年院内における暴行事件の頻発の問題に関するわけです。虞犯少年予防措置は、きわめてこれは大切な問題であります。しかし、すでにあやまちを犯した少年悔悟機会を得るために少年院に収容されるわけであります。また、少年院は、悔悟機会だけではなく、これらの少年たちが将来社会人として活動のできるような将来の生活基礎を与えるためにも、この少年院のそれぞれの係の方々が実になみなみならざる御苦労をしている。これは大臣も御承知の通りだろうと思うのです。この少年院職員皆さん方の御苦労というものは、まことにお察しするに余りある状態であります。そうした周囲の人の苦労、そうしてまた、そこに収容されておる少年たちも、それぞれ苦しみながら、悔悟の念に燃えながら、再起の方途をたどろうとしている子供たちもたくさん中におるわけです。しかしながら、不幸にしてこの少年院の中には、今申し上げたような暴行事件が頻発している、また頻発するおそれも多分にある、また、少年院を出てきた子供は、もう絶対にこれは使い物にならない、少年院を出てきた者は正そう悪くなるのだ、こういうような冷たい世の批判があるわけであります。こういうような批判がある限り、たとえば悔悟の念に燃えて、さらに今後の生活基礎を習得した子供たち社会に出ても、この冷たい批判に果して耐え得ることができるかどうか、また、果してこれらの批判の中にこれらを受け入れるものが一体どのくらいあるのだろうか、こう考えますと、少年院運営そのものについては、相当大臣としてもこの際本腰を入れていただかなければならない問題ではないか。具体的に、この暴行事件はどうして起ってくるのか、この原因等についてお調べになったことがございましょうか。また、少年院を出てくれば一そう悪くなるというこの世の批判が、少年院運営そのもの相当欠陥があるというふうに考えておるわけでありますが、この問題についてどのように大臣は把握されておりますか。まずこの点を伺わさしていただきたい。
  9. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) 高田委員お話通り少年院運営というものは、これは非常に重大な問題でございます。若い者を、かりに罪を犯したといたしましても、将来を惑わせることがあってはならないはずでございますので、少年院にいる間にりっぱな子供にして世の中に出していくということが本来少年院の使命でなければなりません。ところが、お説のように、少年院内部におきましても、職員お話通り非常な努力をいたしております。所長以下実際涙ぐましい努力を続けられておりますことは、私、先般各地を視察いたしまして深く身に感じました。ただ、残念ながら中でいろいろの争いがありますことも、これも見のがせません。  その原因は何かというお尋ねでございますが、大体私どもその当時職員に聞きますと、やはり性的から来る問題が一つ、それから食糧、いろいろ嫉妬関係から起ってくることもございますし、また、その他家庭的ないろいろの事情から一種の神経衰弱になっている、大した原因なくして争いを起しているような事態もあるようでございます。こういったことにつきましては、職員自体が非常に苦慮いたしておりまして、できるだけそういうことのないように、ことに非常な狂暴な性質の子、精神的になかなか直らない子供に対しましては、独居的な懲戒的な部屋もできておりまして、私もそこを見て参りましたが、そこにしばらく入れておいて静かにするというような方法も講じております。大体において最近はその数もそうふえていないように私聞いておりますけれども、詳細なことが必要でございましたら、事務当局からお答え申し上げたいと思います。
  10. 高田なほ子

    高田なほ子君 この暴行事件原因等について、性的とか食糧とか、またノイローゼ等原因大臣はあげられておるのですが、私もこのことを否定はいたしません。しかし、少くとも私ども政治家としてこれを見る場合に、その面だけを強調しているだけではいけないと思う。たとえば、少年院子供たちを集合させる場合に、一棟、二棟の共同集合所子供を集める場合がございます。この場合に、六、七十人あるいは八十人、こういうような大量の収容児を一場に集めて、そこに教官がたった一人である。このようなことは、犯罪動機を誘発する最も私は原因ではないかというふうに考える。要するに、すきを与えるということ、われわれ、正しい子供でも、親の不注意でたんすの上に財布を置き忘れたという場合に、何気なく子供はこの財布に手をかける場合がある。これが成功すればまたその次やる、こうして常習的な盗癖を子供たちに植えつけることについて、しばしば私どもは母親とともに相談をしていく、つまり性善なる子供であっても、すきを与えてはならないということが、これが常識だと思う。しかるに、少年院職員というものは、現在の状況では非常に少い。でありますから、五十人、六十人と集合させても、そこに職員が一人っきりおらないということになれば、このノイローゼ——性的な、あるいは食糧等不満のある者が集まった場合に、そこにおそるべき群衆心理というものが発生するということは、これは否定できない。大臣も、性的あるいは食糧、これらの不満原因であると言っておりますが、その原因を持つ収容児に対していかなるこの運営をしていくかということがこの政治に課せられた問題であって、ここにこの定員増という問題があげられなければならないと思うのであります。特に鑑別所あたりでも、伺うところによると、夜間は一人でもって巡視しないということになっているそうです。非常に危険である。危険だから、一人では巡視しない。必ずもう一人の人が外にいて、その巡視の状況をさらに監視するというような状態である。ここにオーバー・ワークという問題が起ってきているようであります。最近の少年院収容状態は、大臣もとくと御視察のように、きわめて過剰な人員であり、それに加えてかなりの質的に凶悪な者も含まれている。これに対する施設等については、今御説明があったわけでありますが、その運営の任に当るこの定員内容等については、今度の予算編成に際して、これはとくと大臣にお考えをいただかなければならないところではないでしょうか。少年院子供保護の問題、保護すると同時に、これを教育する力が一心同体の形でやっておる。これでは満足なことができないのではないかと思います。この定員問題等について、大臣はどのようにお感じになってこられましたか。将来またこの定員についてどういうような施策をおとりになろうとするか、御所感を承わっておきたいと思います。
  11. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) 高田委員のお説の通り、今日の少年院職員定員というものは、収容人員に比較しまして非常に少く、そのために今お話のような実態——私は、その争いがどうして起るかという直接原因お尋ねになったと思って今申し上げたのでありますが、そのさらに深い原因としては、十分人が足りないので、そういう点を取り締れないという点も確かにございます。ただ、今の少年院連中は、自主的な制度をとりまして、各階級に分れております。その階級別自治制度を実施しておりますけれども何分にも健全なる少年でも自治ということはなかなかむずかしいのに、ああいった連中自治をやっておりましてもうまくいかないことは、これはお説の通りでございますので、何と申しましても職員をふやすとともに、さらに施設が、今少年収容状態が非常に過剰になっております。こういう点につきましても、先ほど御指摘のように、施設を拡大しなければならないと考えておりますし、そういう方面につきまして、いわゆる定員増施設拡充ということにつきまして、少年対策としての予算の上において、私どもとしては十分に力を入れて参りたい。こういうふうに考えております。
  12. 高田なほ子

    高田なほ子君 その次にお尋ねをするわけですが、その前に、自治組織の問題が今大臣のお言葉から出たようでありますが、少年院内のこの院児生活は、もちろんこの自治組織というような形態でやられていると思いますが、この自治組織そのものに今メスを加えなければならぬ時期ではないでしょうか。いわゆるいうところの自治組織というものと、それから、その自治組織を組み立てる上にどういうふうな条件が必要になってくるのか。いわゆる収容児の中におけるボス少年に対する弾圧という、言葉はちょっとこわい言葉でありますが、いじめる。そのボスが強い勢力を隠然と張りながら、せっかく悔悟しようとする少年たちをむしろ悪い方向に導いていく、こういうような温床がこの自治組織の中にあるのではないか。こういうような問題については、それぞれの少年院でも私は御研究ではないかと思いますが、ややともすれば、職員定員が足りないために、この足りない定員を補うために自治組織を利用するという、いわゆる定員の足りないその不足分を彼らの自治組織にまかせて、そうしてこれを運営しようとする、こういう自治組織であるならば、これは、自治組織などむしろない方がいい。もっとその院児自治組織そのものメスを加えなければ、この少年院運営というものは、私は、完全な所期の目的の、少年院法に基く法の完成のための少年院にはならないのじゃないかという気がするわけです。どうか大臣も、御就任日がまだ浅く、私もまた、少年問題に取り組んできわめて薄い知識、薄い体験しか持ち合せておりませんから、ともに研究さしていただくという意味合いにおいて、もう一度この自治組織という問題について御研究をわずらわしたいと思っております。  その次の、第三点の問題でございますが、少年院に収容された子が一応の期間を置いて社会に出ていく。大へんこれは喜ぶべきことだと思います。しかし、この際に私ども考えなければならないことは、少年たちがやっと希望に燃えて社会に出ていこうとするときに、受け入れ態勢がない。両親もなければ、あるいは両親があっても、全然生活がやっていけない。親類は見放してしまっている。こういうような場合、就職先もない。こういういわゆる受け入れ態勢の確立という問題については、これは相当本腰を入れてかからなければ、幾ら総合研究所というものを科学的におやりになるにしても、これでは車の両輪を欠くうらみがあるのではないか。せっかく収容した子供が、悔悟した子供が、少年院の教師が本腰を入れた子供たち社会に出ていくのに、受け入れ態勢がない。多分御説明では、受け入れ態勢があると説明なさると思います。確かに形式的にはあるだろうと思います。しかしそれは、実際には私は運営されていないと思う。この受け入れ対策をどうするかという問題が一点です。  第二点は、普通の成人の刑罰を受けたものが刑期を終えて社会に復帰する場合に、伺うところによれば、約九十日間の余裕期間保護期間として認めておるわけです。しかるに、少年院子供がようやく一年余りの収容期間を終えて、ほんとう悔悟しようと思って社会に出るにしても、受け入れ態勢がない。ただ形式的な職業安定所へ飛び込んでいく。保護司の所へかけ込んでいく。どうすることもできない。一体この少年院から悔悟の念に燃えて出る少年に対して受け入れ態勢がない場合、刑期を満たして出てくるおとなに対しても九十日間余の保護期間が加えられておりながら、この未成年、まだ十分に成長しきれない、ほんとうに大手術のあとに、傷跡がまだふわふわしているようなものに対して、なぜたった一日もの保護期間が認められないのか。少くとも、おとなに三カ月の保護期間が認められておるならば、少年に対しては当然半年くらいのそういう保護期間が認められていいのではないか。この受け入れ態勢について、保護期間受け入れ態勢の実情、こういうものがどういうふうに一体把握されているのか。そうしてこれに対して抜本的な対策はどう立てていくべきものなのか、この点を一つぜひ承わらしていただきたい。
  13. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) お説の通り少年院を出ました少年受け入れ態勢が十分でないということは、これはもうお説の通りであります。私どもも、その状態を見まして、これは何とか本腰を入れていかなければならぬと考えを深く持ちまして、結局やはり手段としては保護観察制度拡充していくよりほか道がないと考えておりますので、そういった方面予算を本年は相当多額に要求するつもりでおります。そうして保護司を通じまして、少年院を出ました少年の善導に当らしめていくということに力を入れて参りたい。その保護期間の問題につきましては、事務当局の方から詳しく御説明いたします。
  14. 竹内寿平

    説明員竹内寿平君) 私の所管ではございませんが、今保護局の方が見えておりませんので、私の存じております限りにおいてお答え申し上げたいと思います。  ただいま大臣から御説明がございましたように、少年院を仮退院した者、あるいは少年院を満期で出ました者の受け入れの問題、これは確かにただいまも努力はいたしておりますけれども、いろいろな面で欠陥があることは、私どもも率直に認めておるのでございます。それにつきまして、従来保護観察官、こういうものが、一般刑務所を出た、あるいは仮釈放になりました、仮出獄しました者に対する保護観察というような面に大きな力をさいておりました点もありまして、これを少年の方に振り向けまして、それではまだ人員におきましても足りませんので、まあ予算でございますから、ちょっと大きいかもしれませんけれども、数百名の大増員をいたしまして、そうしてそういう人たちと民間の保護司の方々と協力のもとに、受け入れの方の家庭の状況の調整、そうして子供の善導について何くれと世話をしていくという態勢を強化いたして参りたい、そういう考えで、少年問題対策の一環といたしまして、保護関係におきましてはそういう方面予算考えて、ただいま研究いたしておるところでございます。
  15. 高田なほ子

    高田なほ子君 保護関係予算化の増額が今述べられて、大へんけっこうだと思いますが、この内容等については、詳しく承わる時間もありませんから、ここでは避けたいと思います。ただ、保護司の待遇というものについては、何か特段の考えを持っておりますか。この保護司というものは、大へんお忙しい方々が献身的におやりになっておられますけれども、しかし、その待遇というものは、まさかその待遇を目当てにして保護司をしておられる方はもちろんないと思いますけれども相当にこれは本気になって取り組めばやり切れない仕事ではないだろうかと思います。そういう方々に対する手当というものは、ここでまあ手当と申しますか、これは全くゼロに等しい。これであっていいかという疑問が私には起るのです。予算化の内容の中に、保護司の一体待遇問題ということについてはどういうふうにお考えになっておるか。数百名の増員はけっこうです。しかし、その増員の基礎になるものはどうするか。このことについて、概略でけっこうですから、お尋ねしておきます。
  16. 竹内寿平

    説明員竹内寿平君) こまかいことは私存じませんけれども保護司予算と申しますと、手当はいわゆる実費弁償金という予算でございます。これは、御指摘のように、非常に少いものでございまして、保護司は自発的に、いわゆる慈善家という方々をもって発足したもので、そういう沿革を持っておりますけれども、それはそれとして、非常に重要な仕事をお願いしておりますので、せめて実費だけは十分に弁償されなければならぬということは、これは当然なことでございますが、しかし、予算の手当は、その実費弁償も実費弁償とはいえないので、実費弁償のうちの幾分かを弁償するという予算になっております。ここ数年来この実費弁償金の値上げと申しますか、そういう予算化を毎年いたしておりまして、ここ二、三年の間に相当改善をされて参りました。なお、この実費弁償金だとか、あるいは民間の保護団体に対する助成金というようなものも非常に少いものでございますので、私どもも、予算を扱っておりました当時から、こういう方面の民間の自発的にやられる方々に対するせめてもの心づくしというような観点からいたしまして、鋭意この面の予算化に努力をして参りましたが、その結果として、今度は保護観察とかいう国家制度の方の予算が非常に跛行的になって、アンバランスになっておる。聞くところによりますと、保護司の方々が実費弁償金を受け取って、あまり役所がかわいそうだから奇付してやるというようなところもあるやに聞いておりまして、こういうことではいけませんので、本年は、保護司の実費弁償金の点も無視いたしておりませんけれども、役所の庁費だとか、そういうような事務的な経費の拡充という点に重きを置いて予算編成をしておるやに聞いております。
  17. 高田なほ子

    高田なほ子君 次にお尋ねしたいことは、この今私が申し上げましたことは、受け入れ態勢の確立について本腰を入れてもらいたいという点でありました。なぜ私がここに本腰を入れてほしいかということを時間をさきながら力説するかと申し上げますれば、これは、再犯を防止するという点に、この一点に尽きるわけであります。受け入れ態勢を確立しなければ、再犯というものはやはり次々と悪循環をしながら重ねられていく。その再犯に至るまでの過程で、その悪い芽が善良な子供の中に一つ加わると、その善良な子供がまるでばい菌にさらされたごとくに、どんどんどんどんものすごい勢いで悪化していく。だから、この再犯を防止するということ、そのことのための受け入れ態勢を確立するということ、これは実に緊急な問題であるという認識をお互いに持っていかなければならないのじゃないか。台風七号に対しては、社会党は、臨時国会を開いて、この台風七号の災害の緊急対策を立てるように政府に要請をしたわけであります。しかし、事は台風七号に匹敵するようなこの緊急性を持つものが、この激増する青少年の不良化対策に対する態度でなければならないと思う。台風七号は目に見えますけれども青少年の不良化の温床は、まことにおそるべき勢いでふえている。このことのために、法務省当局としても、昨日の夕刊を拝見いたしまして、若干意を強うしたわけでありますが、昨日の夕刊読売では、「青少年の再犯防止へ」という大きな見出しで、十五地検に資料室を作る。新しく課も新設して、この科学的な究明に当ろう、こういう構想のもとに、来年度の青少年課を新設する基本的な考え方が新聞で述べられているわけであります。幸いにこのただいまの私の質問と関連する問題でありますから、青少年の再犯防止について、単にこの十五地検に資料室を新設するということだけではなく、もっと新しい構想がおありではないかというふうに考えられる。最近国会も開かれておりませんので、法務大臣からこまかい御意見を聞くチャンスも非常に少いのでありますが、大へん新聞社の方が御勉強で、なかなか法務省の新企画についてはいいニュースをちょいちょいと出しているのでありますが、われわれの耳に入るのはまことにおそい。従って、こういう問題が出ておりますから、再犯防止についてどういう一体計画と対策を持っているのか。詳しく一つ説明を願い、そうしてまた、この構想には、特に大臣から、再犯防止に対してどういう対策を持つかという点について承わらしていただきたいと思います。
  18. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) 少年院を出ました少年の再犯防止につきましては、これは、今お述べの受け入れ態勢と全く関連した問題で、受け入れ態勢がよければ再犯は起らないはずなんでございますが、何分にも、先ほど局長からお答えいたしましたように、今日保護司に対する手当すら、私も実際びっくりしたのですが、月百九十円というのですから、これではほんとう予算を差し上げているかどうかわからないような予算であります。それも、昨年愛知法相が非常に御努力なさって、七十円増額されて百九十円だというので、今年さらにまた増額するということはなかなか困難ではないかと思いますので、むしろ観察官の予算を大いに今年は回して、そして保護司の方は、予算はまあ百九十円であっても、恩賞的な優遇方法をいろいろ考えて、単にそういった気持で、自分が一身を挺して、金で働いているのじゃないという気持を深く持っていただいて、そして他の方面で御優遇申し上げて、そういった動きをしていきたい。そして観察官の方は一つ予算をふやして十分に処置をしていきたいというのが私の考えましたぎりぎりの知恵であります。それから、青少年課を刑事局に設けますのも、こういった問題は重要でございますので、やはり専門の課を設けなければならぬと考えておりますので、予算もそれを要求したような次第でございまして、なおほかにいい知恵がございますれば、どしどし聞かせていただきますれば予算化の上に、一応は大蔵省に出しましたけれども、この問題は大きな問題でございますから、いい知恵がありましたら、まだこれから私の方でお受けをして予算化をはかっていきたい、こういうふうに考えております。
  19. 高田なほ子

    高田なほ子君 私ばかり質問しても長くなりますから、この一問で終りたいと思います。  最後に伺っておきたいと思います。大へん大臣も、この受け入れ態勢の問題についていろいろな御所見をここに御発表していただいて、私は非常にありがたく思います。また、こういうお気持の法務大臣とともに私は歩んでいきたいという気も今非常にしているわけであります。お伺いしたい最後の問題は、収容されている子供保護費の基準というものは果してこれでいいかどうかという問題、それは、悪いことをした子供たちであり、また大して金持でもないわが国のことでありますから、何もぜいたくなことをさせよと私は力説しているわけではないのであります。しかし、少くとも少年犯罪の動機というのは、非常に単純な動機が多いと思う。つまり未完成なるがゆえについに罪に陥ってしまうという、いろいろな彼らを囲む社会的な家庭的なそういう諸条件の崩壊の中にこの少年犯罪というものが起きてくるということは、これは私が申し上げるまでもないわけで、さればこそ、この少年保護の問題については、あたたかい、再生をして健全な社会人に育て上げていくという、この精神に徹しなければならないのではないか、こういう意味合いから考えると、現在の収容児保護費の基準というものは若干低過ぎるのではないか。一日二十四円内外の副食費である。二千四百カロリーのカロリーは取っていると説明をしておるし、私もそう信じたい。しかし、実際見ると、大へんにお粗末過ぎるのではないかという気がする。凶悪な問題が起る原因の中に食料等があげられているということは、これはかなり問題にしていいところではないか。特に一年間のおやつ代が一人、百円と聞いております。甘いものを好む子供たちにとって、一年に百円のおやつ代で、それでいいんだろうか、これは、ぜいたくを言えばきりも限りもございませんが、何とかこうした保護基準というものについて御検討が願いたいということが一つ。彼らに希望を与えるためには、希望あらしめるような対策を収容中に講じなければならない。特に映画の鑑賞等については、これは相当考えなければならない問題ではないだろうか。このことも、費用は一体これでいいのだろうか。また、彼らの使う鼻紙は、一日たった四枚です。びろうな話でありますが、果して四枚の紙でもって足りるのだろうか。男の子であれ女の子であれ、鼻紙一日四枚というのは、きわめて非常識な保護基準ではないだろうか。四カ月かに一個の石けん、これで果していいだろうか。もう少し、もう少しです。たくさんとは私は言いません。もう少しあたたかい目が彼らに必要なのではないか。ジェット機を作るのに一億数千万円の金が要りますが、ジェット機を一台節約するならば、彼らにもっとあたたかい手が伸べられそうです。そうでなくても、もう少しこの子供に対して、なぜ犯罪に陥ったのか、彼らを裁く権利のある者は一体何人ここにおるのかという、この子供たち犯罪に陥らせた社会的な諸条件というものを謙虚に考えるならば、もう少し、もう少しこの保護費の基準というものは上げて、彼らにあたたかい目を向けてやっていいのじゃないか。予算の折衝中であると承わっておりますが、岸内閣の閣僚の中に、彼らの保護費の基準というものがどうなっているかということを知っている大臣が一体何人いらっしゃるでしょうか。担当の大臣だけではなく、すべてのおとながすべての子供に責任を持たなければ、日本の国の将来は明るくならないと同じように、全閣僚が不幸にして罪に陥った子供たちのためにあたたかい目を向けてやる態度こそ、彼らを更生させる何よりの私は近道ではないかと思う。幸い予算編成の時期でありますから、どうか一つこのことについて、大臣の再度の御考慮をわずらわしたい。  さらに第二の問題としては、大分の特別少年院を視察して痛感したことであります。彼らのうちには、この暑いのに、一きれのスイカも入る余裕がない。しかし、彼らは、悔悟の念に燃えながら、一生懸命に農園の栽培をしておりました。そうしておとなの頭よりもっと大きなスイカがたくさんたくさん彼らの手によって収穫されております。彼らは裸になって汗水を流しながらこのスイカは何キロ、そうしてこれは幾ら幾らというふうに、マジックインクでもってずっと目方をメモしながら、廊下の所にずっとスイカを並べておりました。私は院長に、どうですか、このスイカは彼らの口に入りますかと尋ねてみたところが、いや、現在の制度では、このスイカは一応政府が買い上げることになっている。院児に食べさせるためには、きょうの副食費を節約して買い上げることでなければ、これを食べさせることができないのだと答えております。私も人の子の母であります。食べたい盛り、育ち盛りのあの子供たちは、スイカの甘みを旱天の労働の中にどんなに欲しておるかを私はしみじみ感じさせられた。できるならば、ああいう農作物を子供に食べさせることができないならば、ああいうものは作らせるべきではないと思う。残酷です。少くとも少年院が農園作業を行うならば、直接口に入る物は作らせるべきではない。もし作らせるならば、あれが子供の口に入るような、せめて副食物になる夏季の果物ぐらいは自給自足の体制を、この目で見てやって、これを口に入れてやるというような思いやりのある方策が必要ではないか。何もかにもその園の農作物は全部院自体の自由にせよと、そういう暴論を私は申し上げるつもりはちっともございません。やはりこれは政府の監督下に置かれなければならないことは百も承知です。けれども、どうかスイカやマクワウリ、トマトのような、見ればすぐ口に入るような、そうして食べ物の食べたい、おやつも食べたい、甘味もほしい、あの育ち盛りの子供たちの日の前に、汗水流してすいかの作業をさせるような残酷なことだけはさせてもらいたくない。こういうようなあたたかい思いやりがあればこそ、子供たちというものが私はやっぱり再生していくのではないかというふうに考えるのです。  機会がありますから、大分の特別少年院院児の反省記録と申しますか、感想文と申しましょうか、反省記録の一部を所長さんにおねだりをして送っていただきましたが、児童たちのこの反省記録の全部を読み上げることはできませんでしたけれども、以上、私が申し上げたことを裏付けするような子供の心情がるるとして書かれておるわけであります。まあ二、三読んで、皆さんとともにこの問題の本格的な解決のために取っ組んでいただけるように、一つ私は読んでみたいと思うのです。これは八月の暑い日に、私どもちょっと伺ったときのことでありますが、「東京から八月一日に参議院法務員の人が当院を見学にこられ、帰る時僕達が一番喜ぶ映画を昨日見せてもらい心から感謝致しました。私達が悪い事をしてきているにもかかわらず、温い目で見て下さった事がなによりさきに感謝する次第です。  昨日の映画の中で主人物が自分の望みを最後までやってのけた意志の強さをみならい僕も今度社会に出る時は一人前の社会人として小さい望みでも最後までやりとうす意志の強い人になって帰るように頑張ろうと思いました。小さい望みでも最後までやろうと思う勇気と元気をあたえてくれたのも法務員の方々の温い心のおかげと本当に心から感謝しております。」これは所長が気をきかして、まあ私たちの視察のあとに、こういう方が来られたということで、映画を見せてくれたのだろうと私は推察するわけです。次に、「先日東京より、当少年院に見廻りにこられた人は高田先生と言われていた。僕は謹慎にいました。  初て顔を見ました時、——これは私の顔を見たらしいのですが、初めて女の先生の顔を見たときに、「自分のお母さんに良くにているなと思いました。その先生が僕達の為に自分達の一番楽しみである映画を見せて下さり大変嬉しかった。  あの時に先生が自分にお母さんのもとに早く事故なく帰らねばと言われた時は本当に後悔しました。あの時の先生の顔は本当にお母さんににていたと思う。  また映画は本当に感謝して見せていただきました。大変面白かったです。大変有難とう御座居ました。」それからその次に、これは考査寮の下村少年というのが書いております。「八月初に、東京から参議院法務委の方が当院を色々と寮舎別に回って御見学をなさいました。又お帰る時院生の皆様にと御金をおいて行かれました。又自分達が一番喜ぶ映画を昨夜見せてもらいました。自分達が悪い事して院生の修養生活の道を歩いている僕達に温い目で見て下さる事をなによりさきに心より感謝いたします。  昨夜映画を見学し夜ふとんの中でもつくずく有り方さを感じ本当に有難度う御座居ました。」それから吹田少年というのがおりますが、この吹田少年は、「今日も朝から天気の良い一日であった。  午前中はいつもの通り彫刻の作業があった。自分は今日から「猿」の彫刻を始めた。以前に小便小僧を完成したので今度の猿も小便小僧に劣らないものを作りたいと考える。大体一週間位で仕上げたいと思う。  作業が終って帰寮してから参議院の高田先生が寮舎におい出になり僕に色々話しかけて来れた。特に小便小僧が良く出来ていると言われた時は嬉しかった。先生は御忙しい処を切角この少年院までおいで頂きその上僕達に色々励ましの言葉をかけられ故郷の年老いた母が自分の帰りを首を長くして待っているのを思い出し明日からの生活に一段と励ましをつけてくれた。  午後は入浴があり、夜の余暇時間は室内で楽しいレクリエーションがあった。  今日も一日無事で過せたことを感謝します。」たくさんありますけれども、謹慎にいる子供たちも、これは松岡少年という子供ですが、「謹慎も解除になり明日頃は再び寮舎にかえって皆なと楽しい生活が出来る様に成るだろう。つまらない事で事故を起し先生方に迷惑をかけてしまった。  今日は参議院の高田先生が僕等の生活を見に来られた。そして特殊寮にもおいでになって僕に佐々話して来れた。僕は人の前では余り良く話しきらないので困った。それでも一生懸命頑張りなさいと言はれた時はお母さんが励まして来れたようで今度こそどんな事があっても真面目になって見せると心に誓った。  午後は入浴があり図書館で本を借りた。  明日も頑張ります。今日は本当に僕にとって良い一日でした。お父さんおやすみなさい。」(松岡少年日誌)  まだございますけれども、時間の関係上省きます。いかに彼らが愛情に飢え、いかにかれらがあたたかい目を望むか。この少年ほんとうに正しい社会人に戻してやろう、そうでなければ再犯がふえていく、そうでなければ犯罪が倍加していくという悪循環の中に、岸内閣が青少年問題の本格的な解決のために取り組んでいるところに、私どもは双手をあげて賛成しますが、何よりもかによりも、この非行少年としてこういう院の中にとらえられなければならない子供たちの再起のためには、どうか一つ法務大臣の非常なるがんばりを期待してやまないわけであります。  以上で質問を終ります。
  20. 赤松常子

    ○赤松常子君 私、やはり青少年問題でちょっとお尋ねしたいのでございますが、最近少年法改正法務省は取り組んでいらっしゃるように何っております。この問題は、すでに二、三年来、いろいろ法務委員会でも問題になった事柄でございますが、今どういう経過で、どういう段階でいらっしゃるのでございましょうか。これは、非常に法務省のねらっていらっしゃる、法務省というよりも、検察当局のねらっていらっしゃるところがおもに改正されるように聞いているのでございますけれども裁判関係の方、あるいは第三者も、その検察当局の意見にはまだまだ反対がある問題でございます。つまり年令を十八才に引き上げる問題でございますが、この点、今どういう経過で改正をやっていらっしゃるのでございましょうか、その点について。
  21. 竹内寿平

    説明員竹内寿平君) ただいま赤松委員からお話のございました少年法改正の問題でございますが、先般新聞紙に、法務省少年法改正に着手したというような記事が出ておりましたが、その点を特に御指摘になっての御賛同かと思います。法務省としましては、御承知のように、かねてから少年法に関するいろいろな問題を洗い出して研究を続けて参っております。しかし、これは非常にむずかしい問題でございまして、新聞に報道されていたように具体案を作っておるという段階にまでまだ行っておりませんので、新聞のその点の記事は、私どもの真意を伝えたものではないように私は考えております。しかし、この少年法が現状のままでいいというような考えを持っている方は、裁判所の方にもないと申していいと思うくらい、この少年法は何とかしなければならぬという考えは、関係者一同持っているのでございます。ただ、改正の問題点という点になりますと、これもたびたびこの席で御説明申し上げたのでございますけれども調査審判と処遇をいたしまする機関とが別々の機関になっておりまして、その間に統一性がない。保護を受けます方の少年にとりましては、たらい回しにされるような感じを受ける。これは処遇といたしまして適当でないことは、これまた関係者一同の認めておるところでございます。そのほか年令の問題もございますし、あるいは調査審判に際しまして、検察官も関与すべきではないかというような意見もございます。まあこういったようなことは制度の問題でございますが、こういう問題につきましても、先般もある新聞記事に際しまして、最高裁の家庭局あたりから、やはり厳罰主義じゃなくて保護主義だというような見出しで、何か現に法務省考えておるのは、検事側の意向を代弁しておって、厳罰主義に返ろうとするような動きがあるのじゃないかというような点を指摘しておりますが、それに対しまして、反論というわけでもございませんが、いささか私どもの真意と違う意見でございましたので、追っかけまた毎日紙上に、私どもの担当官から意見を発表しておりますが、私ども考え方を申しますと、厳罰主義とか保護主義とかいうことではなくて、やはりもう少し高次の、治療主義と申しますか、科学主義と申しますか、そういう面に私どもは頭を置いて改正の問題点を考えてみたいという考えでございます。そしてただいまの段階としましては、すでに刑事局におきましていろいろな問題点はもうすでに洗い出しておりますので、さらに、刑事局だけではなくて、保護局、矯正局あるいは法制調査部等の省内の関係部局の方々にも、この九月からお集まりをいただきまして、さらに問題点をいろいろな広い視野から検討していただく。なお、総合研究所のこういう問題の担当官にも参加していただきまして十分検討いたします。それから、最高裁判所の審判を担当しておられる方々、あるいは学識経験者と申しますか、学者あるいはケース・ワーカーの実務関係というような方々の御意見等も徴しまして原案を作成する。もし改正すべき点があるならば、こういう点で改正したいという案を作っていきたいというような考えを持っておるのでございます。  現状はそういう状況でございます。
  22. 赤松常子

    ○赤松常子君 少し安心いたしました。新聞の記事では、その年令を引き上げるということだけが強く書かれていたものですから、まさかと思ったのでございますが、それ以外の改正すべき点、これは、私どももそうありたいと思うわけでございますが、どうぞ九月からいろいろの方を御参集を願って、十分、今おっしゃったように、科学的に合理的に取り上げていただくように、その一環としてゆうべの新聞にも出たのだろうと思うわけでございます。総合対策が出たのだろうと思うのでございますが、どうぞそういう方向にぜひお願いしたいと思うわけでございます。今、高田議員から言われましたように、青少年の不良化、これはもうさまざま、深い社会的な原因もございます。就職ができないとか、家庭が貧困であるとか、特にアフター・ケアの問題など、非常に私ども憂慮しているわけでございますが、単なる厳罰主義で臨まないように、そういう態度を切に要望したいと思うわけでございます。  それからその次に、ちょっと売春法のことでお尋ねしたいのでございますが、先ほど法務大臣売春法改正考えているとおっしゃっておりますが、二、三具体的に私どもも要望を持っております。その前にちょっと一つ、これは過ぎたことでございますけれども、非常に私遺憾に思った点がございますから、お尋ねしたいのでございますが、七月十日に、もうすでに法務省も御承知の売春対策の国民協議会という民間団体がございまして、久布白落実先生ほんとうに熱心にこの売春問題と取り組んでいらっしゃいます。この国民協議会が主催いたしまして、関東地区の婦人相談員の協議会を参議院の会館で開いたのでございます。約百二、三十名、婦人相談員の方及びこれに関心を持っている方々も御参集になりまして、いろいろ政府に対する要望、質問ございましたわけです。そのときに、法務省及び厚生省の関係法律でございますから、それに対する答弁にだれかお立ちかと思ったんですけれども、政府関係だれも……だれもと申しては失礼ですが、責任のある方が御出席なさらなかったのです。で、私、協議会の主催者に、関係当局に御案内状をお出しになったんですかと聞きましたら、ちゃんと出している、こうお答えなのにかかわらず、責任をもって答弁できるお方がおでましになっていない。ある一つの課の課員の方が出ていらっしゃる。満足な答弁ができていない。私、大へん遺憾に思ったんです。こういう民間の方、しかも、第一線で非常に苦労している方々、あるいは法律の解釈があいまいな点を、自分の経験でこうだろうというふうにやっているけれども、自信がないというようなことをほんとうは聞きたい。あるいは将来法の改正に対しても政府に要望したい。予算の面でも、法律の解釈についても、実に幾多意見が開陳されたんであります。そのときに政府当局にこれをお聞きになっていただきたいと思ったんです。どうして御出席なさらなかったのでありますか。非常に私はその点残念でございましたので、まあ過ぎたことでございますけれども、どうだったんでございましょうか。案内状来ていたんでございましょうか。ちょっとその点……。
  23. 竹内寿平

    説明員竹内寿平君) ただいま刑事課の参事官に伺いましたら、御案内をいただきまして、係官を出席せしめたということでございます。実は私、そういう御案内があったこと、私は存じておりませんでしたものですから、事前にわかりませんでございましたが、会議の模様は、メモにいたしたものを上司の方へ出しておるということで、私まだ十分検討しておりませんけれども、そういう状況になっておりまして、まことに申しわけございません。
  24. 赤松常子

    ○赤松常子君 今後も地区別に開く予定でございますから、ぜひ御出席願って、民間の声、第一線に苦労している人の声、要望をどうぞ聞いていただきたい。また政府の所信も、政府の立場も、法律の解釈も正しくそのとき御解明いただきたい、考慮を願いたいということをちょっと要望申し上げておきます。  それから売春防止法について、そのときのいろいろな要望がたくさんございます。きょうは時間がございませんから、すべてにわたることが許されません。しかし、法務大臣もおっしゃったように、今度の国会にこの改正考えているというお言葉に対しまして、今具体的にどういう点を御検討中でございましょうか。簡単でよろしゅうございますが、それを伺って、またその私どもの方の、その会で出た、また私も二、三婦人相談所をずっと歩いて参っておりますので、その所員の方々の御要望も二、三申し上げておきたいと思うのでございます。今、政府はどういう点の改正をお考えでいらっしゃいましょうか。
  25. 井野碩哉

    国務大臣井野碩哉君) 先ほど私が売春法に関しまして所信を申し上げました際、この次の国会で改正案を出すということは申し上げませんでした。と申しますのは、なかなかこういった一年実施したばかりの法案に対して、行政法と違って、刑事罰の方はそう簡単に直すということもいかがと考えておるので、ただこの問題点は、単純売春の問題であるとか、あるいはひもつきの問題であるとか、いろいろありますことは、皆さんからよく伺っております。でございますから、今、事務当局にもいろいろ命じましてそういう問題についての研究はいたしておりますが、これらの問題も、この前の立法の際に相当議論をし尽した問題でございますので、なおその後のいろいろの売春状況を勘案いたしまして、こういう問題を考えて参りたいということを申し上げたんでございます。
  26. 赤松常子

    ○赤松常子君 私、聞き違っていたのでしょうか、それはちょっと済みませんでした。けれども、非常に一年間実施してみたその後の状況というものが、決して好ましくない派生事実がたくさん出ているということは、よく御承知でいらっしゃいますことです。ですから、このまま放っておいていいというわけにもいかないと思うのです。できるだけ早くその問題のある点の解明をし、あるいはメスを入れて、正しく改正していくという、その態度を政府がぜひとっていただきたい。これは私、心からお願いいたしたいと思っております。けれども、その根本的な重要な改正、これはすぐに、急がないとおっしゃっておりますが、やっていただきたいのでございますが、そうでなく、ほんとうに、何と申しましょうか、ちょっとした、技術的にちょっと御考慮願えれば大へんうまくいく、あるいはスムースにいくという面も一、二ございますので、一、二御要望申し上げておきたいと思うのです。  それは、売春した女の人が罰金刑を受けましたときに、これが一時に払えない、これを分割して払うというようなことを考えられないものだろうか。これは、技術の面で操作できるのじゃございませんでしょうか。そういう点がございまして、自分の責任を果すその態度を完成さしていくように、便宜的にはかっていただいたらいかがでございましょうか。  それから、婦人相談所に収容いたしました際に、ほんとうに科学的にやっていかなくちゃいけないということになるのですが、分類してもらいたい。分類のこの専門家をぜひ置いてもらいたい。あるいは普通の地区の少年院でもあれば、そこと連絡をとって、入ってくる女の人のその知能なり性格なりを分類してもらいたい。これも要求されていることでございますけれども、白痴の人、こういう人々が非常に多いので、こういう人々を一緒に収容しているということが決してよい成果をもたらさないことは言うまでもない。ですから、収容している婦人の分類ができるような、そういう取り計らい、これを何とか、この地区に今申しました政府の諸施設の人々との交流、あるいは出張残してもらうというようなことで簡単にできるのではないか。この要望が強く言われた次第でございます。  それから、これは厚生省との御相談で、ぜひ白痴の、精神薄弱児の対策、これが非常に売春婦の更生の場合も大きな比重を占めているのではないか、これも言われておりますけれども、この点で厚生省と御相談下さいまして、全体の精薄児の収容施設拡充、これをもっと本格的に取り上げてもらいたい。こういうことはすぐにも、法律改正と切り離して考えられる問題でございませんでしょうか。精薄児の問題について、どういうお考えでいらっしゃいましょうか。
  27. 佐藤昌之

    説明員佐藤昌之君) 精神薄弱婦人の問題でございますが、お説の通り、現在婦人補導院に収容されます売春婦の知能指数は非常に低い。いわゆる精神薄弱と言っていい女子が相当多く、この対策という問題でございますが、何分補導院に収容されている期間が短い関係もございまして、それからまた、発足早々の施設でもありますので、十分専門家である職員を補導院に置くということが不可能な状況でございます。しかし、先生のお説の通り、この対策というものは、これは厚生省との関係もあろうかと思いますが、厚生省とも協議いたしまして、アフター・ケアの問題としても、これは十分一つ考えていただきたいというふうに、私どもの方でも厚生省に要望いたしている次第でございます。  それからなお、補導院の分類の問題でございますが、分類の問題は、私ども非常に力を入れてやりたいというふうに考えた次第でございます。専門家の養成という点も、私ども更生施設全般として考えなければならぬ問題でございますが、漸次そういう方面に力を入れまして、補導院の方も一つ充実させたいというふうに考えております。
  28. 赤松常子

    ○赤松常子君 最後にちょっと要望を申しておきます。  売春防止法の改正の問題点も、これはよくおわかりでございましょうけれども、まず第一に業者を厳罰していただきたい。この間一つの例としてあげられたものに、一月から六月までに二十二万円搾取している業者が発覚いたしまして、それの罰則が、たった二週間の営業停止で済まされた。これは茨城の例に述べられたのでございますけれども、こういうことでは、ほんとうにあってもなくても同じような罰則ではないか。こういう例を見ましても、そういう悪質な業者がまたはびこっておりますから、これに対する厳罰をもっと強めるという方向に持っていっていただきたい。  それから、単純売春を何とか取り締る改正をぜひやっていただきたい。それからひもの問題、売春をさしているということが自分の生活手段であるという、そういうひもが、悪質なひもが必ずいるのでありますから、こういう人々も、広く売春行為を行わしめたという解釈をとって、罰則の対象にしていただきたい。こういうことは、今度の改正のいっときも早いことを念じておりますが、その点の御考慮を払っていただきたいということを要望しておきます。
  29. 大川光三

    委員長大川光三君) ほかに発言もなければ、本日は、これにて散会いたします。    午前十一時四十九分散会