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1959-09-30 第32回国会 参議院 商工委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年九月三十日(水曜日)    午前十時四十八分開会   ―――――――――――――   委員の異動 九月二日委員椿繁夫辞任につき、そ の補欠として吉田法晴君を議長におい て指名した。 九月七日委員宮澤喜一辞任につき、 その補欠として岸田幸雄君を議長にお いて指名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     山本 利壽君    理事            川上 為治君            斎藤  昇君            栗山 良夫君            大竹平八郎君    委員            井川 伊平君            上原 正吉君            岸田 幸雄君            小林 英三君            鈴木 万平君            高橋進太郎君            阿部 竹松君            岡  三郎君            近藤 信一君            島   清君            田畑 金光君            吉田 法晴君            奥 むめお君   事務局側    常任委員会専門    員       小田橋貞寿君   法制局側    法 制 局 長 斎藤 朔郎君   説明員    公正取引委員会    委員長     佐藤  基君    公正取引委員会    事務局長    坂根 哲夫君    通商産業省通商    局長      松尾泰一郎君    通商産業省公益    事業局長    小室 恒夫君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選派遣委員報告 ○経済の自立と発展に関する調査の件  (ガス料金に関する件)  (新聞購読料値上げ問題に関する  件)  (沖繩における自由貿易港の設定に  関する件)   ―――――――――――――
  2. 山本利壽

    委員長山本利壽君) ただいまより委員会を開会いたします。  まず、委員長及び理事打合会において協議の結果を御報告いたします。  本日はまず理事補欠互選派遣委員報告、次いでガス料金値上げ問題、第十五号台風に関する災害状況に関連しての物価対策沖繩自由港問題、原子炉問題等について順次質疑を行うことといたしました。   ―――――――――――――
  3. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 次に、委員の変更について御報告いたします。  去る九月二日椿繁夫君が辞任され吉田法晴君が選任されました。また七日宮澤喜一君が辞任され岸田幸雄君が選任されました。   ―――――――――――――
  4. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 次に、理事補欠互選についてお諮りいたします。  理事であった上原正吉君が決算委員長に就任され、理事辞任いたされましたので、欠員となった理事補欠互選を行いたいと存じます。  つきましては互選は先例により委員長において指名することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 御異議ないと認めます。つきましては理事斎藤昇君を指名いたします   ―――――――――――――
  6. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 御異議ないと認めます。つきましては理事斎藤昇君を指名いたします
  7. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 次に、過般東北班及び中部北陸班の二班に分け、委員派遣を行いました。この際、派遣委員より報告をお願いいたします。東北班井川伊平君。
  8. 井川伊平

    井川伊平君 東北班について申し上げます。  東北班川上委員近藤委員、それに私の三人で八月十一日から五日間にわたって奥只見電源開発見附新潟秋田石油資源さく現場視察して参りました。  報告の詳細は速記録末尾に掲載させていただくことを委員長にお願いいたしまして、ここではその間の感想を述べまして報告にかえる次第であります。  まず、奥只見から申し上げますと、ここにできます奥只見発電所は、三十六万キロワットの完全地下式でありますが、すでに発電機据付工事にかかっており、ダムのコンクリート打ち込みも三分の一程度進み、来年十一月には一部の発電開始、三十七年には完成するとのことで、三十二年五月に木工事に着手してから順調に工事が進んでいるようでしたが、ただこの地点わが国でも最大積雪地であるため、工事は一月から三月中までは中止して、除雪を初め、施設維持等越冬作業をやらなければならないという余分の仕事があって、その労苦は大へんなものであったと思われます。また工事規模も大きいので、その資材も膨大となり、そのために専用のトンネル道路ができていましたが、そのトンネル道路二十二キロメートル中約十八キロメートルもあり、費用は三十八億を投じたと言われますが、りっぱな道路で、電源開発のためにこれだけの道路が必要なものかどうかと思われないでもありませんでした。しかし膨大な資材重量物を運びまた資材運搬の時間の短縮のために現場の地形や気象を考慮して作られたもので、将来の利用も考え合わせれば必要やむを得ないものかと察せられました。  次に、石油開発につきましては、見附新潟秋田付近油田秋田では海洋掘さく現場を天候の都合で海岸から遠望して参りましたが、探鉱技術の進歩のせいか、総じて予想していたよりも良好の成績ではないかと思われました。見附鉱場は三十三年以来八号井までの掘さくを実施しており、多量のガス及び揮発油を産出していました。当時九号井を掘さく中で、大規模構造性ガス層を発見して仕上け試掘中でしたが、これは相当有望のようで、期待されていました。さらに四坑の掘さく計画中とのことでしたが、これらのガス供給先を探すのに努力しており、現に見附市内工場供給しているが、さらに栃尾、長岡、三条を初め、燕、新潟にまで供給できるようにしたいという希望を持っており、それがための供給施設資金援助を強く要望しておりました。新潟におきましては、天然ガス利用によるガス化学発展が著しく、ためにガス採取も増大して、その需要は大なるものがあるのでありますが、何分にも地盤沈下の問題とからみ合い、天然ガス採取制限をせざるを得ない状況のため、将来性のあるガス化学工業発展地盤沈下防止とのかね合いで、天然ガス業者ガス化学業者被害者及びガス関係従業員とも、これが問題に苦慮している模様が目に見えるのであります。しかし、地盤沈下原因が果して天然ガス採取最大原因があるかどうか、業者間にはいまだ疑問視されており、長期間にわたって、その原因を明確にして、その対策を講ずるようにとの要望もありました。新潟地区ガス化学工業発展期待を抱いたとたんに、このような問題で発展の道を閉ざされることになれば、経済的にも大きな打撃であり、今後の措置は十分に研究した上で決定すべきではなかろうかと思われます。秋田におきましても、試掘は着々進んでおり、新しい油田期待もある等、新潟のように地盤沈下の問題もないので、今後の石油化学工場の誘致に努めておるようでした。なかんずく海底油田試掘には資金と掘さくの困難が並み大ていでないと想像されますが、これが成功の暁には新しく海洋への開発の足がかりともなり、わが国資源開発の一大収獲でもあって、石油資源開発五カ年計画遂行に資すること大なるものと期待すべきであろうと思われます。  全体を通じて新潟地盤沈下の問題はありますが、現段階では試掘成果は着々と実効をあげて、所期の目的達成には、今後の努力次第でさほどの開きは生じないのではないかと思われました。しかし、石油資源開発は、資金を要するだけでなく、その成果も直ちに現われるものではないので、長い目で見守ってやる必要があろうと思われます。  以上が東北班視察後の感想でありますが、最後に、われわれの視察に当って、種々御便宜を与えて下さいました現地の関係者の方々に、この席をかりまして厚くお礼を申し上げまして報告を終ります。
  9. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 次に、中部北陸班大竹平八郎君。
  10. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 まず中部班から申し上げます。  派遣委員栗山理事、鮎川、奥両委員、それに私の四名で、期間は、七月二十七日より三十一日まででございました。  視察個所日程順に申し上げますと、関西電力黒部川第四水力発電所建設現場。高山市でいすなどの製造をしておりまする飛騨産業春慶塗り松沢漆器店電源開発御母衣発電所建設現場。関市のフェザー安全剃刀会社愛知用水公団の兼見トンネル建設現場中部電力新名古屋火力発電所でございます。  視察個所の実情の詳細につきましては、別に報告書を用意してございますので、これを会議録末尾に掲載していただくことに委員長にお願いいたしまして、ここでは簡単に、特に感じましたことを申し述べてみたいと思うのであります。  今回の委員派遣は、その目的にもありますように、電源開発事情調査が主でございまして、御承知のように、私どもの参りました黒部第四及び御母衣は、わが国の代表的な水力電源開発工事でありまして、今やダム及び発電所工事最盛期を迎えております。  黒部第四は、北アルプスの峻峰立山連峰を縦横にくり抜いて、人跡未踏黒部秘境に高さ百八十六メートル、堤長五百二十六メートルに及ぶ世界第二のアーチ・ダムを作り、最大出力二十五万八千キロワットの発電所建設するものであります。従いまして、その工事の困難にして規模の雄大なることは、一目瞭然であり、いまだ日本電源開発史上例を見ないところであります。これを一事業会社が単独に着手いたしましたことは、まことに英断ともいうべく、幸いにいたしまして、総工事費約四百億円のうち、世銀より約百三十億円の借款が成立したのでありますが、政府といたしましては、その他に財政投融資のワクを増加するとか、低利な資金を獲得できる道を開いてやるべきであると思われます。電源開発に伴う資本費増加のはね返りを料金面に反映させることは、需用者はもちろんのこと、電力会社自身も好まないことであります。なお、黒部峡谷は、国立公園のため、種々その方面の関係者と問題があったのであります。しかし、今後は、自然の美と人工の美を調和させ、交通路開発ができるので、この地域観光地として発展することでしょうが、そのためには、地元の富山県なり、厚生省なりが、積極的に会社側と緊密な協力体制を整える必要があるのではないかと思いました。その他、労務管理災害防止について関西電力、間組、熊谷組等、おのおの懸命に努力をいたしておりますが、何しろ場所場所だけに、娯楽設備も十分にないので、関係者はこの面にも相当気を使っておるようでありました。  次に、御母衣は、庄川水系合掌作りで有名な飛騨の白川村に、最大出力二十一万五千キロワットの発電所建設するものでありますが、ここでは、わが国でも電力会社関係ダムとしては唯一にして最大ロックフィルダム建設中であります。私どもの参りましたときには、六十メートルほど土砂と岩石が積み上げられ、底面積が縦五百六十メートル、横七百二十メートルもあるので、あたかも庄川の中に小山を造成しているような壮大な景観でした。しかし、発電所からの放水路工事が、今までに二度も落盤事故を起し、幸いにして二度とも全員つつがなく救助されたとはいえ、まだ危険を蔵しているようであります。電発側としても、細心の注意と周到な準備をもって工事を行なっておるようでありますが、監督官庁においても十分な考慮が必要であろうと思います。補償については、この地点が当初より問題が多かった所でありますが、私どもの参りましたころは、約七〇%処理を終り、あとも大体順調にいく見通しであります。この点、電発側はもちろん、通産省においても最後まで円滑に処理できるよう、行政指導を要望する次第であります。  次に、新名古屋火力でありますが、ここは予定出力八十万キロワットの大容量発電所で、私どもの参りましたときには、第一号機十五万六千キロワットがすでに営業運転を行い、第二号機二十二万キロワットが本年十二月運転を目途として発電機等の据えつけ工事中でした。今後二十二万キロワットの発電機二基を増設する予定でございます。第一号機は米国のG・E社より輸入されたものでありますが、最新鋭火力のため、運転にきわめて高度の技術を要するようでございます。しかし、燃料節約上非常に有利なので、今後の増設機も、この構造のものを採用し、特に三号機、四号機はすべて国産でまかないたいとの意向でありました。なお、燃料対策について十分国会で検討されたいとのことでございました。  次に、愛知用水公団兼山取り入れ口及び兼見トンネルでございますが、私ども参りましたときには、兼見トンネルの方は、一部を残し、大部分コンクリート巻き立ても終っておりましたが、取り入れ口工事は、木曾川の水利用について関西電力との間にいまだ交渉すべき点が残っておるため、あまり進捗はしておりませんでした。しかし、最近の話ではその解決もつき、貫通したとのことでございます。  フェザー安全剃刀工場は、鋼材処理から包装に至るまで、大部分がオートメーション化され、飛騨産業は、その製品の八割五分が輸出用であり、松沢漆器店は手工業的でありますが、美術品的な持ち味をもって、それぞれ当該業界でも代表的であるとともに、わが国特有郷土産業として今後大いに育成すべきであると痛感をいたしました。  最後に、今回の視察旅行感じたことでありますが、わが国観光日本を喧伝しながら、外国人観光路線に当る地域に、しかも、観光シーズン中、配線される車両がきわめて貧弱なものが多い事実にかんがみましてたといローカル線でありましても、優良な車両を配車するよう、運輸省及び国鉄当局に要望しておきたいと存じます。  以上で報告にかえて感想を終りますが、この委員派遣日程の円滑なる遂行に御協力下さいました関係会社通産省当局高山市等に対し、この席を借りまして厚くお礼を申し上げる次第であります。  なお、今回の第十五号台風によりまして、私どもの参りました新名古屋火力発電所も相当な被害を受けたようでございますが、この機会に、被害地全体の復旧と並んで一日も早く回復されることを祈る次第でございます。
  11. 山本利壽

    委員長山本利壽君) ただいま派遣委員発言中にありました資料の件につきましては、委員長において会議録に掲載するよういたしますから御了承を願います。
  12. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 次に、ガス料金値上げ問題の件を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  13. 奥むめお

    奥むめお君 まず委員長にお伺いいたしますが、どなたが来ていらっしゃいますか。――だれが来ていらっしゃるのですか。
  14. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 公益事業局長でございます。
  15. 奥むめお

    奥むめお君 ガス料金値上げ申請が行われているようでございますが、私はその概要と、そうしてあなたの御見解を伺いたい。
  16. 小室恒夫

    説明員小室恒夫君) 九月の十一日付でもって、東京瓦斯大阪瓦斯東邦瓦斯、これは名古屋でございますが、三社から――いわゆる大手三社からガス料金改訂申請を受けつけたわけでございます。  まず最初に、申請の主たる内容を申しますと、東京瓦斯の場合は、現行料金十五円七十七銭に対して、三円上げの十八円七十七銭というものを平均単価として改訂申請しております。値上げ率は一九%。それからまた、大阪瓦斯現行十六円十二銭に対して三円八銭上げの十九円二十銭、値上率は一九・一%。それから東邦瓦斯現行十六円三十八銭に対しまして三円二十四銭上げの十九円六十二銭、値上率はやはり十九・八%。これが大部分を占めましたものの本社料金でありまして、三社とも軌を一にして平均単価では一九%台の値上げ申請してきております。どうしてこのような大手三社がこぞって値上げ申請して参ったかという事情を簡単に御説明申し上げます。  ガス料金昭和二十七年の十月以来七年目の料金改訂でございます。これはその間電気料金の方は二十八年、二十九年にも一斉値上げがございました。またその他の各種の値上げがあったのは御承知通りであります。かなり間をおいての値上げでありますが、その値上げを必要ならしめた最大事情は、いわゆる資本費増加でありまして、これは減価償却費とか支払利息、配当、それから租税課金というようなものをまとめてわれわれ資本費と称しておりますが、資本費増嵩というものが料金改訂を必要ならしめたゆえんでありますけれども、その点をさらに砕いて申しますと、大手三社は昭和二十八年以来第一次都市ガス施設拡充五カ年計画というものをやっております。またそれに引き続きまして昭和三十三年から第二次五カ年計画というものをやっておりまして、非常な勢いで都市ガス供給区域を拡張し、また供給区域内における新規需要家に対する供給をできるだけ完全に行なうという方向でやって参りました。そのために製造設備自体も新しく作りますし、また供給のための導管あるいはガスタンクというようなものも新設いたして参りました。東京の例で申しますと、豊州にできた新しいガス工場、こういうようなものが新しい建設の重点になったわけでございます。そういうふうになりました結果といたしまして、需要家の戸数は三社で昭和二十七年末に百五十五万戸であったものが、昭和三十三年末に二百七十五万戸に伸びております。八割近くでございます。
  17. 奥むめお

    奥むめお君 ちょっとお話し中失礼でございますが、資料をお持ちでございますか、各委員にお配りいただく資料。それはその資料に出ているかどうか――出ていないですか。
  18. 小室恒夫

    説明員小室恒夫君) ある程度出ております。
  19. 奥むめお

    奥むめお君 資料があるものは資料で……。きようはお持ちでございませんか。
  20. 小室恒夫

    説明員小室恒夫君) きようは必要な部数を持って参りませんでしたので、取り寄せて……。
  21. 奥むめお

    奥むめお君 午後までには出ますか。
  22. 小室恒夫

    説明員小室恒夫君) 出ると思います。
  23. 奥むめお

    奥むめお君 ではそういうこまかい数字のことは省きまして、時間が惜しいですから。まずあなたの方の態度、どういうふうな御見解でございましょうか。
  24. 小室恒夫

    説明員小室恒夫君) ただいま申しましたような拡充計画に伴いまして資本費が非常にふえておるということは事実でございます。で、値上げの幅の大部分、あるいはそれを越えている部分資本費増加でございまして、むしろ石炭価格が下ったとか、その他の事情で若干値上げの必要を相殺しているような面もありまして、その結果一九%台の値上げ申請してきたというような一応の計算になっておるわけでございます。大勢として、値上げ申請をしてきたということには理由があると思いますが、私どもとしては申請を現在受け付けて審査を始めておる段階でありますので、どの程度値上げを妥当と認むべきかという結論にはまだ達しておりません。また、これはむろん家計費に相当な影響のあることでございますから、ガス会社の経理ということのほかに、そういう影響のこともむろん考えなければなりませんし、またガス会社自体企業合理化をやる、あるいは仕事のやり方について改善すべき点もいろいろあると思いますが、改訂機会に十分そういう点についてはっきりした線を出さなければならぬというふうに考えております。まだ、どういう見解であるかということを公式に申し上げるような時期にはきておりません。ただし、特にお尋ねがあればまたお答えいたします。
  25. 奥むめお

    奥むめお君 公聴会をいずれお開きになると思いますけれども最後におきめになるのはおよそいつごろになるのですか、値上げをしないとか値上げするとかいうことは。
  26. 小室恒夫

    説明員小室恒夫君) これはもう少し審査が進んで参りませんと申し上げられないと思います。また、政治的な判断ということもあると思いますから、事務当局として申し上げるべきことでないかもしれませんが、政治的な判断をまじえるにしても、もう少し時間をかしていただかないと、いつごろになるということは申し上げられないと思います。
  27. 奥むめお

    奥むめお君 けさの新聞経企長官の談話が出ておりましたのとちょっと食い違っております。それは、経企長官は今の物価をずっと安定しながら景気が上昇していくようになるか、あるいは物価が上っていくかという境目にあるから、そういう公定料金値上げというものは非常に慎重にしなければならない。そうして、そういうふうな意味のことを経企長官がきのうラジオでもおっしゃっておりましたし、新聞にも出ておりました。私どもから言いますると、このごろ次々と独占価格値上げになっているのですね、御承知通り放送料も上ったし、国鉄、バスも上ったし、それからちょっと関係が違うとしても新聞代等も上ったし、今度、ガス電気の三割頭打ちがなくなろうとしているし、こういうふうなことは非常に国民に心理的な刺激が大きいですね、非常に大きいと思うのですね。そして今までからの経験を見ましても、公定料金独占価格値上げというものは必ず諸物価値上げを伴っているわけですね。役所が値上げの進行をしていなさるという感じがあると思うのです。ですからこの際ガス代上げるということをぜひ押えていただきたい。これは私ども全体の家庭の消費からいいましても、また物価問題に非常に関心を持つ者からいいましても、そんなに値上げ理由はあなたがおっしゃるように妥当と認められるという筋ではないと思うのでございますけれども、これを値上げしなければならぬというお見込みで今見ていらっしゃるとおっしゃいましたですね。
  28. 小室恒夫

    説明員小室恒夫君) 本件の料金改訂申請はあらゆる角度から慎重に検討しなければならぬということは当然でございまして、企画庁長官の言われた御趣旨もむろんよくわかるわけでございますが、私ども料金の問題については、建前としては原価主義でもって料金を算定するということが公益事業料金についての建前になっておりまするし、また料金改訂申請してきた会社側理由というものは、理由がないというわけにはいかぬということをさっき申し上げた。むろんまだ細目にわたっての審査は進んでおりませんから、どの程度の値上けが必要になるということは軽々には申し上げられません。ただ政治的配慮は別といたしましてむちゃな値上げ申請は認めるというふうには考えていないということだけを申し上げておきます。
  29. 奥むめお

    奥むめお君 こういうふうに考えられませんか。どうも独占的な料金とか価格というものはすぐ消費者におっかぶせて値上げしようとするのですね。たとえば電話でも、今度電話を取ろうと思えば十五万円の債券を買わなきゃならぬということになりそうですね。まあなるかならぬか知らぬが、そうすると、国鉄でも線が多くなったから値上げしなければならぬ、また、ガスが普及したから値上げしなければならぬ――これはいつでも公定料金の場合にいわれることです。今度は一般の営利団体からいいますと、電気洗濯機が非常にふえた、あるいは繊維が非常にふえた、大へん売れ行きが盛んになった、需要者もふえたということになって、これは設備をよけいしなければならぬとか何とかということを、物価にかけないですね。消費者物価にかけないで、その企業努力で、むしろ、よけい売れれば売れるほど値が下るのだけれども公定料金だけは、いつでもふえることにおいて値を上げている。これはどうなんです。私ども消費者から言えば、独占の上にあぐらをかいている企業というものは、いつでも消費者にばかりおっかぶせていくのですね。これから伸ばそう、今まで現にこんなに伸びたのだ、だから値を上げねばならぬ――これは非常に違うのじゃないでしょうか。
  30. 小室恒夫

    説明員小室恒夫君) そういう角度からごらんになるのも、感じとしてはわかるのでございますけれども、ただ、ガス料金電気料金のごときものは、独占企業であるために料金をずっと押えてきたという面も実はあるわけでございまして、三年ぐらい前に一ぺん料金改訂の問題が持ち上りかけたようなこともございますけれども、また、今回の値上げ申請も、実は昨年の暮れごろちょっと表面化しかけたこともあるのでございますけれども、これもずっと押えてきた――自由価格でないから押えられてきたという面もあります。また、一般の産業でございますと、操業率が上って増産になりますとコストが下るというようなことで、だんだん安くなっていくという面もあるのでありますけれども電気とかガスは、供給能力の方が非常に不足しておる、あるいは供給のために必要な導管が不足しておるというようなことのために、非常に多額な固定設備を次々にやっていかなければならぬような関係になっております。操業率が上っていくためのコスト低下というような段階があまりない。そういうことで、ほかのものに比べて違った様相を呈している。過去七年間全然値上げしなかったことも、まあ過去の例を申すのもなんですけれども、他の独占事業の料金にしても、あるいは一般物価にしても、非常に高低がございましたけれども、その間全然同じ値段でやってきたので、やむを得ない点もあるのじゃないかと存じております。
  31. 奥むめお

    奥むめお君 今、三年前に値上げ申請されていたけれども今までずっと押えてきたとおっしゃるのですが、そういう、押えていらっしゃる政府として、ガス事業に対して、何か消費者におっかぶせていくほかに方法が私はあるはずだと思うのですね。ことに、ガス事業なんというものは、日本全国からいえばパーセンテージで一七%です。か、非常に少いですね、利用している人が。これはもっと利用しなければ、木炭を使ったり何かしたら、なお困るわけです。森林資源の問題からいっても非常に困るわけですね。そうすると、かりにあなた方の方が、上げるのが当然だったのだけれども値を押えたのだとおっしゃるのを、そのままのみ込むとしても、あなた方の方でどういう努力をなすったか。ガスという独占事業に対してどういうことをなすったか。今度値上げ申請が出てきたので、今度はどういう手を打とうとしていらっしゃるか。この二つをあわせて伺います。
  32. 小室恒夫

    説明員小室恒夫君) 従来ガス事業に対しては、電気事業に比べまして政府の優遇という点が薄かったということは認めざるを得ないと思います。開銀の融資なども本年度から特別にガス事業に対するワクをとりまして、重点的な融資対象の一つにいたしているわけであります。それまでは特別なワクもなく、比較的少額の融資にとどまっている、またガスは先ほど申したような固定資産が非常に多いのでありまして固定資産に対する減税、これは地方税の領域であります。これも私どもとしては電気事業並みに考えていただきたいという強い希望を前から持っているのでありますが、なかなか地方財政等の事情もあってまだ実現しておりません。今年はぜひ実現したいと思っております。しかし正直なところを申しますと、開銀の融資にいたしましても、利率が九%ぐらい、民間の銀行の利子とそう変らないような実情でもあります。その辺よほど優遇措置を講じましても、料金原価に対する影響という点からいうと、そう大きなことは期待できないというのが残念ながら現状でございます。
  33. 奥むめお

    奥むめお君 私自身は資料を持っているのですけれども、これはガス会社から取り寄せた資料を持っております。それをほかの皆さんの方にも資料を配っていただいて、それから私、数字についてのこまかい質問をしたいと思うのですけれども、たとえば今度の半期の決算書を見ますと、利益率が一二%なんぼと出ておりましたね、正確な数字はこっちにありますが、それで株の配当は一割二分でございますね、そうしてガス会社というのは、民間の事業としては非常に人件費がすぐれていいと、これは巷間の評判ですね、こういうふうな一割二分の配当をして人件費も非常にいい、そうして独占である、それで今度料金値上げをするという問題が出てきた、どういうことになりますか。
  34. 小室恒夫

    説明員小室恒夫君) ガス会社は先ほど申したように、新建設をやります関係で、相当大幅な増資を次々にやってきております。東京瓦斯で言えば百五十億以上の資本金に現在なっておりますが、将来とも増資を続けていかなければならない。そういう場合に資本調達を可能ならしめる配当率を維持するということが一方では必要になるだろうと思います。現在の上場株の配当率の平均等から見ましてそう高い率だとは――一割二分がそう高いとは思いませんが、同時にむろん成績の悪い会社、無配の会社どもあります。電力会社も今期から一割に大体配当を下げるというような動きもありますが、この点はもう少しあらゆる角度から慎重に検討してみたいというふうに考えております。  それから人件費の点でありますが、確かに東京瓦斯あたりは年齢の構成も高いのですが、あるいは東京に住んでいる人が非常に多いとか、そういう若干の特殊性はありますが、一流会社でも相当のところに位置しているということは事実でございます。ただまあなかなか給料というか労賃というか、そういう関係はかなり昔からの伝統的な沿革があります。こういうのをどういうふうに考えていくか、むろん厳重な査定を全体としては加えて参りますが、企業合理化なり企業努力に待つという部分をどこに重点を置くかということは慎重に考えていきたいと思っております。
  35. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 関連してお尋ねいたします。  いずれこまかい資料が出ると思いますが、そのときにゆっくりお尋ねすることにいたして一点伺いたいのでありますが、今の公益事業局長の御答弁の中に、従来もしばしば値上げの要求があった、それをむしろ押えていたというような意味にとれた説明があったのでありますが、これは昭和二十七年にたしか現在の料金というものが設定されたと思うのでありますが、それから今回に至りますまで、何回くらい値上げについて申請があり、そうしてそれを却下をしたか、そのいきさつを一つ承わりたい。
  36. 小室恒夫

    説明員小室恒夫君) 値上げ申請はして参りませんでした。これはまあ値上げ申請をして却下されるというような情勢、全然問題にされないというような情勢であると、会社側もいたずらに世を騒がすだけということになりますので、自然引き下ったという形になっております。
  37. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 そうすると、今度の正式申請というものを一応とにかく受け入れた、そうして検討中だということは、客観的に言うならば、ガス料金はある程度まで値上げをすることはやむを得ないだろう、こういう観点に立って今審議中である、こう解釈していいわけですか。
  38. 小室恒夫

    説明員小室恒夫君) 申請をしてくるのはやむを得ない事情があるというふうに私どもは認めて受け付けたわけであります。
  39. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 それで、これは三大メーカーというものはあるのですが、これは長くなりますから、三大メーカーについてお話を承わらなくてもよろしいのですが、たとえばわれわれに一番関係のある東京瓦斯、結局問題は、資本費というものがだんだん重なってきたということが大きな今度の値上げに対する要望になってきたんだ、これは大体わかるのであります。配当の問題とか、あるいは減価償却の問題とか、あるいはまた支払い利子の問題とか、こういうことがだんだんはね返ってきた、それからことに設備資金なんかも相当大幅のものを入れてあるということは、これはわかるのです。さらに副産物としてのコークスが値下げになってきた、こういう点もわかるのでありますが、そういうことで一つ東京瓦斯の実態を、あまりこまかいものは必要ないのでありますが、いずれ参考資料は出ると思いますけれども、ちょうどだいぶ委員の方々もそろっておりますから、まず参考に東京瓦斯の実態をあなたから御報告願いたいと思います。こまかい点は資料でいいです。
  40. 小室恒夫

    説明員小室恒夫君) いかがでございましょうか、後刻三社まとめた大ざっぱな説明と、それからまた三社そろえた数字をお出ししたときに御説明することに願ったらいかがかと思いますが……。
  41. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 それはそれでけっこうなんですが、概略でもわかりませんか、東京瓦斯の営業実態くらい大体のことはわかりませんか。
  42. 小室恒夫

    説明員小室恒夫君) まあ大ざっぱに申し上げまして、先ほど現行料金が十五円七十七銭、それに対して十八円七十七銭の申請料金――三円の差になっているわけです。資本費の高騰だけで三円八十銭くらいの計算になっております。と申すことは、石炭費その他原材料費等にそれを相殺している面があるということであります。  それから需要家東京瓦斯について幾らふえたとか、あるいは戸当りの需要がどうなったということを御説明いたしましょうか……。たとえば、おもな点を申しますと、製造能力でありますが、一日の製造能力、昭和二十八年には三百五十三万立米、それが昭和三十四年には七百四十九万立米、ちょうど二倍一分になっております。それから需要家の戸数で申しますと、二十八年に八十五万八千戸であったものが百五十九万戸、これは八割六分増であります。普及率から申しますと、二十八年に東京瓦斯の管内で四七・六%の普及率であったものが六割二分の普及率になっております。それからガスの販売量、これは年間八億三千五百万立米――昭和二十八年、であったものが十六億五千九百万立米、ほとんど二倍、一九九%になっております。資本金はその間に四十一億から百五十六億、ほぼ四倍になっております。それから固定資産の年末の簿価、昭和二十八年に百二十三億であったものが四百二十億、この間相当償却はやっておりますが、それでなおかつ四百二十億、三倍半ぐらいになっておる、東京瓦斯はこういう状況でございます。簡単でございますが……。
  43. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 それから金融関係ですが、この投融資並びに市中銀行の割合はどんな状況になっておりますか。
  44. 小室恒夫

    説明員小室恒夫君) こまかい数字はあとで申し上げますが、財政投融資はもうほとんどごくわずかでございます。三十四年度からガス会社全体に対して十五億の開銀融資を推薦しておりますが、それまでは大体年間五億前後ぐらいのものでございます。
  45. 奥むめお

    奥むめお君 資料が出ましてからもう一度質問を重ねたいと思います。ガス会社からも来てもらって質問を重ねたいと思いますのでこれは保留にしたいと思いますが、ただ一つ局長にお伺いしたいのは、ガス税でございますね、今度値上げになりますと、エスカレーターに乗っているようにまたガス税が上っていくわけですね。これはガス会社が計算する以上に一割出てくるわけですね。これの問題をお考えになっていませんですか。非常にこれは不合理な、あれは二十三年でございますか、戦後のやむを得ない措置としてとられた、あれは記録にあったと思いますけれどもガス税が何にも、たとえば東京都へ入ります集金もしないし、そうしてだれも知らないのに税金の形でとられている、この不合理なガス税というものを、今値上げが出てきた際に御検討していらっしゃいますかどうかということをお伺いしたい。
  46. 小室恒夫

    説明員小室恒夫君) 私ども電気ガス税、特に電灯の関係とそれからガス関係は一般家庭の必需品にかかっていることでありますので、いい税であるとは考えておりません。従来からも電気ガス税の廃止なり軽減なり希望してきております。特に料金改訂の際でもございまして、何らかの形で減税を考えたいと思っておるのであります。ただまあなかなか地方税の財源として大きな比重を占めておりますから、現在の地方財政の関係で今日まででも電気ガス税の軽減の問題はなかなか難航して実行に移らなかった問題であります。従来の税収を確保しながら、従ってまた地方税の財源としては従来通りのものを確保しながら、増税にならぬというか、増収にならぬような形を何とか考えてみたいというふうに思っておりますが、まだ検討中であります。それ以上はちょっと申し上げられません。
  47. 山本利壽

    委員長山本利壽君) この問題につきましてはなお質疑もあるようでございますから、本日はこの程度にいたします。   ―――――――――――――
  48. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 次に新聞料金値上げ問題の件を議題といたします。  質疑のある方は御発言を願います。
  49. 奥むめお

    奥むめお君 公取の委員長に伺いますが、新聞値上げ問題は非常に変な結末をつけられまして、非常に世論をわかせていると思います。ただこれは事新聞問題であるだけに、新聞紙上に発表されませんから、週刊誌なり月刊誌が取り扱っておる程度にすぎませんので、一般に広がっておりませんですけれども独占禁止の守り番人としての公正取引委員会の今度の新聞値上げ問題に対する結末のつけ方は非常に不明朗だったと思うのでございます。それを今から伺ったところでしょうがございませんが、この前の委員会で、八月十日の委員会で、坂根事務局長は、今は審査の進行中だから発言ができないとおっしゃいましたが、もう事は済んだんですけれども、いろいろなことを――たとえば委員会でどういうふうな話の結果こういうふうにきまったとか、取り上げないことにきまったとか、審決をしないことにきまったというふうな経過ですね。それからその中には少数意見があったと聞いておりますけれども、どういう御意見であったかというふうなことをここで伺いたいと思います。私は憲法の定める国会の審議権によってこれを伺っております。坂根事務局長がそうおっしゃったことは委員長もあのときにおいでになったからお聞きになっておりましたね……、委員長御病気だったですね、それではまず坂根さんにお伺いします。
  50. 坂根哲夫

    説明員(坂根哲夫君) 審査中でこまかい内容をお話申し上げられないということを申し上げたと私も記憶しております。その八月十三日の午前に決定いたしました委員会の決定についてその内容はどうであるかということをその前のこの委員会で申し上げるように私は申しておらなかったわけでございまして、あくまで独占禁止法上の建前で、三十八条なり三十九条――第三十八条は公正取引委員会の事件についての事実の有無または法令の適用について意見を外部に発表してはならない。あるいは三十九条は、公正取引委員会委員及び職員は、その職務の上で知った秘密を外に漏してはならないという規定がございましたから、そのとききまりましたら御説明申し上げるとは私は申しておりません。従って委員会の内容その他については私は申し上げる自由を持っておらない、こう答えざるを得ないと思います。
  51. 奥むめお

    奥むめお君 委員会の内容はともかく、今はあなたはそう言わなかったから、ここで言えないと、こうおっしゃるのですね。それじゃ国会があなたにどういういきさつでそうきまったかということを明白にここに報告して下さいと今こう言っているんです。それでもあなたは前言……。私はあなたがおっしゃったとかおっしゃらなかったとか全然考えておりません。
  52. 坂根哲夫

    説明員(坂根哲夫君) 委員会の決定については私から申し上げますよりも、十三日の午前中に決定したことについて、委員長談が発表されておりますから、その委員長談について御審議を願いたいと、こう考えております。
  53. 奥むめお

    奥むめお君 それではもっとこまかくもう一度伺います。委員長に伺います。まあ消団連があなた方に申し立てをしまして、そうして調査が始まったとおっしゃいましたけれども、前に報告を受けておりますけれども、公取がその調査をなさった証拠、あるいは臨検をなさったその証拠あるいはいろいろ新聞社の責任者をお調べになったその経過あるいはそのときの記録あるいは新聞値上げについて二月以来各新聞社のいろいろしておりましたその会合の速記録、それから審査官の報告、こういうふうな書類を、事件があなた方の方から、これは取り上げないということになりまして、発表がもう済みました以上は、これを国会に対しての御報告を今要求しているんですが、いかがでございますか、私それを要求いたします。
  54. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) 私、ちょっとごあいさつしておきたいのですが、七月に公正取引委員会委員長になりました佐藤基であります。この委員会には初めて出席し、従って皆様に初めてお目にかかるわけでありますが、どうぞよろしくお願いいたします。  ただいまの御質問でありますが、委員会の行動につきましては、八月十三日に委員長談として発表いたしました。そのいきさつ等につきましての今御質問でありますが、坂根局長が今申しました通り、いわゆる独禁法におきまして、委員会の合議は公開しないとか、あるいはまた委員会で扱った業者の秘密を漏洩しちゃいかぬ、漏洩するというと、これに対しまして刑罰がある。あるいはまた委員長委員という者は、事件に関する個人的意見を述べちゃいかぬと、そういうふうな規定がありますので、今のお話でありますけれども委員会といたしましてはかんべん願いたい、こう思っております。
  55. 奥むめお

    奥むめお君 委員長に伺いたいのですけれども、私どもは佐藤委員長が公取の委員長におなりになることを、国会が承認してこれがきまったわけでございます。私たちその承認の場へ出ております。そうして私たちは、その新聞代の値上げ問題について、前の委員会でも、すでに審査が始まっているんだから、その調べたり、臨検したりあるいは責任者を呼んで話を聞いたりした事実、いろいろなものを報告してほしいと要求しましたが、今事件が調査の最中だからできないと言われました。今坂根さんの巧妙なる言い回しによりますと、報告しますとは言わなかったとおっしゃるのですけれども委員長、こういう場合に憲法に保障されている国会の権限においてこれを報告することを委員会でしなければならないとお考えになりませんか。またできないとお考えになりましょうか、できるとお考えになりますか、委員長の御見解をお伺いしたいと思います。非常に事は重大だと思いますので。
  56. 山本利壽

    委員長山本利壽君) お答えいたします。ただいま公取の委員長からも、その会議の内容については公表しないとか、それが漏れた場合には刑罰といったようなことの規定もあるようでございますから、軽々にこのことは私今即断いたしかねます。また後刻理事会でも開きまして、あるいは私としては、衆議院の方でもこの問題は取り上げられたようでございますから、研究いたしたいと存じます。
  57. 奥むめお

    奥むめお君 続けてそれでは御質問いたします。委員長の談話でございますが、委員長の談話によりますと……では委員長の談話を一ぺん読んで下さい。
  58. 坂根哲夫

    説明員(坂根哲夫君) 新聞購読料金に関する独占禁止法違反事件についての委員長談話。昭和三十四年八月十三日。  一、当委員会は四月七日全国消費者団体連絡会から、新聞購読料の一斉引上げ独占禁止法に違反するものであるとの申告を受けましたので、自来鋭意慎重に審査を進めて参りました。ところが本件が独占禁止法に違反するかどうかについて最も問題となる点は、一斉引上げが各新聞社間の拘束性のある申合せに基いて行なわれたものであるかどうかでありまして、当委員会はこの点に関して審判を開始するに足る十分な証拠があるか否かをあらゆる見地から検討したのでありますが、なお最終の結論に到達するに至っておりませんでした。然るところ最近に至り各新聞社から当委員会に対し、今回の新聞購読料改訂に際し独占禁止法違反の疑いを受けるにいたったことはまことに遺憾であります。各社とも今回改訂された購読料の維持について何ら他から拘束されるものでなく、また将来も購読料は常に各社が自主的に定める立場にあることを明らかにして疑惑をぬぐい去りたい旨の申し出がありました。  二、よって当委員会はこの申出についても十分検討を加えた結果、現在各社は相互に何ら拘束を受けておらず、従って独占禁止法違反の疑いはないものと認め、本件を審判手続に付することを取止めるのが相当であると決定いたしました。  三、なお、当委員会は今後新聞界で自由な競争が行われるものと期待するが、競争の行き過ぎによって新聞業における特定の不公正な取引方法に関する公取委告示に違反するなど不公正な取引方法が行われることがあれば、当委員会がこれを取締るのは当然のことであります。
  59. 奥むめお

    奥むめお君 この後段で述べております新聞の不公正な取引を取り締るということが書いてあります。これはどういう意味でございますか、委員長にお伺いいたします。
  60. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) これはかつて新聞のいわゆる不当競争がありまして、何というか、特定の購読者になべかまを配給するとかなんとかいうそういう事件があったそうであります。こういうふうな不公正な取引というものは独禁法としては禁止する趣旨でありますので、そういうことがあっちゃ困るというので、不公正な取引方法の指定が委員会の告示で出ておるわけであります。そこで今度新聞社はお互いに自由競争をやっていこうということに、当然のことでありますが、その自由競争いかんによっては、かつて問題になったようななべかまを景品につけるというような不当な競争が起つちゃ困る。そこでわれわれといたしましては、どこまでも公正な自由競争をしてくれ、不当な競争をしちや困るということをつけ加えて言ったわけであります。
  61. 奥むめお

    奥むめお君 なべかまのことをおっしゃいますけど、たとえば新聞取次店が三百三十円で配達したり、三百九十円で配達したり、三百五十円で配達したりする、こういうことはどういうふうにお考えになりますか。
  62. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) それは不公正な取引方法が指定してありますが、特定の地域とかあるいは特定人について、定価よりも安く売るということは不公正な取引方法ということに一応きまっておるわけであります。だから今行われておる事態がそれに該当するかしないか、またはかりに該当するとしても、いわゆる独禁法の趣旨から考えて、それが不当であるかということをさらに考え、いろいろな点から考えて不公正な取引方法ということなら、こちらは排除措置をとるということになるわけであります。
  63. 奥むめお

    奥むめお君 それでは非常にあいまいじゃありませんか。今現に行われておる新聞料金の三百三十円売り、三百五十円売り、三百九十円売りについて、これはその問題を将来含めているものだと思って読んでおりますが、いかがですか。
  64. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) 要するに、私の方としては、先ほど申しました通り、競争がひどくなるというと不当な競争が起りはしないか。この場合不当な競争、それがいわゆる幾ら激しい競争でも、自由競争ということならこれは何とも言えない。ただ不公正な自由競争ということは、この独禁法から見ても、これを排除すべき義務がわれわれの方はあるので、そこで今の問題が不公正な取引に当るか当らないかという問題であります。今の点は、もちろん実は若干申告もあるように聞いておりますが、それらの点を精細に今事務局において調査しております。その結果によって、われわれの委員会にかけることになりますが、まだ調査段階でありますので、値下げ問題ということがどういうふうに行われておるか、はっきり申しますならば、不公正な取引方法の指定に該当するのかしないのかという点を事務局で検討をしておる段階であります。その事務局の結論によりまして、われわれとしてこれを判断をするということになると思います。
  65. 奥むめお

    奥むめお君 委員長の談話を読みますと、とにかく拘束していない、だからこれは取り上げるに足らないということになっているんですね。それは結局、新聞代は三百九十円で一律に支払わねばならぬということではないんですわね、そうでしょう。三百九十円の値上げはもうどうでもいいのだ、三百九十円でなくてもいいということになるんじゃありませんか。そうしたらそれを三百三十円で売ろうと、三百五十円で売ろうと公取がなぜ関係するのですか。
  66. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) 新聞代金が幾らであるべきかといったような、そういう物価的見地からわれわれは言う権限といいますか、責任もないわけであります。それはもちろん消費者の利益をはかるという大きな目的はあります。目的はありますけれども、それは独禁法に認められた範囲においてわれわれは権限を発動するのであって、新聞が高かろう安かろうということは、個人としてあるいは消費者の立場から見ればこれは重大問題であります。しかし、その値上げということが独禁法との関係が起らなければ、公的立場において、私たちは何とも言えないというわけであります。従って、三百九十円がいいとも悪いとも申し上げかねるし、また三百三十円がいいとも悪いとも申し上げかねる、こういうわけであります。
  67. 奥むめお

    奥むめお君 これは新聞代の値上げ問題によってあなた方の発動が行われたわけなんですね。だから新聞代というものが、これはどうしたって主体になっているわけです。そうしてこれは拘束性がないというて、あなた方はこれを不問になさったわけです。そうしたら今度は、あなた方はそういうふうにして不問に付してしまったから、巷間みんなばらばらになったわけですね。これは別に公取でお調べになることも何にもないじゃないですか。三百三十円、三百六十円と、なぜ公取がそれに関係するのですか。調べなければならないのですか。
  68. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) 私の御質問に対する答えがあるいは悪かったかもしれませんが、幾らになろうがそれは私の知ったことではない。ただ値上げをする場合に関係者がいわゆる拘束性ある申し合せをしたという結果において値上げをする、これは独禁法に正面衝突する問題でありますから、これはやります。しかしながら値段が幾らかということは、われわれ委員会の立場としては何にも言えない。  そこで、ただ問題は、今お話しの定価というものをきめておく、その定価を特定の地域なり特定の人について割引するということは、一つの不公正な取引だということは、これに書いてある通りであります。だからそういうことについて問題があれば、われわれの方で調べざるを得ない、こういう趣旨で申し上げたのであります。
  69. 奥むめお

    奥むめお君 非常に詭弁で逃げていなさると思いますけれども、まあ公正取引委員会というものの、それじゃもう一ぺんあなたが委員長に就任なさいますときには、公正取引委員会というものは何をするところだと御理解になって、そうしてどういう決心でおつきになったんですかね、あらためてお伺いしたい。
  70. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) 今の私の言い方は詭弁とおっしゃるけれども、私はちっともそういう気持でなしに冷静に申し上げておるつもりなんですが、委員長としてどういう気持かと言われると、これはわれわれの方は、まあ裁判所的な機能もあるし、検察庁的な機能もあるが、それはいずれも法規によってしばられておるのでありまして、従ってわれわれの職務というものは独禁法の一条に書いてありますが、大きな目的はやはり消費者の利益とか中小企業者の利益、国民経済の民主的で健全な発達ということの促進を目的とする法律でありますからして、その趣旨で働いておるのであります。ただこの法の目的を達成するために、この法律に条件が書いてあるのであって、独占禁止であるとか不当な取引制限であるとか、不公正な取引方法を禁止するとか、事業の支配力の過度の集中を防止するとか、結合、協定等の方法による生産、販売、価格技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除するということが書いてあるのであります。その法の趣旨に従ってわれわれは活動しておる、活動しなければならぬ、こう思っております。
  71. 岡三郎

    ○岡三郎君 ちょっと関連して。  この前、私も質問したんだが、今新聞値上げについていわゆる事務当局がいろいろと調査せられた中で、埼玉新聞の社告ですね、あの問題が一応関心を持たれてそうしてあなたの方でも十分調査した際に、これに基くところのいろいろな資料が見つかった、こういうようなお話しがあったわけですが、埼玉新聞の社告に伴うああいう証拠物件、ああいうものをどういうふうに公取は解釈したのか、その経緯を説明してもらいたいと思います。
  72. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) 埼玉新聞の社告、そのわれわれの方に関係する要点は、ちょっと読んでみますと、このたび全国の諸新聞は一斉に購読料の改訂を行うことになりました。六社もやむを得ず四月一日から云々とこう書いてあります。この本社もやむを得ずということ、それから一斉に上げることになった、こういう点がわれわれの方として検討すべきことだと思います。そのわれわれの方で調べました結果は、これがどういう意味であるか、やはり新聞社としては自分だけが値上げをするということはやりにくい、そこで全国でみんなが上げるからおれも上げる、やむを得ず上げる、こういうだけの趣旨であって、それ以上これが新聞社のいわゆる拘束力ある共同行為の表現と考えるかどうか、これはわれわれの方としては必ずしもこれだけじゃ考えられない、こう思っておるわけであります。
  73. 岡三郎

    ○岡三郎君 ずいぶん新聞社の方に寛大な解釈で、やっぱりこの点については、そういうふうに簡単にそれを取り扱っておられるように今聞いたわけですが、新聞社の方自体はこれは自分の方で言いわけ的にこういう文句を使ったんだというふうに今言われておりまするが、実際にいって四大新聞ですか、三大新聞ですか、これはみんな同じように値上げしているわけです、事実が。事実がこれに伴っている。どういうふうに拘束性があるとかないとか、それは言いのがれで何とでもできますよ、実際問題として。ところが実際はみんな同じように、新聞社は同じように日曜版みたいな大して読みもしないようなものをくっつけておいて、そうして料金値上げしている。それで新聞社の方からは拘束性もないし、まあそういうふうなことも心配ないようにやるのだ、こういうふうにくると、被告の方から言ったことだけが取り上げられて、訴えている国民の方の立場の点を少くも公取がこれを取り上げておるというふうには考えられない。私はこれでは公取の精神というものを委員長が無視しておるということの奥委員のやっぱり発言、こういうものはやはりわれわれはそうだというふうに同意させるのです。つまりそれは埼玉新聞が一つの特例であって、こんなものは大したものじゃないのだ、こういう解釈、そういう精神の行き方で公取の運営が公正にできるかどうかということを心配するわけです、私たちは。だからそういう点について委員長の今のような態度ならば、これはどういう事案が起ってもあなたのような解釈が成り立つならば、成り立ちませんよ、巧妙な犯罪者はみんな公取から逃れていってしまうというように断言しても私は差しつかえないと思う。そういうふうな点で今の埼玉新聞に対する解明は、私としては遺憾ですが、これ以上委員長逃げないでしょうけれども、もう少し公取としての委員長の態度を厳正にしてもらいたいと思うのですがね、その点どうですか。
  74. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) 厳正にしてくれというお話でありますが、そういうお話がなくてもわれわれは職務の独立をもっておりますし、何人からも拘束を受けないで厳正にやっております。それでありまするからして今厳正であるということも、今被告と言われるが、被告の立場だけを考えるということは決してないのであって、委員長談にもあります通り、われわれの方としては十分調べたんだけれども、まあ黒と申しますか、審判を開始しこれを維持するだけの十分な証拠が見つからなかったという点が重点でありまして、それは証拠が見つかれば、何も相手はだれであろうが、ちっとも遠慮する必要はないので、それが公取の職務独立の本旨だと、まあこう思っておるわけであります。だからわれわれといたしましては、誠心誠意良心に従ってやったんであって一方の肩を持つとか他方の肩を持たぬとか、そういうような考えは持っておりません。
  75. 岡三郎

    ○岡三郎君 あなたは持っておらぬと言っても、われわれはそんな、水かけ論になるかもしれませんが、問題の焦点は埼玉新聞の一つの事例というものをあなた方は非常にこれを簡単に解釈しておられるという点にあると思う。事実上一斉に全国の新聞値上げしていることも事実なんですね。そうしてこれを拘束するとかしないとか言っても、事実上その負担が消費者にかかってきている。これは厳存しているわけです。それであのときの条件をずっとつまびらかにすれば、これは各社で話し合ったくらいのことは大体想像できるわけなんです。そういうような一切の問題についても少しもわれわれに知らしてくれない。こういうことで公取の条章をたてにして少しも国会に対してもはっきり内容的に聞きたい点があってもなかなか言えない、これは法文上逃げられておると思うのですが、そういうような点について、たとえばここの会議が秘密会を開いた場合において公取委員長はそういうものを説明してもらえますか、他にそういうふうなものの経緯が漏れないということになれば。
  76. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) 先ほど申します通り委員会の合議というものは公開しておりませんし、私どもは裁判所の関係の裁判所法等の規定を見ましても同じでありましてこういうふうな関係者の信用なり、あるいは利害関係の重要な問題でありますし、また公取委が将来仕事をしていく上に、公取委のやったことが外に出るということになると、秘密のことを言わなくなるし、われわれとしては仕事が非常にやりにくくなると考えております。こういう審議の内容につきましては秘密にしておきたいと思うのであります。
  77. 岡三郎

    ○岡三郎君 秘密にしておきたいということは、その条章からよくわかるのですがね。今、一つの希望意見を含めて言ったわけなんです。かりに皆の意見がまとまって、他に漏れないように、これを公開しないという形でやる場合においてどうか、こういう質問をしたのです。
  78. 小林英三

    ○小林英三君 今の点に関連しまして、公取委員長の御答弁を聞いていますと、とにかく新聞業者というものは強いもので、それで実際問題として全国の業者が一斉に値上げをしたということはわかっております。それから、今御質問のありました埼玉新聞社の社告の問題、これはその社告の文句の解釈はいろいろつくかもしれません。しかし、実際に全国一斉に値上げをしておるという事実がわかっておる。そうして、しかも埼玉新聞がああいう社告を出すということからみますと、委員長は証拠という問題で、審判開始の証拠というものは、これは証拠ということになりましたら、各社が一斉に値上げしようじゃないかという文書でも取りかわしたようなものでも発見されるというのが証拠なんですか。われわれが常識判断しますと、今の奥さんだとかその他の方の御質問が、これはどうも正しいように僕には考えられる。公取委員長の証拠という問題は、具体的に言うとどういうことなんでしょうかね。私ども常識判断ですけれども
  79. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) その点でありますが、われわれの方としても、とにかく全部とは申しませんが、大多数の新聞が一斉に値上げをしたという事実はあるのですね。しかしその前に、数社が寄り集まって話し合いをしたと推定される事実もある。そこで、その話し合いの結果、いわゆる拘束性ある申し合わせがあったかどうかという点が法律的に問題になる。そこで、その証拠があるかないかを一生懸命探したわけでありますが、少くとも各社が寄り集まって話し合いをしたのだけれども、その話し合いがまとまって、いわゆる共同認識といいますか、どうせ新聞社は競争がひどいのですから、甲社が上げようとする場合に、乙も丙も上げれば、自分も営業政策として上げる。しかしながら乙も丙もついてこないのに自分だけ上げるということは、なかなか営業政策上むずかしい。そこで、しょっちゅう競争相手の出方というものをいろいろの方法で探っていると考えられるわけです。それをたまたま寄り集まった際に、君はどうか、君はどうかといって聞いたら、皆もだいぶ経営が苦しいものでしょう、あるいはさらに積極的に内容を改善するために、上げたいという気持があった。そこでおそらく上ったのだろうと思いますが、その際の話し合いというものは、いわゆる共同認識と申しますか、刑法で申しますと、教唆の際の共犯関係が成立するかどうかという問題と以てくるわけなんです。ところが、共犯関係におきましては、共同認識があればいいので、人がどろぼうに入っている。おれもついて行ってやろうと言えば、次に入った人が、一緒にやろうという意思の連格がなくても共犯が成立する。共同行為になりますが、この独禁法におきましては、やはり共同認識だけで足りるかどうかという議論がありますけれども、われわれの見解としては、共同認識では足りない。意思連絡があって、一緒にやろう、そうしてしかも値段を維持していこうという、そういうふうな拘束性ある共同行為が存在しなければ独禁法の違反にならぬと考えております。そこで、今申します通り、一斉に上ったという事実はある。事実はあるけれども、その事実の裏づけと申しますか、共同認識をこして拘束性ある申し合せになっておるかなっておらぬかという問題でありまして、その証拠を探ぐることは、実はなかなか容易なことではないので、事務局としては全力をあげてやったわけなんですが、どうもそこまでの証拠を握るという点までには達しなかった。従って審判を開始しても、これを維持する自信がないわけなんです。のみならず、いわゆる被告たるべきものの信用とか何とかということも考えなければならぬし、ちょっと怪しければすぐ審判を開始するということも、人権擁護のやかましい今の憲法におきましては適当でありませんので、相当のこちらが黒になるという自信があって、初めて審判を開始するというのが従来のやり方であります。またそのやり方が適当であるし、今もそういう考えでおります。そういう見地から申しますというと、審判を維持するに足る十分な証拠が得られないということになったわけであります。
  80. 小林英三

    ○小林英三君 だから今の答弁に関連して、いわゆる日刊紙というものが全国に何千社あるか知りませんが、日刊紙の一つ残らずが全部一斉に申し合せをしてやったということでないと独禁法にひっかからないということになりますか。大体においてもう大まかの、大部分の一流紙というものが一斉に値上げをしたということであった場合は、それは何ですか、のがれるのですか。
  81. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) その申し合せの当事者です。それが独禁法にひっかかるので、たとえば新聞社が百ある場合に、五十だけ申し合せをした、あるいは三十だけ申し合せをした……。
  82. 小林英三

    ○小林英三君 幾らでもいいわけですか。
  83. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) ええ。その関係者だけが独禁法にひっかかる、こういうわけです。
  84. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 今お話をいろいろ承わっておりますと、何か委員長の話を聞いておりますと、被疑問題ですらほとんどないように受け取れるのでありますが、これは私は、単に今度のこの新聞料の値上げだけの問題でなくして、根本的には私はこれは独禁法全体の大きな問題になると思うのであります。で、すでに私は先般の国会の本会議場においても、岸総理大臣に伺ったのでありますが、独占禁止法の問題について、かなり政府もこの改定の用意をされている。そういう意味からいって、私は非常にこれは独禁法全体の大きな問題である。そういう意味から申しまするならば、さっき岡委員のいわれた埼玉新聞の問題とか、それからまた東京の某新聞と某新聞とのいきさつの問題等、この前の委員会に出られて、そうしてこの問題について、速記録をごらんになれば、ある程度お認めになっているわけであります。で、要するに上手に共同行為をやったということならば、いつでもあれはのがれるんだという、こういう解釈になると、これは今後の独占禁止法の問題に非常に大きな影響を与えていくわけであります。そういう意味からいって新聞それ自体は社会の公器であり、あくまでガラス張りの中でやるべきであります。でありますから、公取の権威を嵩めるという意味からいうならば、これは明らかな被疑事件である。私はこれは間違いない。あなた方が、いきなりこれはもう何でもないという解釈をしたら、これはまた別な角度から政治的に大きな問題である。被疑事件であるということがおわかりになるならば、公取の権威の上からいって、私はむしろ堂々とその審判手続をとって、結論が、かりにあなたの発表のような結論が出るにしましても、そういうことの手続をおふみになって、堂々とガラス張りの中でやるということの方が、これは私は世間が納得し、またわれわれもそれにある程度まで服するのもやぶさかでない、こう考えているのですが、この点について御意見を承わりたい。
  85. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) お話の点は、大体私も同意見でありますけれども、と申しますのは、とにかく共同して上った――共同してというか同一期日に上った、こういう事実があります。だからわれわれとしてもそれが独禁法に違反するかどうかということは全力をあげて実は事務局を動員して調べたわけであります。調べたのだけれども、今申します通り、審判を維持するに足る十分な証拠が得られない。だから何でもかんでもちょっとでも疑いがあれば、何でも審判にかけるというのも一つのいき方かもしれませんけれども、われわれとしましては、やはり裁判にかける以上は、結果は黒になるか白になるか、これは審判にかけなければわかりません。あるいはまた審判に不服であれば高等裁判所に訴えさせますし、結果はどうなるかわからぬけれども、ある程度審判にかければ黒という確信を少くともわれわれとして抱いておらぬのに、何でもかんでもちょっと怪しければすぐ審判にかけるということは、これはどういうものかと思われるのであります。そこで先ほど申しました通り、やはり一体審判にかけるということになれば、審判にかけられるいわゆる不信任と申しますが、不信任の世間的信用と申しますか、いろいろな問題にも関係するので、これは人権を非常に尊重している憲法の一般原則でありますからしてわれわれとしては軽々に審判に付することはできない。審判に付してそれを維持するに足る証拠があるとわれわれが考えたときにやる、こういうふうに思っております。
  86. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 いま一つ伺いたいのでありますが、この違反事件について委員会がその委員会の下に構成されております、あれは審査会ですか、審査官というのがおるはずですが、審査官が同席をいたして、そうして資料を収集し、専門的な立場で委員会に助言をしてそうして違反事件のスムーズな解決をはかっていく、これが従来のやり方のように聞いておりますが、今度の問題に対しましては、これは私が早耳であるいは憶測であったらそのままにしてもらいたいのだが、何か審査官が委員会に同席をすることも拒んだというようなことも聞いておるのでありますが、もしそういうことが事実であるならば、いよいよもって先ほどあなたが言われたことと私どもの考え方というものがほんとうに根本的に違っておる。ことに本件に対するあなた方の態度というものについては、非常な政治的な大きな含みがある、こう私どもは断ぜざるを得ない。これは非常に重要な点なのでありますが、この点一つお伺いしたい。
  87. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) お答えいたします。事務局に審査部というのがありまして、そこでまあ調べさせるわけです。それで調べた結果を委員会にかけて、委員会が最終的に責任をもって公取の態度をきめるという建前になっております。そこで今の問題は委員会を開くときに必ず審査部の者を入れてやっております。審査部の者、ことに審査部長を入れないで委員会をやったということは絶対にありません。ただ審査官については、あるいは私先ほど申します通り七月から後の問題でありますから、その前のことは多少怪しくなるかもしれませんが、委員会審査官が報告したのでありますけれども、それは事実を報告したのであって、それを法律的に判断するということになるというと、審査部長は出ておりますけれども、必ずしも審査官が出なければ仕事ができないという問題ではないので、それで審査部長と審査部長の下におる審査の三人の課長がおりますが、これは必ず出てやりました。
  88. 栗山良夫

    栗山良夫君 私は今の委員長の御答弁を聞いておりまして、非常に理解しにくい点が一点ありますので尋ねておきます。それは要するに拘束性の問題ですが、拘束性がなかったとおっしゃいます。しかし拘束性なるものは、一応申し合せをした事実はお認めになっておるわけでありますから、申し合せをした事項について脱落者が出るときに初めて拘束性というものがものを言ってくるわけです。ところがあなたの今の御答弁では、新聞社がお互いに非常に激しい競争をしておるので経営難で上げたい、上げたいのだけれども一社だけ上げたのでは競争に勝てないから、お互いに腹の中では思いながらも上げる時期というものに非常に因っておった。申し合せをして一斉に上げられるということならば、各社は一斉に実行をする、こういう空気があるという意味のことをおっしゃったのです。そうすれば申し合せをしたことは、各社は積極的な協力性を持っているわけです。拘束性というものじゃなくて積極的な協力性を持っている、そういう意味では、こういう新聞業界という特殊な条件にある事業について、公正取引委員会として独禁法に関して事件の調査をされるときには、この拘束性を持っているという意味というものをもう少し掘り下げてお考えになる必要がありはしませんか。あなたの今お話しになっている拘束性という一般概念の解釈は、新聞業界で実際に起きている事実とは全く相反することをきわめてたんたんとお述べになったのですが、その点は少し調査として不十分ではありませんか。
  89. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) 新聞社の連中が寄り集まって話をしたのだろうという疑いはあるわけです。それが先ほど申します通り、拘束性ある共同行為になったかならぬかという問題があります。おそらく共同認識はあったかと思いますけれども、拘束性ある共同行為になったという証拠は残念ながら得られない。われわれの方といたしましては、審査部の者が一生懸命やったのでありまして、できるだけの調査について骨を折ったわけであります。その結果が今申します通り、拘束性ある共同行為であるという証拠を得るに至らなかった、こういうことであります。
  90. 栗山良夫

    栗山良夫君 私のお尋ねしたのは、拘束性があるという事実はわからなかった、こうおっしゃるのですが、それはその通り私は承わりましょう。しかし、あなたの御説明の中では、拘束性を云々しなくても申し合せをすれば、すぐ即時実行という段階新聞業界の実情があったのだ、こういうふうにおっしゃったのです。ですから拘束性がなくても申し合せをすれば、すぐ実行に入ってしまう、こういう工合に理解できる、そこを私はお尋ねをしているわけです。あなたは新聞業界というものは非常な競争をしている。一社だけ上げれば経営に響くから、それで適当な時期に歩調を合わせてやるということを各社が望んでおったのだ、こういう意味のことを先ほどおっしゃったのです。それだから私は申し上げるのです。拘束性ということは、もう意味がないのじゃないか、そういうことを言うのでは。もう申し合せをすれば、すぐ拘束性を含めた積極的協力性を発揮して実行に入ってしまうのじゃないか、こういう特異な事態があったのではないか、こういうことを申し上げたのです。
  91. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) 非常に法律的にデリケートな問題になるのでありますが、お互い会合して値上げの問題を話し合ったろうということ、これはわれわれの推定でありますが、それはおそらく想像できるのですが、それが先ほど申す通りの拘束性ある共同行為であるのか、単純に相手の腹を探ろうとしてのいわゆる共同認識であるのか、ここが実際の分れめになるので、共同認識まではあったのだろうという疑いが濃厚であります。しかし、それをさらに進んで拘束性ある共同行為までになったかというと、遺憾ながらと申しますか、われわれの方ではそこまでの証拠はつかめなかった、こういうわけであります。
  92. 栗山良夫

    栗山良夫君 私の質問に真正面に答えてもらいたいのですが、あなたの先ほどからの御答弁の中身は、委員会の空気というよりは、あなたの意思を述べられているのです。新聞紙というものは、値上げをしたくても一社だけすれば営業に響く。激しい競争をしているから営業に響くからやり得ない、それで申し合せをしたのだ、こういう前置きがあったのです。これはあなたの意思を述べられているのです。これに対してどういう見解をおとりになっているか。それと拘束性ということについて拘束性というものを含めたもっとより広い積極的な協力性というものが各新聞社にあったのじゃないか、そこまで視野を広くして検討しなければいけないのではないか、こういうことを申し述べてもう二回質問しておるのだが、その点をぼかしておられる。そういう点が非常に不明瞭です。
  93. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) 申し合せという言葉は私使ったかもしれません。申し合せということは単純なる共同認識なのか、意思連絡なのかということが法律的に非常に重要な問題になってくるので、少くとも甲も上げる、乙も上げるのだから自分も上げたということ、そこまでは非常なそういうことがあっただろうという疑いは濃厚なんであります。しかしながら一緒に上げようと言ったかどうかということですね、共同して上げようと言ったかどうかということになると、遺憾ながら証拠がそこまでいっておらぬと、こういう事実なんであります。非常にデリケートな問題でありますから、私の言い方が足りなかったかもしれません。
  94. 栗山良夫

    栗山良夫君 私はそのことをお尋ねしておるのではないのですよ。その前のことなんだが、その前のことをなぜお答えいただけませんか。そのことはもう何回も伺ったからよく承知しました。その前のこと。
  95. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) 拘束性があるかないかということは、これは昭和二十八年の東京高等裁判所の判決にもありますし、拘束性がなければいかぬということをはっきり言っておるわけであります。ただ拘束性の証拠が出ないのに独禁法違反ということは、われわれとしては言えないと、こういうことなんです。
  96. 栗山良夫

    栗山良夫君 そのことを伺っておるのではないのですよ。やはり法律を運用するなら解釈というものが必要ですから、解釈というものが適正、公正妥当に解釈されなければいけません。今の憲法解釈のようなことになってしまうのでは困る。そういう意味であなたの御説明になったことを、速記がついておるけれども、もう一ぺん、じゃ、先ほどの答弁してもらいたい。新聞値上げが一社だけ上げたのじゃ上げにくいから云々ということをおっしゃった、それは非常に重要な意味を持っておる。あなたの今の答弁を全部伺いまして、その点だけ聞き捨てにならぬのです。それだから繰り返して伺っておるのですが、その点は二言も触れておりません。もし触れられぬとすれば速記を持ってきてもらい、それで伺いましょう。その点はあいまいにできないことです。
  97. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) それは先ほど申しますようにやっぱり競争ですから、自分だけ上げてもほかが上げてくれなければ非常にやりにくい。非常に自信のある新聞、特殊な新聞、たとえば日本経済新聞、こういう新聞なら別ですか、同じような新聞だと――各社に言わせれば同じだとは言わないでしょうけれども、読者から言わせればそうは言わない。それを自分の社だけ上げるということは経済的にむずかしいことであるからして、相手方の出方を見るということは、これは経済的に当然の話です。だからして共同行為になったと、そういう結論は当然出ないと私は考えております。
  98. 栗山良夫

    栗山良夫君 そういう条件があるから、あなたは先ほどたしか私の記憶に間違いがなければ、印し合せ云々をした疑いの事実があるとおっしゃったのですよ。疑いの事実がある、そういう意味のことをおっしゃった。申し合せの事実とはおっしゃらなかった。そこに何かクエスチョン・マークがついておるかもしれないが、その事実がある。速記を持ってくればわかりますがね。そういうことをおっしゃったのだが、そうすればあなたの今の言葉を、繰り返して答弁なさったことをそのまま率直に理解すれば、そういう新聞業界にあるから、何かの新聞値上げということを申し合せすれば、それは拘束性云々の問題ではなくて、もう自動的に積極的に協力して実現してしまおうじゃないかと、拘束性よりもっと大きな問題ではないか、もっと強い問題ではないか、新聞業界として。そういう工合にわれわれは理解せざるを得ないということを申し上げているので玉その点はどうですか。
  99. 井川伊平

    井川伊平君 よくお話わかるのですか、新聞紙の値上げの問題は申し合せかあった、あるいは申し合せ類似のいりいろの交渉があったことをお認めにばっておるのですが、埼玉新聞の言うところの、本社もやむを得ず四月一日よリ上げる、やむを得ずということは拘木の中に入るのではないか。拘束の中に入らないのだとすれば、このやむを得ずとはどういう意味だ。これをお伺いしたい。
  100. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) それはやはり各社としては、読者との関係があるから、自分は自発的にやったということは言いにくい。そこでやむを得ずというのを使ったので、やむを得ずという言葉を使っておりますから拘束があるということは、それだけではわれわれとして判断しにくい。他に有力な証拠があれば、これはもちろん申し上げますけれども、それだけではですね。
  101. 斎藤昇

    斎藤昇君 先ほどからいろいろ御議論を伺っておりますと、拘束性というのはどういうことなのか、これを公取委の法律解釈をはっきりしていただければ、もっと明瞭になると思うのです。
  102. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) 拘束性と申しますのは、やはりたとえば値上げなら値上げをして、それを維持する義務を各社が持つ、こういうふうに考えております。
  103. 栗山良夫

    栗山良夫君 今のは法律の解釈上から言えば根本的にやはり違いますよ。拘束性が発動される場合は、云々される場合は、業界にある何社かがいやだと、協力の意思を表明しない人に対して義務的に協力させるのだ、そういうときに拘束性というものは問題になってくるのです。今のあなたの御説明では、新聞社はみんなが協力しようとしておられる。そのある問題に対してそのときには協力性ということはない。協力性ということよりもっと広いのです。だからそういう点はやはり法の解釈上必要があるのではないか、こういうことを私は申し上げているのです。  それから次に伺いますが、私は今度の新聞料金値上げの問題は、新聞社の立場ということは何も申し上げませんが、公正取引委員会のとられた態度については、少くとも国民に非常な大きな疑惑を招いておりますから、今のあなたの答弁をしてもなおかつ国民は釈然としません。何としてもしない。そこで巷間伝えられておるうわさの中ではいろいろなものがありますが、この際にあらためて念のために伺っておきますが、委員長個人、あるいはほかの委員ですね、その方々が特定の政党の幹部、これはその役職か、あるいは特定の幹部、個人かもしれません、かしらぬが、それらの方々と新聞料金値上げの問題についてお会いになり、あるいはこの問題についてお話し合いになったことがありますか。
  104. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) そういうことはないと思います。少くとも私は会っておりません。ほかの委員もおそらく会っていないと思います。
  105. 栗山良夫

    栗山良夫君 その点は絶対にありませんか。
  106. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) ありません。
  107. 栗山良夫

    栗山良夫君 ほかの委員の方も絶対にありませんか。
  108. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) ほかの委員もあるまいと思います。私は一々尾行しているわけじゃありませんから、わからないのでありますが、これはもうそういうことはあり得ないことだと思います。
  109. 栗山良夫

    栗山良夫君 そうすると、今申し上げたように、公正取引委員会のとられた態度については、非常な国民に割り切れないものを残しているが、こう何か割り切れるような方法で国民に釈然とさせる方法は今お考えになっておりますか。もう全然このままでずっとおいきになる予定ですか。これは今後の公正取引委員会の運営については、これは非常に問題だと思うのです、いろいろな場合を考えまして。まあ不公正取引委員会になるならば別だが、少くとも公正取引委員会という看板であなた方が委員会を運営なさろうとすれば、何としてもこれが釈然としないというと困る問題なんです。その点については何か政治的というと語弊がありますが、お考えになっておりますか。
  110. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) 今のお話ですが、われわれとしては独禁法の何というか、番人として、どこまでも公正にやってきたつもりであってそれでまあ委員長談話も発表したのでありますから、それ以上やるということはただいま別に考えておりませんです。
  111. 山本利壽

    委員長山本利壽君) お諮りいたします。  ちょっと速記とめて。    〔速記中止〕
  112. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 速記始めて。  暫時休憩いたします。次は一時半から開会いたします。    午後零時四十一分休憩    ―――――・―――――    午後二時十二分開会
  113. 山本利壽

    委員長山本利壽君) これより委員会を再開いたします。  午前に引き続き質疑を行います。
  114. 奥むめお

    奥むめお君 新聞社から申し入れがあったということを聞いておりますが、その申し入れば、いつでございましたか。ちょっとお伺いいたします。
  115. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) 八月の上旬に数回にわたって……。
  116. 奥むめお

    奥むめお君 もっと正確におっしゃって下さい。
  117. 坂根哲夫

    説明員(坂根哲夫君) たしか八月二日、第一回だったと思いましたが、それから……。
  118. 奥むめお

    奥むめお君 第一回は何新聞でございますか。
  119. 坂根哲夫

    説明員(坂根哲夫君) これは、今持ってきておりませんが、これはなんでしたら、あとで資料として。
  120. 奥むめお

    奥むめお君 それは資料で、あとでもらってもいいけれども、その文面を読んで下さい。
  121. 坂根哲夫

    説明員(坂根哲夫君) 去る四月、当社が新聞購読料を改定いたしました際、私的独占禁止法に違反の疑いを受け、貴委員会審査を煩わしましたことは、まことに遺憾に存じます。このような疑いを払拭するため、当社は、今回改定した購読料の維持については何等他から拘束されているものでなく、将来においても購読料は常に当社が自主的に定める立場にあることを明らかにします。なお今後このような疑いを受けることのないよう細心の注意を払うことを念のため申し添えます。
  122. 奥むめお

    奥むめお君 それは、どこの新聞社から出たのですか。
  123. 坂根哲夫

    説明員(坂根哲夫君) これは八月二日から十日にわたって、数回にわたって出された。新聞社が、同じ文章で、日付と、新聞社の代表者の氏名印が違う、こういうことでございます。
  124. 奥むめお

    奥むめお君 同じ文章で、各新聞社から出るというのは謀議じゃないのですか。どういうわけでそうなったのでしょうか。あなたのお考えは、どうですか。
  125. 坂根哲夫

    説明員(坂根哲夫君) これは、お互いにそういう拘束は、今現にないということを言ったのであろうかと存じております。
  126. 奥むめお

    奥むめお君 これは、あなたの方で委員長談を発表なさったのは、いつでございますか。
  127. 坂根哲夫

    説明員(坂根哲夫君) 八月十三日の午後でございます。
  128. 奥むめお

    奥むめお君 ここの委員会がありましたのが、八月の十口でございます。それで、そのときには、中村委員事務局長も、一週間ぐらいにはできると思うけれども、まだ決定に至らないという御報告をした。この新聞社から続々と同じ文書が出てきて、そうしてそれを待っていたかのようにして、あなたの方が十三日に委員長談を発表をなすった、そこに関連があるのじゃないですか。委員長どうですか。
  129. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) 関連があるといいますか、私の方は、とにかく今事務局長が申します通り、八月の上旬に出てきて、私の方が、委員長談を発表したのは八月の十三日であります。従って待っていたということはないわけであります。結果的に、済んでから出したということになりますが。
  130. 奥むめお

    奥むめお君 何としても、そこに内々の打ち合せがなければ、そんなものが新聞社からぽかっと出てくるのは、おかしいのじゃないですね。私は、そういう点に非常に疑義を持っている。  そうしてしかも委員長の発表というものは、この問題は不同に付する。そうすると委員長の発表と、それに続く談話によってみますと、委員長は、もう拘束がないのだから、新聞社もこう言っている、こう言っていらっしゃいますね。  そうすると、あなた方のほうに、新聞を申告したのは、その前の値上げの事実にからんで消費者団体は申告していますね。それをその問題のきまりは、七月一ぱいで大体きまった、済んだという報告をこの委員会で聞きました。七月一ぱい、……もっと早かったですね。あれはいつとおっしゃいましたか、五月一ぱい……。
  131. 坂根哲夫

    説明員(坂根哲夫君) 事務当局の方の審査の完了は、五月一ぱいでございます。
  132. 奥むめお

    奥むめお君 五月一ぱいに審査の完了が済んでいるわけですね。それからあとは、まあ報告書を見ますと、とにかく法律論議で、いろいろ延びているという話でございますね。そうすると、それまで延びていたものが、ぽかっと新聞社が、どうして出してきたのでしよう。おかしい、それは、どうしてもそこに関連があると思う。しかも同じ文面でばたばた幾社が出しましたか。
  133. 坂根哲夫

    説明員(坂根哲夫君) 私の記憶しておるところでは、三十三社と考えております。
  134. 奥むめお

    奥むめお君 そうすると、委員長に伺いますが、それを受けてから、急にこれを不問に付するということをおきめになったと、私どもは、そう了解するよりほかありませんが、いかがですか。
  135. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) 受けてから急にといわれると、いろいろ修飾がありますが、受けた後に決定した。
  136. 奥むめお

    奥むめお君 そうしますと、公取の判断というものは、申告があったときは、共謀して、新聞代の値上げを各社が共謀してはかった。この問題で申告して、その値上げは認めないということで問題が始まったわけですね。それからあとで非常におくれて、八月になってから新聞社が、こういうことを申し入れた。これを非常に重大な資料にして、あなた方がこれを不問に付するということをおきめになったわけです。それをいかにも出るのを出させるように仕向けて、出るのを待っていて、十日までにみんなが来たと、そして十三日に談話を発表して、その間、非常に長い間法律論を戦わせていたということになるわけです、御報告を聞いていますと。ずいぶん、そこおかしいと、だれだって、世間では公取が新聞社となれ合っているというふうに考えざるを得ないのですが、そういう疑問を公取が持たれて、それで責任が済むものでしょうか。  ことに消費者のためにただ一つの法律を守る公正取引委員会としてそれでいいものでしょうか。いかがですか。
  137. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) われわれの方といたしましては、委員長談に書きました通り、終局的な決定はしておらなかった。そこへ新聞社が来た。新聞社の申し出のみを資料にしたわけではない。新聞社の申し出もあわせて考慮した。その前に、まあ大体の方向としては、証拠が不十分だというふうに傾いておった、こういうわけであります。  だから従って、何も新聞社となれ合いというのは、私は全然考えておりませんが。
  138. 奥むめお

    奥むめお君 まあ私ども世間の者からいえば、その間が、非常に日が短かすぎて、しかも同じ文章でみんなが持ってくる、とってもそこ、不可解ですわね。公正取引委員会が、これからもそういうことをなさるとしたら、この法律の番人として、私値しないと思うのですが。非常にこの点に世間の疑惑が集中しているわけなんですがね。これが私の一つ。  それから、先ほど新聞代の問題で、まあこの委員長の談話の中に、後段にございます特殊指定の問題でございますね。あれをあとで速記録を読めばわかると思いますけれども、今調べているという委員長の御意見でした、お話でしたね。何を調べているとおっしゃったのですか。
  139. 坂根哲夫

    説明員(坂根哲夫君) ただいま私の方に消費者から、三百三十円の申し入れをしたら断わられたというケースが陳情のようであり、申告のような格好のものが相当来ております。そういうケースが一つ。それから販売店の方がまた三百九十円で売ろうとしても、なかなか売れないということを述べたようなものもございます。そういうものを、どういう事情であるかということを現在調査しておる、こういうことであります。
  140. 奥むめお

    奥むめお君 先ほど公正取引委員長の説明によりますと、この問題で委員長は調べているとおっしゃいましたのですね。この問題で、今申告はわかりましたね。そして委員長の第三番目の、これはなべかまの問題でなしに、私は定価のことではないかと聞いたわけですね。そしたらそうだと、その問題を今調べているのだと、こういうお話でございますが、私どもから考えますと、消費者が、あなたのところの新聞は、三百三十円の値打しかないのだ、三百九十円なんというのは、不当な価格だと思われるのだ、払われないと言うて、三百三十円ということにしたときに、これは委員長の談話によりますと、これは法に触れますか。
  141. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) この告示を見ますというと、ある代理店――新聞社の販売店といいますか、その販売店の区域全体であれば問題でありません。特定の区域とか、特定の人に対して定価を割り引いてやるということが、不公正な取引方法の疑いを受けると、こういうことでございます。
  142. 奥むめお

    奥むめお君 それはどこがですか。販売店が、それに引っかかるのですか、読者が引っかかるのですか。
  143. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) 販売店でございます。
  144. 奥むめお

    奥むめお君 販売店がね……。実は、委員長談話を発表されましてから、新聞の取引店が、それこそ各購読者の方へ殺到しまして、委員長がこういうふうに値上げを不当じゃないのだと言うたのだ、もうきまったのだ、公正取引委員会がきめたのだ、三百九十円にきまったのだから、払わなければ新聞やめると言って、もう全国に、これは取引店が共謀したとしか思われない状態で殺到したわけなんですね。委員長が、三百九十円に認めなすったことと同じ結果になる。  そうすると、その新聞店に対して購読者が、あなたのところは三百三十円の値打しかないじゃないかと、こう言うたら、購読者は、何にもその法に触れないけれども新聞社が、販売店が法に触れると、こうおっしゃるわけなんです。それを取り締るとおっしゃるわけなんですね。どうなんですか。
  145. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) 特殊指定に引っかかれば、独禁法の番人としてやらざるを得ないと、こういうわけでございます。特殊指定に引っかかるのは、ごく限られた地域、たとえば、東京のある区の、実際あるか知りませんが、ある区の販売店があって販売区域が全体だ、その区域の一部分地域について安く売るとか、あるいは特定の人に安く売るとか、こういう場合に不公正な取引方法という独禁法の告示に該当するわけであります。  だから、その新聞社が、販売店が、自分の販売区域全体でやるなら、これは、こういう問題は起りません。
  146. 奥むめお

    奥むめお君 そうしますと、委員長が、その談話を発表なすった。それに続いて消団連に談話をなすったときに、これからは新聞料金は自由、各社自由になったのだと言うていらっしゃいますね、各社自由になったのだと。そうしたら、自由にすること当然じゃありませんか。
  147. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) これからはじゃない、私の方としては、前から自由と思っておりますけれども、自由にするというのは、定価を自由にするということであって、定価をきめておいて、勝手に不当競争で制引されちゃ困る、これは独禁法の不公正な取引方法に入りますから。定価をきめるのは勝手ですよ、現に新聞社も、何らの拘束を受けないと言っているのだから。これは定価が上るか下るかは、これは自由です。しかしながら、今の問題は、定価をそのままにして割引して売るというから、不公正な取引方法に入りやしないか。だから、こういう問題が起るわけです。
  148. 島清

    ○島清君 関連して。  それはおかしいですね。そうすると、公正取引委員会の方では、新聞値上げについて、何か公正取引委員会としての本来の職務に怠慢があったのではないか、上げることはけしからぬというのが、奥先生の質問の要旨ですね。ところが、それで、ある新聞社によっては、何も三百三十円でいい、あるいはある販売店においては、三百三十円でいいと言うなら、それは三百三十円でよろしいじゃないですかね。  それとも、必らず、あなたたちの方で、それは新聞社の申し合せかどうかわからないけれども、とにかく三百九十円に定価はきめたのだから、三百九十円とらなければ、それは独禁法に触れるのだと言うて取締りの対象にするということになると、それはおかしいじゃないかな。
  149. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) そこのところが、重要なところなんですがね。定価をきめるのは、三百九十円にしようが、三百六十円にしようが、あるいは三百三十円、これは自由なんですよ。だから、定価を勝手に変えて三百三十円で売ればいい。こう思っております。
  150. 島清

    ○島清君 ちょっと委員長、それは三百三十円であろうと、三百五十円であろうと、かまわないわけですね。それはあなたたちの方の対象にならないわけですね。
  151. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) 値段だけは対象……、その値段を動かすについて、独禁法に言う拘束力ある共同行為として動かすということが問題なのです。  それでなければ、いかようにきめようが、百円にしようが、五百円にしようが、(島清君「それならわかる」と述ぶ)そういうことです。
  152. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 佐藤さん、今の奥先生の質問に関連してお尋ねしますがね。  その前に一つ、二つ簡単にお尋ねしたいのですが、独禁法の改正について前々国会等から、相当問題になっておったわけですね。昭和二十三年に制定した法律ですから、当時と経済状態が違う、従って独禁法を改正せねばならぬということで、案まで私たちに示されたことが、今度の国会がいつ開かれるかわかりませんけれども、これはどういう状態になっていますか、出すのですか、出さないのですか、改正を。もちろんこれはあなたに聞くべき筋合いのものではありませんけれども企画庁長官、あるいは総理大臣に聞く筋合いのものかもしれませんけれども、少くともあなたは独禁法の総元締ですから、あなたに相談がないとはいえないから、それをどうするかということをまずお尋ねします。
  153. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) お話の通り、この法律案の提案権は政府部内におきましては、独禁法に関しては私どもにはないのであります。ないけれども、やはり独禁法を改正するということになれば、われわれの方に相談せずにやるということは、常識では考えられない。もし出すなら、われわれの方に話があると思うけれども、今のところありませんし、われわれといたしましては、この前の議会に法案が出て、それが審議未了になった、しかもその問題点は、私の聞いておるところでは、農業団体であるとか、あるいは中小企業であるとか、いわゆる消費者に密接な関係といいますか、つながりといいますか、そういう方面の非常に強い反対があったと聞いております。  従いまして審議未了になった案について、われわれの方としては、もし将来改正するとすれば、どうあるべきかということは、当時の事情と合せて目下研究中、こういうことであります。
  154. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 研究中ということは、農業団体その他から問題が提示されたから、それを直す時間を与えろということですか、それとも、少くとも臨時国会をやるそうですが、その臨時国会は短いから、やるかやらないということは別として、通常国会は百五十日あるのです。  従って政府としては、やるかやらないか、当然あなたの方に相談があったはずです。今までの歴代委員長の方は、明確に相談がありました。従って出しますか出しませんかという政府の見解は、政府の見解はこうですということを述べられた。研究ということは何を研究しているのですか。
  155. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) この前の案が、どうしてつぶれたか、どういう点に原因があったのかということを研究しておるのです。  しかし出す出さぬということについては、先ほど申した通り、政府から何も話はありませんし、私の方も出さなければならぬということも考えておりません、現状におきましては、将来、改正する必要があれば、どういう点が改正しなければならぬかということを常に行政官庁としては、行政委員会としては研究しておく必要があるので、そういうことをやっておるわけであります。
  156. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 それが出されてから、引っ込んで一年も、それ以上になるのですよ、あなたは研究中で逃げようと思ったら、研究中でもけっこうですが、あなた、東京都の都会で都会議員を相手にしているようなつもりで、にやにや笑いながら答弁したって困るのですよ、もう少しまじめに答弁してもらわなければ困る。何を研究しているのですか。  僕の聞くところによると、研究など何もしておらぬ、政治的配慮があって、出すか出さぬかまだきまっておらぬ状態である、こういうわけで、研究しておるということも承わっておりません。何条の何項目を研究しているか、具体的に聞きたい。  しかしきょうは、それを聞くのが目的ではないから、奥委員の質問しておられる新聞の問題について、二つ三つ聞きたいのですが、商工委員会で衆議院でも参議院でもやって、相当あなたにお尋ねしている。ところが僕も、それをすっかりダブって質問しては工合が悪いと思って読んでみたところが、あなたは僕と同じで、あなたはなってから二、三カ月だから、全部を求めるのは無理かもしれないけれども、僕と同じで、あまり独禁法に精通なさっておらぬようだ、ということは、ここに公正取引という雑誌――これはどこで出しているのかわかりませんが、公正取引協会というのがあって八尋昇さんという第一審査部長ですよ、あなたのところにありますね、この人が新聞購売料に関する独占禁止法違反事件についての委員長の談話、こういうことで、八尋昇さんという人が書いておる、あなたが言った通りかどうかわかりませんが、しかし第一審査部長ですから、おそらくまげて書いておるとは私は思わない。  ところが、この内容でいくと、新聞社の今度の件はよろしいということになれば、もう芝浦電機と日立製作所と共同して電球の値段を幾らにきめましょうという、きめた証拠がないから、勝手にやったのでしょうといって、一切独禁法がないと同じようなことをあなたは言っておる。これは新聞だけではない、新聞だけなら、もう各家庭の主婦なり皆さん方が反対しているから、しかし一カ月六十円だから、がまんしなさいということもいえるかもしれませんけれども、あなたの解釈でいけば、独禁法がないと同じことになる。そんなことを共同行為でやっても、共同行為をやりましょうといった証拠物件がないから、これは独禁法違反でございません、こういうことをあなたは言っている。この八尋さんの言うた通り、あなたは委員長談話として発表したのですか。それともあなたの心境が、こういうことですか。  私、しばらく留守にしておったからわかりませんけれども、あなたの就任されて、新聞記者を集めての第一声は、一般中小企業とか消費者、あるいは零細企業の味方になってやりますというのが、あなたの就任の第一声だったやに承わっておる。しかしやることと第一声とは、全然正反対じゃないですか。こういうことについてのあなたの心境と、この八尋昇さんが書いた昭和三十四年八月十三日のこの見解を一つ承ると同時に、これをやると、全部がやったって、あなたの解釈でいけば、独禁法は何ら適用せぬということになる、こういう点いかがですか。
  157. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) 中小企業者であるとか、あるいは消費者の保護ということは、この法律に書いてある通りで、私も、そのつもりでおります。  ただ、今お話になる点は、証拠がないからできないといっていることを、証拠をろくに調べずしてやるというふうに誤解されては困るので、たとえば殺人罪があったって証拠がなければ、むやみに人を引っ張って、お前犯人だといって逮捕するわけにいかないので、やはり殺人罪として、この間の松川事件なんか、ずいぶん大きな事件だけれども、あれだけ人が死んで、それで証拠がなければしょうがないのです。証拠を集めることは、おそらく検察庁で一生懸命やったと思います。やっぱり法治国ですから、証拠なしに云々ということはできないので、証拠を集める能力が――一生懸命やっております、努力しておりますけれども、能力が足らぬのか、あるいは現実に証拠がないのかわかりませんけれども、とにかく証拠が出ないのに、刑事事件でいえば裁判するというわけにいかない。  それと同じ意味で、われわれの方としては、委員長就任当時述べた消費者の利益ということをできるだけ考えます、考えるけれども、やっぱり法治国ですから、審判に付する以上は、証拠がないのにやるわけにいかない。それは刑事事件と同じことで、証拠さえ隠せば、幾ら人を殺してもかまわぬという議論と同じになると思うのですが、そういうつもりでおりますから、決して証拠があるのに、見つかるのに、審判にかけない、そんなばかなことは絶対にいたしません。
  158. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 あなたの書いたあれは、証拠がないからできぬというようなことになっておらぬ。そこにお手元に、自分がどんなことを言ったかということが問題になるだろうと思って、おそらくあなたの事務局長のところにあるでしょう。しかし証拠のあるないは別にして、厳然として三百九十円を一律に、とにかく協定して取るということは、厳然たる証拠じゃないですか。企業内容は、全部違いますよ、朝日だって読売だって毎日だって。ということは、毎日なんか大毎オリオンズという野球会社を持って、一人の選手を、二千万円も三千万円も金をかけて、たった一人を雇うだけの力があるのです。読売だってそうでしょう。球団が赤字であるけれども、親会社から補給してもらっています、こう言っておるのですから、僕は、赤字だと信じない。そうすると、証拠というのは三百九十円に一斉に線をそろえているということが、歴然たる証拠です。それが証拠でなくて何が証拠になるのですか。こういうことをきめなければ、各会社によって企業の内容が全部違うし、当然ちぐはぐ、あるいは紙数によっても違うし、通信網によっても違っているわけです。しかし三百九十円に、ずっとラインを引いておるということは厳然たる証拠です。全然それをやらなければ、証拠が、最後まで出ないということになる。現在やっているじゃないですか。  そういう方針でいけば、証拠があるといっておっても、それは証拠になりません、一切各社の社長の調印したやつが出てこなければ証拠にならぬということになれば、電球からラジオ、テレビ、マッチ、ろうそくの果てまで、全部協定がなければ、カルテル行為ができるということになれば、独禁法というものは、必要ないということになるでしょう。そういうことになりませんか。各電機会社、電機メーカーでも、何のメーカーでも、共同行為をやって値段を協定する。しかしあなたの方で証拠があがらぬということになれば、独禁法というものはない方がいい。高い税金を出して、委員長以下膨大な人数を抱えて憲法の番人ですなんぞという国民に期待を持たせることがむちゃである、こういう結果になる。そういうことについてはいかがですか。
  159. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) 三百九十円になっておるということ、これはございます。しかしながらわれわれの方は、先ほど申しましたように、いわゆる物価を取り締る役所でありませんから、三百九十円になろうが、三十円になろうが六十円になろうが、これは直接関係がない。その三百九十円にすることについて、拘束力ある共同行為があったかないかということが問題です。ただ三百九十円に一斉に上ったという事実があります。それは今申します通り、拘束力ある共同行為があったかないかということを判断するのに、一つの材料になるけれども、それのみで拘束力ある共同行為があったということは、われわれとしては、ちょっと判断しにくいのです。
  160. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 そうすると、佐藤公取委員長の御見解では、こういうことは証拠物件がないから、一切独占禁止法の内容に一つもかかりませんと、こういう明快なる判断なんですか。
  161. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) われわれといたしましては、拘束力のある共同行為があるという証拠がありませんので、従って独禁法の問題にならぬ、こういうわけであります。
  162. 島清

    ○島清君 ちょっと関連して。  証拠の問題ですが、阿部さん並びに奥先生は……、一律にわれわれは共同行為をしたのではないと、社独自の立場において値上げをしたのであるからというので、八月の二日を皮切りに、八月十二日をもって終っております、全国の新聞社が同一文書をもって、あなたたちの方に報告ですかをやっているのですね、そういうこと自体も文章を書いて、それを読まして、そして金をふんだくる商売をやっております新聞社が、同一文書で、あなたたちの方に同様な報告が同様な時期においてなされるということに、私は、これはもしあなたが公平な裁判官の気持で、公取の本来の使命に忠実であったとするならば、りっぱな証拠だと思うのです。それから結論として、三百九十円という同一の価格をもってしたということも、りっぱな証拠だと思う。  そこであなたの言われるところの証拠というのは、ここに現に物的な証拠、こういうものがないから、これは証拠にならないのだというような、あなたは裁判官的な立場でおられる。それならば、私はあえてその立場から御質問申し上げますけれども、ここに私が、非常に強弓だといたします。向うの方で火事が燃えております。私が弓矢を放ちまして、あなたの首筋を通しまして、そしてその弓矢が火の燃えるところに落ちて、これがなくなってしまった、ここには私一人しかいない、弓も何も持っていない、しかしながらだれが判断しても、あなたを殺し得るのは私以外にはない。しかし証拠であるはずの弓矢というものは、もう火事の中に入ってなくなっているという場合のことを私はあなたに言いたいと思う。私はそういう場合でも、十分に殺人罪としての起訴し得るところの条件があると思うのです。あなたは、それは証拠がないから、どうにもならないということをおっしゃっておられますけれども、あなたの裁判官的な立場でいいまするこういう事例については、あなたは、こういう証拠はないものとして否定されますか、そして無罪の判決をされるのですか。どういうふうな法律解釈に基いて、この証拠というものを非常にあなたは強調されるのですか。
  163. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) ただいまのは例だから、ちょっと言い方がむずかしいのですけれども、あなたが私を殺す意思をもって、それで弓を射ったという事実が客観的には存在する。しかしその客観的な存在というものが証拠によってわかればいいのです。たとえば遠くから見ていた、そうしたらあなたが弓を射っていた、私をねらっていたということがわかれば、証人がありますから、これは人的証拠になりますね、たとえ弓矢は火の中に入って焼けてしまっても。しかもだれも見ている人はないし……あなたが自白すれば別ですよ、しかし、自白の有無は証拠にならんけれども。あんたは自白しないし、だれも見ていない、それはちょっとわからないですね。それであなたを引っぱっていって、殺人だと言われても、あなたはお困りになると思います。自分が殺人の意思でやったということを言われるなら、それでもいいけれども、何も証拠はないのに、あなたを引っぱっていって、お前殺人だということを言われても、普通の人だったら迷惑だと思うのです。ちょっと例は悪いかもしれませんが、あなたが私を殺人の意思を平素から持っていた、たまたま遠くから人が見ていた、弓を持って僕をねらっていたということが客観的にわかれば、そうすれば有力なる被疑者になりますけれども、だれも見てないし、何もわからない、あなたは、自分だけではわかっているかもしれないけれども、ほかの人は何もわからないのに、それを引っぱってきて殺人容疑者としたら、これは大問題だと思います。
  164. 島清

    ○島清君 そういうことは、あなたはおっしゃいます、完全犯罪ですね、弓矢で射られたことははっきりしておる、ところが弓矢を射得るところの地点に僕が立っておった、しかし証拠はなくなっておる、自白もしない、目撃者もいない、完全犯罪です。あなたは、完全犯罪として犯罪が行われているけれども、完全犯罪としてそれは裁判するわけにいかぬ、有罪にするわけにいかぬ、こういう結論なわけですね。  そこであなたは、新聞をそういう意味において完全犯罪として、それでは、その事例と同様にお認めにならなければいけない、そういう場合に、それは完全犯罪であるということの結論をあなたはお下しになるのだったら、新聞は、それだけの条件がそろっておるからしてそれは完全犯罪としてあなたはお認めにならなければならぬということになる、それならあなたは証拠を、唯一のあなたの逃げ口上の証拠々々ということにならない、いかがですか。
  165. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) 今おっしゃる完全犯罪という観念、ちょっと私にわかりませんけれども、そこのところ、ちょっと御説明願えないでしょうか。
  166. 島清

    ○島清君 殺す意思を持ち、もちろん自白もしないわけです。そうして殺した行為もある、しかしながらこれを証拠立てるものはない、そしてこれは殺人犯人に問われなければ、被疑者としても刑法の対象にならない、こういうことをスリラー劇なんかでよく見るでしょう、あなた、テレビ見ているでしょう、テレビを見ると、スリラー劇で完全犯罪といって、現にテレビを見ている人は、あれが人を殺したと見ておりますけれども、この関係者の諸君は目かくしをされて、そして「私だけが知っている」という秘密があるでしょう、そういうことで人を殺しておりながら、犯罪に問われない、こういう事例があるわけです。  それを完全犯罪と言うんだそうですが、そういうことで、あなたが証拠とおっしゃれば、奥先生も阿部先生も証拠は十分だ、こういう工合に行われているじゃないか、そして共同謀議の結果、同一の価格で、それが問われそうになったから、そういうことはございませんといって、同一文書であなたたちの方に報告をして、あなたたちの方で、声明書の中にそういうことを、唯一でもありませんが、あなたたちの逃げ口上の条件としておるわけですが、完全犯罪になっておるわけです。あなたたちが証拠々々ということによって、これは何も独禁法違反ではないのだということになると、証拠は十分にあるんだ、この目撃者は言っておられるのです。ところがあなたは、それは証拠ではないからということになると、あなたは、あなたの例でとっておられますところの刑法学上からいうと、要するにこのスリラー劇かなんかに出ますところの完全犯罪としてなるほど犯罪はあるけれども、証拠がない、だから証拠がないのだから、刑法の対象にならないのだというところの結論にこられないと、ちょっと、あなたがおあげになりましたところの理由は、理由にならぬわけです。  だから、そういう場合に、その新聞社のやりましたことは、なるほど阿部先生やそれから委員諸君の目から見ると、そういうことに思われるかもしれませんけれども、しかし私の目から見ると、証拠がございませんので、完全犯罪として、なるほどそれは認めなければならな、こういうような刑法学的な立場をおとりになるかどうか。こういうことなんです。
  167. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) ちょっと殺人の場合と今度の場合と、私は観念上違うと思うのですけれどもね。殺人という行為がある。それは、ある人がある人を殺せば、それは殺人罪ですね。殺人という行為がある。ところが今度のやつは値上げをしたということはこれは独禁法に何も関係ないことで、拘束力ある共同行為によって値上げをしたのでなければ同じことなのです。値上げをしたというのは殺人行為と違うのですね。殺人なら殺人自身が殺す人と殺される人は、誰かわからぬけれども、殺人の事実はある。だけれども、殺した人がわからぬというのだけれども、これは、値上げということは、何も独禁法とは関係ないことであります。値上げしようが下げようが、これは独禁法の知ったことではないのです。値上げをしたことについて、拘束力ある共同行為によってやったものかどうか問題なので、価上げをしたということは殺人とはだいぶ観念的に違うような気がするのです。
  168. 島清

    ○島清君 もう質問はしませんけれども、あなたが証拠がないから云々というので逃げられるから、こういう犯罪の場合に証拠が隠滅される場合がまああり得る。それを称して俗に完全犯罪といっているのだそうだけれどもということを申し上げておるわけですよ。あなたが証拠というから……。しかも奥先生や阿部先生は証拠は十分にある。拘束力を持つところの不当な共同行為があるのだ。その拘束力を持つ不当な共同行為によって三百九十円の値段がぴたっと出ているじゃないか。各自の会社の経営自体から出ている結論じゃないじゃないか。それも全国の新聞社が軌を同一にしてあなたの方に報告書を出している。それで十分な証拠じゃないか、こういうのです。ところがあなたは、何か知らないけれども、一知半解な法律的な知識によって、証拠々々と逃げようとするから、僕は、法律専門家だからそういうことをあなたに質問をしているわけです。今度は掘り下げて、法律左門的な立場から私は質問しているわけですね。そうすると、あなたは証拠証拠と言っておるから、いろいろ例をあげるでしょう。殺人の例もあげるでしょうし、詐欺訪盗の例もあげるでしょう。しかしあなたが、そういうふうに証拠々々と逃げられるには、公取の委員長としては、少し逃げ方がおかしいのじゃないかというて、私は傍聴者的な立場に立って聞いておったけれども、関連的な質問をしているわけです。だから、あなたが証拠で逃げようとされても、この質問者はもちろんのこと、傍聴席の方も、それは証拠として逃げるには、少しおかしいじゃないかと、こういうことなんですよ。
  169. 奥むめお

    奥むめお君 今法制局の方、どなたか来ていらっしゃるのですか。
  170. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 課長が見えておるそうですが。
  171. 岡三郎

    ○岡三郎君 今の佐藤さんの説明を聞いていると、まあそういうふうに客観的に値上げをきめて、それが拘束性を持たなければ、全然そういうことは該当しない。まあ一応そういうふうな説明を聞いておるのですが、公取委員会が発足以来、そういう形でのみ運営されてきたかどうか、事実の取り調べというもの、審判というものに付した事件、そういうものを見たときに、佐藤さんが言っておるような、そういう形ならば、事件にならぬような仕事がかなりあったのじゃないかと思うのですが、私も午前中言ったように、商売で価格上げていくときに、実際的に皆が腹を合せて書きものには全然残さぬ。そしてこれこれにしよう、そうしていわゆる事業者が結びついて、そうして市場を支配する、現実的に三百九十円ということで支配しているわけです。こういう事実が客観的にあるときに、口頭で申し合せたことについては、お互いがこれは口を割らぬ、そういうふうに、事業者同士が結合して市場を支配する行為が客観的に起ったときに、これは公取としては、公取の立場というものに立って発動しないのですか。  これは、今後の公取としての重要な問題だから、もう一ぺんよく念を押しておきますが、従来において佐藤さんのような方針で一貫してやられたのかどうか。これは、もう少し詳細に聞いておかないと、公取というものが、独禁法を起用する場合においての今後の重要なる内容を含んでいるので、これは従来の公取の運営とあわせて新たにここで、そういうふうな一つの判断に立って新しい運営方法に立ったのかどうか。これは重要な問題が含まれているので、そういう点、明快にお答え願いたいと思う。当事者間の、いわゆる事業者間の結合によって市場が支配されている事実があっても、これはやらないのかどうか。
  172. 坂根哲夫

    説明員(坂根哲夫君) ただいま岡先生の御質問の従来の経緯について、私からお話しいたしますと、二十八年の東京高等裁判所の判決があるまでに、合板事件というのがありましたが、そのときには、相互拘束の問題は審決で――これはもちろん司令部のおった時代でありますが、特に問題にしたようではございませんでしたが、二十八年の東京高等裁判所が東宝事件の判決で、これは公取が被告になって争ったわけですが、そのとき公取の申し分の中に、相互拘束という主張が十分でないという法の適用の誤まりを指摘されました。二十八年の高裁の判決の以降は、私は、今日今朝来、委員長が御説明になりました相互拘束というものを問題にしておるように、私は考えております。  今後の問題は、委員長からお答えいたします。
  173. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 その、今答弁された新東宝の件ですね。その新東宝の関係したことでしょうが、それであなたが、その点について衆議院かどこかで、委員長が答弁されたかあなたが答弁されたか、質問に答弁されているようですね、こういう例がございましたと。ございませんか。
  174. 坂根哲夫

    説明員(坂根哲夫君) 衆議院の御質問の中に、二十八年以降のたしか冷蔵会社の勧告審決の中にという御質問がございましたが、それも勧告審決の中に、相互拘束を含めた審決があると私はお答え申し上げました。
  175. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 そこで、それは当然その支配関係の拘束だから、対等関係の拘束と全然意味が違うでしょう。この内容と、対等の立場で拘束し合うのと、支配関係の拘束ですから、それを同じだということになると、ちょっと筋が違うような気がしますがね。
  176. 坂根哲夫

    説明員(坂根哲夫君) 高裁の判決は、不当な取引制限については、相互拘束が必要である、相互拘束というのは、従ってカルテルのことをいうわけです。
  177. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 ですから戸等裁判所の判決というものは、岡委員の質問に対するあなたの御答弁と高等裁判所がやった件と、これと全く同じだということは言えぬ。全然意味が違うわけですよ。今回のような対等拘束ではない。支配拘束なのだから、どっちも同じであるからなどというような理由は成り立ちませんよ。
  178. 坂根哲夫

    説明員(坂根哲夫君) いや岡先生に御答弁申し上げた趣旨も、今申し上げたような趣旨でございます。
  179. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 それだから違うというのですよ。高等裁判所の例を、この例にあてはめて答弁するということが不合理であって、中身が全然違う。中身が違うものを、高等裁判所の判決がこうだったから、これもそうだというような印象を与えるような答弁は、全然中身が違うのだから同一例として答弁できないということは明確じゃないですか。
  180. 坂根哲夫

    説明員(坂根哲夫君) 高等裁判所の判決は、それで指示しているのは、不当な取引制限には云々ということを指示しておりますから、不当な取引制限は、すなわちカルテル行為だと私は申し上げているのであります。
  181. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 そこで、それに関連してお尋ねいたしますが……。
  182. 岡三郎

    ○岡三郎君 ちょっと待って下さい。こっちが今聞いているのですが、さっきの残りを委員長に聞いている。  事業者間の結合によって、いわゆる商売をしておる人が、みんなで心をあわせて合同でやる。そこには証拠が出てこない。そう言って、現に市場が、それによって支配されている。こういうことが明確に客観的にここにある。そういう場合においても、すべてこういうものについては、公取は全然おかまいなしだということなんですか、物的証拠がなければ。
  183. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) 今のお話に、ちょっと言葉を返すようだが、明確に客観的に、そういう事実がわかっているのなら、すなわち証拠上わかるわけなんで、そうなれば問題になると思います。
  184. 岡三郎

    ○岡三郎君 つまり、事業聞の結合によって、いろいろ話し合って、これだけにきめよう、しかしこれは、他に漏洩してはいかん。これは、不当な他の会社を困らせるようなときには拘束力とか何か出るけれども値上げをすることになれば、みんな喜ぶのだから、そんなものは背反するやつが出てくるということ自体おかしいことで、そういうふうに皆さんが話し合って、そうしてそのもとに市場が支配されていく。現に三百九十円でまかり通っているわけだ、現実に。  こういうふうな客観的な事実があって、そうして市場の支配が認められておる。三百九十円ということによって市場が支配されておるわけだ、今のところ。こういうふうな一つの例示ですが、その他いろいろな場合に、つまり公取かどこかにいた有能な人が、各社に配置されて、カルテル行為を法網によって抜けるということは易々たるものになってくると思う。やすやすとしてこんなことになったら、価格をきめるなんということは、少々知恵がある者ならば、これは平気で行われるということになると思うのだが、現在三百九十円ということで、市場が励行されておるわけだ。しかも、三百二十円が独禁法に違反するなどとおどかしておる、委員長が。精神的に言うと逆なんだ、私から言わせれば。そういうふうな、事実上、下業者の結合によって市場が支配されておる、こういうふうなことが客観的に見られるときに、証拠はないが、事実はそういうふうに進んでおる。こういうふうな、いろんな事象が経済界において、これから起ってきた場合においても、証拠は、紙に書いたものとか、そういう人が口を割らない限りは駄目なんだ、こういう見解で、公取はこれから終始一貫して行かれるのかどうか。
  185. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) 先ほどから、たびたび申しておる通り、拘束力のある共同行為があったかどうかという問題で、拘束力というのは、値上げをした、それでそれを勝手に値を下げない、こういう義務ですね、そういうことがあるということが、客観的に存在し、また大体において客観的に存在する以上は、おそらく何らかの方法で証拠があげられると思うのでありますが、そうなれば、もちろん独禁法に触れることになりますけれども、どうしても、意思の合致によって引き上げて、それでそれを維持するということが立証できない場合には、これはやっぱり一般の刑法でも同じでありますけれども、裁判をするのに、裁判官は冷静にやりますからしてそうだろうとは考えても、そうだということを常識的に良識をもって、そう判断することができないのに、有罪ということはできないと同じように、われわれの方としても、今のような場合には、おそらく、お互いに意思の合致によって値段を引き上げ、しかもこれを維持していこうということがあるということは、何らかの方法で証拠がつかめるだろうと思っております。それができなければ、これは刑事事件でも民事事件でも同じでありますけれども、証拠なしの裁判ということは、これはできませんので、われわれの方の審決でも、やはり証拠がなければできないと言わざるを得ないと思います。
  186. 岡三郎

    ○岡三郎君 証拠とか相互拘束とかということは、非常にデリケートな問題で、われわれから言わせれば、三百九十円の値上げが一斉に行われて、それがずっと影響を持ってしかも現在でも行われておる。これは一つの客観的事実です。その中で、たまたま埼玉新聞を非常に軽く、あれは商売の苦肉の策で、ああいうことを言ったと、こういうふうに解釈されておるが、やむを得ずという――結局、自分のほうは値上げをしたくはないけれども、みんなが値上げをするということになったから、やむを得ないと、こういう解釈も事実上成り立つわけですね。だから、そういうふうな解釈によれば、一つの証拠というものが、現実に問題点があるわけです。全然それがない場合においては別にしても、やむを得ず全幅的に新聞値上げをするから、自分のところもやる、それを読者に対して値上げをするための方便だ、あんたは、こういうふうに解釈する。その解釈も一つの方法かもわからん。しかし、すなおに解釈して、またみんなが上げたということを決めたから、私のところも上げるんだ、こういう解釈も私は成り立つと思う。  だから、そういうふうな客観的な一つの証拠というものもあるといえばあるわけだから、公取という立場からいえば、三百九十円というものに線をそろえて一斉にやったこと自体は、たとえ証拠なくしてもおかしい。たとえば、毎日が三百九十円というならば、読売は日曜版を廃止して三百七十円、あるいは朝日は四百円なら四百円、そこに各社の経営能力というものもいろいろと相違がある。全然そういうことがないならば、三百九十円ぴたりと、こう出るなんということは、これはおかしいですよ。各社別にお話し合いをして、どうもやはり経営上値上げが必要だということになれば、そこにおのおのの社のいろいろとそろばんがあるということになれば、三百八十五円、あるいは四百円、三百七十円、いろいろな線が出てくるやつを、みんなネコもしゃくしも三百九十円、だいたいおもだったところが、そういうふうなところが出てきているところへ持ってきて、やむを得ずこういうふうに値上げしますという一つの事実がある。これを客観的に見れば、ははあやっぱり三百九十円にそろえるためにいろいろと御苦心をなされたなということは、公取のほうだっておわかりになっていると思うんだ、佐藤さん、おわかりになっておると思うんです。だから、その場合において、まずやるべきことは、埼玉新聞の当事者を私が公取委員ならば呼んで、その間の事情をよく聞かなきゃならんと思うんですが、埼玉新聞のほうは聞かれたんですか。
  187. 坂根哲夫

    説明員(坂根哲夫君) 私は、衆議院でも答弁いたしましたが、たしか呼んでいませんです。
  188. 岡三郎

    ○岡三郎君 呼んでいない。
  189. 坂根哲夫

    説明員(坂根哲夫君) はあ。
  190. 岡三郎

    ○岡三郎君 そうするというと、これは必要以上に、そういう資料というものを軽視して、いわゆる一般の購読者を相手にしないで、実力のある影響力のある新聞社のほうの方向へのみ顔を向けていかれたのではないかという、こういう疑いとか疑問を一般の人々が持つということは、私は当然ではないかと思う。これは公取のために、まことに惜しむのですがね。そういうふうに出てきた一つの証拠的なものをつまびらかに審査するということ自体も、私は公取の責任ではないかというふうに考えるわけです。それをしもしておらないで、あれは値上げをする立場を有利にするために、ああいうふうな言葉を使ったんだという解釈は、これは公取としては、まことに怪々たる判断でないかというふうに一般の人が考えておることを私自体は承認せざるを得ないと思う。そういうふうな角度の中で現に三百九十円が価格として行われておる。  こういうふうな点で、ほんとうに個々ばらばらであるならば、私は違った価格が出てくると思うんですが、しかもそれが、今各委員から言われておるように、今度は新聞社の方で、いろいろとその公取の方に、もう各社の態度というか考え方というか、そういうものを申し出てきた。ところが、それがくしくもまた線をそろえて、文言内容も全く同じである。これは一体何だということになるというと、これはまたよく御相談あそばされたんじゃないかと思う。まことにみごとだと考えるのは、私は、常識じゃないかと思う。少くとも各社が各自の独自の立場で公取に申し出るということになれば、てにおはぐらいは違ってくるのが当然だし、内容文言、それぞれ各社においても考え方があると思う。それを数多くの社が、全部同じ文章で、大体一定期間の中において、そういうことをいってきたということになるというと、これは、初めも一緒だったから、まああとも一緒にやろうじゃないか、こういうことに、私は、やはりそれを各社が抜けがけに勝手にやるということは工合が悪いから、一つ一斉にやろうじゃないかということで、それをやってきたんではないかというふうに解釈する方が、私は、まあ常識的じゃないかというふうに考えます。  そういうふうなことを考えたときに、今度は三百三十円なり六十円なり、各販売店が、それぞれ苦労の中で、やはり商売を伸ばしていかなければならぬし、お得意さんを減らしちゃ困る。しかしいろいろないきさつがあって、三百九十円といったって、なかなか承知してくれない、こういうふうな中において、また一定地域の販売といいますか、購読者の所得というものは個々ばらばらなんです。これは佐藤さんもわかる通り一つの販売店の周辺におるところの購読者、経済的にもばらばらだし、それからいろいろな立場の人もおるかもしれないということになれば、そこにある販売店が自己の営業を盛んにし、その自分の新聞を売るために、いろいろと苦労をしていくということもわかるわけです。そういうところについては、今度は二百九十円でないというと、独禁法に違反するんじゃないかということになれば、まるでもう初めから最後まで、全くこれ新聞社の、言葉は悪いことになるかもしれんけれども、走り召使か走り使いという印象をこれまたその購読者が持つということも、私は、感情論ではなくてどこまでも公取というのは、大資本家の味方であって、購買一般の消費者の味方ではないというふうな印象を強く持たせるんではないかというふうに私は考えるわけです。この方が現状の認識においては、客観的じゃないかと思う。  そういうふうに状態があるものを、今公取が、この段階に立って処置するとなれば、一たん佐藤さんの方で、ああいうふうなことを公収できめたことについては、なかなかもとに戻して審判開始するということは、なかなか困難かもわからぬが、事実上において商売をしているもの、販売店が、いろいろな苦肉の策でやっているということ、そういうふうなことの中から、事前にそこに自由に行われてきているということをみたら、振り返ってみて、今度はそれは不公正な商売だとか何とか、なべ、かまの問題と混同して今度はそれと一緒に、これはいかぬということを言い出すというと、これは、ますます感情的にも筋がめちゃめちゃになってくる。公取自体に対しても、不信の感情というものが、これは解け切れないものが将来残されてくる。そういう点については、実態はなかなかむずかしい。で、独禁法の運営についても、なかなか現状は困難な点が多くできている。そういうふうな点からみてこれは一応三百九十円というものの相場が、ここできまったが、その相場のきめ方自体は、全く無協定の中で当事者が全然相談しないでやったとも思われないが、証拠がないから仕方がない。しかし現状の販売店で、いろいろな仕事の中で、これはいろいろな消化のされ方をしているということをみたときに、あなたの方としても、やはりこういう点については、もう少し、もう少しというよりも、この成り行きについては、経過を見て、真実三百三十円で販売店がやっている。それぞれの購読者、それぞれ違うわけですから、生活保護を受けている人もあれば、そんなものは、新聞読む必要はないんだということになれば、これは別ですが、いろいろな階層があるのだから、そういう点については、そこまでは、おれたちも考えておらぬというふうな見解でも表明されるか、何かしなければ、この問題については、何か不公平な印象がぬぐえないと私は思う。  これについて、どういうふうにお考えになっているか。
  191. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) ただいまの現実の末端における新聞の販売の問題につきましては、先ほど事務局長も説明いたしましたように、こちらで今調査をしておる段階でありまして、御趣意の点をよく考えて善処したいと思います。
  192. 奥むめお

    奥むめお君 今、法制局長おみえになったようですが、先ほどから、新聞代の値上げの問題が出まして以来、公正取引委員会発言が、私たちに疑義を感じさせる。それは今までの例をずっと見ておりましても、共同して不公正な取引をするということは、これは違反になるけれども、それを共同の事実は認める、だけども、拘束力がないとだめなんだ。拘束の何の事実も認められないから、これは不問に処するという委員長談話でけりになったのですね。この事件。御承知のように、この拘束力というものは、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の中で、どういう位置を持つものですか、拘束力というものは。
  193. 斎藤朔郎

    ○法制局長斎藤朔郎君) ただいまお尋ねの問題は、独禁法二条六項の「共同して……。相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、」ここの文句の解釈問題だと思いますが、御承知のように法律の解釈につきましては、いろいろの説が出るわけでございまして、この「共同して……相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより」という文句の解釈につきましても、公取委員長からおそらく御説明のあったことかと思いますが、共同遂行ということの中にも、拘束性というものがプラスされるのだ、拘束性のある共同遊行だと言いかえれば、この文句を、拘束しもって遂行するというような意味にとるような説も、これは学説として少くないようでもありますし、またそういう裁判例もあるように聞いておりますが、おそらくそういう考え方としては共同遂行という文句自体には、拘束ということは字句の上ではかかっておりませんけれども、拘束性のないような共同遂行を独禁法違反として取り上げる必要がないのだというような考え方かとも存じますけれども、しかし反対の立場から申しますれば、消費者側からいえば、拘束性があるなしにかかわらず、値が上げられてしまえば、それは非常に困ることでございますから、共同遂行には拘束性というものは要らぬじゃないかと、こういう反対説も出し得ると思うのでありますが、そのどっちの説がいいかということにつきましては、これはすべての法律解釈の問題についても同様でありますように、そこにきめ手というものはわれわれの方でもないわけでございます。ただ私の職務上、すなわち法制局としていろいろの立案に関与しておる者の立場といたしましては、法文の字句をあまりに無視するということにはどうもちゅうちよいたさざるを得ないのであります。その共同遂行ということに拘束性を加味して解釈するという通説的の立場に対しましては、法制局といたしましては疑問を持っておる次第でございます。ただそういうことを申しましたからと申しまして実際の具体的の事件の処理についてとやかく申す権限は法制局にはございま正せん。公取がいかなる立場でどういう解釈をおとりになっておるかということについて、私がここでとやかく批判をする気持はございません。一応法制局といたしましては、通説的の見解――共同遂行に拘束性のある場合だけだという解釈については疑義を持つという、こういう程度でございます。
  194. 奥むめお

    奥むめお君 大へんよくわかりました。だけれども、この法律を見ますと拘束という字はないのですね。字はない。ところが、今度の公取の発表によりますと、法律にない字を共同と拘束というのを二木立にして、非常にはっきり打ち出してきておる。そして共同したことは認める。だけれども拘束性を認められないから、その証拠がないからこれは不問にする。こういう解釈になるわけですね。
  195. 斎藤朔郎

    ○法制局長斎藤朔郎君) さっきも申しましたように法律の解釈が二通りありまして、共同遂行があっても、それが拘束性のある共同遂行でなければならぬ。そういう見解を公取がおとりになったことが前提になって、ああいう委員長の談話になったものと聞いております。ただその前提をとるかとらぬかは、その人の立場の相違でございまして、ここは結局きめ手というものはないのでございます。
  196. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 午前中にいろいろ伺ったのでありますが、ちょうど法制局長が見えたので関連してお尋ねしたいのでありますが、結局私どもの知りたいことは審査の経過である。ところが、なかなか公取側はこれを拒否して納得をしない。これは独禁法の三十八条あるいは三十九条というようなものの建前に立っての御公言かとも思うのでございますが、国会は御承知通り、公取の直接の監督機関であるわけであります。しかも憲法六十二条の国政調査権の発動という問題もあるわけなんであります。これが事件が審査中であるならば、われわれはそれを要求して拒否されてもあるいはやむを得ないかもしれませんけれども、すでに一応事件が終ったという建前からいうならば、当然われわれのいわゆる憲法六十二条の国政調査権というものが発動し得るのじゃないか。そうするならば、われわれ委員の要求に対して公取側が拒否する私は何ものもないではないかと、こう解釈を私自身はしておるのですが、局長いかがですか。
  197. 斎藤朔郎

    ○法制局長斎藤朔郎君) お尋ねの独禁法三十八条と国会の権能として持っております国政調査権との関係でございますが、独禁法三十八条の規定があるからといって国政調査権ははばまれる趣旨ではないのではないかと、こういうお尋ねのようでありますが、私も同じように考えております。ただ、資料なりの提出を国会が求めました場合に、国会法の何条でございますか、百四条に、記録提出の要求を各議院または各議院の委員会から官公署にできることになっておりますが、そういう要求があったときには、その求めに応じなければならない、こういう国会法百四条の規定が国政調査権を受けてその手段として設けられておるわけでありまして、こういう要求があって、実際事実上それを出さなかった場合に、強制力があるかと申しますと、その点は国会法で参りますと強制力は何にもないわけでありますけれども、結局さらに進んで、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律の運用に今度はなって参りまして、ぎりぎりの線で参りますと、例の内閣声明によって提出を拒否されれば、それ以上その資料の要求はできないことになってしまう、こういうことになるわけでございます。
  198. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 わかりました。
  199. 奥むめお

    奥むめお君 よくわかりました。その手続をとりたいものでございます。あなたのおっしゃる拘束力というのは何を含んでいるとお考えでございましょうか。拘束というのは、どういうことが拘束というのでございましょうか。
  200. 斎藤朔郎

    ○法制局長斎藤朔郎君) 「相互にその事業活動を拘束し、」のこの拘束でございますね。その拘束をここで簡単に定義いたすことは非常にむずかしゅうございますが、要するに共同の事業者間の当事者の自由意思の活動を押えるというような常識的な意味にしか考えられませんが、拘束性というのは必ずしも罰則というような強いものでなくても、事実上ある程度の拘束力があれば、拘束性があると考えていいと思います。
  201. 奥むめお

    奥むめお君 今までの公取委員会側の発言を総合しますと、拘束は罰則を伴うという解釈なんですね、私どもの聞いている範囲では。そうすると、今の法制局の御意見と公取とは非常に意見の違いがあることが私たちははっきりわかりましたから、どうもありがとうございました。
  202. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) 今の奥委員のお話で、拘束力というのは罰則がなければいかぬということは、私どもの方といたしましてはだれも言った記憶がないので、罰則があれば一番はっきりするという意味で、罰則がないから拘束力がないということは私は言った覚えもないし、私の方の職員も言っていないと思います。
  203. 奥むめお

    奥むめお君 私はそれを質問した人間ですが、坂根事務局長も確かに言ったと思いますから、事務局の方で速記録を調べて下さい、八月十日の。それは私の耳に残っております。
  204. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 さいぜんから各委員委員長の問答を聞いていると、独禁法はそういう調子で今後やられると、今回の新聞に始まって一切のものに適用されて大へんなことになってしまうということで、新聞ばかりでなくて、将来のことにまで影響してくるのですがね。それで委員長、端的にお伺いしますが、たとえば今回の新聞がこういうふうになったことについて、新聞社が値上げのことについて話し合いもしません、何にもやらない。しかしながら偶然の一致で、いつから上げます、金額はこれこれにしますということは、たまたま偶然であって、そういう話し合いは全然なされておらぬというように委員長委員長談話発表後、各委員を招集してお話し合いをなされたように承わっているが、全部の委員の人が、これは新聞社が会って話したことでなくて、もうあずかり関せぬことで、みんなやったことがたまたま偶然の一致だ、というように委員長並びに各委員が理解されてこういうことになっているんですか。
  205. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) 話し合いも何にもないということは私は言っておらぬし、われわれの方の委員も考えておらぬわけです。ただ、その値上げをするという意思の合致ですね。共同行為、これを維持するという拘束力、それについて意思の合致があるという証拠がない、こういうことを言っておるんで、話し合いがないということは絶対に言っていないのです。
  206. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 そうすると、何らかのとにかく連絡があったということになると、委員長委員長のおっしゃる、証拠がなくて人を処罰できるかという、それは僕も全くその通りで、ごもっともなお説だと思う。しかし、その証拠についてですが、昭和三十一年十一月九日に、日本石油事件というのが起きて、これは高裁の判決が出ている。この判決は、御承知通り、共同認識ということについては、共同認識と意思連絡があれば当然ひっかかってくるというような高裁の判決があるわけですよね。たまたま東宝の事件しか――さいぜん局長さんおっしゃらなかったが、こういう判決も出ているわけです。ですから、新聞社が連盟して一札はんこをついた以外でも、電話で連絡して意思の連携をはかったということだけでも、これは当然ひっかかってくるわけですね、高裁の判決では。ですから、あなたのおっしゃるその証拠がないということは、何をさして証拠がないということをおっしゃるか、われわれ聞いていてわからぬ。僕ら当然かかるものだと思うけれども、証拠がないと言われりゃそれまでだが、そのあたり明確にもう少し、あなた並びに各委員は、全く意思連絡がなかったという、こういう観点に立って結論を出されたものかどうか、こういうことを一つお尋ねいたします。
  207. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) 意思連絡と申しますか、話し合いが全然なかったとは思わないので、新聞社の連中が集まっておるということはわかっております。しかしながら、そこで拘束力ある共同行為、すなわち意思の合致があったかどうかということはわからないと、こういう意味であります。わからないというか、あったという証拠が見つからぬ。どこにないかといわれても、ないものを証拠だてるということは、これはむずかしい話である。こういう話で、探すのであって、探して見つからぬものを、どうして見つからぬかといわれても実は困るんで、われわれの方の事務局としては、できるだけ骨を折って証拠の収集に当ったんだけれども、審判を維持するに足る十分な証拠は見つからない、こういうふうな状態なんであります。
  208. 岡三郎

    ○岡三郎君 ここは常識的に、新聞社の側に立ってしまえば簡単です。しかし、三百九十円というものの事実がある。そうして、ここで新聞社の人が、今言ったように、集まった形跡もある。今そういうふうに委員長言われたですな。そういうこともあるらしい。ということになると、一斉に値上げし、値上げの額が同じで、しかも、新聞社の連中が集まった形跡があるということになれば、これは取り調べることに値いするですな、これは。証拠とか何とかというよりも、集まった形跡があって、しかも、どういう話をしたか知らぬけれども、ばかんと三百九十円、一斉にやってきた。こういう事実があって集まったという事実が大体想定されるということになれば、これは調べるに十分値いすると私は思うんだが、それをなぜ調べないんですか。審判部より調べないんですか。
  209. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) われわれといたしましても、三百九十円になった事実、集まった事実ということは認めております。それだからこそ審判部に命じまして、あらゆる証拠を探させた。ところが、その結果、審判を維持するに足る十分な証拠を得られないから審判を開始しない、こういうことでございます。決してやらないわけではない、審判部としては一生懸命やったんです。
  210. 岡三郎

    ○岡三郎君 それはなかなか、非常に何というんだが、消極的で、集まった事実もあるし、三百九十円の事実もあるし、一斉にやったんだ。それで、審判部へいってやったが、証拠が出てこない。審判の方も非常に不満をいっているんです、公取委員長に対しては。私はそういうふうに仄聞しています。委員会内部において、調べにいった審判部が非常に不満を持っている。そうして、とにかく委員長にいろいろとお伺いを立てているような話も聞いているが、いろいろな相互間における割り切れないものがここに残って、そうしてここに来ているわけです。だから事実上において集まったということがあるし、ここに価格がこれだけ値上りしたというようなこともあるし、一斉にやったということがあって、審判部がこういう取扱いについていろいろな問題を持っているということになれば、こういうことを明瞭にするために、かりに私が新聞社ならば、これは私はやはり審判に付して明快にやってもらった方が気持がいい、ガラス張りできちんとしていいということになると思うんです。そういうふうに私は解釈する方が常道じゃないかと思うが、どうですか。
  211. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) 審判部が不満を持っておるかもしれませんが、これはちょうど刑事事件で検事控訴をやったやつが却下される、無罪になったというような場合と同じことで、これは審判部としてはできるだけやる、自分のやったものが通るということについて非常な関心を持つ、これは当然の話であって、また、そうあってもらわなければ困るのですけれども……。
  212. 岡三郎

    ○岡三郎君 いや、審判部だけじゃないですよ。それも要件の中に一つ入っているが……。
  213. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) 審判部がいいからといって、それじゃ委員会が要らぬというわけにはいかない。委員会はやはり裁判所的な性格もあって、冷静に判断しなければならぬ。われわれは審判部の努力は十分買いますよ。やってくれたけれども、冷静に判断して、審判を維持するに足る十分な証拠がないという判断をしておる、そういう結論になっておる、こういうわけであります。
  214. 岡三郎

    ○岡三郎君 いや、その点についてはわかるが、そうするというと、私はまあ、これはあとでさらに適当な機会を持ってやらなければならぬが、そうするというと、ここで、われわれが資料を要求するこの資料について、誠意をもってこたえる、そういう精神が委員長にありますか。それをちょっとお伺いしておきたい。公明正大ならばできるはずだ。
  215. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) 先ほど申し上げます通り、独禁法の趣旨にかんがみまして、差しつかえのない資料は出しますけれども委員会の合議を秘密にしておくという趣旨から考えて、出すのが不適当と思うものはかんべん願いたい、こういうふうに申し上げておるわけでございますし、今でもそう思っております。
  216. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 今まで御答弁をいろいろいただいたんですが、どうもすっきりしないんです。しかし、われわれも明確にして、あくまでもすっきりさしてほしい。具体的なことになるんですが、委員長が、今月九日ですか、衆議院商工委員会でこの問題が論議されたとき、拘束の問題をやっているんですね。相互拘束というものが明確にならなければ、違反であるか、違反でないかということが判断できない。そういうことで、つまり岡委員の質問に関連して、審判部で調べてきたものも相互拘束でないということで却下したと思うんだが、相互拘束ということは、具体的に一つ二つ例をあげて、どういう場合までは委員長として相互拘束と認めるものか、どの程度になると認めないものか、一つ二つ、今まで相当数例があるんですから、参考になるように説明をしていただきたいと思います。
  217. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) 相互拘束の問題は、先ほど申します通り、共同行為としてみんなが意思が合致して、三百九十円なら三百九十円に値上げする、そうして値上げ価格というものは各自がこれを維持する義務があるということになると、相互拘束があると考えております。
  218. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 そこで佐藤委員長、蒸し返すようですが、あなたは、新聞社が一切がっさい連絡をとらぬで、偶然の一致で、金額から上げ日程等について全く偶然の一致とは私も考えておりません、というふうに答弁されたと思うんであります。しかし、その明確な証拠物件、こういうものもない、こう言うのです。そこで、さいぜん申し上げました三十一年の日本石油事件の高裁の判決は、連絡をとっただけで、とにかく拘束したとみなす、という高等裁判所の判決があるんですよ。これにはひっかからぬのですか。こういうことはどう違うんですか。確かに連絡があったから、大体日にちも、金額も、方法も一致しただろうということは、佐藤委員長、大体認めているわけですね。そうすると、そういうことが直ちにこれはかかりましたという高裁判決が出ているわけです。三十一年は横田さんおったときだから、横田さんはああいう清廉潔白の人だったから、やめてだんだんふやけてきたからこれはやれぬようになったと言えばそれまでです。あと何も言えませんけれども、しかし同じ法の精神でやっているのですから、委員長がかわったからつてぐらぐらすべき筋合いのものじゃない。私はそう思うのです。ですから、あなたのお話をこの討論の中で承わっていると、どうも三十一年九月の判決と同じような結論になるような気がするのです。そこでそれと全然違うとおっしゃっているが、これと同じじゃないですか。
  219. 佐藤基

    説明員(佐藤基君) 三十一年九月の判決についてちょっと私今記憶しておりませんが、私のさっき申しました高裁の判決では、共同行為は、事業者が共同で相互に一定の制限を課し、その自由な事業活動を拘束するところに成立するということを言っておるのでありまして同じ年の他の高裁判決も同じことを言っておるんで、やっぱり相互拘束ということが、独禁法という法一律におけるところの違反事件の成立の重要な構成要件だと考えておるわけなのであります。
  220. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 ところが、三十一年の十一月九日の判決はそうじゃない。あなたの方が詳しいはずですが、別に共同拘束ということは高裁で言っておらぬ。共同認識あるいは共同連絡あればこれでもう証拠が十分だと言っているのです、高裁は。そうでしょう。ですから、あなたは全然認めていない、新聞社の今回の処置は偶然の一致でああなったんだという見解であればそれまでだけれども、あなたもその点は何か連絡あったでしょうということをかすかながら認めているから、そうなればこれと同じことになるでしょう。全然新聞社が――朝日、毎日、読売でやったことも、これは各個別々にやったのだが、たまたまそれが一緒になったんだという、そういう御見解であれば僕の理論は成立せぬけれども、あなたのように、やっぱり何か連絡あったでしょうぐらいになると、この問題と関連してくるでしょう。
  221. 坂根哲夫

    説明員(坂根哲夫君) ただいま阿部先生のお示しになりました三十一年の判決をここに持っておりませんから、判決の内容を覚えておりませんが、私どもの記憶では、その二十八年に別々のケースで二つ判決がございまして、それはいずれも、今佐藤委員長がお読みになりましたように、共同行為には相互の拘束が必要だという判決をいたしまして、その後相互拘束を特に問題とした判決もないし、おそらくその二十八年の高裁の判決の筋は変っていないと、私は理解しております。
  222. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 あなたちょっとおかしいじゃないですか。私はその判決の抜粋を持ってきて話をしているんですよ。私はここへ持ってきておりませんが、私の考えではということは、これは失礼でしょう。こっちは判決の全文を持ってきているんです。あなたはなんか知らんけれども、単なる説明員か政府委員でしょう。全然持ってきておらぬで……。私は抜粋を持ってきた上で、大問題だから自分の頭で記憶しておれぬということで、抜粋して持ってきているのに、あなたはどれくらい能があるか知らないけれども、私の記憶ではこうなっておりますということは、委員会の侮辱もはなはだしいでしょう。何たることです。
  223. 坂根哲夫

    説明員(坂根哲夫君) ただいまの私の御答弁がはなはだ委員会に対して侮辱しているのは取り消しまして、三十一年の判決を私帰りましたら読みまして、あらためてまた阿部先生にお願いしたい、こう考えております。
  224. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 今ここに持ってきて……。特にあなたの部課長はたくさんいるでしょう。大体私は心配だから抜粋したものを持ってきた。私たち以上にあなた方が勉強していなければならない。前々から公取委員長にお願いしますといって出している。緊急に出したのじゃないですよ。大体そういう精神だから今回のような問題を起すのですよ。そんな精神で出たとこ勝負でやるものですから……。
  225. 山本利壽

    委員長山本利壽君) それじゃお諮りいたします。  この問題はきょうはこのくらいにしてまだ次の問題について通告がございますから移りたいと思いますが、異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  226. 山本利壽

    委員長山本利壽君) それでは……。
  227. 岡三郎

    ○岡三郎君 菅野長官はどうなんですか。
  228. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 菅野長官はきょう午後出席のはずでございましたが、商工会議所の総会がありまして、総理、通産大臣とともに出席いたしておりますので、明日出席するように回答がありましたが、きょうは……。
  229. 岡三郎

    ○岡三郎君 ちょっと委員長にお伺いしたいが、商工会議所でどういう相談をされておるか知らぬが、国会で委員会が開かれて、そうしてそこで出席を要請されておるわけですな。そうするというと、商工会議所で何時から何時までやっているか知らぬけれども、少くともそれは失礼じゃないかと私は思うのですが、委員長どうですか。委員長、そんなことで委員会の運営ができると思いますか。
  230. 山本利壽

    委員長山本利壽君) お答えいたします。今日経済企画庁長官に出てもらって、一番おもな問題は、経済の見通しに関する問題とか、それから台風被害に関する問題とか、いろいろ関連した問題があると考えますが、目下調整局長が経済見通しに関していろいろ資料の準備中でございまして、きょうはそれがととのわないようでありますから、明日それを持って出席したいという内意がありましたので、大臣と局長とそろっておいでを願う方が委員会として適当かと考えます。御了解願います。
  231. 岡三郎

    ○岡三郎君 了解。それならわかる。   ―――――――――――――
  232. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 次に、沖繩自由港の問題について島委員より質疑の通告がございます。
  233. 島清

    ○島清君 仄聞するところによりますというと、沖繩が先年でしたが、B円からその通貨がドルに切りかえられました際に、同時に沖繩のある一定地区に自由貿易港を設定するという当時の発表がなされました。そうしてその後あるいは必要なる法律などの制定を見まして、十月の一日から発足するやに承わっておるのであります。自由貿易港ということになりますと、その典型的な姿というのが香港だと思うのですが、沖繩の方で香港みたような大規模自由貿易港の設定を目途としておるのか、それともまた、それを上回るような大きな自由貿易港にしたいという意図があるのかどうか、私は寡聞にいたしまして承知をいたしておりません。  そこで私は、これから政府にお尋ねをいたしたいと思っております私の立場を申し上げますと、実は沖繩の方で自由貿易港が設定をされました場合に、果して沖繩県民が利益を得るのか、それともまた日本側において利益を得るのか。その利害得失という点については十分に理解をいたしておりません。そこでかりに香港並みの自由貿易港としてその機能が活動するということになりますというと、それは日本におきましても十分に考えておかなければならない問題を多分に含んでおるのではないか。こういうふうに考えますので、今は私は、沖繩自由貿易港の設定についてこれを歓迎をするとか、あるいは反対をするとか、こういったような立場で御質問を申し上げるのではございません。全くの白紙でございます。そこで全くの白紙の立場に立ちまして、そして自由貿易港が設定された場合の利害得失について私はこの際ただしておきたいと、こういうような念願でございます。  そこで、そういうような立場に立ちまして本案件を考察いたしまする場合に、自由貿易港というのは、よそから物を持ってきまして、そこに何か包装をかえるとかあるいは加工するとか、こういうふうにいたしまして、そしてそれを外国の方に輸出をする、こういうふうな建前であろうかと考えます。そうなりますというと、沖繩並びに沖繩を巻きまする経済状態を眺めまする場合に、日本から原材料を持っていかなければ、それに加工するというようなことも困難ではなかろうかと、こういう工合に考えるわけでございます。今講和条約にどういう規定がございましょうとも、政治的あるいは法律的には潜在主権というものがございましょうとも、実際、貿易の面からいたしますというと、日本政府と琉球側の方との支払いに関する覚書、これによってもわかりまするように、外国並みの支払いの覚書になっておるわけでございまして、貿易の面から見ますというと、これは全くの外国みたようになっておるわけでございます。そこで、その外国並みになっております沖繩の方で自由貿易港が設定をされて、そして向うがメイド・イン・リューキューというのか、メイド・イン・オキナワというのかは知りませんけれども、貿易が行われていく。そして原材料が日本から運ばれていって、包装の仕方をかえ、加工をしてどこの市場の方へ出すかわかりませんが、おもには私はアメリカあたりの方に輸出されるのではないかと思います。そうなりますというと、そこで加工しあるいは包装がえをされまするのは、日本の貿易品からいたしますというと、おもに中小企業者の手によって生産をされました輸出品というものが向うでも扱われるのではないかと、こういうふうに考えるわけでございます。そうなりますというと、アメリカの方で、同じ材料を使って同じような品物が、片っ方はメイド・イン・ジャパンであり、片っ方はメイド・イン・リューキューかメイド・イン・オキナワで、同一の市場で売られるということになりますと、何かそこに、市場において同一商品が競合するような形が出てくるのではないかと、こういうことも懸念されるわけでございます。もしそういうふうな懸念があるといたしまするならば、日本政府の方におきましては、この沖繩と結んでおりまする覚書――本土と南西諸島との間の貿易及び支払いに関する覚書、こういうような覚書に対しまして、もっときついものにしなければならないのではないかという考え方が、当然に起ってくるのではないかと私は心配するわけでございます。しかしながら、仄聞するところによりますというと、沖繩側におきましては、この覚書の第七項がございますというと、今私が御指摘を申し上げました原材料というものが、日本の方から思うように入らないから、これを緩和してもらいたいという覚書改定の要望が強く日本政府の方に寄せられているように聞いているわけでございます。どのような考え方でどのような回答を寄せられているか私は存じませんが、少くともこの覚書の改定要求から見まするならば、これは日本品が参っております市場において同様な品物が競合して売られるというようなことについての心配する懸念というものが、何か知らないけれども、立証されるような気がいたすわけでございます。私は、そういうことでございましても、日本が利益をするとか、あるいは沖繩側の方で利益をするということでございますならば、そういう問題を乗り越えてもやらなければならないというふうに考えます。そこで私は、自由貿易港が設定をされました場合の利害得失ということについて、冒頭に申し上げ通り、だれが一体利益をするのか、その利益するのは日本側なのか沖繩側なのか、沖繩側という形で利益を受ける場合には、その扱いまする側においては沖繩県人なのか、アメリカの商社であるのか、あるいは第三国人であるのか、こういうようなものを一切承知をいたしておりませんので、そこらの点について十分に私などが理解のできるように説明をお願いいたしたい、こう思うわけであります。
  234. 松尾泰一郎

    説明員松尾泰一郎君) お答え申し上げますが、ただいま先生からるるお話がありましたように、昨年の九月に琉球におきまして、B円から米ドルにいわゆる法定通貨を切りかえたのでありますが、ちようどその前後に高等弁務官布令というようなものが出ておりまして、琉球列島における外国貿易に関する政策が琉球政府に指示されているのであります。その中に、自由貿易地域の設定ということが規定をされているのであります。その後琉球政府におきましては種々調査研究等をされたようでありますが、率直に申しまして、その調査研究の段階におきましては、われわれの方にあまり十分な連絡がなかったのでありまするが、本年の八月の二十七日に、自由貿易地域規則というものが公布をされたのであります。現実の運用は、先生御指摘の通りに、本年の十月一日からいわゆる自由貿易地帯を利用する者の申請を受け付けるということになっているのであります。そこで今御指摘のような香港並みの自由貿易港にあるいは発展していくものなのか、あるいはこれは沖繩の利益なのか、日本に対して利益なのかという、いろいろの自由貿易地域設定に伴う利害得失ということをわれわれも研究をいたしているのでありますが、何分今の段階におきましてははっきりとした見通しを立てることが非常に困難でございまして、現在のところ、自由貿易地域として考えられておりますのも、那覇港におきまするガリオア倉庫二棟、千三百坪程度のものであります。これを利用するという建前になっておりまして、貨物の保管、それから展示、再包装等の簡単な作業を行う程度で、加工等は行わないというふうな状況であります。従いまして、自由貿易港に発展するかどうかという、ことにつきましては、今後の動向を見守るほか仕方がないのでありますが、私の個人的な見解を申し述べますならば、そうはいくまいというふうに考えておるのであります。  本来、いわゆる自由貿易港並びに自由貿易地域というものを考えてみますると、それ相当のヒンターランドも持ち、港湾の設備あるいは倉庫の設備、それから金融機関の整備、その他万般の要件が整わなければならぬのでありますが、どうも沖繩、那覇港を考えてみた場合に、将来はあるいはそういうようなことに繁栄をしていくのかもしれませんが、どうもさようなふうに考えられないのでありまして率直に申し上げますならば、現在の琉球経済というものが、ああいう基地経済の様相を呈しておるわけでありますし、また貿易面につきましては、日本にだいぶおんぶをしておるというような現状でありまするので、今後その自由貿易地域の構想が成功するかどうかということについては、私は率直に言うて、かなりの疑問を持っておるのでありまするが、ともかくそういう制度なり、そういう地帯が設けられた以上、われわれとしてはその利害得失を研究をしなければならぬのであります。まあ琉球にとっての利益ということになりますと、御存じのように琉球は域内にあまり見るべき産業もございません。輸入依存度は非常に高い地域でございますので、従ってそこにおる住民に何らかの職を与えるという意味からは、自由貿易地域の構想そのものは何らかのやはりプラス面も考えられようかとも思うのでありますが、従ってそのやる方とない方とがどっちがということになりますと、琉球だけの利害からいうと、何がしかの利益になることは明らかではなかろうかと思うのでありますが、日本側にとってみますると、これは非常に複雑でありましてただいま先生からも御指摘がありましたように、日本と南西諸島との間の貿易及び支払いに関する覚書もあり、決済におきましてはドル決済――外国扱いではございまするが、実際問題として、輸出入につきましては、内地といいますか、国内に準じた扱いをいたしておるのでありまして従いまして、率直に申しますならば、香港が近くにもう一つできたというような感じになるわけであります。まあ今のところはさような大きな規模のものでもなし、まあ将来の発展性はわかりませんが、かりに若干の活動を営むということになりますると、香港が近づいたというような格好になるわけであります。そうなりますと、今もお話がありましたように、対米向けのみならず、その他の地域に対しまして各種の商品について輸出の自主規制をいたしておる日本の輸出の現状から見ますというと、この自由貿易地域を通ってアメリカなりその他の国に出ていくということになりますと、いわゆる日本品の第三国経由輸出という問題が起るわけであります。御存じのように金属洋食器具にいたしましても、その他の商品にいたしましても、第三国経由輸出の問題は、とかく問題の種になっておりまするが、そういう問題が頻発をするおそれがあろうかと思うのであります。ただこのメード・イン・リューキューならリューキュー、あるいは沖繩なら沖繩ということになりますと、これはまあ今のところは日本品ではないわけでありますから、どういうふうな扱いをアメリカなりその他の国がいたすか、これはまだ未定ではございまするが、まあそのほとんどでき上ったものを持っていりて、そこで包装だけをやり直すとか、あるいはちょっとメード・イン・リューキューだとかいう刻印だけを押して出すというようなことになりますと、結局これは日本品じゃないかというようなことで、ただいま申します第三国経由輸出の問題がやかましくなるのではないかということをおそれておるような次第でありますが、まあ今の段階では、果してそうなるものやらどうかということが、まだよくわかりません。東京に駐在をいたしております沖繩政府の出先の者に聞きましても、明確な説明をいたさないような次第であります。  なお、琉球からの輸出につきましても、御存じのように関税はほとんど無税になっております。あるいは輸入の制度にしましても、自動承認制というようなものを適用しておりまするので、第三国物資が自由貿易地域を通して入ってくるというようなことも考えられるわけであります。まあ、これにつきましては、琉球産品か、しからざるものかの原産地証明というものをはっきりいたしまするならば、自由貿易地域を通ってきましても、これは琉球産品ではないということで、琉球産品にあらざる扱いをすることは比較的容易かと思うのでありますが、何分この輸出の場合におきまして、先生も今言われておりましたような心配をわれわれもいたしておるのであります。  そこで、この南西諸島との覚書の第七項の問題でありますが、この中継貿易につきまして事前の了解を得なければならぬというふうなことになっておるのであります。従いまして、この規定の緩和方を、まだ正式ではございませんが、非公式に打診をして参っておるのであります。近く沖繩政府の経済局長が来られるようでありまするので、いま少しこの現地の実情も聞き、方針その他も伺った上で、われわれの態度をきめようじゃないかというふうに考えておりまして、現在のところ、現に覚書第七項についてもちろん回答もいたしておりませんし、どういう態度をとるべきか、現地側の説明を十分聞いた上で決定をしたい。こういうふうに考えているのであります。  結論的に申し上げますならば、日本にとってはあまり利益はなさそうな感じがするわけでありますが、沖繩にとっては何がしかの利益もあるのではないかというふうに今のところ考えているわけであります。
  235. 島清

    ○島清君 私は、今局長が御答弁になりましたように、沖繩の方で何がしかの利益になるのではないかという見通しをお持ちでありますならば、日本側においては若干の不利益があろうとも、私はこの自由貿易港の設定について日本としては援助する建前から協力をすべきだ、こういう工合に考えます。しかしながら、私はこの自由貿易港を設定したからといって、沖繩側の方に利益になるというようなデータをまだ持ち合せておりません。と申し上げますのは、あれがドルの切りかえと同時にその自由貿易港の設定が発表されたということと、それからこれは最近の新聞――今月の新聞でございますが、それによりますというと、「自由貿易地域関心が薄い?」という見出しで、「経済局照会に反応なし」、短かいですからちょっと記事を読んでみますと、「経済局では、来月一日の自由貿易地域発足をまえに、地元米琉実業人五百人にたいし質問状を送り、事業計画などをきいたが、締切り日の十五日はすぎたというのに、十九日現在でわずか二件しか回答がとどいてない。それも、その会社(うち外人一)の事業内容からして「沖繩自由貿易地域を設定する必要がない」というもので、当局ではその非協力ぶりに頭をかかえている。」、こういうふうに新聞は報じているのであります。沖繩の方が利益になるというならば、利益に敏感な実業人が、五百人にもその質問状を発してわずか二件しか回答を寄さぬということは私はあり得ないと思うのです。  そこで私は、多分にこれは沖繩の人々にも利益にならないだろう、こういうような考え方に基いてそこで貿易地域のその設定は要らないんだというような結論を出しているのではないか、こういう工合に考えるわけでございます。そこで、そういったような、沖繩の住民諸君があまり関心を寄せてないような問題に、法律まで作ってそでそれを促進しようということの意図れを、われわれが勘ぐります場合に、何か日本が戦争に勝利をいたしまして、多くの占領地域を持っておりました場合でも、軍とよからぬ商人が結託をいたしまして、そうしてずいぶん不純な利益をほしいままにした事例を、私たちは数少くなく承知しているわけでございます。何かそういうような意図のもとで、住民の意思とは別個な形で進められているといたしますならば、私はその利する者は沖繩住民にあらずして、沖繩を占領する、その権力にくっついている一部の不良な人々を利するのみではなかろうか、こういう工合に思うわけでございます。  沖繩の金融状況を私どもしろうとが眺めます場合に、中央銀行の役目を果しております琉球銀行の、その株の五一%は軍が持っております。そしてその五一%にものをいわせまして、琉球経済を金融の面からアメリカ軍は自由自在に支配をしております。ところが、ドルの切りかえが完了いたしましてから、アメリカの市中銀行がもう沖繩の方で業務を開始をいたしております。それとこれとをながめまする場合に、もしそれ、かりにアメリカの国籍を持つ人が、ないしアメリカの国籍を持つ不良な商人と結託をいたしまする第三国人が、そういう軍権力者と意思を通じまして沖繩住民の意思を無視をいたしまして、この自由貿易港の設定が行われて、そして運営がされるということになりますというと、何か局長さんがおっしゃいまする、沖繩のために何がしかの利益になるのではないかということが、私はないような気がいたすわけでございます。そこで私がおそれますのは、私は、沖繩のパイン産業を育成しなければならぬという考え方から、先般、局長には、立場上、非常にお許しを願わなきゃならぬというような、きつい言葉をもって私はあなたに質問をし、激励をし、そしてお願いもしたわけでございますが、それは沖繩は、講和条約の第三条によりますというと、いずれは日本の方に返ってくる。で、返って参りました場合に、基地経済を離れた沖繩の諸君が、基地を離れても生活のできるためには、そういう産業を育成しなければならぬのではないか。その産業というのが、また日本にも数少い希少な物資であるといたしますならば、日本政府も、政府の方針として大いに援助してしかるべきではないかという建前をとっておったわけでございますが、今回は、それが発展をして参りますというと、たとえば双眼鏡にいたしましても、ミシンにいたしましても、またトランジスタにいたしましても、これは組み立て式になっておるのでありますから、部品を持っていって組み立てて、どんどんアメリカ人の手によってアメリカ市場の方に運ばれるということになりますというと、私たちはこの双眼鏡あるいはミシンの例のあの過当競争にこりましてそしてあるいは日本の憲法に抵触するような疑いがあるのではないかと思われるような、軽機械の輸出の振興に関する法律と、こういうものを制定したばかりでございます。そうなりますというと、沖繩の方でこの組み立て式の商品をどんどん持っていきますというと、まあアメリカ市場において、こういったような、せっかく憲法に抵触をするのではないかという疑いを持つような法律すら一われわれは中小企業者を保護し、日本の貿易の振興をはからなければならぬという建前で法律を制定したにかかわらず、そうすると、同一のような品物がアメリカの方に出ていくということになりまするというと、一面においては日本商品と競合し、そして市場の方で競争する姿が出てくるわけであります。しかもその競争をいたしまして、その競争いたしました日本商品が負けて、それからメイド・イン・オキナワに市場を支配されましても、その益するところが沖繩県民であるとするならば、私はこの際、沖繩県がああいう状態であるからというので、局長が同情しておられるような立場で、それもまたよろしかろうと思うのです。しかしながら、その扱いまするのは沖繩県民ではなくして、アメリカ人であり、あるいはそれらと結託するところの、よからぬところの商人であるとするなら、私は大へんなゆゆしい問題をはらんでおると思うのです。  そこでもし沖繩自由貿易港、これに協力するということになりますというと、これは日本の方が協力しないと、なかなかそれは作ってみても、運営の面においてうまくいくはずはございません。売られるのは私はアメリカの市場であると断定して間違いないのではないかと思います。たとえば日本の品などを東南アジアの方に出しましても、ドルがございませんから焦げついてしまう。だから結局輸出も不振になるという形でございます。また売ってすぐドルを持ってこれるような地域だといたしますというと、沖繩とアメリカの特殊な事情からいたしまして、アメリカ市場ということになるわけでございまするからして、で、私はその発展するところ、沖繩日本との関係も非常にまずい形になるのではないかと思います。  私たちは、日本の政治家といたしまして、沖繩八十万県民が祖国に帰りたいという気持に対しまして、謙虚な立場からほんとうに帰ってもらわなければならないという気持を持っておるのです。そうであるといたしまするならば、それは貿易の面から、経済の面からいたしましても、沖繩日本との間の溝を埋めて、そしてこの覚書にもございます通り、もう外国扱いなどをしないようにするという状態を作り出すことが、私たちはその沖繩の特殊事情によりよく報いるゆえんだと考えるのです。ところが、今私が例で申し上げたように、日本でも過当競争で、それは法律まで制定をしてそれを押えているというものが、沖繩の方で部品を持っていって組全てられて持っていかれたということになりますというと、それは松尾さんも黙ってはいないと思うのです。やはり沖繩の方にいく商品については、この覚書より以上の厳重な私は規制をしなければならないと思うのです。そうなりますというと、何人も利益をしないような、自由貿易港を制定したがゆえに、そして日本沖繩との間によりよく物の流通に壁を作って、そうしてよりよく溝を深めていくということは、将来沖繩日本に帰ってこなければならぬという運命からいたしましても、ますます私はその実情を遠のかせていくのではないか、そういうような気がするわけなんで、それを私は憂えるわけなんですが、その点については松尾局長さんどういうふうにお考えでございましょうかな。
  236. 松尾泰一郎

    説明員松尾泰一郎君) 大体私もそういう危惧を持っておるということを先ほど申し上げたと思うのであります。元来が沖繩県民の盛り上る構想でこういうものができたのではなくて、高等弁務官の市会に基いてそういう制度を作ったということでありまするので、わが方が質問しても要領の得た答弁ができないというのが実態で、果してその制度がうまくいくかいかぬかということは、琉球政府としても私は確信がないんじゃないかと思うわけです。今申しましたように、経済局長が近くやってくるようでございますが、十分話したいと思いまするが、われわれの受けている情報も、今、島先生がおっしゃったようなあれで、どうもほんとうに腹が入って大いにこれを発展させようという意図があるのかないのか若干疑はしいようなことを伺っているのです。そこで、ただ、私が沖繩に若干利益の面もあるのではないかということを申し上げましたのは、自由貿易地帯ができたから、それによって沖繩の現在の経済が影響を受けるというわけじゃなしに、かりに日本の利益というものを度外視して考えますならば、そこに日本品が入る、そこで加工されていくということになれば、かりにそれをアメリカ人が経営したといたしましても、沖繩県民が就業の機会をかなり持つことも考えられるわけでありますので、そういう点もありまするので、害があるということはちょっと言えないんではないかという意味で申し上げたのでありまして、これももう少し十分検討をいたさなくちゃいかぬと思います。ただ単に私の感じを申し上げたのであります。  ただ、私たちとしては、もちろん沖繩自身のことも考えなければなりませんが、当面といたしましては、日本の輸出政策なり輸出に対する影響というものの方から深く考えなければなりません立場におりまするので、先生と同様の実は心配を持っておるわけなんであります。その意味において香港が近づいたという感じを持つということは、香港を通して物が出ることによって非常に日本の中小企業製品の自主規制に悪影響を及ぼしているわけであります。その点につきましては私も同様の危惧を持っております。従いまして、今後沖繩との接触につきましても十分その注意をして参りたいと、こう思っております。
  237. 島清

    ○島清君 先ほど法律規則の話をしておられたのですが、それは何ですか、あそこにはいろいろとややこしい法律規則がございまして一番優先するのは何か軍の市会だそうでございますが、その貿易自由港の設定に関連をして必要なる法律的な法律規則というものは、民の立法院で制定された法律規則なんでございましょうか、それが一点。  それからもう一つは、かりにまあ日本が協力するのかしないのか、私は存じませんが、協力をしていただいて、それで自由貿易港としてはなばなしく運営をされるということになりましてこれが沖繩日本に返りましたときに、そういう場合には、一体この自由貿易港というものはどういうような立場をとるでしょうかね。もちろん、日本としてはそういうものは必要がなくなると思うのですが、それはやはり今のような沖繩が特殊事情のもとに置かれておりまする間のやはり変形的な貿易港としての姿なんでしょうか。それともまた、それは沖繩日本に戻ってきた場合でも、やはり自由貿易港であったからというて、そういうような機能を発揮する余地があるかどうか、そういうことについてもあわせて説明が願えるなら伺っておきたいと思います。  もう時間もございませんので、私の質問はこれで終りたいと思いますが、また局長さんも十分に説明を承わっておられないようでありますから、相願わくば、一つ通産省あたりから係官を派遣されまして実情を十分に一つ調査をされまして、そして私は若干不利益があろうとも、これが沖繩の方に利益をもたらすものであるというような判断がおつきになりました場合には、私は、ああいったような沖繩の特殊な悲しむべき状態にありますので、日本の利益等は少し乗り越えても、その自由貿易港の設定のために援助、御協力を願いたい。私は反対の意味でこういう質問をしておるのでもございませんので、その点はどうぞ一つおくみいただいて、日本が協力することによって沖繩の諸君が何がしかの恩恵を受けるというなら、それをこの際一つ乗り越えて、援助をするという意味で御協力を願いたいものだと、こう思うわけです。
  238. 松尾泰一郎

    説明員松尾泰一郎君) 第一点の根拠の法令でございまするが、自由貿易地域規則というものが本年の八月二十七日付で、この行政主席の名前で出ておるわけです。それで、前文に書いてありますことをちょっと申し上げますと、「高等弁務官市会第十二号「琉球列島における外国貿易」第五項に基き、自由貿易地域規則を次のように定める。」ということで、要するに高等弁務官市会に基いてこういう規則を定める、こういう法令になっております。  それから第二点の、琉球が日本に返還されたあとの問題でありますが、これは非常にむずかしい問題であろうかと思いまして私の私見を言わせていただきますならば、まあそういう自由貿易港というものはあの地域においては必要はなかろう、こういうふうに考えております。
  239. 山本利壽

    委員長山本利壽君) それでは、本日はこれで終りたいと思いますが、いかがでしょうか。――明日は午前十時から引き続いて委員会を開きます。通産大臣、経済企画庁長官等も出席の予定でございますから、なお督促をいたしますが、委員の各位も御出席をお願いいたします。  本日は、これをもって散会いたします。    午後四時三十一分散会