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1959-07-09 第32回国会 衆議院 農林水産委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年七月九日(木曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 吉川 久衛君    理事 永田 亮一君 理事 丹羽 兵助君    理事 野原 正勝君 理事 本名  武君    理事 石田 宥全君 理事 日野 吉夫君       安倍晋太郎君    天野 光晴君       金子 岩三君    久野 忠治君       高石幸三郎君    保岡 武久君       足鹿  覺君    角屋堅次郎君       神田 大作君    小林 正美君       實川 清之君    塚本 三郎君       中澤 茂一君    芳賀  貢君       松浦 定義君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   松永  勇君         農林政務次官  大野 市郎君         農林事務官         (農林局長)  伊東 正義君         農林事務官         (農地局愛知用         水公団監理官) 大山 一生君         農 林 技 官         (農地局建設部         長)      清野  保君         農林事務官         (振興局参事         官)      林田悠紀夫君         農 林 技 官         (振興局普及部         長)      徳安健太郎君         通商産業事務官         (企業局工業立         地課長)    川原 英之君         通商産業事務官         (企業局工業用         水課長)    藤岡 大信君         通商産業事務官         (重工業局長) 小出 榮一君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局         長)      小岩井康朔君         建設事務官         (河川局次長) 曽田  忠君         建 設 技 官         (河川局開発課         長)      小林  泰君         参  考  人         (愛知用水公団         総裁)     濱口 雄彦君         参  考  人         (愛知用水公団         副総裁)    野田 清武君         参  考  人         (愛知用水公団         理事)     伊藤  佐君         参  考  人         (愛知用水公団         理事)     瀬戸 忠武君         参  考  人         (愛知県知事) 桑原 幹根君         参  考  人         (愛知総務部         長)      岩瀬 繁一君         参  考  人         (愛知商工部         長)      喜多 庄一君         参  考  人         (愛知農林部         長)      山分 一郎君         参  考  人         (愛知農地部         長)      森山貞之丞君         参  考  人         (愛知用水土地         改良理事長) 日高 啓夫君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 七月九日  委員加藤常太郎君、久保田豊君及び西村関一君  辞任につき、その補欠として久野忠治君、小林  正美君及び塚本三郎君が議長指名委員に選  任された。同日  委員久野忠治君、小林正美君及び塚本三郎君辞  任につき、その補欠として加藤常太郎君、久保  田豊君及び西村関一君が議長指名委員に選  任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(愛知用水公団の  事業問題並びに農地及び農業用施設にかかわる  地盤変動対策の促進問題)      ————◇—————
  2. 吉川久衛

    吉川委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件につきまして調査を進めます。  愛知用水公団事業問題について参考人より意見を聴取することといたします。  本日出席参考人は、愛知用水公団総裁濱口雄彦君、同副総裁野田清武君、同理事伊藤佐君、同理事瀬戸忠武君、愛知県知事桑原幹根君、同総務部長岩瀬繁一君、同商工部長喜多庄一君、同農林部長山分一郎君、同農地部長森山貞之丞君、愛知用水土地改良理事長日高啓夫君、以上十名の方々であります。  この際参考人各位一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多用中のところ本委員会調査のためわざわざ御出席をいただきまして、まことにありがとう存じました。厚く御礼を申し上げる次第であります。愛知用水公団事業に関しましては、その設立以来、本委員会は、きわめて深い関心を持って事業進捗状況を見守るとともに、調査を続けて参り、先般も委員を派遣してその実情調査いたして参りました次第でありますが、本日は参考人各位より公団事業進捗状況並びに工期内の完成の見通し、用水に関連する水利の問題、営農指導体制確立等中心とした諸般の問題につきまして、参考人各位のそれぞれのお立場から忌憚のない御意見を承わり、もって本委員会調査に資したい所存であります。何とぞよろしくお願い申し上げます。  なお、参考人の御意見は初めにそれぞれの代表者より十分程度お述べ願い、あとは質疑によりお答えをお願い申し上げます。  それでは濱口参考人よりお願いいたします。濱口参考人
  3. 濱口雄彦

    濱口参考人 愛知用水公団設立以来本日に至ります間の大体の工事進捗状況並びに経過を御説明申し上げます。  御承知のように、公団は去る三十年の十月に発足いたしまして、直ちに農林省時代よりでき上っておりました事業基本計画の交付を農林大臣より受けたのであります。公団は、その基本計画に基きまして、公団独自の調査を始めるとともに、一方、世界銀行からの借入金交渉並びに外国の技術者との技術協定締結等を進めて参りましたが、技術者との提携は三十一年の五月にアメリカのシカゴのエリック・ラロア社との間に締結いたしました。また、世界銀行との借款は、その翌年、三十二年の八月にワシントンにおいて七百万ドルの借款調印を完了いたしました。その後、輸入機械一部分国産機械に切りかえる等の関係で百七十万ドルを取り消したのでございますが、締結は一昨年いたしました。その後、先ほど申しました基本計画にのっとりまして、公団調査に基き事業実施計画の作成を急いでおったのでございますが、その間、一昨年、第三次余剰農産物輸入停止に伴いまして、その余農資金から借入金が不可能になり、その結果資金計画に多少の変更が生じましたので、幾分手間取りまして、三十二年の六月に事業実施計画の告示があったのでございますが、諸般の手続を終えまして、ここに公団の仕事がいよいよ軌道に乗って参ったのでございます。  それより先、公団は、発足と同時に、一番難航を予想せられておりました木曽川の支流王滝川ダム地点土地買収、補償の交渉に人っておったのでございます。いろいろ難航をいたしまして、それがようやく三十二年の十一月ごろ妥結をして、早速入札をし、この十一月からダム工事からとりかかったのでございます。  ダム工事につきましては、御承知のように、昨年の七月、八月同地域異常出水によりまして、仮のダムでございます仮堰堤が一部流出するうき目にあったのでございますが、それも全部片がつきまして、ただいま非常に順調に進捗をいたしておりまして、この分で参りますと、予定の三十五年度末を待たず、工事そのものは三十五暦年の末までには完成する確信を持つに至りました。それと同時に、水路につきましても、土地買収交渉が片づいたものから片っ端から着手しております。これも、工期が一年半、二年と長くかかるものから先に着工するという方針で参りましたので、トンネル工事、こういうものから先に始めております。  まず、愛知用水の水の取入口でございます岐阜県の兼山、取り入れるとすぐ五千百余メートルのトンネルになるのでございますが、これは着工いたしまして、この八月ごろに貫通することになっております。そのほか、その下流の二千メートル前後の三つくらいのトンネルも、一つはもう貫通したのもございます。他のものも着々やっております。  なお、愛知県の東郷村に調整池を作るのでございますが、これは有効貯水量九百万トンの調整池でございます。これの土地買収交渉が過去一年有余続いておりますが、ようやく妥結が近いのじゃないかと思います。これが妥結いたしますれば、この夏の終りごろにも着工いたします。これは工期は大体二年くらいと推定されておりますが、この点が全部湛水いたしますのは多少おくれますけれども幹線水路支線水路を通じまして、予定昭和三十五年度末までには完成をいたしまして、同年度植付農家の灌漑期には十分間に合う自信を持って工事を進めておる次第でございます。  大体の経過並びに進捗状況説明は以上をもって終ります。
  4. 吉川久衛

  5. 桑原幹根

    桑原参考人 お許しをいただきまして、この機会におきまして一言愛知用水につきまして愛知県政立場からいたしまして御説明を申し上げたいと存ずる次第でございます。  愛知用水のことにつきましては、そもそもの事の起りからいたしまして、国会関係、なかんずく衆議院の農林水産委員会各位には非常な御尽瘁をちょうだいいたしまして、ことに、先般は、前の委員長であられまする松浦周太郎先生、そうして委員各位おそろい現地に御視察をいただきまして、いろいろと御支援、御鞭撻をちょうだいしたのでございますが、それに引き続きまして、本日ここに、きわめて政務御多端の折柄、しかも暑熱のこのみぎりにおきまして、農林水産委員会を御開催下さいまして、愛知県政でも重大な問題でありまするこの愛知用水につきまして、私どもをお呼び出しをいただきまして御審議をいただきますことは、まことに感謝にたえないことでございまして、この機会に、従来の御支援、御尽瘁に対しまして、同時にまた本日のこの御厚情に対しまして、衷心より厚く御礼を申し上げる次第でございます。  愛知県は、御承知通りの状態でございまして、百五十万の人口を有しまする名古屋市を中心といたしまして、県下全体の人口が四百万あるのでございまするが、そのうち百五十万が今申しました通り名古屋市でございまして、残り二百五十万がその他の地域でございまするが、この名古屋市あるいはその付近は工業的な色彩も多いのではございまするが、しかし、何と申しましても、広大な農業地帯を有しておるのでございまして、名古屋市以外の二百五十万の人口のほとんど大半は農業人口である、かように申し上げてもあえて過言ではない、かように存ずるのでございます。米の産額にいたしましても、平年作二百十万石を有しまする大農業県でございます。もちろん、名古屋市という消費都市を控えておりまして、年々六十万石、七十万石の米を県外から移入いたしておるわけでございまする。かように、二百十万石の米産地でございますか、それだけの事実をもっていたしましても、いかに愛知県が農業県であるかということがわかるわけでございまするが、それだけに愛知県政上の地位におきまして農業が大きな価値を持っておるわけでございます。  愛知県の現在の予算は、一般会計が大体三百三十億ほどでございまして、この三百三十億の予算は、くしくも愛知用水の三百三十一億とその額を同じゅうするわけでございます。この三百三十億の県予算のうち、御推察通り、申すまでもなく教育関係経費が非常に大きな部分を占めておるのでございまして、百十億、すなわち三分の一強を占めておるわけでございます。その次が、これまた御推察をいただきますように、土木関係でございまして、約五十億を占めておるわけでございます。その次が農林水産農地関係でございまして、愛知県はかような大きな県でございますだけに、農業農地につきましては、県の機構といたしましても農林部農地部とに分けておるのでございます。予算の面におきましても、農林関係産業費と申し、農地関係農地費と申しておるわけでございますが、この二つが農林水産農地関係でございまして、この農林部農地部の両予算を合せますと、本年度におきまして三十五億一千万円になっておるわけでございますが、これは例年の例でございますが、実は九月の県会において追加をいたすことになっております。これは、御承知のように、先般四月二十三日に府県会議員選挙が行われまして、愛知県におきましても県会議員選挙が行われましたので、その選挙の前に当初予算を編成いたしましたので、単独県費補助等につきましては、その半額を当初予算に見積り、あと半額を九月の県会に譲ったというふうな状況もございます。従って、九月の県会におきまして追加予算を見ますれば、この三十五億一千万円という額はさらに増加して参ることと存ずるのでございますが、いずれにいたしましても、愛知県政におきまして、教育土木、そして農林農地関係ということになるわけでございます。  このような県政上の地位占むる農業でございますので、私どもといたしましても、県政の面から各方面の御協力をちょうだいいたしまして、私、微力ではございますが、これに当っておるわけでございます。私個人といたしましては、百姓の子ではございますが、しかし、百姓と申しても養蚕農家のせがれでございます。従って、私自身は農業につきましては何ら経験はございませんが、今申しました通り県政上の立場に立っておりますので、各方面の御協力、御支援、また御鞭撻をちょうだいいたしまして、微力をささげて当っておるわけでございますが、特に御尽瘁を賜わっておりますこの愛知用水につきましては、ただいま濱口愛知用水公団総裁の申されたような次第で今日に参っておるわけでございます。  この愛知用水計画は、戦後御承知のような状況具体化を帯びて参ってきたのでありますが、国政において取り上げられ、強く推進されまして、初めて今日の段階まで達したのでありまして、地元におきます私ども微力、何ら加うるところはなかったのでございます。しかし、現在の愛知用水公団事業は三百三十一億の予算をもって進められているわけでございますが、このうち、県費といたしましては、結局はこれを負担しなければならぬのでございますが、ただいまは、あるいは国の補助なり、あるいは先ほどお話のありましたような世銀の借款なり、あるいは政府からの資金部の資金なり、かような御配慮をいただきまして、すべて公団においてこれを取り扱っていただいているわけでございますが、愛知県といたしましては、これが完成後におきましては、その三百三十一億のうち、農業関係施設として約四十億の負担をしなければならぬのでございまして、これに建設利子等を合せますと、相当の額になるわけでございます。結局、六十九億九千万でございますか、約七十億の負担をすることになるわけでございまして、これを愛知用水完成後におきまして十五年間に完済しなければならぬのでございまして、一年に約四億六千六百万円という大きな金を払って参らなければならぬのでございますが、一面、これまた御承知のように、水道計画をこの愛知用水計画の中に持っておるわけでありますので、これは県といたしましてその大部分負担いたして参らなければならぬわけでございます。これは幸い二十年の長期にわたる年賦償還でございまして、均等に償還して参るわけでございますが、これがやはり毎年四億二、三千万円の償還をいたして参らなければならぬ次第でございます。これとても、総計は建設利息と合せて参りますれば八十九億くらいになるかと思いますが、そのくらいの金を結局負担するわけでありまして、この農業用水施設関係水道施設関係とを合せまして、終局におきましては約百五十五億くらいの金を負担しなければならぬわけでございます。それだけに今後におきます県政の上に大きな負担となるのでありますが、それだけにまた県政上非常に重大な問題でございまして、私ども、この大きな問題をかかえ、日夜その微力を嘆いておる次第でございますが、皆様方の非常な御支援をちょうだいいたして今日までの段階に達しておるような次第でございます。  この愛知用水事業のうち、支線につきましては、公団より県が受託して工事の施行に当っているわけでございまして、先般これを御視察をちょうだいいたしたのでございますが、この事業進捗状況につきましてもいろいろ御示教をちょうだいいたして、ありがたく存じている次第でございますが、今日まで各般の事情に制約されまして必ずしもこれがわれわれの思う通りには参っておらなかったのでございます。しかし、ただいまも濱口総裁お話にもありましたように、幹線工事が、大体この昭和三十四年、しかも昨今六月ごろから昭和三十五年の終りまでに一番集中いたしておりまして、ちょうど昨今から三十五年の十二月一ぱいまでがその最盛期でございます。幹線水路中の一番大きな工事であります、あるいはトンネルとか、あるいはサイフォンという点につきましては先般詳しく御視察をいただいたことと思うのでありますが、かような工事が順調に進んで参っておりますので、これらの地点を連係いたします暗渠にいたしましても明渠にいたしましても、これからはトンネルなりあるいはサイフォンと違いまして比較的工事も容易でございますので、順調に進んで参る、かように考える次第でございますが、県が受託しておりますこの支線は約一千百四十五キロメートルあるわけでございまして、これらは、幹線なりあるいは公団が直接やりまする約百キロほどの支線、これは支線中の支線であり、ほとんど幹線にひとしい大支線でありまするが、これに県の受託しております支線は全部連結するわけでございます。従って、幹線なり、これら公団の受け持ちます支線の設計が完了し、そしてその分水位——県の受託支線接合点分水の位置が決定いたしましたり、あるいは水量計算が行われまして、通過水量が決定いたしましたり、こういうことによりまして、すべての段取りが整うわけでございまして、一部支線は着工しておりまするが、これらの関係諸般の情勢の円滑なる推移とともに、県の受託しております支線事業も今後十分なる努力を傾倒いたしまして、公団工事とわれわれの受託いたしておりまする工事と相待ちまして、さらに農林御当局のいろいろの御援助、御示教をちょうだいいたしまして、また各位の御鞭撻を大きな刺激といたしまして、この支線工事を進めて参り、予定期間でありまする三十五年度一ぱい、すなわち三十六年の三月までに完成し、そして少くとも三十六年の六月の通水期までには水がその管を通るようにしていきたい、かような考えを持っておる次第でございます。  この愛知用水は世紀の大事業といわれておるわけでございまして、これによりまして関係地域農業もその様相を変えて参ると存ずるのでございます。一つ一つのこまかい施設につきましては、この通水条件が決定いたしまして、いろいろその状況判断が確定することができますれば、さらにこまかい施設はやって参らなければならぬと考えておりますが、今日において予想せられまする一般的な営農体制というものは整えて参らなければならぬのでございまして、先般もこの点につきまして委員各位より親しく御示教をいただいたのでございます。これらの点にかんがみまして、愛知県の占めておりまする農業上の地位性格というものから考えまして、また、同時に、受益地域がその中におきましても格別な性格をこの愛知用水によって付与せられるという点にかんがみまして、営農体制をも整えて参りたい。すでに、このことのために、三十一年、三十二年、三十三年、そして本年度三十四年、かような意味合いにおきまして、約一億二千万円の経費を投入いたしており、また本年度投入いたそうとしておるわけでございます。これは、国の農林省方面の非常な御支援をいただき、またそのおかげもあるわけでございまするが、今申しました一億二千万円、そして二十四年度の当初予算におきまして三千百万円というこの愛知用水関係経費は、全く単独県費でございまして、愛知用水営農体制を確立して参りますために投入いたしておるような次第でございます。実は、先般御要求によりまして提出いたしました参考資料の中に、この点につきまして掲げてありました数字が非常に不十分でございまして、さらに先ほど委員長さんの御了解をいただきまして再提出をいたしたのでございまして、あとから提出いたしました資料がこれを示しておるわけでございまして、その点御了承を願いたいと存ずる次第でございます。  いずれにいたしましても、かような考え県政上からは愛知用水に対処いたしておるわけでございます。問題はむしろ今後にあると存ずるのでございまして、一そうの御鞭撻、御支援を賜わりたいと、かように存ずる次第でございますが、ここにまた吉川委員長さん初め委員各位の本日の御審議に対しまして、また前もって重ねて敬意と謝意を表しまして、一応私の説明といたします次第でございます。  なお詳しくは御質問等によりまして私からも親しくお話を申し上げ、また、数字等につきましては他の参考人から御説明することにいたしまして、一応私の御説明を終らせていただきます。まことにありがとうございました。
  6. 吉川久衛

  7. 日高啓夫

    日高参考人 愛知用水土地改良理事長日高啓夫でございます。御指名をいただきまして、愛知用水事業につきまして常日ごろ非常な御支援、御協力をいただいております先生方にまずもってお礼を申し上げる次第であります。なお、先回はわざわざ御遠路現地を御視察いただきまして、つぶさに実情をごらんいただき、なおまた私どもの微意を御聴取いただきまして、大へんありがたい仕合せでございまして、この点も厚くお礼を申し上げる次第でございます。  愛知用水土地改良区は、愛知県内におきまする受益地区を包含いたしておりまして、受益予想面積三万町歩、組合員三万名という概数でございまして、愛知用水建設工事が一日も早くかつ順調に進捗いたしますための受け入れ態勢を整備いたしますことをまずもって現段階の使命だと存じまして、日々土地改良区の事業の推進をいたしておるわけでございます。従って、面積は非常に広うございますので、全区域を大体三ブロックに分けまして、知多半島尾張北部、三河というふうに分けまして、また、各町村におきましては、最初必要でございます水路敷地の獲得の問題というようなことの重要性にかんがみまして、用地対策委員という名のもとに各町村ごと対策委員を自主的に作っていただきまして、用地問題の解決に当っておるわけでございます。と同時に、水が利用できます日を期待いたしまして、利水委員会というやはり自主的な町村ごと委員会を作っていただきまして、この利水委員会でもって、将来の営農計画受益に対します作付計画というような検討をいたしておるわけでございますが、何を申しましても、そのうちに含まれております畑地灌漑問題等は、いろいろな要素が複雑多岐にわたりますので、これらの問題を一日も早く解決いたしたいと思って努力をいたしておるわけであります。  なお、改良区全体といたしましては、独自の立場から、受け入れのための作付計画であるとか、あるいは水の利用の方途であるとか、耕種改善の問題というようなことを勘案いたしまして、年々受益計画の試案を作成いたしまして、受益農家参考に供することはもちろん、公団や県の方の御参考に供しておる次第でございます。なおまた、畑地灌漑に関連いたしまして、御承知のような知多半島を包含する非常に地形の複雑な地域の畑地でございますので、畑地の耕地整理事業と申しますか、畑地整備の必要が痛感されるのでございます。また、公団や県が委託を受けてやられます支線幹線水路工事完成いたしましても、その末端の毛細管に相当する水路問題等は、そうした事業によって画龍点睛を欠かないように完璧を期したいという所存から、この整備事業土地改良区で責任を持って完遂いたしたいというふうに努力をいたしておるわけであります。本来の目的は、完成した水路の維持、管理あるいは利水の規制、統制というようなことを目途とはいたしておりますが、現段階におきましては、最初に申しましたように、工事が一日も早く、しかも完全にスムースにでき上りますような、そうした地元の受け入れ態勢に対しまして土地改良区としては全力を傾倒いたしまして、りっぱにこの事業完成皆様方のお力添えをいただきましてでき上りますように念願をいたしますと同時に、努力をいたしておるわけでございますので、どうぞ今後とも御叱正、御支援をいただきたいと存じて、一言お願いを申し上げる次第であります。  なお、申し上げましたこと、非常に粗雑で不十分でございますので、御質問をいただけますれば、それに対してお答え申し上げたいと存じます。
  8. 吉川久衛

    吉川委員長 以上をもちまして初めの意見陳述は終りました。引き続き質疑に入りますが、ただいままでの政府側からの出席者を申し上げますから、質問者の各位はそのおつもりでお願いいたします。農林省から、大野政務次官、伊東農地局長、徳安普及部長、清野建設部長、大山監理官、大蔵省から松永主計官、建設省から小林開発課長、なお、通産省の小出重工業局長は、出席を求めておりますが、ただいま参議院の方の関係で、少しおくれて参る予定でございます。  それでは、質疑は通告に従いまして順次これを許します。角屋堅次郎君。
  9. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 愛知用水事業中心にした問題につきましては、ただいまそれぞれ関係者から概要についてお話があったわけでございますが、御承知のように、この問題につきましては、過般農林水産委員会として調査等も実施をし、先般の委員会において、その調査概要について報告がなされ、そのあと本省関係について私から総括的な質問をいたしたわけでございますが、本日はそれぞれ現地側の愛知県あるいは土地改良区あるいは公団側を迎えまして、今日非常に大きな問題になってき、しかも現段階においていろいろ検討しなければならぬ問題を含んでおります際でありますので、この機会にいろいろな点についてそれぞれ関係者から御意見を承わりたいと思うわけでございます。  申し上げるまでもなく、愛知用水事業は、日本の農業開発事業といたしましては、一つには世銀あるいは余剰農産物等の見返り資金の導入という問題、いわゆる外資導入による農地開発事業であるという問題、さらに、エリック・フロアとの技術提携による工事設計施工がなされておるということ、また、この受益地が三万数千町歩に及び、特に知多半島中心にいたしましては畑灌を中心にした新しい営農体系を確立しなければならぬという問題等を含み、総額において三百三十一億円という巨額の経費を使ってこの事業をなされておることは御承知通りでございます。私は、先般の調査で、直接、愛知県の牧尾橋ダムを初め、幹線水路の兼山におけるトンネルのライニング、あるいはサイフォン幹線水路等の問題、あるいは直接営農の下準備としての東海、近畿農業試験場等の畑作実験あるいは公団の実験圃場の実験、その他各般の問題について視察する機会を得たわけですが、この視察を通じ、報告書でも明らかにされておるわけでございまするけれども、私は、この世紀の事業というものが愛知用水公団中心にいたしまして日夜非常に建設的な意欲に燃えてやられておるというところの姿に対しては深い敬意を覚えたわけでございますし、同時に、終戦後の日本の農業土木事業というものがその設計、施工の面において画期的な前進を示しておる姿に認識を新たにする問題があったわけであります。しかし、反面、現実に現地の実態調査をしますと、先ほど来総裁あるいは愛知県知事等からお述べにはなりましたけれども愛知用水事業予定の三十六年三月までに工事が終了するかどうかという問題については、今のぺースのままで行った場合には、愛知県側が当時現地において話されたところでは、一年ないし一年半くらい、県に委託された支線工事においておくれる可能性を持っておるということが伝えられたわけでございます。同時に、今次事業の施行に伴いますところの営農体系、いわゆるこれから始まるべき営農等の問題については、これは農林省、県ともに関係が深いわけでございますけれども、きわめて立ちおくれを示しておるということでございます。また、愛知県側の本事業に対するところの受け入れ態勢、これは申し上げるまでもなく非常に国際的にも関連があり、日本の農業開発事業としては画期的な事業でありますが、その事業の遂行に直接地元として当るべき県の受け入れ態勢いかんということになりますと、これ等についても十分県側として熱意を持って推進してもらわなければならぬ問題が多く含まれているのじゃないかということを感ぜざるを得なかったわけでございます。また、最近の愛知用水事業基本計画と関連した用水配分等の問題が、いわゆる愛知の南部臨海工業地帯あるいは中部等の問題その他を含めまして具体的に表面化してきていることは御承知通りでございまして、この問題に関連をして愛知用水基本計画というものは予定通り推進し得るのであるかどうか、こういうことについても、それぞれ公団愛知県等の意見を聞きながら慎重に検討すべき問題を含んでいるんではないかというふうに思うのでございます。同時に、この仕事が一応一段落しましたあと愛知用水公団としての今後のいわゆる管理公団に切りかえたあとの職員の問題、技術体制をどういうふうに将来生かしていくかという問題等につきましても、この機会に明らかにして、いわゆる愛知用水事業に携わっている人々が安心をして仕事を推進していく、こういうことを責任を持って検討すべき時期に来ておるということも考えておるわけでございます。本日は、私は、主として基本計画の問題、特に水の問題あるいは工事施行に関する基本的な問題等に触れながら、後ほど営農等の具体的な問題について足鹿委員その他からお触れになりますので、まずこういう基本的の問題についてお尋ねを申し上げたいと思います。  先ほども愛知県の桑原知事から、いわゆる愛知用水事業関係地区というものは、一つには工業の立地条件を含んだところの地帯を含んでおるという指摘がございました。ただ、問題がきわめて重要であるだけに、こういう工業用水等の問題については全然触れられることを避けられたわけでございますけれども、これは後ほどいろいろな質問の中でお考えを明らかにしていただきたいと思うわけでございます。  そういういろいろな最近の情勢等からして、この機会公団並びに県側に承わりたいのでございますが、御承知のように、愛知用水事業、これは国土総合開発の一環としての木曽特定開発地域の一環として行われており、しかもこれにつきましてははっきりした基本計画というものが樹立されて遂行されておるわけでございますが、今日の段階において、この基本計画に基いて推進をしていく、こういうことをあくまでも堅持されていかれるのであるかどうかという点について、まず総裁並びに県側の意見をお伺いいたしたいと思います。
  10. 濱口雄彦

    濱口参考人 基本計画農林大臣が定めるものでございまして、私どもただいままで聞いておるところによりますと、基本計画は今のところ変更する意図がない。それで、公団といたしましても、十分今の基本計画に従ってやっていける、こういうように存じております。
  11. 桑原幹根

    桑原参考人 ただいまの御質問でございますが、愛知用水自身の基本計画につきましては、ただいま濱口総裁のお述べになった通りでございますが、なお、角屋委員から木曽総合開発地域計画についても御言及になったようでございまして、この計画は、御承知通り関係県が寄り集まりましていろいろ協議をいたしまして、そうして、各県の持っております問題を取りそろえまして、その周にいろいろな調整をはかり、いわゆる中部地帯の産業経済開発というふうな面から総合的な計画を一応立て、内閣等に上申をいたしておるのでございまして、こまかい点につきましては今後の客観情勢の推移に応じていろいろ変更することもあろうかと思いますが、基本的な考え方につきましては、私は、変らない、かように考えておるわけでございます。
  12. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 まず、工事の今後の完了の見通しの問題から入って参りたいと思います。  先ほど総裁並びに愛知県知事あるいは土地改良区の理事長が口をそろえて、予定通り三十六年三月までに愛知用水事業を完了するように努力をいたしたい、こういうお考えについて明らかにされたわけであります。冒頭に申し上げましたように、私どもは、愛知用水事業現地を見まして、牧尾橋ダムを初め、兼山の取り口路、サイフォン、その他幹線水路公団で直接やっておる支線水路計画、あるいは県側に委託した支線水路工事進捗状況を見て参りますと、特に、県に委託いたしておりますところの支線水路工事の完了という問題については、今のぺースのままでいった場合には一年ないし一年半もおくれるという危険性を持っておる、こういうふうに読みとって参ったわけでございます。しかし、この点について過般の委員会農林省側の意見を聞きましたところ、この問題については、今後、いわゆる設計の推進、あるいはまたそのために各県の技術援助、事務局に昇格をいたしました愛知農地事務局の積極的な協力等も加えながら進めて参りたい、こういうふうなこと等も言われておるわけでございますが、受け入れ態勢にある県側の問題としまして、今日私どもが県に委託されている支線工事については相当におくれるのではないかという心配について、具体的に推進する側として、おくれないという腹案をお示し願いたいと存じます。
  13. 桑原幹根

    桑原参考人 ただいま、特に、県が受託しております支線工事の今後の見通しにつきまして、現在の進行のペースで進めば一年あるいは一年半おくれるのではないかという御懸念でございます。その点につきましては、先般もいろいろと御意見をいただいたのでございますが、これは愛知用水公団幹線なり支線工事と一体的な関係にあるわけでございまして、県の支線工事だけを先に進めて参るというふうなことにも参りませんで、常に同じ歩調あるいは同じペースで参らなければならぬのでございまして、先ほどちょっとその点にも触れましたように、この三十四年、三十五年が工事最盛期でございまして、従って、この期間に努力を傾注して参らなければならぬわけでございますが、今日までわれわれの努力が足りないというような御懸念をお持ちいただくようなことに相なることほまことに遺憾に存じておる次第でございますが、御意見もございますし、なお私どももかねがねそのように考えておりますので、農林当局、特に農地局等の御指導もいただきまして、先ほど角屋委員がこの点にもお触れになりましたが、人員の充足、ことに愛知用水という事業がいわば時限的な性格を持っております関係からいたしまして、これに従事する職員の充足は非常に困難でございますし、同時に、これまた御指摘のように、その後の働きの場所を求めるというふうなことにつきましても考慮して参らなければならぬことでございまして、それぞれ当人といたしましてはいろいろ懸念いたしましてなかなかりっぱな人を多数に集めることは困難でございますが、これにつきましては、農林当局、農地局の御援助もいただき、また府県からの御支援をいただきまして、愛知用水公団ともども人員の充足をはかって参る。あるいはまた、設計等につきましても、コンサルタントの依頼とか、あるいは設計そのものの簡素化というふうなこともはかりまして、御趣旨に沿うように進めて参る。先ほども申しました通り、三十六年の三月一ぱい、そして三十六年の六月の通水期までには末端まで完成さしていきたい、かように考えておりますので、さよう御了承いただきたいと存ずる次第でございます。
  14. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 愛知用水公団でいただいて参りました「愛知用水公団業務概要」という最近の資料によりまして、工程表の進捗状況等を見て参りますと、昭和三十五年度の第四・四半期、つまり三十六年の三月までにかかってくるところの工事というものは、牧尾橋ダムにおいては取水設備、枠線系路の関係においては第七、第八、第十、第十一、第十四工区、支線水路関係におきましては、公団施工分においてもちろんこれは関係して参りますし、県の委託分については、先ほど知事が述べられましたように、公団の施工分と関連をして愛知県の委託工事分の計画通りできるかどうかということが大きく影響する、こういうふうに指摘されておるわけですが、そこで、この工程表に基いてなされた場合において、愛知県に委託してあるところの支線水路工事完了というものが予定通りできるという考え方に立っているのであるか、この計画通りいくと予定よりもおくれるという、そういう考え方に立っておるのであるか、この点について両者から明らかにしていただきたいと思います。
  15. 伊藤佐

    伊藤参考人 便宜私からお答えさせていただきますが、ただいまの工程表によって参りますれば、大体県知事から申されましたようなふうに参るという予定でございます。
  16. 桑原幹根

    桑原参考人 先ほど申しましたように、公団とともどもやって参りまして、三十五年度一ぱい完成をさせて参るように今後努力し、検討して参りたいと存じますが、いろいろの点におきまして相当困難もございますので、関係方面の御助力が一体になりまして初めてこのことができ得る、かように存じておるのでございまして、なお、われわれは、そのような方面に御了解もいただき、また御援助も懇請いたしまして、御趣旨に沿うようにいたしたい、かように考えます。
  17. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 先般現地視察しました際に、県側の関係者から説明しておるところによりますと、県の委託分については、現在一五%進捗しており、本年度中に大体三〇%完了の見込みであって、来年度以降に七〇%の委託工事が残る、しかも、最近東海製鉄その他の工場用地等の問題が出て参りましてから、用地買収という問題について従来以上の困難が出て参っておるということを指摘しながら、先ほど申しましたように、この仕事の遂行については一年ないし一年半くらいおくれる危険性を持っておるということを愛知県の責任ある課長からお話があったわけでございます。そこで、先ほど御質問申し上げましたけれども公団側の工事工程表に基いて予定通り県側でできるということに相なりますと、問題は、今指摘しましたように、工場用地等の問題と関連をして、知多半島における受け入れ態勢の地元の状態はどういうことになっておるのか、いわゆる幹線支線等の用地買収がスムースに進むのであるかどうか、こういう面について県側とし自信を持って推進し得るという見通しに立っておるかどうかをお伺いしたいと存じます。
  18. 桑原幹根

    桑原参考人 ただいま重ねての御質問でございますが、自信を持って用地買収等の問題に当っていき、円満にやって参りたい、このように考えております。
  19. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 工事完了の問題については、私がちょうど地元に帰っておりました際にラジオ等でお聞きをした愛知県の知事のニュース放送によりますと、この工事がおくれておるという問題は、予算が足らないんだ、予算を増額をしてもらうということに相ならなければ予定通り終るかどうかわからぬという意味のニュース放送がなされておるのでございますが、要するに、愛知用水事業の三百三十一億という基本計画に基く予算、しかもこれがそれぞれ既定方針に基いてそれぞれの年度配付されてくる予算、こういう前提に立って、今の工程表に基き、しかも受け入れ態勢の県側として予算のそういう問題に全然関係なく予定通り進捗できるというふうにお考えであるかどうか、その間の事情についてもう一度お考えを承わりたいと存じます。
  20. 桑原幹根

    桑原参考人 きわめて適切な御指摘でございますが、工事の費用が全体的に十分でないという点につきましては、これは私も内心そう思っております。これは三百三十一億の決定になりました当初からいたしまして私はそういう懸念を実は持っておったのでございますが、このことは率直に申し上げてよいと思います。従って、特に昨今のような物価の値上りとか、あるいは用地の買収等につきましてもかれこれ当時予想しなかったような事情が発生して参りましたので、なかなか苦心が多いわけでございまして、そういう苦心の要るところから、あるいはおくれるのではないかというふうな御懸念も生ずることと思うのでございますが、経費の足りないところはわれわれの努力によって補なっていくと同時に、また、さような面につきましては、なお政府、特に農林御当局に一ついろいろとお願いを申し上げまして、今後そのような困難な問題を打開して参って、順調なる進行ができますようにいたして参りたい、このように考えている次第でございます。
  21. 吉川久衛

    吉川委員長 ただいま建設省から曽田河川局次長が見えました。
  22. 中澤茂一

    ○中澤委員 関連して。  どうも何か奥歯にもののはさまったような御答弁ですが、いま少し率直にざっくばらんにお考えを開陳してもらいたい。それは、視察の結果、この用水性格が大きく変りはしないかということをわれわれは危惧しておるのです。現在の支線の問題にいたしましても、われわれの調査の過程においても、資料要求をしても、その資料を故意かどうか知りませんが出してくれない。きょうまた、参考人においで願っても、何か奥歯にもののはさまったような、上手に逃げればいいというような感じを受けるのです。そういうことでなくて、三百三十一億という膨大な、しかも世銀の金まで借りた資金を投入してやっておる仕事であるから、ここでもっとざっくばらんに、一体臨海工業地帯との関連の問題をどうするか、——この用水計画そのものの根本的な問題をわれわれは考えておる。われわれの一部には、もはや性格変更をしなければだめだという見方もあるのです。そういうようなことであるから、もっとざっくばらんに、今の問題にしても、しからば足りないのなら足りない支線はどするかというような問題を、知事ももっとざっくばらんに言ってもらいたいと思うのです。奥歯にもののはさまったような、何か農林委員会がうるさいから上手に逃げればいいじゃないかというような感じをさっきから受けるのです。そういうことでなく、もっとお互いに胸襟を開いて、しからば現在の東海製鉄の問題をどうするか。しかも、この臨海工業地帯の膨大な計画の概要を見ると、一体この地帯の工業用水をどうするつもりでこういう膨大な計画を立てておるのか、この水は一体どっから持ってくる予定なのか。知事は矢作川の水をこっちに引水するというようなことを懇談会の席上で言われておった。しからば、河川局が現在築いておる矢作川のダムとの関係はどういうことになるのか。そういうような根本的な問題をわれわれは考えておるのですから、もう少し……。私、途中からのらりくらりと上手に逃げればいいというような感じを受けておりますから、金が足りないなら足りないで、知事としては今後こういう計画でいくんだというようなことをもっとざっくばらんに言ってもらいたい。  それから、公団側でも、基本計画が変らないなんていう、そういうごまかしを言わずに、この際基本計画が変ってきておるのです。たとえば受益面積の問題を見ても、当初計画の三万三千町歩が、第一次案では二万八千町歩、第二次案では二万五千町歩になり、第三次案では二万四千町歩になっておるというふうに、どんどん変ってきておる。そういうように変ってきておるのだから、基本計画は変りませんとかなんとか、そういうことじゃなくて、一体公団側と県側は、東海製鉄の年間一億トン所要量の水についてどういう話し合いをしたのかということまでざっくばらんに話してもらいたい。
  23. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 ただいま、工事完了の問題について、受知県知事から予算増額というような一つの問題が提起されておるわけでございます。この問題はやはり愛知用水事業としてはきわめて重大な当面の問題に相なろうかと思うのであります。しかも、この予算増額というふうな問題がかりに必要であるということになって参りますと、当然これ、農民の負担の問題、あるいはまた発電に対するコストの問題、工業用水に対するコストの問題、上水道に対するコストの問題と、各般に大きな影響を持ってくることは申し上げるまでもないのでございます。こういう必要性が今日の時点において生じておるのかどうかということについて、農林省並びに愛知用水公団側の率直な意見を求めたいと存じます。
  24. 伊東正義

    ○伊東説明員 御質問の事業費の問題でありますが、当時予定いたしておりましたいろんな要素、その後のたとえば物価の問題でございますとか、あるいは牧尾ダムの流出の問題、あるいは用地の補償の問題、いろいろ要素で変ってきた問題もございますので、それが予備費でまかなえるかどうかという問題、全般にわたりまして今公団事業費の検討をしてもらっているような段階でございます。
  25. 濱口雄彦

    濱口参考人 今伊東農地局長が言われた通りのことでございまして、公団でも検討中でございます。
  26. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 この点は愛知用水の今後の事業推進の問題としては一つの重要な問題であると思うのですが、この点が非常に抽象論で片づけられまして何ら具体性を持たないという点は、本委員会審議としてはきわめて遺憾でございます。そこで、話を進めます前提として、愛知県側の直接の分として今後の工事施行にどれだけの予算増額が必要であるかということが具体的な数字としてあれば、お答えを願いたいと存じます。
  27. 桑原幹根

    桑原参考人 愛知用水工事全体の予算を増額するということになりますれば、ただいまお話しのように、これは基本計画の変更ということになるわけでございまして、われわれといたしましてはいろいろその点について要望しなければならぬのでございますが、農林御当局において御決定を願い、また国会方面にも御審議を願うことになる問題でございますので、私の立場からいたしましては、そういうことをこいねがう立場でございまして、何らこれ以上申し上げられる立場ではございません。しかし、それに関連いたしまして、当然それが増額ということを想像いたしますれば、そうなりますれば、それはまた、愛知用水の現在の計画が、御承知のようなアロケーションによって、先ほど申しました通り県も負担しておるわけでありますから、そういう基本方針によって県への負担も増加して参る、かように考えておるわけでございまして、その際におきましては、県として当然その負担は負わなければならぬと考えておるわけでございます。
  28. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今の予算の問題に関連をして、知事は当初、私の愛知用水事業基本計画通り進める考え方であるかどうかという質問に対しては、基本計画通り進めていきたいと答えられたはずでありまするけれども、今予算の問題からたまたま知事のお話を聞いておりますと、基本計画の変更をしなければならぬという前提に立って予算の増加を考えているやに承わったわけであります。そういたしますと、これは後ほどいろいろ質問の展開の中でさらにお尋ねをするわけでございまして、きわめて重大でございますが、基本計画の変更とはどういう内容のものでございましょう。
  29. 桑原幹根

    桑原参考人 ただいま、御質問によりまして農林当局より御答弁がございまして、あるいは物価の値上りとか、あるいはまたいろんなことによって今後増額する必要があるということであるならば検討するというふうなことでございまして、御検討の結果がどうなるかは存じませんが、もし増額になるというふうなことになりますれば、当然また県への負担お話があることと存ずるわけでございまして、さような仮定のもとに私はお話し申し上げたような次第でございます。この点とくと御了承いただきたいと思います。
  30. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今の工事完了に関連した予算増額という一つの大きな問題については、今直ちに回答をすること自身が非常に重大な問題であるのでさらに若干の検討を要するということであれば、午後の再開までにそれぞれ農林省あるいは公団、県等で十分検討されて、もっと具体的なお話をこの委員会で承わりたい、かように考えますので、この点については、今のところ直ちにさらに追及いたしましても具体化しないということであれば、後ほどの質問と関連いたしますので、これは午後の再開冒頭にそれぞれ農林省、公団並びに県側から一歩前進した具体的な意見というものを承わりたいと存じます。  次に、先ほど知事は基本計画の変更ということを口をすべらしたのでございますけれども、また今の質問の中では予算の変更かのごとき話にすり変えられたというふうな感じが率直に言っていたすのでありますが、これは次の問題をお尋ねする中でもう少し明らかにして参りたいと思います。  第二の問題は、申し上げるまでもなく、今日愛知用水事業が当面をしておる問題は、いわゆる愛知用水事業基本計画として決定をされておる農業用水一億一千万トン、都市用水四千五百万トン、この都市用水四千五百万トンの内訳は、上水道千七百八十五万トン、工業用水二千七百十五万トンという中で、総計締めて一億五千五百万トンという計画に相なっておるわけでありますけれども、この水の問題に関連をいたしまして最近の東海製鉄等の誘致の問題というものが出て参り、その他愛知県の工業化への立地条件との関連の中でその他の用水の今後の見通しの問題はどうかということ、あるいは農業用水の一億一千万トンの問題それ自身にいたしましても、土地改良理事長から後ほどまたお伺いしたいと思うのですが、先般視察いたしました際にも、畑灌を中心にした知多半島の新しい営農体系の確立ということがもちろん中心であろうけれども現地側の農民の要請としては水田化への要請というものはきわめて強いというお話を承わったわけでございます。そうなりますと、予定をされておる農業用水一億一千万トンそれ自身についても今後増大の可能性というものを十分持っておる。こういう農業用水の増大の可能性、あるいは工業用水の増大の可能性、さらに、上水道等についても、名古屋の都市人口というものが今後増加して参るに従いまして、名古屋市の上水道の必要量というものが、昭和四十年あるいは五十年等について、科学技術庁の資源局からの資料等を拝見しておると、相当大きな用水量の増ということを考えておるようでございます。しかも、御承知のように、愛知県の名古屋中心にした臨海工業地区の工業用水の相当部分というものが今地下水に依存をしておる。この地下水に依存をしておる問題については、その後も競合等によって地下水がどんどん低下をしておる、地盤沈下等の問題もからみ合ってきておる、こういうことから、地下水に依存をしてきておる工業用水等について、新しい表流水によるところの工業用水の増加ということのファクターも考えて参らなければならぬという問題も生じてきておると思います。これら彼此勘案して参りますと、ここで、愛知用水事業中心にした今までの農業用水、都市用水の配分計画というものは、このままで推進をされるのであるか、これは根本的に検討しなければならぬ段階になってきておる、これが一つの当面の大きな問題であろうと思います。  そこで、まず農業用水関係の問題に入って参りたいと思うのでございますが、御承知のように、一億一千万トンという用水の内訳については、これは、畑灌に対するところの水の所要量、あるいはまた水田の開田に対するところの水の所要量、あるいは用水補給田としての水の所要量、こういうものが総合されてきまっておるわけでありますが、この機会に今までの計画から一歩前進した地元側の要請があるかどうか、先般からお伺いしておるのでありますけれども、開田化への要請等も含めて農業用水中心に、土地改良区の方から現地側の意見というものを承わりたいと存じます。
  31. 日高啓夫

    日高参考人 ただいまの御質問の点でございますが、私の方としては、できるだけ基本計画の線に沿いまして営農効果をあげて参りたいという考え方を持っておるのでありますが、やはり、地元農家の素朴な要求と申しますか、何分、多年稲作農業になれておりまして、しかも農家経営のうちで比較的安定をいたしております稲作に対する要望、これは非常に強いわけであります。従って、畑地灌漑の面におきましても、できる限り、畑地灌漑による陸稲の栽培であるとか、あるいは、ただいま試験研究機関で試験をしておいでになります畑地灌漑による特殊の水稲栽培というような面を将来開拓いたして参りまして、畑地灌漑でできるだけの効果をあげて参りたいという、土地改良区自身としてはそうした考え方を持っておりますけれども、一部農家の間には、この際できるだけ一つ畑地あるいは新規開墾地においては水田の面積をふやしてもらいたいという要望のありますことは事実でございます。
  32. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 牧尾橋ダム決定の前に二子持貯水池の計画というものが当初あったことは、御承知通りでございますが、この二子持貯水池の場合には、有効貯水量が約八千六百五十二万トンになるわけでございますけれども、実際に牧尾橋ダムに変更したために有効貯水量六千八百万トンということに相なる。従って、このことによって有効貯水量が一千八百万トン近く減じたために、従来の農地に対するところの配水計画というものを変更いたしまして、開田の面積を二千七百八十九町歩減じ、畑地灌漑を二千三百十町歩増して、水量の調節をしたという経過になっておると私は思うのでございます。今日、農業用水の増大の問題、あるいは工業用水、上水道用水問題等をかかえた段階において顧みてみますと、一体、牧尾橋ダムという建設計画によって今日やっておるのが、実際の用水事業実情に適しておったのであるか、それとも、さらに遡及をして二子持ダムの当初の計画において設計施工をして推進しておった方がよかったのかという問題が、これはすでに過ぎ去ったことでございますけれども、私は出て参る一つの問題ではないかと思います。もちろん、設計上の問題、その他、エリック・フロアの技術援助の問題、世銀余剰農産物の見返り円資金の外資導入の問題、いろいろな問題がからんだと思うのでございますけれども、この問題はお答えとしてはきわめてつらい立場かもしれませんが、専門的な視野も含めて、愛知用水公団側から、この時点における御意見を承わりたいと思います。
  33. 濱口雄彦

    濱口参考人 当初ダム農林省当時二子持地点予定しておったのを、後に牧尾地点に変更いたしまして、その結果、有効貯水量は二割方減ったのは、今角屋さんのおっしゃった通りであります。なぜ減ったかといいますと、初め二子持地点にコンクリートのダム——地質上あすこならコンクリートということになりますので、世界銀行視察団が参りまして、牧尾地点にロックフィル・ダムを作るのと比較いたしまして二十数億円よけいの費用がかかる、これでは世界銀行は金を貸さない、貧乏風ならそれに従って費用の安いのをやれということで、やむを得ずやったわけでございます。その結果、ただいま申しましたように、有効貯水量が二割方減ったのでございまして、これを補うために東郷の調整池を設けまして、少し水の余っておるときに東郷の調整池にためておきまして、これを水の不足のときに流すというようなことで幾分その水不足をカバーする、こういうことでやっておるのでありまして、牧尾に変更したのは、これは世銀がどうしても聞かないのでやむを得なかったわけでございます。
  34. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 農業用水の問題については、先ほど土地改良区の理事長のお答え等も勘案して参りますと、一億一千万トンの当初計画というものは開田の要請等も考慮して考える場合においてはさらに増大をする可能性を持っておるということは、私は明らかであろうかと思います。  一方、工業用水の問題に入りたいと思いますが、この点については、愛知県から「工業用水計画概要書」というものについて私ども資料を提出されたわけでございます。この中身を見て参りますというと、今焦点になっております東海製鉄の問題も含みまして、今後の、いわゆる机上プランではございますけれども愛知県の南部、中部を含む工業地帯の所要工業用水量というものが、私は計画としては出ておると思うのでございます。その計画によりますと、昭和四十一年の段階になりますと、毎秒三立方メートル、年間にいたしまして約九千四百万トンの水が必要になって参る。さらに、昭和五十年の段階になりますと、毎日四十三万二千トン、年間にいたしますと一億数千万トンの大量の水になって参るわけでございますが、この工業用水資料による具体的な構想について、この機会愛知県側から説明を願いたいと存じます。
  35. 桑原幹根

    桑原参考人 ただいまお尋ねの工業用水の問題でございますが、御承知のように、工業用水計画は当初の愛知用水計画の中に入っておるのでありまして、先ほど御指摘のように、四千五百万トンのうち、上水道の方を除きまして二千七百万トンが工業用水でございます。これは、現在の情勢からいたしまして、名古屋港を中心といたしまするあの地域に予想されております、あるいはまた既存の工場等にこれを供給するのでございますが、二千七百万トンでは多少余裕があるわけでございまして、その余裕の水をもちましたり、あるいはまた天白川の伏流水を使いましたり、あるいはその地区におきます——現在地下水をとっておりますところにつきましてはもう飽和状態でありましてさような余地はありませんが、東海製鉄の設置されますような地域につきましてはまだ地下水の利用も困難ではない、かように考えております。地下水の利用ということによりまして一時これらの需要に充てていきたいと考えておるわけでございますが、しかし、事態がだんだん進んで参りまして、さらに工場設置というふうな情勢が一そう急迫して参りますれば、これはなお考えを進めて参らなければならぬ、かように考えております。特に、東海製鉄の誘致を決定いたしまして、その事業計画を見ますと、実は工事は本年の十月ごろから実施されるわけでございますが、それまで両三年の間はそう水は要らないのでありまして、今申しましたような一時の便法をもちましてその需要を満たしていかれる、かように考えております。さらに、三十八年度以降になりますと、すなわち東海製鉄の第一期の工事終りまして高炉の一つが稼働いたしますと水が必要になって参ります。それは大体毎秒一トンくらい必要であろうと考えておるわけでありまして、それは愛知用水の非灌漑時に当りましてその水路を利用いたし、工場の敷地に予定されておる後背地の丘陵地帯に佐布里というところがありますが、そこに池を設けて余裕水を貯水いたしまして、そこから東海製鉄の方に供給いたしましてその需要にこたえていきたい、このように考えておるわけでございます。なお、これがだんだん進んで参りまして、すなわち、東海製鉄の第二期と申しますか、さらに第二番目の高炉の工事が四十一年から四十二年、四十三年に行われまして、四十四年になりますと、ちょうど今から十年後でございますが、四十四年になりますとその二番目の高炉が稼働いたすわけでございまして、そのときになりますと、大体年間四千七百万トンの水が要るわけでございまして、これは毎秒にいたしますと約一トン半くらいになるわけでございます。従って、この水は、愛知用水公団あるいはまたさらに根本的には農林省あるいは建設省等にも話をいたしまして、その御理解をいただきまして、すべて手だてをいたしまして、さらに水を木曽川からとるというふうなことにお願いをいたさなければならぬ、このように考えておるわけでございまして、今御指摘の九千万ドンというふうなことにつきましては、そういうことになってはおりますけれども、しかし、それは現在の東海製鉄の計画のうちには具体的にはないわけでございまして、四十四年までの計画、すなわち四十三年に高炉の二期が完成いたしまして、四十四年から稼働をいたしまして、そしてそのときの水の量が年間四千七百万トンということになるわけでございまして、秒間一トン半くらいでございますので、その以後につきましては、まだ会社当事者も具体的な計画は全然持っておらぬのでございまして、私どももその話はまだ聞いておらぬのであります。現在の高炉一期と高炉二期、この計画が相当膨大な計画でございますので、なかなか会社といたしましても資金の面その他からいたしまして、その後の計画というものは今日考えるというふうな段階にはなっておらぬ、かように存じておるのでありまして、われわれもそのようなお話を聞いておる次第でございます。
  36. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今、愛知県知事の方から、東海製鉄を中心にした今後の工業用水の増大計画といいますか、そういうものについて話があったわけですが、これは愛知用水事業と関連してきわめて重大な問題であります。この際、農林省、公団並びに愛知県の三者にお伺いしたいのでございますが、愛知用水事業としては、一つ基本計画というものが確立をされ、そして現在工事進捗中でございます。その基本計画に重大な関連を持った工業用水の増大を伴うところの東海製鉄その他の誘致が、一応愛知県側としては決定したと言っておる。しかも、その東海製鉄の工業用水の所要量というものは、大体一日にして二十五万トンの水を必要とする段階が来るということは、当初計画として想定されて明らかでございます。そこで、この東海製鉄の誘致という問題については、これは、三重、愛知の間で、それぞれ選定過程ではこちらの方へという誘致運動等があったわけでありますが、最終的に愛知県にきめて内定したということに相なりますけれども愛知用水事業が現在進行中であり、はっきり用水に対するところの基本計画が現存しておる段階において考えますれば、愛知県側としては当然この問題の決定前において農林省あるいは公団側と折衝をされたと思うのでございますが、まずその点の経緯について愛知県知事からお伺いをいたしたいと思います。
  37. 桑原幹根

    桑原参考人 ただいまの御質問でございますが、東海製鉄を誘致するにつきましての折衝の経緯についてのお尋ねでございますが、ただいまお話しのように、愛知県、三重県がその候補地といたしまして会社の選定の対象になっておったわけでございまして、三重県においても御同様でございますが、愛知県といたしましても、それぞれ御要求に応じまして資料を提供いたしまして、御要求に従っておったわけでございます。それらの資料に基きまして、会社といたしましてもコマーシャル・ベースと申しますか採算上の見地からいたしまして一方を選んだわけでございまして、それが愛知県の名古屋の東南部の知多半島の西海岸の方に決定したわけでございます。これにつきましては、御指摘のように、愛知用水に依存しなければならぬ面が多いのでございます。従って、農地局はもとより、公団側に対しまして、いろいろと御理解をいただかなければなりませんし、また今後御尽力をちょうだいしなければならぬのでございまして、まず公団の方にいろいろ事務的にも連絡をいたし、また私といたしましても幹部の方々にいろいろお話をいたしたのでございますが、何と申しましても、公団側といたしましては、国の計画を根本といたしておりますので、政府の御方針というふうなこともございまして、確答は避けられたのでございますが、私どもの懇望いたしております点につきましては、問題の性質につきましては御理解をいただいたと思っておりますが、それに対する公団側の態度等につきましては最後的なお話はなかったわけでございます。同様、農林当局、特に農地局長さんにお会いいたしまして、いろいろ計画につきましてお話を申し上げたのでございますが、申すまでもなく、当時まだ敷地が三重県、愛知県いずれにも決定いたしておらない状態でございましたので、ここにおられます伊東農地局長といたしましては、それができ上った後において協力ということについてはやぶさかでないが、自分の返事なりが決定の一つの要素になるというふうなことは自分の立場上非常に困る、どちらに決定しても自分はできるだけの協力をする、すなわち、愛知用水立場に立って農業用水に支障のない範囲において協力するが、しかし、ここで今書面をもって、県の方から申請を出し、それに対して農林省として回答を出したり、あるいはまた、私自身が、かりに口頭であっても、今日の状態において、いずれに決定するかという大事な際においてその決定の要因になるような言質を与えることはできない、こう言われて、まことにごもっともである、かように存じまして引き下ったような次第でございまして、農林当局、また愛知用水公団当局に対して私が折衝いたした経緯は概要以上の通りでございます。
  38. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 先般現地に参りました際に、愛知用水公団総裁濱口さんは、東海製鉄等を中心にした工業用水の増大というふうな問題については県側から何ら交渉を受けていないということを私どもお話をされたわけでございます。今の愛知県知事お話と関連をして、この間の経過についてまず公団総裁からお伺いをいたしたいと存じます。
  39. 濱口雄彦

    濱口参考人 この前農林水産委員会委員の方々が見えたときに、東海製鉄に供給する工業用水のことについては公団は関知していない、こう申したつもりでございます。ただいま桑原知事が申されたように、県側から公団に何とか協力が得られないかというようなお話があったようでございますが、公団は何ら返答は与えておりません。あげて監督官庁たる農林省がしかるべく返答することだと思います。そういうわけでございます。
  40. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 この辺のところは肝心かなめのところでございますけれども公団総裁愛知県知事とのお話は大きな食い違いを来たしておることは明らかでございます。きわめて重大な愛知用水基本計画に関する問題について、愛知県と公団側との間に大きな話の食い違いがあるということは明らかでございます。この点についてさらに農林省の農地局長から経緯をお話し願いたいと思います。
  41. 伊東正義

    ○伊東説明員 この前の委員会でも御質問があったのでございますが、私、答弁したことと同じでございます。実は、この問題につきまして、当初、県から愛知用水公団に対しまして、この水路利用その他について便宜をはかってほしいというような話がございました。これに対しまして、私は、愛知用水公団に対しましては非常に問題が重要なことでもあり、公団独自で返事をする問題でもないから、公団としては返事をすることは無理だからやめなさいということを実は公団には申しました。それは今公団総裁が言われた通りでございます。それから、県に対しましては、私は、桑原参考人のおっしゃいましたことと大体同じでございまして、要するに、農林省といたしまして、この問題については非常に愛知用水自身の問題とも関連ございますし、また下流の農業水利の問題あるいは河川そのものの河床の維持の問題も非常に関係するところが大きい問題でございますので、私といたしましては簡単にこの問題は御返事はできません、ただし、私といたしましては、会社が三重県にきまろうとあるいは愛知県にきまろうと、それは農林省の問題ではございませんが、そのどちらの場合であろうとも、私といたしましては、農業の水利計画に支障がないということであれば、その範囲では御協力いたしましょうということを言いました。これが大体、さっき知事さんが言われたと同様のことでございます。
  42. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今農地局長、公団総裁愛知県知事の三者のお話を聞いておりますと、愛知用水基本計画の重大な根本に触れる用水の変更というふうな性格の問題について、きわめてあいまいな姿において東海製鉄の誘致が内定をしておるということでございます。この問題は、私たちがあるいは委員会公団を発足さした趣旨等からはっきり一つの意思を出せば、東海製鉄そのものの今後の建設計画というものにも重大な支障を生ずるという可能性も私は含んでおると思います。そういう重大な問題をきわめてあいまいな姿において愛知県が決定をしたということであると、これは軽率なことじゃないかというふうに思うのでございます。かりに、愛知県の知事が言われる今後の工業用水の増大という問題について愛知用水基本計画の中である程度これを消化していくということに相なりますれば、これは本来の基本計画の変更に相なると思うのでございますが、この点について愛知県知事の見解を承わりたいと思います。
  43. 桑原幹根

    桑原参考人 重ねての御質問でございますが、基本計画のそれが変更になるかならないかということは、今後の事態の推移によって考えて参らなければならぬのでございまして、もしそれが変更になるというようなことでありますれば、これは重大なことになりますし、結局、国の方面におきまして御勘案を願い、御決定を願わなければならぬことでございまして、私どもとしていかんとも今申し上げかねるところでございます。
  44. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 ちょっと肝心のところで知事さんは逃げられましたが、御承知愛知県営工業用水道計画というものによりますと、これはやはり愛知用水事業基本計画の二千七百十五万トンという工業用水配分計画に基いてこの工業用水道の施工設計がなされておることは御承知通りだと思う。一日八万六千トンという水を取水する、こういう計画でございます。これは基本計画に基いての計画でございます。ところが、東海製鉄等の工業用水の必要量、これはピークの時期においては一日二十五万トンという形になっている。さらに、昭和五十年度の南部、中部等の工業用水の増大等に考えて参りますと、愛知県の私どもに出した資料によりますれば、四十二・三万トンの水が要るであろうということを言っておる。その多くの部分愛知用水関係から得たいという先ほどのお話もございました。こういうことがそっくりそのまま計画と関連をして実施をされるということになれば、これはやはり基本計画の変更でなくて何でしょう。もう一度お答えを願いたいと思います。
  45. 桑原幹根

    桑原参考人 私の言葉が足りなかったことからいたしまして重ねて御質問をちょうだいしたのでございますが、先ほど来私が申し上げておりますように、愛知用水の工業用水、特に東海製鉄について必要な水を供給して参るにつきましては、愛知用水の現在の計画に沿って、それに支障を及ぼさないように、従って、それの変更を来たさないようにということで考案されておるというわけでございまして、ただ、愛知用水水路を利用させていただくというふうなことが問題になってきておるわけでございます。そういう点につきましては特に関係方面の御理解をいただかなければならぬのでございまして、計画そのもの、すなわち基本計画そのものを変えるということは、まだその段階では考えられない、かように考えておるのであります。
  46. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 これはまたさらに問題をぼかされたと私は思うのであります。御承知のように、兼山の取水地点において毎秒三十トンの水を取る、そういう前提に立って、農業用水、工業用水、上水道用水等の一億五千五百万トンの水が基本計画として計画をされておる。そこで、東海製鉄等を中心にした工業用水の増大については、先ほど触れた通り、しかもこの水はやはり今の段階においては兼山から水を取るという前提が相当部分私は含まれておるのじゃないかと思う。そうなれば、やはり愛知用水事業のうちの計画の一部ということに私はなって参ると思うのであります。そうすると、この水の取水という問題は即基本計画の変更ということに連なっておると考えざるを得ないと思うのでありますが、いかがでございます。
  47. 桑原幹根

    桑原参考人 数字でございますから、岩瀬総務部長から……。
  48. 岩瀬繁一

    岩瀬参考人 お許しをいただきまして、ただいまの点について私から御説明をさしていただきたいと思います。  お尋ねの御要点は、東海製鉄の誘致に関連いたしまして、それぞれの年度に相当量の工業用水が要るのではないか、そうして、その工業用水を現在の愛知用水計画の中に含まれております農業用水一億一千万トンの中から、何と申しますか、用立てると申しますか、抜いていく、結局愛知用水計画を変更するようなことになりはせぬか、県の計画はそうなんじゃないか、こういうふうなお尋ねであろうかと拝察するわけであります。先般お手元に差し上げてあります資料に基きましてごらんを願いますれば、私ども計画の意の存するところを御了察願えようかと存じまするが、私どもがこの計画によりまして考えておりますところは、決してさようではございませんで、あくまでも愛知用水が現在兼山におきまして、お示しのように取水をし、一億一千万トンを農業用水として配水をする、こういう計画には少しも影響を及ぼさないという考え方の上に実は立案をさしていただいた計画であるわけであります。当初の一トンを兼山から取る計画にいたしましても、また第二次の工事として行います当初の一トンを含めましての三トン取水の点にいたしましても、いずれも愛知用水の現在の計画であります農業用水、また工業用水なり上水道なり、いずれにせよ一億五千五百万トン、この水には手を触れない、そうして御迷惑をおかけしないようにしていこう、こういう計画であるわけであります。もっとも、それについて、先生も先ほど御指摘がありましたが、いろいろ関係の向き向きと今後御理解をいただき、また御協力を仰がなければならぬ問題が多々あろうかと思います。愛知用水受益地帯の農民の諸君にいたしましても、また木曽川下流の地帯のそれぞれの権利者なり何なりにいたしましても、さらに公団の本部、また農林省御当局、また建設省の御当局、いろいろ関係する向き向きが多いわけでありまして、今後私どもといたしましては、関係の各官庁なり、また関係のそれぞれの向きと十分御協議を申し上げまして、ただいまのような計画を実現いたしたい、かように考えておるわけでございます。その点御了承をいただきたいと思います。
  49. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 肝心なところを知事並びに総務部長は話をそらそうとしておる。それであるならば、愛知用水基本計画ということで農業用水、工業用水、上水道用水の配分の数字なんか出す必要はないということに極端に言えばなってくる。実際にこういうこまかい数字までの基本計画をし、それ以外にプラス相当大きな工業用水の要請から、愛知用水の木曽川の兼山から水を取るという前提に立って計画が進められておるということになっておる。しかも、愛知用水基本計画については何ら修正でないということで逃げようとされておる。私は、これはきわめて重大だと思う。これは、あなた方の考え方というものをすなおにかりにとったとしても、今の愛知用水基本計画に工業用水の必要量が今後プラスされて増大した計画になっていくだろうと思うのですが、その点は、知事、いかがですか。
  50. 岩瀬繁一

    岩瀬参考人 重ねてのお尋ねでありまして、あるいは的を射たお答えにならぬかとも思いますが、御説明をさせていただきたいと思います。  兼山の地点で取水をさしていただきたい、そうして愛知用水水路を使用をさしていただきたい、かような点がわれわれの方の立てました案の重要な点でありますことは御指摘の通りであります。ただ、取水をいたします点につきましては、これは、愛知用水と申しましても、灌漑期に常時三十トンの水を取水しておるわけでもございませんし、従って、その間水路にはまあ余裕があるわけでございます。その余裕のときを利用さしていただいて、われわれが別個に関係の向き向きに御相談、お願い申し上げまして水を取らしていただこう、そうしてさっき申しましたように余裕の時間を利用さしていただく。また、非灌漑期におきましては、愛知用水の方といたしましては実際問題といたしましてずいぶん水路の断面に余裕があるのではないか、また、そのような実施計画にもなっておるやに承わっておるわけでありまして、その余裕をこれまた使わしていただきたい。そうして、さっき知事もちょっと触れましたが、知多郡の知多町、おおむねその地帯の佐布里なり、あるいは将来といたしましては七曲、鎌ケ谷といったような三つの専用の貯水池を設けまして、そうして貯溜もし調整もした上で配水をいたして参りたい。こういう考え方でありまして、再々申し上げるようでございまするが、農業用水の方に別に食い込み、あるいはその計画がその結果変っていってしまう、こういうふうなことはわれわれの計画考えておりませんことを重ねて申し上げまして、御了承をいただければと思うのであります。
  51. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 この基本計画との関連の問題について、この際、農林省並びに公団から、さらに、これは水の問題でございますので、御出席願っております通産省の工業用水関係、並びに建設省の関係等から、あわせて御意見を承わりたいと存じます。
  52. 伊東正義

    ○伊東説明員 基本計画との関係でございますが、これも実はこの前の委員会で御答弁いたしましたが、私ども考え方としましては、基本計画で、農業用水道、工業用水——これは上水道のことでございますが、この利用の問題、それから、あのダムを作ります問題について、アロケーションをやったのであります。これは基本計画であります。今問題になっておりますものについては、農業用灌漑期以外の余り水を利用してあそこの水路を使うという計画でございますが、これ自身につきましても、私どもは別個のものだと考えてよいだろうというふうに考えております。
  53. 伊藤佐

    伊藤参考人 私からお答え申し上げます。  ただいま伊東局長が申したことと結果が大体同じになると思いますが、私どもの方としましては、現在の基本計画に基きまして工作物を作っているわけでございます。今回県で考えておられます工業用水計画なるものは、現在公団が命ぜられて作っております工作物に対して何ら変更を加えるものでもございません。以下にもいたしませんし、以上にもいたしません。その意味で、基本計画の変更にはならないではないかというふうにわれわれは考えている次第であります。
  54. 川原英之

    ○川原説明員 お答え申し上げます。  先ほど来いろいろお話がございましたように、現在第一期の工業用水道計画工事中でございますが、第二期以降の問題につきましては、まだわれわれの方では確定した計画を御相談する段階にまではいっておりません。ただ、いろいろお考えがあるようで、これはむしろ農林省等の関係で御答弁いたしましたようなことで、話がきまりましてから十分御相談していきたいと思っております。
  55. 曽田忠

    ○曽田説明員 お答えいたします。  ただいま御質問のありました木曽川の水をどの程度利用できるかという一般的な問題でございますが、これは実はわれわれの方も現在慎重に調査中でございまして、その結果を待たなければ何とも御返事できないと思っております。一般的に申し上げまして、工業用水に限りませず、灌漑用水あるいは上水道用水というものが不足しておりまして、特に利根川でもそうでございますけれども、これの根本的対策といたしましては、要するに、ダムを作りまして、降雨時の雨を貯めておいてそれを利用するということだと考えております。愛知県におきましては、先ほどちょっとお話がありましたように、矢作川のダムにつきましては今年から調査を始めておりますが、これがどういう結論が出ますか、今のところわかりませんが、そういうように、どうしても水がなければ、降雨時の水をためておくという方法を考えなければいかぬじゃないか、そういうように考えております。
  56. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 肝心のところへ参りますと、農林省、公団愛知県とも、問題の中心のところをそらされる、そういう感じがするのでございます。これは、農林水産委員会に私ども関係者を招致するという段階の前に、愛知県でも連日会合が持たれ、打合せ会がやられたやに聞いておりますし、上京されてから農林省、公団等といろいろ話し合いをされたように聞いております。何か今の話を聞いておりますと、農林省、公団あるいは愛知県が意思の統一をはかってここで答弁をしているという感じがいたします。岸さんではありませんけれども、再軍備の問題についてはなしくずしでいく、工業用水の問題についても、今の段階においては、基本計画の変更ではなくて、これは余っておる水を余っておるときに取るのだと言って済ましておいて、いずれ行く行くははっきりしたものが中心に出てくる、こういうふうな考え方があるのではないかという感じさえ私はするわけであります。私どもは、この愛知用水の基本事業を始めます際に、オレンジ運河とか夢の運河だということを宣伝しながら、日本のTVAだということを宣伝しながら膨大な経費をかけてこの事業推進に当って参ったわけでございまして、かつて愛知の安城が日本のデンマークだといわれたならば、知多半島に日本の新しいデンマークができるということを夢に描きながら、私はこの事業の実ることを祈っておったわけでございます。そういう前提に立って今の用水問題を考えて参りますと、オレンジ用水変じて、煙のむくむく吹く、農林漁業等に汚水等できわめて甚大な被害を与えるような水に変更する危険性を持っておりはせぬかという感じさえする。しかも、愛知県の営農その他に対する受け入れ態勢問題等のきわめて不十分な事態等から考えて参りますと、桑原知事がすでに三期にわたって県政をやられておるのですから、桑原知事が、今後の愛知県の産業の発展の上の問題について、工業の発展の問題と農林水産等の第一次産業等に対する発展の問題とのウエートの置き方の問題について大きな差異があってこの問題に対処しておるとさえ率直に言って感ぜざるを得ないわけであります。問題は、愛知用水事業本来の事業推進の前提に立って、しかも立地条件に適合した伊勢湾の中部、南部の工業地帯の事業推進を進めていくということでなければ相ならぬと思うのでございます。  今の肝心の水の問題について、しかも増大の計画というものが当然明らかになってきておる段階において、基本計画との関連の問題についてはあいまいもことした答弁で過される、これはきわめて遺憾でございます。しかも、この配水計画の変更の問題は、言うまでもなく、下流の濃尾第一期計画、今後予定されるであろう第二期計画等、いわゆる三重、愛知、岐阜等の関係県のそれぞれの地域に甚大な影響を持っておることはいまさら申し上げるまでもございません。これらの点については今後さらに具体的に触れて注意を喚起したいと思いますけれども、当然これらの問題を考えながらやって参らなければなりません。すでに兼山取水路からの用水の増大の問題については関係県である三重県においては絶対反対であるという意思の表明があったことも関係者皆御承知のところであろうかと思います。そういうふうな問題等があるだけに、ことさらに、私は、この基本計画との関連の問題、特に工業用水の増大の問題についての現時点における計画の推進の問題についてぼかされているということについては、きわめて遺憾だと思うのです。  そこで、工業用水の問題については、愛知用水からの幹線水路を使って兼山から水を取る以外に、先ほ建設省からお触れになった矢作川の総合開発を今後やっていくのだという。しかし、これは、関係者に聞いてみると、よほど早く進めてみても昭和四十一年度以降であろうというふうに言われている。この矢作川の総合開発から、県の資料によりますと、一応三トン毎秒の水を南部工業地帯の方に取りたいのだ、これは、この方面の工業用水がきわめてまだ未確定要素であるので、そういうことを考えて参りたいというようなことも言われております。先ほど知事の言われました天白川の伏流水の活用等の問題においても、今日調査段階にあるということを承知しております。同時に、地下水のいわゆる利用増大の問題が今日大きな壁に当ってきておる。先ほども触れましたように、名古屋の今後の人口の増大に伴うところの上水道の必要量の増大ということも相当大量になることも承知しております。こういうこと等を彼此勘案して参りますと、この機会に、工業用水問題等についても、愛知用水基本計画との関連において明らかにしておかないと、溶鉱炉の火消えたりという事態に私はならなければいいがと思うのでございます。ことに、計画の推進過程で、愛知用水の仕事の中心から考えまして、用水の水についてはこれ以上東海製鉄に与えることができないというようなことがかりに生じて参りました場合には、計画の推進に重大な支障を来たすということも考えられるわけであります。  東海製鉄の誘致の問題については誘致条件というものについて愛知県と東海製鉄の間に結ばれたその協定書の中身というものをある資料によって見て参りますと、きわめて有利な条件のもとにこの誘致をやっておる。この誘致のために大体百億円以上の金を使っておるのじゃないかというふうにも言われておるわけでございますが、これらの問題はまた後ほど触れる機会があったら知事にさらにお尋ねしたいと思うのでございますけれども、そういうことについて、今乗り出しておる東海製鉄の関係の問題については、もっと本委員会の中で明らかにしていただきたいと思います。ことに、基本計画との関連の問題については、もっとやはりそれぞれの関係者から明らかにしてもらいたいと思います。まず、愛知県知事からさらに再答弁を求めます。
  57. 桑原幹根

    桑原参考人 ただいま重ねての御質問でございまして、いろいろお話しになりました点につきましては一々拝承したのでございますが、御指摘のように、愛知県といたしましては農業県でございますし、また、先ほどお話しになりましたように、デンマークと御比較になったのでございますが、やはり、デンマークにつきましては、私自身がかつてデンマークの農業視察したことがございますが、安城を中心としてのあの地帯をデンマークと比較されておりますけれども、これは余談ですが、デンマークの農業と安城を中心としての農業形態とはだいぶ事情が違っておるのでございます。このことは、私自身質問を持ちまして、いろいろ関係者に聞いてみましたところ、やはり、これは、安城を中心としての農業の経営が、先覚者の山崎延吉先生などの御主張によりまして、産業組合当時から産業組合を中心にいたしまして個々の農家が一致団結いたしまして、いわゆる科学的な農業経営を進めたということが農業の効率を非常に高めたということで、そういう点で日本のデンマークと言われたというふうなことでございますが、これは、ひとりあの地帯に限らず、愛知県全体についても言い得ることでございます。愛知県は、あのように気候が温暖であり、また交通が至便であり、また非常に勤勉な県民性でございますので、いろいろ工夫をいたしまして、米作ばかりでなくて畑作についてもいろいろ多種多様のものを栽培いたしまして、農家の収入をはかっていくという点に非常な努力をいたしておるわけでございます。従いまして、この知多半島のあの水以外のことを考えますと、非常に恵まれた地域でございまして、一番肝心の水がないということが、愛知用水というふうなことに先覚者が着眼され、そうして今日まで関係方面の御助力をいただきまして、このような段階になってきたわけでございます。これの完成の暁におきましては、私は、冒頭申し上げましたように、あの地域農業形態がほんとう一変するのではないか、このように考えておるわけでございます。  かような情勢の際に、また名古屋港を中心にいたしまして伊勢湾臨海工業地帯の造成というようなことが問題になって参りました。これは、やはり、あの地方の性格に基きまして、すなわち、工業の立地条件が非常によいというふうなことに基きまして、そういうふうな機運が勃興してきたのでございまして、この勃興しました機運のさなかに、東海製鉄の誘致をするというふうなことが決定した次第でございます。従いまして、これに対しまする工業用水の供給ということは非常に大きな問題になって参ったのでございまして、われわれといたしましても、できる限りこれに協力をし、今後せっかくできました東海製鉄がその成績をあげて参りますように、今お話しになりましたように、溶鉱炉の火消えたりというようなことがないようにして参りたい、そうして、あの地方が農業とともに工業が栄えて参るようにいたしたい、かように考えておるわけでございます。そこに私ども微力でございますだけに苦心が存するわけでございまして、その点も特に御了察賜わりまして、今後とも御鞭撻をいただきたい、このように存じておるわけでございます。  なお、午後お尋ねの点が多々あると存じますけれども、その際に数字等につきましてはいろいろ申し上げたいと存じますが、一応御答弁を終ります。
  58. 吉川久衛

    吉川委員長 午後一時四十分より再開することとして、これにて休憩いたします。     午後零時四十九分休憩      ————◇—————     午後二時三分開議
  59. 吉川久衛

    吉川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  愛知用水公団事業問題に関する質疑を続行いたします。角屋堅次郎君。
  60. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 午前中工事基本計画あるいは水の問題等中心にお伺いをして参ったわけでございますが、その最終のときに申し上げたわけでございますけれども愛知県知事から話の出て参りました事業予算という問題について、予定通り工事を遂行するためにはある程度の予算増をしなければならぬというお話が出ておりました。この問題は、今後の問題に関連してきわめて重大な問題の一つでございますので、午後開会冒頭に、農林省並びに愛知用水公団等の御意見、さらに、愛知県の地元側としても予算増ということを抽象論ではなく具体的にどの程度のことが考えられておるか等についてもお伺いをいたしたいと思います。
  61. 伊東正義

    ○伊東説明員 事業費全般の問題でございますが、これは、午前中お答えいたしましたように、実は今公団に対しまして検討するようにということを私の方から申しております。午前中に申し上げましたように、その当時考えておりましたことに比較しまして、骨材その他の材料費の問題でありますとか、あるいは用地の補償の問題でありますとか、あるいはダムの仮締め切りの決壊等、従来予想しておりませんようなことも出て参りましたので、若干上る可能性の要件も出てきております。それで、全般的に一体どういうことになるのかということで、今公団に検討を命じておるのが実情であります。ただ、われわれといたしましては、この事業費の問題は非常に重要な問題でございまして、これで従来予定しておりました農民負担が上っていくということになりますと非常に問題になりますので、この点につきましては、結果いかんでございますが、国なり県なりでいろんな手段を講じまして、極力農民の負担を上らぬようにするという措置はとって参りたいというふうに考えております。
  62. 濱口雄彦

    濱口参考人 午前中も申し上げましたが、ただいま伊東農地局長も言われましたように、公団といたしましては、今せっかく検討中でございまして、今どのくらいの規模になるかということを申し上げる段階には至っておりません。
  63. 桑原幹根

    桑原参考人 予算増のお尋ねの問題でございますが、ただいまお聞き及びの通りでございまして、農林当局のお指図によりまして愛知用水公団がせっかく検討中であるとのことでございます。やがて案が農林省に提出されると存ずるのでございますが、農林省におきましていろいろそれを御決定になる際におきましては、今一端にお触れになったのでございますが、当然また県の負担ということに相なろうかと考えておるわけでございまして、まだその点についてのお示しがございませんので、このことによりましても、今せっかく検討中であるということが御推察願えると存ずるのでございます。もし県の方に県分の負担について御指命がございますれば、その際におきまして、今農地局長の仰せられたように、県民負担とのかね合いにおきまして県におきましても十分に考慮して参りたい、このように考えております。
  64. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 工事費増大の問題が今検討中であるというお話でございますが、問題は、工事費の増大ということがどういう要因によって生じたか。これは、農林省あるいは公団あるいは県側の全体的な視野の中で、予定した工事費よりもさらに将来検討の結果増大するということに相なりますれば、私どもは十分検討しなければならぬと思いますが、一体、どこの条件によって、どこの責任において生じてきたか。これは私は看過することはできなかろうと思う。先ほど局長からも指摘されましたが、これが諸条件によって増大を来たした場合に農民負担に転嫁されるということについては、絶対に容認できないということにも相なろうと思います。過般の調査結果の報告の際にも指摘されましたが、当初計画した農民負担の問題が、最近のケースでは増大してきているということがある。これ自身も非常に大きな問題をはらんでいる。さらに工事費の増大等がそういう要因をつけ加えるということになりましたならば、きわめて重大であろうと思いますが、これらの問題についてはさらに後ほどの質問の中であるいは出るかもしれませんけれども、時間の関係上、この問題についてのさらに追及は避けたいと思います。  次に、先ほどの問題に返るわけでございますけれども、要するに、基本計画に関連した水の問題でございます。御承知のように、総合開発等をやります場合に常に問題になります点は、工業用水農業用水等の競合、いわゆる第一次産業と第二次、第三次産業等の今後の発展の度合いに応じての競合という問題がいずれの地区においても基本的な問題の一つ考えられているわけでございます。今日この問題がやはり愛知用水事業の場合に起ってきていると私は看取するわけでございます。そこで先ほど来お尋ねをしているわけでございますが、当初愛知用水基本計画で定めました農業用水あるいは都市用水等の配分が、先ほど桑原県知事の工業用水の増大の要因の中で触れられた問題と関連して、これをそのまま受け入れるという場合には基本計画の変更ではないかという私の質問に対して、農林省、あるいは公団、あるいは愛知県口をそろえて逃げられておるようでございます。しかし、これは基本的な問題でございますし、この問題についてさらにお尋ねをいたしたいと思います。  二千七百十五万トンという工業用水のうちで、従来の名古屋市内あるいは南部工業地帯の既設の工業用水として必要な工業用水がどれだけであり、新設を伴う問題に対する工業用水がどれだけであるか、当初の段階においてそれがどういうふうに考えられておったのであるか、この点について公団側からお伺いをいたしたいと思います。
  65. 伊藤佐

    伊藤参考人 率直に申し上げますと、現在の工業用水の問題は、一括してこれは県にお願いしてございます。その内訳等につきましては、県の方でお考えになっておりますので、公団といたしましては直接タッチいたしておりません。
  66. 岩瀬繁一

    岩瀬参考人 それでは、私から、数字にもわたりますので、お答えを申し上げたいと思います。  現在の愛知用水事業の一環として行なっております県営の上水道、並びに工業用水道の事業でありますが、お示しのように、そのうちの工業用水道は二千七百十五万トンと相なっております。その大体の現在の計画でございまするが、名古屋市南部の工業地帯に立地いたしております新三菱重工名古屋製作所ほか十工場、全部で十一工場にそれぞれ配水をいたしたい、かように考えております。ただ、現在におきましては、先ほど桑原知事からの御答弁の中にその点にもちょっと触れましたが、まだまだ余裕がありますので、東海製鉄誘致の実現の暁におきます初期のきわめて軽微な給水のためには、その余裕水量をもって一部充てていきたい、こういうふうに考えております。
  67. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今のお話によりますと、計画の二千七百十五万トンはほとんど既設の工業用水として活用され、今俎上に上ってきています東海製鉄の新しい工業用水の要請に対しては、この水のほとんど大半というものは無関係である、こういうことに相なると解釈してよろしゅうございますか。
  68. 桑原幹根

    桑原参考人 ただいま岩瀬総務部長からお答えいたしました点で、なお私よりも付加して申し上げたいと存じますが、名古屋南部の名古屋港の工業地帯にあります既設の工場に対しまして、二千七百万トンのうちから供給することに計画上なっておりますが、まだこれらの工場と契約を締結したわけではございませんで、一応の希望を取りまとめたという程度でございます。そして、それらの希望をフルにいれたにいたしましても、なおかつ三百十万トンでありますかの余裕があるわけでございます。なお、この四千五百万トンのうちから二千七百万トンの工業用水を引きましたすなわち上水道の一千七百八十万トン、約一千八百万トンほどの上水道につきましては、実は、これは、昭和五十年のときを予想いたしまして、これに対処する生活用水、すなわち上水道でございまして、これは人口の増加等を見込みましてさような計画を立てておるわけでございますが、それにつきましても、昭和五十年でございますから、最初の間は相当余裕があるわけでございまして、かような上水道の余裕水、そして工業用水になっておりますその余裕水をもちまして、先ほど申しましたように、天白川の伏流水その他地下水を利用いたしまして、東海製鉄の当初の需要にこたえて参りたい。なおそれが進んで参りますと、木曽川から毎秒一トンの水を取って、そうして非灌漑時におきまする水路等を利用いたしまして貯水池の中に導入いたしまして、そこから工場へ持っていきたい、かように考えておるわけでございます。  重ねて申し上げますが、まだこれらの既存の工場に対して契約を締結いたしたわけではございませんで、いろいろ希望をとりまして、その希望を全部まとめましたものが二千七百万トンを埋めないのでありまして、余裕があるということを重ねて申し上げます。
  69. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今お話しの点で、工業用水関係の契約の問題等も出ましたが、同時に、上水道の用水の問題に触れて、場合によってはこの方面から東海製鉄等の水を暫定的に取っていきたい、こういう考え方等についてのお話がございましたが、これ自身も、この基本計画から申しますと、中身が変ってきておるということに相なろうと思います。それで、あまりしゃくし定木に、一トン、ニトンまでどうだということを必ずしも言うわけではございませんが、先ほど知事がお述べになりました、ある時期において四千七百万トン近い東海製鉄の水が要るのだというのですが、私は、もっと長期に考えるならば、愛知県側の資料によっても、一日二十五万トン、年間約九千四百万トン近くの資料を出してきておる。先ほどの資料の四千七百万トンというものを考えました場合でも、二千七百十五万トンでは消化できない。既設工場との契約が結ばれていないと言っても、それで大半済んでしまう。そうして、工場用水のいわゆる上水道用水から取るということは、基本計画の問題と関連がある。こういうことになって参りますと、やはり基本計画の内容が変ってくるということには間違いないと思いますが、いかがですか。
  70. 岩瀬繁一

    岩瀬参考人 ただいまのお尋ねでありますが、御理解をいただく意味合いから、一応私どもの現在承知をいたしております東海製鉄の水の入用な状態を大体年度別にちょっとお話し申し上げまして御理解をいただきたいと思います。  大体現在私ども承知いたしております東海製鉄の水の所要量でありますが、東海製鉄の会社のいわゆる第一期計画、これは先ほど知事も触れたわけでありますが、高炉一基を設けまして、そうしてこれに付帯するいわゆる鉄鋼一貫作業を行う計画、これを第一期計画と会社では称しております。これを一次、二次に分けまして、第一次の計画におきましては、すなわち第一期の第一次の計画におきましては圧延設備を行いたい、第一期の第二次計画といたしましては、高炉一基、それからこれに付属いたしますコークス炉、焼結その他各種の付帯設備を行なっていく、こういうわけであります。そこで、第一期の第一次計画ができ上って仕事が行われる場合と、それから第一期の第二次計画もさらにできまして高炉が動き始める場合とでは、所要の工業用水の量も当然違ってくるわけであります。そこで、私どもただいままで御説明申し上げた資料にも書いてあるわけでありますが、ただいま申し上げました第一期の第一次工事、すなわち圧延設備のみが動く際の会社の所要の工業用水量は、三十六年度において二百五十万トン、それから三十七年度において八百万トン、こういう状態でございます。その際の所要の工業用水は、ただいま私ども申し上げましたように、現在の愛知用水工事の一環として行なっておる工業用水道の余裕から回していきたい。また、一部上水道の方の水も、これは公団の方とも十分御協議を申し上げ御理解をいただいた上でのことであるわけでありまするが、一部回していく、こういうことに相なるわけであります。しかしながら、会社の方の第一期第二次工事、すなわち会社本来の姿であります高炉ができ上り、動き始める、こういうような事態に相なりますれば、御指摘を受けております二千七百万トンといったような数字をもってこれを充足するということはきわめて困難であるわけでありまして、県といたしましては、差し上げた資料の中にも明らかにいたしておきましたように、愛知用水公団愛知用水計画の中に含まれておる工業用水、上水道計画とは別個に、工業用水道計画を策定し、この実現をはかりたい、かように思っておるわけであります。従って、その工事完成の暁におきましては、ほとんど全部そちらの方から会社の方へは供給して参りたい、こういうふうに思っておるわけでありまして、その点多少錯雑するきらいがあるかもしれませんけれども、さように御了承を願いたいと思います。そして、第二期の県の工業用水道計画の実施につきましては、午前中知事あるいは私どもから申し上げましたように、正愛知用水はもちろんでありますが、既存の農業用水にも支障を及ぼさないことはもちろん、他の関係のいろいろな部面の御理解もいただき、御協力をいただき、お許しを得ましてこの計画の実現を期したい、かように考えておるわけでございますので、御了承をいただきたいと思うわけでございます。
  71. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 基本計画との関連の問題について、今総務部長からいろいろ今後の時期的な変遷についてお話があったわけでございますが、私の聞きたいところは、最終時点というものを今の段階では計画としてはある程度見通せる。東海製鉄についても、最終時点において関連産業を含めて所要工業用水は幾らかということは見通せる。また、さらに、南部工業地帯あるいは中部工業地帯等の今後の工業用水の増大の問題についても、やはり一応昭和四十年なり五十年なりという時期を画してある程度の見通しというものは立て得る。現に愛知県からの資料としては一応のものができ上ってきておる。そういう最終時点の工業用水という立場から見ての観点というものを、そのまま計画として私どもが今の問題と関連をして検討をする場合において、計画それ自身がもしかりに実施されるというふうな前提に立って考える場合においては、愛知用水基本計画そのものはそのことによって変更されておるというふうに私は考えるのが至当だと思うのですが、その点を先ほどから私は幾たびとなく聞いておるわけです。
  72. 岩瀬繁一

    岩瀬参考人 重ねてのお尋ねでありますし、また、先ほどの私のお答えが舌足らずの点等もございましたので、あわせてお答えを申し上げたいと思います。  現在の段階におきます東海製鉄の年度別の需要いたします工業用水計画といたしましては、さっき申し上げましたように、会社の第一期第一次の計画が稼働を始めたという場合におきまして、三十七年において八百万トンでございます。三十八年度以降におきましては第一期の第二次計画、すなわち高炉が稼働をし始め、工業用水の所要量も飛躍的に増大をいたすわけでありまするが、三十八年度において年間二千八百万トンほど、三十九年度以降三千三百万トンほどでございます。その間、会社といたしましては、第二期の工事、すなわち高炉を二基にする、かような工事を進めるわけでありまするが、これが昭和四十四年度から稼働をし始めるであろう、かような計画でございます。従いまして、昭和四十四年度以降におきましては、それ以前の高炉が一基しか動かない場合と比べますれば、段階的に相当飛躍的に工業用水所要量もふえるわけでありまして、約四千七百万トンを必要とするであろう、かような現在の段階における計画と相なっております。  そこで、先ほど来再々申し上げますように、これらの二千八百万トンないし四千七百万トンの工業用水の需要に対する供給のために、県といたしまして別個の工業用水道計画を立て、これによりまして兼山地点から取水をし、愛知用水の水道を拝借し、また別途に知多郡の知多町地点に貯水池を三個設けまして、これに貯溜、調整の上供給いたしたいというわけでありまするが、この点、われわれといたしましては、愛知用水には支障を来たさないように、愛知用水の取水はもちろん、通水断面の使用等につきましても、愛知用水の現在の御計画には少しも触れないように、かような配慮を基本として置いた上でいろいろ計画を立てさせていただく。従いまして、先ほど農地局長さんからもこの点についてお触れになりましたが、愛知用水計画と、県の私どもがただいまのところ立案し、その実現に今後関係方面、各官庁にお願いいたしてその実現を期したいと考えております計画とは、別個のもの、かように私ども考えておるわけでありまして、その点とくと御了承を賜わりたいと思うわけであります。  そこで、昭和四十四年度以降におきましては、ただいま申し上げましたように、東海製鉄オンリーといたしましては四千七百万トンの工業用水を必要とするであろう、ただ、この時期までには、私ども計画といたしましてはすでに年間約九千万トンの給水可能な、状態に持ち来たし得られるのではないか、従って、残余の四千数百万トンはこれを他の関連産業等にも振り向ける余裕を生じ得る、かように考えるわけであります。そこで、お手元にあります県の資料の中に、最終的な段階としては、昭和五十年ごろにおきましては、秒間約五トン、一日四十三万トン、こういう工業用水量が必要となるであろう、かような想定を下しておるわけでありまするが、その際におきましては、今まで申し上げております県の工業用水道計画におきましてはそれだけの余裕がございませんので、そこで、資料にも述べてありますように、矢作川の多目的ダム建設による工業用水の導入等のことも当然考えて参らなければならぬ、また、県といたしましては、その実現に今後とも十分努力をいたしたい、関係各官庁なり関係方面と十分御協議をし、これもいろいろな権利関係が複雑しておろうかと思いますが、そちらの方にいささかも支障を来たさないように、できるだけ配慮の上で努力をいたしていきたい、かように考えておるわけでありまして、御了承を賜わりたいと存じます。
  73. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今の問題で双方の問答を続けておるわけですが、これは私はきわめて重要な問題であると考えるだけに、今まで時間をかけたわけでございます。申し上げるまでもなく、愛知用水事業というものについての経費負担の問題、これはやはり、基本計画の中で農業用水あるいは都市用水等の配分があり、それに伴っての発電あるいは工業あるいは上水道あるいは農民負担、こういう仕分けでそれぞれに区分されて、一つあとで問題になるでありましょう農民負担等の問題も出てくる。実際にでき上った工事というものを、今のお話でいきますと、数年たってから、その施設を使いながら、しかも兼山から水を取りながら活用していくということを始めようと考えておられる。矢作川の総合開発というような計画も言われておりまして、矢作川の総合開発で秒間に三トンの水、年間九千四百万トンの水を、用水が不安定であるので南部臨海工業地帯の方に一応回したいと考えておるということを言っておりますけれども、矢作川は矢作川として、総合開発の形での水の要請というものは、同様に農業の場合にも部市用水の場合にも強いだろうと思う。それを軽々に三トンというふうな大きな水を一秒間に取るということは、なかなか言うべくして困難な問題を含んでおる。天白川の伏流水の問題等にいたしましても、同様の条件があろうと思う。地下水の先ほど触れたような問題も考えて参りますと、工業用水の増大の問題は、愛知県側の希望から言うならば、兼山からある程度取らざるを得ないという考え方が相当部分あるだろうというふうに私は推察する。そうする場合に、やはり、愛知用水事業というものは一応再来年で終るという前提に立つにしても、今の東海製鉄を含む工業用水の増大という問題は具体的に俎上に上っておる。それが最終年度はおそらくこれくらいの水を必要とするだろうということも出てきておる。それで、兼山取水路から大体どれくらい必要であろうか、あるいはまた矢作川の総合開発からどのくらい必要であろうか、あるいは天白川の伏流水からどういうふうになるだろうかといろいろな問題等が勘案されまして、具体的に爼上に上ってくるということであろうと思う。  特に私が今まで質問をしてきた観点は、申し上げるまでもなく、愛知用水事業本来の遂行の目的からして、絶対に農業用水の配分計画というものに支障を生じてはならない。むしろ農業用水の配分計画は増大の要因というものを持っているであろう。その増大の要因というものも若干含みの中に入れて考えるということの方が至当ではなかろうかと思う。そういうものとの関連の中で、工業用水の増大というものをどう消化していくか。同時に、私は、今まで触れませんでしたが、兼山からの取水量の増大という問題が出て参りますと、即これは木曽川の下流の農業用水あるいは今後発展するであろう工業用水等の問題、治水上必要な常時流さなければならぬ水の量というものが当然あり、そういう舟運の便あるいはまた塩水等に対する被害の防止、こういうこと等を考えて流さなければならぬ問題等も含めて考える場合には、これに対して与える影響というものが当然考慮されなければならぬと思う。そういう観点から、この兼山取水路からの水の増大という問題について、三重県側から言うならば、木曽岬あるいは長島あるいは三重県の県会といたしましても、取水の増大に対しては絶対反対であるという意思の表明がある。私は過般長島、木曽岬等の現地の状態を実地に調査して参りました。知事はおそらく御承知だろうと思いますが、木曽岬あるいは長島等では、昭和二十四年以降今日までの間に、大体九億円近い金というものを、あるいは県営、団体営、県単事業という形で早害対策のために投じておる。今後数年のうちにこれが全部合わして十五億円をこえる財政投資をやりながら早害対策に対処しておるという問題がございます。しかも、そういう対処をしながらも、なおかつ従来設けて参りました樋門からの取水がほとんど不可能になっておるようなところも出て参っておる。また、さらに、塩害等が各所に従来より増大してきておる問題がございます。収穫皆無等の状況も従来より以上面積が増大して参っております。また、この地域は、揚水ポンプというものを大量に使いまして、農業経営上から申しますならば、こういう経費を相当にかけてやる農業経営は非常に問題があるわけですが、最近上流からの水の量の減少に伴いまして、揚水機によって農業用水を得るということが増大してきておるわけです。しかしながら、地下水がだんだん低下してきておるために、地下水に見合ってさらに下までおろしていかなければならぬ。また、水がそれだけ少くなってきておるという問題がございます。こういう諸経費の増大等が具体的に出て参っておりますので、兼山から取るところの水が一体どうなるかということは、これは木曽岬、長島に限らず、下流地域の利害にも関連してくる大きな問題であろうと思われる。御承知のように、濃尾第一期計画において五億という工事がなされ、そこからの用水配分が現在実施中でございます。しかし、これはまだ下流部の用水問題をほとんど解決していないので、第二期の濃尾用水計画も今後検討されようとする段階になってきておる。こういう問題や、あるいは木曽岬、長島その他を含んでの地先の干拓という問題の用水量の増大、こういう問題を考えてくると、下流部でも用水量の問題はきわめて真剣な問題になっておるわけでございます。  そういうことを彼此勘案して参りますと、今気楽に、遊んでおるときの水を兼山から取ってやるのでございますというふうなことを答えておるけれども、兼山から取る水の増大という問題は、即、下流部に大きな影響を持っておるということが、私の先ほど来言っておる一つの大きな問題でございます。一体、そういう水の減少によって生じてきておる下流部の被害というものはどこが補償するのであるか。それは農林省でやるのか、公団でやるのか、あるいは愛知県か、東海製鉄か、こういう問題が出てくると思う。同時に、工業用水の増大ということが明らかに見通せる場合に、一つの具体的な計画ができた場合には、まず下流部において被害が生じないという前提の工事を一応見通しを立て、そしてそれを実施した前提に立って、上流部の用水の増大ということを考えるのが本筋ではなかろうかと思う。そういう問題等もありますので、先ほど来兼山から取る水の問題と関連して基本計画の変更ではないかということを追及しておる。これは、今後の工事費の増大の問題、それがかかってくる各区分の負担問題等とも関連をしてお伺いをしたわけでございますが、これらの問題を含めて、農林省、公団並びに県側からの御意見を求めまして、後ほど同僚委員からさらに質問がありますので、一応私の質問はこれで終らしていただきたいと思います。
  74. 伊東正義

    ○伊東説明員 今の下流の水利権なり下流の被害の問題でございますが、これは、実は、県側から兼山から取水という問題が起きましたときにも、当然これはそういう問題も出てくるわけでありまして、単にこれは農林省だけの問題でございません。午前中から申し上げますように、関係する建設省あるいは通産省の問題も出て参りますので、これにつきましては、われわれとしては何ら意思表示もいたしませんし、これは、今後の研究問題として、具体的な問題の起りました場合に、どういうことをしているんだということを将来の問題として検討したいというふうに考えております。負担その他の問題につきましても、これは、具体的な問題が出ました場合に、どういうふうにこれを解決していくんだということでこれを取り上げていきたいという態度でおります。また、上流で水を取る問題そのものにつきましての影響その他につきましては、それがまた可能かどうかということにつきましては、将来の問題として検討したいという態度でございます。
  75. 伊藤佐

    伊藤参考人 公団といたしましても、現在のところは、示されました基本計画に基きまして工事を施行するということでございます。将来新しい何か付加されたものがあるということになりますれば、その場合に改めて検討するということになっております。
  76. 桑原幹根

    桑原参考人 角屋委員から三重県の木曽岬、長島等の実情につきまして詳細お述べになったのでございまして、私もこれらの地域実情につきましては承知しております。全くお話通りでございまして、従って、木曽川の兼山地点以下の水源その他の問題がきわめてこれら関係地域住民にとりまして深刻な問題でありますことは重々承知いたしておるわけでございます。従って、東海製鉄に関係いたします工業用水の取水の問題につきましても、その点をこれから具体的な計画を立て、そして会社と折衝する等の場合におきましても十分にこれらの事情を参酌して参り、下流農民の方々に御迷惑をかけないように、誠心誠意、農林省、建設省その他公団関係方面の御理解のもとにこれらの事柄を進めて参りたい、かように考えておる次第でございます。御了承を賜わりたいと存じます。
  77. 吉川久衛

    吉川委員長 足鹿覺君。
  78. 足鹿覺

    足鹿委員 愛知用水事業の問題につきまして参考人並びに政府にお尋ねを申し上げたいと思います。  私の質問をいたします立場をあらかじめ申し上げておきますと、私は、この公団法が昭和三十年の国会の末期に非常に当局が急いで提案をされて、幾多の問題のあることは、当時から想像しておりましたが、事の重大性と、日本における初めての総合開発、しかも農業中心とする外資まで入れての大計画であったという点で、観念的には割り切れないものがありましたが、しかし、現実の問題として観念論でこれを反対すべきものではない、こういう見地に立って大乗的な立場でこの法案通過をはかったものであります。今日多数の同僚委員諸君がおられますが、他の委員会に転じられるとかいろいろな事情で、数少いと思います。当時からの事情を知っており、また公団審議に参画をした一人としまして、今日の愛知用水事業実施の計画から、やむを得ず質問をいたしたい、そういう一つ立場を持っております。第二は、私は遠く中国地区出身でありまして、この愛知用水地区には何ら利害関係はございません。従って、きわめて公正な立場に立って事業の性質を追及し、そうして真にこの最終目的を達成したい、そういう観点に立っておるわけでありまして、若干きついことを言うかもしれませんが、他意はありません。その点、あらかじめ御了承をお願いいたします。  この用水の話は、現地を何べんも調査をしたときに、伊藤さんが古事来歴を私どもによく説かれ、なるほど、夢の用水か、オレンジ運河になりかけ、そうして農業用水中心の総合開発として今に実を結ばんとしておる。ところが、その実情については、角屋委員なり他の同僚委員からも午前中からいろいろその性格について御発言がありましたから、私は多くは申し上げませんが、少くとも私どもが数次にわたって現地調査した結果は、幾多の疑念を抱かざるを得ない。全く、公団法をわれわれが審議した当時、政府が約束をし、また公団当局、現理事であらせられる伊藤さんの当時の長い夢と現状とお比べになって、果してあなたは、これでよろしいと、当時われわれに言われた考えをそのまま堅持しておられるかどうか。公団理事として、あるいは現在を生み出した大きな原動力の一人として、特にこの農民の総意を代表して理事に入られた伊藤さんとして、この現状を何と見ておられるか、私はそういう点をつくづくこの間の視察で感じたわけであります。  それはともかくとしまして、とにかく、性格が大きく変らんとしておる一つの転機に立っておる。立っておるならば、その実態というものをやはり国民の前に明らかにして、国会においても率直明快に、包み隠すことなくこれを提示されて、そうして、法律の改正を必要とするならば、その法律の改正を合法的に審議の上行う、また、実施計画についても、基本計画についても、それぞれ法律の定めるところによってこれを改めていく、それが私は男らしい態度ではないかと思う。いわゆる実績を積み重ねておいて、そうして、いよいよ完工の暁に、気がついたときには、その性格は似ても似つかぬものに変っておったというようなことがあってはならぬと私は思う。少くともそういう点については良心的な態度が私は好ましいと思う。  伊藤さんに最初伺いますが、今私が述べた点について何らの矛盾も感じておられませんか、これでもってよろしいというお考えでありますか、どのような御感懐を持っておられますか、まず最初にこの点をお伺いしておきたい。
  79. 伊藤佐

    伊藤参考人 大へん私個人の意見を申して恐縮でございますが、率直にお尋ねでございますので、私も率直にお答え申し上げたいと思います。  公団法の御審議をいただきました当時は、確かに、現在の基本計画に示されておりますように、大部分農業用水でございました。農業が主体になりまして、それに他の種類のものが加わりまして、水の総合開発ということになっております。その精神というものは、現在も、私、変っておらぬと確信をいたしておるのでございます。ただ、今回の東海製鉄をめぐります将来の工業用水の問題、この問題が将来具体的に論議されるということは、先ほど来のいろいろの御質疑応答の結果で明らかになっておるわけでございますが、あくまで、現在の農業関係並びに将来の農業の発展の関係、この関係は微動だもさせぬということが前提になりまして、しかも、農業関係負担が安くなるというふうな、さらにそれに追加する何ものかがあるという限りは、私は現在の性格は変らぬと思いますし、また、そうでなければならぬ、かように考えておる次第でございます。
  80. 足鹿覺

    足鹿委員 濱口総裁は、今の伊藤理事の御発言、個人としての感懐、また理事としての御発言、その点についていかようにお考えになりますか。
  81. 濱口雄彦

    濱口参考人 私は公団ができてから参ったものでございますが、公団法成立当時の御審議のありさまをずっとあとから聞いておりまして、今伊藤理事の言いました通り私は思っております。
  82. 足鹿覺

    足鹿委員 これから質疑に入りたいと思いますが、最初に、この公団方式について、政府は、愛知用水の現在の性格が変ってきた実情、それから、いろいろ基本計画なり実施計画に相当修正を必要とし、また、将来必ずそれが起きるような情勢になっておることはすでに承知しておられるわけでありますが、私は、この公団システムというものについて、この法案審議の際に相当問題として論議をした一人です。なぜ公団を作るのか、政府の特別会計で直轄事業でやれるんじゃないか、なぜやるのだということを、しつこく私は追及した記憶を持っておるのです。現在円資金は全部ストップしてしまっておるじゃないですか。当時の資金調達計画というものは根底からくつがえっておる。そのために、いろいろな運営面においても、金利の面、それはひいてはこの受益負担、そういうものに大きく響いておることは御案内の通りです。わずかに世銀から二十一億ばかりの金を借りて、アメリカの機械を買うことが相当問題になった。そこで、これを若干少めた。しかし、現に、アメリカの会社の技術者を最高顧問に迎えて、そして、月収七十万、八十万の大金を現実に払っておる技師をたくさん置いておる。何の必要があって——あの八郎潟をごらんなさい。オランダの技師一行に帰っていただいて、日本人の力でちゃんとやっているじゃないですか。最初は必要でしょう。しかし、ある一つ段階が来れば、私は、何も高給をはまして——それは別な会計から出るわけではない。みんな受益者の負担に形を変えて転嫁されることになる。現在の資金面から見ても、これは全く別個な資金調達計画の上に立っておる。当時政府が主張したのは、世銀の融資を受ける、見返り円を使う、国費では他の土地改良事業等には寸毫も影響を与えない、こういう約束のもとにやったのではないですか。事実は、もうすっかり国の負担、それを中心とする受益者の負担、あるいは関係府県自治体の負担というようなものにおいてまかなわれておるのです。わずかにその全資金額の一〇%にも足らない世銀の融資を受けているにすぎないではないですか。そうしますと、当時政府が国会において言ったこの公団システムを必要とした理由は、現在においてはその大半は失われておる。世評を聞きなさい。私は、公団の首脳部を前に置いて、その具体的なことは言いません。私ども審議に参加した者としてその一半の責任を負わなければなりませんから言いませんが、とにかく、非常にきつい批判を受けておることは事実です。なぜ現在この公団方式をとらなければならぬかというその内容がありますか。どういう根拠がありますか。少くともこの法律は根本的に立て直さなければならぬ現段階が来ておると私は思う。これは農林大臣なり政府の責任のある人から私はこの問題を聞きたいと思うが、農地局長は最近御就任になったばかり、政務次官はわれわれの同僚の中から最近めでたく次官に就任されたばかりであって、これ以上のことを申し上げるのはどうもちょっと困るのですが、農林大臣に——これは非常に重要な問題です。  委員長、きょうは米審なのでちょっと都合が悪いのだが、とにかく、この問題について農林大臣一つ出席機会があるかどうか、長い時間は取らせません。あと農地局長なり次官でけっこうですから、御連絡をいただきたいと思います。  まず、その前に、関係事務当局者としてはいかようにお考えになっておるか、根本の問題は大臣がおいでなってから聞きますが、一つお聞きしたい。
  83. 伊東正義

    ○伊東説明員 今の御質問でございますが、公団発足当時のことは、私より先生の方がお詳しいわけでありますが、当時の情勢といたしまして、世銀の借款をする、それで大規模な農業機械を入れまして、その上で、余剰農産物の見返り円資金も、金利の安い金も使いまして、この公団という新しい方式で発足していく、その場合に、世銀との関係におきまして、いろいろな大規模なロックフィル・ダム関係その他ございまして、技術協定をするということで、当時といたしましては、私は、公団として発足するだけの存在理由があったろうというふうに考えております。ただ、その当時は特別会計というものは御承知のようにございません。特別会計ができましたのは三十二年度からでございます。それで、資金の関係が全然変ってきたじゃないかという御質問でございますが、これは、三十二年に事業実施計画をやりますときに、すでに余剰農産物関係は第二次で打ち切りということになりましたので、そのときまで借りました、たしか五十七億でございましたか、それで余剰農産物関係は一応ストップしまして、それが変りまして預金部資金になって、金利が当時より若干高くなっておる、これは事実でございます。ただ、そういう前提——余剰農産物の金がなくなったんだから、これは公団方式でない方がいいんじゃないかという御意見でございますが、われわれ事務当局といたしましては、これは、そういう余剰農産物の金は、これは確かに今ストップいたしておりますが、公団としてこういう優秀な技術者を集めて一つの大きな組織として事業を運営いたしております際に、これをまた別な組織に改組するというようなことは、これは、私は、事業を遅延させるというような結果になるおそれが多分にある現在におきましては、やはりこの公団という方式で継続していくのが最も適当であろうというふうに考えております。ただ、将来、これは一般論でございますが、大規模な開発をいたします場合にどういう形式がいいのか、役所の特別会計でやっていくのがいいのか、あるいはまた公団という形、あるいはそのほかの形、どれがいいかということは、これはまた、その場合の問題として議論し、もう少し検討してみたいというふうに考えております。
  84. 足鹿覺

    足鹿委員 根本論ですから、大臣がおいでになってから伺いますが、今すぐに法律を改廃して別な方式をとれということを私は言っているのじゃない。完工を目睫に控えてこういう事態が新しく出てきておるわけですから、直ちにこれをひっくり返すということは、言うべくしてなかなかできないことでしょう。それだけに、公団の運営の衝に当る人、また監督指導の最高の責任を負う農林省当局、また地元というものは、今直ちに法律が変えられるものではないが、確かに公団存立の根本的な理由の一つはすでに薄らぎ、ほとんどなくなっている、そういう意味からも、この点については慎重なる運営があってしかるべきだと思う。それを私は言っておるのです。が、しかし、確かにこの点は再検討を要するということはお認めになるでしょう。これは大臣がおいでになってからも申し上げますが、やはりその事実に立脚してわれわれは言うのであって、仮定理論でやっておるわけではありませんから、その点は、謙虚にお互いが意見の交換をして、同感であるならば同感という点に立って質疑応答を進めていくべき性質のものではないかと思うのです。とにかく私はそういうふうに思っておる。  そこで、公団法を審議する際に、衆議院では十カ条、参議院でも数カ条の附帯決議が附されておる。これは、両院とも、この公団の将来というものを憂えてそして、問題となるべき点を指摘して、厳重なる警告とでも言いますか、意思表示を行なっておるのであります。その一にわれわれが指摘しておった点は、資金の面について指摘しておるのです。「本案は世界銀行よりの借款及び余剰農産物見返円資金という不確定財源を主要財源とするのみならず、工事完成までに六カ年以上を要し、且つ、明年度以降の所要円資金も巨額にのぼるのであるから、本事業計画通り進捗せしめるためには他の一般土地改良事業に重大な悪影響をもたらすおそれなしとしない。よって、政府は、わが国全体の食糧増産事業重要性に徴し、これが所要資金の確保につき毫も支障なきょう万全を期すること。」という一項が冒頭にあるのですが、われわれが指摘しておった通りになってしまった。  そこで、この際公団総裁に関連してお伺いいたしますが、三十年の十一月における資金計画は、大体三百二十一億、世銀三十六億、国庫四十七億、見返り二百三十八億というふうになって、細目は資料に基けばわかると思いますが、現況はどういうふうになっておりますか。そして、最終完工の暁における資金の調達、それから各工種別の振り分けの実情というものはどういうふうになると思っておりますか。その点も、この間の資料を拝見しましたが、一般の農民や、一般国民向けのパンフレット程度であって、われわれは現状を把握することができません。少くとも性格が大きく変ろうとしておるというときに、何かその間にわれわれがお聞きしておかなければならぬ点があるだろうと思うのですが、その点いかがですか。
  85. 伊藤佐

    伊藤参考人 便宜私からお答えいたします。  先般農林委員先生方に差し上げましたあの資料を現在のところ出ておらないわけでございます。なお、先ほど来御質疑もございまして応答されております今後の資金計画と申しますか、工事進捗に伴います資金計画の再検討を今やっておるわけでございます。その暁においては変ることがあると思いますが、現在のところは、先般差し上げましたような資料でございます。  それで、大分けにいたしますと、余剰農産物の方は、第一次、第二次五十八億円余で終りました。それから、先ほど足鹿先生仰せの世界銀行の方は、二十一億ばかりのワクでございます。それで、その残りのうち八十六億というものが国庫の助成金になっております。それから、百六十何億になるかと記憶いたしますが、それは資金運用部の資金を借りるということになっております。それで、今のところ全体で三百三十一億でございますが、その点は目下検討いたしておりますので、個々の内容につきましては近いうちにはっきりいたすと思っております。
  86. 足鹿覺

    足鹿委員 農林省に伺いますが、公団当局の話を聞きますと、近いうちに資金計画が変るであろう、こういうことですが、それは御了解になっておるのですか、大体御検討になっておるのですか。
  87. 伊東正義

    ○伊東説明員 午後の冒頭にお答えしましたように、三百三十一億の資金計画につきまして、いろいろその後当時予測しませんでした事情等もございますので、もう一回再検討するようにということを公団に言っております。これはまだどういう数字になるかわかりませんが、公団で慎重にこの問題は検討してほしい、工期の問題と合せまして、これは両方検討するようにということを申しております。
  88. 足鹿覺

    足鹿委員 私は、午前中放せない用事がありまして、角屋委員の質疑応答を十分知悉することができておりませんので、あるいはダブるかもしれませんが、この「工業用水取水計画図、昭和三十四年六月、愛知県」というものの取水計画説明の項目に1、2、3、4とありますが、ぞの2項に、「木曽川からの導水は、愛知用水幹線水路の余裕通水断面を利用して工業用水専用貯水池に導入、これから供給する。」、こういうことになっております。これは、われわれが現地を見たときに、いろいろ東海製鉄の施設の問題が話題に上った。そのときわれわれが主として見たのは隧道工事ですが、若干の余裕を見てあるらしい。われわれには専門的なことはわかりませんが、とにかく最大通水のときも相当の余裕がある、それを全部使わせてもらえばいけます、こういうきわめて楽観した話なんです。将来に備えて余裕を見ておかれることはけっこうでありますが、愛知その他の臨海工業都市、特に今問題の東海製鉄に莫大な水が要る。年間一億トン以上の水が昭和何十年かには要るということなんです。それは、矢作川その他でカバーしながら、この幹線水路を利用させてもらえばうまくいくんだと、事もなげに言っておられますが、一体、設計のときには必要があって余裕面が残してあると思うのです。それは、工業用水にいくのか、上水道にいくのか、農業用水がもっと多量に要るのか、今後検討してきめられるべきことです。こんななまくら資料がどこにありますか。愛知幹線水路の余裕通水断面を利用して工業用水専用貯水池に入れるのだと断定しておられます。県当局はこの問われわれに対しても、また公団当局もそういう相談をまだ受けておらぬと総裁も断言された。何たることですか。ここには既定の事実としてちゃんと載せているじゃないですか。そういうわれわれを侮辱した態度がありますか。こういうことを麗々しく資料に出してわれわれに配付する以上は、相当協議が進み、すべてのものが決定づけられていると思う。われわれ国会をでくの坊扱いにされるなら、われわれも考えがあります。具体的に説明して下さい。
  89. 桑原幹根

    桑原参考人 足鹿委員からの御質問でございますが、実は、午前中におきまして角屋委員からその点につきましていろいろ御質問がございまして、詳細に御答弁申し上げたわけでございます。この愛知用水計画の中に工業用水計画がございますが、それは前にも説明を申しました通り既定の計画でございまして、すでに誘致が本決定をしたり、あるいはすでに既存のものに供給するという見通しのついておりまするものについての二千七百万トンの計画でございまして、そのほかのことにつきましては、先ほど来説明いたしておりますような方法で、愛知用水計画とは別個の県の計画といたしまして樹立いたしておるわけでございまして、その際におきまして、関係方面の御協力をいただいて、その水路を利用させていただきまして、利用に応じていきたい、かように考えているわけでございまするが、愛知用水水路は、御指摘のように、三十トンの能力を持っておりますが、三十トンフルにそこを通水いたしますのは、年間わずかな日数だけでございます。ことに、非灌漑時におきましてその水路を利用させていただきまして、今申しました通り東海製鉄その他につきまして工業用水を供給してもらいたいと考えているわけでございます。その計画をわれわれが樹立するにつきましては、関係方面ともいろいろ折衝を重ねたのでございますが、午前中に申し上げました通り、事柄が重大でございますので、関係方面といたしましては、きわめて慎重な態度でございまして、確答はいただかなかったのでございますが、われわれといたしましては、関係方面と折衝いたしまして、愛知用水計画と別に県の方の立場におきまして工業用水の一応の計画を立てまして、現在まで進んでおるような状況でございますので、これらの事情をとくと御了察賜わりたいと存じます。
  90. 足鹿覺

    足鹿委員 先日われわれが調査に行った正式の調査報告書ですが、速記をお読みになりましたか。公団も御検討になりましたか、この国会報告を。会議録はまだできていないそうですから、念のために一番いいところを読んで聞かしてあげます。「そこで県当局は矢作川等の水資源の新規開発を考えているようでありますが、いずれにしろ、木曽川及び愛知用水との関連なしには実現し得ないことであります。しかるところ、この製鉄工場の誘致者たる愛知県当局からは、公団に対してはもちろん、監督官庁たる農林省に対しても何らの協議がなされていないありさまであります。」と断じておるのですよ。これは、総裁、あなたは午前中に言葉を濁されたそうですが、あなたが現に私の質問にも答えられ、委員長の質問にも答えられたじゃないですか。事前の協議は何ら受けておらないとおっしゃったじゃないですか。だから、その通り団長は国会にこれを報告しておるじゃないですか。真実のことをお互いに言うべきではないですか。すべてはもう計画通り進んでおる。地元の同僚議員からもあとで具体的な事実を示してあなた方にお尋ねをするでしょうが、とにかく、すべての膳立ては全部きまっておって、表口は、知らぬ存ぜぬ、協議を受けたことはない、そういうことでこういう世紀の大事業の結末がつくと思ったら大間違いですよ。現在、百万、二百万の補助金に対して、大蔵省は農業問題に対しては干渉しておる。われわれ農林委員会は、これらの問題に対しては、党派を越えて、必要なことに対しては農民のために論陣を張り、日夜努力しておる。三百三十一億というこれだけの大金を投じて、世紀の大事業としてわれわれが着目して、将来の総合開発に対してエポツクを画する、こういう大きな理想で、現実をわれわれは見てこの問題を重視しておるときに、具体的な工業用水重点にすでに性格が一変し、性格のみならず具体的な運用計画までもできておるのに、公団側は、あくまでも、協議を受けたことはない、事前の相談を受けたこともない、農林省も全然知らぬ、そういうふうに言い切れますか。はっきり御所見を承わりたい。
  91. 伊東正義

    ○伊東説明員 今の御質問は、午前中角屋委員にもお答えしたのでございますが、これは、公団に対しても、県から、あの水路を使わしてくれという申し出といいますか、依頼がございました。それで、公団に対しましましては、事柄が重大でありますので、公団からこれに対して返事をすることは適当でないということをはっきり申しております。それから、県から、私どもに対しましては、東海製鉄の誘致についてということで陳情を受けました。しかし、これに対しましては、愛知県からも受けましたし、三重県からも受けております。いずれの場合でも、これは水の問題が関係して参りますので、必然的に農業水利ということに関係して参ります。それで、私は、この問題に対しましては、非常に重要な問題でございますので、にわかに返事がいたしかねます、ただし、これは農業関係の水利に支障を及ぼさないという範囲では、どちらの県にきまろうとも協力はします、ということは答えておるわけであります。公文でどうということはございませんが、陳情でも話はもちろんしております。
  92. 足鹿覺

    足鹿委員 桑原さんにお尋ねしますが、われわれが昭和三十年の七月に炎暑の中を現地に参りましたときに、わざわざ御案内をいただいて、そしてるる地元を代表してこの用水のゆえんから将来にわたって懇切にわれわれに述べられた。そして農業開発についての情熱をあなたは示された。そうして、農民が狂喜し、知多半島の起伏の多い山頂にわざわざ氷を運びいろいろやってくれた。われわれは、これだけ農民が念願をしておるならば、この用水は早天の慈雨のごとく農民の夢を満たしてやることができるだろう、観念論は持つべきでないという大乗的な立場に立った。そうして、委員会ごとにあなたはこの委員会に詰めかけられて、直接間接に陳情をされました。今まで角屋委員との質疑応答を私静かに聞いておりますと、もう既定の事実になっておる。われわれは工業化に対して何ら異議を持つものではない。日本の開発は農業のみではない。しかし、農業がおくれておるということだけは、あなたもお認めになるでしょう。こういう見地から、この用水計画農業中心とした開発というところに魅力があり、それに関連して大きなる工業あるいは地方住民の飲用水その他保健衛生等にも大きく寄与貢献するであろうというところからやったのに、今日かくのごとき事態が知事の手によって進められておる。東海製鉄の敷地は全部方針がきまり、その付属設備の用地の買収から補償金からすべてのものが具体的に解決しておる。こういう既成事実を作って、公団性格はそのままに農業用水でございます、それ一点張りで、今日まで、われわれが現地に出張するまで、ただの一ぺんでも、こういう事態に直面しておる、こういう事態になっておるということを——当時この公団法通過のためにあなたが努力されたあの情熱の半分でもあったら、正式にこの委員会に向って、公団法の性格変更あるいは合理的な運用、いろいろな点について抱負経綸を述べられる必要があるじゃないですか。今日に至ってもなお、自分たちは事将来の点についてはといって濁しておりますが、そういうことでは通りません。既成事実を作っておいて、そうして合理的にこれを持っていって最後にはこうだ、こういうことでは通りません。いかような御所信でありますか。
  93. 桑原幹根

    桑原参考人 足鹿委員の重ねての御質問でございますが、ただいまお示しになりましたように、公団法の制定ばかりでなくして、愛知用水の問題が起ってきましたそもそものときからいたしまして、足鹿委員を初め委員会各位の非常に御尽力をちょうだいいたしたのでございまして、公団法成立の前におきまして親しく御視察をいただきました際におきますお話等、今その当時を回想いたしたのでございまして、その前から、またその際におきます、また今日までの足鹿委員の御尽瘁に対しまして、ことに変らざるその御熱意に対しましては、まことに感謝にたえないのでございまして、私ども、その御熱意に、また御支援に対して、形の上においてわれわれがお報いするようなことのない今日の状況は、まことに申しわけないことに考えておりまするが、それも、ひっきょうするに、私の微力でございまして、おしかりは受ける次第でございまするが、しかし、愛知用水計画は、関係方面の非常な御支援によりまして、とにもかくにもこのような段階に進んで参ってきておるわけでございまして、さような際に、この日本の国情がそこまで参りましたのか、あるいはまた、いわゆる中京地帯の情勢がさようなところに参りましたのか、東海製鉄という問題が突如として起って参ったのでございまして、われわれの方もこの問題について接触をして参りました。われわれがこれを受け入れるということにつきましていろいろと微力をいたし、結果はそのようになったのでございまするが、それにつきましては、工業用水の必要でありますことは当然でございますので、私どもは、県の独自の立場からいたしまして、これに供給する工業用水計画を進めて参ったわけでございまして、これは、もちろん、御指摘のように、関係する面が非常に多いのでございまして、しかもむずかしい問題でございまして、農林省にしましても、あるいは公団にいたしましても、これをにわかに結論づけ、そうしてOKを出すというふうには参らぬのでございまして、一応の事情はお訴え申し上げ、御理解をいただくことに努めたのでございますが、関係方面が多く、また問題が非常にむずかしい問題でありまするし、将来のいろいろの計画に関連を持つ関係からいたしまして、それぞれの向きにおきましては最終的な決断はないわけでございますが、これらの間をかけ回りまして私がこの問題を進めて参ったということも、今後の各方面の御援助さえありますればこれは進めていくことができるのじゃないかというふうに見通しを一応つけてやったのでございまして、これは、決して、ただいまお話しのごとく、国会方面を無視したとかいうふうな、さような不心得な気持は毛頭ないのでございまして、そういう点につきまして足らない点がありましたならば、この機会に心からおわびを申す次第でございますが、どうぞ、その点につきまして、足りない点は平に御海容願いたい、かように存ずる次第でございます。  いずれにいたしましても、今後私ども微力の全部を尽してこの問題の解決に当っていきたいと考えますので、どうぞ、足鹿委員におかれましても、従来非常な御熱意をもちまして御支援をいただいたのでありまして、今後とも引き続き御援助を賜わりますようお願いを申し上げる次第でございます。
  94. 吉川久衛

    吉川委員長 足鹿委員にちょっと申し上げます。足鹿委員の要請でございますので、農林大臣に連絡をいたしましたところ、米審では今なお大臣に対する五人の質疑が行われておりますので、午後は特に時間をさくことはできないそうでございます。そこで、私のそんたくで恐縮でございますが、この問題は非常に重大であると思います。本日は概論的な問題程度になるのではないかと思いますが、なお引き続き今後検討しなければならないように存じますので、そのお含みで質疑を続行していただきます。
  95. 足鹿覺

    足鹿委員 どうも御配慮ありがとうございました。いたし方がありませんので、農林大臣に対する質疑は、委員長に御一任申し上げて、他の適当なときにお願いいたします。  濱口総裁の御答弁がありませんが、農林省は何ら諾否を与えてない、慎重なかまえのようです。あなたは現地の責任者でありますが、全然相談を受けておらぬと言う。われわれが先日参りましたときの言葉を御記憶になっておると思いますが、知らぬと言う。だからこういう報告になって現われておる。私だけの認識じゃない。これは団の正式な報告書ですよ。どうですか。
  96. 濱口雄彦

    濱口参考人 午前中に私は角屋委員の御質疑にお答えしたのでありますが、使わしてくれという相談を一つも受けないとは申しません。あのときは、愛知県の方から、愛知用水公団水路のあいているときに使わしてもらってこうこうというお話でしたが、私ども一つも返事をしてないのですから、私らの関知する限りでない、こう申し上げたのです。
  97. 足鹿覺

    足鹿委員 協議を求めた事実もない、また、もちろんそれに対して了承を与えたこともない。そうすると、何もないのですね。そうすると、愛知県は、こういう重大な問題を誘致した以上は、県が勝手にしていいという判断に立っているのですか。どうせ自分たちが使わしてもらうのだ、——どうせ地元の人々がその利益と福祉を受けるのです。われわれはそれに対して何らとやかく思っていない。率直簡明になぜ実態を言わないのですか。われわれは、何も、現地の利益を、工業地帯になることを忌みきらったり、それに難くせをつけたり、そういうことで質問をやっておるのじゃない。いずれの角度から言っても、国富を増し、国民の福祉を増大していく立場に立って、それが正しくされていくならば、当委員会としても何らそれに対してとやかく言う筋合いじゃないのです。ただ、問題は、その性格の上から見て、重大な転換が行われる。現に行われておる。あなた方が公団から委託を受けておられる一万一千一百幾十キロの支線水路が遅延をしておった理由の一つは、たまたまあの東海製鉄の敷地買収のブームによって、その支線水路の用地買収難航しておる、それが遅延の大きな理由の一つだということは、知事としてはわかっておるでしょう。そういう密接不可分な関係があるからわれわれは追及しておるのです。公団にも相談をしない。農林省もこれに対しては慎重にかまえて何ら諾否を与えておらぬ。にもかかわらず、国会に対しても、そういうことに対して一言の真相の解明もなされない。そうすると、県は何をやってもいいのだ、どうせ使うなら思い切って使ってやれということですか。それならそれで、お互いが了解の上でやられた方が百年の大計というべきでしょう。また、われわれが名古屋の臨海工業地帯のあの説明を聞き、現地を瞥見しただけでも、今後十年間には現在の愛知用水のこの構想をもってしてははるかに足らない現状が起きてくる。現に、現地に行かれた松浦委員長は、——あの隧道工事を見て、相当天井まで空間がある。そこで、だれかが、モーターボートなどを入れたり何か入れてスリル満点な一つの遊覧地的なことにならぬだろうかというような冗談を言った。ところが、これはもう今の計画でも足らぬ、もっとトンネルの構想、幹線水路の隧道の構想を大きくしておけばよかったということすら松浦委員長はすでに卓見として述べておられるとわれわれはしばしば聞いておる。私はその卓見を今でも聞いておりますが、われわれがわずか数日見ただけでも、この構想にはもう十年後には用に足らないような事態が来やしないか、せっかくのあの隧道を見ても、何かそういう印象を受けておるのです。あの地帯の営農問題が今後いかような発展をしていくかということによっては、まだまだ水の必要量も出てくるでしょう。まずこれを重点的に取り上げて、そして工業用水を見たときには、おのずから現在の構想には限界があることは常識ですよ。矢作川云々と言われますが、これは、技術屋その他が正確に見て、あなた方の計画が東海製鉄その他一連の臨海工業に供給する水がまかない得ないというちゃちなものだということはわれわれも知っております。そんなことぐらいで薄っぺらの二、三枚の資料を配って、それで事足れりというようなことを考えるようでは大へんな間違いですよ、はっきり言っておきますが。このように工業面に対しては十分な配慮がなされており、将来を見込んで大計画がなされるにもかかわらず、現実の営農問題については愛知県当局は一体どういう態度をとっておられますか。  以下、私は、あまりこの問題について時間を費してもいけませんから、営農問題に入りまして政府に伺いますが、今の公団の大体の性格は建設公団ですね。ところが現地に行きますと、これはわれわれの意見と異なるところでありますが、日高土地改良区の理事長さんのお話によっても、公団でもっと営農指導をやってもらったらどうだろうということを聞いたように思うのです。現地の農村関係の人々もそういうことを言っておった。公団が大府灌漑農場を経費をもって創設されたということは、私は、現地においても、これはまことに卓見であるし実際的な行き方だという一応の賛辞を呈しておきました。是は是、否は否ですからね。私どもは、いい点はいい点として大いに伸ばしてもらいたいと思う。いち早く、農林省よりもすみやかに公団当局は不十分な中からもあれだけの施設のものをやられた。まだその成果を見ることはできませんが、とにかく、私は一つの卓見だと思いますが、基本問題としては、農林当局、公団当局は、今後の愛知用水地域に対しても、営農的な指導を公団業務の中に入れていくべきと考えておるか、それとも、この建設公団的な任務が完了すると同時に管理公団の方向へいくのだということはしばしば聞いておりますが、新しい段階にきてどのような考え方を持っておられるか、農林省と公団当局者から伺っておきたい。
  98. 伊東正義

    ○伊東説明員 公団性格でございますが、今お述べになりました、建設が終った将来においてこれが営農の指導をしていくというような形のものとして考えられるかどうかという御質問でございますが、これは無理でございます。公団は、やはり、現在は建設をやってもらって、それからあと施設の管理をするという性格のものだろうと思っております。でありますので、営農の指導につきましては、これはやはり国と県がこの責任を持っていくという形態でやっていくべきであるというふうに考えております。
  99. 野田清武

    野田参考人 ただいま営農関係のお尋ねでございますが、私どもといたしましては、農地局長と同様に考えております。建設から管理に移るというふうに考えております。
  100. 足鹿覺

    足鹿委員 一応そういうお考えであるということを前提にして愛知県当局に伺いたいのであります。「愛知用水土地改良区の試算について」という資料をわれわれは拝見しておりますが、これによりますと、第一次の総収益増加生産額が三十八億一千三百五十五万三千円、反当り一万三千二百八十四円。これが、第二次を省略して第三次に至りますと、総収益増加生産額が十五億二千二百三十万九千円、反当にして六千百三十円と、驚くべし半分以下に計画が減じられたことは、いかような理由に基くものでございますか。この資料の根拠をはっきり御提示を願いたい。
  101. 日高啓夫

    日高参考人 お答えを申し上げます。  この受益計画につきましては、午前にちょっと触れましたように、土地改良区自体でもちまして自主的に試案を作成いたしました。従って、第一次の試案につきましては全理事者等の意見は入れたのでございますが、想定されます諸利益——作付計画の変更あるいは耕種改善による生産の向上という、水が参りましてからの受益を想定して、基本になります試案を作定いたしましたものが、ただいまお尋ねのような第一次試案になっております。ただいまお尋ねの数字は、粗収入ではございません。これは純収益ということでございます。それは、お尋ねのように、純収益が三十八億円、反当に換算いたしまして一万三千二百八十四円、こうした数字になっております。これを、第二次試案を作りますときには一応、地元の各市町村の治水委員会中心といたしまする改良普及員、あるいは農協の営農指導員、農業委員というような方々にお示しをいたしまして、その意見を聴取いたしまして作成いたしましたのが第二次試案であります。これは、第二次試案によりますと、純収益が二十八億円、反当にいたしまして一万九百四十三円というような数字になっております。そこで、これは、たとえば作付計画などは、実際われわれの理想といたしまするところは第一次、第二次試案で示しておるわけでございますけれども、実際に地元でこうした作付計画を変更、実行してもらえるだろうかということで、もう少し詳細に地元の意向を取り入れる必要があるということから、第三次試案を作成いたしますにつきましては、地元の意見中心にとりまして、それをそのまま率直に集計をいたしましたものが第三次試案である。その第三次試案でございますと、純収益の方は十五億円、反当に換算いたしまして六千百三十円というように減少を示しておるわけであります。しかし、この問題は、作付の形態の逐時の試案の変化もございますし、あるいはまた、私ども意見を問いました市町村全部からその返答があったわけではございませんので、一部の町村において返答のありませんものはそのままゼロとして計上してあります。その集計でございますために、数字が非常に激減いたしたわけであります。さような次第の試案でございまして、全くの試案でございます。さらにこれをよく検討いたしまして、返答のない市町村の地区におきましても再調査をいたし意見の提出を求めますと同時に、各専門技術者等にもこれを根拠に検討させまして、将来第四次の試案を作成いたしたい、かように思っております。
  102. 足鹿覺

    足鹿委員 平均三千三百円の受益負担が十年間続くということになるわけですね。その平均の根拠は、用水補給田が反当概算農民負担が二千四百円、普通畑灌漑が二千六百円、開畑開田が五千七百円、果樹園が二千七百円、これを締めて平均いたしますと大体三千三百円ということになる。われわれが愛知県当局からいただいたトータルは、最終的には反当りのトータルが出ておりますが、その栽培種類別の反当の増加生産額というものは示されておらない。この前も、愛知県当局と関係者を交えての懇談会のときに、われわれ委員一行はその点の資料の提示を迫ったが、何ら根拠ある数字をお出しにならない。きょうも農林部長はおいでになっておるようでありますが、責任のある根拠をお示し願いたい。いやしくも、第一次計画、第二次計画、そして第三次計画と見なければならぬものがあったとか、いろいろのものがあった。それは先駆者の悩みとして、そういうことを公式的に私は攻撃したり非難したりするつもりはありません。しかし、見込み違いもはなはだしいじゃないですか。そんなばかな話はありません。だから、農民負担が問題になってくる。三割減とか、ものによっては五割減とか、これだって一様ではありますまい。ここに十数種類のものがある。しかし、この愛知用水性格農業用水の主たる目的、これはどの方向へ向って将来その営農の形態を進めていくのか。少くとも臨海工業都市に対しては十年も二十年も先のことを目途として雄大な計画を立てながら、農業の問題については、現実の問題が三分の一になってもてんとしておられますか。そんなばかな話はないでしょう。当委員会農林水産委員会ですから、その点はもう少し具体的に御説明をいただいて、納得ができなければ幾らでも追及します。工業用水に対しては十数年先のことを緻密に計画を立て、主たる用水の目的である農業問題についてはかくのごときずさんきわまるものをもって国会へ提出されて、恥かしくないですか。
  103. 山分一郎

    山分参考人 先般も懇談会の席上でお尋ねを受けましたが、私のお答えが満足を皆様方にお与えすることができなかったわけでございます。この試算表でございますが、これは、ここに書いてございますように一応こういうものがあると申し上げたのを、それでは提出しろということがありましたので、県を通じて御提出を申し上げたわけです。原案はすべて土地改良区において作成をされたわけでございます。あの当時も、これは県が作ったということは申し上げてはおりません。われわれは、新しい事態に応じて、水の研究も大体できておりますので、県として一つ計画をどうしても立てたいという気持を持っておるわけなんです。従いまして、幸いにして土地改良区においてはこういう案をお作りになりました。われわれとしては、まだこれにいろいろな新しい作物を付加して、新しい事態に応ずる作付計画というものを作り上げたい、かように思っております。もちろん、土地改良区からも御協力を得なければならないと思いますけれども、現在のところでは、土地改良区のお作りになったこの表しか作付計画につきましてはないわけであります。従って、あのときに、土地改良区において作ったこういう第一次試案、第二次試案、第三次試案があるということを申し上げたわけでございます。県といたしましては、これから新しい事態に応じた作付計画を作りたい、かように考えておるわけでございますので、御了承願いたいと思います。
  104. 足鹿覺

    足鹿委員 御弁明ともつかず、無責任をみずから露呈されるような御答弁を、私、非常に遺憾に思います。これは本日あなた方からいただいた資料でありますが、われわれが現地調査の際にも承わってあぜんとしたわけです。営農対策事業というものがありますが、試験研究というものは一朝一夕にしてその成果が実地に適用されるものでない。農家の創意と農家の要求と結びついてそこに一つの成果をあげていくわけでありますから、いわんや、新しい愛知用水のはるばる引いてきた水をどう営農に有効適切に利用するかということについては、少くとも異常な熱意と努力を要すると私は思うのです。これによりますと、営農計画樹立に要する費用は、産業費の中でしかも農山漁村対策費の一部として二十万円が計上されておる。聞くところによると、五百万円を当初県会は要求し、知事の査定において三十万円に減じられたと伝えられておる。全く驚くべきものです。現在われわれもいろいろな農村関係にタッチをしておりますが、県営あるいは団体営、わずかな経費を投じたものに対しましても市町村なり県なりは二十万や三十万の営農改善費は朝飯前で出しておりますよ。三百三十億円の年間予算を持つ愛知県が、営農の、しかも世紀の大事業受け入れるについて、営農体制の根本をなすところの計画立案費が三十万円というに至っては、われわれはあぜんとして言う言葉がない。しかも、一方においては膨大な臨海工業計画というものを進められておる。いかに農業を軽視しておられるか、この表が明らかに示すと思う。他にも、畑作改善試験に要する費用千七百万円、あるいは営農指導事業に対して二百十四万円、畜産の試験並びに指導奨励に千五十一万円、園芸に六十二万円、締めて三千百五十四万三千円というものが一応この数字の上に載っておりますが、少くともこれは愛知県政全般の問題であって、この愛知用水完工を目睫に控えて、いかに農村に一つの方針を授け新しい近代的な経営改善を行なっていくか、用水の性質に即応していかにその営農計画を指導推進していくかということに対する県の熱意の足らざることは、この三十万円が物語っていると思います。松浦委員長は三十億といって聞かれておった。いや三十万、私どもはあぜんとしたわけです。われわれは三十億と聞き違えた。せめて三億程度ならよろしかろう。私、非常にきついことを言うようでありますが、よく御反省になってしかるべきものだと思います。三百三十億の大予算の一万分の一ですか、それにも当らぬでしょう。もはやお話にも何にもなりませんな。このことは現地を見て一目瞭然です。現在の知多半島のあの営農状態は、少くとも僕が国政調査で方々の農村を調査してみたその経験から見ても、最低です。全く区画整理すらなされておらない。農道の整備に至っては全く見るべきものはない。ほとんど、畑とたんぼと丘陵とが雑然と、一つの指導方針も何もないと言われても弁明の余地のない非近代的な原始産業状態に放置されておりますよ。全く、私どもは、バスの中から、あるいはおりて見て、びっくりぎょうてんした。あなた方の方へ行く前に相模原をわれわれは見た。神奈川県の相模原の畑地灌漑状況を見ましたが、区画整理も十分できておらない、そこまでは手が至っておらないが、そのことは率直に認めておりましたが、少くとも既存のある程度の耕地の区画というものが支線水路に沿って区画整理がなされようとし、また、計画が立てられてあったように思う。支線水路は、ただ単なる水路ではなくて、またその水路から分れていくものに対しては、すでに農道あるいは附帯設備がそれに伴うべきものでしょう。区画整理を伴わない支線水路という水路計画というものはあってならないですよ。その際に何らそれに対して将来こういう計画も持っておらないというに至っては、言語道断ではありませんか。三百三十一億の巨費を投じて、しかも明後年は是が否でも完工するのだという、こういうどたんばになって、これからぼつぼつ三十万円計上してやりましょう、そういうことで一体よろしいでしょうか。愛知用水公団当局にしてみても、農林農地局の責任ではありませんが、農林省自体も、そういうことであってよろしいと思われますか。振興局の徳安さん、いかがでしょう。
  105. 徳安健太郎

    ○徳安説明員 ただいま愛知用水公団受益地帯の営農の問題についていろいろと足鹿委員から御指摘がありましたが、この問題につきましては、私も現地をお供して参りまして痛切に感じた者の一人であります。ただ、御承知のように、この畑地灌漑の問題というのは、わが国でも新しい技術でありまして、基礎的ないろいろな問題についてまだわかっていない問題が多々あるわけであります。農林省といたしましては、三十二年度から、御承知のように東海近畿農業試験場の栽培第二部を東郷村に設けまして、基礎的な研究をやり、かたがた、この愛知用水公団におきましては、水と作物の問題、土壌との関係等につきましていろいろ研究して参った、また、県の農業試験場、園芸試験場、及び分場等におきましても、これらの基礎的な問題をここ数年来やって参ったのでありますが、試験研究機関におきまするいろいろの基礎的な問題も大体解明して参りましたので、これらの基礎的な技術を組み合せまして、その受益地帯の地帯別の営農の形と申しますか、作付体系を確立して、これを農家に推進せしめるということを早急にやっていかなければならぬということを痛感いたしております。従いまして、私どもといたしましては、現在愛知県におきましては約五千万円ばかりの金を出しましていわゆる農業改良普及事業というものをやっておりますが、この農業改良普及事業の組織を中核といたしまして、もちろん土地改良区を中心といたしますが、早急にそういう営農指導体制、それから指導をやりまする営農類型、作付体系の問題を地帯別に確立しまして、これを一日も早く推進するように、愛知県当局と協議しまして、県当局に実施してもらうように指導していきたい、かように考えます。
  106. 足鹿覺

    足鹿委員 知事さん、どうですか。
  107. 桑原幹根

    桑原参考人 足鹿委員の御質問でございますが、先ほどこの資料についての御質問がございましたが、実は、先ほど農林部長から申し上げましたように、この点については特に御了承を賜わりたいと存じますが、そこに愛知県とございますけれども、これは、委員会から御要求がございまして、公団あるいは農林当局を通じまして提出したものでございまして、これは愛知県を経由したというだけでございます。先ほど日高理事長からお話がございましたように、土地改良区におきまして自主的に作ったものでございまして、これが愛知県の計画ではないのでございまして、相当希望的ないろいろの要素がまじっておる、かように考えておるわけでございます。ただ、しかしながら、御要求がございましたから、かようなものを地元の土地改良区において考えておるというふうなこともきっと御参考にと思ってお出ししたので、私は御要求になりましたその経緯につきましては存じておりませんけれども、さような次第でありますので、これを拝見しましたときに、愛知県とありますが、これは愛知県が責任を持つ書類でない、愛知県を経由したものであるから、愛知県というのは消してもらいたいというようなことを実は申し上げたような次第でございます。  それはそれといたしまして、ただいまお尋ねの営農の問題でございますが、営農の問題につきましては、これは午前中にも申し上げましたように、愛知県の農業県政上におきまする非常な重要な地位にかんがみまして、ひとり愛知用水と限らずに、県全般につきましていろいろの施策をやっておるわけでございまして、申しましたように、三百二十億円の予算のうちにおきまして、教育費、土木費、そしてこの農林関係費といたしまして第二位を占めておるわけでございます。三十五億一千百万円というふうな金を毎年投じておるわけでございますが、それらの中には営農的な施策の性格を持ったものがたくさんあるわけでございますが、それらの問題も、特に愛知用水と限らないでも、愛知用水受益地に関する限りにおきましては、自然に結果的には愛知用水と関連するものでございますが、なお、愛知用水完成を目途として、それとの関連において考えましたものもあるのでございます。さような性格を持っておりますものを拾い上げまして、三十四年度といたしましては三千百万円のものがそうである、かようなことを申し上げたのでございまして、午前中にお話し申しましたように、かような性格を持ちましたものが、過去三十一年から三十二年、三十三年、そしてただいま申しました三十四年の当初予算において三千百万円、これを総計いたしますと約一億二千万円になるわけであります。これは国の助成を伴うものもございますが、しかし、そこに計上いたしましたのは全く国費を省きました単県費でございます。なお、九月の県会におきましては、本年度予算といたしましては、その営農的なもので愛知用水受益地に関するものもさらに計画を進めて追加して参りたい、このように考えておるわけでございまして、先ほどお話しの三十万円というのが、どういう機会にどのようなお尋ねでどういうふうな意味で答弁されたか知りませんけれども、私といたしましては、その答弁はきわめて遺憾に考えておるわけでございます。しかも、三十万円というのは、県の予算をごらんいただきましても御了解いただけますように、農山漁村対策費といたしましてそれを計上いたしたわけでありまして、その当時要求がございまして、いろいろの方面に計上いたしますと同時に、それだけのこともやったわけでございます。これは他の項目と一貫して御了解いただきたい、かように存ずるわけでござまして、それらを含めて本年度の当初予算においては三千百万円、かような数字に相なっておるわけであります。  そもそも、愛知用水についての営農につきましては、御承知のように、あの地域は丘陵地帯であり、しかも畑作を主といたしておりまする関係からいたしまして、その点につきまして相当考慮いたしておるわけであります。もとより、先ほど申し上げました通り愛知県は米産県でございまして、水田も受益地帯にございますし、また、先ほどお話しのように、開田の計画があるところもあるわけでありまして、従いまして、米の生産、水稲を中心としての施策ということも考えて参らなければなりません。これにつきましては、従来、愛知県といたしましては品種の改善とか、あるいは水稲の早期栽培、それと同時に、その裏作の関係でありますいろいろな畑作の体系というものを一つ整然と確立する、愛知用水の実施の機会におきましてさような体系を整えて参る必要がある、かように存じておるわけであります。従いまして、今後愛知用水のこの事業の進展に伴いまして、さような観点から営農的な施策をやって参りたい、かように考えておるわけであります。  御承知のように、名古屋という消費都市を控えておりますと同時に、東海道線の中央に位しておりまして、やがて名神弾丸道路なり、あるいは東京と名古屋との弾丸道路ができますれば、東京に三時間、あるいは阪神地方に二時間というようなことになりますので、従前におきましては、愛知県の畑作、蔬菜なりあるいは畑の生産物というものは、東西の市場を制圧しておったと申しますか、指定席を持っておるというような考え方を持ち得るような地位を占めておったわけであります。戦後だいぶその地位が落ちて参りましたが、しかし、愛知用水完成機会といたしまして、畑作の方面に力を入れまして、従来の東西におきます市場の勢力を挽回いたしたい、かように考えておるわけでございます。それにつきましては、やはり、先ほどオレンジ用水というようなお話もありましたが、これは、ひとり、ミカンだけ、果樹類に限るわけではございませんが、実は、さような観点からいたしまして、従来内海にありましたところの園芸試験場の分場も、この愛知用水完成を目ざしまして、その規模を変え、位置を変えまして、拡大、強化をはかったのであります。内海の園芸試験場の分場というようなものが、その愛知用水に関連いたしまして、今申しました通り、その土地を他に移し、しかも膨大な面積を獲得いたしまして、そこに新しい構想のもとにスタートを起しましたような次第であります。あるいは春日井の方にあります種畜場におきましても、従来の施設を拡充いたしまして、畜産の面に、愛知用水との関連におきましてその施策を充実していくというような計画をも持ち、具体的にそれを進行しておるような次第でありますし、あるいは、先ほど徳安さんのお話にありましたように、農事改良普及員を、もちろん県内にも相当おりますが、特に愛知用水受益地に増員をいたしましたり、あるいは農業協同組合にその改良普及員の設置を慫慂いたしまして、それに半額県費を出すというふうなことで、特にこの地域につきましてはかれこれいろいろの面から施策を行なっておるような次第でございますので、さようなものがそこに数字として一応出ておるような次第でございますが、もとよりこれとても私ども十分とは考えておらぬわけでございます。なお今後御示教をちょうだいいたしましてその拡充をはかり、御期待にこたえて参りたい、このように考えております。
  108. 足鹿覺

    足鹿委員 知事さん、それではますます了承できぬのですよ。これは土地改良区から出した、県が出したのじゃないと言うが、県がお出しになったのはここにあるのです。われわれは現地でいただいたのです。「愛知用水事業営農対策について」、これ一ついただいただけですよ。その最終は何で締めくくってあるか、念のために申し上げましょう。「要望事項」として、「以上の対策は用水開通を間近かにひかえて、早急に実施せねばならぬ緊急事項でありますが、特に第一線指導陣の人員拡充なくしては多く期待することが困難でありますので、普及員の増員については、国においても格別の御配慮を賜わるよう御願いします。」、これが結論ですよ。振興局の徳安さん、あなたもこれを一緒にお読みになったのですが、私ども調査に参りまして、こういう一、二枚の作文を配って当面を糊塗しようというようなものは初めてですよ。あきれてものが言えないです。おそらくわれわれはこういう場面にぶつかったことはありません。はっきり言っておきます。あなた方自体が持っておるものはこれ以外にないのだ。だから、重要な問題についても土地改良区まかせなのだ。土地改良区から出てきたものを愛知県の名前を打って出してくる。土地改良連合会なら土地改良連合会と銘を打って出されてしかるべきだ。だから、あなた方の責任を追求するわけです。土地改良区のものだとするならば、あなた方に、それにかわるべき第一次、第二次、第三次、そして将来にわたる営農計画の展望、具体的実施計画がありますか。ただこれだけじゃないですか。この内容は拝見いたしました。これは普通の学年で言えば大体尋常六年ぐらいの作文ですよ。抱負経輪をこの際農林部長から承わりましょう。農地部長と農林部長から、相関関係において、はっきり今の知事の御言明を裏づけるような解明を願いたい。
  109. 山分一郎

    山分参考人 従来愛知用水事業のためにとって参りました営農対策について一応御説明申し上げます。  三十一年度以降、愛知用水に関する営農対策として、本年六月末にすでに支出し、またこれから支出をする予算は、総額は一億二千万ということになっております。これは本日の冒頭に知事が申されました額でございます。  その内容といたしましては、耕種に関する試験研究といたしましては、あの懇談会の当時に私から若干申し上げましたが、二十八年から、国の指定試験でありますところの陸稲の畑地灌漑試験、このほかに、県独自でそれ以外の作物の畑地灌漑の試験をやっております。また、安城というところにあります本場におきましては、水稲の早期栽培とその裏作の体系化の問題につきまして、これを中心として、愛知用水導入後の対策の基本的な問題を研究いたしておるわけでございます。園芸試験場におきましても、挙母の分場、それから、先ほど知事が申しました内海の分場というもの、内海の分場は柑橘の試験場でございますが、これは、三十一年から三カ年計画をもって、昨年規模を拡大いたしました。なお、柑橘のほかに、これは今後の問題でございますが、後ほど申し上げますが、その他の研究も行う予定になっております。なお、こういう新しい水を導入しますところにつきましては、新しい作物、ことに、基本計画に載っておりますところのいろいろな作物別の体系を見ますと、基本計画におきましては蔬菜を非常にたくさん取り入れておられます。この蔬菜の中に、蔬菜をたくさん作るのはどうであろうかというようなことで、新しい作物としてテンサイの導入ということはどうであろうか、しかも、これは、畑作としてのテンサイの問題ではなくて、水田裏作としてのテンサイを何とか導入できないかという試験を昨年から始めておるわけでございます。これらの試験の問題につきましては、愛知県にできましたところの国の東海近畿の農事試験場、それから、大府にありますところの、先ほどから話題になっておりますところの愛知用水公団の実験農場、これらのものとが協議会を開きまして、密接に、研究題目をそれぞれ持ちまして、相談し合って、連結をとってやっておるわけでございます。  次は営農指導の問題でございますが、これは、将来の通水後の営農指導というものを勘案いたしまして、今日までは農林省との共同試験でありますところの耕種改善試作圃というものを中心に、農家と相談しながら、どうやっていくか考えるということを主としてやっておるわけでございます。この個所数も、愛知用水地区、犬山から知多半島の先端まで非常に細長いのでありますが、毎年この地区に十数カ所のそういう試作圃を作って、それぞれやっておるわけでございます。本年からは新たに畑作総合指導施設というものを設けることになっております。  なお、昨年から……(「そんなことはどこでもやっているよ」と呼ぶ者あり)なお、この地区におきまするところの改良普及員でございますが、現在は五十九人でございます。このほかに、県といたしましては、この普及員の人数を、先ほど要望事項として申し上げましたが……
  110. 吉川久衛

    吉川委員長 山分参考人、大体予算額で説明して下さい。
  111. 足鹿覺

    足鹿委員 委員長、ちょっと、発言中ですが、私の聞いておるのはこうです。試験研究については大府のを見せてもらった。農林省の分場を見せてもらった。大体において相互連繋というものはあまり十分いってないようだが、苦心のあとは見える。完璧とは言いがたい。ただ、私が先ほどの質問に言ったように、質問の趣旨を考えて下さい。工事完了後において区画整理をしなければならぬ。せっかくの用水路ができても、増産にはならぬのですよ。愛知用水が完工した後において必然的に新しい村作りをどうあの地帯に進めるかということを聞いておるのですよ。
  112. 森山貞之丞

    ○森山参考人 私からお答え申し上げます。  末端河川水路の耕地整備事業につきましては、御案内のごとく、これは事業主体が地元の土地改良区になっております。従いまして、県はその土地改良区の仕事の指導監督を行なっておるのでございますが、御指摘にございましたごとく、これが事業の開始がおくれておりますことは否定はできないのでございます。しかしながら、この事業遂行の体制土地改良区自身におきましても整備をされてきておりますので、県といたしましても、指導援助の万全を期しまして、所定の年度内に完成いたしますように努力いたして参りたい、かように考えております。     〔委員長退席、丹羽(兵)委員長代理着席〕
  113. 足鹿覺

    足鹿委員 私がさっき指摘したのは、知多半島その他の地域において相当新しい区画整理とか、あるいは関連土地対策、農地対策というものが進んでおるだろうと思いますが、とにかく、新しい村作りをどうしてやられるか。それには近代化と合理化の問題がある。土地改良区から出た陳情書によりましても、第二項においては、末端の施設、スプリンクラーの問題にしても、パイプ・スプリンクラー、ポンプ、原動機などに対して補助の道が講ぜられるように願いたい、こういう項目があるわけです。この前行ったときに、県として世紀の事業をやる以上は、もっと県が力こぶを入れられて、しかる後に——この点は、農政の欠陥だと言われましたが、われわれは、御指摘されるまでもなく、われわれの立場において、畑作が後進農業の中でもさらに大きな較差をもっておくれておるという点は、しばしば当委員会でも論議をし、政府も気がついておくれながらも対策を講じておるところの問題は、あなた方が世紀の大事業受け入れる態勢ができていないということをわれわれは指摘しておるのです。それに対する明確なる方針と具体的な対策と、知事が、これらの農民負担の小規模の土地改良事業その他に対しても、農民負担がたえられないならば、これに対して、この委員会を通じて、至らなかった点は至らなかった点として認め、それに対するところの決意の表明があってしかるべきだと思うのです。こちらが聞くと、それに対して弁明ばかりされて、それが何ら対策になっておらぬ。それを私は言っておるのです。たとえば、新しい村作りのために小規模の土地改良事業に対して具体的な計画をどう進めるか、その農民負担の点についてはどうやっていくか。そのことにおいて初めて愛知用水農業用水としての成果を全うする。それが伴わなければ、農民は高額負担にたえかねて、勢い自分たちは受益を拒否する、好まぬところではあるが残念ながら負担にたえないということになる。十五年間に一町前後の農家が七十万、八十万の負担にたえ得ましょうか。まだまだ負担が増高することは、私どもは現状をもってすれば必然だろうと思う。どうしてそういう結果が生じておるかということを謙虚にあなた方が反省されるべきものではないかと私は思う。そのことを指摘しておるのです。  長くなりますし、まだ同僚議員の質問も残っておりますので、この程度にいたしますが、この問題は重要な問題であり、農林大臣にも質問を留保しておりますから、委員長においてしかるべく計らっていただきたいと思います。  最後に農林省に伺っておきたいのですが、愛知用水公団法成立の前後をめぐって、関係省の膨大な了解事項というものがある。それを一々説明する煩にたえませんから、要点だけ申し上げますと、たとえば、三十年の、日にちはわかりませんが、大蔵事務次官平田敬一郎農林事務次官平川守、この両者の公式の了解事項によって、ダム及び幹線水路の国営級については六〇%以上を越えてはならぬ、路線水路及び補助ため池県営級については五〇%を越えてはならぬ、末端水路及び補助ため池については四〇%、ただし開拓地については若干の補助率のオーバーが認められておるようであります。果樹園については全然認められておらぬ、こういう了解事項の取りきめが行われておりますし、また、重大なことは、三十年の六月十六日、まだこの公団法が国会に提案されておらないときに、農林事務次官、通商産業事務次官、この両者名において了解文書が取りかわされておる。その算用数字の2項によりますと、重大な了解事項が取りかわされておる。前略しまして、規定により農林大臣事業実施計画または施設管理規定に修正を加えるべきことを指示する等の処分をするときは、通商産業大臣の同意を得るものとし、また、通商産業大臣が修正を加える必要があると認めるときは、その要請に基き農林大臣はその措置について通商産業大臣と協議するものとする、ただし発電及び工業用水関係する事項にわたらないものである場合はこの限りでない云々、まことに、これでは、愛知用水農業用水の基本性格を持つにもかかわらず、全く農林省はいかれておる。通産省の言いなりに、通産省の要請があったら通産省の鼻息をうかがわなければならぬようなことを平然と了解事項に取りかわしておる。一体これはどういうことですか。こういうことがいろいろ積り積って、そうして今日のような性格に及ぶような重大なことになり、現地受け入れ態勢、いろいろな諸事情が加わってこういう事態になっていると思う。この通牒、了解事項等はたくさんありますから、一部をもって全部を類推することは誤まりであろうと思いますが、とにかく、膨大なものがあります。そうして、法律の精神から見てわれわれは納得のいかぬ面も多々あるように思います。十分この説明を聞きたいわけでありますが、またの機会に譲ってもけっこうでありますが、少くとも、本問題については、農林省が指導権を持って断固たる決意のもとに農業用水の使命達成に向って私は進んでいただきたいと思います。  最後に、委員長にもお願いしておきたいと思いますし、当局にもお願いしたいと思う。中央並びに現地側の方々、公団の方々に対しましても申し上げておきますが、愛知用水は日本のTVAと言われております。本物のTVAは、草の根本の民主主義という言葉によって、この合言葉のもとに民衆の積極的参加があったはずだ。この点は愛知用水と全く雲泥の差と言わなければならぬ。世紀の事業とはいうものの、地元農民が積極的にこの事業に参画して、自分たちの営農をさらに改善し、盛り上げていこうという熱意が今度の視察でうかがえなかった。この点はだれの責任であるかは、われわれはつまびらかにいたしがたいが、とにかく、安易なことを言って、最初農民に、御嶽さんの水が飲めるんだ、こういうわけで、きわめて抽衆的に宣伝をし啓蒙された。具体的な営農の実態から、この水が来たならばどういうふうになるんだ、そのためには農民もこういう犠牲と努力を惜しんではならないのだと、実態を詳細につまびらかにして、その上に積み立てられたものとは判断しがたい節がある、断定はいたしませんが、努力をされたところもあろうかと思いますが、そういう節々があるように思います。それが、今日、いよいよ負担が現実の問題となり、水が一部にはすでにため池から出されてくる段になって、負担の問題が目前に迫ると、農民はあわてて、これに対して一種の疑惑を持ち、一方においては思わざる大きな製鉄工場の誘致とかいろいろなものが出てきて、そうして、だんだん自分たちの土地もその敷地やいろいろなものに転用されてくるような状態になり、そうして、農業に熱意を失って、この土地の騰貴を念願するというようなはからざる事態にもそれがちであります。今後、これを転機として、中央、地方が相呼応し、現地の農民の声を積極的に取り上げて、官民一体として進められんことを私は要望してやみません。われわれは、この問題に対して、愛知用水性格を曲げることなく、総合的な中部地帯の中心地点である当地方が発展することに対して、何ら努力を払うことにやぶさかなものではありません。今後もしばしば、あるいはお気に入らぬかもしれませんが、押しかけて参りまして、現地の声をよく聞いて、そうして、真にこれが日本のTVAとしての大きな成果をあげられるように、われわれも努力したいと思います。そういう点につきましては、当委員会がこの問題についてはさらに検討を進める機会をすみやかに講じていただくことを委員長にもお願いを申し上げまして、大へん言葉の過ぎた質問や意見を述べたようでありますが、冒頭に申しました通り、何ら他意ございませんから、悪しからず御了承願いたいと思います。
  114. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員長代理 塚本三郎君。
  115. 塚本三郎

    塚本委員 私は、地元に席を置いております立場から、今日愛知用水がその工事が進められつつある段階におきまして、民衆の声等を聞きながら、今日行われております愛知用水の実態を勘案しつつ、気のついた点について御質問を申し上げてみたいと存じております。  御承知のように、今足鹿委員が申されましたように、民衆の参加と了解、さらに協力がなければ、このような総合的な開発というものはきわめてむずかしいのではなかろうか、かように思いますとき、どうしても、もっともっと民衆に対して、公団が行わんとしておる工事に対してその内容と計画について十分周知徹底させる必要があるのではなかろうかというように存じております。ところが、私どもは、愛知用水計画通りに実施せられるということに対してはもろ手をあげて賛成しておりますことはもちろんであり、さらにまた、今朝来質問しております工業用水の問題につきましても、でき得るならばこれに対しても万全の策を講じまして、農業の発展のみならず工業の発展も招来することに対しては全面的に賛成をいたさなければならぬと信じております。従って、最初出発した愛知用水公団というものと、そして今日工事が進められておる段階からいたしますと、大いに時勢の推移と変化があったことは、公団及び愛知県知事も認められておるところだと存じております。この点は、そのような時間の推移とともに変っていくことについてはやむを得ない。従って、そのつど国会の承認を求めて計画を変更することもあり得ることであると私どもも信じております。今朝来、最初の計画通りであるということが押し通されつつあるやに見受けられましたので、幾多問題を生じて、時間がおそくなった、かように存じております。  実は、最初角屋委員から御質問がありました点についていまだに返答がなされておりませんが、ラジオ及び新聞等におきまして、公団において工事計画のうちで百五十億を増額していただくことを国会に要望するのだということが伝えられておったはずでございますが、この点は誤報であるのかどうか、その点から公団及び愛知県知事にお尋ねしてみたいと思います。
  116. 濱口雄彦

    濱口参考人 塚本さんからの御質問で、新聞紙上に愛知用水予算を百五十億円ふやすとかということは、全くわれわれの知らないところでございまして、先ほども申しましたように、予算をどのくらい増すかというのは検討中でございまして、そういうのは全然誤報と存じます。
  117. 桑原幹根

    桑原参考人 私の名前も御指摘の上御質問でございますからお答え申し上げますが、私もただいま塚本議員から初めて百五十億の話を聞くような次第でございまして、テレビ、新聞でも、私は聞いたこともございませんし、見たこともございません。ただいま濱口総裁の御答弁になりました通りでございます。御承知おき願います。
  118. 塚本三郎

    塚本委員 それでは、はっきりと誤報だということで了解をいたしておきます。  それから、先ほど総務部長の方から、工業用水に対する御説明の中におきまして、三十七年には工業用水が二千七百万トンのうち三百十万トン余るから、それを東海製鉄に回す、そういうような説明があったわけであります。ところが、東海製鉄として予定しておりますものは三十七年においては八百万トンが必要であるということの説明もあったわけでございます。この点、工業用水として二千七百万トンのうち三百十万トンが余り、そして実際必要であると総務部長の方から発表せられた東海製鉄に対する工業用水が八百万トンということになりますと、現実においてすでに三十七年度において東海製鉄に対する工業用水は不足することになるわけでありますが、この点は上水道の分を計画変更して利用するとみなさなければならぬと思いますが、その点どうでしょうか。
  119. 岩瀬繁一

    岩瀬参考人 お答えを申し上げたいと思います。  先ほど申し上げましたように、現在の段階におきまして東海製鉄の会社の方で一応要望しております三十七年度の工業用水の需要量は、お示しのごとく八百万トンでございます。先ほど申し上げましたのは、愛知用水事業の中に含まれまして、その一環をなしつつ現在工事を執行しております上水道、工業用水道の事業の中から、三百十万トンは現在におきましてもすでに余裕がございます。二千七百十五万トンのうち、三百十万トンは今申し上げましたように余りがあり、それから、他の十一社から一応申し入れがあり、それを申し入れ通り受け取りますれば約二千四百万トンということになるわけでありますが、その間、これは現実の問題として契約をいたしているわけではないという経緯につきましては午前中知事からも御説明申し上げた通りであります。しかし、私が先ほど申し上げましたのは、これをそのまま十一社の要望通り給水いたすといたしましても、先ほど申し上げましたごとく、一方の上水道計画、これが約千七百八十五万トンあるわけでありますが、これは、これまた知事からも詳細に話がありましたが、昭和五十年を目標といたしまして人口の増その他を見込んでの計画であるわけです。従いまして、昭和三十六、七、八年と当初におきましては相当量の余裕があるわけでございます。従いまして、その方から回すことによりましても、三十七年度の会社における要望量八百万トンを充足さしていただくことはできるのではなかろうか。ただ、先ほどもちょっと話が出ましたように、上水道の方を工業用水の方に回すということにつきましては、これは、今後公団の向き向き、また関係の向き向きに十分御相談をし、御了解を得た上で行なっていきたい、かような計画を持っておりますことを先ほど申し上げたわけであります。御了承をいただきたいと思います。
  120. 塚本三郎

    塚本委員 三十七年度にしてすでにそういうような計画、上水道の方から東海製鉄の方に持ってこなければならないという一応予定がなされているやにうかがえるわけでありますが、その翌年の三十八年度になりますと二千八百万トンと説明せられて、以後三千三百万トン必要である、これも先ほど説明せられた通りでありまして、しかも、このときになりますと、私たちの地元の佐布里の池を利用する、こういう話でございます。ところが、この工業用水につきましては、二千七百万トンのワクの中でということでありますから、三十八年度になりますと、当然愛知用水以外の——先ほどの説明経過等から参りますと、最後には足鹿委員の質問に対する桑原知事の説明はおかしくなって参ったわけでありますが、最初、午前中の角屋委員の御質問に対しましては、地下水を利用する、あるいはまた矢作川の水を利用してその水を佐布里の池にためるということも総合的に考えなければならぬのじゃないかと思いますが、たとえば佐布里の池にためるのは、愛知用水の水をためて二千八百万トンないし三千三百万トンの水を工業用水に利用するということ以外に考えられないと思いますが、その点どうでございましょうか。
  121. 岩瀬繁一

    岩瀬参考人 お答え申し上げます。  三十七年におきまして八百万トンの工業用水を会社において現在の段階で要望しておりますことはさきに申し上げました通りで、今も話が出たところであります。三十八年に二千八百万トン、三十九年以降三千三百万トン、これまた、現在の段階におきまして、会社において、これだけ必要であるから、こういうことで要望しております数量でありますことは今お話しの通りでありますが、これらの水は、現在、さっきに申しました愛知用水の一環として行なっております工業用水、上水道のワク、締めて四千五百万トンの方から供給する筋合いでないことを午前中私は申し上げたつもりでおります。もし舌足らずでさように御了解でありますれば、御訂正をお願い申し上げたいと思います。と申しますのは、この間におきまして県営の別個の工業用水道の事業を実施いたしまして、秒間平均一トンを兼山において取水をいたしたい、この取水については、これまた午前中申し上げましたように、愛知用水事業の遂行にいささかも支障のないように配慮をした上で、一トンを取水していただく、これを取水して、余裕のある際に水路を使用させていただく、佐布里の池に貯水した上で給水をして参りたい、こういうことでございまして、さきの四千五百万ドンなりあるいは二千七百万トンのワクの方から持っていく計画ではございませんで、別個の県営工業用水道を作りたい、こういう計画でありますことを御了解願いたいと思いまするし、また、皆様方のお手元にお配りしてあります資料の中にも、さように表示してあるつもりでございますので、その点とくと御了察をいただきたいと思います。
  122. 塚本三郎

    塚本委員 午前中の御意見と午後の御意見とだいぶ違ってきておりまして、今部長の話によりますと、愛知用水の工業用水としての水二千七百万トンとは別個に兼山から工業用水を取り入れるという計画だ、しかも愛知用水の工業用水計画から別途にということですが、これは、兼山からとる水というのは、愛知用水水路通り、さらにまた、木曽川の水であることも、これまた否定することのできないものであろうと思うのです。そうすると、愛知用水をそのまま使いながら、そして工事をそのまま行いながら、別途に愛知県だけがその計画であるはずはなくて、やはり、愛知用水公団の根本的な工業用水に対する水路及び水に対する計画を変更していかなければならぬということは、もはやこの立場になりますと明らかな事実ではなかろうか。実は、先日視察に参りましたときも、たびたび話の中で松浦委員長の話が出て参るわけでございますけれども、もうこういうふうにしてこの愛知用水水路を使って、どうしても工業用水をもっとたくさんほしいのだ、しかもそれが必要であろうということにつきましてはこれはもうすべての委員が認めておったのではなかろうかと思うわけであります。ただ、問題になりますのは、農業用水として愛知用水に設備だけ出させておいて、いざその水が通う段になりましたときに、おれの方に水をよこせと言って工業家が横取りするということ。そうなりますと、負担だけは農民に過大にかけておきながら、工業家が安い水をそのまま地元において取るというところに問題がある。従って、東海製鉄に水が必要であるといたしますならば、これも地元発展のために必要であるから、当然どこか上流において東海製鉄のダムでも作っておいて、別に農業用水に割り込むということなくして、さらにまた、今ならばその水路に対しても取得することも可能ではなかろうか、こういう意見をすべての委員が出されておったはずでございます。それを、計画計画としてそのままで、別途にまたその計画の中に割り込む別の計画を持って、そうして計画変更がないという形では、これは筋が通らないのではなかろうかというふうに思うわけであります。この点、率直に、今ここで検討中ということでありますが、やはり、農林水産委員立場から言っても、あるいは地元の産業の発展のためにも、必要ならば、そういうこそくな手段をとらずに、この際、農業用水もさらにまた工業用水についても十分にするために根本的に態度を改めるときが来たのだ、こういうことを議会に訴え、そうしてまた農林当局にもそのことを説明して、大胆にこの問題を処理することが必要だと思います。今ここでやるということは断言できないと思いますが、公団及び県知事は、そういうことを訴えて、そうして計画を大胆に予定するように仕向けていく希望があるかどうか、この点をお尋ね申し上げたいと思います。
  123. 桑原幹根

    桑原参考人 ただいま塚本委員から重ねての御質問でございますが、ただいまの工業用水の点につきまして、午前中の答えと午後の答えとがそごしておるというふうなお話でございましたが、これは全く同一の趣旨で申し上げたのでございまして、ただいま総務部長がお答え申し上げた通りでございます。従って、三十八年度以降の工業用水につきましても数量が増加いたしておりますが、これは、毎々申し上げます通り、現在の愛知用水計画とは別個の県独自の工業用水計画でありまして、兼山地点から毎秒一トン取りまして、そうしてそれから四十三年までの間の需要にこたえていきたい、かようなわけでございます。その際に、いわゆる非灌漑時におきまして、水路に余裕のありますときにそれを拝借いたしまして通させていただきまして、そうして佐布里の池に貯水いたしまして需要に応じて参りたい、かようなことでございます。従って、それを拝借するにつきましては、今後農林御当局、公団関係の向きにいろいろと懇請申し上げまして御協力を願いたい、かような次第でございますので、御了承を賜わりたいと思います。
  124. 塚本三郎

    塚本委員 濱口総裁にお尋ねいたしますが、なかなかおもしろい話が出て参ったのでありますけれども愛知用水水路というものは愛知用水が使うべきものであると私は思っておりますにもかかわらず、愛知県当局が、工業用水のために、あいておるときは愛知用水公団から拝借をして工業用水を佐布里の池にためるのだ、こういうような御意見でありますが、その点、工業用水のため、あいておるときに拝借することに対しては、濱口総裁は了解を与えておいでになるのかどうか。午前中、あるいは先日おじゃましたときには、工業用水のことに対しては、そのことについては触れていない。しかし、水路を拝借するということに対しては了解を与えたという御返答をなさるのかどうか、この点をお尋ねいたします。
  125. 濱口雄彦

    濱口参考人 これは、先ほどからたびたび申し上げておりますように、愛知用水としては、工業用水のために水路があいておるときに使っていただくということには何ら返事をしていないのであります。これは農林省のお考えがありますので、愛知用水としては何も返事ができない段階でございます。
  126. 塚本三郎

    塚本委員 それでは、さっきの桑原知事のお話は、これから拝借するように交渉をし、農林省当局にもその了解を得るつもりでありますか。
  127. 桑原幹根

    桑原参考人 今日までもお願い申し上げたのでございますが、毎々伊東局長、また総裁からお答え申し上げておりますように、その結果につきましては確答いただいておりません。ただお願い申し上げたのでありますが、事業の内容等につきましては一応御理解をいただいているとは思いますが、その点についての最後の断は下されていないわけでございます。従って、毎々申し上げました通り、今後引き続きわれわれが誠意を尽しまして、事業計画の内容等も、いろいろとさらに詳しく、客観的な情勢の推移に応じましてこれらの事態を御説明申し上げまして、御了解を得ることに努めて参りたい、かように考えておる次第でございます。
  128. 塚本三郎

    塚本委員 そういたしますと、これから了解を得られ、工業用水の点につきましてはその水路を拝借することになるという話でありますが、それにしても、勝手にその水路だけを拝借したにしましても、工業用水に対するダムを作る必要があるということについて、県当局はもしそれができないとすると、農業用水に食い込む危険性があると思うのですが、この点、工業用水、特に南部臨海工業のためには莫大な水量が必要であることは先ほどから説明しておられる通りでありますが、そういたしますと、工業用水に対する水路は拝借をすることができたといたしましても、——これも非常に狭くなるのじゃないかと思いますが、そのためのダムをこしらえておく必要があると思いますが、この点の考えは持っておいでになるかどうか、再度答えていただきたいと思います。
  129. 岩瀬繁一

    岩瀬参考人 私からお答えを申し上げたいと思います。  二千八百万トンあるいは三千三百万トン、兼山地点におきまして平均毎秒一トンを取水をすることについて、これは関係の向き向きと十分協議をし、下流地帯の農業用水その他に支障を及ぼさない範囲で取水をさせていただく、これが一つ問題があるわけであります。けさほどからいろいろお話が出ました際にお答え申し上げましたように、これは、公団はもちろんのこと、農林省御当局、河川関係の御当局、その他いろいろ関係の向き向きが多いわけでありまして、そうした向き向きには今後できる限り御懇請、お願い申し上げまして、取水できるような取り運びをいたして参りたい、こういうふうに思っておるわけであります。  それから、もう一つは、愛知用水水路を使用をさせていただく、こういう問題であります。(「勝手じゃないか、だれが了解しているんだ、そういう独断がどこにある」と呼ぶ者あり)これまた、今後公団に、また農林省御当局なりにお願いをいたしまして、灌漑期におきましても愛知用水は三十トンをフルに常に使っておるというわけでもありませんので、その余裕の際に使用させていただく、こういうことにつきまして御了解を得る、その二つの点を満足させた上で計画を実施して参りたい、こういうふうに思っておるわけであります。(「だれが了解したんだ」と呼ぶ者あり)御了解を得ておるおらぬ、お願いをしたことがあるかどうか、こういう点につきましては、ただいまも知事からお答えになりました通りでありまして、現在の段階において了承を得ておるわけではございません。従いまして、今後できる限り努力をいたしまして、御了解を得る手続を取り運びたい、かように思っておるわけでございます。
  130. 塚本三郎

    塚本委員 これは、すでに東海製鉄の誘致が愛知県の特に知多半島に決定をいたしております。さらにまた、それが、知事の説明等によりましても、大半は愛知用水に仰がなければならないことは自明の理だと思っております。しかも、濱口総裁は聞いておらないというふうな態度に出ておりますし、桑原知事は、了解はまだ得ないけれども、再三お願いしておる、こういうふうな意見の食い違いがあります。しかし、いずれにいたしましても、農民を犠牲にすることなく、愛知用水を実現するとともに、この水をもって工業用水に充てて産業の増大をはかるということについては、これはすべての人に異論のないところだと思っております。そうするならば、今ここでいろいろなこまかい技術的なことでもってこの場を切り抜けるよりも、はっきりと必要量を示して、計画変更に対して国会の協力を求め、あるいはまた農林省当局の協力を求める、こういう立場に大胆率直に立つことの方が、地元発展のためにもいいのではないかと私は思います。この点、そういう気持で計画変更を要請せられるようなことになろうかと思いますが、桑原知事はどうでございましょう。
  131. 桑原幹根

    桑原参考人 午前中から申しております通り、ただいまのところそのような考えは持っておりません。さよう御承知願います。
  132. 塚本三郎

    塚本委員 計画変更なしにということになりますと、もしこれがだめだということになりまして、特に畑地灌漑等で農業用水が必要になって参りますると、当然、先ほど御説明がありましたように、工業用水は二千七百万トンであるのに対して、三十八年には東海製鉄だけで二千八百万トン必要であり、さらにまた三十九年になりますると三千三百万トン必要であるということは大体計画で出ておると思うのです。そうすると、やはり四十四年までの間にはどうしても愛知用水の水を借りなければならぬと思うのですね。そうするならば、いや応なく既成の事実によって濱口総裁の方では了解を与えなければならない段階に追い込まれてくるだろう。工場が着々と建設せられつつある段階で、農業用水に対してはもう当然必要であるからと言ってみても、上水道等が余っておるならばそちらから計画を変更して融通しなければならない、そういうことになってくると思うのです。愛知県自身として水路を借りて工業用水を使うというふうなお話でありますけれども、この点、そういうこまかい小細工的なことをせずに、やはり大胆に計画を変更していく方が正しいと思いますが、濱口総裁はどう考えておいでになるのでしょう。
  133. 濱口雄彦

    濱口参考人 愛知用水計画を変更する考えは今のところ何もございません。
  134. 塚本三郎

    塚本委員 愛知用水計画を変更することは毛頭考えておりませんという話でありますが、先ほど足鹿委員の質問しておられますときには、変更を来たすこともあり得るということで、そういう立場から検討してみるということを農林当局と答弁なさったはずであります。今は毛頭ありませんという話でありますが、一体、計画について変更する考え方はありませんということをはっきり言い切っていいものなのか悪いものなのか、私はそれは非常に重大だと思います。その点、計画変更する意思がありませんということでよろしいかどうか、大へん恐縮でありますけれども、もう一ぺんお答えいただきたいと思います。     〔丹羽(兵)委員長代理退席、委員長   着席〕
  135. 濱口雄彦

    濱口参考人 いや、変更ということは今のところ考えておりませんと申し上げたのでございます。
  136. 伊藤佐

    伊藤参考人 補足的に御説明申し上げます。  塚本先生のおっしゃいましたのは、先ほど事業費についてどうだというお尋ねが足鹿先生からございまして、その際に、目下検討しております、また、農林省の方から、公団に命じて検討させておる、こういうお答えがあった、その点ではないかと思います。それから、事業計画というものにつきましては、先生御承知通り公団といたしましては実行機関でございますので、公団には事業計画を変更するとかせぬとかいう権限も、また能力もないわけでございます。
  137. 塚本三郎

    塚本委員 計画に対しては権限がないことはわかっておりますが、しかし、先ほどの経過から見まして、計画を変更して実態に合うようにすることに対して御意思を持っておいでになるかどうかということを御質問申し上げたわけで、南部臨海工業の発展とともに事業計画は変更に迫られておる。たとえば、先ほど愛知県知事説明がありましたように、水路自身でさえも実は工業用水に足りないことはわかっておるから、その水路を借りるというお話があったわけです。そうなると、欲しいときに借り、あるいはまた詰まっているときには借りないというような変な形にもなり、愛知用水から通ってくる水も工業用水として使い、またあいておるときに愛知県が借りて通す水も工業用水だ、こういうことになりますと、愛知県の工業用水と、それからまた公団の工業用水と、二本立の工業用水という形になってくる。しかも、それについて、知事と総裁との中においては、お願いしておるといい、何も聞いておりませんという話でありますから、その点に対して、やはり事業計画も変更するということの必要性が出てくるということではなかろうか、この点を御質問申し上げたわけです。ですから、先ほどの点は予算の点であって、事業計画については変更する意思があるかどうか、この点再度お尋ねしてみたいと思います。
  138. 伊藤佐

    伊藤参考人 ただいまのお話でございますが、事業計画につきましては、先ほど知事からもたびたび御質問に答えておられますように、県として今考えているが、今後こういったような点についてはそれぞれ関係方面に協議をして、協議がととのった上でというようなお話でございます。そういう場合に、愛知用水公団といたしましても、あらためて正式に協議がございますれば、公団としまして、今の水路を通せるか通せないかというような点について検討しまして、県に答えることになりますか、あるいは農林省の方にそういう点の意見を申し上げるということになると思います。  なお、先ほど来しばしば、県から協議があったかないかという点について問題になっておりますので、私の知っておりますことを御参考までに申し上げておきたいと思いますが、そこのところ少し言葉の食い違いがあるのではないかと思います。協議という、何か公団にいわゆる協力を求めるという意味の協議は確かにございました。ただ、総裁が申しておられますのは、公団はその協議に対して答えるべき立場にないので関知しておらぬ、こういう答えでありますので、その点は、行き違いがございまして、だいぶ先ほど来問題になっておると思いますが、その間のいきさつを私は承知いたしておりますので、御参考までに申し上げる次第でございます。
  139. 神田大作

    ○神田委員 関連して……。  今の問題について、農地局長にそういうような相談があったか、それに対してどのような返答をしたか、お尋ねいたします。
  140. 伊東正義

    ○伊東説明員 これは再三お答えしておる通りでございまして、公団との関係は、今伊藤理事からお話がありましたように、公団からそういう問題について返事をするのは適当でない、公団が意思表示をするのはまずいということで、公団からは何も意思表示をしてもらっておりません。それから、農林省に対しまして実は陳情がございました。これに対しましては、私どもとしましては、これは非常に重大な問題でありますから確答はいたしかねますということで、ただ、その場合でも、これは会社が愛知県にきめましょうとも三重県にきめましょうとも、その場合におきまして農業計画に支障が全然ないという範囲ならば何県であろうと御協力できますということは言えますということは、言ったことはございます。その程度でございます。
  141. 神田大作

    ○神田委員 私の尋ねておるのは、先ほど総務部長が答弁した中に、いわゆる愛知用水を借用したい、こういうことを協議したとかあるいはそういう要請をしたと言われておりますが、それを農地局長は聞いておるか、それに対して答弁しておるかということを尋ねておる。
  142. 伊東正義

    ○伊東説明員 今のお答えがそのままなんでございます。農林省が陳情を県から受けたことは確かでございます。それに対して私が言いましたことは何回も今繰り返して申し上げておるようなことでございます。
  143. 神田大作

    ○神田委員 そうすると、部長さんが言われるように、あなたは、一方的に、農林省あるいは愛知公団が返事もしないのに、勝手に計画を立てて、東海製鉄か何か知りませんが、そういう工場の誘致を計画し、それを実現し、その計画を着々と実施しておるということになりますと、私はこれは重大な問題だと思う。愛知用水を作りました根本的問題は、足鹿委員から先ほど質問があった通りでございまして、いわゆる農業振興のためにこの用水を莫大な費用をかけて作っておる。それに途中から割り込んで、返事もしないのに勝手にそういうような工場誘致をし、用水計画を立てておるということは、非常に矛盾した、しかも人をばかにした話じゃなかろうかと思うのでございますが、その点どうお考えでございますか。
  144. 岩瀬繁一

    岩瀬参考人 お答えをいたします。  ただいま農地局長さんからお話がありましたように、われわれどもといたしましては、計画を立案し、ただ、その立案した計画を実施に移すに当りましては、関係の向き向きが非常に多いことでもありますし、また、愛知用水水路に余裕がある際に、これを通らしていただく、こういう面からも、下流の農民が必ずしも不安を抱かぬと保しがたい点もございましょうから、それらも十分納得もさせ、愛知用水計画の実施に少しも支障を来たさないように配慮をいたして実施をいたしていきたい、ただ、再三申し上げますように、その実施につきましては、関係の向き向きのいろいろの御了解なりあるいはお力添えを得なければならぬ点がありますので、そういった部面についての努力を今後ぜひ極力行いましてこれを実現いたしたい、かように考えておるわけであります。
  145. 神田大作

    ○神田委員 これはあんたたちが勝手にそういう判断をし計画を進めておる。あたかも愛知用水を自分の用水であるかのごとく考えてこういう計画を立てた。もし農林省あるいは愛知用水公団がそれを承認しないということになったら、どうなるんです。あるいは、先ほど塚本君が言ったように、それに対して既成事実を作って、あらゆる運動を展開しておる。これでは愛知用水の使命というものを曲げていくおそれがあると思うので、本委員会はこの問題を非常に重要視しておる。あんたの今の答弁はまことに得手勝手です。自分勝手に計画を立てて、承諾もしないのに、あたかも承諾するかのごとく予想して事業計画を進めておる。長い間の農民の苦労にこたえてわれわれが大用水を作って農業振興をはかろうとする、そういう計画に対しまして、横から突然出てきて、自分勝手な計画を立て大工業を誘致していくというようなことは、愛知用水の本旨に反することである。もしこれが水路を貸さないという結論になった場合には、あんたたちはどうする。それをお尋ねいたします。
  146. 岩瀬繁一

    岩瀬参考人 お答えを申し上げます。  ただいまはなはだ身勝手ではないかという御叱正を受けたわけでございますが、私どもといたしましては、愛知用水計画とは別個に、御迷惑をかけない範囲で工業用水路の計画を立てて、その実現方についてぜひ関係の向き向きのお方々の御理解と御協力を得まして、その実現ができますように今後十分努力をいたして参りたい、かように考えておるわけでございます。
  147. 神田大作

    ○神田委員 迷惑がかからぬとかかけないということはだれが判断するのですか。これは、あなたが今、私は農業用水に対しまして迷惑をかけないと言ったって、あなた一人でもそんなことを勝手にきめることができるのですか。そんなことできないでしょう。これは、農林省当局やあるいは各省関係、あるいは当委員会あるいは院議等においてずいぶん問題になった愛知用水施設に対しましては、これらの関係機関がなるほど工業用水に回してもよかろうというような、そういう結論に達して初めて君たちはそれの計画というものを立てるのです。それを、何ら結論的な相談もしないで、勝手に鉄工場の誘致をはかり、これを計画する、そうして、しかも、農業には迷惑をかけないというようなことを独断的にあなたがきめてやっているということは、もってのほかです。  私は、この問題は、時間がありませんから関連でお尋ねしておるのでありますが、後刻これは徹底的に、あなたがそういう考え方を持っておるならば追及したいと思います。
  148. 塚本三郎

    塚本委員 私は、農業用水が満足にできるだけでなくして、工業用水に対しても不足を来たさないような状態に置くために、そうして愛知用水公団をすっきりさせるために今までの御質問を申し上げたつもりでありますけれども、言葉じりだけのやりとりに時間を費した感がして、きわめて遺憾に存じております。  話を次に進めて参りたいと存じておりますが、実は、地元の農民の方々の思いを私が申し上げてみますと、農民に水が必要である、従って農民のために作ってやったのであるから、必要な施設の敷地を提供する、そして農民は莫大な負担金を請け負う、こんな形でもって愛知用水受益地帯の農民の協力公団努力によって今日まで来たのであるが、しかし、今日愛知用水が実現の運びになってきて、そして愛知用水の水が知多半島の南端まで流れてきますと、突如として製鉄会社が横取りして、そうして会社自身は工業用水に対する資金計画では一銭も負担金は計上しておらない。しかるにかかわらず、最終段階では、公団が示された資金計画によりますと農民の負担金は九十九億となっておったはずでございます。この点、先ほど足鹿委員から、営農指導の問題と関連いたしまして、受益負担があまりにも大きいという指摘がありましたが、この農民の声は、私も連日のごとく地元において聞かされております。従って、工業用水に必要ならば、工業用水にもそのごとくに与え、そうして負担金を工業用水の方にもしょってもらって、そうして受益者農民の負担金を少くすることが大切ではなかろうか、こういう考えも持っておるわけでございます。いずれにいたしましても、計画事業に対する変更はないという御説明でありましたから、その点は追及することを避けますが、このままで参りますと、反当り平均四万三千円という莫大な受益負担額というものが農民に示されたときには、一体農民は何と言うか。ほんとうに農民自身が受益負担をしなければならないという段階になって参りますと、私は重大な問題が惹起すると想定いたします。しかし、ほんとうから申し上げますならば、これは農民が陳情して、そうして多くの運動によってこの事業をなされたのであるから、農民はとっくに知っておらなければならないし、その受益者に対する負担金というものは覚悟の上であり、そうして今日まで進められてきておらなければならぬと思いますが、現実は全然違っております。この点、公団側におきましては農民に受益負担をどのように徹底させておるか、この点を公団側から御説明いただきたいと思います。
  149. 伊藤佐

    伊藤参考人 ただいま塚本先生からお話しでございますが、大体、われわれとしましては、できるだけ徹底さすことをかねてずっとやって参っておるのでございまして、今度二千八百円が二千三百円になったということも大部分の方は存じておると私は思っております。ですから、一方で高いという問題が出てきておるのでございます。その点、私より、むしろ、農民代表が来ておられますので、一つ農民代表からも聞いていただきたいと思いますが、われわれといたしましては、今後ともに、できるだけこまかく、負担の点やら、あるいは事業の点も普及徹底するようにいたしたいと存じておりますが、大部分もうすでに御承知考えております。
  150. 塚本三郎

    塚本委員 伊藤さんの方から、大部分の農民が知っておる、そうして農民代表という話がございましたが、私は連日農家を回って参りまして、いろいろと懇談会を催しますと、その幹部の方たちはある程度御存じになっておられるかもしれませんが、しかし、それでもまだ十分でない。どこへ行っても、この計画——最初十カ年間平均三千三百何がし、そうして後の五カ年間千八百九十何円、この問題をおたくからいただいた資料で私が説明いたしますと、驚愕をいたしております。これが現地における農民の訴えである。皆さん方は役員の方だけ集められるからそういうことをおっしゃるけれども、現実における農民というものは非常にびっくりしております。この点、皆様方は役員の方だけを相手にしておいでのような感じが強いのでありまして、私が直接農民の皆さん方と話し合っておりますと、その点、少くとも私が接しております範囲の中におけるところの過半数の農民の人たちは、聞くところによるとということで、ぼつぼつ知り、あるいは新聞等で知りというふうな形になりつつはございますが、公団側から話としては全然聞いておらない、こういうのが実情だと思っております。この点について地元の町村長あるいは農協の責任者等に質問いたしますと、そのときになったら百姓はこすいから反対運動を巻き起してくるであろうし、あるいは軽減運動を巻き起してくるであろう、だから、今からそんなことを言うと用水ができない、それで、今悪者になる必要があるから、黙っておって、そうして、実現してから、まさか金を納めぬやつは施設を取りこわして持っていくというようなことはないから、それまで黙っていてやるのだ、こういうのが個人的に話した場合の地元の責任者たちの偽わらざる言葉であることを知っております。この点、用水実現を非常に期待しておりますけれども、現実に起きます農民の負担があまりにも多過ぎる、この実情をお訴え申し上げまして、これを軽減する何らかの方法を講じなければ、このままでは私は済まされないのじゃないかというように考える。それがために、工業用水問題等も、取るなら取るでそちらにも負担をしょってもらって、そうして農民の負担を軽くするという方法も一つの方法じゃなかろうかというように考えて、先ほどから質問申し上げておったわけでございます。  受益負担に対する金額について徹底しておるという伊藤理事の話でありますが、その点どのような具体的方法をとっておいでになるか、さらにまた、受益負担に対して今後軽減する意思を持っておいでになるかどうか、この点、こまかい問題でありますけれども、御質問いたします。
  151. 伊藤佐

    伊藤参考人 ただいまのお話でございますが、最初公団のできます前の土地改良区の時代でございますが、私、当時土地改良区の方の仕事をさしてもらっておったわけでございますが、当時、国営事業として政府の方へ要請しますために、各土地改良区の組合員の判を押したものが必要であったわけでございます。そのときに、今から見ますと大体昭和二十九年ごろと記憶いたしておりますが、全面的に三万何千人の印を取りました。私も実際部落に入りまして連日やったのでございますけれども、その当時の計画といたしましては、基本計画によります十カ年反当二千八百円、それから後の五カ年問が千六百円何がしであったと思っておりますが、その点、一番判を押すについて問題になりましたのは、幾らかかるのかという点でございます。その点が一番問題になり、一番やかましく論議されまして、一応全域にわたりましてその点の御了解を得、かつ、農民の受益以上にとられるというようなことは絶対にありません、さようなことではこの仕事自体が成り立たないのでありますということを十分御説明いたしまして、判をちょうだいしたことがあるのでございます。その後、第二次の余剰農産物の打ち切り等のことがありまして、五百円ばかり上りましたが、当時改良区その他の方面を通じましてその点を農民の方々にもお知らせをし、また、改良区で毎月出しておられます「愛知用水だより」というようなものを通じて各農家の方にお知らせをしたのでありますが、それについて、非常に高いじゃないか、もっと安くせいというふうな御要望がございますし、また現在でも続いておるのでございます。しかし、なおやはりそのときどきに当りまして十分徹底させる必要があると思いますので、塚本先生がおっしゃいましたことは十分に注意いたしまして、今後ともにそういう点について遺憾のないような普及徹底をはかりたいと思います。
  152. 塚本三郎

    塚本委員 差額の点は……。
  153. 伊藤佐

    伊藤参考人 差額の点は、今後これは最後になりましてからどういうふうになりますかという点になると思います。ただいまのところは、中間的の要素といたしまして、最初には余剰農産物の金とそれから世界銀行の金と政府の補助金、この三つの金でもってこの事業をまかなうということになっておりましたが、御承知のように、第二次の余剰農産物というものが打ち切られましたために、百億円余りというものが非常に利子の高い資金部の金を借りることになりました。その結果が十カ年間毎年反当五百円ずつ上っていく、あとまた後の五カ年間約二、三百円上るというふうなことになって参りました。それの問題やら、今後最後に締めくくりしました場合の農民の負担がどうなるかという点につきましては、これは、いずれはっきりいたしました上、また国会の当時の附帯決議の御趣旨によりまして、いろいろまたお願いもしなければならぬといったことになるかと考えております。
  154. 塚本三郎

    塚本委員 形式的には今伊藤理事がおっしゃったような形であること、私も承知いたしております。ところが、現地の姿というものを申し上げてみますれば、ここであまりにもあけすけに申し上げてはどうかと思いますが、愛知用水を作ってもらうのだから、それには署名が要るということだからみんな判を持ってこい、こういうことでもって、責任者の方々から、負担金の説明はもちろんのこと、その内容がどういうものであるかということは知らされずに、判をみんな渡した、こういうことで、自分がつくのじゃなくて、みんな判を持ってこいということだから持ってきた、それでついたという形がある。これはあらゆる機会に農民のやることでありまして、しかし、判をついたから、これはいやと言わずにとられるのだぞということを私が言いますると、実は驚く。これが、私の出かけた農民の約八割がそういう姿であります。用水をこしらえていただくということに対しては、すべてもろ手をあげて賛成いたしまするが、しかし、負担金がそんなにかかるということに対して、もっともっと当時説明しなければならなかったと思いますが、みんな判を持ってこいということだから判を持っていった、だから、その中にどういうことが書いてあるかということに対しては全然知らぬというのが八割、これが素朴な農民の実情ということ。私はこの問題がやがて負担金を徴収する段になってきますると大きな問題になってくることをはっきり今申し上げておく必要があるというふうに思うのです。皆さん方は役員の方と接しておいでになるだけだと思いますけれども、私は現地の農民と毎晩のごとくいろんな懇談会等をいたしておりますると、八割までがそういう返答をして驚いておるという実情であります。従って、実際、先ほどの足鹿委員説明のように、よほど上の人において画期的な指導がないことにはこの問題が遂行されない。それでも、なおかつ、今日このような実情を知った農民の多くの人たちは、今でも田んぼには水があるのだから、それなら受益地帯からはずしてもらおう、塚本さん、はずしていただく方法はないだろうかと言って、私に負担金をのがれることを尋ねる農民が相当数あることもいなめない事実だと思っております。こういう実情の中にありますから、私は、これができることは農業振興のためにきわめてすばらしいことであると思っておりまするが、しかし、この負担金の問題については、十分今後とも検討していただく必要があると思うのであります。この点、公団当局と現地の農民との間には相当見解の差があると思いますが、この点、なお終局になるまでは一応この計画でやっていかなければならないという状態らしいのでありますが、その点、伊藤理事は徹底方について努力するというお話でありましたから、これはやはりよほど十分懇切に説明して、そうしてそれでなおかつ十分採算が合うのだという、そういう具体策を持って以下臨まれないことには、大きな困難が来るであろうということを申し上げないわけには参らないのでございます。  なお、幹線の敷地に対する買収の問題でございますが、実は、各地とも、現在の農民の所有いたしております土地価格と公団側が示しております価格との間には相当開きがございます。さらに、先ほど足鹿委員の質問の中にもございましたように、東海製鉄の敷地決定に伴いまして、特に知多半島におきましては農地及び山林の地価が暴騰いたしております。従って、この間における土地買収の問題は相当難航を予想されるだろうと承知いたしますが、ともいたしますると、この機に臨みまして、公団側の出先の方々が、いやならば強制収用するというようなことで、土地収用法を発動して二束三文で取り上げてしまうがごとく農民には早合点させがちな状態の中にございます。もちろん、土地収用法を発動いたしましても、公団が要求いたしております金額と、そしてまた時価との間には、相当の歩み寄りがあることは私ども承知いたしておりますが、しかし、何も知らない農民におきましては、この点につきましても、幹線の敷地所有者に対しては大きな不安と動揺のあることも見のがせない事実でございます。しかし、それをぐずぐず言うと、戦時中軍部がなしておりましたような姿で、二束三文で取り上げられてしまいやしないか、こういうことに対する不安から、農民の方々から私のところにも問い合せがあるわけでございます。この点は、実は、あくまで納得ずくで農民と話をし、しかも資金のワクがあるのだからということを十分説明して、そうして受益者の納得を得るように努めなければならぬと思いますが、この点、公団は今後どのような態度で幹線に対する敷地買収を進められるか、この点をお尋ねしたいと思います。
  155. 伊藤佐

    伊藤参考人 土地買収の話の前に、一点、先ほど先生からお話のありました、先生が接しておられました農民の八割くらいは判こは何のことかわからずに押したというふうなお話でございましたが、この点はどうも私何とも受け取りがたいのでございまして、私も、当時は土地改良区の理事長をしておりまして、毎日毎夜村へ行きまして、そして実際に当ってやりました者でありますが、何かたまたま先生のところに来られますのが、あるいは一家の中で全員が出てくるわけでもございませんで、これは一家の代表が一人出てくるというようなことで、先生のお会いになりました方々がそのとき出てこなかった人々があるのかもしれませんが、さようなことは私は万ないように心得ております。ただ、全体として応いところでございますから、今後とも十分に徹底するようにはかって参りたいと考えておる次第でございます。大部分の人が、判こだけ預けておいて、そうして何のことかわからずというふうなこと、これは、愛知県の農民というものはそんなに進歩しておらぬものではない、うんと非常にその点は発達しておりますので、何かその点は多少——そういうときにたまたま来ておらぬ人方が先生におっしゃったのではないかと思います。なおわれわれの方も普及徹底につきましては十分注意をいたします。  それから、次の用地の買収の問題でございますが、この点につきましては、公団はあくまで話し合いをもとにいたしてやっております。それで、山の方はもちろんのこと、現在の百二十キロにわたります分、また県の方にお願いして県でもやっておっていただきますが、いまだかつて一件もかような強権を発動したようなことはございませんし、また、今後発動しようという意思はございません。実は、数日前も、先生のお隣の上野町でございますが、夜中の三時までかかりまして、それも何べんもやったあげく、やっと御了解を得まして、そうして工事にその部分がかかれたというようなことがございまして、あくまでこれは話し合いでいくという方針でございます。
  156. 塚本三郎

    塚本委員 時間がございませんが、先ほどちょっと誤解があるようであります。愛知用水に対する署名の判であることはもちろんみんな知っておりますが、その負担金に対する問題等について関知していないということを申し上げたわけであります。何のために判を押したかということはみんな知っております。ただ、負担金の問題について、あるいはまたその内容はどういうことが書いてあったか、愛知用水を作ってもらうための署名というだけのことだというふうに農民は大部分受け取っておる。しかし、この点は、今は言葉じりの問題でありますが、事実になってきますると、私は大きな問題であることを憂えて申し上げておるわけでありますから、十分その点徹底していただきたいと存じております。  次に、時間がございませんから簡単に御質問申し上げてみたいと思いますが、もう一度東海製鉄の問題に移りまして、実は、地元におきまして、この問題は私どもきわめて賛成の立場でおるわけでございますが、東海製鉄が参ることによって、東海製鉄の敷地、もちろん敷地は海岸埋め立てでありますが、背後地の問題で、農地を買い上げられて、そうして住宅あるいはそれに必要な施設等に使われるという状態になろうかと存じますが、この際桑原知事が中に入ってあっせんの労をとられることはきわめて適切なことだと私は思っておりますが、ともいたしますると、実は一個人の営利会社に対する施設の問題であるにかかわらず、町村長では公共施設と感違いするがごとき状態で、農地が不本意な形で買い上げられるという疑念を持っております。この点、私は、せっかく愛知用水によって農地が開発せられようとしております今日におきまして、その農地が工業用水のためにつぶれることもときにはいたし方ありませんが、農民自身が、逆に、東海製鉄が来ることによって、その敷地が、県当局からの話で、それが町村に伝えられて、そうして安く買い上げられてしまう、こういうふうなことになる危険性を農民は憂えております。この点はどういう運びでなさるか、その点を御説明していただきたいと思います。
  157. 桑原幹根

    桑原参考人 ただいまの塚本委員の御質問でございますが、まことにごもっともな御懸念であると存じます。農地なり、あるいはその他の必要とする土地の買い上げ等につきましてはもちろん地元の町長さんあるいは議長さん等の御協力をいただかなければならぬのでありまして、実は、先般からこれらの方々においでをいただきまして、御理解を願い、そしてまた懇請をいたしたわけでございますが、これと同時に、並行いたしまして、ひとり農地の問題ばかりでなくて、漁業の補償等につきましても、漁民なり、あるいはまた土地の所有者等、またこれが組合長でありますならばその組合長についても話を進めて参る所存でございます。何分にも先般さような決定がなされたばかりでございますので、今後御趣旨のような線に沿って努力して参りたい、かように考えております。
  158. 塚本三郎

    塚本委員 実は、これは伝え聞くところによりますと、それを県当局が買い上げて、そして寄付をするといううわさが立っておるのでございます。従って、県当局が買い上げるということだから、東海製鉄側に売り渡す場合でありますと時価でありますけれども、県当局が買い上げるということになりますと、どうしても権力から権力を通じるという形になりまして、そして町村長も知事には何かと御厄介にならなければならないということから、きわめて安い価格が農地買収のために提示せられておる。従って、不本意にこういう問題が出てくるというようなことになりまして、せっかく地元発展のために東海製鉄あるいはまた愛知用水が敷かれても、農民自身が、かえって、愛知用水、東海製鉄が来ることによって、そしてまた工業用水に重点が置かれるということになることによって、実は農民自身が動揺しておるということは事実でありますので、その点、東海製鉄のための敷地として農地買収せられるということで、県当局が必要なために買い上げるものではないというふうに思うのですけれども、この点、何か県当局が買い上げて、そうして一営利会社に寄付をするのだ、こういう形の筋書きのように地元では伝えられておりますが、その点どうでしょうか。
  159. 岩瀬繁一

    岩瀬参考人 私からお答えを申し上げたいと思います。  東海製鉄誘致に関連いたしまして、県が協力を申し上げるという、そういうそれぞれの条項があるわけでありまするが、その中の一つに、土地をいろいろごあっせん申し上げる、こういう話し合いも出ているわけであります。ただ、ただいまお話のように、県が土地を買い上げて、そうしてこれを無償その他で会社に譲り渡す、こういうような形はとりません。両者の間に立ちまして、できる限りその間の売買がスムースに参りますように、できるだけごあっせんを申し上げる、こういう考え方で進みたいと考えております。  なお、先ほど塚本先生のお話の中に、愛知用水農業用水が、会社にいわば取られると申しますか、ただいまも、そういった御趣旨からの農民の不安、こういう点に御言及があったわけでございまするが、けさほど来申し上げておりますように、県営水道計画に基きます計画の実施に当りましては、何と申しましても、最も注意を払わなければならぬ点は、愛知用水によります農業用水に差しさわりを来たさないということがわれわれの第一に考えております点でありまして、具体的に申せば、けさほど来話の出ております愛知用水の総水量一億五千五百万トン、そのうちの一億一千万トンの農業用水からこれをいただいて会社に供給する、こういう計画ではございませんことを、重ね重ね御了解をいただきたいと思うわけであります。
  160. 塚本三郎

    塚本委員 時間がございませんから、最後に要望だけ申し上げてみたいと存じておりますが、私が申し上げたのは、再三申し上げましたように、民衆がこの事業計画の中にできるだけ入って了解をして、その協力のもとになされねばならない。かような観点から、民衆の声というものと県当局及び公団考えておいでになる考えとの中には相当食い違いがありましたので、この点を率直に申し上げまして、本日の意見をくみとっていただいて、今後の運営に寄与していただきたいと存じております。なお、事態の推移とともに、きょう御答弁いただきました内容等につきましてもいろいろと検討してみたいと存じております。  私の質問はこれで終ります。
  161. 中澤茂一

    ○中澤委員 関連。  河川局長来ておりますか。——河川局がおれば、一体、天白川の伏流水はどのくらい取れるものか、それから、矢作川の秒間三トンを愛知用水べ導入するのは一体可能なのかという問題を明らかにしたいと思ったのです。それを明らかにすれば、そこで初めて、今回の東海製鉄の誘致そのものが、県のとっている方針が正しいのか正しくないのかという結論が出てくると思うのです。  そこで、一応知事と総務部長に聞きたいが、一体、こういう重大な決定をするのに、たとえば愛知用水水路を借用するとしても、あなた方が独断できめていいと思いますか。午前からの質疑を聞いておると、公団総裁の方へも完全な協議もしていない。ただ単に茶飲み話程度。農林省へは陳情程度。そういうことを独断でやってよろしいと知事は判断しているのですか。それから、総務部長は、一体いつ農林大臣か通産大臣になったのですか。あなたの答弁を聞いておると、全部決定しているじゃないですか。もし貸さないというときにはどうしますか。責任をとりますか。
  162. 桑原幹根

    桑原参考人 中澤委員の御質問でございますが、私からお答え申し上げたいと存じます。  東海製鉄に供給する工業用水の問題につきましては、県の立場におきまして計画を樹立いたしたのでございます。毎々申し上げます通り関係方面が非常に多いのでございますので、どういう関係方面におきましてもにわかにそれにつきましての決断を下すことはできないのでございまして、これは、相当長い期間を要しましてそれぞれの向きにおきまして御検討を願って初めて結論の出る問題ではございます。しかしながら、私どもといたしましては、各方面の御協力をいただき、微力ではございまするが全力を傾倒して参りまして、そして私ども計画が実現するようにして参りたい、このように存じておる次第でございます。決して独断ですべてができるとかいうふうなことを考えておるわけではございません。今後各方面の御協力を一に期待いたしましてこのような計画をいたしたような次第でございまして、重ね重ねこの点につきましては御了承を願いたいと存ずる次第でございます。
  163. 中澤茂一

    ○中澤委員 了承の問題ではないのです。今後も、あなたの独断で、国のこの仕事に対して県が勝手に方向をきめていくつもりですか。そして、今までやったことがよろしいと思うのか悪いと思うのかということを私は聞いておるのです。少くとも、われわれ常識で判断するならば、当然、公団との協議事項が成り立ち、それから農林省との問題も解決がつき、しかる後にこの問題が決定すべきものだと思うのです。だから、そのことについて、よろしいという判断をしておるのか、これはまずかったという判断をしておるのか、その判断を聞いておるのです。答弁は簡単に願います。
  164. 桑原幹根

    桑原参考人 私といたしましては、この計画実情に即しての計画である、かように存じておりまして、全く、関係地域農業と工業と、いわゆる農工両全ということがこれによってできるのではないか、かような信念を持ってやっておるわけでございます。なお、至らぬ点につきましては、今後いろいろと御指導を賜わりたいと存ずる次第でございます。
  165. 中澤茂一

    ○中澤委員 あなたは、そうすると、これはよいと考えてやったことなんですね。協議がととのわなくても、これはやってもいいんだと判断してやった、そういうことですね。
  166. 桑原幹根

    桑原参考人 これまたお察しを願いますように、問題が関係方面においてもにわかに決断ができないところでございまして、これは相当の期間をもちましてそれぞれの向きにおきまして御研究をいただける問題である。従って、私は、自分だけの独断ではなくして、これらの方面の御協力を期待してやったようなわけであります。これは私どもの方の見通しでございます。
  167. 中澤茂一

    ○中澤委員 だから、そういう期待、たとえば、これは河川局がいればいいんですが、天白川の伏流水の問題だって、全然海のものとも山のものともわからないし、これも伏流水を取るとなれば相当用水権の問題が出てくるはずなんです。矢作川の問題だって、先ほど角屋君も言われるように、旧縁地がどうなるかわからない。そういう不確定要素、しかも、公団農林省も了解しない、一切私がやると言う。これは不確定要素じゃないですか。その不確定要素でやったことをあなたはよいと判断しておるのかと聞いておるのです。
  168. 桑原幹根

    桑原参考人 不確定要素と申しましても、事は将来の問題でございますので、やはり、見通しといたしまして、その見通しが、結果的に、ある期間を通して見ますれば、よかったかよくなかったかというような御批判もいただけると存じますが、現在の私の立場といたしましては、その見通しは正しい、かように私自身なりに考えておる次第でございます。
  169. 中澤茂一

    ○中澤委員 しからば、当委員会で今後、この問題は重大な問題で、いずれ農林大臣、通産大臣、建設大臣を全部呼んで継続審議を皆さんにも来てもらってやっていきますが、あなたは、よいと判断すれば、何をやっても、一切自分が、他の了解を得ずに、協議事項がととのわないのにどんどんやっていくつもりですか。今までのことがよいと判断しているなら、あなたはやっていくつもりですか。勝手に決定したことはまずかったと思っていないのですか。
  170. 桑原幹根

    桑原参考人 一般的に申し上げることはできないと存じますが、事柄の性質によりまして、それが関係する事項が長い検討の時期を要するものにつきましては、やはり一応の見通しをつけていく、かように私は考える次第でございます。
  171. 中澤茂一

    ○中澤委員 そういう長い見通しのことを聞いておるのじゃないのですよ。こういうことすべてが独断で県がやられたら大問題なんですよ。今までやったことはまずかった、少くともやり過ぎであった、こういうことをあなたは考えないですか。今後もこれでどんどんやるつもりですか。たとえば、東海製鉄誘致問題以外に、大同製鋼の問題が出ておる。それから、愛知県臨海工業地帯達成計画を見ると、年間二億一千万トンの水を必要とすると出ておるじゃないですか。それを、あなたは、少くとも愛知用水にからんだ問題に対して、これはまずかった、少くとも公団あたりぐらいとはいま少し問題を具体的に検討して、協議事項が大体概略でもととのってから決定すべきだと思うが、その点についてあなたはちっともまずかったという反省がないじゃないですか。そんなばかな話はないでしょう。反省がないじゃないですか。しかも、総務部長はいつ農林大臣になったのか、いつ通産大臣になったのか、おれが勝手にきめれば何でもできるという態度、その態度が今後どんどん出てくるならばおそろしいことになる。その点について、まずいという反省が一つもないじゃないですか。どこまでもいいと強弁なさるのですか。
  172. 桑原幹根

    桑原参考人 重ねての御質問でございますが、先ほど伊東局長からも答弁申しましたように、この問題は重大であるから、それらの問題について今後の考慮の余地を残されまして、もし敷地が決定するならば、そういう問題を考慮の余地を残して協力をする、すなわち、木曽川の下流の問題につきましては、下流の関係農民の農業用水利用の今後の問題あるいは河川維持の問題その他に関連いたしましていろいろの問題を考慮し、なお愛知用水の利用の面におきまして支障のない範囲におきましては、敷地が決定したならば協力するというふうなお話もありましたし、そのような点につきまして、私といたしましては、私なりの見通しを持ちまして、このような計画をいたした次第でございます。
  173. 中澤茂一

    ○中澤委員 これは、知事が、どこまでもまずかった、今までのことは反省すべき余地があるということを言わない以上は、私は農地局長と公団と相当の話し合いがあったと推察するよりしようがない。しかも、今の御答弁を聞いておると、農地局長は協力すると言ったというのですが、あなたはどう考えておるか。
  174. 伊東正義

    ○伊東説明員 この問題は、先ほどから私の申し上げております通りでございます。公団に対しましては、これに返事することは適当でない、返事してはまずいということを言っておりますので、公団から何ら県に意思表示いたしておりません。私、何回も申し上げますように、これは愛知県と三重県から陳情を受けました。農林省としましては、これが相当水を使う事業でありますので、いずれにしても農業水利に関係が出てくるということで、私どもとしましては、重大な問題であるから即答はいたしかねます、しかし、農業用水に支障ないという範囲があれば、それは協力いたしますということを言っております。といいますのは、これには非常に問題がございまして、先ほどから問題になっておりますように、愛知用水だけの農業の水の利用量も一億一千万トンになっておりますが、これも、土地改良区の理事長さんからお話がありましたように、もう少し水がほしいという話も出ております。これにつきましても農林省方面といたしまして検討を要する問題がございます。検討した後に、そういう水をどこから持ってこれるのか、あるかないかという検討の段階になるだろうと思います。その場合に、あると仮定しましても、それは農業で取るのか工業で取るのかという問題が出て参ります。そうして、なおかつ、その場合には下流の水利権者にどういう影響があるかということが当然問題になることでありますので、非常に多方面にわたっている問題でありますので、即答はいたしかねるということを申したわけでございます。
  175. 中澤茂一

    ○中澤委員 あなたは協力すると言ったということをさっき知事は言っておる。その協力の意味は、通水路を貸すという意味が含まれているのかどうか。
  176. 伊東正義

    ○伊東説明員 これは、私どもとしましては、その水をどうするかということを検討した上での問題でありませんと、何とも言えません。この問題は、東海製鉄につきましては水路を使わしてくれということも一つの問題でありましょうし、あるいは農地の転用等も、これは具体的な問題として出てくるかもしれない。いろいろ関係がございます。どの問題をつかまえて具体的に協力ということは、具体的には申し上げかねます。しかし、そういういろんな問題が出てくるだろうということは想像はつきます。
  177. 中澤茂一

    ○中澤委員 じゃあ、知事はおかしいじゃないか。協力という意味の中に通水路を貸すのだという意味が含まれてないとしたら、知事の独断じゃないか。
  178. 桑原幹根

    桑原参考人 そういう問題も含めていろいろとお願いを申し上げた次第でございまして、局長さんは概括的に御答弁なさったのだと思いますが、私といたしましては、その協力という中にさようなことも含まれているというふうに解釈をしたわけでございます。
  179. 中澤茂一

    ○中澤委員 知事、あなたはどこまでも強弁されているけれども、これはいずれ国会の大問題になりますよ。きょうは序の口で、農林大臣も米審で忙しいし、建設大臣も通産大臣も都合が悪いというから呼ばないだけで、これはいずれあなたにまだ何十回も来てもらいますよ。あなたは、どこまでも協議すべきところと協議して、ある程度の話し合いを出して、しかる後にやっていくという方向をとるのか、どこまでも、大同製鋼なりほかの会社がこの横へ建てると言えば、これまた愛知用水もらえるだろうという方向で勝手にやっていくのか、これは重大な今後の問題があるから、私はあなたに聞いておるのですよ。少くとも、私は、あなたに、今までの問題は見通しとしてはよかったかもしれないがやはり手続上において少しまずかったという反省があって今後の問題は自重していけると思うのですよ。それを、あなたが、これはどこまでもいいのだと言うならば、今後これは、場合によれば、最悪の場合は農林委員会も決議をして、絶対もう出さないということも考えられるのですよ。そういう点でもっとあなたの自己反省が足りないから、総務部長が農林大臣になったような発言をしておるのじゃないか。
  180. 桑原幹根

    桑原参考人 重ねての御発言でございますが、今後の具体的な問題につきましては、その関係方面農林省でありましょうと公団でありましょうと、あるいはまたその他でありましょうと、その問題の性質に応じまして、私ほ最大の努力をもちまして御了解を得るようにいたして参りたいと思っております。これはひとり東海製鉄の問題でなくて、今お話のありました、まだ具体的には問題に上っておりませんし、私は聞いておりませんけれども、さような問題がこれから出て参りますれば、私自身は最大の努力をもってこれの関係方面の御理解を得るように努めて参りたい、かように考えておりますが、東海製鉄につきまして、私の微力その他について至らぬところがありましたならば、——あろうと私も存じております。その点は自分として深く反省をいたして参りたいと存じておりますので、御了承を賜わりたいと思います。
  181. 野原正勝

    ○野原委員 関連して。  愛知用水公団の問題については、けさほどからいろいろ拝聴いたしておりまして、非常に重大な段階にあるということがよくわかりました。そこで、ただいまもかなりきびしい質問があったようですが、ここで反省とかなんとかいうことをはっきりするわけにもいかないでしょうが、要するに、今まで聞いておりますと、どうも連絡の点で意思の疎通が十分でないという点、これは関係機関で十分にこの新事態に即応して問題を再検討する必要があると思うのであります。  もとより、愛知用水公団の使命は、新しい農業開発のためのことがあくまでも中心であり、これが主たる使命のもとに生まれた事業でございますが、余裕があった場合においては工業用水にある程度利用されることもけっこうなことであります。しかしながら、それによって下流地帯に工業が発展する、それに必要な水が供給されるといたしましても、これはあくまでも農業開発ができて余った場合であります。それが十分農民のために役立った後において、余裕があればのことなのです。従って、それが下流における工業の発展につながるとするならば、それによって受益する工場の関係者に十分これに対して費用の負担をしてもらう、その費用負担によって農村の方々の過重な負担が軽減される、農民ができるだけ安い水が利用できる、こうなればけっこうなことなのであって、それが、どうも知多半島全体を通算してみて、遺憾ながらそれだけの余裕がない、どうしても水がないのだということになったならば、幾ら桑原知事が英断をもって工場を誘致しようと思ったところで、水のないところに工場はできませんから、これは自然に消えてしまうわけであります。しかし、どうしてもこれはやらなければならぬし、また、お話を聞いておりますと、一回に膨大な水が必要なようでもございません。将来の大きな発展をするときにおいては二億トンも必要であるというようなまことに膨大、雄大な計画もあるようでありますが、さしあたってのところは、必ずしもそう大して大きな水ではない。そうすると、農業用水として利用したその残りの余裕でもある程度できるようなものもあります。厳格な資料をまだ持っておりませんから、何とも判断できませんけれども、とにかく、こうした愛知用水を利用して、また、今までの計画を多少変更して、他の方面から水をできるだけ持ってくる、そうなれば、同じ知多半島に向って水路を二本通すなんということはまことにもったいない話で、同じ水路を利用することができれば、その水を利用するのはけっこうなことです。ですから、これはむしろ、この際農林省が中心となって、どこまでも関係の建設省あるいは通産省あるいは愛知県当局、あらゆる方面の諸君と一つ虚心に話し合って、そして、日本のTVAといわれ、まさに世紀の大事業ともいわれる愛知用水公団のこの仕事をりっぱに有終の美をなし遂げるようにしなければならないのであって、今、来年一ぱいででき上るというときにおいて、まるでごたごたおっ始めるのは、まことにみっともない話であります。今までいろいろないきさつはございましょう。しかし、そのいきさつは、あえてこの際、くさいものにふたではいけないから、洗いざらいぶちまけた上で、あらためて出発するというくらいな決意で臨んでいかなければ、この問題は解決できないと思う。  私も、実は、今朝来いろいろ拝聴しておりまして、まことにいろいろな面で矛盾を感じ、また問題点の多いこともよくわかりました。ついては、この際、農林大臣もいませんから、せめて大野政務次官の御決意のほどを承わっておきまして、問題を後に残すけれども、あらためてこの問題は十分検討することにいたしたい。関連してその点お伺いしておきます。
  182. 吉川久衛

    吉川委員長 愛知用水公団事業問題に関しましては、先刻足鹿委員も、公団法の制定の際にそれに参画されて責任を感じておると言われました。私も当時政務次官といたしましてその責任を痛感いたしている一人でございます。朝来からの質疑でもおわかりのように、農林省初め関係機関の各位委員の諸君もごらんの通り、まだ私どもは何だかはっきりしないものを感ずるのでございます。従いまして、今後各関係機関は本委員会に十分連絡をとられるとともに、本委員会におきましても今後適時に調査をいたします。そうして、われわれは、事業の変更に反対するとかいうようなことをあえてこだわっているわけではありません。あくまでも本事業の今後の発展について筋を通し、そしてすべての人々が納得できるような形に持っていかなければ、莫大なる国費を投じて国民に相済まない問題でございますので、そういう意味で、今後本問題については本委員会は慎重な態度で臨むということにいたしまして、本日は本問題に関しましてはこの程度に止めたいと思いますが……。     〔中澤委員「まだ二三点残っている」と呼ぶ]
  183. 吉川久衛

    吉川委員長 それでは、引き続いて中澤君の発言を許します。
  184. 中澤茂一

    ○中澤委員 そこで、この支線完成の責任というものはどこが負っておるのですか。県にまかしたから県が負っているものか、公団が一体として支線完成までも責任を負っているのか、どっちですか。
  185. 伊藤佐

    伊藤参考人 県と契約をいたしまして委託いたしておりますけれども、その内容につきましては、設計等につきまして御相談を受けましてやっておりますのと、それから、結局支線公団幹線から出る部分もございますし、それからまた公団支線の末端になる部分もありますので、一応格好は県に委託しておりますけれども、両者一体となってやっている、こういう趣旨のものと思います。
  186. 中澤茂一

    ○中澤委員 責任を聞いておるのです。完成の責任はだれが負っているのかということを聞いておるのです。公団が負っておるのか、委託契約してしまったから県が負っておるのか、最終責任というものはどこにあるのかと聞いておるのです。
  187. 伊藤佐

    伊藤参考人 事業全体といたしましては、公団にあると存じます。
  188. 中澤茂一

    ○中澤委員 そうすると、公団にあるのですね。確かに公団はわれわれの視察したところでは幹線工事に非常な努力を払っておる。三十六年の三月までに完成をしようと非常な努力を払っておる。しかし、あなたの方に責任があるとすれば、あれほど無理な突貫工事をやって、たとえば、現場でちょっとつかまえて聞いてみると、十二万ぐらいで掘れるのを、十四万、賞金的なものまで出してやっておる。そこで、一体支線完成しないと何の意味があるのですか。結局それが農民負担にはね返るのでしょう。そこに問題があると思います。だから、その点について公団は責任の立場からどうお考えになっているか。また、それについて愛知県は必ず三十六年の三月までに絶対完成するという確信をお持ちかどうか。
  189. 桑原幹根

    桑原参考人 責任の問題につきましては、ただいま公団伊藤理事からお述べになった通りでございますが、県といたしまして、受託したものにつきましては、県は当然にまた公団に対して責任を負担するわけでございまして、従って、全力を尽して今御指摘のごとく三十六年の三月ごろまでに工事を完遂いたしたい、かようなかたい決意を持っておりますことを御了承願いたいと存じます。
  190. 中澤茂一

    ○中澤委員 これは、われわれ調査の結果、帰りにいろいろ話し合いしたのだが、支線完成期は一年半は延びるということをはっきり県側の人は言っておる。これは、悪意に解釈をするならば、支線を作らなければ水の行き場がない、支線さえサボタージュしていれば、水の行き場がないので、いやでも応でも横須賀に流れていく、こういうことも考えられるのです。そういうような意図的なものがありはしないかということをわれわれは危惧しておる。それから、同時に、これは巷間のうわさであるが、知事は退職したら大いにおみやげを持って東海製鉄へいくのだということを二、三聞いておる。まあそういうことはおそらくあり得ないと思いますが、念のために一つ知事の御答弁をお願いいたします。
  191. 桑原幹根

    桑原参考人 ただいま中澤さんのお尋ねでございますが。私は、知事をやめても東海製鉄に行くというようなことは、いまだかつて考えたこともございません。
  192. 中澤茂一

    ○中澤委員 見返り問題や何かで農民負担がだんだん増大してきたが、今後も増大するのかどうか、この点を公団側から答弁願いたい。
  193. 伊藤佐

    伊藤参考人 先ほど来予算の点につきましては申し上げておりますように、ただいま検討いたしておりますので、その結果によりまして出てくるわけでありますが、用地の値上りの点等とか、あるいはまた山の方の仮締め切りが流されたというような点がありまして、減るとは考えられません。
  194. 中澤茂一

    ○中澤委員 そうすると、農民負担は、当初計画の二千八百二十一円、十カ年、あと五カ年千四百九十一円、これが修正されて、三千三百五十六円、十カ年、あと五カ年千八百九十三円、こういうふうに増大されてきたが、これに対して工業用水の方の利水料金の値上りはどういうふうになっておりますか。
  195. 伊藤佐

    伊藤参考人 工業用水の方につきましては、水道の用水はトン当り二十三円でございます。それから、一般のその他の工業用水等につきましては六円五十銭、これは現在基本計画に定めてある通りでございます。それから、今回のなににつきましては、全然これは問題外でございますので、ただいまのお答えの中に入っておりません。
  196. 中澤茂一

    ○中澤委員 農民負担が増大してくれば、工業用水あるいは水道の方もその負担増に応じて増大してくることはだれが考えても当然である。一体、農民側だけ増大してきて、基本計画に定めた工業用水もほかの料金も上っていかないのはどういう理由ですか。
  197. 伊東正義

    ○伊東説明員 ちょっと、私、かわって今の点をお答えいたします。  農民負担と工業用水、上水道の値段がきまりましたのは、今の事業実施計画をやったときの金額でございます。今農民負担がどうなるんだというお話がございましたが、これは、事業費全部といたしまして、今公団事業費の再検討を命じております。それでありますので、この事業費がどうなるかによりまして、農民負担だけでなくて、全般的にどうなるんだということをもう一回再検討する必要がそのときには起るだろうと思っております。ただ、私が午前中申し上げましたように、農民負担につきましては極力上らないような万般の措置は講じたいというのがわれわれの態度でございます。
  198. 中澤茂一

    ○中澤委員 おかしいじゃないですか。農業用水の方は、当初計画の二千八百二十一円、十カ年から、三千三百五十六円に上ってきているんでしょう。工費増大の分は、農民だけが上って水道の方も工業用水も上らないという理由は一体どこにあるかということを聞いておる。農民負担が上れば、工業用水も、二十円から二十五円になった、六円五十銭は十円になったとか、負担割合がきまっておるならば上ってくるのが当然でしょう。農民負担だけが上ってきて、なぜそっちが上っていかないかということを聞いているのです。
  199. 伊東正義

    ○伊東説明員 今数字は調べておりますが、私が申し上げましたのは、今最終的な案になっている事業実施計画でございます。これは基本計画をもとにしまして作りました事業実施計画で、これは縦覧しまして最終的な案になっているわけでございます。それが、先ほど申し上げました、農民負担は四万三千円、工業用水でありますと六円五十銭という結果になっております。ただ、これは、そのままでいくか、今後どうなっていくかという問題は、今再検討いたしておりますが、事業費がどうきまるかということによりまして、もう一回検討しまして最終的にはきまるということになるわけでございまして、農民負担だけを上げてほかを上げぬというふうな結果にはならないようにいたします。
  200. 中澤茂一

    ○中澤委員 私は一つ知事に忘れないうちに注文しておきますが、東海製鉄の誘致条件についての県との協約書がある。これを本委員会資料として出してもらいたい。それから、巷間承わるところによると、これは、誘致の条件の中に、六円五十銭を値下げするのだというようなことも、われわれ調査のときちょっと耳にはさんだことがあるのでありますが、一体、そういう点について、農地局長の方で今数字がわからなければ、まあこの問題は詰めないが、同じ水路を通ってきておる。その費用増になったものは、当然工業用水の方もうんと上げるべし、それから上水道の方もうんと上げるべしです。しかも、われわれに言わせれば、農民は、もはやこの負担にたえかねて、さっき塚本君が言ったように、こんなに銭とるならおれはやめたというような状態さえあるじゃないですか。だから、当然、膨大な利益をあげるところの工業用水は、少くとも農業用水の比重よりもっとウエートを置いて上げるべきだというのが、われわれだれが考えてもの意見だと思う。そして農民負担を軽くしていく、あるいは水道用水をもっとうんと値上げをして、それによって農業用水の費用をカバーしていくということが、だれが考えてもとらなければならぬ措置だと思う。そういう点について、先ほどの質問は、後日資料として、現在までの総費用負担で農民がこれだけ上ったが工業と水道はどれだけ上るのだという資料を提出願いたいことと、今の質問に対してあなたは答弁してもらいたい。
  201. 伊東正義

    ○伊東説明員 資料は別途お出しいたします。  後段の問題でございますが、事業費を計算いたしまして、三百三十一億という事業費がどうなるかは今再検討いたしておるわけでございます。その結果、共同費用の負担等についてどうするか、これは電気、水道、みな一緒でございます。その問題は事業費を再検討しました場合に新しい問題として検討していく、今御質問のありましたように、農民負担だけ上げてほかを押えていくというような結果にならぬようにその場合に協議をしたい、こういうふうに思っております。
  202. 中澤茂一

    ○中澤委員 知事にお伺いしますが、おたくで出した愛知県としての「工業用水計画概要書、昭和三十四年六月」に、はっきりと、第一期計画四円、第二期計画四円以下と出ていますが、これと今の農林省の答弁の食い違いはどうするつもりですか。県負担にするつもりですか。
  203. 桑原幹根

    桑原参考人 工業用水と上水道の計画につきましては県営でやることになっております。水を愛知用水から買い取りまして、そして県営でやることになっておるのでございまして、もし、そういう点につきまして事情が変更して、一応設定した金額が適当でないということになりますれば、県の負担になることになります。
  204. 中澤茂一

    ○中澤委員 時間も迫りましたから、あと一点だけ聞いて、よします。  現在公団に七百人の職員がおるわけでありますが、これの調査のとき、組合の皆さんがおいでになって、もうわれわれは浮き足立っている、これが管理公団になった場合は今の所要人員の五分の一か七分の一の人員で間に合う、一体われわれの身分をどうしてくれるのか、こういう陳情を受けたわけであります。この中を見ますと、農林省から行った者、あるいは県から行った者、あるいは地方で採用した者等、幾多の種類に分れておりますが、これに対して農林省と公団総裁は完工をあと二年に控えてどうやって一体処理しようとしているか、今から腹案をお持ちかどうか、この点について、非常に働いている人が不安を持っているようでありますから、当委員会を通じて明らかにしてもらいたい。
  205. 伊東正義

    ○伊東説明員 職員の再就職の問題でございますが、これは、今御質問がありましたように、国家公務員から出ました者、あるいは地方公務員から出ました者、現地採用の者がございます。圧倒的に多いのは現地採用の者でございます。これにつきましては、おのおの出ました——国家公務員でございますればほとんど農林省でございますが、出ましたときの事情で、帰れる人は極力採るようにいたしますし、地方庁その他に対しましても、われわれといたしましては責任を持っていろいろお話したいというふうに考えております。また、現地で採用になりました人につきましては、この点農林省でも非常に頭を痛めているのでございますが、これは公団にあります再就職のあれがございますので、一つ、われわれとしましては、この公務員から出ました者、現地採用の者につきまして、責任を持ちまして公団と相談して、何とかこれを活用していくということ、あるいは再就職をするということにつきまして極力努力いたしたいというふうに考えております。
  206. 濱口雄彦

    濱口参考人 われわれといたしましても、公団の職員が仕事の完了を前にして非常な不安に陥っていることに同情しておりまして、今局長の申されましたように、対策委員会を作って、再就職にできるだけの努力をしたいと思っております。  なお、この際、私、一つ考えでございますが、こういう新しい仕事をいたしまして、かつ、外国の技術者もこちらに招き、いろいろ技術者は新しい知識を会得したことと思いますので、願わくは、この公団の仕事が完了いたしました暁に、何か愛知用水ではなくて総合開発公団とか、また国家にもいろいろなこれに似た仕事があることと思いますので、そういうところに一団となって行きましたならば、この知識を生かす上からも、国家的に非常に有効ではないか、こういうことを念願しているわけです。
  207. 大野市郎

    ○大野説明員 先ほど野原委員からの御要求がありまして、また私も愛知用水公団の法案の審議中から当委員会に所属しておりまして、この件に対しては非常な関心とまた成功を祈っているものであります関係から、この愛知用水公団事業の進行状況その他につきまして、本日も当委員会において各委員諸君から実に真剣に、よくでき上るようにいろいろ御指摘をいただいて御審議をいただきましたことを私承わって、これは非常に建設的な意味合いにおいて私は傾聴し、また、実際それぞれの望むものを取り入れるべきものであると実は聞いて参ったのでございます。  そこで、足鹿委員の、大臣御出席の上で答えろというのでございますから、その点は保留をいたしますが、公団性格が変って参ったので、これは特別会計に持っていくべきものか公団そのものでやっていくべきものかという公団の構造上からの御質問もございましたが、この点は重要な将来の問題を含んでの基本論でありますので、当然大臣の御答弁でなければと思って御遠慮いたします。ただ、その他の問題につきましては、たとえば、ただいま幸い事業計画にのっとって、公団側としてはいろいろ予期せざるダムの決壊などの問題もありましたけれども、まず計画にのっとって事業を進行しておることがだんだん立証されて参っておりますが、ただ、愛知県の御当局のお考え方に対しても、いわゆる国の立場から考えまして、膨大な国家資金というものが愛知県のあの肥沃な丘陵地帯に注ぎ込まれるのでありますから、県の財政その他あるいは諸般の政治情勢でいろいろ問題があるかもしれませんけれども、国全体を見回した場合に、愛知県の受けられる恩恵というものは非常に大きな子孫に対する恩恵であると常識的に考えられまするので、県当局の御発言を聴取いたしましても、私どもはそのことをどの程度お考えか、実は疑問に思うような印象も受けたのであります。特に、事業完成後に現実に農民諸君が営農に従事せられる場合の営農形態の問題に対しましては、まことに申しわけないような指導の状況である、私も実はさように行き届かぬことを認めざるを得ないと思います。現に、たとえばオランダの干拓の実施の状況などを調べましても、干拓終了後三年間くらいは入居を待たせて、その村作りをして、しかも、村のその家にどんな樹木を植えるかまで指図をして、モデル・ケースを実施の上でやるほどに、実は慎重に営農計画を立てておる事実を聞いておりますだけに、われわれの国が、陸に乏しいといいながらも、そういう計画的なものがおくれておることは、私どもとしては大へん是正しなければならぬことと思っております。ただ、現実に予算の面その他でまことに私ども予算措置そのものがなかなか思うようにいきませんので、焦燥の感がございますが、精神はそういう意味で科学的な計画を含んで指導をやらねば、営農がうまくいくはずがないのはよく承知いたしておるのであります。どうか、次会には大臣出席の上で諸般の根本問題がさらに御質問いただけると思いますが、私どもは、そういう精神、そういう気持で大いにこれを推進いたしたいと思っておることをつけ加えさしていただきます。
  208. 吉川久衛

    吉川委員長 本問題に関する調査は、本日はこの程度にとどめます。  参考人各位には長時間にわたり本委員会調査に御協力をいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げる次第でございます。     —————————————
  209. 吉川久衛

    吉川委員長 次に、地盤沈下による農地及び農業用施設対策について質疑の通告がありますので、この際これを許します。石田宥全君。
  210. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 大へん時間がおそくなっておりますから、要点だけを御質問申し上げたいと思うのであります。  まず最初に通産省の鉱山保安局長にお尋ねしたいと思うのでありますが、ここ数年来新潟市並びにその周辺における天然ガスの採掘に伴いまする地下水のくみ上げが急激に増加いたしまして、地盤沈下の状況もここ数年の間急激な沈下をいたしておる次第でありますが、これに対しましては、すでに以前から、その原因はおそらくガスの採掘によるものであろうと言われておったにもかかわらず、資源調査会における調査がなかなか進まなかったわけであります。これには、もう御承知だと思うのでありますが、やはり、ガス業者の方で相当な運動資金を流して極力その発表を抑えて参ったことは間違いのない事実だと思うのでありますが、幸いにいたしまして、六月二十四日に、資源調査会の結論——最終結論でないにいたしましても、大体今日までわれわれが考えておったと同じように、その原因がガスの採掘に伴う多量な水のくみ上げの問題であるということが報告されました。これはおくればせながらけっこうなことであります。ところが、この地盤沈下に対しましては、どうも、最近伝えられるところによると、都市周辺、密集市街地を対象としてガスの採掘を禁止する意向であるかのように伝えられておるわけです。そういうことになりますと、そうでなくてさえも従来都市とその周辺だけでなしにかなり農地及び農業用施設が地盤沈下のために非常な被害をこうむっておるわけでありますが、今後さらに密集市街地を中心にして禁止または規制をするということになりますると、業者はどんどん農村部に入っていく可能性も出てくる。現にここに写真がはってありますように、亀田郷はわずか四十ミリくらいの雨で完全に冠水をしてしまっておる。こういう実情にある。亀田郷は御承知のように約一万町歩の土地改良を行なった地域でありますが、白根郷六千町歩もやはり同様な運命に立ち至るのではないかということが憂えられておるわけです。こういう状況のもとにおいて、通産省として、この天然ガスの採掘に対する対策、規制措置、あるいは禁止措置、そういうような措置についてはいかような措置をとろうとしておられるのか、これをまずお伺いしたいと思うのです。
  211. 小岩井康朔

    ○小岩井説明員 天然ガスの採取に伴います地盤沈下につきましては、従来、ガスの採取によりまして沈下するという点については明瞭にはわかっておりませんでした。石炭などにつきましては、はっきり、石炭鉱山保安規則の中に、石炭採掘に伴います地盤沈下というような条項が載せてありますけれども、石油、天然ガスの関係につきましては、従来、地盤の沈下するという点については定説もありませんでしたし、実例がなかった関係で、規則にも載せてないというような実情であったわけであります。しかしながら、最近、生産の増強とともに沈下現象が激しくなったという点で、その原因究明につきまして種々問題が起りまして、結局、総合的に、科学技術庁におきまして、新温地盤沈下の特別対策委員会、こういうようなところで原因の究明にかかったわけでありますが、ただいまお話のように、先月の二十四日に、結論と申してよいかどうか、地盤沈下の主原因は急速かつ大量の地下揚水にあるとする説に重大な関心を持たざるを得ない、こういうような非常にとりにくい表現でありまして、通産省としても、実際にどういうふうに考えておるのかという点については十分に聞き得ないのでありますが、主原因が急速大量の揚水にあるという点に関心を持てという点についてははっきりわかるのであります。そこで、私ども鉱山保安局といたしましては、原因の一つであるという点が明瞭になりましたので、かねがね検討いたしておりました石油鉱山の保安規則につきまして一部改正をいたしました。先月の二十九日に改正、即日施行いたしたわけです。  そのごくあらかたの内容は、従来考えておりませんでしたので、地盤沈下に対する一番目安となる水準測量、それから水位、そういったものにつきまして、監督部長が必要なときには業界にやってもらう、それから、地盤が沈下するという実態が採取に伴ってどんどん出てきた場合には、鉱業権者はそれを防止するための措置を講じなければならぬという点につきまして、鉱業権者側に義務を負わせるという点で改正をしたわけであります。  それから、なお、目下一応の想定といたしまして、まだ通産省として規制の内容については決定いたしておりませんが、一応石炭などの場合で考えられております地上の重要物件というものは、われわれの住んでおります民家、家屋、これが一番大切なものでありますので、とりあえず市街地の中で採取しているものを一応全面停止したら一体どういうことになるかという点につきまして、関係の鉱業権者、県を別にしまして現在十八社になっておりますが、関係十八社を、実は今日まで、今週の月、火、水、木ときょうまでずっと連日呼んでおりまして、実情の聴取が終ったばかりであります。直ちにこれらの状況を判断いたしまして、適当な規制の措置を私の方で案を作りまして、来週早々くらいに通産省の幹部に御相談したいというふうに考えております。  なお、この問題は通産省だけの問題でもございませんので、経済企画庁にあります対策審議会というものにも連絡をとり、今後関係官庁のそれぞれの担当者と随時連絡をとりまして、関係のところには企画庁中心でそれぞれ対策を整備したい、かように考えております。
  212. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 政府は一方においてはガス事業に対する助成措置をやって、年々二千万円程度の補助金を出して試さくを奨励しておる。そして一面には非常な沈下現象が起っておる。あるいは住宅街に、あるいは工場街に起っておる。しかし、工場地帯や住宅街については、これは、建設省が中心になりまして、それぞれの臨時的な措置が講ぜられて、昨年と本年の二年だけでも約二十億近くの予算措置が講ぜられておるわけです。ところが、このガスの採掘によって明らかに沈下したと認められる農地農業用施設の災害というものは今日まで全然顧みられておらないと言っても過言ではない。これは別に保安局長の責任を云々するわけではございませんけれども、とにかく今農民は非常な不安におののいておるわけです。今の御答弁によりますと、そういうガスの採掘事業によって起るところの損害に対する賠償責任を明らかにするような規則の改正をおやりになったということでありますが、鉱業法の百九条の賠償の責任というものについては、通産省ではどのようにお考えになっておりますか。
  213. 小岩井康朔

    ○小岩井説明員 百九条は鉱業法の問題で、私の所管ではございませんけれども、百九条の点につきましては、非常に解釈がむずかしくて、御承知のように、土地の掘さくという概念になっておるのですが、天然ガス採取が土地の掘さくになりますかどうかという点につきましては、法制局の方で目下検討中でございまして、明瞭にまだ結論が出ていないような状態でございます。
  214. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 この地盤沈下に対する各省間の——建設省も農林省もいろいろ調査をやっておるようでありますが、建設省、農林省、通産省の関係の各省間の対策の協議が行われておると思うのですが、その中心、世話役的な、中心になってこれを進めておられるのは一体どこの省ですか。
  215. 小岩井康朔

    ○小岩井説明員 今までは、原因待ちで、科学技術庁の結論を待っておったわけでありますが、一応結論めいたものが出ましたので、あとの問題は通産省の関係が非常に大きくなってきたと考えております。しかし、もちろん通産省だけで解決のできる問題ではないので、大蔵省、建設省、それぞれの関係各省、非常に多うございますので、そこで、中心になっておりますのは、経済企画庁が中心になって各省の取りまとめをやっていただくような形で最近進めております。
  216. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 保安局長よく御存じだと思うのですが、さっきも私が触れたように、調査会の結論めいたものは、私は非常にゆがめられたものだと実は判断せざるを得ないのです。おそらく通産省の資料によればわかる通り、井戸の掘られた数と水のくみ上げる量と沈下の現象はどこでも比例しているのです。これは単に新潟市だけではない。ほかのずっと離れた郡部でもこれはちゃんと比例しておる。そういう資料はたくさんごらんになっていると思うのです。そこで、私は、先ほどから局長がお話しになりますように月曜日からずっと事情聴取をやっておるということでありますが、実はそれを非常におそれるのであります。ということは、ガス業者にとっては非常に大きな利害関係でしょう。だから、中には、ある業者のごときは、労働組合や何かに呼びかけて、社会党がこういう問題を取り上げるのはけしからぬとか、あるいはその裏面には草大な資金が動いておる。だから、調査会のこの発表にも私は疑いを持つ。ところが、今度は、その事業をずっと進めていって一日延ばせば一日だけそれだけ大きな利益を得られるという業者が最近非常な策動を始めておる。そういうことがあなた方にどう影響するかを実はおそれているわけです。今日なお明確な対策もきまらないというようなことは、私は通産省の重大な責任であり怠慢だと思う。怠慢と言われても弁解の余地はないでしょう。何年も前からガスによる沈下だということはだれしも指摘しておる。もちろんそれには知事や市長も財界からの圧迫で率直なことは言わなかったのです。それはそれもあるけれども、やはり、一方において補助金を出して掘さくさせておいて、一方、沈下するものに対しては、一部のものに対しては暫定措置で堤防のかさ上げをやったりいろいろやっておるけれども農地農業用施設というものは全く顧みられておらない、こういう現状なんです。だから、私は、これは機会があれば通産大臣の決意を承わらなければならぬと思うのですが、この間のあなた方聞き取りをやられておるときに、あらゆる方面に金をもって運動をしておる。一日おくれれば一日だけ沈下がひどくなってくる、これはきわめて明瞭なんです。しろうとが見てもはっきりわかるのです。こういうふうな事態でありますが、今後急速にその措置をされなければならないと思う。本会議においては、櫻井奎夫君の質問に対しては、総理大臣も通産大臣も早急に対策をとると言っておるけれども、窓口で直接担当されるのはやはり局長さんあたりなんだから、これはもう日を置かないで、また勇気を持ってやっていただきたい。同時に、農地及び農業用施設災害に対しても、今伺えば、やはり通産省が中心になって各省間の連絡をはかり、経済企画庁がさらに今後の計画等は検討するということでありますけれども、やはり事業そのものは直接通産省の担当なんだから、そういう面において業者のわがままを勝手に許したり、いつまでもそういう被害を甚大に及ぼすものに補助金を出したりするような矛盾した政策はやはり一日も早く改めてもらわなければならないと思うのです。  きょうは実はいろいろ順序をただしてやるつもりでしたけれども、時間がないのでこれ以上申し上げませんが、なお、農地局長に、農地局としてはすでに前からいろいろ調査は進めておられたようですけれども、ここにごらんの通り、わずか四十ミリの雨といえばちょっとした普通の雨で、それでこういうふうにずっと冠水する。農地局から係官も派遣していただいたわけで、御報告も受けておられると思うのでありますが、今日までの対策と今後の対策についての考え方を承わりたいと思います。
  217. 伊東正義

    ○伊東説明員 農地局では、今までの対策といたしましては、三十三年度、三十四年度ともに調査をやっております。私の方で調べました記録は昭和二十三年でございますが、二十三年当時に比較してどのくらい沈下しておるかということをだいぶ農地の広い面積にわたってやっております。三十三年は二百万円使い、三十四年度は七百五十万円ぐらいで、それから、浅い井戸も掘りまして調査をやっていこうということになっております。今までわかっております結果は、大体二十三年に比較しまして二十センチないし五十センチぐらい下っておる、地域的には新潟に近い方がよけい下っておるという結果が出ております。  それで、われわれの方としましては、調査をやりましただけで、まだ実は応急対策というものをとっておりません。これにつきましては、実は、県その他と打ち合せまして、特に今問題になっております栗ノ木の排水機の能力低下の問題、それから鳥屋野潟の網川原からあそこの排水路が、特に法面のくずれ等がございますので、この二つの問題は何とか早急に大蔵省に話を持ち込みまして応急対策をとりたいというのが今のわれわれの考え方でございます。
  218. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 農地局としては今まで調査々々で日を暮らしたのもどうかと思うのですが、少くとも本年度予算ではどうも予算がつかなかったようですけれども、栗ノ木排水だけはやはり直ちに補助ポンプの増設をやってもらわなければならないと思うので、それは一つ大蔵省と正式に御交渉の上、早急に実現するように御配慮を願いたいと思います。  それから、松永主計官にちょっと伺いたいのですが、実は、この間この問題で地元の土地改良区の理事長と一緒に大蔵省の宮崎主計官補佐のところへ伺ったのです。ところが、実はえらい暴言を吐かれたので、私も憤然として帰ったわけでありますが、こういうことを言っている。一体土地改良などについて地盤沈下の状況というようなことが今までわからなかったのかどうか、わからないでやったとすればこれは農林省の責任なんじゃないか、調査不十分じゃないか、こう言っておる。一体、ガスの採掘がはなはだしくなったのはここ数年なんですよ。最近始まったばかりなんです。それもいい。それから、もう一つは、全く聞き捨てならないのですが、新潟市の問題のごときも、どれだけ金をつぎ込んだならば沈下がとまるのか見当がつかないところへ金をぶち込んでも意味がない、無限に金がかかるようならばほかに移転することを考えてもいいじゃないか、こういうふうな言葉です。この理屈から言うと、たんぼの一万町歩や二万町歩は沈没してしまっても仕方がないという、こういう暴言なんですね。一体、大蔵省の官僚というものはそんな認識しか持っていないのかと、私は実は驚いたのです。きょうは来てもらうつもりであったのですが、宮崎さんが来ないので、松永さんに文句を言ってみたってしょうがないわけだけれども、これは大へんな問題ですよ。たんぼなんかもぐったってほうっておけ、新潟市が水びたしになったら、どこかへ移転した方がよいか、あるいは堤防をかさ上げした方がよいかということは、もう少し沈んでみなければわからない、——実に私は聞き捨てならない。憤慨にたえないのですよ。それで、今一万町歩の水田がそこらにごらんになるような状況のもとにあるわけなんだが、今これは県と金沢でまとめたところでは、十台のポンプでは十分機能を発揮しない。二割五分程度能力が低下しておる。そこで、従来あるようなポンプをもう二台施設をすれば、当面は、まあちょっとした雨ぐらいでは冠水するようなおそれもなかろうと、こういう状況になっておるのでありますが、一体、大蔵省の主計局というものはそんな冷淡な考えでおるとすれば、私は重大な問題だと思うので、それに対する松永主計官の心がまえ、考え方を一つ承わっておきたい。
  219. 松永勇

    ○松永説明員 ちょっと先にお断わり申しておきます。実は、私、公共事業担当の主計官でございまして、この農地関係は高木主計官が担当しておるのでございます。この前先生がお見えになったときに、私、ちょうどいなかったのではないかと思いますが、実は、高木主計官が病気なものですから、たまたま私の方の宮崎という者がお話を承わったのではないかと思っております。きょうここでお話があるというので、私、建設運輸関係の新潟地盤沈下の問題にタッチしておりまして、農林の方も大体感覚はわかっておるということで参ったのであります。  宮崎主査がどういうことを申し上げましたか、非常に失礼なことを申し上げたのでしたら、私からおわびを申し上げます。私たちが仕事をやっております際に、非情だということのお話がございましたが、常に、各省はもちろん、業務の主管庁としまして、その事業の妥当性あるいは経済性その他を判断された上で大蔵省に予算の要求をなさるわけです。私たちはその予算の面から各省の事業計画の裏づけをするという立場にあるわけです。もちろん、各省の案につきまして、その投資効果がどうだとか、いろいろな論議はございます。しかし、あくまでも、私たちは、各省の事業計画予算的裏づけをするという立場にあるわけです。従って、もちろん、予算が最終にきまる際にも、これは各省と了解をつけて、内閣としてきまって国会に予算が出るわけでございます。私たちだけがそういう非情な考えでいるというようなつもりでは毛頭ございません。これはただ心がまえとして御質問にお答え申し上げます。
  220. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 まさか大蔵省の主計官がみんなそんな非常識な者がそろっているとは考えませんけれども、とにかく、そういうような考えがどこかにあるということになると、われわれも考えなければならぬ、こう思うのですよ。農地局長の方も、昨年は非常な水害があって、この地域だけでも八億幾らも被害があったので、ことしの当初予算にこのポンプの増設は当然要求を出さなければならなかったはずだと思うのです。これはなぜ出さなかったのですか。
  221. 伊東正義

    ○伊東説明員 私の方で、実は、昨年のたしか十月か十一月ごろから調査を始めました。実は、この問題は、各省の応急対策を立てようというのを経済企画庁でまとめましたのが八月ごろでございまして、私ども農地局の方で調査を始めましたのはたしか十月ごろでございます。そして、大体沈下がどのくらいだということがわかってきましたのは、実は非常におそくなってわかって参ったわけでございます。そんなような関係で、実は、三十四年度としましてはまだどの程度沈下しているかということがわかりませんでしたので、先ほど申し上げましたような応急対策費は組みませんで、井戸を掘るとかというような調査費を組んだような次第でございます。しかし、だんだん被害がわかって参りまして、特に栗ノ木の排水機の問題ははっきりして参りましたので、私どもといたしましては、年度の途中でございますが、大蔵省に話して、これから折衝したいというふうな考えでおります。
  222. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 あっちこっち飛び飛びの話になってなにですけれども、要は、政府全体で、工場地帯や住宅地帯だけを中心にして、農地農業用施設をほとんど顧みないような感がするわけです。そういうことのないように、農地局の方からも早急に具体的な要求を出して、できれば予備費等で、わずかな金で数千町歩の水田が沈むか助かるかというせとぎわなんですから、一つ早急に要求を出すように協議を進めていただきたい。通産省の方は、先ほど申しました通りで、規制措置なり禁止措置なりは一つ勇気を持って早急にやっていただきたい。  時間の関係がありますので、場合によりましてまたいずれあと機会を得たいと思いますが、この程度にいたしておきます。
  223. 吉川久衛

    吉川委員長 本問題につきまして委員会の決議をいたしたいとの申し出があります。この際発言を許します。野原正勝君。
  224. 野原正勝

    ○野原委員 新潟県下における地盤沈下の問題、また、ただいま石田君から、非常に深刻な、農地の問題につきまして農民が困っておられる事情のお話がございました。私どもはこの問題に対しまして非常に心を痛めておるのであります。そこで、この際、政府に対しまして、至急これに対して積極的に対策を立て、応急の措置等をしていただくために、決議をしたいと存じます。  まず決議案文を朗読いたします。    農地及び農業用施設にかかわる地盤変動対策の促進に関する件(案)   新潟県等における地下水汲上げ等を原因とする地盤の沈下は、各方面にわたりゆゆしい損害を与えている現状である。しかして、港湾、下水道等については、既に着々その対策が実施されているにもかかわらず、農地等に対しては、今なお調査段階を脱しないことは、農業生産の確保、農業経営の安定上、はなはだいかんとするところである。   よって、政府は、これらの地盤変動に対し、遅滞なく応急工事を施すとともに、早急に、根本的調査の完了、農地および農業用施設の保全工事の実行並びに国庫補助率の引上げ等の措置を講ずるよう検討すべきである。  右決議する。   昭和三十四年七月九日       衆議院農林水産委員会  以上でございます。  時間もありませんからあえてこの説明は申し上げません。皆様方の満場の御賛同をお願いしたいと思います。
  225. 吉川久衛

    吉川委員長 お諮りいたします。ただいま野原正勝君より提案の、両党共同にかかる農地及び農業用施設にかかわる地盤変動対策の促進に関する件を本委員会の決議とするに賛成の諸君の御起立を求めます。     〔総員起立〕
  226. 吉川久衛

    吉川委員長 起立総員。よって、右決議することに決しました。  この際政府当局の所見を求めます。大野政務次官。
  227. 大野市郎

    ○大野説明員 ただいま、新潟県下などにおきまする地下水のくみ上げを原因とする地盤沈下について、その変動対策の促進に関する御決議をいただきました。本件はまことに重要な案件でございますので、政府といたしましては決議の趣旨を尊重申し上げまして善処をいたす決意でございます。
  228. 吉川久衛

    吉川委員長 なお、お諮りいたします。ただいまの決議の各方面への参考送付等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
  229. 吉川久衛

    吉川委員長 御異議なしと認めて、さよう決定いたします。     —————————————
  230. 吉川久衛

    吉川委員長 先般の松浦委員資料要求の発言に関し、林田振興局参事官より発言を求められておりますので、この際特にこれを許します。林田参事官。
  231. 林田悠紀夫

    ○林田説明員 先般の当委員会におきまして、北海道のビートの生産計画につきまして七月二十日までに資料を提出せよということがあったのでありますが、ビートの生産計画は、目下北海道庁におきまして各市町村について綿密に策定中でございまして、まだ相当の時日がかかりますので、七月二十日までに提出できません。それで、お断わりを申し上げなければならないので、この際おわびを申し上げる次第でございます。
  232. 吉川久衛

  233. 松浦定義

    松浦(定)委員 七月二十日というのは、私ども委員会調査に二十一日に出発したい、こういう予定でありますので要求したわけであります。調査は二十九日からということになっておりますけれども、今の情勢で二十九日までにその資料が出せるかどうか、ちょっとお伺いいたします。
  234. 林田悠紀夫

    ○林田説明員 まだ市町村別に詳しくやっておりまして、七月中にはとてもできない状況でございますので、御了承をお願いします。
  235. 松浦定義

    松浦(定)委員 この間申し上げましたのは、三十四年度を基礎として三十五年から三十九年までの五カ年の計画、それから、それに基いて新工場をどの地帯にやる意思があるかということ、さらに、その新工場に対してはどういう範囲によって集荷をするかというその計画、さらにまた、それに関連して、既設の工場はどういう形になるか、こういう要求をしたわけであります。これは林田参事官にお尋ねしてもどうかと思いますけれども、過般ここで六月十五日に甘味資源の小委員会が催されました場合に、前農林大臣と北海道知事との間に六月十日ごろにすでにいろいろな構想があるかのような計画が発表せられたわけであります。その際にはおそらく今要求したような資料に基いて私は計画されたと思ったのでありますが、今のお話でありますと、全然なかった場合における問題であったということがわかるわけであります。私どもとしては、本問題の重要性から見て、来たる二十九日から一週間行われる調査の後においていろいろ検討する。従って、当局においてもそれに基いてそれぞれ検討はされるでありましょうけれども、本問題の見通しとして、道とか農林省の見通しとしては、そういう情勢でありますならば、私はおそらく八月一ぱいかかってもこの資料に基いたような計画はできないだろうと思うのでありますが、その予想は大体そういうことであるかどうか、ちょっとお伺いしておきます。
  236. 林田悠紀夫

    ○林田説明員 計画の性質でございますが、詳しく各農家の経営とかその地域におきます営農類型、そういうものを考えまして最も綿密な計画を立てるということになりましたならば、これはなかなかむずかしい問題だと存じております。しかしながら、ビート工場の設置のための五カ年計画というふうな場合におきましては、そういうことももちろん慎重に考慮しなければなりませんが、大体の市町村別の計画考えておる次第でございまして、そういうような見地から時日を考えましたならば、一年かかるとか、あるいは二年かかるとか、そういうことはなくて、一カ月とかニカ月とか、そういうふうな時日をかしていただきましたならばできるのではないであろうかということを考えておる次第でございます。
  237. 松浦定義

    松浦(定)委員 大体意向はわかりましたが、私どもが要求しましたこの資料が整わない限り、新工場の決定を農林当局が打ち出すということはおそらくなかろう、こういう考えでおりますので、今の資料の提出は多少おくれましても、これを了承することにいたします。
  238. 吉川久衛

    吉川委員長 林田参事官に申し上げますが、資料ができましたら本委員会に提出をしていただきます。  本日はこれにて散会いたします。     午後六時五十一分散会