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1959-08-10 第32回国会 参議院 農林水産委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年八月十日(月曜日)    午前十時五十五分開会   ―――――――――――――   委員の異動 本日委員大河原一次君辞任につき、そ の補欠として江田三郎君を議長におい て指名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     堀本 宜実君    理事            櫻井 志郎君            仲原 善一君           小笠原二三男君            戸叶  武君            森 八三一君    委員            青田源太郎君            秋山俊一郎君            石谷 憲男君            岡村文四郎君            重政 庸徳君            高橋  衞君            田中 啓一君            藤野 繁雄君            東   隆君            江田 三郎君            北村  暢君            清澤 俊英君            小林 孝平君            棚橋 小虎君            中田 吉雄君            北條 雋八君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   説明員    農林政務次官  小枝 一雄君    農林大臣官房長 斎藤  誠君    農林省農地局参    事官      正井 保之君    農林省農地局管    理部長     庄野五一郎君    水産庁長官   奥原日出男君    日本国有鉄道総    裁       十河 信二君    日本国有鉄道営    業局長     磯崎  叡君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○農林水産政策に関する調査の件  (農林畜水産関係物資国鉄貨物運  賃に関する件)  (爆薬による漁業被害に関する件) ○派遣委員の報告   ―――――――――――――
  2. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) ただいまから農林水産委員会を開きます。  農林畜水産関係物資国鉄貨物運賃に関する件を議題にいたします。  この件はかねて委員会の問題となり、再度にわたる決議が行われて当局の善処が求められ、特に遠距離割引公共政策割引存続について、過ぐる七月の三日に、お手元にお配りいたしておきましたような決議が行われ、いろいろ当局に申し入れたのでありまして、当局においては、この決議に従って処置されるものと考えておりますが、かような問題が懸案になっておりますることは、経済活動の円滑を阻害することとなり、かつ、八月末日の期限が切迫しておりますので、今日この席において、当局のその方針を明らかにするため、重ねて委員会議題とした次第でございます。まず、国鉄当局の御説明を求めます。  なお、当局からの御出席は、日本国有鉄道中村常務理事――まだ中村さんはお見えになっておられぬようであります。それから営業局長磯崎さん、農林省から農林政務次官の小枝一雄君、農林省経済局長須賀賢二君が御出席でございます。
  3. 重政庸徳

    重政庸徳君 僕は、国鉄からそういう事務的な職員でなしに――今まで、あるいは営業局長とかなんとかいう、そういう事務的な職員にはしばしばいろんな質問もしておるので、これはやはり総裁とかいう責任ある者の見解が聞きたい。なお、ここで私がそう言うのは、そういう事務的なことを聞くんでなく、またその段階でないので、とにかく農業政策の根本において、どうしても国鉄運賃なるものは、今の制度を継続していかねばならぬという、この根本的な問題である。だから、そういう意味において、まああとから来られるならばそれでけっこうですけれども、それがおそらく私はこの委員会の重点だろうと思う。その点に非常な見解の相違があるということを申し上げておきます。
  4. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) ただいま重政委員から御発言がございました総裁、副総裁の御出席の件でございますが、ただいま、本日ちょうど衆参両院運輸委員会が開催されておりますので、衆議院と参議院とに分れて御出席だそうでございます。残念ながら当委員会には出席ができないということでございますので御了承願いたいと思います。  速記をとめて下さい。    〔速記中止
  5. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 速記をつけて。
  6. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 国鉄営業局長でございます。農林水産物資のいわゆる公共政策割引存続の問題につきましては、昨年の六月の末で打ち切りといたしておりましたが、それを一年間延期いたしましたことは御承知通りであります。その後、本年六月末で期限が切れるわけでございます。実はこの問題につきましては、当委員会にたびたび出席さしていただきまして、その後の経過あるいはいきさつ等いろいろ申し上げておりましたが、前国会の当委員会におきまして、私並びに当時おりました石井常務理事からはっきり申し上げましたごとく、六月末でもって打ち切りになる公共政策割引につきまして、これを一律に全廃するということはいたしません。しかしながら、この割引制度の設置の趣旨その他にかんがみまして、農林省、あるいは通産物資もございますから通産省に対しまして、具体的な資料提示を求めまして、その資料によりて品目別に具体的に検討した上で、それの存廃あるいは調整を決定するということを申し上げておったわけであります。四月の上旬に、農林省に対しまして私の方から資料の提供を五月末までにしてくれるように要求いたしました。五月末に資料をいただきましたが、不幸にして非常に具体性に乏しく、また、われわれの企図するいろいろな点に触れてない点などもございましたので、いろいろその資料検討いたしました結果、あらためて六月の末にもう一ぺん不足資料補足をお願いするということでもって、その資料を七月十日までに提示を求めたわけでございます。従って、六月末でもって切れますと、その期間中になくなるということで、はなはだ事柄が事務的でないというふうに思いまして、二カ月間延長いたしまして、農林省からの再度の資料によりまして各品目――農林通産物資合わせまして約百十品目がございます。この百十の品目につきまして、具体的に数字検討した上で割引率調整するという方針でもって二カ月延期いたしましたわけでございます。七月三日に当委員会の御決議があったことはもちろん了承しております。当日も実は私ども出て来いというお話がございまして、お待ちしておったのでございますが、お呼び出しがなくて済んだわけでございますが、そのときにもしお呼び出し下さいましたならば、その間の経過はそのときに御説明いたしたと思うのでございますが、機会がなくて、二カ月間延期した理由を当時説明しておりませんでしたが、ただいまその趣旨を申し上げたのでございます。  現在は農林省からの再度の資料検討を大体終了いたしまして、私どもといたしましては、各品目ごとにただいま農林省事務当局と具体的な数字検討あるいは不足資料の整備ということをやっておる最中でございます。先週の金曜日からこの事務折衝を始めております。私どもといたしましては、このお話がつきまして、九月一日から新しい割引率によって、この公共政策割引の一部が調整されるというこを確信いたしております。私どもといたしましては、残りました割引につきましては、場合によっては、当然国家からの補償等をお願いいたしたいということも農林省に申し上げております。実はこの席で申し上げるのはどうかとも存じますが、衆議院農林水産委員会におきましては、与党からも野党からも、この問題につきまして国鉄しわ寄せするということよりも、国家自体として考えるべきではないかというような御意見もございましたので、私どもといたしましては、残りました割引の額につきましては、原林省に対しまして、今年度の通常国会でこれを予算化して、私どもの方に補償あるいは補助金という形でもっていただきたいということを申し述べております。  なお、私どもの方の昭和三十三年度の決算は間もなく国会に提出される予定になっておりますが、その決算によりますれば、営業益金は全体で約二十六億くらいでございます。しかしながら、これを旅客輸送貨物輸送とに分けて詳細なる原価計算をいたしますと、私の方では実は営業係数という言葉を使っております。部内的な言葉ではなはだ恐縮でございますが、いわゆる経費収入の割合でございます。収入でもって経費を割った数字でございますが、旅客におきましては九二%、営業係数は、一〇〇以下が何と申しますか、収入の方が多いというわけでございます。旅客におきましては九二、貨物におきましては一〇六という数字を出しております。すなわち、全体としては国鉄益金は、二十六億でございましても、実はそれは旅客収入から上ってきている益金でございまして、今の計算を進めますと、貨物関係におきましては、約八十五億の原価割れ数字が出ております。私どもといたしましては、そういった財政上の理由から、今回ぜひとも二十億に上るこの割引調整をお願いしたいというふうに農林当局お話ししている次第でございます。簡単でございますが、経過お話し申し上げました。
  7. 重政庸徳

    重政庸徳君 今説明を聞きましたが、そういう説明を聞く必要はないので、資料農林省から提供して、そうしてこの割引制度存廃をきめるなどということは根本的にこれは間違いなんで、われわれはどうしても農産物に対する割引制度というものは継続してもらわねば農業政策は遂行できない。御承知通り、今農民収入と他の収入との格差を縮めていこうという政策をとっております。だから、やはりこんなことを百万べん聞いたところが私はこの委員会の欲するところじゃないように思うのですが。
  8. 石谷憲男

    石谷憲男君 すでに三月と七月の再度にわたりまして、この委員会決議をいたしたことは、国鉄当局も御承知通りだと思うのです。しばしばの機会に、まことに真剣な審議がされたことも御承知通りであります。一体なぜにそういうことが行われておるかということを考えてみますと、公共政策割引という制度の成立いたしました経緯から考えても、また、この制度が現に国の施策の上に果しているさまざまな役割の上から考えても、きわめて重要だ、こういうことで真剣な審議が重ねられ、さらに、それが再度の決議となっておる、こういうことなんですが、ただいまの御説明によりますと、従来のごとく、あくまでもこの公共政策割引という制度はやめるのだ、段階的にやめるのだという考え方は絶対に変えておられぬということですが、れそが一点です。それからもう一点、去る四月ですか、農林通産両省と思いまするが、非常にむずかしい調査を照会された。公共政策割引というもののもたらすさまざまな経済的な影響、いわゆる経済効果という問題について非常にむずかしい調査を依頼されたところが、それが提出期限いっぱいに出てきたところが、十分に国鉄満足のいく資料でない。初めからそういう資料が出ることはわかっておる。かりに立場をかえて、国鉄当局がそういう資料産業省立場に立って出すということになっても、あの程度の資料しか出ない。そこで、今度、再度不備なものを補充して出してもらいたいということで、それは先般出たはずだと思うのですが、私ども聞くところによりますと、それで一体国鉄当局は十分なる資料、御満足のいった資料というものを得られたのかどうか。かりに得られぬとするならば、これはあらゆる努力を費しても十分なる資料を今からでも整備しなければならぬという問題が残ると思う。もたらす影響というものは、これは要するに生産農民であり、消費者だということを考えるならば、この段階において、何もそうそそくさとする必要もないのであって、必要な資料というものは、時間をかける必要があるなら時間をかける、十分に整備した上でやはり両当局が話し合って、この前提の確立ということが私は絶対に必要だと思う。そういうことについて一体どういうふうにお考えになるのか、この二点を一つ。
  9. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) ただいまの御質問でございますが、初めの公共政策割引をやめるかどうかという問題でございます。実は、そのお答えに入ります前に、私の方の貨物運賃制度は十分御承知だと思いますが、貨物運賃制度自身が、きわめて鉄道といたしましては、前時代的な、いわゆる鉄道だけしか陸上交通機関のなかった時代の貨物運賃制度であるということは十分御承知だと思います。それは、具体的に申しますれば、私の方で輸送しております貨物輸送の足を一つ見ましても、戦争前に百七、八十キロだったものが、現在は二百八十キロ、距離的にいうと約百キロ足が伸びておるということ、当然近距離貨物トラックに移行しておる。また、運賃の高い、私の方で申しますれば等級の数の少いもの、すなわち、等級の高いものは漸次これが減少いたしております。その割合その他につきましても、すでに御説明いたしましたので御承知と存じますが、そういった前時代的な運賃制度に対しまして、さらに現在私ども特別等級という制度を持っておることも御承知かと存じます。この特別等級は、当然普通等級に入っておるべき貨物の中から、いわゆる国民の生活必需品というものだけを約二、三百品目抜き出しまして、そうしてそれにつきましては、21、22、23と申します全然違った等級番号をつけて、普通等級からは相当な割引をして送っておるということも御承知かと思います。この特別等級が、大体年額約八十五億ないし九十億――によって違いますが――の運賃割引額になっております。ただいま問題となっておりますいわゆる公共割引と申しますのは、さらにそれから引いたものでございます。それが三十三年度の実績では約二十億、三十二年度は二十四億ございましたが、数量の減、全体の出荷の低調等関係で、三十三年度は二十億、トン数にいたしまして約千四百八十万トンというものがその内容でございます。すなわち、私どもといたしましては、現在の貨物運送制度あるいは現在の貨物運賃制度そのものが、今のヨーロッパやアメリカの鉄道事情を見ましても、当然改正されなければならないものというふうに考えながらも、さらにそれを前提として特別等級を作り、さらにそれからある物資についてのみ割引をしている、それが旅客運賃しわ寄せになる、あるいはほかの物資しわ寄せになるということを考えますと、全体としての運賃負担の公平及び国鉄のこれからの財政状態ということから見ますと、私どもといたしましては、まことに寒心にたえない問題でございます。この点につきましては、私どもしろうとだけではと思いまして、実は、昭和三十二年からことしの七月までに、これも新聞紙上で御承知と存じますが、運賃制度調査というものを作りまして、もちろん農林関係の人にも入っていただきまして、そして新しい鉄道運賃制度はかくあるべきだというような種々の議論を、約一年半にわたって、旅客運賃貨物運賃ともにやっていただきまして、十数の貨物につきまして一応の結論が出ております。その中におきましても、公共政策割引というものは、これは廃止すべきものである、しかし、急激に、一挙に廃止できなければ、これはあるステップを置いて漸減していけ、ただし、その中で、さっき申しました特別等級というものと趣旨を同じくするものについては、一部その特別等級の中に含めて考えるべきであるという一応の答申が出ております。従いまして、私どもといたしましては、今やっております作業によりまして、ある程度公共割引調整をいたしておりますれば、その残額につきましては、一部は特別等級に編入するということも行われると思います。これにつきましては、現在貨物等級専門委員会というものを作りまして、約四十名、これは各界代表の方が全部入っております。各界――私どもで申しますれば、荷主、いわゆる産業界の各業種別のおもな代表者を網羅いたしました貨物等級専門委員会を現在開会中でございます。今週中も十三日に行うことになっておりますが、その専門委員会の中で、その残った部分の処置について討議いたすことになっております。もしそれらが特別等級に編入されなければ、私どもとしては、どうしても農林政策上残す必要があるということならば、これは農林当局として当然予算化されて、大蔵省運賃要求される、そうして私の方なり、あるいは業界に対して運賃補給をなさるべきであるというふうに考えております、  なお、念のために、そういう例があるということだけを申し添えておきますが、実は、傷痍軍人でございます。傷痍軍人と申しますのは、最近までは、実は鉄道にただで乗せる乗せないで、ずいぶんいろいろ問題がございました。しかしながら、数年前に、これは議員立法でございますが、議員立法されまして、傷痍軍人国鉄無賃乗車である、いわゆる割引というよりも、百%割引無賃乗車である、しかしながら、その運賃については政府がこれを補償するという、一個の単独法律がございます。それによりまして、私どもといたしましては、年間約二千七、八百万円の金を大蔵省からもらっております。もちろん実額と多少違っておりますが、そういう単独議員立法によりまして、現実に私どもといたしましては、旅客運賃補給を受けているという実例がございます。従って、私どもといたしましては、ただいまの御質問の第一の公共割引をなくすかという御質問につきましては、これは漸減ないし廃止いたしたいと思っております。しかしながら、漸減で残った部分につきましては、一部は特別等級編入され、一部は、もし農林当局としてぜひこれが存続の必要があるとおっしゃるならば、これは当然予算化されて、今の傷痍軍人の例と同じように、私どもの方に補給金のような形でお金をいただくということになるのが筋ではないかというふうに考えております。  第二の御質問でございます。私どもが四月十一日に農林当局に求めました資料調査は非常にむずかしいと、こういうことでございますが、確かにむずかしいと存じます。しかしながら、私どもといたしましては、少くとも二十億の運賃割引をしているということは、これが果してどういうふうに、これがいわゆる公共政策割引として具体的にそれが使われておるかということを知らなければならぬと思うのは、当然だと思います。これはもちろん運賃改正のときにできたものでございますが、すでに今の段階になりますれば、農林当局としては、当然これが価格構成にどういう影響があるかということは、もう私ども資料を求めなくても、そういう資料によって御説明あってしかるべきものというふうに私どもは思っております。従いまして、相当詳細な資料提示を求めましたが、先ほど申し上げました通り、残念ながらあまり具体性のない資料でございます。それについての補足資料を七月十日にいただきました。現在資料につきましては、具体的に検討中でございます。なお、検討の過程におきまして、不足部分があれば、また、私どもの欲する部分等がありましたら、いろいろ農林省資料要求するつもりでございます。実はもし二十億という金を大蔵省から、何と申しますか、農林省法律を作って補助金をもらうということになりますれば、とてもこれは、あんな資料では、大蔵省では金はくれないと思います。少くとも二十億の金を私ども要求するということになりますれば、それは私ども主計局ほどではございませんが、やはり私どもの納得できる具体的な数字を、私どもはほしいと思って要求したのでございまして、この要求が非常に無理だというような御意見だとは存じましたが、それにつきましては、私ども農林事務当局にそれは大蔵省要求するときの気持になってみれば、そんな資料要求できるものではないと申しましたのは事実でございます。それによりまして今折衝中でございますが、なお、足りない部分等につきましては、農林省に求めまして具体的に早く検討したいというふうに思っております。
  10. 石谷憲男

    石谷憲男君 国鉄経営合理化という立場から、お話のごとく運賃体系等について再検討を加えているということ自体は、よく事情を了とするわけです。しかしながら、何も運賃体系のいわゆる合理化是正だけが、国鉄経営合理化じゃない、まだほかにもたくさん合理化しなければならない問題点というものはあると思う。そういうふうに国鉄立場からだけお考えになり、議論になるから問題になる、相手方があって、相手方に及ぼす影響というものは甚大だというところから、先ほど私が冒頭に申し上げたような、当委員会においても、あれだけ審議が行われ、しかも、再度の決議にもなったこの決議に対して、国鉄当局十分判断なり反省をしなければならぬということを申し上げなければならぬと思う。それをはっきり申し上げなければならぬ。  それから二十億を云々とおっしゃっているけれども、これはいささか大蔵省に対する予算要求ぐらいの資料とおっしゃるが、二十億というものが、現にどれくらいな財政的な影響というものをたくさんなあれだけの物資に対して持っているかということ、個々のいわゆるケースについて数字をはじけとおっしゃる、そういうことは、私は非常にむずかしいということを申し上げる。しかしながら、二十億の減額というものが、多少抽象的、一般的になっているかもしれないけれども、非常にいい影響を持っている、いわゆるそういう状態において現状が持続しているということを農林省ははっきり申し上げなければならぬ。だから、そういう事柄の中からおよそ推定をしなければならぬ要素があるというところが、おそらく国鉄当局の困るとおっしゃるところだと思います。かりに立場を変えて国鉄当局がそういうようなものを自分で作るのだとおっしゃってもできるものじゃないということを私は申し上げた。そこで一体、かりに今の問題、現に農林当局通産当局との間に個々物資について、そういった具体的な影響力等を考慮しながら、個々ケースをどうするのだという問題が、おそらく話し合われ、今後も相当長期間にわたって話し合われるだろうと思うわけです。そういう場合、六月一ぱいだ、十月一ぱいだ、そういうように期限をつけて議論をするということ自体に誤まりがあるのじゃないですか、どうなんです。
  11. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) ただいまの先生の初めの方の御意見につきましては、どうも議論になりまして非常に恐縮でございますが、国鉄全般経営合理化につきましては、まさにお話通り、これは私どもといたしましても、運賃問題だけで国鉄経営合理化されるというふうに全く考えておりません。ことに、いわゆる斜陽化しつつある鉄道事業というものを今後どうするかということは、これは国鉄だけでなしに国家としても大へんな問題だというふうに考えまして、私どもといたしましても、及ばずながら新しい今後の鉄道というものを、これは国鉄に限らず私鉄を含めたいわゆる鉄道というものの将来というものを考えながら、現在経営合理化その他諸般の施策をやっておるわけでありまして、これにつきましては、いろいろ今後ともお教えを賜わりたいというふうに存じておる次第でございます。  次の相手方立場を無視したんじゃないかというお話でございますが、これは非常に私どもといたしましても申し上げにくいことでございますが、私どもといたしましても、今までこれだけの割引をさせていただいておるわけであります。十分に今までに相手方立場を了といたしましてやって参っておりますが、やはりこういうふうに国鉄経営が漸次、斜陽化という言葉は必ずしも適当じゃございませんが、非常に苦しくなってきている。ことに貨物輸送におきましては、たとえば同じ農林物資でも、あの運賃の非常にいい近距離、これはほとんどトラック輸送しておられます。私どもは、実は農林省に求めた一番の大きな資料は、農林物資のおもなもの――一体輸送機関別にどういうふうに輸送されているかという一番大事な、私どもとすればほんとうに鉄道輸送分野を決定する一番大事な資料です。この資料が果してあるかないか、逐年どういうふうに生産量の増加に比例して鉄道輸送の割合は減ってきているか、こういった大きな問題については、私どもといたしましては、徹底的に資料を請求いたしたわけであります。これは農林水産物資輸送についての鉄道のウエートというものが、だんだん低くなっておるという現状は、どうしてもやはり具体的な資料を求めなければわからないと思います。それは今まで提出されました資料の一部分につきましては、そういった点がはっきり出ておる部分が多々ございます。従いまして、私どもといたしましては十分、もちろん私どもにとって大事な荷主さんでございますが、国民の一部であられると同時に、私ども収入の一番のかてである荷主さんであります。その荷主さんの立場は、もちろん私どもは了といたしますが、やはり国鉄全体としての問題、あるいは場合によっては、たとえば、先ほどの特別等級八十億というものはほかの運賃に転稼されておる。もしこの八十億の特別等級をなくせばほかの貨物運賃は安くなる、旅客運賃がそれだけ下げられる、こういう趣旨でございます。しかも、そういうことをしないで特別の等級制度でもって約百億に近いものをほかの荷主あるいはほかの旅客に負担させておる、この負担の不均衡というものも徐々に問題になりつつあるわけでありまして、これらを十分考えた上で、今回の二十億について約十億の調整農林当局にお願いしたわけであります。私どもといたしましても、十分に相手方のお立場考えてやったつもりであります。  それから三番目に、非常に期限を切ってやることがけしからぬというお話かとも存じますが、実はそれにつきましては、昨年の六月に相当論議したものでございます。今初めてこの問題が起ったわけでございません。実は昨年の四月末で切れるものを三ケ月延ばして、その三ケ月延ばしたときにもずいぶん論議をいたした問題でございまして、さらに昨年の六月から本年六月まで一年間延長いたしました。その一年間のうちに農林当局としては、当然この具体的な影響あるいは鉄道輸送農林水産物資輸送における地位の変化というものについては、当然研究し、検討してしかるべき筋合いのものだというふうに私どもは存じましたので、ああいった資料を四月に求め五月にいただいたわけであります。従って、私どもといたしましては、この問題は今始めて取り組む問題でございません。すでに、今申し上げました通り、約一年半の間、この問題はいろいろな意味で先生方も御検討して下さいましたし、私どもも及ばずながら検討いたしておった問題でございます。従いまして、私どもといたしまして、八月末までに大体検討を終了いたしたいと考えておる次第でございます。
  12. 森八三一

    ○森八三一君 ただいまいろいろと説明があったのですが、この委員会がすでに二回にわたって現状を存続すべしという決議をいたしましたことは、お話しになったようなことは、十分承知の上で国状の予算を年々予算委員会審議をしておるのですから、現状、将来等を、なおかつ、日本の経済の伸展に関係のある原始産業のためにかくなければならぬとわれわれは確信をもって決議をしておる。いいかげんにやったものじゃないのです。そういう決議を再度やったにもかかわらず、なおかつ、廃止をすることを前提として作業を進めておるという局長のお話です。総裁農林委員会決議をしたことは問題とする要なし、やはり国鉄の運営のためには、国鉄としての既定方針通りやらなければならぬから作業を進めろという総裁の命によってそういうことをやっていらっしゃるのか、あなた方が事務的に勝手にやっておるのか、一体どうなんですか。われわれは二回も決議をして申し入れをしておる。その趣旨総裁は受け取ってお考えになっておるのか、あなた方が事務的にお進めになっておるのか、総裁の命によって私は作業をやっておると思うのです。勝手におやりになっておるのではないと思う。こういうような決議がなければ、事務当局としては総裁を補佐するために、こういうふうにしたらいかがでございましょうという資料をお作りになって御相談になるのが当然なんです。しかし、前後二回にわたって決議しておる現状に立ってなおかつ作業を進めていらっしゃるということは、総裁の命があっておやりになっておる、こう私は了解しますが、それはどうなんですか。
  13. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 私どものただいまやっております作業は、この公共割引を全廃するという作業ではございません。従いまして全廃するという作業について総裁から命令は受けておりません。しかし、当然私どもとしまして、今いろいろほかの先生からお話がございました国鉄の今後の合理化という問題について、運賃問題、輸送問題、設備、車両、いろいろの方向から一体どうしたら国鉄の斜陽化が防げるか、経営合理化ができるかという点について程々検討しております。その検討する項目の中の一つの項目に入っております。従って、総裁からこれだけやれということを、命令を受けたかというと、具体的にこれだけということは申しておりません、全体として合理化の一つの方策として私どもの所管局の仕事の一つとしてやっております。
  14. 森八三一

    ○森八三一君 私の聞いておるのは、今あなたが前段に種々御説明になったようなことは、私は議員として十分承知しておることなんです。国鉄の現状がどうなっておるか、それから貨物運賃特別等級を作ったり、あるいはこういうような政策割引をしたりということによって、国鉄の赤字と申しますか、負担と申しますか、そういうものが幾ばくになっておるか、あるいは、それが国鉄全体の運営にどういうような影響をもってきておるか、さらにそれがまた全輸送物資に対してどういうような影響を与えておるかということはあなた方の方の再三再四の御説明によって十分承知をしておる。その承知しておる上に立って、なおかつ、日本の経済、産業の現状からは現在の政策割引というものを存置することが必要である、これは大きな角度に立ってわれわれは判断をして申し入れをしておる。それは一回ではない、二回もそういうことを申し入れしておるのに、国鉄としては何ら反省なしに従来の基本方針通り作業を近めでおるということは、総裁からそういう命が私はあったのじゃないかと思う。全般的な問題ではないですよ。もう具体化しておるのです。国鉄全体の運営をどうするかという問題ではないのです。具体的にこの問題をどうするかという注文をつけておるのです。それに対して国鉄の内部で何らかの反省がなければならぬと思う。そういう趣旨において私は総裁の命を受けておるものと理解するがどうかということなんです。あなたは、ほかの審議会なんかもやっておる、各界の人を集めておるということが、各界意見の方が重要で委員会意見はその下にあるような印象を受けた。そういうことで一体いいのかどうか。そういう各界の代表というものはほんとうに国民を代表しているものか、そこに問題がある。今これはあなたに聞いても仕方がないから、総裁がどういう態度をもって、その事務的な面をやっているかという説明だけお聞きしたい。
  15. 小林孝平

    ○小林孝平君 議事進行。大体この審議を始める際に当って、総裁が来て話をしなければわからぬ、この間の委員会決議に対する総裁意見を聞こう、営業局長の話を聞いても仕方がないという各位の意見だ、しかし、念のために聞こう、こういうことで聞いたけれども、話が徹底しないのに、営業局長にその命令を受けてやったかどうだなんということを聞くのは、この委員会の進め方にそもそも反しているのです。従って、私はもう営業局長に聞くのはやめて、総裁を呼んで聞けばいい。向うだって昼飯の休みはあります。だから、その昼飯の休みに総裁もしくは副総裁がここへ来て話をして、命令を受けたかどうかなんということを言うよりも、命令をしたかどうかということを聞いた方が早いじゃないか。この暑いのに、しかも、まだ議題がたくさんあるのに、結論のつかない議論をいつまでもやっておらないで、これはこの程度にして総裁を連れて来てやる、そういう運営をしなさい。
  16. 清澤俊英

    清澤俊英君 小林君のに関連して言うのが、僕は議論することはたくさんあります、言われることに。ここはこうだ、あそこはああだ、これは幾ら言っても片づかない、もう一つの大きな政治問題だと思う。だから、やはり政治的な責任の負える人に来てもらって返答してもらわなければ何ら価値のない問題です。技術的の問題じゃない。
  17. 岡村文四郎

    岡村文四郎君 局長に聞くのじゃございません、局長に聞いてもだめでございますから。きょうやっております公共割引をせなければならぬという問題、これはその後荷主の状態が多少でも回復したのだから元に戻すということなら話が聞える。そうじゃない、だんだん悪くなっております。そこで、先ほど皆さんの話がございましたが、これは当然のことだ、私の見るところでは、何も不思議じゃございません。ただ農林省に聞くのはどうも資料が十分じゃない。農林省では徹底した資料が出ません、荷主のなにもございません。ただ統計上の問頭で、おととい経済局長から話を聞きますと、割引するというがあんなもの二千万円ぐらい大したことじゃない――そうじゃない。遠距離貨物は少くなりますまいが、近距離貨物はだんだん少くなりますよ。ですから、それに対応して国鉄はどうするかということをお考えにならないで、現在のままで大事な公共割引をしなければならないという事情にあるものを元に戻す、復活するということは、たとえば仕事をしてその荷主の方がよくなっておれば当然私はけっこうだ。そうじゃありません。こじきから物をもらうような状態になっているものから今より以上増して取れるものじゃない。だから、質問はいたしませんが、断然だめになっておりますから、そのつもりでいて下さい。
  18. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 速記をとめて。    〔速記中止
  19. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 速記をつけて。  ただいまの小林君の議事進行に関しまする問題のように、総裁出席を求めてこの問題を審議いたしたいと思います。つきましては、この問題は後刻に譲りたいと思います。  速記をとめて。    〔速記中止〕   ―――――――――――――
  20. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 速記つけて。  次に、爆薬による漁業被害の件を議題にいたします。  紀伊水道における爆薬の被害については、前回の委員会の問題になり、当局の善処が求められ、当局から、調査団を派遣して調査の上善処したい旨答えられておるのであります。今回重ねて委員会の問題として、その後の事情について当局説明を求めることにいたします。  なお、この件について当局からの出席は、水産庁長官であります。
  21. 奥原日出男

    説明員奥原日出男君) 和歌山県の火薬の投棄事件に関しまして、過般本委員会におきましても御審議をいただいたのでありますが、その後内閣の審議室が中心になりまして、関係のある各省協議をいたしまして――関係ある各省と申しますると、通商産業省、海上保安庁、海上自衛隊、厚生省及び水産庁、さらに当然現地といたしましての和歌山県でございます。で、これは相談いたしました結果、それぞれしかるべき責任者を出しまして、七月の十三日から十九日の一週間現地の調査をいたしたのでございます。で、地元から小型底びき船五隻を用船をいたしまして掃海をいたしたのでありますが、最初の打ち合せ及びしけの模様等の関係から、実際の掃海は十六、七日の両日に実施し得たのでございます。なお、これが掃海に当りましては、保安庁の巡視船二隻、それから県の取締り船二隻も一緒に参加をいたしております。掃海は、両日にわたりまして延べ五十四回の掃海をいたしたのでありますが、これによりまして、非常に残念なことでございますが、二十二箱の火薬を引き揚げましたのでございます。さらに火薬の海中投棄に至りまする経緯、これは通産省及び海上保安庁において調査し、また火薬の散布状況、これは参加いたしました各省それぞれにプレスをする、さらに火薬の化学的な、物理的な状況、これは特に水中におきまする火薬の状況、さらにこれを引き揚げるに当りましての危険度の問題等につきましては、これは通産省が責任を持つ、地元に対する関係につきましては、もちろん水産庁がこれが調査の中心になる、食品衛生に対する影響は厚生省が責任を持つ、こういうことでさらに調査を進めて参ったのでございます。  調査の結果明らかになりました海中投棄に至りまする経緯につきましては、これは簡単に申し上げたいと存じますが、国土開発株式会社の西島工場で六十三トンの不完全な管理の状況にありまする爆発物件がありますることを立ち入り検査の結果発見をいたしましたので、そこで、その中でさらに火薬として再調製して使用し得るものは、別な処理場に運んで処理させることとし、火薬としての再調製の見込みのないものを海中に投棄をするということにいたしたのでございます。国土開発株式会社は、中国火薬株式会社と作業契約を締結いたしまして、この契約に基きまして、実際の調製及び海上輸送投棄の仕事は、中国火薬株式会社がこれが実行に当った次第であります。中国火薬株式会社は二隻の船、一隻は九十九トン、もう一隻は四十四トンの船を用船をいたしまして、そして廃棄すべき火薬の輸送に当ったのでございますが、これが輸送に当りましては、海上保安庁等も特に関係者を呼んで協議をして室戸岬と潮ノ岬の中間の地点に投棄をする、こういうふうなことを指示をいたしておるのでございます。かつ、これが廃棄する船に対しましては、国土開発株式会社及び中国火薬株式会社よりそれぞれ社員が監督のために乗船をいたしておるのでございます。しかるにかかわらず、四月一日に姫路港を出港いたしまして、現実には四月二日に海上に投棄をいたしたのでありますが、これは明らかに当初の指示に違反をいたしまして、由良港南方約十海里地点から日ノ岬燈台西方の沖合いまでの海面に投棄をした。これ」対して乗り込んでおりました会社の社員がこれを制止をしたが船員が聞かなかった。こういうふうな説明をいたしておるような次第であるのであります。  かくのごとき事態が発生いたしまして、しかもなおかつ、海中に火薬が残存いたしており、漁獲のつどこれが魚と一緒に揚げられて、そして漁業に対して非常な被害を与えておる、こういうことが事実であるのでございますので、目下、打ち合せに参りました関係省が、内閣の審議室が中心になりまして、これに対しまする対策についての打ち合せをいたしておるところでございます。先週の金曜日にもその打ち合せのための会議を持ったのでございますが、まだ政府部内におきまして、これをどうするかということについての最終的な結論は出て参っておりません。これははなはだわれわれ遺憾に存ずるのでございますが、水産庁といたしましては、事実がこういう事実である以上、会社の法律的責任の問題はそれとして、一方において、漁民をして操業を可能にさせるために、できるだけ早い機会において掃海をしていくという方角においてこの問題についての努力をいたして参りたいと、かように考えて、委員会におきましても、必要なる主張を強く述べておる次第であります。さらにこの線で努力を倍加いたして参りたいと、かように考えておる次第であります。
  22. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) ただいまの御説明に対して質疑の向きは御質疑を願いたいと存じます。
  23. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 この爆薬の投棄につきましては、さきに愛媛県、高知県、この関係におきましても同様の事件が起りまして、当委員会にも陳情があったのでありますが、今回また同じ中国火薬、いわば前科者がまた同じような違反を犯しておるということについては、われわれとしてまことに遺憾に思うのでありますが、紀伊水道の方は、和歌山県の方は、ただいま御説明のように、関係当局がその現地におもむいてそれぞれ調査をされ、また引き揚げるものは引き揚げつつあるようでありますが、この高知県側あるいは愛媛県側に対するこの問題については、一体どういうふうな処置をとっておるか、この点を一つお伺いしたいと思います。
  24. 奥原日出男

    説明員奥原日出男君) 宿毛湾におきまする火薬の廃棄をいたしました同じ会社がまた今度もこの事件をしでかしたということについては、これはまことに行政的な処置につきましても、われわれとして非常に反省を政府の一部としてしなければならないと、まあかように考えておるのでございますが、ただこの投棄された火薬の漁業に及ぼす影響というものにつきましては、これは紀伊水道の場合と宿毛湾の場合と事情を異にすると、かように考えるのでございます。紀伊水道の場合は、漁業が小型底びきでございまして、定着性の魚を取るとそれと同時に火薬が揚げられることによりまして、その魚がすっかり黄色に汚染をして全くもう利用価値がなくなってしまうと、こういう実態があるのでございますが、宿毛湾の場合は、主としてイワシのまき網漁業でございまして、これは比較的上層部に回遊いたしまする魚を取るのでございます。  そこで、宿毛湾の場合に、海中に投下されました火薬が継続的にその後も非常に悪い影響を与えておるかどうか、こういうことが非常に問題であるのでありまして、そういう意味におきまして、私の方でも、最近における宿毛湾のイワシ漁の不漁というようなものとの関係等につきまして、資源的な、また生物学的な、また海水の水質自体についての研究を南海区の水産研究所及び両県の水産試験場等と一緒に研究をいたしたのでございます。資源的な関係から申し上げまして、実は火薬の投棄がイワシの回遊を悪くしたという科学的な裏づけは、海況、漁況の究明からは出て参らないのでございます。魚群探知器によりまする魚群の発見率というふうなものを調べてみましても、火薬のまだ投棄されておった三十二年ごろにおきましても、若干好転のきざしが見えており、三十三年八月以降――ちょうど火薬の投棄がやめられましたのが三十三年の六月であったと、かように存じますが、漸次、来遊度はよくなってきておるというふうに考えられるのでございます。しかし、それがこの火薬との間にどういう影響があるのかということについては、残念ながらわれわれの研究者によって科学的に裏づけを求め得ないようであります。  生物試験につきましては、外国におきまするやはり火薬の漁業に対する影響についての研究事例を調べ、またTNT火薬の含んでおりまする水中における、比較的抵抗力の弱いと思われまする魚の飼育試験を見ましても、特にこれによって魚が死ぬというふうな顕著な影響を認めることができないのであります。  海水の水質試験、これは表層とそれから五十メートル、百メートル、これをあの海域の十一カ所にわたりまして調べておるのでございますが、これによりましても、その水中に火薬の成分が含有されておるということを検出することができなかったのでございます。  しかし、科学的に火薬の投棄が漁況に影響があったというふうな裏づけを認め得ないといたしましても、何分にも最近イワシの不漁によりましてあの海域におきまする漁民が非常に困っておると、こういう実態でございまするので、前年度におきまして、沿岸漁業振興総合対策の一環といたしまして、特に宇和海を取り上げまして、そこに浅海増殖、あるいは冷蔵施設、加工施設等の助成をいたして参ったのでございます。で、今後とも不漁対策という観点においては、この地域の漁民についてのいろいろな対策を県とも相談をしつつ取り上げて参りたい、かように考えておる次第でございます。
  25. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 ただいまの御説明を聞きますというと、宿毛湾における火薬の投棄というものが魚の回遊にはほとんど影響がないようであるということにまあ帰着するような御説明でありましたが、私は過般同地に参りました際に、沿岸の五つの漁業組合の組合長から陳情を受けまして、非常に困っておる、何とかこれに対して処置を講じてもらいたい、ということにつきまして、過般国会に陳情したと同様の陳情がございましたが、私も、果してこれが影響があるものであるかどうかということによっておのずからこの処置は変ってくる、今お話のような不漁対策という問題は、この火薬の投棄あるなしにかかわらず考えなきゃならぬ問題であるが、果してこれが不漁の原因をなしておるかどうかということが非常に重大な問題である。そこで、当局においてすでに調査をされたということであるから、どういう調査が出ておるか、それによってまずもってわれわれとしても検討しなきゃならぬということを答えて参ったわけであります。しかし、現地の漁業者といたしましては、まあその原因が果して何であるかにいたしましても、その火薬を投棄したころから非常な不漁になってきた。しかも、それは沿岸からきわめて近いところに投棄されておるし、深さも百メートル以下の所に投棄されておるというようなことから、その方面を漁場としておりましたまき網が来ないので困っておるが、対岸の大分県あるいは宮崎県の方には相当いい漁場が通じておって、それによって漁場が変ったのじゃないかということを非常に懸念しておるというわけであります。私はこれに対して、当局が火薬の投棄についての措置をいかにとるかということを非常に心配しておりましたが、今のところでは、お話によりますと、火薬投棄による影響というものはあまり認めないようなお話でありますとするならば、これに対しては何ら措置を講じないお考えであるか、これは不漁対策は別でありますが、火薬投棄による問題としては何ら措置が講ぜられないのであるか、もしそうならばそのことを、火薬による影響でないということを現地にはっきりお示しになるのであるか、またなっておるか、その点をお伺いしたいと思います。
  26. 奥原日出男

    説明員奥原日出男君) 火薬の投棄が最近の不漁に影響を与えたという科学的な裏づけはない、裏づけが見出し得ないということだけを申し上げたのでございまして、実はまだ魚の回遊に対する生物学的な研究というものが非常に未熟でございます。従って、今の学問の段階においてはそういうふうに考えざるを得ない、こういうことを申し上げておる次第でございます。で、私は陳情に来られる方々に何べんもお目にかかりましたが、機会あるごとに、とにかく火薬の対策として国が多額の国費を出して掃海等に乗り出すということであれば、それが紀伊水道の場合のように、現実に操業に全く支障を与えておるが、あるいはそれが海中にあるということが表層回遊いたします魚に非常に悪影響を与えておるかということについては、何らかの科学的な説明がつかなければ、われわれとしても国費を投じてそれに乗り出すということは困難であります。従って、そういうことよりも、むしろ宇和海の一帯の今日の不漁ということについての総合的な振興対策を一体どうするか、こういう問題についての御相談に応じたいと、こういうことで、ただいま申し上げましたように昨年度も実行をいたして参ったのでありまして、最近また地元からいただいておる御陳情の中には、非常に御無理なこともございますけれども、中には十分われわれとしても行政ルートの上で取り上げなければならないというようなこともあるのでございます。それはそれとして、それぞれ善処いたして参りたい、かように考えております。
  27. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 最後に、先ほどおしまいにお尋ねしました現地に対してその火薬の投棄が回遊に影響しておるような実証がないと認められないというようなことは表明されておりますかどうか。
  28. 奥原日出男

    説明員奥原日出男君) 両県の県当局及び陳情に見えた方々に対してはよくその話を申し上げておるのであります。当然現地の方々にもその点は伝わっておるかと思うのでございますが、ただ非常に最近、ただいま御審議いただいております紀伊水道の問題が起りましたので、それなら宿毛湾も同じように何らかの対策があるのではないかという御期待が新しく出ておるようでございます。しかし、これにつきましては、ただいま申し上げましたようなことで非常に実態を異にいたしてもおりますので、よくさらに現地の方方に御納得のいくような説明をしたいと、かように考えております。
  29. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 この紀伊水道の問題につきましては、聞くところによりますと、会社側から何らかの見舞金かなにかの意味で若干の費用を出すようなことも聞いておりますが、これはどういう交渉によったものであるか。当事者間の交渉であるのか、あるいは役所がそれにタッチしてそういうことになっているのか、もしそうであるとすれば、この宿毛湾の問題は全然そういうことにはならないのか。今お話のように回遊に影響があると認められないとするならば、会社側としては出す必要がない、こういうことを言われると思いますが、少くとも指示したところの海域に捨てないで、漁場であるところの海域に持って行って捨てたということ、この責任は、たとえその影響がはっきり出ないにしましても、漁民は非常にそれは不漁の原因だとして心配いたしておるのでありますが、そういうことについて、会社としては何らかの責任を持たないのか、あるいは持たなくてもいいものか、これは広島県知事がたしかやったと思いますが、一方は兵庫県知事がやっている。いずれにしても指示した海域からはるかに沿岸に持って行って投棄した、あるいは船長、船員がやったということでもって話が済むものかどうか、この点の見解はいかがなものでございますか。
  30. 奥原日出男

    説明員奥原日出男君) 中国火薬株式会社は紀伊水道の問題について責任を認めておるかと存ずるのでありますが、和歌山県のあっせんによりまして、三百五十万円の見舞金を関係の漁業者に提供した、こういうことを承知をいたしております。私は、これはやはり民法でいいます不法行為であるのであります。従って、あくまでも民事上のそういう責任というものはこれは免れ得ないと存ずるのであります。もしその点において、今日火薬取締法が非常に不徹底であるのであれば、いや、確かに不徹底であるのでありますが、よその省のことでありますので私もそういう表現を使わざるを得ないと存ずるのでありますが、これはぜひ関係当局におきまして深甚なる御検討をお願いいたしたい、かように存じておるのでございます。ただ、民事上の責任をいろいろ追及するのあまりに、現地の漁業者が操業できるような状態を作り上げることがおそくなるということは、これは水産庁といたしましては厳に慣しんでいくべきことであると、かように考えまして、できる限り政府部内におきまして努力いたして参りたい、かように考えております。
  31. 清澤俊英

    清澤俊英君 ただいま経過の問題でいろいろ聞きましたが、しりの方にきて処理の問題が非常にぼやけているのですね。今幸い問題が出ましたが、賠償の問題というようなものはどうなるか、それから処罰の問題が、この責任が当然あるとするならば、どれくらいの範囲の処罰があるのか、ということは、ただいまも賠償を中国火薬株式会社が三百五十万円出したというが、一体国土開発株式会社は、親会社としては無責任でおいてよいのですか。親会社の係員も廃棄船に乗っておった、こうしますと、そこに何らかの、私はただ単なる契約でなく管理責任を持っているのじゃないかと思う。こういうものに対する大体処罰の範囲、命令を聞かないで無理に投棄した船員、元請負の国土開発等おのおのの責任の範囲と処罰の範囲ぐらいを一つ聞かしてもらいたい。  その次に、掃海の仕事は今考えていると言われるが、ただいまのお話を聞きますと、中国火薬の方から出す三百五十万円のような賠償の問題などはあまりやらないで、会社側に掃海の仕事をさせようというようなちょっと含みのあるようなお話を聞いているのですが、この掃海は、今いろいろ考えておられるという御説明であったが、これは国がやるのかどうか、どういう考え、方なのか。あるいは会社側と話し合いをつけて半々でやるとかなんとかいうようなことでやっておられるのかどうか、これがまあ第二点。  第三点としましては、いろいろその後の問題についても相談していると、こう言われるのですが、先般私は、他にも類似の例がありますので、従いまして、通産省はこれこれのものはこういう海域のこういう場所へ捨てるべきであると、こういう規定ができておるので、従いまして、それぞれの係と相談して潮ノ岬と室戸岬の間へ捨てべきことを指示したのでありますが、この間のときは保安庁は何らそれを知らない、知らないがこれを監督する責任がある、こういうことになっているので、そこに重大な欠陥があるのじゃないか。従いまして、そういうものがきめられたら、投棄する前に保安庁にこれを通知して、そして保安庁の船がついていけば、ちゃんと監視していったら、こういう問題が起きないのだと思う。だから、法律が大事なところで死んでおるから、それに対して一つ考えてもらいたい、こういう私は御注文を申し上げておいた。その点についての進行の様子、どういうふうな御相談をしておられるのか、その三点について一つお伺いしておきたいと思います。
  32. 奥原日出男

    説明員奥原日出男君) 火薬類取締法の話になりますので、私直接その責任ではございませんわけでございますが、当然関係いたしておりまする非常に重大なる関心を持っておりまする以上、若干私の承知しておりますことを申し上げたいと思います。まず、火薬類取締法二十七条、これによりまして火薬類の廃棄について基準を定めておるのでありまして、さらにこまかいことは省令に譲ってあるようでございますが、ただ、この指令に違反した場合の罰則はきわめて軽微でございます。五万円以下の罰金が適用されるのみでございます。その辺にやはり一つの問題があったかと存ずるのでございます。  次に、海上保安庁のこれに対する関与の程度でございますが、火薬を船に積みましてそして廃棄に行きまする際に、神戸海上保安本部の姫路分室におきまして海上保安庁の現地におりまする分室長、兵庫県の工業課の技師、それから県警察本部の保安課員及び中国火薬の神戸出張所長、これらが会合いたして打ち合せをいたしたのでありました。その際に、ただいま申し上げましたように投棄位置は北緯三十三度二十分、東経百三十五度、すなわち、潮の岬それから室戸岬を結んだ中心点だと、こういうことがその際にはっきりと指示をされておるのであります。ただ海上保安庁が、中国火薬は宿毛湾の問題もあり、巡視船を送って監視するところまで手を回し得なかった、やはり事務的ないろんな差しつかえがそこにあったようでございます。そういう指示がそこで少しも守られなかったということは、これは非常に残念に思うところでございます。私は、どういう機関においてどういう掃海作業をやっていくかということは、今委員会において相談をいたしておる最中でありまして、まだこれについてもまたいろいろ民事責任の問題とも関連していろんな議論もございますので、まだ結論が出ておりませんことを申しわけなく存ずるのであります。  ただ先ほどお話が出ました賠償責任の問題については、これはおそらく両会社ともに責任があるというのがこれが当然のことであろうと、かようにわれわれ考えておる次第でございますが、ただ実際問題といたしまして、会社の経営状態その他で今日までお金を出しておりますのは中国火薬のみのようでございます。
  33. 清澤俊英

    清澤俊英君 今重大なる発言をせられたと思うのですが、これは国土開発ですかね、賠償責任があるとしますとね、これは係員が乗り込んだという点であるのですか、その解釈は。と申しますのは、この前東京湾においてですが、廃棄――捨てまする際に、元請会社はわかっておるのです。捨てさせた会社もわかっておる。船もわかっておる。だけれども、第三の請負になってきますと、何か第三国人の非常に結果に対して責任の持てない、貧弱な経済力しかない人間が請け負ったので、それがために賠償ができないということになってしまったのですね。だから、今たまたま私は国土開発がその廃棄船に乗って社員が監視していった、ところが、その言うことを聞かなかった、こういう事態が出ておるのでありますから、それをお聞きいたしたのでありますが、その場合に、これは両方の会社が責任があると言われることは、その廃棄船に乗っていたからそう言われるのか、どうなんですか、そこのところは。
  34. 奥原日出男

    説明員奥原日出男君) 私は、実は民事上の責任についての有権的な御返事をし得る立場にないことをお許しをいただきたいと思います。ただ、私の法律常識の上から、お答えを申し上げるのでございますが、国土開発会社は火薬を利用できるものは利用して、利用できないものはこれを廃棄する、こういうことを意思決定をいたして、それを実行するために中国火薬会社にその実行を委託をいたしたのでございます。従って、委託をいたしましたのも、またその実行をいたしましたものも、やはり善良なる管理者としての注意は当然払わなければならない、こういうことに相なるのではないかと、かように常識的にお答え申し上げる以外にないのであります。
  35. 清澤俊英

    清澤俊英君 これはこの前の例がありますからね、一つ徹底的にやっていただきたい。この前は、東京湾の場合は、ついにこれはもう相手にしても何ら効力がないのだからというので投げてしまった。これは一番先に請け負ったのは三井物産かなにかの船がこれを投棄させたのです。この船が投棄させた。その下請をした。その下請がまたさせた。そうなったためについにそのかかり合いがなくなった。ですから、これは一つ水産庁としては重大なる問題ですから、民法上の問題を徹底的に、うやむやにならないように、この際ある程度までしっかり確保しておいてもらいたい。  それからいま一つの問題は、この間のこの問題が起きましたとき、海上保安庁では投棄したことは何も知らないと、こうお答えになった。合議をしたときに、合議して投棄場所をきめたときには、海上保安庁も入っているのであります。そうすると、海上保安庁というものは船がなかったらば責任が持てない、私はこれは重大な問題だと思うのです。だから、あんたにこれを文句言ったってしょうがないですから、いずれ海上保安庁から来てもらって――非常にこの間の説明と違っておるのです。通産省はこういう場所へ廃棄すべしということを通知しました、こう言っておるのですけれども、保安庁は何ら捨てられるということも事実知りません、従って、私の方では監視はできません。だから、保安庁がぐずぐず言ったってしょうがないじゃないかという私はお話をしたのですから、こういう合議があって保安庁がしないということになっては、これは大へんな問題です。場合によりましたら、国の補償の必要性を生じてくる重大なる問題が出てくると思う。この点、この次までにあれしておいて下さい。
  36. 石谷憲男

    石谷憲男君 一点だけ。たしかこの前の御説明では百五十トンばかり投棄されたというふうに聞いたのですが、従来揚ったものはごくわずかで、今後の調査によりまして、一体現地の漁民が要望している完全掃海というものが果して技術的にできるという調査団の見解であるかどうか、その点をお聞きしたいのです。安全操業ができるまでのいわゆる掃海が果して技術的にできるという判断であるのかどうか。
  37. 奥原日出男

    説明員奥原日出男君) ただいま御質問のありました点につきましては、小型底びきの比較的牽引力の弱い底びき網で五十四回に対して二十二個の火薬が揚っておるのであります。ただ砲弾は一つも揚っておりません。もちろん技術的な方法について、ことに操業の安全性ということについては、砲弾をいじったりいたします以上は、よほど研究しなければならぬ点もございますが、この程度の小型底びき網でとにかく掃海をして、今後の操業の安全に寄与するということは可能だというふうに私の方の担当者は見ておるようでございます。
  38. 戸叶武

    戸叶武君 前にも清澤さんから注意がありましたが、私どもは東京湾における外国船の廃棄の場合に、千葉の沿岸漁民が非常に被害を受けておるし、この問題がうやむやにされたのですが、ああいう前例があるから、結局、危険率なり、配慮なり、そういう他の人に被害を与えるようなものを放棄するときに、だんだん下請というか、下請という形で責任を転嫁してやれば問題はうやむやにできるという前例があるから、こういうことが繰り返されたのでございますが、今度は一回じゃなしに二回目のできごとでありますから、また三回くらいあるかもしれない。この間に十分その責任の所在を明らかにしてこういう無責任なやり方がないように今後その責任の主体を追及しなければならないと思います。  それから海上保安庁が立ち会って、しかも、その威令が行われないということは、今後何に立ち会ったとしましても、海上保安庁なんかが立ち会ったところで問題にしなくてもいいという悪例を作ることにもなるのだし、全く責任体制というものがどこにも確立していないということを意味するので、これはただ法律上の論議じゃなくて、こういうことが今度もまたいいかげんにされると、今度は第四、第五という、これはこういう問題に対してはこの悪例を踏襲することになると思いますから、このことは厳重にやはり各官庁なり、それから海上保安庁なりの責任を明らかにしてもらえるように努力してもらいたいと思います。
  39. 奥原日出男

    説明員奥原日出男君) ただいまの御示唆の点、十分委員会の場にも反映させまして問題の解決をつけるようにいたしたいと思います。
  40. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 本件はこの程度にいたします。   ―――――――――――――
  41. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  42. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 速記を始めて。  重ねて農林畜水産関係物資国鉄貨物運賃の件を議題にいたします。  この件について公共政策割引存続に関し、かねて問題となり、再度にわたり決議が行われて、当局の善処を求められたことは、総裁も十分に御承知のことと存じ、この決議に従って措置されるものと考えておりますが、八月未に期限が切迫しておりますので、今日この席において総裁から当局方針を明らかにされたいと存じます。
  43. 十河信二

    説明員(十河信二君) 二度にわたる皆さんの御意思御決定は私もつぶさに拝聴いたしました。でき得るならばそういうふうに取り計らいたいといろいろ努力いたしましたのですが、遺憾ながら、最近の国鉄財政状態はきわめて窮迫いたしておりまして、収入はわずか十五億か、二十億しかふえないが、経費は百四、五十億もふえるといったような情勢であります。また、先刻も運輸委員会で播但線等の旧式な線路、隧道あるいは機関車、動力等の関係で事故を起しまして、国民の皆様にも非常に御迷惑をおかけいたしたのでございます。また、従業員にも尊い犠牲者を出しているというふうな状態であります。これに対してもすみやかにトンネルを拡大するとか、あるいは電化をするとか、ヂーゼル化をするとかいうふうにして輸送の安全をはからなければならぬのじゃないかということをいろいろ御注意を受けたのであります。私どもとしても、もちろんそういうことを全部やりたいと、こう考えているのでありますが、初めに申し上げましたように、一面においては、収入が思うように上らない、他面においては、経費はどんどん増加してくる、国鉄の背負わされている財政の独立自主ということが今やほとんどくずれかかっているのでありまして、これがくずれますと、この特別割引どころではなく、国民の皆様にさらに大きな御迷惑をおかけしなければならぬというふうなことに相なるということを心配いたしまして、御決議の次第もありますが、どうか一つ、まあ半分だけ何とか国鉄でやりくりをして、半分は一つ国で補償をしてもらうというふうに一つ御了承を得たい、こう考えまして、いろいろと皆さんにお願いいたしておるような次第であります。それらの事情を御勘案いただきまして、私どもの微衷をおくみ取り、御了承いただきたいと、私から重ねてお願い申し上げる次第であります。
  44. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 われわれの決議したことと相異なる御答弁でありますから、私はそれを是認した立場で申し上げるのではございませんが、内容がまだ不明でありますから、その点を先に質問したい。半分は国鉄が持つ、半分は国が持つということで、そういうことをおっしゃることは、国鉄営業面には、全面的にこれは廃止せられた形で収入増を考えると、こういうことでございますか。
  45. 十河信二

    説明員(十河信二君) 私の説明が少し間違っていたかもしれませんが、今まで営業局長が申し上げてお願いいたしておりました通り、一部分特別等級に入れて、旅客なり貨物なり、他のなにで補いをつけてもらう、そうして残りの部分は政府で補償をしていただくと、半分と申しましたのは、少し大ざっぱにすぎましたが、そういう趣旨で、今まで営業局長から皆さんに御明をし、お願いをいたしておりますような線で一つ御了承をいただきたい、こうお願い申し上ぐるわけであります。
  46. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 営業局長からその内容をもう少し具体的にお話し願いたい。――さっきやったですか、そんならいいです。では続けてやります。そんなら政府当局財政措置をしないというときにはどうなります。
  47. 十河信二

    説明員(十河信二君) 私どもの窮迫しておる財政状態は、政府当局でも十分御了承下さっておることでありますから、政府当局必ず了承下さることと、目下政府当局折衝中であります。そういうふうに考えます。
  48. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そうすると、政府当局折衝がうまくいけば、国鉄考え通り全面的な実施をやる、うまくいかない場合には、そのときまた考えは変ると、こういうことですね。
  49. 十河信二

    説明員(十河信二君) 私としての考えは変らないのでありますが、政府当局で承認しないと、こうしろということだと、これはどうも仕方ないかと思いますが、政府当局がそういうことを私は言わないと確信いたしております。
  50. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それは政府当局に尋ねればいいことですが、最悪の事態であれば、国鉄側の考えとしては、政府に善処してもらう要望なのですが、それが満たされないという最悪の場合には、やはり他に転嫁するのが国鉄考えでございましょうか、趣旨からいうて。
  51. 十河信二

    説明員(十河信二君) これができませんと、収支のバランスがとれないのであります。従って、先刻申し上げましたような、あるいはディーゼル機関車に変えなければならぬという、変える予定であっても、それができなくなるというふうな事態が起ってくるかと思うのであります。従って、これは国民の皆様に少しずつがまんしていただいて、そしてできるだけ皆さんの御都合のいいようにということをわれわれは考えておる次第であります。
  52. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 これは前国会でしたか、おやめになられた理事の方がここに来ての御答弁で、六月末のそれをニカ月延期するというあの騒ぎのときの答弁では、このものは全面的に打ち切ろうなどという僣越なことは考えないが、一部変更は必至なのだということでしたが、その程度のお考えと今日の考えとは同じですか、違いますか。
  53. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) ちょうどそのとき私がおりましたので私から申し上げます。前国会で石井理事と私と出席させていただきまして、本件について申し上げましたのは、本件はそのまま存続さすことは考えておりません。しかしながら、これを全廃することも考えておりません。どの程度に調整するかということについて、農林省資料を求めた上で、具体的に品目について検討して調整いたしたい、こういうふうに申し上げたのであります。その調整の内容が、一応各品目ごとに当ってみた結果、ただいま総裁から申しましたように大体十億に、これは通産物資合せてでございまして、二十億のうち十億調整したい、そうするとそれは割引率の軽減になる、減少になるのです。そうして残りにつきましては、一部は、先ほど申し上げました特別等級に編入いたします。しかし、さらに特別等級に編入されない部分につきましては、農林省におきまして、もしどうしても割引等級が必要ならば、これを国家でもって補償するという建前に進む、そういうことで農林省に話しております。
  54. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そこで、再三繰り返して申し上げますが、私は前提としてはいかなるそういう措置にも反対なんです、はっきりこの際申し上げておきますけれども。内容として私は質問するのですが、国鉄当局としてはどういう根拠で農林当局にそれを要請しているのですか、農林当局はまたどういう根拠に立ってそれが可能である、できるとお考えになっているのですか、農林当局が負担せいということでしょう。
  55. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 私どもといたしましては、これは先ほども実は申し上げたのでございますが、過般、衆議院でございますが、衆議院におきましては、与党からも野党からも、本件についてはこれをいつまでも、国鉄運賃しわ寄せということはおかしい、この点については、国家で当然農林政策としてその補償考えるべきであるというふうな実は御意見もございましたのでございます。それなども拝聴いたしておりましたので、私どもといたしましては、かねがねこの点につきましては、農林当局に対しまして、もし農林政策上必要だとすれば、この国鉄の利用者だけが負担するということでなしに、国民全体がこれを負担すべきだという建前から、私どもといたしましては、実は最近起った件ではございませんで、昨年の六月にこの公共政策割引期限が切れることになっておりまして、そのときに一年延ばして、その間に一つ検討するということでもって延ばしてきたのであります。今突然起った問題でもなんでもないのであります。私どもとしては、さらに各物資につきまして検討いたしました結果、これを大体半減程度、全体として半減程度にしたい、こういうふうに思っております。
  56. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 これだけでやめますが、農林物資の問題であるから、農林当局が国民にかわって、国民全体が費用を負担するという立場で、農林当局からその金を出す、そうであれば学童の割引で、やはり困るということであれば文部当局が国民の名にかわって金を出す、こういう論理も通ずるのです。私は国鉄の今の営業面のお困りになられている点は、十分これはひどいところだと思います。しかし、そのことは国策として新線建設費等々の基本的な問題が国として行われて、経営面が国鉄として行われるというふうに、もっと根本的に全体として考えるべき筋合いのものであって、その部分的に各関係当局において始末せられるという方式が必ずしもいいのかどうかということには、私は非常に大きな疑点を持っておる。かりに新線建設のために云々としましても、国策だと言いながら、赤字路線をどんどん当局に作らせる、そのしりは全部国鉄当局にぬぐわせる、こういうやり方は、私は実際国として不都合なことがあると考える。そういうような部分で、国として補いをつける、国の当然の責任だとさえ私は思うのです。そうしてその基礎が成り立っている上で、経営の責任は国鉄が負うてもらう、そういうような基本的な問題を考えないで、こういう問題を糊塗していくということは、私は反対なんです。どうしても国民生活の基礎に触れるその物資の問題なんですから、何としてもこの問題については、従来の割引なら割引というものが今後とも行われ、少くともここ一年なら一年、予算年度の間ばかりもこれが行われ、そうして来会計年度において国が根本的に考える、こういうようなことについて国会も十分考えてもらいたい。こういうことであれば、これは当然もう国鉄の問題は基本的に検討する時期がきているとは思うのですよ。しかし、この中間の、年度の中間で、これは去年からの既定方針である、当然六月で済むものを、二カ月も延ばしたのだから、それだけのことを、微意はくんでもらいたい、こういうことだけでははっきりした今の経済的な裏づけがない。諸物資関係者にとっては、重大な問題だと思うのですね。そういう意味からいって、われわれとしては少くとも一年なら一年というものを、これを延期し、その間において根本的に問題を考えるという方向にいってもらいたい。少くともそういう考え方を持つのですが、総裁の御所見はいかがですか。
  57. 十河信二

    説明員(十河信二君) 今お話のような趣旨で、今日まで一年か二年か、何年になりますか、約一年半延ばしてきたのです。お話通り国家政策上必要として国鉄に犠牲を払わせる部分は、政府の方針といたしましても、新しいものは全部政府が補償してくれるということに、現に傷痍軍人等の場合はそういうふうになっておるのです。資源を開発する必要上、新線を建設しなければならぬという問題につきましても、われわれとしては政府に対して、国家資金で建設するようにしてもらいたいということをしばしばお願いいたしまして、建設審議会も数回そういう決議をせられておるのであります。政府としても新しい方針として、国鉄財政状態を見ると、いかにもこれで、あれをやれこれをやれ、こういうことがあったのはいけないから、こう改めろということを言うことは無理だというふうに御了解いただきまして、新しい方針としては、漸次今お話しのような、国策上必要とする割引というようなものに対しては政府が補償してやろうというふうな方針になってきておると、私はそういうふうに承知いたしております。われわれとしてはそういうふうに各方面にお願いをいたしておるような次第であります。
  58. 重政庸徳

    重政庸徳君 総裁とすると、ただ単に国鉄だけを考える、これはその職務からいって当然だと私は思う。そういう意味で今御説明がありましたが、これからのいわゆる資源の開発とか、新しく金が要るものは国家から特別に出資する、これは当然だ。ところが、そういうようになる前に、やはりそういうものが非常にたくさんあったものを国状がのんで、そうして今の説明によると、そのあとのしりぬぐいを、この農林水産物資割引運賃でやるというように私ら了解せざるを得ぬ。とにかく農林水産物資割引というものが、農業政策上これは必要欠くべからざるもので、事態が非常に違ってくる。特に現在の状態においては、割引したために非常に農家荷主というようなものが非常に利益を得て栄えてきたというような状況じゃない。ますますまだ窮境に立ち至っておる状態です。こういう意味において、この農業政策上この制度は概括的に、あとの調整は別として、この精神としてはこれを排除すべきものではない、政治上、というように私ども考えております。それをただ国鉄財政経理の点において、半分はいわゆる農林省から予算として出してもらうとかいうような御意見でありましたが、これは別な問題だと私は思う。金が要ることは当然だろうと思う。これをこの制度の改革によってこの金を出すということは根本的には私は間違いだと思う。こういう意味において、どうも総裁は単に国鉄の経理のみによった考え方、これはあるいは当然かもわからぬけれどもが、もう少し目を広くして私は考えるべき必要があるだろうと思う。こういうことにおいて、根本的な観念とすれば、この委員会は、総裁考え方とは根本的に具なるということを申し上げておくものですが、この点はどうお考えになるんですか。
  59. 十河信二

    説明員(十河信二君) 私はもちろん国鉄経営の責任者として国鉄のことを当然考えていろいろ施策をいたしておるわけでありますが、国鉄が先刻も申し上げましたように、一番国民から背負わされておる大きな義務は、安全に確実に輸送するということが一番大きな義務なんです。その安全に輸送し、確実に輸送する任務が、収入が思うように上らず、この経費が思うように減らないということのためにできないような実情はまことに私どもの微力を恥ずることはもちろんでありますが、どんなに努力いたしましてもそれがなかなかできないんであります。そこを皆さんに御了承を願って、国鉄が参ってしまえば農村ももちろん、商工業も、みんな災いをこうむるのでありますから、だから国鉄が安全に確実に輸送のできるように皆さんでお助けを願って、そうしていただくのほかないのであります。そういうことを考えまして、今の傷痍軍人などは一つ政府で補償していただきたい、農林物資につきましても、その農林物資の適当な運賃等級表でちゃんとおきめいただいておるのであります。それ以上のことは、しばらく一つごかんべん願えないかというのが、われわれの趣旨であります。どうかその点を繰り返してお願い申し上げますが、御了承をいただきたいと思います。
  60. 小林孝平

    ○小林孝平君 国鉄当局立場については、先ほど営業局長からいろいろ聞きました。しかし、そういうことでは問題が解決しないというので、特に総裁においでを願って、所見を承わっておるわけなんです。  そこで今私は意見を申し上げるのでなくして、先ほど御説明がありました中に、わからない点がありますから一つお尋ねいたします。それはこの一部分国鉄が今後負担する、その残りの部分については、政府がその予算を組んで補てんをするようにいたします――いたしたいというお話ですが、そういう考え方は、どうしてもこれが必要であるという前提に立って、お話しになっているんだろうと思うんですね。こういうわれわれの農林委員会が主張しておるようなことは、必要であるという前提に立ってお話しになっていると思うのです。それならば、傷痍軍人などは現にもう全額国が負担しておるんですから、今総裁がおっしゃったように、半分は国鉄が負担するが、残りは政府が負担するように補助金でやりたい、こう言っておられるのですから、その意味はもしその補助金のめどがつかなければ、少くともこの現行の通りやるということだろうと思うのです。――ちょっと、営業局長のあなたに聞いておるんじゃないんです、私は十河さんに国鉄総裁としての所見を聞いておるので、事務当局で片づくことなら、何も忙しいのに十河さんお呼びしないです。あなたが横から言うと十河さんの意見がくもるからちょっとやめて下さい。  そこで、――そういうことだろうと思うんです。特にあなたは大国鉄総裁として、普通の総裁と違うんです。そのあなたが、先ほどのような御発言をなさった以上は、これは当然政府が補助金として組む自信があるから言われておるんですよ。そこでもしそれが実現できないということであれば、当然それまではこれは待つのが当然ですよ。そういうことでなければ、あなたの先ほどの御発言はこれは意味をなさぬ、営業局長の発言ならいいですけれども、あなたの発言としては実に軽率きわまる発言であると言わなければならない。十河さんがそういう御発言をなさるはずがないから、私は聞く必要がないけれども、そこは念のためお聞きしているので、当然そういうことになるだろうと思うのです。われわれの意見は別なんですけれども、これは私の意見を言っておるんじゃない。あなたのお話しになったことは、こういう意味でしょうということを言っておるんですが、どうです、私のお尋ねしておる通りでしょう。
  61. 十河信二

    説明員(十河信二君) 国鉄の私といたしましては、私が金を持っておって負担するというのじゃないのでありますから、国鉄を利用して下さる荷主や、お客さんにそれだけ負担してもらうということになるのでありますから、それを私としてはできるだけ公平にやるべきじゃないか、計算はなかなかむずかしいのでありますけれども旅客の方はある程度利益が上っておる、その利益でもって貨物の方の埋め合せをしてきている、また貨物でも一部分貨物は黒字になっておりますが、赤字の貨物もある、そういうふうなことをできるだけ公平に皆さん少しずつ譲り合ってできるだけ公平に負担をしていただきたいということから申し上げておるのであります。その点を一つよく御了承……。
  62. 小林孝平

    ○小林孝平君 せっかくの御発言でございますが、私はそういうことを総裁にお尋ねしたんじゃない。私たちそういうことはよく承知して議論しておるんです。今せっかくおっしゃいましたが、そういうことはよく承知しているのです。私のお尋ねしたいのは、先ほどそういう考え方に基いて、あなたは国鉄としては今おっしゃったような意見に基いて、一部は国鉄等級の変更等によって処理するけれども、残りの部分は処理し切れないから、これは国家予算によってやる。それは傷痍軍人の例もあるから、当然国がおやりになるだろうというような御発言でございますから、今おっしゃった御発言からいけば、もし国の予算のめどがつかない限り、現行を維持するということはあなたの御発言から当然の結論になるのです。だから、これはほんとうはお尋ねする必要はないけれども、また間違いがあると悪いから念のためお尋ねしているのです。その通りですと、こうお答えになればいいのです。
  63. 十河信二

    説明員(十河信二君) 収入がたとえば三千五百億円ある、こう仮定して、できるだけわれわれは収入増加をはかっているのでありますが、三千五百億円あると予想しておったが、しかし、そういうふうに努力したが、それがどうしても収入が今の話のような事情で二十億円なら二十億円減った。そういたしますと、国鉄のその収入の中から経費を引いたものでいろんな施設をしなければならぬ。さっき申し上げましたような、動力の近代化をするとか何とかいうことをやらなければならぬのであります。その方がおくれてくる、その方がおくれてくるということになるのほかはない。政府でどうしてもそれを永知しない――われわれは政府の監督を受けてやっているのでありますから、政府がどうしても承知しない、補償金も出さないというならばそれは仕方がない、私としてはそれ以上の力はないのですから。
  64. 小林孝平

    ○小林孝平君 だから、私はさっきから申し上げているように、そういうことはよくわかっているのです。だから、あなた方はそういう立場で、今この農林委員会の強い要求にもかかわらず、これはだめだということを御主張になっている。それはいい悪いは別として、わかっているのです。あなた方のおっしゃっていることはわかりますが、先ほどのあなたの御説明では、その二十億円のうち十億円は国の予算でやることが当然である。また傷痍軍人の例を見てもやられるはずである。だから、わしらは十億円だけ考えるから、あとの十億円は国でもって考えるからそれでいいじゃないか、簡単にいえばこういうお話なんです。ところが、そういうことをあなたがおっしゃれば、これは政府がかりに補助金の問題が片つかぬということになれば、現状維持でいくということに論理上なるのです。そういう問題をお尋ねしているのに、あなたはまたどうも基本的な問題をお話しになりますけれども、そういうことは、国鉄立場はよくわかっている。先ほども営業局長からるる説明もありました。納得はしないけれどもわかっている。何を言わんとしているかはわかっています。だから、今の質問に一つお答願いたいですね。
  65. 十河信二

    説明員(十河信二君) それでありますから、私のそのポケットの財源がきまっているのでありますから、それから二十億円減れば、その財源で施行する事業がこれこれこう減りますよ。それでよろしいかということを――それじゃわれわれは安全確実に輸送するという責任を果せなくなる場合も起ってくるということを政府に説明して、政府の了解を得るつもりでございます。
  66. 清澤俊英

    清澤俊英君 あのね、十億円を国に持たせる、持って補償してもらうという考え方の基本はどこにあるのです。それをまず伺います。そうでもしなければならぬということは、どうも農林委員会がやかましいから、農林団体がやかましいから、まあこんなことで一つごまかそう、こういう考え方であるのか。農林行政の上から見て、運賃問題は非常な重要な関係を持っているから、従って十億円くらいのものは、国鉄の実情もそうであるし、農林行政の上の実情もそうである、こういう観点から、十億円くらいのものを国が当然持ってくれて、補助してやっていけるのだ、こういう御観念に立っておるのか、どっちなんですか。それから先にお伺いします。
  67. 十河信二

    説明員(十河信二君) 農林行政上、必要とする政策を政府が国鉄に強要する以上は、政府は、それに相当する農林行政上、必要と認める範囲の補償をするのは、私は当然でないかと思います。
  68. 清澤俊英

    清澤俊英君 今政府からあなたの方へ言うている段階にきておらないのだ。あなた方がこの運賃値上げというものを解決する建前に立って、十億円というものは国家補償に一つやってもらいたい、こういう考えを出された根底がどこにあるか。政府が押しつけたのではないのですよ。まだ審議の過程なんです。その過程においてあなた方が幹部として受け取られたものは何か、私が聞いているのはそういうことです。
  69. 十河信二

    説明員(十河信二君) それはわれわれとしては、全部政府が負担してもらいたいと、こういうのですけれども農林当局には農林当局のまた意見がありますから、その意見と今折衝の過程において、一部は他の旅客運賃貨物運賃で何とかまかないをつけて、残りを国家補償にしていただきたいということを申し上げておるのであります。
  70. 清澤俊英

    清澤俊英君 小林君の言うことに戻りますが、あるいはわれわれがこれから農林行政を中心にして政府当局に話をする、あるいは二十億円、総裁考えておられるように二十億円全部持とう、こういう線が出るかどうかわからぬ、十億円もまだ未確定ならば、二十億円も未確定とするならば、根本において、今直ちに、八月末日が延期の期間であるから、もとへ戻してしまうなんとかということはできないわけなんです。それを小林君が言っているのです。私は、当然それらの問題が、少くとも十億円という問題が片づくくらいの間は、その折衝の過程において、われわれはまだ二十億円にするかどうかわからないのだから、一応あなた方の原案を話していく上においても期限が要るというのです。九月になれば黙ってそれだけの改訂をやって、あとの十億が解決できなかったときはどうなるのか、小林君の言うのはそれなんです。だから現行のまま、それがきまるまでしばらく待ってもらいたい。もうじきでしょう。そろそろ九月になれば三十四年度の予算はでき上ってくるのです。当分の間、それくらいのことをはっきりと返答していただいても私は問題ないと思う。八月の三十一日にはもとへ戻すのだというようなことは、そういう考え方は一つ訂正していただかぬといかぬ。その御答弁を願いたい。小林さんの言っているのも私の言うのも同じなんです。小林さんの言っていることについて中心をはずしている。そういうところに結論がいきますよ。総裁は笑っているけれども、結論がそこへいっているのですよ。あなたの気持とわれわれの気持は一つなんだ。国鉄のこともよくわかります。だから、日本の農林行政と国民生活というものを考えたら重大な問題であるから、われわれはこれはこのままにしてくれ、ここの食い違いなんだ。そうすれば国の方でどうするか、こういう問題が出てきている。そうしましたら、同じ気持のものが話し合いをつける間くらい待ってやろう、待たなければなりませんという御答弁があるのが当然だと思う。その点をはっきりして下さい。
  71. 十河信二

    説明員(十河信二君) 私としては、たびたび申し上げますように、政府当局国鉄の窮状を十分御存じでありますから、われわれの申し上げておることを御了承下さることと私はただいままでも思っております。
  72. 戸叶武

    戸叶武君 国鉄当局が予算編成時期を前にして、国家補償してもらうのには、自分たちだけにしわ寄せされるのではかなわないから、農林行政の立場からの言い分もわかるけれども何とかしてくれ、この言い分はとにかく、あるところまで私ども理解できると思うのです。賛成とか反対でなく。ただしかし、国鉄の今までのやり方を見ると、どうも大本を忘れて、そうして弱い者いじめというか、そういうふうなところに問題を転嫁しているような傾きがある。この前でも、運賃値上げのときに、あれほどの反対があっても、あの際に国鉄としての公共性の上に立って、新しい施設や何かを作るので、そういうために旅客に犠牲を耐え忍んでもらいたい、私鉄には何のかかわりもない、私鉄運賃は値上げしないというようなことをいって運輸省でやったが、その後結局河野君の昨年の発言によって、私鉄は一割七分の値上げをやった。あなたの国鉄が瀬踏みをして、その上に私鉄が乗るというやり方なんです。貨物運賃の値上げなら値上げが起きると、国鉄の窮状というのは察せられるが、直ちにそれが他に波及しないということは保証できない。先ほどの営業局長の弁解の中にも、近距離輸送というものがほとんど貨物自動車の方に奪われたという実情は、われわれも東京の近郊にあって、関東一帯の状況なんかもよく把握できるのですけれども、そういう事態に陥るまでに、運輸行政の上において大きな一つの力を持たなければならない国鉄というものが、バス、乗合自動車においても、あるいは貨物自動車においても、いつでも私鉄関係に蚕食されてしまって、そうして全体のバランスのとれた運輸行政を行えるだけの骨格をくずしてしまって、そういうところから国鉄が今日の状況に追い込まれた、その大本のことが食われるままにまかしておいて、そうして弱い者のところにしわ寄せする、あるいは哀願をするというやり方で部分的にいくということは、よくわかるけれども、何か国鉄全体の運輸行政に対する大本、骨格がくずれて、結局弱いところへ泣き込んでいくというような傾向が強い。それが他に波及して、またこれが運賃値上げ、それが今度は私鉄の方の運賃値上げになれば、また国鉄がその媒介役をやるというようなことになると、結局悪循環が非常に起きるじゃないかと思いますが、こういうことは考えておりませんか。
  73. 十河信二

    説明員(十河信二君) 今お話しの点はごもっともでありまして、そういう点についてもわれわれは絶えず努力をいたしておるのであります。しかし、自動車の点は、政府の免許を得なければならぬという関門がありまして、その関門を微力にして突破することができなかった結果、非常にわれわれは今悩んでおるのであります。そういうことはありますが、そのすべての点について私どもは全力をあげて努力をいたしております。決してただ一部だけをやっているというのではないのでありますから、そのことはどうか御了承いただきたいと思います。
  74. 岡村文四郎

    岡村文四郎君 どうも十河総裁においでを願って質問しても、なかなか残念な点ばかりあっていけないのでありますが、一体公共割引というものを設定しなければならなかったという事情はおわかりだと思う。そこで、それがその当時から見てだんだん悪くなっておるにもかかわらず、この際撤廃しなければならぬということは、国鉄経営上非常に赤字が出ておるのだからだめだ、こういうのでございますが、それは通りません。ですから、なぜ一体公共割引をしなければならなかったかという状態を十分お考えになれば、今それを戻すことは不可能なことはきまっておる。だんだん悪くなっております、荷主の方では。ですから、それに転嫁するのでなくて、方法を講じて、そうして現在のままでいくのが総裁の責任であり、職務であると思う。企業というものは、どの企業でも、どういう方法をとっても、企業はかえって円満にいくべきが企業の方法なんです。しかも、国鉄という日本第一の大事業が、あんな赤子の手をねじるような、農林水産の現状を見ながら、もとに戻して運賃割引きをすることはできないという考えは、これは非常に国を考える基礎のない考えだ、だから私はどんなことがあってもこの割引は元通りやってもらわなければならないというかたい決心を持っておりますが、いろいろお聞きいたしますと、どうも総裁は自分の方は方法を講ずることを考えないで、そうしてたらぬ部分は国なりあるいはその他に求めるというお考えのようでございますが、大企業でございますからたくさんあると思います。整備する場所は、そこで少し整備いたしますと、二十億円や三十億円の金はすぐ出てくると思う、大企業ですから。どんな方法もございますから、それをお考えになって公共割引だけはこれは六月まで延ばす、八月まで延ばすということでなしにやってもらわなければなりません。割引の必要がなくなりますればこっちから望んで取消します。そうでないのに法外でもないことをしておる。十分その点はお考えになってもらわなければならない。その点よろしくお願いします。
  75. 北村暢

    ○北村暢君 今の論議を聞いておりますと、私は、これは二カ月間延長いたしましたが、二カ月間延長するのには延長した理由があったと思う。その三カ月間の間にどれだけの努力がなされて、この八月末日で期限がくるのだが、そのときに一体この二カ月間において農林水産委員会においても決議をいたし、それからあらゆる努力をしてきたと思う。そうしてこの八月末日で、延期した期間においてどういう条件が変って廃止してもよろしいということになるのか、そうでないと二カ月延ばしただけ、ただ解決する努力をしなかった、何らの条件が変っていないのに、延期するときの条件と同じ条件で八月末日がきてしまったら仕方なしに打ち切ってしまう。これでは私は二カ月間何のために延ばしたかわからない。だから、二カ月間それでもサービスしたのだ、こういうふうに、国鉄が言われるのは、そのようにしかとれない。そうではなくして二カ月間延ばしたためには、やはり農林当局なりあるいは国鉄との間なりにその間で論議をされるであろうし、そういうある程度のやはり変った条件がないというと、この二カ月きたから打ち切るのではなくして、何ら条件が変ないならば、これは私はやはり続けてやっていって、話のつくまでやはり続けるのが至当だ、そうでないと二カ月延ばした意味は何もない、そういうふうに思うのです。そういう点についてどれほどの変り方を予想しておるか、話がつかなければもうだめだということで荷主に転嫁する、そしてまた一カ月くらいしてまた話がついたら元に戻す。こういう行政のやり方はしてはならないのです。だから、これは二カ月努力したのだから、その努力の結果が出ない限りは、これは当然八月三十一日というものをまた延ばして、そうして何らかの結論を得るまで当然なされるべきだと、こう思うのですが、国鉄総裁はその条件が変らないにもかかわらず八月末日で何でもかんでもやめてしまう、こういうことなんですか。
  76. 十河信二

    説明員(十河信二君) その間にただ手をこまぬいてじっしていたのではないのでありまして、いろいろ農林当局からも資料をいただきましたし、検討してもらったいきさつがあるのであります。そのいきさつは営業局長から御説明申し上げます。
  77. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) その点についてはさきほど実は詳しく申し上げましたが、六月を八月に延ばしましたのは、私どもといたしましては、これほど農林水産関係にとって重大な問題でございますので、四月に農林省資料要求すれば、私どもといたしましては当然数字的に納得できる資料が一カ月ないし一カ月半でできると思ったのであります。従って五月までに資料をもらって、そうして検討した上で六月一ぱいでもってこの措置をきめるつもりでおりましたところが、いただきました資料が残念ながら私どもの納得できない点が多々ございますので、その資料の再提出を求めて、その再調査の期間を作るために二カ月延ばした、現在はその二度目の資料について具体的に各品目につきまして農林省折衝中でございます。
  78. 北村暢

    ○北村暢君 だから私の聞いているのは、そういう資料を提出願って検討されておるのはけっこうなんですよ。けっこうなんだけれども国鉄総裁に言わせると、十億円は国鉄で見るから、十億円は一つ必要ならば政府で見てくれ、こういうことのようですから、そういう見てくれということの話がきまらないうちに、八月末日までと言ったって、条件が変らないのですから、その話がきまるまで、やはり八月末日がきたら何でもかんでもやめてしまうと、こういうことでなしに、今の段階ではやはり当然私は引き延ばして、そうしてその話がつくまでやる、そのくらいの国鉄総裁は度量と腹がまえくらいはあってしかるべきだ。二カ月というめどをもってやったのですから、それがべらぼうに長く時間がかかって結論が出ないという問題でなくて、その結論の出るまでは、まだ八月末日ということがあるけれども、まだその点の余裕というものは考えて話をつけるのだと、こういう点をここで答弁をいただきたい、そうして私どももですよ、ただ単に国鉄総裁だけをいじめるのじゃなくして、政府に対しても、今後において官房長官を呼び、運輸大臣を呼び、農林大臣を呼んで、そうしてその中で一体この問題を政治的にどうするかということについては今後やるのですよ。やるのだが、国鉄総裁は一方的に短気を起して、とにかく八月三十一日までに話がつかなければ、これはもう消費者に迷惑がかかっても国鉄の経理状態からいって仕方がないのだ、こういうことでは国鉄として、完全な私企業じゃないのですから、国有鉄道なんですから、一つそういう点からいって、それだけの含みというものはやはり持ってもらわなければならない。このことは先ほど小林委員も言っているし、清沢委員も言っていることだ。それは当然のことだと思う。その位のことをこの委員会で答弁できないということは私はないと思う。だから国鉄総裁に再度答弁を願っている。
  79. 十河信二

    説明員(十河信二君) 先年運賃値上げをしていただきましてそれだけ今黒字が出てきたのでありますが、遺憾ながら経済界の情勢または諸般の事情から収入はそうふえないので、経費も増して、昨年のごときはまあ収支とんとんになったというふうなせっぱ詰った状態に相なっております。それで私といたしましては、はなはだ皆さんに申し上げにくいのでありますけれども、再度の御決議があったにかかわらず、一部分は何か特別等級に編入するということで補ってやりますが、残りの部分は政府で補償をしていただきたいということをお願いしているような次第であります。実は財政状態がそういうふうなせっぱ詰まった状態でなければ、またせっかくの皆さんの御意見でありますから考えようがあるのでありますけれども、そういう状態に相なっておりまするために、皆さんの御意見に反してはなはだ申しわけないのでありますが、お願いを申し上げる次第でございます。(「質問に答えてくれ」「委員長から注意して下さい、質問に答えて下さい」と呼ぶ者あり)
  80. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 質問に答えないから関連して。さっきから各委員質問していたことで、だんだん事情はわかって来た。ただしかし、はっきりした点は、磯崎さんのおっしゃったことは、今の折半の方式で農林当局折衝中だ、各品目別の十億をいかに取るかという、率の引下げですな。引き下げと申しますか、減少です。減少について折衝中だ、そのことは少なくとも当委員会公共割引を廃止すべきではないという精神で再三国鉄当局に申し上げておる、そういう農家経済なり国民生活一般にわたる基礎物資として重要だという、農林政策も相当お考えになられておきめになったことだと思うのです。そうすれば、その意味は、十億円程度の収入が上げられる限度までの率の減少ということは、これは農林政策上からものんでもらえるのでないか、こういう前提でおきめになったものと考えなければならぬと思うのです。ただ事務的の折半で割り振ったものだというふうには考えられない。そうだとすれば、現状においては、国鉄当局としてはやはり消費者大衆や生産者、荷主の立場考えれば、どうしても十億円程度以上の収入増を見込む率の減少は無理であるということを国鉄当局も是認したことだと思うのです。ですから、そのことについて農林当局折衝中であることが一つ、他の十億円を政府から補助金として取ろうということが一つですが、かりに政府から十億なら十億円の補助金がくれないにしても、取れないから開き直って八月末から全面的に二十億円を荷主に対して転嫁してくるという方式には、今までの考え方からいって断じてなるわけないと思うのです。いや、そういう折衝はしましたが、それが政府から金が出ないとなれば、本然の姿に立ち返って八月三十一日にどっと二十億円取るように全面廃止をするという、そういう考え方で国鉄がおるとすれば、これはもう春の国鉄当局の答弁とは明らかに違う見解になるわけです、その場合であれば。ですから、もう条件なしに、限度としては荷主に負担できる範囲は十億円程度である、それ以上のものは負担させることが今の経済情勢の上ではできないのだという御認識のものとに国状当局もおきめになって農林当局折衝されておる、こう判断するよりほかない。ですから、従って農林当局がただ率の減少についてがえんじないという状態が起る場合があるでしょうし、ましてや十億円の金を今急遽政府が出すということについてはなかなか話がつかぬ、延びるという事態もあるかもしれない、そうであれば、八月三十一日の打ち切りになるということは全面打ち切りで、この廃止という状態で二十億円取るのだという態勢にいく筋合いのものではなくて、それはまた話がつくまでこれは延ばしていく、そして根本的な解決を得て実施に移すという態勢に移るのは当然のことではないか、これがさっきから各委員がおっしゃっておることだと思うのです。ですから、その八月三十一日の段階について、折衝中であるという状況が生まれる場合においては、打ち切るのか打ち切らぬのかということをだめ押し的に聞くことは、小林君言う通り必要ないことなんですけれども総裁の政治的な判断をこの際伺っておきたい。また農林当局としても折衝中だということですが、内輪話としても十億円程度、半分くらいのところの率の減少ならば、まあやむを得なかろうというような態度が暗々裏に国鉄当局に示されたというようなことがあるのかないのか、その点をお伺いしたいし、今の品目別折衝ということについてですが、そういうものの折衝に具体的に入っておるのかどうか、入っておるということであればそのこと自体はまことにおかしい。前提になる基本的な問題がきまらぬのに、その具体的な品目の率を、どうして十億を取ろうかということを、右、左といじり回すということそれ自身がおかしい。従って農林当局見解も伺っておきたい。どうせこの問題は、これだけで済む問題ではないと思うので、前提になる考え方というものだけを聞いておけばい  い。そう思って質問している。
  81. 十河信二

    説明員(十河信二君) たびたび申し上げますように、二十億円のうち半分はやめていただく、そして残りの一部分特別等級に編入して、他の荷主さんから……まあ荷主さんにがまんしてもらう、その残りを政府から補償をいただきたい。こういうのでありますが、政府から補償をいただくことは、もちろんわれわれは、政府は御了承下さると確信しておるんでありますが、これは通常国会の予算のときでなければ確定しないのでありますから、それまでの間はまあこのまま続けておくという、それが政府が補償はどうしてもできないということになれば、国鉄は、たびたび申し上げまするように、いろいろやらなければならぬことがたくさんあるのですが、それを削ってやめるよりほか仕方がない。そうしますと、またほかで問題が起って……、私はけさからほかの委員会でもその点を責められておったのです。われわれはどっちにいっても責められるばかりで、だれも財源をこしらえてくれる人がないのですから、それで皆さんに少しずつがまんしていただいて、そしてなるべく国民の皆さんに納得いただくということにしたい。こういう次第であります。
  82. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それでだんだんはっきりわかってきたが、そうすると、半分の十億円は通常国会で来年度以降しかこれは国鉄収入にはならない。けれども、それは政府としてのんでもらえるだろうから、そういうことを前提として、十億分を、一部一般の貨物運賃の操作で御負担願う、大部分をこの率の減少という形で農林物資の方から収入を上げる、これはどういうことになるかしらぬが、いずれ十億円だけ取る、そういう手だては八月末日にやるのだ、その点はっきりした。そうすると、政府からもらうもらわぬは国鉄当局の今後の努力、そしてあくまでも通常国会において予算化のための努力をするし、それは大部分できておる。十億円分だけを当座の問題として九月一日から実施に移していく、これが国鉄のお考えですね。
  83. 十河信二

    説明員(十河信二君) その通りです。
  84. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そうすると、じゃあ農林当局は、そういう態度について、今何を折衝しておるのかお尋ねしたい。
  85. 小枝一雄

    説明員(小枝一雄君) 私どもといたしましては、過般の当農林水産委員会において御決議がありまして、その御決議趣旨にのっとりましてぜひ善処しなければならぬ、かような考えを持っておる次第でございますが、先ほどから国鉄当局からもお話がありましたが、いろいろ事務当局の間において資料の提出を要求せられ、また事務当局としても多少それに対する資料の提出もいたしておるのでございます。申し上げるまでもなく、最近におけるこの農林水産諸物資につきましては、なかなかその困難性のある問題がたくさんございますし、ことに現在の政策方針といたしましては、先ほどどなたかからお話がありましたように、どうもややもいたしまするというと、農業という、農林水産業という仕事が他の産業に対して常に取り残されていく、その所得の均衡というものも失しておる、これを漸次回復していかなければならぬときに当りまして、こういうふうに運賃のみが、かえって荷主、生産者に転嫁されるというような状態になりますことは、私どもといたしましては、困ると思っておるわけでございます。ただ、ただいまお尋ねのありましたような、それでは個々の問題に対していろいろ具体的な折衝をいたしておるかということでございますが、これは、ごく最近に書数によって私どもそういう通知が参っておるということは承知いたしておりますが、そういうことについて私どもといたしましてはまだ何らの話し合いをしている段階ではないのでございます。
  86. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 もうあと尋ねませんがね、じゃ農林当局は、わわれれ農林水産委員会が、これほどのことをやっておってだ、そして農林大臣が国鉄総裁折衝するという段階にも至らず、政府部内でこの問題について経済閣僚の懇談等を遂げられるというにも至らず、まだまだそれ以前のことであるということは事実としてわかったわけですが、今後どういうことをやろうと農林当局はお考えになっておるのですか。
  87. 小枝一雄

    説明員(小枝一雄君) まあ私どもとして、ただいまお尋ねのように、農林大臣が経済閣僚懇談会やその他閣議においてこういう問題はやっておるものと考えておりますが、まだ国鉄当局と大臣が折衝する段階には至っておらないとは私は考えておりますが、私ども考えといたしましては、事務当局考えは一応聞いたわけであります。事務当局といたしましては、今なおもう少し検討しなければその段階ではないと、こういう考え方を持っておるものと考えるのであります。至急に話を、事務当局といたしましても検討させまして、その上で国鉄当局とも首脳部の間で話し合口いを進めていくように考えております。
  88. 清澤俊英

    清澤俊英君 時間にも大体なっておりますし、従いまして、農林当局国鉄の方の考え方もだいぶ食い違っているし、われわれとしてもまだ農林省関係においてもっと突き詰めなきゃならぬところもある。同時に、この問題は、先ほどからしばしば言われる通り、もう農林省国鉄の問題でもないと思うので、従いまして、あす午前中から一つ総理大臣のかわりに官房長官もしくは経企の長官くらいは出て来て、農林国鉄、運輸各大臣が出ていただいて、そこでいろいろ御質問して、今総裁の答弁では、もう八月三十一日というものは延ばされぬ、こういう独断的な御答弁で、これは何とか結末つけなきゃならぬので、そういうお取り計らいを一つ皆は諮って下さい。
  89. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 速記をとめて。    〔速記中止
  90. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) それでは速記をつけて。  それでは、本日はこの問題はこの程度にいたし、休憩いたします。    午後一時四十分休憩    ―――――・―――――    午後二時五十一分開会
  91. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 委員会を再開いたします。  この際、委員の変更について御報告をいたします。  本日大河原一次君が辞任され、江田三郎君が選任されました。   ―――――――――――――
  92. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) ただいまから委員派遣の御報告をわずらわすことにいたします。  御承知のように、先般、第一班青森及び秋田、岩手、第二班は鳥取及び山口、第三班高知及び徳島の各県に委員・派遣が行われたのでありまして、派遣委員各位におかれましては、暑さの折から、遠路お出向きをいただきありがとうございました。ただいまから順次御報告を願うことにいたします。  なお、最初各班から御報告を願い、続いて御報告について、派遣委員に対する御質疑を願い、次に政府当局に対する御質疑を願うことといたします。  それでは御報告をお願いいたします。第一班棚橋委員
  93. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 第一班の御報告を申し上げます。第一班は、青田委員、北條委員と私の五名の外、岩手県におきましては、小笠原委員及び千田委員が特別参加され、岩手県及び青森県の農林水産事情、特に両県の酪農、果樹農業、漁村及び漁港の実情、青森県における農地開発機械公団事業の実施状況、国有林の現況、岩手県の林木育種等について、定められた日程の範囲で、関係者との懇談あるいは実施調査等の方法により、実情の調査をいたしたのであります。  次に、その大要を御報告いたします。まず両県の酪農の現況について申し上げます。  岩手県においては、二十三万ヘクタールの牧野採草地があり、この資源を利用し、高度集約牧野、改良牧野を造成して、濃厚飼料を節減し、自給飼料による酪農振興を計画し、現在、岩手山麓、九戸高原等八地域が集約酪農地域に指定され、全県酪農化が進んでおり、乳牛も三万余頭、搾乳量も年間二十万石に達しているのであります。  青森県は、戦前は、馬と肉牛の飼育が主体をなしておりましたが、昭和二十三年第一次畜産五カ年計画、二十九年には第二次畜産五カ年計画を樹立し、三十三年完了、この間、十和田及び三八地区が集約酪農地域として指定になり、酪農化が急速に進み、乳牛は集約酪農建設事業、有畜農家創設事業、県有乳牛の貸付事業並びに寒冷地農業振興対策事業等により、乳牛も現在一万二千百数十頭に達し、搾乳量も年間約十一万一千石に達しております。現地の視察は、岩手県の岩手山麓の開拓酪農、西根村周辺の集約牧野、九戸高原大野村の開拓酪農の現況、青森県上北地区における開拓酪農の状況及び十和田集約酪農地域における関係者との懇談等であります。  次に、その視察により問題となりました点について二、三申し上げます。  すなわち、戦後わずかの借入金と自力により入植し、十二、三年を経た今日、ようやく経営の安定に近づきつつある農民たちも、借入金の償還問題で、再び行き詰まろうとしているのであります。凍霜害あるいは冷害等により助成金等が支払われる道が開かれてはいるものの、その金は農民の手には入らず、旧借入金の返済金として消え去るのであります。岩手山麓の開拓酪農民の言によりますと、この地帯の牧草は、土壌改良の必要がなく、クローバーなら年に七回の刈り取りができ、畑作を牧草に転換すれば、八〇%自給飼料の確保ができ、経済基礎のでき上った開拓酪農適地ゆえに、資金の面の解決さえあればりっぱに経営が可能であるとのことであります。ここに従来の複雑多岐にわたる政府資金の旧債を一括整理し、新たな政府資金に借りかえさせ、十年あるいは二十年の長期返済に切りかえる以外に、その救済方法がないのではないかという問題が提示されるのであります。  次に、十和田集約酪農地域における問題でありますが、この地域に導入されたジャージー種牛は二千百十頭で、うち千五百二十一頭は世銀借款による導入で、現在まで四十六頭の事故牛、うち二十四頭は繁殖障害が発生しており、これらの事故牛については、現在何らの補償措置が講ぜられていない現状であり、すみやかに事故補償制度の確立の要望がなされたのであります。  次に、漁港及び漁村について申し上げます。本問題については、岩手県九戸郡野田村の野田漁港、久慈市久慈港、青森県の八戸漁港を視察いたしましたのであります。野田漁港については、一億七百九十四万円の事業費をもって、第一種漁港修築事業として、昭和二十六年度から三十五年まで継続事業として実施されており、その進捗状況は、七月現在で七七%であります。本漁港は千葉県及び宮城県のサバ釣り漁業者の避難港として利用されるのみで、地元漁民の受ける恩恵はきわめて少く、全く地元のサービスという状況であり、加えて漁港法施行令(昭和二十五年政令第二百三十九号)附則第二項の特例が昨年度限りで消滅したため、補助率が従前の五判から四割となり、前途の利用者の問題とあわせ、村の負担割合の過重等より村行政が漁港偏重に傾き、健全な行政施策の不可能を訴え、第一種漁港に対する補助率の増額が強く要望されたのであります。また久慈港については、最近の漁船船舶の大型化、沖合い漁業と外来船の増加に伴い、泊地の拡大に迫られる現状では、収容力に限界があり、内防波堤を局部工事により延長施行の早急実施の要望があったのであります。青森県の八戸漁港は、昭和二十六年第三種漁港の指定を受け、三陸沖の大漁場を擁し、北洋の漁場も近く重要な漁業基地として発展を続け、水揚げ数量においては、下関、長崎に次いで全国第三位であり、また漁獲物が、イカ、サバ等の大衆魚類が多く、しかも、大消費地に遠いなどの原因より、魚価の維持対策が重要視され、その対策の一環として冷凍、冷蔵設備の充実や加工工業の振興に力を注ぎ、カン詰工業は東北有数の規模を誇るに至っているのが本漁港の概要であります。  次に、カツオ・マグロ遠洋漁業協同組合関係者よりなされた要望事項について申し上げます。すなわち北洋サケ、マス独航船のカツオ、マグロ漁業への転換反対の問題であります。青森県のカツオ、マグロ漁業は平均九十八トンの三陸沖漁場を中心とする中型船が主体をなしており、漁場は一年を通じて盛漁期はわずか半年、中型船の性能上からも、操業範囲が狭められているため、水揚げ金額も一隻当り平均千五百万円程度にとどまり、漁業者はその打開のため大型化をはかり、薄漁期にマーシャル群島及びミッドウェイ諸島方面の好漁場に出漁の希望を持っているのでありますが、政府の厳重な制限のため三陸沖漁場に膠着を余儀なくされている現状であり、かかる現況に対し北洋サケ、マス独航船のカツオ、マグロ漁業への転換は、独航船の船型が既存のカツオ、マグロの船型と類似している関係から、政府が転換措置を強行するならば、三陸沖漁場への出漁は火を見るより明らかであり、わずか半年足らずの盛漁期の漁場は、いよいよ狭隘の度を深め、ひいてはその秩序が撹乱され、本県カツオ、マグロ漁業自体の破滅となり、そのこうむる損失は甚大であり、絶対に反対するとの趣旨であります。  次に、青森県上北地区の機械開墾事業の概要について申し上げます。上北地区は上北郡野辺地町外三カ村にまたがり、地域の総面積は五万九千町歩で、このうち地区面積四千六百町歩、耕地面積約三千町歩の開拓を計画の対象とし、三十一年度より着手し、冷害の常襲地帯のため酪農経営ないしは混同経営を導入し、開墾は農地開発機械公団が、入植営農指導は県がこれに当り、一戸当り配分耕地面積は平型約五町歩、入植計画戸数は三百四十九戸を三カ年で入植させる計画で進み、計画通り完了する予定とのことであります。三十四年度には倉内地区で二百七十六町歩の機械開墾を実施し、五十戸の入植を行うとともに、同地区の既入植者の不振開拓地二百三十三町歩の開墾を実施中であります。また営農計画の概要は、乳牛の飼養を主とした混同農業で、家族は四人、経営土地利用区分は、耕地方町、宅地二反、ほかに若干の付帯地、基本家畜は乳牛四頭以上、すなわち導入が三頭、自家増は一頭、豚四頭、耕馬一頭、鶏二十羽、建物は十八・四坪の住宅兼畜舎のブロック建築とサイロその他等で、作物はバレイショ、大豆、菜種、ソバ、燕麦等で、これに要する資金は約百数十万円で、入植六年目から償還を始めるのであります。野辺地町よりの公団建設の緯線道路は国道よりりっぱで整備されており、私たちは芋ケ崎地区に向う途中開墾の実情を拝見いたしたのでありますが、レーキドーザーの抜根作業は一日に二町歩を抜根し、人力の二年分とのこと、抜根が済むとデスクプラウがあら起しをしており、一台で一日三町歩可能とのことでありました。三十一年度入植した開拓者たちも、今日でほぼ確実な将来の見通しを持ったようであり、十九坪の畜舎兼用住宅には二、三十羽の鶏、四、五頭の豚と、ジャージー牛も四、五頭はおり、乳もジャージーで一升六十円、ホルスタインでは三十九円で地元の雪印が引き取っております。しかしながら、関係者の言によりますと、入植三年目の今日すでに開拓者個人の精神力及び能力の点より各戸に相当の差も生じ、不良の者も四名は退去させられており、経営内容については、戦後入植者と機械開墾による入植二、三年目の人とが大体同等とのことであります。この大きな差に対し、既入植者の新規入植者に対する不平不満はないかと質問いたしたのでありますが、公団建設の道路による恩恵等により、次のようなことは皆無との関係者の言でありましたが、何か割り切ることのできない感じを受けるくらいその差があるように思われたのであります。  次に、果樹農業については、盛岡市外の湯沢のリンゴ集団栽培地、青森県リンゴ試験場におもむき、その概要を、また、両県のひょう害によるリンゴの被害地におもむきその状況を伺ったのであります。特に、ひょう害については、関係者の言によりますと、本年は天災融資法の適用を受け一応の救済にはなるが、いずれも来年果実をつける小枝の新芽が害を受けているため、来年の減収は免れがたく、回復までに二、三年はかかるのではないかという実情を訴え、その点についての救済方の要望があったのであります。  その他に東北林木育種場及び青森県の三本木営林署管内の国有林の実情を視察いたしましたのでありますが、時間の都合上省略させていただきます。  最後に、ただいままでに御報告いたしました以外にございました強い要望事項について申し上げます。第一に、畑作振興対策については、北海道寒冷地畑作営農改善資金臨時措置法のような措置を講ぜられたい。第二には、生産流通を一貫した果樹振興法の制定の強い要望であります。また、リンゴの輸出振興については、東南アジアに対する輸出の増大その他の諸外国に対しても輸出販路の開拓、すなわち、通商協定にリンゴの品目を加えることの要望であります。  その他国営、県営の土地改良事業等の早期の完成と予算の増額、高原開発及び奥地林開発林道に対する予算上の要望等が数多くなされたのでありますが、今後の委員会審議の途上において開陳いたすこととし、簡単でありますがこれをもって報告を終ります。
  94. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 次に、第二班仲原委員にお願いいたします一
  95. 仲原善一

    ○仲原善一君 第二班の報告を申し上げます。  第二班は櫻井、大河原、仲原の三委員で鳥取、山口の両県下を視察して参りました。七月二十日東京出発、同夜鳥取着、翌二十一日県庁に向い、県下の農林水産事情一般について説明を聞きました。鳥取県の県民所得総額は、国民所得総額の〇・五%余りで、全国の都道府県の最下位にあり、昭和三十二年の産業別所得構成は、第一次産業四一%、第三次産業四〇%で、第二次産業最も低く、わずか一九%にすぎません。代表的な後進県とされていますが、それだけに農林水産業に対する期待は最も大きく、戦後初めての農林水産委員会からの公式出張であるだけに大へん喜んでいただき、およそ次のような点について要望が述べられました。  第一は、十七万石に上る県外移出米に助成交付金を交付されるよう予算措置を講ぜられたいということであります。第二は、一組合平均わずか三百二十六戸という零細な農業協同組合を合併等により整備強化をはかるため、農協の組織整備強化のための予算措置等を講ぜられたいということであります。第三に、鳥取県は全国有数の農業災害の少い低位災害地でありますから、農業災害補償制度を抜本的に改正し、共済団体事務費交付金の増額、無事戻し制度の確立、基準反収量の引上げ等を実現してほしいというのであります。第四に、農村文化、生活改善施設に対し、農林漁業金融公庫の融資対象を拡張されたいということであります。また生活改善普及事業を強化されたい。畑地灌漑事業を強化し、砂丘造林事業等を進め、畑作地帯農業生産の障害となっておる土壌線虫防除等についても対策を強化されたい等の要望が述べられました。第五にそれぞれ現地を視察してきましたが、県下で行われている東郷湖干拓事業、代行崎津干拓、中海干拓淡水化事業その他について早期実現、事業促進等についての陳情がありました。なお、既設林道の改修補助、水源林造成事業の存続、大山等開拓地の安定対策の実施、自作農維持創設資金の本県への資金ワクの増額、漁港局部改良事業の国庫補助率の引上げ、公共事業の高率補助の継続実施等についても、それぞれ本県の具体的な実情を述べて要望されたのであります。  後、県会議事堂において県下の農林水産団体との懇談会を開き、鳥取県農業会議、鳥取県農協中央会、県農業共済連合会、県たばこ耕作組合連合会、県開拓農協連及び開拓者連盟、県土地改良連合会、県森林組合連合会、漁業協同組合連合会等から、それぞれ前と同様の陳情要望が述べられました。しかし、特に砂地地帯の葉たばこ耕作面積の拡大、主拓営農振興臨時措置法の実情に即した大幅改正、林業改良指導委員の増員、日本海の海損増加に伴う漁船保険料国庫負担の増額、韓国東海岸漁場への護衛船の増加、桑の萎縮病対策実施等に対する要望については特に御考慮を願いたい旨要望されました。  県庁を辞し、鳥取県の海岸砂地と、その造林事業の実情を視察して参りました。県下の海岸砂地面積は八千町歩に及び、海岸砂地地帯振興臨時措置法制定以来、県下で約四億円の振興事業費が投入されておりますが、最初の七カ年計画の二十四億七千万円からみると、十六・六%にすぎない実情であります。この砂丘地は、全体の六二・五月に当る五千二百町歩が耕地として利用され、一四%に当る千二百町歩が林地となっていますが、なお、二二・八%に当る千九百町歩は不毛地となっております。このうち最大の団地で延長八キロ、幅員二キロにわたる鳥取砂丘に至り、まず、多鯰ケ池から展望しつつ、県林務課長より、海岸砂地の現状と造林事業の概要について説明を受け、後、海浜まで出て、推砂垣を作り、アカシアと松を混植して年々広げられている砂地造林地を視察いたしました。一町歩当り三十万円の経費を要するといわれておりますが、それぞれみごとに生長し、特にアカシアは青々と育ち、松を圧到しているものもありました。従って、県としては造林費だけでなく、これらアカシアを適当の時期に切り、松を育てるため若干の維持費に対する助成を考えてほしいと要望されていました。これら砂丘にして畑地となっている地帯は、鳥取砂丘と北条砂丘地帯で、昔は「嫁殺し」といわれる水汲灌漑が行われていましたが、今は両地区とも近代的な畑地灌漑工事が進行しつつあり、この一つである湖山砂丘の畑地灌漑を見学いたしました。この事業は湖山池から取水し、大寺屋地内に設置したポンプにより、第一号、第二号幹線地区二百二十六町歩に灌水しようとするもので、事業完成後の経済効果は、米換算三千石といわれ、すでに末端水路ではスプリンクラーが勢いよく白いしぶきをあげて散水しているのが見られました。  次いで羽合町に至り、橋津川口の排水路拡張工事の現場を視察しました。この工事は東郷池干拓計画とも関連し、その水位を下げるため河口閉鎖現象を排除し、河水の流通を安定化しようとするのが主要工事になっています。しかし、特に冬期の季節風による荒波と流砂による閉鎖現象に対し、工事の効果とその耐久性確保のため、工事計画を若干変更するというのであります。現場を見ますと、橋津川の河口は湾曲して海に注いでおり、常時打ち上る砂が河口に高く積もり、水のはけ口を狭めているのが見られ、技術的にやや大規模な河口工事を要するものと認められました。  次いで倉吉市役所に至り、農業法人問題について地元関係者と懇談会を開きました。まず県農業会議の大久保事務局長から、昭和二十七年から三十二年にかけ、六社の農業法人が設立されたが、農地法の解釈で問題となり、現在実質的に法人課税が認められず、現在に至っている経過と実情を報告、出席された沢農園外五法人の代表者と農業法人の問題点、今後の取扱方等について種々話し合いました。農業法人側では実質的に法人成りを認めておいて、税法上合法的であるにかかわらず、法人課税を認めない点、ナシ経営においてははなはだ多くの雇い入れ労力を必要とするにもかかわらず、労賃を含めて四二%しか必要経費を認めない個人申告の不合理、家族労賃を必要経費として認めず、赤字繰り越しや、内部留保を認めない税法上の不合理と不公平を指摘し、税法上の農業法人が一日も早く認められるよう強く要望されたのであります。これに対し一戸一法人においては、農地法上問題はないか、一戸一法人の場合、税法上の特典以外にいかなる利点があるかとの質疑に対しては、農地法上の問題はない。利点としては、(一)企業としての自覚を高め、税金が安くなる分だけ資本蓄積になる。(二)家族従業員にも給料を支払らうことになり、仕事に励みがつくと同時に、家計と経営が分離し、経営が明確になる。また労災法等社会保障の対象にもなり得る。(三)対外信用が高まり、資金導入が容易となる。(四)共同防除共同出荷等、共同化による経営合理化もやりよい。(五)家族経営を民主化し、資産相続による経営細分化を防止し得る等があげられました。いずれにせよ、現に係争中の問題を早急に解決し、法的措置を必要とするものは早急に措置し、せっかく伸びてきた農業法人が、一日も早く公認されるよう強く要望されたのであります。  第三日は猛暑の中をジープで大山高原の香取開拓地を視察しました。この開拓団はかつて満州開拓に挺身し、終戦後引き揚げてこの地に入植した人々が多く、火山灰地で、標高の高い、風の強い、雪の深い、しかも、晴天年百日という悪条件の地にがんばって営農を続けてきたのであります。従って、最初の九十二戸が、現在五十七戸に減少しているようであります。開拓農協の事務所に集った開拓者の方々の要望を取りまとめてみますと、この地区のような地並みの悪い荷冷地開拓では、資金がかさむが、末端資金は、なお金利が高いので、低利長期の資金を融通し、また償還旧債借かえ等についても、開拓営農振興臨時措置法を再検討し、償還延期と貸付金の増額を望むというのであります。それは従来の穀菽農業から酪農中心農業に、開拓営農を確立するため、ぜひ考慮してほしいというのであります。その他郵便が配達されないので、郵便夫を一名増員し、配達してもらいたい。小学校へ四里、中学校へ六里もあるので、開拓道路を広げてほしい。小水力発電の融資の償還期限が来ているので、特別融資の道を考えてほしい等であります。なお、地元町役場から大山国営開拓建設事業中、特に畑地灌漑発電等に利用できる水利工事の早期完成について陳情がありました。  次いで米子市に至り、衆議院の足鹿議員を加え、中海の八尋鼻から中海を展望し、地元の方々から中海干拓等について説明を聞き、陳情を受けました。中海干拓に鳥取、島根にまたがる中海一万町歩のうち、約三千町歩の干拓とあわせ、その淡水化をはかろうとするもので、事業完成後は米九万三千石、麦六万七千石のほか、淡水化された水は農業用のみならず、沿岸都市の工業用水及び上水道として利用し、後進地の工業開発をも実現しようというのであります。昭和三十二年度から直轄事業として調査が進められており、経済効果も認められているので、早急着工するよう促進してほしいというのであります。なお、これと関連して日野川の護岸工事が老朽化し、台風期ごとに国道、山陰線、送電線、日本パルプ米子工場等が危険にさらされるので、早急直轄改修工事を実施してほしいという陳情と、年々浸食のはなはだしい美保湾海岸線に対し、現在県営の浸食防止堤が築造されているが、なお海岸線全線の被害を防止し得ないので、この際、建設省直轄の浸食防止事業として八億円の事業を実施してもらいたいという要望が述べられました。  第四日は、山口県萩市の越ケ浜地区生活館に至り、漁村の生活改善について、同漁業組合婦人部の方々十五名と懇談会を開きました。この漁協婦人部は昭和二十六年に発足、現在会員五百四十名あり、月一人十円の会費で運営しており、現在、文化、厚生、家政の三部を設け、共同のパン焼かまど設置、パン食奨励等を行い、好評を博しているようであります。映画や演劇もできる生活館を持っており、組合員の貯金も三百万円以上もあり、婦人が自主的に生活改善に乗り出している全国にも数少い組合と思われました。ここでパンを試食しながら懇談いたしましたが、問題は、漁村の生活改善を担当する生活改善普及員の制度考えられていないことで、山口県では、県に二名の県費漁村生活改善普及員を置いていますが、二人ではとうていこの地方には回れないから、この制度を国で確立してもらいたいとの要望がありました。後、越が浜、萩の漁港修築状況を視察しましたが、萩市には、この他第四種見島、第二種大島等の修築工事が行われていますが、一カ年の配分工事費は、総工費の三―五%程度、この分では二十年たっても完成しないから、年度割工事費の増額を強く要望する旨萩市長からも陳情がありました。  次いで秋芳町に至り、秋芳洞を見学、秋吉台に出て、秋吉台開拓地を遠望し、さらに御坊開拓地を視察しました。計画戸数はわずか九戸であるが、果樹を中心とした珍しい開拓地で、北九州市場に長野リンゴより十日間早く出荷できることから、早出リンゴを出産中であり、桃もなかなかりっぱなものが出荷されており、市場でも好評を博しているとのことでありました。酪農中心を考えている秋吉台開拓地とともに、水利に問題があり、今後開拓地においては水利施設が重要であることを認識させられたのであります。  次いで瀬戸内海の防府市に出て、佐波川尻代行干拓の現場を視察いたしました、この干拓工事は、昭和二十五年から着工、総工費五億三千万円で、佐波川右岸大道工区九十五町歩、左岸西之浦工区六十町歩、計百五十五町歩の干拓を行わんとするもので、完成後は、米三千七百石、麦二百石、カンショ二万貫の増産が予定されている。このため、地元漁民は、干拓地区の漁業権を坪六円で供出し、干拓後の入植の日を鶴首して待っているのであります。しかるに、その後約十年を経た今日、事業費は一億三千万円、総工費の二五%にすぎずこの間ノリの産額は五分の一に激減、県下一のクルマエビ漁場は荒廃し、カレイ、コチの繁殖にも支障を来たしており、工事遅延の被害甚大につき、ぜひ来年度予算において工事が累進的に促進されるよう要望されました。既設干拓の護岸から展望しますと、既干拓地は反当四石の豊作であり、工事未完の地区は一面不毛の干潟であり、その差があまりにも著しく、地元の方々の御要望も無理からぬことと思われた次第であります。  後、小郡の組合病院で県下の農業団体代表との懇談会を開きました。まず、県農業会議からは、山口県は七月中旬各地に災害があり、この災害復旧のための施設災害復旧事業費の国庫補助対象を十万円から三万円に引き下げてほしい、また自作農資金のワクを拡大されたい、県土地改良事業団体連合会からは、団体営土地改良事業の国庫補助対象を、一団地二十町歩から五町歩以上に引き下げられたい、県開拓連合会からは、開拓営農振興措置法の金が末端に届くのに一年半もかかるので、早期手続遂行を要望し、内地でも上北以外にパイロット、ファーム方式を考えていただきたい、開拓指導員の旅費、超勤手当等に対する助成の道を開いてほしい、等の意見が述べられ、県共済連からは、事務費に対する国庫補助の増額と早期交付を要望され、県森林組合連合会からは、森林組合系統団体の育成強化と伐採調整資金ワクの拡充について要望があり、県農協中央会その他からは、国鉄貨物運賃に対する特別等級公共政策割引存続について、また農業基本法、農業法人の法制化等について、それぞれ要望が述べられました。  第五日は、山口県庁において、県下の農林水産業の一般情勢について説明を聞き、さらに七月十三日から十五日に及ぶ豪雨被害等により、二十四億の被害を受けた状況が説明され、これが災害復旧に対する国の施策を早急に進められたい旨の陳情がありました。また、水産関係では、遠洋漁業を主とする基地漁港は、国の直轄事業とし、早期完成をはかってほしい、西日本水産の最大の問題である漁船拿捕については、船主救済策がないので、代船建造融資利子補給策の道を開いてほしい、年八十五万ドルに上る韓国鮮魚の輸入は制限または漸減してほしい、タコ等の人工孵化放魚について助成の道を考えてほしい、等の陳情があり、また農林部からは、中国、四国農業試験場に園芸部を設置してもらいたい、公有林造林融資の起債の問題を早く解決し、融資を実施されたい、等が要望され、その他無角和牛を種牡牛改良種の中に加え、助成の対象にされたい、山口県下の塩業の企業整備を促進されたい、等の希望がありました。  県庁を辞し、宇部、小野田を経て王喜町の王喜干拓現物を視察し、ジープに乗りかえて、木屋川、栗野川沿岸町村の水害状況を視察して参りました。このうち、木屋川は、七月十三日、四日、二十時間三百三十三ミリの豪雨があり、折柄の満潮と、木屋川ダムの危険水位による放水も加わってはんらん、堤防決壊、水田埋没、住家半壊、橋梁、道路破壊等、ありとあらゆる被害を惹起したもので、豊浦郡菊同時、豊田町は災害救助法が発動されたのであります。これら町村の被害は著しく、他の豊作田にまじって、砂礫に埋まった水田の復旧工事を行なっている被害農家は全く哀れでありました。町役場の対策本部を訪れ、実情を聞き、見舞を述べて帰りました。  峠を越え、粟野川沿岸町村をたずねますと、被害はさらに著しく、連続雨量は四百ミリをこえたといわれ、往年の伊豆狩野川の被害を再現し、道はこわれ、橋は落ち、水田は埋没し、丘の上の小学校まで浸水しているありさましかも、この粟野川は連年はんらんする川で、町長は、住民の安全のためにも、上流に防災ダム等を設け、根本的災害対策を樹立する必要があり、切に国の援助を得たいと、悲痛な顔で実情を訴えられたのであります。道路もまだ応急復旧の個所あり、ジープが通過困難の個所もありました。  かくて災害救助法が発動された豊北、豊浦町を訪問し、豊浦町では、室津地区の食生活実態調査の成績に基き、生活改善上の諸問題と対策について資料により説明を聞きました。漁村でありますから、自給野栄の作付計画、料理栄養改善、作業着改善、コンクール等、婦人を中心に生活改善について著しい成績を上げており、前述越ケ浜のグループとともに注目すべき地区で、町長からも生活改善事業強化について陳情がありました。  最後に、下関市の山口県下関水産事務局を訪れ、下関漁港修築計画について説明を聞き、後、水産会館において、水産関係団体並びに水産業者との懇談会を持ちました。まず、山口県漁連会長より、漁業用燃油の確保措置、漁業共済制度の整備強化、漁業協同組合整備特別打置法の制定促進、臨海埋立による漁場補償要網の制定、漁港修築計画の早期完成等について陳情がありました。特に、日韓漁業問題の抜本的解決促進については、関係業界の関心は最も高く、北鮮送還問題を契機として日韓水域の危機はかえって増大し、抑留船員の釈放についても、その後何らの進展もみていない、事国際外交の問題であり、相手のある外交であるからとして、業界は多年隠忍してきたが、問題が一歩も好転しないことは、まことに政治に対する不信を招くことになり、政府頼むに足らずとして、私的な自衛船を出して操業している現状である、この間の業界の事情を賢察の上、抑留者帰還促進等、抜本的解決促進のため特段の努力を願いたいという切実な発言がありました。この点強く中央政界に伝達してほしいというのでありました。かくして二十五日帰京した次第であります。  以上御報告申し上げます。
  96. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) どうもありがとうございました。  第三班の御報告を秋山委員にお願いします。
  97. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 第三班の報告を申し上げます。  第三班は、小笠原委員が都合で参加できませんでしたので、森委員と私の二名でございました。七月二十日から二十六日までの七日間にわたり、高知県の漁業共済の実施状況及び国有林の現況並びに徳島県の剣山地区における森林開発公団の事業の実施状況及び農業法人等の現状等を中心に視察をいたして参りました。二十二日、高知県庁にて県下の農林水産事情の概要を聞いた後、須崎市の水産試験場において定置漁業者の代表多数と懇談をいたし、漁業共済制度の実施状況及びこれが要望を聴取いたしました。  高知県の漁業について見ますと、本県は位置が黒潮本流及びその沿岸流に面しているため、接岸魚族の大部分は暖流系回遊魚でありまして、漁業はほとんどこの種魚族を対象としたもので、カツオ、アジ、サバの一本釣り漁業や、ブリ、マグロ等を目的とした定置漁業またはイワシ等を目的とした地びき、きんちゃく網漁業等でありまして、県下総漁獲高の七割を占め、沿岸以外のものは遠洋カツオ・マグロ漁業であります。漁民数は約四万人、家族を含めると十七万人に達し、高知県総人口の約二割に相当するのでありますが、その経営方法は個人または組合経営が大半を占めているのでありまして、沿岸、沖合いにおける総漁獲高は、約五十億円、このうち沿岸漁業は約三十億円で、これらのうち零細漁家によるものが十二億円で、総数の二五%にすぎないのでありまして、零細漁民の生産性の低さと生活の苦しさを物語っているのであります。その上、近年海流異変等により全般的な不漁に襲われ、漁村はきわめて苦して経済状態に置かれているのであります。県としては、これらの救済について鋭意努力を払い、沿岸漁民の過剰就業の解決については、基本的には社会政策面による対策が必要であるが、副業問題、生活改善等の検討、あるいは漁業共済の完全実施による漁業経営の安定化、金融政策の推進等の漁業振興策を講じているとのことであります。  また、本県における漁業共済の実施状況について見ますと、これに加入している漁種は大部分がブリ等の定置漁業でありまして、御承知のように木県の定置漁業は三重県、富山県と並んで全国でも優秀な漁場で、現在総数四十統を数えているのでありますが、漁業共済制度の発足を見た三十二年度には、加入件数漁獲八件、漁具二件、三十三年後には漁獲十五件、漁具三件となり、三十三年度における共済契約金額は八千二百六十万円に達しているのであります。しかしながら、近年の不漁により、共済事故の発生も多額に及んだのであります。三十二年度の共済事故八件に対する支払共済金一千三百万円はすでに支払われ、さらに三十三年度の支払いも相当額が近く行われることになっております。従いまして漁業者はこれにより経営を維持し、また漁業共済に加入することにより金融機関からの融資の道が可能となるなど、沿岸漁業の不漁対策並びに漁村経済の安定振興策としてきわめて重要な役割を果していることがうかがわれるのであります。しかし、この制度は発足以来日も浅く、さらに改善強加すべき点もありますが、漁業共済に対する現地関係者の強い要望は、本制度に対する国庫助成の強化拡充についてであります。これは本事業と類似の他の事業等の関連から見ても、国庫の助成は十分でなく、共済会が掛金収入額をこえた共済金を支払う場合における、現在の債務負担契約による助成方法は必ずしも妥当とは思われない。特に共済の支払準備金のための措置については、債務負担契約によりますと、過渡的な支払措置を金融機関による融資に待たなければならない点があり、共済金の支払いに、円滑を欠くことも考えられ、この種社会保険事業の一般的性質として、また事業が安定期に達するまでには、損害率が極端な形で現われ、収支が、不均衡となることが考えられ、かつ増大する事業量に比し、現在の債務負担のワクが少額に過ぎるなど、運営上からも、また技術上からも債務負担契約による方法よりも、むしろあらかじめ共済金支払準備のための基金を相当額国庫助成により持つことが望ましく、漁業者も不安がなくなるというのであります。また、事業の持つ公共性、あるいは漁業者の負担軽減の面からも、事務費の増額及び掛金の一部の国庫助成等にもついて考慮され、また共済契約の限度額は現在漁獲期間の操業に必要な事業経費予定額の八割もしくは過去六年間の平均漁獲高の六割五分を限度としているのが、この限度額の低率は漁業者にとって魅力を感じない、たとえ掛金が高くなっても十割全額を限度とされたい。契約方式の簡易化、漁具共済の填補範囲の拡大、掛金の分割払い等を認め、また一、二年の赤字率が大きくとも、続けて赤字になるとは限らないし、また加入できないと金融機関から見離され、これにより生計を維持する一統当り数十名の漁民が路頭に迷うことになるから加入を認めてほしい等、本制度に対する漁民の期待と制度確立に対する熾烈な要望がなされたのであります。  このほか、漁業関係の要望としては、国において、沿岸漁家経営維持資金の制度を作り、零細漁民の救済策の確立、漁業協同組合整備促進法の制定、本県沖合い漁場における大型まき網漁業の禁止、北洋サケ・マス独航船のカツオ、マグロ漁業への転換反対、漁港整備の強化及び起債ワクの増額、宿毛湾における火薬類投棄による漁業被害の救済、地方財政再建のための公共事業にかかる国庫負担等の臨時特例法の復活等についてでありました。  農林関係の要望としては、四国山脈の南半分と宮崎、鹿児島、和歌山、奈良各県の南部山間地帯は台風の頻度が高く、高温多雨の気象環境の上に、急傾斜地が多い特殊な条件下にあるがため、農業の生産基盤と営農事情は他の地域とは本質的に異なった特性を備えているので、常農林総合経営の技術確立を目途とした試験研究機関を設置する必要があるので、現在の長岡郡大量村にちる県立農業試験場山間分場に国立の多雨傾斜地労農試験研究機関を設置されたい。また、地すべり防止対策の事業は現在三カ年計画で実施されているが、これを集中的に個所を限って一カ年で完成するよう、また国有林の薪炭原木の払下げ量の増加についての要望がありました。  二十三日、奈半利営林署にて高知営林局及び奈半利営林署管内の事業概要を関係者から聞き、田野、奈半利の両貯木場を視察いたしました。  高知営林局は四国一円を管轄し、林地面積は約百四十万町歩、このうち国有林野面積は約十八万町歩、民有林百十八万町歩、官行造林面積二万町歩であります。国有林は、杉、ひのき等の針葉樹六九%、広葉樹三一%でその蓄積は一町歩当り四百七十石であります。管内には二十営林署と百三十五の担当区、五十六の直営伐採事業所、二十三の貯木場を有し、職員数は五千百七十六名で三十四年度の伐採量は直営伐採約百五十万石、立木処分百二十万石で収支予定は収入二十九億円、支出二十五億円となっております。  奈半利営林署は、国有林三千六百町歩、公有林野官行造林地五百五十八町歩を管理経営するとともに、隣接の魚染瀬営林署等の生産にかかる素材年間十九万石の輸送並びに年間二十二万石の貯材処分の業務を担当しております。三十三年度は約二百二十万石の素材をおおむね田野、奈半利の両貯木場にて処分し、いわゆる販売営林署の性格が強く、職員は百十九名、作業員は百八十九名とあります。  次に、室戸市の室戸漁業組合にて地元のカツオ・マグロ漁業関係者から、北洋サケ・マス独航船のカツオ・マグロ漁業への転換は、高知、徳島、鹿児月三架のごとき中小一船を主勢力とする弱小カツオ・マグロ漁業者にとっては死活に関する重大問題であるから特別の配慮を願いたい。また室戸市長外関係者から室戸市に四国海運局室戸支局の設置についての陳情を聞いた後、高知県と徳島県の境にある野根営林著管内の宍喰貯木場にて管内の説明を聞いたのであります。  二十四日、日和佐町から那賀川上流剣山地区の森林開発公団の事業現場に入り、釜ケ谷線、南川本線及び出原谷線の三路線の林道開設状況を視察いたしました、  徳高支所が管轄する区域は、剣山を中心とした海抜千メートル以上の連峰によって囲まれた奥地山岳地帯で那賀川流域と古野川流城の二つとなっているのでありまして、この地域の総面積約十万町歩で、全面秘の約九〇%が森林で、林業に恵まれた気象的土地条件を有し、産物の大部分は林産物であります。しかるに、搬出施設に見るべきものなく、ただ、川沿いに国道や県道が一線わずかに入っている程度でありまして、水運による流送が行われ、林道に至っては、全国平均の三分の一という貧弱さであったのであります。  御存知のように、去る昭和三十一年七月、森林開発公団法が施行され、三十一年度から三カ年計画をもって、国五二%、県一〇%、地元三八%の負担割合でこの地域の林道の開設が行われることになり、当初計画は九路線、延長五万七千メートルで、事業費六億五千三百万円でありましたが、三年後の今日では九路線、延長七万メートルとなり、その大部分が完成を見、これに要した事業費も七億一千四百二十万円となっております。また、林道管理状況を見ますと、三十一年度計画の林道開設改良事業もほぼ予定通り進みましたので、千本谷、高の瀬外三路線の林道については、三十三年六月から林道管理規程により管理を行いその後の完成部分についても逐次管理事務を実施しており、三十三年度における各林道通行券徴収高は、台数三千四百五十台、金額にして百二十六万二千円となっております。また、林道の災害復旧事業については、現在いまだ実施してはおりませんが、山林所有者に対し三五%の賦課金を一時支払いさせることになっておりますが、これは災害個所による受益地のとり方等困難が予想されるので、公団が賦課金相当額に充当するため、利用料に加えて、基金とすべき金額を徴収する等の方法も考えられるようであります。  二十五日、木頭村を出発、勝浦町に参り、県立果樹試験場を視察した後、町役場において農業法人の問題について現地関係者と懇談をいたし、実情を聴取いたしましたのであります。  勝浦町における農業法人設立の経過を見ますと、この町は徳島県におけるミカンの主産地でありまして、現在約六百五十戸が四百町歩のミカンを裁培し、平年で百三十万貫から百五十万貫の生産を上げているのでありますが、ここのミカンは開墾地の急峻な傾斜地に裁培されており、肥培管理に多大の経費と労力を要し、しかも灌漑施設、索道等も共同施設がなく全般的に作業が不便でありまして、生産費が割高となっているのであります。一方、立木の樹齢は四十才以上のものがその大半を占め、生産高も最盛期を過ぎ更に新期に近づいているため不利な生産条件下にあるのであります。たまたま昭和三十一年度農業所得保税に当って、ミカンの品質が全国的に見て最も悪く、市場価格も低いにかかわらず全国一律のワクで課税され、かつ税務当局と生産者の生産数量見込みにも相違があったようでありまして、本町における当時の所得税の実態を見ますると、三十年度の生産量百十万貫、所得税額九百五十六万円、作付反別四百町歩、貫当り六十七円でありましたのが、三十一年度になりますと、生産量二百四十万貫、所得税額二千五百万円、作付反別四百町歩、貫当り百円という、例年の二―三倍の税額となり、ミカン農家に対して過重な課税になったのであります。この過重な課税に刺激されて、比較的裁培面積の大きい百三戸の農家が主として税対策のため、立木、土地、建物等の現物及現金を出資して有限会社を設立することになったのであります。  当町における農業法人は三十二年五月から十月までに百三社が設立され、当初は前述のように現物出資を主とする有限会社で、一戸一法人でありましたがその後変更して現在では、一戸一法人には変りありませんが、現金出資が六十九社、現金並びに現物出資が三十四社でありまして、契約内容別に見ると、土地の賃貸借によるものが三十二社、農作業の請負契約によるものが七十一社となっております。  県としては、三十二年八月、農地法の許可を得ることなく、法人設立の登記がなされていることを知り、直ちに農林省及び岡山農地事務局あてに照会し、十月に、「立木出資は農地方の適用を受け、かつ、農業法人が立木の出資を受けて使用収益することは、農地法上認められない」旨の答えがあったので、十二月、勝浦町農業委員会に対して前記通達の内容を通知したのであります。  ところが、農業委員会は、会社側の農地法第三条の許可申請に対して、法人の農地使用収益することは農地法上認められかつ、法人は農業に精進する見込みありの見解に基いて、この申請の許可を議決したのであります。これに対し農林省は三十四年四月、「農林法人の賃借権の設定は、農地法全体の趣旨に反し、著しく不当である」と見解を通達したので、知事は農業委員会に対し、本件議決の再議を命じたのであります。そこで農業委員会は、本問題について種々検討を加えていたしましたが、六月に至り申請人から許可申請の取り下げ並びに許可処分の取り消し願いが提出されましたので、これを議決したのであります。   また、税法上の問題としましては、農業法人会社百三社のうち、三社は三十二年度より引き続き法人として課税申請をしましたが、徳島税務署は従来通り個人課税に更正決定をしたので、三社のうち二社はこれを不服として所得税の再調査請求を申請したが棄却され、別途すでに徴収済みの法人税及び源泉所得税をそれぞれ還付したのであります。これに対し二社は高松国税局に審査申請を提出しましたが棄却となりましたので、行政訴訟を提出しているのであります。  以上が勝浦町における農業法人問題の概要でございますが、今申し上げましたように、勝浦町における農業法人設立の直接の動機は、合理的な課税によって農家の所得の増大をはかることから端を発したのでありますが、本質的には、減税による生産資金の蓄積、従来混同されていた経営と家計の経費が明らかになり、経営の診断ができるようになり、家族給与支給により労働意欲の増大、合議制による肥培管理、労力配合の合理化、家族の民主化、婦人、青年の解放等、種々の利点があげられているのでありますが、「一戸一法人の場合、税法上農業に専従者控除を認めるということにしたら法人化の必要がなくなると思われるし、また法人化に伴う複雑な記帳などしないで済むと思われるがどうか」との森委員質問に対し、多数のものから、その趣旨に賛同する旨が述べられたのであります。  また、現在の一戸一法人を発展させ、将来は数戸一法人として農業経営合理化と生産性の向上をはかりたい、他の一般産業同様農業にも法人化を認めるべきである等の意見も述べられたのであります。  なお、勝浦町の隣接町においては、同じミカン農業でありながら法人化の問題が起っていないのでありまして、これは当時課税交渉においてよい結果が得られたことに基因しているようであります。  なお、勝浦町における三十二年度の所得税は、生産量百三十五万貫、所得税額八百万円、貫当り九十三円と下り、さらに三十三年度においては所得税五百万円、貫当り七十三円と大きく下り方を示しているのであります。  以上をもって、高知、徳島両県における調査を終り帰京いたしました。  右、御報告申し上げます。
  98. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 御苦労でございました。ありがとうございます。  以上、御報告について派遣委員に対して御質疑の向きは御質疑を願います。――御質疑がないようでございますが、以上の御報告について、政府当局に御質疑の向きは御質疑を願います。ただいま政府の出席されておられます方は、小枝政務次官、斎藤官房長、奥原水産庁長官、正井農地局参事官、庄野農地局管理部長、浅川計画課長、林野庁でございます。林野庁治山課長若江則忠君、小林経済局農政課長、以上でございます。
  99. 森八三一

    ○森八三一君 私はただいま秋山委員から御報告をいただきましたように、高知県と徳島県の漁業共済制度、さらに、森林開発公団の事業実態並びに勝浦町における農業法人の問題を主として調査をして参りました。  御報告がありましたように、漁民諸君からいろいろの御意見なり、国政に対する要望等も承って参ったのでありますが、非常に問題は多岐にわたりますので、時間の関係上、きょうはそのうちの漁業共済問題について水産庁長官にお尋ねを申し上げたいと思います。時間がありますれば林野の問題その他もございますが、最初にその問題から一つ御質問申し上げます。その制度ができました当時、私もこの委員会委員として法律の制定に賛意を表わしたのでありまするが、その当時非常に零細な漁業者のことでありまするし、経済的にも非常難儀をしておる。絶えず当然招来されるであろう災害に備えて、あらかじめ掛金を出すというようなことは、今日の生活に追われておるという現状からして、必ずしも歓迎されるというわけに参りかねるのではないかというような危惧を持っておりました。制度そのものとしては、非常に大切なことであって、やらなければならぬこととは存じましたが、そういう心配を持っておったところが高知県へ参りまして関係諸君から聞きますと、この制度の実態というものが、零細漁民諸君によく理解せられて、漸次発展の域をたどっておりますことは非常にありがたいことでありまして、水産庁当局が格別に指導された結果でも、あろうと思います。この点については敬意を表するのでありまするが、ところがだんだん進んで参りまするとただいまも御報告がありましたように、現在、試験実施期間中というのですか、というような建前になっておるという関係からでもありましょうけれども、共済給付金の支給に対しまして、国庫の負担をいたしまする限度が、掛金から事務費相当額を差し引いた残りの二倍、そうしてそれは一億円を限度として、債務負担行為によってその処置をする、こういう建前になっているとも承わるのであります。そうなりますると……どんな共済制度、保険制度にいたしましても、事故が発生したときに、約束によってすぐ給付金が受けられるというところに、私は大きな意義があると思う。ところがこの制度で参りますると、関係の団体が借入金をして払っておかなければ、今申し上げまするような措置をするという訳には参りかねる。そこで、関係組合事業実施団体としては、金利の負担が非常に大きいという問題が一つ発生してくる。さらにそのことをちゅうちょいたしますると、給付の時期が非常におくれまして、せっかく楽しみにしている漁民諸君からは失望とまでは参りませんまでも必ずしも加入する当時に考えておった感激というものを味うことが薄くなるというような状態も発生する。なお、制度の発足早々でございますので、ときによって不測の事態が発生するという場合が多いと思うので、そういう場合に、今申し上げましたように、国の援助の程度が非常に小さくきめられておるということによって、あるいは給付が十分に受けられないのではないかというような、危惧、心配というものを持つということになりまするというと、どうしても、制度そのものに対しては役所の指導その他によって十分理解せられておっても入ってこないという結果が生まれてくる危険があるように見受けられますそういう点からして、必ずしも全部の漁家が協同組合を通じて加入をしているということではなくて、ともいたしますと、優秀な漁獲を上げております地域においては加入が渋られているという事態があるのであります。そういうような、あれこれいろいろの問題を総合して考えますと、この制度はどうしても伸ばしていかなければいかぬ。ことに秋山委員から御報告ありましたように、零細漁家が次の再生産を進めて参りますためには、どうしても着業資金なり経営資金なりというものを要するのでありますが、そういうような蓄積を持つということが今日の漁家にいたしましては不可能だ、そこで他の金融機関なり、自分たちが組織している金融機関の方から借り受けるということにならなければならぬのでありますが、そういう場合に、やはり持っておる本来の建前が、不可避的な損害にぶつかるという危険を包蔵しておるという点から金融機関といたしましても、そういう漁民諸君の要望通りに融資をするというわけにも参りかねる。そこで、この制度に加入をしておりますれば、少くともその限度に対しては保証が与えられておるということでございますので、着業資金なり経営資金の入手ということにつきましても非常に都合よく進んで参るということで、零細な漁民諸君の現状を考えますれば、この制度はどうしても伸ばしていかなければならぬ。そのためには、今申し上げましたような、給付に対する安心感なりというものを与えなければならぬ。そこで、基金制度を作ってほしいという要望がきわめて熾烈に述べられたのであります。私も、他の原始産業に関連する共済制度等を考えまする場合に、もうすでに発足して三年ないし四年目を迎える今日でございますので、少くとも三十五年度あたりからは、そういうような、要望にこたえて、本格的な基金制度を作って、この仕事を助長発展せしめていかなければならぬというように考えるのでありますが、これはただ単に漁業者の陳情なり希望があるからということではなくて、沿岸における漁業の現状を考えますると、どうしても、わずかな補助金を出すとかそういうものでなしに、基本的なこの問題を一つのささえとして、漁業の安定的な経営をせしめていくという方向に発展させる、そのためには基金制度を設定するということが当面の急務のように思います。沿岸における零細漁民対策としては、このことが一つの根幹として、重要な柱として進められていかなければならぬと思うのでありますが、その点につきましては、これは全水協等から役所の方にもしばしばお話があったと思いますので、御研究を願っておることだろうと思いますが、御研究の現状がどうなっておりまするか、私の申し上げまする基金制度を設定すべしということに対しての御見解を承わっておきたい。
  100. 奥原日出男

    説明員奥原日出男君) 漁業共済に関しましては、昭和三十二年の年度の途中から発足をいたして、ここ三年足らずの期間がたつのでございます。そこで現状は、試験的実施の調査委託を国が行う、こういう建前をとっておるのでございまして、それとともに、事故が多発いたしまして、共済掛金で間に合わなかった場合の安全弁を与えまするために、国が掛金の倍額の債務負担契約をいたしておるのであります。これによりまして、掛金の三倍の安全性をこの事業に対して付与いたしておるのでございます。ところで、試験的実施の委託という観念をとっておりまするが、やっておりますることは、これは、全国の臨海県全体に対しまして本格的な実施をしておることといささかも変りはないのでございまして、しかし、これが果して保険として長期的に回転していき得るかいなか、あるいはまた危険率自体につきましても、今日全国的に画一的な危険率をとっておるのでありますが、これが果して、地域的にあるいは漁種別にもう少し危険率の精査をする必要があるのではないかとか、その他いろいろな実行上の問題点を、やりながら是正をしていくと、こういうことで試験的実施という観念を今とっておるのでございます。で、当初はなかなか普及が困難でございましたが、漸次普及のスピードは加わって参っております。しかしながら、保険として長期的にこれが循環していくかいなかということについての見通しは、残念ながらまだ全然立っておりません。昭和三十二年及び三十三年の共済掛金が、両方合せまして約四千七百十五万円でございますが、これに対しまして、支出いたしました共済金は、両年度のものにつきましてすでに五千九百四十三万円、で、今後三十三年度契約分について支出いたすかと思われまするものが約五千六百万円ばかりでございまして、結局四千七百万円の掛金をもっていたしましては、六千八百万円の要するに赤字が出ておると、こういう状況にあるのでございます。で、全水協から、一方におきまして共済制度自身の実行上のいろいろな改善の要請が出て参っております。ただいまお話が出ましたような、たとえば共済の限度額が過去の経費の、六カ年間の経費平均の八割、あるいはまた漁獲高の六割五分、この限度額をもう少し引き上げてくれと、こういうふうな要請その他いろいろな問題がございますが、これはそれぞれ事務的に消化をして取り進めて参りたいと、かような検討をいたしておるのでございます。  ただ、全水協の申しておりまする要請の中で、基金制度を作ってくれと、この点に関しましては、われわれといたしましては、まだその時期が早過ぎる、かように考えておるのでございます。で、基金制度と申しまするのは、要するに、この際共済掛金の何倍か、これは通常の保険におきましては、最も危険なものにおきましてもせいぜい三倍、こういうことでございますが、何倍かの基金を組合に渡して、そうしてその基金で赤字を埋めて回転させるようにしてもらいたいと、こういう要請であるのでありますが、しかし、それは同時に、この共済事業が、ある年においては赤字も出るが、ある年においては黒字も出、全体として回転していくという見通しのもとに立って初めて基金の設定ということが考慮され得るかと、かように思うのでございます。われわれといたしましては、基金を設定して、それがなくなればなくなったでまたつぎ込めばいいじゃないかと、こういうふうな単純な考え方はとりかねるのでございます。おそらく政府部内において予算折衝いたしましても、現在の加入の状況が、たとえば三十三年について見ましても、年間を通じまして、掛金といたしまして四千三百三十二万円、で、おそらくこれの二倍なり三倍なりの基金というようなところが、保険の場合等の例を見ましても常識的かと思うのでありまするが、しかし、かりにそういう基金を設定しても、それが使い果されたときに一体どうなるか、こういうようなことを考えれば、現在のような、掛金額の二倍の債務負担契約をしておる、全体としては三倍の安全率を与えておくということの方が、これが一番無難な道であるのではないかと、かように考えておるのでございます。もしも事故が発生いたしました場合に、掛金の支払いがそういう制度をとっておることのためにおくれると、こういうことであれば、これは共済事業に対する漁民の信用を失うことになり、共済事業を促進するゆえんではないのでございまするけれども、現実におきましては、農林中金が国の債務負担契約を見返りにいたしまして、事故発生のつどおくれないで融資をいたしておるのでございまして、そういうことによりまして、私はむしろこの際においてはそういう方法でいきまする力がより安全であり、かつ共済野業を伸ばすゆえんではないか、かように考えておるのでございます。  なお、予算の面におきましては、今年度一億円と、こういう債務負担契約のワクでございますが、これは予算折衝の際におきまして、もしも共済掛金が非常に伸びてきて、その額を越す、その額をもっては間に合わないと、こういうようなことになりますれば、当然債務負担契約の額の更改をする、こういうふうな予算折衝の際の申し合せもある次第であるのでありまして、むしろこういう方法でいくことの方が、まだ保険として自転し得ない現段階における保護対策としては適切ではないか、かように考えておる次第でございます。
  101. 森八三一

    ○森八三一君 もちろんこの制度は、お話がありましたが、発足してまだまる二年ですが、足かけ三年ないし四年というのですから、ある一定の基金を作れば、それでその基金の中で回転をしてうまくいくかどうかということの見通しがつきませんことは、これは当然であると思います。しかし、債務負担行為ということで、掛金額の倍率で政府が援助をしてやるという約束だけであっては、もしそれ以上の事故の生じた場合、問題がやはり起きるという心配も当業者としては持つと思うのです。そこで、この制度を伸ばしていきたい、さらに一そう進展せしめていかなければならぬ、沿岸漁業の現状を考えれば、この制度それ自体より私はこの制度を進めることによって受けられる金融の魅力というものは非常に大きいと思うのです。そのことは、私は全国的に普及されなければならない非常な大きなポイントだと思います。そういうことを考えて参りますと、やはりこの制度自体が、やはり一つの安心感を与えるということが今日普及して参ります一番大きな要素だと思う。そこで基金制度を、額の問題ももちろん関連いたしますが、安心感を与える程度の基金制度というものを設定いたしますれば、今日の加入の程度ではなくて、全漁家が加入するという程度に発展せしめ得るのじゃないか、といたしますれば、これは事故発生率の多いところも少いところも入ってくるという結果が生まれるかもしれない、そこでこの掛金の中でほんとうの共済的な意味の運営が可能になるというように見通すのであります。そういう趣旨で基金制度を設定すべきだ、ただ過去の経験から自転をし得るかどうかということについては見通しがない、これは当然ですが、そうではなくて、この制度を伸ばすということが沿岸漁業、零細漁民の対策として今日一番急を要する問題だ、とすれば奨励するという趣旨から入りやすいように進めてやるということが当面の私はとるべき対策だと思うのであります。そういう趣旨から観点を変えて基金制度を見ていく必要があるんじゃないか、こう思うのですが、その点いかがですか。
  102. 奥原日出男

    説明員奥原日出男君) これは議論にわたりまして恐縮でございますが、私は今日漁業共済制度が悩んでおりますのは基金制度であるか、あるいは債務負担方式であるかということでは私はないように思うのでございます。漁民としますれば、事故が起ったとき金が確実に払えればそれでよいのでありまして、今日までの事例におきましては、基金制度がとられておらない、債務負担方式であるからということでその共済金の支払いが滞ったというようなことはただの一度もないのであります。農林中金も十分協力的融資を全水協に対して与え、全水協は支障なく今日まで支払いをいたして参っておるのでございます。ただ、その金利負担が将来どうなるかということにつきましては、これは今後も共済事業の運営というふうなものとの関連もございまするので、ある程度分析いたしました場合、共済事業の自転ということについての見通しの中において金利負担をどう解決するかということは当然解決していかなければならない、かように考えるのでございますが、基金制度で国からつかみ金を何億もくれ、こういうことは、それだけの金があればもう公済事業はりっぱにやりますと、その金がなくなればもう共済事業はやめてもよろしゅうございます、こういうような一つの前提に立たなければ、予算の折衝としてはとうていこれは成り立たないのであります。農業共済についての基金制度というのは、これは今いわれておりますような基金制度とは多少趣旨を異にして、これはむしろ融資的な性格を持っておるように承知をいたしておるのでございますが、この場合においては、事故が発生したときの、要するに支払い財源に円滑にこれを充てよと、こういうようなことであるのでありまするが、そうであるだけに、私はやはりこれが自転し得るという見通しの上に立たなければ基金制度にはなかなか踏み出し得ないのじゃないか、また、おそらく債務行為といたしましても、それだけの基金を与えっぱなしにして、そうしてさらにまたそれが自転するかどうかわからないというふうな状態においては、なかなか予算の折衝にも応じかねるのではないか、かように考えておるのでございます。債務負担契約によりまする補給額が累積すれば、やはりある時点においては同じような問題が起るかということも予測するのでございますけれども、これはまあ、とにかく今日までわれわれ努力をいたしてここまでこぎつけて参っておりますので、これは今後の予算折衝においても相当期間安定した共済事業に対する裏打ちとしての内容の拡充を期待し得るものではないか、かように考えておりまする次第であります。この際は、むしろ基金制度をとらざることの方が適当なのではないかと申し上げたいと存じます。  なお、最初申し上げることを逸しましたが、国が共済事業の試験実施の調査を委託している、こういう建前から、漁業共済に対しまする事務費以下保険料に相当いたしますものについては、全額国が補給をする、こういう建前に相なっております。ただし、実際は単価の関係等もございまして一〇〇%には参っておりませんが、そういうことで援助をいたしております次第でございます。
  103. 森八三一

    ○森八三一君 まあ、これはいつまで押上問答をしても同じことを繰り返すと思うのですが、現在の債務負担行為を見ましても、結局は同じようになると思うのです。私は同じようになると思いますが、そこで私の申し上げまするのは、当業者は、漁民諸君がこの制度を非常に信頼し、安心をして事故率の少ないところによけい加入してもらうというところに発展せしめてもらわなければならぬ。それには、お話にありましたように、一億円というものは必ずしも固定した限界ではない。掛金が増加してくれば当然それは発展していく余裕というものは約束されていると思う。であるとすれば、大体掛金の三倍程度あればやっていけるのではないかということは想像はできまするが、何年か分が一時に基金として蓄積されておるということでありますれば、今前段に申し上げましたように、零細漁民諸君の安心感と期待を得て、全部の者を加入せしめていく、その結果自転し得るという結果が生まれてくるというようなことにつながっていくのだ、そういう結果が出てからやるのだということになりますると、これは非常に長期間を要してなかなか掛金の中で自転をしていくような状態というものを導き出していくのには時間がかかる、逆にいけばそれが早くいく、どちらが現在最も経営に困難をしている、特に金融上難儀をしている漁民諸君に対する対策であるかということを考えるという問題であろうと思うのです。そこで、この問題はもう少し一つ十分そういう実態を御研究願いまして、必ずしも私は長官のおっしゃることは、絶対に異議があるというのじゃございませんけれども、奨励的にこの制度を進めていくという観点からながめて参りますれば、基金制度を設けた方が早くいくのではないか、理想の位置を早く完成するように見るのでありますので、十分一つ御研究をいただきたいと思います。いずれ時間がありますれば、もう少し私も研究いたしまして申し述べてみたいと思います。  それから、今ちょっとお話がありましたように、現在の制度では、保険と申しまするか、契約と申しまするか、そういうものの限度が経費に対しては八割漁獲高に対しては大川五分ということで制約をされておる、こういうことでは優秀な漁場成績が進んで上っておりまするような漁民諸君は魅力を感じない。そこで、結局事故率の多いところが加入をして事故率の少いところは加入がちゅうちょされるというような結果を生み出しておるように承わるのであります。そこで漁民諸君としては掛金がふえてもよろしい、契約の限度額というものを実態に即するように上げてくれという要望がありますが、これは今そういう点については事務的に解決の歩を進めておるということでございましたので、おそらく実際の経営者のお話をお聞きになりまして、この契約限度額については引き上げるという措置がとられると思いますが、そういうように了解してよろしいかどうか、それが第一点。  それから第二点は、その契約に応じました場合の掛金につきまして、必ずしも一ぺんに事故が発生するわけではないので、また漁民諸君の収入というものも定置のような場合には順次上ってくるのですから、そこで掛金の分割払いということも認めてほしいという要請も相当あったのでございます。これはもう定置等の実態から考えますればそういうことも考えてやるべきじゃないか。そのことは必ずしも漁民諸君だけとの約束ではいかぬとすれば、あるいは漁業協同組合の保証だとか、あるいは漁信連の保証だとか何とかいうような一つの裏づけのもとに掛金の分割払いということを認めてやることが、この際この制度を進めていくのにはふさわしい方法であるかと思うのでございますが、現在では内規であります。るが、そういうものによって分割払いは認めておらぬということのように承わるのでありまするが、その点についての改善と申しますか、改正と申しますか、御意図はございませんかどうか、第二点としてお伺いをいたしたい。
  104. 奥原日出男

    説明員奥原日出男君) ただいま共済の限度額の引き上げについてのお尋ねがあったのでありますが、これに関しましては、相当程度引き上げるという方角で、ただ掛金が高くなるというふうなこととの関連等を検討をいたしております。事務的には大体御趣旨に沿うような方角で進んでおる次第でございます。  次に、掛金の分割払いの問題でございますが、これは実は漁船保険の場合におきまして掛金の分割払いという制度がありまして、それが滞りまして、その跡始末に非常に苦労をいたしておるというのが実態でございます。ただ漁業共済は、一つの共済期間の長い経過の中に共済事故が発生したかどうかが認定されるのでございまして、漁船保険のような場合と違った、ある程度の便宜な方法があるいはとれるのではないかとも、かように思うのでございますが、これはもう少し具体的研究をさしていただきたい、かように考えます。
  105. 森八三一

    ○森八三一君 私一人で独占しちゃいけません。いろいろありますが、最後にもう一点お伺いをしておきたいと思います。  今の分割払いの問題は、これは漁船保険や家屋の火災保険と実態が違うのですから、これは十分一つ御研究を願いまして、この制度に漁民諸君が魅力を感じて入ってくる、そのしやすい方法を十分一つ御研究を願いたいと思います。私は漁船の保険とか住宅の火災保険の場合にはそういう分割払いというものは考えられないと思いますが、一定期間、長期にわたって漁獲が上ってくるという制度である限り、組織の実態がそういうことでありますから、そこに分割払いということが当然考えられてよろしいというふうに思いますので、御研究を願いたいと思います。  最後にお伺いいたしたいと思いますことは、現在の制度では全国の組織が一本でこの制度を引き受けておるということですが、必ずしもそれが悪いというわけではございませんけれども、むしろ地域別に責任を明らかに分担せしめるような中間の組織を作って、全国組織は再保険をするというような建前にした方が、事故率の調査その他この制度を育成強化していくためにはふさわしいような感じもいたします。もちろんそういう組織ができますれば、その組織の運営に要する経費というのが要るようになりますから、彼比勘案をしなければなりませんが、漁夫共済のような場合には、府県の段階なり、ブロック別なり、適当な地域ごとに実際に経営主体を設定する。そうして全国組織は再保険をするというような建前をとった方が、実態に即する経営ができるのではないかというふうに考えるのでありますが、そういう御研究がございますかどうか、その点を最後にお伺いをしておきたいと思います。
  106. 奥原日出男

    説明員奥原日出男君) 加入成績が上りました場合におきましては、今日の全国一本の組織を再検討をするということも可能であろうかと思うのでございます。しかし、何分にも現状におきましては、たとえば昭和三十四年の加入の状況について見ますると、十九県にわたっておりまして、中にはたった一件しか加入していないというのが六県ばかりもある。二件しか加入していないというのが二つ――二県ある。こんなふうな加入の状況でございます。こういう段階におきましては、地区の組織をさらに下部に作るということは付加保険料も非常に高くなる次第でもあり、かつまた今日の現状はとにかく漁協の系統が非常に力を入れて援助をしておるのでありますが、ともすれば地方の団体では役員の関係で必ずしも団体同士の間が円滑にいかないことが起り得る。そんなふうなこと等をも考えますれば、もう少し普及をいたしまするまでの間は、今の一段階制でいくべきではないか。もし事情がどうしても必要である場合には、組織としては一本であっても、ある程度地区の元受保険、さらにそれに対する全国的な再保険というふうな形の計算をしていくということは、これは内部の事務処理としては可能ではないかと、かように考えておりますが、そのこともまだ時期尚早ではないかと、かように考える次第であります。
  107. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 私はただいま農林省から配付になった「7月豪雨による被害概況」を見てみまするというと、農林水産業施設等被害状況は総額が六十二億円という多額に上ったようであります。また八月台風の被害もあるのでありますから、さらにそれに倍加するもみであろうと思うのであります。しかして九州、山口各県知事からの陳情についで福岡県の方から午前陳情があったのでありますが、今回の七月の豪雨というものは非常に大きいのであって、かつ同じ県であっても、局地的に被害が大きいのであります。それでありますから、被害が大きいのと、その局地的に被害があるというようなことから考えて参りまするというと、どうしたっても今回の七月豪雨に対する対策も、陳情書にありますように、農地等の小災害の復旧事業については、昭和三十三年七月、八月及び九月の風水害により被害を受けた地方公共団体の起債の特例等に関する法律と同様なものを制定せなくてはこの救済をすることができないと、こう考えるのでありますが、この点について政府のお考えを伺いたいと思うのであります。
  108. 斎藤誠

    説明員(斎藤誠君) 手元に配付いたしてございますように、七月の豪雨による被害の概況は約十二億円と相なっておりまして、これは統計調査事務所が報告いたしております。その大部分は水陸稲でございまして約十一億円となっておるのでございます。今回の被害につきましては、お話しがありましたように、局地的には相当大きな被害があり、また山口県あるいは福岡県等からは今次の災害の特色として十万円以下のいわゆる小災害の被害が相当ある、従ってこれに対する対策を講じてもらいたいという要望があるのでございます。  御承知のように、今お話しがありましたような措置を、昨年度の伊豆災害につきましては、そういう措置をとった次第でございます。ただ現在までの被害の状況につきまして、小災害がどの程度に相なっておるかということにつきましては、まだ調査段階でございまして、農林省としましては、さしあたり現在起りましたところの農地、農業施設あるいは林野関係の施設等につきまして暫定法あるいは公共事業費負担法に基きまして、とりあえずは現地査定を早くその面についてはやってもらいたい。大体八月一ぱいにはそれを完了いたして、九月早々には予備費要求の措置を講じたいという考えで、今取り進めておるのであります。従いまして、それらに応じまして小災害についての被害の状況も検討して参らなければならないと考えておるのが現状でございます。ただ、今までの被害の概況は今申し上げた通りであり、また今次の災害について相当小災害も多いのでありますけれども、昨年度は御承知のように、伊豆災害を契機といたしまして小災害問題が取り上げられたのでございますが、御承知のように、昨年度の水害は年間で百八十六億でございます。七月までの昨年度の水害は四十七億、八月以降の水害が百三十八億、これはいずれも県の被害報告でございますが、そういうような、昨年度は非常な大きな災害であったのでございますので、まあ比較するということによって対策の緩急をはかるというのはいかがかという感じもいたしますけれども、これまでの災害についての調査はもちろん進めて参りますけれども、現段階におきましては、もう少し今後における災害の状況等を見て検討をすべきではなかろうか。特にまた二年、三年というふうに続きますと、小災害問題についての対策について特例的な措置でやるべきかどうかということもあわせて検討する要があると考えますので、現在の状況におきましては、できるだけ今の復旧をやり、十万円以上の災害についてはできるだけ早く措置をとって参りたい、それ以外の災害については目下調査を進めている、こういうのが現在までの状況でございます。
  109. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 まだ調査中であるということでありますから、調査の結果を待たなくてはできないのでありますが、私の知り得た範囲内においては、小規模の災害が非常に多いのであります。でありますから、十町歩以上災害に対して、今お話しのようなことをやっていただくのはもちろんなのでありますが、そういうようなことであれば小災害は救われないというようなことになって参ってくるのであります。でありますから、調査の結果、できるだけ昨年同様の対策を講ぜられるようにまずお願いして、そうして次に移りますが、第二番目に、きょうも陳情があったのでありますが、天災法はこの際七月家雨に対して実施される予定であるかどうか、また今までの災害に、昭和三十四年度の災害に対して天災法をどういうふうな程度まで研究を進められているか、これを承わりたいと思うのであります。
  110. 斎藤誠

    説明員(斎藤誠君) 先ほど申し上げましたように、本年度の農作物被害は約十二億円ということに相なっているのであります。もちろん対象として天災法を発動すべきかどうかという解釈になりますれば、もちろん対象となり得べきものでございますけれども、御承知のように天災法の発動の要件といたしましては、その被害が国民経済上重大な被害を及ぼすといったことが一つの基準となり、現在まで発動されて参ったのであります。従来までの天災法の発動の大体の経緯から言いますと、四十億円程度の農作物被害がありました場合が大体発動の結果と相なっているのであります。もっとも本年度ひょう害に対しましては局地的で、かつ、従来の被害に比べてみますと、三十年度でしたか、十三億円というひょう害に伴う被害に対して、本年度は約二十三億円というような非常に大きな被害が生じましたので、このひょう害につきましては天災法の発動をいたしたのでございます。現在まで判明した今回の水害に伴う被害は十一億円でございまして、これを過去の例から言いますると、三十三年度が五十八億円、三十二年が八十九億円といったような金額に比べますれば、農作物の被害は施設災害に比べますると、総体的にはむしろ被害がやや少なかったんではなかったかと思われるのであります。もちろんこれは局地的な議論ではなくて、総体的な議論でございますけれども、そういうふうに考えているのであります。われわれといたしましても、そういう風水害地帯におきまする農家の救済については、何らかの措置をとりたい。特に融資等の措置をとりたいというのは、被害に伴う対策については、かねて考えているところでありますので、そういう方向における研究はもちろんいたしているのであります。ただ、こういうことを申し上げておしかりを受けるかもわかりませんが、大体におきまして、天災法の発動につきましては、裏作と表作とを一応分けまして、表作は表作、裏作は裏作で被害の累計をして発動するというふうなことを従来もいたしておりましたので、今後風水害がなければこれに越したことはないのでございますけれども、また同時に台風シーズンにも入ってくるということになりますれば、それらの表作被害を通じましてどのような被害になるかということもあわせて今後の天災法発動についての研究、あるいは検討を加えて参りたいというのが率直なわれわれの気持でございます。
  111. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 それで天災法の実施については、さらに御検討をお願いしたいと思うのであります。  それから、自作農創設維持資金の現在まで割り当てられた金額が幾らであって、残りが幾らであるか、また今回の災害にどのくらい割り当てられる余裕があるのであるかどうか、また割り当てられようと思っておるのであるか、それをお伺いしたいと思うのであります。
  112. 庄野五一郎

    説明員(庄野五一郎君) ことしの自作農資金は御承知のように、百億のワクがございまして、そのうち開拓分が十六億四千九百万円になっておりまするので、ただいま一般に割当いたしましたのが、当初割当として六十億円割り当てております。ひょう害のときにはその中から取りあえず急ぐ部分は割当をするようにという通達をいたしまして、さらに必要面があれば追加割当をいたしたいと、こういうことで、ただいま東北なり関東地方のひょう害地帯から要望が目下来ておりますので、それを今検討して、早急に額の決定をいたしたいと、こういう段取りでございます。ただいまのところ、自作農の資金の余裕額は約二十二億円程度が留保されておりまして、その中から災害なり、今後の災害に対して追加割当をしていくと、こういう段取りでございます。
  113. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 さっきも申し上げたように、今度の災害は金額においては大きくないかわかりませんけれども、局地的の災害であって、災害を受けたところのものは非常な困難な状態に陥っておるのでありますから、この点十分に御研究の上、自作農資金の割当をお願いしたいと思うのであります。その他については従来の例にならっていろいろ陳情書にも書いてあるのでありますから、この点を十分に御考慮の上に善処をしていただきたいと思うのであります。  それからこの際、私はさらに別な方面でお尋ねをしたいと思うのでありますが、この前の委員会、あるいはその他で、旱害対策についていろいろと議論があり、農林省も考慮を払っておるのでありますが、昨年はああいうふうな旱害のために早害に、対していろいろの応急措置を講じられたのであります。また、今年も最初は非常な旱害であったために昨年同様の善後策を講じてもらうというような考えのもとに、各県において早害対策を講じておるのであります。その旱害対策に対して現在まで政府がとられたところの方法及びこれに対してどういうふうに金額を判り当てられようとしておるのであるか、どんな事業にどんな方法でやろうと思っておられるのであるか、その旱害対策についてもお伺いをいたしたいと思うのであります。
  114. 正井保之

    説明員(正井保之君) ただいまお話がございましたように、本年度もまた相当に旱害の状態が特に西日本の方でございまして、七月の初旬におきましては、およそ十万町歩に近い被害面積というものが上って参りまして、何とかこの措置についても心配をしておったわけでありますが、幸いにいたしまして、七月の十日前後から相次いで降雨がございまして、その結果旱害の被害の期間も非常に短かく、ほとんどが解消いたしました。その結果は作付等も順調に進んでおるわけでございます。ただ、問題になっておりますのは、この旱害に対する措置といたしまして、あるいは井戸、水路をつけるとか、あるいはまたポンプ等の措置をするというふうなことで、実はすでに対策をいたしておりまして、これがほぼ三億八千万円程度に上るわけであります。それでこの措置につきまして、実は昨年同様の措置が必要かどうかという点につきましては、なお被害の状況等の検討も要りますが、とりあえず七月の十一日付で、昨年の早書のときにはまだその制度がはっきりいたしておりませんでしたが、非補助の低利融資の道が実は活用できるのではないかということで、農林漁業金融公庫とも打ち合せをいたしまして、これの活用によりまして緊急の必要に応ずるというふうな措置を一応とりまして、各出先にも連絡をいたしましてございます。ただいまのところはそういうふうな措置によりまして、大体まあこの場をしのげるのじゃないかというふうに考えております。  なお、応急措置をとりました実情につきましては、ただいま調査中でございまして、やがてその調査も参ると思いますが、概況はそういった――なお、昨年国が灌漑のために若干の機械を買い上げましたのと、かねがね災害対策用に、これは水害等の場合に排水をするわけでございますが、そういったポンプがございますので、台数は少うごごいますが、約二百台ぐらいのものでございますが、これは地方の要望に応じまして貸し出してございます。約半分ぐらいでごごいますが、なお昨年旱害の対策としまして、農家でポンプ等を買いましたものが二万六千台ぐらいあります。そのうち各県の適当な指導等によりまして、七割余りのものが活用されまして、今度の旱害については非常にまあうまく措置がとれておるというふうな状況でございます。以上、概要を御説明申し上げました。
  115. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 旱害については、特に愛媛県が甚大であるということで、農林省から直接派遣されたのでありますが、その被害の状況がどうであったか、それに対してどういうふうな対策をとられたか、お伺いしたいと思います。
  116. 正井保之

    説明員(正井保之君) ただいま申し上げました措置で、ただいまのところはそれ以上は――なお実は旱害地帯につきましては、将来にわたっても推置をしたいということで、実は団体営の灌漑事業になお若干の予算がございますが、そういったものの今後の使用につきまして、旱害地帯にそれがうまく使えるかどうかというふうな点についての調査等も事務局を通じてやっております。ただいまそういうふうな調査と申しますか、うまくすでに持っている予算の活用ができるかどうかというふうな点を主にしまして、その調査をいたしております。
  117. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 そうしますというと、昨年同様に応急対策を研究中である、またさらに同じ旱害が起らないように恒久対策を研究中である、その研究がまとまった上で具体的の案は立てる、こういう意味ですか。
  118. 正井保之

    説明員(正井保之君) 恒久の対策につきましては、ただいまお話のございましたように、応急対策事業を実施しました地区につきまして、特にその実情を調査いたして、それによってまた考えたいということでございます。応急措置そのものにつきましては、これもまた実情を調査いたしておりますが、旱害による被害が、どの程度に将来稲作等に及ぶか、被害の程度そのものが実はまだはっきりいたしておらないというふうな状況でございますので、ただいま直ちにこの応急対策としてとられた措置についての扱いをきめるには時期尚早じゃないかというふうに考えております。ただいまのところは、先ほど申し上げましたように、低利融資を活用する道を開きまして、これによって措置して参るという考えでございます。
  119. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 低利融資といえば、金利を幾らにされるお考えであるかどうかわかりませんが、旱害があるということでもうすでに井戸を堀る、水路を作る、その他の方法をやっておるのでありますから、これはもう事実今後の問題じゃなくて、実際行なっている問題であります。それで行なっているところのものに金が足らないのであったらば、低利融資をしよう、こういうふうなお考えであるというならば、その低利融資というものは金利は幾らにされるお考えですか。
  120. 正井保之

    説明員(正井保之君) 三分五厘の融資につきまして、小団地の改良開発事業というものが対象になっておりますので、たとえば水路を引きますとか、あるいはポンプ井戸を堀るというようなもの、そういう事業として土地改良の一つということに扱い得るわけでございますので、そういう措置で参りたいというふうに考えております。先ほども申し上げましたように対策をとられたわけでありますが、旱害の時期も短うございましたし、幸いにして旱害はその後の降雨によって解消するというふうに、不幸中の幸いのような状態に至っておりますので、ただいまのところは、先ほど申し上げましたように、恒久対策の仕事と、応急事業をやった地区の状況というものについて調査をいたしておる、かような状況でございます。
  121. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 そうすると、低利融資の期間は一体どのくらいにされるお考えでありますか。
  122. 正井保之

    説明員(正井保之君) 低利融資の償還の期間でございましょうか。
  123. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 ええ。
  124. 正井保之

    説明員(正井保之君) これは的確に私ちょっとただいま申し上げかねますが、一般の融資が三年据え置き十五年になっておりますので、それ以上になるということはないと思っております。なお、いろいろ低利資金の融通につきましては、手続上なるべく簡単にと、あるいはある程度、五分の非補助で進んでおるような場合にも、途中で三分五厘の的確な事業というふうな認定があれば切りかえるというようなこともあわせて出先に指示いたしております。
  125. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 そうすると、その金利及び据置期間及び償還期間はわかったのでありますが、一地区当りの金額は、どのくらい制限があるのであるか、ないのであるか、お尋ねしたいと思います。
  126. 正井保之

    説明員(正井保之君) これは一つの地区ということでなしに、一つの借り受け、一件ごとの金額は十万円以上という一般の農林漁業金融公庫の建前になっておりますので、それにのっとっていただく、かように考えております。
  127. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 そうすると、十町歩以下の場合であっても、同一水系であったならば同一個所であるというようなことを認めて、一昨年の長崎県の諌早その他の水害の場合においては認めていただいたようなことなのでありますが、今度の場合も、十万円といえば大した金額ではないようなものあでるけれども、ある一つの設備を農家がやるとかなんとかというようなことだったならば、それ以下の金額になることもないではないかと思っているのであります。こういうふうな場合においては、それを一個所一個所というようなことでなくて、同一水系であったならば、それを一単位と認めて、その一単位と認めたところのものが十万円以上であったらばいい、こういうふうに解釈されますかどうか、この点さらにお尋ねしたいと思うのであります。
  128. 正井保之

    説明員(正井保之君) ただいまのお話は、農地及び施設災害に対する補助金の対策を十万円以上のものについて考えておりますが、それに関連した御質問かと存じますが、昨年も実はこの点、すなわち小災害が問題になったのでございますが、災害復旧の臨時措置法によりますと一件は十万円以上で、その間隔が、一つの施設について五十メートル以上離れている場合には、原則として一個所とは見ないということになっておりますが、ただそれは、それ以上離れております場合にも、機能上同時にそれを復旧しなければ効果が出ないというふうなものにつきましては、これは一つのものとして取り上げるというふうにいたしておるのであります。  なお二つ以上の施設でございましても、これが、たとえば水路が同時に、その堤防があぜの役割も果しているような場合には、別々に取り上げないで、あわせて処理するというふうなことにつきましても、昨年、査定要領を大蔵省お話をいたしましてきめておりましたので、そういった事情のものにつきましては取り上げるというふうなことで処理をいたして参りたいと思っております。
  129. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 今の問題は、今回の旱害の場合も、そういうふうな取扱いをされる、あるいはする予定だったといことうでありますか。
  130. 正井保之

    説明員(正井保之君) 実は旱害の場合には、施設自体がこわれることはございませんので、ただいま申し上げましたのは、施設等が小災害を受けた場合のことでございます。先ほどお話を申し上げておりましたのは、旱害のために応急措置をした場合に、これについて低利の融資の道を用意して、その旨を支店等出先機関に示してある、こういうことでございまして、これはむしろ土地改良の一つとして扱う、こういう建前でございます。
  131. 田中啓一

    ○田中啓一君 今のに関連した問題ですが、例の三分五厘の、団体営の土地改良の方の融資は、まだ割当末済のものが相当残っておりますか。
  132. 正井保之

    説明員(正井保之君) 私、実は確かめておりませんけれども、昨年の実績から申しますと、従来非補助融資事業は五分でございますが、割合に売れ行きがよくございませんので、残るような例が多うございましたけれども、昨年は大体一ぱい一ぱいに参りまして、本年もおそらくそういうことだろうと思いますが、割り当ててしまって全然余裕がないというふうな状態ではなくして、むしろ申請を待って、従来の実績等もございますので、大よそのワクの予定はございましても、融通のきかないという状態ではないと思っております。
  133. 田中啓一

    ○田中啓一君 それから、これはもう一つ、前の藤野さんの質問に関連しているわけですが、いわゆる自作農創設維持資金ですね、あれはあなたの方への、庄野さんのところへの報告で、それをまとめると、こういうことがわかりますか。創設の方ですね。つまり今まで八反しかなかったがもっと多くしたいので、二反か三反買いましたというようなのがどれくらいの件数になり、どんな様子になるか、あるいは今のように、名前はどうも自作農創設維持資金でまことにりっぱだけれども、災害や何かがあると何でもいい、とにかく低利資金がほしいのだということで、まあそれもなければ土地を売ってしまわなければならぬというようなことにもなりかねないのですからいいに違いないと思いまして、これはどこの県でもやっておることですから、それで一応よろしいと思いますけれども、実はそれほど売らなくてはならぬというのでなくても、とにかく金があった方がいいということで、金を借りるということも、実はありそうに思っているのですね。そこで、創設の方へ、開拓関係にしろあるいはそうでないところにしろ、どれくらい回っておるものか、何かまとめて調べられたことございますか。
  134. 庄野五一郎

    説明員(庄野五一郎君) 自作農創設維持資金につきましては、御承知のように経営規模を拡大するための農地取得の資金というのと、それから小作人が自分の小作地を取得するための小作地取得の資金と、それから相続によって分割されるのを防止する相続関係資金、それが大体自作農の創設的な資金になっておるわけであります。そのほかに御承知のように、災害その他、疾病あるいはさきにも申しました農地取得のために借りてやって、それが旧債になって非常に圧迫している、そういった旧債、そういう小作地なり自作地を、農地を取得するために借りて、そうして旧債のために困っている、そういった旧債の問題、そういう四つになるわけでございまして、今詳しい資料を持ってきておりませんが、それは件数別、金額別に大体一年おくれくらいで集計が上っております。大体の見当を申しますと、農地を取得し、あるいは小作地を取得し、あるいは相続のための分散防止といったような資金と、それから災害による転落防止の資金というものの比率は、大体六割から七割程度が災害による転落防止の資金になっておりまして、三割ないし四割がさきに申しました農地取得の資金になっております。詳しいことは資料をもちましていずれ御報告するようにいたしたいと思いますが、大体そういう見当で融資されております。
  135. 田中啓一

    ○田中啓一君 その見当でけっこうなんでして、とてもそう詳しく伺っても覚えられはしませんし、何ですが、そこでだんだん年々ふやしてきておりますが、そこでやはり依然として各県に割当をやっているということなんですが、あれを割当というよりも、要るだけ出すということになりましたら、一体どれくらい出てきそうな金額になると思いますか、それを一つ伺っておきたいのですが……。
  136. 庄野五一郎

    説明員(庄野五一郎君) 非常にむずかしい御質問でございますが、われわれが今算定いたしておりますところでは、中庸規模を大体融資対象にする。中庸規模と申しますのは、その県々でそれぞれ違いますが、それを大体平均耕作反別を中心にしまして、大体考えておるわけでございますが、それを中心にしまして、われわれは、災害資金というのは非常に不確定分子がたくさんあるわけでございますが、農地を取得し、あるいは小作地を取得する、そういう点を考えまして、今、来年要求しようかといって検討している分が、これは開拓者の借りかえ資金等を含めまして百五十億円前後じゃないか、そういうような見当をつけて、今、来年の準備をいたしておりますが、まだ確定的なことは申し上げられません。大体そういう見当でやっております。そうして、これは相当横すべりしていくのではないかというような考え方を持っております。
  137. 東隆

    ○東隆君 ちょっと今のに関連して。今自作農資金のワクの問題で、来年度要求される数字をちょっと言われたようですけれども、私はこれは北海道では例の寒地畑作に対する特別資金ですか、このときに実はお約束をいたしているわけです。それはその資金と関連をして、自作農創設維持資金を出すことによって負債の整理をする、こういう約束をされているのですが、これだいぶウエートをその中にお持ちだろうと思いますが、どういうふうにお考えになっておりますか。
  138. 庄野五一郎

    説明員(庄野五一郎君) 寒冷地の畑作振興の問題で、この春でございましたか、自作農資金等についてもワクの拡大ということと、もう一つ一戸当りの融資ワクの問題をさらに検討して広げるというような御要望が強くありましたこと、承知しております。で、とりあえず三十四年度につきましは、北海道庁とも打ち合せまして、どの程度見るかということについては、今北海道庁と再三資料を突き合せながら検討中でございまして、先ほど申しました、ことしの保留額がまだ二十二億円ございますが、災害等もございますし、この間は北海道のそういう負債整理の借りかえ、これも当然自作農資金として、農地を手放さなければ返還できないというような要件を必要とするわけでございますが、そういう要件に当てはまったもので、どの程度いくかということは、今詰めております。来年の要求については、まだ一戸当りの融資ワクの問題というのも、検討はいたしておりますが、先ほど申しました百五十億円見当というのは、現状において大体考えられるものがそのくらいだ、こういうことを申し上げた次第でございます。なお、一戸当りの融資ワクということについては、内地と北海道との関連もあって、いろいろ問題もございますので、検討中でございます。
  139. 堀本宜実

    委員長堀本宜実君) 本件は以上で終ります。本日は、これをもって散会いたします。    午後五時九分散会