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1959-10-07 第32回国会 参議院 外務委員会 閉会後第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年十月七日(水曜日)    午前十時十五分開会   —————————————   委員異動 九月八日委員藤原道子辞任につき、 その補欠として小柳勇君を議長におい て指名した。 九月九日委員小柳勇君及び大和与一辞任につき、その補欠として藤原道子 君及び松浦清一君を議長において指名 した。 九月二十一日委員杉原荒太辞任につ き、その補欠として林田正治君を議長 において指名した。 九月二十六日委員林田正治辞任につ き、その補欠として杉原荒太君を議長 において指名した。 十月六日委員松浦清一辞任につき、 その補欠として大和与一君を議長にお いて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     鹿島守之助君    理事            井上 清一君            苫米地英俊君            堀木 鎌三君            森 元治郎君    委員            大谷藤之助君            笹森 順造君            杉原 荒太君            津島 壽一君            永野  護君            野村吉三郎君            加藤シヅエ君            佐多 忠隆君            曾祢  益君            藤原 道子君            大和 与一君            佐藤 尚武君   国務大臣    外 務 大 臣 藤山愛一郎君   事務局側    常任委員会専門    員       渡辺 信雄君   説明員    外務省条約局長 高橋 通敏君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査の件  (国際情勢に関する件)   —————————————
  2. 鹿島守之助

    委員長鹿島守之助君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について報告いたします。昨日松浦清一君が委員辞任され、その補欠として大和与一君が選任されました。   —————————————
  3. 鹿島守之助

    委員長鹿島守之助君) 本日は国際情勢等に関する調査を議題とし、藤山外務大臣に対し質疑を行うことにいたします。  藤山外務大臣から発言を求められておりますので、まず、これを許可いたします。
  4. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は九月の十日に立ちまして、第十四回の国連総会出席をして参りました。その間、メキシコで中南米公館長会議を開きました。それに引き続き、あわせて現下ヨーロッパ事情承知いたしておくことが適当と考えましたので、ジュネーヴにおきまして英、仏、独等の大使を集めましてそこでヨーロッパ情勢に対する分析をいたしました。そして一昨日帰国をいたしたわけでございます。  今回の旅行は、右申し上げましたように、国連総会出席するのが第一の目的でございました。今回の国連総会に当りましては、冒頭におきまして、例年のごとく日本国連に対する所信を表明いたしますと同時に、当面におきます万般の問題、今後の問題等につきまして代表団と打ち合せをして方針を大体確定いたした上で帰国をいたしたわけであります。  また、中南米公館長会議におきましては、中南米における現下情勢、その他日本との関係等につきまして、将来改善を要すべき点その他につきまして検討を加えたわけでございます。  なお、ヨーロッパに参りましては、フルシチョフとアイクの相互訪問という重大な問題が現在ございますので、それらに対するヨーロッパの反応を十分検討して帰って参ったわけであります。  右申し上げました期間中、フルシチョフソ連首相が米国を訪問されたのでございまして、ちょうど私の滞在中にアメリカにおられたようなわけであります。フルシチョフソ連首相アメリカにおけるいろいろな言説なりあるいは行動なり等について観察をいたします機会を得ましたことは、私まことに仕合せだったと考えておるのでございます。  詳細につきましては御質問等ありましたらお答えいたしたいと思いますが、右旅行をいたしましたことについて、簡単ながら御報告を申し上げ、かつ留守中ごのあいさつを申し上げた次第でございます。
  5. 鹿島守之助

    委員長鹿島守之助君) それでは質疑のおありの方は、順次御発言願います。
  6. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ただいまお話のように大臣アメリカフルシチョフ首相アメリカにおけるいろいろな言動その他を身近かに見聞をして来られたと思うのでありますが、このフルシチョフ国連総会における演説、あるいはその後アイゼンハワー大統領との間に出された共同コミュニケ、そういうものをめぐって現在の国際情勢がどういうものであるとお考えになったか。さらに、これが今後どういう方向に発展をし、展開をしていくというふうに観察をされたか、それらの点について御所見を承わりたいと思います。
  7. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回のソ連首相アメリカ訪問は、御承知通りその動機と申しますか、アイゼンハワー大統領ソ連首相を招待した気持、あるいはフルシチョフ首相アメリカに行くという気持は、御承知通りフルシチョフ首相としてアメリカの実情をつぶさに視察してきたいというのか第一の目的であったと思いますし、また、アイゼンハワー大統領としてもアメリカ事情等十分承知させ、両国の間に誤解の起らないようにアメリカ内部を視察してもらいたいというのが第一の目的だと思います。  お互い対立している国の総理が訪問を交換するという事態は、非常に大きな事実だと思うのでありまして、これが行われたことを、われわれとしては喜んでおるわけでありますが、同時に、今回の訪問そのものが、今申し上げたような事情でありますから、すぐに何か当面の問題の解決に具体的に資していくという話し合いが、そう深く行われたとは考えておりません。しかしながら、私どもアメリカにおりましてこれを見ておりまして、両国首相が平和な世界を作っていくんだ、また、主義は違ってもできるだけ共存して行きたいという気持が十分あるということだけは承知しております。将来のいろいろな問題の解決に当って、従来よりも誤解を解け、あるいは道を開き得る—道が開かれていくのではないかという感じを持っておるわけであります。ただ、申し上げましたように、すぐに当面いろいろな問題がこれだけで解決するというわけには、むろん長い間のお互い両国関係もありますし、あるいは両国をめぐるそれぞれの共産圏あるいは自由主義国間の関係もございまするので、簡単には解決して参らぬとは思いますけれども、そういうような相互訪問によって、若干ずつでも意思の疎通がはかられ、そして問題解決に資していくという道が開かれていくということは喜ばしいことだと、こう考えております。
  8. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 もちろん、具体的な懸案についの解決その他がもたらされようとは、初めから予期もしていなかっただろうし、目的にもしていなかったのであります。それは繰り返し説明をされているように、何も交渉に行ったのではなくて、一般的な国際情勢に関する話し合いに行ったのですから、それはむろん当然だと思う。ただ、私たち外務大臣に聞きたいのは、その一般的な話し合いの中から、国際情勢をどういうふうに判断をしたとお考えになるか、今後それをどういう方向に持っていかなければならないというふうに考えたか、それらの点に、両者意見が一致したのか一致しなかったのか、それらの点を特に、たとえば具体的にいえば、国際緊張緩和の問題、あるいは軍縮の問題、あるいはドイツ問題—ベルリンの問題を含むドイツ問題等について、大体どういう考え方なりどういう話し合いであったのか、それらの点をどう判断されるかを、もっと詳しく聞きたい。
  9. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この国際緊張緩和の点につきましては、おそらく私どもこれは世界のだれもが、現在のような緊張した、あるいは冷戦を続けてきているような状態が続くことを、世界のあらゆる国民が積極的に望んでいるという人は一人もないと思います。むしろ、緊張緩和していくことを期待していくことは当然だと思います。今回の訪問を通じてみましても、アイゼンハワー大統領にしても、あるいはフルシチョフソ連首相にしましても、ともに今日までの対立状況を何らかの形で緩和していくことが国際間の緊張をほぐし、そうしてこれが共存べの道を開いていくということを強く希望もし、考えてもおり、その結果が、一つ相互理解の上に立たなければならぬのだということで、相互訪問ということになったことも、私は事実だと思います。従って、こういう動きが国際緊張緩和に向って次第に歩を進めていくようにお互い努力していくという道に、また、お互い理解し合っていこうという努力を続けていくという道につながっておることは、私はこれは当然だと思いますし、また、そういう気持でみんながその相互訪問というものをなにしたと思います。ただ、それらの点について、果して効果が上ったか上らないかということでありますけれども、少くも訪問したという事実そのことについて、また受け取り方については、むろんそれらのソ連首相その他の言動を通じて必ずしも全部が理解したとも考えておりませんけれども、しかし、そのこと自体が、やはり何らかの努力を示していくのだという限りにおいては、やはりみんなの受け取り方というものは、将来こういうことをだんだん育てていくことによって、国際緊張緩和の第一ステップがやはり踏み出されていくのじゃないかという気持、ただ、それを育てていくのが非常に困難でもあり、また、現にそういうものを育てていくということにおいて、種々両国間の従来の関係がありますから、それらについても激しい論議が戦わされなければならぬと思うのであります。そういう互譲の精神が、どの程度までその基礎の上に立って考えられていくかということは、これは今後の問題だと思います。また軍縮の問題についても、おそらく両国の当事者として今日のような膨大な軍備を持って進めていくということを、軍備競争をしていくということを、終局こいねがっておる人はだれもないと思うのであります。そういう意味において、できるだけ適当の方法考えながらお互いに歩み寄って、そうして軍備の制限をしていく、縮小をしていくということにおいては、相互異存はないと思います。ただ、その間においてやはり相互不信感というものがあって、今日までの軍縮を見ておりましても、やはり相互不信感の上に立っての問題がいろいろあるわけでありますから、こういういろいろな軍縮提案がありましても、その解決方法をまとめて参ります場合に、やはり問題になっているのは、不信感ということが大きな妨害をなしていることは事実でありまして、従って、そういう問題、そういう不信感お互いに払拭し得るという努力を続けていくということが必要なことだと思います。今度の相互訪問というものは、やはりそういう不信感を払拭するような努力一つとしてわれわれ見ていかなければならぬことは申すまでもないのであります。むろん個々軍縮の叫びというものについては、そういう両国主張もありますし、また、今回の訪問だけで両国主張が折り合ったり、あるいは両国の従来の主張を必ずしも撤回しているというわけではございません。国連におけるソ連首相演説においても、従来の主張を繰り返して述べておるという点が多分に見られるわけであります。そういう点は、むろん今回だけの問題として扱うわけには参らぬ、今申し上げたような基盤の上に立って、将来これを考えていくということにあろうと考えます。またベルリン問題は、当面のやはりこれは国際政局の問題における大きな問題でありまして、何らかの形でもってベルリン問題なり、東独の問題というものは、これは解決をしていかなければ、やはり世界平和のために適当ではないというふうに考えられており、それについて大統領ソ連首相とが努力しようという立場は、明らかに見られると思います。そういう基礎の上に立って話し合いを続けていったということも、これはもう事実だと思います。ただ今回の場合においては、まだ何も出ていないということは申し上げられると思います。また同時に、両陣営にいたしましても両陣営の中におけるそれぞれの国の立場もございます。従って、そういうものとの間の十分な理解を、大統領ソ連首相とが、お互いに内輪の意見も固めてもらわなければ、問題は簡単には解決しないと思うのであります。ただ、そういう努力をしていくということだけが現われておることは事実だと、こう見ております。
  10. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうも外務大臣お話によると、意見はどういうところで一致したのか、従って、今後国際情勢がどういう方向に進展をしていくのかという点において非常にあいまいであり、正確に認識をしておられないんじゃないかと思うのです。失礼ながら。共同コミュニケが出たあとの新聞記者会見で、アイゼンハワー自身は、はっきり冷戦の氷は解け始めた、始まりではあるけれども解け始めたし、今後はこの方向をさらに強く進めなければならぬということを、非常にはっきりと言っていると思うのです。また、フルシチョフ首相は、モスクワに帰って市民大会においての演説で、アイゼンハワー自身が平和を非常に積極的に希望をしているし、冷戦解消することに全力をあげるという、しんからの気持を持っていることを確信をして帰ったということを、はっきり言っております。もっともこれに対しては、アメリカでは非常に強い反対も一部にはあるので、そういう意味では、アイゼンハワー大統領は非常に困難な位置にはあるけれども、しかし、とにかくアイゼンハワー大統領自身は、そういうことをはっきり確信をし、熱意を示しているということをフルシチョフ自身が言っている。従って、アイゼンハワー大統領フルシチョフ首相との共同コミュニケの中にも、フルシチョフ首相アイゼンハワー大統領は、すべての重要な国際問題は、力によらず、交渉による平和的な方法解決すべきであるということに同意をしたということを明記いたしておると思うのです。で、この力によらず、平和的な交渉によって解決すべきだということに両者意見が一致してこれを共同コミュニケに、今さらのごとく、この時期に新たに書きしるしたということが、非常な意味を持っているんだと思うのですが、それらの点を外務大臣はどういうふうに感得してこられたか。
  11. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 大体、佐多委員のお考えにありましたように、私も先ほど申したつもりなんですが、大統領首相とが、できるだけ将来話し合いで平和的に問題の解決をはかっていこう、そうして平和共存に進んでいきたいという熱意をもって相互訪問も行われるわけだし、また、今回のフルシチョフ首相アメリカに行かれても、アイゼンハワー大統領との話し合いにおいてそういう熱意を示し、あるいはそういう意味においてアイゼンハワー大統領がそれを受け取ったということは、私は先ほど申し上げた通り、そう感じておるわけであります。従ってこのこと自体は、私は相当の歴史的な事実だということを感じておるわけであります。ただ、今申し上げましたように、今回は問題を解決しに行ったわけではございませんことは、先ほど申し上げました通りであります。従って、すぐにこれが雪解けになるということが如実に現われてくるということは、そう早急に期待し得ないことは、これは当然だとは思いますけれども、しかし、そういう熱意をもってお互い誤解を払拭していく、不信感をできるだけなくしていくという努力を払っていくということは、これは今後の国際政局の上にも大きなプラスであるし、また、その事実が好ましい事実であるということを見て、佐多委員のようには思っておらないのであります。
  12. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 共同コミュニケの、平和的な方法解決するということに両者がここであらためて意見が一致したとして発表したことが歴史的な事実であるというふうなお話ですが、歴史的な事実であり、しかもそれが非常に大きな方向転換外交政策における国際情勢一つの大きなエポツクを画するような意味を持ったものであるということを私たちは見て取らなければならないんじゃないか。その点において何か外務大臣は、いや、個々の具体的な諸懸案解決されていないからとか、あるいは完全に雪解けになることがなかなかむずかしいからということで、その点に対する、何というか、方向の正確な認識を曇らされていると思うのですけれども、そうでなくて、アイゼンハワー大統領自身も言っているように、すでに冷戦の氷は解け始めたのです。解け始めたということが、そして今後それをさらに推進しなければならぬということが、非常な歴史的な意味を持つんだし、そのことをもっと正確に認識をされる必要があるんではないかと思うのです。そういう意味では、国際情勢は非常に大きな転回点に立っている、アメリカ外交政策自身が大きく方向転換をしつつあるんだということを、もっと正確に認識をされたらどうかと思うのです。これは私から申し上げるまでもなく、ダレス氏が国務省を支配していた時代のアメリカ外交政策は、申し上げるまでもなく、ソ連膨脹主義の国だ、従って西欧諸国は、必要な場合には武力によってソ連を封じ込める、あるいは大量報復の処置をとらなければならない義務がある。そういう意味共産主義との共存は不可能だ、従って冷戦は徹底的に推し進めなければならない。こういう対立状態のときに、緊張緩和というようなことを主張をするのは、一般大衆、特に西欧諸国の民衆を、偽わりの安全感に誘うものだとういふうな態度がとられて参ったわけです。ところが、ダレス氏が退いて後、特に死んでから後のアイゼンハワー大統領考え方なり態度は、今申し上げたようなものに比較すると、全く逆な方向であるとういことを言ってもいいんじゃないか、そういうふうに感得をしてもいいんじゃないか。すなわち、今度のフルシチョフとの話し合いの前後を通じてアイゼンハワー大統領は、フルシチョフ首相ソ連は、膨脹主義でもなければ軍国主義的でもないんだ。従って、共産主義を相手とする普通の道は、ソ連西欧周を隔てているさくを新たに取りこわしてしまって、双方を政治経済競争の新しい風に当てなければならないんだ。そういう意味ソ連との、あるいは共産圏との共存は可能であるばかりでなく、不可避でもあるんだ。そういう点から見れば、冷戦ということは、これまではともかくとして今後は必然でもなければ、これはこれまでは、一半は人為的になされたのであるが、そういう点をやめて、冷戦をやめる方向に積極的な、全面的な努力をしなければならないんだ。こういう気持態度を非常に明瞭に表明をし始めたと思うんです。そういう意味では、アメリカ外交政策方向転換をしたものだし、国際情勢はそういう意味において大きく歴史の転回点に立っておる、こういう認識のもとに今後われわれは対処していかなければならないのじゃないかと思うのですが、その点は、外務大臣はどうお考えになりますか。
  13. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) お話のように、今回の相互訪問第一歩というものが、大きな歴史的事実であるということもわれわれは十分承知をしておりますし、また、そう見ておることは当然だと思います。しかしながら、これは第一歩でありまして、まだ完全にそういう数歩もどんどん前進していくということがすぐに起り得るか起り得ないかということは、われわれとしては当然考えて参らなければならぬ。また、起っていくように各国が努力していくということも必要だと思います。むろん力の対立によって相互のバランスを維持していくという、いうような政策が、だれが考えてみても、必ずしも適当だとは考えておりません。しかし、それらの基礎をなしております不信感というものは、まだ完全に払拭されておるとも思っておりませんし、そういう意味においては、むろんそういう方向努力していくということを皆が考えていかなければならぬことは当然でありますが、しかし現状において、やはりその第一歩ではあるけれども、まだそこの出発点に立っただけであるということは、これは当然政治現実として、われわれながめていかなければならぬ。大きな事実としてながめることをわれわれ現実考えておりますけれども、しかしそれだけに、われわれは慎重に、また、今後もそういうことが発展していくように努力していくという立場に立っていかなければならぬわけであります。その事態が、すぐに何らかの転換を翌日にでもするというようなふうに早急に考えるわけにはいかぬと思っております。
  14. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 緊張緩和が非常にむずかしいという点は、お話通りでありますが、しかし、方向緩和方向に非常に大きく進んだし、展開をしたんだというふうに考えるのですが、よく外務大臣緊張緩和が非常にむずかしいと言われるが、一体、外務大臣緊張緩和原因はどこにあり、従って、それを解消するとか、不信感を取り除く努力をしなければならないと言われる場合に、具体的にはどうするというふうにお考えになっているんですか。
  15. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん今日の緊張が続いてきた点については、いろいろな原因があろうと思います。第二次大戦後の跡始末の問題その他をめぐっての緊張ということも当然大きなファクターだということは、これは申すまでもないのであります。これは問題処理についても相当大きな今後のやはり負担もあり、解決については努力も必要だと思います。ですから緊張が起りました理由の一つに、第二次大戦後の跡始末の問題というのが具体的事実であるということは当然だと思います。同時に、現在の国際情勢をながめてみまして、やはり共産主義陣営における相当積極的な、何と申しますか、攻勢というようなものについても、果してそれを軽く見ていいかどうかというような問題につきましては、やはりこれが一つの大きな緊張を起している原因であろうとも思います。従ってむろん自由主義陣営側としても、自由主義を守る上において反省して参らなければならぬとは思いますけれども、しかし、共産陣営の側においても共産陣営が全部世界政治の上において正しく行動してきたとばかりは、われわれは考えられないのでありまして、そういう点については、共産陣営側においてもよほど今後世界に与えている不信感というものを払拭するように努力をしてもらわなければ私はならぬと思っておるわけでありましてそういう意味において今日まで続いてきた緊張というものは、今申し上げたような原因が錯綜してそして織りまざって起っておるということが事実ではないかと考えております。
  16. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 藤山外務大臣は、国連演説で、今日世界の平和を不安定にする最も大きな原因は、自由共産陣営対立である、こういうふうに言っておられる。それで、国際緊張の重大な原因がその両陣営対立であるとするならば、国際緊張緩和は、その対立緩和解消するということに努力が向けられなければならないということは、おのずから出てくる結論だと思います。しかも、外務大臣の言われるその両者における不信感解消をするという問題を、今言ったような両陣営間の不信感解消をすることでなければならない、そういう意味では、両者が直接に話上合いをする、お互いお互い気持をとっくりと話し合うということが絶対に必要だし、そういう方向で問題が解決をされなければならない。従って共同コミュニケにもさっきから言っているように、力によらないで話し合いによって解決するということをやるんだということを言っているんだ。それで、外務大臣はそこまでは一応言葉としては言っておられるにかかわらず、外務大臣の現在の外交政策なりその他の問題、これは後ほどお聞きしたいと思いますが、たとえば安保条約改定の問題にしても、中国とは話し合いをしないのだという態度にしても、全くそういう方向に反しているんじゃないか。少くとも不信感解消をする場合には、そういう問題から根本的に改めて参らなければならないと思う。そういう意味日本もまた外交政策転換をしなければならない時期にきていると思うのですが、その点は、外務大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  17. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本の外交方針が、武力に訴えて問題の紛争を解決するというようなことは、過去においても現在においてもわれわれ考えておる問題ではないのでありまして、やはり平和でもって話し合いでやっていこうということだと思います。従って、われわれとしてはそういう話し合いの外交方針でいくことむろんであります。しかしながら、御承知のように現在の国際情勢というものが、お互い不信感があり、その不信感がわれわれ自由主義陣営のものから見ますれば、ソ連を中心にした共産諸国のいろいろな国際政治に対する脅威ということが、まだ完全にわれわれとして払拭できないことは当然だと思います。そういう意味においては、やはりわれわれとしてもある程度のそういう問題に対処することを考えて参らなければならぬと思います。で、御承知通り安保条約の改定という問題は、七年前にできております現行の安保条約を、日本が独立国家として世界に入っていきます以上、当然あの占領直後に起きましたような問題を解消してそしてりっぱな対等の立場話し合いのできる安保条約に改定をしていくわけで、そのこと自体が、日本が何か攻勢に出ていくような目的のために改定しているわけではないのでありまして従って、そういう問題についてもソ連なり共産圏なりが正当に理解をしてもらわなければ、私はこれはやはり日本として不信感が除去できないと思うのであります。そういう点については、従って従来の方針が必ずしも間違っておるとは、私ども考えておらぬのでありまして、むしろわれわれが安保条約を改定していく趣旨というものを、共産圏側も十分に理解してもらわなければならぬことじゃないかというふうに考えております。
  18. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その安保条約改定の問題については、後ほどもう少しお尋ねしたいと思いますが、その前に、もっと一般的に、それでは今度国連の総会に行かれてフルシチョフ演説その他もあって、今、軍縮という問題が非常に重要な問題として取り上げられ、非常に具体的に取り上げ始められたと思うのですが、この点について、外務大臣はどういうふうにお考えになり、日本としてはどういう態度で進めなければならないというふうにお考えになっておりますか。
  19. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 世界の重要な国と申しますか、大国と申しますか、そういう国が互いに軍備競争をしていきますこと、それによって対立していきますことは、これは当然世界の、何といいますか、人類といいますか、世界の人のために適当なことだとは思わない。これはあらゆる人がそう考えておりましょう。また、ことに核兵器のようなものが出てきて、もしそういう軍事上の対立が破綻をすれば、お互いに殺戮し合うのだ、そういう兵器によって人類が破滅に導かれるのではないかということは、これはみんなの考えていることだと思います。従って、そういうことを逐次制限をし、あるいはそういう軍備を撤廃していく方向に進んでいくということについては、だれも希望しておるところでありましてそういう事実が起ってくることをみんな望んでおること、これは間違いないと考えます。われわれとしても当然そういうことを思います。しかしながら、現在までの状態は、そういう状態にあるわけで、まだ完全に不信感を出ておりません。従って、軍備の制限はむろんやって参らなければならぬことは当然でありますけれども、それがおのずから段階的になることもやむを得ない、また、そういう不信感の上に立っての話し合いでありますから、それが解消するにつれてだんだんと段階的になっていく、これはやむを得ないことだと考えております。
  20. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 私がもっと聞きたいのは、この軍縮の問題が、今度の国連会議においてどういうふうに進展をして、どうしなければならぬというふうに具体的にお考えになっておるのか、その点、もっと御所見を伺いたい。
  21. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の国連においては、御承知通りソ連首相軍縮に関する演説をいたしたわけであります。その直後に、ソ連側から議題として採択の要求が出ております。従って、これが議題になって参ることは当然だと思います。軍縮そのものの問題については、国連加盟各国が重大な関心を持っていること、これまたむろんでございます。しかし、現在の国連事情から申しますれば、ソ連が十カ国方式を主張して、そうして国連において十カ国委員会でこれを討議するというのがソ連主張でありますから、ソ連自身が、果して現在のところ、国連軍縮委員会でどれだけこの問題を取り上げるつもりがあるか問題でありまして、従って、それはむしろ十カ国委員会等で審議されることになろうかと思います。国連一般の空気としては、大国だけでやっておる、十カ国委員会だけで、小国の利害をわきまえないで論議され、決議されることは、そのこと自体世界各国に関連してくることでもありますので、望んでおりませんが、しかし、そうしたとにかく現実の問題としては、やはり大国の関係において話し合いがまずつかなければならぬということを見ておりますから、その十カ国軍縮委員会と国連における軍縮委員会との関連性をどういうふうに持たしていくかということが、やはり一番大きな国連における当面の軍縮問題の課題ではなかろうか、こう考えております。
  22. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 フルシチョフ軍縮演説あるいは軍縮提案がなされた直後に、外務大臣談なるものを私は拝見したんですが、それによると、何か非現実的な、観念的な、新味のないものにすぎないというふうな、非常に消極的な態度なり、見解が発表されたと記憶をします。その後、岸総理大臣も非常に消極的で、現実状態として、いまだ力がものを言っているんだから、力の裏づけによらなければ問題は解決しないんだから、あまり意味はないというような談話を発表をされております。しかし世界各国は、少くとももっと違った、もっと真剣な態度でこの問題を見ている、あるいは取り上げているんじゃないかとさえ思うんです。これはアイクとフルシチョフとの共同コミュニケにもありますように、両者は、「包括的軍縮の問題は現在の世界の当面する最も重要な問題であることに同意した。両政府は、この問題を建設的に解決するため、あらゆる努力を尽すであろう。」というふうに、これはフルシチョフの提案のあった後の共同コミュニケですから、もちろんそれも考慮に入れながらの同意であると思うのですが、非常に積極的な熱意を示していると思うのです。ことにフルシチョフの提案は、すでによく検討をされたと思うのですが、四カ年三段階にわたっての軍縮撤廃案で、そういう意味では非常に思い切った提案でありますけれども、しかし問題を非常に現実的にも考慮をして従って、その段階あるいは一般兵力の縮減の方法その他については、これまで西欧方が提案をいたしたいろいろな考慮を十分に織り込んで提案をしていると私は解釈をしている。特に、もしそういう全般的な包括的な軍縮案が、今直ちにできないとなれば、部分的な軍縮案でもいいのだと言って出した五項目等は、今直ちにでも具体的に検討をしなければならない諸項目を含んでいると思うのです。そういう意味では、どうしてもこれは一つの議題として取り上げて、共同コミュニケが言っているように、建設的な問題として、建設的な解決をやるように、全努力を傾けなければならない問題である。そういう点からいえば、あの提案が単に観念的であるとか、非現実的であるとか、新味がないとかとういようなことで一笑に付する、皮肉にせせら笑うということでは、もはや済まされない時期であり、段階だと私たちは与える。特にわが国は、申し上げるまでもなく、憲法九条で戦争を放棄して戦力を保持しないことを世界に約束をしておる。その考え方が、今、世界的な規模において、初めて現実的な問題になりつつある時期であり、段階であり、そういう意味においては、わが国は、その先見の明を世界に誇っていいときが来つつあると私たち考え主張して、いいのじゃないか、そういうふうな立場、そういうふうな考え方から、軍縮の問題を取り上げなければならないし、従って、そういう点で、むしろ日本こそは率先してこの軍縮の問題を推進をする役割を果すべきなんじゃないか、こういうふうに思うんです。しかるに、外務大臣もそうでありますが、特に総理大臣その他においては、全くそれと逆な、水をかけるような言動をしておる。ことにあなたが今企図されておるところの安保条約の改定、きょう朝日新聞で全条文が発表されているようでありますが、この真偽のほどは後ほど聞くとして、その第三条には、むしろこの際にあらためて軍備拡張をアメリカとの間に約束をするということを明瞭にうたっておられる。これまでは、たとえば安保条約においては、アメリカ側が日本に対して軍備が漸増することを期待をするという態度にすぎなかったのに、今やこれをはっきりと両国の間に約束をするという態勢に切り変って参っておる。しかもその背景には、すでに防衛庁長官が明瞭に言っているように、第一次軍備拡張計画では事足りないとして第二次の拡張計画を、非常に大きなものを構想をし、しかもすでにアメリカとの間には約束を取りつけながら、着々とそれを進めているという状態だと思う。そういう点を考えると、日本はこういう世界的な情勢と全く逆行をしておるとしか思えないのですが、外務大臣は、これをどういうふうにお考えになりますか。
  23. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) お話のように、軍縮に対し二両国の首脳者の共同コミュニケケを通じましても、努力をする熱意があるということは、これは当然であります。ただ、先般の国連におけるフルシチョフ首相演説というものは、演説をされる前に、国連のメンバー・ステートの連中が、みな非常な期待を持っていた。ただ、あの演説の直後の感じから言えば、もう少し何か思い切った、あるいは新味のある提案が行われると思っておったが、必ずしもそうでなかったということは、これは国連内におけるあの演説に対する気分だと思います。従って、そういう意味において、あの演説を、当時の議場の空気から見ていき、あるいは説明するということは、別にわれわれが軍備縮小に対する熱意がないという意味ではないことはむろんのことでありまして、従って日本としては、むろん膨大な軍備競争をして、そうしてお互い対立していくということは、そのこと自体いいことであると考えておりませんし、また、そういう方向努力することは当然のことだと思います。ただ、今申し上げましたように、国連におけるソ連首相演説そのものが、必ずしも、みんなが非常に大きな期待を持ち過ぎてきているという考え方があり過ぎたのかもしれません。若干、議場においては、必ずしも新味なものとはいかなかった。もう少し、よかれあしかれ、何か問題が提起されるのじゃないかというふうに考えておったということは、これは事実でありまして、そういう意味からいって、あの演説に対して、何かもう少し新味があった方がいいんじゃないか、あり得るのじゃないかという予感が裏切られたということは事実だと思います。
  24. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今、外務大臣の言われたように、何ら新味がなかった、あるいは観念的で非現実的にすぎないというような感じその他は、なるほど今あなたの言われたように、あの演説の直後においてはそういう空気なりそういう意見が相当出た。しかし、一両日おいてその後の経過を見ますと、むしろ空気はもっとこの問題を真剣に取り上げなければならないのじゃないかというふうに、非常に変ってきている。イギリスにおいてもそうであるが、もちろんこれは申し上げるまでもなく、イギリスのロイド外相自身が、あなたもお聞きになった通りに、例の三段階にわたる軍縮案を具体的にあらためて提案をしておる。またアメリカでも軍縮担当の代表は、やはり単にあの問題に対して論議を引き延ばす等々のことでなくて、具体的に取り上げて積極的の解決方法を具体的に少くとも推し進めなければならないということを繰り返し主張をしておる。西ドイツでも同じような空気が出てきている。そういうその後の空気、その後の変り方、そういうものは非常に微妙に感じ取ってきておられるはずだし、先ほどもお話のあったように、わざわざヨーロッパにも回ってこられたことでありますから、その辺の空気もよく観測をされたと思うのですが、それらの点についてどういうふうにお考えですか。
  25. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろんこの軍備撤廃と申しますか、あるいは前提としての軍備制限というか、これについて各国が熱意を持っておるし、日本熱意を持っておることは、これはもう申すまでもないことだと思います。同時に、今お話のありましたように、フルシチョフソ連首相のあの演説というものは、非常に大きな、ある意味から申して、よかれあしかれ大きな期待をもたれていた。それにもかかわらず、その期待ほどではなかったということは、同様の空気であることは、これは申すまでもありません。これは一応とにかくまとめて述べられたソ連のああいう主張というものを基調にして、ソ連が今後どういうふうな考え方で動いていくかということを研究し、またそれをやはり手がかりとしていくことも、それは軍備問題に対する一つソ連側の主張としてのキー・ノートであることも、これはだれでも無視をしておるわけでもありません。そういう問題について研究し、それに対しての対策なり方法論なりまたあるいは段階論なりを研究していくことは、これは当然各国ともやっていることでありまして、今お話のような、数日後にそういう研究がだんだん出てきたことは、これは当然なことだと思います。従って私どもとしましても、むろん日本が、大国間における軍備競争を好んでおるわけではないのでありまして、そういうことが次第に制限され、あるいは解消されていくということに、十分日本立場から貢献し得る場合には貢献していく、これはまた当然のことだと思います。
  26. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 外務大臣は、アメリカでハーター国務長官とお会いになっていろいろ会談されたと思うのですが、その場合には、安保条約の問題はどういうふうにお話しになりましたか。
  27. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 安保条約の問題は、すでにマッカーサー大使と私との間で交渉をいたしております。また、初めから東京においてマッカーサー大使とこれを交渉することの了解のもとに交渉をいたしておるわけでありますから、具体的にいって交渉についてはむろん大使を通じて交渉すべきが外交上の儀礼でございます。また、実際問題解決のために必要だと思います。ただ、安保条約をやります基本的な日本考え方態度というものにつきましては、ダレス国務長官にも十分話をして、これを出発したわけであります。ハーター氏にかわりました以上は、ハーター長官に対してその日本のこまかい立場というものを十分説明して、そうして日本考え方がいれられるように、具体的な交渉がその線の上で進められることが必要でありますので、そういう点について重ねてハーター長官に対して十分説明をいたしたことは当然でありまして、また説明をしなければならぬわけであります。そういう意味においてハーター長官に安保条約の問題について話をいたしたのでございます。
  28. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、その会談で安保条約、行政協定改定の対米交渉はすでに実質的には済んでいる。済んだ。従って条文化も終ったというふうに考えていいのですか、どうですか。
  29. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) すでに対米交渉が終ったと私どもは申しておりません。ただ条文化も最終的には終っておりません。われわれは先般来申し上げております通り、問題の論点を詰めまして、ある程度条約については相当詰まってきて、条文化の前提になっていることは事実でございます。また同時に、行政協定については、まだ数個の点について交渉を継続中でありまして、そうした点についても、われわれとしては基本的な立場説明しているわけであります。でありますから、交渉が終ったという段階には、条約につきましてもあるいは行政協定につきましても、まだそう申す段階ではございません。
  30. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、この条約についても、行政協定についてはもちろんのこと、まだ話し合いが、対米交渉が済んでいない。従って条文化も、できていない。伝えられるところによると、あさってですか、またさらにマッカーサー大使との話上合いも進められるというふうなことになっているようですが、そういう点で実質的な内容の問題についても、まだなお対米交渉は続けられるというふうに了解をしておいていいのでしょうか。
  31. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知通りこの種条約を作りますときに、完全に条文作成が終りますまでは交渉が継続しておることは当然なことであろうと思いまして、われわれとしてはその間にできるだけの努力をしてやっていく。しかしまた、過去において半歳以上交渉を継げておるわけでありますから、問題点が妥結し、あるいは解明されているという問題もあることはむろんでありまして、ただ交渉が継続しているかしていないかという御質問になれば、条文を作成して、最後のこれで、いいというところまでは交渉は継続しておるわけであります。
  32. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、たとえば条約改定の問題について例の期限の問題、一年の猶予で改正の協議ができるようにする。しかもその旨を条約本文に入れるべきだという意見が非常に強く行われておる、党内において行われておるというようなこともいわれておりますが、それらの問題もまだ交渉の段階にある。交渉の余地があるというふうに考えていいのかどうか、その点の状況はどうですか。
  33. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) その交渉に当りましては、私は五月二日に、自由民主党の総務会で決定しました安保条約改定基本要綱の線に沿って交渉をいたしたのでありまして、その線に沿っての話し合いは、ある程度妥結しているといって差しつかえないと思います。むろんこういう問題でありますから、最終的段階までいろいろ論議がありましょうし、最終的にもいろいろな話し合いを続けていくことは当然でありますが、しかし、今言ったような線で大筋においては話し合いが進められ、また、大筋においてはそれがついていることは申し上げて差しつかえないと思います。
  34. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 これまで外務大臣は、むしろ期限の問題としては十年が当然なんだとういことを極力主張をしてこられたと思う。しかし、近ごろになって少しその点はぼかしてこられたようだし、あるいは特に岸首相は、この期限の問題については相当弾力性を持たせて考えなければならないし、場合によってはその問題の交渉に、自分みずから行くんだとか、あるいは一部の人たちがそういう問題をひっくるめて、さらに交渉に総理が乗り出していくべきだというような意見もあるやに伝えられておりますが、それらの点はどういうふうに外務大臣としてはお考えになっていますか。
  35. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私としましては、自民党の五月ニ日の総務会で決定しました期限等の趣旨をあれし、また、私自身が交渉の当事者としても現在の期限の十年ということは不適当だとは考えておりません。党内にいろいろの議論があるやに今お話がありました。むろんこういう問題ですから、いろいろ議論はあろうと思います。しかし、私としては今申し上げたようなことに考えております。
  36. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、まだ条約、協定の改定の対米交渉は、人質的な問題についてもまだ話し合いが全部完了したとはいえないというふうなお考えからすれば、調印の時期その他はどういうふうにお考えになっているのか。大臣は、ことし中にやるのだということを繰り返し言っておられたが、ことし中にやれる見込がついたのかどうか。その点をハーター国務長官との間にどういうふうにお話し合いになったのか。
  37. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん条約交渉のことでありますから、必ずいつまでに作らなければならぬということは、これははっきり申し上げるわけにも参りませんし、約束するわけにも参らぬと思います。がしかし、すでに交渉な開始いたしましてから一年、実質的交渉を五月からやっております。従って、相当私としては党の方針に従って、問題点をお互いに話し合って、そうしてある程度了解をし、その上に立って条文作成の前提ぐらいまできていることは、先般から申し上げておる通りでありますから、それからの細目についてむろんそう大きな時日がかかるとは思っておりません。一方、これらの問題についてやはり適当な時期に調印をして、議会等に批准するということは、相手国に対しても、また条約の改定を日本が要求した立場からいきましても当然のことであります。し、できるだけ努力をして、私自身としては早い時期に調印をし、早い時期に国会の批准を得たいと考えております。しかし、その時期等につきましては、年内であるとか、来年になるとかということは、これは交渉のことでありますから、最後の条文作成の上でも、一字の修正に一週間かかる場合もありますし、何とも申し上げかねるわけであります。
  38. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうもその時期の問題について、これまでは外務大臣は非常にはっきりして、何月の末までにはぜひやるのだというようなことを、三、四カ月、五、六カ月、前にもすでに言っておられたが、今はその点に非常に慎重になっておられるのですが、その辺の事情が私たちには捕捉しかねるのですが……。たとえば、伝えられるところによると、アンゼンハワー大統領から岸総理に親書がきて、ぜひ一ぺん近いうちにいらしっていただきたいというような招請があった。それらも兼ねてこの調印には総理自身出かけて行って調印をするんだと、した方がいい、すべきだという意見すら出ているということも伝えられております。これらの点をどういうふうに外務大臣はお考えになるか。ことにこの調印の時期、あるいは場所、特に調印者について、いろいろ問題はあると思いますが、たとえば、米比、米韓、米台相互防衛条約等の先例においては、調印の場所、あるいは署名者等はどういうふうになっておるのか。それらの点もあわせて御説明を願い、御意見を承わりたいと思います。
  39. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 申すまでもなく、こういう交渉に当ります当事者としては、交渉に当って、ある程度のめどを置いて、そうしてそれにいくように、むろん国内各方面の意見の調整もしてもらわなければなりませんし、従って、この時期ぐらいまでにはやりたいのだ、従ってその時期ぐらいまでには意見の調整もしてもらいたいというようなことを、交渉当事者として希望もし、かつまた表現をして、各方面にそういうことをお願いすることは、これは私は当然なことだと思う。従って、従来私が、なるべくこの月、あるいはこの時期ぐらいまでには各方面の意見を出してもらいたい、そうしてこういうふうにしてまとめていきたいという時期をなるべく明示して、そうしてそれに合わせるように御意見を出していただくということは、交渉当事者の立場として、これは私は当然だと思います。しかし、もうだんだん煮詰まって参りまして、最後の段階にきますれば、そう各方面のいろいろな意見がたくさん出てくるわけでもなし、それを促進して出してもらわなければ、解決に非常に手間どるような問題でない場合も多いことであると思いますし、従って、そういう意味においては、何も今日交渉の時期を何月何日までにやらなきゃならぬという明示をする必要は、この段階にくれば、ないと私は思います。そういう意味において、私は、やはり交渉の当初においては、なるべく半年以内にやりたいとか、あるいはなるべく何月ごろまでに意見を出してもらいたいというようなことは、これは当然なことだと思うのであります。そういう意味において、今日では私としてはもうこの段階で特に時期を明示しなくとも、だんだん固まっていくものではないか、こういうふうに思っております。(「固まらないな、それは」と呼ぶ者あり)  なお、調印の時期、あるいは調印の方法等をどうするかということについては、まだ私自身何も考えておりませんし、現在いろいろな議論があるいは出ておるかと思いますけれども、それらの点も参考にして今後考えていけば適当なことだと思います。  なお、お話のように、米比、米台、米韓条約の調印の時期なり調印の場所なり、あるいはだれが調印したかということについては、私、今日知っておりませんので、いずれ調べました上で申し上げたいと思います。ただ、調印の場所につきましては、交渉は東京でやり、調印は向うでやる、あるいは批准書の交換は東京でやるということが大体適当ではないかと思って、私ども今日までやってきております。
  40. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 総理の渡米の問題。
  41. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 総理が渡米されるかされないかというようなこと、あるいはアイゼンハワーから親書がきたかどうかということについては、私は存じておりません。また、総理自身が、私に渡米をして調印すると言われたこともございませんし、そういうことについていろいろ意見が新聞紙上で出ておることは承知しておりますけれども、これは具体的に何も考えておりませんし、また、総理自身から私がそう言われたこともございません。
  42. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうも今までのお話を聞いていると、改定の実質的な内容に関する交渉もいまだ完結をしてないし、従って、条文化その他の問題もまだ残されておる。それらのことを考えると、相当な時期、相当な期間を要するだろう。のみならずことし中にそれをやるのだということが言われておるし、あなたがハーター国務長官とお会いになった翌日だったか翌々日には、岸総理が非常に明瞭に、ことし中にやるのだというようなことを、確信ありげに言明をされた。そうすると、どうもアメリカの方では安保の問題についてはあまりそうは話さなかったのだ。ろくすっぽハーター長官との間に話がなかったのだということが伝えられてきておるにかかわらず、こちらでは一両日後に総理が非常にはっきりと調印の期限を明示された。しかし、その後の状況を見ると、必ずしもそうでないようだし、今の大臣お話を聞くと、いまだ交渉も多分に残っておる。のみならず、国内の状況から考えても、臨時国会が今月末に開かれるでありましょうが、それには災害予算その他もまじえて特に賠償問題が非常に大きな問題として出てくる。これには相当な時日をかけなければならないし、そうすると、ことしの末くらいまでにはこの問題が論議されなければならないし、従って、国会は開かれておるから、総理も外務大臣もこれを欠かすわけにはいかない。それら内外の事情考えると、こしと中の調印というのはもやは不可能だ、非常にはっきりしてきたというふうに私は感ずるのですが、事実はそうなんじゃないか、どうか。その点を大臣はどういうふうにお考えか。
  43. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先般の参議院の外務委員会でも、総理は大体一月通常国会冒頭に安保条約を提出するということを言っておられます。従ってそういうことを勘案すれば、少くも今から一月の二十日くらいまでの間には調印しなければならぬことは、これは当然だと思います。われわれはそういう目標でやって参るつもりでおります。それが一月一日になるのか、十二月三十一日になるのかということで、年内か年内じゃないかというようなデリケートな問題になれば論議は別でありますが、しかし、そういうことも目標にして、われわれとしてはむろんやっていくことは当然であります。ただ、年内とか、年の暮れということはありませんけれども、まあ交渉当事者としての私としては、なるべくこういう交渉は早く完結させることが必要だと思うということで努力しておること、これはむろんでございます。
  44. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 前例の方は事務当局でわかりますか。
  45. 高橋通敏

    説明員(高橋通敏君) ただいまの件でございますが、米比は、署名はワシントンでございます。それから批准書の交換はマニラ、それから署名者は、アメリカ側はアチソン、ダレスその他でございます。フィリピン側はロムロ。それから米韓は、署名はワシントンで、批准書交換もワシントンでございます。署名者はダレス及び大韓民国はピャンでございます。
  46. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それは地位は何ですか。
  47. 高橋通敏

    説明員(高橋通敏君) ちょっと地位は書いてございませんものですから……。
  48. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 あとで調べて下さい。
  49. 高橋通敏

    説明員(高橋通敏君) 米華でございますが、署名はワシントン、それから批准書の交換は台北でございます。それからアメリカはジョン・フォスター・ダレス、中華民国はヨウという外交部長でございます。それからアンザスでございますが、サンフランシスコで署名、批准書の寄託はオーストラリア政府にいたします。これは多数国間でございますので、署名はワシントン、署名者はオーストラリアは駐米大使スペンダー、ニュージランドは駐米大使ベレンゼン、それから米国はジョン・フォスター・ダレス。SEATOでございますが、マニラで署名されております。オーストラリアはケーシー、フランスはシャンブル、ニュージランドはウエッブ、パキスタンはカーン、フィリピンはガルシア、タイはワン・ワイ・タコヤン、英国はレディング、アメリカダレス
  50. 永野護

    ○永野護君 安保条約の問題は、日本における目下の最も大きい問題として各方面から論議されておりますけれども、産業、経済なんかに関係しておる人たちに不思議に思われますのは、この大問題が、軍事上とかあるいは外交上、政治上の質疑応答に終始されておって、経済上の立場からこの問題を論議されている場合が非常に少ないのであります。そこで、しかも経済人の立場から見ますると、日本の今日の経済の実情と遊離した議論が往々にして行われておる、意気すこぶる壮でありますけれども、現実的には非常にむずかしい問題を含んだことを表書されておる場合が多いので、私は、経済、産業の実情に最もよく通暁されておる外務大臣が、この安保問題の交渉に当って日本の経済の実情をどの程度に考慮しつつ、経済上の立場からはどういうふうに交渉をなすったかということが伺いたいのです。
  51. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この日本アメリカとの関係、これは政治的にもあるいは外交上からも緊密な連携をとっていくことはむろんであります。経済上から見ましても、日本の国民の生活というものがアメリカ経済と緊密な連携関係を持ち、あるいは密接な間柄でなければならぬことはむろんであります。従って、安保条約の基礎においても、今御指摘のように、両国関係を規正する、根本的に日米関係の基本的な立場を示すという意味からいいますれば、経済の緊密化ということが、両国親善と申しますか、協力態勢の上に打ち立てられなければならぬということは当然のことでございます。むろん安保条約自身が直接に外交上の関係あるいは自衛上の措置に対する処置でありますから、安保条約自身の問題のみに大きな経済的ないろんな条項が多分に加わるということは、これはあり得ないのでございますけれども、しかし、それにいたしましても、両国の経済関係が緊密であり、文化的にもお互いに親善関係を持つという意味からも、これは当然うたわなければならぬと思います。しかし御指摘のように、そうした条約上にそういうことがうたわれる以上に、両国の経済関係が緊密であって、そしてこれが離れてはならぬということは、むろん安保条約を作ります基礎的な事実の一つであることは申すまでもないと思います。
  52. 永野護

    ○永野護君 言葉は悪いかもしれませんけれども、外務大臣のお言葉の中にも、いざ鎌倉のときにはという言葉があったと思いますけれども、いざ鎌倉というのは、実際問題としてはなかなかないと思います。また、ないことを念願しておるのですけれども、アメリカとの関係は、いざ鎌倉というときでなく、今日ただいまの問題としていろいろ言えなければならぬ問題がたくさんあるのであります。従いまして、この機会にそれと交換的にというと非常に語弊もあるし、そうはいかぬかもしれませんけれども、何か少し具体的に、抽象論でなしに、経済協力の問題をこの中にとり入れていただくということが一番日本の国民生活を安定せしむる上に大切なことじゃないか、私は日本がほんとうの意味における独立国、それは法律的とか政治的にはもうりっぱな独立国になっておりますけれども、残念ながら経済的に見たら独立国ではないと思います。まだほんとうにどこの国の助力も借りなくて生きていけるという段階ではないのであります。一日も早く日本が経済上の問題を離れて、ほんとうに理想的な外交交渉をする時期に一日も早くなることを念願し、われわれは努力をしているのでありますけれども、現実の問題は、ただいまの事情はそうでないと思います。でありますから、私は今度の安保条約の問題が、経済上の問題を協議するための外交交渉でないことは十分承知しておりますけれども、もう少し何かこう具体的の、抽象論でない何かのお取りきめがこの機会に願えると、国民も非常に安心する。日本経済の運営の上に、ある程度の目安がつくというような副産物がありはしないかと、こう思うのであります。いろいろあると思います。この機会にきめることができたらと思うことは。それについて、何か具体的のお話し合い交渉中にありましたか、どうですか。あったとすれば、それはどういうふうに扱われましたかということを承知したいと思います。
  53. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この種の条約を結びますお互い関係というものは、むろん防衛上の問題、あるいは外交上の親善関係というばかりでなく、将来ともに経済関係が緊密に協力し得る国とこういうものを結んだという、形においては当然そうあるべきことだと思うのであります。従って、今回の条約においても経済条項その他が入ってくると思います。そして両国が将来とも全面的に経済協力の態勢を打ち立てていくという道をお互いに確認していくということは、まあ必要なことじゃないかと思います。ただ、この糠交渉をやっております場合に、むろん当面として具体的な何か経済問題をここで直接の取引の具に使うというわけには参りませんし、また、そうすべきでないことは当然でございます。従って、この問題と併行して何か行われる、また行わなきゃならぬということは考えておりませんけれども、しかし、私はこうした日米の関係が、深く相互信頼の上に立ちまして、そしてお互いに自主的に運営をしていくということになってくれば、日米関係というものはほんとうの大きな基盤の上に乗ると思う。従って、その乗りました結果というものは、将来、安保条約締結から引き続いて、いろいろまあ経済協力の態勢もさらに、確固とした道を歩んでいけるものだし、そのときにはいろいろな両国の経済協力の問題についても話し合いの道が開かれ、また、そうした具体的な問題を取り上げるような時期がくることがあり得ることはむろんであるし、また、お説のようにそうあることが必要だろうということも考えています。従ってそういう面については十分今後の対米関係考えながら、日本の経済の実情あるいはアメリカの経済の実情等の線に沿って問題の進展をはかって参りたい、こう考えております。
  54. 永野護

    ○永野護君 むろんこの条文の中にあまりこまかいことは書けないことは承知しております。しかし、こういう機会に日本が軍事的にアメリカのたよりになる国になる前に、国民生活が安定しなければならぬということは言うまでもないと思います。ひょろひょろした身体で重いよろいかぶとを身につけたって動けはしないのであります。よろいかぶとの問題に先立ってそれを着るだけの体力をつけさすということが、必然的に相伴わなければならぬ、こう思うのでありますが、そういう話をするのにはいい機会だと思いますので、同時にやられないまでも、少くともそういう御相談をなさるきっかけを作ってそして具体的な日本経済を自立せしむることに役立つような話し合いを継続されるような御計画はあるのですか、ないのですか。
  55. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろんこの日本の外交として対米関係を調整し、経済関係を緊密にしていくということは当然のことであります。従って、これは常時やらなければならぬことでありますが、しかし、そういう協力態勢を作っていく基盤の一つとして、現在の自主的な立場に立ってほんとうに日本アメリカと手をつないでいけるという安保条約の線を打ち立てる、その上に立って、問題の発展をはかっていくということは、これは理想だと思います。従って、今後こういう問題が解決するとともに、あるいは解決するために、両国の経済関係が緊密になって参らなければならぬことは当然なことでありますから、従って、むろん具体的に何かの交渉が伴っているということはこれはございません。しかしながら、両国気持と申しますか、気分と申しますか、そういうものの上においては、絶えず両国関係が経済的にも正常化され、そして経済的にもお互いに協力態勢ができ得る状態に持っていくのだという気持が一番大切だと申されることは、これはお話通りわれわれも心得て、できるだけやっているわけでございます。
  56. 永野護

    ○永野護君 私はアメリカ国民に対するPR運動の非常にいい機会じゃないかと思います。つまりアメリカ国民の世論が日本のために自分たちが苦しむのは困るし、辛抱はできないというような気持がいろいろな面に現われておるのであります。従って、こういう条約を作られます機会に、日本がしっかりしてくれることは、それはアメリカのためなんだ、そのためにはいくらかアメリカ人は辛抱しなければならぬ点があるのだということを、アメリカの大衆に認識せしむる一つのいい機会だと、ただ、日本の業者のためにのみやるのじゃないのだ、日本が強くなることはアメリカのためにもなるのだという、つまり具体的の必要性を認識せしむる非常にいい機会だと思うのですが、何らかこの機会に、アメリカでこういう条約を結ぶ必要を説明される機会がありましたら、その機会に、こういう日本の実情だからこの国に対する援助といいますか、のためには、ほかの国と同じように扱わないで、特別な関係日本のために考慮を払ってやるという必要性を、アメリカの国会を通じて国民に訴えてもらいたいと思うんです。だから繰り返して申すまでもありませんが、この条約の中にそういうふうに入れていただきたいということを言うわけじゃないのでありますけれども、しかし、この条約にも少なくも抽象的の条文は入るやに聞いておりますから、その抽象的の条文を具体化することを、それだけを具体的におきめを願っておき、次に、あるいは両国から委員を出して協議するとか何とかいう言葉でもいいのでありますけれども、そういうふうに、ただもみ手をして日本の業者が困るからこうこうしてくれというような従来のような交渉のやり方でなくって、一つ一貫した政策の遂行として、そういう交渉ができる機会ができると、日本のために非常に交渉しやすくなるのじゃないか、そういう感じがするのでありますが……。
  57. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) お説はまことにごもっともであります。両国の経済関係を調節していく、あるいはむろんそれぞれの国の立場によって経済上友好国といえども利害関係が違う場合もありますが、それをどう調節するかということは、非常に大きな問題でありましてお話のような点については、十分われわれも考慮しながら交渉に当って参りたいと、こう存じております。
  58. 永野護

    ○永野護君 私は、この機会に私の希望だけを申し上げて、私の質問を終ります。
  59. 大和与一

    大和与一君 私は、在日朝鮮人の帰国に関する件についてお伺いしたいと思います。  その前に、一つだけ佐多委員の質問に関連して、国際情勢の問題について——大臣は答弁がうまいか、あなたの意思は一言も言っていないんですよ。それで、アメリカから帰ってきて、アイク、フルシチョフのその熱のさめぬときの状態の中から、国際情勢緊張緩和していない、こういうふうにおっしゃるのかどうか、それだけお尋ねしたいと思います。
  60. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は、国際緊張というものが、従来冷戦の形において激しかったことは御承知通りでありますけれども、今回のフルシチョフ首相とアイゼンハワー大花領との相互訪問によってそれに対して何らかの終止符を打ってそして将来の世界冷戦から救っていこうじゃないかという努力が払われておることは、これは十分認めざるを得ない。また、認めて、従って、その価値を評価したいと思います。しかし、先ほど来申しておりますように、そういうスターティング・ポイントに立ったといいますか、そういう意欲で出発しているわけであります。けれども、それをどうしてこれから合せていくかという問題になれば、なかなか困難な問題があり、お互いに十分な自制をしてやって参らなければならぬことは、これまた当然であろうと思います。そういうような動きについてお互いが監視しながらいくことが望ましいことであることも御承知通りであります。しかし、現状においては、それじゃ会ったから翌日からすぐにぱっとそれが変るかというと、むろんフルシチョフ首相アメリカに来て、アメリカの生活の実情見て、おれが心配していたところと違ったという点も発見されたと思います。また、いやしかし、予想通りのところもあるんだということもあったと思います。ですから、そういう点については、やはりお互いにこれからそういう交流を盛んにし、また、いろいろな話し合いをすることによって、漸次になってくるということは望ましいことでもあり、また、なっていくことでもあると思いますけれども、今の段階ですぐに断定的に申し上げることは、それは無理じゃないかと、こういうことを申し上げておるわけであります。
  61. 大和与一

    大和与一君 この問題は本論でありませんから、この辺で……。  在日朝鮮人の帰国の問題ですが、これもやっぱりアメリカにとってもある意味においては非常に大事な関心のある問題だと思われます。従って、今度おいでになってこの問題について何か話し合いなり、あるいはこちらからこういう状態だというようなことをお話しになったのか、向こう様は一体どんなことを言ったのか、その点をお尋ねいたします。
  62. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 在日朝鮮の方々の帰還の問題については、すでに日本政府も態度を決定し、国際赤十字もこれを認めて助力と指導とを与えることになって、それが進行中であります。従って特にこれらの問題について説明をする必要もございませんし、また、アメリカ意見を聞く必要もないと思っておりますが……。私としては、この問題については、何らハーター氏との会談で触れておりません。
  63. 大和与一

    大和与一君 帰国に関していろいろな設備その他の準備がありますね。この準備は完全にもうなされておりますか。
  64. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 実は、この帰国に関する事務というのは、厚生省が扱っております。国際赤十字の理解を得てそうして問題が解決するまでは主として外君名の問題であったと思いますが、現在においては厚生省の所管の関係でありますから、私、つまびらかにいたしておりません。
  65. 大和与一

    大和与一君 それで、大臣がお留守のときに「帰還案内」というのが出たんですね。これは一体あなたは全然知らなくて、そうしてあなたの代理の総理大臣がきめたことになるのでしょうけれども、それを官房長官がえらい新聞なんかで勢いよく発表なんかして、一時政策を変えるとか大へんな意気込みなんですが、そのことによって帰還の問題が促進されたと私たちは思わない。しかも、この内容をいろいろ拝見しますと、これは相当重大な基本的な人権をまさに明らかに侵しておる、あるいはまた、帰国協定に違反しておる、こういうふうな内容まで含んでおると私は考えるのですけれども、この点については大臣はどのようにお考えになりますか。
  66. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 帰還の問題を取り扱いました諸般の事項につきましては、むろん赤十字とそれから厚生省とが、国際赤十字の指導のもとにこれを作ったことと思うのでありますが、御承知のような今日の状況下にありまして、何らかの形でもってその帰還が妨害されるというような種類のことがあってはならぬので、これらの問題を扱います人が相当に慎重に問題の扱い方を考えたと思います。ある場合にはそれは慎重過ぎるという見方もあるかと思いますけれども、できるだけ混乱を避けるためには慎重にやった方がいいだろうということの趣旨から、こういう問題があるいは少し行き過ぎているのじゃないかというふうに見られる点もあったものかと思います。具体的に帰還の問題が始まりましてそういう事態が起らないようなことしでありますれば、また仕合せであります。また、われわれもそれを望んでおりますから、そういう円満に帰還が進行していく場合に、何もむりやりにむずかしい制限を置くというようなことは、具体的にはあり得ないと思いますけれども、一応そういう状況下において、できるだけ帰還される人に危害が加わったりその他のないような処置を一応考えておくということは、それは当局としては必要なことであったのではないかと私は考えております。
  67. 大和与一

    大和与一君 妨害するものがあるからこういう案内を出すというのでなくて、もしそういうことであれば、それは当然政府の責任においてこれは排除しなくちゃ、ならぬと思うんですが、その方のことは一つも言わないで、そうして朝鮮人が、国際人としても自由な人間としての立場から、当然扱われるべき措置を国際的にきめてもらって、そうして伸び伸びと帰ろうというのに、これを押え付ける、抑圧するというようなことは、これはまことに本末転倒であって 一体そういうことはどこから出てきたのか。法律にもないだろうし、規定にもないだろうし、そうすると、一体だれがどこで考えたのか、こういうことをお尋ねしたくなるんです。
  68. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん今お話のように、伸び伸びとした気持で、いろいろな混乱はなしにこれを進めていくというのが政府の方針であることはむろんであります。従って、そういう意味において、できるだけ妨害が起らぬような形においてやっていかなければならぬ。いろいろな妨害が起ったり何かいたしますことはいたずらに混乱を起す原因ではないかと思うのであります。でありますから、そういう意味において、おそらく関係当事者が細心の処置をとって参りたいというふうに一応考えることも無理からぬことだと思うのであります。そのこと一体は、これを円満に北鮮に帰還さしてあげようという気持の現われだと思います。従って、そういう目的が達成され得るならば、実情に即してできるだけ円満な処置を実際的にはとっていくことになろうと思うのであります。それらの問題について、当然関係当事者が運用の上においてはこれらの問題について細心の注意をしていく。しかし、万一の事態があった場合のことを危惧して、そういうこと自体はかえって帰還される方のために迷惑である。また、今お話のような伸び伸び帰れるのを阻害するような事態があってはいかぬという細心の注意ではないかと、こう思っております。
  69. 大和与一

    大和与一君 ところが政府は、あなたがちゃんとしておるときには当りまえの格好でおったのですが、あなたがおらなくなったら、突然高姿勢というか、だれが見てもおかしいですよ。なぜ官房長官そんなにいばらなければならぬか、かえって挑戦するのじゃないか、こういう感情を持っておるのが今日の国民の気持だと思います。また、自民党の中でも大体まとまっておると思うのだが、私なんかうわさに聞くところでは、どうも自民党の中でもこの正常な帰還について、やっぱりかえって邪魔をする、こういう動きがあるのじゃないか、それがやっぱり政府にも反映する、そういうつながりが精神的にも客観的にもあり得るのじゃないか、こういうことを考えますが、そういうことは絶対にないというふうにおっしゃることができますか。
  70. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は北鮮に帰られる希望が起って以来の経緯を見ておりまして自民党の中にもそれに反対の方があったとは思っておりませんし、むしろ積極的に協力して活動をしておられる方もたくさんあることを私も承知しております。それらの方々——むしろこれは超党派的に、ある意味からいえば、やっていくというようなことで事態が円満に進行してきたのではないかと思うのであります。何かそういうことのためにこれを妨害する勢力が自民党の中にあるということは考えておりません。
  71. 大和与一

    大和与一君 しかし、この「帰還案内」をごらんになったと思うのですけれども、私はやっぱり自民党の中というか、閣内で大臣は、国民から言うと、画龍点睛だと思うのですよ、おだてるわけじゃないが、実際。そのあなたが、良識に立って帰還問題を一応踏み切って、あなたの非常なお骨折りだということは国民もよく承知しており、感謝しているところでございます。それでありながら、あなたがいないときに、こっそりこそどろのようにこんなものを作って、なぜあなたがいない間にこんなことをしなければならなかったか、帰ってからでも間に合うのじゃないか。どうしてこうなったかということをお聞きしたいのと、これをあなたがごらんになって、これじゃ行き過ぎている、どうもおかしいじゃないかと、こういうふうにあなたが人間藤山としてお考えになる点があろうと思いますが、その二点についてお伺いいたします。
  72. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 別に私がいない間に何かこそどろ的にやったというほど私はえらい人であろうとは思っておりませんので、そういうお言葉は違うのじゃないかと、こう思っております。まあ本問題の取扱いにつきましては、むろん慎重を要すること当然であろうと思います。従ってそういう点で初めからこの問題は当然北鮮に帰られる方が円満に、いわゆる喜んで帰られるように持っていくという趣旨からいって、何かいろいろな騒擾が起ったり、あるいは混乱が起ったりしないようにという関係者の注意が、あるいはある場合には、文章で表われるところで少し強過ぎている点があろうと思いますが、強いて人権を踏みにじってどうしようという意味で書かれたものだとは私どもも思いません。むしろそういう観点から、できるだけ保護して円満に帰国すること、途中でいろいろなごたごたが起らないようなために、案内についてもそういう趣旨から書かれたものだと思っております。でありますから、先ほど来申しておりますように、そういう趣旨を達成する上において支障がない限りは、実際の取扱いとして、そうしゃくし定木な取扱いは、私は関係当局者がするとは思っておりませんし、また、現に帰ってから聞きましても、やはりしゃくし定木の扱いをするということはないように思うわけでありまして、しかし最終的に何か混乱が起らないようなことだけの指導はしておかなければならないという意味だと思います。
  73. 大和与一

    大和与一君 しかし、これを見ると、どうも戦時とか内乱とか、そういうときの捕虜といいますか囚人というか、そういう取扱い以下じゃないかと思います。因人にしてもやはり今生のなごりというときには面会にしても外出にしてもさせる、いろいろ世の中にはそういう実例があるのだから、それをことさらにこんなものを作って、そうしてこれを天下に公表して、そうして帰る人たちの平らかな気持を妨げるということは、まさに政府の責任であると思います。そうしますと、大臣としては、行き過ぎな点もあると思う、こういう言葉もございましたが、さらにこれをもっとよく検討してみるというか、果してそういう点までの気持がおありになるのか、この点をお尋ねしたい。
  74. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) まあ私は「帰還案内」そのものが、今申し上げたような立場である場合には、少し慎重過ぎるくらいに慎重に考え過ぎていると思います。従って、むろんそういう状況がなければ、運営としてはやはりそうかた苦しい運営をするとは思っておりませんが、従って、そういう意味において、関係当局者ができるだけ円満に帰還の目的を達するように努力をしていく。そうしてお互い話し合いをしながら、今言ったように運営を全うしていくのだ、その意味においては、やはり政府のやったこともそういう意味に御了解願いまして、そうして今後は、実際帰還者の団体の方々とその事務を取り扱う当事者の方々とがお話し合いの上で、具体的にはこういう状況ならもう少し扱いを楽にしてもいいのじゃないか、そういう配慮をいろいろ運営上はしていけると思います。それはまたあまり字句等にこだわると、あれもあろうかと思いますが、何といいましてもせっかくここまできたのだから、円満に帰還されることが目的なんだから、それをこの際できるだけうまくいくように取り扱っていく、こういうことが第一義じゃないか、そういう意味において、私たちもそういう趣旨のもとに対処して参りたい、こう考えております。
  75. 大和与一

    大和与一君 今の点、ちょっとくどいようですが、やはり帰られる個人というわけにはいきませんが、団体などの意見も十分聞いて、そうして大臣としてもよくお話を聞きながら対処していきたい、こうお考えになっていると考えてよろしいわけですね。
  76. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん当面の責任が厚生省なり赤十字でございますから、いろいろそういう意味において御意見がございますれば、私も責任当同なり厚生当局の帰還事務を取り扱っている方々にそういう御意思を取り次いで、要は円満に帰還されることが目的なので、こういうことだけにこだわってうまく帰還がいかないということであっては、せっかくここまできました趣旨を汲却することになる、そういう趣旨に沿ってできるだけあれして参りたいと思っておりますが、帰還者の団体の方においてもそういう趣旨を御了解下さいまして御協力して下されば一番円満にいくのじゃないか、こう思います。
  77. 大和与一

    大和与一君 今のお話を聞きましたので、そうなると、この「帰還案内」等にあまりこだわる必要はないのだけれども、一応あまりばかげたことが書いてありますからね。窓口で全く本人の自由意思かどうかということを、決心したかどうかということを尋ねる。尋ねるときに、その尋ねる人が今度は脅迫しているように思うんですね。本人からいやだと言ってきた場合には、これは当りまえだけれども、窓口で一体だれがやるか、大臣が全部やるのならいいけれども、そうはいかぬでしょう。そうしたら、やはりお役人さんがやるのだから、その人が、一人一人の判断で何か聞いて、これは自由意思であるとかないとか、そんなことをきめることが一体できるのですか。これは明らかに憲法違反の疑い十二分にあると言わなければならないと思う。あるいはまたこれはちょっと字句になるのだけれども、申請が終ったら出発の予告通知のくるのを静かに待っておれ、こんなことはずいぶんふざけた言葉だと思いますが、こういうことまで書いてある。それから国旗とかポスターとかそういうものを外部に掲げちゃいかぬとか、あるいはまた今度は集合センターで、特別の一室で帰国者の自由意思であるかどうかをさらに再確認をする、こんなものはまるで監禁か軟禁ですから、そういう設備は早くやめてもらわなければいかぬし、いうことも含めて、今の大臣のさっそうきのお話によってこういうことも具体的に各項にわたって十分意見を聞き、なお厚生省なりとも相談をしながらこれに対して善処する、こういうふうに考えてよろしゅうございますね。
  78. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) お話通り、われわれ帰還を妨害する意思は毛頭持っておりません。むしろ円満に帰還されることを希望して今日まで努力してきているのでありますから、円満に帰還される、また帰還される人が何らかのいろいろな暴力等を受けないように、用心をしていかなければならぬわけです。そして円満に帰還されるような方途をとっていくことが必要でありますから、そういう点について、いろいろ御意見がありますれば、むろん関係当事者に私からもその御意思を伝達しまして、必要な範囲内において、できるだけ具体的に取り扱いについても十分考慮してもらうようにやって参りたい、こういうふうに考えております。
  79. 大和与一

    大和与一君 それではもう一つだけ、この案内について聞きますが、この帰還規則に従わない者は、帰還業務の利益を剥奪する措置をとることができる、こういうことまで書いてあるんです。そんなことをして、帰還業務をほんとうに誠意を持ってあたたかい気持でやるということにはならないと思う。こんなものを書いてそしてばらまいておりますね。こういうことは絶対にしないということを、はっきり言って下さい。こんなことではできないですよ。こういうことまで書いてあるんです。これは結論的に書いてあるからもう一ぺんここだけ念を押しておきます。
  80. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今申し上げましたように全面的に「帰還案内」そのものについて、いろいろまあ行き過ぎとかあるのじゃないか。あるいはそういうことが必ずしも適当でないじゃないかという御意見を承わりまして、むろんわれわれは自由意思で帰還されるということを建前にしておりますから、そういう意思の確認ということは必要であろうと思いますけれども、そのこと自体以外の点については、できるだけ円満に、妨害が行われないように、そして帰還者が安全に妨害されないで帰れるようなことがこの趣旨なんですから、その趣旨に沿って政府がやっていくということは、これは間違いないと思います。従って、帰還者の方においても、政府の趣旨のあるところだけは十分御了承願って、御協力を得れば、私はどう書いてあろうと円満に進行していくのじゃないか、またそういうことが望ましいのじゃないか、こういうふうに考えておりますので、そういう意味において私もできるだけの御助力をするつもりであります。
  81. 大和与一

    大和与一君 もう一つの点は、日韓会談をやっていますね。これでどうもちょっと変なまたうわさが韓国から出ているのですが、これはうわさかどうか知らぬけれども、韓国人の帰還協定は近く締結されるかもしらぬ。それがきまるときにはそれらの人に対して特別の補償といいますか、あるいは品物についても、あるいはその他についても、この北朝鮮に帰る人と違った条件で話を進めているのじゃないか、こういうことが当局の情報として、韓国で何か新聞か何かに出ておったそうですが、そういうものを見てきた人の話があったのです。そんなことが実際あるのか、あるいは小委員会というか、分科委員会というか、なっておりますね、そんなことがあるのでしょうか、その点をちょっとやや正確にお伺いしたい。
  82. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 韓国内でどういうことが論議されているか、私帰ってきて早々ですし、存じておりません。しかし、むろん日本におられる朝鮮の方々が、南に帰ろうと北に帰ろうと、それに対して差別的な待遇をしようという考え方は毛頭持っておりません。
  83. 大和与一

    大和与一君 そうでなくて、今、日本でやっている日韓会談の分科委員会ですか、その中でそういう話が出ておるというようなことが書いてあるというのですよ。そういうことを一体考えておられるのか、どういうことなんですか。
  84. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 現在行われております日韓会談の中でそういう話が行われておるとは思っておりませんし、かりにそういう話が出ましても、今申し上げたようなわれわれの原則で、何か特別な差別的待遇をするというようなことは考えておりませんから、かりに今後そういうことがありましても、われわれの態度は変らないで進む、こう考えております。
  85. 大和与一

    大和与一君 そうすると、今の日韓で抑留者の例の問題がありますね、この方は大体きまったのでしょうか、いつごろ……。
  86. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 抑留者の問題は、名簿をあれしました。そうしてこの手続からいいますと、従来でもそうでありますが、出された名簿について韓国側は一応の、何といいますか、調査をするというようなこともございます。従って、大村収容所におりますリストについて、今聞いておりまするところによると、相当数が調査が完了したと、で、ある数がまとまりますれば、日本の船でこれを仕立てて帰すことになろうと思いますけれども、また同時に、釜山の抑留者についても同じ処置がとられてくるので、まあ早ければ今月中、おそくとも来月に入って交換が始まってくるのじゃないか、こういうふうに予想をしながら、できるだけ事務的な仕事は日本側においては急がせてやらせております。
  87. 大和与一

    大和与一君 最後に、実はさっき一つ大臣に質問しないことがあるのですが、やっぱり大臣の留守に「帰還案内」をきめて強引に出したというのがどうもくさいんですよ。八月十五日かに帰国者の協力会をおやめになった渡邊厚生大臣にお会いしたときなんか、まるきり手放しで喜んでくれて、面会も自由だし、外出も自由だし、もしも日本人が汽車賃さえ払ったら幾らでも同乗してもらってよいということを大臣が言っているのです。相当皆さんの前でおっしゃっているのです。そういうことを言っておったのが、ころっとあなたの留守中に変ったものですから心配しているのです。ですから、政治とこの問題とからませないとか、その他の問題とこの問題とからませない、あくまでも政府は国際協定の通り、今までも大臣もお骨折りで、ほんとうに国民が翹望しておるわけですから、ぜひ既定方針通りやるのだ、それにはこの問題がひっかかっておるから、早急に解決をしてやってもらうのだ、そういうことを私は要望するし、それに対する大臣の所信をお尋ねして質問を終りたいと思います。
  88. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この問題は、御承知通り、居住所選択の自由という国連憲章の原則に従い、むろん世界の公正な立場に沿ってわれわれとしては解決努力をしてきたわけであります。その目的が一日も早く達成されることを希望しながら進めております。ただ、先ほど申し上げましたように、この問題が純粋のあれであるにかかわらず、何かで妨害行為等が送還の際に起ってしまいますことは好ましいことでないのですから、そういう点について責任ある政府としても、ある程度円満に帰れるように、喜んで帰れるように措置をせざるを得ないことは、これはやむを得ないことだと思います。その点は人権をじゅうりんするためにこういうことをいろいろやったのじゃないということを、帰還者側においても御理解をいただけるようになって、そうして協力していただければ、あるいは行き過ぎた点等につきましては、文書自体を直さなくても、実際の運営におきまして、ほんとうに円満にいけるように運営ができると思いますし、もし若干必要があれば、そういう点については考慮していくということも必要だと思います。ただ要は、政府においても帰還者側においても、円満にしかも安全に—安全ということも非常に大事なことだと思うのであります。安全に所期の目的を達成せられるように、お互いに協力する意思をもって実際の問題の取扱いに当っていけば、まあ帰還問題等も、若干いろいろなことがありましても、円満に遂行できるのじゃないかと思うのでありましてそういう点を私は望んでやまないのであります。
  89. 森元治郎

    ○森元治郎君 時間もないからほかの問題は聞きませんが、きょう聞いた方が適当だと思うので、大臣の時間がないのは知っておりますが、はっきりお答えを願いたい。問題を二つに分けまして、第一点は、なぜ安保改定を急がれるのか、それは大臣が、どこか。羽田かどこかでしょう、国際緊張緩和ができたからといってちゅうちょするのはおかしい、かえって急いでやるべきだというような談話があったのですが、それは、国際緊張緩和の傾向が強く出てきたので、もたもたしていると情勢に流されるのをおそれて、以前にやりたいというお気持か。それを裏づける一つ国際的な事実としては、アイゼンハワーとイタリアの総理大臣の共同声明にありますように、NATOの結束を固めるというような共同声明がありました。これなども、このフルシチョフ氏の訪問によって少し緩和された空気で国民あるいは政府がふらふらするのを押える予防手段ではないかと考えるのが一点。流されるのをおそれているんじゃないか。  第二点は、安保条約を結ぶ情勢が熟しているんじゃなくて、結べない情勢の方がむしろ熟しつつあるんじゃないか。その理由は、大きくいえば国際関係アメリカ態度を見れば、現行条約でも、極東における平和と安全、自国の防衛に役立つようにこの基地を使えるのですから、特にあらためて改定されても、アメリカが多くプラスになることもないからというような関係か、積極的ではない。国内を見ると、社会党は反対。自民党を見ると、新聞では、最近、総理大臣は一月の初めに安保改定を出すと言い、近ごろこの数日は、川島幹事長が、親書がきたとか、調印は年内でとか、あるいは一月十日とか、いろいろ安保が今でもできそうな放送を盛んにやってきている。その反面、党内で派閥があって、いろいろと申し入れを大臣のところに持ち込んでいる。ただいま内容について伺えば、行政協定についても三、四の点まだきまらないところがあると言いますが、その三、四点がむずかしいんで、所管外の大蔵大臣まで、ハーター長官に会ったときでも横の方から応援しているような状況。また一般国民の世論を見ても。イギリスのエコノミストのいつかのものにも、国民の半分は無関心だというのであります。それから最近の読売新聞でしたかの世論調査でも、半分は中立だと、そして改定に賛成の中でも——四六%とかあったようでしたが、賛成の中でも、どう変るか内容のわからないのが二一%もある。エコノミストのときでも、半分が無関心で、残る半分の半分が賛成で、半分が反対と、こういうふうになっているので、そうしますと、国際情勢、党内情勢、国民の無関心、無理解の状況において、はなはだ御苦労さんですが、藤山さん——交渉当事者と、これを裏から、激励するか足を引っ張るか知りませんが、総理大臣が応援している。このままうっちゃっておいてごらんなさい、流れますよ。これはむしろ、締結する情勢は熟してない、むしろ中止すべきだということに、私は、社会党という立場じゃなく、宇宙の客観情勢から見て賛成だと、こう考えておりますが、いかがですか。
  90. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) どうも宇宙の客観情勢からか何かで見ることは私もむずかしいと思いますけれども、少くも現在の、現実事態の上から考えまして、御承知通りこの交渉というものは、数年前から自由民主党としても、政府の方針として重光外務大臣以来、アメリカに対して日本の要望を伝えておったわけであります。また、そう言っちゃあるいは失礼かもしれませんけれども、私が外務大臣になって以来、外務委員会等においてもずいぶんこの問題は論議されている問題でありまして、私は、日本として当然七年前のあのままに条約を置いておくのは適当でないという考えでありますので、従って、これを改定することが必要であり、今日の事態において当然だと思います。従って交渉を始めたのでありまして、何か私が大へんに急いでいるように各方面ともとっておられますけれども、すでに交渉を始めてから一年もかかっているのでありまして、そんなに急いでおるなら、もっと早くできるわけでありますが、なかなかそうも参りません。従って、時間をかげながらでもやっていくというつもりでやっておるのでありまして、特に急いでやっておるわけでもございませんが、しかし、現在の事態から見まして、私どもは、今まで申し上げたような立場でこの改定交渉を取り上げておりますから、これは当然、政治的に考えましてもあるいは事務的に考えましても、この交渉を中途半端にしておくことは適当でないと考えます。従って、一日も早くこの交渉を妥結させ、そうして調印に持って参り、あるいは国会の批准を経て—論議を尽してきめるというのが適当だと思うのでありまして、そういう意味においては、できるだけ努力をして、一日も早くこの問題の終局の論争に移って参りたい、国会批准等を通じての論争に移って参りたい、こういうふうに考えているわけでありまして、今、機が熟してないというお話でありましたが、私としては、必ずしも、これだけ論争を重ねただけに、ある意味から言えば機が熟しているとも言えるのでありまして、政治方面に携わっている人がこの問題にまるで無関心であるわけはないのでありまして、ほとんど全部が、安保問題ということに政治的関心が集中しているということ自体は、相当にやはりこの問題について世間一般に関心があるということであるわけで、そういう意味からいいましても、当然早く帰結に持っていくということが必要であろうと、こう考えます。
  91. 森元治郎

    ○森元治郎君 時間がないから、また後日……。
  92. 鹿島守之助

    委員長鹿島守之助君) ほかに質疑のある方はございませんか。  それでは、本日はこれにて散会いたします。    午後零時十九分散会