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1959-09-10 第32回国会 衆議院 内閣委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十四年九月十日(木曜日)     午前十時二十五分開議  出席委員    委員長 福田  一君    理事 岡崎 英城君 理事 高橋 禎一君    理事 高橋  等君 理事 辻  寛一君    理事 前田 正男君 理事 飛鳥田一雄君    理事 受田 新吉君 理事 木原津與志君       内海 安吉君    小金 義照君       田村  元君    富田 健治君       橋本 正之君    保科善四郎君       山口 好一君   茜ケ久保重光君       石橋 政嗣君    石山 權作君       柏  正男君    中原 健次君       西尾 末廣君    八木  昇君       柳田 秀一君  出席国務大臣         国 務 大 臣 赤城 宗徳君  委員外出席者         内閣官房長官  椎名悦三郎君         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房賞勲部長) 吉田 威雄君         防衛政務次官  小幡 治和君         防衛庁参事官         (長官官房長) 門叶 宗雄君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         防衛庁参事官         (経理局長)  山下 武利君         調達庁長官   丸山  佶君         総理府事務官         (調達庁総務部         補償課長)   久保田栄一君         総理府事務官         (調達庁不動産         部長)     柏原益太郎君         外務事務官         (アメリカ局         長)      森  治樹君         大蔵事務官         (管財局国有財         産第二課長)  細川 俊三君         海上保安庁次長 和田  勇君         参  考  人         (日本芸術院院         長)      高橋誠一郎君         参  考  人         (日本文芸家協         会会長)    青野 季吉君         専  門  員 安部 三郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  栄典制度に関する件  国の防衛に関する件      ————◇—————
  2. 福田一

    福田委員長 これより会議を開きます。  栄典制度に関する件について、参考人より意見を聴取することといたします。本日御出席されております参考人の方は、高橋誠一郎君及び青野季吉君の両君であります。  この際参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。本日は御多忙中のところ、本委員会のために御出席いただきましてまことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。何とぞ本件につきまして、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べ下されば幸いと存じます。  それではこれより御意見を承わることといたしますが、御発言の順序は高橋誠一郎君、青野季吉君とし、委員より参考人に対する質疑は、御意見を承わった後に行うことといたします。それではまず高橋誠一郎君にお願いいたします。
  3. 高橋誠一郎

    高橋参考人 ただいま福田委員長から御丁重なごあいさつをいただきまして恐縮いたしております。私栄典制度につきましては一向研究したこともなく、深い関心を持ったこともなかったのでございまするが、先年昭和三十一年の初めにおきまして、鳩山内閣時代内閣栄典制度審議会というものが設けられまして、はからずその委員を仰せつかりました際に少しばかり考えてもみ、また委員会におきまして委員諸君の御意見などを聞きまして、二月の何日かに答申をいたしております。私最初この委員をお引き受けいたしましたときにはかなり急進的な意見を持っておりまして、もう今日はすでに爵は廃せられておりまするし、金鵄勲章というようなものも廃されておるのでありますから、一切の位も勲章もやめてしまったらいいのではないかというような考えを持っておったのでありますが、しかしこれもなかなか急激に行うということは、またいろいろそこにおもしろくない事態も起るおそれがありますので、せめて今日のかなりに複雑しておりまするものをでき得る限り簡素化いたしたい、こういう考えをもちまして委員会に臨んだのであります。私どもは全くのしろうとでございましたが、委員諸君の中には、たとえば賞勲局長を十何年勤めたというような、くろうと中のくろうととも申すべきで方がおられまして、いろいろ貴重な御意見を伺うことができたのでありますが、よくそのころ言われましたことは、政府はしきりに審議会というものを設けているが、これは政府のアクセサリーにすぎないものである。その意見はあまり尊重されないというようなうわさが立っておったのでありますが、われわれも一生懸命になりましてこの問題を審議いたしまして答申いたしましたところのものが、果してどれだけ政府栄典法案の中に取り入れられておりまするのか、はなはだ心もとなく感じたのでございます。  私どもがまずこの委員会に臨みまして最初に気つきましたことは、どうも勲章というものは国際関係においてなお今日存置する必要があるということでございました。どうも理想的な考えなどを実現いたそうとする場合に、これを妨げまする大きなものは国際的な関係でありまして、むしろ栄典などということはごく小さな問題かもしれないのでございまするが、この点におきましてもやはり特殊な勲章を存して置くということが国際儀礼の上から必要ではないかということに気つきまして、そして審議会の案といたしましては菊花章というものを置くというような考え方、外国の国王であるとかあるいは大統領であるとかいうような人たちに贈ります場合には、こういうような勲章をもってするというような案も立てましたのであります。  それからなるべく簡素化するという考えの第一の現われといたしましては、いわゆる爵位勲等位階勲等でありまするが、この位の方は廃してしまったらいいではないかという考えがほとんど圧倒的であったように考えます。多少これに対して反対意見を唱える人もあったのでございまするが、まず大体において一致を見たのであります。位の方は日本は非常に古い時代から、推古天皇時代とかいわれておるのでありまするが、階の制度にならったというようなもので、まず日本的なものと申してよかろうで。ありまするからして国粋的な考えから申しますならば、むしろ位の方を存置して、勲章の方はこれを廃したらどうかというような考えもなくはなかったのでありまするが、しかしながら位と申しますると、どうも生まれとか地位とかいうようなものに付随しておるところが多いようでございまして、それでむしろこれは西洋伝来のものではありまするが、勲章の方を存置するというふうに意見が傾いたのではないかと考えられます。そのとき話に出ましたところでは、明治維新の際に維新の功臣たちいろいろ位だとかいうようなものをほしがるのであるが、位の点になりまするとどうしても公家にかなわないのであります。公家の位倒れとか申しまするが、非常に高い位を持っておりまするので、どうもこれにかなわない。そこで新しい西洋制度などを取り入れまして、勲章というものを設けることになった、こういうような話なども出たのでありまして、今日におきましてはむしろそのどちらかを廃すべきものである。ことに先ほど申しましたような点からして、位を廃すということにいたしましたのであります。  それから勲章でございまするが、これは存置いたしますけれども、でき得る限り簡素化して参りたい。今はかなり複雑なものになっておるようでございまして、またこれはいろいろ複雑なものになっているだけに、それだけ便宜な点もございますが、しかし大体国に対して功績のあった者というところから与えられるものでありまするならば、一種にしてしまったならばいいのではなかろうか、こういう考えが出ましたので、それではどの勲章にするかということになりますると、はっきり決定はいたさなかったのでありますが、とにかく一種にしてしまう。そして等級もなくしてしまおう。文化勲章のようなものにしてしまおうというような意見も少しはあったのでございますが、まあこれは漸を追って進むべきもので、やはり五等ぐらいに分けておこう。そしてそれも数字で現わさないようにしよう。今の勲一等とか三等とかいうような数字で現わさないようにして、何かほかの方法で現わして、人間等級などはきめないようにしよう。こういうような意見が出たのであります。まあ妙な例かもしれませんが、私ども子供時分に汽車に乗りますときには、上等、中等、下等という三等に分れておったのでありますが、上中下はいかにもおもしろくないというので、一等、二等、三等となり、やがて客車などには一等、二等というような文字もなくなりまして、ただ色で分ける。そしてさらに一等はだんだん少くなり、二等も少くなり、三等一色になってしまう。つまり等級がなくなってしまう。むしろこういうふうにすべきものではないだろうか。しかし今までのこともあるのでありますから、まず五等ぐらいに分けておこうというようなことが申されたのであります。  それから一番問題になりましたのは文化勲章であります。これはまあ今までの勲章の中では大へん評判のいいものだといわれておるのでありまして、むしろこれは存置すべきではないか。終戦後におきましても文化勲章だけは毎年授与せられておるのでありますから、これはやはり存置すべきではないか。ところがこれに対しまして強い反対論が出まして、国家貢献したとかいうような見地から勲章を出すものとすれば、学問、芸術文化というような方面において貢献するのも、政治、経済において貢献しますのもあえて区別すべきでないのだから、ただ一本の勲章の中に入れてしまうべきものである。この意見が大へん強く主張されたのであります。ちょうどその最後の決定を見ます日に、私はこの問題は相当重要なものであるから、ぜひ出席いたしたいと思っておったのでございまするが、ちょうど会に出席しておりまして、開会いたしまする直前に、参議院予算委員会から私に対しまする質問があるということを聞きまして、どうも予算委員会は代理では困るというようなことで、議長席金森徳次郎会長にお願いいたしまして、参議院の方に参りました。質問もきわめて簡単でありまして、およそ一時間ほど審議会に帰ることができたのでありますが、案外早く片づきまして、もう文化勲章廃止することにきまつたということでございました。しかし後に聞くところによりますと、やはり廃止反対意見も相当あったようでありまするし、それから廃止反対論者であって欠席せられた方が、はっきりは覚えませんがたしか二人おられる。そこに私の意見がまだわかってはおらないのでありましたが、私がもし廃止反対ということでありますならば、どういうことになったかわからぬということを聞いたのであります。これはすれすれのところで廃止決定いたしたのであります。  それで廃止を主張いたします議論は、先ほど申しましたところに大体尽きていると思うのでありまするが、この存置を主張しますものは、私のところに特に所管の文部省の社会教育局長などが見えましていろいろ述べられたのでありますが、もしこれを一色のものにしてしまいますと、学者芸術家というような人たちのところにはほとんど行かなくなってしまうのではないか。どうも役人そのほかの方に厚くなるのではないかというような意見であったと記憶いたします。しかしこの点などもいろいろ考えることができるのではないかと存じておったのでありますが、さようなわけでありまして、廃止となったのであります。その際少数意見の方では、もしこれを存置するとすれば、今までのような学者芸術家だけに限ることがなく、もっと広い意味文化貢献した人というように拡張すべきものだという意見が出されまして、これには同調される方々が相当あったと聞いております。文化勲章の場合においてこれを学者芸術家だけに限るべきものであるかどうかということが、選考委員会においてもたびたび議論になったのでありますが、一番問題になりましたのは、岩波茂雄氏に勲章を与えたということであります。これはまだ選考委員会ができる前のことでございましたが、いよいよ選考委員会ができるようになりまして、ここでの意見をいろいろ聞いてみますと、その例にならうべきものではないかという意見に対しまして、あれはむしろ誤まりであった、ああいう人はなるほど国家貢献したのではあるが、むしろ他の勲章を設けて表彰すべきものであって、文化勲章を与うべきものでない、こういう意見が有力に主張されまして、とうとう学者芸術家にほとんど限られてしまいまして、ほとんどと申しますよりも全部限られたといっていいのであります。でありますから学士院会員芸術院会員の中でほとんど選び出されるということになっておったのであります。ところが四年ほど前からだんだん、やはり選考委っ員会の中におきましても、もっとこれを拡張すべきものだ、たとえて申しますならば新聞界人たち、これは学者ともいえない、芸術家ともいえない人たち、長年新聞事業などに尽した人、こういうような人たち候補にあげべきさものではないかという意見が出まして、候補者の中に、二人と記憶いたしておりますが、有名な新聞人などの名前が出たのでありますが、だんだん委員会を重ねておりますうちにその名前も消えてしまいまして、ほとんど学者芸術家だけになってしまったのであります。ところが三年前でありましたか、大谷竹次郎さん、それから平沼亮三君、こういう人たち候補に上りまして、これが選考委員会を通りまして授与せられることになったのであります。こういうふうに拡張されますることがいいか悪いか、これはいろいろ議論があるところと存じますが、またその後、一昨年からでございますが、また再びこれに対しまする反対意見が出まして、学者芸術家に限った方がいいという意見が有力なものになりまして、昨年文化勲章を授与せられました方々学者芸術家だけに限られたようであります。選考委員会も年々違った人たちによって構成せられておりますので、今後どういうところへ進んで参るかわかりませんが、こういうふうに動揺しておりますこともはなはだおもしろくないと考えております。それからまたすでに学士院とか芸術院とかいうものがありまして、学者芸術家を優遇することになっているのでありますから、その上にさらに文化勲章を与えなくてもいいのではないか、もし文化勲章を与えるということになりますと、同じく学士院会員であり芸術院会員である者の中にも、何だか等級のようなものができる。勲章を持っている人と持っていない人というようなふうに区別せられるおそれがあるので、むしろこれはやめてしまった方がいいのではないかというような意見もあるかに聞いております。  それで、とにかくこれは審議会におきましては廃止されるということになったのでありますが、この点はその後出ましたところの政府栄典法案におきましては、審議会答申を御採用にならなかったところと思いますが、審議会自体がかなり意見が分れておりましたので、こういうようなことになりました点も、あながち審議会と著しく相違したとも申せないかと存じます。それからこの審議会答申にも、政府案そのほかにも、栄典審議会というものを設けるということになっております。これはぜひ必要であると考えるのでありますが、さてこれがどういう形になるか、どういう人たちから選ばれるのであるか、どこで選ぶのであるかが問題だと考えます。私の長い間経験いたしましたのは、先ほども申しました文化勲章選考委員会だけであります。これは十人からなるものでありますが、人のことはしばらくおくといたしまして、私自身があの選考委員会に出ておりまして、どうもわからない方面がはなはだ多いのであります。私は人文科学と申しますか、社会科学と申しますか、多少こういう方面をつついておりますので、その方面学者については幾分通じておるつもりであります。また芸術院などの仕事も仰せつかっておりますので、芸術院につきましても若干の知識があるつもりでおるのでありますが、どうも自然科学方面になりますと、一体だれが功績があったのであるか、全く見当がつかないのであります。そういう感を漏らされます方々が、年々選ばれる委員諸君の中にはなかなか多かったと記憶しております。たとえば数学方面においてこういう功績を上げたというのでありますが、名前を聞くことがそもそも初めであるし、その数学上の功績というようなものを伺いましても、なかなか頭に入らないのであります。ただ自然科学方面から出ておられる委員一人あるいは二人の意見を聞きまして、それに従うほかはないという状態にあったのであります。そういうことがこの広い栄典審議会におきましても相当あるのではないか。むろん公平無私な人間を選ぶことが問題で、ぜひやらなければならぬことだと考えますが、そのほかに、一般に通じておるという人をあげますことが大へん困難なことになるのではないか、この点十分考えなければならぬと考えます。  これくらいにとどめておきまして、なお申し上げることがございましたら、後刻申し上げたいと思います。(拍手)
  4. 福田一

    福田委員長 次に青野季吉君にお願いをいたします。
  5. 青野季吉

    青野参考人 私は栄典制度について特別に考えていることもありませんし、そう深い関心を持っておりませんが、栄典ということは憲法で規定されておりますので、栄典制度を設けるならばこうあってほしいという、国民の一人として常識的に考えておることを申し上げたいと思います。その前に私は文学者の一人としての立場から申しますと、およそ国民功績——人間功績と申しますか、そういうものを勲章のような形のあるもので表彰し、栄誉を与えるということは、私ども文学者としてあまり望ましくないと思います。やはり自分国民の一人としての功績には、国民の精神的の尊敬というものが一番大事でありまして、また本人から申しましても、そういうものをかち得ておるというのがプライドでありまして、それは私は文学者一般、少くとも精神文化というものに携わっている人は考えておると思います。しかしそうは言っても、やはりそういう勲章とかいうものがいいというので、それを形に現わして、そしてなお一そうその人の貢献を表彰するということも必ずしも悪いことではないと思いますが、あくまでもこれは精神的なもので、精神的の一そうのつながりを作るものであるということを、栄典制度を作られるという方によくお考え願いたいと思います。私は単に結論だけのことを申し上げましたが、栄典制度を設けることは国家百年の計であるから、ゆっくり慎重に各方面意見を徴されておきめになることが必要である。しかしそうは言っても、皆さんの意見一致があればできるならば早い方がいいと思います。おそくなりますと、過去及び現在の勲章が習慣的に固定してしまって、これをあとで直すことが困難であるという事情もあると思います。そういうことを心配するのであります。  それから栄典を授けられる人の問題でありますが、私はこれはやはり国家公共に特別に貢献した人に授けらるべきではないかと思います。貢献という中でも、普通に貢献したというのではなくて、特に貢献したということを重要視したいと思います。私は明治時代小学校時分に、えらい人というとみな勲章をぶら下げているということに妙な感じを受けたことがありますが、そうでなくて、やはり比較的特別な功績に対して与えられるようにしてもらいたいと思います。  それから栄典を授ける場合には、私はやはり機械的な基準はよくないと思います。たとえば官吏の方とか、あるいは学校の先生とかいうような人で、一定の年限、一定の義務的な仕事を忠実にしたというだけで、論功行賞的な栄典を授ける、勲章を授けるということは、私は意味がないと思います。  そういう人でなくても、善良な国民であれば、一生の間にやはり自分国民としての義務をやっているわけでありますから、そういう機械的な基準によってやらないようにやられることが望ましいと思います。  それは基準の問題でありますが、勲章種類——先ほど高橋さんも申されました中にあったようですが、私は勲章種類はなるべく簡素な、単純なものでいいと思います。もしできれば種類分けは、リボンの色で変えるとか、あるいは図案の多少で変えるとかして、一本の勲章にして、名称ども新しい名称で、今ちょっと考えられませんけれども、たとえばフランスのレジョン・ドヌールのような、ああいう一本の名称にするとか、その名称を何らかの方法国民の世論に聞くというようなこともあり得ると思いますが、要するに簡素化を願いたいと私は思います。そしてその勲章勲等と申しますか、等級をつけるのは私は賛成できません。一体人間功績に特に勲章を与えるということにも、私ははなはだ困難があると思いますが、勲章を与えて、その勲章等級がましいもの、また上下があるというようなことは、実際上厳密に考えたら考えられないことじゃないかと思います。もちろん勲章には三種類か四種類種類があるのは自然でありますけれども勲章上下等級をつけることは、私は望ましいことではないと思います。  それからこれはもう私が申し上げるまでもなく、一般の主張もそうだと思いますが、位階というものは、先ほどのお話にあったように、日本に古いときからあったものでありますが、これは絶対にない方がいいと思います。位階制度というものは、憲法には、栄典には特権を伴わないという、非常にりっぱなことが規定してありますが、どうも位階というものと特権というものは結びがちになる、それはそういう考えがなくても自然と結びがちになるという考えでありまして、位階というものはない方がいいだろうと思います。  それから勲章そのものですが、私どもは今度の勲章というものは、実際その人が国民の一人として公共に特に貢献したという意味で、それを受け取る国民の方からいえば、全く自分たちの中からこういう人が出たのだという感じを与えるようなものであってほしいと思います。それには勲章図案ども、威圧的な、国家の威厳を示すというようなものでない方がいい。もっとなごやかな、親しみある、また新しい美しさを出したものであってほしいと思います。  一番大事なのは、やはりそういう勲章を与える場合の栄典審議会と申しますか、それの構成であると思います。だれが考えてみましても、今日の社会仕事は、単に狭い意味文化社会だけとってみても、非常にこまかく分化しておりまして、ほかの分野の方にどれくらい貢献があるかということは、自分と異なる分野なら全然わかりません。私も文学とか、あるいはそれに類した面では多少の判断はできますけれども、同じ文化でも、ほかの科学その他などというと、どういう人が特に公共貢献したのであるか、判断に迷います。極端に言えば、名前さえ知らない。でありますから、審議会の活動というものはなかなかむずかしいし、審議会の一人々々の、自分の受け取り方もなかなか困難だと思いますが、それはやはり何かの形で、審議会がその専門分野の大多数の意見参考にされるところの方法を講ぜられて、これは専門分野の大多数の人が賛成したのだ、従って国民判断する一つの信頼すべき括針になるような人であってほしい、こういいますと、審議会はなかなか大へんなことであると思います。何か二十五人というようなことが書かれておりましたが、私はこれは二十五人でなくて、もっとたくさんの人間であってもいいような感じがいたしております。しかしこれは私の感じであります。少数の人でも、その審議の前に十分な調査をされ、その専門意見を聴取されれば、少数の人でもいいかと思います。  最後に、勲章をかりに私の申し上げたような一本にした場合に、今の文化勲章はどうなるかということでありますが、これはやはりむずかしい問題で、私は文学芸術というようなものを特別に取り扱うことに、文学者でありながら多少の疑問を持っております。もしも一本にして、種類だけを分けるとすれば、文化勲章、その一つの種類の中に解消してしまってもいいのではないかという考えも持っております。  それだけ申し上げて、はなはだ簡単でありますが……。(拍手)
  6. 福田一

    福田委員長 これにて両参考人の御意見の開陳は終りました。  委員の方に御質疑はありませんか。——御質疑がなければ次に移ることといたします。参考人の各位には種々有益な御意見を開陳していただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  なお栄典制度に関する件について質疑の通告があります。これを許します。受田新吉君。
  7. 受田新吉

    ○受田委員 今両参考人から御説を伺ったのでありますが、私は政府として現在行われている栄典制度の一つである文化勲章の授け方についてお伺いしておきたい点があります。それは文化勲章という制度が、現行栄典制度で唯一の残された生存者へのいわゆる顕彰になるわけでありますが、その授け方がどうなっているか。先般も文化勲章の選考委員の任命がされたようでありますが、栄典制度全般から見て政府の所管事項がどうなっているのか、文部大臣が文化勲章の選考委員の任命をされるということでありますが、これは文化勲章というものの性格が文部大臣の専管事項のように一応の印象を与えるわけでありますが、内閣の賞勲部という機関もあるわけで、栄典制度全体の問題を所管する役所が委員の任命にもタッチしないというやり方は、はなはだへんぱなやり方ではないかと思うのでございますが、政府の御所見を伺いたいと思います。
  8. 吉田威雄

    ○吉田説明員 ただいま御質疑がありました文化勲章授与に関しての問題でございまするが、文化勲章授与は、憲法の規定によりまして、内閣の助言と承認によって授与するということになっておりますが、その授与に至る手続につきましては、まず文部大臣が一応候補者をきめまして、内閣総理大臣に上申いたします。そしてそれによって内閣で文部省の案を検討いたしまして、内閣総理大臣がこれを閣議にかけまして、文化勲章の授与を決定するという段取りになっております。そして文部大臣が内閣文化勲章候補者の上申をいたしまするその前の手続といたしまして、選考委員会を設けて、候補者を選考するわけでございます。ただいま御指摘になりました選考委員会というのは、文部大臣が文化勲章の授与の候補者をきめる、事前の手続として選考委員会にはかる、この選考委員の任命でありますので、これは文部大臣がなさるということはやむを得ないのではないかと思います。ただしこの場合におきまして、文化勲章の選考委員は、文化功労者年金法によりまする文化功労者の選定のための選考審査会と同一の委員を当てておりますので、こういう関係におきまして、やはりこれは文化功労者年金法の規定によりまして文部大臣の任命になっております。ただその手続におきまして、その委員の選考、任命につきましては閣議の了解を得るという手続をとっておられるようであります。従って最後的に文化勲章の授与を決定します内閣といたしましては、その前に選考委員の顔ぶれにつきましても一応承知いたしておるということになっておりますので、その点は差しつかえないのではないかと考えております。
  9. 受田新吉

    ○受田委員 内閣として、この栄典制度全体の所管をしておられる立場から、選考委員の内定、任命から文化勲章候補者の内定に至るまでを文部大臣に一任しておられるということになると、内閣という機関が高い立場からの判断をするのにはなはだ怠慢であることになるおそれもある。その意味からも、内閣の責任ということになるならば、一文部省の専管事項のような形で、第一段階を一任したような形、今了解事項というようなことがありましたけれども、その了解というのは了解しないために成立しないということがあり得るのかどうか、そういうことも考えられるわけですが、勲章を授けるあり方として、国の高い立場からの判断をする上において、現行制度が最良の策とお考えかどうか、もう一度御答弁願いたい。
  10. 吉田威雄

    ○吉田説明員 ただいま御指摘になりましたが、もちろん実際問題としまして、選考委員の顔ぶれ等につきましては、われわれも非常に関心を持っておるわけであります。しかし文部大臣から総理府の方に具申がありました際に、また総理府といたしまして十分審議をいたしておるわけであります。従いまして、場合によりましては、人数その他につきまして、これは事前にいろいろこちらの希望も申し上げて連絡をとっておりますので、その点は総理府としての意向も十分反映いたしまして、従来文化勲章授与の際の選考に当っておるわけであります。その点従来は大きな不都合はないのでありますが、ただ実際問題といたしまして、文化勲章授与の際に総理府の意向を相当反映させるということにつきましては、十分考慮していきたい。これは総理府の部内におきましても、しばしば問題になる点でありまして、今後とも十分この点研究していきたい、こう考えております。
  11. 受田新吉

    ○受田委員 ことしまた文化勲章をお授けになることになるのですけれども、今総理府の意向が反映するということでございましたが、総理府は文化勲章受賞者の数をどのくらいにしておるか。またその受賞させる対象を、今高橋さんが言われたような、二つの面だけに限定されたものということで総理府も態度がきまっておるのか、これをもう一つお答え願いたいと思います。
  12. 吉田威雄

    ○吉田説明員 文化勲章受賞者の数でありますが、これはまだことし何名ということは、別にきまっておらないのでありますが、従来の例からいいますと、最大七名でありまして、年によりましては五名程度、できるだけ厳選の態度をもってやっていきたい、さように考えております。  対象の点でありますが、これも先ほど高橋参考人からも申されましたように、いろいろな考え方がございまして、範囲を広くするようにという考え方と、もう一つは純粋に学術、芸術方面に限っていけという考え方とございまして、年によりまして多少の動きがあるわけでございます。ことしはまた選考委員会等の選考の経過におきましても、十分連絡をとりまして、相談し合っていきたい、さように考えております。
  13. 受田新吉

    ○受田委員 内閣考えはどうなっているのか、それをお聞きしたいのです。
  14. 吉田威雄

    ○吉田説明員 内閣考えといたしましても、これは沿革的には、純粋に学術、芸術関係者に対する表彰方法として文化勲章が生まれたのでありまして、沿革的には非常に狭い範囲で選考していくということになっております。しかし戦後のいろいろな状況からいたしまして、だんだんにこの範囲を、いわゆる狭い意味文化の範囲よりも広げまして、あるいは社会事業、スポーツといった方面、つまり直接学術、芸術に携わるということよりもさらに広げまして、こういう方面を助長した。かたがた傾向としましては範囲を広げるという傾向になっておる、こういうことを申し上げられると思います。
  15. 受田新吉

    ○受田委員 これで終りますが、傾向として広げる、今勲章をもらう人が少い、文化勲章一つしかないという意味で、そういう対象を広い立場で、文化全体の問題として考えていくという方向に考えているわけですね。  それからもう一つ、生存者の中で勲章を与えられておる者がある。たとえば防衛庁の自衛隊の職員で、災害出動で功績のあった人々、こういう生存者への勲章を与えるという制度が今日本に残されておる。そうして生存者への勲章授与の範囲を、自衛隊その他ごく一部に限っておるわけですが、生存者へ勲章を与えるというのはどういう根拠から出ておるのか。それから自衛隊に一部限っておるというのはどういう実情か。一般国民は、生きた人には勲章がないと思っているのですが、現に六十何人やら、生きた人に勲章を与えておられる。これをちょっと御答弁願いたいと思います。
  16. 吉田威雄

    ○吉田説明員 生存者に対する勲章の授与でございますが、これは昭和二十八年に閣議決定で、非常災害等の場合に、その災害の現場等で、実際に職務遂行——身の危険を顧みずに仕事をやって、人命救助、災害の防止その他に功績のあった者に対しては、いわゆる栄典制度が本格的に整備するのを待たないで、生存者に対して勲章を授与することができるという道を開いたのであります。この閣議決定の根拠によって、そうした災害等の場合の現場の功労者、また災害でなくても、たとえば犯人逮捕等で非常に危険を冒して職務を遂行した警察官等に勲章を授与しておるわけであります。そうしたことになっております。
  17. 受田新吉

    ○受田委員 これははなはだ限界がむずかしくなると思うわけでありますが、民間の協力者の上にもそういうことをやるかどうか。犯人逮捕などの問題で、民間協力者にもそういう問題が起ってくると思うのですが、そういう突破口を開いておくと、いろいろ複雑な問題が起ると思う。  それからもう一つ、吉岡弥生先生に対して、その危篤の状況で勲章を与えられた。それが奇蹟的に助かって、今度あらためて死なれた。そうしたら今度は勲章が前よりいいものが与えられた。あのとき死なれたものであるならば勲三等ぐらいでとどまるところが、最後には二等まで上った。こういうように危篤の人に与える、それが奇跡的に助かる、またもう一度なくなるというときに、またやり直すというようなことをやられておるようでありますが、そういう賞勲制度というものは、何かはなはだあいまいな感じがするわけです。そのときにそのままなくなっておれば、勲章も一階級下であったのが、生き返られてまた死に直されたというので、また勲章が上るというようなことは、はなはだあいまいであると思うのですが、これはいかがですか、一つはっきりしていただきたいと思うのです。
  18. 吉田威雄

    ○吉田説明員 ただいま御指摘の点でありますが、実際過去においてそうした例がございます。しかしこれは全然同じ功績対象に対しましてさらに高い勲章を上げたというのではないのでありまして、吉岡先生の場合におきましても、これはその後におきまして、学校の設備の充実あるいは病院等の完成、そうした事柄がありますので、その数年間にありました功績を加味して勲章を差し上げたということであります。全然同じ功績対象に対しまして二度もそういうことをしたということではないのであります。
  19. 受田新吉

    ○受田委員 これで終ります。     —————————————
  20. 福田一

    福田委員長 次に国の防衛に関する件について、調査を進めます。質疑を許します。茜ケ久保重光君。
  21. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 私は質問をする前に、委員長に要望したいのです。見ますと、自民党の議員がただ一人しかいない。私はやはり閉会中の審議の場合でも、与党の議員が不勉強のために定数を欠いているのは困ると思う。委員会の運営上もいかぬし、国会に対する信頼等の点に関しても、はなはだ遺憾であります。これはきょうだけではありませんけれども、今後委員長は、委員会の運営上特に与党の委員の御出席を督励され、少くとも定数を割らない程度の委員の御出席方についてぜひ御協力願いたい、こう思うのであります。以上御要望申し上げまして、質問に入りますが、最初調達庁長官に、大泉キャンプの返還が予定されておるようでありますが、これが現状並びに今後近き将来にどのような状態になるか、一つ御説明願います。
  22. 丸山佶

    ○丸山説明員 大泉にありますキャンプ・ドルゥと申しておりますが、あのキャンプに関しましては、地元県等の強い要望に応じまして、先般来その返還に関して鋭意折衝をいたしまして、この返還が確定いたしました。現実には来月中には引き渡しができる運びになると存じております。
  23. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 大泉、太田すべてを含めてでございますね。
  24. 丸山佶

    ○丸山説明員 ただいま返還の確定いたしておりますのはキャンプ・ドルゥの範囲でございます。その隣接のもとの飛行場地域並びに住宅地域、これはまだ確定しておりません。これに関しましてはただいまも返還措置について折衝中でございます。
  25. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 飛行場の返還が確定しないのは遺憾でありますが、これは即時調達庁は早急な返還ができますように、と申しますのは、大泉キャンプが返還になるということは結局あの飛行場もともに返還されることは一番地元としても望ましいし、またあの飛行場が設定されましたいきさつから考えましても当然だと思うのであります。そこで防衛庁長官にお伺いするのでありますが、どうも防衛庁はこういったことに対して少し強引でないかと思うのです。この大泉キャンプは最近返還される施設としては一番大きなものであるし、従ってこれが民間に完全に返ってくるか、ないしはさらに引き続いて防衛庁その他の国の施設がここに入るかということは、地元民の死活を制する非常に重大な案件であります。ところが、まあ防衛庁としてもそれはやむを得ぬ点もあろうけれども、どうもそういう施設が返還されようとすると、何か防衛庁が、これは当然防衛庁自体が使うのだ、また使う権利があるといったような態度を現わしておる。かつての歴史的な点を考えると、もと民間の工場だったし、地元の諸君が非常な協力をしてでき上ったものでありますから、アメリカ軍が返還したあとは、当然地元がこれを利用すべきものであるにもかかわらず、防衛庁が横からおれたちが使うのだ、おれたちが使うのは当然だというようなことのために、地元の不安と動揺は非常に大きい。従って何回となく防衛庁に陳情しておるのです。私は地元民に防衛庁に陳情することはない。防衛庁が使う権利もないし、防衛庁が使うことは一つもないから、返還されたら当然地元に返るべきものだから、防衛庁などに陳情すること自身がおかしいのだ、何も陳情する必要はないと言うのでありますが、地元民の諸君はやはり不安でありますから、度々防衛庁にも陳情しております。使ってもらっては困る、返したまま、これは地元民の民間のいろいろな業体に渡してもらいたいということを陳情しておる。これは調達庁にももちろん大蔵省にも行っております。ところが防衛庁は何か地元民に対して思わせぶりなことを言ってみたり、地元民を威圧するようなことを言ってみたり、そのために、全く県並びに地元の市町村、あるいは関係者は非常な精神的にも時間的にも、そしてまたいろいろな具体的な面においても動揺と不安を持っておる。これは現実であります。赤城防衛庁長官ができたのですから、赤城長官は今までの防衛庁長官では話のわかる防衛庁長官だと思う。少くとも私は民間人の気持がわかる人だと思うのです。今までの防衛庁長官ではできなかったことを、あなたは一つあなたが防衛庁長官ということで、それは増強ということもあなたとしてはやりたいでしょうが、防衛庁は昔の軍隊みたいな考え方と行動を起さないようにすることも、私は赤城防衛庁長官に対する一つの期待だと思う。ところが実際は今私が指摘したように、大泉キャンプの返還についてそういうことがあれば、これは非常に遺憾でありますし、また私どもとしては不届き千万だと思うのであります。そういうことでありますので、今後大泉だけでなくて、幾つか返還されようとする基地について起る問題として、この点を特に防衛庁長官に要望するとともに、大泉に対する防衛庁としての最後的な態度をはっきりしてもらいたい。私は、使ってもらっては困るし、また使うべきではないと思うが、まだ何かしら、一応地元民としては、防衛庁は手を引いたという気持は持っておりながら、やはり不安を持っておる。まだ防衛庁は来るのではないかという不安を持っておりますから、ここで赤城長官の責任において、大泉キャンプは防衛庁としては使わないという言明ができるのかどうか。また今でも今言ったようなものを持っておるかどうか、この点をはっきりしてもらいたい。
  26. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 ただいまお話のようなことがあるかと思いますけれども防衛庁といたしましては、米側から返還になった飛行基地等を、防衛庁の権利として当然防衛庁が使用すべきだという考えは持っておりません。返還になったものにつきまして民間側で使うか、あるいはまた防衛庁で必要とするかということ、あらためて検討の上できめる方針になっておりまして、返還になったから直ちにそれが防衛庁で、自衛隊で使うという権利を持っておるような考えは持たしていないと思いますし、そういうことではないのであります。ただ新しい飛行基地等を作る場合に、耕地やその他をとることが農民やその他に非常に迷惑をかけることがありますので、返ったものをなるたけ防衛庁で、自衛隊で必要であれば使いたいという考えは持っておりますけれども、返ったものが直ちに権利として防衛庁で、自衛隊で使うものだという考えは持っておりませんので、その点は御了承願いたいと思います。  問題の大泉キャンプにつきましても、地元からのお話も承わり、私の方でもこれは飛行基地として使いたいと思っておったのでありますが、地元の様子等も判然いたしましたので、これは自衛隊として取りやめにいたして、ほかにこれにかわるべきものを今見つけております。でありまするから大泉地区については、自衛隊として今これを使う、こういうことにはなっておりません。取りやめというようなことになっておりますので御了承願いたいと思います。
  27. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 赤城長官としては最初の方の御答弁、アメリカから返ってくる基地について権利も主張しないし、またそれは決して無理をしないとおっしゃるのですが、事務当局としては、今あなたがおっしゃったように、他に農地ないしそういったものをつぶすことになると困難が伴うので、どうしてもアメリカが従前使っておった基地をそのまま使うことが一番安易であり簡単でありますから、どうしてもそれを使うという前提に立たれるものですから、地元なんかに参りますと、やはり農民や一般国民の中には、昔のお上といったような国家権力に対する一つの威圧感を持っておりますから、それはあるいはあなたの事務当局はそうでないという気持でやっておられるかももしれませんけれども、よほど注意してもらいませんと地元民に非常に威圧を強く与える。これは一つ考えてもらいたい。これは今あなたのおっしゃるようなことで進めてもらいたいと思います。  大泉キャンプを自衛隊はもう絶対お使いにならぬということであれば、これはうれしいことです。そこで大蔵省にお伺いしたいのですが、自衛隊は使わぬとなりますと、これは当然民間にお渡し願うと思うのであります。たとえば前橋あたりの中島飛行機の跡が西武になるということで、いろいろお骨折りになっておるのですが、なかなか価格の点で折り合わぬ。これは政府の査定が高いのか、西武の査定が低いのか知りませんけれども、折り合わぬ。地元ではこれにも非常な不安を持っている。ということは、西武があそこを使うという意思がなくてやっているのではないかという不安を持っている。ところが同じように大泉も、そういった点が関連して参りますと、せっかく返ってきた施設が民間で有意義な利用ができなくなるという可能性もありますので、これは差しつかえない限りにおいて、西武の前橋のキャンプの折衝の経過、並びにそれと関連して大泉キャンプの民間への払い下げのあなた方の作業の進行状態を、一つここで御説明を願いたいと思うのです。
  28. 細川俊三

    ○細川説明員 お答えいたします。ただいまお話のございました前橋地区の西武の問題、これは方針が決定いたしましたあと、いろいろとその評価を急ぎまして——評価は今度売り払い評価基準というものをきめました。そのためには公正なる評価額を立てなければならないということで、いろいろ部外の精通者の意見も聞きまして、その結果評価を提示したのでございますけれども、その評価の問題で最後の折り合いがつかず、今その交渉の進行中でございます。  それから今の大泉地区の問題でございますが、これは先般二月十八日に、あそこにございます国有の建物約四千坪、土地九十六坪が返りましたにつきまして、こちらにおきまして、六月の十日の関東地方の国有財産審議会にかけまして、三洋電機に売り払いするという方針を決定しました。その後四千坪余りの建物の評価を急いでおりまして、評価のあとの交渉に入っております。あとキャンプ・ドルウで残っております地区といたしましては、国有では建物が五万六千坪余りございます。これに対しましても、もちろん三洋電機からその払い下げの申請が出ております。従いましてこれが返還になりましたときは、こういう事情を十分くみ取りまして、国有財産審議会にかけて、その評価あるいは妥結を急ぎたい、こういうように考えております。
  29. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 大体了解できるのでありますが、前橋の方もなるべく一つ早く解決していただきたい。ということは、前橋市が現在生糸の不況によって、市全体が非常に沈滞しております。あの施設は小さいのでありますが、しかしあの施設に民間の工場が来るか来ないかが、今後の前橋の市全体の発展に大きなウエートを持っております。全市民の期待がそれにかかっている。それが現在あまりのろいので、先ほど申しましたように西武がこれを買うということでやったのだが、買う気がないのじゃないか、また買っても仕事をしないのじゃないかといったこともございますので、やはり全市民の期待と輿望にこたえるために、国としても査定の非常な無理はできないでしょうが、一つその点も勘案されまして、早急な解決方に御努力願いたい。そこで大泉の場合、御承知のように太田市周辺が首都圏の中に入りまして、今後の発展をああいうものにかけているわけです、ほかにもうなかなかありませんから。そういう点で、これも先ほどの調達庁長官の話では、来月は全面的返還でありますが、ぜひ一つその御努力をいただきたい、これを要望しておきます。最後に防衛庁長官に百里基地のことについてお伺いいたしますが、この件は、あなたが官房長官をされていた前の内閣のときに、当時の防衛庁長官の伊能氏に対しまして、また岸総理にも私は念を押したのです。百里の基地は膨大な予算を使って、りっぱな兵舎や付属設備が完成したのでありますが、肝心かなめな滑走路が全然できてない。私は何も滑走路を早く作らなくちゃいかぬということを言うのじゃありませんよ。言うのじゃありませんけれども国民の血税を莫大もなく使って、いわゆる兵舎を作り、付属設備を作って、ここに飛行基地を作るのだという決定をしながら、いまだに滑走路ができない。先般来の新聞を見ますと、何か補助滑走路をしやにむに作って、そうしてあれはジェット戦闘機の飛行場でございますから、当然あそこは防衛庁としてはジェット機が飛ぶはずの飛行場でありましょう。それができないためにヘリコプターを使わなくちゃならぬとか、訓練をするとか騒いでおりますが、これは非常な政府の責任だと思う。盛んにそうやって付近の住民なり、あの滑走路にがんばっている住民諸君を威圧するような状態を続けておられますが、先般来、伊能長官は必ず近い将来に滑走路を作って国の責任を果すと言われ、さらに岸総理もこの委員会の席上ではっきり、私も地元住民と話し合って早くこれを決定して責任を果すとおっしゃったのだが、それからもう半年たっている。いまだに何ら進展しない。わずかに補助滑走路を作ってごまかしておる。こういうことは私は許されぬと思う。少くとも政治的責任は大きいと思うのだが、赤城防衛庁長官はこの現実を承知をされて、どのような責任を感じ、またどのような具体的な方法をもってこの案件を解決される決意であるか、その辺を一つ伺いたい。
  30. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 御承知のように飛行基地内の大部分の者は、基地の拡張等について同意をしたのでありますが、なおこれに対して同意をしていない者が残っておるわけであります。そういう関係上、これを強引にやるということも考えるものでありますので、前の防衛庁長官あるいは総理大臣も言明されたと思いますが、その言明通りに進んでいないことは私ども遺憾に思っております。しかしぜひとも私どもはこの基地は使いたい、こういうことでありますので、反対側の者とも、また直接そのことに関係のある人々とも話し合いを進めておる状態であります。そういう状態でありますので、話し合いがなかなか進みませんと、私どもの意図通りには参らないわけでありまして、できるだけ私どもの意のあるところを話して進めていきたいということでやっておるわけであります。いろいろバツク関係といいますか、基地反対闘争委員会というようなものもありまして、非常に話の進め方は困難でありますが、ぜひこれは話し合いの上で解決していきたい、こう考えております。
  31. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 今の長官であるあなたに私は全責任をかぶせようとしないけれども防衛庁のとる一貫した態度は、私はけしからぬと思う。大体何十億という金を使ってああいう施設をする場合に、果してこの仕事はスムーズにいくかいかぬか、やれるのかどうかということを全然調査したと思えぬ。ほかのところで今すでに十何億使っているようですが、そういう膨大な仕事をして完成しないでは済みますでしょうか。国民は承知しませんよ。兵舎のりっぱなものができて兵隊が入っていない、格納庫もできているが飛行機が入っていない、雨ざらしです。防衛庁はこういうことをしていいと思うのですか。私は少くとも責任ある政府であるならばこのことは許されないと思う。いまだに見通しがつきません。そういうことが平然となされるところが、現在の防衛庁のあらゆる面に対する不純さというか、傍若無人というか、全く国民の血税をないがしろにした、国民を無視した態度だと思うのです。しかも岸総理も前長官もはっきり、日にちは迫ったが日にちは言えぬ、しかしできるだけ早い機会に必ず責任を果しますと言っている。それから半年たっているが一歩も進んでいない。こんなことは何としても私は国民の代表として許されないと思う。赤城長官が今話を進めてやるという気持はわからぬではないけれども、あなたの心情だけでなくて、国民全体の気持を考えなければならない。経理局長に一つ聞くけれども、あなた方があの仕事をする場合に、いつ完成するつもりでやったのでありますか、はっきりおっしゃっていただきたい。あれだけの費用をかけてあれだけの施設をするのに、しかもこの前も指摘したように、普通の兵舎ならばかまわない。兵舎ができればどこかに兵隊を連れていって演習できるが、特にジェット機の飛行場は滑走路がなければ役に立たない、その一番重大な使命を持っている滑走路の見通しもつかずになぜあんなことをしたか、どういう自信とどういう手続と、いつ完成する予定である仕事をしたか、その点経理局長から明確に願いたい。
  32. 山下武利

    ○山下説明員 ただいま御指摘のようなことで、百里の基地問題が非常に延び延びになっておりますことは、毎回申し上げております通り、私どもとしても非常に遺憾に存じておる次第でございます。もちろん防衛庁といたしましては百里を最適の土地と認めまして、国会に予算を御要求申し上げて、そして地元の方の大方の御了承も得て、十分の自信を持って始めた仕事でございまして、中にごく少数ではございますけれども、御了解を得ない方がありましたために、現在まで工事が進んでいないということははなはだ残念に思っておる次第でございます。現在の滑走路の位置というものを、必ずしもこれを技術的に変えて不可能ということはございませんけれども、現在の予定地が最も適当であるということと、基地の中にそういうふうな未解決の問題を残しておくということは、将来にもいろいろ不測の事態を生ずるということもありまして、あくまでお話し合いによって円満に解決を進めていきたいという趣旨のもとにやっておることであります。非常に事態が遷延しておるということは責任を感じておる次第でございますけれども、意のあるところをおくみ取り願いたいと思います。
  33. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 あれは何年度計画で、いつ着手していつまでに完成する予定で仕事を始めたのであるか、その点を一つ明らかにしてもらいたい。
  34. 山下武利

    ○山下説明員 手元に正確な資料がありませんので、あるいは間違っておるかもしれませんが、たしか三十一年度あたりの予算に計上したのが最初かと存じます。当時はおそらく一年半ないし二年くらいな予定であったかと思いますけれども、今のような事態でもって延びているというふうなことで、非常に残念に思っておる次第でございます。
  35. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 一生懸命に遺憾の意とか残念の意を表されるけれども、大体ああいう大きな仕事を始めるのに、地元の賛成を得たとおっしゃるけれども、具体的には一番肝心な滑走路の中に非常に反対の強い者がおるのです。こういった者と話し合いを進めないで、いいかげんなことで着手したところに問題があると私は思う。おそらくあなた方は滑走路の予定地にそういう反対の強い者がおるということを知っておりながら、兵舎を建てたり格納庫を建てたり、こういう具体的な事実を作っていけば、反対者も結局は賛成せざるを得ないだろうという、あなた方一流の先ほど言ったどうかつあるいは利益誘導、こういうことでたかをくくってやったことと思う。そこに問題があるのです。それでなければそんなことはできないはずだ。御了承願いたいとおっしゃるが、私は了承できません。国民が許しません。ただ単なる滑走路の予定地にがんばっておる反対者の気持だけではございません。あの金は全国民の血税ですよ。しかも作りっぱなしだ、あなた方それでいいと思われるのか。私は少くとも国民の代表としてこれは許せぬと思う。また話し合いをするとおっしゃるが、いつまでにあの仕事を完成する自信があるのか。あなたは当面の責任者として、いつまでに話し合いをつけてあの仕事を完成させるという御自信があったら、その御自信のほどを承わっておきたい。
  36. 山下武利

    ○山下説明員 いつまでに必ず完成するということを申し上げる確信がないのは、非常に遺憾と存じます。もとより相手のあることでございますので、相手方とも十分に納得の上で事を進めたい。かように考えておる次第でございます。
  37. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 防衛庁長官、建設をする責任者である経理局長はああいう答弁をしております。私はもちろんあの基地を私の立場から完成しろとは言ってない。少くともああいう状態を作った責任を問っておる。私はこの前の国会で伊能長官にもうあの基地をあきらめて、りっぱな施設があるのだからあれは学校なりにしなさいと言ったが、今言ったように国民の気持はただ単に経理局長が遺憾々々と言っただけでは済まないと思う。先ほども言ったように、赤城長官は少くとも自民党における良心的な人ですから、あなたはおそらく内心じくじたるものがあると思う。しかしそれをただ単にあなたが良心的であるということで看過できない。こういったことはあの問題一つを見てもそうでありますが、防衛庁は伏魔殿と世間でいわれておる。経理の面においては世間の人たちはそう思っておる。こうなりますとやはりいろいろな問題が起きてくると思う。これはいつまで言ってもあなた方が遺憾の意を表し、何とかするとおっしゃることで話が進まぬが、はっきりあなたに言わざるを得ないことは、どういう責任をあの事態によってとる決意であるか。岸さんも私の責任でやるとおっしゃったのであるが、なかなかそれができていない。もちろん私どもはあの基地設定には反対立場でありますから、あの基地の中におる諸君とともに反対のまた一つの具体的な行動を起すことは当然でありますが、私の言うのはあの滑走路を一日も早く作れというのではなくて、そういうできもしないことを、私どもの税金をもってああいうむちゃなことをしたところに責任があるというのです。しかも先ほど指摘したように防衛庁当局は、何人か反対しておるけれども、兵舎を作ったり格納庫を作ったりして既成事実を作っていけば、当然この人たちは賛成せざるを得ないであろうといった考え方が多分にあった。そのことはあの山岸町長をリコールする前後の小川町の状態、さらにそのときとった防衛庁の裏から表からの態度を見ればはっきりしておる。最近ヘリコプターを持っていってヘリコプターの練習をしたり、飛行機を飛ばしたりすること、並びに完成しない飛行場で完成祝いをやっている。付近の住民なりいろいろ集めて防衛庁は多大の費用をかけて完成祝いをしておる。完成をしていない。兵舎はできたが滑走路ができていない飛行場は飛行場でない。それにもかかわらず完成祝いをやっておる。付近の住民を集めてもう仕方がないのだということを印象づけようとしておる。しかも長官、今残っておる方々は、あなた方がどういう説得をされようとも、そう簡単に説得できるものではない。私どもは、必ずあそこに滑走路を作らせない。あなた方はしっぽを巻くと観測しておる。それはそうとして防衛庁としては、今経理局長が時間が切れておるけれども何とか説得をして完成したいとおっしゃるけれども、一応防衛庁長官としても、今までの責任と今後どういうふうな処置をするかということについて、はっきりしておいてもらいたい、こう思います。
  38. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 御承知のように、今経理局長からも話がありましたが、百里原の基地につきましては予算も計上し、その基地をやるということ、一つを取り出したわけではありませんが、予算の面を通じたり何かして国会の承認も得ておるわけであります。でありますから、これを作り上げるということは、私どもの責任だと思います。反対が一部あったからといって、それを途中でやめるというわけにはいきませんから、私どもといたしましてはできるだけ説得してこれを使えるように完成したい、こういう方針で進めておるわけであります。道路のまん中に反対があったからといって、道路を途中でやめるというわけにはいかぬと同じように、その反対したものの立場をよく考えて、たとえばほかに移転いたしましても、よく生活ができるような立場をとってやるというようなことによって解決したい。しかし根本的に基地は絶対に反対だという立場から反対されるということになれば、これはどうも平行線でなかなかまとまらぬと思いますけれども、私どもは既定の方針に従って、おくれてはおるといえども、これはぜひとも基地としては必要なことでありますから完成をしたい、こう考えております。
  39. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 大体あなた方も御承知のように、現在残っておる住民は絶対反対であります。基地設定に反対をするのであります。そうなりますと、今あなたも指摘したように平行線であります。片一方は作る。作らせない。そうなりますと、アメリカの駐留軍ならばいわゆる特別措置法でやれますが、これはずっと前にこの国会でも指摘したように、自衛隊では今の解釈では自衛隊は土地収用法が適用できないという見解がとられております。従って今までは自衛隊はどんな問題でも土地収用法をやっていない。防衛庁当局はやはり法律を拡大解釈して自衛隊も適用できるようなことを言っておるけれども、具体的には適用できないのが事実なんです。従って今まで防衛庁はやっていない。私ども防衛庁は公共の利益という解釈しか出てこないので、土地収用法は適用できないと思う。そうなりますと私どもから言わせますと、あの少数の諸君であっても絶対に基地には反対だという立場からがんばっておれば、あなた方はどうにも手がない、こういうことになると思うのでありますが、赤城防衛庁長官はその点についてどのような見解を持っておられるか。この点を一つお聞きいたしたいと思います。
  40. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 土地収用法が適用できるかできないかということにつきましては、いろいろ問題があろうと思います。私どもの見解としてはできるという見解を持っていますけれども、しかし今の百里原の問題を、直ちに土地収用法によって解決しようという考えは持っておりません。あくまで話し合いで進めていきたい、こう考えておりますけれども、基地絶対反対ということだと、なかなかこれはむずかしいかもわかりません。しかしそういう点もいろいろ話を進めていけばだんだんわかって参り、了解できると思いますが、ともかくも話し合いを進めてやっていきたいというのが、今考えている段階であります。
  41. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 時間もありませんからこれで打ち切りますが、最近あの基地に対して、防衛庁あるいは長官の意思ではないかもしれませんが、具体的に付近の住民にいろいろな印象を与えるようなことが次々に起っております。つい最近も何か問題が起ったようであります。それはあなた方の立場もありましょうが、そういうことができるだけないような方法を講じていただきたい。あせるのあまり付近の住民に威圧したり、何かいやがらせ的なことがないように、私は良心的な赤城長官に期待しますが、そういった点で一つやってもらいたいと思います。私どもは私どもとしての立場で対処しますけれども、私は今の実態を見て、防衛庁としてのまた政府の責任の所在をお聞きしたのですが、まだ今のところそこまでいきませんが、私はやはりこの問題は依然として残されておる問題として、今後も重視をし、たびたび質問をしていきたいと思います。この点において私は防衛庁担当大臣としての赤城長官の政治的な責任を追及して参りたいと思っております。
  42. 福田一

    福田委員長 次に石橋政嗣君
  43. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 私は先月の二十四日から今月の一日にかけまして佐世保の港外で米海軍が無断で演習をやったという問題について、若干お尋ねをしてみたいと思います。本件については社会党といたしましても、すでに正式に政府に対して厳重な抗議をいたしておるのでありますけれども、本委員会においても一つ経緯を明らかにしてもらいたいと思うわけであります。  この問題で一番中心になりますのは、米軍側が公々然と行政協定を無視しておる。それにもかかわらず、政府機関がこれに協力をしておるというところに、一番大きな中心があると思うのです。聞くところによりますと、八月の上旬に日本においては大体二カ所掃海訓練をやりたいからという申し入れが、日本政府に対して行われたのだそうでございますが、それに対して調達庁は、その演習を行うという水域は、指定水域ではないから困るという回答をしたということでございますが、当時のいきさつをもう少しはっきりさしていただきたい。それから保安庁なり外務省に対してどういうふうな申し入れがあったのか、それに対してどういう態度で臨んだのか。まずその辺のいきさつからはっきりさしていただきたいと思います。
  44. 丸山佶

    ○丸山説明員 掃海演習の問題に対するただいままでの経過並びに参考事項を私からまず申し上げます。八月の十一日に在日米軍当局よりこの掃海訓練の演習をいたしたい旨調達庁は連絡を受けました。それを調査いたしますと、その区域が指定されておる区域の外にあるということがわかりましたので、この場所で演習させることはできない。ここでやるにはあらためて行政協定の規定に従い、合同委員会の承認を得なければならないという旨を先方に回答し、連絡しておったのでございます。にもかかわらず、お話のように演習が行われました。この最中あるいはその後におきましても、調達庁といたしましてはそのときに米軍の釈明を求め、なお善後措置に関しても折衝をいたして参っております。一方政府全体の立場からこれに対する釈明を米軍に求める、その方法といたしまして去る三日、日米合同委員会におきまして日本政府の代表よりこの問題に対して公式に申し入れを行い、あとの補償問題等の措置もあわせて申し入れておるわけでございます。これに対しまして米側の代表は実情をよく調査究明した上で御回答申し上土げる、こういうことを約束いたしておるわけでございます。  これに関連いたしまして私若干参考事項を申し上げておいた方がいいと思いますので、調達庁がこれまでの折衝等を通じて察知いたしました事情でございますが、掃海問題は御承知の通り終戦当時日本の近海沿岸に機雷その他多数の危険物が浮遊しておる。それを占領時代は主として占領軍の海軍当局が当りまして、日本側の関係機関とも協力して掃海に努め、船の安全、漁業の安全等をはかって参ったのでございます。平和条約発効になりましてその直後の合同委員会だと存じますが、その際にこの問題に対しまして、なおこの掃海問題については米軍当局も日本側と協力態勢を従来通り維持していく、これらに関する事項は米海軍当局は日本側の関係当局に直接連絡し得る、掃海並びにそれに関連する事項は連絡し得るということが、その合同委員会できめられてございます。今回私ども米軍当局へこの問題で折衝いたしておりました経過から察知いたしますのは、その合同委員会の取りきめ等に基いて、先方としてはあるいは直接関係機関に連絡の上やり得るのだと解釈しておるのではないか、こういうことを察知しております。これに関しまして私どもは、それはそのものの誤解であって、この演習のようなものとは性質が違うものである。この掃海演習に関してはやはり当初調達庁が申し入れておる通り、もし必要な場合にはあらためて正式に日本側に提案され、合同委員会が承認をした上において手続が至当である。単に関係機関に通報のみをもって足りるものではない。その点は誤解である。この旨主張しておるのであります。従いましてこれに関して正式には向う側は、先ほども申し上げましたように合同委員会においてのこちらの提議に対しまして、実情をよく調査究明の上何分の回答をするということになっておりますので、ただいまのところそれを待っておるのが実情であります。
  45. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 政府から抗議的なことを申し入れたとおっしゃいますが、それはもう事件が、訓練が行われまして予想外にたくさんの人たちが被害を受けたあとの問題なんです。しかもその点に関しても、米軍側はいかにも誠意があるようなことをおっしゃいますけれども、佐世保の調達事務所に出されて参りました直接の米軍側の責任者からの回答によりますと、何もおれたちの方には出任がないのだ、漁船が勝手に、訓練をやっている最中にうしろを通ったりするから、そういう被害を受けるのだと言わんばかりの回答が出てきておるのですよ。この点はあとでまたやりますが、一体それは、米軍側が十一日に申し入れてきた。これに対して調達庁は一応断わったとおっしゃいますが、そのときに訓練が始まりますまでに、まだ半月ばかりあるわけですが、一体やめてくれということをいずれかの機関で、政府が正式に申し入れたのかどうかということなんですよ。それから米軍側が訓練をやりたいと言ってきたのは、そのときは調達庁だけなんですか。保安庁や外務省にはその後も訓練開始までに何らの話はなかったのですか。
  46. 丸山佶

    ○丸山説明員 十一日にその連絡を受けまして、これに対して米軍はそのままの形においては演習はできない。従って適当な措置をとるまでやめるべしということ、調達庁はずっと言って参っております。なおそれ以外に私承知しておるところは、海上保安庁にもそのころにその演習の連絡があったと存じております。
  47. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それでは保安庁長官に直接聞きますが、保安庁では早々にいわゆる協力態勢をとっておるではありませんか。少くとも十九日に航路告示第千百十一号ですか、こういうものを告示しておる。これはどういうわけですか。まだ五日前にこういう手続をとっておるのですが、一体これはどういうわけですか。
  48. 和田勇

    ○和田説明員 お答えいたします。海上保安庁がこの航路告示と申しますか、航行警報を出しましたのは、われわれの方で米軍からテレタイプで連絡がございましたので、その位置を検討いたしますると、いわゆる提供区域外であることがわかったわけであります。そこで調達庁を通じまして提供区域内で掃海訓練を実施していただきたいということを申し出たわけでありますが、十八日になりまして米海軍の航路告示が出されたわけであります。そこでその正当性は別といたしまして、とにかくそういう訓練をやるという事実は、船舶の航行の安全に支障があるということを考えまして、万一の場合をおもんぱかって十九日に無線によって航行警報を出した次第でございます。
  49. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 そういうあいまいな態度をとられるものですから、八月の二十二日にいわゆる現地の機雷艇隊の司令部から横須賀司令部に問い合せている。日本政府の承認を得たのかどうかということを……。それに対して八月十日海上保安庁に連絡し、了解を得ている、こういう回答までしているのですよ。あなた方の方では操業やあるいは航海に支障を来たすおそれがあるから、ただ親切にやったのだとおっしゃるかもしれぬけれども、米側ではそういうふうにとっておらないじゃありませんか。この点はどうですか。
  50. 和田勇

    ○和田説明員 ただいま申し上げましたように、われわれの方では区域外でありますので、区域内でやっていただきたいということを再三申し上げたのであります。現実に十八日に米海軍の航路告示が出ましたので、やるということになりますると、船の航行の安全に支障がありますので、この危険を知らせるということをいたした次第でございます。(「取りやめさせないのか」と呼ぶ者あり)海上保安庁といたしましてはそういう権限はないかと思います。
  51. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それでは保安庁としてはそういうことを米軍がやることを黙認した格好になっているのですが、実際にそれは外務省なら外務省を通じて、あるいはお宅の方で独自の立場で、そういうような違法な行為はおやめなさいという意思表示はなさっておるのですか。
  52. 和田勇

    ○和田説明員 先ほど申しましたように調達庁を通じて申し入れてございます。それで航路告示と申しますのはいわゆる航行警報でございまして、こういう危険があるということを一般船舶に知らさねば、米軍の方ではどうしても訓練をやるということでございますので、知らせない方がかえって危険が多いわけでありまして、私の方では米軍の申し入れを受け入れたとかいうのは全然ございませんで、むしろ米軍の誤解というふうに解釈いたしておまりす。
  53. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 先ほど丸山長官が述べておられるように、演習しようという水域は明らかに指定水域外なんです。しかも共同の漁業権の設定区も入っている。あるいは知事の認可に基いて操業の許可を得ている単独漁区もある。それから一番交通量のひんぱんな航路にも当っている全く特殊な水域なんですよ。一体米軍側は何でそういう勝手なことをやれるのかという厳重な抗議をどこでやるのですか。それについて政府機関としてはそれだけの連絡が十分にとられておるのですか。そしてまたやめさせるだけの努力を政府機関としては一体どこでどれほどの熱意を持ってだれに向ってやったのか。調達庁は一応断わったというが、それでは保安庁に直接というのであなたの方に来た。あなたの方では協力したのじゃないけれども、しかし実際に被害があったのでは困るからそういう告示だけやったのだというけれども政府としてそんな違法な行為をやってもらっては困る、何で行政協定の違反をあなたたちはあえてやるのか、そういう厳重な抗議を——私はこれは直接は外務省がやるべきものなのではないかというような感じがするのですが、よくわからない。一体どこの機関が責任を持つべきものなのか、そうしてそれをやめさせる努力をどの程度にやったのか、これをお聞きしているわけです。
  54. 和田勇

    ○和田説明員 先ほど申し上げましたように私の方では調達庁を通じまして、区域内でやっていただきたいということを申し上げたのでございます。米軍に対して直接折衝いたすのは私どもの所管でございませんので、調達庁を通じて申し上げた次第であります。
  55. 丸山佶

    ○丸山説明員 先ほども申し述べましたように、私どもはこの行為は行政協定の正規のものではないということで、調達庁として取りやめ方を折衝いたしておりましたが、その見解に遺憾ながら先方が従わない。この事情は先ほども参考事項として若干申し上げましたが、古いころの行政協定に基く合同委員会の総会並びにこれに関連する事項に対する取りきめ、これに関する先方側の解釈、これについて私は先ほど申し上げましたようにそれは間違った解釈である、私の解釈が正しいのである、であるから正規の手続をとらない限りやめるべきであるということを調達庁は米軍当局に主張して参ったのでございます。なおこれに対します調達庁の見解が正しいか、あるいは向うの言い分にも理屈があるかという問題もございまして、その後外務省その他関係官庁ともよく協議しましたが、調達庁の見解の通りである、これをもって正式に米軍に統一的態度として処置を要求すべきであるということで、先般の合同委員会におきまして政府代表より先方に抗議をいたした次第であります。
  56. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 政府としては米軍の今度の行動は、行政協定違反であるということをまず確認するわけですね。その次に米側としては違反したということを認めたわけですか。
  57. 丸山佶

    ○丸山説明員 ただいま申し上げましたように、当庁が先方との折衝過程において向う側の議論の間から察知されますのは、先ほど申しました古い一つの合同委員会決定というものを根に持っておるふうに判断いたしております。しかしながらこれに基く先方の正式の態度表明はいまだなされておりませす。先般申し上げましたように三日の合同委員会で先方の代表は、事情をよく調査究明の上回答いたしますということを約しておりますので、次の機会においてはそのことが出てくるものと期待いたしております。
  58. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 現在においてすらまだそこの一番根本のところで食い違いがあるじゃありませんか。日本政府は行政協定違反だとおっしゃっても、向うは違反だということをまだ確認しておらない。そういうところからいくと向うさんとしては、最初から協定なんというものは問題にしてないということになるじゃありませんか。やはり多少調達庁あたりで異議を申し立てようと、やればいいのだ、こういう格好で、はなから行政協定なんというもうは無視してやったとしか思われない。そこに問題がある。私はこの点を一番ここで追究しているわけなんです。しかも保安庁のごときは、向うが十八日に告示したらさっそく十九日に告示をしている。確かに警戒させることは必要かもしれませんが、これとても補償措置も何にも考えないまま、実際に操業も制限してしまうような、そういうことをやる権限があるのですか。迷惑をこうむる漁民が出てくるということははっきりしている。その補償について何らの話し合いも行われないままに、そういった制限を実質的にやるような告示をするというような権限もあるのですか。
  59. 和田勇

    ○和田説明員 航行警報を出すことにつきましては、海上保安庁法の第八条の三号によりましてございます。損害補償ということにつきましては、もちろんその条文にはうたってありませんが、船舶の航行の安全に支障があるという際には、支障になる事項について通報して船の安全をはかるということが私ども仕事であります。従ってそれによってやっておるわけであります。
  60. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それが不可抗力のものではないのですね。しかも違法の行為なんですよ。違法の行為をやらせるために、正当な生計を営んでいる漁民の操業を実質的に制限する、そういうふうなことができるのですかと言っておるのです。その前にやはり違法な行為をやめさせる努力をやるべきじゃないですか。
  61. 和田勇

    ○和田説明員 お答えいたします。今の違法な行為と申しますが、この点につきましては再三申し上げましたように、調達庁を通じまして申し入れてございます。私どもの方は面接米軍と折衝する権限がございませんので、くどいようでありますが……。
  62. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 委員長、これでは官房長官にすぐ来てもらわぬと、責任を両方で転嫁されたのでは話にならないわけですよ。政府機関として一本の筋を通した行動が行われていないということじゃないですか。調達庁は調達庁として違法だとおっしゃったと言うけれども、片一方あなたの方で、その方は調達庁にまかせておいて協力態勢をしく、その間がちぐはぐになっておる。それをしぼって政府の意思として行動を起すというようなことはないのですか。それは一体だれがやるべきなんですか。
  63. 和田勇

    ○和田説明員 協力ではございませんで、先ほども申しましたように十八日に米海軍の方で演習をやるという告示をいたしたわけであります。そういたしますると、これをほうっておく方が危際が大きいわけであります。その危険を船舶に知らせるということが、私どもの航行警報の義務でございますのでやったわけでございまして、協力ではございません。
  64. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 あなたの方は協力じゃないとおっしゃったって、政府機関であることは間違いないでしょう。しかも米軍側が正式にこういう回答をしてきているのですよ。海上保安庁とも連絡し、了解を得ているのだ。あなたは誤解だとおっしゃるけれども、実質的に米軍側としては政府機関である海上保安庁が結局認めて、お手伝いしたのだ、協力したんだというふうにとっているじゃありませんか。それはまた対外的にはそうなんじゃないですか。それは調達庁が抗議をする、違法性はただす。おれの方は違法であろうと何であろうととにかくこれだけのことをやればいいのだ。対外的にそれで通用しますか。私だって納得しませんよ。そんなばかみたいな……。そこのところはやはり政府として一本で、なぜその行政協定の違反ということを軽々しくやらしたかということを私は聞きたい。あなた方に聞いてもしようがないと言うなら、これは官房長官にも早く来てもらわなければいかぬ。
  65. 丸山佶

    ○丸山説明員 繰り返すようですが、新しく区域を演習場にする、一律的にやるということについては、海上保安庁は何も権限も責任も持っておるわけではございません。あくまで政府機関としては調達庁でございます。従いまして調達庁が反対しておる見解を述べておるにもかかわらず、海上保安庁に通じたから足りると米軍が言った、それはまさに米軍の間違いでありまして、その辺の間違いがどこから起ってきたか。一つは先ほど申しました平和条約発効直後の合同委員会の記録に掃海に関する規則の特別なものがある。そこらに根を発しておると私は今までの折衝過程において判断しておるのでございます。あくまでそれに対する公式な米軍の態度は、日本側を代表しました合同委員会の当方の代表よりの申し入れに対する向う側の回答によって判明すると思っております。
  66. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それでは責任は調達庁にあるとおっしゃるならば、担当大臣の赤城大臣に私は聞いてみたいのですが、それは事務的に処理できる問題ではないのですね。行政協定の違反を向うがやろう、しかもそれを強行してこようというような問題を、調達庁が事務当局でやってもらちがあかない。大臣としてはそのときに何らかの措置を打たれたのですか。担当大臣として政府の代表ということで……。
  67. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 先ほど調達庁長官から申し上げましたように、新たな場所で訓練をするということは行政協定の違反であるから、こういう通達を出したわけであります。ところが、これはあとからわかったのでありますが、米軍の方では、平和条約発効後の合同委員会においての打合事項のようなことがありまして、それの解釈を間違えておったというふうなことが大体判明してきたわけであります。でありまするから、責任者としての立場としては合同委員会においてできたことでありますから、これは行政協定違反になる、あなたの方の考え方は違うということを主張して、向うにそれを了承させるということが筋だと思っております。そういう方法を今とっているわけであります。
  68. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 出先の調達事務所で米側と折衝した範囲の中でわかってきたのですが、問題は佐世保だけで行われた演習ではないということです。結局ホノルルから来た、太平洋艦隊司令部というか何か知りませんが、そういうところから指令が出て広い地域において一ぺんにやる。東京湾、佐世保、沖縄の那覇、那覇湾、そういうような広い地域で一度にやる演習だから、ずっと上級の司令部からの命令だから、違法かどうか知らぬが、とにかくわれわれとしては命令を守るという立場でやらざるを得ないのだ、こういう回答をしてきておるのです。今こうやって現実に日本国民が被害を受けたという形で問題になってきたのですが、こういう被害がなければおそらく黙って通ってしまったのじゃないかと思う。演習をやるときにおいてすら日本政府として何らこれを有効に阻止することもできない。協定無視を見のがしてしまう。実際の場合に、実際の場合というのは演習じゃない。実戦の場合に政府として一体米軍の行動を阻止できるのですか。このごろの安保条約の改定問題などで、事前協議制なんというのを盛んに言っておられる。米軍の領域外出動、あるいは在日米軍の装備の重要な変更とか、そういうようなものは交換公文で事前協議制を採用するようにするのだとおっしゃっておるが、演習においてすら阻止もできないような政府が、事前協議で一体阻止できるとお考えになりますか。これは防衛庁長官、自分防衛という立場と調達庁所管だという立場から両方かかると思うのですけれども、実戦の場合なら阻止できる、演習だったからちょっと手抜かりがあった、そういう理屈が成り立ちますか。そこのところのお考えを聞きたいと思うのです。
  69. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 実戦のときと演習のときとは違うかという御指摘でありましたが、あまりよくわかりませんでしたからもう一度。
  70. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 質問中に私語しておられるからわからない。私が言っておるの、今安保条約の改定に当って、駐留軍が日本の領域の外に出動する場合、こういう場合には事前協議制をとるとおっしゃっておる。われわれは、今の日米政府の力関係からいってできるものか、また現実にアメリカの国防省筋では、そんなことしよったら最も大切な機動性が失われる、あるいは秘密保持が困難だ、そういうようなことから反対しておる。おそらく事前協議制は空文になるであろうという批判をしてきたのです。実戦の場合に米軍がどこかに出動するというような場合に、ほんとうに事前協議をやって、しかも日本の安全に非常に大きな影響があるからやめてもらいたいという意思表示をかりにしたとしても、阻止するのはおそらく困難だ、とうていできません。そういう批判を今までしてきたのです。今度の事件はそれを裏づけたようなものじゃないか。ということは、これは実戦ではなしに演習ですよ。演習においてすら日米間の取りきめを無視され、のほほんと指をくわえてながめておる。違法な演習すら有効に阻止できないような政府が、かりに事前協議制なんというものをとられても、実戦の場合にこれを阻止することがどうしてできるのか、できるならその理由をお教え願いたい。私は演習の方が軽いと思う。そこのところをお尋ねしたのです。
  71. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 現在におきましても行政協定がありますので、演習であっても行政協定違反であってはならないはずです。そういうことはありません。この場合は、終戦後の合同委員会の打合事項の中に、その普通の掃海をする場合には、直接関係官庁と連絡することができる、こういうことになっておったのです。そこでこの掃海と演習というものとを米軍の方では間違えた、こういうふうに私ども考えております。これは先方の間違いだ。ですから間違いでなく、演習をするという場合に行政協定違反があってはならない、こういうことです。今度の安全保障条約改定に当りましても、事前協議という問題が非常に不安なようでありますけれども、しかしこれにつきましては急迫の場合には、なかなかできかねる場合もありましょう。ですからあらかじめどういう場合に、これはいいとか悪いとかという程度のものはもうきめておって、そうしてそれを阻止する。日本の適当でないと認める場合には阻止するだけの措置は当然とっておかなくてはならぬと思います。事前協議は、私は相手方を信用しなければ別ですけれども、信用した場合には事前協議によって配備及び装備については日本考えが通る、こういう前提のもとに交渉をしておる、こう思っております。
  72. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 非常に重要な答弁をいただきました。今、政府で進めております事前協議というものは、もうケースをちゃんと想定しておいて、そしてこの場合はどうというような、そういうことが入るとおっしゃったのですが、事実ですか。
  73. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 事前協議のことができたあとで、委員会か何かできることと思います。そういう委員会等において、どういうことの場合にはどういうふうにするというような具体的な問題は、これはあらかじめきめておく必要があるのじゃないか。今の改定の中へ、あるいは交換公文の中へ入れるということでなくて、いずれ両方の委員会ができましょうから、その委員会においてそういうことが問題にされるだろう、こういうふうに申し上げたわけであります。
  74. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 ちょっと私わからないのですがね。事前協議制が採用される。そして事前協議が行われる場合、こういう場合におそらく事前協議をしなければならぬだろう、そうするとそのケースごとに、この場合は日本政府はもうオーケー、この場合はノー、この場合はそのときにならぬとわからぬ、そういうことになるとおっしゃるのですか。
  75. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 まだそういうことまで詳しく話は進んでおらぬと思いますけれども、私は事前協議の細目等につきましても、こういう場合ああいう場合ということが、これは両方の委員会でもできましたならば、相当議題になって検討しなければならぬだろう、こういうふうに思っております。
  76. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 今後そういうふうになるだろうと大臣はおっしゃるのですから、少くとも安保条約については外務大臣と防衛庁長官は密接に連携をとっておるというのが前の大臣からの御答弁です。またそうなければならぬだろうと私どもは思うのですが、さて事前協議制が採用された、そのあとで、交換公文に入る入らぬは別として、そのケースごとにちゃんと想定して、ちゃんと作っておくのだとおっしゃるなら、それは事前協議と言えますか。そんなのは事前協議と私どもは思っていないのですがね。そこのところはどうもわからないのですよ。
  77. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 配備、装備等についての事前協議ということに相なっておるわけですが、配備、装備の中でどういう点が重要であるかというようなことは、これは当然検討されると思います。何から何まで一々事前協議というわけには参らぬと思いますから、そういうことが検討の議題になる、これは当然そうなるだろうと私は思っております。
  78. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 一番重要な点、やはり先ほど私が二点にしぼりました米軍が日本の領土の外に出撃していく場合、いわゆる極東における国際の安全と平和の維持に寄与すると称して、日本の基地から米軍が出ていく場合と、原子兵器等の重要な装備品が持ち込まれる場合と、これが山になっているわけですよ。そうするとこれについてあらかじめ話し合いしておくというのですか。実際に行動を起すとか、あるいは原子兵器が持ち込まれるとかいうときではなしに、もうちゃんと話し合いを最初からしておくのだというお答えだから、一体そんなものが事前協議なのか、そういう話し合いが事前にできてしまうくらいの気持ならば、なぜ最初から条約の中に織り込んでしまわないのか。持ち込ませないなら持ち込ませない。一体そういう事前に話がつくものを事前協議とはこれいかにと、私は聞いているわけですよ。
  79. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 事前協議をするような事態を検討するだろう、こういうことで、事前協議を初めからきめてしまったのでは、事前協議になりませんから、事前協議をするようなテーマ、題目を検討することになるだろう、こういうことです。
  80. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 ちょっと話が別ですから、いずれその安保条約の問題はこれからも再三お尋ねしなくちゃならぬと思うのですが、結論は、大臣の答弁は、結局私が質問していることには直接答えていないのですよ。演習も阻止できないような日本政府が、実際の実戦の際に米軍の行動をとやかく規制することができるものですかというこの私の批判に、的確にお答えになっていないのです。お答えし切らないというならそれでもようございます。演習も阻止できないような日本政府が何でいざ実戦で、実戦の場合の米軍の行動を規制できるものですか。事前協議なんてえらそうなことを言ったって、ただアメリカの一方的にやることを指をくわえてながめているだけだという、われわれの主張が裏づけされているじゃないですかと私は言っているわけです。それに対する適当な反駁はないわけですよ。腹の中ではお認めになったのじゃないかと思うのです。
  81. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 演習を阻止できないという前提が間違っておると思います。(「できなかったではないか」と呼ぶ者あり)阻止できなくない。これは考え方、解釈が違っておったからであります。実際に演習ならば阻止できるのであります。非常にその解釈を間違って、アメリカ側がやったのです。ですからこれは合同委員会の結果を見なければ、まだ演習を阻止できなかったということの結論を出すのは早いのではないかと思います。石橋さんの方で……。掃海はできるという話し合いになっていたものですから、演習と掃海そのものとを間違っておった、こういうふうに思っておりますから、これは合同委員会の結果を見ませんと、演習を阻止できなかったかできたか、これはまだ早いと思います。それからまた行政協定における事前協議ができないかどうかという問題でありますが、これは相互の信頼関係がその結果をもたらすと思いますので、これはまた別の機会に……。
  82. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 この保安庁の方の措置に戻るのですが、協力したのじゃないと盛んにおっしゃっておられますが、結果的にはやはり協力した格好になるわけなんですよ。これはもう聞違いない。米軍がそう思い込むのもやむを得ないような手当がちゃんと講ぜられておる。そうして現実に現在まで——九月三日までの調査の結果ですが、漁民の人たちが十八件、金額にして約二百三十万八千八百円程度の被害をこうむっておるわけです。最初から訓練をやれば被害が出るという予想はされましたかどうか。
  83. 和田勇

    ○和田説明員 お答えいたします。最初から被害が出るということは十分予見し得ませんでした。
  84. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それではお宅で告示されました水域に共同漁区が入っておるということにはお気づきにならなかったのですか。
  85. 和田勇

    ○和田説明員 お答えいたします。その点については十分調査せずに航行警報を出しております。
  86. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 そこでまたミスが出てきているのです。あなたの方で告示されました水域の中には、明らかに漁業権が認められている水域が入っているのですよ。そうするとこれは明らかに認められた漁業区の中における操業を実質的に制限することになるのだから、ここから補償問題が出てくるということが事前にわかっておらなくちゃならない。それがわからなかったという、その点でも政府間の連繋が不十分である、当然予知さるべきことまで予知されておらぬ、こういうミスがまた出てくるわけなんです。それから今度のこの演習が、私は政府としては絶対に違法なものだということを米側に確認させなくちゃいかぬと思うのですけれども、その合法あるいは不法ということは一応抜きにしても、現実にたくさんの人たちが被害を受けておるわけでございますから、この補償は完全にやらせるつもりなんですか。
  87. 丸山佶

    ○丸山説明員 被害補償に関することは、当然完全に処置しなければならぬと考えております。ただその方法に関しましては、確定的なことは今回の事件に関する公式の態度が確定したときになりますが、私はこの行為は米軍の過去の合同委員会の記録等に基く間違った解釈によるものである、従ってこの行為は許されざることである、ゆえに現在の行政協定第十八条の補償措置をとるべきが適当だとただいまのところ考えて、そのように処置していきたいと考えております。
  88. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 先ほどもちょっとお話しましたが機画掃海隊司令官から佐世保の調達事務所長あての回答の中に、こういうことがあるのです。漁船が掃海艇後方を横切ったために生じた事故がかなりあったことを認める、その中のある漁船は掃海機具に多大の損害を与えた、当司令部はいかなるクレームも正式には認めていない、現地の米軍はこういう態度ですよ。漁船の方がうしろを横切ったりするから事故を起したじゃないか、こっちの方がケーブルを切られたりして損害をこうむっているくらいだ、いかなるクレームも正式には認めぬ、一片の反省もありませんよ。これでも政府が抗議を申し入れた、その結果米軍が若干反省したというふうにあなた方の方はおとりになりますか。米軍側がこんな態度では、これから非常に困難になるのじゃないですか。だから私が心配して、現実に起きた、しかも不法行為による被害については、日本政府としては絶対に責任を持って補償いたしますという答弁を期待して、今質問している。
  89. 丸山佶

    ○丸山説明員 お説の通り本件は基本問題においての見解の相違があるわけであります。この問題を合同委員会において明確にして初めてすべての措置がとれる。私どもといたしましてはただいままでとって参りました解釈において、これが正しいものである、このことを合同委員会において明確にいたしまして、今後こういうことのないようにするとともに、この補償措置は協定に基く成規のものによって完全に払われるように努力いたしたいと思っております。
  90. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それから補償にも関連して問題はもう一つあるわけですが、協力したかしないかは別として、米軍が告示した、それを受けて海上保安庁が演習地を指定したわけですね。ところが現実に指定された水域以外でまた損害を受けておる面がある。網が切られた、生けすがやられた、あるいは操業しようとしたら信号灯や照明灯をどんどん打ち上げて追っ払われて、操業が不可能になった。こういうようなとんでもない事件もあるのですよ。かりに成規の手続が行われておったとしても起きたであろうと思われる問題が出てきておる。告示された水域以外において現実に迷惑をこうむっておる。こういう問題について、補償だけでなしに、どうお考えになりますか。
  91. 丸山佶

    ○丸山説明員 先方の当初連絡して参りました地域に対してはただいままで申し上げた通りでございますが、現実にはそれ以外の区域においてもなおそのようなことがあるということは、当然問題なしの米軍側の責任だと考えております。
  92. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 そうしますと当然補償もしなければならぬということなんですか。
  93. 丸山佶

    ○丸山説明員 現実の損害がある限り補償すべきものと考えております。
  94. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 たとえばそこにあらかじめ設けておった網、生けすというものならはっきりしますね。ところがそうではなしに追っ払われて操業ができなかったとか、あるいは網を切られたとかということになると、位置測定が非常に困難だという問題が出てくる。漁民の人たちは、あの山のはなとこの線とここでやられたと言っても、計器を持たないわけなんです。米軍側としては、いやそこではなかったというようなトラブルが出てくる。そのときの位置というようなものについても、一つ積極的に漁民の利益を守るという立場で調達庁としてはやるつもりですか。
  95. 丸山佶

    ○丸山説明員 お話の通り現実の事実確認等においては、相当困難の事項も予想されます。しかしながら調達庁としましては実情を十分に調査しまして、その被害が米軍の行為に基因されることを確認し得る措置を講じまして、適正な手段を講ずる、このようにいたしまして目下現地の役所には調査を命じておる次第でございます。
  96. 福田一

  97. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 私も東京湾の入口で同様な掃海訓練が行われたことに関して御質問を申し上げるつもりでおりましたが、石橋君の佐世保の問題でほぼ同様でありますので、あえてそれは繰り返しません。ただ、今石橋君の質問を聞いているうちにちょっと疑問になってきたのですが、補償を調達庁でやっていかれる場合に、本庁の方で、それが違法なものであろうとなかろうと、一応航路指定をした、だからそれに反して入ってきた連中はなとどいうような、過失相殺のようなことを言われはしないかという疑問が出てきたのですが、そういう点についてはどうでしょうか。
  98. 丸山佶

    ○丸山説明員 その辺は法理的にむずかしい議論があろうかとも思いますが、御承知のように、そもそもの基本問題として、この演習が行政協定上適法であったかどうかというところで目下検当、折衝をいたしており、なるべく早くこれの態度表明を明確にする、その基本において私どもが主張しますようなことでありますならば、やはり補償措置は当然いたすのが至当であろうと私は考えて、そのような方針のもとに進んでいきたいと思っております。
  99. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 くどいようですが、航路指定があったとかなかったとかいうことと被害補償の問題とは関連せしめない、こういうふうに伺っていいですね。
  100. 丸山佶

    ○丸山説明員 東京湾の問題も佐世保の問題も、事の性質は全然同じでございます。それらの関連事項の法理論と解釈等も十分に検討いたしますけれども、基本的な態度といたしましては、先ほどのように米軍の基本の措置からのこととして処理をしていきたい、このように思っております。
  101. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それでは東京湾の問題に戻りますが、東京湾の入口の観音崎東方約二キロメートルの海面を南北に約九キロ、こういうところで掃海訓練をやられたようですが、御存じのように東京湾というのは日本の玄関口だ、こう考えてもいいと思います。そしてまた外国船もたくさん出入りするわけですし、また日本の巨船もたくさん出入りするわけです。言ってみれば玄関口、鼻っ先のところで明らかな違法な訓練が行われた。こういうことについて調達庁の方は防衛庁の方に事前に御連絡なすったのですか。
  102. 丸山佶

    ○丸山説明員 東京湾の件も佐世保の件も、たしか同様に同日付をもって連絡を受けた事項であります。全く同性貿のものであります。従いまして調達庁のこれに対する措置は、佐世保に関するものと全く同一に取り扱っております。
  103. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 防衛庁の方に通知したのですか。
  104. 丸山佶

    ○丸山説明員 防衛庁の関係の向きにも連絡してあったはずでございます。
  105. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それでは一つ赤城さんに伺いたいのですが、これはさっきから石橋君は遠慮をして、行政協定違反というふうに述べておられますが、しかしこれは行政協定違反というだけにとどまらず、再三の警告にもかかわらずわが国の領土、領海を侵した行為にならないですか。そしてしかも何らの権限なくして、わが国の領土、領海の中で公然たる軍事的な行為を行い、そのためにわが国の良民に多数の被害をこうむらせたということにならないでしょうか。この点赤城長官の御説明を伺いたいと思います。
  106. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたように、合同委員会の結果によって、これは行政協定違反だと思います。しかし米軍との関係は、安全保障条約等によって日本に駐留もいたしておりまするし、近海において演習をすることも話し合いの上では認められておるわけであります。そのこと自体は日本の主権を侵犯したということには相ならない、こう思います。
  107. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 どうもそういうお話だと、なおわれわれとしては不可解ですが、安全保障条約によって米軍が駐留をすることができる、それはお説の通りです。だがしかしそれにはちゃんと安全保障条約及び行政協定に基く制限があるはずです。いかなる地区であろうとも、日本政府の了解なしに勝手な行動を行うという権限はないだろうと思う。それをあなたはお認めになるはずはありません。そこで本件について見ても、あらかじめこちらとしては、そこは権限外ですよということを調達庁の方から明確に言っている。にもかかわらず、公然と彼らの権限にない範囲でもって軍事行動を行うとすれば、そのことの事情の重大であるかないかは別として、少くともわが国の領土を侵していると言わないわけにいかないじゃないですか。行政協定違反だ。行政協定違反という行為が公然と行われた場合には、日本の領土、領海が侵されているものだと言わないわけにいかないと思うのです。今あなたも話し合いの上で、こういうふうに制限をつけて述べられましたが、話し合いの上でまとまっていないじゃないですか。こっちはだめですよ、こう言っているわけでしょう。にもかかわらずやられている。普通の人がわれわれの家をたずねてきて、お入りなさいとこちらが言わないのに、いや、それどころか、入っちゃいけませんよと言っているのに無理に入ってくれば、家宅侵入罪になるでしょう。一体それとこれとどう違うのです。私は別にいやみを言うわけではありませんが、この間北海道へ私も行ってみましたが、北海道ではレーダー・サイトなどを置いて、ソ連の飛行機がちょっとでも領海に近づくと、入ってはこなくて、もうその付近まで来ると、すぐ警報を発して、あなた方の飛行機がその飛行機に向って飛んでいっている。こういう状況がある。入ってもこない飛行機に、近寄ったというだけで飛んでいくのに、こちらでは堂々と入ってこられて、横っつらを張られて好き勝手なまねをされる。しかも東京湾というのは日本の玄関口ですよ。鼻っ先で、被害がなかったからようございましたが、かりにこのために、そんなこともなかろうと思いますが、航行する外国船舶にでも被害を与えたというようなことになったら、一体どうなるのです。国際問題じゃないでしょうか。そういうことを公然とやっているのにもかかわらず、あなた方は平然として、国の領土を守るということを常々唱えていらっしゃる防衛庁は知らぬ顔の半兵衛、これでは先ほどの石橋君も一体事前協議について断固たる措置がとれるのかというような疑問を出さざるを得ないじゃないでしょうか。一体この事実は領土、領海の侵犯行為でない、こうあなたは断定なされるのかどうか、その点だけ伺いましょう。
  108. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 先ほどから調達庁長官が御答弁申し上げているように、きまった区域においては演習はできる、きまってない区域については、これは合同委員会で話し合った上できめるべきだ、こういう建前であります。ところが、これは両方できまった区域でないから合同委員会で諮るべきだ、諮ってからでないとその決定はできないということを、調達庁の方から米軍の方に通知したわけであります。ところが米軍の方では、前の合同委員会における話し合いの解釈を間違えて、ミス・アンダスタンディングといいますか、そういう形でここで訓練をした、こういうことでありまするから、領土、領海等を侵すということではなくて、その手続を怠ったということでありまするから、これを領土、領海の侵犯だというふうには認めておりません。
  109. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 誤解に基くのだから犯意がない、こういう説明でありますが、しかしその誤解を解くためにあらかじめ調達庁の方から正式にちゃんと抗議を申し込んでいるわけです。しかもまたその誤解を解くために、米軍としては当然合同委員会なり何なりに出席して討論すべき筋合いです。にもかかわらず、そういう再三の警告を受けたにもかかわらず、あえてそのことを行なった以上、これを誤解というわけにはいかないじゃないでしょうか。あなたは人殺しをしちやいけませんよと注意を再三しておいたにもかかわらず、あえて行うという場合には、許されたものとその人が何べん考えたとしても、それは客観的に誤解とは言えないわけです。この問題について、しかも事は個人の行為でない、演習といえども軍事行動である。いろいろな演習、大規模な演習が国際的な波紋を描いていることは、あなた方も御存じの通りでしょう。軍事行動という性質を持つ以上、慎重に扱わなければならないわけです。しかもその軍事行動が、駐留軍の指揮系統外と言っていいのかどうかはわかりませんが、ハワイから指令が来た。ハワイから来た指令に基いて公然と行なった。再三の注意にもかかわらず。そうだとすれば、それはただ単に誤解だという程度でとどまるでしょうか。そういう遠慮した、卑屈な態度がむしろ問題をこじらしていくのじゃないか。なぜもっときぜんとした態度がおとりになれないのか。しかも東京湾といえば、その中には横須賀という軍港があります。そこにはあなたの指揮下の日本の海上自衛隊がたくさんいらっしゃる。目と鼻の先で公然と領海が侵犯をせられていることを、指をくわえて見ておった、こう悪口を言いたくなるわけです。一体そういう何でもかんでも米軍に好意的な、しかも卑屈な解釈をしていることが、あなたと私の間のこの問答ならば許されるけれども国民の間におりた場合にどう評価されるか、お考えになれぬのですか。やはりこの問題は明らかな主権侵害である、領海侵犯である、そのことについて日本政府は厳然とした抗議を申し込む、ただ単に行政協定違反である、おあやまりなさい、補償しなさい、そんなけちくさいやり方でなしに、あなたは領海を侵犯したじゃないか、こういうことでアメリカ本国との間に公然たる交渉をし、これに対する彼らの謝罪の意思を明確にさせなければならないはずです。そうでないと、またハワイから命令が来ますよ。今度はワシントンから命令が来ますよ。そして上部機関の命令だから、なに調達庁がとやかく言おうともおれたちは断じて行う、こういう態度を次々にとられていくに違いない。しかも先ほどからくどいように申し上げますが、東京湾ですよ。ここから入ってくれば横須賀にも行き、横浜にも行き、東京にも行く。言ってみれば日本の玄関じゃないですか。玄関の鼻先でそういうことをやられていて、断固たるこうした領海侵犯に対する抗議をワシントンに提示できないような弱腰の政府が、今後安全保障条約でどんな説明をなさろうとも、国民は納得しないのじゃないか、こう私は考えるわけです。くどいようですが、これは領海侵犯でないのか。誤解に基くといっても、その誤解は、あらかじめ解くために再々こっちから警告を発しているのですから、そんなことは言いわけになりません。そうしてその侵犯に対して、日本政府はただ単に行政協定違反だといって、補償をどうしますかというようなけちくさい態度でなしに、ワシントンに対して遺憾の意を表していく意思があるのかないのか。第三には日本の駐留軍がハワイあたりからの指示に基いて勝手な行動をやることについて、やはり正式な抗議を申し込んでいただけるかどうか、この三点について伺いたい。
  110. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 この点につきましては、御承知のはずだと思うのですが、なお御説明申し上げますと、いきさつがあるのです。御承知のように占領中は米海軍の極東司令部が掃海をしていたわけです。これが平和条約が締結されてから、日本側が引き続いて掃海をすることになったわけであります。そこで一定の区域をきめてあるわけでありますが、区域外で掃海をする場合には合同委員会にかけてその可否をきめる、こういうことになっておるわけであります。そこで当時の合同委員会におきまして、将来掃海並びにこれに関連する事項についてはアメリカの海軍司令官は直接関係官庁と連絡することができる、こういう話し合いが合同委員会でできてるわけです。でありますから、今回のこともアメリカ側から見れば、そのときの合同委員会の話し合いであるので、これに関連する事項であるから——掃海並びにこれに関連する事項であるから、関係官庁に連絡すればいいだろうというようなことでやったのではないかということが、あとで判明したわけであります。その前におきまして調達庁からは、こういうことをされては困る、これは合同委員会に諮らなければならない問題だ、こう言っておいたのでありますが、向う側では前の合同委員会における話し合いの解釈を、わが方と違った解釈のもとでやったのだ、こういう結果に相なっておりますから、今開かれた、またこれから開かれる合同委員会におきましてもその点を明らかにしたい、こういうことであります。でありますから一般に、ただ単に日本の領海とか領空等を侵すということとはこれは別個の問題で、ただ漫然といいますか、合同委員会の話し合いがないときに領空あるいは領海、領土を侵す場合にはきぜんとして私の方でも抗議を申し込み、そういうことはさせないのでありますけれども、今問題になっております事件は合同委員会において語りし合いができていた、その話し合いの解釈の相違がこういう結果になっておる、こういうことでありますから、領土あるいは領海侵犯というふうには私ども考えておりません。
  111. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そのために調達庁の方からすぐ回答をなすったのじゃないでしょうか。調達庁の方でもただ漫然と指定区域内でおやり下さい、こう言っただけではないだろうと思う。調達庁こそそういう事前の了解事項があったことを一番よく御存じの官庁だろうと思います。従ってそういう取りきめがあって、あなたの方で誤解しておるかもしれないけれども、これはだめですよ、こういうようなお話を当然なすったはずです。もしなすっていないとすると、調達庁はうかつ千万だと言わないわけにいかない。そうじゃないでしょう。調達庁は当然そういう話をなすっているはずだと私は信じます。もしそうでなかったら調達庁は怠慢です。そういう再々の注意にもかかわらずあえて行うというところに、重点を置かなければいけないのじゃないか。一ぺん注意したのにあいつまたやったよ、悪いやつだというのが私たちの、国民の常識だと思います。悪いことをしても裁判所は一ぺんは執行猶予にしてくれる、注意してくれる。今度はしっかりやりなさいよ、こう言って、またやれば今度は許さぬという態度が国民の態度じゃないだろうか、こう思うのです。ところがあなたの方は、誤解だ誤解だ、誤解するのも無理からぬということで、向うにばかり同情して、誤解する側に立ってものを言っている。そういうことで問題は片づかない。ここでのあなたと私の問答はそれで済みますよ。水かけ論でしょう、コンニャク問答でしょう。それで済みます。だがしかし、釈然としないのは国民ですよ。何べんも注意をした上で、なおかつ行うものに対して、同情的に無理もないのだ、こういうような言い方で許されるかどうか。この点は私は別にあなたの答弁をいただくつもりはありません。しかし当然これは厳重なる抗議を相手方に呈すべきものであって、ただささたる行政協定違反という程度の問題ではない、こう考えていただかなければならないはずです。しかも結果として、あなた方の言う同情すべき善意の誤解に基いて、わが国の国民が多数被害をこうむっている。こういう事実も見のがし得ないだろうと思います。誤解で原爆を落されて多数死んだ、誤解で仕方がない、同情すべきことだ、こんなことで済ますつもりですか。
  112. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 官房長官が来られましたのでお尋ねしたいと思います。大体今までの質問で一応の経過はわかったわけです。やはり政府として本気で取り組んでもらわなければならぬ重要な問題だと思うわけなんです。そういう意味で、政府代表という立場で一つ官房長官にお答え願いたいと思うのです。  まず第一番目は、今度の掃海演習というのが明らかに調達庁も認めておるように、行政協定に違反して行われておるという事実です。しかもその、いわば不法な演習を、事前に有効に阻止することができなかったという政府の責任をまず私はただしたいわけです。今まで聞いてみますと、調達庁の方ではそれは指定水域ではないから、そんなところで演習をやってもらっては困ると言いましたと言う。ところが今度は海上保安庁の方にいくと、違法かどうかは別として、とにかく向うさんがやると言うものだから、国民に被害を与えては工合が悪いので警戒警報の意味で告示をしたのだ、こう言っておる。ところがその告示をしたということが、米軍側にとってみれば日本政府の了解を得たのだ、こういうふうに伝わっておるわけです。これは現地で責任者に調達庁の出先が質問をしました。そのときの米軍側の回答がそうなっているわけです。機雷艇隊司令部から横須賀の司令部に、日本政府の了解を得たのかどうかといって尋ねてみたら、八月十日に海上保安庁に連絡し了解を得ておる、こういう連絡があったということを回答しているわけです。だから海上保安庁としては、協力するつもりはなかったと先ほど言っておるのですけれども、実質的には協力したというだけではなしに、政府機関の一つとして了解を与えたような印象すら与えておる。一体何事だと私は言うのです。政府でばらばらじゃないですか。調達庁は抗議を申し込んだかもしらぬが、保安庁は、抗議を申し込んだり違法性をただしたり、そんなことは調達庁の仕事でございます、私どもは何も知りません、一体それで済みますか。しかも現実的に明らかに行政協定が無視されておる。なぜ政府としてその関係の役所を統一して、一本の秩序のもとにおいて有効に阻止するような手を打たなかったのか。済まなかったと言えばそれまででございますが、その点をまず明らかにしていただきたい。
  113. 椎名悦三郎

    ○椎名説明員 次の合同委員会において、各所管の官庁においてとるべき責任をはっきりさせようという考えであります。
  114. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 正式に日本政府として米側に抗議を申し込むということなんですか。
  115. 椎名悦三郎

    ○椎名説明員 いや、御質問の趣旨は、日本の官庁のやったことに対して不当であるか当然であるか、とにかくその責任をただせ、こういうお話だと思いまして、その点は適当な方法によって明らかにしたい、こう考えております。
  116. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それもまあやっていただかなければならぬかと思いますけれども、そのことよりも私はそういう結果になっておるとすれば、政府立場としてどうもおかしいのじゃないか。何らかそこで、事務当局にこんな重大な問題をまかせっぱなしではなしに、あなたならあなたが直接そういう問題は取り扱って、日本政府としてやめて下さいという正式な意思表示をやる必要があったのじゃないか。そういうことをしないから、政府機関である調達庁はやめてくれと言ったような格好だけれども、もう一つの機関である海上保安庁は協力したような格好になっているじゃないか。そういう不統一はこれは問題じゃないか。何も今から責任をとやかく追及してもらったって片づく問題じゃない。あなたが今それをどう考えるかということなんです。この問題はすでに早くから党として正式に長官に抗議を申し入れておることでもございますし、十分に調査も研究もされておると思いますので、その前提に立って私は質問しておるわけです。行政協定の無視、違反といったような重大な行為を有効に阻止できなかったということについて、政府として責任をお感じになりませんか。
  117. 椎名悦三郎

    ○椎名説明員 アメリカ側に対しましては、次回の日米合同委員会において十分その間違いであるということを主張して、アメリカの反省を十分に促したい、こう思、います。
  118. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それも必要でしょう、ぜひやっていただきたいと思います。ただ私もう一度申し上げますけれども政府の対米折衝といいますか、アメリカに対する日本政府機関として非常に統一がとれておらないじゃないですか。今度の問題ではしなくも暴露されたのですけれども、調達庁は違法だからやめてくれとおっしゃったかしらぬが、保安庁の方はそれは調達庁まかせで、実質的にはもうやるということを前提にちゃんとおぜん立てをしてやっている。しかもそれについては何らの深い研究も行われないままですよ。そういうことでは今後いけないのじゃないですかということを聞いておるわけです。
  119. 椎名悦三郎

    ○椎名説明員 行政官庁間の不統一ということよりも、実際問題として物騒だから、それで海上保安庁としては警告を出したというようなことに聞いております。私はそれは行政官庁がばらばらで不統一であって、方針がまちまちであるというふうには考えないのであります。問題が緊急事態になれば、今度はそれに対して危険を防護するために何らかの措置をとらなければならない。その措置をとったにすぎない、こう考えております。
  120. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それはおかしいですよ。アメリカと日本政府との交渉なんですよ。調達庁の抗議というものに裏づけを与えてやるということをまず考えなければいかぬじゃないですか。私はそれで調達庁の抗議なるものも、一体どの程度まで本気でやったかというその疑いすら持つのですよ。調達庁は抗議しましたと言うけれども、そういう違法な行為はやめて下さい、正式な手続をとって下さいと言ったとおっしゃるけれども、片一方で同じ政府機関の方で、すでにやることを前提にして準備をするということで迫力が出ますか。日本政府が本気でこれを阻止しようという気持が向うに伝わりますか。そういう意味で私は言っているのですよ。そんなばかなことはないじゃないですか。協定違反をやらせない、そういう不法な行為はやらせないという日本政府の態度を見せるためにも、保安庁はぎりぎりまでまだがんばれるのですよ。アメリカから通告があったのが半月前、保安庁が告示をしたのは五日前、しかもアメリカが告示したのは翌日ぱっと告示しておる、告示をした、いよいよもってこれは本気でやるつもりらしい。そのときに政府として絶対に阻止しなければいかぬ、そんな不法なことをという気魄がないじゃないですかと言っておるのですよ。調達庁の抗議よりも、保安庁がいかにも了解を与えて協力したかのごとき印象を与えるような行為が先に出ておるじゃありませんか。そういうことでいいのですか。それぞれの役所に権限がそれぞれあって、だからこんなことになったのだというならば、政府としてそれを一本にまとめて、保安庁ちょっと待て、今調達庁で抗議しておるのだからもうちょっと待て、こういくような見解を与えて指示を与えるところがないというところに、問題があるのじゃないですかと聞いておる。それについての反省がないということは大へんな問題ですよ。それで官房長官に政府を代表して、そういったところから若干の反省はございませんか。アメリカに、本気で日本政府の意思はこうなんだということを見せるためにも、ちょっとおかしな格好になったのじゃないですかと聞いておるのです。
  121. 椎名悦三郎

    ○椎名説明員 あくまでアメリカの掃海演習に対する日本側を代表する機関は調達庁でございます。それが抗議したにもかかわらず、米軍の誤解に基いて行動を起された、その行動の危険を防護するという、ただそういう事実行為を海上保安庁がやったというのでありますから、私はこれは不統一ではないと思います。
  122. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 あなたがそういうような考えでしたら、先ほど私は防衛庁の長官にもお尋ねしたのですけれども日本政府とアメリカ政府との間のいわゆる事前協議なんというものを今後やったってくそにもなりませんじゃないですか。安保条約の改定でいかにも自主性を確保するのだ、そのために米軍の領域外出動あるいは装備の重要な変更、そういうようなことは今後事前協議をやるのだ、日本の意思に反してはそういうことは絶対にさせませんと太平楽をおっしゃっているけれども、演習一つ阻止できないじゃありませんか。向うさんの誤解でございます、事務当局にまかせっぱなし、事務当局にまかせて済む問題だとあなたは簡単に考えているのですか、協定の無視などということを。今後の交換公文によって事前協議制がとられたのと同じ問題だと考えてもいいのですか。また誤解で向うがやったらしょうがない。演習すら約束を守らすことができないで、協定を守らすことができないような日本政府が、どうして実際実戦の場合に米軍を規制することができますか。防衛庁、政府と向うの軍部の出先と、それだけで話をして、そうして行うようなことを過去にもやっているのだ。あなた方はそれに対して内閣の責任者としてもう少し反省があっていいと思うのです、約束を守らすことができなかったということについて。おかしいじゃありませんか。
  123. 椎名悦三郎

    ○椎名説明員 繰り返して申し上げてまことに恐縮ですが、大体において日米安保態勢というものを是認しておる建前からいいまして、そういう一種の不信頼感に基いた行動を過度にやるということはいかがなものか。それで規則によりますと、直接演習の際には関係官庁に折衝することができるという取りきめがあるそうであります。それに基いて海上保安庁に折衝をした。その結果、危険防護のために海上保安庁は危険信号を出した、こういうのでありますから、そう不統一とかなんとかいう問題は私はないと考えます。
  124. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 岸内閣がアメリカと特殊の関係があるということは私はわかっていますよ。しかしそれはノー・ズロですか。ちゃんと政府政府との間で行政協定というものを作っておいて、本来ならばそれは国会の承認を得なくちゃならぬような重大な問題じゃないですか。その協定を守らなかった。守らないで勝手に演習をやろうとしている。あなたは何の規則でできるというのですか、そんなことが。行政協定の第二条なんというのは空文だというのですか、合同委員会にかけなければならぬというのは…。調達庁事務当局でもはっきり協定違反だと言っているじゃないですか。何か規則の方が、取りきめか、約束か、協定よりも優先するとあなたはおっしゃるのですか。
  125. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 先ほどから再々申し上げておりまするように、行政協定に基いて合同委員会があるわけであります。それで平和条約締結後の合同委員会におきまして掃海の問題につきましては、将来の掃海並びにこれに関連する事項については、アメリカの海軍司令官が直接関係官庁と連絡することができる、こういう行政協定に基く合同委員会における話し合いがあったわけであります。でありますから、掃海についてはこれは関係官庁に連絡すればそれでいいわけでありますが、掃海の演習については合同委員会できめた区域以外においてやる場合においては、これは合同委員会で諮らなければならぬ、こういう建前でありまするから、調達庁といたしましては、これは掃海の演習だから、訓練だから、これは合同委員会で諮るべきものだ、こういうふうに通達といいますか、相手方に、アメリカの方へ通知したわけであります。ところがアメリカの方では、これはあとでわかったわけでありますが、先ほどの合同委員会の訓練、あるいはそれに関連する事項というようなことで、これは合同委員会に諮らなくてもいいものだというふうにとった向きがあるのです。これはあとで判明したのであります。そういうことでありまするから、この事態ができた後の合同委員会におきまして、アメリカ側の合同委員会における話し合いの解釈が間違っておる、日本の解釈が正しいのだということを主張したわけであります。しかしまだ結論に達しませんので、この次の合同委員会におきましてもわが方の主張が正しいのだということを主張する、こういうことに相なっておるわけであります。
  126. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 もう経過はよくわかったのです。わからぬのは官房長官です。そういう経過であったことは私もわかって、その前提の上になおかつ質問しているわけなのです。あなたはアメリカには厳重に抗議すると今おっしゃった。それで一つは了解しまりした。もう一つ、日本政府側にもちょいと反省すべき点があるのじゃないでしょうかという意味質問を私はしているわけです。というのは、そういう向うの誤解があとでわかった、しかしそういう誤解に基こうと何にしようと、とにかくやってしまおうという気持にはもう間違いなかったわけです。いよいよ根拠がはっきりしたわけですよ、誤解だとおっしゃった今の材料で。ただ関係官庁に連絡さえすればできるのだという気持だったかもしらぬが、とにかくやるのだ、調達庁の抗議なんというのは問題にされなかったという結果がはっきりしておる。いよいよはっきりしてきたわけなんだ。その日本政府の抗議が問題にされなかった裏に、日本政府機関として何らか反省すべきものがあったのじゃないか。片一方の役所では、どの程度か知らぬが、確かに抗議は申し込んで、やめて下さいと言っているけれども、片方の役所ではやることを認めた格好で準備をどんどん進めておる。そういうことで本気で反対しているのじゃない、抗議しているのじゃないと向うがとる要素があったのじゃないか。行政協定、両国政府のこういった正式の取りきめ、私どもは本来ならばこれは条約そのものでなくちゃならなかったと思っている。そういうものに違反しようというときに、日本政府の抗議の仕方がそんなことでいいのですかと——保安庁の心配もわかります。わかるけれども、それはもう少しぎりぎりでもできぬことはありません。アメリカがやったからぱっとこっちもすぐやるという、そんな百パーセントの協力ぶりを発揮する必要はなかったと思う。そこのところで政府がしっかりさえしておれば、保安庁がそういう手続をとるのを若干抑えてでも、とにかく困るという——協定を守らせるという点でもっと強い抗議をやる必要があったのじゃないでしょうか、その点にいささかの御反省もないのですかと私は聞いているのです。
  127. 椎名悦三郎

    ○椎名説明員 大体において行政庁の各持ち場持ち場においての大きな一方針上の食い違いはないと私は見ておりますけれども、しかし百パーセント完全であって、反省すべき点がないかどうかという点になりますと、それは全然ないということは言えないと思います。その点はよく調査いたします。
  128. 福田一

    福田委員長 ちょっと石橋さんに申し上げますが、官房長官は二時からまた参議院へ出なければいかぬので、食事もまだですし、一つ大体の事情を……。
  129. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 官房長官にそう言っていただくと五分で済むことなんですが、答弁の方でおくれておることなんですが……。  とにかくこういった重大な問題を、いかにも政府機関内の不統一といったような印象を与えるようなことは、今後一切御注意を願いたい。あくまでも取りきめに違反する、それに対する抗議をするということであれば、政府一体でぶつかる。一つそれくらいの気組みでやれるような組織的な機構的な面も、御検討願いたいということで第一点は終ります。もう一つは軍が告示をして、それを受けて海上保安庁が告示をした。合法性はないのですけれども、とにかく保安庁の気持としては危険があってはいかぬから、そういう気持だそうでありますが、演習地域は指定されたわけであります。ところが現実に指定された水域以外において日本国民が迷惑をこうむっておるのです。網を切られたり、あるいはほとんど夜ですから信号灯や照明灯をばんばん打ち上げられて追っ払われたり、操業不可能になったり、そういう迷惑をこうむっておる。これはまことにいよいよもってわがもの顔にふるまっておると言わざるを得ないでしょう。これは誤解もへったくれもないでしょう。ちゃんと水域まで指定しておるのに、その水域以外において暴れ回っておる。魚とりに行っておったら向うに行け、行っても信号灯や照明灯で追っ払われる。夕涼みでふざけておるとしか思えぬじゃないですか。そういうことに対してやはりきぜんとしたところが政府にない、この当初のいきさつから見ても。だからいよいよ向うはいい気になって、自分の家のような態度で臨んでおるのじゃないかという印象をわれわれは受けるのです。地元の住民もそういう印象を受けておるのです。そういうことに対しては協定を破ったということ以上に、私は厳重な抗議をしてもらいたいと思うのですが、この点いかがですか。
  130. 椎名悦三郎

    ○椎名説明員 調達庁の方におきましては、すでにその申し入ればしておるのでございます。なお次回の合同委員会において十分に申し入れをして、それの万全の善後策を講じてもらいたい、こう考えておるわけであります。
  131. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 最後に、今言ったような場合に、今度迷惑をこうむっておる人たちはまた特殊なケースになるわけです。先ほど調達庁の長官にもお尋ねしたのですが、立証の面で非常に困難性も予想されるわけであります。ほんとうに事務的にまかせっぱなしにしておったのでは、むずかしいのではないかと思われるような点もあるわけであります。やはり政府としてこの抗議と一貫してあくまでも起きた被害については補償させるという、根本的な基本的な約束をここで取りつけるくらいの気組みで、迷惑をこうむった漁民、国民の補償については積極的に政府として取り組むという態度をここで明言しておいてもらいたい。
  132. 椎名悦三郎

    ○椎名説明員 その点につきましては十分実態を調査いたしまして、これに対する措置をとりたいと思います。     —————————————
  133. 福田一

    福田委員長 この際小幡防衛政務次官より発言を求められておりますので、これを許します。
  134. 小幡治和

    ○小幡説明員 過般防衛政務次官の任命を受けました参議院議員の小幡治和でございます。今までごあいさつする機会を持ちませんのでおくれましたことをおわび申し上げます。非常にふなれでございまして、目下大いに勉強いたしておる最中でございますので、どうぞ一つお手やわらかによろしくお願い申し上げます。(拍手)
  135. 福田一

    福田委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後一時四十八分散会