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1959-10-15 第32回国会 参議院 文教委員会 閉会後第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年十月十五日(木曜日)    午前九時二十分開会   —————————————   委員の異動 十月十四日委員植竹春彦辞任につ き、その補欠として大谷贇雄君議長 において指名した。 本日委員秋山長造君及び豊瀬禎一君辞 任につき、その補欠として高田なほ子 君及び成瀬幡治君を議長において指名 した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     相馬 助治君    理事            北畠 教真君            近藤 鶴代君            吉江 勝保君            松永 忠二君    委員            大谷 贇雄君            剱木 亨弘君            迫水 久常君            杉浦 武雄君            野本 品吉君            二見 甚郷君            荒木正三郎君            高田なほ子君            千葉千代世君            豊瀬 禎一君            成瀬 幡治君            柏原 ヤス君            常岡 一郎君   事務局側    常任委員会専門    員       工楽 英司君   説明員    文部政務次官  宮澤 喜一君    文部大臣官房長 斎藤  正君    文部省初等中等    教育局長    内藤誉三郎君    文部省管理局長 小林 行雄君    文化財保護委員    会事務局次長  田中  彰君   参考人    全国都道府県教    育委員長協議会    会長      木下 一雄君    都道府県教育長    協議会幹事長  本島  寛君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○教育、文化及び学術に関する調査の件  (教職員組合専従制限に関する件)  (伊勢湾台風による文教関係の被害に  関する件)   —————————————
  2. 相馬助治

    委員長相馬助治君) これより文教委員会開会いたします。  まず、委員の変更について御報告いたします。去る十四日、植竹春彦辞任大谷贇雄君が選任されました。   —————————————
  3. 相馬助治

    委員長相馬助治君) 本日は教職員組合専従制限に関し、参考人から御説明をいただき、これに対し質疑を行うことになっております。本件に関しましては先般来、当委員会においてかねて論議を重ねて参りましたが、さらに問題の本質的解明に資するために、本日は参考人出席を求めることになったわけでございます。時間は参考人の御都合によって、特に開会時間を一時間繰り上げ、終りは十二時半ということにいたしました。さよう皆様においてお含みの上、議事に対して御協力賜わりたいと存じます。  議事の進め方については、先ほど委員長及び理事打合会において協議いたしました結果、まず、参考人御両氏より三十分程度今までの経過及び内容についてお話をいただくことといたします。次いで自民党社会党、共産党、社会党自民党社会党自民党という順序で各人より御質疑を願うことにいたします。  なお、終りの時間を十二時半と申し上げておりまするが、本島参考人はやむを得ない事情によりまして、十二時ちょっと前に退席いたしたい旨委員長に申し出られておりまするので、さように皆様においてお含みの上、質疑をお願いいたします。  それでは、これから参考人の方から教職員組合専従制限に関するに件について御説明願うことにいたします。  その前に、まず私より本日御多忙のところおいで下さいました両参考人に対し心より敬意を表し、本日の議事進行について御協力賜わることをお願いいたし、委員会を代表してごあいさつとしておきます。では、参考人の方の御説明をお願いいたします。
  4. 木下一雄

    参考人木下一雄君) 本年八月、全国都道府県委員長協議会におきましては臨時総会を開きまして、昭和三十五年度文教予算等につきまして政府に御要望申し上げますこと等を取りきめました次第でございます。その中に、学校運営正常化管理指導体制の充実について、という項目がございまして、その項の中にただいま今日の議題にもなっております教職員団体専従職員及びその構成等につきましての項がございます次第でございます。その点につきまして全国教育委員長協議会におきまして考えました案としましたことを、骨子を御説明申し上げたいと思うのでございますが、なおこの件につきましては、全国都道府県教育長協議会におきまして、それぞれ各部会に分れまして教育の問題につきまして部会を持っておりまして、その面から十分事務的その他からその部会におきまして研究調査されまして、それにおきまして原案ができました。その原案をもとにいたしまして、私ども委員長協議会としてこれを認めたものでございまして、この原案の作成につきましては十分教育長協議会部会におきまして検討されたものでございますので、私が委員長協議会としてまとめましたものにつきまして御説明申し上げますとともに、私に次ぎまして、全国教育長協議会幹事長である東京都の本島教育長より、さらに私の話を補いまして御説明申し上げることをお許しいただきたいと思うのでございます。  私どもはこの学校運営正常化という立場におきまして、どこまでも教職員教育実績を上げるということにつきまして、中心にこの問題が考えられて参ったのでございます。私ども公務員といたしましても、公務の執行を確保するという建前のもとに、教職員の場合は、十分教育実績を上げるということの点につきまして考慮しました。その結果といたしまして、現在の専従職員、これは認められたものでございますけれども、その点につきましてこれは考えなければならぬという、いろいろの点が出て参ったのでございます。  その、まず一つは、期間の問題でございます。その次は数の問題でございます。  まず専従教職員期間並びに数ということにつきまして検討をいたしました次第でございます。その他なお二、三点がございますが、私は主としてこの面から申し上げたいと思うのでございます。  この教職員専従者といたしまして、長期にわたりまして教育現場を離れますということは、これは今日の教育の進んでいきます状況から考えまして、教育の上に、特に専従者自身の上に非常な私は困ることが起ってくるのではないかと思うのであります。たとえば今日は道徳教育というようなことが、これは新しく時間も特設されまして、その内容等十分検討をして、新しい時代に備えました道徳教育を進めていかなければならないというようなことでございますが、すでに東京とか、あるいは全国を通じまして、教育内容等につきましてはそれぞれ教育者の間におきまして、現場において熱心な研究会が持たれまして、私どもかような研究会にときどき参加しておるのでございますが、その内容等研究につきましては、実に新しい時代道徳教育にふさわしいような研究が積み重ねられていっておるのであります。かようなことが一年積み重ねられ、二年積み重ねられ、三年積み重ねられしていくことによりまして、道徳教育の真価は上ってくると思うのでございます。かような点につきましても、教育専従者として、一年、二年、三年でなく、さらに長期にわたりまして専従であるということは、教育現場にありまして教育のことをさように研究しておる者と比較いたしまして、そこに大きな差ができてくるということは当然であると思うのであります。三年あるいは四年、五年という、あるいはもっと長期にわたりまして現場を離れておるということと、一年、二年、三年ずっと研究を積み重ねていった者と、これを比べますと、非常なそこに相違が起ってくるのであります。全部がさような積み上げていく中におきまして、その間数年ブランクにしておきまして、現場にかりに帰ったといたしましても、その間の教育のすでに進んでおるということの実態と比べまして、現場に復帰いたしましたときに非常に困難なことではないかと思うのであります。もとよりこの点につきましては、自分らも教壇に復帰すれば、直ちにさような、長い閥現場にいた者と負けないようにやるということを言っておる者もあるようでございますけれども、私どもは今日の教育の日々進歩していくという点からいいましたならば、研修を続けておる者には全くかなわないと思うのであります。これはひとり道徳教育の問題ばかりでなく、理科教育にいたしましても、理科教育にいろいろ使われますものも、初等教育初等教育中等教育中等教育におきまして、それぞれ新しく進みました今日の科学を反映いたしましてのいろいろの施設もあると思うのであります。これも数年の長期にわたりましてブランクにいたしておきますことは、これは復帰いたしました後に非常な差しつかえが起るのではないかというふうに考えます。あるいは視聴覚教育一つを取り上げましても、今日視聴覚教育が日々進んでおるというのに、この間数年の間、全然それに触れないで、教壇に復帰いたしました場合に、まことにこれらの人は困るのではないかということは、明らかにこれは考えられることであります。  次に、数の点につきまして申し上げたいと思うのでございますが、これはすでに国の文教施策の中におきましても、すし詰め学級解消ということで、すでに政府におかれましても、五カ年の計画でもって、これが解消に努められておることを伺っておりますのでありますが、これもまた大きな教育の問題であります。ここに私ども教育実績を上げていくということのために、かような教育の場における教育規模適正化ということを考えて参ります。この教育規模適正化ということを考えまして、これを二つの方面から考えますと、一つ学級規模の問題になります。この学級規模の問題につきましては、一学級五十人以下ということで進んで、だんだんと国の予算も進められてくるようでありますが、もう一つの問題といたしまして、一学級教員定数の問題であります。この教員定数の問題は、やはりこの学級規模適正化とともに考えて参らなければならないものでございます。ところが、この教員定数を確保するという問題一つにいたしましても、実はこれは困離な問題があるわけでございます。もちろんこれは予算の面からも、たとえば東京都におきまして、小学校教員定数が一、三一でございますけれども、これをかりに一・三二にするということになりますと、予算措置は相当なものになりまして〇・〇一を増すということさえなかなかむずかしいのであります。また、東京都の現状から考えまして、東京都におきましては、来年度におきまして中学校生徒が七万人ふえることになっておるのであります。その七万人につきましてこれをいかにして収容するか、千人の中学校を七十こしらえなければ来年度の中学校の七万人の生徒の増加に対しては、これを適当にするわけにいかないのであります。かようなことになって参りますと、この現場におきましての教員を確保するということは、教育実績を上げるにおきまして、一人でも実は重要な問題になって参るのであります。東京都におきましては、教員定数の中に専従者も含めておるのでございますが、これは含めておきます。そのほか指導主事等も含まれて参りますが、やはりこれを含めておきませんと、教職に、現場に復帰いたしましたときに困ることになって参ります。どうしてもこれは含めておく。ただいまのような次第でございますので、一人の問題が実にこれは重要な教員の担当する分量になってくるのであります。従いましてさような意味からいたしまして、専従者の数と申しますのは、教育実績を上げる現場の面からいいますと、一人でもこれは現場に確保しておきたいというのが、今日の児童生徒数の激変する時期におきまして重要なことなのであります。東京都におきまして小中学校の一学校規模は、大体二十三学級ないし二十四学級を平均とするのでございますけれども、その二十三学級学校におきまして一年の職員の増減…これは定員を一人増すということは容易なことではございません。その一人の存在ということが実にこれは重要なことになってくるのであります。ということから考え及びまして、おそらくこれは全国学校の場合におきまして通じて考えられることでありまして、ひとり東京都の点から申し上げるのではないのでありますが、具体的な事実に立脚いたしまして東京の例をあげて申し上げた次第でございます。  さようなことからしまして、教育委員長協議会におきましては、この案を作りますときには、教職員組合結成当時の労働協約等によりまして、その構成する組合員およそ千人につき一人という形にいたしました次第でございます。要するにこれらのことは、すべて私ども教育実績を上げるという面から考えて、この専従の問題にまで考え及びましたものでございます。私どもがかようなことを委員長協議会として発表いたしましたときに、一方からは、これは組合運動に対する不当な弾圧であるとか、あるいは政治的意図を持ってするものであるとか、いろいろその間におきまして批評を伺ったような次第でございますけれども、私どもの考えておりますことは、教育実績を上げる現場の点からかようなことが痛切に考えられて参りましたものでございます。なお、この点は本年初めてさようなことが考えられたのではございませんので、昨年の三十四年度の文教予算その他の措置等におきまして、全国教育委員長協議会がいろいろの問題を取り上げましたときにも、この問題は痛切の問題として私どもに考えられ、昨年の要望の中にもこれが入っておる次第でございます。なおしかしながら、この問題はいろいろの点から考えなければならないことでございまして、教育公務員以外の全部の公務員関係する問題でもございますし、これまたILO条約第八十七号等批准に関する答申を拝見いたしましても、あるいはそれに伴います労働問題懇談会の小委員会のいろいろの御報告伺いましても、さような点につきましては十分これは研究しなければならない。たとえ教育実績上ぐるという点から考えられましても、これを正常化のためにさようなことについて具体的に考えるという場合におきましては、関係するところが多いものでありますから、その点につきましては教育委員長協議会といたしましても、十分この点に検討をされるよう、政府に対しましてその対策を一つお考えいただきたいという要望をしたものでございます。しかし、ILO条約答申並びにそれに対する懇談報告等伺いましても、これは業務の正常な運営ということから考えるべきであり、また行政事務に従事する公務員立場というものも考える必要があるというようなことがこの報告の中にも書かれてあるようでございますので、この点は一つ教育委員長協議会といたしましては、いろいろなことを勘案されまして、政府に善処の方法をお願いいたしましたような次第でございます。教育委員長協議会といたしまして、専従問題を取り上げました趣旨は、かような次第でございます。
  5. 相馬助治

    委員長相馬助治君) 続きまして、本島寛君。
  6. 本島寛

    参考人本島寛君) ただいま木下委員長から、いろいろいきさつについてのお話がございました。与えられました三十分の時間の残りの点につきまして申し上げさしていただきますので、従って十分各項目にわたって専従規制内容を詳しく御説明することができませんので、これは後に御質問いただきましてからお答えをさしていただくということで御了察をいただきたいと思います。実はこの専従に関する問題は突如として私ども政府に要求したのではございませんので、すでに三年くらい前から私どもとして何とか現在のようなままで置くことにはいろいろな面で不合理がある、これを是正する方法はないものかということで検討して参ったのでありますが、具体的にこれが教育長協議会で盛り上って参りましたのは昨年からのことでございます。そこで、毎年予算編成の前に、政府なり国会の議員の先生方に私どもとしていろいろお願いすることがございますが、それらを取りまとめるために各部会でいろいろ検討を具体的にいたしました。その際に、昨年第三部会の問題といたしまして、専従問題を取り上げて具体的な検討をいたしたのでありますが、当時の情勢におきましては、今年要望書をお手元に御参考に差し上げたのでございますが、八ページにありますような具体的にこまかく問題を分析して出さずに、専従の人員であるとか、あるいは期間であるとか、その他のことについて、政府でどうか一つ十分御検討をいただいて、はっきりした態度をきめてほしい、そういうことをまことに抽象的ではございましたが、要望したにとどまったのであります。その後政府におかれましては、文部省自治庁といろいろ協議をされ、さらに法制局見解を求められました。その結果、そのうちの一部、つまり勤務条件として、従来休暇扱いをしておったことがこれは不適当であるので、むしろ都道府県の条例に基く勤務条件として扱うことが適当である。つまり、われわれとしては休職として扱うという考え方でありますが、そういう点についての開示があったわけでございます。もちろんこれに関連して専従期間昇給関係退職金恩給計算基礎等についての影響がございますが、その問題のみについての回答があった。しかし、私どもはこの回答のみにおいて直ちに実施に移すということはどうだろうということを考えまして、国家公務員、他の地方公務員にも全部関係がある公務員の処遇については、常に公平という考え方を失ってはならない。権衡を失しないようにしなければならない。そういう点からいたしましても私どもは直ちにこれを一緒実施に移そうということにはまだ踏み切れなかったのであります。ことに多くの問題が他に残されて、まだ政府からの態度としては専従期間はどのくらいが適切か、人数についてどうか、その他の問題については何にもお示しがないので、われわれとしてはもっと具体的に、今度ははっきり内容を出して政府の方の措置をお願いしょうということにいたしましたわけでございます。それがつまり専従中心とし、これに関連した問題を加えて六つの項目に、ここに書いてありますようなことを具体的に掲げまして、政府において十分検討してもらいたい。これは国家公務員地方公務員との関連があるので、もちろんこれは関連のあるということは、国家公務員なり他の地方公務員と違った点も当然あることでありますから、違うものは違うものとして、すべて一緒に同じ画一的な方針を立てて一緒実施するという意味のものではございませんが、違うなら違うなり、一緒にやるなら一緒にやるなりして一つの統一した考え方を打ち出してもらって、その中においてわれわれは実施に移していきたい、こういう考え方でございます。このうち特にILO条約の問題にもちょっと触れてございますが、今日に至ってみれば条約批准の問題も控えていることでございますので、それとの関連をも考えてはっきりした一つ政府見解をお願いしたい、きめてほしいということを要望いたしまして、その態度決定方針決定を待って、私どもとしてはそれぞれ各都道府県なり市町村自主性に応じて、いろいろまたその県なり市町村事情もあると思いますから、それらは県自体市町村自体自主性に応じて決定をいたしたい、こういう考え方で出したものでございます。  大へん抽象的ではございますが、あらかじめ概要だけを御説明させていただきます。
  7. 相馬助治

    委員長相馬助治君) 以上、参考人の方の経過並びに今までの概要について概略のお話がございました。参考人に対して質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 吉江勝保

    吉江勝保君 ただいま御説明をいただきましたことに対しまして一、二いま少しお伺いをいたして、御説明あるいはお教えをいただきたいと思います。まず第一に、きょうはこの専従職員制度の問題についてお伺いをいたしておるのでございますが、この専従職員というものが本質教育公務員に関するものでありますから、専従職員でありましても地方公務員身分あるいは教育公務員身分を持ちまして、そして組合事務専従をいたすのでありますが、組合事務というものと教育行政教育事務というものは、これは純然として別個のものなんであります。教育事務と申しますか、教育に携わりますことと組合事務に従事いたしますことは、これははっきり別個のことなんでありまして、その組合事務に従事いたしまするのに、特に教育公務員がその身分を保持しまして、教員という身分を持って専従ということが許されている。これは何も教育公務員ばかりではありませんが、しかし、こういうような制度教育公務員にも許されている。教育者という、教育公務員という身分を持って、そして組合事務専従するというような、こういう制度が認められましたゆえんのもの、あるいは認められておりまするその理由というものは、これはどういうところにあるのか。まず第一に、その点につきましてお伺いをいたしたいと思います。これは木下さんにお伺いをいたします。
  9. 木下一雄

    参考人木下一雄君) ただいま教員身分をもって組合仕事につくということは、これは職員の職務に専念する義務の特例として認められておるものでございますが、この点につきまして、私どもはただいまの御質問の趣旨にもございましたが、これはさように認められてはおりますけれども、この点は休暇ということでありますけれども休職立場に置かしめた方がいいのではないかというようなところまで考えておる次第でございます。この身分がさような身分のもので、組合事務に尽すということにつきましては考えなければならない点ではないかと思っております。
  10. 吉江勝保

    吉江勝保君 なおこの問題につきまして、都道府県教育長協議会幹事長本島さんにもあわせてお伺いいたします。
  11. 本島寛

    参考人本島寛君) これは、本来ならば組合業務にもっぱら従事する職員は、組合職員であってしかるべきだと思うのでありますが、特に現職公務員に対して、その身分を保有しながら、給与を支給しないというだけで組合業務に専念することを認めたゆえんについては、私はこう考えておるのであります。一つには、組合の正常な活動を育成すると申しますか、それに好意ある協力と申しますか、組合はもちろん自主的な活動をすべきでありますけれども、正常な活動の育成をこいねがうという気持から、それにはやはり現職教育身分を持っておって、身分上将来の身分の不安定がなく、組合業務に専念しているけれども、また必要があった場合にはいつでも現職に復帰できるという安心した状態において組合活動に専念させる。また、そのことが現場にある教師の気持、また仕事、こういうものを一番よく知っておる、そういうようなことから、組合にとってもよろしいし、本人にとっても将来のためにいいのじゃないかということからいたしまして、これは認められた趣旨ではないかというように私どもは考えておるのであります。    〔委員長退席理事松永忠二君着席〕
  12. 吉江勝保

    吉江勝保君 私は、今日専従の問題がいろいろな世の何と申しますか、視聴を集めるような問題を引き起して参っておりますことを解明いたしまするのに一番根本的なことは、専従職員というものも教育公務員現職身分を持っておるものである、こういうことが忘れられておるのではないかと思うのであります。ただその間組合業務に従事する間は、給与組合から受けておる。しかし、これは今もお話がありましたように、給与だけは組合が出すのでありますが、身分地方公務員あるいは教育公務員身分を持っておりまするので、先ほどもお話にありましたように、あるいは休暇終りましたあとは現職にも復帰いたしますし、またやめますときは退職金を受けまするし、あるいは恩給基礎になります年限にも通算されるというふうに、専従期間といえども教員身分を持っておるのでありまして、それだけのものを国なり、地方の財政におきまして、いわば国民の税金におきましてそういうような退職金あるいは恩給、こういうようなものにつきまして負担をいたしておるのであります。従って専従職員というものの考え方は、今日組合に忠実であろうとすれば、今度は教育者としての立場にあるいは反しやしないか。教育者としての職務を行なおうとすれば組合からあるいはつるし上げを受ける、こういうような立場に立ちまして、非常に幾多の気の毒な事例が東京都下にも起っておるのでありまして、こういうようなことをまず第一に解決いたしまする基本的な考え方というものは、専従職員といえども教職員身分を持っておるということが第一義的に認識されておらなければならない。こういうように考えておるものでありまして、そういう立場におきまして、先ほどお話がありましたように、組合仕事におきましても、現場の空気がよく反映いたしますためには、この身分を持っておりますものが組合の役職員になっていく、こういうようなことが考えられて認められた制度ではないかと思っておるのであります。ところが、その制度が今日果してその所期の通りの運営がされておるかどうか、今日の教職員組合活動の状況、あるいはその活動状況の中におきまする、こういうような専従職員がどういう役割を果しておるか、果して地方公務員、あるいは教育公務員としての身分を持っておるものにふさわしいような行動をしておるかどうか、こういうことにつきまして、私は非常に疑いを持っておるのであります。そういう点につきまして、重ねて木下教育委員長の御所見を承わりたいと思います。
  13. 木下一雄

    参考人木下一雄君) 組合専従者としているものも教師の身分を持っておるものであるということから、ただいまの御質問が出たのでございますが、現状を私ども考えまして、まことに専従者としての組合の行動というものには、遺憾な点がはなはだ多いのではないかと思うのでございます。やはりかような地位におきましても、教育者、教師であるというところの身分を持ってのすべての活動でなければならないことは言うまでもございません。さような立場におきまして、ただいま本島教育長からも、さような趣旨のもとにおいて専従意味があるということを申し上げたのでございますが、事実におきましては、さような教師の立場にありますものがいろいろの教育、今日問題が起っておりますが、さような教育の問題が、たとえば教官内容の問題にいたしましても、勤評の問題にいたしましても、どこまでもこれは教育の質の向上という立場において考えられているのでありますが、ややともいたしますと、これが政治問題化してしまいまして、さようなことからして勤評のほんとうの精神も、あるいはこの教育内容である教育課程、あるいは道徳教育というような面の教師としての、これに対する考え方というようなものにつきましても、まことにその解釈に遺憾な点があることと思うのであります。たとえ教育専従者として組合事務に没頭するといたしましても、この点におきましては、やはり純粋に教育立場から考えまして、教育の自主中立という大きな方針のもとに考えていかなければならないと思うのでありますが、さような態度が……ときどき逸脱いたしました行動の現われて参りますことは、まことに遺憾であると思います。
  14. 吉江勝保

    吉江勝保君 次に、私は少しく規則に触れるような問題につきましてお伺いをしてみたいと思います。専従職員の数ということが問題になるのでありまするが、ややもいたしますると、専従職員給与を府県から受けていないと、従って、組合から受けておるゆえに幾らふえましても、教員身分を持っておりまする者が幾ら専従職員にふえて参りましても、それは少しも差しつかえないと、地方の財政に負担をかけておらないから差しつかえないんだと、定数には少しも関係ないのだと、こういうようなことを主張されておる方があるのでありまして、これはこの定数というものは多分予算定数のことを考えておられるのと思いまするが、地方教育行政の組織及び運営に関しまする法律の四十一条には、定数というものをきめなければなりませんので、都道府県でこれは条例できめるということになっておるのであります。この場合の、条例できめまするところの定数というものは、今一部に誤解されておりまするような予算定数というものと、この法律に基きまする条例できめまする定数というものとは、どういう区別があるものか、そういう点につきまして明確に御説明をいただきたいと存じます。これは事務的なことになりまするので、本島教育長さんからお話をいただきたいと思います。
  15. 本島寛

    参考人本島寛君) 専従の数の問題について、給与を支給しないから何人でもよいじゃないかという意見があるのでありますが、定数にも関係がないと、給与定数関係がないから何人でもという前段のお話でございますが、これは少々私どもとは考えが違うのであります。給与を支給しないから、幾人でも組合が希望するだけ多く認めてもよいということには、結論として考えておりません。と申しますのは、あとで定数の問題が出ましたけれども、これは法の定めによりまして、職員定数は条例ではっきり規定しておかなければいけないことになっております。以前は、そうした条例の規定、法の規定があったにもかかわらず、慣行として予算で定むる数をもって定数のごとくに取り扱っていた点もありますが、改正された地方自治法、公務員法等の考え方においては、はっきりこれは条例事項と明定いたしてございますので、それを条例で定数をきめないで、そのほかに職員があるという考え方は毛頭ないのであります。従って、給与を支給しないからといって、定数のほかでは公務員たる身分を保有する道がない、私どもはかように解釈をして実際やっておるのであります。従いまして、給与を受けないんだから、公けの支給を受けないから何人でもよいということにはならない。先ほど木下委員長も申しましたように、一人でも多くの教師を現場では求めておるのであります。また、われわれとしては一人でも多くの教師を現場に送って、より行き届いた教育が行われるように施策することが私ども仕事でなくてはならないのであります。それは一人でも多くを、という考え方で努力をいたすべきであろうと思うのであります。しかし、一面には組合の自主的な活動、また正常な活動ができますことは大へんに大事なことと私ども思っております。言いたいことも言えず、不平不満もぶつぶつ陰で言っておるようでは、ほんとうに先生たちがのり切った気持で、張り切った気持教育仕事に専念することはできない。一人々々ではそういう道がありませんから、組織を通して、自分からの代表を通してそういうことを訴えたり交渉したりして、その向上に努めるということは非常に大事なことだと思っております。ですから、この両方面を考えて、どの辺が一体適当であろうかという判断に立って問題を考えていかなければいけないのじゃないかというように私どもは考えておるのでありまして、給与を受けないからとか、定数関係がないから何人でもよいというような、ある一面からのみ考えた結論を出すべきじゃない、かように考えております。  それから、あとの予算定数と条例の関係でありますが、これは今日ではどこでも予算はその支出をすべき限界点を議会が認めておることでございますから、その範囲においての執行を執行機関がやっていくわけであります。従って、予算の範囲で執行いたしておるのでありますから、現状は必ずしもその通りにいっておりません。    〔理事松永忠二君退席、委員長着席〕  それからなお、定数の問題でありますが、これももちろん定数をこえてはいけませんけれども定数は、予算を動かしたからといって、定数をそのままにしておいたのでは人間をふやすことが許されません。はっきりこれは定数条例の改正をしなければ、予算で金額だけをふやしたからといったって増員する道はないのであります。はっきり人員の基礎というものは定数条例に基礎を置くべきであって、予算基礎を置いて、定数の方を軽く見るべきではないというように私どもは考えておりますから、その両者をはっきり区別すべきである、かように考えております。
  16. 吉江勝保

    吉江勝保君 定数の条例につきましては、御趣旨は明確にわかったのであります。いま少し具体的に入って参りますというと、定数条例をきめますときにはその内容におきまして、現場に、教壇に立ちまする教員の数、あるいは事務職員の数、あるいは結核等で休職になります者の数、あるいは専従職員の数とか、こういうような教育公務員として身分を持っておりまする者の、その都道府県におきまする全部の数というものが定数条例の中にあげられるべきものでありまして、それ以外に、定数条例以外に、給与を受けていないから定数条例以外の者がおっても、それはさしつかえないのだというような議論をしばしば聞くのであります。今申されましたように、こういう点は予算定数条例が明確に違って、定数条例は身分というものをきめておるのだということをお聞きいたしましたので、一応この問題はその程度にいたしまして、次の問題をお伺いいたします。  次は、昇給等の問題でありまするが、専従いたしておりまする者が、休暇をとりまするので、その休暇は大体一年を限度にいたしておりまするが、更新をしてあるいは三年、五年と、こういうように延長される場合もあるのでありますが、こういう専従期間が数年に延びました場合にもその昇給というものは、教育に従事していない、組合事務に従事しております者がこの期間の間に実際に給与は受けないにいたしましても、昇給というものが行われるやに聞くのでありますが、一体そういう事実があるのでありましょうか、本島教育長さんにお伺いしたいと思います。
  17. 本島寛

    参考人本島寛君) お話の通りに、現実におきましては給与を支給しないという定めになっておりまするのに、実際においては専従期間中、つまり全く公務員たる職務に従事しておらない期間も昇給期間に、他の毎日職務に専念している者と同じように昇給を認めておるところが、大体でございますが、半数程度あるように私は聞いておるのであります。あとの半数の点については認めておりませんが、後に現場に復しましたとき、現職に復帰いたしましたときにその期間を計算いたしまして、調整をするという方法をとっておる、この二つの区別が現にあるのであります。
  18. 吉江勝保

    吉江勝保君 まことにこれは不可解な扱い方であります。国家公務員にいたしましても、その専従期間というものが昇給に必要な期間の六分の一以上に当りまする場合には、専従いたしておりまする者の昇給というものは考えられないのであります。こういうようにその期間の制限がありまするのに、地方公務員といいますか、教育公務員は全期間を数年にわたって専従しておりながら、しかもそれが昇給の対象になっておるというような扱いにつきましては、私は了解がいかない。しかし、これは東京都がおやりになっておるというわけでもなかろうと思います。全国のそういう扱いにつきましては、しかるべき方面に重ねて私はお尋ねをいたしたいと思います。  次に移って参りたいと思います。二十分の時間がただいま参ったようでありまするので、私も制限時間を守りまする意味でもう一問だけお許しをいただきたいと思います。先ほど本島教育長さんのお話のように、政府に対しまして、政府方針要望をされまして、その政府方針決定をいたすのを待っておられる、そうしてその方針決定いたしましたならば、各都道府県教育委員会が自主的に専従の制限をおやりになる、こういうように聞いたのでありまするが、この専従制限をいたしまする条例をきめまするその発案と申しますか、そういう根源というものは、もちろんこれは都道府県教育委員会にあるのでありまして、私は、政府にそういうような方針をお聞きになっておりまするために、地方教育委員会専従問題につきましてあるいは条例を制定するということにつきましての権限というものが喪失されておるかのごとくに誤解をされる向きもあるのでありまするが、私は固有の地方教育委員会の権限として、たとえ政府方針要望され、あるいは意見を聞いておられましても、いつでもこれは自主的に地方教育委員会がやろうと思えばやれる権限をお持ちになっておるものと考えるのでありまして、ただいま政府方針をお尋ねになっておるようでありまするが、そういうような要望をされますというと、自主的な地方教育委員会の権限というものはどういうようにお考えになるのでありましょうか。あるいはその間は停止されてしまうのか、その間は失われておるのか、あるいはこういうふうにやはりお持ちになっておりまして、おやりになろうと思えばやれる立場にいらっしゃるのか、その点を最後にお伺いをいたしたいと思います。これも本島幹事長さんにお伺いいたします。
  19. 本島寛

    参考人本島寛君) この点は、私ども部内で検討しておるときにも問題があったのでありますが、どこまでも教育委員会自主性というものを失ってはならない。現にわれわれが要望しておりまする事項でも、都道府県なり、市町村の条例において実行のできる問題を含んでおるのであります。やりようによってはほとんどがそれでできるのであります。ただILO条約との関連で、関係方面の改正を要する問題は別といたしましても、他の問題といたしましては、地方で真剣にやろうとすればやり得る問題でございます。しかし、特に政府見解をただしましたゆえんは、先ほども触れましたが、地公法にございますように、公務員給与とか、その他の処遇については、他の公務員との権衡を失しないようにしなければいけないということは法定もされておりますが、法定を待つまでもなく、当然そういう配慮をしなければいかぬ。ことに給与等については、民間の給与さえも考慮しなければならない趣旨が盛られておることから考えましても、やはり公平、権衡を失しないようにという考慮が常にその衝に当る者には考えられなければならない大事なことだと思っておりますので、従って、国家公務員なり、他の地方公務員においてもまだ具体的にこれらの施策が講じられておらないさきに、他の県が、われわれがいろいろ問題にいたしたからといって、まちまちでやるということは、とりもなおさず、非常な権衡を失する、公平を失するようなことにもなりかねないので、ことに教育公務員については、全国同じ職種にあるものでございますから、共通のものであればできるだけ同じような処遇を講ずることがよかろうという考え方もございまして、それには自治庁、総理府、あるいは人事院等含めまして、国家公務員地方公務員関係を掌理している文部省自治庁、総理府、その他政府機関においてもちろん検討していただきまして、そして政府見解を求めて、それを伺った上でわれわれとしては実施したいというのが基本的な考えであります。しかし、それはどこまでもわれわれの参考としての御意見を承わるとか、あるいは政府の統一ある措置を願うとかいうことでありまして、実施の衝に当る者は教育委員会なり、あるいは地方公共団体でありますから、この公共団体の自主性教育委員会のみずからの仕事というものを決して私どもは忘れておるものではございません。従って、かりに政府の統一した措置とか回答がなくとも、現にある都道府県なり市町村がやろうと思えばやって少しも差しつかえないものでありますし、私ども委員長協議会なり、あるいは教育長協議会は統一した見解なり、行動はいたしますけれども、個々の委員会仕事には関与しない、当然のことながらこれは堅持しているつもりでございますから、それらのことは委員会が照会をしたからということで何ら制肘を受けるものではございません。
  20. 吉江勝保

    吉江勝保君 ありがとうございました。終ります。
  21. 松永忠二

    松永忠二君 一つお尋ねをいたしたいわけでございますが、この職員団体というものが、地公法が成立の事情から考えてみて、従前、古いときには労働法を適用して、公務員も俸給生活者であるというところから、民間企業の労働者とほとんど変らない適用を受けておった。それが昭和二十二年の二・一ストに基くマ書簡に基いて、政令第二百一号が出て、その精神に基いて地公法というものができたわけです。こういうことを考えてみたときには、職員団体には公務員である職員であると同時に、賃金労働者であるというような意味の性格と二つを合せた職員団体の性格があるように私たちは考えているわけであります。これについて、木下さんはどういうふうなお考えをお持ちかどうか、これを一つお尋ねをするわけであります。
  22. 木下一雄

    参考人木下一雄君) ただいまの御質問の通り、教育者もまた労働者であるということは、これは認められておることでございますので、私は教師も労働者であるというふうに考えておるのでございますけれども、しかし、教師である労働者はやはりそこに教師の身分を持った労働者でありますから、そこで、本務とするところの教師としての立場はどこまでも守られていかなければなりませんし、またその職とするところのものは十分尽していかなければならないと思うのであります。その点は考はさように一応思っておるのでございますが、さらに今後の問題としましては、かような点におきまして、もっともっと考えていかなければならない点があるのではないかということも考えております。
  23. 松永忠二

    松永忠二君 重ねて今の点についてもう一回お尋ねをするわけでありますが、あなたの、職員団体というものは、公務員としての性格と同時に、また労働者としての性格とを持っている、あわせた団体だというふうに、お話だと思うのでありますが、再度、職員団体というものが法できめられ、あるいはそれに専念する専従者が認められておるということについては、憲法の二十一条とか二十八条の勤労者の団結権とか、あるいは交渉権という、いわゆるそういうような性格の上から出てくる面とあわせ持っているということによって、そういうことが規定されていると私たちは考えるのですが、簡単にそうお考えになりましたら、そうだということをお答えいただきたいと思います。
  24. 木下一雄

    参考人木下一雄君) 私もさように思っております。
  25. 松永忠二

    松永忠二君 それではお尋ねするわけでありますが、これは本島さんにお願いをいたしますが、今、本島さんもお話しになりましたように、現在の専従者については昇給を認めているところも半数ある、それからまた昇給を認めなくても、現場に復帰をすればその期間については調整をしておるというようなお話もあるわけであります。同時に、またいろいろ御検討のようでありますけれども、現在国家公務員地方公務員休暇という形で与えられているわけなのであります。そしてまた私が申し上げるまでもなく、自治庁の行政実例の中にも、「専従休暇期間はその後職務に復帰した場合、昇給昇格の期間に算入され、またこれらの期間恩給法による在職年に含まれ、かつ同法四条の二の適用をしないと解する。」、つまり恩給期間を半分認めるということもしないで、恩給期間にそのまま認めていけという、そういう行政実例が昭和二十六年の二月の九日に出されておるわけであります。こういうことは職員団体の、先ほども申し上げたように、要するに労働法を適用された当時の考え方、憲法で規定をされていることと関係のある考え方、そしてまた地公法の中の不利益取扱いをしてはならないということに関連をして行政的にそういうものが行われているとわれわれは考えるので、これについてはあなたは、今までこういうことが行われたことについて、どういうところに基いてこれが行われたとお考えになっておられるのか、その点を一つお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  26. 本島寛

    参考人本島寛君) ただいまお話にありましたように、従来の扱いが本来から考えると、私どもとしてはおかしいと思うのであります。全然職務に従事しておらない者が職務に従事しておる者と同じように昇給をされるということがあるということ自体がおかしい。これは先ほど申しましたように現在はやっておるのでありますが、地方公務員においても国家公務員において不行政の実例、義としてあるのでありますけれども、これ自体がおかしいので、私どもとしてははっきりした見解政府に求めたわけなのであります。つまり国家公務員にも関連する事項として求めたのでありまして、申しますれば、私どもとしては従来扱っておるはっきりこの職務に従事しておらない、組合業務だけに専念しておる者に対して、そうでなく毎日職務に専念している者と同じように昇給することは適当でないということは、はっきりとした私ども見解を持って政府にその方針をただしたわけです。  それからあとの調整の問題でございますが、これは私はやはり先ほど二十六年の行政実例の例で引用されましたように、その趣旨はくんでいいというように考えておるのであります。たとえば民間業務に従事しておった過去の経験年数も、これはある率によってこれを見まして俸給共準等をきめるという考え方が現にあるわけでありまして、これはそういう点から考えまして、組合業務に専念した期間というものを全然計算から除外するということは至当でない。ただし、フルに毎日業務に専念しておる者と同じように見ることも適当でないという考え方で、後に適当な率において国家公務員等との均衡を失しないようにして調整することは私どもとしてはいいというように考えておるわけであります。
  27. 松永忠二

    松永忠二君 私がお尋ねしたのは、不合理が一部あるとかということを申し上げておるのではなくて、そういうことが現実に行われてきたということについては、どういう意味からそれが行われているとお考えになっているのか、それが不合理であるとかどうとかいうことでなくて、そういうことが現実に行われておるのはどういう事情に基くとあなたはお考えになっておるかと、そこをお聞きしておるわけです。
  28. 本島寛

    参考人本島寛君) これはいろいろな見方や考え方があると思いますが、私なりの見解で申しますと、法律には給与を支給しないということが明定してあるのですから、その通りに処理すればよかったはずであります。ところが、実質的には給与を支給したと同じように恩給計算なり、退職給与金の計算の基礎になっておるということで、法律の趣旨というものがそのままに行われておらない。これは戦後にいろいろな行政の実例におきましても、とにかく行き過ぎがあったり、あるいは誤まって運用されたりしたことがなしとしません。こういうことはだんだん秩序の回復と同時に是正していくべきである、本来こうあるべきだという姿に是正すべきであるという考え方でありまして、私どもはその原因が、当時は組合といろいろな話し合いの中におきまして、このような問題が処理されて参ったのでありますが、それらについて当時のいきさつを詳しく今申し上げるだけの資料を持っておりませんけれども、少くとも私はそういう点は本来のこの法の趣旨なり、またこうあるべきだという姿から見て不合理だというふうに考えております。はっきり理由がどうであったという点についてはまことに不十分な説明であろうと思います。
  29. 松永忠二

    松永忠二君 私たちの考え方としてもやはりそういう面のあるということについては、あなたの申されたように、その後復帰の場合、調整する必要があるということを申されているのは、やはり職員団体というものは、団結権があるというようなことは憲法にも規定されているごとであり、労働組合法も適用されていることであるので、そういうような意味から、そういうことについての配意というものがなされているのではないかと思うのであります。  そこで、とにかくあなたは昇給を認めることについてはどうだと、こういうお話もあるわけでありますが、その後の調整は必要だ、民間もそうやっているので、均衡もあるというお話だといたしますと、今度あなた方がお考えになっている条例でこれをきめるということになると、全くその人数も期間も一方的にきめられてしまう。今千人に一人だということであっても、条例で変えようとすれば、二千人に一人にすることもできるし、三年に期間を考えていても、その次にもう二年の方がいいとお考えになればすぐ二年にもできる。こういう一方的にきめられる条例でこれを規制していくというようなことについては、従前の考え方より非常に幅があるようにわれわれは考えるわけです。こういうやり方について、それが正しいとお考えになられる点は、どこに根拠をお持ちになっているのか、非常に差があるように思うのですが、この点について再度本島さんの一つ御意見をお聞かせ願いたい。
  30. 本島寛

    参考人本島寛君) 私は、条例できめればこれは一方的であって、二年でもあるいは三年でも、いつでもそういうふうに必要があればきめられるという状況のもとに置かれ、まことにこれは一方的ではないか、それが正しいと思うかというようなお話でありましたが、私は条例とか、法律できめることは決して一方的だという先入的の概念は持っておらない、最も公平なきめ方の一つであるというふうに思っております。協定なり、協約も公平なきめ方の一つでありますが、条例できめるやり方も同様それに劣らざる私は公平なものだと思う。決して条例できめるからといって不合理な、突拍子もないことがきめられるはずはございません。私どもも常に仕事をやります場合、議会に議案を提案し、その慎重な審議を経て執行しているのでありますけれども、どこからでも不合理なり、足りないところがありますれば、これをつかれ、是正されまして、ほんとうによりよいものになって執行されるというのが、今日の私は民主行政のあり方だと思う。そういう面から考えまして、決してこの条例できめますことが一方的である、それが非常に職員に対して圧迫になるというような条例のきめ方というものは一つも私はなされないだろうというふうに考えているのでございます。
  31. 松永忠二

    松永忠二君 そこで、再度私関連でお尋ねするのですが、先ほど労働組合、労働者としての面が職員団体にあるということであり、そういう精神をくんで一つのいろいろな措置がなされているということを考えてみると、こういう問題については労働組合では団体協約というものによって当事者と交渉して、了解の上でやられている、そういうふうなことについて、やはりそういうことをやられている方々も、やはり少しせっかちに過ぎるではないか、もし運営に一部いろいろな点があるとしても、こういう点についてやはり先ほど申したように、古く労働組合法を適用されている面もあるし、そういう性格を持っていることを考えてみると、労働組合職員団体に決定的な影響を及ぼすところの職員団体の人数であるとか、あるいは期限等の問題は、やはりそれが条例という形で実施をするというよりは、やはり相互の理解と話し合いのうちになされることが妥当ではないかということが、成立の経過からも職員団体の性格からいっても、妥当ではないかというような意見もあるわけでありますが、こういう意見については、本島さんはどういうお考えをお持ちでしょうか。
  32. 本島寛

    参考人本島寛君) 私ども職員をもって構成した職員団体と任命権者の間でスムーズに取りきめがなされる、これが合理的に執行されて公務の運営等に何らの支障を来たさないような状況下でありますれば、あるいはこのようなことを政府要望しなかったかもしれないと思うのであります。残念ながらなかなかこういうことが、こうすることが妥当であり、合理的である、必要であると考えても、なかなか今日ではスムーズな協約、協定を結ぶとか、話し合いをするとかいうようなことができかねる状況であるのです。理想的には公務員をもって組織された団体のことでありますから、罰則の規定が設けられたり、年限とかいろいろなことが規定される制約というものははずされることが私は理想だと思うのです。そういうことがなくても、公務員のお互いの良識、任命権者と相互の良識によって処理されていく、こういうことが、法律や条例できめられないことが私は理想だと思うのでありますが、現実にはなかなかそうは参らない。やはりこうあるべきだという仕事を執行いたしていくためにはどうしても条例で規定してもらう、それでも足りないことは法律をもって規定してもらわなければ正しい一つの公正な教育仕事を執行する上においていろいろな支障を来たすので、お考え方は、私は理想として、話し合いで、協約できめていくという考え方を決して否定するものではないのでございますけれども、現実の問題といたしましては、私どもはこうしていただく必要を毎日現実の仕事から実は切実に感じて、お願いしたわけであります。
  33. 松永忠二

    松永忠二君 木下さんにお伺いをするのでありますが、この職員団体、教職員組合というものは教職員一つの団体であるという性格もあるわけでありますが、こういう面で、あなたは教育実績を上げるという意味において、やはり教員組合職員団体というものの非常な協力を必要とするものであるというふうにわれわれは考えているのでありますけれども、こういう考え方について木下さんはどういうお考えをお持ちでありましょうか。
  34. 木下一雄

    参考人木下一雄君) この教職員組合には、地方公務員法に定めます職員団体といたしまして、職員給与、勤務時間、その他勤務条件を改善するというような立場にできておるものでありまして、また厚生施設等につきましても適当な目的を持っておるものにつきましていろいろ交渉を持つことがでる、こういう建前のものでございます。しかしながら、教職員組合としましてさような立場のもとにおいて教育実績を上げるということに、ほんとうの意味におきまして協力をされるということでありますならば、これは私ども教職員組合とともに十分その点につきましては協力をしていきたいと思っているものでありまして、教職員組合の存在は、結局日本の教育の質の向上、全体の教育の円滑な運営ということにあるのであるということは私どもも十分承知いたしております。
  35. 松永忠二

    松永忠二君 そこで、本島さんにお伺いいたしますが、今理想という言葉をお使いになりました。とにかくそういう考え方の方がいいと考える、しかし現実はどうもそうではないしというお話であるし、木下さんからも、職員団体の任務、役割というものは非常に重要であるということは認めている、しかしそれがなかなか思うにまかせずというお話もあったので、そこで教職員組合があなた方のお考えになるような運動というようなものが必ずしもできてないことについては、専従期間が長い、専従者が多い、あるいは性格を逸脱をしている、政治運動をやっているというふうなことについて、これはなぜそうなっているかという点について、教育行政をやられる立場から、皆さん方として、何か皆さん方の方にも原因を持っているのではなかろうかという反省をお持ちでありましょうか。そういう点は、やはり一方的に教職員組合の責任だとお考えになっておられるのか。何かやはり皆さん方は地方で行政をやられていて、中央の行政というか。教育行政を通じてみて、やはりそこも問題はあるけれども、ここにも問題があるということをお考えになりながらお仕事をやっておられるのか。その点について、本島さんはどういうふうなお考えをお持ちであるか、木下さんはどういうお考えをお持ちであるか、お二人からその点についてお伺いしたいわけであります。
  36. 本島寛

    参考人本島寛君) 私から先に御指名がありましたから申し上げますが、これは決して相手を責めるというだけの、またそういう態度をもっていくよりは、常々お話にもございましたが、自分らのやっていることをよく反省し、また相手の言っておりますこともよく聞きながら十分考えていくところに問題の解決なり進歩なりがあるというような態度は私ども失わないつもりでいるわけでございます。決して一方的に教組だけの責任を責めるというような考え方ではありませんし、むしろ私どもは教組と申しますか、教師こそは教育の効果を上げる基本的なファクターなんだ、教育が人によって行われる限りにおいては教師を除いて教育は考えられないわけですから、もっとも身近かに私は教師というものを考えていく立場、さらに見ますれば、私どもは最も強い教師の味方であるはずである、またそうなければならないのであります。ですから、相手方の責任だけを問うてということは私どもは決して考えておらない。そこで、今教職員組合がやっている闘争というようなことについて考えてみますれば、私が多くの説明をいたすまでもなく、はなはだしい行き過ぎが多いのであります。これが教職員団体活動であるかと思わしめられるようなことが、今日日常全国的に、また地方的にも繰り返されているわけであります。私どもはそれが一体、どうしてこういうことが起っているのだろうかということをいろいろ考えてみますときに、これは問題はいろいろあるでありましょう。終戦後における教師の生活水準が低かったことであるとか、あるいは教育の諸条件が悪かったということとか、社会情勢、これは教師の、あるいは教育の社会だけじゃない、一般社会の状況、いろいろな影響等、原因もあると思う。しかしながら、私どもはその一つの中に、やはり専従職員というものが長い間教育現場から離れて指導者の仕事に専念していってしまう。他の労働組合とタイアップして、あるいはその組織の、大きな組織の中に入って、そうして安保条約の改定とか、あるいは警職法の問題でありますとか、いろいろ政治問題、外交問題と一緒にして教育の——本来教育の問題であるべき問題が、一緒にして同じ闘争を繰り広げられるということに対して考えますと、やはりそこに今の専従という問題にも原因の一つがあるのではないかというふうに考えたわけであります。つまり、そういうような労働運動のプロというような立場に立って企画をし、これを采配を振っていくということが、現場の教師としては実に割り切れないような行動が現に行われているというように考えているのでありまして、私どもは先ほど申しましたように、決してこれを、組合を圧迫するとか何とかでなく、正常な組合活動をしていただくならば、だれよりも尊重するという態度でいきたいのであります。ただ行き過ぎを是正しなければならないということから、いろいろの面を考えているだけでありますことを申し上げておきます。
  37. 松永忠二

    松永忠二君 それじゃちょっと木下先生のお話を伺う前に、私はそういう角度でなしに、そういう点については皆さん方のいろいろお話を聞いているけれども教育の行政をやられる立場の者から言うと、やはり何か地方行政に問題があるのか、中央行政に問題があるのかというように、こういう自分の方にも問題が一つ、こういう点は非常に困っている、こういう点もやはりこういう行動を起す一つの原因だと考えるものが自分の方にもあるのかないのかということを、向うの方のことだけを私聞いているのではありません。そういう点はよくわかっております。そういう点について、自分側の原因としてこうは思っても、こうだと思うけれども、こういうことについてはやれないので、こういうことについてますます向うの仕事を激化していくのではないかという、自分の方のお考えになっていることを簡単に一つ、時間もありませんので、もう一点だけ聞いて私おしまいにします。
  38. 木下一雄

    参考人木下一雄君) 教職員組合の性格につきましては、ただいま申し上げた通りでありまして、さような立場において、私は教職員組合立場を大いに認めているものであります。さようなことからいたしまして、今日教育行政に携わる者といたしまして、特に教育委員会委員長といたしまして、教育行政を行なっていくというただいまのお求めによりまして私はお答えいたそうと思うのであります。教育委員会というものが、教育の中立自主という立場におきまして行なっていくという、その教育委員会の使命につきましては、私は十分理解をして、日々の仕事に尽しているつもりでございます。しかるところ、実際この教育の、現実との交渉を考えてみますと、数年来からいたしまして、教育課程の改正に伴いましても、教育行政に伴いましても、また勤務評定に伴いましても、まだこれから教育の問題として取り上げられるものは相当あると思うのでありますが、現にこれはまだ形になっておりませんですけれども、今日の状況から考えますれば、教員養成の問題のごときも、教育の実際面から考えて、大いにこれは早急に解決をしなければならないものと、かように思っているのであります。ところが、現在教育課程、あるいは道徳教育、あるいは勤評の問題にいたしましても、これが教育行政立場から実施いたそうといたしますと、円滑に行われていないということを痛切に感じております。これはどなたも御承知でありましょうと思うのであります。全国におきましてさようなるがゆえに、国民一般も教育に対しまして非常な不安を感じておる。あるいは教育の危機ではないかといわれておる。あるいはさようなことからしまして、非常に教師というものに対する世間の信頼まで失われるというようなことがあるのではないかということを私は教育委員会委員長としてまのあたりにさような事実を見ておるのであります。その一体原因はどこにあるかということを私は考えてみますと、これらの教育課程の改善にいたしましても、道徳教育にいたしましても、勤評の問題にいたしましても、一連のこれにつきましてはある解釈がつけられまして、これは政治権力のために行われておる一環の政府の施策であるというようなふうに考えられる、私はさようなことを非常に遺憾に思うものであります。教育委員教育課程の改正を必要とするということは、現場教育の実際を考えまして、今日の基礎学力をもってしてはとうていこれはいけないのだ、もっと向上させなければならないのだというようなことは、もうこれは現場に職を持っておる者から見ればまことに当然のことで、また今日道徳教育を進めなければ、もっともっと国民に道徳的な意識を高め、社会にいたしましても個人にいたしましても、もっともっと倫理の観念を持たなければいけないんだ、倫理をもって行動しなければならないのだということがある、さようなことの立場から道徳教育実施されなければならない。かような問題につきましても、これが何か政府文教施策というものから一連の解釈をされますゆえに教育が私は混乱してくる、さような考え方はどこから出てくるかと申しますと、おもにこれは組合の方からさような点につきましての解釈がされて、さようなことから非常な摩擦が起って参りまして、ことに数年来の勤評の問題のごときは、これは私は都道府県教育委員会が責任を持って行わなければならないところの純粋なこれは教育の問題だと思って私どもはこれを実施いたしておるのであります。その純粋に教育の問題であるということを確信をもって行なっておるにもかかわらず、これを政治権力をもって教師を統制するものであるというような解釈がつけられる、ここに今日の教育が何事につけても混乱が起ってくるのではないか、そういうようなことが主としてさような点につきましての解釈がつけられ、反対の中心になるところのものが教職員組合であったと思う。またそこに中心専従職員がいて、これが私は先ほど期間あるいは数の問題を申し述べたのでありますけれども、実際の教育現場に対しまして、はなはだ認識不足のところが実際あるのではないかということさえ感じさせられることがあるのであります。さようなことからいたしまして、教育行政に携わる者といたしまして、今日の組合の行き方につきましてはまことに遺憾なところがあるというふうに感ずる次第でございます。
  39. 松永忠二

    松永忠二君 時間が参りましたので、最後に私はやはり組合のいろいろな行動について、いろいろな御意見等も聞くことも非常にありがたいし、またそういうお考えがあると思うのでありますが、やはりその責任の中には地方行政、あるいは中央の教育行政をやっている者の方の責任はないか、自分たちの考えておることはやはり全部正しいし、またその法律の解釈等についてもいろいろな解釈をやっていたものが急に変更になってきて、実施をしなければできない立場にある地方教育委員会のそういうような苦しい立場もおありになるのではないか、あるいは任命制教育委員と公選制教育委員のそこの間にくる一つの責任感とか責任体制というようなものについても何か問題があるのではないかという、そういう実際おやりになっている逆な立場の方からのお話もお聞かせをいただきたいと思っておりますが、いずれもそういう点についてはお触れになりませんでしたが、今後そういう点についても一つぜひまたお考えをいただきたい。特にお話のありました先ほどの是正の理想ということではなくて、何かやはり一部にも非常にせっかち過ぎるのではないか、一方の論理に重点を置き過ぎるのではないか、公務員ということだけを強く出して、それだけで規制していこうという考えがあるのではないかというような批判も多いし、私たちも一部そういう考えを持っておりますので、慎重に一つお考えをいただきたいということを、これは御答弁をいただかないで、お二人の今の御意見をお聞きしまして、自分としての考えを一応申し述べたわけであります。ありがとうございました。
  40. 千葉千代世

    千葉千代世君 先ほどから教員組合の行き過ぎということを再三おっしゃっておりますけれども、終戦後今日まで十四年の間全国の教師たちが営営として日本の教育の民主化のために働いて参りましたけれども、それらの点について教員組合の果した役割の中で、このことがほんとうによかった、こういう点について木下さんからお答えいただきたいと思います。御存じになっている範囲でけっこうでございます。たとえば私どもの考えの中では終戦後の青空教室の中で環境整備の問題やら、あるいは教育財政の問題、たくさんの資料を整えて当局に教育予算の要求というような面について営々努力して参りました幾多の実績がございますし、また教育の法規に関しましても、私どもはいつも教育文部省に奉仕するのではなくて、国民に奉仕する、こういう観点からお母さん方や、お父さん方の御意見をよく尊重いたしまして一生懸命に現場の中で取り組んで参ったわけでございます。また教師の勤務条件につきましても、たとえば世界に類例のない産休補助職員法にしましても、今の日本のどこの労働法規にもなかったし、あるいは条件の中にもございませんでした。この産休補助職員法を作りますにも、当時は調査の問題についても政府もなかなかできにくかった。そういう中で現場の二十四万の女教師たちが始めて一人々々の調査を出して、その科学的な調査をもとにして法律が作られていったし、またたくさんの実例がございます。それから教育研究にしましても、何か組合に出ておりますというと、非常に研究がおろそかになるというようなことをおっしゃっておりましたが、そうではございませんで、逆であるということを私は証明したいと思っておりますが、そういう点につきまして一つ木下さんが今までごらんになった中で、教員組合がほんとうにこういうようなことを、いいこともしているのだということを、一つお知りになる範囲で述べていただきたいと思います。具体的にお願いしたいと思います。
  41. 木下一雄

    参考人木下一雄君) 教職員組合教職員団体といたしまして、今日までいろいろの点に尽してきました、そのいろいろのよかったと思うようなことをあげろということのお尋ねでございます。私もこれをだいぶ認めております。たとえば職員給与の問題であるとか、あるいは勤務時間というようなことにつきましては、特に給与の問題等については、それがために教員給与の面におきまして、相当の今日教員がこれが組合のおかげであったというふうに考えておるように、組合の功績があったというふうに認めております。  また、ただいま産休の点につきましてお話がございましたが、確かにこの問題のごときも組合がさようなところで骨を折られたために日本は特別のかような状況になったということに大きな力をいたされたということは私も認めております。これはアメリカなぞと比べますと、全く日本はありがたい国でありまして、これは日本の教職員はかような日本の産休のような制度ができておるということにつきまして、もっともっと意識してありがたいと思ってこれに向わなければならないほどのものだと私は考えております。さようなところに力をいたされたということを私は認めるのであります。だいぶ前のことになりますけれども、アメリカばかりではないと思うのでありますが、お産をするときには休みの間の教育を頼む人は自分で、お産をする人みずから自分の休み中の先生を探して、そうしてこの人が私がお産の間、休む間責任を持って引き受けてくれるから、私はこれでお産のときに休みますということで、自分の休んでいる間の教職は自分が責任を持ってかわってやってくれる人を探してやる、そうしてさらにその人の報酬と申しますか、給料と申しますか、それはやはり頼んだ人がやるというふうになっておるにもかかわりませず、日本では相当の期間安心して休養ができるというようなことであります。かようなことに骨を折られたということも確かに認めるのであります。  また、教育予算等におきましては、これはもう現在でもそうでございますが、私どもは毎年東京都の場合におきましては、都教組並びに高教組と予算のことにつきましては、十分組合の方で研究されましたところのものを提出し、またそれの説明を丁寧に伺うことをいたしております。ついまだ一週間ほど前でございましたが、現に都の高教組の人たちが私どものところに参りまして、来年度の予算等につきましては、かように組合としては研究し、かように要望をしたいということを申し入れて参りました。私ども東京都の教育委員は全部参加いたしまして、さような組合からの研究を丁寧に聞きまして、教育予算につきましては十分この点についてはそれをいろいろ私ども予算を編成するに当りましてはそれを使っておるということも確かでございます。というようなことで、組合がさような面におきまして尽してきておるということは私も認め、現に組合とのさような面においては話し合いも十分しておる。話し合いをしているということは、さような立場における教職員組合の存在を認めておるからであるわけであります。また、教職員組合として研修をしておるということも私もよく存じておるのであります。しかし、教職員組合の研修ということにつきましては、はなはだ熱を持ってやっておるようでございますけれども、これにつきましてはまだまだこの研究をし深めていくという点におきましては、もっとやってもらいたいというふうに考えておる次第でございます。
  42. 千葉千代世

    千葉千代世君 今木下さんがおっしゃったのですけれども、今外国でお産をした場合に自分で見つけて云々ということをおっしゃいましたが、それは多くの国の中でごく一部にはあるかもしれませんけれども、少くとも私が調べました範囲では、やはり国の社会保障と関連いたしまして、そうしてやはり母体を守る、国の責任で守る、教育者の場合も文部行政の責任で守ると、こういう点で少し違う意見を持っておりますし、また十分保護されておりますが、その点は今省略いたしまして、二番目に伺いたいことは、専従が三年以上だというと非常に教育にマイナスになる、本人のためにも非常にマイナスになるのではないかと、こういう点をおっしゃったわけでございますが、その点についてやはり三年以上の専従が何人あって、そしてどういう点が具体的にマイナスになって、こういう点に困ったという実例がございましたら……。先ほどはただ概念的にこういう点で道徳教育については、これこれ困るのではなかろうかと、こういうふうにおっしゃったのですが、その点を伺いたいわけですが、それに関連いたしまして私は今度の全国教育長協議会あるいは教育委員長の会合で要望されました点については、組合を弱体化していくのではなかろうかと、こういう心配を持つのでございます。なぜならば国家公務員法並びに地方公務員法では、職員職員団体を結成して代表者を選んで、当局と交渉することを認めております。で、これは憲法上の勤労者の団結権に基くことはもちろんでございますが、反面からすれば公務員の場合でも職員団体が結成され、あるいは職員の代表者が当局との間に職員の意思を反映して交渉していく、これは公務員の管理上とかいろいろな点に都合がよいという理由でございますが、それだからこそ現職公務員の中から、組合専従する職員を認めて、種々の便宜を提供しているのではなかろうかと、そう解釈しているわけです。ですから、これは組合専従者現職と違う特別な不利益を課することは、職員団体を認めた趣旨と一致しないのではなかろうか、その点、専従休暇休職に改めると先ほどおっしゃったのですが、ちょっと聞くともっとものように見えますけれども、その底にあるものはやはり、それでは組合の役員になるというのを逡巡する人もないではない。そうすると、組合の役員のなり手をなくし、組合活動を弱めるだけの効果がそこに浮き上ってくるのではなかろうか、こういうふうなことを私は心配するわけであります。また今問題になっておりますが、ILO条約の八十七号にも明らかなように、役員はだれでもこれを選ぶことができると、こういう権利があるわけなんです。だから干渉されるということはない。これはやはり近代的な労使の関係の慣行ではなかろうか、こういう点では私は専従者役員を何人にするかということは組合自体の問題であって、一年でいけなければ一年でかえる、ほんとうに組合員の権利を守り、輿望をちゃんとになって行動しない役員については組合の中から、もうあの人はいけないから今度はやめてもらおう、選ばないようにしよう、こういう点について非常なきびしい批判が行われて、そこでいつも組合の役員の選挙のときにはだれがよかろうかということでもう真剣に討議されて、そして選挙されるわけです。してみますというと、一年々々で選挙していくわけですから、もう新しく一年また一年、こういう中で三年、四年、五年となっていくことについては非常な民主的なやり方ではなかろうか、これは私前にも申し上げたことがございますが、東京都に関係する問題ですけれども、終戦後組合の役員が一生懸命になって組合一緒になって教育の民主化のために努力してきた。当時占領下でございましたが、前の教育長のときでございましたか、デッペルさんという大尉ですが、組合員は三年以上専従なんということはけしからぬ。三年以上やるものは沖繩へ重労働にやるから覚悟せよというので、みんなのことをよく言いきかせるから集まるようにというので、神田の教育会館の四階にみんな集められたわけです。そうしてデッペルさんから言われたわけです。そのときに、当時占領下ですから大ていのことは何でもきかないというと非常にきびしい制約があったわけです。けれども、みんなで話し合って、ほんとうに裸の中からやっていく中から、血と汗で築いた自分たちの団結権というものを、組合のありがたさというものを知っておりますために、こんなことで縛られてはならないのだ。これこそ占領軍の干渉ではなかろうか、教育長しっかりして下さいというので、当時宇佐美教育長だと思いますけれども、今宮内庁にいらっしゃる、それは大へんだ、それは行き過ぎではないか、それでは私からも教育の行政をやるものとしてこういう点は非常に民主化を阻害するから、一緒にGHQに行こうではないかということで、陰ながら再三御交渉下すったし、組合自体の方としては、それならばみんなでしっかり、重労働されるなら全部行こうではないか、そういうことで討議いたしまして、そのことはお断わり申し上げたわけです。逆に司令部に私ども行きまして、そういう占領政策で非常に行き過ぎなんだから、あなたの方でも出先きの行政の任に当るデッペルさんたちをよく監視してほしい、監督してほしいということを言ったわけです。そうしてそのデッペルさんが呼ばれて、間もなく送り帰されていったわけなんです。そうした中で考えていきました場合に、やはり組合干渉ということが強く浮き上ってくる。なお、その後専従の問題についても当時は無制限におりましたから、これはやはり少し整理していこうではないか。その時分には組合の役員、専従者全部、国と地方で給料を持っておったわけです。給料の予算のやはりワクがあるから、国で払うのだから、地方で払うのだから、だから千人に一人にしようではないかということになったわけです。その後、今度は組合費の中から専従役員の給料を払う。そうなりましたので、千人に一人になったという根拠は、当局で給料を払うからということで、そうなったわけなんです。そうしてきますというと、今度千人に一人をよりどころとなさった点については、人数の問題から先ほどおっしゃったのですけれども、その点についても多少まだ問題点があるのではなかろうか、特に学校のような場合には他の労働組合の職場と違いまして、学校が方々に分散しているわけなんです。そういう点について人数についても特殊な条件もあるのではなかろうか、こんなことを考えております。そういう意味からいたしまして、一挙に千人に一人とか三年以内とか、こういうことをおきめになったという点について私は、非常にこれは組合の弱体化をねらっていくのだなという、そこにあるものを感じるわけなんですが、それでマイナスになったという具体例についてお答えいただきたい。これは木下さんに。
  43. 木下一雄

    参考人木下一雄君) ただいま専従期間並びに数ということにつきまして、これは組合を弱体化するという趣旨になるのではないかというようなお話でございました。私どもは重ねて申し上げますように、職員団体としてのこの教職員組合を十分認めておりますので、さようなことからいたしましてこれを弱体化する意味において考えておるものでないということは、一番最初に趣旨としても申し述べたことでございまして、デッペルが組合考え方というものについて、さような意見を述べたのかも存じませんが、私どもはさような立場ではございませんで、教育の実質を向上させるという立場から、数は一人でも少い方がいいのだということと、それから三年ということを一応全国教育委員長協議会におきまして取り上げておりますが、これはまあさように書きましたのですけれども、私どもやはり教育行政をやる者として、というよりは、かようなことを考えましたのは、教師の立場として考えたものであります。およそ教師として教壇に立っておりますと、まあ私、これはいろいろ個人になりまして、まことに根拠が……、人の問題になるかもわかりませんが、およそ教師仲間の通念といたしまして、教壇で御経験のある方もおありと思うのでありますが、三年ということは、学級経営者にいたしましても、学校経営をする者にいたしましても、一つの私は考え方の更新されるときではないかと思うのであります。三年一つ学級の経営いたしますと、初めてその学級経営ということにつきましては一段と進んだ一つ考え方が出てくる、これは教育者の経験としてだれも体験を持っておることである。これを同じことをして六年かりに学級経営者としておりますと、この三年に反省なくして六年まで続けて参りますと、これはもうきわめて安易な教師の生活になるということを私は見ておるのです。一つ学校の校長にいたしましても、三年目には一つ仕事が考えられる、同じようなことを六年いたしますと、もう全く惰性でもって校長をやるというようなわけで、校長としての気が抜けるというようなことも考えられる。とにかくこの三年を一期といたしまして、教師の生活というものは一つの段階を積み上げていくのではないかというのは、私ども教育の経験者として考えられる。その三年をかりに現場から離れ、さらに引き続きまして六年を現場から離れるというようなことになりましたならば、教師が一年々々積み上げていくところの教育実績というようなものが、まことに空疎になってしまうということをおそれて、さような立場から申し上げたのであります。しかしながら、この職員団体としての教職員組合の存在、並びに先ほどもこのILO条約のことも、ちょっとこれに触れて申したのでありますが、これによりましても、やはりこのILO条約の根本精神は業務の正常な運営ということがやはりそのもとにおいての考え方であろうと思うのであります。従って、それによるところの国内法との関係とかいうことが考えられてくるであろうと思うのでありますが、これは将来の批准に際しての問題になってきますので、私どもはかようなこともよく考えまして、さようなことも十分今度は教職員組合立場において考えなければなりません。さようなことからして、検討すべきところがまだ十分あるから、これは一つ政府のようなところで検討してもらいたいということでありまして、くれぐれもこの教職員組合の弱体化というようなことでなく、教育実績を上げる立場から痛切に感じまして、これを実施するに当ってはかような条約もこれから批准されることでありますが、そこには業務の正常な運営という立場から考えられるということであってみれば、この検討一つ政府でやって、この教職員組合職員団体としても考慮を払い、また教育の質を向上するという意味におきましても、その点に考慮を払っていただくような御検討をいただくというふうにお願いをいたしました次第でございます。
  44. 千葉千代世

    千葉千代世君 今お話を伺っておりますと、専従役員がいかにも現場教育にはノー・タッチで、そして影が薄れているようなお話でございましたが、私はそうではないという見解を持っているわけです。具体的には、御承知のように全国教育研究協議会という中には、現場の教師が昨年は三十五万取り組んでおるわけです。たくさんのテーマの中には一つ一つ集団を作りあるいは学校の中で、それから分会役員、それから教組の専従役員もその中に入りまして、十分に検討をしているわけなんです。そして積み重ねて参りましたが、そういう中の実績を見ていきますと、制限時間がございまして、ここで資料がございますが、詳しく申し上げることのできないのは残念でございますが、非常に広い視野に立ってほんとうに教育的な良心によって、そしてこれを推進していく、この推進力の一部になっておるということも事実でございます。そうして考えていきますと、単に技術的な問題だけではなくて、日本の教育を行なっていくためのほんとうの中心になるものは何であるかという点、そういう点からずっと解明されていっているということが、私は幾多の例でこれを知るものでございます。専従の問題がございますので、専従役員を三年以上やっているとマイナスになるということも、この間文部省からもそういうお話がございましたので、どうしても不思議でたまらないというので、東京でやっていらっしゃる三名の方で、今現場に復帰していらっしゃる方の御意見を聞いたし、実績も聞いたわけですが、決して現場に劣らない、むしろまさっているという事例を見たのでございます。これは後に譲りまして、もう一点だけ、先ほど他の労働組合の役員専従の方々の均衡を失するような問題と、給与の問題があげられたわけでございますが、ちょうどこれは九月の二十八日に、石原自治庁長官が、今のところ一般地方公務員国家公務員には専従の制限を行う必要がないと、こういうふうな意見を述べられているわけです。そういう点でずっと考えていきますときに、一般の地方公務員その他について制限を行う必要がないという御意見があるのに、教育公務員の方だけが制限を行う必要があるというのは、逆にこれは均衡を失するように仕向けているのが、あるいはそういう結果になっていくのじゃないかと、こう考えるわけなんですが、その点についてお答えいただきたいと思います。
  45. 本島寛

    参考人本島寛君) これは、おそらく、石原長官が言ったというお話を引用されたのでありますが、これは一般地方公務員にとりましては、教育公務員のような弊害と申しますか、行き過ぎと申しますか、そういう点がないのじゃないかと思うのです。現に知事部局と教員以外の地方公務員におきましては、人数についても全国的には千二百人に一人くらいということであります。それから実際問題として、そう長く従事しているものはまことに少い。はっきりした今数字を持っていませんが、非常に少いということでありますし、また先ほど来申しますような、いろいろな活動の面から見ても、教職員組合のような激しい政治闘争をやっているのは、私はそう聞かないのであります。一部にはあるのでありましょうが、全国的にはそういうところまでいっておりません。私ども身近の東京都におきましても、実際その通りであります。知事部局においては、三千人余りについて一人程度の専従しか置いておらないのでありますから、かりに私どもが要請いたしましたようなことがよろしいという政府方針がきまりましても、実際に適用する場合においては、国家公務員なりあるいは一般地方公務員には適用の余地がない、またそういう必要が起った場合には適用を受けるわけでありますが、現在においては必要がないのじゃないかと、こういうことでありますから、私の先ほど申し上げましたような、他の公務員との権衡を失するということにはならない、かように考えているわけであります。
  46. 千葉千代世

    千葉千代世君 今おっしゃったのですが、たとえば他の職場ですと、一つの会社なら会社が固まっているとか、あるいは国鉄さんとか全逓さんとか、ずっと固まっておりますね。ところが教員の場合ですと、先ほど申し上げましたように、非常に地域が分散しているわけです。そういう特殊の条件もございますので、その点については私も意見を持っておりますが、時間が切れましたので後に譲りたいと思います。どうもありがとうございました。
  47. 野本品吉

    ○野本品吉君 専従の問題がいろいろの角度から論議されておるのでありますが、私は今までの論議、御質問等に漏れた点についてお伺いしたいのですが、最初にどうしても申し上げておかなければ気が済まない問題は、これは私が申し上げるまでもなく、私は教育あるいは教科というようなことが行われる本質的な条件、そういう作用の行われる根本的な条件というものは、これは信頼ということだと思うのです。その信頼というのは、教師、父兄、児童生徒相互間における絶対信頼の上において、特にほんとうの意味における教育、教科の作用が行われる、現われる。そこで本日この委員会専従の問題が取り上げられ、その他ずいぶんと回を重ねて委員会でいろいろな問題が論議されますが、問題はこの三者間の信頼感が薄らいだと申しますか、ここにあろうかと思いますので、この三者の間の信頼の薄らいだことは大げさであるかしれませんけれども、むしろ日本の悲劇だと私は思っております。教育行政を担当される方が営々として努力され、また行政の面から努力され、政治に関係を持っておりますわれわれが政治の面から教育の問題についてこんなに精力を傾けるということは、要するに一日も早くこの三者の間の信頼を取り戻して、そうしてすなおな形においてはつらつたる伸び伸びした教育の行われる境地の建設、ここにあろうと思うのです。本日の専従の問題もかような形において取り上げられておるのでありまして、私は要するに、これもまた三者の信頼感をどうしたならば取り戻せるかという立場において問題を考えたいと、こう思っておる。そこで、先ほど来いろいろと御論議がありましたが、専従というものがなぜ教員たるの身分を保障されて認められておるか、このことにつきましては先ほど来御質問もあり、また教育委員長さんからもお話がございましたが、要するに、教育の場の実態をみずから体験しておる人たちによって教育の場の諸問題が処理されることが一番よろしいということが一つ、もう一つは、身分を保障しつつ専従を認めるということは、やがてその人が教壇に復帰するということを前提に置いて考えられておることと、かように考えておる。そこで、先ほど千葉委員等からも御質問があり、また木下委員長からも御答弁もありましたが、たとえば教員の待遇をよくするとか、あるいはすし詰め学級解消するとか、あるいは産休の助教員を特設するとかということで、教員組合の皆さんがお骨を折られたということを言われ、また認められておるのでありますが、それこそが実は私は職員団体としての正常な活動であって正常な運営であって、そういう点に、この職員団体としての教員組合が専心努力し真剣に取り組んでいくということならば、おそらくこういう問題は起ってこないのじゃないかと、私はそこまで考えるのです。そこで、そういうことはまあ意見になってきますから差し控えまして、私はきわめて簡単な問題を一つ伺いいたしたい。その第一は、先ほど千葉委員から御質問があって、お答えがはっきりなかったようでありますが、東京都にいたしましても、全国にいたしましても、専従職員専従としての勤務年数の大体一番長いのはどのくらいになっておるか。一番短かいのはどのくらいであるかということを教育長さんの方が御存じかもしれませんので、その点をちょっとお尋ねいたします。
  48. 本島寛

    参考人本島寛君) 専従の扱いは、御案内の通り一年々々これを承認されておりますけれども、同じ人が選挙によって組合の役員に選任されて申請された場合に、それが今の都道府県の全体の認めている数の範囲でありますれば、従来の扱いといたしましては、これは何回重なっておっても認めてきたのが実績であります。従いまして、その実績から申しますと、一年の者から長いのでは十一年のような、最初からの者もおるわけでございまして、全体として見ますと、十年以上勤務しておる者が、たしか二十八人現在おります。それから四年以上勤務しておりますのが三二%、それから六年以上が一六・一%おるわけでございます。従って、この両方で四八%余りが四年以上ということになっております。そのうち、十年以上が今申しましたように二十八人ということでございます。
  49. 野本品吉

    ○野本品吉君 今の十年以上が二十八人ということでありますが、それを裏からまた私はお伺いしたいのですが、この十年以上専従として勤務されております先生方は、教壇にどれくらいおられたか。
  50. 本島寛

    参考人本島寛君) 専従を長くやっておる先生たちで、そう年をとった人はおりません。その以前の在職年数を、今正確に一人々々の調査をした資料を持っておりませんけれども、一番多くても四十代くらいのところでございます。三十代、四十代のところでありますから、十年の専従経験以前においてそう長い教育経験を持っているとは考えられないから、年令から計算してもそういうことが言えると思います。
  51. 野本品吉

    ○野本品吉君 極端なことをお聞きするようですが、一番短かい方というのはおわかりになりますか。
  52. 本島寛

    参考人本島寛君) まあ一年承認というのが二九%程度、一二年目になってこれが継承されるかもしれませんが、まだ初めてという者が二九%。
  53. 野本品吉

    ○野本品吉君 これは、専従の在職期間の問題がいろいろ問題になっているようでありますが、十年以上専従されておる。いろいろ組合のためには御功績があったことだと思いますが、最初申し上げましたように、それが教壇に復帰するということを予定して身分が保障されておるということになりますと、その点に相当考えなければならない問題があるように考えるのですが、その点についての見解はどうでしょう。
  54. 本島寛

    参考人本島寛君) 私どもは、さっきも木下委員長から申されましたように、大体教師がいつでも現場に復帰して、支障なく本来の教師としての職務が執行できる期間というものは、一般的に見てどのくらいであろうということをいろいろと過去の実績等から見まして検討したのでありますが、できる限り現場から離れることが一日でもない方がよいことは言うまでもない。やむを得ざる事情によって現職から離れる場合でも、できる限り短かい方がよろしいことも言うまでもない。ことに今日のようにいろいろと教育内容が、一日一日とその研究活動もいろいろな機関なり、相互の間においてなされている際に、これが何年も何年も離れておるということでありますと、事実教師自体がまごつくのであります。先ほど千葉委員お話にもございまして、非常に教員研究活動が旺盛になったことは事実であります。これは、現場におる教師の研究活動が非常に旺盛であることは私もはっきり認めておるのであります。専従をやっていますと、専従のその先生方が非常に忙しい組合仕事を担当いたしておりまして、まだ足りないということを常々聞いておるので、これらの人たちが教育課程とかあるいは指導方法とか、そういう専門的なことについて専心指導と研究するというようなことは、時間的に私はないように思う。そういうことを現実に私ども聞いておるのであります。実に過労に陥っておるというくらいに今の状態ではやっておる。従って、専従の人たちが一生懸命十分に教育研究をするとか研修を積むとかいうことは、事実上私は専従期間中においてはできかねると思う。現に三年以上も離れて現職に帰った場合においては、受け入れ側でもかなり問題のあったことをいろいろ私ども聞いておりますし、東京都のうちにおきましても事実そういう問題もあったわけであります。これはやはり現場から長いこと離れておって、激しい現在のような闘争活動に入っておりますと、教師という職務と非常にそぐわない日常の生活が繰り広げられていく、そういう期間も大体三年くらいが限度ではなかろうかと見たのであります。従来、今申しましたように、職場を離れておっても——やむを得ざる事情で離れておっても、これは復帰し得ることを認めた他の例から言いますれば、一番長い例でも三年である。三年というのは、結核休養上特に必要である場合ということでありまして、その他の場合においては三年という長いケースはないのであります。そういうことから見ましても、まあこの辺のところが限度だろうと、別に科学的なものさしではかって三年を出したわけじゃありませんが、できるだけ短かい方がいい。しかし一面、組合の方の活動の不当な抑圧になってはいけない。そこで、本務たる教職にそう大した支障なく復帰できる年限を三年くらいというように見た次第でございます。
  55. 野本品吉

    ○野本品吉君 次に、これも実際問題なんですが、専従決定の問題でありますが、先ほど来伺っておりますというと、専従は、分会といいますか、地方教職員組合で選挙によってこれを決定する。これは一応そういう手続をとるのは当然でしょう。その場合に、私がお伺いしたいのは、たとえば小学校の場合よりも中学の場合等に多いと思うのでありますが、ある学校に理科の先生がおると、その学校の最近の科学技術教育の基本的な教養としての理科教育を甲という先生が担当しておる。その人がいなくなれば、そこの学校理科教育の水準というものが低下せざるを得ない。こういうような場合に、そういう人が専従として選挙されたとき、一体どういうふうになるか。その場合に、やはりそういう理科にたんのうな者がいなくなったことはその学校の不幸だから、これを他から補充するとか何とかいうようなことになるのでございますか。
  56. 本島寛

    参考人本島寛君) これは特に中学校においてそうでありますが、その教科担当の教員専従として認められました場合、その場合には教育委員会としては支障の起らないように同じ教科の担当の者をそこに配置する。ときによりますとなかなか、今技術についてのお話がありましたが、こういう特に専門教科の点については、直ちにその後任を得られないという場合は事実上はあるのでありますけれども委員会としてはそういうこともできるだけ起らないように考えてやっておって、これは現実に、理窟からいえば、校務の方に支障がある場合にはあるいは断わっていいんじゃないかというように考えるのでありますけれども、実際問題としては、組合が選挙して、そうして定数の範囲内で専従を承認してくれという申請を出してきました場合においては、教育委員会の方でいろいろ苦労をいたしまして、そうしてまあなかなか教科によりますと直ちに得られない場合がありましても、ずいぶん苦労をして後任の補充をするというのが実情でございます。
  57. 相馬助治

    委員長相馬助治君) 野本君の発言中でございますが、委員長として一言申し上げ、議事に御協力願いたいと思う点がございます。本島君は、当初に私が述べましたように、十二時にはどうしてもここを退席しなければならないので、私としてこれを認めております。従いまして本島君に対する質問をなるべく簡潔にやっていただいて、野本君の次に荒木君からどうしても本島教育長にそこの席にいるうちにただしたいとの通告がありますので、その点を考慮に入れられて、野本さんには大へんお気の毒ですが、一つ御協力を賜わりたいと思います。
  58. 野本品吉

    ○野本品吉君 今の専従の選任と教科担任の問題で、私は組合の諸君が、そういうその学校教育水準の向上と、ある者を専従として推薦するということについて、これは相当慎重な態度をとってもらいたいということを希望しておりますし、同時に教育委員会あるいは教育長等、教育行政のことを担当されている面におきましても、私はその学校教育水準の低下を予想される上にもかかわらず組合の推薦に従うというようなことにつきましては、これまた一応の警戒をしなければならぬという、これは意見になりまして失礼でございますが、申し上げておきます。  次にお伺いいたしたいと思いますことは、先ほどちょっとお触れになりましたが、私はやはり専従をされておられた方も学校へ帰ってりっぱな先生としての活躍をしていただくことを希望するわけなんですが、専従を長くやられた方等が教壇に復帰する場合に、私の地方におきましても歓迎されない実情があるわけであります。中には学校の先生自体が歓迎しない、あるいは父兄がこれを歓迎しないというような場合があるのでありますが、そうなってきますというと、職員団体のために非常に骨折ったことが結局その人の一身上非常に気の毒なことになってくるので、この問題も大きな問題として考えなければならぬと思う点ですが、そういうような実情について、どこのだれということでなしに、そういう場合が相当あるかどうかについて一応教育長にお伺いしたい。
  59. 本島寛

    参考人本島寛君) これは具体的な事例でありますが、学校なり人の名前は遠慮さしていただきますけれども、今お話のありました理科担当の教員規模の小さい学校で一人であるという際に、その者が専従に選ばれていろいろ苦労をしてあと補充した。そういう際に、これは教科は違うのでありますけれども、事実は、ケースは同じようなことがあります。後に今度その者が現場へ復帰することになった。そうすると、前の教員が現におるわけでありまして、そこには同じ教科に二人の教員を置く必要はない。置けば楽には違いないのであります。それでは全体の教員配当の上に支障を来たすのであります。それもその学校に職がある、籍があることでありますし、その専従期間における活動状況から見まして、その教育委員会なり学校としては、どこかほかへ回してくれということを強く要望しておりました。しかしながら、これに対しては相当苦労をいたしまして、何とかほかへ回そうということで苦労をしておったのでありますけれども、相当知名の士でありますために、なかなかとるところがありません。ようやく頼んで、二年もたって適正配置ができたという実例もございます。それも教科の関係でございますが、またやっぱりその組合を代表して活動をせられるとはいうものの、非常に闘争歴等から見まして、自分の学校から選んだに違いないのですから、喜んで引き受けてくれてよさそうなものでありますけれども、事実はなかなかそうでないところがございまして、かなり説得をして、この学校でみんなが選んで出したのだ、みんなのために働いたのだから、現場へ復帰する場合ぐらい喜んで受けてくれということで、受けさせる場合もあるのであります。こういうようなことは、どうも好ましい例ではございませんけれども、ともかくも、また、本人自身においても、長いこと教壇を離れておった、相当教育内容等も変っておるので、自分は直ちに現場復帰する自信もないというようなことで、これは他の職場に、研究所の庶務的な仕事に回すとか、教育委員会の他の職につけるとか、そういうことで私どもはやってきている例もあるのであります。東京都の二、三の例でございまするが、最近における例ではありますけれども、他の地方にも、ずいぶんこの問題を討議するときにいろんなケースで困っているというような話もあった次第であります。
  60. 野本品吉

    ○野本品吉君 まだ時間は相当かかりますが、荒木君に……。
  61. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 時間もないようですから、簡単にお尋ねを申し上げたいと思います。  先ほどのお話の中にもありましたし、また、私どもの手元にお配りいただいておるこの書類も拝見いたしたのでありまするが、専従者の問題について、あるいはこれに関連をして重要な六つの点について、従来の解釈あるいは扱い方を相当大幅に変えていこうと、こういう御意思のあることがはっきりとたわけですが、まあ全体的な問題は差し控えまして、私は、この六つの問題について、十分教育委員会側のお考えを理解することができませんので、この機会にお尋ねをしたい、かように考えておるわけです。  その第一点は、この専従者の取扱いについて、従来は無給休暇の取扱いをしていた、ところが、今回はその取扱いを改めて休職扱いにしたいと、こういうお考えのようです。これについては、私は二つの点で疑点があるのですが、一つは、休職扱いにするということは、専従職員にとっては相当不利益な結果になる。これは申すまでもないわけです。どういう必要があってこういう従来の取扱い方を変えて、ことさらにこの不利益な結果が生まれるような取扱いをしようとお考えになるのか。その点が第一点です。  それからもう一つは、そのときどきの——これは政府なりまた皆さんが、教育委員会の方々が、そのときどきによって扱い方を変えていくという態度ですね、これは私はよくわからないのです。これの基礎になっている——専従職員基礎になっている法律は、これは地方公務員法に規定されているわけなんです。ですから、根本になる法律は一つであって、その取扱い方が——あるいは解釈がと言ってもいいと思うのですが、ときどきによって変ってくる、しかも、それが相当専従職員自身にとっては利益不利益の結果が生まれてくるような問題について、そういう、ときどきに解釈が変ってくる、あるいはときどきに扱い方が変ってくる、こういう態度は、私は好ましくないというふうに考えているわけなんです。根本の法律が一つであれば、その扱い方も、これはやはり一貫してあるべきはずだというふうに考えているわけです。それが一点です。ですから、第一項の、休職扱いをする——なぜ不利益になるような扱いをしなきゃならぬのかということが一点。法規上いずれにでもできるというなら、できるだけ不利益にならないような扱いをすることが教育委員会としても思いやりのある扱い方ではないかというふうに私は考えています。そういう点についてお尋ねしたい。これは本島先生に一つ……。
  62. 本島寛

    参考人本島寛君) 最初の専従者の取扱いでございまするが、従来、無給休暇として職務の専念の義務を免除する特例という扱いをいたしておりました。これを考えてみまするのに、利益不利益ということでなくて、最初には、どう扱うべきかということが考えられ得るのでありまするが、休暇という概念からいえば、一般公務員に対する年間の休暇は二十日である。休暇というものが、そう何年も何年も休暇扱いというようなことは、私は休暇の概念といううちからおよそ遠い扱いではないだろうか、かように考えておるのです。実際職務に専念をしないということをはっきり公けの措置として認めて、それが休暇だというようなことは、はなはだ他のケースから考えても私は不均衡な扱いになってくるのじゃないだろうかと思うのです。外国へ行っていろいろ教育の勉強をしたいからと、自分の希望でどうか一つ認めてくれという場合におきましても、長い間職場から離れておることはそうは認められない。自分の必要で研修をさせてくれという、職務上大事なことでありますけれども教員現場を離れるということは非常に直接の支障を来たしますから、どうしても最小限度にこれを認めるという考え方が立つのでありまして、そういう無給休暇の場合なんというかりに休暇を認める場合におきましても、非常に少いことで考えられる。それ以上、三カ月以上にもわたって研究したいというような場合におきましても、これは休暇の扱いをするというのがこれは各地方を通じての従来の扱い方なのであります。  先ほどもちょっと触れましたように、結核対策として特に教育公務員特例法で認めた三年ということは別といたしまして、それ以外にはそういう長いこと認めているということは考えられない。で、私どもといたしましては休暇扱いという、休暇の概念からいってほど遠い扱いになるので、これはむしろ休職扱いにした方がいいのじゃないかということは考えたのでありますが、これもわれわれ勝手の解釈で、従来の行政実績もあることでありますから、変更することもいかがというので、政府にその解釈を求めたのでありますが、大体私ども同感でありますけれども法制局からもそういう回答文部省自治庁の照会によってなされたのであります。この実施に移ります場合には、今、荒木委員お話にありましたような、従来の扱い方の変更になって参ります。一つの法律の解釈がまちまちになってみたり、それがぐらつくようでは、行政の安定は期せられませんから、われわれとしては慎重に取扱いをすべきであるということからいたしまして、その公文による回答は得ておりまするけれども、いまだこれは私ども実施に移しておらないのであります。この実施に当りましてはさらに、解釈は解釈としてできたのでありますが、これをやる場合においてはさらに他の公務員に関する問題等もありますことで、国の方でも十分検討して一つ考え方を立ててもらいたい。それによってわれわれは実施をしたいということなんです。  それから、およそこうあるべきだという点から見まして、現地の扱い方は決して合理的な正しいその解釈なり法の解釈に立って行われてきているのではないと思いますから、ここで改めますれば将来この問題が、法律が変ればいざ知らず、同じ法のもとにおいてこれがぐらつくということは考えられない。従来の扱い方について是正すべき必要のあることは、実績のあることでありますから、慎重の上にも慎重を期する必要はありますけれども、どこまでも、やっていることはやっている、しきたりでやるのだということではいけないと思います。正しいやり方には私は変えていいのじゃないかという考えなのであります。  それから、地公法の認定に変更がないのに、どちらかといえば休暇扱いの方が非常に専従にとって利益である。それが不利益になるから、どちらにでも扱えるならば有利に扱っていいのじゃないかという、これも一つの私は考え方であろうと思います。また、場合によってはそういう考え方をして処理しなければならぬこともあろうと思うのでございますけれども、この場合におきましては、私どもとしましてはどうしてもこの休暇という概念でこの専従だけを特別扱いするということはおかしい。すでに身分を持ちながら組合仕事専従して、いつでも組合の方の線からはずれてくれば現場へ復帰できるというかまえをもって認めておるということに、私はそれ自体大きな便宜供与だと思うのです。その上、法に支障を来たすような考え方、それから現場で働いても働いていなくても同じ処遇をするという不合理、こういう点はやはり是正してしかるべきではなかろうか。休暇扱いをしておく限りにおいては、当然その場合においての、現在もやっておりますような考え方で昇給の対象をほかの人と一緒にしてみたり、あるいは恩給にしても、一時退職金給与の計算の基礎を同じようにしてみたりすることは、私どもとしては不合理に考える。それらの給与の必要があるならば、専従期間給与を支払わないという法の考え方からして、組合で負担してしかるべきではないか。身分の保障をして置く、いつでも復帰できるということが私は十分なる処遇ではないのだろうかと考えるのです。
  63. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 専従者の問題について、地公法の規定は五十二条の第五項が私はたった一つの規定じゃないかと考えておるのですよ。その第五項の規定は、御承知の通り「職員は、地方公共団体から給与を受けながら、職員団体のためその事務を行い、又は活動してはならない。」という規定です。これは裏を返せば、専従職員給与を受けてはならない。こういう規定なんです。そのほかには私はどこにもこの法律には具体的な規定はないと思うのです。でそういう点からいけば、やはり職員団体の健全な発展といいますか、育成といいますか、そういう見地から立てば、やはり専従職員が非常に不利益になるような解釈を特別にしてやっていくという必要はないというふうに思うのですよ。給与を受けてはならないという規定だけしかないわけです。ですからその範囲内では、私は現行の解釈が間違っておるという解釈は全然とらないのです。これは見解の相違になりますから私はこれ以上申しません。本島先生がそういう解釈をされる、あるいは教育委員会が最近になってそういう解釈をせられる。これは解釈せられるんですからやむを得ないと思います。しかし、私どものようにそう解釈しておらない者もあるということを御承知願いたいと思うのです。ですから、こういうふうに変えれば、今後確固不動のものだ。非常に御信念はけっこうですけれども、それは解釈も相当あると思う。今後これらの解釈をめぐって裁判所でどういうふうになるか。そういうところまでいくかどうか知りませんけれども、結局この解釈は、少くとも今の規定からいえば、私は現行の解釈がそう無理な解釈でないという考え方も立つというふうに考えておるわけなんです。これは意見になりますから差し控えますが、この点は今も慎重にしたいというお話でしたが、非常に私はけっこうであると思うのです。よほど慎重にしていただかないと、これを条例できめるといっても、今の法律からいって給与及び勤務条件以外の問題について条例できめるという場合には、教育公務員だけをきめるわけにはいかない。私はそう考えておるのです。この点は本島先生どういうふうにお考えになっておりますか。
  64. 本島寛

    参考人本島寛君) 私は、勤務条件については条例事項になっておりますので、その勤務条件のうちに専従というものをどのように認めるかということを規定することは、規定の仕方としては正しいやり方だと思う。この点については私は法制局見解が正しいのじゃないかと思うのでありまして、従ってこういう、かりに専従に関しての休職の扱いとする場合とか、あるいは専従を三年だけ認めるとか、同一人について、そういうことを条例事項として規定することは、法の規定に私は矛盾するというようには解釈をいたしておりません。
  65. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 今の問題について、地方公務員法の二十四条の第五項ですが、「職員の勤務時間その他職員給与以外の勤務条件を定めるに当っては、国及び他の地方公共団体の職員との間に権衡を失しないように適当な考慮が払われなければならない。」という規定があるわけなんです。ですから、これらの問題が考慮されないで、教職員団体にだけそれらの条例が適用されるということは私はあり得ないのじゃないか、先ほどこう言っていたわけなんです。
  66. 本島寛

    参考人本島寛君) 私が最初に申し上げましたように、いろいろ問題点を具体的に出したのでございますが、この実施につきましては、国家公務員なり他の地方公務員との権衡を失しないように処理しなければならない建前から考えまして、そこで政府に十分なる御検討を願って、それに対する対策を立ててほしいということで、冒頭に掲げまして具体的に六つの問題を出したのであります。十分なる政府の御検討の上の方針がきまるのを待って私どもとしては実施に移したいという考え方でございます。
  67. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それから第二点の問題としてあげられているのは、千人に一人——大体の基準としては専従職員は千人について一人、こういう考え方のようですが、しかもこういう考え方はどこから出たかということについては、「教職員組合結成当時の公務員の労働団体の在り方が打出されたときのいきさつ等からみて、」そういうふうに考えた、こういうふうになっておりますが、これは私も当時実は政府といろいろこの問題について話をいたしましたので、若干事情を知っておるわけなんです。その当時は、教職員組合結成の当時は、給与を受けながら専従職員として活動したわけなんです。今と非常に事情が違うわけなんです。その当時政府は確かに千人について一人ぐらいにしたらどうかという話がありました。しかし、そのことはうまく話が成立をいたさなかったのですが、しかし事情がだいぶ私は違うと思うのです。当時は給与を受けながら専従をやっておったわけなんです。ですから、これを例にとって千人に一人、こういうことは、やはり事情が違う上に立っているのですから、私は基準として考えるのには適当でないというふうに思うのです。また私は、この千人に一人ぐらいがいいのか、六百人に一人ぐらいがいいのか、千五百人に一人ぐらいのがいいのか、これは客観的な条件というのはなかなかむずかしいと思うのですよ。しかし、こういうことは規定しなくても、今では給与組合が負担しているのですから、そう無制限に専従者を出すということはできない事情にあると思っているのです。確かに組合結成当時に比べて専従職員は減っていると私は思うのです。それは組合がその給与を負担するという責任がありますから、そうむやみに出すわけにはいかない。それから東京や大阪のように人口が非常に固まっているところは、少人数の専従でやれます。これは千人に一人ぐらいでやれると私はいえるかもしれません。しかし山村の多いいなかでは、そういうところは教職員の数も少い、しかも地理的には範囲が広い。そういうところでは千人に一人というような基準ではとうてい実際の活動はできないというふうに考えておるわけなんです。こういうことは、これは組合の自主的な決定にまかした方がいい。これを抑制するものとしては、すでに給与組合が負担している、こういうことがあるのですから、これは組合の自主的な決定にまかすというようにせられたらどうか、こういうふうに思うのですが、どうでしょう。
  68. 本島寛

    参考人本島寛君) これは、給与を受けながら専従を置いておった昭和二十三年のころと事情が違うのじゃないか、事情の違うもとでそのときの基準をとっておるということについてのお話でありましたが、なるほどそういう事情もあったわけでございますが、まあ発足の当時は、申し上げるまでもなく、労働組合としての発足を教職員組合はいたしておりました。まあ団体交渉権も、スト権も持って、他の民間の産業労働者と違わない法の適用のもとに育ってきたわけであります。ところが、現在において職員団体としての相当の行為についての制肘があるわけです。その制限は、また人事委員会とか、あるいは公平委員会によって救済の道は開かれてはおりますけれども、そこまで労働組合と違った今日では形になっておるわけであります。ですから、一面その給与を受けておったという点で、給与面から制限する必要があるということもあったかもしれませんが、また非常に幅の広い運動が可能であった時代ですら、大体千人に一人、しかも最初においては私どもも承知いたしておりますけれども、何とか教員組合を作らして、そうして対等の立場に立って給与条件や勤務条件で話し合っていくという民主的な関係を打ち出していくということは、これはCIEあたりでもかなり指導した例であります。そういう育成時代、草創の間である、しかも労働組合として発足して、幅の広い行動ができたときにおける基準でさえ一応千人であったのだということで、これははっきりとそれをものさしに使ったわけではありませんが、われわれが考える一つ参考として打ち出した線であります。  それから、山村のお話がありましたが、なるほど小規模学校地方に多いのでありますけれども、実際問題としては、今日給与都道府県が負担しておることであり、また任命権も都道府県が持っていることでありますし、これに関連いたしまして勤務条件給与条件等について組合との話し合いをする場合は、県としてまとまった話し合いがなされなければなかなか解決しない。従って学校は分散しておりましても、実際組合員としてその本来の職務としての交渉をします場合には、県当局が相手になって参りますから、そうそれによって私は違っていくのではないのではないだろうか。要はやっぱり定数というものをできるだけ多く現場に配置する必要が教育上どうしてもこれは否定できない。そういう要請から考えまして、人数についても経済上の負担が組合で可能だから、そのところで自然に制限を受けるから、組合自主性にまかせるということは、実績から見ましても私はどうかと思う。他の地方公務員が千二百人程度であり、国家公務員が二千五百人に一人の程度であるというような例から見ましても、現在の五百七十一人くらいの平均ということは、どうも教職員定数というものが非常に多く現場から割愛され過ぎていはしないかというふうに考えております。
  69. 相馬助治

    委員長相馬助治君) それでは、時間となりましたので御退席されることを認めます。本島さん、お忙しいところ御苦労様でございました。    〔委員長退席理事吉江勝保君着席〕
  70. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 あまり時間がないようですから、委員長一つ一括してお尋ねします、まだあとに御質問の方がおられますから。  第三項目は、専従の期限を三年に制限しよう、こういうお考えなわけです。このことは、条例でこういう規制をするということが可能かどうかですね、その母法から考えて私は疑問に思っております。そういう規制を条例ですることは行き過ぎであるというふうな解釈をとっておるわけなんです。これも私はむしろこういう問題は、専従者の人数とか、あるいはそういう年数とか、こういう問題は組合自主性にまかすべき問題で、もしこれを教育委員会が条例等で規制するということになれば、どうしても組合運営に干渉するという非難は免れないというふうに私は考えておるわけなんです。それは別として、こういう問題をやはり組合お話しになったかどうかですね、そういう点を伺っておきたいと思います。
  71. 木下一雄

    参考人木下一雄君) 三年の制限につきましてこれを条例で定めるということにつきましては、先ほども御質問がありまして、本島教育長からもお答えしたと思うのでありますが、条例を定めるにいたしましても、それぞれの都道府県におきまして条例の定め方におきまして、一方的に私どもがこれを取り扱うというようなことは、現在におきましては私どもさような非難の起るようなやり方はやりたくないと思っております。慎重に十分いろいろの意見も尊重し、公平なる条例をもって進みたいというふうに考えておるのであります。  なお、現在におきまして、まだこの問題は直接都の場合におきましては組合と話しておりませんです。また、全国都道府県教育委員長協議会といたしまして一つの案を持ちましたのでありますけれども、これも教育委員長協議会としてこれを拘束するとか何とかいうようなことのあり得るはずがないものでございまして、それぞれの都道府県におきまして慎重に考えなければならないというようなふうに考えております。また条例の云々の前に、先ほどもたびたび出てきておりますけれども、この点につきましては、まず政府に対しましてかようなことの意見を持っておるということで、十分一つ検討をしてもらいたいというようなことを先にまあ協議会としまして差し出したわけでございます。
  72. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それではもう一点だけお伺いしてほかの方と交代いたしますが、この専従職員の人数を制限したり、あるいは専従職員期間を制限したりする問題について、私は新聞で伺ったのですが、自民党の方で七役会議でこれを決定して、そうして党の組織を通じて各県会に、県議会で条例でやるように、こういう指導をしたということが新聞に出ておりました。私は、新聞報道ですから、まだ自民党に直接伺っておりませんから真偽はよくわかりませんが、それの一番の例として青森県でまずこれを実施しようとした。おそらく私は、そう報道はされておらないのじゃないかというふうに思うのです。で、こういう問題は、これは党がやるべき性質の問題でなしに、もし必要があったとすれば教育委員会の考えによってそれぞれ措置されるべき性質の問題であると、私はそういうふうに考えている。それを自民党がいかに与党であるとはいえ、党の機関で決定をして、それを下部に流して党の組織を通じてこれをやっていく、こういうことでは行政機関というものを無視している、そういうふうに考える。こういうことは許されるべきでない、それこそ教育の中立性をじゅうりんするものだというふうに、極言すればそう言いたい。しかし私は、その前提は、新聞報道によって私は言っているわけだ。しかし、かなりこういう報道は再三にわたって行われました。そういうことについて教育委員長として、その行政の責任者としてどういうふうにお考えになっておるのか、あるいは自民党に抗議を申し込まれるとか、あるいは何らかの意思表示をせられるとか、そういう点について御意見を承わって、私の質問を終りたいと思います。
  73. 木下一雄

    参考人木下一雄君) 専従の数と期間のことにつきまして、全国都道府県教育委員長が考えましたことは、一番最初に私が御説明申し上げました通り、教職員教育実績を上げるという立場から考えましたものでありまして、さような点から御説明を十分申し上げたつもりでございます。従いまして、この問題は自民党とは関係ございません。また、私は自民党の方々とさようなことにつきましてお話をし合ったこともございません。ただ新聞におきまして、青森県においてさようなことがあるやに拝見をいたしましたことがあります。それはただいまお話がありました通りでありますが、その後私は直接ではありませんが、青森県の教育委員長と電話でもって話をしたことがございます。青森県の教育委員長は、この問題は非常に重要な問題であり、慎重に進めなければならない問題であるから、青森県の教育委員会はこの点については慎重に考えておるということを伺ったことがございます。というようなわけでありまして、おそらく青森県の教育委員会はやはり青森県の教育委員会として十分自重された態度をとられると思うのであります。条例で定めるというようなことはただいま申し上げました通り、非常に重要なことで、一方的なそしりのないようなふうに考えなければならないと考えております。これは全国みな同じであろうと思うのであります。というような次第でありまして、私どもはやはりこれも前に申し上げましたが、教育委員会としての立場を十分尊重いたしまして、その自覚のもとに今後とも進んで参るつもりでございます。
  74. 高田なほ子

  75. 吉江勝保

    理事吉江勝保君) 高田委員に先に申し上げますが、開会のときにお越しになっておりませなんで、十二時半で質問者はございましても打ち切りますから、どうぞ御了承を願います。
  76. 高田なほ子

    高田なほ子君 木下先生にお尋ねをしたい。さきに群馬県教組の勤評闘争以来、県の人事委員会職員団体に対して規約補充の命令を出してきたことについては、かなり違法性があるということで問題になっていた。その後御公述の中にも触れられたように、政府が歩一歩進めて専従制限の問題を対日教組問題として持ち出してきた。六月八日の文部省の通達の中でありますように、専従制限の数を千名に一名とする、それから専従期間を最高三年とする、校長、教頭は非組合員とする、専従者の昇格は行わない、こういうような文部省の通達を受けられた全国教育長協議会が八月の二十一、二十二日の両日開かれて、それをそっくりそのまま採択をせられて、全国都道府県教育長協議会の案として文部省にこの方針要望したことが伝えられておるわけです。私はこのように重大な文部省からの諮問ですか何ですかわかりませんか、通達に対して、どのような論議をされて、このような方針決定されたか、その論議の経緯について、まず承わっておきたいのです。それが第一点。
  77. 木下一雄

    参考人木下一雄君) ただいまこの組合専従の問題について文部省から云云というお言葉がございました。私どもはこの問題は、ことしになりまして取り上げたものでございませんことは、私が先ほども申し上げました通り、実は昨年もこの点につきまして、文部省その他に要望をいたしているのでございます。従いましてこの問題は、教育委員長協議会におきまして関心を持ちましたのは、すでに昨年これが案としてできたのでございましたから、さらにその以前から、この問題があったということは確かでございます。  それから八月二十一日、二十二日ということにつきましてのお尋ねで、その間における教育委員長協議会のこの論議の経過ということでございますが、御承知の通り、教育委員会と申しまするのは委員会の構成でありまして、これは一つ一つの問題につきまして、具体的にこれを研究し、調査をするというような、さような仕事はなかなか運びにくいのであります。また、委員会委員の一人々々の職業なりごらん下さいますれば、なかなかさようなことはできるものでない、みずからこれを研究、調査するというようなことはできないのであります。しかしながら、委員会としては、少くとも教育というものにつきまして、一つの見識を持っていなければならぬということだけは、私ども責任上十分それを感じているのであります。従いまして、昨年もすでにこれが案としてできましたことでもありますしするので、本年度になりましてからこれをさらに十分調査、研究し、練り上げなければいけないというので、教育長協議会の方に、このことにつきましてのさらにこの検討を委託いたしましたのであります。そこで教育長協議会におきましては、第一分科会、第二分科会、それぞれの担当の面を持っておりますが、第三分科会におきまして、この問題を担当いたしまして、十分この問題につきまして検討をいたしました。これが教育長協議会の第三分科会におきまして検討をされまして、さらにこれを教育長協議会の総会にかけ、案がまとまりましたもので、教育委員長協議会の方に、第三分科会の案をもとにして教育長協議会がかような成案を得たということが、初めて回ってきたのであります。そこで教育委員長協議会といたしましては、臨時総会を開きまして、ひとりこの問題だけではございません、先ほども申し上げました通り、三十五年度教育予算その他立法措置、それらの事柄と一緒にいたしまして、この臨時総会におきまして、十分検討をいたしました。その中にむろんこの学校運営正常化管理指導体制の充実ということにつきましての案を、委員長協議会としまして、今度はこれを十分検討いたしました。そうしてこれを委員長協議会の案といたしまして、要望をすることになった次第でございます。  この問題が出ましたのは昨年さらにそれ以前からあった問題であるので、昨年もこれが成案が一つあって要請したくらいでありますから、現在、先ほど文部省で何かされたということでありますが、私どもはむしろさようなことにつきましては、はなはだ認識不足であって、これは文部省もそれでは困るというようにお考えになるかしれませんけれども、私ども教育実績を上げる立場から、さように考えて進めてきたものでございます。
  78. 高田なほ子

    高田なほ子君 お説承わりましたが、文部省の「職員団体の業務にもっぱら従事する職員身分取扱について」という通達と、今御説明になりました協議会の第三分科会の結論というものは全く同じである。これは幸か不幸か一緒になったのかもわかりませんが、私どもは、ここに何らかの連絡がないなどと考えてはおりません。  次にお尋ねしたいことは、この第三分科会の、今お話がありましたが、伺うところによると、ほぼこれはもう結論に近い、訂正する余地がない、こういうふうに私は今のお説から承わるわけですが、先ほど荒木委員専従職員に対する条例制定についての質問がありましたが、これについて木下会長は、この専従期間についても、専従職員の数についても、一方的には決定したくないのだ、公平に進みたいと思うのだ、だから協議会としてはまだ十分にこれは検討したいのだと、こういう答弁があったわけでありますが、第三分科会の結論が動かされないほどのものなのに、荒木さんに対しては、動かされるがごとき御答弁があるのは、これは一体どっちがほんとうなのか、この点について御答弁をわずらわしたいのであります。
  79. 木下一雄

    参考人木下一雄君) 私はその条例を作りますときに、少くとも一方的なものであるというような、さような権威のない条例は作りたくないという意味で申し上げたのでございます。また、このきまりましたものが、訂正の余地なしというような、かようなことは私に考えておりません。しかし現在におきましては、私どもがかように考えることがいいのであろうというふうに確かに信じましたので、かようなことになっております。しかしながら、これにつきましては、先ほどからもあります通り、ILOの条約の批准の場合のことも考えられますし、この辺は、十分一つ業務の正常な運営を考え、またこの行政という事務関係する公務の地位にかんがみまして、十分これらの点は私どもは意見としてかように思うということを申し上げておりますけれども、この点につきましては関連するところが多いのでありますから、さらに政府において十分検討してもらいたいということで、非常にそこにはまださようなものが残っておるということを申し上げるわけであります。
  80. 高田なほ子

    高田なほ子君 専従問題というのは、これは単に機構的に制限をしたり、排除したりするやり方というのは、これは明らかに民主主義社会に対する挑戦だと、これは私の言い方でなくて、民主主義社会の常識だと私は思う。従って、この専従問題というのは、政府研究してもらって結論を出すというような筋合いのものではない、すなわちこの専従問題というものは、労使の協議事項であるということは、これはもう社会主義社会の一大原則なんです。(笑声)しかるにもかかわらず、木下会長ともあろう尊敬する木下先生が、政府見解を待ってこれをきめるなどという考え方については、いささか私は涙なきを得ない。すなわちやはりこの専従問題というものは、労使の協議事項であるという原則を打ち立てていただかなければならない。これは官民いずれもひとしい原則である。この原則について、どういうふうにお考えになっておりますか。政府見解に従うことが正しいのだというふうにお考えになるか、それともやはり協議事項であるという原則を樹立することが正しいと考えられるか。二者択一の回答を要求し、失礼でありますけれどもお答え願いたい。
  81. 木下一雄

    参考人木下一雄君) 私は、教職員団体の存立を侵すような考えを毛頭持っておりませんということをまず申し上げておきまして、さらに、しかし、私は、文部省政府が考えておるのに従うということを言っておるのではなくして、教育委員会が自主的に考えたところのものを政府において検討してもらいたいということを申し上げておるのであります。文部省の言ったことを取り上げて、これでなければいけないのであろうという意味ではございません。さらに、失礼でありますが、ただいま社会主義社会という……(高田なほ子君「民主主義社会」と述ぶ)ことがありましたが、私はちょっと、もしできましたらお伺いしたいと思います。
  82. 高田なほ子

    高田なほ子君 これは私、民主主義社会の言い誤まりでございますから、その点は私はお答えいたしません。  次にお尋ねいたしたいことは、政府教育委員会の結論を検討してもらうということは、私、納得がいきます、と同時に、教育委員会の結論を、やはり労使協調の協議事項であるという原則であるなれば、その結論を教員組合にもやはり協議をし、検討研究するというような機関を当然置かれるべきではないかと思いますが、この点いかがでしょう。
  83. 木下一雄

    参考人木下一雄君) 私ども全国教育委員会委員長協議会といたしまして、この案を発表いたしましたときに、日教組、高教組の方から、これに対しまして、大きなこれは弾圧であるとかいうような意味でのお話がございました。これは、私は、日教組の小林委員長並びに日高教の委員長が直接見えましてその意見を伺いました。私どもはもとより、教育委員会が案を立てましてこれから進んで参りますのに、十分いろいろの面の世論を尊重し、いろいろの面におきまして聞いていく立場をとるということは、申すまでもないことでございます。
  84. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうすると、多くの世論をお聞きになるわけですから、その世論の中には、当然組合の意見というものも含まれているというふうに私は解釈しますが、間違いはございませんでしょうか。
  85. 木下一雄

    参考人木下一雄君) 組合からいろいろのことを申してくるであろうと思うのであります。しかしそれは、伺った上でなければ、ちょっとこちらで今判断することはできないと思います。
  86. 高田なほ子

    高田なほ子君 組合からまだ言ってきておりませんようですから、まあ言ってきた場合には、いろいろ御協力になって、専従問題が労使の協議事項であるという原則をお貫きになるという御意思を十分に今拝聴いたしまして、これは納得いたしました。  次にお尋ねしたいことは、専従職員の期限、数の問題等につきましては、これは人事院規則一五——三、つまり国家公務員法にも抵触する問題であるように考えるわけです。先ほど荒木さんは、地公法の五十二条、五十三条を出されましたけれども、人事院規則一五——三の中には、「職員団体の業務にもっばら従事するための職員休暇」について書いてあるわけです。本島さんがお見えにならないではなはだ残念なのでありますが、この休暇を二十日とか三カ月とか言っておられますけれども、これは二十日や三カ月というようなものは、どこにもこの規則に書いてない、つまり「休暇期間は、一日を単位として、一年をこえない範囲内で定める。但し、休暇期間が満了した場合には、所轄庁の長は、この規則の定めるところに従い、さらに休暇を与えることができる。」と、そうして、この職員団体の業務に従事している間は、普通の業務には携わらないのだということが書いてあるわけです。これは明らかに、職員団体のつまり性格を雄弁に物語っているものであって、この中に働く専従職員等についても、三カ月とか二十日とかというようなものではなくて、さらにこれを更新することができるという行政上の慣行に伴って今日まで認められてきたけれども、ここに三年という条例を作るなどということについては、これは国家公務員法の職員団体を守るこの規則等についても、かなり抵触する内容が含まれるものと考えるわけですが、こういう点については全国都道府県教育長協議会等では問題にならなかったかどうか。この点についてお伺いしたいこと、国家公務員法の改正をも含んでの御検討がなされたものであるかどうか、この二つの問題についてお尋ねをしたい。
  87. 吉江勝保

    理事吉江勝保君) ちょっと高田委員に申し上げますが、ここで最後の質問にしたいと思います。
  88. 高田なほ子

    高田なほ子君 もう一問続けさして下さい。時間がありませんから、この際貴重でございますから……教育行政の任務に携わる先生方が……この教育行政の限界について私は明確にこの際承わっておきたいのです。なぜならば、その限界点は、教育行政教育内容に介入すべきではないということが、教育基本法の十条二項の説明のときに、これは政府見解として発表されたものです。ところが、最近これと全然違うふうになっております。従って教育行政の限界についてこの際明確に承わらしていただきたい、この三点です。
  89. 木下一雄

    参考人木下一雄君) 第三点をもうちょっとはっきり……。
  90. 高田なほ子

    高田なほ子君 教育行政の限界です。教育内容に介入してならないということが説明の中にあるわけです。最近そうじゃなくなっているということなんです。
  91. 木下一雄

    参考人木下一雄君) 教職員団体の面から考えるということは、十分これは必要でありますし、私どももこれを考えておるのでございます。けれども、それと同時に、この面ばかり考えるのでなくして、やはり両立しなければなりません。教育実績の向上ということもあわせて考えなければならないと思うのであります。やはりこれは両面の調和があって、ほんとうに教育が向上していくものであろうと思うのであります。この点は、私は教職員団体の面から考えると同時に、また教育の質の向上という面から考えて、それでいかにいい運営ができてくるか、こういうふうに考えておる次第でございます。  それから教育行政というものが、教育内容に触れるという点でございますけれども、およそその一つ教育が行われますにつきましては、私はいろいろ今日教育行政の面から行われておることの中に、内容に触れる、内容を考えないで教育行政というものはできないじゃないか。内容を考えて、その内容の上に立ってこそ教育行政が実を結んでいくのではないかというふうに考えております。
  92. 吉江勝保

    理事吉江勝保君) ただいま十二時半になりました。最初に申し上げました通り、本日の会議は参考人の方々の余儀ない事情で、十二時半までしか出席できないために、特に開会時間を一時間繰り上げて開かれております。まだ御質問が残っておることと存じますが、右の事情でありますので、参考人に対しまする質疑はこれをもって終了することにいたします、  参考人の方には、本日は早朝から出席をいただき、当委員会のためにいろいろと有益な御意見を述べていただきました。委員会といたしましても大いに資するところがあったものと存じます。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  午前は以上をもって休憩することにいたし、午後は一時半より再開いたします。    午後零時三十五分休憩    —————・—————    午後一時五十七分開会
  93. 松永忠二

    理事松永忠二君) これより委員会を再開いたします。  午後の議題は、伊勢湾台風による文教関係の被害に関する件であります。本日は、文部大臣から説明を聞き、これが対策等について質疑をする予定でありましたが、文部大臣は現地の方へ調査に参られておりますので、本日は出席できません。従ってただいまは宮澤政務次官、小林管理局長、斎藤官房長が出席しております。  まず、宮澤政務次官から説明を聴取することにいたします。
  94. 宮澤喜一

    説明員(宮澤喜一君) 過般の台風十五号によります災害につきまして、私ども文部省関係あります点を概略最初に私から申し上げたいと存じますが、前回の委員会で御要求のございました資料を御配付申し上げてあると思います。概括的な資料でございますが、資料の一は、物的損害につきまして最近までわかりました計数並びに多少の説明を加えてございます。資料の二は、人的な、死亡ないし傷害につきまして、これを児童、生徒教職員等に分ちまして御報告をいたしておる次第でございます。資料につきましてごらんを賜わりますように、非常に痛ましい、はなはだしい人命、あるいは人の傷害並びに物的な損害をこうむっております。これは文部省ばかりでなく、政府、ほとんど各省に関係のあることでございますので、御承知かと思いますが、政府全体として対策を研究いたし、なお来たるべき臨時国会に所要の法律案並びに補正予算案を提出する方針でおるわけでございます。私ども文部省といたしましては、災害直後に、所管の局長であります管理局長並びに係官数名がかなり長期にわたりまして現地を視察いたしました。その実情につきましては後刻御報告を申し上げますが、この際とるべき対策につきましても若干の成案を得まして最後の者は昨日東京に戻って参りました。  学校関係の状況についてごく累計的に申し上げますと、一部の学校では学校の施設そのものが避難民の避難所あるいは収容所として現在まで使われておって、従って学校の授業というものは実際に行い得ない状態でありますものが相当数ございます。これは緊急の際にやむを得ず避難所として使われ、今日に及んでおるものもございますし、多少行政的な指導のもとに計画的にこれを収容所として今日まで使用しておるものもございまして、両方の態様がございますが、いずれにいたしましても、このように学校そのものが現在休校中の状態にあるもの、これが相当ございます。もっとも、そのうちには浸水のために休校しておるものもございますが、他方で浸水及び避難民の収容あるいはもっぱら避難民収容、こういう理由によって休校しておるものが愛知県で六十三校ございます。小学校が四十五校、中学校が十八校ございます。三重県で小学校が九校、中学校が五校、合せて十四校ございます。岐阜県につきましては、私どもの知っております限りでは該当がないようでございます。従いまして、これらの学校につきましてはさしずめ住居の対策が立ちません限りは学校で授業を再開するという見通しはつかないわけでございまして、緊急住宅を作って避難をしておられる方々を収容する、そういう施設が先立たなければならないのではないか、かように考えております。  それからもう一つ別の累計といたしましては、概して計画的に児童をいわば集団疎開をさせたケースが相当ございます。すなわち父兄つき添いの上で安全な町へ避難をさせまして、そして夜は父兄と児童とが学校の雨天体操場に寝泊まりをする。そして学童は朝になりますと何人かずつに分れまして周辺の学校へみんな勉強に出させる。おおむね三人ないし四人ぐらいを授業をやっております学校へ分けて通学させておる。夜は父兄のところへ、すなわち雨天体操場へ戻りまして一緒に休む、そういったような形で、ともかくも授業に学童生徒を参加させておるようなケースもございます。これは三重県あるいは愛知県で現実にそのような集団的な、何と申しますか一種の疎開授業のようなものでございますが、そういうことをやっておりまして、これは概して申しますればほぼ計画的に行われております。もっともある町のように、米軍の助けを借りまして避難が非常に急速に行われたために多少混乱をしたところもございますが、概してこのような形で授業というものを再開しつつございます。  これらの小中学生につきましてはさしずめ教科書の問題があるわけでございますが、教科書はとりあえず受け入れました学校で使っております教科書を、古いものを回収して使わせております。将来の問題を考えますと、もとへ帰りましたときに新しく教科書を与えなければならないわけでございますが、ただいまは暫定的に受け入れました学校で使っております教科書を、古いものを回収して与えております。  それから罹災いたしましたところの学校教職員は二、三日ずつ交代で避難先の学校に出勤をしております。それによって学童の生活指導に当っているわけでございます。炊事は学校給食の施設を利用しておりますので、従いましてこれは児童、父兄ともに学校給食の施設を使って炊事しておりますので、いわゆる平生の学校給食というものは、これらの学校では中止しているのが概して実情のようでございますが、もちろんこういう状況でございますので、多少長期に見ますと、さしあたっての学用品はともかく、通学いたしますための雨具でありますとか、くつでありますとか、あるいはカバンでありますとか、こういうものの需要が間もなく起ってくることは明らかであります。施設、設備、机、腰かけ等も、事態がやや落ちつきますとともに非常に不備が目立って参るといった状況でございます。  なお一般的に申しますと、これらの学童生徒の健康状態はただいまのところ概してあまり心配すべき事態は見えておりません。ただこれから先は非常に寒くなるわけでございますので、大きな雨天体操場でありますとか、あるいは三重などのように昔の格納庫を利用しているといったところでは、おのずから早急な対策が、これは一種の住居対策でございますが、これが望まれるというふうに承知をいたしております。  なおお許しがあれば、管理局長が現地を視察して戻っておりますので、詳しく御説明を申し上げたいと思います。文部大臣は先ほど委員長からお話のように昨日、今日と災害地を視察しておりますので、帰りまして、また機会が与えられますれば報告を申し上げたいと思います。
  95. 松永忠二

    理事松永忠二君) では、小林管理局長。
  96. 小林行雄

    説明員(小林行雄君) 政務次官から御説明を申し上げましたが、御承知のように今回の伊勢湾台風はその大きさにおきまして戦後最大といわれておりますが、その被害の方の大きさからいいましても、普通の台風による被害と異なっておりまして、ことに名古屋という大きな都市が真正面から高潮に見舞われたというようなことも加わりまして、これまでにあまり類例のないような大きな災害を招いているわけでございます。全般を通じて申しますと、被害は全国都道府県三十四県に及んでおりますが、ことに愛知、岐阜、三重の三県下では空前の大被害になっております。この三県下におきましては、災害救助法も県下の全市町村に漏れなく適用を見ているという状況でございますし、また三県以外におきましても、長野県とか、山梨県とか、奈良県とか、和歌山県、あるいは滋賀県とか、兵庫県、京都府というような府県におきましても相当多数の市町村に対して災害救助法の適用を見たような状況でございます。  先ほど政務次官から一応概略を申し上げましたが、お手元にお配りしてありますところの資料につきまして、少し私から申し上げたいと思います。    〔理事松永忠二君退席、理事吉江勝保君着席〕  第一は、児童に関する被害でございますが、被害の児童生徒数調、それから被害の教職員数調というものがお手元に参っておると思いますが、この表で見ましても、児童生徒数におきまして死亡者の数が八百三十六人、それから現在なお行方不明の数が四十一人、合せて八百七十七人というものが死亡ないし行方不明という数になっております。教職員につきましては、その下にございますが、死亡が五名、行方不明九十七名、合せて百二名というものが死亡ないし行方不明ということでございます。こうした多数の人命が天災とはいいながら一朝にして失われましたことはまことにお気の毒でございますし、残念なことでございます。災害の犠牲になられました方につきましては心から深く哀悼の意を表する次第でございます。この数字につきまして申し上げますと、死者、これは児童生徒の死者でございますが、八百三十六人のうち、岐阜県が十名、愛知県が五百五十二名、三重県が二百四十九名、合せて八百十一人、九五%以上がこの三県の該当者でございます。この八百三十六人の内訳はそれ以下のページに詳細に書いてございますが、小学校が六百二十四人、中学校が百九十三人、高等学校が十八人、盲ろう学校が一人というような内訳になっております。それから行方不明の四十一人につきましては、小学校が二十七人、中学校が十二人、高等学校が一人、盲ろう学校が一人というような内訳でございます。それから先生方につきましての内訳でございますが、死亡五人の内訳は小学校が三人、高等学校が二人でございます。それから行方不明九十七人の内訳は、小学校が六十五人、この六十五人のうち六十四人までは愛知県でございます。それから中学校は三十人、これは全部愛知県でございまする高等学校が二人、この二人も全部愛知県下でございます。そういった人に関する被害の状況でございますが、いわゆる物的の災害の状況につきましては、お手元に別表がお配りしてございます。国立文教施設につきまして三億六千五百万円、それからこれはそのページの下に注をつけてございますが、名古屋大学、名古屋工業大学、愛知学芸大学、岐阜大学、三重大学、東京大学というような比較的被害の大きなもの並びに商船高校、国立青年の家というようなものを合せた数字でございます。  それから二番目の公立学校施設の被害四十三億九千万、その次に各府県別の表がございますが、三十七都道府県約九千校の多きに達しております。そのうち岐阜県が一千四十一校、五億九千九百万、愛知県が千二百校で二十億二千六百万、三重県が六百八校で九億一千六百万、かような被害の数字になっております。この三県を合せますと、約二千九百校でございまして、金額といたしましては三十五億四千三百万という数字になります。この全体の数字四十三億九千三百万の八割強に当っておる数字でございます。なお、この金額でこれに次ぐものといたしましては長野県、山梨県、奈良県、山形県、和歌山県、静岡県、兵庫県等がございます。ただ山形県につきましては、これは非常に山形市内の大きな学校の校舎が倒壊したために金額がかなり上っておるという特異なケースだと思われます。学校数から申しますと、たとえば東京都千二百六、かなり大きな被害枚数になっておりますが、金額としてはそれほど大きな数字にはなっておりません。    〔理事吉江勝保君退席、理事松永忠二君着席〕  次に私立学校の施設の被害でありますが、四億二千九百万、これは大体愛知県下の名古屋市所在のものが多いのでございまして、愛知県下の大学、高等学校中学校、小学校、そういったものが一番金額の大きなものでございます。なお三重県、岐阜県等にも多少の被害がございます。  社会教育施設につきましては二億二千百万円、これも愛知県下の公民館四百十九、その他の施設の被害で一億四千万、なお三重県、山梨県、岐阜県等にも被害が相当ございます。  それから体育保健施設でございますが、これは主として競技場、運動場等でございますが、愛知県下の二十四カ所の競技場等で五千三百万、そのほか長野県、岐阜県等における被害がございます。  なお、この学校給食の関係で、学校給食用物資の被害が多少ございました。これは当時私ども最初に予想いたしましたよりは比較的金額が少額でございました。これはちょうど給食物資の入れかえの時期に当っておりましたので、比較的被害が少かったのかと思っておりますが、被害総額は約百五十万でございます。  そのほか文化財に関する被害といたしましては、愛知県の犬山城、京都府、清水寺、大徳寺、上加茂、下加茂の神社、その他滋賀県の彦根城といったものを合せまして約九十件、被害総額四千六百万、こういう被害の数字になっております。  これは初めに申し上げなければなりませんでしたが、この数字は一応各府県から被害の報告として参りましたものをとりあえず集計いたしましたものでございまして、文部省として特に精査をいたしたものでないことをお断わりいたしておきたいと思います。なお、いろいろ具体的なものにつきましては、お尋ねがございますればお答え申し上げたいと思います。
  97. 松永忠二

    理事松永忠二君) それでは順次質問をお願いいたします。
  98. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 質問に入る前に、今度の台風で非常な被害を受けられた方方に対して深甚な同情の意を表したいと思います。申し上げるまでもなく、今度の被害は、台風は非常に強力なものであり、従って今御説明があったようにその被害も未曾有とも申すべき甚大な被害であります。この被害について今後復興対策をどういうふうに進めるか、これはきわめて重要な問題であると思います。近く臨時国会も開かれて、政府もこの災害の復興予算を国会に提出になると思いますが、本日、文教委員会が開かれて質疑をする機会に当って、今予算について特に編成中であると思いますので、質問とあわせて私どもの希望意見も述べたい、かように考えておるわけであります。で、この復興対策については応急的な対策と、それから永久的な対策というふうに分けて考える必要があると思うのですが、この応急的な対策については現地でいろいろ協力しておられる委員の方も出席されておりますから、私はその方に譲りたいと思うのですが、一点だけお尋ねしたいのは、現地に対策本部がありますが、文部省関係ではどなたが行っておられるか、責任者ですね、そうして常駐してやっておられるかどうか、その点を伺っておきたいと思います。
  99. 小林行雄

    説明員(小林行雄君) 災害が起りますと同時に、対策本部のできます前に、実は私が参りまして、私のほかに数名の者を引き連れて参ったのであります。その後、現地に中部日本災害対策本部ができましたので、私が当初対策本部に文教関係の責任者として常駐をいたしました。その後、約十日ばかりおりましたが、これにかわりまして、その後の一週間教育施設部長が主となりまして、現地に参って対策本部に列席をいたしております。つい今週の初めに教育施設部長が現地で引き継ぎをいたしまして、現在では調査局長が現地に参っております。その下に数名の者がやはりついて三県と連絡をとりながら対策本部でいろいろ連絡をし、協議をいたしておる次第でございます。
  100. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 今、御説明の中にもありましたように、愛知それから岐阜、三重を中心にして被害児童が三十万、こういう非常に大きな数字に上っております。これらの応急対策は非常に重要であり、文部省も対策本部に人を派してその対策に努力しておられるということは非常にけっこうであると思いますが、これらは一つ万遺憾のないように十分やっていただきたいということを要望したいと思うのであります。  私は主として永久的な復興対策について申し上げたいのですが、まず第一点に、この校舎の復興ですね、これはどうしても鉄筋校舎で復興するという方針をきめる必要があると思うのです。従来、文部省は公立学校の校舎の建築について鉄筋校舎よりも木造校舎を多く建てているというふうな実情であったわけです。しかし、私は今度の災害を離れてもやはり学校は木造じゃいかぬ、どうしても鉄筋校舎にする必要がある。これは特に日本のように災害の多い国においては、こういう天災地変というふうな場合に、これは非常に大きな助けになると思うのです。そういう意味からも予算はなるほどよけいかかります。けれども、この際思い切って鉄筋校舎で復興する、こういう方針で私はやってもらいたいというふうに考えているわけなんです。で、きのう文部大臣が現状視察されて、記者団と会見されていろいろ意見を発表せられております。それによると、大体鉄筋校舎で復興したいような御意向を漏らしておられるのですが、文部省としてはそういう方針で望まれるのかどうか、その点を明らかにしてもらいたい。
  101. 宮澤喜一

    説明員(宮澤喜一君) ただいまの荒木委員の御指摘はまことにごもっともであると思います。全般的にこのたびの災害復旧につきましては、いわゆる原形復旧ばかりでなく、これを機会に改良復旧を考えなければならぬのではないかということが政府部内でもかなり支配的な考え方になっております。ことに御指摘の学校の問題につきましては、このたびも特に経験したことでありますが、災害の場合に、事実上の避難所として頼り得る永久構築物が非常に少いといったようなことから、たまたま鉄筋あるいは鉄骨でありました学校はそういう用にも現実に今日まで役に立っているわけであります。そういうことも合せ考えますと、ただいま荒木委員の御指摘の御意見は私どももまことにごもっともだと考えます。従って、大臣も現地でそのようなことを発表いたしたようでございますが、来たるべき臨時国会に御審議をお願いいたしたいと思っております。このたびの災害に対しまする国の負担及び補助に関する特別措置の法案、その中に学校の設置者に対して財政その他許し得る限り、鉄筋または鉄骨づくりによって新築するように努めなければならない、こういったような規定を置きまして、国もそれに対して補助をして参りたい、御審議をやがてお願い申し上げるでありましょう措置法案の中にもそういう規定を設けましてそのような方向に持って参りたいと考えております。
  102. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 問題になるのは、やはりそういう方針で私非常に心強く感じたのですが、これは一つあくまでも鉄筋で復旧をするという方針はくずれないように努力をしてもらいたい。われわれもこの点については、そういう方針に全面的に支援をしたいという考えを持っているわけです。ただ問題は、国庫の補助率をどうするかという問題があると思うのです。鉄筋にすれば相当の予算もかかる、そうすると、非常にむずかしい問題が起ってくる、そういう点で国庫の補助率、私は校舎の問題で言いましたが、今度の災害復旧全般を通じて、今、政務次官は特別立法をこしらえると、これは私は当然な措置であると思います。どうしても特別立法をこしらえて災害の復旧に当らなければならぬ、むしろ特別立法よりも永久といいますかね、災害にそのつどでなくて、私は一貫した災害に対する立法措置が実は望ましいと考えておるわけなんです。この点は別としましても、今度の災害に対する復興としてどうしても特別立法をこしらえる、特別立法でやはり一番中心になるのは、補助率をどうするかという問題があると思います。そういう点についてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  103. 宮澤喜一

    説明員(宮澤喜一君) 政府として最終的な結論が出たわけではございませんけれども、今度災害対策を考えますときに、一応の基準として私ども各省相談の結果出ましたものは、御承知のように二十八年の災害復旧の基準でございます。それを一応私ども気持としては最低の基準としてものを考えたい。ただそれ以上にどれほど出得るかということになると御指摘のように、財政の問題にも関係して参ります。ただいまのところ、それを最低の基準として、それ以下に下るようなことはいたすまい、概括的にはそう考えております。
  104. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私はこの際思い切って、特に小中学校——義務教育関係の校舎の復興については鉄筋でやる、これを全額国庫で見るというふうな、思い切った英断ですね、これを実施するということはできないでしょうか。そうしなければ、なかなか地方財政の実情からいって、私はこの前の災害は二十八年度の災害をさしておられると思いますが、これは四分の三の補助ですね、七割五分になるわけですが、これではやはり十分ではないと思います。実は私も被害地を見て回りましてあれは四日市でしたが、四日市の水につかった校舎、半分倒れかかっている学校を見ましたが、やはり市当局は金の問題からこれを鉄筋にすることはむずかしいということを言っておられました。そうすると、かりに四分の三以上、あるいは八割の補助率が出るとしても、やはり鉄筋で建てることが困難であるという地方団体が私は出てくるのじゃないか、こういうふうに考えるのです。そこで私は、この際、全部を鉄筋にというわけにはいきませんが、少くとも小中学校の復旧は鉄筋でやり、そうして全額国庫で持つというくらいの英断を持つべきじゃないかということをひしひしと感じておる。そうしなければ、鉄筋でしたいと言ってもその通りにならないのじゃないかという心配をしているわけなんですが、こういう点について考慮の余地はないでしょうか。
  105. 宮澤喜一

    説明員(宮澤喜一君) 御指摘のように、二十八年災害の場合には、公立文教施設につきましては四分の三を適用いたしましたわけでございます。私どもも、ただいま荒木委員の御指摘の点はよくわかる、と申すよりは、むしろそのようであってほしいということを考え、また努力をいたしているわけであります。一応の、何と申しますか、御答弁といたしましては、残りの部分は当然長期の起債が伴いますわけでありますから、何年間かの間に起債の形で当該設置者から償還をしてもらいたい。ただ、実質的に経済力を失ってしまった市町村に対して、金を貸すからいずれ返せということは、いかにも酷なようにも感じないわけではないのでありますが、一応最低限のところ、そういうことを考えてみたい。御指摘の点は、むしろ私ども御激励を賜わっておるというふうに私承わっております。
  106. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この問題については、委員長に私はちょっと要望しておきたいのですが、これが済んでから、文教委員会としてやはり政府を鞭撻するという意味で、意見の一致するところで一つ要望書を出したらどうかと思うのです。その内容はいろいろ御検討をいただいてもけっこうですが、私は今の校舎の復旧ですね、これは鉄筋でやる、そうして全額国庫でこの際は見るというくらいの思い切った措置がいいのじゃないかと思いますが、これはあとに譲るとして、これは強く要望しておきたいというふうに考えておるわけです。  それからその次に、災害地の児童、生徒教員に対する対策という問題について若干お尋ねしたいと思うのですが、先ほどの御説明にもございましたように、八百三十六名の児童、生徒がこの災害で痛ましい死亡をしております。まことに同情にたえない次第です。それからそのほかの、何らかの被害を受けたという数は実に三十万に上っておる、こういう現状であります。また教職員についても死亡、行方不明を合せますと百二名、それから罹災した数は四千三百四十二名と、こういう状況になっておる。こういう、特に私は児童生徒の対策の問題ですね、これは私はきのう汽車の中で、中部日本新聞ですか、新聞の名前を言ってはいかぬかもしれませんが、子供の座談会が載っておりました。そうしていろいろそこで心配なことが述べられているのですが、そういう点を考えて私は質問したいと思うのですが、やっぱり一番今困っておるのは学用品あるいは教科書、そういう問題のようです。これは若干この対策がおくれているのじゃないかという気が私はしておるわけですが、相当時日がたって応急的な措置は大体できているのじゃないか、特に教科書とかそれから学用品、こういう種類のものは大体応急的な措置ができているのじゃないかというふうに思っておったのですが、その座談会の記事を読むと、まだまだ手が届いていない、こういう実情のようにとれるわけなんです。で、これはやはりどんな……無理というわけじゃないのですが、努力をすれば私はもうできてなきゃならぬはずだというふうに感ずるのですがね、これがどの程度教科書や学用品が行き渡っているのか、まだ行き渡っていないのはどの程度になっているのか、あるいは今後どの時期には大体これは不十分ではあるが一通り行き渡るのか、そういう点を一つ説明願いたいと思います。
  107. 小林行雄

    説明員(小林行雄君) 被災児童生徒の学用品でございますが、そのうち教科書につきましては、これは私と同時に教科書課の専門の担当官が参りまして、三県の教育委員会と連絡をとりまして、その早期の救急の手だてにつきまして指示をいたしたわけでございます。ただ三県とも、ことに愛知県、三重県の教育委員会等におきましては、まず児童生徒の救援と申しますか、避難等の問題のために非常に忙殺されておりまして教科書等になかなか思いがいかないような状況でございましたが、三県とも、いずれも今月の十日現在で、すべての児童生徒につきまして教科書の流失その他の損害状況を調査して、これを教科書の特約店等を通じて発行所に連絡をするということにいたしたわけでございます。もちろん、しかし、県全体としてはそういうことでございますが、比較的被害の軽微な県下の市町村におきましては、すでに相当部数実際に配付をされまして、児童生徒の手に渡っておるものもございます。ただ、先ほどお話の中にもございましたように、水没地帯あるいは湛水地帯等におきましては、御承知のように、学校の授業形態が普通の正常の状況じゃございませんので、それらに対して、従来使っておりましたものの継続の新規の教科書が渡るという状況には至っておらないかと思いますが、大体教科書の配給につきましては一応の手段がとられておるわけでございます。  なお、学用品につきましては、これは災害救助法によりまして、さしあたっての学用品が支給されるということになっております。各府県それぞれみんなそれらの点の手ぬかりはないと思いますが、なお災害救助法の学用品の単価等につきましては、厚生省等におきましても、現在の支給の単価が低いのではないかということでいろいろ研究をしてもらっております。文部省としても、これをできるならば引き上げて、学用品の支給の範囲を少しでも広げてもらいたい、また量も少しでも多くしてもらいたいということで交渉をいたしておるような次第でございます。
  108. 野本品吉

    ○野本品吉君 今の教科書の問題ですが、今の教科書の発行、それから配給、採択という制度でいいますというと、同じ町内、市内でも甲の学校と乙の学校とが違うということがあるわけです。従って乙地区における教科書の水没あるいは紛失というものが、直ちに他のものをもってかえがたいということが想定できるわけですね。  そこで、私のお伺いしたいのは、教科書の発行の際に、こういう災害に対処するために、ある程度の部数というものを予定されて発行所に保管されておるかどうか。そういう制度というものがどんな状態になっているのか、それをちょっとお聞きしたい。
  109. 斎藤正

    説明員(斎藤正君) 災害等のための教科書の予備本でございますけれども、これは業者は予備本を実際上持っております。今御質問のありましたように、制度上そういうものがあるかと申しますと、ございませんけれども、実際上は予備本を持って、教科書の取扱い団体であります教科書協会が中心になりまして、このあっせんの仕事をいたしております。今次の災害にも、対策本部ができますと同時に、教科書協会からも専務理事が参りまして現地を調査いたしております。
  110. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 教科書、学用品の問題は児童や生徒にとっては非常に大事なことです。これは一刻も早く手に入れたいと念願しております。今後とも文部省は業者とよく協議されて滞りなくやられるように骨を折ってほしい。こういう問題こそ十分にやってもらいたいと私は思うのです。  同時に、座談会の記事を見ると、やはり進学、就職の問題を心配しておりますね。なかなか勉強できないので、中学校、高等学校に進学するのに相当の支障があるのじゃないか、また就職にも影響するのじゃないか、こういう心配をしておりますね。これはやはり何とか方針を明らかにして安心させてやるという必要が私はあると思うのですがね。こういう問題を、今すぐ質問してお答えを求めるということはちょっと無理な点があるかもしれませんが、できればこれは早く、進学の問題、あるいは就職の問題について、罹災児童生徒が非常に不利益な取扱いを受けないような措置はこれはすべきだと思うのです。具体的にはいろいろやり方があると思うのですが、こういう点いかがでしょうか。
  111. 斎藤正

    説明員(斎藤正君) お話の点につきまして、直接進学あるいは就職の対策について研究いたしますことと、それからできるだけ早く正常の授業を再開するように努力すること、この二点あると思いますが、ことに直接就職、進学の点については、お話のように、私はただいまどうしたらいいかということをお答えする段階に至っておりませんけれども、担当局においていろいろ検討いたすようにいたしたいと思います。
  112. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この問題は、この罹災児童生徒が不利益な扱いを受けないようにぜひ十分考慮してもらいたい。具体的な方針を私はきめてもらうことを文部省要望しておきたいと思うのです。  それからもう一つの問題は、罹災した学童に学用品を送るとか、あるいは教科書を送るとか、あるいは学校給食等の問題について考慮されるということ以外に、やはりけがをした者がある。それから死んだ者がある。こういう子供に対して何らかの措置がとられているかどうですか、この点を伺っておきたいと思うのです。
  113. 斎藤正

    説明員(斎藤正君) 教職員につきましては、共済制度がございますから、それぞれ特段の措置をして相互扶助という観点からの救済の道がございますが、御質問の児童生徒につきましては、あるいは学校制度、あるいは教育の観点からは特段の救済の道はございません。
  114. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 やはりこの機会に、児童生徒の災害救助の問題、この点を、政務次官どうですか、政府として検討せられたらどうですか。やはりけがをした子供、死んだ子供、相当多いのですよ。これらの、何といいますか、救済とか、あるいは死んだ子供に対する見舞とか、そのほかいろいろな問題がある。災害に対する救助法の問題はこの際、真剣に検討されたらどうかと思うのですがね。
  115. 宮澤喜一

    説明員(宮澤喜一君) 御指摘のように、その点について対策が欠けておるということを私も痛感をいたします。衆議院で継続審議をいたしておりますところの学校安全会法案はこういう考え方に立って書かれておるのでありますけれども、不幸にしてまだ成立をいたしておりません。本案が成立をいたしますと、何らかの形で政府もこれに対して財政的な援助をするという建前及び用意をいたしてはおりますけれども、いまだ成立いたしておりません。なお、県によりましては、たとえば三重県でございますが、県として学校安全会類似の仕事をしておられる県はあるようでございます。国としてはまことにお恥かしいことでありますが、ただいまのところ何もございません、こう申し上げ、その結果を私も確かに認めるものでございます。
  116. 千葉千代世

    千葉千代世君 今の学校安全会法というのですが、あれは衆議院で継続審議になっておるというのですか。その点と、もう一つ、その中には何か掛金の問題でまだ少し心配があるように聞いたのですが、実はずっと以前に山崎始男さんが社会党案としての児童災害補償法案をお出しになった、その点との関連をちょっと。  それからもう一つは、教職員の場合でございますが、共済組合法が適用される云々のことがありましたが、ああいう不可抗力な場合ですから、公務災害死亡という面を適用していただくということはございませんでしょうか、その点について。
  117. 斎藤正

    説明員(斎藤正君) 御質問の前段の、児童災害補償に関する法律案につきましては、政務次官から申し上げましたように、衆議院で継続審査中でございます。その内容で掛金に問題があるというわけではございません。山崎先生がお出しになったものとやり方が違う、負担の区分が違うということでございます。  それから第二の、教職員の死亡の問題でございますけれども、宿直その他公務に従事中でありますれば、もちろんお話のように公務災害補償の問題が起ると思います。
  118. 野本品吉

    ○野本品吉君 今の問題ですがね、学校安全会法のあの内容で、こういう大きな災害に対処できるかどうかということで、私は一応疑問を持っておるわけです。従ってあの問題については、さらに一段と御検討をなさる御用意といいますか、お考えがありますかどうか、その点一つ
  119. 宮澤喜一

    説明員(宮澤喜一君) かなりの財政的な負担を伴うことと思いますけれども、何分にも非常に尊い教訓でございますので、大臣が戻りましたら私どもでさらに検討いたしてみたいと思います。
  120. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 児童生徒に対する災害救助法はやはり充実したものを作る必要がある。政務次官は予算があるのでということですが、これはやはりこれだけの災害の多い国において、これだけのやはり対策を講じておくということは、われわれおとなの義務じゃないでしょうか。だから、一つ財政的な困難さがあっても、この際腹を固めて文部省としてもこの機会にやる、こういう方針で私はいってもらいたい、一つ要望したいと思います。  先ほど、教職員については共済組合があって、それによって何らかの救助ができる、こういうお話でした。私は現地へ参りまして、どのくらいの程度かということを聞いてみたのです。私も勉強不足でしたが、家屋が流失した者については三カ月の俸給、こういうわけです。それではとても……。実際今日、三カ月分の俸給では、家屋が流失し、なくなってしまった人に対して、共済組合としての補償として私はあまりにも少いということを痛切に感じたわけです。私現地へ参りまして、家屋が流失して、川原の土手で天幕を張っておられる人もだいぶ回ってきました。悲惨なものです。これも掛金、予算との関係もありますが、私の聞いているところでは、相当な額が余っているというふうに聞いているんですね。共済組合の経理状況はどうなんですか。昨年度決算の結果金が余っているんじゃないですか。相当な金が余っていると私は聞いているんですが。
  121. 小林行雄

    説明員(小林行雄君) 公立学校共済組合につきましては、ただいま荒木委員の言われた通りに、法定の給付といたしまして災害の見舞金並びに災害の貸付金をやっております。災害見舞金につきましては、ただいまお話のありましたような、これは法定給付でございますので、各省共通の見舞の給付の内容の程度でございますが、これを行なっておるわけでございます。貸付金につきましては、文部省といたしましては従来よりも貸付期間の延長というようなこと、また据置期間を一般より長くするというような措置を緊急に講じたわけでございます。経理の内容と申しますと、ここ数年来蓄積がありましたので、順次掛金の率を下げて参りまして、現在はそれほど大きないわゆる資金の蓄積があるということではございません。特に他の共済組合と比べて非常に大きな資金の蓄積があるというわけじゃございません。
  122. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これ、給付金額を引き上げるということはできませんか、この際。
  123. 小林行雄

    説明員(小林行雄君) これは先ほど申しましたように、国家公務員共済組合法を公立共済は準用しておりまして、国家公務員共済組合法が改正されない限り、現在としてはむずかしいことだと思います。
  124. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これは一つ検討してもらいたいということを要望しておきます。あまりに額が少いということですね。これじゃああまり足しにならぬということです。だから、せっかく共済組合制度があっても、あまり大した足しにならぬということではこれはよくないんで、何としても検討してもらいたいと私は思います。まあ、ほかの委員の御質問もあるので、もう一点まとめて御質問いたしますが、まあ授業料の減免ということは当然なされると私は思いますので、質問いたしませんが、育英資金の問題ですね、これはこういう災害地の生徒に対しては格別に見ると、特別に見ると、こういう考え方はありますか。
  125. 斎藤正

    説明員(斎藤正君) 今次の災害によりまして、まあ家庭の困窮した学生に対します——大学の学生あるいは高等学校生徒に対しましては、特別ワクで育英資金を貸与する方法を講じたいと思っております。これは具体的には、予算の問題でございますので、まだ確定した数字を申し上げる段階に参っておりません。今回の罹災者の子弟の育英資金につきましては、特に今回長期の床上浸水等がございましたものですから、今まで取り扱ってないそういう対象をも考慮に入れて運用して参りたいと、かように考えております。
  126. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それからもう一つの問題は、私立学校の問題です。これのやはり復興対策にも政府は相当な援助の手を差し伸べる必要があるというふうに考えますので、そういう点で文部省考え方をお聞きしたいことと、もう一点は、文部大臣は現地で大体二十億円ぐらいの予算、二十億前後の復興費が要るだろう、こういう意見を述べられております。これは真偽はわかりませんが、しかし被害の状況は今日まで、十月十四日現在で文部省は五十五億という数字を出しておられる。五十五億全額出すというわけではないのですが、しかし、その開きがあんまり大き過ぎる、二十億と五十五億では……。特に公立学校の施設の被害が一番大きいのです。四十三億、これに対して八割の補助をしよう、こうすれば四十三億のうち三十二億要るわけです。ところが一方では二十億の予算、結局これは金の問題だと思う。そうすると、あんまり開き過ぎるんじゃないですか。勘定が合わないと感じておりますが、この点で私立学校の問題と、あわせて今度の臨時国会にどの程度の文教として予算を出そうとするのか。私はこの問題はやはり災害対策のこれは、政府与党で十分考えてもらわなければいかんですが、この際伝えられている二百億程度では問題にならぬと思うのですよ。大ワクで締められるから、これをいろいろ八割にしたい、あるいは鉄筋にしたいと言っても、二十億の予算ではどうにもならないのです。そういう結果になってくる。そういう点は非常に大きな問題ですが、この五十五億と二十億ではあまりに開き過ぎている。現在いろいろ文部省検討されている要求予算というものは、どのくらいになっているのか、政務次官から一つ説明してもらいたい。そうしないとわれわれここでしゃべっても、何にも実のないことになってしまう、それじゃ困るので、一ぺんやってもらいたいと思う。
  127. 宮澤喜一

    説明員(宮澤喜一君) 仰せのように、私立学校の施設も非常に大きな災害を受けております。ことに愛知県は私立学校の非常に多いところでございまして、災害を受けたという意味では、公立も私立も同じような教育の損害でございますから、公立学校に一定の補助をいたします場合に、私立学校にむろん何もしなくてもいいというふうに考えておりません。やはり許します範囲で、私立学校の復旧についても、国としてお助けを申し上げなければならないと思います。そうしてその場合に、公立でございますと、かりに補助の行き渡りません残余の部分については起債という問題があるわけでございます。私立学校については、これも一応の考え方としては私学振興会からの貸付に頼っていただくということになるのでありましょうけれども、振興会の財源につきましては、ただいまのところ若干の問題があるようでございます。考え方はそういう考え方で進めていきたい。この点につきましては、私立学校関係から相当強い御要望があり、私ども災害復旧に必要なこういう点につきましては、公立、私立おしなべて同じことではあると考えますけれども、設置者、学校の性格の違いというものが若干ございますので、当面とにかくできるだけの補助を申し上げて、残余は何年かの後には御返還をいただくような形にならざるを得ないのではないかと思うのでございます。  なお、文部大臣が二十億ということを現地で申したということでございますが、積算の根拠を私は実はつまびらかにいたしません。初年度という意味から申しましたか、どうでございますか、全体を考えますと、完全に文教関係の施設復旧をいたしますのに二十億ではとてもおさまりそうもないように私は実は考えるのであります。もっとも、それは財政支出の方面もございましょうし、起債の面もございましょうから、ちょっと二十億という数字をここで論評する根拠を持ちませんのであります。  なお、文部省から大蔵省にどれだけの予算要求をするかということについては、まだ計数整理の以前の段階でありまして、ここで申し上げる用意がございませんが、いずれにいたしましても、これは補助率等をきめて参りますと、数字はある程度事前に出て参りますし、補助率をきめれば出ました数字については、今後はあまり議論のないことになるのじゃないか。ことに改良復旧を考えておりますので、出ます数字そのものについては、むしろその基礎になる考え方の方に私ども重点を置いてただいま折衝をいたしております。
  128. 松永忠二

    理事松永忠二君) 先ほどの荒木委員からお話のありました、災害復旧要望書の問題、あるいは災害復旧の決議というようなことになりますか、前回の狩野川台風のときにもそういう措置をいたしましたので、委員長理事打合会検討して、そしてできるだけ早い機会にそういう処置をしていきたいと思いますが、異議ありませんね。  それではちょっと速記とめて。    〔速記中止〕
  129. 松永忠二

    理事松永忠二君) 速記つけて。
  130. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 今、荒木委員から非常に御好意のある御発言、御意見を承わりまして、考は災害地の一人としまして、ありがたく存じております。  第一の、今委員長からお諮りになった今度の被災学校の校舎につきましては、私ども、愛知県、三重県、岐阜県をずっと実は実情を調査して参りまして、やはりこの復旧はどうしても鉄筋コンクリートでなければ、こういう千人近くの子供の被害者を出す、犠牲者を出す。どうしても学校の施設というものは鉄筋コンクリートでなければならぬということは、荒木委員同様に痛感をいたして参りましたので、これはぜひとも一つ特別の措置をとって、今度の予算措置におきましては、ぜひとも一つ文部省としては強力なお進めがいただきたいと要望いたす次第であります。  それから今、荒木委員から私立学校お話が出ましたが、それに対して宮澤政務次官から御答弁がございましたが、きのう文部大臣が名古屋で、私立学校については二分の一の補助をするというようなことを発言をせられたようでありますが、これはどうも、従来文部省はとかく官学偏重で、私学に対しては尊重すると言いながら、どうもその点が認識がわれわれとは隔たっておる。これは与党、野党を通じて、私学振興ということは、国会の多くの方方が、常に要望をしておっていただいておるのでありまして、ことに今度のような災害を受けますると、これは二十八年の十三号台風のときとは御承知の通りちょっと違うのでありまして、規模が非常に大きい。また、従って被害が深いのであります。従ってまた、私立学校の受けておりまする痛手というものは非常なものがある。そこで公立の学校につきましても、なかなかこれは四分の三補助をいただきましても、小さな市や小さな村はあと起債でやっていかなきゃならぬということは、ほかの……、学校だけじゃありませんから、従ってまあ非常な困難であります。これももっと積極的な御尽力を願わなければなりませんし、私立学校は、主として財源というものは父兄が負担しているわけです。それ以外にはそんなに寄付金なんというものは集まるものではない。従って、こういう災害を受けますと、その負担は父兄にかかってくる。その父兄の大部分というものが今度の災害の被害者であります。従って、そういう父兄に負担をかけるというようなことは、これは容易ならぬことであります。同時にまた、罹災の生徒が非常に多いわけです。公立学校の方におきましては、むろん授業料の減免をすることは当然なことでありますが、従って私立学校も減免をしなければ、これはせっかく志願をしてきておりまする学生生徒に対して申しわけない。そうしますると、学校の経営収入においてなおさら少い。こういう点から考えまするというと、私立学校はたださえ経営が困難である、こういうような大災害をこうむりまするというと、まあひどい学校になりまするというと復興がむずかしい、こういうような状態であります。従いまして文部大臣が、二分の一で私立学校はいいなんという考え方ではこれはいかぬので、公立学校の方に四分の三十出し、あとは起債で市町村がやっていく、私立学校の方は私学振興会とおっしゃるけれども、さっき宮澤政務次官もちょっとおっしゃいましたように、私、私立学校振興会に調べに行きました、行ったところが、ことしは金がないのです。経常費の貸付すら十億円しかない。私学振興会から借りればいいとおっしゃるけれども、現実にはふところにはちっともないと、こういうことになると、口にはうまいことおっしゃるけれども、現実には私立学校はたちまち困ってくる。こういう現状でありますので、その辺は一体、政務次官なり局長はどういうふうに考えていらっしゃるか、この点承わりたい。
  131. 宮澤喜一

    説明員(宮澤喜一君) 実は、先ほどの荒木委員の御質問にも多少関係がございましたので、私、自分の所管外と思いまして答弁を御遠慮しておったのでありますが、こういう災害が起りますと、根本的には実は生命保険及び損害保険の保険事項——約款の定め方と申しまするか、保険事項の定め方に私は一つはなってくるのじゃないかと思います。御承知のように、こういう事項が保険でありませんために、かねてこれに備えることが罹災者あるいは被害を受けた方自身で容易にできないという、そういう問題が一つもとに大きくあるのではないか、学童の生命あるいは身体の問題もございますが、これは学童ばかりでなく国民全体の問題としても、実はそこにも保険の問題に一つ問題があるのじゃないかということを考えるのでございます。これは多少所管外でもありますし、また余談になったかと思います。  そこで、ただいまの大谷委員の御質問でございます。私学振興会の財源に問題があると申しましたのは、実は私どもそのことに気がついているわけでございまして、振興会にいらっしゃればいいということで問題をほうり出してしまっては片づかないということは承知をいたしております。文部大臣が二分の一ということを現地で申しましたのは、実は私どもも大蔵省といろいろに折衝しながら、どうもその辺までしかいけないのではないかという折衝の段階を反映しまして文部大臣が申したと思います。  さて、御指摘のように授業料は免除していただかなければならない。のみならず、当分は生徒数が激減をするであろうということを考えなければなりませんので、経営について非常にお困りになるだろうと思います。私どもとしては、この補助率についてなお努力を進めるつもりでございますし、さらにそれと並行して振興会の財源が非常に困窮をしておられるということについて、何か考えなければならないのではないか、こういうところまでただいま考えております。非常に強い御要望がございますので、とくともう少し考えて——時間を急ぐ問題でありますが——みなければならないと思っております。
  132. 小林行雄

    説明員(小林行雄君) ただいま政務次官からお答え申し上げました通りでございまして、先ほど冒頭に政務次官からお話がありましたように、災害の復旧対策としては一応二十八年災の線を基準にするというような、まあ抽象的な原則もございますので、私ども今回の災害復旧についてはそれ以上のものをしたいわけでありますけれども、なかなかそれがうまい工合に進捗しないというような状況でございます。私学関係の施設の復旧の場合の補助率並びに振興会からの融資の財源等につきましても今後努力をしたいと思います。
  133. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 そこで、これは一つぜひ、私立学校というものが、今日まあ愛知県だけの例をとってみましても、大学の学生の八五%は私立の大学に入っておる。高等学校も県なり市なりどんどん作ればいいがなかなか作らぬものですから、従って五三%というものが私立学校へ来ている。そういうことを考えますると、国なり県なり市がやるべきことを、私学が非常な困難た中から努力しておるわけであります。従って、公立学校に四分の三出すならば、私立学校に対しては百パーセント援助をすることが、私は、それこそ私学振興であるし、これは私学を援助する、国の教育を進めるという意味において大事なことだと思う。従って、これは一つ大臣帰って来られたら、文部省がもっと腰強う大いにぐんぐんやってもらわぬことには工合が悪い。ぜひとも一つ強力にお願いしたい。  それから、名古屋あたりは幼稚園等が流されてしまって、姿も形も見えぬようなところが非常にたくさんあるわけなんです。こういうようなものの復興、これは来年度の予算に幼稚園に対しても全国的に補助を文部省は与えると、ただし、学校法人でなければいかぬというようなことでありまするけれども、しかし、今日まあ幼稚園設置基準もできておりますし、法人であろうがなかろうが、その教育内容についてはちっとも変りがない。従って、こういう施設について、流された幼稚園だけでも三千人くらいの子供さんを扱っていたということです。これについては、復旧に対する補助をされるという御意思があるかどうか。これはもうぜひともしていただきたい。こういう希望をもってお尋ねをいたします。
  134. 小林行雄

    説明員(小林行雄君) 私立の幼稚園の災害復旧でございますが、お話にもございましたように、学校法人立のものにつきましては、これは私ども、大学から小学校のものまでと同じような考え方で補助及び融資を行いたいと考えております。ただ個人立のものにつきましては、これはまあきわめて規模の小さいものが非常に多いのでございまして、いわば個人企業的なものもあるのでございまして、そういうものまで——微細なものまで全部拾えるかどうか、そういう点につきましては現在のところ疑問もあるのじゃなかろうかと思っております。少くとも法人として公けに認められて、経営もしっかりしているものについては、ただいま大谷委員お話にございましたように、全部拾うつもりでございます。
  135. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 極力一つその点の御配慮と御善処をお願いいたしたいと思います。  それから三重県でも、伊勢神宮の五百年、六百年に達しておった樹木が倒れて、御本殿が立っておるだけだ、そのために被害が十一億円だというようなことを聞いておりますが、これは愛知、三重、岐阜三県下におきまして、神社なり寺院なりの被害が非常に多いわけであります。ところがこれに対しても、宗教法人なるがゆえに何ら貸付等の恩典にも浴せない。ほったらかしである。それで半壊しておるところやあるいは倒れなんだところは、御承知の通りに避難者を収容しておる。そうしてまあ公共的なことに一生懸命努力しておる。また、愛知県などでは全寺院を開放して、避難して来られる方に開放しようというようなことで、努力をしているわけなんです。こういうような宗教法人に対しては、所管官庁としてどういうような考えをお持ちであり、またどういう対策を講じておられるか、お尋ねいたします。
  136. 斎藤正

    説明員(斎藤正君) 宗教法人でも御承知のように、文化財保護法の適用等のありますものにつきましては、その面からの災害の復旧の補助ができるわけでありますけれども、まあ宗教法人の行いますところの宗教活動に必要な施設そのものに補助をいたしますことは、事柄としてこれは困難なことではなかろうかと思います。ただ、今先生のお話のありましたように、実際問題として、個人の住宅等は、それぞれ応急の復旧の資金、つなぎの資金等の方法があるけれども、神社それから寺院等については、そういう点で困っておるのだというお話が、現地の方の宗教団体等から私の方へございました。この点は、住宅の用に供しておるような部分の復旧につきまして、公団からの資金の融通等ができるのかどうか、その点は、公団に当りまして、連絡もしてみたようなわけでございます。今さしあたって具体的な措置は実はございませんけれども一つ、災害対策本部に調査局長に行っていただきましたのも、実は、担当の局長で、現地の実情から見てどういう方法があるのか、どういう御相談に乗れるのか、その点も一つ承わってみて、御相談に乗ってみたらということが、担当の局長が出ていきました理由の一つでございますので、何かそういう実際の融資のごあっせん等でできます道がありますならばと、こういうことを考えておるようなわけでございます。
  137. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 この問題も、宗教法人だから何らの貸付もできぬと——このごろ、大蔵省にも当ってみたんですけれども、なかなかすぐにその研究がしてもらえないのですが、これは文部省が宗教団体については所管しておられるのですから、ぜひ一つ、一般の神社の社務所や庫裏でも、これは宗教法人のうちだから貸付も何もできないのだというようなことでは、もうあしたの日から因っちまうということですから、特にこれは一つぜひとも急速にお考えを願い、お手配をいただきたい、かように思います。  それから、もう一点だけですが、さっき名古屋からもお話がございまして、陳情がありまして、今児童たちは集団避難をしておりまするが、さっき宮澤次官が言われましたように、別のところの親と一緒におって、そして学校の授業だけ受けるという子供は、親と一緒におれるのだからまだまだ非常にいいのだけれども、海部郡とか、水がまだ引かぬようなところは、親は水浸りの二階に住んで、子供だけ避難しておる、こういうような子供は、私はちょいちょい訪問しましたけれども、何ともかとも言いようがない。夜になるとお母さんを呼んで、まことに痛ましい状況です、実際。そういう子供と、また、水害のために親を失ってしまった、いわゆる台風の、水害の孤児の問題。これは、地元の中日新聞なども、すぐにみなしごの救援運動などを起して、まことに民間としてありがたいことだと思っておりまするが、こういうような児童の数は御調査になっておりますか。また、それに対してこういう、学校に来ておりまして、みなしごになってしまった子供に対しては、文部省なり災害対策本部としてどういうような処置をとっておられるか。それから、斎藤君急いでおられますから、もう一点なんですが、給食の問題も、さっきお話がありましたが、給食の何ですか、小麦粉、乾燥脱脂ミルクの損失補償ですね、これについては一体どういうような処置をおとりになりますか。  それからまあ、さっきなくなった子供さんの数字が出ておりますけれども、これは行方不明の数は少い。まだどんどんふえると思う。そこで災害の、要保護、それから準要保護世帯の子供たちもどんどんふえてくると思う。そういう者に対する給食費ですね、それからまあ医療費の補助というものについては、どういうような処置をとっていただけるか。  それから給食の設備に対する補助ですね、これについてはどういうふうに考えておられるか承わっておきたい。
  138. 斎藤正

    説明員(斎藤正君) 災害によります孤児等の数は、私どもでは現在の段階ではつかんでおりません。で、これは厚生省の担当しております児童福祉施設のまあ収容の問題でございましょうけれども、福祉施設と関連を持ちます学校教育につきましては、十分に現地で担当者と連絡をとって処理いたして参りたいと思っております。  それから学校給食用の物資の損害の問題でございますが、先ほど管理局長からの御報告にもございましたように、当初予想しておりましたのに比べまして、小麦並びに脱脂ミルクの流出の状況は非常に初めの予想よりは軽微でございました。また、二十八年災の状況と比べましてもかなり少うございますので、現在この程度でありますならば、特別立法を出さないで、別の方法で処理できるのではないかと思っておりますので、現在の段階では損失補償の特別立法を考えてはおりません。  それから、災害によりまして新たに生活の困窮となります家庭の、いわゆる準要保護児童生徒に対する給食費の補助に対しましては、これは御質問にありましたように当然増加すると思いますので、これも具体的な予算措置を講じて参りたい、かように考えております。
  139. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 それから、設備はどうですか。
  140. 斎藤正

    説明員(斎藤正君) 給食設備の復旧の問題は、これは当然に公立学校の災害復旧費の法律の中に含まれる問題でございます。
  141. 北畠教真

    ○北畠教真君 先ほど来、いろいろと御意見を拝聴いたしておるのでございますが、今までの経験からいたしますと、文教方面の災害に対する復旧というものが等閑されておるということではありませんけれども、非常に手ぬるい経験を今まで味わって参っております。特に今回は未曾有の風水害でありまして、全国的な被害を考えてみなくちゃならぬと思うわけでございますが、非常に愛知県、岐阜県、三重県の災害が大きいために他の府県の被害というものが等閑されるというようなことがありますときには、非常に全国家的に見て遺憾な点が残るのではなかろうかと存じております。もちろん、災害のひどい三県に向っては十分なる施策を講じていただくとともに、ぬかりもなく全国的なことについても目を転じていただきたいと願っておるような次第でございます。他の建設方面、いろいろな方面ではいろいろ災害の復旧というものが完成されるのでございますが、文教方面の復旧が非常に手ぬるいというような非難は今日まで非常に強く叫ばれておるのでございますので、その点十分当局におきましては意を注いでいただきたいと思うのでございます。  なお、先ほど大谷委員の御質問に対しまして、幼稚園に関する件がございましたが、学校法人である幼稚園に対しては他の学校と同様に方法を考えていくけれども、企業体をなしておる弱小幼稚園に対しては全然現在は考えておらないというような御答弁のようでございましたが、弱小であり、また個人経営体というような形式をとっておるかもしれませんけれども、たとえば宗教法人を中心にした幼稚園というものが、相当の力をもって弱小ではない範囲まで発展しておる幼稚園も非常に多いのでありますから、こういうものもやはり、小林局長の御意見によると、学校法人でないから十分考慮に入れかねるんだということになりますると、幼児教育の面に非常な支障を来たすのではないかと思うのでありますが、この点については、この際特に何かお考えをいただくような御意思はないかどうか、一言お伺いをしておきたいものだと思います。
  142. 小林行雄

    説明員(小林行雄君) この今回の被害状況から申しますと、当初に御説明申しましたように、三県は特に、たとえば文教施設等につきましても非常に深刻な被害を受けておるわけでございますが、しかし、三県以外にも先ほど申しましたように、長野県、山梨県、あるいは奈良県、和歌山県といったような工合に、三県と比較すれば軽いかもしれませんけれども、それ自体においては相当やはり深い被害を受けておるところもございますので、こういった三県以外の府県につきまして、やはり的確な復旧対策を実施しなければならぬことは当然でありまして、文部省といたしましても、その点については十分努力をするつもりであります。  なお、私立学校施設の復旧につきまして、個人立の幼稚園のお話がございました。私どもといたしましては、従来から個人経営のものはなるべく学校法人に経営を切りかえてもらいたいという指導をしておるのでございます。もちろん、教育自体から申せば、学校法人立も個人立もその間に教育というものの観点から申せば差異はないかと存じますが、やはりこれは総体論でございますけれども、個人立の傾向といたしましてはやはり非常に小さいものが多い。また実際の経官も個人経常的であるものが多いのでございまして、二十八年災のときには、個人経営のものについては、これは対象としなかった事態もございますので、もちろん研究はしてみなければならぬと思いますが、私ども相当難点があるんじゃなかろうかと現在考えておる次第でございます。
  143. 北畠教真

    ○北畠教真君 大体、御当局の気持はわかるのでございますが、実際の幼稚園の施設になりますると、学校法人になっておる幼稚園より大きい幼稚園が相当全国的にできて参っておりますが、そういうものが被害をこうむった場合、これは学校法人でないからこれは考えないというような、二十八年災のときと同じような考え方でなくて、教育の場ということを十分御考慮に入れて、できるだけの広範囲な御救助をお願いいたしたいと思っておる次第でございます。一言お願い申し上げておきます。
  144. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私もちょっと時間がございませんから、非常に簡単に一つお尋ねいたしたいと思います点は、実は名古屋市の方から陳情もあったと思いますけれども、それに対して次官の方からお答えをいただいておりますが、一番心配しておる点は、学校に今九十ほど避難民が入っておる。その避難民の人はどういうお方かといえば、これは小林局長も現地に行ってみられて御存じだと思うけれども、大体ロー・クラスの人なんですね。親戚やなんかに頼っていけない人、それから便乗といっては悪いけれども、駅裏の浮浪者も実は入ってきたということも実情なんです。この人たちがいつ出ていくかといえば、住宅が建たないから出ていけないじゃないかということです。こういうことになると何年も先だということになる。今は市町村議員の人たち、学校の先生あるいはお気の毒だというのでPTAまで協力をして今はやっておっていいのです。しかし、もう少したったら風紀上いろんな問題が出てきます。そこで、これをどうするかというのが頭痛の種なのです。そこで、住宅の問題がやはり出てくると思うから、住宅の問題についても、これは建設省の問題だと言わずに、文部省としてこれをどうするかということを考えていただかなければならぬとともに、学校も実は十五から二十ぐらい愛知県で大体流れてしまってあるいは土台はあるかもしれぬが、ちょっと地震でも食えばぐしゃっといっちまう。洗われたり、あるいは水がつかっていて、使いものにならぬ。この学校も建てなければ……子供が帰ってくる、土地は、提防の締め切りがおそくとも来月の中旬までにできる、排水はそれに続いて、一週間ぐらいたったら親は帰ってくるが、今度は入る学校が全然ない。それに、コンクリートでやっていくということは賛成です。ところが、コンクリートで建てるというと、二年ぐらいかかってしまう。そこで、そういう学校にはバラックを建てて子供を戻して、片一方では永久建築に入っていく。そういう構想か何かで進んでもらわなければならないのですが、学校へ収容してしまった者に対しては文部省の責任じゃないじゃないかと言われるかもしれませんけれども、これをどういうふうにしてやるのか、一応大筋のめどだけは立てておいてもらわないとどうにもならぬというところです。文部省としては、これに対してどんなふうにお考えになっておるか。
  145. 宮澤喜一

    説明員(宮澤喜一君) それは、確かに御指摘の通り、私どもも問題にしております点であります。災害の起りました当初は、ともかくも学校というものを計画的にあるいは自然に避難施設として使われることになった。この段階まではやむを得ない。お役に立ったことはむしろ幸いだと考えなければならぬと思いますけれども、多少落ちつきますと、先ほど申し上げました愛知県六十三、三重県十四でありますか、この学校の災害に対して文部省としてやはり一つの主張と申しますか、いつまでも放置しておける問題ではありませんので、対策本部でプログラムを立ててもらわなければならないと思います。と申しますのは、それによって緊急住宅の建設なり、あるいは便宜新たに分宿なりいろいろな形でともかく収容してもらって学校を明けてもらいたい。こういう要求はある段階では持ち出さなければなりませんし、またそういうつもりであります。  それから、後段のお尋ねでございますが、場合によりましては、多少学区の再編成とまではいきませんでも、それに近い事態が暫定的に起るのではないか。地区によりましては、かなり早く罹災者がともかく帰って来られるというような場合に、何かの形でそこへ急造的なものでもこしらえますかどうか、ともかく多少の不便を押してでも学童が通学し得る範囲でどこかの学校へ行ってもらうといったようなことは、これもプログラムのある段階では当然現地、現地で立てていかなければならないと思います。
  146. 松永忠二

    理事松永忠二君) 初中局長が見えておりますから。
  147. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私も、入っている人に一カ月後あるいは二カ月後に出て行けということは非常に冷酷な処置だとは思いますけれども、何せプログラム的に、何月幾日ごろには出て行ってもらうのだというめどがつけば、やはりその学校の人たちもみんな協力をしてやってもらえると思いますが、ずるずるべったりにいかれるということになると、大へんなことになると思いますから、それはタイミングを誤まらないようにやってもらいたい。それにはいろんな手があると思いますが、そういう手を逐一申し上げることは別として、今さしあたって、こういうところに困っておる問題が三つあるわけです。給食の問題と便所と非常に困っちゃっておるわけです。朝起きて見ると、校舎の周囲ずっと一ぱいだということになっちゃって、便所の問題をどうするか。もう一つは、市吏員が泊まっておるというのと、先生が二十四時間勤務でやるわけです。ところがこれではもたない。そこで、学大の生徒が勤労奉仕的に協力するという形で今出ておる。それだけじゃ私は問題は解決しないから、この際児童数、教職員の定員ともからんでくると思いますが、見たところ愛知県の定員にしろ、あるいは三重県の定員、岐阜県の定員にしましても、全国的に率が悪いわけです。ですから、教職員の定員をふやす。便所の問題と、それと給食の給付ですか。そういうようなものをどうするかというような問題については、とくと一つ考えてもらいたい。まあ実際あんたらば御存じだと思うが、入ってきておる人たちは、サービスが悪いといって先生らに食ってかかるわけですよ、市吏員に食ってかかるわけです。やる方の先生でいえば、自分のうちに帰らずに——流されておる。市吏員もそうだ。実際精力的にやっておるけれども、なお罹災者でいえば不満になる。なぐられた市吏員もおれば、つるし上げられた校長もいる、非常に迷惑しておるわけです。ですから、私は一つこの際、教職員の定員も若干見てやろうというようなことをして、そうして、あなたの方から市役所あるいは県の方に御連絡いただいて、という手が打てないのか。それから、便所の問題については、そう大した問題じゃないと思うから、これは一言言ってさえいただければ早急に事は片づく問題です。それから給食の問題は、定員の問題あるかもしらぬが、まあ施設をふやしていただく、今お話しになったようなことで解決すると思いますから、そんなことですから、ともかく応急の問題を一つ解決してもらいたい。その点についてどんなふうに手を打っておみえになるか。
  148. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) 便所の問題で困っている話は私どももよく聞いております。厚生省とも話し合いまして至急に何とか処置しなきゃならぬと思っておりますが、今お尋ねの事務職員なり教員が非常に手不足で困っておるということは関係の府県からもよく聞いておりますので、特に愛知県では事務職員をふやしたいという御要望もございますし、三重の場合には集団で疎開しておりますので、派遣教員のような形で約十カ所ぐらいですけれども、大へん困っておりますので、これにつきましては国の方で半分見るようにし、また残りの負担分につきましては自治庁の方とも今交渉しておりまして、特別交付税で考慮していただくように話を進めておるのでございます。
  149. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 まあ、よく聞いて承知だとおっしゃるが、承知だけでずるずるいっておると、こういう問題はタイミングがなくなっちゃうのですからね、やっぱし市町村に半分負担させるという点も、私は義務教育趣旨からいえばそうだと思うのですが、実際まあわしの方で言うと、南陽は——まああれは、南陽は名古屋に入ったから。そうして、たとえば飛鳥だとかなんとかいうところは、今度は町村財政というのはゼロですよ、収入がないのですよ。ですから、そこらあたりは、あんまり、あった法律をそのまま準用するというのじゃなくて、そこは、そういうものはあっても、こういうときですから、何か私は便宜的な措置が講じてもらいたいと思うのです。そういうおざなりの答弁じゃなくて、もうちょっとさっとやれるようなことができぬものかどうか、文部省はもう少し融通のきくことをやったらどうか。
  150. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) 私の方は融通のきくように今愛知県からもお申し込みの事務職員の数、それから、三重県からお話しになっておる派遣教員、まあつき添い教員のような、いわば寮母のようなもの、これも全部私の方で責任持ちますと、残りの分については自治庁で特別交付税で考慮すると、こういうふうに財政局長とも打ち合せておりますから、その点は御心配ないと思っております。
  151. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 まあ、安心したような答弁ですが、いつそれじゃ来るのか、そういうことはまあ別として、一つ早く現地に実際に一つ実現できるようにお願いしたいと思う。  それから、次に入学試験の問題、ちょっと先ほどいろいろと出ておりましたが、これがまあ実際の行われる三月ごろになっちまうと、もう原状へ大体復帰したようなことになっちゃうのです、七、八〇%。そうすると、これ忘れられちゃってとんでもないことになってくる。そこで入学試験の問題にからむと、試験をやると非常に差がつく。それじゃ高等学校の定員をふやすかどうか。それには私学の方に行つちまっても、大谷さんの方からもお話があった、収容も若干むしろ逆に減らすような格好になると思うのですよ。そこで、これは私は入学試験の問題は、なるほどここでは結論は出せないけれども、今すぐということはいけないけれども、まあ一カ月ぐらい先にはどうこうするというようなことを、やはり三県には適切な一つ指導がしてもらいたいと思う。これは一つ要望ですから十分一つ検討していただきたい。それから孤児の問題は大谷さんが指摘して下さいまして、こちらの方で答弁がないわけですが、実際水害の孤児については、戦災孤児のときもいろいろな手があったと思うのですが、私はこの水害の孤児をどうするかという問題は、非常に悩ましい問題であって、これは何も文部省だけの問題でなくて、厚生省の問題にもなるかと思いますが、とにかく水害孤児に対しては、ひがまないように、あたたかい手でやってもらってこれを特定なところだけにしわ寄せしないように、一つ文部省からも十分に厚生省の方に働きかけてもらいたい、これも要望でございます。それから、この補助率の四分の三ということについても、これは異議なくきまったことですが、これは問題は基礎計算を坪幾らにおくかという問題が非常に問題になってきた。四分の三に上げていただいたけれども、坪単価が六万円かかるのを、三万円にしておいて四分の三にしてもらったんでは、これは実際には補助率は同じことになるんですよ。だから基礎単価をどうするか。これはやはり住宅公庫等がやっておるような、ああいうものを十分参酌してやってもらいたいとともに、教材費をこの際うんと上げてもらいたい。教材費というのを交付税の中から、まあ内藤さんよく御存じですけれども、教材費を一つ出していただかないと、流出学校などではとてもやっていけないので、この点についてはやっていただきたい。こういう点については要望になったが、まあ先ほど聞きましたら、非常に融通がきいて、てきぱきと手を打っておられるようでありますから安心しましたが、今の問題についても、一つてきぱきとやってもらいたい。どうぞお願いいたします。
  152. 内藤誉三郎

    説明員内藤誉三郎君) 実は私の方も、入学試験の問題は大へん心配しておりまして、寄り寄り今相談しておりますが、この災害を受けたことによって、そのあとの勉強が一時できないわけですから、できるだけ災害の影響のないような方法関係の府県と十分相談して、父兄の皆さん方に御心配ないようにいたしたいと思っております。
  153. 吉江勝保

    吉江勝保君 ただいままでの質疑応答で、私がお尋ねしたいと思っておりましたことがほとんど出されておりますので、今まで論議いただきましたことを、私も促進といいますか、実現をお願いいたすのであります。そこで、漏れましたようなものを二、三拾うてお伺いをしてみたいと思います。  第一に、これは本日、伊勢湾台風の災害報告がありまして、大体それを対象に対策を御答弁になっておったようでありまするが、もちろんその対策になりまするというと、これは法律なんでございますから、多分本年の七月以降の災害には全部適用になることと思うのでありまして、今までの台風で被害を受けておりました各府県の被害に対しまして、同じようなやはり適用を見ることと思うのでありまして、この点につきまして、まず最初に次官から、その点につきましてはいかがでございましょうか。
  154. 宮澤喜一

    説明員(宮澤喜一君) 考え方としては、吉江委員の御指摘のようにいたしたいと考えております。従いまして、臨時国会において御審議を願います法律案、予算案におきましても、十五号台風ということでなく、八月、九月の風水害……。
  155. 吉江勝保

    吉江勝保君 七月の分は……。
  156. 宮澤喜一

    説明員(宮澤喜一君) 七月分はございましたか。災害地域につきましても、政令でなるべく広く定めたいと思っております。
  157. 吉江勝保

    吉江勝保君 ただいま次官が七月台風をお忘れになったようで、各省が出しておりまするものは、昭和三十四年七月以降の対策なり予算要求をやっておりますので、ぜひ文部省もお忘れないように、一つ各省に負けぬように一つ予算要求をお願いいたしたいと思います。それから、大体考え方が、二十八年災を基準にしてお考えになっておるようでありまするが、ほかの省、たとえば厚生省その他建設省にいたしましても、二十八年災のときの基準よりも上回りましたものを要求しておるやにも聞きますが、文部省はその点非常に良心的にお守りになっておるようでありまするが、先ほど来ほかの委員からも御発言がありましたが、まあこういうときには、いま少し強力に学校の施設に対しましても、その他の災害対策にいたしましても、二十八年のときのもので不十分なものにつきましては、積極的に率も上げるとか、あるいは対象の範囲も広げるとか、また二十八年ごろの災害では、まだ文教の災害に対しまする対策につきましての論議も相当やりましたが、やはり不十分な点も当時あったことと思うのであります。で、今日のような積極的な意見も十分に盛り入れまして、必ずしも二十八年災害の基準をこえてはいかぬというようなお考えでなしに、もっと積極的な対策なり予算要求をおやりいただきたい。まだその予算の締めくくりはできていない、まだしていないというような先ほど御答弁でありましたので、ぜひそういうふうにお願いをいたしたいと思います。これはお願いにとどめておきます。  その次に、少し拾いますので、こまかいような話になりまするが、先ほど来、公立学校あるいは私立学校の問題につきまして相当御答弁をいただいておるのでありまして、こういう点につきましては、先ほどの御答弁なり、さらに今私が申しましたように、より積極的に一つお考えをいただきたい。そこで私立学校につきまして、先ほどほかの委員からもちょっとお触れになっておりましたが、私立学校の範囲を学校法人に大体限定されておるように感じられたのでありまして、個人立のものは微力であるとかいうようなことで、まだ考慮中だというような御答弁があったのでありまするが、それに対しまして、さようなものばかりでもないというような御意見もありまして、考慮していただくことになっておりまするが、個人立のものと申しましょうか、学校法人立でなくても、相当幼稚園ばかりでなしに、あるいは小学校、あるいは中学校、あるいはそれ以上の学校を経営されている者もあろうかと思うのであります。で、やはり広く私立学校を見まするときに、学校法人はもちろん、並びに学校としまして現在教育いたしておりまする私立学校につきましては、相当範囲を広く対象にお取り上げになるように、これも希望を申し上げておきます。  それからその次に、今度はお伺いをいたしたいのでありまするが、今まであまり問題に出なかったのでありまするが、この十五号台風によります文教関係の災害の状況につきまして、やはり文化財の被害も相当出ておるのでありまして、こういうような文化財の災害復旧につきましては、あまり文化財にたくさん関係者がおりませんので、その声があるいは弱まっておるかとも思うのでありまするが、こういう文化財の災害を受けましたものに対しましては、通常予算で年々修理をいたしておりまするような程度では、なかなか文化財の保存ということも不十分になっていこうと思うのでありまして、災害がありましたようなときの文化財の災害復旧に関しましては、完全に十分な復旧をやられる意思があるのかどうか。この点につきまして御答弁をいただきたいと存じます。
  158. 田中彰

    説明員(田中彰君) 文化財関係の復旧につきましては、今特に御指摘がございましたが、われわれといたしましても、これが修理につきましては、特に高率の補助金をもってこれが修理に万全を期したいというふうに考えております。
  159. 吉江勝保

    吉江勝保君 その高率というのは大体どのくらいお考えになっておるのか。あるいは文化財の対象の何パーセントぐらいを大体本年度のうちに災害復旧しようとお考えになっているのですか。
  160. 田中彰

    説明員(田中彰君) 補助率につきましては大体七割ないし八割の線、これは実は先ほども話がございましたが、二十八年度の台風を基準にいたしまして考えておる次第でございます。それから復旧計画は今年度の三十四年度、三十五年度、まず五分五分の割合で復旧いたしたいと考えております。
  161. 吉江勝保

    吉江勝保君 その二点につきましては、どうも不満足の意を表せざるを得ないのでありまして、まあ文化財などの財源というものは出ますところがほとんどないのであります。こういうものこそ高率の全額に近い補助を受けられるように、何ぼ譲りましても九割くらいの補助を要求していただきたいのであります。また対象になりますものも五分五分というような程度では、また来年度災害が起らぬとも限らぬので、その年の予算で七割ぐらいのものは災害復旧して、二、三割を翌年度に譲るというぐらいな一つ方針でお進めをいただきたいのであります。いかがでしょうか。
  162. 田中彰

    説明員(田中彰君) ただいま補助率を七割ないし八割と申しましたのは、平均値を申し上げたのでありまして、もちろん御指摘のように、個々のケースについては先の財政状態等もにらみ合せてさらにそれよりも高率の補助を考えなければならぬというふうに考えております。それから復旧計画でありますが、実は御指摘のように、われわれ一日も早く今年度内に復旧いたしたいのでありますが、社寺あるいは記念物等の復旧につきましては、技術陣容その他の面も考えなければなりませんので、実は大体金額から申しまして半々の計画を立てておるわけです。できまするならば、さらにこれが進捗をはかりたいと思っております。御了承願いたいと思います。
  163. 吉江勝保

    吉江勝保君 その次に社会教育施設でありまするが、社会教育施設の中にはいろいろなものが含まれるのでありますが、こういうような施設が水害等で災害を受けました場合に、あるいはその場所を移転しなければならぬ、これは社会教育施設ばかりでもなかろうかと思うのでありまするが、たとえば海岸あるいは川の岸にありまして、将来川の流れ等の関係とかそういうことで、その場所が不適当で、あるいは場所をもっと高いところに移すとか、こういう施設が移転せざるを得ないというような場合も考えられるのでありまするが、そういうときには三分の二の補助というものの対象には新しい用地、新しい土地を購入するというような、そういう経費も合せてお考えをいただくのでありましょうか。
  164. 小林行雄

    説明員(小林行雄君) ただいまの御指摘のような事例で、たとえば海岸あるいは川の岸には再度災害を受けるような懸念もあるので、適当な場所に移転をいたしたい、これは建物といたしましては当然災害復旧の対象になると思いますが、そのために新しい敷地を購入するというような事例がございましても、敷地の購入につきましては、これはいわゆる災害復旧の対象にはならぬのじゃないか、むずかしいのじゃないかと考えておる次第でございます。
  165. 吉江勝保

    吉江勝保君 そこで、私は実は言いたいのでありまして、厚生省関係の、たとえば福祉施設でありますとか、母子施設でありますとか、そういうものが移転いたしますような場合に、もし土地の購入費まで厚生省が見るという場合に、文教関係だけが土地の購入費を落しておるというようなことではまことに情ないのでありまして、そういう点につきましては、厚生省がもしおくれておりましても、文部省の方から土地の購入費も一緒に見るというくらいに一つ積極的に働きかけていただきたいのでありまして、文部政務次官一つ御所見はいかがでしょうか。
  166. 宮澤喜一

    説明員(宮澤喜一君) 土地につきましては、整地費までは考えておったわけでありますが、御指摘のような場合が起るかと思いますので、これは研究いたします。
  167. 吉江勝保

    吉江勝保君 これはなければけっこうでありまするが、私は今回のような水害に際しましては、やはり幾つか起るのじゃないかと思うので、そういう点は一つ土地の購入費も対象に入れていただきたい。  その次に、再度災害を受けておりまするもの、たとえば七号台風を受けまして、一応それの修理をした学校のごときは一刻も置いておけませんので、修理をいたすでありましょう。そういうような修理をいたしましたものが、十五号台風で再度また災害を受けた、こういうときには七号台風の災害に対しましても、所定の国庫補助というものはお考えになっておりますかどうか、お伺いをいたします。
  168. 小林行雄

    説明員(小林行雄君) 従来さような場合には、前回のと申しますか、前の方の災害復旧ということでは認められなかったのでありますが、文部省としてはそういったものも当然今回の災害復旧のときには取り上げてもらいたいという考えをもちまして現在その法律の立案をいたしておる次第であります。
  169. 吉江勝保

    吉江勝保君 公共土木の災害などを見ましても、たとえば河川の堤防が決壊しましたときに、応急の仮堤防を築きまして、そのまた応急の堤防がまた次の災害で決壊をしてはんらんをするというようなこともあるのであります。そういうときには、最初の応急措置をいたしました仮堤防の費用も、やはり公共土木の災害として一応国が見ておるのであります。それを文教関係だけは、学校がたとえば屋根が飛んだ、それは最初のやつは見ないのだ、後のやつだけしか見ないのだというようなことで引き下がっておられるというようなことでは、文部省の腰が弱い。私はほかの方でも全災害を要求しているので、それは当然文部省が要求をさるべきものではないかと思うのであります。もう一度これは政務次官から……。
  170. 宮澤喜一

    説明員(宮澤喜一君) その点、私どももそう考えております。
  171. 吉江勝保

    吉江勝保君 現在、今まで十五号台風以前の台風災害を受けておりまする都道府県に対しまする文部省のこういう方面の指令と申しますか、御指図は前の災害は見ないというような指令を発しておられるように聞くのでありまして、市町村の財政は、先ほどもお話がありましたが、非常に苦しいので、前のときの修理もこれは市町村でやっておるのでありまして、それを全然見ないような指令を流されるということは、まことに私は不可解に思っておったのであります。今日からでも新しい立法をして、あるいは立法しなくても当然前のやつは見るべきなんで、予算要求をやっていただきたいと存じます。これは希望にとどめておきます。  その次に災害地域の指定でありまするが、これは各省ともにやっておりまするが、災害地域の指定に漏れますというと補助が受けられない、こういうような場合に、相当災害がありました市町村で、災害地域の指定に漏れるというようなことがありはしないかと懸念をいたすのであります。災害があれば、もうその市町村の公立文教施設につきましては当然法律を適用すればよいのに、わざわざこの災害地域を指定されるのは、何か特別に文教関係に必要があるのでありましょうか。
  172. 小林行雄

    説明員(小林行雄君) 従来、狩野川台風のときにも、またそれ以前の西日本風水害のときにも特別立法をいたしましたが、この前二回の事例におきましては、いずれも地域の指定というのをやっております。そのうち西日本風水害につきましては、これは各省共通の地域指定があったのでありますが、狩野川台風につきましては特別立法は文部省だけでございましたので、文部省と大蔵省で話をして災害地域の指定をいたしております。私ども地域を指定いたします場合にも、これはできるだけ広い範囲に、少くとも相当の被害をこうむった市町村はなるべく含めてもらいたいという気持を持っておりますが、今回の十五号台風、また八月以後の風水害、こういうようなものもやはり文部省だけでなしに、関係各省いろいろ関連がございまして、歩調をそろえる必要がございますので、おそらく地域指定ということが各省共通で行われるのではないかと思うのでございます。しかし、先ほど申しましたように、そういった地域指定が行われる際におきましても、文部省としてはなるべく広い範囲にこの指定をするように努力をいたしたいと思っておる次第でございます。
  173. 吉江勝保

    吉江勝保君 各省で共通しまして指定をするというようなときには、ややもしますと大きな公共土木の被害を受けた市町村、あるいは農業災害を受けておる市町村というものは漏れることがないのでありまするが、市町村学校の数からいいましてもわずかな学校しかないようなその災害につきましては、漏れておる例が相当あるのであります。何も必ずしもほかの指定と一緒に文教施設がその指定しなければならぬという必要がないのなら、そういう指定をなさらずに、被害を受けた全部の市町村の文教施設につきましての災害対策を講じられたらよいのじゃないか、こういうように思うのでありまするが、次官いかがでしょうか。
  174. 宮澤喜一

    説明員(宮澤喜一君) ちょっと私お答えを……、つまびらかに事情を存じません。聞きますと、各省共通の指定という問題があるということを申しております。もう少し私研究いたします。
  175. 吉江勝保

    吉江勝保君 もし何でしたら、局長の方からいかがですか。
  176. 小林行雄

    説明員(小林行雄君) これは御承知のように、今回の災害復旧に関しましては、政府全体といたしまして現在三十数件の法案を検討しておるということでございます。そのいずれにも、やはり被害地域の指定という問題が出てくるわけでございます。この地域の指定いかんによっては、先ほどお話のございましたように、たとえば特別に高い率の補助を受けられるかどうか、地域の指定からはずれれば平常の災害復旧の補助率しか受けられないということも起りますので、非常に災害復旧事業の進捗上大きな影響があるわけでございます。私どもは先ほど申しましたように、もし地域の指定をすれば、なるべく広い範囲で公立学校の災害復旧のものがなるべく落ちないように、広範囲の地域指定をしてもらいたいというふうに考えておるわけでございますが、やはり政府全体として共通の地域指定をするということになりますれば、その点は関係各省とお話し合いの上、政府全体できまった地域指定に従わねばならないのじゃなかろうか、かように考えるわけでございます。
  177. 吉江勝保

    吉江勝保君 まだ今の答弁では納得がいきかねるのであります。というのは、文教関係では、たとえば先ほど申しましたような文化財というようなものがやられておりまするような、まあいわば割合に少い被害でも、これを直しまするときには、どうしても国庫の補助を持っていかなければならぬ。こういうものがあるのでありまして、天災法のような二段の地域指定をいたしまして、激甚地と普通の天災法の地域と、二段がまえでその援助が、国の補助が区別されるというような運用がされるならともかく、文教関係の災害立法におきましては、適用になれば全国一律に同じ率で、大体これは災害の国庫補助を受けられるので、指定を受けたから高承で、指定がないから低率というような区別はないように私は思うのでありますが、もし指定によって高率と低率と二段がまえになるような立法があるならお示しをいただきたいのであります。
  178. 小林行雄

    説明員(小林行雄君) 御承知のように、たとえば公立文教施設をとりましても、公立学校の施設災害復旧費国庫負担法というのがございまして、これは平常の災害の場合に、率といたしましては国の負担率三分の二ということでいっておるわけでございます。今回の特別立法におきましては、それを四分の三に高めたいということを考えておるわけでございまして、それはまあ先ほど来議論のありました地域指定とか、災害地域に指定されたものが四分の三、その地域指定からはずれたものは例の今までの災害復旧費国庫負担法にありますところの三分の二でいくという形になるわけでございます。  なお、文化財等のお話がございましたが、文化財につきましては、おそらく特別立法をいたさない、これは二十八年災もいたしておりませんので、今回も特別立法はしないということで参ると思います。で、その場合には、災害地域の指定ということは当然起らないわけでございます。
  179. 吉江勝保

    吉江勝保君 まあ、私が文化財をあげましたのは、小さな災害でややもすると、ほかの各省の災害を見ましたときに、地域指定をしまするときに、文教関係のものは落されてしまう。地域指定をしないと、この特別立法の適用を見ない、こういうことで、地域指定というものでスクリーンにかけられしぼられてしまう、こういうことを心配するので、今度の特別立法が昭和三十四年の七月以降の風水害に対する特別な法律として制定になれば、全国に適用になるのであります。その全国適用の中から、特に被害を受けた一地域だけを指定して、そこにだけ適用するというようなしぼり方をする必要がないのじゃないか。こういうことを申し上げておるのでありまして、これはいま一段と御研究をいただくことにいたします。大体以上でありますが、いま一つ終りたいと思います。  この災害地域の指定と同じように、文教災害の、他の委員からもお話がありましたが、どうも対策が少し手ぬるい。これは私も感じておるのでありまして、これはやはり災害が起りますと、すぐに査定をされるのでありまするが、この査定官と申しますか、査定のやり方に、あるいは人員が不足して各府県に一斉に出られないというようなところに険路があるのかとも思うのでありますが、たとえば農林省とか建設省は、ほとんど建設事務局とか農地局とか、いろいろ農林省の地域ごとの機関を持っておるのであります。そういうところの人は手早く出ますが、文教関係では都道府県教育委員会というものだけしかないので、文部省の査定官の手助けになるものがないのであります。そこで、自然にほかの省の災害対策よりも現状把握もおくれまするし、それから査定もおくれるし、自然予算の編成もおくれてくる。こういうことになって、後手をとっておるので、災害が起りましたときには、文教の災害対策に対する査定は、実施の仕方を、特に他省におくれないようなことを特に御考慮いただきたいのであります。これは希望として申し述べておきます。  最後に、どの委員からもお触れになっておりませんので、この台風第十五号による文教関係災害の中で、国立の文教施設、名古屋大学を初めとしまして、国立の文教施設の災害があげられております。これはもう補助でなしに、国立のものでありまするから、文部省が直接に災害復旧をなさることになろうと思うのでありまするが、こういうような学校の施設に対しまする災害復旧につきましても、予算としましては本年度の災害復旧予算で修理ができるかどうか、これが次年度まで延ばされるようなことがないかどうか、そういう点につきまして、最後にお伺いいたしておきます。
  180. 小林行雄

    説明員(小林行雄君) 国立文教施設の災害復旧でございますが、これは従来の事例から申しますと、大半はその災害年度ということでございますが、やはり幾分かは延ばされておるものがございます。今回の十五号による国立文教施設の災害復旧につきましても、私どもといたしましては、できるだけ本年度で大量のものを消化してもらいたい。しかし、やはりこれは、公立とのバランス等もございまして、公立学校は従来五〇・五〇の比率で、二カ年にわたって復旧をいたしておりますので、国立文教施設だけ全部本年度に実施せよということも無理かと思いますが、できるだけ多く三十四年度で修理の実施をするように努めたいと思っております。    〔理事松永忠二君退席、理事吉江勝保君着席〕
  181. 松永忠二

    松永忠二君 ちょっと関連して、二点ほどお聞きをするわけでありますが、適用地域の問題については、今吉江委員からお話がありましたが、この地域指定について、局地的な災害を受けたというような所については、狭い範囲で指定をするというような——広い範囲で指定をするということが理想だけれども、もしそういうことができないという場合においては、局地的に地域指定をするという方法もあると思うわけであります。こういう点については、どういうふうなお考えを持っておられるのか、それをお聞きをしたいわけです。
  182. 小林行雄

    説明員(小林行雄君) 災害地域の指定のことでございますが、先ほど申しましたように、私どもといたしましては、地域指定をする場合には、できるだけ広い範囲の地域指定をして、なるべく災害市町村の多数のものがこの恩恵を受けられるように努めたいと思っておるわけでございます。ただ従来の事例から申しますと、何県何郡何町とか、何村とか、こういった指定をいたしておりますが、場合によっては局地的といえるのじゃないかと思います。今回はどういうふうになるか、まだ私どもとしては全然見当がついておりませんけれども、先ほども申しましたように、関係各省足並みをそろえてやるということであれば、各省の出方を待って私どももそれについていきたいというふうに考えております。
  183. 松永忠二

    松永忠二君 広い範囲で指定をするというようなことも、予算があれば望ましいことだと思うわけですが、局地的な被害を受けておる、集中的に豪雨を受けたとか、あるいは風害を受けた、全県的にはそれほどひどくはないというものも、今度の災害の地域にそういう事例があるわけです。従って、広い範囲で指定をするということが理想だけれども、そうでない場合における局地の指定ということについて、極力がんばっていただきたい。せっかくの特別立法という措置をされるのであるから、その地域について、ぜひ一つそういうような方向で努力を願いたいと思うわけであります。  それから、特別立法の中には、今考えておられるのは、小災害のものは含んでおらないのか、含んでおるのか、それぞれ十万以下という、十万以上ということはそのままにして、特別立法の適用を考えておられるのか、その点はいかがでございますか。
  184. 小林行雄

    説明員(小林行雄君) この小災害に対する対策でございますが、いわゆる伊勢湾台風、または七月、八月の風水害というものに対する特別立法の中には、それを含めてございませんけれども、小災害につきましては、別の特別立法をするつもりでございます。で、公立文教施設におきましては、従来、建物、土地、工作物、設備、それぞれ一項について十万円以上でなければならないものを、今回のその別の特別立法で、一項において合計で十万円以上になれば被災の対象にするというふうにしたいと考えております。
  185. 松永忠二

    松永忠二君 今のお話だと、よけいにその指定に漏れるということになると大へんだということになるわけであります。局地指定に漏れると、その方の立法の指定に漏れれば、結局、普通の公立災害の復旧で小災害は見てもらえないし、それから、また高額の補助率ももらえないということになるので、非常に影響するところが多いわけであります。そうなった場合には、片方の特別立法には指定にならないけれども、他の方の立法においては適用の指定になるという区別があるものなのかどうか、共通なものなのか、その辺はどうなんですか。
  186. 小林行雄

    説明員(小林行雄君) この補助率を高める特別立法は、御承知のように、特に被害激甚地に対する災害復旧を促進させるためのものでございまして、これについては先ほど来お答え申し上げておりますように、災害地域の指定というものがあろうかと思いますが、後段の方の小災害の復旧対策としての特別立法の方には、特に地域指定というものは行わないのであります。
  187. 松永忠二

    松永忠二君 よくわかりました。そこで最後に、今なお処理の済まない非常な被害を受けた地域について、私は、その調査その他の方法がおくれてくるという点は、やむを得ない場合もあると思うわけでありますが、全般的にはやはり、そういう所を除くと、調査はすでに完了しておるわけであります。それが画一的に、他の地域の調査を待って実施をするということになりますと、非常に時期的におくれてくるわけであります。特に私の地域で、新居という中学のごときは、山の上にあって、それで周囲はほとんど何も被害はないわけなんです。学校だけが雨の日には授業をやれないという状況にあるのに、なおかつ査定もまだ済まないし、実際のところ手をつけることも、やはり財政上の見通しから非常に困難だという状態もあるのです。われわれは、すでに調査の完了した地域については、事務的な査定の処理を早くやってもらって、実施できるような方向にしていきたい、もちろん特別立法の関係もあるので、やはりこういう点について、立法が適用されれば補助率は違ってくるわけでありますが、それはなお一そうよいことであるので、現状のままでもこの程度のものはできるのだということで、確信を持って早急に一つ着手をする必要があるということをわれわれは痛感をしておるわけなんです。そういう点で、大体非常にひどい所を除いて査定の完了する時期をいつとお考えになっておられるのか、それを一つお聞かせを願いたいと思います。
  188. 小林行雄

    説明員(小林行雄君) お話のございましたような、たとえば愛知県、三重県の冠水地帯——水のたまっておった地帯というようなものを除きまして、それ以外の府県からは、逐次すでに国庫負担申請書を出していただいております。この国庫負担申請書も、例年よりはできるだけ簡素なもので間に合わせるという形で、すでに出していただいております。また、先ほど吉江委員のお尋ねの中にもございましたが、大蔵省との立会調査も、この二十日から開始する予定にいたしております。ただし、愛知県、三重県等の先ほどのお話の非常に被害のひどかった地帯は、できるだけ時期をおくらすというふうにいたしておるわけでございますが、今月の下旬からだんだんに大蔵省財務当局と文部省、それから府県の教育委員会の担当の職員との立会調査を開始することにいたしております。
  189. 松永忠二

    松永忠二君 その終る時期は……。
  190. 小林行雄

    説明員(小林行雄君) 最後の愛知県の方は十一月の末ごろになるのじゃないか。十一月の末から十二月近くになるのじゃなかろうかと考えております。
  191. 松永忠二

    松永忠二君 他府県のものは。
  192. 小林行雄

    説明員(小林行雄君) 他府県のものは、すでに国庫負担申請書は出していただいております。ですから、それ以外の府県は、もちろん十月から十一月の中旬ころには終るわけです。
  193. 松永忠二

    松永忠二君 わかりました。    〔理事吉江勝保君退席、理事松永忠二君着席〕
  194. 吉江勝保

    吉江勝保君 ただいま松永委員との応答の中で少し感じたのですが、この査定がおそいということを私は先ほど言ったのですが、それでは七号台風の災害に対して、あの災害の激甚であった長野とか山梨とか静岡とかですね、こういうような県に対する査定はもう終っておるのですか。
  195. 小林行雄

    説明員(小林行雄君) 実は、七号台風関係のものの査定をいたそうと思いまして、九月の下旬から開始しようというので、予定を立てまして、府県の教育委員会に連絡をしたあとで、この今回の災害が始まったために、その予定を一時中止いたしたわけでございます。  それで、この二十日から七号台風関係のものをあわせて財務当局の関係の者と立会調査をするようにいたしております。
  196. 吉江勝保

    吉江勝保君 そういうことになりますので、先ほど災害の二度重ねた場合に、最初の災害の負担が市町村に負わされてしまうというようなことになりはしないかという懸念を持つのであります。やはり災害があれば、災害のすぐ直後といっても無理でしょうが、八月の十四日に起っておりまする七号台風を、九月の二十六日に十五号が起っておるのですが、それまでの間に激甚地ぐらいは手分けをして、査定を完了されるように、もっと迅速に一つやってもらいたいという感じがいたしたのであります。  それからいま一つ、何か聞いておりますと、大蔵省の査定官と一緒に行くので、大蔵省の方がみこしを上げないので、文部省は勢いおくれるのだというように響いたのでありますが、これは大蔵省の者が来ないと査定ができないのかどうか。文教施設の災害につきましては、文部省の者だけで査定ができないのかどうか。それほど大蔵省の者が出なければ査定というものができないのかどうか、その点をお伺いをいたしたいと思います。
  197. 小林行雄

    説明員(小林行雄君) 立会査定をなるべく早くやれという御趣旨はごもっともでございますので、今後はできるだけその点は努力をいたしたいと思います。  なお、立会査定の方法でございますが、これはもう今までの災害復旧につきましては、ずっと長い間、財務当局と申しましても大蔵本省ばかりじゃないのでございまして、財務局の担当官でございますが、そういったものと協力してやるというのが建前でございますので、文部省だけでこれはやるといたしますれば、多少早いかもしれませんが、今までのいきさつもあって、この点はそう簡単には改められないのではなかろうかと思っております。
  198. 吉江勝保

    吉江勝保君 前からの慣例もあって、同時に見なければならぬとおっしゃるのであれば、もう少しほかの農林省とか建設省が大蔵関係の者と査定をいたしまするのが全部済んでから、文部省がやるというような、いつも大蔵省の査定官というものがあとになるというようなことでなしに、少しもっと同時にでも、あるいはいうなら、もっと先手を打って、早く文教施設の査定を大蔵省の財務官と一緒にやるという、もっと積極的に一つ乗り出して  いただきたい。  なお、この際蛇足でありまするが、そういう大蔵省の査定官と現場に臨みましたときに、大蔵省の関係の者は非常に改良復旧でも消極的に査定をしますし、あらゆる査定に非常に厳格な査定をいたすのであります。そういう場合には、文部省関係の者が大蔵省の者に必ずしも引っぱられずに、独自にもっと強く、この学校施設、文教施設はこういうような改良復旧にすべきだというように、強い意見を負けずに一つ出していただけるかどうか、そういうようにして一つ査定をしてもらいたい。これは希望にいたしまして、それじゃこれで終ります。
  199. 松永忠二

    理事松永忠二君) それでは、本日はこれで散会いたします。    午後四時二十五分散会