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1959-09-02 第32回国会 参議院 外務委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年九月二日(水曜日)    午前十時十一分開会   —————————————   委員異動 九月一日委員亀田得治辞任につき、 その補欠として加藤シヅエ君を議長に おいて指名した。 本日委員小柳牧衞辞任につき、その 補欠として大谷藤之助君を議長におい て指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     鹿島守之助君    理事            井上 清一君            苫米地英俊君            堀木 鎌三君            森 元治郎君    委員            青柳 秀夫君            大谷藤之助君            笹森 順造君            津島 壽一君            永野  護君            野村吉三郎君            佐多 忠隆君            曾祢  益君            羽生 三七君            藤原 道子君            大和 与一君            佐藤 尚武君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    運 輸 大 臣 楢橋  渡君   事務局側    常任委員会専門    員       渡辺 信雄君   説明員    法務局長官   林  修三君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査の件  (国際情勢に関する件)   —————————————
  2. 鹿島守之助

    委員長鹿島守之助君) それではただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について報告いたします。昨日亀田得治君が委員辞任され、その補欠として加藤シヅエ君が選任されました。   —————————————
  3. 鹿島守之助

    委員長鹿島守之助君) 本日は、国際情勢等に関する調査を議題とし、岸内閣総理大臣藤山外務大臣及び楢橋運輸大臣に対し、質疑を行うことにいたします。  岸総理大臣から発言を求められておりますので、まずこれを許可いたします。
  4. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、過般ヨーロッパ及び中南米等を歴訪して帰って参りましたので、その御報告を申し上げたいと存じます。  私は、去る七月十一日羽田を出発以来、一カ月にわたり英国ドイツオーストリアイタリアヴァチカンフランスブラジルアルゼンチンチリーペルー及びメキシコの十一カ国を訪問して、八月十一日帰国いたしました。これら諸国は、御承知のごとく、いずれもわが国と緊密な友好関係にあり、ことに近年において彼我の国交は政治経済文化等の各分野においてますます緊密の度を加えるに至っております。これら諸国訪問して、それぞれの政府首脳者意見交換を行ない、各国発展状況を親しく見聞することは、かねてからの私の念願でありましたが、他方、昨年来これら諸国から相前後して懇篤な招待を受けておりましたので、ここに訪問を決意し、これを実現する機会を得ましたことは、私の最も欣快とするところであります。  私の今回の訪問は、まず英国から始まったのでありますが、時あたかも東西外相会議ジュネーヴにおいて開催せられ、両陣営間の緊張緩和への努力が行われておりましたときに当り、マクミラン首相初め政府要路者と、当面の重要国際問題及び日英両国友好関係促進について、隔意なき意見交換し得ましたことは、まことに意義深きものがあったのであります。その際、私は、日本国民がひとしく重大な関心を持っておる問題として中共問題を取り上げ、意見交換を行なったのでありますが、私からマクミラン首相に対して、わが国は、政治的には、現在の段階において中共を承認する意図は持っていないが、経済的な提携は極力推進したいと考えておる旨を述べましたところ、同首相は、終始熱心に傾聴するとともに、本問題に関する英国立場を説明し、日本態度は、日本立場からすれば、よく理解し得るところであるとの態度を示されたのであります。  その他、英国政府首脳部との会談は、軍縮問題、中近東問題、後進国開発問題、欧州共同市場問題等に及び、今後のわが国施策上きわめて参考となる点が多かったのでありますが、特に、かねてより両国間の懸案となっていた英国ガット三十五条援用の撤回については、私より早急実現方を強く要望したのに対して、先方は、日本希望は了察できるが、英国としては困難な事情もあるので、すでに進行中の通商航海条約交渉との関連においてさらに検討を進めたいとの好意的な発言がありました。  今回の訪英に当り、英国政府の誠意ある歓待を受けましたことは、私の衷心より欣幸とするところでありますが、私個人の見聞及び新聞の論調等から判断いたしますると、日本に対する英国民の感情と認識は、戦争直後の一時期に比すれば著しく好転したことを感知いたしました。かかる好転のゆえん考えまするに、近来政治及び経済の両分野における安定の増大とともに、日本の地位が国際的に著しく向上した結集、イギリス朝野に、日本経済的には英国競争相手たる面も少くないが、大局的には自由陣営を強化するため日本との協力関係を一そう緊密にする必要があるとの認識が、逐次高まったためと推察されるのであります。  東西陣営接触点たるヨーロッパにおいて、英国世界平和のために果している現実的な役割に思いをいたすならば、わが国としては、今後一そう同国との協力関係増進することが重要であると考えるのであります。  ヨーロッパ大陸におきましては、ドイツオーストリアイタリアヴァチカン及びフランスの五カ国を訪問いたしました。これら諸国のうち、ドイツイタリアフランスの三国は、北大西洋条約機構、いわゆるNATOの有力なメンバーであり、欧州大陸における自由諸国の中核として国際政局の上に重要な役割を演じていることは御承知通りであります。これら三国におきましては、まずドイツにおいてホイス大統領アデナウアー首相及びエアハルト副首相経済相に、イタリアにおきましては、グロンキ大統領セーニ首相及びペラ外相に、またフランスにおきましてはドゴール大統領及びドブレ首相にそれぞれ会見いたしました。  これらの会談におきましては、折しもジュネーヴにおいて開催中であった四国外相会議をめぐる東西関係の見通しを初め、欧州政局の諸問題についてそれぞれ忌憚なき活し合いを行い、三国首脳から、きわめて示唆に富む見解を聴取することができたのであります。これら会談を通じて得ました印象では、三国は、個々の外交施策の上においてそれぞれ若干ニュアンスの相違はあっても、対ソ外交基本方針においてはその理念を一にし、よく団結の実を上げておるように見受けられたのであります。  アジア情勢につきましては、中共問題に対するわが国態度を説明し、中ソ関係の将来について意見交換を行なったほか、後進国開発の問題についても討議を行ないました。この点につきまして、私は、未開発諸国に対する援助の問題は、現下における最も重要な問題の一つであること、また、かかる援助は、各国が個々別々にではなく、自由諸国が共同して統一的に行なう必要があることを強調いたしましたところ、三国首脳は、いずれも同感の意を表しました。  また、これら三国は、石炭、鉄鋼共同体共同市場ユーラトム等欧州共同体の加盟国であり、いわゆる欧州統合化動きを強力に推進しつつあることは御承知通りであります。このような欧州経済統合化と、それによる繁栄は、それ自体としては歓迎さるべき性質のものであることは言うまでもありませんが、これによって日本その他地域外諸国に対する通商上の差別待避が強められる結果となるならば、これは世界貿易自由化の大勢に反し、域外諸国に対し、不当な損害を与えるものといわなければなりません。私はかかる見地から、三国政府首脳者に対し、共同市場の運営に当っては、それが排他的性格のものとならないよう、慎重な考慮を払うよう要望いたしましたところ、各国首脳は、いずれもわが国立場を十分に了解できる旨述べるとともに、欧州における経済統合目的は、かかる排他的性格のものでないことを言明した次第であります。  次にオーストリアは、上述の三国と異なり、中立立場をとりながらも、他方、また西欧的伝統を維持しておりますことは御承知通りでありまして、同国政府首脳者との会談は、かかる同国特殊性を反映して、きわめて興味深いものがあったのであります。また、同国シェルフ大統領及びラープ首相は、ともに近年わが国訪問された経緯があり、日興関係は最近著しく緊密の度を加えておるのでありますが、今回の訪問に際しては、かかる友好関係を今後もさらに強化するための方途について、種々意見交換を行ないました。なお、オーストリアフランスとは、御承知のごとく、わが国に対してガット第三十五条を援用しており、このために、わが国からこれら両国向けの輸出は著しい制約をこうむっておりますので、私は両国政府首脳者に対して、右の援用を撤回するよう強く要請いたしました。その結果、両国とも本問題について十分好意的検討を行うべき旨を約しましたことは、さきにそれぞれの共同声明によって明らかにされた通りであります。  次にヴァチカンにおきましては、法王ヨハネス二十三世に謁見いたしました。歴代法王が戦後日本の当面しておる諸問題に深い関心を寄せられ、ことに移民問題について多大の理解と援助とを与えられておることは御承知通りであります。右の謁見に際しては、法王より進んで移民問題に言及せられ、法王庁としては今後ともこの問題につき協力を惜しまないであろうと述べられたのであります。  私は今回のヨーロッパ訪問に当り、戦後の復興期を完全に終って、今や安定した繁栄を謳歌しつつある欧州の実情をまのあたりにして、まことに感銘深く、また、共同市場を初めとする欧州統合動きがきわめて底深いものであることを痛感した次第であります。また、直接ヨーロッパ指導者の口から、東四緊張緩和のためあらゆる手段、方策を尽す反面、東西対立の冷厳なる現実を直視し、安易なる考え方に陥ることなく、自由諸国団結を固めることの肝要なるゆえんを聞いた次第であります。  欧州諸国訪問の旅を終えて、七月二十四日ブラジルのリオに到着いたしましたが、ブラジルにおいては、クビチエック大統領ネグロン・デ・リマ外務大臣通商貿易拡大移住促進文化交流増進につき会談いたしますとともに、かねてから懸案となっているクビチエック大統領訪日につき、その実現方を申し入れましたところ、大統領はその好意を謝し、万難を排して訪日実現したいとの希望の表明がありました。会談の内容は、七月二十七日署名いたしましたクビチエック大統領との共同宣言にうたわれているところでありますが、現行の貿易及び支払い取りきめが両国間の通商貿易拡大目的に沿わない点があるので、新しい角度から新取りきめを締結することの必要性につき意見が一致いたしましたほか、現在交渉中の移住協定及び文化協定の締結を促進することについても合意が成立した次第であります。  ブラジル滞在中、目下建設中の首都ブラジリアを視察いたしましたが、世紀の偉業ともいうべき大事業が着々進行いたしております。また、在留邦人の多数居住するサンパウロを訪問いたし、短時間ではありましたが在留邦人活動状況をつぶさに観察いたし、また親しく懇談する機会を得たのであります。私は、在留邦人一同ブラジル経済発展のために重要かつ積極的な役割を果しており、ブラジル社会からその勤勉と誠実とを高く評価されていることを知り、まことに心強く感じた次第であります。  次いで二十八日アルゼンチン訪問いたし、フロンディシ大統領及びタボアダ外務大臣と懇談いたしましたが、大統領より、同国経済開発促進のため外国資本の導入を歓迎しており、工業国たるわが国からの企業進出に多くを期待したいとの意向が表明されましたので、私といたしましては、同国との経済関係緊密化のため、今後の協力とその具体的方法につき検討いたすべき旨を約しました。また、私より移住増進に関するわが国希望を述べましたのに対し、先方よりは、具体的植民計画があれば現在の移住ワクをさらに拡大する用意がある旨の好意的回答に接しました。  その後チリー訪問いたし、アレサンドリ大統領ヴェルガラ外務大臣会談いたしたのでありますが、私は最近の日智経済関係が、鉄、銅山の開発漁業提携等により著しく強化されて新段階に入っておりますことにつき認識を新たにいたしました。また、同国首脳との話し合いにおきまして、今後一そう両国協力関係を強化することに意見の一致を見た次第であります。  次いで八月二日ペルーを訪れてプラード大統領及びベルトラン首相会談いたしましたが、その際私より、在留邦人に対する同国政府のあたたかい保護と指導とにつき感謝の意を表しました後、わが国といたしましては、今後とも同国との通商特に経済協力促進し得る旨を述べたのであります。また、かねて話し合いを進めておりました同国大統領本邦招待につき申し入れを行ないましたが、同大統領は、なるべく近い機会わが国招待を受けたいとの意向を示されました。私はペルー滞在中、同国在留口日系人活動状況に親しく接する機会を得たのでありますが、これらの人々が戦時、戦後を通ずる幾多の困難の時期を経て雄々しく立ち上り、現在ペルー社会の一員としてはなばなしく活動している姿をまのあたりにいたし、まことに意を強くした次第であります。  右に引き続き、八日五日メキシコ訪問の上、マテオス大統領及びテーリョ外務大臣会談いたしました。その際私より、日墨両国間の片貿易現状を是正するため、わが国産品品買付増大方を要望いたし、かつ、わが国同国に対して資本技術とを提供する用意がある旨を述べましたところ、先方は、両国経済提携促進いたすため、本年中にもわが国に対して経済ミッションを派遣したいとの意向を表明いたしました。よって本件につきましては、わが方の在メキシコ大使をして、今後さらにメキシコ政府と密接なる連絡をとらしめ、これが実現につき努力いたすことといたしたのであります。   私はメキシコ訪問を終えましたのち、ロスアンゼルス、ホノルルを経て過日帰国いたした次第であります。  今回私が訪問いたしましたこれらの中南米諸国を概観いたしまするに、これらの国々は、いずれも新興の意気に燃えて、新しい国作り経済開発に懸命の努力を払っておるのでありますが、同時に、これに要する資本技術との不足に悩んでいる現状でありまして、これがため、工業先進国としてのわが国に対する期待も大であります。よってわが国といたしましても、でき得る限りこれら諸国経済建設に対する協力を進めるべきであることを痛感いたしたのであります。同時にまた、これらの国におきましてわが国移住者努力が高く評価されておりますのみならず、今後の移住につきましても好意的の国が多いことにもかんがみましてわが国といたしましては移住促進につき、さらに一そう努力すべき時期に到達していることを強く感じた次第であります。  以上をもって報告を終ります。
  5. 鹿島守之助

    委員長鹿島守之助君) 御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  6. 井上清一

    井上清一君 私は安保条約の改定問題に対しまして、総理並びに藤山外務大臣に若干お伺いを申し上げたいと思います。  昨年来、日米安保条約改定の問題に対しましては、総理並びに外務大臣が非常な御苦心と御努力を払われておりますことにつきましては、深く敬意を表するものであります。  去る八月二十六日の毎日新聞に、安保改定をどう思うという全国世論調査が出ております。これによりますと、推定でございますが、国民の四〇%が安保条約というものに対してわからぬという答えを出した、また改定賛成が二八%、廃棄が一九%ということが、この世論調査に出ておるのであります。安保条約というわが国の将来にとってきわめて大きな影響を持っておりますこの問題、そうしてまたわが国民の安否、また命運に関するこの重大な問題に対して、かくのごとく国民関心が非常に薄く、浅いということについて、私は非常に遺憾に存じたのであります。また一方、このたびの安全保障条約改定の問題をめぐりまして、安保条約改定日本戦争に導く原因を醸成するものであり、あるいはまた日本原水爆火器をもって武装させる道を開くものであり、あるいはまた、はなはだしきは徴兵制度の前提であり、あるいはまた憲法改正意図をもってこれをやるというような、まことに飛躍した議論が、そうしてまた里耳に入りやすい議論が非常に流されおるのであります。それと同時に、この交渉を阻止することを目的といたしまする組織的な政治活動が展開されようとしておるのであります。日本が独立を回復いたしました当時におきましては、なお朝鮮動乱が継続中でございました。顧みますれば一九五〇年の一月、アメリカの国務長官のアチソンが太平洋の防衛線には朝鮮が入っていないのだということを言明いたしましたちょうどその年の五月に朝鮮動乱が起ったのであります。私は単に一例をあげたにすぎないのでございますけれども、国連憲章の認めます集団安全保障は、平和を守るため必要やむを得ざるものであることは、戦後の歴史上のいろいろな事実が証明しておるのであります。この平和を守るための措置、特に現に存在いたしておりまする条約に合理的な改正を加えることを目的とする本交渉に対しまして、改定阻止条約廃棄主張が行われておるのであります。もちろん中立をもって日本の安全を保障する道であると、純粋な動機からこれを信ずる人もあるでございましょう。しかしながら、改定阻止運動を組織しておりまする勢力というものは、従来の言動から見まして、その性格中立でなく、共産圏政策に追従し、反米運動の一環としてこれを推進しておりますことは、何人にも明らかであります。安全保障条約改定は、現在日本の最大の政治問題となったのでありますが、以上申し上げましたように、日本基本的な進路をめぐる争いにまで発展をしてきておるのであります。私はこの際、日本の進むべき道という根本的な問題に対して、政府が重ねてその信念国民の前に明らかにすべき時期に到達しておると考えるのであります。私は、この点に関しましての総理の御所信を承わりたいと思うのであります。  なおまた、今次総理外遊に際しまして、今後の外交進路に関して、また日本外交方針について、総理がいろいろお考えになってこられたと思うのでございますが、将来どういうふうな方向が一番いいのか、またどうすべきかということについて承ればけっこうでございますし、なおまた、安全保障条約改定の問題に関し、外遊を通じて総理がお感じになりましたことを、この際、率直に承ることができれば非常にけっこうだと思います。
  7. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は、かねてからしばしば申し上げております通り日本の進むべき道は、言うまでもなく個人の自由と、それから個人人格尊厳を認め、それを基礎としたところの民主主義方向を強く推し進めていく必要があると思うのであります。これに対して、あるいは左の方から、あるいは右の方から、いろいろな策動がありますことは御承知通りでありますが、これに対して中正な真の民主政治を完成して民主主義の道を進むべきことが、日本国民福祉をもたらすゆえんであり、また繁栄をもたらすゆえんであり、また、それに基いて世界の平和を築き上げることが人類の幸福と福祉繁栄をもたらす唯一の道であるという信念に立って、あらゆる国内あるいは外交方針をきめ、また、そのきめたところのものに向って強く進んでいくというのが私の基本の観念でございます。  今回私が外国訪問いたしました際におきましても、実は先ほど報告申し上げましたように、今回の訪問は、いずれも私が信念として考えておる理想に向って従来政策を進めておられる国々訪問したわけでございますが、これらの国々におきましても、やはり今日一番強く脅威を感じておるのは、言うまでもなく共産主義によるところのいろいろな面におけるところのこの平和攻勢と申しますか、いろいろな施策というものに対して、いかにして人間の自由を守り、民主精神民主政治を守っていって、そうして人類福祉繁栄をもたらすかという、この点に関して非常な苦心をされておる国々であります。しかも今日、共産主義自由主義国々との考え方は、根本においてその考え方が違っておるばかりでなくして、その考え方に立って、おのおのおのおの理想なり、考え方を同じくする国々を糾合して、そうして東西陣営対立という状況にあるわけでございます。これは緩和しなければいかぬ。この間において戦争というような事態を再び招来するようなことがあっては絶対いかぬ。これはどうしても緩和する、それにはあらゆる努力と、あらゆる施策を強力に行なう必要があり、従って、あるいは外相会議といい、あるいは巨頭会談といい、最近におけるところのフルシチョフ及びアイゼンハワー大統領相互訪問というような努力も、私はこの緊張を緩和するための努力であり、戦争を再び起させないようにするということに対する努力であると思うのであります。しかし、その根底にあるところの人間の自由を尊重し、個人の自由と人格尊厳をあくまでも基礎としたところの民主政治民主主義というものによって人類繁栄と、それから幸福をもたらすか、あるいは一つの共産的な考えでもって独裁的な方法によってこれをもたらすかということについては、根本理念を異にし、この点においては、両方主張をいずれも曲げないというのが現在の状況でございます。従って、この間においてどうして両方が共存しながら繁栄し、ここに平和が作り上げられるかということが、結局私は今日のいろいろな世界政治家努力の中心であろうと思うのであります。お互いに侵さず侵されずというこの安心感、そのことが確保されることが絶対に必要であり、従って、お互いの今日の状況から申しますというと、自由主義の国におきましては、自由主義国団結をあらゆる面において—経済的においても、あるいは軍事的においても、あるいは政治的におきましても——いろいろな連繋や協力団結を強めていく。共産主義の国におきましても、やはりそういう体制がとられております。この間において自由主義国々は、また共産主義国々も、あるいは集団的防衛措置も講じ、あるいはそれぞれの事態に応じて自分の国の安全と平和を守るための措置を講ずるというのが、現存の国際情勢でありまして、決して先ほど申しました話し合いによって解決するとか、あるいは米ソ巨頭相互訪問ということによって、一挙にして、一気に両陣営とも一切のこの安全保障に関する建前や、あるいは軍備の問題は撤廃して、まる腰で話し合ってこれを解決していこうというような情勢では決してないのでございます。従って、われわれはこの日本の今日までずっと戦後幾多の苦しい試練を経ながら、これだけ経済が復興し、国民の所得も上り、われわれが平和のうちに繁栄の道をたどっておるということは、要するに、日本の国が他から侵略されず、そういう侵略に対する不安を持たずして、国民がそのおのおのの仕事に安んじて全力を発揮しているというところにあるわけであります。こういう日本の安全がどうしてできたかということにつきましては、私は、極東における諸情勢を見ましても、やはり日本が他から侵されないという体制、それは日本の自衛の措置や、日米安保条約のためにそういうことがもたらされたものだと思います。従って、そういう意味において今日のこの国際情勢においてわれわれが民主主義理想をあくまでも進める、また、世界の平和をあくまでも念願する、こういう意味から申しますならば、日本が侵さず侵されずという体制を常に強く持っていく必要があると思います。これが安保条約の真の目的であり、またその意味において私は安保体制というものが必要である。しかも今も御指摘になりましたように、現行の安保条約は、その成立の当時の特殊の事情から、私は日本がここまで国力を持ち、ここまで国際的地位が上り、また国際の一員として十分な責務を尽していこうという場合における独立自主の立場から見ますると、きわめて不合理な点が少なくないと思います。これらを合理的に改めていくということは、言うまでもなく絶対に必要であります。それから今日までの日本の進んできました自由主義立場を堅持し、自由主義国との間の協力を高めていく。特にその中核として日米の間の信頼と協力を推し進めてくるということは、私は日本の戦後における繁栄と回復の道をたどっておるところの非常に大きな原因をなしておる道だと思います。この路線は決して間違っておらない。これを今、日米を離間し、もしくは日本自由主義立場を離れて容共的な立場なり、親共的な立場に変るということになるならば、日本国際的地位も、また日本経済繁栄というものの基礎も、私はゆらぐものである。くつがえされるものである、こう思いますがゆえに、従来われわれが信じ、とってきたところの自由主義立場及び自由主義国との協力その中核としての日米協力というものを推し進める体制というものを、私は今後といえどもこれを推進していくべきものである、かように考えておるのであります。   —————————————
  8. 鹿島守之助

    委員長鹿島守之助君) ちょっと申しあげます。ただいま委員異動がございました。小柳牧衞君が委員辞任され、その補欠として大谷藤之助君が選任されました。  以上御報告いたします。   —————————————
  9. 羽生三七

    ○羽生三七君 総理の長い間にわたる外遊に敬意を表しながら、これから主として安全保障の問題について伺いたいのでありますが、必ずしも条約の条文に問題を限定するわけではありません。私がしばしば触れる問題でありますが、一国の安全をいかにして維持するかという、この基本的な問題から、最初若干抽象的なことになるかもしれませんが、意見を述べて、総理の見解をお尋ねしたいと思います。  今、井上委員からもいろいろお話がありましたが、どんな政党でも、これは私がしばしば申し上げることでありますが、どんな政党でも、またどんな議員でも、だれであろうとも、一国の安全をないがしろにするものはないと思います。皆祖国を愛しておる。ただその手段方法が違っておる。そこで、私どもが見た場合に、総理が、総理大臣として就任をされて以来かなり時間がたっておると思いますが、私どもは、まあ半年や一年ぐらいで人の功罪を論ずる考えは毛頭ありません。しかし、時すでに久しいのでありますけれども、遺憾ながらこの岸内閣、自民党政府から開かされる一国の安全保障は、ほとんど軍事力中心主義である。もちろん軍事力が一国の安全をささえる柱であった時代もあるし、また今後なしとも言えぬ。これは歴史的に見もて明らかであります。しかし、核兵器、原水爆時代における一国の安全保障が、ただ軍事力だけに依存していいのかどうか。むしろ戦争の起りやすい条件そのものを取り除いていく。そういう中で平和の強い柱を確立していく、これは一国の安全保障の非常に大きな条件であろうと私は思います。だから、先ほど来お話があったように、自由主義陣営に属すること、あるいは理論的にこの自由主義あるいは資本主義をお信じになることも私は自由であるということは、しばしば私が申し上げる通りであります。しかし、まあお話を承わっておって、非常に私はイデオロギー外交の感を深くしたわけであります。そのことと現実の外交とは別であろう、もっと是々非々があっていいのじゃないか、そういうことを私たちとしては痛切に感ずるわけであります。特に井上さんから御指摘のあった、いろいろアジアを取り巻く緊張条件の問題にいたしましても、たとえば欧州ドイツ問題にしても、ベルリン問題にしても、朝鮮問題にしても、中国問題あるいはインドシナ関係の諸国にしても、全部共産主義政権と他の政権との二重政権であります。同一国家が二つに分れておって、その一方が共産政権である、そういう確執があるところに紛争が起っておる。何でもない単一の国家に今紛争の起こるケースは非常に少ない、絶対ないとは言えない、今後もあり得ることもあるでしょう。しかし、現に起こっておる世界情勢は、一方が共産政権で一方が他の政権、しかもそれが同一国内に二重政権として存在するところに問題が多いわけであります。  さて、そういう前提から考えた場合に、岸総理として軍事力中心主義だけが一国の安全をささえる柱であるとしてお考えになっておるか、あるいは、それ以外に緊張緩和ということも大きな一国の安全をささえる柱になると思うのでありますが、他国のフルシチョフ、アイク会談等はいざ知らず、わが日本において岸総理として、岸内閣の成立して以来、すでに久しいのでありますから、単に防衛力の増強、日米共同防衛体制の強化ということ以外に、具体的にアジアにおいて緊張を緩和していくという政策があるならば、日本を取り巻く国際的環境条件の中では、どういうものがあるのか、そういうものを一般的に、抽象的に自由主義陣営に属してということでなしに、具体的にこの緊張緩和の条件というものを聞かしていただきたい。
  10. 岸信介

    国務大臣岸信介君) もちろん一国の安全を保障するということは、単純な軍事的な力だけでこれが解決されるものでないことは、羽生委員の御指摘の通りであります。また、いわゆる国防という観念も、決してただ狭義のいわゆる軍事力を強化するというだけでもって国防ということが成り立つわけじゃございません。国の安全を保障するために、われわれは、あるいは外交の問題も、あるいは国内におけるところの諸施策も、この防衛と考えていかなければ、国防というものが成り立たないと同様に、この一国の安全を保障するという場合におきまして、軍事力だけにたよるということでないことは言うを待たぬと思います。われわれは、決して今日までどの国を敵視したり敵国呼ばわりしてこれと対抗するというような考え方をしておるわけじゃございません。今申し上げておるように、世界の現実が東西陣営というものに分かれて、そうして対立し、その間に緊張がある、これに対する不安がある。これをやはり除くためには、いろいろな話し合いもよかろうし、あるいは、お互いお互いの不信であるとか、あるいは誤解というようなものを解くために必要な手段を講じつつ、そうしてお互いお互い立場を尊重しながら共存していくという世の中を作り出すということが、私は外交の要諦であり、また、それが一国の安全を保障するために絶対に必要なことであると思います。従って、決して私は軍事力や、あるいはそういう軍事的な面からだけ一国の安全を保障する柱があり支柱があるというふうな、片寄った考えは持っておらないつもりであります。と同時に、この軍事力やあるいは現在の現実の世界情勢から申しますというと、他から侵略をされないという安心感を持つための備えをしておくということは、これは各国ともに行なっておることであり、また、日本としてもそのことを怠ってはならぬというのが私の考え方でございます。
  11. 羽生三七

    ○羽生三七君 一般的には今のお考えはわかりますが、私は、具体的にそれじゃ現実にどういう緊張緩和政策を持っておるかという点を伺いたかったのでありますが、それじゃもう少し具体的に入ってみたいと思います。  総理は、外遊から帰国したあとの記者会見で、こう述べております。今の段階で極東の平和と日本の安全と切り離す議論は成り立たない、こう語っておられます。これは確かに一つの条件のもとにおいてはわれわれも肯定し得る見解であります。また、昨日の外務委員会で、首相は質問者に答えて、極東の平和が書される事態が起これば、日本の安全は保てない、こう答弁をされております。これは今申し上げました通り、一定の条件のもとにおいてはまさに総理の、言う通りでありましょう。ただ問題は、このことを裏返して言いますというと、極東の緊張緩和が同時に日本の平和と安全のために役立つ不可欠の条件であることを意味しておるわけであります。だからこれはうらはらの問題でありまして、今の段階では、極東の平和と日本の平和を切り離すことはいけない、これは総理議論であります。同時に、それはそうではあるが、極東の緊張緩和が同時に日本の平和と安全につながるということを意味しておるわけであります。だから、そういう立場に立って今度の安保条約のいつも問題になっておる極東の平和と安全に関する云々というこの問題であります。この問題は、先ほど私が申し上げましたように、極東の平和と安全がなければ、日本の安全は保てないと同様に、また同時に、それを裏にして育った場合のこともあるのでありますから、これは私は安保改定をやる場合の非常に大きな条件になると思うのであります。特に、やはり同じ記者会見の際に、記者諸君の質問で、では自由陣営立場に立って安保改定を進めるというのは、極東の安全を目ざす立場に近いのかと、こういう質問を記者諸君がされております。自由陣営立場に立って安保改定を進めるというのは極東の安全を目ざす立場に近いのか、こういう記者諸君の質問に対して、総理自由陣営がいかに自分たちを守っていくかという立場でないといけない、こう言っておるだけであります。これは私は日本の安全について総理日本の固有の立場よりも西側の態勢を中心に考え過ぎておるのじゃないかと思います。一種の運命共同体的の感じとして受け取れるわけであります。だから、従って日本は極東の平和と安全といううたい文句にしばられて、結局他国の紛争にかえって巻き込まれていく結果になりはしないか、今私どもが冷静に国際情勢を見た場合に、日本そのものを直接対象とする攻撃が予見し得る近い将来に起り得るという条件は少ないと思います。これはこの前も私申し上げましたが、もちろん絶対という言葉で表現することは行き過ぎでありましょうが、少なくともわれわれが予見し得る将来に、日本そのものを直接の攻撃目標としてくる、そういう攻撃が起り得る客観的の条件は非常に少ないと思います。もし問題が起るとするならば、日本を取り巻く近隣諸国の紛争にアメリカが極東の平和と安全という名において介入をして、その結果、米軍に対する攻撃を日本に対する攻撃と見なして、日本が共同防衛の責任を負うというところに危険性が存在する、また危険性が増大する、これは何人の目にも明瞭でありまして、おそらく私は今度の条約の一番の問題点はこの辺であろうと思う。私はこの前にも総理に、かなり時間をいただいて述べましたが、私は絶対という言葉はいつも使っておらぬつもりであります。問題は相対の問題であります。比較の問題であります。こういうふうに比較的、相対的に見てきても、私は今度とられようとする政府のこの政策というものが、安全保障日本の安全にプラスになるかどうかという立場になると、むしろマイナス要因の方が多い、こう考えざるを得ないのであります。それは政府考え一つのお考えであります。しかし、かれこれ比較し、相対的に考えて見た場合に、むしろ日本に対する直接攻撃よりも、アジアにおける紛争にアメリカが介入をして、日本がそれに共同防衛の立場に立つことによって起こる紛争、戦争への危機—すぐそれが海外派兵につながるなんてことは私は絶対に申しません。そんなことを言うわけではありません。しかし、紛争の危険性、日本の安全がおびやかされるとすれば、むしろその方にはるかに度合いが多い。そういう相対的な立場から考えて私は今度の安保改定、特に極東の平和と安全、運命共同体的にそれまで突っ込んでいくということは、少し日本の安全とは逆の結果になるのではないか。これはもちろん日本が個別的に一国だけの安全を考えて、寝ころんでものを言っているというような勝手なことはできませんが、しかし、いろいろな諸般の情勢国際的な情勢日本の国内的条件、かれこれ考えてしかも日本は二重政権は存在しない。単一の政権です。だから中国や朝鮮や、あるいはインドシナ等と違うのであります。あるいはドイツとも違う。だから日本のそういう条件の中で、もう少し私は一般的、抽象的な安全保障条約ということよりも、具体的に現実に即してお考えいただいたらどうか、この問題に関する総理の御見解をお伺いしたいと思います。
  12. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 極東の安全と平和に関する問題につきましては、今お話の通り、私どもは、一方から言えば日本の安全と日本の平和というものを維持するためには、やはり狭い意味における日本の領土だけに侵略があった場合にしか、日本の自衛隊は動くことができないことは言うを待ちませんが、そういう国際情勢からいって、そういうふうに限定して考えることはできないのであって、やはり日本の安全と平和というものは、極東の安全と平和というものと密接なつながりを持っているということは、私は現実の問題であると思います。もちろん今、羽生委員のお話のように、かるがゆえに極東におけるところの緊張を緩和するということの努力をすることが、日本の安全を作り上げる上において必要であるというお考えにつきましては、私も同感であります。しかし、緊張を緩和するということが、直ちに日本が当然日本の安全のために考えなければならないところの、日本が侵略されないし、また日本と密接な関係のある極東の地域において平和が乱されるような現実の事態が発生しないように努力するということは、私は決して矛盾しておる問題ではないのであって、両々相待っていくべき性質のものであると思います。こういう意味において、私は従来極東のこの日本の安全を保障する安保条約に、現行の条約におきましても、極東の安全と平和のために米軍が出動できるような規定になっているゆえんもそこにあると思う。しこうして私は、アメリカはもちろん、アメリカだけでなしに、国連に加盟しているところの国々は、国連憲章の規定に従って、すべてそういう行動が起こされるのであります。従ってこれを無視して、何か介入したり、あるいは不当に平和を乱すような行動をするということを前提にものを考えることは間違っているというふうに私は思うのであります。現に、たとえば現行のこの状態から見ましても、かりに朝鮮半島であるとか、あるいは台湾海峡であるとかというような所に現実に戦火が動く、爆発するということになれば、現実に日本自身が侵害されなくても、国民も不安に思うし、また、ひいていろいろな事態が起こることを考えてみまするというと、決して日本の安全に……。そういう極東の平和や安全が著しく危殆に瀕するというような事態があることは、これはわれわれは避けるようにしたい。これを避けるのには、一方においては緊張緩和に関する努力をすると同時に、そういう事態が起こることを防ぐ意味におきましての、従来の国際の現実から見るというと、そういうことが起った場合においては、こういう行動によってそれを阻止するぞという備えをしておくことが当然必要である、私はかように考えます。
  13. 羽生三七

    ○羽生三七君 それでですね、一方において緊張緩和の必要なことは総理も今言っておられるのでありますが、それじゃ具体的にたとえば中共の国連加盟とか、日ソ平和条約の締結とか、あるいは朝鮮問題の合理的な解決とか、いろいろあると思います。これが条件です、緊張緩和の。それ以外にもいろいろあるでしょう。しかし、そういうことは何一つおやりにならない。ただ安保条約の推進だけであり、片方の、一面だけの裏づけだけを強調されて他の方面にこれと並行して進むべき緊張緩和の条件というものが、現実には進行しておらないのです。そこに問題がある。しかし、それはかすに時間をもってしてくれと言われるに違いないと思いますが、どうもいつまでたっても、極東の日本が一成員であるし、特にいろいろな意味からいって強国の一つであるわが日本が、いつまでたっても国際情勢待ちでは、私は芸のない話だと思います。だからマクミラン首相に岸総理の自信というものを裏づけしてもらうことも一つ方法でありましょうが、具体的にそれじゃ緊張緩和の条件というものをどういうものを持っているか、自分はこういう考え方で将来こういうふうにしていきたい。一面安保条約というもので自分たちはやっておるけれども、しかし、これだけで日本の安全をまかせるわけではない。他面においてはこういうことを考えておる。それは、そうするとそういうものは全然ないのですか。それは国際情勢待ちで、イギリスもアメリカもなってくれれば日本もついていく、こういうことなのですか。もう一度そういうことを具体的に承わりたい。
  14. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日ソの関係を私どもは共同宣言によって国交を正常化して参っております。これとの間に平和条約の問題がまだ締結されておらないということは、日ソの間が国交が完全な形においてまだ回復していないと、一面からいえば言えるわけでありますから、あなたのお話のように、あるいはこの点における努力をどうしたらいいか、それについて、それの平和条約を締結するならば、日ソの間におけるところの関係問題というものが、いろいろな懸案というものが解決するじゃないかということでございます。まことにそうだと思います。ただこの問題は羽生委員も御承知通り、領土問題に関連をいたしております。そうして私はこういう問題に関しては、それなら緊張を緩和するためにわれわれが正当な主張をも捨てて、平和条約を結ぶとか、あるいはわれわれがこの共産主義陣営の言うことに対してわれわれとしては譲るべからざることまで譲ってそして緊張を緩和するという性質のものでは私はないと思う。もちろん、私はたとえば中共に対しましても、静観主義であり、あるいは現在の段階においては政治的な関係を離れて、貿易や文化の交流を盛んにしてお互いが理解をして、お互いが積み上げていって、そして国際的な情勢の調整もはかりつつ、その関係を調整しようという考え方でございますが、それを一挙に現在の台湾の関係、あるいは国連におけるところの大勢というものを無視して、日本が一足飛びにこれを承認するということが、それではそれによって極東の緊張が緩和するじゃないかというふうな議論は、私は現実にはとれないと思います。それに、どうしてもこの両国の間に存しておるところの誤解であるとか不信であるとか、いろいろな疑惑であるとかいうものを一掃するように努力をしなきゃならないし、それには、いろいろな意味におけるところのそういうことに直接的でない経済や文化の交流を盛んにして、そしてこれが問題を調整していくという努力をすべきことが、現在の段階においては、私はとるべき現実的な方法である、かように考えます。
  15. 羽生三七

    ○羽生三七君 私も日ソ平和条約のような場合に、領土なんかどうでもいいそんなことを言うわけじゃないし、ものには順序がありますから、せっかちなことを言うわけじゃありませんが、しかし、その方向に向って政府が動いているという足跡がなかなか見つからない。だから私は申し上げているわけでありますが、そういう抽象的な理論は別としまして、先ほどの米軍の行動に関して、日本がどういう規制をする手段、方法があるかというこの問題に関して、結局事前協議、これだけで政府はカバーしようとしておる、ところが実際問題として、その場合に、日本が単に協議した場合に、ノーと言えばそれを無理してアメリカはやらぬだろうというだけのお考えで、条約上明白にこれを明記できないのか。おそらく問題はこの一点でしょう。私どもはこれができたからどうとは思いません、力関係ですから。しかし、条約の体裁上から言っても、これほど重要な問題がそこにかかっているのを、なぜそれを日本がノーと明白に答える場合においてのそれを明文化できないのか。この問題。  それからもう一つは、現実に問題が起こってしまった場合ですね。現に問題が起こってしまって、すでに米軍が行動してしまったあとの、事後に承諾を求められた場合にどうするか。私はそういうケースもあると思います。その場合には、日本はどうなるのか。そのほかにもいろいろこまかい問題もありますが、まずこの二つを、外務大臣でもいいのですが……。
  16. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 形式的には条約という名前を打っているものもありましょうし、あるいは条約的な内容を持った交換公文という形も外交上用いられているわけでありますが、とにかく二カ国間における約束した事柄を、初めからこれを違反したらどうするのだという……。これはお互いがこういう条約は信頼と、そしてお互いが誠実にこれを守るというところに条約があるわけでありまして、これを初めから守らなかったらどうするかということは、実は私どもは日米の間においてはお互いがこれを信頼し、お互いが忠実にこれを、約束したならば約束した通りを守るということを前提としてすべての交渉をしていくのでありますから、今のお話のように、事前協議をすると言っておったのに事前協議をせずして勝手にやったらどうするかというようなことは、それは二カ国間におけるそういう条約関係がそういう不信な行為をする国との間に成り立たないわけですから、これは私は考えるべきではないと思います。事前協議という問題につきまして、この点については外務大臣が現実に交渉をしているわけでありますが、私の承知いたしております限り、アメリカにおいてはもちろん事前協議をするということに踏み切ったゆえんのものは、この条約改正の根底である日米の間におきましてのほんとうに国民的なこの感情の上において国民的理解が、それを欠くようなことがあっては、どういう政府間において約束をしても実際に実効を上げるわけにはいかないのだ、ことに安保条約のごときものについては、国民が十分に納得し、国民協力を得なければならない。どちらが一方的である、どちらが権力が強いということよりも、そういう国民の信頼と協力が必要なんだということが根底をなしているわけでありまして、従って、事前協議で話し合いして、そして日本の同意を得なければやらないというのが、この協議事項にしたゆえんでございますから、それがあるいは条約の条文の上に置けずして、交換公文に置くとかというような事柄につきましては、私はやはり両国間の根本の誠実と信頼の上に立って、約束ということについては同一に見ていただいていいものである、かように考えております。
  17. 羽生三七

    ○羽生三七君 いや、この問題は重大でありますが、わずかな時間で片づく問題ではありませんから、これは実際問題としてはそれほど仲のよい日米であるならば、アメリカによく了解さして、政府与党の立場においても私はその程度の保証は取りつけるべきだと思いますし、かりにそんなことはやらぬと言っても、近代戦争では事が起こったあとに必らずこういうことになったからというような、事後承諾ということが起り得るケースがないとは言えない。私はむしろそういうケースが多いと思う。ですから、それを相互信頼というようなことでカバーできるのだということで納得できる性質のものではありません、が、時間がありませんから、他日にこれは譲ります。  次の問題は簡単なことですが、この前、藤山外相にお尋ねしたとき、事前協議の場合の日米会談のメンバーはどういう人によって構成されるか、それがいわゆる軍人、まあ自衛隊のような関係者によって選ぶべき性質のものではない、これは最高の政治会談の問題であろうと言いましたところが、外相は同意を表されて、近く検討するということを言われておりましたが、どういうことをお考えになっておるか、こまかい問題ですが、この点を一つ……。
  18. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回の条約につきましては、非常に全面的に協議をすることになっております。従って、協議機関の問題というものは非常に重要であること、御指摘の通りでありまして、われわれも協議機関の構成という問題については慎重に考えていかなければいかぬと思っております。従って、条約その他が完全にでき上りますと同時に、やはりそういう協議機関の構成問題というものがきめられなければならぬと思いますので、われわれとしてもせっかく検討をいたしております。むろん今日、総理がワシントンに行かれまして岸アイク共同声明にうたわれておりますが、日米安全保障委員会というものができております。あの構成メンバーが一つの例になることは当然だと思います。あれに対しまして、さらに何らかプラスをしていくかどうかというような問題がまあ中心になって考えていくべき問題、最高の協議機関としては考えていくべき問題ではないかと、今そう承知しております。従って、防衛当局者間だけの協議機関というものは、そういう最高な政治的な協議機関の下部的な協議機関になる。また、おそらく協議の実際の問題としては、いろいろな協議をいたさなければなりませんから、下部的な協議機関というものが、あるいは一つだけでなくて、二つになる場合もあろうかと思います。そういう意味において、今それらの最終的メンバーをどうするかということは、御指摘のように、最高の協議機関というものはやはり政治的な問題、観点から協議して参らなければならぬと思いますから、われわれとしても決して両国の防衛当局だけが会議をするというものを最高機関とは考えておりません。
  19. 羽生三七

    ○羽生三七君 もう一点だけ……。  最後に、外相は、大阪でやられた演説で、新しい条約は国連が日本の平和と安全のため十分な処置をとったと認めるときにこの条約を終了させることを定めると言われておりますが、これはまあ現在でもそういうことがうたわれておるわけですけれども、具体的にどういう処置をとったときとお考えになるのか、この点をちょっと具体的に承っておきたいと思います。
  20. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 国連のとります措置については、いろいろあると思います。たとえば、世界的に国家間の民主主義的秩序が完全に遂行されること、そうしていわゆる世界的に平和が招来されるということも考えられましょう。あるいは、そういうものに対して国連が、従来からいわれておりますように、国際警察軍その他についての準備をするというようなことも一つの考慮に入れていい問題だと思います。その他、世界的な問題でなくして、特に極東に対しての安定その他に対して、国連が何か措置をとっていくということも全然考えられないわけではないのではないかと考えております。極東だけを限って今申し上げましたような方向に何か考えられるものもあろうと思います。従って、そういう意味において、国連が、国際的にと申しますか、世界的にと申しますか、あるいは極東に対していろいろとります措置そのものについて両国が極東の平和を維持し、あるいは世界の平和が維持されるという状態ができるということになりますれば、当然これは解消していいんじゃないかと、こう考えております。
  21. 羽生三七

    ○羽生三七君 これでやめますが、総理どうですか。やはりいろいろ国内的にも自民党内にも問題があるし、まあ最初に私が申し上げたように、安全保障の問題は非常に重要だと思うのですが、やはり既定方針通り断固邁進というわけですか。
  22. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私はもちろんこういう重大な問題でありますから、国内においてもいろいろな御議論があることも当然であろうと思います。また、国内だけじゃなしに、党内におきましても議論があることも、これも私は決して世間で言っているように、そのためにこれをどうするという問題でなくして、党内の問題については私自身、また私が党の総裁として、党内の意見をまとめるような措置を講じて、国民の納得するような方法を講じていかなければならぬ。もちろん、大きな問題でありますから、国民のうちに相当数の、反対のあることも予想しておりますけれども、私はやはり日本が独立し、日本がこの安全を保障していくために安全保障条約体制というものは必要だ、これは廃棄するというようなことは考えるべきものじゃない。そうして、あるとするならば、従来議論されているように、これが日本にとって不当であり、日本にとってきわめて独立国とし対等な関係として望ましくないような条項はなくし、そうしてできるだけ不明確な点を明確にしていくというふうな改善を加えることは、これは私はやるべきものだ。いわゆる反対論のように廃棄しろという議論については、これは私は根本的に間違っておるという考えと、それからこれがある以上は、これを合理的なものにするということは、これは国民として十分に、従来といえども考えておったことであり、また、今日世界における日本国際的地位を考えても当然だと、こう思っておりますから、もちろん十分に国民の理解と御支持を得なければなりませんから、あらゆる努力をして実現をしたいというのが私の考え方でございます。
  23. 佐藤尚武

    ○佐藤尚武君 本日の委員会の冒頭において、総理が先般の外遊に関しての報告をされたのでありますが、このたびの外遊に関しては、世間でいろいろな批評がありましてかけ足旅行であるとか、実績が上がらなかったとかいうような批判があることは御承知通りであります。しかし私は、これは何も政府に対して太鼓をたたく意味で申し上げるのでも何でもありませんけれども、私は、一国の責任者が、いや日本の責任者が、機会をとらえて外国に出かけていって、そして各国の首脳者と会談し、意思の疎通をはかるというようなことは、きわめて望ましいことであって、今までそういうことがあまり行なわれなかったということが、むしろ不思議なくらいに感じます。今後も総理なり外務大臣なりが、機会があり、かつまた時間が許せば、ぜひ出かけていかれることを私は希望するものでありますし、単にこれら両大臣に限らず、特定の問題に関しては閣僚諸君が特定の国に出かけて行かれるということも、これも望ましいことだと思うのであります。ただ、その場合に、閣僚が外国に行って勝手気ままに国家の根本方針について論議してくるというようなことは、これは絶対に慎しまなければならぬことだと思うのでありまするが、ややもするというと、そういう気配が見受けられることは、われわれとしては注意しなければならぬことであると思うのであります。私は、口を開けば国際共産主義の危険について話をするので、本日もまた佐藤が世界赤化の問題についてしゃべるのだということになって、一部の批判を受けるかと思いまするけれども、これは幾ら口をすくしてしゃべっても足りないと私は思うぐらい、日本国民はその点に関する理解を欠いておると思うのであります。先般ニクソン副大統領がソビエトを訪問され、そしてあれだけの歓待を受け、米ソ両国とも、その結果については大いに満足を表しておるようでありまするが、そのニクソン副大統領が発表した最終の声明、つまり、ソビエトを離れるに当っての声明の中にも、はっきり彼は言っておる。ソ連は力をもって共産主義を押し広げようとするならば、アメリカは絶対にこれを承認することはできないということを言っております。あれだけの歓迎を受けてなおかつニクソンとしてはそれだけのくぎを打っておかなければならないと考えたところに、私は非常な重要さを見出すのでありまして、決してこれは看過することのできない問題だと思うのであります。きょうは羽生委員中立問題には触れられなかったのでありまするけれども、安保条約改定反対、あるいは根本的に解消する、ないしは日本性格としては中立でなければいけないんだというそういう考え方、これは日本を侵すものがないという前提に立って初めてそういう意見が出てくるのであって、そういう点において安心を得ることができない国際情勢であるとするならば、私は、日本が無防備で、かつまた安保条約を廃止してしまって米軍を撤退せしめて、そしてこの国が安全であるというように確信することは、だれにとってもできない相談だと思うのであります。ソビエトが戦争の末期において、あるいは戦後において、隣邦諸国を赤化して回ったということは、これは明らかな事実である。いや、もう国際共産主義などというものは古いんだ、ああいうやり方はもうソビエトとしてはとらないんだというようなことをちらほら聞きます。しかし、それだけでもってわれわれは安心するということはとうていできない相談であって実績をもって国際共産主義は放棄したんだと旧いうことを示してもらわなければならない。そういう実績が上がったとするならば、この佐藤、率先してソビエトに対しての安心感を表明することができるのでありますけれども、一つも実績は上がっていない。いや、その反対に、かえって国際共産主義をどこまでも進めていくんだという反対の証拠だけがわれわれの目につくのであります。三年前のハンガリアに対してのあの強圧的な干渉、ハンガリアの青年が、共産主義体制から脱出して自由を回復しようとするあれだけの愛国的な暴動を起した。それに対して、ソビエトは膨大な戦車隊を送って、そして青年たちをみな殺しにしてしまったことは、明らかな事実であります。もし、ほんとうに国際共産主義なんていうものはもうソビエトはとらないんだ、戦争中、なるほどハンガリアならハンガリアは赤化してしまったけれども、もし、その国の青年たちがほんとうに自由を回復したいという強い念願があるならば、それはおやりなさい、自分たちは一切干渉しないといって、超然としてハンガリア国内の事件の発展を待っていたというようなことであるならば、なるほどソビエトの態度根本的に変ったということが実証されたはずのものでありまして、世界自由国家群は、その瞬間に大きな安心感を得たでありましょう。そうなってこそ、初めてこの冷戦というものが解消されるのでありまするけれども、実際はそうでなく、やはりハンガリアは赤化されたハンガリアとして残していくんだという、そういうソビエトの心底が、あの一挙でもって明らかにされてしまったのである。一ハンガリアにとどまりません。最近のチベットのできごと、これも同じ考え方から出ておる。昨今の新聞報道やラジオ放送などを聞いてみまするというと、インドに中共軍が侵入しておる。本日の報道によりますると、クリシュナ・メノン国防相が辞表を提出したということであり、それがネール首相の内閣の瓦解にもならんとするようなことに聞いております。つまり、クリシュナ・メノンのとった中立政策—このメノンという人はネールの片腕と称せられており、また、中立政策の第一の首唱者である模様でありまするが、その中立政策なるものに大きな破綻を来たしたということ、その問題などを考えてみまするというと、一連の昔からとってきた流れというものが、自然今日も続いていると見なければならないのである。それはそうでない、国際共産主義なんというのはもう古くさいもので、ソビエトもそれは放棄したんだというように、ただ実績も見ないで安心感を持ってしまうということ、これは私は実に危険千万な考え方であると思うのであります。そういったようなあやふやな安心感をもとにして中立政策をとるということに対しましては、私は絶対に賛同することができないと申し上げるほかないのであります。もしそうでないとするならば、日本の必要に基いて締結した安全保障条約というものは、根本的にいいまして、どうしてもこれを存続していかなければならぬということになるのは、当然の話でなければならぬと思うのであります。安全保障条約の改定ということがいいか悪いかについては、私は内容について論議しようとは思いません。というのは、改定というからには安全保障条約がなお存続するというのが建前であるからであります。存続するということは、どこまでも日本に必要があればこそ存続するのであります。であるからして、存続ということが土台になって、そうして不都合な点があってそれを改定するんだということであるならば、私はあえて反対するものではございません。社会党その他の改定反対ということは、改定された安全保障条約でもこれだけの欠点があるんだ、あるいは危険が伴うということを指摘するのみにとどまっておって、しからば安全保障条約の存続には賛成かというならば、おそらく社会党はそうでなく、問題の根本は、安全保障条約の解消にあると思うのであります。何となれば、政府が改定の交渉を引っ込めた——そういうことは実際おやりにならぬだろうと思いますけれども、引っ込めてしまって、そうして昔の安保条約はそのまま存続していくんだということになったならば、それには社会党は反対しないというわけのものではなくて、社会党の主張されるところは、根本的に安全保障条約をなくしてしまうということであろうと思うのであり、すなわち、それは間違った安全感に基いた処置であると私は言わざるを得ないのであります。かるがゆえに、政府が現在とっておられる方針、つまり、安全保障条約というものをどこまでも続けていくんだというものを根本的な方針というものに対して、私は満腔の賛意を表せざるを得ないものであり、また、ぜひそういうふうにやっていただきたいということを申し上げるのであります。私は、ソビエトなり中共なりからする強圧、脅威というものに対して、非常に日本立場から言ってこれを憂慮するものでありますが、たとえば中共のごとき、昨年中共に行った民間の使節団が、通商協定の草案を、あちらの人たちと相談して帰ってきた。ところが政府はこれを認めなかった。あるいは長崎の国旗事件に対して政府は陳謝をすることをがえんじなかったといったようなことがありましたが、それに対して中共はどんな態度をとったかと申しますならば、徹底的に日本に対して重圧を加える態度をとりまして、その一例としては、中共政府日本の民間諸団体と締結しておった民間の通商契約などを、一方的におかまいもなくこれを破棄してしまった。そうして民間の企業者たちは、何ら中共から賠償をとることも何にもできなくて、泣き寝入りになってしまった。つまり自分の目的達成のためには手段を選ばない。どんな強圧な手段でもかまわずとるというのが中共のやり方であり、これはまさにソ連圏、ソ連そのもののやり方であると私は言わざるを得ないのであります。  もし日本がこの安保条約を解消してしまって、そうして米国側からする協力援助廃棄してしまったとするならば、憲法九条に基くまる腰の日本が残るだけでありまして、ソ連圏ないしは中共側から重圧が加わったときに、どうしてこれを突っ返すことができるか。自分で好んでいわば突っかい棒をはずしてしまうことになるのでございまして、突っかい棒のなくなった日本というものは、実にみじめな状態に置かれるに相違はございません。いや、そういうことはソビエトなり中共なりはやらないんだ、日本安保条約を解消し、中立さえ守っていくならば、彼らは日本に対して強圧を加えることはないんだという、そういったような前提でもって安保条約を解消するなどというようなことは、これは責任のある内閣、それは岸内閣だけでなくて、保守糸の内閣であるならば、どの内閣でもそういう責任はとることはできないというように私は痛切に感ずるものであります。  現在の中共ないしはソ連においてすでにその通りである。しかもソ連においては、東部シベリアに非常な力を用いてきているように見えます。私はきわめて貧弱な報道きりしか持っておりませんから、はっきりしたことを申し上げる段取りにはなっておりませんけれども、イルクーツクのわきを流れるアンガラ河をせきとめて、人工的な膨大な湖を作ろうとしている模様であります。すでにその工事はどんどん進められておる。あるいはバイカル湖以上の大きな湖ができるのだとさえも伝えられている。それから出る電力というものは、おそらく何百万キロワット、とても日本の最大のダムなどというようなものとは比較にならぬほど強大なダムがあそこにできる。その何百万キロワットの電力を利用してそしてあの辺には地下資源が豊富にありまするから、これを開発していく。いや、そのために日本に対していろいろな工作機械などの注文が、おそらくそのうちにはくるんじぁなかろうかと思うのでありますが、日本の業者は、あるいは注文さえ受け取ればいいんだ、こういう気持でもって、ソビエト様々で契約を結んだり何かするかもしれませんけれども、これには政府としては十分な注意を払われる必要があろうかと思うのであります。というのは、単なるそれが通商上の私的契約であるならば、それはまず問題はなかろうかと思いますけれども、どんな条件がついてくるかはわからない。業者は注文がほしいがために、その付帯条件などは、ほとんど注意を払わないでもって、易々諾々、これを承諾してしまうというようなことがないとは限らない。そしてあとになってほぞをかむというようなことであっては、私は日本としては非常な危険な場面に追い込まれるということになるだろうと思うのでありまするがゆえに、十分に政府としてはそういった注意をされると同時に、その東部シベリア開発に関しましての適確な情報を集められるということに、私は政府としてはできるだけの力を注ぐようにしていただきたいということをお願いせざるを得ません。また国会側におきましても、国会図書館にはそれぞれの調査立法機関もあるようでありまするからしてこれらを活用して、そしてその方面の情報を集めるということも、これは当然われわれの義務としてやらなければならぬことかと思うのでありまするけれども、しかし、何と申しましても、そういうような情勢を適確に調査するということは、政府が率先しておやりにならなければならぬことであろうと思います。  人民公社が果してどれだけの成績をあげるか、われわれとしてはこれはまだ未知数でありまして、もうすでに幾ばくかの破綻が生じつつあるかのような報道もありまするけれども、一たんやり出したことであるとするならば、中共政府はどこまでもこれを推進していくだろうと思うのであります。個人個人の犠牲はかまわずに、所期の目的達成に全力を尽すのではなかろうかと思うのであります、五年もたたないうちに。私は、そういう点からいいますれば、中共というものは、日本に対しておそろしい国になるということを、非常に憂慮するものであります。軍事力の点においても、これは膨大な常備軍を持つというくらいのことは、中共としてはでき得ないことじゃございません。また経済力におきましても、国民は貧乏であっても、政府の力はうんと伸びていくというようなことが考えられる。そういう場合に、日本がもしこの安保条約などをなくしてしまって、そして赤子のような状態でもってそこに転がっておるとしたならば、どういう重圧を日本に加えてくるかわからない。そういうことも予見して、そして政府は適当な政策をお立てにならなければならぬというように私は痛感させられるのでございます。  先ほど来、総理はもうすでに井上委員の質問に対しましてかなり明瞭にお答えになりましたけれども、今私の申し述べました事柄に対しましても、いま一応政府のお考えをお聞きすることができれば幸いでございます。  つけ加えてもう一点お尋ねいたしておきたいと思いまするのは、ガットの問題でございます。いや、先ほどの欧州の今度新しくできる六カ国の間の特別な協定によりましての、自由市場の問題でありまするが、これは先ほどの御説明では、欧州の首脳者たちは、日本に対しても差別待遇を与えるというようなことは考えていないという証言を取られたという御説明でありました。しかし私は、それは口の上では言えるかもしませんけれども、実際においてはできない相談ではなかろうか。と思うのは、自由市場と言うからには、それに加盟した国の間ではお互い貿易は自由であり、そして通関の際の関税は免除される。日本なら日本から、その市場、その国々に対して輸出をするというときには、当然関税がかけられるというのでありますれば、差別待遇をしないということを言うのが、すでに私は根拠のないことを言っているのじゃなかろうか、事実に反することを言っているのじゃなかろうかという危惧を持つのでありますが、ちょうどこの十月の半ばごろから、日本ガットの総会が開催されるということでありまするし、今のヨーロッパの自由通商圏の問題も当然問題とされることであろうかと思うのでありまするし、また、ガット三十五条の差別待遇の問題、これも先ほどお触れになりましたが、これに対して、今度の総会を機として、できるだけ日本主張を通すように、日本側としては努力をされる必要がむろんあるのでありまするし、政府としてもすでにその準備をされていることと思いまするけれども、これらに関しましての政府の御所見を伺うことができれば幸いでございます。
  24. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日米安全保障条約体制というものが、現在の国際情勢の上からいって、日本の安全を責任をもって確保し、国民全体が安全感を持っておのおのその業に励みつつ国の繁栄国民生活の福祉を作り上げていくその根拠として、この体制が絶対に必要であるという考え方は、今、佐藤委員のおあげになりましたような国際共産主義の実情というものから、私は当然考えなければならぬことである。しかしてこの安全保障条約の成立当時の状況から見まして、日本に何らの防衛力もなく、また日本国際的地位というものも非常に低かった時代に、むしろ日本から頼んでアメリカの力によって日本の安全を保障してもらうように、あらゆることを頼んでおる形式でできております。こういうことは、今日、日本が独立を回復し、名実ともに日本の国力も充実してきて、そうして不十分ながら自衛力もある程度持っておる、また、国際的の地位も非常に上ってきた、国連におきましても非常任理事国に選ばれておるという情勢から見まして、私は、安保条約の現行の規定というものはきわめて不合理である、これを合理的に直すということは、国民の自主独立の上からも、また日本国際的の立場からいっても、当然やらなければならぬことである、かように思って改定を志して、今日まで努力いたしておる次第でございます。根本において、もしも安保条約廃棄しよう、そうしてあるいは自衛力についてもこれをなくするようにしようというような考え方は、少くとも私は、この世界の現実を直視してそうして責任をもって九千万の安全を保障し、また九千万の国民が安全感を持ってこの努力をしていくという上から申しますというと、とうていそういうことはできないことであります。かように考えております。その点に関しましては、佐藤委員のお述べになりましたお考えと全然同様に考えております。ただ、共産主義国との間におけるところのいろいろな交通あるいは文化の面において、あるいは経済の面において、あらゆる面において友好関係を深め、共存共栄の意味においていろいろと交流をしていくという考え方は、これは私はやはりやるべき問題である。ただ、それに伴ってわれわれはよく政治経済を分離するとか、あるいは思想といろいろな経済関係なり文化関係というものは別であるというふうなことを申しますけれども、従来の共産主義国のやり方を見まするというと、それが不可分になっておる傾きが多分にあるというこの現状から見まして、いろいろな交流につきましても十分その情報を正確に取って、そして適当な措置を講じていかなきゃならぬ、手放しで、ただ経済、文化の交流であるという名前がつけば、どういうことがその背後にあり、それと関連してあるかというような事柄についても全然これを度外視してやりゃいいんだというふうに甘く考えることは、これは私は実際の共産主義国のやり方を見まするというと、そう簡単に考えるべき問題じゃないと思います。しかし、根本的にこういうお互いお互い立場を尊重しながら、そうしてまたその国の内政には干渉しない、また、政治体制等につきましてかれこれいろいろな宣伝やあるいは行動はとらないという、この原則を認めておる限りにおきましては、文化やあるいは経済の交流というものをやるということは、これは私は考えていかなきゃならぬ。ただ、今いったような点を留意すべきものであり、また、その点に関して十分に事情を明らかにし、情報を明確にしなきゃならぬというお考えは、全く私も同感でございます。  最後に、ガットの問題でございますが、私が先年豪州やニュージーランド等を回りましたときにも、やはりガット三十五条の英連邦諸国におきましては、従来本国と同じようにこれを適用しておりますので、その撤回問題について話したのでございますが、これらの国々においての言い分は、それは日本主張は、日本が独立国として、日本の今の国際的地位から見て、そういう差別待遇をされるということを原則としてがえんじないという立場はよくわかる、しかし同時に、現実の問題として日本商品が、これを撤回した場合において一時に非常にはんらんして、そうしてその国の同種の産業に非常な混乱を生ぜしむるというような事例が従来もあり、また、そういう危険性というもの、懸念というものを除かないというと、やはり国民のうち、ことに業界の方面においては、その点に対する不安があるから、なかなか一挙にこれを撤回するというわけにもいかない事情があるという主張が、いずれも共通の議論であります。それに対しては、日本の商品の輸出の上におきまして自制的な方法を講じて、そういう結果を招来しないように日本自身が自制的にやる。現に豪州においてはそういう事例をとっておりますし、また、多少でもそういう傾向があった場合において、すぐ日本に通報してもらって、直ちにそれに対する措置を講じて、向うの混乱を防ぐというような措置を講じてきております。まだ豪州においては撤回はいたしておりませんけれども、近く撤回するという含みのもとに通商条約を結んでやっておりますが、それが相当な実績を示しております。従って、イギリスにおきましても同様な議論でございましたが、そういう実例を述べ、また実績をイギリスの方においてもある程度調べておりますので、さらにそういう具体的の、原則としてはこれの適用を撤回するが、それに伴って日本の方面において自制的にやられる方法等について、具体的な方法を何らかの形において約束して、そうしてその不安をなくして撤回しよう、それは通商航海条約の締結の問題がちょうど懸案であるから、それと関連して一つそういう方向検討しようじゃないかというのがイギリス首脳部との話の結論であります。そういうふうにガットの三十五条の適用の問題については、私はできるだけ日本の今日の国際立場からいい、これをなくするように努力をしていかなければならぬと思っております。  また、今ヨーロッパ共同市場の問題に関連して、お話のようにヨーロッパ諸国内における関税の障壁やその他のことについては、できるだけこれをなくしよう、そうしてヨーロッパ経済繁栄するようにしていこうという考えであり、また、一応見方によりますというと、アデナウアー首相あたりの言い方によりますというと、これは経済的のみならず非常に政治的な意味を持っておるのだと、いわゆるヨーロッパ連邦のような考え方がやはり他面においてはあるように見受けられるのであります。そういうような点から考えますというと、あるいはドイツとかフランスとかイタリアとかいうものに対して、ドイツイタリアへ輸出する場合と、日本イタリアへ輸出する場合との間には、差別待遇があるいはある程度、今お話のように起る場合があると思います。しかし、これがいわゆる自給自足の鎖国的ななにとして、域外の方からの輸入を非常に不便ならしめて、そうして自給自足になるというふうな考え方自体は、考えておらないようであります。従って、今言う共同市場、国内における物資の交流と域外の交流との間をどういうふうに調整するかということが一つの問題になるわけでございまして、それについて、全然差別待遇が私は結果的にないとまでは言い得ないと思いますけれども、その点を非常に強くわれわれが要望しておるので、その点の差を非常に大きくする、そうして事実上域外からの、物資の交流を不可能ならしあるとか、あるいはそれを非常に阻止するというような傾向に進んでいくことは、これはわれわれは極力避けるというのが、このヨーロッパ諸国の大体の意見であるように思います。いずれにしましても、ヨーロッパ共同市場の問題もございますし、あるいは中南米の方面に行ってみまするというと、中米の共同市場をまず作るとか、中南米を一緒にしての共同市場の問題というふうな議論がやはりあるようであります。こういうふうなことを、今度世界貿易自由化の傾向とにらみ合わせて、どういうふうに今後その間に処していくかということは、日本貿易政策の上からも、これは重大な問題として研究していかなければならぬと思います。
  25. 佐藤尚武

    ○佐藤尚武君 ありがとうございました。政府の御意図は御説明によってよくわかりましたが、結びに一つつけ加えさしていただきますならば、近来日本では、アメリカが一部の社会において不評判を買っているということは、これは申し上げなければならぬと思うのでありまするし、また、そういう風潮に乗じてと言っては悪いかもしれませんが、そういう風潮に際して、一部の学者なり、あるいはことに若い学者の方ではそうでありますが、あるいは一部の新聞論調なり、アメリカの不評をいやが上にも高じさせられるような論議をしたりするようなことがちょいちょい見受けられるのでありますけれども、私はアメリカと密接な関係を保っていくということは、何の心配もないことである。もしあのアメリカが日本を従属国にするとか、あるいは日本をのんでしまうというような野望があったとするならば、あの終戦当時、日本が無条件降伏した当時の日本に対して、アメリカは何事でもできたはずのそのアメリカであったにかかわらず、自由憲法を日本に与え、広範な自由を日本国民に許し、そうしてまた安保条約を締結して、そうして日本を守ってやるというような、ああいう考え方を現に持って、そうして今日まできておるということに、アメリカにそういうような野望がないということを証明するものであり、その野望がないことが証明されている以上は、私はアメリカと密接な関係を保っていくということは当然であり、かつまた不安のないところであると思います。しかるに、ソビエトなり中共なりは、これとは違っております。うっかりすればのまれてしまう心配があるということ、これはそれだけのことは政府においても十分に意をとどめられて、そうして適切なる措置をおとり下さるようにお願い申し上げまして、私の質問を終ります。
  26. 曾禰益

    ○曾祢益君 最初に外遊問題の御報告がありましたので、若干質問したいんですが、イギリスのマクミラン首相との会談において、今、総理から読み上げられたのを伺ったところによると、日本の中共に対する態度あるいは立場、それを了解した。まあきわめて簡単にこっちの言ったことを向うが了解したというふうに言われたと思うんですが、新聞会見の際には、むしろもっと積極的に、マクミラン自身が、岸総理日本の中共対策を内容的に肯定したというふうにとられるような発言をされておると思うんです。すなわち、イギリスが中共を承認した後に、中共の出方から、承認した後も、何ら交渉会談をしていないし、政治関係を持つことは適当でないと思っている。日本考え方は実際に即しているという返事だ、これは、ただ日本立場を説明して、それはよくわかりました、これは当りまえのことで、外国政策について向うが意見をお開きになったはずでもないだろうし、向うがそれにいい悪いと言うこともおかしい。しかしそれと違って、日本のように中共を政治的に承認もせず、関係も持たない。それがイギリスのような承認国においても、あるいはその方針がいいんだ、それが実際に即しているんだ、こういうふうにマクミランが言ったやにとれるような発言をされているわけです。そういうことから、イギリスの労働党のある議員が、ロンドン・タイムスに投書いたしまして、一体イギリスの保守党の政策というものは、その政策を変更したのか、変更したのでないとすれば、ずいぶん愚かなことを言ったものである。いずれにしてもマクミラン首相は、このことをはっきり国民に説明する必要があるというふうに切り込んでおるやに伝えられております。もちろん総理マクミラン首相との会談のことですから、それは全部を出すということは適当でない場合もありましょうし、また、そうであればこそ、基本的な問題は、共同コミュニケで発表されるわけです。しかし、何だかわれわれの受ける印象は、岸内閣の中共不承認政策を、イギリスのマクミランによって裏書きされた、積極的に賛成を得てきたんだというような意味に、会談の内容の一部を、総理みずから、まあ漏らしたということがいいかどうかわかりませんが、されておるとすれば、第一これは儀礼的にいってもおかしなものであると思います。私はその点問題じゃないか。だから全面的にどういう応酬があったかということを、ここで明らかにされたいなんという無理なことを申し上げるつもりはありません。ほんとうに日本の保守党の今の政策に対するはっきりしたそういう裏書きがあったのかないのか。これはあったという意味の新聞会見をやっておられる以上は、きょうこの外務委員会における今の簡単な御説明とは、必ずしも平仄が合っていない。その真相はどうであるかを伺いたい。
  27. 岸信介

    国務大臣岸信介君) マクミラン首相と会見しまして、各種の問題を話し合ったわけでありますが、今御指摘になりましたように、両方で合意して発表すべきことは共同コミュニケに発表しておるわけであります。本来、それ以外のことにわたって話すということについては、これはよほど慎重にしなければならぬことであり、また、儀礼上から申しましても、今お話の通りであると私は考えております。ただ、この中共の問題につきましては、言うまでもなく、日本国民が非常な関心を持っておる問題であり、特に報道機関等におきましても、この点に関して非常な強い関心を持っておるのでありまして、従って、全然共同コミュニケに発表された以上のことは一切言わぬという立場で会見することも、私はこの問題については適当でない。しかもマクミラン首相にいろいろな迷惑を及ぼすような事柄も、その後において起っておる事柄は非常にあり、これは新聞の報道等におきましてごらん下さればわかるように、行き違い等もあるように私は思うのでありますが、いずれにしても、迷惑をかけるということは、はなはだ儀礼上も慎しまなければならないことであり、こういう意味において、相当慎重にこの問題については私も考慮した上、会見をいたしたつもりであります。このマクミラン首相との会談におきまして、中井問題に関しては、私の方から、中共に対して日本政府のとっておる方針及び考えというものをいろいろ述べたことは事実でございます。私は日本とイギリスとは非常に立場が違っておる、すなわち承認をされておる、われわれは承認をしてないというこの立場において、非常に立場が違うのだから、イギリス政府のお考えについても一つ忌憚なく聞きたいということを、私から話をして、イギリス側におきましても、イギリス側のとってきておる従来の事柄をいろいろ話されたわけであります。御承知のように、承認はしておるけれども、実際上両国間においての政治的な交渉というようなことは、長い間持ったこともないし、また承認はしているけれども、国際連合に加盟する場合においては反対の態度をとっておるというふうな事柄も事実でありますから、その通り述べられたわけでありますが、日本日本としての立場でそういう方針をとっておるということに対しては、十分私は了解されたような態度を示されたということを、実は率直にその程度のことを新聞会見においても述べたわけであります。しかし、それがいろいろ私の用いた言葉通りのことでなしに、イギリスの方へ伝えられ、また、それに対して労働党の議員から、今お話のように、日本態度に対して投書があり、それに対しまして私としては今のいきさつについて、イギリス政府の方にもこういうことだということは申し伝えて、向うの了解を求めておるというのが実情でございます。
  28. 曾禰益

    ○曾祢益君 いろいろおっしゃいますけれども、どうもすっきりしない。やはりこれは新聞の報道陣の責任ですか、われわれ知りませんけれども、そうあなたの言葉を不正確に伝えたものと思われないのですが、確かにイギリス側の態度の説明はあったでしょうけれども、政治関係を持つことは適当でないと思っている、こういう言葉も使われている。これはイギリスの立場として、さらに日本考え方は、日本のやっていることはわかったというのと違って、日本考え方は実際に即しているということが、ちょうどイギリスの保守党の態度としても、政治関係を持つことは適当でないということとちょうど組み合わされて考えたときに、だれが考えても、マクミランがかりにそう言ったとしても、非常にこれは国内的にも国際的にもマクミランは、そこまで肩を入れて日本政策として、近似点あるいは同じ点を言われたのでは困るという問題があり得るような表現をされておると思うのです。その点はこれは明確にすれば、今の委員会の冒頭にお話しになったように、日本態度の説明は了解した、そのほかイギリスのとっておる態度の説明があったという以外に、岸さんがいかにもマクミランに会って、イギリスの態度日本態度はもちろん違うけれども、基本的には政治的な不接近の態度ということに何か了解ができたように言っておられることは、これは正確でないということになるわけですか。
  29. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 先ほど私が御説明申し上げました通り日本側として日本立場を説明し、イギリス側の意見を聞いたのに対して、イギリスが従来とってきていることを述べられたわけでありまして、私は日本立場として、日本のとっておる政策、やり方というものに対しては、十分な了解をされたものというふうに、そのときの会談においては、私は確信を持ったわけであります。
  30. 曾禰益

    ○曾祢益君 大体わかりました。  もう一つ、ロスアンゼルスにおける談話として伝えられるところによれば、大体二つの点が私は特徴だろうと思う。一つは、日本外交路線は日英米三位一体を基調とする、これはどうもだれが考えても、少し言葉が過ぎておられるように思うのです。三位一体とはどういう意味か。  いま一つの点は、同僚羽生委員からきわめて適切な立場から質問されたところと関連するわけですが、やはりこの安保改定というものが、単に日米の関係だけでなく、これは自由陣営全体の問題との関係、むしろ今後はこの日米のワクを考え過ぎないで、自由諸国との連繋という広い意味考えたい。あるいは日本の安全は極東の安全と不可分であり、日本のみならず自由諸国内の安全という立場考える、こういうふうなことを言っておられる。これについては、先ほど応酬がありましたので、その応酬を了解の上で、さらにしかし私が御質問したいのは、いろいろな意味のとり方もあるでしょうけれども、少なくとも日本国民考えからいえば、この安保改定は、実は安保改定ではなくて、新相互防衛条約というふうに私は内容的になっていると思うのですがね。これが私は問題の中心であって、先ほど以来井上委員やほかの方からの御意見、佐藤委員の御意見、つまり、この際中立主義だ、あるいは日米安保体制をそのままにする、しないという議論よりも、新軍事同盟、相互援助条約を作るのがいいかどうかというところに、実際上の焦点があるのであって、ああいう議論はあまり実を結ばない議論じゃないかと思うのですが、それはそれとして、日本国民から言うと、やはり今度の新安全保障条約の内容が、アメリカの極東の平和と安全のための行動を、日本の防衛というものに直接結びつけている点に、非常な疑惑と心配を持っている、こういうことであります。しかも、さらにこのサンフランシスコ談話等からいうと、さらにそのワクが広がって、日本の安全はもちろん、極東におけるアメリカの平和と安全の問題、このほかに総理考えだと、さらにそれを広げて、あたかも西欧陣営の極東における、何といいますか、代表者というような、西欧陣営全体の安全保障の焦点を、日本が引き受けると言わんばかりの思想が、ここに現われていやせぬか、果してそうであるかないか。あとでも伺いたいと思っているのですが、すでに国民の世論の動向、また、あなたの党内においてすら、この極東の平和と安全のための条項を、これは日本の純粋な自衛からいって、行き過ぎではないかという議論がある。総理はそれをさらにワクを広げて、日米協力より日本自由陣営全体との協力という関係から、日本の防衛問題を考えるということになれば、ますますこれは世論の動向からさらに飛び進んだ方向に行くのではないか、こういう心配があるからお伺いいたすわけです。
  31. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日英米三位一体という言葉は、私自身が使ったわけでは別にないのでありますが、私は今回のイギリス訪問に際しまして、最も私の根底にある一つ考え方は、日英というものが、かつては非常な同盟国であり、非常に親密な関係にあったけれども、戦争中及び戦後、この関係が冷やかになっていることは、これはいなむことができない。やはり日本とイギリスというものが、十分な理解と、将来に対する信頼関係を作って、そしてこの緊密な関係を持つことはぜひ必要である。いかにしてこの関係を従来の、最近におけるところの冷たい関係をなくして、真の信頼と協力の関係を作っていくかということが、実は私、防衛の目的の非常に大きな一つ考え方であったのであります。それは今、日本は、われわれは日米関係を外交基本路線として考えており、日米協力というものを非常に強く考えております。そして、この間における理解と信頼を深めるように、また協力を進めていくように、あらゆる努力をし、幸いに日米関係というものは今日の状況において非常にいいと思います。また、英米の関係も、御承知通りこれは従来から特別の関係であり、英米関係というものも非常に緊密である。また、従って日英関係というものが非常に今まで冷たかったのを、これを強化するということは、二面においてはヨーロッパ日本外交上において—もちろん日米関係というものは非常に重大に考えておりますけれども、ヨーロッパというものに対して、われわれは、戦後どちらかというと、日本国民全体の目がアメリカに向くという関係上、ヨーロッパに対する関心が薄くなっている。これに対して、やはりヨーロッパの—世界平和の上からいっても、また日本経済発展の上からいっても、ヨーロッパというものの重要性を考えるときにおいて、日英関係というものを回復し、これらの間における関係を緊密にするということは非常にいいという考えでありますし、また同時に、日米関係というものをさらに補強し、正当な主張日本として主張する場合にも、日英関係が非常に緊密にいっておって、日英で同じ考え方でもってアメリカにいろいろな意見を述べるということも、日米関係を強化する意味において私は適当である。こういうような意味からいって、日英関係というものを非常に強化したいというのが考えであり、また、この点について十分に話し合いをいたしまして、共同声明の中にもその点においてマクミラン首相と私の考え方は完全に一致をしておるわけであります。そういう意味からいって、日英米の関係が、いわゆる新聞等にいわれておるように、三つですから三位一体というような言葉を使ったと思います。そういう意味が日英米の関係について私の考えておることでございます。  また、この安保条約の問題につきまして、もちろんこれは日本の安全をわれわれとしては主眼に置いて考えておることは、これは言うをまたないことでありまして、何といっても日本の安全というようなことのために、こういうふうにするわけであります。しかし、アメリカが日本なりあるいは極東の平和ということを考えておるということも、これもアメリカの安全のために私は考えておることだと思います。ただ、日米関係が非常に緊密であるから、アメリカはアメリカ人の血をもって日本の侵略を防いでやるのだというふうな恩恵的なことじゃなしに、われわれが日本の安全のために、アメリカのある点の力を借りて侵略をさせないということであると同様に、アメリカ自身が、日本が侵略されないということが、アメリカの安全のために必要であると考えるから、私はこういう条約ができておると思います。また、その意味において極東の安全というようなことも考えておると私は思います。しかし同時に、先ほども言っているように、極東の安全と平和ということは、日本立場からいうと、日本に全然関係のない、われわれが何か別のことを考えておるのかといえば、そうではないので、やはり日本の安全と極東の安全と平和というものは不可分的な関係があると思います。しかし、日本自身は言うまでもなく、日本の自衛隊というもの、日本の力は、日本の領域外に出ることはできない。そういう場合において、アメリカの日本に駐留しているものが、日本と協議して、そうして極東の安全と平和のために出動するというようなことは、これは日本の安全をはかるという意味からいっても、私は適当な方法であると、こういう考えを持っておるわけでございまして、そういう意味を先ほど来から申し上げた次第でございます。
  32. 曾禰益

    ○曾祢益君 第一の点はよくわかります。まああなたの表現でなかったとすれば、三位一体というのは適当でないと思うのです。しかし、極東の平和、安全、あるいは自由陣営全体ということをあまり考えるということは、これは自由陣営全体でもいろいろ意見が違いますし、率直に言って、日本の中国に対する考え方、アメリカの中国に対する考え方、現政府のもとにおいてすら、私はそこに現実には国の相違というものからの少くともニュアンスの相違がある。ですから、もちろん積極的にも消極的にも、日本の平和と安全というのは、極東の平和と安全に関係がある、これはだれしも否定しないことです。しかし、日米の安全保障条約をとらえているときに、アメリカの極東におけるすべての政策、あるいはすべての軍事行動というふうなものに、当然日本がタイアップされる、あるいは自由陣営全体のために日本防衛線を引き受けるというようなもし考え発展するとすれば、これはまさに冷厳に見た場合の日本の正しい外交安全保障ということじゃないと思う。この点を申し上げたかったわけであります。  もう一つは、これは非常に総理ははっきりと断定的に言われている点ですから、あらためてこの際どうかという気がしますが、非常に重要な問題だから伺いたいのですが、つまりまあ東西巨頭会談といいますか、直接には、アイゼンハワー、フルシチョフの相互訪問と、安保条約、現に今やろうとしている安保条約の関係、これは会談と安保関係とにつながりを持たせることはおかしい、新安保体制は絶対に必要との立場で、会談と関係なく促進さしたい、こういうふうに言っている。この一つの決意といいますか、この決意は決意として私は、果して賢明であるのか、そうその意地にならないで考える方が日本のためじゃないか、もとより相互訪問が、直ちにこれはあなたの言葉にもありますように、直ちに東西の完全な雪解け状態が一挙にできる。そんなことを思っている人はいない。しかし、世界の大きなここに望みが嘱されている。その際に、先ほどの議論じゃありませんが、保守党の立場から、今の安保体制を破壊するということが、今問題になっていない。われわれは、これを社会党の立場からいえば、解消しなければならないと思っおります。これには順序と方法があろうと思いまするが、しかし、それをいろいろのことを言っておられまするけれども、いびつな点を直すのだと。そうじゃなくて、だれが考えても自主性の名のもとに、相互防衛条約に直す、これは何といってもどぎついですね。極東の、東西関係からいって、これは一つの画期的な積極的な措置、それを東西雪解けということからどういう関係があろうかということについては、いろいろ問題もありましょう。しかし、これは良識としてしばらく模様を見ようというのが、これが国の外交を誤まらない方向にやる最も正しい道じゃないかと思うのですが、この点はいかがにお考えですか。
  33. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 安保体制を、現在安保条約がある、この安保条約廃棄しろという議論でなしに、その安保体制は、これはまあもちろんわれわれも考える。今度の改定におきましても、これがいわゆる長い目から見て暫定的なものであって、永久不変なものであるというふうな考え方はしておりません。しかし、安保体制そのものを、とにかく現在の状況においては存続していくという考え方の上に立って考えてみないと、これは安保条約廃棄しろ、安保体制をやめちまえという議論は、これはちょっと、非常にラディカルな議論であって、われわれの改定問題に関連して廃棄論が出ていることは、はなはだ私は心外に考えておるわけでありますが、そうでなしに、今度は安保体制というものは、一応とにかく、将来は別として、現在の情勢においては、これはやむを得ないなにとしてこれを認めていくという考え方をかりにとるとするならば、現在の安保条約のうちにおけるところのいろいろ今度の改定の内容等を御検討下さってみればわかるように、一体、現在よりも日本が何か軍事的な同盟に深入りしておる、もしくはそれが強化されておる、現在の条約よりも日本にとって義務が大きなものになっておるとか、あるいは危険が増大しておるというような点がありとするならば、これは私はその改定は適当でないという議論が出ると思います。しかし、これを御検討下さればわかるように、あるいは不十分である、ここまでくるならばここまでいったらいいのじゃないかという議論は私はあると思います。たとえば、先ほど来お話があるように、協議事項というものを禁止事項にしたらいいじゃないか、今は協議事項じゃない、今は勝手にできるというものを、協議事項にして、日本の意思を、同意を得た上でやるという状態に置こうということは、私どもは、決してそれによって軍事的な義務が加わったものであるとか、あるいは増大したものであるとかいうふうには考えておりません。また、たとえば期限の無期限なものを十年、十年が長過ぎるので、あるいはこれを五年にしろとか、三年にしろとか、一年にしろという、いろいろ御議論があるようでありますが、一体、無期限であるのと十年であるのとどうなんだというふうなことを検討して見るならば、安保条約というものの体制を是認するならば、従来からも論議されておったアメリカが一方的であり、もしくは日本における自主性が全然認められていない、日本の意思というものが全然その間において組み入れられていないというような、アメリカが勝手にできるというような、いろいろなわれわれ知らないうちにいろいろ危険が加わるという、少くともそれに対して自主的な制約を置こうという改定に対して私は当然それをこのフルシチョフとアイゼンハワーとの相互訪問によってやめなきゃならない、われわれが自主的の立場から今の不合理性を是正していこうということをやめなきゃならぬという論理的の関係は、どうしても私は理解できない。従ってそのいかんにかかわらず、今全然安保条約体制というものがないのだ、安保条約体制を作り上げるのだということであるならば、あるいはそういう議論が出るかもしれませんけれども、今言ったようなことでございますから、私はあえてはっきり申し上げておる次第でございます。
  34. 曾禰益

    ○曾祢益君 今、総理は非常に頭のいい方ですから、問題をすりかえておられると思うのです。それは、たとえば協議条項、これは不十分です、今の安保条約よりか不十分であるか、かえって悪いかという問題があります。期限の問題もそうだと思います。もう一つ前の問題がある。今の悪いところだけを直すのだという議論で、それで実際上は全く質の変った条約ができるという点ですね、これは自主性の名前でカバーはできない問題である。もちろんそれは安保条約そのものがまあ独立と引きかえ的にいわば押しつけられた、今度は日本の自主性によって相互防衛条約という、これが果して今いいのか悪いのか、政府はしきりにその改定の必要、自主性の回復、これが世論であるというふうなことを言っておられますが、同僚井上委員が指摘された最近の新聞の世論調査を見ても、一体、先ほども述べられましたが、今のような改定を即行しろという、すぐにやれという世論はたった七%で、これは今の政府の言っておられることが、決して世論というものに乗っているじゃなく、あなた方のお考えであって存外、大衆の方は、これはあまり寝ている子を起さない方がいいのじゃないかというのと、本質的にこういうものは解消の方向に行くべきである、やはり安保体制があった方がいいというこの二つに分れている。それは決して今あなたが言、われたように、この改定、この点とこの点を直すのだという問題にすりかえられない問題であって、そういう軍事同盟に飛び込むことを世論は向いていないところではない、だれも望んでいない、七%しかない、だから幾ら自民党がPRされたって、存外日本の本質的の大衆の意見というものは、相当賢明なところがあるのじゃないか、だからそういったわれわれが議論をしていくと、中立論とあれとは違うと。それは根本的に違います。違いますけれども、その問題のほかに、いま一つ安保のここの悪いところは手直ししてやるのだという議論で、相互防衛条約に、バンデンバーグ決議を頭からあれして、相互防衛条約に、はっきり日本の能動的感心で、限定された条件であるけれども、はっきり共用防衛の義務を負う条約を作る、ここが世論が賛成してないということは、少なくとも——これだけで動かすわけにはいかないかもしれませんが——一つの例として、総理はこういう世論の趨向、動向というものに対して、もっと謙虚に耳を傾けるべきではないかと、私はそう思います。いかがでしよう。
  35. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 私は世論調査に表われている数字から見ましても、いわゆる安保条約の改定という問題に関して関心を持たない、またいわゆる何といいますか、反対、賛成ということを決しかねているところの国民が非常に数字的にいって多数表われているということは、こういう大事な問題を最後的に決定する上においては、政府として考慮しなければならない。すなわち十分に国民に納得せしめ、国民をしてこれを理解せしめてそうして政府意図というものに協力せしめるように啓蒙宣伝といいますか、十分に国民の理解を求める手段を講じていかなければならぬ、かように考えております。その点についてまだ十分でないことのあることは、先ほど井上委員の指摘された数字等におきましても明瞭に表われていることだと思います。十分そういう点については私は努力する考えでおります。
  36. 曾禰益

    ○曾祢益君 そこで総理は、非常に今後は、総裁、首相が陣頭に立って党内調整に当る決意である。これは当然のことであって、一年も藤山さんがやってきて、一年もたなざらしにしているのは実際上おかしな話で、今ごろ党内調整とは何ごとかと言いたいくらいですが、しかほどさように党内もまた世論も決して熟していないという実態からいって、こういう決意をされたのだと思います。ところが、たとえば河野氏の意見等が伝えられております。藤山氏が独走していると。これは藤山さんは、おれは党議の決定に従ってやっていると。私は他党内のことですからその点は申し上げませんが、一体、陣頭に立っての調整とはどういうものであるか、党内で調整されるというのか、それとも河野氏のごときは、首相みずから米側とさらに政治折衝する……。これは事重大だと思います。どういう米側とさらに政治折衝……。この政治折衝の河野君の課題は、先ほどの極東の平和と安全の点を落とすか落とさないか、行政協定が実体的に一つも改善されてない点を直す、あるいは期限の問題等々を含んでいるとか、そういう政治的な折衝を総理がされるということを含めての党内の調整であるか、この点を伺いたい。
  37. 岸信介

    国務大臣岸信介君) こういう問題に関しましていろいろ党内にも議論があることは、これは私は民主政党としては当然あるべきで、初めからすべての問題が何百人というものがみんな同じ意見であるというわけにはいかぬと思う。しかし、それには政党としておのおのの党の機関もございますしするから、それぞれの手続もあって、いろいろな順序を経て、もちろん交渉することにつきましても藤山君が独走しているわけでもなければ、あるいは総裁が、あるいは総理が一人で党を無視してこれをやっているわけではございません。しかし、新聞等においてそういうような議論が出ますために、党内の意見が調整されておらない。党内の意見をまずまとめたらいいじゃないかというふうな議論もあります。また国会等における質問におきましても、社会党の諸君から、まず党内からまとめてこいというような御議論も出てくるゆえんでありまして、そういうふうな印象を世間に与えているということは、党としてははなはだ不満足であるという考えで、これらの反対の意見を述べている人々とも十分ひざを突き合せてこの議論をしていく、そして納得せしめるという方法を講ずるというのが私の考えでございます。政治的折衝などということは私にもわかりませんが、そんなことを考えているわけではございません。
  38. 曾禰益

    ○曾祢益君 大へん申しわけないが、あと二点だけ質問させていただきたいのですが……。  内容の問題についていろいろ伺いたいのですけれども、時間がありませんから……。ただ、最近の世論調査を見ても、事前協議で安心しろということは、決して国民は安心していないということを一点だけ申し上げておきたいと思う。特に私が、これはきょうはもう時間がないから、この次にも続けてやりたいのですけれども、一つ切り出しておきたい問題が一つあります。それはやはり共同防衛の問題、これは政府考え方、あるいは説明ぶりというものは非常にごまかしである。条約では確かに共同防衛の義務を認める条約をお作りになる、これは明瞭だと思う。その共同防衛の範囲は、国内にあるアメリカの基地なり、基地のアメリカ軍隊に対する場合である、現実ではそうされてある。その場合に、条約では共同防衛の義務を認めておる。その説明を伺うと、いいですか、それから先が問題なんです。その説明を伺うと、これは個別的自衛権で説明する。つまりそこに国内のアメリカの基地なり、軍隊を攻撃するときには、ついでに日本の領土主権を侵している、その日本の領土主権を侵したものの攻撃に対して、日本の固有の自衛権を発揮する。義務を書いておいて、こっちは固有の自衛権で説明をのがれよう。しからば、集団的自衛権というものは国連憲章でも認めている。憲章五十一条。平和条約でも認めている。今度の安保条約のあれでも、おそらく前文でお認めになっている。そのときに、集団的自衛権は使わない。なぜ使わないかというと、憲法上の制約がそこにあるから。日本の自衛権を憲法は否定しているとは私も申し上げません。しかし、自衛の手段について、戦争行為について、あるいは戦力を持つことを憲法は否定していることは明白。しからば日本の自衛の手段をすら制約している日本の憲法から見て、他国のために、見ていられないからといって、いわゆる集団的自衛権を行使するということは、これは条約上どう見ても日本の憲法から許されないと思う。そこで、あなたの方ではそれを個別的自衛権でごまかそうとする。これは欺瞞以外の何ものでもない。昨日も衆議院のあれで、私は新聞で読んだ程度ですけれども、集団的自衛権というと、外務省の条約局長は、海外出兵の場合。冗談言ってはいけません。そんなことをほんとうに考えているのはよっぽどどうかしている。外国ではなくて、日本の国で起り得ることがあるじゃないか。アメリカ軍隊に加えたものを日本が集団的自衛権を——発揮していいとはいえませんよ——発揮する場合もある。集団的自衛権を行使するということは、すなわち海外派兵だと、そんな、街頭演説ならいざしらず、まじめな国会における憲法論なり国際法論でそんなばかなことはあり得ない。しかほどさように集団的自衛権を使うことをためらって、それでいてしかも、じゃアメリカがやるときにはどうか。アメリカ軍隊が日本のために武器を取る義務を今度は認めさせたのだ。これが自民党の岸内閣の今の国民に対する最大のPRのあれになっているわけですね。これは自主性を認めさせた。アメリカに防衛の義務を認めさせた。そのアメリカの防衛の義務がどこから出るかというと、条約上。しかも集団的自衛権。締約国の片っ方は集団的自衛権、片っ方は個別的自衛権。そんなばかなことはどうして説明できますか。こんなことは法制局長官とか、条約局長の問題ではありません。憲法の問題ですから、一つ総理からお考えを伺いたい。
  39. 岸信介

    国務大臣岸信介君) これは、私は、憲法上及び国連憲章の解釈の問題でございますから、法制局長から返事させます。
  40. 林修三

    説明員(林修三君) 今、曾祢委員の御質問で、二つばかり要点があるかと思うのでございますが、共同防衛という問題でございますが、共同防衛の義務というふうにおっしゃいましたけれども、いわゆる日本立場から申しまして、日本とアメリカと共同して守らなくちゃならないという義務は、これはないのじゃないかと私たちは思います。もちろんアメリカに守ってもらうということを日本は要請するわけでございますが、必ずあらゆる場合に日米が共同して守らなければならない、こういう意味の義務というものはないのじゃないか。日本が単独で守るもよし、アメリカと共同で守るもよし、こういうことだと実は思います。  それから、もう一つの個別的自衛権あるいは集団的自衛権の問題でございますが、これは昨日も外務委員会条約局長からお答えしたところでございますが、いわゆる集団的自衛権という言葉の意味についても、国際法学者にいろいろにこれは解釈がございます、従いまして、いかなる意味の集団的自衛権という言葉を用いるかということによって、これはいろいろそこのいい方が違ってくるわけでございます。そこで、どういうところに問題があるかと申せば、いわゆる日本がやられた場合、日本外国から侵略を受けた場合に、日本自身を守るということは、これはもちろん自衛権でございますが、これは個別的自衛権で説明できることでございます。で、その場合に、アメリカと一緒になって守るという意味の、いわゆるある意味においては集団的防衛、これを集団的自衛権の発動というふうに理解している方もあるはずでございまして、集団的自衛権という言葉を、そういうふうに理解すれば、日本に集団的自衛権がないとは言えないと思います。しかし、これは同時に個別的自衛権という言葉でも説明できることだと思います。また、日本の米軍の基地がやられたという場合に、それを日本が守るということは、これはよその国を守ることじゃないかという御議論もあるようでございますが、これは、私は、理論的にも実際的にもそういうことは成り立たないのじゃないかと思います。日本の国内にある米軍の施設区域を外国がゆえなく攻撃してくるということは、これは同時に日本の領土、領海を侵さずしてそういうことができるはずのものではございません。またそういう意図が何によって証明できるかということもこれはわからない。日本の領土、領海に侵入してくる外国のものが、果していかなる意図を持って入ってくるかということは、これは実際はわからないのでございます。われわれとしては、当然に日本としては、日本の領土をゆえなく侵すものは、日本に対する侵害であるというふうに認定するのは当然だと思います。もちろん事態によっていろいろ認定の仕方はございましょうけれども、そういうふうに見得るものだと思います。そういう場合に、日本が自衛権を発動する、これを日本が単独でやれば、もちろん単独でも私は守り得ることだと思います。で、そういう場合に、アメリカと日本が共同して日本を守るということは、集団的自衛権という言葉を用いれば、これは集団的自衛権の発動かもわかりません。しかし、さっき申しましたように、日本日本自体を守るということは、日本が単独でやろうと、アメリカと共同してやろうと、それは個別的自衛権だというふうな説明もできるわけでございまして、そういう説明を従来しておるわけでございます。いわゆる国連憲章の五十一条の集団的自衛権という問題が一番典型的に問題となるのは、いわゆる二国が、お互いお互いの国がやられた場合には、お互いの国を助け合おう、外国からやられた場合、Aという国がやられたことはBという国、自分の国がやられたことと同じである、そういう意味でAという国がやられた場合にBという国が集団的自衛権を発動する、それが集団的自衛権の最も典型的なものである。日本がそういう意味の集団的自衛権、つまり米国がやられた場合に米国本土自体を日本が守るという、そういう意味の集団的自衛権というものは、日本の憲法からは認められないのじゃないか、かように考えます。しかし、アメリカの立場からいいますれば、アメリカが日本の国土を守る、日本がやられた場合に日本の国土をアメリカが守ってくれる、これはまさに国連憲章五十一条の集団的自衛権の発動でございます。これは集団的自衛権で説明する以外にないと思います。そういう意味で、日本を守るという行動自身も、日本の目で見れば個別的自衛権、アメリカの目で見れば集団的自衛権、こう言うことは何にも不思議はない、かように考えております。
  41. 鹿島守之助

    委員長鹿島守之助君) 曾祢君にちょっと申し上げますが、もう時間がきておりますので、簡単に願います。
  42. 曾禰益

    ○曾祢益君 まだ私はこの問題をさらに別の機会にやりますけれども、今の議論は避けておられます、要点を。問題は、日本とアメリカとが共同してやるとか何とかということじゃなくて、日本の憲法から見て、あなたが言っている日本の自衛権の発動だということでごまかさなければ、この条約日本におけるアメリカ軍を守るために日本の軍隊を使う—武力を使うことは許されない。従って、そういう義務は条約で負っていけないので、条約で負っておきながら、その説明は、日本の個別的な自衛権の、つまり日本の領土権に対する侵害だからやらんですということでごまかそうとする。ところが今度はアメリカの方はどうかというと、政府は、もしあなたの議論でいけば、アメリカ軍が日本を守るのは彼らの集団的自衛権の行使であって、この条約であなた方がアメリカに義務を認めさしたんだというが、義務でなくなっちゃうわけです。集団的自衛権の行使にしかすぎないような条約を改めても、アメリカは日本を守る義務はないということになる、その議論から言えば。そういうへんてこりんな議論はやめてほしい。さらにこの点はあとで追及いたします。  最後に一点だけ石橋さんの訪問について伺いたいのですが、石橋さんが中国に行かれることは、われわれはほんとうに一切の党派的なけちな考えでなくて、非常にいいことで、時宜にまた適した政治的の勇断でもあるし、いいことだと思うのですが、特に私が一言御注意を申し上げて、政府の所信を伺いたい点は、石橋さんは向うに行かれるに当って、まあどこまで向うとはっきり約束ができたかどうかは別として、石橋さんみずからが三原則を立て、その三原則に基いて話をする。第一原則は平和共存、第二原則は政治経済、文化の交流を盛んにしよう、第三原則はお互いの持っている国際的な取りきめ等を急激に変化しない。そこで、石橋さんが行かれることについて、総理がほんとうに心から応援されているのかどうかしりませんけれども、少くともこの政治的交流ということの中に入れておられる点は、従来の政府態度よりか一歩やわらかい、前進の線だと思うのです。また同時に、この三原則ということは、われわれが中国から帰ったときに口をすっぱくして申し上げたように、政府は、何かというと、中国側の貿易再開の条件の三原則というものを、その中に当然に日本と台湾との条約の即時廃棄の要求があるとか、—安保条約そのものを改定の名によって相互防衛条約にするということについては中国側は非常な不信等を持っていることは事実ですが、中国側が直ちに安保条約を破棄することを要求しているとか何とか、ありもしないことをあるがごとく言って、だから何にも話しはできないのだと、こういう態度でおられる、それは間違っていると私どもは申し上げる。で、まあ石橋さんのあれは石橋さんの立場からお作りになったんでしょうけれども、私はそういう意味で、中国側の計っている貿易再開のための三原則と石橋さんの言っている三原則とは、ある意味一つのことを別の立場から、うらはらから表現したとも見られる。そういう意味で、われわれ国民立場から、結果に対して非常に期待を持っておるわけです。そこで、これらの点について、政府は、今の三原則によって話が進むならば、国交正常化への一歩前進の方向をとっていいと考えておられるかどうか。基本的な石橋三原則に対するお考えを、この際お聞かせ願いたい。  またいま一つは、これは石橋さんの意図とは全然無関係で、私が伺いたいのですが、私の見るところでは、やはり向う——中国側としては、今あなた方がおやりになろうとしておる安保改定、すなわち新軍事同盟には、非常に大きな疑惑を持っておる。中国側と政治的に和解の方向に進むということと、この際アメリカとの関係において相互防衛条約に踏み切るということのやはり政治的の矛盾というものはそこにあるのじゃないか、この二点について伺いたい。
  43. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 石橋君が中共を訪問するということにつきましては、一昨日ですか、石橋君と会見をいたしました際に、その意図につきましても十分話がございました。また、私自身が従来中共に対しての態度は、今の段階においてこれを承認するという段階ではないと思うけれども、しかし、経済や文化の面においてこれが交流を盛んにして、お互いの理解を進めることはやらなければいかぬ。また、両国おのおのその立場を理解し、尊重し、そうして内政やあるいは外交等においてこれがお互いがいろいろな干渉がましいことは言わない。そうしてお互い立場を尊重し、そうして交流をしていくということは、将来ある段階になって、この承認するというふうな、国交を正常化すというような問題も、もちろん頭に置いて考えるべきことだけれども、現在の段階においてそれを考え状況ではないというのが、従来の私の考え方であります。しこうしてその間においてずいぶんわれわれのやっておる事柄を敵視政策であるとか、あるいはいろいろな誤解やあるいはわれわれから見るというと、曲解と考えられるようなこともあるように思うので、相互の真意を十分に理解し合い、そうしておのおの立場を十分に理解して、そうして親善が深められていくということであれば、これはもちろんけっこうなことであり、また今回、石橋君が行くに際しましても、そういう意味において従来わが自由民主党がとっておる政策、また内閣のこの方針というものを、十分に向う側に理解させ、誤解の点があるならば、これを解くように努めてもらいたい、これがいい機会である、こういうふうに私は考えており、またそういう意味におい石橋君と話をしたわけであります。石橋君の言っておるいわゆる三原則という問題も、いろいろ私は砕いて話を聞いたわけでありますけれども、今すぐこれを承認するとか、あるいは外交関係を聞くとか、政治関係を持つとかいう考え方を持っておるわけではないのでありまして、われわれが従来考えておるような考え方であることも十分に私は理解できたわけであります。いずれにしても、こうした有力な政治家が行って、そうして中共側の首脳者と隔意のない話し合いをするということは、私はけっこうなことである、かように考えておるわけであります。  安保条約の問題につきましては、これは私は今何か曾祢委員は新軍事同盟というような言葉でもってどぎつく表現されますから、何か非常な意図があるように思われますけれども、そうじゃなしに、内容を冷静に検討していただくならば、私の心持、あるいはわれわれの政府の心持であるところの現在の安保条約の改定というものは、その不合理性を改めていくというところに、言うまでもなく主眼があるわけでございまして、もしもそれを逸脱して、何か軍事的なような、強力な攻守同盟とか何かそういうふうに近いようなものを考えるとか、あるいは現在あるところのSEATO知るあいはNEATOみたいなものに近づくものであるというような考え方ではないのでありまして、この辺も私は中国側において十分に一つ理解をしてもらいたいと、こう思っております。
  44. 大和与一

    ○大和与一君 私は、韓国との関係についてお尋ねしたいと思います。  第一は、韓国の国民感情は、日本に対して一体どのようであるか、こういう質問をしたいのです。私の知っておる人が五年ほど前に京城で孤児院を長くやっておって死んだときに、韓国の文部大臣あるいは京城市長なんか全部葬儀に参加して、大へんな盛大な葬式がありました。また、去年までぐらいの話ですけれども、釜山という港には内地から引き揚げたたくさんの子供やらおりますが、家庭に行って見ると、ほとんどみんなレコードは日本のレ  コードをかけておる。あるいは文芸春秋とか主婦の友とか、こんなものは飛ぶように売れている。それを李承晩大統領がたまたま怒っては、ときどき市場を一晩のうちにひっくり返してしまう。そうするとまたすぐあしたくらいになったらちゃんと日本の品物がずらっと出ておる。こういう形で、私は、韓国の国民の気持というものは、日本国民に対して、日本の国に対して、非常な近親感というか、一日も早く正常な形、あるいは商売をしたい、こういう気持を持っておると思うのですが、それはどうか。  もう一つは、しかしながら、南朝鮮の方は、御承知通り、物資がない。米がとれるだけで、ほとんどほかの産業に役立つようなものがない。こういう形の中で、一体、韓国の国民の生活はどうなのか。このことを第一にお伺いします。
  45. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 韓国の国民自体が日本に対して非常な親近感を持っておるといういろいろな例をお話になりましたが、もちろん、これは私自身がいろいろな関係で知り得たところの情報におきましても、大体大和委員のお話のような傾向を持っておる人が非常に多いように考えております。また私は、日本立場から言っても、この韓国との間に一番近い人民でありますから、これが国交が正常化されておらないということは、非常に両国間のために不幸であるから、一日も早くこれを正常化したいという考えでもって実は日韓会談を続けておるわけであります。しかし、そういうふうに近いだけに、問題はなかなか複雑な点もありますし、錯綜した点もありますので、根気よく当らないというと、なかなか今までの過去におきましても、長年の交渉の経過にかんがみましても、簡単に結論に達することはできない情勢でありますけれども、われわれはぜひ国交を正常化する意味において、この交渉を続けて、成功したい、かように考えております。  第二点の、韓国の経済、産業の立場から、一体韓国だけで経済的に成り立ち得るかどうかという点についての御質問でありますが、戦後における事情は正確なものはよくわかり得ませんけれども、戦前の状況から考えてみまして、大きな工業等は北鮮にあり、また、いろんな資源の点から見ましても、動力等の点から見ましても、北鮮がそういうものに恵まれておることは、従来の戦前の状況もそういうふうでありますし、また、地域的に見ましても狭い所でありますし、人口の上からいっても同じ民族が二つに分かれておるということは望ましくない状況でありますので、これが何とか適当な方法によって統一されてそして十分に国が成り立っていくようなことになることを私どもは望ましいことだと思います。しかし、ほかの東独におきましても、ヴェトナムにおきましても、そういうふうに民族が分れて、イデオロギーを異にしておりますと、なかなか統一問題はむずかしいのでありまして、朝鮮半島におきましても同様な事態があると思いますけれども真に平和とそれから住民の福祉の上から考えますというと、適当な方法で統一されることが望ましいと、かように思っております。
  46. 大和与一

    ○大和与一君 次には、李承晩大統領も反共産主義の権化ですが、その点じゃ岸さんも大体同じようなものでおじさんみたいなものだと思うのです。(笑声)そうすると、そういう仲のいい同憂同門の士であるのに、一体なぜ韓国とほんとうの話し合いができないか。こういうことはやっぱり一番総理がおわかりになっているのじゃないかと思うのです。その点を、今まで努力を——特使をやったりしたそうですけれども、国民感情がそうであるというのもよくおわかりになっているその上で、韓国政府と一体ほんとうに難関打開の方途がどこでふさがれているか、こういうことをお聞きしたいのです。
  47. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 日韓交渉の上におきましていろいろな問題点が従来からもあるのでありますが、特に一番両国意見の一致を見ない点は、李承晩ラインの問題であろうと思います。この点に関して、何らか適当な案ができ上がるということが、この交渉をまとめる上からいって最も必要である、かように考えておるわけであります。まあその他にもいろいろ込み入った問題はありますが、今、おじさんとおいのお話がありましたが(笑声)ある意味から言うと、世の中におきましても、きょうだい間のけんかというものは、他人間のけんかよりも、ある場合には問題が解決がむずかしい場合もございますので、案外おじ、おいであるために、いかない場合があるのかもしれませんが、まあそれは一つの比喩でありまして、両国がいかにも近く、そうして両国民が歴史的にも地理的にもあるいは民族的にも非常に近い関係にあるために、両国間に存在しておる各種の問題が、遠い国の間に存在してあおる問題よりも、一つの問題をつかまえましても、その複雑性とそれにからまるところの感情というものがあるものでありますから、この交渉が非常にむずかしいと、私はかように思っております。
  48. 大和与一

    ○大和与一君 私は、今の話で、岸総理が、おじさんであってもいいのだけれども、どうも私は、民主主義者とはちょっとほど遠いと、こういう感じがするので、ただ近親感、親戚感で盲従してもらったら因る。その点はやっぱりきちんと正すべきものは正してこれからやってもらいたいと思いまする  それは余談で、運輸大臣にちょっとお伺いしたいのですが、この前の外務委員会で政務次官からちょっといろいろ聞いたんですが、何を言ったかわからんで、漫談になっちゃった。それで、あなたが漁民の方の視察、鼓舞に行かれて、あれに行かれたのは、閣議の意思決定、一つのまとまった意見でおいでになったか。それからまた、あなたがおいでになって、不幸にして拿捕されましたですね。ああいうことは当然これは複雑な関係からいって予測できるとも思われたのですけれども、そういうことも十分考えながら、なお現地視察ということを主にして、内閣の意思を一つにしておいでになったのか。その点をお尋ねします。
  49. 楢橋渡

    国務大臣楢橋渡君) お答えいたしますが、私が参りましたのは、別に閣議の了解を得て行ったのではありません。私は海上保安庁の主管大臣でありますから、海上保安庁の李承晩ラインにおける警備状態その他あそこに操業している漁民の状況等をやはり視察する必要がある。と申しますことは、私が大臣になって初めて長崎に行きましたときに、自衛船を出してあそこを警備しようという漁民側の熱烈な民族的な、むしろ怒りといいますか、そういう動きがありましたので、そういうことはいけない、自衛船をもって諸君がやるということは慎しんだ方がいいということを、実は警告をいたしたのでありますが、その後において船をチャーターしていくというような情勢等もありますから、急遽現地を見る必要があるということで実は参ったのであります。そうして李承晩ラインの船上といいますか、海上から、自衛船はいけないという声明を出しました。私が行ったから拿捕されたというのではなくして、これは自衛船がその後あちらに参りました。私が帰った後に参ったのであります。ただ自衛船がいけないということだけでは、これは、はなはだ政府としては……。むしろ私は、民間が自衛船を出してみずからこれを防ぐといいますか、これを守るというようなことをやっておるということは、これは明らかに政府の怠慢というか、少くとも海上保安庁の責任者たる私としては、これはみずから自粛をしなければならぬことであるから、帰りましてから、閣議において自衛船を、少くとも自衛船を出さないような態勢に政府の方でも考えてもらいたい。言いかえてみれば、海上保安庁の警備をもっと強化するということと、漁民に対して受信機をつけて退避ができるようにする。現在漁船は三分の一しか受信機をつけていませんが、三分の二は一つ農林大臣の方で急遽大蔵省と交渉して、退避命令を第七管区から出した場合には直ちに受信して退避ができるような態勢を作ることによって、少くとも安全操業を確保したい。基本的な、李承晩ラインの問題は、今、友好裏に日韓交渉を行なっておる段階であるから、その方に基本的な問題はまかしたい。まあこういうことで参ったのでありまして、従って、その線に沿うて私からも政府にいろいろ相談をいたしまして、昨日閣議において了解を求めまして、五隻だけとりあえず——船を建造するということは間に合いませんから——民間船をチャーターするという線によって、一方には船に対する防弾板を張るということと、漁船に対してはさいぜん申し上げました受信機をつけるということについて、今関係各省で事務的にその具体的実現努力しておる、こういう状態なんです。
  50. 大和与一

    ○大和与一君 今の、五隻を認めるということでありますが、正確ではありませんけれども、きのうの閣議で、これからまあ指導していかなければならぬ、こういうようなお話があったと聞くのですが、一体、それは政府は全責任を持たないということなのか、その辺は……。自衛船をやめるということにきまったのですか。
  51. 楢橋渡

    国務大臣楢橋渡君) あなたのおっしゃる自衛船をチャーターするというのではなくして、海上保安庁が警備船をチャーターするというのであって自衛船はやめさせるということです。一体、自衛船は、力をもって来る場合に力をもって排除するというのが自衛なんだから、そういうものはいかぬ。単に漁船式のものならば、そんなものはチャーターする必要はないというのが私の意見なんです。
  52. 大和与一

    ○大和与一君 それでは自衛船ははっきりとやめたわけですかね。
  53. 楢橋渡

    国務大臣楢橋渡君) やめるように指導しようというのです。
  54. 大和与一

    ○大和与一君 指導と言っても、自衛船がつかまったらどうするのですか。
  55. 楢橋渡

    国務大臣楢橋渡君) 今自衛船と言っておるものは、これをやめさせるような態勢にしなければならないのだけれども、その態勢ができなければ、漁民の方がそれをやめないと言えば、これは強制執行してやめさせるわけにはいかないからね。彼らは任意的に行っておるから……。
  56. 大和与一

    ○大和与一君 私は、巡視船と自衛船ということについては、明確に区別してお尋ねしておるつもりなんです。ですから、巡視船を強化して、早くいいものを作って、そうして政府が責任をもってやりたいというお気持はわかるのですが、それなら自衛船をぴたりとおやめになっても、民間の方のそういう危惧の念はなくなるのだ、こういうふうにはっきり言明ができるかということを聞いておる。それができないと、それはそれで勝手に動いていって、それで、一体政府はどこに責任を持つのか。その点、はっきりして下さい。
  57. 楢橋渡

    国務大臣楢橋渡君) 自衛船というものをやめさせるためには、政府がやっぱり警備を充実してこれにかわるべき安心できる態勢を作らなければやめないというおそれがあるから、その方向に向ってやっておるということです。
  58. 大和与一

    ○大和与一君 だから、その責任は一体どこにあるのですか。
  59. 楢橋渡

    国務大臣楢橋渡君) 何ですか。
  60. 大和与一

    ○大和与一君 責任。自衛船に対する責任……。自衛船はやはりやめるわけにはいかないと言っておる。
  61. 楢橋渡

    国務大臣楢橋渡君) やめてもらいたいと言っておる、私の方では。
  62. 大和与一

    ○大和与一君 政府の方はやめろと言うが、はっきりとやめて、そうして巡視船を早く作って、そうして民間には迷惑をかけないというならわかるが、そもそも政府施策なり外交なりが悪いからこうなっておるのだから、国民に迷惑をかけないで、政府の責任でもって自衛船をやめろというなら話はわかるのですよ。そうじゃないでしょう、大臣のおっしゃるのは。
  63. 楢橋渡

    国務大臣楢橋渡君) それは端的に言えば、自衛船なんというものができるということは、彼らが不安を持っておるのだから、またこれを出さなくていいような態勢を作らなければならないということを痛感したから、閣議においてそういうことをきめて、そうして一方にはそういう態勢をとるから、そういうものは差し控えろ。こちらにまかせろということを言っておるのです。
  64. 大和与一

    ○大和与一君 それじゃ新しい巡視船というか、それはいつできるのですか。
  65. 楢橋渡

    国務大臣楢橋渡君) それは今折衝しておるんです。事務的に。
  66. 大和与一

    ○大和与一君 いつごろできますか。
  67. 楢橋渡

    国務大臣楢橋渡君) それは急速にやらなければならないから、事を急いでおりますから……。
  68. 大和与一

    ○大和与一君 そうすると、自衛船がもしつかまった場合は、これはどうなるんですか。あなたの方でやめてくれと言っておるのだけれども、実際にはある。それがつかまったら、政府は一体どうするんですか。悪いのは政府が悪いんでしょう。
  69. 楢橋渡

    国務大臣楢橋渡君) 大体自衛船は出ていけないということを私の方として指導しているのだから、それを無理して今出すということは差し控えろ。そのかわりに、いわゆる警備船をですな、するということを、政府で責任をもってやるから、差し控えろということを言って今通達しておるんだから、一方においてはそれをきめまして、今、海上保安庁長官なり各関係省で、具体案を急いでおるんですから、それで処置したいと思っております。
  70. 大和与一

    ○大和与一君 だから、それは話はわかるのだけれども、やはり未来の話をしておるから、その間に真空がありますよ。あなたの話は。そのときに実際に自衛船がつかまったら、政府は全責任を持つんですか。
  71. 楢橋渡

    国務大臣楢橋渡君) 真空といいましても、現在第七管区で十二隻の船でもって実際は警備しておるんですよ。全地域ですよ。しかし、この李承晩ラインだけには、大体に今のところでは四隻か五隻しか常時回せないんです。それを六隻まで常時回すようにすれば、大体安心がいくということで、五隻というものを今なにしておるんであって、現在でも自衛船が二隻いなければすべてつかまるという態勢ではないんですね。実際に自衛船といいましても、これは御存じのように何も武器を積んでおるわけでもなく、自衛する態勢でもない。ただ連絡する範囲内においてのものだから、そういうものを百五十万円もかけてチャーターして、実際に韓国を刺激してやるということは、妥当じゃない。また今そういうことすらもやらなければならないような気持を持っておる漁民に対して、早く施策しなければならないということで、私が行ってやっておるわけですから、どうぞ御了承願います。
  72. 大和与一

    ○大和与一君 今のいわゆる自衛船というものは、政府としてはやめてもらいたいのだけれども、実際にそういう形で動いて、もし問題があった場合には、もちろん政府が全責任を持っているんだ。こういうふうに理解していいわけですね。
  73. 楢橋渡

    国務大臣楢橋渡君) 全責任を持つということは—自衛船を出していけないということを、勝手に出しておるのだからね、実際において。
  74. 大和与一

    ○大和与一君 だから、そうすれば巡視船ができておらないのに、そんなことを言ってもだめじゃないですか。実際にあるのだから。巡視船がちゃんとできて、自衛船はいかぬと言って、なお勝手に動くならいかぬということもあるけれども、今お宅の方で作って、いけないということをはっきり言っておるが、それで自衛船がつかまった場合、政府の責任ではないと言ったら、それはだれの責任ですか。(「政府の怠慢だ」と呼ぶ者あり)
  75. 楢橋渡

    国務大臣楢橋渡君) この自衛船という言葉が私は妥当じゃない。それはほとんどはやはり何か自衛するために相当抵抗するような格好で行く態勢を持っておりましたよ。しかし、それはいかぬと言ったんで、だんだんと形を変えてきて、結局通信連絡ですな、通信連絡というような意味のものになっているわけなんだ。ですけれども、それが先般も出たのを見ますと、一つは差し押えされた船か何かを持ち出して事件を起しておるし、それから実際に自衛船ということを言っても、その自衛という効力があまりないのだから、従って、漁民自体も非常なこれは反省といいますか、何とかしてもらいたいということを言ってきておるわけだ。従って、私の方で急速に今そういうことをしなくてもいいというふうに、万全の策を講じたいということで、きのうそういう決定をしておることですから、それで御了承願います。
  76. 大和与一

    ○大和与一君 政府の方で自衛船という言葉を使って、それを、自衛船をやめたい、やめてもらいたいと、こうおっしゃっておるのだから……。私もそれは自衛船と漁船とは区別してもいいし、しなくてもいいと思っているんですよ。つまり、言うことはよくわかるんですよ、わかるけれども、政府国民に対してやる場合に、今の問題は自衛船の問題なんだから、これをやめたらそのかわりあしたから政府が責任を持って国でちゃんと監督をします、そうおっしゃればそれで終るのだ。ところが、その方はいつできるかわからぬ。計画は今からぼつぼつ考えようじゃないか、あさってからずっとあとで。こんなことを言っておっても、実は自衛船というものは生きておる。それが  つかまった場合に、政府は全責任を持たないという場合には、もう怠慢というか無責任だと思うんですよ。そこだけはっきりしてもらえば私はいいのです。
  77. 楢橋渡

    国務大臣楢橋渡君) 責任を持たないというよりも、私の方としては、とにかく今第七管区に命じまして、自衛船は差し控えろということを言っておりますから、一つ御了承願います。
  78. 大和与一

    ○大和与一君 もう一つ、抑留者の交換の問題ですが、これは外務大臣ですが、近くあるいは全面交換といいますか、なるようでありますが、その場合に、日本の釜山に抑留されておる人が全部でなくて、刑期の終っていない者はあるいは残るんじゃないか、こういううわさといいますか、そんなことがあるのですか。一体どうお考えですか。
  79. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 一応釜山との、送還というのは名簿の交換をやりまして、そこから進めていくことで、大体話し合いはぼつぼつながら進めております。われわれとしては、むろん釜山に抑留されて刑を受けた人、その刑が正当だとは李承晩ラインというものを認めておりませんから、われわれとしてはそれを認めるわけには参らぬと思うのです。しかし、実際問題として必要なことは、今後そういう抑留される漁船がなくなるということが根本だと思います。そしてそれによって刑を受ける人がなくなるということが必要と思います。しかし、一日も早く帰さなければならぬ立場からいいますと、一応そういう状況は認めておりませんけれども、刑を終った人が先に帰ってくるという事態にはなろうかと思います。
  80. 大和与一

    ○大和与一君 そうすると、こちらにおる人は全部帰してわが方はそういう差別の段階をとると、こういうことでありますか。
  81. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) こちらにおります人は不法入国の人ですから、実は原則からいうと、こちらが帰さなければならぬ人なんです。当然に帰すべき人、また韓国側は引き取らなければならぬ人なんです。追放という言葉はおかしい言葉ですから使いたくないと思いますけれども、日本から出てもらわなければならぬ、不法入国者ですから、ということなんですね。それを今日まで韓国側は引き取っておらぬのが現状なんです。ですからこれはどうしても韓国に帰るという人は引き取ってもらわなければならぬ。今度は大村収容所におります人の中にも韓国には行きたくないという人がある。しかし国外退去を拒む人はないのですから、その自由な意思の所にやるのですから、全部韓国に渡すということには、今回は参らぬと思います。その点は。
  82. 大和与一

    ○大和与一君 そうすると、刑の済まない人はあと回しになるというけれども、これが今までの例から言いましても、あと回しといってもすぐならいいんですけれども、ずいぶんこれはあと回しになるんですね。その辺を韓国政府と今までも交渉をたびたびされているわけですが、どうもやはり政府主張といいますか、あるいは完徹というか、意思なり方法なりがまだ足りぬのじゃないか、こういう感じがするわけなんです。外務大臣はいつでもガラス張りの会議をやっていると言うけれども、なかなか外から見えぬから、どれくらい一生懸命やっているかわからぬものだから、どうもその点、そういうふうな差をつけることは、われわれ反対だけれども、かりにそういうことが万止むを得ずあった場合にも、それがおっつけすぐ帰って来る、これくらいの話し合いは、何時間か何日か知らぬけれども、そういう話し合いを同時につけてもらう努力をし、ぜひとも強く韓国と折衝してもらいたいと思うのです。
  83. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん韓国側との折衝は、私はやはりしんの強さと申しますか、それがなければいけないし、それを通していかなければならぬと思います。ただしかし、具体的な問題を若干扱いますときに、日本としておとなの態度というようなものをある程度はやはり持つべきじゃないかということは考えておりますけれども、しんの強さがないと……。日本考え方を完徹して、むしろ日韓会談を円満に解決する上におきましても、しんの強さは必要なんだ、こういうふうに考えます。
  84. 鹿島守之助

    委員長鹿島守之助君) これで予定の質疑は終りましたですが、ほかに何か御発言ございませんか。  それでは、本日はこれにて散会いたします。    午後一時十八分散会