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1959-07-08 第32回国会 参議院 外務委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年七月八日(水曜日)    午前十時二十五分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     鹿島守之助君    理事            苫米地英俊君            堀木 鎌三君            森 元治郎君    委員            青柳 秀夫君            笹森 順造君            杉原 荒太君            津島 壽一君            野村吉三郎君            加藤シヅエ君            佐多 忠隆君            羽生 三七君            藤原 道子君            石田 次男君            佐藤 尚武君   国務大臣    外 務 大 臣 藤山愛一郎君   事務局側    常任委員会専門    員       渡辺 信雄君   説明員    外務政務次官  小林 絹治君    外務省条約局長 高橋 通敏君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査の件  (国債情勢に関する件)   —————————————
  2. 鹿島守之助

    委員長鹿島守之助君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  この際、小林外務政務次官から就任のごあいさつをしたいとのことで発言を求められております。これを許可いたします。
  3. 小林絹治

    説明員小林絹治君) 小林絹治と申します。このたび外務政務次官の任命を受けまして、きわめて浅学不練達な者でございますが、どうぞ今後皆様の甚大なる御指導をお願いを申しあげます。どうぞよろしくお願いをいたします。(拍手)   —————————————
  4. 鹿島守之助

    委員長鹿島守之助君) 国際情勢等に関する調査を議題として藤山外務大臣に対し質疑を行うことにいたします。なお藤山外務大臣出席は、都合により正午までとなっておりますから、この点お含みの上質疑お願いいたします。藤山外務大臣から発言を求められておりますので、まずこれを許可いたします。
  5. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 参議院外務委員会開催に際しまして私から第三十一回通常国会以降の主要な外交関係事項経過について御報告を申し上げておきたいと存じます。  私は去る五月十三日サイゴンにおもむきまして、同地におきましてヴェトナム共和国との賠償協定調印をいたしました。ヴェトナム賠償に関しましては、政府といたしましてもすでにしばしばその所信を表明したところでありますが、元来ヴェトナムは桑港平和条約の当時国としてこれを批准いたし、同条約に基いてわが国に対する賠償請求権を有するものであります。しかしてヴェトナム共和国政府は、全体を代表する政府として、自由諸国のほとんどすべてが承認している政府であり、また、わが国が、正式の外交関係を維持しているものであります。今回、同国政府との間に調印されました賠償協定は、桑港条約に規定されたわが国賠償義務を履行するための協定にほかならないのでありまして、政府といたしましては、右協定につき国会の十分な御審議を得る所存であります。  なお先般、ビルマ連邦政府より、日緬平和条約の再検討条項に基き、ビルマ連邦に対するわが国賠償について、再検討方を求めて参りました。政府といたしましては、ビルマに対する賠償額は、他と比較して均衡を失しているものとは考えておりませんが、いずれにいたしましても先方の言い分をも十分聞いてみるという目的で、最近ビルマ側本件についての予備的話し合いを開始いたした次第であります。  私はヴェトナムを訪問いたしました後、カンボディア及びラオス政府の招きを受けて、これら両国を訪れ、今後ともわが国との外交関係経済関係を強化すべき方途につきましてそれぞれの政府首脳と懇談したのでありますが、特にカンボディアにおきましては、わが国同国との間の経済協力協定実施細目について合意に達しましたので、右に関する公文の交換を行いました。この結果、さき国会の御承認を得ました経済協力協定は、近く東京で批准書交換を行いました上で、具体的実施段階に入る次第であります。  五月末、私は米国にに参りまして世界各国の首相、外相等とともにダレス米国務長官の葬儀に参列いたしました。多年米国国務長官として世界平和のために奔走された同長官の業績については、あえて多言を要さぬところでありますが、私は特に同長官が今日の日米親善のために払われた絶大な努力と献身に対して、ここに敬意と追悼の念を新たにするものであります。  次に、在日朝鮮人北鮮任意帰還問題につきましては、わが国といたしましては、何ぴとも自国に帰り、またその欲する所に居住し、移転し得るという国際的にも広く認められた基本的立場に基きましてこれを行おうとするものでありまして、この自由意思に基く任意帰還という原則は、決してゆがめられてはならないのであります。この原則は、さき日本北鮮両赤十字代表の間で妥結を見ました帰還取りきめの中に明確に規定せられているところであり、この規定のもとに帰還業務が実施されることを期待し、かっこの協定赤十字国際委員会承認され、帰還業務がすみやかに実施されることを期待いたすものであります。もとより本件が実施されることは、わが国北鮮に対する従来の立場ないし関係にいささかなりとも変更をもたらすものではないのであります。  なお、韓国に抑留されております日本人漁夫の問題は、それが同胞の運命に関するものであり、一日もゆるがせにし得ないことでありますので、政府は、そのすみやかな釈放のため、つとに赤十字国際委員会にあっせんを依頼たしました。その後、留守家族代表ジュネーヴにおもむき、直接事情を委員会に訴え、その協力を求めた次第でありますが、政府はさらに最近スイス駐在奥村大使をして、わが政府及び国民が、本件について抱いている強い希望と関心とを重ねて強調せしめ、その善処方申し入れしめたのであります。幸い同委員会側におきましても、本件に関し、深い理解と同情とを示し、これら漁夫早期釈放方に現在せっかく尽力中であります。政府といたしましては、今後ともでき得る限りすみやかに釈放が実現されるよう、内外世論の支持のもとに、あらゆる努力を就けて参る所存でございます。  次に、安保条約改定問題について一言いたししたいと存じます。本件改定交渉は、前回国会終了後、米国側とさらに約十回の会談を重ねました。改定条約の構想中、主要な点につきましては、すでに過日総理大臣もその所信表明に際して明らかにされたところでありますが、今、さらにその要点を述べますれば、国連憲章との関係を規定すること、日米両国政治的かつ経済的に共通の基盤に立ち、その協力関係を促進すること、米国日本防衛義務を明きらかにすること、条約の運営に関してわが国発言権を確立すること、並びに新条約においてわが国の負うべき義務は憲法の範囲内なることを明らかにすること等であります。  さらに行政協定に関しましても、その締結当時よりの情勢変化にかんがみ、所要調整を行うべく、目下折衝中でございます。  もとより現行条約といえども、今日までわが国の平和を守るという点において重要な役割を果してきたのは事実でありますが、条約締結当時、わが国の置かれていた客観情勢にその後相当の変化が生じておりますので、右に応じた所要改定を行いますとともに、今後の国際情勢のもとにおいて、わが国の平和と独立を確保上得る現実的な方途としての安全保障体制を規定せんとするのが今次改定交渉の趣旨であり、新条約目的及び性格は、あくまで平和の擁護と侵略に対する防衛に存するものであることを、ここに重ねて明らかにしておきたいと存じます。  右、改定交渉は必ずしも容易なものではなく、目下のところ、いまだ条文を最終的に確定する段階には至っておりませんが、米国は、わが政府主張に対し、十分理解ある態度を示しており、遠からず妥結を見るものと考えております。  第二次大戦後、十余年にわたる冷厳な世界情勢、特に今日なおわが国周辺における政治上、軍事上のきわめて不安定な情勢を考えますれば、平和を守る道は決して容易なものでなく、世界的にも、また局地的にも、常に現実に即した平和への保障措置を積極的に講ずる要があると考えるのであります。  先般来、ジュネーヴ開催されております東西外相会議も、約一カ月余の討議を経ながら、ドイツ統一問題及び欧州安全保障問題等について、双方の主張は依然として根本的に対立し、結局何らの進展をも示しませんでした。よってまず対象をベルリン問題に局限いたしましたものの、ついに何らの合意に至らぬまま休会に入り、近くこの十三日から会談は再開される模様でありますが、果して外相会議自体が何らか建設的な結論を得るに至るかいなかは、なお予断を許さぬところであります。外相会議がその行き詰まりを打開し、巨頭会談開催を可能ならしめるとともに、大国同平和促進のための有効適切な合意が成立いたしますことは最も望ましいところでありますが、現状における東西間の対立は、根本的な政治的信条対立に由来するものでありますので、巨頭会談開催されましても、緊張の緩和が一夜にしてもたらされることは望みがたいのでありますが、問題の解決が困難であるがゆえにこそ、大国首脳者による平和促進への努力が真剣に続けられることを希望するものであります。  以上、前回国会以後の外交問題に関するその経過を御報告いたした次第でございます。
  6. 鹿島守之助

    委員長鹿島守之助君) それでは質疑のおありの方は順次御発言お願いいたします。
  7. 森元治郎

    森元治郎君 一番初めに北鮮帰還の問題についてお伺いいたします。  けさジュネーヴからのAP電報だったと思うのですが、国際委員会ボアシエ委員長ですかの談話で、北鮮日本帰還協定調印をしなければ、同意を与えるにしろ、審議するにしろ、やれないということを言ってきてだいぶ問題を起しているようです。ただ、この電報だけでは、ボアシェがだれにということがどうもはっきりしていないようなところもありますし、UPとか、あるいはロイターも打ってきていないので、果してそうであるかどうかはわかりませんが、政府がきのうか、訓令を電話でやった内容と大へん違うように思うのですが、この点について御説明を願います。
  8. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ボアシエ委員長がどういうことを言われましたかは、私も新聞電報の断片を承知いたしておるだけでありまして果してどういう機会に、どういう相手に対してどういう程度意思として言われたか、まだはっきりいたしておりません。いずれこれらの問題については、はっきりさせてから意見を申すのが適当だと思うのです。がしかし、北鮮側がきょう帰るという問題につきまして、作品会談をいたしたわけでありますけれども、その経過は、北鮮側からいつ調印をするのかというと、いついつ調印をするということをきめてもらいたいということで、日本側としては国際委員会の、承認のあったときに調印をするのだということで、それ以上話は進まなかったようでございます。  従って、北鮮側は一応帰国したいということでありますが、私の手元にきております北鮮側代表団の声明の末段には、現在は帰国する、ここに長く待っていてもしようがないが、われわれは戻って来るし、日本側調印の別意を表明するときには、いつでもすぐにこれに応ずるであろう、われわれはこの点に関し、ジュネーヴ連絡のために二名を残しておくというようなことを言っておりますから、当然話し合いそのものが決裂したわけではなし、やはり向うの北鮮側においても、現在国際委承認のもとにこれを行うということには同意をいたしていると考えております。むろん、これらの問題についていろいろの考え方がございますけれども、今日まで、北鮮側も、日本側も、国際委同意のもとに、了承のもとに調印をするという話で、北鮮側も残っております。ただいまの最終的なコミュニケにおいても、その点は確認されておるわけであります。これを調印しておいて、国際委に持っていく方がいいのか悪いのかということについては、おのずから意見が分れるところでありましょうし、また国際委の方も、調印という事実によって圧迫すること事態が必ずしも適当でないということも考えられるわけであります。その辺のことは十分注意をしながら、われわれとしてはこの問題を扱って参りたい、こう考えております。
  9. 森元治郎

    森元治郎君 どうもこの北鮮帰還の問題は複雑な交渉経過で、私たちも的確に、現段階はどうとかということがつかめないくらい、むずかしい。  その一つの原因は、小策を弄している傾きがある。ことに出先の外務省のアウトサイダーのような人も、私個人的にも知っておりますが、あまりこまか過ぎる疑いがある。これがこの混迷を招いていることが一つと、それからやはり外務当局として、国際委員会におけるアメリカ代表に何事かを頼まれて、その動きを期待している、アメリカの動向というものに大へん気がねをしているような点がありゃしないかということ、それからもう一つは、やはりすなおに考えれば、ここまできた以上、調印をする。国際委員会にものを頼むという場合にでも、このようにして合意が成立したし仮調印でもいいでしょう——更そういうようなはっきりした形をとって、初めて国際委員会としても真剣にこれを委員会として取り上げ得るのだと思うのです。それを何か事前の承諾の内意をつかもうと、喪で暗躍するようなことは、この段階においてはもう必要もないし、はなはだまずいと思うので、すみやかに、過去にとらわれることなく、調印をして国際委員会に持ち出すならば、私はよい結果を得るのじゃないかと、かように考えるのですが、この二、三の点についてお伺いいたします。
  10. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今までの経過からいいまして、特に何か小策を弄するというようなわれわれとして考え方はございませんし、また、実際にこの交渉を担当しておられます日本赤十字方々が、特に小策を、弄しておられるとは私ども考えておりません。ただ、若干外交上の交渉にふなれな点があるというようなことはあり得るかもしれませんけれども、これは常時外交交渉を担当しておられる方々でないわけですから、その点については、若干もしそういう点があったといたしましてもやむを得ない点ではないかと存じております。従って、大筋において決して混迷したような進行を続けているとは思っておりません。むろん両方の側における代表の間の折衝でありますから、その間にどちらが譲歩したとか、どちらが譲歩しないとか、はたから見ておりますと、いろいろな点もございますけれども、しかし、それらの問題を通じて特に小策を弄しているというふうなことはないと思っております。  それから御意見として、この際調印をしてという御意見もございますけれども、ただいまも申し上げましたように、そういう点については、われわれとしては初めから国際委の自由に帰還する意思というものについてのワクの中でやりたいという考え方でおります。今日北鮮側においてもそれを拒否しておるわけではないのでありまして、ただいま申し上げましたように、今度帰りますについても、二名の連絡員ジュネーヴに残して、つき次第調印をするというようなことで帰っていかれますので、北鮮側においてもその点について特にこだわっておられるとは思っておりません。まあ昨晩からきょうにかけてのいろいろの出来事でありますし、新聞電報等いろいろありますけれども、大局においてそう大きな変化もなしに進行しておるのではないかと思います。なお詳しい電報その他がだんだん入ってきますれば、それらについて十分詳細な点はわれわれも検討して参りたい、こういうふうに考えております。
  11. 森元治郎

    森元治郎君 もしこのけさ電報の入ったボアシエ委員長の言ったと言われる内容、まず調印をして——合意したものは即はっきり調印の形にしたならば、国際委員会で取り上げてというあの内容は、おそらく全委員会の一致した結論になろうかと私は思うのですが、その際、政府は従来の行きがかりにとらわれないで、これに従うおつもりかどうかを伺っておきます。
  12. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ボアシエ委員長がそういうことを言われたという新聞電報はございますけれども、先ほど森委員も言われましたように、また私も申し上げましたように、ボアシエ委員長がどういう資格で言われたのか、個人的な感想を述べられたのか、あるいは委員会代表して言われたのか、そういう点も明確にいたしておりませんし、また、どういう機会にそれをどういう立場で言われたのかもはっきりいたしておりません。従って、そういう問題につきましては、やはりそういうことがはっきりしてからでないと、われわれ国際委員会発言等を簡単に批評をするとか問題にするということは、今の時期においては適当ではないと、こう考えております。
  13. 森元治郎

    森元治郎君 ついでにもう一点重ねて。ボアシエ委員長発言したと言われる内容はリーズナブルなものだというふうにお考えになるかどうか。
  14. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) まあAPで簡単にそういうことを打ってきておりますので、それがリーズナブルなものであるかないかを、今私の立場で申し上げることは適当でない、こう思っております。
  15. 森元治郎

    森元治郎君 これから安保関係の若干の質問をいたしたいと思いますが、それは主として条約内容に関して、われわれがいまだはっきりつかめない、了解できないことに対して、政府の所見を伺うところに重点を置いてやりたいと思っております。一番初めに、その安保条約改定調印というのは、十一月以後におくれて、国会にかけるときには通常国会だというのが自民党及び藤山さん自身も新聞で書いてある通り、早くも転進をして、こういう線で進んでいるように伝えられているのですが、果してその通りでございましょうか。  それからその理由は一体どういうところにあるのか。岸内閣の内部が弱体で、思想統一、見解の調整に手間取るのか。あるいは社会党の反撃が強まってきて、これに対応するだけの態勢が自党内にないということなのか。あるいはもう少しそういう情勢では党内調整をはかると同時にPR活動をやって、国民に対する啓発を行なっていってからにしたい。あるいは砂川判決がおととい発表になった。最高裁の審理のスケジュールによれば、十月以後には例の砂川の問題に対する判決が出るのではないかというので、これも頭に入れて待っておられるのか。こういう点について、時間を卸約するために、列挙して一束にして御質問したので、忘れないでお答えいただきたいと思います。
  16. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 忘れましたらあとで御指摘を願いまして御説明申し上げたいと思いますが、御承知のように私はこの外交交渉に入りますまでは、むろん私が交渉責任者としてこれらの交渉を進めて参ります上において一定の大体目標を置いて、そうして日本各省間の意見も取りまとめて参らなければなりません。党その他の考え方もできるだけ早い時期にまとめてもらいませんければ、交渉当事者として交渉に臨んでそれを遂行していくわけには参りません。従って、ある程度私は交渉に入りますまでは、一定の期間を示して、この程度にやりたいのだという交渉当事者としての意思表示をして参ってきておりますが、しかし、外交折衝のことでありますから、各省間の意向も出てきて、あるいは党の意向も出てきて、交渉に入って参りますと、相手方との交渉でありますから、いついつまでにこの交渉妥結させるんだということは、非常にむずかしい問題でありまして、この条約締結最終段階において一つの字句の問題についても一週間や十日議論をしなければならないということもございますのでありますから、私は、実は交渉に入りましてからいついつ調印をするということを特に申したのではないわけでありまして、できるだけ交渉をスムーズに早くやって調印をしたいというのが、折衝当事者として当然の気持であり、その当然の気持を、できるだけ早くやりたい、こいうことを表明しておったのは申し上げるまでもございません。今日御報告申し上げましたように、五月三日以来約十回にわたって会談をいたしておりまして、安保条約及び行政協定につきましてのいろいろな問題点について論議を置ねてきております。ある程度論議が固まりつつありますけれども、まだ問題の最終的な合意を見ておらない点もございます。従って私といたしましては、それらの合意に達するのがいつの時期に達し得るかということは非常に今申し上げることは困難だと思います。むろんできましたものを議会等批准を要請することになりますので、そうした国会等関係等も党においては考慮お願いいたさなければならぬことは当然でありますが、私としては、それらの問題を交渉当事者として特に念頭に置いて交渉を進めておるわけではございません。むろんそれらの御意見を拝聴してはおります。そうしてできるだけスムーズに問題点について——必要の問題につきましては何べんも重ねて日本側からこれを押し返してもおりますし、また合意に達するべきものは達するという形においてやって参りました。従って、そういう意味で私としては今日進めておりますので、臨時国会とか通常国会とかとちらかにきめてそれに間に合せるとかあるいは間に合せないというようなことを考えてやっておるわけではございませんし、またそうやってみましたってその通りにいけるかどうかということは、相手側関係もございますから……。そういう意味において、ただ交渉当事者としてはなるべく早くこういう問題について全力をあげて解決していくことが適当だろうと、こういうふうな態度で現在やっているわけでございます。
  17. 森元治郎

    森元治郎君 そういう答弁の中に砂川の問題に対する判決が出てからということに対する御回答がなかったのですが、それをいただきたいのと、ただいまのお話では、合意に至らない点がまだあるので、しかもそれがいつ合意に達するかは見込みがわからないとおっしゃったのは、これは行政協定に関するものを言っているのか、あるいはまた例の期限の十カ年という問題もこの今意を見るに至らない点に含まれているかどうか、この点を伺いたいと思います。
  18. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 砂川の問題については、裁判を特に考慮に入れてはこの問題の交渉自体はやっておりません。政府としては、むろん砂川判決に対する今日までの態度がきまっておりますので、われわれはそういうことに関連なしに交渉を進めておるわけでありまして、従って、念頭にそういうことを置かないで交渉自体はやっております。それから交渉につきましては、ただいまもちょっと申し上げました通り原則的な話し合いについてある程度合意したものもあり、あるいは合意段階までいっておりませんけれども、両者意見交換してみまして、大体条約草案を書くときにはこの辺で書けるのだというお互い理解を深めていっている点もございます。期限十年というものは、今申し上げた第二のような意味において、両者が同じような理解の上に立っているということを申し上げて差しつかえないと思います。また行政協定につきましては、今後まだ直接の具体問題として各省間から出ておりますものについて、各省の御意見もまだございますので、最終的に、両者がこの程度草案を書いてみようというところまでいっていない問題も二、三ございます。従ってそういう状況のもとで、今後ともそれらの問題についていろいろの話し合い外務省としてはして参りたいと、こう思っております。
  19. 森元治郎

    森元治郎君  いろいろの話し合い外務省でこれからやっていくわけですが、そういう問題もお互い理解があるそうでありますから、そんなに長くはかからないでも条約を起草するまでに至ることはむずかしくないと思うのですが、もし通常国会というようなことになれば、その間にはただあたためておくのか。ずるずる交渉をやっていくということもできないのでしょうが、その間には仮調印といったような形もあるのでしょうか。もし合意に達した場合はあたためておくのですか、何らかの措置をとるのか、その辺の御決心をお伺いしたい。
  20. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん交渉当事者としての私といたしましては、できるだけ日本側の希望を盛り込んでく、日本側立場交渉を通じて盛り込んで参らなければなりませんので、その努力を今後も続けていくわけであります。だんだん問題の数が少くなってくるから簡単にいくとは、ある意味からいえば申し上げにくいのでありまして、数が少くなって討議があとに残っています問題ほど、むしろ問題を何べんもむし返さなければならぬというような、若干両者合意のしにくいような問題がだんだん残っていく。交渉の過程で申し上げますれば、一応いろいろな問題を取り上げて話がスムーズにつくものはまず片づけていく、スムーズにつかないものは、ある程度話し合いを途中で打ち切って、つくものから片づけていくものもございますので、従って、つかないものが数が少くなったからすぐ片づくというのではなくて、数が少くなったから、ある場合には若干長期にかかるというようなこともございますので、そういう意味においてわれわれはやって参りますので、今、先ほど来申しておりますように、いつ最終的に草案作成をし、草案が作成されて、その字句等についても合意に最終的に達するかということは、非常に困難だと思います。草案でも作成して、その上で、全部両者合意になった上では、それが批准等のために非常に時間がかかる。じきにそうなるのかならないのかということは、今申し上げかねますが、また従って、時間が多少余裕があるのでイニシアルをしておくかしておかないかというような問題についても、今の現状から申すと、必ずしも的確にそうなるともそうならぬとも申し上げにくいのであります。そういう意味において、われわれとしては、ただこういう交渉をやっております者にとりまして、むろんできるだけ早く交渉日本側の要求も入れて解決したいという気持は、当然交渉当事者としては持っておることは当りまえでございますけれども、なかなかそう言ったって向こうがその通りにしてくれるかどうかわからない。(「もう少し大きな声で言って下さい」と呼ぶ者あり)従って、今日はまだ完全にイニシアルをするとかしないとかいうことは申し上げかねます。それからあたためておくというようなつもりは、私自身ないわけであります。
  21. 森元治郎

    森元治郎君 なかなかこのごろ大臣も政治家になってきたので、いろいろ芸当をするようになってきたので、さよう御質問をしたわけです。  協議事項についてお伺いしますが、極東の平和と安全が脅かされていると認められるときはいつでも協議するということが入るようですが、その協議する場合は、情勢判断というものを持たなければこれは臨めないわけですが、日本の現状において、一体何を根拠に置いて情勢判断をやるのか、下手にまごつけば情勢判断は資料が山ほどある米軍に押し切られて、アメリカ側に押し切られて、これをうのみにしなければならぬ場合もしばしば出てくるんじゃないかと思いますが、これに対する処置はいかがされるか。日本発言を自主的にしかも増大していくという大臣のその間の用意がなければならぬのですが、いかがですか。
  22. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 協議をする場合の情勢判断というのは、お話のように非常に重要でありまして、この問題については平素から政府全体としてもそうでありますが、またそれぞれの情勢については、それぞれ担当各省意見も十分政府全体としてまとめて参らなければならぬと思います。従って、担当各省においてそれぞれ今後のそういう判断については、むろん十分注意をしてやられることだと思います。そうした材料の上に立って情勢判断をしていくことはむろんございまして、重要な協議に当って、情勢判断を誤まっては相ならぬことはむろんでございますから、そういう点については、政府としてもこうした問題について今後十分な情勢判断の材料も入手し、またそれに対する正確な検討もして参らなければならぬことは当然だと思います。
  23. 森元治郎

    森元治郎君 関係各省などから的確な情報とおっしゃいますが、日本には自衛隊というものがありますけれども、昔は大公使館に陸海軍武官がいるとか、あるいはこういう人たちがそれぞれの国で軍人としての正当なる待遇を受けてしかるべき情報交換などをやって、ことに軍事情勢などについてはしっかりつかんでいた、そういう組織があったわけですが、現在それが全然ないので、ただこの小さい島にもぐっていて、緊迫した、脅かされているというのを、関係各省が幾ら集まっても、これはわからないと思うのですが、いかがですか。
  24. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろんお話のように戦前のような軍の組織が今日あるわけではございません。しかし、戦前のような軍の組織が、的確な情勢判断に非常にいい影響を与える場合もあろうかと思いますが、また戦前の経験から見ましても、必ずしも軍だけの情勢判断で問題をきめていきますことは、危険なこともあろうかと思います。従いまして、必ずしも戦前のような軍の組織がないから情勢判断の非常に誤まるんだということは言えないんではないかと思います。むろん今後のこういうような国際情勢なり国際軍事的な情勢なりの把握については、政府としても十分努力して参りませんければなりませんし、各省ともそれぞれ日本の将来の運命に関する問題でありますから、それらについては的確な材料をとり、正確な判断をするように努めて参らなければならぬと思っております。
  25. 森元治郎

    森元治郎君 次に、この事前協議と拒否権の点でありますが、大臣は、国会の質問に答えてノーと言うことは拒否権である、これをあえてやるならば、世界の非難をアメリカが買うであろう、またアメリカも、日本がノーと言ったならば、いやだということはやるまい、こういうような答弁が総理及び外務大臣からあったように理解をしておりますが、どうもこれは非常に甘いので、事が起ってしまってからアメリカが非難を受けるだろうなどということを期待しているだけでは、何とも醜態のきわみだと思うのです。ことに武力攻撃というものを前提としているのですから、始まった以上がちゃがちゃになってしまって、世界が非難しようとしても非難ができないような事態になってしまうので、ここはやはりもう少しはっきりとしておかなければいけないと思う、はっきりと。そこで、われわれが振り返ってみると、拒否権というような問題を、過去の歴史と申しますか、経過というものから見てみますと、大国と小国との関係すなわち日本の場合はアメリカがしっかりした軍備を持ち、戦争をやれる国柄であり、日本は平和憲法のもとで自衛隊というえたいの知れないものを持っている国と共同で動作をする、共同か協力か、その辺はむずかしいようですが、一緒にやるという場合には、おのずから差が出てくる。ダンバートン・オークスという例の会議でも拒否権の問題が論議されて、結局ソビエトもイギリスもアメリカも拒否権を置くことに一致した。その意味というものは、たくさんの軍隊を持っている国が、持たない国の表決によってその軍隊を使われてしまうなんというのは、もってのほかだ、こういうようなことから拒否権を設けることに米、ソ、中国、イギリスが意見が一致した経過があるので、日本の場合でも、アメリカ大国であり、日本は小国も四等国の小国で、これと一緒に危険に対処するという場合日に、どうしてもアメリカとしては、日本のノーということを聞き得ない場合がしばしば、あるいはすべて起ってくるかもしらぬと思うのです。そこでわれわれとしては、国会における答弁だけでは満足できないので、もしこれを政府が言うようなものとするならば、単に国民の反対、あるいは社会党その他文化人などの反対を押えるための単なるゼスチュアであって、実際の内容は、曾祢同僚委員が過般の本会議でも御質問申し上げたときの、白紙委任状をアメリカに与えるものではないかということに私は帰着すると思うのです。拒否権があるんだとまで極言をされるならば、この点をやはり明確にすべきではないか。大国と小国との現実の関係においては、先ほど申した通りの理由であります。から、そうされることが正しいと思うので、もう一回御答弁を願います。
  26. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 協議でありますから、われわれノーとむろん言えることが当然であり、それを確信いたしております。同時に、協議が整わない場合には、これが実行に移らぬということも、これまた確信しております。ただいまお話のように、政治論として大国と小国との間に、小国がいかにノーと言っても、なかなかそれはむずかしいじゃないかというようなお話かと思いますけれども、私は今日の国際社会において、小国の発言というものは相当尊重されることになり、国連においても拒否権問題がすでに問題になったようなわけでありまして、小国だからということでもって、大国が小国の意思を完全に無視していくということは、いろいろの情勢上あり得ないと思います。また日米安保条約締結するという日本アメリカとの関係から見ましても、日本意思に反してアメリカ側が行動することが、日米両国の共同関係からいいまして、政治論としてもあり得ないことではないかと、こう思うのであります。その点において私は今日でも協議によって拒否権があり、また協議が整わない場合には、これは実行されないことだというふうに確信を持っておる次第でございます。
  27. 森元治郎

    森元治郎君 なるほど大臣の御答弁も、その気持はわかりますが、この事前協議をしなければならぬ事態というのは、緊迫した事態であって、あるいはすでに火花が散っているかもしれない。アメリカとしても、やはり日本とは共同すると言っても、アメリカを守りたいのでありまして、この際は、どんなことかあっても海外に出なければならぬ。日本の了解を取りつけ得ない、日本がノーと言っても出なければならぬという事態が想像されるのです。そういう場合のことを想像しない限り、事前協議という事項が対象とする事態というのはないので、そういうふうに、たとい日本がノーと言っても、アメリカとしてはこの際やらなければならぬというときに、日本がノーだからノーだと言っているのか、あるいはアメリカが実際行動に移ってしまったときに、いかなる態度をおとりになるおつもりか、その点をお答え願います。
  28. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま森委員の御指摘になりましたように、事前協議をやる場合に、非常に緊迫しているんだという状態のもとに協議が行われる。むろん緊迫している状態のもとにある程度行われるとは思いますが、しかし、今回は安保条約全体の運営にわたって協議がされていくわけでありまして、従って、瞬間的な緊迫な状態が起ろうという前提のもとにおいても、各種の意味において、先ほどお話のありましたように、情勢判断等についても協議がこれによって行われて参ると思います。従って、それらの問題に当りまして、何か事前に協議するひまがないというようなこと、あるいは瞬間的な何か判断をしなければならぬという機会は、私はないとは申し上げかねますけれども、しかし、むろんその事前にそういう情勢に至る過程において、両国がどうすればいいか、また日本立場としてそういう際にそういうことをしてもらっては困ると言うならば、アメリカは他の方法を考えるということも当然あり得るのではないかと思います。また、ある時間的余裕も私は政治論的にいえばあると存じます。それでありますから、日本主張いたしますノーという言葉が全部受け入れられないのだというようなふうには考えておりません。
  29. 森元治郎

    森元治郎君 大臣の委員会におけるただいまの御答弁を伺っても、どうしても納得がいかないので、結局これはアメリカ側に言わせれば、お前の方で国内的にむずかしいなら事前協議ということで相相談することにしてやろう、政府の方もどうも都合が悪いから、事前協議ですべて円満にいくのだというような説明でごまかしているようなんですが、これは実際問題として実効は全然なくて、自然のままに事態に引きずられていってしまうことを御警告申し上げて次の問題にいきますが、この一九五四年十二月二日にアメリカと中華民国との間に相互防衛条約が結ばれまして、その追加の文というのが同じ月の十二月十日ダレス長官とヨー外務大臣との間に締結されております。その中にこういうところがあるのですが、これと事前協議にわれわれが注文をつけておる問題との関連を伺いますが、本「条約に基く両国義務及びいずれか一方の締約国によるこれらの、区域のいずれかでなされる武力の行使が他方の締約国に対し影響を与えるという事実にかんがみて、明らかに固有の自衛権の行使である緊急的性格を持った行動の場合を除き、前記の武力の行使を合意事項とすることが合意される。」ということが、この条約の追加として出ておりますが、この点はわれわれの心配することを意味しているものだと思うのですけれども、外務当局はどういうふうに御説明されますか。
  30. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん協議でありますから、先ほど来申し上げておりますように、全般的な問題について協議をしていくわけでありますが、緊急事態のときには何か自衛的な措置をとるということは、むろんこれは国連憲章の範囲内でやること当然でありまして、しかも国連がそれを安保理事会なり総会で承認しない限りは、その限度においてその措置は否定されることになるわけでありまして、そういう意味において、私どもは今の協議事項そのものが、あるいはノーといいますか、緊急事態に非常に乱用されるという森委員の御心配はそういうところにあるかと思いまするが、そういうことはないと考えております。
  31. 森元治郎

    森元治郎君 この条約についての解釈を一つ伺いたいのですが……。
  32. 高橋通敏

    説明員(高橋通敏君) このアメリカと中華民国の条約の点でございますが、私はこの条約を読みまして了解いたします範囲におきましては、アメリカと中華民国との条約の第六条には、この条約の適用される地域としまして、中華民国におきましては台湾と澎湖島だけに限られているわけでございます。従いまして、中華民国側としては、実は自分の方はこれだけではなくて、将来支配に入るべき地域も考えるべきであるということが、おそらく中華民国側の強い主張ではなかったかと考えられます。そこで、そういう事情で、実は条約の本文では、台湾と澎湖島を限りましたが、それ以外の地域にわたる場合にも、相当相互の防衛的な関係をつけようではないかという主張があったのではないか。そのような場合に、台湾と澎湖島以外の場合に武力を行使するというようなときは、それはそのつど情勢を判断しまして、そこで合意事項として武力が行使されるのだ、こういうふうなことを念のために注意的規定として書いたので、あくまで条約の本体は、台湾と膨湖島に限られる、こういう意味だと思います。
  33. 森元治郎

    森元治郎君 条約期限の問題に入りますが、大臣は、諸般の事情を考慮して十カ年が適当と思う。また、日本の方で安全を保障し得るまでには十年くらいかかるだろうという想定のもとに十年という期限を一応考えた、こういうようなことが大臣の国会における答弁であったと思いますが、この意味は、十年もすれば軍隊を持つのかどうか、軍隊となるのだということになるのか、あるいは自分一人で自分を守れるまでに成長していくのには十年もあればたくさんなんだというふうにお考えになっているのかどうか、それから条約の終了を予告し得る条件というものは、一体どういうふうにお考えになっておるのかを伺いたい。
  34. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この条約期限を何年にするかということについては、いろいろの御議論があったことは、沖縄、小笠原を入れるか入れないかと同じように、いろいろな御議論があって、われわれもそれをずっと拝聴してきたわけであります。そこで、私どもとしていわゆるNATO条約のように長いものは必ずしも適当だとは考えておりません。そうかといいまして、この種の条約を作ります場合に、あまり短期であることも、必ずしも適当ではないと考えます。むろん国際情勢なり、あるいは軍事情勢なりが、今日相当に科学兵器の進歩発達等によっていろいろ変化しておりますことはむろんでありますけれども、しかし、今日国連においても、核実験の問題すら、すでに二年を経てなかなか進んでおりませんし、また一方では軍縮会議というものも、必ずしも円滑に進捗していないことは、皆様方御承知いただいておる通りだと思います。それでありますから、あまり短期であることも必ずしも適当でないと思います。そういう意味からいいましてやはり十年くらいが適当であろうとわれわれも考えております。また、ただいまお話のありましたように、われわれは前提としていつでも申し上げておりますように、今日自分の力だけで自分を守るということが、自衛のためでも非常に困難である、従って、自由主義社会の世界におきましても、あるいは共産主義の世界においても、集団的な安全態勢というものがとられておるわけでありまして、従って、世界的軍縮というものが全般的に非常に大幅に行われません限りは、自分一国でなかなか自衛力を全うしていくというわけにはいかぬと思います。従って、私自身日本の自衛力が増したら、もうこれでこういうものが完全に要らないのだというような段階がすぐこようとも考えておりません。ただしかし、若干ずつは日本の自衛力も増加されて、財政経済とにらみ合せ、あるいは国民生活の向上ともにらみ合せ進んで参ることはむろんだと思います。従って、そういう根本的な問題を別にいたして、そういうことを検討することもあり得るとは思います。そういうことでありますので、私どもは諸般の情勢から見ましてやはり十年くらいが適当であろう。そうしてお話のように十年がきましたならば、どちらか一方の当事国がこれを廃棄したいという通告を出しますと、一年の予告期間をもって廃棄できるということが、最後の御質問であります廃棄手続の問題になろうかと思います。
  35. 森元治郎

    森元治郎君 初めに五年とか三年とかという案もあったように聞いておりますが、それがほんとうかどうか。それから十年たったときには一応終了させるつもりか、現在の心がまえはどういうふうであるか。ただ単に十年くらいが適当だと思ってふわっとやったのか——条約期限をきめるときというのは、おのおの腹づもりがあってきめるので、ふわっときめることはないのです。相当両国あるいは関係国が議論をし合って期限というものをきめるので、ふわっときめたなんというのはまずないので、その心組みを伺いたいと思います。
  36. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろんわれわれは国連の安全機構に期待を将来かけて参らなければならぬと思いますし、また、それに日本努力して参らなければならぬのであります。従って、国連がこの世界の平和的な処置に対する力を持って参ったと両国が認めれば、むろんこういう条約は解消して国連に一任されることは当然だと思います。これは国連加盟国として当然それは考えて参らなければならぬと思います。従ってお話のように、国連において軍縮が達成し、あるいは世界の平和維持の機構が完備してくるというようなことがあれば、両者合意の上でそれに対応してこれらのものを解消していかなければならぬことは、国連加盟国の一国としては当然考えて参らなければならぬと思います。がしかし、そういう情勢がくるかこないかということは、今にわかに先ほど申し上げておりますようにわれわれ判断できませんし、が同時に、少くもできるだけ早くそういう時期がくることをわれわれ努力していかなければならぬことは、メンバーの一員としての当然の責務だと思います。むろん今申し上げた立場において、私どもは条約期限をどうするかという問題を考えて参るわけでありまして、むろん今日、十年後の国際情勢というものを断定的に見きわめますことは非常に私は冒険だと思います。従って、今十年後には世界の情勢が一変するのだとか、しないのだということを、私は申し上げることはこれは当然避けていかなければなりません。がしかしながら、少くもそのくらいな期間をやはり現在の現実の政治家として今の国際情勢をながめて参りますれば、当然考えていかなければならぬのでありまして、またそうでなければ、両者合意の上、あるいは国連憲章の平和維持達成の目的がさらに機構的にもあるいは維持力の上においても達成すれば、当然解消されるべきものと思います。でありますから、そういうこともにらみ合せてみますと、決して十年ということ自体が、ばく然としたという意味ではないということは申し上げられます。ただそういうものの基礎になっておりますのが、多く政治情勢の判断なりその他になって参りますので、若干透視的な見方によってこれをきめていかなきゃならぬという点が、ばく然という御印象を受けられるゆえんじゃないかと、こう思うわけです。
  37. 森元治郎

    森元治郎君 ばく然と透視的にというのはどういう意味ですか。
  38. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 上の方からふわっと、全体の国際情勢を考えていかなきゃならぬ……。
  39. 森元治郎

    森元治郎君 透かして見るのですか……。  それからこの条約期限に関連して、本条約は十年、そうすると行政協定は一体何年になるのですか。
  40. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 行政協定は本条約があります限りにおいては、あり得ると思います。しかし行政協定内容等につきましては、従来の例から見ましても、随時そのときの情勢に応じて内容を変えていくことは、両者合意の上ならできることでありまして、そういう意味において、本条約がありますれば、行政協定がなければならぬということに考えております。
  41. 森元治郎

    森元治郎君 なければならぬけれども、これは行政協定は無期限で、一年の予告で廃棄するとでもいうのか、一体期限もやはりつけなければおかしいので、当然つくと思いますが、短いですか。
  42. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 行政協定につきましても、本条約とほとんど一体の、実際的問題を処置する協定でありますから、本条約と同じことであるということを申し上げて差しつかえないと思います。
  43. 森元治郎

    森元治郎君 北大西洋条約は三十年で、そうして北大西洋条約当事国間の軍隊の地位に関する協定というものは四年であったと思う、こういうこの関連から見て、一体、必ずそれは大臣が今おっしゃったように、ときどき直さなければならぬということであるならば、期間が若干短かくなるのが普通だと思うのですが、その点。
  44. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むしろこれは期間が短かくなるとか長くなるとかいうことは、やはり随時協議をして、行政協定のことでありますから、そのときどきの実情によって、変ってくるものにつきましては、随時協議していかなければならぬと思います。そうして変えられるものは話し合いで変えていくということが必要でありまして、必ずしも一ぺんきめたものが、期限まで一つもいじらないのだということよりも、その方が適当ではないか、今日までも現行の行政協定でも、刑事裁判権の問題等については、途中でいじっておりますので、そういう意味において考えて差しつかえないと、こう思っております。
  45. 森元治郎

    森元治郎君 大臣は、この現行の安保条約は、平等でなく不平等であるというので、これを国民気持の最大公約数を取り上げて、平等のものにしていきたいのだというのが、一番の骨子であるように思います。が、政府が今まで発表あるいは国民にいろいろな機会に示したところによると、どうもそうではない。その一番はっきりしているのは、概括的なこれは問題ですが、現行安保条約は、行政協定において日米の協力がうたわれているのに、本条約では日本防衛義務はうたってない。アメリカ日本防衛はうたってない。今度の政府の案によれば、本条約では日本防衛ということを一緒にやるということをうたっておりながら、行政協定にいきますと、日本は軍隊を持っていない、戦争もできない国であるという大へんおとなしくなりまして、駐留軍は外国の軍隊であるから、外国の軍隊はその駐留国において特権的な地位を持つことは、これは国際的な慣例であるから、そう諸君が平等々々と言っても、必ずしも平等にはいかないのだと言って、逃げている。現行条約は、本条約義務はうたわないで、今度は義務はうたった。かわりに行政協定にいきますと、平等なんということはどこへいっちゃったかわからない。で、それは仕方がないのだ、小国なんだからということで、いかにもそのときは憲法を尊重するような口ぶりで、そうして外国に特権的なことを認めているということは、はなはだ私は解しかねるのですが、大臣はどういうおつもりでありますか。
  46. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 本条約によりまして、アメリカ日本防衛義務を持って、そうしてここに、隊を駐留させるという事態が起って参りました場合に、われわれとして日本防衛義務を持ってくれるアメリカ軍に対して、できるだけその防衛の任務を達成してくれるに適当な待遇を与えていくことは、これは決して従属的でもなければ、あるいは不平等でもないと考えております。むろん今日までの行政協定あるいは安保条約そのものの成り立ちからいいまして、占領軍当時の引き継ぎのような形においてあった点はたくさんございます。従って、そういうものは直して参らなければなりませんけれども、ある程度日本防衛のためにおります外国軍隊に対して、防衛をやってくれるのだから、そのやりいいように一ついてもらう待遇をするということは、これは私は決して不平等でもなければ従属的でもない。日本が自主的にそういうことを認めて、アメリカ軍に対して日本のできる限りの待遇を与えるということは適当だと思います。しかし全体を通じて、それではどういう状態でもいいのかといえば、それはやはり日本国民生活と関連して参りますから、その日本国民生活を無視してまで待遇をするというわけに参らないことはむろん当然でありまして、そういう点については、われわれも十分考慮して参ることが、今申し上げたような意味において、不平等にならぬ点だと思います。ただ、若干今お話のありましたように、日本の自衛隊というものは、各国の軍隊と違った性格を持っております。従って、それに伴います若干の日本の国情の相違というものは、これは当然われわれも考慮に入れながら安保条約を結んで参らなければならぬことは当然でございます。
  47. 森元治郎

    森元治郎君 あと二点だけにとどめます。アメリカが第三国と事をかまえた場合、すなわち日米安保条約の区域ではない所においてアメリカが第三国と事をかまえたときの日本立場というものは、一体どういう立場をとるのか、その点を伺います。
  48. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 第三国でアメリカが事をかまえました場合に、当然日本としては日本に直接侵略がこない、あるいは直接日本の平和が侵されない問題について日本が介入し、あるいはそれに巻き込まれるということは、避けて参らなければならぬことは当然のことだと思います。従って今度の場合におきましても、日本の基地から作戦行動等に他の紛争に飛んで参りますというような場合には、事前の協議をしてもらわなければならぬということを規定して、そうして当然われわれとしてはそういう規定によりまして協議をしていくということにいたして参らなければならぬと思います。
  49. 森元治郎

    森元治郎君 穏やかな事のかまえ方ならばそれで済むのですが、どんどん火花が散ってここの辺は——極東は割に穏やかであるという場合には、依然として介入はしないのですね。
  50. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 非常に激しい火花が散っておるが極東は静穏だとう……。
  51. 森元治郎

    森元治郎君 日本条約区域が平穏である場合。
  52. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん今度の条約を作ります目的というのは、私は、日本が他国から侵略をされ、あるいは日本の安全が害されるという状況下において条約がまず発動するということが、本条約改定一つ目的だと思います。従って非常に周囲が平穏だと、今お話のようなヨーロッパであるとか、あるいはヨーロッパとまで遠く言わないにしましても、お話のように極東の事態が静穏だというようなときに、それに巻き込まれるというようなこと、また日本の憲法上がらいいましても、進んでそういうことに日本が介入していくということはあり得ないと考えます。また、国民も当然そう考えるだろうと思います。
  53. 森元治郎

    森元治郎君 そういう場合には、日本立場は中立ということになるのか、中立という言葉で表現され得るかどうか。中立というのは、まあ戦時状態にあって、戦争に参加しない第一国の取得する地位だと思うのです、国際法でいう中立はね。そのときは日本は中立という立場になるのか、何という立場になりますか。
  54. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 中立という立場と申しますか、私どもは自由主義陣営の一口として当然今日いわゆる中立政策というものには、必ずしも外交政策の上で同調はいたしておりません。そういう立場からいえば、お話のような意味における中立という意味では、むろんないかもしれませんけれども、戦争に直接介入するということは当然起って参りませんし、また、日本憲法もそれを当然許してはおらぬのでありまして、日本が侵されたときに初めてこの状況下が——、本条約の発効の状況下が起ってくるということであります、それは。
  55. 森元治郎

    森元治郎君 しからば、極端な話を伺いますが、あちらこちらで火花が散って、また戦争という言葉は避けますが、日本は、幸いこの地域はどこからも外部からの武力攻撃もない。わが盟邦が、自民党内閣の盟邦であるアメリカがだんだんくたびれちゃって、ひっくり返っちゃっても、それは動かないことは当然でありますね。
  56. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 少くも安保条約に関する限り、また日本の憲法に関する限りは、アメリカの本土が攻撃されると、そこまで応援にいくということは絶対にあり得ないことであります。
  57. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと関連して。  今の森委員の質問に対する外務大臣の答弁に関連してですが、この日本の区域以外の所で紛争が起った場合、その場合に中立の立場をとるかとらないかというときに、外務大臣は、自由陣営に属する日本としては、森君の言うことと同じ意味ではないが、しかし戦争に関連しては介入することはない、こういう御答弁であります。それはそれでいいと思うのです。だが、われわれの言う、今まで中立と言っていることは、岸内閣や、あるいは外務大臣や自民党がアメリカ考え方とときに同じであっても、そんなことに私は反対するものではない。人それぞれおのおのの考え方を持っているのは、これは御自由です。共産党の諸君がソ連を好きなのも、それも自由。われわれもまた特殊な考え方を持っている。そんなことを制約するものは何もないのです。問題は事が起ったときに、軍事的にどういう立場をとるか、これをわれわれ社会党員はいつも言っているのです。だから、今、外務大臣が言われたように、一朝有事の場合には軍事的には中立の立場をとるというなら、それでいいのです。それ以上のことを私たちは望まないのです。だが、それならば条約のすべての面に対してそれを貫き通せばいい。条約のこういう問題が起ったときにそういうことを貫き得るならば、もう本質的に条約の最初からそういう考え方を貫いたらどうです。そのアイデアがどうであろうとか、どっちの陣営の考え方の方が好きだとか、そんなことは私たちはかれこれ言わない。それは御自由です。軍事的中立をわれわれは言う。
  58. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) お話のように、日本の憲法が自衛の立場以上には認めておりませんから、積極的に戦争に介入するということはあり得ないことですし、今度の条約交渉に当りましても、憲法の制限以内ということは厳に守っておりますので、会お話のようなことは、私は起り得ないというふうに考えております。
  59. 森元治郎

    森元治郎君 私は、こういう質問をしたのは、もう何でもかんでもわれわれ自民党政府は中立主義はとらないのだと言っているか、やはりこういう中立という場合もあり得るのです。で、その点を私は伺ったわけです。中立という場合も当然あり得る。さように考えるのですが、大臣はどうですか。
  60. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 軍事的には日本を直接侵略される危険がない限り、現在において安保条約の協議事項でもノーということになっております。また、憲法の範囲内ということ自体は、軍事的介入を進んでするわけではないのでありますから、そのこと自体を中立というかどうかは、私も国際法上の中立というのかどうか、正確にはわかりませんけれども、森委員のお説の通りのことだと思います。
  61. 森元治郎

    森元治郎君 中立というのは、小理屈こねる専門家もたくさんおられるようだが、中立というのは、おれは戦争のないときにどっちにも加わらないというのがほんとうの意味の中立ではなくて、中立という場合は、戦争が起って、それにどっちにも加わらない場合の第三国の立場をいうのですから、私は、やはり自民党内閣でも中立はあるのだ、中立をとることはあるのだということを言わしたかったのです。(笑声)  小さいことを伺いますが、安保条約の第二条、第三国の駐兵の禁止と、うことは削除ということになるように伺っているのですが、そうした場合に、国連の決定による行動の必要上、日本に対してそれが要求された場合、日本はこれに応じなければならないということは、憲章の五条第三項ですか、にあったと思うのですが、その通りですか。
  62. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この項の削除は、そういう場合にアメリカの許諾を必要とすることになっている。それが削除される。御指摘のところはそうだと思うのですが……。
  63. 森元治郎

    森元治郎君 アメリカの許諾を必要とするということだけを取るのですか。
  64. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろんそういう項が削除されることになりますから、アメリカの許諾を受けないでも国連軍等が、もし日本が国連の精神に従って、国連軍が何か行動するという場合には、新しくアメリカの許諾を得なくて、国連当局と相談することで決定していく、こういうことです。
  65. 森元治郎

    森元治郎君 これは削除ではなくて、そこを書きかえるわけですか、その趣旨を。
  66. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) つまり現在の規定では、アメリカ以外の軍隊、それは単独の軍隊でありますか、あるいは国連の軍隊で、警備隊でありますかは別としてそういうものが日本に基地もしくは駐留するという場合には、まずもってアメリカの許諾を得なければできない。しかし、今度では、そういう条項がなくなりますので、従って、その単独の国もしくは国連と、そのときに話し合えば、それだけで、アメリカの許諾を得なくても済むということになるということでございます。
  67. 森元治郎

    森元治郎君 そうすると、削除ではなく書きかえということになりますか、そういう趣旨で。
  68. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 書きか、えということでなくて削除だと思いますが……。
  69. 森元治郎

    森元治郎君 終ります。
  70. 羽生三七

    ○羽生三七君 先ほどの森委員の質問の中の事前協議の問題ですが、事前協議をする場合のこちら側の協議者はどういう構成になるのでしょうか。これは私、問題の発展によっては相当大きなウエートを占めることだと思うのですが、何らかのお考えがあるだろうと思いますので、承わりたい。
  71. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今日まで条約もしくは行政協定そのものの大体折衝をやっておりましたので、まだ最終的に協議機関の問題には触れて参っておりません。がしかし、両者の協議の過程におきまして、当然協議事項を置いて参りますから、協議機関を置かなればならぬ。どういう種類の協議機関を置かなければならぬかということは、それぞれ考えて参っております。まだその条約あるいは行政協定の方がきまっておりませんから、その問題についての直接の話し合いは、実はいたしておりません。これからの段階でいたすことになると思います。ただ、今日の協議に当りましては、お話のように広範な情勢の判断に対する協議もございますし、あるいは日本が侵略されましたときに、協議をして行動するための協議を必要とする、これは日本の自衛隊とアメリカの軍隊とが単一司令官のもとには構成されません。従って、やはり協議機関が必要だと思います。そういう意味において、いろいろな協議機関がございますので、それらの問題につきましては、今後どういう種類の協議機関をどういう段階に設けていくかということは、具体的な問題になってくると思います。がしかし、全般的な協議機関として現在御承知のように岸・アイク声明に基きまして、一応日米安保委員会というものができております。が、当然これは任務を終了したので、一応解消することにはなろうと思いますけれども、あの種類の協議機関というものが——その構成のメンバーは若干訂正するかどうかは知りませんが、少くとも基本的には、現在の構成メンバーにプラスするかプラスしないかは別といたしまして、あの種類のものが一つ入り用であろうということは、私どもも考えております。そのほかに、むろん自衛隊とアメリカ軍隊との間に協議機関とか、そういうものが要ると思います。そこで、現在の日米安保委員会の構成、あれをどういうふうに増加するか、減らすというわけにはちょっと性質上いきませんけれども、ふやすとなる場合、あるいはその性格を若干変えていく、もう少し広範なものにするという意味においては、メンバーについても考慮しなければならぬ、そこまでは考えておりませんが、そういう種類のものを持っていくと考えております。
  72. 羽生三七

    ○羽生三七君 この前、ずっと前でしたが、予算委員会で、私、岸総理とそれから藤山外務大臣にお尋ねしたときに、そういう重要な事前協議の場合に、結果によっては国会承認を求めんならぬ事態になるかもしれぬというようなお話がありましたが、それほどに重要な問題が、もし協議されるような場合においては、アメリカの軍とか日本の自衛隊関係という純粋な軍事面の方が協議をするのは、私は適当でないと思う。むしろ政治的に配慮すべき最高の私は懸案だろうと思う。だから、そういう場合における構成メンバーというのは、非常に私は重要だと思うので、この点については私どもは安保解消論者ですから、立ち入ったことをいうわけではないが、政府立場に立ってお考えになっても、私はこれは非常に大きな問題だろうと思います。これは御注文申しあげておきます。
  73. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 羽生委員の言われますように、私も最高の協議機関というのは、相当重要だと思います。そうして単にこれは軍の意向だけでなしに、やはり政治的判断のもとに、一番最高の機関として判断をしていかなければならぬわけですから、その構成等につきましては、相当慎重に考えていかなければならぬと思います。
  74. 羽生三七

    ○羽生三七君 今もちょっと申し上げましたように、この本来安保改定に反対をしておる私たちが立ち入った論議をするのは少々おかしいのですが、しかし、政府、自民党の立場に立っても、どうしてもおかしいと思うごく一、二の点を申し上げてみたいと思うのですが、それは、かりに社会党の立場でいえば、外国から理由のない攻撃、侵略があれば、社会党も私国連に救援を求めるだろうと思う。国連の救援が間に合わなければ、他の適当な国に救援を依頼することがないとはいえない。そこいらは、私は大して自民党、社会党変らないと思う。ただ、私どもはそんなことは起らないと、本来、理由なき他国からの攻撃、侵略が予測し得る将来にあるとは思いませんが、かりに、万一あるとすれば、その立場は、そう大して自民党と異なることはなかろうと思う。問題はそうではなしに、日本にかかわりのない他国の戦闘に、なぜ日本がかかわり合いをするような条約内容を持たなければならないか。それは先ほど森委員が触れられたことにも関連をいたします。だから、日本に対する直接攻撃の場合に、アメリカに守ってもらうというなら、これはある程度話はわかります。国民も納得するでしょう、判断は別として。そうなれば、どうして、不断に、常時日本に米軍が駐留しなければならないか。これは有事の場合だけに、政府自民党の立場からいっても、限定されたらどうですか。沖縄あるいはハワイ、あるいはグアムの線、これはもう今のスピードからいって、近代兵器の現状からいって、決して不可能ではない。むしろ日本アメリカ軍が駐屯することによって、問題が起る。しかも日本の安全の度合いよりも、安全をそこなわれる度合いの方がはるかに多い。これはもう万人の常識であります。ですから私たちは、今政府の言うように、他国から侵略があった場合に、日本を守ってもらうのに何が悪いか、そんないろはみたいな議論は、社会党だって当然だと思っています。そうではないんです、問題の所在は。だから、それをチェックする方法を考えなければならない。  それから、もう一つは、この前も私何回も総理にお尋ねしたときに、事前協議の場合に、たとえば、イエスと答えるようなケースがあるか、ほんどない、ノーと答える、いかなる場合においてもか、いかなる場合においてもノーと答、える。これは速記録にみな載っています。だからときにはイエスと答え、ときにはノーと答えるならば、いい悪いは別として、条約の体裁上協議事項は確かに残ります。しかし、いかなる場合にもノーと答えるなら、そんな協議事項ならはずした方がいい。極東の平和と安全に関する一項ですね、これははずしたらいい。それから今の常時駐屯ということは、全然意味がない。だから、もし日本の安全ということを至上命題とするならば、そこからものを根本的に考え直さないと、単なる平板な防衛論議ということで、どろぼうの戸締り論議でこの問題を扱っても、もう本質的に問題が異なっておる。そこに私は問題の所在があると思うのですが、いかがですか。
  75. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) お説のように、社会党の皆さん方も、日本に侵略の事態が起ったときには、当然他国から助けてもらう、その通りだと思います。われわれもそのつもりでやっておるわけです。ただ、現在の国際情勢の認識において、若干私どもまだ社会党の方と違うから、第二段の議論が分れてくるのだと思います。われわれの立場、特に実際政治の局に当って、そうして責任をもって日本の安全というものを考えて参ります場合に、現在の国際情勢または軍事情勢からいいまして、むろん世界の国民が平和を念願し、局地的な紛争もできるだけ起さないように避けていくという念願を持っていることは当然でありますけれども、しかし、そうしているにもかかわりませず、やはり局地的な紛争も現に起りつつあることは御承知の通りなんでありまして、従って、そうしたことで、やはり何か日本防衛力が空白を感ずるというようなときには、その空白にのしかかって、何かの戦争誘発の条件にならぬとは、これは言い切れないと思います。そういうことにおいて、つまり今回の条約そのものが、直接日本防衛のための戦闘をする場合でなく、日本に侵略を防止する防止能力があるということも言えるのではないかと思うのであります。で、その意味において、社会党と若干意見が違ってくると思うのです。そういう安保条約のような防止能力は要らないのだという御判断と、われわれは、安保条約というものが——事実こういう条約が発効されることそのことは好ましいことでないのでありますから、むろんこういう条約を作りましても、発効されないように努力して外交をやっていくのは当然のことだと思いますが、しかしながら、やはり若干の防止的能力というものは、こういうものによってあり得る、これは共産圏の場合においてもおそらく私はそうだと思うので、中ソ友好同盟条約の軍事条項というのも、やはりこれは一つの防止能力というふうに見ても差しつかえないのではないかと思うのでありまして、やはりこれらの条約を作りますときには、何か問題がそこにすぐ発生してくるのだからというその発生に現実的に対処する場合でなく、その意味の中には、若干の平和を維持するための防止能力というものが加わっているということは、これは当然なことだと思うのです。で、その防止能力が必要であるかどうか、また、それ自体が防止能力になるか、アメリカとの関係においてなるかどうかという、点になりますと、社会党の方と若干意見が食い違うと申しますか、あるいは並行的になるというか、そういうことになるのじゃないかと私は思います。
  76. 羽生三七

    ○羽生三七君 もう時間がないようですから簡単にいたしますが、その防止能力になるかならぬかは、それは判断の違いですが、かりになるとしても、外相の今言われるように、皆さんのお立場からいってなる場合があるとしても、しかも他との比較でですね、先ほど私が前段申し述べた問題との比較においても、なおかつ私は危険のウエートの方が多い、それを言うのです。  もう一つは、日本に加えられる直接攻撃は別として、日本の基地を使用して他国の紛争にアメリカが加わる場合、これはどうして条約上チェックできないのですか。そこに問題があるわけですね。だから、それを事前協議でなしに、条約そのものからこれをはずすべく工夫されたらどうですか。
  77. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) われわれとしては当然事前協議によって、日本はそれに対するはっきりした、意見も申しますし、先ほどお話のありましたように、総理は、そういう場合にノーと言うということを言われておるのでありまして、私どもとしては、当然協議事項でそういうことが規定されて参りますれば差しつかえないことだと考えております。
  78. 羽生三七

    ○羽生三七君 それは根本的な見解の違いになるから、私はこれ以上は申し上げませんが、問題の所在はそこにあるだろうと思います。  それからもう一つは、先ほど森委員から質問されたが、条約期限の問題ですね。これほど世界が激しい変化をしておるのに、日本の方から十年に合意するなんということは、私はとんでもない違いだと思う。おそらく外相の頭の中にも、もっと短かい期間を考えられたであろうと思うし、それから政府部内にも、条約専門家の間にも、それからいろんな外部の外交関係の評論家たちも、一年とか三年とかということを考えられておると思うのです。それだから、もし必要があるならば、更新して継続したらいいでしょう。どうして最初から、こんな長い期限をお考えになるか、アメリカの要求で外相が押されておるとするなら、これは別ですが、もし何も向うから強い要求がなかったら、必要があれば、当然更新すればいいのだから、これは断じてそんな長い期間は私はいかないと思う。
  79. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 期間の問題につきましては、いろいろ御意見がございます、先ほどから申しているように……。NATOみたいに二十年なり三十年なり長くした方が適当じゃないかというような御意見もありますし、羽生委員の言われたように二年なり三年なりという意見も、いろいろございます。われわれとしては、先ほど来申し上げておりますような見地に立ちまして、まず十年くらいが適当ではないかというふうに考えております。
  80. 羽生三七

    ○羽生三七君 これで終りますが、もう一つ。どうですか、外務大臣、先ほど森君も言われましたが、相当、政府、与党の中でもいろいろな意見があるようだし、それからもうだんだん変ってきて、最初外務大臣は五、六月ごろなんて言われておったのが、この調子でいくというと、通常国会、それも予算が通ったあとなんということになりかねない、その間あたためておるかどうか、それは知りませんが、どこにもこれを徹底的に改定しなければならないという意欲というか、一般的情勢はほとんど存在しておらぬと私は見受けます。だから無理をしてこんなことを強行されぬように、ここらで一つお考え直しになったらいかがですか。(笑声)
  81. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 決して私は無理をして強行いたしておるわけではないのでありまして、アメリカ側との話も円滑に進められておると存じております。これはむろんこれだけの条約改定することでありますから、お話のように、いろいろな御意見があることは当然でありまして、条約地域の問題についても過去半年、ほぼ一年に近く論議してきております。ただ、私はやはり現行の安保条約というものが、非常に占領当時の延長で作られた形になっておりますし、日本が自主的な意見を申し述べる状況にもなっておりませんし、それらのものが、やはりそういう意味において改定されることは望ましいことであり、私自身がたびたび申しておることでありますけれども、外務大臣に就任以来、衆参両院の外務委員会においても、なぜ核兵器の問題については文書で取りつけないのだと、いろいろな御意見もあったわけで、そのこと自体、私はやはり国民の声だと思っておりまして、私自身が何か功を争うとか、あるいは急いでやりかけたからやっているというよりは、私はやはり国民の声ではないかと思います。ただ、それらのものを具体的にしていく前に、もっと強力に条約に規定したらどうだ、あるいはもっと弱く規定すべきだという、そういう幅についていろいろ御意見があると思います。協議事項だから手ぬるい、拒否事項にしろ、あるいは協議事項にするほどの必要はない。中には、日本にそういう兵器も要るのだという御議論もございます。しかし、全体として、やはり日本が自主的な何かの形においてアメリカと協議をし、占領当時からの延長を少くも現在の安保条約からできるだけ払拭しておく、百パーセントそれはできないにしても、払拭しておくということ自体については、私は、これは国民の皆さんの考えておることではないかと、こう思っておりますので、私自身、今これをやめるという考え方は持っておりません。
  82. 羽生三七

    ○羽生三七君 手段方法は、国民願望の手段方法は、おのずから他に道があるだろうと私は思っておりますが、質問はこれで終ります。
  83. 森元治郎

    森元治郎君 今、羽生委員の御質問に対する大臣の答弁の中で、非常に大事な発言一つあったと思うのですが、それは従来中ソ同盟というものは日本を敵としたものだ、けしからぬじゃないかというのが自民党及びその政府一つの大きな論拠であったようです。だからわれわれの方でもこれに対応しなければならぬのだ、ただいまの御答弁の中には、中ソ同盟は平和能力を維持するために戦争防止能力をここに加えているのだという大へん理解のある発言があったのですが、これは特に銘記されて、そうやきもきしないで、やはり中ソとも仲よくしていくということに、この主張を伸ばすというお考えはないかどうか、もう一ぺん伺いたい、いかがでしょう。
  84. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今日まで外交をとってきておりまして、特にソ連、中共を敵視しているつもりは、われわれ毛頭ないのでありまして、ソ連については特に問題がないと思いますが、中共が、岸内閣が何か中共を敵視しているという判断が相当多いわけでありますけれども、総理がたびたび言われておりますように、総理自身も特に中共を国際外交の上で敵視しているということはないと思っております。むろん—ソ同盟条約につきましても、そういう同盟条約を作る上において、日本安保条約アメリカとやります場合において特に中共を敵視あるいはソ連を敵視して作っているわけでもないと同じ意味において、そういうことが言えるのだということを申し上げたわけであります。
  85. 森元治郎

    森元治郎君 質問ではないのですが、この前の六月の外務委員会で、政府の留保答弁があるのです。それは、茨城衆那珂湊飛行場アメリカ車の対地訓練区域の返還問題について、那珂湊の宮原市長が二十三年にジョンソン基地の司令官に会ったときに、三十五年になったらば返すだろうというようなことを言った。これに対して丸山調達庁長官は、私は聞いてない、そこでそれを聞いてくれと頼んだところが、向う側と接触して調べてみます、こういう御答弁があったので、どういうふうになったか、それを本委員会に返事してくれるように、措置を委員長からとっていただきたいと思います。
  86. 鹿島守之助

    委員長鹿島守之助君) 承知いたしました。  ほかに御質疑のおありの方はございませんか。  本日は、これにて散会いたします。    午後零時七分散会