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1959-09-11 第32回国会 衆議院 農林水産委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年九月十一日(金曜日)委員長指名 で次の通り小委員及び小委員長選任した。  農産物に関する調査小委員       秋山 利恭君    倉成  正君       高石幸三郎君    中馬 辰猪君       綱島 正興君    本名  武君       保岡 武久君    赤路 友藏君       實川 清之君    中村 時雄君       芳賀  貢君  農産物に関する調査小委員長 秋山 利恭君     ————————————— 昭和三十四年九月十一日(金曜日)     午前十一時八分開議  出席委員    委員長 吉川 久衛君    理事 田口長治郎君 理事 永田 亮一君    理事 丹羽 兵助君 理事 野原 正勝君    理事 本名  武君 理事 赤路 友藏君       秋山 利恭君    今井  耕君       金丸  信君    坂田 英一君       高石幸三郎君    田邉 國男君       中馬 辰猪君    松田 鐵藏君       三田村武夫君    保岡 武久君       足鹿  覺君    角屋堅次郎君       金丸 徳重君    神田 大作君       實川 清之君    田中織之進君       中澤 茂一君    中村 時雄君       芳賀  貢君    北條 秀一君       松浦 定義君  出席国務大臣         農 林 大 臣 福田 赳夫君  委員外出席者         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房審議室長) 大島 寛一君         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房審議官)  福山 芳次君         大蔵政務次官  奧村又十郎君         大蔵事務官         (主計官)   相澤 英之君         農林政務次官  大野 市郎君         農林事務官         (農林経済局農         政課長)    小林 誠一君         農林事務官         (農地局長)  伊東 正義君         農林事務官         (農地局愛知用         水公団監理官) 大山 一生君         農 林 技 官         (農地局建設部         長)      清野  保君         農林事務官         (振興局長)  増田  盛君         農 林 技 官         (振興局農産課         長)      江川  了君         農 林 技 官         (振興局普及部         長)      徳安健太郎君         食糧庁長官   須賀 賢二君         農林事務官         (食糧庁総務部         長)      岡崎 三郎君         農林事務官         (食糧庁総務部         総務課長)   大和田啓氣君         農林事務官         (食糧庁業務第         二部長)    村田 豐三君         農 林 技 官         (食糧庁業務第         二部油脂課長) 馬場 二葉君         農 林 技 官         (林野庁指導部         治山課長)   若江 則忠君         水産庁長官   西村健次郎君         農林事務官         (水産庁漁政部         漁業調整課長) 木戸 四夫君         農林事務官         (水産庁漁港部         長)      林  眞治君         海上保安庁次長 和田  勇君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 九月十一日  委員加藤常太郎君、三田村武夫君、栗林三郎君  及び中村時雄辞任につき、その補欠として田  邉國男君、八木徹雄君、田中織之進君及び金丸  徳重君が議長指名委員選任された。 同日  委員田邊國男君、金丸徳重君及び田中織之進君  委員辞任につき、その補欠として加藤常太郎君、  中村時雄君及び栗林三郎君が議長指名委員  に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員会設置に関する件  農林漁業災害に関する調査小委員長より報告聴  取の件  農林漁業災害に関する件(台風第七号等による  農林漁業災害問題)  農林水産業振興に関する件(紀淡海峡の火薬  投棄による漁業被害問題、愛知用水公団事業  問題及び食糧問題)      ————◇—————
  2. 吉川久衛

    吉川委員長 これより会議を開きます。  小委員会設置に関する件につきましてお諮りいたします。すなわち、農産価格等調査するため小委員十一名をもって農産物に関する調査小委員会設置いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 吉川久衛

    吉川委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  なお、小委員及び小委員長選任につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 吉川久衛

    吉川委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  なお、あらかじめお諮りいたしておきますが、小委員及び小委員長辞任補欠選任、小委員会において参考人より意見を聴取する場合の参考人の決定、小委員会において記録の提出を関係方面に求める場合等については委員長に御一任を願いたいと存じます。以上について御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
  5. 吉川久衛

    吉川委員長 御異議なしと認め、さように決定いたします。     —————————————
  6. 吉川久衛

    吉川委員長 農林漁業災害に関する件につきまして調査を進めます。  台風第七号等による農林漁業災害に関する質疑を続行いたします。  角屋堅次郎君。
  7. 角屋堅次郎

    角屋委員 昭和三十四年度の七月及び八月の暴風雨等による農林漁業災害問題につきましては、御承知のように、災害発生以来、本委員会といたしましても小委員会を特別に設置をいたしまして今日まで鋭意これが対策審議を続けて参りました。また、災害地にもそれぞれ調査班を派遣して現地の実態をつまびらかに調査し、委員会審議におきましても今日まで数回にわたりまして真剣な討論を重ねて参ったことは御承知通りでございます。いよいよ本日は、小委員会の中でいろいろ検討して参りました内容を取りまとめまして、本委員会で決議する段階にまで相なりましたので、この際集約的に二、三の重要問題について政府並びに関係各局等の御見解を承わりたいと思うわけでございます。  申し上げるまでもなく、本年度の災害は、私ども調査実態からいたしましても、あるいは農林省等報告をもっていたしましても、その規模昭和二十八年度の災害に匹敵するような、相当大規模な大災害である。こういうことにつきましては、今まで災害地陳情に参りました各県知事、あるいはきのう参りました知事会代表、県議会の代表、本日参りました市町村のそれぞれの代表等陳情をもってしても明らかな通りでございます。そこで、私は、今までの委員会でも、あるいは中澤委員その他からそれぞれ小委員会で検討された各項目についていろいろ質問がなされ、また同町に、私も若干の点について農林大臣建設大臣等にも質問をしたわけでございますが、この機会に、まず問題になりますのは、終戦後の日本災害状況をずっと検討して参りますと、数字でも明らかなように、年平均にして約二千四百億に上る大きな損害が出ておることでございます。従いまして、政府におきましても、今日までこういう災害に対する抜本的な対策といたしまして、特に昭和二十八年度の災害の場合に治山治水対策協議会というものを内閣に作られて、治山治水基本対策、こういうものを樹立され、自来、昭和三十一年度には経済五カ年計画に伴うところの治水事業五カ年計画、あるいはまた、三十三年におきましては、新長期経済計画に伴うところの新治水事業五カ年計画、こういうものを作られ、木平に入りましてからさらに治山治水対策関係閣僚懇談会ということで、抜本的に治山治水対策を検討しておることは、私ども承知しておるわけでございます。ただ、この機会に、新治山治水五カ年計画の中で、建設省三千五百億、農林省七百二十二億、農林省、運輸省の海岸保全事業として三百億、計四千五百二十二億というこの五カ年計画内容の問題について、最近の新聞紙上を見ますと、たとえば建設省治水関係の三千五百億という予算につきましても、大蔵省で非常に難渋をきわめておる、こういうことが報道されておるわけでございます。私どもは、やはり、新しい昭和三十五年度の予算編成過程の中でおそらく予算編成重要項目というものがいろいろ立てられると思いますけれども、抜本的に治山治水の積極的な推進をはかる、こういうことが一つの大きな柱にならなければならぬ時期に来ておると思いますし、農林省面で言いますれば、特に治山治水対策、こういうものについて本腰を入れる情勢になってきておると思うわけでございますが、この問題については過般建設大臣農林大臣等が出られたときにもいろいろお伺いした点でございます。昭和三十五年度の予算編成に当りまして、農林省としては、この方面に対する抜本的な対策樹立する、こういう方針で臨まれておるのであるかどうかということをまずお伺いしたいと思います。
  8. 大野市郎

    大野説明員 ただいま御質問のございました、なお、実情について所信を承わりましたが、戦後毎年の災害によりまして御指摘通り膨大な国損があったのでございますが、今回、農林省としては、三十五年度の要求予算で、復旧治山予防治山その他の項目にわたりまして予算要求をいたしたのでございます。そうして、治山治水閣僚懇談会が実は本日もただいま開かれておるのでございまして、前回の委員会においても農林建設大臣からお話があったことと存じますが、熱心に関係大臣懇談が続けられておるのでございまして、その意味におきましてでき得る限りの方策をとろうといたしておる次第でございます。
  9. 角屋堅次郎

    角屋委員 治山治水の総合的な対策樹立するに当りまして、これはこの前にも申し上げたわけでございますけれども、やはり、国土総合開発、あるいは治水面においても、今後の産業経済発展関連を持った利水問題、こういうものを含めて、いわゆる国土総合開発、あるいは治山治水、利水、それぞれの関係地域における産業発展、こういう全体的なことをにらんで、その一環としての治山治水、こういうものでないと私はいけないと思う。この問題を討議するに当っては、やはりそういう総合的な視野から内閣においても検討していただきたい。その中で農林省といたしまして積極的に働いていただきたい。また、総合的な計画一環として、まず、昭和三十五年度の予算編成に当っては、そういうものが一つの柱としてはっきり出てくる、こういうことについて最大限の努力をしていただきたい。こういうことをまず希望しておきます。このことは、小委員会のいろいろな論議の結果、決議案文の一項、治山及び治水に関する事項として、「特定の治山及び治水事業については新計画樹立して抜本的対策を講ずるため、特別会計設置してその早期完成をはかることとし、これがためすみやかに所要の法制的、予算的措置を講ずるものとする。」ということが出て参っておるわけでありまして、これは今日の災害情勢から見て当然の推移だろうと思います。この点は、大臣が後ほど参られましたならば、治山治水関係閣僚懇談会における問題等についてもお尋ねしたいと思いますけれども農林省として今後積極的に推進をしてもらいたい。私どものいろいろ判断するところでは、建設省治水、こういう面が表面に浮び上りまして、農林省治山というものはそのあとにくっついていく、こういう感じが印象として避けがたいのでございますけれども、やはり、山から川から海に至るまで一貫した問題でございますから、そういう点、各省のセクショナリズム、こういうことを離れて、総合的な対策樹立に万遺憾なきを期していただきたい、こういうことを特に要望申し上げておきたいと思います。  そこで、根本的な恒久対策樹立すると同時に、現実の問題として、日本の地勢、気象その他の関係上、年々台風というものはやはり不可避である。それが、非常に強い台風が累次にわたって来るか、あるいは軽度の台風で済むかということは別として最近の災害状況から見ましても、年々各県各地域において相当大きな災害を生じてきておるということから見ますと、災害というものは不可避な条件にある。この前も申し上げたのでございますけれども気象学者の専門的な意見によりますと、中程度台風でも水爆数個のエネルギーに匹敵するということが言われておるわけでございまするから、こういうふうに不可避であるという前提に立ちますと、災害に対する防災的な面、あるいは災害が起った場合の適切な処置、こういうものが当然必要になってくるわけでございます。そこで、やはり、災害に対する適切な措置一環として、たとえば災害の問題についての適時的確なる情勢把握という問題と関連をして、去年起った伊豆の極端な災害教訓の中からこういうことが出されて参っておるわけであります。すなわち、わが国の災害対策状況、特に伊豆災害教訓からいたしまして、台風の進路を測定するためのレーダー、電子計算機ロボット雨量計などの気象器具と、気象台、国、県、市町村を結ぶ無線電話整備は刻下の急務である。毎年繰り返される災害に対しての復旧費は全国で二千億にのぼるのであるから、その一割程度の額でこれらの設備を相当完備できる。  従って、伊豆災害状況等から見ても、有線電話が途絶をしてしまう、あるいは道路、橋梁がほとんど流失、佃没して、災害地とその他との連携が呼密にとれない、そのために被害をますます大きくしたということが教訓として得られ、科学的な災害対策樹立というものの一環としてこういう問題が出て参っておるわけであります。いわゆる気象体制の問題、あるいは気象体制関連をした各県市町村までの通信網整備の問題が特に指摘されておりますけれども、そういう問題についても、台風が不可避であるという前提に立つならば、抜本的な対策樹立してそういうことについての金一を惜しんではならない、こういう段階に私は来ているのではないかと思います。これは単に気象においてこういうものが利用されるだけではございませんから、総合対策一環として災害対策の問題も考えて、新しい予算編成の時期でございますから、こういう問題についても、農林省立場からも特に精極的に検討してもらいたい、こういうふうに考えておるわけでございますけれども、この点についてはいかがでありましようか。
  10. 大野市郎

    大野説明員 災害状況把握が敏速を欠くという御指摘でございますが、これに対する事前の対策としての気象の観測、機械設備、あるいはそれに対する連絡網の問題でございますが、これは気象庁その他農林省担当以外の分担でもございますので、御趣旨は全く同感でございまして、その必要を私どもも痛感をいたしております。ただ、担当の省が気象庁というような工合で分担をされておりますので、この点は当然治山治水基本策としての技術的な面になると思いますので、これらを強くその方面要請をいたしたいと思います。
  11. 角屋堅次郎

    角屋委員 私が特にこういう気象関係の問題を取り上げて具体的に例を引きましたのは、やはり、毎年起る相当大きな災害に対する対策として、恒久的な対策ももちろん必要であるけれども、そういう台風が襲来した場合における臨機応変の適切な措置がとれる、そういう必要な条件整備する、こういう一面として申し上げたわけであります。そういう点は、災害対策としてもっと科学性を持たなければならぬし、もっと機動性を持たなければならぬ。そういう問題については、旧来の観念を再検討いたしまして抜本的なそういう問題についての対策を考究する必要があるのではないか、そうして、必要な予算措置を講じて、災害が起るような場合においても最小限に食いとめるという努力政治責任において根本的にすべきではないか、こういうことで申し上げたわけであります。  そこで、これは災害の起った場合の対策に対する農林省としての受けとめ方、あるいは政府当局の受けとめ方の基本的な考え方についてでございますけれども、私どもは、災害が生じた場合には、罹災者の問題については、災害なかりせばの状態に政治責任において復旧をしていく、これがやはり私ども考え方の目標でなければならぬと思う。家が流れ、あるいは耕地が埋没し、収入の道も途絶するというふうな災害状況の中において、しかも罹災民災害復旧のために相当程度の金を使わなければならぬ、こういうことは極力避けるということが私ども気持の上にやはり必要だろうと思う。従って、今日まで災害対策については諸法律が作られ、今日小委員会においてもまたいろいろ積極的な推進の面についての改正意見が出て参っておりますけれども、やはり、災害の生じた場合には、政治責任においてどうすべきかという考え方においては、少くとも原状に返すまでは、でき得べくんば国あるいは地方自治体等努力により、その責任において処理するということを私ども心がまえとして持って臨むことが必要ではないか。これが罹災民要請にこたえる政治責任ある態度所ではないかと思う。そこで、そういう場合においても、私どもは、農林水産業関係舞台と、一般の第二次、第三次産業舞台とを比較してみまする場合に、農林省気持の上においては、御承知のように、終戦後の第二次産業、第三次産業との所得の較差、あるいは産業経済発展状況における農林水産関係の低姿勢、こういうものから見ましても、こういう災害の場合においては、特に災害対策の面において低位にあり、しかも国民所得その他の面においても悪条件下にある農林水産関係については、他の関係よりも特に手厚い気持を持って処理していくべきである。農林省内においては、対大蔵関係においても、政府部内においても、そういう気持でやっていく必要があるのではないか。私ども委員会でいろいろ論議してきた中においても、一般中小企業者とどうだ、あるいはその他の一般関係とどうだ、こういうことで大蔵省はいろいろ難色を示します。これらのことが具体的な検討の中で出て参っておりますけれども、特に政府が最近放送されておりますように、所得二倍増とか、あるいは農村関係における何倍増とかいうことを真に考えられるということに相なりますれば、どうしても、今日低位にあるところの農林水産関係については、こういう災害の場合にも特に手厚い気持を持ってやる、こういう心がまえでもっていくことが必要ではないかと思う。この点について農林省考え方を伺いたい。     〔委員長退席丹羽(兵)委員長代理   着席〕
  12. 大野市郎

    大野説明員 前段のお話農業関係災害復旧については、個人のものであっても、公共性のあるものであっても、いずれも救わねばならぬことは間違いございません。ただ、予算配分上あるいは順位をつけざるを得ないのでありまして、公共性のあるものから取り上げて、個人の財産に所属するものは比較的に補助率も低く、あるいはものによるとその助成もできないような状況でございます。しかし、基本には、天災というものはその個人責任ではございませんから、これを保護すべきことを政治は考えねばならぬと思いますが、現段階においては、限られた予算内の配分として、ただいまの処理状況の形式は一応是認していただきたいと思います。  それから、他産業関係につきまして中小企業との問題が出ましたが、低位産業であります点で、実は国全体として見まする場合に中小企業脆弱面が相当深彫りされて現われてきますので、この問題をネグレクトするわけには参らぬのでありまして、そういう意味でその議論が出て参ったと思います。農林省立場といたしましては、もとより農業脆弱性をよく認識しておりますので、深く救済の手を差し伸べるべきであると思っておることは間違いございませんが、国全体の立場中小企業脆弱面を忘れるわけにはいかぬので、その問題は折衝の過程でしばしば出ますが、私どもは、これを排除するわけにいかない、こう考えて、比較をしながら、農業のさらに低位性であることを、そういう比較論を是認しながら主張をしておるわけでございます。中小企業をネグレクトするわけには相ならぬと思います。
  13. 角屋堅次郎

    角屋委員 今、災害対策に対するところの対農林水産関係と他の舞台について私申し上げた点については、今政務次官が言われましたように、たとえば中小企業の問題をとらえ、中小企業それ自身にもやはりいろいろ脆弱な面がある、この点は私も同感でございます。ただ、そういう中小企業と対比して言われた場合以外の問題をも含めて一般国民というふうな形で現わしながら農林水産関係についての特にめんどうを見てもらいたいという点が、ややもすれば対大蔵その他の関係において除外されていくという点は、特に気持の上において農林水産関係の引き上げという熱意において努力してもらいたいということを申し上げたわけでございます。  そこで、具体的な問題に入りまして、農林水産業施設等災害復旧に関する問題で、これは、政務次官も、従来政務次官になられるまでに委員会等にもずっと出ておられて十分詳細に御承知の問題でありますが、ここで従来から論議されて参りました問題は、一つは、災害復旧の場合に、原形復旧という建前をあくまでも堅持して、そして若干の関連の改良復旧的なものを認めていくか、あるいは災害の際に禍を転じて福となす、あるいは抜本的な治山治水対策総会計画一環として災害の生じた地域についてはその計画の一部を実施するという気持から積極的に改良主義的な面を採用していくかどうか、これがやはり災害復旧に対する考え方の分れ道でございます。私どもは、しばしば災害地を視察いたしました場合に、過去の累年の災害において同じところが今度もやられました、こういう報告に接する機会が多いのでございます。たとえば、過般も申し上げましたけれども、三重県の多度町の提防決壊は、昭和二十八年度の災害のときにも決壊した。そして、その後災害復旧をし、耕地整理もし、美田と化し、本年は豊作が期待されるといって喜んでおったところが、同じところがやはり今度の災害において堤防決壊をして、全く収穫皆無の状況に置かれてしまっておる。こういう現状というものは、単に多度町ばかりではなくて、あるいは岐阜においても山梨においても長野においても静岡においても、各県において多く見られるところでございます。これは災害県から参りました福井その他の各県知事報告の中においてもそういう報告の一端が出ておりましたし、これはお互いに承知しておるところであります。そういうことになって参りますと、やはり、一銭惜しんで百円を失うということになってはいよぬ。だから、災害復旧という考え方は、なるほど、もとに戻すという考え方が常識の考え方であるかもしれない。しかし、根本的な治山治水総合計画推進災害機会にその地域に対しては完全に実施するのだという前提に立って考える場合には、私は、積極的に改良主義を取り入れるということは何ら矛盾でないと考える。そういう意味で、小委員会におきましても、この際法の改正をやって改良主義ということを原則にすべきであるという意見も強く出て参りましたけれども、まず、それに行く段階といたしまして、従来災害関連事業を、たとえば防災関係について八%、一般関係については五%というごく少数の災害関連事業というものは認められて参りましたが、これを従来建設省が実施しておるレベルまで引き上げる、つまり、農林省でも考えておるわけでございますけれども災害関連助成事業というものを、災害復旧費と同額のところまで百パーセント認めさせて、改良主義的な考え方を積極的に取り入れる、最小限当面の段階においてもこれをやるべきじゃないか、こういうことが委員会の一致した結論として出て参っておりますが、こういう問題に対してどう対処されるお考えであるか。非常に重要な、従来から論議されてきた焦点の一つでありますので、お考えを承わりたいと思います。
  14. 大野市郎

    大野説明員 改良復旧事業に関しまする問題は、当委員会において車ね重ね論議されて参りました点てございまして、前回も中澤委員からも同様御趣旨の御発言をいただいております。そのときにも申し上げたと思いますが、農林省といたしましても、三十五年度は所要の改良工事が行えるような措置をとりたいというので予算措置を要求しておる状況でございます。
  15. 角屋堅次郎

    角屋委員 当面の段階においては、私どものゆるくした決議の趣旨については、農林省としてはその線に沿って努力されておるようでございますが、やはり、最低限こういう考え方は完全に実現しますように、最大限の努力を希望しておきたいと思います。   第二の問題は、先ほど市町村代表陳情の中にも出ておりましたし、しばしば陳情の中で問題になって参りますのは、申し上げるまでもなく小災害対策の問題でございます。つまり、十万円以下の小災害に対する問題でございます。これは、御承知のように、昭和二十八年災につきましては、三万円以上十万円のものについて九〇%補助をする、こういう特別の措置を講じたこともございますが、これが昨年の伊豆災害のときにおいては起債をもって処理する、つまり、昭和三十三年七月、八月及び九月風水害による被害を受けた地方公共団体の起債の特例に関する法律、こういうことで昨年度は処理されたことは私ども承知しておるわけでございます。この問題について、昭和二十八年度災に準じて処理をするか、あるいはまた去年の伊豆災害の例に準じて処理すべきか、こういうことが小委員会でも真剣に論議されて参りました。農林省の見解といたしましては、十万円以下の小災害につきましては、農林省の査定能力、指導能力として十分そこまでは行きわたらない、あるいはまた、昭和二十八年度の災害の例によると、小災害の問題については、会計検査院等からいろいろ指摘された事例もある、こういうふうないろいろな問題等から、小災害の問題につきましては、地方自治体が責任を持ってやる。それに対して起債をやるという建前がいいのではないかという意見が出て参っておりました。私どもの見解も、昭和二十八年度災に準じてやるべきである、あるいはまた昨年の例に準じてやるべきであるというふうに、いろいろ意見が分れましたが、大勢の集約といたしましては、最低限昨年の例に準じて行うべきであろうということで、その場合に、毎年々々災害が起ってくる場合に、毎年々々の臨時立法としてこういうものを作っていくということになりますと、災害は必ずしも国会の開会中あるいは国会が予定されておるときに限りませんから、これはこの機会に恒久立法にすべきであろう。そのことは政府自身としても何ら反対すべき理由がないであろうから、この際、毎年々々の臨時立法ということでなくて、恒久立法にすべきじゃないか。同時に、昨年実施した中身の中においても、御承知のように、起債をやる場合に、三万円以上十万円の小災害については百パーセント救われるという形になっていないことは御承知通りでございます。いわゆる起債の場合には二つの条件がございます。つまり、第一は、事業主体は市町村で、農林水産業施設等国庫補助に該当する事業と小災害三万円ないし十万円の合計額が一千万円以上であること、これが一つ条件であり、第二の条件は、小災害の農地は五〇%と農林水産業施設は六五%との合計額が五大都市においては一千万円、三十万以上の都市については、五百万円、人口十万以上三十万未満のものについては三百万円、五万以上十万未満のものについては二百万円、その他の市町村については百万円、こういう二つの制限規定があるわけでございます。そこで、小災害は最近は各地に頻発をしておりますけれども、この二つの制限のために現実に小災害に対するところの政府のとった措置による恩典、政府気持というものが、市町村段階において適用されないということが数多く出て参っておるわけでございます。たとえば、三重県に例をとってみますと、ことしの台風七号による小災害の場合に、関係五十一市町村の中で、今申しましたような条件で適用して参りますと、五十一のうちわずかに十一市町村が該当するにすぎない、あとのものは全部該当からはずれる、こういうことに相なって参ります。そこで、私ども委員会の論議の中でも、この一千万円の合計額というものを五百万円に下げたらどうかということで、五百万円に下げるということになりますと、三重県の場合においては、この条件に適合してくるのが十三という形になって前進をして参る。そして、金額の面では、該当市町村としては数が少くても、金額の面では相当救われてくる、こういうことに相なって、小災害の部面が従来よりも一歩前進をするということに相なって参る。それと、一つ災害の起債の問題で問題になります点は、従来、御承知のように、土地改良法においては、事業主体として、県あるいは市町村、あるいは土地改良区あるいは農協、あるいは数人の共同施行、こういうことを事業主体として認めて参っておるわけでございます。ところが、三万円以上十万円の小災害を適用する場合は市町村という形になる。そうすると、従来土地改良法等弔推進をして参りました土地改良区あるいは農協あるいは数人の共同施行、こういうふうな問題については、こういう小災害からは適用除外になるといこことになる。そういう体制が現実にあるけれども、こういう法律の適用の舞台においては、市町村というだけで、他のものは適用の除外になるということになる。ここでやはり、運営の問題として、具体的にこういう問題についての政治の公平という意味から言ってどうすべきか、こういうことが私は具体的に問題になるだろうと思う。農林省関係当局の意見を聞きますと、それは市町村に肩がわりをしてやつたらどうだ、こういうふうな意見があるわけでございます。しかし、現実に現地の情況等を聞いて参りますと、地財法等の適用を受けて再建団体になっておる、こういうようなところで、今度小災害の問題で現実にはその事業主体は土地改良区がやっておったり農協がやっているところを引き受けるということになると、ただ名前を引き受けるということでは済まないから、人員を置かなければならぬ。こういう場合に、自治庁その他からきつい制約があるから、なかなかそういうわけに参らない。こういう問題等があって、現土地改良法で認めている事業主体の場合は、そのまま小災害の場合運営の問題としては適用していく、こういう形を検討してもらいたい、こういう強い要請を私どもは受けておるわけでございます。そこで、小災害の問題について、たとえば恒久立法等を作る場合においても、今申しました二つの制限規定をもっと緩和して、合百の市町村の財政状況から見ましても、国が相当な責任をもってやってやるという熱意から見ましても、そういう面についてはもっと条件を緩和する、同時に、今申しましたように、農林省推進をしておる土地改良法による事業主体等についてアンバランスが起債という形をとるがゆえに起らない、こういう問題についても運営上の万遺憾のない検討を進めてもらいたい、こういうことが私どもの希望でございますが、そういう点について農林省の見解を承わりたいと思います。
  16. 大野市郎

    大野説明員 小災害対策としまして、ただいま御指摘のありました、地方団体に起債を認めて、これが元利償還に対して財源を補給するという考え方、これはその考え方でただいまも閣僚会議で具体案の問題に相談がいっておるのでございまして、方向は、大臣からもお答えいたしました通りに、その方向で進んでおるのでございます。  ただ、法律の指定市町村の基準の緩和の問題につきましては、まだ部内でいろいろ純技術的な問題でありますために意見が出ておりまして、もう少し調整を要する段階でございます。しかし、御指摘の三重県の実例を見ましても、五十幾つのうちで該当が少いという実態は、これは尊重せねばならぬ実態でございますので、それらをしんしゃくいたしまして、これの基準の内容についてはさらに検討いたしたい。  ただいまの土地改良区の問題に対しましては、結局地方の市町村の負担になる部分その他もごいますので、これらは先ほどの地方債のワクができますることでカバーができるのでありますが、御趣旨の土地改良区の方にも負担の不公平のないようにということに対しまして、私少し事情にうとい点がございますので、事務当局からもう少し掘り下げて御説明さしたいと思います。
  17. 小林誠一

    ○小林説明員 ただいまの土地改良区の起債の問題でございますが、これは、御指摘通り、現行のと申しますか、特別立法で起債を認めました場合にも、それは認められませんので、従って起債されないということは御指摘通りでございます。従いましてこの問題につきましては、先ほど角屋委員からの御要望もございますので、慎重に検討いたしてみたいと考えておりますけれども、現在のところ、起債では救われないということになるわけであります。
  18. 角屋堅次郎

    角屋委員 これは、全国的に土地改良法で事業主体を置きながら実施をしておる農林省の経緯から見まして、災害の場合に必ず市町村以外の土地改良区あるいは農協その他の問題が現実に起っておると思うのです。そういう問題については、単にこの法律を適用する建前から言って、その際は便宜的に市町村に切りかえてやる、こういう形をとったらどうだ、そういう形で物事を考えるのでなしに、もっと積極的に、今の体制のままで運営の問題としてはっきりとれるという条件を私は作ってもらいたいと思う。御承知のように、土地改良区という場合は、単に限定して一市町村というばかりでなしに、数市町村にわたって土地改良区を作っておるということに相なる。しかも災害が数市町村にまたがって生じておる。当然事業主体は土地改良区にやらした方がいいという場合が私は出て参ると思う。そういう場合に、起債の対象が市町村であるために、市町村ということに事業主体を移す、あるいは無理に市町村が実体的にも事業主体になるということになると、土地改良法でいう恒久的な土地改良の推進と、災害の場合の推進というものが、ここに小災害対策をめぐって乱れを生ずるということになってもいけない。だから、現在の体制を活用しながら、法の運営に不公平のないように、こういう問題については具体的な運営の問題として十分善処できるような体制を考えてもらいたいと思っておる。そういう点について再度お伺いをいたしたいと思います。
  19. 大野市郎

    大野説明員 その件につきましては、さらに検討させていただきます。
  20. 角屋堅次郎

    角屋委員 この点については検討ということでございますが、従来から出ております小災害対策については政府も本腰を入れてごの対策に乗り出さなければならぬ、こういう気持の上に立って、去年の伊豆災害の例に準ずる起債というところまで今年もとろうということですが、この問題については、私どもは、毎年々々の臨時立法でなしに、恒久的な立法としてやってもらいたい。こういう恒久的な立法という前提に立てば、この際、従来のいろいろな経緯からかんがみても、条件等の問題についても、小災害がなるたけ救われて、市町村財政に大きなしわ寄せが行かぬようにするという政治責任立場から、条件緩和についても今私が意見を申し上げた点でございますし、同時に、従来農林省が進めて参りました土地改良との関連において、こういう体制を崩さないためにも、運営の問題については十分善処してもらいたい。こういう点も含めてお願いいたしたいと思います。  次に、堆積土砂とかワサビとか、潅漑用水の確保の問題とか、あるいは農業協同組合等に対する共同利用施設の二〇%を五〇%引き上げの問題であるとか、あるいはまた、特に開拓地の災害を受けたことに対する対処の問題、これは小委員会でも第二項の第七番の中で開拓地の災害対策という問題についていろいろ言っておるわけですが、小委員会の中でいろいろ関係者も呼んでお伺いしましたところ、農林大臣も、開拓地の災害対策については、最近までの実態、あるいはまた、特に、同じ農家の中での開拓政策等の従来の不徹底、欠陥、こういうものが現実にはまだ全面的に解消されない、こういう条件下において、特に開拓地の災害対策については万全を期したいということを言っておられますので、具体的な内容についてはここに書いてありますから、こういう趣旨に基いて善処願いたい、こういうふうに思うわけですけれども、その中で、特に最後に農林水産業の施設災害等の復旧の問題で要請しておきたいのは、これは関係知事あるいは市町村長等からも言われておる問題の一つとして、災害が生じたときの仕事の率というものは何割にするか。これは、御承知のように、従来緊急のものについては五、三、二ということで七〇%の範囲内において処理する、あるいはまたその他の三〇%については二、二、三、三というようなことで四カ年で処理する、こういうようなことで考えられて参ったわけでございますが、これは必ずしも法律事項でなくて、いわゆる政令事項に相なるわけでございまするから、政令で処理できる。ここでやはり関係県あるいは市町村からの強い要請は、特に緊急を要するものについては初年度五〇%以上の災害復旧をやってもらいたい、こういう強い要請があるわけでございます。こういう問題も、一つは政令の問題であり、あるいは運営の問題でございまするけれども、去年の伊豆災害の場合には、私どもは本年に入りましてから罹災状況の復興状況を視察いたしまして、その復興の顕著なのに実際に驚いたわけでございます。これは特に伊豆災害等についてけ政府対策ということも適切であったかもしれませんし、同時に、特に罹災地の関係市町村等の異常な努力というものが、他に模範的なああいう復興ぶりを示したのだろうと思う。少くとも緊急を要する災害復旧工事については五割以上の災害復旧をやる、こういう精神をやはりこの際もっと明らかにしておくべきではないか、こういう点で特に委員会としても要望が出ておるわけでありますが、特に第八の点について政務次官のお考え方を承わりたいと思います。
  21. 大野市郎

    大野説明員 ただいま、緊急工事につきまして初年度五割以上要求せよ、こういう御趣旨でございますが、農林省といたしましてはその趣旨で予算要求をいたしております。
  22. 角屋堅次郎

    角屋委員 農林水産施設等災害復旧に関する問題については、細部はすでに本委員会におきましても中澤委員その他から詳細に触れられた問題でありますので、特に重点的な問題について触れまして、次に移りたいと思います。  第二の金融に関する問題等についても、これはもう、政務次官が練達でございますから、われわれの言わんとするところは十分御承知通りでございますが、特にこの金融問題で私どもいろいろ論議した中で問題になりましたのは、災害の場合には、単に経営資金とか事業資金とか、そういう資金の問題ばかりでなしに、現実に生活資金というものが必要である。そういう生活資金というものを金融の面で特別に見るのをどういうふうに処理するか。これを天災融資法の中で見るべきであるか、あるいは自作農維持創設資金の拡大によって見るべきであるか、いずれもいろいろ論議はございますけれども、少くとも災害を生じた場合、全く無一物になったような被害激甚の罹災農家というような場合においては、やはり生活資金という要素をこの際はっきり打ち出すべきであろうという意見が強く出て参ったのでありますが、そういう要素も含めまして、天災融資法の問題、あるいは農林漁業金融公庫等の貸し付ける自作農維持創設資金の問題等についていろいろ出て参りましたし、特に、本年度の災害の特色として、果樹災害というものが、山梨、長野等を中心にいたしまして非常に激甚な被害を受けておる。この際、こういう問題については、従来あまり適用の例のないところを、今回の災害の経緯にかんがみて、特別に金融の問題、その他の問題で善処をする、こういうことが強く要望され、大臣等もその線に沿って最大限の努力をするということを申されておるわけでありますけれども、その問題も含めまして、金融の問題については、やはり、天災融資法の問題についても、自作農維持創設資金の問題につきましても、全体のワクという問題について不足のないように、必要な場合にはこれを増額する。あるいは自作農維持創設資金については、今日手持ちが二十二億円である、あるいは予備費は六億円である、こういうようなことでありますと、これをもって全面的な処理ができるかどうか、こういうようなことになって参りますし、特に、自作農維持創設資金等については、従来、災害中心主義になりまして、一般的な、いわゆる自作農から転落する可能性がある場合の自作農維持創設資金としての性格というものが、非常に規模は大きいのでございますけれども、現実的にはこれが押えられているという現状にあることは御承知通りでありますから、災害の問題についても十分対処し、一般的な要請についても十分対処するという面から見て、資金ワクの問題があるが、こういう問題について農林省として今日十分対処できる態勢で折衝を進めておられるかどうかということについて、一般的な問題としてお伺いしておきたいと思うのであります。
  23. 大野市郎

    大野説明員 生活資金をどうやって貸し出すか、あるいは与えるかという問題、これは毎回御論議を活発にいただいておりますが、一般的な生活資金の問題でありますると、農林省の管轄のほかに、いわゆる生活援護的な観点から別個な考え方を持つ者も実はあるのでございまして、議論が残るのでありますが、来年度予算におきましても、要求項目では非常に大幅な必要性を痛感しまして、自作農維持創設資金のワクの拡大を予算要求はいたしているような状況でございまして、今日のもので十分であるとは思えないのでございます。その意味で、どういう折衝段階であるかということになりますると、今Rのこの災害そのものに対しましての段階では、前回以来数字をあげて御説明いたしておりますけれども、自作農のワクがありますので、このワク内で消化をして、どうしても足りないという数字が積み上げられた場合には、さらにこれが予備費の追加要求をせねばならぬと思いますが、今日の累計におきましては、間に合うのじゃなかろうかという、そういう予測でおりまする関係から、現実にこのたびの災害のために幾ら幾らの額を増額せよという折衝はまだできない段階でございます。しかし、一般論としての自作農の資金の要求の多いことはよくわかっておりまするので、その点善処いたしたいと思っております。
  24. 角屋堅次郎

    角屋委員 きょうはさらに愛知用水あるいはその他たくさんの問題が議題として控えておりますが、災害の問題については、小委員会でも十分検討がなされ、そうして各委員から質問がなされましたので、金融に関する事項、さらに第四項の農業共済事業に関する事項、あるいは資材等に関する事項、災害調査、技術指導等の強化対策に関する事項、食糧及び飼料対策に関する事項、国有林野事業の協力に関する事項、救農土木事業に関する事項、堤外農地に関する事項等、大綱的な所信のお尋はこの際省略をいたしたいと思います。  ただ、現地の状況から見て最後に特にお願いをしておきたいと思いますし、御検討を願いたいと思いますのは、第九の救農土木事業に関する事項でございますが、この点については、たとえば三重の多度町のような場合に、三百町歩のところが堤防決壊によって全く収穫皆無になって、何とか救農土木事業等を起して日銭を取らなければ今後の生活が立たない、こういう状況は、単に多度町ばかりではなしに、養老町の三千町歩の浸水によるところの収穫皆無、こういうことから、岐阜県でも要請が起って参っておりますし、また各県でもこういう救農土木に対するところの要請というものが強いだろうと思う。特に広範にわたって被害を受けた激甚地においてはこういう要請が強いだろうと思う。ところが、いろいろ聞いて参りますというと、農林省大蔵省の折衝の中で、こういう点が大蔵省でなかなかうんと言わない空気等もあると言われておりますが、こういう点については、やはり、現地の被災民の状況災害復興に対するまず大前提としての条件、こういうものを十分に考えられまして、救農土木等については、そういう要請のあるところ、そういう態勢のあるところについては積極的に推進する、こういう立場で善処してもらいたいと思うのですが、この点についてはいかがでございますか。
  25. 大野市郎

    大野説明員 救農関係におきましては、公共土木事業の繰り上げ実施の方は私どもは自信を持って進めることができるのでございますが、新規事業の問題で、ただいま御指摘政府部内における折衝が難航する部分が予想されます。しかし、今度の災害実態が全く——土地改良でもまだ残っておればよろしいのでありますが、できておる地区がだいぶあります。その関係で、まさに、今の繰り上げ、いわゆる公共土木事業でもせねば現金収入のない場所が確かにございます。この点よく認識をいたしまして、新規事業にまで乃ぼせますように努力をいたす所存であります。
  26. 丹羽兵助

    丹羽(兵)委員長代理 この際暫時休憩いたします。     午後零時七分休憩      ————◇—————     午後一時五十九分開議
  27. 吉川久衛

    吉川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林漁業災害に関する調査小委員長報告を求めます。坂田英一君。
  28. 坂田英一

    ○坂田(英)委員 小委員会審議の経過並びに小委員会において決定を見ました昭和三十四年七月及び八月の暴風雨等による農林漁業災害対策に関する件について御報告を申し上げます。  農林水産委員会農林漁業災害に関する調査小委員会が去る八月三十日に設置され、直ちに同日から小委員会を開いて調査審議に着手いたし、その後、九日一日、八日、九日、十日にわたり調査審議を進めたのであります。その間、委員長初め各委員とも、今回の激甚なる被害地における被害者の窮状に思いをいたし、適切かつ迅速なる措置を講ずべきことを念願しつつ、熱心に調査検討をなし、審議を重ねて参りました。その間、委員会においては農林大臣建設大臣、その他関係省庁の係官に対する質疑応答が行われ、また、小委員会においても、農林省その他関係省からは災害調査の結果並びに対策の経過等を聴取し、また、被害府県等から災害救助に対する陳情等を聴取いたし、あるいは陳情書の取調べ等をいたしました。かくして、お手元に配付いたしました昭和三十四年七月及び八月の暴風雨等による農林漁業災害対策に関する件小委員会案を決定いたした次第でございます。  次に小委員会決定案を御説明申し上げます。  まず案について朗読をいたします。    昭和三十四年七月及び八月の暴風雨等による農林漁業災害対策に関する件(案)  本年七月及び八月の豪雨及び第七号台風等は福岡、山口、長崎、山梨、長野、岐阜、京都、福井、静岡、三重、滋賀、石川の各県を初め三十数府県にわたり、農地、山林、農林水産業施設、農作物、果樹等に対して四百数十億円に達する損害を与え、被害を受けた農林漁業者の生活と経営に対してはもちろん、府県及び市町村の財政と経済に対し深刻な影響をもたらしている。  政府は、今次災害の特徴と態様に深く思いをいたし、これが防止、軽減または救済の根本策について思い切った手段方法をとるとともに、特に左記事項の実現につき、適切かつ速急な措置を講ずべきである。     記  一、治山及び治水事業に関する事項特定の治山及び治水事業については新計画樹立して抜本対策を講ずるため、特別会計設置してその早期完成をはかることとし、これがためすみやかに所要の法制的、予算的措置を講ずるものとする。  二、農林水産業施設等災害復旧に関する事項  (一)「農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律」及び「公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法」により、すみやかに査定を完了し、農地、農業用施設(かんがい排水施設、農道、農地又は農作物の防災施設)、林業用施設(林地荒廃防止施設、林道)、漁港施設及び共同利用施設の災害復旧事業を行うものとするも、この際次の事項の実現に努める。  1.現在、一部の災害関連事業を認めているが、これをさらに積極的に推進するため、災害関連助成事業費を別途に計上し、復旧事業費と同額までの改良事業費を認め、改良復旧の目的をすみやかに達成するものとする。  2.三万円以上一〇万円未満の農地及び農林水産業施設等のいわゆる小災害復旧事業については、この際、「昭和三十三年七月、八月及び九月の風水害により被害を受けた地方公共団体の起債の特例等に関する法律」に準ずる恒久法を制定し、農地にあっては五〇%の、農林水産業施設等にあっては六五%の、地方公共団体による起債を認め、これに対して国から元利補給を行うこととするも、この場合、被害の著しい市町村の指定基準を緩和するものとする。  3.農地、農林水産業施設にかかるたい積土砂等の排除事業については「暫定措置法」の適用対象事業とするも、農家等のたい積上砂の排除事業についても助成するものとする。  4.わさび田の災害復旧は農地の災害復旧事業に含めて措置するものとする。  5.かんがい用水確保のため、被害農業者が共同して設置した施設のうち、河川の仮〆切り、水路及び井戸の掘さく並びに揚水機の賃借等に要した経費は、応急復旧事業費として「暫定措置法」の適用を受けるものとする。  6.農業協同組合等の所有する共同利用施設の災害復旧事業に対する現行補助率は二〇%であるが、法律を改正してこれを五〇%に引上げるものとする。  7.開拓地の災害を受けた住宅、農舎、畜舎等の復旧のため補助を行うものとし、この場合、現行基準によれば大部分の被災開拓者は該当しないこととなるので、被災開拓者の大部分を救済しうるよう適当に条件の緩和(半壊を含む)をはかるものとする。  8.農地、農林水産業施設等災害復旧は、緊急工事については、初年度五割以上の完成をはかるものとし、所要経費を確保するものとする。  三、金融に関する事項  (一)「天災融資法」を発動して早急に経営資金及び事業資金を融通し、また、既貸付金の借換措置を講ずるものとする。  (二)農林漁業金融公庫が貸付ける自作農維持創設資金については、緊急を要する者には一般割当額より取りあえず貸付けを行い、引続き本年度の資金枠の残二十二億円、同予備枠六億円を使用することとするも、これらの資金枠が不足する場合はすみやかに増額するものとする。また、開拓者に対しては別枠を設定する。  (三)個人の所有する農舎、畜舎(鶏舎、豚舎を含む)、たい肥舎、温室、葉たばこ乾燥室、果実貯蔵庫、製茶施設、果樹棚(ホップ支柱を含む)、木炭倉庫、山地製材工場等の災害復旧に必要な資金は農林漁業金融公庫の主務大臣指定災害復旧対象施設の資金枠から貸付けることとし、その貸付限度額及び資金枠については必要に応じ拡大するものとする。また、貸付金利は七分となっているが、これが引下げをはかるものとする。  (四)果樹の植栽、保育、附帯施設等に必要な長期低利資金(据置期間七年以上)を貸付けることができるよう、農林漁業金融公庫法を改正するものとする。  (五)大規模かつ激甚な農林漁業の災害に際しては、農山漁民がその再生産を確保するために必要な立上り資金及び資材の供給等に対し、国及び都道府県が総合的かつ体系的に補助助成を行う制度を確立しうるよう検討するものとする。  (六)国民金融公庫の災害融資を積極的に行うため、第三・四半期資金を繰上げ支出し、また、貸付利率は六分五厘以下とするものとする。  (七)被災開拓者等であって引揚国債を所有するものに対しては、この際、優先的に国債の買上げを行い、なお、買上資金に不足を生じた場合には、その不足分について追加するものとする。  四、農業共済事業にする事項  (一)農業災害補償法に基く共済金の仮払い及び再保険金の概算払を早急に実施せしめるものとよる。  (二)農業共済組合、同連合会の神物、機具類の災害復旧について助成措置を講ずるとともに、事務費の国庫負担について特段の考慮を払うものとする。  (三)りんご、梨、さくらんぼ、もも、ぶどう、くるみ等に対する果樹共済の実施について早急に検討するものとする。  五、資材等に関する事項  (一)農作物、桑、茶、果樹等に鮮する農薬、肥料又は種苗及び防除機具並びに冠浸水田畑の土性改良のための石灰等の購入、軍樹棚(支柱を含む)の購入及び果樹の改植に要する経費の一献について助成するものとする。  (二)畜舎の消毒及び家畜の伝染病予防注射費について補助するものとする。六、災害調査、技術指導等の強化対策に関する事項   統計調査職員、農業共済団体職員、専門技術員、農業改良普及員、耕地又は山林関係県市町村職員、開拓営農指導員、養蚕技術員等の活動等に要する経費を増額するものとする。七、食糧及び飼料対策に関する事項  (一)被害農家に対しては先例により、米麦の安売りを実施することとするも、この際、この制度の恒久化を図るものとする。  (二)等外米の政府買入を実施するものとする。  (三)予約概算金については三十四年産米事前売渡申込制集荷要領に基き、被害の程度に応じ、利子の減免を図るものとする。  (四)有畜被害農家に対しては政府の所有する事故麦及びふすまの売払を行うものとする。八、国有林野事業の協力に関する事項   「物品の無償貸付及び譲渡等に関する法律」に基く国有林野からの林産物(風倒木を含む)の売渡しについては法令の解釈を拡大し、被害を受けた県及び市町村に対し一率五〇%の減額を行うものとする。また、被害農家が必要とする建築材料を「予算決算及び会計令」に基き国有林が市町村に一括売払う場合にはその売払代金を無担保、無利、一ケ年以内の延納を認めるものとする。九、救農土木事業に関する事項   被害農業者等の現金収入を確保するため、国及び府県は災害地の実状に応じて既定公共土木事業の繰上実施又は新規事業災害復旧事業を含む)の実施を行うものとする。特に、国有林は強力に協力するものとする。一〇、堤外農地に関する事項    国は、個人所有の堤外農地を、この際、買上げるよう措置するものとする。  右決議する。   昭和三十四年九月十一日       衆議院農林水産委員会  大体かようなことでありまして、全体を読みましてもなかなか声も疲れるほど詳細に決議を書き入れてあるのでございまして、特別の説明を要しないと思いまするが、まつ先の一の事項につきまして、これは、治山治水こそ、災害を予防する上において、再び繰り返す災害をでき得る限り少からしめるための最も重要な事業でありますことは申すまでもないのでありまして、これらの事業をすみやかに完成させるために特別会計設置して参りたいというのが本旨でございます。  それから、この二の農林水産業施設等災害復旧に関する事項のうちでおもな点を申し上げますると、従来、復旧事業は、災害復旧事業としては原形復旧という建前にあるのでありまして、いろいの現在の災害状況を見ましても、非常に局部的に深刻な災害が多く相なり、また、今まであまりなかったところに災害が起ってきておるというような関係からいたしまして、単なる復旧では、これは同じ災害を繰り返すようなことに相なりまして、まことに効率的ではないのでありまするから、でき得る限りこの災害関連助成事業費を増額いたすことにより改良事業を認めまして、改良復旧の目的をすみやかに達成する、これは特に重要なる事項であると存じます。  なお、最近の情勢を見ますというと、小災害が続出しておる、局部的には非常に深刻である、こういう実情からいたしまして、昨年も同様の昭和三十三年七月、八月及び九月の風水害により被害を受けた地方公共団体の起債の特例等に関する法律というのが出ておりまするが、かような法律に準ずる恒久法、毎年繰り返すのでありますから、恒久法を制定していきたい、こういう意味であります。  それから、本年の災害を見ますというと、果樹あるいはホップというような、特に果樹の被害が特別に激甚であった地帯が多いのであります。しかも、果樹に対する国の助成というもの、あるいは果樹に対するいろいろの施策というものが非常に乏しい。これは戦争当時のやはりいろいろの経過を踏んでおるものであると思うのであり誉すが、被害を離れても果樹振興等に関する施策を大いに講じていかなければならぬと存じられるのでありますが、特に今度の場合において果樹の災害が非常に著しい地帯が多かったという点にかんがみまして、果樹につきましては、資金の面あるいは補助の面等について、それぞれの項目にありまする通り、相当適切なる救助策を講じたいということが包含されておるのであります。特に、金融に関する事項のうちの(四)におきましては、果樹の植栽、保育、附帯施設等に必要な長期低利資金を貸し付けるというようにいたして参りたい、従って、このためには農林漁業金融公庫法を改正して参りたいということを決定いたしておるような次第であります。  なお、すべて重要なことを規定してあるのでありますが、特にここに申し上げたい点は、国有林野の協力に関する事項でありますが、ここに書いてあります通りでありまして、あまり説明を要しないのでありますが、ただ、市町村に安く売り払う場合において、これは地元町村というだけでなしに法律の趣旨を拡大して解釈することができるのでありますが、そういうきわめて限られたその市町村というだけでなしに、隣接市町村にも一律に及んでいきたい、そして全般的に一律に五〇%の減額を府県での場合も市町村の場合も行うというふうに、これは法令の解釈によってそういう運営をやっていきたいということを決議しておるような次第であります。  すべてが重要な事項でありまして、詳細記載しておりまするので、説明はこれで省略させていただきたいと存じます。  かようなわけでありまして、昭和三十四年七月及び八月の暴風雨等による農林漁業災害対策に関する件を小委員会において決定した次第でございます。ごく概略でございますが、委員長報告を終ることにいたします。 (拍手)
  29. 吉川久衛

    吉川委員長 ただいまの小委員長報告のうち、昭和三十四年七月及び八月の暴風雨等による農林漁業災害対策に関する件は、これを本委員会の決議といたしたいと存じます。  この際、小委員長報告のうち決議とする事項につき、中澤委員より、自由民主党、日本社会党を代表して賛成の討論を行いたいとの発言を求められておりますので、これを許します。中澤茂一君。
  30. 中澤茂一

    中澤委員 ただいまの小委員長報告に対しまして自由民主党並びに日本社会党を代表して全面的に賛成の意を表するものでございます。特に、決議がされたならば、この際政府の所見を明らかにしておいていただきたい点が二、三ございますので、その点について若干申し上げたいと思います。  御承知のように、この決議には小委員会の非常な努力によりまして新しい農業災害に対するところの問題が幾つか取り上げられておるわけでありますが、その中で、ただいま小委員長も言われたように、特に重要な点は、新立法が二つあるということ、それから法改正が三点あるということ、この五つに対しまして、御承知のように、今の報告にございましたように、大項目第二のうちの(一)の2の中にある、この際昭和三十三年七月、八月及び九月の風水害により被害を受けた地方公共団体の起債の特例等に関する法律に準ずる恒久法を制定すること、これは特に政府の所見を求めたい一点てあります。これは新立法になるわけでございます。  その次は、新しい立法として連年災害のたびに臨時立法をやっておるところの、第七の、被害農家に対しての米麦の安売りの法律であります。これは、委員会でも論議されましたように、この際これは恒久法に立法化する必要がある、こういうことでありますので、これも新立法としての政府の見解を明らかにしていただきたい点でございます。  それから、その次は、大項目二の(一)の6にあります、農業協同組合等の所有する共同利用施設の災害復旧事業に対する現行補助率は二〇%であるが、法律を改正してこれを五〇彩に引上げること、これは法改正でございます。  それから、その次には、第三項の口の「個人の所有する農舎」云々から最後の、小委員長も触れられました「貸付金利は七分となっているが、これが引下げをはかるものとする。」、これも農林漁業金融公庫法の一部改正を願わなければならぬ問題であります。  その次は、同じく第三項の(四)の「果樹の植栽、保育、附帯施設等に必要な長期低利資金(据置期間七年以上)を貸付けることができるよう、農林漁業金融公庫法を改正するものとする。」、すなわち、農林漁業金融公庫法の一部改正が二点あるわけでございます。  そういう法改正が三点と新立法が二つ含まれた問題をここに決議としての提案をされるわけでありますが、この点については特に政府側の所見を明らかにしていただきたい。  で、この問題については、当委員会決議がされるならば、政府側がこれをおやりにならぬとすれば、これは臨時国会において議員提案なりでもやらなければならない早急を要する問題だと考えておるのでありますから、その点を農林大臣は特にお含みの上に、見解、所見をお述べ願いたいと存ずるのでございます。
  31. 吉川久衛

    吉川委員長 お諮りいたします。昭和三十四年七月及び八月の暴風雨等による農林漁業災害対策に関する件を本委員会の決議とするに賛成の諸君の御起立を求めます。   [総員起立]
  32. 吉川久衛

    吉川委員長 起立総員。よって、右決議するに決しました。  この際政府の所見を求めます。農林大臣
  33. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 今般の災害に当りましては、当委員会の各位におかれましては、あるいは現地に出張下され、あるいは連日調査審議下さって、ただいま小委員長から示されたような御決議を願いましたことを、私、非常にありがたく感謝いたします。政府といたしましては、この決議の趣旨の実現にできる限り努力をいたします。  なお、ただいま中澤委員より、小災害に関する立法、米麦の安売りに関する立法等につきまして御意見がありましたが、小災害につきましては、三十三年度の臨時立法に準じた内容の法制を作る用意をいたしております。これを恒久法にいたしますかどうかは、なお検討いたしております。安売りにつきましても、これを恒久法にいたしますかどうかについては、委員会の御意向を尊重しつつ検討いたすことにいたします。その他、農協の補助金の問題、個人の農舎等の問題、できる限り当委員会の御決議の線の実現できるごとく努力いたすつもりでおります。
  34. 奧村又十郎

    ○奥村説明員 ただいま当委員会で全員一致の御決議につきましては、所管大臣農林大臣も特に尊重し実現するように努力するという御答弁でありましたが毛大蔵省といたしましても、当委員会の御意思、また農林大臣の御意思をよく尊重いたしまして、実現に努力いたしたいと思います。ただ、その内容が非常に複雑多岐でありますし、また、ただいま初めて承わったことでありますので、十分慎重に検討の上で、農林省とよく御相談して実現したい、かように存ずる次第であります。
  35. 吉川久衛

    吉川委員長 次にお諮りいたします。ただいまの決議の関係方面への参考送付等につきましては委員長に御一任願いたいと存じます。これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 吉川久衛

    吉川委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  37. 吉川久衛

    吉川委員長 次に、農林水産業振興に関する件につきまして調査を進めます。  紀淡海峡における火薬投棄の問題につきまして質疑の通告があります。これを許します。  赤路友藏君。     〔委員長退席丹羽(兵)委員長代理   着席〕
  38. 赤路友藏

    赤路委員 現在までの経過をちょっと御説明願いたい。
  39. 大島寛一

    ○大島説明員 御説明いたします。  その後の経過につきまして申し上げますと、先般御報告しました後にも、引き続き関係各省におきましてこれが対策について急いで検討した次第でございます。その結果といたしまして、関係各省間に一つ対策を結論としまして見出した次第であります。  その概要を申し上げますと、政府におきましては、漁場確保のために、妨害となっております火薬を排除する目的をもちまして、掃海に要すべき費用の二分の一を県に対しまして補助金として支出することにしたいということでございます。なお、県を掃海の主体といたしまして、速急に掃海ができますように諸般の段取りを進めることにいたしたいと考えております。なお、先般御説明申しましたように、これは政府責任に帰すべき事項ではないのでございますが、今申し上げましたような趣旨に基きまして、漁業の障害となっていることを除去する必要があると認めまして補助する次第でございますので、県ないし地元に対して、掃海費等の求償について国土開発、中国化薬等関係の会社に対しまして努力すべき旨要望したいと考えているわけでございます。その求償金が入りました場合におきまして、国、県、一部は地元等にそれが還元されるように具体的な措置を考えたい、かように考えております。  以上が、その後の調査審議の結果政府としましてこの際とるべき措置として関係各省結論に達した要点でございます。  なお、掃海費用につきましては、調査団の報告等を取りまとめまして検討いたしました結果、関係各省の一致しました見積りといたしまして、総額千五百万円以内と考えておる次第でございます。従いましてただいま申し上げました補助金等につきましても、総額千五百万円以内において、その二分の一を補助して参りたい、かように考える次第でございます。
  40. 赤路友藏

    赤路委員 大体結論らしきものが出てきたように思います。掃海をするということを一応決定されて、それに対して今御説明のあったように二分の一を補助金として出す、こういうようなお話のようですが、それでは、お尋ねしますが、千五百万円以内という数字が出ているようですが、これはどういうような計算で数字が出たのか、計算の基礎について御説明願います。
  41. 西村健次郎

    ○西村説明員 御答弁します前に一言ごあいさつを申し上げます。私、去る九月一日に水産庁長官に任命されました西村でございます。なお就任日が浅く、新米でございますけれども、今後よろしくお願い申し上げます。  ただいま、千五百万円以内という計算の積算の基礎はどうかというお尋ねでございました。大体現地に調査団が行きましたその報告等を検討しました結果、掃海面積は、幅六キロメートル、南北の長さ三十キロメートル、従いまして、面積は百八十平方キロメートル、ここを掃海するわけであります。掃海の方法は、大体縦にたんざく型に長いのを横にひく、こういうことになっております。そうして、一回当りの掃海時間というのは、六キロメートルを大体時速三ノットくらいでひきますと六十五分かかる、こういう計算になります。これは非常にこまかいことで恐縮でございますが、網を揚げるに要する時間とか、船を移動するに要する時間とかということになりますと、一つの操業単位は約一時間半、大体一時間半とすれば、一つの単位が一日に五回できる。そうしますと、この掃海の幅は四メートル——これは私どもは地元の漁船の利用をお願いしたいと思っておりますが、幅が四メートル、こういうことになりますので、今のような計算から、一日一隻の掃海可能面積は〇・一二平方キロメートル、こういうことになります。これで百八十平方キロメートルを割りますと、一隻がやるとすれば千五百日かかる、こういう計算になります。用船料は、これは小さい船でございますが、一隻一日一万円という計算で、これで千五百回ということで千五百万円、こういう計算であります。これはなお具体的に実施する場合に県あるいは現地ともう少し細目をもっと打ち合せなければなりませんが、今一応積算の基礎をお尋ねでありましたから、かようなことになります。
  42. 赤路友藏

    赤路委員 一応積算の基礎はそれでわかりましたが、幅六キロという形ですね。これは現地で調査された方はわかると思うのですが、もちろん、当初四月の二日に船が火薬を放棄したときはそういう状態であったと思う。おそらく船を運航しつつ両面へ落したのですから、そう長い幅にはいっていない、こう見ていいと思う。ところが、四月の三十日に漁船が操業して初めてそれがわかった。しかもそういうようなことを予期しないで操業しておるわけです。私が現地へ行って調べてみますと、大体これが三箱程度入って網が破れておるのです。そうしてそのまま中べ落しておる。こういうような状態です。大体一時間半程度ひいて、非常に残念なことではあるが、縦線形態に放棄しておるのがわからないために、横に網をひいて、分散したという形態にむしろ私はあると思う。七月の十七日の調査のときにやられた各地点は、これは中心点をおやりになった。むしろ、私は、あれは相当幅が広がっておると思うが、こういう点を御検討になっておるかどうか。
  43. 木戸四夫

    ○木戸説明員 お答えいたします。  この予算の積算に当りましては、現地に実際に行きました通産省と海上保安庁、それから水産庁の係官が検討したわけでございまして、十分現地の実情も反映いたしまして計算したつもりでございます。
  44. 赤路友藏

    赤路委員 しごく簡単な答弁で、私は、現地の実情を反映していないと思う。もう少し慎重におやりにならなければ、せっかくの好意が好意にならないと思う。あえて私は好意という言葉を使いますが、その点は十分御考慮おきを願いたい。——これ以上言いませんが。  それから、先ほど言いましたように、今西村長官の御説明を聞きますと、できるだけ現地の船に掃海の作業をやらしたいというお話です。非常にけっこうだと私は思います。そこで、問題は、綱の強度ということが問題なのです。現在の網でやったのでは、強度はおそらく持たないと思うのです。やはり、ひいて破れれば意味がないのです。破れるような網でひくということは意味はない。むしろ、先ほど言いましたように、分散の度合を広くするわけなのです。だから、従って、網をかえさせなければいけない。もっと強度な網にかえて、三箱や四箱入ってきても十分引き揚げられるという可能性のある網にかえるということになりますと、相当な経費がかかると見なければなりませんが、この点は全然考慮の中に入っていないようだが、それはどうなんですか。
  45. 西村健次郎

    ○西村説明員 赤路委員の仰せのように、網は現実に破れております。そういう事態にありますが、必ず全部破れるとも限らないと思っております。破れないような網を作るということは非常な経費がかかるわけですが、これは、率直に申し上げて、現地の小型底びきを使うのですが、何も魚をとつちゃいけないというわけではありませんので、同じところをひくと魚も相当そこに入ってくる可能性はあるわけです。網をかえることによって経費もかかるし、かえって魚もとれなくなるというくらいなら、むしろ専門の掃海部隊に掃海業を委嘱した方がいいというようなことを考えまして、そこで、多少網が破れることもあるかもしれない、そこは網をあえてかえなくてもそう大補修しなければいけないというふうにはならないのじゃないか、こういうことです。かたがた、そこはいい漁場でございますので魚も入ってくる、そういうこともいろいろ勘案しまして、その方がいいのじゃないかということでございます。
  46. 赤路友藏

    赤路委員 長官は現地へ行っていないのでそういう御答弁ができるのだと私は思う。話を聞いておられると思うのだが、いろいろな砲弾系統のもの、箱入りでいろいろなものが入っていますが、そういうような廃弾のようなものが単に入ってきたというのなら、これは問題はありますまい。しかしながら、少くとも火薬と同時に入ってきたということになりますと、魚は全然販売の用には供せません。これは従来の経過から見ましてはっきりしておるわけです。だから、ここを掃海するときに魚が入ってくるだろうことを予期して、しかもそれが何ほどかにでもなるという考え方を持っておるとすれば、これは大きな間違いである。そういう結果は出て参りません。  もう一つの問題点は、これはこの前の委員会でもありましたが、火薬の性質だとか、いろいろ雑多なものが入っておるわけなのですが、それらは上からこれは何だあれだというので判断することはできない。中に入っておるものだから、そういう判断の上に立って掃海なんてできるものじゃございません。とにかく入っておるものを一切根こそぎとるという形に私はなってくると思う。そうしますと、そういうおよユ魚も入ってくるだろうという仮定の上に立って、それが売れるという、そうして計算をするということになると、私は、計算というものにいささか誤算が生じてくるのではないか。もちろんこの前からの委員会の討議の中にあるように、間々これは政府責任でないのだという法律論的解釈が出てきております。しかしながら、今回のこの場合は、単なるそういうような法律的解釈でなくして、現実の姿の上に立ってこれは考慮してもらわなければならぬと思う。
  47. 西村健次郎

    ○西村説明員 私、申し上げ方が多少悪かったと思いますが、その、魚もとれる、それが計算の基礎とはけしからぬというお話ですが、ただ、御承知のように、従来も、地元の船でやりました場合に、常に網をひいたからかかるとは限らないというわけでございまして、たしか五十回ひいて二十何回、そういう程度でございます。従って、火薬が散乱して魚に黄色く色がつくような火薬が魚と一緒に揚ってこない場合もあるわけであります。常にかかるならもっと効率的に火薬が掃海できるわけであります。そういうこともあるのではないか。それから、私どもの方で各省といろいろ相談しまして、先ほど申し上げましたように、一日の用船料というものは一万円ということを一つ計算に入れまして、いろいろなことから考えまして、さっきのように網を特別にしつらえるというようなことはかえって効果的じゃないじゃないかというようなことから、こういうことをしたわけであります。
  48. 赤路友藏

    赤路委員 この前の八月十一日の委員会における小川説明員の答弁の中にけ、これは読んでいただけばわかると思うが、大体東から西へ一回、西から東へ一回、また戻るというので大体三回、時間にしますと七時間半、一隻でやれば二千五百日の予定、結局二千五百隻船が要る、こういうことなのですね。こまかいことは議事録を見ていただけばわかるが、掃海の合計金額は二千六百五十万円あればこの海岸を掃海できる、こう言っているのですけれども、これが千五百万円に下ってきたんですね。どこからそういう誤算が生じてきたのか。回数にいささか違いがある。これは海上保安庁の説明員の説明ですが、御説明願いたい。単なる予算の折衝で勝手に回数を減らしたりふやしたりするやり方はどうかと思うのだが、その点御説明を願いたい。
  49. 和田勇

    ○和田説明員 八月十一日に私どもの方の小川保安官から試案を御説明いたしましたのはこういう事情でございます。たしか中澤先生だと思いますが、たまたま経費はどれくらいかかるかという御質問が私にございまして、私は現地に行って詳細調査いたしておりませんので、調査に行った小川保安官からということでお答えしたわけであります。大体このお答えしました試案なるものは、当時の状況一つの仮定に基いて作った案でございまして、二千五百日かかるということを申し上げたわけでありますが、後ほど、小川保安官から、この掃海をさらに能率的にやることによりまして、同じ効果を得るという行き方、それによって千五百日でいけるという結論を得ましたので、詳細は小川保安官から申し上げたいと思います。
  50. 赤路友藏

    赤路委員 これは仮定でしょう。今度のものも仮定ですよ。やってみないんだから、あくまでも仮定です。ただ、現地へ行って現地で引き揚げの実際の作業をやってお帰りになった海の仕事をやる専門家である海上保安庁の係官がそのように説明をしておるわけです。ただ、仮定であることは間違いありません。これは実際じゃないんだから、やってみなければわからないんだから仮定である。しかし、いずれにしても、私は、現地の調査の結果の上に立ってこうした数字が出ておるんだと考えざるを得ない。それをもっとこうすればああすればというので検討したんでしょう。検討した結果、三回でなくして、一日五回できるじゃないかという線が出たんだと思います。善意に解釈すればですよ。もっと変った形で解釈すれば、大蔵省主計官がこの前言っておったように、法律論だけの上に立ってものを言う、このことの処理を考える、こういうふうになってくると、自然予算との関連が出てくる。大蔵省がうんと言わないんだからこの程度でやっておこう、こういうようなお考えでおやりになったように私には推測できる。この程度のものでおやりになるのなら、もうおやめになった方がいいですよ。私はそう思う。ほんとうにこの掃海を全面的にやるという熱意がない。私は、今度これにかかられた係官の方々は冷血漢だと言いたい。毒言であるかもしらぬ。ほんとうに漁民の立場を考えておるのか。早急にやりますと言って、一体今まで何ヵ月かかっているか。前委員会において言ったこととまるつきり違っておる。私はこれ以上この問題については触れません。しいて掃海せいということも言いません。むしろ掃海はおやめになったらよいでしょう。ただ、そのかわりに、一言ここで責任のある御答弁を願っておきたい。たれでもよい、政府代表して責任のある答弁をしてもらいたい。掃海はやってもらわなくてもよい。そのかわり、漁民は飯が食えないのだから——食っていけないのですよ。四月の三十日に初めてこれを発見されて、今日まで何日たっていると思うか。速急にやるとかなんとか言って、今日なおこういう状態である。しかも完全に掃海できるような状態ではない。やる意思がないのですよ。ほんとうに漁民の立場を考えて、これでは気の毒だという考え方があるのか。ないと私はにらむ。だから、もうおやめになったらよい。そのかわりに、私は、漁民大会を開かして、漁民の連中に、めしが食えないのだからやむを得ない、密漁であろうと何であろうと操業することを慫慂せざるを得ない。そういうような事態になればどういうことが起ってくるかということは予測できません。もちろん、船に対してはそれぞれ漁協の船である標識を立てさしてやらせます。そういうような事態が起ってもやむを得ませんという確言を一つしてもらいたい。どなたか御答弁してもらいたい。
  51. 大野市郎

    大野説明員 ただいまの御意見が漁民の生活権の擁護に発する御意見でございますので、農林省といたしましてお答えをいたしたいと思いますが、御存じの通りに、大へん手間がかかって、やきもきしており、部内におきましても、農林省立場においては全く同様な焦燥感をもちまして督促をいたして参った次第でございます。なお、委員会において非常に御熱心な御討議をいただき、本日の委員会でようやく解決策の具体的な内容を経過報告として申し上げる段階に至ったのでございますが、千五百万円が妥当であるか、さらにそれ以上の費用がかかるかということは、赤路委員お話の中にもございました通り、積算の基礎の考え方の相違もあるのですから、御趣旨はわれわれも全く同感でございますが、一歩前進せしめますために、ただいま調査室の方で取りまとめました具体案が一日も早く実現できますように、しばらくこの問題に対しましてそういう趣旨で一つお見守りを願いたい。
  52. 赤路友藏

    赤路委員 大野次官の話、一応了解いたしましょう。そのかわりに、私はここでもう一度御答弁願わなければならぬ。千五百万という金額が一応出た、これでやってみたところがどうにも十分でなかったという場合はどうされますか。出したんだから打ち切りだというんでは何ともしょうがないんですからね。
  53. 大野市郎

    大野説明員 ただいま調査室長が代表して中間報告をいたしました内容は、一つの積算基準を立ててやったことでございますが、万一それが効果をあげないということになりますれば、これは当然第二段に問題が起きるのでございますから、万一そういう問題が起きまするならば善処をいたします。
  54. 赤路友藏

    赤路委員 了解しましょう。そのときはそれで善処していただきましょう。  それから、大島さんにちょっとお尋ねしますが、半額を補助金として出すということなんですね。あとは県の方で出せという形になると思います。もちろん、県民のことですから、当然県の方でも何らかの形で考えるということは筋かもしれないが、しかし、これは県の方に話し合いができていますか。県は了解していますか。
  55. 大島寛一

    ○大島説明員 水産庁から県の方には連絡をしてもらっております。
  56. 赤路友藏

    赤路委員 返事はまだ来ないでしょうか。
  57. 西村健次郎

    ○西村説明員 これはごくきわめて最近こういう一応の結論が出たものですから、まだはっきりした返事は参りません。
  58. 赤路友藏

    赤路委員 県の方でこの半分を負担せよと言ったって、ちょっと今の和歌山県の事情から言ったら無理じゃないかと思う。もしそういう場合はどうなりますか。国がこの二分の一補助、県があとの二分の一を負担しなかったら、やらぬということになるのか、どうなるのか、その点ちょっとお聞かせ願いたい。
  59. 大島寛一

    ○大島説明員 御説明いたします。  本件につきましては種々の角度から検討した次第でございまして、政府として責任はないという議論はあるのでございますけれども、なおかつ、漁場を確保するために、掃海に国として広援助をすべきであるということに相たりまして、援助をしようということでございますので、国としましてはその二分の一を補助するのがぎりぎりである、従って、県の財政負担という問題もお話のようにあろうかとは存じまするけれども、やはり地元のことで二ざいまするから、県が他の二分の一を出されることを期待いたしまして、政府としましてはぎりぎり二分の一まで補助しようという考え方に立脚しまして、先ほど御説明したような結論を得たわけでございます。
  60. 赤路友藏

    赤路委員 私はもう議論はやめます。今の大島さんの言葉の中にも、国としては責任はないという議論もあったということなんですね。だから、この点議論をすればまた議論になります。しかし、今のあなたの御説明からいくと、お涙ちょうだいということですね。まことに何か変な形になるんですよ。物を施しておるような形になる。これはそういう性質のものじゃない。少くともない。これはもう議論はしませんが、責任がないという議論は間違いだと思う。法律上の手続は一応とっておるし、やったのが一つ個人の会社ですから、そういう法律論の上に立って、これは責任がないという議論が…てくる。現実の問題として、法律に欠陥があれば、それは少くとも政府の方で責任はとるべきである。法律の欠陥によって生じたものであるから、これは当然だと思う。法律を作ったときにおける概念と違った結果で国民に対して非常に損害を及ぼしておるということになれば、これはやはり責任がないというのでなくして責任がある。だから、施すという形ではない。当然責任においてやるべきものだと解釈している。この点は、いろいろ法律論にもなりましょうから、これ以上は申し上げません。一応とにかく結論らしきものを得た、これを直ちに実行に移す、こういうことに尽きると思います。別段答弁は求めません。  私の質問は終ります。
  61. 丹羽兵助

    丹羽(兵)委員長代理 田中織之進君。
  62. 田中織之進

    ○田中(織)委員 本件については、赤間委員から熱烈な質問がありましたので、私あえて重複的な質問をいたそうとは考えません。しかし、赤路君からも指摘しましたように、本件の事故が発生いたしましてからいよいよこれが掃海に着手するまでということになりますと、優に四カ月を経過することに相なるのであります。四カ月の間、調査だけは、本委員会で取り上げて、きわめて早急に、この種の調査をこれだけ迅速にやってくれたことはほかに類例を見ないくらいで、われわれは感謝しておったのでありますが、出してくれた結論には、これほど粗末な結論はないと、私、あきれ返ってものが言えないような状況なのです。  そこで、大島審議室長の言われる、国には責任がないという前提の上に立って、国には責任がないものを何で千五百万円の範囲内で国が二分の一補助するというのですか。どこを押せば国に責任がないと言えるのですか。国に責任のないものを、国民の血税である千五百万円の半額でも何であなた方は出すのですか。国に責任がないという根拠をはっきり答えて下さい。
  63. 大島寛一

    ○大島説明員 御説明いたします。  先般来各省からそれぞれの御質問につきまして御説明申し上げた通りでございまして、国としましては、火薬類が海に捨てられまして漁業に非常に妨害となっているということは、火薬を捨てる衝に当った民間の者の責任であるという考え方でございます。しかしながら、現に、先般来の委員会の御審議において御指摘もございましたように、漁業の障害になっている次第でございますので、この障害を国として排除するにつきましてできるだけの援助を与える見地から、先ほど申し上げましたような補助を出そうということに踏み切った次第でございます。
  64. 田中織之進

    ○田中(織)委員 これを一番最初に取り上げたときに、きょうも御出席になっている海上保安庁の和田次長が——やはり、海上保安庁の任務としては、ただ単に海上保安庁は海難事故の問題ばかりの所管の役所ではないのです。だから、火薬類取締りの法令に基いて海上保安庁の方で投棄場所を指定しておるのです。従って、少くとも、それが投棄する指定場所に参るまでの間に火薬のことでありますからどういう事故が発生するかもわからないのだから、そういうようなことについても海上保安庁がやはり管理、指導しなければならぬ責任があるわけなんです。その意味において、指定場所に投棄されたかどうか、その投棄するまでの間に爆発等の事故がないかどうかというようなことを確認するのは海上保安庁の任務であることは言うまでもないと思うのです。従って、海上保安庁はこの投棄する中国化薬の船が指定場所まで持っていって捨てるかどうかということを確認するところの責任が欠けておるということ、このことは、和田さんが、一番最初にこの問題を取り上げて、前々回の委員会で、これは海上保安庁の責任だということをはっきり述べているじゃありませんか。これは国の責任でなくて何ですか。あなた方は、前段に、これは国の責任ではないのだと言うが、そんなばかなことはありませんよ。それでは海上保安庁の任務は何ですか。
  65. 和田勇

    ○和田説明員 海上保安庁といたしまして、この火薬数を投棄します際に十分関係者に注意をいたしまして、本来ならば十分巡視船がございますれば現場まで指導するということが万全の措置であったわけでございますが、今までの数回にわたる注意によりまして、指定海面に投棄するということが間違いなく行われるであろうというふうに確認いたしましたし、また、ちょうどその際巡視船は他の業務もございましてついていかなかったのでございます。その結果、実際には指定海面まで行きませんで火薬類を投棄したということになりまして、漁民の方々に非常に御迷惑をおかけしたことになったわけでございますが、こういったことにつきましてまことに申しわけないというふうに申し上げたのでございます。
  66. 田中織之進

    ○田中(織)委員 今の和田さんの答弁は、やはりこれは国の責任だということなんです。行政の責任なんだということなんです。あなた方が習った法律知識で、これは国の行政の責任でないという解釈ができるのですか、どうなんですか。しかも、この中国化薬は佐伯湾で前科一犯を犯しているではありませんか。現にこれも問題になっておるのです。しかも、国土開発会社との関係で中国化薬に請負わせるという業者の指定の問題について、私の調べたところによると、海上保安庁はまるっきりノー・タッチではありませんよ。従って、これが指定場所に完全に投棄せられれば、こういう事故は発生していないのですから、それまで見きわめるということをしないならば、何のために海上保安庁を置いているのですか。
  67. 和田勇

    ○和田説明員 田中先生のお言葉を返すようでございますけれども、指定海面に私の方の巡視船が行きまして現場まで指導しなければならぬという義務は、海上保安庁としてはないわけでございます。従いまして、出港する際に十分関係者に注意を与えて、それで、火薬類の投棄を確実に指定海面でできると確認いたしましたので、そうしていただいたわけでありまして、現場まで巡視船がついて行かねばならぬという義務はないわけでございますので、この点御了承いただきたいと思います。
  68. 田中織之進

    ○田中(織)委員 それでは、和田さん、あなたの前々回の委員会で答弁されたことと食い違いますよ。私らの聞いたところによりますと、途中の明石沖までは海上保安庁の船はついてきた、しかし、途中から引き返した、こういうことをわれわれは関係者から聞いたものですから、委員会で率直にそのことを申し上げたら、何かやはり責任を感じているという立場からそういうことを現場の者は申したようでありますけれども、随行はしておりません、しかし、本来ならば、完全に責任を果すという点から見て、指定場所に投棄されるかどうかということまで海上保安庁としては見守る責任があるということは、あなたは前々回の委員会の速訂録ではっきり答えられておりますよ。私もまたそうだと思うのです。これは途中で爆発の事故はありませんけれども、途中どんな形で、船が衝突するなり、どんな海難事故が発生するかもわからないじゃないですか。現実に、何万という漁業者、家族を入れれば十万をこえる漁業者が現実に漁業ができないのです。それで、この火薬の投棄された部分を避けて操業する関係から、他の漁区を侵犯するという問題がひんぱんに起って、収拾がつかない事態になっているのです。これは国の行政の責任でないということは、私は断じて言わせない。国の責任でないものを何であなたたちは国の金を出すのですか。国の金を出さなければならぬという点については、大蔵省主計官も、この間来られて、民事訴訟でやりなまい、——ふざけたことですよ。あなたたちの預かっている金は自分の金じゃないでしょう。これはやはり、行政の責任において漁場を確保するということ、それ以前の問題があると思うのです。赤路君も指摘されたように、あるいは火薬取締法等で、陸上においては採石なんかに使うわずかばかりのダイナマイトの管理なんかについてもどれかけやかましく言っていることか。ですから、ちゃんと、海上保安庁が一定の水深のところでいろいろな方面に被害を及ぼさないところの投棄場所の指定というような行政措置をとることを法律できめているのではないですか。それなら、和田さんに伺いますけれども、指定場所へ行って間違いなく投棄されるという保障なり確認がどういう形でなされたのですか。具体的に述べて下さい。
  69. 和田勇

    ○和田説明員 その点につきましては、関係者を呼びまして十分注意を与えてございます。  それと、もう一つ御了承を得たいと思いますのは、先ほど田中先生から、明石沖まで巡視船が行って、そこで引き返したというようなお話がございましたが、これは私の方でも当時一部の関係者からそういう主張がございました。そこで、これを再三調べてみましたところ、さような事実はございません。巡視船は初めから行っておらないのであります。これは御了解を得たいと思うのです。  それから、七月三日の私の答弁を今見ましたが、仰せのように、親切なやり方といたしましては、現場まで同行するというような措置がとられておりますればかようなことは行われなかった、ところが、実際の問題としましては、私どもの確認の仕方が不十分であって、現実には火薬類が投棄された、それで、関係者の皆様に御迷惑をかけておることは、われわれ監督者としましても、また現場の者としましても申しわけない、というふうに申し上げておりまして、直接海上保安庁の業務に関係して、私どもの義務違反と申しまするか、そういうような点からは突っ込まれるようなことはないというふうに申し上げたのでありまして、親切な行政のやり方でなかったために皆様に御迷惑をおかげしたのは申しわけないというふうに申し上げたのでございます。
  70. 田中織之進

    ○田中(織)委員 あなたの方では、そこまでやることは親切なやり方だ、通常やらなくてもいいというふうに考えているかもしれませんけれども、国民全般は、そこまでやるのが、少くとも本件については海上保安庁の当然やるべき義務だ、これは国民の方ではそう受け取る。その意味で、全然国の行政の責任がないというような——もし民間会社が補償しなければならぬ責任があるならば、国の名において民間会社から取り立てる方法だってあるじゃないですか。そこまでやるだけの国は責任がある。もし、国が費用を出すことについて、どうしてもこれには筋が通らぬ、こういうことであるならば、掃海のための費用は一時全額国で出しておく、1−民間会社が当然払うべきものであれば、国がとにかくその立場に立って、被害を受けた広範な漁民の立場代表して国が民間会社に請求すればいいじゃないですか。やって悪いということはないでしょう。その点はどうなんですか、大島さん。
  71. 大島寛一

    ○大島説明員 国が責任があるかないかという御議論でございますが、私どもいろいろな角度から検討しました結論といたしまして、御議論に対しまして反することを申し上げて恐縮でございまするが、国としては責任がないということではございまするが、しかし、先ほども申しましたように、漁民が実際漁業ができなくて困っておる、この漁場を確保するために妨害物を排除しなければならないということでございまするので、そのために援助をしよう、こういう趣旨でございます。義務がないから国は何もしないでもよろしいということでは、これは実際の事態を救うゆえんではございませんので、義務はありませんけれども、やはり、国としては、漁業を維持するために、漁場を確保するために補助をしよう、こういう趣旨でございます。
  72. 田中織之進

    ○田中(織)委員 国は責任がないけれども漁場を確保する立場で出すということになりますと、あなたがあまりそういうことを強調することは、この支出は先で問題になりますよ。それだから、あなたたち役人が自分の当面の責任だけを糊塗して、そういうことに支出する、こういう文言が出たということになれば、当然これが支出された後においては会計検査院で問題になりますよ。しかし、あえて僕はその点をここで諸君と議論をするつもりはありません。しかし、あなたたちがそういうことを言い切ると、何か責任があると言ったら田中委員からもっと出せと言われるという、そういう、バナナのたたき売りではあるまいし、そんなけちな考えを持っていませんよ。僕らは、先ほど赤路君も言ったように、この程度のものなら、これは実際に掃海も何もできませんよ。大野農林政務次官が、とにかくこれでやってみてで貴ない暁には第二段の問題として善処するということを言われているから、僕はもうこの内容の点についてはあまり立ち至って言いませんけれども、あなたたちの積算の基礎だって一体一回の操業で平均して何個揚けられるというのですか。現在まだ八千何個残っておる。それについても、確かに、和歌山県から出してきた資料の中にも、砲爆弾というものは数から言うと七千四百九十一個あるわけなんです。これはこの間も私が問題を申し上げたのですけれども、とにかく、新しい爆弾であれば、それから火薬を抜いて国土開発にその火薬を売っているんですよ。この砲爆弾というものは、もうとにかくケースが破れかかったり何かして、投棄しなければならぬようなものなんです。それだから、かますや本箱に詰まったと同じような形でこの七千四百九十一個という砲爆弾本投棄されているんですよ。そして、カーリット二百八十ケース、ロケット用火薬が百かます、須佐丸のものが、爆薬が千百九十二ケース。この間も奥原前の水産庁長官が見えられて、その中で六百何十個を引き揚げているから、あとは千個足らずしかないんだというふうな考え方のもとに、できるだけ出す金をしぼろうという計算であなたたちはやられた関係ですけれども、たとえば、砲爆弾のようなものは漁業に関係があるかないかとか。そんなものに充填されている火薬でも、ここに出ているカーリットと同じような立場で漁獲物にすぐ影響を及ぼすような状態のものなんです。そんなものでなければわざわざ莫大な金をかけて捨てないです。そういう通常あなたたちが考えられるような状態の完全な爆弾であれば、船へ積んで捨てにはいかないですよ。それだから、砲爆弾の形にはなっていて本、形がくずれかかっているとか、鉄分のところがさびてぼろぼろになっておるとか、そういうような形のものを投棄しているんです。従って、先ほど旅路委員指摘をいたしたのでありまするが、前回小川海上保安官が説明された中では、同じ幅、同じ長さの、従って百八十平方キロを、一回に五メートルずつ一日三回掃海するということに対して、今度は回数は違ってきて、操業の度合いというものは能率的だということで和田さんは逃げられましたけれども、一体、一回の掃海で平均何個引き揚げられるか、そういう観点から見て、これを一隻の船で全部掃海するというと何日かかるというような計算をされたことがあるんですか。ただ掃海するだけで、こういう投棄された火薬類あるいは砲爆弾が引き揚げられようが何しようがかまいなく、とにかく掃海すればいいという計算ではまさかないと思うのですが、一回の掃海で大体何個程度のものが引き揚げられるものと見てこの積算を立てられたんですか。その点をもう一ぺん説明してくれませんか。
  73. 和田勇

    ○和田説明員 御説明いたします。  この計算は、一回やって何個引き揚げられるという考え方で計算したわけではありませんので、長官から先ほり御説明がありましたように、六キロと三十キロのところを横に引いていけばみな掃海される、引き揚げられるのではないか、こういう計算でございます。それで、過去の試験掃海をやつみときには、五十四回ひきまして二十一個揚っております。そういう計算の方法もあるかと思いますけれども、そうすればもっと金額が非常に少くなるのではないか、かように考えられるわけでございます。
  74. 田中織之進

    ○田中(織)委員 五十四回の中で二十二個引き揚げられているという計算人らいけば、もっと船と日数がかかる計算になるんです。砲爆弾というものはあなたたちは完全な形状のものが投棄されていると思っている。今までそういうような形のものは揚がっておらぬことは事実なんです。そんな形のものは捨ててないから揚がってくるはずはないですよ。従って、現在揚ってきているような形のものがまだ八千何個あるという形なんです。それを今言うような形でまず二回に一つしか揚らないという計算でいく場合には、かりに八千個としたって、これは回数がおのずから出てくるじゃありませんか。従ってそういう点については、ただ百八十平方キロのやつを幅の狭い方を東西でありますか南北でありますか一回ひくという形で網を引っぱればいいということでなくて、これは揚げなければならぬのですから、完全に揚げていただくことを関係の漁民としては熱願しているわけです。ほかの問題もあるようでありますからこれでやめますが、先ほど赤路君から、とにかくこれを一日も早く実行に移して——私らはこれではとうていできないと考えております。少くとも国の方で千五百万円は見てやる、あとそれに見合うものを県が出せということで、三千万近い経費を見られるということであれば、この間の海上保安庁の案のように一応いけるのじゃないかとも考えられるわけなんです。また、現実に和歌山県の財政の状況から見て、この関係で七百五十万円の地元負担を——沿岸漁民のことでありますから、知事としても特に考えてもらうようにわれわれからもお話をいたしますけれども、これはなかなかむずかしい問題です。  そこで、先ほど赤蹄君の質問に対して農林政務次官の方からは、とにかくこれを実行に移してみて、それでも片づかないということになれば第二段の問題を考える、こういうことを言われたわけなんですが、その点、幸い奥村政務次官がおられますのでお伺いしますが、これは具体的に水産庁の指導のもとに和歌山県がやることになると思うのでありますが、私ら必ず第二段の策を講じてもらわなければならぬような事態になると思うのでして、その場合に農林省から連絡があれば、大蔵省としても、そのときには、今度のように時間をかけないで、一つ早急に掃海が完結できるように、財政的、予算的な裏づけについて配慮願いたいと思うのですが、奥村次官から一つその点についての確約を賜わりたいと思います。
  75. 奧村又十郎

    ○奥村説明員 お答え申し上げます。  先ほど赤路委員からも、また田中委員からも今いろいろ述べられまして、御不満な点もごもっともと思いますが、しかし、また、役所の方といたしましても、これは農林省、海上保安庁、また大蔵省、総合して内閣審議室の方で中心になってやっておりますが、実はずいぶんいろいろと心配いたしましたので、今の質疑応答の間に実は私ども政府委員もずいぶん苦しい、また気の毒な答弁をしておるのです。それはなるほど御不満な点もございましょうけれども大蔵省といたしましては、まず第一に、これに対して金を支出するについてもっと早く出したらという御意見もございましたけれども、やはり、中国化薬がやったことでありますから、中国化薬に対してどういう責任を負わすかということも、これはやはり国の立場として検討し、金を出すについても、幾ら出すか、どういう形で出すかという、これは釈迦に説法でなんですが、ずいぶん苦心惨たんして今日に至ったわけでありますから、その点はどうぞ政府の苦しい立場も御了承賜わりたい。  最後に、私に対する御質問に対しましては、これは大野農林政務次官の御答弁の通りでありまして、これは和歌山県がやっていただくことでありますので、県がやっていただいて、その上で、これじゃ不十分だ、この上もう一つこうしてもらいたいということであれば、今までにもう十分いろいろ検討し尽した問題でありますから、今度もう一度ということになれば、それは決定は早いと思います。ただ、しかし、やらぬ先に、だめならまたもう一ぺんやろうというふうなことを軽率に申し上げるということもいかがかと存じて、黙っておった次第であります。その点御了承願いたいと思います。     —————————————
  76. 丹羽兵助

    丹羽(兵)委員長代理 愛知用水公団事業問題について質疑の通告がありますので、これを許します。足鹿覺君。
  77. 足鹿覺

    足鹿委員 愛知用水の事業につきまして、先般のいつでありましたか、七月八日ごろであったと思いますが、われわれ現地の調査から帰ってその調査の結果を報告しました。それに基いて愛知県当局なり公団当局を多数御出席を願いましていろいろと調査検討を進めたわけであります。その際に重要な問題として大臣に御質問申し上げたのですが、どうしても繰り合せがつかぬというのでそのままになっております点がございますので、きょうはまずその問題からお尋ねを申し上げ、なお三点ないし四点について最初に大臣にお尋ねを申し上げたいと思います。  いつも申し上げるのでありますが、私は、この問題に対しては地元関係はないし、きわめて公平な立場から問題を取り上げておるつもりであります。と申しますのは、日本における総合開発としては最近最も大規模なものでありますし、また、その農業関係の面から見ましても、開田、開畑等の問題もありますが、特に畑作の振興という立場から非常に大きな面積が対象になっており、その成否は非常に注目されておる点でありまして、この愛知用水の成果があがるかあがらぬかということは、今後の日本の農産資源あるいはその他の産業開発の上から言いましても非常に大きい問題を投げかけると思うのであります。そういう点からこの問題を私は特に重視してお尋ねをするわけであります。昭和三十年にこの法案を審議しました際に、どうも資金の調達の面において非常に安定性がない、また、公団法という特別な法律を作って仕事をしなければならぬのか、あるいは特別会計でもやれるのではないかといったような点も議論したのでありますが、何しろ審議の時間がなく、むしろ、この事業によって水没する農家の救済であるとか、あるいはロックフィル工法に基く堰堤の問題とか、そういった点に審議の重点が置かれまして、肝心な、完工後における営農との結びつきとか、あるいは工業用水との調整の問題とか、いろいろそういった点で十分審議を尽すいとまがなかった。そういう点は私どもも反省をいたしておるわけでありますが、いずれにしましても、意義ある仕事でありますので、いろいろ、外資導入の面とか、問題はありましたが、私どももこれに賛成をした、こういう経過であります。ところが、私どもが当初案じておった、水没農家、あるいは関連する水路、あるいは支線水路、その他、ため池等の敷地につぶれるその補償といったような点は比較的うまくいって、途中仮堰堤が二回も切れたというような事情もありますが、とにかく一応その面においては現在順調に進んでおる。特に、幹線水路のごときは、非常な突貫工事で、一時案じられておったにもかかわらずその工程は非常に進んでおる。が、支線水路になりますと全くこれは停頓状態である、こういうわけでありまして、今後現状からしますといろいろな問題があるように思うのです。  そこで、最初に大臣にお尋ねをしたいのでありますが、現在の公団の目的は、農業用水を主たる目的とした事業団体、特に建設公団的な性格を多分に持っておるようであります。ところが、最近、あとに触れますが、私ども現地を見まして、伊勢湾あるいはあの近郷、名古屋近郷の鉱工業の異常な発達のために、情勢が著しく四年前よりも変ってきておる。そういう点から、大きな製鉄工場が設置されようとしたり、あるいは当初計画しておったような工業用水では間に合わないほどのいろんな工場の施設が次々と計画をされるというような情勢からして、この公団の主たる目的であった農業用水を供給するという基本的な性格が貫けるかどうかということを私どもは切実に感じておるわけであります。大体そういう現状の中にあって、大臣はこの愛知用水公団事業についてどのような御所信を持っておられるか。要するに、農業用水を主たる目的としたこの公団の性格をとことんまで貫いていかれるのかどうか、最初にこの点一つ承わっておきたい。
  78. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 申すまでもなく、愛知用水公団は、畑地潅漑等を含めまして、日本としては画期的な大規模な水利用計画をやって参りたい、こういうことで始まったものでございます。     〔丹羽(兵)委員長代理退席、委員長   着席〕 それに対しまして、その近辺に工業建設計画なんかが多々できているということも伺っておる次第でございますが、まだ、私自身といたしましては、その工業の計画に対して愛知用水の水をどういうふうに協力してもらいたいのだというような具体的な話を伺っておりません。私の一般的な考え方といたしましては、工業の繁栄すること、もとよりこれは歓迎すべきであり、さような計画がありますれば、これは政府としても大いにこれを助成するという立場をとるべきだというふうに考えておりますが、しかし、愛知用水公団は農地の必要な水の利用というところに発足いたしておりますので、この目的に沿わないような水の利用方法というものが出てくるということは、私といたしましては、これは希望せざるところであり、また、これを避けなければならぬというふうに考えておるわけであります。ただ、愛知用水の所期の目的を達し、しかも工業の発展に寄与し得るというような方途があれば、これを何も拒む必要はない、かような考えを持っております。
  79. 足鹿覺

    足鹿委員 全く私もその通りだろうと思います。私も別に工業化を阻止したりどうこうという考えは毛頭ない。が、現実において農業用水としての性格がだんだん減殺される傾向にあるし、また、近い将来において、現在われわれが見てきたところによりますと、もうそれは必至の情勢にあるように思うのです。この間この委員会に愛知県知事にも御出席を願っていろいろ聞いたのですが、もう頭から、この愛知用水の水を残ったものはみんなもらう、そして足らないのは別にその他の水を開発するということで考えておる。もう既定の事実として、工場を誘致したり、その必要な敷地の提供に努力をしたり、どんどん実際は進んでおる。公団に聞いてみると、いやそういうことはわれわれは一ぺんも相談を受けたことはない、また、受けてもどうこう言う権限はないと言う。農林省に聞いてみますと、陳情はあるけれども、公団にそういうことに対して諾否を指示した覚えはないと言う。こういう中にあって、どんどん現実は工業化一辺倒のような形で進んでおる。そういう情勢なのです。これは一ぺん大臣もごらんになりますと実感が伴ってくると思うのですが、とにかく、現状においては、当初の性格というものが著しく変らざるを得ない実情にありはしないか。しかも、一方、営農と結びついた、水が通った後における利用方法等については、全く計画がないにひとしい。いろいろな点は努力しておる点は認めますが、地元の農民はだんだん考え方が変ってきておるのではないかとすらわれわれ思うのです。そういう中にあって、それならそれで農民の負担をうんと軽減して、頭から性格の変更をするというふうに割り切れるならば、これはまた別途な角度からわれわれも検討した方がいい。しかし、どう言ってもこう言っても、性格は変えぬのだ、余ったものだけでやるのだ、こう言われますと、現実がもうそういうことではない事態になっておるわけでして、そこにどうしても私どもは納得がいかぬわけです。これはあとで触れますが、そういった点で、これは一つ大臣が就任されて新しい立場で、よくこの実態の上に立って、御判断になり、今後の方針を樹立してもらいたいと思います。  第二は、国土開発、特に農産資源を中心とした開発方式についてです。現在愛知用水は公団方式がとられておる。また、森林関係においては林道開発を中心として森林開発公団が設けられておる。また、北海道の根釧あるいは青森の上北というようなところは機械開発公団方式がとられておる。今取り立てて注目しておるのは愛知用水と森林開発公団と機械開発公団のこの三つなんですが、この機械開発と愛知用水には外資関係が今まであったわけですが、森林公団は純然たる国内の資金でやっておって、ちょっと性格は違いますが、この愛知用水を公団方式によって立案された当初、これは世銀の融資を受ける、また、余剰農産物の見返り円を使わなければならぬ、また、一定期間に工事を完工しなければならぬというような意義を当局は力説されまして、好ましくはないがやむを得ぬという態度で私どもは公団の発足に同意を与えたわけなんです。当時私はなぜ特別会計方式でいけないのかということについて相当議論をしたわけですが、時間がないためにそのままになってしまった。ところが、この見返り円にしましても余剰農産物は先年来打ち切られますし、世銀の金にしてもわずか三十六億ばかりで、あとはみな国民の預貯金の運用部資金その他が中心になって使われておる。当初考えられておったような、外資を導入するとか、あるいは金利の安い見返り円を使うとかいうような条件は完全になくなってしまった。公団を必要と力説する根拠は二つながらくずれてしまっておる。世銀の金にしましても、わずかばかりの金がほとんどアメリカの機械を買うというひもつきの融資であります。それから、向うの技術者を招くという、これもやはりひもつきと同じような形で、全く残念ながら、当時私どもが資金源が非常に不安定だという点を指摘しておった通りの状態になってしまった。従って、今度は金利の変更によって農民負担が引き上げられた。こういう実情にあるわけです。これは機械開発公団の場合でも似たり寄ったりのようなところもありますが、大臣に特に承わりたいのは、こういう開発方式というものについてどうお考えになるか。どうも、林野庁は林野庁、農地局は農地局ということで外郭団体を作って、そうしてばらばらに仕事をしていくのがよいのか、——もっと能率の上るいろいろな方式を検討しなければならぬ段階が来ておるのではないかと私は思うのです。たとえば、この間現地を見たときに、今年の初めには技術者を中心として六百八十人の陣容を持っていて、これは政府の方から派出された者もあるし、地方庁から出てきた者もあるが、その人々が私どもへ悲痛な陳情をしておった。中央に帰る者はあるいはポストがあるかもしれぬが、地方庁からここへ出向してきた者はもう帰ってもポストがない、こういうことでは不安で、身分の安定もないし、行き先についても希望が持てぬ、何とかしてもらわねば困るという悲痛な陳情をしておる。こういう技術者の不安は能率の低下にも私は相当及んでおると思う。これらにも安心を与えると同時に、日本で初めてのまとまった技術を身につけたこれらの諸君をどう生かしていくかという現実の必要から迫られた跡始末の問題が、もう一年後の完工した後においては出てくるわけです。そうした場合に、今後の総合開発方式、特に農産資源を中心とする国土の開発方式について、この際基本立場に立って検計をし直す必要があるのではないかと思うのです。そういう点からこの間も力説したら、今すぐに公団をやめるようなことを言われては困るというのですが、私は今すぐとは言いません。現在もうすでに仕事にかかっており、もうあと一年で完工するというのですから、これを今さら言っても始まりませんが、少くとも、実に非能率といいますか、膨大な機構を持って、私どもが見ましても官庁能率よりもまだ劣るような、しかも地元の愛知県その他からはほとんど連絡協議も二、三回くらいしか受けないというような取扱いを受ける。政府なら政府として一つの権力を必要とする場合には思い切って使えるでしょうが、その権力もない。出先からは軽く見られ、使っておる職員の技術者はもう先のことを心配して仕事にあまり実が入らぬ。こういう状態で、公団方式をとった意味というものは、どういう角度から見ても、失敗とは断言できませんが、少くとも成功したとは言えないと思うのです。そういう見地から、農林大臣は、今後の日本の農産資源の開発という点について、もっと基本的な立場に立って、この愛知用水を一つ教訓としてやられなければならぬ段階が来ておるのではないかと思います。愛知用水自体が失敗だったか成功だったかということについて、それを追及するわけではなくして、むしろ、今後一体どうされるのか。北海道、東北、どこを歩いても未開発資源は至るところにころがっておる。これに愛知用水につぎ込んだような三百数十億というような資金を入れ、すぐれた技術を入れれば、至るところにまだ未開発地域がたくさんある。それを今後開発していく場合にどうあるべきか。たとえば、これは大臣の所管ではありませんが、特定地域総合開発というものが全国で二十六カ所くらい、私のところでも一カ所指定を受けておる。ところが、これが三〇%から四〇%程度の仕事の進度です。しかもそれは一般行政費でやった仕事も全部含めての計算をやっておる。特定地域の指定を受けた地帯にしてみても、全然特定な予算というものはついておりません。若干予算上の優遇を受けるという程度にすぎない。こういったことから、特定の開発指定地域を作っても遅々として一向進んでおらない。継続で仕事を始めたものでも、その進度は一向にはかどらない。こういう中にあって、ほんとうに日本の農地を拡大して適正規模にする場合でも、あるいは共同経営にする場合でも、あるいは一般農業政策の中で後進性の強い畑地対策をやっていく上においても、まず土地の造成なり、あるいは大規模な土地改良なり、あるいはそれに関する施設なりをどういう形で今後進めていかれるか。これは愛知用水が私は非常にいい教訓を与えておると思うので、そういう点から、公団方式にかわる——ではどういう考えがあるかといわれますと私自身もよくわからぬです。だが、その後において特別会計方式でけっこう進んだ事業もありますから、必ずしも公団方式にとらわれる必要はないと思うのです。そういう点から、一つこの際、予算の編成期を前にして、大臣のこれに対する農産資源を中心とする国土開発に必要な機構の構想を、愛知用水との関連において率直に承わりたいと思うのです。
  80. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 愛知用水事業推進するためにどういう機構がいいかということは、その当時いろいろ議論があったかと思うのです。結局公団方式ということに落ちついたのですが、その理由の一つは、これは非常に広範な事業を遂行する一つ事業体である、こういう考え方にあるわけなのです。そうしますと、これを一般の会計から分離いたしまして経理することが適切であるという考え方になるわけなのです。しからば、国の一般会計から分離して一つ事業体の会計をやっていこう、また事業体としての事業運営をやっていこうという際におきましては、従来とられておる方式としては特別会計がある、また、公団という行き方もあるわけです。あるいは、場合によりましては、これはまれに見る行き方でございまするが、特殊会社を作りまして、それに事業を委託するという方法もあるわけなのです。愛知公団の場合におきましては、そういう事情で、一般の会計ではどうもやりにくい、しからばどういう形がいいかということになりますると、第一に考えられますのは、これはあるいは建設省的な仕事もある、もちろん農林省の仕事が主体になっておる、その他いろいろな関係の仕事も含まれております関係で、ある特定の一つの省の特別会計という方式は、御承知のような政府機構でございまするから、なかなかできにくい事情になってくるわけであります。そうすると、特別会計ではどうもいかぬじゃないか、公団かあるいは特殊会社にしてやらせるということでございまするが、特殊会社というようなことは非常に異例なことでございます。かたがた、今お話もありましたが、公団なり特殊会社なりにするということの方が資金の調達圏という意味合いにおきましても適切である、さようなことで、愛知用水事業を公団方式でやるという結論に到達したものだと私は承知しておりますが、今後こういう同じ種類の事業はどういう形で進むべきかという問題になりますれば、やはり、今私どもの頭にありますのは、その三つの行き方以外にはなかろうかと思うのです。それで、仕事の内容がどういうふうになっているのか、単純な農林省的な一貫した仕事でありますれば、私は特別会計が一番よかろうかと思います。これが各般の行政事項にわたるというようなものは、一般的に公団という方式の方がいいのではあるまいか、また、ごく異例なもので、機動的にやるという性格のものにつきましては、あるいは特殊会社というようなことも考えられるのではあるまいかというふうに考えるわけであります。今いろいろ愛知公団の運営についてのお話もありましたが、さようなことを今いろいろ反省しながら、今後特定の事業について、その事業に当てはめる形は何がいいかということは、なおよく検討いたしていきたいというふうに考えるわけです。  それから、愛知公団の人がいつ首になるのかわからぬ、そういう意味から非常に非能率になっているというようなお話でございますが、これは、特別会計にそれを切りかえましても、その事情は私は変らぬと思うのです。特別会計でやっている事業がおしまいになればということに相なりますので、その関係は、公団の形をとろうが、あるいは特別会計という形をとろうが、そこには私は違いはあるまいと思います。ただ、実際問題といたしましては、とにかく、アメリカの画期的な技術をこの愛知用水公団事業には導入いたしまして、日本のこういう開発技術には非常に貢献するところがあったと思うのです。また、愛知公団の職員がそういう技術を体得しておるということも、これは私どもも十分認めておるところなんです。こういう人々の力が、この事業がおしまいになったと同時に消滅するというようなことは、まことに国家的損失でありますので、そういう技術なり人の力なりというものの国家的活用ということにつきましては私どもも十分考えていきたい、かように考えておる次第であります。
  81. 足鹿覺

    足鹿委員 そういう御答弁だろうと思うのですが、その技術者ですね。建設公団としての任務を一応終って、今度は管理公団にするのだというようなお話も伺っておるのですが、管理公団という大げさなものは必要ない。そういうものなら、名古屋には農地事務局もできたのだし、何かそれとの関連において国が管理するのが適当だというならばその点で考えられる。管理程出のものであれば、これを地元の愛知県に委託してもいける。ただ、問題は、その技術者たちが今後身分の保障がどうあるかということが一番問題なんです。この間北海道へ行って聞いたことなんですが、パイロット・ファームにしても、実際の機械はフルに動いておらなかった。力が余ってしょうがない、もっと仕事を与えてもらいたいしいうことなんです。愛知用水だけでも、アメリカから入れた機械類は高い。十三億一千万円くらいになるのです。もっと上回っておると思いますが、その機械が、あの仕事がもう一年後に完工して済んだらどうなるのですか。どういうふうにこれを活用するのですか。世銀のひもつきの金を借りて、そうしてこの仕事が済んだら、一体どういうふうに活用するのか。根釧にしても数年後には全部済む。上北にしても全部済む。一体それはどういうふうに始末されるものか。大きな機械を入れるために道路を作ったり鉄橋を作って、今までの木橋やその他の橋梁では間に合わぬというのでわざわざ橋をつけるというくらいの大げさなことをして機械を入れて、一応任務が終了したらそれなりにその負担も永劫にわたって農民が受けたりあるいは工業その他の受益地帯が受けるというようなベらぼうなことはない。非能率だ。それを一体どういうふうに始末するのか、もう考えられても私はいいと思うのです。産業開発青年隊というものが竹山建設相当時各地にできた。いろいろ農村の次三男が勉強している実態を私ども見て知っておりますが、夜具すらない。貧農のむすこたちがそこに入って技術を修得しようといっても、ろくな宿舎もない。寝具の設備もない。一日三百円か三百五十円の日当をもらって、そうして食費に二百円近く取られて、乏しい中にも、自分たちが農業ではやっていけないから何らかに活路を開こうとしておるけれども、これらの施設は全く問題にならぬ。そういうふうに、至るところで、農山資源を中心とする国土の開発方式というものの根本が定まらない、それに伴う施設も十分講ぜられていないというようなところから来るいろいろな矛盾が随所に出ておる。これをどう収拾するかということは、国土の開発の上からも非常に大きな問題だろうと思う。私は、あなたの農業所得の倍加論に対してもこれは関連のあることだと思う。あとで事務当局に何か御構想があったら聞きたいと思いますが、この問題だけに時間を費してもいけませんが、とにかく、愛知用水あるいは根釧あるいは上北その他の技術者とその付帯する施設が今後十二分にどう活用されるかということについて、この際はっきり活用の方針を立てるのだということを承わっておけば、現地の諸君たちももっと仕事に身が入るでしょうし、能率も上るでしょう。この前、大野政務次官から、それはぜひ善処するという御答弁があったが、そういう程度でなく、もっと具体的なものが示されていいはずじゃないですか。あれから二月くらいたっておりますからね。何かないですか。
  82. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 愛知公団なりあるいは機械公団なりに働いておる人の技術の力を何とかして保存いたすということは、どうしても考えていかなくちゃならぬ。しかし、それは、先ほどから私も申し上げておりますように、公団という機構の問題じゃないのです。機構が終了した後の人の問題である、こういうふうに私は理解するわけでありますが、ぼつぼつこの事業も終りに近づきますから、私ども、それが後つたあとには、速急にこの技術者を動員いたしまして、——どういうふうな仕事をやっていくか、まだ幾らでも仕事があるのですから、具体的な構想を示して御安心を願うつもりであります。
  83. 足鹿覺

    足鹿委員 御安心願いたいということですから、おそらく現地の人々もそれを伝え聞いて安心してやるでしょう。しっかり検討されたいと思います。  第三点は、今三十五年度の予算編成に当っているのですが、聞けば農林省は省議を決定されたとかどうとかいう話であります。伝えられるところによりますと、愛知用水公団予算が、増額分が百億——この前、伊東局長は、予算の再検討はさせておるということを言われた。なんぼかということはそのとき明らかにならなかったわけですが、省議決定となれば一応の素案があるはずだと思う。どの程度のものでしょうか。
  84. 伊東正義

    ○伊東説明員 愛知用水の予算につきましては、実は非常に重要な問題がございまして、今先生が御質問になりましたように、来年度の予算といたしまして関係して参りますのは、一般会計、それから預金部資金の財政投融資というような問題でございます。実は、総額どのくらいふえるかということにつきましては、まだ、三十五年度に全部で幾ら、三十六年度に全部で幾ら、残った金が三十六年度の支払いが幾らというようなことまでは、実はこの前の省議では最終的には決定いたしておりません。実は、愛知用水公団予算につきまして、建設期間、三十五年度でございますが、それの間に一般会計から八十六億を入れるという前提で、いろいろな建設計画なり何なりが組まれております。それで、そのうち三十四年までに四十二億ついておりますので、来年度の一般会計からは四十四億入れていただくということは、これは省議できめていただいております。ただ、全部の額がまだきまりませんので、預金部資金から幾らということにつきましては、実は、大臣にお願いしまして、これはもう少し時間をかしていただきたいということで、省議では未定ということで、預金部資金の方はそういう形にいたしております。もう少し時間をかけて大蔵当局ともいろいろ話しました上で、最終的な三十五年度の予算として要求いたしたいというふうに考えております。
  85. 足鹿覺

    足鹿委員 これは非常に重要な問題なのです。当初は、他の事業を圧迫しない、そのためにも世銀あるいは見返り円を使うのだということで、これは別ワクであったわけです。ところが、見返り円の打ち切りその他によって、現在は一般農林省予算一般土地改良予算等の中に含まれているわけです。それで、基本計画に示されたものは三百二十一億二千八百万円。それが修正計画では三百三十一億というふうにふえてきております。総額として何ぼにふえるかということは見当がつかぬと言われるが、また、四十二億円程度は現在一般会計からふえるんだということなんですが、おそらく財政投融資の面ではもっと大きなものが出てくると思うのです。そうしますと、それでなくても農林省関係予算は年々圧迫を受けており、——そう言うと政府当局は非常にごきげんが悪いようですが、事実だから仕方がない。そういう状態に追い込まれておる中にあって、少くとも百億を下らぬ予算並びに財政投融資からこの愛知用水に金が抜けていくということになりますと、他の土地改良その他に対する影響がないという保証がつくでしょうか。これは、少くとも大臣の裁断によって、それはないんだ、どのように投融資がふえても予算がふえても、そういうことはないということがこの際はっきり御断言願えるかどうか。これは、私、非常に大事なことだろうと思うのです。最近の農林省予算の減り方から見まして、一つ事業に百億円をこすような増額なんというものは類例を見ませんよ。削られる分はあっても、ふえるなんということはなかなか少いときに、この事業に限ってこれだけのものが抜けていくということになると、どっかにそのしわが寄ってこざるを得ぬ、こういうふうに思うのです。その点はいかがですか。
  86. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 愛知用水公団事業費が相当ふえそうな傾向であることはお話通りです。それが農林省予算のワク内だということになりますれば他の予算を非常に圧迫することになる、これもお話通りなんです。私といたしましては、愛知用水公団は別格だ、他の予算には影響ない、こういう建前で農林予算の確保をしていきたい、こういう考えでおります。
  87. 足鹿覺

    足鹿委員 お急ぎのようですが、これはあとで局長に詰めた御質問を申し上げますが、大臣にあらあらのところだけもう一点。  冒頭に申し上げましたように、東海製鉄の敷地がきまる、あるいは日本住宅公団が鳴海地区で三百ヘクタールも宅地化を計画して確保する、とにかく大へんなことらしいですね。そうしますと、最初述べたように、これは農業用水としての性格がだんだん変り、また、付近の農村でも、水は要らぬという者も中には出てくる、そういう声もあるようです。どうも私どもがすっきりしないのは、あれだけの東海製鉄が横須賀地区を中心に面積を確保し、付属住宅設備その他の敷地等もみな手を入れておる実情がはっきりしておるにもかかわらず、そして愛知県当局は既成の事実としてぐんぐん進めておるのに、農林省は、その相談は受けたことはない、承諾は与えたことはないの一点張りでは、もう過せぬではないですか。そこで、大臣は前に自民党の幹事長もやられたし政調会長もやられたので、その間の事情を御存じになっておらぬでしょうか。これはどうも私どもは納得がいかぬのです。もう既成事実としてどんどん進んでおるわけですね。先ほども述べましたように、おかしいことには、上水道の使用料金が二十三円で、工業用水が六円五十銭、これを四円二十銭に引き下げの声すらもあるのです。全然逆ではないですか。別に工業化を阻止する必要はないわけですから、そういう事態が来るならば、工業用水の占める量がふえて、それによる受益地帯がたくさんになり、受益者が多くなっていけば、むしろそれにうんと負担をかけていく。そうして、そうでなくてもこの間の資金調達源の変化によって農民負担はすでにかさあげになっておるわけですから、こちらをうんと軽減する。反当三千三百円というような、最初高くてだんだんしり細りになるような負担計画に現在なっておるが、これは逆で、むしろ最初安くして、負担能力が出てきて営農実績もあがってくるに従って漸次ふやしていくというならわかりますが、何と言っても公団はこの点について反省しない。頭は高くてだんだん下げていくんだ、それは公団の資金運営やいろんな面から言ってやむを得ないんだと言って、聞かない。これは、大臣、非常な矛盾だろうと思う。そういう事態が出てくるならば、無理にそれを何か知って知らぬふりをしたり、黙認したかのごとくせざるかのごとき状態で放置していくということは、事態の混乱も来ますし、非常におもしろくないと思う。もっと、工業用水なら工業用水で、この程度で始末がつくという緻密な一つの計算の上に立って、農業用水も圧迫しないということでなければならぬ。しかし、工業用水の需要もこういう実態から言ってこの程度にとどまるということはわからぬと思うのです。ほんとうに当初の計画政府が遂行していく場合には、開田ではなくて開畑だったのですからね。畑地潅漑を中心とした。そのために大府農場まで作って、試験場も東海試験場の分場まで作って、あれだけ大きなものをやっておるのです。それでいて、どんどんそれが盛んになれば、水の需要量は増大こそすれ減るはずはないのです。そうすると、どこかにそのしわが寄っていかなければならぬ。その工業用水をチェックするか、農業用水を押えるか、どうかしなければ、もとは一つしかないわけですから。どうもその辺が、何か知って知らぬふりをしながら既成事実をぐんぐん進めていくという印象を受けて、非常に不明朗な感じを受けます。要らざる邪推かもしれませんが、何かこれにはあるんじゃないか。あれだけの大規模なものを東海製鉄でも思い切ってやっておる。しかも、まだ政府は許諾も与えておらぬ。表向きの計画にも載っておらぬ。どうも私どもは納得できない。そういう点で、工業用水の需要が高まってふえるならば、その工業用水の料金を上げていかなければならぬ。どうもおかしいですな。農業用水は一立米当り六十二円六十一銭、上水道、工業用水が十九円四十二銭、電力用水は四円五銭、こういう頭で、この三十年の七月二十五日の資料によりますとそういうことになっておる。こういうものも基本的に再検討して変えなければならぬ。ところが、この間現地へ行ってわれわれは不思議な資料を見てきた。関西電力はまだこの使用料金の値下げも考えておるということを聞いた。驚くべきことじゃないですか。どうも私どもは納得いかぬ。これには浅からざる何か伏在した事実があるのではないか、こう疑わざるを得ないですね。これは現地の新聞社にしてみてもそう言っていますよ。何だかおかしい。なぜこういうことに対して農林省がもっと確固たる決断をもって農民擁護の立場に回らないのか、どうも私どもは納得いかぬわけです。別に根拠があって、証拠があって言うわけではありませんから、その点は、党の大物として今日まで党務を処理してこられた福田さんとして、何かその間のいきさつがあれば承わりましょうし、また、今私が述べたようなことが間違いでないとすれば、一つその点に向って英断を下していくというような御所信が伺えたらいいと思います。
  88. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 私は、農林大臣に就任する以前におきまして、東海製鉄という問題は全然聞いておりません。初めて聞いておるわけなんです。それで、しからば、東海製鉄ができるという話であるが、その水はどうするかという問題でございまするが、私は、先ほども申し上げましたように、これは愛知用水公団の水はどこまでも確保しなければならぬ、しかし、それが余るという際に、工業が進むという方面に協力しないという、そういうけちくさい考えは持ちたくない、こういう考えです。そういう、水が余り、しかもその水を使って工業化が進むとかいうようなことが行われることは、私はむしろ望ましいことである。ということは、水を供給するには料金という問題がある。お話のように、料金をいただきまして農家の負担の軽減ということも考えられますし、また、先ほどお話のように、事業量がふえるというようなことになりますれば、勢い今までの方式でいけば農民負担がふえるということにも相なりますので、何とかしてこの農民負担の増高は阻止しなければならぬという考えも持ちますこの際とすると、余った水があり、それを高く使ってくれる人があるということは、まあいい種があるというような感じもするわけです。しかし、具体的にどこの会社がどのくらいの水をいただきたいというような愛知県当局などからの話もまだ実は聞いていないのです。これはぼちぼち向うから話がなければ聞いてみなければならぬ段階かとも思います。農民の便利本位ということを念としてこの問題には対処するということを申し上げておきたいと思います。
  89. 足鹿覺

    足鹿委員 最後に、大臣もお忙しいようですから、今の点に関連して簡単に伺いますが、かりにそういう交渉が出てきた場合には、妥当投資額の地元の振り分け問題が出てくる。そういう点の調整がつきませんからまだ最終的にはもちろんできないでしょうが、大体、当初の計画は、電力に二十億、上水道十二億、工業用水十五億、農業は二百五十四億ですよ。けたにならぬ。一けた以上もみな違っておるのです。現実の姿を見ると、ほとんど農業関係がしょっておる格好なんですね。私どもそういう計算はできませんが、東海製鉄が作業を開始して数年後に操業をフルにやる場合、工業用水にみんな使ってしまう、こういうことにもなるようですね。そうなってきますと、どこからかもっと水をたくさん取ってくる。そうすると、現在の川そのものの流量も一定の限度があって、それ以上取ることはできないでしょう。それでなくても、あのダムの次々の造成によって、木曽川の水位が下って、取り入れ口の変更とかいろいろな大工事が次々と農林省の負担によってなされておる。今までですらそうなんですね。これを無理して取って、通常必要とする水量以上に取れば、どこかにまた今度はひびが入ってくる。これは必ず農民に大きなしわが寄ってくる。今まででもそうですからね。そうすると、結局いいところは臨海工業地帯やその他の工業関係に取られて、いつもしわを寄せられるのは宿命的に農民だ、こういうことになるわけなんですが、第一、その現状からして、この妥当投資額はどの程度変更になるものですか。大体そういう想定はつきませんか。最終的な見通しはいつごろどの程度で決定しそうですが。これは大事な問題です。もう来年完工するというのですからね。どうでもやるというのですから。この前も、とにかく工期は必ず実行するという確約をもらっておるのですよ、大臣、この席上で。ですから、これはもう大臣に確かめるまでもなく、大臣にも報告があったと思う。再来年ですかの三月三十一日に完工することになっておる。われわれの見たところでは、この工期内完工ということは困難だと思います。けれども、やるというものを別にそうでないと言ってみたところでしょうがない。これはけっこうなことですから、それは一応そういうことにして、少くとも、当初計画を立てているにしろ、伊勢湾の工業開発の面とか、あの一帯の異常な変化というものは何人が見ても明らかな点でありますから、相当費用の振り分け関係が変ってこなければならぬ。変ってくれば、当然いろんな負担の関係に及んでくると思う。ぽつぽつ話があれば聞こうじゃないかというような大臣の今のお話なんですが、来年度の予算の編成ともこれは関係があるのですよ。どう処理なさるおつもりなんでしょうか。なかなかこれは問題なんですがね。
  90. 伊東正義

    ○伊東説明員 アロケートの話が出ましたが、三十二年度の実施計画をやりましたアロケートの方式は、現在の電源開発促進法に基く政令でやっておるあの方式でやっております。今御質問の、今度あるいは水を使う量の問題あるいは事業費の問題でアロケートが変ってくるのじゃないかというお話でございます。これは実は問題が二つございまして、水の使用量を同じにしたままで事業費が変った場合にアロケートをどうするかという問題もございます。あるいはまた、水の使用量が今度がらっと変ってきたという場合には、電気、工業、水道を含めましてアロケートをどうするかという、二つの問題がアロケートに関係して参ります。それで、水の問題は、実は私の方といたしましては、先ほどから大臣からお話がありましたように、あくまでも農業用水としては必要なものは確保するということがこの公団の大前提だというふうに考えております。今いろいろやっておりますが、先ほど御質問もございましたが、その後御視察でもわかりますように、開田希望があの地域は前よりだいぶふえております。そうすると、農業用水でも一億一千万といっておりますが、これは若干ふえる水の量になってくると思います。もう一つ、従来の工業用水上水道で四千五百万ということでアロケートしております。これは今後の問題でございますが、それをそのままといたしまして、たとえばこの前問題になりました東海製鉄の問題なんかどうするかということでございますが、現在わかっておりますのは、東海製鉄の水が、この前、第一期が一トンであり、最終的には三トンにするかもしれぬというような説明があったのでございます。われわれ試算しておりますのは、今の段階では、いろいろ計算をいたさせておりますが、兼山なり今渡の操作規程を変えない、結論的に言いますと、下流の水利権に支障を来たさないというようなやり方で、農業用水が若干ふえること、あるいは東海製鉄が使いたいと言っている第一期のものは何とかまかなえやせぬか、これは実はそういうようなことを今計算しております。それで、これは仮定でございますが、東海製鉄につきましては、この前私もお答えいたしました通り農業用水に支障がないという場合にはあの水路を使わすことに承協力いたしましょうということも実は私は言ったのでございますが、これはアロケートとしてやりますか使用料としてとりますか、そして農民負担の方にそれを使っていくということにしますか、今どういうやり方にするか最終的にはきまっておりません。  アロケートが最終的にはいっきまるかという御質問でございますが、先生御承知のように、電力については一万一千キロの最初計画になっておりますが、その後電源開発自体も実は通っておりません。今後の問題になっておりまして聞くところによりますと、これがまた若干変るかもしれぬというような話も実は聞いております。まだ電力につきましては最終的には詰まっておりません。これもなるべく早く詰めたいということで、公団に関西電力とかけ合うようにということを言っておるのでありますが、これも来年の予算とは非常に関係がございます。できますれば、私どもは来年度の予算のきまります前に解決したいというふうには思っておりますが、時期的にはあるいは三十五年度までに若干そういうことも残るかもしれぬと思っております。
  91. 角屋堅次郎

    角屋委員 関連して……。  愛知用水の問題につきましては、先ほど来足鹿委員から重要な点についてお尋ねがございました。短時間では専門的な分析を試みながら大臣にお尋ねするという時間的なゆとりがないわけであります。この問題については、私は主として用水関係の問題について過般知事あるいは公団の総裁等が来た場合に専門的な立場から具体的に追及をしたわけであります。今簡単に大臣は、余っている水があれば使えばいいじゃないか、こういうふうに言われましたが、しかし、愛知用水事業基本計画、そして東海製鉄等を中心にした南部、中部の工業地帯の工業用水の所要量、こういうものを彼此勘案して参りますと、簡単に余っておる水を使えばいいじゃないかというなまやさしい事態じゃないと思う。これは、今直ちにそういう事態だということではなくて今後愛知県で計画をしている工業用水所要量の五カ年後あるいは十カ年後、そういうものを展望して参りますと、これはそういうなまやさしいものではない。そこで、地下水の利用、あるいは天白川の伏流水の活用、あるいはまた矢作川の総合開発の水を東海製鉄を中心にした工業地帯に回す、こういういろいろなことが計画されているわけですけれども、そういう問題等と相互関連して考えないと、中部、南部の工業地帯の所要量というものの答えが出ない。先ほどの大臣の答弁の、農業用水と工業用水の競合の問題について、あくまでも愛知用水事業の当物計画をした農業川水の所要量については確保するという前提に立って、その他の新しい事態については対処したい、こういうお考えについては、考え方としてはそれで私はいいと思う。問題は、そういう場合に、工業用水の所要量というものは、簡単な余った水を使う、そういうなまやさしい事態ではない。従ってそういうなまやさしい事態でないという前提に立って、この機会農業川水の確保ということをはっきりやるのだという前提に立つならば、自余の総合的な計画等についてもなるべく早い機会に具体化をして、そうして、今後、総合開発の実施に伴いまして、開畑をやる者、開田をやる者、そういうところが安心して総合計画の中で協力できる体制を作らなければならぬじゃないかと思います。そうでないと、先ほども足鹿委員から指摘されましたように、最近、工業化の波に乗りまして、宅地を貰う、何を買うということで、現地でブローカー等の暗躍が出て参りますと、どうしても現地住民としては零細規模の経営であるだけに動揺する、またそういうものに乗ぜられるという可能性も出て参る。現に、率直に言って、愛知県の知事等の考え方は、工業の発展等の方に頭が相当いっておって、愛知用水事業に伴うところの今後の農業総合開発という点についての関心はきわめて薄いのじゃないかという心配すらある。そういう点から見ても、やはり、この機会に、単に農林省だけの問題でないかもしれぬけれども建設省等も含めまして、あの地帯の工業化と農業総合開発というものと関連をして、特に水の問題等については速急に具体的なプランというものを立てて、そうして現地の競合の問題についての具体的な調整というものの見通しをつけなければならぬ。同時に、この木曽の水の新しい舞台におけるところの利用という問題は、当然、岐阜、愛知、三重の三つの関係県に大きな影響を持つ問題であります。特に、下流の地域においては、上流部におけるところの水の利用という問題は、即、下流等においては潮の逆潮問題とか塩害問題等が発生する。こういうことから、農林省におきましても、濃尾の第一期用水計画あるいは今後第二期用水計画樹立しなければならぬ。こういう問題等については、やはり具体的なプランというものが明確にされなければならぬ。いずれにしましても、関係県にしろ、あるいは総合開発推進の問題にしても、農林省はほおかむりをして、具体的なそういう工業化の問題が進んでいる。そういうことに対するところの現地側における不安の問題、あるいは関係県におけるところのいろいろな摩擦の問題、こういうことはすみやかに打開をしながらやっていくという態勢になければならぬと思うのであります。そういう点で、農林大臣は非常に頭はいいのでございましょうけれども、簡単に局長あたりから、余った水を使います、そうか、その程度で済むのかというふうな考え方で、中部、南部の工業化に伴うところの工業用水と農業用水の競合あるいは下流との関係というものを把握されたのでは、大きな誤まりを犯すのではないかと思いますので、その点を大臣にちょっとお伺いしたいと思います。
  92. 福田赳夫

    ○福田国務大臣 お話、まことにごもっともなことでございます。これは、工業用水全体を含めまして、また、かつ長期の見通しも立てまして、水全体の計画を立てたい、かようにいたしたいと存じます。
  93. 足鹿覺

    足鹿委員 局長に個条的に申し上げて、資料ももらいたい。  第一は、公団は、事業実施計画について、関係各省——通産省、建設省、厚生省の了解を得て覚書を作成して、これを世銀に提出してあるはずですね。
  94. 伊東正義

    ○伊東説明員 今実施計画とおっしゃいましたが、これは、各省は、基本計画農林省の承認を得ましたあとで、いろいろな申し合せなんかいたしております。
  95. 足鹿覺

    足鹿委員 その覚書に基いて公団が造成する共用施設の使用について、電力会社または県と協定が結ばれているはずですね。その内容——配水計画、施設の操作、施設の使用料、使用料の支払い方法、ダム及び幹線水路の使用料についての契約または協定をした事実があるならば、それを資料として出してもらいたいのですが、いいですか。
  96. 伊東正義

    ○伊東説明員 わかりました。まだ先生のおっしゃいますもの全部についてはできておりませんが、あるものについては資料として出します。
  97. 足鹿覺

    足鹿委員 あるものといって、どれができていないですか。
  98. 大山一生

    ○大山説明員 ただいま御質問の件でございますが、電気との関係につきましては、先ほど来大臣また局長が申し上げておりますように、一万キロワットという当初の計画が大きくなるかならぬかという問題があるわけでございます。その問題とも関連いたすわけでございますが、牧尾ダムの管理権の問題、それから、もう一点は、兼山地点において取り入れます兼山の取水条件、この二つがきまっておりません。それから、水道の関係につきましては、公式の文書によって協定はしておらなくて、すでに当初の基本計画ないし実施計画時のアロケートでいくということがきまっております。従いまして、今先生の御要求の資料の中で、電気の関係が今申し上げました使用形で残っております。それから、使用料ということを言われたわけでございますが、これはアロケートされた金額を毎年使用料という形で公団に払うという格好になっておりますので、資金計画に申します来年度の償還額というのが使用料になるわけでございます。
  99. 足鹿覺

    足鹿委員 きまっておらぬ点は、早く、さっき言ったような情勢なのですから、当然あなた方は、そういう要求があるのですから、やらぬならやらぬとはっきりとどめをさすべきだ。そうでしょう。やるでもない、やらぬでもない、認めるような認めないようなふらふらした態度をとっておる。そういうことではいけないです。大体、こっちがいろいろ仕事をして、ごちそうはみんな別な方向べ食べられる。そういうばかげたことになりそうですな。ですから、それははっきりちゃんと資料としてきちんとしたものを出していただきたい。  それから、これは先ほどとちょっと重複はしますが、世銀との借款交渉に当って農林省はこんなことを言っておる。円資金は見返り資金を一応予定しているが、将来見返り資金の使用が困難となった場合の方針は、新規地区への支出を剛滅する等によって円資金の確保をはかる旨の説明を世銀側にしておるのです。あなた方みんなその当時の交渉の衝に当っておられるのです。これは、渡部伍良君、今の次官がやられたことだろうと思うのですけれども、そういう不届きな説明をしておるから、僕は大臣にさっき言ったわけですよ。これははっきり記録に載っておるのですから調べてごらんなさい。そういう点からも、さっき、振り分けの問題を料金の形で公団に入れさせるのだというお話なのですけれども、大体、振り分けの問題にしましても、負担基準が、電力の場合は年間約一億キロワットとしてこの際は二十億、佐久間ダムは一億キロワット時三十億円以上になっておるのですよ。同じ一億キロワット時に対して十億も開いておるのです。そういう点から、非常にこれはわれわれ検討してみればみるほど不可解千万なことがあるのです。さっきの大臣の御答弁でこれははっきりしておりますが、土地改良事業の新規地区への支出を削減するなんということを、情勢は変ってはきておりますが、そうしてでもこの円資金の確保をはかるというような公約あるいは説明を世銀側にしておる実情から見ても、一つ腹をきめてやってもらいたい。最終的な振り分けは今のところわからぬということでありますが、早急にこの問題については最終的なものを御提示を願いたい。  それから、次は、大蔵省との申し合せ事項というものは、農民の年間償還額は、年純収益の範囲内において他の国営土地改良事業地区の受益者とあまり均衡を失しないようにして定めるということになっておるのです。今度の予算の増額が何ぼになるかわかりませんが、増額分が一応きまったときに農民負担にどういうふうに影響するのか。これは影響しないでしょうね。おそらくしないと思うのです。さっき言ったような方針でいけば下らなければならないような方針なのですから。それで、他の土地改良事業地区との比較一覧表を一つもらいたい。いいですか。
  100. 伊東正義

    ○伊東説明員 いろいろ出ましたが、先ほどの牧尾一万一千キロの問題、これは、私御答弁しましたように、実は最終的にまだきまっておりません。それで、電源開発審議会にも実は一万一千キロでやるというふうにもまだ通っておりません。私どもも、早くアロケートのことを片づけたいということで、公団なり関西電力、また公益事業局というところに話しまして、なるべく早くこれは幾らでやるのだということを最終的にきめたいと思っております。  お話のありましたうちで、農民負担、これは純益の何十%ぐらいで、それは他の地区とどうなっておるというような資料があったら出せというようなお話でございますが、これはなるべく御希望に沿いますような資料は作ります。御心配の農民負担の問題でございますが、私どももこれは事業費との関連で実は一番心配いたしております。大臣もこの点は農民負担が上らぬようにということを極力いろいろな手を尽してやりたいということを言っておられまして、私どもとしましても、この純益の償還がどのくらいになる九という問題、それから農民負担の絶対額がどういうふうになるのだということにつきましては、これが今までの計画より悪くなるということにはならぬように極力努力いたしたいというふうに考えております。
  101. 足鹿覺

    足鹿委員 極力努力するのではなしに、そうならねばならぬはずですよ。この間の委員会で、愛知用水の十地改良区受益第一次試算から第三次概算というのを愛知県から出してきたのを私が営農関係で突っ込んだところが、あれは土地改良事業団体連合会が作ったので私どもはどうも自信がないなどというようなことを言う。農林省はどうなんですか。愛知県が出してきておる第一次の試算から第三次概算、半分以下になっておるのですよ。米の石当りは当時の算定基礎の八千三百円という基礎でやっておられる。米価も若干動いておりましょう。が、しかし、農林省自体としては受益の試算はその後どういうふうに再検討しておるのですか。徳安さん、これはあなたの関係ですぜ。きょうは振興局長がおられればこの点はもっと私は伺いたいのですが、どういうことになっておりますか。農民負担を極力下げるというのではなしに、当初の計画は現地の受入態勢が不備であるとはいうものの、当初の第一次試算の半分以下に減っておるのですよ。これに対して、この前は主として愛知県当局にわれわれは質問したけれども、あなた方には質問を遠慮してしておらぬ。こういう資料についてどういうふうに考えておるのか。また、あなた方は、この工事完工後において営農体系との結びつきがついた後にはどういう状態へ持っていこうとしておるのか。それが負担との間に非常にある。現在まだ遅々として進んでないということは事実ですから、どう言ってみたところでしょうがない。だとすれば、愛知公団を督励して負担を下げさして、そうして営農実績をあげるに従って償還を漸次ふやしていくとか、何らかの手が打たれなければならぬ。半分以下になるというような試算でいかれますと、農民負担はうんと苦しくなりますよ。現状でも苦しくなる。純益度が低下するわけですからね。その点、振興局と農地局は協力してどういう作業をし、どういう見通しを持っておるか、その点の資料があったら一つ出して下さい。
  102. 伊東正義

    ○伊東説明員 それは資料として差し上げます。  われわれの考えでございますが、今先生のおっしゃいました土地改良区の試算というのは、一次、二次、三次とございまして、だんだん下っております。おっしゃいますように、最後になりますと非常に下った計算が一応出ております。それは、一応土地改良区が自分でやりましたのを、県の名前でたしかこの前資料として出しました。やりましたのは土地改良区でございます。私ども農地局としまして、振興局ともよく相談をしながら、あそこの営農形態はどういうふうになっているだろうか、それで収益というものはどうなってくるんだということを、実は、現地に人を出して、県、公団と一緒になって調査もやって、今集計いたしております。その資料は先生に差し上げます。  大体の考え方でございますが、現地で農民の希望もだいぶ聞いたのでございますが、先ほど申し上げましたように、その結果は、畑より開田の方を希望するというようなことがございまして、当初考えておりました陸稲が非常にふえますというようなものが、逆に水稲がふえますというような形になりましたり、それもまた、従来と変りまして、かなりな早期栽培も入れていくというように、従来より農民の希望等も変っております。それから、畜産につきまして、従来はほとんどこれは計画に入れてございませんでした。これにつきましても、現地に参りますと、あそこの県の酪農計画も立っておりまして、これも、当然飼料その他についても考えるべきじゃないかということで、裏作の麦が減りまして飼料が入りました。そうして前と若干変っております。これは資料として差し上げます。その結論でございますが、大体収益は前に実施計画をやったときとそう変らぬじゃないか、結論的には大体それに近いような数字を持っております。
  103. 足鹿覺

    足鹿委員 第一次試算と変らないというお話でありますが、それはけっこうです。書面の上だけじゃなしに、ほんとうの営農実態を照らし合せて無理のないものでなければならぬと思うのです。そうでない限り、そんな資料をいただいてみたところで意味を持ちません。とにかく、農地局は土地の造成なり水の対策をぐんぐんやる。振興局は、そっぽまでは向かぬかもしらぬが、あまり協定が行われておらぬ。連携がうまくついておらぬですね。これは今後非常に問題になる点だろうと思うのです。今後の畑作を中心とした営農体系を、あなた方のやる農地局の仕事とどういうふうに表裏一体化していくか。密着しないとうまくいかぬのです。その点は特にまた別な機会に言いましょう。  最後に、通産省との申し合せ事項によりますと、非潅漑期間におきまして、上水道及び工業用水の所要水量に対して、今渡発電所堰堤操作規程に抵触しない限り兼山ダムから取水できるものとするという申し合せ事項があるんですね、今までの規定をずっと調べてみますと。その限度は幾らなんですか。また、兼山の取水口から取水する計画について、両者の協議が成立しない限りは変更しないんだということがありますが、取水計画についてどういうふうに協議をされたのか、協議は成立をしたのか、それはどうなんですか。
  104. 伊東正義

    ○伊東説明員 兼山地点では二百トンを下らぬということになっております。これは従来通りでございます。この問題は実は下流の水利権との問題もございまして、この前愛知の知事が工業用水の説明をいたしましたときに、これを下げるとか下げぬとかいうことで議論になりました。今の愛知用水公団といたしましては、それは二百トンを下らぬということで付議いたしております。実は、兼山から取りますその使用料その他につきまして、それを幾らにすべきかというようなことは、先ほど監理官も申しましたが、牧尾ダムの管理権、それから発電量の問題と関連しまして兼山の使用料の問題等は、今後の問題としてまだ残されております。
  105. 足鹿覺

    足鹿委員 これで終りますが、とにかく、今までの資料をずっと見ますと、農林省はどっちかというと通産省その他からやられておる、そういう感じを受ける。もっと筋を通して、農民擁護の立場を明確に——この際伊東さんの大きな仕事として、前任者のやったことをひっくり返したりすることは困難でしょうが、しっかり農民擁護の筋を立てていただきたい。まだたくさんありますが、当局に対する質問はこれで終ります。  次に、委員長一つお願いがあります。前の松浦委員長のときにわれわれは現地に行った。ところが、どういうわけか、堰堤工事とか幹線水路の掘さく状況ばかりが日程に入れてある。われわれが見たいのは、もっと下流の今問題になっておる鳴海地区だとかあるいは横須賀地区だとか、知多半島の突端の内海地区で、あの辺を見ぬとこの問題に対するわれわれの判断も最終的には出ぬと思うのです。で、適当な機会でよろしいのですが、そういう現地を視察する機会を作っていただきたい。どういうわけか、今まで行っても一ぺんもあっちに連れていかぬ。こっちの方にばかり注意を払おうとする。堰堤工事や幹線水路は進んでおりますから、なるほどやっているなあということになりますが、肝心かなめの、営農との結びつき、あるいは工業用水との問題が今起きているところ、農地が宅地化されていく現状とか、そういう問題が伏在しているようなところは残念ながらまだ足を踏み入れておりませんので、あまり先では寒くなって困りますが、適当な時期にその機会をお与え下さいますようお願いいたしまして、私の質問を終ります。
  106. 吉川久衛

    吉川委員長 足鹿委員のおっしゃる通り、私も現地視察に参加したかつらのでありますが、当時同僚議員助川君の不幸がありまして、参加できなかったことはまことに残念でございました。南部地区を視察することは私も全く同感でございますので、できるだけ近い機会にそのように計らいたいと思います。  大野政務次官に申し上げます。今の足鹿委員の質疑の通り農林省はもっと積極性を持たなければならないと思うのですが、非常に消極的で、われわれの期待に反して、既成事実に押されているような感じがしてならない。一つもう少し積極的に現地を大臣政務次官もごらんになって、大分御配慮をいただかないと、本委員会の質疑がどうも時間がかかってまことに遺憾な点がありますので、十分御考慮を願いたい。     —————————————
  107. 吉川久衛

    吉川委員長 次に、食糧の検査の問題並びに油脂の問題について質疑の通告がありますので、これを許します。  角屋堅次郎君。
  108. 角屋堅次郎

    角屋委員 食糧庁関係の応援検査の問題についてお尋ねをいたしたいと思うのですが、本日議題として愛知用水の問題が取り上げられ、大臣もおいでになって、足鹿委員が中心になっていろいろ御論議がありましたが、私も犬らに今日の時点における問題についていろいろお尋ねしたい点がありますが、時間の関係上省略をいたします。ただ、応援検査の問題に入ります前に、まだ政務次官農地局長もおられますので、希望しておきたいと思うのですが、先ほど足鹿委員から出ました問題の中で、公団方式という問題について、大臣は、愛知用水でつちかわれた技術その他の活用、国家的な見地からこれを今後活用していきたい、こういうことを言われたわけでございます。この点は大野政務次官も同様な答弁をされました。ただ、関係の局長である農地局長の場合には、そういう形ではなしに、私の印象では、それぞれ人間について万不安のないようにあちこちに配置するというふうな意味のことを、私が質問をいたしたときに答えたように記憶しております。この辺のことは、あと一年の問題でございまするから、当然、この技術陣容をどう活用するか、こういう問題について、明後年には新しい公団方式でいくということならば、公団方式の仕事そのものについても具体的に検討を進めて、スムーズに移行ができるように、そういう点について具体的に万遺憾のないようにいたしていただきたい。これを一つ希望しておきたいと思います。  本論に入りまして、応援検査の問題でございますが、御承知のように、この問題は、本年度に入りまして、食糧庁の方といたしまして、最盛期の検査の問題に関連をいたしまして、北海道、宮城、秋田、山形、新潟、富山、石川の各県の検査につきまして、全国のうち、宮城、山形、福島、茨城、群馬、東京、神奈川、石川、富山、山梨、長野、岐阜、愛知、三重、和歌山、こういう各県から応援の人を派遣いたしまして、そしてそれぞれの関係県におけるところの検査をやろう、こういう計画を本年打ち出して参っておるわけでございます。これは、私ども従来からの経過を承知しておる立場から申しますと、最盛期の早場地帯の検査の問題について、人員不足その他の問題から、農林省関係の組合の方から数年来強い要請が出て参りまして、当局といたしましては、これが解決に窮しまして、小手先の対策としてこういう各県からの応援体制というものを打ち出されて参った。こういうことでは、北海道初め関係県の検査の万全の体制を期し得られるものとも思いませんし、また、通達等を見ますと、「今後この措置は制度化して実施する方針であるので」云々ということが書かれておりますが、こうなると、私はますます問題であろうと思う。食糧事務所における米の検査の問題は、仕事のウエートからしますと非常に大きな比重を占める問題でありますし、同時に、対農民の関係からいきましても、この問題についてはやはり十分適正検査を実施いたしまして誤まりなきを期するというのが、現地の食糧事務所にいたしましても、あるいは食糧庁にいたしましても当然の責任であろうと思う。そういう問題について、いわゆる小手先の各県からそれぞれ応援の人員を派遣して済ませよう、これをまた制度化していくのだ、こういう考え方になると、私は、食糧庁の検査に対する、あるいは検査制度としての考え方そのものに問題があるのではないかというふうに考えるわけでございます。こういう問題について、こういうことを計画された責任者からお考えをまず承わりたいと思います。
  109. 須賀賢二

    ○須賀説明員 本年産来の出荷の時期がだんだんと迫って参っておるわけであります。その検査の体制につきましては、かねてから食糧庁におきましてもいろいろ準備を進めて参っておるところであります。ただいま御指摘のありました応援検査につきましても、本年度は御承知のように作柄も非常に良好でございまして、予約数量もすでに三千五百三十万石をこえておりますし、それぞれ現地の情報を総合いたしますと、三千六百万石をこえる集荷も期待できるのではないかというような情勢に相なっておるわけでございます。それで、過般来、各食糧事務所につきまして、それぞれ現地の状況に応じまして、検査の職員の整備につきまして、非常勤職員等もそれぞれ必要なものは整えて参る、それらの計画と即応いたしまして、県外から応援をなし得る計画、また、一方においてこれを受け入れる計画をそれぞれ突き合せまして、先ほどお話がありましたように、全体で約二百六十三人、延べ日数にいたしまして二千四百三十八自の応援の計画を進めておるわけでございます。これは昨年度におきましても岐阜と石川の間に実施をしたのでございますが、今後の問題といたしまして、過般食糧庁から出しました通達の中にこれを将来制度化するというような趣旨のことを番いております点がいろいろ注意をされておるようでありますが、この点につきましては、制度という養葉の表現が適当であるかどうか、御指摘のように問題があると思います。われわれといたしましては、本年度の経験を十分に検討してみまして、さらに必要なところは将来も引き続き実施する場合を考えておるという意味合いにおいて、そういう言葉を使っておるのであります。その程度の制度という意味であります。
  110. 角屋堅次郎

    角屋委員 食糧庁長官は就任早々でありますけれども、同じ農林省におられたわけですから。従来早場地帯における検査の人手不足という問題が長く非常に問題になって参りまして、食糧庁としてもこれにどう対処するかということでずいぶん苦心して参った、その答えがこういう形で処理されるということは、農林省の食糧庁関係の職員としては全く期待はずれの結果だということになると思うのです。もともと、こういう関係地区については、応援検査を受けなければならないということは、その関係県においては人手不足である。従って、こういう問題については抜本的に定員の修正をもって処理する、これが本筋であって、それぞれ全国各県から毎年あるこういう検査について応援体制でもって小手先でもって処理するということは、これはまず考え方の上において誤まりを犯しているんじゃないか。これはやはり根本的には人員の修正をもってやるということでなければならぬと思うのですが、その点についてはいかがお考えでございましょうか。
  111. 須賀賢二

    ○須賀説明員 いろいろ、食糧庁の業務につきまして、現実に、末端の検査受け入れ、あるいは食糧の売却といったような仕事につきまして、最近の情勢の移り変りに応じまして、仕事の面につきましても、いろいろこまかく、従来にない面についても工夫をこらしていかなければならないような状況に相なっておるわけでございます。これに応じまして、末端の職員にも従来以上に努力をしてもらっておるわけでございますが、ただいま御指摘がありましたように、検査員の定員についてこの際増員を考えるかどうかということは、今後の政府買入数量についての長期的見通し等につきましても十分検討を加える必要があります。事柄自体とくと検討を要する問題でありますので、現段階におきましては、私どもは増員ということは考えておりません。しかしながら、現在食糧事務所の定員に若干の欠員がございます。これは最近までは補充をいたしておらなかったのでございますが、こういうこうに県外に対しましても応援を出してまで検査事務の進捗をはからなけれげならないような情勢になっておりまするので、できるだけ早くその一部は補充をいたしたいという考え方をもちまして、ただいまその段取りをとり進めておる次第でございます。
  112. 角屋堅次郎

    角屋委員 食糧庁長官お話を聞きますと、出面増員は考えてない、欠員の補充等については、これは具体的に所要の措置をとりたい、こういう考えのようでございまするけれども、早場地帯の検査というものは、これは毎年の業務になっておるわけです。特に災害等が起りまして災害調査をやるという臨時特例的な仕事と違いまして、これは毎年々々繰り返される問題であり、しかも、業務量の増大という最折の増産傾向からの問題は、これはお互いの話の中でも出ておりますように、     〔委員長退席本名委員長代理着席〕 最近の農業技術なり、あるいは農薬なり、いろいろな農業の伸展に伴いまして、いわば平年作としての固定化の傾向を持ってきておる。従って、そういうことに見合っての人員配置ということは、恒久的な問題として検査制度の中では考えていかなければならぬ情勢だろうと思う。それを、こういう応援検査を、去年は二県の間において実施をし、ことしはさらに範囲を広げまして幅広くやられようとする。しかも、今これを制度化いたしたいという点については少し逃げましたけれども、しかし、何か腹の中にはこういう形において検査予備軍のようなものを作って、非常に重要な、国の責任において行うべき米の検査を、小手先でもって処理しよう、こういうことに私どもは看取せざるを得ないのです。米の検査の問題については現地農民が非常に関心を持つ問題でございまして、当然この検査というものは十分慎重に適正に検査をしなければならぬ。ところが、これはさらにお伺いしたいのですが、適正横費数量ということが前々からいろいろ問題になっております。適正検査数量という場合に、従来必ずしも明文化したわけでございませんでしたが、大体一日四百俵程度が適正検査数量であるというふうに言われてきておった。最近では、本年に入りますと、適正検査数量については一日八百俵まで最高限度を上げるという考え方に立っておるやに聞いておるわけです。そういう形で、いわゆる全国的な適正検査数量というものについては、これを二倍にして、職員に対する労働強化をしいてくる。さらにまた、当然必要になるべき早場地帯の検査については、それぞれの県でも十分でない人手の中から血のにじむような思いで応援検査員を派遣させて、そしてそれぞれの非常に忙しい地域の検査という検査を小手先でもってカバーしようとする。こういうことは、私は食糧庁の考え方として問題があるんじゃないかと思う。今の適正検査数量の問題について、現在食糧庁として第一線の事務所長あるいは第一線の支所、出張所長に対してどういう考え方で指導しておるか、その点お伺いいたしたいと思います。
  113. 須賀賢二

    ○須賀説明員 適正検査数量につきましては、今回の応援検査を計画いたしますこととも関連をいたしまして、それぞれの各県の実情に即して適正検査基準量をきめて参っておるわけでございます。検査につきましては、だんだん需給事情、生産事情の変って参るに応じまして、それぞれより的確な精度の高い検査を要求されておるわけでございまして、それに対応して食糧庁としても検査体制を整えなければならないわけでございますが、食糧庁全体の機構をできる限り効率的に動かして参ります建前から、今回実務的に詳しく検討いたしまして検査基準を設けたわけでございます。それは、一日八百俵ということを基準といたしまして指示をいたしておるわけでございます。
  114. 角屋堅次郎

    角屋委員 当局の一日当り八百俵の出た算出基礎というものは、私どもが持っております資料によりますと、こうなっております。これは、一軒の農家の平均検査数量というものを二十俵といたしまして、二回に分けて運搬をする。従って、検査格付の問題は十俵を二回ということに相なる。一俵当り二カ所さして検査格付を行なって、その時間が二十秒。等級が決定して、等級証印を押すのに十秒。それから次の検査に移る時間が二秒。そのほか、野帳の整理等、その他の付属したものを含めまして四十秒。そこで、合計して十俵で六分。従って、一時間の間には百俵できるのだということです。まるで人間が機械のように、さしから、あるいは証印を押し、証紙の張り付けから、あるいは野帳の整理から、いろいろなことでずっとフルに動いていって、そういうことで出したマキシマムの一時間あたり百俵というものを八掛して一日当り八百俵、こういう検査のやり方。しかも、この検査の格付という問題については、適正検査をやってもらいたいという農民の関係から申しますと、いささかも誤まりがあってはいけない、こういうことを責任ある農林省としては考えなければいかぬと思う。従来、適正検査の問題については、大体標準として一日四百俵ということで指導してきたかと私は思うのでありますけれども、これがマキシマムの八百俵になったということは、基本的に見て、やはり検査の問題については相当人手不足になってきたので、一日当りの作業量の増大によって全国的にこれでカバーしていこう、こういうことに相なったのだろうと思いまするが、どうでしょうか。
  115. 須賀賢二

    ○須賀説明員 一日八百俵と今回基準を示しましたのは、期末におきまして、御承知のように大量に農家から殺到して参るわけであります。その場合、期末の扱いは、一応受け付けまして、実際の検査は翌日回しにするような扱いをいたしておるのでございます。その場合、当日受け付けます基準といたしましてこのような検査基準を設定いたしたわけでございます。もちろん、八百俵と申しましても、検査場所、あるいはそのときの天候でありますとか、あるいはさらに検査官の個々の検査能力、あるいは生産者団体等の協力の度合い等によりまして、個々に変って参りますことは当然でございますが、いろいろ部内におきまして実務的に検討いたしました結果、この限度の検査基準を設けることは必ずしも実務的に無理ではなかろうという判断をもちまして、かようにきめたわけであります。
  116. 角屋堅次郎

    角屋委員 一時間百俵あるいは一日八百俵という、そういう非常に無理な検査数量、それを期末の非常に激しいときには適用していく、こういうことで果して食糧庁が指導しておるような適正検査というものが実施されるというふうに考えておられるかどうか。人員その他の関係からやむを得ずこういう数量で期末等の繁忙期にははかざるを得ない、こういうやむを得ざる事情でこういうふうになってきたのか、あるいは、こういうことでもってどうしても第一線の検査官の適正検査ができるのだというお考えに立っておられるのか、その点はどうでしょうか。
  117. 須賀賢二

    ○須賀説明員 従来の経験によりますと、出荷の最も繁忙な時期におきましては、今回の基準数量を相当大幅に上回って検査をしておったような事例もあるようでございます。しかしながら、先ほども申し上げましたように、順次検査の精度もさらに高めて参らなければならないというような状況でもありますし、また、一方、農家に対しましてはできるだけ適時に検査をするという要請にもこたえなければなりませんので、最盛期の検査基準としてはこの程度の数量を基準として実行いたしますことは、現段階におきまして実務的にも可能であるという考え方をもちまして、この基準を作ったわけでございます。
  118. 角屋堅次郎

    角屋委員 須賀さんは非常にからだも小さいし、こちらが非常に重要な問題を突いておっても柳に風と受け流すものだから、質問追究としてはやりにくいわけですけれども、やはり、何か一つの方針を立ててしまったから、それにつじつまの合うように説明をして当面を糊塗する、こういうことではこの問題は済まされないと私は思う。やはり、一時間百俵、一日八百俵の検査の数量の問題にしても、これが適正検査数量であります、こういうことは、やはり私は大きな問題だろうと思います。第一線の検査官の最盛期におけるところの検査状況等を聞いてみると、血まめを作ってやらなければならぬという現状を私ども承知しておるわけです。そういう現状に検査官を追い込んでいって、そうして目も血走って検査をやるような状況に追い込んでいって、しかも食糧庁自身が言っているような適正検査ができるのだということは、これは私は詭弁じゃなかろうかと思う。等級の格づけという問題は、個々の農民にして見れば、一年間の実りの米に対するいわゆる評定でございまして、非常に重要なことであろうと思う。それをこういう従来の一日四百俵を八百俵の倍に標準の最高限度を上げてくるという形でやるというのでなしに、やはり、適正検査の建前から言ったら、必要な人員を充足をして、農民の要請にこたえるような適正検査を実施していくという心がまえでやらなければならぬじゃないかと思う。先ほど、定員の修正問題については、食糧庁長官は、当面は考えておらない、欠員の補充等について善処したいと言っておられますが、そういうなまやさしい状態で、今日増大している検査数量とのタイ・アップの中で問題の処理ができるのかどうか、これは十分検討してもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。
  119. 須賀賢二

    ○須賀説明員 一日八百俵につきましても、これは、先ほど申し上げておりますように、毎日の検査数量が八百俵になるということではないのでございます。私から申し上げるまでもなく、この仕事につきましては、当然に季節的な非常に大きなピークがあるわけでございます。このピークを乗り切りますための体制としてこの基準をここに設けたわけでございます。やはり、業務の性質上そういうときにはそれだけの努力をするということは、この業務の性格からいたしましてやむを得ない、また、そういうことは当然必要じゃないかというような考え方をもってやっておるわけでございます。  それから、定員増加の問題につきましては、これは食糧庁として現に二万九千名程度の定員を擁しておるわけでございます。いろいろ、食糧庁の業務に関連いたしまして、できる限り効率的に全体の組織を動かして参らなければならないという考え方をもちまして、現段階において直ちに定員増加という方向で検討いたしますよりも、さしあたり現在の人員を最も効率的に活動をさして参りますのにはどのように工夫したらいいかという見地から計画を進めておるわけでございます。
  120. 角屋堅次郎

    角屋委員 応援検査ということを本年度から相当広範囲に計画されたようですが、現実に応援検査員になった場合に、土地の事情も知らない県に入っていって、そして支所、出張所等の割り当てられた地区に行って、大体三日なり五日なり、全然見知らぬ土地で、しかも相手方の農民とも何ら人的な関係のない土地で検査をする。何か検査問題というのを機械的に考えておられますけれども、申し上げるまでもなく適正検査を実施するという立場から申しますならば、その土地におけるところの農業事情、あるいは肥培管理の状況、あるいは米の品種、あるいは銘柄、いろいろなものについて十分承知をして、そうして個々の農民との人間関係等についてもお互い十分知り合いながら適正な検査をするというのが、やはり検査員としての心がまえであり、当然の行き方であろうというふうに思う。よその全然知らないところの者が他府県に数日間応援に参って、そうして検査をして帰ってくる。何か検査の問題について機械的に物事を考えている。そうして、その機械的に物事を考えたこの行き方を今後恒久的に制度化するような考え方等もちらほら文章の中に現われてくる。それは、私は、検査制度あるいは米穀検査というものに対するところの食糧庁の考え方というものは基本的に変貌してきておるのじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  121. 須賀賢二

    ○須賀説明員 他県から出向きまして検査をいたします場合に、現地の農民の方々との気分的なつながり等が十分でなくてうまく参らないのじゃないかというような懸念も一部にあるようでございますが、この点につきましては、われわれも、応援検査に参る検査員諸君の立場も十分考えまして、現地の受入態勢等につきましては、あらかじめ、出向きました県の検査の事情等につきましても事前に十分のみ込ませるようにいたしまするし、また、その検査員を配置する場所等につきましても、地元の検査員と十分連絡がつくような検査場所を選びまして、地元検査員と密接な連絡の上に、出張して参りました検査員と地元の検査員との間で実際の検査の実務に多少でも手違い等のことが起きませんように、こまかくその辺のところは介意をして参りたいと思っておるわけでございます。特に、派遣をいたします検査員につきましては、技能の程度等につきましても十分調べまして、十分それらの点につきまして遺漏のない検査員を送りたいと思っておるわけでございます。そこらの点につきましては、送り出す方の側、受け入れる方の側、両者のそれぞれの感情的な面までも十分配慮をいたしましてこの計画は進めて参りたい、かように考えておるわけでございます。
  122. 角屋堅次郎

    角屋委員 本年度の応援検査の計画については、これは、私どもいろいろ聞いておるところでは、第一線の事務所長、あるいは特に検査関係の部長、課長、これは実際腹を打ち割って言えば反対である。忙しい自分の県の検査業務の中から他府県に人を派遣しなければならぬ、しかも、受け入れる県からいたしましても、全然なじみのないよその県の人員を受け入れて、数日間ある地区において検査をさせる、こういう行き方についても、私は、腹の中では反対だろうと思う。現実に、いろいろ聞いて参りましても、検査課長、部長は反対である。あるいは事務所長等もこの問題については消極的に考えておる。ことに、こういう検査制度の本年度の行き方そのものについては、全農林等の組合関係においては、これは全面的に反対だ、こういう形で今後全国的に検査予備量的に考え方でもって責任ある国の米穀検査というものが変貌していくというようなことがあるならばこれは大きな問題である、ことに、検査の問題については、いろいろ農民との間でも十分慎重にやらなければならぬ性格のこういう問題について、特に他品目の検査と違って米の検査という一番大きなウエートを占めた検査の問題についてこういう形を本年度から相当大幅にとろうとする、しかも、これをぜひとも大幅に続けていこうという考え方には全面的に反対だという立場から、農林省関係方面、食糧庁の責任ある長官等に対していろいろ真剣な要望が出ておることは、私は御承知通りだと思う。今現実に検査をやろうとする時期が近づくに従ってこの問題が一つの紛争問題に相なろうとしてきておることも御承知のことだと思うのです。現実に、検査に行く者については検査に行かないというような問題、あるいは行くというような場合には検査にやらせないというような問題、いろんな問題等の紛争も想定されてきておるようないわゆる険悪な空気等も御承知のことだろうと思う。私は、この計画そのものが筋道が通り、今後の検査制度の発展の問題と関連して何ら矛盾がないということであれば問題は別になろうと思うのですが、先ほど来述べておりますように、国の責任において行うべき米の検査の問題、あるいは検査制度の今後の行き方の問題、こういう点で、こういう小手先の応援検査において問題を処理しようとする考え方そのものは、今後再検討してもらわなければならぬ。従って、今次計画においても、これは当初計画されたものを実施されようという過程にあるわけですけれども、もう一度関係の事務所長なり検査部長、あるいは直接組合の要望等も十分勘案して善処してもらわなければならぬと思うのですが、その点については、政治的な配慮等の問題とも関連いたしますので、上だいままで述べて参りましたいわゆる応援検査等と本年の計画関連して政務次官の御見解を承わりたいと思います。
  123. 須賀賢二

    ○須賀説明員 政務次官からお答えいただく前にちょっと申し上げておきたいと思いますが、今回の応援検査については、ただいま御指摘がありましたように、あるいは組合の立場から、あるいはまた他の立場から御意見のありますことは、私どもも十分承知いたしております。ただ、ただいま御指摘たなりました中で、あるいは将来予備検査員の制度に通ずる検査体制に対する基本的な問題ではないかという御指摘がありましたが、私どもは、今回の応援検査と関連いたしまして、そのような検査制度の基本的体制というような定義をもってこの仕事をやっておるのではないのでありまして、これは、初めから申し上げましたように、現実に手が足りませんことと、季節的な関係で、若干でも部外に無理をしてでも抗力が願えるというところとつり合せまして、食糧庁の全体の機構を少しで父合理的に動かしたいという意図に出ておるものでございます。きわめて単純にそのような意図で考えておるわけでございまして、それぞれの立場からの意見に対しましては、われわれといたしましても極力説明の足りないところは説明をいたしまして——こういう仕事は実際の現業でございますから、相当前広に準備をして参らなければならない性質のものでございます。すでにそれぞれの県につきましても相当準備を進めておるわけでございます。それぞれ説明をするところは説明を尽し、協力を求めて仕事を進めて参らざるを得ないというふうに考えておるわけであります。
  124. 大野市郎

    大野説明員 応援検査の問題につきましては、食糧庁長官が説明をされました通りでございますので、私どもとしましても、よく働いてよく遊んでいただく、その原則で、ピークでありますので、ピークのカバーのためには、ただいまの計算の基準が妥当かどうかは私はしろうとでわからぬのでありますが、一応八百俵という数がそのピークの最盛期にそれをこなしてくれという形で積算が出て参っておるわけでありますので、われわれは、この点について現業員の方々に御協力をいただきたい。年間平均してずっとそういう過重な仕事が続くものであれば、お説の通りでありまして、増員の問題とすぐに結びつくと思いますが、国家財政の調節の問題などもありますので、よく働きよく遊ぶという形で一つその現業の方々に御努力要請するつもりでございます。
  125. 角屋堅次郎

    角屋委員 政務次官のお答えにいたしましても、あるいは食糧庁長官のお答えにいたしましても、検査制度のあり方という問題と当面の応援検査という問題とを今の段階では切り離して問題を考えておるかのごとく答弁をされておりますが、現実に長くこの問題に携わってきた側から申しますと、そう言うほどさような簡単な問題でないという考え方をするのが自然の姿だろうと思う。緊急事態に対処して本年度どうしてもやらなければならないということでこういう問題が起ったのでなくて、来年やらなければならぬ検査の問題の点について、各県の応援体制でやろうという手初めが本年度出て参った。こういうことが拡大解釈をされて参りますと、検査制度の基本問題が変貌していくのじゃないかということを考えるのは当然だろうと思う。私どもは、こういう問題は、そういう小手先の応援体制で処理するということではなくて、やはり、当初から申しておりますように、早場地帯におけるところの人員の不足の問題については、前々から言われているように人員の増加によって処理すべきであり、各県の状況についても、決して他府県に応援を送るという余裕があってこういう計画がなされておらないと思う。であるだけに、関係県の必要な人員についてはそれを充足して、こういう応援体制ということによって毎年繰り返していくことについては全面的に排除していく方針でやってもらわなければならぬと思う。本日は後ほど神田委員質問等もありますが、私は、こういう機会にこういう応援体制で本年度の検査を処理されようという食糧庁のいき方については全面的に反対でありますし、同時に、こういう問題をあくまでも強行されるという形になると、相当事態が紛糾するということも予想されますし、従って、こういう問題については十分いろいろな関係方面意見を聞いて善処されるように要望しておきたい、かように考えております。
  126. 本名武

    本名委員長代理 神田大作君。
  127. 神田大作

    ○神田委員 だいぶおそくなりましたが、非常に大事な問題でありますので、ごしんぼういただきたい。  まず第一に、油脂課長がお見えでございますから、油脂課長にお尋ねしますが、私が去る八月十五日に油脂関係のいろいろな問題等について農林大臣あてに資料の提出を求めたのでありますが、この資料が非常にせっぱ詰まって二、三日前に来たので、詳しく検討するいとまがないのでありますけれども、この資料を作るについて、課長が、どうもこういうことは越権行為ではないか、作業をする上に困った、というふうなことを言ったということを聞いておるのでありますが、一体、国会議員がこのような資料を求め、それに対しまして課長がそのような考えでおるのかどうか、まず第一にお尋ねします。
  128. 馬場二葉

    ○馬場説明員 私は、御質問の書類等は差し迫って拝見したわけでありますけれども、決してそういう不遜なことを申し上げた事実はありません。ただ、非常に突然質問書を拝見しまして、あわてまして、大へんだという気持は起きましたけれども、できるだけ早く間に合せるために努力しただけで、決してそういう気持を起したこともございませんし、申し上げたこともございません。
  129. 神田大作

    ○神田委員 課長の御答弁の通りだろうと私も思います。それが当然だろうと私も考えます。われわれは、日本の油糧行政、ひいては日本の自給食糧の達成のために審議をするのでありまして、皆さんが私の資料要求に対しまして非常に御苦心をされて作成になったということは重々感謝をしておるのでありまして、非常に御苦労をかけて申しわけなかったと私も考えておるのでありますけれども、しかし、われわれがこういうような資料を要求した場合においては、少くとも一カ月前に要求しておるのでありますから、それを質問の前日に渡されるということであっては、これは私の方の質問の資料も整わないということになるのであります。非常に大へんなことではありますけれども、国会の審議の上においてやむを得ざることでありますので、この点は、課長がまさかそういう不遜なことを言ったとは私も思われませんが、そういううわさを私は聞きましたものですから、まず念のためにこれをお尋ねしたわけであります。  なお、資料等につきまして、一番大事な三十年、三十一年、三十二年の資料が抜けておるようでありますからして、私はこれを一番求めたのでありますけれども、この点は、後刻でけっこうでございますから、お届けいただきたいということを要望しておきます。  次に、現在の油糧行政が非常に混乱しておるように私は承わっておるのでありますけれども食糧庁長官は就任早々で、この現況等はよくわかっておらないかとも思うのでありますけれども、わかっている範囲におきまして、現在の油脂行政につきましての情勢等について簡単に御答弁願いたいと思います。
  130. 須賀賢二

    ○須賀説明員 神田委員から御要求のありました資料につきまして、実は、私どもの方の部内の全くの手違いで、油脂課において調製する時間的余裕がきわめて少い間に急拠これを整えたというような次第でございます。従いまして、ただいま御指摘がありましたように、御要求の資料の全部を尽しておらないわけでありますが、まだ整っておりません部分につきましては、早急に整えまして、お手元にお届けをいたすようにいたしたいと思うのであります。  油脂行政がどういうふうに相なっておるかということについてのお計ねでございますが、御承知のように、最近の油脂行政は、農林省の仕事といたしましては、現実にはその原料でありまする大豆、菜種等を通じましての行政面が最も表面に出ておるわけであります。その運営につきましては、前回あるいは今回御質問を受けました内容等から見ましても、今後なおしさいに検討をいたさなければならない問題も多々あるわけでありまして、それらの点に十分留意をいたしまして検討をいたし、改めるべき点につきましては改めるようにいたしたいと考えます。
  131. 神田大作

    ○神田委員 現在の日本の油脂行政は、内地産の大豆並びに菜種ではとうていこれが需要を満たすことができないので、年間約四百億から五百億に上るところの大立、菜種の輸入によってまかなっておると思うのでありますが、この日本の大豆の価格と外国から輸入する菜種や大豆の価格とが非常に開いておるのは長官も御存じの通りだと思うのであります。この問題点は、やはり、輸入大豆、輸入菜種の配分にある、これが消化にあると思うのでありますが、この点についてどのような見解を持っておるか、お尋ねします。
  132. 須賀賢二

    ○須賀説明員 御指摘のように、輸入大豆は現在約百万トン近いものを輸入をいたしておるわけであります。この実際の割当業務は農林省と通産省とが協議をいたしてやっておるわけでありますが、現在やっておりますのは、その半分を商社側に割り当て、その半分を需要者に割り当てる方式をとっておるのでございます。
  133. 神田大作

    ○神田委員 この輸入大豆並びに菜種の配分に対しまして、これは現在いわゆる外貨割当による制限があるわけでありますが、この外貨割当によって、国内の生産大豆、菜種とにらみ合せ、あるいは油糧の需給とにらみ合せて行なっておると思うのでありますけれども、現在需要者割当あるいは商社割当等の方法でやっておりますが、輸入された大豆や菜種が油にならずに、ほかの食品に横流れをしておるというのが、この油糧行政の混乱のもとであると私は思うのでありますが、この点についてどうお考えになりますか。
  134. 須賀賢二

    ○須賀説明員 割当をいたしましたものが一部横流れをするというような点につきましては、われわれもその実態をつかむことはなかなか困難な問題でございますが、われわれがこれに対してとっております措置といたしましては、需要者割当のものにつきましては、許可なく転用、転売等をいたした事例がはっきりいたしますと、自後の割当等について考慮するということも考えておるわけであります。そうして、製油用の割当につきましては、割り当てました量と、それを工場で処理をいたしました数量とを食糧事務所でチェックをいたしまして、横流れ等のことを防止するように極力努めておるわけでございます。
  135. 神田大作

    ○神田委員 それはおざなりの答弁であって、まことに、横流しをして悪いということは、これは長官の言われる通りでありますが、現に横流れをしておるということがわかっておっても、なかなかこれを取り締らないで放置しておるというのが、これが偽わらざる現状であると思うのです。しかも、アメリカ大豆にいたしましても、輸入の割当を受ければ、内地の大豆価格が支持されているために、割当を受けた業者なり商社というものはトン当り一万円からの利潤が生まれておる。いわゆるトン一万円というようなことが通例言われておって、割当さえ受ければ一万円直ちにもうかるというような、こういう問題をこのまま放置しておくところに、油脂行政の大きな欠陥と混乱が生じておるのでありますが、この点を長官あるいはその他部長なり油脂課長なりは十分わかっておるのでありますけれども、これらの問題についていかなる考えを持っておられるか、お尋ねします。
  136. 須賀賢二

    ○須賀説明員 発券に伴いまして相当の利潤が生ずるのではないかという御指摘でございますが、これは、御承知のように、需要者割当、商社割当ともに、大部分は油なりその他の製品に加工されて参るわけでございます。その中へ、それぞれの原価計算として入っておるわけでございまして、外国大豆と国産大豆とでは、おのずからそこに価格差が出ておりまするが、その原価に基きましてそれぞれの製品の生産なり販売が行われておるという実態になっておると考えております。
  137. 神田大作

    ○神田委員 ただそういうふうに行われておるというふうなことじゃなしに、このような、割当さえ受ければ莫大な利潤を生むということに対して、行政的な処置を放任しておるところに問題があるのでありますからして、これらについて長官はどのような考えを持っておるか。今の制度でこのままやって、これでけっこうなことか。いわば割当一トンもらうことは小切手で一万円もらうようなものだ、金券を配っているようなものだ、私はそういうふうに了解しておるのでありますけれども、この点をどう考えますか。
  138. 須賀賢二

    ○須賀説明員 その間の事情につきましては、私は、おそらく、外国産大豆が五十万トン程度の輸入でありました時代と、現在のように百万トンをこえる数量になってきておる時代とでは、かなり変っておるのではないかと推測をいたします。しかしながら、現在の割当制度のもとにおきまして、ただいま御指摘のような事態が全然ないということは申し上げられないわけでございます。そこで、われわれは、今後大豆の輸入方式等につきまして別の制度を検討いたします場合は別でございますが、現在のような外割方式をとっていきます限りは、外貨事情等も相当ゆとりも出て参っておりまするし、あとは国産大豆の価格に対する影響が、残る最も大きな問題でありますので、その点につきましての必要な配慮を加えつつ、できるだけ必要量は十分に輸入をする、俗にわれわれの方でたっぷり予算をつけるということを言っておりますが、いわゆるたっぷり予算の方向で、できる限り有効需要を満たしていくということで措置をして参りまして、ただいま御指摘のような事例がかりにあるといたしましても、できるだけそういう度合いを軽減して参りたい、かように考えております。
  139. 神田大作

    ○神田委員 輸入を増大するというようなことは油脂行政としては非常に必要なことであろうと思うのでありますが、これは、しかし、国内の大豆や菜種の価格を維持するという観点から立って、そう簡単に割り切れるものではないと思うのでありますが、しかし、そういうことをしましても、いわゆる国内の大唐の価格と外国から入る価格との差益というものは解消するものではない。それでたっぷり輸入をしたから油が下ってくるかというと必ずしもそうではない。それでは、大豆生産農家、菜種生産農家がそれによって増産が遂行されて、そして少しずつでもいわゆる食糧の自給度というものが高められるかというと、現在、大豆の生産状況等を見ましても、年々国内の大豆というものは減産をいたしておる。一方において消費者も利益が得られないし、生産者も何ら利得がない、国家的に見ても国内の油脂原料というものが増産をされないというような、こういう非常に不合理な油脂行政というものに対して、そういうおざなりな答弁では解決できない。この点、食糧庁長官は、もっとはっきりした態度をとって、そしてこれに対しての見識ある答弁をしてもらいたい。
  140. 須賀賢二

    ○須賀説明員 私は、現在の国内産大豆に対しましても、また、菜種に対しましても、価格政策の面におきまして減産をさせるような要素があるというふうには考えておりません。価格の面から見ますれば、地作物との関係も見まして、作って引き合わないものではないと思うわけであります。ただ、特に大豆の場合につきましては、日本の長い間のいろいろ作物指導の体制から見まして、十分に国内産大豆の指導奨励施策が尽されていないことは非常に遺憾であります。その点は、私は必ずしも価格政策だけの面から日本の大豆が伸びないというふうには考えていないわけでございます。
  141. 神田大作

    ○神田委員 どうも答弁をそらすけれども、核心をのがれるようでありますが、現在の油脂行政の大きな欠陥であるこの価格差というもの、こういう問題に対してどう考えますか。
  142. 須賀賢二

    ○須賀説明員 日本の国内の農産物と外国から入ってくるものとの間に価格差がありますことは、これは単に大豆、菜種だけではないのでございます。各種の農作物につきましてそのようだ現象を呈しておるわけであります。従いまして、現在、大豆を例にとりますると、一〇%の関税を徴収しておりますし、一面、価格差がありますから、国内大豆につきましては、その価格を支持いたしますために必要なる支持措置をとっておるわけでございます。
  143. 神田大作

    ○神田委員 食糧庁長官が言うまでもなく、もちろん、日本の食料品、特に砂糖あるいは雑豆、あないはその他の多くの農産物というものは、外国の慶産物に比較いたしまして価格が高い。そういう意味合いにおきまして非常にわれわれも悩んでおるわけでありますけれども、そういう場合に、砂糖にいたしましても、あるいは雑豆にいたしましても、それ相応の施策をしておるわけだ。ところが、油脂に関しましては野放しにしておく、そこに問題があるのだと思うが、この点はどう考えておりますか。
  144. 須賀賢二

    ○須賀説明員 その点は、先ほども申し上げましたように、特に大豆の場合のごときは、これは国民の必需物資でございます。従いまして、単に、国内価格に合せてそこまで引き上げる、外国産の大豆に比較いたしました場合に、そこまで引き上げるというような措置をとりますと、結果におきましては、あるいはみそでありますとか、しょうゆでありますとか、あるいは食料油でありますとか、そういものの価格一般にも響いて参る問題でもありますので、私は、基本の方向といたしましては、先ほど申し上げましたように、外貨割当等に伴って不当な利潤等が発生をいたしませんように、実際の有効需要をよく的確につかみまして、必要量は十分に輸入をするというような方法によって調整をすべきものと考えておるわけでございます。
  145. 神田大作

    ○神田委員 私は、中小企業であるところの小さな工場等がその割当によって多少の利潤を得て工場の経営が有利になっていくというようなことに対しましては、そうとやかく申したくないのであります。しかしながら、大きなメーカーやあるいは商社等がこのような油脂行政によって莫大な利潤をあげておるのを見て見ぬふりをしている日本の油脂行政は、やはり検討しなければならぬ。それらの利潤は適正に吸い上げて、そうして国内大豆、菜種の増産に振り向けるというようなことをするか、あるいはまた、消費者に対しましてこれを適正に還元するというような、そういう行政措置をすることがいわゆる政治であろうと思う。それを、現在五百億からの大豆、菜種を輸入し、それから生ずる——私はしろうとでありますから数字的には多少間違いがあると思うのでありますが、百億に近い利潤が生まれている。そういうものがわかっておりながら、知らないふりをして、輸入調整でもってこれを調節するというようなことを責任ある立場にある長官が言明しておるということは、私は非常に遺憾であると思う。そういう欠陥を認めるか認めないか、まずお尋ねいたします。
  146. 須賀賢二

    ○須賀説明員 現在の外貨割当制度に関連をいたしまして、大企業と中小企業との間に技術的に均衡がとれておらないというような点があるという御指摘のように考えますが、私ども、大豆の外貨割当制度を将来どういうふうにしていったらよいかということと関連をいたしまして、最も苦心をいたします点は、中小企業を今後どういうふうに扱っていったらよいかということがやはり一番大きな問題であるわけでございます。御承知のように、中小企業の製油企業は、能率も悪うございまするし、また、立地条件が概して山の方にあるというような事情もありまして、操業的にあまり有利な条件に立っていない。従いまして、将来かりに大豆の外割をやめるというような事態でもありますと、その間おそらく現在よりもはるかに中小企業と大企業との関係がむずかしい問題になってくるかと思うのでございます。従いまして、私どもといたしましては、中小企業に対する対策は、この大豆の割当問題に関連いたしましては特に注意をして参らなければならない点であるというふうに考えておるわけであります。
  147. 神田大作

    ○神田委員 私が質問したことと多少違った答弁をしているようでありますが、先ほど申したように、莫大な利潤を生む問題等について、はっきりした答弁を願います。
  148. 須賀賢二

    ○須賀説明員 大企業が大豆の外割によってどの程度利潤をあげているかというようなことについては、私どもも別に具体的な資料によってその実態把握しているというまでには至っておりません。
  149. 神田大作

    ○神田委員 あなたの答弁を伺いますと、今までの油脂行政についてあなたは非常に不勉強な油脂行政をしていると言わざるを得ない。今日これらの問題が油脂行政のそういうような欠陥によって非常な混乱をしているという現実を長官はまだ認識していないと私は思う。そういう御答弁をしている者に私が何回質問をしても同じでありますから、それは一つ後刻長官に勉強してもらってはっきりとした答弁を得なければならぬと私は思います。私が先ほど言ったように、中小企業に対する割当、あるいは大企業に対する割当、あるいは実需者割当、あるいは商社割当というようないろいろな問題があると思うのでありますけれども、それでは、一体、この商社割当とか実需者割当というような複雑な割当制というものは、どういう観点に立ってやっているのか、お尋ねいたします。
  150. 須賀賢二

    ○須賀説明員 商社割当、実需者割当の関係は、割当制度を始めましてからいろいろの経過をたどりまして、その割合等も変って参っているようでございますが、最近は、先ほども申し上げましたように、百万トンを越える量の輸入にもなってきておりまするし、順次、昔のようないわゆる輸入制限的な考え方をもちまして量的に非常にしぼったものを輸入するというような事態と大きく変って参っているわけであります。従いまして、昔のように乏しい外貨事情のもとにおきまして制限的な輸入をいたします場合は、実需者割当がその主体となりますことは当然でございます。最近のように、相当量的にも多く輸入をするような事態になって参りますると、順次、やはり、通常の輸出入の態勢といたしまして、商社活動等を活発にやらせるような機会のありまする商社割当が総体的にふえて参るということは、輸入の当然の筋道であろうと考えております。
  151. 神田大作

    ○神田委員 この実需者割当というのはわれわれも話がわかる。しかしながら、それと同時に、同じような商社割当をやる。この商社割当というものは主として横流れというようなものに変ってくる。あるいはまた、今日におきましては、実需者割当でもって工場に割り当てられても、自分で油をしほるよりもそのままこれを横流しした方が利潤が多いというような現実です。そういうような非常に不確実な割当制度、——外貨割当でもって輸入をすることはけっこうでありますけれども、それのいわゆる操作というものが非常に不確実、しかも不明朗である。この点を私は指摘しておる。この点について長官はどのような認識を持っておられます。
  152. 須賀賢二

    ○須賀説明員 商社割当は、これは全部通産省でやるわけでございますから、通産省の通商行政の中でやられております方針によって処理をされておるものと考えております。需要者割当につきましては、われわれの方で個々に割当をきめてやっておるわけでございますが、これは、お話のように、出績その他をもって極力公正を期しておるつもりでございますけれども、あるいは場合によりまして十分でない点もあったかもしれないのでございます。今後、その割当方法の公正妥当な運営につきましては、私どもといたしましてもさらにこまかく注意をして参りおいと考えております。
  153. 神田大作

    ○神田委員 先ほどから私が言っている通り、いわゆる外貨割当を受ければ相当の利潤が出る、それをそのままにしておいて、そうして、割当を受けみ商社なり需要者がそれを横流しをし莫大な利潤を得ているというような事柄が現実に発生しており、これらが油脂界を混乱させておるのでありますけれども、これらのことに対して、多少そういうようなことがあるということをお認めでありますが、正直者がばかを見ない行政をやる上において、これらを根本的に改善しなくちゃならぬ、こう考えるのでありますが、この点長官はどう考えます。
  154. 須賀賢二

    ○須賀説明員 そのような事態がありますれば、そのような事態の発生を防がなければならないことはもちろんでございますが、何しろ関係の業者の数も非常に多いことでありますし、また、事柄が現実の商売とつながっておる問題でございますので、われわれがただ口の先でそれを改めますと言ったようなことだけでは簡単に解決できないことは申し上げるまでもないことであります。従いまして、やはり、基本において、十分なる量の供給がある、必要なだけの数量が割り当てられるということでありますれば、そういう問題が逐次解消して参る筋合いのものでございますから、今後の大豆の輸入方針といたしまして、ただいま申し上げましたような考え方をもちまして、できる限り有効需要を満たして参るように、外貨予算等の編成等につきましても努力をして参りたい、かように考えております。
  155. 神田大作

    ○神田委員 ある程度欠陥を認めておっても行政的にその手が届かないというような御答弁のように聞えますけれども、行政的に手が届かないのじゃなしに、それをやろうとしないのじゃなかったか。今までこれを改革しようとしなかったのじゃないか。この点は、長官は就任したばかりで、長官を責めてもどうにもならぬことだと思うのでありますけれども油脂課長は油に関しましては相当の権威者であると聞いておりますので、油脂課長にお尋ねしますが、私が今まで長官に質問したような欠陥、それから現状、これに対する今後の対策、こういうものについて一つ油脂課長から御答弁願います。
  156. 馬場二葉

    ○馬場説明員 長官から御答弁申し上げた通りでありますが、最初に御指摘の差益の問題ですけれども、これは、やはり、私どもは、できるだけ輸入のワクをふやして有効需要を満たして、差益を少くしていく方向にすべきであるというように考えておるわけであります。  それから、割当の大豆の転売の問題でありますが、これは、私ども非常に頭を痛めまして、再三業界には勧告をし、警告を発し、そして食糧事務所を通じまして報告なりあるいは現場立ち合いなりもさせておるわけです。ところが、御指摘のように、商割大豆が約半量の割当になっておりますが、ある工場が転売しているという風評を耳にしましても、これは商割大豆であるということになりますと、なかなかこれを究明するきめ手がないわけであります。かつて全量需割の時代は、ある工場が転売いたしますと、それは要綱違反であるということで、罰則規定を適用いたしまして割当を削減したことがあるわけであります。現在は半分の商制大豆がありますので、その点非常に流通秩序の確立がむずかしいという現状でありますけれども、しかし、できるだけ転売、転用のないように最善の努力をしておるつもりでおります。
  157. 神田大作

    ○神田委員 努力をしておるのであろうけれども、現実においては、その努力が何ら現われておらないところに問題があるわけです。商割大豆にいたしましても、私が先ほど申した通り、内地大豆との価格差というものが相当大きいので、先ほど言ったように、トン一万だというようなことを言われておる。こういうように特定の業者に莫大な利潤を与えておって、それで油脂行政を正しいものにしようとしても、私はできないと思う。この点課長はどう考えます。
  158. 馬場二葉

    ○馬場説明員 やはり、何度も申すようでありますが、輸入量をできるだけふやしまして、差益をできるだけ縮める、差益が発生しないような数量を確保するということが第一の方針ではないかというふうに考えておるわけであります。
  159. 神田大作

    ○神田委員 これは、輸入量をむやみに増大することになると、内地産の大豆や菜種を圧迫することになるのでありますから、そういうやり方によって、いわゆる大豆生産農家、菜種生産農家を圧迫することは、日本の国内食糧自給の基本線に沿って、これはできないことであると私は思うのであります。だからして、今砂糖やあるいは雑豆等においても一部行われているように、何らかの形によってこれを公平に吸い上げて、生産増強のために使う、そういう形にしない限り、油脂行政というものは正当なものになっていかないと私は思うのでありますが、その点どう考えますか。
  160. 馬場二葉

    ○馬場説明員 割当を受けた商社なりあるいは需要者から差益を吸収するという大きい問題につきましては、私、現在遺憾ながらそこまで検討していないのでありますけれども、今の状態でいいとは決して考えておりませんので、やはり、先ほどから申し上げるように、数量を増加しながら、そして、需要者の原料入手価格にマッチした製品価格、——取りやすい原料が入りますと安い油なりあるいはみそ、しょうゆなりを供給するような指導をし、それに必要な原料をやはり供給してやるということが私どもの方針というふうに考えておるわけです。
  161. 神田大作

    ○神田委員 振興局の立場として、今のような食糧庁長官油脂課長の答弁、いわゆる外国からどんどん安い大豆なり菜種を輸入するということに対して、あなたたちは、内地大豆の増産というような立場に立ってどう考えるか、お伺いします。
  162. 江川了

    ○江川説明員 振興局といたしましては、大豆なりあるいは菜種の農産物としての重要な地位にあることから考えまして、まず国内生産を基本といたしまして、そして、輸入量の決定に当りましては、国内生産に圧迫を加えないということを基本線にいたしまして、食糧庁と十分協議をいたして進めております。
  163. 神田大作

    ○神田委員 そうすると、振興局の答弁と食糧庁の答弁とは大きな食い違いができると思うのであります。その問題点は、振興局としては、内地の大豆、菜種の生産増強のために、適当な輸入を行う、内地の大豆、菜種の増産を目途として行うのは当然であります。食糧庁としては、輸入をできるだけよけいにして、そして差益金をなくして消費価格を下げたいということで、非常に矛盾した二つの答弁でありますけれども、このままでは今の油脂行政の混乱というものは何ら解決されないのでありますが、この点政務次官にもお尋ねしますが、いま一度、食糧庁長官に、この振興局の答弁に関連してお答え願います。
  164. 須賀賢二

    ○須賀説明員 私どもは、外貨予算を編成いたしますにつきまして、それが国内生産農家に対する影響等ももちろん十分に配慮しながらやっているわけであります。先ほど来御説明申し上げました中にも、たっぷり予算等の方法によって有効需要を充足するということをたびたび申し上げておりますが、そういうふうにいたします場合、国内産大豆に対する価格の影響等も当然あるわけであります。大豆の場合につきましては、これは、現実に、価格支持作物といたしまして、ことしあたりの例を見ましても、全販が自主調整として買い上げましたものの処分等につきまして、いろいろ具体的に食糧庁としても協力をして処理をしているわけであります。もちろん、国内産の大豆の価格支持の関係を十分織り込みながら、先ほど来申し上げておりますような線で計画を進めているわけでございます。
  165. 神田大作

    ○神田委員 どうも、食糧庁長官の答弁は、内地大豆、菜種の増産を来たし、外国から安い大豆や菜種を輸入するというような矛盾を含んでいる。現在において日本の油脂行政としては外国から入れるのは当然でありますけれども、私の先ほどの質問の中心点であるところの差益金の問題に対して、あなたが言ったそういう答弁では何ら解決のめどがつかないわけであります。片方において輸入を増大すれば、内地大豆、菜種の生産を減少し、しかも、内地大豆、菜種の生産農家を圧迫することになる。これは非常に矛盾しているので、そういう矛盾をどう解決するかという問題点を私は出しているのでありますから、ただ差益金をなくする問題について輸入を増大する、振興局からそれでは困ると言うと、内地の農家の価格やそういうものとにらみ合せて今度は輸入するというような答弁をしております。これは答弁がつじつまが合わないのでありますが、どうなんですか。
  166. 須賀賢二

    ○須賀説明員 現にことし百万トンの大豆を輸入しておりますが、現実の市価は、御承知のように支持価格は三千二十五円でありますけれども、実際の相場は三千三百円くらいしているわけであります。従いまして、実際の操作面において内地大豆の価格に悪影響を起させないようにいろいろこまかく配慮しながらやっておりますから、こういうことになっているわけであります。私どもは、現在の輸入割当方式によりまして、内地産大豆の価格に対する影響というものは十分配慮しながらやっているつもりであります。
  167. 神田大作

    ○神田委員 すると、外国から来る大豆は二千八百円から五、六百円だろうと思いますが、そこの差益をみすみす特定な者に利潤として勝手に吸収させておくというような、この問題をどう考えますか。
  168. 須賀賢二

    ○須賀説明員 差益と一がいにおっしゃいますが、これはみんな油にしぼったりそれぞれ加工して最終製品になっているわけでありまして、最終製品として販売をされているわけであります。現実に大豆がそれぞれ大豆の形において公然と売買されるのでありますならば、あるいはそこにそういう差益ということが起るかもしれないのでありますけれども、大部分のものは原料として需要者に割当されておりますので、そういう原価計算のもとに企業が営まれているというふうに私どもは考えます。
  169. 神田大作

    ○神田委員 食糧庁長官の答弁は、私の質問する問題の核心をそらす答弁をしている。これは非常に重大な問題でありますから、今後、長官は就任してまだ新しいから、もっと研究してもらって、後刻この問題については徹底的に検討していきたい。当委員会におきましても、砂糖の問題、あるいは雑豆の問題、その他の輸入食糧の問題についても相当の手を打って、これが適正化をはかっているのでありますけれども、今野放しになっているのは油脂関係。そのほかにもあるだろうと思いますが、主として油脂関係。そのために今大豆業界は輸入大豆の割当をめぐっていろいろと問題を起しているのでありますから、この問題は一つ次の委員会において、きょうは時間もだいぶたっているようでありますから、あらためて質問を続けたい、こういうように考えます。  翻って、私は、この前当委員会において質問いたしましたが、輸入菜種、大豆をめぐって、いわゆる日油連に対する割当の問題について伺いたい。この日油連というような組織は必要であります。中小企業が組織しているのでありますから、必要な組合でありますけれども、これに一括割当をし、この一括割当を受けた日油連が、いわゆる金券を配るように、割当を一トンやれば一万円というような利潤を生むというようなことで、この割当をめぐっていろいろ紛争が起きていると思うのであります。この問題について、私は、そういうように非常に利害得失のある問題をこのような組合に一括割当すべきじゃない、これは、農林省責任を持って各県の連合会なりに直接割当をして、この割当の公正を期すべきであるということを御質問申し上げたのでありますが、その後これらに対しましてどのような措置をとっているか、お尋ねします。
  170. 須賀賢二

    ○須賀説明員 日油連の割当に関しまして御質問をいただきまして、それに対しましては御回答を差し上げたのでございますが、その後の措置といたしまして、こういう団体への割当ができる限り公正妥当に行われて参りますように、農林省といたしましてもその指導監督を強化いたしております。割り当てましたものが、農林省が考えている基準に実際に正しく合致しているかどうかというようなことも、よく調べまして指導をいたしているのでございます。さらに、三十四年の上期からは、この団体を通して割当を受けたくない、農林省から直接の発券を希望するという者に対しましては、それに対しても発券をするような道も開いているわけでございまして、そういうような角度からも、この団体のやっております割当の業務の内容が公正に行われますように、さらに指導を加えていきたいと思う次第であります。
  171. 神田大作

    ○神田委員 私は、その後の情勢を見ておりますと、何らこれに改善の加えられた跡が見られないように見受けられる。依然としてやはり大きな利権を握った者がその利権を傘下の工場に自分の権利として割り当てておるように私には見受けられるのでありますが、この点は食糧庁長官ではわからぬだろうから、油脂課長から答弁を願いたいと思うのでありますが、その後どういうふうな改善の跡があったか、お尋ね申し上げます。
  172. 馬場二葉

    ○馬場説明員 事務的なことでございますので私から御答弁申し上げますが、大豆と菜種と若干事情が違いますので、まず大豆につきまして申し上げます。  大豆は、昨年の下期から日油連の内部の配分を、すべて食糧庁が算定いたしました配分通りの割当をするということにまず改められたわけでございます。それから、本年度の上期からは、ただいま長官から御説明がありました通りに、食糧庁の算定の通りに内部配分をやると同時に、直接の個別発券を希望する者にはそれができる道を開いておるわけです。それまではすべて日油連に内部配分の権限を与えておりましたので、相当改善をしたということに私も考えております。  それから、菜種でありますが、菜種は、非常に工場数が多くて、しかも零細でございますので、その実態なり能力なり実績なりをつかむことは非常に困難であります。そこで、昨年の下期まではやはり日油連にまかせたままになっておったのが現状ではあります。しかし、これは決して妥当だとは思っておりませんので、本年からは菜種の配分につきましても合理的な配分基準を検討することにいたしまして、日油連内部配分、県別の配分は、少くとも食糧庁で合理的な算定規則に基いてやりたい、こういうふうなことで現在検討いたしておる段階であります。
  173. 神田大作

    ○神田委員 私がこの前質問したときは、そういうように日油連に一括割当というようなことではなしに、府県別なり工場別に割当をするというような答弁をしたと思うのでありますが、今日まだそのようなことが完全に実施されておらないようでありますれば、これは、先ほど私が言ったように、大きな利権を持っているものにその利権を勝手に使用させるというようなやり方は、やはり油脂行政を混乱させることでありますし、これはとうとい外貨を使ってできるだけ油脂行政を正常化しようとする意図に反するものである、こういうように考えるわけでありますが、きょう油脂課長にはっきりとそういうような府県別割当、そして公正な割当を期するというようなことに対して御言明を願って、それについて業者なり関係筋にその旨を通達すべきであると思うのでありますが、今日までこの処置が非常にあいまいのうちに過ごされてきたように見受けられるのでありますが、この点いかがでありますか。
  174. 馬場二葉

    ○馬場説明員 大豆について、昨年下期は、まだ通達に正式に至らなくて、実際は日油連に対する行政指導でやったわけでありますが、本年の上期の割当におきましては、はっきりと明文化して個別発券の道も開いたし、それから、一括発券の方もみな食糧庁で算定した通りに発券をするようにはっきりと規定いたしたわけであります。  それから、菜種につきましては、ただいま申し上げましたように、下期からは従来と変ったより合理的な配分基準を検討して、日油連の内部配分配分だけは食糧庁が算定した通りやらせるという某木方針についてはすでに決裁をとっておるわけであります。具体的のやり方については現在検討しておる段階でございます。
  175. 神田大作

    ○神田委員 菜種についてはまだ行政的措置をしていないということでありますが、これはすみやかに行政的な措置をして、今までの非難を解消してもらいたい、こういうように私は考えるのであります。また、中小企業を育成する意味において——この菜種というのは中小企業が主でありますし、大豆というものは大企業が主でありますが、菜種の配分等につきまして食糧庁は何か実績主義をとるというようなことで通牒を出したので、今地方においては、検査実績を得てそれによって割当をたくさんもらおうというような意図のもとに、いわゆる菜種の証紙の買い占めが行われておる。しかも、これが中小企業よりも大企業の方に証紙がたくさん集まっておって、この菜種の割当もややもすると大企業に多分に割り当てられるような危険があるということを地方の中小製油業者は非常に憂えておるのでありますが、この点はいかがでありますか。
  176. 馬場二葉

    ○馬場説明員 本年から菜種の割当も新しい基準に基いてやる、その基準の基礎になります方法として、この国産菜種の購入実績を一つの要素として採用することにいたしたのであります。ところが、従来、国産菜種の購入実績の業者の報告をとりますと、国内生産量の約倍近くの報告がありまして、非常に信憑性に乏しいということで、確実に国産菜種を買った実績をつかむ方法はないかということでいろいろ研究いたしました結果、農産物検査法に基きます検査票箋の数によって、その工場が国産菜種を購入した数量をチェックするというような方法を実は考えたわけであります。これは農産物検査法の目的外の使用であります。いろいろ弊害のあることも予想されたわけでありますが、これ以外にはっきりと業者の実績をつかむ方法が見つかりませんでしたので、本年はとりあえずその制度を採用いたしたわけであります。ただ、大企業と中小企業に割り当てます場合に、ただ検査票箋だけではなくて、もう一つの要素として、前年度の輸入菜種の割当実績も同時に加味するということに相なっておるわけでありますが、その加味の割合いかんによって、大企業に有利になるか中小企業に有利になるかというような関係でございますので、この点は、そのウエートのとり方について十分検討いたしまして、下期の割当が行われますまでにははっきりと制度を打ち出したいというふうに考えております。
  177. 神田大作

    ○神田委員 私が申したように、そういうような方針を打ち出したために証紙の買い占めが一部に行われ、そのために菜種の需要が増大して、ひいては油の価格をつり上げておるというような結果を来たしておるのであると思うのでありますが、この問題について課長はそれを認識しておるのか、そういうやり力が正しいからそれに基いてあくまでも割当をやるというのか、その点をお尋ねいたします。
  178. 馬場二葉

    ○馬場説明員 そういうような買い占めが一部に行われてプレミアムが発生しておるということを業界紙で拝見したことがございます。しかし、これは、まだ実際どれだけの割合で証紙による国産菜種の実績を織り込むかということが決定していないのでありますから、それを無理に手に入れて、それが果して将来の利益になるかどうか、そういうことは搾油メーカーとしては予見ができない状態なのでございまして、一定のプレミアムで売買されているという事実は、実は了解に苦しんでおるのが実際でございます。
  179. 神田大作

    ○神田委員 その点については、一つ実情をよく御調査の上、不公平な割当が起らないように善処してもらいたい。先ほど申したように、このようなことが行われると、資本の少い中小メーカーというものは非常な苦しい立場に追いやられる、こういうように考えますので、その点をよく御考慮願いたい。  それから、先ほど割当について公正であるというようなことを言っておりましたけれども、大豆油をしぼらないような工場、あるいは菜種油をしぼらないような工場に日油連は割当をしておる。あるいはまた、資料に基いて調査しますと、実需者割当をもらい、それと見合う商社割当を日油連はとっていながら、実需者割当は各製油業者に割り当てておるようでありますけれども、この商社割当というものを割り当てておらない。これが一体どこへ流れているか。聞くところによりますと、日油連あるいは日油連の姉妹会社といいますか、私この前質問した通りに、日本油糧株式会社というようなものがそれを取って経済行為をやり、この会社が莫大な利潤を得ておるというようなことを言われておるのであります。あるいはまた、資料を詳しく検討するいとまがないので残念でありますけれども、これは後日調査の上この次の委員会なり適当な機会質問をしたいと思いますが、いわゆる菜種の余分な買付分に対しまして、これを実需者に割り当てないでどこかへ横流しをしたような様相が見られる。こういうように、日油連内部に対していろいろと、とうとい外貨を使って菜種や大豆を割り当てながら、そのようなおもしろくない行為が見られます。これに対してわれわれは再三これが監査と監督をするように申し入れておるのでありますけれども、何ら適切なる監査、監督を行なっておらない。まことに私は遺憾であると思いますが、この点課長はどう考えますか。
  180. 馬場二葉

    ○馬場説明員 大豆、菜種の割当行政上は、私どもは、需割は絶対転用、転売できませんので、十分監督しております。商割大豆につきましても、できるだけその比率に応じて最終末端需要者まで配分されることが望ましいので、そういう指導をしておりますけれども、これは、食糧庁としては別段の権限がございませんので、十分に徹底しているということは考えておりませんが、極力指導しておるわけでございます。
  181. 神田大作

    ○神田委員 日油連は、私が言うまでもなく、協同組合組織でありますからして、協同組合に対しまして監督指導をする責務はあると思うのです。これら監督指導をする立場に立っておる農林省が、いろいろの問題が起きて監督指導をしろと言っておるにもかかわらず、いろいろと理屈をつけてこれをやらないというところにも、やはり問題点があると私は思うのでありますが、一つこの点について関係官から御答弁願います。
  182. 須賀賢二

    ○須賀説明員 私からかわってお答えを申し上げますが、団体の監督につきましては、建前といたしましては、ただいま神田委員から御指摘がございました通りでございまして、個別に周到なる監督をいたさなければならないことはもちろんでございます。しかしながら、現実にはなかなかそこまで手が回りかねているわけでございます。ただいまいろいろ御指摘がありますような問題もありますので、今の日油連の問題でありますれば、需割大豆の割当という問題に関しましてその業務を直接やっておりまする立場から個々にこまかく監督して参るということで団体に対する監督の効果をあげなければならぬ、さように考えておるわけでございます。従いまして、今の問題等、大豆につきましては、大豆を担当しております立場から、私どもの方でさらにこまかく監督を加えて参りたい、さように考えております。
  183. 神田大作

    ○神田委員 そういうようにおざなりな答弁をしておる者に幾ら質問してもこれはらちがあかぬ。私はこまかいいろいろの証拠も持っておる。油脂行政に対して、あるいは日油連の監督等に対してそういうおざなり的な答弁をするならば、後刻私は証拠を提示して、そうして油脂行政の混乱を是正しなくてはならぬと考える。もちろん、手が回らぬから監督できないというのは言いのがれですよ。われわれ、そういうことでごまかされるわけにはいかない。聞くところによると、油脂課の重要な地位におるある課員が転勤をしたときに、新橋の料亭みすずに行って、日油連の費用だと言っておりますが、そういうものでもって再三飲み合いをしたというようなことをわれわれは聞いておる。そのほか私はいろいろの資料を持っておりますが、時間もありませんし、また、そういう一つ一つを取り上げることは今日はいかがかと思いますので発表しませんけれども、現在課長はもう十分わかっておると思うのであります。この油脂課をめぐる、あるいは大豆、菜種の割当をめぐってのいろいろな問題になるような事柄が、業界においては日常茶飯事のようにささやかれておる。この際、私は、日本の油脂行政を確立するために、あるいは国内大豆の増産、あるいは消費者を擁護する立場に立って、根本的なメスを入れなければならぬというふうに考える。その根本は、いわゆる割当を受ければ莫大な利潤を得るという外貨の割当をめぐる問題であると思うのであります。私は半年も前にこの問題を質問したにもかかわらず、はっきりとした態度を現わさないほどに、これは今後も混迷があるわけです。油脂課長は本日そのような問題に対しましてある程度決意をされて答弁をされたようでありますからして、私はこれ以上きょうは追及しませんが、油脂行政全般に対する粛正について一つ真剣に考えなければならぬ。これは、業者を育成する意味におきましても、日本の農産食糧品を増産する上におきましても大事なことである、こう考えるのであります。そういう意味合いにおきまして、政務次官はこれらの問題等に対しましてどうお考えになるか、最後にあなたの御意見を聞き、なお、本日はもう時間がたって、皆さんに御迷惑をかけますから、次の機会質問を続けることにいたしまして、私はこの程度でやめたいと思います。
  184. 大野市郎

    大野説明員 油脂行政全般に対しましての神田委員の御指摘は、かねて私どもも注目しておったところであります。また、油脂行政のみならず、いわゆる内地産の大豆の増産、大豆対策という問題でも大きな問題を含んでおります。非常な関心を持って、実は部内でもその話を掘り下げております。従いまして、詳細につきましては、来たる次の機会に十分御質疑をいただき、また部内の意思を統一して施策をお答えいたしたいと思います。  そこで、ただ一つ、御趣旨はよく御了解なんでありますが、油脂課長並びに食糧庁長官の答弁のうちの、今回実施をいたしました措置のうちで、一点だけ私神田委員にお開き取りを願っておきたい点がございます。それは、中小企業団体法がございまして、中小企業の育成強化をはかっておるのは御承知通りでございます。日油連というものの実態が、いろいろ御指摘のありましたように問題があることは、私どもも風評を聞いておるのであります。従って、日油連という中小企業団体法に基くその団体にいろいろな問題があるので、業者の個別割当ということを先ほど言明いたしたのでございますが、筋を立て、本来の中小企業育成という見地から参りますと、できるだけ業界の結束、結集が実は望ましい方向だろうと思います。日油連については、御指摘のところはよく理解がいくのであります。しかし、ほかにも実はいろいろ他業種の団体がございまして、これらがやはり、今度別な意味で、業会に入らないでも勝手なことができるというような形にもしなって参りますと、逆なことになりますので、この点、ただいまの発表いたしました措置は、すでに通達済みでございまして、間違っておらぬのでありますが、将来の行政の方法として、あるいは、その点、行政指導の面で、個々の割当をできるだけ避けて、説得をして内部の不合理を是正せしめつつ団体の円満な育成ということに行くべきものでないかと思いますので、この点、将来そういう方向にあるいはかわるかもしれませんことを、善意の上で御理解をいただきたいと思います。
  185. 神田大作

    ○神田委員 政務次官の答弁はよくわかりました。  最後に、今質問しておかないと困りますので、大事な点を一つお尋ねいたします。大蔵大臣が近くアメリカに行って、アメリカとの圏に輸入問題について話し合う。その場合に、いわゆる大豆のAA制、自動承認制ということをアメリカ側から強く要請されておるようでありますが、もし自動承認制が速急に実現いたしますと、内地の大豆生産業者並びに農家というものは、非常な打撃をこうむって、どうにもならなくなる、同時に、力のない中小企業もそのあふりを食って倒産するのじゃなかろうか、こういう大事な問題でありますので、農林省はこういうことをよく御研究の上、大蔵大臣等とよく打ち合せをいたされて、AA制の問題について御検討を願いたい。これの速急なる実施は今の日本状況からいたしまして非常に不利であるというような点を私は憂えておるのであります。この点について政務次官はどうお考えになるか、お尋ねいたします。
  186. 大野市郎

    大野説明員 この問題は、前回もAAの早急実施が起きましたときに、当委員会におきましても、また国内においても、大豆の行政が大きな問題になっております。今日においてもその状況は変りがないと思います。ただ、新聞に出ましたのは、貿易の自由化の方向という一つの大きな筋はございますので、その大きな筋の大きな旗があげられたのであって、個々の特殊性という問題になりますと、私ども、十分に討議をして、間違いのないようにいたしたい。これは部内でもちろん研究を進めております。
  187. 赤路友藏

    赤路委員 ちょっと資料要求。  これは通産省の方だと思うのだが、菜種の外貨割当の割当先、数量、金額、それから、輸入大豆、菜種の採油業者の原価計算について、もしわかっておる資料があれば提出してほしい。それから、内地産の方も同様な形で、もしわかっていれば出して下さい。わからなければいいです。それから、前の外貨割当先の問題では、本年度のものだけでなしに、過去三カ年分を年次別に出していただきたい。
  188. 本名武

    本名委員長代理 それでは、本日はこれにて散会いたします。     午後七時八分散会